きみはリア充死ね死ね祭を知っているか
●モデルとなった祭典は存在しません……たぶん
6月といえば世間ではジューンブライドである。さらに6月14日をキスデーと呼んでカップルたちが人前で堂々とキスをしていい日と定めている地域もあるらしい。ともあれ6月は梅雨空なんか関係ないねと言わんばかりのリア充どもがらーぶらーぶを謳歌する月であるらしい。だが世の中光があれば必ず影も存在する。そんなうらやましい状況を楽しんでいられる者たちばかりではないわけで。
そんなわけでシルバーレイン世界のとある山中に集まる集団がいた。梅雨空のようにどんよりとした彼らは皆、竹やりを手に険しい顔をしていた。そして。
「リア充爆発せよ!」
「リア充死すべし!」
「もてない者たちの怨念を思い知れ!」
口々に叫ぶと彼らは大型のわら人形に竹やりを次々と突き刺し、それを巨大な焚火の中に投じていく。フラストレーションを爆発させた彼らは先刻までの険しい顔を一転させた。
「あー、一仕事をした後は気持ちいいのお!」
焚火の暑さと労働により流れる汗はじつにさわやかに見えなくもないものであった。そして皆は引き続きわら人形に攻撃を加えたり、リア充どもの悪口でおおいに盛り上がったり、飲んで食って騒いだりと、それぞれの時間を過ごしたのだった。こうして夜はふけていった……極秘に行われたその祭典の名は、誰が呼んだか『リア充死ね死ね祭』というそうな。
一方グリモアベースにて。
「世の中、昨今の非モテどもはリア充爆発しろの精神を忘れ、3次元なんかクソだとか現実の恋愛はクソだとかそういう方向に流れつつあるようで実に嘆かわしく思っていたが、いまだにこんな頼もしい者たちがいるとはまだまだこの世界も捨てたものではないな、うんうん」
果たしてそれは本当に捨てたものではないと言えるのだろうか?集まった猟兵たちは暑く語る不破・静武(人間の非モテの味方・f37639)にそうツッコミを入れたくてたまらなかったことであろう。
「こんなすばらしい祭を妨害するとは!アレックスラインとやら!こいつはメチャ許せんよなぁ!?」
いや、そんな祭り潰されてもいいんじゃ……そう思った猟兵もいたかもしれないが、それでもまあ、一応ナイトメアビースト案件だ。敵の企みは食い止めなければなるまい。
ナイトメアビーストのアレックス・ラインは祭典を楽しめなかった者の怨念を具現化して『フリーダムモンスター』を作り、それで祭典を襲撃しようというのだ。なのでまずは『リア充死ね死ね祭』に潜入し、敵の襲撃に備えたり、祭りを楽しんでる人たちにそれとなく避難を促したりする必要がある。思いっきり楽しんでる(??)者たちをいかにして避難させたものか。腕の見せ所だ。
そしてナイトメアビーストの襲撃を切り抜けたら、アレックス・ラインとの決戦だが、この時に注意しなければならないのが、祭典への潜入行動およびナイトメアビーストとの戦いは素早く済ませなければならないという事だ。さもなくばアレックス・ラインが侵略蔵書を得てパワーアップしてしまうのだという。具体的には2週間以内に済ませる必要があるそうな。しかしリア充を憎む祭りを楽しめなかった者ってどんな感じだろうなあ。そもそんな祭典があった事を知らなかったか、内気な性格がゆえ参加がためらわれたか、それとも……まあいいか。
「ともあれ!もてない者たちの楽しみを奪うアレックスラインとやらはリア充に違いない!なんとしてもこの腐れリア充をぶっ殺してくれ!頼んだ!!」
……まあリア充云々非モテ云々は置いとくとして、一応ナイトメアビースト案件だ。敵の企みは食い止めなければなるまい(2回目)。猟兵たちはシルバーレイン世界へと向かうのだった。
らあめそまそ
らあめそまそです。シルバーレイン世界の決戦シナリオをお送りいたします。
第1章で祭典への潜入、第2章でフリーダムモンスターとの戦い、第3章でアレックス・ラインとの決戦になります。繰り返しになりますが、第1章・第2章は2週間で完成させないと第3章の敵が強化されるようですので、なんとか早く仕上げたいなと思っております。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『キャンプを楽しもう!』
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POW : テント設営をしよう
SPD : 渓流で魚釣りをしよう
WIZ : バーベキューでキャンプ飯を作ろう
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●繰り返しますがモデルとなった祭典は存在しません……たぶん
シルバーレイン世界に転移した時、既にあたりは夜の闇に覆われていた。いくつかのテント、巨大なキャンプファイヤーの周囲に集う人々の姿だけ見れば、それは単なる野外パーティーに見えたかもしれない。だが人々が握りしめる竹槍や、あちこちに積み上げられた等身大のわら人形の存在が、この集いの特異性を雄弁にあらわしていた。
「リア充爆発せよ!」
「リア充死すべし!」
それは非リアと呼ばれる者たち以外にとっては異様な光景にうつるかもしれない。だが、こんなんでも一応生命賛歌に溢れる場であり、アレックス・ラインが狙う場なのだ。なのでまずどうにかこの災典に潜り込み、迎撃の準備や避難誘導等をなんとかお願いいたします。いや本当に。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
「日本の奇祭」を扱った雑誌や記事等で紹介されていそうですねぇ。
とは言え、何とかしませんと。
【涵輔】を発動、出来るだけ違和感の少ない『|階梯5相当《獣人戦線基準》』の『信徒』を複数、召喚しますねぇ。
今回は、比較的出番の少ない『男性信徒』にも来て頂き「X組のカップルのフリ」をして、祭りを覗きに行って頂きましょう。
これだけ盛り上がっていれば狙われるでしょうから、獣人の身体能力を生かして山に逃げ込み、囮になって会場から引き剝がして頂きますねぇ。
後程、報酬に美味しい[料理]をご用意しますので。
ただ、この『祭りに込められた怨念』を利用された方が、色々危険な気がするのは気のせいです?
遠藤・修司
「同好の士と祭りをするの、まあまあリア充なのでは?」
『恋人がいないという狭義のリア充なのだろう』
「うーん?」
『彼らもまた商業主義の被害者だよ』
「そうなの……かな?」
『まあ“|僕《君》”は見ていたまえよ』
【人格交代】して【UC使用】
要は彼らはリア充に死ね死ね言う体験を共有したいのさ
それを煽ってやればいい
リア充を指差してけしかけるよ
非リアの同士達よ! あれを見よ!
我ら非リアに見せつけるかの如くいちゃつく破廉恥なリア充め!
あのような暴虐、許してなるものか!
同志諸君よ! 今こそ爆破の時ぞ!
リア充死ね死ね祭りに相応しい花火を上げるのだ!!
さて、これで避難もできただろうね
おや“僕”、何か言いたいことでも?
高崎・カント
ここにピクニックに丁度良い場所があるって聞いてきたのです
もきゅ! いい感じにシートが敷いてあるのです!
わーいなのです! ゆーいっちゃんとおやつを食べるのですー!
【UC使用】で、ゆーいっちゃんと一緒におやつタイムなのです!
6月なのでサクランボを持ってきたのです
あーん♪で食べさせてもらうのです
もきゅーん!
おいしいのですー! うれしいのですー!
お空もキラキラでとっても素敵な日なのです!
14日はキスの日なのです!
ほっぺにチュッとしちゃ……もきゅううっ!?
なんかいっぱい人が走ってきたのです!
え? 花火? なんなのですーっ!?
ヤバいのです!
ゆーいっちゃんを抱えてダッシュで逃げるのです!
全速力なのですー!
●死ねにも2種類あるという話
「リア充爆発しろ!」
静かな山中に響き渡るシュプレヒコールに、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は思わずにいられなかった。
「『日本の奇祭』を扱った雑誌や記事等で紹介されていそうですねぇ」
確かにまあ、歴史はそれほど長いものではないだろうが、間違いなくこの『リア充死ね死ね祭』は奇祭に分類されるべきものであろう。ならば取り上げたがる雑誌があれば、たぶん掲載されると思う。問題は掲載される側の意思であるが……まあ同志を集めたい気持ちはあるかもしれないが、逆にあんまり知られたくない事な気がしないでもない。
それはさておき、祭りで盛り上がっている人たちをいかにしてこの場から遠ざけるか。なかなかの難題であるが。
「とは言え、何とかしませんと」
るこる、しばし思案……で。祭りの性格や参加者たちの属性について考えれば、自然にあるひとつの結論に至るのは当然と言えたかもしれない。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、女神の加護を得し豊饒の信徒達よ、私の下へ」
早速るこるは信仰する女神の信徒を召喚した。基本的には女性信徒が呼ばれるものらしいが、今回は珍しい事に男性が含まれていた。使徒たちは全員獣人らしいが、その姿はケモミミつけただけの人であり、獣人戦線でいうところの階梯5だ。早速るこるは指示を出す。
「では、お願いいたしますねえ」
同じころ。
「同好の士と祭りをするの、まあまあリア充なのでは?」
ほぼ同時に祭りの光景を眺めていた遠藤・修司(ヒヤデスの窓・f42930)はそのような事を考えていた。まあ言わんとする事はわかる。たしかに基本的に非リアはぼっちという印象は強いので、自身もそれほどコミュ力が強いとは言えない修司がそう言いたくなるのも道理といえた。そんな修司に、並行世界の『修司』たちが語り掛ける。
『恋人がいないという狭義のリア充なのだろう』
「うーん?」
『彼らもまた商業主義の被害者だよ』
「そうなの……かな?」
その指摘はある意味的を得ていた。確かに世の中恋愛を賛美するさまざまな事や、それにかこつけていろいろカネを使わせようとする企みめいたものであふれかえっている。ならばリア充も非リアも、そういう情報の氾濫によって翻弄されているという点ではまったく変わりがないのかもしれない。あるいは昨今の恋愛結婚離れもそういう一方的な情報への反感からきているかもというのはさすがに穿ち過ぎであろうか。
『まあ“|僕《君》”は見ていたまえよ』
かくして修司の人格は数ある『修司』のひとりに入れ替わった。その狙いは……偶然にも、るこると似たようなものになったのだが、またそれは後ほど。
そんな状況などまったく気にする様子もなく動いていたのは高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)。
(ここにピクニックに丁度良い場所があるって聞いてきたのです!)
かつてキャンプ・フォーミュラが出現した時に積極的に参加した事から見ても、カントはそういうのが大好きなようであった。で、たまたま辿り着いたのが、あやしげなお祭りの場。そしてそこには。
(もきゅ! いい感じにシートが敷いてあるのです!)
むろんシートが自然に敷かれているはずはない。敷いた主はおそらく今頃キャンプファイヤーの前で大ハッスルしている事だろう。そんな事に気付く様子もないカントは。
(わーいなのです! ゆーいっちゃんとおやつを食べるのですー!)
早速愛する人の幻影を呼び出すのであった。用意したのは6月に相応しいサクランボだ。
「はーい、あーん」
「もきゅーん!」
ちなみに猟兵としてのカントは、いわばゴッドゲームオンラインのアバターのようなものであるらしく、ゆーいっちゃんと会話しているカントは猟兵ではない本体のカントなので言葉は通じないようだが、ふたりの間にそのようなものは全く関係がないのだった。
(おいしいのですー!うれしいのですー!)
その笑顔を見ればわかるというものだ。よりによってここが非リアの領域である事などまったく気付く事なく、ふたりの幸せいっぱいなやりとりは続くのであった。
そして。
「メーデーメーデー!」
祭りの場に高らかに響き渡る警告の声。
「リア充だ!こんな所にリア充がいるぞー!」
彼らの視線の先にいたのは獣耳の男女たち。彼らはみな性別の違うもの同士が一組で仲良さげにしていた。むろんそれはるこるが呼び出した偽装カップルであった。
(どうやらうまい事見つかってくれたようですねえ)
後は非モテたちが彼らを襲撃し、偽装カップルたちは獣人の身体能力を活かして逃げ回り、非モテたちはそれを追う……という形で結果的に避難をさせるというのがるこるの計画だった。だがここで予想だにしない事が起こった。
「この神聖な場に足を踏み入れるとはふとどきなリア充どもめ!」
「ここはお前たちの来るべき場所ではない!とっとと帰れ!」
「かーえーれー!かーえーれー!」
(あれ?)
物陰で様子を見ていたるこるは訝しんだ。非リアたちは偽装カップルたちに声を張り上げこそすれど、誰一人として手を出そうとしないのである。どうしたというのだろうか。彼らはリア充死ねを謳っているのではないのだろうか?
(……これはちょっと意外でしたねえ)
考えてみれば、死ねとか殺すって、本当に殺意に満ち溢れていて殺したい人と、単にものすごく憎らしいという事と、その2種類があるわけで。両者は似ているようで天と地の差があるわけだ。で非モテがリア充を見る時はどちらかというと、まあたまには前者な人もいないとは言わないけど、基本的には後者が多いような感じなようだ。少なくともこの場ではそうであった。あとは単にそこまでするほどの度胸とか情熱に欠けていたのもあったかもしれない。ただるこるとしてはまずい事になった。むろん信徒たちにこのまま帰ってもらうわけにはいかない。
(なんとか襲ってもらうためにも、信徒たちに挑発めいた事でも言わせるべきでしょうか)
思案するるこる……だが助け舟は意外な所から現れた。
「非リアの同士達よ! あれを見よ!」
言葉の主はいつの間にか祭りに入っていた修司であった。
(要は彼らはリア充に死ね死ね言う体験を共有したいのさ。それを煽ってやればいい)
修司も非モテ達をリア充にけしかける事で避難とする方針はるこると共通していた。ただ、本質的には彼らが実際にリア充を襲うような事がない事は理解していた。なので、その一歩を踏み出させるのが修司の狙いだったのである。
「我ら非リアに見せつけるかの如くいちゃつく破廉恥なリア充め!あのような暴虐、許してなるものか!」
修司の言葉に非モテたちは大いに盛り上がった。基本的には先導者がいればそれに乗る事が大好きな者たちである。そこに修司のユーベルコード【見よ、大衆文学作家のこの偉観】でおおいに火をつけられたのだ。
「同志諸君よ! 今こそ爆破の時ぞ!リア充死ね死ね祭りに相応しい花火を上げるのだ!!」
「おおう!!」
偽装リア充たちに向け、今度こそ非モテたちが殺到していく。逃げるリア充……もとい信徒たちを追い、どんどん会場から離れていった。
『さて、これで避難もできただろうね……おや“僕”、何か言いたいことでも?』
「……いえ」
元に戻った修司はなんとも複雑な顔をしていた。
(後程、報酬に美味しい料理をご用意しないとですねえ)
結果的に狙い通りに事が進み、逃げる信徒たちを見ながらるこるは考えた。
(ただ、この『祭りに込められた怨念』を利用された方が、色々危険な気がするのは気のせいです?)
そして。
(お空もキラキラでとっても素敵な日なのです!)
そのような喧噪とは全く無関係にいまだにカントはゆーいっちゃんとイチャついていた。
(そういえば14日はキスの日なのです!)
冒頭でそんな事も言ってましたねそういえば。そんなわけで、カントはゆーいっちゃんの顔に近づくと、そのほっぺにチューをしようとして……
「あ!あんなところにもリア充がいるぞ!」
「もきゅ!?」
カントたちの所に男たちが血相変えて殺到してきたものだからさすがに驚いた。
(もしかしてシートをだまって借りちゃったから怒ってるのですか?それにしてもちょっと怒り過ぎなのです!)
「花火を打ち上げろー!」
(え?花火?なんなのですーっ!?ヤバいのです!)
ここがリア充を憎む非モテ達の祭典の場であり、彼らの怒りがとある者の煽動によってブーストされているなどという事情はカントにはわかるはずもない。ただ、逃げなければならないのは確かだった。
(全速力なのですー!)
ゆーいっちゃんを抱えて森へとダッシュするカント、それを追う非モテ達。結果としてカントはこれから戦場となる場から一般人を避難させる事に成功したのであるが、むろんカント本人はその事に気付く由もないのであった。
いずれにせよ、まったく期せずして、3人は協力し合って非リアたちを安全地帯へと避難させるという形になったようだ。まあ結果オーライということで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雁帰・二三夫
目頭押さえ
「…非常に身に詰まされるお話です」
「流石魔法使いになって10年選手は言う事が違うな、二三夫」
「違いますよ?!と言うかノーコメントですよ?!」
おっさん涙した
170cmスレンダー美女(人化した30m級竜型巨神G-O-リアス|3号機《トレス》)と参加
「キャンプじゃない、だと…」
「情弱だな、二三夫」
「わたくしカップルではないですよ?!」
「そう、ご主人様と下僕。下僕は二三夫」
「何だか本当にそんな気がしてきましたよ…」
「お前達も下僕になりたいなら私の下僕にしてやろう。喜べ」
「また変な遊びをトレスさんが覚えてきましたよ…」
天を仰いだおっさん、収集つかなくなったら参加者UCで眠らせ安全地帯へ運搬した
●男女ひとりずつだからといって恋人同士とは限らない
「……非常に身に詰まされるお話です」
グリモア猟兵の話を聞いた雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)は思わず目頭を押さえていた。二三夫は40歳、グリモア猟兵ほどではないがなかなかいい年である。
『流石魔法使いになって10年選手は言う事が違うな、二三夫』
声をかけたスレンダー美女は残念ながら二三夫の恋人ではない。その正体はクロムキャバリアはアステラ共和国なる所で発掘された30m級超巨大キャバリア『G-O-リアス』の|3号機《トレス》である。189.7cmの二三夫の横に並んだら小柄に見えてしまうが、それでも170cmはある。ちなみに魔法使いというのはあれだ、30歳になるまで何かが未経験ならと俗に言われるやつだ。ただそれが言われた頃はまだまだ該当者が少ない頃であり、現在では該当者があまりに多くなり過ぎた感があるのでちょっとすたれた表現になりつつある気もするが。
「違いますよ?!と言うかノーコメントですよ?!」
涙を流しながら抗議する二三夫。ちなみに本当に該当しないかは本人のみぞ知る。
ともあれシルバーレイン世界の夜の森に転送された二三夫であったが、そこは当初想定された光景からはかなりかけ離れていた。一応テントらしきものはいくつも設置されていたし、巨大なキャンプファイアーもあったが、そこで安らぐ人の姿はない。代わりにあちこちに響き渡るのは何やら争っているような喧噪。
「キャンプじゃない、だと…」
『情弱だな、二三夫』
愕然とした二三夫にトレスは冷静に答えた。まあ一応キャンプな要素がなくはないのだろうが、それよりもメインはみんなで騒いでリア充を呪う事なわけで。そして二三夫たちが到着する前に、とある要素により彼らの恨み憎しみはむちゃくちゃ増幅されていたのである。そんなわけで。
「あ!あそこにも新手のリア充がいるぞ!」
二三夫たちを見つけた非モテたちが早速殺到してきた。
「わたくしカップルではないですよ?!」
「何を言うか!」
襲われてはかなわないとあわてて二三夫は弁解するが怒りに燃える非リアたちには受け入れられそうにない。ならばとトレスが前に出た。
『そう、私たちはご主人様と下僕。下僕は二三夫』
「何だか本当にそんな気がしてきましたよ…」
出会いから今に至るまでのあれやこれやを思い返し、二三夫は頭を抱えた。だが。
「ぬう!そういうプレイか!そこまで深い仲ということだな!」
「いやいやプレイとかじゃなくて……うーん」
残念ながらトレスの言葉は火に油を注ぐだけでしかなかったようだ。しかり怒り狂う非モテたちを前にしても、トレスはあくまで冷静であった。
『お前達も下僕になりたいなら私の下僕にしてやろう。喜べ』
「また変な遊びをトレスさんが覚えてきましたよ……」
トレスとは対照的に頭を抱える二三夫。だがこれが意外な方向に働いたようで。
「え?げ、下僕?」
つい先刻までげきおこだった非リアたちはなんか困惑してちょっと怒りを忘れてしまったように見えた。まあ、ここで喜んで下僕になるような人たちだったら、たぶんこんな集いに参加してないような気もするし。良くも悪くもそういう方面での積極性はないのであった。
「な、なんだかわからないけど好機です!ちょっと休んでくださーい!」
相手の動きが終わった瞬間を見逃さず、二三夫は【戦士(笑)の休息】を使用、非リアたちを強制的に眠らせると、そのままトレスとともに安全地帯へと運搬したのだった。
『最初からこれをやれば楽だっただろうに』
「わたくしだってこんな強引な手段はとりたくなかったんですよッッッ」
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
Σなんちゅー熱気
(相棒ユキエはビビって懐から顔だけ出てる)
『この時間つがい探しに使えば良いのに』
人間社会は難しーのよ
『トーゴも叫ぶの?』
やー叫ばんけど藁人形は一緒に燃やすかなー
『トーゴにはユキエいるもんね早く巣作りして卵産む用意し「いや待て可愛いユキエは心の妻って事で
周りから鳥相手に…って哀れみの目が
同志認定されてそ
まー連中も本気でりあ充殺したい訳じゃねーし
【暗視、情報収集】で何通りか目星付けよ
退路確保に敵の侵入阻む方向数ヶ所にりあ充藁人形2体設置
敵気配感じたらみんなを煽りここへ向けて竹槍投げさせたりバリケード作ったり【罠使い】
『死ね死ねって』
インドの山奥から敵が来ねー事祈るかなー
アドリブ可
●だから行くのだ
「リア充よ死ね!」
「リア充爆発しろ!」
「な、なんちゅー熱気」
猟兵として、忍びとしては百戦錬磨な鹿村・トーゴ(鄙の伏鳥・f14519)も、この非モテたちの怒りのパワーには圧倒されるものがあったようだ。相棒のオウムのユキエもどうやらかなりびびっているようで、トーゴの懐から顔だけ出して様子を伺っていた。
『……死ね死ねって……』
「インドの山奥から敵が来ねー事祈るかなー」
うん、たぶんそれが名前の由来だとは思う。ただ、単にびびってばかりでもなかったようで。
『この時間つがい探しに使えば良いのに』
ユキエの言葉はオウムらしからぬド正論である。まったくもって、本当に恋人がほしいのであれば、こんな所でリア充を呪っている暇があったら積極的に相手を探せばいいのにというのは、まさしく火の玉ストレート。剛速球過ぎてキャッチャーも取れないというものだ。
「人間社会は難しーのよ」
トーゴの言葉はあくまで非モテたちの事情を慮ったもののはずであった。そう、わかっちゃいるけどそれができるぐらいなら最初からやっているのだ。それが様々な理由で自分から行く事が不可能となった悲しき存在が彼らなのだ。それはこれまでに負ったトラウマの数々か、実社会や未来への絶望か、単にリア充が憎いだけなのか。ともあれ、いろいろと難しい(そうでもない事もあるが)事情を抱えてしまった者たちは、誰からも救いを得る事ができず、ただ世の中を呪い続ける以外に道がないと思えば。
そんな事を思いながらもトーゴは敵襲に対しての備えを行っていた。参加者の避難は他の者に任せ、トーゴは忍びらしく会場の警備に尽力する事にしたようだ。侵入を得意とする忍びなら、自分がここに潜入するならどこからが適当かという事は誰よりもわかる自負がある。闇夜も忍びには関係ない。むしろホームグラウンドと言える状況だ。トーゴはそこに罠やバリケードを仕掛けると同時にリア充わら人形を設置した。罠やバリケードは判りやすいがなぜわら人形かといえば、参加者たちを煽ってそこに竹槍投げさせる事で敵への攻撃とする算段のようだ。
「よし、あとは……」
『トーゴも叫ぶの?』
準備をしているトーゴにユキエが声をかけた。
「やー叫ばんけど藁人形は一緒に燃やすかなー」
何やら思う事があったらしいトーゴの返答に、ユキエは。
『トーゴにはユキエいるもんね早く巣作りして卵産む用意し』
「いや待て可愛いユキエは心の妻って事で」
とんでもない発言にさすがにトーゴはあわてた。種族差とかいうレベルではないだろうさすがに。いや猟兵ならあるいは……まあないだろうねさすがに。そんな会話をかわすトーゴたちを見る非モテがいたが、さすがに相手が鳥とあってはいくらなんでもノーカンなようで、微妙な視線を向けつつ去っていった。つい先刻襲撃されていたモーラットがいたが、あれは猟兵効果であろう、たぶん。
「……」
リア充に襲撃されなかった事に安堵しつつも、さすがにちょっと複雑な気分のトーゴであったが、それでも手を止める事なく襲撃への備えを続けた。いまさらあとへはひけないぞ。
大成功
🔵🔵🔵
中村・裕美
エレクトロレギオンを周囲に放ち、センサーや電脳魔術を併用して周囲を【情報収集】して地形を把握すると共に敵襲対策や避難誘導のプランなどを味方に通信して共有
「……さて。……ここまで仕事すれば……いいわね」
あとはリア充死ね死ね祭りを堪能する
大型藁人形を竹槍で【串刺し】にしたり
「リア充は滅びろぉおお!!」と叫んだり和気藹々と参加する。ドラゴンランスを振るうことはあるので槍の扱いは割と得意
ただ、基本コミュ障なので自分から話しかけたりしないし、フリーの時はゆっくり腰を下ろして空気感を,楽しむ。こちらのコミュニケーションの距離感を察してくれる陰の者が多いのも心地よい
「……邪魔者は……倒さないとね」
●準備運動
中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)も参加者の避難ではなく会場の警備を選んだようだ。早速エレクトロレギオンを召喚、755体もの小型機械兵器を会場に散らばせて周囲の地形を確認する。攻撃を受けたら一撃で破壊されるという弱点も非戦闘に用いるならまったく問題にはならない。敵を知り己を知れば百戦しても危うからず。情報収集は戦いに向けての基本中の基本である。まさに戦いは数だよ兄貴。そして予測される敵の襲撃経路や、一般人を避難させるための誘導に最適なルート等を割り出し、それを他の猟兵たちに伝達していく。これにより、一般人避難や襲撃への迎撃準備等は飛躍的に効率を上昇させたに違いない。
「……さて」
だが、他の猟兵が準備や避難をメインにしたのに対し、裕美にとってそれは前座であった。彼女にとっての本番は、他の猟兵たちにとって理解の範疇の外にあったものにこそあったのである。
「……ここまで仕事すれば……いいわね」
裕美は竹やりを手に取ると、にやりと笑った。
「リア充は滅びろぉおお!!」
多くの者が(結果的に)避難したが、それでもまだリア充死ね死ね祭り自体が中止になったわけではない。まだ避難していない大勢の非リアたちがわら人形に竹やりを突き刺していた。その中に混じり、裕美は思う存分に感情を爆発させていた。もともと槍を使うのはお手の物だ。等身大のわら人形に思い切り竹やりを突き刺し、次々に火にくべていく。そう、裕美もそっち側の人間だったようだ。その殺意にも似た情熱をグリモア猟兵が見ていたならば同志として握手を求めたかもしれない。裕美は顔は悪いとは思えないのだが、それを打ち消すほどに性格面に難があったのかもしれない。
「ふうっ……充実したわ」
一息ついている裕美に、だが声をかけようとする非リアはいない。状況からいって参加者は圧倒的に男の方が多く、そんな中に女性がいればモーションかける者がいてもおかしくはないはずなのだが、誰もそれをしようとしない。それはただでさえ裕美に声かけづらい感じがあり、なんとなくそういう雰囲気を周囲が察したというのもむろんあったが、それだけではない。何度か言及されている事であるが、そも声をかけにいけないからこそこういう所でストレスを発散させるしかない悲しき者たちの集いである事を忘れてはならないのだ。まあ裕美もそれがわかっているからこそ、他の者たちにとってはなんとも居心地の悪いこの場所を非常に心地よく感じられるのはあった。むろん裕美自身もコミュ障の気があるようで、一部の者たちのようにリア充への悪口で盛り上がるような事はせず、あくまでひとりで佇んでいるのであった。
そして改めて裕美はこのすばらしい環境を破壊しようとしている者の事を思う。そう、本来裕美はそいつと対峙し、打ち倒すためにここに来たのだ。メインの理由が祭りへの参加だとしても、それは決して忘れてはいけない事であった。
「……邪魔者は……倒さないとね」
改めて、迫りくる敵への敵意を露わにする裕美。そしてあちこちに散らばっていたエレクトロレギオンの一機から通信が入る。すぐに裕美はそれが意味するものを悟った。
「……来たわね」
裕美は立ち上がる。祭りは一時中断だ。本業に戻る時が、来たのだ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『『シャーデンフロイデ』正義を振り翳す人々』
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POW : 俺達は絶対正しい!どんな犠牲を払っても必ず正す!
【自分は絶対正しく、自身が信じて疑わない】【正義の為なら、無関係な人を巻き込んで】【犠牲が出るのは、仕方がないという狂気思考】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : これは正義を成す為の聖戦!いざ正義の名の元に!
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【と同時に、自分達は正義そのものという狂気】を与える。
WIZ : あなたは絶対間違っている!必ず阻止してみせます!
「【自身が感じた相容れない相手の価値観を正す】」という誓いを立てる事で、真の姿に変身する。誓いが正義であるほど、真の姿は更に強化される。
イラスト:光華 三毛
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●死ねにも2種類あるという話(2回目)
『リア充は死ね!』
やってきたのは一見普通の男女に見える者たちであった。その言葉だけを見れば『リア充死ね死ね祭』の参加者にも見えた事だろう。だが。
「い、いやいや君達ねえ」
祭りの参加者に彼らを歓迎する様子は見られない。むしろ困惑、いや恐怖の目で見ていた。
「本当に殺しちゃまずいでしょ!」
『なんだとぉ?』
たちまちフリーダムモンスターの殺意は参加者に向けられた。
『俺達の正義を認めないとは、さてはお前たちもリア充だな!リア充は殺す!!』
さて【|人の不幸に対する喜び《Schadenfreude》】と名付けられたフリーダムモンスターの能力は以下の3種類だ。
【俺達は絶対正しい!どんな犠牲を払っても必ず正す!】は、いかなる犠牲を払おうとリア充を殺すこそ正義だという信念により自らを強化させるものだ。フリーダムモンスターの信念は半端なものではなく、強化された敵はなかなかの脅威となることだろう。
【これは正義を成す為の聖戦!いざ正義の名の元に!】は、リア充絶対殺すべしという演説を行う事で他のフリーダムモンスターを強化させるものだ。フリーダムモンスターの信念は半端なものではなく、強化された敵はなかなかの脅威となることだろう(2回目)。
【あなたは絶対間違っている!必ず阻止してみせます!】はリア充殺すべしという彼らの思想に反する者をなんとしても修正するという誓いで自らを強化させるものだ。フリーダムモンスターの信念は半端なものではなく、強化された敵はなかなかの脅威となることだろう(3回目)。
以上、どの能力も狂気とも呼べる敵の意思の力で自らを強化するものであり、そのため強化の度合いも半端ないものであろう。あえて言うなら攻撃手段が特異なものでないあたりに付け入る隙があるだろうか。あるいは他に手があるだろうか?グリモア猟兵も言った通り、可及的速やかに敵を倒さなければならない事もあってなかなか厄介な状況ではあるが、それでもなおこいつらはアレックス・ラインの前座なのだ。オードブルはさくっと平らげ、メインディッシュに備えようじゃないか。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
民衆に混ざっていても気づき辛そうな辺り、厄介ですぅ。
『FAS』により飛行、『FLS』で『FPS』『FTS』召喚後に空間歪曲障壁を展開しますねぇ。
幾ら強化しても『飛行出来ない』なら遠距離攻撃しか手はなく、『FPS』で射線を把握し空間歪曲で逸らせば脅威になりません。
そして【烕弇】を発動し全『祭器』に『万象消却』を付与、『FRS』『FSS』の[砲撃]による[範囲攻撃]を降らせれば、命中した時点で『消却』可能な上、地面に当たれば『穴』を形成し回避可能範囲を削り、より命中し易くなるでしょう。
『穴』に落ちた方は行動不能後、『FTS』で回収した『近くの土』で埋めてお帰り頂きますねぇ。
●より自由なのはどっちだ
フリーダムモンスターの【シャーデンフロイデ】は、その禍々しいオーラや素人目にも見て取れるほどに強すぎる殺気をのぞけば外見は普通の人間とほぼ変わらないものと言えた。
「民衆に混ざっていても気づき辛そうな辺り、厄介ですぅ」
その姿を見た夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)がこのような懸念を持ったのもある意味当然の事といえた。とはいえフリーダムモンスターなら基本的にはお祭りの場にのみ出るものなので一般人に紛れて行動する事がないのは幸いと言えた。むろんシルバーレイン世界において同名の他個体が人知れず潜入工作に従事する可能性はないでもないが、幸いにも現段階においてそのような事例は確認されていないようだ。まあ世界の性格上、一般社会に紛れて人知れず悪を働くというオブリビオンが出づらいというのはあるかもしれない。
『むう!お前、その姿!リア充だな!』
一方、るこるの姿を見つけたシャーデンフロイデは当然のようにそう決めつけた。まああれだ。確かにるこるは誰が見たってきょにゅーというやつであり、そして一般論としてきょにゅーちゃんがモテるというのはあながち決めつけでもないだろう。まあにゅー以外の部分もそれに合わせるようにきょである点は人によっては肥満体型を想起させるがゆえに忌避材料になるかもしれないが、それでもむしろそれが良いという人も決して少なくはあるまい。なればただでさえ自らの思想に忠実なフリーダムモンスターたちがるこるをリア充すなわち殺害の対象とみなす事は、そこまで不自然な事ではあるまい。
「来ましたねえ、では行きますよお」
まあ敵が自分をどう思おうと、戦う以外に道がない事に変わりはない。るこるは空高く舞い上がると各種祭器を召喚した。見た所敵の武器はバットやら包丁やらという近接戦武器だ。ならば上をとるだけで有利になるだろうし、祭器を使って相手の動きを探知し、飛び道具が来れば空間歪曲で射線を逸らして対応する。あとは上空から攻撃すれば完封もできるだろう。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『消除の加護』をお与え下さいませ」
早速るこるはユーベルコード【烕弇】を発動させた。烕=滅、弇は覆う事だ。すなわち読みの『ハイダツヘノドウト』は『擺脱への道途』だろうか。最初は排脱かと思ったがそれはまた違うようだ。これは召喚した砲撃用祭器に万象消却なる名前からして全てを消し去れそうな属性を付与するものであった。なんというか、戦争のボス級が使いそうな属性だ。
「では、行きますよお」
さっそくるこるの容赦ない絨毯爆撃が開始された。万象消却の効果がある広範囲攻撃は当たれば即消滅、当たらなくても地面に穴を開け、その穴に落ちた者は行動不能になるという二重三重に凶悪な技だ。さすがのシャーデンフロイデも徐々に追い詰められていった。
『空を飛んだり飛び道具を使ったりと卑怯者め!』
「そうは言ってもこれも戦いですからねえ」
『卑怯者は悪だ!ならば悪を倒す俺達こそ正義だ!』
このまま終わるかと思われたが、フリーダムモンスターはその名の通りフリーダムであったようだ。るこるの行動を悪とみなす狂気をもって自己強化を図ったのだ。そしてフリーダムがゆえに。
『俺達は絶対正しい!どんな犠牲を払っても必ず正す!とう!!』
当然のように大ジャンプをしてのけた。跳ぶ、というより飛ぶ勢いで空間歪曲すらものともせずるこるに一気に突っ込んでいくと、必殺のバット殴打を食らわせようとした……が、るこるは冷静だった。
「さすがに軌道修正は無理でしょうねえ」
一直線に飛んでくる敵に情け容赦のない砲撃を食らわせたのである。それでも飛んできた砲撃を数発はバットで撃ち落とす自由ぶりを見せつけたシャーデンフロイデだったがさすがにここまでであった。一撃でも対象を消滅させる弾幕の嵐を浴びて悲鳴を上げる間もなく消え失せたのであった。
「ふう、ちょっと驚きましたねえ」
口では言いつつもあくまで落ち着いていたるこるはさらに残敵に絨毯爆撃を浴びせ、穴に落ちた敵には土をかぶせて完全に埋めて骸の海に放逐した。かくして初撃からるこるは敵に大打撃を与える事に成功したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フェリチェ・リーリエ
リア充死ね死ね祭りと聞いて!
…って、ガチのやつなんだべか?いやいやほんとに殺したらマズイべさ…?後味悪いでねーか、てか捕まるわ。
リア充なんぞのためにムショ行きになって残りの人生棒に振るとかアホらしいでねーか!だいたい捕まるようなことしようとしてる時点で正義じゃなくね?
とまあ、一応矛盾をついて説得はしてみるけどもどうしても無理なら説得(物理)だべな!
あっちが強化してくんならこっちも戦闘力上げてくべ!
スーパーブーストピッキーヌで戦闘力アップ、【武器巨大化】で巨大化した中華鍋に【武器に魔法を纏う】で冷気を纏わせまとめて殴る!
ちーっと頭冷やせや!嫉妬はあくまで清く正しく美しく!暗黒面に堕ちんな!
●
フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)はその称号から想像がつく通り、あのグリモア猟兵と同類の人物である。もっと言うなら同志であり『しっ友』である。それがゆえに。
「リア充死ね死ね祭だべ?そんなすばらしい祭りがあると聞いては行かないわけにはいかねえべさ!」
当然のように自分も参加しなければ!と駆けつけてみたら、ちょうど今まさに問題のフリーダムモンスターが祭りを襲撃している最中であった。
『リア充は死ね!』
「……って、ガチのやつなんだべか?」
一般人ですら気付くぐらいだから、年季の入った嫉妬戦士であるフェリチェは当然、フリーダムモンスターの叫びがマジモンの殺意に満ち溢れている事をすぐに悟った。
「いやいやほんとに殺したらマズイべさ……?」
そうなのである。何度か繰り返しているが、基本的に非モテがリア充死ねという場合本当に殺したいわけじゃあない。超絶憎いよーぐらいの意味である。そして仮に非モテが本当にリア充を襲った場合、ほぼ間違いなく返り討ちにあう。というより返り討ちにあう事を前提に襲うのである。そして破れた事でさらにリア充への憎しみを再生産する。仮に勝ってしまった場合、リア充はそれを利用してさらに絆を深め合い、それを見た非モテは本当に勝ったのはどちらなんだうごごごご……と勝ったにもかかわらず敗北感に打ちのめされ結局リア充への憎しみをさらに深める。非リアはリア充に勝ってはならない。これが古き世からのしきたりなのだ。
「おいお前たち!」
そんなわけなので、オブリビオンに通じるかはわからないが、まあ一応は同志っぽい相手だしと、フェリチェは説得を試みる事にしたのであった。
「本当に殺しちゃったら後味悪いでねーか、てか捕まるわ」
大成功
🔵🔵🔵
『ん?なんだお前?』
「リア充なんぞのためにムショ行きになって残りの人生棒に振るとかアホらしいでねーか!だいたい捕まるようなことしようとしてる時点で正義じゃなくね?」
そも嫉妬戦士も一歩間違えれば捕まりかねないような事をしているわけだが、ただフェリチェもグリモア猟兵もそのあたりの事はわきまえている気はするわけで。正義だと名乗るなら国家権力のお世話になるような事は基本的にはしないし(応用的には……まあいろいろと)、逆にお世話になるなら基本的には正義とは名乗らない(応用的には……まあいろいろと)。フェリチェは相手の言葉の矛盾を突いて説得を試みたのだが。
『何を言うか!リア充を殺すのは正義!国家権力であろうと邪魔をするなら悪だ!』
……やはり聞く耳持たないようだ。まあ今回のフリーダムモンスターはリア充死ね死ね祭をなんらかの理由で楽しめなかった者の怨念の集合なので、もともと狂気に似た強い妄執に囚われており、その思想を修正するのはなかなか困難ではあっただろう。
『さてはお前もリア充だな?』
「お、おらがリア充……!?」
よりにもよって自分がリア充呼ばわりされるとは。シャーデンフロイデの指摘にフェリチェは驚愕に似た怒気をたしかに覚えた。まあフェリチェとて性格はともかく顔は実際かなり可愛い系ではあるので、仮に今の思想を改めて本気で恋人作る方向に尽力するならば、リア充になるのもそう遠い話ではなかったかもしれない。だが、今の道を選んだフェリチェにとって、その言葉は侮辱以外の何物でもなかった。まあ相手はフェリチェの容姿や性格など以前に、単に自分の敵だからリア充に違いないという短絡的な考えでしかないような気はするが。
「許せんべ!こうなったら物理的に説得だべ!」
『何を言うか!俺達が絶対正しいんだ!』
狂気思考で戦闘力を強化するシャーデンフロイデにこちらも戦闘力強化で対抗せんと、フェリチェは大型の激辛唐辛子を口に放り込んだ。たちまち口から全身へと響き渡る灼熱感が全身の血行を活発にし、活力がみなぎってきた。
『くらえ!』
シャーデンフロイデ包丁を手に斬りかかってきたが、それはどうやらフェリチェをさらに怒らせるものであったようだ。
「おまえ!それは人を斬る道具じゃないべ!それは料理に使うもの!」
フェリチェは愛用の中華鍋を巨大化させると、冷気を纏わせた。普段は灼熱に晒される中華鍋が冷気を帯びた時、それはいわば光と闇がそなわり最強に見えるようなものである。そして中華鍋は強化された包丁を容易に受け止め、お返しとばかりのフルスイングでシャーデンフロイデを思い切り吹き飛ばしたのだった。
「ちーっと頭冷やせや!嫉妬はあくまで清く正しく美しく!暗黒面に堕ちんな!」
嫉妬戦士としての誇りに胸を張るフェリチェ……なんか頭が冷える以前に骸の海に強制送還されてしまったような感じがしなくもないが、まあ些細な事であろう。
雁帰・二三夫
「…若いって凄いですよね」
おっさん遠い目をした
「いえ、オブリビオンである以上、相容れない死者ではあるのですが。大人は『全ての人とは分かり合えない』『絶対の正義はない』から手探りで関係性を構築します。声高な主張だけで意見を通せると思うのは幼児と暴力団だけです。児戯しか出来ない貴方達は、もう1度幼児から生まれ直してきた方が良いと思います」
おっさん憐れんだ
「正義の為に犠牲が出るのが仕方ないと思っているなら…わたくしの正義のために、貴方達は犠牲になって下さい」
普通の人を庇うのはトレスに任せ延々敵を100m吹き飛ばし壁等障害物に叩き付ける
全ての敵が壁の赤い染みになるまでバット振るい続ける
●若かったあの頃何も怖くなかった
リア充死ねを叫び、口だけでなく本気でそれを実行しようとするオブリビオンを前にして。
「……若いって凄いですよね」
『いきなりどうした』
遠い目をしながらしみじみとつぶやく雁帰・二三夫に、傍らのトレスは訝し気に声をかけた。
『たしかに二三夫は若くはないが』
「それはそうなんですけどはっきりと言わないで欲しかったです。そんな事はさておき」
改めて眼前のシャーデンフロイデたちを見るに、まあオブリビオンなので外見が実年齢を示しているかは不明だが、少なくとも言っている事の若さ、もっと言えば青さを鑑みるに、精神的には若者という事でまあ問題はないだろう。というより生まれた時間を考えれば若者よりもむしろ赤子同然だ。
「いえ、オブリビオンである以上、相容れない死者ではあるのですが」
『それはその通りだ』
「大人は『全ての人とは分かり合えない』『絶対の正義はない』から手探りで関係性を構築します」
二三夫の言葉は厳然たる現実を告げているのか、それとも過ぎ去りし若き日に失われた何かを懐かしんでいるのか。ただ。
「声高な主張だけで意見を通せると思うのは幼児と暴力団だけです」
失った物に対して憧憬に近い感傷めいたものはあったかもしれないが、それを捨て去った事は決してマイナスな事ではないだろう。あるいはお子様のみならず一部の大人からも枯れた考え方と呼ばれるかもしれないが、少なくともこの場においては間違った事を言っているつもりはない。二三夫はリア充になる事はできなかったし、それについて思う事は山のようにあっただろうが、その解決あるいは代償手段をリア充に対する暴力という形で示す事はしなかった。
『なんだお前は!女連れの男とは、さてはきさまリア充だな!』
そうこうしているうちにシャーデンフロイデは二三夫の姿を見とがめたようだ。見た目だけなら美女であるトレスを伴う姿はたしかにリア充だと疑われても仕方がないだろう。たとえ当人らが否定しようと、だ。
『いや、二三夫は私の下僕だが』
「無駄ですよトレスさん」
珍しくもバットを握りしめた二三夫が一歩前に出た。
「児戯しか出来ない貴方達は、もう1度幼児から生まれ直してきた方が良いと思います」
二三夫の言葉はなぜか、敵手に対する怒りよりも憐れみの成分が強く感じられた。リア充を憎むように生み出された敵を本気で憐れんでいたのか、彼なりの諧謔あるいは皮肉が込められていたのか。それは本人以外の誰にもわかるものではあるまい。
『良い心がけだ、私も手を貸そうか』
「トレスさんは一般人の避難をお願いします、ここは私が引き受けます」
トレスが後方に下がるのを見て、二三夫はさらに前に出た。一般人が安全な場に移動するまでは敵を引き付けておく必要がある。いや、それで済ますつもりもなかった。
『ええい!リア充はどんな犠牲を払っても必ず正す!』
狂気思考で自己強化したシャーデンフロイデは金属バットを構えた。奇しくも二三夫と同じ得物だ。
「正義の為に犠牲が出るのが仕方ないと思っているなら……」
時間を稼ぐのはいいが、別にあれを倒してしまっても構わんのだろう?と言わんばかりに二三夫はバットを握る手をさらに強めた。
「わたくしの正義のために、貴方達は犠牲になって下さい。燃え上がれフレイムブリンガー!」
金属バットが炎と燃えた。二三夫はバトロワシューターらしいが、行使する技は同じアスリートアースの超人スポーツでも野球選手が使う必殺打法によく似たものであった。普段ならバトロワプレイヤーらしさ壊滅であるとか自虐してみせるのである二三夫だが、その代わりに敵に対する怒りをぶつけるがごとく、熱血が炎と化して燃え上がるバットを構えてみせた。それは大人になったと称してあきらめたように捨て去ったはずの、若かりし日の情熱が蘇ったかのように見えなくもないものであった。
『死ねリア充!』
「実に熱いですねえ、でも今に限ってはこのおっさんの方が熱いのです!」
互いのバットが交錯し、次の瞬間、吹き飛ばされたのはシャーデンフロイデの方であった。そしてそのまま壁に叩きつけられ潰れたトマトのようになって消えた。勢いに乗った二三夫はさらにバットをフルスイングし、シャーデンフロイデたちを次々と吹き飛ばして骸の海に送っていった。
「……わたくしとしたことが、少々熱くなってしまったようですねえ」
目に映る全ての敵を消し去った後、一気に熱が冷め、もとのおっさんに戻った二三夫は一息ついた。ひさびさの感情の奔流は、ちょっとだけ恥ずかしい、でもそれほど悪くないものであった。
大成功
🔵🔵🔵
高崎・カント
遠藤(f42930)と連携
もぎゅうううっ!
ナイトメアビーストの仕業だったのですか!
あのシートも罠だったのですか!
フリーダムモンスターが相手なら手加減はいらないのです
ちょっとそこの最近よくご一緒する人(名前知らない)
魔方陣をこの辺に置いてほしいのです
円の軌道を描いて飛ぶのです【UC使用】
軌道上に魔方陣を設置してもらって、1周毎に加速するのです!
十分加速したところで突撃なのです!
カントのキスの日を邪魔した罪は重いのです!
爆発するのはそっちなのですー!!
お祭りの人達にも言うことがあるのです!
悪ふざけでも死ね死ね言ってたら、本物の人が来ちゃうのです
するなとは言わないけど、やり方は考えた方がいいのです
遠藤・修司
カント(f42195)と連携
ああ、なるほど。非モテ同士の内部抗争だったのか
『穏健派と過激派の争いだね。こういうのは内ゲバの方が揉めるんだよ』
なんというか、迷惑な話だなあ……
見たことのあるモーラット(名前知らない)を巻き込んじゃってたか……
ああ、うん。全部ナイトメアビーストの仕業なんだよ
やったの僕じゃないけど、けしかけたことがバレたら面倒だし黙っておこう
後ろで炎の魔弾撃ってたら、モーラットが話しかけてきた……
魔方陣を置くの? 別にいいけど?
4つ置いたら、運動エネルギーが3の4乗で81倍になるよ
うわ、すごい速さでグルグル回ってる、怖……
非モテばかり出てくるね
アレックスラインもそうなのかな……?
●わたしとあなたは友達じゃないけど
同じリア充死ねを叫びながら、その内容は180度……ほどではないがかなり食い違いのあるリアル非リア(ややこしい)とフリーダムモンスターたるシャーデンフロイデを遠くから眺めていた遠藤・修司は。
「ああ、なるほど。非モテ同士の内部抗争だったのか」
思いっきり勘違いをしていた。その言葉に別人格の『修司』も同調する。
『穏健派と過激派の争いだね。こういうのは内ゲバの方が揉めるんだよ』
「なんというか、迷惑な話だなあ……」
まあフリーダムモンスターというものがもとはといえば祭りを楽しめなかった者のマイナスの感情から来ると思えば、裏を返せば情念のおおもとはリア充死ね死ね祭を楽しみたいという気持ちからだっただろうし(そうでないのもあったかもしれないが)、そういう意味では『内部抗争』という呼び方もあながち大きく的外れというものではないのかもしれないし、確かに分類するなら穏健派と過激派という言い方も間違いでもないのかもしれない。ただしあくまでフリーダムモンスターは外的要因であるために、やはり内部抗争という言い方はちょっと違うような気はした。
「さて、どうしたものか……おや?」
そんな修司の視界に一匹のモーラットが入った。
「もぎゅうううっ!」
高崎・カントは怒っていた。ようやっと非リアたちの追跡を逃れて戻ってこれたと思ったら、目にしたものは暴れるフリーダムモンスター。
(ナイトメアビーストの仕業だったのですか!)
もともとシルバーレイン世界で戦っていたカントはむろんその脅威もよく覚えているだろう。今回暴れているフリーダムモンスターがかつてナイトメアビーストによってクリスマスに出現した事も。そして。
(あのシートも罠だったのですか!)
やはり思いっきり勘違いをしていたようだ。あれを用意したのは非リアであって別にナイトメアビースト関係ない。そして。
(あー、巻き込んじゃってたか……)
カントが追いかけられたのは半分は修司のせいであった。そういえば非リアをリア充たちにけしかけたのは修司でしたねえ。まあカントは巻き込まれた形だったわけだが。ただまあ、そんな事は口には出す必要はないだろう。言ったら面倒な事になるのは目に見えていたし、そもけしかけたのは修司本人ではないし。
「ああ、うん。全部ナイトメアビーストの仕業なんだよ」
(あ!最近よくご一緒する人!もぎゅううう!そうだったですか!許せないです!)
カントと修司は数度顔を合わせ、共闘する事もあったが、それでも両者の関係は『最近よく顔を見る人』程度であり、互いの名前すら知らないのだという。まあ名前知らなくても共闘できれば問題ないのかもしれないが。そうこうしているうちにフリーダムモンスターのシャーデンフロイデの一団がふたりに気付いたようだ。
『あ!あのモーラットはたしかリア充だったな!悪だ!』
『もうひとりの優男の方は……根暗そうだしリア充には見えないが』
『見た目で判断しちゃいけない!リア充と一緒にいるんだからリア充の可能性がある!すなわち悪だ!』
「うわ、むちゃくちゃ言うなあ」
カントが襲撃対象になるのは自明の理だとしても、無理やりな理屈で修司を攻撃対象に入れるとはさすがに予想外だった。まあシャーデンフロイデの狂気にも似た妄執を考えれば想像の範疇ではあったかもしれないが、にしても別にリア充というわけではない修司にとってはいささか不本意ではあった。
『いかなる犠牲を払ってでも悪を撃ち滅ぼすぞ!』
『そうだ!これは正義を為すための聖戦だ!』
シャーデンフロイデたちの掛け声は自らを強化し、それに他者を強化する掛け声が重なってえらいことになりつつある。放っておけば無限に強化されるのではないかと懸念される程であり、猟兵側としても手を打たなければなるまい。で。
(そこの人!)
「ん?僕の事?」
迫りくるシャーデンフロイデの動きを火炎弾で止めていた修司にカントは声をかけた。
(魔方陣をこの辺に置いてほしいのです!)
「魔方陣を置くの?別にいいけど?」
修司の【魔弾の射手奥義】は、本来ひとつずつ展開する魔法陣を同時に4つ設置できるようにしたものであり、これによって範囲にやや不安のあった魔法陣を数並べる事で範囲の狭さをカバーするという運用ができるようになった。また、単に範囲を広げるだけではなく……。
(感謝なのです!じゃあ、行くのです!)
カントは円を描くように走り始めた。ちょうどその軌道上に魔法陣が4つ設置される。魔法陣の効果は通過した物の運動エネルギーを3倍もしくは1/10にするというものであり、今回は3倍にする方を選んだ。で、カントが魔法陣を4つ経由して1周したなら、運動エネルギーは3の4乗で81倍になる。結果として。
「うわ、すごい速さでグルグル回ってる、怖……」
(こ、これは……思った以上にきついのです!でもがんばるのです!)
強烈なGに耐えつつ回転を続けるカント。これもゆーいっちゃんとの愛を妨害するけしからんやからをやっつけるため。まさに愛の為せるわざであった。そして何周かしたところで。
(そろそろ十分なのです!カントの全力!受けてみるのです!)
突っ込んでくるシャーデンフロイデたちに向け、カントは自らを静電気を帯びた大砲の弾をして発射したのである。【超電磁モーラット砲V】……モーラットレールガンビクトリーはこれまでにない速度をもって炸裂する事になった。
『リア充は爆発しろ!!』
(カントのキスの日を邪魔した罪は重いのです!爆発するのはそっちなのですー!!)
大爆発。さすがに超絶的に強化されたとはいえ、バットや包丁しか持っていない状態で防ぎきれる攻撃ではなかったようだ。かくしてカントの怒りの一撃はシャーデンフロイデたちをまとめて吹き飛ばしたのであった。
(ちょっと全員そこに座るのです!)
それでもカントの怒りは完全におさまりきらないようで、そこらにいた祭りの参加者たちはとばっちりを受ける形になった。まあ先刻追い掛け回した事もあるからまるきりのとばっちりでもないかもだが。ちなみに猟兵としてしゃべっているので、猟兵特性のおかげでモーラットがしゃべった!とはならないようだ。
(悪ふざけでも死ね死ね言ってたら、本物の人が来ちゃうのです!)
本当に本物が来てしまった後では、さすがの非モテたちもぐうの音も出ない。まあこんなイレギュラーそうはないとは思うけど、確率低かろうが実際に起きてしまったわけだし。実際今後同じような事がないとは言えないわけで。
(するなとは言わないけど、やり方は考えた方がいいのです!)
「は、はいッッッ」
結果として非リアたちはリア充に説教されるという理不尽を味わってしまったわけだが、まあ助けてくれた相手なんでリア充が何を言うかコノヤロウとはならなかったようだ。
「非モテばかり出てくるね」
それを遠目に見ながら修司は考えた。本当は彼もいっしょに正座しなければならなかった気がしないでもないが、まあささいな事だ。
「アレックスラインもそうなのかな……?」
うーん、どうなんだろうなあ。さて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
しね充達もスゲーが敵さんもキレてんな
なーあいつらヤバすぎだろ
【催眠術】で
退却退却しね祭は終了だぜーと離脱させる
ユキエ先導を頼むよ
あ、退路は竹槍と藁人形目印なー
しゃーでんさん達
りあ充殺す!って息巻いてるけどさ
没頭してんな
没頭できる趣味あるんだろ
アンタ等こんだけ情熱注いでたらもうりあ充じゃね?
挑発合間に藁人形で殴る
脆い藁はばらけて周辺に散る
藁にUC発動の為毒針仕込み済
敵達の肌も刺すように【念動力】でも操作【罠使い】
UC行使
敵がよろめく・動けない
そんな隙を突いてクナイを手に跳躍して接近し自重も掛け【串刺し、暗殺】
反撃受けたら【カウンター】で薙ぎ、裂く
真の姿か
正義と自己憐憫
酔ったら負け、てね
アドリブ可
●非モテと非リアは同じものか
「しね充達もスゲーが」
さらりと鹿村・トーゴは重要な事を言った。そう。トーゴは祭りの参加者である非モテ達あるいは非リア達をこう呼んだのは。『しね充』と。そういえば似たような事を言っていた猟兵がいたような気もしたが、確かにこういう祭りに集まってみんなでバカ騒ぎができるという時点で彼らもまたある意味では充実しているという事なのかもしれない。ただ、トーゴの言葉にはもう少し別の意味があるようだが……それはまた後程。
「敵さんもキレてんな、なーあいつらヤバすぎだろ」
当面問題にすべきは文字通りの意味でリア充死ねを叫ぶどころかそれを自らの手で実行しようとしているフリーダムモンスター、シャーデンフロイデであった。むろんそのような事を許すわけにいかないトーゴだったが、その前にやるべき事はあった。それは危険にさらされている参加者たちを避難させる事だ。
「なあ、あんたら」
まだ避難を終えていない非リアたちに呼びかけると、返事を待たずに催眠術をかける。たちまち動かなくなったリア充たちにトーゴは避難を呼びかけた。
「はい退却退却、しね祭は終了だぜー」
催眠状態にある参加者たちはユキエに先導されて避難場所を目指していった。第1章で設置された大型のわら人形はそのための目印となったようだ。そしてひととおり一般人たちの姿が見えなくなったところで、改めてトーゴは敵に向かい合った。
「しゃーでんさん達りあ充殺す!って息巻いてるけどさ」
呼びかけつつ、トーゴは等身大わら人形をひとつ両手で抱えていた。
「没頭してんな」
『なんだお前は!』
「没頭できる趣味あるんだろ」
趣味か……うーん。趣味と呼ぶにはちょっと不健康な気はするが、まあ趣味かどうかは健康云々で決めるものでもあるまい。|百科事典《Wikipedia》的な意味で趣味とは『人間が自由時間に、好んで習慣的に繰り返しおこなう行為、事柄やその対象のこと』を指すらしい。ならば嫉妬活動が趣味と呼べるかは、好き好んでやっているか否かであろう。リア充を呪う事が好きでやっているなら趣味だろうし、やりたくてやってるわけじゃないけどリア充は憎いから仕方なくというなら違うという事になるだろうが。まあこの場合は真実がどうかというのはそこまで重要でもない気はしなくもないか。
「アンタ等こんだけ情熱注いでたらもうりあ充じゃね?」
『お、俺達がリア充だと!?』
ようはイチャモンだろうとこの言葉を突き付ける事が重要だったのだ。
『そういえば貴様は鳥とリア充的行為を行っていたな!やはりリア充か!そのゆがみ、俺達が修正してやる!死ね!!』
祭りの参加者が見逃してくれた事もフリーダムモンスターは見逃す気はなかったようだ。バットや包丁を持って次々に突っ込んでくるが、トーゴはこれを回避しつつ、わら人形で一撃。わらの破片があちこちに飛び散るほどの一撃は、むろん大したダメージにはならない。
「まあまあ、そう慌てなさんな」
『ええい!リア充を滅ぼすためのわら人形で俺たちを殴るとは!やはりリア充か!』
ますます興奮したシャーデンフロイデたちは真の姿を現す……そういやオブリビオンの真の姿ってどんなもんだろうな?まあ各自で想像してもらえばいいか。ちなみに筆者的には姿一緒で戦闘力だけ強化されたもののような気はする。ただ邪悪なオーラめいたものは増強している気はするが。
「真の姿か……正義と自己憐憫、酔ったら負け、てね」
敵の猛攻を回避しつつ、トーゴは地面にちらばったわら人形の破片を念動力で動かすと、敵たちに触れさせた。むろんそんなものが皮膚に刺さったからといって大した痛痒にはならないはずだ……が。
『なんなんだぁ今のは?』
「……なに、些細なかすり傷さ」
『!?』
次の瞬間、シャーデンフロイデたちの視界がゆらいだ。回転するようなめまいが頭を揺るがし、歩みを不確かなものとする。頭を動かす事によってめまいと吐き気はさらに強くなる。これではまともに戦う事もできない。
『な、何を……』
「言っただろ、ただのかすり傷だって」
むろんただのかすり傷ではない。シャーデンフロイデたちを刺したのはわら人形の破片などではない。人形に密かに忍ばせておいた毒針なのだ。その毒が三半規管に作用して回転性のめまいを引き起こさせたのだ。
『お、おのれ!』
それでもどうにか凶器を振るうシャーデンフロイデたちだったが、卓越した忍びのトーゴには回避は容易だった。お返しにと振るわれたクナイが次々に敵を倒していった。
「りあ充ねえ」
あらかた敵を片付け、トーゴはつぶやく。たしかに敵はトーゴをそう呼んだが。
「オレになれるもんかねえ」
いろいろな事が頭の中に回っていた。
大成功
🔵🔵🔵
中村・裕美
「……分かってないわね……リア充を殺したいとしても……死んで欲しい訳じゃないの」
殺したいほどの憎悪をぶつけたいが、その結果で死んで欲しくない。この複雑な心の機微は分かるまい
「……攻撃したいならどうぞ……どうなっても知らないけど」
などと言いつつ【早業】【ハッキング】で相手の脳に攻撃プログラムを仕込み、相手の攻撃の意思をトリガーに【プログラムド・ジェノサイド】を発動。同士討ちさせる
「……自分達の正義の力……堪能できたかしら?」
こちらに攻撃しようとしてもプログラムした攻撃なら【見切り】は容易い。隙を突いてドラゴンランスを呼び出して【串刺し】
「……正義を振りかざす資格なんて……誰にもないわ」
●何度でも繰り返そう
「……分かってないわね……」
本気でリア充死ねを叫ぶシャーデンフロイデたちに、中村・裕美はつぶやいた。
「リア充を殺したいとしても……死んで欲しい訳じゃないの」
裕美も非リアとして、リア充どもに殺したいほどの憎悪をぶつけたい気持ちは山のようにある。が、その結果で死んで欲しくない。それは別の猟兵が言ったように、本当に死んじゃったら後味悪いというのもあるだろうが、さてどうだろうか。そういえば何度か『リア充死ね』には2通りあると書いた。今シャーデンフロイデが叫んでいるような本当に死んでほしいのと、裕美や他の非リア系猟兵や祭りの参加者たちのような、本当には死んでほしくないのと。しかし考えてみれば『死んでほしくない』にも2通りあるような気がしないでもない。すなわち、憎悪はぶつけたいけど実害は及んでほしくないのと、死ぬまで行かなくても生きたまま地獄を味わってほしいのとの2種類。まあそれにしたって基本的には前者なんだとは思うけどねえ。とかいろいろ考えてみると、最近死ねという言葉そのものを忌避する傾向があって、まるきりそれが悪い事というわけではないかもだけどやはりそれについてはいろいろと思う事が……さすがにそれ過ぎた。このあたりで話を戻そう。
『何を言うか!』
目ざとく裕美の言葉を聞きつけたシャーデンフロイデは激怒した。いずれにせよ、シャーデンフロイデには死ねという言葉ひとつとってもこれほどまでにいろいろあるんだという複雑な心の機微は分からないようだ。まあフリーダムモンスターというものが人間の後ろ向きな情念に由来するという事もあり、硬直した思考になってしまうのは仕方のない事かもしれないが。
『リア充が死ぬのが正義!さてはお前はリア充だな!』
「……まさか……私がリア充と呼ばれるとは……」
敵の発言はある程度予想されたものであったとはいえ、やはり衝撃的なものではあった。リア充を憎む自分がリア充呼ばわりされるとは。
『そうだ!わりとスタイルは良さげだし、そのうちそのメガネを外してリア充を目指すぞとか考えているに違いない!脅威は事前に排除する!』
「……え……」
うん、実はスタイルはわりとガチだ。眼鏡はバフかデバフかというのもまた別の議論を招きそうな話題ではあったが、まあここで深く語るような事でもあるまい。なので本人がその気になればかなりポテンシャルは高そうである。まあその気はないだろうし、何より本当だとしてもそれを理由に殺されそうになったんじゃたまったものではあるまい。
「……リア充は殺したいけど死んで欲しいわけじゃない……でも、あなたは殺したいし死んで欲しいわね」
『殺すのは俺達だ!これは正義を成すための聖戦だからな!』
ドラゴンランスを呼び出して戦闘態勢をとった裕美を見て、シャーデンフロイデたちも宣戦布告代わりの演説で集団強化を行った。あとは衝突するだけだ。
「……攻撃したいならどうぞ……どうなっても知らないけど」
『よく言った!覚悟しろ!!』
裕美の挑発にのってシャーデンフロイデが突っ込んでくる……が。その時驚くべき事が起こった。
『!!??』
『ま、待った!殺すべき敵はむこうだぞ!』
なんと敵が同士討ちを始めたのだ。攻撃する者もされる者も何が起こったかわからぬままに凄惨な光景を展開するだけである。その様子を表情も変えずに裕美は眺めていた。
「……自分達の正義の力……堪能できたかしら?」
裕美が使用したのはUDCアースのUDCメカニックの基本ユーベルコード【プログラムド・ジェノサイド】であった。その説明はこうだ。『【予め脳にプログラムしていた連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。』これを見れば多くの者は自分が使用する攻撃だと考えるだろう。裕美はそれを相手の行動として使用したのだ。相手の脳にハッキングで攻撃プログラムを送り込み、味方を攻撃するように操作したのである。この発想はなかった。まさにユーベルなコードである。
『だ、だが正義は俺にあるのだ!』
同士討ちで数を大幅に減じたシャーデンフロイデであったが、それでも一部がどうにか軌道修正して裕美の方に向かった。だがその動きをプログラムしたのは他ならぬ裕美本人であるだけに回避は容易であった。そしてドラゴンランスによる攻撃で敵に傷ついた敵に次々ととどめを刺していったのであった。やがて最後のシャーデンフロイデも倒れて消滅するのを見届け、裕美はつぶやいた。
「……正義を振りかざす資格なんて……誰にもないわ」
残された敵は、あとひとりのみ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『アレックス・ライン』
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POW : フリーダムグラッジ
高速で旋回する【怨嗟の炎の渦】を召喚する。極めて強大な焼却攻撃だが、常に【ロックの演奏】を捧げていないと制御不能に陥る。
SPD : フリーダムナイトメア
【人々の恨み】から【黒馬のナイトメア】を召喚する。[黒馬のナイトメア]はレベル×5km/hで飛翔し敵を攻撃する。使用者はこれに騎乗可能。
WIZ : フリーダムランページ
【ロックを聴かせた対象】から【フリーダムモンスター】を召喚する。[フリーダムモンスター]に触れた対象は、過去の【フラストレーション】をレベル倍に増幅される。
イラスト:七夕
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ロックンローラー
そしてついに猟兵たちの前にナイトメアビースト【アレックス・ライン】が現れた。
『クソ、たったあれだけの数に、フリーダムモンスターがこんなに早く滅ぼされたとは……』
頼みの綱の侵略蔵書もまだ到着していない。それでもアレックスは、吠えた。
「クソ!認めんぞ!絶対の破壊を貴様らに与えてやルァァァッ!!いかに破壊が困難であろうとも、必ず破壊する。それが俺の力、俺の忠誠、俺の矜持!俺のフリィィダァァァム!!』
アレックス・ラインは両手の鉤爪で攻撃してくる。フリーダムの精神で攻撃してくるその威力自体も侮れないが、以下に述べる3種類の能力もまた脅威だ。
【フリーダムグラッジ】はロックミュージックの演奏をする事で高速で旋回する怨嗟の炎の渦を召喚するというものだ。炎はきわめて強力なものであるらしいが、相手の演奏を止めれば制御不可能になるらしいので、そこに付けこむ隙があるだろうか。
【フリーダムナイトメア】は高速飛翔する黒い馬を呼び出すものだ。悪夢の名を与えられた馬は蹴りや体当たりで攻撃を行い、その威力はまさに悪魔級だという。またアレックスが馬に乗って高速攻撃を行うのもまた脅威だろう。
【フリーダムランページ】はロックミュージックでフリーダムモンスターを呼び出し、相手の過去のフラストレーションを倍増させるものだ。戦闘中に精神が乱れたらアレックスの爪攻撃を防御する事も難しくなるだろう。過去にどんなフラストレーションがあり、いかにそれを乗り越えるかを考えるかは有効かもしれない。
以上、かつて銀の雨の世界で大暴れしたその実力は折り紙付きであり、恐るべきものであるが、それでもなんとかしなければならない相手だ。だから、その、なんとかしてください。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
また激しい方ですねぇ。
『FAS』により飛行、『FLS』で『FES』を召喚後、空間歪曲障壁を展開しまして。
『FES』の対呪結界を重複、『炎』属性を指定し【暜噄】を発動しますねぇ。
これで『召喚』という『空間属性』の性質と『炎の渦』自体を吸収してしまえば、作用しうるのは『怨嗟』の部分のみ、二重の防御で十分に防げますし、抑えている間に『FBS』で『ギター』乃至『腕』を[部位破壊]すれば、以降の『演奏』も封じられますぅ。
そして、強力な能力を吸収した分、相当な『強化』が得られますので、『万象吸収の波動』に『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FGS』の重力波を併せ、一気に叩きますねぇ。
●本当に自由なのはどっちだ
戦場に現れるなり絶叫したアレックス・ラインを見て、夢ヶ枝・るこるは。
「また激しい方ですねぇ」
実に素直な感想を述べた。まあかつては『フリーダムファイター』などと名乗るロックンローラーである。ただ、先日の予兆を見る限り、またかつての銀の世界での戦争を知る者なら覚えているかもしれないが、本来はむしろ冷静な人格であるらしい。これはるこるや他の猟兵が知らなくても仕方のない事だったが、アレックスがあらぶっている時というのは追い詰められた状況である。そう、まさに侵略蔵書が来る前に手下を全て失った、今だからこそ、こんな感じなのだ。
『俺が破壊するのはお前か』
ただ、追い詰めたという事実は存在するが、それでも追い詰めた事と撃破した事の間には天と地の差が存在する。追い詰められてはいたがいまだに元気イッパイなアレックスは獣爪を構えた。いつもながら、るこるは一番槍は武門の誉、他の者に渡さないとばかりに他の猟兵に先立って真っ先に敵に突っ込んでいくが、それは当然ノーダメージの強敵と相対しなければならない事を意味している。だがその事についてるこるは全く気負いも恐れもない。るこるは別に武門ではないが、もしかして信じる神の教えにそういうのがあったりするのだろうか。
『破壊し甲斐のありそうな奴だな、さあかかってこい』
「では、行きますよお」
と言いはしたがむろんるこるはいかにも白兵戦を得意とする者に真っ向から向かうような事はしない。そういうのはそういうのを好む武辺者に任せておけば良いし、やりたがる者はいくらでもいるだろう。るこるはあくまで自分のやり方でやると、翼を広げて大空に舞い、空間歪曲障壁に対呪結界を張った。
『はん、まあそう来る奴もだろうな、だがそういうガチガチの守りだからこそ、破壊し甲斐があるってもんだぜ!』
アレックスはロックギターを構えると強烈な音楽を奏で始めた。炎を思わせるような激しい速弾きは本当に炎を呼び、それが渦を巻いて踊るように動き回った。それはまるで自由への渇望が生み出した|自由の怨念《freedom grudge》が形を得たかのような業炎であった。だが炎が来る事をあらかじめ知らされていたるこるは、それにメタを張った対策を用意していたのである。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その収穫の理をここに」
そのユーベルコードの名は【暜噄】といった。暜=普、噄=喫、であろうか。読みの『カイシキノイコウ』は……『解式の威光』いや『皆敷』かもしれん。まあいいや。ともあれ。
『こいつでこんがりとチャーシューになりやがれ!』
アレックスがさらにギターをかき鳴らすと怨念の炎の渦がるこるに飛んだ。いかに障壁を張り巡らそうが全て破壊して敵を焼き尽くすというフリーダム精神では放たれた炎は、だが途中でその勢いを弱めた。
「無駄ですよぉ、全て収穫されるのですぅ」
『なんだと!?』
これが【暜噄】の効果だった。アレックスが使用したのは『怨嗟の炎の渦の召喚』であった。【暜噄】は相手の技の中で特定の物理科学属性および時間空間属性を吸収するというものである。で、指定されたのは『炎』そして『召喚』という『空間属性』であった。それらを吸収すれば残るのは怨嗟のみ……
『炎ならまだしも、召喚を吸収……だと?』
アレックス、説明を聞いてもわけがわからんという顔。まあたしかに難しいよね。ただ確実に言えるのは、論理的な事は別にしても、である。
「怨嗟だけなら十分防げますねえ」
『|クソ《F●●K》!!俺の怨念がこんな事で!!だが次はこうはいかねえぜ!!』
悔しがりつつもアレックスはさらにギターを強くかき鳴らした。一般論であるが吸収の力を持つ者は確かに恐ろしい。で、それを攻略する方法は……いくつかある。まず吸収できる属性が決まっている場合、別の力で攻撃する手はあるが、今のアレックスにそれは難しい。ならば後は吸収無効効果のある能力を発動させるか、相手の吸収ポテンシャルを上回るだけの力を注ぎ込みパンクさせる事であろうか。他にもあるかもしれないが、現実的なのは間違いなく一番最後だろう。
『うおおおおおおお』
アレックスの高速ギターに合わせて炎の渦がさらに高まる。だがるこるとて黙って見ているはずはない。
「それはダメですねぇ」
『ぐっ!?』
チャクラムが飛ぶとアレックスのギターと腕に命中し、演奏が中断された。それに伴って炎の渦がコントロールを外れ、無秩序に暴れ始めた。
『ちいッッッ!あじな真似を!この中断は高くつくぜ!』
だがアレックスのフリーダム魂はおさまるどころかますます燃え上がったようだ。両腕の獣爪を構えると、制御を失って襲い来る炎に向き直った。
『これが俺のフリィィダァァァム!!』
そして、アレックスはなんと炎が生み出す上昇気流に乗り、高々と飛びあがったのだ。そしてそのままるこるに真っ向から向かっていく。繰り出された両の爪は空間歪曲障壁も対呪結界もあっさり斬り裂いていった。
「……なんか先程もこんな光景見たような気がしますねえ。全砲門発射ですぅ!」
『させるかぁ!!』
あくまで強力なジャンプであり飛行ではないため軌道修正は不可能。そう見たるこるは吸収した属性で強化された『万象吸収の波動』に加えて砲撃用祭器をありったけ叩き込んだ……が。さすがにナイトメアビーストはフリーダムモンスターとは違う。飛んでくる攻撃を次々に斬り落とし、あまつさえ波動すら斬り裂いてみせたのだ。そしてついにるこるにその爪を……。
「……そうでした、こうすれば良かったんですねぇ」
……回避された。撃ち落とせなければ避ける。簡単な話だ。さすがのアレックスも空中で軌道を変えられるほどにはフリーダムではなかったようだ。そして改めて猛攻撃が加えられた。
『お、俺のフリーダムが足りていれば空ぐらい飛べたものをッッッ』
集中砲火を受けたアレックスは無念の叫びとともに墜落していった。それを見ながら安堵とともにるこるはつぶやいた。
「……激しい方でしたねえ、本当に」
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
なんか不機嫌な親玉だねェ
この山の【地形の利用】して枝葉に身を隠し【視力、聞き耳と野生の勘、忍び足】で相手の足音から位置を見定め一擊目は奇襲したい
UCの蜂達七匹を音無く奴の周囲に張らせ
クナイを構え飛び降り背後から突き裂き【暗殺】
【武器受けと激痛耐性】反撃を軽減させる
敵UCの火は【念動力】で直撃逸らすが息も止めて対処
さァ七針こっから【カウンター】で仕掛けるぞ
手や喉を刺せ
【目潰し】も仕掛けろ
火の二擊、三擊をマトモに撃たせるな
敵が苛立ったら足元を狙いクナイで斬りつける
そっちの鉤爪と斬り合いと行くか?
こーやって強敵とやり合うのって羅刹的にはりあ充なんだぜ
愛と正義の命ずるまま、とはいかねーがなー
アドリブ可
●いまさらやめてはだめなのだ
ハイテンションなアレックス・ライトを見て、激しいと表現した猟兵がいたが、鹿村・トーゴの見解は少し違っていた。
「なんか不機嫌な親玉だねェ」
まあたしかにアレックスにとって機嫌が良い理由は現状まったく存在しないだろう。せっかく作り出したフリーダムモンスターがあっさり全滅させられ、しかも頼みの綱の侵略蔵書の到着も間に合わなかったのだ。繰り返しになるが、アレックスは普段はむしろダウナーな感じすらする人のようであり、こんなに荒れているのはそれ自体が追い詰められた証拠と言えるのである。
「さて、できれば初撃は奇襲をかけたいもんだ」
ちなみにアレックスを見ているトーゴはインドならぬシルバーレインの山奥に身を隠していた。むろん修行するためではない。強敵相手ならば先手を取った方が有利だからである。別世界のニンジャの戦いは互いにアイサツを交わしてから始められるが最初の一撃だけアイサツなしのアンブッシュが許されている……のとはあまり関係ないかもしれない。折しもアレックスは他の猟兵と激闘を繰り広げていた。当然トーゴに気付く気配はない。あとは最高のタイミングで先制攻撃を仕掛けるだけである。トーゴはその時を待った。
そしてトーゴの前にアレックスが……落ちてきた。どうやら空中で猟兵の攻撃を受けたらしい。そのまま受け身も取れずに地面に激突したが、まだまだ元気そうだ。トーゴにとっては願ってもないチャンスであった。
「七針、お前たちの出番だな」
トーゴは不可視の大蜂7匹を送り込みつつ自らも飛んだ。クナイを構えるとアレックスの背後を襲った。
『|クソ《F●●●》!!新手か!』
すぐに気づいたアレックスは爪で迎撃しようとするもさすがに攻撃を受けた上に高空から落下したばかりとあっては姿勢に問題があった上にダメージから動きも鈍り、トーゴのクナイが背中に深々と刺さる。だがさすがはかつて戦争のボスを張ったほどの男である。反撃の一撃は確実にトーゴをとらえたが、予測していたトーゴはすぐさま敵の体からクナイを引き抜き致命の一撃を受け止めた。それでも完全に防ぎきれず、爪の一撃がトーゴをかすめる。
「……っち、それでもやっぱ痛てえな」
『当たり前だ!今のを防いだだけでも大したもんだ!』
痛みに耐えつつ距離を取ったトーゴに対し、アレックスはギターをかき鳴らした。アレックスは別にニンジャというわけではないし、トーゴも忍者ではあるがニンジャではないので当然アイサツはなしだ。
『今度はこっちの番だ!俺のフリーダムを見せてやるぜ!』
「ここで来るかね」
ギターに合わせて沸き上がった怨嗟の炎の渦がトーゴを襲う。得意の念動力でこれを防ごうとするトーゴだったが、やはり祭りに参加できなかった怨念が生み出す炎は強い。完全に防ぎきれないと悟ったトーゴは息を止める。怖いのは外側の火傷もだが、炎を吸い込んだ事による気道熱傷も恐ろしい。最悪、気道の閉塞により呼吸ができなくなってしまう事もありえるのだ。体外と体内の両方を守るべく、トーゴは気合を込めた。
そして炎がトーゴを包み、やがて完全に覆い尽くし……。
『ほお、こいつで生きてるか』
「……なんとかねぇ」
凄まじい業火が晴れ、どうにかトーゴは両の足で立っていた。それはトーゴが業炎に耐えるための準備と気合を十分に用意していたからであるが、不意打ちの初撃の影響もあるいはあったかもしれない。ともあれトーゴは強烈な怨念の炎から辛くも生き残ったが、だがそれで満足はできない。次の攻撃は間違いなく今よりも激しいものになるだろうから。
『それとも俺のフリーダムが足りなかったか?だが今度はそうはいかねえぜ』
「……七針、仕掛けろ」
再度ギターをかき鳴らそうとしたアレックスの手を激痛が襲う。次いで喉や目といった急所を狙って攻撃が繰り出される。あらかじめアレックスの周囲に配置していた透明の蜂がトーゴの指示で次々に仕掛けたのだ。
『|クソ《●U●●》!!俺にフリーダムを鳴らさせねえつもりか!』
「さすがに今のをもっぺんくらいたくはないもんでね」
初撃をあえて受け、2撃目を放とうとするところを妨害して防ぐ。これがトーゴの計画だった。さしもの透明な蜂の攻撃とはいえ敵が元気な状態だったらその動きは見切られる恐れがあるだろう。2撃目は初撃を上回る演奏を行おうとするだろうし、戦いが続いて疲労がある程度蓄積された状況でそれを行おうとするならその分隙も出てくるだろうから蜂の攻撃も決まりやすくなるに違いない。トーゴの狙いは見事に的中した形になった。
『|クソ《●●C●》!!こうなりゃロックなんざいらねえ!こいつでカタをつけてやるぜ!』
演奏を妨害されて頭に血が上ったアレックスは両手の獣爪を振りかざした。そして気配から不可視の蜂の動きを察知し、爪を一振りすると、足元に一本の針が転げ落ちた。針に使役霊を降ろしたものこそ蜂の正体だったのだ。
「そう言ってくれるのを待ってたさね」
だがそれはトーゴの狙い通りであった。炎を封じて白兵戦に持ち込めば自分にも勝ち目がある。この展開に持っていく事でどうにか勝ち筋が見えてきた……のもあるのだが、だがそれだけではなかった。
「こいつでそっちの鉤爪と斬り合いと行くか?」
『いい度胸だ!俺のフリーダムを見せてやるぜ!』
ダメージなら五分と五分だ。トーゴはクナイでアレックスの足元を狙いにいった。正面からぶつかりはするが、先刻のようにクナイと獣爪のぶつかり合いは避けたい。あくまで相手の隙を狙うのが忍びのやり方なのだ。
(りあ充かー)
ふとトーゴは先刻の言葉を思い出した。
(そうだ、こーやって強敵とやり合うのって羅刹的にはりあ充なんだぜ。愛と正義の命ずるまま、とはいかねーがなー)
そう。別に恋人とイチャつくだけがリア充ではないのだ。人それぞれにリア充の形があったっていいじゃないか。今のトーゴはまさしくリア充なのだ。
「隙あり!」
そしてトーゴの充実ぶりが動きにも表れたのか、ついに一撃がアレックスに入った。
『|クソ《●●●K》!!フリーダムがまだ足りてなかったてのかッッッ』
このままだと勢いに飲まれる。危惧したアレックスは一度退くしかなかった。
大成功
🔵🔵🔵
フェリチェ・リーリエ
おー!お前さんが偉大なる先達と噂のフリーダムモンスター…栗とマス(違)だっぺか!
…と若干尊敬もしてたんだども。せっかくのリア充死ね死ね祭りをガチの笑えねえ祭典にしてくれたことはきっちり反省してもらわんといかんべ?
嫉妬戦士がいらん風評被害被るとこだったでねーか!てかおらリア充呼ばわりされたんだべが!?
今一度その根性叩き直してやらぁ!
炎の渦は【火炎耐性】のある中華鍋を【武器巨大化】で巨大化して盾代わりに防ぎつつヴァルキリーの翼で飛び上がり旋回、スピードを上げ『ダイナミック頭突き』をお見舞い!演奏中に頭突きされたら止めざるをえまい!
その炎はリア充だけに向けるべきもんだろが!仮にも同胞を燃やすでねえ!
●保守と革新に本来優劣はない
ナイトメアビーストの『フリーダムファイター』アレックス・ラインはかつて銀の雨の世界で大暴れをしていた。その主なやり口は、様々な鬱屈を抱えた人の前に現れ、そのフラストレーションをもとに『フリーダムモンスター』を生み出し暴れさせるというものであった。そして人々のフラストレーションが最高潮に達する日こそクリスマスである。あの予兆の際に『|うーちゃん《ハビタント・フォーミュラ》』が名乗っていた名『ジャック・マキシマム』。そいつに命じられ、クリスマスの日に溜まった、様々な理由でクリスマスを楽しめない者たちの怨念を元に大量のフリーダムモンスターを生み出し、能力者たちの本拠地を襲撃するという大それた行動に出た者こそ、まさにアレックス・ラインであったのだ。
そんなわけだから、嫉妬戦士を名乗り、リア充爆発すべしを旨として常日頃活動するフェリチェ・リーリエとしてみれば、あのクリスマスを荒らすべくおおいに暴れ回った行動はまさに英雄的行為と言って差し支えないものであったのだ。だから。
「おー!お前さんが偉大なる先達と噂のフリーダムモンスター……」
アレックスの前に出たフェリチェの行動は、まさに憧れの英雄を前にしたファンのものであっただろう。満面の笑顔で……。
「……栗とマスだっぺか!」
『違うわ!』
とんでもない言い間違えに存外律儀に突っ込むアレックス。
『一歩間違えたら実に|クソ《F●●●》な事になってたぞ!』
ついでに言うとフリーダムモンスターはアレックスが召喚したモンスターの方であり、アレックスはナイトメアビーストなので二重の勘違いだったのだが。さて嫉妬の先達(と勘違いしている)である相手に対し、フェリチェはまともに戦いを挑む事ができるのか?と危惧もあったのだが。
『お前は漫才をしに来たのか?』
「いーや」
どうやらその危惧は杞憂のようであった。フェリチェはたしかにこの相手に戦いを挑みにここに来たのであった。
「お前さんの事は若干尊敬もしてたんだども、せっかくのリア充死ね死ね祭りをガチの笑えねえ祭典にしてくれたことはきっちり反省してもらわんといかんべ?」
『なんだと?』
「嫉妬戦士がいらん風評被害被るとこだったでねーか!」
そう。何度も語っている事の繰り返しで恐縮だが、たしかにフェリチェをはじめとする非モテ非リア充たちはリア充(この場合は恋人持ちを刺す)に対して死ねとか爆発しろとか言っているわけだが、別に本当に死んで欲しいわけではない。死なずとも地獄味わってほしいぐらいに思う人はいるかもしれないが、たいていの人はそれすら願っていない事だろう。とりあえずストレスが発散できればそれで良いのであった。なにせ今回の祭りはリア充に危害を加えるどころか、直接罵声を飛ばす事すらしていない。リア充の眼前に出る事すらしていないのだ。もしかしてリア充のツイートにクソリプ飛ばしたりお気持ちメールぐらいする人はいるかもしれないが……当リプレイはいかなる犯罪行為やらも迷惑行為やらも推奨するものではございません。
「てかおらリア充呼ばわりされたんだべが!?」
そしてフェリチェがさらに許せないのはこれであった。リア充嫌いで男嫌い(さりとて同性とリア充関係になるつもりもないらしい)なフェリチェにとって、フリーダムモンスターにリア充と言われたのはあまりに屈辱的な事だったのだ。そういうわけでフェリチェは殺る気満々なのであった。中華鍋を振り上げて、フェリチェは吠えた。
「今一度その根性叩き直してやらぁ!」
『わけのわからんことを!お前こそ俺のフリーダムを受けるがいいぜ!』
別にリア充が憎くてクリスマスを荒らしたわけでもなければ非リアが憎くて非モテの祭典を荒らしたわけではないアレックスにしてみれば、とんだ言いがかりもいいところであっただろう。アレックスはあくまで祭典を憎む人間のフラストレーションを利用しただけである……まあ根性叩きなおされた方がいい部類である事自体は決して否定はしないが。
『くらえ俺のフリィィィィダァムッッッ!!』
早速ギターを思い切りかき鳴らすアレックス。たちまち怨念が炎を呼び、渦と化して暴れ回った。やがてそれらは多頭を持った炎の龍のようにフェリチェに次々に襲いかかって来る。
「そんな炎がなんだべ!炎を使うのはむしろおらの方が専門だべ!」
フェリチェは中華鍋を巨大化させた。その大きさをのぞけば、一見しただけでは特別な武具でもなんでもなさそうなありふれた中華鍋だ。
『なんだそりゃ?そんなもので俺のフリーダムを防げるもんかいっ!』
炎の龍が一本フェリチェに襲いかかってきた……が。なんとフェリチェが鍋を一振りすると、たちまちのうちに龍が四散したのだ。
「こんな程度の炎じゃチャーハン炒めるのも無理だべ!」
『なんだと!?』
「言ったべ!炎を使うのはおらの方が専門だべさ!」
中華料理といえば火の料理。炎の芸術である。火と油をもって全ての材料に立ち向かい制する事こそ中華料理。それを支えるのは中華包丁、そして中華鍋である。ならば中華鍋こそ炎に対抗するにもっとも相応しい道具と言えるのではないだろうか。その後もフェリチェは次々に襲い来る炎を中華鍋で防ぎ、いなし、かわし、回避していった。
『そ、そんなやり方で俺の炎が防げるものか!フリーダムが足りてなかっただけだ!』
ならばとアレックスは演奏を強化して材料が一瞬で炭化する程の炎を出そうとした……が、させるまいとフェリチェは翼を広げて大空高く舞い上がった。いまだ荒れ狂う事をやめない炎が気流を生み出し、それがフェリチェを加速させていく。そして勢いのままに頭から突っ込んでいった。
「くらうべ必殺石頭!これなら演奏も止めざるをえまい!」
鈍い音。さすがのアレックスも吹き飛び、確かに演奏は止まった。だがフェリチェも無傷ではない。頭痛はやったほうも痛いものなのだ。
「……そ、その炎はリア充だけに向けるべきもんだろが!仮にも同胞を燃やすでねえ!」
アレックスは『だから俺は同胞じゃねえ』と抗議はしなかった。頭痛のダメージでそれどころではなかったのである。人間自由ばかりではいられない、石頭である事も時として有効だ……と、いうことを示したのかもしれなかった。
大成功
🔵🔵🔵
高崎・カント
もぎゅー! カントを追いかけさせた悪い奴登場なのです!
負けないのです!
もーきゅ、昔を思い出すのです
あの時のカントは、ゆーいっちゃんとパーティーをしてて
気が付いた時には終わってたのです
カントはプロの芸能モーラットなのです!
音楽なら負けないのです!
ロックのリズムを乱して歌の邪魔をするのです
7拍子から11拍子にリズムをどんどん変えて、タンバリンをシャンシャンするのです!
即興で歌も歌っちゃうのです!
もーきゅきゅっぴぃぴーい♪ もっきゅぴぴ♪
もきゅぴぴっぴっぴっぴっきゅーぃ♪ もーきゅぴぃぴーっ♪
踊りも踊っちゃうのです!
尻尾と耳は3拍子でワルツのリズムなのです!
隙ができたらもきゅっと体当たりなのですー!
●ひらけパパママといっしょにあそぼう
シルバーレインの事件、相手はかつてシルバーレインで大事件を起こしたナイトメアビースト。シルバーレイン出身のモーラットである高崎・カントがこの状況に燃えないはずがない。しかも、しかもだ。
(もぎゅー!カントを追いかけさせた悪い奴登場なのです!負けないのです!)
そう。何よりカントが非モテたちに追いかけられた元凶こそ、このナイトメアビースト、アレックス・ライトなのだ……と、カントはいまだに勘違いしていた。そう、非モテたちをそそのかしてリア充を追い掛け回させたのは、カントの知り合いである名前の知らない猟兵でしたよねそういえば。まあ、なにはともあれ気合が入るのは大変に良い事だ。
(もーきゅ、昔を思い出すのです)
そしてカントはさらに気合を入れるべく、かつての戦いの事を思い出した。そう、あの忘れもしないクリスマスの日。最大に増幅された力をもって大量のフリーダムモンスターを生み出したアレックスが銀誓館を襲撃した、あの日の激闘を……。
(……あれ?)
思い出せない、というよりもとよりそんな記憶はない。と、いうのもだ。
(そうだったのです、あの時のカントは、ゆーいっちゃんとパーティーをしてて気が付いた時には終わってたのです)
確認いたしました。確かに【フリーダムモンスタークリスマス】事件にカントおよびゆーいっちゃんは参加していなかったようですねえ。ついでに言うならゆーいっちゃんの冒険記録には、ナイトメアビーストを意味する赤い馬のマークはなかったようで。
(てへぺろなのです)
まあ戦争に参加する事だけが貢献の仕方というわけでもなし、クリスマスを楽しむ事も生命賛歌を高めるという点では立派に貢献していたと思われるので、まあいいのではないでしょうか。この祭りの参加者がどう思うかという点は気にならなくはないですが、彼らにはカント本人が先刻きっちりとお説教かましたことですし。
『ちいっ、モーラットかよ』
一方アレックスにしてみれば、かつて自らの破壊活動を幾度も打ち砕いた敵の中にモーラットの姿を見かけた事もあり、その存在を好意的に見るべき理由がそも存在しなかったのはあっただろう。その上、だ。
(カントのキスの日を邪魔した上に追い掛け回されたのです!覚悟するのです!)
『……いや、そんな事をした覚えはねえんだが……』
当人にとってはわけのわからないことで眼前のモーラットに詰められて、はっきり言ってストレスはかなり溜まっていた。自分に溜まったフラストレーションでフリーダムモンスターが呼び出せるのではないかというぐらいであろう。
『|クソ《F●●●》!!とにかく覚悟するのはてめーの方だ!俺の炎で丸焼きになりやがれ!』
アレックスはギターを取り出してかき鳴らし始めた。たちまち怨念の炎が噴き出し始める。カントとしてはこれをくらってしまってはかなり危ない。だがカントにはそれを止める方法があった。
(そのギターを止めればいいのです!)
口で言うだけなら簡単だが、フリーダムを旨とするロッカーのギターをそう簡単に止められるものだろうか?だがそんな懸念はカントには関係のないものであった。なぜなら。
(カントはプロの芸能モーラットなのです!音楽なら負けないのです!)
そう。銀の世界での戦いが終わった後、カントはゆーいっちゃんとともに芸能界に入って子供向け番組でおにいさんとマスコットをやっているのだ。けっこうな人気者のようで、カントがテレビの前で踊れば泣いているお子様もすぐに笑い出し、お子様たちはカントくんとのおやくそくで食後にちゃーんと歯磨きをするようになると言われているとか。
『ほざきおって!お子様向けの童謡ごときで俺のフリーダムを妨害できるものならやってみろ!』
(もきゅっ!子供向け番組を笑うものは子供向け番組に泣くのです!)
かき鳴らされるギターに対し、燃え盛る炎をものともせずにカントは前に出た。そして手にしたタンバリンを鳴らし始めた。シャンシャンシャン、というリズミカルな音は決してロックギターの大音響にも負けてはいない。
『ちっ!なんだこいつは!?』
7拍子から11拍子と次々に変わっていくリズムに、ギターの調子が徐々に狂い始めてきた。そう、たしかに子供向け番組は決してアレックスが馬鹿にしていいものではなかった。子供向け番組は文字通り子供が見る番組であるが、子供向けだからといって子供だましでいいなどというふぬけた考えで関わる者など存在すまい。そこにはものすごい気合を注ぎ込まれていることだろう。大人になっても子供向け番組で見聞きした歌がいまだに頭に残り、同世代の者たちの間で話題にして盛り上がれるぐらいに子供向け番組の影響力は強いという事実が、製作者たちの気合の入れ方を何よりも証明するものであろう。
「もーきゅきゅっぴぃぴーい♪ もっきゅぴぴ♪」
さらにカントは即興で歌まで歌い始めた。むろんアレックスのギターに合わせたものではない。むしろ逆にギターを乱す事が目的なのだ。
「もきゅぴぴっぴっぴっぴっきゅーぃ♪ もーきゅぴぃぴーっ♪」
くわえて踊りまで飛び出すあたり今のカントは本当に絶好調だ。踊りに合わせて尻尾と耳が3拍子でワルツのリズムを刻んでいる。別のリズムでタンバリンを叩きながらと考えてると、本当に並大抵の事ではない。
『|クソ《●U●●》!!こんな事で俺のロックが!フリーダムが負けてたまるかッッッ』
どうにか抗おうとアレックスもギターをかき鳴らすが、だが劣勢は明らかで、荒れ狂っていた炎の勢いも徐々に弱まりだした。攻撃するなら、今だ。
(今なのです!もきゅー!)
そしてカントが動いた。完全に隙をさらしたアレックスに強烈な体当たりが炸裂したのである。本来ならば容易に跳ね返せたはずだったかもしれないが、さすがにタイミングが良かったようだ。
『ぐわっ!?|クソ《●●C●》!!さすがになめ過ぎてたか!』
(ギターはそんなふうに使うものじゃないのです!もっといいことに使うのです!)
芸能にたずさわるものとして、それはカントがどうしても言わなければならない事であった。
大成功
🔵🔵🔵
遠藤・修司
へえ、こいつがリア充死ね死ね団の親玉なのか
そんな悪い顔でもないと思うんだけど
『別に非モテの恨みだけが能力の対象じゃないんだけどね』
あ、そうなんだ?
『抑圧なら何でもいいんだ。確かメイド萌えとかでも良かったはず』
何それ? 銀雨世界って変なの多いんだね……
前から思ってたけど
運動エネルギーの増減変えたらどうなるんだろう
相手、近接攻撃っぽいから、試してみようかな
敵が近づいてきたところで魔法陣を2×2で並べて4つ展開【UC使用】
アレックス・ラインに近い上部は運動エネルギー3倍
馬がいる下部は十分の一にしてみるよ
うまいこと落馬してくれないかな
駄目そうなら素直に運動エネルギーを落として、炎の魔弾で撃とうか
●そういえば祭りの主催者って誰だろう
リア充を本気で殺害する事を狙ったフリーダムモンスターを操るからには、それを作り出したアレックス・ラインもまたリア充殺害を狙っているに違いない。すなわちアレックスこそリア充死ね死ね団の親玉に違いない。そんな風に遠藤・修司は考えていた。で、実際にそのアレックスを目前にして。
「へえ、こいつがリア充死ね死ね団の親玉なのか」
『……なんだ、そのあやしげな集団の名は。そんなのは知らんぞ俺は』
アレックスはじつに嫌そうな顔をした。むろんアレックスはそんな集団のトップではない。かつてシルバーレイン世界でアレックスが所属していた組織の名は……アレックスは団体ではなく、あの予兆において|うーちゃん《ハビタント・フォーミュラ》が名を挙げていたナイトメアビーストのジャック・マキシマムという個人に従っていたフシがある。で、そのジャックはといえば、かつて『|最悪の最悪《タルタロス》』なる組織に所属していたらしい。はっきり言って名前的にはこっちの方がリア充死ね死ね団よりもあやしげである……いやそんなに差はないか。
「そんなに悪い顔でもないと思うけど」
うーん、そうですねえ。まあ黒主体の服装に、赤い髪はいかにもロックンローラー然とした感じだ。顔は……どちらかといえば表情で損してる感はあるがロックバンド的ではあるかもしれない。両手の爪はまあおいておくが、いずれにせよ、あくまで筆者的な印象ではあるが、まじめにリア充になるための活動を行えば存外早く目的達成は望めるかもしれないな。ただシルバーレイン世界に限らず、基本的に敵キャラというやつはあんまり日常生活の存在を感じさせない感はあるので(むろん例外もあるが)、実際の所シルバーレイン時代のアレックスがリアルではリア充だったのか非モテだったのかは、正直なんともいえない。
『別に非モテの恨みだけが能力の対象じゃないんだけどね』
なんてことを考えている修司の脳内に並行世界の『修司』が話しかけてきた。
「あ、そうなんだ?」
『抑圧なら何でもいいんだ』
そう。またしても繰り返しになるが、アレックスの能力はあくまでフラストレーションを覚えた者からフリーダムモンスターを生み出す事である。アレックス自身は別にリア充でも非モテでもなく(どっちかである可能性もなくはないが)、単に能力の対象が非モテの祭典を楽しめない(詳細はよくわからない)という抑圧を覚えた者だったというだけなのである。ついでにクリスマスの銀誓館を襲ったのも別にアレックスが非モテだからというわけではない、はずだ。
『確かメイド萌えとかでも良かったはず』
「何それ? 銀雨世界って変なの多いんだね……」
確認しました。たしかにありましたメイド萌え由来のナイトメアビースト事件。他にはロリータファッションとか、TRPGがやりたいとか。銀雨世界の名誉のために付け加えますと、当然、きわめてまじめでシリアスな抑圧による事件もあったわけですが。
『さっきから何をわけわからん事を!』
なんだかよくわからないが侮辱されたような気がしてならないアレックスはついにぶち切れた。これまでのようにギターをかき鳴らすだけでは能がないと、とった手段は別の物であった。
『来い!ナイトメアよ!』
集めた怨念で作り出した漆黒の馬の上に、アレックスは手綱も持たずに立つと両手の獣爪を構えた。これで突っ込んでこられたらかなりまずい事になる。ただの馬でさえ突進力やキック力は恐ろしいのに、フリーダムモンスターとなればなおさら脅威だろう。そして馬の攻撃に対処していると、今度は頭上からアレックスの爪が襲ってくるという二段構えの作戦のようだ。まともに対処したくない……が。
「……前から思ってたけど運動エネルギーの増減変えたらどうなるんだろう?」
ふと修司にひらめきが生じた。先刻も使用した【魔弾の射手奥義】だが、その際には全ての魔法陣を運動エネルギー3倍の効果で使用した。だが魔法陣には運動エネルギー1/10という効果もある。ならば全ての魔法陣が同一効果でなく、別々に使用する事もできるのではないか。
「相手、近接攻撃っぽいから、試してみようかな」
理屈はともあれ実戦で思いついた事を即試すとはなかなかの度胸だが、なにせ相手は強敵である。とにかくやれることは全てやるというのは考え方としては決して間違ってはいないのだ。
『ヒャッハー!!』
黒馬に乗ったアレックスは真正面から突っ込んでくる。小細工も何もなしの真っ向勝負だ。実際それくらいの実力はあるのだろう。策は用意したが、それはそれとして敵が来るまでただ突っ立っているだけだと罠の可能性を考慮されると、修司は炎の魔弾を数発撃ち込んだ。
『そんなもので俺のフリーダムは止まらねえぜえ!』
回避するまでもないとアレックスは爪を振るって火炎弾を切り払った。だが修司は慌てない。これくらいは予測の範疇だ。その後も数発弾を撃つがやはり通用する様子はない。そうこうしているうちに敵はそろそろ射程距離に入って来るか……。
「……今だな」
魔法陣が設置された。4つ同時に設置できる魔法陣を、アレックス側に2つ、馬の足元に2つ設置した。そして上の運動エネルギー変化を3倍に、下を1/10に設定する……と、どうなるか。要するに、ものすごく単純に言うなら、アレックスが勢いよく動こうとし、馬は止まろうとするわけだ。とすると自然にこうなる。
『!!!!????』
車が交通事故にあい、中の人がシートベルトを装着していなかった、と想定してみよう。中の人はつんのめってフロントガラスに衝突し、ガラスを砕いてそのまま外に飛び出し、大惨事を引き起こす事になるだろう。アレックスに起こったのは要するにそういう事であった。馬上に立っていたアレックスは前方に思い切り吹き飛ばされ、運動エネルギーによる衝撃をモロに受ける形になったのである。
『ぐはああああああッッッ』
「……どうやらうまくいったみたいだね」
咄嗟の思い付きではあったが、結果としては強敵に多大なダメージを与える事ができた。むろん修司の損害がゼロだ。
『うまくいったんだから少しは喜んだらどうだい』
「……これでも喜んでるんだけどな」
それでも修司はあくまで無表情であった。
大成功
🔵🔵🔵
中村・裕美
「……リア充を目指した時期もあったわ。……でもうまくいかなかったから……結局陰の者なのよ」
コンタクトにイメチェンした高校時代。(高嶺の花扱いを知らずに受けており)友達はできなかったし(ちゃんと告白されたことも気づかずhttps://tw6.jp/gallery/?id=157439 )甘酸っぱい恋愛をすることもなかった
何が言いたかというと
「……陰の者の居場所を奪おうとするのなら……消え去りなさい」
ドラゴンエナジーで【毒・呪詛・激痛耐性】を得つつUC発動。竜翼の機動力でスピードに対抗しつつ黒炎を纏わせたランスで【早業】【串刺し】
「……他者の自由を踏み躙るなら……相応の覚悟を持ちなさいな」
●非リアに歴史あり
これまたリア充からほど遠い人物であるにも関わらず、いいがかりとはいえフリーダムモンスターからリア充呼ばわりされてしまった中村・裕美。その心境はかなり複雑だった。
「……リア充を目指した時期もあったわ」
あったらしい。昔いろいろあっただろうし、そういう事を考えた事だってあってもおかしくはない。例えばこんな事があったそうな。今でこそいかにも度が強そうな、マンガやアニメで博士キャラがかけていそうなアレ、レンズに多重円がうつっていて目が外から見えなくなっている、俗に言う瓶底メガネあるいはぐるぐるメガネでがっちりと固めている裕美であるが、陰キャを脱出する第一歩としてコンタクトレンズを試した時期があったらしい。まあ、めがねがバフかデバフかについてはおおいに議論の対象ではあろう。そりゃ世の中にめがね萌えーと主張する人は多い。ちょうど嫉妬云々の元ネタとなったマンガの終了と入れ違いで始まったとあるマンガにもめがねっ娘教団なる熱狂的な団体があったような。それでもあれだ、めがねを取ったら美人ッッッっていうパターンは昔から根強く存在するわけで。最近の事情はよくわからないが。ただそれは本当は美人なんだってことを知っているのは自分だけで良いという妙な独占欲めいたものとも絡んでるような気がして……そろそろ戻そう。ともあれめがねを外した裕美だったが。
「……でもうまくいかなかったから……結局陰の者なのよ」
ということらしい。なんでも裕美曰く、友達はまったくできず、甘酸っぱい恋愛をする事もなかったそうな。ただ本人がその原因についてどこまで気が付いていただろうか。めがねを外しても性格そのものが変わったわけじゃなくて、基本的に無表情で積極的に他人に交わろうとしなかった事で、どこか冷たい印象を抱かせ、高嶺の花的な扱いを周囲から受けてしまったというのが実情だったらしい。これは完全に印象だが、なんとなくだが最初の頃は近づきづらい印象でも話しかけてくれる同級生いたような気がするけど、塩対応で通しちゃった結果ついに話しかけられなくなったような感じであろうか。さらにだ。クールビューティーだと考えればワンチャン狙いで告白してくる男だっていたらしい、が、それら全てを本気のアタックとは取らず、なんかの罰ゲームでいやいややらされているものだと頭から決めてかかって冷たい目を向けるだけだったそうな。ダメじゃないか男の方も。一度や二度ぐらいの塩対応でめげずに何度も突っ込んでいかんかい。そうしていくうちにだんだんと氷が解けていく、それがラブコメのド定番だろうが。あきらめんなよお前どうしてそこでやめるんだそこで。なおリアルでこれやると最悪警察沙汰なので空気はよく読むように。
『なんか、お前からフリーダムモンスターを作ったらすごい事になりそうだな』
アレックス・ライトはそう評した。確かにアレックスにはそれができるだろう。だがそれは実行される事はなかった。
「……何が言いたいのかというと」
その前に裕美が動いたからだ。
「……陰の者の居場所を奪おうとするのなら……消え去りなさい」
裕美は黒い缶を取り出すと、中身を一気に飲み干した。ドラゴンエナジーと名付けられたそれは、肉体疲労時の栄養補給等を目的とするいわゆるドリンク剤なのだろうが、その触れ込みがすごい。なんでも『8717万2485秒不眠不休で働ける』というものだ。約2年10か月である。どんな中身なんだ。しかしこの中途半端な数字はいったいどこに由来するのだろうか。なんでもケルベロスディバイド世界と関連ある世界で暗躍していたとある人物が不眠不休で実際に仕事をした時間だという説もあるようだが実際にはちょっとわからない。しかしこんなヤヴァいものを飲むのには意味があった。
『お、こいつぁ……』
裕美の戦闘力が一気に上昇するのがアレックスにはすぐに分かった。【|邪竜降臨《ウロボロスインストール》】という名のユーベルコードは、文字通りに邪竜を我が身に降ろす事で様々な強化や特殊能力を得るというものだ。だが代償が大きく、下手をすればそれが致命的になりかねないため、その副作用を抑えるためにあんなごっついエナドリを飲んだのである。後からの反動えらい事になりそうだが、それも今日を生き残ってこそだ。
『おもしれぇ!昔から竜を倒すのは馬に乗った騎士様って決まってるよなぁ!?』
アレックスが呼び出したのはあんまり正義の騎士っぽくない黒馬だし、持ってる武器もナイトランスなどではなく普通は馬上で使う事のない獣爪ではあるが、それでもまあ強い事は強い。並大抵のドラゴンなら実際勝てるような気がするぐらいには強いだろう。
『行くぜ!』
「……とっとと来なさい」
竜の翼を広げ飛翔する裕美に対し、黒馬に乗ったアレックスもまた空を飛ぶ。そして激しい空中戦が開始された。高速で飛びつつ交差した瞬間に裕美のドラゴンランスとアレックスの爪がぶつかり合い、火花を散らす。離れてはぶつかりを繰り返し、二合、三合、四合……。
「……もういい加減青丸は11個超えてるんだから、あきらめなさいな」
『お前は何を言ってるんだ』
とはいえこれまでの戦いでアレックスのダメージが蓄積しているのは確かなことである。一方の裕美も強力きわまるエナドリの効果で抑えているとはいえ、加減を間違えれば副作用が一気に出てきて局面を左右しかねない。ともに不安要素を抱えながら、傍目にはそうは見えず、ベストコンディションでのぶつかり合いにしか見えないのは、両者が高い実力を持っている事の何よりの証左と言えようか。そして。
『ぐうっ!|クソ《F●●●》!!』
黒炎を纏った裕美のランスが獣爪をかいくぐり、アレックスの胸部を突いたのだ。勝敗を分けたのはやはりスタミナだっただろうか。疲労していたアレックスに対し、裕美は2年10か月不眠不休で活動できる耐久力があったのだ。
「……他者の自由を踏み躙るなら……相応の覚悟を持ちなさいな」
竜の力による突撃ダメージに黒炎のダメージが加わり、退くよりないアレックスの背中に向け、裕美はつぶやいた。
大成功
🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
真の非リアは祭も自室の中でやるモンじゃね?
外出してる時点で…って冷静に分析しつつ
愛機Glanzを【運転】しながら戦場へ。
キスの日で盛り上がるとかナンセンス!
やっぱ6月って言ったら|69《ロック》の日っしょ☆
てなワケで…対戦ヨロシクおねしゃーす♪
日頃鍛えたFMX級のテクで翻弄しながら
展開したKrakeでアレックスを狙撃していくよ。
アレックスが黒馬に騎乗したら
並走したり擦れ違い様に【乱れ撃ち】したりして【挑発】。
Fワードが出てくるぐらいキレたタイミングで―UC発動!
アレックスの鉤爪に通電させて光速移動。
デスヴォイスの上手な出し方って知ってる?…こうヤんだよ。
喉笛に銃口を突き付けて【零距離射撃】を。
●ロックとは、フリーダムとは
ドイツ語で『|輝き《Granz》』の名を持つ宇宙バイクにまたがり、戦場への道をひた走りつつ、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は考えていた。
「真の非リアは祭も自室の中でやるモンじゃね?」
改めて言われてみればたしかにその通りなのだ。例えば猟兵で(実際にそうかは別にして)非リアを連想させるものいえばやはりアレだ。ケルベロスディバイドのジョブ、自宅警備員。あれは一説によれば本当に自宅にこもっているわけではなく、あくまで自らが『自宅』と決めたものを守るジョブであるらしい……と言ってはみたが、やはり一般的にみれば普通自宅とは自らの自宅である事が圧倒的に大多数なわけで。やはり自宅にこもっているというイメージからはなかなか自由になれないものである。さらにその固有スキル【絶対に出ない!】などは発動条件がダンボール箱の中にいるというものであり……うん。まあいずれにせよ、リア充というのが外出が好きで、リア充でない者は自宅にこもっているという考え方は、全てではないが大多数においては当たっていると言わざるをえまい。と言ったら、いやリア充だって自宅にこもってあんなことやらこんなことやらやってるだろ、という反論はあるかもしれないが、それは違う。リア充は外出を好むこともあれば自宅にこもる『こともある』のだ。
そんなわけでだ。たしかに野外でみんなで集まってリア充死ね死ね祭をやるというのは本来的な意味でいえば非リア的ではないのかもしれない。だが、だからこそ参加できない者のストレスがあり、今回のフリーダムモンスター事件につながったのだと思えば、まあこのシナリオの理屈付けはできた。それでよしとしておこう。ちなみにパウル自身は……分類としては一応今回のシナリオ的な観点からすればリア充に入るのか。なんかリア充と呼ぶにはかなり修羅入っている感もあるが、まああまり細部にまで踏み込むのはここでやるべきことではあるまい。
さておき。
『おのれ猟兵ども!』
バウルの視界に、既に大ダメージを受けておおいに荒れ狂っていたアレックス・ライトが入ってきた。
『だが俺のフリーダムはこんな事では壊されんぞ!かかってこい猟兵ども!』
「おうおう、盛り上がってるねえ」
固定砲台のKrakeを展開しつつ、パウルは挑発めいて言った。
「キスの日で盛り上がるとかナンセンス!やっぱ6月って言ったら|69《ロック》の日っしょ☆」
『何をぬかすかお前』
ロックと聞いてはアレックスも黙っているわけにはいかない。なぜなら。
『ロックの日は1月8日だろうが!』
そう。確かに日本記念日協会には6月9日がロックの日と登録されている。なおこの日はRock《ロックミュージック》の日同様に|Lock《鍵》の日もであるとかどうとか。だが日本語の語呂合わせであるがゆえに通じるのは日本限定だ。海外で1月8日がロックの日というのは、この日がとある著名なミュージシャンの誕生日である事に由来するらしい。なお7月7日とか7月13日もロックの日であるらしくてなかなかややこしい事になっている。まあアレックスも日本で活動してたわけだから6と9でロックだな語呂合わせなんだろうなーぐらいはわかった上で言ってる気はする。
「まあなんにせよ……対戦ヨロシクおねしゃーす♪」
『はっ!どっちがロックンローラーとして上なのか見せてやるぜ!』
言いつつアレックスは獣爪、一方のパウルは宇宙バイクで戦うようだ。両者ともロックらしくないのはまあ御愛嬌だ。さて獣爪を構えたアレックスは相手が突っ込んでくるならカウンターで斬りつけるつもりのようだが、パウルもそれはわかっていて容易に敵の間合いに入ろうとしない。|FMX《フリースタイルモトクロス》で鍛えたテクニックで斬られそうになったら離れ、相手が間合いをとるなら近づきと、つかず離れずの間合いをうまくキープしながらKrakeを撃ちこんでいった。
『ちいっ!機動力に差があるか!ならこいつでどうだ!』
アレックスは怨念の|黒馬《ナイトメア》を召喚すると、手綱を持たずに馬上に立った。これで機動力には差はなくなったはずだ。これでパウルのバイクに真っ向から突っ込み、自らの獣爪と馬の同時攻撃をくらわそうとした、が。
「おっと、小回りはこっちの方が上みたいだね」
どんなに速くとも馬の動きは基本直線である。それに対して前後左右自由自在に動くFMXで鍛えたパウルのバイクは容易に捉える事ができない。むろんアレックスの乗る馬はただの馬ではないので本来の馬ではありえない動きだってフリーダムの名のもとにできそうではあるのだが、蓄積されたダメージと、それに伴う怒りが、冷静さを奪っていたようだ。
『|クソが《F●●●》!この俺のフリーダムがお前らを破壊してみせる!』
「……そろそろ、かね」
相手が冷静さを失った今が攻め時と、パウルはユーベルコード【|Immortals《ブラフマン》】を発動させた。そしてパウルは宇宙蛸の人魚なる姿をとる……彼はキマイラだったのだ。そしてこの姿の時にとれるのは、電撃および通電物質内移動の能力。
『破壊してやるぅらぁぁぁぁぁ』
「おっとぉ、そんなに腹をたてちゃあいけねえぜ」
繰り出された獣爪に電流を通すと、パウルはそこを通って一瞬のうちにアレックスの前に現れてみせた。そしてアレックスが反応する前に素早く喉笛に銃を突きつけた。
「デスヴォイスの上手な出し方って知ってる?…こうヤんだよ」
『く、|ク《●●》』
言い終わる前にKrakeの弾丸がアレックスを貫いていた。もはやアレックスにはこの地名の一撃を耐えるだけの力は残っておらず、もんどりうって馬上から転がり地面に叩きつけられた。
『……俺の戦いもここまでか……』
その体が徐々に崩れていく。
『死と|自由《フリーダム》は違う、死ねば全ては無に帰す……兄ペインよ、我が主ジャックよ、俺は、どこまで飛べただろうか……』
やがて完全に消滅し、骸の海へと還っていった。
「……もーちょっとロックの日っぽく戦ってもよかったかね」
そんな事をパウルは考えないでもなかったが、まあ猟兵の戦いは勝事こそ本意なれである。ひとまずはナイトメアビーストとフリーダムモンスター事件は解決ということで、猟兵たちは帰路に付いたのであった。
大成功
🔵🔵🔵