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ほのひかる花の間

#アヤカシエンパイア

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#アヤカシエンパイア


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●ほのかにひかる
 小さな花々がさいて、花弁のようなガクが周囲を巡る。
 山の斜面を染める紫陽花の淡い色は目にしたものの心を慰めるものだ。
 しかし、本当の見頃は暗くなってからだろうか。
 いくつか灯りが掲げられほんのりと紫陽花が照らし出される。その中に、ふわりふわりと飛ぶ淡い色。やわらかなその色は蛍の光。
 その光景はとても不思議で、はかなげで。しかし美しいと思える光景だ。
 ゆるりと、紫陽花の間を歩めば蛍もほわほわと散歩に付き合ってくれる。蛍についていって迷子に、なんてことが無いようにだけは気を付けなければいけないかもしれない。
 この光景は、年に一度のこの時期だけ楽しみなのだ。
 山奥の――対妖要塞たる屋敷と、その周辺に住む者達にとっては。
 けれど今、ひときわ強い妖によってその場所が脅かされようとしていた。

●予知
「山中の貴族から、手を貸して欲しいと連絡があってね」
 白矢羽・尭暁(金烏・f42890)はやわらかに微笑みながら、向かってほしい場所があるのだと告げた。
 それはとある山の中――対妖怪要塞たる屋敷は大きく、そこは小さな町と言っても良い。屋敷の主、そしてその屋敷に仕える者達の住まう場所。
 そこは季節折々の花に囲まれた場所であり、季節ごとに息抜きも兼ねて祭りも行われている。
 祭りの予定を変えることはできない。しかし、強い妖の気配を感じたというのだ。
「祭りを延期しては、ひとびとが悲しむだろう。だから、猟兵の力を借りて祭りを行いつつも、強い妖を倒してしまいたいとうことなのだ」
 僕達がいれば、そうできるということなのだろうねと尭暁は微笑む。
 陰陽師たちの力を借りることももちろんできるが、強い妖との戦いでは長引くこともある。
 しかし、猟兵の力を借りれば素早く戦いを終わらせることができるだろうという考えなのだろう。
「紫陽花を愛でる祭りを楽しみ、妖が現れたなら一気呵成に叩く。そしてまたゆっくりと過ごしたらいいと思うよ」
 頼まれてくれるかい? と尭暁は紡ぐ。問題なく妖が倒せると思っているから、その声は柔らか。
 掌の上でグリモア輝かせ、よろしく頼むよと尭暁は猟兵たちを送り出した。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。
 詳細な受付期間については【マスターページ】【シナリオ上部のタグ】で案内しますのでお手数ですが確認お願いいたします。
 オーバーロードでプレイングをいただける場合、いつ送っていただいてもOKです。

●シナリオについて
 第1章:🏠『季節の祭り』
 第2章:👿『大妖怪『仁兵衛』』
 第3章:🏠『桜蛍の道しるべ』
 以上の流れとなっております。

 紫陽花に冠したものがあふれる祭りを楽しみつつ、妖が現れたなら退治を。
 そして、その後またゆっくり紫陽花と蛍を楽しむことができます。
 詳細は追加文章にて。

 公序良俗に反しない。また他の方に迷惑のかからない内容でしたら問題ありません。
 当然の事ながら、未成年の飲酒喫煙については絶対禁止です。(なお見た目年齢で判断致します)

 グループ参加などの場合は、ご一緒する方がわかるように【グループ名】や【ID】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。

 三章ではお声がけあれば志羽のグリモア猟兵も遊びに参ります!

 以上です。
 ご参加お待ちしております!
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第1章 日常 『季節の祭り』

POW   :    祭りの会場を歩き回り、巡り尽くす

SPD   :    祭りで催される遊戯に挑戦する

WIZ   :    祭りの風景を眺め、歌を詠む

イラスト:del

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 山の中にある寝殿造りの屋敷を中心に、小さな家が建ちそこは町のようになっていた。
 祭りとなればいつもより賑わっているのだろう。
 紫陽花の髪飾りや、紫陽花の花弁からの染物など、色々なものが売られているようだ。どれもなかなかのできで、奮発して買う者もいる様子。
 それから町の通りでは近くの清流で採った川魚を焼いていたり。同じように山の中で採った鳥を串焼きのようにして振舞われている。
 無礼講というように酒もふるまわれ、此処に住む人々にとっては憩いの時間となっている。
 それから干果物などもどうぞご自由にと用意され、子供たちが嬉しそうに手にして歩いているのも見られた。
 席も設けられ、初対面でも楽しく飲み食いなどをしているようだ。
 そして屋敷の中では――祭りと合わせて酒や食事ももちろん用意されているのだが、集った貴族たちが楽しみにしているものがある。
 氷を細かく削り、そこに甘い蜜をかけたもの――削り氷なのだがそれが特別に振る舞われているようだ。
 高貴な身分の者でしか口にすることができない貴重な甘い蜜ではあるが、祭りの時だけとほんの少しであるが振る舞われている。他の世界を知る猟兵にとっては物足りないものかもしれないが、この世界の人々にとってそれは大変な御馳走といえる。
 そんあ楽しみもあれば、紫陽花の風情を楽しむのもまた一興。
 屋敷の裏から続いていく道――山を登っていく道には紫陽花が見事に咲いている。
 昼間は、明るい日の下で色の移り変わりをみせてくれる。山道を歩めば美しい色合いの紫陽花が迎えてくれるだろう。
 夕刻になれば、その山道に火が掲げられほんのりと照らしてくれる。空が暗くなれば、ほわほわとやわらかな桜色の光がその紫陽花の間を飛ぶ。
 それは蛍。紫陽花と蛍がともにみられる時間は、僅かの間だという。
 だから脅かさぬように、最低限の灯りだけ用意され幻想的な光景の中に溶け込むことができるのだとか。
 山道の途中に休めるような場所も誂えられており、酒とつまみをもってというような者達もいるようだ。
 と、ここでの楽しみは時間の経過で様々ある。
 件の妖が現れるのは、夕刻の前らしい。
 現れるまで祭りや、周囲の紫陽花を楽しむのが良いだろう。
 そして倒したなら、夜は紫陽花と蛍の時間を。
葦原・夢路
紫陽花の花を愛でに参りました。
紫陽花の花は植える場所によって色が変わるのだとか…ここの紫陽花はどのような色を魅せてくれるのでしょう…。
けれどあまり他の花を愛でてばかりいればわたくしの花達がやきもちを妬いてしまうかしら…
ですから紫陽花を愛でるのはほどほどにして
「削り氷」をいただきましょう。
滅多に口にはできませんからこの機会に…
あら、こちらが楽しみだったのではなんて…ふふ、どうかしらね



●共に
 しゃらりしゃらり、その一歩は小さく。漆黒の髪と瞳を持つ姫がゆるりと、紫陽花の道へと向かう。
 花を愛するその姫は――葦原・夢路(ゆめじにて・f42894)。
「紫陽花の花は植える場所によって色が変わるのだとか……ここの紫陽花はどのような色を魅せてくれるのでしょう……」
 楽しみと夢路は笑み零す。
 紫陽花の淡い色の移り変わりが美しいその道。
 まぁ、と夢路は紫陽花たちへと心寄せる。
 けれど、花を愛するあまりいつの間にか化身と化した十二の花神も共にいる。だから、夢路はちゃあんとわかっていた。
「あまり他の花を愛でてばかりいれば、わたくしの花達がやきもちを妬いてしまうかしら……」
 だから、ほどほどに。
 紫陽花たちの間をゆるりと歩んで楽しんだなら、夢路は貴族の屋敷へと向かう。
 そこで削り氷が振舞われているというからだ。
「滅多に口にはできませんからこの機会に……」
 そう紡ぐと、花神たちがさざめくように告げる。
「あら、こちらが楽しみだったのではなんて……ふふ、どうかしらね」
 折角なのだから楽しみませんと、と夢路は紡ぐ。
 ひんやりとして、それはすぐに甘さを残して口の中で消えていくけれど、余韻感じてその表情は一層ゆるんでいた。
 皆にも食べさせてあげたいけれど、少ししか――と匙を見詰めれば気にしないでと伝わってくる。
 夢路が美味しいと食べれば、それだけで花神たちは倖せなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
愛しの君の朔兎様(f43270)と参加

ああ、紫陽花と蛍の季節でしたね。そういえば、一年前、今は亡き家族と朔兎様と紫陽花と蛍を夜に愛でにいきました。妖が跋扈する夜でも愛しき君と家族なら怖くなかった。生みの家族はもういませんがこの風流な景色はまもらねば。

でもまだ幼き身の私と朔兎は美味しいものが食べたいですね。大きい戦いの前には力を蓄えて!!

通りで焼き魚と鳥の串焼きを買い、気軽に設けられた席に座って朔兎様と食べます!!ああ、美味しい!!

ああ、干し果物も買いますか。お父様達へのお土産と含めて6個、ですね。

もちろん、削り氷もいただきます!!ああ、蜜の甘さが最高!!

よし、力蓄えました!!準備万端ですね。


源・朔兎
愛しの姫の星羅(f42858)と参加

同じ皇族なのに、尭暁さんは違うな。やっぱり気品とカリスマ性がすごいというか。そうだな、星羅とお世話になった家族の皆さんと夏の紫陽花と蛍を鑑賞しにいって一年経つのか。守ろう、この景色を。

これから戦うために、腹ごしらえだ。ああ、店でかう新鮮な魚を焼いた焼き魚、疎外な森の中を駆け回って狩った鳥の串焼き!!皇族として民の努力の成果を味わえるのはとっても嬉しい。

果物の干し菓子か?うん、家族の皆さんが好きそうだ。6人分買おう!!

ああ、もちろん暑い夏には蜜をかけた削り氷だ。俺や星羅も滅多に食べれなかったからな。うん、美味しい!!

よし、元気いっぱい、行けるぞ!!



●これまでも、これからも
 同じ皇族なのに、尭暁さんは違うな、とこの場に送った男のことを源・朔兎(既望の彩光・f43270)は思い出しながら唸る。
「やっぱり気品とカリスマ性がすごいというか」
 朔兎は大人になったら自分もあんな風になるのだろうか、と思うけれど遠い未来よりも、今が大事だ。だって隣には神城・星羅(黎明の希望・f42858)が今、いるのだから。
「ああ、紫陽花と蛍の季節でしたね」
 星羅は綺麗ですねと紡いで、そういえば――と思い出す。
 一年前、今は亡き家族と朔兎様と紫陽花と蛍を夜に愛でにいったことを。
 そのことを星羅が告げると、もちろん覚えていると朔兎も微笑んだ。
「そうだな、星羅とお世話になった家族の皆さんと夏の紫陽花と蛍を鑑賞しにいって一年経つのか」
 妖が跋扈する夜でも愛しき君と家族なら怖くなかったと星羅は朔兎をそっと見詰めて思う。
「守ろう、この景色を」
 はい、と星羅は頷く。拳をきゅっと握って、紫陽花の道を星羅は見詰める。
「生みの家族はもういませんがこの風流な景色はまもらねば」
 でも――と星羅は朔兎を見詰めて。
「でもまだ幼き身の私と朔兎は美味しいものが食べたいですね。大きい戦いの前には力を蓄えて!!」
 朔兎はひとつ瞬くと口端あげて笑って。
「これから戦うために、腹ごしらえだ」
 ではさっそくと二人で祭りの通りへ。
 焼き魚もあるよ、こっちには鳥だよ、なんて声をかけられたら両手に握ってしまうのは仕方ない。
「ああ、店でかう新鮮な魚を焼いた焼き魚、疎外な森の中を駆け回って狩った鳥の串焼き!!」
 美味しい! と朔兎は味わって満面の笑み浮かべる。
 そして改めてその手にあるものを見て思うのだ――皇族として民の努力の成果を味わえるのはとっても嬉しいと。
 その隣ではぐ、と一緒に食べていた星羅も頬を緩めて。
「ああ、美味しい!!」
 この恵を享受していると干し果物はいかが、と聞こえてくる。
「果物の干し菓子か? うん、家族の皆さんが好きそうだ。6人分買おう!!」
「お父様達へのお土産と含めて6個、ですね」
 その声かさなって、二人で笑いあう。
 そしてもうひとつ、お楽しみがあることを二人は知っている。
「まだ食べれるか?」
「それは、もちろん――もちろん、削り氷もいただきます!!」
「ああ、もちろん暑い夏には蜜をかけた削り氷だ」
 俺や星羅も滅多に食べれなかったからなと、朔兎はひとすくい。
「うん、美味しい!!」
「ああ、蜜の甘さが最高!!」
 冷たさと甘さ。なかなか食べられないそれを口にすれば表情はふにゃりとゆるむ。
 もうひとくち、と食べすすめればそれはあっという間に消えていった。
 でも美味しかったという幸せは消える事はなく。
「よし、力蓄えました!!」
「よし、元気いっぱい、行けるぞ!!」
 また、声が重なりましたねと星羅は小さく笑い零して。
「準備万端ですね」
 でも、次の瞬間表情はきりりと引き締まる。これでこのあとの戦いも負ける気はしないと。
 朔兎もああと頷いて、その時へと心を向けていた。この屋敷で、この付近で暮らすひとびとを守るためにと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

武富・昇永
見事な屋敷だ。これほど大きな屋敷は中々見かけんぞ
住んでいる平安貴族たちも多いだろう
それでも猟兵に助力を請わねばならぬほど手を焼く連中が襲ってくるということか
まさに勲功の稼ぎ時だな!
この賑やかな生業も美しい山々も守り切って、この武富・昇永の名を轟かせて見せよう!
・・・ふふふ、まだ戦いも始まってもいないというのに気持ちが昂ってきたな
こんなときは紫陽花をながめながらゆっくり散歩して心を鎮めようか
それとも山の幸で腹を満たして満腹感で心を落ち着かせようか
どちらにするか・・・ううむ、迷うなぁ
ここは一つ天に任せてみるとしようか
(道の真ん中に気の棒を立てて行き先を決めようとする)



●導きのままに
 それは山の中に突然現れた屋敷。見事な屋敷だ、と武富・昇永(昇鯉・f42970)は瞬いた。
「これほど大きな屋敷は中々見かけんぞ」
 住んでいる平安貴族たちも多いことだろう。ということは、対妖の手も多いはず。
「それでも猟兵に助力を請わねばならぬほど手を焼く連中が襲ってくるということか」
 一体どのような妖がくるというのか。昇永がふるりと震える、それは武者震いだ。
「まさに勲功の稼ぎ時だな!」
 上昇志向の塊でもある昇永は、高位貴族とのつながりもできるかもしれないと野心を抱く。
「この賑やかな生業も美しい山々も守り切って、この武富・昇永の名を轟かせて見せよう!」
 ぐっと拳握ってうんうんと頷いて。昇永はこの場所でいかに目立ち、いかに縁を繋ぐかと考え巡らせる。
「……ふふふ、まだ戦いも始まってもいないというのに気持ちが昂ってきたな」
 この高揚のまま戦えるだろうか。少し落ち着いた方がよさそうだなと昇永は思う。
 こんなときは――紫陽花をながめながらゆっくり散歩して心を鎮めようか。それとも、山の幸で腹を満たして満腹感で心を落ち着かせようか。
 紫陽花の方へいけば、静かな気持ちに自然となっていくだろう。
 しかし山の幸で腹を満たすそれもまた捨てがたい。
「どちらにするか……ううむ、迷うなぁ」
 迷って決められない。となれば――おお、これがいいとふと目についた木の棒を拾い上げた昇永。
 それを道の真ん中で、指先一本で支え自分の真ん前に立てたなら。
「ここは一つ天に任せてみるとしようか」
 立てていた木の棒からその指離せば、ぐらりと揺れて。
 さぁどちらへ傾くか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勧禅寺・宗大
アドリブ連携可
賑やかな場所は嫌いではない、
その雑踏に活気はあるから我が身の事とか色んな事を考えなくていい。
そして自分の事を知らぬ人々、何となく悪戯心が沸いてくる。

という訳で今の私は童子のような姿、
なので一旦仕事を忘れ、大人になって出来なかった事をしてみるか。
串焼きを道すがら食べ、貴族の子に化けて甘えに甘えて削り氷を食べと多少貴族として行儀の悪い行動をして怒られつつも色んな物を食べ歩いて満喫。

最後に戦う時の場所の確認がてら辺りを歩き回り、若い体の疲れ知らずを思い出す。しまった、仕事を忘れきれんかったのは良くないなと自分の仕事人間っぷりに苦笑いしながら歩き回った分の体力をまた飲食で補給しに行く。



●年相応、体相応
 ひとびとの明るい、楽しそうな声が聞こえてくる。それは祭りの活気。
 賑やかな場所は、嫌いではない――勧禅寺・宗大(平安貴族(従四位下)の幻惑の陰陽師・f43235)の足は、特に行き先を定めることもなくその中を歩むことを選んでいた。
 雑踏に活気があるから、宗大の意識はそちらに誘われる。我が身の事とか色んな事を考えなくていい――そしてここにいるひとびとは、宗大の事を知らない。
 宗大が、本当は45歳であることなんてもちろん、知らない。だからだろうか、何となく悪戯心が沸いてくる。
 今の宗大は同時のような姿。だから、一旦仕事を忘れ、大人になって出来なかった事もできるということ。
 そう思うと心躍るものがある。
 串焼きは魚にするか、鳥にするか――今日は両方でもいいのではないだろうか。
 宗大は両手にそれぞれ持って食べ歩き。こんな事、大人ではやはりできないなぁと思いながらぺろりと平らげる。
 そしてもう一つ、削り氷もあると聞いたのだからそれも楽しまねばと足はそちらへ。
 貴族の子供のふりも簡単なものだ。
「わぁ、削り氷だ!」
 と、きらきら期待した視線を向けて、それを貰って。
 蜜の一滴までもったいない! というように器を傾けて飲み込んだ。
 行儀悪いぞ! なんてこの屋敷の貴族から注意されたらごめんなさい~と申し訳ないと思っていないような声色で笑って逃げ出す。
「さて……あとは」
 事前に、戦う場所はどこになるだろうか。そんな確認がてら周囲を歩く。
 それにしてもどれだけ動いても、と宗大は若い体の疲れ知らずを思い出して――はたと、その歩み止めた。
「しまった、仕事を忘れきれんかったのは良くないな」
 しみついている仕事人間っぷり。それを改めて感じて苦笑いを零す宗大は、祭りのほうへと踵を返す。
 動いた分の体力の回復を、またしようと思いながら何を食べるか考えてひとつ、思い浮かぶ。
「さっき美味しかった魚の焼きたてにしよう」
 魚にかぶりつくのも、この姿だからこそ違和感なく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ココ・ロロ
友達のリスさんたちと
お花を見にー…
…ふふ、干果物が気になるのですか?
お散歩のおやつに少しもらっていきましょうか
みんなで仲良くわけっこ~ですよ?

おやつにご機嫌な友達とのんびり歩む山道には
はじめて見る花がたくさん咲いていて
雨みたいな、雲みたいな
雨の季節のような色
でも、さみしい色ではなくて
心が落ち着く、やさしい色

それに…
小さなお花が仲良く咲いていて
えへへ、ココ達みたいですね
いつもそばにいてくれる
大切で、大好きな
家族みたいなお友達

ココはね
みんながいてくれるから
いつも元気でいられるのですよ
だから、ね
これからもなかよくそばにいてくださいね
なんて
もちろん、というように頬に擦り寄る友が
うれしくて、くすぐったい



●紫陽花の中で
 ココ・ロロ(ひだまり・f40324)の肩の上には森から喚んだ森の友達たちがいる。
 行きましょう! とココは紫陽花の方を指させば皆楽しそうに駆けた。
「お花を見にー……ふふ、干果物が気になるのですか?」
 リスたちの視線が干し果物のほうへそろって向いている。ココは笑い零して、そちらへ足をむけると肩の上で嬉しそうにしているのが伝わってくる。
「お散歩のおやつに少しもらっていきましょうか」
 ひとふくろください! とココがお願いすると一つと言わず二つどうぞと手の上に。
 沢山の干し果物を手にすればリスたちが跳ねる。
「みんなで仲良くわけっこ~ですよ?」
 それはまるで、わかっているよというように。
 ひとまず一個ずつ、と友人たちに干し果物を渡せばご機嫌。
 彼らと一緒にのんびり歩む山道には、はじめて見る花がたくさん咲いている。
 それらはココが初めて出会う花。
 雨みたいな、雲みたいなとそっと指先で振れる。友達の一人がその花に飛び込んで、花の間から顔をのぞかせた。ちょんちょんと触れる小さな花がくすぐったいのかふるふると頭をふって。
 雨の季節のような色――でも、とココはそっとその花に触れた。
 さみしい色ではなくて心が落ち着く、やわらかくやさしい色と眦緩めて見詰める。
「それに……小さなお花が仲良く咲いていて」
 えへへ、とくすぐったそうにココは笑い零して。
「ココ達みたいですね」
 いつでもそばにいてくれる、大切で、大好きな――家族みたいなお友達。
 足元でくるくる回って楽しそうな友達もいれば、頬にその体を摺り寄せてくれる友達もいて。
 ココの心の中はあったかいもので満ちていく。
「ココはね、みんながいてくれるからいつも元気でいられるのですよ」
 リスたちが、ココの身体を駆けのぼって、頭の上にちょんと乗ったり腕にしがみついていたり。
 それがいつも通りな空気で、ココは止めていた足を再び紫陽花の中へと進めていく。
「だから、ね」
 これからもなかよくそばにいてくださいね、と――紡げば、もちろんという様に小さな鳴き声が重なって。
「わわ」
 もちろんと、肩の上に乗って頬にすり寄るリスの友。
 それがうれしくて、くすぐったい。だからお返しとココは自分の頬でその顔に自分からもすり、と優しく触れる。
 同じ気持ちで嬉しいねと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冷泉・辰乃丞
【晴辰】

先生に師事していた時も
このような機会は余りなかったもしれない
尊敬する先生との時間に、心の内で嬉しく

この花の彩りが場所によって違うのは、土壌の酸度によると
異世界の書物で見ました
先生の風情溢れる言葉に、風情ない返しを無自覚でするも

月の君…
先生の元主で、尭暁様の御父上、父の友と聞いている御方
私も幼い頃、お言葉を交わしていただいた事がある

何より、先生が従者で在った頃のお話は伺いたく、耳を傾ければ
幼い私にも、あの御方は花をくださった気がする、と

私も先生の様な立派な従者で在れるよう、精進いたします
その為にも、尭暁様の予知された妖を、と
我が主からの任を成すべく気合入れ
先生と共に戦える事がやはり嬉しい


弓弦葉・晴周
【晴辰】

紫陽花が綺麗に咲いておりますね
この花のよひらは宵を思わせますゆえに、私には好ましく思えますね

弟子の芸術的感性の無さはよく知っておりますが
勤勉な様子に微笑んで返し

甘雨の雫纏うこの花を、月の君と共に眺めたこともございましたね、と
暫し、あの御方が在りし日のことを紡ぎましょうか

我が主は花がお好きで
慈しみ深く季節の花を静かに愛でておりましたが
私の姿を見れば、ちか、と微笑んで駆け寄り
地に落ちたばかりの綺麗な花を、私にくださいましたから
月の如きその銀糸に、私も花を飾って差し上げておりましたね

御子様の予知した妖狩りの案件に気合十分な弟子に微笑んで
ええ、私も尽力いたしましょう、と
そっと胸に想い秘めながら



●師弟
「紫陽花が綺麗に咲いておりますね」
 そっと紫陽花に触れながら弓弦葉・晴周(月に焦がれる・f43172)は零す。
 この色は――まるで、と思い浮かべる者が彼にはいた。
「この花のよひらは宵を思わせますゆえに、私には好ましく思えますね」
 晴周はそう言いながら弟子の冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)へと視線向けた。
 辰乃丞は尊敬する先生との時間、と嬉しさで心の内を満たしていた。
 先生に師事していた時も、このような機会は余りなかったかもしれないと修行の日々を思い出す。
「この花の彩りが場所によって違うのは、土壌の酸度によると異世界の書物で見ました」
 その辰乃丞の答えに晴周はそうでしたね、と微笑む。
 そう――弟子の芸術的感性の無さはよく知っていた。けれど勤勉さ現れる返しに相変わらずですねと好ましく思いながら微笑み、晴周は更なる過去へと思い馳せる。
 紫陽花、この花を愛でていたあの方、と。
「甘雨の雫纏うこの花を、月の君と共に眺めたこともございましたね」
「月の君……」
 それは、晴周の元主であり、辰乃丞の主である尭暁の父。辰乃丞の父とも友であったことを知っている。
 そして辰乃丞もまた、幼き日に言の葉を交わしたことがあった。その時に向けられた笑みを微かに覚えている気がする。
「暫し、あの御方が在りし日のことを紡ぎましょうか」
 こく、と静かに辰乃丞は頷く。
 主の父である月の君の事も気になるが、尊敬する師が従者で在った頃の話は耳にする機会などそんなにない。
「我が主は花がお好きで、慈しみ深く季節の花を静かに愛でておりましたが」
 瞼の裏にいくらでも思い浮かべることができる。
 己の姿を見れば――ちか、と微笑んで駆け寄りその手にある花をそなたにと渡してくれたことを。
 それは地に落ちてすぐの綺麗な花。このまま、誰の目に触れぬまま朽ちるより、そなたの傍にあるほうが良いだろうと微笑んでその手に置いたのだ。
 もらうばかりではまいりませんねと、晴周もまた花を返すことも多々あった。
「そして月の如きその銀糸に、私も花を飾って差し上げておりましたね」
 嬉しそうに、くすぐったそうに礼などいらぬのにと微笑み、そしてありがとうと紡ぐ様を、晴周は思い出し語る。
 そういえば、幼い私にも、あの御方は花をくださった気がする――と、辰乃丞は話を聞きながら思い出す。
 そして、主と従者として、しっかりと絆結ばれていたのだと辰乃丞は感じ、面映ゆいような喜びがあった。
 そしておふたりのように、主と私もあれたらという想いがこみあげる。
「私も先生の様な立派な従者で在れるよう、精進いたします」
「一層、励むのですよ」
「はい」
 その為にも、尭暁様の予知された妖を、と辰乃丞はきりと表情引き締め気合を入れる。
 辰乃丞の表情は常と変わっていないようにも見えるが、いつもより気合が入っておりますねと晴周にはわかる。
 御子様の予知した妖狩りの案件、まぁそうなるでしょうねと弟子の心中察し晴周は微笑んだ。
「ええ、私も尽力いたしましょう」
 晴周はそっと、胸に想いを秘めている。すぐに叶うことが無いとはわかっている己の願いのためにも、と。
 その願いを辰乃丞はもちろん知らない。けれど、つい先だっての戦いでも感じた高揚を、また得ていた。
 先生と共に戦える――そのなんと嬉しきことか。
 紫陽花の花の間で師弟は共に過ごし、この後に備えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
【白夜】
愛称:リティ

はじめましての世界
サムエンや幽世に近い印象だったから
機会を頂けて嬉しい
旦那さんの言葉に成る程と頷き町を見回す

木造でも違う形のお家は見て楽しいね
噂の猫又さんに出会えたら尻尾をつい追い
手を繋いで、牽いて、牽かれて
お祭の賑わいを分けて頂きましょう

涼やかな紫陽花さんのお品
どのコも綺麗に咲いて素敵だわ…!
やっぱり一等惹かれるのは染物さんで
薄紫や緑の帯を見つけたら、
旦那さんにって気になって…
雨の日でも元気のお守りになってくれそうだわ…

突然の近距離のお声にぴゃっ…!
集中し過ぎてたわと、
きゅうと手握り直してうん、と返し
小腹さんは大丈夫?
川魚さんもあるのですって
夜までの元気補給もバッチリとね


冴島・類
【白夜】
アヤエンに来るのは、僕は二度目
その時は庶民の方々の住む村でね
雰囲気が違うなぁ
貴族さんは妖から護る戦いを続けている方々
屋敷の広さは武将の城と似た意図なのだろうね

君と手を繋ぎお祭りをぶらり
猫又さんを見かけたら
つい目で追い
ふふ、共に尻尾に誘惑されたかな

気になる子はいるかい
紫陽花さん達の青や紫は
見目涼やかだよねぇ

リティにどうかと小物に目がいき
初夏らしい彩
宵に見る楽しみが増す素敵さだが
僕の奥さんの御髪は可愛い白花が咲くから…
髪飾りより、染物や檜扇の方が合わせやすいかも

沢山歩いて少し暑くなったら
お屋敷で削り氷を楽しめるそうだよと耳打ち
行ってみる?
驚かせちゃったかな
ああ、この後に備え補給もしておこう



●手を繋いで
 すぅ、と吸い込んだ空気は少し冷たく、心地よくて。
 城野・いばら(白夜の魔女・f20406)はアヤカシエンパイアの世界にはじめましてをする。
 サムライエンパイアや幽世に近い印象の世界だったから、こうして足を運ぶ機会を頂けて嬉しいと彼女はいとしい旦那さん、冴島・類(公孫樹・f13398)へと笑み向けた。
「僕は二度目なんだけど、その時は庶民の方々の住む村でね」
 雰囲気が違うなぁとくるりと周囲を見回す類の視線をいばらは追いかける。
「こんな山の中に、本当に大きなお屋敷」
「貴族さんは妖から護る戦いを続けている方々で、屋敷の広さは武将の城と似た意図なのだろうね」
 成る程と頷き、改めて町を見回せばひとびとが明るく楽しそうな雰囲気でこの祭りを楽しんでいるのがわかる。
「さて、見てるだけじゃなくて行こう」
 そっと自然に、当たり前のように類はいばらの手をとる。指先のぬくもりにいばらも笑って、ええと微笑みを。
 ゆるりとふたり、歩む街並みはなじみがあるようで、でも新鮮なもの。
「木造でも違う形のお家は見て楽しいね」
 と、いばらが見回していると、類の視線がじっと一点に向けられて。
 なにかしら、と見れば――ゆうらり動く二尾。
 塀の上で、ほこほこと日光を浴びてご機嫌な猫又がぱたりと倒れる。どうやらお昼寝の最中のようだ。
 尻尾の動きにふたりして視線捕われたことに気付いたら笑いあう。
「ふふ、共に尻尾に誘惑されたかな」
「他にもいるかしら」
 探してみる? と改めて手を牽いて、牽かれて。
 祭りの賑わいを歩いて、さまざまなものをふたりで一緒に感じていく。
「涼やかな紫陽花さんのお品。どのコも綺麗に咲いて素敵だわ……!」
「気になる子はいるかい」
 紫陽花さん達の青や紫は見目涼やかだよねぇと類はきらきらと瞳輝かせていばらが商品に触れるのを見つめる。
 そんな彼女にどうかと、類も小物に目が向く。
 初夏らしい彩。今、この紫陽花だからこその色が並んでいる。
 彼女の淡い金糸に会うのは、なんて目で追いかけて――でも、僕の奥さんの御髪には可愛い白花が咲くから、と類の視線は髪飾りを通りすぎていく。
 髪飾りより、染物や檜扇の方が合わせやすいかも、と思っているといばらの手が染物に触れていた。
 やっぱり一等惹かれるのは染物さんと、どうぞ手にと言われて布地にふれるいばら。つるりとした質感で肌触りよく、そしてその色は薄い紫。
 ちらと傍らの旦那さんに視線向けて、似合う色といばらは思う。でもこれは着物をあつらえる反物。と、思っていれば葉の色そのままの緑が目に留まった。
 緑だけかと思えば、淡い紫も入るその帯。
「雨の日でも元気のお守りになってくれそうだわ……」
 小さな声と、笑みが零れる。これは似合う、持っているお着物にもあわせられそう、と思っていると。
「お屋敷で削り氷を楽しめるそうだよ、行ってみる?」
「ぴゃっ……!」
 突然の近距離、耳元でのささやきにいばらは吃驚。
 驚かせちゃったかなと類が紡げば集中し過ぎてたわと笑って、手をきゅうと握り直しうん、と返す。
「小腹さんは大丈夫?」
 と、ふわと香る良い匂いにいばらは気付いて。
「川魚さんもあるのですって」
 夜までの元気補給もバッチリとね、と――言っていると。すると足元に気配。
 にゃあ、と猫又が一声鳴いて、ちょこちょこと歩いては振り返る。まるでついてくると良いというように。
「リティたちにおすすめの川魚を教えてくれるのかしら?」
 なら、このあとについていくしかない。
「ああ、この後に備え補給もしておこう」
 猫又のおすすめの川魚のもとに。案内のお礼をしなければいけないね、と類が紡げばそうねといばらが頷く前に、そのとおりとにゃあと一声。
 その鳴き声に瞬いて、顔見合わせて笑うのは同時。ふたり、繋いだ手は楽しそうに揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と

先日一目惚れした平安貴族様を銀の雨降る世界へお誘いした身、愛しの光る君と今度はアヤカシエンパイアでデートできるなんて夢みたい…!夢じゃないですわよね?
あの…腕組んでも良いでしょうか?ああでも、昼間からくっついて歩くなんてはしたないかしら、頼典様の立場もあることですし…
宜しいのですか、では遠慮なく!(両手でがっつりしがみつくスタイル)

紫陽花の花言葉ですの?『移り気』というのは有名ですけれどたしか他にも色々ありましたわよね、七変化する花色のごとく…
まあ…!白紫陽花には「一途な愛」という花言葉もありますのね。
白紫陽花の髪飾りをわたくしに?嬉しい…!
頼典様、大好きですわ!


八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と

異なる世界ではミルナ様からのお誘いで楽しい一時を過ごせた
そのお返しとして何だけど、今度はボクから|逢瀬《デート》をお誘いしよう
慣れない世界で不安かもしれないし、ボクが案内しながら紫陽花の市の散策を…腕を組みたいと?

そうだね…従一位としての|頼典《ボク》は今、宮中に居る事になっていてね
転身式神と優秀な部下が政務代行をしてるし、この場に居るのは忍び名であるライデン
だから、こうして腕を組むのは歓迎さ

ところで、紫陽花の花言葉は知ってる?
「移り気」だけど、色が違えば意味は変わってね
白い紫陽花は「一途な愛」
白紫陽花の髪飾りを受け取ってくれるなら…キミの美しい髪に差してもいいかな?



●その白き色の
 一目惚れ――ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)は恋をしていた。
 先日であった平安貴族、八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)に。
 ミルナは先日、銀の雨降る世界へ彼を誘った。その楽しいひと時――そのお返しとして、今度は頼典からのお誘いがあったのだ。
 逢瀬デート――その響きだけで幸せいっぱい。
 愛しの光る君と今度はアヤカシエンパイアでデートできるなんて夢みたい……! とミルナの胸はどきどきでいっぱい。
 でもはっとする。
「夢じゃないですわよね?」
 ちらと視線を傍らに。頼典はこれから散策するのは紫陽花の市で、と説明をしてくれている。
 その横顔も素敵と思いながら、そろりとミルナは尋ねる。
「あの……腕組んでも良いでしょうか?」
 するするとどのような場所か説明していた言葉がぴたと止まって。
 頼典はミルナを見詰める。
「……腕を組みたいと?」
「ああでも、昼間からくっついて歩くなんてはしたないかしら、頼典様の立場もあることですし……」
 この世界で頼典は地位のある者で。腕を組んで歩いていたりしたら噂になってご迷惑をかけてしまうのではとミルナは思う。
 頼典はそんな、少し考えこむ様子に笑み零して。
「そうだね……従一位としての頼典ボクは今、宮中に居る事になっていてね」
 転身式神と優秀な部下が政務代行をしてるし、この場に居るのは忍び名であるライデン――そう、紡いだ。
「だから、こうして腕を組むのは歓迎さ」
 どうぞ、と腕を差し出す頼典。その言葉にミルナの表情はぱぁっと花咲くように綻んで。
「宜しいのですか、では遠慮なく!」
 両手でがっつりしっかり、ミルナはしがみついた。こんな機会は逃してはいけないから。
 でもそれも頼典は受け入れて、あちらに行こうかと示す。
 それは紫陽花の咲き誇る道だ。綺麗に紫陽花が咲く花の道をいとしの君と一緒に歩けるなんて、とミルナは舞い上がる気持ちでいっぱい。
「ところで、紫陽花の花言葉は知ってる?」
「紫陽花の花言葉ですの?」
「『移り気』というのは有名ですけれどたしか他にも色々ありましたわよね、七変化する花色のごとく……」
「『移り気』だけど、色が違えば意味は変わってね」
 その通りと頼典はいって、例えば――と傍に咲く紫陽花へとそっと触れた。
「白い紫陽花は『一途な愛』」
 その紫陽花の色は、白。
「まあ……! 白紫陽花には『一途な愛』という花言葉もありますのね」
 そう、だからとそっと懐から頼典はあるものをとりだし、ミルナへと見せる。
 それは白紫陽花の髪飾りだ。今、手にしそれを見せているのは、見ているのはミルナだけ。
 だからその意味が解らぬことなんてない。
「白紫陽花の髪飾りをわたくしに? 嬉しい……!」
「白紫陽花の髪飾りを受け取ってくれるなら……キミの美しい髪に差してもいいかな?」
 ええ、勿論! とミルナは微笑む。お願いしますと待つ彼女の青い髪へ。
 ふれた髪は思っていたよりも柔らかで、頼典はそっと、優しく髪飾りを挿した。
 ミルナは挿してもらった髪飾りに触れて。
「頼典様、大好きですわ!」
 今日一番の花咲く笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

華やかな祭りもよいが
静かな山道を辿り二人きりの世界を楽しむのもよい
私の巫女の髪に揺れる私が贈った紫陽花の髪飾り
可憐だと満足気に頷く

見事な紫陽花だ
儚くうつろう色彩はまるで万華鏡のようだ
……心変わり、か
うつろいや浮気心といった花言葉もあるのだったか
…掴みどころがない故によりいっそう目が離せないのやもしれぬ
あわいに染まる花を傷つけぬように優しく触れ

甘い蜜のかき氷も実に美味であった
その心こそが嬉しいな
サヨ、紫陽花の雫は飲まぬように
美味しそうだけれど

この紫陽花は桜色でまるでサヨのようだ
赤い紫陽花は見たことがないが…見つかったら嬉しいね

笑み交わして山道を行く
うつろう事のない
こんな時間が──愛おしいな


誘名・櫻宵
🌸神櫻

髪に咲くのは桜の他に、祭りで買ってもらった紫陽花の髪飾り
しゃらり揺らして機嫌よく、傍らの神へと言葉を紡ぐ
紫陽花が綺麗に咲き誇っているわね、カムイ
春は桜、梅雨は紫陽花……私、紫陽花も好きなのよ
儚くあわいにうつろう、色彩の美しいこと
ころりと色をかえるのは心変わりの様のようでいっそ、いじらしいと思わない?

屋敷で食したかき氷、優しく甘やかな蜜も美味しかったけれど……葉に花に、滴る雨雫だって、まるで宝石のようで美味しそうよね
なんて、笑いながら紫陽花を楽しむわ
あら、本当
この紫陽花は私のような桜色だわ
カムイみたいな、赤みの強い紫陽花もあるかしら?

こういう風景やゆるりとした時間も…大切に守りたいものね



●共に紡ぎ歩む
 笑みが零れる。髪に咲くのは桜の他に、祭りで買ってもらった紫陽花の髪飾り。
 歩けばしゃらりしゃらりと揺れて、誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)の心は踊り機嫌よく傍らへと声向ける。
「紫陽花が綺麗に咲き誇っているわね、カムイ」
 櫻宵が声向けた相手、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)の視線は自分が贈った髪飾りが揺れるのを見詰めていた。そして可憐だと満足気に頷いていた時に掛かった声。
 華やかな祭りもよいが、静かな山道を辿り二人きりの世界を楽しむのもよい――そう思いながら返す言葉。
「見事な紫陽花だ」
 さまざまな、色を見せる。緩やかに山を染めるその色にふたつと同じ色はない様に見えた。
「春は桜、梅雨は紫陽花……私、紫陽花も好きなのよ」
 儚くあわいにうつろう、色彩の美しいこと、とそっと櫻宵の白い指先が紫陽花を撫でていく。
 同じようで違う色の連なりが、また新たないろ、いや世界を紡ぎだそうとしているような。
 儚くうつろう色彩はまるで万華鏡のようだとカムイは紡いで。
 すると櫻宵はそうねぇと少し、考えて。
「ころりと色をかえるのは心変わりの様のようでいっそ、いじらしいと思わない?」
「……心変わり、か」
 紫陽花にはうつろいや浮気心といった花言葉もあるのだったかとカムイは思い出す。
 でも、自分の心はうつろうとは思えなくて。
「……掴みどころがない故によりいっそう目が離せないのやもしれぬ」
 カムイも、あわいに染まる花を傷つけぬように優しく触れて。
 そのゆびさきを、今度は櫻宵が追いかけるように見つめていた。
 ふるりと、葉の上の雫がゆびさきにふれてつるりと落ちていく様が櫻宵の瞳に映った。
「屋敷で食したかき氷、優しく甘やかな蜜も美味しかったけれど……葉に花に、滴る雨雫だって、まるで宝石のようで美味しそうよね」
「甘い蜜のかき氷も実に美味であった」
 うん、とカムイも思い出し頷く。その心こそが嬉しいなとカムイは思いながら――
「サヨ、紫陽花の雫は飲まぬように、美味しそうだけれど」
 飲むとは思わないけれど、でもその花に櫻宵が顔を近づけたならちょっと心配で。
 そんな様子に櫻宵は笑って。本当に綺麗ねとゆっくり一歩ずつ進みながらこの光景を楽しんでいた。
 と、カムイの瞳はその色を捕まえて――自然と表情は緩む。
 そして、こちらへとその花の傍まで櫻宵を導いた。
「この紫陽花は桜色でまるでサヨのようだ」
「あら、本当」
 この紫陽花は私のような桜色だわと櫻宵はくすぐったそうに。でも自分に似た色だけでは、満たされない。
「カムイみたいな、赤みの強い紫陽花もあるかしら?」
 あっちは……どちらかというと赤紫でちょっと違うわね、とくるりと視線回して探す櫻宵。
「赤い紫陽花は見たことがないが……見つかったら嬉しいね」
 そのような紫陽花はあるだろうか。こんなに沢山あるのだからもしかしたら、と思える。
 だから、その色を探しにふたたび二人は歩む。
「こういう風景やゆるりとした時間も……大切に守りたいものね」
「そうだね」
 うつろう事のない、とカムイは瞳細めて。
「こんな時間が──愛おしいな」
 こうして、共に歩み、共に同じものを見て、同じことをすることが。なによりも、と笑み交わして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

紫陽花、毎年見ても美しいですね
僕も好きです
家族団欒は素敵な言葉ですねぇ
彼女と手を繋ぎ歩く
店の紫陽花はまた違った魅力ですね
おや?川魚の串焼きですか
香ばしくて美味しそうな匂いがします
では買ってみますか?
小骨があるので本当なら骨を除いて彼女にいつも料理をして差し上げるのですが
これも勉強、此処は心を鬼して

一番食べやすいのは魚を横にして背中をかぷりと食べる事ですね
お腹は内臓があるので苦いです
ふふっ、美味しくてよかった
僕?僕は頭からぱくっと食べてもぐもぐ
頭から全部食べますね
僕の歯は鋭いので骨も食べれますよ

彼女が紫陽花の飾りなどを見て回っている
その間にこっそりと紫陽花の花で染めた布を購入した
これは後々彼女にサプライズを
彼女が戻って来て、何だか嬉しそうだ
しゃがむ?言われた通りにしゃがんで彼女の目線に合わせる
胸元に綺麗な花が咲く
おやおや、これは素敵な
ありがとうねぇ
ではお返しに硝子の紫陽花で作った簪をそっと彼女の髪に飾る

ルーシーちゃんもとても可愛くて綺麗ですよ
お揃いの紫陽花にほっこりとする


ルーシー・ブルーベル
【月光】

アジサイ!ルーシーだいすき
ふふー、パパも好き?
元々好きだけれど
家族団欒って花言葉を知ってもっと好きになったの
パパと手を繋いで町中を通る
お店の中にもたくさんのアジサイがあるね
ええ本当、可愛かったりおいしそうだったり!
と…わ、わわ
これは川のお魚の串焼き?そのままの姿で焼いてる
どうやって食べるの?
うん、食べる!

パパのお話を聞いて
ええと、横にして背中を…ここかしら?いただきます!
熱ッ…!でも、…美味しい!
お腹…少し齧ると確かに苦い!これが大人のお味?
ね、パパも食べて
パパはお腹も食べるのかしら…えっ
えっ、頭から?骨は!?

ふと目に入ったのは小さな、つまみ細工のアジサイ簪
白や黄なり、水色に紫
淡くも鮮やかに色づくそれ
見つけたら手放せなくなってしまって
すみません、これ下さいな!

パパ、しゃがんで下さる?
ブートニアの様に簪を胸元へ飾る
ふふー!とても似合っててステキ!
パパからも頂けるの?わあ…ガラスのアジサイだわ
とてもキレイ…ありがとう、パパ!

パパにそう言ってもらえると嬉しいわ
お花もお揃いで更に嬉しい!



●こころ満たされて
「紫陽花、毎年見ても美しいですね」
 様々な色が移り変わりを見せる――朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)はその色を自分の目に移して、微笑みを向ける。
「アジサイ! ルーシーだいすき」
 くるりと回ってルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)はユェーを見上げる。
「ふふー、パパも好き?」
「僕も好きです」
「元々好きだけれど、家族団欒って花言葉を知ってもっと好きになったの」
「家族団欒は素敵な言葉ですねぇ」
 どちらともなく、手を繋いで。町中をルーシーとユェーは歩む。
「お店の中にもたくさんのアジサイがあるね」
「店の紫陽花はまた違った魅力ですね」
「ええ本当、可愛かったりおいしそうだったり!」
 咲き誇る紫陽花とはまた別の魅力。ルーシーはどれにも輝いてみえる。
 と、ふわとユェーの鼻をくすぐる香り。
「おや? 川魚の串焼きですか。香ばしくて美味しそうな匂いがします」
「と……わ、わわ」
 その店を見つけて、ルーシーはぱちりと瞬きじっと見つめた。
「これは川のお魚の串焼き? そのままの姿で焼いてる」
 どうやって食べるの? とルーシーはユェーを見上げ尋ねる。ユェーはふふと微笑んで。何よりも体験してみるのが一番と。
「では買ってみますか?」
「うん、食べる!」
 焼きたての川魚。小骨があるから、本当なら骨を除いてルーシーに出したい。いつも自分が料理するときはそうしているから。
 けれど――これも勉強、と此処は心を鬼にしてとユェーはルーシーへと渡す。
「一番食べやすいのは魚を横にして背中をかぷりと食べる事ですね」
 と、こんな風にと持ったふりしてみせる。そして、お腹は内臓があるので苦いですともう一つ付け加えてユェーはルーシーを見守ることに。
「ええと、横にして背中を……ここかしら? いただきます!」 受け取った魚を横にして、背中側を口のほうへ。最初の一口はどきどきのひとくち。でもはぐ! と思い切って大きく。
「熱ッ……! でも、……美味しい!」
 ぱりっとした皮。でも身はふっくらしていて塩加減も絶妙。
「ふふっ、美味しくてよかった」
 そしてルーシーは川魚のお腹を見つめる。
「お腹……」
 そこを齧るのはちょっとだけ勇気がいる。先に苦いと聞いているから。でも、折角だからとぱくと控えめな一口。
「! 確かに苦い! これが大人のお味?」
 ちょっとだけ大人になった気分のルーシー。でも自分だけでなく、ユェーにも美味しいのを味わってほしくて。
「ね、パパも食べて」
「ええ、僕もいただきますね」
 パパはお腹も食べるのかしら……と、思いながら見つめていると。
「……えっ」
 ユェーは頭からぱくっと。そのままもぐもぐと食べ進んでいく。
「えっ、頭から? 骨は!?」
「僕の歯は鋭いので骨も食べれますよ」
 そんなユェーをすごい……! とルーシーは見上げる。
 ルーシーももっと大きくなったら頭から食べれるかしらなんて思いながら。
 そしてお腹いっぱいになったら、いろんなお店を見て回るのがまた楽しい。
 ふと、ルーシーの目に入ったのは小さな――つまみ細工のアジサイ簪だった。
 白や黄なり、水色に紫と淡くも鮮やかに色づくそれ。
 見つけてしまったらもう手放せなくなってしまう。まさにひとめぼれ、というところ。
「すみません、これ下さいな!」
 ルーシーが髪飾りを見ている間に、ユェーもこっそり紫陽花の花で染めた布を買い求めて。これは後々、彼女にサプライズのつもり。
 買った簪を手にルーシーがにこにこと笑顔で戻ってくる。
 何だか嬉しそうだと、ユェーが思っていると。
「パパ、しゃがんで下さる?」
 しゃがむ? と思いつつルーシーの目線に合わせて膝を付けば、彼女の手がそうっと胸元へと向く。
 ブートニアのように簪を、飾れば――満面の笑み。
「ふふー! とても似合っててステキ!」
「おやおや、これは素敵な。ありがとうねぇ」
 ではお返しに、と硝子の、紫陽花の簪をユェーはルーシーへ差出した。
「パパからも頂けるの? わあ……ガラスのアジサイだわ」
 わぁ、とルーシーはぱちぱち瞬いて。
「とてもキレイ……ありがとう、パパ!」
 その笑みによかったと微笑んでユェーはルーシーの髪へと簪を。
「ルーシーちゃんもとても可愛くて綺麗ですよ」
 パパにそう言ってもらえると嬉しいわとルーシーはふふりと微笑んで、そしてユェーの胸元を見る。
 ユェーはその視線を追って、お揃いですねと紡いだ。
「うん! お揃いで、更に嬉しい!」
 花咲く笑みがやわらかに。
 こころはほっこり、幸せに満ちて。ふたり手を繋いでまた歩む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『大妖怪『仁兵衛』』

POW   :    招来白魂 《先制UC》
【白魂(倒させると武器と服が消滅)が消滅撃】を放つ。他のユーベルコードと同時に使用でき、【UC濁炎とUC神羅闇を発動し状態異常回復】効果によってその成功率を高める。
SPD   :    濁炎 《先制UC》
【必中無効化濁炎(一時的に猟兵の力を失う)】を放つ。他のユーベルコードと同時に使用でき、【UC招来白魂とUC神羅闇を発動して神眼の】効果によってその成功率を高める。
WIZ   :    神羅闇 《先制UC》
【自身を神越速にし敵のUCと神秘無効化の力】を放つ。他のユーベルコードと同時に使用でき、【UC招来白魂とUC濁炎を発動し体力回復の】効果によってその成功率を高める。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は西恩寺・久恩です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 紫陽花の咲く斜面――その少し離れた場所に妖の裂け目が開かれた。
 大妖怪『仁兵衛』はその裂け目より顔をだし、そしてにたりを笑う。配下の妖たちを連れだって、存分に暴れてやろうと思っているのだろう。
 そして目を付けたのは寝殿造の屋敷。
 けれど、妖が現れる事を屋敷の者達は知っていた。だから裂け目より妖あふれ始めたならもう戦いは始まっている。
 配下の者達は屋敷の者達が引き受けている。
 猟兵たちには大妖怪『仁兵衛』の討伐が託された。
 紫陽花のもとへたどり着く前に、妖たちに踏み荒らさせはせぬというように、戦いが始まる。
葦原・夢路
WIZ
雅を解さぬ不届きものにはそうそうおかえりいただきましょう。
美しき紫陽花達を散らすわけにはいきませぬもの。
ですが…敵とわたくしの相性は良くありませんね。
UC「まぼろしの歌詠み」が通じるなら良いのですが…。
そうなってしまってはわたくしには他の方のご武運を祈る事しかできませんね。



●その花を守るべく
 雅を解さぬ不届きものにはそうそうおかえりいただきましょう、と葦原・夢路(ゆめじにて・f42894)は袖口でそっと口元隠して、静かに現れた敵を見る。
 大妖怪『仁兵衛』――大きな二本の角、そしてその口も大きく牙が並んでおり、いかにもといった様相だ。
 あのまま進めば、紫陽花の咲き誇る場所を踏み荒らすのは間違いない。
「美しき紫陽花達を散らすわけにはいきませぬもの」
 その言葉に花神たちは同意を示す。同じ花であるのだ、自然に散りおちるならそれは節理の内。しかし踏み荒らされ散らされていくのは見過ごすことはできぬと。
「ですが……敵とわたくしの相性は良くありませんね」
 見て、そう感じる。けれど何も出来ぬわけではない。通じれば良いのですが、と夢路は思いながらもそれを展開する。
「夢を見せましょう――」
 しばしの間でもいい。惑えばそれで良い。からくり屋敷を仁兵衛の周囲に広げ包み込む。突然のことに仁兵衛も動揺はしているようだ。
 夢路のからくり屋敷が動いて、仁兵衛を罠にかけ痛みを与えていく。
 このからくり屋敷をもし、壊されたり脱出されたなら――そうなれば、わたくしには他の方のご武運を祈る事しかできませんねと思いながら夢路は敵をまぼろしの中に捕らえた。
 仁兵衛は暴れる。神越速にてからくり屋敷の中を走り回りやがて屋敷を突きぬけて、体力を回復していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

武富・昇永
来たか妖ども!山の幸で腹を満たし紫陽花で心を癒して心身ともに万全な状態な俺の勲功となるがいい!
ふむ、敵の親玉はかなりの強敵のようだな
これだけ大きな屋敷を狙うのだから
それに応じた強さの敵が現れると睨んだが的中したようだ
これを討ち取れば大手柄は確実!
ふふふ、滾ってきたぞ!

({転身式神・多忙冠者}を召喚すると『欲望解放』であふれた出世欲を注ぎ『存在感』を強化することで囮にしつつ{思業式神・出世魚ハマチ}による攻撃と{護廷式神・出世魚ブリ}の防御で敵の目を自分からそらす)
青天井の昇り鯉!武富・昇永!この一撃に全てを懸ける!いくぞ!
(多忙冠者が攻撃されたと同時にUC【出世道・功名一番槍】で突撃する)



●欲を満たすべく
「来たか妖ども! 山の幸で腹を満たし紫陽花で心を癒して心身ともに万全な状態な俺の勲功となるがいい!」
 現れた仁兵衛が連れた妖たちをしゅばっと倒しつつ武富・昇永(昇鯉・f42970)は距離詰める。
 そして目にして――勢いよく進んでいたその足を止めた。
「ふむ、敵の親玉はかなりの強敵のようだな」
 これだけ大きな屋敷を狙うのだからそれに応じた強さの敵が現れると睨んだが的中したようだと昇永は口端を上げる。
 そう、これは狙い通り――不敵に昇永は笑ってみせる。
「これを討ち取れば大手柄は確実! ふふふ、滾ってきたぞ!」
 転身式神・多忙冠者でもう一人の自分を生み出せば、欲望を解放しあふれる出世欲を注ぎ存在感を増して。
 すると、仁兵衛の意識は昇永の姿した式神へと引き寄せられる。
 思業式神・出世魚ハマチが攻撃を、そして護廷式神・出世魚ブリが式神を防御して。
 仁兵衛は 白魂を招来し、その攻撃を掻い潜り昇永の式神へと消滅撃を放った。
 にたりと仁兵衛は笑う――それはひとり仕留めたと思ったから。
 しかしそれは式神だ。その身が砕けたと同時に、本物の昇永が仕掛ける。
「青天井の昇り鯉! 武富・昇永! この一撃に全てを懸ける! いくぞ!」
 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!
 そう、高らかと声上げれば仁兵衛も気付く。しかし仁兵衛が攻撃しようと動くよりも、早く。
 穂先のように鋭くなる銀色のオーラを纏って昇永は飛翔する。
 あの敵を倒せば出世――ぶわと膨らむ欲に比例してその力は高まるばかり。
 仁兵衛の身を貫いて、そして飛翔すると同時にその身を貫いた。仁兵衛がその一撃に態勢を崩す。身体に傷を負わせたものの、仁兵衛はそれを塞ぎ体力を回復していく。
 それが出来なくなるまで戦うしかないのかと昇永は零すが、そんな大物を仕留めたとなれば――と一層欲は高まっていく。
 ここで負けることはあってはならんな、と昇永は出世欲を満たすべく再び攻撃をかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
愛しの君の朔兎様{f43270)と参加

むむ、真っ直ぐに強烈に感じる強烈な邪気・・・朔兎様、気をつけてください。その威圧感は確実に先手を取られます。まずは備えましょう。

は、早いです・・・【オーラ防御】【幻影使い】【変わり身】【残像】!!なんとかしてまともに喰らうのを避けます!!たとえふっとばされても【回復力】で持たせながら、式神に受け止めてもらいます!!

神秘無効化。守護の神楽衣装を展開できればいいですが、頼りにするのは危険ですね。なにより朔兎様が危険なので、調律の弓を【限界突破】の力で力一杯引き絞り、しっかり【精神集中】。【破邪】【破魔】の必殺の矢を!!

はい、大丈夫です。後はお任せしましょう。


源・朔兎
愛しの姫の星羅(f42858)と参加

うわ、わかりやすいぐらい殺気と妖気がおおきすぎる!!威圧感だけで凄いとは。うん、確実に先手とられるな。これ。凌いでも、辛そうだ。

うう、この攻撃やばいぞ!!【幻影使い】【変わり身】【残像】【迷彩】【第六感】!!くらってもその攻撃を【瞬間記憶】で覚え、【カウンター】【引き裂き】確実に痛手を返してやる!!

ああ、愛しの姫の前で屈してなるものか!!【回復力】【根性】【継戦能力】で踏ん張るぞ!!こいつ、強いから俺と星羅は長く戦えないな。せめて一矢報いて次に繋げるぞ!!

いざという時は【式神使い】で式神にフォローしてもらう!!後は頼む!!



●ふたりで共に戦えば
 その妖の存在感に神城・星羅(黎明の希望・f42858)はきゅっと表情引き締めて源・朔兎(既望の彩光・f43270)の前に立つ。
「むむ、真っ直ぐに強烈に感じる強烈な邪気……朔兎様、気をつけてください」
「うわ、わかりやすいぐらい殺気と妖気がおおきすぎる!!」
 威圧感だけで凄いとは、と朔兎も緊張する。
「ん、確実に先手とられるな。これ。凌いでも、辛そうだ」
 的確に敵と戦えば自分たちがどうなるかをすぐさまに感じて朔兎は紡ぐ。星羅もはい、と頷いて出来ることをすべく動いた。
「その威圧感は確実に先手を取られます。まずは備えましょう」
 敵に攻撃を受けた時の対策として、護りをかため、幻を纏いその身を貫かれぬように気を付けて――それでも、仁兵衛は狙ってくる。
「は、早いです……!」
 神越速にて、纏う神秘をはがしてしまう仁兵衛。星羅も守りもそれとみなされ崩されていく。けれどまともに喰らうのを避けて、星羅は仁兵衛に対する。攻撃がくる。その腕を振るうだけの一撃に吹き飛ばされるが、式神が受け止めて星羅は踏みとどまった。
 けれど、戦っているのは一人ではないから。
 その間に朔兎が入り次の攻撃を受けた。変わり身を持ってそのダメージを受けずにかわす。けれど何度もは続かなさそうだ。
「うう、この攻撃やばいぞ!!」
 仁兵衛が招来した白魂が放つ消滅撃から逃れて、朔兎はその攻撃を覚える。覚えれば、次の回避もしやすくなる。そして確実に痛手を返すチャンスとが作れるはずと朔兎は動く。
 けれど、やはり攻撃が強力なのは間違いない。
 神秘無効――それがなかなか、厄介で。
「守護の力を!!」
 ただ一時でも良い。神楽衣装纏えば攻撃となる音波と、傷を癒やす鳥の羽が舞い踊る。
 そしてなにより、今とどめている朔兎が危険と調律の弓を己が持つ限界まで――いや、それ以上の力を持って引き絞り、集中する。
 朔兎もその時が来るまでと、重い一撃を仁兵衛へと仕掛けた。
「さて、必殺技だ!!」
 双剣による斬撃波を仁兵衛へ。仁兵衛が反撃をかけてくるが、それを受けても朔兎は倒れない。
「ああ、愛しの姫の前で屈してなるものか!!」
 そして――集中を極限まで高め破邪と破魔の力を乗せ、必殺の矢を星羅は放った。
 仁兵衛を貫いて、しかしその傷が塞がっていく。
「こいつ、強いから俺と星羅は長く戦えないな」
 朔兎は星羅の傍に戻り、でもまだ戦えるなと確認する。
「はい、大丈夫です。後はお任せしましょう」
「せめて一矢報いて次に繋げるぞ!!」
 あともう一撃。危なくなれば式神にフォローしてもらいながら、出来る限り仁兵衛を削っていくだけ。
 強敵との戦いは、引き際を見極めつつ星羅と朔兎を成長させる一戦ともなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

弓弦葉・晴周
【晴辰】

…やはり違いますね
そう微か漏らすも妖見遣り

力奪う炎ですか
身に浴びねば問題ありますまい
敵が先に技を放つならばと、三種の神器の八咫鏡を無限複製
数多成した鏡で必中の炎を全て受けましょう

残念ですが、貴方の攻撃は届きませんよ
私にも、辰之丞にも

それに、遅いですね
同時発動の技で神越速とやらになったのかもしれませぬが
私の弟子はもう疾うに動いておりますゆえに

辰之丞は、私が確りと鍛えましたからね
敵を確実に捉え打つでしょう
頼もしい愛弟子です、と微笑み声向けつつ

この妖討伐は主からの任、気合も入っているでしょう
従者として、その気持ちは私もよく分かりますよ、ええ
そう笑み乍ら、神器の草薙剣を数多敵へと降らせましょう


冷泉・辰乃丞
【晴辰】

妖を祓うのは陰陽師のつとめ
それに主の予知した案件であり、先生と共にとなれば
自然と気合充分

敵の手の内は尭暁様からお聞きしている
先制攻撃への対処は、結界術施し、霊符や式神放ち相殺
防げぬものがもしもあれば素早く回避

先生の鏡にも守っていただきつつ
先生の成す神器に敵の気が向いている隙に
大きく地を蹴り前へ出て素早く接敵

私は優秀な拳士でもありますから
敵が神越速を得ても、動き出すその前に既に此方は動いている
青龍の気を宿し、放つは神速の蹴り
清浄なる青龍の光纏う拳を叩きつける

先生の声に、更に胸の内でやる気になりつつ
優秀な陰陽師として、拳士として
そして先生の弟子として、何より尭暁様の従者として
妖を全力で祓う



●師弟の戦い
「……やはり違いますね」
 ため息のように弓弦葉・晴周(月に焦がれる・f43172)は微かに零す。それは分かっていた事ではあり落胆する必要さえない事だったが改めて確認するように、妖を見遣った。あれは求める妖ではないと。
 そして自分の前にたつ冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)の視線を向ける。
 妖を祓うのは陰陽師のつとめと辰乃丞は知っている。
 それに今回の件は辰乃丞の主が予知した案件であり、師たる晴周と共にとなれば、自然と気合も満ちる。仁兵衛を前にしても恐れることなどないといった様子だ。
 仁兵衛がどのような動きをするか――辰乃丞は知っている。主が語ったからだ。
 敵が迫りくる――けれど結界術を施し、霊符放てばそれが攻撃を受けて砕け散る。
「先生」
 そして晴周は、仁兵衛が宿らせるものを見ていた。
 仁兵衛が纏う濁炎は、一時的に猟兵の力を失わせるものであり、他の攻撃も同時に行えるというもの。
 弟子のわずかの戦いから、晴周はあらゆることを読み取っている。
「力奪う炎ですか」
 敵が先に技を放つならば三種の神器、八咫鏡を晴周は無限複製していく。
「残念ですが、貴方の攻撃は届きませんよ。私にも、辰乃丞にも」
 炎が放たれたならその八咫鏡を指先一つで操って濁炎の前に並べ全て受け切ってしまう。その様を目に、やはり先生はすごいと辰乃丞は思う。
 しかしただ見ているだけなんてことはなく、大きく地を蹴り辰乃丞は駆ける。
 先生の成す神器に敵の気が向いている隙に――その動きを仁兵衛は見ていない。
 何故砕けぬというように八咫鏡へ濁炎を向けるがいくつも重ねられたそれは減っているようには見えない。
 晴周の表情は何一つ変わらず、ただたんたんと仁兵衛へと紡ぐのは。
「それに、遅いですね」
 私の弟子はもう疾うに動いておりますゆえに――と、視線一つ。
 先生の鏡にも守られているのだから、ここは決めねばならぬところと辰乃丞は肉薄する。
「私は優秀な拳士でもありますから」
 超越速を得ても、動き出すその前に辰乃丞はすでに詰めている。
 装甲はないが、その肉の強度は落ちるだろう。五芒星の霊符が閃いて仁兵衛に張り付いた瞬間、青龍の気を宿し放たれる神速の蹴りがその頭を地面へと打ち落とす。
 そして脚だけでなく、拳にも青龍の光を纏わせて――よろしい、というように晴周は頷く。
「辰乃丞は、私が確りと鍛えましたからね」
 確実に捉え打つと、見ずともわかる。
 頼もしい愛弟子です、と微笑み声向ければ――握る拳にもさらに力が入るというもの。
 辰乃丞の拳は仁兵衛の内部へと衝撃響かせ確実に痛手とする。
 優秀な陰陽師として、拳士として――そして、晴周の弟子として、何よりかの君の従者として。
 全力で祓うのだと、辰乃丞の全力が向けられた。
 その一打に一層、晴周の瞳は細められる。
 この妖討伐は主からの任、気合も入っているでしょうと響く鈍い音にその威力を感じていた。
「従者として、その気持ちは私もよく分かりますよ、ええ」
 それは己も使える主がいたから――そう笑み零しながら草薙剣を連ねる晴周。
 辰乃丞が仁兵衛より離れたその瞬間、無常なる剣の雨が降る。苦し紛れのように放たれた濁炎をも貫いてその剣は鈍らない。
 受ける攻撃に耐えられず仁兵衛が背を向け逃げる。その様に、まぁこの程度の妖でしょうねと晴周は見切っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
【白夜】

そうだね
あの猫又さんや
紫陽花を楽しみにしてる子らの想いも
踏みにじらせぬよう、共に

不気味さすら感じる相手の笑みに
放つ術警戒
初手は瓜江と共に前へ

刀構え妖の気を引き…誘導
動きの瞬間を見切り
先手の炎は避けられぬとしても
瓜江の鉄扇でかばい受け
術の効果を
自分と、力編む彼女に
無効化の影響及ばぬよう守りたい

次手へ繋がせないと伸びる茨
阿吽の呼吸と
僕らには守護となる枝から
想いが伝わり頼もしく
君の通せんぼは、護りのかいなだ

リティの行動妨害で
攻撃にずれや隙が生まれたら
逃しはしない
刀から放つ旋風で
大妖怪本体のみ引き寄せ
(白魂への攻撃は避け)
破魔の力込め斬る

多彩な技手繰ろうと
僕らにも
託し合う信という武器があるから


城野・いばら
【白夜】
愛称:リティ

随分と技自慢の妖さんのよう
けれど、二人も一緒だからきっと
お利口さんな猫又さん、
このお屋敷に住まうコ達の為にも、引けないの

私の出番は二人の後
大きな背の後方に控え、
先制攻撃を二人が引き受けてくれたなら
UCを全力全開、今度は私が二人の前へ
作ってくれた機は逃さないの

距離を取られる前に、
眠りへ誘う茨を伸ばし捕縛
強力な技を、次の手を遮る茨の森となれ
怪力籠め掴んだ茨から生命力吸収し、
体力を奪い眠り速度を上げていくわ
攻撃を狙うのは妖さんだけに定め
素早く駆ける術も、
入り組んだ茨の中は動き難いでしょう

行動阻害する茨は二人を護る揺籃にも
二人が私を守り信じてくれるように
リティも二人を信じ、守るから



●共に託して、託されて
 紫陽花の咲く斜面へと向かい仁兵衛がやってくる。その姿はすでに傷をいくつもおい、完全な様ではないようだ。
 それでも、油断はいけないと静かに対する。
 濁炎、そして白魂を周囲に揺らめかせるその姿に、随分と技自慢の妖さんのようと城野・いばら(白夜の魔女・f20406)は零して。
 けれど、二人も一緒だからきっと、と冴島・類(公孫樹・f13398)と瓜江へと信を寄せる。
「お利口さんな猫又さん、このお屋敷に住まうコ達の為にも、引けないの」
 いばらは真っすぐ、仁兵衛を見据える。その表情を横目に見つつ、そうだねと類も頷いた。
「あの猫又さんや紫陽花を楽しみにしてる子らの想いも」
 踏みにじらせぬよう、共に――不気味さすら感じる相手の笑み。そして放たれる術にも警戒しつつ、瓜江と共に前へ出る類。
 その背は大きく、いばらは私の出番は二人の後とその動きから目を離さぬようにする。
 類は銀杏色の組紐飾りの付いた短刀を構え、仁兵衛の気を引く。
 敵はこちらだと意識を誘導するように動いて、仁兵衛のともした濁炎を招く。
 それに触れるか触れまいか――その瞬間、濁炎を断つように瓜江が鉄扇で庇い受ける。
 濁炎を地へ叩き落す様にかき消した。
 触れてはいない。だからその効果は類にも、そしていばらにも届いてはいなかった。
 後ろにいるいばらを、リティに影響及ばぬように守りたい――類はそう心に抱いて動いていた。
 瓜江もその心のままに動きを紡いで、今この機を逃さないと、いばらも紡ぐ。
 次の手を打たせる前に。
「此れは、呪い。此れは、祝福」
 仁兵衛へと伸ばし取り囲む眠りへ誘う茨。類と瓜江を守る様にもそれは動いて、いばらの心を類へと伝えるかのようだ。
 その茨が伸ばされたタイミングは阿吽の呼吸といえて。類と瓜江にとっては守護となる枝でもある。
 互いに伝い、伝わり、伝える想い――ふ、と類は笑み零す。
「君の通せんぼは、護りのかいなだ」
 頼もしい――そう思えば戦いの最中でもわずかに、口端に笑みが乗る。信を寄せているから。そして、その気持ちもまた、いばらに伝わっているのだろう。
 仁兵衛を捕まえて、次の手を遮る茨の森を走らせて。力強き枝が、その生命力を吸い取り体力を奪う。
 その速度があがっていく。眠りに落ちよと、したたかに。
 それを振り払おうと仁兵衛が神越速で動こうとするが、入り組んだ茨の中で思うようには動けない。悔し紛れのように茨を引きちぎることに執心して、他の事はおろそかになる。
 行動を阻害する茨は、二人を護る揺籃にもなる。二人が守り信じてくれるように――
「リティも二人を信じ、守るから」
 遮る茨によって早い動きが乱れ、精細さを失って。
 そして生まれる隙を、類と瓜江は見逃さない。
 ひゅうと鳴くのは風の音。破魔の炎を伴う旋風が仁兵衛を捉え引き寄せる。
 抗っても逃げられるその風。仁兵衛をその刃の範囲内に捕らえたなら破魔の力込め類は斬りつける。
 たとえ、仁兵衛が多彩な技手繰ろうとも、補い合えばいい。
 託し合う信という武器があるから――負ける気などしない。
 仁兵衛の身の上、類のもたらす一閃がいくつも増える。それはいばらが留め守っているからこそ。
 それを互いに、知っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸神櫻

私達を楽しませてくれた美しい紫陽花を踏み躙らせはしないわ
こういう風景やゆるりとした時間も守るのだと
かぁいい神様と約束しあったばかりだものね
いい気概ね!

勿論
カムイこそ気をつけて
妖退治と洒落こみましょう

ピリリとした殺意が心地いい
大妖怪を斬り殺せるなんて
たのしみ

纏うは桜花、生命を喰らい尽くして桜と咲かせ散らせる仙術に破魔を重ね

鶱華

私にはかぁいい神様の加護があるのだもの!
斬ることを辞める理由はない
衝撃波を薙ぎ払い、足に腕に腹に首にと舞うように蹂躙する

強ければ強いほど愉しいの!
カムイと太刀筋合わせて、傷口をえぐる
まだまだこんなものじゃないでしょ?

ふふ、悪くないわ
あなたは綺麗に咲いてくれるかしら?


朱赫七・カムイ
⛩神櫻

噫、サヨ
四季の狭間に咲く儚くあえかに美しい花々を
きみと過ごす穏やかで優しい団欒の時も何一つ、壊させはしないさ
屋敷の者達には良くしてもらった
せめてもの恩返しをしなければ

何とも面妖な力を使うようだ…サヨ、気をつけて

ひとつの禍も遺さず斬る
神速に至る動きを鈍らせるべく斬撃波に乗せて斬り裂くように捕縛の呪詛を放つ
攻撃は桜花のオーラでいなし守りサヨを庇うように前へでる

再約ノ縁結

之は神罰だ
不運を招き、そなたの思惑を潰し否定する──幾度でもだ
成功などさせない

広範囲に斬撃を薙ぎ払いサヨと太刀筋を合わせ断ち切ろう

こうして共に戦えるのは楽しいな、なんて
笑みが浮かぶのは不謹慎かな
さぁ、このまま
大妖怪を仕留めよう



●ただ重ねて舞うように
「私達を楽しませてくれた美しい紫陽花を踏み躙らせはしないわ」
 そうでしょう? と誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)は朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)へと笑む。
 噫、サヨとカムイは頷く。
 四季の狭間に咲く儚くあえかに美しい花々を――そして。
「きみと過ごす穏やかで優しい団欒の時も何一つ、壊させはしないさ」
「こういう風景やゆるりとした時間も守るのだとかぁいい神様と約束しあったばかりだものね」
 それに、とカムイは思い返す。
 あの屋敷の者達には良くしてもらったと憩いの一時を反芻して。
「せめてもの恩返しをしなければ」
「いい気概ね!」
 櫻宵は笑って、さてと仁兵衛へと桜霞の瞳を向ける。
 その身は美しいとは言い難い。裂けた口がその身に這う妖が使う術。同時に使われるそれに、カムイの足は自然と櫻宵の一歩前へと出ていた。
「何とも面妖な力を使うようだ……サヨ、気をつけて」
「勿論。カムイこそ気をつけて」
 さぁ、妖退治と洒落こみましょうと屠桜を抜き放ちその指で撫でた。
 ピリリとした殺意が心地いい――櫻宵の口端が、美しく上がる。
 ごうと濁炎を周囲に躍らせる仁兵衛。それに触れることは避けなければと櫻宵の本能が告げる。
 そう、触れなければいいだけど。
 大妖怪を斬り殺せるなんて、たのしみと嫣然と笑み零しとんと一歩を踏み出した。
 踊る様に、軽やかな一歩。桜嵐を纏った櫻宵は、一瞬にして仁兵衛へと距離詰める。濁炎も飛び越えて、生命を喰らい尽くして桜と咲かせ散らせる仙術に破魔を重ねて。
 暴風雨の如く吹き荒れる千万の斬撃と衝撃波が仁兵衛を捉える。
 その代償は己の命を削るもの――だからそれくらいでとカムイの喰桜もまた閃く。
 ひとつの禍も遺さず斬るのだと、櫻宵の斬撃波に乗せて切り裂くように駆けた捕縛の呪詛。
「―― 人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は」
 櫻宵を庇う様に前に立って、呪と災厄の禍津神であった男は仁兵衛のもたらす結果を断ち、書き換える再約の神罰を放った。
「之は神罰だ」
 ただ静かにカムイは告げる。
「不運を招き、そなたの思惑を潰し否定する──幾度でもだ」
 成功などさせないと、仁兵衛が重ねようとするすべてをカムイが断ち切る。
 そしてふふと笑い零れる。
「私にはかぁいい神様の加護があるのだもの!」
 斬ることを辞める理由はないと櫻宵は舞う様にその足に、腕に、腹に、そして首にと蹂躙する。
 どうして力が使えぬと仁兵衛が戸惑う間に、斬撃で薙ぎ払ってカムイも櫻宵と息合わせて。
 強ければ強いほど愉しいの! と櫻宵が笑う。
 そしてカムイも笑みを浮かべていた。こうして共に戦えるのは楽しいな、と視線が合う。笑みが浮かぶのは不謹慎かな、と思いはすれどそれを閉じ込めることはできない。
 心のままに、思うままにカムイと櫻宵の太刀筋は踊る。
「まだまだこんなものじゃないでしょ?」
 その櫻宵の言葉にもちろんだとあでやかに、その太刀筋でもってカムイは応える。
 さぁ、このまま大妖怪を仕留めようと。
「ふふ、悪くないわ」
 あなたは綺麗に咲いてくれるかしら? と、櫻宵の視線がカムイから仁兵衛に向く。
 獲物を捕らえる視線――斬撃が閃いてその首筋を撫でていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

勧禅寺・宗大
アドリブ連携可
さて、戦うとなって来てみたが本当に強敵のようだな。

しかも猟兵としての力を一時的に奪うらしい、
ならば…【山児】と【護邸】を呼び出して山児は【山児連撃】で
奴の攻撃の機会を封じて貰い、【護邸】には私を守ってもらうとしよう。

濁炎の一時的を猟兵の力を奪う効果で私の力が弱まっても
元は妖怪の悪行罰示の山児と鬼の護邸。
培った【荒御霊使い】の力で制御して【連携攻撃】で戦って貰えば勝機はある。そもそも護邸は私に恩義を感じて契約し、山児は妻を娶る為に私の元に下った者、ただ強引に調伏させた者達ではないので容易に裏切ると思わんほうがいい。

猟兵の前に私は陰陽師なのでね、
こっちの戦いの方が心得ているのだよ。



●縁がある故に
 ずるりずるりと、深い傷を負った仁兵衛はゆっくりと歩んでいた。
 その姿を見つけた勧禅寺・宗大(平安貴族(従四位上)の幻惑の陰陽師・f43235)は派手にやられてきたようだとその姿に思う。
 けれど――感じるものもまたあった。
「さて、戦うとなって来てみたが本当に強敵のようだな」
 あそこまで傷をおっていても、油断はできないと思える。どのように戦うのか、話は聞いてきた。
 猟兵としての力を一時的に奪うらしい――ならば、と宗大は元は人間の女を嫁にする猿の妖であった山児と、朽ちた祠より引き取った美しい鬼である護邸を呼び出す。
「山児は奴の攻撃の機会を封じ、護邸は私を守ってくれ」
 護邸は宗大に良くなついており、傍にいて守れることがどうやら嬉しいようだ。
 そして仁兵衛もまた宗大に気付いて、濁炎をまき散らし、白魂を招来しと対してくる。しかしそれは力を振り絞って――ぎりぎりで耐えているようにも見えた。
「山児よ、思い切り暴れてこい!」
 だから好機かと宗大は命じる。
 悪行罰示の山児が徒手空拳で畳みかける。
 苦し紛れのように放たれる濁炎。しかしそれが山児に届いても、何も変わらない。
 猟兵であるのは、宗大なのだから。
 宗大に届きそうになっても護邸がそれを払い散らせた。培った荒御霊使いの力で制御して、山児と護邸が連携し戦う。
 仁兵衛にとってはそれえはあり得ないような光景。どうして襲うのだ、同じ妖ではないかというような声をあげる。
 襲うのでは自分ではなく、そちらの人間だと。
 けれど、宗大はそれに笑って。
「そもそも護邸は私に恩義を感じて契約し、山児は妻を娶る為に私の元に下った者、ただ強引に調伏させた者達ではないので容易に裏切ると思わんほうがいい」
 そこに確かに縁がある。お前の言葉で易々と覆ることはないと。
「猟兵の前に私は陰陽師なのでね、こっちの戦いの方が心得ているのだよ」
 陰陽師としての戦いはやはり手慣れたもの。
 仁兵衛は防戦一方となり、そして攻撃をさらに受け引き下がることを選んで踵を返す。
 追ってもよかったが――これでいいと宗大は傍らに戻ってくる山児と護邸を労う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と

…見た目からしてなんて凶悪な…(大のお化け嫌い)
いえ、わたくしとて騎士ですもの、頼典様には指一本触れさせませんわ!

【武器巨大化】で巨大化した盾で【魔力吸収】しつつ先制UCを防ぎましょう。深海のオーラを纏わせ【オーラ防御】を施した【鉄壁】の防御はそう簡単には破れなくてよ!

先制UCを凌いだなら後は頼典様、お願いします!
捕縛とUC封じで大分楽にはなりますが…でもあまり寿命を削らせるわけにはいきません、わたくしも尾びれで高く【ジャンプ】、高所から『兜割り』の一撃を叩き込みますわ。

怖くないわけではないけれど…先ほど頂いた紫陽花の髪飾りが力をくれますの、恋する乙女は無敵なのですわ!


八秦・頼典
●WIZ
ミルナ様(f34969)と

おや、来たようだね?
ミルナ様との語らいが一時途絶えると分かっていても、逢瀬を邪魔立てされれば…やはり心が震える
いみじき妖の姿にミルナ様が恐れ慄いていられれば、ここはボクが…と思ったけど、まさかこうも勇ましい御方であられたとは

気恥ずかしさで畏まらなくていいよ
強き者は美しい
それにありのままなキミがどんな姿なのかも興味が尽きないしね?
さぁ、共に妖を討ち果たそう

ミルナ様の盾で守られたが、ボクも|平安貴族《陰陽師》の端くれ
『七星七縛符』で|妖術《UC》を封じ、いみじき再生力も抑えよう
結構身体に堪えるけど妖を倒せれば構いやしない
阿近、吽近…ミルナ様の手助け、お願いするよ?



●守り、そして傷つけさせまいと
 その妖はすでに傷を負って――足もとはふらついている様子。
 それでもまた妖としてそこにいて、目の前のものを壊そうと、滅ぼそうと動いている。
 蹂躙するはずであったのに、自分が追い詰められている――仁兵衛はそれを感じていた。
 がさがさと木々をかき分けて、痛みを感じつつ進んでいく仁兵衛の前に、猟兵がまたふたり。
「おや、来たようだね?」
 八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)の心は震える。来るのはわかっていたことだ。けれどやはり――彼女と、ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)との語らいが一時途絶えると分かっていても、逢瀬を邪魔立てされれば許せるものではない。
 視線は僅かに、鋭くなるというもの。
 そしてきゅっとミルナは頼典の服の端を握っていた。
「……見た目からしてなんて凶悪な……」
 大のお化け嫌いのミルナ。その姿はいかにもといった体で正面から対するのもはばかられるような心地がある。
 そんな、ミルナの声が聞こえて、頼典はここがボクが……と彼女を護るべく前に出ようとしたけれど。
「いえ、わたくしとて騎士ですもの、頼典様には指一本触れさせませんわ!」
 けれど、続く言葉は勇ましく。お化けのようであっても頼典に触れさせるわけにはいかないとミルナは奮い立つ。
 その姿にまさかこうも勇ましい御方であられたとは……と思わずぱちりと瞬いた頼典。
 けれど騎士としての姿を彼に見せていいものかと微かに躊躇いもある。だが頼典は笑み浮かべて。
「気恥ずかしさで畏まらなくていいよ」
 強き者は美しい、と頼典は紡ぐ。
「それにありのままなキミがどんな姿なのかも興味が尽きないしね?」
 さぁ、共に妖を討ち果たそう――その言葉にはい! とミルナは頷いて、騎士として盾を構えた。
 それはダイヤモンドや水晶で作られた、水の透明感と光を放つシールドだ。
 白魂が放つ消滅撃を深海のオーラを纏わせ鉄壁の防御として構える。
「そう簡単には破れなくてよ!」
 その攻撃を耐えて、しのいで。ミルナは頼典へと視線向けて。
「後は頼典様、お願いします!」
 もちろんと頷いて返す。
 ミルナ様の盾で守られたが、ボクも|平安貴族《陰陽師》の端くれ――頼典は護符を構え放つ。それは敵の|妖術《UC》を封じる技。
 そしてそのいみじき再生力も抑えようと、頼典は僅かに眉寄せる。
 結構身体に堪えるけれど、妖を倒せれば構いやしない。
「阿近、吽近……ミルナ様の手助け、お願いするよ?」
 犬に似た霊獣たちへと頼典は頼む。
 頼典のその術の代償はその寿命を削る事――だから、あまりそうさせるわけにはいきませんとミルナも攻撃に出る。
 尾びれで地面を叩き、ミルナは叩く飛び上がる。大上段の構えからただ打ち下ろす。だからこそ強力な一撃を仁兵衛に。
「お母様直伝の一撃、これは強烈ですわよ!」
 怖くないわけではない。けれど頼典が先程その送り、そして髪に飾ってくれた紫陽花の髪飾りが力をくれる。
「恋する乙女は無敵なのですわ!」
 その一撃は仁兵衛の身の上に大きく傷を走らせた。
 ぼたぼたと落ちる血――仁兵衛の回復は間に合わず、仁兵衛の姿がさらと崩れていく。
 地面にずしゃりと倒れ、最後の一撃かけたミルナは消えていく姿を確認するとともにやりました! と頼典のもとへ。
 頼典も微笑み浮かべて、彼女を迎えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『桜蛍の道しるべ』

POW   :    屋台を巡りお祭りを楽しむ

SPD   :    桜蛍にちなんだ装飾を見る

WIZ   :    迷った桜蛍を帰してやる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 紫陽花を散らすとされた脅威も排除され、祭は続いていく。
 ゆるりと日が暮れて夕焼けに染まって――すると、紫陽花の中に桜色が躍り始めた。
 ぽ、ぽぽ。ひとつ、ふたつとそれは徐々に増えていく。
 それは蛍。珍しい桜色の蛍たちが紫陽花の中を楽しげにふわりふわりと飛んでいく。
 一年に一度、今だけ目にすることができる幻想的な光景。
 紫陽花の咲く斜面には、ひとつ、ふたつと最低限の篝火が。
 もし、足元など不安であれば灯りもかしてくれるそうだ。
 紫陽花の中をゆるりと歩んでいれば、桜色の蛍が遊びにきてくれるだろう。
 花の中に光る姿を見つけたり、共に紫陽花を眺めたり――静かで穏やかな時間をほのひかる花の間で。
武富・昇永
やれやれ此度は少々手ごわかったせいか疲れてしまったな
こういうときは月を愛でながら縁側で酒を飲みんでゆっくりしようか

おや?蛍か…ん?桜色の蛍?
見間違いか?縁側に座っていてはよく見えんな
しょうがない、今ひとたびの力を振り絞って紫陽花によってみるとするか
よっと
(少しけだるそうに体を起こすと浅沓を履いて紫陽花に近づく)
ほぉぉ…見間違いではなかったか
桜色の蛍とはなんと珍しい…
ふむ、胡床を持ってくるか
月を愛でるのはまた今度にしよう
今宵は一夜限りの逢瀬になるであろうこの蛍たちを愛でなくてはな



●指先にとまるひかり
 ふぅと武富・昇永(昇鯉・f42970)は一呼吸。肩を回せばごりごりと音がするような。
「やれやれ此度は少々手ごわかったせいか疲れてしまったな」
 無事に現れた妖を倒し、配下の妖も倒し戻って来た平穏は大事のようなものに思えた。
 けれど、あれほどの妖を倒したとなれば体は正直で、やはり疲れはある。
 昇永は縁側に腰を下ろし、頭上へ視線を向ける。そこには月が柔らかな光を零していた。
 月を愛でながら酒を飲みゆっくりしようかと思ったところで――視界の端でふわと飛ぶ光があった。それに気を引かれ、視線を向けるがふっと消えてしまって。
「おや? 蛍か……ん? 桜色の蛍?」
 見間違いか? と昇永は瞳細める。しかしそれで良く見えるわけでもない。
「縁側に座っていてはよく見えんな」
 しょうがない、と昇永は一呼吸。今ひとたびの力を振り絞って紫陽花によってみるとするか、と体動かした。
「よっと」
 少しけだるそうに身体を起こし、縁側から庭へ。浅沓を再び履くのも少し億劫だ。
 のろのろと足を動かし紫陽花のもとへ寄れば、先ほど目にしたひかりがふわと傍を通っていく。
「ほぉぉ……見間違いではなかったか」
 そうっと指先を伸ばしてみればふわふわ飛んでいた蛍がそうっととまりぴかぴかと柔らかな光を見せてくれる。
 まるで今日の事をお疲れと労うかのように。
「桜色の蛍とはなんと珍しい……」
 そして指先から蛍が飛び立ち紫陽花の花の上へ。
「ふむ、胡床を持ってくるか」
 月を愛でるのはまた今度にしようとすまんなと月へ一言向けて。
 昇永はこの屋敷に仕えるものに胡床と、それから酒をと声かける。
「今宵は一夜限りの逢瀬になるであろうこの蛍たちを愛でなくてはな」
 愛でつつ、一杯付き合ってくれるかなんて――蛍に声をかけつつ。
 昇永は紫陽花と、桜色の蛍と共に、ゆるりと一献。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勧禅寺・宗大
アドリブ連携可
花と蛍、これはこれは中々に風流な。
激しい戦いが起きた後とは思えぬ光景ではあるが
こういう物を守るのが我々の仕事だから嬉しい物よ。

これを愛でつつ戦後の身を清める為に酒の一つも欲しい所だが
この姿ではな致し方無いな…本当に惜しいが。

そんな風に見ていると【天網】がもふもふふわふわとすり寄って来る。
ん、もしや蛍に嫉妬か?いや、慰めか?
ふふ、どちらにしてもそこまでではないさ。

しかし疲れた身で風景を眺めてると眠くなる、【山児】を呼び出して宿まで運んでもらうか。「子供じゃないんだろ」と言われたら「お前の子の予行練習にしてくれ」と返し、背負われて帰るとしよう。たまには徹底して子供扱いも悪くないな。



●たまには背負われるのも
 戦いを終えて、戻って来た平穏に、勧禅寺・宗大(平安貴族(従四位上)の幻惑の陰陽師・f43235)の一息。
 改めてここに住まう人々の守ろうとした紫陽花と、そして今しか見れぬという蛍の姿に瞳細めた。
「花と蛍、これはこれは中々に風流な」
 見た目は十代半ばほどの宗大。けれどその実はその倍は生きているもので。こういった景色に心寄せる教養ももちろんある。
「激しい戦いが起きた後とは思えぬ光景ではあるがこういう物を守るのが我々の仕事だから嬉しい物よ」
 そして宗大は、その価値を知っている。今までもこのように妖から人々と、その心を守った事が何度もあるからだろうか。
「これを愛でつつ戦後の身を清める為に酒の一つも欲しい所だがこの姿ではな、致し方無いな……本当に惜しいが」
 酒も共に楽しんでいる者達の姿をちらとみて、宗大はため息一つ。
 紫陽花と蛍を楽しもうかと視線を向ける。ふわふわとよってくる蛍がいたなら、その袖を貸してやる。袖の上にとまりほわほわと光る様を眺めていたら――ふわふわもふもふ。
 白いふわふわの蛾の姿の式神、天網が宗大へとすり寄ってくる。
「ん、もしや蛍に嫉妬か? いや、慰めか?」
 宗大は天網へと笑いかける。桜色の蛍を見ていたから、妬いたのだろうか。それとも、酒が飲めぬこと――この姿である経緯も含めて何か思ってのことか。
「ふふ、どちらにしてもそこまでではないさ」
 宗大がそっと袖を動かせば蛍はふわと離れて紫陽花の中へと向かっていく。
 美しいな、と眺めているとふと眠気がやってきてふぁと欠伸が零れた。
 戦いで思っていたよりも疲労していたらしい。
「山児」
 宗大は山児を呼び出して、宿まで運んでくれと頼む。すると山児は、何故自分がというような顔をして。
「子供じゃないんだろ」
「お前の子の予行練習にしてくれ」
 予行練習と唸りつつ、山児はしゃがんで背中を向ける。宗大は笑って、その背中にぴょんと乗る。
 たまには徹底して子供扱いも悪くないなと、宗大は喉鳴らすように笑い零していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夏彦・星彩
【ココ彩】
おぉ紫陽花の中に桜のいろ〜
珍しいホタルがいるのだなぁ
友だちと一緒に初めて景色を楽しもう

この世界の色とりどりな紫陽花と共に
楽しげにふわりふわり飛ぶ光を眺めて
蛍というのは自分の番い…
ずっと一緒にいられる相手を探すため
明かりを灯して飛ぶのもいるらしいのだが
こうして沢山集まれば星空のようでもあって
淋しくはないのかもしれないなぁと

友だちと思い出たくさん作ったり
また明日〜を言うのもまた
星彩は良きものだと思ってはいるのだが
……でもやっぱり美味しかったりな
思い出いっぱいの方がうれしいかな?
甘いお裾分けも嬉しいぞぅ
星彩からもクッションみたいな星を浮かべて
並び座って今を味わいたいなぁ


ココ・ロロ
【ココ彩】
わあ…この子達がホタルさん…!
ホタルさんは光る虫さんなのですね
それにそれに~
ふわふわゆらゆら~ってダンスしてるみたいです!

見てると追いかけたく…なっちゃいますが
友達とのんびり見て回るのも楽しくて
ふふ、そうですね
家族になってくれる子が見つからなくても
たくさん集まればさみしくないでしょうし…
もしかすると、お友達が出来ちゃうやもしれません!
ふふー、ココ達みたいに!

…ふふ
サイさんはおいしいがすきでー…
あっ、そういえば…
いっしょに食べよーって残してたのが…
ふふー、ありました!
今日のおいしいに干し果物はどうですか?
わわ…お星様ー?
友達のフシギな星に並んで座れば
えへへ、ココ達もお星様なかま~ですね



●仲良く、並んで
 夜――篝火のひかりもやわらかく。
 幻想的でもあるその中を夏彦・星彩(アルベード・f38088)とココ・ロロ(ひだまり・f40324)は並んで歩んでいた。
 昼と違って、この時間の紫陽花もまた綺麗で。そしてふわふわと、二人の前を桜色の光が飛んでいく。
「おぉ紫陽花の中に桜のいろ~」
「わあ……この子達がホタルさん……!」
 珍しいホタルがいるのだなぁと星彩はふわと飛ぶさまを目で王。ココはきらきら瞳輝かせて、ぱっと星彩を見て。
「ふわふわゆらゆら~ってダンスしてるみたいです!」
 ココもつられたようにしっぽがふわと揺れて、まるで踊っているよう。
 二人で見る初めての景色。ゆっくりと歩めばその世界に溶け込んでいけるような、そんな心地だ。
「見てると追いかけたく……なっちゃいますが」
 星彩とのんびり見て回るのも楽しくて、ココの歩みはゆっくり。
 ふわりふわり、飛ぶ光は時折紫陽花の上に降りて。けれどしばらくすればまた飛び立っていく。
 楽しげに飛ぶその様子を眺めながら星彩はふと零す。
「蛍というのは自分の番い……ずっと一緒にいられる相手を探すため明かりを灯して飛ぶのもいるらしいのだが」
 こうして沢山集まれば星空のようでもあって、淋しくはないのかもしれないなぁと星彩は紡ぐ。
 その言葉にぴことココの耳は動いて。
「ふふ、そうですね。家族になってくれる子が見つからなくてもたくさん集まればさみしくないでしょうし……」
 ふわりふわり、鼻先に光が灯って、脅かさないように少しだ声小さくして。
「もしかすると、お友達が出来ちゃうやもしれません!」
 そう言うと――ふわと別の蛍が誘うようにやってきて、飛び立っていく。
 その桜色の光、ふたつをココと星彩の視線は夜闇に溶け込むまで追って。それがふっときえると、ココは星彩へ視線を戻し。
「ふふー、ココ達みたいに!」
 にこと笑み浮かべた。星彩もふと、表情和らげて。
「友だちと思い出たくさん作ったり、また明日~を言うのもまた星彩は良きものだと思ってはいるのだが」
 そう言って、星彩はしばし考える。その言葉の続きをココが待っていると。
「……でもやっぱり美味しかったりな、思い出いっぱいの方がうれしいかな?」
 その言葉にココはぱちりと瞬いて。
「……ふふ、サイさんはおいしいがすきでー……」
 と、ココは思い出す。昼間にもらったアレがあることを。
「あっ、そういえば……いっしょに食べよーって残してたのが……」
 ごそごそとポケット探せば指先に触れる包み。
「ふふー、ありました! 今日のおいしいに干し果物はどうですか?」
 ココの掌の上。干し果物に星彩はさっそくひとつ。口に放り込めば甘くて頬も緩む。
「甘いお裾分けも嬉しいぞぅ」
 そうだ、と星彩はクッションのようなふかふかの星を浮かべる。
「わわ……お星様ー?」
 こくと頷いた星彩はそこにぽふと座って、ぽんぽんと隣を叩く。ココは、そのぽんぽんのお招きにうんと嬉しそうに笑った。
 フシギな星に並んで座って。
「えへへ、ココ達もお星様なかま~ですね」
 ほわほわとやさしい桜色の光に囲まれて、ココと星彩はこの一時を過ごす。
 干し果物一緒に口に運んで、笑い合って。遊びに来る光に止まり木代わりに指をかして。
 きっとこの時間は今だからこそのもの。笑い合いなが、ふたりで大切に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冷泉・辰乃丞
【晴辰】

尭暁様、妖は全て祓いました
そう主に報告後、もう暫く邸宅に留まり

尭暁様、足元にお気を付けください
灯りで行く先照らしつつ、必要ならば主へと手も差し伸べて
主と先生と共に、眼前の光を暫し眺めてみる
蛍が発光するしくみは、体内の物質が反応を起こすのだと
風流よりもその生態に興味向くのはいつものこと

先生の従者時代のお話はやはり興味深く
はい、先生
先生の教えを胸にこれからも精進し、鋭意取り組んで参ります
私も先生のように強く在らねばと、密かな誓いと気合を

尭暁様、髪に蛍が
風流なことは言えぬが
ほの光る桜色に照る主や紫陽花は綺麗だと
そう思っていれば
…私にも、ですか
主と揃いの蛍の光纏いつつ、紫陽花の間を歩んでゆこう


弓弦葉・晴周
【晴辰】

今回も違いましたが…まぁ焦ってはおりませぬゆえ
今はゆるりと過ごしましょう

蛍の光の燃えるさまに、恋焦がれる身を重ねる歌も多くありますが
ほの光る桜彩は、より一層それを思わせますな
宵の如きよひらに寄り添う蛍の心が、私にはわかる気がいたします
宵月様とやはり似ておられる御子様見つめつつ
弟子の声にはいつも通り微笑んでおきましょう

宵月様との夜狩りにて、蛍舞う里へ赴いたこともありましたね
有象無象は私が全て難無く祓いましたし
月の君の一矢が首領を仕留め、大変ご立派でございました
貴方も御子様を確りとお支えするのですよ、辰乃丞

御子様達の仲睦まじい姿見れば
月の君との幸せな日々が、まるで昨日のことように蘇りますね



●今と、過去と
 分かっていたことではあるのだけれど、弓弦葉・晴周(月に焦がれる・f43172)はひとつ息を吐く。
「今回も違いましたが……まぁ焦ってはおりませぬゆえ」
 今はゆるりと過ごしましょうと視線を向けた先では、冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)が主である白矢羽・尭暁(金烏・f42890)へと報告をしている最中。
「尭暁様、妖は全て祓いました」
「うん、よくやってくれたね。さすが僕の従者。晴周殿もありがとうございます」
 当然ですというように辰乃丞は瞳を伏せる。
 その様子に尭暁は微笑んで、折角だから一緒に蛍と紫陽花を見に行こうと誘う。
「晴周殿も、ご一緒に」
 もちろんと晴周は頷く。と、灯りを手に先を歩むのは辰乃丞の仕事。
「尭暁様、足元にお気を付けください」
 ここは少し段差がありますと手を差し伸べる。ありがとうとその手を借りて進んで。その後ろの晴周はいつもと変わらぬ足取りで。
 すると紫陽花と桜色の蛍が沢山舞う場所へと迷い込んだか、誘われたか。
「蛍の光の燃えるさまに、恋焦がれる身を重ねる歌も多くありますがほの光る桜彩は、より一層それを思わせますな」
 そういえば、宵月様も蛍の歌を詠もうとして悩んでおられましたと晴周が語れば、父上がと尭暁は嬉しそうにする。父の話が聞けて嬉しいのだ。
「父上は……詠めなかったのですね。ああ、どのような方が最初に、恋い焦がれる事と蛍を重ねたのでしょうね。僕は……そのように重ねることはできなさそうです」
 尭暁の言葉に、晴周は小さく笑う。
「宵の如きよひらに寄り添う蛍の心が、私にはわかる気がいたします」
 晴周殿はやはり何事にも造詣が深いのですねと感心する尭暁。その様が、晴周の主であった尭暁の父、宵月と重なって。
「やはり似ておられますね」
 誰にも聞こえぬ声で落としていた。
「蛍が発光するしくみは、体内の物質が反応を起こすのだそうです」
 と、辰乃丞が告げる。風流よりもその生態に興味が向くのはいつものことと晴周は微笑みを。そして尭暁は、いつものれーくんだなぁと笑う。
 そしてふと、晴周は思い出し――二人へと紡ぐ。
「宵月様との夜狩りにて、蛍舞う里へ赴いたこともありましたね」
 尭暁と辰乃丞はその話に耳傾ける。
「有象無象は私が全て難無く祓いましたし、月の君の一矢が首領を仕留め、大変ご立派でございました」
 晴周と宵月の話は、二人にとって師匠と父の話であり興味をひかれる事なのだ。そしてその光景はありありと想像できる。
「貴方も御子様を確りとお支えするのですよ、辰乃丞」
「はい、先生」
 先生の教えを胸にこれからも精進し、鋭意取り組んで参りますと辰乃丞は静かに子敢えて。
 そして――私も先生のように強く在らねばと、密かな誓いと気合をいれる。
 と、ふわと蛍が遊びにやってくる。
「尭暁様、髪に蛍が」
「止まってるかい? 羽休めしにきたのかな」
 桜色のひかりに照る主、それに紫陽花は綺麗だと辰乃丞は思う。
 そして尭暁がふふと笑い零しているので、どうしました? と問えば。
「れーくんの髪にも遊びに来ているよ」
「……私にも、ですか」
 見れば、辰乃丞の長い髪の中で桜色の光が瞬いている。払いのけるのも野暮、そのまま行こうかと紫陽花の中を歩んでいく尭暁と辰乃丞。
 その仲睦まじい姿を目に、晴周は――
「月の君との幸せな日々が、まるで昨日のことように蘇りますね」
 かつての己と、その主の姿を重ねていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
愛しの君の朔兎様(f43270)と参加

NPCの尭暁様のご同行をお願いしたいです。

守れた蛍の輝きに朔兎様と心から安堵しつつ、式神の金鵄を手にとまらせて上で尭暁様をお迎えいたします。

朔兎様と同じく、皇族であり、名乗りがメインの式神の金鵄、同じ八咫烏を共とするものとなれば、違う存在なれど、縁を感じずにはいられません。

尭暁様、不躾ながらお尋ねしていいでしょうか?私はこの式神に相応しい陰陽師になれてるのでしょうか?

蛍の光で照らされてる今なら放たれる桜蛍が許してくださるでしょうか。

どんな答えを返されようと、お話しできただけでも愛しの朔兎様とともに晴れやかな笑顔を浮かべます。ああ、いい時間でした。


源・朔兎
愛しの姫の星羅(f42858)と参加

(とりあえずお腹すいたので屋台で星羅と一杯食べてきた)

うん、やっぱり全ての風景を守ったかいがあったな!!うん、尭暁さんをお迎えするぞ!!うん、物凄く緊張するぞ!!俺と星羅にとって大先輩だからな。

ええと・・礼儀はしらないので、ストレートに聞く!!尭暁さん、今の俺は皇族に相応しい男になれてるか?星羅を守れる男になれてるか?

まあ、大人の方には些細な事だが、未熟な俺には成長の糧になる!!


今後の糧にするぜ!!星羅、今後も共に頑張ろう!!


尭暁さん、ありがとう!!これ、鴨の串焼きだ!!3人分あるので一緒にたべないか?光のように晴れやかに笑う。



●まだその道は長く、しかしゆっくりと
 戦い終われば、お腹はへるもので。源・朔兎(既望の彩光・f43270)は屋台で神城・星羅(黎明の希望・f42858)と一緒に色々食べて、今はお腹いっぱい。
 そして、二人は自分たちが守った光景を見に行く。
 篝火に照らされたあじさい。そしてほわほわと桜色の光がその傍で遊ぶ。
「うん、やっぱり全ての風景を守ったかいがあったな!!」
 はい、と星羅は朔兎の言葉に頷いて、式神の金鵄を手にとまらせる。
 そして――この場を守って欲しいと託した者の訪れを待つ。
「うん、物凄く緊張するぞ!! 俺と星羅にとって大先輩だからな」
 この場に訪れて、彼は彼の従者を労って。そして朔兎と星羅の前にやってくる。
 二人へ、此度は力を貸してくれてありがとうと、彼は、尭暁は微笑んだ。
 星羅は尭暁を見つめる。
(「朔兎様と同じく、皇族……」)
 そして、星羅のメインの式神たる金鵄。同じ八咫烏を共とするものとなれば、違う存在なれど、縁を感じずにはいられない。
「尭暁様、不躾ながらお尋ねしていいでしょうか? 私はこの式神に相応しい陰陽師になれてるのでしょうか?」
 蛍の光で照らされている今なら、放たれる桜蛍が許してくださるでしょうか――そんな思いと共に星羅は尋ねた。
 そして朔兎も、ええと……と言葉を探して。
「尭暁さん、今の俺は皇族に相応しい男になれてるか? 星羅を守れる男になれてるか?」
 朔兎の問は真っすぐで、尭暁はおやと瞬き、そして笑み浮かべた。
「そうだねぇ、どちらの答えも、まだだと僕は思うよ」
 でもそれは力が足りぬからとかではなくて、まだまだ成長の途中だからと続けた。
「僕は君たちより年を重ねているけれど、まだまだ成長の途中であるし……今が一番良いとしてしまうのはもったいない。きっとまだまだ強くなれる」
 そう思わないかい? と逆に問い返されたなら、確かにその通りと思うところで。
 朔兎と星羅は顔を見合わせる。星羅の表情は晴れやかで――ありがとうございますと尭暁へ。
 そして朔兎も、大人の方には些細な事だが、未熟な俺には成長の糧になる!! とその顔を上げる。
 その表情は、これからへ向けて、もっと邁進していくのだとやる気に溢れていた。
「星羅、今後も共に頑張ろう!!」
「はい!」
「尭暁さん、ありがとう!! これ、鴨の串焼きだ!!」
 と、朔兎はさっきもらってきたそれを差し出して、一緒にたべないか? と笑む。
 光のように晴れやかに。
 尭暁はうんと頷いてそれをひとつ。鴨は好物なんだと告げて共に。
 いまはまだ成長の最中にある朔兎と星羅にとって、この時間はとても良きもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミルナ・シャイン
頼典様(f42896)と

恐ろしい妖でしたわね…こういう時は美しいものを見たりして心を和ませたいものですが。
その…アレを斧で頭から一刀両断しちゃうとかお見苦しいところをお見せしてしまったかしら。騎士であることに誇りは持っているのですけれど。やっぱり好きな人の前では可憐な乙女でありたいな、なんて考えてましたの。
この光る花びらのような蛍みたいに…

まあ…!そこまで言われたら照れてしまいますわ、頼典様お上手なんですからもう…
でも…そうですわね、これからもっとお互いのことを知っていきたいですわね。

はい、わたくしの光る君…あ、また腕組んでも良いでしょうか?
(はぁ〜蛍に照らされたお顔も格好良い…!)


八秦・頼典
ミルナ様(f34969)と

今回の妖騒動も無事一件落着
屋敷と紫陽花も守れた事だし、口直しに桜蛍を楽しみながらミルナ様と夜の屋台巡りにでも…
おや、どうなされましたか?
そんな顔をなされて…ああ、先程の勇ましき戦いぶりで
はは、ボクはキミに対して幻滅なんかしちゃいないよ?
寧ろ、ありのままなミルナ様の姿が何とも美しい物だと魅入ったよ

それに、ボクはキミの事をもっと知りたいしね
恋に生き、恋に燃え、恋に戦う、まるで万華鏡の様に様々な姿を見せるミルナ様を…ね?
お手をどうぞ、麗しくも愛らしい姫
桜蛍に照らされた白い紫陽花のように、ボクがキミを照らしてあげるよ

…ボクは皆人にゆるされたれば
身体を寄せるキミの耳にそう囁こう



●囁きの距離
 今回の妖騒動も無事一件落着。八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)はこの屋敷、そして山の紫陽花も守れた事だし、ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)を改めて、口直しに桜蛍を楽しみながら夜の屋台巡りにでも……と、誘おうとしたのだが瞬きひとつ。 それはミルナがひとつ、息吐いており、表情がわずかに曇っているから。
「おや、どうなされましたか?」
「恐ろしい妖でしたわね……こういう時は美しいものを見たりして心を和ませたいものですが」
 その……とミルナは言葉を探すように視線反らす。頼典は早く、などとせかさずゆるりと彼女の言葉を待っていた。
 その優しいまなざしにおずおずとミルナは頬を僅かに染めて、紡ぐ。
「アレを斧で頭から一刀両断しちゃうとかお見苦しいところをお見せしてしまったかしら」
 そわ、としつつミルナは尋ねる。
 ミルナは騎士であることに誇りは持っている。けれど、やっぱり――やっぱり好きな人の前では可憐な乙女でありたいというのが乙女心。
 その気持ちをミルナは頼典へと紡いで、傍にふわと寄る桜蛍を指先へ。
「この光る花びらのような蛍みたいに……」
 少し不安げな表情。そんな顔をなされて……と思っていた頼典も合点がいく。先ほどの勇ましき戦いぶりで、と。
「はは、ボクはキミに対して幻滅なんかしちゃいないよ?」
 頼典はそんなことは一切ないと微笑む。そして逆なのだと言葉紡いだ。
「寧ろ、ありのままなミルナ様の姿が何とも美しい物だと魅入ったよ」
 ミルナはよかったと、安心して笑み零す。そんな彼女にそれに、と秘め事囁くように頼典は。
「ボクはキミの事をもっと知りたいしね」
 そう告げてミルナの瞳をまっすぐ見つめる。
「恋に生き、恋に燃え、恋に戦う、まるで万華鏡の様に様々な姿を見せるミルナ様を……ね?」
 自分の頬が染まるのを、その熱さで感じるミルナ。その表情は、恋する乙女のものになる。
「まあ……! そこまで言われたら照れてしまいますわ、頼典様お上手なんですからもう……」
 ふふと擽ったそうに微笑んで、ミルナはまっすぐ頼典を見つめて返した。
「でも……そうですわね、これからもっとお互いのことを知っていきたいですわね」
 もっと仲良く、距離を縮めたく――ミルナは頼典へとそろりと尋ねる。
「はい、わたくしの光る君……あ、また腕組んでも良いでしょうか?」
 そろりと尋ねれば、もちろんと。逆に頼典からその腕を差し出して。
「お手をどうぞ、麗しくも愛らしい姫」
 桜蛍に照らされた白い紫陽花のように、ボクがキミを照らしてあげるよと囁く。
 ほわと桜蛍が躍る中、その姿を目にしたミルナの胸はどきどきと高鳴るばかり。
(「はぁ~蛍に照らされたお顔も格好良い……!」)
 そんな、高鳴りの最中であることを知ってか、知らずか。
「……ボクは皆人にゆるされたれば」
 頼典の囁きひとつ――ミルナのもとに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
【白夜】
浴衣に着替えてから行こうか
生成りの浴衣を纏い
リティに任せてもらえる帯は
折りたたみ型にして

灯が少ない分足元暗いだろうか
夜目は効く方だから
段差などある時は気をつけてねと囁き

手繋ぎ歩く君の言葉に
ふふ、だねえ
綺麗な紫陽花の中で逢瀬を重ねる時間
壊さず済んで良かった

呼び合う光を共に探し
聞いてはいたが
世界が違うと蛍さんの彩も異なるんだなぁ
艶やかな紫や青と
間を舞う桜色が幻想的で

光が巡り合いふたつ連れ立つのをみれば
仲良くなれたみたい?と笑い
リティの瞳に灯る楽しげな色に
初めて共に蛍を見た日を思い出し

景分かち合える距離が嬉しくて
繋いでいた手導いて腕を組もうと
花の間で想い交わすのは
僕らだって、して良いだろう?


城野・いばら
【白夜】
愛称:リティ

夜に融ける浴衣に、
旦那さんに結んでもらった明空の帯
確り崩れ難い型に素敵と笑顔が早咲き
手繋いで紫陽花さん達の許へ

類の導きに頷きながら
穏やかな時間に声も自然と小さく
改めて護れてよかったと彼に寄り添う
悪い妖さんがいたら
蛍さんもデート所ではなかったでしょう

紫陽花さん達を待合せに
そろそろ蛍さんが来る頃かしら
思い出すのは類との待ち合わせデートの時のキモチ
蛍さんはどきどき?わくわく?

わぁ…お名前通り、桜色なのね
お家や昨年のデート先で会ったコ達とはまた違う
今年は此方へと
共に決めた初めてのアヤエンは
嬉しい素敵な出会いで充ち満ちて

…あなたの甘やかなお誘いに
ふふっと咲って
もっと近くへと添い合うの



●この|腕《きょり》で
 戦い終えて、気持ちも新たにするように冴島・類(公孫樹・f13398)は生成りの浴衣を纏っていた。そして城野・いばら(白夜の魔女・f20406)も、夜に融ける浴衣を着て。その帯は類に結んでもらったもの。
 今日は折りたたみ型にしてみれば、素敵といばらの笑顔が花咲く。
「それじゃあ」
「ええ!」
 行こうと類が差し出した手にいばらも手を重ねて紫陽花の咲く方へ。
 時間はもう日も暮れて、灯りもあるがすべてを照らし尽くしているわけではない。
「段差があるから気をつけてね」
 夜目は効く方だからと類はいばらを導く。穏やかな時間に、声も自然と小さくて、それはいばらだけへの囁きだ。
 いばらは頷いて、繋いだ手の熱感じつつ護れて良かったと寄り添いつつ零した。
「悪い妖さんがいたら蛍さんもデート所ではなかったでしょう」
「ふふ、だねえ」
 共に見る光景に類も瞳和らげて――壊さず済んで良かったと紡ぐ。
 こうして、綺麗な紫陽花の中で逢瀬を重ねる時間も今あるのだから。
「紫陽花さん達を待合せにそろそろ蛍さんが来る頃かしら」
 ふわ、と視界の中に光が過ぎって、消えたような気がしていばらはそれを探すように視線を巡らせる。
 そうしながら思い出すのは、類との待ち合わせデートの時の気持ち。
 蛍さんはどきどき? わくわく?
 どちらかしらと、その姿探すのに心も踊る。
 紫陽花の中をふたり、進んでいれば――ほわり、ほわり。桜色のひかりがひとつ、ふたつと現れ増えていく。
「わぁ……お名前通り、桜色なのね」
 いばらがそうっと手を伸ばせば、そこにふわと降りてくる桜色。けれど少し休んだら、すぐに飛び立っていく。
「聞いてはいたが、世界が違うと蛍さんの彩も異なるんだなぁ」
 艶やかな紫や青と、間を舞う桜色が幻想的だと類は瞳細める。
 いばらの指先から飛び立った桜色が、もう一つの光と出会って共に同じ方向へ。
 その光景を目にすれば自然と、ふたりの視線は重なって笑いあう。
「仲良くなれたみたい?」
「ええ、きっとそうね」
 きゅっと、繋ぐ手の力がどちらともなく強まったような。
 あの仲良しさんたちみたいに、もっと奥も見にいこうと類が先に一歩。
 いばらも、勿論と笑んで、お家や昨年のデート先で会ったコ達とはまた違うと。ここにいる桜蛍たちと一緒に、類と歩む紫陽花の中をいとおしく思う。
 共に決めた、初めてのこの世界――アヤカシエンパイア。
 嬉しい素敵な出会いで充ち満ちて、いばらの瞳はきらきらと輝いて見える。
 その瞳の輝き――リティの瞳に灯る楽しげな色が、と類はあることを思いだす。
 それは初めて、共に蛍を見た日のこと。
 あの日とは違う光景。それをまた、共に分かち合える距離が嬉しくて――類は繋いでいた手をそえた。
 いばらがどうしたの? と視線向ければ手を解いて、そうっと腕へ導く。
「花の間で想い交わすのは僕らだって、して良いだろう?」
 いばらはぱちりと瞬いて、ふふっと咲って――なんて甘やかなお誘いとその腕に、自分の腕を絡めた。
 もっと近くへ。それは一歩、それとも二歩だろうか。
 寄り添って飛ぶ桜色の蛍たちと同じように――それ以上に、近く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

桜色の?
噫、本当だ!これは珍しいね
私も初めてみたよ
咲き初めた桜のようだ
童のように無邪気にはしゃぐ巫女の可愛らしいことだ
つい目を奪われてしまう

紫陽花の?そうかもしれない
淡い光に灯された花姿の風流な事だね
花と遊び戯れているようだ

サヨ、蛍は……星垂る虫、とも呼ばれるようだよ
なるほど、流れ星とはまさしく
この光は邪気を祓う正義感の象徴、とも
私も同じことを思った
尚更、この光景を観られてよかったとも

おや
はたと見遣れば、愛しい巫女の満開の桜角に
淡い桜の光が羽を休めている
サヨの角が気に入ったのかな?
その様子がなんとも可愛らしく美しく
良いものがみれたと破顔する

咲いあえば胸の裡にも花が咲くようだ
倖、という名の


誘名・櫻宵
🌸神櫻

わぁあ!みてみてカムイ!
桜色の蛍よ!
ひとつふたつ、みつ
無数に咲いていく光に思わず童のようにはしゃいでしまう
だって仕方ない、桜色の蛍なんて初めてみたんだから!

紫陽花もより美しくみえるわね!もしかして、紫陽花の雫を飲んでいるのかしら?
咲き誇る花々の狭間をゆるり散策しながら、舞い飛ぶ蛍達のひかりを楽しむわ
手を伸ばせば、すり抜けていく
意地らしくもかぁいらしい桜色のひかりたち

星垂る…確かにやわこい流れ星みたい
邪気を祓う…此度、この世にはぴったりの存在ね

え?私の角に……?
上目遣いをしてみれば
チカチカしてる気もする…見えないのが残念ね
…でも嬉しそうに笑うかぁいい神様のお顔がみられたから──いいかしら



●共に、咲いて
 篝火のあたたかなひかり。その中で紫陽花の淡い色が浮き上がるよう。
 でもそこに、もうひとつ輝きがある。
 その桜色の輝きに誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)はぱちりと瞬いて、満面の笑み浮かべた。
「わぁあ! みてみてカムイ! 桜色の蛍よ!」
 ひとつふたつ、みつ、と楽しそうに数えはじめて。けれど数え切れないほどにいっぱいなことが楽しくてたまらないというようにくるりと回ってみせた。
「桜色の? 噫、本当だ!これは珍しいね」
 ふわふわと飛ぶ桜色。朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)がそうっと手を伸ばせばその手に休みにくる蛍がひとつ。しかしまたすぐに飛び立っていく。
 その様を見送りながら私も初めてみたよと、カムイは微笑み零して。
「咲き初めた桜のようだ」
 そして櫻宵が童のように無邪気にはしゃぐ姿に可愛らしいことだと眦緩めた。
 その姿につい目を奪われる、桜色の蛍よりも。蛍も確かに美しいのだけれど――それよりも、と柔らかな視線を向けていた。
 櫻宵はそのカムイの視線に気づいた。はしゃぐ姿にそんな顔してるのねと。だって仕方ないじゃない、と擽ったそうに。
「桜色の蛍なんて初めてみたんだから!」
 どこにいくの、どこに誘われるのと、櫻宵は足取り軽く蛍をおいかける。
「紫陽花もより美しくみえるわね! もしかして、紫陽花の雫を飲んでいるのかしら?」
「紫陽花の? そうかもしれない」
 咲き誇る紫陽花、その狭間をゆるりと歩む。
 先を行く櫻宵は楽しそうで、カムイはその後をゆるりとついていく。
 淡い光に灯された花姿の風流の事だね、と紡いで。
「花と遊び戯れているようだ」
 それは桜色の蛍もだけれど、櫻宵もそのように見える。
 手を伸ばせば、すり抜けていく。桜色の光は触れさせてくれなくて、櫻宵はあら、とその指先でおいかける。
「意地らしくもかぁいらしい桜色のひかりたち」
 つれないわね、なんて笑ってみせる。カムイもふふと笑み零して。
「サヨ、蛍は……星垂る虫、とも呼ばれるようだよ」
「星垂る……確かにやわこい流れ星みたい」
「なるほど、流れ星とはまさしく」
 それに、とカムイは紡ぐ。この光は邪気を祓う正義感の象徴、とも。
「邪気を祓う……此度、この世にはぴったりの存在ね」
 うん、とカムイは笑んで頷く。私も同じことを思った、と。
「尚更、この光景を観られてよかった」
 そうねと櫻宵は微笑む。と――その角の上にふわふわと桜色が近寄ってくる。
 その様をおや、とカムイは笑み零す。
 愛おしい巫女の満開の桜角に、淡い桜の光が羽を休めている。その様子をじぃと見詰めていれば、櫻宵はどうしたのと尋ねる。
 カムイは、それはねとそっとそれを告げる。すると櫻宵はぱちと瞬いて。
「え? 私の角に……?」
「サヨの角が気に入ったのかな?」
 そうっと、櫻宵は動かないようにしつつ上目遣い。
 見えそう、でも見えない。ううん、見えたとぱちぱちと瞬き。
 その様子がなんとも可愛らしく、そして美しく。良いものがみれたとカムイは破顔する。
「チカチカしてる気もする……見えないのが残念ね」
 でも、と櫻宵はカムイを見詰める。
(「……でも嬉しそうに笑うかぁいい神様のお顔がみられたから──いいかしら」)
 まだいる? と聞けばいるよとカムイは微笑む。
 咲いあえば胸の裡にも花が咲くようだと――カムイは思う。
 それは倖、という名の花。共にいれば、いくらでも咲き誇る――そんな花。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

紫陽花の道
胸元の花も鮮やかに
色とりどりでいつ見ても美しい
彼女の手を繋いでゆっくりと歩く
ぽつぽつと小さな光がひかりだす
それはついては消えついては消えて
ピンクの光がくるくると紫陽花の近くへと
おや?ルーシーちゃんの指に?
可愛いらしい指ですね?
人差しを出してと言われて、彼女の近くに近づけると
そっと僕の指につたってくる
おやおや?ふふっ、可愛らしい
えぇ、アレから経ちますが蛍の美しさは変わりませんね
蛍は僕達の周りをくるくる回る
君の髪飾りに、僕の胸元のブートニアにとまって
どうやらどちらもホンモノと思ったのでしょうか?
このまま連れて帰りたくなりますね
でも生き物ですから、住む場所は僕達が勝手に決めてはいけませんね
そっと帰して

指輪?光指輪とは幻想的です
んー、でも僕より先に可愛い娘に贈るとは蛍さんに妬けてしまいますねぇ
ふふっ、いつかそれに負けないモノを贈りましょう
約束ですと小さな指に指切りをして


ルーシー・ブルーベル
【月光】

アジサイの路をパパと手を繋いでお散歩しましょう
もちろんガラスの簪もいっしょに!
ええ、本当に
毎年みてるはずなのに見飽きないわ
あ、蛍さん!
ここの蛍さんは桜色に光るのね
アジサイの色にピンク色の優しい光を添えて
とてもキレイ
指を伸ばしてみると蛍さんが指先にとまってくれて
ふふ!ねえねえ、ゆぇパパ
指を伸ばしてみて
パパの人差し指の先にルーシーの指をくっつけると、
伝って蛍さんが歩いていく
……前も、同じような事をパパとしたね
あれから何年も経っているなんて信じられない
そうね、これまで見てきた沢山の蛍さん
きっと同じ命はひとつとしてない
違う命の変わらない美しさ
だからこんなにも魅せられるのね
ふふー!パパの胸元、ぴかぴかしてるわ!
わ、えっ?ルーシーの髪も?
連れて帰れたらって確かに思うけれど…その通りね
蛍さんの居場所は蛍さんが決めたいはずね

あら、パパ!見て
指の付け根にも蛍さんがとまって
指輪みたいね?
パパったら!蛍さんは少し休憩してるだけだと思うわ?
でもパパからはちょっと嬉しいかも、です
約束よ?と小指を差し出して



●約束ひとつ、光と共に
 手を繋いで、そして笑顔零れる。
 紫陽花の道を歩むルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)の手は朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)と繋がれて。
 髪に煌めく紫陽花のガラス簪ももちろん嬉しいのだけれど、ユェーの胸に贈った花が鮮やかに咲いていることもまた嬉しい。
 ユェーは彼女の楽しそうな姿にやわく微笑んで、ほんのりと灯りに照らされる紫陽花へ瞳細めた。
「色とりどりでいつ見ても美しいですね」
「ええ、本当に。毎年みてるはずなのに見飽きないわ」
 どの子も綺麗に咲いて――とルーシーの視界の中を淡い桜色がふわと飛んでいく。
「あ、蛍さん! ここの蛍さんは桜色に光るのね」
 ぽつぽつと小さな光がひかりはじめて、それはついては消え、ついては消えを繰り返す。
「とてもキレイ」
 ぽつ、とその光景に視線奪われてルーシーは零す。そしてそっと、指を伸ばせばふわりふわりとそのひかりがおりてくる。
「ふふ! ねえねえ、ゆぇパパ」
 指を伸ばしてみて、とルーシーはゆっくりと、その桜色のとまる指先をユェーへと見せる。
「おや? ルーシーちゃんの指に?」
 可愛いらしい指ですね? と微笑んで、ユェーはこうですか? とそっと人差し指をルーシーへと近づける。
 その指先にルーシーはそうっと、優しく桜色の光宿る指先を近づけてぴと、とすれば。その光は指先伝ってユェーの指へと歩いていく。
「おやおや? ふふっ、可愛らしい」
 蛍がゆっくりと指先を進んでいく。その様を見つつルーシーはふと、思い出す。
「……前も、同じような事をパパとしたね」
 あれから何年も経っているなんて信じられないとルーシーは零す。ユェーと過ごしてきた時間、さまざまな思い出が巡って、今日また一つ増えたと笑みは深まる。
「えぇ、アレから経ちますが蛍の美しさは変わりませんね」
「そうね、これまで見てきた沢山の蛍さん」
 きっと同じ命はひとつとしてない。違う命の変わらない美しさとルーシーは、指先からふわと飛び立つ桜色を視線で追いかけた。ユェーもその様を共に見つめていて、同じ光景を見ていることが嬉しくある。
「だからこんなにも魅せられるのね」
 ふわと行き先決めぬまま飛ぶ桜色。ルーシーはそのひとつがどこへいくのか見つめていると――ある場所にとまって。
 ルーシーはぱちりと瞬いて、笑み深める。ねぇパパ、と紡げばどうしました? という表情に、まだ気づいてらっしゃらないのねとまるで悪戯するように告げる。
「ふふー! パパの胸元、ぴかぴかしてるわ!」
「ルーシーちゃんの髪にもとまってますよ」
「わ、えっ?ルーシーの髪も?」
「どうやらどちらもホンモノと思ったのでしょうか?」
 このまま連れて帰りたくなりますねとユェーは紡いで、でもと続ける。
「でも生き物ですから、住む場所は僕達が勝手に決めてはいけませんね」
 こちらがあなたの場所ですよとユェーは蛍をそうっと指に招いて、紫陽花の上へと導く。
 その様を見つつ、ルーシーもうんと頷いていた。
「連れて帰れたらって確かに思うけれど……その通りね」
 蛍さんの居場所は蛍さんが決めたいはずねとルーシーは軽く頭を振る。すると桜色の光はふわりと飛び立って、どこにいこうかと悩んでいるよう。
 好きな所にいくと良いのよ、とルーシーは微笑んでその様を見守る。と、その桜色はふわふわ、迷いながら再びルーシーのところへ戻ってきて。
 どこにいくのかしらと見守っていれば――ぴと、とある場所で一休み。
「あら、パパ! 見て」
 そうっと、ルーシーはその手をあげる。
 さっきの蛍が向かった場所はルーシーの指の付け根だ。
「指輪みたいね?」
「指輪? 光指輪とは幻想的です」
 でも、ユェーはちょっとばかり眉を下げて。その表情にどうしたのかしらとルーシーは思う。
「んー、でも僕より先に可愛い娘に贈るとは蛍さんに妬けてしまいますねぇ」
「パパったら! 蛍さんは少し休憩してるだけだと思うわ?」
 でも、とルーシーははにかむ。
「パパからはちょっと嬉しいかも、です」
「ふふっ、いつかそれに負けないモノを贈りましょう」
 パパから頂けるその時が、楽しみと心の中はあたたかく。そんな彼女にユェーも微笑んで、ルーシーはそうっと小指を伸ばす。
 桜色の光はまだ、指の付け根にあって飛び立つ気配はないから、優しく脅かさないように。
「約束よ?」
「ええ、約束です」
 そしてその小さな指に、ユェーは自分の指を絡めて指切り。
 桜色のひかりが、その約束の見届け人。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年07月18日
宿敵 『大妖怪『仁兵衛』』 を撃破!


挿絵イラスト