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空より来る絶望の/それでも

#クロムキャバリア #ザ・スター #ファーストヒーロー #🔵1章断章投下済み #🔴プレ受付開始→6/20の8:31より #🟦執筆:リプレイ内容重視 #→ちょっとだけ速度重視に切り替えます、すみません(6/23) #キャパオーバーでした、すみません(6/24)

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#クロムキャバリア
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#ザ・スター
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#ファーストヒーロー
#🔵1章断章投下済み
#🔴プレ受付開始→6/20の8:31より
#🟦執筆:リプレイ内容重視
#→ちょっとだけ速度重視に切り替えます、すみません(6/23)
#キャパオーバーでした、すみません(6/24)


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 それは唐突に姿を現した。クロムキャバリアのとある小国家の上空……そう、上空にである。
 その存在は決して悪ではない。為そうとしていることは正義である。

 ――それは『誰にとっての』正義であっただろうか?

「遂に見つけたぞ!
 ヒーローズアースを遠く離れ、骸の海を彷徨うこと幾星霜……。
 このクロムキャバリアなる世界こそが、邪神の複製体『レディ』の製造工場に間違いない!」

 その存在は語る。声高に、宣言するように。
 だが。

「……ウグッ、何だ? 頭が痛む!! 心の声が聞こえる!」

 これもまた唐突に苦しみだす。

『強靭すぎるが故に生きながらオブリビオンと化した、哀れな我が肉体よ。
 |汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》……!』

 心が語り掛けてくる。
 『それ』はあらゆる者達に対する正義ではないのだ、と。
 決して『真の平和』をもたらすものではないのだ、と。

「……だ、黙れ黙れ!
 ようやく旅の目的地に辿り着いたというのに、何もせず引き下がれるものか!
 我が心よ、貴様こそ|汝の使命を思い出せ《レミニセンス・ザ・ワールド》!」

 |聖なる使命《正義》は誰が為に。


「悪いね、急な呼びかけでさ! 集まってくれてありがとう!」
 シャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)が随分と慌てた様子で集まってくれた猟兵たちへ振り返る。頼もしい面々にシャナミアがまずお礼を告げて、そしてすぐさま本題に入る。
「だいぶヤバい状態なんだよ。急いで行ってもらえると助かる」
 そういってグリモアを掌に掴めば、浮き上がるのはホログラムのようなモノ。シャナミアが見た予知を視覚化したものだろう。
 それを元にシャナミアが話を続ける。
「場所はクロムキャバリアのゼルヴェンって小国家だね」
 小国家とは言っているが、本当に小さな国で。具体的に言うと都市ひとつで国と言っている状態だ。
「まぁいろんな事情があってそんな小ささなんだけど、それはさておいて」
 問題はその上空。カメラがズームアップするような感じで場面が切り替わる。

 そこに映っていたのは、ひとりの男と不可思議な現象。

 生身のまま超高速で飛来したその男は空中で制止後、手を天に掲げる。すると、掲げた掌の先、小国家の『プラント』の上空に不可思議な現象が広がっていく。
 その不可思議な現象を目にした猟兵がシャナミアへ問いかける。これは……『ユーベルコード』なのか、と。
「そう。ユーベルコード……名前は『エナジー・ゲート』ってことはわかったんだけど、後は全部謎。完璧に謎」
 問いかけに頷きを返して、シャナミアが肩をすくめる。
「どうやって、|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の砲撃を凌いでいるかもね」
 ホログラムにもう一度視線を遣る。そこに映っていたユーベルコードの『現象・効果』は。

 小国家の上空に張り巡らされたエナジー状の、何か次元干渉しているような揺らぎ。そしてその揺らぎが|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》から怒涛の砲撃を、どういうわけか尽くエナジー・ゲートに吸い込み、消滅させている光景だった。
「後はわかっているのは『空中戦対応型オブリビオンマシン』を召喚できるってことくらいかな」
 その言葉の後、ホログラムの中で展開されていった光景は、空にずらりと並ぶキャバリア……オブリビオンマシンの姿。

「これまで……クロムキャバリアじゃ高高度を高速飛行する物体は尽く|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》に叩き落とされてきたわけなんだけど」

 オブリビオンマシン『エルゼドール』が一斉に手にした魔杖槍を構える。切っ先は真下……つまり、ゼルヴェン! 放たれる魔力の奔流が弾幕のようにゼルヴェンへと降る。

「高高度からの大威力射撃。めっちゃくちゃ面倒だよ。何せ、クロムキャバリアじゃ『通常』これに対する手段が無い」
 それはそうだろう。
 クロムキャバリアにおいて、高高度は死のエリアだ。誰にも気づかれないように……高速で到達すれば|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》に撃ち落される。逆に地上から高高度に対応するには、通常の地対空兵器よりも技術面や性能面でコストをかける必要がある。
 確かに乾坤一擲の一手として『その手段』を取る者もいるだろう。だがそんなギャンブルを仕掛ける者はいても極々少数だ。そのために、貴重なリソースを割くのは非効率に過ぎる。
 だから、『そんなことは想定していない』『あり得ない』ことなのだ。
「それを知ってか知らずか、相手は『反撃できない高高度から、有無を言わさずプラントを破壊する』つもりだよ」
 そこまで言って、シャナミアが皆の顔を見渡す。そして、ふふん、と笑った後、親指でホログラムを指す。
「だから皆で『此処』に乗り込んでほしい。クロムキャバリア史上初ともいえる、『超高高度空中戦』にね!!」

 グリモアが揺らぐ……導く先はクロムキャバリア。

「っと、言い忘れていたっていうか、もう予兆で知ってると思うけど」
 空に浮かんでいた男の名前だ。
「謎のオブリビオンの名前は『ザ・スター』……その目的は『世界全てのプラントの破壊』だよ」


 緩衝地帯小国家『ゼルヴェン』。
 ひとつのプラント都市がそのまま小国家になっている此処には少々特殊な環境にある。

 まず。4つの大国、赤:ロート、青:ブラオ、白:ヴァイス、黒:シュヴァルツに四方を囲まれている。
 次に、都市の位置。活火山の麓にある。時折とはいえ、噴火もすれば地震も多い。もちろん全てを溶岩流が押し流すような大噴火は百年に1度レベルだが、無くはない。その際は進路上にある全ての文明を破壊していく。
 そして、運送路。噴火や地震による、少なくない土地の隆起と荒廃。さらには各国家の横やり。最低限の道はあるものの、栄えるような要素はなく。

 だが、放置するには惜しい。
 何故なら、プラントが優秀すぎるからだ。
 溶岩流に飲み込まれたとて耐えきる|防御機構《バリア》に、壊れない生産機能。
 周囲の4国の生活を支えてなお、小国家として成り立つ程度には潤う資源の産出量。
 もちろん、キャバリアのフレームや部品などもなかなかの品質。

 唯一のデメリットは身の危険。
 火山が噴火すれば一切を失う可能性。例え、プラントを占拠して十全たる戦力を配置したとしても、敵ではなく、内部から蹂躙される可能性があるのだ。
 だが、何も手を出さないとなれば他国が潤うだけ。

 放置できない、だけど恩恵は受けたい。
 そんな思惑から生まれたのが、緩衝地帯小国家ゼルヴェン――またの名を対ゲルプ連合管理都市ゼルヴェン。
 4国から派遣された者と、このプラントを生まれた時から見続けている者で形成されている、あらゆる意味でプラントを中心にして生きている人々の国。

 ゼルヴェンは、成立から幾度となく火山の脅威に晒されながらも、何代も世代を重ね、いまもなお健在である。


るちる
 毎回いつもお世話になってます、るちるです。
 久しぶりのクロキャです。リハビリを兼ねて、頑張ります。
 そんなわけで、お届けです!

●全体
 3章構成の通常シナリオです。
 リプレイとしては、戦闘よりですが、戦闘は基本的に空中戦となります。
 まぁどんなノリでもOKです。プレ準拠。

 1章のスタート時点はザ・スターの到来の3時間前ほど。そこから2章の開始まで半日程度と考えてください。

 禁止事項:R18的な行為および公序良俗に反する行為。小国家にダメージを与える行為(物理以外に評判も含む)

 現時点で謎UC『エナジー・ゲート』について判明する事項は無いでしょう。調査が無駄とはいいませんが、得られるものはないと思います。

●1章
 日常『空中戦に備えろ!』
 タイトルの通り、来る空中戦に備えます。高高度で戦うことになるため、通常の地対空兵器は届かず、空対空戦になります。
 元々自力で飛行できる猟兵は良いんですが、そうでない場合はキャバリアに『古代の飛行機械』を換装したり、失われた筈の『飛行機技術』を継承したイカレ……もとい稀少な飛行機技士に戦闘機を作ってもらったり等、対策が必要です。
 現地で対応可能で、この辺りは断章にて補足します。
 また、元々飛べたキャバリアも高高度のためのメンテナンス等をやっておくといいかもです。

●2章
 集団戦『エルゼドール』との戦闘。
 ザ・スターがエナジー・ゲートから召喚した『空中戦対応型オブリビオンマシン』との高高度空中戦になります。艦隊戦イメージ? もちろん1対多でも全然OK。
 空中戦をうまくこなした猟兵にはプレイングボーナスが発生します。

●3章
 ボス戦『ファーストヒーロー『ザ・スター』』との戦闘。
 エルゼドールを殲滅した後は、ファーストヒーロー「ザ・スター」との空中決戦となります。ザ・スターは生身でも戦えるのですが、エナジー・ゲートからザ・スター専用オブリビオンマシン『レミニセンス・エニグマ』を召喚し、それに乗り込んでロボ空中戦を仕掛けてきます。
 詳細は断章にて。


 場所やシチュエーションはそれぞれ断章でご説明。

 オープニング公開後、断章を追加します。プレ受付開始はシナリオ公開日の翌々日朝が目途です。2章以降も冒頭に状況説明を入れますので、流れは一緒で。プレ受付時間などはタグで案内します(ない場合は、空いているなら受付)

 それでは皆さんの参加をお待ちしていまーす!
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第1章 日常 『空中戦に備えろ!』

POW   :    徹夜で空中戦用の機体や装備を開発する

SPD   :    既にある技術を応用し、飛行手段を編み出す

WIZ   :    幻の「飛行機技士」を探し出し、助力を頼む

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 グリモアの転送。
 謎のオブリビオン『ザ・スター』の襲来が『予知』であるならば、それに先んじて行動できるのが猟兵の強みだ。
 だが、グリモアの予知の性質上、『予知』の内容に干渉するような行動は推奨されない。予知そのものが覆る可能性があるからだ。

 だから、今。猟兵たちができることは、空からの絶望に対して、対策を整えること。
 具体的には、高高度空中戦に備えることだ。

 転送の際、グリモア猟兵から告げられたアドバイスはこちら。

 幸いにして、ゼルヴェンのプラントでは通常の資源以外にも、極まれに『オーパーツ』が生産される。
「いわゆる、『古代文明時代』の部品なんだけどさ。そういう『持て余してしまう』モノはプラントの地下にある共同保管庫へぶっこんであるんだ」
 長年の蓄積でそこそこの数がある。その中に、今回の事態を打開するパーツがあるかもしれない。
 例えば、短時間――依頼の間くらいになるだろうが、キャバリアを載せて動くサブフライトシステムとか。無重力制御装置なんてものもあるかもしれない。
「現地の技術では『用途が確定できない』モノだったり、エネルギー消費が酷すぎて稼働時間が1分未満とかそういうモノが投げ込まれてるよ」
 逆にその問題が解決できれば、今回の依頼に使ってしまってもいいだろう。そもそも価値が不明というかほぼ無いからこんな雑な管理をしているわけで。
 壊れたところでプラントがいつか再生産するだろうし、そもそも現地で扱いきれるかはまた別問題だし。
 プラントの管理者を訪ねれば、『酔狂な』傭兵として案内してくれる。

 そういった未知の手段に訴えないなら、都市内にあるキャバリア工房を頼るといい。
 ゼルヴェンにあるキャバリア工房といえばひとつしかないので、ご安心を。『究極の器用貧乏』な機体を作るべく、日々奮闘している。最終的な目的は、『誰でも扱えて、世界に通用する量産機』を作ること。
「そのために装備とかアタッチメントばっかり作ってるから、この手の問題にも強いはずだよ」
 それこそ、空飛ぶ装備とか。いや、実際にある。
「まぁ、変人ばっかりなんだけど。腕は確か、だと思うんだけどなぁ……」
 なんでそんなに自信が無いのか。そこを問いただす前に転送された。

●サニー工房
 今日のゼルヴェンの天気は、晴天ときどき雲があり。
「よっしゃー!! 今日もテスト日和じゃー!!」
 大柄な女性がラフなツナギ姿で両手を広げて天に吠える。
「んで、姉御。どれを試すっていってましたっけ?」
 同じくツナギ姿の、小柄だけど良く鍛えている感じの助手の男が、げんなりした表情で『一応』聞いてみる。
「そりゃ……試作ドラグーンのパターン1から10」
「多いわ!! いや、テストパイロットがフェスちゃんしかいないですよね!?」
「並べて順番に乗っていけば問題ないだろ?」
「「死ぬわ!!」」
 テストパイロットの女性まで一緒にツッコんだ。
「いや、並べてんじゃねーかよ」
「そりゃ並べるだけは並べますよ……|試作した《つくった》んだから」
 そういう3人の視線の先では、屋外の広大な試験場へ職員たちが試作キャバリアを並べていく光景がある。
「え? ホントに全部乗るの?」
「いやいやいや。全部は無理だし、そもそもパターン8から10はいらんでしょ」
 がくぶるしながら問いかけてくるテストパイロットに、手をぶんぶんと振りながら助手が告げる。パターン8から10……その機体を見れば、なぜか背中に翼やら、頭にプロペラやら、アンダーフレームが戦闘機になってるやら、である。
「なんで!! お前たちは!! 空に憧れない!!」
「「|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》があるからだよ!!」」
「ちぇーっ」
「普通の人は死にたくないんですよ」
 姉御の慟哭を一蹴する助手とテストパイロット。
「だけど、低空とはいえ、制空権取れたら戦略は広がるんですけどねえ」
「うーむ。理論的には確かに魅力的なんだけど、コストがなぁ……」
 テストパイロットの言葉は確かにその通りだ、と助手も思う。最近は飛翔可能なキャバリアも増えていることだし。
 だが、大きな企業ならまだしも、この工房レベルで実現できる飛翔手段など、目の前にある方法くらいのもんである。主に生産力とコストの問題で。
 一回限りのバックパック式のスラスター&翼とか。エネルギーインゴットを直接ぶっこんでプロペラを回して滞空するとか。そもそも脚などいらんのだ、という結論に達するか。
 いわゆる『自由な高機動』を実現するには何もかもが足りないわけだ。
「シャナちゃんも1回も使ってないっていうし、もー」
「もー、って。それはあたしのセリフでは??」
「フェスちゃんはもっとクールなキャラで攻めてほしい」
「何をだよ、このおバカ……」
 そんなこんなしている間に、職員から合図があった。準備完了らしい。
「それじゃはじめっかー!!」
「ふっ。お任せください。サニー工房のNo2パイロットが乗りこなしてみせましょう……! あ痛ぁっ!?」
「毎回、コックピットに乗るまでに時間がかかるんだよなあ」

 そんなわけで本日は快晴なり。


※シナリオ補足
 『ザ・スター』襲来の3時間前です。
 マスターコメントにあるように、2章の開始まではここから『半日程度』あります。
 襲来後、2章開始まで数時間あるのは、『襲撃開始』⇒『プラントのバリアが発動。防御する』⇒『バリアが破れそうになるまで』という流れのため。民間の避難はゼルヴェンに常駐している国軍が行いますので、ご安心を。

 キャバリアをジョブやアイテムで持っていない人でも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 借りることができるキャバリアは、量産型キャバリア(ジョブのイラストのイメージ)。装備も標準は見た目通りですが、アタッチメント変更可能です。

 空中戦の仕様ですが、空気抵抗や高高度での温度低下はこのシナリオでは無視できるものとします。

 プラントのオーパーツは、特定の空中戦対策をお求めの方に。オーパーツってことでだいたいのものはありますが、ある程度のイメージを持ってプレに書いてください。
 こだわりのない方はサニー工房へ。『ブレイドウイング・ジェットパッカー(マ○ンガーのジ○ットス○ランダーなの)』や、アンダーフレームを戦闘機にする『ブレイドウイング・アンダーファイター』のご用意があります。
 サニー工房は民間の小企業なので、エネルギーは通常のインゴットで賄える一般技術で装備が作られているため、バリアとかナノクラスタ装甲とか特殊な装備はありません。あくまで『飛べる』だけと思ってください。あと、翼でのカッター。『ブレイド』『ウイング』なのでね!!
 ちなみに、ブレイドウイング・アンダーファイターを背中用にバックパック化しただけだったりします。試作品がいっぱいあるよ!

 サニー工房の人間は基本的にどこか頭おかしい(誉め言葉)ので、突然訪問しても『装備に興味があるんです』といったら無条件でウェルカムしてくれます。なんなら手伝ってくれとかいうかもしれませんが、そこは無視して自分のキャバリアの装備を整えてください。
 技術が盗まれる? HAHAHA、こんな|非効率な《浪漫》装備、誰が盗むのよ。

 そんな感じで、空中戦の準備お願いします!
数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】

超高高度でのキャバリア戦闘だって?
参ったね、カブを纏っての空中戦ならやらなくもないけれどサイズ差が気になるよ。
仕方ない、Overedに合いそうなパーツをオーパーツの散らばる中から探しますかねっと……ん?
何だここ、機体のセンサーが反応してる、空間座標に歪み?歪曲パターンは……オイオイオイ、Overedと同じかよ!?
中にあるのは……専用のフライトユニットぉ!?
なんでこんな所に亜空間の格納庫を分けておいたのさ、ご先祖さんよ!?
色々ツッコんだり詮索したいけど今は置いとくか、まずはこのリフターを工房に持ち込んでドッキング作業を手伝って貰おうじゃないのさ!




「暑っちぃ~~」
 火山の麓の街だ。そんなこともある。
 着慣れたライダースーツの胸元を軽く仰ぎながら、しかし周囲の目を気にするような性格でもない。だから彼女はどこまでも駆け抜けることが出来る。
 それが例え、空の上でも。

 とはいえ、だ。
「超高高度でのキャバリア戦闘だって? 参ったね」
 愛車というよりは相棒のバイクと言った方がいいか。カブこと『宇宙カブJD-1725』を纏っての空中戦ならやれなくはない……だが。
「……サイズ差が気になるよ」
 どこまでいっても人間が運転する宇宙バイクだ。5mを規格とするキャバリアと相対するにはちと厳しい。
 だから、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)の足は自然とプラントの地下へ向く。正しい手続きを踏めば特に問題なく、公開される『オーパーツ』の共同保管庫。凄腕のパイロットあるいは生身でキャバリアと渡り合う超人……総じて『戦況を変え得る傭兵』として名を馳せる猟兵に対してならば、少々の融通も利かせてくれよう。未来が読めなくとも『エビで鯛を釣れれば』、費用対効果は最高だ。
 『仕方ない』とカブと一緒に訪れた共同保管庫は混沌としている。っていうか雑然とマジで放り込まれている。
「さて、と。Overedに合いそうなパーツをオーパーツの散らばる中から探しますかねっと……」
 カブを入り口に止めて(入り口まで持ってきていいって言ってくれた)、保管庫の中へと歩みを進める多喜。……が、一瞬で挫折しそうになる。
「……保管庫とは……ゴミ箱の間違いじゃないのかコレ……」
 思わず多喜がこぼす。
 そう、保管庫は名ばかり。此処はただただ『投げ込まれる』だけのスペースなのだ。
 プラントが生成したものの、『よくわからんがいつかどこかで使えるかも』とか『これは用途分かってんだけどコスパが酷い』とか『使うと命がヤバいっていうか死ぬだけのモノ』とか。
 そういうモノが雑然と投げ込まれている。価値があるかもしれないが、現状価値はない、そういうモノばかりだ。
 だから、『管理』はされていない。
「えー……」
 生きてるモノならテレパスとかいう手もあるのに。無機物ではどうしようもない。
 はぁ、とため息をつきつつ、とりあえず『どうしたもんか』と思ったその瞬間。カブに反応があった。
「ん?」
 カブまで戻る。
「……何だここ、機体のセンサーが反応してる、空間座標に歪み?」
 機体のセンサー……カブをハブにして送られてくる信号は多喜のキャバリア『"JD-Overed"』からのものだ。……どうやって送ってきてんだ、とかはわからん。何せ謎のキャバリアだから。
 だが、解析はカブで出来る。許可を得て保管庫の中――指定された座標までカブを移動させる。
「歪曲パターンは……オイオイオイ、Overedと同じかよ!?」
 唐突に示された事実は多喜が叫ぶ。慌てて手を突っ込めば、その先に見えるはずの自分の手は『空間に飲み込まれている』……招かれている。その直感のままに体を躍りこませれば、そこにあったのは異空間……否、次元がズラされた位置にある保管庫。当然、其処は先ほどまでの此処ではない。ゆえに見える景色も違い、目の前にあるのは……。
「……専用のフライトユニットぉ!? なんでこんな所に亜空間の格納庫を分けておいたのさ、ご先祖さんよ!?」
 わけわからん!! だが此処に在るのは確実に『"JD-Overed"』のための装備だ。うがー、とか、うおぉぉぉ、とか悩む多喜。だが。
「色々ツッコんだり詮索したいけど今は置いとくか、まずはこのリフターを工房に持ち込んでドッキング作業を手伝って貰おうじゃないのさ!」
 先は見えた。
 後は調えるだけ。
 手に入れた専用フライトユニットをキャリアに乗せて、カブにエンジンを入れる多喜。

 現地では、気配すら感じない、戦いの未来。
 そのために多喜は疾走する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久遠寺・遥翔
アドリブ連携歓迎
▼使用機体
レヴィアラクス
あらゆる環境での活動を想定した万能型の巨神
意志を持っており平時は少女型端末で活動
ですます口調で淡々と喋る

▼行動
今回は巨神レヴィアラクスを使用する予定で整備を進める
特化した機体には一歩劣るとはいえ陸海空宇どこでも優れたパフォーマンスを期待できるし既に高高度での[空中戦]も経験済みだ
その[戦闘知識]を活かし、彼女自身にも手伝わせながら[メカニック]技術を駆使して機体を今回の空に向けて仕上げていく
念のためエナジー・ゲートのデータを集める為の機構も整えておこう
今は何もわからなくとも観測データを蓄積していけばいつかあの衛星に対抗する手段に繋がるかもしれない




 緩衝地帯小国家『ゼルヴェン』の外周に近い一角……というか敷地。サニー工房が所有するキャバリア工房および試験場である。そこそこの広さと規模を持つこの攻防は少ないながらゼルヴェンの雇用を生み出しており、そのためある程度の無理が通る。……いや、変人ばかりだからかもしれんけど。

 その敷地内の一画に急遽設置、設備されたのは本日の『見学者』用のエリアであった。簡単に言えばキャバリアを置いておく場所とメンテナンスが行える場所。ただ、フリースペースなのでお互いの機体は見放題という展開。
 そこに久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)はいた。
 額の汗をぬぐいつつ、跪いていた体勢から顔をあげる。眼前にあるのは自身のキャバリア――万能型巨神『レヴィアラクス』。あらゆる環境での活動を想定したこの機体は『今回』のケースでも十二分に通用するはずだ。……否、既に『超高高度での空中戦も経験済』である。そう、『ザ・スター』との邂逅は『今回』が初めてではない。
「……どうなってんだか」
 思わず独り言ちる。
 何度邂逅しても同じような『ザ・スター』の行動。もちろん全く一緒ではない。随伴する機体も異なれば、『ザ・スター』の行動も細部で見れば全然違う。でもグリモアの予知が示す流れは『一緒』だ。
 何故なのか。オブリビオンとして滅ぶ前の記憶を引き継いでいないだけなのか。それとも……別の要因があるのか。
「ま、考えても答えは出ないか」
 雑念を振り払って、もう一度愛機を見上げる。
 特化した機体には一歩劣るとはいえ、陸海空、そして宇宙。どこでも優れたパフォーマンスを期待できるこの機体は今回の何が起きるかわからない事態には最適だろう。それに……。
『マスター』
「おお、すまん。続けよう」
 傍に立った少女――否、少女型端末の声に遥翔は振り返り、頷きを返す。レヴィアラクスは意志を持っている。『ラクス』――その意志が宿る平時用の少女型端末が今、遥翔の横に立っている存在だ。自身の体を弄るのはどういう気分なのか、と思わなくはないが、『キャバリア』という存在はそんな質問は無意味なのかもしれない。
 そう。遥翔が持つ超高高度での戦闘経験は彼自身だけにフィードバックされるものではない。何度も繰り返せばこちらに有利となる。そのポイントをラクスに伝え、それを具体的な設計として起こし、それを共有して具体化する。人馬一体ならぬ、人機一体。
 とはいえ、戦場に着いてしまえば後は問題ないだろう。レヴィアラクス自身が持つパフォーマンスで対応が可能なはずだ。
「後は、移動手段だな」
『幸いにして、空気抵抗を無視できる手段を入手しました』
 ラクスの言葉に遥翔が振り返れば、促されるようにラクスが視線を向ける。そこにあったのはサニー攻防製のブレイドウイング・ジェットパッカーであった。
『少しコツがいるようです。が、これを手に上昇すれば流線型の構造が余計な負荷を排し、上昇のエネルギーはジェットパッカーのエネルギーインゴットで賄えます』
 そして上まで行けば火山目掛けて捨てればいい。エコ。
「それでいくか。ラクス、念のためエナジー・ゲートのデータを集める為の機構も整えていくぞ」
『了解です。パーツはどこに搭載しますか?』
「戦闘の邪魔にならない……やはり背中だろうな」
 今は何もわからなくとも観測データを蓄積していけば。いつか|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》に対抗する手段に繋がるかもしれない。
 そんな思いを馳せながら、遥翔はレヴィアラクスのメンテナンスを調えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー

聞いたことがあります。
サイキックキャバリアは、己が主を選ぶと。
であれば…
保管庫の隅で眠っていたソレが、プラントの危機を前に目覚めたのも。
虚空を裂いて私の前に現れて、跪いて忠誠を誓い始めたのも。
当然の帰結と言えるのでしょう。
私は|サイキックエナジーが潤沢《美味しそう》で|猟兵《そこそこ善良》で|美人《美人》ですからね。
さもありなん。

さて、意味不明な超展開は置いといて、パーツ探しですね。
古代文明時代の物なら、サイキックを推進力に変える装備もあるはずです。
サイキックウィングとかそんな感じのが。
エネルギー効率は度外視で、出力の高いものを選びたいですね。
消耗の問題は、私がゴリ押しで何とかする方向で。




 ともすれば、彼女の様相は|この世界《クロムキャバリア》には似合わないのかもしれない。UDCアースであれば一般的な『戦う女性』の戦闘服――スーツ姿に、煙草をくゆらせる姿。
 だが、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は猟兵である。であれば、彼女はこの世界においても凄腕の傭兵として通じるし、その|雰囲気《オーラ》を醸し出している。例え、戦場であっても、彼女は動揺することなく駆け抜けるであろう。まごう事なき、クールビューティー。それがエリー女史である。
 問題は……ちょっとお茶目が過ぎることかなぁ……。

「ええ、聞いたことがあります」

 そんな声など聞こえていないのか、エリーは独り言ちる。
「サイキックキャバリアは、己が主を選ぶと。であれば……」
 今日はシリアス全開であった。
 立ち止まり、視線をプラントへ向けるエリー。口元に運んだ手が煙草をつかみ、エリーの口元に自由を与える。
「保管庫の隅で眠っていたソレが、プラントの危機を前に目覚めたのも。虚空を裂いて私の前に現れて、跪いて忠誠を誓い始めたのも」
 ふぅ、と空を仰ぎ、紫煙を吐く。
「当然の帰結と言えるのでしょう」
 だからこそ、彼女はこの世界へと飛ぶことを選んだのだ。そう、サイキックキャバリア――『謎めいた「古代魔法帝国時代」のキャバリア』ならばその基準も謎めいていて当然だ。
 そう。
「私は|サイキックエナジーが潤沢《美味しそう》で|猟兵《そこそこ善良》で|美人《美人》ですからね。さもありなん」
 全部諸手あげて肯定する内容だけど、美人重ねる必要あった??
 シリアス全開かと思ったけど、そんなことはなかった。エリーさんはエリーさんでしたよ!

「さて、意味不明な超展開は置いといて」

 置いておくんかい。
 だがエリーがそこまで語るならそれは事実なのだろう。ならば、残された問題は空へ辿り着く手段。
「パーツ探しですね」
 エリーの足が向く先はプラントの地下にある共同保管庫。
 そこならば。
(古代文明時代の物なら、サイキックを推進力に変える装備もあるはずです)
 サイキックキャバリアの動力源が搭乗者の|超能力《サイキック》なのだ。その時代のものであれば……当然そのようなモノもあるはず。今の技術者が構造を理解できずに投げ捨てていたとしても、このゼルヴェンならば共同保管庫に投げ込まれているはずなのだ。
「サイキックウイングとかそんな感じのが」
 キャバリア兵装としてもある『BX-Bサイキックウイング』の強化版、あるはサイキックウイング・アドバンスとでも言うべきものか。現存されているサイキックキャバリアに搭載されていない装備ならば何らかの問題があるはずだが、そういう装備こそ狙いだ。何故なら、『今回』は通常のクロムキャバリアにおける戦闘では無いのだから。

 ……あった。

 『BX-Bサイキックウイング』のように背面に直接組み込むタイプではなく、何故か取り外しが可能なサイキックエナジーの翼『EPサイキックウイングS』。通常のスラスターに強化パーツとして備え付ける後付け装備。
 利点は、外付けであるがゆえに機体を選ばないということと、強化パーツそのものにエネルギーインゴットを積み込めるという点。
 弱点は、エネルギーインゴットを積み込んでなお、エネルギー効率が悪すぎる、という点だ。搭乗者のサイキックを動力にする以上、過剰な出力は死をもたらす……それは明確な欠点だ。
 『通常』ならば。

「おい、アンタ。本当にそれ使うのか? 実験で軽く稼働しただけでパイロットが1週間寝込んだんだぞ……?」
 共同保管庫の管理をしている職員が不安そうにエリーに尋ねる。持っていくことも使うことも特に問題ない。自己責任だ。だがそれでも、目覚めが悪くなることは出来れば避けたいという人の善性が思わず言葉をかけてしまったのだろう。
「ええ。問題ありません。エネルギー効率は度外視で、出力の高いものを選びたかったので」
「それなら、まぁ。いいけどよ」
 そういってエリーに『EPサイキックウイングS』を払い下げてくれる職員。此処に置いておいても眠っているだけなのだから。特に問題は無いのだ。
「ありがとうございます」
 用意されたキャリアにパーツを積み込み、エリーが向かう先はサニー工房。
 何やら、人が集まっているらしく野外メンテナンスエリアが設置されているとのこと。そこでパーツを組み込む。
「消耗の問題は、私がゴリ押しで何とかする方向で」
 酒……は断酒中だった。ならば煙草でどうにかできるだろうか。場合によっては酒も解禁せねばならないかもしれない。
 そんなことを思いつつ、目的のものを手に入れたエリーは次の戦いへと準備と整えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着


「正義の忍者、衣更着参上っす!人々を守るため、プラントは破壊させないっす!」

おいらのクロムキャバリア「テングリーフ・ホワイト」は流れ星を由来とする妖怪「天狗」が一種、木の葉天狗をモチーフとした空力意識の機体っす!
メガスラスター「シューティングスター」でカッ飛んで「ハイノーズランス」構えてUC『流星突撃槍』が必殺技っす!

自力で飛べるけど短期決戦型だから高高度に行くためのサブフライトシステムとそれを動かすエネルギーインゴットをお借りしたいのと、上についたらパージしたいので自動帰還装置つけてほしいっす!

機体データ取って構わないから整備と調整もお願いしまっす!

「先輩ヒーローの悪事は阻止しないとっす」




 クロムキャバリアにおける超高高度での空中戦。猟兵がこの世界に訪れてから、否、クロムキャバリアの歴史上、それは『あり得なかった』ことである。
 だが、それはそれとして、空に憧れる者はいついかなる時にでもいるわけで。
 キャバリアとして『飛翔機能』を有する機体は少なくない。
 そう、『特定』の条件を外せば、|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の砲撃は行われない。
 例えば、低空――ビルの高さくらいまでの空中機動や、高度であっても低速で飛行する飛行船など。
 だから、『同じ高さ』まで辿り着くことが出来れば、超高高度での空中戦とて戦う術を持つ機体は有る。

「正義の忍者、衣更着参上っす! 人々を守るため、プラントは破壊させないっす!」

 家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)が持つクロムキャバリア『テングリーフ・ホワイト』もまた『そういう』機体であった。
 トンビのように尖った鼻先を持つ白きキャバリアは、その名の由来――流れ星を由来とする妖怪『天狗』が一種、『木の葉天狗』をモチーフとしているように、『空力意識』が働いている機体だ。
 メガスラスター『シューティングスター』でカッ飛んで、『ハイノーズランス』を構えてユーベルコード【流星突撃槍】が必殺の流れ。
 だから空中戦を行う『力』はある。問題は……戦う力『しか』ないこと。いわゆる強襲型――短期決戦タイプのキャバリアなのだ。
 だがそれは欠点ではない。だからこそ、問題も見えやすく、対策も打ちやすい。
「高高度に行くためのサブフライトシステムとそれを動かすエネルギーインゴットをお借りしたいのと、上についたらパージしたいので自動帰還装置つけてほしいっす!」
「エネルギーインゴットとパージ機能は工房で言え。あとサブフライトシステムとかわからんから」
 『勝手に見ていって持っていくがいい』と共同保管庫の職員は言う。
 そりゃそうだ。サブフライトシステムなんて、クロムキャバリアの通常で流通している兵装ではないし、此処にあるオーパーツは基本『わけわからんもん』である。図書館のように管理された仕組みでは無いのだから。
 とはいえ、目的のモノが無い、とは言っていない。

「あ、あったっすーーー!!!」

 簡易型マスドライバーと言えばいいのだろうか。真上に射出するタイプ。HLVの簡易版とすればわかりやすいか。なんでこんな大型なものが転がっているかは別として。
 後はこれを工房に持ち込むだけ。
「これを動かすエネルギーインゴットをお借りしたいのと、上についたらパージしたいので自動帰還装置つけてほしいっす!」
「エネルギーインゴットはともかく、自動帰還装置って……なにそれ?」
 首を傾げるサニー工房の助手。そんな技術があったら既に作ってる、って顔である。
「ふーむ。そもそも打ち上げに特化してるみたいだし、上に行ったらパージしてそのまま捨てれば?」
 もしかしたら、そういう機能がついていてマスドライバーまで戻ってくるかもしれないし。
「機体データ取って構わないから、整備と調整もお願いしまっす!」
「おー、それは嬉しいねえ。戦い方はともかく、機体の形は参考になる。いいよ引き受けよう」
 よく似た戦い方をする機体が此処にもあるしね、とのたまいつつ、メンテナンスを請け負ってくれる助手さんはやはりやり手なのだろう。
「しかし、今日は千客万来過ぎて何が何やら。悪いことが起こる前触れだったりしないかなーこわいなー」
 ぶつぶつと呟きながら自分の作業に没頭する助手。

 そう。グリモアの予知を得られた猟兵は知っているが、『ザ・スター』の襲来は『現地の人にとっては未来のことであり、知り得るはずのないモノ』だ。
 だが、だからといって歩みを止める理由にはならない。
「先輩ヒーローの悪事は阻止しないとっす」
 衣更着は強く拳を握り締めながら、空へ誓う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

疋田・菊月
空ですかー……
思えば、すぐ近くに空を飛ぶ悪魔の方を連れていながら、久しくそんな夢を抱いておりませんでしたね
何しろ、この世界に空は無い
その道が絶たれて久しく……いや、飛行船はあるそうですが
高高度ともなると、やはりそれ相応のバックユニットが必要かもですね
さあさ、我らがヴァルラウンはワタリガラスの名を関する者!
それに相応しい翼を授けてもらいましょう
私もお手伝いしますよ
あのー、背中のレーダーと光量子砲は、できればそのままがいいんですけど……
『おみゃあ、自分の船はどした』
松露ですか?
あれは運搬用ですよ
空中戦ができなくては、的になりに行くようなものです
あ、皆さんはそちらが気になりますかね?




「ふぅ……暑いですねー」
 ぱたぱた、という擬音は、彼女の歩く姿か扇ぐ姿か。ともあれ、疋田・菊月(人造術士九号・f22519)はいつも通り、柔和な、あるいは楽し気な笑みを浮かべつつ、クロムキャバリアは緩衝地帯小国家『ゼルヴェン』の街中を歩いていた。
 目指すはプラントの地下にある共同保管庫である。
 なお、お手軽にサニー工房へ行ったわけだが。
「よっしゃーーー!! 改造しがいのある機体がきたーーー!!」
「あのー、背中のレーダーと光量子砲は、できればそのままがいいんですけど……」
「じゃあ無理」
『早いっておみゃー』
 サニー工房の親方というか姉御がやる気満々だったが、菊月のリクエストを受けて一気に『スンッ』ってなった。やる気のムラが激しいらしい。思わず、カラスの『カミオ』さんがツッコむレベルである。
 というわけで、ゼルヴェンの街中を歩いているのである。

 そんな菊月の目に映るのは、快晴の空。グリモアの予知を得られていなければ、この空が絶望に染まるなど想像もつかないであろう。そんな感じの快晴であった。
「空ですかー……」
 なんか感慨深いものがある。何かといえば。菊月の視線が肩に乗っているカミオさんへ向く。
「思えば、すぐ近くに空を飛ぶ悪魔の方を連れていながら、久しくそんな夢を抱いておりませんでしたね」
『いつもおみゃーを吊り下げて飛んどるわ?』
「あはは……」
 言われてみればそうだ。だから『飛べる』ことではなく、『この世界で』という枕詞が重要になる。
 もう一度空を見上げる。
「何しろ、この世界に空は無い」
 自身のキャバリアもあって、自身のグリモアから得られる予知もあって。そこそここの世界とは縁があるはずなのに、その『夢』には至っていなかった。
 すなわち、空には|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》があり、その道を絶たれて久しく。
 その災禍を逃れるべく、高度を飛ぶ飛行船は低速で、運搬がギリギリの役目。戦闘や情報の伝達を担うにはとてもじゃないが、役不足。
「高高度ともなると、やはりそれ相応のバックユニットが必要かもですね」
『ま、そうなるがね』
 菊月の言葉を受けて翼を広げるカミオさん。ふわりと飛び上がった先は菊月の屋台こと自動随伴輜重機『はる』が引っ張るキャリアがある。そこに佇んでいるのは今回の戦いに使用するキャバリア――シュタインバウアーmk-2c『ヴァルラウン』。頼もしい相棒に不足しているのは翼のひとつのみ。

 気を取り直して、再び共同保管庫へと歩を進める菊月。
 そこでふと。なんか思い出したのかカミオさんが菊月の肩に戻ってくる。
『おみゃあ、自分の船はどした』
「松露ですか? あれは運搬用ですよ」
 いつもキャバリアの移動に使っている蒼郷式輸送艇――10m級のガレオン船である。ついでにいうとキャバリアだけじゃなくて、兵器や屋台まで詰め込める。用途としてはこの世界の飛行船に近いだろうか。
「空中戦ができなくては、的になりに行くようなものです」
『あえて盾……』
「それは流石に……」
 そんな軽口をかわしながら、目的地に到着。
「さあさ、我らがヴァルラウンはワタリガラスの名を関する者! それに相応しい翼を授けてもらいましょう」
 ぐっ、と袖を捲り上げて、ある意味戦闘態勢の菊月に、保管庫の中を飛び回るカミオさん。
 目指すは『背中のレーダーと光量子砲を邪魔せずに、空中機動を行える装備』――例えば、肩とか腰とかに装備というよりはアタッチメントとして組み込めるような。
「……これですかね?」
『けど、おみゃー。これ、|超能力《サイキック》で動くでよ?』
「カミオさんの悪魔力で何とか?」
『なるわけにゃーわ!! ……あ』
「あ?」
『…………』
 悪魔とサイキック。その関係性とは。そんな疑問を残しつつ、菊月とヴァルラウンは翼を得る。
 腰から伸びる無定形の闇の翼は天使か悪魔か。その答えに意味はない。あるのは……次の戦いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
こんにちわ。空へ飛ぶための装備を求めてやってきましたっ♪

あ、せっかくだからうちの子(キャバリア)の紹介だね。
空戦型サイキックキャバリアのレゼール・ブルー・リーゼです。
もともと空中戦に重きを置いているから、高高度へたどり着ける状態にすれば大丈夫かなって思っているの。

あ、データ取るなら取ってもらってもいいよ?
空にあこがれる気持ちはわかるからっ♪

ん-、高高度に上がる手段があればそれでいいかな?
目標ポイントまで上がったらパージして、身軽になれるような、そんな装備ってないかな?
イメージは、推力器を全身のハードポイントに装備して、高所へ一気に上がるってイメージだね。

後、本体のOSも少し弄るかな?




「こーんにーちわー♪」
 軽快な声が、ともすればキャバリア工房には似合わないような明るい声が響く。
 ひょこっと覗いた顔から青い髪が揺れ、ぴょこんとエルフの尖った耳が見える。
 今日も今日とて天真爛漫、シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は持ち前の性格からか、あるいは隠された能力か、コミュ力全開でするっとその場に馴染み込む。
「空へ飛ぶための装備を求めてやってきましたっ♪
「こんにちはーっ。今日はそういうお客さん多いねえ。うん、あたしとしてはウェルカムなんだけど」
 グリモアの予知がもたらされていない現地の人間からすれば、『なんでこんなに|猟兵《傭兵》来てんの?』って感じなのだが、サニー工房の人間はキャバリア開発以外のそういう『細かいこと』を気にしないので、その程度で済む。変人とも言う。
 ただ千客万来なので、休憩中だったテストパイロット……フェスことフェステニアも受付してたりするわけだ。
「いやー。ちょっと色々? ありまして?」
「あー、別にいいよー。キャバリア乗る理由なんて人それぞれだしさ。それに……」
 そういいながら、フェスの視線はシルが伴ってきたキャバリアへ向けられる。
「あ、せっかくだから|うちの子《キャバリア》の紹介だね。空戦型サイキックキャバリアのレゼール・ブルー・リーゼです」
「うん。知ってる。知ってる? なんか細部が違う? あたしはクライノートの事件しか知らないからなー」
 それも伝聞で仕入れただけの。
 だから、シルの『ブルー・リーゼ』が飛べて空で戦えることは知っている。だがその後の進化――すなわち『レゼール・ブルー・リーゼ』の存在や、そもそも直接見たのは初めてだから。
 めっちゃ興味津々である。
「もともと空中戦に重きを置いているから、高高度へたどり着ける状態にすれば大丈夫かなって思っているの。
「だよね! だよね!」
「うん。ちょっと不審者っぽくて近いかなー?」
「あっっっっ!! ゴメン!!! 限界オタク化してた!!」
 シルの言葉にしゅばっと離れるフェス。そして遠目から拝んでいる。なんか憧れのアイドルに会えた熱狂ファンみたいな感じになってる。
 『おかしな人』と思いながら、溢れるキャバリア愛から悪い事にはならないと判断したのだろう。シルが次の言葉を告げる。
「あ、データ取るなら取ってもらってもいいよ? 空にあこがれる気持ちはわかるからっ♪」
「マ・ジ・デ!?!?!?!?!!」
 天地がひっくりかえる勢いってこういうのを言うのかなっていう勢いで立ち上がって伸びあがって天を仰いでそのまま倒れたフェス。『大丈夫かなー?』と思うシルだが、まぁダメだったらグリモア猟兵のせいにしたらいいと思います。
 そして、またまたしゅばっとメカニックモード(衣装もね)になったフェス。顔は緩みっぱなしだが、手つきと動きはちゃんとしてるっぽい。
 だから、シルは目的を再度告げる。
「ん-、高高度に上がる手段があればそれでいいかな? 目標ポイントまで上がったらパージして、身軽になれるような、そんな装備ってないかな?」
「うちにある装備だと、『ブレイドウイング・ジェットパッカー』くらいかな。背負うタイプの後付け装備。あ、捨ててきていいよ。試験の為に、大量に同程度の性能のパーツ、製造してあるから」
 シルが『イメージは~~』と言い出す前に、『これしかねえ』と言い切るフェス。
 だが聞いてみれば、シルのイメージ『推力器を全身のハードポイントに装備して、高所へ一気に上がる』とはベストマッチせずとも、使い方としてはシルの想定通りでいけそうだ。レゼール・フルー・リーゼの装備の邪魔にならない場所……例えば腰や揃えた両足の真後ろに一時的に装備、上空でパージすれば。
 高高度にあがるまでのエネルギー消費を極限まで抑えることができそう。
「じゃあ。後、本体のOSも少し弄るかな?」
「それは機密もあるだろうから、そっちでお願い」
「顔。めっちゃ悔しそうな顔。見せないからね?」
「は~~~い」
 そんなこんなをしながら。
 シルとフェスはレゼール・ブルー・リーゼの装備を調えていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミケーレ・アンジェリコ
僕には空中戦の術はありませんし、具体的な案も持っていません。ですのでサニー工房にお世話になりましょう。

もちろんお世話になるからには出来る手伝いは全力で頑張ります。

正直な話これ以上の具体的な行動は何もきまっていません。るちるマスターにお任せしてもいいでしょうか?




 グリモアの予知を聞いて、あるいはそこに『何らか』の予感を感じて。
 猟兵たちはクロムキャバリアへ、緩衝地帯小国家『ゼルヴェン』へと足を踏み入れる。
 だが、そのひとり。ミケーレ・アンジェリコ(ノンプレイヤーキャラクターの白聖者・f43592)は、サニー工房の前でとりあえず立ち止まる。
 現状、手持ちのキャバリアは無い。もちろん猟兵である以上、生身でもキャバリアと渡り合えるわけだが、その場合は空中戦を行うための下地がいる。
 すなわち。
「僕には空中戦の術はありませんし、具体的な案も持っていません。ですのでサニー工房にお世話になりましょう」
 まぁ、こういう結論になる。

 だがサニー工房はキャバリア工房である。出来ることと言ったら、キャバリアの機体に関することだけで、例えば『空を飛ぶ』能力を授けられるわけではない。
 というわけで、極論的に。
「わかった。うちのキャバリア使え。っていうか試験機貸し出すから戦ってデータよこせ」
 サニー工房の長、姉御ことフールーがのたまう。『空に行きたいんです』というなら、彼女はそう言う。絶対。
 だが、問題は彼女のセンスである。それによってチョイスされるキャバリア。それはすなわち、『挑戦』に満ちている。
 というわけで、この機体である。アンダーフレームが『ブレイドウイング・アンダーファイター』なやつ。
 上半身はよく見かける量産型キャバリアだが、腰から下が戦闘機になっているわけである。もっというと、戦闘機に上半身が生えているといってもいい。
「エネルギーは翼にもキャバリアにも詰め込んである。そんな簡単に落ちたりしないから安心しろ」
 武装はシンプルに、『RS-Aアームキャノン』と『BS-A腕部粒子ビーム砲』、そして『RS-Sミサイルポッド』。物理近接はアンダーフレームのブレイドウイングのみ。
「急旋回といったマニューバクラスの高機動しなけりゃ、全然制御可能だ。シンプルに飛んでシンプルに回避してシンプルに敵を撃ち落とす」
 簡単だろ、という姉御。
 まぁ聞いてみれば操作はそんなに難しくなく、動きも実用に耐えられるようだ。
 しかし、この機体の最大の弱点は『アンダーフレームが戦闘機になっている』こと。つまり、あれだ。一回飛び立ったら、一箇所に停止する機能は無く、一度でも止まってしまうとまた飛び立つまで動きが完全に止まる為、うっかり地上にでも降りた日には空に戻るまで時間がかかる。
「空中戦でもありゃ、役に立つんだけどなー」
 地上でこのアタッチメントは邪魔でしかない。不人気アタッチメントであった。

「ま、死なない程度に頑張ってくれ」
 そう言ってミケーレを送り出す姉御であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チェスカー・アーマライト
マジに|殲禍炎剣が無くなる可能性《アフター・ホーリーグレイル》を思うなら、今のうち空戦装備を整えとくべきなのかねぇ
そん時は飛行型のアンダーフレームとかどうよ、相棒?
(ビッグタイガーが中指を立てて断固拒否)
……だと思ったぜ

さて、相談なんだが
背面に背負う型だと、胴体を戦車よろしく旋回させて狙いをつける主砲とあんま相性良くなさそうなんだよな
いっそブースター部分だけを幾つか胴回りに括り付けちまうか
最低限、この重量機を支えてホバリング出来りゃ上出来だ
後は高高度用のパイロットスーツも新調か

(操縦性が変わって1から覚え直しなので、チェスカー的にも空戦機はあまり気乗りしない
いつか必要になる時に備え色々模索中)




 |クロムキャバリア《この世界》の空に平和は無い。
 それは今もなお、戦火が拡大しつつあるこの世界の状態を揶揄するものであり、そして『物理的』な事実でもある。
 |殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》――今なお、空の上に在る暴走衛星はクロムキャバリアの命運を握りつつ、空の支配を決して手放さない。
 だが、それでも。

「マジに|殲禍炎剣が無くなる可能性《アフター・ホーリーグレイル》を思うなら、今のうち空戦装備を整えとくべきなのかねぇ」

 チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)は懐からシガーケース……と見せかけた人参スティックケースを取り出し、煙草感覚で口元へ遣る。
 そんな彼女の足元……というよりは、ハッチを開けてコックピットから上半身を乗り出していた態勢だったチェスカーは相棒に視線を遣る。
「そん時は飛行型のアンダーフレームとかどうよ、相棒?」
 その言葉がチェスカーの相棒――人型キャバリアに変型し、スタンディングモードで大地を踏みしめていた『ビッグタイガー』はその手を象る。……中指を立てて、いわゆる、その、アレ。
 示す意志は、断固拒否。
「……だと思ったぜ」
 かりこりっ、と人参スティックを噛み砕いて飲み込んで。
 チェスカーは改めてコックピットに座り直す。

 とはいえ、だ。今、この世界を蹂躙しようとしている敵は空から来る。空から降る絶望をどうにかする為には、大地を踏みしめたままでは到底、届かない。
 チェスカーとビッグタイガーが探すのは、それを『どうにか』する方法だ。
「さて、相談なんだが」
 ビッグタイガーで移動しながら、チェスカーが話しかける。言葉を有しない、されど自我らしきモノを有するビッグタイガーは歩みを止めないまま、チェスカーの言葉に反応する。
 それを感じて、チェスカーは頷きを返す。
「背面に背負う型だと、胴体を戦車よろしく旋回させて狙いをつける主砲とあんま相性良くなさそうなんだよな」
 人型で二足歩行をして、それでもビッグタイガーは『旧式重戦車』だ。メイン兵装は戦車の主砲。両手に持つ兵装も野戦砲にガトリング砲と、装備は全て射撃武器。機体をぶつけての近接戦はビッグタイガーに似合わない。
 となると、オーバーフレームに当たる上半身部分の可動域と可動性を妨げる改造は、彼我戦力差を広げることになりかねない。
「いっそブースター部分だけを幾つか胴回りに括り付けちまうか。最低限、この重量機を支えてホバリング出来りゃ上出来だ」
 それを解決するには、既存の装備……つまり、サニー工房では少し物足りない。というか、高高度へ到達するためのジェットパッカーはその場でパージして来ればいいものなので、移動手段はそれとして。
「空戦手段は、ここしか無ぇよなあ」
 プラントの地下。共同保管庫。
 この依頼の間だけでもいい。そんな感じで保管庫内を探して、当たりを付けた兵装が2つほど。
「反重力フィールド……ってか重力制御装置か。あとは姿勢制御スラスター。うーむ……」
 悩むチェスカー。後はフィーリングというかどういうスタイルを貫くか。
 重力制御装置は、両足の裏に仕込んでその真下で重力制御をおこなう。例えば、反重力フィールドを発生させて一時的な足場にするとか。重力を軽減して上へ跳びあがるとか、そういう使い方が出来る。
 一方、姿勢制御スラスターは基本的に噴射剤が効いている間だけの空中機動装置。パーツとしては複数存在するので好きなところに装着できる。あとフレキシブルな稼働が行えるので、細かい姿勢制御と発進&停止が可能。問題はエネルギーだが、エネルギーインゴットをガン積みしていけば、どうにか戦いの間は持つだろう。
「さて、どっちにするか相棒? 誇りを取るか実利を取るかって感じだ」
 出番までにはもう少し時間がある。充分に悩めばいい、二人で。
 とりあえずその2つのパーツを確保してチェスカーは外へ出る。
「よっし。後は高高度用のパイロットスーツも新調か」
 これはサニー工房を頼るか、とチェスカー&ビッグタイガーはゆっくりと歩を、工房へと進める。
 どのような戦いを行うのか。
 それだけが彼女たちの重要課題だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
……。

ついこないだの戦争で、鹵獲品のガンシップを飛行支援機に改装したものの、単独空戦テストを終えたばかりです。
そして、エイストラと結合させての飛行試験は未実行。

間が良いのか悪いのか……微妙に悪意を感じる偶然ですね……。

ま、良いでしょう。元々のバイブロジェットブースターも、推進剤を消費しない長時間の稼働が自慢の品です。
追加ユニットに問題が生じても、大気園内であれば問題なく飛べます。

そんなわけで、なにやらMe262のような外形になってしまった双発ガンシップを、エイストラの背に結合して飛んでみましょ。
もとより高速で飛べるエイストラ、さらに天使核ロケット二基の推力を追加すれば不足はないでしょう。




 今日も空が青い。
 その空の元で生きる人々は、戦火と隣り合わせ、あるいは強烈な緊張下において平穏という生活を強いられているが、それでも、その狭間で懸命に生きている。
 だから、この空が数時間後に『絶望』に染まるとも、それがクロムキャバリアの通常において対策の打ちようの無い、高高度からの攻撃であろうとも、生存を諦める理由にはならない。

「……」

 ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)が空を見上げていた。冷静沈着で無表情なキャバリア乗りの傭兵が空を見据えるからには、そこに何か異常を感じているのか?
 と、通りすがりの人は思ったかもしれない。
 だが、彼女もまた『生きて』いる。

「……」

 もっかい同じ間で、零れたのはため息だった。これはあれですか。なんか諸行無常感を感じてらっしゃいます??
「間が良いのか悪いのか……微妙に悪意を感じる偶然ですね……」
 そう零して。あまり表情を変えずに視線を前に戻す。少し離れた場所に待たせているのは、彼女の愛機『エイストラ』。そしてその横に鎮座しているのが、今回のキーアイテムとなる存在――戦闘機型ガンシップ『フギン』。
 元々鹵獲機だったガンシップを飛行支援機に改装した代物だ。戦闘力もあるし、単独での活動も問題ない設計……とはいえ、十全に乗り回してきた機体ではない。
「ついこないだの戦争で、単独空戦テストを終えたばかりです。……そして、エイストラと結合させての飛行試験は未実行」
 そう、このフギンは単独戦闘も『出来る』が、本来の用途、というかノエルが見込んだ役割は『エイストラの長距離飛行支援』である。乗るタイプではなく、支援ユニット。
 ということはきっとこう。
 『動くことは確認したけど、本格運用の実地試験は終わってない。のに、それが強烈に求められる戦場が目の前に放り込まれた。しかも見過ごすと世界が滅ぶ勢いで』
 ため息くらい出るな、これ。いや、ノエルさんじゃなければ叫んでる。

 だが、彼女とエイストラにとって、空とは『制圧できる戦場』のひとつである。|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の影響を避ければ、地上と変わらぬ、いや、地上以上の戦いが出来る。飛行支援ユニットが無くとも、である。

「ま、良いでしょう。元々のバイブロジェットブースターも、推進剤を消費しない長時間の稼働が自慢の品です。追加ユニットに問題が生じても、大気園内であれば問題なく飛べます」

 結論はそういう感じですね。大気圏内……すなわち、『ザ・スター』がいる超高高度であっても『辿り着ければ』どうにかなる。
 そんなわけで。
「なにやらどこぞのジェット戦闘機みたいになってしまいましたが、エイストラの背に結合して飛んでみましょ」
 なんか、Me262のような外形になってしまった双発ガンシップを、愛機の背中に結合する。シンプルなシルエットのエイストラに、かなーり無骨なガンシップがドッキング。
 だがこれで。
 『飛行性能』に関しては段違いとなるはずだ。
「もとより高速で飛べるエイストラ、さらに天使核ロケット二基の推力を追加すれば不足はないでしょう」
 『ザ・スター』の襲来まであと2時間ほど。その後の猶予期間を含めても、試験飛行を行うには、エイストラ+フギンに慣れるには時間がある。
「では、さっそくいきますか」
 ノエルが馴染んだエイストラのコックピットから新しく信号を発したなら、新しい姿を得たエイストラが力強く飛翔する。
 その様子、データ、そしてノエルへのダイレクトフィードバック。そのいずれもが、空に来たるであろう凶星を、確かに捉える力を教えてくれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​