獣人世界大戦⑧〜アンディファインド・ソング
●定義されず
渾沌――そこに定義を持ち出すことの無意味さを知るのならば、それに相対することもまた無意味であったことだろう。
絶えず時は運び、全ては土に還る。
そういう定義さえ、それの前には無意味である。
|罪深き刃《ユーベルコード》刻まれし者達が相争い、いつの日にか、その左目に|炎の破滅《カタストロフ》を映すこともあるだろう。
生きるために踏みしめるは過去。
時間はそうやって未来へと進んで行く。
避け得ぬことである。免れ得ぬことである。
「『師父』が求めるは『はじまりの猟兵』。そして、すでに目星をつけている『はじまりの場所』! 俺は猟兵、お前達の尽くを打ち倒して、これを為して見せよう」
コンキスタドール『有頂天道人』は異形なる体躯にて構える。
その構えは、誰が言ったか『サイバネ殺法』。
サイバーカンフーマスターたる『有頂天道人』は空を切る凄まじき蹴り、機械化義体の左腕を振るい天蓋を打ち砕く。
一部の隙すらない構え。
されど、恐るべきは変容した……常に不定形たる姿を見せる右腕であった。
時に翼のようであり、時に白く濁り、時に拳へと姿を変える一定の形を見せないもの。それを嘗て封神武侠界にて勃発した大いなる戦いにて見た猟兵もいるだろう。
『undefined』――渾沌氏『鴻鈞道人』が用いた力である。
濁る白は黒とも白とも灰色とも言えぬ渾然一体を示すようなものでありながら、剥離し分離しているかのような有り様。
その『渾沌』と『サイバー化』を並行励起させるコンキスタドール。
それが『有頂天道人』であった。
人外の膂力と反応速度に加え、自在に変化する肉体。
この相反するかのような力を余す事なく発揮する恐るべき敵。
駆体に満ちるは、功夫。
「お前達は『師父』のご所望たる『はじまりの猟兵』へと至る道。ならば、この俺が行かぬわけがなかろう。さあ、来るが良い六番目の猟兵よ。その道、この『有頂天道人』が踏破してくれよう――」
●獣人世界大戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。獣人戦線にて獣人世界大戦が勃発いたしました。そして、数ある『須弥山型都市』の一つを瞬く間に制圧したコンキスタドール『有頂天道人』が座す『有頂天天蓋』への道を皆さんが駆け上がってくださっています」
すでに数多の軍勢をはねのけ、猟兵たちは『有頂天天蓋』へと至っているだろう。
だが、問題は此処からである。
山一つを改造したサイバー都市、『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』。
このネオンサイン輝く天頂にてコンキスタドール『有頂天道人』は待ち構えている。
「『有頂天道人』は『サイバー化』と『渾沌化』、二つのまるで異なる異形を纏った超強敵です。人外の膂力と反応速度、そして『自在に変化する肉体』を余すことなく使いこなす恐るべき敵……」
だが、『有頂天天蓋』へと駆け上がる猟兵達を邪魔立てしていたオブリビオン軍団は退けられている。
後は、この『有頂天道人』を倒し、『須弥山型都市』を開放する正面決戦だけだ。
「敵の力は強大そのもの……そして、定義できぬ未だ謎に満ちた不定形にして曖昧模糊なる現象『undefined』。その気質からか『有頂天道人』は油断一つない隙のない構えを取っています」
戦うには正面きってぶつかるしかないのだろう。
機械化義体によるカンフー技。
さらには不定形にして不定義たる『undefined』の変則的な攻撃は、当たれば全てを消滅させるだろう。
恐るべき敵であり、真に恐るべきは『サイバネ殺法』。
「ですが、これなる敵を打倒さねば『須弥山型都市』は元より、獣人戦線世界を救うことはできないでしょう。どうか」
ナイアルテは身を抱くように肩を抑える。
嘗て渾沌氏『鴻鈞道人』に身を乗っ取られたことを思い出したのかもしれないし、それを踏み越えようとしているのかもしれない。
その瞳が猟兵達へと告げている。
この戦いが、明日の誰かのためになるのだと――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『獣人世界大戦』の戦争シナリオとなります。
山一つを改造した『須弥山型都市』の数々に突如として現れ、瞬く間に制圧したコンキスタドール『有頂天道人』。
彼は『サイバー化』と『渾沌化』という二つのまるで異なる異形を纏った超強敵です。
これを撃破し、『須弥山型都市』を奪還するために『有頂天天蓋』へとオブリビオン軍団を蹴散らし皆さんは到達しました。
ですが、ネオンサイン輝く『有頂天天蓋』にて座す『有頂天道人』は『サイバー化』と『渾沌化』の二つを励起させた超強敵。
この二つを組み合わせた『サイバネ殺法』に対処しなければ、勝利は危ういでしょう。
プレイングボーナス……敵の「サイバー化」と「渾沌化」を利用した功夫殺法に対処する。
それでは、超大国をも巻き込んだ獣人世界大戦にて多くを救うために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『有頂天道人』
|
POW : サイバネ殺法 undefined cyberne
【機械化義体でカンフー技】を放ち、命中した敵を【undefined】に包み継続ダメージを与える。自身が【中国拳法の構えを】していると威力アップ。
SPD : サイバー渾沌拳 undefined kungfu
【サイバー化した肉体】と【渾沌化した肉体】を組み合わせた独自の技能「【サイバー渾沌拳】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
WIZ : 渾沌波動弾 undefined aura
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【undefined】を放つ。発動後は中止不能。
イラスト:松宗ヨウ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レニー・リー
師匠と同じ虎獣人が世界に仇なすなんて
正直、いい気分じゃない
強敵なのはわかってるけど
ここで後には退けない。勝負だ!
サイバー化は見てわかるけど
渾沌化のことはおれは詳しく知らない
付け入る隙があるとすれば
サイバー化――機械化部位の方かな
一先ずは『功夫』で相対するよ
『オーラ防御』と『受け流し』で防戦に徹して
被ダメージを抑えつつ、機を待つね
サイバー化部分の一撃を受ける一瞬に
【辰の形】での反撃を仕込む、その時を!
内部に流し込んだ闘気を爆発させれば
機械部位なら破壊するなりショートさせるなりできるはず!
部位の不具合で敵に隙が生まれたら
一気に体術を叩き込むよ
お前がはじまりの猟兵を求めるなら
その道を阻むだけだ!
制圧された『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』へと駆け上がったレニー・リー(眠れる獅子兎・f43295)が見たのは奇妙なる体躯を持つ虎の獣人だった。
その名をコンキスタドール『有頂天道人』。
サイバー義体化された半身と不定形にして不定義たる『渾沌化』を持つ異形の獣人。
その漲る闘気を見やればわかる。
目の前の敵が油断ならぬ敵であり、油断などしていなくても強敵であることを。
恐るべき敵だ。
だが、レニーは思う。
己が師もまた虎の獣人。
その虎獣人が世界に仇為すなど気分のよいものではない。
「ほう、俺の闘気を前にしても臆しないか、猟兵。よく功夫を積み上げていると見える」
『有頂天道人』の言葉にレニーは己の体躯が震えるのを感じた。
練磨の差を見せつけられているかのようであった。
「だったらなんだ。此処で後には退けない。この『須弥山型都市』を開放するためには……」
裂帛の気合を込めて構える。
力がみなぎり、全身の筋繊維に血液が満たされていくのを感じた。
「勝負だ!」
「意気は良し! だが、それだけではな!」
踏み込まれた。
戦闘義体化された体躯による瞬発力。それは尋常ならざる速度であり、同時に狙いは精密にして精緻であった。
振るわれる打突。
その全てが致命傷になり得ることをレニーは直感的に、それこそ本能で理解したのだ。
受け流すように動く体。
それは練磨にて意識せずとも反応するように繰り返されてきた練磨故。
放たれる打拳。
それをオーラと組み合わせた受け流しの技法でもってレニーは凌ぐ。
身を焼くような痛みが体に走る。
一体何の痛みかわからない。あの『渾沌化』した右腕が己に触れる度に、言いようのない焼けるような痛みが走るのだ。
「っ……!」
「ふっ、わからないか。わからないだろうな。そうだとも!」
繰り返される打突にレニーは呻く。
やはり圧倒的な差がある。
けれど、レニーは不撓不屈なる意志を持って対峙すると決めたのだ。ならば、退路はない。己の背は敵には向けない。
ならばこそ、ユーベルコードにレニーの瞳が輝く。
「何かを狙っているな? ならば、やってみせろよ若造!」
一瞬だった。
レニーは踏み込み、義体化された『有頂天道人』の左腕へと指突を繰り出す。
その一撃を『有頂天道人』は躱すこともできただろう。
だが、繰り返された練磨による一打。
これは『有頂天道人』の予想を超える速度であったのだ。放たれた一撃を受け止めた左腕へと流し込まれるは龍を模したかのような闘気。
「龍の如く……哮り、燃えろ! 見よ、これが辰の形『龍哮荼毘』(タツノカタ・リュウコウダビ)だ!」
咆哮するようにしてレニーの一撃が『有頂天道人』の内部へと走り抜け、破壊しようとする。だが、『有頂天道人』は己が体内、その経絡より気を充填し押し返す。
僅かな時。
それだけがレニーに得られた時間だった。
全身の気を練り上げる一瞬。
『有頂天道人』は無防備になったのだ。それをレニーは見逃さない。
己がユーベルコードは、このときの為に。
「この、若造如きが……!」
「お前が『はじまりの猟兵』を求めるなら、その道を阻むだけだ!」
確かに己は若造なのだろう。
だが、レニーの瞳は一人の猟兵としての輝きを放つ。
炸裂する体術は師より賜ったもの。
これをもって悪を討つ。
彼の拳は違わず『有頂天道人』を打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リリスフィア・スターライト
アドリブ、連携、苦戦描写歓迎
強気で接近戦が得意な人格「リリス」で参戦
これは私向きの相手かしらね。
間違いなく強敵だけれど真っ向勝負を挑ませてもらうわ。
向こうが2つの力を組み合わせて来るなら
私も紅蓮乱舞による魔力と武術、
そして武器の組み合わせによる連続攻撃を叩き込んであげるわ。
有頂天道人の構えを崩した所を一気に畳みかけるわね。
渾沌波動弾には特に注意して放ってきた波動弾は
軌道を見切り地形を利用して、触れる事無く避けるようにするわ。
範囲が半径1mであることも忘れないわよ。
他の攻撃は多少受けてでも、私の攻撃の手は緩めないわよ。
私の全力を華麗に叩きづけてあげるわよ!
「お望み通り、相手になってあげるわ!」
『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』にてネオンサインが煌々と煌めく。
その最中に明滅するはユーベルコード。
猟兵の放った一撃が一瞬であれどコンキスタドール『有頂天道人』の体躯を止め、その隙に放たれた練磨されし打撃でもって打ち据えたのだ。
血が舞う。
されど『有頂天道人』は獰猛に笑った。
並ぶは剣呑なる犬歯。
鋭き牙は強敵と相まみえたことへの高揚に喜んでいるようであった。
「――……流石は俺の障害と言おうか! だがよ!」
咆哮がほとばしる。
『有頂天道人』は『有頂天天蓋』を踏み割る勢いで構えた。
サイバーカンフーの構え。
義体化された体躯と鍛え上げられた獣人としての体躯。
そして、『渾沌化』によって得た右腕。
構える姿に隙はない。
「これは私向きの相手かしらね」
リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は多重人格者である。
その人格の一つである『リリス』が表層へと現れ、つぶやく。
目の前の『有頂天道人』は明らかなる強敵。
そして、不定形にして不定義たる『渾沌』と戦闘義体を組み合わせ、励起させる力を持ち得ている。
本来ならば矛盾するかのような力である。
だが、それを『有頂天道人』は同時に操り、猟兵を責め立てるのだ。
「そちらが二つの力を組み合わせるというのなら」
『リリス』の瞳がユーベルコードに輝く。
『有頂天道人』の踏み込みの速度は言うまでもない。一瞬で間合いを詰めてきている。
徒手による攻撃。
これはカンフースタイルによるものであろう。
撃ち合う拳。
『リリス』は己が体躯が不定形にして不定義たる謎の痛みを覚え、その痛みによって体躯の動きが鈍るのを感じただろう。
「これが……」
「そう、これこそが『渾沌化』の力よ。猟兵よ、防げると思うな。この至近距離で、この俺と打ち合うことを選択したのだ。この程度の痛みで参ってもらっては困る!」
打ち付けられる打撃。
それを『リリス』は魔力と武術、そして武器の組み合わせによって受け止める。
反撃の糸口。
それを見出す。
そう、猟兵は一人で戦っているのではない。先んじた猟兵が放った一打が『有頂天道人』の義体化された左腕に影響を及ぼしている。
右腕よりも反応が僅かに押しうのだ。
故に『リリス』は、そこだと踏み込むのだ。
「そうね。戦いの中だからこそ咲く華もあるでしょう。そして、あなたもそうであるように私自身の五体こそが私の武器!」
爆煙の魔力を迸らせ、『リリス』は絶え間ない反復によって得た無駄なき動き……即ち、最小にして最大たる力を発揮する最短経路を持って己が拳を放つ。
勁を練り上げ、僅かな隙間にも放つ一打。
大地という力を己が足から腰部へと流し込み、腰部から流れ込んだ勁を拗られた筋繊維から己が肩へと伝達する。
伝達される力は当然、途中で霧散されるものである。
だが、その霧散される力を限りなく零に近づける練磨こそが寸勁の極地。
そう、大地より伝わる力は、減算されるのではなく、己が体躯をもって乗算されるもの。
肩、肘、手首。
伝わる経路が多くなれば成るほどに失われる力は、しかして駆動部にいたりて掛け合わされていく。
打ち込まれた一撃が『有頂天道人』の体躯へと叩き込まれる。
装甲を砕き、疾風の如き回し蹴りが『有頂天道人』の側頭部を捉える。
轟音が響き、体躯が崩れた瞬間『リリス』は己が手にした『リリス・ギア・ブレイド』の一撃を叩き込む。
音速の如き連続攻撃。
「私の全力を華麗に叩きつけてあげたのよ」
紅蓮乱舞(バーニング・ダンス)は『有頂天道人』へと全て命中する。
だが、恐るべきは『有頂天道人』である。
「効いた……だが!」
立っている。あれだけの攻勢を受けて尚。
「まだ足りぬ。猟兵、お前達という障害を持って、俺は『師父』の望みを叶えよう」
「そう。お望み通り相手になってあげるわ!」
『リリス』はユーベルコードの輝き宿す瞳と共に踏み出し、その拳でもって『有頂天道人』と打ち合い、『有頂天天蓋』に嵐のような衝撃を走らせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
全く変な能力使ってきてくれちゃって
渾沌だろうがサイバー化だろうが
美味しい所取りなんて邪道どうかと思うよ!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
理外の力、理外の異形
それを操るってんなら…こっちは2人がかりで斬り捌く!
【Duplicate Myself】起動
分身を展開、余った2剣を渡して連携でいこう
分身の方が戦闘力は高い!
つまり馬鹿力!
サイバー化の方よろしく!
私は渾沌の方を対処しよう
接近し、同時に仕掛ける
自分自身、クセやタイミングなんて見なくても分かる
『なぎ払い』や『串刺し』を織り交ぜ連携しながら剣戟を叩き込もう
サイバー渾沌流とか独自技術開発してるけど…
最後はやっぱり王道が強い!
ユーベルコードの明滅が『有頂天天蓋』にてネオンサインよりも煌々と輝く。
激突による衝撃が生み出され、その戦いの激しさを知らしめる。
コンキスタドール『有頂天道人』はまさしく強敵であった。
戦闘義体化と『渾沌化』、二つの力を同時に励起させ、サイバネ殺法を手繰る力は猟兵たちの構成を受けて尚、これを退けんとするものであった。
「不定形と身を増強させる力。これ即ち陰陽重なる理! 故に、猟兵。お前達は俺の障害でしかないのだ!」
裂帛たる気合が、轟と響き渡る。
踏みしめた天蓋が砕け、しかし、踏み出す一歩の速さたるや音速を超えているかのようであった。
「全く変な能力使ってきてくれちゃって」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は『須弥山型都市』を駆け上がり、『有頂天天蓋にて座す『有頂天道人』の姿を見て辟易した。
『undefined』――嘗て対峙した渾沌氏『鴻鈞道人』が用いた力。
この力の意味を、この力の正体を未だ猟兵は知らず。
しかし、義体化された力は玲も知るところである。
2つの世界の力が合わさる渾沌。
これを体現しているのが『有頂天道人』である。
「渾沌だろうがサイバー化だろうが、美味しい所取りなんて邪道どうかと思うよ!」
「良きところを掛け合わせて新たなる良きものを作り上げる。それが人間の業というものだろう。それを邪道と呼ぶか、猟兵!」
踏み込まれた瞬間、打突と襲撃が玲を襲う。
一瞬にしてニ種の攻撃が左右同時に迫るのだ。
人の瞳は二つあれど、その両眼にて情報を処理する。即ち、二つの眼球で一つの事柄を脳が処理するのだ。
故に、左右同時攻撃には対応できない。
言ってしまえば、それは必殺のニ撃であったのだ。
「我が義体の鋭くも堅牢なる一打にて死ぬか、それとも『渾沌』に消滅するか選ぶがいい!」
迫る不可避たる二撃。
だが、玲の瞳がユーベルコードに輝く。
一度に処理できるものが一つであるというのならば。
「人格エミュレイト…分身生成開始――Duplicate Myself(デュプリケイト・マイセルフ)、起動!」
玲に迫る二撃。
サイバネ殺法の一撃を受け止めるは、二人の玲であった。
そう、彼女は己が分身を召喚し、義体化の一撃と渾沌化の一撃を防いで見せたのだ。
「……分身の方が戦闘力が高い! つまり馬鹿力! なら、サイバー化の方よろしく!」
「財力に勝るからってなんでも金で解決しようっていうの……イエスだね!」
イエスか? と玲は思ったが、今はそれどころではない。
渾沌化の一撃は、触れるだけで身を消滅させるように焼くのだ。
故に玲は抜き払った模造神器でもって『有頂天道人』の右腕を切り捨てたのだ。
だが、その渾沌化した腕は不定形ゆえに即座に羽毛生え揃うようにして再生されてしまう。
「ほんっと、面倒な能力使っちゃってさ!」
「考えたな。一人で対応できなければ、二人で対応する。しかも、己より優れた戦闘力を持つ分身を生み出すとは!」
「褒めてもらってもなんにもでないけど、とりあえず喰らえ!」
分身の玲が振るう模造神器の一撃はサイバー化した義体の腕を持つ『有頂天道人』すらも凌駕する膂力でもって押し込むのだ。
そこに玲が踏み込む。
互いの動きやクセ、タイミング、思考。
そんなこといちいち確認しなくってもわかる。故に彼女たちは斬撃と刺突を組み合わせ、連携しながら剣戟を叩き込んでいくのだ。
「単純に数が増えただけではない、だと……!?」
呻く『有頂天道人』は、己が足が一歩後ずさったことを理解し、その瞳に怒りを宿す。
そう、それは。
「サイバー渾沌流敗れたり!」
「やっぱり王道しか勝たん!」
二人の玲は『有頂天道人』を追い詰めるようにして斬撃を繰り出し、『有頂天道人』を初めて後退させた事実であった――。
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
こいつは手強いね
フィジカルの強さがとんでもない
サイバネに支えられた強化に渾沌化での強化。異質な二つの強化が噛み合うように、一つの方向性を待たせるのがあの拳法の構えって訳か
つまりいかに速度とパワーを極めようと、その動きはあの構えと型に依存すると【見切り】をつける
後は【覚悟】の答え合わせ。ゆるく構えた剣先に【優しさ】をこめて、雷光の速度の攻撃にそえ【受け流し】を試みる
答え合わせが正しいなら、攻撃直後の奴の首に「雲鷹の一太刀」を添えて行き違おう
「動くなよ。そうすりゃ、まだ死なずにすむ」
一言告げね納刀し、後は奴に背中を向けて立ち去ろう
僅かに一歩。
されど一歩である。
コンキスタドール『有頂天道人』を一歩後退させた猟兵達の攻勢。尋常ならざる体力。そして二つの力を手繰る技量。
『有頂天道人』は強敵のな中の強敵であったことだろう。
「この俺を後退させるか、猟兵!」
迸る咆哮。
びりびりと体躯を揺らすほどである。
神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)は理解する。
『有頂天道人』は手強い、と。
「フィジカルの強さがとんでもないな」
「サイバー化している故。そして、それを支える地力もまた功夫にて得ている。加えて『渾沌化』によって不定形の力を得ている。猟兵よ、我がサイバネ殺法を受けきれるか!」
異質なる力。
その二つが『有頂天道人』の獣人としての体躯を礎にして発揮されているのだ。
そして、カンフーの構え。
それこそが恭二郎が認めた通り、『有頂天道人』を強敵たらしめるものである。
「受けろよ、この一撃を!」
踏み込まれた瞬間、恭二郎は理解しただろう。
躱せない。
されど、受け止めれば不定形たる痛みが己を焼く。
これが渾沌たる力。
身を焼く痛みに呻く。
炎はない。なのに熱いと感じる。
覚悟は決めた。
如何に速度と膂力を極めようと、その動きはカンフーの構えと型に依存するであろうと見切りをつけていた。
故に致命傷はない。
打ち込まれた拳はスペース手拭いでもって薄皮一枚で留め置かれている。
直撃を受ければ、今此処に恭二郎の体はないだろう。
受け流すことはできない。
だからこそ、雷光の如き一撃に己が太刀を添えたのだ。
交錯した体。
言葉は少なかった。
在ったのは斬撃の痕。
そう、彼の斬撃は『有頂天道人』の首元へと放たれていた。
痛みすら感じさせない雲耀の一閃。
「神酒坂風桜子一刀流・虎落笛(モガリブエ)――『動くな』よ。そうすりゃ、まだ死なずに済む」
一言告げ、恭二郎は納刀し、『有頂天道人』に背を向ける。
敵に対して背を向けるということは、すでに『有頂天道人』を彼が敵とみなしていないということであった。
それは彼にとって侮辱に値するものであった。
「ふざけたことを!」
振り返る。
瞬間、それは起こった。
恭二郎の斬撃は痛みを感じさせない。
だが、斬っていないわけではないのだ。簡単なルールの付与。
『動くな』というルールを破った瞬間、その斬撃は痛みを噴出させる。
「――!?」
「言っただろう。『動くな』と」
恭二郎は鮮血荒ぶ『有頂天道人』を振り返ることなく、悠然と『有頂天天蓋』より立ち去るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エミリィ・ジゼル
サイバー渾沌拳ですか。強敵でしょうが、やってやれないことはない。
がんばるんば。
相手の攻撃に対して、まずは防戦を主軸に行動します。
【第六感】と【見切り】という二大チート技能を用いて敵が攻撃する方向を予測。
そちらにUDC-[データ削除済]を構え、正面からの全攻撃を認識不可能な原理で防御し、正体不明の必中攻撃で反撃します。
そして反撃によって発生した相手の虚をつき、獣人特攻属性を有した神秘殺し(フライパン)で【カウンター】による【暴力】をお見舞い。
よくわからんもん対決なら負ける気がしません
わたくしのようなカオス筆頭に混沌対決を挑んだことを後悔させてやりましょう。
鮮血が噴出する。
それはコンキスタドール『有頂天道人』の首より噴き出すものであった。
猟兵の一撃が彼の首を切り裂いていたのだ。
しかし、噴出する血潮が色を喪っていく。
濁った白。
そう、噴き出す血潮すら渾沌化させ『有頂天道人』は咆哮する。
「舐めた真似を!」
怒りに満ちる瞳。
己を虚仮にするかのように斬撃を見舞い、後退させた猟兵たちに対する怒りだった。
「このサイバネ殺法を前にしてもお前達は!」
「ほう、これが噂のサイバー渾沌拳ですか」
エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は『有頂天道人』を見やる。
敵は戦闘義体化によって尋常ならざる膂力と速度を得ている。
瞬発力で言うならば、随一であろう。
エミリィに踏み込み、一打を見舞う。吹き荒れるような渾沌はエミリィを襲う。
だが、突き出された拳の前にあるのは――。
空白だけがそこにあった。
エミリィが構えている、という事実だけがそこにある。
それ以上は認識できない。
削除されているがゆえに、認識できないし、定義できない。
未定義であるというのならば、それは可能性であり同時に渾沌である。
ならばこそ、正体不明たるそれは説明できようのない事象を生み出す。
理不尽そのものである。
「丸い釘を四角い孔にはめ込むことは出来ないのですよ」
「何を言っている!?」
「プロトコル-[データ削除済](プロトコルアンノウン)……あー、ごめんなさい。わたくしにもわからないのです」
説明できない。
未定義故、削除されているが故、認識できないというのならば、その原理は説明できない。
なぜ、渾沌が防がれているのか。
なぜ、エミリィはピンピンしているのか。
いずれもが説明できない。
白紙の上に水で何某かを描いているようなものだ。
『有頂天道人』にとっては暖簾に腕押しという状態であろう。何一つ手応えがない。
「やってやれないことなんてないのです。がんばるんば」
そしてエミリィの正体不明の一撃が『有頂天道人』に叩き込まれる。
当然何が起こっているのかわからない。
わからない。わからないが、何かが起こっているのだ。
「よくわからんもん対決なら負ける気がしません。わたくしのようなカオス筆頭に渾沌対決を挑んだことを後悔するのですね」
よくわからない原理で防がれ、よくわからない攻撃で打ちのめされる。
その理屈も、何が起こっているのかも説明しようのない空白地帯。
引きずり込まれたのは、そういうものだ。
それを渾沌と呼ぶのならば、また異なる事象であったことだろう。
説明不要である。
説明不可能である。
猟兵とは生命の埒外。
ならば、渾沌すらも凌駕するのは、何もないということなのかもしれない。渾然一体へと至るものが何一つないのならば、そこには何も生まれないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
「サイバー化」も「渾沌化」も、なんだろうと!
人工魔眼の【動体視力】で敵の初動を捉え【カウンター】
【早業】メガスラスター【推力移動】踏み込みに踏み込みで返しサイキックシールド展開【シールドバッシュ】!!
壊せ、壊し尽くせ!!!
同時に『摩訶鉢特摩小景』発動!
ハーーーーーーハーーーーーーーーーーー
【呪詛念動力】至近距離から超冷気の霊障で周囲ごと有頂天道人も凍らせる!機械も肉も、熱あればこそ十全に動くもの!故にその熱を奪う!!
【継戦能力】闘争心で戦闘続行!超冷気宿るフォースサーベルで【追撃】
その身に刃を突き立て、裂け破る超冷気の【念動力】で躯体を破砕切断する!!!
バァーーーーーーーーーーーーー!!!!!
踏み込む。
心にあったのはただ一つだった。
猟兵達の攻勢によって『有頂天道人』は追い込まれていた。
異なる二つの力。
サイバー化と渾沌化。
相反するような力を同時に発露する『有頂天道人』の力は圧倒的だった。
脅威という他なかっただろう。
だが、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)には関係のないことだった。
「『サイバー化』も!」
メガスラスターが噴射し、互いにかち合うようにして激突する。
サイキックシールドと『有頂天道人』の放った拳がぶつかる。敵の初動を殺す勢いで持ってシールドバッシュの一撃を叩き込んだのだ。
だが、『有頂天道人』もまた功夫を積み上げた武人である。
小枝子の狙いを即座に理解し、己がサイバー化義体の拳でもってシールドを叩き割ったのだ。
「舐めるな、猟兵!」
「『渾沌化』も! なんだろうと!」
破壊されたシールドの破片が小枝子の頬を切り裂く。
だが関係なかった。
『有頂天道人』も猟兵の攻撃を受けて無事ではない。
此処で畳み込む。
敵は『渾沌化』でもって傷を覆っている。
効いていないわけではないのだ。
ならば!
「壊せ、壊し尽くせ!!!」
身を焼くような痛みが小枝子を襲う。
渾沌化による一撃は、小枝子の体躯を焼き滅ぼすようであった。
「滅びろ、猟兵! 渾沌に飲まれ、その身に災禍の如き痛みを!!」
叩き込まれる打突。
その全てが小枝子の体躯を滅ぼすための一打だった。
だが、小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
打ちのめされ、のけぞってなお、その眼光は『有頂天道人』を捉えていた。目をそらすことなどなかったのである。
「ハーーーーーーハーーーーーーーーーーー」
長い息が吐き出される。
それは霊障。
大紅蓮地獄を内包せしもの。
触れたものに絶対零度の――大紅蓮地獄の裂け破る超冷気を凍りつかせるのだ。
「機械も肉も、熱があればこそ十全に動くもの!」
「ぐっ……この冷気は……内側から壊す、だと!?」
「そうだ! 渾沌であれど壊せぬ道理はない!」
「馬鹿な……! この冷気は一体なんだ!? 渾沌が凍結する!?」
これがユーベルコードなのかと『有頂天道人』は呻くしかなかった。
渾沌化した体躯ですら凍りつかせるは、摩訶鉢特摩小景(コールドレッド・マグナゲヘナ・エングレイス)。
熱を奪うということは、即ち、その体躯を動かすエネルギーすらも凍結させるということ。
小枝子は踏み込んだ。
己が体躯が燃える過程すら凍結させながら、手にしたフォースサーベルを振るう。
斬撃は追撃となって『有頂天道人』へと叩き込まっる。
渾沌化した体躯を破砕させるようにして小枝子は力を込める。
「バァーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
それは咆哮のようであり、吐息のようであった。
吹き荒れるは力。
超冷気が流し込まれた『有頂天道人』の体躯は渾沌化によってもなお、砕ける――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あやー!
サイバネ殺法、厄介なのでっす!
ですが、ええ。
それなら戦いを成立させないまで!
藍ちゃんくんでっすよー!
藍ちゃんくんの歌で吹き飛ばしまくってカンフー技を届かせないのでっす!
サイバー化と渾沌化に身体能力を合わせ持つ道人さんはすぐに距離を詰めれるでしょうが!
それでも吹き飛ばしは体勢を崩すかと!
瞬時に構え直すにしても、一瞬でも隙は生じるのでっす!
それにでっすねー。
せっかくの変幻自在undefinedがカンフー技の構えを成立させる範囲で制限されてしまうのでは?
不定形にご自身が形を与えてしまってるのでっす!
それこそが道人さんが道人さんだからこその産まれてしまった隙なのです!
サイバネ殺法破れたりです!
凍結に寄る体の破砕。
それを受けてなお、コンキスタドール『有頂天道人』の体躯を占めるは渾沌であった。
サイバー化による義体。
その左腕は未だ動く。そして、右半身を覆う渾沌もまた負った傷を隠すようにして不定形へと変貌していく。
濁った白。
多くが覆われた『有頂天道人』は荒い息を吐き出す。
猟兵達の攻勢が追い込んでいる。
それを見て、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は深く頷いた。
敵は確かに厄介だった。
サイバネ殺法もそうであるし、『渾沌化』による一撃はあらゆるものを消滅させるようにして焼く。
「ですが、ええ」
藍はやっぱり頷いた。
これは戦いだ。
なら、戦いを成立させなければいいのだ。
「藍ちゃんくんでっすよー!」
歌が響く。
情熱と熱狂。
それは藍の喉からではなく、心から迸るものであった。
「歌……!? 歌だと!?」
身を撃つ衝撃。
それに『有頂天道人』は吹き飛ばされてしまう。
サイバー義体であってもこらえきれぬほどの衝撃。いや、絶えられぬ理由などなかったはずだ。なのに、どうしてか『有頂天道人』は吹き飛ばされてしまう。
『有頂天天蓋』の屋根をサイバー義体の鉤爪にて突き立てることでなんとかこらえている。
「ユーベルコードか!」
「そうなのでっす! 確かに藍ちゃんくんの歌だけでは、そこまで吹き飛ばせなかったでっしょう! でもでも! 他の猟兵さんたちが戦ってくれたのです。一見すると平気そうな顔をしてますけど、すっごく消耗してまっすねー?」
そう、手傷は『渾沌化』でもって塞いでいる。
塞いでいるだけ、なのだ。
確実に塞いだ下の体躯は傷ついている。
ならばこそ、藍は『有頂天道人』が体勢を整えるより疾く踏み出す。
「それにでっすねー?」
藍は歌う。
藍ちゃんくんパッショネイトステージ!(エキサアアアアアアイットォォォッ)はここからだというように熱狂と情熱が迸り『有頂天道人』の体勢を整えさせないのだ。
「不定形にご自身が形を与えてしまっているのでっす!」
「何を!」
「そのカンフー技が、変幻自在たる『渾沌』の器になっているのでっす! 注がれた水は不定形でも、器に収まった水の形は認識できるのでっす! それが! それこそが!」
藍は情熱と共に指摘するのだ。
「『有頂天道人』さんが、『有頂天道人』さんだからこその生まれてしまった決定的な隙なのです。即ち!」
サイバネ殺法破れたり! と藍は情熱のシャウト共に『有頂天道人』へと突きつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
うわ、こういうやついるのかよ。案外早いかもなぁ…『俺様自身を取り戻すの』。
あとで念の為、連絡入れとくか…。
だがな、今は目の前の敵に集中しねぇと!
何があるのかわからねぇなら…打ち合うしかねぇだろ!何を組み合わせるかは、各人の発想だろうがな!
まあ、このUCで貫けるとしたら、サイバー化の方だと思うんだが。
グラップルで合わせて、衝撃吸収で被ダメージを減少狙いでいくか。
ただ、拳のみと思うなよ。凍炎不死鳥の体当たりと、死角から欲望竜の尾が迫ってるんだからな!
目の前にいるのはなんだ。
定義できないものが半分。定義できるものが半分。
歪な、と呼ぶにはあまりにも渾然一体たる性質。世界は陰陽に線引されど分かたれることがないように目の前のコンキスタドール『有頂天道人』もまたそうであると示すように、二つの力を並行的に扱う。
しかし、猟兵達の攻勢によって吹き飛ばされた『有頂天道人』は己が義体化された左腕を『有頂天天蓋』に突き立てこらえるようにして立ち上がった。
その身に刻まれた傷跡の全ては『渾沌化』によって覆われている。
まるで傷を負っていないかのようであるが、『渾沌化』によって塞いでいるだけなのだろう。
「まだ俺のサイバネ殺法は破れてはいない」
漲る気合。
その咆哮が大気を震わせる。
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は驚愕する。
「うわ、こういうやついるのかよ」
案外、と彼は胸中で独白する。
自分自身を取り戻すこと。
それが遠くない未来に起こり得るかもしれないという危機感。
念の為、という言葉が己のなかに湧き上がってくる。
けれど、今は、目の前の敵に集中しなければならない。
ともすれば、次の瞬間には勝負が決まっているかもしれないからだ。
「何がなんだかわからねぇ敵だが、何があるのかわからねぇなら……打ち合うしかねぇだろ!」
踏み込まれた、と思った瞬間に『有頂天道人』の拳が迫る。
不定形の拳か、それとも義体化された拳か。
その選択を強いることこそサイバネ殺法の骨頂である。
「万物は揺蕩うのではなく、普遍でもなく、唯移ろいゆくものである。故に!」
放たれた拳は不定形。
混沌化によって得られた力は、あらゆるもの消滅させる拳。
触れれば、瞬間に敵を焼く。
ヌグエンは己の拳と打ち合う。
硬化と鉄壁を組み合わせ、さらに貫通攻撃の技能を組み合わせた徹甲攻撃。
鋼鉄をも板材のように(コウテツヲモイタザイノヨウニ)貫く拳は、しかし『有頂天道人』の放った拳とかちあい、その身を焼くような痛みでもって痛めつけるのだ。
顔をしかめる。
痛みは内側から広がるようだった。
衝撃を吸収するなど無意味であった。衝撃ですらない。ただ触れただけで渾沌は内側を破壊していく。
恐るべき力である。
「確かにお前は強いんだろうさ。異なる二つの力を併せ持っている。だがよ!」
ヌグエンは吠える。
異なる力を手繰るのが自身だけではないのだと。
己もまたそうであるというように打ち合う拳の横合いから不死鳥の炎が迫り『有頂天道人』を襲う。
だが、『混沌化』は炎すら意に介さない。
わかっている。
ならば、やはり己である。
「拳だけだと思うなよ!」
「ソレ以外に何がある!」
「尾があるだろうが!」
死角から放たれた尾。その一撃が『有頂天道人』を打ち据える。
「俺様を誰だと思って嫌がる。『欲望竜』だぞ。尾くらいあるって――」
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
サイバー化……渾沌ってぇのは良く知らねーですけど、どっちもやべーって事は分かるですよ。
ここは機械の体で生まれたボクが試してやるですかね。
後付で置き換えた機械の腕の強さがどれほどのもんか!
ボクはカンフーとか知らねーですけど、結局は殴り合いですよね。
グラップルでの掴み合いでも少しは対抗出来るはずです。
警戒すべきはundefinedってヤツですね。
このカンフー技をボクの機械腕で受け止められれば反撃できるかもですね。
まずは受け止めた方の腕を切断して、継続ダメージが体に及ばないようにするです!
そしたらもう一方の腕を飛ばしてぶん殴ってやるですよ!
これなら間合いも防御も関係ねーです。
不意を打ってやるですよ!
ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』へと至る。
ネオンサインが煌々と輝いている。
きらびやかな光景であるが、そこにて行われていたのはネオンサインすらくらむようなユーベルコードの明滅であった。
コンキスタドール『有頂天道人』は、渾沌化とサイバー化、この二つの相いれぬはずの性質を携え猟兵達と戦っていた。
圧倒しているように思える。
猟兵達の攻勢は傷を与えども『渾沌化』によって塞がれているのだ。
だが、ファルコは知るだろう。
それは塞いだだけ、なのだと。
傷事態は覆ってあるだけで致命傷の一歩手前で繋ぎ止められているだけなのだと。
「どっちもやべーってことはわかるですよ。でも、機械の体で生まれたボクが!」
ファルコは『有頂天天蓋』より高く飛び上がり、空中から『有頂天道人』を捉える。
「試してやるです!」
敵は言ってしまえば後付の置き換えである。
その腕が恐ろしく硬く、凄まじい膂力を発揮するのだとしてもファルコは構わなかった。
自分はレプリカント。
生粋の鋼鉄。
ならば、純度の高い方が勝つ。
そういう理屈なのだ。
「踏み込むか、猟兵!」
「当然です! 踏み込まねーと、てめぇをぶん殴れねーです!」
振るう機械腕。
鋼鉄の拳は唸りを上げて『有頂天道人』の拳と打ち合う。
火花が散るようであったが、しかしファルコは己の体躯を燃やすような痛みが走るのを感じただろう。
そう、『渾沌化』である。
触れたものを消滅させる濁った白の炎。
恐るべき力でファルコは声を上げるより先に、己の腕部を切り離す。
あの力が全身に回れば、常に痛みに苛まれてしまうと判断したがゆえであった。
「思い切りがよいが! それだけではな!」
「うっせーってんですよ!」
叫ぶな、とファルコは口悪く舌打ちする。
片腕を喪った。
しかし、それは自身の体躯に迫るダメージを最小限に抑えるための方策だったのだ。片腕を失うということは、それだけ戦う力が半減するということだ。
ならばこそ、時間はかけられない。
迷っている暇なんてなかった。
敵は踏み込んできている。
己を滅ぼそうとしている。あの『渾沌』はそういうものだ。止めようがない。
ならばこそ、ファルコは後退ではなく前進を選ぶ。
「遅いッ!」
踏み込みの速さでは負けている。
だが!
「舐めんじゃねー!!」
ユーベルコードにファルコの瞳が輝く。
残された片腕。振るう一撃は『有頂天道人』の拳が早いだろう。だが、ファルコはレプリカントである。
鋼鉄の駆体。
故に。
「ディスタントォ! ナックル!」
放つは切り離した拳。
内蔵されたプラズマジェットが噴射し、加速する。『有頂天道人』にとって、それは不測の事態であったことだろう。
人間の躯体をもつ以上、拳の速度というのは変わらない。
だが、ファルコはレプリカント。機械の体故に、内蔵されたジェットが段階的に加速し、その一撃を『有頂天道人』の顔面へと彼より先に届かせたのだ。
「グオッ!?」
「間合も防御も関係ねーです! これがボクの拳だ!!」
吹き飛ぶ『有頂天道人』にファルコは拳を突き上げ、高らかに己の拳を、駆体を誇るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:四天霊障
むう…純粋に打ち合いたい相手ではあるな?
しかして、そうも言っとられん!渾沌化なぞ、厄介なものであるからな!
UCにて上げるは攻撃力。
認識は、影におる陰海月と霹靂に任せた。
これで、多少は良い勝負となろうな。
そして、こちらの攻撃手段は、四天霊障を拳に纏いての…正拳突きである!
すまんな!久々に拳でやりたくなってな!?四天霊障は、グローブ代わりというやつじゃ!
飛ぶ鋼鉄の拳がコンキスタドール『有頂天道人』の顔面を捉え、その体を吹き飛ばす。
『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』にて彼の体がボールのように跳ねて倒れるが、よろめきながらも立ち上がっていた。
「効いた……だが!」
これまでの猟兵の一撃も浅からぬ傷跡であったはずだ。
だが、『有頂天道人』はその傷をなかったかのように『渾沌化』で塞いでいる。いや、傷自体はのこっているのだろう。
それを『渾沌化』で覆ってないように見せかけているだけだ。
消耗している。
確実に、と馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『侵す者』は理解する。
同時に彼は純粋に打ち合いたいという欲求が胸から湧き上がるのを感じていた。
「むう……」
「どうした、来ないのか猟兵」
『侵す者』に求道者としての、いや武芸者としての性質めいたものを感じ取ったのか『有頂天道人』が笑む。
不敵な笑みであった。
あれだけの手傷を負わされてなお、笑う。
その獰猛さ。
そして、身に宿した異なる性質の力。
『渾沌化』――それは『侵す者』にとって捨て置けるものではなかったのだ。
「いや何、このような場でなければ純粋に武芸者として相対したいと思った所よ」
「構うものか。状況が許さぬのだとしても、己たちが持つは矜持であろうが」
裂帛の咆哮と共に『有頂天道人』が迫る。
そう、武芸者であるのならば、状況は後付でいい。
目の前に打ち倒したいと思う者がいる、それだけが重要なことだったのだ。
「はっ、そうも言っとられん! 貴様の『渾沌』なぞ、厄介以外のなにものでもないのだからな!」
打ち据えられる拳に体躯が歪む。
『渾沌』――それは触れるものを消滅させる力。
それが形を為すものであろうとなかろうと関係なく、そこに在るのならば消滅させるのだ。
身を削るような痛み。
炎のような痛みに意識が揺らぐ。
身は呪詛でできている。
ならば、『渾沌』の力は相性が悪すぎた。隔てる物が何一つなく、己達の輪郭を作っているのは束ねる認識のみ。
故に、外部。
他者からの認識によって『馬県・義透』という術式を補足しているのだ。
身が削れど、まだ己が此処に在るという認識を他者に委ねるユーベルコード。それが四悪霊・『戒』(シアクリョウ・イマシメ)であった。
「四悪霊は滅びず」
輝くユーベルコードの光。
削れたのならば、補填する。
生み出し封じてきた呪詛が不足を補う。
打ち据えられる拳を受け止め、いや、受け止めきれず削れるのだとしても構わず『侵す者』は踏み込む。
武器は手にしていない。
在るのは無手。
即ち、拳である。
「すまんな、皆。久々に拳でやりたくなった!」
霊障纏う拳。
振るう殴打が『有頂天道人』の連打と打ち合い、砕け、削れ、そしてそれでもなお応酬を続けていく。
滾るような熱量。
これこそが呪詛を上回る衝動だと示すように『侵す者』は『有頂天道人』と拳と拳とで打ち合い続け、衝撃でもって『有頂天天蓋』を揺らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ
「大きく出たなコンキスタドール。いや、有頂天道人!
このブレイザインを踏破するなど笑止千万!
お前はその道の困難さを知らない!
その身に叩き込んでやるよ!オレ達、猟兵の強さをな!」
UCを発動して黄金のオーラを身に纏う
文字通り青天井に上昇し続ける戦闘力
「真の意味での人機一体をアンタに見せてやる!」
放たれる功夫殺法を[気合い]と[根性]で受け止めて反撃
千変万化の渾沌化の攻撃を圧倒的な出力差で真正面から粉砕
何度も戦争を、強敵を超えてきた
こと踏破という概念において空桐清導は空前絶後の超特級だ
「必ずこの戦争にも勝つ!そのために!アンタを踏破する!」
全力の拳を叩き込んで決着をつける
打ち合う拳の音は、おおよそ人の出す音ではなかった。
まるで鋼鉄と鋼鉄とが打ち合っているとも空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は思っただろう。
他の猟兵の拳とコンキスタドール『有頂天道人』の拳が打ち合う。
火花散るように見えたのはユーベルコードの明滅であった。
弾かれるように衝撃に押されて『有頂天道人』は距離を取る。
今しかない、と清導は思っただろう。
踏み込む。
敵は『渾沌化』と『サイバー化』という二つの相反する力を束ね、渾然一体となって迫ってきているのだ。
その力は強大というしかない。
「よいぞ。貴様たちを踏破してこそ、求道よ!『師父』の求めたるところをなすが弟子の務め! 猟兵よ、我が道となるがいい!」
「大きくでたな、コンキスタドール。いや、『有頂天道人』! このブレイザインを踏破するなど笑止千万!」
清導は黄金のオーラをまとい、踏み込む。
迫る拳。
『渾沌化』された拳と義体化よって得られた尋常ならざる速度と膂力。
それらの全てが渾然一体となって放たれた拳は清導の顔面を捉える。
黄金のオーラが消滅し、頭部の装甲が砕けた。
痛みが走る。
炎が皮膚の中を走るかのような痛みだった。凄まじい力。これが『渾沌化』である。
あらゆるものを消滅させる力。
だが、あらゆるものを消滅させるのだとしても清導の戦う意志までも消滅させることはできない。
フェイスカバーが弾け、清導はのけぞった体を押し戻すようにして前に進む。
頭部の装甲が砕け、血が滴る。
だが、構わなかった。
「お前はその道の困難さを知らない!」
「だったらなんとする!」
「その身に叩き込んでやるよ! オレ達、猟兵の強さをな!」
拳を振るい上げる。
敵の拳は凄まじいものだ。
これまでの功夫の積み重ねを感じさせる重たい拳だった。だが、己の重ねてきた気合だって負けてはない。
振るう拳と振るわれた拳がぶつかる。
機械鎧の装甲が砕ける。
消滅させられる。粉砕されている。ひび割れていく赤い装甲。
だが、構わない。
いつだって己は強敵を超えてきたのだ。
踏破、という概念において己は空前絶後の超特級であるとい自負がある。
その意志が彼を前に進まえるのだ。
「必ずこの戦争にも勝つ! そのために! アンタを踏破する!」
全力を込めた拳を振り抜く。
黄金のオーラが集約された拳。
その一打が『有頂天道人』の頬を捉え、力任せに振り抜いた。
衝撃が走り、『有頂天天蓋』が揺れる。
天蓋の屋根を砕きながら吹き飛ぶ『有頂天道人』を見やり、清導は荒い息を吐き出し、己が拳が強敵を砕いたことを知らしめるように突き上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
多少格闘による戦闘経験はあるが、その程度では相手にとって赤子を手を捻るようなものだろう
身体能力もだし変幻自在に形状を変える相手…間違いなく強敵だ
ここは狩りを得意とする動物達の力を借りて乗り切ろう
ライオンを召喚しUCにて合体
咆哮で攻撃力を上げつつ
マヒ攻撃を付与した闘気弾を相手のUCの使用に合わせ連続発射、敵へと命中させたい
敵の攻撃の着弾地点をずらす事が目的だ
可能なら、闘気弾を放った後に残像を発生させ敵の波動弾着弾位置をずらそう
合体した事で野生の勘も増幅されている
相手の動きを少し阻害出来れいればいいが、弱体化属性攻撃を付与した爪で敵を攻撃
敵の戦力を削ぎつつダメージを与えていく
最後の鍵は気力だろうな
凄まじい音が響いた。
『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』にて吹き飛び、体躯を跳ねさせて立ち上がったコンキスタドール『有頂天道人』の頬は赤熱するようにただれていた。
猟兵の一撃。
己が意志を込めた拳が彼を打ち据えたのだ。
血反吐を撒き散らしながらも『有頂天道人』は咆哮する。
それはある種の喜びにも思えただろう。
戦うことへの歓喜。
強敵と相対することへの狂喜。
そして、それを蹂躙し踏破することへの享楽。
「踏み越えるに値するぞ、猟兵!」
その咆哮を鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は受け止める。
多少なりと格闘経験はある。
だが、その程度だと彼自身は理解する。
目の前にいるのは求道者である。
サイバネ殺法を得た『有頂天道人』は己など赤子の手をひねるよりもたやすき相手であろう。
加えて『渾沌化』である。
変幻自在にして不定形にして不定義。
触れれば消滅させられる力。
その恐るべき力をひりょは知っている。
ならば、己は求道者ではなく。狩猟者として戦うまで」。
「俺と皆の力で、この状況を乗り切る! ビーストマスターの名に懸けて!」
ひりょの瞳がユーベルコードに輝く。
召喚された黄金オライオンが咆哮し、ひりょと超獣化身(ビーストリンク)を果たすのだ。
漲る力。
「有頂天道人』は虎の獣人。
されど、すでに『渾沌化』によって不定形へとなっている。定義することすら無意味であろう。
故にひりょは咆哮する。
王者の咆哮によって己が体躯に漲る闘気を弾丸として放つのだ。
それを踏み出した『有頂天道人』が躱しながら、迫る。
疾い。
あまりにも速すぎる。
それが『サイバー化』による義体の力なのだろう。
「舐めるなよ、猟兵。今更飛び道具など! とうに踏破しているわ!」
振るわれる拳はひりょを捉えた――いや、残像であった。
『有頂天道人』は己の拳が手応えを感じないと判断した瞬間、すぐさま翻り後ろ回し蹴りを放つ。
それも空を切る。
被呂は動物敵勘でもって、その一撃を躱した。
偶然だ。これは二度は続かない。
ならばこそ、ひりょは踏み込む。
己が合身した獅子の力を込めた爪の一撃が『有頂天道人』の腹部を切り裂く。
倒す必要はない。
ひりょは、己が倒そうとは思っていなかった。
猟兵とオブリビオンの力の差は言うまでもないものばかりだ。けれど、これまで強敵に打ち勝ってきたのは、共に戦う者たちが居たからだ。
そうやって戦ってきたのだ。
なら、己は繋ぐのだ。
「オオオオッ!!!」
それは王者の咆哮ではなかった。
人間ひりょの気力振り絞る咆哮だった。その咆哮に乗るようにしてひりょは、その爪を『有頂天道人』へと叩き込み、あとに続く者達の勝利へと導くようにして拳を振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
歌!?
エイルさんもついに音楽に目覚めたってことですか!
いいですね!
これはそのうち3人でセッションとかできそう……って。
引っ張らないでください!? 行きますから!
ちゃんと行きますから、練乳1本飲ませてくださいよぅ。
過去にあったありとあらゆるもの……。
今回の敵の攻撃ってそんなのだったんですか?
まぁ、光の勇者たるわたしに後ろ暗い過去なんてありませんから、
その攻撃はぜんぜん怖くないですね!(どやっ
あ、ステラさん、今回はハードがリクエストですか?
わっかりました!
それではわたしのハードな想いをバイオリンに乗せておみまいしましょう!
届け想い! 砕けろ耳栓!
今、魂の!【ツィゴイネルワイゼーン】!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁすっ!!
どちらかというと歌かもしれませんが!!
はい、メイド吶喊しますっ
光の勇者も連れてきたので私たちにお任せを!
しかし鴻鈞道人の『undefined』ですか……?
かの存在は骸の海と同義
すなわち過去に在ったありとあらゆるモノ
それを放たれるのはなかなかハードな展開ですが
ええ、ハードな|展開《地獄》ならこちらにもルクス様がいますからね!
というわけでルクス様合わせていきますよ!
ここも文化の力で押し切ります!
【アウルム・ラエティティア】
今此処に至るまでの道とこの場に在れる、黄金のような喜びを歌にして
顕すためにはルクス様の破壊音波にも耐えてみせましょう!
コンキスタドール『有頂天道人』は恐るべき敵である。
異なる二つの力。
『渾沌化』と『サイバー化』を渾然一体として操る。
その力は迫る猟兵達を押しのけ、さらなる道へと邁進するかのようだった。
しかし、圧倒的な攻勢に傷を負っている。
これまでの傷は『渾沌化』によって塞いでいたし、覆っていた。
それさえも今は取り繕えなくなってきているのだろう。刻まれた腹部の爪痕。そこから血潮が溢れ出しているのだ。
「やるではないか……だが、『師父』が求めておられる『はじまりの猟兵』を!」
咆哮が轟く。
しかし、その咆哮を塗りつぶすかのような叫びが響いた。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁぁすッ!! すぅ――ッ!!!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は滅茶苦茶息を吸っていた。
此処は『須弥山型都市』の一つ。
その『有頂天天蓋』である。此処には『熾天大聖』がいる。ならば、この場の空気は即ち彼女の求める主人のもの。
拡大解釈が過ぎるが、そういうことである。
「どちらかというと歌かもしれませんが!! ですが、そんなの関係ないのです。メイドたるもの、嗅覚に優れ、香りを判別し! 嗅ぎ分けてこそ、一流! そういうもんあのです!」
うわ、とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思ったが、歌、というフレーズに耳が引っ張られる。
「ついに『エイル』さんも音楽に目覚めたってことですか! いいですね! これはそのうち三人でセッションとかできそう!」
ルクスはルクスで演奏に心奪われている。
光の勇者とは一体。
「はい、メイド吶喊しますッ! きっとどこかで見ておられるであろう『熾天大聖』様に活躍をお見せしなければ! そのために光の勇者もつれてきたのですから!」
そうなの?
「えっ、あっ。ちょっと待ってください。シリアスっぽいので」
「はりーあっぷ!」
「練乳一本の時間をくださいよぅ」
練乳一本分の時間とは一体。
あまりにも混沌たる有り様。
さしもの『有頂天道人』もあっけに取られていた。あの猟兵たちは一体何を言っているのか。
それもさも当然のように仕切り直している。
「しかし、しかし鴻鈞道人の『undefined』ですか……?」
ステラは『有頂天道人』の半身を見やる。
濁った白。
その汎ゆる物を消滅させる力は、骸の海と同義であると考えるのならば説明がつく。
即ち過去になったものすべて。
触れれば消滅。
なんともハードな展開である。
だが、とステラは目を見開く。
「ハードな|展開《地獄》なら、こちらにもルクス様がいますからね!」
「そうなんですか!? まぁ、光の勇者たるわたしに後ろ暗い過去なんてありませんから!」
全然怖くないし、全然ハードじゃないとルクスは胸を張る。
そして、ルクスはステラの言葉に頷く。
「ステラさんのリクエストを承りました! なら今回はハードです! このハードなわたしの想いを込めて! バイオリンを奏でさせていただきましょう!」
瞳に輝くはユーベルコード。
だが、それをさせぬと『有頂天道人』が踏み込む。
ステラはルクスを守るようにして前に踏み出す。
この際、贅沢は言っていられない。耳栓ヨシ。あとは野となれ山となれ!
「文化の力で押し切らせていただきます! 今、此処に至るまでの道とこの場に在れる、黄金のような喜びを歌にして!」
香りが充満している喜びの間違いではないだろうか。いや、それも間違いではないのだろう。
故にステラのユーベルコード、アウルム・ラエティティアはシャウトとなって迫る「有頂天道人』を押し止める。
そして、それだけではない。
「届け想い! 砕けろ耳栓!」
なんか後半おかしくない?
おかしくない? おかしくないかぁ……なら、砕けるやつですね、耳栓。
「今、魂の! ツィゴイネルワイゼーン!!」
ルクスの演奏が炸裂する。
それはステラの耳栓よ砕けろと念じたものであったが、強烈なる音は『有頂天道人』にまで及び、そして、ステラの耳栓は殉職したのだった。なんで――?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紅月・スズ
おぉー、アナタなかなかやるアルね!
やっぱりこういうのアルよこういうの!
そっとが|災罵荒《さいばあ》渾沌拳ならこっちは護業天象拳アルよー!
身体を雷に変え、思考速度と挙動の速度増加(雷アルからね)で挑むアル
機械仕掛けなら雷は結構効くんじゃないアル?
それに肉体を|災罵荒《さいばあ》とか渾沌化してても、基礎となる拳法の動きと技はヒトの時と同じままだと思うネ(ワタシも雷や炎を操ってもそういう感じになるアル、まだ修行が足りないネ)。なら、これはちょっと見た目の変わった拳法家同士の打ち合いアルよ
動きを見切り、関節や肩などを打って体勢を崩し、時折暗器で不意打ちしたりして高速での打ち合いに持ち込むアルよー!
よろめく体躯。
コンキスタドール『有頂天道人』は度重なる猟兵の攻勢を前にふらつきながらも立っていた。漸く、という体ではない。
気力みなぎり、その体躯にある二つの力をもって立っている。
練り上げられた気は獣人の体躯という基礎でもって『混沌化』、『サイバー化』という力を支えているのだ。
こと二つの力を得るに至った『有頂天道人』は、しかしてその力に頼りすぎることはない。
練磨を続け、獣人の体躯を練り上げることによって地力を底上げしているのだ。
それを紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)は理解しただろう。
己の肉体を巡る気を制御し、また同様に天地に満ちる気をも制御せしめる拳法『護業天象拳』の伝承者たるスズは『有頂天道人』が膨大な功夫を重ねてきたことを知る。
「おぉー、アナタなかなかやるアルね!」
「俺の体躯に内在する気を知るか、『護業天象拳』の」
スズは、応対する『有頂天道人』の言葉に己が心が燃え上がるのを感じただろう。
そう、戦いとはやはりこういうことである。
互いの功夫。
その量と質とを問う戦い。
それこそがスズの求めたるところであった。
「そっちが|災罵荒《さいばあ》渾沌拳を手繰るというのなら!」
「お前は『護業天象拳』!」
互いに言葉は不要であった。
あとは言葉でなく、拳が語ってくれる。
スズの瞳がユーベルコードに輝く。
己が身に内在している気を天地に満ちる雷を介して操ることで、体躯そのものを雷となし、神速をもって『有頂天道人』へと迫るのだ。
敵は『サイバー化』してる。
ならば、その義体へと反応を伝えているのは電流……即ち雷気であろう。
これを操るスズは『有頂天道人』の左腕の信号を途絶させ、己が雷の拳を『有頂天道人』へと叩き込む。
「っ、チッ! やるな、『護業天象拳』! 雷気を!」
「そうアル! これこそが、護業転身・蒼天雷装(ゼンシンビリビリアル)! 雷そのものへと変じる理アルね!」
しかし、スズは渾沌化した『有頂天道人』の動きを見て、己もまた人の五体に縛られていると感じるのだ。
本来であれば、雷そのものへと変じる。
即ち、五体の形を取る必要はないのだ。
どうあっても動きの起点は人の動きに成る。
これはまだ己達が修行の足りぬ若輩たる身である証明。
故に、スズは『有頂天道人』が如何に渾沌化で不定形、不定義たる姿へと変貌するのだとしても、これが未熟者同士の打ち合うでしかないと知るのだ。
「ハッ――!」
スズは『有頂天道人』の動きを見切り、拳法家ならではの動きでもって『有頂天道人』の体勢を崩し、『渾沌化』した拳を躱す。
受ければ消滅する一撃である。
しかし、その大半が今は傷を埋めることに注力されている。
それほどまでに猟兵達の攻勢は苛烈だったのだ。
「ここで畳み込むアルね!」
体勢を崩した『有頂天道人』のみぞおちを打ち据えるはスズの雷へと変貌した拳。
その一打でもってスズは、己が『護業天象拳』の天頂たる片鱗を『有頂天道人』へと味合わせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…「サイバー化」と「混沌化」…混ぜれば良いって物じゃ無いきもするけどあまり人の事は言えないか…
…さて…技術の融合は良いけど…弱点まで把握してるかな…?
【我が身転ずる電子の精】を発動…腕を粒子化するとしよう…
…そしてサイバー混沌拳の攻撃を防護障壁を張って防いで…術式組紐【アリアドネ】で一瞬拘束…
…そこに粒子化した腕で義体化した部位の操作信号を遮断して無力化してしまおう…
…混沌化単体ならばすでに戦闘経験もある…触れないように立ち回って至近距離から術式による光や電撃の矢を浴びせて攻撃するとしようか…
……ただの重りになった義体部分を即座に消滅させる思い切りがあれば…もっと厄介だったかも知れないね…
「……ふむ」
『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』にて繰り広げられる戦い。
猟兵とコンキスタドール『有頂天道人』。
その二者の間に明滅するはユーベルコードの輝きであった。
雷へと変じた猟兵の一打が『有頂天道人』のみぞおちを捉え、これまで渾沌化でもって体裁を整えてきた傷痕を白日の元に晒す。
そう、傷は癒えていない。
消えているように覆い隠されていただけなのだ。
ただ駆体を動かすために、その差し支えがないように渾沌化の力を使っていたのだろう。
そして、電撃から回復した義体の左腕を振るい、『有頂天道人』は咆哮する。
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は理解しただろう。
敵はやはり、力を渾然一体として扱っている。
混ぜているだけではなく、それを完璧に並行に扱うことに長けているのだ。
「……混ぜればいいってものじゃない気もするけど……あまり人のことは言えないか」
メンカルとて各世界の技術と魔法を融合させることをテーマに研究を重ねている。
オリジナルの術式、ガジェット。
そうした発明や発見があるからこそ、彼女は未知の地平が広がっていることに喜びを見出すのだ。
「……技術の融合。それは良い……けど、弱点までは把握していないね……?」
そう他の猟兵が雷へと変じ、左腕の戦闘義体を無効化したことをメンカルは観察していた。
やはり、電気信号。
体躯に流れる生体電流を以て、義体は動かされている。
如何に渾沌化の力を有しているのだとしても、基盤となるのは獣人の体躯である。
ならば、と彼女の瞳がユーベルコードに輝き、己が腕を粒子化せしめるのだ。
「我が身転ずる電子の精(コンバート・テクノマンサー)――我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰」
その腕はデータや信号に直接干渉することのできる粒子の集合体である。
変異した特性を以て彼女は『有頂天道人』の左腕の操作信号を遮断させたのだ。
「……ッ、腕が重い……!?」
「……だろうね。確かにサイバネ義体の膂力、速度は恐ろしい……けれど、結局動かすのはお前の体だ。その基盤が生体電流でもって信号を送っているのならば、その信号を途絶させれば、その義体は無用の長物となる……」
「なら、渾沌の力で!」
不定形にして不定義。
右腕が濁った白に変じ、言いようのない形状へと変貌していく。
触れれば消滅する滅びの力。
恐るべき力である。
だが、それをメンカルは知っていた。
初見であれば、それを見切ることはできなかっただろう。だが、メンカルはすでに『渾沌化』というものを知っている。
故に義体の信号を途絶させ、ただの重りへと変貌させたのだ。
「……やっぱり、その義体を捨てられない、か。全てを渾沌化させる思い切りがあれば、あるいは、私達を追い詰めることもできただろうね」
メンカルは理解する。
二つの力を混合させる存在。
故に一つを切り捨てられない。
渾然一体となっているのならば、二つで一つなのだ。
陰陽が分けられぬのと同じように、隔てられど分かつことは能わず。
「……それがお前の運命を決定づけるものだったんだよ……」
故にメンカルは己が力でもって『有頂天道人』の動きを阻み、さらなる猟兵達の攻撃への隙を生み出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎
道人と聞けば渾沌氏が思い浮かびマスネー。
あの時、ナイアルテ殿や我輩のボディに憑依したundefined……。
おや、有頂天殿の半身も白色灰色のundefined?
ここで会ったが数年目!
鴻鈞道人の恨みを有頂天で晴らしマース!
見事なサイバネ功夫殺法ではありマスナ!
ならばコンキスタドールと猟兵、二つを励起させた力をお見せしマショー!
「骸式兵装展開、剣の番!」
ピサロ将軍を模したこの姿は、とても優れた飛翔能力を発揮しマース!
変則的な攻撃も空中機動で回避して、頭上や背後を狙ってファルシオンで斬りかかる!
ヒットアンドアウェイで挑みマース!
師父とやらが何道人かは知らぬが…疾く道を譲るがいい!
『渾沌化』――それは幾人かのグリモア猟兵によって体感したことであっただろう。
肉体を奪われること。
猟兵たちに対峙したこと。
その何れもが苦々しいものであっただろう。
「道人と聞けば渾沌氏が思い浮かびマスネー……我輩のボディに憑依した『undefined』」
不定形にして不定義。
不明たる存在。
過去の集約ともいうべき骸の海そのもの。
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、対峙するコンキスタドール『有頂天道人』がネオンサインの煌々たる輝きに照らされながら、しかし、その半身である義体への信号を停止させられていることを知る。
「チッ……再起動まで時間がかかるとは。この義体を食い物にできる存在がいる……やはり猟兵は!」
吹き荒れるようにして濁った白。
灰白色の不定形が膨れ上がる。
それを見やり、バルタンは瞳を見開く。
「ここで会ったが数年目! 鴻鈞道人の恨みを有頂天で晴らしマース!」
「ほざけ! お前達猟兵は俺の踏破すべき道でしかない!」
放たれた渾沌をバルタンは、そのユーベルコード輝く瞳で見据える。
「そのサイバネ功夫殺法の冴えも鈍っている様子! やはり、その渾沌は己が傷を塞ぐのではなく、覆っているだけ! ならば!」
彼女は息を吐き出すようにして、ユーベルコードの光に包まれる。
変じるは七大海嘯『邪剣』ピサロ将軍を模した姿。
即ち、骸式兵装展開、剣の番。
「アナタがコンキスタドールであるというのならば、見さらせ、この猟兵とコンキスタドール二つの力を励起させた力を!」
バルタンは飛ぶ。
迫る渾沌が以下にして己を襲うのだとしても、模倣様式・八艘飛び(イミテーションスタイル・フランシスカ)は、間隙を縫うようにして攻撃を交わすのだ。
変則的な空中軌道。
重力など意に介さない変則的な動き。バルタンの身を襲うであろう加速度Gは、しかし圧倒的な白兵戦闘能力と機動力の前には意味をなさない。
射撃や投擲といった行動が封じられていても、関係ない。
ただ踏み込み、己が攻撃を叩き込むのみ。
「ぐっ……このままでは!」
義体が動かない。
この状況では、義体の膂力も速度も活かせない。
猟兵のユーベルコードが此処まで戦いに影響を及ぼすとは『有頂天道人』も予想していなかったのだろう。
確実に此方を食い物にする力。
それによって劣勢を強いられ、戦いの趨勢が遂に猟兵に傾いたのだ。
この機を逃すわけにはいかない。
バルタンはファルシオンを構え、『有頂天道人』の周囲を飛び、その斬撃を無数に見舞うのだ。
「『師父』のご所望たるを満たせぬ……!」
「『師父』とやらが何道人かは知らぬが……疾く道を譲るがいい!」
バルタンは一気に『有頂天道人』の懐に飛び込む。
この距離では渾沌化による一撃も加えられない。
振り下ろされた一撃をバルタンのファルシオンが斬り上げ、弾き飛ばす。
圧倒的な速度。
剣閃は迷うことなく『有頂天道人』の体躯へと叩き込まれ、さらなる傷を持って彼を追い込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
まったくんもー六番六番って
ボクはいつだって一番(?)だよ!
ていうかカルロスくんってまだいたんだ?あと何人いるのさー?
答えは勝ったら聞かせてもらうよ!
●“ Don’t think. feel!"
つまり予測困難なものを目で追ったり頭で考えたりしちゃダメってことだね!
そう…やるべきはしんえんぼうりょに暇無いボクの思考をあえてゼロにして…感じるままに動くこと!
頭をからっぽにして【第六感】でカンフー技をかいくぐってUC『神撃』をドーーーンッ!!
たとえちょっと当たっても相手が先に倒れれば勝ちだし!理論でUC『神撃』をドーーーンッ!!
ふぅ…何も考えずに戦うのって難しいね!
「六番目の猟兵……! ここまで俺を追い詰めるか!」
コンキスタドール『有頂天道人』の言葉にロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は憤慨していた。
オブリビオンより告げられる言葉。
頻発するほどはないが、しかし耳にする言葉。
それが六番目の猟兵である。
耳にタコができるほどであるとロニは思ったし、そういうのはもういいのだとも思っていた。
「まったく、んもー! 六番六番って! ボクはいつだって一番だよ!」
憤慨しているのはそこであった。
何よりも一番が良い。
一番慕われているのが良いし、そうであるべきだし、そうでないといえけない。
何事も一番最初。
それが己に捧げられるべきものであるとロニは思っていた。
「ていうか、カルロスくんってまだいたんだ? あと何人いるのさー?」
「それを応える義理はないが」
「答えは勝ったら聞かせてもらうよ!」
「皮算用を!」
迫るは渾沌。
不定形にして不定義たる右腕が走る。
それこそが『有頂天道人』の恐るべき力である。
すでに左腕の義体は猟兵達によって信号を途絶させられ、重しとなって彼の動きを鈍らせている。
「なら、簡単なことだよね! 如何に渾沌が予測困難なものであっても、頭で考えた時点でもう負けってことだから!」
だから、とロニは己の頭をクリアにする。
零にする。
如何に深謀遠慮たる己の頭脳であったとしても、何も考えていなければ、予測不能な渾沌を目で追うこともない。
感じるままに動くこと。
考えることが人の理性であり、本能を手繰るものであるというのならば、今のロニはただ直感を信じる動物的な動きに支えられている。
反射、とも言えるだろう。
敵の動きに自動的に反応する。
迫る渾沌は不定形であるが、攻撃するというのならば、そこに指向性というものが生まれる。
指向性があるのならば第六感でもって迫る攻撃を察知することもできるだろう。
「一体これがなんであるのか考えないでいいっていうのは、難しいね。どうしたって考えちゃうもの!」
ロニは笑いながら己が拳をユーベルコードに輝かせる。
「その拳がボクに届くのだとしても、キミが先に倒れればボクの勝ちだもんね! はい、ド――ンッ!」
神撃(ゴッドブロー)の一撃が義体の信号を途絶させられた『有頂天道人』に叩き込まれる。
それは神々しささえ感じさせる光景であった。
『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』を砕き、飛び散る破片。
その最中に沈み込みながら、『有頂天道人』は腕を伸ばす。
未だ這い上がることを諦めていない姿にロニは笑う。
「まだやる? やっぱり何かしら考えちゃうね! こういうのって難しい――!」
大成功
🔵🔵🔵
飛・曉虎
●POW
ムハハ!
骨身を機械に置き換えるどころか渾沌をも喰らう、飽くなき豪然への至りと探求…見事なり!
そこまでに至る不退転の覚悟で得た力とは如何なるものか、大力無双たる神将の我輩が試してくれるわ!
ムハハ!
機械化してこの程度の力か!
これなら我輩の【怪力】が…うぉ!?
これが渾沌…っ!
【野生の感】で危うく取り込まれる直前に仕切り直せれたが、迂闊に殴ろうが切り裂こうして反撃すれば取り込まれるのは必定!
ならば…『渦輪粉碎鐵拳』!
ふたつの拳に生じる正と負の陰陽反発力は、まさに原初の|小宇宙《コスモ》!
乾坤圏を射出せぬままの状態で、お主の渾沌渦巻くサイバネ殺法を打破してみせるわ!
ムハーハハハ!
我輩に敵なし!!
砕けた『須弥山型都市』の天頂、『有頂天天蓋』から這い出すようにしてコンキスタドール『有頂天道人』は立ち上がる。
左腕の義体はすでに信号が途絶している。
体躯に刻まれた傷跡は猟兵達の攻勢によるものだ。
凄まじい戦いである。
残されているのは、右腕の渾沌のみ。
だが、これが最も厄介であった。
不定形にして不定義故に、その攻撃の軌道を見切ることはできず、触れれば消滅させる力は脅威そのもの。
「此処まで追い込まれてなお、俺は存在している。それを猟兵……知るがいい!」
その意味、その意義。
しかし、その言葉を前に立ちふさがる者がいた。
「ムハハ! 骨身を機械に置き換えるどころか、渾沌をも喰らう! 飽くなき豪然へと至らんとする探求……見事なり!」
飛・曉虎(大力無双の暴れん坊神将・f36077)は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
そう、目の前にいるのは不退転の覚悟をもって得た力である。
不可逆たる道。
その先をゆく者へと己が退治するのは、試したいという心持ち故であった。
大力無双。
それが曉虎の誇るものであった。
「ならば、受けろよ! このサイバー渾沌拳を!」
動かぬ義体を無理やり突き動かし、『有頂天道人』は曉虎へと踏み込む。
振るう拳は精彩を欠いている。
だが、受ければ渾沌の力によって汎ゆるものが消滅させられてしまう。
故に曉虎は己が拳で真っ向から受け止める。
多くの猟兵に攻撃されてなお、その力は凄まじいものであった。
「ムハハ! この程度……うぉっ!? これがっ、渾沌……!!」
身を焼くような痛み。
内側から、外側から、汎ゆる痛みが襲ってくるようであった。
野生の勘ともいうべき危機回避能力でもって曉虎は飛び退る。
「退くか、猟兵。退けば、それだけ道は後退する。後退は停滞を生み、停滞は過去に食われるのみぞ!」
迫る『有頂天道人』の瞳は鬼気迫るものであった。
目の前の障害を踏破せしめんとする意志にみなぎっていた。
曉虎は迂闊さが己の生命を殺すと理解する。
拳を叩き込むのだとしても、打ち合えば即ち渾沌に飲み込まれる。
ならば、と彼女は陰と陽、正と負の反発し合うエネルギーを凝縮させ、己が腕へと纏わせる。
回転しているエネルギー。
反発するがゆえに互いから離れようとする力は、回転を得る。
回転のエネルギーは最もエネルギー効率が優れている。
ロスなく回り続ける力。
それは乾坤圏へと変貌するのだ。
「これぞ、渦輪粉碎鐵拳(スパイラル・マグナム)! 唸れよ、乾坤圏!」
超光速で回転する一撃が叩き込まれる。
原初の小宇宙誕生にも匹敵するかのような爆発的な加速によって打ち出された乾坤圏は一瞬で『有頂天道人』の放つ渾沌をも巻き鋳込みながら、貫く。
「これぞサイバネ殺法破りなり!」
放たれた一撃がついに『有頂天道人』の体躯を穿つ。
大穴……否、その体躯の殆どを吹き飛ばした一撃に『有頂天道人』は立ったまま絶命していたのだ。
それを見やり、曉虎は盛大に笑う。
「ムハーハハハ!『有頂天道人』! 確かに見事な功夫、修練よ! だがしかし! 我輩に敵なし!!」
見よ、と彼女はネオンサイン煌々と煌めく『有頂天天蓋』を見やり、敵を打ち倒した拳を突き上げ、共に戦いし猟兵達へと勝利を示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵