リ・ヴァル帝国録~|招待状《Invitation》
●
「……漸く少し落ち着いた状況になったみたいだね」
――グリモアベースの片隅で。
北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が誰に共無くそっと息をつくのを聞いた猟兵達が姿を表す。
その猟兵達に向けて、静かに優希斗が言の葉を紡いだ。
「リ・ヴァル帝国と呼ばれる帝国がある地方に、独立都市として自由都市ウェルディンと言う場所がある」
――自由都市ウェルディン。
そこは、都市の中立性からリ・ヴァル帝国のある地方小国家の要人達の会合等にも使われるそんな場所。
それ故に、猟兵達の中には何度か侵略されかけたこの都市を守ったことがある者もいるだろう。
――その自由都市で先日起きた事件の礼も兼ねてだろう。
「無事に帝国へと帰還した皇帝……アロンダイトから、皆への自国への招待状が届いたんだ」
そこまで言ったところで、それで、と優希斗が続けた。
「皆をリ・ヴァル帝国に送ることは可能なんだけれど、ウェルディンにいる人々に確認したいことがある人達もいるかもしれない。そこで……」
続いた優希斗の話を要約すると、こうなる。
先ず、猟兵達を優希斗がウェルディンに転送。
そこである程度猟兵達に休暇も兼ねてウェルディンを歩いて貰い、必要に応じて色々な人々に話を聞く。
その後、陸路でリ・ヴァル帝国に移動。
そしてアロンダイトの招待状に書かれた模擬戦に出つつ、それを見ているアロンダイトに拝謁し、何らかの話を聞く。
「多分、こう言う段取りがアロンダイト皇帝の誘いに乗る上で一番最善なのかな、と俺は思っている。とは言え、リ・ヴァル帝国に行くのは只の物見遊山って訳にはいかないから、アロンダイトとの話の時には模擬戦組と、アロンダイトから直接話を聞く組に分かれて貰うことになるかと思うけれども」
因みに今回は、オブリビオンの影は無い。
模擬戦で使われる機体は、嘗てはオブリビオンマシンとして見覚えのある機体でも、間違いなく正規のキャバリアである。
「まあ、アロンダイト以外にもリ・ヴァル帝国の他の市民や兵士達に話を聞く機会もあるかも知れないけれど……」
但しそれは、模擬戦が終わるまで。
その為、ただ戦えば良いのではなく、遅滞戦闘に近い戦い方をした方が、『リ・ヴァル帝国』にたどり着いてからは、情報収集の時間が多く取れると考えた方が良い。
その分、ウェルディンでは様々な話を聞いたり、ある程度自由行動が可能だ。
「まあ、そう言う意味では普段よりは気楽に情報を集めたり、模擬戦で戦うことも出来る筈だ。あまり根を張り詰めすぎない程度に情報を集めたりのんびりしてくると良い。どうか皆、宜しく頼む」
その優希斗の言の葉と共に。
――蒼穹の風が吹き荒れて、猟兵達が姿を消した。
長野聖夜
――その望みは如何なるものか。
いつも大変お世話になっております。
長野聖夜です。
今回は、クロムキャバリアシナリオを1本お送り致します。
このシナリオは下記拙著シリーズと一部設定を共有しております。
勿論、今までのシナリオ未参加でも全く問題ございません。
シリーズ名:リ・ヴァル帝国録シリーズ。
今回は、リ・ヴァル帝国の皇帝アロンダイトに帝国の模擬戦に招待されたシナリオとなります。
ただ、その前に第1章にて自由都市ウェルディンで活動が可能です。
その為、第1章のフラグメントはウェルディンでの話となり必要であればフラグメント以外の選択肢として下記人物に接触が可能となります。
人物に接触したい場合はプレイング冒頭に名前の隣の数字をご記入下さい。
但し、UC等を使用して何人にも話を聞きに行くことは不可能です。
また、ステータスオープン系や、洗脳系等強制的に情報を取ることの出来るUCも使用出来ません。
あくまでも1キャラ1人と言う扱いになります。
1.リズ。
自由都市ウェルディンの防衛隊隊長です。執務室にいますので、聞きたいことがあれば会いに行くことが可能です。
2.クレア。
自由都市ウェルディン防衛隊所属の少女で機体管制やウェルディン防衛の通信を担ったりしています。
今回は休暇中なのか、通信管制室にはいませんが、会いに行くことが可能です。
勿論、話を聞くことも出来ます。
3.カイト。
この地方で傭兵として渡り歩いているクロムキャバリアパイロットです。専用の銀のサイキック・キャバリアを所持しています。
今はキャバリア格納庫にいます。
尚、カイトは猟兵が望むのであれば、第2章以降に同行して貰える可能性があります。
その場合はカイトを選択し、プレイングにてご依頼下さい。
4.その他。
上記3人以外に会って話を聞きたい場合の選択肢です。但し、アロンダイト皇帝はおりません。
この選択肢は予め誰に会いたいのかを指定する必要がありますが、判定次第では空振りになる可能性がございます。
加えて会えるかもしれませんが、上記3人から聞き出した情報がないと会えない可能性もございます。
その点、予めご了承下さい。
第2章以降出来ることは断章でお知らせいたします。
プレイング受付期間はタグにてお知らせいたします。
――それでは、良き結末を。
第1章 日常
『いざ、小国家観光へ』
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POW : その小国家の食文化などを楽しむ
SPD : その小国家の芸術文化などを楽しむ
WIZ : その小国家の人となりなどを楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鳴上・冬季
4
リ・ヴァル帝国録~奸計者で行った酒場兼珈琲屋兼宿屋の店主
カウンターで店主に
「以前来た時、カイトさんが個室でこういう仕草をしてまして(同じ仕草を他者に見えないよう店主だけに見せ)。貴方なら欲しい情報を売ってくれるもしくはそういう相手に繋ぎを取ってくれるかと思ったのですが」
嗤う
(記念金貨の袋を置き)
「他国の十八金記念金貨ですが、鋳潰せば普通に金として使えるでしょう?情報料に足りませんか?」
「私が追っているのは|始原の人《アダムカドモン》を名乗る集団です。この地に入り込んだ貿易国家フェザーの商人で始原の人の構成員もしくは繋がりがありそうなキャバリア商人を調べてカイトさんに伝えてほしいのです」
嗤う
ベティ・チェン
3
「ボクは、ベティ。猟兵。情報屋の仲介、頼みたい。紹介して、貰える?」
「ロスト共和国に関わる、屍鬼帝国。リ・ヴァル帝国に関わってるらしい、ジルド帝国。両方に関わってるらしい、アダム・カドモン。人を全て小型ジャイアントキャバリアに書き換えると言った、エリュシオン。捕虜になった吸血鬼らしくない、吸血鬼。ここまで、似てると。ミッシング・リンクがあると、思う」
「何かは、繋がる…多分。だから。情報屋の紹介が、欲しい。依頼を出すのは、ボク。受け取るのは、キミ。だから。キミの情報屋で、いい。ボクは、簡単に来られない」
「まず、捕虜の尋問記録、護送記録」
「耳と目は、多いほど、いい。キミも、帝国。行く…だろ?」
●
――キャバリア格納庫。
そのキャバリア格納庫の一角で銀のキャバリアを整備している青年の後ろ姿をその少女……ベティ・チェンはちらりと見る。
(「彼に、会うのは、ボクは、初めて、か……」)
手のタブレットを操作しながら、機体を調整していたのであろうカイトに向けて。
「初めまして、カイト」
そう手を合わせながら挨拶をしたベティの声に気が付き。
カイトが其方を振り返ると、微かに怪訝そうな表情を浮かべた。
「君は……? 僕と会うのは初めてだよね?」
そのカイトの問いかけに。
「ボクは、ベティ。猟兵。キミに情報屋の仲介、頼みたい」
そう端的に切り出したベティのそれにカイトが思わず、と言う様に目を眇めた。
「……何処でその話を? ……いや」
そこまで呟いたところで。
軽く頭を横に振りつつ周囲を見て、他の整備員等が居ないことを確認してやれやれと言う様に嘆息を零した。
「……以前にベティさんの仲間……他の猟兵達をあそこに連れて行った以上、そこから話が漏れても致し方なし、か。他言無用って、皆には一応言っておくべきだったかな」
「……情報、武器に、なるから?」
そのベティの問いかけに。
そう言う事、と軽く首肯を返したカイトがタブレットを握りながら軽く両腕を組む。
「それで、如何してベティさんはその情報が欲しい? 事情は何となく察せるけれども、一応理由を聞かせて貰おうか」
そのカイトの問いかけに。
ベティが軽く首肯を返しつつ、訥々と語りかけている。
「ロスト共和国に関わる、屍鬼帝国。リ・ヴァル帝国に関わってるらしい、ジルド帝国。両方に関わってるらしい、アダムカドモン。人を全て小型ジャイアントキャバリアに書き換えると言った、エリュシオン。捕虜になった吸血鬼らしくない、吸血鬼。ここまで、似てると。ミッシング・リンクがあると、思う」
そのベティの考えに。
成程ね、とカイトが首肯し、まあ、と考える様にしながら言葉を続けていく。
「屍鬼帝国については少し噂を聞いている。ジルド帝国についても、まあ、知らない訳じゃない。アダムカドモンについても多少の情報は持っている」
ただ……とそこまでをベティに話したところで、そっと溜息を零すカイト。
気が付けば、持っていたタブレットの角で軽く米神を解す様にしながら言葉を続けた。
「ただ、エリュシオンについてはそう言う名前の聖湖がロスト共和国にあることは知っていたし、他の猟兵の皆から、エリュシオンと呼ばれる存在についての情報提供は受けているけれど。そのエリュシオンが、人を全てジャイアントキャバリアに置き換えようとしている計画を、ロスト共和国で行っているとは少なくとも僕は直接聞いた記憶は無いな。皆が吸血鬼と言っている、この間の戦いで捕虜にした彼女についても、僕は詳しい話は聞いていない」
そう自分自身の状況を前置きする様に説明してからカイトはけれども、と話を続けた。
「あのタイミングでの屍鬼帝国とジルド帝国による|自由都市《ウェルディン》への同時侵攻があったと言う事実はある。つまり……」
そこまでカイトが呟いたところで。
ベティが静かに首肯し、カイトの言葉を引き取って続けた。
「何かは、繋がる……多分。だから。情報屋の紹介が、欲しい」
その、ベティの回答に。
カイトが成程、と軽く首肯した。
「そう言うことならば、助力は惜しまないけれども……あくまでも僕の知っている情報屋を紹介するだけになるよ?」
「構わない。依頼を出すのは、ボク達。それを受け取るのは、キミ。だから。キミの情報屋で、いい。ボクは、簡単に来られない」
ベティのその言の葉に。
カイトが、分かった、と軽く首肯し、手に持っていたタブレットを操作して、自由都市ウェルディンの地図を出し、ある1カ所を指差した。
「それならば、此処にある店の店主に先ず、『メニュー表に無い』飲物を注文すること。成人しているならば『蜂蜜とビールを割った酒』、未成年ならば『ノンアルコールワインを垂らした紅茶』の様にね」
そう告げるカイトのそれに軽く首肯するベティ。
「そうすれば後は店主が案内してくれる。その上で符牒を示せば彼等は僕の案内が無くても君を迎え入れてくれるだろう。但し、それ以降の繋ぎまでは僕にも保証できないけれどね」
「分かった。……因みに、捕虜の尋問記録や、護送記録は見れる?」
そのベティの問いかけに。
いや、とカイトは軽く頭を横に振った。
「僕は、リズ達と個人的な繋がりはあるけれど、組織として繋がりを持っているわけでは無いからね。流石に治安維持の為の機密情報を君達に説明する権限はないし、仮にあったとしてもそれをするつもりもないよ」
カイトの、その回答に。
「……分かった」
小さく首肯したベティが軽く一礼し、その場を後にする。
(「……連絡を、入れておくか」)
拾って改造して貰ったスマートフォンで、鳴上・冬季へとこの件に関してを。
●
(「……成程。カイトさんは顔パスだった訳ですか」)
そのベティからの連絡を受けて。
口の端に笑みを浮かべた冬季が、ベティを案内した酒場兼珈琲屋件宿屋でもある園場所へと足を踏み入れる。
相変わらずの雑談を楽しむ者も居れば、静かに粛々と珈琲の芳醇な香りを楽しんでいる者、昼間から酒を飲んでいる者等めいめいが楽しんでいる姿を見て、思わず冬季が嗤っていると。
「おう、いらっしゃい。……おや、アンタは……」
冬季の顔に見覚えがあったのだろう。
此方に気が付いた何処か歴戦の勇士の様な風格を漂わせている店主の方へと、冬季が悠然と向かう。
「こんにちは。ご無沙汰しておりますね。以前にも侵攻があったにも関わらず、此処は相変わらずの様で何よりです」
その冬季の謝辞にハハッ、と男は短く笑声を上げた。
「まっ、2度も侵攻されたがね。幸い、此処は彼等の攻撃目標になる様な事も無かったからな。政府から補償も出たし、お陰様で無事にやらせて貰っているって感じだ。勿論、アンタ達猟兵の協力には深く感謝しているぜ」
「そうですか、ありがとうございます」
そう口の端に笑みを浮かべて告げる店主に嗤いを向ける冬季。
けれども、そんな冬季の嗤いを気にすることも無く、で、と話を切り替える様に店主が何気なく問いかけた。
「注文は?」
その店主の問いかけに。
「『蜂蜜と麦酒を割った酒を1つ』」
そう冬季が嗤いながら店主にメニューを告げると。
店主が目を眇め、へぇ……と物珍しそうな声を上げた。
「お客さん。幾ら猟兵って言っても、ウチのメニューに無いものは出せないぜ? 本当にそれで良いのか?」
そう小声で尋ねてくる店主に。
「頼みます」
と嗤う冬季を見て。
やれやれ、と言う様に店主が嘆息しながら何処か虚空を見つめる様にした、その時。
――トン、トン。
と冬季の肩を1人の男とも女にも見える人が背後から叩き、その耳元で。
『お客様、此方です』
そう囁き、何食わぬ様子で人混みに紛れて掻き消える様に雑踏の中に紛れ込んでいくその人物を悠然と追う冬季。
そうして、その人物の後を追った先で冬季の前に音も無く現れたのは、男とも女ともつかぬひょろ長い背の灰色のローブに身を包んだ人物。
以前にも見覚えのあるその人物がそっと何か奇妙な仕草を取るのを見て、冬季がそれに倣う様に静かにそれを返している。
――それは、符牒。
その符牒を見て灰色のローブの人物は首肯と共に、そっと個室の奥へと冬季を招き入れていた。
「中々に手の込んだ事をしますね」
そう問いかける冬季のそれに、その人物は淡々と、いえ、と呟く。
「このご時世ですからね。我等としても、自分達の身の証を立てる程度の仁義すら無い奴等とは組みたくないのですよ。金を積まれればやることはやりますが、かと言ってお偉いさん達の言いなりになりたくもねぇ。幾ら猟兵さんだって言っても、あの人の紹介が無きゃ、流石に此処に入れることはしませんでしたよ」
その人物の説明を受けて、そうですか、と冬季が首肯で返したところで。
部屋の奥に既に用意された食事や酒を見つつ、灰色のローブの人物は上座についた。
「で……お客さん、今回の商売は何ざんしょか」
その人物の問いかけに。
冬季が無造作に記念金貨の袋を懐から取り出し、どさり、と机の上に投げ出して。
「これは、他国の十八金記念金貨です。鋳潰せば普通に金として使えるでしょう? 情報料に足りませんか?」
そう嗤って問いかける冬季のそれを聞いて、その人物はそっと鋭く目を細めた。
「ほう、こいつは……。要するに私達をこれだけの金で買い叩きたいと?」
その人物の問いかけに、冬季は嗤う。
「私も何時も此処にいるわけではありませんからね。今、出来ることはしますが、貴方方にしか出来ない様な事をして貰う為に、相応の対価を差し出すのは当然でしょう?」
そう冬季が嗤って告げるのに。
「成程……あの人が肩入れをするだけはある。……買い付けたいものはなんざんしょ?」
その人物が鋭く目を細めながら、問いかけるそれに。
冬季が嗤って、それを告げた。
「ええ。私が追っている|始原の人《アダムカドモン》を名乗る集団についてです」
その冬季の買い取りたい商品の名前を聞いて。
「……成程。そいつはデカイ山だ。この位は確かに|必要経費《・・・・》ですな」
そう淡々と告げるその人物の言の葉に冬季が具体的には、と話を続けた。
「この地に入り込んだ貿易国家フェザーの商人で|始原の人《アダムカドモン》の構成員。若しくは、繋がりがありそうなキャバリア商人を調べてカイトさんに伝えて欲しいのですよ」
その冬季の言の葉に。
やれやれ……と軽く灰色のローブの人物は頭を横に振った。
「私がそうである可能性は考えなかったのですかい、旦那? 或いは私がこの情報をそいつらに売るとか」
その灰色のローブの人物の軽口に。
冬季は此までに一番深い嗤いを浮かべ。
「――それは、貴方方の仁義に反するのでは無いですか?」
そう嘲笑する様に問いかけると。
灰色のローブの人物はごもっとも、と言う様に軽く肩を竦め、眼前の机の上に置かれた記念金貨の袋を持ち上げ、懐に収め。
「まっ……その通りですな、旦那。私達は金で動きますが……かと言って裏社会の仁義を汚すつもりもありゃしません。よござんす。払いは受けとりましたので、お時間を頂きますぜ、旦那」
その灰色のローブの人物が告げると同時に、自らの胸を請け負った、と言う様にポン、と叩いたのを見て。
「ええ、任せましたよ。それでは、私は此で」
そう嗤ってその場を悠々と後にする冬季の後ろ姿を見て、やれやれ、と言う様に灰色のローブの人物は嘆息を零した。
「全く――本当にあの人が紹介するだけはある。ああいう手合いは、本当に……」
そう何処か感心する様な嘆息と共に。
「さて、私もお仕事と行きますか」
そう呟いて。
灰色のローブの人物もまた、その場から姿を消し、闇の中へと消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雁帰・二三夫
「年を取ると言い間違いしやすくなるんです。ブルーアルカディアをブループラネットと言っちゃうとかですね…」
「不惑なのに惑いっ放しだな、二三夫」
「言わないで下さいよトレスさん」
おっさん涙した
1
「屍鬼帝国絡みの捕虜はウェルディンに居ないでしょうし、居るとしたら吸血鬼ですかね?」
170cmスレンダー美女(人化した30m級竜型巨神G-O-リアス|3号機《トレス》)と面会に
「こんにちは、わたくし猟兵の雁帰二三夫と申します。先だってロスト共和国から侵攻があった日に捕虜にした吸血鬼、まだウェルディンで確保してますか?そうなら面会方法を知りたいのですが」
「ジルド帝国、アダムカドモン、聞きたいことだらけですから」
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
1
帝国から招待状が来ましたが…やはり、判明している事が少ないのが現状ですね。事前に可能な限りの情報を集めておかなければ。
リズさんの執務室を訪問、彼女から色々情報収集を行います。
当たり障りのない世間話から始め、その後彼女の表情や仕草に注意を払いながら情報を聞き出します。
聞くのは、前回のウェルデン襲撃時に拘束したクィムラヌートの操縦士の身柄の行方と、6年前にリズさんに賢者の石が埋め込まれた時の状況や詳細を可能な限り。
そして、リズさんが今でも皇帝――リ・ヴァル帝国を憎んでいるのか否か。
最後のは、無理に答える必要はないですが。とりあえず、知って置きたい事でしたので。
藤崎・美雪
1
【闇黒】
他者絡みアドリブ大歓迎
敬輔(f14505)のことは「先輩」呼び
一通りウェルディンの街並みを散策してから
先輩と一緒にリズさんのところに向かうかね
大分復興は進んだ…よな?
リズさん、ご無沙汰しておるな
お元気そうで何よりだ。
せっかくなので、少しお話をば
指定UCで飲み物提供しつつ
最初は聞き役に徹する
頃合い見て話を切り出そう
さて、ここからは
リズさんとウェルディン、双方の安全にかかわる話だ
実は、リズさん誘拐犯のハルさんが脱走したとの情報を入手した
脱走を手引きしたのは、どうやらいつぞやの襲撃で重傷を負った収監所や浄水場の職員らしいのだ
(情報源:「ロスト戦記~|宵闇の襲撃者《イブニングダークネス》」1章陽太リプレイ。グランマからの情報である旨は伏せつつ表現をマイルドにして伝えます)
そこで、昨年の襲撃で重傷を負い、青十字の治療を受けた者をリストアップしてはいかがかな?
可能なら彼らの身体検査を行い、人造賢者の石が埋められていたら摘出…までしていただければベストだが、これはリズさんの権限外かもしれん
館野・敬輔
1
【闇黒】
他者絡みアドリブ大歓迎
美雪(f06504)のことは「後輩」呼び
事前に「リ・ヴァル帝国録~|強襲者《エミュレーター》」3章で捕えた吸血鬼の情報を陽太さんに提供しておく
リズさんではなく、あえてカイトさんから聞いて欲しい
さて、リズさんに会うより先にウェルディンの街を見て回るかな
どれだけ復興は進んでいるだろう?
一通り確認したら執務室へ向かうよ
リズさん、久しぶり
あれから体調はどう?
…って、働きすぎないよう気をつけてな
一通り他猟兵の話を聞いたら
後輩の話も聞くとするか
人造賢者の石は、後輩に頼まれて持ってきた
まさか、これと同じものを埋め込まれた街の人が
ハルさん脱走の片棒を担がされたとはな…
それ自体は阻止するのは難しかっただろうから仕方ないけど
また、ロスト共和国や青十字とやらがいらぬ手を出して来るかもしれないから
街の人に埋められた石は、可能な限り除去したほうがいいだろう
この石は引き続き、僕が預かっていていいかな?
既に埋められている者がいる以上、あまり意味はないかもしれないけど
●
……一方、その頃。
「しかし、年を取ると言い間違いやすくなるものです。ブルーアルカディアをブループラネットとか言っちゃうとかですね……」
そんなことを呟きながら、自由都市ウェルディンの防衛隊達の駐屯する場所に向かうのは、雁帰・二三夫。
そんな二三夫の後ろに連れ立つ様に歩いている170cm程のスレンダー美女に変化した、ジト目をして巨神G-O-リアス|3号機《トレス》が睨み付けている。
「不惑なのに、惑いっぱなしだな、二三夫」
そうバッサリと切り捨てる様に告げるリアスのそれに。
「言わないで下さいよ、トレスさん」
そう涙を零している二三夫の事をチラリと見遣りつつ、ネリッサ・ハーディが顎に手を置き、思考を続けていた。
(「帝国から招待状が来ましたが……やはり、判明していることが少ないのが現状ですね」)
そう内心で嘆息を零すネリッサのそれに気が付いたのであろうか。
「どうかしたのか、ネリッサさん」
リズの執務室に向かう反対側から姿を現した2人の人影の内の女性……藤崎・美雪がそう問いかけて来るのに。
「藤崎さん。都市の方の様子はどうでしたか?」
元々、自由都市ウェルディンを回ってから此方に合流すると言っていた美雪の言葉を思い出し、ネリッサが何気なくそう問いかけると。
「……復興は順調に進んでいたよ。それこそ、普通に生活できる位にな。聞いた話だけれど、リ・ヴァル帝国とロスト共和国……双方から復興支援が表明され、それを政府が受け入れた結果、迅速に復興活動が行われたらしい」
そう館野・敬輔が美雪に変わってネリッサに告げると、ふむ、とネリッサが軽く呻いた。
「……成程。両国からの復興支援を受けたと言う訳ですか。……まあ、両国のどちらかにすり寄れば、緊張が一層高まってしまいますし、中立としての立場も失われてしまう以上、当然と言えば当然のことでしょうね」
「まあ、そう言うことだろうな。正直、かなりのリスクを伴うとも思えたが……市民達にちゃんとした生活を送らせるためには背に腹を代える事も出来なかったのだろう」
そのネリッサの言葉に美雪が同意するその間に、リズの居る執務室の前に到着するネリッサ達。
(「他の方々はカイトさんや、クレアさんのところを回っている以上、今は情報を伝え合える状況ではありませんね」)
そう内心で、ネリッサが呟きながら、執務室の扉をノックすると。
「どうぞ」
と短い声リズの声が聞こえ、それに一礼してネリッサ達が執務室へと入っていく。
――その現れた顔ぶれを何気なく見上げる様にして。
リズが少し驚いた表情になりつつ、程なくしてお久しぶりです、皆さん、と微笑んだ。
少しやつれている様にも見えるリズを気遣う様にしつつ、代表して美雪が告げる。
「久しぶりだな、リズさん。お元気そうで何より……と言いたいところだが、少しやつれたか? まあ、大分復興は進んでいるようだが」
その美雪の言の葉に。
「ええ、そうですね。色々と調整はしている最中ですが、それでも、何とか市民の皆さんが平和な生活を送ることが出来る様にはなりました。……まあ、正直、綱渡りではありますけれど」
そう微苦笑を浮かべて入ってきた美雪達5人に告げて、執務室のソファーを勧めるリズ。
それに頷き美雪達がソファーに着いた対面へとリズが座り、改めて。
「お久しぶりです」
と、挨拶と共に差し出してくる右手を、ネリッサがそっと握り返す。
その間に美雪が6人分のブレンドコーヒーを用意しようとしたところで。
「いや、私の分は良い」
そうすげなく断るトレスのそれに美雪が一瞬、ハリセンで突っ込みを淹れようかと思った丁度その時。
「いや~……トレスさんは巨神なので、飲物とかは大丈夫ですよ、藤崎さん」
そう二三夫が取り敢えずフォローを淹れるのに分かった、と気を取り直して美雪が首肯し、珈琲を用意する。
美雪が用意したブレンドコーヒーに1口口を付けながら。
「あれから体調の方はどう?」
そう敬輔がさりげなく問いかけながら、チラリとリズの胸元に目をやる。
その敬輔の視線の意味を、誤解すること無く諒解したリズがお陰様で、と微笑み、そっと自分の胸元に手を当てた。
「特におかしな事は起きていませんよ。まあ、確かに復興の件も含めて色々と政治的取引やら何やらのゴタゴタには巻き込まれていましたが。……防衛隊の再編と強化も行っている最中ですしね」
そう言って美雪の淹れた珈琲に口を付け、美味しいですね、と口元を綻ばせるリズ。
とは言え、その目の下にやや薄いとは言え、クマが出ていることから、彼女が殆ど休む事無く仕事を続けてきたのは、容易に想像できたので。
「……あまり働き過ぎない様に気を付けなよ。……まあ、その様子じゃそれどころじゃ無いみたいだけれども」
そう敬輔が気遣いの言葉を掛けるのに、そうですね、とリズが微かに沈痛な表情になって話題を繋いだ。
「……前回の戦いにおいて、此方で厳重に監視していたハルさんに逃げられて、結果として大きな騒ぎになってしまいましたからね。……自分達の力不足を嘆くばかりです」
その沈痛そうな表情でそう呟くリズのそれを聞いて。
「……そうか。3ヶ月もあれば、リズさん誘拐犯のハルさんの脱走に気付かない理由も無いか。……因みに犯人の検挙は出来たのか?」
その美雪の問いかけに、はい、と静かに首肯するリズ。
「収監所や浄水場の職員の一部の検挙に成功し、現在逮捕・拘禁までは完了しましたが……特にハルさんとの接点が見当たらないのですよね……」
そう憂いげに眉を顰めて難しい表情を浮かべるリズ。
そのリズの表情を見て、美雪は、やや苦みを帯びた口調で、言の葉を紡いだ。
「その収監所や浄水場の職員だが……リズさん。貴女が気付いていない接点があるらしい」
その美雪の問いかけに。
リズが思わず、と言った様に美雪の方を凝視して。
「どう言うことですか?」
そう問いかけると、美雪はある人物の事を脳裏に思い浮かべながら、ゆっくりと自らの淹れた珈琲に口を付けてから言の葉を紡いだ。
「……脱走を手引きしたその者達は、どうやら、いつぞやの襲撃で重傷を負い、青十字で治療を受けた者らしいのだ」
その美雪から齎された情報に。
「……っ!」
その襲撃に思い当たる部分があったのだろう。
リズが思わず息を飲む様にして、それから……どっと疲れた様に嘆息を漏らす。
「……そのいつぞやの襲撃とは……あの、最初のウェルディンへのオブリビオンマシンの部隊による侵攻があった時……の事ですね?」
そのリズの確認の様に告げるそれを聞いて。
そうだ、と美雪が小さく首肯し、しかも、と敬輔が話を引き取る様に言の葉を紡ぐ。
「後輩達が得た情報によれば……」
そこまで告げたところで。
そっと懐から以前、リズに預けられた賢者の石を取り出し、コトリ、と机の上へと置いてそれを指差す。
「……その犯人達は、どうやらこれと同じ物を埋め込まれた街の人達らしいんだ」
「……!」
その敬輔の告白に、血相を変えて息を呑むリズ。
思わずコーヒーカップを取り落としそうになってしまったのに気が付き、慌ててそれを持ち直して、平静を装う様に。
「……賢者の石を埋め込まれた人々……ですか。……でも、だとすると……それを埋め込んだ青十字って……まさか、あの……」
何かを確認するかの様に高速で思考を張り巡らしその言葉をポロリと漏らしたリズのsれを聞き。
美雪がそのリズの反応に気が付いて鋭く目を細めて、リズに問いかける。
「リズさんは、青十字を知っているんだな?」
「……はい。ロスト共和国にあると言う『国境なき医師団』を名乗る集団です。確か、あちらでは製薬会社として設立されている筈ですが……」
自分でそう口にしながら、手に滲んだ汗を握りしめる様にするリズ。
そんなリズの中で点と線が繋がっていく様を気の毒そう見つめながら、美雪がやや重苦しい表情と口調で残酷な真実を口にする。
「……つまり、青十字を放置しておけば、同じ様な事件が起きる可能性が高い。そう言うことだ、リズさん」
その美雪の真剣な警告に真剣に頷き返すリズへと、美雪が畳みかけていく。
「そこでだ、リズさん。昨年の襲撃で重傷を負い、青十字の治療を受けた者をリストアップして頂くことは出来ないだろうか? もし可能であれば、彼等の身体検査を行い、人造賢者の石が埋められていたら摘出……迄出来ればベストではあるのだが」
その美雪の助言を聞くのとほぼ同時に。
リズが即座に机の上の通信機を起動し、在る場所へと繋ぎ。
通信機越しの通信員に美雪の助言を聊か慌てた様子で指示を出すと、通信機越しに此方も少し慌てた様子で通信相手が分かりましたと、応えて直ぐに通信を切る音が部屋に響いた。
その通信を終えたリズが顔を青ざめさせたまま、一先ず、と言の葉を紡ぐ。
「治療を受けた人々について、早急に調査、リストアップする様に指示は出しましたが……ですが、それでも摘出できるかどうかは分かりませんね。都市と市民の安全の確保のために摘出を行うと言えば聞こえは良いですが、市民達からの反発は避けられないでしょうし……」
そう沈痛な表情で呟くリズの表情には参ったと言う沈痛さが浮かび上がっている。
そんなリズの様子を気遣わしげに見遣りつつも、そう言えばと、ネリッサが続けてリズに問いかけている。
「前回のウェルディン襲撃時に、拘束したクィムラヌートの操縦士の身柄は今、どうしているのですか?」
そのネリッサの言葉に、それは、とリズが微かに頭を横に振った。
「其方は南地区の一角にある監獄で現在、拘束中ですね。……人造賢者の石を埋め込まれた人々によって脱走させられる可能性も今の話だとないではありませんが……」
そこまで呟いたところで。
ピッ、と素早く通信機を再び取り、リズが通信機越しに彼女の身柄について確認する様に連絡を入れると。
程なくして、監視カメラの映像や、事実の確認が行われ、彼女の拘束は確かだと言う報告が上がってくる。
その部下からの報告にありがとう、とリズが礼を述べて通信機を切る様子を見て。
「その……言い辛いんだけれど、今連絡を取った職員達は、同じ様な事件に巻き込まれて青十字に治療を受けた可能性は無いのかい?」
そう敬輔が問いかけるのに、リズは大丈夫だと思います、と首肯して返す。
「今、私が連絡を入れたのは、元々は、カイトやクレアさん直属のレジスタンスだった方達です。青十字のことは知っていますが、彼等が青十字から治療を受けたと言う話はないですから。……いずれにせよ、今できる精一杯を行い、信じるしかないでしょうね」
そう呟くリズに対して、因みに、と二三夫が、
「……因みに屍鬼帝国絡みの捕虜はウェルディンにはいないのですか?」
そう確認する様に問いかけると、リズはそれに曖昧な表情を見せた。
(「この表情……何か理由があって話せない、と言う表情をしていますね」)
恐らくリズ達防衛隊の上層部……即ち自由都市の政治的な事情が絡んでいるのだろう。
それ故に深く話すことが出来ないと言う表情を見せるリズに配慮する様に多少態とらしく、ネリッサが、ゴホン、と咳払いを1つ。
二三夫もネリッサの咳払いを聞いて直ぐに事情を察したか、すみません、と軽く謝罪を告げ、代わりに、と言う訳ではありませんが、と言葉を続けた。
「ハーディさんが言っていたそのクィムラヌートのパイロットについてですが。ウェルディンで確保しているのであれば、面会する方法はありますか?」
その二三夫の問いかけに。
「もし時間がある様でしたら、皆さんにも確認に行って頂いた方が良いでしょうね」
そう自分に言い聞かせる様な口調でリズが呟き、それから一度席を立って自らの執務机に置いてあった紙を取り。
その場で素早くペンを走らせて面会許可状を書き出し、二三夫達に手渡し、更に懐からタブレットを取り出し、それを机の上に置く。
そこに映し出されたのは、上空から見たらこんな感じなのだろうと思えるウェルディンの地図。
その内の1点がチカチカと赤く点滅していた。
「此処にいる衛兵達に、その紹介状を見せて下さい。そうすれば、面会と彼女の状態を確認する事が可能でしょう。但し、あの場所からの出所を条件として情報を聞く様な、司法取引の権限は流石に皆様に与えることは出来ませんので、その点は十分ご注意下さい。また、この面会状による面会権を、今、此処に来ている方以外に譲渡することも出来ません。その点も、予めご了承くださいね」
そう告げて面会状を二三夫に渡すリズに、ありがとうございます、と一礼する二三夫。
「ジルド帝国、アダムカドモン……聞きたいことだらけですからね」
そうポツリと呟く二三夫の事は脇に置き、しかし、と敬輔が自らの手にある人造賢者の石を見ながら頭を横に振った。
「此と同じものを埋め込まれた街の人達が、ハルさん脱走の片棒を担がされるとはな……まあ、明らかにそれ自体を阻止するのは難しかったのは分かるが……」
「ええ……そうですね。……ですが今思えば、カイトから『起き上がり』の件を聞かされた時点で、ロスト共和国の中にある青十字についてももっと警戒をしておけば、前回の様な事件を起こされることは無かったのかも知れません。……私が、迂闊でした。……やはり、恩人の出身地を疑うのは、中々難しいものですね」
そう沈痛な表情を浮かべて俯き加減になりながら悔しそうに呻くリズ。
そのリズの言葉に含まれた悔恨に気が付きつつ、ネリッサがすみませんがと口を挟んだ。
「恩人と言うのは、やはり、6年前に、館野さんが持ってきたその賢者の石を埋め込んで、貴女が命を助けた方の事でしょうか?」
そのネリッサの問いかけに。
「……はい、そうです。そうでした、と、今となっては言うべきかも知れませんが」
そう顔を手で覆う様にしながら嘆息するリズの気落ちした様子を認め、美雪が労る様にリズの背を摩ると。
「……大丈夫です。ありがとうございます、美雪さん」
そう俯き加減だった顔を上げてそっと微笑を浮かべるリズの様子を見て1つ頷き、ネリッサが続けた。
「お差し支え無ければ、その時の状況や詳細を詳しく教えて貰えませんか?」
そのネリッサの言の葉に、リズが以前、敬輔さん達にはお話をしたのですが、と前置きをしつつ言葉を紡ぐ。
「先ず、私が6年前に埋め込まれたのは、エリク君のお母様が持っていた賢者の石でした。事情としては、6年前のあの日、黒装束の暗殺者から襲撃を受け……そして私は重傷を負った。その時、私は辛うじて『即死』こそ免れたものの、座して死を待つ程の瀕死の傷を負っていたのだと思います。思います、と言うのはそこで意識を失い……」
それから次に彼女の意識が目覚めたのは……。
「私の国の医療室の集中治療室だったからです。そうして、私が意識を失っている間に、私の胸にその賢者の石が埋め込まれた……こう言う話です」
「その暗殺者達については、どう言う相手なのか分かっていないのでしょうか?」
そのネリッサの問いかけに、当時は、とリズが思い出す様にしながら言葉を紡ぐ。
「元々、エリク君とエリク君のお母様は、ロスト共和国からの亡命者の様なものだと思っておりました。ですので、その亡命者であるエリク君とエリク君のお母様を狙った刺客なのか、とぼんやりと考えていたのですが……」
「……それは、どうでしょうか?」
そのリズの話を聞いて、そう疑義を呈したのは、二三夫。
二三夫の疑問符に、トレスがこう言う見方も出来るな、と独り言の様に言の葉を漏らす。
「……今までの話からすると、そのエリクの母とやらは、その賢者の石の性能実験をする体の良い実験体を探していた……そう言う見方をすることも出来そうだ。更に言えばリズの話を聞いていると、暗殺者達は最初からリズや、その親族を狙っていた様にも思える」
「しかも、その時に使われた賢者の石は今、此処にあるけれど、それが量産され、重傷の人々に埋め込まれた……。これはリズさんと言う被検体で得たデータを基にして、どの位の効果があるのかを計り、量産して今回の事件の様なテロを再び起こすために使用できる様に改造した可能性も考えられる、と言う事か……」
そのトレスの言葉に、敬輔が嫌な想像を膨らませ、ポロリとそう言の葉を紡ぐ。
「……つまり、あの暗殺者達は、エリク君とエリク君のお母様を狙ったのでは無く……元々、私を狙い、賢者の石の実験体にするつもりだったと……?」
その顔から血の気を失いながら。
リズがやっとの思いで告げたそれを聞いて、ネリッサが。
「……明確な証拠が無い以上、断言は出来ませんが……確かにその可能性はあるかも知れませんね」
と締めくくるのを聞いて、リズがその顔から更に血の気を失わせていく。
そしてそれは……ネリッサや敬輔、美雪も同じだった。
「……考えれば考える程、嫌な方向へと想像が広がっていくな。……リズさん、そうなるとやはり……」
そう唸る様に呟く美雪のそれを引き取る様に、敬輔が唾を飲み込み、言葉を続けた。
「……ロスト共和国や青十字の言いなりにこれ以上ならない為にも、埋め込まれた人造賢者の石の摘出は行った方が良いだろうね。その辺りの駆け引きをどうやって通すのかは、リズさん次第だけれども」
そう敬輔が告げるのに、そうですね、と血の気を失わせながらもリズが首肯するのを確認して、取り敢えず、と敬輔が言葉を続けた。
「この賢者の石は引き続き僕が預かっていても良いかな? 既に埋め込まれている者がいる以上、あまり意味は無いかも知れないけれど」
その敬輔の言葉に、お願いします、とリズが首肯したところで。
そろそろ面会時間は終わりだと感じたネリッサが、最後に、とリズへと言の葉を紡ぐ。
「……1つだけ聞かせてください、リズさん」
そのネリッサの問いかけに。
「……はい、何でしょうか?」
表情こそ青ざめ、血の気を失わせながらも、その瞳には未だ希望を持ち、目まぐるしく頭を回転させているリズにネリッサが真剣な表情で問う。
「リズさんは今でも皇帝――リ・ヴァル帝国を憎んでいるのでしょうか?」
そのネリッサの問いかけに。
「いいえ」
と、リズがはっきりと頭を横に振った。
「オブリビオンと呼ばれる強大な敵が牙を研ぎ澄ましているのです。であればこそ、そんな私情に囚われている場合ではありません。……私には、未だ、守るべきものがあるのですから」
そうキッパリと告げたリズのそれに。
「分かりました」
ネリッサが首肯し、何かあれば連絡をして欲しいと挨拶を交わし。
――敬輔達と共に、リズに見送られ、静かに執務室を後にするのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィリアム・バークリー
3
ウェルディン市を平和に歩くのは新鮮な気がしますね。今まで侵略の危機を救いに来るばかりでしたから。
さて、カイトさんとお話ししてみましょうか。
こちらに来た一同が揃っていることを確認して、手頃なカフェに移って気軽に話ができるようにすることを提案します。
実はアロンダイト帝から、先日の事件に協力した返礼らしい招待状が来てまして。
カイトさんも一緒にどうですか?
カイトさんは皇帝陛下と面識があるようですけど、どういうご関係でしょう?
帝国はリズさんの祖国を武力併合した国で、そのリズさんとカイトさんは近しい間柄だったと思うんですが。
それがどうにも不思議に思っているところなんですよ。
よければ教えてもらえませんか?
エルゴ・ルスツァイア
【SIRD】
アドリブ歓迎
3.カイト
カイトさん、居るか? ジェイド43、エルゴだ。少々話を聞きたいんだが……おお、あの機体だ。いつも戦闘中だったし、こうもまじまじと見るのは初めてだな……。
キャバリア格納庫へと向かい、銀に輝く機体を色々調べてみたい気持ちを抑えつつカイトさんへと歩を進める。
聞きたい話と言うのは「ジルド」の事。以前の戦闘中に通信回線越しに聞いたけど、詳細は直接聞いた方が良いだろうと思ってな。
情報こそ力だ。纏めた上で皆に共有しておこう。
ミハイル・グレヴィッチ
SIRDとして行動
3.カイト
さて、帝国に行く前に一杯引っ掛けて、といきたいところだが、その前にカイトの所によって、ちょいと話でもするか。
いよぅ、|色男《リェーフ》。先日も大活躍だったな。大した腕前だ。塹壕で俺の隣にいて欲しい位、頼りになるぜ。
今日は寄り道みたいなモンでな。折角だから、お前さんからもう少し詳しく話を聞こうと思ってな。帝国やアダムカドモン、フェザーに関して色々な。何、世間話みたいなモンだから、気楽にいこうぜ。
そうそう、俺らは|皇帝《ツァーリ》から招待状を貰ってな。この後帝国に表敬訪問と洒落込もうとしてるんだが…よければお前さんも来るかい?場所が場所だけに、腕が立つ奴は歓迎だからな。
森宮・陽太
3
【闇黒】
他者絡みアドリブ大歓迎
●事前準備
「ロスト戦記~|宵闇の襲撃者《イブニングダークネス》」1章でグランマから聞いた情報を美雪と敬輔に提供
代わりに「リ・ヴァル帝国録~|強襲者《エミュレーター》」3章で捕えた吸血鬼の情報を敬輔から貰っておくぜ
ガヴェインは光学迷彩を纏わせ
|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》に撃墜されないギリギリの高さから偵察を頼むぞ
●カイトと接触
よっ、元気にやってるか?
そういや、敬輔から聞いたんだがよ
前回ウェルディンを襲った首謀者、吸血鬼っぽかったらしいな
あの吸血鬼、敬輔たちが捕らえたと聞いたが
その後どうしてやがるか、知らねぇか?
俺からは「屍鬼帝国を名乗る輩の情報」を提供するぜ
(「ロスト戦記~|宵闇の襲撃者《イブニングダークネス》」で判明した情報)
カイトも欲しい情報だろうから、先にぶちまけても構わねぇ
っつーわけで、だ
カイト、俺らと一緒に帝国に行くか?
ちなみに、ガヴェインのことは、指定UC発動後テレパシーでこそっと伝えておく
俺と同行している経緯は説明してなかった気がするんで
文月・統哉
【3】
カイトと話がしてみたい
先日の襲撃から数カ月、今はどうしているだろうか
各国の復興の様子と
あの時捕らえた『吸血鬼』の少女がどうなったのかも聞いておきたい
そして格納庫にいるという事は
彼の銀のサイキック・キャバリアも一緒だろうか
名前は何というのだろう
アロンダイトの金のキャバリアと対の様にも感じたけれど
良かったら搭乗までの経緯も含めて話して貰えたらと思う
アロンダイトとの関係も気になる所だ
皇帝とレジスタンスというだけでなく
もっと深い部分を知っている様に感じられて
どんな因縁があるのか、互いをどう思うのか
改めて聞いておきたい
確かに二人の理想は異なる方向を向いている
それでも
遥か彼方の理想へ向けて折れる事無く足掻き続けるその姿は
とてもよく似ている気がして
違う視点を持っているからこそ
衝突だけでなく補い合える事もあるかもしれないと
二人なら新しい道を見出す事もできるかもしれないと、そう思えて
カイトに招待への同行を提案したい
直接会って話をしてみるのはどうだろうか
招待状があるんだ、丁度いい機会だと思わないかい?
●
――その頃、自由都市ウェルディンの格納庫では。
「……ふう」
と自らの銀のサイキック・キャバリアの整備を一通り終えたカイトが、誰に共無く一息ついていた。
すると、そこに。
「カイトさん、居るか? ワタシだ。ジェイド43、エルゴだ」
その格納庫の中に入ってきたエルゴ・ルスツィアが気軽な口調で声を掛けながら入ってくる。
そのエルゴの背後からは……。
「いよぅ、|色男《リェーフ》。前回も大活躍だったな。大した腕前だ。塹壕で俺の隣にいて欲しい位、頼りになるぜ」
そう口の端に笑みを浮かべたミハイル・グレヴィッチが気さくに手を上げながら姿を現している。
カイトが現れたエルゴとミハイルを見て、そっと微笑み。
「エルゴさん、ミハイルさん、久しぶりだね。それにしても、歴戦の傭兵でもある猟兵のミハイルさんにそこまで言われるのは光栄の限りだね」
そう応えるカイトの返事を聞いてミハイルがニヤリと笑みを返していると。
「よっ、元気にやっているか?」
「こうやって比較的落ち着いた状況でカイトさんと話が出来るのって、かなり久しぶりという印象がありますね」
「ニャハハッ! そうかも知れないね。やあ、カイト、久しぶり。元気だった?」
森宮・陽太とウィリアム・バークリー、そして文月・統哉が現れそれぞれにカイトに挨拶してきていた。
そんな統哉達との再会に少し驚いた表情になりながらも彼等を歓迎するカイト。
と、丁度その時。
「……おお、カイトさんの後ろにあるその機体が……正に、あの機体なんだな」
そうエルゴが興味深そうにカイトが調整を終えた彼の愛機である銀のサイキック・キャバリアを見つめている。
全体的に鋭角的な美しいフォルムを持ち、その背に翼の様なブースターを装備したその銀のサイキック・キャバリアは、まるでそんな来訪者達を歓迎するかの様に、瞳にポウ、と翡翠色の輝きを灯した。
「こうマジマジと見るのは初めてだな……。この鋭角的なデザイン、中々に美しく、格好良いな……」
そう興味深そうに呟くエルゴのそれにそうだろう? と嬉しそうに胸を張るカイト。
「ガヴェインとも少しタイプが違うな。だが、確かに格好良いぜ、こいつは……」
そう陽太も少しだけ呆けた様子でカイトの銀のサイキック・キャバリアを見つめているその間に。
「カイト。この機体の名前は何て言うんだ? アロンダイトの金のキャバリアと対の様にも見えたんだけれど」
統哉がさりげなくそうカイトに水を向けると。
カイトが一瞬ピクリと反応しつつ、満更でも無い様子で。
「まあ、僕が勝手に付けた愛称だけれど。これは、レーテって呼んでいるよ」
そう銀のサイキック・キャバリア……レーテと愛称を口にするカイトを見て、そうなのか、と素直に統哉が素直に感心し。
「そう言えば、どうしてカイトはこの機体に搭乗する様になったんだい? もし良ければ……」
と何気ない調子で聞いてみようとした、丁度その時だった。
「そう言うことでしたら、折角ですし皆さん。この辺りにある手近なカフェにでも行って、気軽に話をするのは如何でしょうか? 皆さんも積もる話は色々とあるのでしょう?」
そうウィリアムが提案を口にしたのは。
そのウィリアムの提案に微笑み、便乗する様にカイトが。
「そうだね。少し長くなりそうだから場所を変えようか。……皆、聞きたいことも色々ある様だしね」
そう言の葉を紡ぐと、統哉も悪い話じゃ無いね、と笑って首肯する。
「どうせなら、酒が飲めりゃ良いんだけれどな。おいカイト。どっかこの辺でどっか良い店知らないか?」
続けてミハイルがそう水を向けると。
「いつものあそこは、今、ちょっと忙しいだろうし……それなら、あそこにするか。じゃあ皆、付いてきて」
心当たりがあったのかカイトが首肯と共に、レーテを背にその場を後にするのを見て。
「むう……出来れば色々と調べてみたいが……今は任務を優先しなくてはいけないな」
そうエルゴが唸る様に呟き、カイトの後を追う様にこの場を去るのに続く様に。
ミハイル達もまた、一先ず格納庫を後にしたのだった。
●
――そうして、歩いて10分程で。
小さな、少しレトロな空気のあるカフェに到着するエルゴ達。
上空からは陽太のガヴェインが光学迷彩を掛けて偵察をしているが、幸いにも目立った動きは無い。
(「まあ……人造賢者の石の件もあるから油断は出来ないが……」)
少なくとも、今回は特に何もなさそうだと言う気配を感じ取り、そっと陽太が安堵の息を零しているその間に。
カイトは勝手知ったるなんとやら、と言う感じで躊躇いなくその店の扉を開き。
「いらっしゃいませ」
そう丁寧に深々とお辞儀をするウェイトレスの女性に対して。
「6名。少し内緒の話があるので」
そう短く告げると。
「畏まりました」
と手慣れた様子で彼女が一礼し、店の奥のボックス席へと6人を導く。
それからめいめいに飲物を注文し……それらがそれぞれの前に運ばれたところで。
「ごゆっくりお過ごしくださいませ」
そうウェイトレスが一礼して去って行くのを見送ってから、さて、とカイトが注文した紅茶に口を付けてから話を始めた。
「まあ、いつものことだけれど。やっぱり皆、只の観光って訳じゃ無いよね? どうしたんだい?」
そのカイトの問いかけに、最初に応えたのは、ウィリアム。
「実はアロンダイト帝から、ぼく達猟兵宛に、先日の事件に協力した返礼らしい招待状が来てましてね。それで、カイトさんも一緒にどうですか? とお誘いに上がったのです」
そのウィリアムの提案を受け、成程、カイトが1つ首肯する。
「……そうか。アロンダイトからの招待状が、皆の所に行ったのか。それで、帝国に直接行かず、先ずはウェルディンの様子を見てからとか、そんな話かい?」
そのカイトの確認する様なそれを聞いて。
「流石に飲み込みが早いな、カイトさん」
そう微苦笑を滲ませて返すエルゴのそれを聞いて、まあね、とカイトがポリポリと軽く鼻を掻いてみせる。
「君達が来る時は、必ず何かあるからね。しかも、態々アロンダイトからの招待状を貰っておいて、それよりも前に皆が僕のところに来たって事は、多分聞きたい話があるんだろう? 全部、と約束は出来ないけれども、取り敢えず、何を聞きたいのか教えて貰って良いかな?」
そのカイトの確認の様な言の葉を聞いて。
「じゃあ、先ずは俺から良いかな?」
そう手を上げたのは珈琲を啜っていた統哉。
統哉の問いかけに、なんだい? と口では無く目で問いつつ紅茶を一口啜るカイトに。
「さっきも聞いたけれど、改めて。君がレーテに搭乗するまでの経緯とか、教えて貰って良いかな? あの機体がアロンダイトの金のキャバリアと対になっている様にも見えたから、気にはなっているんだ」
その統哉の問いかけに。
カイトはそうだね、と小さく首肯し、簡単に話を続ける。
「まあ、話せば長くなるんだけれどね。元々僕は、レジスタンスで|虚偽の英雄《ヒーロー》に祭り上げられ。リ・ヴァル帝国の……と言うより、アロンダイトの、かな。彼のやり方に抵抗する勢力としてあのオブリビオンマシンに搭乗して戦っていた。そこを皆に救われた訳だけれど」
「そうなのか?」
エルゴが微かに怪訝そうに首を傾げて誰に共なく呟くと。
「ああ、そうか。あの頃は、エルゴは未だカイトと関わった事が無かったな。そうだ。あの時、俺達はカイトとこいつの率いるレジスタンスと戦った。理由は簡単だ。当時のカイトが搭乗していた機体がオブリビオンマシンだったからだ。猟兵としては、それを破壊するのは|仕事《ビジネス》だからな」
そうミハイルがエルゴに説明しながら、注文したウィスキーをガブリと煽るのを見遣りながら、そうだね、とカイトが苦笑して頷く。
「まあ、その後、当時の僕達のレジスタンスの多くがこのウェルディンに防衛隊員として雇われたんだけれどね。あの時はリズが上手く聞き口をしてくれて助かったよ」
「つまり今のウェルディンの防衛隊員には、カイトさんの知人もそれなりにいるのだな」
成程、と納得した様に首肯するエルゴに首肯で返しつつ、カイトが話を続ける。
「で、その後この地域の戦いの裏で軍需産業を営み、莫大な利益を得ている死の商人、『アダムカドモン』の存在に気が付いてその調査をしていたんだけれど、その過程で帝国にも勿論、足を運んだんだ」
「……まあ、そうでしょうね。とは言え……それだけで、カイトさんがアロンダイト皇帝陛下と面識が出来る様には思えませんけれども」
そう紅茶を啜ってから確認する様に問いかけたのは、ウィリアム。
ウィリアムの指摘を聞いて、カイトは苦笑と共に、そりゃそうだよね、と軽く首肯した。
「実際、アロンダイトとは皆に会うよりも前からレジスタンスとしてだけでなく個人的に全く繋がりがない訳じゃ無かったんだ。……厳密に言えば、アークライト家、とだけれどもね」
「アークライト家って……確か、アロンダイト皇帝の姓だね。つまりカイトは、アロンダイト個人以上に、アークライト家と繋がりがあったって事かい?」
そう統哉が少し驚いた様に尋ねると。
そうだね、と微かに神妙な表情を浮かべてカイトが首肯する。
「そう言う伝手もあって、リ・ヴァル帝国内にアダムカドモンの手掛かりが無いか探りに行ったんだけれど……そのアダムカドモンの一部の手掛かりを見つける途上で、彼等のキャバリア……いや、オブリビオンマシンという方が正確か。それに襲撃を受けて……その時だよ。まるで何かに導かれるかの様にレーテに僕が呼ばれたのは」
そのカイトの言の葉に。
「……レーテに|呼ばれた《・・・・》?」
微かに驚いた様に問い返す陽太のそれに、そうとしか説明が出来ない、とカイトが首肯する。
「声の様な、波動の様なものだ。実際の所はそれが、オブリビオンマシンの可能性もあったけれど、けれどもあの機体とは違い、その声には何処か懐かしささえ感じられた。……まあ、レーテは、アークライト家に対オブリビオンマシンとして密かに受け継がれてきた機体だから、当然かも知れないけれどね。まあ、陽太さんならそれがどう言う意味か、分かるんじゃ無いかい?」
そうカイトが陽太に問いかけると。
陽太はそのカイトの説明に心当たりがあったのか、カイトの脳裏に直接声を掛ける。
(「それはお前がサイキックで、オブリビオン……世界の敵と戦う覚悟を持って、帝国に入り。その時、アダムカドモンが操っていたオブリビオンマシンに対抗するために、レーテにこんな風にサイキックで呼ばれたって事か?」)
そうサイキックで陽太が問いかけるのに。
(「ご明察だよ、陽太さん」)
そうサイキックで返すカイトのそれに、陽太が思わずと言った様に溜息を漏らした。
「成程な。サイキックとしての能力を持ったカイトが世界の敵……オブリビオンと戦うと言う意志を持ち、その一端としてアダムカドモンの調査をしていたからレーテが力を貸す気になったって事か。……つまり、あのレーテってサイキック・キャバリアも、使い手を選ぶ意志があったって事だな」
その陽太の言葉で、大体の事情を察したのだろう。
成程、と統哉が1つ首肯した上でそれからずっと気に掛かっていた言葉を紡ぐ。
「けれども、カイト。さっきの話だと、あのレーテは元々、アロンダイト……と言うか、アークライト家のサイキック・キャバリアって事だよね?」
その統哉の再度の確認を聞いて。
「そうだね」
とカイトが確と首肯するのにウィリアムが首を傾げた。
「カイトさんがサイキックであり、それ故にサイキック・キャバリアに選ばれて使うことが出来る様になる素質を持っていた、と言うのは感覚的には分かります。ですが、それだけの理由で、アークライト家……リ・ヴァル帝国の皇族に代々伝わるサイキック・キャバリアが貴方のことを選ぶものでしょうか? そもそも帝国はリズさんの、引いては貴方の祖国を武力併合した国で、リズさんとカイトさんは近しい間柄だったのに、そこにアロンダイト皇帝と直接の繋がりがある様には、ぼくにはどうしても思えないのですが」
そのウィリアムの説明に。
流石に苦い表情を浮かべて、そうだね、とカイトが苦笑を零す。
「例えそこにどんな大義名分があったとしても、アロンダイトがリィズ王国を滅ぼして良い理由にはならないね。……況してや、アークライトの|血族《・・》……つまり親戚が居る国であれば、尚更だ」
そのカイトの紅茶を啜りながらの言の葉に。
「……|親戚《・・》が居る国……?」
そう身を乗り出す様に問いかける統哉のそれに、カイトが苦笑を零して見せた。
「まあ、簡単な話なんだけれどね。僕とアロンダイトは従兄弟なんだよ。皆に隠すつもりは無かったんだけれど、言うタイミングも無かったからね」
「……えっ? ……|従兄弟《・・・》ですか……?」
そうウィリアムが確認する様にカイトをマジマジと見つめながら問いかけると、そうだよ、とカイトは小さく首肯した。
「僕の母親は元々、アロンダイトの父……ランスロット・フォン・アークライトの妹だったのさ。まあ、政略結婚でリィズ王国に嫁いだ事になる一方で、実は此処には重大な意味がある。それは……」
「……普段は友好的な顔をしていればそれでいいが、有事の際には平然と切り捨てることが出来る。そんな立場の人間を嫁がせたって訳か。よくある話と言えばそれまでだな」
そう呟いたのは、ウィスキーを煽っていたミハイル。
そのミハイルの言葉にそう言う事だね、とカイトが首肯し、だから、と話を続けた。
「元々僕は、アロンダイトと血が繋がっているっていう事実を知っていたし、そもそも何故リィズ王国を滅ぼす必要があったのか、それを確認する必要があった。だから、帝国に最初に入った時にアロンダイトの所に行って話を聞いたのさ。その結果、オブリビオンについての知識を皆に伝えられていたから、オブリビオンと戦うと言う一点においては、決して協力できない訳じゃない事は、直ぐに分かった。……まあ、レジスタンスをやっている時は、オブリビオンとは別の理由で彼と敵対する道を選んだんだけれどね」
そう告げるカイトのそれに、統哉が、それが……と言の葉を紡ぐ。
「皇帝の『空を取り戻す』為に人の力を集める。その為の手段として、覇道を選んだ事。でも実際には覇道以外にも取るべき道があったのでは無いかと言う主義主張があり、カイトが後者の道を選んだからってことかい?」
その統哉の確認に、その通りだよ、とカイトが真剣な表情を浮かべて首肯する。
「リィズ王国が滅ぼされた後。僕は、戦禍に巻き込まれてリズの生死を確認することが出来ず、国を守ることも、主を守ることも出来なかったと自分を責めながら放浪していた。その放浪の最中に僕はフェザーの商人に出会い、あのオブリビオンマシンを授けられた。その力を以て、僕は戦いを続けていたんだけれど……丁度その頃かな。今の帝国に覇道では無く、違う道が在るのでは無いかと訴え続けていた人と出会ったのは。勿論、その中には、アロンダイトのやり方によって何もかもを奪われた人達もいたし、単純に帝国と敵対する理由を持っていた人達もいた。そんな集団を守る様な形で、オブリビオンマシンに搭乗した僕が現れ、実際にリ・ヴァル帝国に対して戦果を上げた。……それで僕を皆は、|虚偽の英雄《ヒーロー》として祭り上げ、頼りにする様になり……僕は、本当に此が正しいのだろうかと感じながら、レジスタンスとして活動していたんだ」
そこまでのカイトの説明を聞いて、でも、と統哉がそれを引き継ぐ様に話を続ける。
「……でも、カイトが最初に乗っていたオブリビオンマシンは俺達が破壊した。それでもカイトは、互いに互いが手を取り合って『戦争』を無くすことが出来ると言う希望と理想を胸に抱いた儘、ずっと戦い続けてきたんだね」
その統哉の出した結論を聞いて。
そうだね、とカイトが微笑を浮かべてそれを肯定したところで。
「ワタシの方からも、質問をさせて貰って良いだろうか?」
そう次に言の葉を紡いだのは、エルゴ。
「勿論、構わないよ、エルゴさん」
そのエルゴの問いかけに応えるカイトに軽く礼を述べ、エルゴが続けた。
「ワタシがカイトさんに聞きたいのは、以前の戦闘中に通信機越しに聞いた、『ジルド』の事だ」
「ああ……その件は俺も聞きたかったんだ。確か、カイト。俺も敬輔から聞いた話なんだけれどよ、前回ウェルディンを襲った首謀者が吸血鬼っぽかったらしいな? 何か『ジルド帝国』ってのを名乗ってたんだろ?」
エルゴのそれに同意する様にして、そう話を続けたのは、陽太。
そのエルゴと陽太の問いかけに、其方の話か、とカイトが静かに首肯する。
「……実はレーテの嘗ての戦闘記録に残っている程度の話なんだけれど。『ジルド』と言うのは、前回ウェルディンを襲撃した2つの帝国の1つ、『ジルド帝国』の建国帝の名前だ。その人物の正式な名前は、ジル・ド・モンモランシ=ラヴァル。そのジルドが生み出した『ジルド帝国』は、今より遙か前……それこそ巨神『ガヴェイン』等が作られた時代に建国された超古代魔法帝国の1つらしい。で……まあ、正直、僕にとってはお伽噺の存在なんだけれども。『吸血鬼』と言う、人の血を啜り、永遠の時を生きながらえる種族の鬼達が、自分達の楽園を作るために作り上げ、人と言う種をその奴隷として扱い、この地方の一角を支配していた帝国らしいんだ」
そこまで告げたところで、カイトが少し考え込む様な表情を浮かべる。
「おう、どうしたカイト?」
そんなカイトの様子を見て、興味深げにミハイルが問いかけると。
「これは、アロンダイトに直接皆に確認して欲しい話なんだけれど、一応、僕からも話しておこうか。その『ジルド帝国』なんだけれど……」
そこまで告げて、紅茶を一杯口に含み、カイトが唇を湿らせて、話を続けた。
「……『リ・ヴァル帝国』の皇帝がアロンダイトになり急速に力を付けながら、オブリビオンについてリ・ヴァル帝国が明確に敵対し、調査する様になった本当の理由。それが、『ジルド帝国』を名乗るオブリビオンマシンの一派に、リ・ヴァル帝国が襲撃を受け、それで多くの死者や被害が出たことに起因している様なんだ」
そのカイトの言の葉に。
「……待て。と言う事は、リ・ヴァル帝国やアロンダイトは、ウェルディンを襲撃されるときよりも前に、そのオブリビオンマシン……と言うより『ジルド帝国』と交戦した記録がある、と言う事かカイトさん」
思わず、と言う様にエルゴが問いかけるのに、恐らくは、とカイトが首肯する。
「確実では無いんだ。これは、未だリィズ王国に僕がいた頃に起きた話だから……あくまでも噂だし、一般には秘匿されている話だしね。只……僕自身もウェルディンの復興意外にも、ちょっと事情があってこの数ヶ月の間に一度帝国の方に足を運んだんだけれども……この時にある一団と交戦して撃破した事がある」
「ある一団? さてはそいつ……アダムカドモンの奴等じゃねぇのか?」
そうミハイルが笑う様にしながら問いかけるのに。
カイトが多分ね、と小さく首肯し、やや声を潜めて続けた。
「とは言え、精々が末端と言ったところだろう。そいつらが求めていたのは『不老不死』……つまり、皆も知っている『起き上がり』と言う技術だったからね」
そのカイトの言葉を聞いて、
『!』
と思わず全員が息を飲むのを確認しながら、軽く紅茶を啜り話を続けるカイト。
「皆の方が詳しいとは思うけれども。元々、ロスト共和国で研究されている『起き上がり』は不老不死を目指す技術でもある。だからこそ、それを求める人々が独自の勢力を築いたとしてもおかしくはない。アダムカドモンとしても、そういった技術を欲しがる連中を子飼に出来れば、色々と都合が良かっただろうしね。……まあ、その勢力は、僕がリ・ヴァル帝国の一部勢力と協力して撃破しているんだけれど」
そうあっさりと応えるカイトのそれを聞いて。
「……リ・ヴァル帝国の一部勢力?」
そう興味深げにカイトの言葉を引き取ったのは、統哉。
統哉はそこで珈琲を一口啜り、もしかしてそれは、と話を続けた。
「例えば、それはカイトと同じ様な理想や理念を持った帝国の人達みたいな事なのかな?」
その推測交じりの統哉の言の葉に。
「その通りだよ、統哉さん」
カイトが同意する様に首肯するのを見て、やれやれ、とミハイルが軽く肩を竦めた。
「帝国の|皇帝《ツァーリ》直々のお呼び出しを受けて、この後表敬訪問する前に、お前さんからもう少し詳しい話を聞けりゃあと思って寄ってみたが……どうやら、正解だったみたいだな。只……今の話だと、アダムカドモンの末端も末端を潰す事は在ったみたいだが、流石にフェザーや詳しい調査をする暇はなさそうだった感じか」
そうぼやいてウィスキーを呷るミハイルに苦笑を零してカイトが首肯する。
「そこに手を回していられる程、僕にも時間は無かったからね。とは言え、そっちについては、皆の仲間が別の方法で情報を集めるべく交渉に向かったみたいだけれど」
「……ぼく達よりも先にカイトさんを訪れた猟兵がいたんですね」
そのウィリアムの確認に、ああ、とカイトが静かに首肯する。
「因みにカイト。この間ウェルディンを襲ったジルド帝国のあのパイロットがその後どうなってやがるのか、知っているのか?」
そう陽太が確認する様に問いかけると。
カイトがそれにそっと溜息をつき、彼女は、と軽く言葉を紡ぐ。
「今でもこの自由都市ウェルディンに監禁されているよ。只、その尋問記録等はこの都市の機密事項だからね。どんな尋問が行われたのかは、僕が詳しく知る権限はないし、仮に知っていたとしても、幾ら皆が相手でも、流石にそれを口にすることは出来ないかな」
そうカイトがさらりと告げるのに。
(「となると……俺達の情報と交換って言うのも、難しそうだな」)
そう陽太が内心で結論を下している間に、それじゃあ、と統哉が言の葉を紡いだ。
「彼女を見て、カイト自身が感じた印象みたいのを教えて貰うことは出来ないかな?」
そう統哉が問いかけると。
「……僕自身は、直接話をした訳では無いけれど。一先ず、神経質というか……簡単に口を割ってくれる様な雰囲気は感じられなかったかな。……只、人間を見下しているんじゃ無いかな、とは思えた」
そう小さく息を吐くカイトの印象を聞いて。
「因みにカイト。アダムカドモンとあのジルド帝国は繋がっていると思うか?」
そうミハイルが問いかけると。
「まあ、間違いなくクロだろうね」
そうあっさりとカイトが応えるのにだろうな、とミハイルが苦笑を零したところで。
「カイト」
少しだけ、空気を切り替える様に。
統哉が居住まいを正してカイトに問いかけるのに、カイトが神妙な表情で統哉の方を見返す。
「……どうした、統哉さん」
そのカイトの問いかけに。
「君に改めて聞いておきたい事がある」
その統哉の改まった言の葉に。
「何をかな?」
そうカイトが確認する様に聞くのに、統哉は君とアロンダイトの理想は、と話を続けた。
「異なる方向を向いている」
――けれども。
「遙か彼方の理想へ向けて、折れること無く足掻き続ける君達の姿は何処か似ている……そんな気が、俺にはしているんだ」
その統哉の何処か確信を持った言葉を聞いて。
カイトが少しだけ嘆息し、まあ、と小さく呟いた。
「……そう言う|兄妹《・・》だからね。アロンダイトと、レジスタンスに居たその|妹《・》は。僕は只、リィズ王国を失ってからの放浪で、その|妹《・》の思想に共感して、同じ道を歩みたいと思っただけさ。その後にリズと再会出来たんだけれどね」
そうカイトが微苦笑を零して告げるのに。
そうか、と統哉が1つ頷き、ならば尚更、と言の葉を紡いだ。
「違う視点を持っているからこそ、衝突だけで無く互いに補い合える事も在るかも知れない。2人なら、新しい道を見出すことも出来るかも知れない。その為に1度、俺達と一緒に皇帝に会って話をしてみないか?」
そう、統哉が問いかけるのに。
カイトは少し悩む様な表情を見せるが、程なくして、静かに首肯した。
「……僕が出来るとしたら、それは多分、兄妹の仲裁って形になるだろうけれどね。それでも、話をすること自体を否定するつもりは無いかな。しかも今回はミハイルさんの言葉を借りれば、正式な表敬訪問だ。……只、啀み合うだけ以外の道を模索できる可能性はあるね」
そのカイトの応えを聞いて。
「良かった。宜しく頼むよ、カイト」
そう統哉が微笑んで首肯するのにカイトもまた、首肯で静かに返すのだった。
大成功
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灯璃・ファルシュピーゲル
2、クレアへ訪問
今回は比較的、穏やかな仕事ですが。相当、方々に敵の目もありそうですし、油断できませんね
普段、副官として多忙な実務と調整に追われてそうですし、折角の業務外、お土産に和菓子でも持参して、一服して貰いながらゆっくり雑談がてら(情報収集)に当たれればと思います。
最初は復興の現状や防衛体勢の再構築等の状況を聴いて、
聞き役に徹して、苦労に同意しめしてなるべく労うように声を掛けつつ、
徐々に過去の事情や敵側への話に移していきます。
この辺りの国家事情は、紛争地あるあるですが…やはり複雑怪奇ですね。
単純に敵味方、仇や恩人、友と言い切れない処がある…リズさんやカイトさん、アロンダイト…それに貴女達の様に。
実際のところ、何があったんでしょうかね。帝国のあの皇帝さんは、
本当に王国が障害だからと、短絡的に戦争に走ったんでしょうか…。
それに、各国に相当に手を広げてる|黒い影《アダムカドモン》は
かなり昔からこの都市や帝国の中枢にも根を張って居るんじゃないですかね…クレアさんはどう思います?
アドリブ歓迎
寺内・美月
4,ヴェルナー少佐
連携・アドリブ歓迎
・武装勢力によって再度ウェルディンが攻撃された場合に帝国軍(≒帝国)は、市内の治安は維持できている状況でも救援の為に武力行使ができるか?
・同、現状でどの程度の初動戦力を投入できるか?
・同、現状の指揮系統と指揮官ないし責任者は?
・同、現地の防衛隊及び軍事組織又は猟兵と円滑な共同作戦を行える素地又は準備はあるか?
※少佐がいない場合はリズ王女に以下の事のみを聞く
・旧リィズ王国関係で王女の統制下にない武装組織はいるか?
・防衛隊の内、王国出身者は過去の悲劇を乗り越えて帝国軍と共同できるか?
※カイトが帝国に向かう場合、万一の事態を考慮し秘密裏に副官を連絡員として残置する
●
――その頃、自由都市ウェルディン南地区では。
(「今回は比較的、穏やかな仕事ですが。相当、方々に敵の目もありそうですし、油断できませんね」)
そう内心で灯璃・ファルシュピーゲルが呟きながら、ウェルディンの南地区……リ・ヴァル帝国方面の都市の商店街に足を踏み入れていた。
年頃の娘の休暇であればこう言う場所に顔を覗かせている可能性は高いだろう。
と……此処で。
(「そう言えば、この都市は……2度程襲撃を受けている筈ですが」)
前回の戦いは大体3ヶ月前のこと。
外からの襲撃部隊は1機も通さず迎撃したが、その間に内側から屍鬼帝国勢力の襲撃を受けたにも関わらず。
既に都市の大部分が復興していると言う事は……。
(「誰かに手を貸して貰ったと言う事でしょうか?」)
と、内心で灯璃が思考を進めた……丁度その時。
キャミソールにプリーツスカートと言う格好の少女が両手に買い物袋を抱えている姿の少女に気が付き、灯璃がクレアさん、と声を掛けると。
「えっ? あっ、貴女は……?」
見覚えはある、けれども何処でだったかと言う表情をクレアが浮かべるのを見て。
微苦笑を零しつつ、灯璃がお久しぶりですね、と丁寧に言葉を紡ぎ。
「灯璃・ファルシュピーゲルと言う猟兵です。そう言えば、クレアさんとは、面と向かってお話をするのは初めてでしたね」
そう続けて自己紹介を行うと。
クレアがああ、と思い出した様に声を上げ。
「猟兵の灯璃さんでしたか! お久しぶりですね! 元気でしたか?」
そう快活に微笑んで確認する少女のそれに、はい、と軽く敬礼して、話を続ける。
「普段はリズさんの副官として多忙な実務と調整に追われていそうな折角の業務外にすみません。あ、これ、お土産です」
そう告げて。
灯璃が懐から和菓子を取り出してクレアに見せるのに、わあ、と嬉しそうに頬笑むクレア。
「あ、ありがとうございます! ところで、今日はどうしましたか? 灯璃さんも休暇か何かで?」
「そうですね。まあ……ちょっと此方の方に来る用事が出来まして。それで折角なので、クレアさんに会いに来たんです」
その灯璃の言の葉に、成程、とクレアが首肯で返しつつ。
「でしたらお土産も頂きましたし、私の家に来ませんか? お茶位ならお出しできますよ」
そのクレアの提案に。
「あっ、それでしたら荷物を1つ持ちますよ。それでは行きましょうか」
そう言って。
買い物袋の1つをクレアから預かった灯璃が。
クレアと肩を並べて、クレアの自宅に足を運ぶのであった。
●
「結構色々買い物をしているんですね」
「まあ、1人暮らしですからね。管制室に泊まり込むことも多いですが、こう言う時でも無いと、自炊用のものとか、生活用品を買う時間も中々無くて」
そんな他愛も無い話を聞きながら、凡そ15分程歩いたところで。
そこそこ小綺麗なマンションに辿りつき、クレアが懐からカードを取り出しスリットさせると。
ガラガラガラ……と音を立てて開いた扉を潜って2階に上がっていき、マンションの部屋の1つに到着。
クレアはそれから懐から取り出した鍵で扉を開き、どうぞ、と灯璃を部屋に招き入れる。
「正直、あまり片付いていないのですが……」
そう告げつつリビングに灯璃を通し、買い物袋をキッチンの机の上に置くクレア。
灯璃が周囲を見回していると、リビングと台所、それにテレビが脇に置かれると言う……。
(「普通のマンションの一室に住んでいるんですね」)
等と灯璃がぼんやりと考えを張り巡らせていると。
「すみません。ちょっと先に荷物片付けてしまいますね!」
「あっ……宜しければ手伝いますよ」
クレアがそうすまなそうに告げるのに、灯璃が頷き、買い物袋の荷物を一通り片付ける。
それが一段落したところで。
「ありがとうございました。今、お茶入れますんで、寛いでいて下さい」
そう告げられて、頷きリビングの椅子に座り周囲を灯璃が見ているその間に。
クレアが食器棚から取り出してきた急須にお茶を淹れ、2個の湯飲みを盆に載せて戻ってきた。
「すみません……色々とお手伝いして貰っちゃいまして」
そう告げて。
急須から湯飲みにお茶を注ぎ、灯璃に勧めてくるクレアにいえ、と灯璃が頭を横に振る。
「突然お邪魔したのは私の方ですから。まさか、買い物中に出くわすことになるとは思いませんでしたが」
そのまま軽くお茶を一口啜る灯璃に私もですよ、と笑いかけるクレア。
「猟兵の皆さんが神出鬼没なのはカイトからも聞いていますし、私もよく知っているつもりでしたけれど。|休暇《オフ》の時に会うとは思っていませんでしたね」
「そうですか。それは……何だか申し訳ないです」
そう何となく自分が聞こうと思っていたことを思い出し、何とも言えない表情を浮かべる灯璃。
けれどもクレアは気にしないで下さい、と笑って、灯璃の差し入れたお茶菓子に舌鼓を打ちながら、ところで、と何処か悪戯めいた光を瞳に宿らせて問いかける。
「灯璃さん。此処まで、ご一緒して頂いた訳ですが。少し不思議に思いませんでしたか? あれだけの攻撃を受けつつ、よく此処まで復興できたな、とか」
そのクレアの問いかけに。
灯璃が参ったという様にポリポリと頬を掻きつつ、1つ頷く。
「実際、それは思いましたね。あれだけの攻撃を受けつつも、よくもこれだけとは」
そんな灯璃に微笑み、差し入れの和菓子を口に含んで飲み下すクレア。
「ふふっ。まあ、猟兵の皆さんが被害を最小限にして下さったのが主な理由なんですけれどね。南地区の方は、リ・ヴァル帝国が復興支援の為に手を貸して下さっておりまして」
そのクレアの言の葉に。
成程、と首肯しつつその発言に引っかかりを覚えた灯璃がふと、それを口に出す。
「では、北地区の方は、ロスト共和国が……?」
その灯璃の問いかけに。
そうですね、とクレアが何とも言えない表情を浮かべつつ首肯を返した。
「……個人的にはロスト共和国の復興のための支援表明は裏があると睨んでいるんですけれど。まあ、それでも、リ・ヴァル帝国から支援を受けている以上、双方への政治的事情に配慮すると、ロスト共和国からの支援表明も受けないわけには行かない、と政府上層部は判断した様でして」
その微かな嘆息ともとれるクレアのそれに、灯璃が静かに先を促す。
「まあ、リ・ヴァル帝国と正面から殴り合いになる危険性もあるので、ロスト共和国には、南地区まで、リ・ヴァル帝国には北地区まで手を出さない様に取り決めはしているんですけれどね。正直、起き上がりの技術をウェルディンに持ち込まれる可能性が跳ね上がるので、リズさん達も今回のロスト共和国からの支援を受け入れるのは不本意だと思いますが」
そのクレアの言の葉を聞いて。
「……クレアさんは、|知って《・・・》いるのですね」
そう灯璃が問いかけると。
ええ、と小さく首肯して、クレアが続けた。
「カイトから教えて貰いましたよ、ロスト共和国の起き上がりについては。只……ハルさん誘拐の犯人は、起き上がりだったのか、それともそうでは無かったのか、私達には分かりませんでしたけれど。……もしそれが分かっていれば、ハルさんに脱走されると言うことは、起きなかったかも知れません……」
そう、何処か悔しげに呟くクレアのそれに。
灯璃がそうかも知れませんね、と相槌を打ちつつ、お茶を一口含んで、話を続ける。
「防衛体制の再構築状況はどうでしょうか?」
「……南地区に関しては悪くは無い、ですね。今までで2回、この都市は襲撃を受けましたが、そのどちらにおいても、リ・ヴァル帝国の軍人や皇帝が市民の避難救助に手を貸して下さった事、それからリ・ヴァル帝国から派遣された復興支援部隊が友好的なのも大きいです。その為、『リ・ヴァル帝国』に対してはさておき、『帝国軍』には非常時には人々の避難救助支援をして貰える様に上層部に掛け合った位ですから。後は、防衛隊員達の追加と実戦訓練、各箇所との非常時の連携用の特殊通信ルートの構築……」
そこまで告げたところで。
少し疲れた様に微かに嘆息するクレア。
「本当はお休みを貰うのもどうかと思うのですが……寧ろ、隊長に『クレアは働き過ぎているから休む様に』と言われましたので、今日はお休みを頂いている、と言う感じです」
「……本当に苦労していますね、クレアさん。ですが、クレアさんのその働きのお陰で、復興が早くなって来ているのだと思いますよ」
そう頬杖をついて灯璃が渡した和菓子を食べ、お茶を啜るクレアに、灯璃がそう労いの言葉を掛けるのに。
「私の力なんて、微々たるものですよ、灯璃さん。それでも、そう言って貰えるとやっぱりほっとしますね」
そう肩の力を抜く様に呟くクレアの様子を見て、微笑む灯璃。
「とは言え、ロスト共和国に関しては、私は色々と疑うしかないのですけれどね……。そう言う意味では、万が一また襲撃があったら、北地区の方がより危険なことになる可能性が高いかも、と言う懸念はあります」
そう愚痴るクレアのそれに、そっと灯璃が嘆息を漏らし。
「まあ……この辺りの国家事情は、紛争地あるあるではありますが……やはり複雑怪奇ですね」
続けられたそれにクレアがそうですね、と相槌を打ちながらそっと溜息を零している。
「まあ、小国家群が乱立していた嘗てよりも多少は大きな国が幾つか生まれている以上、人によっては多少マシという人もいるかも知れませんが……」
そのクレアの言葉に流される様に。
腕を組み、考え込む表情を浮かべて、灯璃が続けた。
「単純に敵味方、仇や恩人、友と言い切れない処があります……それこそ、リズさんやカイトさん、アロンダイト……そして貴女の様に」
その灯璃の促しに、ええ、とクレアが首肯を返し。
「……オブリビオンと呼ばれる存在を除けば、皆が皆、それぞれに掲げている信念や正義がありますから。……それも他者から見れば全く違う見方の出来るものですが」
そこまで告げたところで頭を横に振るクレアを見て、灯璃がポツリ、とさりげなくその疑問を口に出した。
「実際の処、何があったんでしょうかね?」
その灯璃の問いかけに。
「えっ?」
一瞬何を言われているのか分からないという様に目を瞬かせたクレアに、灯璃が続けた。
「あの皇帝さん……アロンダイト皇帝は、本当に、王国が障害だからと、短絡的に戦争に走ったんでしょうか……?」
その、灯璃の呟きに。
「……ロスト共和国の……いえ、オブリビオンの息が掛かっている可能性の高い国として、何らかの疑いを持たざるをえず、それ故にあの国を滅ぼそうとしたと言うのは、彼の動機の1つとしてはあると思います。まあ、あれが起きなければ、カイトと私が同じ道を望んで歩いて行く事も無かったとは思いますけれども」
そう静かにそっと目を眇めるクレア。
そのクレアの言の葉に、灯璃がちらりとその顔を見遣る。
――その顔に……何故か、アロンダイトやカイトに似た面影を、微かに感じられた。
(「……この方は……もしかして……」)
内心であることを思いながら、灯璃がそれに、と言葉を続けた。
「この地域の各国に相当に手を広げている|黒い影《アダムカドモン》の事も気になります。まるで……かなり昔からこの都市や、帝国の中枢にも根を張っている様な、そんな感じがしますからね。その点、どう思いますかね……クレアさん」
その灯璃の問いかけに。
クレアは暫く黙していたが、程なくして冷め切ってしまったお茶を啜り、少し居住まいを正して言葉を続けた。
「……灯璃さん。灯璃さん達は、|黒い影《アダムカドモン》について、どの様に思っていますか?」
その、クレアの問いかけに。
「死の商人。その集合体だという話を聞いています」
その灯璃の言の葉に。
クレアがそうですね、と静かに首肯する。
「それが|黒い影《アダムカドモン》の基本理念だと私も思っています。であれば、この100年で彼等は飛躍的に勢力を拡大している筈です。何故ならその頃に人々は空を奪われ、それ故に限られた物資を自分達の者にするために、プラントの奪い合い……戦争を行っているのですから。ですが、それよりも以前から、それこそこの地方全体に『アダムカドモン』を名乗る商人の連合体は存在しると私は考えています。目的は戦争の泥沼化による、人類の急激な技術力の発展の促進と軍需産業の拡大による自分達の利益の追求でしょうね」
そのクレアの言の葉に。
「……何故、クレアさんはそう思うのですか?」
思わぬクレアの推測を聞いて、微かにその眉を動かした灯璃が問いかけると。
クレアは微苦笑を浮かべて、少し話題を逸らす様な口調で話を続けた。
「灯璃さん。アロンダイト・フォン・アークライトは、『人類に空を取り戻す』為に人々の力の統合を目指しています。その為に邪魔な各国を併合することで、力を行使しています。ですが……そうではなく、互いに手を取り合い、お互いのプラントから供給される物を分け合っていけば、きっと戦いで奪い合ったりする事無く、生きていくことが出来るのでは無いか? もっと簡単に言えば、『戦争』を無くし、|黒い影《アダムカドモン》の陰謀を止める事は出来ないか? と考えることはありませんか? 例えそれが夢の様な話に過ぎずとも」
そのクレアの問いかけに。
それは……と灯璃がそっと軽く頭を横に振った。
「……カイトさんも同じ様な事を言っていましたね、以前」
「はい。そしてその気持ちは、私も同じ。そして……そんな風に思っている人々が帝国内にもいます。これは、俗称ですが帝国では『穏健派』と呼ばれる人々です」
そのクレアの説明に。
「……『穏健派』、ですか」
と灯璃が確認する様に言葉を漏らすのに、そうです、とクレアが静かに首肯した。
「そして、『穏健派』と呼ばれる者達にも表向きには公表されていませんが、代表者がいます。その者の名はギネヴィア・フォン・アークライト」
「……アークライト。その性は……」
何か核心を突かれたかの様にハッ、とした表情を浮かべる灯璃のその呟きに。
はい、とクレアが微笑と共に首肯した。
「アロンダイトの異母妹であり、人々の細やかな平和を広げたい、互いに手を取り合って人として生きていきたいと願い。その為に戦うと言う矛盾した道を選ぶ事を決めた女。それが私の本当の名前です」
そこまでクレアに告げられたところで。
「……!」
思わず息を飲む灯璃に首肯し、クレアは近くに置かれていた小棚に向かい。
そこから1通の封筒を取り出して、灯璃に差し出した。
「灯璃さん。もし、リ・ヴァル帝国に行く機会があったら、この手紙をルーファスという人に渡して欲しいのです。もしかしたら、此から灯璃さん達皆さんの役に立つ話を聞くことが出来るかも知れませんから。必要ならば、カイトに聞いて貰っても誰のことかは分かるでしょう。但し、それ以外の方には私の事やその手紙については秘密でお願いします」
そう秘密めいた口調で語るクレア――ギネヴィアのそれに。
「分かりました。……クレアさん」
彼女から渡された封筒を懐にしまい、そっと灯璃が首肯し、静かにその場を辞した。
●
一方、その頃。
自由都市ウェルディン南地区に入った帝国軍の駐屯しているその地区へと、寺内・美月は足を踏み入れていた。
そんな帝国軍達の駐屯地を歩き、此処に来る前にアポイントメントを取った軍部へと足を運びながら、美月が周囲を見回していると
(「……まるで防衛大の様な空気だな」)
ふと、何故かそんな思考が美月の脳裏を過ぎっていく。
グラウンドでは兵士達……それとも士官候補生達か? が運動をしている様子が見え。
或いは訓練の一貫として、この敷地一帯を回る様に走っている者達もいるが故にそう思えたのであろうか。
様々なことに思いを馳せながら、美月は目的としていたそこに辿りつき。
その軍部の一室……『レイモンド・ヴェルナー』と書かれたネームプレートの貼られた一室の扉をノックすると。
「久しぶりだな」
扉を開けて敬礼と共に美月を迎え入れたその青年に首肯し、美月も軍隊式敬礼で返礼し、少し驚いた様な表情になりながら言の葉を紡ぐ。
「この地に貴方が残っているとは思っておりませんでした。……レイモンド・ヴェルナー少佐」
「覚えていてくれたようで、何より。まあ、帝国軍として、臣民達を守り、この都市を復興させるための手伝いの為にも、キャバリアは役に立つからな。我々も人々の生活の復興のために、力を使えることを誇りに思っているよ」
そう穏やかな笑みを称えて告げるレイモンドのそれに、美月が軽く首肯をする。
それから部屋に招き入れられて席を勧められ、礼を述べて席に着いたところで、挨拶もそこそこに、用件を早速切り出した。
「まず、これから先、ウェルディンが武装勢力によって再々度侵攻された場合、帝国|軍《・》は、市内の治安は維持出来ている状況でも、救援のために武力行使を行うことは出来るのでしょうか?」
その美月の問いかけに。
レイモンドがそっと溜息を漏らし、軽く頭を横に振った。
「市民達を守る為に武力行使をするのは、吝かではない……と言うより、軍人としては当然ではあるが、今の私達ではウェルディン上層部の承認が無ければ武器の使用許可は降りない状況になっている。只、人々の迅速な避難誘導などにはある程度裁量を与えられる様になったが」
そのヴェルナーの言の葉に。
「……それは、貴方達がリ・ヴァル帝国軍人だから、ですか?」
そう確認する様に問いかける美月にその通りだ、と応えるレイモンド。
そのレイモンドの返答を聞いて、では……と美月がゆっくりと噛み締める様な口調で問いかけた。
「帝国や、帝国|軍《・》としてではなく……貴方方個人個人が、この都市の人々を守る為に動くことは出来ますでしょうか?」
その美月の問いかけに。
成程、とレイモンドが静かに首肯した。
「私達個人としては、ウェルディンの者達と共にありたいとは思えど、支配したいとは思わぬ。互いに手を取り合うことが出来るのであれば、それに越したことはない。少なくとも、今の私達と私の上官……新しいウェルディン復興支援部隊の隊長はそう思っているよ」
そのレイモンドの応えを聞いて。
「成程……現在、ウェルディンに駐屯している帝国軍の責任者は貴方ではないのですね」
その美月の言の葉に。
「ああ、そうだ。今、此処に駐屯している我が軍の部隊長は、パーシバル・ツァイス中佐と言う」
「パーシバル・ツァイス中佐……ですか」
その美月の問いかけに。
うむ、とレイモンドが1つ首肯をして、言葉を続けた。
「以前の戦いの時までは、私だったのだがな。パーシバル中佐は皇帝陛下の『空を取り戻す』為に人類の力を統合するその夢には賛同しているのだが、やり方には反発していた為、これまでは閑職に回されていた方だ。だが先日……3ヶ月程前に起きたあの戦い以降、この都市の帝国からの復興支援部隊の隊長に任命され、以降は私達と共に、此方に駐屯していらっしゃる。自由都市ウェルディンの上層部とも、それなりに良好な関係を築いている方だ」
そのレイモンドの応えを聞いて、ふむ、と美月が確認する様に首肯して、では、と話を続けた。
「現状、どの程度の戦力を初動で投入できるのですか?」
その美月の問いかけに。
「本来は機密事項だが……猟兵である君達とは円滑に事を進めていきたいと思っている。故に明かすが、初動で、人民全ての避難と警備の為に動くのであれば全機……つまり100機を動員出来るだろう。塹壕を作り上げることを含めるのであれば、流石に部隊を分割する必要はあるがな」
そのヴェルナーの説明に成程、と1つ相槌を打って、美月が続ける。
「因みに、ツァイス中佐とヴェルナー少佐率いる、この復興支援部隊は、リ・ヴァル帝国から見た場合、どの様な指揮系統になっているのですか?」
その美月の問いかけに、レイモンドが仕方ないな、と言う表情になり。
何処か諦めた様に言葉を続けた。
「私達の所属は、あくまでもリ・ヴァル帝国だが、派遣されている理由は、あくまでもウェルディンの復興支援部隊だ。但、前回の反省もあるので、もし、ウェルディンがまた何からの襲撃を受けた場合には、特例として帝国の指揮権から独立しての行動の裁量は許可されていると考えて良い。無論、前回の様に皇帝陛下自らが先陣に立ってこの都市を守るという様な事がある場合は、速やかに其方の指揮下に入るがな」
そのレイモンドの応えを聞いて、では、と美月が言の葉を紡いだ。
「もし有事の際には、ウェルディン防衛隊や、我々猟兵達と円滑な共同作戦を行える素地或いは、準備はあると言うことですね?」
その美月の問いかけに。
そうだな、とレイモンドが難しい表情になりつつもそれに応えた。
「とは言えそれはあくまでも、『ウェルディンの市民を避難・守護』すること迄だ。此方から攻めてくる武装勢力に積極的に攻撃する事は出来ないだろう。……それをすれば、今度はロスト共和国に攻撃の隙を与える切っ掛けになってしまうだろうからな。私に言えるのはこの位だな」
そのレイモンドの締めくくる様な言の葉を聞いて。
「ありがとうございました」
そう首肯すると共に。
美月が静かにその場を辞するのを、レイモンドが敬礼して見送った。
●
――と、此処で。
「……寺内さん、良いか?」
不意に美月のイヤーマフ型通信機に通信が入ったのに気が付き、美月がそれを取る。
その通信の相手とは……。
「ルスツァイアさんですね。如何しましたか?」
その美月の通信機に連絡を入れてきたエルゴの声に美月がそう返事を返すと。
「多分、大丈夫だとは思うんだけれど。カイトさんはワタシ達と一緒に帝国の方に同行することになった。だから……」
そのエルゴからの通信に分かりました、と美月が首肯を1つ。
「では、最悪の場合に備えた準備だけはしておきましょう」
そう小さく呟いた美月のそれに。
「頼んだよ、寺内さん」
そう告げてエルゴからの通信が切れたところで。
「――征け、トゥルパ」
そうウェルディンの人気の無い場所に密かに美月が自らの|自我を持つ分身《トゥルパ》を召喚する。
(「万が一に対する備えを怠らない様にする。これも、軍人の基本ですね」)
そう内心で呟きながら。
美月は、静かにウェルディンを後にした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『廃集落捜索』
|
POW : 重機やキャバリアで瓦礫を撤去。これは秘密の入り口か?
SPD : あたりを偵察。もしかしたら敵が潜んでるんじゃないか?
WIZ : 文書などを捜索。電力が復旧すれば、確認できる記録もあるんじゃないか?
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――リ・ヴァル帝国に向かう、その途中で。
「……嗚呼、そうか。もしかしたら皆、興味があるかも知れないな」
そう猟兵達に誘われて、レーテと共に猟兵達に同道したカイトが微苦笑を零す。
そのカイトの様子に気がついた猟兵達が其々の表情でカイトを見ると。
「……まあ、さっき皆の内の何人かには話をしたんだけれどね。僕が戦った末端の末端に過ぎないとは思うけれど、アダムカドモンと思しき勢力と戦ったその跡地に、もしかしたら皆は興味を持つかも知れないね」
――元々。
今のリ・ヴァル帝国皇帝アロンダイトは、戦によって、自らの領土を広げてきた存在だ。
故に、その戦跡地を辿っていけば、自然とリ・ヴァル帝国に向かうことが出来るというもの。
――だからこそ。
「僕もアロンダイトがどんな戦いを行い、自身の領土を拡大してきたのか、全く知らないわけじゃ無い。だから、皆がアロンダイトの招待状に応じるなら、その途上でどんな戦地跡があるのかを、見せることも出来ると思う。……あまり、意味は無いかも知れないけれどね」
そうカイトがレーテに搭乗したまま言葉を紡ぎ。
そして……。
「……皆は、此から如何するんだい?」
そう気安い口調で問いかけるカイトのそれに。
――猟兵達が、出した答えは……。
******
第2章は下記ルールにて行います。
シナリオフレームの集落跡では、リ・ヴァル帝国と反抗勢力(リィズ王国除く)の戦いの跡地を訪れるこ
とになります。
また、下記ルールを使用した場合、下記設定が追加された場所を調査することが可能です。
a.カイト同行。
→カイトが第1章の判定の結果、猟兵達に同行してリ・ヴァル帝国に向かってくれる様になりましたので、カイトに案内を頼めば、幾つかの箇所を案内した上で、リ・ヴァル帝国に向かうことになります。
1.不老不死を求める勢力とカイトが交戦した場所。
2.カイトがいたレジスタンスとリ・ヴァル帝国が争ったことのある跡地。
これを選ぶ場合は、プレイング冒頭にカイト同行と明記した上で、1か2を選択してください(どちらも帝国に行く途中にあるので、見ていくことは可能です)
また、カイト同行の場合は、カイトと会話をすることも可能です。
b.ウェルディンに残る。
これを指定した場合、第2章でウェルディンに残って調査を進めることが可能になる行動となります。
但し、行動が可能なのは下記のみです。
また、第3章も幾つかのルートに分かれますが、第2章でウェルディンに残る場合、第3章で分かれるルートの中の、『模擬戦』にしか参加できなくなります。
上記注意点を承知の上でウェルディンに残る場合、プレイング冒頭にbと記載して頂く+その条件を満たしている方のみ、下記プレイングを受理致します。
行える行動:ウェルディンで、吸血鬼に面会する。
※第1章でリズと面会をした方のみが選べるプレイングとなります。
此方を選ぶと、下記拙著で捕虜となった吸血鬼と牢獄で面会することが可能になります。
但し彼女を脱獄させたり、何らかの代価を基に交渉を行うことは不可能です。
リ・ヴァル帝国録~|強襲者《エミュレーター》
尚、この章から新規参加する場合はフラグメント通りの行動かカイトに同行して貰うかのみ、選択可能です。
c.第1章で明かされた情報は2のクレアに関する情報以外は猟兵同士で共有したとして頂いても構いません。
但し、吸血鬼には条件を満たしている方以外は面会できませんので、その点、予めご承知おきください。
――それでは、良き旅路の程を。
ベティ・チェン
a
カイト同行
2
「屍鬼帝国は、アロンダイトの因子を欲しがった、けど。ジルド帝国は、アロンダイトが要らなそう、だった。キミも、知られた、ら。屍鬼に望まれ、ジルドに疎まれる、かも。どう思う、カイト」
「屍鬼帝国、アダム・カドモン、ジルド帝国。ボクが、気になるのは、この順。だから。屍鬼帝国が、望んだ。アロンダイトのことを、知りたい。キミとアロンダイトのことを、知りたい」
「この前の、ウェルディン侵攻。ロスト共和国の捕虜の、ナツ。彼女がもし、逃げたら。エリクを殺す必要性が、跳ね上がる。だから、ボクは。何をするのが、正しいか。知らないことを、調べてる」
「不死者を、殺すには。蘇った瞬間、死ぬ状況にすれば、いい」
●
――リ・ヴァル帝国に向かう途中で。
「一先ず、ウェルディンから先に向かえるのは此方だね」
そうカイトが呟きながら、『レーテ』を以て移動を行ったのは、嘗てカイトがレジスタンス達と共にリ・ヴァル帝国の兵達と争った戦場跡。
その戦場跡に向かうその直前に。
「少し、時間、貰えるかな」
そう問いかけたのは、ベティ・チェン。
巨神G-O-リアス『スーロン』に搭乗し、その後を追う様にに移動するベティからの通信にカイトが。
「如何したの、ベティさん」
と問い返してくるのを聞いて。
ベティが軽く息を漏らして、言の葉を紡いだ。
「屍鬼帝国は、アロンダイトの因子を欲しがった、けど。ジルド帝国は、アロンダイトが、要らなそう、だった。キミも、知られた、ら。屍鬼に望まれ、ジルドに疎まれる、かも。どう思う、カイト」
そのベティの問いかけに。
何を言いたいのかを諒解したのであろう、カイトはコクピット内で唸る様な声を上げ。
それから程なくして、軽く嘆息を1つ零した。
「……そうだね。僕の感覚だと、屍鬼帝国にとって重要なのは、|アロンダイト《・・・・・・》なのだと思う。確か、屍鬼帝国が皇帝を狙った理由は、そのボスであったナツさん? とか言う起き上がりが、アロンダイトとの間に子供をもうけたかったから、とか何とか言っていたらしいとは、リズ達が聞き出したみたいだけれど」
そのカイトの確認に。
「重要なのは、|アロンダイト《・・・・・・》?」
そうベティが軽く首を傾げると、厳密に言うならば、とカイトが続けた。
「今回、ベティさんの言うとおり、ジルド帝国を名乗る彼女は、アロンダイトを殺そうとした。恐らく此はアロンダイトを、ジルド帝国にとって一番都合の良い『起き上がり』の皇帝にしたかったからでは無いか、そう思っている」
「アロンダイト『皇帝』を、『起き上がり』の皇帝にしたかった。そう思う、理由は?」
そのベティの問いかけに。
カイトが思考を巡らしながら話を続けた。
「これも、確証があるわけじゃ無いんだ。だが、『起き上がり』ってのは確か、死んだ人の記憶もそのままに人を蘇らせる邪法だよね? となると、『起き上がり』を互いに争わせ続ける為には、アロンダイトの様な思考の人間の方が、都合が良いんだ」
「……永遠に、戦い続ける、『起き上がり』、か」
そのベティの言の葉に。
僕は、とカイトが言葉を続けた。
「既に皆にも話している通り、僕はアロンダイトの従兄弟に過ぎない。母はサイキックだったけれど、父は只の人間だ。でも、僕の考え方は、永遠に戦い続ける『起き上がり』を欲する者達にとっては非常に邪魔なのかも知れないな、と思っている」
そのカイトの述懐に。
「……そうか」
と『スーロン』のモニタ越しにカイトを凝視し続けるベティ。
けれども、特別カイトが口に出した以上の情報が出てくる様子もない。
自分が見られているのには気が付いているのだろうが、特にそれを気にした様子もなく。
「因みに、ベティさんはどの勢力が一番気になっているんだい?」
そうカイトがさりげなく水を向けると。
ベティはカイトを凝視したまま、ボクは、と唇に言葉を乗せた。
「屍鬼帝国、アダム・カドモン、ジルド帝国。ボクが、気になるのは、この順だね。だから。屍鬼帝国が、望んだ。アロンダイトの事を、知りたい。キミとアロンダイトの事を知りたい」
そのベティの希求混じりのそれを聞いて。
カイトが成程、と1つ頷き話を続ける。
「先程も言った通り、僕とアロンダイトは従兄弟で、僕の母親は政略結婚の為に、リィズ王国に嫁いだ。先ず、僕とアロンダイトの関係性と屍鬼帝国の皇帝……女帝、なのかな?
ナツが望んだのは、直系と傍系どちらを選ぶのか、と言う話だろうなと思っている。普通に考えると、こういう時一番使いやすいのは第一王位継承者にして、現皇帝であり、しかも元々はジルド帝国で奴隷にされていたが脱走した人間の王の直系の子孫だろう」
此処まで、一息に説明をしたところで。
そう言えば、とカイトが誰に共無くポツリと呟く。
「情報屋からの情報にあった気がするな。……確か、アロンダイトの母親は左目が深紅だったとか、何とか言う、話が……」
その、カイトの言の葉に。
「瞳が、深紅……」
その言葉の意味を咀嚼する様に呟くベティに、まさかね、とカイトが軽く頭を振る。
「……もし、その話が本当なのであれば。何か理由があるのかも知れないね。ただ……もう故人の彼女は確か、オブリビオンでも、起き上がりでも、無い筈だけれど」
――そのカイトの話に、嘘はなさそうだ。
元々クロムキャバリアのオブリビオンは基本的にオブリビオンマシンである以上、アロンダイトがオブリビオンの血を引いているとは考えにくいだろう。
「この前の、ウェルディン侵攻。ロスト共和国の捕虜の、ナツ。彼女がもし、逃げたら。エリクを殺す必要性が、跳ね上がる。だから、ボクは。何をするのが、正しいか。知らないことを、調べてる」
「……エリク? あの、自由都市ウェルディンでリズが友誼を結んでいた彼のことかい?」
カイトの確認の様な問いかけに。
ベティがそう、と小さく首肯した。
そのベティのモニタ状での首肯を見て。
エリクについては深く追求をせず、カイトは仕方ないか、と言う様に溜息を漏らした。
「……ナツについては、今のところ脱走はされていない筈だ。何せ、彼女は今、一番ナツにとって都合の悪い場所に監禁されているからね」
続けて飛び出してきたカイトの其れを聞いて。
「それは、もしかして……」
思わず、と言う様に身を乗り出してベティが問うのに、カイトが嘆息して続ける。
「僕は此処最近の3ヶ月の間に、帝国に一度向かっているんだけれどね。その時の任務が、アロンダイトの護衛及び、『ナツ』の護送だった。とは言え、僕に出来たのは精々リ・ヴァル帝国までアロンダイトとその護衛、そして『ナツ』を連れていくことまで。流石に今、リ・ヴァル帝国の何処に監禁・拘束されているか、そこでどんな尋問が行われたか迄は知らないし、分からない」
それ以上の事は本当に分からないのだろう。
一先ずそこまで話したところで話を区切ったカイトを見て。
「情報提供、感謝、カイト」
そう呟くベティに、カイトが小さく首肯した。
大成功
🔵🔵🔵
ウィリアム・バークリー
a.カイト同行
2
カイトさんがレジスタンスにいた時期って、結構前ですよね。その戦場跡もどれだけ当時をとどめているか。
まあ、実見するに限ります。カイトさん、案内よろしくお願いします。
この世界ですから、当然敵味方ともにキャバリアで戦ったんでしょう。キャバリアが暴れた痕くらいは残っていますか。
Wizard Eyeを放出して、色んな視点から現地を見てみましょう。
双方の戦闘方針も聞いてみたい。
リ・ヴァル帝国軍は人々を戦渦に巻き込むことを是としていたかどうか。レジスタンスを差し出させるために、村の焼き討ち予告という手を使わなかったかどうか。
アロンダイト帝は、民が受ける被害をどの程度重要視していたんでしょう?
ミハイル・グレヴィッチ
SIRDとして行動
カイト同行.2
さしずめ古戦場跡で物見遊山、って気分だな。観光にしては殺伐としているが。
(付近にあった残骸を軽く蹴りながら)とはいえ、まるっきりの徒労でもないか。過去の戦例を研究し、戦訓を導き出し、実戦に応用する。これが出来ずに敗北した国家や軍隊なんぞ、歴史上幾らでもいるぜ。
そういや、カイトと最初に会ったのもここだったな。あん時はカイト以外のレジスタンスの連中、俺から見ても素人同然の戦いぶりだったな。あれからちっとはマシに戦える様になったか?
で、今更だがカイトがあん時乗ってた機体・・・アークレイズ・ディナとか言ったか?その機体の残骸でも探し出して調べるか。無駄足かもしれんが。
エルゴ・ルスツァイア
【SIRD】
アドリブ歓迎
カイトと共にa-2
戦いの跡地、か。まあ、あちらの軍について知るのは重要だろう。…恥ずかしい事ながら、ワタシはあちらの軍についてあまり知らない。
流石に遺留物が残されている訳では無いだろうけど、報告書だけよりも実際に見た方が良いな。
百聞は一見に如かず、とも言うし。
案内、よろしくな!
森宮・陽太
カイト同行&2
【闇黒】
【一応WIZ】
他者絡みアドリブ大歓迎
出立前にガヴェインに念話で質問
『ジルド帝国』とやらの情報を知っていたら教えてくれ
情報を得たら敬輔と急いで情報交換するぞ
ウェルディンの外れでガヴェインを呼び寄せ搭乗しカイトに同行
レジスタンスとリ・ヴァル帝国が争った地に案内してもらおう
カイトには敬輔たちが吸血鬼の尋問に向かったと伝えておくぜ
現地に着いたら
文書や復旧できそうな設備を探して修理しつつカイトに質問
ここはレジスタンスと帝国、どっちの施設だ?
っつーか、何でここで戦闘になったんだ?
…と質問しつつ、文書や設備からも情報を引き出すぜ
万が一、声に出して話したくねぇ状況になったら
指定UC発動し念話で会話
…ま、そんな状況はねぇと思いたいが
あ、模擬戦会場到着前にガヴェインから降り
光学迷彩纏わせて上空に逃がすぜ
正直、巨神持ち込んで帝国を刺激する気はねぇよ
全く蛇足になりそうだが
機会があればレーテとガヴェインを話させるってのもアリかもしれねぇ
レーテがカイトを『選んだ』理由が聞けるかもしれねぇからな
文月・統哉
a
カイトに2の案内を頼みたい
可能なら1も同行して現場を見ておきたい
帝国の戦いはどれだけの戦渦を齎したのか
帝国軍にも応戦する国々にも
双方にオブリビオンマシンが配備されていた可能性があり
その裏には勿論、アダムカドモンの暗躍があったのだろう
アロンダイトのオブリビオンを倒すという意志もまた
戦いの誘導に利用されていただろう事は想像に難くない
各戦地の開戦と戦渦拡大の経緯について話を聞いておきたい
そういえばレーテの嘗ての戦闘記録
当時の搭乗者は誰で今はどうしているか情報はあるだろうか
もしアロンダイトが金のキャバリアに乗り始めたのもその頃だとしたら
カイトの様な切っ掛けがあったのかもしれないね
空を取り戻すと彼が誓うに至った何かと共に
そしてもう一つ
カイトが共感して同じ道を歩むと決めた皇帝の妹さん
カイトが大きく信頼を置いていて
レジスタンス時代から今も共にある少女といえば
思い当たる人物はクレアしかいないのだけど
小声でカイトに確認はしておこう
アロンダイトがこの事を知っているか否かも
和解を願う一人として聞いておきたい
●
――ベティとの会話から暫くして。
「……着いたよ。此処が僕がレジスタンスに居た頃、リ・ヴァル帝国軍と戦った戦場跡だ」
そうカイトが告げて案内したのは、今となってはゴーストタウンの様に静かな戦場跡。
あの戦いの折使われていた帝国軍の機体の残骸や、戦いの痕は微かに残っているが、殆どそこは廃墟にも等しい状態の場所である。
そんな戦場跡地を見つめて懐から取り出した煙草を口に咥えてのんびりと一服しながら。
「さしずめ、古戦場跡で物見遊山って気分だな。まっ、観光にしては殺伐としているが」
それまで搭乗していた<ストラーウス>から降りて寛ぐミハイル・グレヴィッチが肩を竦めてそう笑うと。
「まあ、それでも皆に頼まれれば案内はするよ。特に何も言われなければ、もしかしたら、嘗て帝国が反抗勢力と争った集落跡に向かったかも知れないけれども。別に、今もだけれど、帝国に対抗する勢力は僕達だけじゃ無かった訳だしね」
『レーテ』からラダーを伝って降りながら、軽く溜息をついて告げるカイトのそれに。
「それでも、あちらの軍についてを知る為には、戦いの跡地を見るのも重要だろう。……恥ずかしながら、ワタシはあちら……帝国軍についてはあまり知らないしな」
そうエルゴ・ルスツィアがミハイルの言葉に相槌を打つのを聞いて、そうだね、とカイトが首肯して、1点を指差す。
そこには残骸と化したキャバリア……パラディヌスと呼ばれるものの頭部の残骸が在り、カイトが軽く1つ首肯して、話を続けた。
「まあ、帝国軍が主力として使っているキャバリアは、あのパラディヌスって呼ばれるシリーズであることが多いね。搭乗者達に求められる技量の高さは相当なものだけれど、騎士の様な外観からも、割と人気の量産機だから」
「……そうか。となると、ワタシ達がアロンダイトから受けた招待状で出席する模擬戦でも……」
そう呟くエルゴのそれに。
そうだね、とカイトが軽く首肯して応える。
「多分、パラディヌスに搭乗するクロムキャバリア志願兵達との模擬戦って事になるんじゃ無いかな。因みに彼等が得意としているのは、ファランクス陣形を初めとする集団戦術だから、未だ士官候補生レベルでも、それなりに手強い相手になる筈だよ」
「成程な」
そんなカイトの説明にエルゴが首肯するその間に。
ウィリアム・バークリーが天空に飛ばした掌大の透明な眼球……Wizard Eyeで嘗ての戦場跡を俯瞰して、そっと溜息を漏らした。
「カイトさんがレジスタンスにいた時期って、もう2年近く前ですからね。やはり殆ど当時の風景は留めていない様ですね」
そのウィリアムの言の葉に。
「ああ~、俺は当時そこにいなかったからそうなのか、としか言えねぇな……」
そうボリボリとガヴェインのコクピット内で頭を掻きながらウィリアムの言葉を集音し、それに応えたのは森宮・陽太。
「陽太よ、如何した?」
調査兼休憩という意味合いもあるのだろう。
取り敢えずめいめいがキャバリアから降りて、文月・統哉が変貌させた『キャンプ地』に落ち着くのを確認しながらのガヴェインの問いかけに。
陽太は束の間悩む様子を見せたが、程なくしてそう言えば、と出来る限り気軽な調子で念話でガヴェインに呼びかける。
「ガヴェイン。お前『ジルド帝国』とやらの情報を知っていたら、教えて貰えないか?」
その陽太の問いかけに。
ガヴェインが束の間自らのデータメモリを探る様な沈黙を見せるが……程なくして駄目だな、と小さく頭を横に振る様な反応を示した。
「その名前は我の|記録《メモリー》の中にはあるのだがな。だが……それをたぐり寄せようとすると、不意に靄がかった様な感覚に襲われて、分からなくなってしまう」
そのガヴェインの思わぬ念話での返答に。
「……マジかよ……。それって、ブラック・ボックスってやつか?」
そう微かに息を呑んで問いかける陽太のそれに、恐らくはな、とガヴェインが幾分沈んだ声で応えた。
一方でガヴェインはカイトが降りたレーテを見て、寧ろ、と言の葉を紡ぐ。
「案外、『彼女』の方が我よりも情報を持っているかも知れぬ。少なくとも『ジルド帝国』の皇帝の名前等は、『彼女』に記録されていたのだろう? ……まあ、『彼女』は使い手を選ぶ程度の自我はある様だが……それ以上に我の様に自我が発達しているのかどうか迄は直接話をしてみなければ分からぬが」
「……って、おいガヴェイン、ちょっと待て。今お前、カイトが『レーテ』って呼んでいるあのサイキック・キャバリアの事、『彼女』って言ったか?」
ガヴェインのさも当然と言った調子の思わぬ返答に、身を乗り出して陽太が問うと。
「恐らく、あれの人格は『女性』だろうからな。あの少年の脳裏に声が聞こえたと言うのは我が今、お前にしている『念話』であろう。まあ……案外、名前が付けられたことで、人格が芽生えたのやも知れぬが」
そうガヴェインが淡々と念話で語るのに。
(「……レーテとガヴェインに話をさせた方が良いかも知れねぇな、これ……」)
と結論づけた陽太が、『ガヴェインの|記録《メモリー》では、ジルド帝国についてはブラック・ボックスになっている』事を連絡した後、ガヴェインを降りるその間に。
キャンプ地と化したその場所で、人心地付く様にキャンプファイヤーを起こしながら、統哉がカイト、と改めて呼びかけた。
「確認するけれども。帝国の戦いはどれだけの戦禍をこの辺り一帯に齎しているのかは分かるかい?」
その統哉の問いかけに。
カイトが自分の記録を捲る様に軽く顎に手を置いて考える表情を見せていたが、少なくとも、と言葉を続けた。
「大小数えて数十国は統合されているかな。リィズ王国も含めればね。反帝国勢力が集まっていたと言う理由で統合されようとした此処みたいな場所も含めると枚挙に暇がないけれど」
そのカイトの返答を聞いて。
「……つまり、かなりの人々が戦禍に巻き込まれ、それを併呑して、巨大化してきているのが、リ・ヴァル帝国と言う訳か」
このクロムキャバリアと言う、小国家が乱立して戦い続けている乱世の世で、それだけの国々が武力を以て併呑されている。
しかも……。
「帝国軍にも、応戦する国々にも双方にオブリビオンマシンが配備されていた可能性もあると考えると……」
――例え、オブリビオンとの戦いであったとしても、アロンダイト皇帝が出してきた犠牲は、決して看過できるものではないだろう。
(「まあ、その裏にはアダムカドモンの暗躍があったんだろうけれどね」)
そう統哉が胸中で考えている表情を見て何かを感じ取ったか、カイトもまた沈痛な表情を浮かべて言葉を口に出した。
「……リ・ヴァル帝国が襲撃した全ての国家に、オブリビオンマシンが配備されていたとは限らないとは思うよ。拡大された人口に不足した物資を補うために、新しいプラントを奪う為に戦った例も、無いではないし」
そう呟くカイトの声音には、何とも言えない諦観と、それに対する疑義が含まれている。
そのカイトの口調に漂うそれを感じ取りつつ、ウィリアムがポツリ、と呟いた。
「この世界ですから、当然敵味方共にキャバリアで戦ったんでしょうね……」
そのウィリアムの言の葉に、そうだね、とカイトが首肯で返した。
そのカイトの首肯の間にも、上空からWizard Eyeで世界を見下ろしながら、ウィリアムが続ける。
「それはそれとして、当時のカイトさん達の戦闘方針と、リ・ヴァル帝国の戦闘方針はどんなだったのでしょうか?」
そのウィリアムの何気ない風を装った重要な問いかけに。
カイトがそうだね、と軽く呟きその時の事を振り返る様に言葉を紡ぐ。
「……少なくとも、レジスタンスとしての大まかな方針は、あくまでもリ・ヴァル帝国の帝国軍のキャバリアの無力化した上で、出来れば此処の集落の人達も保護するつもりだった。とは言え、全員が全員その方針に賛同していたとは限らないけれども……」
――でも。
「そうやって手を取り合い、協力することが出来る様になればアロンダイトに対して僕達の我を通す為の力になり得たからね。……勿論、保護した人々に戦いを強制するつもりは、少なくとも僕達には無かったけれどね」
「戦闘の方針としては、カイトさん達は帝国軍を撃退しつつ、民間人も保護できれば、という感じだったのですか」
少し意外そうな表情でそう返すウィリアムの言葉に、被せる様に、だがよぉ、とミハイルが続く。
「カイト。確かに手前がそれを出来るだけの並外れた技量を持っているのは分かるけれどよ。カイト以外のレジスタンスの連中は、俺から見ても明らかに素人同然の戦いぶりだったぜ?」
煙草の灰をポツリと零しながらのミハイルのそれに。
カイトが流石に苦笑いを浮かべつつ、その通りなんだよね、と嘆息を零す。
「一応、最低限、キャバリアを操縦して戦える様にはしたつもりだったんだけれど。ミハイルさんの言うとおり、僕達レジスタンスは先程告げた方針通りに動ける程、練度が戦ったかと言えば……そうでもない、としか言いようが無い位だった。だからこそ、本来ならば守るべき人々に対しても被害が出そうになっていたのを皆が保護してくれた事にはあの時も感謝した訳だし」
そうカイトが言の葉を紡ぐのに。
ミハイルが成程な、と軽く息を吐く。
「……あの時からそう言えばカイトは言ってやがったな。『大を救うために小を犠牲にするのは容認できない』って。って事は、そいつはお前自身の方針であると同時に、当時のレジスタンスの方針でもあったって訳か」
そうミハイルが締めくくる様に言の葉を紡ぐのに。
「まあ、偽善と言われればその通りだけれど。それでもその道を貫く覚悟が無ければ、帝国……いや、アロンダイトと対峙しよう何て思えないしね。勿論、それ以外の理由でレジスタンスに身を寄せていた人達もいたけれどね」
そうカイトが軽く嘆息するのを聞いて、成程、とウィリアムが首を縦に振る。
「カイトさん達が、一般人を戦禍に巻き込みたくないという意志があり、戦闘方針もそう言う方だったと言うのは分かりました。では、カイトさんから見た、リ・ヴァル帝国の戦闘方針はどうだったと思いますか?」
そのウィリアムの問いかけに。
カイトが束の間考える様にして……多分、と言の葉を紡いだ。
「この戦闘地区での戦闘で200人の帝国の在り方に疑義を抱く人達を見せしめとして殺害すれば、更に周辺各国に対する圧力になる、とは考えていただろうな、と僕は思っている。自由都市ウェルディンで彼等が人々を守った理由は、そもそも守る方が彼等にとっての益になったからだろう。更にレイモンドさんがウェルディン侵攻の折、『民は守りたいけれど、此処で自分達が介入すれば侵略扱いとなり、ロスト共和国に攻撃されるかも知れない』と迷い即座に判断を下せなかった事。此も、『リ・ヴァル帝国』には多くの犠牲が出ない様にする為に少数の犠牲を容認したとも言える。……そのリスクも含めた上で、リズは僕に最悪の事態に備えて帝国軍への援護の要請に向かわせていたんだけれどね」
そう説明するカイトのそれに、つまり、とウィリアムが纏める様に。
「カイトさん達レジスタンスは『民間人に極力被害を出さない』という方針で、帝国の戦闘方針は、『最小の犠牲で帝国にとって最大限の成果を出す』と言う方針だったと言う事ですか?」
と、カイトに確認する様に問いかけると。
「少なくとも、僕はそう認識しているけれども、今のアロンダイトとリ・ヴァル帝国の方針迄、完全に把握している訳じゃないよ。その犠牲を出すことそのものを減らすべきであり、その為には同盟の様な関係を強化した方が良いという一派が居る位だからね」
そうカイトが告げるのに。
「成程。その一派って言うのが、カイトと同じ様な理想を持っている人達って事か」
その辺りのカイトの説明を思い返しつつ、統哉が捕捉する様にそう告げるのにカイトが首肯したのを受けて。
「……因みに、此処で如何して戦闘になったのかはよく分かったが、当時此処はどっちの施設だったんだ?」
ふと陽太が確認する様に呟くと、それは、とエルゴが考え込む表情の儘に言葉を紡いだ。
「多分、未だどちらの勢力圏にも入っていなかった……そう言うことじゃ無いかな? ミハイルさんや統哉さん、ウィリアムさん達の話も纏めると、ワタシにはそういう風に感じられるのだけれども」
そうエルゴが陽太の問いに推測を述べるのに。
「そうだね。あの戦闘の当時、此処にいた住民も、この集落も……レジスタンスの土地でも無ければ、帝国の支配地、と言う訳でもなかったんだ」
そうカイトがそっと嘆息する様に応えを出すのに、成程な、と陽太が呻く。
と……此処で。
「……この集落にも、プラントはあったのですよね? 少なくとも、200人程が生活していたと言う事は」
そうふと、思いついた様な口調で告げるウィリアムのそれに。
カイトがそうなるね、と静かに首肯し、それから軽く周囲を見回すと。
「……あの戦いではそこまで気を回す暇も無かったけれど、あれがそれ……かな?」
そう告げたカイトが指差した先を、ウィリアムがWizard Eyeで見下ろすと。
――既に折れて使用不可能になっているであろう、プラントの残骸が存在していた。
●
「……既に使い物にならなくなってやがるが……案外、帝国の奴等、これ狙ってきたんじゃねぇだろうな?」
既に入口が塞がれ、中に入ることが出来なくなっているプラントの様子を見て。
陽太がうわぁ、と言う様に顔を手で覆う様にしながら肩を落として告げるのに、カイトも軽く米神を解し、深く嘆息の息を漏らす。
「……何で、僕も今まで気付かなかったんだろう……。普通に考えれば、200人の人々が生活できる様な集落ならプラントの1つ位あってもおかしくないのに……」
そう当時の自分を思い出して何処か想いを馳せる様な表情を浮かべるカイトに対して、もしかして、とウィリアムが尋ねた。
「カイトさんの言い方から察するに……当時、カイトさん達は、此処の集落の人々を守る為に来た訳ですが、このプラントが目的では無かったのですね」
そのウィリアムの確認に。
カイトがそうだね、と静かに首肯するのに、あることに気が付いたウィリアムがもしや、と踏み込む様に言葉を続ける。
「では、この集落を帝国が襲撃する事にカイトさん達レジスタンスが、この集落の件について気が付いた本当の理由は……村の焼き討ち予告の様なものがあったからではありませんか? もしかしたら、そうしてカイトさん達の様なレジスタンスを差し出させる為の方便だったのかも知れませんが」
そのウィリアムの問いかけに。
カイトが参ったという様に嘆息し、コクリと首を縦に振った。
「それがリ・ヴァル帝国側の罠だって分かっていても、此処の人達を助けない理由の方が無かったからね。此処を守り抜けば、プラントも手に入る……と迄は考えていなかったんだけれど」
「百聞は一見に如かず、と言うが……。やはり、時と場合によって、考え方は勿論、見えるものや事が違ってくるのだな」
そのカイトの嘆息をフォローする様に微苦笑を浮かべたのは、エルゴ。
(「流石に遺留物が残されている訳ではないと思ったが……報告書だけで分からないことも実際に見ると、分かる様になるな」)
そんなことを思いながら、既に朽ち、使用不可能となっていたプラントに近づく。
陽太もそれに近づきガヴェイン、と念話で自らに付いてきている巨神へと呼びかけた。
(「このプラント、記録しておいて貰えるか? 何か手掛かりがあるかも知れねぇ」)
その陽太の問いかけに、承知した、とガヴェインが応じ、その情報を採取する。
とは言え、直ぐに解析できるのかどうかは定かではない為、取り敢えずデータの回収だけ、という感じだ。
カイトも似た様な事を思ったのだろう。
後ろから付いてきているレーテの方へと軽く手を上げると、レーテがガヴェインと同様にプラントの前に立ち、そのプラントの姿と情報を収集する。
そんなレーテの様子を見ながら、そう言えば、と統哉がふと、思い出した様にカイトに問いかけた。
「レーテの嘗ての戦闘記録。当時の搭乗者は誰で、今は如何しているかと言う情報はあるのかな?」
その統哉の問いかけに。
カイトは記憶を探る様にするが、程なくして軽く頭を横に振った。
「いや、流石に僕の先代の搭乗者に関するデータは無かったな。そもそも、レーテは僕がレーテと呼んでいるだけで、周囲から見れば普通に銀のサイキック・キャバリアだし」
そのカイトの回答を聞いて。
(「成程……さっきガヴェインが言っていたレーテに本当の意味で自我が生まれたのは、カイトがレーテと呼び始めたからではないかって、そう言う意味か」)
恐らくこの銀のサイキック・キャバリア……レーテには、なにがしかと戦うと言う覚悟をしたサイキックを選ぶ能力はあったのだろう。
だが……只、自分達の様な強い『個』を持っている訳ではなく、それ故に先代のパイロット等の記録を残さなかった、と言う事だろうか。
「じゃあ、アロンダイトが金のキャバリアに乗り始めたのが何時頃かは……」
そう統哉が問いかけると。
「それは多分、アロンダイトが皇帝として即位して、『|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》を破壊して、オブリビオンと呼ばれる存在から、人類の手に空を取り戻す』と誓った時だろうね。……レーテはアロンダイトのキャバリアと同時に起動したのでは無く、僕が呼ばれた様な感覚に導かれて搭乗した時に起動したから」
そう告げるカイトのそれを聞いて、そうか、と首肯する統哉。
「データの収集、完了したぞ、陽太」
丁度その辺りで、ガヴェインが陽太に声を掛け、陽太がそれに振り返り、分かったと軽く首肯を返していると。
「……それなら陽太さん。すまないが、ワタシのイクスフェルにも、ガヴェインが取得したデータを転送しておいて貰えないか? ワタシの方でも、機会があれば解析したい」
運悪く自らの愛機TCW-01ELC イクスフェルをキャンプ場に置いてきたエルゴが頼む様に陽太に告げ、それに陽太が首肯したところで。
「取り敢えずプラントのデータの解析は後にして、今はキャンプ地に戻りましょうか」
そうウィリアムが提案し、それに首肯したカイト達がキャンプ地に戻る途中。
「そう言えばよ、カイト」
ふと、あることに思い至ったのだろう。
ミハイルが口の端に笑みを浮かべてカイトの方を見るのに、カイトが軽く首を傾げた。
「如何した、ミハイルさん?」
そのカイトの問いかけに。
「さっき話した、カイト以外のレジスタンスの連中。あれからちっとはマシになって戦える様になったのか?」
そのミハイルの確認に。
カイトが少しだけ自信を窺わせる表情で微笑み。
「多くがウェルディン防衛隊に所属しているからね。キャバリアの操縦技術も、人々の避難、緊急時への対処。諸々あの頃よりもずっと熟練しているよ」
そう返してきたカイトに対して、そうかい、とミハイルが笑い返した。
●
――そして、キャンプ場に戻ってきたところで。
ミハイルが微かに怪訝な表情を浮かべながら、そう言えば、と内心で引っかかりを覚えて、ウィリアムへと問いかける。
「バークリーよぉ。お前、上からこの戦場跡見ていて、アークレイズ・ディナの残骸は見つけられたか?」
そのミハイルの質問に。
ウィリアムが上空からの光景を頭に思い浮かべながら、いや、と軽く頭を横に振った。
「それって確か、カイトさんが当時搭乗していたオブリビオンマシンでしたね。……言われてみれば、残骸すら見当たりませんでしたね。オブリビオンマシンですから、僕達が破壊した段階で消滅した可能性も高いですが……」
その、ウィリアムの言の葉に。
「……アークレイズ・ディナの残骸が無い、か。それは少し気になる話だね」
そうエルゴが返し、少しばかり雑談にウィリアム達が入った瞬間を見計らって。
統哉がカイト以外に声を聞き取れない様な小声で、そっと彼に囁きかけた。
「カイト、もう一つ聞かせて欲しいことがあるんだ」
その統哉の問いかけに。
「何?」
そうカイトが切り返すのを聞いて。
ウェルディンでした話を思い出しながら、統哉が神妙な表情を向けて言の葉を紡ぐ。
「……カイトが共感して同じ道を歩むと決めた皇帝の妹さんの話だ」
その統哉の確信に迫ったそれを聞いて。
カイトが一瞬、厳しい表情を浮かべ、統哉にそっと囁きかけた。
「……彼女のことか」
そのカイトの囁きに。
この地をよく調べると決めた陽太達にも聞こえない位の小声で、統哉がカイトに囁き返した。
「その皇帝の妹さんなんだけれども。俺には心当たりが1人しか居ないんだ」
その統哉の推測に。
カイトが何も言わずに、自分の目前に置かれていたホットコーヒーを啜りながらそっと統哉に話の続きを促す。
「カイトが大きく信頼を置いていて、レジスタンス時代から今も共にある少女と言われれば、クレアしかいない。つまり……彼女が、そうなんじゃないか?」
その統哉の結論を聞いても、カイトは無言だったが……この場合は、沈黙こそが回答であろう。
やはりな、と悟った統哉が因みに、とカイトに。
「君達が和解できる可能性を願う1人として、聞いておきたいのだけれど……その事を、アロンダイトは知っているのかい?」
そう問いかけると。
カイトが周囲に聞かれない様に嘆息を漏らしつつ、静かに首肯を1つして。
「……知っているよ。但し、極力他言無用で頼めるかい?」
そのカイトの真剣な釘刺しに。
分かった、と統哉が首肯し情報の共有の1つをするその間に。
陽太は、ガヴェインをレーテの方へと向けていた。
「……汝、名前はレーテと言うのか」
その、ガヴェインの問いかけに。
「……その通りですね。遙かなる古代の時代、人々の争いにその身を投ぜし、厄災者にして守護者たる巨神『ガヴェイン』殿」
不意に、念話で明瞭にその様な言の葉を紡がれ、ガヴェインと陽太が思わず息を飲む。
「……んな、レーテ、お前ガヴェインのこと知っているのか!?」
そう思わず念話に割り込む様に陽太が入ると。
「私とて『人』を守り、この地の人々の呪われた運命を断ち斬るための力とならんことを欲し、その為に今も尚、戦っているキャバリアです。その位の知識は持ち合わせておりますよ、災厄と守護の双方を司る巨神と、その今の主殿」
そうレーテと思しき思念が淡々と返すのに、陽太がさっ、と顔を青ざめさせ、色々と聞きたいことを考えつつ、1つだけ問いかける。
「なぁ……レーテ。お前がカイトを『選んだ』理由は……なんだ?」
その陽太の問いかけに。
その念……レーテの念は、今の自らの主『カイト』の姿を脳裏に思い描き、優しく微笑んで言の葉を念話で紡ぐ。
「――互いに共に手を取り合い、『人』同士の争いを少しでも減らし、互いに協力して『争い無き世界』を求める弱く、心優しき想いを持つ者。……その為の戦いという矛盾した覚悟を持つ者の為の『剣』になりたいと私が欲しからです。巨神の主殿」
そのレーテの優しく、何処か誇らしげな念話を聞いて。
「……そうか……」
そう念話で返した陽太は……何処か疲れた様にぐったりとガヴェインに寄りかかった。
(「まあ……あんまり深く突っ込んで聞かない方が良さそうではある話だよな……」)
そんなことを、思いながら。
かくて、再度調査をして、やはりアークレイズ・ディナの残骸を見つけられなかった猟兵達は、他の猟兵達と共に、更にリ・ヴァル帝国の方へと足を進めたのだった。
大成功
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ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
【a】【1】
成程、ここが不老不死勢力と交戦した場所ですか…とりあえず、調査を行ってみましょうか。何か有益な物でも発見できれば良いのですが。
同行しているカイトさんに、その時の戦闘の経緯や戦った機体の特徴、何か変わった事や気づいた点などを詳細に聞いてみる。実際に戦場に立って見れば、何か思い出すかもしれませんから。些細な事でも、こちらにとっては何かしらの役に立つかもしれませんからね。
同時に、UCの夜鬼を召喚し、戦場跡の上空一帯を飛行して捜索を行い、何か不審な痕跡などがないか調査する。まぁ恐らく、残っているのはせいぜい残骸程度ですから、過度な期待は禁物ですね。
鳴上・冬季
a1
「似て非なる、と言う言葉があります。ジルド帝国と屍鬼帝国を繋いだのは|始原の人《アダムカドモン》で、内容は資金提供、目的は不老不死の模索の一環かと。今回の侵攻が共闘に見えたのは、始原の人が自分達の望む不老不死に何方が近いか、秤に掛けただけだからだと思うのです」
嗤う
「更に正しく言うなら、始原の人はエリュシオンの望む不死とジルド帝国の言う不死の違いを見極めたかっただけでしょう。二帝国自体からは本国軍と地方軍程度の違いしか感じませんから」
嗤う
「始原の人は、尸解仙を目指す邪教の輩扱いが1番正しいのではないでしょうか。昇仙して邪仙を目指す輩が居ると知った以上、私達仙は放置出来ないのですよ」
嗤う
灯璃・ファルシュピーゲル
a.カイト同行(1)を調査
●【SIRD】一員で連携
やはり、御家がある一族の方達は、当人同士の意思とは関係あろうとなかろうと、複雑になっていきますね…此方としては話を聞きやすいですが
本来、報告必要の高い話ですが、先ずは彼女からの信用を重視し、跡地調査の合間にカイトさんに一人で密かにを機会を見計らって近づきます
熱意のある御親類から届け物を頼まれました…相手の事は貴方に聞いてくれと。親戚関係が複雑だと何かとご苦労されますね(困った様に苦笑しつつ)
帝国中枢の軍や政治方面の穏健派の人かとも思いますが、可能ならルーファスさんや穏健派について詳しく聞き込み。
今現在、冷静な視点で見て、皇帝が武力制圧を決意した各国に
オブリビオンの影はどの程度ちらついていたと思うかを
失礼ながら聴き込みたいと思います
跡地調査については、指定UCで管狐達を展開。
兵器・情報機器の残骸や隠匿された設備が無いか探査させ、
あれば内部残留データを(情報収集)させ、組織概要やロスト、
特に青十字と接触を持ってなかったか調査します
アドリブ歓迎
寺内・美月
カイト同行.1
アドリブ・連携歓迎
SIRD共同
「さてカイト君。帝国領内で以前アダムカドモンと推定される武装組織から襲撃を受けたと聞きましたが、その襲撃された場所を案内していただけますか?。あと出来ればその時に関わっていた『一部勢力』とも連絡を取っていただければ助かります」
・『一部勢力』と接触した場合はアダムカドモン、屍鬼帝国及びジルド帝国を含む、リ・ヴァル帝国に現在属さない反帝国もしくはその他の目的を掲げ帝国や周辺国を攻撃する武装組織ないし勢力に関して、どこまで情報を得ているか確認する
・接触できなかったらUCで襲撃地点を探索しつつ、他の猟兵の支援に徹する
●
――統哉達を中心としたレジスタンスとリ・ヴァル帝国の戦闘跡地の調査を終えて。
カイトと共に、猟兵達が次の目的地……カイトが戦ったと言う不老不死を求める一団達の戦い跡地に辿り着いたところで。
「成程。此処が不老不死勢力と交戦した場所ですか……」
改めて広い荒野の様な場所が淡々と続くのを見た、ネリッサ・ハーディがそうレーテから降りてきたカイトに問いかけると。
「うん、そうだね。此処が、僕がリ・ヴァル帝国のある一派と協力して彼等を倒した戦場だよ」
そうカイトが説明をするのにネリッサが一つ首肯したところで。
「さて、カイト君。少しいいですか?」
そう寺内・美月が問いかけるのに、カイトがどうかした? と小首を傾げる。
そんなカイトの様子を見ながら、美月が確認する様に言の葉を紡いだ。
「此処でアダムカドモンと推定される武装組織から襲撃を受けたと言う話ですが。その勢力と出来れば連絡を取ることは出来ませんか?」
その美月の問いかけを聞いて。
カイトがそうだね、と1つ頷き、但し、とまるで注意する様に言の葉を紡ぐ。
「連絡を取り、皆に繋ぎを取らせることは可能だよ。でも、僕が共に戦った勢力と会えるとしても、リ・ヴァル帝国に入国してからになるだろう。それでも構わないかい?」
そうカイトが美月の其れに問いかけると。
「成程。と言う事はカイト君の言う、『一部勢力』とは帝国内にいる勢力なのですね?」
そう美月が確認する様に問いかけるのに、そうだね、とカイトが首肯しているのを見て。
(「……ふむ。話をしている限り、どうやら此処でカイトさんの方が嘘をついている様子はありませんね」)
そう胸中で断を下しているのは、鳴上・冬季。
『観相術』を以て、今はカイトを|観《み》ているが、今、カイトがした様な話以上の情報が出てくる様子はない。
(「情報を集めれば集める程、様々な事を暴くことの出来る、人を|観《み》る術を以てしても、全てを暴くのは難しい、と言う事でしょうか」)
そんなことを思いながら観察を続ける冬季。
そして美月とネリッサのカイトとのやり取りを、少し距離を取る様にして見つめながら、そっと灯璃・ファルシュピーゲルが嘆息している。
灯璃の脳裏を今占めているのは、ウェルディンでクレアとした会話と、その懐にある、彼女から託された手紙の事。
(「……やはり、御家がある一族の方達は、当人同士の意思とは関係あろうとなかろうと、複雑になっていきますね……」)
まあ、灯璃達からすれば、状況が分かってくる以上、話を聞きやすいとも言える。
とは言え……。
(「本来であれば、報告の必要性の高い話ではありますけれど……此処は、クレアさんの信用もありますし、頃合いを見計らってカイトさんにこっそり尋ねるべきでしょうね」)
そう灯璃が判断し、そのタイミングを見計らっている、その間に。
「カイトさん、丁度現場にやってきていいタイミングだったので、確認をさせて貰っても良いですか?」
そうネリッサが問いかけながら、上空に向かって夜鬼を飛ばすのに合わせる様に。
――パチン、と。
灯璃がさりげなく指を鳴らすと、不意に電子精霊の管狐達が姿を現し、四方へと散っていく。
そうして、統哉達も行っているであろう、現場検証を行うその間に。
「何だい?」
レーテに何かを指示するかの様に一瞬意識を惚けさせていたカイトがネリッサに問い返してきた。
そのカイトの様子に1つ頷き、ネリッサが続ける。
「此処で例の勢力と如何して戦う事になったのかの経緯と、其の時の機体の特徴等を教えて貰えませんか?」
そのネリッサの問いかけに。
カイトが少し思い出す様に目を細めながら、ちらりと虚空を見る様な表情を浮かべてから、コホン、と咳払いを1つ。
そうして気を落ち着ける様にしてから、まるで物語をなぞらえるかの様に話始めた。
「実は此処迄来る途中で、他の猟兵から通信が入って少し話をしたんだけれど。僕はこの3カ月の間に1度、帝国に向かっている」
そのカイトの言の葉に。
「帝国に、ですか……その理由は一体何です?」
そう美月が確認する様に問いかけると、カイトは特に隠す様子もなく、話を続けた。
「うん。本来は傭兵としては仕事の内容を明かしてはいけないのだけれど、これを前提にして貰わないと話が繋がらないから言っておくよ。『屍鬼帝国』だっけ? 前回、ウェルディンを襲い、アロンダイトを捕縛しようとしたかの帝国の多分、女帝になるのかな? 皆が捕虜にした『ナツ』をリ・ヴァル帝国に護送する事になってね。無論、リズも知っている事だけれど」
「! ナツさんを、ですか……」
その『ナツ』を自分達の手で捕虜にした時の事を思い出しながら、そう確認する様に問いかけたのは灯璃。
その灯璃の表情に複雑なものが見えているのを確認しつつ、カイトが続ける。
「リ・ヴァル帝国に帰還するアロンダイトやレイモンド少佐の部隊の一部帝国護衛兵達と一緒にね。で、其の時、少しだけ情報を集めさせて貰ったんだ」
そう告げて。
カイトがちらりと冬季の事を見やると、冬季が思わず口の端で嗤った。
「成程。そう言う事ですか。確かにああいう手合いは何処にでもいるでしょうね」
冬季の納得した、と言う様な言葉に、そう言う事だね、とカイトが軽く息を漏らした。
「まあ、そのリ・ヴァル帝国でその手の情報を売買している人と接触したら、最近になって不老不死を望む者達が、その為に誰かとつるもうとしていると言う情報が入ってね。で、その調査をするために、僕は帝国の皇帝とは別の勢力と協力して動いた結果、相手の尻尾を掴むことに成功した。……まあ、今思えば尻尾を掴ませること自体が罠だった可能性もあるんだけれど」
そう思わずカイトが嘆息するのに、ふむ、と冬季が息を漏らす。
「それは、|始原の人《アダムカドモン》による罠だった可能性と言う事ですか? 貴方や貴方に協力する一派を戦場に引きずり出し、抹殺する為に」
その冬季の問いかけに。
そうだね、とカイトが溜息をつきつつも背後のレーテを見やってまあ、と息を吐いた。
「犯人と思しき相手を当初僕達は生身で追った訳だけれど、彼等はキャバリアを用意していた。ただ……幸い、レーテは僕が念じれば僕の所に来るからね。直ぐにレーテに来て貰って捜査に協力してくれた人達を守りながら戦っている所に、帝国の方から増援として十機程のキャバリア部隊がやって来た。そのキャバリア部隊と僕が協力して、兵達に1人も死者や裏切り者を出させる事無く、撃破することが出来たという訳だ」
そのカイトの説明に。
「成程。死者を出すことも許されなかったのですね、その戦いは。いや……其れも当然かもしれませんが」
そう嗤って告げる冬季の其れに、ああ、そうだ、とカイトが今、思い出した様に冬季の方を見て言の葉を紡ぐ。
「|ウェルディン《・・・・・・》から出る前に、少しだけ|話《・》を貰ったけれど。僕達が見つけ、追っていたその武装集団に属していた彼等も|取引《・・》があったよ、冬季さん」
そのカイトの言葉を聞いて。
意味を諒解した冬季が成程、と嗤った。
「繋がっていた訳ですね、あの国と。しかも不老不死を求めた組織がですか。成程、成程」
自分がウェルディンで繋ぎを取った相手からの情報とカイトが遭遇したと言う敵部隊が一致したことを悟り、嗤う冬季。
と、丁度その辺りで。
「……局長、お話し中すみません」
灯璃が、不意に何かに気が付いたのか、そっとネリッサに話しかけた。
「どうしましたか、灯璃さん」
その灯璃の表情に何かが含まれていることを感じ取りつつ、ネリッサが問うと、灯璃が続けた。
「実は今、機体の残骸を管狐達が掴んでその解析をしているのですが……。それを局長達にも直接見て来て頂きたいのですが……構いませんでしょうか?」
その灯璃の言葉に今は如何してもそうして欲しいと言うものがあるのを感じ取り。
ネリッサが美月と顔を合わせて頷き、冬季を伴って、灯璃がネリッサのMPDA・MkⅢに転送させた行き先に向かったところで。
1人きりになったカイトの肩にポン、と灯璃が軽く手を置いて。
「カイトさん」
そう囁く様に耳打ちをされたカイトが思わず灯璃の方をチラリと見遣りながら。
(「……レーテ」)
そう内心で念じる様にレーテに冬季達の後を付いていかせながら、カイトが幾分生真面目な口調で灯璃に囁きかけた。
「……何かあったみたいだね、灯璃さん」
そのカイトの何かを覚悟したかの様な質問に。
はい、と灯璃が首肯して、周囲に気を配りながら、懐にあるクレアから預かった封筒を取り出し、そして囁く。
「此を、熱意のある御親類の方から届ける様に……と言われました。その届け先については、貴方に聞いてくれ、ともです」
その灯璃の1つ、1つを確認する様なそれを聞いて。
カイトが成程ね、と全てを悟ったのか、少し疲れた様に溜息を漏らした。
「……まあ、何時かは気付かれるだろうとは思っていたけれどね。個人的に会ってきたんだ、灯璃さんは」
誰に、とは敢えて言うまい。
だが……それも情報漏洩を防ぐための常套手段であることを諒解し、思わず灯璃が苦笑を零した。
「親戚関係が複雑だと何かとご苦労されますね」
その灯璃の苦笑に、カイトもまた、苦笑を零して。
「まあ、血は水よりも濃いって言うけれど、上手い諺だと思うよ。……まあ、それが無ければレーテに僕が選ばれることも無かったんだろうけれど」
そんなカイトの苦笑に首肯を返しつつ、周囲を見遣ってから、灯璃が続けた。
「それでカイトさん。この手紙の届先の相手について先ず教えて欲しいのですが……」
そう囁きかける灯璃のそれに。
カイトが渋面を作りつつ、はぁ、と深い慨嘆を漏らす。
「……ルーファスの事か。あの人、僕、苦手なんだよなぁ……色々と食えない人だし」
そうがっくりと項垂れる様に言の葉を漏らすカイトのそれに、灯璃がへぇ、と少し珍しいものを見た、と言う表情を浮かべた。
「カイトさんがそこまで言うという事は余程の曲者なのですね、ルーファスさんは。帝国中枢の軍や、政治方面の穏健派の人だと思っていましたが」
その灯璃の問いかけに。
その通りなんだけれどね、とカイトが苦笑しながら、言葉を続けた。
「そもそもアロンダイト傘下の武官の中でも、一定の人事権を握る要職……まあ、将官の地位にいる人だし。しかも、穏健派にとっての協力者……要するに内側から穏健派の考えに近い人間をスカウトしてくる人だからね。美月さんから少し聞いていると思うけれど。最近になって、パーシバル中佐という穏健派に近い人がウェルディンに派遣されているリ・ヴァル帝国によるウェルディン復興支援部隊の隊長に成ったって話は聞いているかい?」
その、カイトの問いかけに。
もしや、と灯璃が流石に目を白黒させて、嘆息を零した。
「そのルーファスさんが、その辺りの人事にメスを入れたとか、そう言う話ですか?」
「そう言うことだよ。お陰様で、今後またウェルディンへの侵攻があった場合、市民の救助、避難に関しては、帝国軍もより上手く動いてくれる様にはなったけれども。しかも本人は至って涼しい顔してさらりとそう言う判断をして上に投げて承認させる上、何処か飄々としてつかみ所が無いというね……」
そう、深い、深い溜息と共に告げるカイトの様子を見て、灯璃が思わず苦笑を零しながら、話を続ける。
「もしかして、先程美月さんが聞いていたカイトさんに協力してくれた帝国のある勢力というのも、穏健派と呼ばれる方々ですか?」
その灯璃の問いかけに。
カイトが苦笑を零しつつ、そうだね、と首を縦に振った。
「まあ、僕とも割と上手く協力出来る帝国の一部勢力となれば、今の灯璃さんなら、全部分かるだろう。穏健派……つまり僕達が掲げている、理想論に過ぎないそれを信じて、共に戦う人達が協力してくれたって事だ。この辺りは、ルーファスの采配もあったし、帝国の中でも僕と知己になっている人達もいるからね。例えば……アロンダイトが傘下に置いた各国の人の中で、兵士として今、帝国に仕えている士官の一部とかね」
そのカイトの言の葉に。
「成程。では、穏健派には、語弊があるかも知れませんが、何も帝国人に限っただけでは無く、帝国に支配された国々の人々もいるのですね?」
その灯璃の問いかけに。
「その通りだね。そもそも、そう言ったきちんと分かり合おうとすることが出来る人々とも手を取り合って行こうと言うのが、穏健派の基本理念だ。何時か人々が互いに手を取り合い、少ない資源を分かち合い、共にプラントの研究を進める事で、争いの無い、皆が当たり前の様に生きていける平和な世界を作りたい。そんな夢の様な世界に少しでもその手を届かせたくて皆、頑張っている。とは言え……オブリビオンマシンや、|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》と言った問題そのものを先ずは何とかしないといけないと言う意識はアロンダイトとも共通しているから、その辺りは協力も出来ると思ってはいるけれども。……まあ、皆の権利も何時か取り戻せれば、とは思うけれど、それは未だ、今ではないとも思うしね」
「それは、どう綺麗に言葉を飾ったとしても、結局はアロンダイト皇帝との衝突は現状のままでは回避できないから、と言う事ですね」
その灯璃の確認に。
そうだね、とカイトが首肯し、いずれにせよ、と軽く頭を横に振って話し続けた。
「灯璃さんがそれを貰っている以上、恐らくルーファスには既に何らかの形で連絡が行っているだろう。だから、灯璃さんが面会を望めば、ルーファスには会うことが出来る筈だ。後……ルーファス経由ならば、もしかしたら、皆が今欲しがっている情報に辿り着ける可能性は出てくるだろう。但し、他の人にその権利を委譲させるのは無理だろうけれどね」
そうカイトが言の葉を紡ぐのに。
「私達が今、欲しがっている情報の1つ……?」
と、灯璃が確認すると。
カイトが周囲を見回し、未だレーテに遮られる様に他の猟兵達に自分達が見られていないことを確認しながら、話を続けた。
「屍鬼帝国の皇帝……女帝なのかな? 『ナツ』が収監されている場所だよ。『ナツ』は今、リ・ヴァル帝国に収監されているからね。この話を他の猟兵にした時は、全く思い浮かばなかったけれども……灯璃さんとルーファスの話をして、漸く繋げることが出来た」
その、カイトの告白に。
「! ナツさんの……居場所……」
全く想定外の情報が入ってきたのに灯璃が思わずと言った様にそれを繰り返す。
――それから、少し時間を置いて。
灯璃が動揺から立ち直った様子を確認して、カイトが一先ず、と言の葉を紡いだ。
「あんまりネリッサさん達から離れていると却って心配されるだろう。そろそろ、灯璃さんが見つけてくれた機体の残骸の所に行こうか、僕達も」
そう告げて。
ネリッサや冬季達が消えた方向に向かって歩いて行こうとするカイトを追う様に灯璃が隣を歩きながら。
「カイトさん」
少し落ち着いた表情を浮かべて。
改めてカイトに問いかけると、カイトが何? と首を傾げる。
そんなカイトへと、灯璃が確認する様に。
「カイトさん、教えて下さい。今現在、冷静な視点で見て、皇帝が武力制圧を決意した各国に、オブリビオンの影はどの位ちらついていたと思いますか?」
そう今までずっと疑問に思っていたことを口に出すと。
カイトは今、帝国の傘下に武力で入れられた……プラントの有無も含めて……各国の人々や集落民達を思い浮かべつつ、そっと嘆息を付いた。
(「リィズ王国の様な突然、プラントがオブリビオン化した様な、大々的にオブリビオンに蝕まれていた国はあまりない筈だと思うけれど……」)
けれどもオブリビオンマシンと思しきそれを提供され、帝国に返り討ちに遭い、制圧された国々の事も鑑みて、注意深く言の葉を紡いだ。
「……多分、制圧された全ての国と、集落のことを考えると……4~6割位は、何らかの形でオブリビオンの存在がちらついていた、だろうね。少なくとも、ある筋から得たフェザーの商人が接触してオブリビオンマシンを提供されたと思しき国の数は、その位は見ておくべきだ」
そう正確な数を割り出せないながらも、確実であろう情報を口にするカイトのそれに。
「分かりました。ありがとうございます」
そう一礼して、灯璃がカイトと共に、ネリッサ達に合流した。
●
――その、合流先で。
「……成程、そう言うことですか」
灯璃のい管狐達が見つけたカイト達が交戦して撃破したというオブリビオンマシンの残骸を見たネリッサがそう呟いたところで。
「……ああ、似ていますね。あの時戦ったあの機体達と」
そう確認した冬季のそれに、そうですね、とネリッサが首肯する。
そこに……。
「局長」
そう灯璃が呼びかけるのに気が付いたネリッサが灯璃とカイトを認め、カイトさん、と声を掛ける。
「ネリッサさん、どうかした?」
それに対してそうカイトが応えるのに1つ頷き。
「すみません。この機体の残骸を見ましたが……カイトさんも此には見覚えがあるのではありませんか?」
確認する様に、ネリッサがカイトに問いかけると。
カイトがそうだね、と小さく首肯し、それから何処かすまなそうな表情で話し続けた。
「話が途中になってしまったからね。うん、そうだね。この機体は……前、ウェルディンに襲ってきた人工太陽と接続されたエヴォルグシリーズだっけ? あれに酷似しているな、と僕も思ったよ」
そのカイトの率直な感想を聞いて。
「エヴォルグシリーズ……ですか」
そう美月が確認する様に言の葉を紡ぐのに、そうですね、とネリッサが首肯する。
「あの時、ジルド帝国の部隊として使われていましたね。ロスト共和国でも使われている機体ですし……と言う事は、この機体は……」
そのネリッサの言の葉に。
内部残留データを管狐達に読み取らせた灯璃が、はい、と静かに首肯する。
「データを取ることに成功しました。恐らくこの機体の搭乗者達は、青十字との接触があったと判断します」
その管狐達が残骸に残されていた電子データを解析して出した結果を灯璃が口にすると。
つまり……とネリッサがあることに気が付き、カイトさん、とカイトへと声を掛ける。
「確認ですが。『国境なき医師団』を謳う青十字は、リ・ヴァル帝国内でも活動しているのですか?」
そのネリッサの質問を聞いて。
「いや、それは無い筈だ。僕が知る限りでは、青十字について浸透しているのは、精々ウェルディンまで。元々、青十字の受け入れに関しては、帝国方面は全体的に否定的だったからね。まあ、ロスト共和国と友好的な繋がりがあった国なら未だしも、こちらの地域には根付いていないよ」
そうカイトが微かに表情を俯かせつつ、言の葉を紡ぎながら、その事を思い出す。
――実際、リ・ヴァル帝国のある南地方には青十字と言う存在はほぼ知られていない。
恐らく此方に浸透されるより前に、何らかの手をアロンダイト達が打ったと考える方が妥当であろう。
(「そう言う意味では……徹底的にアロンダイトは、青十字やロスト共和国の動きを警戒している様にも見えますね」)
そう内心でネリッサが思い、一通りの調査を終えたところで。
不意に冬季が、前回の件ですが、と言の葉を紡いだ。
「似て非なる、と言う言葉があります」
そんな冬季の問いかけに。
気が付いたカイトが何だろう、と言う様子で冬季の方を見遣ると、冬季が嗤ったまま、話を続けた。
「ジルド帝国と屍鬼帝国を繋いだのは、|始原の人《アダムカドモン》なのは確実であり、その内容として資金提供、目的は不老不死の模索の一環ではないかと、私はそう判断しています。故に、あの侵攻が共闘に見えたのは、始原の人が自分達の望む不老不死に何方が近いか、秤に掛けただけなのでは無いかと思うのです」
そう嗤う冬季のそれに、愈々カイトが首を傾げるのを見ながら、冬季が続ける。
「更に正しく言うなら、|始原の人《アダムカドモン》はエリュシオンの望む不死とジルド帝国の言う不死の違いを見極めたかっただけでしょう。二帝国自体からは本国軍と地方軍程度の違いしか感じませんから」
そう嗤って告げる冬季のそれを聞いて。
カイトがすまないが、と軽く頭を横に振った。
「エリュシオンについては、ウェルディンで人を全てジャイアントキャバリアに置き換えようとしている計画を、ロスト共和国で行っていると言う話は聞いたことがあるけれども。それを目指す不死と、ジルド帝国の言う不死の違いと言うのが、僕にはよく分からないな。僕が何となく感じているのは、あくまでもジルド帝国は、理由があって、アロンダイトを『起き上がり』にしようとしているのではないか位の事で。その件については、何らかの繋がりがあるとは思うけれど、正直、それ以上の何かを考えるには、僕には材料が足りない感じがしている」
そのカイトの応えの中に、特にそれ以上の情報が入っていないのは、観相術を起動させている冬季にも分かる。
つまり現状のカイトは、どちらも『起き上がり』が深く関係していること以外には、今までカイト自身が話した情報しか持っていないと言う事なのだろう。
(「これは……読み違えましたね」)
そう内心で嗤いながら呟きつつ、冬季がいずれにせよ、と言葉を紡いだ。
「|始原の人《アダムカドモン》は、尸解仙を目指す邪教の輩扱いが1番正しいのではないでしょうか。昇仙して邪仙を目指す輩が居ると知った以上、私達仙は放置出来ないのですよ」
そう嗤う冬季のそれに。
「意図的に他人を屍にして、自身も屍となり、その先の人々が生きるための未来を奪う。そう言う存在が、冬季さんの言う、|始原の人《アダムカドモン》なのだとすれば」
そこまで告げたところで。
カイトが小さく息を吐き、そっと続けた。
「人の生き死にを利用して自分達が利益を得ようとしているのだから、やっぱり僕達とは相容れることはなさそうだね」
そう嘆息と共に呟くカイトのそれに。
「まあ、貴方はそう言う人ですよね、カイトさん」
冬季がそれにゆっくりと頷き――静かに嗤った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雁帰・二三夫
b
吸血鬼面会前リズに
「吸血鬼さんに会う前に、ロスト共和国側で捕虜になった方々含め吸血鬼さんの、尋問記録と護送記録を見せて貰うもしくは教えて貰うことは可能でしょうか。既に防衛隊に話したことをわたくし達がまた聞いたら、態度がより頑なになってお話にならなくなる気がするんです」
UCは面会前から使用
「こんにちは吸血鬼さん。わたくしは猟兵の雁帰二三夫と言います。貴女のお名前を伺っても?」
「わたくしは貴女のことを知りません。ジルド帝国のことも知りません。だから貴女がジルド帝国に向ける想いが想像出来ません。知ることで貴女に共感出来るかもしれない。ジルド帝国の理想とする社会を見たいと思うようになるかもしれない。捕虜の食事をもっと好みに合わせて向上出来ないかと言う提言を行えるかもしれない。全ては貴女が話して下さらなければ分かり合えないことです。教えていただけませんか。わたくしも話せることは話しましょう。いかがです?」
面会後
「吸血鬼か吸血鬼風か、オブリビオンかそうでないか。最低限見定める必要がありましたから」
館野・敬輔
b
【闇黒】
アドリブ大歓迎
陽太さんからジルド帝国の情報を受け取った後
指定UCでヴァンパイアに変身した状態で吸血鬼と面会
相手が吸血鬼であれば、俺もあえてこの姿で面会し
ダークセイヴァーの吸血鬼っぽく振る舞おう
仮に吸血鬼でなくても、あえてこの姿を晒せば引き出せる情報もあるだろう
必要あらば恐怖と従属のバステも与える
まずはこの質問から入ろう
|この世界《クロムキャバリア》における、貴様らの立場を説明してもらおう
他の話はそれからだ
先日、貴様らは俺らにこう言ったな
「全ての者達が争いも無く、穏やかに満ち足りた幸福を過ごすことの出来る世界」を与えると
そのために『新人類』達の王としてアロンダイトを求めたそうだが
なぜアロンダイトでなければならなかった?
リ・ヴァル帝国とジルド帝国をひとつに…とは思えないぞ?
そういえば、強襲者2章で『HighS』に搭乗していたパイロットって、復活後頭を撃ち抜いていたよな
あれは起き上がりに加え、オブリビオンマシンの精神汚染を受けていたのでは?
根拠はないけど…説明してもらおうか?
藤崎・美雪
b
【闇黒】
アドリブ大歓迎
…この展開、全く予想してなかったわ
これは私が行くしかないが
はぁ…気が重い(嘆息
というわけで、先輩たちと一緒に吸血鬼との面会に向かうが
面会前に指定UCで召喚したネズミサイズのもふもふさんを
猟兵全員及びウェルディン側の立会人の懐に忍ばせておく
万が一、精神汚染等を受けたら治療を頼む
…ふむ
正直、吸血鬼と言われればそう見えるが
オブリビオンには到底見えぬ
優越種ぶっているのは見ればわかるが
…本当に吸血鬼か?
実は私は吸血鬼の話は初耳でな
故に私からの質問は、ネリッサさんから預かった質問になる
他猟兵の質問中は、口を挟まず観察に徹しよう
回答中の反応も立派な情報だからの
まずは貴殿らが名乗っておる「ジルド帝国」とやらについてだ
我々も歴史的背景は少し調べたが
貴殿の口からも如何なる国家?か説明願おう
何、場所まで言えとは言わぬ
我々が辿り着けぬ場所にあるやもしれぬからの(カマかけかも?
そしてもうひとつの質問は
貴殿ら「ジルド帝国」の目的、及びアダムカドモンとの関係だ
これはきっちり喋ってもらうぞ
●
――時は、陽太達10人の猟兵が、カイトと共に自由都市ウェルディンを出立した頃にまで遡る。
その頃、自由都市ウェルディンには。
「リズさん。吸血鬼に面会に行く前に、なのですが、お願いがあります」
自由都市ウェルディンの執務室の扉を再びノックした雁帰・二三夫が、その場で何故か土下座をしている姿を見てパチクリと目を瞬かせるリズがいた。
「え……えーと、二三夫さんでしたっけ? 如何か致しましたか?」
そう丁寧に問いかけるリズのそれに二三夫が少しだけほっとした様に息を漏らして顔を上げ。
「ふむ……美少女の足下で土下座する不惑。……最早犯罪街道まっしぐらだぞ、二三夫」
そう170cmスレンダー美女化した30m級竜型巨神G-O-リアス|3号機《トレス》が冷たく言い放つのに、そりゃないですよ、と涙目になる二三夫。
そんな相変わらずの二三夫とトレスの漫才に苦笑を零しながら。
「それで私に何の御用があるのでしょうか、二三夫さん」
そうリズが柔和な表情で問いかけてくるのに、すこしだけ居たたまれなさを感じながら、二三夫が続ける。
「いえ、先日リズさんが許可をくれた例の吸血鬼に会いに行く前にですね、私達がウェルディン防衛戦で捕虜にした方々含めた吸血鬼さんの、尋問記録と護送記録を見せて貰う事は可能でしょうか、とお伺いしたく」
その二三夫のお願いを聞いて。
リズが軽く目頭を解す様にしながら、ああ、と軽く首肯する。
「別に構いませんけれど、一応理由をお聞かせ頂いても宜しいですか、二三夫さん」
そう確認する様に呟くリズのそれに、ええ、と二三夫が土下座をやめて何となく正座したまま話を続ける。
「いえ、既に防衛隊であるリズさん達に話したことをわたくし達がまた聞いたら、態度がより頑なになってお話にならなくなる気がしましてね」
「成程。そう言うことでしたら……」
その二三夫の至極真っ当な主張に頷いて。
リズが一度執務室に引っ込み、執務机のキャリーから、書類を取り出して要点を抜粋しながら二三夫に告げる。
「一先ず、二三夫さん達が交戦したナツさんについては……皆さんが知っている事しかお話しできませんので、これ以上を話すことは出来ませんが……」
そこまで告げたところで。
リズが微かに苦みと罪悪感の綯い交ぜになった表情を浮かべてそっと溜息を漏らす。
「……あのアロンダイト皇帝を殺そうとしていたジルド帝国の吸血鬼を名乗る存在については、名前だけは白状させることが出来ましたが……それ以上は、殆ど黙秘を貫かれている有様ですね」
「……そうですか。因みに彼女の名前は何というのですか?」
その二三夫の問いかけに。
リズが尋問記録の紙を捲って、その名前を確認する。
「セラ、と言う名前だそうです。それ以外には、殆ど何も情報を得られていません。本当に、皆さんが得た様な情報が精一杯、ですね。彼女が『ジルド帝国』と呼ばれる地下帝国に所属していること。それから、彼女達『ジルド帝国』が『争いの無い、真なる永遠の平和に満ちた世界』を求めている、と言う事位、でしょうか」
そう気になる部分をそう二三夫に説明するリズに。
「ありがとうございました、リズさん」
そう礼を告げて、トレスと共に、二三夫がその場を後にして……。
●
「……あー、この展開は全く予想していなかったわ」
現れた二三夫がリズから得た情報を確認し。
何処か地平線の彼方を眺めるかの様な表情を浮かべた藤崎・美雪が、誰に共なく愚痴る様に嘆息を1つ。
そこに深い、深い荷重感が漂うのを感じつつも、館野・敬輔はそれに対して何か気を配る様な一言も言えず、淡々とその場所を見据えていた。
「まあまあ、藤崎さん。こう言うことは、人生数十年生きていれば往々にしてあるものですから、仕方ありませんよ。あっ、トレスさんは一応、此処に残っていて下さいね」
そう二三夫が美雪を励ます一方でトレスにそう告げるのに、トレスが微かに不服そうな表情を見せつつも。
「むっ……まあ良かろう。万が一リズに何かあれば、私が守ってやろう」
「宜しくお願いしますよ、トレスさん」
そう首肯するトレスのそれに二三夫が頷き、敬輔や美雪と共に、リズが指し示したその場所に向かって歩き始めている。
――それから1時間ばかり歩いたところで。
人気の無い、まるで裏通りの様に物静かなその場所へと足を踏み入れ。
「……この気配……まるで人を寄せ付けない魔除けの魔法でも掛かっているかの様だな。……それだけ重要な施設に収監している、と言う事か」
自分達の足音が反響するのを聞きながら敬輔がそっと呻くのに。
「……そうだな、先輩」
取り敢えず我を取り戻した美雪が改めて周囲を見回しながら同意するのに敬輔が黙って首肯し、更に前を行く。
その間に見る見る自らの口から犬歯を生やさせ。
更に何時の間にかそれまで纏っていなかった、表地が漆黒、裏地が紅のマントを纏い。
その赤と青の色彩異なる双眸を真紅へと染め上げながら。
そんな自らを吸血鬼化した敬輔の姿を見て、流石に驚いた表情を浮かべた兵士達が身構えるが。
「ああ、私達は、リズさんから此処に収監されている吸血鬼……セラに面会に来た者だが」
そう美雪が告げ。
「因みに此方がその紹介状です」
そう二三夫が敬輔と衛兵の間に割り込む様に入って渡されていた面会状を差し出すと。
それをよくよく確認した兵士が、ふむ、と小さく首肯して。
「そうですか。リズ隊長から既に連絡は来ていましたが……貴方達ならば、大丈夫ですね。では、彼女の所に参りましょう」
そうそばかすが何処か特徴的な青年が首肯して、二三夫達の前を立って歩いて行く。
無論、その青年だけでなく共にいた女性兵士もまた、敬輔達の前に立って、その施設に入り、奥に向かって歩き始めた。
(「しかし……完全武装した兵士が看守兼、立会人か。この2人、見るからに明らかに手練れだな。……まあ、此処に投獄されている者はカイトさんの言葉通りならば、彼等にとっても御伽噺上の存在だろうから……恐らく、幾ら警戒をしてもしたり無い、と言う事なのだろう」)
等と自分自身を納得させつつ、立会人であると同時に、看守でもある彼等の懐にひっそりともふもふした小動物を潜ませる美雪。
そうして、その完全なる牢獄の最奥部へと導かれた美雪達が見たのは……。
「……なっ」
その身を椅子に鎖で縛り上げられ。
猿轡を噛まされ、目隠しをされ。
更に体中に傷を負った女吸血鬼がだらりと吊されている彼女の姿。
「……ウェルディンを狙ったジルド帝国とやらの兵士です。用心に越したことはないので、この様に拘束し、またそれなりに手荒い手段で情報を収集しようともしましたが……それでも、僅かな情報しか得られなかったのですよ」
そう何処か無念そうに。
軽く下唇を噛む様にする青年のそれを聞いて、二三夫が念のために、と言う様に言葉を続けた。
「これだけの事をしても尚、漸く口に出したのが自らの名前とジルド帝国の望み……私達が知る位の情報と言う訳ですか」
(「此は……手強い予感しかしませんね」)
そう内心で二三夫が思考を張り巡らしている間に。
そばかすの青年がゆっくりと近づき、吸血鬼……セラから猿轡を取ると。
『アハハハハハッ! 何をされようと、これ以上は何も言わないわよ! 下等で、野蛮な人間共にこれ以上、話してやる事は無いわ!!!!!』
そう高らかな笑い声と共に、セラが口の端に嘲笑を浮かべるのを見て、その猿轡を外した看守が軽く頭を横に振り、敬輔達を見ると。
「……ならば、貴様の同族が相手ならばどうだ?」
その言の葉と共に。
吸血鬼形態に変身した敬輔がセラへと高圧的に押し潰す様に畳みかけると。
「何? この私と同族ですって?」
そう何処までも小馬鹿にした口調で。
そう叫ぶセラのそれを聞いて、敬輔がすっ、とその目を細める。
「信じないか?」
「見えないものを信じるほど、私も馬鹿では無いわよ。そもそもこの世界に私達の様な上位種が、私達以外に居る筈がないじゃない。証拠があるって言うなら、こいつらに命じて、私の此を外させなさいよ!」
そう叫ぶセラのそれを聞き、やむを得ないか、と言う様に嘆息を零して。
「すまないが、お2人共。彼女を警戒しているのは重々承知だが、彼女の目隠しを外してやって貰えないか? そうしないと話を聞くことすら出来そうに無い」
そう美雪が仕方ない、と言う様に看守である2人に告げると、女の看守の方が仕方ない、と言う様にそっとセラの目隠しを外す。
そうして目隠しを外されたセラが、吸血鬼化した敬輔の真紅の瞳と、伸長する犬歯を見て、へぇ……と愉快そうに嗤った。
「本当にいたんだ。私を助けに来てくれたのよね、同族さん」
そのセラの言の葉に。
敬輔がギロリと鋭い眼差しを向け、軽く頭を横に振る。
「流石にそれは出来ない。だが、貴様が望むのであれば特別に少しは待遇を良くしてやることなどは出来るかも知れないがな」
敬輔が敢えて見せつける様に自らの犬歯を光らせて自らの存在を誇示しながらそうセラに告げるのに。
「館野さん、それは……」
思わず二三夫が割って入る様にし、同時に2人の兵士も敬輔達を警戒する様に直ぐに武器を敬輔達に向けて構え……。
「いや、先輩。私達にその権利は無い。リズさんがそれを許さないし、下手したら目前の2人に私達が蜂の巣にされかねないぞ!?」
と、美雪が反射的に敬輔に突っ込みを入れると、敬輔はふん、と鼻を鳴らして軽く頭を横に振った。
「どちらにせよだ。どんな理由にせよ、先ずは|この世界《クロムキャバリア》における貴様等の立場を説明して貰わないことには、何もしてやるつもりはないがな」
そう淡々と切って捨てる様に言う敬輔に、セラがギロリ、と鋭い眼差しを叩き付ける。
一触即発にも等しいその状況を見遣りつつ……二三夫がまあまあ、と宥める様に嘆息し、ゴホン、と態とらしく咳払いを1つ。
「改めまして、こんにちは吸血鬼のセラさん。わたくしは猟兵の雁帰・二三夫と申します。この度は、わたくし達と貴女との間の相互理解を図るべく、此方を訪れさせて頂きました」
その二三夫の執り成す様な挨拶に。
鎖に全身を締め上げられ、椅子に縛り付けられたセラは、ギロリと鋭い眼差しを二三夫へと向けた。
「猟兵……。忌々しき、私の乗っていた機体を破壊した敵……!」
そう忌々しげに睨み付けてくるセラの様子を見ながら、美雪がふと思う。
(「……この娘。吸血鬼化した先輩を同族といっている以上、本物の吸血鬼なのであろう事は間違いないのだろうが……」)
――オブリビオン……それに付随してくるであろう、骸の海の気配があまりにも薄い。
そんな感覚を覚えつつ嘆息を1つついて、具にその様子を監察し続ける美雪。
その間にも、敬輔が相変わらずギラつく様な真紅の眼差しで、射貫く様に彼女を見つめ言の葉を紡いでいた。
「で……如何した? 答えるつもりは無いのか?」
その敬輔の切って捨てる様な問いかけに。
セラは相変わらずギラついた眼差しを叩き付ける様にしながら……。
「私達の|この世界《クロムキャバリア》での立場ですって? そんなの愚かな人類同士の下らない争いに終止符を打ち、『真なる永遠の平和』を導く選ばれた上位種族に決まっているじゃ無い。それ以外に何があるというの?」
そうセラが瞳に狂信的なまでの光を宿しながらそう問いかけると。
(「彼女達は……本気で『真なる永遠の平和』を、自分達の手ならば作ることが出来ると思っているのか?」)
思わず絶句する美雪だったが、二三夫は自らの装備するサングラスを軽く直して、コホン、ともう一度咳払いを1つして。
(「流石に土下座をして、下手にでたら、何も情報を得られそうに無いですね、これは」)
そう内心で思いつつ、狂える真紅の瞳でセラを睨み付ける敬輔の脇で、なるべく穏やかに聞こえる様に口を挟んだ。
「貴女はそう言いますが。そもそも、わたくし達は貴女がセラさんと言う名前であることや、ジルド帝国に所属していると言う事以外、何も知りません。だから、貴女とジルド帝国がどの様な想いをわたくし達に抱き、どれ程の想いを抱いているのかを想像することも出来ないのです。ですから、もし貴女がそこまで言うのであれば、わたくし達にも教えて下さい。貴女達が齎す事の出来る『真なる永遠の平和』とはどの様なものなのですか?
そうやって……ジルド帝国の理想とする社会を知ることで、その世界を見たいと思う様になるかも知れない。ですから……ほんの少し、ほんの少しだけで良いのです。貴女達が求める世界がどんなものなのか、それを教えて頂けませんか?」
そう柔らかな物腰で少し腰を低くしつつ、けれどもある程度の理を持つ二三夫の説得を受け。
そんなことも知らないのか、と言いたげな無知な者を嘲笑う光を二三夫に向けるセラだったが。
『……まあ、良いわ。そこまで言うなら特別に少しだけ話してあげましょう』
先程までの激情を少し緩めたセラがそう蕩々と言の葉を紡いだ。
「そうして頂けると幸いです」
(「ふむ……成程。全くコミュニケーションが通じない相手、と言うわけでも無い……いや、本当に無いのか……?」)
そう思わず首を傾げる美雪を脇に置いて。
セラがまるで吟遊の様に言の葉を紡ぐ。
『ああ、我が愛しき『ジルド帝国』。我等、愚かな戦いを続ける人類達の上位種にあたる我等に神々が授けし使命は、『我等の下』にて愚かなる人類が幸福な日々を永遠に享受できる楽園を作り上げること。その楽園では、永遠に人は生き続け、そして上位種たる我等に己が血と言う名の美酒を奉ることを無常の幸せとする。それによりて、人類は永遠に取るに足るを知り、闘争と言う名の流血の幸福を永遠に繰り返すことが出来る。それは……我等と人類が互いに互いの幸せを永遠に享受する事の出来る、楽園と呼ぶに相応しき場所……。私達は、己が器を知り、その器がなせる範囲での事を為す事こそが、本当の幸せな世界だと知っている。それ故に、その真の理想郷を人類に与えることこそが、我等『ジルド帝国』の本当の使命』
そのセラのあまりにも一方的な話を聞いて。
「……はっ!?」
と思わず美雪が素っ頓狂な声を上げた。
(「いやいやいや、真なる永遠の平和とか言っているけれど、思いっきり人類殺し合い続けているわ、吸血鬼に血を捧げているわじゃないか……!? これ、絶対何か主語抜けているよな!?」)
そう全力で突っ込みを入れたくなる美雪に対して、敬輔が何処までも冷めた目でセラを見下ろしていた。
「……成程。今ので貴様達が望む世界というのはよく分かった。全ての者達が争いも無く、穏やかに満ち足りた幸福を過ごすことの出来る世界で過ごすことの出来る新人類とは……『起き上がり』のことだな?」
その敬輔の貫く様なその言の葉に。
セラがさて、とペロリと舌舐めずりを1つする。
「いや、だが、まて先輩。そしてセラさん。争いの無いと言っている筈なのに、起き上がりと化した人類は殺し合いを永遠に続けている。……明らかに矛盾していないかそれは?」
漸く少し落ち着いた様子で。
一先ず敬輔の説明を受け入れた美雪がそうセラに問いかけると、セラはそれに何のことかしら、と嘲笑を浮かべた。
『人類にとって、争いとは娯楽でしょう? 人類は自分達が生き延びるためだけに、醜い争いを永遠に繰り広げ続けている。だったら、仮に永遠の命を得たとしても、人類はその娯楽から離れることは決して叶わない。ならばそれを、争いなんて醜い言葉で表現するのでは無くて、娯楽という言葉に置き換えてあげる事こそが、人類にとって本当に幸せな事に決まっているじゃ無い。……覇王としてその名を今、この地方に轟かせているアロンダイト・フォン・アークライト。正しくあれこそが、人類の本能そのものじゃない』
その、セラの当然の様に告げるそれを聞いて。
「……成程。その人類の上位に君臨し、永遠を生きる様になるわたくし達人間の上に立つ為に存在するのが、貴女方ジルド帝国とそこに住まう貴女方吸血鬼、と言う事なのですね」
そう確認する様に二三夫が言葉を紡ぐと。
『……満足して貰えたかしら? でも、そう悪い話じゃ無い筈よ。数多の歴史を紐解けば、人類は動物達と異なり、他者から奪い合うことで、より幸福になろうとする。それは取るに足るという事を知らないが故の愚鈍な行動。だからこそ……私達が、貴女方をきちんと管理してあげないといけないのよ』
そのセラの言の葉に。
「……くそったれが」
そう吐いて捨てる様に敬輔が唾を吐き捨て、頭を横に振る。
セラを取り囲む様に存在しているウェルディンの看守兼立会人達もまた、屈辱と憤怒からか、目を怒らせてセラを睨み付けるが。
『……ふん、そんなに睨んだところで、貴方達は私の言う事を否定できない。私から必要なことを聞き出そうとかなり手荒い手段を取っているのですからね。それこそ正しく……人間の果て無き欲望と闘争心の成れの果てよ』
そうセラが叩き付ける様に言の葉を紡ぐのに、看守達がぐっ、と苦い表情を浮かべ、敬輔も震える拳をやむなく下ろして。
それから敬輔は、淡々と問いかけた。
「『新人類』達の王としてアロンダイトを求めた理由は、アロンダイトの闘争心故か? 何故……|アロンダイト《・・・・・・》でなければならなかった? リ・ヴァル帝国とジルド帝国を1つに……」
そこまで問いかけようとしたところで。
違う、と敬輔の中の冷静な自分がそう囁きかけてくる。
(「アロンダイトを求めた理由は、彼の野望……夢を成し遂げるために闘争という手段を選び続けるその姿勢こそが、永遠に生きて戦い続ける起き上がりの人類の王として、相応しい……そう考えているからではないか?」)
そう冷静な自分が囁き続けるのを聞いた敬輔が少しだけ落ち着いた表情になって、セラを睨み付ける。
セラは嘲笑を浮かべたまま、敬輔の問いかけには応えない。
その様子を見て、美雪がそっと嘆息し、確認する様に言の葉を紡いだ。
「私は知人から2つ質問を預かっていたが、内1つは今の二三夫さんへの反応で大体分かってしまったな……」
それは『ジルド帝国』とはどの様な国なのか、と言う事。
即ちそれは……。
(「吸血鬼達によって遙か昔に建国された……人類を自分達に隷属化させることこそ、真の永遠なる平和に繋がると信じている『吸血鬼達の帝国』だった、と言う事か」)
そう内心で、美雪が嘆息し。
「もう一つの方は念のためにお聞かせ願おうか。貴殿等『ジルド帝国』は『アダムカドモン』とどんな関係にある?」
そう美雪が問いかけると。
『ああ……あいつらね』
さも当然、と言う様に、セラが嗤って言の葉を紡いだ。
『あいつらは、私達の国の求める永遠の平和の世界に感銘を受けて、援助をしてくれている扶助組織よ。あそこが提供してくれるのは、様々な武装やそれを購入できるだけの資金と……あの最新型のキャバリア達ね。あの銀のサイキック・キャバリアや金のサイキック・キャバリアみたいに、自分達の意志で、自分達を生み出した愚かな人類に味方をする様な、愚かな古代兵器よりも遙かに利用しやすい、便利な道具を授けてくれるそんな組織よ。まあ……いずれあの|完全なる人間《アダムカドモン》を名乗る愚鈍な奴等にも、『新人類』の仲間入りをして貰って、永遠の幸せを享受して貰うつもりですけれども』
そのセラの言の葉に。
「……成程な。つまりアダムカドモンは、貴殿等にとっては、あくまでも人によって作られた組織という認識と言う事か」
そうポツリと嘆息する美雪の脳裏に、僅かに引っ掛かったものがあった。
それは……。
(「銀のサイキック・キャバリア……今はレーテとカイトさんが名付けているあのキャバリアも。そしてアロンダイト皇帝の搭乗する金のサイキック・キャバリアも……彼女達に対抗するための手段として古代魔法帝国時代に作られたキャバリア……と言う事か」)
だからこそ『ジルド帝国』や、『アダムカドモン』と戦うことを決めたカイトや、アロンダイトを、彼等は選んだのであろう。
取り敢えずカイトとアロンダイトのサイキック・キャバリアについては、人類の味方であるという認識を再確認して何故かそっと安堵したところで。
「……最後に1つだけ聞かせろ。貴様達が支配すべきとしている新人類、起き上がりだが……あの戦いの時、復活後に頭を撃ち抜いていたが……あれは、オブリビオンマシンの精神支配を受けていたのか?」
そう脅しの様に問いかける敬輔のそれに。
さあ、と嘲笑してセラが続けた。
『愚かな人類がしようとすることの全てを私達が理解できる筈が無いでしょう? 貴方達は、自分達の下等生物の全てを、果たして理解できるのかしら?』
そのセラの言の葉に。
「……答える気は無い、と言うか……本当に分からない、と言う事か」
そう敬輔が吐いて捨てる様に呟いたところで。
「……そろそろ面会終了の時間です」
そう、看守達が震える声音で告げるのを聞いて。
二三夫が分かりました、と小さく首肯し……その前に、と言の葉を紡いだ。
「貴女達、ジルド帝国の好みや、意見はよく分かりました。もし貴方が望むのであれば、何時かわたくしが話せることをお話し致しましょう。今回は此で失礼致します」
そう締めくくる様に一礼して。
看守にして立会人たる2人がセラに再び目隠しと猿轡を噛ませるのを確認し。
彼等の後を付いて去って行く二三夫達3人をセラはモゴモゴと嘲笑と共に見送った。
●
「……大体、ジルド帝国の理念などは分かったな」
そう敬輔が疲れた様に嘆息するのに。
「ああ……そうだな」
そう目頭を押さえる様にして呟く美雪のそれに、二三夫もまた、そうですね、と静かに首肯する。
重苦しい空気を纏った牢獄からの帰り道を歩きながら、そう言えば、と美雪がさりげなく二三夫へと問いかけた。
「二三夫さん、貴方は彼女に最後に何か交渉の余地が残る様な匂わせをしたが……どうしてだ? 少なくとも、私は、彼女達の思考とはとてもじゃないが相容れられなさそうな気がして仕方ないのだが」
そう嘆息する美雪のそれに、二三夫がいえ、と軽く頭を横に振る。
「彼女が吸血鬼であるがオブリビオンでは無い、そう言う最低限の見極めを行うことが出来ましたから。その分のお礼としてのリップサービスというやつですよ」
そう苦笑じみた表情を浮かべて美雪の問いに応える二三夫のそれを聞いて。
「……そうか」
と、何処か疲れた様に美雪がそっと嘆息するのだった。
――リ・ヴァル帝国での模擬戦の日は、もう間近だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『MCK04N-パラティヌス』
|
POW : RXキャバリアソード/EPキャバリアシールド
自身の【補助CPUを停止、搭乗者への制御負担】を代償に、【力量に応じ近接戦闘力を向上した状態の機体】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【砲火を潜り抜ける運動性と近接武装】で戦う。
SPD : RBXSランスライフル
レベル分の1秒で【近接突撃/射撃モードに切り替え】【ビーム】を発射できる。
WIZ : EPオプションバックユニットスラスター
【作戦に応じた追加兵装(通常はミサイル)】を向けた対象に、【射撃攻撃を行った後、追撃の突撃】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――その入口は、割と賑やかな場所だった。
「着いたよ。此処が、リ・ヴァル帝国だ」
城門にそれなりに人が並んでいるリ・ヴァル帝国の入口の様子を窺いながらカイトがそう言の葉を漏らす。
その城門の前では様々な人々が列を成して、自分の受付が完了し、入国可能な時を今か、今かと待ち受けている様に見えた。
「まあ実際は、帝国市民権を発行された人や、皆みたいに特殊な事情を持つ人しか今は中々入れないんだけれどね。僕も一応、入りやすくするために、偽造市民権は用意しているけれど」
そう微苦笑を零してそう告げて。
カイトがその人々の列に並び、猟兵達へのアロンダイトからの招待状の話を臨検にし、帝国兵と思しき者達もそれに納得している。
どうやら猟兵達にとっては、出入りが比較的自由な場所である様だ。
尚、外観を見る限り、リ・ヴァル帝国は『守るに易く攻めるに難い』国として建国されているらしい。
ほぼ山岳地帯を中心に防衛に適した地形に作られているのは、どの様な目で見ても、直ぐに分かる。
そんな、リ・ヴァル帝国の中に入り。
活気のある中央広場へと猟兵達を導いたところで、さて、とカイトが嘆息を1つ。
「僕が皆に対して出来る案内は此処までだね。因みに、招待状を見れば、アロンダイトと会見できる時間と、模擬戦の場所、何時行われるのかははっきりと分かるだろう」
……このリ・ヴァル帝国に入国したところで。
リ・ヴァル帝国で行動できる時間が、ある程度限られている事は明らかだった。
「此処から先は皆も自由行動になるけれど。色々事情を鑑みると、アロンダイトへの謁見と皆がこの都市を見て回ることの両立は不可能だろうね」
そうカイトが言の葉を紡ぎ。
模擬戦は……と微苦笑を零して、カイトが続けた。
「飛び入り参加も最悪許可されるから、ウェルディンを僕達よりも後に出た人達も、ギリギリ間に合うとは思うけれど。それ以外に関しては、難しいだろうな」
――そもそも、各々多忙であるにも関わらず、時間を割くと言う状況のなのだから。
如何に猟兵達にそれなりに敬意を払っている者達であっても、出来る限りの便宜を計らうのがやっとである。
「と言う訳で皆との事もあるし、僕も特に皆から何も無ければ自由に動くつもりだけれども。皆はこれから、如何するんだい?」
その、カイトの問いかけに。
――猟兵達が、出した答えは……。
******
第2章までの判定の結果、下記選択肢に分かれる様になりました。
どの選択肢を選ぶのかはお任せ致しますが、条件の都合上、参加可能・不可能になる選択肢がございます。
また、いずれのルートにせよ、UC等を使用して複数のルートに跨がって話を聞きに行くことは不可能ですし、ステータスオープン系や、洗脳系等強制的に情報を取ることの出来るUC、探索系統のUCも使用出来ません。
どのルートを選ぶのかはプレイング冒頭に、各選択肢を示す左の数字を書いて頂けますよう、お願い申し上げます。
1.模擬戦
此方を選択した方は、表示されているキャバリア(パイロットはオブリビオンでも起き上がりでも無い、只の一般士官候補生です)との模擬戦を行って頂きます。
この選択肢を選んだ猟兵の皆様で合計🔵11以上を取得できなければ、2以降の選択肢で得られる情報の全てが得られない、と判定します。
また、第2章において、b(ウェルディンに残って、吸血鬼に尋問する)選択肢を選んだ猟兵のお客様は、この選択肢以外のプレイングを却下致します。
該当者は下記です。
雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)
館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)
藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)
尚、最少人数で🔵を最大限得るヒントは、OPにて提示済みです。
因みに集団戦となり実弾は使用されない、パイロットが死亡しない以外事以外は通常の戦闘と同じです。
2.皇帝との会見
キャバリアの模擬戦が行われている傍らアロンダイトと面会し、話をする選択肢です。
此方の選択肢は、基本的には猟兵であれば、誰でも話を聞くことが可能です。
尚、皇帝に物理的に敵対的行動を行うプレイング(攻撃、暗殺等)は却下致します。
何を聞きたいか等を想定した上でプレイングを掛けた方がより良い情報を手に入れることが出来るかも知れません。
3.ルーファスとの面会
今までの判定の内容的に、第1章で『クレア』と接触して『ルーファスに渡す手紙』を預かった猟兵のみが選択できる選択肢です。その為、この選択肢については、下記猟兵の お客様のみ選択です。
灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)
この選択肢を選んだ場合、ルーファスと言う帝国の要人に会見することが可能です。
また、ルーファス経由で依頼した場合、この人物は現在、捕虜になっているロスト共和国勢力との面会も可能になる可能性がございます。
4.プラントから収集したデータの解析
此方は第2章で、a-2+カイト同行者がおり、且つ、破壊されたプラントのデータを回収したため可能になった選択肢となります。
第2章で情報として収集したプラントのデータを解析しようと試みる選択肢です。
どの様な形で、どの様にそれにアプローチするかをはっきりさせた上で、今までに出てきている情報と照らし合わせれば、何らかの成果を出すことが出来るかも知れません。
5.帝国の穏健派との接触。
此方は、a-1カイト同行且つ、カイトに協力した一部勢力との接触を依頼した為、選択可能となった選択肢です。
この選択肢を選んだ場合、ルーファスではありませんが、一般帝国穏健派の勢力と接触することが可能になります。
穏健派からどんな話を聞くのかによって、何らかの手掛かりを得ることが出来るかも知れません。
但し、戦闘的行動は行えません。
*第3章から新規参加となるお客様(猟兵)が選択可能なのは、1、2、5の何れかのみとなります。その点、予めご了承くださいませ。
b.カイト
カイトを同行させる場合、各選択肢で下記プレイングボーナスを得られます。
但し、そのプレイングボーナスは1つしか選ばれず、且つ第2章までの判定の結果、現状、特に何も無ければ最もカイトが向かうであろう箇所は2です。
尚、カイトが与えてくれるプレイングボーナスは下記となります。
カイトに同行して欲しい場合は、選択肢の後ろに【カイト同行】と明記して下さい。それ以降は、基本方針と皆様のプレイングを判定した結果で、行先を決めます。
1→模擬戦に参加してくれる。猟兵達は🔵2つ分を満たしたことになる。
2→皇帝との会見に、カイトが付いてきてくれる(不利益は起こしません)
3→ルーファスとの会見にカイトがついてきてくれる(不利益にはなりません)
4→特になし。
5→猟兵達への初対面の穏健派勢力への信用度が上がる可能性がある。
c.『クレア』と『レーテ』に関する情報は、第1章でクレアに、第2章でレーテの『人格』に接触した方のみ詳しい情報を持っていると判定しています。但し、それ以外の情報(ex:穏健派等)に関しては、共有していることにして頂いても構いません。
また、第3章では、レーテやアロンダイトのサイキック・キャバリアと会話したり、そこから情報収集をしたりすることは出来ません。
――それでは、良き結末を。
*1件、訂正。
第2章で『ナツ』が『屍鬼帝国』の皇帝(女帝?)と書いておりましたが、『屍鬼帝国』の皇帝は、『フユ』です(カイトがそれを知っているかどうかの判断は、皆様にお任せ致します)
都合上、直ぐに修正出来ませんので断章でのお詫びも兼ねた説明になりますが、予めご了承下さいませ。
ヴィルマ・ラングカイト
SIRDとして参加
【1】
模擬戦か。我々猟兵の力を示すには丁度良い機会だな。こういった訓練も無駄ではないからな。よく実戦は訓練に勝る、というが、訓練にも優れた点はある。実戦と違い、同じシチュエーションを何度も繰り返せるからな。
味方のやや後方に占位し、遠距離からの主砲射撃を行う。こういった遠距離射撃は任せろ。
敵は密集隊形を維持している様だが…こういった陣形は、側面からの攻撃に弱い。タイミングを見計らって、UCでグスタフを呼び出し、敵陣形の側方上空から、火力を生かしての攻撃を展開、何度も往復させて敵陣形を切り裂き陣形を断裂させるのを試みる。密集陣形が取れなくさえすれば、後は各個撃破すればいいからな。
ミハイル・グレヴィッチ
SIRDとして行動
①
さて、そんじゃお待ちかねの模擬戦タイムだな。|ひよっこ《士官候補生》共とはいえ、帝国正規軍と正面切ってやり合えるいい機会だからな。手加減はしねぇぜ?
ストラーウスで他の猟兵が動き易くする為、敵の攻撃をを正面から受け止める。UCは攻撃回数を重視し、弾幕を張る。
(敵の動きを観察し)ふん、悪くはねぇ。だが良くもねぇな。教科書通りの手堅い陣形だが、その分融通が利いてねぇ。俺は攻撃を引き付ける為にあえて正面から仕掛けたが、果たして他の猟兵はそんな手管で相手ができるかな?
模擬戦終了後、味方は勿論、相手の帝国軍将兵も誘って一杯やりに行く。こういうのは、お互い戦訓を引き出すのが大事だからな。
雁帰・二三夫
捕虜との会話で得た情報は全猟兵にフルオープンで伝える
1
「ここでわたくし達が負けてもオブリビオンは台頭しません。弱兵なりに頑張りますよ」
おっさん朗らかに笑った
「だからカイトさん。貴方はわたくし達の誘いに拠らず、どうぞ貴方が1番なさりたいことを優先して下さい。貴方の伝手は誰にとっても魅力的ですが、貴方の出自とこれまでの経緯を考えれば、貴方だってこの機会を逃せない筈です。どうぞ貴方も悔いのない選択を」
おっさん笑った
「それじゃあトレスさん、出来る範囲で遅滞戦闘頑張りましょう」
飛行しオーラ防御しながら他猟兵の攻撃に合わせ小刻みにUC使用
ミサイル攻撃はタスラム使い封じる
トレスでも使える遮蔽があれば積極使用
館野・敬輔
1
【闇黒】
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
吸血鬼の尋問結果は
一応陽太さんに連絡しておく
模擬戦開始前に確認を
戦闘中の双方の機体の損傷、破壊はやむを得ない、ということでOK?
(※注:時間稼ぎの意図は無く、素で質問)
遅滞戦闘で時間を稼ぐ必要があるなら
あえて『魅せる』戦いをした方がいいだろうな
指定UC発動
靄の色は普段は白だけど、今回はあえてカラフルな色合いにする
…何となく、少女たちがノリノリな気が
生身で挑む無謀さを嘲笑われるかもしれないけど
俺はこの剣でキャバリア戦を潜り抜けてきているのさ
「地形の利用、ダッシュ」+UC効果の高速移動で相手機の間を駆けまわり翻弄しつつ
作戦に応じた追加兵装がどれか「視力、世界知識」で「見切り」次第「属性攻撃(雷)、衝撃波」で「範囲攻撃」し無力化
隙を見せたら「武器に魔法を纏う」で炎を纏わせヒートソード化した黒剣で関節を「部位破壊」し行動不能に追い込もう
模擬戦の最中、皇帝や周辺警備に視線を向けている相手機がいたら警戒し
万が一皇帝らに粗相を働くようなら、即座に接敵し無力化するぞ
藤崎・美雪
1
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
数合わせの参加なので、人数足りていたら却下可
あのー…
…正直、このキャバリアで模擬戦は無いと思うんだ
しかも現在、魔改造されてマンティコアくんになってるから、余計にな…
まあ、人数必要だから出るけどさ
開始と同時に指定UC発動
相手機の追加兵装にムササビ属性もふもふさんを大量にじゃれつかせてしんぜよう
あとは妨害しつつ時間を稼いでもらえればおっけー
追撃は気合で回避
あ、挑発したり嘲笑ったりしてきた相手機は
魔改造の結果尻尾につけられた荷電粒子砲を空中に一発放って黙らせるということで
それでも黙らなければ四肢を撃ち抜いて沈黙させよう
…ネタのフリしてピーキーな機体だからねぇ
アイン・アルブス
1
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
何だか人数が必要と聞いたから来ちゃった
あたしも相棒のクロムキャバリアに搭乗して、模擬戦に参加しまーす!
模擬戦だから実弾兵器の弾丸を全部ペイント弾に入れ替えておくね
ビームライフルは…できるだけ使わないようにしたいけど
指定UC発動し白雷属性を纏いながら
「威嚇射撃、範囲攻撃」でペイント弾をばら撒き相手機の動きをけん制
追加兵装を見つけたら飛翔し接近しつつ、キックし破壊!
使われる前に壊しちゃえば問題ないよね? …え、やりすぎ?
捕縛能力ありのライトニングキャストネットは1発しかないから
有事の時に備えて温存するよ
こういう時を狙う不届き者、っていそうだからねー
●
――模擬戦舞台へと向かうその途上で。
「此処でわたくし達が負けてもオブリビオンは台頭しません。その点では安心できますね、館野さん、藤崎さん」
半ば駆け込み乗車位の勢いで。
どうにかその模擬戦の為の舞台に辿り着いた雁帰・二三夫が。
「……いやー、あのー……、何が如何して私は此処まで来る羽目にナッタンダロウナー」
そう何かかくかくしたロボットの様な口調でぼやいている藤崎・美雪と。
「……取り敢えず、二三夫さんからも全員に礼の吸血鬼の件は連絡して貰ったみたいだから、多分あの件は全員に伝わっているだろうな」
そう二三夫が巨神G-O-|リアス《トレス》に装備された通信機を使って連絡を入れているのを確認した館野・敬輔に朗らかに笑いかけている。
――と、そこに。
「やっほー、敬輔! 美雪!」
不意に。
後ろからパタパタと駆けてくる様に姿を現したキャバリア……アイン・アルプスの声を聞いて、敬輔が少し驚いた様に目を丸くして。
「えっ? アインも来たのか。如何して急に……」
そう敬輔が確認する様に問いかけるのに合わせる様に。
「何も、アルプスだけでは無いぞ」
アインの後ろからひょっこり、と姿を現したヴィルマ・ラングカイトを見て、美雪が何故だか酷く遠い目になっていた。
「……援軍に来て貰ったのはありがたいが……あのキャバリアで、私、戦場に出てしまって良いのか? 人数的に十分と言えるのでは無いか?」
そう美雪が何処か遠い目をしながら、自分のキャバリア……魔改造されたマンティコアくん(旧名:ラウンズくん3世)の事を思い出す。
既にカイト達の手で運び込まれている筈だが……一体、運び屋はあれをどう思ったのだろうか?
等と、美雪が考えているその間に。
「おう、ヴィルマ、藤崎、館野、雁帰。お前ら間に合ったのか」
「ようこそ、皆」
そう高揚を抑えきれずに鮫の様な笑みを浮かべたミハイル・グレヴィッチとカイトが彼等を出迎えたのを見て。
「カイトさん」
朗らかに笑った二三夫がカイトへと近づき、声を掛けると。
「二三夫さん、どうかしたのかい?」
そのカイトの瞬きと共にそう返してくるのに二三夫が1つ首肯して。
この場に集まった美雪、敬輔、ヴィルマ、アイン、ミハイルを一通り見回して、あなたは、と笑いかけた。
「これだけの人数がいるのです。遅滞戦闘による模擬戦の為には十分でしょう。ですから、貴方はわたくし達の誘いに拠らず、どうぞ貴方が1番なさりたいことを優先してください」
その不三夫の問いかけに。
ヤレヤレ、と言う様にカイトが小さく息を吐き、軽く肩を竦めて見せた。
「まあ、僕個人としては会っておきたい人もいるからね。友人からも誘われているし」
そのカイトの応えを聞いて。
その心意気ですよ、と二三夫が笑って続ける。
「貴方の伝手は誰にとっても魅力ですけれどね。ですが、貴方の出自とこれまでの経緯を考えれば、貴方だってこの機会を逃せない筈です。ですので、どうぞ貴方も悔いのない選択を」
その不三夫の言の葉に。
じゃあ、とカイトが微苦笑を零して軽く首肯した。
「アロンダイトの所に行ってくるよ。僕がいた方が、交渉がスムーズになる部分もあるだろうからね。特に、皆がアロンダイトの模擬戦の招待に応じたのなら、尚更だ」
そうカイトが締めくくる様に呟き。
それじゃあ、と言う様に手を振ってアロンダイトがいるのであろう、招待客用に用意された貴賓席に向かったのであろう姿を見送る二三夫を見て。
「ふむ。二三夫。不惑のお前にしては随分としっかりとした気遣いではないか」
そうスレンダー美女型に変身して後ろをついてきていたトレスが意外そうに呟くのに。
「いや、不惑関係ないですよね、トレスさん!? ……と、取り敢えず出来る範囲で頑張っていきましょう」
ちょっとだけ涙目になって突込みを入れつつそうトレスに告げる二三夫の様子を見て。
(「……人数合わせだけのつもりだったが……出て、正解だったのかも知れん。いや、マンティコアくんだと色々と突っ込まれが捗りそうだが……」)
そう何故か遠い目になってトレスと二三夫のやり取りをみる、美雪なのであった。
●
――その模擬戦の会場に。
6名の猟兵達が姿を現すと、既にスタンバイをしていたかなりの数のパラティヌス搭乗の士官候補生達と、その隊長としてであろう。
肩に隊長機であることを示すのであろう、マーキングの刻み込まれた金のパラティヌスの姿を見て、へえ……とミハイルが愉快そうに笑う。
「お待ちかねの模擬戦タイム。|ひよっこ《士官候補生》共が相手と聞いていたが、正規兵クラスの教官もいるのか。帝国正規軍と正面切ってやり合えるいい機会だとは思っていたが……こりゃ、手加減する必要は無さそうだなぁ?」
そのミハイルの言葉を聞いて。
「うむ。こういう手合いに率いられた部隊なのであれば、彼等に尚更我々猟兵の力を示すいい機会だろうな」
そう粛々と頷きながら、PanzerkampfwagenVI AusführungEの弾丸を実弾から、訓練用の砲弾に変えたヴィルマが唸り、うむ、と首肯する。
「実践は訓練に勝る、と言われているが、訓練にも優れた点はあるな。例えば……同じシチュエーションを何度も繰り返せる、と言う様にな」
そう呟くヴィルマのそれに違いねぇと笑いながら、ミハイルが自らのウォーカーマシンXPT-11B<ストラーウス>に搭乗して身構える一方で。
隊長機の後方にきちんと集まっている士官候補生達の乗る機体から、嘲笑……と言うよりは何処となく動揺の様な驚愕の様な気配が漂ってくるのを感じていた。
――その理由は。
「まあ、間違いなく俺と……」
そう呟きながら、生身で黒剣を抜剣。
その刃を赤黒く光り輝かせながら、己が全身に何だか色とりどりの布を纏っているかの様な煌びやかな輝きを放ち始めている。
赤・桃・黄色・金・群青……その靄の色が全般的に派手に感じられるのは……。
(「何か……『彼女』達、いつもより御洒落が出来て嬉しそう感が凄いなぁ……」)
と、敬輔が内心で嘆息しつつ、呟いた言の葉に。
「……私のマンティコアくんが原因だろうな」
続いた美雪が獅子と翼……そして禍々しい形状をした尻尾を持つ自分の搭乗したキャバリアの外観を想像し、そっと嘆息を1つつく。
「でもでもでも! 敬輔も美雪も強いし! 驚いてはくれているみたいだけれど、何と言うか、あの人達全然馬鹿にしている感じはしないよ!?」
そうハキハキと告げた普通の量産型キャバリアに搭乗したアインの其れに。
『……お前達猟兵が、生身でも我が帝国の一般キャバリア搭乗兵を軽くあしらえるのは幾度かの交戦経験で証明されているからな。その姿形に囚われる事の愚かさは、お前達と嘗て実戦で戦った我等の骨身に染み渡っているよ』
その教官にして隊長であろうパラティヌス新兵隊の指揮官の言葉を聞いて。
1つ頷きながら、そう言えば、と敬輔が極自然な様子で問いかける。
「戦闘中の双方の機体の損傷、破壊はやむを得ない、と言う事で良いのか?」
その敬輔の問いかけに。
『せめて損傷による行動不能迄にしてくれ。流石に完全破壊されると新兵達に入らぬ不安と整備士達に余計な負荷をかける事になるのでな。……無論、加減して貰う必要はないが』
「オッケー! まあ、実戦形式の模擬戦だもんね! 流石に実弾でやるわけには行かないよね!」
そうアインが張り切った様子で告げて、己が量産型クロムキャバリアの武装を実弾からペイント弾に全弾きちんと変えていたかを確認。
(「ビームライフルは……出来るだけ使わない様にしないとね……」)
出力を弱めて軽微な損傷を与える事は出来るだろうが、其れで戦闘不能迄追い込めるのかどうかは怪しいところだ。
そうアインが決を下し、其れにコクリと隊長機が頷く気配を見せ、その指揮によって背後の士官候補生部隊が緊張しながら武器を構える姿を見て。
「まっ、話はこの辺りにしておこうぜ。……楽しんでいこうぜ? なぁ?」
そうミハイルが鮫の様に笑いストラーウスを敬輔と共に前衛へと移動させた姿を見て。
「さて、行きますよ、トレスさん」
スレンダーな美女から西洋竜に近い巨大神形態……G-O-|リアス《トレス》に搭乗した二三夫が呟き、ふわり、と宙を舞う様に浮き上がった。
●
『……一斉砲撃開始! 此方は目くらましを行う!』
その叫びと共に。
その両肩から素早く後退しつつ無数のミサイル……の形をした閃光弾を発射した隊長機の指示に従う様に。
『|了解《ヤー》、隊長!』
士官候補生達がそれに従って、ゆっくりと射撃モードに切り替えたランスライフルを構えて、一斉に砲撃を開始。
放たれたのは先程、アインが予め予測していた低出力のビームの驟雨であり、死の危険こそ少ないが……。
「うわっ! 結構弾幕厚いっ!?」
そう思わず叫び、一瞬その動きを止めるアイン。
「此れは、意外に手強そうですね……トレスさん」
飛翔して、自らのトレスの目前に灰色の結界を展開、その背に装備された二門のキャノン砲から演習弾を放ちながらの二三夫の呟き。
その不三夫の呟きを聞きながら、ミハイルが敢えて彼等の正面に立って。
「オラオラオラオラオラ行くぜ!」
叫びと共に、<ストラーウス>の背面の30mm機関砲の引金を引いた。
同時に解き放たれた無数の銃弾が隊長機の放った閃光弾の眩い光を貫通する様に進み、後方からビームの驟雨を撃ち出す士官候補生部隊へと損傷を与えていく。
それから指揮官から発された指示に少し遅れる様にして、ビームの驟雨の援護を受けて飛び出してきた白兵部隊が、その手のランスをミハイルに突き出すが。
「今だな。行くぞ……|撃て《フォイヤー》!」
そうヴィルマが叫ぶや否や、PanzerkampfwagenVI AusführungEから訓練弾を発射。
曲線を描いて放たれたそれが帝国機の中央に着弾、そこからスモークガスを放出し、更に二三夫のリアスの背面キャノンの連射が白兵部隊の追撃を食い止めるその間に。
「はっ!」
敵機の内の1機の死角に素早く潜り込んだ敬輔が、赤黒く光り輝く黒剣に炎熱を纏わせて一閃、その足を焼き払い、その場にどうと膝をつかせた所で。
「いっけぇー!」
態勢を立て直したアインがミハイルの銃撃に合わせる様に真正面から、白雷属性纏うペイント弾を前衛の白兵部隊に向けて降り注がせた。
『むっ……一旦、後退せよ!』
咄嗟にその両肩部から閃光弾を発射して戦場全体を眩い光に満たして視界を遮る様にしながら叫ぶ指揮官。
アインと敬輔がその閃光弾に一瞬目くらましを受けるその間に、数機を戦闘不能に追い込まれつつ、咄嗟にバーニアを逆噴射して後退する新兵部隊。
そうしながら、後方射撃部隊が一斉に低出力のビームの驟雨を浴びせかけて此方の動きを牽制しながら追撃を行おうとするのを見て、ミハイルが笑った。
「ふん、まあ、悪くはねぇ。が……良くもねぇな」
そうミハイルが軽く鼻を鳴らしながら、両腕に装備した対戦車ミサイルランチャーから、弾頭部を発煙筒に変えたミサイルを発射。
其れが大地に着弾すると同時に、無数のスモークがたかれ、士官候補生達が何処か焦る様子を見て、やれやれと嘆息する。
「後方からのビームの驟雨による砲撃戦からの白兵部隊の正面からの突撃。教科書通りの手堅い陣形なのは認めるが、その分融通は利いてねぇな。今、お前らを指揮している隊長機の苦労が思いやられるぜ」
その、ミハイルの言の葉をまるで聞いたかの様に。
――轟!
と言う風を切るすさまじい音と共に。
「行け……グスタフ!」
ヴィルマの命令を受けた竜型の巨神|G-O-リアス《グスタフ》が咆哮と共に、両翼に装備されたブラスターキャノンから、低出力のブラスターを一斉掃射。
突然側面上方から驟雨の如く降り注いだ低出力のブラスターによる砲撃に士官候補生達が泡を食った様に慌てて上空へとビーム砲を向けて我武者羅に発射するも。
「既に300km/hの速度で飛翔しているグスタフの機動性にお前達が追い付けると思わぬことだ」
そうヴィルマが呟く間に。
まるで陣形の中央に楔を打ち込むかの様にブラスターキャノンを連射しながら側面からパラティヌス部隊を駆け抜けていくグスタフ。
――その、グスタフの後ろからは。
「まっ……まぁ、この位は許容範囲だろうな」
全部で149体のムササビ属性持つ、無数のモフモフさん達がグスタフに勝るとも劣らぬ速度で率いられ、パラティヌス隊にじゃれついていた!
『うっ、うわ、なんだこいつら!?』
『えっ……ええっ、もふもふ小動物!? って言うか、ムササビ属性って何!?』
突然グスタフに率いられる様にして登場した無数のムササビ属性持つもふもふさん達にじゃれつかれると言う、想定外も甚だしい状況に動揺隠せぬ士官候補生達。
「あれは……流石にちょっとだけ、君達に同情するよ。……まあ、普通、戦場でムササビ属性持つもふもふさん達にじゃれつかれるなんてまず無いしなぁ……」
そう呟きながら、じゃれつかれて動揺し、身動きが取れなくなったパラティヌスの一機に肉薄し白熱させた黒剣を駆動部分に食い込ませて敬輔が溶解させていくその間に。
「美雪は相変わらずだな~! よーし、あたしも行っくぞー!」
叫びと共に、上空の二三夫のリアスによる間断なき砲撃支援を受けたアインが、上空に飛翔。
そのままクロムキャバリアキック! を叩き込み、咄嗟に統制を取ろうとしていた指揮官の左肩の追加武装を破壊する。
『くっ……やはり私を狙って来るか……指揮官を狙うのは定石だが、其れ故に極めて有効……』
その、指揮官機の言葉を聞くよりも前に。
アインが破壊した肩部をキャバリアの両腕で掴む様にして逆立ちになって白雷属性を纏わせたキャバリアの足による旋風脚を解き放った。
その一撃が、指揮官機の頭部と右肩部の武装を破壊し……、指揮官機がその場にがしゃん、と崩れ落ちる様に機能を停止する。
「わわわわわっ! や……やり過ぎちゃったかな!?」
と、自分の行動に突っ込みを入れながら素早く上空へと飛翔し、その場から素早く離脱するアインに向けて。
『よくも……隊長を!』
模擬戦と言えど、敬愛する上官の機体が戦闘不能にされたことに激怒した士官候補生の数人が上空にランスを向けて一斉にビーム砲撃を浴びせかけるのに。
「えええええっ!? ちょ、ちょっと待って! ちょっと待って!」
慌てて回避しようとするアインを援護する様に二三夫のリアスが二門の背面キャノン砲からメガリス『魔弾・タスラム』を発射。
放たれたバレーボール大の球石が着弾し、ビームの驟雨をアインに向けていた士官候補生達の憤怒を引き出させ。
『くっそー! バレーボールとは舐めた真似を!』
その叫びと共に。
オーラ防御纏う二三夫へと標的を変えて、遮二無二バーニアを噴射させてリアスに肉薄しようとするのを。
「まっ……見逃しはしないぜ――|выстрел《発射》」
その言の葉と共に。
真正面から囮として最前線に立っていたミハイルが<ストラーウス>の全武装を、一斉掃射。
両腕から放たれた弾頭部を煙幕に変えた無数のミサイルが着弾し、戦場を煙で包み込むその間に。
続いた無数の銃弾が次々に機体の武装を破壊していく。
――更に。
「行くぞ……グスタフ!」
グスタフと美雪のムササビ属性小動物達に陣形を引っ掻き回され。
アインによって隊長機を戦闘不能にされて陣形がバラバラになったパラティヌス部隊に向けて、連続でPanzerkampfwagenVI AusführungEの砲塔から砲撃を叩き込んだヴィルマが瞬く間に各個撃破していく様を見て。
「……まあ、そろそろ決着をつけるのが正解かな」
その呟きと、共に。
敬輔がカラフルな『彼女』達に自らの黒剣に纏わせた『炎』を乗せる様に千々に乱れたパラティヌス隊の中央で回転する様に振るったその瞬間。
――解き放たれた炎を纏った斬撃の波が、未だ辛うじて戦意を残していた士官候補生達の機体の関節部を焼き切り、戦闘不能に陥らせるのだった。
●
『全く……猟兵と言うのは、やはり見事な手腕だな』
その称賛する言葉と共に。
降参の意も込めてであろう、あっさりと負けを認めた指揮官である教官がパラティヌスから姿を現したのを見て、ミハイルが笑う。
「まっ……俺は攻撃を引き付けるために、敢えて正面から仕掛けたがよ。ヴィルマ達、他の奴等の奇襲にはとてもじゃないが対応できない様だな」
そのミハイルの言葉を受けて。
其々の表情を浮かべて現れたパラティヌスに搭乗していた士官候補生達を軽く手を挙げて制止して、教官が笑う。
『全くだ。正規の帝国軍であれば、迅速に対応できたであろう側面からの分断にまるで対応できなかったからな。正面からの射撃に対応できる様になった矢先の側面からの攻撃の様な『奇襲』には気を付けるよう、良く言い聞かせていたのだがな』
「何、寧ろこれで、貴様達帝国軍の新兵部隊の現時点での対応力の低さを炙り出すことが出来たのだ」
その教官の嘆息にヴィルマが小さく首肯をしながら言の葉を紡ぐ。
「ならば、それへの対応策、そう言った部分も重点的に鍛えてやれば良い。実践ではない以上、何度でもそういうシチュエーションを繰り返せるのだからそれだけでも十分な成果だろう」
『全くだな。しかし……候補生達にも侮らせたつもりはなかったのだが……その外見が色々とあれな機体よりも、寧ろ……』
そうウームと考えこむ様に言の葉を紡ぎ。
教官がマンティコアくんから降りてきた美雪の方を見て思わず嘆息する。
「……そのキャバリアの奇抜な外見も中々にあれだが、それ以上にムササビ属性の小動物を機体に纏わせて視界を遮るとは……やはり、世界は広いな」
「……突込みどころは、其処か! そこなのか! ……いや、マンティコアくんの事で突っ込まれたり挑発される可能性は考えていたが……」
そう、思ったよりも自分のユーベルコードの意外な奇襲の強味を指摘され、美雪が何とも言えない表情になって思わず突っ込む。
「ちょっ、ちょっとやり過ぎちゃったかな……と思ったけれど……そんなに気にしていない感じかな?」
そうひょこり、とアインがキャバリアのコクピットから顔を出して小首を傾げて問いかけるのには。
「まあ、最初に教官さん、完全破壊はしないでくれ、とは言っていましたが、武装の破壊に関しては許容の範囲内と言う感じでしたからね。つまるところ、そう言う事なのでしょう」
そうリアスから降りた二三夫が呟くのに、そう言う事だな、と教官が首肯する。
(「取り敢えず十分な時間は稼げただろう。これだけ戦って時間を稼ぎ、且つ成果を出せたのならば十分の筈だ」)
そう敬輔が胸中で結論付けながら、周囲を見やる。
――幸いにも皇帝と他の猟兵達、そして周辺警備に怪しげな視線を向けている者達がいる気配はない。
(「と言う事は……今回は杞憂で終わってくれた感じか。それならば、それでいいが」)
そう内心で敬輔が呟くその間に。
「さて、と。という訳で手前ら! これから一杯やりに行こうぜ! もっと詳しいお互いの戦訓を引き出すのは、模擬戦の後のお楽しみって奴だろ?」
そう愉快そうに笑って教官と彼の後ろに控える士官候補生達にミハイルが問いかけるのに。
『うむ……そうだな』
「あっ! あたしは未成年だから、ノンアルコールが限界だよー!」
教官が首肯したのを確認しつつ、アインがはっ、とした表情でそう言って大仰に身振り手振りでそれを示すのを見て。
――模擬戦を無事に終えた士官候補生も教官も猟兵達の間に、温かな空気が漂うのであった。
大成功
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寺内・美月
5(穏健派)
アドリブ・連携歓迎
SIRD共同
*連絡で副官に異常の有無を確認
・前プレの質問を問うも、機密性が高い情報は深く追求しない
・帝国内の穏健派は、現在帝国全体及び政経・軍部中枢においてどれだけの影響力及び独自の戦闘力(定義はおまかせ)を保持しているか?
└付随して、現在の人事系の某将官が穏健派上層部とは認識しているが、他の穏健派上層部である将官や高級幕僚、主要な部隊長の氏階級又は補職を明かすことはできるか?
・万一帝国が殲禍炎剣の破壊前に積極的拡張政策を停止するとなった場合、 皇帝に与する組織および派閥並びに皇帝を支持する帝国臣民はこれを受け止め、暴動ないし蜂起その他帝国の統治機能を揺るがしかねない行動はしないと断定できるか?
└付随して、 その手の事態への対応を穏健派としては現実的な対策案を講じているか?
・(人払い推奨)穏健派や皇帝に与する組織および派閥の中枢となる人材は、全員が殲禍炎剣の破壊を目標として動いており、政治経済的・軍事的な野心を抱えて行動している人物はいないと断言できるか?
●
――一方、その頃。
帝都の中心部から少し離れたややうらぶれたスラム街の様な雰囲気を醸し出す、その場所を寺内・美月が骨伝導式のイヤーマフ型通信機を耳に当てて、小さく首肯する。
「自由都市ウェルディンは異常なしですね。引き続き宜しくお願いします」
そう自らが数日前に自由都市ウェルディンに置いていった|自らの分身《トゥルパ》との連絡を終え、そっと安堵の息を漏らした。
(「さて……」)
そんな美月が指定されていたこの何処となくスラム街地区の様に思えるその場所の更に奥へと向かって行くと、そこには……。
「よお。アンタがカイトさんに俺達への繋ぎを依頼した猟兵さんかい?」
そう1人の青年が気安い口調で問いかけてくるのに。
「そうですね、私は寺内・美月と言います」
敬礼して答える美月のそれに、青年が敬礼を返してニヤリと笑う。
「義理堅いね。俺は穏健派の一員でサガラって言うんだ。で、俺達について何を聞きたい? カイトさんからの依頼だ。俺に出来る範囲でなら、答えるぜ」
そのサガラと言う青年に美月が1つ首肯して。
「では、詳しく話を聞かせて下さい、サガラさん。先ず、貴方達帝国内の穏健派は、現在、帝国全体及び政経・軍部中枢においてどれだけの影響力及び独自の戦闘力を保持しているのでしょうか?」
そのズバリと真正面から切り込んでくる美月のそれに。
やれやれ、と軽く頭を横に振ったサガラが訥々と語り始める。
「政経・軍部中枢への発言力は、そうだな……『全くない訳じゃないが、かと言って今のアロンダイト皇帝の統治を覆せる程では無い』、て言ったところか。無論、一部高官で、俺達が引き込んだ奴が与える影響については別の話だが」
そこまで一息にサガラが説明を終え。
軽くゴホンと咳払いを1つしてからサガラは続けた。
「独自の戦闘力についてだが、此は簡潔に言えばこの『リ・ヴァル帝国』軍の保有戦力の3割に届くか届かないかって所だな。だからこそ、さっき言った様な情勢になっている、とも言える。この辺りはあの人の采配による所も大きいかな」
そのサガラの回答を聞いて。
美月がそれは、と彼の言葉を引き取る様に言の葉を紡ぐ。
「例の現在の人事系の某将官の事ですね?」
敢えて名前を出さずに問いかける美月のそれにサガラがそうだな、と無言で首肯する。
「その人物も穏健派上層部とは認識していますが、もし他に穏健派上層部である将官や高級幕僚、主要な部隊長がいるのでしたら、それを明かすことは出来ますか?」
その美月の問いかけに。
サガラがやれやれ、と言う様にポリポリと困った様に頭を掻いていた。
「一応、相互理解が間違っていないことを確認するために敢えて言うが。俺達の勢力の皆が皆、ルーファスさんの様に器用に立ち回ることが出来る訳じゃ無い。例えば……カイトさんから聞いたけれど、アンタ達、ウェルディンから来たんだよな?」
そのサガラの問いかけに無言で首肯する美月。
その肯定を引き取ってサガラがならば、と言葉を続ける。
「なら、誰かから話を聞いたと思うけれど、今の帝国のウェルディン復興支援部隊隊長のパーシバルさん。あの人なんかは俺達穏健派寄りの思想の持ち主だったからあそこに行くまでは冷飯食らいの閑職に回されていたんだぜ? そう言う事例もあるし、万が一俺等の大切な仲間に何かがあっても困る。此処まで言えば……」
サガラが暗に示した回答を聞いて。
「そうですね。何処にどんな目があるのかも分からない以上、それは当然の処置だと思います。では、次にお伺いしますが……万一帝国が|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》の破壊前に積極的拡張政策を停止する事になった場合、皇帝に与する組織および派閥並びに皇帝を支持する帝国臣民はこれを受け止める事が出来ると思いますか? それとも、暴動や蜂起の様な、他帝国の統治機能を揺るがしかねない行動をしないと断定は出来ますでしょうか?」
1つ首肯した美月の立て続けの言の葉にサガラがやや苦笑じみた表情を浮かべて話を続けた。
「まあ、アロンダイト皇帝は|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》と言う、100年以上俺達の空を覆い尽くしている脅威を取り除く為に決起した方だからな。|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》を破壊する前に積極的拡張政策を停止して、俺達の様に共に手を取り合ってくれる様になるとは考えにくいが……。まあ、何処にでも『野心』を持つ輩ってのはいるものでね」
そのサガラの言の葉に。
「……野心。人としては持っているのが自然なものですね」
そう美月が相槌を打つのにその通りだな、とサガラが首肯する。
「こんな乱世の時代だ。その積極的拡張政策によって武勲を上げて、高官に名を連ねたいとか、もっと良い想いをしたいって奴は幾らでもいる。まあそう言う奴等が何らかの形で人々を煽動して決起させようとする可能性は0じゃない。皆、『自分が一番になりたい』と思うものだからな。……まあそれだと、争いの連鎖が止まらない訳だから、俺達としてはそういった勢力に便乗するよりは、寧ろ穏便に話し合いで解決して、この国を炎で灼かせない様にしたいところだね」
そう、微かに目を眇めて。
何処か懐かしそうに言の葉を紡ぐサガラのそれに、微かに引っ掛かる物を覚えたが、美月が続けた。
「と言う事は、その手の事態への対応に対して、穏健派としては現実的な対策案を講じていないと?」
その美月の問いかけに。
サガラが困った様に嘆息して、そっと呟く。
「|最悪の事態《・・・・・》は想定しているつもりだけれどな。話し合いで如何しても解決できなければ、武力を用いてでも鎮圧せざるを得ない時ってのは、考えたくは無いが、有り得る話だ。只……実際にそれが起きた場合、どの勢力がどの程度の規模の乱を起こし、それにどれ位の人員やキャバリアを動員できるかはその時によって全然異なる。だから、此方としても今自分達が保有している戦力がどの位なのかは把握しているが、その時如何に自分達が対応するかは完全には確定していないんだ。……手はそれなりに打っているし、予めその手の情報を仕入れることは出来る様、対策は講じているけれどね」
その、サガラの説明に。
(「……成程。そう言った決起や何かが起きた時、或いはその兆候を感じ取れるだけの情報網はある程度用意がある、と言う事ですか。……情報は、戦争において最大の武器。そう言う意味では、単純な武力による力押しよりも、敵に回したら厄介かも知れませんね」)
しかも、今の言葉はこう言うことでもある。
人事権を操るルーファス以外にも、穏健派の人材にはそれこそ『情報将校』の様な者がいる可能性が高いと言う事。
(「となると、皇帝勢力との腹の探り合いや、目に見えないけれども水面下でのある程度の駆け引きは行える程度の能力は保有している、と言う事でもありますね」)
そこまでを美月は一先ず結論づけて。
それから周囲を見遣ってサガラ以外に人が居ないことを注意深く確認してから、サガラさん、と静かに語りかけると。
「何だい、美月さん」
そうサガラが応えてきたのに美月は1つ首肯して話を続けた。
「最後に1つだけお願いします。穏健派や皇帝に与する組織および派閥の中枢となる人材は、全員が|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》の破壊を目標として動いており、政治経済的・軍事的な野心を抱えて行動している人物はいないと断言出来ますか?」
美月のその確信を射貫くかの様な質問には。
サガラが思わず嘆息し、そして、こう、応えた。
「……俺は穏健派の信念を信奉し、共に歩みたいと思っている一兵卒に過ぎないからな。政治経済的・軍事的な野心を抱えて行動している人物がいないなんて、断言は出来ない。そもそも俺達人間は、そんな聖人君子ばかりじゃない。只……1つだけ俺が信じていることはあるが」
そのサガラの言の葉に。
美月がそれは? とさりげなく話の続きを促すと。
サガラは少しだけ照れくさそうに鼻を掻き……そして続けた。
「俺達のボスは、少なくともそんな人間と一緒に同じ理想に進みたいと思うかと言えば、非常に難しいだろうなって事だよ。まあ、俺達穏健派の考え方自体、此処では少数派な上、明らかに異端的、偽善的だからな」
そのサガラのぼかしながらの回答に美月が首肯して。
「分かりました。ありがとうございます、サガラさん」
そう美月が敬礼して。
颯爽とその場を後にするその後ろ姿が見えなくなるその時まで、サガラは敬礼をして、見送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】として行動
【2】
皇帝に交渉を試みる
まず最初に我々猟兵、少なくともSIRDの最優先目的はオブリビオンの撃滅であって、内政に積極的に関与するのは二の次です。まぁあまりにも非人道的な行いがあった場合、その限りではありませんが。
それらを踏まえ、こちらからの要求は今後帝国領内での猟兵の活動の自由の保障及び帝国軍の全面的な協力。
その見返りとして、オブリビオンの駆逐。これは帝国側から見ても悪くない筈。そして…皇帝の掲げる|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》の排除。それに我々猟兵が、何かしらの助力が出来る、かもしれません。現状あくまで可能性ですが
…まぁとりあえず皇帝に我々猟兵が、皇帝のドクトリンにとって利用価値がある、という印象付けが出来れば上々です。
今並べられる飴玉は、これ位でしょうか。
もしこれらの提示条件の実現が疑問でしたら、模擬戦を見れば猟兵の実力を実感できるかと。
あとひとつお聞きしておきたいのは、帝国がリィズ王国に侵攻したのは単純に領土拡大ではなく、何かを探す為では?例えば…ある石、とか。
ウィリアム・バークリー
2
アロンダイト皇帝陛下、我々を帝国へご招待くださりありがとうございます。
ぼくからお尋ねしたいことはひとつだけです。
|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》をいかにして墜とすのか。
少し前ですが、オブリビオンマシンの精神汚染によって殲禍炎剣に無謀な攻撃を仕掛け、反撃でその地域一帯を焼け野原にしようとするという事件がありました。それらは猟兵の手で全て阻止されましたが。
陛下、あなたはどういう手段で殲禍炎剣と対峙するおつもりでしょう? 現実家のあなたのことですから勝算があるのでしょう。それをお聞かせ願いたい。
それは帝国の膨張主義とも関係するものですか?
それと、殲禍炎剣を墜とすと決意した時のお話もお聞かせ願えれば。
エルゴ・ルスツァイア
【SIRD】
イクスフェルを利用
アドリブ歓迎
4:プラント収集データの解析
さて、データ解析の時間だ。
命がかかる程逼迫してる訳じゃ無いけど、そこまで時間が有るとも言えない。着実に丁寧に手早く行こうか。
あちらの人に手助けは頼めないが、以前に行ったデータサルベージの経験を活かす。稼働ログやら何やら片っ端から見て行こう。
それにしても破壊されたプラントか…新たに建造出来る訳でも無いだろうに、どうして接収しなかったんだ? 方針として切り捨てるべき”小”なのか?
…まあ、それはそれとして何か有用なデータか手がかりでも残っていれば良いんだけど…。
共有される情報や無線機に注意しつつ、解析結果を皆へ回そう。
森宮・陽太
2【カイト同行】
【闇黒】
他者絡みアドリブ大歓迎
指定UCは有事対応用
さすがにガヴェインで模擬戦挑むわけにはいかねぇだろ
エルゴに2章で得たプラントのデータを渡しておいて
俺も皇帝に謁見しますかね
カイト、話が暴走しそうになったら止めてくれ(汗)
ジルド帝国のセラとやらから得た情報は、敬輔から受け取っている
皇帝にその情報を提供しつつ
リ・ヴァル帝国側のジルド帝国の認識を聞いておきたい
ただ、俺…『零』は、今の状況は皇帝暗殺の好機と見ている
もちろん、俺も零も暗殺は絶対しねぇが
模擬戦中か模擬戦後を狙い、暗殺を企てる輩が他に紛れ込んでいるかもしれねぇ
ゆえに万一の事態に備えて、空ぶり覚悟で手を打っておく
ガヴェイン
1章同様、撃墜されないギリギリの高度から光学迷彩かけて偵察を頼む
もし、不審な動きをする輩が目に入ったら教えてくれ
有事の際は自己判断で模擬戦会場に乱入し阻止しても構わねぇ
俺も死角となり得る位置をチェックしておき
不審な動きをする輩がいたら警戒しておく
有事の際は指定UCで捕縛しつつ、皇帝を身を挺して「かばう」
文月・統哉
2)カイト同行
但し1不足時は1の応援を頼む
仲間と共に謁見の場へ
挨拶も失礼のない様にこの国の作法に合わせたい
皇帝はオブリビオンや猟兵について何処までご存じなのだろうか
それを見極める為の招待でもあるのだろうし
猟兵が様々な世界を渡り歩いてオブリビオンと戦う存在であるという事は
極力誤解のない様に伝えたい
そして皇帝にも
人類の手に空を取り戻すと誓い
覇道を歩み続ける理由を聞いてみたい
多数を救う為に少数の犠牲を厭わない
だがそれは犠牲を生みたい訳ではなく
皇帝として限界を知るからこその決断でもあるのだろうか
彼の思いを見極めつつ
帝国とカイト達と猟兵と
対オブリビオン戦において互いに協力できないかと提案したい
オブリビオンは各地で暗躍し戦渦の拡大を狙っている
だが猟兵ならばオブリビオンマシンを識別する事が出来る
目指す理想は違っても
人々の未来を守りたいという願いが同じであるならば
今こそ歩み寄るべき時ではないかと
争いの種は人の心の中にあるのだろう
でもそれを解決しようと手を尽くすのもまた人々の力だ
俺はそんな人の力を信じたい
●
――一方、その頃。
模擬戦の会場から聞こえてくる戦闘音を耳にしながら。
皇帝の賓客、と言う事で特別に貸して貰えることになったキャバリアの格納庫の一角にTCW-01ELC イクスフェルを止め置いて。
「……さて、今の内にデータを解析しておかねばならないな」
そう、エルゴ・ルスツァイアがコクピット内で呟き、『イクスフェル』に設定してあるOSを立ち上げる。
エルゴが立ち上げたそこには、仲間から転送された、先日発見された放置された儘だったプラントに残されていた未解析のデータが入っていた。
(「命がかかる程逼迫している訳じゃ無いが、そこまで時間が有るとも言えないな。……着実に、丁寧に、手早くいくとしようか」)
そう内心で決を下し。
しなやかな指でまるでピアノを早弾きするかの如き速度でキーボードを叩き始める。
もしかしたら、リ・ヴァル帝国勢力から人手を借りれたかもしれないが……。
(「未だ、この国が完全に信用できる様になった訳ではないからな……。此処はワタシのデータサルベージの経験を活かして……」)
そう内心で呟き、口の中で今、出ている未解析データのプロトコルを読み解いていくべくカタカタカタ……と無機質な音と共に、キーボードを叩いていくエルゴ。
その稼働ログ等を確認しながら、ふとした疑問が、エルゴの脳裏を過っていった。
「……破壊されたプラントか……」
プラントは、新たに建造できる様な物でもない。
となると、接収してもおかしくないものとも思えるが……。
「……いや、新たに製造できるものは愚か、そもそもクロムキャバリアの人間には、プラントを修理する技術もないか。とは言え、研究の為に接収するのも1つの手だとは思うけれども……?」
――そうしなかった……或いは|出来なかった《・・・・・》理由がある?
そう、ふとエルゴが感じ、そのデータの解析と浚いを続けていると……。
「……?」
エルゴは、ある違和感を感じ取った。
それは、定期的にある場所に向かって、このプラントに籠められている情報が発信されている様な履歴の存在。
その送り先は……。
「……Feather……? ……此れって」
――カイトが一度調査の為に乗り込んだり、ちょくちょく皆の話にも出てくる……?
「……まさか、このプラントも、オブリビオンプラントになる可能性を秘めていた? でも、其れが破壊されたから、オブリビオンプラントが完成するのを阻止できた、と言う事なのか……?」
もし、そう言う事なのであれば。
「ワタシはその当時は絡んでいなかったけれども……皆に話をすれば、何か気づくかも知れないな……」
――そう、決をエルゴが下し。
「此方、ジェイド43。グイベル01、応答を……」
慌ててイクスフェルに搭載された通信機で自分達の局長……ネリッサ・ハーディへと連絡を取った。
――そのエルゴの報告を……。
●
「……了解です、ジェイド43。報告ありがとうございます」
今、正に皇帝の居る謁見の間に足を踏み入れようとする直前に、ネリッサが小型情報端末MPDA・MkⅢで受け取り、そっと息を吐く。
「ネリッサ。今のは……?」
そんなネリッサにそう問いかけたのは、先程模擬戦組と分かれてカイトと合流した文月・統哉。
統哉からの問いかけに、ネリッサが簡単に事情を説明すると。
「……Feather……やはり、此処でも出てくるのですね」
統哉が難しい顔をする傍らで、ウィリアム・バークリーもまた、苦い表情を浮かべてそう相槌を打っていた。
「名前は出てくるが、具体的な動きを捉えることが出来ない貿易国家『フェザー』ね……。アダムカドモンの本拠地っぽくも見えるが、生憎俺達のスタンスでは、そこに介入できる状況にはねぇな」
光学迷彩を張って、密かに|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》に撃たれない低空飛行を以て。
ガヴェインに念のために周囲を警戒して貰いながら、難しい表情を浮かべた森宮・陽太のその言葉に。
「……あそこはロスト共和国傘下の国でもあるからね。皆の動きを見ている限り、あそこでは目立った動きが出ないから侵入することは難しいだろう。僕も潜ったことはあるけれども……正直、例えば密輸品の荷運びみたいな理由が無いと、また侵入するのは難しい」
そうネリッサからの事情を聞いたこの世界の住民であるカイトが言う程に、フェザーへの入国は難しいのだろう。
(「……介入できる証拠もありませんしね。そもそも、オブリビオンプラント化をフェザーがさせていると訴えても、この世界の住民に納得して貰えるとは思いませんし……」)
――ともあれ、だ。
ネリッサは一先ず今は、為すべき事を先に為そうと言う意志を持ち、改めて謁見の間に続く厳かな扉の前に居る兵士に。
「……アロンダイト皇帝陛下のお呼び出しを受けて参りました。宜しいでしょうか?」
そう確認の問いかけを行うと。
兵士達がキビキビと敬礼を返して謁見の間に続く扉を開く。
やや無骨ではあるが、きちんとした機能美に優れた造形の施されたその最奥部にある玉座には、1人の男が鎮座していた。
――そう。まるで、黄金の獅子を思わせる様な美丈夫たる……。
「アロンダイト皇帝陛下。この度は、我々を帝国へとご招待下さり、ありがとうございます」
そうウィリアムがアロンダイトへと一礼して言の葉を紡ぐのに、うむ、としなやかに首肯するアロンダイト。
『此度は、よくぞ私の招待に応じてくれたな、猟兵達よ』
――と、そこまで告げたところで。
ちらりと統哉の隣に立つカイトの姿を認めて、アロンダイトが、思わず、と言う様に微苦笑を浮かべた。
『貴様も来ていたのか、カイト。しかも猟兵達と一緒にとは、意外だな』
そうアロンダイトがさもあらんという様に軽く言いながら、周囲に目配せ。
兵士達がそのアロンダイトの目配せに敬礼を返し、静かに謁見の間を退出する。
「……やれやれ。相変わらず妙なところで律儀だな。僕達だけを残して兵士達を退出させるとか……自身の身を顧みないのかアンタは?」
何処か呆れた様な口調でそう問いかけるカイトのそれに。
何、とアロンダイトが唇に苦笑を浮かべてそれに応える。
『ある意味では身内でもある貴様も来ているのだ。此処で、兵士達に貴様達との会話を聞かせる必要もあるまい。……況してや、貴様等のことだ。色々と兵がいれば|やりづらい《・・・・・》話もあるのだろう?』
そのアロンダイトのカイトへの冷笑混ざりの問いかけに。
カイトがやれやれと呆れた様に軽く頭を掻き、まあ、と言の葉を紡ぐ。
「|最悪の事態《・・・・・》に備えるべきは寧ろ僕達の方だからね。これだから、こう言う公式の場でのオフレコは苦手だ」
そう嘆息するカイトのそれにアロンダイトがさて、と場を仕切り直す様に言葉を紡ぎ。
「猟兵達よ。私が招待した模擬戦に出ること無く、私との面会を望んだと言う事は、当然、理由があるのであろうな? ……少なくとも私と、我が帝国にとって益のある話が」
そうアロンダイトが剃刀の様に鋭い口調で尋ねてくるのに。
「ええ、そうですね。最初から要件を切り出して頂けると、私達としても話が早くて助かります、皇帝陛下」
そう代表する様にネリッサが言葉を紡ぐのに、そうか、と首肯するアロンダイト。
優雅な仕草でさりげなく玉座に取り付けられた肘付きに肘をついて問いかけるその様子は、酷く優雅だ。
『して、先ず貴殿等は私にどの様な話を持ってきたのだ? 貴殿等には恩義もある以上、貴殿等の質問にある程度答える義理はあるが、先ずは貴殿等の基本的なスタンスを聞かせて欲しい。貴殿等とは幾度かオブリビオンを巡った戦場で出会っているが、我が軍も貴殿等に相応の被害を受けているのだからな』
そのアロンダイトの問いかけに統哉が先ずは丁寧に予めカイトに教わっておいた作法で一礼し、自らの発言を求めると。
『其方、名は?』
そうアロンダイトに問われ、統哉が小さく息をついた。
「こうして正式の場に手の発言を許してくださり、ありがとうございます、アロンダイト皇帝陛下。俺の名前は、文月・統哉。猟兵として世界を巡り、貴方方も知る『猟兵』と呼ばれる者達です。その上で、1つ確認をさせて頂いても宜しいですか?」
その統哉の流暢な挨拶に。
『ふむ……何だ?』
アロンダイトが応答するのに、統哉がそっと安堵の息を漏らし、言葉を紡いだ。
「アロンダイト皇帝陛下は俺達猟兵やオブリビオンについて何処までご存知なのでしょうか?」
そう射貫く様に問いかける統哉のそれを聞き。
ふむ、と小さくアロンダイトが首肯し、ゆっくりと言の葉を紡ぐ。
『私が貴殿等猟兵と呼ばれる者達について知っていることは、我等が『オブリビオン』と呼ぶ悪しき者達と、そうでないものを見極める目を持つ者達らしい、と言う事くらいだ。また徒に平治に乱を起こす存在と認識している。貴殿等然り、『オブリビオン』然りだ』
そのアロンダイトの応えを聞いて。
「……俺達が、平治に乱を起こす? どう言う意味だそりゃ?」
思わず陽太が小さく呟くのをカイトがそっと窘める様に肩を叩くが、アロンダイトは微かに首肯した。
『少なくとも、国家間同士の争いにどちらの敵も味方も無く介入し、更にはオブリビオンに関わる有事が起きれば、我が国の者であろうと、そこの私の従兄弟の部下であろうと構わずに敵対する。……オブリビオンが危険な存在であることは重々承知の上だが……それに伴い現れる貴殿等もまた、徒にこの世の理を乱す脅威に私には映るのだよ』
そのアロンダイトの回答を聞いて。
統哉が微かに考える様な表情を浮かべて成程、と小さく呟いた。
「それに対しては、1つだけ言えることがあります。俺達猟兵は、このクロムキャバリア以外にも様々な世界を渡り歩いて、オブリビオンと言う存在と戦う存在です。その影響でアロンダイト皇帝陛下の臣民や、或いは従兄弟君であるカイトの仲間を害するのが脅威に見えるのは、確かかも知れません」
そう統哉がそっと嘆息し。
それに続けてネリッサが言の葉を紡ぐ。
「成程、アロンダイト皇帝陛下のそれには、確かに一理あるかも知れません。少なくとも、私達猟兵……私の率いる|Specialservice Information Research Department、《SIRD》の最優先目的はあくまでもオブリビオンの撃滅であり、内政に積極的に関与するのは二の次です。故に、皇帝陛下の目で見た場合、結果として私達がオブリビオンマシンを壊滅する為にこの帝国兵達と敵対することになった事があることに関しては、反論するつもりはありません。……まぁ、あまりにも非人道的な行いが私達の目前で行われていれば、流石にその限りではありませんが」
そのネリッサの言の葉に。
ふむ、とアロンダイトが小さく鼻を鳴らすが、その姿ですら酷く神々しい。
『成程。貴殿等猟兵の本当の目的は、オブリビオンの殲滅か。となると、|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》。100年以上前から空を支配し、我等を圧するその存在は貴殿等にとっては何処に属していることになる?』
そのアロンダイトの問いかけに。
「|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》。あれもまた、オブリビオンマシンの1つですね。故に私達は、その時が来ればオブリビオンと共にそれを駆逐するべく皇帝陛下達との共闘も可能でしょう」
そうネリッサが流暢に確かな自信と共に応えるのを聞いて。
ふむ、と小さくアロンダイトが考える様にその形の整った顎に手を置き、それからちらりとカイトの方を見る。
『……カイト。貴様は彼等の行動原理、理念についてはどう感じているのだ?』
その、アロンダイトの問いかけに。
カイトが小さく嘆息を零し、苦笑と共に肩を竦めた。
「まあ、そうだね。彼等の行動原理に今のところ僕も矛盾は感じていない。オブリビオンの殲滅の為であれば、嘗ては味方だった国とも敵対し、敵対した国とも協力する。……この1点は事実だろう」
そのカイトの返事を聞いて。
『……ふむ。貴様がそう言うという事は、そうなのか……』
そうアロンダイトが何かに納得したかの様に首肯する様子を見て。
統哉が引っかかりを感じ、もう一度発言を求めて許可を受け、確認の様に話を続けた。
「カイトは、アロンダイト皇帝陛下。貴方にとってはある意味で敵とも言える存在だと俺は思っていますが、その話し方ですと、どうにも只、それだけでは無い様に思えるのですが、どう言うことなのです?」
その統哉の問いかけに。
アロンダイトが微かに息を吐き、嘗て、と言の葉を紡ぐ。
『貴殿等、そいつが乗っていたオブリビオンマシンと交戦し、そいつを救ったであろう? その時からであろうな。そいつは、ある意味で貴殿等と同じ様な能力を1つ持っている。私も、持ってはいるのだが……そいつ程はっきりとは掴み取れないのだ』
そのアロンダイトの言の葉に。
「カイトの能力? それって……サイキックのことなのか?」
そう陽太が思わずという様に問いかけるのに、それもだが、とアロンダイトが言の葉を続けた。
「……貴殿等程では無いであろうが。私も、そいつも『オブリビオン』に汚染された土地やマシンと、そうでないものを一応は見分けることの出来る目を持っているのだ。……貴殿等の様に|様々な世界《・・・・・》とやらを渡り歩くことは出来ないがな」
そのアロンダイトの衝撃的な回答に。
「……成程。だからカイトさんは私達と共に戦う時、オブリビオンマシンとそうで無い存在を見分けることが出来、故に協力しやすい立場に居る、と言う訳ですか」
確認する様にネリッサが呟くのに、そう言うことだね、とカイトが小さく肩を竦めた。
「まあ、その能力に関しては、アロンダイトはどうやらあの金のサイキック・キャバリアに選ばれてから覚醒しているらしいから……僕よりもそう言う意味では先達って事になるのかな。僕の場合は覚醒した、と言うよりもウイルスに掛かったけれどもそれを克服した結果、そのウイルスに対する抗体を持った、みたいな感じだと思うしね」
そのカイトの憶測に。
「成程。確かにカイトさんは一度オブリビオンマシンに搭乗して、ぼく達と戦っている。その時に救助されたから、オブリビオンマシン……と言うか、オブリビオンに対する免疫が出来ている、と言う事ですね。では、もしや、リズさんも……?」
そのウィリアムの問いかけに。
カイトは多分ね、と小さく首肯を1つしたところで、さて、とアロンダイトが軽く咳払いを1つ。
『少し話がそれてしまったが。だが、今の話で貴殿等の行動原理についてはある程度理解は出来た。だが、必要であれば我が国とも敵対する可能性がある点については、納得しきれるかと言えば、そうではないな』
そのアロンダイトの返答を聞いて。
ですが、とネリッサが発言権を求め、それにアロンダイトが首肯する様を、藍色の眼差しで射貫きながら言葉を紡ぐ。
「私達猟兵がオブリビオンを駆逐し、且つ皇帝陛下の掲げる|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》の排除に何かしらの助力が出来るかも知れないそのメリットは、皇帝陛下にも、帝国臣民にも計り知れない筈です」
そのネリッサの提案に。
ふむ、と計算する様に鷹の様に鋭く目を細めながらアロンダイトが細剣を突き出す様な怜悧さを以て話しかけた。
『それで、貴殿等が求めているものは何だ?』
そのアロンダイトの鋭い問いかけに。
ネリッサが私達は、と負けない様に冷静な口調で言の葉を紡いだ。
「今後帝国領内での私達猟兵の活動の自由の保障及び、対オブリビオン殲滅における、帝国軍の全面的な協力をお願いしたいのです。……少なくとも、皇帝陛下。貴方様のドクトリンにとって、私達は十分利用価値があると思いますが」
そのネリッサの言の葉に。
ふむ、とアロンダイトが微かに形の整った眉を動かし、ネリッサを睨み付ける。
『……それには直ぐには返答できぬな。貴殿等の実力を疑うつもりは無いが、その言葉に嘘偽りが無いかどうかの確信が、今の私には持てぬ。……まあ、その見極めのために貴殿等に模擬戦への招待状を送った訳だが……』
「……成程。その結果でしたら、私達の理念と実力を恐らく実感して頂くことが出来るでしょうね」
――もし、ネリッサ達の言う事が真実であるのならば。
只の人間で且つ、一般キャバリアに過ぎない士官候補生達及び、その機体を完全破壊すること無く無力化し。
その後、人として共に手を取り合うことの出来る様な、そんな行動を行う必要がある、と言う事だろう。
(「つまりあの模擬戦への招待は、私達の実力だけでは無く、覚悟をも推し量る為のものだった……と言う事ですか」)
そう内心でネリッサが呟いているその間に。
「1つ、ぼくからもお伺いさせて頂いて宜しいでしょうか?」
そうウィリアムが発言を求めるのに、鷹揚に首を縦に振るアロンダイト。
「……貴方は、|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》を、如何にして堕とすつもりなのでしょうか?」
そのウィリアムの問いかけに。
アロンダイトの優美な眉がピクリ、と動きそのまま淡々とウィリアムの言葉の続きを促す。
ウィリアムは鷹の様に鋭い眼差しに射貫かれつつも、気後れすること無く言葉を紡いだ。
「少し前なのですが、オブリビオンマシンの精神汚染によって、|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》に無謀な攻撃を仕掛け、反撃でその地域一帯を焼け野原にしようとすると言う事件がありました。その事件の全てはぼく達猟兵によって阻止されましたが……。ですが、陛下。この件からも分かる様に|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》を堕とすのは至難の業では無いかと存じ上げます」
――だからこそ。
「陛下、ぼくはお伺いしたいのです。あなたがどう言う手段を以て|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》と対峙するおつもりなのでしょうか? 現実家のあなたの事ですから勝算があるのでしょう?」
そのウィリアムの問いかけだったが。
アロンダイトはそれ以上何も言わずに、ゆっくりと頭を横に振った。
『貴殿の聞きたいことは尤もだが、それは国家機密だ。貴殿等の様な外来者に教える理由は無いだろう』
そのアロンダイトの拒絶を感じ取り。
ウィリアムはこれ以上聞くことは得策ではないなと判断し、軽く頭を横に振り、では、と、話題を切り替える様にもう1つの質問を口に出す。
「何故、|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》を堕とすと決意した時の事はお聞かせ願えるのでしょうか?」
そのウィリアムの問いかけに。
アロンダイトは何を言っているのだという表情でウィリアムを見つめたが、程なくして嘆息を零す。
『簡単だ。『復讐』だよ。私の両親は、オブリビオン……いや、オブリビオンマシンだな。この近隣にあった『ラ・デルタ』と言う名の小国家に停戦協定を結ぶために向かったのだが、その時に、突如として現れたオブリビオンマシン達の起こした騒動に巻き込まれ殺害された。無論、その『ラ・デルタ』と言う小国家もそのオブリビオンマシンに滅ぼされた』
そのアロンダイトの何処か淡々としながらも、はっきりと紡がれた言葉のその重さに。
「なっ……?!」
ウィリアムが思わず息を飲み。
「……復讐……かよ……」
陽太が気難しげな表情を浮かべてその言葉の意味を推し量る様にポツリと呟いているのに、アロンダイトが静かに首肯する。
『そして、そのオブリビオンマシン達は……当時は他国のキャバリアとしか思っていなかったが……あろうことか、我が国に進軍を開始した』
「っ!!」
アロンダイトのそれを聞き、思わず息を呑む統哉。
カイトもその事情だけは聞き及んだことがあるのであろう。
何かを考え込む様に指を唇に当てて考える様子をチラリと見遣りながら、淡々とアロンダイトが話を続けていく。
『……幸いにも我が軍の精鋭達がそれに気が付いてな。無論、私も陣頭指揮に立ち、そのオブリビオンマシン部隊を撃破することは出来た。だが、その時に我が帝国の民達にも被害が及んだ。そして、多くの大切な者を奪われた我が国の民達の為に、私が出来ること。それが……』
「――|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》を破壊して、人々に空を取り戻すと言う希望の光を与えることだった」
そのアロンダイトの言葉を引き取る様に。
カイトがそう歴史を紐解く様に呟くのに、その通りだ、とアロンダイトが首肯した。
「それじゃあ……|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》を破壊し、空を取り戻すと言う大義を貴方が掲げ始めたのは……帝国臣民に希望を与え、人々が生きていくための縁を与えるためだったと……そう言うことですか? そして、その為の最善の手段が――帝国の膨張主義の……」
そのウィリアムの確認の様な呟きを聞いて。
『……ああ、その通りだ、猟兵達よ。そうして、絶望に塗れ、飢え、細りゆく民達を救う最善の答えが此だと私は信じている。そして、その私の決意と覚悟を後押しするかの様にその封印が解かれたのが、あの、我が王家に代々伝わる、金のサイキック・キャバリアだった。銀のサイキック・キャバリアの方は、当時全く動かなかったのだがな』
そう言ってちらりとカイトを見つつ、アロンダイトが微かに重苦しい息を吐く。
その様子を見つつ、でも、と軽く頭を横に振ったのは、カイトだった。
「その憎しみは、確かに帝国の民達を立たせるための希望になり得た。その点に関しては、僕は貴様の手腕は認めている。けれども……何故その時の憎しみだけを追い続け、その憎しみを広げていく事の意味と悲しみの重さに、貴様は目を向けることが出来ない?」
そのカイトの問いかけに。
ふん、とアロンダイトが軽く鼻を鳴らしながらも、軽く頭を横に振った。
『貴様とて、事情は重々承知しているのだろう、カイト。既にオブリビオンに汚染されたマシン等が元に戻ることは無い。であれば、それを破壊することは、貴様は否定することは出来ないのでは無いか?』
そのアロンダイトの問いかけに、カイトがそうだね、と小さく首肯する。
「オブリビオンと仲良く出来る――なんて、そんな甘い幻想は僕も抱いているつもりは無いよ。でも、貴様が併呑した|全て《・・》の国家が、オブリビオンに汚染されていた訳でも無いだろう?」
そのカイトの射貫く様な問いかけに対し、アロンダイトが真っ直ぐにカイトへと視線を叩き付ける。
そのカイトとアロンダイトの様子を見ながら、統哉がポツリ、ポツリと言葉を紡いだ。
「……確かに、アロンダイト皇帝陛下の仰るとおり、国を、民を充実させるのに最も手っ取り早い手段として、『多数を救うために少数の犠牲を厭わない』、覇者の道を進むのは1つの正しさなのでは無いだろうかと、俺も思います。ですが、本当にアロンダイト皇帝陛下、貴方が覇道を歩み続ける理由はそれだけなのですか?」
そう、思わずと言った様に口から飛び出した統哉の質問に。
アロンダイトは目を細めて統哉を見つめ――けれども、何も応えなかった。
(「……何か、他に理由があるのか?」)
その理由を問い正したいとも統哉は思うが、けれども、これ以上アロンダイトにその点について聞き出すのは難しそうに思える。
恐らく、その鍵となるであろう『それ』が何であるのかは、既に統哉なりには見つけていた。
その統哉が『鍵』と内心で思うそれは、アロンダイトも何なのか知っているだろう。
――けれども、今、直ぐにその話を切り出すべきかどうか。
そう統哉が微かに迷うその間に。
「あー……俺も質問したいんだが、良いか?」
そう敢えてであろう、何処かぶっきらぼうな口調で問いかけたのは、陽太だった。
その陽太の発言にカイトと統哉を交互に見つめていたアロンダイトが陽太の方へと意識を向け、無言で首肯する。
一先ず、統哉が自分の提案を口に出すタイミングを見計らっているのを確認してから、陽太は思い切りよくその質問を浴びせかけた。
「ジルド帝国のセラとか言う吸血鬼から、俺達は情報を得ている」
陽太から浴びせかけられたその言葉は。
アロンダイトが思わず目を眇め、静かに陽太へと続きを促すに足りるものだった。
そうしてアロンダイトの次の関心が自分に移ったことを肌で感じ取りながら、陽太が続ける。
「で、カイトにも少し聞いたんだが。アンタ達、リ・ヴァル帝国は、『ジルド帝国』と交戦した事があるらしいな。此も、アンタの両親が殺され、一緒に滅んだ『ラ・デルタ』国と、関係のある話なのか?」
その陽太の問いかけに、アロンダイトが微かに苦々しさを浮かべ、静かに首肯する。
『……その通りだ。『ラ・デルタ』を滅ぼしたオブリビオンマシン達……それが何処からやってきたのかについての捜査を当然ながら、私達も行わない訳には行かぬ。そうして辿り着いたのが……『ジルド帝国』、或いはその裏にいるであろう、『アダムカドモン』なる死の商人達だった』
そのアロンダイトの応えを聞いて。
「……此処で出てくるのかよ……アダムカドモンが」
そう陽太が頭を抱えてポツリと呟き、同時に思わず嘆息する。
(「俺……いや、『零』は、今のこの状況、正しく皇帝暗殺の好機とみているが……」)
此処で、自分達がこの皇帝を暗殺することで、果たして得るものがあるだろうか?
そう考えれば、自然、今は暗殺をする意味は無いだろう、とも思う。
「じゃあ……アダムカドモンや『ジルド帝国』は同一存在で、少なくともアンタ達の帝国を脅かす『オブリビオン』って認識なのか、アロンダイト皇帝陛下は?」
その陽太の問いかけに。
アロンダイトがうむ、と小さく首肯して、そもそも、と言葉を続ける。
『以前、自由都市ウェルディンを私が訪れた折、奴等は私を捕縛しようとした。その事実1つをとっても、私が『ジルド帝国』を脅威と見做すのは当然であろう。況してや、先代……私の両親や、臣民の多くの命を奪った者達であれば、尚更だ』
「……だな。あそこは実は吸血鬼の国だが……アダムカドモンの影が後ろに控えているのは間違いねぇ。まあ、アロンダイト皇帝陛下にとっても、俺達にとっても、あいつらは間違いなく打倒すべき相手だ」
そう遠回しに自分達の『敵』でもあることを陽太が暗に伝えるのにアロンダイトが首肯したタイミングを見計らって。
統哉がそっと発言許可を求め、アロンダイトがそれに鷹揚に首肯で返すのを見て。
「……陛下。貴方の願いは、想いは、ある程度分かりました。だからこそ、ネリッサの申し上げた言葉を踏まえた上で、俺からも提案させてください」
そう統哉が紡いだ言葉を聞いて。
『何をだ?』
そうアロンダイトが問いかけるのに、統哉が粛然とした表情で言葉を続けた。
「アロンダイト皇帝陛下と俺達猟兵と、そしてカイト|達《・》。この3勢力が、対オブリビオン戦で全面的に協力体制を取提案提案です」
その統哉の提案に。
アロンダイトが少し意外そうに目を見開き、統哉の隣に居たカイトをチラリと見遣る。
『……成程。それが、貴殿等が持ってきた本当の提案だったか』
そのアロンダイトの言葉に諒解が見え隠れするのを感じながら、統哉が静かに首肯した。
「……オブリビオンは各地で暗躍し、戦火の拡大を狙っていることは、アロンダイト皇帝陛下、貴方様には明確に分かっていることでしょう。でも、僭越ながら申し上げますが、貴方達|だけ《・・》のオブリビオンを見分ける|目《・》では、対オブリビオンにおいては、とてもでは無いが手が回らない状況です」
――であれば、こそ。
『……その1点においては、全面的に協力体制を取る事が出来ると……そう言うことか』
そのアロンダイトの呟きに。
そう言うことでございます、と統哉が静かに首肯して、その赤い瞳でアロンダイトの瞳を正面からじっと見据える。
「アロンダイト皇帝陛下も、カイト|達《・》も。目指す理想は異なれど、人々の未来を守りたいという願いは同じでしょう。であれば、今こそ対オブリビオンという一点においてだけでも、歩み寄るべき時なのでは無いかと……俺はそう判断しました」
――争いの種はそれぞれの人の心の中にあるであろう。
だが、それを解決しようと手を尽くすのもまた、人々の力なれば。
「そうですね。そのために、私達猟兵の活動の自由の保障、及び帝国軍の全面的な協力を私達は欲しているのです」
そう畳みかける様に告げられた、ネリッサの言葉を聞いて、暫くの沈黙の後に。
『……即答は出来ぬが、検討はしておこう』
そう重々しく首肯したアロンダイトのそれに、宜しくお願い致します、とネリッサと統哉が一礼した。
●
――その会談の最後に。
「アロンダイト皇帝陛下、最後に1つだけお伺いさせて下さい」
退出の時間が迫ったところで、ネリッサが最後に確認するかの様に問いかける。
『何だ?』
肘付きに手を置き、その手に持たれる様に考えていた彫像の様に美しい姿をしたアロンダイトがその質問をネリッサへと促し。
「……リ・ヴァル帝国がリィズ王国に侵攻したのは、本当に単純に領土拡大が目的だったわけでは無く、何かを探すためだったのではありませんか? 例えば……ある石、とか」
そうネリッサが思うところを応えた時。
アロンダイト皇帝は――微かに笑った。
『……石、とは?』
その返事を聞いて。
(「……これは……人造賢者の石について皇帝陛下が知っているのかどうか分かりませんね……。上手く躱されてしまいましたか」)
そう内心でネリッサが結論づけて。
「いえ、お気になさらずに。それでは……失礼致します」
そうネリッサが代表して別れの挨拶を告げ、アロンダイトの前をカイトを伴い、立ち去っていく。
(「……アロンダイトは、皇帝としての自分の限界をある程度知っているが故に、『多数を救うために少数の犠牲を厭わない』という道を選んだのか? それが復讐にとっての最善で在り、自らの民達を肥えさせるための最大の薬となるから。でも、それだと……」)
――|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》が破壊されたその後に、一体アロンダイトの所に何が残る?
そんな微かな疑念を、統哉の胸中に灯らせた儘に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灯璃・ファルシュピーゲル
1→3
【SIRD】一員で参加
自機キャバリア持参
先ずは正式な招待ですし模擬戦対応を。
陣形組んでの火力結集による押切りが得意の様ですし、
連携の断ち切りを優先。統率の要で他機より少し引いて戦況把握に努めてそうな指揮官機と、連携の先導役をしてそうな、陣形端で戦闘正面を監視する機体を集中狙撃し連携を崩しつつ戦う。
模擬戦後は自由都市防衛の件でお世話になったお礼を。
という態でルーファス氏に面会を願い、密かに手紙を配達。
カイトさんからの話もありましたし。礼儀を持ちつつも相手のペースにはならない様にし、軍人として端的に話を。
帝国が青十字やアダムカドモンをどの程度排除出来てるのか、
また今後の対応や帝国軍の強硬な派が諸国と時間を掛けた対話より
武力制圧に急ぐ理由等を聞いてみます。また、本当は妹君や穏健派に
皇帝は気づき配慮しているのでは?妹君をどう思ってそうかも聞ければと。
可能であればナツさんとの面会を依頼し
皇帝との子を設けるという目的がフユの発案か自身の独断か?
アダムカドモンと何か約束をしたのか?
を聞いてみます
●
――模擬戦のその後に。
「……念のために、SJPzH.188 JagdSköllを用意しておきましたけれど……無用になったのは、幸いでしたね」
皇帝との謁見の後の模擬戦も無事終わり。
模擬戦に参加した仲間達が士官候補生やその教官と共に歓楽街へと足を運んでいったのを見送りながら、灯璃・ファルシュピーゲルがそっと息を吐く。
そうして、灯璃がさりげなく周囲を見回していると。
『やあ、美しいフロイライン。これから一緒にお茶でもどうかな?』
何だか、とてつもなく軽薄な口調で。
飄々とした何処か捉えどころの無い気配を纏う30になるかならないか位の男が明らかに胡散臭い調子で灯璃を口説く様に話しかけてきた。
そんな突然、自分になれなれしく声を掛けてきた男を見て、灯璃が思わずそっと嘆息を漏らし。
「すみません。これでも私、自由都市防衛の件で……」
と、灯璃がナンパを断る様に言の葉を紡ごうとした……その瞬間。
男が周囲に気取られない程に恐ろしい小声でそっと囁きかけてくる。
『ああ、勿論分かっているよ。美しきフロイライン、灯璃・ファルシュピーゲルさん』
その軽薄さの中に宿る確かな知性を伴った声を聞いて。
灯璃が突然、自分になれなれしく声を掛けてきた相手が誰なのかを悟り、小声で。
「……ルーファスさんですか?」
そうこっそりと囁きかけるのに、男……ルーファスはああ、と妙に態とらしい感嘆の息を漏らす。
『流石は対オブリビオンの精鋭として名高い猟兵さんだ。ボクの事なんて、当然、お見通しなんだね~。いやはや、参った、参った!』
そう口の端にからかう様な笑みを称えて仰々しく自らの顔を手で覆う様にするルーファスに灯璃がはぁ……と思わず溜息を漏らす。
(「……これは完全に相手にペースを握られていますね……。確かにこう言う人を食った様なタイプはカイトさんが苦手な気がします……」)
――ともあれだ。
目的としていた御大将の方から態々灯璃に接近してきてくれているのだから、これに応じない理由も無い。
しかも幸か不幸か……。
(「模擬戦に参加した皆さんが連れ立って外に行き、私とルーファスさん以外いないタイミングを見計らって、ナンパの振りをして声を掛けてきたのですからね……」)
それは、ある意味で完璧なタイミングで。
成程、この男は、捉えどころの無い、本当に『食えない』相手の様だ。
『で、如何するんだい、フロイライン。ボクと一緒に折角だし、Interviewと洒落込まないかい?』
そのルーファスのお誘いに。
「……Yes,サー」
仕方ないとばかりに、灯璃が苦笑と共に静かに首肯で返すのだった。
●
――模擬戦会場を出て、程なくして。
ルーファスに招き入れられる様に彼の私室に足を踏み入れる灯璃。
飄々としたルーファスにその場で手紙を渡してしまい、話をしようかとも思ったのだが……。
「まあまあ、折角だし麗しきフロイラインに珈琲の一杯位は奢らせてよ。その方がじっくりとボクとしても話がしやすいし」
等とあっさりと言ってのけ、あれよ、あれよと言う間に、彼の私室に招き入れられる羽目になった灯璃。
イニシアティブをのっけから取られた感じはあるが、取り敢えず勧められるままにソファーに腰掛けて。
さりげなく周囲を見回す灯璃を置いて、鼻歌交じりに台所で珈琲を挽き始めるルーファス。
「ああ、大丈夫。此処なら盗聴とかの心配は無いよ。なんだかんだでその辺りの対策はきちんとしているからね」
そう台所の方で珈琲豆を挽いて自ずから珈琲を2人分淹れたルーファスが珈琲カップと共に、灯璃の前に堂々と座り珈琲カップを置く。
カップの中から漂う珈琲の香りが何故か奇妙な郷愁を感じさせられて、勧められるままにその珈琲に口を付けると。
「あっ……飲みやすいですね、これ」
そうほう、と何となく落ち着いた溜息を零してしまう灯璃の様子を見て、だろう? とルーファスが嬉しそうに笑顔で首肯する。
『こう見えて珈琲には一家言あるんだよ、ボクはね。だからこそ、ボクの|お客様《・・・》には振るって差し上げているのさ』
「はっ、はぁ……」
しかし、この戦乱の世の中で嗜好品とも言うべき珈琲の様々な豆を揃えているこの男。
只それだけで、明らかに他の者達とは一線を画している、中々に手強い相手と判断するべきだろう。
等と灯璃が考えつつ。
「それで、ルーファスさん。此方が、その……」
そう告げて。
懐から取り出したクレア……否、ギネヴィアから預かっていた手紙をルーファスに手渡す灯璃。
『ああ、ありがとう、ありがとう、フロイライン。どれどれ……』
と態とらしく珈琲を片手に、足を組んでリラックスした姿勢でギネヴィアからの手紙を一読するルーファス。
(「何というか……朝に新聞片手に朝食を食べている一般人みたいな空気を醸し出していますが……」)
しかし、その手紙の内容を程なくして読み終えたルーファスは不意に、我が意を得たり、と言う様にニヤリと笑んで。
『流石は、銀の姫君。慧眼だね』
そう何か悪いことを企む表情で呟いているルーファスの様子に、灯璃の藍色の瞳が不意に鋭く細められる。
「……何か、とても重要な事が書かれていたみたいですね」
その灯璃の問いかけに。
ルーファスがちらりと灯璃へと目をやり、軽くウインクを1つしてみせる。
『まっ、その内フロイライン達にも分かるだろう。少なくとも陛下にも銀の姫君にも悪い様にはしないよ』
そう含み笑いと共に告げるルーファスのそれに何となく軽い目眩を覚えつつも、灯璃がそっと嘆息し、軽く頭を横に振って。
取り敢えず珈琲を一口啜りながら、灯璃が言の葉を紡いだ。
「それで、ルーファスさん。少しお伺いしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
その灯璃の問いかけに。
『銀の姫君が見込んだお相手だ。ボクで良ければ、相談に乗るよ』
そう軽薄に告げるルーファスの様子を具に観察しながら、灯璃が一先ず、と言う様に言葉を紡いだ。
「リ・ヴァル帝国内で、青十字やアダムカドモンはどの程度排除できているのですか?」
その率直な灯璃の質問に。
ルーファスがへぇ……と笑うが、その瞳は微かに鋭く細められている。
――まるで、全てを射貫く鷲の目の様に。
(「皇帝とクレアさん……双方の派閥で要職と思しき職に付いているだけはありますね。軽薄そうですが、だからこそ、却って付け入る隙が無い」)
そんな印象を灯璃が抱いているのは既に見抜いているのであろう。
『いやいやいや! ボクは人畜無害な一般人ですよ? 少なくともカイト君や皇帝陛下みたいなキャバリア操縦能力を一切持ち合わせていませんからねぇ~』
まるで道化の様に軽く笑って態とらしく肩を竦めながら。
『だからボクに出来たのは、青十字団と繋がりのある不老不死を求める一団の情報を掴んだカイト君の為に一部隊を編成して送り込んで、前回で帝国内最後の青十字勢力を一掃するお手伝いをした位だねぇ』
そう、まるで茶飲み話の様に気軽な調子で。
さらりと国家機密であろう情報を漏らしてくるのだから、手に負えない。
『あいややややややっ! いけない、いけないっ。うっかり話しちゃったなー。まあー、でもしょうがないかー。他でもない皇帝陛下の賓客相手だものなー』
そう態とらしく下手な口笛を吹く真似をするルーファスのそのペースに灯璃がはぁ、と米神を解しながら溜息を1つ。
「……今の情報だけでも、正直私達にとっては朗報と言うか……とんでもない位大事なお話なのですが……」
『因みに、アダムカドモンについては未だ未だかなぁ。あの死の商人共、個人と言えば個人だし、集団と言えば集団だしと、誰と誰がどう繋がっているのかが確定しきれないからねぇ~。まあ、その辺りはフロイライン達のお仲間さんが、アウトローガーのネットワーク使ってカイト君に一部情報を流してくれたみたいだけれどさ』
そうすっ、と自らの珈琲を軽く口に含んでから。
さりげなく告げるルーファスのそれに灯璃がキョトン、と目を瞬く。
「アウトローガー……? 聞き慣れない組織の名前が出てきましたね……」
そう呟く灯璃のそれに。
おや、と言う様にルーファスが目を瞬く。
『そっか。そっちの名前はカイト君も出してなかったか。ボクにはアクセス権無いんだけれど、カイト君が時々使っているこの地方独自の裏社会ネットワーク組織だよ。主な商品は『情報』だね。とは言え、金出せば何でも情報を拾い集めてくれる情報組織として、この地方の裏社会に首突っ込んでいる人だったら、モグリでも聞いたことがある位には有名なネットワークなんだけれどね。只……彼等はお偉いさん達から離れて自由に生きたい連中の集まりだから、まあ、ボクみたいなお偉いさんだと直接繋がるのは色々と面倒だから出来ないって言うのもある。カイト君もそれが分かっているから、ボクの協力が必要そうな時はこっそりとこっちの情報網に引っ掛かる様に情報を流してくれるんだけれどさ』
そのルーファスの飄々とした態度での説明に、思わずぽかん、と口を開けそうになり、慌てて珈琲を啜る灯璃。
ルーファスがそんな灯璃の様子を見て楽しそうにニコニコしながら話を続けた。
「早々。なんでボクがアダムカドモンの追跡や駆逐が難しいって説明するかというと、単純な話、彼等が何処まで直接的、乃至は間接的に各々の武器商人やら他の商人とつるんでいるのかどうかの動向までは、把握しきれないからだね。まっ……だから対アダムカドモンって話になると、ボクみたいな軍人よりは、カイト君みたいなフリーダムな立場の子の方が強いのさ。だから、ボクもフェザーから来たアダムカドモンに連なるであろう商人についてはある程度掴んでいるけれど、証拠が無いから逮捕できないんだよね。それで誤認逮捕しちゃったら、その人が可哀想だしさ」
そんなルーファスの説明を聞いて、成程、と灯璃が気を取り直して首肯する。
因みに、とルーファスがまるで独りごちる様に言葉を紡いだ。
「フロイライン灯璃さんの表情を見て、話しといた方が良いかな、と思ったんだけれどね。こいつはボクの独り言だけど。取り敢えず皇帝陛下が武力行使による制圧を急ぐ理由は、そうしないと何時プラントにオブリビオンが広がっていくのか、或いは、オブリビオンマシンに何時の間にかキャバリアが全部すり替えられる国家が登場してこないか。そう言った身近な危機を早々に排斥する為でもあるよ。まっ……そう言う意味ではカイト君は従兄弟でもある皇帝陛下のやり方を間違っていると言いつつも、一方で一定の理解を示している。歯がゆいと思っているのが、今のカイト君なんじゃないかな? まあ、別の見方も出来るんだけれど……」
ルーファスが先駆ける様に灯璃が問いかけようとしていた事に対するある程度の回答を貰いつつ。
灯璃が嘆息しつつルーファスさん、と静かに問いかけた。
「……アロンダイト皇帝陛下の人柄や行動を見ていて思うのですが……貴方から見て、妹君や穏健派のことを、皇帝はどう見ているのでしょうか?」
そう、灯璃が問いかけた時。
ニヤリ、とほくそ笑んだルーファスがおどけた仕草で、ぴしり、と灯璃を指差して。
『良い質問だね、フロイライン。そうだね。皇帝陛下は主として政治的事情だけれど……色々と銀の姫君の事を気に掛けているのは確かだよ。そうだね、それこそ……『抵抗組織は、生かさず殺さずうまくコントロールするに限る』位にはね』
そう見込みのある教え子に教導する教官の様な口調でのルーファスの説明に。
灯璃がえっ、と思わず声を上げるのにルーファスは微笑んで上手そうに珈琲を啜りながら話し続けた。
『別にこう言う地方では珍しい話でもない。自分達の主張に抵抗する組織ってのは、居てくれた方が色々と都合が良いんだ。民の不満のはけ口にもなり得るし、不満を持つ人達をそこに集めさせて、最悪纏めて切り捨てて一気に掃除をする、なんて事も出来る。まあ、今は明らかにオブリビオンっていう明白な|有事《・・》がある以上、必要とあれば協力も検討するけれどね。そもそも、今、カイト君や銀の姫君に消えられると一番困るのはボク達だ。だって、アダムカドモンの喉元に一番食らいつける可能性を秘めているし、ボク個人としても銀の姫君達の方に強く共感しているしね。そういう裏からの協力体制って言うのは、上手く調整できる人が居ればし易くなるものさ』
「……だから、ルーファスさんの様な方がアロンダイト皇帝の配下に属している、と言う訳ですか」
そう嘆息する灯璃のそれに。
これでもね、とルーファスが優しく笑う。
『ボク、実は殺し合いって嫌いなんだ。だから、出来ることなら皆仲良く上手くやっていきたいと言う穏健派勢力の一派を担っている訳だし。まっ……そう言う考えを持っている人ってのは、大概この地方では爪弾き者になるけれど』
「……成程。政治的にアロンダイト皇帝が、クレアさんを重要視しているのは分かりました。では……1個人としては、どう思っているのかは、分かりますか?」
その灯璃の問いかけに。
ルーファスが微かに目を眇めて面白がる様な笑みを浮かべつつ、軽く頭を横に振る。
『予測は何となくつくけれど、ボクはルーファスであって、アロンダイトの坊やじゃないからねぇー。流石にボクの憶測を口にするのははばかられるかな』
「……そうですか。ありがとうございます、ルーファスさん」
そう灯璃が一礼したところで。
早々、とまるでたった今思い出したかの様にルーファスが自分の懐から、一枚の面会状を取り出し灯璃に手渡す。
『銀の姫君の手紙を持ってきてくれたフロイラインへのお礼だよ。そうだね……もしかしたら、政治的事情で、大々的にフロイラインが彼女に|此処で会える《・・・・・・》のは、此が|最初で最後《・・・・・》になるかも知れないから、時間があるなら今の内に会って来たら? 何か面白い話が聞けるかも知れないからね。但し、尾行には気を付けて』
そう告げたルーファスから手渡された面会状を灯璃が読むと、それは……。
「……! ナツさんとの面会状……。ですが……政治的事情で、此処で会えるのは此が最初で最後の機会って……?」
そう怪訝そうに尋ねる灯璃のそれに。
さて、とルーファスが惚けた様子で肩を竦めてみせる。
『まあ、ちょっと考えれば聡明な君達なら分かるでしょ? まっ、今フロイライン達が一番欲しているものは、ボクが知る限り此で全部だ。後悔しない様に、行っておいで』
そうルーファスが飄々と告げるのに灯璃が珈琲を飲み干して立ち上がり。
「……ありがとうございました、ルーファスさん」
そう一先ず敬礼した灯璃が、素早くルーファスの私室を辞して、その面会状に書かれたナツの収監所へとその足を向けた。
●
――重大犯罪人収容所。
そうとしか思えない厳しい警備下にあるその場所の警備兵達に、灯璃が懐にしまっておいた面会状を見せると。
警備をしていた帝国兵が灯璃に向けて敬礼し、淡々と灯璃をその場所へと導いていく。
導かれたその先では、鎖に繋がれ幾つかの傷痕を残す女が何処か虚ろな眼差しで牢屋越しに灯璃を見つめていた。
(「此は……多少手荒な手段を使ってでも、帝国は情報を吐かせようとしたのでしょうね……」)
恐らく自白剤なども使われていることであろう。
その姿を見て、少々痛ましさを感じつつも、灯璃がナツさん、と静かに声を掛けると。
「……あなたは……灯璃さん……ですね」
「はい、そうです。こう言う形でお会いすることになるのは残念でしたが」
そうそっと呟く灯璃のそれに。
ふっ、とあるかなしかの微笑を浮かべて、それで、とナツが話を切り出す。
「何か御用でしょうか。それにしてもよく、貴女達によって囚われの身となった私が此処にいると突き止めることが出来ましたね」
そう言葉を紡ぐナツのそれに。
「幸い、私達の後ろに食わせ者ですが、親切な後援者が不意に現れましたので。それで、今回は確認したいことがあって、貴女の元を訪れました」
苦笑と共に応える灯璃のそれにナツが微かに小首を傾げて。
「……何ですか?」
そう問いかけるのに、世間話は無用とばかりに灯璃が尋ねる。
「皇帝との子を設けるという目的は、フユの発案ですか。それとも自身の独断なのですか?」
そう灯璃が問いかけた、その瞬間。
あの時、灯璃達へと見せた聖母の様な笑みを口元に称えてナツが軽く頭を横に振った。
「その、どちらでもありません」
そうはっきりと告げたところで。
続けてナツが、まるで愛しき誰かに向けて吟じるかの様にそれを唇に乗せる。
「ロスト共和国憲章 第一章。国民は皆、等しく健やかであること。長寿であること」
不意に諳んじられた、ロスト共和国憲章を聞いて。
「……」
灯璃がじっとナツの言葉の続きを待つと、ナツはそのまま歌う様にこう続けた。
「そして、この文言は、青十字社の理念でもあります」
「……青十字社の、理念ですか……」
その灯璃の囁く様なそれにナツが首肯して、淡々と謳う様に話を続けている。
「私は青十字社で生まれ、青十字社で育ち、青十字社のために生きています。皇帝と私との間に生まれた子は、国民が皆、等しく健やかで長寿であるために必要な存在」
――それが、即ち。
「青十字社の理念であり、故に貴女は自らの手で、アロンダイト皇帝の子を身籠もることを望んでいたと。そう言うことですね……」
そう灯璃が考え込む様に顎に手を当てるのを聖母の様な笑みを称えた儘にナツが見つめ。
「他に、何かありますか?」
そう囁く様に尋ねてくるのに、ええ、と灯璃が首肯を1つ。
「その為に貴女は、何かアダムカドモンと約束をしましたか?」
その灯璃の問いかけには。
聖母の笑みを浮かべた儘、いいえ、と言う様にナツが静かに頭を横に振って。
「アダムカドモンは武器商人です。私たちが理念の実現に必要な力を、それなりの対価と引き換えに授けてくれる取引相手です」
そこで一拍深呼吸をして。
「それ以上でも、それ以下でもありません」
キッパリとそう告げるナツの様子を見て、これ以上の情報を聞くことが出来ないと判断した灯璃が。
「分かりました。教えて頂きありがとうございます。その代わりと言っては何ですが、|此処《・・》で私が貴女にお会いするのは、|此《・》が|最初で最後《・・・・・》になるかも知れないそうです。それでは……失礼致します」
そうルーファスの言葉をさりげなく伝言の様に告げて。
ナツに背を向けて立ち去る灯璃を、ナツは聖母の笑みを称えて静かに牢屋越しに見送った。
大成功
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