獣人世界大戦⑬〜エバーチェンジリング・ソング
●変わりゆく
過去は変わらないが、歪む。
次々と骸の海に送られてくる過去の堆積によって形は歪に歪む。
故にオブリビオンは過去の化身でありながら、嘗てあった姿であれ、過去にあった性質であれ、変化する。
それが強みだと言われたのならば、そうなのだろう。
現に。
強大なオブリビオンとはそういうものであった。
不変の化身でありながら、普遍の化身。
しかし、渾沌氏『鴻鈞道人』はオブリビオンではない。骸の海より滲み出る存在ではなく、骸の海そのものであると語った。
生きる者が踏みしめてきたすべての過去である。
ならば、その力の一端を持ち得るコンキスタドール『有頂天道人』は如何なる存在か。
「カカッ……一度はしてやられたが、二度目はない」
彼は義体化によって得られた半身と渾沌化した半身を以て、立ち上がる。
「しかしまあ、やるものだ。六番目の猟兵。先の戦いは前哨戦である事を差し引いても、俺をあそこまで追い詰めるとは」
一度目は須弥山型都市の天頂、有頂天天蓋での戦い。
そして、二度目の戦いは、ここ人民租界である。
彼は圧倒的な暴力と智謀をもって人民租界のサイバーマフィアたちを統率していたのは、全ては彼の『師父』の命のためである。
「『はじまりの猟兵』の居場所……すでに『師父』により目星はついている。だが、鬱陶しいのは、やはり六番目の猟兵共か。カカッ! いいだろう。リベンジマッチというわけだ!」
未だ時間はある。
彼は己が右半身、その渾沌化した白き天使の翼を羽ばたかせ、さらには白きおぞましき触手へとうねらせるように変貌させ、白き無謀の牛頭を現出させる。
そして、白き殺戮の刃を生み出し、不規則な変化を見せつける。
「来るが良い、六番目の猟兵よ。お前たちが来ることは百も承知。故に貴様らを打倒し、『師父』の望む『はじまりの猟兵』へと迫るとしようではないか! カカッ――!」
●獣人世界大戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ついに獣人世界大戦も第二戦線へといたりました。すでに多くの猟兵の皆さんが戦いに参じてくださっている故、ここまで大きく戦線を押し上げることができました」
だが、戦いはまだ終わっていない。
第二戦線は謂わば中盤戦である。
ここに来て須弥山型都市にて一度姿を現したコンキスタドール『有頂天道人』が人民租界に姿を現したのだ。
彼はサイバーマフィアを統率している百戦錬磨のコンキスタドールである。
「『有頂天道人』と二度目の交戦となりましょう。彼は須弥山型都市の有頂天天蓋にて現れた時とは異なり、その渾沌化した右半身による不規則で予測不能なる不意打ちを躊躇なく使ってきます」
それは容易ならざる戦いであろう。
元々、戦闘義体化、サイバー化により『有頂天道人』は虎獣人以上の膂力と速度を兼ね備えたコンキスタドール。
さらに今回は予測不能な渾沌化による不意打ちに対処しなければならない。
「まるで予想もつかない不意の一撃は、先制攻撃よりもある意味厄介でしょう。即ち、それは後手に回っても彼が千変万化たる一撃を皆さんに叩き込むことができるということです」
ですが、とナイアルテは付け加える。
彼女には『有頂天道人』の予測不能なる不意打ちの一撃は予知できない。
しかし、勝利への道筋が見えぬわけではない。
「不意打ちは確かに恐るべき者。後の先とも言うべきカウンターじみた挙動を示すでしょう。ですが、それは敵に翻弄されればこそ、最も皆さんを追い込む一手。即ち」
そう、不意打ちをされたからとて、翻弄され、冷静さを失わなければ次なる猟兵たちの一撃は叩き込むことができる。
ならばこそ、対処の仕方は猟兵たちがそれぞれ持ち得るものであろう。
「恐るべき敵です。渾沌化……あのおぞましき力はを持ち、さらには戦闘義体化という基礎に裏打ちされた『有頂天道人』の力は皆さんを追い詰めるでしょう。ですが、私は信じております」
その恐るべき力も一度は乗り越えてきているのだ。
ナイアルテは知っている。
死にも勝る恐るべき力であろうとも、それで立ち止まる猟兵はいないのだと――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『獣人世界大戦』の戦争シナリオとなります。
人民租界にて立ちふさがるコンキスタドール『有頂天道人』。
彼はサイバーマフィアたちを統率する恐るべき暴力と智謀の化身です。
戦闘義体化による膂力と速度を軸に、右半身の渾沌化による予測不能の不意打ちを皆さんに仕掛けてきます。
その一撃はまさしく人知を越えた不意打ちでしょう。
これに対処するには、例え不意打ちをされたとて翻弄されぬように、冷静な立ち回りが要求されます。
この恐るべき一撃へ対処し、勝利を掴みましょう。
プレイングボーナス……「渾沌化」から放たれる予測不能の不意打ちに対処する。
それでは、超大国をも巻き込んだ獣人世界大戦にて多くを救うために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『有頂天道人』
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POW : サイバネ殺法 undefined cyberne
【機械化義体でカンフー技】を放ち、命中した敵を【undefined】に包み継続ダメージを与える。自身が【中国拳法の構えを】していると威力アップ。
SPD : サイバー渾沌拳 undefined kungfu
【サイバー化した肉体】と【渾沌化した肉体】を組み合わせた独自の技能「【サイバー渾沌拳】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
WIZ : 渾沌波動弾 undefined aura
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【undefined】を放つ。発動後は中止不能。
イラスト:松宗ヨウ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神酒坂・恭二郎
さぁて、第二ラウンドと洒落こもうか『有頂天道人』!
今回もタフな勝負になりそうさね
対策
予測不能な不意打ちに対し、刀をだらりと下げて脱力した無刀の構えで応じる
相手の動きに予測も対応もしない【覚悟】を試される構えだ
ギリギリまで冷静に見極め、風桜子を刀に大きく纏わせ巨大な「風桜子刀」を形成し、その一撃を根こそぎ巻き上げる【見切り、衝撃波、武器の巨大化、受け流し】
細かく対応出来る攻撃じゃないんで、ちょいと雑にやらせてもらおう
反撃
渾沌化を凌いでも、まだ戦闘義体による攻撃は脅威
ならば、剛を以て剛を断つ
「絶ッ!!」
サイバネ殺法に対し、渾身の「片手一本突き」をぶつけて勝負といこう【覇気、鎧無視攻撃、急所突き】
須弥山型都市の天頂、有頂天天蓋での戦いは猟兵に軍配が上がった。
一度の敗北は二度目の敗北への布石たり得るだろうか。
「否。断じて否よ! カカッ! 一度の勝利が貴様たち猟兵に与えた手向けよ! これより俺の速度、そして変幻自在なる一撃をもって、その生命を散らし、過去になるがいい!」
コンキスタドール『有頂天道人』の裂帛たる気合。
その言葉に偽りはない。
迫る重圧に一度目以上の物を感じながら、神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)もまたしかし不敵に笑む。
「第二ラウンドと洒落込もうか『有頂天道人』!」
「意気や良し! だが、それでどうにかなるものではないと知っているな、猟兵!」
恭二郎は、その言葉に構える。
いや、構えを解いた。
だらりと力の抜けた手足。
かろうじて刀の柄に指が掛かっている程度のものである。
無防備。完全なる無防備である。
「今回もタフな勝負になりそうさね」
「言う事とやることが一致していないぞ、猟兵! それで俺の拳を受け止められるか!」
サイバー化と渾沌化。
半身にそれぞれ二つの力を宿し、渾然一体となって迫る『有頂天道人』。
サイバー化に寄る速度と膂力。
そして、変幻自在たる渾沌化による予測不能なる一撃。
これを持って一撃の決着と相成ることは言うまでもなかった。
だが、だからこそ恭二郎の瞳には諦観はない。
「言っただろ、タフな勝負になるってな」
迫る予測不能なる渾沌化の一撃。
千変万化たる渾沌お右半身は、その白く濁った異形をもって恭二郎へと迫る。
「しゃらくさい真似を!」
彼を覆うは嵐の如き一撃。
おぞましき触手によって四方八方から迫る回避不能たる一撃。
これを京次郎は己が刀に纏わせた風桜子を振るう。
大きく、多くをえぐり取る太刀筋。
その一撃は四方八方から迫る異形の触手を根こそぎ巻き上げる一撃だった。
「全て切り払うかよ!」
「ああ、どこから来るかなんてわかっちゃいない。確かにあんたの一撃は予測不能なんだろうさ。だが、一点。そう、ただの一点! 不意打ちという点だけが俺たちにはわかっている。ならば!」
雑にやるのさ、と恭二郎は己が刀をふるった脱力からの加速でもって手にした刀を振るう。
「その身に宿した義体は、剛の力。ならば、剛を以て剛を絶つ!」
ユーベルコードの輝きを宿した恭二郎の瞳が『有頂天道人』を捉える。
片手一本突きによる念動衝撃波。
その一撃が最速にして最短たる一撃となって『有頂天道人』へと突き出されるのだ。
だが、『有頂天道人』もさるものである。
義体化した瞬発力で持って一撃を受け止めたのだ。
「勝った……!」
「いいや、その勝利の確信すら、絶ッ!!」
捻り突き(ネジリヅキ)が螺旋状に超圧縮された風桜子と共に『有頂天道人』のサイバネ殺法、サイバー渾沌拳と真っ向からぶつかり、その火花を散らす。
凄まじいまでの衝撃と散る桜の花弁の如き粒子が舞い散る中、恭二郎の一撃は『有頂天道人』の渾沌化した右腕を穿ち、さらには巻き込むようにして獣人の体躯をも切り裂くように傷つける。
血潮が溢れ、恭二郎は迫る嵐の如きおぞましき触手を切り裂きながら彼が言ったようにタフな勝負を制するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:四天霊障
ふむ、やはり殴り合いたい相手なのよな、こやつ。
ゆえに!わしは!四天霊障にて全身を包みグローブ代わりにして殴る。
機械化義体の方は見切って避けて、さらにUCによる殴打で…。壊れとらんか?(機械壊す人)
問題はその不意打ちよなぁ。
だが、不意打ちするということは…四天霊障の探知に引っかかるのよな。あと、おそらく…あやつから離れてはおるまい。
そうなれば、戦闘知識からくる第六感から避けられよう。内部の三人が黙っておるわけもないから、三重(風、氷雪、重力)属性の衝撃波攻撃もいきそうであるが。
猟兵のユーベルコードが輝く。
その明滅する光は戦いの光である。
獣人世界大戦において、幾度となくまばゆく輝く光。
戦いはいつだって人を惹きつける。忌避しなければならないものであると知りながら、しかして誘蛾灯のように人を惹きつけてやまぬのだ。
「ふむ」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『侵す者』は頷く。
コンキスタドール『有頂天道人』。
その智謀、暴力を以てサイバーマフィアたちを統率する恐るべき獣人。
知っている。
一度、須弥山型都市の天頂にて相まみえたのだ。
猟兵たちと共に戦い、これに勝利を一度は収めた。しかし、二度目の再戦もまた一度目と同様に勝利を収められるかと言われれば、それは運命のみが知るものである。
「やはり殴り合いたい相手なのよな、お主は」
「そうか。カカッ! 力を求め、武を磨きたいと思うのは、男の性よ! なれば、来やれや、猟兵!」
『有頂天道人』の右半身が蠢く。
白く濁った体躯。
それは渾沌化によって得られた変幻自在にして千変万化たるおぞましき力。
どんなものにも変わる。
定義できぬ一撃は予測不能なる不意打ちの一撃となって、その殺戮の刃を『侵す者』へと叩き落とす。
頭上よりの一撃。
それも一撃ではない。一撃の内に数十にも及ぶ斬撃が『侵す者』を襲う。
「対応できるかよ、猟兵!」
「なんの!」
握りしめた拳に霊障たるグローブを形成し『侵す者』は迫る数十の刃を打ち据える。
全てを迎撃せしめたとしても、迫るサイバー化した半身による速度、膂力を得た本命たる『有頂天道人』の一撃。
横合いから叩き込まれる凄まじい一撃。
体躯に衝撃が走る。
己が脇腹が薙ぎ払われたのかと思うほどの殴打。
それにこみ上げるものがある。
己が霊障に引っかかれど、その反応を上回る圧倒的速度による殴打。
速度のみにあらず。
一撃の重たさもまた規格外。
「ぐっ……ふっ……ふふふっ! ハハハハッ! そう来るか、そう来ると思っておったよ!」
「なに?」
「不意打ちは予測不可能。されど、不意打ち。我等が感知に引っかからぬほどの速度なれど、その一撃が叩き込まれる瞬間だけは感知できよう! 故に!」
第六感など無意味。
予測不能なるのだ。
故に、『侵す者』は笑ったのだ。
この一撃は重たい。けれど、己が一人ではないのだ、この体躯は。
内に四柱を含めた体躯。故に、己が意識を刈り取る一撃であったとしても、他の三柱が反応する。
「黙っておるわけがないのよな!」
ユーベルコードに輝く瞳。
殴打の一撃は肉を斬らせた。骨身にもしみるものであったが、しかし骨は砕けていない。
「骨子が保つのならば!」
四悪霊・『怪』(シアクリョウ・アヤ)が迸る。
呪詛となって走るユーベルコードの力は逃れようとする『有頂天道人』の体躯を掴み上げ、その生命力を奪う。
「負けはせぬよ!」
そこに『侵す者』は踏み込む。
血反吐撒き散らしながら、それでもなお、その拳を『有頂天道人』へと叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
不意打ちがあるとわかっているが、そのタイミングがわかんねぇ、ってやつか。
でも、やりようはあるな。
UC使用しつつも、有頂天道人をしっかりと目前に据える。…渾沌化の一撃は絶対にヤツの右半身から来るようだしな。
だからこそ…金翅蝶が切り裂き、凍炎不死鳥が燃やして凍らせようさ。
それにな!やっぱり俺様とて殴りたいんだよ。今や、肉弾戦は俺様の一部だからな!
さっきの刻んだ渾沌化のやつも、復活してるだろうが関係ねぇ。
まっすぐいって、ぶっ飛ばす!今度は尾の一撃だけでなく、足も…蹴りも行くけどな!
千変万化たる渾沌化。
それは予想できぬものである。
如何なる攻撃が迫るのか、直前までわからない。いや、直前を過ぎたとしても、己の体躯に攻撃が打ち込まれて初めて、それと知ることができる。
故に不意打ち。
コンキスタドール『有頂天道人』は真に恐るべき敵であった。
迫る猟兵達の一撃を受けながら、しかして彼は笑ったのだ。
「カカッ! これは功夫が捗るというものよ! なあ、猟兵!!」
獰猛に笑う獣人。
虎の牙を見せつけながら、戦いの惨禍に踏み込むことをこそ是とする者。
その迫る濁った白を纏う渾沌化した右半身。
「不意打ちは確実。だが、そのタイミングがわからんねぇってやつか。でも、やりようはあるな」
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)の言葉にまた『有頂天道人』は笑った。
「ならば、やってみせろ! この俺を止めれられるのならばな!」
サイバー渾沌拳。
その構えに一部の隙もない。
ヌグエンは『有頂天道人』を見据える。
敵の渾沌化は右半身。左半身は義体化、サイバー化しているがゆえに変わることはない。となれば、攻撃が来るのはどうあがいても右半身を起点とするもの。
ならばこそ、己はまっすぐに敵を見据える。
瞬間、横薙ぎに衝撃が走る。
一撃を受けた、と認識した瞬間、凍れる炎でできた雲を突き抜け、さらには金翅蝶をも吹き飛ばしながら白く濁った渾沌化の拳がヌグエンに叩きつけられていた。
凍らされようが、燃やされようが、千変万化たる渾沌には意味をなさない。
不定義ゆえに、凍ることも燃えることも全てが同一であるからだ。
だが、ヌグエンは衝撃を感じながら思った。
戦うのならば、やはりステゴロだろうと。
眼の前の『有頂天道人』だってそうだ。
これまで培ってきた練磨がある。ならば、そこに不意打ちという一打があれど、直接殴り合いたいと思うのが常である。
「やっぱりな! 俺様と同じ考えかよ!」
「然り! カカッ! 似通ったことを考えおるわ!」
凍れる炎の稲妻が降りしきる中を『有頂天道人』はヌグエンへと一直線に迫る。
身に走る衝撃を生命力活性化作用のある凍れる炎の雨で癒やしながら、ヌグエンは踏み込む。
「なにせ、今や肉弾戦は俺様の一部なんだからな!」
「その意気や良し! と言おうか! ならば受けろよ、このサイバー渾沌拳の真髄を!」
振るわれる拳と拳。
激突し、骨身が砕けようとも構わない。炎の雨が癒やしてくれる。
それはまるで矛盾存在(ツメタクテアタタカイモノ)であった。
「まっすぎって、ブッ飛ばす!」
激突する拳と拳の最中に尾や襲撃が『有頂天道人』へと迫る。
互いに肉弾戦を得意とする者同士。
打ち合う音は鋼鉄が激突するかのようであったし、また彼らの唇の端にはどうしようもない喜びが満ちていただろう。
対等に戦える。
勝利するためであることは当然。
されど、己が武を、暴力の尽くを、受け止めぶつけ合うことができる。
「やっぱ、男は|これ《拳》だよなぁ!」
ヌグエンは拳を再度握り固め、その一撃を『有頂天道人』へと叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
レヴィア・イエローローズ
渾沌化……これが骸の海そのものを名乗る存在のUCね
しかし……『対象の性質を全て無視して空間を削る格闘術』を前に、意味はあるのかしら
そんな風にブラフを張りながら――黄薔薇の黒檀杖と黄薔薇の白夜杖で過去属性と未来属性を抽出
未来を予測し不意打ちを観測し、喰らったという『時間軸を破却する』事で対応
更に反撃として空間を削り取る掌底を渾沌化した肉体に叩き込み、空間諸共削り取って行く
とはいえ、渾沌化した以上は増幅して埋め合わせる事も出来るのでしょうけど――サイバー化した方を狙いながらやればわたくしは持久戦で勝ちを拾いに行けるわ
トドメに、サイバー化した肉体に貫手を放つ
渾沌化。
それは恐るべき力である。
如何様にも変化する白く濁った体躯。しかして、定義することはできない。
それが何であるのかを理解できない。
時には翼のようであり、時には刃のようであり、時にはおぞましき触手であり、時には無貌の牛頭。
それが渾沌化が見せる僅かな一端でしかない。
あれらは全てが氷山の一角。
定まらぬものを定義するのが人の知性であるというのならば、あれらは全てを無意味にするものであった。
全てがあるからこそ、全てではない。
矛盾めいた言葉すらも意味をなさない。
「ならば、骸の海そのものを名乗る存在のユーベルコードであるのは……」
レヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)は告げる。
己が手繰るは対象の性質を無視して空間を削る格闘術である。
対するはコンキスタドール『有頂天道人』。
構えるはサイバー渾沌拳。
カンフーと義体化、加えて渾沌化。
これらを渾然一体となす拳法である。
「この私の格闘術を前に、意味はあるのかしら」
「カカッ! ちょこざいな理屈は要らぬよ、猟兵! ただ拳の殴打のみによって決着するものよ、この戦いは!」
レヴィアの言葉はブラフであったが、事実である。
敵の動揺を誘うなど盤外戦術ではない。
これは己が存在と敵の存在を賭けた戦いなのだ。なれば、レヴィアは己ができることを全て引き出す。
手にした黒壇の杖と白夜の杖を構える。
過去と未来。
その属性を抽出し、己が未来を得る。予測不能なる不意打ちの未来を観測すれど、しかして可能性に満ちる未来から千変万化たる渾沌の一撃を全て得るのは難しいだろう。
故に、迫る渾沌化たる右半身の一撃をレヴィアは己が身で受けることになるのだ。
だが、次の瞬間、時間軸を破却することによって一撃を受けたという過去そのものを削り取る。
「なかったことにしたか、カカッ! だが、それだけではな!」
「ええ、でしょうね。ですからこうするのです。我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは万象の理を無視し削り取る女王の御手。触れた存在の行方を誰も知らぬ事だけが理である」
踏み込む。
互いに距離は至近。
間合など在ってないようなもの。
ならば、レヴィアの掌底たる一撃が『有頂天道人』の渾沌化した右半身を削り取る。
空間そのものを削り取る掌打。
それは渾沌化であろうと削り取るもの。
空間が削れ、生じた空間歪曲、空間断層をレヴィアは蹴って飛ぶ。
この一打で決まるわけがない。
渾沌化は代わりゆくものであり、また定義できぬもの。右半身という定義すら定まらぬというのならば、その穴を埋めて然るべきもの。
故にレヴィアは左半身。
その義体化たる変わりようのない部分へと掌底を叩き込むのだ。
「カカッ! 狙いを絞ったか。だが、それは」
「ええ、持久戦。渾沌化が如何なる力かわからずじまいですが、それでも積み重ねていけば良い。道は轍を刻むもの。わたくしの後に続く者が、必ずやあなたを打倒するでしょう」
故に、とレヴィアは義体化した半身を守るようにして戦う『有頂天道人』を追い詰め、その渾沌化した右半身を空間ごと削り取るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
鳴り響く自作宝貝・縛作八音盒は戦場上空で黄巾力士が抱えてオーラ防御で庇う
自分は風火輪で敵目前へ
宝貝能力
有頂天道人の攻撃意思を受け無作為変異する混沌化能力のうち
伝達する変異作用部分を音で阻害
結果混沌化の発動を封じる対混沌化専用音波兵器
一巻で一刻鳴り響く
「さて、何度目かの再戦をいたしましょう。…我が名は迅雷公。貴様を屠る妖仙ぞ」
拱手し嗤う
全身に仙術で雷属性纏う
仙術+功夫で縮地(短距離転移)し接敵
敵の打撃や蹴撃は功夫の組手の要領で捌きながらサイバー義体にもダメージ蓄積させる
二連脚から回し蹴り
震脚から寸勁
寸勁数打から肘打ち裏拳回し蹴り
空中機動+功夫の軽身功で敵の攻撃の上に乗り前蹴り
等0距離連打を続ける
コンキスタドール『有頂天道人』は脅威なる力を振るう。
右半身の渾沌化は無論のこと。
鍛え上げられた獣人の体躯に左半身をサイバー化に寄る義体化によって、さらなる膂力と速度を兼ね備えている。
否、兼ね備えているというのは語弊がある。
渾然一体となっているのだ。
千変万化たる不定義と定義された義体。
これらを重ね、合わせ、さらには一つの拳へと変貌させている。
即ち、サイバー渾沌拳。
これこそが『有頂天道人』の至りし道の一つ。
「さて、何度目かの再戦をいたしましょう」
「カカッ! 次から次へと……応、これは妖仙か。名を今一度聞こうか!」
「我が名は迅雷公。貴様を屠る妖仙ぞ」
鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は拱手でもって相対する。
不意打ちの一撃があると知りながら、しかして礼節を重んじる。
その態度に『有頂天道人』もまた拱手でもって応える。強敵と相対するのだ。弱者と相対するわけではない。
なればこそ、そこに礼儀は必須であった。
だが、礼儀、礼節満ちれど、それを塗りつぶすのは必滅たる相手への敬意以上の殺意である。
冬季は簡易宝貝の創造(カンイパオペイノソウゾウ)を為す。
素材なくとも、理屈なくとも、想像力と仙術でもって生み出す宝貝。
一時しのぎであれど、しかし己が信じる無敵……即ち、渾沌化を阻害する音波兵器を生み出していたのだ。
鳴り響くは音。
渾沌化を封じる専用宝貝。
されど、残るはサイバー化、即ち義体化能力である。
「ほう、渾沌化を封じる宝貝か。面白い」
「これで五分、とは言いますまい」
「カカッ、高く見積もったものだ! ならば、受けよ。渾沌化封じられてなお、我が拳に精彩を欠く、という言葉はないのだと!」
裂帛の気合は轟雷にかき消されるようであった。
冬季は全身に雷を纏いながら雷の速度で持って踏み込む。
だが、『有頂天道人』の速度は、それに匹敵するものであった。
一瞬の内に打ち合うは数合。
激突した拳と襲撃が互いの躯体を打ち据える。衝撃がだけが宙に走り、残像の如き姿が微かに見えるばかりである。
人民租界の大地を割らんばかりの驚天動地たる戦い。
「カカッ! 面白いな、妖仙よ! これぞ戦いだ! これぞ、求道の一打というものよ!」
「恐るべき功夫。されど、その拳は幾度見たことか!」
連脚からの回し蹴り。
謂わば、それはジャブとストレート。
拳か蹴撃かの違いでしかない。相手のガードを跳ね上げさせるほどの切り裂かんばかりの一撃。
『有頂天道人』はしかし、構わずに踏み込む。
義体化によって強化された踏み込みの一撃は冬季の体躯、その胸を穿つかのような強烈な殴打。
槍撃が背に走り抜ける。
痛みが、吐血によって認識される。
されど、踏み込む。
大地震わせるかのような踏み込み。伝えられる震動は『有頂天道人』の体躯を捉え、瞬間、何千、何万となく繰り返されてきた体躯の動きを以て放たれる寸勁の一打を打ち込む土台へと変貌する。
大地から流入する力。
大地が己を押し上げる感触。
その力が流動し、己が拳より放たれる。加えて、肘打ち。勁はインパクトの瞬間、その触れる面積が小さければ小さいほど強大な力となって発露する。
圧力と同じだ。
凄まじい衝撃と共に『有頂天道人』の体躯がくの字に折れ曲がった瞬間、裏拳と回し蹴りが叩き込まれ、そのゼロ距離戦闘を以て冬季は互いの殴打の応酬によって、滴る血潮を振りまきながら、『有頂天道人』を打ちのめすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
《神性解放》発動
チャイナドレスで太極拳の構え。
「サイバー化」と「渾沌化」という事は通常の功夫とは異なる動きや間合いを可能とする筈。
UC効果に加え、太極拳による防御と(最近開眼した)八極拳による攻撃をシームレスに繋ぎ、第六感・心眼で相手の動きを予測し、功夫・見切りで躱したり、功夫・受け流しによる化勁で上手くいなして対応。
オーラ防御も纏います。
不意打ちに対しては、心眼・第六感でタイミングを予測し、武器巨大化した二つの天耀鏡を背後から側面を覆うように配置。
更に結界術・高速詠唱の防御結界構築で凌ぎます。
カウンターで神罰・雷の属性攻撃を籠めた猛虎硬爬山(UC効果・功夫・衝撃波・貫通攻撃)を撃ち込みます!
コンキスタドール『有頂天道人』との戦いは熾烈なるユーベルコードと、鍛え上げられた体躯の激突を以て推移する。
大地は砕け、割れる。
宙を舞うは大地の破片とユーベルコードの明滅。
その最中にありながらひときわ目を引くのは『有頂天道人』の右半身である。
渾沌化。
濁った白。
その力は変幻自在。
予測不能なる不意打ちの一撃を可能にする恐るべき力である。
「カカッ! やれる、やってくれる! 猟兵! 俺が功夫を持ってしてもなお、ここまで追いすがるか!」
構えるはサイバー渾沌拳。
サイバー化たる義体と渾沌を渾然一体と為す恐るべき拳法である。
退治するは、新緑のチャイナドレスをはためかせる大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)であった。
太極拳の構え。
それは激しさのない、ゆったりとした緩慢な動きである。
しかし、揺れ動く柳のように『有頂天道人』の恐るべき一撃をいなし続けていたのだ。
若草のオーラ。
己に危害を加えんとするもの全てを浄化消滅させるオーラである。
これをもって彼女は『有頂天道人』の不意打ちの一撃を防いでいたのだ。
「人々を、世界を護るため、全力でお相手致します!」
「神性が驕るかよ!」
「いいえ、これこそ真の世界を護るための戦いです! そのためには!」
呼気をゆっくりと吐き出しながら、詩乃の腕が動く。
体躯はなめらかに動きながら、迫る一打を流水の如く受け流すのだ。
「見事な受け流しだ! だがよ、それで俺のを討てるものか!」
確かに詩乃の太極拳は練り上げられたものであった。見事と言っても良い。
だが、それは防御に関して、である。
攻め手に欠ける。
それ以前に『有頂天道人』の攻勢を凌ぐので精一杯だったのだ。
無理もないことである。
『有頂天道人』は獣人の体躯だけではなく、義体化による膂力と速度を強化している。加えて、渾沌化である。
気を抜けば、それだけで押し込まれると詩乃も理解していたのだ。
「故に、この一手です!」 巨大化した二つの天耀鏡が迫る白濁の触手の一撃を受け止める。
だが、それは『有頂天道人』にとって必殺の一打の布石。
「防ぐ手立てを使ったな、猟兵! ならば、この一打で沈め!」
「いいえ、あなたは誘い込まれたのです! この一打は防御にして攻撃! 一連の動作こそ虎の爪の如く!」
詩乃の掌打の一撃が迫る『有頂天道人』の打突をいなし、しかし、いなす動作と連動して彼の顔面をひっかくように打ち据えるのだ。
その一撃は周囲に衝撃波を生み出す。
彼女の勁だけではない。
世界と人々を守りたいという想いを受けたユーベルコードの一打であった――。
大成功
🔵🔵🔵
皐・芽衣
お主は渾沌化、そしてサイバー化。
なら、わしが武器を持つのも異論あるまいな?
これも[功夫]、そうじゃろ?
……参る!
【神羊拳・器械套路『雷霆万鈞』】で攻める。
機械に混沌の肉体。電撃への耐性は、どこまであるかの?
マヒしたら、機械はまともに動くのか?
痺れた肉体は変形出来るのか?
試してやろう!
徒手空拳の間合いには入ってやらん。
[電撃・マヒ攻撃]で牽制し、痺れた部分を[見切り]、そこから崩していく。
渾沌化による不意打ちも、マヒしておれば効果半減じゃな。
距離を詰められれば[ぶん回し]て[吹き飛ばし]。
隙があれば、[仙術]による[怪力]を使った[部位破壊]も織り交ぜていこう。
二度目の勝負も、ここで決着じゃよ!
猟兵の一打が虎の爪のようにコンキスタドール『有頂天道人』の顔面を捉える。
痛烈なる一打にたたらを踏むようにしてよろめく体。
しかし、その体躯は倒れない。
なぜなら、彼の右半身、渾沌化たる濁った白の不定形にして不定義が蠢き支えたからだ。
「くっ、カカッ! 愉快だな! ここまで俺を追い詰めるか! このサイバー渾沌拳を手繰る俺を!」
「恐るべき敵よ。渾沌化とサイバー化。二つを綯い交ぜにしながらも平行励起するとはの」
『有頂天道人』の前に現れるは、瑞獣にして仙人。
そして、神羊拳伝承者。
その名を。
皐・芽衣(金色一角のメイメイ・f35724)と言う。
尖角もつ瑞獣たる彼女は偃月刀と宝貝たる赤縄を手にして構えていた。
「よもや、わしが武器を手にしていることに異論はあるまいな?」
「無論よ! 得物なぞ、武を収める者の手の延長線上に過ぎぬわ。無手の相手に武器を手に取ることを卑怯と謗る軟弱者といっしょにしてくれるなよ、猟兵。これは――」
「そうじゃな。これも功夫、そうじゃな?」
「応ともよ!」
「ならば、参る!」
ユーベルコードが明滅する。
手にした偃月刀を振り回し、赤縄がほとばしらせるは雷光であった。
空を切り裂くような雷鳴と共に雷撃が『有頂天道人』へと迫る。
身を穿つ雷撃。
されど、その一撃が右半身の渾沌化によって防がれていた。
「考えることは同じだな。我がサイバー化した義体を狙うか!」
「なるほどの。渾沌化によって咄嗟に覆って防いだか! ならば!」
しかし、次の瞬間芽衣の背後から迫るは渾沌化の不意打ちの一撃。
背を打ち据える一打。
それは殺戮の刃であった。
だが、これが一打で終わったのは芽衣のユーベルコード故である。
彼女の放った雷撃は確かに防がれた。しかし、放たれた雷撃は確かに『有頂天道人』の体を麻痺させていたのだ。
僅かにズレた挙動。
不意打ちはただやみくもに敵の死角から攻撃を放てばよいというものではない。
不意を打つのならば、狙いすまさねばならない。
その狙いがズレたのならば、大きく力を減ずるところとなるのだ。
「見よ、これこそが神羊拳・器械套路『雷霆万鈞』(シンヨウケン・キカイトウロ・ライテイバンキン)なるぞ!」
数多の技能を組み合わせて生み出された彼女の独自の技能。
それこそが、『雷霆万鈞』である。
「ならば、踏み込むまで!」
「させぬよ! わしの偃月刀の冴えわたるを知るがよい!」
振り回した偃月刀の一撃が『有頂天道人』の右半身と打ち合う。
火花が散る。
だが、芽衣は己が怪力によって無理やり渾沌化した右半身を切り裂く。
強烈な一撃であった。
両断した渾沌が霧散していく。
やはり、無限ではない。切り裂けば傷を追うようにして消耗していくのだ。
「ならば、『有頂天道人』! 敗れたりと言っておこう!」
「尚早なことを!」
「いいや、お主は負けるのだ。これが二度目と言ったな。此処で決着はつく!」
戦いは続く。
ならば、芽衣は己が持てる全ての力を以て、『有頂天道人』へと雷撃と偃月刀を叩き込む。
確かに消耗するのだと理解できれば、この敵を打ち据え続けるのみ。
今、勝てずとも必ず勝利が目の前に迫る。
故に彼女の瞳はユーベルコードに輝き、一層の冴えわたる技とともに『有頂天道人』を追いつめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
能力者に覚醒した時は否応無く魔剣士だった
ジョブチェンジで技の全ては仕舞い込まれた
猟兵に覚醒した時は躊躇わず魔剣士を選んだ
矢張り手放したけど今度は手の中に技は残った
この恐るべき敵に俺はその【黒影剣】で挑もう
最初からは使わない
どのみち必ず一打、いやもっとかも知れない
痛打は喰らう
血を吐いたとしても防御技能の全力展開で
持ち堪えよう
「他愛ないと思った?」
次の瞬間黒影剣で闇に消える
半身が輝く天使でも
存在には必ず影が闇があるから
影闇から大鎌の一閃を喰らわせる
放つオーラから命も吸い上げ
己がものとしまた消える
何処にでも闇はある
「たかがこんな奴に、と思う?」
幾度でも消え幾度でも放とう
「朽ちるのは貴様の方と知れ!」
思い返せば、いつもそうだったのかもしれない。
能力者に覚醒した時、己が手にしていたのは魔剣士の力だった。
だが、力を取り替えれば、技は己が身に仕舞い込まれた。使えなくなった、というのが正しいだろう。
喪ったわけではないと理解しても、しっくり来ないものがあったかもしれない。
そして、猟兵として覚醒した時もまた魔剣士としての力と共にあった。
手放した。
今度は手放した。
けれど、技だけは己が手の中にユーベルコードとして残った。
この意味を考える。
仕舞っても、手放しても、なお掌の中にある技。
この意味はなんだ。
葛城・時人(光望護花・f35294)は考える。
答えは出ている。
そう、眼の前のコンキスタドール『有頂天道人』、この恐るべき敵に挑むためである。
「迷うかよ、敵を前にして! 猟兵!」
迫るは予測不能なるなる不意打ちの一撃。
千変万化にして不定義たる一撃。
濁った白を保つ不定形が己に迫る。完全なる死角より放たれた一撃に時人はよろめく。
思った以上に痛烈だった。
血潮が溢れる。
血反吐が撒き散らされる。
喀血のように地面を濡らす。
されど、それでも持ち堪えるようにして時人は倒れ込みそうになる己が体を支える。
「他愛ないな、猟兵!」
「だろうね。そう思っただろうね。けれど」
次の瞬間、時人の姿が闇のオーラに覆われ、瞬時に消える。
眼の前から視覚では捉えられない領域に時人は隠れ、『有頂天道人』は目を見開く。
瞬き一つしたつもりはなかった。
見逃すほどの超スピードではなかった。
感じ取られない気配ではなかった。
だが、現に彼は時人の姿を見失っていたのだ。
「どこだ!? なぜ、消えた! 気配が感じられぬ! 己が嗅覚も、聴覚にも、なぜ……!?」
「簡単なことだよ」
彼の言葉は『有頂天道人』には届かない。
己の手の中にあった技――黒影剣は、視聴嗅覚での感知を不可能にするユーベルコード。
故に、時人は不意打ちの一撃を受けても冷静に己が姿を各s、闇のオーラを纏う大鎌の一閃を『有頂天道人』へと叩き込んだのだ。
「ぐおっ!? なんだ、これは傷口から生命力が吸われる……!?」
「たかが、こんなやつに、と思う?」
取るに足らない相手であったはずだ。
なのに、翻弄されている。
消えては斬撃が繰り出される。その度に『有頂天道人』は己が生命力が吸い上げられていくのを感じたことだろう。
吹けば飛ぶような体躯だったはずだ。
なのに、どうしてか彼は時人を捉えられない。
「朽ちるのは貴様の方と知れ!」
時人は闇のオーラから飛び出し、その大鎌の一撃を『有頂天道人』の背を切り裂く。
それは、彼の体躯から生命力を削り取り、不可逆なる道へと叩き落とすものであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガロウ・サンチェス
ちょっと邪魔すんぜー。俺も仲間に混ぜてくれや。それにしてもお前さん、随分変わった体してんなァ。混沌の力ってやつか?
戦い方はいつも通り、《功夫》を使った格闘戦だ。今回は愛用の武術棍を使う。
体がすげえのは分かったが…技の腕前の方はどうなんだ!?
《ジャストガード》《受け流し》を極めた【棒術戦闘】の極意を見せてやるぜ。
棍でカンフー技を捌き、こちらは上中段蹴り、《足払い》で反撃を。
んで、蹴りが命中したら今度は棍の打突に繋いで追撃を入れる《連続コンボ》だ。打撃には覇気を込めた《衝撃波》を乗せて、《吹き飛ばし》ダメージを追加させるぜ。
予想外の攻撃がきたら、咄嗟に中華なべをかざして《盾受け》だ。あぶねー!
消耗している。
一見すればコンキスタドール『有頂天道人』は傷を負っていない。
しかし、それは右半身の渾沌化によって覆い隠しているからだ。負傷すれど、消耗すれど、それをひた隠しにする十全たる体躯。
その厄介さは言うまでもない。
加えて、渾沌化した右半身による不意打ちは、未だ予測不可能。
必ず猟兵へと不可避たる一撃を見舞う。
幾度重ねても、それは必中とも言うべき精度であった。
故に、消耗すれど負ける道理などなかったのだ。
「カカッ、それでも追いすがるか。面白い!」
咆哮する『有頂天道人』の前に立ちふさがるは、ガロウ・サンチェス(人間のゴッドハンド・f24634)であった。
「愉快そうに笑ってるところ悪いが、ちょっと邪魔すんぜー」
その体躯に『有頂天道人』は関心したようだった。
「俺も仲間に混ぜてくれや」
「構わぬ。強者ならば、それ相応の礼儀を見せよう」
「はっ、それはずいぶんと余裕なこって。それにしてもお前さん、随分と変わった体してんなァ。混沌の力ってやつか?」
「然り。これぞ渾沌化。そして、我がサイバネ殺法と組み合わせた……名付けるならばサイバー渾沌拳よ!」
構えはカンフースタイル。
練り上げられた功夫によって、ガロウは対峙する『有頂天道人』が只者ではないと知るだろう。
例え、不定形なる渾沌化を右半身に宿していても、サイバー化義体の左半身を保つのだとしても、練り上げられた練磨の果たる体躯を理解したのだ。
「体がすげぇのはわかったよ……だがな!」
踏み込むガロウ。
手にしていたのは愛用の武術混であった。
迫る不規則にして予測不能たる不意打ちの一撃。
無貌の牛頭より変貌した天使の翼が彼の視界を埋め尽くし、殺戮の刃となってガロウの四方八方から迫る。
まるで羽が舞い散るように不規則に蠢く刃。
それらが全てガロウに迫っているのだ。
手にした武術混で叩き落とし、薙ぎ払ってなお、彼の体躯に刃の一撃が叩き込まれていく。
「しのいだか! だが! 甘い!!」
裂帛の気合と共に『有頂天道人』の掌底の一撃が迫る。
それをガロウは捌き、返す刃のように上段、中段と連続蹴りが放たれ、下段の足払いを放つ。
しかし、それを尽く『有頂天道人』は虎の獣人たる俊敏性でもって受け止めたのだ。
致命打にならない。
故に受け止めたのだろう。
だが、それが過ちである。
「素晴らしい連撃だ。足一本で此処まで俺に防がせるとはな」
「全部受けきっておいてよく言う! だが、実は俺、一番得意なのって棒術なんだよねぇ」
ガロウの瞳がユーベルコードに輝く。
切れ味鋭い蹴り技。
その一打は起因に過ぎない。
受け止められてなお、それは命中したのだ。故に、流れるようにしてガロウの武術混の打突が『有頂天道人』の喉をつくのだ。
覇気を込めた衝撃波。
それは痛烈なる一撃となって『有頂天道人』の首を吹き飛ばさんばかりの衝撃を放つ。
えぐれるようにして彼の肩口が吹き飛ぶ。
「――ッ!」
「さあ、やろうか。こっからだ!」
互いに構える。
一部の隙はなく。次に動けば始まるのは技の応酬。
嵐のような棍と蹴り技。それらを持ってガロウは『有頂天道人』と対等に渡り合い、その消耗を深くしていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
儀水・芽亜
まったく、『有頂天』どころか油断も隙も無い相手ですね。
ナイトメアを召喚して、「騎乗」「軽業」「騎乗突撃」でナイトメアライド。
「武器(アリスランス)に魔法を纏う」「霊的防護」「オーラ防御」で渾沌に対する耐性を武器に持たせて、サイバー渾沌拳も渾沌化した肉体からの攻撃も、「早業」で槍を振るって「受け流し」ます。
ナイトメアで攻撃を凌ぎながら戦場を駆け巡り、最も勢いの乗ったところで「ランスチャージ」、そのまま「蹂躙」します。
いかな渾沌化といえど、当たらなければ問題ありません。
馬上から槍を刺せるだけ刺しておいてから飛び退いて、また次の一撃を狙って駆け回りましょう。さあ、もう一勝負、お願いしますよ。
猟兵たちのユーベルコードが戦場に明滅している。
コンキスタドール『有頂天道人』は迫る猟兵たちに不意打ちの一撃を見舞い、その反撃を尽く受けながら、しかし十全の様子で捌き切っていた。
いや、違う。
確実に消耗させている。
一度目の戦いの時のように渾沌化によって傷をカバーしているのだ。
巧妙なる智謀。
加えて、暴力。
どれもが渾然一体であるからこそ、『有頂天道人』は強敵であるのだ。
「まったく、『有頂天』どころか油断も隙もない相手ですね」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)はナイトメアライドによって白馬型来訪者『ナイトメア』に騎乗し、戦場を疾駆する。
手にしたアリスランスに魔法を纏わせる。
これがどこまで『有頂天道人』に通用するかわからない。
わからないが、しかし、やらねばならないのだ。
「騎兵もいるかよ! カカッ! これは食いごたえがある!」
笑いながら迫る『有頂天道人』。
その右半身は渾沌化によって不定形なる姿であった。
唸るような濁った白き触手は、おぞましき気配をもってナイトメア駆る芽亜へと迫るのだ。
予測不能ということは不可避ということだ。
だが、それに動じてはならない。
すでに芽亜は準備をしてきたのだ。予測不能であれど、来るとわかっている不意打ち。
敵は渾沌化によって力を得ている。
故に芽亜は敵の攻撃を避けるのではなく、防ぐことに特化させていた。
オーラを纏う武器。
霊的防御を高め、魔法まとうアリスランスを掲げる。
疾駆するナイトメアの速度であれば、迫る触手も貫くことができるだろう。
「貫きます!」
放たれたアリスランスの一撃。
防護によって阻まれる渾沌化。触手を穿ちながら芽亜は『有頂天道人』へと突き進む。
ただ、まっすぐに。
脇目も振らない。
己がユーベルコードは、このためにある。
「如何に渾沌化と言えど! 触れられなければ!」
「問題ないとでも思ったか! この俺の存在がなければ、それもそうだろう! だがな、舐めるなよ、このサイバー渾沌拳を!」
跳躍し、ナイトメアの馬上よりも高く『有頂天道人』は体躯を浮かび上がらせ、放たれるアリスランスの一撃を、その牙で受け止めたのだ。
恐るべきことである。
馬上のメリットは一つ。
高い位置から敵を見下ろし、刺突することができることだ。
そして、乗騎の突撃を止められない限りヒットアンドアウェイができること。それを『有頂天道人』は完全に殺してみせたのだ。
「ですが、甘い! この悪夢の蹄は!」
芽亜の瞳がユーベルコードに輝く。
踏み込むナイトメア。その蹄の一撃が『有頂天道人』を捉え、振り下ろされた一撃でもって彼の体躯を大地に沈める。
蹴り落としてナイトメアは芽亜と共に飛ぶ。
そのば上から芽亜は言う。
「さあ、もうひと勝負、お願いしますよ」
「望むところよ!」
沈められた大地から立ち上がる『有頂天道人』と闘志火花散る戦場にて芽亜は何度でも、その槍を叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくん、アンコールなのでっすよー!
やや、後の先のカウンター、予測不能の不意打ちでっすかー!
なるほどなるほど!
厄介ではありまっすが、それは藍ドルにとっては日常なのでっす!
ライブは生き物と言いまっすればー。
アクシデントはいうに及ばず、藍ちゃんくんとファンの皆様、ステージに機材に環境etc!
予測不能なあらゆる要素を全部ひっくるめてライブとなすのが藍ちゃんくんでっすのでー!
予測不能も不意打ちもアドリブで乗り切っちゃうのでっす!
それにどれだけ身体を義体化・渾沌化、独自の技能を用いようとも!
心技体、心はどうでっすかー!
藍ちゃんくんの歌は心にこそ届くものなれば!
見事、ハートキャッチしてみせるのでっす!
「藍ちゃんくん、アンッコールなのでっすよー!」
その声にコンキスタドール『有頂天道人』は顔をしかめた。
「また貴様か! 歌などというもので、またこの俺を!」
彼の瞳の先にあったのは、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)であった。
藍の瞳が捉えている。
不定形にして不定義。
その恐るべき渾沌化した右半身を。
確かに予測不能の不意打ちの一撃は恐ろしい。
現に藍を襲う渾沌化たる一撃は予測できない。形を動く度に変えているからだ。
天使の翼のようであり、おぞましき触手のようであり、無貌の牛頭でありまた同時に殺戮の刃でもある。
どのように変化するのかわからない。
後の先のカウンター。
それが渾沌化による一撃。
藍は理解した。
厄介である。とても、とても厄介である。けれど、藍にとって、それは日常だ。
いつだって予想通りに行くことはない。
いつだって変わっていく。
いつだって、どんな時だって、一日たりとて同じ日はないのと同じように。
観客の顔が全て同じだったことなどない。
覚えている。
あの日、あの時、藍がステージの上から見た観客たちの顔をつぶさに覚えている。
顔の表情だって違ったのだ。
ならばこそ、アクシデントは不意のプレゼントである。
「ライブは生き物と言いますっればー! アクシデントは言うに及ばず! 藍ちゃんくんとファンの皆様、ステージに機材に環境えとせとらえとせとっら!」
予測不能なあらゆる要素を全部ひっくるめてライブとするのが己だと藍は迫る不定形の一撃を受け止める。
それは、まるでファンサービスの握手会のような光景だった。
不意打ちの一撃を藍は握手という形で受け止めていた。
掌から血が滴っていた。
だが、構わない。こんなことかまってなんていられない。
そう、これまでの足跡は歌だ。歌は足跡になる! そして、足跡は轍となって、轍は路になるのだ。
「……今度はこの歌を聞いてくださいでっすよー!」
「何を……!」
「歌を聞いてくださいでっすよー! どれだけ体を義体化、渾沌化、独自の技能を用いようとも! 心技体、心はどうでっすかー!」
至近距離で浴びせられる透る歌声。
無尽の|藍《愛》がそこにあった。
与えても与えても突きぬもの。
それが愛だというのならば、藍が齎すは歌を愛さず敵対する精神のみ。
「藍ちゃんくんの歌は心にこそ届くものなれば!」
「こんな、歌などに心奪われるものか! だが、なんだこの胸の高鳴り! 刻む音は! 鼓動の音か!?」
「それが歌なのでっす! 藍ちゃんくんは『有頂天道人』さんのハートをキャッチしたいと思ったのです! さあ、歌いまっしょう! そうすれば、その鼓動の意味もわかるかもしれないし、わからないかもしれないのでっす!」
けれど、踏み出さなければ、わからないこともわからない、と藍は迫る『有頂天道人』に構わず歌い続ける。
それが己の路だと示すように、歌い続け、己に迫る拳が止まる光景を見たのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
前哨戦でもなんでも負けは負け。大人しく引き下がっておけばいいものを
ま、引き下がれない理由ってものが奴にもあるんだろうけど
神刀の封印を解除。神気によって身体能力を高めて、敵と相対
下手に仕掛けて不意打ちを喰らうと拙いので、まずは受けに回る
それじゃなくとも、単純にサイバネ殺法自体が強力だしな
此方からは攻撃を仕掛けずに。落ち着いて敵の攻撃を刀で受け流し、回避しながらも、意図的な隙を見せてやる……そうすれば奴は、いずれそこを狙って不意打ちを仕掛けてくる筈
その一撃に合わせて捌の型【水鏡:流】で反撃
攻撃自体が予測不能であっても、有頂天道人の思考は予測できる……予測できる形にしてやれば良い、って事だな
第一戦線での戦いは猟兵が制した。
同じ敵。
コンキスタドール『有頂天道人』の力を猟兵達は知るだろう。初見ではない。右半身の渾沌化。左半身のサイバー化。
この二つの力を同時に扱うはサイバー渾沌拳。
義体の膂力と速度は虎獣人の俊敏性と筋力を地力にして凄まじいものへと変貌している。
それだけではなく渾沌化の右半身は不定形にして不定義である。
天使の翼めいていながらおぞましき触手。
触手でありながら無貌の牛頭。
千変万化たる殺戮の刃。
そのいずれをとってしても、猟兵に予測させない。一度見たとは言え、その力は未だ定義できないものであった。
故に渾沌。
「前哨戦でも負けは負け。大人しく引き下がっておけばいいものを」
対する夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はそう言い放った。
ここまで他の猟兵たちに消耗を強いられている『有頂天道人』なれど、その体躯に傷はない。
渾沌化によって覆い隠しているのだろう。
補填するだけの力がある、というのが末恐ろしいところである。
「敗北を是とするのは生きている者の特権よ。生きていなければ、敗北を認めるところも、知るところもない。カカッ! 故にまた俺は一つ功夫を重ねることができた、というわけだ。喜ばしいことではないか」
「引き下がれない理由ってものがあるんだろうな。武人の意地か、それとも使い走りの矜持か」
「それを知るのは言葉ではなく拳であろう」
膨れ上がる重圧と共に渾沌化の右半身が不定形に形を変えていく。
見て、わかるものではない。
何が起こっているのか判別できない。
不定義にして不定形。
それが渾沌化の力である。そうでなくても。
「サイバネ殺法……!」
「応よ! これぞ、渾沌化とサイバー化の渾然一体たるサイバー渾沌拳の真髄! 俺が拳は後の先ではない。先の先よ!」
迫る殺戮の刃。
予測不能なる斬撃が鏡介を襲う。
神刀の封印を解除し、神気によって身体能力を高めてなお反応できない予測不能なる不意打ちの一撃。
下手に仕掛けられないと受けに回ったことが幸いした。
身を切り裂く刃は、肉は斬らせても骨までは到達していない。
さらに嵐のように迫る刃と触手、さらには無貌の牛頭。
いずれもが致命傷になり得る攻撃であったことだろう。
けれど、鏡介は落ち着いていた。
血潮を失おうとも血肉を引き裂かれようとも、血に塗れようとも己は未だ生きている。
敗北を是とできるのは生きている者の特権だと『有頂天道人』は言った。
だが、敗北は即ち死であろうか。
否である。
敗北とは即ち認めた者の得る者。
故に、認めぬものは、未だ勝利の道程にあるのだ。
「我が太刀は流れる水にして、鏡の如く――捌の型【水鏡:流】(ハチノカタ・ミズカガミ・ナガレ)」
ユーベルコードに一瞬輝く鏡介の瞳。
己が動きは敵の動きを誘発するもの。
迫る渾沌拳を鏡介は頬にかすめながら、先の先、さらにその先へと踏み込んだ太刀の一閃でもって『有頂天道人』の体躯を切り裂く。
「その力が予測不能だろうと」
「カカッ! この俺の思考は予測できると!」
「そういうことだ」
ふるった斬撃は鮮血を迸らせた――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎
お帰りなさいマセ、有頂天道人!
我輩たちとの交戦経験でパワーアップしたのは、アナタたちオブリビオンだけではありマセーン!
それをご覧にいれマショー!
「骸式兵装展開、拳の番!」
模倣様式・有頂天道人!
戦闘義体としてはサイボーグであるワタシの経験も利用可能!
サイバーカンフーマスターの座はワタシが継承しマース!
このUCそのものが挑発的ではありマスガ、対策としても有用デース!
如何なる不意打ち、千変万化の攻撃も冷静に見極め、サイバネ的な左腕で受けて流せば相手へカウンターを打ち込む道がこじ開けられるのデース!
そのまま懐へ、痛打!
有頂天な仙人(エクスタティク・ハーミット)、再見(サヨナラッ)!
鮮血が飛ぶ。
それは血しぶきとなってコンキスタドール『有頂天道人』から迸る。
だが、体躯は崩れ落ちない。
未だ彼は立っている。
己が武は数限りない功夫の中にて成り立つもの。故に、その真芯にあるものはブレず。
故に構えは解かぬ。
「カカッ! 何度やってもたまらんな。思わず我が『師父』の言いつけを忘れるほどだ!」
喜びに震えるように武を振るう。
それこそが武人としての矜持であるのだろう。
「お帰りなさいマセ、『有頂天道人』!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は一度目の再戦とばかりに立ちふさがっていた。
元より彼を捨て置くことはできない。
渾沌化と呼ばれる未だ猟兵にとって底の知れぬ力の一端を振るう『有頂天道人』を倒さねばならないと理解しているからだ。
「我輩たちとの交戦経験でパワーアップしたのは、アナタたちオブリビオンだけではありマセーン!」
「面白い。お前たち猟兵もまた武の頂きに至らんとするか!」
「それをご覧にいれマショー!」
バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
「骸式兵装展開、拳の番!」
光と共に現れるのは半身義体のバルタンであった。
左腕のサイバー部品。それを得た左右非対称の姿。
まるで挑発であった。
そう、これこそが模倣様式・有頂天道人(イミテーションスタイル・サイバーカンフーマスター)。
その姿に挑発されながらも『有頂天道人』は笑った。
「カカッ! 俺の姿を模倣するか! だが、半人前だな、猟兵! 俺がサイバー渾沌拳は渾沌化を以て渾然一体と為すこと! お前は!」
迫る予測不能なる不意打ちの一撃。
おぞましき触手が地を這い、無貌の牛頭となってバルタンの四肢へと食らいつく。
強靭な顎がバルタンの手足に食い込む。
サイボークの体とて、その顎の力は堪えられるものではなかった。
受け流す、という発想自体が間違いであるというように『有頂天道人』はバルタンに踏み込む。
四肢を封じられたバルタンに躱す余裕などない。
打ち込まれた殴打の一撃が勁を伴ってバルタンの体躯を駆け巡り、その衝撃がバルタンの内側を引き裂くようであった。
「これで終いだ、模倣者!」
「いいえ、終わりではありマセーン!」
『有頂天道人』を模した左腕。
それが彼の方に賭けられていた。謂わば、それは虎手。
鉤爪のようにバルタンの左腕が『有頂天道人』を捉えて話さなかった。
「一撃で仕留められなかったのならば、その一撃はめぐり、我輩の拳から内勁となって……お返しデース!」
身を暴れ、引き裂く勁力。
これをバルタンは『有頂天道人』を模したからこそ手繰り寄せる。
謂わば、これは敵の放った勁力。
内在するのならば、それもまた己が力。模した動きは寸分たがわずに『有頂天道人』の動きをトレースし、打ち込まれた勁力を増幅し、渾身の一撃となして『有頂天道人』へと叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
禹・黄風
身体能力そのものの底上げ…強くなるために貪欲に取り込んでいる姿勢は敬意に値します。
ですがやる事がそれでは止めなければなりません。
…トラとして、貴方を此処で叩き潰します。
UC起動、重量を大気と等しくし跳躍飛翔。
周囲の地形も足場に利用して距離を取りつつ棍を伸ばして牽制攻撃。
右半身の変化に注視、距離を取る事で渾沌化部位の不意討ちを見切り冷静に対処、風に舞う一片の葉のようにするりと躱し、地形を棍を伸ばし突いて緊急回避。
波動弾には着弾点周囲に入らぬように飛翔し回避。
…それは強ければ強い程中止不可能、ならその間に左半身側に回り込み機械化義体の部位に伸ばした棍の一撃を叩き込みましょう。
※アドリブ絡み等お任せ
虎の獣人は体躯に恵まれた者である。
強靭な筋力。
それを支える下肢。
爪は鋭く、顎力も強大。しかして、俊敏。
汎ゆる点において捕食者の頂点たり得る器である。
だがしかし、まだ足りぬ。
そう、足りぬのだ。
コンキスタドール『有頂天道人』は、その体躯を震わせる。
義体化による強靭な体躯の地力を増幅する力。
加えて、渾沌化である。
不定形にして不定義。千差万別にして千変万化。どんな形にもなり、どんな形でもない。型破りの如き力を持つのが『有頂天道人』であった。
「身体能力そのものの底上げ……強くなるために貪欲に取り込んでいる姿勢は敬意に値します」
禹・黄風(武の頂を・f40009)は、その驚異を知る。
故に敬意を持つ。
如何なる存在であろうとも、敬意は忘れられないのが彼の気質であったのかもしれない。
「ですが、やることがそれでは、止めねばなりません」
「カカッ! いずれにせよ俺とお前とでは相争う以外の間柄にはなれぬよ。そういうものだろうよ、猟兵。トラよ、その名はなんと言う」
「……同じくトラ……禹・黄風」
「黄風、では死合おうぞ!」
大地を踏み砕く踏み込み。
『有頂天道人』の踏み込みは鋭く速く、そして重い。どれだけ義体化されても、地力がなければ活かせぬもの。
恐るべき修練の果に得たものである。
だが、それ以上に恐るべき者は渾沌化による不意打ちである。
「よもや卑怯と謗るまいな!」
大地を割って迫るはおぞましき白の触手。
それらが即座に刃へと変貌して黄風に迫る剣聖の混の一打をものともしない渾沌化の一撃。
距離を取ってなお、この踏み込みの深さである。
見切ることなどできようはずもない。
だが、心は冷静だった。
凄まじき一撃なれど、動揺しない。心は揺らさない。だが、体は揺れるのだ。
まるで、それは小風に遊ぶ木の葉のようであり、また水流に身を任せ大海に漕ぎ出す笹舟のようであった。
混を大地に伸ばし、己が体躯を空へと跳ね上げさせる。
追うようにして『有頂天道人』が迫る。
迫るはサイバネ殺法。義体化による速度と膂力の増大。
その拳を受ければ、ただではすまないだろう。
「大した軽身功(チンゴン)であるが!」
放たれる『有頂天道人』の拳すらも黄風は受け止め、木の葉のように受け流す。
加えて、その拳の甲すらも足場にして黄風は舞うようにして飛ぶ。
手にした棍を構える。
「あなたは確かに強い。私が及ばぬほどに。されど、その身に刻まれた仲間たちのユーベルコードはごまかしようがないでしょう。故に」
踏み込む。
大地を蹴って黄風は左回りに走り抜ける。
狙いは『有頂天道人』の左半身。即ち、義体化された体躯。
右半身は渾沌化によって不定形にして不定義。ならば、左半身の義体化は傷をごまかせぬ。
振るう棍の一打に黄風は渾身の力を込めて振り抜く。
「私の一打もまたあなたに刻まれる一打。同じトラとして、あなたを此処で叩き潰します」
それが己が矜持。
武の頂きを求めるのではなく。世にオブリビオンによる惨禍がはびこるを憂う義士としての一撃であった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
むぅ、これは再生怪人…!
や、オブリビオンはみんな半分そんな感じかなー
まさか二度あることは三度ある方式!?
今度こそカルロスくんの秘密を話してもらうぞー!
約束したよね!(してない)
●アタタタタタタ!
神に同じ技は二度通用しない!そんな設定を推していきたい
予測困難でも一度見ていれば少しは精度もあがるってものさ!【第六感】に任せた回避!からの以前とは違う技で味変!
同じ技ばっかりじゃあ神じゃなくても覚えられちゃうし、飽きさせちゃうからね!
ボクの神百裂拳をさばけるかな!
UC『神パンチ』でアタタタタタッ!のドーーーンッ!!
さあ、第三ラウンドで待ってるよー!
「むぅ、これは再生怪人……!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は再び現れたコンキスタドール『有頂天道人』の姿に呻く。
一度目は須弥山型都市の天頂、有頂天天蓋での戦い。
しかし、再び現れたのは人民租界。
サイバーマフィアはびこる大地である。
この地に置いて『有頂天道人』は智謀と暴力を持って、これを束ねる恐るべき敵であった。
そんな敵が今一度猟兵たちの前に姿を現したのだ。
「や、オブリビオンはみんな半分そんな感じかなー。まさか二度あることは三度ある方式!?」
「カカッ! そういうことだ!」
「今度こそカルロスくんの秘密を話してもらうぞー!」
「そんな義理はない!」
「約束したよね!」
してない。
だが、戦いの場においては意味のないことである。
互いに構える。
迫るはサイバー渾沌拳。
右半身の渾沌化による不定形にして不定義たる一撃。それは予測不能なる不意打ちの一撃である。謂わば、必中。
躱しようのない一撃を前にしてロニ配下にするのか。
「あえて言っておくけど!」
「聞こうか」
「神に同じ技は二度通用しない! そんな設定を推していきたいんだけど!」
「ならば、なんの問題もない。このサイバー渾沌拳、一打とて同じ技はない。不定義にして不定形。それ故に!」
逼るはおぞましき触手。
それらが変貌を遂げる。宙を走る度に形を変えていくのだ。時に刃に、時に無貌の牛頭へと。
さらに翼へと変貌した渾沌化の右半身がロニを取り囲む。
「そうなんだ! 予測困難ってそういうこと!?」
第六感に任せた動き。
如何に超常的な五感を越えた先にある第六感があろうとも、刹那に変容する力は、ロニの体躯を打ち据えるのだろう。
「違う技で味変とか小癪! でも神じゃあなくっても覚えちゃうからね! 飽きさせないって大事なことだと思うよ!」
体が吹き飛ぶ。
否、体が吹き飛んだのではない。
ロニの体躯が跳ね上がったのだ。
空中に飛ぶロニが見下ろすのは、『有頂天道人』。
これまで猟兵たちが与えてきたユーベルコードの影響を感じさせない姿。
傷一つない。
だが、それは誤りである。
その体躯にはこれまでの猟兵たちの攻勢が、戦いの跡が刻まれているのだ。
渾沌化による補填と覆い隠すことによって十全の状態を維持しているだけに過ぎないのだ。
「見えた! ボクの神百裂拳をさばけるかな! アタタタタタッ!」
神パンチ(カミパンチ)の一撃は、一撃の最中に無限の拳を叩き込む。
千変万化であるというのならば、万を超えて億。
その変化を追うようにして放たれ続ける拳。
それは確かに『有頂天道人』の体躯を打ち据え、その刻まれた傷跡を暴くようにして血潮を噴出させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…こういう時にかける言葉を叩き付けてあげよう有頂天道人
何度も出て来て恥ずかしくないんですか…と!
ま、冗談はさておき立ち塞がるなら倒すまで!
相手はオブリビオン、何度だって倒むしてあげよう!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【Code:C.S】起動
時間加速、まずは速攻!
一気に接近、両剣で連続攻撃
『なぎ払い』と『串刺し』を混じえた連撃で仕掛けよう
いかに予測不能、常識外の不意打ちだとしても時間の流れまでは操れないでしょ
時間加速、加速した時間の中で有頂天道人の不意打ちに『カウンター』
『オーラ防御』で剣の強度を補強し迎撃
君の師が誰だったとしても、私達はそれすら倒して進もう
須弥山型都市に続いて二度目。
この邂逅は獣人世界大戦が勃発してより二度目の邂逅であった。
第二戦線とは言え、しかし間を置かぬ再びの邂逅。
「……こういう時にかける言葉を叩きつけてあげよう『有頂天道人』」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はコンキスタドール『有頂天道人』を前にして抜刀した蒼き刀身もつ模造神器の切っ先を突きつける。
「何度も出てきて恥ずかしくないんですか……と!」
「カカッ! それは悪かったな。恥知らずにも程があるのは重々承知の上よ。されど俺の『師父』が求めたるところの『はじまりの猟兵』はなんとしても、その所在を突き止めねばならん。ならば、恥など恥の書き捨て程度にしか役立たんというわけだ」
構えるはサイバー渾沌拳。
コンキスタドール『有頂天道人』にとって、この邂逅はなんら恥じ入るところのないものえあった。
「ま、冗談はさておき。立ちふさがるなら倒すまで!」
「それは此方の台詞だ、猟兵。六番目の猟兵よ。お前たちを倒して進む。それによって我が『師父』求めるところのものを誰よりも速く奪い去ってみせよう!」
漲るは力。
渾沌化した右半身よりあふれかえる不定形にして不定義。
それを玲は予測できない。
そう、千変万化にして千差万別。
一瞬の内に変化は数千。認識することすら許されぬ不定義纏う右半身の一打は必中の不意打ちであった。
故に玲の瞳はユーベルコードに輝く。
己が手にした模造神器の封印を解き、彼女は時の加速へと足を踏み入れる。
周囲にある時間は己が置き去りにした光景である。
ゆっくりと変化していく渾沌。
時に無貌の牛頭。時に天使の翼。時におぞましき触手。時に殺戮の刃。
それらは全てが変化し、一つも同じ形へととどまるところを知らない。
己に迫る刃もそうだ。
太刀筋、というものがわからない。この場合は拳筋、とでも言うべきか。
「加速してなお訳わからないとか常識外でしょ。でも、時間は万象にあまねくっていうのならさ!」
加速した時間の中で玲は手にした模造神器でもって迫る『有頂天道人』の一撃を串刺しにして大地に縫い留める。
いや、それだけでは止まらない。
この加速した時間の中であっても変化が止まらないのだ。
貫かれた、縫い留められた、という事象にさえ渾沌は対応して玲へと迫る。
必中であるところを止められない。
ならば、と踏み込む。
これが不意打ち……即ち、先の先、であるというのならば、己はその先を行かねばならない。そのための加速。
模造神器に施された時間加速の封印が解除され続けていく。
もっと速く。
渾沌がこれまで踏みつけてきた過去の堆積であったというのならば、己は堆積し滲み出るものさえ置き去りにする速度で持って『有頂天道人』へと踏み込むのだ。
戦いは一瞬。
されど、加速した時間の中における攻防は数千、数万。
玲は必中の不意打ちの更に先を行くカウンターの如き一撃で以て『有頂天道人』へと己が模造神器の蒼き一閃を叩き込む。
「俺のサイバー渾沌拳を破るだと!?」
必中の不意打ち。
されど、加速した時間の中で玲は汎ゆる渾沌の変化へと対応してきた。
加速した時間は彼女の寿命を削るだろう。
だが、関係ない。
彼女は生命の埒外、猟兵なのだから。
「時間の流れは私を置き去りにしない。私が、時間を置き去りにするんだよ」
振るう一閃が『有頂天道人』の体躯を切り裂く。
「君の師が誰だったとしても、私達はそれすら倒して進もう――」
大成功
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紅月・スズ
おぉー、更に変えてくるアルか!
まあ、ケド幾ら見た目やカタチが変わろうと、あれは彼の右半身アルから、それを動かす彼の気配や気の流れ、視線の変化、身体平衡のちょっとした違い、そういうところに意識を向けるアル
……まあつまり、見た目に惑わされず、ただひたすらにいつものように打ち合うアルね!
今度は【気脈同調】を使うアル!そしてこっちも護業天象拳、見せるアルよー!距離を取るなら『掃天雷爪』を伸ばして裂き、刃を降らせるなら『轟炎掌』で掴み焼く。
翼で飛ぶならこっちも『風蹴爪』で風を蹴り空を歩み、生やした金属の腕『金剛剛腕』で殴るアル!
勿論、体に隠してる『大量の隠し武器』での不意打ちも使ってくネ!
ただ在るが儘に在る、ということがどれだけ難しいことであるのかを知ることもまた至難である。
己という存在を最も知るのは己である。
その考え自体がおこがましいものである。
人は己の体躯のことを知らない。
己の体躯にどれほどの細胞が有り、筋繊維が形成され、その皮膚の下を這う神経の一つ一つに思考を巡らせることができる者がどれだけいようか。
「カカッ! これだからやめられん、戦いは! 戦いの中で更に俺は知ることができる! 己が体躯の、己がサイバー渾沌拳が未だ完成していないことを! ならば、それは可能性というものだ! 停滞にありながら、なおもまだ飛翔を知るか!」
コンキスタドール『有頂天道人』は猟兵たちのユーベルコードの一撃を受けてなお、笑っていた。
そう、笑っているのである。
喜びに満ちていると言っても良い。
右半身の渾沌化した体躯がうごめいている。不定形にして不定義。
その様相を見やり、紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)は驚嘆する。
一度目の戦いから、さらに形を変える。力がましている、といってもいいだろう。
「おぉー、更に変えてくるアルか!」
「無論よ! 貴様たち猟兵が千差万別のように! この渾沌の力も同様と知れ!」
「是が非でも! まあ、いくら見た目やカタチが変わると、本質は変わることないアル!」
互いに構える。
静寂が満ちていた。
視線は外さない。互いに呼吸を定めているかのようだった。
達人同士の激突は静かで、裂帛の気合すら必要なかった。
無論、渾沌化による予測不能なる不意打ちの一撃を警戒しないわけにはいかなかった。
その点においてスズは『有頂天道人』より一手遅れていると言ってもいいだろう。
しかし、スズは護業天象拳伝承者である。
己の肉体を巡る気を制御し、照応させ己の気を介し天地を巡る気もまた同様。さすれば、天地万物すら己の体の延長線上なのだ。
不意打ちの一撃を前にしても、それは変わらない。
即ち、気脈同調(ナンダカノッテキタアル)。
『有頂天道人』の不意打ちの一撃は、即ち、スズが即座に知る所となる。
「――ッ!!」
呼気の音すら重なるようであった。
動いたのは互いに同時。
振るうは天使の翼。それらの一つ一つが無貌の牛頭となってスズへと迫る。
呼応するようにして大気に満ちる静電気を手繰り寄せて爪へと変貌させ、これを切り裂くのだ。
だが、切り裂かれた牛頭は即座におぞましき触手へと変貌を遂げてスズの体躯へと食らいつかんとする。が、それを袖の内に隠された暗器を以て撃ち落とす。
時間にすれば刹那。
されど、その刹那は未だ終わらず。
拳による殴打。
摩擦に寄る火花が散り、スズの手に宿るは炎。
それらを打ち払い、いなし、殴打を繰り出す『有頂天道人』。
その技量は恐るべきものであった。
しかし、徐々にスズの速度が上がる。
「この俺の速度についてくる……否、俺を越えていく、だと!?」
大気を掴むは己が五体。
スズは己が蹴撃が風纏い、その斬撃じみた一撃を『有頂天道人』へと叩き込む。さらに早くなる。
僅かに。されど、確実に。
一打一打が『有頂天道人』を越えていくのだ。
「モチのろんアルよ! ふ、アナタの動きは既に見切ったアル!」
背より生えるは金属の腕。
剛腕たる腕は周囲に散らばった暗器を用いて、先んじて放たれた不意打ちの一撃を真似るように、いや、それを超える速度で持って『有頂天道人』へと叩き込まれる。
「知るがいいアル! サイバー渾沌拳! 我が伝承せしは、護業天象拳! 風つかみ、火花散らし、雷纏う! 天地万物を己が体躯が一つ! 故に護業天象拳アル!」
その名乗りと共に副腕と共にスズの拳が『有頂天道人』の体躯を穿った――。
大成功
🔵🔵🔵