●その復讐は慟哭にも似て
嗚呼、嗚呼、何故。
何故、このような身に堕ちたのか。
何故、愛しい家族があのような目に遭ったのか。
全ては——が悪いのだ。——が、悪いのだ。
報いを与えなくては。
影朧は哀しみ、憎む。
その慟哭は蒼き悪魔の形で現れた。
●黯の蒼き悪魔
「先の獣人世界大戦、お疲れ様でした……無事勝利をおさめ、大変喜ばしいかと」
寧宮・澪(澪標・f04690)はゆっくりした口調で話し出す。
「黯党の党首は斃されましたが、配下の悪魔召喚士は健在……残された彼らは同盟者である、幻朧戦線将校カルロス・グリードへと悪魔生物『デモノイド』を供与していました。カルロスは儚く弱い存在である影朧達に忠実なデモノイドの軍勢を与えて、『世界への復讐』を果たすよう囁きます……」
生前の未練や執着に強く苛まれている影朧はその甘美な誘いに抗えない。復讐を果たそうと、デモノイドの群れをサクラミラージュへと送り出してくる。
「たとえ復讐を果たしたとしても、決してこの影朧の未練は晴れないでしょう……このまま放置すればその力に溺れ、更なる復讐に及ぶかもしれません。……報いの相手が、もういなくとも」
サクラミラージュのためにも、影朧のためにもここで影朧のテロル行為を阻止しなくてはいけないと、澪は目を少し伏せた。
「今回、皆さんを送るのは帝都にある陸軍の駐屯地の一つです」
影朧の命を受け送り出されたデモノイドの群れがそこに現れる、と澪はいう。デモノイドは影朧の復讐を果たすべく強大な拳で辺りの地形ごと全てなぎ倒し、鋭い剣状に変形させた腕部で切り裂き、恐ろしい咆哮で周囲を無差別に攻撃してくる。
攻撃対象には駐屯地にいる人々も含まれているので、彼らの安全確保も必要だろう。たとえどんなに優秀な軍人であっても、猟兵でない彼らはデモノイドにも影朧にも敵わない。
「デモノイドの群れを払えば、駐屯地の人々から話を聞くこともできるでしょう……」
蒼き悪魔、デモノイド——彼らは人間に『デモノイド寄生体』を移植することで生み出された、異形の悪魔生物だ。彼らはもう理性も言葉も失っていて、影朧について何も聞き出すことはできないけれど、彼らの行動には影朧の抱く意図が反映されている。
「狙われた人々の証言からその意図が見えてくれば、この影朧が『なぜ、世界をここまで恨むに至ったか』の手がかりが掴めるかもしれません……」
現れた影朧との戦いの中で、手がかりを元に説得することもできるかもしれない。説得が届けば、影朧の力は弱まるかもしれないのだ。倒したあとの転生も望めるかもしれない。
「……申し訳ありませんが、影朧の正体は見えませんでした。でも皆さんなら、大丈夫です」
今までもそうだったように、今回も無事に解決へと進んでいくでしょう、と。澪は信頼の言葉を口にした後、よろしくお願いします、と頭を下げるのだった。
霧野
霧野です、よろしくお願いします。
サクラミラージュにて、デモノイドの力で以って復讐を果たさんとする影朧のテロル行為を止めてください。
●シナリオについて
2章での情報収集は、具体的な内容でもふわっとした感じでも大丈夫です。
3章の影朧戦で、前章までの情報を踏まえてこの影朧を説得しようとした場合、プレイングボーナスがあります。
第1章 集団戦
『悪魔生物『デモノイド』』
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POW : デモノイドグラップル
単純で重い【悪魔化した拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : デモノイドカッター
【剣状に硬質化した腕部】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
WIZ : デモノイドロアー
【恐ろしい咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:佐々木なの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●蒼き慟哭
ごうと音を立てて拳が唸る。
びゅんと風を切って腕が振るわれる。
恐ろしく哀しい唸りがすべてをなぎ倒す。
デモノイド達は主の意に従い、——を、それに繋がるものを|毀《こわ》す。
人と物の境なく。ただ、与えられた命令に従うように。
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎
疑問は多いけど、まずは目の前のデモノイドを祓う事、それが最優先だ。
【フュウネラル・バレッドパレヱド】
とにかく、相手の攻撃をもらわないこと。
紅路夢の機動力で動きつつ、デモノイドの動きを見極めていこうか。
もう、人間としての意思はないとは言え、憑き物は祓っていこう。
ユーベルコヲドでの乱射で、邪悪さや敵愾心を削ぎつつ、影朧が何を求めているのか、少しでも見えるものを見つけていこう。
……もし、遺体が残るようなら、利用されてしまった人がちゃんと帰れるように弔いたいね。
この無差別テロルが、黯党の残渣なら、ここで残らずに終わらせておこう。
●
送り出された鈴鹿の目に一番に飛び込んできたのは、デモノイドが拳を振り上げる姿だった。
拳の先にいるのは軍服の人物と制服の人物。この駐屯地に属する士官と非戦闘員の事務職だろう。このまま見ていれば、砕けた大地に赤が広がるはずだ。
もちろんその未来は訪れない。
鈴鹿の手が翻る。ナアサテイヤとダズラ、二丁の銃の引き金を弾きながら。鈴鹿の脚が駆ける。ひらりひらりと、銃声を伴奏に舞い踊りながら。
清めの弾丸で撃ち抜かれた蒼い悪魔はぐずりと崩れ、その向こうで驚いた顔が見えた。
「大丈夫ですね」
「ああ、感謝する。其方は噂の超弩級戦力だろうか」
「はい、そうでございます。まだあの蒼い悪魔はいるでしょう。避難誘導をぜひ進めてください」
彼らに怪我がないことを確認し、その場に残された僅かな金属を拾い上げ、鈴鹿はフロヲトバイに乗って征く。
倉庫の壁を壊そうとするデモノイドを、それを止めようと走ってくる軍人を狙うデモノイドを、清めの銃弾のパレヱドを届けて祓うために。
(疑問は多い)
幾体も祓いながら鈴鹿は考える。
黯党の党首は倒した。残党が新たな拠り所を求めるのは自然ではある。その先が手を携えていた幻朧将校だった、というのも納得できる。
たが影朧を唆し、世界を揺らがす理由は何なのか。そもそも影朧自身の復讐は何を対象としたものか。はじまりの猟兵の語った、第二から第五までの猟兵達との繋がりはあるのか。
尽きない疑問は、世界に残る謎は多い。けれど今、鈴鹿がやるべきは決まっていた。
軍刀を構えた軍人に向かうデモノイドを撃ち祓い、鈴鹿はきゅっと口を結ぶ。
(まずは目の前のデモノイドを祓う事、それが最優先だ)
悪魔の核とされた人の遺体が残れば、きちんと帰れるように弔いたかった。
でもそれは叶わない。悪魔が崩れた後に残るのは、彼らに付いていた金属だけだ。どこの誰かもわからない、物言わぬ冷たい塊だ。
それでも残された|金属片《よすが》を大切に拾い、鈴鹿はハイカラさんのメイド服を翻し、紅路夢を走らせる。
(この無差別テロルが、黯党の残渣なら、ここで残らずに終わらせておこう)
これ以上の哀しさを増やさないように。復讐を続けさせないように。
鈴鹿が清めの弾を撃ち込めばデモノイドは僅かに動きを変えていた。邪悪さや敵愾心を削ぎ落とされ、命令により忠実に応えるように動きの質を変える。
武器や軍人をより狙うような、そんな動きに。
大成功
🔵🔵🔵
水貝・雁之助
◎
……うん、この引っかかる感じは……そう言う事なのかな?
出来れば此の予感は当たって欲しくないんだけど当たっていたとしたら……止めないとね
其の為にもしっかりと邪魔をしてくるこいつらも倒さないと、だし
〇ユーベルコードを使い悉平太郎を呼び出し戦闘
〇地形の利用をし簡易的に拠点を作り〇拠点防御しながら敵を一体ずつ倒していく
又、可能なら〇天候操作で雨を降らせ滑りやすくしたり敵の動きを誘導し他の敵の攻撃から防ぐ為の〇敵を盾にする等していく
兎に角、確実に敵を屠り、本命に備える
悪いけど犠牲者の君達の事を考えてあげられる余裕は今の僕にはない
だからせめて苦しむことなく解放してあげるよ
……武器や軍人狙い、やっぱりか
●
雁之助はとある予感を感じていた。何か引っかかる、それは当たって欲しくない予感だ。
(……うん、この感じは……そう言う事なのかな?)
その予感が己の宿縁に関わると確信できる。ただその縁が、雁之助が予想するものではないことを心から願っていた。
悲しくて愛しい記憶に通じていてほしくないと、心から願っている。
けれど、この予想が当たっているならば。
(当たっていたとしたら……止めないとね)
きっと愛しいかの人は、悲しんでいるはずだから。
駐屯地に送り出された雁之助は、手近な建物の影を簡易拠点とし、遮蔽をとってデモノイドに相対する。
囲まれないように位置取り、一体一体確実に倒すために。
(悪いけど、犠牲者の君達の事を考えてあげられる余裕は今の僕にはない)
デモノイドには元となる人間がいる。彼らも家族から引き離され、悪魔を寄生させられて、自分の意思も命も奪われた存在だ。理性をなくした悪魔として、主の意志のまま暴れるばかりの犠牲者だ。
けれど雁之助の邪魔をするなら、それは確かな敵であった。
「だからせめて苦しむことなく解放してあげるよ。悉平太郎、力を貸してほしい」
静かな声で呼び出すのは、悪逆非道の猿神殺しの柴犬、その霊だ。
鋭い牙と爪を持つ勇敢な御霊は、蒼い悪魔の咆哮にも怯まずに地を蹴って食いついた。ちょうど周囲一体を狙う咆哮をあげるべく、大きく口を開けたデモノイドは、痛みに吠える。
その間に雁之助は小さな雨雲を呼び寄せた。ほんの僅かの湿り雨、けれど濡れた地面はデモノイドの足を滑らせた。
暴れ、滑り、揺れ動く巨体の太い首を柴犬がちぎり取り、爪で肉を割いていけば、ぐずりとデモノイド崩れていく。
(兎に角、今は確実に敵を屠り、本命に備える)
予感は強くなっていくばかり。デモノイド達を観察しながら、雁之助は悉平太郎の援護を続けた。
そうした中で観察していけば、彼らの狙いも推測できてくる。
「ああ……そうか。武器や軍人狙い、やっぱりか」
扉を破った先に武器が格納された倉庫を、刀や銃を持った軍人を狙うような動きが多い。ただの食糧庫や住居、非戦闘員を狙うよりもずっと。
このあと、詳しく調査を行えば、狙いについてしっかりした確信も得られるだろうか。
そうしたら——雁之助の予感も、やはり当たってしまうのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【星の絆】
まあ、アタシの家族はこのサクラミラージュに縁深い。実は本田にも面識があるんだ。分身体なんだが。この桜散る都に潜む闇を散々みてきた身としては。状況を把握しておかないとね。
デモノイドはしらないんだよ。でも影朧にも色々事情があるんでね。
無理やりこの姿にさせられてる姿をみると、ね。終わらせてやろうか。
赫灼の戦乙女発動。まず一体戦乙女を随身させ、【残像】【オーラ防御】【見切り】【心眼】を利用しながら様子をみる。これぐらいの修羅場は幾度も経験したんでね。耐え切れる。
やはり、ね。狙いが定まりすぎているか。奏、いいかい?【気合い】【範囲攻撃】!!一気に槍で斬りはらう!!
真宮・奏
【星の絆】で参加
私たち家族はこのサクラミラージュに家があるんですよ。でも闇に潜む戦火、影朧の悲哀。よく存じております。それに本田とも面識あるんですよ。分身体ですがね。
デモノイドは知識ありません。でも自分の意志なしで姿変えられたとなれば・・・放ってはおけませんとも。
トリニティ・エンハンス発動。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【受け流し】【ジャストガード】。防衛に徹して様子を伺います。
やはり、ですか。この方達も強大な悪に飲まれた犠牲者。【覚悟】はあります。【限界突破】【衝撃波】・・・お救いできなくて申し訳ないです。せめてくるしみが続く前に。
●
真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・奏(絢爛の星・f03210)の家はこのサクラミラージュにある。愛する家族と共にずっと暮らしてきた。
そしてこの世界で起きた事件、黯党や幻朧戦線が起こす事件、闇に潜む戦火、影朧の悲哀も、幾度となく見てきた。
かつて要人を暗殺せしめんと現れた黯党首魁『本田・英和』の分体にも|見《まみ》えたこともある。彼の本体も獣人世界大戦にて撃破され、骸の海へと還ったが、彼の起こした黯党の残滓は未だサクラミラージュを騒がせている。
「状況を把握しておかないとね」
「ええ」
新たな悲しみを生ませないために、今尚続く悲しみを終わらせるために。この世界を守るために。
新たな事件を見定めるべく、母と娘は事件の現場へと赴いた。
送り出された駐屯地では既に蒼い悪魔、デモノイドが何体も現れていた。
今まさに刃に変えた腕を振るい、軍服姿の将校を切り飛ばそうとする姿が、大きく拳を振り上げて、転んだ事務員を潰そうとする姿が響と奏の目に飛び込んでくる。
「さあ、共に行くよ!!」
真紅の戦乙女が響の詠唱に応じて現れ、先行する。全て切り裂くような鋭さの腕を戦乙女が弾き、槍を構えた響がデモノイドと将校との間に割って入る。
デモノイドが目前に現れた獲物に腕を再度振えど、そこに残っていたのは残像のみ。オーラで動きを強化した戦乙女が再度デモノイドの腕を弾き、将校が退避する隙を作り出した。
「させません!」
トリニティ・エンハンスで己の防御力を強化した奏が拳を振り上げたデモノイドと事務員の間に割って入る。
そのままオーラを纏ったエレメンタル・シールドで受けとめ、人ならざる膂力を受け流し、タイミングを合わせて弾いた。
デモノイドが崩れた地面でたたらを踏むように。デモノイドが再び拳を振るうまでの時間を稼ぐために。その間に背後の事務員が無事に離れられるように、デモノイドの狙いを見定めるために、奏は防御に徹する。
しばし響が戦乙女と共にひきつけ、見切りながら刃の腕をかわし続け、奏が剛力を受け止めいなし、ずらしながらしばし耐える。
響も奏もデモノイドについてよく知らない。けれど知っていることもある。彼らは人の体に悪魔寄生体を植えられ、異形へと変えられた存在だ。人の心を抑えつけられ、意識も理性もないままに影朧の命令を果たそうと暴れ回る。
「やはり、ね。狙いが定まりすぎているか」
「やはり、ですか」
その動きを観察していれば、影朧の意図が朧気ながらも見えてくる。無差別に暴れているように見えながらも、確かな狙いがあると確信できた。
それこそが影朧の復讐に繋がるのだとわかってくる。
避けて、受け止めながら二人の会話は続く。
「無理やり変えられたこの姿をみると、ね」
「自分の意志を持たないようにされ、姿を変えられたとなれば……放ってはおけませんとも」
狙いは見えてきた、あとはデモノイドを止めるだけだ。真紅の戦乙女を伴奏に加え、響と奏のデュオが始まった。
戦乙女と響が軽やかに刃を振るうデモノイドを翻弄し、奏が剛力の一撃を弾き飛ばす。軽快に、重厚に、デモノイドの動く先を誘導し。息を合わせて動きを合わせて幾度かそれを繰り返せば、2体の蒼い悪魔がごく近い距離に集まっていた。
「奏、いいかい?」
「はい、せめてくるしみが続く前に」
「ああ。終わらせてやろうか」
響がブレイズランスを構え直す。この一閃で終わらせようと心を定め、赤熱の刃を横薙ぎに、一気呵成に切り払う。
奏がブレイズセイバーを両手に握って高く跳ぶ。から勢いつけて振り下ろす。響の一閃に交わるように、世界を護る意思を込めて。
赤に切り裂かれた悪魔はぐずりと崩れ、消えていった。そこには元となった人を偲ぶようなものはなく、僅かにデモノイドに付いていた金属が残るばかりだ。
「この方達も強大な悪に飲まれた犠牲者。……お救いできなくて申し訳ないです」
恨むべきはこの事件を起こした影朧か。しかし影朧にも色々な事情があるだろう。
けれどその復讐は続けさせてはならない。悩みはあれども、今やることははっきりしている。
これ以上のかなしみも、くるしみも無いように。響と奏は、次のデモノイドを倒すべく駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジゼル・サンドル
◎○
ひどい話だな、人の憎しみや哀しみにつけこんで化け物に変えてしまうなんて…
復讐はただでさえ何も生まないのに、ましてその感情を利用しようだなんて影朧への冒涜じゃないか。
【結界術】で周囲に結界を張りつつ拡声機能付のデバイス越しに、デモノイドの咆哮にも負けないくらいの【大声】で避難を呼びかけよう。
復讐を思い止まらせることも、君を元の姿に戻してやることもかなわずすまない…今わたしにできるのはせめて鎮魂の祈りと共に送ってあげるくらいだ。
『花嵐の旋律』発動、手回しオルガンを鎮魂曲と共に舞う無数の花びらに変えて攻撃。
自身のダメージは【オーラ防御】で軽減をはかる。
咆哮すら悲痛の叫びのようで心が痛むな…
●
ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)は憤る。
「ひどい話だな、人を化け物——デモノイドに変えて利用するだけじゃなく、影朧の憎しみや哀しみにつけこんで、世界を壊そうとして。復讐はただでさえ何も生まないのに、ましてその感情を利用しようだなんて影朧への冒涜じゃないか」
理性のないままに暴れる怪物に変えられた人は苦しかっただろう。何も報われない復讐を繰り返すだけの影朧は苦しむだけだろう。
黯党も幻朧戦線も世界を壊し人を害するばかりで、巻き込まれる人も影朧も、世界にも悲しみは増えていくばかりで。
それでもジゼルはそんな状況を変えたい、救いたいと桜舞う世界へと赴くのだ。
事件の現場へと送り出されたジゼルの目に映ったのは、今、咆哮をあげようとするデモノイドの姿。辺り一帯に異様な響きの吠え声が広がる前に、ジゼルは結界を張る。周囲にいる軍人も、戦えない事務員も守るように。
結界で守ると同時に響いた咆哮に負けぬよう、夜空に歌うクロウタドリを介し、ジゼルはよく通る声で周囲に呼びかける。
「こちらは超弩級戦力だ! 皆を助けに来た、デモノイド……蒼い悪魔はこちらで引き受ける! 避難を進めてほしい!」
「……承知した! 皆の避難を進めよう」
ジゼルの呼びかけに応じ、周りにいた軍人が連携を取って周囲一帯の避難を進めていく。
このまま彼らが無事に逃げられるように、結界を維持しながらジゼルはデモノイドと相対した。
ジゼルの手元に現れた手回しオルガンが形を変える。ひらりと軽やかに、ふわりと柔らかに。色とりどりの花びらが幾重にも広がっていく。
「旋律と共に舞え、花嵐」
静謐な旋律の鎮魂曲が始まれば、無数の花びらがデモノイドを囲んでいく。その姿が埋もれていけば、抗うようにデモノイドの裂けたような口からおぞましい咆哮が溢れ出た。避難する人を優先して張った結界を、ジゼルを守るオーラを超えて、デモノイドの咆哮が届いてくる。
(ああ、咆哮すら悲痛の叫びのようで心が痛むな……)
けれどジゼルにできるのは、デモノイドを送ることだけだ。
「君を元の姿に戻してやることも、助けることもかなわずすまない……せめて、安らかに」
真摯な鎮魂の祈りを、奏でる曲に、舞いあがる花びらに乗せて、デモノイドに、その元になった人に届くように。ジゼルは祈り、デモノイドを見送る。
花びらの中の蒼い体がぐずりと崩れ、僅かな金属片を残すまで。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『営みの裏に潜む影』
|
POW : 体力、勘に物を言わせて事件に向き合う
SPD : 捜査は脚で、つまり健脚こそ事件解決の第一歩
WIZ : 整理しよう。きっと何か見落としがちな手がかりがある
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●駐屯地にて
蒼き悪魔は全て崩れて消え去った。
人の被害はなく、建物や備品に破損が残る。
助けられた人々は駐屯地を片付け始める。
その間に話を聞くこともできるだろう。
片付けられていく備品を見て、何かを推理することもできるだろう。
水貝・雁之助
アレンジ連携歓迎
心情
確かに彼女は戦を嫌っていた
自分から家族を奪った戦を、仇の配下に追われ幼くして放浪生活を送る事になった原因で自分の様な者を数多く生み出す戦を
けど彼女はこんな風に関係ない誰かを傷付ける復讐をする様な人じゃない
だから影朧が彼女だとしたら絶対に止めてみせる
其れが彼女の夫として出来る最後の事だから……
〇京雀の手助けを用いて鳥達に〇動物と話し、デモノイドが現れた瞬間や彼女の髪色と同じ女性が居なかった等の〇情報収集を行う
此処に彼女の直接の復讐の対象となりうる存在はいない
そして狙われてるのは武器や軍人……彼女が嫌ってた戦、或いは暴力を連想させる物を持つ者
当たって欲しくなかったんだけどなあ
●
駐屯地にだって木々がある。空が完全に覆われた建物でもない。
故にそこには鳥が来る。先の騒動で飛び立ってしまっていても、数羽また飛んできていた。
「皆、少し聞きたいんだ」
見つけた鳥へと雁之助は問いかける。蒼い悪魔が現れたそのときに、愛しい妻の姿を、淡い髪色を、見なかったかと。
鳥たちは答える。見ないと鳴く声、知らぬと鳴く声。僅かな安堵を感じながらも、雁之助はそっと拳をを握りしめた。
(確かに彼女は戦を嫌っていた)
彼女が生まれ育ったのは戦乱の世だった。彼女から家族を奪った戦を、仇の配下に追われ幼くして放浪生活を送る事になった原因で自分の様な者を数多く生み出す戦を、とても嫌っていた。
けれどいつも雁之助に申し訳ないと謝って、家族を奪われた怒りはあっても、それを押し付けることはしてこなかった。追われる放浪生活で疲弊し、ボロボロになっても雁之助へと謝ってくれる人だった。
(本来の彼女はこんな風に関係ない誰かを傷付ける復讐をする様な人じゃない。もし、ここに現れる影朧が彼女だとしたら絶対に止めてみせる)
優しく微笑む彼女が泣かないように。
(其れが、僕が、彼女の夫として出来る最後の事だから……)
握った拳を開けないまま鳥へと問いを続ければ、見た、と鳴く声がした。顔にひらめく布をつけ、淡い髪の人を見た、と。
鳥達のさざめきは、見たと言う声が増えていく。蒼い悪魔に驚いて去り、戻ってきた鳥が増えれば増えるほど、見たと言う意思が増えていく。
「そうか」
此処に彼女の直接の復讐の対象となりうる存在はいない。それでもここに現れた理由は想像がつく。
(狙われてるのは武器や軍人……彼女が嫌ってた戦、或いは暴力を連想させる物を持つ者)
だからここを狙ったのだろう。仇がいなくとも、仇につながる武力を、戦を、暴力を振るう存在へ復讐するために。
彼女の家族を、命を奪った武力へと復讐するために。
「当たって欲しくなかったんだけどなあ」
予感は当たってしまった。きっと彼女は、雁之助の妻は影朧となってここに来る。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【星の絆】で参加
事情は把握している。アタシも他人事ではないんだよね。プライベートな事だからこれ以上詮索しないでおくが。
アタシもこの世界の闇に関わりが深い以上、できるだけ手掛かりをつかみ、この異常な災いの早期の終結の手がかりとしたい。
いざとなれば私は歌い手として赫灼のグロリアで心を動かす選択肢をとれるが、何しろ目立つからね。元はいいところの娘だし、立ち振る舞いには自信があるんだ。
できるだけ足で地道な調査を続けるよ。歌は最終手段だ。いざとなれば茉莉に手伝って貰う。今までの世界の経験も活かしたい。
奏が体当たり調査だしね。・・・・アタシの幸せを奪ったのも武力だった。それでも。止めないとね。
真宮・奏
【星の絆】で参加
うん、戦友の方の悲痛な表情からなにか事情がありますね。お母さんも複雑そうな顔してますし。私はできる限りのことしましょう!!すなわち、体当たり調査です!!
お母さんは生まれがお嬢様ですので、聞き込みはお任せです。迷惑にならない程度にお片付けのお手伝いを!!あ、流石にそれなりに礼儀はしってますので控えめに、聞きますよ。ウィッシュダンスは強制力があるので最終手段です。
この影朧は軍人の方の絡みが多いです。この事件を知った時点で胸騒ぎ、かんじてたんですがね。
やはり、ですか。私にとっても胸が痛みますね。立ち向かわないと。
●
「うん、なにか事情がありますね」
「そうみたいだね」
戦友の悲痛な表情から、響と奏はこれより訪れる影朧と縁があるのだろうと察していた。縁ある者との戦いに向かう気持ちを慮ってか、武力を狙うようなデモノイドの狙いから推測される影朧の復讐対象を思ってか、響の表情が陰る。
(お母さんも複雑そうな顔してますし)
奏はそんな母を見て一つ瞳を瞬かせ、決意を込めて拳を握った。
(なら、私はできる限りのことしましょう!!)
それすなわち、体当たり調査である。言葉よりも行動で縁を繋ぎ、情報を得るのだ。聞き込みは育ちの良いお嬢様であった母に任せ、奏は体力を提供する。
ちょうどすぐそこで、瓦礫を集める一団がいる。彼らの手伝いから始めるのも良さそうだ。
「お母さん、ちょっと行ってきます。瓦礫の撤去、手伝います!」
奏は迷惑にならない程度に周囲の片付けへ参加するために走っていく。軍人も非戦闘員も、皆協力して復旧に当たる手伝いへと名乗りを上げたのだ。
ユーベルコードを用い、一緒に踊って頼みごとを聞いてもらう手もあるがそれは最終手段。できるだけ強制力のない方法で、穏やかに情報を入手したい。
細かな瓦礫を拾い集め、重い欠片を持ち上げる人々にそっと声をかけて手伝って。超弩級戦力ならではの力を貸して、少しでも早い復旧に力を貸していく。そんな中で礼儀正しく控えめに先程の悪魔について問を投げ掛ければ、彼らの見たことや感じたことが返ってきた。
体当たりで調査に向かい、結果を得ていく娘に、響は柔らかに微笑む。
(あの子らしい。……アタシもこの世界の闇に関わりが深い以上、できるだけ手掛かりをつかみ、この異常な災いの早期の終結の手がかりとしたい)
憂うことも悩むことも悪くはないけれど、と響は気持ちを切り替える。今はやれることをやらなくては。
視線を動かせば、そこかしこに色んな人がいる。周囲で監督し、指示を出している軍人に少しばかり時間をもらい、聞き込みもできるだろう。被害状況をまとめている事務方に声をかけることもできるだろう。
ユーベルコードを用いて歌い手として歌うことで心動かすこともできるが、同時に目立ってしまう。それよりは体が覚えている優雅な立ち居振る舞いで相手の警戒を解きつつ、情報を仕入れたい。他の世界での経験も活かせして、聞き出せないだろうか。
響は地道に足で駐屯地を巡ることを選択する。あちらこちらと手隙の人を探しては声をかけ、ときには稲荷狐の茉莉の愛嬌も借りて聴き込んでいった。
手助けをし、聞き込みながら集めた情報を整理すれば、先程暴れていたデモノイドの狙いに、影朧の復讐対象によりはっきりした確信が持てる。
事務方よりも軍人を、戦う姿勢を示した者を。素手よりも武器を持つ者を。生活品や食料よりも武装を狙って暴れていたようだ。
故に、影朧の狙いは武力である、と見えてくる。
「やはり、ですか」
この事件について聞いたときから感じていた胸騒ぎに理由がつき、奏はきゅっと唇を横に結ぶ。何を所以に武力を憎むに至ったかはわからないが、それでも影朧に思うところあっての行動だとわかってしまうから。
「……アタシも他人事ではないんだよね」
響の幸せを奪っていったのも武力だった。それを憎んだことがないとは言い切れない。
「それでも。止めないとね」
「はい」
けれど伏せた瞳を前に向け、響は奏に笑ってみせた。奏は母の笑みに微笑み返し、力強く頷く。
この悲しい事件を少しでも早く、終わらせるために。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジゼル・サンドル
◎○
【WIZ】
影朧の正体についてはどうやら少しずつ分かってきたようだな。
武器や争いを憎む、か…標的がこの駐屯地だったのはたまたまだったんだろうか。
建物や備品の片付けを手伝いつつもう少し【情報収集】してみよう。
狙われたのは軍人だけだったんだろうか?非戦闘員の事務員とかは巻き込まれただけなのか…
備品の破損状態なんかも観察してもっと詳しい手がかりがないか推理してみようか。一応探偵を名乗る身、情報収集と観察は基本だからな。
倒されたデモノイド達からは一様に金属片が出てきたのだよな…あれは何だったんだろうな。
デモノイド達が元はどういう人間だったのかということも、少しでも分かってあげられたら良いのだが。
●
(影朧の正体についてはどうやら少しずつ分かってきたようだな)
仲間の表情、デモノイドの狙い、駐屯地に残る爪痕。それらが示していく影朧の復讐について。
事実を咀嚼しながら、ジゼルは先程の戦闘の中でも感じた事実についてもう一度考えてみる。
「狙いは武器や、武装……軍人のように戦える者。おそらく影朧は武器や争いを憎み、復讐したいか……標的がこの駐屯地だったのはたまたまだったんだろうか」
何か駐屯地に縁があったのか、偶然か。そこかしこで復旧に当たる人や、状況を整理しようという軍人に聞いてみれば、彼らの感じた事実も聞けるだろう。
ジゼルも彼らの手伝いをしながら、聞いてみようと思った。何せ疑問は色々あったから。
(狙われたのは軍人だけだったんだろうか? 非戦闘員の事務員とかは巻き込まれただけなのか……備品の破損状態なんかも観察してもっと詳しい手がかりがないか推理してみよう)
理性がないデモノイドであったから、命じられたこと以外も行った可能性がある。理性がないからこそ、偽装工作はないと思われるが、それも情報を得ればはっきりするだろう。ジゼルも歌姫探偵を名乗る身の上だ、情報収集と観察は基本であるからして。
(あと、倒されたデモノイド達からは一様に金属片が出てきたのだよな……あれは何だったんだろうな)
ぐずりと崩れた蒼い悪魔が残したのは、その体表に残っていた金属達。何か意味のあるものなのか、そうでないのか。
(それに、デモノイド達が元はどういう人間だったのかということも、少しでも分かってあげられたら良いのだが)
黯党の悪魔召喚士がデモノイド寄生体を移植して生み出されたというが、寄生させる人間に何か基準はあったのか。
聞きたいことを整理しながら、ジゼルは復旧作業を手伝いに行く。
作業中に聞いてみれば
理性なく暴れていたから、目につくものすべて襲うという様子ではあったけれど、と前置きがつきながらも、やはり軍人、特に武器を持った者や戦う姿勢を示す者がより狙われる傾向にあったという。それから倉庫の中でも武装が納められたものが狙われていたようだ、とも。
金属と元になった人間については何も情報がない。駐屯地にいた者達も何も知らないようで、こればかりは新たな事件や情報が出るまで、わからないと推測できる。
「まだまだ謎は残っているのだな……」
けれどはっきりしていることもある。争いや武力への復讐を願う影朧がいること、そして必ずやってくるその影朧を鎮めなくてはならないということだ。
ジゼルはその結論を胸に、一つ頷いた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『大谷之紗代姫』
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POW : 三の太刀と称賛されし我が父譲りの武観るが良い!
【弓から無数の矢】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 毘紐天の化身、武を絶やせし斧の振り手よ我に力を!
【パラシュラーマの霊力】を籠めた【鏑矢】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【武術に用いる筋肉】のみを攻撃する。
WIZ : 南無八幡大菩薩!父の誕生に寄与せし御方よ我に力を
【八幡菩薩の真言を唱える】事で【五感が上昇し追跡能力に特化した高速形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:影昊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠水貝・雁之助」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●黄昏時、慟哭と共に
黄昏時には魔が通る。隣の人の顔も定かではないこの時刻、ひとならぬ者が現れ出る。
「嗚呼、嗚呼、何故」
布でかんばせを隠し、淡い色の髪を豊かになびかせて。
「何故、愛しい家族があのような目に遭ったのでしょう」
鎧具足を身に纏い、手には弓矢を携えて。
「愛し君に苦を味あわせ、助けてくれた皆に苦しみを与え……我が身は陽炎のように人ならぬ存在に」
影朧へと転じた『大谷之紗代姫』が、一時的な片付けを終えた駐屯地へと現れる。
「全て……仇が悪いのです。その仇の力となった、武が、悪いのです」
嘆き、悲しみながら彼女は矢をつがえた。
「武に報いを与えなくては。それが私の、復讐です」
たとえ仇がいなくとも、それに通じる武、すべてに復讐を。この地の武をすべて壊したならば、別の地にある武を。
彼女は終わることのない地獄へと踏み出そうとしていた。
水貝・雁之助
◎
心情
彼女と戦う覚悟も彼女を止めるという決意もある
でも紗代と戦う事が辛いという思いも或る
本当に情けない限りだけど……うん、此の想いを捨ててしまったら僕じゃないね
行こうモコ
力を貸してくれるかい?
〇天候操作による暴風で矢の威力を弱め〇地形の利用をしつつ簡易的に作成した拠点による〇拠点防御で矢を防いで対処
柴犬のモコによる〇ユーベルコードで攻撃
最悪、自身をモコの盾にする
紗代、君を止めに来たよ
罪のない人々を苦しめるなんて君には似合わないし……君の手を血に染めて欲しくないと思うからさ
此の位の痛み、君と戦う事に比べればどうって事ない、かな
紗代、今も君を愛してるよ
何時か再び会う時は戦場じゃなくゆっくりと、ね
●
大谷之紗代姫の往時と変わらない姿に、雁之助は懐かしさと愛しさが募る。けれど雁之助に、予想が当たったことに対する喜びはない。大谷之紗代姫にまた会えた嬉しさと、彼女が影朧になっていたという事実、やはり戦わなくてはいけないという衝撃があった。
(彼女と戦う覚悟も彼女を止めるという決意もある。……でも紗代と戦う事が辛いという思いも或る)
大谷之紗代姫の姿に放浪生活の時のようなやつれはない。健やかで、優しく、時に凛と微笑んでいた頃のような姿だった。
違うのはその表情、その視線。雁之助へ愛しいと向けてくれた暖かな想いは無く、影朧に変じた理由でもある武への憎しみに囚われてしまったそのかんばせ。きっと彼女は、今のままでは雁之助に気づけない。
紗代姫にそんな表情をしてほしくない。影朧『大谷之紗代姫』は止めなくてはならない。
(今なお心揺らすなんて本当に情けない限りだけど……うん、此の想いを捨ててしまったら僕じゃないね)
苦しさもやるせなさも飲み込んで、雁之助は彼女を見る。
「行こうモコ。力を貸してくれるかい?」
呼びかけに応じる相棒の頼もしい声がする。それに背中を押されるように、雁之助は大谷之紗代姫へと向かって走り出した。
「私は武を滅します。邪魔すると言うならば、世に称賛されし我が父譲りの武、観るが良い!」
大谷之紗代姫は敵対すると見なした雁之助へ、彼と共に駆けてくるモコへ弓を向ける。びょうと風切り音の後、無数の矢の雨が雁之助とモコへ降り注いだ。
雁之助は風を起こして矢の機動を僅かでも反らし、ときには周囲の施設や木々を盾にし、モコに注ぐ矢を払いながら進む。
「紗代、君を止めに来たよ」
傷ついても歩みを止めない雁之助に、大谷之紗代姫は僅かに目を見開いた。
「何も罪のない人々を苦しめるなんて君には似合わないし……君の手を血に染めて欲しくないと思うからさ」
「……いいえ、武力を持つものは、皆悪しきものです。そうでなければ、あの人も、家族も皆報われない」
紗代姫の視線は揺れても、弓はまだ揺らがない。そんな彼女に雁之助は首を振ってみせた。
「皆が皆、そうではないと知っているよね」
武門の娘であった紗代姫だからこそ、武力そのものが悪ではないとよく知っているはずだ。迷うように揺れて放たれた矢を受けながらも、雁之助は揺らがない。
「これ以上傷を負いたくなくば、退いてください」
「退かないさ。此の位の痛み、君と戦う事に比べればどうって事ない、かな」
雁之助は優しい声で語りかける。ずっとずっと大切な愛おしい妻へ。
「紗代、昔も、今も君を愛してるよ。ずっと」
「……あなたは」
「何時か再び会う時は戦場じゃなくゆっくりと、ね。今はおやすみ」
もう一度目覚めて、出会ったなら何度でもあの日のように二人で笑おう。その言葉に、紗代姫の腕はゆっくりと下ろされた。
「また迎えにいくよ」
「雁之助、様」
瞬間、モコの牙が大谷之紗代姫の影朧としての存在を削ぎ落とした。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【調和の絆】で参加
紗代姫・・・いや敢えて紗代さんと呼ばせてもらうよ。ある意味アンタはアンタはアタシの鏡だ。伝統を受け継ぐ名家に生まれ、運命の相手と会い、失っても正義の道を歩めたアタシ。影朧になってしまったアンタ。
悪いが同情と哀れみで胸の炎が燃えているんだ。少し荒療治になるが。思いを込めた一撃はアタシを戦闘不能級のダメージだろう。
でも、アナタに想いを寄せる程【残像】【心眼】の感は冴える。でもたとえ動けなくなっても。炎は消えはしない。情熱の炎で、【限界突破】であらんかぎりの熱い炎を。辛いよね。痛いほど良くわかる。
奏にもみせてやりたい。人を想う情熱は存在を浄化するほど熱いんだ。
真宮・奏
【調和の絆】で参加
紗代さん。そう呼ばせていただきます。私は音楽家夫婦の娘ですが、生粋の武人夫婦の娘です。音楽家の道を歩めず、父の死も体験しましたから、武が幸せを壊したという気持ちもわかる気がするのですよ。
だから、貴女の悲しみを込めた一撃をトリニティ・エンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】【受け流し】【鉄壁】【硬化】【衝撃吸収】!!全てを注ぎ込んでうけきってみせます。【回復力】で踏ん張り。
貴女の力、守りにつかうことができたらあるいは。普通の人として生きれたのに。
でも。【怪力】で【シールドバッシュ】いずれまた出会えたら。共に。肩を並べて。
●
「紗代さん。私は貴女の気持ちもわかる気がするのですよ」
奏のこれまでの人生も複雑だった。
もしも何もなければ、愛し合う音楽家夫婦の子供として、ただただ楽しい音楽の道を歩めたのかもしれない。
けれど武力はそれを奏に許してはくれなかった。奏の父を殺し、家族の安寧を奪い、奏自身も戦いの道へと赴かせた。
今までの選択に、武器を取ったことに後悔はしていないけれど、武力が幸せを壊したという気持ちも奏はわかる気がするのだ。
「ならば邪魔をしないでください」
「いいえ、そう行かないのですよ」
紗代姫の言葉に奏は首を振る。人を傷つけ、世界を壊すその復讐を見過ごすことはできない。
「貴女の力、守りにつかうことができたら……あるいは普通の人として生きれたのに」
「既に死したる身には無理なこと。邪魔すると言うならば、我が父譲りの武観るが良い!」
影朧がいかに弱い存在と言っても、普通に生きることは無理である。過去より現れ、いずれ人も世界も壊してしまう、もう生きてはいないものなのだから。
奏の言葉に首を振った大谷之紗代姫が矢を放つ。幾つにも別れた無数の矢が奏へと勢いつけて降り注いだ。
奏は盾を構え、火、水、風の魔力を操り、自身の防御力を上げる。これまで培った盾受けの技術を注ぎ込み、幾重にも襲い掛かってくる矢を受け、いなしてみせた。僅かに受けきれずにかすった傷は、己の回復力で踏ん張って耐えてみせる。
「いずれまた出会えたら。共に。肩を並べて」
笑い、家族のことを語り、1曲披露することもあるかもしれない、と奏は語りかけながら突撃する。矢の波を盾で押し返し、勢い込めたシールドバッシュで大谷之紗代姫を吹き飛ばした。
ダメージを受けながらも体勢を立て直す大谷之紗代姫へ、響が語りかける。
「紗代姫……いや敢えて紗代さんと呼ばせてもらうよ」
響のその手に、その心に宿るのは情熱の炎だ。己によく似た、けれど違う道を歩む彼女へと抱く炎だった。
「ある意味アンタはアタシの鏡だ。伝統を受け継ぐ名家に生まれ、運命の相手と会い、失っても正義の道を歩めたアタシ。運命の相手と出会って、先に別れて影朧になってしまったアンタ」
ほんの少し道が違えば、お互いの立場は逆だったかもしれない。紗代姫は悲しみを抱えながらも生き延びて、響は悲しみ抱えて儚く散ったのかもしれない。
「辛いよね。痛いほど良くわかる」
そう思えば、同情と哀れみで胸の炎が燃えあがる。その炎は手にも熱を伝えて一層激しく燃え上がらせるのだ。
「少し荒療治になるが、許しておくれ」
「毘紐天の化身、武を絶やせし斧の振り手よ我に力を!」
大谷之紗代姫の弓に鏑矢がつがえられ、響へと放たれる。決して負けず、折れず、武を断つのだと、大谷之紗代姫の思いを込めた一撃だ。それが直撃すれば、響を戦闘不能に追い込むダメージを与えてくると察することができる。
けれど響の感は大谷之紗代姫に心を寄せるほど冴える。もし受けて、たとえ動けなくなっても響の炎は消えはしない。
(奏にもみせてやりたい。人を想う情熱は存在を浄化するほど熱いんだ)
直感のままに鏑矢の一撃を避け、僅かな余波による脱力をこらえながら、響は腕を掲げた。
戦場に響の炎が舞い踊る。紗代姫を飲み込み、あらん限りの熱い炎がすべて浄化するように燃え上がっていた。
大成功
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ジゼル・サンドル
◎◯
武力を憎む、か…わたしも、戦いは苦手なんだ。武器を振るうのはどうも性に合わないから、わたしの武器はいつだって歌と音楽だ。
『♪武器よりも花を
攻撃よりも言葉を
争うより歌を
そうできたなら それはどんなに素敵な世界だろう…』
指定UCに乗せて歌い上げ、【足止め】を。
でも、わたしとは対照的に斧や剣を振るい勇ましく戦う親友の姿は好ましいと思う。それは彼女が大切なものを守りたい一心で戦っているから…
武器は結局、それを扱う人間の心次第だと思うんだ。
武器を全て無くしたところで、諍いが起きればまた別の何かが凶器になるだけだ。
『♪平和は人の心から始まるの 信じることからはじめよう…』
歌声を【音響弾】に変え攻撃。
●
(武力を憎む、か……)
柔らかに願いを込めて、ジゼルは歌う。
『♪武器よりも花を
攻撃よりも言葉を
争うより歌を
そうできたなら それはどんなに素敵な世界だろう……』
大谷之紗代姫に届くように、彼女が耳を傾け、歌を聞いてくれるように。心底より願いを込めて朗々と歌い上げる。
歌うジゼルの姿を見つめ、紗代姫が足を止めた。
「そうなれば、素晴らしい世でしょうね」
「そうだな。わたしも、戦いは苦手なんだ」
傷つけることを目的とした武器は、どうしてもジゼルに合わなかった。
「剣や斧のような戦うための道具を振るうのはどうも性に合わないから、わたしの武器はいつだって歌と音楽だ」
時に軽やかに、時に重厚に。柔らかく優しく、鋭く勇ましく。想いと技術を乗せて奏でて届ける歌と音楽が、ジゼルの願いや心を表し、実現させる武器だ、と誇らしく胸を張ってジゼルは言った。
「でも、わたしとは対照的にそれらを振るい勇ましく戦う親友の姿は好ましいと思う。それは彼女が大切なものを守りたい一心で戦っているから……」
大切なものを守るため、傷つくことも傷つけることも覚悟して進む親友の姿をジゼルは思い浮かべる。眩しいくらいに凛々しくて、すてきな親友の姿だ。それもまた、誇らしいほどにすてきな姿だった。
「武器は結局、それを扱う人間の心次第だと思うんだ」
大谷之紗代姫はジゼルの言葉に目を伏せ、首を振った。
「武の一族として、その言葉に頷くこともできます。それでも武器がなければ、悲しみは大きく広がらないでしょう。小さなまま終わったでしょう」
「武器を全て無くしたところで、諍いが起きればまた別の何かが凶器になるだけだ」
「だから全ての武を壊すのです。武器の代わりに凶器になった武を壊し、そうして全て無くせば……それに何もかも奪われた者も報われるでしょう」
影朧は過去の悲しみに囚われやすい存在だ。紗代姫も同じで自分の悲しみに心を囚われている。何も信じられず、それにこだわって、それへと報復を望んでいる。
「それでは終わらない苦しみに囚われたままだ」
「この身であればそれに耐えられます。……南無八幡大菩薩!父の誕生に寄与せし御方よ我に力を」
大谷之紗代姫は真言を唱え足を踏み出した。けれどジゼルの歌が届くほうが、僅かに早い。
『♪平和は人の心から始まるの 信じることからはじめよう……』
その歌に紗代姫の足が止まった。もしも信じられたなら報いはあるのだろうか。
悩む彼女を、ジゼルの歌の響きが貫いていった。
大成功
🔵🔵🔵
●嘆きは遠く、彼方へと
大谷之紗代姫の姿はゆっくり消えていく。
その表情は柔らかく、重荷を下ろしたような解放感もあった。きっと彼女は新しい道へと巡っていけるだろう。
デモノイドにされた人も、もしかしたら。
最終結果:成功
完成日:2024年07月15日
宿敵
『大谷之紗代姫』
を撃破!
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