絶対エロい展開にならないトラップダンジョン
#アルダワ魔法学園
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●むかしむかし
肉体を汚辱せしめ、精神をも蹂躙する、賎劣にして邪智になるモノ。
醜悪なる無数の触手、服だけを溶かすという酸性のスライム。
そして女の肢体に下品に舌舐めずりをする、醜い小鬼たち。
迫り来る悪意を前に、女はただひとり、助力もなく壁を背にする。
絶望的状況。
逃げ場はなく、観衆あらば、彼女に待ち受ける酸鼻を極める結末を想像し、誰もが目を覆ってしまうだろう。
されど天井から生えた触手の群れは、一切の情けを持たず、悪意のまま彼女へと牙を剥き、陵辱せんとする。
「まさかと思うが、そんなもので私が達すると思うのか?」
やがて自らの大腿部に巻き付かんとしたそれを、女は一瞥し。
「私が達するのは、音の速度だけだッ!!」
一蹴ッ!!
彼女の脚力から放たれる蹴りは音さえも置き去り、巻き付いた触手は秒を数える間もなく爆発四散……超音速の蹴りが生む衝撃波は飛散した体液をも跡形もなく霧散させる!
「覇ッ!!」
女が裂帛の気合を持って……否。
裂帛とは絹を裂くが如き意なれば、その叫びはもはや〝裂鋼〟!
音の振動だけでスライムはたちまちのうちに蒸発。
服だけを溶かすなどと巫山戯た性質で命を奪い合う戦場に姿を現した時点で、スライムが生き残る未来などあろうはずもなかったのだ!
「どうした……私はまだ、傷一つ負ってはいないぞ……!」
襲い来る触手を文字通りちぎっては投げ。
下卑た笑みを引っ込ませて逃げ惑う小鬼たちを引っ掴んでは熱い抱擁という名の鯖折りで昇天せしめ。
頭を撫でるような柔らかな動作で、災魔どもの首を脊髄ごと引っこ抜く!
「いいか……迷宮とは! 力だけがものを言う、暴力の世界なのだッ!!」
その女の通ったあとには、血と臓腑の海だけが残り。
やがて彼女は、鬼神と呼ばれるようになった……。
●グリモアベース
「……という、アルダワに伝わる女傑の物語があるんですけど」
ホントかよ。
グリモア猟兵、光・天生の話に、集まった猟兵の多くが眉をひそめたとて無理はない。
というか、その話が何だというのだ。
誰かが疑問を呈せば、天生も頷き、それに答える。
「いえ。最近アルダワで新しい迷宮の入り口が開いたらしいんですが……その迷宮というのが。ちょっと、特殊なトラップに満ちた場所なんです」
特殊とは、つまり……。
今しがたの話から、察することのできる者もいるだろう。
つまりは、触手とか服だけ溶かすやつとか。
そういうイヤンなトラップが満ちた迷宮が出現してしまったのだ。
「この迷宮に赴く以上……皆さん、わかりますね?」
真剣な表情で、天生が猟兵たちを見やる。
精神的後遺症さえ残りかねない悪意に満ちた卑しい罠数々、つまり……。
「そのトラップども、一つ残らず徹底的に叩き潰しましょう。物語の女傑のように」
だよねー。
なんたってアルダワは新入生たちがたくさん入ってきたばかり。
何かの間違い彼らが足を踏み入れ、トラウマを負うなどあってはならない。
「大丈夫、銀河皇帝をも打倒した今の猟兵ならこんな罠、屁でもありません。何ならそれこそ気合だけで蒸発させられるレベルのはずです」
嘘みたいな話だが、どうやらマジらしい。
所詮低レベルな罠や戦闘力の低い小型災魔しか出現しないので、猟兵の力をもってすれば純粋な暴力で一方的に全てを屠ることができる。
気兼ねなく、女の……いや、人権の敵とでも呼ぶべき存在の数々を真正面から捻じ伏せるといいだろう。
「ただ、最奥にはやっぱりボス災魔がいるはずなので、戦闘の備えはしておいてくださいね」
最後に警戒を促し、自らが破壊に赴けない無念を猟兵たちに託すように天生が一礼した。
鹿海
どうも皆さん、鹿海(かのみ)です。
1章はエロトラップとかそのテの災魔に満ちたダンジョンですが、エロい展開にはなりません。
エロい展開にはなりそうな芽を力と暴力とパワーで捩じ伏せてください。
イヤンな目に遭うプレイングは問答無用で却下になりますので、何があってもエロい展開にはなりません。
遭遇したいトラップを仔細に指定してもいいし、とりあえずどういう心構えや攻撃手段を用意するかだけをプレイングに書く形でも構いませんが、絶対にエロい展開にはなりません。
どうせエロい展開にはならないので、殴るもよし斬るもよし焼き払うもよし。
もちろん女性も男性もおとなもこどももおねーさんも歓迎です。だってエロい展開にはなりませんから。
あとキャパシティの問題で過去のシナリオよりプレイングの採用数が減る可能性がありますので、エロい展開にはならないことを頭に留めつつ、ご理解願います。
2章からはややトラップの危険度が上がりますが、エロい展開にはなりません。
エロい展開にはなりませんが、3章のボスは恵まれた肢体を持ち、一糸纏わぬ姿の災魔なので、ちょっぴり期待していいですよ。
エロい展開にはなりません。
第1章 冒険
『見せつけろ!先輩の実力』
|
POW : 自慢の腕力・体力を駆使して攻略する。
SPD : 余計な時間を掛けたりせず、確かな技術で攻略する。
WIZ : 自身の頭脳や魔法などの特殊技術を活かして攻略する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
迷宮へ一歩足を踏み入れれば、待ち受ける寒気。
充満するのは、人としての尊厳を徹底的に奪わんとする悪意。
ぬらりと纏わりつけばたちまち身動きを奪い、肉の快楽に溺れさす触手。
服だけを溶かす謎の酸性により、あらん限りの羞恥を与えるスライム。
獣慾を滾らせ、野卑な笑みで哀れな子羊を待ち受ける災魔たち。
ぬるぬる床に拘束具、変なとこだけ舐めてくる植物や催淫作用を持つガス……。
エトセトラ、エトセトラの誇りを穢す罠と罠。
——笑止千万!!
命を奪う気すらないトラップが何するものぞ!
ここは迷宮、気を抜けば即die即hageの世界で斯様な罠などボーナスステージ同然!
殴れ、捩じ切れ、斬り伏せろ!
君たちはエロトラップなどに(本当に)絶対負けないのである!!
ノエラ・ビュイヤール
先輩としての威厳を見せるときでありますな!
新人たちを守るため、気合十分、頑張るでありますよ!
《トリニティ・エンハンス》を使い、炎の魔力で攻撃力を高め、
スライムがあれば〈属性攻撃〉にて蒸発させ、
触手あれば〈力溜め〉ののち鷲掴み、固く蝶結びかにしてやるであります。
「スライムが服を溶かすだの、百万年早いでありますよ!」
「触手がなんぼのもんじゃいであります!こうして、こうして、こうであります!」
威嚇の咆哮。
「さあ次の獲物はどこでありますか!加減を知らない猟兵がどれほど恐ろしいか、身をもって思い知らせてやるであります!」
…これではどちらが悪者かわからないでありますな。
*アドリブ、絡み可
ヴェイル・ランカスター
【アドリブ歓迎】
服を溶かす?触手?
それはつまり、女の子の(検閲)とか(自主規制)だったり(心地よい小川のせせらぎ)なんて見えちゃったりするのか!?
こうしちゃいらんねぇ、今すぐ迷宮へ突入するぜ!
へへ…迷宮では後ろにも気をつけなきゃなんねぇから、しんがりはオレに任せな!
いやいや、別に後ろからじっくり眺めようって訳じゃないぜ、これもチームの安全のためさ!
さあさ、みんなは先に…
なんだ!?身体が勝手に!【ベルセルクトリガー】
待って待って待ってなんでオレが最前線に出てるの!?これじゃ女の子達を見られないじゃない!!
ダメっトラップはオレがかかっちゃダメなのぉ!!
いやあああああ!!(トラップを踏み抜いて進む)
●エロトラップなんかに絶対負けないし何なら蒸発させた
理性を蕩かすとは、何と甘美な響きであろうか。
箍を外し、本能のままに欲を滾らせるのは、とどのつまり気持ちが良い。
知的生命体とて動物なれば、その欲求に抗うことはできない。そう……。
「ウオオオオォォォォォ!!!!」
眼前の敵対者を圧倒的な力で叩き伏せたいという、征服本能には!
最終武装モードへど変型したウォーマシン、ヴェイル・ランカスター(自称エリート警備兵・f03879)を前に触手が何するものぞ!
伸ばされた先から、最終武装モードに搭載されたオート迎撃システムが作動。
迎撃用のビームで触手どもは瞬きの間に黒炭と化す。
床から突如飛び出す振動機能つきの快楽棒。マニピュレーターが反応し力任せに叩き折る!
えっちな気分になるポーション。そもそも機械の体なので効かない!
その他いろんなエロ災魔。勢い任せに撥ねたら普通に死んだ!
奥へ進むほどにヴェイルは苛烈さを増し、やがてトラップのスイッチを力任せに踏み砕いて作動装置そのものをオシャカにする豪快ささえ見せる。
(どうしてこうなった――!)
残ったわずかなヴェイルの理性が、哀愁を告げる。
そう、もともとヴェイルの希望はしんがりであった。
戦場においては最も危険な役割なれど、此度は女子たちがちょっぴりウフフな目に遭う様を特等席で眺めたい……などという下心があった。
途中で出会った水色の髪の子なんてもうめちゃくちゃ可愛かった。
美少女の[ワーオ]とか[小鳥の鳴く声]とか[小川のせせらぎ]やら見えちゃうかもしれない!
彼の期待は、立場を変えれば健全な男子としては至って正常なプログラム。
少年誌に許される範囲ぐらいの展開なら楽しんでいいよね、なんて期待していたのだが。
(トラップは俺がかかっちゃダメなのぉ!)
何の誤作動か【ベルセルクトリガー】を発動させたが運の尽き。
彼は今や、本能のままにあらゆるエロスの可能性を打ち砕く、健全なるアルダワ魔法学園の味方……ゴリラをも凌駕するパワーファイター!
「イヤアアアァァァァァッ!!!!」
トラップを踏み抜きながら迷宮に轟く、悲哀を込めたヴェイルの悲鳴は。
狂戦士と化した今、悪しきを経つ勇ましき猿叫にも似た響きを成すのだった……。
涙を拭け、ヴェイル。
結果として君の姿は女子たちの目にはカッコよく映るはずなのだから――!
一方、後方でヴェイルの戦いぶりにため息を漏らすのは、かの水色髪の女子。
「婦女子を脅かす下劣な罠を恐れず前に出るとは……何と感心な心意気!」
彼の心中が別の意味で紳士だったとも知らず、感心して頷くノエラ・ビュイヤール(碧水のマジックナイト・f09610)。
ヴェイルが手始めに敵を蹴散らしたはいいが、ここは入り組んだ迷宮。
脇道横道に、まだトラップや災魔がたんと残っている。
アルダワで在学生の支援を行ってきたノエラは、そんな脇道から襲い来る危険こそ入念に排除する必要ありと理解していた。
さて、そんなノエラはといえば騎士のような装いで、しかも名家のお嬢様。
――やっとまともに屈服させ甲斐のある娘が飛び込んできた!
喜び勇んでまず飛び込むのは服だけ溶かす系の生まれを持つスライムども。
……が。
「ふんっ!」
哀れ、【トリニティ・エンハンス】によってもたらされた炎の力の前に即蒸発。
ノエラが力を溜めただけでその気合が凄まじい熱気となって放たれたのだ。
服はおろか、その体も溶け落ちることさえままならぬ最期。
続けざま、スライムが服を溶かした瞬間の連携プレーを狙った触手たちとて。
「触手がなんぼのもんじゃいであります!!」
残った熱気に怯んだが運の尽き。
否、怯んでいなかったとて、ノエラの手から逃れることは能わなかっただろう。
力を溜めた彼女の集中力は研ぎ澄まされ、襲い来る触手を一本残らず鷲掴み。
「こうして、こうして、こうであります!」
見舞われるのは、幼い子供が行うにも似たしっちゃかめっちゃかな固結び。
原始的で無邪気な暴力に猟兵の力が合わされば、もはや見る目もあてられぬ効力。
固き力で結ばれた触手同士は、もはや死によってすら分かたれることはない。
触手は触手同士で結ばれているがいい!
「さあ次の獲物はどこでありますか!」
ノエラが猛々しく叫ぶ威嚇の咆哮が、迷宮の奥から響く狂戦士の(やや悲哀に満ちた)雄叫びと重なる。
「加減を知らない猟兵がどれほど恐ろしいか、身をもって思い知らせてやるであります!」
熱気に満ちたオーラを纏い、彼女が一歩を踏みしめる度、強大な圧が放たれる。
グヘヘヘとか影で笑っていた小鬼どもが、その気迫だけで泡を噴いて倒れこむ。
「正義は……卑劣な罠になど、絶対負けないのであります!」
平時であれば、何らかのよろしくないフラグにしか聞こえない宣言。
それも今日この場においては、それは絶対的な正義の誇示……勝利フラグなのである!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神威・くるる
絶対助平なことにならへんなら安心やんね
さぁさ猫ちゃんたち、一緒に探検行きまひょー
それにしても服だけ溶かすとかどういう構造なってるんやろなぁ?
そんなこと言うてる間に服だけ溶かす謎のスライムが!
ああ!なんてこと……
猫ちゃんの冬毛が夏毛に……!!
春というてもまだまだ寒の戻りで寒い夜もあるいうのに、なんて酷い……
猫ちゃん、仇はとったるさかいな
とか言うてる間に
今度は触手が……!
ああ、触手がうねうねと……
猫ちゃんをじゃらしてる……!!
うちの振る猫じゃらしより楽しそうやなんて……
なんてテクニック……なんて酷い……
なんて恐ろしいダンジョン……!
(罠は第六感とかで避けて進みます)
星羅・羽織
アドリブとか、なにやってもOK!
エロトラップ?
大丈夫。私、ぬるぬるダンジョンも、余裕で、クリアした。
そういう、ダンジョンは、実際、力で、なんでも解決可能。
圧倒的、パワーが、力。叩き込んで、あげる。
特に、まとめて、攻撃するの、得意だから。
通路を、ダッシュしながら、【範囲攻撃】と、【二回攻撃】と、【高速詠唱】を乗せた、コズミック・アローで、蹂躙する。
悪意は、すべて、ぶっ壊し。
そして、私は、かっこよし(どややん)
突撃、突撃!
エロい展開になんか、絶対に、ならない。
くっ、ころ。
●エロトラップなんかに絶対負けないし猫ちゃんは今日も可愛い
猟兵たちの力があればエロい目になんて絶対遭いっこない。
ならば猫ちゃんたちを引き連れて探検に赴いたとてまるで問題はないのである!
結論づけた神威・くるる(神の威を狩る黒猫・f01129)は、多数の黒猫を伴って歩く。
【黒猫の手も借りたい(ヘルプミー・ア・キャット)】によって喚び出された立派な仲間なれど、やはり見た目は完全にただの猫ちゃん。
とても女子の敵なトラップに満ちたダンジョンとは思えないほのぼのした道行。
だがそんな彼女にも、悪意は容赦無く牙を剥く。
壁の隙間から染み出した緑色の半透明……彼奴の名は、服だけを溶かすスライム。
どこに秘められてるのかもわからぬ推進力で跳躍し、くるるへ襲いかかる――!
「いやああああぁぁッ!!」
迷宮に響き渡る悲鳴を聞きつけ、星満つる夜にも似た影が走る。
星羅・羽織(星空に願いを・f00376)が、誰よりも疾く、くるるの元へ駆けつけた。
「そんな……!」
到着した羽織が思わず口元を覆ってしまったのも無理はない。
「これは、なんて、惨い……」
訪れたのは、スライムに呑まれる最悪の結末。
つまり……。
「猫ちゃんたちの冬毛が、見事な夏毛になってもうた……!!」
普通にスライムを回避していたくるるもまた、引きしぼるような声を漏らす。
そう、服だけを溶かすスライムに、呑まれたのである。
……猫ちゃん達が!
結果、フサフサだった黒い毛並みは軒並み短く涼やかなスタイルに。
これではフサフサの毛並みに顔を埋めての猫吸いがままならない。
しかも、今はまだ寒の戻りで厳しい冷え込みの夜も多い時期。
これでは猫ちゃん達が寒い夜にたまに震えてしまうことになるではないか……!
許されざる鬼畜の所業、羽織も怒りを滾らせる。
「エロトラップ、絶対に、許せない……!」
かくなる上は、これ以上悲劇を生まぬよう、先にトラップを排除するほかない。
一も二もなく、羽織が先んじて突撃を開始する。
なおスライムはというと、シッシッあっち行っときとくるるが軽く手首をスナップさせたところ、その風圧だけで軽く消し飛んだ。
いざ突撃した羽織の目に、次々と飛び込んでくるエロトラップの数々。
通路の壁から天井まで、あれよあれよと悪意の塊。
されど躊躇なく地を蹴り、羽織が駆ける。
レンガを突き破り現れた肉の壁がその肢体を捉えようとすれば。
「事務所、NG!」
連続発射された【コズミック・アロー】で、塵一つ残さず無へと帰す。
天井から大量のぬるぬるローションが流れてこようと。
「柔軟剤、つけて、出直して!」
再度の斉射でぬるぬるなど意味を為さぬ、星の彼方の世界へご案内。
小部屋に、グヘヘと笑ってヨダレを垂らすだけでだけでそれっぽい雰囲気になる小鬼ズあらば。
「くっ、ころ」
くっころ……そう、それはかつて女傑が言い残したとされる著名な言葉。
敵への挑発として放たれる「クックックッ……殺してやるよ」という殺害予告を戦いの最中で効率よく吐き出すために考案された略語である。
羽織の月面宙返りと共に上方より降らせた矢雨の餌食、笑みはおろか悲鳴ひとつの暇もなしに小鬼への殺害予告が完遂される。
エロトラップ、組し易し。
エロスとはすなわち肉の快楽、物質的快感……宇宙の力の前では、無力同然!
「悪意は、すべて、ぶっ壊し。そして、私は、かっこよし」
羽織がどややんと得意満面な笑みと共にポーズを決めるだけで物陰に隠れ潜んでいた残りの小鬼が爆散するのは有名な話である。
ひとしきり視界に入ったトラップを破壊し尽くし、一息かと思った、その瞬間。
「いやああああぁぁッ!!」
駆け抜けた後方より、再び響き渡る悲鳴。
くるるのものに間違いないと確信し、可及的速やかに羽織が音源を辿る。
……だが、すべてはもう、手遅れだった。
「ああっ、触手が……触手がぁ!」
くるるの悲鳴が、全てを物語る。
「そんな。間に合わ、なかった……」
目を背けたくなるほどの光景に、羽織が力なく項垂れる。
そう。全てはもはや、不意を打って現れた触手どもの思うまま。
「触手が……猫ちゃんたちを……!!」
余裕の達成値で触手を避け切っていたくるるが、その場で崩れ落ちる。
そう。触手が猫じゃらしを巻き取り……。
うねうねと動きながら、猫ちゃん達をじゃらしている!
夏毛で身軽になった猫ちゃん達は、激しい動きで猫じゃらしを追うのに無我夢中。
「うちの振る猫じゃらしより楽しそうやなんて……何てテクニック……何て酷い……!」
「飼い主の、威厳を、奪う……おそろしい、罠……!」
およよと涙を流すくるる、あまりに人の道を外れた罠に顔を覆う羽織。
くるるが膝から崩れ落ちた拍子に頭上スレスレを感度3000倍魔法弾が飛んでいったりもしたが、猫ちゃん事変の前では些事である。
しかも猫じゃらしにじゃれつき続ける猫ちゃん達はあまりに愛らしく。
いつまでも眺めていたくなってしまい、まるで手出しができない!
まさしく迷宮の真髄、全ての探索者を恐怖に陥れる禍々しき罠。
二人はもはやただ、猫ちゃん達の可愛さに立ち尽くすしかままならないのだった……。
ちなみに触手は猫ちゃんの前足が掠った瞬間、肉片ひとつ残さずに消滅した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ダンド・スフィダンテ
なるほど、ここがエロトラップダンジョン……まぁ強姦はマジでダメな事だからな。徹底的に破壊して更地にする意気込みで行こう。
(触手に拐われる小ドラゴン)アンブロジウス!?(スライムと触手の群れに消えていく姿!それを追いかけ群れの中に入る!)
せいやっ!(ユーベルコード使用。拳も武器扱い!!四散!)は?うちの娘になにしてくれてるんだ?(拳を鳴らす親バカ。いやそもそも娘を連れてくるなこんな場所に。武器だから仕方ないんだけど。)
まぁな、貴殿らにも、生活があるからな……生きていく為に仕方ない事も有るよな、うん……悲しい事だ。(再び連れてかれるアンちゃん。)だから!娘に手を!(以下略!いっぱい殲滅します!)
●エロトラップなんかに絶対負けないしあまつさえ拳一つでスッ飛ばした
ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)は、眉間に皺を寄せていた。
「アンブロジウスの教育に悪そうな罠ばかりだな……早急に片付けねば」
彼の肩に乗るのは娘とまで呼んで彼が可愛がる小さな赤い竜、アンブロジウス。
斯様な存在があればこそ……否、なくてもこんなダンジョンは騎士として許せぬ存在。
いざ意気込み一歩を踏み出した途端……ふと、ダンドの肩が軽くなる。
「アンブロジウス!?」
横合いの天井から伸びた触手が小さな竜を絡め取り、攫っていったのだ。
見れば通路にひしめく無数の触手、足元を埋めんばかりのスライムの群れ。
「おい」
ひとつの躊躇もなく飛び込んだダンドの足が、重々しく一体のスライムを踏み抜く。
飛散、そして蒸発。
「うちの娘に、何してくれてるんだ……?」
バキリ、ボキリと拳を鳴らすダンドの姿に。
その瞬間、視覚を持たぬはずの触手たちは、修羅の姿を見たという……。
「……徹底的に、破壊してくれるッ!」
【殲滅】……敵の数が多ければ多いほど威力を増す、ダンドの絶技。
愛娘のためならば父の拳は、あらゆる悪意を粉々にする最強の武器と化す。
群れなして侵入者を縛り上げるが基本の触手が相手ともなれば、南無三南無三。
「そもそも強姦はマジでダメだから! 何考えて作ったんだこんなダンジョン!!」
あまりにも真っ当すぎる倫理観から振るわれた拳が触手という触手を粉砕する。
敵群相手に威力を増した拳圧は、もののついでで服溶かしスライムをも消しとばす!
ところですぐ救出されたアンブロジウスはスライムの雫一つ浴びていなかったし、何なら軽く尻尾をしならせた衝撃で数体を消しとばしていた。
無情なるかな彼女はドラゴンランス、大暴れを続けるダンドの立派な刃なのである。
「うちの娘に狼藉を働こうとしたのはこいつか! こいつかッ!!」
……親バカパワーと拳だけでトラップというトラップを撃滅しているダンドを見ていると、この場においてはいっそ槍を使うまでもなさそうな勢いだが。
ショットガンすら目ではない拳は、肉塊を残すなどという生易しい威力ならず。
たちまち通路は最初から何もなかったかのような更地と化していった。
「まったく……不潔極まりない場所だ。アンブロジウス、帰ったらしっかりお風呂に……アンブロジウス?」
愛しい娘を抱き上げようとしてみたが、気づけばその姿はない。
耳をすませば、近くの小部屋からあんぎゃーと聞き慣れたアンちゃんの鳴き声。
ダンドが部屋へ飛び込めば、ウェルカムトゥようこそエロトラップルーム。
ぬるぬるする床、毎度おなじみどこにでも触手、落とし穴の先の[自主規制]。
翼で浮いてるので、やっぱりアンブロジウスはピンピンしているのだが。
「――うちの! 娘に!」
万一さえ許さず、我が子を想う父の力は何よりも強く。
「何してくれとんじゃあ!!」
天丼という絶対の法則を前に、エロトラップに勝機はないのであった……。
成功
🔵🔵🔴
チェイザレッザ・ラローシャ
へぇー、ダンジョン掃除?
任せてよ、あたし掃除得意よ。
ええ、比喩とかではなくて、こういうやつの掃除がね。
【SPD】
てことで、やるかぁ!
たまにはデスペラードにも休みあげないとね!
見ろよー、この対UDC及び広域殲滅用コードレス掃除機型ブラスター、その名もVenus!
うちの組織の武器開発はっちゃけ組の試行を重ねた結果、アホ火力なのに軽量化に成功した逸品!
最早こんなに軽いのにそこら一体やけ野原にできるとか思えない!
こいつで全部焼却消毒してってやるわ、っふふふ、あーっはははははは!!
え?ブラスターで対処しきれなかったやつ?
平気よ、素手でネジ切るわ。
スライムでも何でもかかってきなさい!!
※アドリブ、他歓迎!
●エロトラップなんかに絶対負けないし全部まとめて焼却した
迷宮内のすべてが、今や一人の女に釘付けだった。
風吹かぬ迷宮にあっても一歩を踏みしめるだけでなびく、濡れ鴉の黒に染め上げた髪。
眼鏡の奥に光る激情を秘めた瞳、みずみずしい果実のような潤いを宿した唇。
傷ひとつない珠のような柔肌に、なだらかで扇情的な曲線を描く肢体。
そして――飾り立てるまでもなく、豊満なバスト!
魅力的な体つきのみならず、いかにも気が強そうであるのがまた良い。
――ああ、事ここに至って、ようやく嬲り甲斐のある女が現れた!
触手にスライム、媚薬矢その他意思なき罠さえ悪意に喚ばれて牙を剝く。
我先にと触手の一本が突出し、風切り音を伴って女を蹂躙せんと襲いかかり。
黒炭と、化した。
「……見ろよー、この対UDC及び広域殲滅用コードレス掃除機型ブラスター、その名もVenus!」
掃除機のような形状の兵器を手にしたまま、女が人好きのする満面の笑みを浮かべる。
女は、名をチェイザレッザ・ラローシャ(落霞紅・f14029)という。
「特殊回転動力炉の導入によりかつてないエネルギー効率、軽量化、高火力、三つのKを実現した逸品!」
セールストークを思わせる軽妙な口調で紹介されるのは、その手に持たれた品。
彼女が平素主力とするUDCとは異なり、ただ灼き尽くし、滅却するための兵器。
「こんなに軽いのに辺り一帯焼け野原にできるなんて思えない! 思えないでしょう?」
高揚で頬を染め上げ……女が、エロトラップどもへ、銃口を向ける。
「だからここからは、実演の時間よ」
チェイザレッザ・ラローシャ。得意分野は、掃除。
四角い部屋あらば、丸く包囲殲滅、のち角の角まで徹底的に。
無論、事ここにおいて〝掃除〟という単語の意味するところは……。
「さあ、全部まとめて焼却消毒よ……っふふふ、あーっはははははは!!」
キラリと眼鏡を煌めかせ、艶めく唇からダンピール特有の牙をのぞかせ、魔王もかくやという高笑いを迷宮中に響かせながら。
引き金が、引かれた。
たちまち放たれる金星の炎……蒸発するスライムに媚薬、消し炭となる触手。
発動する前にオーバーヒートでオシャカになる、エロトラップ起動装置!
だがやられたままではおれぬと、彼女の背後から伸びる一本の触手。
白い手首を見事に巻き取り、いざや屈辱を味わわせる時。
……の、はずだった。
不意打ちからのアレやソレはこの手のダンジョンにおいて、一種のお約束。
なれどチェイザレッザが回避を行わなかったのは、油断でも慢心でもない。
そも、想定済みの自体であり、不意を突かれてすらいない。
「邪魔よ」
単純明快、圧倒的実力差による余裕。
手首に巻きついた触手が文字通り片手間で捻じ切られ、雑に投げ捨てられる。
蹂躙するは、我にあり。
……金星[ヴィーナス]の熱に呑まれ、灼き尽くされる寸前。
エロトラップにエロ災魔、迷宮にひしめく有象無象は理解した。
赫々たる紅蓮の向こうにあってなお、魅惑的なシルエットを浮かべるあの女は。
断じて単なる性[エロス」の担い手などではなく。
この迷宮に、死[タナトス]を運びに来た、死神なのだと――。
成功
🔵🔵🔴
セリオス・アリス
エリシャ(女将)◆f02565と
叩き潰すんだよっしゃ任せろ
女将じゃねえか
見知った顔をじっと見つめ
…ホントに大丈夫かぁ?
首を傾げる
大丈夫っつーなら
どっちが多く狩れるか勝負しねぇ?
『歌』で身体強化
あんま近寄りすぎっと酷い目に合うからな
斬撃による『衝撃派』を飛ばして触手を切り刻む
盾にされたら拳に炎の『属性』を込めて『咄嗟の一撃』
引きちぎる
おいコラ危ないだろうが!
…か弱い?
いややっぱ強いだろ
ちまちまやってたんじゃ負けちまう
【囀ずる籠の鳥】でおびき寄せて一気にカタをつけてやる!
炎の闘気を剣に乗せて斬撃と共にぶっ放す
戦いが終わったら女将にドヤっと
どーだ!俺の方が多いだろ
死体…?
死体は…全部燃やしたからない
千桜・エリシャ
セリオスさん(f09573)と
あら、奇遇ですわね
なんですの…その顔は…
大丈夫に決まっていますわ!私を誰だと思っていますの?
いいでしょう
その勝負受けて差し上げます
首がない敵ばかりで退屈しそうだったのですもの
願ったり叶ったりですわ
二回攻撃ですぱすぱと軽快に切り刻んでいきましょう
見切りで回避しますが
なんかヤバそうなのが来たらセリオスさんを盾にしますわ
きゃっ!危なかった…えっ?だって私か弱いのですもの
賛辞は嬉しいですが、私だって負けられませんわ
傾世桜花で魅了して同士討ちさせましょう
ふふ、愚かに醜くその身を潰し合いなさい
全て燃やし尽くしたドヤ顔に呆れ顔を
ちょっと…それじゃ数がわからないではありませんの…
●エロトラップなんかに絶対負けないし眼中にも入れず切磋琢磨する
「女将じゃねえか」
一目もくれず背後の触手を斬り伏せながら、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)が見知った後ろ姿へと声を掛ける。
桜の香りを伴って振り返るのは、千桜・エリシャ(春宵・f02565)。
「あら、奇遇ですわね……って、何ですの、その顔は」
「……ホントに大丈夫かぁ?」
なにしろ場所が場所、恥辱の坩堝とでも呼ぶべき下劣なる迷宮。
並外れた美貌の持ち主であるエリシャのことを危惧するのも当然のこと。
「大丈夫に決まっていますわ! 私を誰だと思っていますの?」
「ふーん。大丈夫っつーなら……どっちが多く狩れるか、勝負しねえ?」
子供のように頬を膨らますエリシャに対し、セリオスが通路の先を示す。
見ればひしめきひしめく小鬼の災魔、服溶けスライムに四方八方触手の群れ。
他の猟兵たちにも散々コテンパンにされたからだろうか。
せめて一矢報いんと、もはや階層中の陵辱要員どもが総出で押し寄せてきている。
「いいでしょう。その勝負受けて差し上げます……首がない敵ばかりで退屈しそうだったのですもの」
一歩二歩、軽やかに前へ……襲い来る触手を眼前にしても余裕を崩すことなく。
それはまるで、花びらが一輪舞うように。
柔らかに、音すら立てず、エリシャの放った剣閃が宙に舞った。
花を一輪手折るより容易く全てが両断され、悪意は一つとして柔肌に届かない。
続けざま、迷宮内に響き渡る玲瓏なる歌声はセリオスのものだ。
ぬばたまの髪、サファイアを思わせる透き通った瞳……。
セリオスもまた美女と見紛う容姿の持ち主。
なればスライムは飛び込み触手は伸び、淫らなる属性を付与する魔法陣も張り切る!
されど悲鳴はなく、響き続けるはただ【囀ずる籠の鳥(レイド・セレナーデ)】のみ。
歌声による身体強化をもって放たれた斬撃は、邪心が己に近づくことを許さない。
(うへえ、本当にろくでもねぇのばっか)
なるべくあれらに近づきたくないという思いも強いがゆえの遠距離攻撃。
何者も触れること能わず、休符をもたらすこと能わず。
……ただ一人だけ、歌声を止めることができるものがあるとすれば。
そう、あれは……次々斬り落とされる触手を見かねて飛び出すあれは。
太くて逞しい、マジェスティック触手!
ありとあらゆる[自主規制]テクニックを網羅した触手だけが進化する特殊形態。
当然、その戦闘力も陵辱力も、通常の触手の比ではない。
前衛のエリシャ目掛け、マジェステイック触手が凄まじい速度で伸びてゆく!
「きゃっ、セリオスさん!」
「んなッ!?」
か細い悲鳴からは想像もつかぬ力で、強引にセリオスを盾とするエリシャ。
目と鼻の先まで伸びてきた嫌すぎる物体を前に、セリオスも咄嗟の判断。
歌声もなく、炎を纏わせた手であっさり乱雑に引きちぎり、投げ捨てる。
さらばマジェスティック触手、君のことはあと一行ぐらいは忘れない。
……そう、あえて繰り返すなら。
セリオスの歌声を止めることができる者は、この場においてただ一人。
エリシャぐらいなものである。
「おいコラ危ないだろうが! 俺が捕まってたらどうする!?」
「えっ? だって私、か弱い乙女ですもの。あんな卑陋な物に寄られたくないですわ」
「か弱い」
思わず復唱し、辿ってきた道を振り返るセリオス。
無惨に切り刻まれた触手に災魔、見る影もなく瓦礫と化したトラップの山。
「か弱い……?」
「賛辞と受け取っておきますわ。さて……」
あのナントカ触手まで倒れてしまった今、残党どもも全力だ。
一本の矢は貧弱とて、三本束ねれば折れぬ力……何しろ相手は甚だ美しき乙女。
今こそエロトラップどもの力を結束し、限界を超えて辱める時ぞ!
……しかし、悲しいかな。
何本矢を束ねて放ったところで、遥か高嶺の花に届く道理など、ありはしないのだ。
「——蕩けて、溺れて、夢の涯」
薄汚れた者たちが押し寄せる醜悪なる迷宮に、不似合いな花弁が舞う。
指先で撫ぜるように、桜の花が、下賤なる災魔たちの頬に触れた。
——転瞬、災魔たちの矛先が転ずる。
下品な笑みはどこへやら、小鬼たちは情欲を打ち捨て、触手の群れに斬りかかる。
【傾世桜花(コノハナ・メロウ)】。
それは肉欲をも超越する、甘美なる誘惑。
傾世の毒に蝕まれ、醜き者どもは、互いに潰し合うのみ。
高嶺の花は、桜色の唇を優雅に吊り上げ、事の成り行きを見届ける。
「ふふ……愚かに醜く、その身を潰し合いなさい」
「えげつな……」
迷宮ひとつを堕とすほどの誘惑を間近で目にしながら、セリオスが呟く。
「あら、乙女に対して失礼ではなくて?」
「乙女はそんな悪女みたいな戦法取らねぇよ!」
とはいえエリシャの技は効果覿面、ちまちまやっていたのでは負けてしまう。
出し惜しみは無用と、セリオスもまた敵群の前へと躍り出る。
「一気にカタをつけてやる……」
純白の剣に炎の闘気を纏わせれば、描く剣閃は紅蓮。
低く構えた剣が、秒を、刹那を数えるごとにその温度を増してゆく。
階層中にさえ満ち満ちんとするほどの熱気を、剣先だけに集中させ。
「……炭一つ残さずになッ!!」
振り抜くと同時に、解放。
斬撃と共に放たれた紅炎が如し熱が、眼前に広がる総てを呑み込んでゆく。
——あとは野とも山ともならず、何も残らず。
すなわち有言実行、消し炭さえ残さぬまっさらな通路が、眼前に広がるのみ。
「どーだ女将、俺の方が多くやったろ!」
「ええ、大した威力ですわね。……それで、何体やったか数えましたの?」
「えっ? ……死体全部燃やしたからわからない……」
「ちょっと、それじゃ数がわからないではありませんの……」
醜悪が焼き尽くされれば、あとはそこに繚乱を残すのみ。
脅威など何もなかったかのように、平素通りのやり取りを交わす二人であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
多々羅・赤銅
へーつまりこれはか弱いエロトラップダンジョン
か弱いと思うと何もかんも可愛いもんよな
しかしただ壊すのも味気ねえなー、どうせお前らここで潰される運命だからなあ。私くらいちょっと語らってもまあ良いだろ?
こーゆー時は安酒が良いんだ!酒を災魔に注ぎ注ぎフレンドリーに災魔を集めてこーな!
触手溜まりも見慣れれば文字通りタコ踊りみたいだぞ。タコ見酒。
なに?お前らやっぱ柔肌がすき?わかるわ〜赤ん坊のぷにぷにとか最高だよな〜あ、タコの刺身食いたい。此処にいるとお前らタコとか食わないだろ。美味いぞ?(エロくない話で仲良くなる)
空瓶ふりふり楽しく遊び
災魔やスライムを集めた所で
酒瓶羅刹旋風一撃必殺
楽しかったわ
次行くかぁ
●エロトラップなんかに絶対負けないしいっそのこと打ち解ける
もうやだおうちかえる。いやこの迷宮がおうちじゃん。
純粋すぎる力技でアイデンティティを打ち壊されたエロトラップたち。
もはや威勢よく陵辱ヒャッハーに飛び出す気力など完全に失いきっていた。
「よう」
そんな彼らに快活に声をかける、紅梅の熱情に浅葱の清涼を入り混ぜた髪の女。
名を、多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)という。
再び猟兵と出会った以上、ああ年貢の納め時かと、エロトラップ達が諦念を抱き――。
数分後。
赤銅とエロトラップたちによる賑やかな酒宴が、迷宮ど真ん中でおっ始まっていた。
「やっぱ知らぬ仲が語り合うときは安酒に限るよなー!」
猟兵相手に雑兵同然、か弱い存在と思えば可愛く思えてくるとは赤銅の弁。
犯すばかりが能の小鬼災魔も今やすっかり嬉し恥ずかしほろ酔い気分。
どこから飲んでるのか謎だが触手もスライムも大いに振舞われた酒を楽しんでいた。
酒を酌み交わせば、言葉なくとも意思でニュアンスは大体伝わるもので。
「そっかーたまにしか出番ないから潰されて悔しいのかー」
そうだそうだと憤慨の意を激しく振動して示す謎の快楽棒。
猟兵たちに与えられた恐怖はもはや無機物にも感情を与えるレベルだったらしい。
「でも意外とこういうの珍しくないぞ? あたしも住んでるとこでホニャララしないと出られない部屋とか閉じ込められたことあるしなー」
え……それで今ここにいるってことは、ホニャララして出たってこと!? キャー!
などといった調子で顔……顔? を赤らめる触手たち。
なにしろここは発見されたばかりのダンジョン。
実のところほとんどの触手たちは未経験のウブな連中だったのである。
まあ赤銅の語るホニャララは実際のところそんなにホニャララでもなかったのだが。
「でも柔肌好きなのはわかるわー。赤ん坊のプニプニ肌とか最高だよな~あ」
えー、赤ん坊ー!? 触ったことなーい!
エロがアイデンティティなのにエロと関係なしに可愛いものに興味を示し出す始末。
「ここいるとタコの刺身食べたくなるなー。タコ刺し食べたことある?」
ノンノン、一斉に否の意を示す触手にスライム。
「へーマジでー、触手もスライムも主食は意外とヘルシーな感じなの? 意っ外ーー」
歌って踊って飲んで楽しく騒げ、ひとたび酌み交わせば皆同胞。
飲んで明かしてまた飲んで、いかなる上戸も良き哉良き哉。
泣いて笑って時に怒って、もひとつ笑って羅刹旋風。
エロトラップたちは死んだ。
「いやー、楽しかったわあ」
酒杯を傾けるよりも軽やかに自然に、赤銅は酒瓶を得物に全てを一掃していた。
別に騙したわけではない。
本気で彼らと語らいたかったし、本気で彼らを潰すつもりだった。
彼女はただどこまでも酒好きで、祭り好きで、羅刹で、多々羅赤銅だった。
祭りの後にはいつも静けき寂寥。
女は煙草を咥え、酒気に満ちた肺に火を焼べる。
「次行くかぁ」
あとには赤銅鬼の足音ひとつが響くばかり。
もはや誰一人として、この階層で陵辱の憂き目に遭うことなし。
第一階層、これにて一件落着。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『あれトラップダンジョン』
|
POW : 壁はぶち破るもの、床は掘り抜くもの。筋肉は全てを解決する。
SPD : 罠回避!罠外し!当らなければどうということはない!
WIZ : 仕掛けを見破れ、魔力を感じろ。頭脳の力で乗り越えろ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
次なる階層へ進んだ猟兵たちを、新たなトラップが待ち受ける。
先の階層よりもさらに胸がドキドキ、危険な罠の数々。
即ち……。
侵入者にひとたび巻きつけば絶命まで締め上げる強靭なる触手!
生物を骨の髄まで溶かし尽くす強酸性スライム!
感度を30000倍にして対象を一瞬でショック死させる魔弾!
鈍器とパワーで殴って殺すゴリラ災魔!
その他いろいろ殺意MAXの凶悪トラップ!!
だが猟兵である君たちならば、真正面からの力技でもこれを砕けるはずだ!
無論、望むなら技巧工夫、智謀知略を凝らすも一興……それもまた〝力〟だ。
力には力を、殺意には殺意を……いざ迷わず迷宮を突き進め!
……えっちな触手? 服だけ溶かすスライム?
イヤだなあ……侵入者を拒む迷宮の深層ににそんなふざけたトラップあるわけないじゃないか……。
セリオス・アリス
女将◆f02565と
勝敗でもめながら奥へ
こうなったら別の勝負を…
お、イイじゃねえか
まあ次も俺が勝つけどな!
【望みを叶える呪い歌】で速度を上げ
まずは風の属性を込めた剣で2回斬る
女将も中々やるじゃねえか!
言いながらゴリラの拳を
靴に風の魔力を送り
蹴りと共に旋風を炸裂させて相殺
しかし羅刹っても
あんな細っこいのになぁ
強くてイイ女なのは確かだけど…
色々思う言葉は全部省略し
伝える言葉は
やっぱゴリラだよなぁ
あ!?どう見ても俺はゴリラより強いだろうが!
つうかか弱い乙女はゴリラの拳を止めたりしねえんだよ!
ゴリラっていう方がゴリラなんだぞ!
…ッ!飯抜きは卑怯―
って、うるせえ邪魔すんなゴリラ!
胴を一閃言い合いを続ける
千桜・エリシャ
セリオスさん(f09573)
あら、今度は普通のダンジョンのようですわね
丁度よく向かってくるゴリラ炎魔二体
ではあいつらを先に倒した方が勝ちというのはどうかしら?
ふふ、今度こそ負けませんわ!
怪力で挑戦的に受け太刀
跳ね返してからの剣戟をお見舞い
私だって羅刹ですから力には自信がありますのよ
ちょっと…誰がゴリラですって?
こんなむくつけき獣と一緒にしないでいただけます!?
私はか弱い乙女!
あなたの方がゴリラですわ!ゴリラ!ゴリラ!
ゴリラと張り合うなんてオツムもゴリラじゃありませんの!
次ゴリラって言ったら夕飯抜きですからね!
って、
そっちのゴリラは黙っててくださいまし!
(炎魔の首を一閃してから言い争いを続ける)
●ゴリラなんかに絶対ゴリラゴリラ
「絶対俺が勝ってた! ちゃんと数えてなかったけど、最後のだけで数十体はいた!」
「ですから、そもそもセリオスさんの大技が当たったのは私の魅了あってのことで……」
セリオス・アリスと千桜・エリシャ。
二人は前階層での撃破数競争における勝敗の議論をいまだに続けていた。
いくぶん薄暗くなった迷宮の中で言い争いながらも的確に罠を見切り、回避するのは歴戦の勘の為せる業か。
だが燭台に照らされる小さな広間へ辿り着けば、流石に足を止めざるを得ない。
なぜなら、広間の奥に門番とばかりに並び立つふたつの影。
筋骨隆々としたゴリラ災魔が二体、巨大な鉄槌を手に待ち構えていたのだから。
「あら、ちょうどいいところに」
が……足を止めた理由は警戒、戦慄の類ではない。
「あいつらを先に倒した方が勝ち、というのはどうかしら?」
並のアルダワ学生なら震え上がりかねない敵を前に、涼しい表情で提案するエリシャ。
「お、イイじゃねえか……ま、次も俺が勝つけどな!」
「ちょっと、先の勝負の結果を捏造しないでくださいませ」
二つ返事でやはりセリオスもまた、当然の如く勝負を受ける。
――ウホオオオォォォッ!!
激しいドラミングの後、広間に踏み入った侵入者目掛け、ゴリラ災魔が特攻!
まずはエリシャを叩き潰さんと、鉄槌が勢いよく振り下ろされ。
そして、ぴたりと止まった。
否……エリシャが構えた大太刀の刀身にとって、止められたのだ。
「細腕と侮らないでくださいませ。真正面からの力押しとて、望むところですわ」
赤子もあやされそうな甘い声で、しかし不敵な言葉が紡がれる。
まともにぶつかり合ったというのに、大太刀の刀身は刃こぼれ一つ起こしていない。
どころか、災魔の振るった槌の方こそ、刀と鍔競り合った部分が削れ落ちていた。
同時に、エリシャの髪を舞い上げるのは、セリオスが起こす風。
【望みを叶える呪い歌(アズ・アイ・ウィッシュ)】により、それこそ鼻歌まじりに振り下ろされる鉄槌を避けざま、目にも止まらぬ二連斬撃。
痛みに怒り狂うゴリラ災魔が間髪入れず拳を叩きつけんとすれば、靴に込めた風の魔力でそれを蹴り返し、巨大な拳は災魔自身の顎にクリーンヒット。
華麗に翻弄しながらも、セリオスもまたエリシャに負けじと力を示す。
(それにしても)
ふと、セリオスの視線が災魔と唾競り合うエリシャへと向いた。
あれほどか細い肉体に、白磁にも似た肌……柄を握る白魚のような指先。
まったく、どこから怪力が発揮されているのか知れない。
あれが羅刹という種族かと、間近で戦いぶりを目にするたび実感する。
命の奪い合いが最中にあっても愉しげに上がる、自信に満ちた口唇。
猛るほどに美しい横顔は、見惚れそうになるほど。
(強くてイイ女なのは、確かだけど)
花弁よりも優雅に柔らかな振る舞いで、剛撃を真っ向から受け止める。
嫋やかと呼ぶにはあまりに雄々しいその生き様は……。
「やっぱゴリラだよなぁ」
激しく金属音の響く中、ぴくりとエリシャの地獄耳がその言葉を聞き届けた。
「ちょっと……誰がゴリラですって?」
渡り合っていたゴリラをずいと押し退け、エリシャがセリオスへと歩み寄る。
悲しいかな、男というのは本心を心に秘め言葉に出そうとしないもの。
心中を言えば桜色の笑顔を賜れように、引き出せしは真っ赤な憤怒。
「こんなむくつけき獣と一緒にしないでいただけます!? 私はか弱い乙女!」
〝こんな〟呼ばわりされたゴリラ災魔がちょっぴりショックを受けていた。
「か弱い乙女はゴリラの攻撃を余裕で受け止めたりしねぇんだよ!」
「あなたなんて武器すら使わず蹴りでしょう!? あなたの方がゴリラですわ!」
「言ったな!? ゴリラっていう方がゴリラなんだぞ!」
「何を幼児みたいなことを、ゴリラ! ゴリラ!」
「ふざけんな、どう見ても俺はゴリラより強いだろうが!!」
え、そこなの?
両者の剣幕に圧倒されながら、放置されたゴリラ災魔たちが顔を見合わせる。
「あーらゴリラと張り合うなんてオツムもゴリラじゃありませんの!」
「お前こそ望むところとか言ってゴリラと張り合ってただろ!」
「ふーんだ、次ゴリラって言ったら夕飯抜きですからね!」
「……ッ! 飯抜きは卑怯だぞ、今日もさんざん……」
あれ、よく見たらこの二人、隙だらけなんじゃない?
ようやく気づいたゴリラ災魔たちが、ゆっくり得物を振り上げ。
咆哮と共に、言い争う二人の背後から会心の一撃を――
「「そっちのゴリラはすっこんで/ろ/ください!!」」
見舞うより前に、寸分違わぬタイミングで放たれる双つの斬撃。
片やゴリラ災魔の胴を、豆腐に包丁を入れるかのようにするりと裂き。
片やゴリラ災魔の首を、血飛沫さえ舞わせぬ鮮やかな切り口で落とす。
両者の実力をもってすれば、この程度は隙にすらならぬと、太刀筋で語る。
「……今日もさんざん運動してるから絶対かなり腹減るだろうが!」
エリシャの手向けた【散華繚乱(スカーレット・リッパー)】が咲かせた紅い花が舞い落ちると共に、重々しく崩れ落ちる死体の音。
それをゴングに、再開する口喧嘩。
「あーらそうですか、でもゴリラの作る夕飯なんて食べたくないでしょう?」
「ッ……汚い言い方しやがってこのゴリ……」
「むっ!」
「……五里霧中になるだろこんな言い争い続けてたら!」
「言い逃れが苦しいですわよ!!」
ゴリラゴリラ、ゴリゴリラ。
諤々と、文字に起こせばゲシュタルト崩壊を起こしそうな争いは止むことなく。
斯くがごとき調子を絶やさぬまま、二人は危険な迷宮を正面突破していったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルク・フッシー
ーーー魔法学園2年生L君(仮名・当時14歳)へのインタビュー記録ーーー
…は、はい。ぼ…ボクも、確かに、行ったんです…あの、迷宮に…
でも、その…色々あって、出遅れてしまったみたいで……
…はい。ボクが着いた時には、その、ほ、本当に…何も、無かったです。焦げ跡とか、破片とか…そういうのも、全く…何も…
ただ…耳をすましてみると、迷宮の奥の方から…かすかに、悲鳴のような…声?声…だったんでしょうか…とにかく、そっちに行ってみたんです…
そ、そ、そこでは…りょ、『猟兵が、迷宮を、襲ってました』…!
あんなの、戦いじゃない…蹂躙、いや、陵辱でした…
……うわあああ!!わああああああ!!
(記録はここで途切れている)
●ルクがみている part1
幾分出遅れて迷宮に突入した少年……ルク・フッシー(ただの少年猟兵・f14346)が一階層で目にしたのは、無であった。
侵入者を陵辱する罠は影も形もなく、道行きは朝の公園の散歩より安全。
先に行った猟兵たちが跡形もさえ残さなかったのだと、少年は戦慄する。
そして続く第二階層。
少年がはじめに目にしたのは、二人の美しいひと。
片や桜花を思わせる美女、片や美女と見紛う夜色の髪をなびかす男性。
(うわあ、綺麗な人たち……絵に描いてみたいです……)
目を輝かせながら影から様子を見守り、そんなことを思ったのも束の間。
たちまち始まるゴリラとの正面衝突、そしてゴリラを眼中に入れぬ喧嘩。
(ひいっ、なんだか思ってたのと違う!?)
ゴリラゴリラの言い合いの末、ゴリラを上回るパワーでゴリラを一刀両断。
骸となった災魔に目もくれず、二人の猟兵は迷宮の奥へと進んでゆく。
「違う……あの人たちは、ゴリラなんかじゃない……」
少年は、知った。
人は見た目だけで判断できないのだと。
「ゴリラより……全然怖い……!!」
眉目秀麗なる男女がゴリラを暴力でねじ伏せる光景が、この世にはあるのだと。
そして少年は知る。
もはや迷宮が猟兵たちを排除するのではない。
今や猟兵が、迷宮を襲っているのだと――。
「うわあああああ!!」
悲鳴を迷宮に響かせ、ルクが走り去ってゆく。
偶然残っていたトラップを、たまたまこぼした絵の具で無力化しながら……。
成功
🔵🔵🔴
※おしらせ※
たいへん変則的ではありますが、迷宮における猟兵たちの戦いの補遺として
この後の各猟兵の記録に対応する形で、ルク少年の回想を挿入させていただきます。
引き続きお楽しみください。
ノエラ・ビュイヤール
先ほどは力の限り一息に突き進んでしまったでありますが、
クレバーなところも見せないといけないでありますな。
まずは《トリニティ・エンハンス》、水の魔力で防御力を高めて…
「おっと…先ほどたくさん動いたせいで、ちょっとお腹が空いたでありますな」
進む前に、とっておきの大福で腹ごしらえ。
「うーん、甘くておいしいであります!」
さてもう1個…ああっ、うっかり手が滑って、狙ったように大福がスライムの元へ!
「大福が溶けていく!こ、これがホントの『ふく』を溶かすスライム…!!」
ウィットに富んだギャグが決まったにせよ…場が凍りついたにせよ、油断を誘ったところで〈だまし討ち〉であります!
*アドリブ、絡み可
●凶悪トラップなんかに絶対負けないが大福にはちょっと勝てない
「道を開けるであります……開けないなら、押して通るであります!」
愚直なる少女騎士、ノエラ・ビュイヤールは覇気に満ちた声をあげ、迷宮を突き進む。
だが力強さを感じさせる声と振る舞いに反し、此度の彼女の戦法は極めてクレバー。
どこから殺意が襲い来るか予想できぬなら、護りを固める。
【トリニティ・エンハンス】……中でも水の魔力を選んだのは、最適解と言えよう。
水の守りは液体のクッションでもって凡ゆる物理攻撃を柔らげる。
のみならず、床や壁から噴き出す火炎など迷宮においては定番中の定番。
「意思は燃えるが如く、されど心は静水の如く……であります!」
アルダワ出身であるノエラだからこそ、基本への対策は抜かりがないというもの。
ひとたび攻略法を確立すれば、あとは猛進直進一直線こそが正道。
打ち破り突き破り、愚直な少女の意思は止まるところを知らない――!
「おっと……たくさん動いたせいでちょっとお腹が空いたでありますな」
前言撤回。
お腹が減ったら時に騎士も休憩タイムに突入することはあるのである。
ひとしきりトラップを排除しきって安全確保。
その場に腰を下ろし、取り出したるはとっておきの大福。
「うーん、甘くておいしいであります! 至福のひととき……!」
甘いものに舌鼓を打ち、頬を弛ます乙女の幸福。
名家だろうがマジックナイトだろうが、そこに変わりはないのである。
……だが、ここは迷宮。
幸福なる時間も、乙女が享受せし幸せをも容赦無く奪わんとする場所なれば。
「さてもう1個……ああっ!?」
ノエラがうっかり手を滑らせ大福を落としたのは或いは幸運と言えよう。
大福が転がった先には、音もなく彼女の背後からにじり寄っていたスライム。
それもこの階層においては生易しい存在ならず。
すなわち、すべてを溶かしきる強酸性スライム。
すぽりとスライムの中へと転がり込んでいった大福が無残に溶け落ちてゆく。
恐るべき存在を前にしたノエラが、わなわなと体を震わす。
「こ、これが……」
その震えは恐怖によるものか武者震いか、はたまた……。
「これがほんとの、『ふく』を溶かすスライム……!!」
……どっちでもなさそうだった。
カッと目を見開き、いたって真剣な表情で言い放つノエラ。
大福を溶かしきった強酸性スライムもこれには動きを止める。
「『ふく』を溶かす……スライム!!」
二回言った。
だが、そう……ノエラは属性攻撃に長じたマジックナイト。
場の凍りつくようなジョークは、液体生物であるスライムをも凍りつかせる……!
「ムッ、何でありますか! ウィットに富んだギャグに対して失礼千万!」
わりと自信アリの一ネタだったか、リアクションに対しノエラが不服げに剣を抜く。
とはいえ禍を転じて福と成したか、凍りついたスライムは今や無防備。
酸に得物を脅かされる心配もなく、一撃のもとに砕け散る。
「おのれ、人のおやつを奪うとは何と卑劣な迷宮……!!」
うっかり自分で落としただけなのだが、それはそれとして燃え上がるノエラ。
もはや彼女の勢いは殺意程度で削がれることはない。
透き通る水の流るる川のように淀みなく、迷宮攻略が成されてゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
●ルクがみている part2
「め、迷宮のど真ん中でおやつを食べ始めるなんて……!」
透き通る水を思わせる美しい髪の少女騎士をもまた、ルクは影から見守っていた。
そういえばちょっとお腹空いたなあ、大福おいしそうだなあ。
などとよそごとを考えたのも束の間……彼女の背後から迫る、強酸性スライム!
ルクが声をあげるより前に転がり落ちる大福。
そして言い放たれる、少女渾身のジョーク。
「『ふく』を溶かす、スライム……?」
少女がシリアスに言い放ったそれを、思わず復唱する。
「『ふく』を溶かす……スライム……!」
二回言った。
「はっ、ボクはどうしてこんな……!?」
思わず口をついて出てしまったウィットに富んだギャグに、戦慄するルク。
違うんですうまいこと言ったとかじゃないんです。
「わああああああ!!」
恥ずかしさを覆い隠すように叫びながら、ルクが駆け抜ける。
撒き散らした絵の具で、近くから滲み出た強酸性スライムを無力化しながら……。
アマラ・ミュー
あほくさ
こんなとこ造る奴の品性ってどうなってるのさ。気持ち悪い
…この辺は前の階層よりはまともそうだね。よかった、安心安心
それじゃ、しっかり避けていこう。罠の動きを「見切って」回避を心がける
うっかり罠を踏んだりしたら【手を伸ばす】
とにかく、捕らえられないよう
ここのモノにあんまり触りたくないし
で、見かけた罠は片っ端から潰していくよ
銃で撃つ
蹴り潰す
念入りにね
こいつらもアレなことしてこないとも限らないから。ああ嫌な想像した、気持ち悪い
さてと。溝とか落とし穴とかないのかな。潰したの全部蹴り落としておきたいんだけど
……家の掃除もこれくらいやる気出ればなあ
いや、私もやる時はやる、し
……。(反省中)
【SPD】
ヴェイル・ランカスター
【アドリブ歓迎】
お前らさぁ…何本気出してるわけ?
今更遅ぇんだよ!最初からやる気出せよ!
おいしい絵が撮れると思ってこっそりカメラも用意したのに台無しじゃねぇか!
いいぜ、そっちがナメた真似すんならこっちだって容赦しねぇ。
【VL-EX000-β ストームダイブ】ビーム!ビーム!ビームの嵐だ!
根こそぎ焼き払ってやるから覚悟しろよ…!!
災魔は消毒だー!!
●燃えるトラップは燃える罠の日に
「チクショオオオ!」
無念を滲ませた声を響かせながら、ヴェイル・ランカスター(自称エリート警備兵・f03879)が視界に入る全ての敵なるものを薙ぎ払ってゆく。
薄暗い迷宮の通路は、今や乱反射する光線群によって真昼の輝きを得ていた。
【VL-EX000-β ストームダイブ】……ヴェイルが掌を向けた対象を遥か彼方の衛星が捉え、1ミリのズレもなくビーム照射によって焼き払う。
原理は不明だが、屋内であろうが世界をまたごうが当たるものは当たるのである。
前階層と打って変わって本気で殺意を向けてくる罠、罠、罠。
だがトラップ災魔すべて滅すべしとばかりに迷宮を突き進むヴェイルに躊躇いはない。
「何本気出してんだよ! 今更だよ! 最初からやる気出せよ!」
どころか、容赦なく命を奪いにかかるトラップの数々を叱責さえしている。
では迷宮に挑む益荒男としての心意気が彼を奮い立たせているのかといえば……。
「おいしい絵が撮れると思ってこっそりカメラも用意したのに台無しじゃねえか!」
やっぱり別にそんなことはなく、引き続きスケベ心のままの大暴れであった。
あちこちで作動音を響すトラップ。どうせ痛いだけだろ全部壊れろ!
服以外も全部溶かすスライム。蒸発しとけ!
通路の角からゴリラ災魔。うるせえ動物園帰れ!
情け容赦無用の戦いぶりは、いっそ勇猛果敢ですらある。
「サービスシーンの一つもない迷宮に用があるかバーカバーカ!!」
などと微塵も調子を狂わさぬまま、ふと差し掛かった十字路。
左方を見やれば、一人の女と目が合った。
アマラ・ミュー(天のカミサマを射るように・f03823)である。
燃えるような髪に覗く、緑色をした切れ長の瞳……見据えられると迷宮の中にあれど思わず居住まいを正しそうになる鋭い視線。
えっ、何だろうあの熱い目線……もしかして俺の活躍に見惚れてくれちゃってる?
などというヴェイルの思考も束の間。
「……あほくさ」
「はぅあッ!?」
たった四文字の言葉が、どんなトラップより鋭くヴェイルの胸に突き刺さる。
実際のところ、アマラが放った言葉はこのダンジョンそのもの……より正確に言えば第一階層のトラップどもの品性下劣さに対してのものだったのだが。
「……チクショオオオ! 全部お前らのせいだかんな! 根こそぎ焼き払ってやる!!」
もちろん聞き届けた当人はそんなこと知る由もなく、涙声になったヴェイルがさらに激しいビームの嵐を巻き起こし始める。
災魔たちはおろか、隠されたトラップさえ衛星を通して発見……起動するよりも前に破壊してゆく正確無比なる乱撃。
心は傷つけども、結果としてさらなる戦果を引き寄せることに成功した次第。
がんばれヴェイル、負けるなヴェイル。その怪我が君の巧妙となるぞ。
「あのビーム、いいな……」
指一本触れずに全てを撃滅してゆくヴェイルを眺め、アマラがぽつり。
なにしろ第一階層のトラップが「アレ」だったのだ。
続くこの階層のトラップが単純に危険であるという以上に、生理的に絶対触れたくないというのは極めて正常な反応であると言えよう。
油断大敵と言葉を発することはなけれど、ここでもやはり跋扈する殺意。
ヴェイルへと気を取られていたように見えたアマラへ、無数の触手が伸びるも。
「はいはい。前の階層でさんざん見たよ」
いくら命を奪わんとする危険なトラップとはいえ、性質そのものは触手。
つまり前の階層の「アレ」と、動きにおいては大差がないのだ。
見切ってしまえば、照準にブレを生じさせるアマラではない。
天井から生える触手群の根元に正確に弾丸を撃ち込み、千切り落としてゆく。
地面に落とされてなおウネウネと蠢くそれらは、やはりどんな性質であったとしても生理的に気持ち悪いとアマラの心中が断じる。
「……ああ嫌な想像した、気持ち悪い」
嫌悪感を攻撃性に変え、まだ息のある触手を念入りに蹴り潰す。
斯くが如く、アマラもまた道を突き進む。
罠を見透かすような能力はなくとも、培ってきた反射神経と早撃ち技術をもってすればトラップが発動してからの無力化も容易というもの。
落とし穴あらば飛び越え、壁から飛び出す飛び道具を撃ち落とすなどまさしく朝飯前。
唯一厄介なるは、弾丸で撃ち抜かれるたびに酸性液を飛散させるスライム。
弾丸が通じぬ様に、ほんの一瞬だけ眉間に皺を寄せるも。
「……あのさ。足元、危ないよ」
近寄りたくもない相手である以上、手を下すのは自分でなくていい。
片腕を蔦状植物のUDCへと変化させ、【手を伸ばす(ソラヲハネル)】。
狙いはスライム本体ではなくすぐ傍の床に擬態した、スイッチ。
力を込めて、カチリと押してみせたならば。
「じゃあね」
開いた床から超高熱の炎が噴き出し、たちまち液体の体を蒸発させる。
自ら踏み抜く形でトラップを発見してきたからこそ、逆にその利用も可能なのだ。
「……これ、便利そうだな」
ふと思いつき、破壊したトラップその他をついでに落とし穴へ雑に蹴り落としてゆく。
炎が噴き上がり、触手の残骸であろうが何であろうが即消し炭に。
ものの一瞬でゴミが燃え尽きてゆく様はどこか童心を呼び起こし、だんだん落とし穴に撃破したトラップを蹴り落とすのが楽しくもなっていくようで。
「……家の掃除もこれくらいやる気出ればなあ」
何の気なしに呟いた途端、ふと誰かの気配を感じて顔をあげた。
見据えた先には、入り組んだ通路を経て再び合流したらしい、ヴェイルの姿。
再び、目が合う二人。
「掃除できないクールな女……イイネ!」
グッと親指を立てるような仕草が、アマラへと贈られ。
「………………」
噴き上がる炎を凍りつかせそうな瞳が、ギロリとヴェイルへ返される。
「さ……さーて、引き続き災魔どもを消毒しなきゃなー!!」
口笛のような音を残して、通路の向こうへとヴェイルの巨体が消えてゆく。
どうにも緊張感に欠ける道行きへの脱力感と己の生活態度への反省が入り混じった溜息を漏らし、アマラもまた歩き出してゆくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●ルクがみている part3
「そんな理由であそこまで戦闘力を発揮できるんですか……!?」
幸運にも見つけた隠し扉の裏から、やっぱりルクが見ていた。
スケベ心をまったく隠さず、むしろパワーに変える巨躯のウォーマシン。
発動さえさせず罠を潰す鬼神が如き活躍は、もはや迷宮に対する陵辱。
「ああ、あんな冷たい目で見られるなんて……」
やがて赤髪の女からウォーマシンへ向けられた視線もばっちり見届ける。
鋭い目つきから放たれるそれはまさしく天行く者をも射るかのよう。
……そんな攻撃的な視線に、無自覚にちょっとだけときめく部分もあったが。
「やっぱり女の人って、怒らせると怖い……!」
もはや迷宮とは全然別方向の恐怖を覚えて。
「うわああああああ!!」
やっぱりルクは、走り去ってゆく。
安全な隠し通路で、罠をすべて無視してしまいながら……。
チェイザレッザ・ラローシャ
へぇ……手応え、ありそうじゃない。
それなら私も本気で挑まないと失礼よね。
いいわ、全力で、お相手しましょう。
デスペラードを一時的に呼び、Venusの銃身を付け替え。
長さを半分にして小回りが聞くようにするわ。
大丈夫よ、私一人でいけるわ。休んでて。
そして、血統覚醒。
吸血鬼の力を呼び起こし、前進。
これは踏破(たたかい)ではない。
お前達に、蹂躙するとはどう言うことかを教えてあげよう。
引き千切り焼却し、
必要あらば体を霧に変えて回避、回り込んで締め上げる。
知ってたかしら。吸血鬼ってね、ちゃあんと鬼なのよ。
力も強いし知恵もある。血ぃ吸うだけの存在ではないの。
おわかり?……ってまあ聞こえないかー。
●〝鬼〟
迷宮内において「入れ」とばかりに開け放たれた門扉があれば、内側は知れている。
まさしくそれを前に、チェイザレッザ・ラローシャは立っていた。
小さな鯨の姿をしたUDCが二体、どこか心配そうに彼女の周囲を浮遊する。
「大丈夫よ、私一人でいけるわ。休んでて」
温かみを帯びた声でもってチェイザレッザが告げると、それに応え、ようやく二体が姿を消していった。【Venus】……かのろくでもないトラップの一掃にも大いに役立てた兵器を、相棒たちから受け取った銃身へと換装する。
小回りが利くようにという配慮は、全力を出さんという意思の顕れ。チェイザレッザとて、もはや兵器だけの力に頼るつもりは……容赦をするつもりは、ない。
一切の遠慮も躊躇なく、門の内側へと踏み入る。
背中側から鉄柵の下りる音。定番中の定番。つまり「これより襲いかかる全ての障害を退けたなら、部屋から出してやろう」という腹だ。
果たして天井より降り注ぐ強酸性スライム、這い出る触手に小鬼の災魔。
……などと、律儀に全ての出現を見届ける前に、チェイザレッザが動く。
一歩、前へ。骨肉を溶かさんと液状の体を跳ね上げたスライムに対し、強酸の飛沫さえ恐れずにVenusの引き金が引かれた。
瞬く間にスライムが蒸発したのを合図に、全ての敵意が一斉に牙を剝く。
——だが。
〝牙を剥いた〟のは何も、災魔たちだけではない。
チェイザレッザの瞳が、真紅の輝きを帯びる。
「これは踏破[たたかい]ではない」
淡々と述べ、淡々と誅戮。
瞬く間に距離を詰めたかと思えば、まるで服の襟でも直すかのように自然な動作で、小鬼たちの首が落とされる。武器すら、用いることなく。
その背後より、前階層とは違って命そのものを奪わんと強靭な触手が迫るも、結果は先と同じ……いや。さらに惨く、容赦なく、加減なく……血統の力をもってして触手は引き千切られ、床へと打ち捨てられる。止めを見舞うという意思すらなく、ただ床を踏み直すためだけに振り下ろされた足が、過去形となった命を踏み潰す。
チェイザレッザが【血統覚醒】するとは、そういうことだ。
「お前達に、蹂躙するとはどう言うことかを教えてあげよう」
肉片の飛散する音を合図とするかのように、Venusが再び火を噴く。
災魔のみならず、侵入者を焼き払わんと床に仕掛けられていた火炎放射のトラップすら、そのはるか上を行く金星の熱で起動さえせずに溶かされてゆく。
純粋な暴力には、それを上回る暴力による、一方的な蹂躙を。
今や単純にして明快な倫理が、チェイザレッザによって敷かれていた。
雑魚をあらかた一掃したのを見計らったように、室内に咆哮が響く。
本階層を象徴する存在、筋力だけで全てをねじ伏せるゴリラ災魔。巨大な腕に握られた大槌が命中すれば、並の生物はたちまち肉塊と化すだろう。
迷いなくチェイザレッザめがけて振り下ろされた大槌はしかし、地面のみを砕く。
彼女の体は……比喩ではなく、霧散していた。
「知ってたかしら」
睦言を囁くかのように、チェイザレッザが災魔の耳元に唇を寄せる。
吸血行為により眷属を増やす、高潔、あるいは高慢なる怪物。
一般的にその種族の名から想像されるのは、得てしてそんな偶像だ。此処が彼らの本拠ならぬアルダワの世界であるならば尚更である。
であればこそ……迷宮も、災魔たちも〝彼女〟を知らない。知るはずがない。
霧に姿を変え、ゴリラ災魔の背後へ回り……その首を締め上げている者の名を。
「吸血鬼ってね……ちゃあんと鬼なのよ」
みしり。
鈍い音が、命の終焉を告げた。
「おわかり? 力も強いし知恵も……って、聞こえてないかー」
やれやれと首を振って、息絶えた災魔を手放す。
もはやチェイザレッザのほか、室内に生の気配は存在しない。
……ここが、暴力と殺戮の支配する階層だというのなら。
今この瞬間、チェイザレッザ・ラローシャこそが支配者であった。
大成功
🔵🔵🔵
●ルクがみている part4
「普通に怖い……!!」
鉄柵の隙間から、例によって一部始終を見届けていたルクである。
吸血鬼、その威容、美しさ、恐ろしさ。
一方的な殺戮蹂躙は、臆病な少年の背を震え上がらせるには十二分。
「……うわあああ!! わああああああ!!」
吸血鬼の女性も姿を消した頃、少年は再び涙ながらに走り出してゆく。
迷宮を襲う圧倒的強者たちの姿をまぶたの裏に刻み。
そして階層内に残った罠たちを、正確に絵の具で塗りつぶし、無力化しながら。
……もとより。
ただ怯え、怖がるだけならば、迷宮の奥へ進む必要などないのだ。
踵を返し、安全な道を逃げてゆけばそれで済むこと。
だが、ルクはそれをしなかった。
恐怖をすれど、恐怖に負けることはない。
乗り越え、克己することはなくとも……涙を浮かべながらでも、耐え抜く。
彼は、見届けたのだ。見届けるに能うだけの力を、彼もまた、持っていたのだ。
ゆえに少年は走る。後ろではなく、前へ。迷宮の最奥へ。
ルク・フッシー。彼もまた、猟兵なのである。
ダンド・スフィダンテ
よーし、この調子で破壊していこうな!(POW)
同じ様なやり方で申し訳ないとは思うんだけども、とりあえず殲滅すればい?
うんうん、危ないのはよくないもんな。ミューズが怪我とかしたら一大事だし。
アンブロジウス、おいで。一緒に危ない物を破壊しようなー。(槍になってもらう)
ってことでなぎ払って行こう。ん?トラップも敵扱いで良い?それなら威力も上がりそうだな!
……おや?(突然ゴリラと意思の疎通を始める。ウホウホ。)(ウホウホ)くっ、やはりわかり合えなかったか……!強者を求めると言うのであれば、なるほど俺様が相手をしよう!(始まるゴリラとの熱い戦闘。)
(カットアドリブ歓迎で、MSさんの好きにして欲しいです)
神威・くるる
あや、今度は見違えるほど雄々しい仕掛けにならはって
夏毛になってもた猫ちゃん達が風邪ひかへんように
運動させたらななぁ
猫ちゃん、ほな行こかー
【聞き耳】で音に注意しながら
【罠使い】の技術の応用で罠を察知
あとは【第六感】でかわして行きまひょ
ふふ、ええ運動になったなぁ
ああ、こらこら
触手にじゃれつくんやありまへん
そこの猫ちゃん、ドキドキを勘違いしてゴリラはんと恋に落ちるんは悲恋まっしぐらやさかい、よしときよしとき
そのスライムは餌やないからかじったらアカンえー
星羅・羽織
ゴリラ、なんかに、負けない。
私には、師父が、付いてる。
(なんちゃってクンフーポーズ。背後にパンダのオーラ)
大熊猫拳の力、みせつける。
クンフーっぽいような、そうでないような、ポーズとともに、ルート・マジックで、ゴリラを、封じ込める。
大熊猫、束縛拳。拘束した、ゴリラを、腹パンする(とても弱い)
てい、てい……手が、痛い。
面倒、くさくなったら、吹っ飛ばす。
他の、トラップは、なんか、抜けれた。
(羽織が考えるかっこいいクンフーのポーズ)
●紅蓮の騎士と漆黒のミューズ
侵入者を抹殺せんとする無数のトラップ。
……であればやはり、行うべきは破壊であり、前階層と同じなのではないか。
「アンブロジウス、おいで。一緒に危ないものを破壊しようなー」
下劣なトラップから守り抜いた〝娘〟たる小竜にダンド・スフィダンテが声をかけ、たちまち小竜が槍……ドラゴンランスへと姿を変え、〝父〟の手に収まる。
前階層とはまた違った理由で、ダンドは張り切っていた。
「あや、今度は見違えるほど雄々しい仕掛けにならはってー」
理由は、道中合流した見目麗しい和服の少女、神威・くるるの同行にある。先の階層において夏毛になってしまった何匹もの黒猫……猫ちゃんたちを引き連れてほがらかに笑う彼女が、どうにも危なっかしく見えた。
女性を守るのが、騎士の本懐なれば。
「ミューズ……この場は俺に任せてくれ。騎士の誇りにかけて、必ず」
「あら、おおきに。でも猫ちゃん達にしっかり運動させてあげんと」
あまりにはんなりと優雅に進むくるるの姿に、思わずダンドも目を丸くした。
危ない、ここは俺が……と引き止めようともしたが。
罠に満ちているはずの通路を、どうしたことか、くるると猫ちゃん達は散歩道でもゆくかのように、のんびりと歩き通してゆく。
およそ危険な迷宮とは思えぬほのぼのぶりだが、全員、まったくの無傷。
彼女自身がその身に宿す罠への知識と直感が危険な罠を回避させるばかりでなく、夏毛へと変貌した身軽な猫ちゃんたちが、彼女に仇なす罠を察知、無力化しているのだ。
猫が虚空を見つめる現象の理由には諸説あり名前もイッパイアッたりするが、ことアルダワにおいては猫はあらゆる罠を見透かす神聖な動物とされることもある。
……という、一部のアルダワ学生間で囁かれている与太話はさておき。
「……なるほど、あちらのミューズにはもう立派な騎士が沢山いる、と」
やれやれとかぶりを振るダンドだが……彼女たちに自衛の手段があるとはいえ。それは決して、女性を……ミューズを守るための手を緩める理由には、ならない。
万一の可能性は、ことごとく排除する。そも、罠の排除こそが彼の仕事なれば。
「ミューズを脅かすものは……すべて〝敵〟だ」
その認識が、ダンドの振るうアンブロジウスを古今無双の一振りへと変じさせる。
【殲滅】するは、我にあり。
敵が多ければ多いほど威力を増す彼の攻撃は、四方八方縦横無尽に襲いかかる罠の数だけ鋭さを増す。ひとたび払えば風圧が空気の刃を成し、全て敵なるものを裂く。
装置、生体、あらゆる〝敵〟打ち滅ぼし、槍に付着した汚れを一振りで払う。
さて、ミューズ……くるるは無事だろうかと、通路の先、曲がり角を確認すれば。
「ふふ。猫ちゃん、かわいい。にゃーにゃー」
「あやや、羽織はんは猫ちゃんの扱いが上手やねえ」
ミューズはさらにほのぼのしていた。ていうかなんかミューズが増えていた。
猫ちゃん達と戯れる夜色のローブを纏った小柄な少女の名は、星羅・羽織……先の階層でも、くるると行動を共にしていた猟兵だ。そのおかげもあってか、猫ちゃんたちともすっかり打ち解けている様子である。遭遇したトラップはなんか避けた。
「……猫と戯れるミューズも麗しいものだなあ!」
もう細かいところにツッ込んでいたらキリがないと判断したダンドである。
いいところを見せるまでもないとは即ち、女性陣の身が脅かされる心配がないということ……それはそれで、心から喜ばしいのだ。
さて、攻略を続けるうち、やがて辿り着いたのは大きな柱のそびえ立つ広間。
この手の〝いかにも〟な空間はおおむね階層の終わりに設けられていることが多い。
加えて言えば……概して、待ち受けているのは挑戦者の地力に対する挑戦状。
この広間においては、巨体を誇るゴリラ災魔の門番がその役割を請け負っていた。
岩をも砕く筋骨隆々の肉体は得物すら持ち合わせておらず、肉体ひとつで侵入者を拒まんとする威容がその戦闘能力を示唆しているかのようだ。
言うなれば、エリートゴリラ災魔である。
知性の輝きを宿した黒い瞳は、歴戦の戦士の風格すら感じさせる。
ダンドとゴリラ、騎士と戦士。両者の視線が交わり、火花が散……。
「ああほら、そこの猫ちゃん、ドキドキを勘違いしたらあかんで。ゴリラはんと恋に落ちるんは悲恋まっしぐらやさかい、よしときよしとき」
……散るより前に、甘えた猫の鳴き声とそれを宥めるくるるの声が割り込んだ。
ゴリラの足元に擦り寄る猫ちゃんを「堪忍なあ」とにこやかな挨拶と共に回収してゆく、くるる。はんなりした空気が漂い、ゴリラも思わず頭を下げる。
「吊り橋効果……いや、この場合迷宮効果やろか?」
微塵もペースを崩さず、抱き上げた猫ちゃんを撫でながら、くるるが戻ってゆく。
……気を取り直して。
ダンドとゴリラ、騎士と戦士。両者の視線が交わり、火花が散……。
「ゴリラ、なんかに、負けない。私には、師父が、付いてる」
……散るより前に、いつの間にか白いチャイナドレスに着替えた羽織がゴリラの前へと躍り出ていた。アチョーと構えた片足立ちでクンフーポーズ。その背後には、なんだか妙に迫力に欠ける、若干デフォルメされたパンダのオーラが浮かんでいる。
これが詠唱だったのだろうか、羽織の【ルート・マジック】が発動し、ゴリラを束縛する……そう、ここは迷宮、一対一正々堂々などと言ってはいられない。
「てい、てい。大熊猫、束縛拳」
……などという立派な理由があったわけでもなく。
その場のノリで着替え、その場のノリでカンフーに鞍替えした羽織の、やっぱりその場のノリで考えついた技名と共に、ぺちぺちと迫力なき音の拳がゴリラの腹筋を打つ。
ぺちぺち、ぺちぺち、ぺちぺち。
そんな調子で【ルート・マジック】の効果が切れた頃。
ゴリラがそっと羽織を両手で持ち上げ、傍へと置く。ゴリラは紳士だった。
引き続き傍からゴリラをぺちぺちし続けている羽織は、いったんさておき。
「…………」
「…………」
三度、ダンドとゴリラ、騎士と戦士の視線が……以下略。
言葉は不要、とは言っていられないようだ。
だって黙っているとまた緊迫した空気が壊されてしまいそうだから。
「ウホッ」
だからだろうか。ダンドがゴリラ語でもって、両者の間の沈黙を断つ。
「……ウホ」
ゴリラもまた、それに応じる。
「ウホウホ、ウホホ」
「ウホッホ。ウホウホ」
「……ウホウーホ。ウホホウホウホ?」
「ウホ。ウホホホッホ、ウホホウホホ」
いたって真剣なトーンで繰り広げられるゴリラ会話。
会話を通して、ダンドは確信する。やはりこのゴリラ、知性を有し、力のみならず、紳士としての器量も内包する、騎士道精神の持ち主だと。
ぺちぺち。にゃーにゃー。
そしてだからこそ……矜持をもってぶつかり合うことは、避けられないと。
にゃーにゃー。ぺちぺち。
「……やはりわかり合えない、か」
片手で持っていた槍を両手で構え直し、風車の如く回転させ、見得を切る。
ぺちにゃーぺちにゃー。
……静かになるほど、羽織の拳と猫ちゃん達の鳴き声で緊張感が削がれそうになるが。
かくなる上は、今度こそ言葉は不要。力をもって、道を示すのみ。
「天地揺るがす化生が何するものぞ……ダンド・スフィダンテ。推して通る!」
風切り音と共に突きつけられた槍を見据え、ゴリラもまたそれに応える。
咆哮を伴う激しいドラミングが、ダンドの名乗りに対する返礼。
「……いざ、尋常に!」
姿勢を低く、放たれた矢のごとき勢いで、ダンドの初撃がゴリラへ迫る!
「手が、痛い。もういいや、めんどくさい」
……と同時に、カンフーごっこがめんどくさくなった羽織が宇宙の魔力を解き放ち、ゴリラを一撃のもとに天井までスッ飛ばした。
「ゴリラーーーーーーーーーッ!!!!!!」
予想外すぎる形で幕を下ろした勝負と戦友[とも]の結末に、ダンドが叫ぶ。
大広間にはふたたび静寂……と、猫ちゃんたちの鳴き声。
ゴリラは綺麗に天井に突き刺さり、動かなくなっていた。
「あややー、羽織はんは強いんやねえ。猫ちゃんたちも感動しとるわあ」
「ふふん。これが、大熊猫拳の、真髄。くるるんも、やりたければ、教えてあげる」
すっかり打ち解けたミューズたちが、和気藹々と広間を突っ切ってゆく。
二人の背を、ダンドはしばし呆然と眺め。
「……いやあ。ミューズが無傷で、本当に良かったなあ!」
やがては吹っ切れた笑顔で、彼女らの後に続いてゆくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『サイクロプス』
|
POW : 叩きつける
単純で重い【剛腕から繰り出される拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 暴れまわる
【目に付くものに拳を振り下ろしながら咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 憤怒の咆哮
【嚇怒の表情で口】から【心が委縮する咆哮】を放ち、【衝撃と恐怖】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:〆さば
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠茲乃摘・七曜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
こんなの聞いてない。
迷宮最奥にて待ち構えた怪物に相応の知性があれば、そう思ったに違いない。
階層すべてが広間となった、あまりに広大な面積を誇る最深部だというのに。
この空間にあっては、猟兵ひとりひとりなど、小動物同然の大きさというのに。
迫り来る猟兵たちの巨大な威圧感に、はるか見上げる巨躯が冷や汗さえ流す。
だって、こんな連中が。
こんなピンピンして、闘気に満ちた連中が最奥にたどり着くはずがないのだ。
第一階層では、徹底的な辱めによって精神が蝕まれ。
第二階層においては、弱った精神に容赦のない殺意が降りかかる。
だから、最深部に辿り着いた侵入者があったとて、虫の息になるはずなのだ。
……悲しいかな。封印された災魔たちは、〝猟兵〟を知らなかった。
銀河ひとつをも救った彼らの純粋な〝力〟を、知る由もなかった。
この迷宮を踏破せんとする君たちであれば……もはや説明はいるまい。
叩き、砕き、斬り、捩じ伏せよ。
はるか見上げる巨人であろうと、君たちの敵ではない!
ノエラ・ビュイヤール
これは、今までのようにはいかなさそうでありますな!
敵の攻撃は〈第六巻〉での回避を試み、
《鏡氷穿撃》をあの足元に放ち、滑りやすくしてやるであります!
転倒した時こそ好機!駆け寄り致命的な一撃を…
「…それにしても、改めて見ると大きい。どうしたらそんなに大きくなるでありますか?」
まじまじと観察。
「もしかして、骨が丈夫だからでありますかね?」
ルーンソードの柄でスネをトントンと〈2回攻撃〉。
「それとも、モリモリに鍛えたその筋肉があるからでありましょうか?」
〈力溜め〉から素手による腹筋(みぞおち)への一発。
「まあ、別にここまで大きくなりたくもないし、知らなくていい気がしてきたであります」
*アドリブ、絡み可
●一ツ目鬼にお決まりの
サイクロプスにとって、侵入者……人間やそれに類する者など、まさしくアリンコ同然に踏み潰すべき、取るに足らぬ存在であった。今日、この日までは。
「これは、今までのようにはいかなさそうでありますな!」
氷の色を揺らめかせてはじめに颯爽と舞い出たのは、ノエラ・ビュイヤール。
道中において恐るべき罠(「ふく」を溶かすスライムとか)の脅威を目の当たりにした彼女にとって、当然この戦いも油断できるものではない。
即座にサイクロプスの拳が振り下ろされ、轟然と音を立てる。
だが、砕かれたのは石床ばかり。純白のマントと共に身を翻したノエラが中空で姿勢を転換。筋骨隆々たるサイクロプスの腕を蹴飛ばし、反動の勢いに任せて突き出した切っ先でもって重心の傾いた足元を狙いすます!
「凍てつく一撃、受けてみるであります!」
一ツ目鬼の足を穿つ青く透き通る刃の名は、【鏡氷穿撃(アイシクル・エッジ)】。
鋭い痛みと共に、この迷宮に存在するはずのない冷気がサイクロプスの肉体へと沁み入り、全身の筋肉を収縮させてゆく。
「もうひとぉつ!」
当然、ノエラも崩れた体勢を見咎めて反対側の足へと追撃の刃を見舞う。
急速に失われた体温はサイクロプスの感覚を奪い、たちまち巨体が地鳴りをあげて石床の上に倒れ伏してゆく。まさしく、好機。
アイススケートのように華麗に地面を滑り、ノエラが方向転換。
一挙にサイクロプスへと肉薄し、トドメの一撃を——!
「…それにしても、改めて見ると大きい。どうしたらそんなに大きくなるでありますか?」
見舞うより前に急停止して、まじまじとサイクロプスの体を間近で観察し始めた。
いきなり美少女の熱視線を浴びて、倒れたサイクロプスもモジモジと身じろぎ。
なにしろ長らく封印され、最奥まで誰もたどり着いちゃくれなかった迷宮。
マトモに女子と接したことがないのがサイクロプスの実情であった。
「もしかして、骨が丈夫だからでありますかね?」
もっともそんな僅かな胸のときめきも、ノエラが手にしたルーンソードの柄で弁慶の泣きどころをちょちょいと突いた途端に別種の刺激へと変わる。
「それとも、モリモリに鍛えたその筋肉があるからでありましょうか?」
赤ずきんによる問いかけのような愛らしさを内包しながら、興味本位から繰り出されるノエラの一挙手一投足には、まったくもって容赦がない。
みぞおち目掛けて放たれた掌底に、広間中に響き渡る濁った悶絶。
「……まあ、別にここまで大きくなりたくもないし、知らなくていい気がしてきたであります」
じゃあ今の一連の行動何だったんだよ!!
巨大な瞳がノエラへと抗議の視線を向けたものの。
「あっ、この手の怪物は瞳が弱点と相場が決まってるであります! えいえい!」
これ幸いとばかりに、逆に瞳に見舞われるノエラの鋭い突き。再び響く咆哮。
好奇心旺盛な少女騎士の、まっすぐで、迷いなく、正々堂々たる蹂躙。
今しばらく、サイクロプスの苦しみは続くのであった……。
大成功
🔵🔵🔵
神威・くるる
あややー、たくましい旦那はんやこと
それになんて大胆ないでたち……ふふ、男らしおすなぁ
あやや、そないに怯えてかわいそかわいそ
知らへん敵(猟兵)に怯えてはるんやろか
ああ、かわいそうに
思うてた通り行かへんよってこわい思いしたんやなぁ
ああ、かわいそ。かわいそ
慰めたげよか?頭撫でて抱きしめて甘やかしてあげる
まぁ、全部【誘惑】しながらの【言いくるめ】による【催眠術】なんやけど
首筋に抱き着いて、甘やかすふりをしながら
牙を突き立て【吸血】を
こんなダンジョンの奥で一人震える巨体のお味はいかがなもんやろなぁ?
●猫撫での夢
心地よい温もりに包まれ、巨なる瞳は虚を宿したままに細まっていた。
破壊と殺戮にばかり思考を奪われてきた生涯であった。
誰かとの触れ合いなど夢に見たこともなく、暴力以外の接触は知識に無い。
だから、あの小さき者たちが侵入してきた瞬間に覚えた感情も。
怯懦や恐怖といったものさえ、サイクロプスにとっては未知のものだった。
「ああ、かわいそうに。思うてた通り行かへんよってこわい思いしたんやなぁ」
甘く蕩けるような声音が、サイクロプスの聴覚をあやす。
「ふふ、大胆な出で立ちで男らしおすなあ。でも、そないきばらんでもええんよ」
ごく当然のように、骸の海より這い出た時から、迷宮の最奥に鎮座してきた。
そこに賞賛も喝采もあろうはずがない。
だからだろうか。巨躯を撫ぜる指先が、甘やかすような声が。全てが心地良い。
「慰めたげよ。ほら、なんも考えんで、うちに身も心も委ねて?」
踏み潰そうと思えば容易なほど、ちっぽけな存在であったはずだ。
だが今や、どうしたことだろうか。
彼女の……神威・くるるの腕は、サイクロプスにとって、その巨体を抱擁せしめるほどの大きさにさえ感じられ。
「いけずな人やわぁ。そない情熱的に見つめられたら、うち、恥ずかしいわあ」
蚊が鳴く程度にしか思えぬはずの声が、耳の中で幾度も反響しては、狂おしいほどに胸をかきたててゆく。わざとらしいほどの笑みに入り混じる吐息に、全身が煮え滾る。
「惹かれて、臥せて、見つめて……」
やがて子守唄を歌うかのように、くるるが柔らかな声を紡ぐ。
どろどろと心のうちを沈めてゆくような、甘美の海から逃れようもなく。サイクロプスは目を閉じ、耽溺してゆく。逃れられないし、逃れたいとも思わない。
「呼び寄せて、誤魔化され、睦言に、啼き喚き……」
筋張った肉体に触れる白い指先が、温もりを伝えるしなやかな腕が。
やがてゆっくりと、その首元で止まり。
「――八つ数えて、おやつの時間」
牙が、突き立てられた。
「こんなダンジョンの奥で一人震える巨体のお味……いかがなもんやろかと思ったけど」
妖艶なほど紅く染まった唇を拭い、くるるがぽつりと漏らす。
甘やかな揺り籠から、急転直下の悪夢。サイクロプスはなおも夢から醒めやらず混迷とした意識のまま、地面に倒れ伏している。
「……粗野で、大味で。お粗末さんやなあ」
振り返った先では、相変わらず虚ろで〝情熱的な〟瞳が見開かれている。
なるほど、まだあれほどたっぷり隙を晒してくれているというのなら。
「もうちょい……もてなしたっても、ええかもしれんなぁ?」
さて次に突き立てるべきは牙か、爪か、はたまた。
どのみち、選択の権利も、生殺与奪の取捨選択も、迷宮の主は持ち合わせていない。
見開かれた瞳が新たな恐怖を刻み込まれるのに、そう時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
女将◆f02565と
さっきはともかく最初は絶対俺の勝ちだったけどな
まあいいだろう
でっかい方がわかりやすい
騒ぐ女将に目をキョトン
全裸って…
いやまあ全裸だな
けどそんな騒ぐほどの全裸か?
なんか全体的にツルッとしてるし全身タイツかもしれねえぞ
…っえ、そっちの方がなんか気持ち悪いな
よし騒いでる間にさっさとのそう
【青星の盟約】を歌い攻撃力をあげる
恵まれた四肢を手っ取り早く何とかするために
後ろから膝裏めがけて『衝撃波』の『2回攻撃』で転がして斬りやすいいちに
あ?これくらい見えてもたいしたことねぇだろ!
左側から首めがけ
炎の『属性』をこめた思いっきり剣を叩き込む
しかし…全裸で恥ずかしがるような年頃だったんだなぁ
千桜・エリシャ
セリオスさん(f09573)と
そろそろ迷宮の最深部かしら?
ここまで全く勝敗が着きませんでしたし、次で決着を着けたいところですわ
そうですわね…きっと次に現れるのはボスでしょうし
大将首を先に上げたほうが勝ちというのはどうかしら?
ふふ、そうと決まれば…って
――まあ!ちょ、ちょっと!
この方、服を着ておりませんわ!なんて破廉恥なのかしら!?
だって全裸ですのよ!?
私だって年頃の乙女ですわ!
迷宮のボスのくせに、よくもそんな恥ずかしい格好でいられますわね!
少しは隠して下さいまし!
彼岸花腕で咲かせた腕でサイクロプスを隠して(拘束して締め上げて)
その隙に私は右から首を狩ってしまいましょう
あら?今のはどちらかしら?
●花恥ずかしや、一ツ目の怪
「結局ここまで、まったく決着がつきませんでしたわね……」
「さっきはともかく最初は絶対俺の勝ちだったけどな」
「ですが、いよいよ最深部……きっと次はボスのお出まし。大将首を先にあげた方が勝ちというのはどうかしら?」
「まあいいだろう。最初に勝ったのは俺だったけどな!」
事ここに至れど、さても勝敗の言い争いが尾を引いているセリオス・アリス、そして千桜・エリシャであった。
一番槍とは相成らずも、最深部においてかのサイクロプスは未だ健在。
なるほど倒しがいのありそうな巨体と、セリオスが剣の柄に手をかける。
「でっかくてわかりやすいな。よし、こっからは恨みっこなし……女将?」
珍しく一歩出遅れたエリシャを、セリオスが振り返ってみれば。見れば両目を覆い隠し、わなわなと身を震わす艶桜。
「ちょ、ちょっと! この方、服を着ておりませんわ!」
かつてない着眼点を抱かれ、当のサイクロプスさえもちょっぴり呆然であった。
言われるままに再確認せんと、セリオスがエリシャとサイクロプスを交互に見やる。
「いやまあ……全裸だな」
えっ、もしかしてこの由緒正しいスタイル、駄目なの?
ここまで連続で女性に酷い目に遭わされたのもあり、サイクロプスが萎縮する。
「けどそんな騒ぐほどの全裸か?」
「だって全裸ですのよ!? 逆に何ですか騒がないほどの全裸って! 私だって年ごろの乙女ですわ! こんな破廉恥、直視できるわけないじゃありませんの!!」
ウソ……オレって破廉恥だったの……?
とでも言わんばかりに一ツ目を見開き、あんぐりと口を開けるサイクロプス。リアクションに次ぐリアクションが戦いの火蓋を切らせない。
「乙女ねぇ……。でもなんか全体的にツルッとしてるし全身タイツかもしれねえぞ」
「余計に変態じゃありませんの! 想像してごらんなさい!!」
「……っえ、ほんとだ。ないわ。これはないわ」
ぴっちりタイツのサイクロプスを思い浮かべてしまったセリオスが顔を青くする。
そして想像で好き放題に言われ放題、斬り結ぶ前からサイクロプスのメンタルにダメージが蓄積されてゆく。まなじりに浮かんだ大粒の雫は紛れもなく塩辛い。
むべなるかな、悲しみと怒りに任せ、ついに一ツ目の巨体が咆哮をあげながら巨大な腕を振り回し、大暴れを始めてゆく。
「ちょっと!! 全裸がそんな激しく動かないでくださいまし!!」
さらに強く抗議をあげて、両手で顔を覆うエリシャ。
なお、絶妙な角度の大腿部や崩れ落ちる柱などによって見えてはいけない部分は常に完璧に隠れているので、そこら辺りが視界に映り込む心配は皆無である。
「っと……騒いでる間に、さっさとのしてやるかね!」
なおも余裕綽々できゃあきゃあと抗議を続けるエリシャをよそにセリオスが踏み出す。
「星に願い、鳥は囀ずる。いと輝ける星よ、その煌めきを我が元に――さあ歌声に応えろ、力を貸せ!」
耳をつんざく咆哮を【青星の盟約(オース・オブ・ディーヴァ)】……セリオスの高らかなる歌声が押しのけ、また彼の攻撃の鋭さを増す。
思考もなく本能のままに暴れ回るケダモノなど、物の数ではない。
セリオスを踏み潰そうと持ち上げられた足の下を一挙に駆け抜け、背後を取る。
敵の単眼は多角的な視界確保が難しいと判断したのは正しかったらしい。
エリシャとセリオス、どちらからも目を離せなかったサイクロプスの踏みつけ攻撃はたたらを踏む結果に終わった。
「セリオスさん! 私が全裸に攻撃されたらどうするつもりでしたの!?」
「されたって、女将はそのぐらいでやられねえだろ!」
「たとえそうでも、か弱い乙女に対する態度というものがあるでしょう!」
己の実力に対する全幅の信頼そのものは、羅刹であるエリシャにとっても気を悪くするものではないが。それはそれとして、花も恥じらう乙女心は複雑なのだ。
とっておきの【彼岸花腕(ブルーム・ブルーム)】によって咲き乱れる死霊の黒い手……並のオブリビオンを容易に屠れるそれをわざわざサイクロプスの体を「隠す」のに利用することからも、彼女の花恥じらいをご理解いただきたい。
「でかすぎるのも不便だろ。少しは目線を合わそうぜ!」
死霊の手によって動きが鈍った隙を見逃さず、後ろを取ったセリオスの神速抜刀。
放たれた斬撃と衝撃波がサイクロプスの腱を正確に断ち、大きく姿勢を崩させる。
「だから! あまり動くと見えてしまうでしょう!!」
「あ? これくらい見えても大したことねぇだろ!」
なおもファインプレーで見えてはいけない部分を隠し続ける、黒い死霊の手である。
だが一方、死霊の手はサイクロプスの大腿部を力強く掴み、拘束をも続ける。
刹那、セリオスの青い瞳が、エリシャの桜色と交差した。
さすれば両目を覆う手は、するりと愛刀の柄へ。
……そも、エリシャが大技の一つを私情のために使うのには、相応の理由がある。
言い換えれば、それはエリシャの〝余裕だ〟だ。
質に差異はあれど、この迷宮においてエリシャにいかなる脅威が降りかかった場合においても。彼女は怒り、物申し、ふくれっ面を見せることはあれど……。
ただの一度も、恐れてはいないのである。
恥じらいはすれども、恐怖することはない。
「さて……」
当然を通り越した前提。臆する理由が、ただ一つも存在しない。
そも、なぜサイクロプスが恥じらうばかりのエリシャから目を反らせなかったか。
明々白々の帰結と言えよう。
「――隙あり、ですわね」
徹頭徹尾……千桜・エリシャは、強者なのである。
言い争い、恥ずかしがる最中にもセリオスの目配せを見逃すエリシャではない。
サイクロプスの左方へセリオスが突貫、蒼炎を剣刃に宿せば。
エリシャは音もなく反対側へと一気に駆け、そっ首めがけて刀を振るう。
剣刃二閃、双方向よりの斬撃が野太い首を捉えたのは、まったくの同時。
青き炎は、涼やかなほどに易々と分厚い皮を裂き。
舞う桜花は飛び散る鮮血のゆえに、桜色を魅せない。
「……さすがに頑丈ですのね。今ので狩るつもりだったのですけれど」
「タフさのおかげで、防具が必要ないってことかねえ」
痛みに暴れ狂うサイクロプスから両者とも即座に飛びのき、なおも決まらぬ勝負の行方に憮然とした表情を見せる。
「しかし、女将……全裸で恥ずかしがるような年頃だったんだなぁ」
「……私を何だと思っていますの?」
彼女の美しさも艶やかなるも……自信に満ちた振る舞いからの、まさに〝前提〟と捉えればこそ、セリオスは口に出すことをしない。
結果、いらぬことばかりが口をつき、エリシャとの口論に発展するわけだが。
「今のは、どちらが獲ったことになるのかしら」
「あいつはまだ生きてるだろ? なら……」
「……勝負は、これから」
「そういうことだ!」
それでも、戦場に並び立つことを選んだ二人の間には。
やはり大前提として、疑いようもない信頼があるのだ。
再び目配せひとつを交わしたのち、セリオスとエリシャが散開していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
多々羅・赤銅
やーっほ。
そんなビビんなよ、単眼の鍛冶屋同士仲良くやろうや。
っつっても、こんなダンジョンの奥に潜んでるとこから考えるに、お前には鍛冶屋の性質は無ぇのかなあ?
良いもんだよ。炉に燃ゆる火が、万物を斬るひとつを愛するのは。
その大きい瞳は未だ見えるか?
見えるなら見ろよ。見えない程痛めつけられてるなら、他の総てで感じてよ。
せっかく図体がでかくて愛嬌あるツラしてんだ
女一人にビビってんじゃねえよ
なあ
叩き付けられる一撃から、捨て身の如く逃げもせず
剣刃一閃、清涼なまでに振り上げる
鎧無視の斬撃は、どんな頑丈な骨肉にも阻めまい
そうなあ、蒟蒻の方が逃げる分切りにくかったかもな!
●炉にて燃やさば赤銅が色
大なる足が石畳を踏み砕き、クレーターを作り出す。
力任せ、感情任せに紅の残像を追えどサイクロプスの瞳はその実態を捉えられない。
「やーっほ」
間髪を入れず、気さくな声はサイクロプスの耳元。肩の上から、聞こえた。
誰かを目に入れることさえ能いそうな単眼が、驚きで大きく見開かれる。
薄紅と浅葱に片目を隠す、もう一人の一ツ目鬼。
多々羅・赤銅が、そこにいた。
「そんなビビんなよ、単眼の鍛冶屋同士仲良くやろうや」
戯れつくように刀の先でちょいと巨顔の頬を突つくより前に、サイクロプスが激しく身をよじらせて彼女を振り落とす。
「おっと、やんちゃ坊主だな。金物だって乱暴に扱うなよ……って」
サイクロプス……キュクロープスといえば、いくつかの世界においては鍛治技術に秀でいているとされる怪物だが。迷宮の奥はがらんどうの大広間。鍛冶場の一つはありはせず、つまり迷宮の主はただただ、破壊の化身。
「……良いもんだよ」
かぶりを振るより早く、赤銅は落下の速度に任せて振り抜いた刀をサイクロプスの足、その甲へと突き立てる。抜き放ち様、鮮血が散るより早く次閃が脛を裂く。
「炉に燃ゆる火が、万物を斬るひとつを愛するのは」
論より証拠、百聞は一見に如かず。友人へ語り聞かせるような口調が語り終えるより前に剣刃は敵[とも]の肉を断つ。酒酌み交わすように、剣を振る。
狂人の振る舞いならず、赤銅にとってはそれが自然体。たださらりと気楽な走り書きで、殺意に「しんあい」の仮名が振られるだけのこと。
「その大きい瞳で、私が見えるか? 見えないなら、他の総てで感じてよ」
痛みと敵意ままに繰り出される巨躯の蹴りは、しかし赤銅を捉えない。
そこに彼女への恐怖が……怯懦が滲んでいたことを、赤銅は見逃さない。
窮した獣の動きなど、見切るまでもなく肉体に染み付いている。
「せっかく図体がでかくて愛嬌あるツラしてんだ」
単眼はしかし、赤銅の姿を見逃していない。否、見逃せるはずもない。
地を蹴り跳び上がった彼女の姿は、今や宙にてその〝眼前〟を舞っている。
「女一人にビビってんじゃねえよ、なあ」
鬼と鬼の、眸が合った。
巨岩と紛う拳が、握り締められ。
力任せに、振り抜かれる。
「臆せば、終わりだ」
単純な大きさで言えばゆうに数十倍の差はあろう、単眼と単眼。
されどサイクロプスの生物としての本能が、赤銅の目の奥のぎらつきに臆した。
怯えは生に終着点を為し、己が内に悦を為し得ない。
命の奪り合いをも楽しめばこそ、直撃が死を意味する拳からも赤銅は逃げない。
ただ刃を振り上げ、風と共に肉を撫ぜ、骨を愛す。痛みが拳を逸らす。
「今生を、楽しもうよ」
血化粧に濡れた唇で睦まじく笑い、血を噴き上げる豪腕を蹴る。
清涼ささえ覚えさせる音が、サイクロプスの瞳を斬り伏せた。
絶叫。
存在の証しごと断ち切られた怪物は、やはり力任せに暴れ狂うほかを知らない。
着地した赤銅が刀にこびりついた血を払いながら、赤銅が緑の巨体を見上げる。
逃げ場がないとはいえ、あれはそれでも、侵入者をただ壊そうと立ち向かってくる。
——逃げ回る分、蒟蒻の方がまだ斬りやすいというもの。
「もう少し、踊ろうか」
一ツ目鬼は、なおも笑い。
一ツ目鬼の恐れは、なおも終わらない。
成功
🔵🔵🔴
アレクシア・アークライト
遥かな高みから聞こえた声。
この迷宮の最奥には「恵まれた肢体を持ち、一糸纏わぬ姿の災魔」が待っているという。
……。
分かってたわ。
分かってた、分かってたわよ、マジで。
別に本当に一糸纏わぬ美形が出てくるなんて思ってなかったわよ。
思ってたとしてもちょっとよ。
・ということで、UCを発動。
・身体に穿たれている杭を押し込む。
「これは期待を裏切られた私の分!!」
・石柱を操作し、殴りつける。
「これも期待を裏切られた私の分!!」
・最後に力場を収束した拳を全力で叩きつける。
「そして、これも期待を裏切られた私の分よ!!」
――貴方の敗因、それは罠にだけ頼って、自分を磨かなかったことよ。(なんとなくフォロー)
●もちろんエロい展開なんて待ち受けてなかったダンジョン
アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は、わなわなと震えながら拳を握りしめていた。試しにちょっぴり顔を上げてみる。
猟兵たちにひとしきりボコボコにされた、「恵まれた肢体を持ち、一糸纏わぬ姿の災魔」が怒りに任せて映画の怪獣もかくやの大暴れを繰り広げている。
「……いやうん。分かってたわ」
誰の耳にも届かない小声で、アレクシアが独り言ちる。
アルダワ生徒の情報だったか、どこからともない高みから聞こえてきた声だったか。しかし、聞いたのだ。この迷宮には「恵まれた肢体を持ち、一糸纏わぬ姿の災魔」が待ち受けているのだと。
「分かってたわよ、マジで」
だって一階層は女性を辱めるトラップがたくさん待ち受けていたのだ。
つまりこのダンジョンは、主に女性の攻略者を想定しているということ。
ならば最深部に待ち受ける「恵まれた肢体を持ち、一糸纏わぬ姿の災魔」も、女性に向けた、女性受けする耽美な存在である可能性も一片ぐらいはあるかもしれない。あったとしても不思議ではない。あってもいいじゃん。
本当に……いや本当に、ちょっぴりだけの期待に胸を膨らませないでもなかったが。
「……分かってたわよ……!!」
もちろん「恵まれた肢体を持ち、一糸纏わぬ姿の災魔」とは、たいへんマッシヴな肉体で破壊と殺戮を繰り広げる(予定だった)単眼の怪物なのであるが。
「デカブツ、こっち見なさい!!」
悔恨やら乙女の純情やら逆恨みやら、ごちゃ混ぜになった感情と共にアレクシアが叫び、恵まれた肢……もういい? じゃあサイクロプスへと、広げた片手を突きつける。
言われるがままにかの巨人が振り返ったのは、ひとえに嫌な予感のためだろう。
猟兵が己を呼び止めたとき、ロクな結果にならないとすでにこれまでの戦闘で身にしみたのだ。……そしてまた、彼の予感は的中することとなる。
「乙女の純情を弄んだ罪、その身で贖いなさい……!!」
歯を食いしばりながら、決意を滲ませたアレクシアの瞳が単眼を射抜き。
彼女の単純無比にして強大な【念動力(サイコキネシス)】が、発動する!
「これは期待を裏切られた私の分!!」
まずもって、かつてサイクロプスを繋いでいたのであろう金色の杭が、力任せに押し込まれる。巨大な瞳が涙目になったとて、アレクシアに容赦はない。こちとらもっと悲しくて切ない思いをしたのだ。あとそもそも、相手はオブリビオンなのだ!
「これも期待を裏切られた私の分!!」
更にアレクシアが片手をかざせば、倒れ込もうとしていた広間の石柱が、時を失ったかのようにぴたりと動きを止める。
続けざま、サイクロプスが呆気に取られる間もなく、念動力によって操られた石柱が美しい軌道のスイングを描き出し、怨敵の横っ腹を打擲する!
「そして、これも……」
目玉が飛び出そうな衝撃に、巨人が怯む間もなく。
「期待を裏切られた私の分よ!!」
最後のとっておき……力場そのものを収束させた、見えざる巨大な拳が、サイクロプスの顎に見事なアッパーカットを見舞う!
力場そのものの凝固とでも呼ぶべき、熟練のサイキッカーですら為し得ないであろう超高等技術を八つ当……もとい正義の行いのため、容易く引き出す練度。
アレクシア・アークライトの実力は、感情に任せたとて、第一級であった。
そして……ふらつき、足元の覚束ないサイクロプスの頭上へ。
瓦礫の山が、降り注いでゆく。
「あれ?」
特に放った覚えのない攻撃に、きょとんとした表情を見せるアレクシア。
そう……これまでさんざんサイクロプスが暴れまわった帰結として、上階の床が崩れ、そのまま瓦礫となってサイクロプスの脳天へ直撃したのだ。
「……それも、期待を裏切られた私の分!!」
特に狙ったわけではないのだが、思いがけぬ追撃にアレクシアが堂々と宣言する。
道中がトラップダンジョンであった以上、見ようによってはあれもまたダンジョンの立派な罠……迷宮主、己が迷宮に溺れる、というわけだ。
「――貴方の敗因、それは罠にだけ頼って、自分を磨かなかったことよ」
崩れ落ち、ダウンしてゆく巨体に背を向け、アレクシアが拳を突き上げれば。
ノックアウトを知らせるゴングが、どこからともなく鳴り響くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
星羅・羽織
最後も、大熊猫拳で、勝負。
敵も、私の、姿に、恐れる、はず。
なんと、言っても、ゴリラ、倒したから。
ポーズを、決めて、けん制。
ふふ、隙の無い、構えに、攻めあぐねてるの、バレバレ。
来ないなら、こっちから、いく。
たったった、しゅっしゅっしゅっ。どんどん、攻撃入れる。
さっきは、パンチで、痛かった。から、キック主体に、してみる。
(攻撃受けたら)……痛い。……結構、やる。
仕方ない。もっと、本気出して、あげる(魔女モードにチェンジ)
箒に、飛び乗って、飛び回る。
速度で、撹乱。目を、回して、倒れて?
……あっ(軌道がずれてサイクロプスの目玉に箒の先っぽが直撃)……ごめん。
どう動かしてもOK! かもんかもん!
ルク・フッシー
はぁ、はぁ…なんとか、災魔の所にたどり着きました…
あ、もう戦いが始まって…うわあ!(想像を越えた圧倒的暴力を目の当たりにする)
あ、あわわ…ボクなんかがここにいる必要、ないんじゃないでしょうか…(と言いながらも攻撃はする。近づいて【グラフィティスプラッシュ】を浴びせる)
…きゃっ!わあっ!…が、頑張らなきゃ…(狙われて情けない悲鳴をあげながらも、【ドラゴニアン・チェイン】を壁や天井に放ち素早く回避する)
●恐怖!! ダンジョンの奥地に少年は大熊猫拳を見た!!
猟兵たちがサイクロプスと……というより、サイクロプスが猟兵たちと死闘を繰り広げ始めてからしばらくした頃、息せき切って最深部へ走ってくる小柄な影。
「はぁ、はぁ……なんとかたどり着きました……」
みなさんご存知ルク・フッシーである。ご存知ないあなたは今すぐにでもご存じてほしい。喫緊を要する。
「あ、もう戦いが始まって……うわあ!!」
見上げた少年の目に映ったのは、圧倒的暴力。
蹂躙する側であるはずのサイクロプスが徹底的に叩きのめされる下克上。
それが数分前のこと。
誘惑に剣戟に念動力、バリエーション豊かなバイオレンスを目にしながら、自分が打って出る必要性にルク少年が疑問を覚えながら、残った石柱の影から戦場を見守る。
現在サイクロプスと相対しているのは、チャイナ服に身を包んだ小さな少女。
「くくく、恐ろしいか、この大熊猫拳」
第二階層に続きノリノリで、今度は悪の拳法家なんて演じてみながら、星羅・羽織がこないだカンフー映画で観た構えでサイクロプスと相対する。
ここまで凄絶な攻撃に晒されてきただけに、サイクロプスもこれには放心気味。
大きな瞳がぱちくりと瞬きをするたび、羽織がポーズを切り替えて牽制する。
「ふふっ……ゴリラも、倒した、究極拳法。隙の無い、構えに、攻めあぐねてるの、バレバレ。師父の、教えが、私を守る」
大熊猫の如く悠然と構えれば、羽織の背後にうっすらと浮かぶパンダのオーラ。
あるいは虎のように勇ましく構えれば、背後に浮かぶのは無論パンダ。
蟷螂のように低く構えれば、やっぱり背後にパンダ。
兎にも角にも、背後にパンダ。
「あ、あわわ……大熊猫拳……なんて恐ろしい……!!」
サイクロプスがポカンとする一方、パンダの圧倒的威圧感は影から見守るルクには効果抜群である。猟兵たちによる一方的な暴力が凄まじすぎて、だんだんルクの恐怖のリミッターが珍妙な振り切れ方をしつつあった。
「来ないなら、こっちから、行く」
羽織もまたいっぱしの猟兵なれば、先の戦いにおける知見を存分に活かす。
そう……ゴリラを拳で殴ったら痛かったので、今度は蹴ればいい!
「たったった……しゅっしゅっしゅ……どんどん」
口で効果音を発しながら、かわいらしくサイクロプスの脛を蹴り続ける。
いや、そこそこの力を込めた弁慶の泣き所への攻撃は、確かに地味に痛くはあるが。
さしものサイクロプスも途中で我に返り……なおも大熊猫拳に勤しみ続ける羽織めがけて、ゆっくりと、音もなく拳を振りかぶってゆく。
「……!!」
転瞬、羽織の前へと飛び出す小さな影がある。
ルクであった。
猟兵たちの実力は、圧倒的だ。もしかしたら自分の出る幕なんてないのかもしれないという考えも過ぎった。それでも彼は、恐怖を食いしばって前に出る。
どんな怯えも、恐れも。目の前で誰かが傷つこうとしているのを見過ごす理由には、ならない。立ち向かわない理由には、ならない。
今一度言おう。アルダワ魔法学園2年生、ルク・フッシー。彼もまた、猟兵である。
「ぼ、ボクにできることが、なくったってぇ!!」
それでも、やれることをやる。さすれば結果は、必ず返ってくるのだ。
飛び出したルクが愛用の特大絵筆をがむしゃらに振り放し、毛束に染み込んだインクをサイクロプスの巨眼めがけてぶち撒ける!
色鮮やかな【グラフィティスプラッシュ】の直撃は、目にしみるなどという生易しい威力を呈さない。ルクの色彩に染め上げられた巨体が、苦悶の呻きを漏らす。
「い、今のうちに、逃げてくださ……あれっ!?」
この隙に少女を逃がさんとルクが声をあげるも、大熊猫拳の伝承者の姿は消えていた。
否、正確に言えば……。
「敵も結構、やる。じゃあ、こっちも……」
今はもはや大熊猫拳の伝承者ならず……羽織はルクの、はるか頭上にて。
箒にまたがり、彼女の本領たる魔女としての姿へと変身していた。
「——もっと、本気出して、あげる」
真剣に表情を引きしめると同時に箒を軽くはたき、急加速。痛みに喘ぎながら地団駄を踏むサイクロプスの不意を突かんと、目を回すほど高速の空中機動へ移ってゆく。
「きゃっ! わあ!!」
他方、絶え間ない地鳴りと幾度となく振り下ろされる巨大な足にたまらず悲鳴を漏らすのは地上のルクである。一度ならず二度ならずあわや直撃、しかし目を瞑りながら逃げ回る彼は不思議と傷ひとつ負うことはない。当人すら気づいていないが、今しがた振りまいた【グラフィティスプラッシュ】のインクが地面にも塗りたくられ、その上を逃げ回るルクの身体能力を大幅に高めているのだ。
ようやくまともに怯えた様子を見せる侵入者と相対して自信が満ちたのだろうか。次第にサイクロプスの攻撃も勢いを取り戻し、剛腕が、足が休みなく振り回され、耳をつんざく咆哮が広間中に破壊をもたらしてゆく。
だが、結果から言えば……ルクは敵の気をひく囮としても、最高の役割を果たした。
「しょせんは、単細胞」
せめてルクだけでも叩き潰さんと、ひたすら彼一人を狙い始めたばかりに。
完全に背後を取った羽織にまで、サイクロプスはその神経を割けなかった。
「とっておきの、魔法を……」
真白い指先に魔力が集中し、小さな擬似宇宙が形成されてゆく。
羽織の十八番たる魔法をぶつければ、巨人の一人や二人、ひとたまりもない。
箒による縦横無尽の移動が、空中に魔法陣をも描き出し、魔法の威力をさらに高める。
「見せて、あげ……」
いよいよもって、魔法陣も最後の一画となった、その瞬間である。
そのいち。
サイクロプス、痺れを切らして巨体でルクを押し潰すべくボディプレスを仕掛ける。
そのに。
ルク、身の危険を察知して、天井へと【ドラゴニアン・チェイン】を放つ。
「わあああああぁぁぁぁっ!!!!」
そのさん。
天井へ飛びつこうとしたルク、勢い余って、サイクロプスの横っ面に直撃する。
そのよん。
ボディプレス直前の爪先立ちで体幹が不安定になっていたサイクロプス、ルクの直撃によって勢い余って後ろを向く。
そのご。
「あっ」
魔法陣を描き出すべく、最後の直線軌道を描く箒が。
まさしく目の前に躍り出てきたサイクロプスの単眼に、直撃する。
「…………ごめん」
予想だにしない追突事故に、思わず羽織も謝罪を口にする始末。
ただでさえしみるインクの痛みが抜けきっていない眼球へ、立て続けの一撃。
あまりの激痛に両手で目を抑え、地響きを起こしながらサイクロプスが悶え転がり始めたのも当然の結果であった。
「……ぁぁぁぁああああああ!!!!」
そして広間に響き渡る震動のため、ドラゴニアン・チェインのすっぽ抜けたルクが。
「ふぎゅっ!!」
「少年、きゃっち」
羽織の箒の上へと、落下する。
「ナイス、少年。さっきは、ちょっと、助かった」
羽織からルクへと向けられたのは、人懐こい、柔らかな笑み。
戦いはまだ、終わりきっていないが。星空の煌めきにも似たその美しい笑顔を特等席で目にできるのは、きっと、怖れに耐えて一歩を踏み出した少年へのささやかな報酬。
此度の迷宮探索によって刻みつけられた記憶への……あるいは、小さな癒しの魔法。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
チェイザレッザ・ラローシャ
あ、ここのボスー?
やー前の階層のやつ手応えなくてさー!
……お前は楽しませてくれるわよね?
眼鏡は壊れないように外しましょ。
別に伊達眼鏡だし平気よ、目は悪くない……
いいえ、良すぎるくらいだもの。
視線へ乗せる魅了の呪いは目を合わせればそれだけで侵食する。
まああんまどっぷり好かれたくないしチラ見程度でいいかしら。
少し動きを止めるだけでも十二分。
……ああ、前の階層の事は知らないっけ?
なら仕方無いわね、その身体にじっくり、教え込んであげる。
吸血鬼ってね、こわいのよ。
え?語尾にハートついてるみたいなかわいい声なのに威圧が強い?
そりゃ、愛込めてぶちのめしてあげるもの!
骸の海に自主的に帰りたくなるくらいの、ね?
●笑う門には、鬼來る
「あ、やっほー。ここのボスよね? やー前の階層のやつ手応えなくてさー!」
これより命の奪い合いを始めるとは思えぬほどからりと明るく、同僚に気さくに声でもかけるかのような調子でチェイザレッザ・ラローシャは笑う。
無論、当のボスたるサイクロプスの応答は、言葉ではなく力。
迷いなく振り上げられた拳は、まっすぐにチェイザレッザを捉えていた。
捉えて、〝いた〟。
「……お前は楽しませてくれるわよね?」
ほっそりとした白い指が眼鏡を外す優美な動作に相反した怖気が、巨人を襲う。
ものの一瞬、真紅に染まったその双眸。
〝こいつら〟の、ごく小さい、おまけに二つに分かたれた目が得も言われぬ寒気をもたらすことを、サイクロプスは散々に思い知らされていた。
苦し紛れであれ、チェイザレッザと目を合わさぬよう、巨眼を閉じたサイクロプスの選択は利口ではあった。元より狙って振りかぶった拳もまともに当たらぬ現状、がむしゃらに暴れ回るならいっそ視界を捨てるのは一定の合理性がある。
「ああ、前の階層のことは知らないっけ?」
だが、無駄な抵抗であった。
主導権はサイクロプスでなく、チェイザレッザにある。
彼女がかの巨眼をちらりと覗き見た時点で、勝敗は決したのだ。
「なら……その身体にじっくり、教え込んであげる」
甘ったるい声で敵愾心を包み込んで、チェイザレッザがゆっくりと巨体へ歩み寄る。
当のサイクロプスはといえば、目を閉じたまま身動きひとつ許されない。
【Devil Inside(デビル・インサイド)】。チェイザレッザにとって、視線こそが刃であり、呪いであり、視力なるものを持つあらゆる敵を縛りつける鎖。
この物語にあって、ガリバーの拘束はただ一人の手によって為される。
先の階層における圧勝を敵の身に刻み込むべく取り出されたるは、かの《Venus》。
引き金を引くと同時、星明かりひとつ届かぬ迷宮の最下層に、金星の熱が立ち上る。
全身を焼き焦がされど、動きを封じられたサイクロプスは唸り声一つ漏らせない。
ただ倒れぬことばかりが、その命の灯火が消えきってはいない証拠。
「あら、やるじゃない! 流石にこのぐらいじゃ倒れてくれないのね?」
上機嫌に、愛情さえ込めてチェイザレッザは賞賛の言葉を口にする。
焼いて死なぬなら、影の棘なし刺せばよい。
刺して死なぬなら、巨体に飛び乗り力任せに縊ればよい。
嫌味ですらなく、丹念に入念に、痛みと苦しみを塗り込んでゆく。
「窮鼠でさえ猫を噛むんだから。鬼を噛む気概ぐらい見せてよ」
その甘い囁きに答えたわけでもなかろうが、ようやく呪縛を解き放ったサイクロプスがチェイザレッザを叩き潰さんと平手を打つ。
頭へ、肩へ、腕へ、しかし縦横無尽に彼女は自らを捕えさせない。
「タフさは認めてあげるけど、ごめんなさい。今日はそろそろ仕事上がりよ」
文字通り、サイクロプスは必死だったのだ。
これ以上好きにはさせまいという意思すらなく、自分を脅かす敵を排除する。
ただ眼前の破壊に死力を尽くし、気を割いた、ただそれだけだったのだ。
肉体で、肉眼で、愚直に敵を正捉えんとした。
そして、それゆえに。
「あんたも、骸の海へお帰りなさいな」
巨大な一ツ目は、再び。
赤く染まる〝鬼〟の瞳と……目が、合ってしまったのである。
成功
🔵🔵🔴
ダンド・スフィダンテ
うーん……(他の猟兵にボコボコにされてるサイクロプスを見る。)
なんかこう……(他の猟兵に以下略)
一撃で葬れない怯えてる相手って、攻撃を躊躇するよな……いや、倒さなきゃいけない相手なのも分かってるんだけど……
よし。他の人間の支援に回ろう。
とは言え、何が出来るかなぁ。首まで跳びたい者がいれば、ぶん投げたりも出来るけど。
なあなあ、悪とはなんだろうか。
俺様は貴殿がさぁ、ただの幼い餓鬼にしか、見えないんだよなぁ。
せめて苦しまず、必要以上怯えずに、楽に死ねる事を祈るよ。
というのをギャグシナリオで言うのも、どうかと俺様も思うけどな!はつはっはっ!採用し難かったら見送ってくれよな!
●騎士ゆえに、君ゆえに
迷宮最深部に、静寂が訪れていた。
もはや暴れ狂う巨人の姿など、どこにもない。
残るのは瓦礫に埋もれ、その命を風前の灯火にさらす緑の巨体のみ。
猟兵たちの圧倒的力量により、戦いの雌雄は完全に決された。
「うーん……」
ひとしきり……あえて軽い言い方をするのであれば、猟兵たちにボコボコにされたサイクロプスをいささか遠目に眺める結果となった男が、一人。
ダンド・スフィダンテである。
もはや猟兵の側が征服者であり、恐怖と怯懦は悲しいかな、迷宮の主であったはずのサイクロプスの特権となった。故にこそ、ダンドは躊躇う。
一撃で倒しきれぬ程度の耐久力が、この敵にはあるがゆえに。
明確な敵である以上、弱いもの虐めとは決して言うまいが、それでも性分として、どうしても直接戦闘に加わることができなかった。
「つくづく、ここのミューズ達は俺様が手を貸すまでもなく頼もしいなあ……」
結果、戦いの最中に他の猟兵たちを支援するに徹する形での参戦。
怪力任せの機動力確保に一時退避の手伝い、エトセトラ。
振り返るだに、女性陣たちの戦いぶりもまた何と勇ましかったことか。
なお、第二階層に充満していたゴリーラ(ゴリラオーラの略称)によって狂っていた口調も今は元に戻っている。
「……悪とは、何だろうなあ」
答えが出ようもない議題とはわかりつつも、ダンドが口にする。
何千年かけたとて、いかな哲学者も明白な答えを出せてはいない。
それでも、悩まざるを得ない。生きているから。ダンドが人だから。
「俺様は貴殿がさぁ、ただの幼い餓鬼にしか、見えないんだよなぁ」
荒い息を吐き出すこともままならぬ倒れ伏した巨体へ、ダンドが歩み寄る。
敵意はない。とどめを見舞うまでもなく、数分と経たずにこの巨人が骸の海へ還ってゆくであろうことを、ダンドの経験が物語る。
ただダンドは、眼前の怪物が……少しだけ、哀れだった。
「すまんな」
手を貸すまでもなくとも、女性は大切にしたいし、当然守らんとする。
心が通うかもしれないと感じれば、災魔にでも会話や意思疎通を試みる。
そして可哀想だと思ったなら、相手が何であれ、憐れむ。
ダンドはただ、己らしく生きているのみ。
「迷っておいて何だが、俺様は、貴殿に特別何かをしてやれるわけではないんだ」
神秘とも呼ぶべき大きさの単眼は、いまだうっすらと見開かれ。
しかし力なく、〝目前〟に跪いたダンドを見つめる。
「でもせめて」
屈むまでもなく見上げる巨体の前であれば、当然、跪く必要などない。
これもやはり、ダンドがただそうしたいと思ったゆえの行い。
「貴殿が楽に逝けることぐらいは、祈らせてはくれないか」
サイクロプスは知らない。
暴力と破壊のほかに、自らの感情を表す術を。
猟兵という外なる存在の、手に負えぬ埒外の強さを。
そしてまた、時に彼らが当然人として持っている、優しさを。
眼前の騎士の行いの意味を、理解したわけではないのだろう。
斯様に悪趣味な迷宮にて、祈りが届くなどという神秘が起きたわけでもない。
だが……やはりただ、厳然たる事実として。
一人の優しい騎士を前にした巨人は、最期の力で拳を握ることはなく。
ただ穏やかに、目を閉じたのだ。
「一件落着、か」
ダンドの呟きが広間に響く。迷宮の主は骸の海へ還り、正真正銘、戦いは終わった。
敵にいかなる感情を覚えたとて、あれが世界の敵であることも厳然たる事実。
オブリビオンは放っておけば、必ず世界そのものに仇なし、多くの人々を傷つける。
この迷宮を放置すれば、無辜の人々が苦しめられる最悪の結末とてあり得た。
全てを捩じ伏せる猟兵たちの行軍が、未来を救ったのだ。
「これで……」
だから、そう。
「……もう誰も、傷つくことはないだろうよ」
もはや誰一人も、この迷宮において辱められることも、仇なされることもないのだ。
誰も。
何者も、決して。
●
後日。アルダワ魔法学園、とある教室にて。
「なあなあ、お前、知ってるか?」
「まーた女傑伝説の話か? 好きだねえ。伝説っていうより与太話の類だろ、あれ」
「違う違う! 今度はもっとすごい話だって!」
「もっとすごいって、どういう風に?」
「今度は実話なんだ! 下劣で最悪な迷宮を勇猛果敢に叩き潰した、猟兵たちの話さ!」
猟兵によって新たな「伝説」を生み出されたことを、当人たちが知るかどうかは。
諸氏の想像に、お任せすることとしよう。
成功
🔵🔵🔴