●注意
当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
公式サイト:(https://koinegau.net/)
公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)
また、当依頼は『コイネガウ』の旅団シナリオです。
旅団「染物屋:紬姫」の団員と友好だけが採用される全1章「日常」の構成です。
『第六猟兵』の旅団シナリオとは違いEXPとWPが貰えます。
旅団シナリオのハウスルール解説:(https://tw6.jp/club/thread?thread_id=117680&mode=last50)
●
天変地異の災害も終わり|希《こいねがい》|島《じま》も本来の常夏の気候へと戻っていく。学園地区では入学式も行われ、こういった一年の始まりを告げる行事はこの島に日常が戻ったことを、人々に感じさせていた。
しかしこの島には不思議な非日常がまだ眠っている……そんな不思議な出来事のひとつとして、最近は幽霊の噂がトレンドだった。
さて、ここは『染物屋:紬姫』の希島商業区支店。ここでたまにアルバイトでお手伝いをしているソフィア・アマティスタ(ポンコツな私立探偵・f41389)は最近仕入れた噂話を語っていた。
「その幽霊さんは、人によってモヤだったり女の人の姿をしていたりするそうです。目撃される場所は商業地区で、深夜近くになると自然地区の方向から現れて、レストラン街をウロウロするのだそうで――」
出現時間が時間だけに目的情報は閉店後の作業で遅くなった店員や警備員のものが中心だ。だが最近は噂が噂を呼んで学生が肝試しをしにウロウロしている事が増えている。このまま放っておくのは流石に、学生の安全や治安にそのほか事故の防止などのためにもよろしくない。
「――姿を見た方によると、その幽霊さんは綺麗な髪飾りをしていたそうでそれは赤いアネモネの花と白いカスミソウの花、そして青い蝶の髪飾り……」
「その髪飾りの幽霊さん、知ってるの……!!」
この時、この染物屋を訪れていた銀龍・綾音(地球人のモノノケのご主人さま・f41081)がとてとてと走り寄って来た。ぼんやりして大人しい彼女にしては珍しく、やや興奮している様子がある。
そんな綾音の言葉を聞いて、染物屋のオーナーの斑染近・紬姫(女帝の分身・f29077)に直感が走る――それは、話題の幽霊に便乗したデザインの服を作って一時代を作れるかもしれないという直感だ。
「あの幽霊の事を知っているのね? その話、あーしにも詳しく聞かせてもらえるかしら。是非とも会ってみたいわ!」
こうして『染物屋:紬姫』による幽霊探しが始まるのだった。
今回の幽霊も、前回の|南瓜祭《ハロウィン》の幽霊騒ぎと同様に彷徨っているのみで目撃者に害は与えない様だ。そしてまだ存在が不安定なのか姿が見えるかどうかは相性によるらしい。
なお、この幽霊は遅い時間のレストラン街のあちこちの店の前に現れては立ち尽くし、店が閉まっているのを確認するとしょんぼりして居なくなるそうな……。その姿を目撃した人によるとお腹が空いている様に見えたらしい。
幽霊さんに食事をご馳走したならば、きっと満足してレストラン街を彷徨う事も無くなるだろう。
ウノ アキラ
注:このシナリオは、コイネガウ暦20X4年5月前半における希島での物語です。
今回の旅団シナリオをクリアすると新種族「新世代ゴースト」の報酬が出ます。
●依頼について
旅団シナリオです。ご指名とリクエストありがとうございます。
新種族の報酬を付与すると知らされて、びっくりしてます。
ハロウィンのラストの時から引き続き、幽霊さんは自分が死んだことに気付いてなくて時間や年月のズレにも気づけません。そのため深夜ですがお昼だと思っていてご飯を食べたくて彷徨っています。
なのでそのまま交流しつつご飯を食べると最終的に満足してこの場を離れていきます。
なお、幽霊側はまだ現実を受け入れる心の準備が足りないので今回は矛盾を突きつけず幽霊側に合わせて頂けると助かります。
幽霊さんの姿は、見えても輪郭がぼんやりした感じの状態です。
モヤかそうでないかはお任せします。指定が無ければみんな姿が見える状態で書こうと思います。
以上となります。
よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
イラスト:YoNa
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒雪騎・実夢
【銀夢】
西行寺と連携します。
実夢が主役で西行寺が脇役です。
実夢のおまかせプレです。
日常向け。
【日常系】
「種族」か「ジョブ」を活かした行動描写をお願いします。
フラスコチャイルド(種族)が活きる場面は、実験ネタで対応です。
ジョブは、武装警官と探偵騎士です。
ジョブが活きる場面は、警官ネタや探偵ネタで対応です。
推理系キャラの為、ミステリやホラーなシナリオは特に参加歓迎です。
UCお任せ。
アドリブ・連携歓迎。(西行寺以外との連携も歓迎)
NG無し。
西行寺・銀治郎
【銀夢】
実夢と連携します。
西行寺は実夢のアシスト役です。
西行寺のおまかせプレです。
日常向け。
【日常系】
「種族」か「ジョブ」を活かした行動描写をお願いします。
サイボーグ(種族)が活きる場面は、改造人間ネタで対応です。
ジョブは、バトルゲーマーとフリッカージョーカーです。
ジョブが活きる場面は、ゲームネタや大道芸ネタで対応です。
学園生の為、学園系シナリオは特に参加歓迎です。
UCお任せ。
アドリブ・連携歓迎。(実夢以外との連携も歓迎)
NG無し。
●
話題の幽霊が現れるのは夜の遅い時間だ。
つまりどのレストランも営業は終了しているため、いつもならば彷徨う幽霊は"Close"の文字に残念そうに帰っていく。
けれど今夜の商業区はいつもと違う。なんと"Open"の店があるのだ。
日が沈み、深夜営業をしない店が閉まり始める頃。その時間帯の商業区は人がまばらになっていた。
人々は仕事を終えて帰り始め、遊ぶ者は商業区内の歓楽街におもむいてカラオケや飲み屋へと向かっていく。人で溢れる商店街といえど、歓楽街を除けば夜には商業活動を停止して、昼の賑やかさが嘘のように静まり返るのだ。
そして、そこには人工的でいながら人の気配が希薄な静寂の夜が訪れる。だからこそ不安定な存在が彷徨いやすいのだろう。
そのレストランには『貸し切り中』の看板が掛かっていた。
いつもであれば20時には閉店する店なのだが、貸し切られたその店は未だに"Open"の札がかかっている。この貸し切りの看板は噂の幽霊が現れる頃になったら片付ける手筈だ。
そして噂の幽霊が現れるのはもっと遅い時間となる。
この店内ではソフィア・アマティスタと、黒雪騎・|実夢《みゆ》(希島国警察所属のクーデレ私立探偵・f38169)と西行寺・銀治郎(国立希島学園の一般的な残念男子学生・f38167)の三人が準備を進めていた。噂の幽霊が現れる時間まではまだ余裕があるので、それまでに事前の準備や段取りの確認をしておこうというわけだ。
ちなみに料理人や店のオーナーへの事情の説明は終えているので、そのあたりの心配は問題ない。
「パーティみたいに騒いでも、びっくりして逃げちゃうかもしれないから、ね?」
そうみゆは提案する。
「それに、あたしたちは、まだ、彼女がどんな人か……知らないから、ね。派手な歓迎は……控えたい、かも」
知るのは次の機会でも良い。そう考えてみゆは今回は人となりを観察するくらいにしておくようだ。
まさか食事をしたらしい成仏する訳でもないだろうし、今のところは特に騒がず、一般客を装って座っておこうかという流れになっている。
あとは別行動になっている他のメンバーが積極的に交流してくれるだろう。
「ところで、その幽霊は食事はとれるのかな?」
銀治郎はふと疑問を投げかけた。
その疑問にみゆやソフィアはそういえば! と固まるが、もっともな疑問である。するとソフィアはぽんと手を叩き、「あ、でしたら!」と案を出す。
「|仏飯《ぶっぱん》を参考にしてみるとか……!」
そう言ってスマートフォンで検索した仏飯器に盛られたごはんの画像を見せてきた。
「いくらなんでもそれは色々とあからさまな気が……。どれどれ……」
銀治郎もソフィアの検索画面を覗き込んで「ちょっと触るぜ」と操作をすると他の検索結果も確認していった。
「とりあえず仏壇がある場合は肉と魚は避けた方がいいみたいだ。でもここには仏壇はないし、そういうお供えじゃないよな。だから、普通でいいんじゃないか?」
「最低でも……水があればいい、かな?」
と、みゆも話に参加する。彼女は事件の捜査に関わる過程で見聞きした幽霊出現のパターンを思い返していた。
「食べ物よりも……水を欲しがることが多い、わ。幽霊が食べ物を出してきた場合は、食べちゃダメって聞くけれど……今回は逆だし、ね」
「ヨモツ何とかってやつですね! 聞いたことがありますー」
「じゃあ今回はどういう形が良いんだろうな……」
三人でうーんと考えた結果……。
「まあ、普通に食事を提供してから様子を見てみるか……」
一周まわって『特別な事はしない』という結論になるのだった。
その時、くぅぅ……とソフィアのお腹が鳴った。
「ああっ、そのぅすみません……まだ夜ご飯を食べてなくって……」
日々様々なアルバイトをしているソフィアにとっては、この時間がちょうどシフト上がりなのだ。いつもなら帰りがけに駅前の歓楽街で食事をしているか、コンビニで弁当を買っている頃である。
「そうだな、このまま黙って待ってても仕方ないし何か食べよう。店が開いてるのに料理の匂いが全くしないのも不気味だからな」
「ん、まぁ……そう、ね。軽く何か食べましょうか」
「せっかくだし、実夢さんからも話が聞きたいな。前の南瓜祭で自然区で会ってるんだよな? どんな感じだったんだ?」
「事件のキッカケは。たぶん……ソフィアさんの方が詳しい、かな。でも、現場にいたの……は、あたし。だから、そこで見た範囲なら……話せる、わ」
貸切ったレストランで静かに夜は更けていく。
待ち人を待ちながら、待ち人を語る。今に繋がる出会いと過去を、今に至る彼女の話を。
●
「たぶん、この事故で転落した被害者なんですよねぇ」
そう言って、ソフィアは古い新聞の記事のコピーを取り出した。
それは去年の南瓜祭でポケットから取り出したものだ。
「図書館の古新聞のコピーです。商店街に幽霊を何とかしてほしいって頼まれて、調査していく中で見つけたんですよね。えーと……何時のものでしたっけ……」
「約6年前、ね」
ソフィアが持っていたコピーは、古新聞の記事の一部だが年代までは解らない。それをみゆが補足した。みゆも南瓜祭のときに事故の記録を追っていたため事故については詳しいのだ。
「そんなに前なのか。ん? すると、自然区の幽霊はずっと目撃されてたってことなのか?」
「いえー、目撃自体はここ二年ほどでって感じでしょうかー。南瓜祭の時だけだったんですよねぇ。だから、今こうして商業区に移動してきたのは不思議ではあるのですが……。彷徨う魂が可視化してしまうような何かが、最近の|希《こいねがい》|島《じま》にあったりするのでしょうかね?」
確かに最近の|希《こいねがい》|島《じま》は災害や危機が起きやすい気はする。そういった近年の変化がこの幽霊騒ぎを起こしたのかもしれない……。
けれどそれも悪い事ばかりではない。
「でもその何かのお陰で、失くした髪飾りを取り戻せたってわけだ。6年も経ってだいぶボロボロになってたんだよな? 下手すると永遠に森を彷徨い続けてたかもしれないんだし、心残りが無くなったのは良い事じゃないか」
「そう、ね。そのあとは成仏せず、移動してしまったけど……たぶん、悪い事じゃない、わ。髪飾りを取り戻した瞬間は、あたしも実際に見た、し。少なくとも、あの時の変化は……成仏できない感じじゃない、かな」
こうして整理していくと、この噂の幽霊さんはイレギュラーな状態になっていそうだ。
「いずれ、解決はしたいけど……今は、解らない事も多い、し。まずは、この辺りが肝試しスポットになるのは……防がなきゃ、ね」
「そうだな。それにお腹が空いたままってのはツラいだろう。食事をして満足してくれたら良いな」
「そうですね! お腹が空いてるとパワーが足りなくなってきますからね!」
こんな会話をしていると、いつの間にかその時間が近づいていた。貸し切りの看板を外して待っているとカラン、カラン、と入り口の鐘が鳴る。
すると、モヤのような人影がスゥと店内に入って来た……。早速、ウェイトレスの恰好のソフィアが接客の対応をすすめていく。
「いらっしゃいませー。おひとりさまですか?」
「はい……」
「では、こちらの席へどうぞー♪」
絞り出すような微かな声が聞こえた。それは、意識しないと聞き逃してしまいそうなほどに弱々しい。
その様子を銀治郎とみゆはちらりと確認する。
「あれが噂の幽霊さんか」
「ん、例の髪飾りをしているから、間違いない、わ」
「そうなのか? 俺には全部モヤに見えるが……」
この見え方には個人差がある様だ。もしかすると過去に会ったなどの縁があると見えやすいのかもしれない。
出された水がひとりでに減り、やがてカレーライスが運ばれてきた。そのカレーも水と同様にひとくち分ずつ減っていく……。どうやら食べてもらえているようだ。
その時、銀治郎は目を凝らして幽霊さんを二度見した。
「ん?」
「じろじろ見るのは、失礼、よ」
「ああすまん。いやでも、すこし姿がはっきりしてきた様な気がするぞ……」
見るとカレーがひとくち減る度にモヤがほんのり輝いて、ちょっとずつだけれど人の輪郭を取り戻し始めていた。今の姿は、スプーンを持って食事をする女性に見えなくもない。
生きるためのエネルギーを補給している……そんな状態である様に感じられる。
「やっぱり、ただの幽霊ではなくなってる、ね。このままエネルギーを補充していくと……もっとはっきりした姿になる、かな?」
その推測が正しければ、一回食べただけではまだ足りないだろう。そしてもしも、このまま力を得て実体化していくのだとしたら……。
(6年、ね)
みゆはその年月を思う。それはこの幽霊さんが将来直面する年月だ。環境も、人間関係も、様々なものが変わっていることだろう。
その時、この幽霊さんは今を前向きに受け入れられるのだろうか?
……おそらくそのためには、たくさんの楽しい思い出と友達が必要になるはずだ。
商業区では殆どの店が営業を終えて、静まり返っている……今日はそこにカレーライスの香りがふわりと広がっていた。
シャッターや真っ暗なガラス扉が並ぶ夜の道。白い街灯があるから明るさはあるけれど、いつもはどこか寒々として寂しい雰囲気の夜道になる。
けれど、この日はぽつりと店の明かりが灯って食べ物の香りがしている。そこには人の気配があり、温かい雰囲気がちょっとだけ漂っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
有山・優音
アドリブ連携歓迎!
(次の日の夜、場所は同じ貸切状態で事前に看板を外しておいたレストランの前にて)
あっ、何か人型のモヤが見える……あの人やね!おーい!(手ふりふり)
もし良かったらやけど、あたしと一緒にご飯食べへん?
(軽く歓談しながら一緒にメニューから美味しそうなものを選ぶ)
あたし辛味と苦味は食べられへんのよ~、洋食もあるしカルボナーラにしようかな。お姉さんはどないするん?同じにする?
あたしね、この島の外から留学してきたんよ!この島の自然も素敵やね~。
とかとか、会話しながらお姉さんが見えるようになってきた所で……。
「せっかく会えたんやし、あたしはお姉さんの事忘れへんよ」
と友達宣言や!ね、お姉さん!
●
翌日の夜の同じ場所。
先日様子を見た感じでは今日も現れるだろうと有山・優音(あまはん・f39297)は同じ店を貸し切って幽霊を待ち構えていた。
(あたしも仲良うしたいし、それに、ご飯食べるなら一人より二人や!)
そうしていると、やがて薄暗い道の向こうから何かがゆっくりこちらへ近づいてくるのが見えてくる。それはぼんやりしたモヤの様に見えた。
(あっ、何か人型のモヤが見える……あの人やね!)
「おーい!」
優音はそのモヤへと駆け寄って、明るく純朴な笑顔で話しかけていった。
「こんにちはぁ。もし良かったらやけど、あたしと一緒にご飯食べへん? 友達が急用で来られへんくなってな、一人もちょっと寂しいしどないしよかって思うてたら、お姉さんがちょうど来よって。あとあたしね、島の外から留学してきたんよ。だからこの島の話も色々聞かせてもらいたいな~って……」
優音は心細さを見せるように相手に話しかけていった。もちろん嘘は言っていない。優音は島の外からの留学生で、島の話をしたいはそのとおりなのだ。それにいろんな話をしながらの、女子会のような楽しい食事ももちろんしたい。
この言葉に、モヤのほうは驚いたように暫し動きを止めていた。けれど、少しの間をおいて頭が頷くように揺れる。
「はい……私で良ければ」
弱々しい、微かな声が聞こえた。その返答に優音の顔はパっと明るくなる。
「ええの? おおきに!」
この時間帯、営業しているのは貸切った店しかない。なので二人は必然的にその店に入る事になる。
店に入ると、中にはスピーカーと簡易的なステージが設置されていた。
「今日はライブステージがある日みたいや。ラッキーやね!」
そう言って、優音は幽霊さんと近くのテーブルに座るとメニューを手に取った。
優音は向かいに座る幽霊さんにも見える様にメニューを広げると、ゆっくりとめくっていく。そしてメニューを見ながら食べものの話を広げていった。
「ほうほう、いろんなもんがあるんやね~。あたし辛味と苦味は食べられへんのよ~。お姉さんはどうなん?」
「苦いのは……私も苦手ですね……」
「ピーマンやほうれん草とかどうなん?」
「メインで使われてると、ちょっと……」
「塩コショウだけの味付けやと苦みが出よるよな! あとはサラダ。そして青汁も!」
「苦手ですね……」
「コーヒーも砂糖とミルクたっぷり!」
「ふふ、そうですね……」
こうして会話をしながらメニューを見ていって、一通り見終えたところで何を注文するかを決めた。
「洋食もあるしカルボナーラにしようかな。お姉さんはどないするん? 同じにする?」
「私は、カレーライスにします」
そう答える彼女の表情はまだ見えないけれど、受け答えを聞く限りはリラックスしている様であった。
●
「あたしね、この島の外から留学してきたんよ! この島の自然も素敵やね~」
「自然区の遊歩道、素敵ですよね……」
料理を待つ間も会話が進んでいく。内容はやっぱりこの島のことだ。自然区の遊歩道の先にある海の展望所の夕日が綺麗だという話とか、学園地区の七不思議の話とか、工業地区や商業地区の都市伝説の話とか。
けれど幽霊さんの方は返答をする時を除くと、心ここにあらずという雰囲気がある。この会話も優音が質問で返したことで引き出したもので、向こうから話しを広げた内容は殆ど無い。
これは恐らく、彼女が元は儚い想いの残滓だったことが関係しているのだろう。
元は|南瓜祭《ハロウィン》の日にしか現れず、失くしものを見つけた時点で霧散していたはずの存在だったのだ。それがたまたま力を得て、消える機会を失って彷徨っているのが今であ。だから意識や自我がまだはっきりと形作られていないのかもしれない。
「お姉さんの学生の頃もその七不思議あったんやねぇ」
優音が相槌をうったところでちょうど料理が運ばれてきた。優音は幽霊さんが前日もカレーを頼んでいたことを知っていたため、なんとなく聞いてみる。
「カレー好きなん?」
すると、こういう返事が返って来た。
「好き……というより、懐かしいんです……。彼が、カレーが好きだったので、夏は海の家でカレーを食べて、南瓜祭ではカボチャのカレーを食べて、冬と春もイベントの度に一回は食べるんですよ」
そう言って彼女はふふっと笑った。何時の間にか顔が少し見えるくらいに形がはっきりしてきている。
「……この懐かしさが、私に元気をくれる気がするんです。どうしてかは分らないけれど……。今はなんだか無性に昔を振り返りたくなっていて。……美味しいなぁ」
その表情は、寂しいような、嬉しいような……思いが混ざった微笑みを浮かべていた。
このまま霊体にエネルギーが溜まって存在がはっきりしてきたら、意識もハッキリして状況を自覚する日が来るのだろう。彼女の元の居場所は既に形を変えてしまっているかもしれない。
でも彼女の未来に悲しみが待っていたとしても……それはきっと友達と一緒なら乗り越えられると優音は考える。だから。
「せっかく会えたんやし、あたしはお姉さんの事忘れへんよ。友達宣言や!」
優音ははじめから彼女と友達になると決めていた。そのために、今夜は食事に誘ったのだから。
(悲しいことや辛いこと、もちろん嬉しい事も分け合えればきっと大丈夫や! ね、お姉さん!)
けれどその日が来るのはまだまたずっと先の筈。だから今は、安らかで楽しい時間を一緒に過ごそう。
大成功
🔵🔵🔵
銀龍・綾音
&&&
探索
ウノMS様に、おまかせします。
あの時の幽霊のお姉さん。今は幽霊だと自覚に気付かせないほうが良いって言ってた。
でも会っておきたい。レストラン綾音突撃します!
朝露はお留守番。代わりにソフィアさんを連れていきます。重大任務を授けます。わたし、きっと、やらかします。(避けられない確信)
仙は、ポケットに入れておけば、連れていけるかな?
一人だと心細いし、人の多いところは嫌。貸し切りにしたレストランなら、混雑はない。行ける!
お姉さんも、一人?わたしは、え~と、何だっけ?その、、、、、だいじょうぶ、だから。ちゃんと、だいじょうぶだよ。
にゃ~ですわ~(何かが起こりそうな夜なのですわ~)
なんでここに?レストランだから朝露入ってきちゃダメ!
の~じゃ~(ご主人!急に動き回るのは、やめるのじゃ~。朝露は余がなんとかするのじゃ、その前にご主人落ち着いてくれろなのじゃ~)
にゃー(なんか捕まったら怒られそうなのですわ。逃げるのが良策なのですわ!)
ソフィアよ綾音をなんとかするのじゃ(あやかし通信で携帯にメール)
相沢・友子
&&&
#探索
ウノ アキラMS様に、おまかせするよ。
幽霊さんにとってはようやくありつけた、食事会、私もできる限りのことをするよ。
出会いも、縁も、すべてが彼女の歩みに成るなら。
私にも、やれることは有るはずだよ。
未来の有る幽霊さんに私友子が、してあげられること。
歌にパフォーマンスに特別な夜を盛り上げるよ。
歌はドレス姿の歌姫感を出して。心を込めて歌います。
寝ず見(照明操作担当の子)照明まぶしい
水使いの異能を使った、硝子の寝ず見(見える状態の子)の水輪くぐりとかやってみたり。水の操作は正確で自信あり。
今は力を付けないと、
宴は、始まったばっかり。夜は長いよ。
ソフィアさんの協力求む。
斑染近・紬姫
&&&
#探索
ウノ アキラMS様に、おまかせするわ.
霊的な繊維束で編んだ衣なら、着れるんじゃない?
HCで事前に仕立てておいた分、いくらでも取り出せるわ。
各種用意してるわよ。細かなサイズ調整は、色とりどりの紐やリボンですれば、いけるでしょ?
何となく見える人もいるみたいだし。
髪飾りに合う服を揃えて、お色直し?して行きましょいうか。
(6年前から変わらない服装で現れて、知り合いに出くわしたら、懐かしさよりも悲しいものが溢れかねないわ。)
服は、そのまま持っていって良いわよ。この近辺の宣伝にも成るし。デザインとか雰囲気でうちの店だって分かるでしょ。
・ソフィアさん、同行求む。
●
レストランに入店した幽霊さんはゆっくり食事をとっていた。
そのお皿が空になると、タイミングを見計らっていたようにレストラン内のライブステージの明かりがぱっと点灯する。今日は先日とは違いスピーカーと簡易的なステージが設置されていたのだ。
このステージに上がるのは相沢・友子(水使いの淡水人魚・f27454)。彼女は綺麗なドレスを纏ってステージにあがると、ステージの裏方をしていた友子の守護近衛隊(|HC《ホープコード》で呼び出したもの)の『寝ず見』に「寝ず見照明まぶしい」文句をつけてこほんと仕切り直す。
「心を込めて歌うよ」
そう一言だけ宣言すると、友子は喉を震わせた。店内に歌が広がっていく……それは神秘の歌い手の歌声だった。美しく豊かな声色が店内を包み、安らかな時間を生み出していく。
店内の観客たちのために友子は歌う。特に、今夜ここに来た幽霊さんを思って声を奏でて歌った。
(幽霊さんにとってはようやくありつけた、食事会、私もできる限りのことをするよ。出会いも、縁も、すべてが彼女の歩みに成るなら。私にも、やれることは有るはずだよ)
想いがこもるものには何かしらの力が宿るもの。それは友子の歌も例外ではなく、食事を終えた幽霊さんも歌に聞き入っていた。
前回は食事を終えたらどこかへ帰ってしまっていたのが(本人は支払う意思があるが幽霊という自覚がないため、消えてしまう幻のお金を出してしまう)、今回はそのままテーブルに残って歌を聞いている。これは会話をするチャンスだろう。
ここで動いたのが、斑染近・紬姫(女帝の分身・f29077)だった。
「あの歌姫の服、あーしの店のものなのよ」
紬姫はトンボのような羽でスイっと幽霊さんに近づいた。小さなフェアリーはそのまま幽霊さんの周りをぐるりと飛んで「昨日はぱっと見ただけだったけど、サイズは大丈夫そうね」と頷くと、モデルの勧誘を開始した。
「ねえあなた、あーしの仕立てた服のモデルになってくれないかしら? きっと似合うと思うのよ」
そこには商機を掴めと不敵に微笑む染物屋のオーナーの顔があった。
●
ここまでの食事ややりとりで幽霊さんは少しずつ姿を取り戻してきている。
まだ姿は薄いが顔や髪型もわかる状態だ。幽霊さんの容姿は、髪は背中にかかるくらいのロングヘアであるようだ。その長い髪の一部は、前髪のサイドを残したハーフアップでまとめていてその後頭部の結わえたところに髪飾りを刺している。そんな彼女の容姿を確認すると、紬姫はHCの『フェアリーランド』を発動させて小さな壷から服を取り出した。
「まずはこれを着てみて頂戴。着替えはこの壷が自由に出入りできるからこの中で出来るわよ」
幽霊さんは呆気に取られていたが、着てみるだけならと服を受け取って壷の中に入っていった。この時、彼女が|服を受け取れた《・・・・・・・》のがまさに紬姫の見立て通りだった。
(触れるようにと霊的な繊維束で編んだ衣だもの。触れなかったら色々と困るわ。それに、この日のために事前にたくさん仕立てておいたのよ)
紬姫はここまでの準備の苦労を振り返る。それもこれもすべて、幽霊の噂を聞いた時に閃いた作戦だ。
――話題の幽霊と『染物屋:紬姫』のコラボ!
商売繁盛のフラグがここにあると紬姫は考えたのだ。そのためにも、まずは計画の第一段階として服を着てもらわなければならない。
といっても、今回は儲けだけが目的ではなくもうひとつ理由があるのだが……今は掴んだチャンスにウキウキしている紬姫なのであった。
紬姫が扇を口元にあててほくそ笑んでいるとフェアリーランドから幽霊さんが戻って来る。
その服装は、これからの夏の時期に需要が増える浴衣だった。藍より出でて藍より青しその色を基点とし、紅花の赤と桑の黄を組み合わせて花と金魚を躍らせている。
「あの……着てみました……」
「うんうん。素材が良いからか映えるわね」
素材とはモデルのことかそれとも服のことか。二重の意味を含ませて紬姫は二着目を取り出した。
「次はこれよ。デザインは現代の服だけれど布はあーしの店で染めてるわ。どうかしら。発色が良いでしょう?」
それは木の皮を煮詰めて出した柔らかいベージュ色を中心にしたものだ。ベージュを濃くしたスカートに紅花で薄く染めた桜色のシャツを組み合わせ、スカートと同じベージュを薄くした淡いカーディガンを羽織らせる。薄い青と白の濃淡が爽やかなストールで首元を飾れば、夏が終わる頃にちょうどよい秋らしくも軽くて明るいファッションになるだろう。
●
「これも良い感じね。他にもいろいろ着てもらうわよ。あと気に入ったものがあればあげるわ。そのまま来てもらえたら宣伝になるもの」
さて何着目かなというその時だ。
「たのもう、なのーっ」
意を決したような勢いで銀龍・綾音(地球人のモノノケのご主人さま・f41081)がレストランに突撃してきた。
そして中に幽霊さん以外にも誰かが居るのを確認するとピタリとフリーズして……。
「………………」
……無言で帰ろうとした。そこを後からやってきたソフィアが捕まえる。綾音はめちゃくちゃ人見知りをしていた。
「えっ、ま、待ってくださいー。いま来たばかりじゃないですか! 夜道をがんばってここまで来たんですから、もうちょっとなんとか……!」
「………………………………」
「えっ、あ、このまま行くんですか……!? 」
綾音はソフィアの後ろに隠れると、そのまま無言で背中をぐいぐいと押して店内に入る。
さっき帰ろうとしたのはついびっくりしただけ。ここには幽霊さんに会いたくて来たのだから、ここで帰る訳にはいかないと綾音は決意を改めた。
(一人だと心細いし、人の多いところは嫌。でも貸し切りにしたレストランなら、混雑はない。人数は少ないから、いける!)
いつも一緒の朝露(ペルシャ猫)はお留守番だけど、ポケットには仙(|レオパードゲッコー《ヤモリ》)もいるのだから。
でも、何を話そう?
(あの時の幽霊のお姉さん。今は幽霊だと自覚に気付かせないほうが良いって言ってた)
話したい気持ちはあるけれど何を話したらいいかが分からない。そして話すのが苦手な要素が加わって綾音の考えが頭の中がぐるぐるとまわりはじめる。
(えと、まずは、え~と……)
思考が迷子になって目もぐるぐるして汗が出てきた、そんな時だ。
「にゃ~ですわ~(何かが起こりそうな夜なのですわ~)」
白い毛玉がレストランに飛び込んできた!
そのペルシャ猫は店内をぐるぐると走り回り、小さなフェアリー――紬姫に目をつけるとじゃれるように飛び掛かる。
「にゃ~(何か飛んでますわ~!!)」
「ちょっとぉ!? どうしてあーしの方に!?」
「なんでここに? レストランだから朝露入ってきちゃダメ!」
「にゃーー(なんか捕まったら怒られそうなのですわ。逃げるのが良策なのですわ!)」
逃げる紬姫を追いかけて朝露が駆けまわり、それを追いかけて綾音も走る。レストランは一転してドタバタ騒ぎだ。
そんな騒ぎの中で、歌を妨害された友子はほっぺをぷくっと膨らませた。
「心を込めて歌っていたのに」
もてなしたい相手の幽霊さんもこの状況にはおろおろしている。状況を把握した友子は、この騒ぎを落ち着けるために動くことにした。
「これは、猫好きな私の出番」
●
レストランではおいかっけっこの大騒ぎ。
綾音のポケットに入っていた仙ももちろんあっちこっちに揺さぶられて目を回していた。
「の~じゃ~!」
(ご主人! 急に動き回るのは、やめるのじゃ~。朝露は余がなんとかするのじゃ、その前にご主人落ち着いてくれろなのじゃ~)
仙はポケットの中でシェイクされながらなんとかソフィアのスマートフォンへメールを送る。そこには、「綾音をなんとかするのじゃ」と書かれてあった。
「丸投げですか!? 今日は探偵業で使う猫ちゃん捕獲の道具は持ってきてませんよ……! ええと……『猫 暴れる 止める』で検索……」
ソフィアがスマートフォンを操作しているとステージの曲が切り替わる。ショーで流れるような、派手でテンポが早い曲調だ。
視線がステージに集まると、そこには友子と守護近衛隊の『寝ず見』が作った水の輪が浮かんでいた。
「水輪くぐり!」
友子の声は、歌と同じように良く通る。この宣言が十分に届いたのを確認すると友子はひょいと飛び上がって水の輪を潜って見せた。
「まだまだ。もういっかい」
一回くぐると次は二個、輪の数を増やしながらヒラヒラしたドレスで潜り抜けていく姿はまるで魚の女王の様で。さらにはひらひらと舞って輪を潜る様が猫の本能をくすぐった。
そのヒラヒラとした動きが朝露の興味を引いていく。朝露の興味は、小さなフェアリーから水の輪くぐりへと移り変わった。
「にゃ~♪」
目標を変えた朝露がスタタ……と駆け寄るとぴょんと水の輪を潜ってみせる。そしてドヤァとした自慢げな顔で胸を張ったところで、友子がそっと近づいて彼女を捕獲した。
「捕まえた」
こうして店内の追いかけっこは無事に終息するのだった。
「あーしはもう疲れたわ……」
追いかけまわされた紬姫はへろへろだ。彼女は別のテーブルでぐったりと休んでいて友子は朝露に構っている。ソフィアも店内の倒れた椅子やテーブルを片付けていて、今、幽霊さんはフリーな状態だった。
綾音はそっと彼女に近づいていくと恐る恐ると言った様子で声をかける。
「お姉さんも、一人? わたしは、え~と、何だっけ?」
そうだった。話したかったけど、何を話すか決めていなかった。
綾音はふたたびぐるぐると考えが迷子になって、それでも何とか言葉を絞り出す。
「その、………………、だいじょうぶ、だから。ちゃんと、だいじょうぶだよ」
このままだとたぶん、悲しい事や寂しい事が待っている。でもこのまま消えちゃうのも悲しくて寂しいから。悲しい事に負けずに、そして消えずに、楽しい未来になってほしい。そんな気持ちが、現れたのだ。
そんな綾音の頭にそっと手が乗せられた。幽霊さんは、綾音の不安を気遣って頭を撫でながら優しくこういうのだった。
「良く解らないけれど、ありがとうございます」
彼女は綾音に初めて会うような素振りだった。
きっと、髪飾りを見つけた夜のことはよく覚えていないのだろう。まだ記憶や意識が混濁している様である。
●
さてさて、夜のステージは一旦仕切り直し。
歌姫の友子はお色直しをして朝露はネコ用のケージに厳重に入れられた。
朝露は「にゃー!(理不尽ですわ~!)」と抗議をするがまた好奇心で動き回られては迷惑だし、キッチンに毛が入れば大変だ。レストランはペット厳禁なのだ。
同様にペットの持ち込みがバレない様にと仙は優音のポケットで大人しく気配を消している。けれど、そのポケットの中の確かな存在は綾音に勇気をくれる。
そして綾音はその勇気で知らない人が何人かいるレストランに留まって、幽霊さんと同じテーブルに座っていた。いま綾音は注文したオムライスと格闘してもぐもぐ食べている。
そんな綾音の姿を、仙は微笑ましく見守っていた。
やがてお色直しを終えた友子が再び歌を歌っていく。それはまるで「宴は、始まったばっかり。夜は長いよ」と言うかの様に、軽やかで伸びやかな歌声だ。
そのステージを見る『染物屋:紬姫』のオーナーの紬姫は「さすがあーしの店のドレスだわ」と微笑みを浮かべていた。そして、同様に『染物屋:紬姫』の服を着ている幽霊さんへと視線を移す。
どうやらこのステージや乱入してきた綾音とのやりとりも楽しんでもらえているようだ。
(お色直しも成功かしらね。6年前から変わらない服装で現れて、知り合いに出くわしたら、懐かしさよりも悲しいものが溢れかねないもの)
時が止まったかの様な姿は、関係者が見た際に過去を鮮明に思い出してしまうだろう。これをささやかに変えることが紬姫のもうひとつの目的だったのだ。
持続的な商業活動とは未来を作ること、その未来が少しでも幸せや幸福に繋がれば何も言うことは無い。
『染物屋:紬姫』のオーナーは静かに呟く。
「縁があったらまた会いましょう」
願わくば関わる皆の未来が幸せなものとならんことを――。
件の幽霊さんは次は海を見に行きたいと言っていた。どうやらそこも思い出の場所らしい。
けれど彼女はまだ存在が不安定。一般的な幽霊が生前の出来事を繰り返すように彼女もどこかで繰り返す可能性はある。その時は、再び目撃が繰り返されて幽霊の噂が出て来るだろう。
今回の幽霊騒ぎで幽霊さんはだいぶ輪郭がはっきりして会話らしい応答もできるようになっていた。次に現れる時はもっとコミュニケーションが取れる様になっているだろう。
このまま自分を取り戻していけば、いずれ一緒に遊べる機会が増えるかもしれない。
大成功
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