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モーラットナイトメア現る!~悪夢の果物狩り

#シルバーレイン #戦後 #【Q】 #ゴーストタウン #オブリビオン溜まり #モーラット #もQ

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●『あまいものの悪夢』
「もきゅ!」「きゅぴぴぴゅい!」「もきゅっぴぴ!」
 真っ白なモーラット達がぴょんぴょん跳び跳ねては、ころんと地面に落ちる。
「……もきゅーう!」
「もっ……きゅいぴっぴ!」
「……きゅ、もっきゅん!」
 跳ねては落ち、落ちては跳ね。
 モーラット達は何度でも何度でも果敢に挑戦する。
 彼らの視線のはるか先には、とっても大きなリンゴやビワ、サクランボなどの果物の姿。
 季節感というものをまるで無視して、ぴっかぴかのツッヤツヤに輝く果物が、木々の高いところに鈴なりに実っていた。
 体長30センチメートル程度しかないモーラット達にとっては、途方もなく高い目標。
 だがモーラットは諦めない!
「きゅっぴ! ぴぴぴきゅもっきゅ!」
 つぶらなまん丸おめめをキラリと光らせ、何度も何度も果物に飛びつくモーラット。
「きゅ! もきゅぴぴきゅっぴ!」
「きゅう! もっきゅきゅぴきゅいきゅい!」
「もきゅきゅきゅきゅ、きゅぴー!」
 見るからにおいしそうな果物にかぶりつき、あまいものを思うがままに味わう。
 そんな夢に向かってモーラット達は飛び立つ!
 そして……。

「もっきゅーう!!」
 一匹の案外勇敢なモーラットが助走を付けて宙を舞う。
 ちいさなおててを懸命に伸ばし、真っ赤なリンゴまで3センチと言うところで――。

「バァ!!!」
 突然リンゴがぱっくりと割れた!
 割れ目はまるで猛獣の口のように裂け、その中に沢山の牙をギラギラ光らせていた。
 驚いて固まるモーラット目掛け、ぱっくり割れたリンゴの口からビロンと大きな舌が伸ばされ、ペロリと舐め上げる。
「も、もきゅううううううっ!!!」
 固まったまま悲鳴を上げ、ころりころころと地面に落ちて転がるモーラット。
 見ると、先ほどまであんなにおいしそうだった果物達が皆、大きく口を開けて舌なめずりをしているではないか。
 おや、あんなところにおいしくて柔らかそうな白毛玉達。
 バケモノ果物達が獲物を見る目でモーラットを見つめている。
「……も、もぎゅ!? ぴぴーいっ!」
 ――あまいものを食べるつもりが、このままでは食べられてしまう!
 そんな悪夢のような光景に怯えたモーラット達が、四方八方に逃げていく。

「もーきゅ! きゅっぴぴぴぴぴ!」
 木の上からそれを見下ろし、可愛くも邪悪な笑い声が聞こえてきた。
 とっても邪悪なオーラを纏う紫がかったモーラット――モーラットナイトメア達は、自分達が呼び起こした『悪夢の果物狩り』の恐ろしさに高笑いを上げるのだった。

●グリモアベース
「もきゅー! きゅっぴ! きゅいきゅいきゅぴーい!」
 グリモアベースの一角でふわもこがスーパーボールのように跳ね回る。
 モラリンガルのスイッチを入れるのも忘れて、高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)が「とっても恐ろしいのですー!」とぴょんぴょん転がる。
 右に左に上下に斜め、跳ねて飛んでころころ転がって、「もきゅー!」と鳴いている。

 カントが落ち着くまでしばらくお待ちください。

「もきゅ、大変恥ずかしいところを見せちゃったのです……」
 くしくしと手で毛繕いをしながら、カントは集まってくれた猟兵達に向かって言う。
「でも、大変なのです! モーラットの仲間達がピンチなのです!」
 今治市の公園にオブリビオン溜まりが確認されたと、カントは説明する。
 オブリビオンによりゴーストタウン現象が発生し、公園内を迷宮化させているという。
 しかも、偶然その辺に居合わせた野良モーラット達がゴーストタウン現象に巻き込まれてしまったのだ。モーラット達は散り散りに逃げ惑い、迷宮化した公園内で迷子になっているらしい。
「オブリビオンから仲間達を助けてほしいのです」
 野良モーラット達がオブリビオンの餌食になる前に、彼らを捕まえて銀誓館学園のプールかマヨイガに保護してあげてほしいのです。
 そう言ってぺこりと頭を下げて猟兵達にお願いするカント。

「ところで、オブリビオンはどんな奴なんだ?」と猟兵の一人が聞いた。
 その言葉に、カントが「もーきゅ?」と鳴く。
「ええと、モーラットなのです。多分」
 多分? モーラットがモーラットを襲う? 一体どういう状況なのだろう?
 猟兵達が首を傾げると、カントも首を傾げた。
 どうやら彼女も自分の予知したものがよく分かっていないらしい。
「とっても悪そうなモーラットだったのです。すっごくすっごーく邪悪なのです!」
 カントの要領を得ない説明によると、紫色をした邪悪なモーラットっぽいオブリビオンが公園を占拠し、辺りの草花をおいしそうな果物が生る木に変えているという。
「でも、それは罠なのです」
 手に取ろうとすると、果物達は逆に牙を剥き、こちらを食べようとしてくるのだ。
 邪悪なモーラット達は、怯えて逃げ惑う野良達を見て楽しんでいるという。
「あまいものを利用して悪さをするなんて! ひどいのです!」
 カントは怒りでわなわな震える。パチリとその毛から小さく火花が散った。
「あまいものは食べてあげないといけないのですー!!」
 どうも仲間意識よりも食欲が上回っているようだ。
 とにかく怒りに震えるカントは、グリモアを輝かせて猟兵達を送り出すのだった。


本緒登里
●MSより
 モーラットです!
 もっふもふの邪悪なモーラット!
 隅から隅までモーラットなシナリオです!

●シナリオについて
 こちらは2章構成のシナリオになります。

 1章:野良モラ捕獲(冒険)
 2章:悪夢の果物狩りを楽しむ(集団戦)

 1章では散り散りに逃げる野良モーラットを捕獲して頂きます。
 おやつでおびき寄せたり、優しく安心させたりして捕まえてください。
 悪夢の果物達は猟兵が攻撃をすれば簡単に倒すことができ、倒した後は普通の果物のようにおいしく食べることができます。
 果物の種類は様々で、悪夢の世界なのでスイカが木に生ってたりもします。
 ケーキとかマカロンが生る木もあっても良いと思います。

 モーラットナイトメアは隠れているので、1章では出会うことはできません。
 モーラット達を捕獲し、猟兵達が悪夢の果物狩りを楽しむ(おいしく食べる、驚いてあげる)などすれば、2章で出てくるでしょう。

●プレイング受付
 物理的に開いている限り、常時受付中です。
 オバロ、複数、1章のみ参加等、お気軽にどうぞ。
 同行者がいる場合は、同行者の名前とID、もしくはグループ名をお書きください。
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第1章 冒険 『野良モーラットをつかまえて!』

POW   :    走り回ってつかまえる

SPD   :    罠をしかけてつかまえる

WIZ   :    お菓子でおびきよせる

イラスト:RAW

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「カカカッ! ケケ、ケーッケッケッケッ!」
 びっくり箱のようにコミカルな顔が付いた赤や緑の大きなリンゴが、左右にひょいひょい揺れながら、牙の生えた口を開けて大笑いしている。
「きゅ、もきゅう……」
 丸くて小さな耳をぺしゃんとさせて、小さな野良モーラットが後ずさる。
 悪夢の果物達に追われて逃げて飛び込んだ先の茂みにも、ぎょろりと睨むブルーベリーオバケがいて、可哀想な野良モーラットは慌てて跳ね飛んで逃げる逃げる。
 公園のベンチの下に滑り込んで、ビクビクキョロキョロ周囲を窺う。
「きゅいぃ……」
 ――ここにはあまいものはいないみたい。
 やっと一息つけた野良モーラットは、細いおててを突き出して腹ばいになる。
 大好きなあまいものが襲ってくる。
 逃げたいのに出口が見つからない。
 悪夢の光景に、野良モーラット達はただ「もきゅう」と悲しげな声を上げるだけ。
 
「もっきゅ! ぴぴっぴ! きゅっぴっぴ!」
 紫がかったふわふわの毛並みを嬉しそうに震わせて、悪夢より生まれたモーラットは、かぎ爪になった手を口元に当てて意地悪くニシシと笑う。
「きゅっぴ!」
 催促するように鳴けば、どこからか蔓が伸びてくる。
 モーラットナイトメアは、蔓の先に実ったマカロンをむしり、パクッと頬張る。
 もっちりむっちりした生地にとろけるクリームの甘みが口の中いっぱいに広がり、邪悪なモーラットは目を細めてうっとりと身体を揺する。
「きゅぴるるる、もきゅーん!」
 ――悪夢ってとっても楽しい! もっともっと遊びたい!
 そんなことを考えながら、ぴょんぴょん跳ねていると、ゴーストタウン現象で迷路化した公園の一角に、自分達とも野良達とも違う気配を感じる。
「もきゅ? きゅきゅっ! きゅいきゅっぴ!」
 ――誰だろう? 誰でもいいよ。悪夢の世界で一緒に遊ぼう!
 ナイトメアモーラットは無邪気に笑みを浮かべるのだった。
ディアナ・ランディール
アドリブ可

野良のモーラットたちが散り散りに逃げ回っている。
可愛らしいなき声がかすかに聞こえる中、ディアナはどうやって確保しようかと考える。
聞いたところによると甘いお菓子に目がないらしい。
簡単に甘いお菓子。プリンやクッキー、ケーキなどを多めに用意して。
「モーラットさん、こっちにおいで。甘いお菓子がたくさんありますよ?」
逃げ回っているということは、怖い思いをしているはず。
優しく声をかけながら、まずはクッキーをちらちらと見せながらおびき寄せてみる。

こうしてやって来てくれれば、お菓子に夢中になっている間に、やさしく確保することに成功するだろう



「きゅ……ぴぴぃ……」
「もぎゅぅぅ……」
「ぴぃ、きゅぅん……」
 公園のあちこちから野良モーラット達のか細い鳴き声が聞こえてくる。
 ナイトメアモーラットの力で悪夢の果樹園と化した公園は、植生も季節も無視した悪夢の果樹達がぐねぐねと蔓や枝を茂らせ、昼間でも鬱蒼とした葉で薄暗い。
 そんな中、ディアナ・ランディール(鋼糸使いのドール/ビーストマスター・f41918)は緑色のメイド服をひらりなびかせて歩く。
「モーラットさん、随分怖がってるみたいです」
 普段なら好奇心旺盛で楽しいことが大好きなモーラット達は猟兵の姿を見れば寄ってくるのだが、今は可愛らしくも悲しげな鳴き声が聞こえるだけで、そのもふもふな姿は見えない。
「ケケッ、クッククック!」
 頭上でアリスラビリンス世界のように顔がついた果物達が馬鹿笑いしている。
 果物達は手を出さなければ襲ってくることはなさそうだし、その派手な動きの割にスピードは遅く、ディアナにはさしたる敵のようには見えないが、野良モーラット達には恐ろしい相手なのだろう。
 ディアナはヘッドドレスを揺らし、首を傾げて思案顔。
「聞いたところによると、モーラットさんは甘いお菓子に目がないとか」
 思いつくのはモーラットの食欲。特に甘い物は大好物らしい。
「お菓子でおびき寄せるのがよさそうですね」
 さて作戦は決まった。後はどこでどうするかだが――。
 そんなことを考えながら小道を進むと、向こうの方に屋根とベンチのある休憩スペースが見えた。見通しが良く、あそこなら公園のどこからでも見えやすいだろう。モーラットをおびき寄せるにはうってつけの場所だ。
「では、あとはお菓子を用意するだけ」
 そう言うと、ディアナは頭上に視線をやり、その手を素早く一閃。
 シュッと赤の糸が風のように煌めく――。
 ポタ、ポタタタタッ!
 ディアナの振るう硬質残光ワイヤーが頭上にあったクッキーの木の枝を切り刻み、食べやすい薄い円形にして落としていく。
 それをディアナはメイド服のエプロンで受け止める。
 近くの垂れ落ちる枝から、プリンの蕾とカップケーキの花を摘み取って集めていく。
 シュガースポットの口を広げて煩く喚くバナナだって、皮を剥いちゃえばもう普通の果物と同じ。
 悪夢の木から採ってきたお菓子や果物を並べ、ティーセットを取り出し紅茶を入れれば、休憩スペースはあっという間に素敵なお茶会に早変わり。
 そんなことをしていると、ちらりと視界の隅に小さな白いもふもふの姿が。
 逃げてきた野良モーラットが紅茶の香りに興味を引かれてやって来たのだ。
「きゅい……?」
 ――あまいものは食べたい。でもこれも噛みついてきたらどうしよう。
 もふもふした毛をぺしゃんこにして、怯えたモーラットは葛藤でふるふる震える。
「モーラットさん、こっちにおいで。甘いお菓子がたくさんありますよ?」
 ディアナはモーラットを安心させるように優しく微笑み、クッキーを差し出す。
 ぱくりと一つ囓ってみて、危険が無いことを示してやる。
「……きゅ? もきゅう?」
 モーラットはピンクのお鼻をヒクヒクさせてクッキーの匂いを嗅いでいる。
 まだ少し警戒しているようだが、クッキーへの興味を隠しきれないようだ。
「とってもおいしいですよ」
 ちっちっと目の前でクッキーをちらつかせてみると、モーラットの視線がクッキーの動きに合わせてチラチラ動く。
「もきゅ! もきゅーん!」
 ぴょんとモーラットが跳ねる!
 ディアナの腕の中に飛び込んでクッキーに齧り付くと、うっとり目を細めて幸せそうにサクサク頬張る。
 お菓子に夢中なモーラットをディアナが抱っこで優しく捕まえると、モーラットは「きゅっ!」と嬉しそうに鳴いて、ディアナの手にもふもふな頭を擦りつけるのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

百地・モユル
これがモーラットか…噂どおりもふもふでかわいいなぁ
まずは野良たちの保護だね
いろんな甘味がある悪夢の世界だから、この金平糖が生るツルを地面に伸ばしておいて…
引っかかり次第「白い病室」に保護
大丈夫だよ、あとでおいしいものたくさんあげるからね

アドリブ絡み歓迎



「きゅ! もきゅきゅーっ!」
 百地・モユル(ももも・f03218)の目の前に、小さな白い毛玉が落ちてきた。
 そのもふもふな毛のあちこちに葉っぱを付けているところを見るに、どうやら茂みに隠れていたところを悪夢の果樹達に脅かされて飛び出したというところだろうか。
「これがモーラットか……」
 噂通りもふもふでかわいいなぁと、モーラットを見つめてモユルは頬を緩ませる。
 モーラットはシルバーレイン世界の種だが、猟兵として覚醒する者もいることから、そのもふもふっぷりは他世界の猟兵達の間でも密かな噂となっている。
 このもふもふなモーラット達をオブリビオンから守らなきゃと考え、モユルが手を伸ばそうとしたとき――。
 落ちたショックで固まっていたモーラットが瞬きをした。
 モユルの桃色の瞳と、モーラットの黒茶の瞳、二つの視線が交わる。
「も、きゅぴいい!?」
 ――この人も怖いことをするかもしれない。
 怯えるモーラットは悲鳴を上げる。もふもふな毛を逆立ててぼふんと元の二倍の大きさまで膨れ上がり、尻尾をピンと立てた。
「あ、待って! ボクは君達を助けに来たんだよ!」
 悪夢の果樹達に脅かされたモーラットは、モユルが自分達を助けに来てくれた猟兵だということに気付かず、モユルの手の下をくぐり抜けてぴょんぴょん逃げる。
 道沿いの側溝に潜り込み、上から見えない蓋があるところに隠れてしまったモーラット。
 モユルが蓋の隙間から覗き込んでみると、モーラットは底に身体を押しつけ小さく丸まってぴるぴる震えていた。
「うーん、まずは安心させてあげなきゃ」
 サイボーグのモユルの力を持ってすれば、側溝の蓋を持ち上げてモーラットを捕まえるのは簡単。でも、そうやって無理矢理捕まえるのはモーラットを怖がらせるだけだし、そんなことはモユルの正義の心に反するのだ。
 何か使えそうな物はないかなあと辺りを見渡すと、耳が痛くなるようなバカ笑いをする巨大な果物の下に、キラリと輝くものがあった。
 何だろうと近寄ってよく見てみると、それは果樹の幹に巻き付く蔓草の茂みだった。図鑑で見た葛に似ていたが、花の部分が色とりどりの金平糖でできていて、本物のお星様のように微かな光を放っていた。
「ピカピカ光る甘いものなら、モーラットも喜ぶかもしれない!」
 早速、モユルは蔓を引き抜こうとする。
 やはりこれもモーラットナイトメア達が創り出した悪夢の一部だったようで、蔓はモユルの手に絡みつきギュッと締め上げようとしてくる。
 だが、モーラットナイトメアはオブリビオンであろうと所詮モーラットの一種。彼らの創った悪夢は人を驚かして遊びたいという気持ち優先。蔓に人を絞め殺せるような力はなく、ちょっとびっくりする程度。
 モユルが引っ張り返すと、蔓は簡単に地面から抜け、葛餅の根っこを露わにして動かなくなった。
「これでよしっと! じゃあ後はモーラットに出てきてもらうだけだね」
 余分な葉っぱを落として長い紐のようにすれば、モラ釣り用の釣り竿の完成。
 光る金平糖の花を、側溝の中に投げ入れる。
 投げ込まれた金平糖にモーラットはびくり身体を震わせたが、それが襲ってくる気配がないことに気付くと、少し警戒心を緩めたようだ。
 手をそっと伸ばして、ちょんと金平糖の花に触れる。
 花の一つがころりと落ちて、モーラットの鼻先に転がってきた。
「……もっ!? きゅっぴ!」
 甘い匂いにクンクン鼻を鳴らして、ぱくりと食いつくモーラット。
 モーラットがカリコリと金平糖をかじる音に、モユルは作戦の手応えを感じて小さくガッツボーズ。
 気を許したモーラットがついに花本体に食いついた!
 すかさずモユルは蔦を引っ張る!
 スッポーンとモーラットの身体が側溝から引き抜かれ、モーラットはモユルの腕の中。
「大丈夫だよ、あとでおいしいものたくさんあげるからね」
 モユルの手で|白い病室《ホワイトルーム》に入れられ、金平糖と葛餅をたっぷり貰ったモーラットは、「もきゅーん」と鳴いて大人しく保護されるのだった。  

大成功 🔵​🔵​🔵​

木鳩・基
モーラット……詳しくは知らないんだよね
なんであんなもふもふしてるんだろ?
あとで調べてみようかな

で、まずはこの不気味な森をどうにかしなきゃ
普通に怖いんだけど……これ、実害ないんだよね?

手帳を開いてUC発動
現地で【情報収集】した成果と照合して正体を暴く
怖くないならこっちのもんだ!
オラオラオラ!(木の幹連続蹴り)

落ちたお菓子や果物を集めてモーラットを呼ぶ
ほらおいで~、危機は去ったよ~
……これで第一目標達成なの、ゆるいなぁ
こういう仕事ばっかりならいいのに

(モーラットにそーっと手を伸ばす)
ほ、ほんとにもふもふ……!禁忌の感覚だ……!?
野良なら一匹連れ帰っても……いや、UDC組織から怒られる……でも……!



「モーラット……詳しくは知らないんだよね」
 愛用の手帳を片手に、木鳩・基(完成途上・f01075)は悪夢の森を歩く。
 モーラットについて知られていることはあまりに少ない。
 そもそも謎の多い生物(?)だ。モーラットはシルバーレイン世界では使役ゴーストと分類されているのだが、能力者からの扱いはちょっと珍しい動物程度。主人と絆で繋がらない野良モーラットがその辺をチョロチョロしているのだ。
 まあ、そんな世界観的なことは置いておいて、基の関心事はもっと別のこと。
「なんであんなにもふもふしてるんだろ?」
 形態によって翼や足があったりなかったりするモーラット達全ての共通点、それがもふもふな毛皮だ。
 世界を超えて響き渡るモーラットのもふもふ。
 保護したら調べてみようと、基の好奇心がうずく。
 そうなれば、まずやるべきはこの不気味な森からモーラットを助け出すことだが……。
「普通に怖いんだけど……これ、実害ないんだよね?」
 基は頭上を見上げて、身震い一つ。
 モーラット保護の決意を固めたはいいものの、周りには長い舌をべろんと出してケケケと笑う悪夢の果物達。お菓子大好きな子供が風邪を引いたときに見る夢のような、脈絡も整合性もない甘い物と不気味さの融合。
 基が怖がる様子をどこかから見て楽しむモーラットナイトメア達のもきゅきゅ笑いが風に乗って聞こえくるような気がした。
「もうっ、こうなったら全部調べ尽くしてやるからね!」
 手帳をパッと開くと情報収集開始!
 まずはその辺に転がっていた棒をオバケ果物に近づけてみる。
 バクリと勢いよく噛みついてきたが、棒は折れずちょっと歯形が付いた程度。
 垂れ下がって蠢く蔓を棒で突っつくと、嫌がってウネウネ逃げていく。
「あれ? もしかして思ってた以上に弱いのか?」
 もしかしたら野良モーラットでも倒せちゃうくらいの強さしかないかもと思いながら、基は情報屋として培った経験を生かし、悪夢の果樹達の情報を暴いていく。
 
『見た目は恐ろしいが戦闘力はほぼゼロ』
『食べるとおいしい』

 調査の結果解ったことは、つまりこいつらは見かけ倒し……。
 基は手帳をパタンと閉じ、一際太い果樹の根元にゆらりと立つ。
「怖くないならこっちのもんだ!」
 オラオラオラと怒号を響かせ、基はゲシゲシと木を連続で蹴り飛ばす。
 サクランボ、イチゴ、ブドウ、ミカン、ぽんかん、リンゴ、梨、桃、パイナップル。
 枝を折られ、木からドカドカ降ってくる悪夢の果物達。
「オラァッ!」
 最後にトドメと蹴り飛ばすと、ドシーンと音を立ててスイカが降ってきた。
 そんな悪夢の果物達をやっつけまくる基の姿に、隠れていた野良モーラットがいつの間にか姿を現し、キラキラお目々で見つめていることに気付く。
「ほらおいで~、危機は去ったよ~」
 基が優しく呼ぶと、安心した野良はぴょんぴょん近寄ってきて、早速果物にかぶりつく。
「……これで第一目標達成なの、ゆるいなぁ」
 こういう仕事ばっかりならいいのにと思いながら、基はもふもふさの秘密を探らんと、果物に夢中なモーラットにそっと手を伸ばす。
 もっふり、もふもふ……もふん!
 噂通りのもふもふ感!
 毛皮の間に手を差し入れれば、ふわふわと柔らかな感触。通気性の良いもふもふの毛の間で作られた空気の層が、手を温かく包み込んでくる。
「うわ、これは禁忌の感覚だ……!?」
 もふもふ、もふもふ、もふもふ。
 あまりの撫で心地に止められない止まらない!
 撫でられているモーラットの方も、もっと撫でてとスリスリもきゅん!
「野良なら一匹連れ帰っても……」
 もふもふな毛を擦りつけて甘えるモーラットを見ていると、そんな考えが浮かんでくる。
「いや、UDC組織から怒られる……それに……」
 基はふるふると首を振った。
 現時点では世界を渡る力は猟兵か特殊なオブリビオンに限定される。別世界の生物をUDCアースに連れて行けば、たとえそれを野良モーラット自身が望んでいたとしても、やがて骸の海に希釈され消えてしまうことになるだろう。
「よし、撫でるだけにしておこう」
 連れて帰りたいという気持ちを振り払い、もふもふの秘密はこの場で解き明かしてやろうと、基はモーラットを撫で回すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オヴィリア・リンフォース
アドリブ、連携歓迎

むむむ!久しぶりにモーラット達がピンチなのです。
悪いモーラット…どこかのデビルキングを思い出すのです。
美味しくお菓子を食べていられるのも今の内なのです!

まずは悪夢の果物達をやっつけるのです。
猫の身軽さとジャンプ力を活かして銀猫突撃するのです。
猫魔力で悪夢を祓うのです。
野良モーラット達にかっこいい所を見せてヒーローになるのです。
その為のマントも羽織るのです。
ただの果実に戻ったら野良モーラット達と
一緒に美味しく食べるのです。
果実を怖っているようなら、まずは自分が
食べて安全である事を見せるのです。
それでも震えている子には優しくもふもふして安心させるのです。
悪夢なんか怖くないのです。



「きゅ……きゅぴぃ……」
「きゅう……」
 積み重なる雲のように茂る葉っぱの迷路。その行き止まりに追い詰められた三匹のモーラットが恐怖で小さく悲鳴を上げる。
 モーラット達の目の前にはケタケタ笑う巨大な悪夢の果物達。
 イチゴ、サクランボなどの小さい手下を引き連れ迫るは、モーラットの倍近くある巨体を誇るオバケリンゴ。オバケリンゴは舌なめずりしてモーラットを睨みつける。
「も、もっきゅー!」
 他の二匹よりちょっとだけ大きなモーラットが、仲間を守ろうと勇気を振り絞って前に出る。案外勇敢なモーラットはパチパチ静電気を放とうとしたが、オバケリンゴに大きな舌でベロッと舐められ、「ぴきゅううっ!」と悲鳴を上げる。
 追い詰められて逃げ場はない。
 食べられる恐怖にギュッと目を閉じ、身を寄せ合ってふるふる震えるモーラット達。
 ああ、哀れなモーラット達。このまま為す術なく食べられてしまうのだろうか――。

「そうはさせないのです!」
 野良モーラットを狙う悪い奴。デビルキングに加え、新たな悪が現れた。
 悪あるところに正義あり!
 高らかに上げた声と共に銀の光が稲妻のように煌めいて、猫魔力を纏った体当たりが、怯えるモーラットに迫るオバケリンゴに突き刺さる!
 体当たりを食らったオバケリンゴは、枝から千切れ、吹き飛ばされて目を回す。
「……きゅ?」
 薄く目を開けたモーラット達が見たのは銀色の毛並みのにゃんこ。
 大きなリボンのついたピンクのマントを翻し堂々ととモーラット達の前に立つ、その凜々しくも勇壮なる様。
 いかにもヒーロー然としたそれは、モーラットの救助者たるオヴィリア・リンフォース(銀色の魔女猫・f25140)の姿だった!
「ヒーロー登場なのです! もう大丈夫なのですよ!」
 久しぶりにモーラット達がピンチなのですと、颯爽駆けつけ窮地を救ったオヴィリアは、モーラット達を安心させるように目を細めてぱちりと瞬きをする。
「もきゅ! もきゅーん!」
 突如現れピンチを救ってくれたヒーロー、オヴィリアに励まされたモーラット達が歓声を上げる。
「さあ、悪夢の果物達をやっつけるのです!」
 オヴィリアは全身に猫魔力を纏い、マントをなびかせ地を駆ける。
 猫の身軽さを生かして、葉っぱの迷路の壁を蹴って三角跳び。
 高く高く飛び上がったオヴィリアは、空中で一回転してさらに勢いを増していく。
 最大時速690キロメートルを誇る必殺の銀猫突撃が目を回しているオバケリンゴに直撃し、その赤い巨体を真っ二つに割った!
 さらにさらにオヴィリアは止まらない!
 眼にも留まらぬ爪さばきで、真っ二つになったオバケリンゴを引っ掻いていく。
 にゃんぱらり――。
 オヴィリアが動きを止めたとき、そこには食べやすい大きさにカットされ、みずみずしい薄黄色の果肉をさらけ出す元オバケリンゴだったものだけが残っていた。
 オヴィリアはすっくと四本足で地面を踏みしめ、しましまの尻尾を振って、残った手下果物達を見据える。
「さあ、バラバラになりたければかかってくるのです」
 親分を倒され、残ったサクランボやイチゴ達はざわざわと戦慄く。悪夢の果物達は破れかぶれで突撃してきたが、それらは全てオヴィリアの猫魔力で祓われ、次々にただの果物に戻る。
「もきゅん! きゅぴぴ! もっきゅー!!」
 救われた野良モーラット達が喜びの声を上げ、オヴィリアに駆け寄ってくる。
 もふ、もふもふ! もっふん!
 オヴィリアのもふもふとモーラットのもふもふ。
 もふもふを通して温もりと優しさが伝わり、モーラット達は安心して「きゅいきゅい、もきゅーん」と鳴く。
 モーラットのお腹がぐうと鳴った。安心したらお腹も減るのだ。
 そうなれば後はおやつタイム。おや、こんなところにフルーツ盛り合わせ。
 豪華なフルーツ盛り合わせは質も量も十分!
 おやつに舌鼓を打ちながら、オヴィリアは辺りの様子を窺う。
 この悪夢を引き起こした元凶、モーラットナイトメア達は今もどこかに潜み、お菓子を食べながら悪夢のお祭りを楽しんでいるのだろう。
「美味しくお菓子を食べていられるのも今の内なのです!」
 おやつを味わいながら、オヴィリアは邪悪なモーラットナイトメア達への怒りを奮い立たせるのだった。  

大成功 🔵​🔵​🔵​

スイート・シュガーボックス
『キッチンカー』に乗って公園に突入、甘い物は俺にお任せあれッ!
モーラット達は、きっと果物をお腹いっぱい食べるつもりだったに違いないからね。フルーツ系お菓子を作るよッ!

悪夢の果物達をキッチンカーで轢いたり『ケルベロスリボン』を伸ばしてしばいたりして沢山確保だ。流石活きの良い果物、多少乱暴に扱っても全然痛まない。

十分確保したら公園の真ん中でキッチンカーを開け放ち【甘い幸せ彩る調理錬金】ッ!
手持ちの『極上食材』も合わせ、クリームたっぷりのフルーツケーキやシュワシュワのフルーツポンチ等々、色々なフルーツスイーツを作っていくよッ!
さあ皆ッ!悪夢の時間は終わり、おやつタイムの始まりだッ!


【アドリブ歓迎】



 ゴーストタウン現象が発生した今治市のとある公園。
 悪夢の果樹達が蠢く森の中を一台の大型キッチンカーがブロロロと爆走する。
「甘い物は俺にお任せあれッ!」
 キッとブレーキ音を立てて止まったキッチンカーの運転席から現れたのは、箱いっぱいにお菓子を詰めたミミックの男性、スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)だ。
 ツヤツヤピカピカのリボンをかけたお菓子箱!
 こんな素敵なスイートの姿を見れば、普段であれば甘い物大好き好奇心旺盛な野良モーラット達は一斉に集まってくるに決まっている。
 でも、今回はちょっと話が違う。
 なにせ、モーラット達は『あまいもの』に襲われて逃げているのだから。
「モーラット達は、きっと果物をお腹いっぱい食べるつもりだったに違いないね」
 あまいものを食べられないどころか、あまいものに追われる恐怖と悲しみ。
 スイーツを愛するものとしてモーラット達の気持ちはよく分かる。
 その悲しみを癒やすのは、甘い甘いフルーツ系お菓子しかないッ!
 作るべきは決まった! ならば後は材料調達だ!
 スイートは決意に満ちた表情でキッチンカーに乗り込むと、ブロンとエンジンをかけた。
 
 野良モーラット達を悪夢の渦に落としていた果樹達は、因果応報の言葉通り、今度は自分達が悪夢の中にぶち込まれていた。
「流石活きの良い果物、多少乱暴に扱っても全然痛まない」
 スイートが駆るキッチンカーが悪夢の果樹達をぶっ飛ばしながら進んでいく。
 キッチンカーでドーンと木に突っ込めば、果物達が雨あられと降ってくる。
 ぶつかられた衝撃で悪夢の果物達はみんな目を回してしまっているが、品質には問題なく、台風で落ちた訳あり果物のように十分おいしく食べることができる。
 車で突っ込んだら潰してしまう小さな茂みに生る果物達は、ケルベロスリボンを伸ばしてシュイッと茂みごと一本釣りで引っこ抜く。活きが良すぎて噛みついてくるのもいるが、スイートがリボンで一発しばけばどれもこれもシュンと大人しくなる。
 スイートのキッチンカーは公園内を縦横無尽に走りまわり、もぎたてフルーツを文字通り山のように集めていく。
 これ以上はキッチンカーに乗らないというくらい集めたら、店開きの準備だ。
 モラ通りの良い公園の真ん中で、スイートはキッチンカーを開け放つ。
 トトトトと小気味よい包丁の音と共に果物を切り刻んだり、手持ちの極上の卵でメレンゲを作ったり、ツノが立つまで絶妙な塩梅で生クリームを泡立てたり――。
 |甘い幸せ彩る調理錬金《スイートハッピークッキング》の力で、スイートはみるみるうちに沢山のおいしそうなフルーツスイーツを作り出していく。
 真っ赤な苺を贅沢に盛り付けたフルーツケーキは、なめらかふんわりなホイップクリームたっぷりで、どんな腹ぺこモーラットでも満足すること間違いなし。
 弾ける炭酸の香りが爽やかなフルーツポンチには、パイナップルやミカン、桃といった定番の果物に加え、グァバやマンゴーなどのトロピカルフルーツが加わる。くりぬかれたスイカの器に入れられて、味だけでなく目でも楽しさを味わえる逸品だ。
 とろりとろける飴でコーティングしたリンゴ飴はキッチンカーの照明の下で宝石のようにキラリ輝きを放つ。
 さらにさらに、丸くくりぬかれたメロン果肉の上に甘酸っぱいカシスが練り込まれたアイスと生クリームを積み重ねたメロンパフェが、そのゴージャスさで周りの目を惹きつける。生クリームの上に載せられたサクランボが彩りを添え、その名の通り完璧な美しさだ。
「さあ皆ッ! 悪夢の時間は終わり、おやつタイムの始まりだッ!」
「きゅっぴ! もきゅぴぃぴ! もきゅーん!!」
 スイートのキッチンカーはピカピカのフルーツスイーツ溢れる宝石箱のよう!
 高らかに呼びかけるスイートの声に、野良モーラット達が我先にと集まってくる。
「ほらほら、スイーツはいっぱいあるよッ! お腹いっぱい食べていってねッ!」
 スイートのキッチンカーから流れる甘い香りが悪夢を打ち払い、野良モーラット達を甘い物たっぷりの夢の国へ誘うのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
白夜さん(f37728)と。

たしかに白夜さんとはよくモーラット捕獲作戦行ってますね…私達の初陣もモーラット絡みでしたし。

白夜さんは毎回トマトかトマトジュースしか持って来ないじゃないですか…
私は琥珀糖をあげてみます、宝石みたいで綺麗でしょう?
溶かした寒天に砂糖を加えて固めた和菓子ですね、表面はカリカリで中はゼリーみたいに柔らかくて、見た目も綺麗で映えると最近人気なんですよ。
トマト味があるわけないでしょ…トマトジュース入れて作ってみてもいいかもしれませんが。

集まってきたモーラットさん達は私のUC『天球プラネタリウム』の中に入ってもらいますね。この中なら安全ですし、学園に連れていくのも楽ですから。


鳥羽・白夜
八坂(f37720)と。

なんかさー…モーラットってしょっちゅうピンチに見舞われてね?めっちゃオブリビオンに狙われてるイメージあるんだが。野良モーラット捕獲作戦行くのこれで何回目だろうな…(遠い目)

まあ、その分勝手は分かってるけどな。美味いもん持ってけばだいたい来てくれるし。
てなわけでミニトマト持って来たぜ!
だってトマト美味いじゃん、野菜だけど果物感もあるし。

琥珀糖…ってなんだ?
へー、和菓子なのかそれ。トマト味とかねえの?

なんだかんだ言い合いつつも持ってきたトマトや菓子は襲ってきたりしねえから大丈夫だぞ、と声かけたり優しく掴まえて八坂のUCに入るのを手伝ってやったり。すっかり慣れたよなこの流れ。



 ケタケタ笑う悪夢の果樹に覆われた公園の小道を、二人の男女が歩いている。
「なんかさー……モーラットってしょっちゅうピンチに見舞われてね?」
「たしかに白夜さんとはよくモーラット捕獲作戦行ってますね」
 鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)が首を捻って言うと、隣を歩く八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)が頷き返す。
 気の置けない友人同士が軽口を言い合いながら行くような、そんなのんびりとした雰囲気だが、そこは歴戦の能力者だった者達。警戒心は崩さず、油断なく辺りの様子を窺っている。
「めっちゃオブリビオンに狙われてるイメージあるんだが、野良モーラット捕獲作戦行くのこれで何回目だろうな……」
 遠い目をして、白夜は猟兵になってからのことを振り返る。
「私達の初陣もモーラット絡みでしたし、何かと縁がありますね」
 そうやって思い返してみれば、モーラット達はここ数年、新たな天敵が現れたり、強大なリリスにおやつ代わりに食べられそうになったりと、主に肉的な意味で散々な目に遭っている。
 今も遠くの方から、怯えたモーラット達の小さな鳴き声が聞こえてくるのだから、やはり今回もモーラット達は酷い目に遭わされているのだろう。
 その辺で遊び回っているところを捕獲するだけという、銀の雨が降る時代の事件に比べれば、随分物騒になったものだと、二人は思う。
「まあ、その分勝手は分かってるけどな。美味いもん持ってけばだいたい来てくれるし」
 モーラット捕獲作戦のスペシャリストらしく、白夜は胸を張り自信満々笑みを浮かべる。
 それに対して、詩織が浮かべるのは若干のあきれ顔。
「白夜さんは毎回トマトかトマトジュースしか持って来ないじゃないですか……」
 先輩の好物をモーラットも好きとは限らないんですよと、詩織はため息を一つ。
 モーラットは基本的に甘い物が好きだが、大体何でも喜んで食べる。とはいえ、毎回トマトやトマトジュースを推すのは、無類のトマト好きの白夜くらいだろう。
「ふふ、今回はトマトでもトマトジュースでもねーんだぜ」
「え、そうなんですか?」
 珍しいこともあると瞬きをする後輩へ、白夜はちっちっちと指を振ってみせる。
「てなわけで、ミニトマト持って来たぜ!」
 白夜が取り出したるは赤や黄色のミニトマト。やや細長く可愛らしい形をした品種だ。
「……トマトじゃないですか」
「だってトマト美味いじゃん、野菜だけど果物感もあるし」
 やっぱり先輩は先輩だった。いつも通りで安心感すら覚えるくらいだと詩織は思う。
 そんな詩織の内心を知らず、白夜は辺りをキョロキョロ見回し、オバケ果物の中にトマトも混じってないかなと探している。リンゴや苺の赤に紛れていないかと思ってみたが、トマトは野菜。野菜は果樹園には入れてもらえないと知ってガクッと肩を落とす。
 モーラットナイトメア達がトマトは野菜と考えたかどうかは不明だが、同じく草本性のイチゴやスイカは普通にその辺に生っている。ただし、本来の在り方をまるっきり無視して木に生っているので、モーラットナイトメア達は野菜と果物を植物学や法的な見方で区別するのではなく、好きか嫌いかの感覚でやっているのだろう。
 つまり、モーラットナイトメアはトマトがあまり好きじゃない。
 そんな結論に達した白夜は怒りでグッと拳を握りしめる。
「トマトの美味しさがわからないオブリビオン、許せねえ!」
「気持ちはわかりますけど、もう少し別の方向でやる気を出せませんか?」
 と、そんな風に軽口を交わしながら二人はゆったりと公園を進む。
 時折、頭上から悪夢の果物達が驚かしてくるが、学生時代からの相棒である赤い大鎌や結晶輪で軽く薙いでやれば問題なく撃退できる。
 
 そうして歩みを進めれば、公園の一角に据えられた東屋にたどり着く。
 周囲を見渡しても悪夢の果物達の姿はなく、付近には身を隠すのに都合が良さそうなオブジェや石が置かれていた。
 おそらく野良モーラット達はこの辺りに隠れているに違いない。
 幾つものモーラット捕獲依頼をこなしてきた二人の経験と勘がそう告げている。
 どちらともなく頷き合うと、東屋のベンチに並んで腰を下ろす。
 耳をそばだててみると、物陰のそこかしこから「ぴぃぴぃ」「きゅう」と、モーラットの小さな鳴き声がする。
 白夜と詩織の雰囲気を感じ取り、出てきても良いものだろうかと警戒しているのだろう。
 そんなときはそう。食べ物をあげてモーラット達の警戒心を解くのが重要。
 早速白夜がミニトマトを地面に並べてみる。だが、散々脅かしてきた悪夢の果物達に似た外見のトマトはまだ少し怖いらしい。モーラット達はミニトマトにチラチラと視線を送っているが近寄ろうとはしない。
「私は琥珀糖をあげてみます。宝石みたいで綺麗でしょう?」
 そう言って詩織が取り出したのは、和紙で飾られた小さな小箱だった。
「琥珀糖……ってなんだ?」
 白夜の問いかけに答える代わりに蓋を開ければ、中はまるで宝石箱のよう。
 桜、紅、浅葱に薄緑――うっすら透き通った色とりどりの宝石を思わせる美しい砂糖菓子が、ころりと箱の中で転がる。
 一つ摘まんで透かしてみれば、淡い青から菫色へとその色を変化させる琥珀糖が周囲の僅かな光を反射させ、表面の砂糖がキラリと光る。
「うわ、本物の宝石みてえだ」
 白夜が思わず息をのむ。
「溶かした寒天に砂糖を加えて固めた和菓子ですね。表面はカリカリで中はゼリーみたいに柔らかくて、見た目も綺麗で映えると最近人気なんですよ」
 ふわりと微笑みを浮かべて詩織が説明すると、白夜は感心するように頷いて薄い紅に染まる琥珀糖を一つ摘まみ上げる。
「トマト味とかねえの?」
 それっぽくね? 色も似てるしと言いながら、ためつすがめつ光に透かしてみる白夜。
「トマト味があるわけないでしょ……」
 そう言いかけて、でもトマト大好きな先輩のために、寒天にトマトジュースを入れて作ってみるのもいいかもと思い直す詩織。
 今度作ってみますかと提案すれば、若干食い気味に頷かれてしまう。
 それなら作り方を調べておかなければ。それに上手く作れるよう練習も……。
 詩織がそう物思いにふけっていることなどつゆ知らず、白夜は東屋の付近のオブジェの前で琥珀糖を手にモーラットを誘い出そうとしているところだった。
「ほーら、トマトや菓子は襲ってきたりしねえから大丈夫だぞ」
「……もきゅ? きゅう?」
 宝石のような琥珀糖の美しさに、それを差し出す白夜の人の良さそうな笑顔に、モーラット達は徐々に警戒心を解いていく。あるいは、物思いにふける詩織が動かないことも、モーラットを安心させる一助になったのかもしれない。
 一匹のモーラットが、小さなおててを伸ばして琥珀糖を受け取った。
 それを皮切りに、物陰から数匹のモーラット達が姿を現し、次々にお菓子やミニトマトを受け取っていく。
 白夜が持ってきたのは、トマトはトマトでも、モーラット達が好むようにと気を配った少し糖度の高いものだった。パクッとトマトを頬張るモーラットが、へにゃりと口元を緩めて目を細める。
 もちろん琥珀糖を受け取ったモーラットも満足そう。その甘さにうっとりしながら、ぺろりと口の周りに付いた砂糖を舐め取っている。
 モーラット達がお腹を満たして心を許せば、次は安全な場所に連れて行く準備だ。
 詩織が取り出す天球儀に触れたモーラット達が、次々にプラネタリウムの中に入っていく。白夜もモーラット達を優しく抱き上げ、入るのを手伝ってやる。
 これならモーラット達は安全だし、この後で銀誓館学園に連れて行くのも楽だ。
 二人で何度も繰り返してすっかり慣れた流れ。
 こうして野良モーラット達は二人の手で安全に保護されたのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
アドリブ大歓迎

モーラット…あまいものが好きな子が多いのだろうか
とある依頼で会った時は何故か隙間に詰まっていたし…不思議な生き物だ…
兎も角、今は悪夢から助け出さないと

彼らを見つけられたら籠手を外し
視線を合わせる様に跪いて手を差し出すよ
安心して。君達を助けに来たんだ
…とても怖い思いをしたみたいだね
大丈夫。僕が来たからにはもう君達に怖い思いなんてさせない
だからどうか…僕についてきてくれるかい?

しかしこのまま闇雲に探し回るのも…
それなら怖かった記憶を和らげ、迷子さん達への目印にもなるようなお菓子を作ろうか
材料を…おっと
…なるほど?悪戯にしてはやり過ぎだね
意地悪な果物には剣から光属性の衝撃波を放とう
収穫できれば安全確認に味見…うん、大丈夫そうだ
10秒、待っていただけるかい?
料理鞄から調理器具や調味料を取り出し【満星の料理番】の腕の見せ所
パイにタルト、ドーナツ等々テーブルがあれば置いてスイーツピクニックの出来上がり
おいで。迷子さん達の分もちゃんとあるよ
…ふふ。不思議な子達だけれど…やはり可愛らしいね



 モーラットナイトメアが引き起こしたゴーストタウン現象で悪夢の植物たちがはびこる巨大な緑の迷宮と化した今治市の公園。元はそれなりに大きな公園で、お年寄りが体操をしたり、子供達が走りまわったりする市民の憩いの場であったが、今は果樹達の黒々とした葉で太陽の光は遮られ、昼でも尚薄暗い。
 そんな公園の遊歩道を青年が一人歩いていた。
 葉に遮られた日光がそこだけ存在するかのような金色の短髪をさらりとなびかせ、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は舗装された小道を行く。
「モーラット、不思議な生き物だ……」
 モーラットとの初めての出会いは、悪夢の中で隙間にみっちりぎっちり詰まる姿。
 奇しくも今回の事件も悪夢の世界。
 頭上を見れば、現実に存在しているとは思えない木々がずらりと葉を揺らす。一本の木に鈴生りに赤、青、黒のベリーが実をつけ、けたたましくキャラキャラと笑っている。その木に巻き付くのは、赤と白のしましまスティックキャンディーの蔓。
「モーラット……あまいものが好きな子が多いのだろうか」
 こんな悪夢を夢見るのも、それに釣られて迷い込んでしまったのもモーラット。
 モーラットはあまいものが好きという仮説はおそらく正しいだろう。
 だが、あまいものに食べられる恐怖にさらされた野良モーラット達は、きっと今も心細い思いをしているだろう。そんな想像をしてしまって、アレクシスは形の良い眉を下げる。
 早く悪夢から助け出してあげなければという思いを抱き、道を急ぐ。
 木々の間を抜けると、少し開けたところに出た。
 ここは家族連れが楽しむ広場だったのだろう。砂場やブランコ、幼児や児童向けの大型アスレチックがいくつか置かれており、元々木々が少ない場所だったのか悪夢の果樹達はこちらにはその魔の手を伸ばしていなかった。
 ふとアスレチックに取り付けられたチューブスライダーが目に入った。
「ああ、そこに隠れていたんだね」
 モーラットは隙間に詰まる。
 狭いところが落ち着くのか、仲間と身体をくっつけ合うのが好きなのか。
 もしかしたらと覗いてみれば、案の定、数匹のモーラット達がスライダーの中で固まって震えていた。
 アレクシスが覗いていることに気付いたモーラット達は「きゅぴぃ……」と小さく悲鳴を上げ、奥へ逃げようとする。だが、ツルツルな滑り台を逆走することはできず、ちょっと登ってはずり落ちるということを繰り返す。
 まずはこちらに敵意がないということを知ってもらわなければ。
 アレクシスは籠手を外し、片膝をついて跪くと、モーラット達へ純白の手袋を嵌めた手をそっと差し出した。
 澄んだ朝空の色の瞳に笑みを浮かべて、怯える小さな毛玉達と視線を合わせると、モーラット達は黒い瞳をぱちりと瞬かせた。
「安心して。君達を助けに来たんだ」
 アレクシスが穏やかに声をかけると、一匹のモーラットが少しだけ近寄ってきた。モーラットは差し出されたアレクシスの指先に鼻を近づけ、スンスンと匂いを嗅ぐ。
 近寄ってはきたけれど、モーラットはお尻を下げていつでも逃げられる体勢だ。
 手酷く驚かされ、とても怖い思いをしたのだろうと思うと、胸が痛む。
「大丈夫。僕が来たからにはもう君達に怖い思いなんてさせない。だからどうか……僕についてきてくれるかい?」
 傷つけられた小動物に与えるべきは、真摯な思いやりの言葉。
「……もきゅ?」
 首を傾げてアレクシスを見上げるモーラット。
 アレクシスはそれに微笑み頷く。
「きゅっ! ぴぴ、もきゅーん!」
 モーラットは甘えた鳴き声を上げ、アレクシスの手にふわりと身体を擦り付ける。奥に隠れていた三匹も、それに続いてぴょんと跳ねるともふっと飛びついてきた。
 最初に出てきたモーラットがアレクシスの肩に飛び乗り、渦巻きほっぺでスリスリしながら、細い腕で広場の反対側を指す。どうやらまだあちらに仲間が隠れているらしい。
「しかしこのまま闇雲に探し回るのも……」
 モーラットが示した方へと進みながら、アレクシスは思案顔で首を捻る。
 思いの外広い公園の面積と残るモーラットの数を鑑みると、このままではそこそこ時間がかかるかもしれない。
 時間を掛けすぎれば、その間にモーラット達が傷つくようなことが起こるかもしれない。
 小さくてもふもふな守るべき者達がいたずらに怖い思いをするのは本意では無い。
 どうやって救出しようかと考えながら歩いていると、道の傍らに小さな東屋が見えた。東屋の下には小さなベンチとテーブルが据え付けられ、飲食可能な休憩スペースになっている。
「ああ、そうだ。それなら迷子さんへの目印になるようなお菓子を作ろうか」
 アレクシスがぽんと手を打って提案すると、足元をチョロチョロしていたモーラット達も「もきゅー!」と鳴いて嬉しそうにピョンピョン跳ね回る。
「きゅっぴ! きゅいきゅぴ! もっきゅきゅー!」
 早くお菓子が食べたーいとモーラット達が一斉に東屋の下へ駆けていく。
 モーラット達の無邪気な様子を、アレクシスはまなじりを下げて見守っていたが、ふと不穏な気配を感じて白銀の騎士剣を抜き放つ。
 闇を切り裂き一筋の光が閃く――。
 暁の光を思わせる衝撃波がモーラット達の頭上を飛び越え、東屋の屋根から転がってきたものに突き刺さると、一抱えほどもある巨大なオバケリンゴが真っ二つになって地面に転がった。
「も、もきゅー!?」
 目をまん丸にしてピタリ動きを止めるモーラット達。
「……なるほど? 悪戯にしてはやり過ぎだね」
 騎士剣を構えてアレクシスはため息を一つ。
 東屋の屋根の上に張り出した大枝に、大きな目玉と口の付いた悪夢の果樹がいくつも実っていた。油断したモーラット達を驚かしてやろうと転がってきたところ、気配に気付いたアレクシスに貫かれてしまったのだ。
「意地悪な果物にはお菓子の材料になってもらおうか」
 光が走る度にオバケリンゴがゴロゴロ落ちてくる。地面に落ちたリンゴにモーラット達が駆け寄り、大玉転がしの要領でアレクシスの元へ運んでくる。
 収穫したリンゴを少し削って味見する。動かなくなったオバケリンゴの中は真昼の太陽の色をした蜜がいっぱいで、見た目に寄らず繊細で凝縮された甘みが舌の上を転がった。
 あまいものを欲しがって大騒ぎするモーラット達に少しずつ切り分けて与える。
「ふふ、もっとおいしいものがあるんだ」
 シャクシャク音を立ててリンゴを味わうモーラット達に悪戯っぽく微笑むと、アレクシスは料理鞄を開く。空間の拡張魔法が施され、見た目以上の容量を誇る鞄から沢山の調理器具や調味料を取り出すと、東屋はさながら小さなキッチンのよう。
「君達に“おいしい”を届けてみせるよ。十秒、待っていただけるかい?」
 その言葉に、期待に毛を膨らませたモーラット達が両手を揃えてぴっと整列する。
 アレクシスは慣れた手つきでリンゴの皮を剥くと、薄くスライスしていく。
 かつて母に教わった懐かしい味。
 家族を喪った今でもその優しさがアレクシスの記憶に温かく残っている。
 モーラット達の恐怖の記憶を和らげてほしいと心を込めて作られたのは、リンゴをたっぷり使ったパイやタルト。見た目は素朴だが真心籠もったお菓子達は、どんな有名店のスイーツにも負けてはいない。
 甘い香りが東屋の中を満たし、優しい風に乗って運ばれていく。
「……もーきゅ? きゅいきゅい!」
 匂いに誘われた迷子達が次々に東屋の周りに集まってくる。
「おいで。迷子さん達の分もちゃんとあるよ」
 手招きすると、モーラット達が「もっきゅ!」と鳴いて飛びついてくる。
 お菓子に飛びつき無邪気に頬張るもふもふの白毛玉達。モーラット達は手にくっついたクリームをぺろりと舐め取り「もきゅん!」と声を上げたり、手にそれぞれ持ったパイとタルトを両方同時に食べたくて「もきゅーう」と嬉しい葛藤をしたりと忙しい。
「……ふふ。不思議な子達だけれど……やはり可愛らしいね」
 アレクシスはお菓子をつまみながら顔をほころばせる。
 
 これで野良モーラットの保護は全て完了。
 後は、どこかに潜んでいる|悪い子達《ナイトメアモーラット》を探し、この事件を解決するだけ。
 野良モーラットを学園に送る手はずを整え、猟兵達は次の戦いに備えるのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『モーラットナイトメア』

POW   :    もふもふナイトメアイベント!
小さな【もふもふな悪夢 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【悪夢のイベント会場で、催し物を楽しむこと】で、いつでも外に出られる。
SPD   :    もきゅっとナイトメア祭!
レベルm半径内を【悪夢のお祭り会場 】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【お祭りを楽しむ全ての行動】が強化され、【お祭りを邪魔する全ての行動】が弱体化される。
WIZ   :    きゅぴきゅぴナイトメアパーティー!
戦場内を【悪夢のパーティー 】世界に交換する。この世界は「【パーティーを全力で楽しむこと】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。

イラスト:熊谷狼

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●モーラットナイトメアパーティー!!
 猟兵達が野良モーラット達を保護する様子を、茂る木々の葉っぱの上から紫色の瞳がじっと見つめていた。
 元々モーラットは好奇心旺盛で、楽しいことやおいしいものが大好き。
 それはオブリビオンとして骸の海からやってきたモーラットナイトメアでも同じ。
 野良モーラットを脅かしたり、悪夢の果樹に実るあまいものをパクつきご満悦なモーラットナイトメア達だったが、今はやって来た猟兵達に興味津々で、枝の上でぴょんぴょこ跳ね回っている。

「もーきゅ? きゅぴぴ? きゅきゅーう!?」
「きゅう! きゅいきゅい、きゅぴーい!」
「きゅっぴ! きゅいぴぴ! もきゅー!!」

 ――あの人達、なんだか楽しそう!?
 ――おいしそうなものを食べてるね!
 ――いいな! いいなあ! ぼくたちも食べたーい!!

「「「もっきゅ! きゅきゅきゅきゅっ! きゅぴーん!」」」
 ――おいしいもの! 楽しいこと! もっともーっと!

 モーラットナイトメアが声を揃えてきゅぴきゅぴと鳴く。
 その声と共に、悪夢の果樹達がぐらりと轟く。
 果樹達は、寄り集まり絡み合い一本の大きな木となっていく。
 周りの建物よりも高く大きく、天まで届けと育った悪夢の果樹の幹にはいくつもの洞があり、中からケケケと悪夢の果物の笑い声が聞こえてくる。
 モーラットナイトメアはその洞の中に飛び込んだり、車よりも大きな葉っぱの影に隠れたり、枝を伝って飛び回ったりと思い思いに遊んでいる。

「「「もきゅ! きゅぴるる! もきゅぴっぴ!」」」
 ――さあ! いっぱい遊ぼう! 悪夢の世界で楽しもう!

 悪夢の果樹は緩やかにその範囲を拡大し、太い根っこが公園からはみ出し、周囲の道路まで広がっている。
 モーラットナイトメア達は積極的に破壊や殺戮をするつもりはなく、モーラットらしく無邪気に悪夢で遊んでいるだけだが、このまま放置しておけば今治市はいずれその全土が悪夢の果樹園となってしまうだろう。
 今治市を悪夢より救い出せるのは猟兵しかいない。
 悪夢の大木に乗り込み、モーラットナイトメアを止め、骸の海へと帰してほしい。

●MSより
 モーラットナイトメア達の能力で、公園に広がった悪夢の果樹は巨大な悪夢の大木へと変わりました。
 中は迷路のようになっており、一章と同じように悪夢の果樹があちこちに実り、中に入った者を驚かせてきます。
 悪夢の果樹に戦闘力はないので、猟兵が叩けば普通の食べ物に変わります。
 果物だけでなく、お菓子などのあまいものならなんでもあります。
 
 モーラットナイトメアは迷路の中に隠れているので、姿を現すまでは直接攻撃することはできません。
 彼らの興味を惹くあまいもので釣ったり、驚いたり面白い遊びをするなど悪夢を楽しむ行動をしたりすれば、嬉しくなって出てきます。
 やることは大きいですが、野良モーラットと大体同じようなものだと考えてください。
 
 悪夢を楽しまず大木ごと吹き飛ばすような攻撃は、モーラットナイトメアのUCで阻止されます。
 モーラットナイトメアが姿を現すまで悪夢のパーティーを楽しめば、直接攻撃することも可能です。所詮モーラットなので、叩けば簡単に消えます。
 
 オブリビオンと化そうが所詮モーラットなので、たっぷり遊んで満足したら、モーラットナイトメアは勝手にお家(骸の海)に帰ります。
 彼らがいなくなれば数時間ほどで悪夢は消え、ゴーストタウン現象も解決します。
 
 第2章にはプレイングボーナスがあります。
【モーラットナイトメアを満足させる/モーラットナイトメアの悪夢を楽しむ】

 それでは、楽しい悪夢をお楽しみください。
オヴィリア・リンフォース
アドリブ、連携歓迎

ナイトメアモーラット、悪くて強そうなのです。
そして目の前で憎たらしく自慢気にしているのです。
それに対抗して仲良くなったモーラット達を呼び寄せるのです。
久し振りにいたずら猫になって、モラ達と一緒に悪夢モラ達にいたずら返しをするのです。
お菓子を没収して、追いかけっこするのです。
そして隙あらばくすぐり攻撃を仕掛けるのです。
肉球からのくすぐりに耐えられるわけはないのです。
大人しくなって降参するなら、お菓子は返すと約束して、仲直りなのです。
あとは満足するまで、遊んでお菓子を食べるのです。
きっと寂しかっただけなのです。
今度はちゃんといいモラに生まれ変わるのですと言ってお別れするのです。



「もっきゅっ! もきゅいぴぴぴ、もっきゅっきゅ」
 悪夢の果樹が寄り集まった大木、生い茂る葉に囲まれた小さな洞の中から、楽しげなモーラットナイトメアの鳴き声が聞こえてくる。
「ナイトメアモーラット、悪くて強そうなのです」
 大きな大きな悪夢の大木を見上げ、オヴィリア・リンフォース(銀色の魔女猫・f25140)が、苛立ちも露わに尻尾を大きくブンと振る。
 オブリビオンとして強化されているとはいえ、これだけの規模の悪夢を具現化できるというのは、モーラットナイトメアが侮れない強敵である証だ。
 騒ぎの元凶をとっ捕まえてお仕置きしようにも、洞の中は曲がりくねった迷路になっており、この中から体長30センチメートルの毛玉を探すのは骨が折れる。
 それに……。
「もっきゅ!」
 洞の中から、その悪いモーラットがぴょこりと顔を覗かせた。紫がかった白いもふもふを揺らし、オヴィリアに向かって鉤爪になった手をぴこぴこ振ってみせる。
「……目の前で憎たらしく自慢気にしているのです」
 オヴィリアが睨みつけてやると、モーラットナイトメアは「きゅぴ!」とお尻を向けて、短い尻尾をふりふり。
 洞の大きさは小動物がくぐり抜けられる程度。
 安全な場所から煽るのは、モーラットナイトメアが邪悪なオブリビオンである証拠だ。
「むきーっ!?」
 オヴィリアが背中の毛を逆立ててフシャーと威嚇しても、悪い悪い悪夢モラはどこ吹く風。その辺に生っているチョコレートの実をぱくりと食べながら、きゅぴきゅぴ鳴く。
「余裕を見せられるのも今のうちなのです!」
 オヴィリアは前足をぴっと上げる!
「もきゅきゅ~!」「きゅぴぴ~!」「もきゅ~う!」
 オヴィリアの声に応えて、四方八方から沢山の野良モーラット達が集まってくる!
 先頭に立つ三匹は先ほどオヴィリアが助けた野良達だ。自分達を助けてくれたヒーロー、オヴィリアの呼びかけに仲間を引き連れて応援に来たのだ
「助けた分、しっかりと働いてもらうのです」
「もきゅ~!」
 野良モーラット達は雄叫びを上げると、モーラットナイトメアを追いかけて一斉に木の洞に飛び込んだ!
 138匹のモーラット達が小さい洞に飛び込んだのだから――?
「も、もぎゅううううう!?」
 詰まるのは必然ですね。モーラットは詰まるものだから仕方ない。
「もきゅ? きゅっぴー!」
 そこにモーラットナイトメアも突撃!
 ただでさえぎゅうぎゅうなところに突っ込んだのだから――?
「も、もぎゅううううう!?」
 詰まるのは当然ですね。モーラットは詰まるものだから仕方ない。
「何やってるのですー!?」
 みんなでギュウギュウに詰まって手をバタバタさせるモーラット達に、オヴィリアのツッコミが響き渡る。
「……ハッ! これはチャンスなのです」
 オヴィリアは肉球をわきわきさせて、詰まって動けないモーラットナイトメアに近づく。
 まずはおやつを取り上げ心を折る!
 モーラットナイトメアが「きゅーっ!」と悲鳴を上げた。
「続いて……おりゃりゃりゃりゃりゃーっ!!」
「も、もきゅきゅきゅきゅーっ!!」
 オヴィリアの肉球が光って唸る!
 柔らかい肉球で脇腹を執拗にくすぐられ、モーラットナイトメアの笑い声が響く。
 ちょっと手を止めて……すぐにくすぐる!
 それを続けてやると、涙目で手をバタバタさせ、「|もきゅーん!《ごめんなさーい》」となる、モーラットナイトメア。
「大人しく降参するならやめるのです」
 オヴィリアの言葉に、モーラットナイトメアはこくこく頷く。
 大人しくなるのならそれ以上手荒なことをする必要もない。
 よっこらせとモーラット達を引っ張り出して全員が洞から抜け出した頃には、すっかり時間が経っていて、みんなのお腹がぐうと鳴る。
 モーラットナイトメアが「ぴぴぴっ!」と手を振ると、キノコのテーブルが生えてくる。
 そこに採ってきたお菓子や果物を乗せて、楽しいおやつパーティーの始まりだ!
 沢山のもふもふな仲間達と食べて遊んで楽しんで――。
「きっと寂しかっただけなのです。今度はちゃんといいモラに生まれ変わるのです」
 オヴィリアの声に見送られ、モーラットナイトメアは満足して|お家《骸の海》に帰って行くのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディアナ・ランディール
アドリブ可

突如悪夢の果樹は、大きな大木に変わっていく。
これもモーラットナイトメア達の能力らしい。
「うわっ!。凄いですね…これではモーラットさん達も怖がりますよ」
雰囲気的に怖い樹木の様子にディアナ自身も驚いてしまう。
姿が見えない、モーラットナイトメア。
さて、どうおびき寄せようか。甘いものが好きなのは野良モーラットと同じようだ。
ならばと、鋼糸で頭上のキャンディーや果物、ついでにケーキの枝を切り落とし、甘い飲み物も用意。召喚でモーラットを呼びだすと、お茶会を兼ねたお遊びタイム。
持ってきていた小さなボールやヨーヨーなどで楽し気に遊びまわる。この空気にモーラットナイトメアが現れてくれたらいいのだが。



 モーラットナイトメアの力によって、悪夢の果樹達は巨大な悪夢の大木へと変化する。
 その姿はまさに悪夢。
 うねり曲がりくねった枝々が、寄り集まり絡み合って一つの巨大な幹になり、垂れ下がる蔓からは怪しげな光を放ちながら笑ういくつもの果物達がぶら下がる。ぽっかりと幹に穿たれた洞の中には、赤、青、黄の原色の小さな実をつけるシダのような植物が薄ぼんやりした光を放っていた。
「うわっ! 凄いですね……これではモーラットさん達も怖がりますよ」
 巨木の根元で見上げ、ディアナ・ランディール(鋼糸使いのドール/ビーストマスター・f41918)は嘆息する。
 モーラットナイトメアの感性だとこういうのが良いのかもしれないが、ディアナの目には不気味な雰囲気としか映らない。
 とりあえず登ってみましょうかと、ディアナは大木に足を踏み入れる。鋼糸を絡ませて体重を支えようかと思ったが、悪夢の大樹は足を掛けるところに困ることはなく、十分気をつけて歩けば落ちることはなさそうだ。
 人の身体よりも大きな黒々とした葉っぱが、風もないのにわさわさ揺れる。
「わっ、これも悪夢の力なのでしょうか?」
 木の上から転がってきた巨大なドングリをひらりと躱す。ドングリはディアナのメイド服のスカートをふわり揺らして転がって、木の幹にぶつかって砕けた。甘い匂いが漂ってきて、どうやらドングリはクッキーとチョコレートでできているらしい。
 ディアナがドングリが転がってきた方を見ると、紫色をした細い尻尾が葉っぱの影からチラチラしていた。ドングリを転がしたのは、モーラットナイトメアの仕業だった。
 ディアナの視線に気付いたのか、モーラットナイトメアは「きゅぴー!」と楽しそうな声を上げると、葉っぱ伝いに飛び跳ねて枝の間に隠れてしまった。
 どうやら簡単には捕まえさせてはくれないようだ。
「さて、どうおびき寄せましょう?」
 頬に手を当て、ディアナはモーラットナイトメアの対策を考える。
「モーラットナイトメアさんがこの悪夢を創ったのなら、ここに何かヒントがあるはず」
 辺りを見回すと、木のあちこちにチョコやキャンディーの実が生り、クッキーの花が咲いていた。もちろん木なので果物も実っている。枝からカラフルな虹色をしたブドウの蔓が垂れ下がり、その内のいくつかにはモーラットナイトメアのものらしい小さな歯形がついていた。
「甘いものが好きなのは野良モーラットさんと同じみたいですね」
 ちょっと囓って放置するのは、いかにも邪悪なモーラットらしい悪行だ。
「もしかして、食べ飽きちゃった……とかですか?」
 それなら新しい味と楽しみを提供してやれば、出てくるかもしれない。
 ディアナはメイド服の亜空間に通じるポケットから、大ぶりのテーブルクロスとティーセットを取り出した。
 大きく張り出した太い枝にテーブルクロスを掛け、ティーセットを並べる。
 お湯が沸くのを待つ間、ディアナが手をポンと叩いて呼ぶと、沢山の野良モーラット達が「もきゅ!」と集まる。
「モーラットさん、お菓子拾い競争をしませんか?」
 ディアナが鋼糸を走らせ、頭上のキャンディーの花や虹色ブドウの実を落としてやると、モーラット達は我先に走って行ってお菓子を拾い集める。
 甘い香りの枝を輪切りにしてみると、それはスポンジケーキ。
 クリームの樹液を集めてたっぷりケーキに載せた後、野良モーラット達が集めたお菓子でみんなで盛り付け飾り付け。
 いつものお菓子や果物も、ちょっと趣向を変えたら楽しい遊びに早変わり。
「優勝賞品は大きなケーキです。一番たくさん集めたのは誰でしょう?」
「もきゅ、もきゅきゅぴぴーっ!」
 ディアナがお皿にケーキを載せて差し出すと、一匹のモーラットが元気よくお返事。
 あらら? 上がったのは紫のおてて?
 楽しいティーパーティーに誘われたモーラットナイトメアが出てきちゃったのだ。
「ふふ、じゃあみんなでお茶会にしましょうか」
 ディアナの呼びかけに、モーラット達は種族の区別なく「もきゅー!」と歓声を上げるのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

スイート・シュガーボックス
フッフッフッ、分かってるよ。モーラットナイトメアの皆も俺のフルーツスイーツが食べたいんだねッ!
安心して、勿論君達の分も用意してあるからさッ!
さあ、今からこの悪夢の大木は甘い幸せの夢の街ッ!顕現せよ、【甘く香る極上のお菓子街】ッ!

さあ、この輝く宝石のような果物系お菓子の街は丸ごと君達に用意した物さ。存分にお食べ。
更に悪夢の果樹になる果物を『ケルベロスリボン』でもぎ取って『キッチンカー』で新たなフルーツスイーツを沢山作っていくよッ!

好きなだけ思うがまま、存分にお食べ。
お腹いっぱい食べて笑顔満点幸せ気分になれたなら、お家にお帰り。


【アドリブ歓迎】



 スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)とキッチンカーが悪夢の巨木の前に立った時、もう勝敗は完全に決まっていた。
「きゅっきゅ! きゅぴぴ! もきゅぴっぴ!」
「きゅぴるるる! きゅいきゅい!」
「きゅーん! もきゅーん!」
 木の枝に腰掛けたモーラットナイトメア達が、スイートに向かって盛んに鳴き立てている。
 姿を隠す気なんて全くない。
 だって、ほっぺが落ちそうなほどおいしそうなお菓子が詰まった宝箱が、ピカピカのお菓子を魔法のように無限に取り出す素敵な車に乗ってやって来たのだ。
 木の幹がぐいっと広がり、キッチンカーが走りやすいよう道路を創ってお出迎え。
 どうぞどうぞお入りください。
 そしてあまいものを沢山食べさせて!
 もうモーラットナイトメア達はスイートのお菓子の虜だ!
「フッフッフッ、分かってるよ……」
 キッチンカーからスイートが降りてくると、モーラットナイトメアの視線が集まる!
「モーラットナイトメアの皆も俺のフルーツスイーツが食べたいんだねッ!」
「もきゅー!!」
 スイートが拳を振り上げると、モーラットナイトメアも手を上げる。
「安心して、勿論君達の分も用意してあるからさッ!」
「きゅぴー!!」
 スイートが自分のお菓子箱の蓋をパッと開く!
 ピカピカのクッキーが露わになって、モーラットナイトメアは大興奮!
「さあ、今からこの悪夢の大木は甘い幸せの夢の街ッ!」
「ももももっ、きゅっぴー!!!」
 リボンをばさっと広げてスイートが宣言する!
 モーラットナイトメア達がスタンディングオベーション!
 
「顕現せよ、|甘く香る極上のお菓子街《ヘヴンリィ・スイーツタウン》ッ!」

 それはもう幸せな夢としか言いようのない光景だった。
 スイートの背後に顕現したのは、お菓子でできた夢の街。
 ピカピカでキラキラ――とっても素敵な光景に、モーラットナイトメア達は瞬きも鳴き声も忘れて魅入っている。
「さあ、この輝く宝石のような果物系お菓子の街は丸ごと君達に用意した物さ。存分にお食べ」
 スイートが優しく語りかけると、モーラットナイトメア達はそれを合図に弾かれたように駆け出す。
 モーラットナイトメア達の為に開け放たれた街の門は、ナッツやドライフルーツがたっぷり詰まったチョコバーの柵でできている。
 モーラットナイトメア達がチョコバーの門をくぐり抜け、お菓子の街に飛び込む!
 ああ、なんということでしょう。
 サクサクのクッキーが敷き詰められた大通りを駆けた先には、チョコレートがなみなみと湧き上がるチョコフォンデュの噴水があるではないか。噴水の周りに玉砂利のように置かれているのは、イチゴやバナナ、そしてオレンジなどの果物。
 果物を取って噴水に投げ入れると、くるりとチョコが絡まる。
 お口をあーんで待っていると、狙い違わずチョコでコーティングされた果物が返ってくる。お口の中でフルーツの酸味とチョコのほろ苦い甘さがマリアージュ。
 ほっぺにかかったチョコの滴をおててで拭い、こっそりペロリ。カカオの風味と甘さに、ナイトメアモーラット達は「もきゅん」と思わず声を漏らす。
 チョコフォンデュを味わった後は、お菓子の街の探索だ。
 ふわふわスポンジの壁にクリームがたっぷり塗られたケーキのお家。屋根は食べやすい大きさにカットされたフルーツミックス。ビスケットの雨樋を伝って甘い蜜がとろり流れる。
 チョコレートのドアや窓をカリポリ囓ってお家に入る。クリームの層が重なるスポンジを食べながら進むと、ごろっとフルーツが食感に彩りを添える。
 さらに! お菓子の街は止まらない!
 スイートは悪夢の果樹から果物をもぎ取って新たなフルーツスイーツを創り出し、モーラットナイトメア達が食べる端から、街の増築をしていくのだ。
 
「好きなだけ思うがまま、存分にお食べ」
 街のあちこちに響くモーラットナイトメア達の幸せな鳴き声を聞ききながら、スイートは目を細めて呟く。
 幸せな声が段々小さくなっていく。夢はやがて消えるのだ。
「お腹いっぱい食べて笑顔満点幸せ気分になれたなら、お家にお帰り」
 骸の海から生まれたちいさな悪夢の獣達。
 その夢の終わりはきっと満点の笑顔だったのだろう。
 スイートにとって、彼らもまたお菓子を振る舞うべき存在だったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木鳩・基
規模やば……!
これ普通にほっとけないやつだ!

モーラットナイトメアを探して洞の中へ
暗っ……!?ここで驚かされたら普通にビビるんだけど!?
わたわた翻弄されて走り回る
そのうちにナイトメアたちが出てこないかな

くっ……よくもやってくれたな!
やられっぱなしじゃ終われない!

木に触れてピース生成
それを使ってUCで物体構築
私が見聞きしたUDC怪物の群れを呼び出す!
かわいいおばけなんかじゃない……本物の怪異!
さぁ、鬼ごっこしよっか!
偽物でもビビらすには十分でしょ!

ある程度追い回したら終了
これに懲りたらイタズラはほどほどにしなよ!
怪異のピースを分解して、滑り台とかブランコ、滑車とか遊具を構築
仲良く遊んで和解といこう



「規模、やば……!」
 痛くなるほど首を傾けても頂上が見えないほど巨大な樹を見上げ、木鳩・基(完成途上・f01075)は危機感を募らせる。
「これ普通にほっとけないやつだ!」
 モーラットナイトメア達が作り上げた悪夢の大樹は、ゆっくりとその根っこを這わせ、公園からはみ出し広がっている。基の計算によれば、このままのペースで悪夢が広がれば一ヶ月程度で高縄半島は悪夢の中に埋もれてしまうだろう。
 急いでモーラットナイトメアを探さないと、そう焦りながら基は大樹に乗り込む。
「この洞が怪しいな」
 モトスマホの懐中電灯アプリで洞の中を照らしながら、基は慎重に様子を窺う。
「きゅぴい……もきゅーう……」
「うん、やっぱりこの中に隠れてるね」
 そこから反響したモーラットナイトメア達の鳴き声を聞き取り、基は身を屈めれば入れる位の小さな洞の入り口へ足を踏み入れる。
「暗っ……!? ここで驚かされたら普通にビビるんだけど!?」
 絡まり捻れた悪夢の大樹の枝や幹に阻まれ、洞の中は殆ど太陽の光が届かない。
 しばらくすると暗闇にも目が慣れてくる。入り口は狭いが、洞の中は立って歩くのに困らないほどの高さで、足音の反響から考えるとかなりの広さがあると分かる。
 ぴちゃん、ぴちゃん――。
 雨など降っていないにもかかわらず、水滴が垂れる音がやけに大きく耳に響いて、身震いを一つ。洞の中を、基はおっかなびっくり進んでいく。
 不意に基のパーカーのフードが引っ張られ、首筋にゴワリと毛の様な物が当たる!
「うひゃああああっ!?」
 基は思わず悲鳴を上げて飛び上がる。慌てて3メートルほど飛び退いてスマホのライトを向けると、どこかとぼけた顔が付いたキウイフルーツが蔦にぶら下がってブランブランと揺れていた。
「ちょっと、こういうのキツ……ってあああああっ!?」
 首筋を擦りながら基が振り返ると、「バアッ!」と巨大なオバケリンゴと目が合った。
 わたわた翻弄された基が走りまわっていると、近くから「もっきゅっきゅ!」と笑う声。
 基が驚き慌てる様子を面白がったモーラットナイトメアが近づいてきたのだ。
「くっ……よくもやってくれたな!」
 洞の壁に手をついて焦った様子を見せながら、基は内心上手くいったとほくそ笑む。
 実はこれ、驚かされたフリでおびき出そうという基の作戦だ。
「やられっぱなしじゃ終われない!」
 基が触れている木々が、パズルのピースのようにぱらりと崩れていく。
 基の探索者としての記憶をもとに新たにピースを嵌めこみ、再構築していく。
「かわいいおばけなんかじゃない……本物の怪異!」
 ヌルリ――。
 体中に牙を持つ口を開かせた暴食の怪物の群れが顕現する。
 UDC世界ではかなりの目撃例があり、基自身もこの怪物の出現を予知したこともある。
 機能は持たず見た目だけだが、よく知っている怪物なので見た目の再現度は抜群だ!
「さぁ、鬼ごっこしよっか!」
 ニヤリと笑う基の言葉を受け、怪物達は本物のように肉を喰らって増殖せんとモーラットナイトメア達を追いかけ回す。
「ぴ、ぴいいいいいっ!?」
「きゅ!? きゅううううっ!?」
「ぴきゅ、もきゅうううっ!?」
 洞のあちこちからモーラットナイトメア達の悲鳴が聞こえてくる。
 機を見計らって、基は怪異のピースを分解する。
 洞の隅っこに固まってぴるぴるぷるぷる震えるモーラットナイトメア達に向き直ると、ビシッと指を突きつけ、お説教タイムだ。
「これに懲りたらイタズラはほどほどにしなよ!」
 もう悪さをしようという気はないだろう。
 モーラットナイトメア達が何度も頷き謝るのを見て、基はにっこり笑顔を浮かべる。
「それじゃ、仲良く遊んで和解といこう」
「……も? もきゅう?」
 もう怒ってないのかな?と上目遣いをするモーラットナイトメア達に、基は言葉の代わりにピースを組み替え、滑り台やブランコ、滑車などの遊具を構築する。
「もきゅーん!」
 喜びの声を上げて遊具に夢中になるモーラットナイトメア達の夢の終わりまで、基は彼らと楽しく過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
白夜さん(f37728)と

国によってはトマト果物扱いらしいですけどね、台湾の屋台じゃトマト飴が売られてるそうですし。
日本では野菜扱いなんですが…
白夜さんがトマトの美味しさをうまくプレゼンできたらトマトも生るかもしれませんよ?

ほんとトマトのことになると熱いなーと先輩を眺めつつ、果物とお菓子があるなら何か作れるかも?と閃き早速材料集め。
ケーキにさらに果物をトッピングしたり、カステラとホイップと果物で即席パフェを作ったり。
火を使っても大丈夫そうなら飴を溶かしてフルーツ飴を作るのもいいですね。
そういえば食べましたね、トマトパフェ。レシピは大分違いますが…食べてみます?
(モーラットナイトメアに呼びかけ)


鳥羽・白夜
八坂(f37720)と

はぁ…果物狩りすんのはいいけどトマトがねーんじゃなぁ…トマトも果物っぽいだろ(悪夢の果樹を大鎌で切りつつ)
え、マジ?じゃあやっぱりトマトないのおかしいだろ!
えー…果物ですらねえやつも実ってるじゃん、これなんてマカロンだぞ…

そうか!それならトマトの良さを全力でアピールするぜ!ほら俺らがさっき食ってたミニトマト、糖度高めのやつだから甘いぞ。
うん、美味い!と自分でも食べてみせたり。

ってお前何してんの?へー、菓子と果物でパフェ作ってんのか。ならミニトマトも乗せようぜ、糖度高めだからいけるだろ。前にデビルキングワールドでトマトパフェ食ったことあるしな。
トマトは菓子にもなるんだぜ!



「はぁ……果物狩りすんのはいいけどトマトがねーんじゃなぁ……」
 悪夢の大樹の中程にて、鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は道を塞ぐ葉や蔓を赤い三日月型の刃を持つ大鎌でザクザクと切り払いながら、大げさにため息をつく。
 白夜が鎌を振るう度に、果物やお菓子がパラパラと落ちてくる。
 様々な果物が落ちてくるのだがその中にトマトだけはない。
 たまに赤い実が落ちてきたかと思うと、リンゴだったりイチゴだったり。
 先程など、真っ赤でツヤのある皮をした果実が遠くの茂みに生っているのを見て、「お、トマトあるじゃん」と白夜が期待して近づいてみると、それはこぶし大のサクランボだったというオチ。
「トマトも果物っぽいだろ!」
 ケケケと笑うサクランボの茂みを、怒りの声と共に白夜は大鎌でなぎ払う。
「日本では野菜扱いですが、国によってはトマトも果物扱いらしいですけどね」
 怒る白夜の様子を頬に手を当てておっとりと眺め、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は、時々理科の授業で生徒達を引きつけるためにする小話の一つを口にする。
「実の部分を食べるトマトは植物学的には果物なんですよ。トマトが野菜か果物かで裁判になったこともあるそうです」
「え、マジ? じゃあやっぱりトマトないのおかしいだろ!」
 食いつき気味に身を乗り出し、結局トマトはどちらなのかと白夜は話の続きを促す。
「まあ、野菜って判決が出ましたけど」
「不当判決!!」
 さらっとトマトは野菜と言い切られてしまい、白夜はがっくりと肩を落とす。
「大体、果物ですらねえやつも実ってるじゃん、これなんてマカロンだぞ……」
 立ち上がりついでに、白夜は切り払ったときにコロコロ転がってきたピンクのマカロンをつまみ上げて詩織に渡す。
 ひっくり返してみると、マカロンには小さな齧歯類っぽい歯形が付いていた。
「果物じゃなくて、モーラットナイトメアが食べたいものが生ってるんですかね?」
 詩織は小首を傾げて考える。
 確かにこれまで木々に生っていたものは、全てあまいもの。
 それなら、もしかして……?
「白夜さんがトマトの美味しさをうまくプレゼンできたらトマトも生るかもしれませんよ?」
 ちょっとした思いつきを口にしてみると、途端に白夜の顔がぱっと輝く。
「そうか! それならトマトの良さを全力でアピールするぜ!」
 ばっと飛び上がると、白夜は野良モーラットを保護するときに使ったミニトマトを取り出す。
「ほら俺らがさっき食ってたミニトマト! 糖度高めのやつだから甘いぞ」
 パックからミニトマトを出して、どこかで隠れて見物しているだろうモーラットナイトメアに見えるように高く掲げる。
 一つ囓って大げさに「うん、美味い!」とんで見せてば、どこからか「もきゅ?」と小さな声がして、頭上の葉っぱがカサカサと揺れる音が聞こえてきた。
 どうやら白夜の渾身のプレゼンは確実にモーラットナイトメアに伝わっているらしい。
 気を良くした白夜が更に熱くプレゼンを続けるのを、詩織は微笑ましく眺めていた。
「ほんとトマトのことになると熱いなー」
 自分の好きなもののことになると夢中になってしまう。
「そういうちょっと子供っぽいのも、先輩の良いところなのかな」
 学生の頃と変わらない白夜の姿に懐かしさが募り、思わずくすりと笑みがこぼれる。
 そうやって懐かしい思い出に浸っていると、少々ぼんやりしていたようだ。
「……このミニトマト、今、モーラットの間で大バズ中!」
 見ると、白夜はまだモーラットナイトメアにトマトの甘さ美味しさをプレゼンしていた。
 ナイトメアモーラット達の「きゅぴぴ」という鳴き声が少し近づいてきているようだ。
 このままおびき寄せるのを先輩任せにしておくのも気が引ける。
 でも、琥珀糖はさっき野良モーラット達に全部あげてしまったし……。
 詩織がきょろきょろと辺りを見渡すと、さっき白夜が落とした果物やお菓子があちこちに沢山転がっていることに気付いた。
「果物とお菓子があるなら何か作れるかも?」
 ポンと手を打ち、詩織は果物やお菓子を集めていく。真っ赤なリンゴやイチゴ、さっき白夜がトマトと見間違えた巨大なサクランボを集めていると、ふんわりと甘い香りが漂ってきた。そちらを見ると柔らかな黄色に紅葉する木があって、葉っぱの代わりに茂るのは薄くカットされたカステラだ。
 柔らかで真っ白なホイップクリームをカステラの葉っぱですくい上げれば、もうそれだけで甘くておいしそうだが、あともう一押し必要な気がする。
 この材料なら果物を乗せてパフェにしようかなと詩織が考えていると――。
「……ってお前何してんの?」
 背後から声がかかり、思わず「ひゃっ!?」と飛び上がってしまう。
 振り向くと白夜の顔がすぐ目の前にあり、思わず詩織は少し頬を赤らめる。
「白夜さん、もうプレゼンは終わったんですか?」
「ん? まあな、後は試食を残すのみだぜ」
 モーラットナイトメアが手に取れるように、幾つか木の上に投げてきたと白夜は言う。
「んで、八坂はそれ何? 何で集めてんの?」
「ああ、これですか。モーラットナイトメアさん達にパフェを作ろうかなって」
 今はどの果物を乗せようか考えていた所なんですと詩織が返すと、
「へー、ならミニトマトも乗せようぜ、糖度高めだからいけるだろ。前にデビルキングワールドでトマトパフェ食ったことあるしな」
 トマト大好きな白夜が推すのは当然トマトだった。
「そういえば食べましたね、トマトパフェ。レシピは大分違いますが……」
 二人で食べたあの時のトマトパフェは、甘みと酸味のバランスが絶妙で、トマトをそこまで推さない詩織も、甘いものがそれほど好きでない白夜をも唸らせる逸品だった。
 あれを食べればモーラットナイトメア達は絶対にトマトの魅力を知る!
 そう断言する白夜に、詩織が首を傾げる。
 そのパフェには専用のトマトクリームやジュレ、アイスが添えられていた。
「ここにある材料でレシピを再現できるでしょうか?」
「うーん、俺が持ってきたやつだけだと、ちょっと足りねーな」
 レシピの再現度が低ければモーラットナイトメアを納得させられないかもという懸念に二人が思案顔をしていると……。
「もっきゅ! きゅきゅきゅーい!」
 頭上からモーラットの声が聞こえ、白夜と詩織の目の前に赤い実を付けた蔓がスルスルと垂れ下がってきた。
 先程、白夜がプレゼンしていたミニトマトとそっくりの真っ赤な実をいっぱい付けた蔓。
 蔓の上の方ににモーラットナイトメア達がぶら下がり、ミニトマトを囓っている。
「これを使え……ってことか?」
 白夜が尋ねると、モーラットナイトメア達は口々に「もきゅもきゅ」と鳴いた。
「ふふ、先輩のプレゼンは大成功だったようですね。パフェ、作ってみましょうか?」
 詩織がモーラットナイトメアに呼びかけると、「もきゅっ!」と満場一致で大賛成。
 それではみんなでトマトパフェ作り。
 手近な花から砂糖の花粉を集めて、トマトと一緒に火にかける。
 とろ火でとろりと煮詰まるまで待てば――。
「あ、つまみ食いはダメですよ」
 待てずにスプーンですくって食べようとする悪い子達を詩織が優しく咎める。
 叱られたのは白夜とモーラットナイトメア。一人と一匹で顔を見合わせ、へへと笑う。
 甘く煮詰めたトマトは、裏ごしして果汁の部分をクリームと混ぜる。
 詩織は、ふんわり薄紅にツノを立てるクリーム、カステラ、トマトジャムを層にしてパフェの土台を作っていく。
 黄色、ピンク、赤の縞々が並び、カラフルでとっても美しい。
「よし、パフェの具、乗せようぜ!」
 収穫したミニトマトを前に白夜が声をかけると、モーラットナイトメア達も大興奮!
 溢れんばかりにたっぷりとミニトマトを乗せたがる子や、色々な果物を味わいたいとイチゴやサクランボも乗せる子、みんなそれぞれ思い思いに夢のパフェを作り上げていく。
「それじゃあみんなで――」
 みんなで作ったキラキラピカピカのパフェを前に、いざおやつタイム!
「いただきまーす」
「もきゅぴぴきゅーい!」
 悪夢の果樹の中に声が響く。

 骸の海へ帰るモーラットナイトメアに。
 そして、これからも二人で色々な経験をする白夜と詩織の二人にも。

 今日あったことは、きっと素敵な思い出とトマトの美味しさの記憶になるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
アドリブ◎

これは…まるでホラーハウスだ
先ずは悪夢の主を探さないと。…言いたい事もあるしね

彼らもモーラットなら楽しそうな気配にも惹かれるはず
指を指揮棒の様に振って
光属性でオバケ果物達を光の花や星で飾り
光の鳥や蝶、モーラットを作り出してパレードの様に進もう
ナイトメア達が興味を見せたら【夢幻の天衣】で一度透明に
そして光を回転花火の如く縦横無尽!迸らせて驚かせよう
その隙にもふっと両腕で確保を試みてから姿を現すよ
吃驚したかい?悪戯っ子さん達
…君達はただ遊んでいただけだろう。けれどその遊びに傷つき怯えた子達がいるのも事実
だから君達にも驚いてもらおうと思ったんだ。…その事をどうか知って欲しい
僕でよければ遊び相手になるよ。その前に…これもどうぞ
料理鞄から焼き立て林檎のパイとタルトを出して渡すよ
君達の分も作っていたんだ
(…もう意地悪をしないのであれば、野良モーラットくん達も呼べるといいな
彼らへのごめんなさいも忘れずに)

皆で沢山遊んだら真っ直ぐお還り
お土産にフルーツ型クッキーも渡そう
さあ、おはようの時間だよ



「これは……まるでホラーハウスだ」
 視界を埋め尽くすほど巨大な悪夢の大樹の中、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は眉を顰めてため息をついた。
 床や天井は葉っぱや枝でできた天然の迷路。幹の隙間に苔のように這いつくばって広がるのは紫色をした綿菓子で、その隣を蜂蜜でできた樹液の川が流れている。
 ぎょろりと目を光らせる悪夢の果樹達があちらこちらに実り、奇っ怪な笑い声が風に乗ってアレクシスの耳に届く。
 それらの纏う雰囲気には恐怖だけではなくどこかハロウィンの飾り物のようなコミカルさもあり、子供を喜ばせる為のお化け屋敷のようだとアレクシスは率直な感想を口にする。
 先ずは悪夢の主を探さないと――。
 そう思いながら歩を進めていくと、どこからか「もきゅ!」と鳴き声が聞こえてきた。
 アレクシスは首に下げた小さなペンダントトップにそっと触れる。
 保護した野良モーラット達はペンダントの中に作られた陽光満ちる森の中でのんびりと遊んでいるはず。だとすれば、迷宮内に響く鳴き声はモーラットナイトメアのものに違いない。
「彼らは子供なのだろうね」
 これだけの騒ぎを引き起こしたオブリビオンに対しても、その性質が無邪気な子供と同然のものであれば、アレクシスは彼らに憎しみを持つことはない。
「でも……言いたい事はあるよ」
 子供であるなら教え諭さねばならないのだ。
 野良モーラット達を驚かせたこと。それは反省して貰わなければならないだろう。
 モーラットナイトメア達の気配を探りながら、アレクシスは葉っぱの迷路を進む。
 上と思えば下、右に行ったかと思えば左と、その気配は絶えずあちこちに移動しており、とどまることを知らない。
 きっと彼らだけの秘密の通路もあるのだろう。
 闇雲に歩いているだけでは決して捕まらないだろうからと、アレクシスは一計を案じる。

 薄暗い葉っぱの迷路に、キラリと一番星が浮かび上がる。
 アレクシスが指揮棒のように指を振ると、指先から流れる旋律が光となって流れていく。
 |Allegretto《やや速く軽快に》、そして|brillante《華やかに》――。
 アレクシスの光の魔法とリズムが迷宮内を彩っていく。
 大きく指を振ると、悪夢の木の葉の床や壁にキラキラ輝く光の花が咲く。
 周囲で気味悪く揺れるオバケ果物の笑い声だって、星の煌めきを纏えば楽しげなものに早変わり。
 飛び回る鳥から煌々と輝く羽が舞い散り、花の上を軽やかに羽ばたく蝶達は燐光を振りまく。
 アレクシスが創り出す軽快な二拍子のリズムと光が繰り出す夢の星空は、誰だって一緒に行進したくなること間違いなしの楽しさ!
 ダメ押しにと、アレクシスは指をくるりと一回転。
 |scherzando《戯れるように》――!
 その声に、光が沢山のピカピカまん丸なモーラットの姿へと変わる。
 光のモーラット達はアレクシスの周りを飛び跳ねて、一緒に行進する。
 ピカピカの光彩を放ちながら進む行進は、どこまでも輝く夢のよう。
 アレクシスの陽光のような金髪も相まって、光が太陽と星のダンスを踊る。
「きゅっきゅぴ♪ もっきゅぴ♪」
「もっきゅきゅ♪ きゅぴーん♪」
「もーきゅ♪ もーきゅ♪」
 アレクシスが奏でる光の旋律に、別のリズムが混ざり始めた。
 光のパレードに混ざりたくなった小さく悪戯な悪夢達が出てきたのだ。
 飛んだり跳ねたり、もっきゅんもっきゅん!
 踊って歌って、もきゅぴっぴ!
「(おやおや、悪戯っ子達のお出ましだね)」
 彼らの傍若無人なリズムに乱されることなく、アレクシスは胸の内で静かに呟く。
 碧空の瞳を一瞬だけモーラットナイトメア達に向けたが、それを気取られないようにすぐに真正面に向き直る。
 跳ね回るモーラットナイトメア達が十分近寄ってくるまで引き寄せ、そして――。

 ぱっとアレクシスの姿が消える。

「もっ!? もきゅー?」
 アレクシスの姿を見失ったモーラットナイトメア達が、ぱちくり瞬きをする。
 北十字の加護を宿した祈りがアレクシスの身体を透明に変えたことに、モーラットナイトメア達は気付けない。
 モーラットナイトメア達がキョロキョロと辺りを見渡している様子に、アレクシスは唇に人差し指を当てて悪戯っぽくクスッと笑みを浮かべる。
 アレクシスは、パチリとウインクすると、迸る光を回転花火の如く縦横無尽に奔らせる!
「きゅ!? きゅうううっ!!」
 パチパチ静電気よりもずっと激しい稲光に、モーラットナイトメアは慌てふためき駆け回る。
 周りを見る余裕なんてありはしない。
 躓いて、転がって、ぶつかって。
 三匹が真っ白なお団子のようにひとかたまりになってころころころ……もふん!
 モーラットナイトメア達を止めたのは姿を現したアレクシスの両腕。
 捕まえられたモーラットナイトメア達はちっちゃな腕をばたつかせて暴れたが、アレクシスは彼らが逃げることを許さない。
「吃驚したかい? 悪戯っ子さん達」
 いつもの柔和な口調にほんの少し厳しさを混ぜ、アレクシスは語りかける。
「君達はただ遊んでいただけだろう。けれどその遊びに傷つき怯えた子達がいるのも事実」
 野良モーラット達が遊んでいるペンダントを見せ、この子達のことだよと教えてやる。
 ――確かに見覚えのある子達。
 ――悪夢の果物を見せてあげたら、楽しそうに跳ねてくれたっけ。
 ――あの子達も悪夢を楽しんでくれてると思ったのに、そうじゃなかったの?
 モーラットの言葉はわからないが、アレクシスは彼らの言いたいことが理解できた。
「うん、そうだよ。だから君達にも驚いてもらおうと思ったんだ」
 驚かされるのは面白いだけじゃない。怖い思いをすることもあること。
 楽しく面白い夢と、恐怖の悪夢は違うのだということ。
「……その事をどうか知って欲しい」
 そう静かに諭され、自分達のしでかしたことに気付いたモーラットナイトメア達が、紫の瞳を伏せて「もきゅう……」と悲しげに鳴く。
 アレクシスが手を緩めても、モーラットナイトメアはもう逃げようとはしなかった。
 そっと彼らを地面に下ろすと、アレクシスは籠手を外して手を差し出す。
 ぎゅっと目を閉じて固まるモーラットナイトメアのもふもふな頭を、アレクシスは優しく撫でてやる。柔らかで優しい感触にモーラットナイトメアは目を開け、「きゅ?」と上目遣いでアレクシスを見上げる。
「さあ、仲直りしよう。僕も君達を驚かせたんだ、一緒に『ごめんなさい』だよ」
「……もっ? もきゅうん」
 やり方を教えてあげるように、先にアレクシスが『ごめんなさい』と口にすると、モーラットナイトメア達も揃って『ごめんなさい』をする。
「もっきゅ! ぴぴぴぴぃ! きゅっぴー!」
 すると、アレクシスのペンダントから野良モーラット達が飛び出してきた。
「ほら、野良モーラットくん達にもだよ」
 アレクシスが促してやると、モーラットナイトメアはおずおずと彼らにも『ごめんなさい』をする。すると野良モーラットたちは「きゅっぴ!」「きゅぴぴい!」と口々に鳴いて、ふわふわの身体をモーラットナイトメア達に擦りつけた。
 どうやら仲直りできたみたいだねと、アレクシスは微笑みを浮かべる。
「仲直りの魔法の言葉が言えたら、皆で一緒に遊ぼうか……と、その前に」
 アレクシスは料理鞄から焼き立て林檎のパイとタルトを出す。ほんわり香る林檎とバターの甘い香りに、モーラット達が一斉に鼻をひくつかせて、尻尾をぴこぴこ振る。
「君達の分も作っていたんだ。でもこの人数だとちょっと少ないかな?」
 野良モーラットの数も入れたら、一人が食べられるのは一欠片だけになってしまう。
 もっと作っておけば良かったかなとアレクシスが考えていると、モーラットナイトメアが「もっきゅーん!」と元気良く手を振り上げる。
 たちまち悪夢の大樹から沢山の果物がころころ転がってきて、野良モーラット達は大喜び。
 あまいものは独り占めするより、みんなで分け合って食べる方がずっとおいしい!
 アレクシスが差し出すパイの一欠片を存分に味わって、それからみんなで果物狩りだ。
 過去と現在のモーラット達がぴょこぴょこ駆け回り、みんなで楽しい夢の時間を過ごしていく。
 
 そうして十分遊んだら、もうすぐ夢の終わりの時間。
「さあ、おはようの時間だよ」
 アレクシスと野良モーラット達が見送る中、モーラットナイトメアが光の中に消えていく。
 お土産にとアレクシスが渡したクッキーをサクサク囓る音を残して、真っ直ぐ|お家《骸の海》に還っていく。
 
 モーラットナイトメアは過去より生まれしオブリビオン。
 今この場所で心を通わせたとして、次に生まれた彼らもそうであるとは限らない。
 だけど今この場所で、確かに繋がった想いは――。
 猟兵と野良モーラット達の心にいつまでも確かな物として残り続けるだろう。 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年06月10日


挿絵イラスト