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獣人世界大戦⑤〜空を奪還せよ

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「空を取り戻してほしいんだ」
 はじまりの猟兵やそれぞれの思惑を巡って勃発した獣人世界大戦。その対処で慌ただしく猟兵が行き交うグリモアベースにて、ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は既に転送陣を構築しながら端的にそう言った。
「改めて、皆お疲れ様。もう聞き及んでいると思うけれど、獣人戦線のユーラシア大陸全土を巻き込んだ大戦の勃発した。|世界滅亡《カタストロフ》さえ意に介さない超大国のオブリビオンたちの強攻で状況は相当荒れている。急ぎ戦線を突破しなければならないこともあって、今回は電撃戦だね」
 猟兵も駆け足を要求されるような状況だ。都市ごと移動するという無茶を行っている超大国もあれば、諜報戦となって疑心暗鬼に駆られている国もある。いずれにせよ、対処が遅れれば誰よりも被害を被るのは何の罪もない一般人たちだ。
「けれど焦ってしまってはいけないよ。オレたちはいつも通り、一つ一つを着実にこなしていこう。それがきっと、人々を護る一番の近道になるだろうから」
 急いた心はミスを生む。こういう時こそ落ち着いて目の前のことに対処していこうと、ディフは皆を見渡して穏やかに微笑んだ。

「それじゃあ状況を説明しよう。今回皆に向かってほしいのはイタリア半島と呼ばれる、ゾルダートグラート勢力下の地だ。此処では今、獣人たちの航空レジスタンスたちによってゾルダートグラート空軍へと大規模な反抗作戦が決行されようとしている」
 イタリア半島ではもともと航空レジスタンスによるゾルダートグラート空軍への根強い抵抗が続けられていたが、決定打に至らぬままに今日に至っている。だが世界大戦が勃発したことにより、モスクワでのワルシャワ条約機構との激突、移動都市と化した本土の防衛、他の地への防衛や進撃等で戦力が割かれてる状況だ。これを好機とし、以前より抵抗活動を続けていた航空レジスタンスたちは大規模な反抗作戦を決定したのだ。
「皆にはこの航空レジスタンスたちと協力して、ゾルダートグラート空軍のオブリビオンたちの制圧に助力してほしいんだ。やり方は……考えられるのは二つくらいかな」
 一つ。自らの翼、もしくは所有する飛行可能な機体を駆使して助力すること。獣人戦線の戦闘機や複葉機。ブルーアルカディアのガレオン船やセイルフローター。キャバリアなどがそれに当たるだろうか。
 二つ。航空レジスタンスたちの航空機に同乗して戦うこと。操縦や機銃の操作を担当するも良いだろうし、少々乱暴な手段ではあるが、彼らの戦闘機や複葉機の翼に乗って直接相手を叩くのもよいだろう。熟達した彼らの操縦技術は、猟兵たちの確実な足場となってくれるはずだ。
「相手は蝙蝠獣人のオブリビオンで爆撃兵の部隊だ。自由自在に飛び回り、敵味方関係なく爆撃を降らせる厄介な相手でね。戦闘機より的も小さくすばしっこいという点からも、海上戦であるという点からも、今回は空中戦で直接叩くのが現実的と言えるかな。地上からの砲撃や対空射撃はまず無理だと思ってほしい」
 蝙蝠の獣人でありながら、一体一体が戦闘機に匹敵する飛行能力を持っている相手だ。それでいて戦闘機よりも小回りが利く。レジスタンスたちの戦闘機だけで相手取るには少々厄介な相手だ。
 やや難しい顔で腕を組んでそう告げたディフだったが、やがて雪華の転送陣の構築が完了したことで表情を和らげた。
「皆ならきっと大丈夫。無事成し遂げて、皆で戻ってくるんだよ」
 ディフの瞳に籠められているのはいつだって成し遂げてきた猟兵たちへの信頼だ。だからしっかりと頷いて、皆の背を押すように微笑むのだ。
 誰一人、欠けることなく。
 人々の笑みを取り戻す為に。
「アドリア海の奪還は彼らレジスタンスたちの悲願。制空権を奪取出来ればイタリア半島攻略の足掛かりにもなるだろう。……彼らの海と空を取り戻してあげて」

 門の先には夕陽で染まるアドリア海。茜の空に、航空機のエンジン音が響き渡る。
 ――空を取り戻せ、|猟兵《イェーガー》。


花雪海
 閲覧頂きましてありがとうございます。花雪海と申します。
 此度は「獣人世界大戦」の一舞台、アドリア海の空へとご案内致します。

●プレイングボーナス……飛行機乗り達と協力し、空中戦で戦う。

●戦闘
 空中戦となります。
 自前の翼や飛行可能な機体を駆使したり、航空レジスタンスたちの戦闘機に同乗して戦ったり、各々が得意な方法で戦って頂ければと思います。
 航空レジスタンスたちは猟兵たちの足場となるよう動いてくれたり、頼めば敵を追い込んできてくれたりします。
 うまく協力して、敵オブリビオンを撃破して下さい。

●プレイング受付・締め切り・採用について
 当シナリオに断章はありません。公開と同時にプレイング受付を開始致します。
 戦争シナリオの為、完結優先。少人数採用による早期完結を予定しております。
 全採用はお約束出来ませんのでご了承下さい。

 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『コウモリ爆撃兵』

POW   :    無差別爆撃
戦場にレベル×5本の【焼夷弾】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【多くの被害と死者が出る】対象を優先して攻撃する。
SPD   :    反響定位
【超音波】を体内から放出している間、レベルm半径内で行われている全ての【攻撃】行動を感知する。
WIZ   :    空飛ぶ悪魔
戦場内で「【助けて・死にたくない・怖い・熱い・神様】」と叫んだ対象全員の位置を把握し、任意の対象の元へ出現(テレポート)できる。

イラスト:はるまき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リィンティア・アシャンティ
カッコいいですよね、戦闘機
こっくぴっと……? ボタンとか、いっぱい……
……私には無理そうなので、ルノの力を借りて自分で飛ぶことにします
小回りの利きやすさとか慣れとか。こちらの方が戦いやすいと思います!

一緒に戦う皆さんの飛行の邪魔にならないよう気を付けて
敵の位置を教えあうとか、連携はできるように意識して空を飛びます

戦場で特定の言葉を叫ぶとテレポートしてくるとのこと
ならばそれを利用して、近くに来てもらうことが可能なのでは
どこに出現されても対処できるように周囲に意識を集中し「神様!」と叫んでみる
あとは敵に負けない飛行能力と味方との連携で倒していきます

空と海、航空レジスタンスさん達に返してもらいます!




「カッコいいですよね、戦闘機」
「お嬢さんにもわかるかい、このカッコよさが!」
 エンジン音が響き、次々と戦闘機が飛び立っていく滑走路上。愛機を褒める声を聞き逃さなかった飛行機乗りが嬉しそうに応えると、傍らの女性――リィンティア・アシャンティ(眠る光の歌声・f39564)は花のような笑みを咲かせて頷いた。
 リィンティアは今、どのようにして彼らレジスタンスに協力できるか。その方法を探っていた。
「俺の相棒は複座式だ。コックピットに一緒に乗るか?」
「こっくぴっと……? ボタンとか、いっぱい……」
 パイロットに促されてコックピットを覗いてみたが、何に使うのかもわからないスイッチと計器が大量に並んでいる。けれども戦闘機に関する知識が全くない状態では、スイッチ一つすら下手に触れやしない。
「……私には無理そうなので、ルノの力を借りて自分で飛ぶことにします」
 早々に同乗を諦めたリィンティアは、肩に留まっていた|妖精《ルノ》に「ね?」と問うた。すぐに快諾が返るが、驚いたのはパイロットの方だ。
「大丈夫か? 戦闘機が飛び交う空中戦になるが……」
「小回りの利きやすさとか慣れとか。こちらの方が戦いやすいと思います!」
 心配をしてくれるパイロットに、大丈夫としっかり頷く。
 ルノの力を借りれば、空中機動力は戦闘機にも引けは取らない。むしろ慣れがある分より役立てるはずだ。
「わかった。じゃあ行くぜお嬢さん。この空を綺麗にしてやろうぜ」
「ええ!」
 戦闘機のエンジンが轟音を立てると同時、リィンティアがルノとひとつになる。煌めく妖精の碧羽が彼女の背を飾ったならば。
 ふたつの光は空へと駆け上がった。

 交戦の開始は早かった。レジスタンスの部隊が空で編隊を組むと同時に、此方の動きを察したゾルダートグラート空軍の蝙蝠獣人たちが群れを為して襲ってきたのだ。
「5番さん、右から来ます!」
『了解! ……アシャンティさん、下!』
 爆雷の雨を掻い潜りながら、リィンティアは冷静に戦場を俯瞰する。
 編隊で飛ぶレジスタンスに対し、蝙蝠獣人たちの動きは変幻自在だ。幾つもの爆雷や焼夷弾を装備しているくせやたらと身軽で、戦闘機には出来ない動きで此方を攪乱してくる。
 リィンティアは共に戦うレジスタンスの飛行の邪魔にならぬよう気をつけながら、借り受けた無線で敵の位置を伝え合い連携を取る。
 敵とレジスタンスの違いを挙げるとするならば、この連携だ。無線で連絡を取り合い常に連携しているレジスタンスに対し、蝙蝠獣人たちはより被害が広がることを優先して敵味方お構いなしに爆雷を注ぐ。付け入るならばそこだ。

 飛び立つ前、リィンティアはレジスタンスたちからある情報を仕入れていた。曰く、「あの蝙蝠獣人たちは戦場で特定の言葉を叫ぶと近くにテレポートしてくる」のだという。
 ならばそれを逆手にとって利用すれば、バラバラに飛ぶ蝙蝠獣人たちを一纏めにすることも可能なのではないか――?
「皆さん、そろそろやります!」
『気を付けてくださいね!』
 先に伝えておいた作戦決行を端的に伝えれば、レジスタンスたちはリィンティアの傍で編隊を組む。|その言葉《・・・・》を唱えた時に、どこに出現されても対処できるように。リィンティアもレジスタンスたちも周囲に意識を集中する。
 そして、思い切り息を吸うと――。
 
「神様!」

 それは天に助けを祈る言葉。戦場に於いて、戦意を喪失した者が唱える言葉だ。それを悪魔は聞き逃しやしない。
 途端に何体もの蝙蝠獣人がリィンティアを取り囲むように出現する。大きな口で嘲笑って、リィンティアを焼き殺そうと焼夷弾を手にした瞬間。
「今です!」
 リィンティアの合図と共に、レジスタンスたちの機銃が一斉に火を噴いた。一網打尽とはまさにこのことを指すだろう。周囲をすばしっこく飛び回る小さな蝙蝠獣人も、纏まってしまえばいい的だ。
 リィンティアもまた、『眠る光の欠片』と名付けた美しきソードハープを手に真っすぐに敵陣を切り開く。
 まともに連携を行っていない敵軍と、常日頃から連携を取ることに慣れているレジスタンスと猟兵たち。この状況に持ち込んでしまえば、どちらが優位かなど比べる間でもない。
 
「空と海、航空レジスタンスさん達に返してもらいます!」

 妖精が空で舞うが如く。美しきソードハープを振るいながら、リィンティアは空を翔ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

風吹・香織
アドリブ連携歓迎

 へぇ、空中戦の上に、悪魔だって?
 面白い、「双胴の悪魔」と呼ばれた私の|P-38 ライトニング《相棒》とどっちが悪魔の名前に相応しいか勝負だね。

 爆撃兵だと言うのなら、こちらも爆撃部隊で応じよう。
 UC発動。僚機を大量に呼び出す。
 友軍とも連携して一斉に攻撃だ。
 僚機が使えるのはロケットランチャーと爆弾だから、有効な打撃にはなり得ない可能性が高いが、向こうは超音波で攻撃行動を感知してくるらしい。
 一斉に射撃すればそのどれが有効打かは識別しきれないはず。
 そうして飽和したところに、本命の機関銃と機関砲を撃ち込んで、一撃離脱を繰り返す。
 私の相棒のスピードについて来れるかな?




 アドリア海の空を黒い影が埋め尽くしている。聞こえるのはエンジン音ではなく羽搏きの音だ。
 レジスタンスの飛行機乗りたちからは、『空飛ぶ悪魔』と恐れられている相手だという。

「へえ、空中戦の上に、悪魔だって?」
 幾多のエンジン音が響く滑走路にて。暗雲に似た敵の大隊を見上げた少女は、嘲笑うかのように小さく鼻を鳴らす。
 暗雲の正体は、蝙蝠の獣人オブリビオンだ。身の丈程の翼には、いくつもの爆雷。牙を剥く|それ《・・》は血に染まるような赤い目を光らせている。
 獣人でありながら兵器。一体一体が戦闘機に匹敵する飛行能力を持ち、空を飛び回り爆撃を行う。超音波を駆使する為索敵能力も高く、闇夜も難なく飛ぶ姿はさながら悪魔のようだと。
 だがそんな二つ名など少女――風吹・香織(怠惰な「双胴の悪魔」乗り・f39889)は意に介さない。むしろ競争心を煽られたとばかりに笑みを深めた。
 空の悪魔ならば、此処にも居る。|此処にいるのだ《・・・・・・・》。
 傍らの相棒をは既に整備を終えている。機関銃と機関砲の弾は十全。2基の水冷型12気筒エンジンもプロペラの調子も最高潮。あとはもう、香織が乗り込むだけで相棒は空へと飛び立てる。
「面白い。『双胴の悪魔』と呼ばれた私の|P-38 ライトニング《相棒》とどっちが悪魔の名前に相応しいか勝負だね」
 ヘルメットを被った香織は、すぐさま愛機に乗り込む。その顔は既に笑みを止め、戦闘機パイロットの顔をしていた。

 レジスタンスの誘導の元、滑走路を駆け上がった香織は愛機の得意を生かして高度を位置取った。
 相手が爆撃兵だというのなら、こちらも爆撃部隊で応じよう。数で劣るというのなら、数の優位すら覆してやろう。何方が悪魔に相応しいかを決めるならば、同じ条件で競ってこそ。
 香織の瞳に超常の光が灯る。
「さぁいくよ、僚機たち。爆撃開始だ」
 ユーベルコードを発動した瞬間、香織の後方に1個飛行団に相当するP-38 ライトニングが出現した。数の優位を誇り嘲笑っていた蝙蝠獣人から笑みが消える。
 ――その隙が、空では命取りと知らぬわけではないだろうに。
「それじゃあ、やろうか!」
『おお!!』
 無線に返るレジスタンスたちの雄たけびが、蹂躙のはじまりの合図だ。
 
 P-38 ライトニング。高高度戦闘機として開発されたこの戦闘機は、双胴に搭載された二機のエンジンにより上昇力や高高度性能に優れた機体だ。
 香織はあっという間に蝙蝠獣人たちより高度を取ると、蝙蝠獣人たちの頭上に僚機から爆弾とロケットランチャーを雨霰と降らせる。
 香織の愛機とは違い、僚機が使えるのはその二種の武器だけ。それ単体では格闘性能に優れる蝙蝠獣人たちへの有効な打撃にはなり得ぬの可能性が高いが、そんなことは百も承知。
 だが相手は蝙蝠だ。奴らが超音波で此方の攻撃行動を感知しているのもまた既にレジスタンスたちによって暴かれている事実。
 超音波センサーは物体の有無や物体までの距離を検出するもの。ならば感知が意味をなさない程の物量で一斉射撃をすれば、そのどれが有効打かなど識別しきれるものか――!!

 戦闘空域のあちこちで爆発が連鎖する。
 蝙蝠獣人たちの元々連携する気のない敵味方の区別ない行動と、超音波に頼った索敵ではこの飽和状態を脱する術などない。
 その混乱の中を、一機の悪魔が急降下する。圧倒的な速度で敵との距離をすぐさまに詰め、照準に敵を収めた瞬間。
 機首に集中装備された4門の12.7mm機銃、1門の37mm機関砲が火を噴いた。
 あっという間に複数の蝙蝠獣人が撃墜され、背を追うことすら許さぬ速度で上昇して離脱する。
「私の相棒のスピードについて来れるかな?」
 圧倒的な急降下速度と上昇速度。いくら戦闘機と同等の飛行能力を有する蝙蝠獣人ではあっても、それらに特化した機体にまで勝てるようにはなっていないのだ。
 僚機による飽和爆撃と友軍の攻撃の中、その戦闘機は幾度でも高高度から現れては蹂躙して去っていく。その戦闘機の姿はさながら空から穿たれる稲妻のようであり、悪魔のようでもあり――。
 
『双胴の……悪魔……』

 目前に迫った双胴のオリーブドラブを前に、蝙蝠獣人が小さく呟き、その声も、掃射される機銃の音に悲鳴ごと掻き消された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
楽しい空戦ショーの始まりだァ!

拙者に協力してまほ…足場になってよ!
視界が必要でござるのでせっかくだから拙者は戦闘機の翼に乗るぜ!後は好きに飛んでくれよな!
コウモリの編隊が見えたら拙者の先制攻撃だァ!目線をスイと向ければ突然爆発が起こるでござるよ!まあ拙者が爆破してんだけど

狙いなんてどうでもいいんだ、とにかく適当にボンガボンガ爆破して行こうぜ!至近距離で怒る爆発でござるからなぁ~耳のよいコウモリなら良く効くだろォ~?反響を聞こうとしていた今なら特にネ!

耳を潰され爆風に煽られ編隊をぐちゃぐちゃにしたら後はレジスタンスでも楽に相手できるだろ!頑張って撃ち落とせばよいでござるよ!




 アドリア海の空を覆う暗雲の如き無数の蝙蝠獣人爆撃兵。
 敵味方関係なく、より死者や被害者の出る方へと爆撃する傾向にある彼らは、「空の悪魔」と呼ばれ恐れられている。
 超大国と呼ばれるだけの戦力規模を有した国が今、世界大戦が勃発したことで戦力を割かれている状況で行われる大規模反抗作戦。
 そんなもの――燃えるに決まっている。

「楽しい空戦ショーの始まりだァ!」
 今まで覆せなかった戦況を覆そうとするこの状況に、エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)のテンションは適度に高まっていた。
「レジスタンスの諸氏ィ! 拙者に協力してまほ……足場になってよ!」
「足場ってこたぁ、アンタ生身で空に上がんのかい? 俺の戦闘機は複座だぜ。そっちじゃなくていいんか?」
 パイロットの一人が、自身の愛機のコックピットを指してエドゥアルトに問う。
 戦闘機が空を飛ぶ速度は、生身の人間がまともに耐えられるものではない。当然それは理解しつつも、エドゥアルトは胡散臭い程にこやかに笑って親指を立てた。
「視界が必要でござるので、せっかくだから拙者は戦闘機の翼に乗るぜ! 後は好きに飛んでくれよな!」
「無茶苦茶だなぁ。だがいいぜ、空までは俺の相棒の翼に乗るといい。 |Vieni《きな》!」
 無理無茶無謀は時としてパイロットに付き物だ。だが他ならぬ猟兵がそう言うのならばと、レジスタンスの犬獣人は気さくに笑ってエドゥアルトを愛機の翼へと誘った。
 
 編隊を組んで飛ぶレジスタンスたちの航空機部隊は、すぐに敵軍を視界内に収めることが出来た。先に飛んでいる猟兵たちとの激しい戦闘が、遠くからでも見て取れたからだ。
 だが数で言うならば、まだ暗雲めいた敵軍の優位はまだ揺らぎ切ってはいない。さすがは超大国というべきか、一つの国の空に一航空団でも置いているのかと思う程の物量。
 一般兵ならば気圧されるだろう。新兵ならば引き返したくなるかもしれない。けれど今此処にいるのは――。

「拙者の先制攻撃だァ!」
 此方に向かってくる蝙蝠獣人の編隊をエドゥアルトが認識したと同時に、突然編隊の一部が爆発した。装備した焼夷弾に火がついて連鎖爆発が起こり、敵編隊はあっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
「そら! 目線をスイと向ければ突然爆発が起こるでござるよ! まあ拙者が爆破してんだけど」
 所持した焼夷弾が暴発したかと思われたが、そうではない。超常の光を瞳に発動させたエドゥアルトが、視認した敵を爆破するグラビティを撃ちだしているのだ。
 そんな常識離れした方法で攻撃されるとは思っていなかったのか、それすら思考する間もなく爆発と誘爆に巻き込まれたか。混乱を極める編隊をレジスタンスたちが機銃で撃ち落としている間に、エドゥアルトは次々と目線を向けた先を大雑把に爆破していく。敵が少なかろうが外れようが構いやしない。
 狙いなんてどうでもいいのだ。とにかく適当にボガンボガンと爆破しているのには相応に理由がある。
 相手は蝙蝠獣人だ。視覚よりも発した超音波を耳で聞き取り、自分との位置関係や大きさなどを把握している。基本的に目ではなく耳に頼っているという点は、オブリビオンとなっていようと元が蝙蝠の獣人である限り変わらないはずだ。
「至近距離で起こる爆発でござるからなぁ~。耳のよいコウモリなら良く効くだろォ~?」
 口の端を楽しげに歪めて、エドゥアルトは視線を投げる。
 フレンドリーで胡散臭い軽薄な傭兵は、爆発から離れた位置から動きを止めて此方を窺おうと超音波を放つ蝙蝠兵を見逃さなかった。
 雑に投げた視線が――グラビティが、爆ぜる。
「反響を聞こうとしていた今なら特にネ!」

 爆発音に耳を潰され、爆風に煽られて編隊をぐちゃぐちゃに乱されてしまえば、最早『空の悪魔』と恐れられた蝙蝠獣人たちはただのいい的だ。
「後はレジスタンスでも楽に相手できるだろ! 頑張って撃ち落とせばよいでござるよ!」
『おお!!!!』
 今までは空中で格闘戦に持ち込まれると、やたらと小回りの利く蝙蝠獣人に翻弄されてばかりだったレジスタンスたち。けれども今やっと、その立場を逆転する時だ。
 エドゥアルトの声を合図にレジスタンスたちの機銃が掃射される様子に笑みを深め、エドゥアルトは次を求めて翼の上で敵を探す。
 
 楽しい空戦ショーはまだ、はじまったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
空中戦なら負けないわ!
あたしが囮になって陽動するから
出来る限り多くの敵を一箇所に集めてほしいとお願いしてから
レジスタンスの戦闘機と一緒に空を飛んで戦いの場へ
自前の翅で空中機動を活かせばきっと置いていかれることはないわよね
戦闘機の皆があたしを見失わないようにも気をつけるわ
空と海が綺麗なのは、どこの世界も変わらないのね
なんて景色を楽しむのは戦いが終わってから!
空はあなた達オブリビオンには渡さない
ここには助けを呼ぶ誰かなんていないでしょう?
ならレジスタンスの皆にだって追い込むのは難しくはないはず
追い込んでくれている間に魔力を溜めて、ある程度集まったら高速詠唱
虹色の流星雨で纏めて倒してしまいましょう!




 薄暮の空へ、銀の翼が舞い上がる。

 前線基地では、航空レジスタンスたちの戦闘機が出撃準備を着々と整えて出撃していく。
 レジスタンスと言えどこれまで根強く抵抗を続けてきただけあって、彼らの動きは既に熟達のそれへと達していた。整備兵が最終チェックを行い、チェックを終えた戦闘機が誘導兵に導かれて滑走路へと進んでいく。
 編隊を組んで戦闘機が次々と空へと舞い上がる中、最終ミーティングを行っていたある班に、彼女の姿はあった。
「空中戦なら負けないわ! あたしが囮になって陽動するから、出来る限り多くの敵を一か所に集めてほしいの」
 お願いできるかしら、と問うたのは、キトリ・フローエ(星導・f02354)だ。フェアリーという小さな身で空の戦場を駆けることを案ずる声はもちろんレジスタンスたちから上ったが、キトリは第一線で戦える程の経験を積んだ猟兵だ。「大丈夫!」と力強く告げれば、レジスタンスたちも頷いて、キトリを仲間へと迎え入れてくれた。
『それじゃあ行くぜ、キトリ! アフターバーナーに巻き込まれねぇようにな!』
「えぇ、大丈夫よ! 行きましょう!」
 班長の合図に頷いて、編隊と共にキトリは美しい翅を羽搏かせて共に空へと舞い上がった。

 小さな翅ではあっても、持ち前の空中機動力を活かせば戦闘機にだって置いて行かれることはない。
「すげぇな!」と言わんばかりにあちこちのコックピットから見えるハンドサインにちょっぴり照れ臭そうに笑いながら、キトリは戦闘機の皆が自分を見失わないように位置取りにも気をつけて飛ぶ。
 けれど、ふと。
 キトリは眼前に広がる景色に注意を向けた。
 広がっているのは広い広い空と、イタリア半島とバルカン半島に挟まれたアドリア海。
 紺碧の海は夕陽と混じ入り、水平線でひとつになった空と海は薄明から黄昏へとグラデーションを描いていく。
「空と海が綺麗なのは、どこの世界も変わらないのね」
 空と同じ色に染まった銀糸を抑えながら、キトリはそっと微笑んだ。超大国の支配から解き放たれれば、この海はきっと多くの人々の疲れた心を癒してくれるだろう。美しき紺碧に身も心も染めて、どこまでも青く澄んで――。
「……なんて景色を楽しむのは戦いが終わってから!」
 慌ててふるふると頭を振って、キトリはぐっと前を向く。
 先に飛んでいる部隊と敵軍は既に交戦をはじめていて、視線の向こうでは激しい爆発が幾度も起こっていた。キトリたち編隊に気づいた敵部隊の一団が、此方に進路を変えている。
 あの暗雲は火を降らせ、悲鳴と慟哭を生む。そんな暗い雲などこの美しい海と空には相応しくない――!!
「空はあなた達オブリビオンには渡さない!」
『その通りだ、俺達のアドリア海を返せ!!!!』
 キトリの言葉を合図に、レジスタンスの編隊が前に出た。
 敵蝙蝠獣人は戦意を喪失したり助けを呼ぶ相手を耳ざとく見つけ、一瞬でテレポートしてくることがわかっている。だが今。奪還に燃えたレジスタンスたちには、怯えて助けを呼ぶ誰かなんて誰一人いやしない。
 ならばレジスタンスの皆にだって、一か所に追い込むことは難しくないはずだ。
 敵兵を追い込んでくれている彼を信じて待つ間、キトリはすうっと深く息を吸い込んで魔力を練り上げる。溜めて、編み上げ、生み出すは千紫万紅の星。
「願いを抱く星々よ」
 掲げしは花蔦絡む美しき花の魔杖。
 その光を目印に、レジスタンスたちは巧みな操縦技術で蝙蝠獣人たちを追い込んでいく。その暗影が一か所に集まった瞬間――。

『キトリ!』
「ええ! その輝きを見せてあげて!」

 極彩色の流星雨が解き放たれた。
 幾何学模様を描いて翔る星は暗影を貫き、アドリア海の空と海を眩く照らす。
 
 その光に、レジスタンスたちは希望と勝利を見た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
はじめての世界
見知らぬ情報が行き交う中も、迷わず進めるのは
グリモアの皆のがんばりのおかげ
うん、一つ一つ確りと!

レジスタンスさん達にご協力をお願い
翼を足場にさせてもらいつつ
日傘の空中浮遊で戦う距離を図るわ

小回りがお得意なのね
それじゃあアナタ達より小さく沢山な花弁は如何かしら
大砲さんみたいにドカンな一撃はないけど
飛翔の目隠しにも
目印にもなるのよ
指先の花弁の円は一斉射撃の合図に

危険な機体があれば
花弁で攻撃を妨害
熱いって叫んだら、逆に私に向くかしら
茨が届く距離、それが一番得意な距離なの
茨で捕縛できる瞬間は見逃さず
思う儘に翔けさせてくれるから、恐くない
大丈夫、爆弾が来ても
風の属性攻撃で吹き飛ばしちゃうわ




 サムライエンパイアよりも進んだ文明。アリスラビリンスよりも戦火が日常の世界――獣人戦線。
 けれどもはじめての世界、見知らぬ情報や兵器が行き交う中でも迷わず進めるのは、グリモアを授かった皆の頑張りのおかげだと冴島・いばら(白夜の魔女・f20406)は思う。
 だから大丈夫、いつも通りに胸を張っていける。
 此処に送ったグリモア猟兵の|青年《とも》が、門を潜る前に告げた言葉を思い出す。
 如何に急いた状況であろうとも焦ってしまってはいけない。急いた心はミスを生むから。だから――。
「うん、一つ一つ確りと!」

 まずはいばらは出撃前ミーティングを行っている場に顔を出して、航空レジスタンスたちに助力を請うた。
『助力頂けるのならばこれほど心強いことはありません。私たちは貴女の着実な足場となりましょう。|Signora《淑女》をエスコートするにはいささか無粋な場ですが、お任せ下さい』
 ウマ獣人の班長は折り目正しく頭を下げた。淑女だなんて言われて少しばかりはにかんでしまったけれど、ならば淑女らしく頑張ろうなんて気合一つ。真っ白な日傘を手に、いばらは戦闘機の翼に飛び乗った。
 
 風を切って飛ぶ翼の上。髪を抑えて前を見据えるいばらとレジスタンスの視線の先では、既に戦闘がはじまっていた。
 アドリア海を覆う暗雲へと戦闘機が突っ込んでいき、爆発があちこちで起こっている。遠目では戦況はわかりづらいが、暗雲が少しずつ千切れて消えていっているところを見れば、戦況は猟兵とレジスタンスたちに傾きはじめているのだろう。
 だが、それでもまだ。数で優位な暗雲は油断や慢心を許してはくれない。現に猟兵たちの攻撃を掻い潜った蝙蝠獣人たちが此方に気づいて進路を変えた。正面からの激突になる。
 そう認識した瞬間、いばらは日傘をぽんと開いた。
 茜色の空に繊細なレースで編まれた白薔薇が咲く。ふわり、風を捕まえた魔法の日傘がいばらを空中へと誘う。仲間の翼を足場にふわりふわりとたんぽぽの綿毛のように空を舞い、戦う距離を測る。

 あと――10,000m。接触まで72秒。
 蝙蝠獣人が先行レジスタンスの戦闘機をひらりと躱して此方に来る。

「小回りがお得意なのね。それじゃあ」
 いばらのしろい指先がついと蝙蝠獣人を指す。花緑青の瞳に、ユーベルコードの煌めきが宿った瞬間。
「アナタ達より小さく沢山な花弁は如何かしら」
 ぶわりと指先から溢れた無数の白薔薇の花弁が、真っすぐに指差した先へと放たれた。
 花弁は蝙蝠獣人の一団へと襲い掛かり、纏わりついて視界を塞ぐ。大砲のように強力な威力はないけれど、ましろの花弁は飛翔の目隠しにも、此方の目印にもなる。
 逃げようと暴れようがいばらの指先が追い続ける限り、敵は纏わりつく小さな花弁すべてを振り払いきれやしない。超音波を放って位置を確認しようにも、花弁が音波を乱反射してレジスタンスの位置を測ることも出来ない。そうしていつのまにか距離を詰められていることも、ましてや|一つに纏められていることなんて気づきやしないのだ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。
 とん、といばらが降り立ったのはあのウマ獣人の班長機。指先の花弁の円がぶわりと広がった瞬間。
 レジスタンスたちの機銃が一斉に火を噴いた。

「……まあ、大変!」
 撃墜の喜びも束の間。蝙蝠獣人の一団を撃ち落とした直後、蝙蝠たちに追われているレジスタンスの戦闘機が飛び出してきた。
 咄嗟に花弁で蝙蝠たちの視界を塞ぐと、いばらは出発前に班長たちから受けた敵の詳細を思い出す。
 あの蝙蝠獣人たちは、怖いとか熱いとか。とにかく助けを叫んだ相手の位置を把握し、テレポートしてくるのだとか。ならばそれを利用して此方におびき寄せることも可能ではないのか?
 そう思ったら、もういばらに迷いはなかった。
「熱い!」
 力いっぱい叫んだ。それを聞き逃さなかった蝙蝠たちが此方へテレポートしてきたなら、既にいばらの領域に囚われている。
「茨が届く距離、それが一番得意な距離なの」
 片手に日傘を、もう片方には茨蔓を。
 不埒な蝙蝠など茨で捕らえてしまおう。レジスタンスたちは最初の言葉通りいばらを思う儘に翔けさせてくれるから、なにも恐くない。
 上から爆弾の雨が降って来たって、大丈夫。
 
 若萌色の風で、全部全部吹き飛ばしちゃうわ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
【Circus】で飛翔形態
腕と脚を影の獣のようにし、爪には雷(属性攻撃)を纏わせる
飛び回りながら、爪での引き裂きや突き刺し等で敵を攻撃し、
纏った雷で痺れさせてやります
レジスタンスの方々とは少し離れた所でやりたいですね
……いや、霊障がね、僅かでも戦闘機に支障が出ると危ないので……
空中での協力戦、向いてないですね私? なんで来た?

まぁ、派手に立ち回っていれば敵が私の方へ寄ってくるでしょう
影人間らしくない動きですが、まぁ今の見目がもう派手なのでね……
いつもはがっつり消す存在感も、今回はあえてがっつり出してます

敵が集まってきたら呪瘡包帯で纏めて縛り上げる
雷で痺れさせ、そのまま海に放り投げてやりましょう




 茜に染まるアドリア海の空に、黒き影が翼を広げた。
 背に怪奇の翼を。包帯を解いた両手足を獣のそれと変化させ、爪には雷を宿す。さながら雷獣影。半獣人の姿を取ったスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は、敵味方入り混じる混沌の空へと飛び込んだ。

 敵はイタリア半島を占拠するゾルダートグラート空軍。暗雲と見紛う程の、蝙蝠獣人の爆撃兵の大群だ。
 彼らは一体一体が戦闘機並の飛行能力を持ち、戦闘機には真似出来ぬ小回りを利かせ、助けを求める声あらば姿を現し爆弾を降らせて炎と死へと誘う。超音波を駆使する為索敵能力が高く、夜だろうが闇だろうが難なく飛ぶ姿は、さながら悪魔のようだとレジスタンスたちは言っていた。
「蝙蝠ってもう見た目が悪魔っぽいもんな……」
 言い得て妙というか、当然の呼称と言うべきか。どうしても味方と思いづらい顔だ、と思うのは多分自分だけではあるまい。
 投擲された焼夷弾を躱し、上を取ろうとした蝙蝠獣人を下から追い上げて稲妻纏う爪で突き刺す。雷撃による麻痺で動きを封じて海へと棄て、また次へ。まるで暗雲を少しずつ千切っていくかのように、影は雷撃を振りかざす。
 
 スキアファールは今、レジスタンスたちとは敢えて少し距離を取って戦っていた。
「……いや、霊障がね、僅かでも戦闘機に支障が出ると危ないので……」
 ――空へと上がる前。滑走路で助力を申し出た編隊の班長に、スキアファールは申し訳なさそうに首を横に振った。
 自分は怪奇・影人間だ。纏った霊障は周囲に奇怪な現象を撒き散らしてしまう。それによってただでさえ精密な操作が必要になる戦闘機に支障を来してしまったら、即ちレジスタンスのパイロットたちの命を脅かすことと相違ない。そんな不要な危険に巻き込むようなことはしたくないのだ。
「……空中での協力戦、向いてないですね私? なんで来」『かっけーーーーーーー!!!!!!!!!』
 ちょっぴり悲しくなって思わず呟いた言葉に、どこか幼い声の絶叫が重なった。ビックリして顔を上げると、班長の後ろから顔を出した犬獣人の若いパイロットが目を輝かせてスキアファールを見ている。班長に頭を抑えつけられて「こら」と叱られていようが退く気配がない。
『影? これ影? うわ影の翼とか腕とか爪とか超かっけーーー!!! オレこの人と飛ぶ!!』
「いやだから、さっきの私の話を……」
『聞いてたけどしらねー!!!』
「えぇ……」
 話を聞いてくれない。いや理解はしてくれているようなのだが頷いてくれない。どーーーしてもスキアファールに助力すると言ってきかないこの少年兵を班長は何とか諦めさせようと説得したが、しばしの後。班長は結局『近づき過ぎないよう気をつけさせますので……』と少年兵と一緒に頭を下げた。さてはこの班長、苦労してるなと思った。

 派手に立ち回るスキアファールに敵が集まってくる。
 影人間らしくない動きだが、今はもう見た目が派手なので諦めた。いつもはがっつりと消す存在感も、今回ばかりはあえてがっつりと出していく。
 そうして敵を引き付けて、引き付けて、集めてしまえば。その分レジスタンスたちは行動しやすくなるだろう。これもまた協力の形のひとつだ。
 敵味方お構いなしに、巻き込める最大限を巻き込もうと雨霰と降る焼夷弾の隙間を縫うように飛び、急上昇して擦れ違いざまに爪で切り裂く。
 ある程度敵が集まったと思ったところで、スキアファールは呪瘡包帯を飛ばした。念じたままに巻きつく黒い包帯は、周囲の蝙蝠兵を纏めて捕縛しきつく締め上げる。
「いくら戦闘機と同じ飛行性能を持ってたって……!」
 黒包帯へと最大限の雷撃を放ったスキアファールは、麻痺した蝙蝠兵たちを纏めて海へと投げ飛ばした。海へと沈む蝙蝠兵を一瞥し、包帯を回収して一息ついた……その直後。
 背後から突如機銃の掃射音がした。咄嗟に顔をあげれば、スキアファールの死角で焼夷弾を投擲しようとした蝙蝠兵が落ちていく。そのすぐ後に、あの少年兵の戦闘機が後ろからスキアファールを追い抜いていった。
 一瞬見えたコックピットから、親指を立てたハンドサインが見える。

 嗚呼。いくら向いてないと思ったって、協力の仕方は色々あるんだと。
 彼にそう言われたみたいで、スキアファールは思わず微かに頬を緩めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
アドリブ歓迎


美しい海ね…取り戻したいと願う気持ちもわかるやも
茜の空に美しい海が、真紅に染まるのは避けたいわ
世に注ぐ厄を祓う──それが私の償いになるのならば

枝垂れ桜の翼では、風を上手く掴めず飛ぶのはあまり得意では無いけれど──龍の姿なら、別

龍華
桜花纏う龍の姿となって空を駆ける

おいたをする悪い子にはお仕置をしなきゃね!
レジスタンス達とも協力して、時に桜花のオーラで庇い守り
時に共に戦うの
彼らの力もなくてはならないものと示しましょう

生命喰らう神罰宿した衝撃波を放ちなぎ払い、長い尾や爪で叩き落とす
飛んできた攻撃は撃ち落としたり見切ったりして防いでいくわ!
思いっきり蹂躙してやるわ

戦場に桜花を咲かせましょう




 航空レジスタンスたちの前線基地。その滑走路から見えるアドリア海は美しかった。
 薄暮に染まる海はどこまでも青く、深い紺碧を宿している。穢れなど一切ないような、どこまでも澄んだ青は水平線で空と交じり合い、その境界を曖昧にさせる。静かに寄せる波音は、まるで戦争など何処にも起こっていないような。そんな日常の音を繰り返していた。
「美しい海ね……取り戻したいと願う気持ちもわかるやも」
 潮風に靡く桜鼠の髪をそっと抑え、誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)はほうと息を吐いた。
 どの世界でも海は変わらず美しい。けれども今、この海と空は戦火に晒されている。――否。ずっとずっと、この世界は終わらぬ戦の只中にいる。
 眩い茜の向こうには、この景色に相応しくない暗雲が垂れ込めたままだった。今こそそれを振り払い、空と海を取り戻そうとレジスタンスたちは立ち上がった。そしてようやく今という好機を得て、彼らは勇気を奮い立たせて空へと飛び立っている。
「世に注ぐ厄を祓う――それが私の償いになるのならば」
 茜の空に美しい海が、真紅に染まるのを避ける為。
 祓ってみせましょう。咲いて魅せましょう。
 幾度だって、桜が巡り咲くように。

 櫻宵の背には枝垂れ桜の翼が咲いている。この翼では風を上手く掴めないから、飛ぶのはあまり得意ではない。けれど――龍の姿なら、別。
「咲いて咲かせて魅せましょう」
 ひらり。はらり。櫻宵の掌から溢れた薄紅の花弁は風に乗り、櫻宵を包んで流れていく。花弁が晴れた時、そこには流麗な春暁の桜龍が優雅に佇んでいた。
 桜龍はゆるりと首をもたげると、空へと駆け上がった。
 
 舞い上がった空に爆発音とエンジン音が絶え間なく響く。
 暗雲と見紛えた蝙蝠兵たちの大群は、猟兵とレジスタンスたちの活躍によって徐々に、けれど明らかに数を減らしていた。けれどまだ、安堵するには早い。空を覆う程ではなくなっても、未だレジスタンスたちの戦闘機の数よりも余程多いのだ。
 敵味方の区別なく、より被害と巻き込む者が多い場所へと爆弾を投下する蝙蝠兵の戦闘スタイルも油断ならない。なればこそ一切の油断なく、慢心なく。全力で護り、薙ぎ払うのみ――!
 
 レジスタンスを鼓舞するように、櫻宵は一声啼いた。
 龍の咆哮は味方の心を支え、蝙蝠であるが故に耳に頼った蝙蝠兵たちの動きを一瞬止めるに足る。
 その隙に、桜龍はレジスタンスたちの戦闘機と共に一気に攻勢に出た。対処が遅れた蝙蝠兵たちを戦闘機が機銃の掃射で掃討し、その奥にいた別の一団目掛けて櫻宵が生命を喰らう神罰を宿した衝撃波を放って薙ぎ払う。動きを止めた蝙蝠兵を長い尾や爪で叩き落とせば、あっという間に蝙蝠兵たちは海に沈んでいった。
 だが間を置かず、頭上に差す影に振り仰げば、別の蝙蝠兵の一団が櫻宵の傍にいた戦闘機めがけていくつもの爆弾を投下している。
「やらせるもんですか……!」
 無慈悲な炎の雨がレジスタンスたちを飲み込むよりも早く、櫻宵は桜花の護りを重ねて彼らを庇い護る。

 ――世に注ぐ厄を祓う。彼らの命を守る。それが、償いになるのなら。
 
『ありがとう!!』
 護られたレジスタンスが、コクピットから何度も櫻宵にハンドサインを送る。きっとヘルメットの中では大きな声で叫んでくれているんだろう。嗚呼、聞こえなくたってちゃんと聴こえている。
 その隣で、同じ編隊の仲間が急上昇して蝙蝠兵の後ろを取ると機銃で撃ち落とす。
 連携には慣れているのだろう。レジスタンスたちは櫻宵の動きを邪魔せず、補いながら卓越した操縦技術で飛ぶ。助力するこの神秘的な龍を。共に戦う仲間をもう誰一人失わせやしないと、彼らには気概が溢れていた。
 守り、守られて、目指す未来を共に勝ち取る為。その為には猟兵ばかりの力ではなく、レジスタンスの力もなくてはならないのだと。自らも戦って勝利を勝ち取ったのだという事実は、きっとレジスタンスたち心をこれからも強く支えてくれるだろう。
 それを示したかった櫻宵は、彼らに想いが通じたことに櫻色の瞳を柔く細めた。

 ならば後はもう、思いっきり蹂躙してやるだけ。
 
 戦場に桜花を咲かせましょう。
 咲いて咲いて、無粋な暗雲など打ち払い。この美しき海に薄紅を降らせるの。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルキヴァ・レイヴンビーク
百年前のUDCアースを思い起こす世界デスね
あの頃のアドリア海を駆けた飛行機乗りも実に勇猛デシタ

レジスタンスの複葉機の上に仁王立ちして空へ
蝙蝠も鴉も悪役動物定番デスが
彼等は間違い無きEVILな様で?
OK、気に入らないしKILL致しマショウ

両腕振るい闇鴉の羽根放ち
攻撃を感知された所で気にしマセン
影縫いや暗闇も空舞う蝙蝠に利かぬ事は承知
これは次の攻撃への布石に過ぎマセン

同時使用は真王の鋼翼
複葉機の上より飛び降りて
羽ばたき巨大な鋼の鴉へ変じて蝙蝠達に向かい突撃
さぁ、ワタシの威容に慄きナサイ
空中での蹂躙と行きマショウ
小回り効こうと翼で叩き落とせばALL一緒デスよ
ワタシ自身が受けるダメージは…ご褒美デス★




 水平線に沈みゆく夕陽が、アドリア海の紺碧の海を茜色に染めていく。
 どこまでも澄んだ美しい海を染めるのが、それだけならよかった。
 この地は今、――否、ずっと前から戦地だった。
 異世界から現れたオブリビオンの超大国を相手に、獣人戦線という世界は百年以上の戦争を強いられてきた。けれども強大な力を持つオブリビオン相手に、いつだって嘆きに沈んできたのは獣人ばかり。それはここ、イタリア半島を抱くアドリア海だって同じだ。
「百年前のUDCアースを思い起こす世界デスね。あの頃のアドリア海を駆けた飛行機乗りも実に勇敢デシタ」
 レジスタンスの複葉機の上に仁王立ちした、細身の青年が過去を思い起こしてはうんうんと頷いた。
 百年前。UDCアースでは第二次世界大戦が行われていた頃だ。今となっては遠い昔のことをまるでついこの間のことのように語りながら、青年――ルキヴァ・レイヴンビーク(宵鳴の瑪瑙・f29939)はついと視線を投げる。
 彼の視線の先では、美しきアドリア海の空を舞台に熾烈な戦いが繰り広げられている。相手は超大国の一つ、ゾルダートグラートが要するイタリア空軍所属の蝙蝠獣人兵による大爆撃部隊。獣人兵ではあってもそのすべてがオブリビオンであり、戦闘兵へと改造された悲しき獣人でもある。
 彼らに元の意思などない。あるのはただ、襲い来るものを敵味方の区別なく、躊躇もなく爆破するというただ一つの命令のような意思だけ。
「蝙蝠も鴉も悪役動物定番デスが、彼らは間違い無きEVILな様で?」
 魔を感じさせる容姿、超音波による索敵能力の高さ、そして闇夜も難なく飛行し爆弾の雨を降らせる様子から、レジスタンスによって付けられた通称だという。なるほど、蝙蝠であれば納得だ。
 あれらはこの世界にとって完全に悪であり、悲劇と嘆きを生み続けるものだ。なら、何も躊躇などいらない。
「OK、気に入らないしKILL致しマショウ」
 ルキヴァはまるで散歩にでも行くかのような気軽さで、それは愉しそうに笑ってみせた。
 
 敵までの距離を目算する。この速度で行くならば、あと30秒もせずに真正面からぶつかるだろう。それだけあれば十分だ。
 徒手空拳の両腕を無造作に振った。腕の軌跡に生まれるのは大鴉の闇羽根だ。特に狙いもつけずに放った無数の羽根は矢となり風を切って飛ぶ。その行動を攻撃と感知した蝙蝠獣人たちが一斉に散開した。――構わない。
 羽根に付与された影縫いが暗闇が、空を舞う蝙蝠に効かぬことも百も承知。……嗚呼、なんだか今日はやけに『百』に縁があるような。
 ともかくただ、戦意を奪うその力だけ。それさえ効くならば、次への布石は充分だ。
 
「我が翼、鋼鉄の砦となりマショウ!」

 陽気に複葉機の翼を蹴って、ルキヴァは気軽に空へと飛び込んだ。その爪先から解けた羽根がルキヴァの身体を変えていく。
 其は鴉。翼を広げた姿はまるで魔王とでも呼べるかのような巨大な大鴉だ。羽搏きひとつで風を生み、凶悪な蹴爪はひとたび振るわれたなら兵器など紙のように容易く切り裂いてしまえる。
「さぁ、ワタシの偉容に慄きナサイ」
 鋼の大鴉の威圧感に、鋼鉄の鴉羽根から放たれる抵抗意思を奪う力。嗚呼、仕込みは上等。やはり妖怪は恐れられてこそ――!!
 
 レジスタンスたちを巻き込まぬよう位置を図り続けながら、ルキヴァは突如として現れた大鴉に動揺した蝙蝠達に向かい突撃する。
 四方八方から投げつけられる焼夷弾を羽搏き一つで叩き返し、一気に距離を詰めては蹴爪で引き裂く。得意の小回りを利かせて運良く爪の一撃を逃れたとしても、そこで安心するのは油断というものだ。
 逃れたと思った先に現れた力強い翼で叩き落とされて、骨を砕かれた蝙蝠獣人が海へと落ちていく。
 戦闘機よりも尚大きい大鴉は相応に翼も大きい。小回りを利かせた程度では、翼のかいなから逃れることは出来ないのだと。戦闘機以上に大きく、自由に動くものと殆ど戦ったことがない蝙蝠兵たちは知りはしないのだ。

 数の優位によって防ぎきれなかった焼夷弾に焼かれようが、鋼翼はすぐに再生して大きなダメージをルキヴァに与えるには至らない。猛禽であるが故に正面に集中する視界を補うように、レジスタンスの複葉機が死角を埋める。
 むしろ多少の痛みはご褒美とばかりに内心恍惚を深め、ルキヴァとレジスタンスたちは暗雲を次々と払い、叩き落としていく。
 
 そうして、太陽が水平線に沈みゆく頃。
 アドリア海の空は雲一つなく晴れ渡っていた。長くアドリア海の空を覆っていた暗雲はもう何処にもない。超大国に支配され、百年以上戦火に晒され続けたこの海にようやく平和が訪れたのだ。
 百年変わらなかったものが、変わろうとしている。
 美しき空と海に、航空レジスタンスたちの涙混じりの勝利の咆哮が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月06日


挿絵イラスト