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獣人世界大戦⑩〜異世界人の力で地獄を脱しろ

作者：黒代朝希

「楽浪郡……封神武侠界で壊滅的な被害を被った異世界人の街も、この世界の中国における楽浪郡にはあったのね……」
　そんな風に呟くも、だからこそ戦いを始めるべく黄金の縦ロールを靡かせるシカのグリモア猟兵、レヴィア・イエローローズ（亡国の黄薔薇姫・f39891）はポーランドに陣取った『六番目の猟兵』の前線基地にて猟兵達にブリーフィングを行っていく。
「中国大陸の遼東半島先端部に存在する「旅順要塞」は、現在『幻朧帝国』の租借地となっているわ。この近くには楽浪郡……何故か多数の異世界人が神隠しによって飛ばされてくる「流れ者の宝庫」が存在するわ」
　そこを舞台として行われる作戦とは、要塞により近接して攻撃を仕掛ける為、塹壕を掘り進めて進撃する塹壕戦。
　この世界において塹壕戦とは泥沼の中の泥沼……すら生易しく温い文字通りの『地獄』である。
「恐らく戦場は「地獄の塹壕戦」の様相となるだろうけど……ここは異世界人の力を借りるべきね」
　既にレヴィアは『幻朧帝国』の進撃を阻止するべく、楽浪郡の異世界人の内塹壕戦に適した能力や技術を持つ異世界人の協力部隊を確立している。
　これによって塹壕戦……地面を掘り進めながら要塞に接近する泥沼の中の泥沼を潜り抜け、占領する『幻朧帝国』の支配を打破するべく多少マシになった状況で戦いを進めるのだ。
「とはいえ『塹壕を建設した上で要塞に接近する』作業と並行しながら『敵の絶え間ない砲撃に対処する』という重労働が待っているわ。相応の準備だけはして頂戴」
　そう言ってレヴィアは異世界人の協力部隊に連絡を入れるのであった。

第1章 集団戦 『火炎放射兵』

POW   :    ステーキになりやがれ〜！ 【火炎放射器】から【燃え盛る炎】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。 SPD   :    10秒後が楽しみだぜ〜！ 敵を狙う時間に比例して、攻撃力・命中率・必殺率が上昇する【火炎】を武器に充填し続ける。攻擊すると解除。 WIZ   :    吠え面かかせてやるぜ〜！ 【火炎放射器】を使って「どのように攻撃するか」を予想できなかった対象1体に、【火炎放射】の一撃が必ず命中する。 イラスト：うぶき 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「地獄かあ。泥沼、たてがみ汚れるもんね。ボクも好きじゃない。なので今日から旅順はスイカ畑にしちゃうんだよ」
　ユーベルコード『｜スイカの名産地《ボクノジンチ》』を発動するカー・ウォーターメロン（マンゴーフレイム・f01967）は持参した軍用ショベルで塹壕掘りを開始していく。
「敵からの砲撃は、塹壕に建設した掩体壕に退避して凌ぐんだよー」
　ユーベルコードで塹壕には｜掩体壕《シェルター》、対ドーザーブレード防護柵、スイカ畑が建設されている。
　その状態の塹壕戦にて最も怖いのは――
「縦貫される事かな」
　火炎放射兵に対して集団戦術を意識し、協力部隊には敵オブリビオン兵と相対する際は火炎放射器の前で縦列隊形取らないようにお願いするカー。
　ジグザグに掘った通路や溝を活用し、塹壕戦において効率的に敵オブリビオン兵を狩るべく彼らは行動していく。
「あとは……敵が武器に火炎を充填してる隙に、塹壕内に生えてるスイカを片っ端から収穫＆転がす！」
　水気たっぷりのスイカで道を塞がれ、一瞬だけ立ち往生する『火炎放射兵』。
　一斉に火炎放射器で炙っても、大量のスイカは一切揺るがない。
　そこに協力部隊が加勢し、オブリビオン兵を掃討していく。
「こんがり焼けたスイカは後でボクが美味しく頂きます」
　しっかりと活用したスイカ……食品についても問題なく後片付けしていくカー。
　尚、少しの間塹壕戦に余裕が出来た為、協力部隊の面々も暖かく焼けたスイカを堪能していたとの事だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「流された先の異世界のために命がけで戦ってくれるなんて、義侠心溢れる人たちッス！　ご助力痛み入るッス！」
　臥待・月紬（超級新兵(自称)化け狸・f40122）……由緒ある一族から出奔し、塹壕工兵として活躍する祖先に神隠しで流れてきた化け狸の血を引くタヌキの獣人は、同じ様に異世界から転移して生きた楽浪郡の異世界人に感激して加勢する。
　元より彼女は塹壕工兵……塹壕戦において無二の活躍を誇るジョブを有している。
「――｜大砲穴《トーチカ》、鉄条網、対戦車地雷を用意して前線を押し上げるので、掘削の補助がもらえると助かるかも」
　楽浪郡の異世界人に対してそう進言する月紬。
　彼女の要請に応えたのは、アックス＆ウィザーズの魔法使いらしい女性。
　彼女は土を操作する魔術を使う事で掘り出す土を柔らかく軽くしたり、逆に壁面を固めて補強したりして月紬をサポートしていく。
「今の自分の限界以上に長く掘れる気がするッス！」
　そうして味方側の塹壕に設けられた｜大砲穴《トーチカ》、鉄条網、対戦車地雷。
　それらは敵の『火炎放射兵』に罠を仕掛けて排除するのに十分に活躍した。
「化術は、ユーベルコードの域に達しているっスからね！」
　無人のトーチカを設置し、その中に『化術』で兵士の幻影を配置――『火炎放射兵』が囮のトーチカを攻撃し、充填した炎を使い切ったところを、月紬は協力部隊の皆と一斉攻撃する！
「自分は手榴弾を全力投擲！――再充填の隙は与えないッス！」
　銃弾を喰らいながらも生き延びて燃料を再充填を行おうとしていた『火炎放射兵』は、その月紬が投げつけた手榴弾によって吹き飛ばされるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「現在異世界人の方々の協力を得て塹壕作成中ですが……しかし邪魔をする畜生共は度し難いですね――特別コード「冷」発動」
　クロム・チタノ（傾国狂戦士・f32170）はそう言ってユーベルコード『｜物質変換「冷」《クロムエリア》』を発動。
　塹壕戦を繰り広げる戦場にて無数に散らばる無機物を氷の槍と冷結の盾に変換し、如意自在に操作していく。
「戦場には無機物など無尽蔵にある、故に私の槍も盾も尽きる事無く造られ続けるのです」
「成程、これは相手側も良い感じに地獄だな……しかし傾国に苛烈さはつきものよ」
　ニヤリと笑い、レプリカ・レグナント（傾国参謀・f32620）はユーベルコード『｜それは滅びし国の精鋭部隊《レプリカソルジャーズ》』を用いて亡国の精鋭、強固な鱗を纏うワイバーン、撹乱、暗殺を得意とする隠密部隊を召喚。
　ワイバーンの強固な鱗にクロムの冷結の盾が加え、異世界人の守りを固めていく。
「そのような火炎ではワイバーンの鱗はびくともせん。その上で、クロムの盾はどれだけ溶かしても無機物ある限り無限よ」
　戦場において無機物を何かに変化するユーベルコードのシナジーは使い手次第で無限に上がると言っても良い。
　事実、レプリカとクロムは互いのユーベルコードと戦術を合わせて鉄壁の防御態勢を整えている。
「塹壕などかつての亡国の時代に飽きる程に作成して来たわ――故に、異世界人達の塹壕作りの手伝いをさせている」
　これもまた、同じ様に戦場にいた異世界人等が迅速に塹壕を作り上げている結果に繋がる。
　
「優位を確立した上で――我等は皆戦鬼、特に私はね」
　そこに山岡・朱鳥（呪われた鬼の血・f41465）……サムライエンパイアの今は滅んだ武士の家系の生まれで、先祖が禁断の鬼の力に手を出した事で一族が呪われ鬼の血が混ざった家系に生まれた彼女は『鬼』に関連するユーベルコードを駆使する。
「砲撃も火炎もどれだけやっても無駄なこと。戦場にある無数の無機物から無数に生み出される盾をどれだけ砕いてものれんを押し続けるようなもの……いわば徒労よ。そう思うでしょう？」
　一瞬で複数体のオブリビオン兵を切り捨て、そのまま隣にいるもう一人の傾国のメンバーに声をかける朱鳥。
「嗚呼、爆発と雄叫びがわたしの創作意欲を掻き立てますねぇ……泣き叫ぶのが好き、悲鳴も大好き」
　うっとりした様子でユイナ・ナナス（多重人格者の死霊術士・f41443）……元はUDCアース出身の裕福な家に生まれた画家志望であったが、描いた絵が邪神に通じてしまい邪神に魅要られてしまう。
　そうして狂気に侵されてしまい、狂気と理性の二つの人格を持つようになった彼女は、目の前に広がる『地獄』を目に焼き付けていく。
「『｜恐慌の渦嵐《マドネスサイクロン》』――お犬さんの足下の無機物を狂気と恐慌の渦巻きに変えました」
　顕現するは『狂気と恐慌の渦巻き』――邪神に魅入られた猟兵故のユーベルコードに飲み込まれたオブリビオン兵の末路とは、頭の中は恐慌で満たされてまともな思考も狂気に侵されるというもの。
「あはぁ、もう統率なんてとれませねぇ」
「ユイナの狂気は恐ろしいものだな、敵の指揮系統は最早壊滅的だ」
「戦術的にも、優位が取れて素晴らしいわね」
　すなわちその軍隊は死に体……自陣営の防御をクロムとレプリカが穴の無い様に固め、朱鳥とユイナが敵陣営の攻撃を徹底的にかき乱す。
　この状態で優位を確保できない方が難しいであろう。
「いい感じに更なる苛烈な地獄に変わったところで朱鳥は禁忌の技を――禁足地に足を踏み入れた報いを思い知らせなさい」
「分かったわ……さあ、禁足地に足を踏み入れた畜生共――報いの時よ」
　言葉を紡ぐと同時、朱鳥はユーベルコード『｜禁忌【鬼の災い】《オトロシ》』を発動。
　妖刀の魔力と自然現象を融合させ、あり得ぬ天変地異を引き起こしていく――
「此処は禁忌の恐処……さあ、禁足地に足を踏み入れた畜生共、報いの時よ」
　炎の大竜を、絶対零度の氷結の大津波を、有り得ざる現象を引き起こしていく朱鳥。
　それらが引いた時……巻き込まれた者は全て骸に変えられていた。
「これが鬼の災い――禁足地に足を踏み入れた報いよ」
　その様子に、遠くにいて巻き込まれ無かったオブリビオン兵が逃げようとする。
　が、勿論傾国のメンバーは逃がしはしない。
「嗚呼、なんて綺麗な災い……天変地異が恐慌にのたうつ畜生を呑み込み、無残な骸に変えて行く」
　再びオブリビオン兵の足元に『狂気と恐慌の渦巻き』が顕現――そのまま飲み込まれた発狂して墜ちていく。
「朱鳥の禁術で敵の数は激減した。精鋭部隊突撃――敵の体勢が整う前に蹂躙せよ」
　更にレプリカが指揮を取り、他の残党を各個撃破していく。
「此処は正に傾国の戦場……苛烈に無慈悲になお無残に、そしてこの地獄の戦場に戦った方々に――一握りの感謝を、きみに握手を送ろう」
　そうして、此度の『地獄』は終幕を迎える。
　オブリビオン兵の生き残りは、もはやいない。
「この地獄の戦場に……『獣人世界大戦』における全ての敵に、更なる苛烈な傾国の策謀を」
「此処は我等傾国の戦場、苛烈無慈悲に攻め立てよ！」
　最後にレプリカとクロムが戦闘終了後の演説を行い、今回の塹壕戦は終幕を迎えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年05月04日