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獣人世界大戦⑳〜朽ちゆく願いに|陽《ひかり》を差せ

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第三戦線 #はじまりの場所 #はじまりの猟兵

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「――待っていました」

 少女はずっと待っていた。
 |『六番目の猟兵』《あなたたち》が自らの下に辿り着くその時を。

「そう、わたしこそが『はじまりの猟兵』」

 世界に罪深き者と烙印を押されし存在。――しかし後悔などひとつもない。
 それはきっと目の前にいる六番目の猟兵も同じハズだと信じて、少女はずっと待ち続けていたのである。
 ああ、本当にきてくれて嬉しい――まるで親が帰ってくるのを待ち続けた子のように、あるいは飼い主を待っていた子犬のように、無邪気に少女は喜んだ。
 ずっと伝えたかったことがあるのだと。
 今すぐにでもそれを伝えたい……のだが。

「わたしの寿命はとうに尽き、|世界の敵《オブリビオン》と化しています。
 真摯に真実を告げようとしても、皆さんに嘘の情報を残してしまうかもしれません……だから、すみません――」


「――『はじまりの猟兵』と戦い、彼女を完膚なきまでに叩きのめして欲しい」

 それが、今回地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)が貴方たち猟兵諸君に託す任務である。
 予兆で本人が告げている通り、『はじまりの猟兵』は等に死してオブリビオンと化してしまった。
 故に復活できぬ程の致命傷を受け、骸の海に還るまで……そのほんの僅かな間でなければ真実に嘘が混ざってしまう可能性がある以上、確かに彼女の望み通りにするより他にはないだろう。

「倒すことができれば、『はじまりの猟兵』は『二番目から五番目の猟兵について』教えてくれるそうだ。
 きっとこの情報はオブリビオンとこれからも戦い続けるに当たって重要なことなんだろうから……知れるのならそれに越したことはないハズだと思う。ただ……」

 問題は、『はじまりの猟兵』の周囲に漂う闇が彼女の意思に反して"怪物"を生み出し妨害してくることだという。
 そしてそれは、猟兵諸君の持つ"真の姿"――それを歪めたかのような禍々しい姿で襲ってくるのだという。
 これに慌てた『はじまりの猟兵』は何とか撃退するべく諸君に協力してくれる……の、だが。

「あくまで本人の弁なんだが……「正直言って弱いですよ!なのであんまり期待しないでください!」って」

 と、説明しながらも正直陵也は半信半疑な顔をしている。
 そんなこと言ってる奴が一番強いとかあるあるなんだよな……と。
 能ある鷹は何とやら……と。
 恐らく相手にしたら間違いなく(色々な意味も含め)手強いだろうので、共闘してくれるのはこちらとしてはありがたいことではある。
 戦力は多ければ多い程良いのだ。

 かくして。
 猟兵とオブリビオンの終わりなき戦いに一手を投じ得るかもしれない真実の為、そして獣人戦線を救う為、猟兵たちは転移陣を潜り戦場へと向かう――!


御巫咲絢
 死ぬ程筆遅マンなので遅刻しないように気をつけます!!!!!!!!!!!
 最近すっかり複数章を書き切る体力がない中皆様如何お過ごしでしょうか。
 どうも最近数カ月ぶりになりがちの|御巫咲絢《みかなぎさーや》です。
 シナリオ閲覧ありがとうございます!お手数ですが御巫のシナリオが初めての方は一応マスターページもお目通し頂けるととっても助かります。
 ユーベルコード、めちゃくちゃ好きな曲でして……フレーズが使われたフラグメントを見て飛び出してしまったといいますか。
 ちなみにユリイ・カノンさんの曲で他にお勧めなのはスーサイドパレヱドとイフを挙げておきます。是非聴いてみてネ!!

 それはさておき、戦争シナリオをお届け致します。
 はじまりの猟兵と共に貴方の真の姿を歪めたような怪物を打ち倒してください。はじまりの猟兵は本人曰く弱いらしいですけど本当にそうでござるかあ???の顔をしています。

●シナリオについて
 当シナリオは『戦争シナリオ』です。1章で完結する特殊なシナリオとなります。
 また、当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。

●プレイングボーナス
「はじまりの猟兵」と共闘する/自身の「闇の真の姿」を描写し、それに打ち勝つ。
 尚闇から産まれた怪物を撃破すれば自然とはじまりの猟兵も力尽きますので、叩きのめすという意図からズレてはおりません。ご安心ください(?)。

●プレイングについて
 『5/22(水)8:31』より受付開始致します。本業の都合で時間ぴったりに受付開始タグはつけられないので時間がきていれば遠慮なくご投函ください。
 受付開始前に投げられたプレイングに関しましては全て一度失効を以てご返却致しますので、受付開始後にお気持ち変わらなければ再度ご投函頂けますと幸いです。
 また今回に限っては締切がありますので「オーバーロードは非推奨」とさせてください申し訳ない……あくまで非推奨でありそれでもええから書けや!!って方はご利用ください。
 受付締切は「シナリオクリアに必要な🔵が集まったら」、また執筆は「先着順」ではなく、かつ「判定が成功・大成功のプレイングのみリプレイ執筆致します」。
 予めご了承の程を頂けますよう何卒よろしくお願い致します。

 それでは長くなってしまいましたが、皆様のプレイングお待ち致しております!
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第1章 ボス戦 『はじまりの猟兵』

POW   :    ストライク・イェーガー
レベルm半径内の対象全員を、装備した【ライフル】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
SPD   :    プログラムド・ジェノサイド
【予め脳にプログラムしていた連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    キューソネコカミ
【ライフル】が命中した敵を一定確率で即死させる。即死率は、負傷や射程等で自身が不利な状況にある程上昇する。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
厳しい状況ですが、やってみますぅ。

「闇の真の姿」は『神話風衣装を纏い大幅に発育が進んだ姿』を基本に、色遣いが黒主体、各『祭器』も黒色に染まっている様で。

『FLS』で|全『祭器』《未装備含》召喚、【皛翼褧】を発動しますねぇ。
『相対する敵の強さ』を自身に加算する『波動』を纏えば同様の能力を使えても『私+敵方』で合計戦力は同じ、はじまりの猟兵さんの援護分此方が優位、使えなければそれ以上の有利が得られますぅ。
私の複製なら『FPS』の探査から慎重な戦術を選んでくるでしょうから、技量に優れるはじまりの猟兵さんに観察から支援を要請、時機を合わせ全『祭器』の攻撃を集中させ叩きますねぇ。



「わたしは最も古き者……正直言って弱いですよ!」

 と、自信満々に言う『はじまりの猟兵』。

「きっと、戦術もわたしが知っているのから遙かに進歩しているでしょうし。きっと六番目の猟兵ならけっちょんけっちょんにやっちゃえますよ!
 ともかく、遠慮はいらないですからね!全力でかかってきてくだ……」

 ――どくん。
 刹那、と何かが脈打つような音が響く。
 はじまりの猟兵の周囲に漂う闇が、凝縮し始めたのだ。

「……な、何!?」
「これは――危ない!」

 直感的に危険性を察知した 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が『祭器』|F《フローティング》|I《インタディクト》|S《システム》を起動。
 瞬間移動で『はじまりの猟兵』に接触し、彼女を連れて即座に距離を取る。

「あ、ありがとうございます!」
「この闇もオブリビオンの一種……ということでしょうか?」
「なんじゃないかなって……けどアレは……何?何かを象っていっているような……」
「……」

 るこるの頬を汗が一滴伝う。
 凝縮された闇はやがて人の姿を象り、人の色を宿す。
 胸を始めに極端に発育された肉体に食い込む神話の天女が如き衣、四肢に嵌めている戦輪は色こそ違えど間違いなくるこるの持つ『祭器』そのもの。
 目の前に現れたのは、紛れもないるこる自身。その真の姿を歪め、黒く染め上げたかのような存在だった。

「これは……厄介と言うしかないですねぇ」
「どうしよう……まさかこんなことになるなんて……と、とにかく何とかしなきゃ!」

 予想外の状況に陥り動揺しながらも、『はじまりの猟兵』の行動は早かった。
 銃弾を込め、ライフルを構える。

「きっと貴女のコピー、みたいな状態ですよね?指示をください、合わせて動きます!」

 自身を弱いと称するが、危険に立ち向かう意思の強さはやはり猟兵と言うべきか。
 指示を乞うたのも下手に手の内を知らぬ相手に無闇に立ち向かうのではなく、目の前の相手を一番良く理解している自身こその確実な一手を以て迅速に終わらせるため。
 別にオブリビオンであるからと、オブリビオンやそれに属する存在と戦えないワケではない。
 戦ってはならないというルールもなければ、無意識にこちらの邪魔をする可能性は低いハズだ。
 なら、頼らない手はないというもの。

「ありがとうございます。とはいえ、中々厳しい状況ですが……やってみますぅ」

 るこるは『祭器』を起動する。
 F|L《リンケージ》S――彼女の周りを護るように浮遊する153枚の札は、豊穣の女神の使徒としてのるこるの最大の武器である『祭器』を完全な制御下に置くものだ。
 普段のるこるが自身の持ちうる『祭器』、その数にして20機。
 全てを同時に操ろうとすると流石のるこるでもかかる負荷は相当で、それを大幅に軽減した上で防御障壁としても機能する、ある意味で全『祭器』の中でも最も強力なモノ。
 それを迷わず行使するということは――そういうことだ。
 目の前にいるのは自分自身。自らの写身なら、この状況下であれば確実にそうする。
 故にまずはそれの対策からだ。

「"大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、その標たる羽衣を此処に"」

 『祭器』を呼び出したるこるの口から紡がれる祝詞が女神の波動を身に纏わせる。
 【|豊乳女神《チチガミサマ》の加護・|皛翼褧《キョウヨクノウスギヌ》】によって身に纏う波動には生命力とあらゆる疲労を自動的に回復させ、その上で体系の反動と敵の強さに比例した戦闘力の増強を図ることができる強化型のユーベルコード。
 るこるは猟兵の中でも最も練度が高い最前線の猟兵であり、それの真の姿――のようなものと言う方が正しいだろうか――が相手ならばこれで確実に互角に持ち込める。
 そしてこの場にいるのは自分だけではない。

「おお……!これが六番目の猟兵のユーベルコード……!」
「私が前線を受け持ちますぅ。はじまりの猟兵さんにお願いしたいことがあるのですが……」

 ひそりと相手に聞こえぬ声で示し合わせ、戦闘態勢を取る。
 先手を取ったのは敵の方だった。
 『祭器』|F|J《ジャガーノート》Sを砲台へと変え、凄まじいエネルギーの波動砲を早速お見舞いしにかかってくる。
 敢えて牽制すらせず、初手から強大な一撃を見舞う――間違いなくこれはブラフだ。
 るこるはFLSを使用し、空間を捻じ曲げ波動砲のエネルギーを受け止め被害の及ばない場所へと"転移"させる。
 歪曲された空間の中に閉じ込められたエネルギーが海上で大きく爆ぜると同時に、敵はF|A《エアロフォイル》Sを起動し高速起動で駆け回り、F|R《レイ》Sを連射し弾幕を貼る。
 それをF|G《グラビトン》Sの重力波で地に落としつつ、F|M《ミラーコート》Sでレーザー光線を発射し迎撃。
 互いに牽制し合い、一歩も譲らず、一つも隙がない。

「(やはり私の複製なだけあって、慎重にこちらを"分析"しようとしていますねぇ)」

 F|P《プロープ》S――所謂"索敵用”と呼ぶべき『祭器』。
 先ほどからるこると"敵"が一歩も譲らず拮抗しているのも互いにこれで有効打となり得る一撃を見出し、それをぶつけ合うことで相殺しているからに他ならない。
 ユーベルコードによる強化も入り、この拮抗状態が崩れることはないだろう。

 ――だが、それはるこる一人で戦うのであればの話だ。

「!」

 敵が一瞬止まる。
 死角から迫る弾丸の存在をFPSが検知したのだ。
 即座にFISを起動しその銃弾自体は回避に成功するが、銃弾はまたもやってくる。

「逃がしません!」

 敵の死角から迫る『はじまりの猟兵』は手を止めることなくライフルを撃ち続ける。
 撃てども撃てども当たりはせず、かする程度。敵の体力を削りうる一撃にはならないが――元より承知の上である。

「(恐らく探知系の兵器……だけど思考は一人分、二人の攻撃を同時に防ごうとすると思考の回転は鈍るハズ……!)」

 ただでさえFPSによる有効打をぶつけ合わなければ拮抗にしかならない状況に、それを崩しうる想定外が一つでも混ざればいくら探知をしていてもすぐに対応はできるまい。
 どこまでいっても人間――正確にはるこるはバーチャルキャラクターではあるのだが――の脳の回転速度というものには限界が存在する。
 例えどこまで適応できるように鍛えていたとしても、必ずしもルーチンの想定外に即時対応できるとも限らないのだ。
 当然、るこるは『はじまりの猟兵』の攻撃に合わせて攻撃を続行。
 F|D《デトネイト》Sによる爆撃を加え、敵により強く負荷をかけていく。
 しかしそれに集中すれば『はじまりの猟兵』による攻撃が無防備になりかねない。FPSを利用して何とか敵は凌ごうと試みるが――

「!」

 何かが砕ける音がする。
 『はじまりの猟兵』の放った弾丸が涙滴型の装備――『祭器』FPSを破壊する。
 それは敵がこれから得られる情報の一切を失うことと同義、即ち敗北を意味していた。

「敵の探知兵器を破壊しました!畳み掛けましょう!」
「はい、タイミングを合わせますねぇ!」

 ライフルと全ての『祭器』による波状攻撃がるこるの姿をした敵を容赦なく貫く。
 形を保てなくなった闇は再び霧状に散る。だが、まだ蠢き止むことはないようだ――。

成功 🔵​🔵​🔴​

空桐・清導
POW
アドリブ、連携歓迎
闇の真の姿:漆黒のブレイザイン
暗黒の絶対神であり、容易く滅尽しうる存在感を放つ

「オレの暗黒進化体が相手か!
はじまりの猟兵!牽制と妨害任せるぜ!
オレは真正面から迎撃する!!」
UCを発動して真の姿を解放
黄金鎧と拳に光焔を宿して闇の自分と鏡あわせとなる姿だ

はじまりの猟兵が作った隙に[勇気]を込めた一撃を叩き込む
相手の攻撃はUC効果で受け流して更に連撃を叩き込む

「コイツで決める!
超必殺!アルティメットマグナックル!!」
天地を眩く照らす光輝を込めて[限界突破]した拳を叩き込んで決着!
一気に来るダメージを[気合い]と[根性]で耐える
「じゃあな、はじまりの猟兵。良いコンビだったぜ!」



 闇は尚も蠢く。
 『はじまりの猟兵』が知る真実を猟兵たちに伝えまいとする為か、ただ単純に|世界の敵《オブリビオン》としての本能に従ってのことか。
 どちらにせよやることは変わらないのだが……
 次に闇が象ったのは空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が身に纏うブレイザインを模した、漆黒のブレイザインと呼ぶべき姿であった。
 『はじまりの猟兵』が思わず身震いする程の存在感と威圧感を放つその漆黒の鎧は、簡単にあらゆるものを滅尽し得るだろうと思わせるだけの覇気を纏い構える。

「オレの暗黒進化体が相手か!」
「えっあれ進化体!?暗黒進化ってことは正統進化もあるんですか!?」
「もちろんだ!『はじまりの猟兵』、牽制と妨害任せるぜ!オレは真正面から迎撃する!」
「えっ!?あっ、は、はいわかりました!!(待って流れ速いってか判断速っ!!)」

 速戦即決と言わんばかりの清導の行動力に、一瞬頭が回らず困惑しながらも頼まれた通りに『はじまりの猟兵』はライフルを構えて牽制に入る。
 一方清導はユーベルコードを発動し、真の姿を解き放った。
 天下一品のタフネス、無限大の支える心、不撓不屈の男の全力全開、黄金の光焔を纏いしブレイザインが姿を現す!
 闇黒のブレイザインと光焔のブレイザイン、二人が対峙する姿はまさしく鏡合わせと表現するのが相応しい光景を生み出していた。

「本気も超本気!!超々熱血で!!全力全開でいくぜッ!!!!」

 清導は大地を踏みしめ、一気に飛び出し漆黒のブレイザインに肉薄。
 その黄金の右手を漆黒の左手が受け止める。
 流石自らの姿を模しただけあって、この全力全開の一撃を左の拳で打ち据え押し止める程の力はあるようだ。
 だが当然その程度で止まりはしない。ならばと次はもう片方の拳を撃ち込み、同じようにもう片方の拳とぶつかり鍔迫り合いが始まる。

「うおおおおおおおおおおおおッッ!!!」

 裂帛の気合と共に放たれ続ける黄金の拳にタイミングを寸分違えることなく漆黒の拳がぶつかる。
 怒涛の拳と怒涛の拳がぶつかり、拳圧と拳圧が衝撃波を産み、戦場が震え上がり余波で地面が抉れるその応酬はさながら流星がいくつも地に落ちたかのような衝撃を生み出し、最後の一発が相殺されたところで2人のブレイザインは距離を取る。
 先程の応酬だけでも違いにそれなりの疲労やダメージが入っただろうが……

「(あんな応酬の後に息一つ乱れてないなんて……ユーベルコードの効果……?)」

 『はじまりの猟兵』は心配そうに清導を見やる。
 推測通り、清導のユーベルコードは真の姿に変身している間のあらゆる負担を踏み倒すことが可能にするもの……
 だが、当然ながらそれは諸刃の刃であることの示唆だ。
 戦いが終わった後、その負荷は一気に訪れるだろう。

「(ダメージを受けさせちゃいけない……ここは、妨害も攻撃的になった方がいい奴だ!)」

 『はじまりの猟兵』も自らのユーベルコードを発動しライフルの引鉄に手をかけた。
 弾丸が漆黒の鎧にぶつかり、金属音が響く。
 一発だけなら気にする程ではないが、それが二発、三発、四発……増えれば増える程ノイズと化していく。
 漆黒のブレイザインが目の前の清導に集中するのを阻害する為にひたすらライフルを発泡し牽制する『はじまりの猟兵』。
 注意が逸れた瞬間を逃さず清導がさらに肉薄し、その胴体に渾身の拳を撃ち据えた。
 漆黒の鎧に亀裂が入り、その奥の闇にまで光焔を届かせる。
 一瞬だけ漆黒のブレイザインの動きが止まる――が、同時に清導の肩を漆黒の拳が撃ち込まれる。
 否、顔面に撃ち込もうとした瞬間、『はじまりの猟兵』が漆黒のブレイザインの脇腹をライフルで思い切り殴りつけたのだ。
 清導が漆黒のブレイザインに肉薄し、そちらに気を向けていた先に接近し一手を投じようとしていたのである。
 漆黒のブレイザインの胴から清導の拳が離れ、よろめき――脚を思い切り振り上げた。
 それは清導ではなく、清導への攻撃を阻害した『はじまりの猟兵』の顔面に目掛けて、その爪先が飛ぶ……
 前に、即座に間に入った清導がそれを両腕で受け止めた。
 強烈な衝撃が両腕に伝わる。しかしそれにかかる負荷も踏み倒してそのまま脚を掴み、思い切り投げ飛ばす!

「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ問題ねえ!お前の作ってくれた隙は無駄にはしないぜ!コイツで決める!!」

 清導の黄金の鎧を包む光焔が勇気と共に拳に集まる。
 天地を眩く照らす光輝はまさしく闇夜を照らす一条の光。
 態勢を崩し、よろめきながら立ち上がる漆黒のブレイザインへ向けて渾身の一撃必殺の拳を振るう――!!

「超必殺ッ!アルティメットォ!!マグ!!ナックルッッ!!!!!」

 魂の叫びと共に闇を消し去る光輝が叩き込まれ――漆黒の鎧が派手な音を立てて砕け散る。
 中には何もなく、空洞から闇が飛び出しては光輝に呑まれていき……光が消えた頃にはわずかに残った闇が辺りを漂っていた。
 闇は蠢くようにまた広がっていく――まだ完全に消し去るには遠いようだが、自分はここで一度撤退した方が良さそうだ。
 ユーベルコードが解除され、先程までに味わった衝撃やダメージの余波が一気に襲いかかる。
 清導の口から痛みに呻く声が少しだけ漏れ、膝を尽きはするが何とか耐えて息を吐く。

「わわわ……し、しっかり!」
「はは、わかっちゃいるがまあ中々キツい一撃だったな……まあ、後は仲間に任せて休むさ」
「な、ならよかった……!すみません、あまりそちらに負担がかからないようにしたかったんですけど」
「十分やってくれたさ。あの時お前がライフルでぶん殴ってくんなきゃどうなってたか。すぐ治るから気にするなよ」

 親指をぴ、と立ててにこりと笑う清導に、『はじまりの猟兵』はほっと胸を撫で下ろす。
 この様子なら酷く重傷というワケでもなさそうだと安堵した。

「じゃあな、『はじまりの猟兵』。良いコンビだったぜ!」

 次なる猟兵に後を託し、清導はグリモアベースへと帰還する。
 それを『はじまりの猟兵』は微笑んで見送ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
二番目から五番目の猟兵とかいるんですね。
全然意識してなかったですが、教えてくれると言われたら、俄然興味がわきますね。

そして真の姿。
歪められるんだー。目つき悪そう。
でも、実力は自分と同じ。千日手は必至ですから、自称『弱いですよ』と言っている人にも是非とも手伝ってほしいですね。

中遠距離武器は念動力で軌道を曲げられるので、自分を倒すならば近接戦です。
魔法剣『緋月絢爛』にUC【飛天流星】を発動して高速化。さらに【重量攻撃】も加え、バフをてんこ盛りに掛けます。
あとははじまりの猟兵のサポートで作ってもらった隙をつき、でかい一撃を加えて決着を図ります。



「……二番目から五番目の猟兵とかいるんですね」

 時折敵がこちらを『六番目の猟兵』と言うことがあったが、文字通り番号順に存在していたからなのか。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はそんなことを思った。
 そういや"六番目"ということをやたら強調する敵はこれまでにちょくちょく存在していたな、と。
 挙げるならブックドミネーター、祈りの双子、ライトブリンガー、カルロス・グリード……

「(あれ、フォーミュラ級の相手が口にしてること多いですね……かなり重要なのでは?)」

 軽く流してはいけない情報であることを確信する。
 そしてそれを教えてくれると言われたら、俄然興味も湧いてくるというもので。

「はい、そのつもりだったんですけど……闇が何かその……」

 だが、『はじまりの猟兵』にとって完全に想定外だったのがこの"闇”の存在だ。
 いや、闇を纏ってはいたがせいぜいオブリビオンっぽいオーラぐらいの認識だったのがまさか六番目の猟兵の真の姿を真似て襲いかかってくるとは露程も思っていなかったものだから、慌ててライフルで応戦したというワケである。
 『はじまりの猟兵』がライフルの銃弾を放てば、目の前の摩那の真の姿を模した"敵"はその弾丸をあっさりと地に伏せさせた。

「こんな感じで、きてくれた皆さんの姿を歪めたような感じの姿で襲いかかってきて……
 本当にごめんなさい、わたしも手伝うので頑張ってあいつ倒しましょう!」
「歪められるんだー……目つき悪そう」

 例えるならメガネを外して目を細めて目の前の文字を見るような――当然ながらただの例えに過ぎず本人の視力は問題ありません――。
 とはいえ、『はじまりの猟兵』はライフルによる遠距離攻撃を主体としている。
 それに対して自身を模した敵が相手となれば、相性はあまり良いとは言えないだろう。

「中遠距離は念動力で軌道を曲げられるので倒すなら接近戦ですね」
「うーん、ライフルで殴るなら全然いけるんですけど」
「私のことは私が一番わかってますので、私が仕留めます。是非とも手伝ってもらえると助かるのですが」
「はい、もちろんです!でも弱いですからね!」
「(本当かなー)」

 魔法剣『緋月絢爛』を構え、摩那はユーベルコードを発動する。

「"セーフティ解除。励起。帯電を確認……加速開始"」

 高圧電流を纏った花びらが舞い――爆発的に加速した摩那が引き起こした風に吹かれて刃のように敵に降り注ぐ。
 その花びらの雨に合わせ、はじまりの猟兵が神業とも呼ぶべき速度でライフルを発砲。
 念動力でそれらは地に落ちるが、即座に摩那が切り込み『緋月絢爛』と、敵のソレを模した刃がぶつかり合う。
 同じように加速した刃と刃がぶつかり合い、激しい剣戟が繰り広げられていく。
 しかし敵はただ単純に剣戟を繰り返すだけではなく、同時にはじまりの猟兵があらゆる角度からヒット&アウェイで放つ弾丸を捌くことも強いられていた。
 剣戟をしながら念動力で落とそうとすれば、今度は摩那の纏う電圧の花弁が飛び、それを切り捨てたと思ったら銃弾が飛び、それを落とせば即座に摩那の次の一撃が飛び……2対1を強いられる敵。

「(なる程、私の姿形を真似てはいますが、恐らく思考までは完全に真似ができていないのでしょうかね)」

 摩那であれば仮に2対1を強いられた場合、索敵ドローンを用いて突破口を開いたり等をするのだが……その様子が見えるとは決して言えない状況である。
 武装は恐らく全て模倣されている為、やろうと思えばやれるのだが……思考面は完全に模倣先をエミュレートできていなければその発想に至ることも難しいか。
 ある意味良くも悪くも猟兵を迎撃する為のシステムであり、まだAIの学習具合が足りていないと例えれば何となくしっくりくるような、こないような……
 ともあれ、そろそろ決着をつけるべきだろう。

「そろそろ決めましょうか」
「はい、じゃあちょっと一気にいっちゃいますね!」

 摩那が一旦動きを止め――同時に『はじまりの猟兵』がユーベルコードを起動し一気に加速。
 脳に埋め込まれた行動ルーチンを起動し、人とは思えぬ速度でライフルを乱射し"敵”に迫る!
 暴雨のように降り注ぐ弾丸を敵はひたすら念動力で落としていくのが精一杯だ。
 しかし念動力がある限り接近を食い止めることも可能だ。ユーベルコードの制限時間を過ぎれば即座に反撃に出ることも――

 などと、思わせる隙を与えるつもりは当然なかった。

「――後ろががら空きです、よッ!!」

 背後に回り込み、上空から重力加速補正と共に切り込んだ摩那の『緋月絢爛』の一撃が敵を袈裟斬りにする。
 切り裂かれた体から血ではなく漆黒の闇が吹き上がり追い出すかのように刃を押し戻した後、体を形成できなくなった闇は再び空中に霧散し、消えた――かと思いきや、完全に消え去りはせず再び広がり始めていた。

「む、最後の一撃分を押し返されましたね……」

 倒したという手応えを感じられなかった摩那はむう、と少しだけ眉間に皺を寄せる。
 だが確実に弱らせる一手となったことだろう。
 下手に追い詰めようと先走るよりは一旦撤退し、現時点の状況を持ち帰る方が得策か。

「……やっぱり弱いの自称じゃないですか?」
「そ、そんなことないですよぉ!!!」

 ホンマか?と思ったが、まあ本人がそう言うならそうなんだろうと思うことにしよう。
 『はじまりの猟兵』に簡単に挨拶をして、摩那はグリモアベースへと帰還した。

成功 🔵​🔵​🔴​

紫・藍
始まりのおねえさん。
始まりである以上、その戦いは一人で始めたものなのでしょう。
死した後でさえ、心を保つために一人で戦い続けたのでしょう。
そんなおねえさんの手を藍ちゃんくんにとらせてくださいなのでっす!
Shall we dance?
今はもう一人ではないのだとその手を取って共に踊るのでっす!
回避は藍ちゃんくんに任せて、あちらの白ちゃんくんをネコカミなのでっす!
のっぺらぼうで服も真っ白けで、誰でもないと言わんばかりの白ちゃんくんをです!
即死攻撃、たとえ上昇補正が無くとも、確率の話であるならば!
藍ちゃんくんとライフルを握る今、幸福を運ぶ青い鳥の守護でクリティカルを引けること間違いなしなのでっす!



「藍ちゃんくんでっすよー!」

 と、元気よく『はじまりの猟兵』にいつもの台詞で名乗り上げるは僕らの藍ドル紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)。
 わ、と声を上げる『はじまりの猟兵』だが、藍ちゃんくんのにっこりスマイルに思わずくすりと口元を綻ばせる。

「始まりのおねえさん」
「はい?」
「いきなり不躾かもしれないでっすがー……おねえさんの手を藍ちゃんくんに取らせてくださいなのでっす!」
「えっ?」

 いきなりの申し出にびっくりする様子を見せる『はじまりの猟兵』。

「え、えっと、手というのは?」
「おねえさん。おねえさんは始まりである以上、その戦いは一人で始めたものなのでしょう」
「……!」

 『はじまりの猟兵』。はじまりの意味は文字通り、全ての始まりであること。
 きっと彼女は最初一人だった。
 仲間に恵まれなかったワケではないだろうが、一人で戦い続けてきたのはきっと間違いなく事実なのだろう。
 そして、死して|世界の敵《オブリビオン》となった後でも、心を保つ為に一人で……独りで、戦い続けてきたのだ。
 全ては藍たち、『六番目の猟兵』に、少女の知り得る限りの事実を伝える為に。
 独りじゃない時も確かにあっただろう。
 けれど、今ここにいる少女は――独りで、一人だ。
 それは、間違いないのだ。

「死した後でさえ心を保つ為に……藍ちゃんくんたちだけじゃなくて、あらゆる世界に生きる人たちの為にずっと戦い続けたおねえさんの手を、藍ちゃんくんに取らせて欲しいのでっす」

 ――Shall we dance?

 そう言って少女に手を差し伸べる藍ドルは、まさしくプリンスにしてプリンセスと言うに相応しい誇り高さと高潔さを感じさせた。
 少女は藍の言葉を聴いて、ぽかんと口を開けて。
 そんな言葉をかけてもらえるとは思わなかったと言いたげながらも、彼の言葉の意味を咀嚼して、飲み込んで……ふふ、と笑った。

「……六番目の猟兵たちはみんな優しくて、面白い人たちばかりですね」

 そう言って、差し出された手を取る『はじまりの猟兵』。すると藍の顔がぱあ、と輝いて。

「ありがとうなのでっす!一緒に踊るのでっす!回避は藍ちゃんくんに任せてあっちの白ちゃんをネコカミなのでっす!」
「し、白ちゃん?」
「でっす!のっぺらぼうで拭くも真っ白けで誰でもないと言わんばかりの白ちゃんくんをでっす!」

 藍を模した闇の姿は、その藍色の面影も何もないどころか、本人の言及通りの真っ白けで誰でも何でもない……いや最早誰とすらも言えないただただ白い人の形をしたような容貌をしていた。

「わ、わたし踊るの下手だから足踏んじゃったりしないように気をつけますね……!」
「安心してください!藍ちゃんくんがしっかりリードするのでっす!藍ちゃんくんとライフルを握る今、幸福を呼ぶ青い鳥の守護でクリティカルを引けること間違いなしなのでっす!!」

 藍にリードされ、はじまりの猟兵は華麗にダンスを踊りながらライフルを撃つ。
 とても丁寧に、かつ、足がもつれそうなステップはゆっくりと。
 緩急を保ちながらも踊りに不慣れな少女に合わせて踊りつつ、藍は心底楽しそうに歌っていて、その顔は『はじまりの猟兵』からしたらとても輝いて見えた。
 今戦っていることなど忘れてしまいかねない程、一緒に踊るのが楽しいと思った。
 次々と放たれるライフルの弾丸に纏わせた青い鳥のオーラが翼を広げ、藍曰くの「白」を包み込んでは抵抗する意欲を削いでいった。
 青い鳥のオーラが幸運を運び、争いを鎮め、「白」を完全に無力化させていく。
 ライフルの弾丸が敵を穿ち、生命を削り、「白」の存在を確実に削っていく。
 ただ白いだけで顔もないのっぺらぼうの存在は、何故自分が踊っていたのかもわからぬままに弾丸と青い翼をその身に受け続け……戦う意思と共にその体から力も抜けていくばかりだ。
 相手から戦う意思が消えれば、そこからは戦いではなく一人の少女と藍ドルによる即興ユニットのコンサートが無観客で行われているだけの光景と化した。
 楽しく歌う藍の旋律に思わず釣られるように、『はじまりの猟兵』も口ずさみながらリードされてステップを踏む。
 少女が一緒に歌ってくれるのが嬉しくて、藍はより楽しそうに歌声を響かせる。
 「白」が自然と人の形を保てなくなり、再び闇と霧散して消えたと気づくのは、歌の最後のサビを歌い終えてからだった。

「はー!楽しかったのでっす!」
「ふふふ……こんな経験初めてかも。素敵な思い出ができました。死んでからもこういう思い出ってできるんですね」
「そう言ってもらえると藍ちゃんくんとっても嬉しいのでっす!もしまた一緒に踊れる時があったら、その時はまたおねえさんの手を取ってリードするのでっすよー!」
「ありがとうございます。そんな日がきたらいいですね」

 くすくすと『はじまりの猟兵』は笑う。
 闇を削る度に自らの再度の生命が削れていくのを感じながら。
 あと少しで、こんなに優しい彼らに真実を告げられると、期待しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
◎アドリブ連携歓迎

決戦でありますな! 了解デース、はじまり殿!
共に戦い、怪物を撃破しマショー!

我輩の闇の真の姿……ここでは、重火器装備のマザー・コンピュータを模した姿でありますな!
であれば、ワタシたちも力を合わせマショー!
「骸式兵装展開、械の番!」
キャバリアのスコールや装甲列車、各種換装式武器・内臓式武器をまとめて結集させ、戦闘機械都市として合体!
はじまり殿! アナタと戦闘機械(ライフル)もレッツ合体しマショー!

怪物の攻撃はワタシの都市ボディで庇いマース、はじまり殿はガンガン攻撃に専念してくだサーイ!
ワタシの全能力を経由して、最大火力のストライク・イェーガーを怪物に叩きつけるのでありますよ!



 はじまりの猟兵は、実は一つだけ猟兵たちに伝えていなかったことがある。

「……あ!!!忘れてた!!!!!」

 オブリビオンとしての猟兵を妨害する本能とかそんなんではなく純粋に忘れていたからといういかにもぽんこつ感溢れる理由で。

「すみません本当に忘れてました!!そういやオブリビオンなんじゃないかじゃなくてオブリビオンですアレ!
 あの闇、わたしがオブリビオンになった時からずっと周りにもやもやしてた奴なんですけど、多分オブリビオンとしてのわたしの側面的な何かだと思います!」

 なので、事実上はじまりの猟兵を戦いでフルボッコしていることと同義であるらしいという。
 恐らく、オブリビオンとして復活してから当たり前のように周りが暗かったので完全に失念していたとか、そういう理由なんだろう多分。
 結構洒落にならないうっかりっぷりだが、それを今更言及しても意味はないしするつもりもない。HAHAHA、とバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は笑い飛ばす。

「我々猟兵もそういうことはちょくちょくありマース、お互い様デース!」

 そう、猟兵もちょくちょくそういうことはある。例えば鴻鈞道人に操られた結果あまりにもえげつない戦術で仲間に襲いかからざるを得なかった時とか。
 ぐうの音も出ない時は出ないのである。

「ともあれ決戦でありますな!」
「そういうことです!」
「了解デース、はじまり殿!共に戦い、怪物を撃破しマショー!」
「六番目の猟兵は優しくて頼もしいですね……!っと、きますよ……!」

 先ほどから何度も模倣しては霧散させられを繰り返す闇が、性懲りもなく姿を模倣する。
 サイバネティックスーツに身を包み、カプセルの中に繋がれたバルタンをより歪めたかのような、歪な重火器と繋がった姿で現れた。

「吾輩の闇の真の姿……なる程、重火器装備のマザー・コンピュータを模した姿でありますな!」

 バルタンは骸の海からオブリビオンのデータをサルベージし、その残滓を元に編み上げた"骸式兵装"という固有兵装を所有している。
 闇は本人の言う通り、アポカリプスヘルのフィールド・オブ・ナイン、マザー・コンピュータを模したモノを模倣したようだ。
 獣人戦線の環境を考えればなる程、実に的確な兵装を選択したと言える。
 仮にマザー・コンピュータが獣人戦線にて侵略を行っていれば、圧倒的な演算能力と膨大な機械生成能力によりあっという間に獣人戦線の全土を掌握できてもおかしくはなかったかもしれない。
 バルタンを模した闇は、次から次へとどこからか重火器を繋いで繋いで繋ぎ合わせて、非常に歪な鋼の巨人を作り上げていく。
 その大きさはキャバリアをも簡単に越え得る圧倒的なスケールだ。

「で、でか……っ!?」
「目には目を、歯には歯を、合体には合体を、であります!ワタシたちも力を合わせマショー!」

 ――骸式兵装展開、械の番!

 ユーベルコード|【模倣様式・戦闘機械都市】《イミテーションスタイル・マザー・コンピュータ》。
 マザー・コンピュータの所有していた『増殖無限戦闘機械都市』の機能を限りなく模倣したバルタンの骸式兵装。
 目の前の闇が模倣した姿と同じように、サイバネティックスーツに身を包みカプセルに入ったバルタンが、脳波を使って自身の搭乗するキャバリア、自身に収納していた内装の戦闘機械、ミニ・バルタン、ビッグ・バルタン……さまざまな戦闘機械――果たして一部そう呼んでいいのか、ミニ・バルタンとかミニ・バルタンとか――ががしゃん、がしゃんと合体していく!

「はじまり殿!アナタと|戦闘機械《ライフル》もレッツ★合体しマショー!」
「ええっ!?ライフルはともかくわたしはどうやって合体したらいいんですかーっ!?」

 慌てる『はじまりの猟兵』。
 合体した武装の一つであるキャバリア『スコール』のコクピットがいい感じに中央にあるのでバルタンはそのハッチを開いて彼女をそこに座らせる。
 『はじまりの猟兵』は何が起きたのかいまいちわかっていないような顔で辺りをきょろきょろと見渡す。
 メインカメラでこの機体の状況も確認できるようなのでまじまじと見てみると、合体した機械のあちこちからミニ・バルタンが固定砲台をハンドルのように握って構えているようだ。

「え、えっと……わたしがパイロット!?ってことですか!?」
「YES!怪物の攻撃はワタシの都市ボディで庇いマース!はじまり殿はガンガン攻撃に専念してくだサーイ!ターゲッティングや誤差修正もサポートしマース!」
「わ、わかりましたっ!そこまでしてくれるなら全力出さなきゃ無作法ですもんね!」

 はじまりの猟兵は意を決したようにコクピット内のハンドルに手をかける。
 防御及び照準等、攻撃以外のあらゆる処理はバルタンがマザー・コンピュータを模倣した能力で補い、はじまりの猟兵は狙いを決めたらただ撃ち続けるだけで良い。
 所謂AIの補助を得ての操縦に近しいような手法だ。
 当然、バルタンを模倣した敵も同じ要領で迎え撃ってくる。

「バルバルバル!」
「バルー!!」

 機械のあちこちにある固定砲台からミニ・バルタンたちが牽制で砲弾を連射する。
 せいぜい10ミリ機関砲程度の威力しかないそれは本当に文字通りの牽制にしかならないが、気を散らすには最適だ。
 敵の機械がグレネードランチャーを放つが、バルタンが機械の腕をゆるりと動かすだけで全弾を防ぎ切る。
 それなりに損傷は加わるが、機械を繋ぎ合わせた継ぎ接ぎの期待であるが故に操作している当人らへの直接攻撃とならない限り小破の領域を出ることはない。

「――いきます!」

 『はじまりの猟兵』がコクピットのトリガーを引いた。
 刹那、彼女の愛機たるライフルとあらゆる砲撃武器が一気に火を吹き、目の前の敵に畳み掛けるように鉛弾と呼ぶには生ぬるい鉄の塊やエネルギー弾を次々と敵へ叩きつける!
 響く爆発音、煙がもくもくと上がる中敵機体はまだ倒れない。
 しかし脚部から火花が散り、満足に動けず片膝をついたような姿へ。

「流石はじまり殿、確実に仕留める為のプロセスがしっかりしていマスネー!」
「こういう敵は自由にさせたらダメ、ですからね!動けたら下手に周りに被害が及ぶかもしれませんし……!」

 『はじまりの猟兵』は敵を捉えた手応えを感じながら、引き続きトリガーを引き続ける。
 狙い撃つことのみに全霊をかけ、確実に、着実に敵を倒すことを考えて。
 最初は戸惑いこそしたが、よくよく考えれば至極単純だと気づいてからは何も心配する必要がなかった。
 謂わばバルタンのユーベルコードという巨大な『拡張装備』を経由し、彼女の力も加えて『はじまりの猟兵』のユーベルコードによる一撃を叩き込むだけという、実にシンプルかつ最大効率を叩き出す一手。
 常時真の姿による全力の攻撃を常時連射できる、『はじまりの猟兵』にとっては擬似的なオーバーロード手法とも言えるだろう。
 負担がかかるとすればそれをサポートしているバルタンに襲いかかるが、マザー・コンピュータを模したということはそれを難なくこなし切るだけの演算能力も同時に有しているということ。
 つまり事実上ローリスクハイリターンを再現した決戦兵器と言っても過言ではないのだ。
 そしてこれまでの猟兵たちとの戦闘記録を見る限り、この闇は模倣体で襲いかかってくるが、あくまでその模倣要素は"能力面に8割型割かれている"。
 つまり思考・知識面までは完全に模倣しきれていないのだ。
 そこに模倣先だけでなく『はじまりの猟兵』という"追加変数"を加えれば、敵の戦術を瓦解させるのはいとも容易い。
 一発、また一発。砲撃は的確に要所要所を貫き、相手に決して自由を与えない。

「誤差修正完了!はじまり殿、これで終わらせマショー!」
「ありがとうございます!ええ、これで……決めてみせます!」

 バルタンの全能力を経由した『はじまりの猟兵』の【ストライク・イェーガー】。
 その最後の一射が機械の中心たるバルタンの模倣体を貫き、爆発音と共に炎の柱が立ち上った――!

成功 🔵​🔵​🔴​

ティオレンシア・シーディア
…あたし、この世で一番キライなものの一つが「自分の真の姿」なんだけどなぁ…

【容姿:真の姿の左半身が業火に包まれ、4本爪の傷跡からは鮮血
性格・口調:「本性」と同様】

うん、「アタシ」だし何かしらやらかすだろうなーとは想定してたわよぉ?けど――
【戦術:スキル・アイテム共本体と同一。ただし「無制限にUCを組み合わせてくる」――即ち、|轢殺+黙殺・妨害+鏖殺・狂踊+鏖殺・掃演+粛殺《バイクで高速機動しながら魔術弾幕でデバフをバラ撒き、3倍の不規則三次元弾幕をアホほど跳弾させながら3×3=9倍威力で撃ちまくる》とかしてくる】
物事には限度とか程度ってモノがないかしらねぇ!?できるならあたしだってやりたいんだけど!

これはもう「始まり」サンにお願いするしかないわねぇ。●活殺・再起と黙殺・砲列で死ぬ気で攻撃凌ぐから、どうにかして●キューソネコカミ叩き込んでちょうだいな。これだけ不利喰らえば流石に確率上がってるでしょ。
…というか、あたしにできることはあっちもできる以上あたしじゃ他にどーしようもないのよねぇ。



 はあ、とティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は大きくため息をついた。

「(……あたし、この世で一番キライなものの一つが「自分の真の姿」なんだけどなぁ……)」

 目の前の闇が最後の悪あがきと言わんばかりに残滓をかき集めて人の姿を作り上げる。
 左半身が炎に包まれ、右側の腹部付近に刻まれた4本の傷からは鮮血が止め処なく流れ落ちた姿――自分の真の姿を正しく"歪めた"ような敵。
 ただでさえ自身の真の姿が嫌いだというのに、それを歪められたような姿を見せつけられるのは逆鱗を逆撫でしにかかっているも同然だろう。

「はあ……」
「あ、あの、大丈夫ですか……?」
「ええ、大丈夫よぉ。仕事に支障はないから」
「そ、そうですか……」
「まあ、うん。「アタシ」だし、何かしらやらかすだろうから警戒しといてねぇ」
「は、はい!」

 自分がどういう人物であるかはティオレンシアがよくわかっている。
 普段は微笑の仮面で隠してはいるが、その内に秘めた激情はあらゆるものを焼き尽くさんとばかりに燃えている。
 目の前にいる的はそれを歪な形で姿に再現したのだろうと言わんばかりに左半身が延々と燃え盛っていた。
 はあ、本当に嫌になる――と一人ごちて武器を構える。先ほどから嫌な予感がしてたまらない。
 そして目の前の敵が先手を取ると、その予感は見事に的中していたと思い知らされざるを得なかった。

「……ヤバいわ」
「え?――っちょ、わああ!?」

 『ミッドナイトレース』――を、模倣したもの――に乗り、敵が正面から突っ込んでくる。
 ティオレンシアも『はじまりの猟兵』も正面衝突自体は避けたものの、次に襲ってくるのは流鏑馬と『ゴールドジーン』による魔術文字を介した魔法攻撃。
 冗談じゃないわよ、と流石にティオレンシアは叫びたくなった。
 それは紛れもなく自らのユーベルコードを同時使用しての攻撃だったのだ。
 しかしそれだけでは終わらない。
 |【轢殺】《ガンパレード》と|【黙殺・妨害】《デザイア・ディスターブ》の2つだけでも相当厄介なのだが、
 そこで終わればまだ生ぬるかったと言わんばかりに、ティオレンシアの真の姿を模した敵は次々とユーベルコードを連続で畳み掛けるように使ってくるのだ。
 器用にバイク型UFOを乗りこなしながら武装に強化を施し、その上で地形やその場の障害物を利用した上で、魔術文字を宿した銃弾の嵐が三次元弾幕にて放たれあちらこちらを跳ね回る。
 安置は当然だが逃げ場もロクにあったものではない。

「待って!?!?待って!?!?これどうしたらいいんですかーっ!?」
「物事には限度とか程度ってモノがないかしらねぇ!?できるならあたしだってやりたいんだけど!!!」

 猟兵のユーベルコードの行使というものは原則一度につき一つ。複数のユーベルコードを同時に使用することはできないワケではないが極めて至難の業だ。
 それをいともたやすくほいほいと使ってくるとは流石に予想にしていなかったし、ティオレンシアの嫌な予感が極めて最悪な形で的中した状態と言っても決して過言ではない。
 現に、ティオレンシアも『はじまりの猟兵』もロクに動けたものではない。
 とはいえこのままだといずれ確実にやられる。それもほど遠くない未来で。
 ならばどうするか。答えは必然的に限られてくる。

「……これはもうはじまりサンにお願いするしかないわねぇ」
「え!?わたしでできるならやりますけど何したらいいですか!?」
「死ぬ気で攻撃凌ぐから、どうにかして|ユーベルコード《【キューソネコカミ】》を叩き込んでちょうだいな。これだけ不利な状況なんだから流石に確実性は上がってるでしょ」
「ど、どうやって防ぐんですか!?一人じゃ無茶ですよ!」
「無茶でもやるしかない状況でしょう?というか、あたしにできることはあっちでもできる以上、あたしじゃ他にどーしようもないのよねぇ……というワケで、お願いね」

 ティオレンシアは『ゴールドシーン』を呼び寄せユーベルコードを発動する。
 『ゴールドシーン』による魔術文字の弾幕が自然と陣を描くように円となり、生命と精神を活性化させる領域結界を作り出す。
 止め処なく放たれ続ける魔術文字は|【活殺・再起】《リアクト・ソーサリー》の効果を限界まで高めつつ、時折弾丸となって敵を阻害しようと試みるがが、三次元跳躍を繰り返し続けている敵にはそう簡単に当たるワケもない。
 相殺されて終わるか、それをくぐり抜けてティオレンシアに命中すらするかのどちらかだ。
 肩を撃たれ鮮血が飛び散る。しかし活性結界が即座にその傷を塞ぎ、何事もなかったかのようにティオレンシアは弾幕に対処すべく自らも銃を引く。
 もとより空間認識能力が人より優れているティオレンシアが、敵の三次元弾幕の跳弾そのものに銃をぶつけて相殺することは不可能ではなかった。
 とはいえ命中精度は100%とはいえない。通り抜けて敵に命中するならよし、当たらずとも邪魔ができればそれもよし。
 今の自身はあくまで弾除けで時間稼ぎの為に動いている。
 目の前にいる敵は自分を模倣した存在で、その自分自身を模した存在をその場に縫い付けられるのは自分自身しかいない。
 ましてやこんなユーベルコードを3つ以上も同時に使ってくるような埒外の相手に下手に反撃に出ようとするよりは防戦に徹するべきだと判断してのことである。
 ユーベルコードで無限に回復できる状態をキープしているとはいえ、防戦して前線を保つのにも限界はあるだろう、だがそこまで時間を稼げれば上出来だ。
 前線を保つのに精一杯という状態はティオレンシア側の不利を意味する。
 そして頼みの綱のユーベルコードは、不利であればある程その効力を十全に発揮するものなのだから。

「――!」

 ティオレンシアが『オブシディアン』から放った弾丸が、極めてゼロに近い確率を叩き出した。
 敵の構えた『オブシディアン』を模した銃がその影響で爆発し、左半身の炎に引火して敵の全体を焼き尽くす。
 制御をしている余裕など当然あるワケもなく、うめき声を上げて身悶える敵。
 ――その脳天に『はじまりの猟兵』が放った|一撃必殺の弾《キューソネコカミ》が突き刺さった。
 先ほどまでの暴れっぷりが嘘かのように、呆気なく地に伏し、再び形を保てなくなり霧散する。
 ……それが二度と人の姿を形作ることはなかった。

「……や、やりました……か……?」

 『はじまりの猟兵』が息も絶え絶えにこちらへ向かい、声をかける。

「……ええ、無事倒せたわよぉ。ナイスショットだったわ」
「そうですか……よかった……!時間を稼いでくれてありがとうございまし、た……」

 ふらふらと『はじまりの猟兵』はその場に崩折れる。
 先ほど本人が思い出したばかりのことであるが、闇は彼女のオブリビオンとしての側面のようなもの。
 相手が復活できぬ程に叩きのめせば本人がこの場に顕現している時間も、必然的に終わりを迎えるのだ。

「ご迷惑をおかけしてすみません、でした。でも、おかげで……この最後の僅かな時間を使って、真実を伝えることができます」

 そして『はじまりの猟兵』は語り始めた。
 彼女の知っている真実――「2番目から5番目の猟兵」について。
 それにより、猟兵たちに齎されたものとは……それは、戦火の夜が明けた時に語られることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月30日


挿絵イラスト