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獣人世界大戦⑰〜CODE:GIGANTIC〜

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第三戦線 #クロックワーク・ヴィクトリア #プロフェッサー・モリアーティ


 ゾルダードグラードの挙兵に乗じてロシア———ワルシャワ条約機構の首都・サンクトペテルブルクを攻略しようと沖合に押し寄せていたクロックワーク・ヴィクトリア「狂気艦隊」。
 防備の甘い北方を食い破ろうとしていた悍ましい船団は猟兵の介入によりことごとく沈没させられた……はずだった。
「サンクトペテルブルク沖に押し寄せていた狂気艦隊は沈没したように見せかけて凍結海を越え、UDCアンディファインド・クリーチャーの肉体を流用して作った脚部を生やして、イガルカ周辺にまで進軍していることが明らかになりました」
 ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は眉間に皺を寄せながら地図の上に乗せた船の駒を川に沿って動かす。
 その先にはチェスの黒いクイーンの駒が置かれていた。
「クロックワーク・ヴィクトリアの狙いはサンクトペテルブルクでも『はじまりの猟兵』でもなく、ゾルダートグラードの幼女総統『ギガンティック』。最初から我々やワルシャワ条約機構との交戦で弱ったところを漁夫の利で掻っ払うのが目標だったようです」
 船の駒とクイーンの駒がぶつかり合う。
「この狂気艦隊を率いる『プロフェッサー・モリアーティ』はギガンティックを捕えるために『ポーシュボス・フェノメノン細胞』を持ち込んでいます」
 ポーシュボス・フェノメノン。
 アポカリプスヘルで初めて確認された、「善の心」に寄生し、少しでも善の心を持つ生物を新たな「純粋悪ポーシュボス」に変えてしまう生命体である。
 対峙した猟兵の中にはそれに飲まれ、体が液状化してしまったり善悪の心がごちゃ混ぜになって発狂しかけたりした者がいる、厄介極まりない存在である。
「さらにモリアーティが乗る旗艦『ネルソン』は強大なUDC怪物を錨に加工し、武器として扱ってきます。そしてその怪物というのが……こちらの映像をご覧ください」
 そう言ってリモコンを弄ると室内の照明が暗くなった代わりにモニターに電源がつく。
 すると男性が何かを取りに来ようと冷凍庫を開けた瞬間に中から飛び出してきた吹雪に飲み込まれて氷像と化し、伸びてきた腕によって仕舞われていく様子が映し出された。
UDCアンダーグラウンド・ディフェンス・コープでは『冷凍庫に潜む者』と呼称されている存在です。クロックワーク・ヴィクトリアはこのUDC怪物の力も借りてなるべくノーダメージでギガンティックを捕らえて持ち帰るつもりです」
 今回猟兵達に課せられた任務は狂気艦隊をギガンティックと接敵してしまう前に鎮圧することだ。
「相手も猟兵相手となれば出し惜しみはせず向かってくることでしょう。うっかり氷像にされて砕かれたりポーシュボス化してモリアーティの支配下に入ったりしないよう、細心の注意を払って任務に当たってください。以上、説明を終わります。皆様、よろしくお願いいたします!」


平岡祐樹
 お疲れ様です、平岡祐樹です。

 このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。

 今案件にはシナリオギミック「怪物化ネルソンによる『UDC怪物攻撃』に対処する」・「『邪悪ナる者』になる」「ポーシュボス化してでも戦う」がございます。
 これに対抗するプレイングが記載されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。

 UDC怪物「冷凍庫に潜む者」の攻撃は以下の通りです。
 POW:「FREEZER_MODE_READY」
 【冷凍庫の中に引き込む吹雪と腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【冷気で氷漬けにした対象】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
 SPD:「猛抵抗」
 【手当たり次第、氷雪と冷気と冷凍庫にある物】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
 WIZ:「もっといい感じの冷凍庫を…」
 真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【謎の力で改造された、すごい冷凍庫】で覆われる。
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第1章 ボス戦 『プロフェッサー・モリアーティ』

POW   :    狂気砲弾
【ポーシュボス・フェノメノン】を宿した【艦隊の砲弾や機銃弾】を射出する。[艦隊の砲弾や機銃弾]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
SPD   :    プロフェッサーズ・クエスチョン
対象への質問と共に、【自身の肉体】から【ポーシュボス・フェノメノン】を召喚する。満足な答えを得るまで、ポーシュボス・フェノメノンは対象を【ポーシュボス化】で攻撃する。
WIZ   :    『小惑星の力学』
戦場全体に【流星の如く降るポーシュボス・フェノメノン】を発生させる。レベル分後まで、敵は【ポーシュボス化】の攻撃を、味方は【ポーシュボス化している部位】の回復を受け続ける。
👑11
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李・蘭玲
艦隊戦なんて初めてですねぇ
しかもこの寒さ、機体でなければ動けませんよ

出立前にUC発動
上空から艦隊の対空砲火を陽動しつつ、私は装備のバイクで地上から接近
430名となると、複数機で出現しますかね?
あのUDCは殴ると強化されるようですし…電気銃でショートさせましょう
家電は意外と繊細ですからねぇ

モリアーティの放つポーシュボスは、射落とすのが先決でしょう
幸いにも広域に落ちるようですし、430名の霊体女中団と共に対物ライフルで対空射撃です
戦争に善悪なし、殺し合いに善性があるとお思いで?
私は怪異殺し。よってあなたも殺します

時間切れしたら天眼でモリアーティの位置を捕捉
対物ライフルで管制室ごと吹っ飛ばしますよ



「艦隊戦なんて初めてですねぇ。しかもこの寒さ、機体でなければ動けませんよ」
 出立前に要請した輸送ヘリの編隊が狂気艦隊へ向かうのを見送った李・蘭玲(老巧なる狂拳・f07136)はバイクのハンドルを握りしめ、スロットルを開けた。
 その頃、モリアーティはネルソンのブリッジで脚を組みながら、接近してくるヘリの姿を眺めていた。
「あそこまで堂々と姿を晒しながら近づいてくるのは我々の視線を上に集中させて下から本命を通すための揺動でしょう。……されど、そう簡単に通す気はありませんよ」
 モリアーティが他の船に乗る部下へ対空砲火を控えるよう通達していると、ポーシュボス・フェノメノン細胞がまるで雨のように降り始めた。
「来ましたか」
 空から落ちてくる存在に気づいた蘭玲はブレーキをかけて急停止し、素早く構えた対物ライフルの引き金を引いて粉砕する。ネルソンに乗り込むよりも、あの液体が周囲の人物に付着して変質する前に射落とすのが先決、と判断したのだ。
 同時にヘリに乗っていたクラシカルメイド達も開けた扉から銃口を突き出し、真横を落ちていくポーシュボス・フェノメノンを撃ち抜いていく。
 しかし真上から降り注いだポーシュボス・フェノメノンはプロペラやローターに張り付くと飛行能力を急に失わせて墜落させるようなことはせず、ゆっくりと降下しつつ侵食し始めた。
 ただ徐々に高度が下がっていくことを不審に思って頭上に視線を移せば、天井がポーシュボス・フェノメノンに汚染されていることにすぐに気づけた。
 メイド達はパラシュートを背負う素振りも見せず、得物を携えて空へ身投げする。
「おやおや、どうせ死ぬなら人のまま死にたいということですか。愚かですね、そんな『形』に拘って命を投げ捨ててしまうとは」
 ポーシュボスと化したことで全身から生えた触手を揺らしながらモリアーティは落ちていくメイド達の姿を目で追う。
 しかしメイド達は雪原でひしゃげて肉塊になることなく着地し、ヘリと融合するポーシュボス・フェノメノンへの一斉掃射を始めた。
 かなりの高所から落ちたにも関わらず平然と動き続けるメイド達にモリアーティが怪訝な表情を浮かべる中、蘭玲はバイクの排気音を銃声で誤魔化せている間にネルソンの背後をついていた。
 ネルソンに近づくにつれ、その外壁に複数吊り下げられていた物の詳細が明らかになる。
 それは人間の女性の体を捻じ曲げた物を土台に真っ白に塗装された金属を貼り付けて作られた錨。ただ人類が存在しないこの世界で、その存在は浮いていた。
「あのUDCは殴ると強化されるようですし……電気銃でショートさせましょう」
 変わり果てた姿になっても意識だけは残されているのか、UDCの口からは呻き声が発せられている。蘭玲は凍らされる前にその首元へ電気銃を当てて気絶させると、錨と船を繋ぐ鎖を足がかりに登り始めた。
「家電は意外と繊細ですからねぇ」
 電気銃あれだけで簡単に意識を飛ばしてしまった存在を憐れみつつ、甲板までたどり着いた蘭玲は巡回していた船員を出会い頭に撃ち抜く。
「戦争に善悪なし、殺し合いに善性があるとお思いで?」
 いつの間にかポーシュボスの雨も止んでいる。蘭玲は天眼でモリアーティの位置を捕捉すると対物ライフルの銃口をネルソンの一番高い場所へ向けた。
「私は怪異殺し。よってあなたも殺します」
 轟音と共にブリッジが吹き飛ぶ。そして煙が立ち昇っていくが、蘭玲の目には微動だにしていないモリアーティの姿の輪郭が映っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

印旛院・ラビニア
出てくるたびに色々な邪神と融合してるよね、この艦。飽きさせない工夫かな

戦闘はコインくん達や【高速詠唱】【召喚術】で呼んだカードモンスターを【集団戦術】で指揮しつつ戦う。ポーシュボス化は【回復力】【浄化】能力を持つ戦乙女に治療してもらいつつ抵抗
「質問?律儀に質問に答えるいい子ちゃんだったら、その心からポーシュボス化するんでしょ、どーせ」
満足するかは知らないけど質問にはそんなひねた答えを返しておくよ
冷蔵庫の範囲攻撃には
「ランドガルダ!全ての厄災を吸い寄せみんなを守れ!」
UCで全ての攻撃を集中させてもらう。あとは冷蔵庫と盾の乙女の間に上手くモリアーティを挟んでモリアーティを攻撃に巻き込みたいね



「出てくるたびに色々な邪神と融合してるよね、この艦。飽きさせない工夫かな」
 大量の邪神を取り込んでいるから旗艦になったのか、骸の海から再浮上する度に邪神を巻き込んでいるのか、鶏が先か卵が先かのようなジレンマをエンターテイメント的に受け取って流した印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)は袋に入れていた金貨をばら撒く。
 すると金貨はまるでドローンのように空を駆け、船員の目や喉にクリーンヒットして身動きを取れなくさせた。
「先程から使役している物やアイテムのみで戦っているようですが……あなた自身でなぜ戦わないのだね?」
 煙が立ち昇るブリッジだった場所から無傷で出てきたモリアーティは出会い頭にラビニアへ疑問を投げかける。
「質問? 律儀に質問に答えるいい子ちゃんだったら、その心からポーシュボス化するんでしょ、どーせ」
 そんなひねた答えを返してみればモリアーティの体から溢れ出た黒い液体が膨れ上がってポーシュボス・フェノメノンとなり、ラビニアに襲いかかってきた。
「ちょっ、答えなくても襲ってくるの!? ランドガルダ! 全ての厄災を吸い寄せみんなを守れ!」
 悲鳴じみた声を上げながら召喚されたランドガルダは盾でポーシュボス・フェノメノンの突撃を受け止める。しかし盾にはり付いたポーシュボス・フェノメノンは堤防を越えた津波のように障害を乗り越えてランドガルダの体に触れた。
 その瞬間、ランドガルダは錯乱し出して声を張り上げる。さらにポーシュボス・フェノメノン本体も同化しかけている盾も手や腕から離すことも出来なくなっていた。
「エイラ、ランドガルダを浄化して!」
 続けてラビニアが召喚した戦乙女エイラの効果で黒ずみ始めていたランドガルダの腕が元の色を一時的に取り戻す。しかし液状になって垂れ落ちていた肉は戻らず、ポーシュボス・フェノメノンも盾と一体化したままで消失する気配がなく、エイラが気を抜けばすぐに攻勢に転じてくることが容易に想像できた。
「お前ら、調子に乗るのも今のうちだ!!」
「ああ〜」
 その最中、金貨による包囲を切り抜けた船員によって振り回されたUDCの錨から目を回したことを表明する気の抜けた声と一緒に氷雪と冷気と糧食が飛んでくる。
 ランドガルダはそれを利用してポーシュボス・フェノメノンを凍らせようと船員の前に立ち塞がった。
「くそ、邪魔だどけ女!」
 モーニングスターよろしく、船員が振るった錨が凍ったポーシュボス・フェノメノンを粉砕する。
 あとはあの船員と盾の乙女の間に上手くモリアーティを挟み込んで、モリアーティを攻撃に巻き込めるようにすれば完璧であったがそんな狙いはお見通しだと言わんばかりに、モリアーティは船員やランドガルダが動き回るたびに楽器の一部ような見た目の脚を機敏に動かしつつ常に外周に居続ける。
「うわ、冷た!? これ擦るだけじゃ溶けなさそう……」
 一方でラビニアも争いには混ざらずに船員の持つ錨の力で凍らされ、甲板の上に転がされていた金貨を一枚一枚回収していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

宙音・ナナシ
基本戦術は、・・・集団戦の時と同じかな・・・。仲間を守ることを中心に真正面からぶつかって格闘技で攻めていくよ。

どちらかといえばタイマンのほうが好みだね。
相手の攻撃にも臆したりはしないし、攻撃チャンスを作れそうなら相手の攻撃を避けずに、踏ん張って反撃に繋げてみたり・・・。

こんな戦い方してるから、痛撃を多く受けることもあるけど・・・、私は耐久力には自身があるからちゃんと耐えて反撃できるはずだよ・・・!

遠距離攻撃はやや苦手だけど・・・耐久戦しているうちに攻略できる場合もあるから絶対に諦めないよ!

ツッコミは任せて。
アドリブ、絡み、連携、お色気展開、何でもOK。



「基本戦術は……集団戦の時と同じかな……」
 仲間を守ることを中心に真正面からぶつかって格闘技で攻めていくことにした宙音・ナナシ(異能改造体少女1st・f42852)へ錨に加工されたUDCが助けを求めるように手を伸ばす。
「タスケテ……イタイノ……イタイヨ……タスケテ……」
 元の姿から掛け離れた形に捻じ曲げられてもなお意識を残された様は戯言のように繰り返される呻き声と相まって同情すら覚えてしまう。
 だがそれに触れられたら最後、錨に飾りのようにくっついている冷凍庫に引き摺り込まれて閉じ込められて氷漬けにされてしまう。
 そのことを事前にしっかりと教えられていたナナシはその手に触れられる前に腕を蹴り飛ばした。
 声にならない悲鳴を上げながら揺れる錨を放置して、ナナシはどこからネルソンの甲板に乗り込めるか周囲を巡回をしようとしていたその時だった。
「一回周りを焦土に変えておきましょうか」
 自分が搭乗する艦の足元で起きている不穏な気配を感じ取ったのか、モリアーティが船員へ指示を出した。
 側壁から顔を出した砲塔から次々に黒い榴弾が放たれる。
 遠距離攻撃はやや苦手であるが、耐久戦をしているうちに攻略できる場合もあるから絶対に諦めないとナナシは体内で強力な電気を生成する。
『・・・最大出力!消し飛ばすよ・・・!』
 そして勢い任せに放てば射線上にあった榴弾は爆散し、黒い液体状の物体がまるで雨のように地面に落ちてきた。
 それから数秒遅れて電撃から逃れた榴弾が周囲にある地面や針葉樹を抉っていく。そして抉られたところに付着した液体から黄色い目が見開かれると同時に、まるで生物のように周囲の物質を飲み込みながら成長し出した。
「あれが……ポーシュボス……!」
 普段であれば相手の攻撃に臆したりはしないし、攻撃チャンスを作れそうなら相手の攻撃を避けずに、あえて受けて踏ん張って反撃に繋げることもあった。
 しかし此度の相手———ポーシュボス・フェノメノンに関してはそうはいかない。
 一度触れればそこを起点にして有機物無機物関係なく融合を始め、元の人格があったとしても狂気で塗り潰して乗っ取ってしまい、一体化する。
「こんな戦い方してるから、痛撃を多く受けることもあるけど……、私は耐久力には自信があるからちゃんと耐えて反撃できるはずだよ……!」
 人体改造によって得させられた自分の高い回復力と肉体強度に絶対の自信を抱いていたナナシは真正面からその侵食に立ち向かおうとする。
 だがそれがただの自殺行為だと断じた猟兵に首根っこを掴まれて担がれ、半ば強制的に逃げさせられた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ステラ・スターライト
心や身体を侵食される前の短期決戦

防具や《耳飾り》、《結界》の魔法で侵食を防ぎつつ、《帯革》の力で上空へ
艦砲射撃等を行ってきたら、こちらに達する前にUCを発動
通常となった攻撃は空中機動で回避し、《盾》で防御

今度はこちらの番
吸収したUCの力を剣に込めて振り抜き、視界内の艦隊全てを斬り払う!

――時間を巻き戻すことができたなら

そう考えたことは私にだって何度もある
でもそれはやっちゃいけないことだ
他の人達の思い、決意、行動を全てなかったことにしてしまう
時間を巻き戻した自分以外の全てを否定する行為だ

そんな力、貴方に渡したりしない――!

敵が体勢を立て直す前に接近
剣で貫き、全力の《雷撃》をその身体に叩き込む!



 ステラ・スターライト(星光の剣・f43055)にとってこのアバターは助けを求める「誰か」の元へ駆けつけるための大事な手足であるが、所詮偽りでしかない。
 ならばポーシュボス・フェノメノンの侵食を恐れることなく突っ込めそうだが、残念ながらそう簡単に上手くいくわけがない。
 同じように異なる世界を飛び回る権利を得たプレイヤーの中に、アバターが食らった効果が実世界まで影響をもたらした例がすでにあるという。
 その相手はポーシュボス・フェノメノンとは別の存在であったというが、用心するに越したことはない。
 防具や耳飾り、結界の魔法ですでに撒き散らされたポーシュボス・フェノメノンからの攻撃を防ぎつつ、ステラは心や身体を侵食される前に短期決戦でけりをつけようと帯革の力で上空へ跳び上がる。
「焼き払いがちゃんと出来てないようですね」
 ステラの姿に気づき、肩を竦める上官モリアーティの反応に下士官達は背中に脂汗を噴き出しながら新たな榴弾を装填したそばから放っていく。
 内蔵されたポーシュボス・フェノメノンの影響によって真っ黒に変色した榴弾が自分の身に達する前にステラは【光の一撃】を発動させた。
 雷のごとき閃光に飲まれた榴弾は元の金属の色を取り戻し、空中機動で避けたステラのそばで炸裂することなく空中で弧を描いた末に針葉樹の森に着弾する。
「そうら!!」
「イタイノ、アツイノ、タスケテ……」
 続けて船員によって投じられたUDCを素体とした錨がステラを捕らえようとする。
 いくら化け物だと頭では分かっていても、人型の存在が無惨な姿に改造されていて、こちらに助けを求めているということにステラの動きに一瞬の躊躇が生まれる。
 しかしこのUDCの最大の特徴である冷気が先程の雷撃で封じられていたために触れても氷漬けにすることは出来ず、ただただ盾で弾かれてしまった。
「今度はこちらの番」
 ――もし、時間を巻き戻すことができたなら。
 そう寝台の上で考えたことはステラにだって何度もある。
 でもそれはやっちゃいけないことだ。
 なぜならそれは他の人達の思い、決意、行動を全てなかったことにしてしまう———時間を巻き戻した自分以外の全てを否定する行為だから。
「そんな力、貴方に渡したりしない――!」
 飛び交う榴弾の隙間を縫うように急降下していったステラは邪魔をしてくる船員達が体勢を立て直す前にモリアーティへ突撃し、その身体を剣で貫く。
 そして全力の雷撃を刃から流し込めば、液状化している部分が急激に泡立った。
「ほう……中々に元気なお嬢さんだ。だがそれだけでは我を止めることは出来ない」
 体内で凄まじい量のエネルギーを注ぎ込まれたというのに、余裕がある雰囲気を醸し出すモリアーティが不敵に微笑めばその特質を封じたはずの黒い体が剣を侵食し、取り込み始める。
 急激に迫り上がってくるポーシュボス・フェノメノンの圧にステラは咄嗟に柄から手を離して飛び退けば、残された剣はモリアーティの体に沈んで溶けてしまった。

成功 🔵​🔵​🔴​

真波・祭
そうよね
ギガンティック彼女を運ぶんだったら戦艦くらい用意しなきゃ……
って、この戦艦、彼女の半分もないんじゃない?
彼女を運ぶんなら宇宙戦艦でも持ってくるのね

閑話休題

《炎翼》を広げ、敵に向かって一気に飛翔
砲弾や機銃弾を心眼で見切り、UCで未来を見通し、《炎弾》で迎撃
降りかかってくるポーシュボス・フェノメノンは《炎衣》で防御&焼却

伸ばしてくる腕は、空中機動で回避しながら《炎剣》で薙ぎ払い
接敵したら、冷凍庫ごと《炎嵐》で包み込む!

こんな内陸まで出張ってきてほんとお疲れ様
でも、帰りは考えなくて大丈夫
私が全部、ここで燃やしてあげる!

ベルトから詠唱銀を取り出し、一齧り
魔力を補充して《炎剣》で斬り裂く!



「そうよね、彼女を運ぶんだったら戦艦くらい用意しなきゃ……」
 真波・祭(白炎のエアライダー・f42349)は頭の中で目の前にあるネルソンと想像上のギガンティックを比べてみる。
「って、この戦艦、彼女の半分もないんじゃない? 彼女を運ぶんなら宇宙戦艦でも持ってくるのね」
 ちなみにモリアーティ達がギガンティックの大きさを見誤っていた……なんてことはない。
 先程から船員が振り回しているUDC製の錨は暴れられないように氷漬けにして拘束するために持ち込んだ物であり、ネルソンを旗艦としたこの船団もとてつもない巨体を曳航するために召集された物だ。軍の司令官の中には己の肉体だけで成り上がってきた脳筋がいることもあるが、モリアーティはその例からは漏れていた。
 閑話休題、祭は炎翼を広げてネルソンの甲板めがけて一息に飛び移ろうとする。
 その道中、周囲にいる随伴艦から砲弾や機銃弾が立て続けに撃ち込まれるがそれらを全て心眼で見切り、【天眼】で未来を見通し、炎弾で迎撃する。
 そして炎弾を逆に取り込んで襲いかかってきたポーシュボス・フェノメノンに対しては炎衣で包み込むことで自分の身に触ることを許さず、焼却を試みる。
 閉じ込められたポーシュボス・フェノメノンはまるで卵から孵った雛のように炎の球を割って顔を出す。だが榴弾に乗せられている時と違って推進力を失ったポーシュボス・フェノメノンはどんどん落ちており、祭との距離が遠のいていた。
 それでもなお伸ばしてくる腕を空中機動で回避しながら炎剣で薙ぎ払っているとネルソンの甲板にいる船員がUDCの錨を投げてきた。
「アツイ、アツイヨォ……ツメタクシテ、サムクシテ……」
 UDCは悲痛な叫びを上げながら、熱源である祭を凍らせてしまおうと冷気を発する。まるで磁石を前にした砂鉄のように引き寄せられた祭はカウンター気味に、装飾品と化していた冷凍庫ごと錨を炎嵐で包み込んだ。
 炎の渦の中から響き渡る断末魔をBGMに祭はベルトから詠唱銀を取り出して一齧りし、尽きかけていた魔力を素早く補充する。
「こんな内陸まで出張ってきてほんとお疲れ様。でも、帰りは考えなくて大丈夫。私が全部、ここで燃やしてあげる!」
 そして船員が慌てて引っ張り戻した鎖の先に錨がないことを確認してから甲板に降り立ち、自ら手を下そうとせず余裕綽々の態度を撮り続けるモリアーティの体を炎剣で斬りつけた。
 金管楽器を連想させる体が切断され、パイプ状の断面から黒い液体がドバッと溢れ出す。
「おやおや、もうそろそろ危ないですかね?」
 マントが風に煽られて飛び、モリアーティの全身が露わとなる。頭部の左半分以外は全て金属とポーシュボス・フェノメノン細胞で構築されたそれは、もはや改造人間ならぬ改造獣人と断言してよい代物であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神楽坂・神楽
平岡祐樹マスターにおまかせします。

拳で大地を砕き、蹴りで大河を分断する新進気鋭の天才武術家です。総合格闘技を経由し、より何でもありのカードデュエルに転向しました。カウンターとマスデストラクションで場をコントロールしつつ、自身の武術で対戦相手をダイレクトアタックすることを得意とします。

普段の口調は「私、君、呼び捨て、だ、だね、だろう、だよね?」です。

ユーベルコードは指定したものをどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑を掛ける行為はしません。また、たとえ任務の成功の為でも、公序良俗に反する行動はしません。あとはお任せ。よろしくお願いします!



 ポーシュボス・フェノメノンが込められた榴弾の雨霰が止んだところで、近くにあった小屋の軒先に陣取っていた神楽坂・神楽(武術系アスリート・f21330)は自分の手元にあるカードを確認する。
「周りの戦艦を全部マスデストラクションしたかったところだが……今は本体を叩く方が先決か」
 「落雷」も「裁きの剣」も手元に来た分は使ったが、ネルソンを守るように陣取っていた随伴艦を一掃し切ることは出来なかった。
 だが山札の量と残り枚数を比べると、引く前にあちらに立て直される可能性の方が高い。
「召喚!」
 神楽が掲げたカードが光り輝き、ギガンティックに匹敵しそうなほど巨大なクリーチャーが召喚される。
 クリーチャーはネルソンの進行方向に割り込むとそのまま組み付き、先に進むことを妨害した。
 神楽はクリーチャーの体のあちこちにある突起を足がかりにどんどんよじ登り、ネルソンの甲板へ乗り込みにかかった。
「しかしこのまま押し切るにしても撤退するにしても普通の戦艦ではあなた方に太刀打ちが出来ません。ならば、こうしましょう」
 一方で炎の熱気に包まれていたモリアーティは表情一つ変えないまま指を鳴らす。
 するとポーシュボス・フェノメノンが流星の如く真っ暗な空から降り注ぎ始め、ポーシュボス・フェノメノンは近くにある随伴艦やクリーチャーに接触するとそこから侵食して同化していく。
 神楽自身は使わないものの、相手のクリーチャーのコントロールを奪うカードの存在は当然知っている。だがカードと違ってクリーチャーが完全に乗っ取られるまでには若干のタイムラグが生じる。
 その間に甲板にまで辿り着ければいいと割り切っていた神楽はひたすらに上を目指していく。
 新たなポーシュボス・フェノメノンを浴び、クリーチャーの背中が本体の意思と関係なく蠢き出す。その脈動に神楽は一瞬脚を取られかけたが総合格闘家としての体幹で堪えて、息と唾を一緒に飲み込んでネルソンの甲板のへりに手をかける。
「コレナラ、ハイレル……スズシイ……」
 そして反動をつけて転がり込むと、UDCが巨大な冷凍庫を召喚して籠城する横を全力で駆け抜けてモリアーティに殴りかかった。
 その刹那、ネルソンが大きく揺れてモリアーティがよろけたことで拳が空振る。ポーシュボス・フェノメノンとクリーチャーの同化が完遂されたことで、ネルソンの拘束が外れたのである。
 だが手は空振ってもまだ脚があると神楽はすぐに回し蹴り、ポーシュボス・フェノメノンが露出していない部位を狙う。
 だがモリアーティは薄ら笑いを浮かべながら触手で両端を掴んだ杖でそれを受け止めた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

水鏡・多摘
悪霊と化した身であれど邪神を討つは龍の神としての定め、利用する者も尽く滅ぼしてくれよう…!

狙い定め難いよう低空飛行しつつ攻め込む。
ネルソンの吹雪と腕は神珠で盾のように結界展開、炎属性を付与して防ぎ初撃回避。
放たれる機銃や砲弾はそれらの向きを観察し弾道計算、甲板や壁の近く…冷凍庫の扉等のない辺りを飛んで回避。
加減速軌道変更可能を踏まえ浄化の力付与した祟り縄を念動力で操り直撃回避、狂気耐性と浄化でポーシュボス化を抑え込みつつできるだけ引き付け上空へと跳躍、浮遊。
空中機動で反転して砲弾、そしてその向こうの敵に狙い定めUC起動。
雷属性の浄化の力を籠めた全力のブレス…存分に味わえ!

※アドリブ絡み等お任せ



 降り注いだ細胞を浴びたことで半分以上がポーシュボス・フェノメノンと化した随伴艦は、辛うじて形を保ち続けている大砲や機銃からポーシュボス入りの弾を撃ち続けている。
 大砲や機銃が自らの体を拡散できる存在だと判断してわざと残しているのか、ポーシュボスに飲まれた船員が完全に飲み込まれるまで惰性で引き金を引き続けているのか、外から判断することは出来なかった。
 そんな狂気の弾が飛び交う空を、水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は銃口の向いている方向を観察して弾道を計算しつつ、撃つには狙い定め難い低空飛行を保ちながら船団に近づいていった。
「悪霊と化した身であれど邪神を討つは龍の神としての定め、利用する者も尽く滅ぼしてくれよう……!」
 不定形の体にくっついた形になったことで、一定せず縦横無尽に位置を変えるようになった砲塔が多摘と同じ高度にまで下がってから榴弾を放ってくる。
 ポーシュボスを内蔵したことで発射後の加減速軌道変更が可能であることを踏まえて浄化の力を付与した祟り縄を用意していた多摘がそれを念動力で操って弾き返していると、ネルソンの船縁からぶら下がる錨が腕を助けを求めるように伸ばしてきた。
 この高度を保ったまま進めば確実に掴まれてしまうと判断した多摘は神珠で盾のように展開した炎の結界でその接触を防ぐ。すると同士討ちも厭わない勢いで放たれていた弾幕の一部が錨に衝突した。
 腕を引っ込ませて口を大きく開けて断末魔を上げるUDCの体が黒ずんでいくのを尻目に、万が一に備えて甲板の上や船体に埋め込まる形で生成された冷凍庫から距離を取ったルートを進行していると突然扉が開いて中の冷気が雹を交えて吹き出してくる。しかし炎の結界に遮られたことで多摘の体を凍りつかせることは出来なかった。
 だが生じた白い蒸気が周囲に立ち込め、視界を埋め尽くす。その結果どこからか伸びてきたか定かでないポーシュボス・フェノメノンの触手が蒸気の幕を突き破って多摘の体をかすめた。
 触れた衝撃を感じ取った触手はしなって曲がり、多摘を追いかける。そして鱗に僅かについた破片も侵食を始めようとしてきた。
 ポーシュボス・フェノメノンの侵食を狂気耐性と浄化で抑え込みつつ、できるだけ触手を引き付けながら上空へと跳躍する。
 そして空中機動で反転した多摘は砲弾や触手———その奥にいるネルソン及びモリアーティに狙いを定めて息を大きく吸った。
「雷属性の浄化の力を籠めた全力のブレス……存分に味わえ!」
 火花を散らしながら一帯に広がった霊力と呪詛がポーシュボス・フェノメノンの細胞一つ一つにある生命力を奪いつつ、抵抗力を削ぎ取る無数の黒き荊となって動きを封じる。
 そして深々と刺さった棘から直接注ぎ込まれる浄化の力にこれまでの戦いの間に急激に勢力を増していたポーシュボス・フェノメノン全体が苦しそうに体を捩りながら段々と縮小していく。
 自らの身についていた外部の狂気の息の根が止まったのを感じ取った多摘は自らの身にも巻きついていた荊を掴み、力任せに引きちぎった。

成功 🔵​🔵​🔴​

星詠・黄泉
未熟者だが…力を貸そう
UDC怪物のUCに対しては心眼で冷蔵庫にある物を見てオーラ防御は氷雪と冷気を防ぎながら電撃を放ち攻撃します(状況によっては攻撃範囲外まで逃げて攻撃、家電だから電撃でショートするのを狙う)

さっさと出せ、ポーシュボスという奴を
敵のUCは気配感知と心眼でポーシュボス・フェノメノンが出てくる瞬間を見て推力移動しながら電撃か斬撃波を放つ
(余裕があるなら質問の前などにUCを発動)


…落ちろ
UCを発動してポーシュボス・フェノメノンを攻撃
(この時、ポーシュボス化しても敵を倒す事に集中します、駄目なら撤退します)

まずは一太刀入れる…!
指定UCの効果でUC紅葉雷閃を使用してモリアーティに攻撃するかポーシュボス化しているなら電撃の斬撃波で攻撃する


…少し無理をしすぎたか
モリアーティに攻撃出来た地点で撤退します。ポーシュボス化に抗い続けられるか分からないから



「ようやく、辿り着けたか」
 方向音痴を自認する星詠・黄泉(星を駆ける剣豪・f43659)であるが、標的である存在が周囲の山や木々よりも高ければそれを目印に目的地に辿り着くことができた。……近づこうとしていたはずなのに逆に遠のいたことがあったのは内緒である。
「未熟者だが……力を貸そう」
 まずはネルソンの船体に沿って垂れて揺れる錨と一体化しているUDCを仕留めるべく、鍔を鳴らす。すると船体のあちこちに埋め込まれていた冷凍庫の扉が一斉に開け放たれた。
 暗黒に覆われた空と雪で覆われた地面に挟まれた寒冷な陽気の下でもさらに寒いと感じる強烈な冷気と共に中に詰まっていた氷の塊や霜、内容物が飛び出してくる。
 心眼で酒瓶や糧食の軌道を読んで避けた黄泉はオーラによる壁を張って氷雪と冷気を防ぎながら徐々に後退していく。
 そして勢いを失った物品が黄泉の手前で失速して落ちるまで距離を取ったところで刀を抜き払い、電撃を放った。
 相手はUDCの力で作られたとはいえ所詮家電。突然流し込まれた高圧の電流によってショートさせられると冷凍庫は冷気の生成と内容物の射出を停止した。
 体をへし折られて歪に整形されたUDCもついでに感電させられ、白目を剥いて気絶している間にロープ代わりに使ってよじ登る。
 最後に転落防止用の手摺りに掴む手の位置を移して引き上げれば、全身から黒い触手をうねらせるモリアーティの姿があった。
「おやおや、あれだけポーシュボスを放ったというのにまだまだ登ってくるか」
 黄泉の姿を視界に捉えたモリアーティは半分しか残っていない口角を上げる。しかし黄泉はそう長々と無駄話に付き合うつもりはなかった。
「さっさと出せ、ポーシュボスという奴を」
「ふふふ、血気盛んだな。……嫌いではない」
 すでに別の猟兵によって蹴散らされたのか、それとも偶然空白地帯を進まれたのか、それを判断する材料はモリアーティの元には揃っていない。しかし目の前に立たれた以上、対応しない選択肢はなかった。
 モリアーティの黒い液状の体が波打ち出したのを気配感知と心眼で感じ取った黄泉は推力移動しながら斬撃波を放つ。
「地表から鎖を伝ってここまで登ってくるのは大変だっただろう? どうやって」
『……落ちろ』
 強烈な一撃によって質問中のモリアーティの体の一部が千切れ飛ぶ。しかしモリアーティは体を痙攣させながら切れた部位を再生させ、元の落ちた部位も甲板を糧としてポーシュボス・フェノメノンに成長した。
「話を聞かずに攻撃とは中々に乱暴なお嬢さんだ。だがその苛烈さは我々も気に入りそうだ」
 ポーシュボス・フェノメノンが全身を蠢かせて巨大化し、四方八方から黄泉の体を掴みにかかる。
 黄泉は息を飲みながら鞘の中に戻した刀の状態を切り換えた。
「まずは一太刀入れる……!『遡れ、過去の電閃…』」
 五感を破壊し、あらゆる制電性を突破する電撃によってポーシュボス・フェノメノンが弾け飛ぶ。しかしその飛沫は蒸発し切らず、黄泉の体について無我夢中に取り込み始める。
 その激痛と同時に鬼化しているはずの頭の中に潜り込んで喚き立てる狂声に黄泉は歯を食いしばった。
「……少し無理をしすぎたか」
 ポーシュボスがついた皮を肉ごと抉り取れば大量の血が吹き出すが、完全に飲み込まれるよりはるかにマシである。
 ポーシュボスを爆散させた電撃がモリアーティにまで貫通し、その体を痺れさせたことを把握していた黄泉は自らつけた傷口を押さえながらネルソンから飛び降りる。
 原因となる物質を取り除いたとしても、ポーシュボス化に抗い続けられるか分からなかったからだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

クレア・フォースフェンサー
ポーシュボス・フェノメノンか
その影響範囲に入る前に潰せるものは全て潰しておくのが得策じゃな
遥か上空よりキャバリアの光弓で艦隊の残存兵装を射貫いてゆこう

兵装を沈黙させたら光翼で空を駆けてネルソンへ
力場でポーシュボス化を防ぎつつ、伸ばしてくる腕ごとUDCを光剣で斬り払おう

強行着艦したらキャバリアを指輪に格納してモリアーティと対峙
その動きを見切り、対オブリビオン用の光剣で骸の海へと還そうぞ

しかし解せぬな
数年に及ぶ計画は完全に瓦解
この地に現れた40を超えるモリアーティもこやつが最後
だというのに未だ余裕の表情を崩しておらぬ

別の計画が動ているのか、それとも――
いずれにせよ、わしらはその全てを潰すまでじゃ



「ポーシュボス・フェノメノンか」
 遥か上空を飛ぶ純白の騎士型キャバリアからクレア・フォースフェンサー(旧認識番号・f09175)は冷静に戦局を見極めていた。
「その影響範囲に入る前に潰せるものは全て潰しておくのが得策じゃな」
 絨毯雷撃によって一時数は減ったものの、一欠片でも残っていればそこから再生できるポーシュボス・フェノメノンは周囲の木々やUDCを取り込んでまた増え始めている。ただ人工物でポーシュボス・フェノメノンの手で生成出来ない砲塔の量は確実に減っていた。
 クレアは光弓を引き絞り、艦隊の残存兵装を射貫き始めた。
 光の矢が地面に突き刺さるたびにポーシュボス・フェノメノンの体が爆発し、飛び散っていく。
 兵装が軒並み沈黙し、下から上へ飛んでくる砲弾がなくなったところでキャバリアは光翼を広げて急降下し始めた。
 だが遠距離武器は失っても縦横無尽に伸びる触手がキャバリアを捕らえ喰らおうと蠢く。しかしキャバリアの周囲に展開されている力場が寸前で跳ね返し、光剣ですかさず斬り払った。
 その中には錨に加工されたUDCの腕も混ざっていたが、飛び散る液体が赤か黒かの些細な違いでしかない。
 そして強引にネルソンの甲板に着艦するとクレアはコクピットから飛び降り、キャバリアを指輪に格納する。
「キャバリアのままではなくわざわざ降りてその身を晒すとは。相当腕に自信があるか、我を舐めているだけの馬鹿か」
 対峙したモリアーティは杖で甲板を軽く叩く。その周囲では先程散々切ってきた物と同種の触手が新たな獲物を前にして荒ぶり出していた。
「やれ」
 命令が出されるや否や槍のように突き出された触手が光の太刀筋に飲まれて消失していく。そしてそれらが再生しきる前にクレアは距離を詰め、あまりの光量で目を瞑ってしまっていたモリアーティの体を斜めに切り裂いた。
「これで、いい加減仕舞いじゃ」
 切断された金属の体がぶつかり合って甲高い音が甲板に響き渡り、モリアーティの姿が眩い光の中へ消えていく。だが一撃で切り捨てられたというのに、クレアは浮かない表情を浮かべていた。
「……しかし解せぬな」
 数年に及ぶ誘拐計画は完全に瓦解、約40回もの衝突でネルソンもUDC製の錨もポーシュボス・フェノメノンもことごとく粉砕消滅し、モリアーティ自身も骸の海に送還された。
 だというのに、光に慣れて目を開けたモリアーティは飲まれていてもなお余裕の表情を崩しはしなかった。
 それは誘拐計画が失敗に終わっても続行できる別の計画が裏で動いているのか、それとも――?
「いずれにせよ、わしらはその全てを潰すまでじゃ」
 手持ちの情報が圧倒的に足りない今、あれこれ悩んでも何の意味もないと考え直したクレアは指揮官を失うと同時に轟沈し始めたネルソンに巻き込まれる前にキャバリアへ搭乗すると、漆黒の空に軌跡を描きながら帰還した。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年06月14日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト