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獣人世界大戦④〜セラフィエル・ソング

#獣人戦線 #UDCアース #獣人世界大戦 #第一戦線 #クロックワーク・ヴィクトリア #狂気艦隊 #『A』ubade #プロメテウス

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●灰星に願いを
 海を征くは『狂気艦隊』。
 その歪なる形状を持っていた。謂わば、『機械仕掛けの洋館』である。海往く屋敷のような姿をした艦隊は、しかし沈むことなく悠々とサンクトペテルブルクを目指す。
 超大国が一つ『クロックワーク・ヴィクトリア』が要する『狂気艦隊』は、獣人世界大戦を契機にロシアの首都を落とすつもりなのだ。
 その『機械仕掛けの洋館』に一体のUDC怪物が座す。
 洋館の屋根に立つ姿は、鋼鉄の鎧を纏うかのような存在であった。

 おおよそ怪物、と呼ぶには程遠い姿。
 そのUDC怪物の名を『ジャガーノート・ハーレー』と呼ぶ。
「――、オ、ア……願ウノハ、――、ダ、カ、ラ……」
 呻くような声。
 すがるは『約束』である。
 果たせなかった『約束』があるからこそ、『ジャガーノート・ハーレー』は、その狂気を『邪神の加護』として発露していた。
『狂気艦隊』が沈まぬのは、この加護があるからである。

「八番目の子よ。君は、今もまだあの歌を歌えるか」
 問いかける言葉が耳元で響く。
 誰かの声。
 忘れてはいけない声だとわかっていても、それでも思い出せない。
「歌えぬのならば、君は己が魂を以て示さねばならない。君が果たされなかった『約束』を、君自身が叶えようというのならば、君は」
「ボク、ガ……オレ、ガ、スル、事……ソレガ、オレ、ボク、トイウ存在……!」
 天を見上げる『ジャガーノート・ハーレー』。
 その瞳には何も映らない。それはどうしようもないことであったのかもしれない。
 運命は変えられない。
 定められたことは覆らない。なら、これは繰り返される事柄の一つに過ぎないのだろう。
『ジャガーノート・ハーレー』は嘆かない。
 己は打倒されなければならないのだ。なぜなら、己は|『怪物』《プロメテウス》なのだかから。
 故に打倒されなければならない。

 嘗てあったはずの願いも。
 差し伸べられた手も。
 幼子であった己の無力さも。
 全てが狂気に飲み込まれる前に――。

●獣人世界大戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。獣人戦線にて獣人世界大戦が勃発いたしました。そして、超大国が一つ『クロックワーク・ヴィクトリア』はこの機を逃さず、ロシアの首都サンクトペテルブルクを陥落せしめんと海洋より『狂気艦隊』を稼働させているのです」
『狂気艦隊』とは蒸気機関で動く不気味な『機械仕掛けの洋館』である。
 なぜ、これが艦隊と呼ばれ、また海をゆくことができるのかはまったくわからない。
 けれど、純然たる事実として『狂気艦隊』は海をわたり、サンクトペテルブルクを陥落させようとしている。
 この大陸侵攻を阻止しなければならないのだ。

「ですが、この『狂気艦隊』は強力な『UDCアースの邪神』の守護を受けているのです。これを撃破しなければ沈めることはできないでしょう」
 ナイアルテの言葉に猟兵たちは頷く。
 だが、強大な邪神は姿を見せるだけで深刻な狂気を誘発する。
 頭の中に己の願望を叶えなければ、という衝動が溢れかえってしまうのだ。
 そうなれば、戦いどころではないだろう。

「己が望み……それが狂気だというのならば、『狂気艦隊』に座す邪神『ジャガーノート・ハーレー』は、危険すぎる邪神であると言えるでしょう。しかし、これを打倒しなければなりません」
 難しいことはわかっている。
 だが、猟兵たちは退治するだけで『頭にあふれかえる己が願望を叶えなければという衝動』を如何にしてか耐え、この邪神『ジャガーノート・ハーレー』を打倒さなければならないのだ。
 獣人世界大戦という大いなる戦いは、きっと罪なき人々を傷つける戦火となるだろう。
 これを捨て置くことなどできない。
 如何に狂気が迫るのだとしても、これを退ける。
 それこそが猟兵たちに託された使命なのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『獣人世界大戦』の戦争シナリオとなります。

 獣人世界大戦勃発により、超大国『クロックワーク・ヴィクトリア』は『狂気艦隊』をもってロシアの首都へと侵攻を開始しました。
 その先陣を切るのが不気味な『機械仕掛けの洋館』、『狂気艦隊』です。
 これを皆さんは沈めなければなりませんが、しかしこの『狂気艦隊』を守るように強大な邪神の加護が狂気となって皆さんを襲います。

 その狂気は『頭にあふれかえる己が願望を叶えなければという衝動』です。
 これに対処し、邪神『ジャガーノート・ハーレー』を打ち倒しましょう。

 ※プレイングボーナス……邪神のもたらす狂気に耐えて戦う。

 それでは、超大国をも巻き込んだ獣人世界大戦にて多くを救うために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『ジャガーノート・ハーレー』

POW   :    オレハ オ ハ 何ダ?
自身が【斃されるべき"世界の敵"であるという認識】を感じると、レベル×1体の【破滅を齎す彗星】が召喚される。破滅を齎す彗星は斃されるべき"世界の敵"であるという認識を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    ……勝負ハ、3Rマデ ダ
【約束を果たす迄絶対に斃れられない】から、対象の【「再戦」】という願いを叶える【"復活した自分"と復活の度強化される光剣】を創造する。["復活した自分"と復活の度強化される光剣]をうまく使わないと願いは叶わない。
WIZ   :    ――ハ  度デモ 立チ ガル
【瀕死時即復活。復活する毎に前より強い状態】に変身し、武器「【光剣】」・「【瞬間的光子化による超加速】」の威力増強と、【復活回数分の流星を召喚。流星は敵自動追尾】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:落葉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジャガーノート・ジャックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エドワルダ・ウッドストック
アドリブ歓迎

世界大戦へのクロックワーク・ヴィクトリアの介入など、見過ごすわけにはいきません。
狂気艦隊! その進軍、ここで阻ませていただきますわ。

対峙するだけで溢れる願望……オブリビオンを倒し、土地を解放するというわたくしの願い!
ちょうどいいですわ、この衝動を眼前の邪神に思う存分に叩きつけるといたしましょう!

カナリアに搭乗して屋根の上にいる敵に向かいますわ。
ジャガーノート・ハーレー! 今のあなたは、まさしく世界の敵ですわ!
召喚された破滅を齎す彗星の群れ諸共、機体に搭載した各種荷電粒子砲による一斉発射で応戦いたします。
弾幕と共にスラスターで加速して、左腕のプラズマガントレットで殴り飛ばしますわよ!



 海を征くは『機械仕掛けの洋館』、『狂気艦隊』。
 その威容は言うまでもなく不気味であった。
 あまりにも場違い。
 海に浮かぶ洋館というだけでも、それが白昼夢でも見ているかのような光景である。加えて、その『機械仕掛けの洋館』は蒸気機関によって駆動し、濛々と白煙を上げ続けているのだ。
「獣人世界大戦への『クロックワーク・ヴィクトリア』の介入など、見過ごすわけにはいきません」
 エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)は転移した『狂気艦隊』の洋館、その屋根に降り立つ。
 この『狂気艦隊』を止める、もしくは沈めるためには、この『狂気艦隊』を護るUDC怪物を打倒しなければならない。

「この進軍、ここで阻ませていただきますわ」
 だが、次の瞬間エドワルダの脳裏に浮かぶは、己が願望である。
 あふれる願望は狂気のごとく彼女の頭に膨れ上がっていく。
 理性が押し流されるほどの膨大な願望。
 それは彼女の真の願いであったことだろう。

 オブリビオンを倒し、大地を開放すること。

 それこそが彼女の願望であった。
 衝動が止まらない。
 この願望のためならば他の何をも捨て去っても良いと思えてしまう。そう、生命さえも。
 エドワルダの様子を見下ろすはUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』であった。
「オレ、ボク、ハ、何ダ……何ヲ、シヨウト、シテ」
 呻くような幼子の声。
 それを聞き、エドワルダは己の衝動を抑えるどころか、逆に発露する。
 ちょうどよいとも思ったのだ。
 この衝動は全てオブリビオンが起点となっている。
 ならば、衝動のままに戦えば良い。

 彼女はキャバリア『カナリア』を駆り『機械仕掛けの洋館』の屋根を押しつぶしながら飛翔する。
「『ジャガーノート・ハーレー』! 今のあなたは、まさしく世界の敵ですわ!」
「世界ノ敵……ボクガ、世界ノ、テ、キ」
 膨れ上がるユーベルコードの輝き。
 エドワルダを襲うは破滅をもたらす彗星である。
 濛々と立ち込める白煙を切り裂くような強烈な光が空より飛来する。
 それは紛うことなくエドワルダに向かって降り注ぐ。
 群れなす光は『カナリア』を押しつぶし、エドワルダすらも圧殺するだろう。故に、エドワルダは己の衝動を力に変える。
 ユーベルコードに輝くは『カナリア』のアイセンサー。

 構えた武装。
 各種荷電粒子砲が力の奔流を撒き散らしながら、迫る彗星の群れへと放たれる。
「フルバースト・マキシマム! 退きなさい! わたくしは! オブリビオンを打倒します! それこそがわたくしの願望! そして、大地を開放するのです! そうでなくては!」
 己の存在意義。
 戦って、戦って、打ち倒して。
 そうすることでしか取り返すことのできない物があると知るからこそ、エドワルダは吹き荒れる嵐のような荷電粒子ビームでもって迫りくる彗星を尽く破壊し、空を染める爆発の中を飛び、一気に『ジャガーノート・ハーレー』へと肉薄する。
 スラスターの噴射と共に構えたプラズマガントレットの一撃が『ジャガーノート・ハーレー』を捉え、その駆体を殴り飛ばし、己が衝動を発散させるようにエドワルダは己が願望へと邁進するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神酒坂・恭二郎
スペース剣豪は業の深い存在だ
極限の闘争に生きて死ぬ欲望が常にある
故に剣聖に至ることはない

だが義はある
義とは己の思う美の下に我を置くことだ
つまりは野暮はダメだと言うことだ
そう、迷い子に欲望の剣を振るうのは粋ではない

衝動を鎮め、刀を下げて向き合う
相手は倒されるべき世界の敵ではなく迷い子だ
故に、先手を譲り歩みを進める

「そこには何もないぜ、坊主」

光剣に斬られる覚悟で正面に歩みを進め、その胸元に切先を向けるように構える

「勝負だ。恨みっこなしで行こうや」

断罪は必要ない。ただ己なりの優しさを持って、迷い子の旅の終りへの一助となる一撃を仕る



 神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は己を業の深い存在だと規定する。
 極限の闘争に生きて、死ぬ。
 それが欲望である。
 常に付きまとうものであった。光があれば、影があるように切っても離せぬものである。
 謂わば、宿業。
 故に剣聖と呼ばれる極地には至らない。
 活殺自在には到底行き着かぬ。
 修羅の如く生きることを己が業にて定められているようなものなのだ。

 だが、と恭二郎は己が頭のなかに膨れ上がる願望に否を突きつける。
 戦いを望むこと。
 争い、切り結び、そして他者を圧倒すること。
 それこそがスペース剣豪であるというのならば、死する運命すらも欲するところである。

 だが。
 そう、だが、である。
「義はある」
 如何に多くの事柄を切って捨てるのだとしても、最後に残るはやはり義なのである。
 義侠心とでも言えば良いのか
 己が思う美の下、哲学とも言うべきものの下に己を置いてこそ自身の刃は輝きを増す。
「つまりは野暮はダメだということだ」
『狂気艦隊』は『機械仕掛けの洋館』である。
 あまりにも不気味な光景。濛々と立ち込める蒸気の中でUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』は猟兵の一撃を受けて吹き飛んでいた。

「オレ、ハ……ボク、ハ……」
「坊主」
 恭二郎はあろうことか呼びかける。
 目の前にいるのは怪物である。だが、それでも恭二郎は目の前の『ジャガーノート・ハーレー』が迷い子に思えてならなかったのだ。
 己が剣は欲望でできている。
 だが、その欲望の剣を迷い子に振るうのは粋ではないという美意識がそこにある。
 溢れ出る衝動を沈めるように恭二郎は刃を収めて歩む。

 目の前にいるのは世界の敵ではなく、迷い子。
 その認識によって恭二郎は歩み寄るのだ。
「そこには何もないぜ」
 己が斬られることも厭わなかった。
 切り付けられることは容易に想像できた。だが、それでも『ジャガーノート・ハーレー』は動かない。
 衝動が溢れて止まない。
 どうしようもないほどにあふれる願望。
 敵を斬って捨てたい。
 己が求めるは極限の闘争。ならば、敵を迷い子と規定するのならば、それは己が願望を満たすものではない。

 だからこそ、切っ先を胸元に向ける。
「勝負だ」
 まるでそれは、子供に遊びの勝負をふっかけるようなものであった。
 目の前の存在に怪物としての断罪など必要ない。
 あるのは、ただの真剣勝負である。
 これが己の、己なりの優しさであるところが伝わらなくたって良い。
 ただ、目の前の迷い子がもう迷わずによい旅路に向かうことを願うし、その旅が終わることを願う。
 零距離で突きつけた刀の切っ先。
 瞬間、加速した恭二郎の斬撃は、石動(イスルギ)のごとき地鳴りを思わせる音を響かせ踏み込む。
 敵を敵として認識させない。
 目の前の『ジャガーノート・ハーレー』を世界の敵にはしない。
 その思いを込めて放たれた螺旋の一撃が『ジャガーノート・ハーレー』の胸部装甲を貫くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
……狂気上等!
狂気が怖くて|邪神《UDC》扱っていられるか

己が望み……邪神と相対して願う事は唯一つ
邪神を戮し、より邪神を知る
やるべき事と、己の願望が重なるなら…それはデバフじゃなくてバフ!
狂気を力に変えて邪神を討つ!

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【Code:C.S】起動
封印解除、時間加速
加速、加速、加速!
極限まで加速し、斬撃を連続してジャガーノート・ハーレーへと叩き込む!
『なぎ払い』と『串刺し』を織り交ぜ、高速連撃
剣に『オーラ防御』でシールド付与
強度を更に上げて、敵の強化された光剣と斬り結んで真っ向勝負

そっちが何度も立ち上がるんなら、こっちは何度も倒すまで!



 狂気が溢れている。
 衝動がとめどなく心の内側から湧き出し、それが頭に満載されていく。
 はち切れそうなほどの衝動を抱え、発露できぬ苦しみにあえぐのが、UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』のもたらす狂気であったというのならば、皮肉なことであった。
 求めるものを得られず。
 如何にして終わるのかもわからず。

 あるのはただ寄す処とするものばかり。
 猟兵の一撃に胸穿たれてなお、『ジャガーノート・ハーレー』は終わらない。
 虚の如き傷跡を抱えながら『約束』のために倒れないのだ。
「ボクハ、『約束』、ヲ、果タサナ、ケレバ……オ姉チャ、ン……」
 呻くような言葉を聞いた。
 手にした光剣が炸裂するように光をほとばしらせている。
 そのさまを見やりながら、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は己が脳にあふれる狂気を押しのける。
「……狂気上等! 狂気が怖くて|邪神《UDC》扱っていられるか!」
 玲は己が望みを自覚する。

 対峙するのは邪神にしてUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』である。
 同じ名を持つ存在を討ち果たした過去を持つが、しかして、それが似た別の存在であることを玲は知っている。
 オブリビオンはいずれもそうだ。
 過去という堆積に歪み果てた者。
 それ故に、玲は己が願望を発露する。
 即ち。
「邪神を戮し、より邪神を知る」
 彼女の願望はただ一つ。
 やるべきこと。やりたいこと。
 その二つが重なるのならば、それはもはや狂気とは呼べないだろう。

 身を苛む狂気はすでに、玲の中にありながら力へと変じているのだ。
 抜刀される模造神器の蒼き刀身が励起する。
「Code:C.S(コード・クロノシール)――! 封印解除、時間加速開始……!」
 時間加速の封印が解除される。
 幾段にも重ねられた封印。
 それが弾くようにして封を切られていく。
「加速」
 時間が、風のように飛んでいく。
「加速」
 目の前から光が流れていく。
「加速!」
 極限まで加速したのならば、それはもはや時を吹き飛ばしたことと同じであったことだろう。
 圧縮された時間は、それだけでもって己が振るう斬撃を幾重にも重ねていく。
『ジャガーノート・ハーレー』の手にした光剣とぶつかる蒼き刀身。
 凪習う度に弾けるように力が迸り、刺突を繰り返す度に砕けていく。

 玲の加速に刀身が持たない。
 オーラを重ねてもなお、強度が持たないのだ。
 極限まで加速した玲の斬撃は、質量を増すようにして重たい斬撃を繰り出す。
 切り裂く。
 袈裟懸けに放たれた斬撃が『ジャガーノート・ハーレー』を打ち倒す。だが、再び立ち上がってくる。
「ボク、ハ、ア、ア、ア」
「そっちが何度も立ち上がるんなら、こっちは何度でも倒すまで!」
 終わらない剣戟。
 玲の主観時間と周囲の時間が乖離していく。
 だが、それでも構わない。
 玲は己が持てる力を以て、強大なる邪神の力を削ぎ落とすように蒼き嵐の如き斬撃を見舞うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
何故でっしょうかー?
どこかとても悲しい声なのでっす。
あなたが何かと問うのなら、藍ちゃんくんはこう応えるのでっす!
藍ちゃんくんのファンなのでっす、と!
歌うのでっす!
嘆くこともできないかつての幼子に!
祈りを込めて歌うのでっす!
狂気?
狂気耐性するまでもないのでっす!
己自身に誇れる藍ちゃんくんであり続ける!
それが藍ちゃんくんの願いであり、常に叶え続けていることでっすので!
常に常に溢れかえってるのでっす!
そして今の藍ちゃんくんの願いは!
ハーレーさんに歌を届けることなのです!
敵として見なしていない以上隕石は不発!
そして藍ちゃんくんの歌はハーレーさんからハーレーさんを奪おうとする狂気をこそ吹き飛ばすのです!



 呻くような声を聞いて、心がざわざわとざわめくのはどうしてだろうか。
 不思議な感覚だった。
 オブリビオンの、邪神の、UDC怪物の声がどうしても幼子の声に聞こえてならなかったのである。
 少なくとも、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)にはそう思えたのである。
「どこかとても悲しい声なのでっす」
 胸がシクシクと痛むようだった。
「オレ、ボクハ、『約束』」
 途絶え途絶えの声。
 UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』は猟兵である藍を認め、己が世界の敵であることを理解するだろう。
 そして、藍は頭のなかにあふれかえる己が叶えなければならぬ願望という濁流に押し流されそうであった。
 けれど、藍は変わらない。
 スタンスは肩幅ほど変わらない。
 あるのは、目の前の存在が敵ではなく。
「あなたは藍ちゃんくんのファンなのでっす!」
 理解が及ばないだろう。

 UDC怪物自体がそもそも理解の範疇の外にあるものである。
 理解など程遠い。
 けれど、藍は言い切った。
 自身のファンであるということは世界の敵であろうと怪物であろうと変わらぬことである、と。
 故に藍は嘆くこともできぬ幼子の存在を、その魂を見る。
 その魂がどうかほどかれますように、と。
 何かに縛られているのか、それとも囚われているのか。
 わからない。
 けれど、祈りを込めて歌う。
 迫る狂気など関係なかったのだ。
 狂気への耐性など考えもしない。
 あるのは、己に誇ることのできる自身であること。
 それが己の願い。
 頭にあふれるは、それだけだったのだ。

 いつだってそうだ。
 自分を自分であると認識してこそ、世界を知る事ができる。
 世界の輪郭は己の歌声が届く範囲だけか? いや、違う。世界はもっと広がっている。自分の声が届かないのだとしても、それでも響く歌声は、きっと己の世界を知るための力ではないのだ。
 誰かに己の祈りを届けたいという想いであり、願いだったのだ。
「願いなら常に叶え続けているのでっす! 聞いてください、藍音Cryね(アイ・ネ・クライネ)!」
 あるがままの祈りと願いが、ユーベルコードに昇華する。
 心を込めた歌声は、理屈も条理も超越するだろう。
 ひたすらに穏やかな歌声は、敵意などない。
 世界の敵であるという認識すら超えていく優しい歌声。

 悲しみと恐怖。
 それだけでも取り除きたいと藍は歌うのだ。
 空にあるのは破滅もたらす彗星なんかじゃあない。
 あるのは『星』だ。
 いつかの誰かの星写す瞳を『ジャガーノート・ハーレー』は思い出したかもしれない。
「ボクハ、ア――」
「藍ちゃんくんの歌は、ハーレーさんからハーレーさんを奪うとする狂気ををこそ吹き飛ばすのでっす!」
 晴れることのない狂気はあるだろう。
 けれど、この一時は。
 歌が響くこのひとときだけは、と藍は敵意無き優しき歌を響かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天代・ころね
正義!正義!……あぅう、冷静にやるんだよ、考えてからやれっていつも言われてるじゃないか、あんまり守れてないけど!

ファンシーバトルアックスを持って突っ込む、破滅を齎す流星を砕き、避けて、背後から追ってくる物への対処も忘れずに、予測できない所から飛んでくる物は耐えるしかないよね。

もっとも考えた所でお互い自分の役をやるしかないんだよ、いやなら降りてもいいんだけどさ

斧の間合いにまで捉えればあとはするべき事をするだけ、単純で重い斧の一撃を振るうんだよ。



 頭のなかに響くのは、正義を執行しなければ、という思いだけであった。
 そればかりが頭のなかに響いている。
 そうしなければならない。
 そうでなければならない。
 己という存在を定義するのは、正義だけである。
 狂気にも似た感情が頭のなかにいっぱいだった。
 天代・ころね(通学路の自警団・f23060)は、頭に響く言葉によろめく。

 溢れ出すは狂気そのもの。
 UDC怪物と相対しているだけで、ころねは己が願いを叶えなければならないという衝動に駆られる。
『狂気艦隊』、その不気味な『機械仕掛けの洋館』に座すUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』は見るだけで強大な存在だとわかるだろう。
 そして、遅い来る狂気。
 叶えなければ。
 叶えなければならない。
「正義! 正義!」
 声に出さなければ、頭の中で言葉が反響して頭蓋が砕けそうだった。
 迫る狂気を振りほどけない。

 けれど、ころねは頭を振る。
「……あぅう、冷静にやるんだよ。考えてからやれって、いつも言われてるじゃないか」
 ころねは自身の手にした可愛らしく装飾されたバトルアックスにより掛かるようにして体を支えた。
 そうしなければ、立っていられない。
「世界ノ敵、ソレガ――ボク、オレ――!!」
 咆哮が轟く。
 空を見上げれば、迫るは破滅をもたらす彗星であった。
 空を切り裂くようにして一気にころねへと迫ってきている。
 まともに受ければ、滅びるのは己であろう。しかし、ころねの瞳がユーベルコードに輝く。
 単純で重い一撃。
 これによって迫る彗星自体を、ころねは砕く。
 破片が飛び散り、衝撃が身を打ち据える。
 走る。
 走り続ける。
 そうしなければ、迫る彗星が自身を砕くと知っているからだ。
「もうっ! どうしてこんなに……!」
 ころねは手にしたバトルアックスを振るう。
 せっかくデコったのに可愛くない戦い方をシなければならない。グラウンドクラッシャーの一撃だけでは防戦一方だった。

 多くを戦いでは考えなければならない。
 けれど、ころねはもうやめた。
 考えることをやめたのだ。
 たくさん考えても、結局自分の役をやるしかないのだ。
 自分は自分にしかなれない。他の誰かになんてなれないのだ。いやなら降りればいい。そういうものだ。
 けれど、生きているのなら。
「懸命にやるしかないでしょ! そういうものでしょ!」
 ころねは『ジャガーノート・ハーレー』へと攻撃を叩き込む。
 これが自分のしなければならないことだ。
 己の中にある正義を執行する。
 ただそれだけのために、ころねは己が願望を発露させるようにバトルアックスの一撃を『ジャガーノート・ハーレー』へと叩き込み、周囲にあった蒸気機関を砕くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
こんなところまで出張ってくるとは大概ですね、邪神。
「狂気耐性」である程度狂気を制御しつつ、歌声で世界を眠らせたいという望みを叶えるとしましょうか。

これは「先制攻撃」しないと危ない手合いですね。
竪琴を取り出し、「全力魔法」「精神攻撃」悪夢の「属性攻撃」「催眠術」「楽器演奏」「歌唱」でヒュプノヴォイスを、洋館の屋根の上で歌声の届く限り響かせましょう。
瀕死で即時復活するのなら、眠りに落ちた隙に首を裁断鋏で切り落としましょう。
邪神をそれで殺しきれるかは分かりませんが、復活には多少余分な力が必要になるんじゃないですか?

ご安心を。大人しく眠りの淵で微睡んでいるうちに、全ては終わっていますよ。



 超大国が一つ、『クロックワーク・ヴィクトリア』の『狂気艦隊』が目指すのはロシアの首都サンクトペテルブルクであった。
 勃発した『獣人世界大戦』を切っ掛けに彼らは他の領域を侵略しようしているのだ。
 捨て置けるわけがない。
「こんな所まで出張ってくるとは大概ですね、邪神」
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)は猟兵の一撃によって砕けた『狂気艦隊』の蒸気機関の中心に座す邪神、UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』を見やる。

 光剣を抜いた『ジャガーノート・ハーレー』は棒立ちとも言える体勢であった。
 呆然とした様子である。
 猟兵達のユーベルコードが確かに『ジャガーノート・ハーレー』を追い詰めているのだろう。これはわかる。
 だが、一目見た瞬間に彼女を襲うのは狂気であった。
 溢れる願い。
 叶えなければと思ってしまう。
 そして、それは頭をパンクさせるように膨れ上がっていくのだ。
 狂気への耐性を持つのだとしても、それでも抑えられない。
 芽亜が望むのは、『世界を歌声で眠らせたい』という望みであった。己が歌声に世界を沈めたい。
 世界が夢のようであったのならばいいと思うのだ。

「この願いは――」
 叶えなければならない。
 他ならない『ジャガーノート・ハーレー』を眠らせる。
 そうしなければ、世界は眠りに沈まない。
 故に、歌う。
 芽亜の瞳がユーベルコードに輝く。
「さあ、眠りの幕に包まれ、意識を手放しましょう。甘美な微睡みの縁ほど魅惑的なものはこの世にありません」
 大音量で響く声。
 それは歌声であると同時に深い睡眠状態へと『ジャガーノート・ハーレー』を誘い混むのだ。

「――」
 彼は見ただろう。
 悪夢を。
 竪琴の音色の中に悪夢が広がっている。
 赤く染まる窓。
 己が手が血に塗れている。それは他者の血ではない。自分の血だ。
 ごぼり、と音がした。
 まるで自分が出したものではないような音が喉から溢れ、息が詰まる。喉が、支えて声がでない。
「オ、姉、ア――」
 漸く絞り出した声。

 その声に『ジャガーノート・ハーレー』の眼光が煌めく。
 芽亜は、即座に敵の首を寸断しようとしていた。だが、既のところで『ジャガーノート・ハーレー』の体が動いたのだ。
 まるで何かに突き動かされるように前へ。
 裁断鋏の刃に装甲が支え、軋む。
 殺しきれない。
 芽亜は理解しただろう。
 深い睡眠状態にありながら、『ジャガーノート・ハーレー』は踏み出したのだ。

「深い眠りの淵でまどろむように終わらせるつもりでしたが……あなたは全てを終わらせるつもりはないのですね」
 芽亜は気がついただろう。
 敵は、UDC怪物は何かに縋っている。
 狂気ではない何か。
 眠りの先に何もかもが終わるというのに、それを是としないのだ。
「『約束』に縋っているからこその狂気。あなたは、きっと救われないことを選んでいるのでしょうね」
 だから、と芽亜は迫る光剣を受け止め、裁断鋏でもって弾く。
 火花が散り、戦いの光が空に瞬いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百鬼・甚九郎
願望か
わっはっは、儂の願望なぞつまらんぞー
死に時を失った鬼じゃ、望むことなぞ一つじゃろ

強い強い敵と戦いたい!満足する戦をしてくれた相手にこの首やりたい!それだけじゃい

けどまー、あれじゃ、それ以上にじゃな、大切なことがあるんじゃよ。
死んだダチ公と約束しておってな。気が向いたら人を助ける、っちゅーな。
儂は鬼じゃ。鬼はな、約束を破らんのじゃよー。

ちゅーわけだ!こんなところで死ぬまで戦うわけにゃーいかんのよ!
なーにが邪神じゃい!こちとら邪神な水神の息子とダチじゃぞ!ほぼ他人じゃな!うるせー!
彗星に向かって右腕をのばーす!掴んで敵の前にジャンプ!
てめーごと殴り抜いてくれるわー!



『狂気艦隊』に座すは、UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』であった。
 一目見れば。
 視界に収めれば。
 ただそれだけで狂気が他者を侵す。
 あふれかえる願望。
 頭の中で反響するようにして膨れ上がり、他のことなど何一つ手がつけられぬようになってしまうだろう。
 だが、百鬼・甚九郎(茨鬼童子・f17079)は盛大に笑い飛ばした。

「わっはっは!」
 つまらないな、と己の頭に反響する願いとやらを彼は一蹴した。
 膨れ上がる願望あれど、それはただ一つ。
 己は死時を喪った鬼。
 ならば、望むことなど一つしかない。
 強い強い敵と戦いたい!
 満足したい。
 そして、それを与えてくれた者に対して、褒美として己が首をくれてやりたい。
 ただそれだけだ。
 故に甚九郎は笑い飛ばす。

 そんな願いなど叶えられるはずもない。叶えなければと思うけれど、それを為す敵が目の前にいるとは思えなかった。
 目の前のUDC怪物は『ジャガーノート・ハーレー』である。
 しかし、彼の瞳には幼子に見える。
「オレ、ボク、ハ……」
「知らん。お前のような幼子をわしは知らん!」
 きっぱりと言い切り、甚九郎は走る。
『狂気艦隊』は不気味な『機械仕掛けの洋館』である。濛々と立ち込める蒸気をかいくぐり、迫る破滅の彗星へと視線を向ける。

 今の己を走らせるのは願望ではない。
 願望よりも大切なものを甚九郎は持っている。
 そう、『約束』である。
 亡き友との約定。
 気が向いたらでいいから、と言われた言葉を思い出す。己が願望なんて、その『約束』に比べたら矮小なものである。
 人を助けてくれ、と請われた。
 願われたのだ。
 ならば、『約束』を違えてはならない。己を鬼と定義するのならば、それは違えてはならない。

「『約束』……ボク、ハ」
「ちゅーわけだ! こんなところでお主と死ぬまで戦うわけににゃーいかんのよ! 幼子よ、暫し遊んでやる。なーにが邪神じゃい! そんなもん怖くもなんともないわい!」
 甚九郎は迫る彗星に手を伸ばし、つまむ。
 素手で掴むにはあまりにも摩擦熱が酷いが、何、鬼である。
 なんのこれしき、と甚九郎は闊達に笑って『ジャガーノート・ハーレー』の眼前へと飛ぶのだ。
「こちとら邪神な水神の息子とダチじゃぞ! ええい、ほぼ他人じゃな! うるせー!」
 勝手に一人で大盛り上がりして、騒々しいまでの声で甚九郎は『ジャガーノート・ハーレー』を握りしめた拳で打ち据える。

 それは所謂ゲンコツ、というやつであった。
「わらべにはこの程度でよいんじゃよ!」
 ただし、そのゲンコツは彗星よりも硬い。
 強烈なる衝撃と共に『ジャガーノート・ハーレー』は頭部の甲冑めいた装甲を砕かせながら、地面に叩き伏せられるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
流星の時の邪神だね
並々ならぬ後悔を抱えてそうで
見るに忍びないとこもあるけど
狂気艦隊を先に進める訳にはいかないから
この場は停めさせて貰うよ

願望を叶えなければという衝動か
邪神と融合して狂気耐性があるのもあるけど
元の体に戻りたいという願望は
どうしたら良いかわからないからね
行動に移しようが無いんだよ
だから歯を食いしばって集中すれば
戦えない程では無いね

こいつとは戦った事があるから
攻撃を予測して回避するよ
オブビリオンは変わる事ができないから
前回の経験を活かせると思うよ
学ぶ事ができる人間の強みを使わせて貰おうか

攻撃を回避しつつガトリングガンで攻撃
範囲攻撃で確実にダメージを与えよう

でも、またいつか、なのかなぁ



 UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』――それは依然の事件で出現した存在である。
 オブリビオンは過去の堆積に歪んだ存在。
 同一存在に見えて、それはまったく異なる存在である。
 だから、と思う。
 あの時、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が対峙したUDC怪物とは違うのだろう。
 けれど、それでも経験だけは活きる。
 晶は並々ならぬ後悔めいたものを抱えているようにも思える『ジャガーノート・ハーレー』の姿を捉え、己が頭に膨れ上がっていく願望を自覚する。

「オレ、ハ、ボク、ハ……――シナケレバナラナイ、ノニ」
「わかるよ。君のその後悔も。悔恨も。見るに忍びない」
 同情すべきなのだろう。
 そういう敵なのだろう。
 けれど、晶は頭を振る。
 この海上を行く不気味な『機械仕掛けの洋館』は『狂気艦隊』。このまま進ませれば他の領域へと侵略を開始するだろう。
 そうなった時、犠牲になるのはいつだって罪なき獣人たちである。
 それを許してはおけないからこそ、こうしてやってきたのだ。
「この場は停めさせて貰うよ」
 晶は頭にあふれかえる狂気の如き衝動を前にして、凪いだ心のまま立つ。

 願いがないのかと問われれば、あるに決まっている。
 叶えなければならない願望。
 邪神と融合している体を元に戻したい。
 男に戻りたい。
 そういう願望は、あるにはある。けれど、それをどうすれば叶えられるのかがわからない。
 行動に移そうとしても、何をどうすればいいのか。
 わからない。
 叶えなければ、という思いと相反する肉体。
 これを如何にするのか。
 心と体がチグハグなのだ。
 矛盾するような体躯に悲鳴が上がるように骨身が軋む。

 歯を食いしばる。
「戦えないほどじゃないね」
 迫る『ジャガーノート・ハーレー』の攻撃は鋭い。
 光剣の軌跡は確実に晶の首を狙っている。けれど、知っている。以前戦ったときの動きだ。厳密に言えば、違う存在なのかもしれない。
 けれど、人は経験を持って活きることのできる存在である。
 学ぶことができる。
「人間の強みってやつさ」
 光剣の軌跡を晶は見る。
 早く、鋭い。そして、正確だ。だが、故に晶は見切ることができる。
 これまでの戦いで培った経験が、庸人の錬磨(ヒューマン・エクスペリエンス)を経て、この戦いを制するのだ。

 予測された通りに動く晶はガトリングガンの弾丸を『ジャガーノート・ハーレー』へと叩き込む。
「ガッ――、ガ、ァ――」
 打ちのめされる体躯。
 飛び散る破片。
 鋼鉄の体躯は、揺らぐようにして傾ぐ。
 この場で滅ぼしても、また現れるのだろう。
 オブリビオンとはそういうものだ。
 だからこそ、晶はつぶやくようにして言うのだ。
 これが自分への慰めなのか、それとも叶えられない願いの衝動の反動なのか。
「またいつか、なのかなぁ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

戦争になると、雄叫びが多くなりますね。
そろそろこの世界にも|ステラさん《やべーメイド》が馴染んできた頃でしょうか。

うん。馴染むのはいいことです。
……けどわたしはもうダメです。
12本あった練乳がもう残り1本しかないんです。余命わずかです。

って、え?
これが邪神のもたらす狂気なんですか?

なんだー♪
邪神ってたいしたことないですね。ステラさんのほうが万倍やべーですよ!

……あ、本日2度目。
さすがステラさん、狂気には狂気で対抗なんですね!

そうなると真面目で可愛いしか取り柄のないわたしはちょっと不利ですね。

これを覆すにはやはり演奏しか!
あ、テルちゃんに任せるのもいいですね。そうですそうしましょう!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!
今回はどちらかというとハイランダー・ナインでしょうか!
8番目……アハト・ラーズグリーズ様ですか?
貴方さまが平和を願う曉の歌をまだ忘れ得ぬというのなら

……というところでルクス様が瀕死です
これは大変はやく練乳を摂取して!!

おっと、これが邪神のもたらす狂気……
ですがこの衝動は私には無意味
何故ならば叫ぶだけだからです!
エイル様の香りがしまぁぁぁすっ!!
誰がやべーメイドですか!!

ジャガーノート様
貴方さまが|怪物にして争いの熾火《プロメテウス》ならば
私たちが絶望を砕くのみ
戦いに際しては心に平和を
|セラフィム《希望》のごとく
立ち塞がりましょう!



『狂気艦隊』に座すUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の体躯が弾丸に晒され、砕ける。
 破片が舞い散る。
 鋼鉄の鎧の如き姿。
 光剣を振るって弾丸の雨から逃れた『ジャガーノート・ハーレー』は、己が中にある衝動を発露する。
 果たさなければならない。
『約束』。
 果たせなかったものがある。
 ならば、今己が抱えているものがなんであるのかさえ忘れてしまったことを『ジャガーノート・ハーレー』は呻くようにして嘆く。

「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!」
 嘆きをかき消すような叫びが響く。
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)である。言うまでもないことであるかもしれないが。
「どちらかというと、『ハイランダー・ナイン』でしょうか!」
「戦争になると雄叫びが多くなりますね」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は慣れっこだったので、するっとスルーしていた。慣れたもんである。
「八番目……『アハト・ラーズグリーズ』様ですか?」
 ステラの問いかけに『ジャガーノート・ハーレー』の体躯が揺れる。
 いや、震えているようでもあった。
 振動しているようでもあった。
 その名が引き起こすのは、記憶か、それとも悔恨か。

「貴方さまが平和を願う曉の歌をまだ忘れ得ぬというのなら」
 ステラは思う。
 死ぬことで過去になる。
 過去になれば等しく骸の海へと向かう。
 過去の体積が己達の足元にあるものであるのならば、自身達の生は死を踏みつけにして成り立つものである。
「ボク、ハ……――」
 言葉が紡がれない。
 歪み果てた結果なのか。
 わからない。けれど、ステラはさらなる言葉を紡ごうとして断念した。

「そろそろこの世界にも|ステラさん《やべーメイド》が馴染んできた頃でしょうか。うん。馴染むのはいいことです……けど、わたしはもうダメです」
 ルクスをステラは見た。
 すでにシリアスに耐えられていない。
 持ち込んだ練乳は12本。12!?
 その最後の一本をルクスは震える手で掴んでいる。
 もうやばい。
 ライフゲージみたいなもんである。
「余命僅かです」
「ルクス様が瀕死ですね。これはたいへんたいへんはやくれんにゅうをせっしゅして」
 棒読みである。

 そう、今のステラの頭の中は主人様一色なのである。
 ルクスの練乳チューブが残り一本であっても、UDC怪物『ジャガーノート・ハーレーエ』の放つ狂気による衝動が、彼女の願いを発露させるのだ。
「『エイル』様の香りがしまぁぁぁすっ!!」
 二度目である。
 それって掟破りではないだろうか。
 言ったでしょ、叫ぶのは一度に一回だって!
「致し方ないことなのです。これは邪神のもたらす狂気……この衝動は停められないのです。香りがしまぁぁぁぁすっ!!」
 どさまぎで三度目である。

「え? それって邪神のもたらす狂気なんですか?」
 ルクスは練乳ちゅうちゅうしながら首を傾げる。
「なんだー♪ 邪神ってたいしたことないんですね。ステラさんの方が万倍やべーですよ!」
 本日三度目の叫びを聞いてルクスは、練乳チューブをちゅうちゅうする。
 これがもしかしたら彼女の願いの発露なのかもしれない。
 シリアスをどうにかいしたい。
 なら練乳。
 そういうことである。どういうことであるかはわからない。詳しく聞かれても答えようがない。
「狂気には狂気……誰がやべーメイドですか!」
 もはや紫メイドはやべーメイドである、というのが通説であるし、常識である。

「『ジャガーノート・ハーレー』様、貴方さまが|怪物にして争いの熾火《プロメテウス》ならば、私達が絶望を砕くのみ」
「急に真面目になるのずるくないですか? 真面目でかわいいしか取り柄のないわたしにはちょっと不利ですよ?」
「シリアスしてますけど大丈夫ですか?」
「ふふ、これを覆すにはやはり演奏しか!」
「あ、ちょっ!」
 今まだシリアスの途中! とステラが止めようとしたが遅かった。
 ルクスの演奏は止まらないし、オチ担当なのである。
 ウィリアム・テル序曲(ウィリアムテルジョキョク)が響き渡る。クラリネットの旋律は破滅的にして壊滅的であった。

 耳栓なんてぶっ壊す。
 その強固な意志と共に現れた英雄が『ジャガーノート・ハーレー』と切り結ぶ。
「テルちゃんい任せるのも時にはいいですね!」
 テルちゃんていうの!?
 そんなルクスの演奏にシリアスもなんもかんもぶち壊された紫メイドは耳栓なんて意味ない演奏に悶え、苦しむのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
狂気艦隊……邪神の加護を受けているという物が厄介だね…
……まあこの程度の狂気であれば耐性があるからまだ耐える事が出来るかな…こちらにも矜恃という物はあるからね…

…それよりもジャガーノート・ハーレーのこのしぶとさが厄介だ……
…【空より振りたる静謐の魔剣】を発動…
…展開した氷の魔剣の軌道を操って相手の光剣を防いだり…設置することで超加速に対応をしたり…追尾してくる流星の迎撃をしよう…
…迂闊に攻撃をして追い詰めると復活するから…残りの魔剣でジャガーノートを攻撃…凍結により動きを封じ…
…巨大な氷の魔剣を生成して切り裂くことで押し切るとしようか…



 海往くは不気味な『機械仕掛けの洋館』。
 それを『狂気艦隊』と呼ぶ。
 超大国『クロックワーク・ヴィクトリア』が要する狂気に塗れた艦隊。これが目指すはロシアの首都サンクトペテルブルクである。
 これを侵略しようというのだろう。
 獣人世界大戦を皮切りにして領土を広げ、覇権に手を伸ばす。
 それは超大国同士の激突においては当然取る選択であったのだろう。だが、その選択によって生命が脅かされるのはいつだって罪なき獣人達である。

 これを止めるために猟兵たちは『狂気艦隊』へと転移した。
 だが、問題がある。
「……邪神の加護を受けている、か……」
 UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』の姿をメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は捉えた。
 瞬間、頭に膨れ上がるのは、己が叶えなければならない願望であった。
 後から後から溢れ出してくる願望。
 膨れ上がった願望は思考を圧迫し、さらには叶えなければという衝動のままに行動しなければ、という思いに駆られてしまう。

 だが、メンカルは己が衝動を整理する。
 彼女の類まれなる頭脳は願望を整然と処理していくのだ。あれも、これも、それも、と溢れ出す願望を正しく処理できないからこそ人の頭はパンクしてしまう。
 その狂気をメンカルは受け流す。
 理路整然と頭の中でタスクを処理するようにして演算していくのだ。
 優先順位と重要度。
 それらを割り振って並行的に思考を躱していくのだ。
「……まあ、この程度の狂気……こちらにも矜持というものはあるからね……」
 だが、問題は『ジャガーノート・ハーレー』である。
 驚異的なしぶとさ。
 猟兵達の攻勢を前にしても、あのUDC怪物は何度だって立ち上がってきている。

 鋼鉄の体躯は砕かれながらも、その内部が虚であることを示している。
「オレ、ボク、ハ……叶エルマデ、倒レナ、イ」
 反響するようにして幼子の声が虚より放たれている。
「……だろうね。それは叶え得ぬ願望なんだよ。皮肉だね。他者にもたらす狂気は衝動。なのに、お前には、それがない。それは衝動とは呼ばないんだよ。それは」
 執着にして寄す処というのだ、とメンカルは己が瞳をユーベルコードに輝かせる。
 その寄す処を壊す。
 そうしなければ、『ジャガーノート・ハーレー』は倒せない。
 わかっている。

 掲げた手が天を見る。
「停滞の雫よ、集え、降れ。汝は氷刃、汝は驟雨。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)がメンカルの指先に従うようにして『ジャガーノート・ハーレー』へと放たれる。 
 真っ向から打ち据える光剣。
 剣閃が煌く度に、魔剣と光剣が打ち合い火花が散る。
 加速していく鋼鉄の駆体。
 だが、メンカルは手繰る魔剣でもって『ジャガーノート・ハーレー』の体躯を凍結させていく。
 加速も流星も、いずれもがメンカルにとっては致命的だった。
 だからこそ、手数で圧倒する。

 動きを止めることと攻撃すること。
 それを一度に為す事のできるユーベルコードは、『ジャガーノート・ハーレー』を縫い留める。
「『約束』、『約束』ヲ、ボク、ハ、あ、オ姉、チャ、ン……」
「……それはもう叶わない。叶えられないんだよ」
 メンカルは魔剣を生成し、振り下ろす。
 放たれた一撃は光剣を砕きながら『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の体躯を切り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明和・那樹
●SPD

『頭にあふれかえる己が願望を叶えなければという衝動』…統制機構が支配する何も変化しない世界から刺激溢れる日常に満ちたGGOをやってる理由はそれかもしれない
けれど、自由を得られたと浮かれ続けていれば、行きつく先は遺伝子番号焼却

ゲームはほどほどに

当たり前だろうけど、その当たり前えを守っているから僕はこうして何方とも生き延び続けている
それを肝に銘じて…行くよ

手応えのある敵はもう一度戦ってみたい気持ちはあるけど、人の命が掛かってる戦争ならそうは願わない
これで何度目の復活か分からないけど二振一具の【ジャストガード】と【連携攻撃】で機会を窺い、隙が出れば『スキルクロス・リユニヨン』で仕掛けるよ



 切り裂かれた鋼鉄の体躯から破片が散る。
 鋼鉄の体の内側は虚。
 あるのは残響めいた幼子のような声。
「ボク、ハ、ア、ア、ア――」
 叫びにも似た声だった。
 叶え得ぬものを持つがゆえの衝動。
 そして、皮肉にも他者に与えるのは願望を叶えたいという狂気じみた衝動である。
 UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』は己を見た存在へと、狂気を与える。
 頭にあふれかえる叶えなければならない願望を与え続けるのだ。
 頭が願望でいっぱいになる。
 それは他の何にも手がつけられないほどの衝動だった。

 それ以外の全てが無意味に無価値に思えてしまう。
 人はそれを視野狭窄と言うのかもしれない。
 明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は、己の頭に膨れ上がっていく願望を見つめる。
 統制機構が支配する何も変化しない灰色の世界。
 そこから逃れるために刺激溢れるゴッドゲームオンラインへとのめり込んでいるのだ。もっと、もっと、ゲームがしたい。
 一日が二十四時間あっても足りないとさえ思ってしまう。
「きっと、こんな日常がずっと続けば良い、なんて思っているんだろうな、僕は」
 那樹は思う。
 そうだ。
 ずっとゲームの世界に入り浸っていたい。
 あの刺激ばかりの日々に埋没していたい。
 けれど、と理性が言うのだ。

 自由を得るのは簡単なことだ。何も難しいことはない。
 けれど、自由に浮かれていては、行き着く先がなんであるのかを想像できないわけではない。
 遺伝子番号焼却。
 またあの灰色の世界に逆戻りだ。
 それだけではない。
 人権を剥奪され、二度と戻ることは叶わない。
「だから、ゲームはほどほどに、っていうんだろうね。当たり前だろうけど、その当たり前を守っているから僕はこうして生き続けている」
 肝に命じる。
 己が頭に溢れた衝動は、それを自覚させてくれた。
 わかっている。

「君の存在が、人の生命を脅かすっていうのなら」
「オレ、ボクハ、『約束』ヲ……」
「いいよ。君が何度立ち上がるのだとしても。付き合うよ。満足行くまで、いや、その『約束』が摩耗するまで」
 那樹は踏み込む。
 カウンターと捨て身の一撃。
 組み合わせた技能により生み出された独自の技能。
 マキシマムカウンターによって迫る『ジャガーノート・ハーレー』の光剣と打ち合う。
 剣戟の音が響き渡る。

 眩しいほどの火花が目の前に散る。
 変化していく。
 一撃とて同じものはない。
 手応えのあるレイドボスとは何度だって戦いたいと思う。
 けれど、これは現実なのだ。ゲームの世界じゃあない。己の敗北は誰かの生命が消えることを意味している。
「僕は行くよ。君が『そこ』にとどまっているのなら」
 振るう一撃が『ジャガーノート・ハーレー』の光剣を弾き、神速にて踏み込んだ一閃でもって、虚の如き体躯を貫いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧沢・愛里
あれが邪神。
とっても強そう…何より、心に沸いてくるこの気持ち。
『お父様とあいりの間を邪魔する全てを消し飛ばしたい』衝動。

でも、駄目。駄目なの。
そんな事したらお父様が悲しむもの。
お父様を悲しませることは、一番駄目なこと。
だから、あいりも邪神だけれど、世界の敵にはならない。
この願いは、誰にも叶えさせるわけにはいかないの。
あいり自身にも…勿論、そこの邪神さんにも!

あなたは世界の敵じゃない。
あいりのお父様への想いを穢す、あいりとお父様の敵!
自分が何者か、っていう『苦悩』で、潰れちゃえばいいのよ!
(UC発動、暗黒球体叩きつけ)



 不気味な『機械仕掛けの洋館』が海に浮かんでいる。
 それだけでもなんとも言えない恐ろしげな雰囲気があった。本来ならばありえない光景。ありえないが、しかして存在しているという事実。
 人はそうした光景を目の当たりにした時、驚愕よりも先に恐ろしさを覚えるものである。
 故に『狂気艦隊』。
 超大国『クロックワーク・ヴィクトリア』が要する海上戦力であり、目指すはロシアの首都サンクトペテルブルクである。
 獣人世界大戦勃発を皮切りに、各地でこのような侵略が行われている。
 超大国同士が争うことは構わないかもしれない。
 だが、その争いに巻き込まれるのはいつだって罪なき獣人たちなのだ。

 故に止めねばならない。
 だが、『狂気艦隊』を沈めるためには邪神、UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』を打倒せねばならないのだ。
「あれが邪神。とっても強そう」
 霧沢・愛里(ヌーベル・エルダー・f34610)は敵の威容を見やる。
 鋼鉄の体躯。
 猟兵達の攻勢によって傷ついてはいるものの、しかして健在である。
 そして、何よりも己が心、頭に湧き上がってくる感情がどうしようもない。

 それこそが邪神のもたらす狂気である。
「お父様、お父様、お父様」
 つぶやくのは、頭の中にある願望を発露するためだ。そうしなければ、気が狂ってしまいそうだった。
 己とお父様の間を邪魔する全てを消し飛ばしたい。
 それが彼女の願望だった。
 彼女の父との間にある空気すら許せない。
 それすら吹き飛ばしたい。
 世界が阻むのならば、世界だって吹き飛ばしたい。
「でも、駄目。駄目なの」
 そんなことをしたら、他ならぬ父が悲しむ。
 一番してはならないことだ。
 だから、と愛理は頭を振る。

「世界の敵にはならない。あいりは、この願いは、誰にも叶えさせるわけにはいかないの。あいり自身にも……勿論、そこの邪神さんにも!」
 故に、と彼女はユーベルコード輝く瞳で『ジャガーノート・ハーレー』を見据える。
「『約束』、『約束』、ヲ果タサナ、イ、ト……」
「そう。でも、あなたは世界の敵じゃあない。あいりのお父様への想いを穢す、あいりとお父様の敵!」
 掲げる手に生まれるは暗黒の球体。
 頭上に有りて、それは罪業邪樹禍『苦悩』(シン・クリフォート・ディストレス)へと変ずる。
 超大質量の塊たる球体を愛理は『ジャガーノート・ハーレー』へと叩きつける。

 己が願望は止むことはない。
 だが、それを常に己は制御しているのだ。
 止まらないのは常なること。
 そして、己が誇るべきことである。なら、何一つ恥じることはない。
 もしも、彼女が『苦悩』に塗れるのならば、きっとそれは唯一人のために。
「自分が何者かっていう『苦悩』で、潰れちゃえばいいのよ!」
 叩きつけた一撃のままに愛理は『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の体躯を打ち据えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

くっ手が止まらない…!(ぱくぱく)
お菓子が次々出てくる…!(もぐもぐ)
おいしい…!(ごくごく)

と[ポケット]から際限なく出てくるお菓子や飲み物を摂取しながら事態に当たらなければならないなんて…
―――いや、もう食べたよ
お腹いっぱいさ!

●おなかいっぱいげんきひゃくばい(当社比)
おなかいっぱいのボクは無敵だよ!
さぁ[球体]くんたち!とドカデカ球体くんたちを壁にして彼に接近しよう
彼らが突破されるのが先か、ボクがたどり着くのが先か、勝負だよ!
【第六感】に任せて最短を駆け抜けてUC『神撃』でドーーーンッ!!
キミのお願いはボクが聞き届けてあげるよ!
それが、叶うべきものならば…きっと



 溢れる願望を具現化できる術があったというのならば、それはとめどない願望の源泉であったことだろう。
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)のポケットから溢れ出すお菓子。
 キャンディにクッキー、マシュマロ、ビスケット、チョコレート。
 それはもうとめどなく溢れ出している。
 自分ではどうしようもないことであった。
 自らの欲望を制御することなど難しいことであったし、何より『狂気艦隊』を守っている力の源であるUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』の力によって、ロニの頭には己が叶えなければならない願望が溢れかえっているのだ。

「止まらない……!」
 そう、ロニのポケットは己の求めに応じてあらゆるお菓子や飲み物を提供する。
 溢れ出す欲望が止まらない、というのならば、それは彼の衝動に応えるものであった。
 なんでもかんでも飛び出すポケット。
 叩けば二つ。もう一つ叩けば四つ。
 そんな具合に溢れてくるものだから、ロニはパクパクと口に運んではコーラで流し込むばかりであった。
「お菓子が次々でてくる……!」
 お菓子がでてるくるなら食べなければならない。
 止めればいいのに止められない。
 お菓子っていうのはそういうものである。
「おいしい……!」

 これが狂気。
 願望を膨れ上がらせ、衝動と共に頭を一杯にされてしまえば、戦うことは難しい。
「――いや、もう食べたよ。お腹いっぱいさ!」
 テッテレー!
 そんな効果音と背景が見えるようである。
 ぽっこり膨れたお腹。
 たぷたぷと音が鳴るようだ。
 それほどまでにロニのお腹はお菓子とコーラで満たされていた。

「なら、おなかいっぱいげんきひゃくばい! とうしゃひ! ってやつだね! さあ、球体君たち!」
 球体を無数に生み出し、迫る破滅の彗星へとぶつける。
 力技であるが、しかし、それでもロニは膨れたお腹を揺らしながら走る。
 球体が彗星に突破されるのが先か、それとも自分が『ジャガーノート・ハーレー』にたどり着くのが先か。
「勝負だよ!」
 最短距離を走る。
 その度にカロリーが消費されていく。
 最短であれど、それは険しい道だった。
 彗星が次々と迫る。
 球体とぶつかって弾け、砕け、さらには互いの破片が降り注ぐ。

『狂気艦隊』の不気味な『機械仕掛けの洋館』が被害を被っているようであるが気にしたもんじゃあない。
「ボク、ハ」
「キミのお願いはボクが聞き届けてあげるよ! それが叶うべきものならば……きっと!」
 振るう一撃。
 神撃(ゴッドブロー)たる拳の一打が『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の躯体を打ち据える。
 短時間でお腹はすっかりペコちゃんであった。
 それだけのカロリー消費。
 食べても食べても足りないという飽くなき衝動のままにロニは、己が敵を打ち据えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヌグエン・トラングタン
聞いてはいたが…狂気艦隊ってのはまた物騒なもんだな。
だが、ここで止めるっきゃねぇはな!

己が願望ね…『欲望竜』たる俺様の願望は、今はただ一つ。
妻たちの下へ、元のまま戻ること!
ま、そのためには…手早く片付けるしかねぇ。

凍炎不死鳥、彗星の方は任せた。お前は『大厄災を封じる』不死鳥だ。
なら、破滅っていう彗星にも魔力吸収からの封印、貫通攻撃できるだろうよ!

俺様は、このままジャガーノート・ハーレーをぶっ飛ばす。
お前はここにいるべき存在ではないんだろうが…立ちふさがるなら、世界の敵で倒すべき者なんだろうさ!
グラップルの要領で吹っ飛ばしてやる。



「聞いてはいたが……」
 ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は眼の前に広がる光景に息を呑む。
『機械仕掛けの洋館』が海に浮かんでいる。 
 それどこか、艦船のように進んでいるのだ。
 濛々と立ち上がる白煙。
 それが蒸気機関で動いていることを知らしめるように、あちこちから重たい音が響いているのだ。
 これが『狂気艦隊』。
 超大国が一つ『クロックワーク・ヴィクトリア』が誇る恐るべき艦隊なのだ。
 目指すはロシアの首都サンクトペテルブルク。
 獣人世界大戦の勃発によって、彼らは他の領域を侵略しようとしているのだ。
「また物騒なもんを。だが、ここで止めるっきゃねぇわな!」

 ヌグエンは機械仕掛けの洋館の屋根を伝うように走る。
 だが、UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』の姿を認め、足を止める。
 頭にあふれかえるは叶えなければならない願望であった。
 それは膨れ上がり、頭の中を圧迫していく。それしか考えられなくなってしまう。
 願望は、生命が活きるための衝動である。
 ならば、『ジャガーノート・ハーレー』が発露する力は、まさしくヌグエンの中にある願望を刺激するものであった。
「オレ、ハ、ボクハ、……ッ――!」
 咆哮が聞こえる。
 迫るは『ジャガーノート・ハーレー』。
 手にした光剣を振るい上げている。かわさなければならない。だが、体が、頭が、言うことを聞いてくれない。

 この戦いに際してもなお、己の頭の中を占めるのは妻たちのことであった。
 ただ一つのこと。
 この戦いを終えて、彼女たちの元に戻ること。
 それが今のヌグエンの願望であった。
 そして、更に破滅の彗星が天を割るようにして迫っている。
 ユーベルコード。
 ならば、とヌグエンは踏み出す。
 あの彗星を如何にするよりも、早く。
 眼の前の『ジャガーノート・ハーレー』を打ち倒す。それしかない。

 例え、己の頭が狂気に侵されたとしても、鍛えた身体は嘘をつかない(チカラノイッテンシュウチュウ)のだ。
 故に構える。
 静かなる構え。
 振り下ろされた光剣がヌグエンの肩へと叩きつけられる。
 光剣の熱が肉を焼く。
 骨へと到達する、と思った瞬間ヌグエンの瞳がユーベルコードに輝く。

「お前はここにいるべき存在ではないんだろうが……俺様の前に立ちふさがるなら、世界の敵で倒すべき敵なんだろうさ!」
 なら、とヌグエンは拳を握りしめる。
 己が帰るべき未知の前に立ちふさがっている敵を打ち据えるために振るわれた拳は、『ジャガーノート・ハーレー』を吹き飛ばす。
 何者も遮ることはできない。
 己は戻る、と決めたのだ。
 帰る、と決めたのだ。
 なら、何者も阻めない。
 たった一つの願望を持つ『欲望竜』は、並み居る敵の全てを打倒して、また妻たちに会うために、その力を振るうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

何故ここに邪神が…といった疑問はありますが。
立ちはだかるなら、排すまで。

私の願望なんて、取るに足らないものなんですけど。
ええ、『相手と真正面からやり合いたい』っていう。忍びだと叶えること、叶わぬもの。

ですが今ならいいでしょう?
UC使用しつつ…漆黒風を指の股に挟んで、薙ぎ払うように。
どれだけやられようが、こちらも倒れませんからね…!
ええ、生命力吸収はしてしまうので、いつかはあなたがバテるかもしれませんが。行きましょう…!
私だってね、たまにはこういうことしてもいいでしょ。



 超大国『クロックワーク・ヴィクトリア』は何故か獣人戦線の世界にあって、邪神の力を弄する者たちである。
 この『狂気艦隊』、不気味な『機械仕掛けの洋館』もまたその一つである。
 これを護るは邪神にしてUDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』。
 その姿を認めた瞬間、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の思考は一色に染まる。
 それまで邪神がなぜ此処にいるのか、であるとか、立ちはだかるならば倒すまで、と思っていた思考の全てがかき消されてしまう。
 理解できない。
 なぜ、と思った瞬間には染め上げられた思考の意味を知るのだ。

 願望が溢れて止まらない。
 とめどなく溢れかえってしまう。
 単一であろうと、複数であろうと関係ない。
 頭を埋め尽くし、戦うという意志そのものを押し流すかのような願望の濁流。
「これは」
『疾き者』は己の願望が大したものではないと思っていた。
 取るに足らぬものである、と。
 些細なことだった。
 自分の磨き上げてきた技術というものは、全てが不意を打つものであった。
 練磨した技術がそういうものであるのだから、必然『相手と真正面からやり合う』ことなどなかったのだ。

 だからこそ、己の願望が『これ』である、という事実に息を吐き出す。
 どうしようもないことだ。
 忍びである、というのならば叶えることははばかられ、叶わぬものであると切って捨てるべきものであったはずなのだ。
「ですが、今ならいいのでしょう?」
 眼の前には『ジャガーノート・ハーレー』が立つ。
 幾度の戦いを経て、幾度となく立ち上がってきた存在である。
「オレ、ハ、ボク、ハ……」
「真っ向勝負といきましょうか」
 ユーベルコードと共に『疾き者』は踏み込む。
 光剣と打ち合うには、棒手裏剣は心もとない。
 
 だが、互いの一撃が致命傷にはならないことを知っている。
 敵は何度だって立ち上がってくるし、己は何度でも体躯を再構築する。
 堂々巡りの戦い。
 生命力を吸い上げていく。
 これは我慢比べだ。
 敵の生命力を吸い上げることは、即ち、此方の力の状況になる。
「いつかはあなたがバテるのかもしれませんが。いきましょう……!」
「――」
 咆哮が迸る。
 互いに退けぬものを抱えているというのならば、己が五体が如何になろうとも構わぬことであった。

 笑ってしまう。
 己の忍びと既定していながら、このようなことを望んでしまう自我を。
 だが、いいのだ。今だけは。
「私だってね、たまにはこういうことしてもいいでしょ」
 単純なことなのだ。
 己が規定する事柄以上に、己という存在は自由であるのかもしれない。
 そんなふうに思いながら、砕ける五体を再構築しながら『疾き者』は叶えられた願望と共に力を振るうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
自分の望みは破壊だ!敵を破壊する事だ!!!貴様が敵だぁッッ!!!!

己が狂気を、己が|【闘争心】《破壊衝動》の矛先は邪神だけ!
ならば問題はなし!『恐喜歩』発動!!
邪神が齎した狂気の全てを怨念とし、闘争心とし、この戦いに流用する!
【早業】時間・空間を捻じ曲げる怨念結界の効果で彗星と邪神の動きを遅延させ、メガスラスター・プラズマシューズで【推力移動空中機動】邪神へ呪詛込めたフォースサーベルを振るい【切断】攻撃!!

貴様が斃されるべきかどうかなどどうだっていい!!
壊れろ!ただ壊れろ!|争《あらが》った、|求めた夢《約束》の中で!!

【瞬間思考力】片手で保持したフォースサーベルで敵の光剣を【武器受け流し】邪神の身の内側に潜り込み、もう片手に持ったフォースサーベルの|片割れ《双剣変形》から光刃を発生させ【カウンター急所突き】

壊れて果てて眠れぇえええええエエエエエッッ!!!

|破壊の【呪詛念動力】《サイキックエナジー》をフォースサーベルへ流し込み【限界突破】刀身爆破、邪神の肉体を壊し、その魂を呪い壊す!!!



 猟兵達のユーベルコードが鋼鉄の体躯の内側、その虚を貫く。
 UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』は幾度も立ち上がっていた。
 猟兵達のユーベルコードは確かに打ち据えていたのだ。
 だが、立ち上がっている。
 幾度も。
 それは『ジャガーノート・ハーレー』は虚の如き体躯の中にある寄す処のためである。
「オレ、ボク、ハ……『約束』ヲ、果タシ、タイ」
 そのためだけに『ジャガーノート・ハーレー』は立ち上がるのだ。
 恐るべきことだ。
 たった一つの叶えたい願望を寄す処にして、度重なる猟兵達の攻撃から消滅を耐えているのだ。

 だからこそ、破壊する。
 UDC怪物『ジャガーノート・ハーレー』がもたらす狂気。
 己が願望を叶えなければならないという衝動を受けて、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は咆哮する。
「自分の望みは破壊だ!」
 そう、破壊である。 
 それしかできないし、それ以外をしようとも思わない。
「敵を破壊することだ!!! 貴様が敵だぁッッ!!!!」
 敵。
 目の前の敵。
『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の体躯の内側、その虚に幼子を見るの出しても、それは敵なのだ。世界の敵なのだ。
 世界を滅ぼす敵を、小枝子は見過ごす事ができない。

 狂気の如き衝動があるのだとしても、小枝子は己が|闘争心《破壊衝動》の赴くままに踏み込む。
 矛先は、目の前の『ジャガーノート・ハーレー』のみ。
 変わらない。
 やるべきことは、依然変わらないのだ。
 迫る彗星。
 破滅をもたらす彗星が天から己へと降り注ぐ。
「問題などなし! この自分の中にある恐れも! 喜びも! この歩みをとめられやしないのだから!」
 ユーベルコードに輝く小枝子の人工魔眼。
 赤熱する光を放つ力は、時間、空間すらも歪めさせる。

 己が頭に膨れ上がる狂気すらも己が怨念へと変えていく。
 あふれかえる衝動が怨念へと転じ、結界へと変貌していく。
 真の姿へと変わる小枝子の髪は白。
 赤熱する人工魔眼が捉えるは敵。
 簡単なことだった。迫る彗星は時間と空間を捻じ曲げ、『狂気艦隊』へと迫るよりも早く踏み出す。
 メガスラスターが噴射し、プラズマシューズが生み出す反発力と推力でもって『ジャガーノート・ハーレー』へと肉薄する。

 視線がかち合う。
 敵。
 互いにそれを敵としか認識できない。
 振り上げたフォースサーベルと光剣が激突する。軋む骨身。
「貴様が斃されるべきかどうかなんてどうだっていい!!」
「ボク、ハ」
「壊れろ!」
「ボク、ハ!!」
「ただ壊れろ! |争《あらが》った、|求めた夢《『約束』》の中で!!」
 互いの剣が、互いの体を切り裂く。

 血潮と虚が噴出する最中、小枝子の瞳は『ジャガーノート・ハーレー』を捉えていた。
 構わず振るう。
 フォースサーベルと光剣がまたぶつかる。
『ジャガーノート・ハーレー』の拳が小枝子の顔面を捉え、ひしゃげさせる。
 血潮がまた飛沫となって飛ぶ。
 だが、構わない。 
 知ったことではない。
 致命傷だろうがなんだろうが、その全てが今の小枝子にとってはどうでもいいことだった。
 伸ばしたもう片方の手に握りしめられるのは片割れのフォースサーベル。
 変形した力は、逆手に握りしめられ、振り下ろされる。

 頭部に叩きつけられるようにして打ち付けられた一撃は『ジャガーノート・ハーレー』の鋼鉄の体躯にヒビを走らせる。
「壊れ果て、眠れぇえええええエエエエエッッ!!!」
 打ち込んだ一撃より流れ込むは破壊のサイキック。
 清流とは言い難い濁流の如き力。
 打ち込んだフォースサーベルが励起し、そのサイキックを受けて弾けるようにして「ジャガーノート・ハーレー』の体躯を爆散させる。

 それは膨大なサイキックの発露。
 励起した力と干渉し、虚の如き体躯は道へと変わるだろう。
 その魂が呪われていたというのならば、その呪いの如き楔と鎖とを小枝子の呪いが喰らい、壊していく。
「往け、貴様は、もう自分の敵ではない――」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月04日
宿敵 『ジャガーノート・ハーレー』 を撃破!


挿絵イラスト