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獣人世界大戦⑳〜自刃遊戯

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第三戦線 #はじまりの場所 #はじまりの猟兵

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●はじまりの場所
 結界の奥、封じられていた闇が溢れ出す。夜の帳よりなお暗い、歪な闇の中に、少女が姿を現した。
 「はじまりの猟兵」、超大国が揃って狙う存在。彼女は、こちらを認めると――。

「――六番目の猟兵!! 待っていました。ずっと、待っていました!

 こちらを歓迎するように、その両手を広げて見せた。だが歓喜の声とは反対に、鎖のように絡みついた彼女の闇は、猟兵達を呑み込むように広がり始める。
「 本当は、今すぐ皆さんに全てを伝えたいけれど……。
 わたしの寿命はとうに尽き、|世界の敵《オブリビオン》と化しています。真摯に真実を告げようとしても、皆さんに嘘の情報を渡してしまうかもしれません」
 いっそ言葉ではなくジャスチャーとか紙芝居とかにしたらワンチャンあるかも知れませんけど、実験してる暇はさすがに……みたいな葛藤を滲ませながらも、彼女はライフルをこちらへ向ける。
「知りたい方は、わたしと戦ってください! 大丈夫です、わたしは最も古き者。正直言って、弱――ああッ!?」
 決意に満ちた情けないセリフが出かけたが、それを言い切る前に、広がる闇が一体の異形を生み出す。
 どろりと纏わりつくような黒の中、産声を上げたそれは、まるで猟兵自身のような――。

「どうしましょう! この人、多分わたしより強いですよ!!」

●己の刃を
 並み居る超大国が求めた存在、それがこの「はじまりの猟兵」である。彼女の持つ情報は恐らく極めて重要なものだと予想できるが……。
「はじまりの猟兵――つまりこのセンパイさんは、寿命が尽きてオブリビオンになってしまっているようだね」
 こうして出会えただけでも奇跡なのだと言えなくもないか。しかし、|世界の敵《オブリビオン》と化した彼女は、自らの意志とは関係なく偽の情報を口にしてしまう可能性がある。そうならないためには、オブリビオンである彼女と戦い、一度完膚なきまでに倒してやる必要があるらしい。
 難儀な話だね、と肩を竦めて、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は一同に協力を依頼する。
 はじまりの猟兵の纏う闇、それは彼女の意向に関わらず、自動的に広がり、「怪物」を生み出すことで敵対してくる。それが形作るのは対峙した者――つまり猟兵自身をなぞった存在だと言う。
「まあ、君達も大概『自分と戦う』ことに慣れてきてると思うんだけどね」
 経験済みの人も多いでしょう? などと冗談めかして笑ってみせるが、今回の敵はまた一味違うらしい。
「今回生まれる「怪物」は、君達の「真の姿」を更に歪めたような、禍々しい形状になるんだってさ。戦闘能力も見た通りっていうことになるだろうね」
 戦い方は似ているのか、正反対なのか、その辺りは戦ってみるまでわからない。何にせよ、強力な敵となるはずだ。
 ちなみに、戦いにおいては怪物の存在に慌てた「はじまりの猟兵」も、協力して戦ってくれるらしい。
「闇のエネルギー源は「はじまりの猟兵」自身……つまり、彼女にとっても『自分との闘い』ってことになるかもね」
 猟兵を模した闇を倒せば、共闘を終えた彼女は消滅する。きっとその時ならば、歪みの無い真実を語ることが出来るだろう。

「センパイの思いを無駄にしないためにも、君達に手を貸してほしい」
 それじゃ頼んだよ。そう言って、オブシダンは一同を闇の中へと送り出した。


つじ
●はじまりの猟兵
 ユーベルコードを使い、一緒に戦ってくれます。闇を倒すことが出来れば、力を失い消滅していくでしょう。
 戦争終了時点で⑳を制圧していれば、戦争終了後に、はじまりの猟兵が『二番目から五番目の猟兵について』の情報を語ります。このシナリオのリプレイ内で情報を語ることはありません。

●プレイングボーナス
 「はじまりの猟兵」と共闘する/自身の「闇の真の姿」を描写し、それに打ち勝つ

●『闇』
 あなたの真の姿、そこから更に歪んだような形状をしています。イメージの固まっている方はプレイングにてご指定ください。
 戦法、使用するユーベルコードもあなたのものとそっくり、もしくは正反対である可能性が高いです。上手く想定し、対策を打ってください。

 それでは、ご参加お待ちしています。
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第1章 ボス戦 『はじまりの猟兵』

POW   :    ストライク・イェーガー
レベルm半径内の対象全員を、装備した【ライフル】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
SPD   :    プログラムド・ジェノサイド
【予め脳にプログラムしていた連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    キューソネコカミ
【ライフル】が命中した敵を一定確率で即死させる。即死率は、負傷や射程等で自身が不利な状況にある程上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…あれが始まりの猟兵!
…だが…まず先に倒すべきは…白銀の甲冑に青い炎を纏う…己自身とは!
この世界を救う為に…始まりの猟兵よ…力を貸してくれ!さぁ行くぞ…私は処刑人!

【血玉覚醒】で真の姿を開放しバーサークと化し己の闇の姿と戦おう
はじまりの猟兵の射撃により敵の攻撃を妨害してもらいながら
鉄塊剣と宝石剣を抜き振るい怪力と鎧砕きで敵の払う大剣を切り払おう

攻撃を浴びても地獄の炎纏いて傷を回復し継戦能力を発揮し死ぬまで戦い続けよう…!

ここで止まる訳には行くまいぞ…だが貴様はここで終わるのだ!去ね!

地獄の炎纏う手刀を突き放ち傷をえぐり、心の臓を掴み取り出し握りつぶしてやろう!!!



●闇を灼く焔
「あなたが……はじまりの猟兵!」
『はい! ですが話は後にしましょう、あちらに集中してください!』
 仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)の言葉にそう応じ、はじまりの猟兵は自らの纏っていた闇を示す。周囲を覆う闇よりもさらに濃く、急激にあふれ出した黒の中から、青く鮮やかな炎が燃え上がった。
「なるほど、まず先に倒すべきは――」
 己自身か。炎を纏う全身甲冑、その姿はまさに真の姿となったアンナそのもの。ただし鎧は月の光のように冴えた白銀、そして炎は青く輝いていた。
 身の丈ほどもある巨大剣、染みひとつない白銀の刃を手に、『闇』はその切っ先を彼女へと向ける。こちらの動きを待つようなその動きに応じ、アンナは敵の方へと踏み出した。
「この世界を救う為に……始まりの猟兵よ……力を貸してくれ!」
『はい、微力ながら協力いたします! 存分に戦ってください!』
 骨の仮面で顔を覆った彼女の言葉に頷くとともに、アンナの瞳が赤く輝く。噴き上がるのは黒と赤、二色の炎、絡み合うそれらを纏わせたアンナの身体は、相対する相手とは正反対の漆黒の鎧に包まれていた。
「さぁ行くぞ……私は処刑人!」
 命を糧に燃え上がった炎と共に前へ、すると鏡合わせのように、白銀の『闇』もまた踏み出した。探り合うような間はその一歩のみ、次の一手は双方共に、闇色の地面を蹴立てての突進だ。豪風を伴い、拷問器具を模した段平が横薙ぎに振るわれる。敵の首を斬り飛ばすためのそれは、半ばで同様の斬撃と衝突し、重く軋む金属音を響かせた。
 疾黒と白銀、両者とも弾き飛ばされることなく、刃同士が噛み合い火花を散らす。そして斬撃に続くそれぞれの炎が、互いを呑み込もうと荒れ狂う。双方を焼く炎を切り裂き、振るわれたのは『闇』の蒼刃、空いた手で振るわれた餓血刀を、アンナは宝石剣で受け止めた。
 一瞬の硬直、そこへさらに追撃を放とうとした『闇』を、今度はアンナではなくはじまりの猟兵からの射撃が襲う。
『援護します!』
 ライフルの銃弾を『闇』が巨剣の腹で弾く、そしてその間に、アンナの宝石剣が敵の鎧へと刃を突き立てた。付けた傷から燃え盛る青い炎、されど怯まず反撃に出た『闇』の随行大剣が、逆にアンナに喰らい付く。
 傷口を焼く地獄の炎、両者のそれは、周囲の熱をさらに激しく塗り替えていく。
 戦況は互角か、あまりの熱気に後退らないよう抗いながら、はじまりの猟兵はアンナへと呼び掛ける。
『負けないでください、猟兵さん!』
 ああ、ここで止まる訳には行くまいぞ。返答と共に、真紅の瞳が処刑すべき対象を貫く。続く踏み込みは獣の如く、手放した両の剣が地面を叩くよりも早く、アンナは敵の剣の間合いの内側に辿り着いていた。
「――だが、貴様はここで終わるのだ!」
 防御も回避も許さない、赤を纏った手刀は、青い炎を切り裂き、白銀の甲冑を突き破り、秘めたる『闇』へと辿り着いた。
 白銀の『闇』の言葉にならない叫びが響く、手刀を成していたアンナの五指は傷口を抉るように蠢き、『闇』の中心、その心臓を掴み取り、引きずり出した。
「闇よ、去ね!!」
 掴み取ったそれを、一握で潰す。飛び散る闇色は、返り血のように勝利者の頬を濡らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オニバス・ビロウ
理解した…確かに歪んだ姿だ
身体は元服した頃、ただし頭は紫陽花そのものと化した異形の俺
色が青に紅に白にと目まぐるしく変わるのは…感情の表現を模しているのか

アレが『俺』ならば、こちらの首を落としに来るだろう…それしか知らぬ頃の俺のように

此度は周囲の闇を晴らさず、むしろ利用する
まずは花札を撒いて牽制攻撃を
はじまりの猟兵には木苺を渡し、暗視が出来るように…あと花には触らぬように助言を

六百間にて植物を呼ぶ
『俺』なら花に触れたら受けた痛みが消えた事に気付く
…そして痛みが無ければまだ戦えると喜んで敵へと向かう
そこに俺達はいないのにな

ここから斬りに行けば幻覚の巻添えとなる

はじまりの猟兵よ
後はお前がアレを撃て



●七変化
 はじまりの場所にて渦巻く闇、その中心である少女、はじまりの猟兵の身からは、さらに深い闇が零れだしていた。色濃い歪な闇が地面に染みを作り、そこから立ち上がったのは。
『ああ、出てきてしまいました……!』
「理解した……確かに歪んだ姿だ」
 はじまりの猟兵の警告、その意図したものを察して、オニバス・ビロウ(花冠・f19687)が頷く。はじまりの猟兵の意志とは無関係に姿を現した『闇』は、オニバスにも覚えのある姿をしていた。それは若き日、元服した頃の彼自身。しかし一点、彼の頭のあるべき場所には、大輪の紫陽花が咲いていた。
 目も鼻も耳もなく、語る口も持たぬ『闇』は、それでもなおこちらを認識しているのか、佩いた刀に手をかけながらオニバスへと向き直る。そして紅に、白に、紫に、目まぐるしく変わる花の色が、冴えて冷徹な青へと定まった。
 瞬きする間もあればこそ、青い花は鋭い踏み込みと共に鞘から刀を抜き放ち、目にも止まらぬ居合の一刀をオニバスへと放つ。
 不可視に近い斬撃が奔り、しかし派手な金属音が、それを半ばで断ち切った。
「やはり、か」
 どんなに速い一撃でも、狙いが分かっていれば防ぎやすいもの、『闇』は、かつてのオニバスと同じように、まるでそれしか知らぬように、真っ直ぐに首を落としにきていた。
 動きは読める。だが剣の技量は、今のオニバスにも劣らないほどだ、油断はできない。
 冴え冴えとした青白に染まっていた紫陽花が、万華鏡のように色を変えて、一瞬の後に赤い色へと変わる。牽制にオニバスの放った花札、その内命中しそうなものだけを斬り落とし、オニバスの元へと斬り掛かった。
 淀みのない剣閃、それをかろうじて防ぎながら、こちらも反撃の刃を見舞う。双方手傷を負いながらも下がったところで、オニバスははじまりの猟兵へとそれを渡す。
『これは……?』
「食べておけ」
 その木苺は現場への適応を促す、この場合は闇を見通す目が得られることだろう。そして。
「それから、花には絶対に触れるな」
 そう言い置いて、敵の懐へと踏み込む。斬撃の応酬は互角、だがそこで、オニバスは敵の足元に散っていた花札へと働きかけた。
「――惑うが良い」
 『六百間』、花札に見えて、実際は呪符であるそれに、実際に植物が召喚される。闇の中に咲いた花畑、それに足を突っ込んだ『闇』は、その身が軽くなったのを感じ、目の前のオニバスへとこれまでを超える速度で斬り掛かった。金色の髪をしたその首が落ちて、『闇』はすぐさまオニバスの仲間を狙う。続けざまに、いくつもの首を落として、紫陽花の花は歓喜の色で咲き誇った。
「……そこに俺達はいないのにな」
 そんな、『闇』の見ているであろう幻を想像し、本物のオニバスが呟く。先程の術がもたらすのは、痛覚遮断と過剰興奮による幻視。それを疑わず、溺れた者の末路が、あれだ。
 細く息を吐いて、オニバスは手にした刀を鞘へと納める。
「はじまりの猟兵よ、後はお前がアレを撃て」
『え、いいんですか!?』
 驚いた様子の彼女に、当然だと頷いて返す。ここから斬りに行けば、『闇』の見ている幻覚の中に踏み込むことになる。ならば、距離の空いたここから仕留めるのが最善の手。ただただ首を狙う剣鬼には、それが似合いだろう。
 頷いたはじまりの猟兵は、首を斬ることにばかり長けたその『闇』へとライフルを構える。
 どこか静かな銃声と共に、紫陽花の花がひらりと散っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白斑・物九郎
●『闇』
・右腕が付け根から『モザイクの奔流』と化す、己の真の姿まんま
・――自身よりかモザイクの浸食率が高く、そして高出力。

同キャラ対戦だァ?
上等ですわ


●戦闘
モザイク空間をブチ撒けての面制圧攻撃、そいつを目くらましにしての不意討ち、魔鍵を鈍器扱いしての白兵戦、クッソ鋭い【野生の勘】に任せた先読みみてーな攻撃&回避――
俺めってこんなやりづれー戦い方するヤツだったんですわな!?

まずは同じ出方で対抗
が、あの怪物には無くて俺めにはある手札を切る
『味方が居る』ってコトっスよ

【砂嵐の王と狩猟の魔眼Ⅱ】、発動ォ!

俺めが当てた魔鍵を軸に火力支援を召喚
その銃砲撃に紛れて『はじまりの猟兵』にもライフル撃って貰いまさ



●伏せ札
『ああ、本当はわたしを倒すだけでよかったのに……!』
 それはオブリビオンとしての本能か、はじまりの猟兵を中心とした黒の渦の中に、さらに深い闇がどろりと広がる。自衛反応のようなそれが生み出したのは、相対する猟兵、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の真の姿そのもの。だが一点、右腕の輪郭だけがはっきりしない――その肩から先は、完全にモザイクに覆われていた。
「……同キャラ対戦だァ?」
 思わずそんなことを口走ったタイミングで、『闇』はその右腕を掲げた。
『気を付けてください、来ます!』
 白と黒の乱舞、不揃いの大きさのモザイク模様が、その場へ盛大にぶちまけられる。空間そのものを侵食するようなそれから、物九郎とはじまりの猟兵はそれぞれの方向へと身を躱した。
「出力だけなら俺めより上、ってか?」
 見せつけるようなその攻撃に笑って応じたところで、モザイクの濁流の『水源』が姿を消していることに気付く。舌打ちから一瞬遅れて、彼の『勘』が警告。身を逸らした物九郎の眼前を、フルスイングされた魔鍵のキーヘッド部分が通過していった。
 風切り音と風圧、一瞬遅れて到達それらを感じながら爪先を跳ね上げるが、敵は咄嗟の蹴りを見もせずに躱し、モザイクの領域へと身を引いた。
 どうやら姿形のみではなく、この『闇』はやり口までもそっくりらしい。
「……上等ですわ」
 こちらも魔鍵を手に、モザイクを目くらましとしたゲリラ戦の舞台へと上がる。ほかでもない、『自分』の戦法だ、相手の出方はよくわかる。獲物を狙う肉食獣のように低く、モザイクの嵐に紛れるように駆けて、不意打ちで殴り倒しにかかるのだ。色彩も輪郭も乱れ舞う空間の中で、察知した気配を根拠に敵の位置を把握する。
 一足早く敵を捕捉し、その側頭部に向けて振るわれた魔鍵は、しかしその寸前で相手の魔鍵に受け止められた。
 凄まじく鋭敏な感覚の持ち主であるこの『闇』は、隠れ潜みフェイントをかけようとも、ほぼ無意識の勘で対処してしまう。
「俺めってこんなやりづれー戦い方するヤツだったんですわな!?」
 バトンのように素早く半回転させられた『闇』の魔鍵が、キーウェイ側で斬り付けるように振るわれる。同じく鋭い勘を持つ物九郎もまた、それを事前に読んでいたように躱してしまう。
 反撃の一振りを敵が魔鍵で受け止め、軋んだ音色が鳴り響く。
 このままでは千日手、そうでなくては共倒れだ。それを覆すために必要なのは、そう、自分にしかない手札を切る事。
 鍔迫り合いのような体勢から無理矢理強く踏み込んで、物九郎は『闇』の腹に魔鍵の先端を突き刺すことに成功する。
『……』
 そんなもん効かねえって顔が少々憎たらしい。しかしながら、これで目的は果たした。
「悪ィが、こっちにゃ味方も居るんで――『エル・クーゴー』ッ!」
『火力支援を開始します』
 控えていた彼女が飛来し、その武装を悉く展開、飽和爆撃をマーカーである魔鍵に向けて放つ。物九郎の先読みじみた勘も、範囲攻撃の前には力を発揮しきれないはず。
『……あれ! どっちに向けて撃てば良いんですかね!?』
「向こうっスよ、向こう」
 敵味方の見分けがつかなくなっていたはじまりの猟兵へと補足の指示を出して、ユーベルコードのライフルが追撃で刺さるのを確認。
「まァ……ちっと複雑ですわな」
 自分と同質の能力の持ち主が蜂の巣になって、モザイクと『闇』が霧散していくのを見届けて、物九郎は最後に小さく呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミスト・ペルメオス
・WIZ

はじまりの猟兵。……叶う事なら、後ほど情報の提供を願いますよ。
──さあ、やるぞ。ブラックバード。

愛機たる機械鎧を駆って参戦。相手とのサイズ差など関係ないとばかりに。
装備を介して念動力を活用、機体をフルコントロールしつつ……

あれが、「真の姿」なのだろうか? 「はじまりの猟兵」とともに、不明瞭で歪んだ異形の機体と対峙して。
こちらは飛翔しながらの機動戦闘を仕掛ける。突撃銃と散弾砲を用いての射撃戦。
そこにユーベルコードの投射を混ぜ込む。【シュラウド・サクリファイス】。
上手くこちらだけが当てて、肉薄できれば良いのだが……最悪、超近距離戦に切り替えての消耗戦だ。

消耗と削り合い。機体も心身も傷つき、軋み、膝を折りそうになるが……消耗しきったところで、一種の賭けに。
超至近距離からの一撃を入れ、敵の動きを止めたその時。「はじまりの猟兵」に攻撃を、必殺の一撃を願う。
『闇』を打ち破る一撃を、ここに……!



●ハンティング
「はじまりの猟兵。……叶う事なら、後ほど情報の提供を願いますよ」
『はい! ですがその前に――』
 わかっていますよ、とミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)が頷き返す。はじまりの猟兵から溢れ出た闇、その中でももっとも暗き澱みが、ミストの駆る機械鎧を前に形を成す。ミストのそれとよく似た、それでいて禍々しい翼を持つ怪鳥、生体とも機械ともつかない『闇』は、不明瞭な輪郭の中ではっきりと輝く青い輝きをこちらへと向ける。
 眼球か、またはカメラアイか、無数のそれは、獲物を値踏みするようにぎょろぎょろと蠢いている。
『あの! わたしちょっと格差を感じると言うか……!』
「……今のところは、下がってた方がいいかも知れませんね」
 主にサイズ差が。ミストの機械鎧と同サイズの敵、その間の足元を、はじまりの猟兵が駆けていった。『弱い』と自称している彼女に、この戦いへ正面から付き合わせるのは少々酷だ。
 歪んだ真の姿、凶鳥を相手取るべく、ミストは機械鎧の四肢へと意識を広げる。
「──さあ、やるぞ。ブラックバード」
 一瞬の加速と共に、ブラックバードが暗闇の中へと舞い上がる。そして同時に、異形の『闇』もまたそれを追うようにして飛び立った。
 渦巻く闇の中を飛翔する、上下感覚と遠近感が消えていきそうな光景の中で、こちらに迫る敵の動きを探る。マニピュレーターで保持した突撃銃を構えて、牽制射撃。それを難なく交わした敵機は、誘導弾、ミサイルの類か、翼のない鳥の群れを展開した。
 一斉に襲い掛かるそれらを、ミストは逃れるのではなく敵に接近する動きで躱し、止まることなく照準を定める。
(――そこかッ)
 すれ違いざまに散弾砲を発射、回避機動を取った敵を散弾に巻き込んだ。
 だが装甲に弾痕を刻まれながらも、『闇』は機関銃で応射、こちらの動きを制限したところへとレーザーライフルを向ける。
 させじと、ミストはそこへサイキック・エナジーでの妨害を試みた。『シュラウド・サクリファイス』、散弾と同時に流し込んだそれで銃口を鈍らせ、装甲を侵食する。ライフルからの光条が機体側面を掠めていくのをコンソールからの通知で確認しながら、ミストは火器管制を制御、自分の手足か、ともすればそれ以上の正確さを見せるそれで、彼我の位置の差から照準を補正していく――。

 迫り来る誘導弾の群れを突撃銃の連射で撃ち落としつつ、その半ばで急加速、敵の狙撃から可能な限り身を躱す。
 互いに機動力を活かした戦いは消耗戦の様相を呈していた。双方とも火力は十分ながらも、直撃が入らないことで決定機を掴みあぐねている。だが、それでも無傷とはいかず、装甲は削れ、残弾は減り、機体は軋みを上げ始める。何よりも、機体を念動力で制御しているミストの消耗が大きい。
 表面的なダメージは確認できるが、敵は、果たしてあの『闇』は、同じように疲弊しているのだろうか。そうでなければ、いずれ――。
 この思考自体がある種の疲弊の証明だろう、一瞬だけ乱れた集中の合間を縫って、誘導弾の一つがブラックバードの背面を捉えた。
 機体を揺らす衝撃、そしてスラスターのひとつの出力低下を示すアラート。被害自体は大きくないが、戦いに熟達したミストだからこそ先の展開も予測してしまえる。これはすぐに致命傷に繋がるだろう。
 ――だが、まだ終われない。
 敗勢の中に見える細い勝ち筋、それを掴むべく、ミストは残った燃料を焼き尽くす勢いで機体を急加速させる。これまでの精緻な飛行とは打って変わった暴力的な突進、機体を軋ませながら突っ込んだ先は、敵の懐だ。
 機体の装甲同士がぶつかり、双方の質量と勢いに負けてひしゃげ、砕ける。射撃武器の内側の隙、対処が一瞬遅れるそこを突いて、ブラックバードは『闇』を押し切り、地面へと叩きつけた。
 苦し紛れの抵抗、限界の近いブラックバードにできるのはここまでだ。しかし、必殺の一撃はまだここに。
「今です!」
『了解しました!』
 弱い、と自称したところで彼女とて歴戦の兵、はじまりの猟兵はこのタイミングを待っていたかのように、ライフルを構えている。
 『闇』を打ち破る一撃、ミストの繋いだ細い糸を手繰るように、銃弾が敵を撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンゼリカ・レンブラント
若き日の私に天使の翼
桜の花を髪に咲かせるも、
身を包む禍々しい闇光か、成程な。
http://tw5.jp/gallery/combine/61239

お相手しよう、私ならばやはり接近戦に長けているのか?
相手の肉弾戦に対処を取り

……待て、思いっきり後ろに下がって
魔力砲撃撃ってきたんだが?
成程、正反対……魔力に長じた私ということか

こちらが掴む、あるいは剣で斬ろうとした時には
翼で避けられ遠間から光の砲撃を、
あるいは魔力で伸ばした光剣で斬って来る
なんというか、実に理性的で無駄がないな!
覇気を全開に致命打を避けてはいくが、ジリ貧になるな

そうか、では私らしくぶち抜いていこう
はじまりの猟兵にはライフルで援護を頼みつつ、
最短距離を駆ける

いい的だと?ならば《クラッシュ成功!》
裂帛の気合と共に盛り上がった腹筋の輝きでノーダメージだ

ふむ、「その肉はずるいぞ」か
残念だったが、これが私の「わいるどぼでぃ」だ。
距離を詰めれば二度と離さず、格闘攻撃で屠る

違う道を辿った私よ
悔いなき道を歩んでいたのか?
消えた「闇へ問うておく



●りばーす・わいるどぼでぃ
 明るい金色の髪に、桜の花弁が踊る。闇の裡から出でてなお、その怪物は輝いて見えた。
「……成程な」
 アンゼリカ・レンブラント(黄金戦姫・f38980)を写した姿なのだとすれば、それも当然と言えるだろうか。天の光を湛えたような瞳がこちらを睨み、純白の翼がばさりと広がる。しかし彼女の宿す『輝き』は、むしろ光を呑み込むような禍々しさを孕んでいた。
『気を付けてください! これはあなたに反応して生まれた怪物――絶対わたしより強いですよ!』
 はじまりの猟兵の警句に頷いて返し、アンゼリカは油断なく構える。自分の写し身であるというのなら、まず警戒すべきは自らの得意とする戦法だろう。
「お相手しよう」
 それはそれで望むところ、鍛えた肉体を存分に振るい、張り合うことの出来る相手ならば……。
「ん?」
 打撃だろうが組技だろうがいくらでも迎え撃てる、そんな姿勢のアンゼリカに対し、『闇』は思いっ切り後ろに引いた。翼を振るって滞空、容易には手の届かない絶妙な位置まで一瞬で移動すると、彼女の纏う光が輝きを増す。
『お見せしようか、黄金騎使の光を!』
「ちょっと待て! これは本当に私か!?」
 放たれたのは、禍々しくも眩い光の帯。甚大な出力の魔力砲が、咄嗟に飛び退いたアンゼリカの傍らを突き抜けていった。
『よく躱した! だがこれはどうかな?』
 当然これで終わりではないとばかりに、掲げられた剣が炎を纏い、斬撃と共に襲い来る。
 この辺りでアンゼリカにも合点がいく、この敵は確かに彼女の写し身ではあるが、その能力は正反対……肉体ではなく魔力に長じた存在のようだ。迫る炎の熱を感じながらも掻い潜り、敵の元へと腕を伸ばす。だがその動きは読まれていたのだろう、『闇』はその翼でアンゼリカの手を逃れ、遠間からさらなる追撃を放ってきた。
 光の奔流が戦場に広がる闇を灼く。特化寄りの凄まじい火力を、覇気で軽減することでどうにかやり過ごし――。
「なんというか……実に理性的で無駄がないな!」
 そこでアンゼリカの口から出たのは、ある種の称賛だった。自らの特性を理解し、伸ばし、強みを前面に押し出すやり方は、彼女にも共感できるもの。まるで別の道を歩んだ、もう一人の自分を見ているようだ。
「だが、まだ甘い」
『なんだと!?』
 同じ思想だからこそ、至らぬ点も見えてくる。その戦法は、仲間が居てこそ輝くものなのだから。
 不敵な笑みを浮かべたアンゼリカは、はじまりの猟兵の援護射撃に合わせて地を蹴る。魔力の放射が遅れた隙に駆けるのは、敵へと向かう最短経路。だがそれは、見様によってはただの直進に他ならない。
『正面突破のつもりか? それじゃいい的だ!』
 これならば狙う必要すらない、『闇』は真っ直ぐに、アンゼリカへと魔力を解き放つ。迫り来る闇光、敵を灼き尽くす最大出力のそれを、アンゼリカは避けることなく受け止めた。
「はッ!!」
『は?』
 裂帛の気合と共に盛り上がった腹筋、その輝きは敵の放つ光を弾き飛ばし、掻き消した。
 あんまりと言えばあんまりな解決法に、呆気に取られた様子の『闇』だったが、闇光の消滅したそこから迫る圧に、ようやく我に返る。
『……ちょっと、その肉はずるいぞ!』
「残念だったが、これが私の「わいるどぼでぃ」だ」
 歯噛みする彼女の言葉をふふんと笑い飛ばして、アンゼリカが無駄に勝ち誇ったポーズを決めながら距離を詰める。一度接近を果たしてしまえばこちらのもの、砲撃を放つ隙を与えぬよう立ち塞がるその姿、あまりに物理的な圧の前に、『闇』は有効な手を打てぬまま。
「一人の力は脆いもの――ここまでだな!」
 アンゼリカ振るった腕が、敵の防御を撥ね飛ばす。魔力に長じた彼女の手は、白く、か細く……事ここに至って物を言うのはやはり腕力なのだろう。固めた拳は止まることなく、『闇』の生み出した怪物である、彼女の鳩尾へと突き刺さった。
 地に倒れ伏す写し身、その姿を見降ろし、アンゼリカは沈む夕映えを見送るように眼を細める。
「――違う道を辿った私よ、悔いなき道を歩んでいたのか?」
 返事は無い。だが、きっと答えは決まっているだろう。

 消えていく『闇』、それに伴い、はじまりに猟兵の身体が消えていく。
 消滅の間際に、彼女は果たして、何を語るのか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァンダ・エイプリル
闇の真の姿:ヴァンダに瓜二つながらも
瞳を光らせ、どす黒い憎悪の感情に覆われた存在
戦争に関連する物体や現象を出現させ戦う

あっはっは!
なかなか怖いのが出てきたね!
闇なんていうけど、こっちが「私」の本心ではあるんだろうね
まー「ヴァンちゃん」には関係ないけど!
行こう、はじまりの猟兵さん!

相手の攻撃をUCで迎撃
銃弾、爆弾、警報、悲鳴
全部知ってる、その怒りを叩きつけたい相手もね

普通に考えたら相手の方が絶対的に威力が高い
花びら、花火、ギャグ、笑い
紐を引っ張っていきなりピアノを落としたり
地面を布みたいにひっくり返したり
出せるネタ全部出し尽くして抵抗だ!

意識を逸らし、はじまりの猟兵さんの攻撃を通す
確実に削れたところに接近してトドメ!
イタズラで戦意喪失を狙って……すれ違い際にパイ皿を顔にぶつける【おどろかす】攻撃!
あっはっは!
少しはいい顔になったんじゃない?

「私たち」は強くない
怒りに任せてたらいつか壊れちゃうし、守りたい人すら怖がらせる
だからせめて、笑える方を選んだ
あなたの復讐は、この仕掛人が引き継ぎますよ



●獣人戦線
 闇の中、立ち上がったのは一人の狼。階梯は高く、ほとんどヒトの様相である彼女は、どこか物憂げで、何もかもに倦んでいるような昏い眼をしていた。
 それは、はじまりの猟兵の纏う闇から生まれた『怪物』。戦場に生を受け、繰り返される戦いと争いのすぐそばで、只中で、生き抜いてきたこの世界の『普通』。
『うーん、動く様子がありませんね……?』
 銃を構えたはじまりの猟兵が、探るような眼で出方を窺う。警戒を強める彼女を他所に、ヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)は、自分にそっくりなその顔を、すぐそばで覗き込んだ。
「もしかして、怒ってる?」
 軽い調子の問いは、彼女にとっては簡単な確認事項に過ぎない。
 ヴァンダに焦点を合わせたその眼が見開かれ、強い意志の光が宿る。同時に周囲の闇が、渦巻くようにその濃さを増していく。
「そりゃそうか」
 予想通りである、と彼女は頷いた。これが自らの写し身であるならば、瞳に滾るそれは憎悪に違いなく、裡には悲嘆と憤怒が渦巻いているはずなのだから。
「闇なんていうけど、こっちが「私」の本心ではあるんだろうね」
『えっ、急にこわい話を』
「まー『ヴァンちゃん』には関係ないことだよ、大丈夫大丈夫!」
 慌てた様子のはじまりの猟兵を先導するように笑って、ヴァンダは『怪物』と向き合った。姿形は鏡合わせのようにそっくりだけれど、その表情は対照的。
 どこからか火の粉が舞い、渇いた鉄の臭いの混ざった風を感じる。それが気のせいではないと察したところに、『怪物』の周囲で闇が揺らいて、ライフルの群れが顕現する。憎しみを、言葉にならない咆哮という形で吐き出す彼女に対して、ヴァンダは愉快そうに笑ってみせた。
「あっはっは! これは怖いなあ!」
 闇の向こうの戦列が、揃って銃口をこちらへ向ける。躊躇いのない一斉射撃、その瞬間にヴァンダもひとつ指を鳴らす。すると、火薬の音と共に鉛玉を吐き出すはずのそこから、色とりどりの紙吹雪が飛び出した。ライフルかクラッカーか、、区別のつかないその音色が闇を彩り――。
「それじゃ行こうか、はじまりの猟兵さん!」
『わたしあんまり勝てる気しないんですけど!?』
 戦場の火蓋が切って下ろされ、劇場の幕が上がった。

 はじまりの猟兵から生み出された怪物は、その力で『戦場』を呼び起こす。相手を蹂躙する銃の斉射を、塹壕に投げ込まれる手榴弾を、死地へと向かう鬨の声を、死にいく誰かの絶望の闇を。絶え間なく襲い来るそれらに対抗するのは、ヴァンダの齎す『大混乱』。
 砲弾を眩い花火に変えて、|手榴弾《パイナップル》は切り身にして食べてしまう。迫り来る敵の軍靴の群れは、地面をテーブルクロスのようにひっくり返して転がしてやった。
「まだ続ける?」
 当たり前だとばかりに怪物は唸り、さらに激しい戦場を顕現する。しかしそこに描かれるモノ達を、ヴァンダは見るまでもなくよく知っていた。そして、その怒りを叩きつけたい相手だって。
 直後に警報が鳴り響き、空から焼夷弾が降り注ぐ。
 それに対してヴァンダが拾い上げたヘルメットを掲げると、巨大化して彼女とはじまりの猟兵の身体を覆い隠した。甲羅に収まった亀のように爆撃をやり過ごし――。
「叩いて被って――なんだっけ?」
 いつの間にか敵の背後に回っていたヴァンダが、ピコピコハンマーを振り下ろす。それはあえなく躱されてしまったが、この奇襲自体がひとつの囮だ。
『行きます……!』
 隙を突いて放たれたはじまりの猟兵のユーベルコード、超高速の連撃が『闇』を捉える。一度外しても調節が効かないのが難点だが、こうして不意を突ければ最大限の力を発揮できるはず。そうして彼女の攻撃に押されて、下がったところへ、ヴァンダは一跳びに迫る。
 もはや防御も回避も不可能だろう、そして訪れる戦場の顕現よりも早く、ヴァンダはその腕を振るった。
「さあ、トドメだよ!」
 目にも止まらぬ速さで放たれたのは、急所を狙う刃――ではなく、大きなパイ皿だった。
 見事顔面にそれを食らった『闇』は、何が何だかわからないというように、目を丸くしている。
「あっはっは! どう? 少しはいい顔になったんじゃない?」
 ずり落ちていくパイと、顔に残った白いクリームを指差して、ヴァンダが言う。
 当然ダメージなんてありはしない。倒すことなどできてはいない。けれどこんなものがとどめの一撃になるのだと、彼女にはそんな確信があった。

 ――『私たち』は、強くないから。
 怒りに任せていれば、いつか壊れてしまう。呑まれてしまう。そして、守りたい人すら怖がらせてしまう。
 ならばせめて、だからせめて、笑える方を選ぶのだ。
「あなたの復讐は、この仕掛人が引き継ぎますよ」
 力を失った様子の『闇』へとヴァンダが告げる。そして消えゆく最期の表情を見送り、微笑んだ。
 これが、彼女にとっての勝利の形。


●はじまりから六番目へ
 闇は薄まり、やがて霧散する。現れた『闇』を、猟兵達は見事に打ち払った。
 ――これならばきっと、任せることが出来るはずだと。
 六番目の猟兵と共に戦った、はじまりの少女はそう信じて、語り始める。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月31日


挿絵イラスト