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狂気ミュージアムの噂

#UDCアース #ネットロアUDC #最終章以外、ハジけ推奨

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#UDCアース
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#ネットロアUDC
#最終章以外、ハジけ推奨


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●慎重すぎるUDC
「ネットの噂が本当だった……こんな感じの怪談っていうのが、今じゃ割と流行りな感じ?」
 その大半は根も葉もない作り話なのだが、中には本当の話も混ざっている。UDCアースのような世界において、それは危険なUDCが引き起こした事件に違いないと、パトリシア・パープル(スカンクレディ・f03038)は猟兵達に語った。
「まあ、UDC組織も、どの噂が本物なのかは検討付けているっぽいけどね。それでも対処が後回しになっていたのは、元凶のUDCが物凄く慎重な性格ってことらしいわ」
 ネットロアUDCと呼ばれるこれらの怪異に対し、UDC組織も後手に回らざるを得なかった理由。それは、これらのUDCが異様なほどに慎重な性格をしているからである。それこそ、目撃証言もネットの噂レベルでしか存在せず、UDC組織のエージェントが現場に向かっても、忽然と姿を消してしまうことが多いのだとか。
 もっとも、慎重な性格ではあるものの、決して臆病な性格というわけではないのが厄介だ。彼らは犠牲者を確実に殺せる時にしか殺さない。その一方で、少しでも騒ぎが大きくなると判断すれば、獲物を殺すことよりも自身の安全を最優先する。
 その場合、現場に残されるのは抜け殻の如き分身だけだ。当然、この分身を確保したり倒したりしても意味はなく、まんまと逃げおおせたネットロアUDCは、いずれ新たな事件を引き起こす。
「そういうわけで、こっちの予知にもなかなか引っかからなかったのよね。でも、今回はバッチリ先読みしてやったわ。あなた達には、今からUDCアースにある森の洋館に行って、一般人が犠牲になる前に元凶のUDCを撃破して欲しいってわけ」
 この洋館はかつて邪神教団の拠点だったらしいが、今となっては暴走したUDCによって教団員が皆殺しにされ、完全な廃墟と化している。地元では心霊スポットとして有名になっているが、そこで怪奇現象に見舞われたという類の話は、現段階では何の信憑性もない作り話として扱われている。内部には邪悪な美術品が残されている他、UDCの住処に通じる場所までは、様々な罠や仕掛けが張り巡らされている。
 それらを突破して元凶のUDCに辿り着かなければならないが、今までのように正面から危険を回避しては、UDCに逃げられてしまう。ネットロアUDCはとにかく慎重な性格なので、こちらを狩り易い獲物であると誤認させなければ、分身を残して逃げてしまう。
「要するに、わざとやっちゃいけないことしたり、意味のない行動を取ったり、バカやったり……とにかく、わざと変なことして相手を油断させないといけないってわけ」
 自分から罠に突っ込んでもいいし、思い切りネタに走ってもいい。ただし、100%愚かな行動に振り切ってしまえば、さすがに探索継続不可能となり、UDCの討伐前に撤退を余儀なくされるだろう。要するに、まともな行動の間に意味不明な行動を挟みつつ、一方で危険度が上がり過ぎないよう調整しながら進めということだ。
「今回の事件の元凶は、廃墟の奥に潜む狂った人形よ。本物のネットロアUDCまで辿り着くまでが大変だけど……辿り着ければ、後は今までみたいになんとかなるっしょ!」
 さすがに、自分の目の前に猟兵がいる状態では、ネットロアUDCも逃げ出すことは困難だ。バランス調整が難しい任務だが、上手いことやり遂げて欲しい。
 そう言って、パトリシアは猟兵達を、UDCアースに存在する森の洋館入り口まで転送した。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 ネット上での噂でしかなかった心霊スポットの話が、実は本物のUDCが絡んだものでした。
 かなり慎重な相手なので、油断を誘わないと本体に辿り着けません。
 各章では🔵だけなく🔴も稼がねばならないので、よく考えて行動してください。

●第一章(冒険)
 かつて邪神教団のアジトとして使われていた、森の洋館を探索します。
 洋館内は完全な廃墟ですが、美術館としての役割を与えられていたためか、見るだけで気が狂うような絵画、動く彫像や甲冑、飛翔する儀礼剣などの邪悪な美術品で溢れ返っています。

●第二章(冒険)
 洋館地下を探索します。
 内部は様々な罠が存在し、迂闊に足を踏み入れれば、狂気ガスや飛び出す武器、様々な仕掛けが施された落とし穴といった罠の洗礼を受けます。

●第三章(ボス戦)
 ネットロアUDCとの戦いになります。
 この章までに稼いだ🔴の合計数が12個以上であれば、このネットロアUDCは本物です。
 しかし、🔴の合計数が11個以下であれば、このネットロアUDCは偽物です。
 偽物を倒しても依頼は成功になりますが、本体を倒せていないので、いずれまた同じ事件を起こし兼ねません(宿敵として偽物を撃破した場合は、『本物の宿敵に二度と出会えない』という残念な結果になるかもしれません)。

●その他
 第一章と第二章では、わざとおかしな行動を取ることで、🔴を稼ぐことが可能です。
 ただし、🔴が👑以上になるとその時点でシナリオ失敗になるので、稼ぎ過ぎには注意しましょう。
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第1章 冒険 『狂気の廃美術館』

POW   :    気合で耐える/美術品を破壊する

SPD   :    感覚を活かし、危険を避ける

WIZ   :    対抗策や安全なルートがないか調べる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セラー・ミメシス
なるほど美術館な……探索自体は奥へ奥へと進んでいきゃいいからシンプルではあるか。え?美術品が発狂しそうなぐらいセンス悪いのか?
折角作られたのに見る奴を不快にさせるしかできねえなんてかわいそうだな……俺でもちょっと憐れみを感じちまうぜ。ってわけでこいつらのリメイクを行う!!
UC【愚者の宝物】を発動するぜ。偽物だけど俺のレベル分だけ金貨とか宝石とか出てくるから、ダッセェ展示品どもに飾り付けて綺麗にしてやろうじゃん♪
俺様の飾りつけで狂気度合いみたいなもんも下がりそうだし、一石二鳥だな!!……でも一応、マジで一応これに猟兵が触れた時の事考えて金貨や宝石に込める洗脳は【正気に戻る洗脳】にしとくか。



●極めて安全な悪戯
 侵入した者は、漏れなく発狂するか、あるいは命を奪われるとされている洋館廃墟。美術館を兼ねていたその場所を進むセラー・ミメシス(異界渡りの菫色・f43527)だったが、それは他者からすれば極めて奇妙な光景といっても過言ではなかった。
「なるほど美術館な……探索自体は奥へ奥へと進んでいきゃいいからシンプルではあるか」
 台詞だけで見ればおかしなことはないのだが、セラーはミミック……自力で歩行し人語を操る宝箱である。
 そんな宝箱が、廃墟の美術館を歩いているのだ。なんともシュールな、あるいはB級ホラー映画的な展開でもあるが、セラー自身は何も感じていないようである。
 見れば、そこかしこには、見るだけで不快感を催すような美術品がいっぱいだった。絵画の大半は拷問やグロテスクな光景、あるいは異界の神を描いたと思しき代物で、その全てに何らかの形でUDCの持つ魔力のようなものが宿っている。それは彫刻や骨董品も同じであり、ここにある美術品の大半が、所持者に何らかの形で不幸をもたらすようなものばかりだった。
 だが、そんな美術品を前にしても、セラーは全く動じていない。ともすれば、人々が発狂する原因は、美術品のセンスの悪さではないかと考えているくらいだ。
「折角作られたのに、見る奴を不快にさせるしかできねえなんてかわいそうだな……。俺でもちょっと憐れみを感じちまうぜ」
 忌むべき作品として残された美術品に対して同情の念を抱くセラーだったが、美術品達は何も語らない。まあ、そもそも人に害を成す目的や、最初から狂った連中が狂った理由で作った美術品なのだから、憐れんだところで意味はない。ゴキブリに対して『こんな気持ち悪い虫に生まれるなんて可哀想』と言ったところで、当のゴキブリにとっては大きなお世話なのと同じである。
 もっとも、セラーにとっても美術品の考えていることなど分からなかったので、彼は早々に自分の趣味に合わない美術品を改造してしまうことにした。
 ユーベルコード、愚者の宝物。セラーの内部から偽物の金貨や宝石を出し、しかもそれには触れた対象を洗脳するという効果のオマケ付き。
 それらの宝物を使い、セラーは目につく美術品の大半を、金銀財宝で飾られた珍妙な物にしてしまった。心なしか、見た目のグロテスクさも弱まった気がする。宝物に接触している間は美術品でさえも洗脳の効果を受け続けるため、秘められた呪いが彼を襲おうとしたところで時既に遅し。
 それでも、何らかの抵抗があるかと思われたが、しかし何も起きなかった。そもそも、この館に潜むUDCは、本来ならば主である邪神教団員を抹殺したような存在だ。美術品含め、恐らくは何らかのエラーで狂ってしまったのかもしれない。
 そんな美術品に対して、セラーが施したのは『正気に戻る』という洗脳効果。これを受けてしまった以上、美術品は歪められた目的を喪失し、美術品本来の……骨董品としての役割を果たすだけになってしまったようだ。
「なんだ、何も起きないんだな。拍子抜けだぜ」
 鼻歌交じりに、セラーはそのまま館の奥へと歩いて行った。彼の悪戯のお陰で、これからも改造された美術品に関しては安心安全。探索も余裕で進められるというものだが、しかし何の怪奇現象も起こらないのとは反対に、館全体を覆う警戒の空気のようなものは、却って強まっているようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
教団は鏖殺するわ訪問者も殺したがるわ、シリアルキラーだな

懐中電灯照らしながら洋館探索するぜ
B級ホラーの舞台かよ。絵画(当然アタシの場合は女性だ)の眼が動いたように見える―おわかりいただけただろうか?
ホラー映像のナレーションの真似したとこで絵画から出て来た女に襲われ、アタシが絵画の中に封じられたりするよ
ぁぅ…動けない

破魔や浄化。封印術の逆利用で脱出するも時間はロスするし体力も酷く消耗しちまう…女は何処かに潜んでしまうし
懐中電灯の電池も切れてスマホのライトだけで探索を継続
あまりに生々しい乙女像を見るや本気で嫌な予感しかしない
まさか人間を石にした―とでもいうのだろうか?

もっと楽なつもりだったのにー…



●廃墟の中は危険がいっぱい!
 邪神教団でさえ持て余したUDCによって、あらゆる存在にとって危険な場所になってしまった洋館廃墟。何が起きてもおかしくない状況に、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は嫌な予感しかしなかった。
(「教団は鏖殺するわ訪問者も殺したがるわ、シリアルキラーだな……」)
 今回の相手は、UDCの中でもとりわけ危険な存在のようだ。教団でさえ制御できず、半ば暴走に等しい形で人の命を奪っていながら、それでいて慎重かつ狡猾とは恐れ入る。
 懐中電灯で周囲を照らしながら進むと、なにやら奇怪な美術品が姿を現した。絶命する瞬間の女性や、中世の魔女狩りを思わせるワンシーンを描いた絵画が壁に飾られ、鬼とも悪魔ともつかない奇怪な邪神像が棚の上に置かれている。UDCの犠牲になった者の残滓だろうか。破れた窓の近くには一目見て分かる大量の血痕が残され、洗っても取れないであろう程に染み付いていた。
(「B級ホラーの舞台かよ……」)
 あまりに分かり易い証拠に、思わず顔を顰める燦。だが、残念ながらこれは本物だ。映画なら笑って済ませられるような行いを、リアルに平気で行うような存在が、この廃墟の奥に潜んでいるのだ。
 それでも、まずは敵を油断させないことには始まらない。とりあえず手近な絵に顔を寄せると、燦は敢えておちゃらけた様子で、まるで動画実況者のようにホラー特集番組のナレーターの実況を真似してみせた。
「絵画の眼が動いたように見える……おわかりいただけただろうか?」
 美しくも恐ろしい女が描かれた絵の前で、そんなことを呟く燦。すると、突如として絵画の女が中から飛び出し、燦は絵の中に引き摺りこまれてしまった。
「え? ちょっと……ひゃぁっ!?」
 咄嗟に逃げ出そうとしたが、もう遅い! 絵画の女は燦を絵の中に身代わりとして閉じ込めると、意気揚々と外に出て歩いて行く。なにやら新たなUDCを解き放ってしまったような気もするが、燦からすればそれどころではないわけで。
(「ぁぅ……動けない」)
 絵の中に封印されてしまい、意識はあるものの身体の自由が全く利かない。その後、持てる技術の粋を使って辛うじて脱出に成功した燦だったが、この時点で時間も体力も大幅にロストしてしまっていた。
「はぁ……はぁ……さ、最悪……。なんか、女もどこかへ行っちまったし……」
 そうこうしている内に、今度は懐中電灯の電池が切れ始めた。絵画に引きずり込まれる際に、落としてしまったのだろう。現実世界に放置されていたので電池だけは時間に比例して消耗し、このままでは完全に暗闇に覆われてしまう。
「えぇい、こうなりゃ最後の手段だ!」
 懐中電灯を消して、燦はスマホのライトだけで探索を継続することにした。だが、懐中電灯とは違い、スマホのライトでは光源としては心許ない。そっと足音を殺して進めば、いつの間にか自分の正面には美しい乙女の像が置かれていた。しかし、そのあまりに生々しい造形に、本気で嫌な予感しかしなかった
(「まさか、これ……本物の人間を石像に……?」)
 ふと、そんな考えが燦の頭をよぎった矢先、石像が突如として血の涙を流し始めた。それ以外、何をしてくるわけでもないのだが、これ以上の怪奇現象に巻き込まれては堪らないと、燦は早々に逃げ出した。
「うぅ……。もっと楽なつもりだったのにー……」
 やがて、美術品が置かれた部屋や廊下を抜けたところで、燦はようやく安堵の溜息を吐いた。
 もっとも、探索はまだ始まったばかり。UDCの本体がいる場所に向かうには、これから先も危険な道を通らねばならないことに、不安を感じずにはいられなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

リリエッタ・スノウ
んんっ、本物のオブリビオンをやっつけるために、わざと失敗する必要があるんだね?
わかった。リリも頑張って失敗するよ。

ここ、邪神教団のアジトだったから変なのがいるんだよね?
周りに注意を払いながらテクテクと歩いていくよ。……んっ、あの剣、なんだか怪しい気がするね。

予想通り儀礼剣が飛んできたら【バレットタイム】を使って思考を加速するよ。
打ち落としたり避けるのは簡単だけど……んっ、わざと失敗。
当てないように銃を乱射しつつ、儀礼剣を深手を負わないぎりぎりで避けるね。
服とかぼろぼろになったけど、オブリビオンをやっつけるのには影響しないかな。

※アドリブ連携大歓迎



●失敗を狙い撃ちます!?
 UDCを油断させるためには、敢えて無能を演じなければならない。自ら藪蛇をつつくような真似をすることは、それだけ危険を伴うが、しかしリリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)は任務のためであればリスクなど承知の上であった。
「んんっ、本物のオブリビオンをやっつけるために、わざと失敗する必要があるんだね? わかった。リリも頑張って失敗するよ」
 幼くして完成された暗殺者でもある彼女にとって、相手を油断させるのは容易いことだ。まず、初見で大半の相手が、彼女の姿を見て油断する。こんなガキに、何かができるはずもない。そんな浅い考えてリリエッタに手を出し、脳天をリボルバーでブチ抜かれた者もいるだろう。
 とはいえ、相手は常識の通用しないUDC。本気で油断して命を奪われては堪らないので、リリエッタは慎重に館の内部を進んで行った。
(「ここ、邪神教団のアジトだったから変なのがいるんだよね?」)
 ネットロアUDCだけでなく、教団の作り出した邪悪な美術品もまた、一般人にとっては危険な代物。案の定、少しばかり進むと儀礼用に使われる剣が台座に安置されていたが、その剣はリリエッタが部屋に足を踏み入れるなり、いきなり彼女の首筋目掛けて飛んで来た。
「……っ!!」
 奇襲を読んでいたリリエッタは、すぐさまリボルバーを構えて意識を集中させる。視界と思考がクリアになり、まるで時間の流れが何倍も遅くなったかのように感じられ、相手の軌道がはっきりと見える。
 そのまま撃ち落としてしまうのは、今のリリエッタにとっては容易なことだった。しかし、それでは敵を警戒させるだけだ。ここは敢えて攻撃を受けようと、リリエッタは敢えて剣から狙いを逸らして銃を乱射し、剣の攻撃は紙一重で避けて行く。
「……当たらないね。ここは逃げるしかないかな」
 剣を避けながら銃弾を放つ度に、部屋の中に置かれていた美術品が破壊されていたが、それはそれ。中には邪神教団に関係ない、純粋に価値のある骨董品もあった気がするが、作戦成功には代えられないので致し方あるまい。
 やがて、剣の攻撃を避けながら部屋を出て、扉を固く締めたところで、リリエッタは改めて自分の姿を確認した。見れば、攻撃を紙一重で避け続けたことで、掠めた剣先によって服がボロボロにされていた。
「んっ、服とかぼろぼろになったけど……オブリビオンをやっつけるのには影響しないかな?」
 もっとも、リリエッタ本人は、それさえも大して気にしていなかった。状況次第では、裸で戦うようなこともあるのが彼女である。防御力の低下は如何ともし難いが、これで敵も盛大に油断をしてくれたことだろう。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

サエ・キルフィバオム(サポート)
アドリブ歓迎

基本的には情報収集が得意かな
相手が何かの組織だったら、その組織の一員になり切って潜入して、内側から根こそぎ情報を頂いちゃうよ
そうじゃなければ、無害で魅力的な少女を演じて、上手く油断させて情報を引き出したいね
効きそうな相手なら煽てて誘惑するのも手段かな♪

戦いになったら、直接力比べの類は苦手だから、口先で丸め込んだりして相手を妨害したり、糸を利用した罠を張ったり、誘惑してだまし討ちしちゃうかな
上手く相手の技を逆に利用して、手痛いしっぺ返しが出来ると最高♪
敢えて相手の術中に陥ったふりをして、大逆転とかも良く狙うよ



●アブない、潜入任務!?
 かつての邪神教団のアジトに潜入し、危険なUDCを排除する。もはや猟兵にとってはお約束となった仕事だが、しかしサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は予想とは正反対な事態に、支援も楽ではないと思い始めていた。
「う~ん……簡単なお仕事だと思ったんだけど、意外と面倒だった感じ?」
 人間相手の潜入捜査であれば、サエも自分のスキルを存分に発揮できる。色仕掛けや篭絡術、あるいは隙を見せて油断を誘うという戦法は、彼女が最も得意とするところ。
 だが、今回の任務には、それらが通用するような相手があまりいなかった。廃墟の中に鎮座する美術品相手では自慢の誘惑術も通用せず、気が付けば動く石像や騎士鎧などに追い詰められてしまったのだ。
「もう、いっそのこと全部壊しちゃう? あ、でも、後方支援でも少しは敵を油断させないと、他の人達の頑張りがパーになったら困るわね」
 自分の任務はあくまで退路の確保だが、それでネットロアUDCを警戒させては元も子もない。仕方がないので、サエは敢えて追い詰められたフリをしつつ、密かに部屋の中に頑丈な糸を張り巡らせた。
(「さあ、どこからでも来るといいわ」)
 獲物を追い詰めたと勘違いした石像や鎧が、一斉にサエを狙って襲い掛かってきた。もっとも、相手は所詮、知能のない石像や鎧。足元を碌に確認しないままサエの仕掛けたトラップに嵌り、軒並み将棋倒しである。
「よし、これで……って、きゃぁっ!?」
 だが、狭い部屋の中で将棋倒しなど起こせば、当然のことながら自分もまた巻き込まれるのは自明の理。哀れ、石像の下敷きになってしまうサエだったが、それもまた彼女の作戦だった。
「それ以上、近寄らないでっ!」
 爆音を放つユーベルコードを発動させて、サエは鎧や石像を吹っ飛ばした。単なる音ではなく、時にオブリビオンにもダメージを与える程の爆音波だ。UDCでもない鎧や石像にとってはオーバーキルも良いところで、それらの物品は単に吹き飛ばされるだけでなく、一部は粉々に砕けてしまった。
「ふぅ……まあ、後方確保の露払いは、こんなものでいいわね」
 身体に付着した埃を払いつつ、サエは踵を返して撤退した。それなりに苦戦を演じつつ邪魔な物品を排除できたので、必要以上にUDCの警戒心を煽ることもなかったのは幸いだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『トラップハウス』

POW   :    正面から罠に立ち向かう

SPD   :    罠の起動する瞬間を察知して回避する

WIZ   :    罠の位置や種類に見当をつけて回避する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●危険を承知で挑む道
 廃墟と化した洋館の中を進んで行くと、やがて地下へと続く入口へ辿り着いた。
 この先の最深部に、噂のUDCが潜んでいるのだろうか。既に邪神教団は滅びて久しいが、この先は危険な罠の仕掛けられた禁忌の場所。迂闊に足を踏み入れれば、今もなお稼働を続ける罠が侵入者に襲い掛かり、様々な責め苦を強いてくるだろう。
 壁から飛び出す槍や、天井から噴射される謎のガス。あるいは、何らかの仕掛けが施された落とし穴などもあるかもしれない。物理的な危険性を伴う罠は勿論、噴射されるガスは猛毒や麻痺毒として肉体を蝕み、落とし穴の中には鋭い刃物から溶解液、あるいは邪神教団の飼い慣らしていたUDCの眷属などが待ち構えている可能性もある。
 猟兵の身体能力とユーベルコードを以ってすれば、それらの危険を避けることは造作もない。だが、ここは敢えて危険を承知で罠を発動させ、自ら罠に掛からねばならない。華麗に罠を回避すればするほどに、UDCは侵入者が只者ではないと察知して、行方をくらませてしまうかもしれないのだから。
 ここから先は、危険を承知で挑める者だけが通れる道。ネットロアUDCを逃さず撃破するためにも、目の前の罠へ敢えて飛び込む勇気が試される。
四王天・燦
既に消耗しているので、ここから本気モードだ!
矢でも鉄砲でも神鳴で切り払い、落とし穴をジャンプで飛び越え、ギロチンを見切って体を反らせて回避するぜ

道を探してあちこち扉を開く
悲壮な石像だらけの部屋を見つけたら顔が引き攣るわ
これ絶対駄目なやつだ

なのに忍び寄っていた一章の絵画の女に突き飛ばされ石像の部屋に閉じ込められるのでした
石化ガスが充満し大ピンチ
ひっ、体が石になってる!?

扉を蹴って壊して脱出すれど、体は半ば石化して能力激減。服も所々砕けて色気か惨めか分からない始末
スマホの充電も少なく、懐中電灯は石化で故障
絵画の女は不明だし最悪の状況だ

罠の道を戻るも難しく
覚悟を決めて進むよ
本気を出してこのザマでした



●演技ではありません!?
 敢えてピンチを装う作戦で、UDCを油断させる。だが、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)にとっては、既に本気でピンチだった。
「さっきので体力を消耗しちまったからな。ここからが本気モードだ!」
 両手で軽く顔を叩いて気合を入れ直し、燦は一気に駆け出した。ここから先は、危険な罠が満載の地帯。中途半端な気持ちで挑めば本当に命が危ないので、隙を見てやられたふりをするしかない。
「……っ! まずは毒矢か!?」
 壁の一部が反転して不気味なデスマスクが出現し、その口から矢が放たれる。それを一太刀で薙ぎ払う燦だったが、続け様に天井が開いて巨大なギロチンの刃が落ちて来た。それも回避すると、今度は足元が急に開き、不気味な落とし穴が口を開ける。穴が完全に開く前に床と壁面を蹴り飛ばして近くにあった扉を開けて中に逃げ込むが、そこもまた危険な場所だった。
「げぇっ!? な、なんだよ、これ!!」
 そこにあったのは、悲壮な顔をした多数の石像。どれもこれも、まるで生きているかの如き生々しさであり、彫刻の類とは異なるということが嫌でも分かる。
(「ヤバい……これ絶対駄目なやつだ」)
 直感的に何かを察し、燦は早々に逃げ出そうとした。だが、慌てて周囲の警戒を怠ったことで、何者かによって後ろから突き飛ばされ、より部屋の中央へと追い込まれてしまった。
「……っ! お、お前は……!!」
 そこにいたのは、先の廃屋で絵画から逃げ出した女だった。どうやら、あれからも洋館内部を徘徊し、彼女もあたこの部屋に辿り着いていたらしい。
「こいつ……! 今度は逃さな……って、なんだこりゃ!?」
 突然、部屋の天井からガスが噴射されたことで、燦は慌てて横に飛ぶ。だが、それでも完全には回避できず、手や足にガスを浴びてしまった。
「ひっ、体が石になってる!?」
 ガスの効果と部屋の中に置かれている石像の存在が、頭の中で繋がった。あの石像は、全てこの部屋に仕掛けられた罠の犠牲者だ。迷い込んだ哀れな一般人か、それとも教団員の成れの果てか、そんなことはどうでもいい。
「に、逃げないと……!」
 強引に扉を蹴り破って脱出する燦だったが、既に少なくない量のガスを浴びてしまった。中途半端にガスを浴びたことで完全には石化されなかったが、それでも皮膚のあちこちが石になっており、断続的な痛みと不快感が襲ってくる。加えて、石化した衣服は石片になって剝げ落ちてしまい、半裸に近い格好だ。
 何も知らない者が見たら、暴漢に襲われた後かと思うかもしれない。今の燦は、それだけ酷い姿だった。光源として持ち込んだ懐中電灯は完全に石化し、スマホも故障。こんな状態で先程の道を戻るのは自殺行為に等しく、おまけに絵画の女も再び見失ったとなれば、状況は最悪。
 もはや、この苦境から逃れるためには、最深部にいるUDCを倒す他にない。果たして、こんな状況でどこまでいつもの調子が出せるかは不明だったが、それでも覚悟を決めて、燦は廃墟の奥へと歩を進めた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

リリエッタ・スノウ
むぅ、なんとなくまだまだ油断させなきゃダメな気がするね。
リリ、頑張って罠に引っ掛るよ。

きょろきょろと周りを確認しながら進んでみるけど……
なんだか見え見えな罠が仕掛けられてる?
あそこの天井から槍が降ってくるんだね。
んっ、その下に本命の落とし穴があったよ。

降ってくる槍を避けて進んで落とし穴に気付いていないフリをして落っこちるね。
落とし穴の下が命に係わるようなものじゃないか確認して落下。

触手がいっぱいいて破れた服の隙間から潜り込んでくるせいで、んんっ、にゅるにゅるしたのがくすぐったいね。
少しだけ我慢した後に【リリ式シャドウリッパー】で触手をずんばらりんとして落とし穴を脱出するよ。

※アドリブ連携大歓迎



●穴の底で蠢くもの
 廃屋の中に漂う怪しげな空気。それは微かな緊張感を伴うものであり、少しでも勘の鋭い者であれば、UDCが未だ警戒を解いていないからだと気づいたことだろう。
「むぅ、なんとなくまだまだ油断させなきゃダメな気がするね。リリ、頑張って罠に引っ掛るよ」
 ターゲットに近づくためであれば、時に無力な少女を演じるのはリリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)にとって難しいことではない。それでも、本当に危険な罠は避けなければならないので、まずは罠の選別が重要だ。
 暗殺者であるリリエッタからすれば、この屋敷に仕掛けられた罠を見破ることなど造作もない。知識のない者であれば容易に引っ掛かるだろうが、しかしリリエッタにとっては全て見え見えの罠である。
「んっ、あそこの天井から槍が降ってくるんだね。本命は、その先にある落とし穴かな?」
 多重に仕掛けられた意地の悪い罠を瞬時に見破り、リリエッタは敢えて罠の前に身を晒した。まずは槍が降って来るが、それらを避けることは簡単だ。そして、避けた先には落とし穴が待ち受けているわけだが……リリエッタは敢え跳んだり避けたりすることをせず、そのまま穴の底へ落ちて行った。
(「命を奪われるような罠はないみたいだね」)
 もっとも、穴の底にあるのが何なのか、リリエッタはしっかりと確認していたのだが。斬殺刃物や強酸プールのようなものでなかったのが幸いし、リリエッタは落下しても大したダメージを受けなかったのだが。
「んっ、なんだか床が動いているね」
 気が付くと、床が微かに隆起しているのが分かった。いや、隆起などという生易しいものではない! これは、床と壁の殆ど全てが、触手生物で覆われている!?
「んんっ、にゅるにゅるしたのがくすぐったいね」
 破れた服の隙間から触手に侵入され、リリエッタは好き放題に辱められてしまった。それで終われば大したことはなかったのだが、腐っても邪神教団の仕掛けた罠だ。単なる嫌がらせで終わることなく、触手はリリエッタを中へ取り込もうと、更に彼女の身体へ纏わりついてくる。
 このまま何もしなければ、遠からず触手の餌食になってしまうだろう。触手の子どもを孕まされるのか、それとも触手に取り込まれて自らも一部にされてしまうのか。どちらにせよ、これ以上は触手に好き勝手させるわけにもいかない。
「……リリの手刀は急所のみを掻き斬るよ」
 腕の自由が奪われる前に、リリエッタは手刀による斬撃で、絡みついていた触手をズタズタにした。それだけでなく、壁や床にいる触手も全て粉砕し、改めて落とし穴を脱出した。
「これで、少しは油断させられたかな? 罠に掛かったんだから、大丈夫だよね」
 緊張した気配が弱まったことを感じ、リリエッタは更に奥へと進んで行った。ここから先は、さすがに罠を避けることを優先した方が良いだろうか。なにしろ、ボロボロの服の中に入り込まれて蹂躙されたことで、彼女の服は更に破けて心許ない状態になり、半分以上が残っていなかったのだから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

クローネ・マックローネ(サポート)
普段の口調は「クローネちゃん(自分の名前+ちゃん、相手の名前+ちゃん、だね♪、だよ!、だよね★、なのかな?)」
真剣な時は「クローネ(ワタシ、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」
強調したい時は「★」を、それ以外の時は「♪」を語尾につけるよ♪

基本は一般人の安全を優先で♪
多少の怪我は厭わず積極的に動くね♪
他の猟兵に迷惑はかけないよ♪
シリアスな場面では状況の解決を優先するよ
コメディ色が強い場合はその場のノリを楽しむ方向で動くね♪
えっち系・状態変化系もばっちこい♪
絡みOK、NG無しだよ★

UCは状況に応じてMS様が好きなのを使ってね★

後はMS様におまかせするね♪
よろしくおねがいします★


柳・依月(サポート)
 俺は人間じゃない、ネットロアだ。だが人間は物語が好きで、俺も人間が好きだ。だから人々の日常を脅かす者は許してはおけない——それが俺が戦う理由ってことになるのかな。
戦闘時は基本仕込み番傘での近接戦だが、中長距離や支援に回る時などは呪髪糸も使用する。
非戦闘なら情報収集が得意だ。主にネットだが、聞き込みとかもする。【化術】も得意だからな。

以下PL
ギャグ系の状況でもノリはいい方です。
 UCは指定した物をどれでも使用し(詠唱ご自由に)、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。


春霞・遙(サポート)
UDC組織に所属して、UDC関連の一般病院に勤務している小児科医です。
行動の基本方針は困っている人が居るなら助けたい、人に害をなす存在があるなら退けたい。
戦う力はあまりないですけど、自分が傷を負うとしてもみなさんのお手伝いができれば嬉しいです。

基本的に補助に徹します。
「医術」「援護射撃」「情報収集」から、【仕掛け折り紙】【葬送花】での目くらましや演出、【生まれながらの光】【悪霊祓いのまじない】で照明や目印を付けるなども行えるかと思います。
攻撃は拳銃による射撃か杖術が基本で、その他はUCを使用します。
【悔恨の射手】【未来へ捧ぐ無償の愛】は基本的に使用しません。

シリアス以外ならいたずら好きの面も。



●帰り道を守るため
 ネットロアUDC。ネットの中の噂でしかなかった怪物が、本当に実在していたという存在。
 そんな者がいるとなれば、柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・f43523)にとっては動かないわけにはいかなかった。なにしろ、彼もまたネットロア。人の世に紛れて生活する、新しい妖怪なのだから。
「ここが邪神教団の巣窟だったとされる場所か。実に興味深いな……」
 周囲の罠に警戒しつつも、依月はちゃっかりカメラを回していた。彼はオカルト系配信者を務める大学生でもあるので、こういう場所を撮影しておけば、何かとネタには困らない。
 もっとも、遊びに来ているわけではないので、しっかりと仕事もこなさねばならないのだが。とりあえず、化術を使って何かに変身して進もうかと考えていたが、できれば怪我はしたくない。
「安心してください。いざという時は、私が助けますので」
 後方支援は任せておけと、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が名乗り出る。彼女はUDC組織の職員でもあり、また医師でもあるため、この手の事件におけるバックアップとしては心強い。
「へー、怪我したら治してくれるの? それじゃ、安心して進めそうだね」
 仮に罠が発動しても、自分なら大抵の場合は大丈夫だと言って、クローネ・マックローネ(快楽至上主義な死霊術士・f05148)が前に出た。この状況で、罠の確認もせずに進むのは自殺行為。しかし、クローネは全く問題ないとばかりに、スタスタと廊下を進んで行く。
「罠があるって聞いたけど、どんな罠かな~?」
 鼻歌交じりにそんなことを呟いていると、早々に罠が発動し、天井から槍が降って来た。それはクローネの身体に突き刺さり、彼女は瞬く間に串刺し状態にされてしまうが、それでも歩く速度は変わらない。ついには廊下を渡り切ってしまい、他の罠がないことを確認すると、残る二人に向かって手を振っていた。
「おーい、大丈夫みたいだよ~♪」
 本人は普通に手を振っているだけだが、しかし美少女の顔面に槍が突き刺さったままなので、普通にグロい。まあ、彼女はそもそも液状生命体であり、美少女の姿も彼女が取れる形態のひとつでしかないので、身体を貫かれても大出血したり内臓をブチ撒けたりはしないのだが。
「……なんか、俺以上に人間離れしたやつだな」
「本当に大丈夫なのですか?」
 依月も遙も、呆れて物が言えなかった。いくら液状生命体といえど、少なからずダメージはあるはずだ。しかし、当のクローネは気にしていないのか、余裕で頭に刺さった槍を引っこ抜き。
「う~ん……まあ、確かに、当たった瞬間は痛いことは痛いんだよね。でも、直ぐに元通りにできるから問題ないよ★」
 何事もなかったかのように、肉体を再構築して見せる。なんというか、この場合は彼女の方が下手すりゃUDCより人間離れしているような気もするが、それはそれ。
 結局、このままダメージを受け続けるのも問題なのと、ガスのような搦め手には無力である点を指摘され、クローネはしばらくの間、大人しく遙の治療を受けることになった。その代わりに、今度は依月が小動物などに化けて進むことで、なんとか道を切り開いて行く。
(「それにしても……俺の他にもネットロアが存在していたとはな。しかも、トンデモなく危険なやつが……」)
 小柄な体躯で罠を避けつつ進みながら、依月は廃屋の最深部に潜むUDCについて考えていた。
 もしかすると、まだ知られていないだけで、このようなネットロアが無数に存在するのかもしれない。自分のように、人類に友好的な存在の方が少なく、大半は危険な怪物なのかもしれない。
 だが、それに結論を出すのは、今は後だ。罠の位置を把握し、退路を確保したところで、依月は再び元の場所へと戻って来た。
「潮時ですね……。この場所を確保しつつ、いつでも撤退できるようにしておきましょう」
 警戒のため、周囲に仕掛け折り紙を散会させつつ、遙は退路の確保を行う。ネットロアUDCを倒した猟兵達が、安全にこの地から撤退できるように。仲間の帰る場所を守るのもまた、UDC組織の職員としての務めでもある。
 罠を起動させるだけ起動して、しかし更に奥へと進まなかったことで、元凶のUDCも気を緩めたのだろうか。
 いつしか、廃屋の中に漂う空気からは随分と緊張感が薄れ、単に閑散とした廃墟のそれに変わっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『呪われた人形『彼岸』』

POW   :    腐り断たれて分かれる体
【呪いを帯びた刀による居合斬り 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体を内部から腐らせる呪い】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    舞い散るは命と彼岸花
【一本だけの脚を巧みに操ったステップ 】で敵の間合いに踏み込み、【血のように赤い彼岸花の花弁】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    命を蝕む石蒜の呪い
自身と武装を【生者を蝕む赤色の呪い 】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[生者を蝕む赤色の呪い ]に触れた敵からは【活力】を奪う。

イラスト:バスター

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は岩社・サラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂える自動人形
 罠を乗り越えて進んだ先。そこに待っていたのは、かつて邪神教団が作り出した、壊れた自動人形だった。
 この人形が何の目的で作られ、何故に暴走したのかは分からない。もしかすると、邪神の依代として作られた結果、そこに降ろすべき存在を誤ってしまったのかもしれない。
 果たして、真実はどうなのか。今となっては、もはや誰にも分からなかった。ただ、確実に言えることは、ここで討伐しなければ、このUDCは再びどこかで似たような事件を起こすというだけだ。それがどのような形でネットの噂になるのかは不明だが、ここで憂いを断たねば同じことの繰り返し。
 人形の関節がきしみ、その手が腰の刀に延ばされる。どうやら、彼女は猟兵達を『狩りやすい獲物』と認識し、自らの手で始末することに決めたようだ。
 だが、それこそが誤りであったと、今こそこの狂ったUDCに思い知らせてやらねばなるまい。ネットロアUECの抜け殻ではなく本体を叩ける、またとない機会。それを無駄にしないためにも、この戦いには負けられない。
柳・依月
待たせたな、お前が噂の元凶ってやつか?

おっと、見るからに壊れかけの割に速いなあ。うーん、近づかれると不味そうだ。
とりあえず相手の攻撃は【第六感】や【見切り】で回避を試みるか。
うーん、ここはやはり距離を取りながら隙を見て呪髪糸で【捕縛】し動きを止めるべきだろう。

……全く、俺とお前、何が違ったんだろうなあ。
どちらも人に作られたものなのに、同じネットロアなのに。
俺とて「人を恐怖させるものであれ」と望まれて生まれたものなんだがな。
せめて俺が引導を渡してやろう。

※アドリブ・連携歓迎!



●作られし者達
 廃屋の奥に潜みし自動人形。既に作られた目的さえ忘れられ、ただ人を屠るだけとなった存在だが、その戦闘力は未だ脅威。
「待たせたな、お前が噂の元凶ってやつか?」
 同じネットロアとして見過ごせないと声を掛ける柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・f43523)だったが、言葉の代わりに帰って来たのは俊足の動きで間合いを詰めてからの鋭い斬撃。
「おっと、見るからに壊れかけの割に速いなあ……」
 ギリギリのところで避けたが、そう何度も偶然は続かないだろう。なんとかして、あの人形の動きを止めなければ、遠からず斬り刻まれてしまう。
 ここはやはり、距離を取りながら動きを止めるのが正解かもしれない。そう考え、依月は呪髪糸を伸ばし、自動人形の捕縛を試みた。
 だが、そんな彼の放った呪髪糸でさえも、自動人形は得意の剣術で難なく斬り捨ててしまう。もはや、人形の動きを止める術などないと思われたが……それでも、依月は諦めなかった。
「逃げられると思ってんのか?」
 斬り捨てられた瞬間、呪髪糸が更に長さを増した。ユーベルコードによって操られる呪髪糸は、最大で140m近くまで伸ばすことができる。この閉ざされた空間において、それは余りある長さであり、多少斬られた程度では性能が落ちることもない。
「……ギ……ギ……」
 身体の関節を軋ませながら、自動人形は呪髪糸からの脱出を試みた。しかし、絡みつく呪髪糸は物理的なダメージだけでなく、強力な呪詛による汚染も与える代物。いかに邪神の宿った狂える人形とはいえ、これを力だけで振り解くのは不可能だ。
 このまま呪い続けて行けば、後は人形が腐って壊れるのも時間の問題。もはや勝利は確実だと考え、依月は改めて人形を前に呟いた。
「……全く、俺とお前、何が違ったんだろうなあ」
 どちらも人の生み出したものであり、同じネットロアでもある。だが、依月は猟兵として覚醒し、この人形は狂ってしまった。
 依月と人形の違い。それは、元からネットロアであったか否かだ。依月は『人を恐怖させるものであれ』という願いより、怪奇譚としてネットの中に誕生した。だが、この人形は違う。本来ならば邪神の依代となるべく作られ、しかし宿すべき神とは異なった存在が降りた結果、ただ人を殺すだけの化け物になった。そして、その話がいつしか歪んで伝えられ、ネットの怪談になったものである。
 依月と人形は、本質的に存在の根本が違っていた。先天的にネットから生まれた存在である依月にとって、後天的にネットロアと化した人形の存在は、紛い物であり異物でもある。
 やはり、この人形は存在してはいけないものなのだ。意を決し、人形に最後の一撃を加えようとする依月だったが、しかし次の瞬間、人形は唐突に立ち上がると、縛られたまま依月の方へと距離を詰めて来た。
「なっ……! こいつ、まだ動けたのか!?」
 単に片足で跳ねているだけとはいえ、凄まじい執念。気が付けば、周囲は人形の身体から撒き散らされた、赤い彼岸花の花弁が漂っている。
 その花びらに紛れる形で、人形は依月へ体当たりを仕掛けて来た。それに怯んだところで、今度は頭突き。苦し紛れの肉弾戦にしか思えなかったが、それでも相手のユーベルコードの性質を察知し、依月は背中に冷たいものが走った。
(「こいつ……殴るだけで、俺を殺そうっていうのか!?」)
 人形の繰り出してきたユーベルコード。それは、彼岸花の花弁を撒き散らしながら攻撃し、4回当てれば相手を即死させられるというものだ。人形の得意とするのは刀による斬撃だが、このユーベルコードは別に刀で攻撃する必要はない。とにかく、なんでもいいから条件を満たした状態で攻撃を4回当てれば、それで相手は死ぬのである。
「冗談じゃない! こんなところで、殺されて堪るか!」
 次の攻撃を当てられる前に、依月は呪髪糸を引っ張ることで、人形を強引に転倒させた。攻撃がキャンセルされたことで、依月が殺される心配も当面はなくなったが、それにしても恐ろしい相手だ。
 手足の自由を奪った程度では、この人形は諦めない。狂気にも似た執念を持つ人形との戦いは、まだ始まったばかりだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

春霞・遙(サポート)
UDC組織に所属して、UDC関連の一般病院に勤務している小児科医です。
行動の基本方針は困っている人が居るなら助けたい、人に害をなす存在があるなら退けたい。
戦う力はあまりないですけど、自分が傷を負うとしてもみなさんのお手伝いができれば嬉しいです。

基本的に補助に徹します。
「医術」「援護射撃」「情報収集」から、【仕掛け折り紙】【葬送花】での目くらましや演出、【生まれながらの光】【悪霊祓いのまじない】で照明や目印を付けるなども行えるかと思います。
攻撃は拳銃による射撃か杖術が基本で、その他はUCを使用します。
【悔恨の射手】【未来へ捧ぐ無償の愛】は基本的に使用しません。

シリアス以外ならいたずら好きの面も。


リリエッタ・スノウ
んっ、なんとなくわかるよ。アレは本物に違いないね。
油断してでてきたなら確実にここでやっつけるよ。

服がボロボロで体中がにゅるにゅるしてるけど、そのおかけでまだ油断してくれてる?
それとも慎重な性格のせいでリリのこと見極めようとしてる?
リボルバー銃で牽制するけれどこっちの撃った弾の数をチェックしてるっぽい?

それならわざと弾切れを起こして相手が油断して近寄ってくるのを待ち構えるよ。
むぅ、片足で器用に近寄ってくるね。でも、その程度の動きじゃリリの弾幕は抜けれないよ!
素早くオートマチックも取り出して【ストーム・バレット】を発動、残念だけどリリに弾切れの心配はないよ。

※アドリブ連携大歓迎


シホ・エーデルワイス(サポート)
助太刀します!


人柄

普段は物静かで儚げな雰囲気ですが
戦闘時は仲間が活躍しやすい様
積極的に支援します


心情

仲間と力を合わせる事で
どんな困難にも乗り越えられると信じています


基本行動

味方や救助対象が危険に晒されたら身の危険を顧みず庇い
疲労を気にせず治療します

一見自殺行為に見える事もあるかもしれませんが
誰も悲しませたくないと思っており
UCや技能を駆使して生き残ろうとします

またUC【贖罪】により楽には死ねません

ですが
心配させない様
苦しくても明るく振る舞います


戦闘

味方がいれば回復と支援に専念します
攻撃は主に聖銃二丁を使用


戦後
オブリビオンに憎悪等は感じず
悪逆非道な敵でも倒したら
命を頂いた事に弔いの祈りを捧げます



●Gun Slinger Ladies
 ついに本性を現したネットロアUDC。狂える自動人形を前に、リリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)は本能的に、目の前の相手が正真正銘の本物だと感じていた。
「んっ、なんとなくわかるよ。アレは本物に違いないね」
 本物を見つけた以上、ここで討つ。下手に逃がしてしまったが最後、次に倒すチャンスはないかもしれないのだから。
「ギ……ギギ……」
 片足だけしかないにも関わらず、人形は滑るような動きでリリエッタへと肉薄してきた。剣術の間合いに入られては拙いとリボルバー銃で牽制するリリエッタだったが、人形は手にした刀を巧みに振り回し、なんと銃弾を弾き飛ばして行くではないか。
(「こっちの撃った弾の数をチェックしてるっぽい? だったら……」)
 相手が探るような視線を向けて来たことで、リリエッタは目の前の人形が、単なる壊れた玩具や祭器ではないことを悟った。
 これは、想像していた以上に強敵だ。ここに来るまでに衣服をズタボロにされたせいか、人形はリリエッタのことを甘く見てくれてはいる。だが、それでも残弾数を数えるような慎重さがある以上、迂闊に切り札を見せるわけにもいかない。実際は、リリエッタの銃は残弾数など気にせずに使用できるのだが、それを相手に悟らせるのはまだ早い。
 最悪の場合は、多少の負傷も致し方ないかもしれなかった。とはいえ、敵はこちらを4回攻撃するだけで、問答無用で即死に至らしめる能力も持っている。果たして、どのタイミングで仕掛けるかと悩んでいたところで、リリエッタとは異なる方向から銃声が響き、人形の頭に銃弾が食い込んだ。
「助太刀します!」
 音のした方へ視線を向けると、そこには二丁拳銃を構えたシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が立っていた。しかも、支援に来てくれたのは、彼女だけではない。
「UDC組織の職員として、さすがにこんな危険なUDCを放ってはおけません」
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)もまた、拳銃を構えて支援に馳せ参じてくれていた。これで、数の上では3対1。奇しくも拳銃を構えた女性陣に囲まれて、人形は逃げ場を失った。
「ん、助かったよ。でも、油断しないでね」
 数的有利を得ても、強敵なのは間違いないと、リリエッタは念を押す。洋館の奥で化け物相手に銃を構えた者達が戦うというのは、なんともホラーゲームじみた展開だが、これはゲームなどではなく実戦なのだから。
「後ろはこっちでキープするわ。その間に攻撃をお願いね」
「分かりました。十字砲火で行きます!」
 リリエッタの攻撃に合わせる形で、シホが人形の逃げ場を奪うように銃撃を重ねる。それさえも避けたところへ、今度は狙いすましたが如く遙が攻撃を加えて行く。
 だんだんと、人形の身体にも銃撃の痕が目立ってきた。これだけ徹底して撃たれれば、さすがに回避できない弾も出る。それでも、人形は何ら感情を見せることなく、滑るようにな動きでリリエッタの真横をすり抜けて行き。
「……え?」
「いけない! 抜かれました!」
 リリエッタとシホが気づいた時には、人形が遙の目の前に現れていた。あれだけの攻撃を受けながら、後方支援要因から断とうと判断して隙を伺っていたとは、恐るべき判断力。
 狂ったUDCとはいえ、戦闘において、この人形は天才的だった。このままでは、遙が斬られてしまう。刃が振り下ろされた瞬間、そこに割って入ったのはシホだった。
「……っ! ……私はあなたを許します」
 袈裟斬りにされながらも、シホは人形へ慈愛に満ちた穏やかな微笑を向けた。あれだけ激しく斬られたのに、彼女の身体からは殆ど出血していない。
 それは、贖罪という名の死ねない呪い。彼女が命の危機に陥った瞬間、本人の意識とは関係なしに、本能的に発動可能なユーベルコード。
 実際、死にたいと思っても死ねないわけで、そういう意味では救いというよりも呪いに近い代物だった。それでも、人形の攻撃から遙を庇えたのは大きい。だが、いかに出血や痛みを防いだところで、人形の刃から齎される呪いの力はどうにもならない。
「ギ……ギギ……」
 業を煮やした人形がシホを斬り付ける度に、彼女の身体にも人形の呪詛が蓄積して行く。痛みや出血は伴わない代わりに、臓腑が体内で加速度的に腐敗して行く。
「ちょっと! 大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫……です……」 
 遙に微笑んで返すシホだったが、大丈夫なはずはなかった。痛みや出血が和らぐとはいえ、完全にゼロになるわけではないのだ。見かねた遙が生まれながらの光にてシホの治療を行うが、それでようやく五分と五分。内臓の腐敗は回復させることができたが、その分だけ遙の方が体力を奪われてしまう。
「この敵は、私達で押さえるわ!」
「だから……今の内に……攻撃を……!」
 それぞれ、持てる全ての力を使って、二人は人形の攻撃を受け止める。それは全て、リリエッタに切り札を使わせるための布石。実弾を撃ち尽くした今の彼女は、人形からはノーマークだからだ。
「ん、二人とも、ありがとう……そして、ごめんね。もう、これ以上は無理しなくてもいいよ」
 射線から離れるよう視線で促し、リリエッタは手にした二丁の銃を構えた。既に弾切れしている武器を向けられたところで恐れるものはないと、人形は首だけリリエッタの方に回し、まるで嘲笑しているかの如くカタカタと揺れる。
 だが、今回に限っては、人形の方が状況を見誤っていた。リリエッタの銃は、魔力により生成される魔弾を放つもの。故に、実弾を全て撃ち尽くしたところで、弾の供給には困らない。
「リリの攻撃は簡単には止まらないよ!」
 二人が射線から離れた瞬間、リリエッタの銃が火を噴いた。今までの鬱憤を晴らすかの如き、凄まじい連射速度。弾切れしているはずなのに、いったい何故!? そう叫ぶかの如く怯んだ素振りを見せた人形だったが、もう遅い!
「こちらでも撃ち続けましょう。少しでも、火力を重ねれば……」
「は、はい……。できる限り……やってみます」
 遙とシホも、そこへ更に銃撃を重ねて行く。いかに血の通った身体を持たぬ人形であったとしても、これだけの銃撃を浴びせられれば無事では済まない。
「ギ……ギギ……」
 ついに、堅牢な鎧や頑丈な装甲の大半を失い、人形は中身の素体が剥き出しになる程にまで追い詰められてしまった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

四王天・燦
壊れて尚も剣を奮う様を美しく感じた
破魔符や真の姿で半石化を治すのは無粋。互いに不利益抱える公正な死合を臨むぜ

四王天・燦、推して参る

暗視と心眼で視る
神鳴で受け流し、逃げ足で間合いを保つ
今のアタシは動きが鈍いから油断はできねえ

愉しいね

一本足の動きを見切り【盗みの剣】の完成に努めるぜ
防御が間に合わないときはオーラ防御で更に固めた石の肌で弾き返す
異様な体はお互い様ってことで

盗みの剣が完成すれば、彼岸花の踏み込みにカウンターを試みる
花弁に対為して石片を散らし、粉砕を狙った峰打ち一本足打法で|吹き飛ばす《ホームラン》

最後に慰めの稲荷符で呪いを鎮めるぜ
美しい剣だった

(はて…絵画の女は消息不明でお願いします)



●死を告げる彼岸花
 度重なる戦闘によって、もはや半壊状態に追い込まれた自動人形。だが、それはここに到着するまでに、様々な罠によって消耗している四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)も同じだった。
「さて……こっちも似たような具合なんだ。これぞフェアな勝負ってやつだよな」
 手足がそれぞれ半分ほど石化しているため、燦は身体を思うように動かせない。しかし、彼女は敢えて浄化による治療を施さず、不利を抱えたまま勝負に出る。
 それは、ここまで壊されてもなお剣を振るって奮闘する人形に、一種の美しさを覚えてしまったから。相手は危険な邪神の憑依した狂える殺戮人形かもしれないが、剣士としてはこれ以上にない好敵手。
「四王天・燦、推して参る!」
 薄暗がりの中、燦は自分に迫ってくる人形の太刀を感じた。咄嗟に刃を抜いて受け流し、間合いを図ろうとするも、考えていた程にまでは間合いを開けない。
 やはり、石化が足を引っ張っているのだ。動きが鈍いが故、油断は禁物。なにしろ、あの人形は攻撃を4回当てるだけで、相手を問答無用で即死させる力を持っているのだから。
「……っ!! ……愉しいね。ここまで追い込まれるなんて、久しぶりだよ」
 防戦一方になりながらも、燦は笑っていた。肌にヒリつく高揚感。背中を伝わる汗の感触。一歩間違えれば即死という状況が、むしろ脳をクリアにし、彼女の身体に限界以上の力を与えて行く。
「ギ……ギギ……」
 身体が軋み、ともすれば自壊し兼ねないような状況でありながら、人形は更に燦へと斬り掛かって来た。この間合いでは避けられないと察し、石化した腕で受け止める。さすがに、一撃で斬り落とされることはなかったが、それでも表面が微かに欠けて、おまけに『攻撃を食らった』という事実が確定してしまった。
 このまま攻撃を受け続ければ、全てガードしたところで確実に死ぬ。続く二撃目も腕で受け止めると、今度は逃げの一手を見せることなく、燦は強引に人形を押し返した。
 もう、これ以上は敵の様子を探るのも限界だろう。今までの戦いで、相手の太刀筋は完全に覚えた。初見で反応するのは難しくとも、次にどこを狙ってくるのか……その予測が立てられれば、不利を抱えた肉体であっても回避は可能だ。
「見えた――呼吸、踏み込み、太刀筋。その技の冴え、確かに盗ませてもらったぜ!」
 闇の中、瞳を見開き、燦が踏み込む。それに合わせて繰り出される人形の太刀を、咄嗟に真横へ飛ぶことで軽々と避け。
「おっと、そうはさせないぜ。異様な体はお互い様ってことで……」
 彼岸花の花弁が舞い散る中、燦は続け様に放たれた斬撃に石化した腕の一撃を重ねた。身体の一部が石片となって飛散したが、それは些細なこと。相手の攻撃を連続で受けなかったので、即死はしない。攻撃を避けられ、相手が仕切り直しにさせられている今こそ、最大の一撃を入れる絶好の機会。
「そこだ! 天まで飛んで行きな!!」
 片足が石化しているため、一本足でバランスを取りつつ横薙ぎに太刀を振るう。斬撃というよりも、殆ど野球の一本足打法に近い。斬るのではなく、物理的な衝撃で吹き飛ばす一撃だ。崩壊寸前の身体では受け止めることもできなかったのか、人形は身体をくの字に曲げながら、豪快に天井をブチ抜いて。
「…………」
 やがて、燦の前に転がって来たのは、破壊された人形の頭だった。狂気を宿した瞳は既になく、無機質な塊が転がっているだけだ。
 見れば、天井の穴からは、これまた人形の部品だったものが覗いていた。洋館を包む異様な空気が晴れて行くのを感じ、燦は人形に憑依していた邪神もまた消滅したことを感じていた。
「……美しい剣だった」
 石化の呪詛を解呪しつつ、静かに刃を納める燦。これでもう、この廃墟が呪われた地として、人間の命を食らうこともないだろう。行方不明者が出なくなれば、やがてはネットロアも自然に消滅して行くに違いない。
(「あれ……? でも、なにか忘れているような……」)
 だが、最後の最後で、燦は微かな不安を抱いた。確かに、この廃墟からは邪悪な気配を感じなくなったが、本当にこれで終わったのだろうか。
 あのUDCが確実に本物だった以上、同じような事件が起きることは考えにくい。全ては杞憂だと気持ちを切り替え、燦は廃墟を後にする。その後ろ……闇の中にて、何者かが息を潜めながら微笑を浮かべていることも知らずに。

●ネットロアは終わらない
 放課後の鐘が鳴り響く、とある女子高の一室にて。噂話に花を咲かせる少女達が、今日もとりとめもない会話を続けている。
「ねえ、あの話、聞いた? ほら、三丁目の外れにある、アトリエの話」
「あ~、知ってるよ。なんか、すっごく綺麗な女の人の絵が飾ってあるっていう」
 それは、どこにでもある怪奇譚。あまりにベタ過ぎるが故に、誰もが本当の話とは思わない。
「そうそう! で、その絵の女の人って、実はこっそり夜中に絵の外に出て来るんだって。そして、気に入った人を見つけると……絵の中に閉じ込めちゃうんだって!」
「嘘、マジで!? それって超ヤバイじゃん!!」
 それでも、そんな話で盛り上がれる辺り、彼女達はまだ純粋だ。もっとも、中には冷静に突っ込みどころを探し、最初から信じていない者もいるようだが。
「でもさ~、それって所詮は噂でしょ? 誰かが作ったガセ話じゃないの?」
「それがね、実はほら……このサイトに載っている怖い話、そっくりじゃない?」
 そう言って少女がスマホの画面を仲間達に見せれば、そこに載っていたのは、先の話と実に酷似した怪談話。だが、そこに書き込まれている話の舞台は、残念ながら噂のアトリエではないようで。
「な~んだ、やっぱり嘘か。でも、ちょっと気になるね」
「うんうん。アトリエの噂は嘘でも、こっちが元ネタかもしれないからね」
 怪談の原型になった話が存在する以上、どこかに本当の話もまた存在するはず。そうやって、憶測が憶測を呼ぶことで、ネットの噂は加速度的に広まって行く。
 猟兵達の活躍によって、ネットロアUDCと化した「呪われた人形『彼岸』」は撃破された。だが、こうしている間にも、新たなネットロアは生まれて行く。そして……そんな人々の好奇心に触発されたのか、はたまた新たなる魔が降臨したのか。
 どことも知れない廃墟の中、美しい額に収められた絵画の女が、暗闇の中で微かな笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年06月21日


挿絵イラスト