何者でもない誰かに、貴方が
●誰かの英雄譚
それはまるで英雄譚だった。
見たことのない景色、聞いたことのない言葉、知らぬ戦術兵器。
過去の話。もうずっと昔の話。
きっと今はむかしむかしで始まる物語だった。
「憧れは妄執に変わる。妄執は弱き力を手繰り寄せる。いつだってそうだ。私に足らないのは力。圧倒的な力が足りない」
その弱々しき気配。
影朧は、弱いオブリビオンである。
嘗て、誰でもない貴女に誰かが言ったのだ。
叶わぬ夢だと。
見果てぬ夢だと。
叶えてはならない願いだと。
最後の一歩、それが叶わなかった。
「然り。如何に悪性の|赤き熾火《ルージュ》が煌々と闇夜を照らすのだとしても、しかし知るがいい。必ずや善性の青き熾火が生み出す|黒き影《ノワール》は、いずれ|怪物《プロメテウス》へと至るだろう」
幻朧戦線将校『カルロス・グリード』は、弱きオブリビオン『ルージュ・エ・ノワール』に告げる。
その瞳は怒りに染まっている。
ある科学の犠牲者。
発展の末路にある者である。
彼女の前に居並ぶは、青き怪物『デモノイド』であった。
「君の独力では到底果たし得ぬ『世界への復讐』を手伝わせよう。その名を忘れた希望という光によって生まれた影の残穢よ」
「希望なんていらない。人の強烈な善性が見せるものが、如何に残酷なものかを私は知っている。誰もが希望を得ようと手を伸ばす。誰もが平和を求める。平和、希望。その言葉が免罪符になるように、どうしようもない愚かさをひた隠しにする」
『ルージュ・エ・ノワール』は怒りを瞳に灯し、そのベルトのカートリッジを力強く押し込んだ。
その姿は黒。
赤も青もない。
あるのは、純然たる黒である。
そして、その彼女に従うように青き怪物『デモノイド』たちが物言わずとも一歩を踏み出す。
「構わないさ。偽りの平和だ。どんなに文明が発展しても、どんなに技術が進歩しても。人の営みは変わらない。数千年の時を経てもなお、本質的なものは依然変わりない。君は何者でもない。故に、君は突きつけるのだ」
『カルロス・グリード』はほくそ笑む。
『ルージュ・エ・ノワール』の怒りを煽るように告げるのだ。
「壊せ。そのための力だ。サクラミラージュよ、その闇を恐れよ。されど忘れるな、その力こそ欺瞞と偽善に満ちたこの世界の理が生み出したものだ――」
●人が夜、安心して眠るためには
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。獣人世界大戦の結果、帝都で暗躍していた黯党の首魁は撃破されたことは記憶に新しいものでしょう。ですが、黯党の残党悪魔召喚士たちはどうやら同盟者である幻朧戦線将校『カルロス・グリード』に悪魔生物『デモノイド』と呼ばれる怪物を供与していたのです」
猟兵達は頷く。
|悪魔《ダイモン》――その脅威を獣人世界大戦にて戦った猟兵達は知っているだろう。
「サクラミラージュにおいて『カルロス・グリード』は、この『デモノイド』を影朧に与え、世界への復讐を唆したのです」
そう、影朧はオブリビオンとしては弱い存在である。
それゆえにサクラミラージュではユーベルコヲド使いである帝都桜學府の學徒兵であっても対処することができたのだ。
しかし、それが今脅かされている。
強力な悪魔怪物『デモノイド』の軍勢によって、この力関係がひっくり返る。
そればかりか、白昼堂々、影朧『ルージュ・エ・ノワール』は『デモノイド』の軍勢を用いて『無差別大規模テロル』を行うのだ。
「人の往来満ちる街路……ここで『デモノイド』による『無差別大規模テロル』が起これば、人々が犠牲となってしまうのは言うまでもないことでしょう。そして『ルージュ・エノワール』は、一つの劇場を目指しています。何故、劇場に彼女が進むのかはわかりません。ですが、『デモノイド』を指揮する彼女の言葉から、何かがわかるかもしれません」
だが、同時にそれは理解できぬことであるかもしれない。
どの道、影朧である彼女を打倒しなければ、この『無差別大規模テロル』は止められない。
この事件に終止符を打つことができるのは、やはり猟兵しかいないのだろう。
「どうか、お願いいたします。影朧の持つ世界への復讐心。これを止めねばなりません。この事件は頻発すれば、人々の心に言いようのないテロルへの不安を残すことになるでしょう」
そうなれば、人は安らぎを得られない。
夜眠ることも難しくなるかもしれない。
それはなんとしても阻止せねばならいのだ。ナイアルテは猟兵たちに頭を下げ、送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
サクラミラージュ、白昼堂々と巻き怒る青き怪物『デモノイド』による『無差別大規模テロル』を止め、首魁たる影朧『ルージュ・エ・ノワール』の暴走を阻むシナリオになります。
白昼堂々と『デモノイド』による一般人への攻撃が行われようとしています。
このテロルを許せば、人々は不安に苛まれ、その平穏を壊されてしまうことでしょう。
●第一章
集団戦です。
人口密集地である帝都、その市街地の街路にて突如として現れた『デモノイド』たちが往来を逃げ惑う人々に襲いかからんとしています。
巨躯の怪物である『デモノイド』の下へ皆さんは転移で急行し、これを一層しなければなりません。
彼らは理性を持たず言葉を発することのない怪物です。
ただ、主である影朧『ルージュ・エ・ノワール』の命令に忠実に従うばかりです。
一般人の安全確保も同時に行う必要があるでしょう。
●第二章
前章にて皆さんが一掃した『デモノイド』を指揮していた影朧の言葉から、彼女がどうやら市街地にある劇場を次なるテロルの標的にしようとしています。
これを知った皆さんは先回りし、劇場に影朧『ルージュ・エ・ノワール』を迎え撃つ仕掛け、演出を作り上げましょう。
●第三章
ボス戦です。
みなさんが先回りした劇場に現れるテロルの首謀者である影朧『ルージュ・エ・ノワール』。
前章で作り上げた仕掛けや演出を交えて彼女を撃破しましょう。
彼女は影朧、推察される過去などから転生を説得することもできるかもしれません。
しかし、撃破することに変わりはありません。
果たされることのない世界への復讐、そのテロルに終止符を打ちましょう。
それではさらなる脅威『デモノイド』率いる影朧、その世界への復讐を止めるべく戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『悪魔生物『デモノイド』』
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POW : デモノイドグラップル
単純で重い【悪魔化した拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : デモノイドカッター
【剣状に硬質化した腕部】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
WIZ : デモノイドロアー
【恐ろしい咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:佐々木なの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
何処を見ても平和だった。
戦火燻ることすらない平和が此処にはあった。
赦されざることである。許しておけるわけがない。己の知る世界は、戦乱に満ちていた。
平和などなかった。
その言葉すら知らなかった。
けれど、此処にはそれがある。
許せない。
「その平和が偽りのものであると知りながら、それでもなお、これを平和と言うのなら、私は!」
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は怒り満ちる心と共に叫ぶ。
帝都、その市街地たる街路にて、人々は叫ぶ彼女を遠巻きに見やりながらも、一別くべるばかりであった。
しばらくすれば、官憲がやってくるだろうという呑気ささえあった。
その平和呆けした姿に彼女は影朧『ルージュ・エ・ノワール』は怒りをあらわにする。
己が得られなかったもの。
己たちが求めて止まなかったことを甘受しながらも、何一つ特別なことではないと平々凡々に日々を生きる者たちへの怒りがこみ上げてきて止まないのだ。
「その欺瞞、その偽善! 世界そのものを壊さねばならない!『戦いに際しては心に平和を』と叫ぶのならば、『平和に際しては心に争いを』と知らねばならない! それさえも知りたくないという愚かさならば!」
要らないというように彼女の言葉に越えたるようにして街路に現れるは無数の巨躯。
青き怪物、悪魔生物『デモノイド』。
その異形に人々は一斉に悲鳴を上げる。
青き体躯が跳ねるようにして、影朧『ルージュ・エ・ノワール』の怒りに応え、そのユーベルコードの輝きを持って破壊をもたらさんとするのだった――。
杓原・潤
まぁなんかこーゆー問題は複雑だよね、平和ボケとか色々さ。
うるうの周りでもその手の話はあるけど……だからってせっかく平和なのをわざわざ壊す事はないよねぇ?
うるう的にはそれはちょっとやり過ぎって感じ。
そんな訳で先手必勝、ミゼリコルディア・スパーダ!
包囲攻撃で移動を阻害して時間稼ぎしよう。
ついでに多重詠唱で氷の属性攻撃を閉じ込めた泡もいっぱい出しとくよ。
足元が凍ったらちょっとは動き辛いよね!
ほらほらそこの皆、見物してないで今の内に逃げてよね!
あいつが叫び出したら困っちゃうんだから!
なるべく口元に攻撃してやらせないようにはするけど、叫ばせちゃった時は……頼んだよ、うるうのオーラ防御!
傷ついた者がいて、それがなかったかのように平和だと物言う者がいる。
誰かの平和は、誰かの傷跡の上に成り立つものであったから。
踏みつけられた者の痛みを踏みつけた者は理解できない。理解しようと務めても、それはきっと欺瞞であっただろうから。
故に、その言葉に真があれど、全てが正しいとは言えない。
全ての物事において、完璧で完全に正しいものなどない。
それは一側面でしかないからだ。
「まぁなんかこーゆー問題は複雑だよね、平和ボケとかいろいろさ」
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は思う。
誰もが平和であった方がいいと思う。
争うことなく、傷つけ合うことなく。
けれど、それは在りえないことだ。
決して傷つけない者などいない。他者との間に生きているのならば、摩擦は禁じ得ず。
それが傷ついたことだと思う者がいれば、やはり、それは摩擦ではなく、摩耗であり、傷なのだ。
潤は自身のまわりでもあり得ることだと思った。
確かにサクラミラージュの平和は、欺瞞なのかもしれない。
多くの悲しみの上に成り立つものなのかもしれない。
「でも、だからってせっかく成り立つ誰かの平和をわざわざ壊すことないよねぇ?」
潤の瞳がユーベルコードに輝く。
転移した帝都、その市街地の往来に波を打つように迫るのは『デモノイド』であった。
青い巨躯。
その異形なる存在は、物言わぬまま、されど影朧『ルージュ・エ・ノワール』の命じるままに破壊をもたらさんとしているのだ。
「黙れ! 私たちの心の平穏は、貴様たちの平和の下敷きにあっていいものではない!」
「でも、壊していい理由でもないでしょ!」
煌めく魔法剣が飛翔する。
「ミゼリコルディア・スパーダ、行って!」
潤のユーベルコードによって生み出された魔法剣が空に軌跡を描きながら、一気に『デモノイド』へと迫る。
その斬撃が『デモノイド』の巨躯へと突き刺さる。
けれど、それで止まる怪物ではない。
痛覚など存在しないのか。
それともただ物言わぬ故に、その体躯は痛みに震えているのかわからない。
けれど、潤は手にした杖から氷を閉じ込めた泡を噴出し、その進撃を止めようとする。
「ほらほら、そこの皆、見物してないで今の内に逃げてよね!」
潤は街路にて惑う人々に告げる。
「こ、腰が抜けて……」
「ああもう、情けないったら!」
潤は駆け出す。
腰が抜けてへたり込んだ一般人がいるのだ。けれど、『デモノイド』にとっては関係ない。
この場にいる存在全てが敵意の的なのだ。
故に彼らの口腔が開く。
「やば……!」
潤は目を見開く。
『デモノイド』が開いた口からほとばしるは恐るべき咆哮。衝撃となって迫る咆哮を潤は、一般人を護る盾となるように立ちふさがり、己がオーラを全開にする。
「頼んだよ……うるうのオーラ防御!」
骨身がきしむ。
『デモノイド』の咆哮は凄まじかった。
けれど、潤は人々を救うために立ちふさがったのだ。
「ただ命令に従うだけの怪物だっていうんなら!」
潤は己が生み出した魔法剣を飛翔させ、『デモノイド』の口腔へと叩き込む。
もう一度あの咆哮を叫ばせてはならない。
「さ、早く立って! 危ないから!」
潤は人々を逃すために立つ。
これもまた平和ボケと言われるような自己犠牲なのかもしれない。けれど、潤は平和というものを知っている。
ならばこそ、誰かを護るために戦う意味を己が物言わぬ怪物、そして影朧に問わねばならないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
アドリブ歓迎
如何なる動機であろうとも、無差別テロルは見過ごせマセーン!
デモノイドなる謎の脅威を用いるなど、以ての外!
出撃しマース!
悪魔生物。
戦いのために……否、殺すためにだけ生み出されたような存在でありますな。
なればこそ、兵士として作られたワタシは負ける訳にはいきマセーン!
「六式武装展開、風の番!」
拳が届かない遠間からデモノイドを風の見えざる手で拘束して、各種内臓式武装による砲撃で撃破を試みるであります!
強引に突破されたら、ファルシオンでカウンターを叩き込みマショー!
逃げ遅れる民間人は風の見えざる手で掴んで避難させマース!
ヘイ、エブリワン! 対象は暴力的デース!
慌てず急いで退避してくだサーイ!
帝都の市街地、その街路は混乱に満ちていた。
悲鳴がほとばしり、一般人たちが逃げ惑う。折り重なった体躯。さらにそれを踏みつけてでも逃げようとする者たちがいた。
パニックは収まらない。
誰もが我が身がかわいいのだ。
脅威が迫っているのならば、己が命を守る生存本能に従うまでである。
これを愚かというのならば、その通りなのだろう。
けれど、同時にそれは生命として当然のことだった。理性を凌駕する本能。
どんなに平和を謳歌していても、それでもなお、その心にあるのが善性だけではないのだと証明するように人の悪性が青き怪物『デモノイド』の襲来によってさらけ出されるようであった。
これが『カルロス・グリード』の目論んだ『無差別大規模テロル』である。
世界への復讐。
その一点こそが影朧の目的である。
平和そのものに見えるサクラミラージュにあってなお、その恨みは世界を滅ぼすにたり得る理由だというように、今生きる平和そのものを壊そうとするのだ。
「ただ漫然と生きているだけで、その価値も知らぬ者たちに知らしめなければならない。この平和が欺瞞と呼ばれる所以は、そこにしかない!」
『デモノイド』に破壊活動を命ずる影朧『ルージュ・エ・ノワール』の言葉が響く。
けれど、それを真っ向から否定する者がいた。
「如何なる動機であろうとも、無差別テロルは見過ごせマセーン!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)はパニックに陥った群衆たちの頭上を飛び越えるようにして街路へと飛び込む。
迫る『デモノイド』たちの軍勢。
その体躯は異形であり、また同時に悪魔化された拳が地面に叩きつけられる。
「私の怒りが、この世界を壊す。ただ一人も救えずに平和であると宣う愚かしさを正すために!!」
「その『デモノイド』なる謎の脅威が如何なるものかを知らずに用いるなど、以ての外デース!」
バルタンは『デモノイド』へと迫る。
理解する。
あれは、戦いのために生み出されたものだ。いや、違う。殺すためだけに生み出されたものなのかもしれない。
意志なく。
声もなく。
ただ、あるのは破壊の主に従うだけの本能。
「なればこそ、兵士として造られたワタシは負ける訳にはいきマセーン!」
バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
振り降ろされた青い巨岩の如き拳を受け止めるは、告風楼(コンプレスド・エアー・アームド)たる圧縮された空気の手であった。
見えぬ何かが『デモノイド』の腕を拘束しているのだ。
「六式武装展開、風の番!」
バルタンはサイボーグである。
内蔵された火器を解き放ち、『デモノイド』へと叩き込み、爆風と共に宙を舞う。
眼下にあるは、青き怪物たちの行軍。
そして、その先にあるのは逃げ遅れた一般人たちだった。
「ひっ……!」
誰も彼もが逃げ惑うばかりではないのだ。
足がすくみ、その悪意にさらされて動けなくなる者だっているだろう。
だからこそ、バルタンは駆け抜ける。
戦うために生まれた存在なれど、ただそれだけしかできないわけではないのだ。
「ヘイ、エブリワン。ご機嫌麗しゅうデース!」
バルタンは見えぬ空気を圧縮して作った腕でもって逃げ遅れた人々を掴んで、『デモノイド』の脅威が及ばぬ物陰へと移動させるのだ。
「お早く。対象はベリー暴力的デース。慌てず急いで退避してくだサーイ!」
バルタンの言葉に人々は漸く頷く。
その背中を見送り、バルタンはファルシオンを抜き払う。
戦いはここからだ。
未だ迫る『デモノイド』たち。この大波のような進撃を食い止めねば、必ず誰かが犠牲になる。
そんなことはさせぬとバルタンは見えぬ手と共に多くを助けるために戦場となった街路を走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
黯党の首魁は倒れたが残党は残っているし、別の組織も暗躍している……そう簡単に平和は勝ち取れない訳だ
なら、少しでも平和に近付けるように努力するしかないだろうな
周辺の気配を探る事でデモノイドや一般人の位置を大まかに把握
念の為ルージュの言動にも幾らかの注意を払いつつ、大刀【冷光霽月】を抜いてデモノイド達と相対
基本的には一般人を狙うデモノイドを優先して倒しにいく
最短距離をダッシュで接近。接近を阻む敵がいるならば、建物の壁を蹴るなどして大きく跳躍
邪魔な敵の頭上を飛び越えて、空中から大太刀を振り下ろして一撃叩き込む
敵の反撃、または別のが近付いてくるなら剛式・壱の型【雲耀】。先手を取って切り倒していこう
獣人世界大戦において黯党の首魁たる『本田・英和』は倒れた。
しかし、残党たる悪魔召喚士たちが供した悪魔生物『デモノイド』は、帝都に『無差別大規模テロル』をもたらさんとしていた。
いや、すでにもたらしていると言ってもいい。
街路に現れた青い怪物。
巨躯が唸りを上げ、地面を砕く。
安穏たる平和を打ち砕くように彼らは物言わぬままに、ただ粛々と破壊をもたらしていく。
「……そう簡単に平和は勝ち取れない訳だ」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は惨状に駆けつけ、己が刀の柄を握りしめる。
どんなことでも遅いということはない。
たとえ、このサクラミラージュにおける平和が欺瞞に満ちているというのだとしても、それでも人の思う平和に近づけるために努力を惜しんではならないのだ。
いつだってそうだ。
たゆまぬことこそが、己が理想に近づくための一歩でしかない。
たとえ、遠回りに見える道筋も一歩ずつ確実に進むことが最も近道なのだ。
「『デモノイド』……意識無き怪物」
「こんな平和など平和じゃない。ただ甘受するだけの痛みを伴わぬ成果など!」
影朧『ルージュ・エ・ノワール』の叫びが聞こえる。
彼女の言葉に従うように『デモノイド』たちが行軍し、逃げ惑う人々を追う。
悲鳴が聞こえた瞬間、鏡介は駆け抜ける。
「速く、剛く――剛式・壱の型【雲耀】(ゴウシキ・イチノカタ・ウンヨウ)」
それは刹那の斬撃。
常に敵の先手を取る太刀の斬撃。
鋭い一撃は『デモノイド』の巨躯、その青き腕を両断する。
悲鳴が聞こえる。
何処にいても、それは聞こえる。数が多い。
ここまで無差別に人々を襲わせているのは、破滅的な願望があるからとしか思えない。
「世界と心中するつもりか」
「そのつもりだ。こんな世界など間違っている。平和の意味も知らぬままに平和を甘受するなど許されない。平和すら知らず、その言葉の意味もわからぬままに生命奪われる者もいると理解せぬまま、その尊さの前にあぐらをかくなら!」
『ルージュ・エ・ノワール』の言葉に応えるようにして、『デモノイド』が鏡介に迫る。
青き大波のように迫る敵。
彼らは止まらないだろう。
なぜなら、影朧『ルージュ・エ・ノワール』の持つ『世界への復讐』がとめどなく意志として彼らに流れ込んでいるからだ。
『デモノイド』は言葉なき怪物。
意志すら感じさせない。
ただ、己が主に従うのみ。
ただそれだけなのだ。
「知らないということは罪なのか。それが世界そのものを壊す理由になるというのか」
「当然だ。無知なることを免罪符に使うなどあってはならない。それを私は、発展のため、平和のため、礎となっていった者たちの悲哀を代弁しているだけに過ぎない!」
『デモノイド』たちが疾駆する。
立ちふさがる鏡介を殺すために、ではない。
逃げ惑う一般人。
平和を甘受し、安穏と生きる者たちこそが、この世界に蔓延る害悪であるというように襲いかかるのだ。
だが、鏡介は、そんな彼らをこそ護るためにユーベルコードの輝き灯す瞳を残光して駆け抜ける。
世界への復讐。
ただそれだけのために為すテロル。
これは止めなければならない。人々を襲う『デモノイド』を切り捨て、鏡介は防波堤になるべく奮闘するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ぢゅー……。
ぢゅぢゅー……。
ぢゅぢゅぢゅー……ずずっ。
(ぽいっ。2本目取り出し)
ぢゅー……。
ぢゅぢゅー……。
ぢゅぢゅぢゅー……。
(甘い、甘いです。うぇへへへ)
ぢゅぢゅぢゅぢゅー……ずずっ。
(あ、もうあと1本しかないです。シリアス終わったので油断してました)
(ステラさんひとりでシリアスしてますし、今回わたしはここまででしょうか)
いいんです。わたしはもうここまでなんです。
ステラさんはシリアスしてればいいんですよぅ。
だってステラさんには『エイル』さんいればいいんで……えっ?
セッション!?
します! やります! しかもごはん付きなんですか!
わーい! ステラさん好きー♪
それではいきますねー♪
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまぁぁぁす!!
んー、|セラフィム《善性と悪性の力》と|エイル様《乗り手》
この関係性にもまだ謎が潜んでいる可能性が?
それにしても赤とか青とか黒とか……黒?!
なんと!
善性とか悪性とかを超えた何かを感じるのですが
あとデモノイドですねハイハイ
純然たる|青《善性》は無垢な暴力になり得る
赤子なら許されるものが力ある者ではそうもいきませんからね!
というわけで独白終わりでお待たせしましたルクス様
っていじけてる?!あと練乳がすごい?!
そんなにいじけないでください
セッションしましょうセッション
後で美味しいもの奢りますからね(なでなで)
では【アウルム・ラエティティア】で!
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁす!!!」
すー。
はー。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は幻朧桜の花弁舞い散るサクラミラージュの帝都、その街路にて肺いっぱいに空気を取り込んだ。
吸って、吸って。そんでもって吐いた。
花の香しかしないはずであるが、ステラは如何にしてか、彼女の奉ずるところの『主人様』の香りを感じ取っていた。
「んー、これは|『セラフィム』《悪性と善性の力》と|『エイル』様《乗り手》、またこの関係性にまだまだ謎が潜んでいる可能性が?」
考える。
考えても答えがでないことは言うまでもないのだが、ステラは考察を重ねる。
無差別大規模テロルが起こっているので、ところどころ悲鳴と衝撃が音を奏でている。
しかし、そんな中でもステラは考えることはやめない。
「それにしても赤とか青とか黒とか……黒?!」
急に出てきた黒。
というか、影。
熾火が齎すのは悪性と善性の輝きではない。その熾火が照らすのは闇なのだとしても、そこに必ず影が生まれるものである。
悪性と善性がもたらした影。
落ちる影が何を示すのか。強烈な輝きは、いつだって真黒なる影を落とすものである。
「あ、そのまえに『デモノイド』ですねハイハイ」
ステラは頷く。
なんかざっくりしすぎていやしないだろうか。気の所為であろうか。
「気の所為です。それよりもさっきから、ずっと何か吸う音が聞こえるのですが」
ステラは見やる。
その音。ずっと描写はしていなかったが、ぢゅー……。
なんか聞こえるな。
ぢゅぢゅー……。
ぢゅぢゅぢゅー……ずず。
なんかこう、ホラー的なアレ。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、ぽいっと何かを投げ捨てた。こらっ、ポイ捨て!
「ぢゅー……」
ステラは見た。
なんかステラが考察している間にも『デモノイド』による無差別大規模テロルが行われている間、ずっと響いていた音。聞かなかったことにしていた音の正体を見た。
それはルクスがずっとシリアスな空間にアレルギーを示すがゆえに、それを緩和させるために練乳をすすっていた音だったのだ。
怖い。
妖怪練乳啜りとかそんな名前がついていそう。
どこかの漫画家の妖怪大図鑑にも掲載されていそうなビジュアルである。
「(甘い、甘いです。うぇへへへ)」
端的に言って、ヤバい。どう見ても絵面がヤバい。これ一つでシリアスな空気を穿つホラーな雰囲気になっている。
ルクスはもう一本しかない練乳に手を伸ばす。
ステラは一人でシリアスしているし。シリアスしているし?
いや、なんていうかのっけから叫んでいる時点でシリアスじゃあない気がするのだが。気の所為ですね、はい。
「いいんです。わたしはもうここまでなんです。ステラさんはシリアスしてればいいんですよぅ。だってステラさんには『エイル』さんがいればいいんでしょ……」
あー、いじけちゃった。
ステラが叫んでシリアスを中和しきれていないから。
なーかした、なーかした!
もうこのノリでシリアスと言い張るのは無理ではないだろう。
「まあ、純然たる|青《善性》は無垢な暴力にもなり得ますから。正しさを示すためにあらゆる暴力性を肯定するのならば、それは最早悪性と見分け付かぬものでしょうからね。とは言え、赤子なならば許されるかもしれませんが! というわけでおまたせいたしまsちあルクス様!」
いじけているルクスにステラは駆け寄る。
ポイ捨てされていた練乳チューブを回収して、ステラはいじけるルクスの肩を抱いて、その形の良い耳にささやく。
イケボであった。
「セッションしましょうセッション」
「えっ! セッション!?」
ちょろ。
ちょっろ。
二回も言って申し訳ないが、ちょろい。ルクスは目を輝かせる。
「します! やります!」
「ええ、後で美味しいものご馳走しますからね」
なでなで。
二人は二人だけで完結して納得していたが、端から見たら男女の縮図を見たような気がした。いや、この場合、女性と女性であるがまあ些細なことですよ。
「わーい! ステラさん好きー♪」
「ええ、では、合わせましょう」
ステラはどこかのヒモな男性みたいなキラリとした顔でユーベルコードの輝きを歯に宿した。
いいのかな、それで、と思わないでもないが、良いのである。
「それではいきますねー♪」
炸裂するは破壊音波魔法とシャウトであった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
え?え?サージェさん、どしたの?
呼ばれた?
んー?わたしに聞かれても解らないけど、
やっぱりこう、たゆんたゆんしてるといろんな世界から需要あるっていうか、
呼ばれちゃうこともあるって言うか。
……これはいつも以上に忍べない予感。
それになんていうか。
サージェさんがこの世界に来た時点で、目的達成されてない?
もう十分|クノイチ《たゆたゆ》力は見せつけたと思うよ!
ん?セラフィム?デモノイド?
あれ倒さないと、呼んでくれた人に見せつけられないっぽい?
ならわたしもお手伝いさせてもらっちゃおう。
【E.C.O.M.S】【M.P.M.S】全開射撃!
足の止まった敵を打ち倒せー!七面鳥撃ちだ!ひゃっはー!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!
いやーあんまりサクミラって馴染まないんですが
すっごく呼ばれた気がするんですよねえ?なんででしょう?
理緒さんわかります??
理緒さんには噛み噛みとか萌えがなくて申し訳ありませんが!
ともあれ来たからにはクノイチの力をお見せしましょう
デモノイド……
なんというか
セラフィムの青さに比べると不気味な青ですねえ
動きも気持ち悪いし
ここは遠距離で!
【VR忍術】トリモチ投網トラバサミの術!
説明しましょう!
とりあえず足止めする罠っぽいを雑に打っ込んだだけです!
というわけで理緒さんあとは狙い撃ち
よろしくお願いしまーす!
帝都の街路に満ちるのは悲鳴であった。
人々が逃げ惑っている。
迫るは青き怪物『デモノイド』。影朧『ルージュ・エ・ノワール』に率いられ、そして彼女の世界への復讐を為すために破壊を無差別に行っているのだ。
誰でも構わない。
この世界を壊せるのならば、如何なるものも復讐の対象なのだ。
故にテロル。
理由などない。
傷つけるのに、対象を選ばない。
己が意志を、目的を果たすためだけに行われる破壊は、意味を持てども、それを為した時点で無意味に成り下がる。
だが、ただ己が溜飲を下げるためだけに振るわれる暴力は、いつだって弱き者たちを傷つける。
卑怯、無法。
一片の正当性すらない。
故に、響く声があった。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、街路にて逃げ惑う人々をかばうようにして『デモノイド』たちの前に立ちふさがる。
名乗り向上を上げた時は格好良かったのだが、後半が台無しにしていた。
だが、誰もが突っ込む余裕を持っていなかった。
「いやー、あんまりサクラミラージュって馴染ないんですが、すっごく呼ばれた気がするんですよねえ? なんででしょう?」
「え? え? サージェさん、どしたの? 呼ばれた?」
なんでって問われても、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は首をかしげた。
自分に聞かれてもわからない。
強いて言うなら。
「んー、やっぱりこう、たゆんたゆんしているといろんな世界から需要あるっていうか、呼ばれちゃうkともあるっていうか」
うん、いつも以上に忍べてないしね! と理緒はサムズアップする。
サムズアップする意味あったかな? ないけど、そういもんである。
「ともあれ、来たからにはクノイチの力をお見せしましょう」
「……これはいつも以上に忍べない予感」
理緒は思った。
というか、むしろ、サージェがこの場にいることで『デモノイド』の注目を集めている。
猟兵だからというのもあるのだろうが、しかし、それ以上に目立ちまくっていた。無論、良い意味ではなくて、悪い意味で! 悪目立ちってやつである。
「もう十分|クノイチ《たゆたゆ》力は見せつけたと思うよ!」
「え、なんの話です?」
「小うるさい。貴様たちの言葉は、どれもが見えぬ弱者を踏みつける。無意識に、踏みつけたという認識すらなく、ただいたずらに踏みつけて生きている。それが許せない!」
影朧『ルージュ・エ・ノワール』が叫ぶ。
彼女の世界への復讐は止まらない。
どんな言葉であっても、彼女は止まらないのだ。
「『デモノイド』、その力でもって全てを滅ぼせ!」
迫るは青き怪物。
その巨躯が疾駆し、巨大な悪魔化した腕をサージェたちに振りかぶる。
「『デモノイド』……なんというか、『セラフィム』の青さに比べると不気味な青ですねぇ。動きも気持ち悪いし」
「ん?『セラフィム』?『デモノイド』? あれ倒さなと、読んでくれた人に見せつけられないっぽい?」
「何を見せつけると?」
無論、たゆんたゆんしたやつである。
「ならわたしもお手伝いさせてもらっちゃおう!」
「だから何を!?」
「E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)起動、行っちゃって!」
「ええい、何がなんだかわかりませんが、ここはVR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)トリモチ投網トラバサミの術!」
サージェのユーベルコードによって忍術が炸裂する。
忍術? となる術であったが、しかし『デモノイド』たちの足を止めるには十分であった。
「というわけで理緒さん、あとは」
「ひゃっはー! 七面鳥撃ちだ!」
ミサイルランチャーから放たれた一撃が『デモノイド』たちを飲み込み、爆発が巻き怒る。
そのさなかに理緒とサージェは見ただろう。
世界への復讐に染まった『ルージュ・エ・ノワール』の瞳を。
そこに正気はない。
あるのは狂気だけだ。
己以外の全ての、平穏を享受する者たち全てが憎たらしいというような瞳の色だけが、強烈に輝き、世界に影を落としていた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
斬って壊せ、02!
ディスポーザブル02操縦。重力【推力移動】重力浮遊【空中機動】
人工魔眼の【視力】と【第六感】で周囲のデモノイド達を視認し、
その動きに対し【瞬間思考力】で最短最速で刃を叩き込む行動を弾き出し
02【早業操縦】『戦塵剣』六腕に展開した灼熱光剣、その刃に己が|霊力《呪詛》を乗せ、デモノイド共を、奴らの振るいあげた、硬質化した腕ごと【切断】斬り壊す!!
自分達は今、戦っているのだ!!ルージュ・エ・ノワール!!!
敵を見ろ!!貴様の言う偽りの平和とやらを守る為に戦っている者達を見ろ!!
自分達は平和呆けしているのか!?この様でか!!?
言いたい事があるならはっきり言え邪魔だデモノイドぉおお!!!
青き怪物が大波だというのならば、逃げ惑う人々は塵のようなものであっただろう。
否応なく飲み込まれるしかない塵芥。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』はそう認識していた。
平和の意味を知りながらも、ただ感受するばかりの愚かさを認めろというのならば、彼女は怒りを持ってこれを否定するだろう。
「平和の尊さを、その口で説くなど言語道断!」
怒りが世界への復讐へと駆り立てる。
己は、その平和の礎でしかない。踏みつけられるものでしかない。
なのに、世界は平和を求めている。
許せるものではない。
壊さねばならない。
この偽りの平和を壊すしかない。
「斬って壊せ、02!」
だが、そんな青き大波を前にして霊力を帯びた刃が走る。
鋼鉄の巨人が疾駆する。
『ディスポーザブル02』を駆る朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は叫ぶ。人工魔眼に捉えるは影朧『ルージュ・エ・ノワール』であった
そして、青き怪物『デモノイド』。
意志無き破壊を齎す存在。
これを小枝子が許せるはずもなかった。
瞬間的に踏み込む。
迫るは剣上に変貌した『デモノイド』の腕部。その一撃よりも早く小枝子は戦塵剣(センジンケン)を叩き込む。
一瞬の交錯だった。
だが、それだけで小枝子は『デモノイド』の巨体を両断していた。
「壊せ!!」
咆哮と共に『ディスポーザブル02』の六腕がひらめき、灼熱の光の軌跡と共に『デモノイド』を切り刻むのだ。
硬質化していても関係ない。
己が呪詛を流し込む刃は、鋼鉄すら容易く切り裂くのだ。
「自分たちは今、戦っているのだ!!『ルージュ・エ・ノワール』!!!」
小枝子は叫んだ。
己を見ろ、と。
だが、『ルージュ・エ・ノワール』の瞳にあるのは炎だった。
熾火のように輝く意志。
復讐のみしか写っていない。
己という存在が、彼女には写っていない。猟兵であるとか、影朧であるとか、もはや彼女には関係ないのかも知れない。
「お前の敵は世界ではない。自分だ!! 敵である自分を見ろ! 貴様の言う偽りの平和とやらを護るために戦っている者たちを見ろ!!」
小枝子は叫ぶ。
そうだ。己達猟兵は、世界を護るために戦っている。
ならば、そこに平和はない。
平和があるのだとすれば、それは形なき心の中にのみ抱かれるものである。
「自分たちは平和呆けしているのか!? この様でか!?」
小枝子は咆哮する。
己という存在は平和とは隔絶した場所にある者だ。だからこそ、小枝子は叫ぶ。
「言いたいことがあるならはっきり言え!」
小枝子は『ディスポーザブル02』と共に踏み込む。
迫る『デモノイド』がなんだというのだ。今、己は敵を穿つために迫っているのだ。
「邪魔だ『デモノイド』ぉおおお!!!」
輝く六腕が灼熱の光湛えた剣を振るい、復讐にまみれた存在を切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
綾倉・吉野
(……何を言い並べようと、結局は現状が気に入らぬ、と幼子が癇癪を起しているだけの事。止めてしまうのです吉野)
……みょ、妙に辛辣ではありませんかマステマ殿?
(気のせいですよ)
『退魔刀』を抜き前に出て食い止めますので、その間に周囲の方々は避難してほしいであります!……って腕が刃になったであります!?
で、ですが、これならマステマ殿の特訓で相手させられたマステマ殿の部下殿も似たようなことはやってきたから惑わされないのであります!それに、「受けた|傷《ダメージ》」に応じるのだから、退魔刀で武器受けしたり、桜花軽機関銃で迎撃したりして軽減し、破魔と破邪の力を込めた退魔刀での一撃を浴びせるであります!
悪魔召喚士である綾倉・吉野(桜の精の學徒兵・f28002)に協力する悪魔『マステマ』は影朧『ルージュ・エ・ノワール』の言葉を聞く。
けれど、それは癇癪の類でしかないと斬って捨てた。
そう、世界への復讐。
それ自体は肯定できるものであったのかもしれない。
けれど、そのために罪なき者たちを傷つける理由にはならないだろう。
テロルとはそういうものである。
己たちが虐げられていると、不遇に追いやられていると示しながら、やっていることは、己たちよりも更に苦境に立たせる者たちを生み出すための行為でしかないのだ。
平和を得られぬのならば、平和たる者たちを己たちと同じ位置にまで引きずり落とす。
ともすれば生命さえ奪っても構わぬという。
青き怪物『デモノイド』は、その手段でしかなかったのだろう。
だからこそ、『マステマ』は斬って捨てた。
『止めてしまうのです吉野。この愚かしきテロルを』
「……みょ、妙に辛辣でありませんか『マステマ殿』?」
『気の所為ですよ』
その言葉は、本当に気の所為だっただろうか。
いや、それよりも、と吉野は一般時に襲いかからんとしていた『デモノイド』の硬質化した腕、その変じた剣を退魔刀で受け止めた。
「お早く!」
吉野は火花散る刃を見ながら、己の背後にて守った一般人を逃す。
「あ、ああ……」
「どなたか! この方を頼みます!」
吉野の言葉に逃げ惑っていた人々が動けぬ一般人を抱えて逃げていく。
火花散る刃と刃。
力で勝る『デモノイド』の一撃は強烈だった。骨身がきしむ。
「まったく、腕が剣に変化するなんて聞いてないであります……ですが!」
吉野の瞳がユーベルコードに輝く。
このような状況など、『マステマ』に課せられた特訓で既に想定済みである。
マステマの恩恵(トックンノセイカ)は己の体躯に刻み込まれている。
どんな状況だろうと、特訓してきた事柄に合わせて動くことができるのだ。巨体から繰り出される剣の一撃を一般人を護るために受けたとは言え、ここからの変化はお手の物であった。
吉野は青き刃を受け流すようにして退魔刀を滑らすようにして逸らし、踏み出す。
「『マステマ』殿が教えてくれたであります!」
『そうよ、吉野。そのまま』
踏み込んだ吉野は、退魔刀に破魔と破邪の力を込めて一撃を『デモノイド』へと叩き込む。
「偽りの平和を護るなど! その礎になった者たちの痛みも忘れて、その上で平和を甘受しているという意識すら忘れるというのなら!」
『ルージュ・エ・ノワール』の声が響く。
だが、吉野は踏み出す。
機関銃の引き金を引く。
確かに、と思う。
このサクラミラージュの平和は、長く続いたが故に恒久的なものに思えるだろう。
だが、影朧が人々に仇為す。
誰もが傷つかぬ世界などありえない。
大なり小なり、傷ついて生きている。その傷を見ず、己の傷を他者に強要していい理由になんてない。
だからこそ、テロルはいつだって否定されるのだ。
「それでも平和を望む方々を傷つけて、同じだなんて、笑えないのであります――!」
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
あなたが世界の破壊を望むなら
私達が相手よ
『天人結界』を張り、『水精の剣』を握って敵の前へ
避難する人々を追わせはしない
重い拳を受けないよう飛翔しすり抜け、早業で斬りつける
地形が破壊されても、飛んでいれば影響はないわ
天を衝くような叫び声が聞こえる
影朧は誰しも傷を負っているもの
対峙したからには、その声を聞き、怒りの訳を知りたい
戦うしかなくても、解ることはあると教わったから
私は私のやり方で立ち向かうわ
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は世界への復讐を望んでいる。
率いる青の怪物『デモノイド』たちが、その復讐に駆られるようにして行軍する。
白昼堂々。
帝都の街路をゆく姿は、あまりにもおぞましかった。
巨体を揺らし、その巨大化した腕でもってあらゆる物を破壊せんとしている。
「こんな偽りの平和を齎す世界なぞ、壊す。壊さねば、欺瞞と知らぬ愚かしさを糾弾するものがいなければ!」
彼女の言葉は、痛みを持つ者だけのものだった。
理解など求めていないのかもしれない。
己を理解しようとすることこそが、彼女にとっては苦痛だったのかもしれない。
己が得た絶望も、復讐も、誰にも理解されたくないのかもしれない。
いつだってそうだ。
復讐は己だけのものだ。己だけの特権なのだ。
「あなたが世界の破壊を望むなら、私達が相手よ」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は天より舞い降りる天女のように音なく、しかし、軽やかに帝都の街路へと降り立つ。
天人結界(テンジンケッカイ)が彼女の体躯に貼り巡る。
手にした『水精の剣』がきらめいていた。
「邪魔をするな! 私は、この世界を!」
破壊するのだと吐き捨てる。
その意志に感応するようにして『デモノイド』たちが疾駆する。
巨体に似合わぬ速度。
踏み出すたびに地面が砕け、その巨大化した拳が静漓へと迫るのだ。
大地を蹴って軽やかに彼女は拳の一撃を躱す。更に迫る拳。それらの間を縫うようにして彼女は飛翔する。
宙に舞う姿は美しく、軽やかであった。
舞い降りる姿が天女のようであったと人々が思うのも無理なからぬことであった。
「自分だけが正しいと知っているような顔で見下ろすか!」
「……いいえ」
己に向けた叫びに静漓は眉根を寄せる。
わかっている。
影朧はいつだって心に傷を持つ者たちである。何故そうなったのか、その理由さえも定かでなくなってもなお、彼らは世界を憎む。
けれど、力弱きオブリビオンである彼らは復讐を果たすことすらできない。
そのジレンマを解消する手立てがあれば、迷わず手を伸ばすのだろう。その結果が、この無差別大規模テロルだ。
彼女のやったことは、他者の平和を壊し、己と同じ場所まで彼らを引きずり下ろすことだ。
自分より悲惨な目に遭う者がいなければ、己が心を慰めることしかできないし、それだけが己の心を慰めるただ一つだと信じて疑わぬのだ。
「その怒り、その悲しみ。どうして」
「世界が私を生み出したからだ。平和の礎にと、踏みつけてきたからだ。踏みつけた者の痛みも知らずに、のうのうと平和を甘受していることが許せないからだ!」
慟哭めいた言葉だった。
戦うための力を得るためには、痛みを得なければならない。
そして、平和を求めたのならば、戦わなければならない。
いつだってそうだ。
悲しみの連鎖はこうやって始まる。堂々巡りだ。解脱すら遠き輪廻の如き争いの環に、戦いを止めるために力を求めて囚われる。
皮肉でしかない。
「その訳が、あなたの理由」
戦うしかない。わかっている。影朧である以上、倒すしかないのだ。
けれど、それでも静漓は知ったのだ。
戦うしかなくても、解ルコと貼るのだと教わったのだ。
「なら、私は私のやり方で立ち向かうわ」
それだけが、その復讐の理由すら飲み込まれた影朧に対するたった一つなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
平和ならば、それを乱す理由がわかりませんよ。
まずはここを収めませんとねー。
デモノイドたちに向かって、早業によるUCを使っての広範囲投擲攻撃ですー。重量も持たせたので、まあ貫通もしますでしょう。
その剣には当たるわけにはいきませんから、第六感で見切ってからの回避を行いましょう。
…こうすることで、陰海月と霹靂が動きやすくなりますからねー。
※
陰海月「ぷきゅ!」
霹靂「クエッ」
皆を避難誘導!自らに乗せて運んだりする。
理解できない。
平和たる世界を乱す理由が。
何一つわからない。
「何故、そんなにも平和を憎むのですかー?」
迫る青き怪物『デモノイド』の群れを見やりながら、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は言う。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は、このサクラミラージュの平和を、世界そのものを壊したいと願った。
世界への復讐だけが彼女の存在理由だった。
「平和の礎になった者たちを忘れるからだ。ただあ己たちの平和だけを維持するために踏みつけてきたものたちを忘れ、ただ安穏と笑う姿に怒りを覚えたからだ!」
その怒りに呼応するようにして『デモノイド』たちが疾駆する。
腕を剣へと硬質化させ、振るう。
重たい斬撃が結界に激突する。
火花が散り、その怒りを示すようにきしむ。怒りしかない。『デモノイド』は、ただの器でしかない。
意志無き怪物。
主である『ルージュ・エ・ノワール』の怒りを受け止めるだけのものでしかない。
そして、その怒りの発露は無差別大規模テロルとして人々を襲う。
この街路で白昼堂々とテロルを行うのは、彼女が平和に生きる人々を己が怒りの源にまで引きずり落とすためのものだった。
自分だけが悲惨な目にあっていると思っているからこそ、そうやって他者を妬ましく思うのだろう。
『疾き者』は静かに構えた。
手にした棒手裏剣。
指と指との間に挟み込まれたそれを、ユーベルコードを乗せて放つ。
空気を切り裂くようにして棒手裏剣が走る。
打ち込まれた一撃に『デモノイド』の体躯が揺らめく。
「礎、ですか。確かに死者は語る言葉を持たず。最初から礎になるために生きてきたわけではないと語るのでしょう」
平和の礎になった、と語るのはいつだって生きている者だ。
人の生命を解釈しただけに過ぎない。
生きていたかったはずだ。
死にたくなかったはずだ。
平穏に生きたかったはずだ。
誰にも強要されることなく、自由を謳歌したかったのだろう。
だからこそ、死せる者たちは、影朧となって怒りを滲ませる。
どうして、今生きているのが己達ではないのかと。あの平和は己たちが作ったものであると言いながら、どうしてそれを己たちが甘受できぬのだと言うのだろう。
故に、今を安穏と生きる者たちを引きずり落としたいと思うのだ。
己たちよりももっと悲惨になればわかるはずだと。
己たちの悲しみも、苦しみも、痛みも。
全て理解したうえで、それが尊いものだと知らねばならぬと『ルージュ・エ・ノワール』は吠えるのだ。
「ですが、平和を乱す理由にはなっていませんよ」
その痛みも苦しみも悲しみも。
全て他者のものではなく、自分自身のものだ。他者に理解を強要するなど、それこそ無意味だ。
『疾き者』は立ちふさがる。
その悪意から、己の背後で逃げ惑う人々を保護する『陰海月』や『霹靂』を護るために。
悪霊たる己達は、そうすることでしか、報いることができないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもーはためいわくー
誰しも
誰しも平和が一番て
そんなことは分かっているよね
分かっているのに…そうしてしまうんだね
そんな想いはボクが引き取ってあげるよ!
●結界作戦
単純にUC『神罰』で強化した[球体]くんたちを彼らを妨げる結界として使っていくよ!
彼らを通さず、彼らだけを叩く!
んもーまとめてどっかいっちゃえーっ!と押しのけたり
ドーーーンッと球体くん同士で挟み込んだりして倒してこう!
まったんもーカルロスくんもしつこいんだから
それにやり方がこすっからい!
もっと堂々とたのしもうよー!
影朧による無差別大規模テロル。
帝都は混乱に満ちていた。
誰もが逃げ惑っていた。何から逃げれば良いのかもわからないが、ともかく逃げなければならないと走る。
己が先に。
誰よりも先に。
逃げて、生命を守らねばならぬと悪しき性質が表出するのだ。
「んもーはためいわくー」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思う。
誰だって平和が一番だって理解している。
わかっている。わかっているのに、それでも影朧『ルージュ・エ・ノワール』と同じように他者を己と同じ場所まで引きずり下ろし、さらに自分より下に落とさねば気がすまなくなってしまう。
自分よりも悲惨な目に遭うものがいなければ、己が立っている場所を確認さえできなくなってしまうのが人だ。
誰だって、自分が他者より優れていたいと思うものだ。
「そうせざるを得ないんだね、キミは。そんな想いはボクが引き取ってあげるよ!
ロニは己が球体を生み出す。
ユーベルコードの輝きによって強化された球体たちは、鉄槌のように『デモノイド』たちの頭上より降り注ぐ。
硬質化した剣のような腕が球体と激突する。
凄まじい重さが迫る中、ひしゃげるようにして『デモノイド』たちの体躯が砕けていくのだ。
「んもー、しぶとい!」
ロニは球体と球体とで『デモノイド』を挟み込んで押しつぶす。
「理解などされたくない! 貴様たちと私とでは違いすぎる。他者に理解を示す余裕のあるものが、したり顔で私を理解しようとする。その愚かさが、私はどうしようもなく嫌悪するものとして認識させる!」
「だって仕方ないじゃない。ボクとキミとは違う存在なんだから。どうしたって他者を理解しきれないって、真理でしょ。でもさ」
それでも人は誰かを理解したいと思うのだろう。
なぜなら、自分のことさえ人は全て理解できない。
自らの中に、そのうろの中に何があるのかさえ、覗き込むことができないのだ。
そんな人間が何故、他者のうろを覗こうとするのかなど、言うまでもない。
他者は自らの鏡だからだ。
そこに写った己の姿を見て、自身を理解する。
こんな人間なのだと理解を深めるのだ。
「それでも誰かに手を差し伸べたからこそ、この世界の平和があったんでしょ。これが一番いい形だって、誰かが思って、誰もが思ったから、こうなったんでしょ」
それを壊すのは、とロニは球体を『デモノイド』に叩きつける。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』が向かう先はわかっている。
そして、同時に思う。
「まったくもーカルロスくんもしつこいんだから」
それにやり方がこすっからい。
影朧を持って無差別大規模テロルを引き起こすなんて、あまりにも黒幕ムーヴが板につきすぎている。
「もっと堂々とたのしめばいいのね――!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『皆で観劇会をしよう』
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POW : 大道具係なら任せて!
SPD : 手先が器用だから小道具作るね!
WIZ : 演出なら任せて!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
青き怪物『デモノイド』』による無差別大規模テロルは猟兵たちの活躍によって阻止された。
しかし、このテロルを引き起こした影朧は、猟兵達から逃れるようにして帝都を疾駆する。目指す場所などない。けれど、自然と彼女の足は、とある劇場に向かっていた。
理由はわからない。
けれど、そこに向かわねばならないと思ったのだ。
「どうして私はあの場所を目指している?」
わからない。
けれど、どうしてか、そこに行かねばならない。
人は世界というスクリーンに映し出された影。
これが真の姿であるとは思えない。けれど、今、サクラミラージュという|世界《スクリーン》に映し出されている影法師は膨らみ続けている。
世界の平和のためにと科学の犠牲ととなった、いつかの誰かがいた。
平和という言葉すら知らぬ世界にあって、その有名無実にも劣る何かを求めるために生命が消費されていったのだ。
それを礎と呼ぶのならば、己たちの存在はいつまでも踏みつけられ続けなければならないのか。
「そんなこと、許せるわけもない」
そうだ。許せない。
許せないのだ。
平和という免罪符を突きつけられ、犠牲を強いる者も。それを美しきものだと賛美するのもの。
全てが許せない。
猟兵達は、影朧『ルージュ・エ・ノワール』が向かう劇場を知る。
そこは公演のための準備が進められていた。
しかし、無差別大規模テロルの騒ぎによってもぬけの殻となっている。
『ルージュ・エ・ノワール』が此処に来る、というのならば、猟兵達はこれを迎え撃つ仕掛けを作り上げなければならない。
猟兵達は見ただろう。
その劇場にて次なる演目は。
『憂国學徒兵』
鋼鉄の巨人を駆る9人の若者達による群像劇。
その仕掛けが、演出が中途半端に残されていた。
平和を求めながら、平和を否定したいと願う影朧。彼女の傷ついた心は、何を求めていたのか――。
バルタン・ノーヴェ
アドリブ歓迎
観劇にはコーラとポップコーンが合うと言いマース!
なので自作して配給することで、この群像劇の成功を祈願しマース!
平和の犠牲。礎となった何かになれなかった方々。
国を憂いた若者たちは、最初から犠牲になると覚悟して戦ったのデショーカ?
まさか。
彼らは帰るべき日常を思い、平和を望み、戦いに臨んだはずであります。
ルージュ・エ・ノワール。
アナタは、ただの一人も救えなかったというのデスカ?
戦友が倒れても、守り抜くことができなくとも。
助けられた命は何も無かったと言うのでありますか?
世界への復讐というのは……アナタたちが護ったモノを犠牲にしてまで為すべきことなのデスカ?
それすらも灰燼に帰すというのなら……それこそ、何のために戦ったというのデスカ?
我輩の故郷たる世界も、戦乱の只中でありマシタ!
しかし、平和という言葉すら知らぬ世界の中にも、平和を求める声はあったのであります!
ワタシ自身が平和を理解できずとも、それを良しと笑う方がいるのであれば本望であります!
たとえ、役目を終えて放逐られたのだとしても。
帝都市街地に存在する劇場。
いくつもの演劇が繰り広げられ、観客たちは都度歓声を上げていたことだろう。
万雷の拍手もまた降り注いだことだろう。
演劇を志すもの達は皆、成功を祈っている。公演日のために積み上げてきた研鑽も、舞台を設営する手間も、時間という資源を捧げたからこそ報われるものだ。
だが、それを壊そうとするものがいる。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』。
彼女は、この劇場へと迫っている。
何故、と問いかける言葉があったとしても、彼女はそれに対する答えを持ち得ないだろう。
忘れてしまったのか。
それとも、内なる声というものにすら耳を傾けられないほどに力に狂ってしまったのか。
いずれにしても彼女の悲哀は世界への復讐という炎の中に燃え尽きていったのだ。
「平和の犠牲。礎という他の何者になれなかった名もなき者たち」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は無人となった劇場に落ちていた台本を手に取る。
演目『憂国學徒兵』。
国を憂いた若者たち。
己の生命があとに続く者たちのためになると理解して戦ったのだろうか。
犠牲として生命散ることを是としていたのだろうか。
いや、とバルタンは台本を手にとって頭を振る。
「彼らは帰るべき日常を思い、平和を望み、戦いに挑んだはずであります」
そう思うのだ。
きっとそうだと思う。
台本に描かれていたのは、若者の群像劇だ。
戦いの中にあって、それでも懸命に生きようとする者たちの物語だった。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』がこの劇場を目指しているというのならば、劇場か、はたまたこの台本に引き寄せられているのか。
未だバルタンにはわからぬことだった。
けれど、彼女はまずは腹ごしらえ(ミール・タイム)と言わんばかりに、劇場につきものたるコーラとポップコーンをユーベルコードで作り上げる。
バターの香りが劇場に甘く広がっていく。
塩をぱらりとふりかけて、手に取る。
さくさくと口溶け良いポップコーンが甘さと塩っけを舌に乗せていく。
少しバターが油っぽいけれど、コーラの炭酸で流し込めば新たに塩っ気がほしくなってしまうものである。
「きっとこの群像劇が伝えたいことは、台本を書いた者と演劇を見た者にしかわからぬのデショウ。ならば、この群像劇の成功を祈願しマース!」
これは餞別だと言わんばかりにバルタンは大量のポップコーンを補充していく。
そして、見やる。
劇場のステージを。
そこにきっと彼女は立つだろう。
スポットライトを浴びて、必ず。
ならばこそ、バルタンは思うのだ。
「『ルージュ・エ・ノワール』。赤と黒。アナタはただの一人も救えなかったというのデスカ?」
戦地にあって多くの生命が散っていった。
戦友が倒れ、己もまた倒れたことだろう。
何一つ守れなかったのかも知れない。己が守られてばかりだったのかもしれない。
けれど、世界への復讐は確かに彼女の胸の中にある。
この平和は彼女に取って耐え難いものだったのかもしれない。
「だからこその世界への復讐デスカ。アナタたちが護ったモノを犠牲にしてまで、為すべきことなのデスカ?」
問いかける言葉に答えはない。
いずれ問いかけるのだとしても、彼女は如何なる答えを持って己に対峙するだろうか。
その問いかけ自体も灰燼に帰すことを望むのかも知れない。
けれど、それは悲しいことだ。
悲しみだけが炎の連鎖によって破滅を呼んでくる。
それこそ、そんな悲しみばかりが満ちるのならば、なんのために戦ったというのだろうか。
己の命を以てして、誰かのためにと願ったのではないか。
台本をバルタンは握りしめる。
「我輩の故郷たる世界も戦乱の只中でありマシタ。しかし、平和という言葉すら知らぬ世界の中にも、平和を求める声はあったのであります!」
荒廃に満ちた世界には、絶望しかないのか。
『笑いなよ、バルタン。ハイになるんだ!』
その言葉を思い出す。
あの文明すら荒廃し、生きることすら難しかった世界にすら平和を求めるものたちがいたのだ。
「ワタシ自身が平和を理解できずとも、それを良しと笑う方がるのであれば本望であります!」
いつかの誰かが言った。
笑いなよ、と。
ハイになるんだ! と。
そうやってバルタンは生きてきたのだ。
生きることは役目か。
「たとえ、役目を終えて放逐られたのだとしても」
否である。
生きることは役目でも責務でもない。
明日に続く道だ。
明日笑えるようにと進むことが生きること。
なら。
「『ルージュ・エ・ノワール』、アナタはこの劇場から出ることは許されないのデース。アナタの生きた証は演劇として人の心に紡がれていくのデース――」
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
●夢
観劇は大衆に迎合するモノで
時に悲劇さえ美談に変えて
無垢な憧れを煽り
無知を利用しようとするから
『御国の為に』影朧甲冑を纏った人たち
どうしたって選べもしない運命を破滅を
選ばされた人たちがいたことも忘れて
尚もその犠牲を利用するというのなら
……こんなのはただの想像にすぎませんけど
でも、わたしは忘れられません
かつて學府の依頼で命を落とした小さな女の子がいたこと
ほんとうは繰り返してはいけないことを
わたしたちは今でも繰り返しているということを
そして、今もまた利用される
影朧がいることを
台本の流れや舞台装置を確認
もし赤き熾火……彼女の機体があるなら一寸拝借
置物でもいい
かつてそこで戦った兵士の心を探してみます
劇場はいつだって現実と隔絶する。
そこで行われるものを見ることで多くの事柄を知ることもできるだろう。己の心に感じたものを整理することもできるかもしれない。
見るものによって、見る立場によって、その人の成り立ちによって、一つの事柄が多くの変化を齎す。
そういうものだ。
けれど、時として観劇は大衆に迎合するものでもある。
悲劇を美談に変え、喜劇を批判の対象にする。
無垢な憧れを煽り、無知とも知らぬものたちを利用しようとする。
リア・アストロロジー(M2-Astrology・f35069)は思う。
嘗て、幻朧戦線は帝都にて動力甲冑……一度装着すれば二度と脱着することのできぬ影朧甲冑を用いたテロルを行っていた。
二度と脱着できぬということは、即ち、一生そのままだということだ。
そして、それは『御国のために』という尊き意志を利用したものだった。
「どうしたって選べない運命を、破滅を選ばされた人たちがいたことも忘れて、尚もその犠牲を利用するというのなら」
わかっている。
リアにはわかっている。
これがただの想像に過ぎないことであることは。
けれど、彼女は忘れられなかったのだ。
猟兵たちが解決してきた事件の中で、生命を落とした少女がいたことを。
繰り返してはならない。
こんなこと二度と、と思いながらも世界は示すのだ。こんなことこそ何度も繰り返されてしまうということを。
悲劇はいつだって起こり得る。
道端の何処からかも、人の心にある小さな悪意からも、そして、その悪意の裏側にあるであろう僅かな善意からでも起こり得るものであると。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』が迫る劇場にて行われる演目。
『憂国學徒兵』
それは如何なる物語か。
無差別大規模テロルの影響でもぬけの殻となった劇場に配された舞台装置。
鋼鉄の巨人の張りぼてがあった。
うまく作ってあると言えるだろう。
そこに赤い機体はなかった。何故かない。
青や白、黒といった色の鋼鉄の巨人を模した装置はあっても、赤だけがない。
9つの鋼鉄の巨人。
赤だけがない。
「何故、ないのでしょう」
わからない。
なかったことにされてしまったのか、それとも、そもそも存在していないのか。
想像することしかできない。
影朧の存在はいつだって利用されるばかりだ。
弱いオブリビオンであるということもあるのだろう。いつだって強い力を持つものに弱いものは利用されてしまう。
そういうものだというものがいる。
けれど、納得などできない。
「『ルージュ・エ・ノワール』。あなたの心は此処にはないのですか。なら、どうして」
此処に来ようとしているのか。
名もなき兵士として散った生命があって、それ故に己たちの生命の上に立つ安寧を許せぬという心は、ただ、力ある者に利用されるばかりなのか。
それを思って、リアはまた少しだけ悲しくなるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
仕掛けかぁ、うるうそーゆーのあんま得意じゃないんだけどなぁ。
こんな時はとりま召喚術!
うるうもその素性を知らない影の追跡者さんを召喚して、劇場内を調べるよ。
地形とか何があるかとか隠れられそうな所とか、知っとくと良い感じな事ってあるよねぇ。
この人ならもし影朧とバッティングしても見つかり辛いしね。
相手もこの場所に何か感じてるみたい。
となると流石にいきなり壁壊して入って来たりはしないはず。
入口や廊下辺りに仕掛けとこうかな。
光の属性攻撃を込めた泡をシャンデリアに紛れ込ませたり、暗い通路に闇の泡を置いたり。
後はセットにスライム隠したりかな?
いい?敵が来たら絡みついてやるんだよ?
こーら、うるうには絡むな!
劇所に仕掛けは常なるものである。
大掛かりであれ、そうでないのであれ。例えば、幕を上げ下げするもの。スポットライトといった投光器。
多くのものが存在しているだろう。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』が歩む先にあるという劇場にて行われる演目の名は『憂国學徒兵』と呼ばれる演劇だった。
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は、その内容を知らない。
けれど、この劇場の設備が影朧『ルージュ・エ・ノワール』との戦いに利用できるというのならば、これを用いなければならない。
「といっても、仕掛けって。うるう、そーいうのあんまり得意じゃないんだけどなぁ」
何かをしなければならない。
時間は多くはないだろう。
だからこそ、一人でできることはたかが知れている。
「とりま召喚術!」
ユーベルコードに輝く潤の瞳。
影の追跡者の召喚を経て、彼女は劇場内をくまなく調べていく。
舞台の上には9つの鋼鉄の巨人の張りぼてがあった。
隙間を縫うようにして影の追跡者が走っていく。潜り込む場所はいくらでもあるように思えた。
舞台の上にある張りぼての中であるとか、観客席の下であるとか。
姿を隠そうと思えば、多くの場所があった。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』に何か算段があるのかと思ったが、どうやらそうではないようだった。予知があれば、こんな場所を戦いの場には選ばないだろう。
「じゃあ、どうして影朧は此処を選んだんだろう?」
わからない。
何かを感じたのかも知れない。
そうであるのならば、影朧はこの劇場を壊すことはないだろう。
「んー……なら、入口や廊下あたりに仕掛けておこうかな」
潤は影朧が舞台上に来ることを見越して光の攻撃属性の魔法を込めた泡を照明に仕掛けたり、紛れ込ませたりする。
闇の属性魔法を込めた泡も暗い通路や、観客席の下にも仕込んでいく。
後は、と潤は考えを巡らせる。
張りぼて。
9つの鋼鉄の巨人。
この中に仕掛けを隠すならば、ぴったりだった。
「うん、ここにスライムを隠しておこっと。いい? 敵が来たら絡みついてやるんだよ?」
潤の言葉にスライムはびょいんと跳ねて潤の手足に絡みつく。
そうじゃない、と潤はバタバタしてしまう。
「こーら、うるうに絡むな!」
肌をゾワゾワとしたものが這う。
ひんやり冷たい。潤はこれを引っ剥がして、張りぼての中にスライムを突っ込む。
まったくもう、と思わないでもない。
「これで準備はよし、と」
仕掛けは得意じゃないと自分では言っていたが、しかし潤のし掛けた罠は影朧にとっては想定外なものばかりだったことだろう。
万全の体制で影朧を迎えることができる。
潤は、その時が来るまで影の追跡者が見つけた暗がりに身を隠すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
うーん…平和を齎すために戦ったはず、ですよねぇ。
私、戦いが終わったら忘れ去られる側でしたしねぇ(忍び)
やっぱりわかりませんよ、平和を乱す理由が。
ですが、ここに来るということは…何かこの劇に引き寄せられる、ということ。
なれば、台本読んでおきましょうかねー。
ここにヒントがあるような気もしますしー。
それに、どうして狙うのかが、わかるような予感もしますので。
※
陰海月「ぷーきゅー?」
首かしげてる。アスアスのテレビで見たようなー?
サクラミラージュは平和続く世界である。
それは表向きであるとも言えただろう。影朧の脅威は存在し、それをユーベルコヲド使いたちが転生させる。
そうして維持してきた世界だ。
そんな世界にだって大きな争いはあったのだ。
帝による統治。
いつだってそうだが、何かを一つにまとめる時争いはつきものである。
どうしたって生まれるものだ。
齟齬が、軋轢が、摩擦が。
「うーん……平和を齎すために戦ったはず、ですよねぇ」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は首を傾げる。
どんな世界にだって争いはある。
他者と己との違いがあると理解すればするほどに生まれるのが溝であるからだ。
どうしたって他者は理解しきれるものではない。
四つの悪霊を束ねた存在である己達とて、他の三柱の考えていることは理解できれど、全てを知ることはできない。
ならば、他の人間は特段そうであろう。
理解したいと願いながらも理解できぬことに苛立つ。
苛立ちは感情の波だ。
大きな波となって誰かの心を押し流すこともするだろう。
それに、と『疾き者』は思う。
自分の役割というものを。戦いが終わったら忘れられるもの、いや、もともと存在しないものとしての役割が忍びというものであった。
だからこそ、もたらされた平和の意味を知る。
「やっぱりわかりませんよ、平和を乱す理由が」
ともすれば、忍びであるからこそ理解できたものもあったかもしれない。
けれど、『疾き者』は理解できなかったのだ。
見上げるは劇場の舞台。
その上にある9つの鋼鉄の巨人の張りぼて。
台本が落ちている。無差別大規模テロルから逃れるために取るものも取らずといった有り様だったのだろう。
台本を見やる。
『戦いに際しては心に平和を』
その台詞を見やる。
あの影朧がこの劇場に惹きつけられるようにしてやってくるという予知があるのならば、何かりゆうがあるのだと思ったのだ。
台本にヒントがあるのかも知れないと思ったのだ。
「みんな死んでしまう。この得た平和も百年続くとは思えない」
読み上げる台詞。
平和でありながら、平和ではない未来を思わずにはいられない者の苦悩がそこにあったような気がした。
覗き込んだ巨大クラゲ『陰海月』は首を傾げる。
アスリートアースで見た様な気がしたのだ。
決定的なことは何もわからない。
けれど、影朧がここに来るのは確定している。
未練か。
それとも平和というものの礎となって、己がその平和を甘受できぬことへの怒りか。
いずれにしても『疾き者』にとっては理解できないものだった。
平和を憎む理由を理解できないのならば、きっと影朧『ルージュ・エ・ノワール』とは平行線をたどることになるだろう。
どの道、とも思う。
彼女を打倒しなければならない。そうしなければ、多くの平和が壊れてしまうことは言うまでもないことだったからだ――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
サクラミラージュが今の姿になるまで多くの争いがあったのだろう
それだけじゃない。今の姿を維持する為にどこかで争いが起きて、或いは誰かが犠牲になっている
そういう意味では、「偽りの平和」と言われるのも仕方ないかもしれないが――
放置された台本を手に取り、内容をざっと確認して
それから、作りかけの大道具を完成させる事にしよう
ルージュ・エ・ノワールを迎え撃つ為に、この大道具に何かしらの罠を仕掛けるとかを考えないでもないが……それは、この公演に向かい合っている人々や、この物語に悪いよな
あるべきものを、あるべき形に仕上げる事に注力しよう
「偽りの平和」と言われても仕方ないかもしれないが――それでも、と思うんだ
サクラミラージュが最初から平和だったわけではない。
嘗て争いがあったことも伝え聞くところである。
多くの犠牲があった。
何もかもが平々凡々ではなかったのだ。それは言うまでもないことだった。
もしも、この平和がなんの犠牲もなく成り立つものであったのならば、影朧という存在は生まれようがなかっただろう。
世界への復讐。
弱きオブリビオン。
彼らはいつだって、世界に対する復讐を抱えている。
世界自体を恨まずにはいられないのだろう。
それはともすれば、他者と己との違いに苦しむ者の懊悩であったのかもしれない。
自分だけが、と思い込むことしかできないのだ。
「今の平和を維持するために大なり小なりどこかで争いが起きて、或いは誰かが犠牲になっている」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はそうした犠牲を思う。
多いか少ないかの問題ではないことは言うまでもないことだろう。
けれど、確実に誰かの犠牲を踏みつけて生きている。
己たちが過去を踏みつけて未来に進むように。
きっとそうした悲しみの蓄積、堆積してにじみ出るものが影朧というものなのだろう。
「そういう意味では『偽りの平和』と言われるのも仕方ないかもしれないが――」
落ちていた台本を手に取る。
『戦いに際しては心に平和を』
『けれど、見ろ。死にゆく者たちを。僕たちは過去を踏みつけて生きている。平和を愛する心があっても、その心こそが世界を壊す。誰の心にも正義があるように、万華鏡のような人の意志が、いつか世界さえ押しつぶす』
台詞が並んでいる。
演目『憂国學徒兵』。
九人の若者たちによる群像劇。
作りかけの張りぼてがある。
9つの鋼鉄の巨人だ。全てが完成しているわけではない。
「なら、少しでも彼らに報いなければならない」
本当ならば、この張りぼてになんらかの罠を仕掛けるのがいいのだろう。けれど、この公演に向かい合っている者たちに悪いと鏡介は思ったのだ。
この物語にさえ悪いと思った。
自分ができるのは、無差別大規模テロルによって中断された作業を引き継ぐことだけだった。
あるべきものをあるべき形に。
それは難しいことだった。
戦う方が余程簡単だとさえ鏡介には思えたことだろう。
こんなことに意味があるのかと問われれば、恐らくないのだろう。けれど、同時に思う。
「そんなことを言い出したら、世の中の大半は意味がないものになってしまう。過去になるのだけのもの。前に進むための礎として踏みつけなければならないという無価値に落ちてしまう。けれど」
鏡介はそれを無意味だとは思わないだろう。
たとえ、過去となって無惨にも踏みつけられるものであったとしても、だ。
そこに在ったという事実が誰かの未来を示すものであったかもしれないのだ。
「それでも、と思ってしまうんだ」
『偽りの平和』だと謗られようとも、今を生きる人々にとっては夜、安心して眠るために必要なものなのだ。
鏡介はそれを護るために戦う。
大道具を仕上げながら、額に浮かぶ汗を拭い、その平和が偽りであっても誰かのためになりますようにと祈るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
『憂国學徒兵』……。
何があるのか解らないけど、これが目的っぽいよね。
劇を完成させるなら、まずはステージに乗ってもらわないと!
『希』ちゃん、『熾盛』のデータもらえる?【偽装錬金】で作っちゃうから。
『了解。おねーちゃん、OSまわりどうする?』
お願いしていいかな?
『任せて!』
よし。
これでこっちに誘き寄せられるね。
なるほど、犠牲になった人、かぁ。
それで復讐ってことか。
犠牲を忘れて平和を享受する人が憎い。だから無差別に襲い、壊す。
そして、また平和のために戦う人が出てきて、あなたと同じ境遇の人をたくさん作る。
あなたがいちばん、犠牲になった人を侮辱してるよ。
劇ならさっさと、終わらせよう。
サージェ・ライト
【理緒さんと】
んー
ルージュエノワールさんは平和って事項にとっても反応するみたいですね?
憂国學徒兵というとクロキャのフュンフ・エイルさんたちのことですかね?
『戦いに際しては心に平和を』
確かに素敵な言葉です
やり過ぎないように
戦いは単に平和への道のりだと強く思う言葉
だけど
逆にいえば平和を求めるためには戦いを肯定している言葉でもありますよね
その過程で人が犠牲になるのならば……
ルージュエノワールさんはそういう犠牲になった人??
平和のために犠牲になった人々の
『平穏』は誰が守るのでしょうね?
というわけで理緒さん
この劇を私たちで完成させましょう
戦いに際しては心に祈りを
足りない人出は【かげぶんしんの術】で!
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は怒りに身を任せていた。
世界への復讐。
それは本来の影朧としての彼女の力では到底為し得ぬことであった。けれど、彼女が与えられた『デモノイド』であればできてしまう。できると思いこんでしまう。
力は人を狂わせる。
心に抱いたものを捻じ曲げる。
どんなに尊い思いを抱いていたとしても、必ず狂うのだ。
嘗てあったものを踏みつけて前に進むのだから、当然だろう。
当たり前にあったことも、全てが過去になるのだから。
「んー。『ルージュ・エ・ノワール』さんは平和って事柄にとっても反応するみたいですね?」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は先んじて影朧『ルージュ・エ・ノワール』が現れるという劇場に向かっていた。
眼の前には演目が掲げられている。
まだ公開日には遠いのだろう。
そのための準備が行われていた様子であった。
けれど、帝都を襲った無差別大規模テロルによって準備をしていた人々は逃げ出してしまっている。
台本が落ちている。
タイトルである『憂国學徒兵』の文字が並ぶ表紙に踏みつけられた足跡を払いながら、サージェは菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)に言う。
「『憂国學徒兵』……」
「というと、クロムキャバリアの『フュンフ・エイル』さんたちのことですかね?」
「どうなんだろう。何か関係があるのかわからないけれど、これが目的っぽいよね?」
未だ完成を見ていない劇場の舞台。
9つの鋼鉄の巨人の張りぼてが並んでいる。
他の猟兵たちが仕掛けを施したり、せめて遅れた作業を取り戻そうとするように動いている。
理緒も同じ気持ちだった。
「劇を完成させるなら、まずはステージに乗ってもらわないとね。『希』ちゃん」
理緒は己のサポートAIに語りかける。
彼女はこれまで幾度か『熾盛』と呼ばれる戦術兵器のデータを習得できた猟兵の一人である。
ユーベルコードで生み出されるは体高5m級の戦術兵器。
張りぼてとは違う。
データから生み出された機体。
炉とコアだけはデータを習得した時に失われていたため、既存のもので置き換えるほかなかったが、精巧な戦術兵器が劇場に鎮座することになったのだ。
「よし。これでこっちに誘き寄せられるね」
理緒はいっちょ上がり、と鼻の頭を擦る。
そんな理緒が見たのは落ちていた台本を読み込んでいたサージェだった。。
「『戦いに際しては心に平和を』。確かに素敵な言葉です」
サージェは台本をめくっていく。
九人の若者たちによる群像劇。
恋もあっただろう。
友情もあっただろう。
そして、別離もあっただろう。
戦いの中にあって平和を求めるもの。
矛盾している。
けれど、思うのだ。戦いの中にあるからこそ、それを強く求めてしまう。それが人間というものなのだと。
「けれど、逆に言えば、平和を求めるためには戦いを肯定しているとも言える言葉ですよね。その過程で人が犠牲になるのならば……」
「犠牲になった人って、こと?」
平和を得るために。
その言葉が免罪符となって、どんなにか悍ましきことも肯定されてしまう。もしくは、己の欲望を肯定するために用いられた言葉であったかもしれない。
なら、とサージェは思うのだ。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は、そうしたものの犠牲者なのかもしれない。
だからこそ、平和というものを憎むのかもしれない。
「それで復讐ってことか。犠牲を忘れてしまった平和を享受する人が憎い。ここ、サクラミラージュなら、特にそう思うのかな」
「どんなに平和を生み出しても『平穏』を続けさせることができないってわけですね。禍福は糾える縄の如しというわけじゃあないですけれど」
交互にやってくる平和と戦い。
恒久的な平和などなく。
あるのは滅びへの道筋しかないというのに、安穏を貪るものたちに、怒りを覚えるのかも知れない。
けれど、と理緒は思うのだ。
「それは、いつかの誰かの犠牲を侮辱しているよ」
「ええ、理緒さん。この劇を私達で完成させましょう。喜劇でも悲劇でもなく。『戦いに際しては心に祈りを』」
「劇ならさっさと終わらせよう。できればハッピーエンドでね――!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
あ、はい。(正座)
練乳まだあと1本あるので、なんとか頑張ります。
えーと……。
なんだか難しいことになってますけど、
勇者的には平和は嬉しいですけど、永遠の平和とかないですよね。
まぁ、そんなのあったら|勇者《わたし》いらない子になっちゃいますし。
だって|勇者《わたし》って、平和をもたらすために戦う子ですからね!
ですから、
『戦いに際しては心に平和を』はとっても解りますし、
『平和に際しては心に争いを』は、そうなっちゃうんだろうなー、とは思いますねー。
なんてぼんやり思っていたら、演奏!(ぴょこん)
はーい!
そういうことなら【ハンガリー狂詩曲】で楽しくいきましょう!
ではステラさんもごいっしょにー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ルクス様ちょっと待っててくださいね
少しだけシリアスしますので
憂国學徒兵……
『戦いに際しては心に平和を』と叫び
平和を求めて戦い続けた方々
彼ら彼女らの戦った道の後に平和は訪れたのでしょう
世界は違えどこの世界は平和を享受している
ですが……
『平和に際しては心に争いを』
ええ、平和だからこそ争ってしまう
人の根底には『戦い』がインプットされているのだと私は思います
だからこそ何のために力を持つのか
平和は過程でしかなく
だからこそ尊く
故に私たちは|怪物《プロメテウス》にならない!
ルクス様お待たせしました出番です!
盛大に演奏でこの劇を
悲劇を喜劇へと演出くださいませ!
私は不肖ながら力添えといきましょう!
「ルクス様、ちょっと待っててくださいね」
何を、とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思わなかった。
代わりに、あ、はい、と正座した。
なんで正座したのかはわからない。まあ、あと一本練乳チューブが残っているので余裕っしょ! と思ってたいのかも知れない。
幸いにしてここは観劇の場、劇場である。
柔らかいクッションの座席がある。此処で待っておけと言われるのならば、待っておこうと思ったのだ。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はシリアスをしようと思っていた。
いや、考察しようとしていた、というのが正しいだろう。
この劇場に影朧『ルージュ・エ・ノワール』がやってくるという予知があった。何故、劇場に? と思わないでもない。
如何に無差別大規模テロルとは言え、此処をピンポイントに目指す理由はなんだ、と。
だが、ステラは理解する。
この劇場で行われようとしていた演目。
『憂国學徒兵』
その台本を手に取る。
『戦いに際しては心に平和を』
その台詞は幾度となく彼女が聞いてきた言葉だった。
平和を求めて戦い続けたもの達がいた。
嘗てありし、彼ら彼女らの戦った道のあとに平和は訪れたのか。
世界は違えど、この世界は、サクラミラージュは平和を享受している。
けれど、『ルージュ・エ・ノワール』は言ったのだ。
『平和に際しては心に争いを』、と。
「えええ、そうでしょうとも。平和だからこそ、その尊さを知らない。知り得ない。争いを知らぬから。どうしても壊してしまいたいと思ってしまう。人には破滅願望があり、衝動に身を任せる悪癖がある」
ステラは思うのだ。
人の根底にあるものを。
それはいかんともしがたいものであると。
どうあっても、人は『戦う』という行動が植え付けられているのではないか、と。
人の興りを振り返れば、当然なのかもしれない。
他の生命を喰らうことで生きるのが生命だというのならば、それは最も原始的な命令であったのかもしれない。
『戦え』、と。
「だからこそ、なんのために力を持つのか。平和は過程でしかなく、だからこそ尊く。故に私達は|怪物《プロメテウス》にならない!」
ステラは他の猟兵たちが作業を進める舞台の中心に立つ。
台本にあった台詞を読み上げていた。
ちょっと演技入っているのかなと、ルクスはそれを見ながら言う。。
「なんだか難しいですね。勇者的には平和は嬉しいですけれど、永遠の平和となかいですよね」
どうあっても、それは見果てぬ夢だ。
そんなことわかっている。
自分という存在がいらなくなることが最も良いことだとわかっているけれど、そんなことは在りえない。
いつの時代にも勇者は必要なのだ。
ならば、争いは尽きない。
恒久平和など文字でしかない。
だから、とルクスは言う。
「『戦いに際しては心に平和を』はとってもわかりますし、『平和に際しては心に争いを』は、そうなっちゃうんだろうなー、とは思いますね」
しかたのないことなのかもしれない。
こんなやるせない気持ちを抱えて、精算しながら人は生きていかねばならないのだろうか。
そんなの悲しすぎると思わなくもない。
アンニュイな気持ちがルクスの中にこみ上げてくる。
「ルクス様」
そんなルクスにステラが呼びかける。
「おまたせしました。出番です。盛大に演奏でこの劇を。悲劇を喜劇に|演出《かえて》くださいませ!」
「えっ!」
演奏! とルクスが座席から飛び立つ。
アンニュイはどこか飛び去っていった。楽器は、楽しい器。音楽は音を楽しむこと。
なら。
「私は不肖ながらお力添えといきましょう!」
「はーい! そういうことなら楽しくいきましょう! どんな悲劇だって!」
いつかは喜劇に変わる。
あの悲しみは、訪れるべき喜びのためにあるものだと知っているから。
それを示すためにルクスは悲しみに向き合う勇気を胸に抱くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄翅・静漓
『憂国學徒兵』……9人の若者達の話
誰かが書いたこの物語は、過去を顧みる人がいる証なのかしら
どんな内容なのか気になるから台本を調べたいわ
影朧がこの劇場を目指す理由もわかるかもしれない
影朧である彼女の痛みや憎しみ、そして悲しみ
それは想像以上に深いものだった
彼女の心は硬く閉ざされていて
理解しようとすることも苦痛のようだった
平和の礎となった者達……『憂国學徒兵』
――もしも此処にいたら、彼女にどう声を掛けるかしら
気になる場面や台詞があったら覚えておきましょう
演目『憂国學徒兵』。
それはわずかに表記が異なるものであった。
けれど、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、それを知っていただろう。
アスリートアースにて放映されていたというアニメーション作品のシリーズの名である。
最も、それは『憂国学徒兵』というシリーズだった。
此処がサクラミラージュだからこそ興り得た表記揺れであるのかはわからない。関係性があるのかもわからない。
けれど、九人の若者たちの話である。
似通っている。
台本が乱雑に投げ捨てられている。
無差別大規模テロルによって、此処で準備を勧めていた者たちが取るもの取らずに逃げ出したためであろう。
その台本を手にして静漓は視線を落とす。
「誰かが書いたこの物語は、過去を顧みる人がいる証なのかしら」
登場人物は九人。
いずれもが年若い少年少女と言っても良い年の頃。
鋼鉄の巨人を駆る彼らの群像劇。
そして、静漓は息を呑んだかもしれない。
そこに記されていた配役、その名を。
数字を冠された名。
己が知る名がいくつも並んでいた。
「先駆けの名だって、お前が言ったんだぜ」
「いつだってそうだ。僕は、俺は、間に合わない」
「なら、お前が間に合わないものは俺達が!」
並ぶ台詞。それが誠にあったことなのか、それともただ物語として描かれたものかはわからない。
けれど、そこには真実味があるように思えてならなかったのだ。
そして、これが影朧『ルージュ・エ・ノワール』の世界への復讐の動機なのか。
「『戦いに際しては心に平和を』。いつだって、そう思わなければ、人はいつまで立っても平和を実感できない。その言葉の意味も知らぬままに戦わなければならないなんて、そんなの悲しすぎる」
並ぶ言葉。
静漓は指でなぞっていく。
どんなに平和を求めても、その平和はすぐさま新たなる戦いによって消し飛ばされる。恒久的に続く平和など世には存在しないのだという現実が、眼の前に広がる絶望を、そこから見出すことができたかもしれない。
静漓は思う。
「彼女の痛みや憎しみ、そして悲しみ。それは想像以上だった」
心を固く鎧うようであった。
理解されることも苦痛であるというように彼女は怒りを燃やしていた。
そして、同時にこの世界にある平和を理解できないと嘆くようだった。
平和の礎は、過去の者たち。
平和という免罪符によって己たちの感情さえも踏みつけられた者たち。
「――もしも、此処にいたら」
思わずにはいられない。
『憂国學徒兵』たちは、彼女になんと声を掛けるだろうか。
手にした台本からは、読み取れない。静漓は、己の言葉で彼女に呼びかけなければならない。
彼女は多くを知ったのだ。
「だいじょうぶだって! 自信持ってこーぜ!」
振り返る。
そこには誰もいない。
視線を落とせば、台本にそんな台詞が並んでいた。
先駆けの名を持つ少女の台詞だった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
嫌がらせをします。
『え、どしたの奏者!?何があったの?』
クレイドル……敵はこちらを見ていない。
こちらを見ていないものに、言葉は届かない。
争いが成立していない。
で、あるからして、無視できないほどの嫌がらせをします。
相手が嫌がることをするのもまた争いの常道。
なにかこう、奴が破壊を考えられなくなるような何かをしたいです。
『ふむ、要するに……何か策出してって事だね!』
[機楽団]を召喚。
【メカニック】技術で劇場整備・台本読み取り・小道具作成
読み取った台本を元にBGMや効果音作成。奏者演奏練習。
ドロモス・コロスも劇場各所に配置。
『どうなるかわかんないけど、
何をするにしても演劇には適切なBGMが大事サ!』
「嫌がらせをします」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の言葉はどこか拗ねた子供を思わせるような声色だった。
少なくとも『クレイドル・ララバイ』はそう思えた。
いや、それは同時に驚きと共に迎えられるものでもあったのだ。
『え、どしたの奏者!? 何があったの?』
確かに驚きがある。
小枝子が此処まで拗ねたような感情を発露させるのは、彼にとって珍しいことだったからだ。ただ驚くだけでは意味がない。
ここは本腰を入れて彼女の内面を除かねばならない。
そして、その心にある言葉を発露させねば、彼女は自身の内面を知ることなく前に進むことになるだろう。
だからこそ『クレイドル・ララバイ』は尋ねたのだ。
「……敵は、こちらを見ていない」
『敵って、あの影朧のことかい?』
「そうだ。こちらを見ていないものに、言葉は届かない。争いが成立していない」
小枝子はまだ拗ねていた。
拗ねているという感情すらまだ理解していないのだろう。
情動が育っているのだと『クレイドル・ララバイ』には思えたことだろう。
とは言え、その根幹にあるのが戦いであるという前提なのが、なんとも不器用なものであるようにも思えた。
「で、あるからして、無視できないほどの嫌がらせをします。相手が嫌がることをするのもまた争いの常道」
『いやまあ、わからないでもないけれど……』
「何かこう、奴が破壊を考えられなくなるような何かをしたいです」
つまり、今は無策ということである。
こうしなければならない、という目標はあっても、それをどうすれば実行できて、達成できるのかがわからない、というところなのだろう。
『クレイドル・ララバイ』は苦笑する他なかった。
育っているのか育っていないのか。
まるでわからない。
『ふむ、要するに……何か策出してってことだね!』
『クレイドル・ララバイ』は、機楽団(セラ・コロス)を持って、小人型演奏メカニックマシンを召喚し、劇場の設備を整え、小道具を作成していく。
さらに転がっていた台本をも読み取っていくのだ。
「どうでありますか」
『ふむ。彼女がどうしてこの劇場を目指したのかはわからないけれど、これまでの彼女を見るに平和というものに対して、というよりは、それを甘受する者たちに対して怒りを覚えているのだろうね』
なら、と『クレイドル・ララバイ』は笑むようだった。
割りと簡単だ、と。
そう、影朧『ルージュ・エ・ノワール』は平和たるこの世界への復讐を考えている。
自らが平和の礎になったこと自体、間違いであったとさえも思っている。
なぜなら、平和を享受できていないから。
その実感さえ覚えられないままに、死んでしまったから。
だからこそ、今の平和を甘受する者たちを妬み、どうして自分がそうでないのかと嘆いているのだ。
『ならさ、彼女が無視できないのは平和を甘受している姿なんだよ。演劇なんて、最たるものじゃあないかな。文化とは、きっとそうした差異から生まれるものだろうからね。奏者、君は』
『クレイドル・ララバイ』は言う。
簡単なことだよ、と。
「自分は何をすればいいのでありますか」
『無視されたくない、というのならば、仏頂面はやめ給えよ。音楽とは音を楽しむことだ。楽器とは楽しいという感情の器だ。なら、平和とは』
こうした文化を心置きなく楽しむことだ。
何者にも利用されず、ただ一個人の感情として得ることのできる場。
それこそが平和を最も甘受することのできる手段だ。
誰とも争う必要がない。比べるべくもない。
なら、と彼は言う。
『奏者、君は心より演奏を楽しめばいい。そうすれば、彼女は君を無視できなくなる――』
大成功
🔵🔵🔵
綾倉・吉野
【POW】
(大方、死にたくないから戦に身を置き、結局礎だのなんだのと丸め込まれて誰かに命を「使い潰された」のでしょう。戦争ではよくある話です。そしてそれに納得できていないのでせめて己の命に、犠牲に見合った結果が欲しい。……問題はその「平和」をよく知らぬがゆえに、求める「結果」が妄そ…理想に過ぎるという点でしょうね。大方、平和になれば何もかも救われる筈、故にこれは「本物の平和」ではない、とでも思っているのでしょう)
マステマ殿…珍しく長文ですね。やっぱり何か思うところが
(いいから手を動かすのです吉野。……ですが「そんなもの」の為に多くの兵士は己の命を賭けた、その侮辱を、赦すつもりはありませんが)
生命あるものは死という終着点にたどり着くために生きる者である。
死とは逃れ得ぬ終点。
そこに至るために生まれてきたというのならば、なんという矛盾であろうか。しかし、それが生命の運命なのだ。
死から逃れ得る生命はいまだかつてなく。
どうしようもない恐怖が、その身に襲い来る。
『大方、礎だの何だのと丸め込まれて誰かに生命を「使い潰された」のでしょう』
綾倉・吉野(桜の精の學徒兵・f28002)に協力する悪魔『マステマ』の言葉に吉野は首を傾げる。
『よくある話です。戦争においては、特別に。そして、それは特別でもなんでもない。茶飯事』
人の歴史は争いの積み重ねである。
争わないことなどない。
人間という知性は、他者の存在を己とは異なる者だと正しく認識する。
正しく認識しすぎるがゆえに、他者との違いに懊悩する生き物でもある。
何故、理解しない。
何故、理解してもらえない。
何故、こんなにも違うのか。
そうした懊悩は、いつしか人の心を先鋭化させていく。
『生命にとって己の存在を維持することは他の何物にも代えがたいもの。ですが、戦争においては、他者のために生命を捨てなければならない。そう教えられて戦地に向かわされるのですから。でも、せめて』
納得しきれるものではない。
なら、己の生命に見合った代価が、結果が欲しい。
無駄ではなかったと知りたいのだ。
『平和の意味すら知らぬままに、そうした結果を求めるから、理解できない。自分が求めたものの大きさも、形も、色も、意味も知らないから』
「マステマ殿、やはり何か思うところが」
『いいから手を動かすのです吉野』
『マステマ』の言葉に吉野は、劇場の舞台の設営を手伝っていた手を動かし始める。
彼女の言葉に手が止まっていた。
どうにも今回の『マステマ』の言動は吉野の知るそれではないように思えたのだ。
何をそこまで憤っているのだろうか、と彼女は思ったかも知れない。
けれど、彼女は助言してくれる。
手を動かせ、と。
なら、それが正しいことなのだろう。
わかっている。けれど、問いかけずにはいられなかったのだ。
「ですが、それでもサクラミラージュは他世界と比べれば平和と言えるものでありましょう?」
『だから、です。平和と謳いながら、影朧が滲み出す。何故、影朧は世界への復讐を抱いて生まれるのか。真に平和なのならば、己が抱えた感情すらないはず。なのに』
救われていない。
少なくとも平和に影朧たちは救われてなどいないのだ。
なら、これが『偽りの平和』だと宣うのもまた理解できるところであっただろう。
『彼女は、これをそんなものと言いました。ですが、そんなもののために多くの兵士たちは己の生命を掛けたのです』
「それは」
侮辱と呼べるものであっただろう。
名もなき兵士たちを思う。死にたくはなかっただろう。殺したいとも思わなかっただろう。
何故、こんな争いばかりが続くのかもわからない。
けれど、やらねばならないという矛盾。
それでも、と彼らは生命を擲ったのだ。
なら、その侮辱は許せないものだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
そう今回上映するのは鮫婦人!
ある日突然に陸上に進出し始めたホオジロザメ人たち!
鮫に夫を殺された未亡人は許されぬ恋と知りつつも夫を殺した鮫に惹かれていく
翻って鮫夫も果たしてこの戦争に本当に正義はあるのか自分の行いは間違っていたのではないかと悩みつつ彼女に惹かれていく
ジャンルはラブ&ギャグ&コメディ&哲学&政治!
ぇー?ダメ?そっかー
●神前公演UC使用版
であれば見せよう彼女の望んだかもしれないものを
あるいは壊したかったもの?
ここにこの台本通りに形作った彼・彼女らの虚構の世界を構築して彼女を待ってよう!
彼女が来るまでには1,2幕くらいは見れるかなー?
もぐもぐごくごくごく
劇場にいつのまにかスクリーンが設置されていた。
言うまでもないことであるが、もとより設置されていたものではない。
犯人は、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)。
「今回上映するのは鮫婦人!」
彼はごきげんにノリノリであった。
都合の良いことに猟兵が先んじて劇場に補充していたコーラとポップコーンがあったので、これをつまみにしながらスクリーンに映し出される謎の映像を楽しんでいた。
ポップコーンを口に運んでコーラで流し込む。
無意識な作業である。
慣れたもの、とも言える。
「はー、ある日突然陸上にしんしつされたホオジロザメ人たち! サメに夫を殺された未亡人は許されぬ恋と知りつつも夫を殺したサメに惹かれていく!」
いや、まるでストーリーがわかるよなわからんような、微妙なラインである。
え、ホオジロザメ人?
なにそれ? 初耳設定である。
いくらなんでも荒唐無稽すぎる。
「翻ってもサメ夫も果たしてこの戦争に本当に正義はあるのか、自分の行いは間違っていたのではないかと悩みつつ彼女に惹かれていくんだよね~」
テンプレだけれど、そこがまた味わい深いんだこれが! とロニはうんうんと頷く。
いやまあ、ジャンルとしてはラブ&ギャグ&コメディ&哲学&政治である。
どういうジャンルなのだろうか。
ジャンル分けしているつもりで、ただのごった煮の闇鍋状態なのではないだろうか。
脚本家がいるっていうのならば、これは相当に酒の力を借りたに違いないものであろう。シラフで書ける脚本ではない。
「ふいー、しっかり堪能したっと。とは言っても、うーん」
ロニは悩んでいた。
悩むのは性に合わないし、キャラでもないんでもない。
けれど、わからない。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は壊したいだけだ。
この世界、サクラミラージュの平和を壊したいだけなのだ。自分の存在意義が此処にはないから壊したいだけで、彼女自身も彼女が望んだものがなんであったのかを理解できなかったのだ。
いや、できなくなっているというのが正しいのかもしれない。
落ちていた『憂国學徒兵』の台本を見やる。
見てみても、多分これが彼女の心に訴えるところのものはないだろう。
再現してみても、まあ、なんというか、『ありきたり』と言えるものであったかもしれない。
「いつものって感じ! でも、この劇場を選んだってことはなんか意味があるってことなんだろうねーわかんないけど!」
ロニは変わらずポップコーンとコーラを流し込む。
九人の若者たちによる群像劇。
戦いの中に芽生える感情。
それでも、そんな感情を殺すのが戦争というものだ。
「ふーん。でもまあ、彼女には関係ないことなのかな? 関係できるところまですら生きていられなかったのかもしれないね」
なら、この演目は彼女にとって知り得ない物語であったとも言える。
そして、その名前すらでてこない。
端役なのだろう。
だからこそ、なのかもしれない。
この平和を偽りと誹り、破壊しようとするのは。
その意味すら知ることのできぬままに散った生命故に、尊さを理解できない。
己が理解できぬものは、排斥する。
ある意味正しいのだろう。
けれど、正しくもない。
ロニは、スクリーンに映し出される映像を見やり、ポップコーンとコーラを流し込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ルージュ・エ・ノワール』
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POW : エクレール・アンコロール
【爪先に無色のオーラ防御を纏った飛び蹴り】による素早い一撃を放つ。また、【ベルトの力で空気抵抗を減らす】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD : オラージュ・ノワール
【強大な力を抑えている不可視のヴェール】を脱ぎ、【黒いオーラを纏ったアンリミテッドモード】に変身する。武器「【人型サイズのBX-Bダークネスウイング】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ : ミーティアライト・ルージュ
【赤いオーラを放出、当たり判定最大化した拳】が命中した対象を爆破し、更に互いを【勝負がつくまで絶対に切れないオーラの鎖】で繋ぐ。
イラスト:えんご
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠サージェ・ライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
劇場に現れたるは赤き熾火に生み出された影。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』であった。
彼女は舞台を見やる。猟兵達によって完成された舞台。
張りぼての鋼鉄の巨人を見上げ、彼女は何も言わなかった。言う言葉を持ち得なかったのかも知れない。
「結局、こんな見世物にさえ、堕ちる。あの日、あの時、あの場所で、掛けた生命すらも、虚構になる」
あったかもしれないことに墜する。
もしも、自分に圧倒的な力があったのならば。
物語の中のような、群像劇でありながら一線を画する『悪魔』めいた力を持ち得たのならば。
こんな物語も受け入れることができたのかもしれない。
けれど、己は|『超越者』《ハイランダー》ではない。
物語においては端役もいいところだ。
名もなき生命。
死する理由さえも曖昧模糊。
「物語が見せる希望なんていらない。如何に人に善性があろうとも、隠れたる悪性が必ず世界を壊す。在りもしない平和というものを求めて、今あるものさえ壊していく。力ある者の言葉に踊らされ、それが正しいか正しくないかも判別できぬ茹だった頭のままに熱狂によって支配されていく」
そんなものに正しさなどない。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は、己を迎え撃つ仕掛けを前にして立つ。
腰に備わったベルト。
そのバックルに備わったカートリッジを押し込む。
それが戦いの合図だった。避けようのない戦い。戦わなければならない。どんなに心に傷負うものであったとしても、それが世界を滅すというのならば、猟兵は戦わねばならないのだ。
「『平和に際しては心に争いを』「目の前の敵を滅ぼせ』。私は今、此処に居る――!」
朱鷺透・小枝子
『きたね!さぁ奏者、開演といこうか!!』
……此処を、演奏会場とする!!
展開したドロモス・コロス達でサイキックシールド【オーラ防御】
『ルージュ・エ・ノワール』の攻撃から自身と劇場を守りつつ、
[舞台増上]発動。
【楽器演奏】クレイドルが周囲、演劇の内容に合わせ曲を作成、
自分とドロモス達の演奏で絶えずBGM変化。
演劇の為の演奏、故に演劇を壊すような事は演奏妨害行為。
よく見てよく考えて、相対する者たちと踊れ。
『ルージュ』どうあがいても、貴様もこの劇場の演者の一人だ。
暴れ目を背ける事は、壊す事はさせない…!
これが自分を見もしなかった貴様への、自分からの嫌がらせだ……!!
精々楽しめ。自分も楽しんでやる…!!
弱きオブリビオン。
それが影朧である。しかしながら、放置すれば世界を滅ぼすのは言うまでもないことであった。
故に猟兵は戦う。
眼の前の存在と戦う。
心に傷を持つのだとしても、戦ってこれを打倒さねばならない。だが、影朧『ルージュ・エ・ノワール』は猟兵を見ない。
この場、即ち演目『憂国學徒兵』が演ぜられるところの劇場、その舞台を見ていた。
9つの鋼鉄の巨人。
その視線はどこか憧れにも似た感情が乗るものであった。
「……私は、此処にいる。名もなきモノではない。私は、生きて、いる!!」
咆哮が轟く。
だが、それを前にして朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)と『クレイドル・ララバイ』は待ち受けていたと言わんばかりに、そのユーベルコードを発露する。
『来たね! さぁ奏者、開演と行こうか!!』
「……此処を、演奏会場とする!!」
きらめくユーベルコード。
舞台増上(ミュージカルステージ)たる設備が劇場内部に立ち並ぶ。
鳴り響くは音。
否、旋律である。展開された小人型演奏ユニットがオーケストラの楽団めいた動きで持って楽器を奏でる。
響くは壮大なる演奏。
台本に記されていた展開をなぞるように響くが『ルージュ・エ・ノワール』は、頭を振る。
「なんだこれは。私は、こんな……!」
彼女の目が血走っていく。
無視できない。
否応なしに音色が彼女の耳朶を打つ。
そう、これが小枝子のユーベルコード。
この範囲にある者の楽器演奏と歌唱は強化され、味方は気力体力共に充実していく。
だが、敵たる『ルージュ・エ・ノワール』は敵対行為を働けば弱体化される。
即ち、この場合においての演奏妨害とは即ち。
「貴様がこの演劇を中断させようとするのならば、それ自体が妨害行為。弱体化は免れないぞ!」
「だったらなんだ! こんな! こんな軟弱な者のために!!」
「よく見て、良く考えて、相対する者たちと踊れ」
「何を!」
そう、踊ればいいのだ。
踊るだけで、この演目は成立する。妨害とも呼べぬ。だが、『ルージュ・エ・ノワール』はそれを否定するだろう。
文化とは即ち、平和に花咲くもの。
ならば、彼女の存在はそれ自体が文化の否定者。
「『ルージュ・エ・ノワール』、どうあがいても、貴様もこの劇場の演者の一人だ。暴れ、目を背けることは、壊すことはさせない……!」
「貴様! この私に、こんな!」
弱体化した体がきしむ。
もともと影朧。弱いオブリビオンである彼女にとって、世界への復讐のみが原動力。なのに、このような場において小枝子は演者として彼女を見ていた。
敵としてすら見ていなかったのだ。
「これが自分を見もしなかった貴様への、自分からの嫌がらせだ……!! せいぜい楽しめ。自分も」
小枝子は魔楽機を変形させ、爪弾く。
『クレイドル・ララバイ』は言った。
楽しめばいいのだと。
平和に最も近しい行為はこれだと、伝えられたのだ。
ならばこそ、小枝子は奏でる。
本当にこの気持ちがそうなのか、まだわからない。けれど。
「楽しんでやる……!!」
見ろ! 見ろ!!
これが文化の極み。平和というものが齎す果実そのもの。
人に営みの極地だというように小枝子は弦を弾くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
●声を
平和を守らねば
何を根拠にそう言えるのでしょうか
当たり前だと
与えられて当然だと
奪われるのは不当だと
だから守るのだと
なら、それを下さいよ
当たり前を分けて頂戴
夜は安心して眠れて
朝には元気になって
きっとまた起きられる
そんな当たり前を味わったことがないと、知らないのだと泣いていた彼女に
人間扱いされなかったいのちに
こんなことしか繰り返せない影朧に
ずっと悪夢の中
無かったことにされる存在
そんな仕打ちに耐え続けること以外、出来ることがあるのだと唆す者が居て
悪しき企みの礎として消費する
血で血を洗い
涙で涙を沈め
苦しみで苦しみを埋めようとする
なら、わたしはわたしのやり方で
そんな世界に精一杯抵抗しましょう
きっと触れられるだけで悲鳴を上げるむき出しの魂
それでもわたしは報せなければいけない
だれも気にかけない廃棄物などではないと
深すぎた傷を癒す安寧を
そうして元気になったなら
いつか特上のでざあとをあげたいと
そこにあなたのための場所もあるのだと
傍で、触れて、一欠片のぬくもりを
嘗て、わたしにそうしてくれた人がいたように
復讐していいのだという声があった。
世界への復讐。
平和を知らず、その意味すら知らず。ただ無為に失われていく生命があった。
礎となることで心の慰めになると思っているのならば、それは生者の特権であったことだろう。失われた生命に意味をもたせようとする。
それを決めるのは、その生命を全うしたものだけである。
なのに、人は死せる者の心の内を代弁したがる。
誰もがそうだと言葉を大きく強くしていく。
そして、いつしかすり替わるのだ。
『それ』が自分の言葉ではなく、最早言葉を紡ぐことのできぬ死者の言葉であるという信念に。
「平和を守らねば。何を根拠にそう言えるのでしょうか」
リア・アストロロジー(M2-Astrology・f35069)は思う。
それが当たり前だと。
平和こそが守られるべきものであり、平穏こそが人に与えられた特権の一つであるという。
何を根拠にそう言うのか。
当たり前のことだと誰かは言うだろう。
与えられて当然ものであると。
奪われるのは不当であり、奪う者こそ糾弾されるべいものであると。
そんな不当から守らねばならぬのが平和というものであると。
「なら、それをくださいよ。当たり前を分けて頂戴」
リアは思う。
生命は、平等に不平等だ。
凸凹で、欠けている。
誰しもがそうだ。
夜、眠れぬ者がいる。
朝、鬱屈たる思いで目覚めを覚えるものがいる。
陽の明るさこそが己を焼くものだと思う者がいる。
「夜は安心して眠れて。朝は元気になって。きっとまた起きられる。そんな当たり前を味わったことがない。知らないとないていた彼女に、人間扱いさえされなかったいのちに、こんなことしか繰り返さない影朧に」
リアは誰かが与えて欲しいと思った。
何者でもない貴方に、誰かが。
そう願う。
けれど、それは悪夢の続きでしかない。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は、サクラミラージュの平和を偽りだと言う。
彼女のまた平和を知らぬものだ。
そして、その散った生命すら美化されてしまう。どんな思いを抱えていたのかも、その最後が如何なるものであったのかも知られずに、ただ、幾ばくかの美徳の前に消費されていく事象でしかなかったのだ。
故に、世界を憎む。
こんな世界など、偽りの平和に満ちた世界など、と。
リアは迫る赤い拳を見上げる。
振り降ろされる『ルージュ・エ・ノワール』のユーベルコード。
その輝きは鉄槌にも似ていた。
自分を押しつぶすもの。悲しみと憎しみに守れた拳は、最早護るためではない。
「いらない、しらない、そんな感情などとうに棄ててきた!」
振り降ろされた一撃をリアは受け止める。
体躯から血潮が噴出する。
きっと人は血で血を洗うことでしか、進むことができない。涙で涙を鎮めて見なかったことにしかできない。
苦しみで苦しみを埋めて、もうだいじょうぶだと乾いた笑いを浮かべるしかない。
そんなものだ。
世界というのは、いつだってこんなにも美しいのに残酷さを突きつける。
それが罪深き刃だというのならば、リアの瞳はユーベルコードに輝く。
「なら、わたしはわたしのやり方で、そんな世界に精一杯抵抗しましょう」
受け止めた拳から伝わるのは、むき出しの魂だった。
痛みと苦しみにもがきながらも生きた魂だ。
もう傷つく必要なんてないのに、それでも己が抱いた世界への復讐に焼き付いている。
それでもとリアは思った。
報せなければならない。
影朧は、誰も気にかけない廃棄物ではないと。
「星かげさやかに(ホシカゲサヤカニ)……深すぎた傷を癒やす安寧を。そうして元気になったら、いつか特上のでざあとをあげたい。あなたのための場所は、きっとある」
傷ついても、傷ついても、人は生きていかないといけないのだ。
己の胸の鼓動が打ち付けている。
生きろ、とではなく。
生きて、と願うものがあったからこそ、リアは世界に復讐しない。
どんなに此処が地獄めいた偽りの平和だとしても、
多くの生命を踏みしめているのだとしても。
それでも、己の胸には一欠片のぬくもりがある。
かつて自分にそうしてくれた人がいたように。
「夜があなたを呑み込んでしまわないように……」
星降る夜が劇場の天幕から赤い拳を消滅させ、リアはささやかな願いを『ルージュ・エ・ノワール』へと届けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
アドリブ歓迎
ひとつの悪性が世界を壊すというのなら、多くの善性がそれを防ぐデショー!
そして此度。ワタシたち猟兵がアナタという影朧を止めるのであります!
いざ、納得のいく結末を!
ルージュ・エ・ノワールに向けるUCは、演目に合わせたこの力!
「骸式兵装展開、争の番!」
鋼鉄の巨人の如し、『鉤爪の男』を模した人型兵器に変身して戦いマース!
アナタの想いの中にある姿が、敵なのか味方なのか。
いずれにせよ、再び鋼の騎士と戦う好機をご用意しマース!
高速飛翔で飛び蹴りを回避して、鉤爪から放出する超電撃と真空波で攻撃を行いマース!
超弩級の闘争を求めし猟書家の力……それすらも平和のために活用することができるのであります!
「ぬくもりが、私の胸の内に忘れれていたものを想起させるのだとしても」
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は慟哭する。
何処まで言っても遅かったのだと。
手遅れだったのだと。
いかに胸に去来するものが、嘗て与えられたであろう温かさを感じさせるものであっても、偽りの平和があるかぎり、己の胸に渦巻くは炎であると言うように、復讐という名の熾火は今も尚、煌々と立ち上る。
人の心には悪性と善性が内在する。
どんな心にもそれがある。
故に、それを止める手立てはなかったのかもしれない。だが、そのぬくもりこそが人の前世をまた励起させるのは当然であった。
故に影朧『ルージュ・エ・ノワール』は呻くようにして身をかがめる。
腰に備わったベルトのバックルのカートリッジから流入した何かが彼女の体躯から赤いオーラを噴出させる。
「壊す! この世界を、偽りの平和を! 私は!!」
「一つの悪性が世界を壊すというのなら、多くの善性がそれを防ぐデショー!」
劇場の天井まで高く飛び上がった『ルージュ・エ・ノワール』を見上げるのは、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)であった。
「そして、此度。ワタシたち猟兵がアナタという影朧を止めるのであります!」
いざ、とバルタンは、瞳をユーベルコードに輝かせる。
演目。
『憂国學徒兵』――それは鋼鉄の巨人闊歩する戦場の群像劇。
セットでしかない張りぼて。
「骸式兵装展開、争の番!」
等身大人型キャバリアへと変貌したバルタンが飛ぶ。
『ルージュ・エ・ノワール』の足の爪先から噴出した赤いオーラが螺旋を描きながら迫る。
「退きなさいっ! 私は、この偽りを壊す者。その権利を与えられた者!」
激突する赤いオーラとバルタンの体躯。
それは、火花を散らすように周囲に破壊をもたらしていくだろう。
「アナタの想いの中にある姿が、敵なのか味方なのか。今、アナタの瞳に映るものは全ててきなのデショウ。きっと、世界への復讐という炎によって他の何も見えなくなっているのデショウ」
それは、とバルタンは思う。
悲しいことだ。
世界は敵ではない。
悲しさを生み出すものであったとしても、そこには必ず喜びもまたあるのだ。
きっとそうなのだ。
そうでなければ、こんなにも世界は残酷なまでに美しくはないのだ。
交錯するバルタンと『ルージュ・エ・ノワール』
赤いオーラがバルタンの体躯へと深い傷跡を刻み込む。
だが、それっでもバルタンは瞳をユーベルコードに輝かせる。
「超弩級の闘争を求めし猟書家の力……それすらも平和のために活用することができるのであります!」
掲げた鉤爪から放たれるは超電撃と真空波。
その一撃が『ルージュ・エ・ノワール』を吹き飛ばす。
この演目に何故彼女が惹かれるのかはわからない。けれど、バルタンは思うのだ。
世界への復讐ではなく、彼女自身が惹かれてやってきた意味を。
復讐よりも優先されるべきものがあったはずなのだ。
それを。
「思い出すのデース。悲劇なんて蹴っ飛ばせると。そして」
笑うのです、とバルタンは、手本を見せるように笑うのだ。
「ヒャッハ――!!」
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
過去の悲劇を忘れ、美化し、茶化し、娯楽に変える
それを腹ただしいと思うのは、正直分からんでもない
だが、それでも良いじゃないか
人はそうやって前を向いてきた。よりよい世界を、明日を勝ち取る為の原動力にしてきた
そう言えるのは、特別な力を持っているから?
確かに俺は超弩級戦力だとか呼ばれて、少々特別扱いもされるけれど
だが、俺に出来るのは些細な事だ
『ルージュ・エ・ノワール』……お前と同じ、群像劇の中の一人でしかないよ
利剣を抜いて、澪式・捌の型【炎舞】の構え
敵の攻撃を真正面から受け止め、受け流して切り返し。ただ単純に、それだけを繰り返す
それでも止まれないのなら、剣を持って打倒させてもらおうか
平和の意味を考える。
争いがないことか。
それとも何不自由なく生きることのできることか。
いずれにしても、その礎というものが存在する。今という現実を作り上げているのは、過去である。いくつもの過去を踏みしめて生きている。
その上に立つ自覚さえ人にはないだろう。
多くの屍の上に立っている。
考えても詮無きことなのかもしれない。
けれど、それは今生きている者たちの思考でしかない。
踏みつけられてきたもの達は、そうではないだろう。
もしも、影朧のように過去より滲み出る者がいるのだとしたら、過去の悲劇を忘れ、美化し、茶化し、時には娯楽へと変えて見せるのが人間というものだ。
腹立たしいと怒りを覚える過去だっていてもおかしくはない。
「正直、わからんでもない」
雷撃と真空波によって打ちのめされた影朧『ルージュ・エ・ノワール』が立ち上がる姿を夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は見た。
「だが、それで良いじゃないか」
「理解と不理解をたばかるのならば、それは無理解よりも悍ましきものだ! 理解者の不利をした偽善者め!」
その言葉は刃のようだった。
だが、鏡介は一歩も引かなかった。
「人はそうやって前を向いてきた。より良い世界を。明日を勝ち取るための原動力にしてきた」
「それは、お前たちが特別だからだ。言うなれば」
主役であるからだ。
端役の心の内を理解しようなど、烏滸がましいにも程があると『ルージュ・エ・ノワール』は赤いオーラを噴出させながら飛ぶ。
見下ろすは鑑介。
砕かねばならない。世界の主役に選ばれたものを打ち砕かねば、埋もれていった端役の代弁を持って、そうしなければならない。
螺旋描く赤いオーラと共に『ルージュ・エ・ノワール』の襲撃が鏡介へと迫る。
まるで鉄槌のようだった。
「その傲慢さこそが! 世界へ復讐する意味だ!」
確かに、己の言葉は傲慢極まるものだったのだろう。
超弩級戦力。
それが猟兵だ。世界に選ばれた戦士。
特別扱いされることも多々あるだろう。だが、鏡介は思う。
「俺にできるのは些細な事だ」
「黙れ! 貴様の言葉は!!」
己を端役以下にするものだった。蹴り込まれた一撃を鏡介は手にした神刀でもって受け止める。
火花が散る。
赤いオーラが刀身をきしませている。
受け流すことしかできない。
破壊の衝撃が鏡介の頬を打ち据えた。
「『ルージュ・エ・ノワール』……お前と同じ俺も群像劇の一人でしかないよ」
鏡介は剛の太刀で一撃を受け止め、柔の太刀でもって蹴撃を受け流す。
どんなに苛烈なる攻撃であっても、澪式・捌の型【炎舞】(レイシキ・ハチノカタ・エンブ)は受け止め続ける。
「黙れ! 私は、この平和を壊して……世界そのものを!」
「争い満ちる惨禍に引きずり込みたいか。それは本当にお前の望みか。それで復讐は果たされるのか」
鏡介は、手にした太刀を握りしめる。
世界を憎む心は本物だ。けれど、と鏡介は思うのだ。
それだけではなかっただろうと。
振るう一閃が『ルージュ・エ・ノワール』の胴を打ち据えた――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
え、えっと。
うーん。練乳一本じゃ足りなかったですね。
ステラさんまた語りにはいっちゃってますし……。
って、平和のために犠牲になった、とか、平和までの過程、とか聞こえますね。
そんなの普通には忘れられて当たり前ですのに。
犠牲になった人も物も、ごくごく近しい人しか覚えてないですよ。
勇者だって、どんな凄いことをしたって、英雄譚、とか言われて、
美味しいとこしか話に残らないんです。
生きている間なんてむしろ、偉い人たちにめんどくさがられるんです。
だから、勇者のその後、とかみんな知らないんですよ。
犠牲になってしまったみなさまには、救えなくて申し訳なく思いますけど、
忘れられるって意味では、勇者も一般の人も変わらないんです。
って、ちょ!?
練乳なくてしかたないからシリアスしてましたのに!?
たしかにちょっと息苦しかったですけども!
そんなわけで、猟兵も勇者も、世界を救う存在です。
できれば個も救いたいですけど、優先順位は世界です。
あなたのことはわたしが覚えておきますから、
心置きなく骸の海に還ってください!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|悪性の赤き熾火とそれが生み出した黒き影《ルージュ・エ・ノワール》
それが貴女様の由来なのでしょう
ですが、それすらも
|善性の青き熾火《かの『悪魔』と呼ばれた方》とぶつかる事がなければ
影もできず|怪物《プロメテウス》も生まれる事はなかったのかもしれません
『戦いに際しては心に平和を』という言葉が神格化され
『その過程』は後世に残りすらしない
ええ、どんなに沢山の悲劇があったとて
ひとつの救世の喜劇しか綴られないように
貴女様にあるのは憤怒、失望……あるいは羨望?
せめてその想いを受け止めてみせましょう
この勇者が!(ぐいっと前に出して盾)
いえ、そろそろ窒息死するんじゃないかなって親心がですね?
まぁまぁ
ここはひとつ勇者に見せ場をお譲りしますので
ではメイド吶喊します
『ニゲル・プラティヌム』を両手に
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます
猟兵は世界を救うけれども
個人は救わない
『ルージュ・エ・ノワール』という個は救えない
ですから、またひとつ悲劇を綴りましょう
これは平和の礎となった者を平和の為に倒す物語
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は練乳チューブ一本では足りなかったな、と今更ながらに後悔した。
シリアスアレルギー。
こんな状況であれば、むしろ、自分の方がイレギュラーなんじゃあないかとルクスは思った。なので、騒ぎ立てるよりもやり過ごすことを選んだのだ。
それに、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)のあの神妙な顔つきを見ればわかる。
シリアスモードに突入したときの顔だった。
こういう時は練乳のことを考えよう。
練乳が一本。練乳が二本……月末の請求書が怖い。
「|悪性の赤き熾火とそれが生み出した黒き影《ルージュ・エ・ノワール》、それが貴女様の由来なのでしょう。ですが」
「その名前に意味なんてない。私は壊すだけだ。世界を、端役の死など只の礎としか認識しない、その傲慢を!」
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は飛ぶ。
何度でも立ち上がる。
何度でも宙に飛び立つ。
噴出する赤いオーラは、猟兵たちを下し、世界そのものを破壊するために、その身から噴出する
しかし、彼女にそれはできないだろう。
世界を破壊するには、あまりにも影朧たる彼女の力は弱々しい。
「それすらも、|善性の青き熾火《かの『悪魔』と呼ばれた方》とぶつかることがなければ、影もできず|怪物《プロメテウス》も生まれることもなかったのかもしれません」
ステラは想起する。
強すぎる光は闇を色濃くする。
いつだってそうだ。
人の心に悪性と善性が内在するのならば、その衝突によって生まれた火花が世界に映し出される影もまた存在するのだ。
光輝かしきだけであったのならば世界は只美しいだけであっただろう。
残酷ささえなかったはずだ。
「『戦いに際しては心に平和を』」
「その言葉は、戦乱を呼ぶだけの言葉だ! それを!」
迫る赤き螺旋。
その蹴撃の一撃をステラは受け止める。
身が削れる。
痛みが走る。
けれど、それでもステラは前を見た。
「神格化された言葉は、『その過程』さえも吹き飛ばす。後世に残ることさえ許さない。ええ、どんなにたくさんの悲劇があったとて、一つの救世の喜劇の前に忘却の彼方に追いやられる」
「だから、私が楔を打ち込む。たとえ、この身が砕けても。世界という敵に私という存在を」
「でも、そんなの普通は忘れられて当たり前ですのに」
ルクスはステラの背から言う。
それは芋蓋もない言葉だった。
日に一体何人の生命が失われるだろうか。
そのいずれをも記憶している者などいないだろう。全ての人の死を悼むことのできる者などいないのだ。
死せる者がいたとしても、それを覚えているのはごくごく近しい者たちばかりだ。
「勇者だってそうです。どんなすごいことをしたって、英雄譚とか言われて美味しいところしか話にならないんです。いいところ取りですよ。どれだけ道筋が苦しくて、険しくて、長かったのかなんて、語られないんです」
だから、とルクスは言う。
華やかで輝かしき英雄の物語は、絶頂で終わりを迎える。
その後のことなんて語られない。
語る理由もない。
「主役の語る言葉など」
「ですよね。でも、勇者も主役も、英雄も、端役も、名もなき兵士も。忘れられるって意味では、変わらないんですよ」
「それが貴女様に憤怒と失望、そして羨望を生み出したのならば、受け止めてみせましょう。この勇者が!」
「えっ!?」
ステラは己の背中にいたルクスの体を全面に押し出す。
もう限界だったのだ。
ルクスは突然、全面に押し出されて目をパチクリしていた。
「練乳なくて仕方なくシリアスしてましたのに!?」
「いえ、そろそろ窒息死するんじゃないかなって親心がですね?」
「こんな逼迫した状況で前に出されても! 確かに息苦しかったですけども!」
赤きオーラの螺旋がルクスを削る。
痛みが走り、血潮が噴出する。
それでも、ルクスの瞳はユーベルコードに輝く。
「ごめんなさい。あなたのことはわたしが覚えておきますから」
いつだってそうだ。
世界は忘れることで前に進む。
猟兵である以上、世界を守らねばならない。個の全てを救いたいと思うのは、人の心があるからだろう。
けれど、それが叶わないと知るのもまた人である。
故にルクスは、叫ぶ。
この世界を元ある姿に、と。
「世界調律(セカイチョウリツ)! 心置きなく骸の海に還ってください!」
巨大音叉が掲げられ、迫る蹴撃を弾き返す。
「ステラさん!」
「はい……猟兵は世界を救えども、個人を救うことはない。『ルージュ・エ・ノワール』という個は救えない。ですから、また一つ悲劇を綴りましょう」
音叉の衝撃と共にステラが踏み込む。
きっと、何度も繰り返されるのだろう。
こんなことが何回も。
だからこそ、ステラはユーベルコード輝く瞳で己が罪を自覚する。
これは、きっと。
平和の礎となった者を、平和の為に倒す物語なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
綾倉・吉野
(……吉野。私が出ます。少し眠って居なさい)
あ、え?マステマど…の……?ぐぅ。
(※以下吉野の体を使ったマステマ)
……それでは、この悪魔「マステマ」が相手をしましょう
退魔刀を抜き、軽機関銃での牽制射撃から踏み込んでの一閃、
単なる攻撃には機関銃や退魔刀での武器受けで対応を。行動速度は二倍となってますので、相手の跳び蹴りは初動、つまり飛び上がろうとする動き自体を弾幕や一閃で潰しにかかりましょう。UC相手ですので使える手は使います。これは「そういう戦い」でしょう?
これでも元軍人、それも後ろ暗い仕事中心の特務隊の隊長という立場でしたから。
それと、やるのなら徹底的にですよ。…あの者は少し不快でしたので
吹き荒ぶは赤きオーラ。
砕け散りながらも、しかしベルトのバックルより流入する力によって影朧『ルージュ・エ・ノワール』は立ち上がる。
五体はすでに傷だらけである。
だがしかし、彼女は戦いをやめない。
この劇場の中にあってなお、彼女は破壊を目指した。
世界への復讐。
それだけが彼女の身に流れるたった一つの理由だった。
「平和のために礎となることを誉れのように語る。美化する。生命失うことを、賛辞する。そんなことのために生まれた生命など何一つないというのに。それなのに、世界は、この世界は平和を示す。偽りであると知りながら、それを受け入れる愚かささえも、私は!」
彼女の叫びを聞き、綾倉・吉野(桜の精の學徒兵・f28002)に協力する悪魔『マステマ』は、無言のまま彼女の体を借り受け、一歩を踏み出す。
吉野が彼女に何か言う暇もなかった。
彼女を眠らせたのは、『マステマ』の如何なる思惑からであっただろうか。
「……それでは、この悪魔『マステマ』が相手をしましょう」
抜刀された退魔刀。
手にした軽機関銃から放たれる弾丸を『ルージュ・エ・ノワール』は飛び退り躱す。
そして、壁を蹴って跳躍する。
見上げた先にあるのは赤いオーラだった。
螺旋を描くようにして爪先から噴出するそれは、軽機関銃の弾丸さえも弾き飛ばしながら吉野……『マステマ』へと迫る。
「どんな者が相手であろうとも!」
変わらない。
壊すことに代わりはないのだというように『ルージュ・エ・ノワール』の蹴撃が『マステマ』へと迫る。
退魔刀で受け止めるも、刀身が火花を散らす。
ふるった一撃がなければ、その蹴撃の一撃で戦いは終わっていただろう。
だが、だからこそ『マステマ』は踏み込む。
依代となっている吉野の体躯、その身体能力の限界を超えるような挙動に、体中から筋繊維がちぎれ果てる音が響き渡る。
「――」
痛みを覚える。だが、それでも『マステマ』の中にあるのは、『ルージュ・エ・ノワール』への不快感であった。
平和を壊すと言った。
その平和の礎となった者が、そういったのだ。
全てが無意味だとも。
この偽りの平和を壊すことこそが己の存在意義であるというのならば、『ルージュ・エ・ノワール』のやっていることは、今を生きる者たちへの否定だった。
さぞや憎たらしく思えたのだろう。
それを理解しようとは思わない。
まるで自分が、全ての過去の代弁者であるというように語る『ルージュ・エ・ノワール』を己は否定しなければならない。
己の過去が言う。
たとえ、それが消えぬものであったとしても、なかったことにしてはならないのだ。
それが、その道程があるからこそ今の己が存在しているのだ。
それまでも否定されたくはない。
振り抜いた退魔刀が赤いオーラを砕く。
「どんなに悲しみにくれても、どんなに憎しみに囚われても、それでも人は前に進まねばなりません。そういうものなのです。あなたのそれは、それを否定する」
ならば、と『マステマ』は踏み出す。
己の過去を語る言われなどない。
そのつもりもない。否定もしない。ただ肯定して呑み込んでいくだけだ。故に、『マステマ』の振るう斬撃が『ルージュ・エ・ノワール』の体躯を切り裂く。
「やるのなら徹底的に」
軽機関銃の弾丸を叩き込みながら『マステマ』は『ルージュ・エ・ノワール』の為す破壊をこそ否定するように彼女を追い込んでいくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
またあの子に元気づけられてしまったわね
……よし(頬を叩いて気合を入れる)
真剣勝負に相応しいフィールドで舞台の光景を変化させる
張りぼての巨人に鋼鉄の輝きを、漂う硝煙と火の粉を、戦乱の景色をここに
虚構よ……けれどこれは私の知る現実でもあるわ
この景色が私を奮い立たせる
想いの強さであなたに挑む、挑戦者はいつだって無謀なもの
心のオーラを体に宿し、攻撃を受け止め
食らいつくように早業のカウンターを見舞うわ
此処にいるあなたも、過去のあなたも確かに存在した
そのことを覚えておくわ
頬を張る音が劇場に響いた。
それは戦いに関係しない音であった。
何故なら、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)が己の頬を自ら張った音だったからだ。
「……よし」
彼女にしては珍しい行為であった。
その青い瞳はいつだって世界を見つめているものであったから。
そこに感情の色は浮かばない。
けれど、今まさに彼女がそうしたのは、気合をいれるためであった。何故、そのような行為をしたのかと問われれば、彼女はいつものような表情で小さく言うだろう。
「またあの子に元気づけられてしまったから」
それは他愛のない言葉であったかもしれない。
静漓自らが見た幻視だったのかもしれない。
到底意味のない幻でしかなかったのかもしれない。
けれど、確かに彼女は感じたのだ。たとえ、幻であったとしても、彼女が感じ取ったのならば、それは力だ。確かにそこに在ったものなのだ。
「真剣勝負をしましょう」
静漓は劇場によく通る声でもって打ちのめされた影朧『ルージュ・エ・ノワール』を見つめた。
立ち上がる彼女の瞳に映るのは狂気。
怒りと憎しみ。
世界への復讐を果たそうとする者の感情は、彼女の青い瞳に何を映すだろうか。
いいや、関係ない。
彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
この劇場にあるのは張りぼての巨人と舞台装置のみ。
だが、彼女の結界領域(ケッカイリョウイキ)は、真剣勝負に相応しいフィールドへと変貌させる。
鋼鉄の輝き。
漂う硝煙と火の粉。
まさしく戦乱の景色であった。
「斯様な虚構で私を惑わすなど。偽りの平和の使者がやりそうなことだ」
赤いオーラが『ルージュ・エ・ノワール』より噴出する。
だが、静漓は頭を振る。
「そうね。けれど……これは私の知る現実でもあるわ。この景色が私を奮い立たせる」
踏み出す。
このフィールドの中に存在するものは、想いの強さで加速し、駆け引きでもって減速する。
即ち、真っ向勝負。
誰よりも速く敵に己の攻撃を届かせるためには、その想いを示さねばならない。
弱いオブリビオン影朧。
彼女が立ち向かうのは世界だ。
猟兵が立ちふさがるから戦っているだけに過ぎない。けれど、静漓は立ちふさがるつもりはなかった。
己もまた挑戦者なのだ。
迫る赤いオーラ纏う蹴撃。
幾度となく放たれてきたユーベルコード。けれど、威力にいささかの陰りもなかった。
消耗しているはずなのに、それでも螺旋描く一撃は静漓の身にまとったオーラを砕きながら彼女を打ち砕かんと迫っている。
「吹き飛べ! 私の前から! こんな偽りの世界を守る理由ごと!!」
「そうね。確かにそうなのかもしれない。けれど、偽りの世界であっても、此処にいるあなたも、過去のあなたも確かに存在した」
「言葉ではどうとでも言える!」
振り抜くようにして赤いオーラの先端が静漓の眼前に迫る。
恐ろしさがこみ上げる。
だが、背中を押された気がしたのだ。
気の所為だった。
けれど、それを感じ取ることができたのならば、いつだってそれは力になる。
挑戦者はいつだって無謀なもの。
踏み出すたびに静漓の心に湧き上がるものがあった。心のオーラが噴出し、静漓は面を上げる。
頬をかすめるオーラ。
血潮が飛ぶ。
だが、それでも彼女の瞳は『ルージュ・エ・ノワール』を見据えていた。
たとえ、それが世界というスクリーンに映し出された影法師なのだとしても。
「あなたは其処にいた」
その事を覚えているのだというように静漓はあの時見た、しあわせなゆめの中で戦ういつかの誰かの諦めぬ最後の一撃を思い出す。
自然と動いた腕は、拳を握り締めていた。
拳の一撃は『ルージュ・エ・ノワール』へと打ち据えられ、振り抜かれた――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
まあ平和が一番!
とは言ったけどその形はみんなそれぞれでもあるかなー
彼女の場合は…
●神前演目のタイトルは…『臨終?』
UCパワーでちょっと世界を歪めて彼女の最期の時を舞台上に再現!
キミは語られ、物語られるような存在になりたかったの?
違う?まーまー最後まで聞きなよー
キミたちはそーいうとこ細かいよね
誰かが覚えている限り、忘れられない限り本当に死ぬことはない
だから覚えてもらえず、忘れられるのは悲しいって?
生まれることなく死んだ命だって存在してたってこには変わりないのにね
だけど不満があるというのも当然だ!
だから叫ばいいよ!思い切り!
聞いててあげる
ここで、飽きて疲れて眠るまで
「まあ平和が一番! とは言ったけど、その形はみんなそれぞれでもあるかなー」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思う。
人それぞれの中に価値観が存在するように、人の思う平和の形だってそれぞれであろう。
否定なんてできるものではない。
なにせ、それぞれが正しいものであるからだ。
神ならぬ身からすれば、それはあまりにも横柄なことであっただろう。
正しさとはたった一つのものであるべきものだ。
ならばこそ、この世界のあり方は正しくない。
偽りの平和の中で、ただ甘受するだけの日々は緩慢なるものであったし、赦されざるものであったはずだ。
「だから、私は!」
打ち抜かれた拳を受けながら影朧『ルージュ・エ・ノワール』は呻くようにして叫んだ。
自分が正しい。
自分の思う世界ではないからこそ、己が衝動は肯定されるべきものであるはずだと言うのだ。
「キミは語られ、物語られるような存在になりたかったの?」
ロニは言う。
歪神(ゴッド)たる姿をさらしながら、劇場に在りし空間を歪めていく。
全知全能の力によってなされる無体。
世界に、その銀幕に映し出される映像は、虚構から現実に変じる。
「私のような端役が主役になるなど。だが、端役が主役を喰らうことがないわけでは」
「まーまー、最後まで聞きなよー」
ロニは手を振って笑む。
主役、端役。
そんなの些細なことだ。人間というのは、そういうところが細かい、とロニは笑う。
「誰かが覚えている限り、忘れられない限り本当に死ぬことはない」
いつかの誰かが言った言葉だろう。
忘れられないから、完全に消え去ることはない。
映像も、音声も、何もかも。
「だから、覚えてもらえず、ただ礎の一つとして忘れられるのは悲しいってことだよね? 生まれることなく死んだ生命だって存在してたってことには変わりないのにね」
言葉だ。
結局、それは言葉でしかない。
無力そのものなる言葉。
意味はあっても、力はない。
そんな言葉を前に『ルージュ・エ・ノワール』は漆黒の翼を開放する。
ベルトのバックルが唸りを上げている。
「そんなものなど、死者の慰めにもなりはしない!!」
「わかるよ。不満があるというのも当然だ! だから叫べばいいよ! 思い切り! 聞いててあげるよ」
ロニは迫る漆黒の翼と『ルージュ・エ・ノワール』の一撃を受け止める。
どんなに攻撃したって構いやしない。
彼女の攻撃は、記憶以外に残る手段を持ち得ない。
つまり、どんな攻撃もロニを傷つけたということすら残らない。故にロニは笑う。
己の顔を打ちのめす一撃も、胴を穿つ衝撃も、全てが残らない。
けれど、記憶だけは残るのだ。
「ここで、飽きて疲れて眠るまで。でもさ、キミは恵まれている方だよ。ほら、ごらんよ」
ロニは指で示す。
己が作り上げた銀幕の向こうで、まだ待ち受ける者たちがいる。
彼女に終わりを齎す者たちが。
故にロニは笑む。
「さあ、行っといで。キミのことは忘れない。最後まで、その存在を世界に示してきなよ――」
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
どんなものさえ、過去になる。語り継がれるものもあれば、ないものもある。
でも、人々は生きているんですよねー。
だから、今を壊させないために。私は戦いましょう。
どんなことがあれ、戦い…そして、私は、私たちは忘れませんよ、あなたのこと。
あなたがいたということを、忘れない。
※
陰海月「ぷきゅ!」
どんなことがあったって、今を壊すのは違うもん!
四天流星ぽいぽい!
でもね、ぼくだってわすれないよ!
どんな存在にだって、定めがある。
過去になったものは覆せない。
そうやって過去を踏みつけて時は加速していく。
それが世界の理である。全てが終わりを持っている。終わる者は必ず、骸の海へと流れ着く。
還元されることはない。
回帰することはない。
「どんなものにさえ、過去になる。語り継がれるものもあれば、ないものもある」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』もそうであったことだろう。
終わりは来る。
終わらないものはない。
きっとそうなのだ。
もしかしたら、無限もあるのかもしれない。
けれど、今は些細なことだ。
今も人は生きている。
偽りと呼ばれた世界の中で、懸命に生きているのだ。
「だから、今を壊させないために」
「それがお前たちの!」
「ええ、私たちの戦いです」
『疾き者』は虚構の世界から這い出した影朧『ルージュ・エ・ノワール』を見やる。
終わらせなければならない。
きっと何者でもない誰かが求めているのは、何者かになることなのかもしれない。
ならば、『疾き者』は、それがもう叶っているとさえ思えただろう。
「この戦いが何処に帰結するのだとしても。私は、私達は忘れませんよ、あなたのこと」
踏み出す。
手にした棒手裏剣を握りしめる。
「忘れないことになんの意味がある! どんなものも忘れ去られる。忘却の彼方に追いやられる! 今、それを強く願ったとしても、時の流れは残酷すぎる! 摩耗しないものはない! それを!」
迫る赤い螺旋。
蹴撃の一撃は苛烈であった。
これまで猟兵たちを幾度となく打ち据え、砕かれ、消耗して尚迫る。
影朧『ルージュ・エ・ノワール』にとって、それだけが世界に対する復讐だったのだ。
壊さねばならない。
壊さねば、己の存在を肯定できない。
「ぷきゅ!」
巨大なクラゲが何事かを言っている。わからない。だが、壊す。
壊さねばならない。
どんなことがあっても、今を壊すのは違うと言っているのかも知れない。
「子供の言葉など!」
聞くに値しないと、怒りと共に蹴撃が『疾き者』を穿つ。
五体を粉砕するような強烈な一撃。
だが、『疾き者』の瞳はユーベルコードに輝く。
「あなたがいたということを、忘れない」
握り締めた棒手裏剣の一撃が蹴撃を終えて体勢を崩した『ルージュ・エ・ノワール』へと叩き込まれる
打ち込まれたのは心臓。
消耗して尚動く体に終止符を打つように放たれた一撃は、彼女の体躯より爆ぜるようにして光を放ち、互いの体を引き裂くように吹き荒れた――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
ふふん♪ わたしはいつも良いことしか言わないからね!
だからさすがに今日は言ってないよ!?
忍べてはいないけど!
いつも以上に忍んでないけど!(大事なことなので2回
ま、それはいいとして。
戦う理由は人それぞれ。
でも『ルージュ・エ・ノワール』さん、貴方の理由はちょっといただけないかな。
忘れられてイラッとしたから、暴れて世界を壊そう、とか……はた迷惑だよね。
あなたが平和の犠牲になったのなら、それは同情するけど、
あなたが他の人を傷つける理由にはならないよ。
だって、どうせみんな忘れられるんだからね。
記憶に残るのなんて一握りだよ。それはみんな同じ。
『猟兵』という存在がいらなくなったら、存在だけは記憶に残っても、
わたしの名前なんてだれも覚えててくれないよ。
むしろ、覚えてて欲しかったなら、あなたが記憶に残る何かを成せば良かったんだよ。
できなかったんなら、諦めるしかないんじゃないかな。
っと、サージェさんがやる気だね。
それならわたしは全力サポート!
おっぱいぱんちでいちげきひっs……あれ?違うの?
サージェ・ライト
【理緒さんと】
理緒さん良いこと言いますね
『いつかの誰かの犠牲を侮辱している』
そうですね
この平和の礎となった犠牲を貴女は許せない
でもこの|行為《戦い》そのものが貴女の矛盾でもある
誰ですか忍べてないクノイチみたいなものとか言った人
忍べてますから!!
こほん
戦いは無為
だからこそ、戦いに際しては心に祈りを抱く
この戦いの先に
ルージュ・エ・ノワールさん
貴女は何を望むのですか?
今、此処に居る貴女に聞いているんです
でも私たちは不倶戴天の間柄
あるのは言葉ではなく戦いのみ
というわけで理緒さん
援護お願いします!
全力で倒しますよ全力で!
クノイチパワー全開です!
久しぶりにカタールなど装備してみたり!
そこから【乾坤一擲】の一撃を!
なんか正義の味方みたいなキックだろうとも負けるわけにはいきません!
胸の大きさは今関係ないのでは?!
こほん
過去は変わらず、でも知ることで変わる
|過去から滲み出《影朧化》してなお
その魂に想いが刻まれているのなら
それを語るのは貴女の役目では?
善性と悪性が生み出すのは怪物だけじゃないはずですよね?
いつかの誰かの犠牲を侮辱している。
それは影朧『ルージュ・エ・ノワール』が世界へと復讐せんとする動機を示したものだった。世界を破壊すること。平和を壊すこと。
それは礎とならんとしたわけでもなく、生命散っていった者たちへの生きる者からの手向けの言葉だった。
「そうですね。この平和の礎となった犠牲を貴女は許せない」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の言葉に頷く。
良いことをいった、とサージェは思っていたし、理緒はいつだって良いことしか言っていないと胸を張った。
「犠牲を欺瞞に覆い隠した者たちの言葉など、なんの慰めになる! 生命は回帰しない。もう二度と、同じ場所には戻ってこない! それを知りながらどうして散った生命を礎と言える!」
影朧『ルージュ・エ・ノワール』は叫ぶ。
大気を揺るがすように赤いオーラがほとばしる。
振り上げた拳はオーラを受けて巨大化し、二人を押しつぶす鉄槌へと変貌した。
許せるものではない。
互いの正義が、どちらとも正しいからだ。
正しくないことなど何一つないのならば、全てが過ちであっただろうか。
時は無常。
絶えず変化し、流れていく。
その姿を知るからこそ、サージェは言う。
「でも、この|行為《戦い》そのものが貴女の矛盾でもある。誰ですか忍べてないクノイチみたいなものと言った人!」
「言ってないよ!?」
サージェが謎の幻聴と戦うさなか、理緒はどうしても締まらないものだなーと思った。
いやまあ、いつも忍べてないし、いつも以上に忍んではいない。
こうして敵の攻撃を前に身をさらしている時点でそういうものだ。
振り降ろされた鉄槌の如き一撃。
それが劇場を砕かんばかりの威力を持っていることは当然。
その一撃を理緒はユーベルコード輝く瞳で捉える。
現実を囲い、その鉄槌に一撃を電脳魔術と同期させ、動きを止める。完全には止めきらない。
だが、隙はできたのだ。
「サージェさん!」
「はい! 忍べてるクノイチが参ります!!」
サージェは踏み出す。
戦いは無為。だからこそ、戦いに際しては心に祈りを抱く。
いつだってそうだ。
誰かのためになりますようにと言う願いは祈りに昇華する。この戦いが真の意味で無為にならぬようにと戦う者がいる。
理緒は思う。
戦う理由はいつだって人それぞれだ。
けれど、『ルージュ・エ・ノワール』は壊すと言った。理由を正すこともなく、変えることもなく、ただ壊す。
世界という枠組みごと壊すというのだ。
「何故わからない! 偽りは壊さねば、再生すらできぬというのに!」
「はた迷惑だからだよ。あなたには同乗するよ。けど、あなたが他の人を傷つける理由にはならないよ。だって、どうせみんな忘れられるんだからね」
歴史に残る偉人ですら、その認識は歪められていく。
常識と語る知識の中にあってさえ、歪んでいく。
それは変わらないのだ。
「わたしの名前なんて誰も覚えててくれないよ。わかっているよ。そんなことは。貴女もそうだっていうのなら、そうなんだろうね。でも、わたしは壊そうとは思わない」
忘れ去られても、自分という存在がどこにもなくても。
それでも世界を壊そうとは思わない。
諦観にも似た感情だったのかもしれない。
いや、逆に考えれば、今を懸命に生きているということだ。
明日のさらに、ずっと先のことを思うよりも、今を懸命に生きてこその生命だ。なぜなら、理緒はまだ今生きている。
「懸命に生きて、生きて、生きて、その先にあるものが何なのかもわからなくってもがむしゃらに生きるから、人の存在は輝くんだよ!」
拡大された現実空間。
理緒の持つコンピュータのスペックをフル稼働させて『ルージュ・エ・ノワール』そのものの動きを減速させる。
恐ろしいほどに唸りを上げるコンピュータ。
フル稼働しているからこそ熱を持つ。
電脳空間に熱置換していなければ、熱暴走でシャットダウンしてしまう。
それほどの加速。だが、理緒は己ができる全力を注ぎ込むのだ。
「サージェさん、今だよ!」
「ありがとうございます! 全力でいきます全力で! クノイチパワー全開です!」
「それってむじゅんしてない?」
「しておりません! 久しぶりにカタールなんて装備してみたり!」
やる気に満ちておるのです! とサージェは鼻息荒く頷く。
そのやる気が別の場所に向かえばよかったのになぁ、と思わないでもなかったが、理緒は『ルージュ・エ・ノワール』の動きを止め続けた。
「えっ、おっぱいぱんちでいちげきひっさつじゃないの!?」
「え、なんです!? 胸の大きさ今関係ないのでは!?」
たしかにそうである。
だが、迫る赤いオーラは煌々と輝く。
鮮烈なる蹴撃。
「ええい、気を取り直して! この戦いの先に『ルージュ・エ・ノワール』さん、貴女は何を望むのですか? こんなのただ壊してお終いじゃあないですか! その先は! 何もないと! 空虚なままだと、繰り返されるばかりじゃあないですか!」
「だったら、なんだと言う! 私は!」
この先などいらない。
破壊さえできればいい。
壊して、壊して、その先のことなんて考えもしない。
世界さえなければ戦いなんて存在しないのだから。
「今、此処にいる貴女に聞いているんです!」
サージェにはわかっていた。
此処にいるのは猟兵とオブリビオン。
不倶戴天の敵同士。滅ぼさなければならないと互いに思っているのだ。あるのは言葉ではない戦いのみ。
故にサージェは動き鈍る蹴撃へと駆け出す。
乾坤一擲(ヒッサツノイチゲキ)たる一撃はこのときのために。
故にサージェは言う。
「過去は変わらず、でも知ることで変わる。|過去から滲み出て《影朧化》してなお、その魂に想いが刻まれているのなら、それを語るのは貴女の役目では?」
「語る言葉などない! 私は!」
光は影を落とす。
強烈であればあるほどに影は色濃く輪郭を生み出す。故に、怪物へと成り果てる。
「善性と悪性が生み出すのは怪物だけじゃないはずですよね! それを!」
此処までの道程が告げている。
誰もが彼女と戦って言葉を交わしてきた。
転生を望まないのかもしれない。新たなる生を得ることが慰めになるのかさえわからない。
犠牲になったというのならば、それに報いる光景はすでに彼女たちは見てきたのだ。
幻朧桜の花弁が舞い散る中、平和という求めて止まないものがそこにはあったのだから。
だからこそ、サージェの一撃が『ルージュ・エ・ノワール』を砕く。
その胸に抱いたもの。
きっと主役なんかではない。
端役ですらないのかもしれない。
何者でもない誰かの一人であったのかもしれない。
けれど、|『ルージュ・エ・ノワール』という影《貴方》が。
いつかの誰かを、しあわせなゆめの中に誘うだろう。
しあわせになってはならない者なんていないのだ。
いつだって、その先にある未来は何も決まっていない――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2024年06月15日
宿敵
『ルージュ・エ・ノワール』
を撃破!
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