●あるオブリビオンの独白
新たな知見を探る過程が好きなのです。
ひとつ明かせばまたひとつ。ひとつ識ればまたひとつ。たどりつけば別のものが見えて来る。その道を見つけて、ひとつひとつ確認していく事が面白い。
その『聖遺物』はいったいどんな力を持ち、どのように作られているのでしょうか。
ああ、実験がしたい。ソレを使って試したいことがたくさんあります。
欲しいのは、答えではなく知ってゆく過程の楽しさです。その結果、|未来《私や君たち》がどうなろうとそれはどうでも良い事です。
●まずは潜伏するオブリビオンの情報を集めよう
「来てくださり、ありがとうございます! 『アックス&ウィザーズ』の世界でオブリビオンが聖遺物を狙っているようです!」
グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースを訪れた猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると説明を開始した。
「場所は先に言ったとおり『アックス&ウィザーズ』です。神殿のある街に神が遺したとされるマジックアイテムが祀られているのですが……。それを奪おうとするオブリビオンがいます!」
そう説明しながら、ホワイトボードで図が描かれていく。そこは群竜大陸ではない普通の土地にある街だが、マジックアイテム――『聖遺物』を祀ることで観光と信仰の両方の面で賑わっている。その『聖遺物』は多くの加護が付与された布切れである様だ。展示されている場所は神殿の中だが、ボス級のオブリビオンであれば|近寄る事さえ出来れば《・・・・・・・・・・》奪い去るのは難しくないだろう。
そのオブリビオンはすでに人間のふりをして街に潜伏しているらしい。警備のパターンを探っているのか、それともただの寄り道好きか。モタモタと三か月も滞在している様なのだ。けれど最終的には『聖遺物』を盗み逃走時に多くの死者が出ることは間違いなく、オブリビオンを倒す事で被害を防ぐのが猟兵側の目的となる。
対象のオブリビオンは予知では姿がよく見えなかったらしい。それは人に紛れている事が関係しているかもしれない。
「姿は良く解りませんでした……。ですが、能力はわかっています! このオブリビオンは直接戦闘は苦手の様ですが、赤い『賢者の石』を用いた柔軟な創造を行ってきます。しかもそれはユーベルコードではありません。そしてこのオブリビオンは周囲のユーベルコードを無力化するユーベルコードを使用してきます! なので『聖遺物』の前でただ待ち伏せて正面から倒すのは難しそうです」
とはいえ、弱点もある。
「このオブリビオンのユーベルコードはいずれも一日に13分ほど使うと自滅してしまうようです。なので敵の関心を引くなどして時間を稼ぐ事が出来れば戦闘せずに倒すことができます! 幸いなことにオブリビオンが行動を起こすまでまだ時間があります。先に街で情報を集めることで、時間稼ぎのアイディアを集めましょう!」
ホワイトボードに描かれた地図を見ると目的の街は中央に大きな通りがあるようだ。その大通りは街の中心の神殿へと続いていて大きな商店や高級な飲食店が並んでいる。そこからすこし路地に入ると宿と商店が並び、さらに奥へ進んでいくと住宅が並んで合間には安い飲食店がぽつりぽつりと存在していた。また中央の大通とは別に街を囲む様な城壁と一緒に大きな道がある。そこには生鮮食品の市場や行商人の露店が入り乱れる場になっていた。
城壁は猟兵やオブリビオンなら乗り越えることは容易だろう。とはいえこの世界の人々は猟兵やオブリビオンの事を知らないため大胆に動けば衛兵に職務質問される恐れがある。悪目立ちしてはオブリビオンにも警戒されるはずだ。
もし探すあてが無いのなら、街中の端にある酒場でシーフたちと接触するのも良いかもしれない。彼らは時に非合法は商売をして衛兵と小競り合いをするものの、彼らなりの秩序や食い扶持を守ることには積極的で客寄せになる『聖遺物』を守る事にも協力的だ。彼らとうまく交渉する事が出来たなら、彼らの情報網から怪しい余所者はすぐに分かるだろう。
●情報収集と準備が鍵
「事前に解った内容はこれで全てになります。今回は上手くいけば戦闘もせず自滅を誘う事ができますが、対策が不十分だと苦労してしまうでしょう。事前の準備が鍵になると思います。街の日常を保つためにも、どうか皆さんの力を貸してください」
ユーノは説明に用いたホワイトボードを横へ除けると祈りと共に魔法陣を展開させていく。
この上に乗れば、目的の世界へ転移することができるだろう。
「ユーノは転移の発動と維持のため、みなさんへの同行はできません。どうかみなさまに幸運がありますように……」
ウノ アキラ
はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。ウノ アキラです。
このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。
●執筆タイミングなど
書けそうなタイミングで書いていきます。ほぼ休日の作業になるので、木~土あたりに頂けると、土日に書いていくことが出来ます。
他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。
●依頼の補足
アックス&ウィザーズの依頼になります。
戦闘よりは事前の調査と、敵の性格や特性を突いた時間稼ぎがメインになるでしょう。
一章は冒険。二章がボス戦。
二章構成です。
一章は冒険です。
潜伏しているオブリビオンが直ぐに事を起こさない事と、OPのオブリビオンの独白がヒントになります。
具体的な情報が無くて困る場合は、以下の行動がおおまかな指針になるでしょう。
以下にない大胆な行動もOKですが、犯罪行為や怪しすぎる行動は街の衛兵のお世話になってしまうので注意してください。
・街中を散策してヒントを探す。
・街の端の酒場にたむろするアウトローやシーフたちと交渉して情報を得る。
・神殿の構造を確認して戦闘の下調べをする。
二章はボス戦です。
OPで触れたように通常攻撃がかなり柔軟で厄介です。
こちらのユーベルコードは『無力化』されて無かったことにされてしまうので、主に通常攻撃と技能で戦うことになるでしょう。
ただし相手のユーベルコードを誘発するなら大いに効果があります。そして、敵にユーベルコードを使い続けさせながら時間を稼ぐと敵は勝手に自滅します。
事前の情報は以上となります。
よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『とある町での一幕』
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POW : 賑やかな場所に行ってみる
SPD : 穴場を探してみる
WIZ : 商店や市場を見て回る
イラスト:小日向 マキナ
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●『聖遺物』で成り立つ街
街へ入るとそこは活気に満ちていた。
大通りは華やかな店構えが並び、合間には聖遺物をモチーフにしたお饅頭なども売られていて、宿の客引きが活発だ。
ここを訪れる者は皆、『聖遺物』を一目見る事が目的であるようだ。それは神への信仰心であったり、好奇心による観光であったりもするが……。人が集まることで形成された物流と賑やかさが人々を引き付けるのだろう。
田舎者丸出しでうろついているとぼったくり価格で金を得ようとするならず者が現れるが、明るく開けた場所であれば衛兵が目を光らせているので滅多なことは出来ない様である。
しかしひとたび目立たない路地へと入ればそこは都会特有のギャップがある。
薄暗く、場所によっては大っぴらに言えない様なものの取引も行われる事があって、特に薄汚れた路地は治安が良いとはお世辞にも言えない。だがそれなりに整備された綺麗な道さえ歩けば安全に住宅地までたどり着く事も出来る。
その先にある市場は大通りと違って華がなく荒っぽい雰囲気が増すものの、雑多な物で溢れて人通りも多かった。
それらはすべて『聖遺物』があるから成り立っている空間だ。名物があれば人が集まる。つまりこの『聖遺物』を失えばこの街は平凡なものとなって徐々に傾く事だろう……。
さて、この街の何処かにその『聖遺物』を奪おうと企むオブリビオンが潜んでいるわけだが……。
村崎・ゆかり
&&&
イクシア(f37891)と
布状の聖遺物か。聖骸布かな?
うん、イクシアは上手く化けたね。似合ってるよ。
「コミュ力」を発揮して、神殿関係の人達に効果を聞いてみよう。
マジックアイテムなんだから、実際に何かの効果もあるのよね。巡礼者や市民はその効果にあずかってるのかな?
衛兵さんに、地元民でもないのに毎日聖遺物を拝みに来てる人がいないかも聞いておこう。
毎日少しずつ、研究のための仕込みをしてるかもしれないしね。
飾られている聖遺物を見張れるところに、黒鴉を一羽潜ませる。これで相手が来たら分かるはず。
他の黒鴉たちには、神殿の天井付近を飛び回らせて、神殿の構造を把握しておく。
イクシア、そっちの成果はどう?
イクシア・レイブラント
&&&
ゆかりさん(f01658)と。
きれいな場所だけど人の出入りも多いね。
ホロドレスでクレリック用の衣装を再現してみた。(※実際は娯楽創作寄りのミニスカ衣装)
どう、ゆかりさん。似合う?
他の街から来たクレリックの冒険者を装い、見学に来た形で神殿関係者から[情報収集]。
聖遺物とそれを遺したとされる神様に関する逸話や伝承を集めた後、
聖遺物に対して【ステータスオープン!】。
うん。聖遺物に人々に忘れ去られた加護や、知られていない用途がないか確認してみた。
オブリビオンがどのような実験を行いそうか[瞬間思考力、戦闘演算]を用いて、
ゆかりさんと意見を交わしながら一緒に推測を重ねてみる。
ティティス・ティファーナ
*アドリブ歓迎
「街中の散策や酒場や露店を回りながら神殿などを足を運んで訪れます」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動してファンネルビットを創造して展開し記録や記憶をしながら猟兵や露店主に声を掛けられたらテレポートで空間飛翔しながらデータや情報を収集して、他の世界の嗜好品などを用意して内々に渡しながら耳打ちで小さな情報を受け取って他の紹介もされれば更に嗜好品なども追加します。
神殿での“聖遺物”を眼にして該当思想か酷似している情報を検索しながら成り立ちや伝承を詳細まで検索して照らし合わせます。荒くれ者の好む品なども持参して裏路地にも足を運んで調査と探索をします。
ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン
&&&
ひょあっ
活気のある都市ですね…
まだオブリビオンが活動していないようですし街中を探索しておきたいですね…オブリビオンが逃げ込みやすそうな場所ですとか戦闘時に足場になりそうな所を見ておかないとですね
でも先に神殿に聖遺物を見に行きたいと思いますっ!名物らしいですし聖遺物の実物を見ておかないとですよねっ
所で…人がいっぱいで路地が沢山あるとすごく…すごく道のりがわかりません…!ひぃん…
どっちに行けばいいのでしょう!?なんとなく人の流れに乗って進めば何とかなるでしょうか!?
いつでも引き返せるように目印を決めておかないと…大きめの馬車などがいいですかね?
(彼女はもたもたしていた)
家綿・衣更着
&&&(負担にならない範囲でお好きなように)
新しいこと調べるの面白いっすよね!でも人に迷惑かけるのはダメっす!
【コミュ力】で【情報収集】
「実験」を他でもやってるかも
警備詰め所に寄って、何かあれば詳細を聞くっす
神殿でも聖遺物と神殿構造の調査と、経緯を話し冒険者として事件解決の協力要請
神官さんお布施どうぞっす(多めに渡す)
布にどんな加護があってどんな伝承があるか調べ、【化術】ですり替えたり偽物を演出する準備、
神殿構造から【地形の利用】し【罠使い】で仕掛けられる罠を確認、【化術】で偽の通路等を見せて誘導する準備
「過程も大事だけど答えを利用するのも良いっすよ。答えから逆算された嘘を楽しんでもらうっす」
●
活気に溢れる街につくや、猟兵たちは早速おのおのに散っていった。
メンバーの中には街の経済の中心となる『聖遺物』に注目する者が多く、直接神殿へ赴く者もいる。しかしその中でティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は街中で得られる情報を重視していた。
ティティスは人目のないところで早速小型のファンネルビットを放つ。それはユーべルコード『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』で創ったものだ。
そのユーベルコードはティティスの身体部位を実体の無いエネルギーへと変異させていた。そのエネルギーはビットの形をとり、実体が無いが故に人目に触れず情報収集を行える。
(街中の散策や酒場や露店を回りながら神殿などを足を運んで訪れましょう)
最終的には神殿にも訪れるけれど、まずは何より少しでも情報を。
ティティスは残る身体を人の形に整えると、|脳波《パルス》で操るビットにデータの収集を行わせていった。
さて素早く情報を集め始めたティティスとは逆にヴォルフスブルク・ヴェストファーレン(鉄の狼・f34026)は街の門をくぐったあたりでもたもたしていた。
「ひょあっ……活気のある都市ですね……」
門をくぐれば人や馬車の往来に目を奪われる。それらは日々の仕事や食料の買い出しをする住民や職人、そして商人や冒険者に観光客たちだ。
人が多いと道がどうなっているかが分かりにくい。そのためヴォルフスブルクはどう進もうかと考える間にそのまま取り残されたのだ。
「まだオブリビオンが活動していないようですし街中を探索しておきたいですね……」
そう呟きながらキョロキョロと周りを見てみるが、とにかく人が多くて道がよくわからない。そして、気が弱そうな人物が困っていると大抵オオカミが群がって来る。
「お姉さんひとり? 道に迷ってるなら案内してあげよっか、良かったら飯もどう? お酒飲める?」
「それは奢ってくれるって事ですか……? じゃなくて、ひぃん、間に合ってますー!!」
明らかなナンパにちょっと流されそうになりつつも、ヴォルフスブルクは逃げ出した。
気がつけば知らない住宅地。このあたりの治安は良さそうだがヴォルフスブルクは完全に道が解らなくなっていた。
(人がいっぱいで路地が沢山あるとすごく……すごく道のりがわかりません……! どっちに行けばいいのでしょう!? なんとなく人の流れに乗って進めば何とかなるでしょうか!?)
ここはちょうど市場と大通りの中間になっており、目の前には行き来する人の流れが出来ている。
「とりあえずあっちの方に行ってみましょう……」
こうしてヴォルフスブルクは街の中を彷徨い始めるのだった。
さてその頃、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は街の大通りの中ほどにある衛兵の詰め所のひとつを訪れていた。
この世界では猟兵が知られておらず、オブリビオンもモンスターや邪悪な魔法使いなどとして認識されている。そのため大っぴらには動きにくいのだが、冒険者を名乗れば大抵の行動は納得されやすい世界でもあった。冒険者には様々な立場の者がいて、好奇心が強い者も多いので、噂が気になっていると伝えれば衛兵や神殿の者たちも相手をしてくれる。
「怪しい実験をしてる人物の情報があったりしないっすか?」
「人を探しているのか? 流石に簡単に人の情報を教えるワケにはいかないが……もしかして、それを教えたら俺たちの代わりに不審者を監視してくれるのかい?」
対応した者は実験をする人物に心当たりがある様だ。
「俺たちは犯罪の証拠があるか、現行犯のタイミングじゃないとなかなか動けないからな……。何をしてるのか調べてくれるなら教えてやらんでもない。その代わり、あんたが逆に不審者として通報されても助け船は出せないぞ?」
そんな前置きを置いて、衛兵の彼は最近街に住みだした怪しい人物を教えてくれた――。
●
この街に三か月ほど前から滞在している者がいる。
その人物は変わり者であるらしく、何かと噂になっていた。
最近街に住みだした怪しい人物といえばその者しかいない。
その者は市場に露店を開いて手作りのマジックアイテムや薬を売っている。値段が異様に安い代わりに使った感想を執拗に聞こうとしてくるらしい。
その者が『新作』と言った時は注意をする必要がある。何故なら効果や安全の確認をせずに渡してくるからだ。自分で『新作』の薬を飲んで倒れたこともあるらしい。
その者は強い好奇心を持っており、市場に新たな物が入ると細かに観察してくる。その時に商品説明をしようものなら仕組みから素材まで様々な質問攻めにあうそうだ。
同様に『聖遺物』にも関心をもっていて、頻繁に神殿に通っては興味深げに観察したり神官を質問攻めにする姿が目撃されている。
ティティスは道中に街中から集めた記録を確認していた。
「この人物でほぼ間違いなさそうですね。街に滞在していたのは好奇心を満たすためのようですが……」
そう分析しながらティティスはシーフたちのいる酒場へ向かっていった。
手に持った紙袋は大通りのお高い店に売っているお菓子だ。このお菓子は路地裏にたむろする荒くれものにカレールーを渡して聞き出した、この街のシーフのお頭の大好物である。さて、荒くれものたちにとって渡されたカレーは衝撃だった。貴重なスパイスとじっくり煮込まれたうま味のハーモニーが脳を殴りつける味の暴力……。そのうま味にやられて、一口舐めただけでティティス屈してしまったのだ。
こうしてお頭の好物を手に入れたティティスはこれを取引材料としてシーフたちから情報を得ようと考える。時に非合法な商売もする彼らなら、独自の情報があることだろう。
ティティスが扉を開けると、飲み食いしていた者たちの視線がティティスに一斉に集まった。単純に誰が来たのかという関心もあるのだが、彼らの視線を釘付けにしたのはそれだけではない。ならず者が集まる場所に美しい女性が入って来たことが一層と注目を集めたのだ。
「ここはあんたみたいなモンが来る場所じゃないぜ。それとも夜の相手をしてくれるのか? そうじゃないなら帰りな」
ひとりの男が威嚇するような目で近づいてくる。明らかに警戒されていた。
ティティスは手に持っていた紙袋を持ち上げて、男に見せる。
「これを持ってきました」
「これは……ひとつで銀貨5枚もする大通りのスイーツ……! お頭の好物じゃねぇか。……良いだろう、話を通してやる。少し待ちな」
そう言って男は奥の部屋へ入っていった。その後すぐに戻って来て「お頭が話を聞くそうだ」とティティスを奥の部屋に案内した。
そこには筋骨隆々の男がソファにもたれかかっていた。彼の顔には傷があり、目つきも悪くて見た目はだいぶ強面だ。
「お前か? スイーツを持ってきたのは。何が聞きたい? 答えられる範囲で良ければ答えてやろう」
そう男は言った。彼がこの街のシーフたちを取りまとめるリーダーのようだ。
●
ティティスは完結に知りたいことを話した。
それは三か月ほど前から滞在しているという、噂の人物についてだ。するとシーフたちはその人物と取引をしていた事が判明した。
この三か月の間、シーフたちは特殊な毒を作ってもらう代わりに神殿の書庫へ非合法に侵入しては書庫の奥の閉ざされた部屋にある書物を手書きで写しとっていた。その『写し』は聖遺物に関する情報であり、特殊な毒の製造の対価だったのだ。
シーフたちはこの『写し』で聖遺物が脅かされることは無いと考えていた。そのため、取引に応じたのだそうだ。
「だが俺たちも馬鹿じゃない。奴には監視もつけた上で俺たちが利用しているんだ。確かに奴なら『聖遺物』を狙う可能性は高いが、今は奴にそんな兆候は……いや、待てよ」
シーフのお頭は考えを巡らせる。どうやら改めて考えたことで引っかかるものがある様だ。彼はティティスが持ってきたスイーツを一気に食いだした。
「ふぅ、甘いものは良いな。頭が冴えわたる。……思えば確かに奴は街や神殿の構造も丁寧に調べていた。珍しい物ならともかく、アイツは普及しきった技術を知りたがるようなタマか? 聖遺物を奪って逃げる道筋を探してたかもしれん。……最近は監視を振り切る事もあったな。くそっ、こいつは俺たちの落ち度だ。悪い意味で監視に慣れちまっていたか」
シーフのお頭は、一枚の紙を取り出してティティスへ渡した。
「これは聖遺物に関する書物の『写し』のうち奴に渡していないものだ。時間が足りなかったと偽って、奴には不完全なものを渡していた。そしてその欠けた部分を埋める文は取引の切り札としてこうして用意していたんだが……、その一部をアンタにやろう。こいつは万が一流出しても『写し』の存在を知り写しの筆跡も知らなけりゃ意味のわからない内容だ。だから情報としての価値は低い。だが奴にとっては無視できないだろう。……上手く使ってくれ」
そこには『聖遺物』が何なのかが書かれていた。それは文章の一部になっていて、この一文だけでは何かの冗談にしか見えない。だが関連する『写し』を知っていれば同じ筆跡であり、ちょうど足りない部分を補える文だとわかるだろう。
『……が旅の最中で神より賜りし|前掛け《エプロン》である。その加護はあらゆる汚れも寄せ付けず、油や炎から使用者を強固に防護する。しかしたかが調理用と侮り難し。神が残したこの遺物は耐火性も非常に高く、ドラゴンの炎すら……』
そこには、そう書かれていた。
ティティスが手に入れた文章は、真偽を確認するために『写し』と同じ筆跡であることを確認する必要がある。その確認作業は時間稼ぎに使えることだろう。
●
さて一方で迷子になって彷徨っているヴォルフスブルクだが……。
「ひぃん……! また同じ所にもどってきちゃいました……」
人の流れに乗って移動すると城壁近くの市場のある通りに出たのでならばと反対側に向かったヴォルフスブルクだったのだが、道が交差するたびに入り乱れる人の流れで視界と方向感覚を狂わされ、あっちこっちに曲がってはぐるぐる同じところを周っていた。
いちど神殿を遠目に見つけても、人の流れに巻き込まれ知らない内に曲がってしまうので神殿がすぐに視界から消えてしまう。せめて間近に大きな目印があれば位置の把握がもうすこしマシになるのだが、大き目の馬車を目印にしてしまうので馬車が動けば余計に混乱する状態になっている。
|大都会の迷宮《ラビリンス》に囚われて脱出不可能となってしまったヴォルフスブルク……早くも絶体絶命のピンチである。そんなヴォルフスブルクに話しかける者が現れた。
「ねえ、君は何をしているのですか?」
「ひょえっ!?」
ヴォルフスブルクに声をかけたのは黒っぽいサイドテールの女性だった。
ナンパでは無さそうだと、ヴォルフスブルクはホッと胸をなでおろす。
「おかしな動きをしていたからずっと見てたのですが、意図が解りませんでした。君は何をしているのですか?」
「ひぃん……わざとではなくですね……道に迷っていまして……」
「真っ直ぐ歩けば何処かに着くこの街でですか? ふぅん……。『新作』の道に迷わなくなる薬があるのですが、飲んでみますか?」
「えっ……どういう理由で迷わなくなるのでしょうか……」
「脳の空間把握の能力が上がります。理論上は」
「理論上は……? あのう、実際の効果や副作用などは……」
「飲まないとわかりません。だってまだ実証していない調合ですから。3分くらい待ってもらえたら作れます。遠慮は要りませんよ?」
「いえ、遠慮します~……」
効果がわからないものをいきなり飲ませようとする彼女を見て、ヴォルフスブルクは都会は怖いところだと改めて思うのだった。
けれど彼女はヴォルフスブルクがこの街で出会った害意の無さそうな相手でもある。こっそり発動させていたユーベルコード『|Glück W《グルックヴェー》』で近づく詐欺師や荒くれ者から運気を吸い取っていたのだが、これは溜まった運気がもたらした幸運の出会いなのかもしれない。
つまり道案内をお願いしても良いのでは?
「あのう……私、神殿に行きたいのですが……道案内とか……」
「良いですよ」
「やっぱり駄目ですよね。お忙しいのにすみませ……ヴェアッ!?」
「ふふ……。君は面白いですね。道案内でしょう? ちょうど私も神殿に行くところだったので良いですよ」
「あああああありがとうございますー!!! ヴォルフスブルクといいます」
「私のことはエリアスと呼んでください。では行きましょうか。ところで『新作』の薬を試してみませんか?」
「ひぃん……それは遠慮します……」
こうしてヴォルフスブルクは街で出会ったちょっと変な現地民(?)に案内されて無事に神殿に辿り着くことができたのだった。
●
その頃、村崎・ゆかり(|“紫蘭”《パープリッシュ・オーキッド》/黒鴉遣い・f01658)とイクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)の二人は神殿を事細かく調べていた。
二人は調べる場所を神殿に絞り、真っ直ぐそこへと向かっている。
ゆかりは観光客として、そしてイクシアはクレリックの冒険者を装っての潜入だ。
「ホロドレスでクレリック用の衣装を再現してみた。どう、ゆかりさん。似合う?」
「うん、イクシアは上手く化けたね。似合ってるよ」
ミニスカなクレリックの姿だが、冒険者を兼ねている聖職者ならまあそう言う事もあるだろうという感じだ。
神の奇跡を操るクレリックは所属としては神殿側に近いだろう。身に付けるものに冒険者としてのアレンジがあろうとも、神の奇跡や加護を受ける以上はパラディンやクレリックは敬虔なる信徒として、利用できる設備が増える。
それを狙っての変装のようだ。
ゆかりはまっすぐと展示される聖遺物を見に行った。
一枚の布切れがガラスのケースに収められ、両サイドには衛兵が四名が取り囲んで警備を行っている。
布は所々に薄っすらと焦げがついているが、そこ以外は真新しいかのように綺麗だった。恐らくこの美しさが聖遺物の加護なのだろう。しかし布のサイズはフェイスタオル程度であり、用途がわからない。
(布状の聖遺物か。聖骸布かな? って思ったけれど……綺麗すぎるわよね)
ケースの横には由緒の説明を書いた立て札があり、こう書かれてあった。
『神が勇者一行に与え、実際に旅の中で勇者一行が身に付けた装備の一部。その聖なる加護はあらゆる汚れを寄せ付けず、常に美しい。また熱に強い耐性がありドラゴンの炎さえも防いだという』
「ああ、するとマントか何かかしら」
ひとまず納得したゆかりは警備の目を盗み式神を召喚した。ユーベルコード『黒鴉召喚』で召喚されたきわめて発見され難い式神たちは、神殿の天井のほうへ飛び上がっていく。
(これでよし。一羽は上からここを見下ろすようにして監視カメラ代わりにしましょ。残りは神殿の構造を探らせるわ)
黒鴉から送られてくる視界からは、聖遺物という神の遺物を一目見ようとやってきた人々が入れ替わり立ち代わりで訪れる姿が見えている。
「あとは……と」
地元民でもないのに毎日拝みに来ている人がいないかを聞いておこう――そう考えて再び聖遺物を護衛する衛兵の方に向かおうとしたところ、神官を質問攻めにしている女性が目に入った。彼女は黒っぽい髪でサイドテールの髪型をしている。
「今日こそ答えてもらえますか。装備と書いてありますが、あれはどういった装備のどの部位の布なのでしょうか。外套にしては薄すぎて雨風を凌ぐのには向いていないと思います。しかしそういった加護があるのであれば話は変わります。なのに由緒の説明にあるのは汚れと熱に関するもののみですね。つまり――」
「熱心なことは結構なことですが……。エリアスさん、もういい加減にしてください」
神官は心底飽き飽きしたという様子で、逃げる様に退散していった。対してあしらわれたエリアスと呼ばれた女性はため息をつく。
「反応がワンパターンになってきましたね。この街にも飽きてきましたし、そろそろ……」
そう呟いて不意に言葉を止めた。ゆかりに気付いて言葉を止めた様だ。
「なるほど、二人目……。こんにちわ。どうやらここに君たちがいるのは偶然ではなさそうですね。でも、今日はまだです。だから、また会いましょう」
「えっ!? あなたまさか……待って!」
ゆかりは彼女を呼び止めようとしたが、彼女はそのまま人混みに紛れて走り去ってしまった。追いかけさせた黒鴉も途中から振り切られてしまっている。
今のが件のオブリビオンだろうか。
●
クレリックの冒険者に扮したイクシアは『聖遺物』に関する情報を神殿の関係者――この神殿を運営する神官やクレリック――から聞いていた。
聞けた話は展示の横にある看板とあまり差はなく、勇者一行が神から貰った装備らしい事しかわからない。それでもなお、イクシアは神に関する逸話や伝承の教えも併せて熱心に聞いていった。あまりに熱心に学びのために聞かせてほしいと求めるものだから、イクシアは神殿の書庫に入る事を許された。
「神の教えや残された御業を知りたいという気持ち、とてもよくわかりました。貴女には特別に書庫を解放しましょう」
神殿直属のクレリックを付き添わせる条件つきだが、神官の許可による合法的な閲覧だ。イクシアは早速、書庫にある文献を読み漁っていった。
けれど書庫の中には立ち入りが許されない区域があってそこは神殿直属かつ上位の者しか入る事が許されないそうだ。『聖遺物』について隠された情報がありそうだが、合法的な方法ではここまでが限界だろう。
どの神殿にもある地上に残された神の逸話が一通り書かれているが『聖遺物』については情報がまちまちだった。この神殿の『聖遺物』に関しては特に記述が少なく、かつて群竜大陸に赴いた勇者のうちの一人が愛用し、群竜大陸に渡る前に友人に託した事しか解らない。
あとは祝いの席や客人をもてなす時にこの『聖遺物』が登場する事があるという程度だ。
イクシアが本を一通り読みえるころ、外は夕方になっていた。
半日を読書に費やしていたことになる。しかしそれだけ事前調査を行ったのなら人ではないモノに対してもこのユーベルコードが効くかもしれない。
イクシアは聖遺物の前で『ステータスオープン!』を使用した。
するとぴこん、とウインドウが開いて情報が表示される。
●【Item】
聖遺物<祝福されし前掛け>(1/12)
様々な人の手を渡るうちに12の切れ端に切り分けられていった布地。かつての姿から変わり果てもはや見る影も無いが、絶対に汚れない特性と熱を通さない効果は未だに健在。その神秘性は人々が神を信じる拠り所になっている。
「イクシア、そっちの成果はどう?」
「うん。聖遺物に人々に忘れ去られた加護や、知られていない用途がないか確認してみた。神が残した物で間違いないけれど、今はバラバラに切り分けられて本来の役目を果たせないみたい。あと、たぶん日用品の類」
「日用品……?」
「たぶんエプロン……かな?」
「エプロン……そりゃあ神殿側も隠そうとするわね。聖遺物なのは間違いなくても、がっかりしちゃうもの。しかも切れ端かぁ……」
「うん、そうだね……」
ここで二人はいちど情報を持ち寄って情報を整理し、推測を試みた。
それはオブリビオンの関心を引くもの――どんな実験に興味を持ちそうかという事だ。
ゆかりはオブリビオンと思わしき女性と既に遭遇していた。ならば、彼女の聖遺物に対する認識ははっきりしている。
あのオブリビオンはこれがエプロンの切れ端だと気づいていないものの、その正体を解き明かす事に関心を持っていた。使い道を探り当てる事が目的だと仮定するならば……。
「全部の耐性を確認していくつもりかな? 引っ張ったり切ってみたり酸に漬けたり……とか?」
「うーん……確かに防具だと思っていたなら呪詛や雷なんかも撃ち込みそうよね」
こうしてゆかりとイクシアは二人で意見を交わして推測を重ねていった。
●
さて、この神殿の構造だが『聖遺物』を中心に見ると複雑ではない。
正面の神殿の門をくぐり扉を開けるとホールになっている。『聖遺物』はそこを直進した先の部屋になっていた。
聖堂はホールの左側から渡り廊下を進んだ別の建物になっていて、神官やクレリックたちが日々を過ごす宿舎や事務所、書庫などは右側の渡り廊下の先の建物になっている。
つまり『聖遺物』を巡る戦いになるのなら、神殿に入ってすぐのホールと、その奥の部屋になるだろう。『聖遺物』の部屋を始め全体的に天井が高く。ホールと『聖遺物』の部屋の間は扉の上に空気を通す大穴が開いている。そのため実質『聖遺物』のある部屋とホールは天井付近では常に繋がっていた。
壁は高い天井の近くまで装飾が施されており、デコボコしていて死角も多い。加えて壁の近くには太い柱が並んでいるためこれも障害物になるだろう。
「神官さんお布施どうぞっす」
衛兵から話を聞いたあと、衣更着は神殿へ訪れて神官に挨拶をしていた。
それは強奪の事件が落ち着くまでの間スムーズに中に入れてもらうためだ。
『聖遺物』を狙う者がいて、自分はそれを防ぎに来たと衣更着は経緯を話したがその話を保証するものを持っていない。
とはいえ『聖遺物』に執着する者がいることは神官も承知している。なにしろ|今日も《・・・》、先ほどまで質問攻めにあったばかりだったからだ。三か月ほど前からこの街に滞在しだした変わり者。しかも毎日やってきては妙に細かいところを質問攻めにしてくる始末。
神官は心労を溜め込んでいた。
「よかったら……もう少しお布施どうっすか」
衣更着はさらに多めに渡す。神官も人間だ。心が弱れば欲に押される。しかも少しの間とはいえ警備を手伝ってくれるというのだから縋ってみるのも良いのではないだろうか。
「……わかりました。ただし、神殿直属のパラディンを二名随伴させますよ。あなたを信じない訳ではありませんが、冒険者は身元の保証が弱いためどうかご理解いただきたく」
こうして神官は一般解放していない時間に衣更着が出入りする事と、警備のための仕掛けを増やすことを許可した。これは神殿で働く者に十分周知した上で合法的に仕掛けを施すことが出来るということだ。
こうして衣更着はパラディンの監視のもと神殿の中に罠や偽の通路を仕込むための準備を進めていった。
罠は壁の上の部分や壁の近くの柱の陰に何かを置けるだろう。ホールの内装や色を少し変えて何処を向いても同じ景色に見せたなら『聖遺物』のある部屋の方向を解らなくすることも出来そうだ。
またこの神殿内の調査の中で衣更着は罠を仕掛けられそうな場所に既に別の罠がある事に気が付いた。
オブリビオンが爆薬を仕掛けていたのだ。
薬品の量や仕掛けた位置から推測するに、左右の渡り廊下を潰しつつ外に逃げる穴を作るものになっているようだ。
(思い通りにはさせないっすよ!)
衣更着はその爆薬の仕掛けを取り除いた。
あとは『聖遺物』の部屋に偽物を置かせてもらうくらいだろうか。
何をしても絶対に汚れないという特徴と熱を通さないという特徴は再現できるのだろうか?
衣更着は『嘘』を仕掛けてそこに興味を持ってもらおうと考えていた。ちょうど忍者屋敷やトリックアートハウスのような仕掛けだ。
(新しいこと調べるの面白いっすよね! でも人に迷惑かけるのはダメっす! そして、答えから逆算された嘘を楽しんでもらうっす)
この事件がなるべく平和に終わる様にと、そんな願いを込めながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『エリアス・アルティスタ』
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POW : 猟兵がどういうものなのか、見せてください
自身の【持つ『賢者の石』】から【神秘的な輝き】を放出し、戦場内全ての【自身を除くユーベルコード】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
SPD : 私が見たいのは、ありのままの君たちです
自身の【持つ『賢者の石』】から【神秘的な輝き】を放出し、戦場内全ての【自身を除くユーベルコード】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ : なにが君たちを突き動かすのか、見せてください
自身の【持つ『賢者の石』】から【神秘的な輝き】を放出し、戦場内全ての【自身を除くユーベルコード】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
イラスト:にこなす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リサ・ムーンリッド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●望む事象を観測するには
――予知にあった『聖遺物』が盗まれる日がやってきた。
この日までオブリビオンは不気味なほど沈黙を保ち、その間に猟兵側は事前の準備を進める事ができていた。お互いに得た情報は|共有し終えて《リプレイになって》『聖遺物』にも異常はなし。
そして当日。夜になり静まり返った神殿の入り口に『エリアス・アルティスタ』が現れた。
「神殿内の仕掛けは取り除かれていますね。まあ、あれは侵入と逃走で警備をかく乱するためのもので元より猟兵対策ではありませんでしたから、仕方がありません」
手元の赤い石が光ると地面が隆起して閉ざされた神殿の門を破壊する。その後隆起した地面は塵となって地面は元に戻り、破壊された門のみがそこに残る。
次に再び赤い石が光ると、今度は盾を備えた魔道具のドローンが数個創造された。これらはすべて『賢者の石』を用いた創造で、ユーベルコードではない。
「この街で試したかったことはほとんど試し終えて飽きが来ていたところです。あとは神の遺物をいただくのみ……そんなタイミングで猟兵がやってきました。でも私はあえて予定を変えませんでした。それは君たち全員に会うためです。ふふふ……今夜は楽しくなりそうですね」
そう言って、彼女は玩具を見つけた子供のように無邪気に微笑むのだった。
村崎・ゆかり
&&&
イクシア(f37891)と
こんばんは、好奇心の使徒。
|反《アンチ》ユーベルコードか。あたしも似て非なるものを持ってるわ。先に使われた以上、使ってみせられないのが残念。
で、この程度の聖遺物に執着してるんだって? ダサい。ただ不燃と油防止程度しかないよ、これ。
切る事も出来れば電撃も素通し。何ヶ月もかけて追い求める程のものじゃない。
それより『絶対物質ブラキオン』って知ってる? この世界で、神ではなくオブリビオンが作り出した究極存在。
知りたい? 知りたいかな?
あれはもう三年前のこと。猟書家の“大天使”ブラキエルが、猟兵との戦いに投入したの。あれは本当に絶対不壊だった。こんなちゃちな布と違ってね。
イクシア・レイブラント
&&&
ゆかりさん(f01658)と。
POWで判定。
はじめまして。私はレプリカントのイクシア。あなた、名前は?
ドローンを追従させるなんて、この世界では珍しいね。
どこで見つけて、どういう機能を持たせているの?
私のドローンはね。映像を撮影したり、立体映像を纏わせたりする機能を持たせているの。
異世界からの持ち込み品だけど、手に取ってみる?
ねえ、あなたも私たちの側に来ない?
様々な世界の多種多様な猟兵たちの能力はあなたにとって興味深いだろうし
一緒に依頼に行けば、ゆかりさんが見た絶対物質の実物を目にすることもあるはず。
退屈しないと思うのだけど。どうかな?
家綿・衣更着
&&&
自身の一部でもある「打綿狸の綿ストール」を切り(髪を切る感じらしい)、内部を熱を通さないエアロゲルシート外を汚れない超撥水ポリマーの性質、見た目聖遺物の布に【化術】変化
妖怪煙を大量に広げ【化術】【幻影使い】【催眠術】で幻覚を重ね、ホールの内装や色を変えトリックアートで【おどろかす】、【罠使い】で忍者屋敷な迷子空間を形成
聖遺物の偽物と、これまで行った世界で得たメガリス、UDCオブジェクトなど興味引きそうな品を配置
「どーも、狸忍者の衣更着と申しまっす!存分に驚くといいっす!」
UC『妖怪忍法葉っぱ乱舞』で断続的に敵UCを誘発させ、自滅を狙う
【結界術】でパラディンは護る
「楽しんで貰えたっすか?」
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「敵には対処し駆逐して撃滅する」
『アプロディーテ・フューチャーサイト』を起動して1分先の未来を見ようとすると“ERROR”と表示されて困惑するも次にファンネルビットを創造して展開しオールレンジ・フォーメーション・アタックを仕掛けます。
創造が不可能なら手持ちの10機のファンネルビットとリニアロングボウとレーザービームで攻撃を仕掛けます。
「猟兵はUCで優勢にはなっても、過信はしない」
と宣言して可能な通常攻撃と超高速移動と回避を駆使して周囲の猟兵とのれね機を取りながら対応と状況を瞬間計算して行動をします。
ファンネルビットが創造して展開し出来れば間段無い総攻撃を仕掛けます。
ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン
&&&
ひぃん…助けて頂きましたがそれはそれ、これはこれという事で…
なんだかユーベルコードが封じられているような気がします…う~ん…すごく…すごく厄介ですね…!
ユーベルコードに頼らないでなるべく機動力を活かして戦いましょうっ
壁とかをずばっと走ったり置いてあるものを足場にして飛び回ったり剣でえいぃっや!と斬りかかったり!
そして時には飛空艇に変身して|周りに飛んでいるの《ドローン》を砲撃とか体当たりをしゅばばばっとやっちゃいましょう!
飛空艇に変身できるのはユーベルコードではないですので!容赦なくどーん!ですっ
それにしても…なんだかすごく…すごく幸運な気がします…!戦闘中に悪い事が起きないのでっ
時は襲撃の少し前に遡る。
最初の調査のあと、オブリビオンの『エリアス・アルティスタ』はいつも通りの日々を過ごしていた。
シーフたちや猟兵からの監視にも異常はなく姿を隠す様子もない。強いて挙げるなら人の多い所に常に紛れて居たため猟兵から攻撃を仕掛ける事が困難だった事が問題だった。街から出るでもなく『聖遺物』の強奪を早めるでもなく、ただその時が来るまで時間が過ぎていったのだ。
「よし、こんなものっすかね」
家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は手の中にある『聖遺物』にそっくりな布を広げた。
これは彼の体の一部であり髪の毛のような『打綿狸の綿ストール』を切って化術を施したものだ。ユーベルコードを使わず妖力でこれだけの事をしてしまうのはさすが妖怪と言ったところだろう。この技を見るパラディンたちからは感嘆と畏怖が混ざる反応が現れる。それはこれほどに『聖遺物』を模倣できる事実が神殿側にとっても脅威だったからだ。
とはいえ、彼らもこの|冒険者《猟兵》たちが『聖遺物』を守るためにここに居ることはわかっていた。何より本物の『聖遺物』はパラディンが持っている事もあり、警戒こそするもののパラディンたちに敵意は無い。
時刻は0時をまわった深夜。空は新月で月明かりもなく真っ暗だ。
神殿の中も最低限の灯りしかなくて薄暗く、しかし今回は神殿側に話がついているので猟兵たちが夜中に神殿に入り込んでも警備を刺激せずに済んでいる事は大きい。
衣更着は偽物の『聖遺物』をガラスケースに安置すると、続けて正面のホールに出て『演出可能な妖怪煙』をもくもくと撒いていった。その煙は様々な壁を作り出し迷子空間を形成していく。しかしそのままであればただの幻影。煙に催眠の効果を含ませて「実際に壁があって進めない」ように感じさせなければならないだろう。
(催眠術がどこまで効くかは分からないっすけど……)
罠や悪戯の要領で驚かすような仕掛けを加えれば、違和感を意識させずに催眠の効きを長引かせる事は出来る。そしてそういった化かしは妖怪の得意分野だ。妖力を用いないトリックアートの錯覚も混ぜ込めば、神秘とそうでないものの二段構えで相手の認識を惑わせられるかもしれない。
そしてこの迷子空間の各所には他の世界で得たなるべく無害なメガリスやUDCオブジェクトを配置していった。これらも少しでも足を止められたらと考えてのことだった。
さてオブリビオン側が予定を変えなければ今夜には襲撃があるはずだ。
他の猟兵たちもそれぞれの配置について迎え撃つ準備を整える。
そのときドン、と地響きが起こり外から鉄が軋んで岩が砕ける音が響いた。
――外で神殿の門が破壊されたのだ。
幸いなことに神殿の近隣は商店ばかりで夜には人が居なくなる。そのため音を聞いて出て来る者も居ないだろう。
ならばこの状況で扉を開ける者は十中八九、彼女しかいない。
衣更着はパラディンたちの周囲に結界術を施した。区切られた空間領域は中に居る者を目立たなくさせて魔法や呪術に対する抵抗を上げてくれる。巻き込まれ難くなるはずだ。
●
キィ、と扉が開くと『エリアス・アルティスタ』が入って来た。
彼女は内装を見るや楽しそうに微笑んでこうつぶやく。
「成る程、準備万端というわけですね」
眼前に広がるは妖怪手製のからくり屋敷。
それらはどれも|アックス&ウィザーズ《剣と魔法と竜の世界》には無い要素で出来ていた。
「てっきり入室するや攻撃されるものと思っていましたが……なるほど、こう来ましたか」
エリアスは周囲をぐるりと見渡すとドローンを真っ直ぐ壁へ飛翔させる。
ドローンは幻影の壁を検知すると一度は止まったが、エリアスが魔力で直進の指示を伝えるとそのまま壁を突き抜けた。
「成る程、実体は無いのですね。幻影の類でしょうか。……ですが人体は通れない、と。ドローンとの違いは意思の有無……すると精神操作の類の可能性も……」
彼女は早速、幻影の壁を分析し始める。
「検証を進めてみましょう」
そういうと、エリアスは壁を思いっきり殴りつけた。ぶつかって傷ついても構わないといった勢いだ。すると拳は煙を殴るように壁を突き抜けた。
見かけと違う現実が現れてしまえば暗示は弱まり易い。以降は壁を無視して直進する事が出来てしまうだろう。
……けれどこれらの仕掛けは閉じ込めるためではなく、時間を稼ぐためのもの。
(ここでどろんはっぱ乱舞っす!)
衣更着はユーベルコードを使用した。『妖怪忍法葉っぱ乱舞』――召喚された多数の葉っぱが衣更着の映像を映しながらエリアスを取り囲む。
「どーも、狸忍者の衣更着と申しまっす! 存分に驚くといいっす!」
その時、赤い石が神秘的に輝いて衣更着の映像が葉っぱに戻された――ユーベルコードが無力化されたのだ。事前の予知のとおりであれば、この力は一日に13分ほど――およそ780秒使えるはずだ。
「今のはユーべルコードでしたか。ですがこの壁は消えていない……。この幻術は元々の能力なのですね」
エリアスは目を輝かせるがそれもつかの間。ドローンを先行させながら壁を突き抜けて直進し始めた。どうやら『幻影の壁』には満足してしまったらしい。
満足したら次の興味へ最短距離で進んでゆく、それが彼女の在り様であるようだ。
ユーベルコードを封じる間、赤い石は創造の時とは異なる神秘的な輝きを放っていた。
それは己の命を削る輝きだ。けれど何を躊躇する事があるだろう。だって目の前には面白そうなものがあるのだから。
その結果が自滅だろうと世界の破滅だろうと|そんな事《・・・・》は彼女にとって知った事ではない。それが自滅と知りながら躊躇なくその力を使う彼女の価値観である。
「ユーベルコードであれば何が起きても当たり前です。当たり前のことは面白くありません。私が見たいのはユーベルコードではないのです。さあ、見せてください。あなた達の能力を」
神秘の輝きが使用できなくなり、オブリビオンが自滅するまであと762秒――。
●
「黒鴉が消されちゃったか」
村崎・ゆかり(|“紫蘭”《パープリッシュ・オーキッド》/黒鴉遣い・f01658)は暗い天井を見上げた。
前回の調査の時に天井に放っていた偵察用の式神が消えた。
敵の使うユーベルコードは戦場内全てのソレらを有無を言わさず無に帰してゆく。ゆかりも似たようなユーベルコード無効化の力を持っているが、そちらは敵味方を巻き込む事と冷気で付与する『状態異常』なのがデメリットだ。つまり味方も影響を受ける可能性がある上で、敵に効かない可能性や途中で回復される可能性がある。それに比べると確定で無力化してくるこの赤い輝きは強力な効果と言えるだろう。
けれどもし、ゆかりがその無効化のユーベルコードを先に使って相手をうまく状態異常にする事が出来たならこの討伐はもっと簡単になったかもしれない。
(先に使われた以上、使ってみせられないのが残念)
ゆかりがそう思っていると、隣にいるイクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)が敵の接近を知らせてくれた。
「そろそろ来るよ。幻影の壁を無視して歩いてる。時々仕掛けに騙されて横に逸れてるから、迷路を無視してる割には時間かかってるけれど」
イクシアは偵察用ロボット『イクシア・ポリスタキア』から映像を受け取っていた。これはユーベルコードではないため無力化されずに使う事ができるのだ。
二人がいるのは衣更着が作った迷子空間の出口。彼女たちはそこで時間稼ぎをするつもりだった。
その迷子空間はトリックアートを混ぜ込んだことで幻影を見破られてもなお方向感覚をひたすらに狂わせている。そこに脅かしを混ぜることであちこち振り向かせ、更に方向感覚を狂わせているのだ。
その結果、ホールは広いとはいえ真っ直ぐ歩けば本来は1分もかからないというのに十分な時間稼ぎが出来ている。加えてエリアスは壁は無視するのに途中で知らない仕掛けを見つけたらその仕組みの分析に時間を割いていた。
もちろん衣更着は定期的にユーベルコードを発動させて妨害することも忘れない。それによって相手に継続的にユーベルコードを使わせており、それは使用の残り時間を着実に減らす結果につながっていた。
まもなくイクシアの言ったとおり二人の前に幻影の壁を突き抜けてエリアスが現れる。
「どうやら迷路はここまでのようですね、次はあなた達ですか」
「こんばんは、好奇心の使徒」
「はじめまして。私はレプリカントのイクシア。あなた、名前は?」
「ええ、こんばんは。私のことはエリアスと呼んで下さい。さて次は何を見せてくれるのでしょうか」
敵と対峙した二人は武器で戦うようなそぶりがない。どうやら二人は会話で時間稼ぎをするつもりの様だ。
神秘の輝きが使用できなくなり、オブリビオンが自滅するまであと479秒――。
●
次の時間稼ぎは会話だ。これは話題と言葉の選び方が重要になるだろう。
ゆかりは相手が先日まで執着していた『聖遺物』をトリガーにしようとしていた。まずは否定と貶しから入って相手の冷静さを奪おうとする。
「で、この程度の聖遺物に執着してるんだって? ダサい。ただ不燃と油防止程度しかないよ、これ。切る事も出来れば電撃も素通し。何ヶ月もかけて追い求める程のものじゃない」
「ああ、そういえば『聖遺物』もありましたね……。手に入ったら今聞いた情報も確認してみましょう。どういう装備で何に使われていたのかを解き明かすヒントになるかもしれません」
しかし確認する過程を楽しむ彼女にとって結果は重要ではない様だ。何を言っても「では試してみましょう」で終わってしまう。
ゆかりは話題を変えることにした。
「『絶対物質ブラキオン』って知ってる? この世界で、神ではなくオブリビオンが作り出した究極存在」
「聞いたことはあります。聞くところによると『未知の単一原子』で出来ているとか。恐らく『天上界』に辿り着けば何かしらの情報を得る事ができるでしょう。天上界は私が『聖遺物』を求める第二の目的でもあります」
「天上界に行かなくても多少はわかるわよ。だって、私はそのブラキオンで出来た鎧を着た相手と戦ったんだから」
実物が無い以上は実物に触れた者の情報は貴重である。特にエリアスにとって実際に攻撃した時の様子は気になる事だろう。
「知りたい? 知りたいかな?」
「是非お願いします。猟書家は侵略の過程でこの世界に痕跡を残しました。ですがそれは数は多くても質はなく、どれも十分ではありません」
「じゃあ言うわ。よく聞いて? あれはもう三年前のこと。猟書家の“大天使”ブラキエルが、猟兵との戦いに投入したの。あれは本当に絶対不壊だった――」
ゆかりはこの話で時間を引っ張った。この話の中でエリアスは特に『輝石の欠片』と『聖なる木の葉』の影が有効だったことに強い興味を持つ。彼女はその特性から単一原子の正体を推測しようと試みたが……やはり現物がなければ推測の域は出ないだろう。
その話は彼女の興味を引き確実に時間を稼いだ。しかしその間ユーベルコードが必要な場面が無かったため敵側は使用を中断して残り時間を節約してしまっていた。敵のユーベルコードを誘発させていれば倍は時間を削れていただろう。
「君からは貴重な話を聞くことが出来ました。そのブラキオン、是非とも私自身の手で作り出してみたいものです。そのためには天上界ですね」
そう言ってエリアスは『聖遺物』のある部屋へと歩もうとした。
どうやら興味の対象が、猟兵>聖遺物>天上界だったのが天上界(ブラキオン)>聖遺物(天上界のヒント)>猟兵と変化したらしい。
神秘の輝きが使用できなくなり、オブリビオンが自滅するまであと356秒――。
●
「では、私は先を急ぎますので」
そう言ってエリアスが『聖遺物』のある部屋へ行こうとした時、今度はイクシアが相手の興味を引く話題を投げた。
「ドローンを追従させるなんて、この世界では珍しいね。どこで見つけて、どういう機能を持たせているの?」
「これですか? これは私が昔設計したものです。魔力を通す回路を組み込んだ魔法金属で出来ていて、特定の魔力操作で風の魔法が発生して浮く仕組みです。条件式も書き込んであるのである程度オートで動きます。他には光の魔法を組み込んで映像の撮影と投影に特化させた動画撮影ドローンもあったのですが、それは欲しがっていた人にあげました。確か彼女の名は嫉妬がどうとかの……うーん、うろ覚えで思い出せませんね」
「そうなんだ。撮影できるタイプもあるのはすごいね。私のドローンも映像を撮影したり、立体映像を纏わせたりする機能を持たせているの。異世界からの持ち込み品だけど、手に取ってみる?」
「ほう、異世界の。私の設計したものとはどう違うのでしょう。見せてくれますか」
食いついた。
先の忍者屋敷でもそうだったが彼女は珍しい技術には興味津々だ。さらにそれがこの世界に無いものであればさらに目を輝かせるようだ。
イクシアが『強行索敵型デコイドローン』を渡すと、エリアスは赤い石で道具を創造して分解を試み始める。
その姿を見てイクシアは異世界の知識での足止めは有効だと確信した。だから、どこまで行動を制限する条件を引き出せるだろうかと試しにこんなことを提案してみた。
「ねえ、あなたも私たちの側に来ない? 様々な世界の多種多様な猟兵たちの能力はあなたにとって興味深いだろうし」
「それは興味深いですが、君たちと行くのは止めておきます」
興味深いと言いながらも、エリアスは断った。
「何故ならそれは研究に制限がかかるからです。君は、私が他の世界の種族の解剖や生体実験を自由に行う事を保証してくれるのですか? この世界の種族は生前に十分構造を調べたのでもう解剖は不要です。けれど他の世界に行ったなら身体の構造の確認は外せません。なるべく動いている状態が見たいので、生きたまま切り開きたいのですが」
つまりこの街で具体的な被害を出さなかったのは生前に人体を調べ尽くして飽きていたからなのだ。
しかも表情は何も悪びれていない。それらの実験が社会に許されないとわかっていても、それは実行しない理由にはならないのだ。その知への探求心には『傲慢』さが垣間見えていた。
事をむやみに荒立てないのは相手を思いやっている訳ではない。ただ、邪魔されたくないからに過ぎないのだ。
「……それは流石に、約束できないし見過ごせないね」
「でしょうね」
そう返答しながらエリアスは赤い石を光らせて石壁を創造する。それは不意打ちとなってイクシアを吹き飛ばしてしまった。
「今のを聞いたら大抵の人は私を敵だと考えます。ドローンは興味深かったけれど、君たちはもう穏便に対応してはくれないでしょうね」
エリアスは石壁を乱立させてゆかりの妨害を行いながら、『聖遺物』のある部屋へ入っていった。
神秘の輝きが使用できなくなり、オブリビオンが自滅するまであと232秒――。
●
この部屋では中のガラスケースに『聖遺物』が収められている。
とはいえ、それは既に偽物にすり替わっているのだが……見るだけでそれを見破るのは難しいだろう。
さて最後の防衛ラインとしてオブリビオンを待ち構えていたのはティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)とヴォルフスブルク・ヴェストファーレン(鉄の狼・f34026)だった。
この二人は攻撃の手数で足止めをして、ユーベルコードを使わせつつ時間を稼ぐ算段である。故に『エリアス・アルティスタ』が部屋に入るや猛攻が始まった。
ティティスは『ファンネルビット』を展開すると『ロングリニアボウ』や『アームドフォートレスダブルキャノン』と共に一斉に射撃を開始する。
「敵には対処し駆逐して撃滅する」
しかしその攻撃には少なからず困惑があった。何故なら事前に使おうとしたユーベルコード『アフロディーテ・フューチャーサイト』――1分先の未来を予測する能力――が<< "ERROR" >>とだけ表示されて機能していないためだ。
加えて一斉射撃が敵が創造する壁に阻まれてしまう。それは石の壁に魔力を纏わせたもので、物理とエネルギー両方に対応する防壁であった。
「どういう攻撃か良く解らなかったので念のため両方に対応しましたが、質量攻撃とエネルギーの同時攻撃できましたか……。ならこれはどうですか?」
すると辺りに細かい水が霧となって広がっていく――。
「光エネルギーの方はこれで威力が落ちるのではないでしょうか」
――レーザー対策だ。出力を上げれば突破できるものの、光が屈折しやすいためレーザーの威力と命中が低下しやすい。しかもこの環境は視界も悪くなっている……。
霧の中、壁の裏から爆薬を抱えたドローンがティティスへと襲い掛かってきた。
空中から迫る飛翔音。……それを察知したティティスは瞬間思考力で飛来物のくる角度を計算すると、推力で空中へと躍り出て回避した。
「猟兵はユーベルコードで優勢にはなっても、過信はしない」
――過信をせずユーベルコードに頼り切っていないのだから、このくらいは対応して見せるという宣言だ。
ティティスが空中へ飛び立てば相手の防御の壁もシェルター状に変化して上からの攻撃に対応しはじめた。ティティスは迫るドローンを回避しながらレーザーで迎撃して反撃とばかりに反撃のレーザーを撃ち込んでいく。防御は貫けなかったが、『アプロディーテ・フューチャーサイト』が<< "ERROR" >>を返す限りは相手もユーベルコードを使っており、タイムリミットも減ってゆく。
けれど霧の奥から次々と攻撃のドローンが生み出されては終わりがないかのようにティティスへ襲い掛かってくる。それらは搭載するものが爆薬から薬品へと変わっていった。神経毒から溶血毒、硫酸や強酸と毒は弱点を探るように変化しており、しかも途切れなく飛んでくるのだ。
このドローンは避けてもターンして追いかけて来る上に下手に迎撃すると薬品をかぶりやすいので。攻撃に専念し難い。
なんとかファンネルビットまわり込ませて壁の向こうへ反撃しようとするが、ビットはシールドを備えたドローンに妨害されて敵の本体になかなかダメージを与えられずにいる。
「空中を自在に飛べるとはとても面白い能力ですね。どういう仕組みなのでしょう。武器や防具も知らない世界の技術の様ですし、ああ、もっといろいろな事を試したい……」
エリアスは推力で空中戦をこなすティティスへと興味を向けていた。
神秘の輝きが使用できなくなり、オブリビオンが自滅するまであと186秒――。
これをあと3分近く続けるのは厳しそうだ。……だが、それは戦うのが一人しかいない場合である。
●
ヴォルフスブルク・ヴェストファーレン(鉄の狼・f34026)の奇声がこだました。
「ヴェアアアアッ!!」
彼女は『スカイソード』を手に天井の梁から飛び降りると壁を蹴って軌道を変えながらエリアスへ斬りかかる。創造したドローンは全てティティスとの撃ち合いに投入されているため、石のシェルターに籠るその状態は近接戦闘の恰好の餌になっていた。
「えいぃっや!」
「……っ!」
振り下ろされる剣を生成した盾で防ぎながらもよろめくエリアス。すると、シェルターから体が出てしまった。そこをすかさずティティスが狙い撃つが、その攻撃は新たに創造された障害物で防がれてしまう。けれど、その隙にヴォルフスブルクが再び間合いを詰めていった。
距離を詰めて敵を間合いに捉えたのだが……。
「に˝ゃ˝あ˝あ˝あ˝あ˝っ……って、ヒンッ!?」
ヴォルフスブルクは床から生えた壁にスポーンと飛ばされてしまった。けれど、弾き飛ばされた先の壁に着地して再び距離を詰めようと壁を走り出す。
(なんだかユーベルコードが封じられているような気がします……! すごく……すごく厄介です……! 厄介なのですが……! なんだかすごく……すごく幸運な気がします……! 戦闘中に悪い事が起きないのでっ)
実はヴォルフスブルクがここまでノーミスで動けている事はけっこう珍しい。では今回はなぜ調子が良いのかというとそれはユーベルコードが封じられている――ユーベルコード『|Glück W《グルックヴェー》』による悪運の解放が発生していない――からである。
無意識に発動するそれは普段は制御不能の悪運をヴォルフスブルクにもたらし不幸にしていたのだが、その効果がない今の彼女は絶好調だ。代わりに逆転の目となる幸運の発生も無いのだが、今回それは必要ないだろう。何故なら現状維持が出来ていれば相手は自滅していくからだ。
それを知ってか知らずかヴォルフスブルクは機動力を活かした戦いを行っていった。
ティティスがレーザーで攻撃して敵を一箇所に縫い付けると、そこに壁の飾りを利用して飛び回るヴォルフスブルクが斬りかかる。籠る壁から外へ弾き出されたら今度はティティスの攻撃のチャンスだ。
神秘の輝きが使用できなくなるまであと131秒――ユーベルコードが無効化された中で互いに決め手に欠ける状態が続いていた。
けれどいつしか先に時間稼ぎをしたメンバーが追い付いて猟兵側の攻勢は激しさを増してゆく。
「今回は『聖遺物』の入手は難しそうですね……。神殿に仕掛けた爆薬が残っていればもう少し容易かったのですが。出直しますか」
エリアスは撤退を決めた。そしてそうと決めたらそこからの行動は早かった。懐からフラスコを出すとソレを四方へと放り投げ、割れて中身が空気に触れると激しい光と大量の白煙が部屋の中に満ちてゆく――。
神秘の輝きが使用できなくなるまであと45秒。オブリビオン『エリアス・アルティスタ』は、白リンの燃焼による強力な照明と発煙、そして煙の毒性による痛みの混乱に乗じてこの場から逃げ出した。
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すぐに追いかければ一時的に追いつくだろう。
賢者の石による創造を掻い潜りながら追いついて、直ぐに動きを封じれば猟兵側の勝ちは確定となる。……ただしユーベルコードを用いずにだ。そうでなければ路地に入られてしまうだろう。
路地に入られてしまえは戦闘の被害が拡大する上に、道を知り尽くした彼女の方が有利となる。
だがそれの逃亡を防ぎ動きも封じる手っ取り早い方法がひとつあった。それは――。
「ヴェアアアアアアアアッ!?」
白煙が立ち込める神殿から奇声と共に一隻の飛空艇が飛び出した。その全長は23m、UDCアースであればビル7階前後の高さになる大きさだ。
エリアスは赤い石から神秘の輝きを放ってユーベルコードを封じようと試みたが、しかしこれはユーベルコードではない。ガレオノイドの飛空艇への変形、種族の能力なのだ。
自動で迎撃に向かったドローンも多くは飛空艇の船体にぶつかって墜落し、残りも砲撃で撃ち落とされていく。
「こんな大きなもの何処から……いえ、これは船……!?」
エリアスは逃げる事も、ドローンの追加の創造さえも忘れて思わず立ち尽くしていた。その瞳は迫りくる飛空艇へと注がれている。
コレは一体どのように飛んでいるのだろう? そもそも何処から現れたのか? そう考えて立ち尽くしてしまったのだ。そしてこのほんの1秒が、逃げ損なう決定的な原因になってしまった。
深夜の大通りは昼間と異なって人が居ない。その広くて長い、滑走路のような空間に一隻の飛空艇が不時着した。
船の下には体当たりを受けたオブリビオンが船底と地面の間に挟まって身動きが取れずにいる。
「間違いなく、これは幻影ではありませんね……。確かな質量を持っています。これがユーベルコードではないというのですか……」
神秘の輝きが使用できなくなるまであと20秒。他の猟兵たちも追いつきはじめ、最早詰んだ状態だ。
「ひぃん……先日は助けて頂きましたがそれはそれ、これはこれという事で……」
「成る程。君だったのですね。ふふ……。やはり君は面白いです。知らない種族だと知っていれば薬で眠らせて解剖していたのに……残念です」
「ヒェッ!?」
「……今日は色々と新しい事が知れました。やはり知るためには見ているだけではだめですね。実際に触れて、様々な反応を観察しなければ。惜しむらくはこの記憶が別の私に引き継がれない事――」
オブリビオンの身体は消滅し始めていた。ユーベルコードの1日の使用時間が780秒を超えたのだ。
こうして今回の『エリアス・アルティスタ』は消滅していった。
猟兵たちの活躍によりこの街の『聖遺物』は無事に守られた。
人的な被害はゼロで、建物の被害も神殿が壊されたのみ。『聖遺物』ももちろん無事だ。
今回の襲撃は『聖遺物』そのものに興味を持ったオブリビオンが狙ってきた形だ。しかし、このオブリビオンは『天上界』の探索も目的に含んでいた様だ。
『聖遺物』はかつて猟書家が天上界を探す手掛かりとして狙ったことがあるものだ。聖遺物はいずれも形状や経緯が異なっていて、それこそピンからキリまである。しかし神が残したものという点は共通していて、天上界と無関係ではないのだろう。
であれば、聖遺物と関わっていくことで猟兵もまた『天上界』に近づけるのかもしれない……。
大成功
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