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ティタニウム・マキアの再動

#サイバーザナドゥ #高濃度汚染地域 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

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#サイバーザナドゥ
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#高濃度汚染地域
#巨大企業群『ティタニウム・マキア』


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●コラキ
 金が必要だ。
 生きていくには金がどうしたって必要なのだ。
 金よりも大切なものがあると言う者がいる。けれど、金以上にこの世において大切なものなどないと己は思う。
「例えば生命とか」
 生命在っての物種っていうじゃん、と運び屋『ヘリドー』は言った。
 けれど、自分にはどうしてもそうだとは思えなかった。
「そうは言うが、価値あるものは全て金でどうにかなる。金でどうにかできないものは、金でどうにかできてしまう。それは間違いではないだろう。この世界にあっては特にそうだと思わないか。金こそが世界を回しているんだと実感しないか」
 例えば、巨大企業群。
 これもまた金の集大成であるだろう。
 金を得るために最適化されたような合理主義。

「盛者必衰の理ってあるじゃない。どうあっても隆盛を極めたのなら、必ず衰退していく運命なんだよ。あの巨大企業群『ティタニウム・マキア』だってそうだったんだから」
 それは知っている。
『安心・安全を売る』巨大企業群『ティタニウム・マキア』は衰退の一途だ。
 けれど、と思うのだ。
「人生山あり谷あり、とも言うじゃあないか。なら、『ティタニウム・マキア』もまた今が谷間なだけで、後は登っていくだけなのではないか」
「それは否定できないけれど、巨大企業群同士がひしめき合っている今じゃあ、『ティタニウム・マキア』は食い物にされるだけじゃあないの?」
 それもそうかもしれない。
 己、『コラキ』はそう思った。

「弱っているところを助ければ、恩返しがあるかもしれない」
「なにそれ、そんな都合のよいことがあるわけがないじゃない。流石に人の善性に夢見すぎ。そんなこと言っていないで真っ当なことをしなさいよ」
「そうだな」
 確かに、そうかもしれない。
 けれど、『コラキ』はそれでは間に合わないのだ。
 己の弟の義体化手術には金が要る。

 弟は生まれながらの難病を患っている。
 それはこの汚染物質の雨が降る世界にあっては致命的であった。呼吸器だけではなく、他の体の部位も義体化しなければ生きてはいけないのだ――。

●鴉
 サイバーザナドゥにおいて『稼げる仕事』というのは限られている。
 多くは巨大企業群に務めることが勝ち組のルートではあるが、そのルートに、レールに乗れなかった者、もしくはこぼれ落ちてしまったものたちは金を求めるのならば法に背く行いもしなければならない。
 別に咎められたとて、仕方のないことであるが、誰もがやっていることだった。
「さあ、乗ってくれ」
「『コラキ』よぉ、今度もあの『高濃度汚染地域』を通過するのか?」
「ああ、そうだ。何か問題でもあるか」
『コラキ』と呼ばれた青年の言葉に傭兵たちは頭を振る。
 そうじゃあない、と。
「別にいつものことだからな。だが、あの積荷はなんだ。『棺桶』じみていて気味が悪い」
「そうか? 別にオレやあんたたちが入るわけじゃあない。『棺桶』といっても、あの大きさだ」
「だからだって。ありゃあ、巨人の『棺桶』だな。それくら積荷がでけぇと面倒だってことだよ」
「金払いは良いだろう」
「そうだが……」
「なら、話は終いだ。いくぞ」
 そういって『コラキ』は武装トラックの運転席に座り、エンジンを始動させるのだった――。

●対決
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の予知はサイバーザナドゥ……この世界における『稼げる仕事』の一つが長距離運送業であることはご存知でしょうか?」
 そう、サイバーザナドゥにおいて最も勝ち組と言えるのが巨大企業群に務めることである。
 しかし、それ以外にも法外な報酬を得る事のできる職業がある。
 例えば『殺し屋』といったイリーガル。
 そこに加わるのが長距離運送業である。

「その長距離運送業の武装トラックの一団が目的地を前にして巨大企業群のオブリビオンに殺されてしまう予知を見たのです」
 そう、ナイアルテはそうした違法な長距離運送業に携わる者たちが大量の骸の海に長期間に渡って汚染された『高濃度汚染地域』を突っ切ろうとして、トラブルに見舞われてしまい、オブリビオンに襲撃され生命を落とす予知を見たというのだ。
 この『高濃度汚染地域』は全身機械化義体の者ですら踏み入ることを忌避とする危険地帯である。当然、巨大企業群も手出しすることを厭うている。
 つまり、長距離運送業に従事する彼らにとって、この『高濃度汚染地域』を突っ切るのが一番早い、のである。
 安全かどうかはこの際置いておく。

「彼らの武装トラックに臨時の傭兵として皆さんは乗り込み、彼らの『仕事』の完遂を手伝って欲しいのです」
 それに、とナイアルテは続ける。
「道中には『高濃度汚染地域』とは思えぬほどの見事なバイオカワヅザクラが咲き乱れているのです。休憩時には花見をしてもよいでしょう」
 危険地帯を往くというのに、そんな悠長なことを思えるだろうかと猟兵たちは思った。
 それに肝心なのは『トラブル』である。
 長距離運送業の彼らを襲う『トラブル』とはなんなのか。
 普段から『高濃度汚染地域』を突っ切る彼らが頭を抱えるほどの『トラブル』とは一体なんなのか。

「それは……『高濃度汚染地域』から湧出する謎の恐竜型の機械獣の襲撃です。体高5mはあろうかという謎の恐竜型機械獣は、これまで現出していなかったようですが、突如として今回出現するようです。まるで長距離運送業の武装トラックの積荷に引き寄せられるように」
 それが一体なんなのかはわからない。
 けれど、これを振り切って突っ切らねば彼らの『仕事』は完遂できない。
 それどころか、目的地を目前として巨大企業群傘下のオブリビオンが襲撃してくるのだ。これを撃退して長距離運送業の彼らを助けなければならない。
「確かに危険地帯に自ら赴くのは彼らの責任なのでしょう。ですが、そこにオブリビオンが関与するというのならば話は別です。どうか、彼らの『仕事』を完遂させてください」
 そう言ってナイアルテは猟兵たちを送り出すのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 サイバーザナドゥの骸の海によって長期間に渡って汚染された『高濃度汚染地域』を突っ切ることを生業としている長距離運送業たちを狙うオブリビオンの策動を阻み、彼らの仕事の完遂を手助けするシナリオになっております。

 長距離運送業は武装トラックで積荷を目的値に運ぶ仕事です。
 労働環境は極めてブラックですが、荒れくれ者たちが揃い踏みであり、彼らはそれなりに戦闘力を有しています。
 とは言え、『高濃度汚染地域』にてこれまでなかったトラブルに悩まされ、目的地を目前にしてオブリビオンの襲撃にあって生命を落とす予知がされています。
 彼らを助けましょう。

●第一章
 日常です。
 皆さんは臨時傭兵として武装トラックに乗り込みます。
 荒れくれ者たちと共に危険な旅路に向かいますが、全てが危険というわけではありません。
 休憩地点にはバイオカワヅザクラが咲き誇る傭兵たちにとっては名所が存在しています。
 比較的安全です。
 此処で積荷の情報を集めたり、また花見を単純に楽しむこともできるでしょう。

●第二章
 冒険です。
『高濃度汚染地域』は機械化義体を全身に装備した者ですら危険な場所です。
 ここを突っ切って行く武装トラックですが、その積荷に引き寄せられるようにしてあたりから突如として湧出する恐竜型の機械獣たちの襲撃に遭遇します。
 このトラブルに対処し、足止めされてしまう時間を短縮しましょう。
 手間取れば手間取るほどに汚染物質の被害を傭兵たちは受けてしまいます。

●第三章
 集団戦です。
『高濃度汚染地域』を突破した皆さんと武装トラックに待ち構えていた巨大企業郡傘下のオブリビオンが待ち構えており、襲いかかってきます。
 彼らは積荷が目的地に到達することを阻止しようとしています。
 傭兵たちもそれなりに戦闘力を持っていますが、オブリビオンにはかないません。
 彼らと共にオブリビオンを蹴散らし、仕事を完遂しましょう。。

 それでは危険と知りながらも、金のために危険地帯に飛び込む命知らずの傭兵たちと共に高濃度汚染地域の恐るべきトラブルに立ち向かう皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『バイオカワヅザクラは夜に映える』

POW   :    花より団子。飲み物や食べ物を楽しむ

SPD   :    決定的瞬間を見逃さず記念撮影する

WIZ   :    バイオカワヅザクラを目で愛でる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「おい、見ろよ。見事に咲いてるぜ」
 傭兵たちは武装トラックの窓から外を覗く。
 その言葉の先にあるのは見事な『バイオカワヅザクラ』の咲き乱れる様であった。
 掃き溜めに鶴と言えばいいのだろうか。
 確かに此処が『高濃度汚染地域』の入口であることを忘れさせるような光景であった。
 スモッグが晴れ、そこだけが別世界のようであった。
 言うなれば、桃源郷のようである。
 しかし、この世界に生きる人々は、そんなものを知る由もない。
「休憩だ。置いていかれたくなかったら時間は守れ」
 武装トラックのドライバーである青年『コラキ』は言う。
 長らく武装トラックにすし詰め状態だったのだ。ある程度息を抜くために汚染物質……骸の海の濃度が薄い場所で休憩するのだ。
 とは言え、長居は無用である。

 とは言え、見事な咲きっぷりである。
 花見をしてもいいだろう。
 他にも何か気になることがあれば、猟兵たちは各々、限られた時間のうちに行動を行うこともできるだろう。
「30分後に出る」
 短く言う『コラキ』の言葉に傭兵たち共々猟兵たちは武装トラックから降り立つのだった――。
才堂・紅葉
アドリブ・連携歓迎

「金金金。どこの世界も世知辛いわね」
命を的にリスクを負って大金を狙う面子を見やる
自分だって金の亡者の一人なので言うべきことはない
先立つものが無ければ何も出来ないののは真理の一つだ

「でも、まぁリスク管理とは別物なんだけどね」
好奇心は命取りであるが、猜疑心は命を救う。後盾の無いフリーランスには必須の感覚だ
多少の金銭を投じ、コラキ君やその同業者から【情報収集】を行う
特に今回の意見を敢えて受けなかった運送業者との伝手を得て、今回の仕事の背景について調べておきたい



 金。
 金がなくても生きていけるのは社会から隔絶した世捨て人だけであろう。
 自立というのはそういうことである。
 生きるも死ぬも他者の介在を許さぬ生き方だけが、そう呼ばれるのならば、自立を助けるのはやはり金である。
 故に人は金を欲する。
 貨幣という価値基準を持ち得ながら、しかしてそれ以外のモノの価値もまた認める所という矛盾を孕むものである。
「金金金。どこの世界も世知辛いわね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は武装トラックの荷台にすし詰めにされ、揺れる体のままにサイバーザナドゥ、高濃度汚染地域を往く。

 流れる景色を……なんてごきげんなドライブではない。
 周囲には骸の雨に汚染された景色ばかりが広がっている。
 無数の廃棄物。
 機械か、それともただの産業廃棄物かも見分けがつかぬ程に汚染された大地は何処まで行っても、この世界が緩やかな滅びに向かっていることを予感させるものであった。
 周囲を見れば、傭兵たちであろう荒くれ者たちがいる。
 紅葉は臨時の傭兵としてこの武装トラックに乗り込んでいる。そんな彼女が物珍しいのだろう。言葉を発しなくても、視線でわかる。
 値踏みされているな、とも紅葉は思う。
 こちらが彼らを見ているのと同じように、自分もまた金の亡者であると思われているのだろう。
 
 間違いではない。
 言うべき事は何一つない。
 生命のリスク。
 それは最早彼らに言う前もないことであった。高濃度汚染地域は、それほどまでに危険な場所だ。
 全身を義体化していても、それでも汚染物質は蝕んでくるのだ。
「まあ、先立つものがなければ何もできないのは真理の一つね」
 とは言え、リスクと管理。
 それは別個なるものだ。つながってはいるが、個別に考えなければならない。一緒くたにしてしまってはならないものである。
 とは言え、紅葉は好奇心が湧き上がるのを感じた。

 この武装トラックが運んでいる積荷。
 巨大企業群のオブリビオンが最終的に目的地前で襲撃してくる、というのならば、よほど重要なものなのだろう。
 好奇心は猫をも殺す。
 だが、猜疑心を喪っては、ただ生命を奪われるだけである。
 己達フリーランスは投げ放たれて、それで終いだ。
 後のことは槍自身が考えろと言わんばかりなのである。
 故に紅葉は己の端末の画面を周囲の傭兵たちに見せる。
「……何が知りたい」
「私は臨時の傭兵なんだけど、この武装トラックは常にこういうものを運んでいるわけ?」
 端末の画面にはクレジットを移譲する表示がされている。
 言葉少なに語るのは、面倒事を避けるためだ。
 金銭のやりとりで、こうしたノイズを少しでも減らすためでもある。

 彼女が指差すのは積荷である。
『棺桶』めいた巨大な積荷。
 その中身のことを彼らは知っているのか。それも毎回のことなのか。
「いや、今回が初めてだな。このたぐいは」
「いつもは?」
「そりゃあ|口に出してはいけないやつ《違法な品々》だ。あまり首を突っ込めば、どこで誰が聞いているかわかりゃしねぇ」
 金のためならば同業者であれど売る。
 案にそう言っていると紅葉は理解する。

 休憩だ、とドライバーの『コラキ』の声が聞こえ紅葉たちは荷台から降り立つ。
 目の前にはバイオカワヅザクラの花が咲き誇っていた。
 まるで、この場が高濃度汚染地域であることを忘れさせるように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリィ・ローゼ
バイオのお花も気になるけれど、お金のためとはいえ危ないところを恐れないなんて、とっても勇敢な人たちなのだわ
ぜったい力にならなくちゃ!

「みんな、お疲れ様なのだわ」
下車中の傭兵さんたちやコラキさんを労いながら、積荷の重さや行き先について興味津々で尋ねてみる
「とっても重そうな荷物! みんな力持ちだし、何より勇敢でカッコいいのだわ」
時間があれば[歌唱]併用でUC使用
疲れが少しでも癒えますように



「みんな勇敢なのね」
 リリィ・ローゼ(フェアリーのシンフォニア・f04235)は『高濃度汚染地域』を往く武装トラックにすし詰めになっている傭兵たちの顔ぶれを見て、そう思った。
 金のため。
 理由はそれぞれにあるだろうが、一様にこの荒れくれ者たちは金を必要としている。
 逆に言えば金次第でどんなことでもする、というものたちなのである。
 そんな彼らを捕まえてリリィは『勇敢な人』と目をキラキラさせていた。

 グリモア猟兵の説明で彼らは最終的に目的地直前でオブリビオンの蹴撃を受けて生命を落とすのだという。
 それはいけない、とリリィは思う。
 勇敢な人たちが死んでしまうのは忍びない。
 絶対に力になりたいと思ったのだ。
 それは彼女のポジティヴさの現れであったかもしれない。
「休憩だ」
 武装トラックのドライバーである青年『コラキ』の言葉と共にすし詰めから開放された傭兵たちが背伸びをしている。
「みんな、お疲れ様なのだわ」
 下車した彼らにリリィはよっていく。
 彼らを労らなければならないと思ったのだ。だが、『コラキ』と呼ばれた青年はリリィがふわりと飛んでいくと手で制する。

「あんまりうろちょろするな」
「何故? みんなお疲れでしょう? 私、少しでもみんなの気が紛れれば、と思ったのだけれど」
 そう、リリィは小さな体躯をしている。
 そういう意味では武装トラックの荷台にすし詰めにされても兵器だったのだ。
「あんたの小さな体は見落としてしまうかもしれない。こんな場所で置き去りにはされたくないだろう」
『コラキ』は『高濃度汚染地域』においては比較的安全なバイオカワヅザクラが咲き誇る休憩場所を示す。
 此処では確かに汚染物質は薄い。
 とは言っても比較的、である。
「心配してくれるの?」
「事が起こった時に傭兵の頭数が足りないのは、たまったものじゃないから」
 リリィは『コラキ』が悪い人間には思えなかったのだ。

「いい人ね、あなた。ねぇ、あの積荷はとっても重そうね。何が入っているの?」
「知らない。そういうのは知っていても言わないものだ。守秘義務ってやつだよ」
「減るものじゃあないのにね?」
「どうせ違法な品に決まってる。知ったら知ったで面倒なことになるのはわかっているだろう」
 リリィはサイバーザナドゥの出身ではない。
 だから、彼女の言動は『コラキ』にとっては、なんともズレたようなものに聞こえたのかもしれない。
「とっても重そうな荷物だものね! でも、みんな力持ちだし、何より勇敢でカッコいいのだわ」
 だから、大丈夫ね、きっととリリィは笑う。
 その様子に『コラキ』は調子を狂わされているようだった。

「一応、忠告はしたからな。これから先は汚染物質の濃度が上がる。それを肝に銘じておけよ」
 その言葉にリリィは頷く。
 ええ、と答えてリリィは謳う。
 バイオカワヅザクラの花びらが散る最中に傭兵たちは彼女の歌声に聞き入る。
 思いがけない休憩と憩いにすし詰めの疲労は癒えたかもしれない。そんなふうに思いながらリリィは出発のその時まで、ユーベルコードの歌声を響かせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
はいはーい★シルキーちゃん今日もお仕事だぞ★
まあこんな体でも色々と経費は掛かるからね★

とりあえずは此処に来るまでに『G-ライアー』がトラックに追随できるかどうかの確認と~、
後は…こっちの戦力の大雑把な視認、詳しく当人から聞きださなくても、見て解る範囲の大まかな感じでいいんだよ★緻密な連携とかする訳じゃないし、後々そのデータを使う時…具体的にはUCで偽物を創る時の出来とかに関わるからね★
それと、こんだけ戦力を用意してるんだし、依頼者さんはどんな「面倒」が起きるか大まかな予想はしてたって気がするんだよね★受注時に何か積み荷の注意事項がなかったか聞いておくよ★濡らすなとか火気厳禁とかそういうの★



 義体化、というのは何かと金のかかるものである。
 生身と違って維持、整備というものが必要になる。そして、何事も金である。摩耗したパーツは入れ替えなければならない。それも金である。
 全てが金。
 そういう意味では、頭脳戦車たるシルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)の身体は諸々の維持経費はかさむものであった。
「まったくもってその通り。こんな身体でも色々と経費はかかるからね★」
 シルキーの言葉に休憩で武装トラックから折りた傭兵たちは「だろうな」と頷く。

 この世界にあって頭脳戦車は珍しいものではない。
 けれど、シルキーのホログラムに彼らは驚き、興味を持ったようである。
「ホログラムか。良くできてやがるな」
「そうでしょ~★」
 シルキーはそう言いながら、此処までの道中で武装トラックの速度を確認していた。
 自身の操るカエル型のロボットビーストが追従できるのかを知りたかったのだ。無論、追いつくことはできている。
 加えて、傭兵たちの力量。
 やはり『高濃度汚染地域』を突っ切る危険極まりない仕事を請け負っているだけあって、彼らの力量は中々なものである。
 軽く見ているだけでもわかる。

 義体の性能だけではない。
 立ち振舞いもまたそこそこに戦えるもの達であることをシルキーは知るだろう。
 別に緻密な連携をしたいわけじゃあない。
 ただ、彼女には彼女の考えがあるのだ。
「そうそう、シルキーちゃんの美少女ホログラムはすっごいでしょ! でも、面倒事ってどれくらいのものなんだろうね。いつもはどんな感じなの?」
 彼女は臨時の傭兵として、この武装トラックに同乗している。
 普段のことがわからない、と傭兵たちに尋ねると彼らは笑う。
「そりゃ、死ぬときは死ぬくらいの危険ってことだよ」
「ああ、『高濃度汚染地域』の汚染物質はシャレにならないからな。全身義体化していても、長時間いるとすぐにダメになっちまう」
「だから此処はまだ比較的マシだよ」
 そう言って示すのはバイオカワヅザクラである。

 あの花弁が散る場所であれば、汚染物質は他の場所から比べるとマシなのである。
「なるほどね~脅威はその時々ってことか~★」
 積荷がなんであるかはわからないが、少なくとも彼らに仕事を依頼してきた主は、そういう面倒事まで織り込み済みということであろう。
 つまりは『高濃度汚染地域』においてトラブルとは日常茶飯事。
 しかし、汚染物質の濃さから下手に誰も手出しできないこの経路こそが最速なのだろう。

 なら、依頼主には時間がないか、もしくは敵対者の追従を躱すために積荷を横断させようとしているのだ。
「ふ~ん。でもそんなに重要そうな物品なら、なんか注意事項とかないの?」
 例えば、天地無用だとか、濡らすな、とか火気厳禁とか。
 そんなふうにシルキーが言うと『コラキ』と呼ばれる青年が近づいてきて言う。
「詮索はするな。あんたのためにならない。俺達はただ積荷を運んでいる、それだけだ」
「でも、トラブルが起こった時に対処するには情報は必要じゃあない?」
「依頼主が言わないってことはそういうことだよ。あんたも生命は惜しいだろ」
 シルキーは頷く。
 なら、この話は終わりだ、とシルキーは美少女のホログラムで笑顔を作る。

 なるほど、と思う。
 積荷は『コラキ』たちも知らないようだ。
 ただ仕事だから運ぶ。なら、これは結局、オブリビオンの策動に彼らが巻き込まれただけに過ぎないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
金貨
その輝きはヒトの欲望
いつだってセカイを動かすチカラ
ステキなミライをユメ見てその黄金を求めるの
それならこのヒト達が目指すミライって?


らぶも商人だから
コラキ達の事ちょっぴり親近感
真っ暗なセカイを駆け抜けるスゴいトラックをもっと良く見せてほしーの
がっしりしたタイヤに大きな車体
これで荷物も皆も守ってくれるんだ
それなららぶも大切な友達の事紹介しなくっちゃ
こっちはマザー
マザーはね
コンピュータとお友達になるのがとっても上手なのん
例えばこんなケーブルでトラックと接続しちゃえばきっとらぶ達はもっと仲良しになれる筈


ねえ
いつか青空の下でもう一度このサクラを見てみたいってらぶは思う
オマエはその黄金で何を求めるの?



 煌めく輝きがある。
 瞳に映る金色はヒトの欲望の色であっただろう。
 知れば誰もが手を伸ばさずに入られない。魅力的なもの。それが金である。
 金は力である。
 ヒトの欲望を叶える力。
 そして、セカイすら動かすチカラである。
「ステキなミライをユメ見て、その黄金を求めるの」
 それならば、とラブリー・ラビットクロー(人々の夢を追う行商人と人工知能【ビッグマザー】・f26591)は思う。
 武装トラックの荷代にすし詰めにされた傭兵たち。
 彼らが目指すミライとはなんなのだろう。

 ラブリーは己を商人と自負する。
 だからこそ、危険と知りながら金のために汚染物質満ちる『高濃度汚染地域』に踏み込む傭兵たちにすこし親近感を覚えてしまう。
 ごうごうとエンジン音が響いている。
 武装トラックは『高濃度汚染地域』だろうとなんだろうと前に突き進んでいく。
 荒れた道すら踏破するタイヤ。
 馬力を生み出すエンジン。
 そうしたものが積荷も傭兵たちも守ってくれているのだと思ったら、ラブリーはどうしても親近感から来る気安さというものを抑えきれなかった。

「『コラキ』、こっちは『マザー』。『マザー』はね、コンピュータとお友達になるのがとっても上手なのん」
【はじめまして。 『コラキ』、ご機嫌はいかがですか】
「運転中」
「ぎゃっ、ごめんなのん。でもでも、『マザー』はお手伝いできるって思うのん」
「いや、いいから……」
「でも、らぶ達もっと仲良しになれるはず」
 ラブリーの言葉に『コラキ』は困惑しているようだった。

 荷台から常に『コラキ』に話しかけていたラブリーは、休憩として立ち寄ったバイオカワヅザクラが咲き誇る地点でも『コラキ』の背中を追う。
「あんた、休んでおけよ。トラブルが起こったときは働いてもらうんだから。さっきから、ずっと話しかけてるが……」
「ねえ」
 ラブリーは構わなかった。
 自分が必要だと思ったのは会話である。
 仲良しになる、という目的を果たすためには、ケーブルが確かに手っ取り早いのだろう。けれど、ヒトとヒトとのつながりはケーブルでは構築できない。
 会話し、言葉を交わすからこそ生まれるものがあるとラブリーは知っている。
「なんだよ……」
 問いかける言葉に『コラキ』は観念したようである。

「いつか青空の下でもう一度このサクラを見てみたいってらぶは思う」
「そうかよ」
 短く『コラキ』は言う。
 面倒ならば無視すればいいのに、彼はそうしなかった。
 そこにラブリーは糸口を見出す。
「オマエは、得た黄金で何を求めるの?」
 金が必要だから、こんな危険な仕事をしているのだ。なら、その目的は、とラブリーは問いかける。
 ないはずがないのだ。
 欲求の形を作るのが金なのならば。

「……弟の義体化手術代が必要なんだよ。あいつは未知の難病なんだ。徐々に義体化していくなんて悠長なことができない。一気に完全義体化なんて、オレたちみたいな掃き溜めの人間が一生かかっても稼げない。なら」
 多少のリスクは追わなければならない。
 違法であることにも目をつむらなければならない。
 その言葉にラブリーは頷く。
 結局誰かのためなんだな、とラブリーは理解したのだ。なら、とラブリーは頷く。
 ガスマスクに隠れた口元が笑顔になっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
黒鴉の式を飛ばして周囲を警戒しながら行動する。一羽は『棺桶』の側に潜ませて。

やれやれ、やっと武装トラックから解放ね。
この前はVRのお花見だったけど、ちゃんと根付いてるサクラもあるじゃない。
さすがに現状でお酒をあおる人はいないか。
携帯糧食とボトルに入った水で一息つく。

『コラキ』に接触出来るなら聞いてみましょ。
このトラック、『高濃度汚染地域』を突っ切ってまでして、どこへ行くの?
よっぽど急ぎの依頼みたいね。
まあ、あたしたちはもらえるものもらえたらそれでいいけどね。ただ、目的地によっては警戒レベルを引き上げないといけないじゃない?
あなた、その辺はどう考えてるの?

ああ、時間ね。また詰め込まれますか。



 ユーベルコード、黒鴉召喚(コクアショウカン)によって召喚されたカラスに似た式神が武装トラックの走る周囲を警戒している。
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は己と五感を共有している式神の一羽が積荷に取り付いたのを確認してから、武装トラックが止まるまでときを待つ。
 とは言え、荷台はすし詰め状態である。
 はっきり言って居心地はよろしくない。
 かれこれ数時間も荷台にて揺られていたのだ。

 まともじゃない。
 それは嫌というほどゆかりは知っただろう。
 武装トラックが止まり、わずかであるが休憩であると知った時は、心待ちにしていたものを得たかのような気分になったものである。
「やれやれ、やっと開放ね」
 息を吐き出す。
 傭兵たちは荒れくれ者たちばかりだ。
 むさ苦しいことこの上なかったのだ。でも、とゆかりは見上げる。
 其処にあったのは汚染物質に汚染された『高濃度汚染地域』とは思えない光景であった。

 バイオカワヅザクラの花弁が舞い散る休憩地点。
 此処は汚染物質が比較的少ないのだろう。
「この前はVRのお花見だったけど、ちゃんと根付いてるサクラもあるじゃない」
「まあ、まともな品種じゃあないだろうな」
 傭兵の一人が見上げて言う。
 確かに、とゆかりは思う。軽度の汚染状況とは言え、骸の海に汚染された場所なのだ。そんな場所で、こうも咲き誇るサクラがまともなものであるとは到底思えなかった。
「いきなり花見酒とはいかないのね」
「やりてぇところだがよ、トラブルがあったときに酒が抜けてねぇなんて間抜けは死ぬだけだからな」
「それもそうね」
 笑ってゆかりは携帯糧食と水で一息つく。

 積荷に取り付いた式神から、その『棺桶』めいた形状は確認できる。
 だが、大きすぎる。
 人のサイズではない。まるで巨人の棺桶だ。けれど、その内部までは知り得ない。どこかに潜り込める隙があるかと思ったが、それもない。
 なら、と武装トラックのドライバーである『コラキ』に直接聞いてみようとゆかりは思ったのだ。
「ねぇ、このトラック、『高濃度汚染地域』を突っ切ってまでして、何処へ行くの?」
「端から端へ、だ」
 端的すぎる言葉にゆかりは辟易する。
「よっぽど急ぎの依頼みたいね」
「依頼主にとってはな。一刻も速く、例の『棺桶』を送り届けたいんだろ。あんまり首を突っ込むのは生命を縮めるだけだぜ」
「そうね。あたしたちは、もらえるものもらえたら、それでいいけどね。ただ、目的地によっては警戒レベルをひきあげないといけないじゃない?」
 そのへんのところをどう思っているのだと『コラキ』にゆかりは問いかける。

「そのためのオレだ。『高濃度汚染地域』のルートは頭に入ってる。あんたたちは保険なんだ。どんな保険だって、切らなければ切らない方がいい。そういうものだろ」
 急ぎとは言え、そこはわきまえていると言わんばかりであった。
「そうね。そろそろ時間?」
「ああ、早く乗った乗った」
 ゆかりはまた一つ息を吐き出す。
 またあのすし詰めで揺られるのか、と。だがまあ、仕方ない。諦めてゆかりは、再びむさ苦しい傭兵たちの間に挟み込まれてしまうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
……。
ク『奏者、こっちに来てからずっと小難しい顔をしてるよ。大丈夫かい?』
大丈夫です。敵とお味方を間違えは、致しません。

この世界は骸の海の気配が濃い。故に、どうにも気分が荒んで仕方がない。

……。
『せっかく綺麗な桜が咲いてるっていうのに、まったく仕方がないねぇ奏者は!よし分かった。気分転換だ!今日はー……そうだね、桜だから三味線を弾いてみようか!』

魔楽機:揺籃の子守唄が三味線に変形。
【学習力】機械絆を通し魔楽機から楽譜と演奏方法を小枝子へ伝達。

クレイドル。まだ奏るとは……いえ、そうですね。しばしの休憩、今は気を紛らわせましょう。

三味線を弾き【楽器演奏】〚舞台増上〛発動
自身と味方の気力を回復します



『クレイドル・ララバイ』は、難しい顔をしている奏者――朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)がずっと黙りこくっているのが気になっていた。
 この世界。
 サイバーザナドゥに転移してからというもの、ずっと小枝子は似合わぬ小難しい顔をしているのだ。それはそれで失礼かもしれないが、彼女を知る『クレイドル・ララバイ』からしてみれば、問題であるように思えたのだ。
『奏者、こっちに来てから、ずっとそんな顔をしているけれど、何か問題が発生しているのかい? 抱え込まずとも私に語ってくれてもいいのだよ。語ることで何か重荷めいたものが軽減されるかもしれない』
 そんなふうにつらつらと良くもまあ、と小枝子は思いながら頭を振る。
「大丈夫です。敵とお味方を間違えは、致しません」
『なら、なんでそんな顔をずっとしているんだい? 今の君はまるで敵に囲まれているような表情じゃあないか。幾ら傭兵の諸君らがいかついのだとしても、あんまりじゃあないかい?』
 その言葉に小枝子は息を吐き出す。

 別にそんなわけじゃない。
 今も武装トラックの荷台から開放されて、一時の休憩を得ている。
 小枝子が警戒するような、そんな顔をしていたのはこの世界が骸の海に汚染されているからだ。
「この世界は骸の海の気配が濃い。故に、どうにも気分が遊んで仕方ないのです」
 花弁が舞い散っている。
 手元に落ちてきた花弁をひとつまみして小枝子は見上げる。
 そこにはバイオカワヅザクラが咲き誇っていた。
『高濃度汚染地域』であっても、このように花が咲く場所があるのだ。
「……」
 だが、小枝子の心は癒やされない。
 どうにも体が警鐘を鳴らしているように思えてならなかったのだ。

『まったく。せっかく綺麗な花が咲いているっていうのに、仕方がないねぇ奏者は! よしわかった。気分転換だ!』
「いえ、それは」
『今日はー……そうだね、桜だから三味線を弾いてみようか!』
「話を聞いて下さい」
 なんで、と小枝子が問いかけるより早く『クレイドル・ララバイ』は変形し、三味線へと姿を変えて小枝子の腕におさまるのだ。
 それを認めた傭兵たちが目ざとく小枝子に言うのだ。
「お、なんか弾くのか?」
「気が効いてるじゃあないかよ。演ってくれよ」
「あ、いえ……」
 まだ、と小枝子は断ろうとするが、そんな空気ではなくなっていた。
 もうすでに傭兵たちの視線は小枝子に注がれている。

 ここで演奏しない、という選択肢はすでに退路ごと断ち切られているのだ。
『クレイドル・ララバイ』はこれを見越していたのかも知れない。
『さあ、奏者。お待ちかねだよ!』
「はぁ……いえ、そうですね。暫しの休憩。今は気を紛らわせましょう」
 小枝子は仕方ない、と即興の舞台増上(ミュージカルステージ)によって桜の花弁舞い散る中に三味線の音を響かせる。
 それは武装トラックの荷台にすし詰め状態であった傭兵たちと己達の心を、気力をいたわる音色だった。
 これより先に訪れるは、予知にあったトラブルである。
 それを乗り越えるために必要なのは気力。
 ならばこそ、小枝子は傭兵の彼らと共に窮地をくぐり抜けるために、その英気を養わせるように三味線を爪弾くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャット・アーク
(|街中《普段》とは違った桜の風景見たさに依頼を承諾
護衛の仕事は、此処まで乗せてくれた駄賃代わりのつもり
なお花見自体は数分と経たずに飽きた)

運転手のおにーさんに構ってもらいに行こっと
ね、皆からちょっと離れたトコで話そうよ
腕をグイグイ引っ張る
他の傭兵さん達には、このおにーさんと二人っきりがいいって|拗ねたフリ《念押し》すれば大丈夫
盗み聞きされるのが心配なら、オレのパーカーを二人で頭から被っちゃえ
これで、何してるのかなんて分かりっこないよ

聞きたい事がいっぱいあるんだ
一番は、あの棺桶の中身
あれ何処へ持ってくの?
依頼主って誰?
分かってる範囲の事は全部教えて
猫って好奇心強いからね
ずっと気になってたんだ



 普段とは違う状況。
 それは街中で生きるものにとっては物珍しさが勝つものであったことだろう。
 目に映るものすべてが新鮮。
 延々と続く汚染物質蔓延る『高濃度汚染地域』は、つまらないものであったけれど、その先にある休憩地点、バイオカワヅザクラの咲き誇る様は数分もまたずにキャット・アーク(路地裏の王様・f42296)は飽きてしまった。
「だってオレ、猫だもん」
 そりゃあ、飽きる。
 飽きる結果しか見えてないのに、あんなに楽しみにしていたのに、とかそんな理屈を言われたって仕方ないとは思わないだろうか。
 もともと、この仕事だって普段とは違った桜の風景見たさに請け負ったのだ。

 けれど、その目的はたったの数分で満足するものであったのだ。
「運転手のおにーさんにかまってもらいに行こっと」
 キャットは気まぐれな気持ちの赴くままに行動する。
 まさしく名は体を表すというが、その通りであったし、フットワークの軽さと言ったらなかった。
「ね、皆からちょっと離れたトコで話そうよ」
「ダメだ。武装トラックの近くから離れすぎるな」
 ドライバーである『コラキ』と呼ばれる青年はにべにもなく断る。
 腕をぐいぐいと引っ張るキャットをあしらっている。
「おいおい、ちょっとくれーいいじゃねーか『コラキ』、減るもんじゃあるめえし」
「減るんだよ、ここじゃ。忘れるな、ここは汚染物質が薄いとはいえ、『高濃度汚染地域』なんだぞ。ピクニック気分じゃあ……」
「やだやだ、おにーさんと二人っきりが良い!」
 そんなふうに駄々をこねるキャットに『コラキ』はため息を付く。

「……なんだよ」
 結局、キャットに押し切られてしまう。
 普段ならば、取り合わないことであったはずだ。けれど、キャットの瞳はユーベルコードに輝いていた。
 それは、猫好きが野良猫が鳴く(テンプテッド)と反応してしまうのと同じくらい自然なことだった。
「聞きたいことがあるんだ」
 キャットは笑う。
 そう、彼のユーベルコードは確かに『コラキ』の意識に衝動を与えた。
 キャット・アークという対象を猫可愛がりしたいという衝動。それによって、彼は頷くしかなかったのだ。
「あの『棺桶』の中身って何? あれ何処に持って行くの? 依頼主って誰?」
「……知らない」
 そんなはずはない、とアークは思った。
 もう一押しかなってキャットは、もう一声、にゃあと鳴く。

「中身は本当に知らない……行先は『高濃度汚染地域』の先……『秘境』だ。依頼主は……『メリサ』と呼ばれる人物だ。だが、やめとけ。これ以上深入りするのは」
「だめだめ。猫って好奇心強いからね」
「猫をも殺すっていうではないか」
「それはそうかもだけど、ずっと気になってて仕方ないんだよ。気になりすぎて夜も眠れなくなってしまったら、睡眠不足でやっぱり死にそうだから、それなら知りたいって思うのが自然じゃあない?」
 キャットは笑う。
 もう十分、とユーベルコードの力を解いて、武装トラックに向かう。
 知りたかった情報の全ては知り得なかったけれど、行先と依頼主は知れた。その目的はわからないけれど、確かに情報は得たのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
ピィッ!サクラ……!
この世界のサクラにはいい思い出がねーんですよね……こいつらはバイオサクラになって襲って来やがったりしねーですよね?
何もしてこねーなら眺めるのも良いですね、きれいですし。
無口でシリアスな傭兵連中と一緒にぎゅうぎゅう詰められて、ずーっと気の滅入る光景見せられてたんです。
ちょっとは息抜きしないと、ボクの電脳がショートしちまいますよ。
一緒に乗ってるのがうちの部隊の連中みたいなバカどもなら気分も紛れるんですけどねぇ。
くらーい雰囲気の中でじーっとしてるくれーなら、前向きな奴らのバカみてーな話聞いてる方が楽しいですからね!
あー、でも……あんま弄られるとそれはそれでムカつくんですけどね!



 桜、その花は人の心に感情の波を引き起こす。
 儚く散る。
 その様に何を見るのか。
 多くが歌われたように、汚染物質に塗れたサイバーザナドゥにおいても、格別なものであったはずだ。
 けれど、その感情のすべてがポジティヴなものばかりではないのは言うまでもない。
 ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)にとっては、桜とはネガティヴな感情を想起させる花であった。
「ピィッ!」
 変な鳴き声みたいな悲鳴を小さくファルコは上げていた。

 此処は『高濃度汚染地域』において比較的汚染物質が薄い場所である。
 だからこそ休憩場所として重宝されているのだ。
 武装トラックの荷台、そのすし詰めから開放された傭兵たちが体を伸ばしたり、糧食を口にしたりしながらバイオカワヅザクラを見上げている。
 けれど、ファルコはどうにも落ち着かなかった。
「この世界のサクラにはいい思い出がねーんですよね……」
 ファルコは苦々しい気持ちになった。
 彼女が他世界をわたり始めた頃に、経験したことが今でも心的外傷として刻まれているのかも知れない。

「あの、こいつらはバイオサクラになって襲ってきやがったりしねーですよね?」
「なに言ってんだ?」
 傭兵たちはファルコの言葉に怪訝な顔をする。
 それもそのはずだろう。
 なんでバイオカワヅザクラが襲ってくるんだ、と。けれど、ファルコはどうにも落ち着かない。
「なんでもねーです……」
 襲ってこないんなら、それでいいのだ。
 眺めていると、ファルコの心にも望郷の、郷愁の念というものが湧き上がってくる。
 自分が育った部隊。
 その隊員たちもまた、この傭兵たちと同じような荒れくれ者たちだった。

 けれど、己の知る隊員たちと彼らが違うのは、見ている方角がてんでバラバラである、ということだ。
 己の部隊の隊員たちは皆が一つの目的に向かっていた。
 しかし、この傭兵たちは違う。
 目的も違えば、動機も違う。
 共通しているのは、金銭報酬を得たいという思いだけであった。
「……違うんですね」
 あの鬱陶しさが恋しくなるなんて思いもしなかった。
 すし詰めの荷台は本当に息苦しかった。誰もが黙っていたし、ちょっと話をしても、辛気臭い雰囲気ばかりであった。

 すべてが己の部隊にいた者たちとの比較になってしまう。
「あのくらーい雰囲気は息が詰まるですよ……うちの部隊の連中みたいなバカどもばっかりだったんなら気分も紛れるですけどねぇ」
 前向きなバカだったんだな、とファルコはサクラの花弁が散る様を見ながら物思いにふける。
 いや、まあ、さりとてあんなふうにからかわれたらからかわれたで、ムカつくっていえばムカつくのだが。
「バカみてーな話は連中には期待できねーですね」
 仕方ない、とファルコは息を吐き出す。
 またどうせあの荷台にすし詰めになってしまうのだ。
 なら、今は十分に息を吐きださなければならない。
 目的地まであとどれくらいか。
 トラブルが起こる地点までどれほどなのか。
 それがわからないのなら、今は一時の郷愁に身を委ねるのもいいだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユキト・エルクード
SPD判定
アドリブ・連携歓迎

へぇ、どの世界でも桜ってのは綺麗じゃないか。 せっかくだから撮っといてサイバーデッキに放り込んでおこう。
これが見納めにならないようしっかり気を付けねぇとな?

あと、花見ついでに傭兵連中ともお喋りでもしておくか。
傭兵稼業じゃ情報も大事な武器の一つだ。 貨物に関してだって多少は存じているだろう。【コミュ力】を発揮し、最近の商売のことをダシに適切な距離感を守りながら聞いてみるか。

ついでに、こちらから説明するまでもなく俺がニンジャだと分かるようUCを術のように使いながら傭兵連中の関心を買い、使える奴だと内心思うよう仕向ける

背を預けるに相応しい存在だと思ってくれりゃ幸いだ



 ユキト・エルクード(亡霊夜警・f38900)は散るサクラの花弁を摘んで、感心する。
 掃き溜めに、とは言うものであるが、目の前のバイオカワヅザクラは見事に咲き誇っていた。
 汚染物質が比較的薄い場所である、と言っても此処は『高濃度汚染地域』の真っ只中である。
 なのに、これほど桜が咲き誇っている光景にユキトは感心したのだ。
「へぇ、どの世界でも桜ってのは綺麗じゃないか」
 せっかくだから、とシャッターを切る。
 といっても、これで見納めになるわけにはいかない。そういう意味では気を引き締めなければならないということは理解している。
「案外悪くねぇよな」
 武装トラックの荷台にすし詰めになっていた傭兵たちの言葉にユキトは振り返る。
「バイオカワヅザクラ。ま、何を養分しているのかさっぱりわからんけどな」
「まあ、いいじゃねぇの。綺麗なものは綺麗。それで」
 ユキトは気安く傭兵たちと言葉を紡ぐ。

 傭兵稼業において必要なのは、こうした必要最低限のコミュニケーション能力だ。
 確かに傭兵に連携を求めるのは酷であろう。
 それぞれがそれぞれの思惑を持ち、目的を持ち、動機によって動くのだから。
 だが、それでも生き残る、という目的を果たすためには金というただ一つにおいて味方となっている彼らを己の側に引き込んでおかねばならない。
 自分が今どの立場に居るのかを知ることは重要であった。
「それにしても、あの『棺桶』は不気味だな」
 ユキトはもののついでのように武装トラックの後方に繋がれた荷を指差す。

 そう、確かに巨大な『棺桶』じみている。
「巨人の死体でも入っているみたいだ」
「は、確かに。仕事を持ってきた『コラキ』にもそういったがな」
「中身は?」
「さあな。俺達には関係ないんだとよ」
「何を守らされているのかもわからねぇっていうのは、厄介だな」
 既にユキトは傭兵たちに最低限の信を得ている。
 道中に見せた忍者の業は、彼らが生き残るのに利用できる、程度の認識を与えていたのだ。それは詰まるところ、信頼ではなかったが、しかし互いの関係を明白にするものだったのだ。

「噂に聞く限りじゃあ、巨大企業群『ティタニウム・マキア』が傾いてるってのと関係してるのかもな」
「どういうことだ?」
「連中『安心・安全を売る』ってのがキャッチコピーみてぇなところがあっただろ?」
 あらゆる武器も、あらゆる義体も、あらゆる医療品も、『安心・安全』である、という所に巨大企業群『ティタニウム・マキア』は重きをおいていた。
 それが他の巨大企業群に勝ち得る点である、と。
「それが崩れ始めたってことは、それなりの理由があるってことだ」
 そもそも巨大企業群『ティタニウム・マキア』が傾いたのは、猟兵たちがオブリビオン事件を解決してきたからである。

 それと積荷が何故関連するのか。
「あの積荷が『ティタニウム・マキア』の秘匿していた物資なんじゃねーのって」
「どれくらい信じられるソースなんだ?」
「当たるも八卦、当たらぬも八卦ってとこよ」
「半信半疑ってことか」
 そういうこと、と傭兵たちは笑う。
 まあ、今はそれでいいか、とユキトは頷く。
 どの道、この先に起こるトラブルと、目的地目前に待ち受けるオブリビオンを打倒することが己の目的だ。
 ならば、その八卦が当たるか当たらぬかは……この先の状況が教えてくれることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

え……(顔に縦線入れてドン引き)
いえ、違うとかそういう次元でなくてですね?

外側から埋める、とか行ってますけど、これ、だいじょぶなんでしょうか?
名誉的なやつとかストーキング的なやつとか、訴えられたりしません?

あと、いちおう確認しますけど、埋めるって比喩的表現ですよね?
ライバルを物理的にじゃないですよね?

いまでも十分やべーですけど、
そんなことしたら、やべー力が螺旋で天元突破しちゃいますよ!

って、え? 行くんですか?
わたしが傭兵って、ちょっと無理ないですか?

あ、なるほど。
料理人的な設定なら、美少女がいてもおかしくないですね。

しかたないですねー♪
お花見のお重は三段くらいでいいですか?


ステラ・タタリクス
【ステルク】
メリサ様の|嫁《おんな》でーす!!!!
はい!ステラ参上しました!
叫びが違う?
フフフ、今現在、|セーフハウスに引きこもって《安穏とした日々を送って》いるメリサ様は迂闊には出てこないはず
ゆえに!今こそ!外堀から埋める時!!
誰がやべーメイドですか
ルクス様おいていきますよハリアップ

まぁ彼女ムーブは程々にしましてっと
この大きな棺桶
届ける先はティタニウム・マキアですか?
ふむ……仄かに感じるこの香り
……十中八九セラフィムですかねえ?
しかし今更セラフィムを再入手してどうすると?

うーむ
まぁここはルクス様の料理でも食べて
お花見しますか
戦いに際しては心に平和を
これくらいの余裕はもっておきたいものです



 武装トラックが止まり、休憩地点での僅かな憩いの時間。
 広がるはお花見重箱。
 三団重ねの重箱は、色とりどりの花の肴が敷き詰められていた。。
 そう、それはルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の渾身の作である。
「うまそうじゃねぇか」
「一つ」
 同じく武装トラックにすし詰めにされていた傭兵たちがルクスの手料理につられてやってくる。

 そんな彼らを前に立ちふさがるメイドがいた。
 このむくつけき傭兵たちの中にあって、一層異彩を放つ女性であった。
「『メリサ』様の|嫁《おんな》でーす!!!!」
 うわ、とルクスは思った。
 いつもの叫びじゃあない。
 けれど、なんていうか、顔に縦線走るほどのドン引き状態であった。
 違う、とか否定する次元ですらない。
 自称すらつけないステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びにルクスはどう突っ込んだもんか、と思っただろう。
「はい! ステラ参上しました!」
「あ、あんた……」
 傭兵たちがどよめいている。
 別にステラの叫びにドン引きした、というわけではない。

 彼女の口から『メリサ』という単語が飛び出したからである。
 そう、『メリサ』とはサイバーザナドゥにおける業界屈指の殺し屋の名である。
 その『おんな』?
「ど、どういうことだ……あの不可視の殺し屋の、おんなだと?」
「フフフ」
 ステラは不敵な笑みを浮かべる。
 そう、彼女の言う『メリサ』は今、セーフハウスに引きこもっているのである。彼は迂闊にでてこない、とステラは踏んでいた。
 故に、今こそ外堀から埋める時だと彼女は判断したのだ。
 傭兵とはすなわち、横のつながり。
 縦のつながりはほぼなく、そして浅く広いつながりを持っている。

 彼らが噂を広めれば、最早それは周知の事実。
 あの業界屈指の殺し屋『メリサ』におんながいる、と知れ渡れば、これはもう既成事実である。
「これ、だいじょうぶなんでしょうか? 名誉的なやつとかストーキング的なやつとか、訴えられたりしません?」
 ルクスの心配も当然である。
 確実にやべーメイドのムーヴである。
「誰がやべーメイドですか」
「確実にステラさんのことですけど。あの、いちおう確認しますけど」
「何がでしょう?」
「あの、埋めるって比喩的表現ですよね? ライバルを物理的に、じゃないですよね?」
「彼女ムーヴも程々にしておきましょう」
 にこ、とステラが微笑む。
 その微笑みのタイミングがやばい。
 傭兵たちは、やばすぎ……とそさくさと退散してしまっている。

 ルクスは、充分やばい、と思った。
 やべー力が螺旋を描いて天元を突破してしまうほどの勢いである。
 とは言え、此処まで付き合っているのだから、ルクスは付き合いが良い。
「この大きな『棺桶』……」
 そんなルクスの視線を無視してステラは荷台を見つめる。
 中身は伺い知れない。
 届け先もわからない。
 依頼主もステラとルクスは知り得ていない。他の猟兵は聞き出しているようだが、ステラは鼻を鳴らす。
「ふんふん……」
「え、匂いでわかるんですか?」
「……十中八九、『セラフィム』ですね」
 言い切った! とルクスは目を見開く。
 匂い? 匂いでわかるものなの!?

「しかし、仮にこれが『セラフィム』だとしても、今更ではないですか?」
 何処に運ぶのかはわからない。
 けれど、ステラの言う『セラフィム』を手に入れて何をしようというのだろうか。
 目的地を前にして襲い来るオブリビオンが巨大企業群『ティタニウム・マキア』の手の者だとして、これを手に入れて何ができるというのだろうか。
 未だ判然としない情報。
 しかし、状況は向こうからやってくる。
「うーむ」
「まあ、いいじゃないですか。お花見しながら英気を養いましょうー」
「そうですね。お花見しますか。『戦いに際しては心に平和を』。これくらいの余裕は持っておきたいものです」
 ルクスは遠巻きに『メリサ』の嫁と名乗るステラを慄く視線で見ている傭兵たちが気の毒だなぁって思いながら、ステラに重箱を差し出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『高濃度汚染地域にて』

POW   :    力ずくで障害を排除し、押し通る

SPD   :    トラブルの原因を突き止め、取り除こうと試みる

WIZ   :    何らかの手段で汚染物質の影響を抑える

イラスト:九印

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 武装トラックが『高濃度汚染地域』を往く。
 いくつかの休憩ポイントを経て漸く目的地へと近づき始めていた。
 しかし、『コラキ』は己が目を疑う。
「……なんだ?」
 そう、彼の瞳に映っていたのは黒い影であった。
 いや、影、と表現するしかなかったのは、この『高濃度汚染地域』にて遺棄された数多の産業廃棄物にて『それ』が黒ずんでいたからである。
「恐竜……? いや、機械獣!?」
 ハンドルを切る。
 車体が横滑りする。
 正面衝突は免れないと思われたが、しかし『コラキ』のハンドリングでもってなんとか、それは避けられた。スピードは緩めない。
 けれど、彼が見た黒い影は大地を揺らすように踏み出し、武装トラックを置い始めたのだ。
 更に悪いことに複数の黒い影……恐竜型機械獣が四方八方から迫っている。

「傭兵共、出番だ!」
 その言葉と共に傭兵たちは荷台から飛び出す。
「荷物を守れ! 連中、この荷台に引き寄せられてる!」
 猟兵たちは知るだろう。
 体高5mはあろうかという恐竜型機械獣の姿。それは知る者がいれば、他世界の戦術兵器にも似た存在であると。
 そして、この『高濃度汚染地域』に満ちる汚染物質。
 時間をかければ、傭兵たちは消耗してしまうだろう。そうなれば、予知の通りに目的地目前にて彼らは巨大企業群傘下のオブリビオンに殺されてしまう――。
ラブリー・ラビットクロー
おいマザー
らぶ達の出番だ
ちゃんと準備は出来てるの?
【武装トラックのシステムに接続しました。サポート出来ます】
ちゃんと皆の事守ってね
【防衛及びアシストを開始します】
それじゃあ商売開始なんな!


マザーはトラックのシステムや武装と連携してコラキ達のアシストなんな
最適化されたルートを表示したり照準を自動化したり敵の位置をスポットして表示したり
それなららぶは荷台からラビットブレスで火炎放射!近づく奴らを燃やしちゃえ
敵の動きを止めればマザーがやりやすくなるもんね


らぶに出来る事なんてあんまり無いかもしれないけど
それでもコラキのユメの事ゼッタイ応援してる
だってこのセカイもこんなにキレイなんだって教えてくれたんだ



 ヒトには生きる理由が要る。
 それは金であったり、欲望であったり、ユメであったり。
 そして、もう一つヒトが生きる理由をラブリー・ラビットクロー(人々の夢を追う行商人と人工知能【ビッグマザー】・f26591)は知った。
 青年『コラキ』が金を必要としているのは、弟のためであった。
 血を分けた、たった一人の弟。
 そのために金が要ると言ったのだ。
 己が生きるのに必死な世界を知っている。他者を差し置いてでも己の生存を優先しなければならない世界を知っている。
 だからこそ、この骸の海に汚染された、緩やかな滅びの最中にある世界にあってなお、他者のためにという者を見た。

「おい『マザー』。らぶたちの出番だ。ちゃんと準備はできてるの?」
 ラブリーは己のサポートをしてくれる『ビッグマザー』に問いかける。
【武装他ラックのシステムに接続しました。サポート出来ます】
「な、何をしてる!?」
『コラキ』の動揺する声が聞こえた。
 それもそうだろう。己がドライバーを努めている武装トラックに『ビッグマザー』のアイコンが浮かび上がっているのだ。
【防衛及びアシストを開始します】
『コラキ』からすれば、積荷や武装トラックを守るのは傭兵の仕事だった。
 彼にできることは多くない。けれど、ラブリーはガスマスクの下で笑顔を作る。
「ちゃんと皆の事守ってね。それじゃあ、商売開始なんな!」
 ラブリーは武装トラックの荷台の上に飛び乗る。

「ちょ、おいおい! 待て待て! 何をするつもり……」
【コンテナハッチ開放。ハッチをシールドにします】
「つ、積荷! 積荷の……!」
『棺桶』と呼ばれた積荷のハッチが開き、その中から巨大な腕部がせり出す。
 それは巨大な……鋼鉄の巨人の腕だった。
 青い腕。
 その一対の腕が『棺桶』のハッチを盾にして、迫りくる恐竜型機械獣の突進を受け止めたのだ。
「……!? な、何をしたんだ!?」
【棺桶型コンテナ内部に安置されていた戦術兵器とリンクを開始しました。機能の一部を掌握。専守防衛を開始しています】
「なんな! マザーはアシストなん! らぶは……!」
 ラブリーは荷台の上に立ち、火炎放射器を構える。
 吹き荒れるは炎。
『ビッグマザー』のバッテリー残量は心許ない。
 このサポートアプリ【ふぁんとみぃ】(ファントムステップ)の持続時間はそう長くはないだろう。
 だが、傭兵たちにも次々とシステムを介して手厚いサポートが成されていく。

「こりゃいい。自動照準か!」
「なんな! 敵の突進はマザーがコンテナのハッチで止めてくれるん! らぶたちは敵を!」
 放った炎が恐竜型機械獣の装甲を溶解させ、傭兵たちがむき出しになったフレームに弾丸や武器を叩き込んでいく。
 確かにあの機械獣は強敵であろう。
 だが、『ビッグマザー』のサポートがあれば、消耗を避けることができる。
 その様子を見やり、ラブリーは頷く。
 自分にできることはあまり多くないのかもしれない。けれど、ラブリーは思ったのだ。
『コラキ』のユメ。
 誰かのために、という願いを、欲望をラブリーは肯定する。
「ゼッタイ応援してる。だって、このセカイもこんなにキレイなんだって教えてくれたんだ」
 たった一つのこと。
 他の何もかなぐり捨てても叶えたい欲望が、願いが、誰かのためだという奇跡みたいな、宝石のような過輝きをこそラブリーは守るために、ユーベルコード煌めく瞳と共に迫りくる脅威を火炎放射器でもって退けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルゴ・ルスツァイア
イクスフェルに搭乗
アドリブ連携歓迎

うわ、聞いてはいたが酷い濃度の汚染だ。イクスフェルに乗って来て正解だな……スキャナーがレッドアラートだらけじゃないか。
これだと、やはり足止めは命取りになるな。時間はかけられ無い。
……噂をすれば、来たか。目標確認。射撃開始。

トラック側面にて追従しつつ、腕部レールチェーンガンで迎撃。
高感度のセンサーを生かして遠距離の進路上の敵を見つけ、半ばスナイパーのように高出力電磁加速された砲弾を掃射する。



「うわ、聞いてはいたが酷い濃度の汚染だ」
 完全義体化して尚、危険が満ちる『高濃度汚染地域』。
 その噂はかねがね伝え聞く所のものであったが、エルゴ・ルスツァイア(強化継承体・f40463)は、その噂が尾ひれのついたものではないことを知る。
 まじりっけ無しの真。
 それが目の前に広がる『高濃度汚染地域』であった。
 汚染濃度を示す数値が己が機体『イクスフェル』のモニターに並ぶ。
 生身でいていい環境ではない。
 サイバーザナドゥはそもそもが骸の海が雨として降り注ぐ世界である。

 それ故に人々は呼吸器は義体化するのが必須であり、またそれ以外の生身の箇所も義体化しなければ徐々に汚染物質に侵されていく。
「『イクスフェル』に乗って来て正解だな……」
 モニターのあちこちに赤い警告表示がひっきりなしに明滅している。
 それだけではない。
 猟兵たちが臨時の傭兵として乗り込んでいた武装トラックの周囲を取り囲むように無数の黒い影がある。
 それは周囲の産業廃棄物が形作った恐竜のような機械獣であった。
 体高5mはあろうかという恐竜型機械獣たちが一斉に武装トラックの積荷に引き寄せられるようにして迫っているのだ。

「キャバリア……? アンダーフレームが獣脚。オーバーフレームが爬虫類型、でいいのか?」
 とは言え、考えている暇はない。
 エルゴはモニターに浮かぶ汚染濃度を見やり、時間を懸けられないことを知る。
「目標確認。出力調整」
 突如として現れた鋼鉄の巨人『イクスフェル』の搭乗に最初は武装トラックを護衛していた傭兵たちは面食らっていたが、敵ではないと知るとすぐさま対応を始める。
 その柔軟さは見習うべき所であったことだろう。
「トラック側面につく。此方の方面の敵機は引き受ける」
「頼んだ。それも大型戦闘義体か? 中々イカしてやがるじゃねぇか!」
 傭兵たちの言葉にエルゴは応える代わりに腕部のレールチェーンガンの砲身が展開する。
 頭部に備わった高感度センサーを活かし、武装トラックに迫る恐竜型機械獣に狙いを付ける。
「調整完了。射撃開始!」

 エルゴの指がトリガーにかかり、力を込めた瞬間、腕部のレールチェーンガンから放たれるのは、電磁可変速射撃(ヴァリアブルスピード・ファイア)であった。
 凄まじい勢いで放たれる弾丸。
 それは空を切り裂き、恐竜型機械獣の胴をうちぬく。
 電磁加速された砲弾は一瞬で敵機の腹部を貫き、沈黙させる。
「ひゅぅ! すげえ!」
「野郎ども、負けてられるか。意地の見せ所だ!」
 傭兵たちはエルゴの駆る『イクスフェル』の活躍に触発されたように己達の重火器をふるう。
 四方八方から迫りくる機械獣の群れは未だ波のように押し寄せる。
 退けられてはいないが、此方が突破されるような憂き目はないだろう。
 エルゴはモニターを見やる。

 やはり、あの機械獣はキャバリアににているように思えたのだ。
 何故この世界に、という疑問はある。
 それもあの積荷……『棺桶』めいたコンテナから他の猟兵のユーベルコードによって作動した青い腕。
 あれもまたキャバリアめいたものだった。
「何がどうかはわからないけれど」
 今は、とエルゴは冷静に状況を分析し、電磁加速された弾丸を迫りくる脅威に叩き込み撃破していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
本当、この世界は末法の世という言葉が相応しいわね。機械が勝手に身体を組み上げ襲ってくるとか、どこのB級SF?

まあいいわ。契約の経文(広げた巻物状)を掲げ、「全力魔法」で弥勒菩薩苦世救済誓願法を修法。
機械獣たちには「全力魔法」神聖の「属性攻撃」天からの「レーザー射撃」「弾幕」「破魔」の天から降り注ぐ光線で「なぎ払う」。
味方には「浄化」を乗せた回復をかけて支援する。『高濃度汚染地帯』で戦うなら浸食は出来る限り避けたいものね。

さあ、多少のダメージならあたしが何とかするから、皆は機械獣のとどめをよろしくね。

『鎧装豪腕』、顕現。近寄ってきた機械獣を「怪力」で殴り飛ばしてちょうだい。「盾受け」もよろしく。



 目の前で産業廃棄物が獣脚を作り上げていく。
 体高5mはあろうかという機械獣。
 その姿は異様だった。
 ありえないことだった。まるでSF映画を見ているかのようだった。
 しかし、紛れもない現実であることを村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は知る。
「本当、この世界は末法の世という言葉が相応しいわね」
 一体全体どこぞのB級映画みたいな展開だと彼女は溜息を吐き出す。

 とは言え、迫る黒き影の如き恐竜型機械獣を退けなければ武装トラックは発進できないだろう。
「まあいいわ。傭兵の皆さんは、武装トラックを守るついでに、離れないようにね」
「何か考えがあるのか!?」
「見ていなさいってば」
 手にした契約の経文を掲げ、その瞳がユーベルコードに輝く。
「オン マイタレイヤ ソワカ。永劫なりし弥勒菩薩よ。天と地を繋ぐ契約の慈愛と冷厳を持ちて、救済と破滅をこの地にもたらし給え」
 弥勒菩薩苦世救済誓願法(ミロクボサツクセキュウサイセイガンホウ)が唱えられる。
 ゆかりが手にした契約書に定義され断罪。
 その破滅が迸るようにして恐竜型機械獣たちを天より降り注ぐ光でもって薙ぎ払うのだ。

 黒き影のような機械獣たちは、その光に浄化されるようにしてもがき、苦しむ様子を見せた。
「機械なのに、苦しんでいる?」
 ゆかりは訝しむ。
 本来ならばゆかりは己のユーベルコードの力でもって『高濃度汚染地域』の汚染物質を浄化し、傭兵たちの負担を減らそうとしたのだ。
 だが、それ以上に己のユーベルコード、その断罪による破滅の光が恐竜型機械獣に効果があることに気がついたのだ。
 効果がある、というのは戦いにおいては助かることであるが、その理屈がわからないのだ。
「どうなってんだ?」
「わからないけれど、トドメを刺すのならば今ってことよね」
「そりゃそうだ!」
 ゆかりの言葉に傭兵たちは手にした重火器でもって、ゆかりのユーベルコードによって弱った恐竜型機械獣に銃弾を叩き込んでいく。

 他の猟兵達の働きもあって徐々に恐竜型機械獣の包囲は緩まりつつある。
「もう少し押し返せば、トラックも発進できるかしらね?」
「そうだな。だが、あんたらが来てくれたおかげで大分楽ができてるぜ」
「それは重畳ね。あたしだってこんな汚染物質まみれの場所に長居したいっておもわないもの」
 ゆかりの言葉に傭兵たちは同感だと頷く。
 己たちを囲う恐竜型機械獣たちの勢いが衰え始めている。

「『コラキ』、まだでれないの?」
「もうすぐだ。やたらに走ったって、逃げ切れるもんじゃあない。いつでもでれるように準備しておいてくれ!」
「はいはい、っと」
 ゆかりは迫る敵の一撃を『鎧装剛腕』でもって受け止めながら、見上げる。
 体高5mはあろうかという巨体。
 何故己の浄化の力が効いたのか。
 謎は深まるばかりであったが、今はこの場を逃れるのが最善であると、ゆかりは『鎧装剛腕』で機械獣を弾き飛ばして武装トラックに飛び乗るだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
迷彩外套にゴーグル、プロテクターに対戦車杭打ち銃に小火器及び高周波シャベルっと
久々の荒野兵装一式に身を固め、軽く腕を回す

「それじゃあ、お仕事と参りますか」
機構靴のギミックで機械獣の群れに突っ込む
最初の一体は派手に動力部を狙って、対戦車杭打ち銃での一撃必殺狙い
後は乱戦になるが、小兵を上手く使って連中の間を掻い潜り、関節への杭打ちや足回りの動力伝達系を狙った消火器や高周波シャベルの攻撃に切り替える
撃破する必要はない、こちらを追う機動力を削げば目的は達成なのだから
※状態異常力重視
「連中の足は削いだわ。上手く引き離しなさい」
程良い所でワイヤーアンカーを使って武装トラックに帰還する



『高濃度汚染地域』に湧出する恐竜型機械獣。
 それは体高5mはあろうかという巨体であった。
 群れ為す敵は確実に武装トラックに積まれた『棺桶』を狙って迫ってきている。
 今は猟兵と傭兵たちによって阻まれているが、じりじりと囲いを狭ばめられてしまえば、そのうちに追い詰められてしまうだろう。
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は己の装備を確認する。
 迷彩外套にゴーグル。
 プロテクターに対戦車杭打ち銃。
 点検もメンテナンスも十全である。小火器及び高周波シャベルも引っ提げて紅葉は軽く腕を回す。

 窮屈だった武装トラックの荷台が恋しいとは思わないが、こういうときのために己たちは要るのだ。
「それじゃあ、お仕事と参りますか」
「頼んだぞ。敵の囲いが緩んだら走り出す。置いていかれたくなかったら、離れすぎるなよ」
「それじゃあ、遅いわよ。こういうのは敵の勢いがおさまるのを待っていたら、それこそドツボにはまる」
「じゃあ……っておい、あんた! なにするつもりだ!?」
「こうするのよ!」
 紅葉は不敵に笑って、己の脚部に装着された機構靴のギミックで一気に迫る恐竜型機械獣の群れへと突っ込む。 

 それは敵の囲いの一番分厚い、武装トラックの前面であった。
 走り出すにしたって、敵の囲いに穴を穿たなければ逃げることもできない。ならば、と紅葉は一気に踏み込むようにして飛び込むのだ。
「めちゃくちゃだ!」
「いいえ、これくらい出来て当然なのが荒野を征く者(ワイルドウォーカー)ってものよ」
 突っ込んだ紅葉が手にした対戦車杭打ち銃の一撃が恐竜型大型獣の胴部を貫く。
 ひしゃげるようにして穿たれた穴。
 一撃必殺。
 それを体現する紅葉の一撃は、終わらない。
 さらに敵の巨体を活かして身を翻して、間隙を縫うようにして走り抜ける。己が小兵であることはなんら不利にはならない。

 敵が巨体ならば、その巨体を狩る戦いができるのが己という存在なのだ。
 杭打ち銃を引っ提げ、さらに高周波シャベルを振るって恐竜型機械獣の関節を切り裂く。
「無理に撃破する必要なんてない! 関節を狙いなさいな!」
「アンタみたいな無茶できるもんじゃあないんだがな……! だが、やってやらぁ!」
 紅葉の言葉に傭兵たちもまた応える。
 本来ならば紅葉と同じようにできるものではないのだ。
 だが、彼らとて危険極まりない『高濃度汚染地域』を突っ切ろうとする者たちだ。頭のイカれ具合は負けていない。
 恐怖など頭のネジを数本飛ばせば、それで事足りると言わんばかりに彼らは紅葉と共に恐竜型機械獣の脚部を切り裂いていく。

「やるじゃない」
「アンタには負けるがな! はっ、なるほどな」
「ええ、敵は動けなくなった味方が邪魔で此方を踏破できない。勿論、時間をかければ踏破してくるでしょうけど、私達は時間を得られる。どう、でれる!?」
 紅葉は『コラキ』へと叫ぶ。
 武装トラックのエンジンがうなりを上げる。
「いつでもでれる! 遅れるなよ!」
 紅葉はその言葉に頷き、武装トラックへと飛び込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
それじゃあお仕事開始だね★
状況的には殲滅よりは離脱・突破優先かな★という訳で札を1つ切らせてもらうね…【護衛機構・瞳術人形】★
さっき走査しておいたトラックのデータを基に、「偽物」を出しちゃうぞ★
この囮で何割かを釣って、ついでに攻撃反射能力で反撃させるね★

後は囮の護衛に数機ビーストを残し(回収はせずそのまま破棄するよー★)、『G-ライアー』でトラックの後を追いつつ、釣り切れずトラックを追おうとする分にパルスブレイド『SR-KN』でのEMP攻撃からスプレッドダガー『Ku-9』での爆破を狙っちゃうぞ★
トラックに追い付いたら『G-ライアー』の上から『シルキーショット』で味方の援護射撃しちゃうぞ★



 シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は状況を再確認する。
 武装トラックを襲った恐竜型機械獣は『高濃度汚染地域』のあちこちから、此方に向かってきている。
 数は知れない。
 どこぞから湧出するようにして産業廃棄物でもって駆体が構成してくるのだ。
 倒しても、倒した機械獣同士が結合するようにして一体となって迫ってくる。
 それは此処で足を止めて戦っていては、此方が消耗するばかりである。
「でられるぞ! 遅れるな!」
 武装トラックのドライバーである『コラキ』の声が飛ぶ。
 猟兵と傭兵たちによって、武装トラックの前面を封じていた恐竜型機械獣の包囲に穴が明けられたのだ。

 今しかない、と彼はエンジンを始動させ、傭兵たちを荷台に収容させ離脱を試みているのだ。
「それじゃあ、シルキーちゃんのお仕事だね★」
 もう一度状況を確認する。
 敵を殲滅することは難しい。
 それよりは離脱した方がいい。
「一つ仕切らせてもらってもいい?」
「この状況が好転するってんなら、なんだっていいよ!」
「よし★じゃあ、シルキーちゃんの切り札その一! 護衛機構・瞳術人形(ミガワリ・リフレクション・ドール)!」
 シルキーはユーベルコードによって、先程から精査していた武装トラックのデータを基に囮の偽物を作り上げる。

「……!? 武装トラックがもう一台!?」
「そう★ 偽物に囮になってもらっている間に敵の囲いを突破しちゃおうって作戦★」
 シルキーの言葉とともに生み出された囮の武装トラックが的外れの方角へと走っていく。
 積荷である『棺桶』も精査しているのだ。
 生み出された偽物は何処かで確実に破壊されるだろう。
 けれど、時間は稼げる。
 シルキーは数機のビーストを囮につけさせ、自身は『Gライアー』でもって後続に迫る恐竜型機械獣を追い払うのだ。

 とは言え、敵の群れは何割かしか囮には引っかからなかった。
 やはり内部のわからなかった『棺桶』の中身に恐竜型機械獣は反応しているのだろう。
「さっき、青い腕がでてたけど、本当に『棺桶』だったんだね★」
「オレだって知らなかったんだ! 中身があんなのだなんて!」
『コラキ』の言葉にシルキーは頷く。
 だが、同時に疑問も湧く。
 何故、この『高濃度汚染地域』にて湧出した恐竜型の機械獣は、あの『棺桶』の中身を追うのだろうか。
『Gライアー』の放つスプレッドダガーが爆発し、彼らを阻む。

「何が目的なんだろうね、あの子らは★」
 問い掛けても応えはないだろう。
 そもそも、あの機械獣たちは何なのか。理解が及ばない。まるで怨念に取り憑かれたような、ナンセンスさ。
 なのに、同時にそれが真であるようにもシルキーには思えた。
 この『高濃度汚染地域』の汚染物質は骸の海だ。
 ならば、降りしきる過去の残滓、残穢がこうして形となって自分たちの運ぶ積荷を狙っているのかも知れない。

 確証はない。
 けれど、シルキーは己たちに追いすがる恐竜型機械獣を見やり、理屈ではない怨念名たものを感じるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イクシア・レイブラント
アドリブ、共闘歓迎。

違法物の運搬。
他の世界なら見過ごせない行為だけど、
この世界はそうでもしないと生きていけない人が多いのよね。
ままならないものね。

高濃度汚染地域であっても[環境適性、毒無効]の機能を有する
サイキックアーマーなら外気を遮断する。
翼を広げて武装トラックの上空を[滑空]で飛翔。
更にデコイドローンを周辺に展開して[索敵、情報収集]、敵の位置を仲間に[情報伝達]する。
2時の方角に敵影。3分後に射程圏内、迎撃して。

エクスターミネイターのレーザー射撃で【強襲支援】で仲間をサポート。
突破してくるなら[推力移動]で機械獣に接近、
対キャバリア用の大型フォースブレイドで[なぎ払い]して片づける。



 違法な品々。
 それは言うまでもなく法で裁かれるべきものである。
 しかし、それは他の世界であればの話である。
 此処サイバーザナドゥにおいては、違法物の運搬は見過ごせない行為というよりは、そうしなければ生きていけない者たちがいるという事実を突きつけられるようなものであった。
「ままならないものね」
 金が要る。
 どうしたって金がいる。
 生きるためには、必要なものはすべて金と交換である。
 世知辛い、とイクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は思ったかも知れない。

 生きるのがこんなにも困難な世界があるのかとも思ったかも知れない。
 けれど、今のイクシアがやらねばらないことはただ一つ。
 違法とは言え、『高濃度汚染地域』を突っ切ろうとしている命知らずな彼らを救わねばならないということだ。
 彼らの行く末がどうなろうと本来は、彼ら自身に託されたことである。
 介入する必要はない。
 けれど、目的地目前にしてオブリビオンに襲撃されて生命を落とすというのならば、話は別である。
「見過ごせない。理由はそれくらいのもの」
 イクシアは己の身を蝕もうとする汚染物質をサイキックアーマーによって遮断しながら、翼を広げ、追われている武装トラックの上空を滑空するようにして飛翔する。

 デコイドローンが射出され、周囲の情報を得る。
 敵は恐竜型機械獣。
 体高5mはあろうかという巨体である。
 それらが周囲の産業廃棄物によって構築され、撃破しても、撃破された個体と個体と不足分を結合してまた追いすがるのだ。
「厄介ね。けれど」
 イクシアはデコイドローンから伝わる情報を武装トラックの荷台から後方に向けて銃撃している傭兵たちへと情報を伝える。

「二時の方角に敵影。三分後に射程圏内、迎撃して」
「二時!? おい、誰か二時の方角を!」
 その言葉に従うようにして傭兵たちが迫っくるし荷台の中で動く。
「カバーする。エクスターミネイター展開、索敵情報とリンク。強襲支援(アサルトコマンド)を実行する」
 彼女の瞳がユーベルコードが輝く。
 放たれるレーザー射撃が武装トラックを狙う恐竜型機械獣を貫く。

 しかし、その猛攻をかいくぐるようにして恐竜型機械獣が鋼鉄の獣脚を跳ね上げて飛ぶ。
「突破力は中々。けれど」
 対キャバリア用の大型フォースブレイドを構えたイクシアは踏み込む。
 武装トラックの上空に待機していたのは、このときのために。
 ふるう一撃が恐竜型機械獣の胴を一閃に切り捨てる。
「敵はすぐまた結合する。今のうちに距離を稼いで。振り切らねばならない」
「わかった!」
「上空から私は索敵する。情報の共有は常に更新して」
 イクシアはそう告げて、再び武装トラックの上を抑えるようにして飛ぶ。
 まだ突破は成らない。
 けれど、イクシアの支援によって武装トラックは無傷のまま『高濃度汚染地域』をひた走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
デモニック・ララバイ【操縦】
両腕を振るい、殺戮音叉【弾幕】発射。
撃ち出した殺戮音叉は機械獣に刺さった瞬間【衝撃波】を発振、
機械獣を内部から破壊。

これだけいれば狙わなくとも当るな!
『キャバリアっぽいけど、こいつらってこの世界の一般的危険生物だったりするぅ!?』知らない!今気にする事ではない!!響け!悪魔の騒音!!

〚魔音拡散器〛発動BS-S巨大メガホン型スピーカー装着!
【楽器演奏】スピーカーから大音量の衝撃波を放ち迫る機械獣共を【吹き飛ばし】そして敵と、先に撃った殺戮音叉を共振させ魔音の【ハッキング催眠術】機械獣共を狂乱催眠、目に映る機械獣が積荷に見えるように誤認させ同士討ちさせる!



 武装トラックと並走するようにして朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の駆るキャバリア『デモニック・ララバイ』は両腕をふるって『殺戮音叉』の弾幕を恐竜型機械獣へと叩き込む。
 突き刺さった音叉が衝撃波を生み出し、恐竜型機械獣の躯体を粉砕する。
 内部から破壊する衝撃波を防ぐ手立てはない。
 けれど、粉砕された駆体が再び結合していく。
「……これは」
『キリがないね、これは! 彼らを振り切る他に手段はないってことだよ! 一体どうなってるんだろうね! いや、わかっているけれど!』
 小枝子は『クレイドル・ララバイ』の言葉に頷く。
 あれは怨念の類いだ、と。

『どうみたってキャバリアっぽいけど、こいつらってこの世界の一般的危険生物だったりするぅ!? そんなわけないよねぇ!? どう考えてもこっち側じゃないか!』
「知らない! 今気にすることではない!!」
 小枝子は『クレイドル・ララバイ』の言葉を真っ向から否定する。
 そう、今気に留めるところはそこではない。
 留意すべきところは、敵の特性である。
 破壊しても破壊しても恐竜型機械獣は、粉砕された端から結合して再び大地を揺らして走る。
 他の猟兵達のユーベルコードでも同様だった。
 唯一効果が見られたのは、浄化の力であった。
 それは怨念でもって恐竜型機械獣たちがつながっている、ということである。

 だが、小枝子は構わなかった。
 だからなんだというのだ。
 知ったことではないのだ。自分ができることはただ一つ。
「壊す!!!」
 そう、ただそれだけなのだ。
「響け! 悪魔の騒音!!」
『奏者ぁ、自分で騒音っていうのは私どうかと思うんだけれど! 曲がりなりにもさぁ!』
「知らないと言った! 今は破壊することだけを考える!!」
 その言葉と共に『デモニック・ララバイ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 召喚された巨大メガホン型スピーカーを手にし、小枝子の咆哮が拡声される。

「アアアアアアアアア!!!!」
 その声は凄まじい衝撃波となって武装トラックへと迫る恐竜型機械獣を吹き飛ばす。
 さらに小枝子は放った『殺戮音叉』を共鳴させる。
 己の咆哮は魔の音。
 ハッキングする力と音による催眠によって恐竜型機械獣たちに彼ら自身が積荷に見えるようにご認識させるのだ。
 同士討ち。
 それを誘発した小枝子は、しかし、それでも破壊された後に、さらに結合して己の放った催眠を振り払う恐竜型機械獣の姿を見た。
『彼ら、しつこいなぁ。一体あの積荷はなんなんだろうねぇ?』
「知らない。壊しても壊しても追ってくるというのなら!」
『なら?』
「もっと壊すまでだ!!」
 小枝子の言葉に『クレイドル・ララバイ』は溜息を吐き出す。

 やっぱりそれなのかい、と。
 けれど、それは小枝子にできるたった一つのことだった。
 彼らを振り切るその時まで破壊し続ける。
 そのためだけに小枝子は己が喉から迸る咆哮でもって、迫る恐竜型機械獣たちを退けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
こいつら……キャバリアじゃねーですか!
少なくとも似たような奴って事は間違いねーですね。
クロムキャバリアじゃ歯が立たなかったですけど……ここならそうはいかねーですよ。
自由に飛べる、この世界なら!
トラックから飛び出したらそのままウィングアップ!
空からトラックを援護するですよ!
上空からビーム砲で敵を牽制して、近付いて来た奴は突撃して吹き飛ばしてやるです!
トラックのドライバー!てめーはしっかりアクセル踏んでやがれです!
邪魔な連中にはボクが一発かましてやるですから、傭兵共はきっちりトドメ刺すですよ!
この恐竜やろー、白亜紀の後は鳥に任せて大人しく絶滅してろってんですよ!
復元不可能なくらいバラしてやるです!



「こいつら……キャバリアじゃねーですか!」
 ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)はサイバーザナドゥの『高濃度汚染地域』にて湧出した黒い影のような恐竜型機械獣たちの姿を認めて、目をむく。
 彼女がそういったのも無理なからぬことであった。
 獣脚のアンダーフレーム。
 爬虫類型のオーバーフレーム。
 それはやはりファルコにとっては見慣れたキャバリアの機構に国字していたのだ。
 いや、と思う。
 世界が違うから、そうではないのかもしれない、と。

 だが、やはり似通っている。
「少なくとも似たような奴ってことは間違いねーですね」
 ファルコは獰猛に笑う。
 確かに己が世界、クロムキャバリアにおいてはキャバリアは戦場の花形である。
 むしろ、キャバリアがなければまともな戦いにすらならない。
 それはファルコにとって身にしみたことだった。骨身にしみている。骨の髄まで理解している。

 けれど。

「自由に飛べる、この世界なら! ウィングアップ!」
 ファルコの瞳がユーベルコードに輝く。
 武装トラックの荷台から飛び出し、ファルコの体がユーベルコードに包まれる。
「チェェェェェンジ! ファルコン!」
 彼女の体躯が戦闘機に変身し、大空を飛翔する。
 汚染物質に汚染された空であっても、ファルコには関係なかった。
 空にふたされていない世界において、ファルコはこれまでの鬱憤を晴らすように飛翔するのだ。
 その速度は言うまでもなく凄まじいものであった。
 武装トラックを追う恐竜型機械獣たちを睥睨するようにしてロックオンする。

 放たれたビーム砲が天空から降り注ぐようにして恐竜型機械獣たちを貫いていく。
「トラックのドライバー!」
「なんだよ!?」
 通信の先で『コラキ』と呼ばれたドライバーが喚く。
 さっきから猟兵達のユーベルコードが煌めいているのだ。驚天動地のことばかりが起こっている。そんな中で武装トラックを横転させずに奔らせているのは、大した胆力であると言えただろう。
 けれど、まだ足りない。
「てめーはしっかりアクセル踏んでやがれです!」
「言われなくても!」
「それでいーです! 邪魔な連中はボクが一発カマしてやるですから! 傭兵共も聞こえてるですね!? きっちりトドメ刺すですよ!」
「わーってるわい!」
 ファルコの言葉に傭兵たちも応える。

 荒々しい雰囲気にファルコは今更臆することはない。
 はは、と笑って空を飛ぶのだ。
「ならいーです! この恐竜やろー! テメーらは此処までです! 白亜紀の後は鳥に任せて大人しく絶滅してろってんですよ!」
 ファルコが変じた戦闘機が空中で一回転して急降下する。
 それは地を這う恐竜型機械獣には感知できぬほどの強襲であった。放たれたビームの光条が頭部を貫き、結合して再生してなおも追いすがる彼らを討ち果たしていく。
「まーたくっつきやがるです! いいですよ、復元不可能なくらいバラしてやるです!」
 ファルコは地面すれすれを飛び、上空へとパスしながらなおも追いすがる敵を認める。
 まだ追うのならば、己の空の戦いは終わらない。
 それこそファルコの言葉通り、復元できないほどに打ち倒すまでだと言うように、彼女は加速するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャット・アーク
おおー、でっかい!
あれ頭脳戦車?
あんなサイズもあるんだねー

おにーさん達に、がんばろーねって声をかけよう
皆気合い十分って感じだ
積荷の傍に行けたら、試しにおでこをくっつけて話しかけてみよう
「キミはオレ達を助けてくれる?」

トラックの上に登って、腕部に仕込んだワイヤーを袖口から伸ばして準備
機械獣が攻撃してくるのに合わせて素早くワイヤーを引っ掛け、頭によじ登るよ
エンゼルハイロゥ起動、光学迷彩解除
機械にもオレの言葉を届かせ易くするのに便利なんだよね
ワイヤー使ってギュッと引っ付いてお願いしよう
「トラックはダメ。キミと同じヤツは攻撃していいよ」
時間ギリギリまで同士撃ちさせて、最後は味方にトドメを刺してもらおう



 それを見た第一印象は簡単なものだった。
「おおー、でっかい!」
 キャット・アーク(路地裏の王様・f42296)は武装トラックに迫る恐竜型機械獣の群れを見て笑った。
 あまりにも場違いな笑い声。
 この緊急にして異常事態を前にしてキャットは楽観的とも取れる声を上げたのだ。
 傭兵たちは疾走する武装トラックの荷台から己達の重火器を追いすがる恐竜型機械獣へと叩き込んでいるが、破壊したそばから結合して弾丸が無意味であることを知らしめていた。
「あれも頭脳戦車?」
「知るかよ! なんかよくわからんが、あんなのこっちだって初めて見るわ!」
 傭兵の声にまたキャットは笑う。

 なんていうか、こういう窮地にあると笑いが止まらなくなるのかもしれない。
「あんなサイズもあるんだねー。おにーさんたち、がんばろーねっ」
「やってるわ!」
「ていうか、お前も手伝えよ!」
 傭兵たちがぶーぶー言う。
 余裕がないのだろう。わかる。けれど、キャットは武装トラックの荷台へと足取り軽く飛び乗る。
『棺桶』のような巨大な荷台。
 さっきほどは猟兵のユーベルコードでハッチを盾にして中の巨腕が傭兵たちを守っていた。
 意志があるのか。
「キミはオレたちを助けてくれる?」
 ハッチにキャットは額を付けて問いかける。

 応えはない。

 けれど、これが無機物であれ、意志があるのであれ、どちらにせよキャットには関係ない。
 猫に牡丹(アトラクティブ)。
 己の声が届いているというのならば、己の額が振れているというのならば、それは己に味方すると決まっているのだ。
 キャットの瞳がユーベルコードに輝いている。
 ハッチが再び盾のように青い巨大な腕に掴まれ、迫る恐竜型機械獣へと叩きつけられる。
「おっと、過激だねー」
「あれが中身かよ! なんだ、本当に巨人なのか!?」
「ばか、でけぇ戦闘義体だろうが!」
 傭兵たちの驚愕する声が聞こえる。
 キャットは開かれたハッチの奥を見る。

 そこに在ったのは青い鋼鉄の巨人。
 双眸のようなアイセンサーは光灯さず。けれど、キャットの声に声耐えるようにして『棺桶』の中から腕部を振るってハッチを叩きつけていた。
「あはっ、それしか今はできないんだね。なら!」
 キャットは袖をふるう。
 すると内部に備わっていたワイヤーが恐竜型機械獣へと走り、その頭部へと巻き付く。
「ダメダメ、トラックを攻撃するのはさ」
 キャットはワイヤーを巻き付けた恐竜型機械獣の頭部へと飛び、まるで暴れ馬を制するようにしてユーベルコードのちからを波及させていく。
「キミと同じヤツは攻撃していいよ」
 その言葉に従うようにして恐竜型機械獣は周囲にあった同じ機械獣へと組み付く。
 首へし折り、組み付く。

 その同士討ちを見やり、キャットは再び武装トラックのコンテナ……『棺桶』の上へと飛び降りる。
「おっと、もう御眠なのかな?」
 既にハッチは閉じられている。
 助けてくれたり、助けてくれなかったり不思議だな、と思いながらキャットは己の力によって同士討ちを果たした機械獣たちを見やるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

ステラさん、なんだかこの『棺桶入りセラフィム』が狙いみたいでって……彼女?
もう『後方彼女面』になってます!?

それにしてもこれって殲滅するよりは逃げないとダメなやつですよね。
でも恐竜型機械獣とか、わたしちょっと相性悪い気が……。

いえ!そんな弱気で勇者は務まらないですね!
心なき機械すら魅了してこそ、勇者の演奏!奏魔法!

勇気は勇者の象徴!おんなは度胸!

あ、『おんな』っていっても、メリサさんの、じゃないですよ?
わたし、おじさま趣味もありますけど、タイプと違うので!

トラックのコンテナの上によじ登って、わたしの演奏聴かせてきますー。
ここは全方位に向けて、思いっきりの【カノン】をごー、です!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
メリサ様の女、順調に広まっていますね!このまま既成事実を!
懸念点はケートス様とオルテーニス様が潰しにかかってくることですが
今はさておき!

っていうか依頼主はメリサ様!?
彼女に内緒で何をしているのか……!
今度問い詰めないといけませんね

さて
どこぞの王族御用達のキャバリアみたいな敵ですが
ここはルクス様の出番ではないでしょうか
ええ、勇者たるもの……ってルクス様がシリアスしてる!?
ばかな……サイザナなら生きていけるというのですか?この|光の勇者《破壊の申し子》は
しかし好機!
私は支援に回りましょう
【テールム・アルカ】起動!
召喚した『RSパルスマシンガン』(人型サイズ)を撃ち込んでいくとしましょう



「おい、出番なんだぞ! しっかり働けよ!」
 武装トラックを奔らせるドライバー『コラキ』の声が聞こえる。
『高濃度汚染地域』において湧出した謎の恐竜型機械獣たち。
 その追跡は激しいものだった。
 破壊しても破壊しても恐竜型機械獣たちは即座に己たちを結合させて不足分を補って武装トラックを追いかけ回しているのだ。
 しつこすぎる。
 だからこそ、彼らが消耗してしまい、目的地目前にしてオブリビオンに殺されてしまうのだろう。
 そんな『コラキ』の焦りの声を聞いた傭兵たちは慌てて彼を止める。

「バカ、やめろ! あれは『メリサ』のオンナだっていうんだぞ!?」
 傭兵たちは業界屈指の殺し屋『メリサ』のオンナを自称するステラ・タタリクス(紫苑・f33899)に『コラキ』が罵声にも似た声を上げたのを止めようとした。
 逆鱗に振れたのならば、巻き添えを食うと思っているのだろう。
 そんな様子にステラはむしろ、上機嫌だった。
「『メリサ』様の女、順調に広まっていますね! このまま既成事実を!」
 今、既成事実って言った?
 ないところに煙を立てることに手段を選ばなくなってきているステラである。ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、そんなステラを見て、えぇ……という顔をする。

 敵の狙いは『棺桶』じみた貨物である。
 どうして、という思いもある。けれど、それ以上にステラがすでに『メリサ』の彼女として周囲の認知を歪めようとしている所にきょうがくしてしまう。
「もう『後方彼女面』になってます!?」
「懸念点は『ケートス』様と『オルニーテス』様が潰しにかかってくることですが」
 そりゃそうでしょう。
 煙のない所に火は立たない。
 そんな火元がない煙を煽るステラの挙動を『メリサ』が逃すわけがない。絶対依頼する。諸々の噂を潰しにかかる。
 けれど、とステラは思いを新たにする。

「今はさておき、ですね!」
 いやていうか、とステラは思った。
 この積荷の依頼主は『メリサ』だという。
「彼女に内緒で何をしているのか……! 今度問い詰めないといけませんね!」
 彼女じゃないのに問い詰められるとかどういうことなのだろうか。
 いやまあ、それはこの際置いておこう。キリがない。堂々巡りである。
 ある! ない! みたいな。

「それにしても」
 ルクスはそんなステラの言葉をスルーした。
 それにしても、って便利な言葉である。
「これって殲滅するより逃げないとダメなやつですよね」
「ええ、どこぞの王族御用達のキャバリアみたいな敵ですね。ここはルクス様の出番ではないでしょうか」
「でも、恐竜型機械獣とか、わたしちょっと相性悪い気が……いえ! そんな弱気では勇者は務まらないですね! 心なき機械すら魅了してこそ、勇者の演奏! 奏魔法!」
 どん! とルクスは胸を叩く。
 何故かわからないが謎の頼もしさがあった。

「ええ、勇者たるもの……ってルクス様がシリアスしてる?! ばかな……サイバーザナドゥなら生きていけるというのですか? この|光の勇者《破壊の申し子》は!」
「勇気は勇者の象徴! おんなは度胸!」
 ルクスは胸を張る。
 マジで謎の頼もしさ。なんとかなるんじゃないかと傭兵たちは思った。
「あ、『おんな』っていっても、『メリサ』さんの、じゃないですよ? わたし、おじさま趣味もありますけど、タイプと違うので!」
 なんのカミングアウトかわからない。
 けれど、傭兵たちは勘違いした。
 ルクスもまた『メリサ』が囲っている女の一人なのだと。噂は尾ひれがつくものである。『メリサ』のやばいヤツ度が1あがった! 

「さあ、わたしの演奏を聞かせてあげましょう!」
「あ、傭兵の皆様は外部の音声をシャットダウンお願いします。『コラキ』様は運転に差し支えてはなりませんので、こちらを」
 ステラはそう言って耳栓を『コラキ』にわたす。
 そう、如何に義体化されていても!
 ルクスの演奏は、Canon(カノン)は響くのである。

「ごー、です!」
「私は支援に回りましょう。テールム・アルカ起動!」
 ステラもまた積荷の上に乗り、リサイズされたパルスマシンガンを迫る恐竜型機械獣へと叩き込んでいく。
 炸裂する破壊音波と弾丸。
 それは嵐のような苛烈さでもって追いすがる恐竜型機械獣たちを打ちのめすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユキト・エルクード
SPD判定
アドリブ連携歓迎

はっ、華も面白みも無い連中が雁首揃えてぞろぞろ来やがって
そんなにバラバラになりたけりゃ望み通り吹っ飛ばしてやる
旨そうな獲物を目の前に、指一本動かせずにな

傭兵連中に遠慮なくぶっ放して貰う為、汚染対策に救命インジェクターを自分に打ちながら荷台の上に飛び乗り、目視で戦況を把握
単独や少数で近寄ってくる奴は【電撃】や【爆破】属性を付与した【投げナイフ】と同時利用可能なUC【刻影蝕】で対応

大規模な群れや特に巨大な個体相手である場合はUC【神火分霊葬送陣】で相手が死滅するまで地形ごとまとめて爆破し続けてやる

万一乗り込まれそうになった時は、頭叩き割って逆に蹴り落としてやるさ



 迫るは黒き影。
 そう表現する他ないほどに『高濃度汚染地域』にて襲い来る恐竜型機械獣は、湧出していた。
 いくら傭兵たちが打ち倒しても破損部分を互いに補うようにして結合しては武装トラックを追ってくるのだ。
「はっ、華も面白みもない連中が雁首揃えてぞろぞろ来やがって」
 ユキト・エルクード(亡霊夜警・f38900)は己たちを追う恐竜型機械獣たちの群れを見やる。
 荷台の上に立つユキトは、敵の狙いがやはりこの積荷であることを知る。
 コンテナめいた『棺桶』。
 そのハッチの隙間から見えるのは青い鋼鉄の巨人。
 猟兵のユーベルコードによって此方を手助けしてくれてはいたが、それはユーベルコードの効果に過ぎない。
 その意志が感じられない姿を見やり、ユキトは後方に迫る恐竜型機械獣たちを見据える。
 どれだけ弾丸を打ち込んでバラバラにしても結合して迫りくるのだ。
 殲滅は無理だと理解し、ユキトは笑う。

「そんなにバラバラになりたけりゃ、望み通りふっとばしてやる。旨そうな獲物を目の前に、指一本動かせずにな」
 ユキトはキュウメインジェクターを己の二の腕に叩きつけるようにして打ち込み、注入される神火の浄化作用によって汚染物質を体内から消し去る。
「どうだ、あとどれくらいで振り切れる」
「もう少しこらえてくれ! この先に行けば……!」
 ユキトは『コラキ』の言葉に頷く。
 遠くに見えるは一本道のトンネル。
 この武装トラックの車高であればギリギリ。そして、迫る恐竜型機械獣であればくぐれぬ幅と高さだ。
 なるほど、と思う。

「なら、時間は稼いでやるよ」
 派手に行こうか、とユキトの瞳がユーベルコードに輝く。
 舞うようにしてユキトの手が天に掲げられる。
 霊峰天舞アマツカグラの龍脈より招来せしめるは神火分霊。
 それは一気に飛び立ち、迫りくる恐竜型機械獣へと弾丸のように激突する。それだけではない。
 召喚した神火分霊は鎖に連なったように自爆を引き起こす。
 連鎖反応によって膨れ上がる爆風。
 それは武装トラックを追いすがる恐竜型機械獣たちを吹き飛ばし、さらに結合しようとしても連鎖反応で爆発する神火分霊たちが阻むのだ。

「あばよ」
 これぞ神火分霊葬送陣(ジンカブンレイソウソウジン)である。
 ユキトは追いすがる恐竜型機械獣たちがどれだけ爆破しても再結合することを理解していた。
 ならば、敵が追ってこれないように地形事爆破し、さらに連鎖爆破によって結合を阻害したのだ。
 これによって恐竜型機械獣たちは、さらに欠損した部位を結合させるべく巨大化していき、結果的に武装トラックが飛び込んだトンネルの高さ幅に阻まれて追うこともできなくなってしまうのだ。
「ま、欲張りすぎた末路ってことだな」
 ユキトは荷台の上から、荷台の中へと飛び込む。
 相変わらず隙間のないくらいすし詰めであるが、これが傭兵たちが誰一人駆けることなく、このトラブルを脱したことを意味していた。
「ま、これくらいは我慢してやらないとな」
 ユキトはため息を吐き出しながら、トンネルの暗闇の先……即ち、目的地がもうすぐ其処まで迫っていることを知るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『サイバーコムソウ』

POW   :    光学迷彩
自身の【姿が透明】になり、【素早く飛び回り地を駆け抜ける】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD   :    絶命音響
【メタル尺八】の演奏が届く範囲(縮小可能)の全てに、【音波】属性のダメージを与える。無機物には10倍ダメージ。
WIZ   :    諸行無常経
空中に書いた戦文字「【諸行無常】」から【致死属性のレーザー光線】を召喚する。総画数が多い程強いが、書き上げるのに時間がかかる。

イラスト:key-chang

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちは遂に黒き影……恐竜型機械獣の追跡を振り切って光指すトンネルの先へと飛び出す。
 武装トラックの損傷は軽微。
 傭兵たちの消耗も最小限に抑えられた。
 彼らは息を吐き出す。
 トラブルもあったが、今回の『高濃度汚染地域』を突っ切る試みは、はっきり言って大成功だった、と。
 けれど、猟兵たちは知っている。
 このあと、目的地……『此処』と呼ばれる秘境を目前にしてオブリビオンが襲撃することを。

「やはり抜けてきたか」
 彼ら――巨大企業郡『ティタニウム・マキア』傘下のオブリビオン『サイバーコムソウ』 。
 彼らはまるで虚無僧のような姿をしており、その義体化された体躯を持って一列に居並ぶ。
 そのさまは一種のおぞましさを感じさせただろう。
 隊列を組んでいる。すべて同じ駆体が。
「貴様たちの道程は此処で終いだ。『此処』へは行かせぬ。その積荷を明け渡してもらおうか」
 怪しく輝く彼らの眼光が編み目のようなスリットから漏れ出し、その視線の先にある『棺桶』じみたコンテナを見つめるのだった――。
才堂・紅葉
断固速攻
【野生の勘】が考えるより先に体を突き動かす
連中に隊列を揃えてメタル尺八を吹かせたら詰む
武装トラックの走行速度に、自身の機構靴による発射速度をプラスして矢のように突っ込む
乗機を乗り捨て速度を得るのだ

「【気合】よ」
顔に引いた紅の戦化粧に獣の笑みを浮かべ、励起した杭打ち銃で【零距離射撃】
勢いを殺さず反動で回転を活かしながら、連続で杭打ち銃を連撃し

「斉射!!」
叫ぶと同時に機構靴でその場を離脱
手練れの傭兵達に追撃を依頼する
この初撃をもって流れを引き寄せるのだ



「漸くかよ……って、おい!」
 武装トラックの荷台から這い上がるようにして車体の天板へと身を乗り出す者がいた。
 その瞳が映すのはただ一つ。
 目的地である秘境目前にして現れた巨大企業郡『ティタニウム・マキア』のオブリビオン『サイバーコムソウ』たちであった。
 彼らは一斉に隊列を組むように一列に横並びになっていた。
 その動作。
 その意図。
 それを才堂・紅葉(お嬢・f08859)は即座に理解した。
 詰む。
 あの隊列を組ませてメタル尺八を吹かせたのならば、その演奏が届く範囲すべてが彼らの攻撃の対象になる。

「どうしたっていうんだ!」
 武装トラックドライバー『コラキ』の言葉に彼女は声を張り上げる。
「速度は緩めない!」
 その言葉と共に紅葉は機構靴の反発力と武装トラックの速度を利用して矢のように『サイバーコムソウ』へと突っ込んだ。
 それは矢というより砲弾じみていた。
 野生の勘とでも言うのか。
 紅葉は事、このような戦場にあっては冴え渡る勘を発揮する。
 生き残るため。
 勝ち抜くため。
 磨きあげられたセンスは、一朝一夕で身につくものではない。
 彼女がこれまで築き上げてきたすべてが、今の彼女を突き動かすのだ。

「死中に活あり(ホープアゲンストホープ)……まぁ、要するに気合ってことよね!!」
 紅葉の瞳がユーベルコードに輝く。
『サイバーコムソウ』は見ただろう。
 彼女の戦化粧を。
 その横に三本引かれた赤い線。
 其処に浮かぶは獰猛なる獣の笑み。
 励起した対戦車杭打ち銃《楔》の切っ先が『サイバーコムソウ』がメタル尺八を構えるより速く打ち出される。
 その一撃は装甲を穿ち、その電脳を一撃のうちに吹き飛ばすのだ。
 砕け散る体躯。

 それはあまりにも衝撃的な光景であったことだろう。
 人間が砲弾のように飛んできて、ピンポイントで『サイバーコムソウ』を撃ち抜いたのだから。
 そして、それで彼女は止まらない。
 すぐさまに連続で杭打ち銃を『サイバーコムソウ』に叩き込み、メタル尺八を吹き鳴らす暇すら与えない。
「斉射!」
 それは短い号令だったが、しかし武装トラックの荷代に乗っていた荒くれ者……即ち、傭兵たちにはすぐさまに理解できるものであった。
 大地を踏みしめる。
 紅葉は一気に空へと機構靴の反発力で持って飛び上がる。

 次の瞬間、傭兵たちの構えた重火器から放たれる弾丸が『サイバーコムソウ』たちの体を打ち据える。
「よい感じね! 続いて! この流れを断ち切らせたらダメよ!」
 紅葉の言葉に傭兵たちは頷く。
「わーってるよ!」
「任せときな! 援護はお手の物だからよ!!」
 紅葉の切った先陣は見事に敵の初動を潰したのだ。
 後は乱戦になる。
 むしろ、それが望むところだと紅葉は笑い、その戦化粧の紅き三本線を見せつけるようにオブリビオンたちを翻弄するように立ち回るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリィ・ローゼ
やっとここまでたどり着いたみんなの冒険、諸行無常だなんて言わせやしないのだわ!
絶対に、守ってみせる!

「お願い、力を貸して!」
召喚したライオンと一緒に、サイバーコムソウの隊列を撹乱する
文字を書かせないように、シンフォニアの声と魔楽器の音で気を散らして妨害
「勇敢なみんなの邪魔はさせない」この想いは、たとえ機械が相手だろうと届けてやるんだから!



「ヌゥッ! このメタル尺八の力を見破るとは……! だが、隊列を崩されたとて、まだ我等が力が破られたわけではない!」
 オブリビオン『サイバーコムソウ』達の言葉通りであった。
 確かに初撃は完璧に防いだ。
 しかし、傭兵たちの重火器から放たれる弾丸を躱す完全義体たる『サイバーコムソウ』たちの力は強大だった。
「こいつら早い!」
「完全義体だからか……!」
 傭兵たちは完全に翻弄されている。
 そもそもが『サイバーコムソウ』たちに施された義体化技術が違いすぎる。彼らは巨大企業郡『ティタニウム・マキア』のオブリビオン。
 その性能差は歴然だった。

「無駄よ。貴様らがどれだけ道を歩むのだとしても、滅びに向かうことは必定。故に此処で貴様らは終わりを迎えるのだ。全ては諸行無常よ」
 その言葉は真であったことだろう。
 言葉通り、本来ならば傭兵たちは『サイバーコムソウ』たちに殺されてしまう運命だった。
 けれど、それを否定する声が響く。
「やっと此処までたどり着いたみんなの冒険、諸行無常だなんて言わせやしないのだわ!」
 リリィ・ローゼ(フェアリーのシンフォニア・f04235)は、その小さな体躯を武装トラックの荷台から這い出させ、その力を振るう。
 絶対に守る。
 これまで彼らが歩んできた危険に満ちた道程。

 それは確かにこの世界にあっても違法なる行い出会ったし、また危険極まりない自殺行為だったのかも知れない。
 けれど、それがすべて無駄であるなんて誰にも言う権利はないのだ。
 故にリリィは、ユーベルコードの輝きを宿す。
「お願い、力を貸して!」
 その言葉と共に黄金のライオンが現れ、リリィを乗せる。
 彼女の身長の二倍。
 つまりは50cm程度の大きさのライオンに『サイバーコムソウ』たちは笑う。
「それで何ができる。何も出来はしない」
「できるわ。あなたたちが、その楽器を鳴らさないように、隊列を撹乱することが!」
 彼女は黄金のライオンと共に『サイバーコムソウ』たちの間を駆け抜ける。
 メタル尺八を構えようとすれば、小回りの効く小さな体躯で持って、彼らの気を散らし、集中をさせないのだ。

「勇敢なみんなの邪魔はさせない」
 大地を蹴る黄金のライオンが『サイバーコムソウ』の手にしたメタル尺八を叩き落とす。
「こっちも負けてられねーな! おう、あの小さな嬢ちゃんに当たらないように気をつけろよ!」
「わかってるよ! あたんなよ!」
 リリィの果敢なる戦いぶりに触発されたように傭兵たちもまた重火器を構える。
 そう、負けてはいられない。
 此処まで生き抜いてきたのだ。
 これから先も生きるためには金がいる。金だけ得てもしかたないのだ。生命をえて、その先を望むからこそ力と為るのだ。

「そうよ、みんな生きたいって思っているんだもの。だから、ここまで頑張ってきたのだもの! たとえ機械が相手だろうと、絶対にこの想いは届けてやるんだから!」
 リリィは黄金のライオンと共に縦横無尽に撹乱し、尺八の音を響かせず、傭兵たちの放つ銃火の中をただ只管に駆け抜けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
皆はあたしの後ろに下がって。下手すると巻き込む。

「全力魔法」風の「属性攻撃」「範囲攻撃」「吹き飛ばし」「なぎ払い」で風吼陣! 攻撃回数を5倍、移動力を2分の1。
いくら身を隠そうと回避を目論もうと、無数の剣刃を宿した竜巻に巻き込まれて無事でいられるかしら? 空を飛んだって無駄よ。
見えない敵は、怪しい場所ごと消し飛ばす。

一応の防御として、「浄化」を乗せた「結界術」と「オーラ防御」で反撃に対応しておくわ。
結界に引っかかった敵は、薙刀で「貫通攻撃」し「串刺し」にしてあげる。

あたしはいつまでもこんな危険地帯にいたくないの。早く帰って、うちの式たちとお風呂に入らなきゃ。
だから、さっさと殲滅されなさい。



 武装トラックの積荷を簒奪せんと迫るオブリビオン『サイバーコムソウ』たちは、その初手を猟兵たちに潰され、傭兵たちの攻勢に晒されている。
 しかし、如何に危険知らずの傭兵たちと言えど、義体性能の圧倒的な差はいかんともしがたいものがある。
「クソッ! なんだよ、あの義体の性能!」
「速すぎる! それに透明化だと!?」
 傭兵たちは己達のセンサーでは捉えられない光学迷彩機能にて姿を消した『サイバーコムソウ』たちを見失う。
 敵を見失うということは、一方的に攻撃を加えられる、ということだ。

「皆はあたしの後ろに下がって」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、そう言って傭兵たちの前に一歩を踏み出す。
 彼女の瞳にはユーベルコードが輝いている。
「フン、猟兵が如何に出しゃばろうとも!」
「我等が迷彩と、この義体性能があれば!!」
『サイバーコムソウ』たちは一気に透明化した駆体でもって、ゆかりに迫る。
 けれど、ゆかりは不敵に笑む。
「お、おい、あんた! 敵が……!」
「大丈夫。下手すると巻き込むからあたしの前にでないでよ!」
 その言葉と共にゆかりのユーベルコードが炸裂する。
 風吼陣(フウコウジン)。

 それは彼女を中心として形成される暴風圏。
 吹き荒れる風は刀剣を孕む風であり、その圧倒的な刀剣の数でもって迫る『サイバーコムソウ』たちを捉えるのだ。
「いくら身を隠そうと回避を目論もうと、この絶陣の中で無事でいられるかしら?」
 ゆかりの言う通りだった。
 確かに『サイバーコムソウ』たちは透明化と義体性能によって凄まじい回避性能を発揮している。

 けれど、彼らを襲うのは無数の刀剣を宿した竜巻である。
 一度囚われてしまえば、その刀剣は如何に義体であろうとも打ち据え、切り裂くのだ。
「だが、我等の姿がみえなければ……!」
「なら、怪しいところは全部消し飛ばすまでよ!」
 ゆかりのやり方はあまりにも大雑把が過ぎた。
 けれど『サイバーコムソウ』たちにとっては、それが脅威だった。如何に不可視と言えど、確かに己たちは此処にいる。
 そして、狙いが武装トラックの積荷であるというのならば、必然近づかねばならない。
 
「だが、近づけば……!」
「そう。あたしのユーベルコードの効果にとらわれる。なら、そこでしょ!」
 ゆかりは踏み込む。
 刀剣はらむ暴風の中にて、義体を打ち据える甲高い音が響くのだ。
 それこそが『サイバーコムソウ』の居所。
 ゆかりは踏み込み、手にした薙刀の一撃を叩き込めば、迷彩が解除された『サイバーコムソウ』が、そのスリットの奥で眼光を明滅させる。
「バカな……こんな、乱雑なやり方で……!」
「乱雑だろうがなんだろうがいいのよ。あたしはいつまでもこんな危険地帯にいたくないの」
 ゆかりは薙刀を振るって串刺しにした『サイバーコムソウ』を投げ捨てる。
「だって、汚染物質塗れなんて耐えられない! 一刻も早く帰って、うちの式たちとお風呂入りたいの! だから!」
 彼女は息を吐き出す。
 薙刀の柄が大地を打ち鳴らした。
「さっさと殲滅されなさい!」
 ゆかりのお風呂への欲求はとどまるところを知らない。
 その高まりを阻もうとする者すべてをなぎ倒してでも、ゆかりは一刻も早く湯船に浸かりたいと思ったのだ。

 全てはその時のために。
 むさ苦しい荒くれ者たちと荷台にすし詰めになっても。
 汚染物質に汚れても。
 それでも、今日という日の最後を締めくくるお風呂のために。
 ゆかりは目を見開き、そのユーベルコードの光称える瞳でもって『サイバーコムソウ』たちを睨めつけ、この戦いを終わらせるべく奮戦するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルゴ・ルスツァイア
イクスフェルに搭乗
アドリブ連携歓迎

光学迷彩があろうが、トラック周辺以外には敵だけ。つまりは……好きに範囲攻撃が使える訳だ。

「生憎この対処法しか知らないんでね……面制圧する! 炸裂範囲に注意!」
味方に通達した後、射角を変えつつ空中、地面双方に右背部マルチランチャーから無数の中型ロケット弾を射出。空中炸裂させる。
被弾し、その位置を晒した敵は腕部レールチェーンガンでスナイピング。
「一方向だけとも限らない。360度しっかり警戒しておかないとな」



 巨大企業郡『ティタニウム・マキア』のオブリビオン『サイバーコムソウ』の義体性能の高さは言うまでもなかった。
 反応速度。
 駆体の出力。
 どれをとっても傭兵たちの義体以上の性能である。
 この条件で先程のトラブルに疲弊した傭兵たちは敵うべくもなかっただろう。
 グリモアの予知の通りに彼らは殺されてしまうはずだった。
 けれど、猟兵達の活躍によって彼らは余力を残した状態で、目的地目前まで至ったのだ。ならば、負ける道理などない。

「負ける気がしねーぜ!」
「巨大企業郡の犬共がよ! おととい来やがれってんだ!」
 好き勝手に言い放つ傭兵たち。
 彼らは勢いに乗っている。だからこそ『サイバーコムソウ』たちは、その勢いに乗せてはならないと理解する。
 傭兵たちは確かに連携もしなければ、互いを守ることもしない。
 けれど、だからこそ荒くれ者らしく勢いに乗せてしまえば手がつけられなく為るのだ。
「諸行無常よ。その勢いもいずれ衰える。ならば……」
『サイバーコムソウ』たちの姿が透明化していく。
 光学迷彩である。

 そのうえで義体性能にかまけた高速機動ができるというのならば、厄介極まりない。
「光学迷彩があろうが、トラック周辺以外には敵だけ」
 エルゴ・ルスツァイア(強化継承体・f40463)は、己の乗機『イクスフェル』に搭乗し、飛び出す。
 敵は確かに光学迷彩によって姿が見えなくなっている。
 けれど、動き出した端であるというのならば、エルゴは即座に判断を下す。。
「つまりは……好きに範囲攻撃が使える訳だ!」
「ちょ、おい、まて! なにするつもり……」
「生憎、この対処法しか知らないんでね……面制圧する! 炸裂範囲に注意!」
 その言葉と共に『イクスフェル』の背面部にマウントされたマルチランチャーから無数の中型ロケット弾が飛ぶ。
 それは、曳火砲撃(エアバースト・ロケット)であった。
 空中で炸裂した爆風が周囲に吹きすさぶ。

「せめてカウントしてくんない!?」
「そんな時間はない! 敵! 索敵!」
 傭兵たちの非難の声をエルゴはさらりと流し、爆風に煽られて光学迷彩を解かれた『サイバーコムソウ』たちの姿を捉える。
「10時、3時方角に敵多数! 3時はこっちに任せろ!」
 傭兵たちの言葉にエルゴは頷く。
「他の方角も要警戒。ファイア!」
 放たれる銃火。
 それは傭兵たちとエルゴの駆る『イクスフェル』から放たれる。
『サイバーコムソウ』たちは、その銃火に晒される。見えぬ敵こそが恐ろしいのであって、位置の割れた敵など恐れるに足りない。

 打ち倒すには十分だというようにエルゴたちの砲火が次々と『サイバーコムソウ』たちを打ち倒していくのだ。
「諦めが悪い」
 エルゴは更に迫りくる『サイバーコムソウ』たちの姿を認め、腕部レールチェーンガンで撃ち抜く。
 これだけの攻勢を仕掛けてくる、ということは巨大企業群『ティタニウム・マキア』はいよいよ進退窮まっている証明であろう。故にエルゴは弾丸をばらまきながら武装トラックに迫るオブリビオンたちを吹き飛ばしていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャット・アーク
みんなでお行儀よく並んでショドーなんて何が楽しいのさ?
どうせ諸行無常なんだって言うなら、今一番楽しい事をやったほうが断然いいじゃん

仕事も会社もほっといてさ、オレと遊んでよ
ハンティングゲームなんてどう?
狩猟は|猫《王》の嗜みだからね
獲物はキミ達、追っかけるのはオレ達
さあさあ、文字なんか書いてるヒマは無いよ
ちゃーんと逃げ回って、オレを楽しませて
上手にできたら褒めてあげる

踵に仕込んだ銃器の反動で加速しながら、戯れ付くみたいに飛びかかったり、タイミングを合わせて傭兵さん達の火線の前に狩り出す
たまには、ライオンみたいなチームでの狩りも面白くていいよね



「無駄だ。どれだけ抗おうとも、お前達の道程はすべて無意味。此処で朽ち果てることこそが、お前達の本懐である」
 猟兵と傭兵たちの抵抗を嘲笑うかのように次々と増援がやってくる。
 それだけ巨大企業群『ティタニウム・マキア』は本気なのだろう。 
 同時に、それだけ追い込まれているということでもある。
 彼らは猟兵達の活躍によって衰退の一途なのだ。他の巨大企業群に付け入られる隙でもあったが、しかし、再び隆盛を極めるためには、この難局をこそ乗り切らねばならない。
 その方策の一つが武装トラックが運ぶ積荷、あの『棺桶』なのだろう。
 故に、次々と『サイバーコムソウ』たちは湧き出す。

「諸行無常」
「何言ってやがる! おめーら、踏ん張れよ!」
 傭兵たちが重火器でもって応戦している。だが、空中に描かれた文字が光線を解き放つ。
 凄まじい威力で持って放たれる光線が戦場を一変させる。
「なんだ、あの滅茶苦茶な火力は!?」
「ショドーってんでしょ。まったく皆でお行儀よく並んでショドーなんて何が楽しいのさ?」
 キャット・アーク(路地裏の王様・f42296)は迫りくる光線のいち劇を躱しながら、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「どうせ諸行無常だなんだって言うなら、今一番楽しいことをやったほうが断然いいじゃん」
「抜かせ、猟兵。貴様らの邪魔立てさえなければ……!」
『サイバーコムソウ』の言葉にキャットは笑う。
 そんなこと知ったことではない、と。

「仕事も会社もほっといてさ、オレと遊んでよ」
 できるよね? と猫の一声(ドミナント)が世界を書き換える。
 そのユーベルコードは尋常ならざる力であった。
 世界のテクスチャを書き換える力。
 この場は、今やキャット・アークを王とする世界へと塗り替えられた。
「じゃあ、やってみよっか。ハンティングゲーム」
「何を言って……なんだ、この感情は!?」
『サイバーコムソウ』たちはたじろぐ。
 己が胸に湧き上がってくる言いようのない感情に戸惑っているようであった。

「ふふん、狩猟は|猫の嗜みだからね。いいかい。これはゲームだ。獲物はキミ達。追っかけるのはオレ達」
「何を言っている、そんな馬鹿げたことが……」
 通じるわけがない、と『サイバーコムソウ』たちは言う。
 けれど、彼らは理解した。
 今やキャットの言葉が王命である。全てに優先される事柄である。
 王に服従し、傅く事こそ幸福という法則が突きつけられるのだ。
「さあさあ、文字なんて書いているヒマはないよ。キミたちがすべきことは一つ。ちゃーんと逃げ回って、オレを楽しませて」
 キャットの笑顔。
 そしてキャットに続くようにして傭兵たちが重火器でもって『サイバーコムソウ』たちを追い立てていくのだ。

「たまにはライオンみたいなチームでの狩りもいいよね」
「俺達は雄だから、狩りはしないんじゃないのか?」
「気にしない気にしない。雰囲気なんだから、さ! さあ、上手に彼らが逃げられたら褒めてあげようね」
 キャットは傭兵たちと共に『サイバーコムソウ』たちを追い詰める。
 増援がいくら来ようと構わない。
 この戦場の王は己である。
 そう示すようにキャットは、じゃれつくように、戯れのように敵へと飛びかかっていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
ちっ、見えなくなっちまうなんてやりづれー敵です。
でもボクは戦闘機、レーダー的な感覚くれぇ付いてるってんですよ!
気配感知で大まかな場所を掴んだらアームドフォートを展開。
傭兵のやろーども、ボクにプランがあるです!
そう、皆で一緒に撃ちまくって強行突破するーですよ!
でもピンポイントで当てる必要はねぇです。
複数人で弾を広範囲にバラ撒けるなら、大体の方向さえ掴めりゃどれかは当たるってモンですよ!
もし光学迷彩をぶっ壊せれば上々、高威力の火器は見えるようになったそいつ等にとっとけです。
ここを切り抜けりゃ仕事も終わり!
てめーら!金が欲しいなら全弾撃ち尽くすまで死ぬんじゃねーですよ!
それまでに終わらせてやるです!



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』のオブリビオンたちは、わざわざこの『高濃度汚染地域』の端、目的地目前にて待ち構えていた。
 それは一つの意味を持つ。
 そう、如何に高性能の義体を持つ『サイバーコムソウ』たちであっても、この『高濃度汚染地域』にて長時間稼働することは自殺行為だったのだ。
 しかし、そんな中であっても傭兵たちは十全な力を振るう。
 猟兵たちがトラブルを解決したというのもあるだろう。疲弊していないということもあるだろう。
 だが、それ以上に彼らはもとより『高濃度汚染地域』を縄張りとして常に横断を繰り返しているのだ。いってしまえば、命知らず。
 そんな彼らが勢いに乗れば、如何にオブリビオンと言えどたやすく押し返せないのだ。

「チッ……調子付きおって。だが!」
『サイバーコムソウ』たちが光学迷彩で姿を隠し始める。
 そのさまをファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は見やり、舌打ちする。
 光学迷彩。
 それは視認性を尽く悪くするものであった。やりづらい、というのが正直なところであった。
 けれど、ファルコは不敵に笑む。
「だったらなんだってんです! ボクは戦闘機、レーダー的な感覚くれぇついてるってんですよ! 傭兵のやろーども!」
「おうよ! プランがあるってんだろ!」
「そうです! 皆で一緒に打ちまくって強行突破です!」
「プランみたいでプランじゃねーじゃねーか!」
 傭兵たちのブーイングが飛ぶ。 
 けれどファルコは違う違う、と武装トラックの荷台の上に乗って首をふる。

「そうじゃねーですって! ちゃんと最後まで聞けってんですよ!」
「なんだよ! ならそう言えよ!」
「あーもー! 話が進まねーじゃねーですか! いいですか、敵は光学迷彩に加えて高速で飛び交ってんです。ならば、皆で弾を広範囲でばらまけば、被弾した瞬間大体の方角が絞れるってんですよ。なら!」
「当たるも八卦ってか!」
 そうです、とファルコは頷く。
 言ってしまえば、弾丸による面による数撃ちゃ当たる理論である。
 普通ならば、躊躇う。
 弾丸の残弾数もある。けれど、傭兵たちは何処か頭のネジが飛んだ連中ばかりなのだ。ファルコの案にたやすく乗るのだ。

「おらおら、撃ちまくれ!」
 即座にそのプランを実行し、彼らは重火器から弾丸をばらまき続けるのだ。
「こ、コイツら……愚かな! こんな馬鹿げたことで……!」
『サイバーコムソウ』たちはばら撒かれた弾丸に光学迷彩にて周囲に溶け込んでいた躯体をさらけ出されてしまう。
 弾丸が跳ねる様子で彼らの所在が割れてしまう。
 そこにファルコのユーベルコードの輝きが一気に迫るのだ。
「フルバースト・マキシマム! 方角さえわかりゃ、どうとでもなるってんですよ!」
 ぶちまけるようにしてファルコの全兵装から弾丸が打ち込まれ『サイバーコムソウ』は爆散する。

 吹き荒れる爆発を背にしながらファルコは傭兵たちに言う。
「ここを切り抜けりゃ、仕事も終わり!」
「ああ、こんなところで死んでられっかよ!」
「てめーら! 金が欲しいなら全弾撃ち尽くすまで死ぬんじゃねーですよ!」
 ファルコは飛翔しながら、己の武装を傭兵たちによって暴かれた『サイバーコムソウ』たちに叩き込んでいく。
「嬢ちゃんもな!」
「ハッ、誰にモノ言ってんです! そっちが危なくなる、それまでに全部終わらせてやるです!」
 飛翔するファルコは火線と共に戦場を飛び回る。
 敵がどれだけの数いようと関係ない。オブリビオンはすべて撃滅する。
 その意志を込めた弾丸が『サイバーコムソウ』たちを撃ち抜いていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
唄え、ドロモス達よ!

〚揺籃の子守唄〛発動。ドロモス・コロス召喚。
三味線型魔楽機で【楽器演奏】
デモニック・ララバイとドロモス達で【チューニング】演奏音増幅、
メタル尺八の演奏に魔音【衝撃波】をぶつけ妨害。戦場音を三味線演奏で制圧し、味方の【闘争心】、【継戦能力】を回復。召喚したドロモス達でレーザー光線を【オーラ防御】、三味線音波で|【聞き耳】《ソナー探知》透明化敵を感知しドロモスから【斬撃波】

『さぁさ傭兵さん達!奏者が|演奏《妨害》してる内にやっちゃってー!!』
クレイドル操縦補助!

クレイドルの補助と【瞬間思考力】で演奏と同時にデモニック・ララバイ【操縦】殺戮音叉【弾幕】発射、敵を穿つ。壊させない!



『高濃度汚染地域』を抜けようとした直前、武装トラックを襲ったのは巨大企業群『ティタニウム・マキア』傘下のオブリビオン『サイバーコムソウ』たちであった。
 彼らは傭兵たちが目的地に至る目前で襲いかかってきた。
 それは彼らにとっても『高濃度汚染地域』は危険極まりない場所であることを示していただろう。
 故に、これは計画された襲撃であるということが伺い知れる。
「待ち伏せかよ! やることがみみっちい!」
 傭兵たちも果敢に戦っているが、相手がオブリビオンである以上勝つことは難しいだろう。それは猟兵たちも知る所であった。
「黙れ。道程に意味はない。結果こそがすべて。貴様たちの道は此処で途絶えているのだ。疾く死ぬるが良い」
『サイバーコムソウ』たちが一斉にメタル尺八を構える。

 放たれるは旋律。
 いや、音の濁流であった。
 それが傭兵たちに到達すれば、彼らの義体にある神経バイパスは焼き切られてしまうだろう。
 だからこそ、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の瞳と『デモニック・ララバイ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「|唄え《呪え》、ドロモス達よ!」
 揺籃の子守唄(クレイドル・ララバイ)が戦場に響き渡る。
 子機たる『ドロモス・コロス』たちが一斉に飛び立ち、その体躯から放たれる三味線の音色が増幅されてメタル尺八の音色を相殺していくのだ。

「……ッ!? かき消されるだと!?」
「そうだ、唄え。唄え、唄え!!!」
 小枝子は『デモニック・ララバイ』のコクピットで三味線をかき鳴らす。
 それは情熱とは程遠いものであった。
 ただ一心不乱にかき鳴らす。技巧も情熱もない。あるのは怨念のみ。それだけが小枝子の指を突き動かしていた。
 その指が爪弾く音は、子機である『ドロモス・コロス』たちによって増幅されメタル八尺の音を相殺して有り余る音でもって塗りつぶしていくのだ。
 制圧、と呼ぶのが正しいのかも知れない。

『さぁさ、傭兵さん達! 奏者が|演奏《妨害》してる間ににやっちゃってー!! まだ技巧も拙いし、情熱も不十分だろうけれど、それでも可能性は感じるだろう! その可能性に乗っていけばいいのさ! ノリと勢いってのは、いつだってそういうものだろう! グルーヴを感じよう! それだけでいいのさ!!』
「やかましい」
 小枝子は『クレイドル・ララバイ』の言葉に一言二言三言多いのだと一層激しく三味線型魔楽機をかき鳴らす。
 響く音は衝撃波と斬撃波となって『デモニック・ララバイ』と『ドロモス・コロス』より放たれ『サイバーコムソウ』たちを打ち据えていくのだ。

「なんかわからんが、チャンスってことだけはわかるぜ!」
「でもまあ、悪くはないよな! こういうのも! 自然と頭が揺れるぜ!」
 傭兵たちは小枝子の演奏に笑って重火器を取り回す。
 引き金を引く。
 放たれる銃火の音と三味線の音が不思議なアンサンブルとなって戦場に吹き荒れるのだ。
「こんな、馬鹿げたことがあって……!」
「ある! そういうものだ! オブリビオン! 貴様たちは此処で終わる! 諸行無常を否定はすまいな! 敵は穿つ! 貴様たちには、壊させない! 壊すのは!!」
 自分だ! と小枝子は三味線をかき鳴らし、銃火と共に敵を打倒するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

こ、これは……これはまさか……!
木管楽器、東洋の最高峰といわれている『SYAKU-HACHI』!?

その音色はもちろんのこと、若い女子が吹いていると、
なんでか年輩のみなさまが生暖かい瞳で興奮するという、伝説の楽器ですね!

これはもう演奏勝負ということですね!
もちろん合意とみてよろしいですとも!

ということでステラさん。
公平・公正なジャッジをお願いしますね!

なんで、って……。
審判できるの、ステラさんしかいないじゃないですか。
ほら、耳栓なんて『throw away』です!

さ、ここはわたしも木管楽器で対抗しますよ!
【『魔弾の射手』序曲】で、ステラさんもコムソウさんも、
動きを止めちゃいますよー♪


ステラ・タタリクス
【ステルク】
あれー?私の目論見ではここでメリサ様登場だったのですが……
仕方ありませんね、後でお家に押しかけましょう
今のあの方がこの世界の|争いの種火《プロメテウス》になることは無いでしょうし

とかなんとか思考している間に
ルクス様が妙なテンションに……
え?私知らないんですが?
何か間違った知識仕入れてません?勇者勘違いされてません?
って何勝手に私を|殺そう《審判にしよう》としてますか!?
ああ!?また耳栓勝手に捨ててる!?
ええい!!エイル様もメリサ様もここにいないなら
このメイドに出来ぬものなどありません!
【ヴァレット・パープル】で完璧にこなしてみせましょう!
ええ、審判はもちろんのこと、銃での撃ち抜きも



 予測、予見、目論見。
 それは先んじて行うからこそ意味のあるものである。
 たとえ、それが外れていたとしても思考した、ということに意義がある。
 そういう意味では、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は己のあてが外れたことに首を傾げる。
「ここで『メリサ』様登場だったのですが……」
 この状況。この絵図を描いた者が彼であるとステラは思っていたのだが、どうやら絵図の中の一つに過ぎなかったようである。
「仕方ありませんね、後でお家に押しかけましょう」
 なんで?
「今のあの方がこの世界の争いの火種になることはないでしょうし」
 うん、とステラは思考を切り替える。

 そんな彼女とは裏腹にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、はわわわ、と体を震わせていた。
 なんで体を震わせているのか? とステラは思っただろう。
 こちらもそう思う。
「こ、これは……まさか……!」
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』のオブリビオン『サイバーコムソウ』たちが構えるメタル八尺にルクスの瞳は注がれている。
 熱い視線であった。
「木管楽器、東洋の最高峰といわれている『SYAKU-HACHI』!?」
 そうなの?
「その音色はもちろんのこと、若い女子が吹いていると、なんでか年配の皆様が生暖かい瞳で興奮するという伝説の楽器ですね!」
 そうなの!?
「そんなわけあるか!!」
『サイバーコムソウ』たちがたまらず叫ぶ。
 そりゃそうである。
 なんか卑猥なあれそれに自分たちがカテゴライズされそうになっているのだ。そりゃあ、誰だって否定する。ん? 躍起になって否定するってことは間違っていないのか?
「謝罪を要求する!」
「ルクス様、何か間違った知識仕入れてません? 勇者勘違いされてません?」
「してません! これはもうメタル尺八ばーさすクラリネットですよ! 演奏勝負、演奏合戦です! もちろん合意とみてよろしいですとも!」
 誰も聞いてないのにルクスはやる気満々であった。

 構えたクラリネットを今にも吹こうとしている。
「ということでステラさん、公平・公正なジャッジをお願いしますね!」
「んぇっ!? 何勝手に私を|殺そう《審判にしよう》としてますか!?」
「なんでって……審判できるの、ステラさんしかいないじゃないですか。ほら、耳栓なんて『Throw away』です!」
 ルクスはステラから耳栓を奪って遠くに投げ捨てる。
『高濃度汚染地域』にまた一つの産業廃棄物が生まれた瞬間であった。
「ああ!? また耳栓を勝手に捨ててる!?」
「やかましい! 貴様らさっきから黙って聞いていれば!!」
 吹き荒れるは諸行無常の光線。
 凄まじい火力となって迸る一撃がルクスとステラを襲う。

「審判、今のって反則ですよね! 楽器勝負って言ったのにビーム出しましたよ!」
「言っている場合ですか! ええい!!『エイル』様も『メリサ』様もここにいないなら、このメイドに出来きぬことなどありません!!」
 なら、やってんやんよ! とステラは超有能メイドへと変貌する。
 主人が居ないときのほうが強いとかなんなのこのメイド。
「審判だろうがなんだろうがやってみせましょう! ビームがなんですか!」
「理不尽な!」
「さあ、ここはわたしのクラリネットの『魔弾の射手』序曲(マダンノシャシュ・ジョキョク)を聞いて下さい!」
 ルクスの演奏が響き渡る。
 それは音符型爆弾となって周囲に浮かぶ。
 光条と激突して爆発し、その爆発が『サイバーコムソウ』の体に触れた瞬間、彼らの義体は五感をシャットダウンし、動きを止めてしまう。

 何が起きたのかも理解できなかっただろう。
「――!?」
「そこですね」
 ステラは、その理不尽なる攻撃などものともせずに銃を引き抜き、弾丸を放つ。
 放たれた弾丸は『サイバーコムソウ』の笠めいた頭部を撃ち抜くのだ。
「メイドに不可能などありませんので」
「ステラさーん、もちろん、わたしの勝ちですよねー♪」
 いぇいいぇい。ルクスはVサインを作ったが、ステラは頭痛の種がもう一つ増えたことに頭を抱えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
あれあれー★いわゆる物盗り?追剥?って奴かな★
わざわざ危険地帯の外で待っててしかも攻撃前に声をかけてくるなんて親切なんだね★
シルキーちゃんそんなに悠長じゃないし盗人相手だから問答無用★先手必勝★それー★【お金は天下の回り物★】
その高そうな義体も装備も、|全部《ぜーんぶ★》、引っぺがしちゃうぞ★

そして態勢を整える前にすかさずパルスブレイド『SR-KN』を投射して命中箇所周囲へのEMP攻撃★その間に『G-ライアー』からロボットビースト部隊発進★囲ませて行動を邪魔させるよ★

後はビーストの妨害を振り切った敵を優先してホログラムの剣で斬りかかって電脳系を焼ききったり『Ku-9』での爆破を狙っていくよ★



 もう少し、もう少しだったのだ。
『高濃度汚染地域』をもう少しで抜けることができたはずだった。
 しかし、武装トラックは巨大企業群『ティタニウム・マキア』傘下のオブリビオン『サイバーコムソウ』たちの待ち伏せにあっていた。
 目的地である秘境を目前としながら、彼らは此処に来て最大の障害とぶつかっていたのだ。
「その積荷を置いていけば生命ばかりは見逃してやろう」
「うるせぇな! 今更だろうが!」
『サイバーコムソウ』たちの言葉に傭兵たちは信用ならぬと突っぱねた。
 当然だろう。
 傭兵たちを殺せば、総取りなのに、見逃すなんてことがあるはずがない。特にこのサイバーザナドゥにおいては特に、在りえぬことであった。

「あれあれー★ いわゆる物盗り? 追剥? ってヤツかな★ わざわざ危険地帯の外で待ってて、しかも攻撃前に声をかけてくるなんて親切なんだね★」
 故にシルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は茶化すようにして『サイバーコムソウ』たちへと告げる。
「はっ、たしかにな!」
「言われてみりゃそうだ。律儀っていうか……」
「悠長だよね! ま、盗人相手に問答無用★ それー★」
 傭兵たちも笑う。
 それはただ可笑しいから笑っているのではない。『サイバーコムソウ』たちを挑発する意味合いでの嘲笑であったのだ。

 故に『サイバーコムソウ』たちは頭に血が昇るようにしてメタル尺八を吹き鳴らそうとして、一瞬でシルキーの瞳輝くユーベルコードによって、そのメタル尺八を剥ぎ取られていた。
「な、!?」
「お金は天下の回り物★(ファイン・コレクター)っていうもんね! その高そうな義体も装備も、|全部《ぜーんぶ★》、引っ剥がしちゃうぞ★」
 シルキーのユーベルコードは換金可能な全財産、所持品、武器に弾薬に至るまでを徴収することができる。
 彼女を敵に回した時点で『サイバーコムソウ』たちは己達の武装のほとんどが彼女に奪われる未来が確定していたのである。
 そして、シルキーの駆体から放たれるバルスブレイドが彼らの義体へと叩き込まれる。
 放たれるEMP攻撃に義体は一時シャットダウンしてしまう。
 暗闇に包まれた彼らはもう二度と、光を見ることはないだろう。
 なぜなら、EMP攻撃に晒された瞬間、傭兵たちの重火器が彼らを襲い、その躯体を粉々に打ち倒しているのだ。

 加えて、シルキーは『Gライアー』からロボットビースト部隊を発進させ、『サイバーコムソウ』たちを取り逃がさぬように囲いを形成していくのだ。
「何故、我等の装備が奪われる……!?」
「そんなの簡単じゃん★ これまで壊してきた分、傷つけてきた分、その分のお金を回収しているだけだもん★」
 そう言ってシルキーは笑い、ロボットビーストの囲いから這い出してきた『サイバーコムソウ』の前に立ちふさがる。
 這々の体で囲いを突破した『サイバーコムソウ』は立ちすくむしかなかった。
 シルキーの駆体の上に浮かぶ美少女ホログラムが可愛らしくウィンクした瞬間、その手にしたホログラムブレイドの一撃が『サイバーコムソウ』の首を跳ね飛ばす。
「これにて回収完了★ これもお仕事★ だからね、悪く思わないでね★」
 そう言ってシルキーは『サイバーコムソウ』たちの装備を根こそぎ奪い去るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユキト・エルクード
SPD判定 (アドリブ連携歓迎)

金も出せねぇのに物だけ欲しいなんてずいぶんな業突張だな
俺は親切だから尊敬する御仏のもとに送ってやるぞ腐れ坊主ども

攻撃してくるということは悪意がある
悪意があるということは俺のUC【怪祟忍殺】なら遡って殴りにいける
迂闊に人様を殺そうとする奴は自分の命で払って貰おうな?
ひたすら敵の悪意を遡って飛び回りながら頭を叩き割ったり心臓ぶち抜いたり首をへし折ったりし続けてやる

殺しきれなかったり駄目押しが必要な場合は武器に【電撃】や【爆破】属性を宿らせて追撃だ

特に傭兵連中に近づいてくる奴らは重点的に潰す
せっかくここまで欠員無しで来られたんだ
このまま全員生きて帰ろうぜ



 ユキト・エルクード(亡霊夜警・f38900)は思う。
 この世に悪が蔓延っている。 
 それは人の善性の証明であったが、同時にどうしようもないものであったかもしれない。人の心に善性があれば、悪性が生まれる。
 そして、それは天秤なのだ。
 悪性が傾けば、人が泣く。
 人を傷つける。人を追い立てる。どうしようもない悪性に人の善性が追い込まれてしまうのだ。
「金も出せねぇのに、物だけ欲しいなんてずいぶんな業突く張りだな」
「もとより、『それ』は我等が所有物。盗人猛々しいとはこのことだ」
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』傘下のオブリビオン『サイバーコムソウ』は言う。
 そう、武装トラックが運んでいた貨物。
 その『棺桶』めいた中身こそが、彼らの所有物出会ったというのだ。

「それがこいつらを殺す理由だというのか。『それ』は罷り通らないだろう。それがお前達のものであったという証明もできない。なら、そこにあるのは、結局他人からかすめ取ろうっていう魂胆だけだろう」
 ユキトは揺らめくような重圧を放ちながら、一歩を踏み出す。
 その重圧に『サイバーコムソウ』たちは一歩後ずさる。
「俺は親切だから尊敬する御仏のもとに送ってやるぞ腐れ坊主ども」
 メタル尺八が起動した瞬間、ユキトの瞳がユーベルコードに輝く。

 己に悪意を持って対するというのならば、彼のユーベルコードは、即ち、怪祟忍殺(シノビレトリビューション)である。
 即ち、悪意に対する先制報復。
 因果逆転のユーベルコード。
 もしも、ユキトをやりすごそうというのならば、彼に悪意を向けてはならなかったのだ。だが、オブリビオンである『サイバーコムソウ』にとって猟兵は滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。
 そこにあるのは敵意と悪意と憎悪である。
 ならばこそ、それにユキトのユーベルコードは呼応するのだ。
 それは一瞬であった。

 一瞬で『サイバーコムソウ』たちの首と四肢が切断され、その義体の心臓部が抉り抜かれていたのだ。
「――……?」
『サイバーコムソウ』たちは何が起きたのか理解できなかっただろう。
 何故、己達の駆体が動きを止めているのか。
 何故己達は今、地面に転がっているのか。
 視界が、空しか見ていないのか。
 理解できない。
 だが、それはやってくる。
 己たちが見上げる空から見下ろすは、ユキトの赤い瞳だった。
「これが報いだ」
 ユキトの言葉はそこで途切れた。
『サイバーコムソウ』たちの機能が停止したからである。彼のユーベルコードは先制攻撃。一瞬にして勝負は決して居たのだ。

「迂闊に人様を殺そうとする奴は自分の生命を対価として払わなければならない。そういうことだ」
 さて、とユキトは息を吐き出す。
 まだ戦いは続いている。
 どうせなら、と思うのだ。此処まで傭兵たちは欠員なくやってきたのだ。
 ならば。
「このまま全員で生きて帰らなけりゃな」
 そう、できることならば、犠牲はない方がいい。生命の対価は生命。けれど、明日を望むのに対価は必要ないだろう。
 この仕事を完遂することで明日が得られるというのならば、ユキトは未だ迫るオブリビオン『サイバーコムソウ』の悪意に因果逆転の報復を行うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(改造装甲車エンバールに搭乗&併走)
…積荷狙いかぁ…『棺桶』を何に使うつもりか知らないけど…邪魔するならスクラップになって貰うよ…
…あの演奏が届く範囲に音波で攻撃をする…と…
…ふむ…(傭兵達に)私があの音波防ぐから……存分にぶっ放しちゃって良いよ…
…そして操音作寂術式【メレテー】を発動…サイバーコムソウからの演奏を遮断するよ…
…音を利用した攻撃は防ぎづらいから厄介ではあるのだけど……相手が悪かった…と言う事で…
……傭兵達の一斉攻撃に合わせて【狩り立てる嵐の魔犬】を発動…
…サイバーコムソウ達を魔弾で打ち据えるとしようか…



 改造装甲車『エンバール』が『高濃度汚染地域』を突っ切って、オブリビオンに襲撃された武装トラックに追いついた時、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は状況をいち早く分析していた。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』傘下のオブリビオン『サイバーコムソウ』たちが狙っているのは積荷である『棺桶』である。
 その中身がなんであるのかをメンカルは知らない。
 けれど、それがオブリビオンにとって重要であり、『ティタニウム・マキア』が再び一度は地に失墜した力を取り戻そうとしているのならば、彼らが売っていた『安心・安全』が何を担保にしていたのかを知る。

「……積荷狙いかぁ……『棺桶』の中身を何に使うつもりか知らないけれど……」
 邪魔をするのならばスクラップになってもらう他ない、とメンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
「ほざけ! それはもとより我等の物! それを!」
 メタル尺八を構える『サイバーコムソウ』たち。
 放たれる音色は衝撃波となって音が届く範囲すべてを攻撃する。
 それをメンカルは即座に理解する。
 敵ユーベルコードの特性を把握し、対策を講じるというのならば、メンカルは解析を一瞬で追えてしまうのだ。
「……操音術式『メレテー』発動」
 メンカルの術式が改造装甲車『エンバール』から展開され、『サイバーコムソウ』たちの吹き鳴らす尺八からの音色を遮断する。

「音が、響かない?!」
「なんだ……? 音が聞こえない? おい、ねーちゃん、これどういうこったよ!」
 傭兵たちの声にメンカルは頷く。
「……連中のユーベルコードは音を媒介にしている。なら、音を遮断すれば、力は伝わらない。つまり」
「チャンスってことか!」
「……そういうこと。遠慮なく、存分にぶっ放しちゃって良いよ……」
 メンカルの言葉に傭兵たちは笑った。
 そりゃいい、と。
 放たれる重火器の銃火。迸るように盛大な音が響き渡り、遮断された音の向こう側……『サイバーコムソウ』たちの駆体へと弾丸が叩き込まれていくのだ。
「……音を利用した攻撃は防ぎづらい。たしかに厄介ではあるのだけど……相手が悪かったね……」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。

「紡がれし魔弾よ、追え、喰らえ、汝は猛追、汝は捕捉。魔女が望むは追い立て喰らう魔の猟犬」
 紡がれる詠唱と共に魔法陣が展開する。
 生まれるは魔弾にして、狩り立てる嵐の魔犬(ストーム・ハウンド)。
 追尾性を高めた魔弾は、傭兵たちの放つ銃弾と共に戦場を駆け抜け、『サイバーコムソウ』の躯体を打ち据える。
 銃弾の嵐と猟犬の如き魔弾から『サイバーコムソウ』たちは逃れる術を持ち得ていなかった。
 散々に砕かれる破片は、『高濃度汚染地域』において、あらたなる産業廃棄物として残骸を残すのみである。

「……間に合ってよかったよ……」
 メンカルはひとまずの窮地を脱した武装トラックと傭兵たちを見やる。
 まだ敵は迫っているが、此処までくれば戦いの趨勢は此方に傾いたと言ってもいいだろう。
 傭兵たちの生命は守られ、そして積荷もまたオブリビオン……巨大企業群『ティタニウム・マキア』へと渡ることは阻止できたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
【バッテリー切れです。間もなく電源がオフになります】
マザー頑張ったね
ありがとのん
ゆっくり休んでて
【ご武運を】


この先にオマエの黄金があるみたいのんな
なのに震えてるの?
怖いんだ?マザーが居ないから?
でも大丈夫
らぶ達のチカラがなくたって
ヒトは歩き出せる
いつだってオマエはオマエのセカイのヒーローなんな
だから振り返らないで
オマエのユメはオマエが掴むのん!

らぶは立ち上がるヒト達の味方だから
ゼッタイにそのユメを消させやしないの
煙幕やスプレー缶で目潰しをして
取り出すのはいつものバット
明日への扉はらぶが拓いて
その先へ踏み出すのはコラキ自身
だってオマエはもう無敵なんだから!
遠慮はいらねーのん!やっちゃえぇぇーー!



【バッテリー切れです。間もなく電源がオフになります】
『ビックマザー』の音声が響く。
 それは『高濃度汚染地域』におけるトラブルを切り抜けるためには必要なことであったが、しかし、同時にそれは『ビックマザー』のサポートを傭兵たちが受けられなくなる、ということであった。 
 確かに彼らは歴戦の傭兵であると言えるだろう。
『高濃度汚染地域』を突っ切るなんていうイカれた行動を取っているだけに判断も優れていた。
 それでもサポートは力強いものであったのだ。
「つまりどういうことだ!?」
 武装トラックのドライバー『コラキ』はラブリー・ラビットクロー(人々の夢を追う行商人と人工知能【ビッグマザー】・f26591)に問いかける。

「マザー、頑張ったね」
「なあって!」
 ラブリーは『ビックマザー』の端末の角を撫でた。
「ありがとのん。ゆっくり休んでて」
【ご武運を】
「……ど、どうすんだよ! もうこいつのサポートがないってことだろう!?」
「うん。でも心配することないのん。この先にオマエの黄金があるみたいなのんな」
「何言ってる!? この状況を見ろよ!」
 迫るは巨大企業群『ティタニウム・マキア』のオブリビオン『サイバーコムソウ』たちである。
 吹き荒れるは火力凄まじい光線の嵐。
 迫りくる敵は強大そのもの。
 体が震えるのも無理なからぬことであった。
「震えてるの? オマエが求めている黄金がすぐ其処まで来てるっていうのに。怖いんだ? マザーがいないから?」
「そうだよ!」
 あっさりと『コラキ』は認めた。
 怖い。
 誰だってそうだろう、と彼は言う。生命を失うことは、もう二度と弟に逢えないってことだ。
 だから、怖いのだと。

「でも、大丈夫」
 ラブリーはガスマスクの奥で笑っていた。まただ、と『コラキ』は思っただろう。
「らぶたちのチカラがなくたって、ヒトは歩き出せる。いつだってオマエはオマエのセカイのヒーローなんな。オマエが弟を想うチカラがヒトのユメを叶えるんだ。それを忘れてはだめなんな」
 だから、振り返ってはダメだとラブリーは告げる。
 誰かのチカラではなく、己のチカラでユメをつかめ、とラブリーは『コラキ』の腕を掴む。
「明けない夜なんてない。だから、その歩みを止ちゃダメだ!」
 ユーベルコードが煌めく。
 ラブリーの体内から常に人々の夢を叶えたいと願う気持ちが溢れてくる。
 それは自分だけではない。
 他者にまで波及していく力だった。
 傭兵たちもそうだった。明日を求めている。金を求めるのは、明日もまた生きたいと想うからだ。
 故に、希望があふれる。
 明日は見えない暗闇であっても、踏み出す勇気が、希望があるのならば、夢に向かって戦う勇気があふれるのだ。

 迫る光線も、恐れない。
「行くのん!」
 ラブリーは『コラキ』の腕をひっぱりながら、手にしたスプレー缶でもって『サイバーコムソウ』の顔面に位置するスリットを塗りつぶす。
 ぽい、とそれを『コラキ』に手渡す。
「わっ、と! こ、これ……!」
「やるのんな! オマエはできるのんな! 握りしめるん!」
 それだけでいいのだと言うようにラブリーは金属バットを手にする。
「明日への扉はらぶが拓いてあげるのんな」
 振るう一撃が『サイバーコムソウ』の頭部を弾き飛ばす。
「その先へ踏み出すのはオマエ自身。だってオマエはもう無敵なんだから!」
『コラキ』が噴射したビビットカラーの塗料が『サイバーコムソウ』を塗り潰す。

 その瞳には恐怖はなかった。
 ラブリーは笑った。そして、手にした金属バットを『コラキ』へと投げ放つ。そのグリップを握りしめ、『コラキ』は構える。
 そこにラブリーは『サイバーコムソウ』を蹴り出す。
「遠慮はいらねーのん!」
「ああ!」
「やっちゃえぇぇ――!」
 その言葉と共に快音が響き渡る。
 ラブリーは示す。
 それが黄金に至る道だと。
 そして、明日へと踏み出す希望と夢に向かって戦う勇気こそが、黄金の道なのだと。
 他の何物にも代えがたきもの、それこそが真の黄金なのだとラブリーは示したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月14日


挿絵イラスト