Platoon in Kowloon
香港島、九龍城。
『クロックワーク・ヴィクトリア』の版図となっている香港島にあって、唯一その支配下に無い、のみならず、人民租界も含めあらゆる超大国の支配から外れた空白地帯。
やがて超大国からの迫害を逃れた獣人達が街を築き、複雑化と高層化を進め。いつしか此処は、絶えず形を変え続ける機械迷宮と言うべき混沌の特異点と化していた。
住まう者は|黒幇《マフィア》に|極道《ヤクザ》から始まって密売人に密造人、闇医者や盗賊まで、ありとあらゆる闇の世界の住民達。彼らは時に敵対、時に協調を繰り返しつつも、外敵たる超大国の侵略には一致団結して抵抗してきた。そうしてこの混沌の坩堝たる城塞は、長く独立を保ち続けてきたのだ。
だが、其を捨て置くを良しとする超大国ではない。
クロックワーク・ヴィクトリアは今度こそ九龍城の完全制圧を達成するべく、これまでに無い大軍勢を編成し、かの城塞へと送り込んだのである。
切り札として、恐るべき邪神の召喚儀式さえも携えて──。
●
「おうおう、おいでなすったなぁ」
大路を歩む軍勢を見下ろし、狼頭の青年は何処か戯けた様子で笑みを浮かべる。
「フン、時計頭共め。何度来ようが無駄だと未だ理解できんか」
並び立つ虎頭の男は憮然と同じ眺めを睥睨する。しわがれた声音は重ねた歳の程の深きを物語るが、眼光には鋭い殺気が滲む。
「だがよ|黄道《ホァンダオ》の旦那、今日は奴らもちぃと本気みたいだぜ。何だか妙な気配を纏ってやがる」
若き狼は笑みこそ崩していないが、声音に緊張を滲ませる。敵の殺気とは異なる異様な雰囲気を感じ取っている様子。
「怖気付いたか、狼頭《ラントウ》の。彼奴らが何を企んでいようと、やる事は同じだ」
老虎はそんな狼獣人の様子を鼻で笑うものの、同時に警戒もする。この若狼、仙道を修めたる身の上ゆえに超常の事象には鼻が利く。ならば彼の言う通り、あの軍勢には何かがあるのだろう。
「……違ぇねぇ。元より逃げる気なんざ毛頭無ぇんだしな」
狼は笑みを深める。鋭く獰猛な、肉食獣に相応しき笑みを。
「──九龍の地は我々の、我ら九龍の民のものだ。如何な超大国の奴輩とて、侵せぬものと思い知らせてくれる」
虎は呟き、右腕を軋ませる。使い込まれた年代物の|機械化義肢《サイバーザナドゥ》にて成る腕を。
──そして、戦争が始まった。
●
「というワケで皆サン、このヒト達と一緒に『クロックワーク・ヴィクトリア』の軍勢を叩き潰して下さいデス」
グリモア猟兵、陽・緋蜂(機甲武装的虎尸人小娘・f39902)は、予知を語るに続いて任務目的を端的に語る。
「敵はもう九龍城に侵入してて、城内色んなトコで戦闘が起こってマス。住民の皆サンも頑張って戦ってマスケド、敵の数も相当なモノなのデ、このままデスと壊滅は時間の問題デス」
如何に無法の者達と言えど今を生きる人々。オブリビオンの手にかかるを見過ごして良い理由は無い。救援が必要だ。
「敵の軍勢は『変幻の射手』っていう獣人のオブリビオンで構成されてマス。超複雑な九龍城の中で自在に射撃が出来る半端ない奴らデス」
彼ら彼女らの実力は高く、被弾した者の肉体を変異させたり障害物を無視した射撃が出来たりとかなり厄介な技を扱う。住民達だけでは苦戦は否めぬ。
「数も凄く多いんデ猟兵の皆サンでもなかなか厄介な相手デスケド、城塞内の機械仕掛けをうまく使えば有利に戦えるかもデス」
長年をかけて大改造が施された九龍城は、多彩な罠や仕掛けが至る処に置かれており、且つ時間経過に伴ってその構造を大きく変化させる性質まで伴っている。これを上手く活用すれば、大軍相手と言えども対抗は可能だろう。
「デスガ、こいつらを全滅させてもまだ終わりじゃナイデス。こいつら、切り札として自分達を生贄とした邪神召喚儀式を用意しれるんデス」
以て呼び出されるのは、本来UDCアースに現れる強大なる邪神。その詳細は予知では分からなかったが、異常な肉体強度と精神性を前にしては、城塞の罠や仕掛けも何処まで通じるか分かったモノではない。
「此処は住民の皆サンとも協力して、力を合わせて邪神を打ち倒すべきかと思うデス。皆、異形のサイバネ武術や仙術殺法の達人デスカラ、頼れる戦力になるハズデスヨ」
此処で逃せば、どれほどの被害を齎すか分かったモノではない。住民達と共に、確実に邪神を打ち倒すべきだろう。
「敵を全部やっつけたナラ、折角デスシ九龍城で一息ついてくと良いと思うデス。住民の皆サンも歓迎してくれるデショウシ」
九龍城の住民達はいずれもが汚れ仕事に従事してたり脛に傷を持ってたりする者達ではあるが、共に命を張って戦った者達には強い信頼を向ける者達でもある。猟兵達に対しても其処は例外ではない。
「どうやら、城塞内のクラブで戦勝記念のダンスパーティを催すみたいデスカラ、皆サンも参加してみると良いデスヨ」
勿論、他にも何か興味あるものがあれば其方を探してみるのも手である。一歩間違えば先の罠や仕掛けが牙を剥く危険な場所ではあるが、此処でしか見られぬ物も確実にあることだろう。
「それデハ、転送始めマス。皆サン、よろしくデスヨ」
説明を終えた緋蜂、その袖を一振りすると中から飛び出した玉がグリモアの光を放ち。
猟兵達を、かの混沌の城塞へと導いてゆく。
五条新一郎
世界変われど混沌の様相は変わらず。
五条です。
さて今回は、何気に今までリリースしていなかった獣人戦線のシナリオをお届け致します。
中国戦線は香港島、九龍城にて、蒸気と邪神の軍勢を撃滅しかの城塞を守りましょう。
●目的
九龍城を侵略する『クロックワーク・ヴィクトリア』の軍勢の殲滅。
●戦場
獣人戦線の香港島、九龍城。
無秩序に積み上がった建造物群からなる城塞です。
全体的に狭く極めて入り組んでいる上、至るところに罠や仕掛けが存在し、時間経過に応じて内部構造まで一変するという混沌極まりなきサイバーパンクダンジョンです。
●味方NPC
『「黄道幇」「狼頭会」の皆さん』
今回のシナリオで主に戦っている、九龍城に縄張りを持つマフィア・ヤクザ組織の一つ。
OPに登場したのが其々の組織のボスです。
黄道幇はトラ獣人、狼頭会はオオカミ獣人が主な構成員ですが、他の獣人も多数おります。
また、組織外の獣人達も多数参戦してます。
●第一章
『変幻の射手』達との「集団戦」です。
城塞内の罠や仕掛けを利用するプレイングにはボーナスがつきます。
●第二章
変幻の射手達を生贄に顕現した邪神との「ボス戦」です。詳細は章移行後の断章にて。
現地の獣人達と共闘するプレイングにはボーナスがつきます。
●第三章
九龍城で過ごす「日常」です。
フラグメントに無い行動も歓迎です。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
第1章 集団戦
『変幻の射手』
|
POW : 吸血鬼の魔弾
【甘い香りを纏う吸血鬼】に変身する。隠密力・速度・【命中した敵の生命力を奪い続ける魔力弾】の攻撃力が上昇し、自身を目撃した全員に【陶酔】の感情を与える。
SPD : 変身譚の魔弾
敵を狙う時間に比例して、攻撃力・命中率・必殺率が上昇する【肉体の強制改造の呪い】を武器に充填し続ける。攻擊すると解除。
WIZ : 麻痺薬の魔弾
【携行している銃器】から、物質を透過し敵に【麻痺】の状態異常を与える【ライムグリーンの魔力弾】を放つ。
イラスト:けむり
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
成程、大変な状況ですねぇ。
まずは無法者さん達にご挨拶、お話を伺った上で『FPS』を展開し『隠し部屋』に待機しまして。
【垩畃】を発動し超強化した『FPS』で戦場内の情報を把握、『戦場内の時空間』に接するものを操作可能にしますねぇ。
【吸血鬼~】は『命中』『目撃』が条件、『射撃範囲外から、視認せず【香り】を軸に探査でのみ察知』すれば影響は無く、位置も或る程度絞れるでしょう。
後は、仕掛けや構造変化、建材に加え、一体でも倒せば『敵方の装備』も『操作可能な武器』ですので、『FIS』の転移で隠れ場所から『FRS』『FSS』の砲弾のみ転移させての[砲撃]と併せ[範囲攻撃]で叩きますぅ。
九龍城のそこかしこで響き渡る銃声。クロックワーク・ヴィクトリアの尖兵たる『変幻の射手』達と、九龍城の住民たる無法者達が銃撃戦を繰り広げているのだ。
「くそっ、キリが無いぜ」
壁を遮蔽に敵の銃撃を凌いでいた馬獣人の男が毒づく。通路を挟んで反対側の壁から銃撃戦に応じていた虎獣人の男は、敵の出方を窺おうと通路を覗き込むが。
「時計頭の連中、随分と数を揃えてきた……じゃ、ねぇ……か……」
「って、おいお前どうした!? 何処行こうって……」
直後、突然に声音が蕩けだし。更には足元覚束ない様子で、ふらふらと通路へ向けて歩きだしてしまう。馬獣人の男が制止を試みるが、その声もどうやら聞こえていないらしく。そのまま無防備な状態で、敵射手達の射線へ身を晒し――
「……ぶっ!?」
だが次の瞬間。虎の男は何も無い筈の空間に生じた『何か』に顔をぶつけて停止。更には通路の向こうから射手達が撃ってきた銃弾もまた『何か』に弾かれ、男を撃ち抜く役目は果たせずじまいとなった。
「な、何だこれ……!?」
「こんな仕掛けがあるなんて聞いてねぇぞ……?」
いつの間にか通路に展開されていた『何か』――乳白色に煌めくバリア。其を前に、我に返った虎獣人と、その一部始終を目撃した馬獣人は戸惑った様子。と。
「皆さん、こんにちはぁ」
「「!? 何だお前!?」」
其処へかけられた緩い声。振り向けば、自らの頭部よりも優に巨大な双房をはじめとした豊満極まりなき肢体を有する美しき女性の姿が其処にあった。夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)、この地を襲う超大国の軍勢を退けるべくやってきた猟兵である。
「先のバリアは私の祭器ですぅ。其方の虎の方が危なかったので、勝手ながらお守りさせて頂きましたぁ」
先程のバリアの発生源である祭器――円盤群を己の元へ回収しつつ語るるこる。そこから獣人達は、己らを守ってくれたのが彼女だと思い至ったようで。
「マジか。ってこたぁ、お前にゃ命を助けられたってワケか……ありがとよ」
「っつーか、お前は何で此処に? 時計頭の仲間じゃねぇみてぇだが」
礼を述べる虎獣人に続き、馬獣人の男はるこるへ向けてそんな疑問を向ける。其も無理からぬ話、とるこるは頷いて。
「故あって、皆さんをお助けに参りましたぁ。|九龍城《ここ》を、超大国に制圧されるワケにはいきませんのでぇ」
率直に己の目的を語るに続き、現在の状況などについて逆に獣人達から話を聞く。
「成程ぉ。大変な状況ですねぇ」
事態を把握したるこるは重々しく頷く。あまりにも多数の敵が、この狭い九龍城内で襲い来る状況。如何に対多数戦を得意とするるこると言えど、真っ向から戦うのは少々骨が折れそうだと判断せざるを得なかった。
「では――そうですねぇ、皆様のお知恵を拝借したくぅ」
事態の打開の為に、るこるが獣人達へ求めたもの。それは。
「此方の道は途中で途切れているようです」
「では、あちらの通路から先へ進みましょう」
互いに連絡を取りつつ、九龍城内を進軍してゆく変幻の射手達。手分けして周囲を警戒しつつ歩む姿は一糸乱れぬ統率の元に纏まっており、その動きには殆ど無駄が無い。
先頭を行く二人は、その身よりユーベルコードで生み出した甘い香りを放出している状態。先程の虎獣人のように、己を目撃した者を陶酔させ思考を働かなくしてしまう強力な代物だ。
これがあれば不意打ちを受ける心配は殆ど無い。それでも油断なく、兵達は通路を進んでいき――次の瞬間。
「「「!!?」」」
突如、巻き起こった爆発。次いで壁から幾つも機銃砲台が現れ、機関銃を一斉発射。何の前触れもなく襲い掛かった一斉攻撃を前に、射手達は為す術なく全身を焼き焦がされ、引き裂かれ、骸の海へと叩き帰されていった。
「うまくいきましたねぇ」
快哉を上げるるこる。今彼女がいる場所は、先程声をかけた男達が倉庫として使用している隠し部屋。敵に見つかり難い場所を、ということで提供したものだ。
るこるは此処から、『匂い』を頼りに敵集団の存在を探査。発動したユーベルコードによって超強化された探査祭器の性能により、該当の敵集団を然程労せず発見することに成功していた。
以て、これらへ対して周囲の仕掛けによる一斉攻撃と、空間転移で送り込んだ砲撃と爆撃とによる攻撃を同時に送り込み。反撃どころか此方の存在を感知することもできぬまま、敗れ去って行った。
成功
🔵🔵🔴
雨飾・樒
時間が経つと構造が変わる城塞、大軍相手には丁度良いかもね
物理的な遮蔽を無視できる射撃、同じ能力で数は不利、見つかったらダメ
捕捉されないように敵の位置を探りたい、城塞の仕掛けで高い位置にある通路とか梁で動くものがあれば、それに隠れて移動する
音を立てず見られないように狙って"眠り薬の魔弾"で仕留める
撃てる標的が複数いても欲張らない、位置を割り出されたら隠れても撃たれる能力だから、見られないことが最優先
他の方向へ敵の注意を逸らせそうな罠や仕掛けがあれば、動かして陽動に使いたい
同じ射撃能力を持ってる敵が、どんな戦術で動いてくるのか興味ある
学ぶべきところがないか、見逃さないようにしよう
城塞を形成する建物の一部が地に沈み込んでその背を低くし、別の建物が逆にせり上がって、外観や内部構造を一変させる。そうしてせり上がった側の建物の最上階から、下層を見下ろす女性が一人。雨飾・樒(Dormouse・f41764)である。
(時間が経つと構造が変わる城塞、か)
実に大掛かりなことだ、と実感を以て心中で呟く。しかし、これ程に大幅な構造変化があるとなれば。
(大軍相手には丁度良い)
有効活用できれば、数の不利を補って余りある有利を得られる筈。頷き、樒は床を蹴って跳躍。隣の建物の外壁に備わる外付け通路へと着地すると、其処から周囲を見回す。
下層の路地、付近の建物の通路内に、それぞれ何体かのオブリビオンの気配を認める。あれが『変幻の射手』、樒と同じ獣呪術の使い手――だが、それ以上に。
(同じ能力で数は不利。見つかったらダメ)
奇しくも互いに『物質を透過する魔弾』の使い手。それが彼女らと己の共通点。だが数の差は圧倒的。一度見つかれば、全員から存在座標へ向けて一斉射撃を受けるは必至。極めて厳しい状況へ至ることは間違いない。
故に、行動は捕捉回避が最優先。故に敵よりも高い場所からその居場所を慎重に探り、動く壁や梁を駆使して身を隠しながら移動してゆく。
やがて、先程発見した建物内の射手達が、クリアリングをしながら進んでいる処を見つける。注意深く周囲を見回す者達、射線が通る場所は悉く彼女達に警戒されている。これでは気付かれずに撃つのは不可能とも見えるが。
(――このタイミングで撃てれば、いける)
だが、樒が行使するのは物質透過の魔弾。『そこにいる』ことが分かっていれば、遮蔽を挟んでいたって当てることは可能なのだ。
狙いを定めたのは、今現在通路上の窓越しに広場のクリアリングをしている兵の一人。樒はその広場内のガラクタ山に身を隠している。やがて異常なしと判じた兵が、通路を先に進もうとした、直後。
「――沈め、静寂の奥底に」
射手の予想位置に銃口を向けると同時にトリガーを引く。然程響きもせぬ小さな炸裂音を伴って放たれたのは、ペールブルーの煌めきを帯びた魔力弾。其は通路と外を区切る壁へと撃ち込まれ――たと見せて壁を透過し、その先にいた敵兵、そのこめかみを見事に撃ち貫いた。
「! 敵襲!」
「これは……獣呪術です! 皆、外へ!」
仕留めた、だが其を確かめる暇は樒には無い。発射直後、今し方標的とした射手の仲間達が口々に言いながら周辺警戒を始めたからだ。撃たれた際の居場所から、敵も物質透過の射撃が可能と見たのだろう、真っ先に通路の先から外へと出て、周辺のクリアリングを開始する。
(流石に、反応が早い)
その頃、既に樒はゴミ山を離れて脇の建物へ。そのまま通路を駆け抜け、先程までとは別角度から健在な射手達を視界に認める。数は四人。先程発見した時より多い。
(やっぱり、欲張らなくて正解、か)
存在を知覚できていなかった敵がいたことに、樒は己の判断の正しさを実感する。発見され、位置を割り出されれば敵の魔弾で遮蔽物越しでも撃ち抜かれる。まして、敵の正確な数が分からぬままに仕掛けていれば、発見されるリスクは更に高いと言える。慎重に、一体ずつ仕留めていく方針に決めていたことは間違いではなかった。
(それにしても、遮蔽を取っても無駄なら思い切って広場に出る、か。その判断も、アリではある)
敵の動きを観察し、感心げに樒は内心で呟く。同質の魔弾を駆使する者として、敵の戦術が如何なものかには興味はあった。恐らく彼女らは、敵も物質透過魔弾の使い手ならば思い切って遮蔽の少ない場所に飛び出すが良策、と判断したのだろう。
(さて、次は――)
ならば、今度は残る敵を如何に仕留めてゆくか。樒が目をつけたのは、現在敵が警戒網を敷いている地点の奥にあるドラム缶の山。此処へ、魔弾ではなく通常弾を撃ち込めば――直後、大爆発。
「「「!!?」」」
突然の爆発に驚愕の声を上げる射手達。思わず、爆発のあった方向へと全員が目を向け――てしまったがばかりに、其処から最も離れていた射手の一人が倒れ、骸の海へ還ってゆく。無論、樒の魔弾に撃ち抜かれて。
(ここは一先ず、こんな処)
残った射手達が仲間の死に気付いた時、樒は既にその場を離れていた後。この場での全滅を狙うのは、やはり発覚のリスクが付きまとう。ならばこの場は一旦離れ、別方面の敵集団を狙うことにした方が良策と言える。
(――残りの敵も、仕留める)
最終的にはこの場の生き残った三人も仕留めてみせる。その意志のもと、樒は音もなくその場を離れていった。
成功
🔵🔵🔴
レヴィア・イエローローズ
【UCV】
中国戦線にもクロックワークヴィクトリアの影が……
六の超大国が戦争をする世界こそがわたくしの世界、獣人戦線
とはいえど、好き勝手はさせないわ
1km半弱の『暗黒星雲バリケード』と『暗黒星雲鋼鉄要塞』を展開し、九龍城の内部をこちらの優位に保つように構造を利用して『変幻の射手』の動きや攻撃を機先を制して防いでいくわ
暗黒星雲で出来たバリケードと鋼鉄要塞が、貴方達を護るわ
だから進撃なさい!歯車仕掛の支配をいつも通りに跳ね除ける為に!
エドワルダ・ウッドストック
【UCV】POW
アドリブ連携歓迎
こんにちは、香港島九龍城の皆様。
時計頭共と戦うイングランドの猟兵が加勢に参じましたわ。
一緒にオブリビオンを叩き潰しましょう!
わたくしは獣人の方々と肩を並べて戦列に加わりますわ。
魔弾の直撃を受けぬようコンバットナイフを手に切り払う構えを取り、吸血鬼に変身した変幻の射手をスローイングナイフでUC攻撃しますわ。
レヴィアのUCで防衛陣地を構築してもらえるのであれば、過去を感知した情報を共有することで曲がり角や物陰から視界に映る前に射出・加速・軌道変更できるでしょう。
地の利、人の和はこちらに有利。
黄道幇と狼頭会の皆様も、サイバネ武術や仙術殺法を存分に披露してくださいませ。
「抵抗勢力確認、これを殲滅します」
口々に呟くと共に、ライフルを構え撃ち放つ変幻の射手達。迎え撃つ獣人達は城塞の地形を駆使し射線を躱してゆくが。
「ぐぁっ!? う、ぐ……身体が……」
「な……壁を抜けてきやがった!?」
敵が放つ銃弾は、壁を抜けて目標へ命中する魔弾。故に遮蔽は意味を成さない。被弾した虎獣人の男は、致命傷でこそないものの、その場に崩れ落ち身動きが取れない。この魔弾には麻痺の呪術が込められているのだ。
「おい、次が来るぞさっさと立て……! ちぃっ!」
彼を叱咤する狼獣人だが、敵の更なる攻撃が間近と迫れば身を翻す。最早虎獣人を助けるのは間に合わぬという非情の決断――であったが。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵――」
詠唱と共に前方へ蟠るは、漆黒の雲とも光の塊ともつかぬ物質。其は壁じみて広がって、放たれる魔弾を防ぎ止める。物質透過の呪力をも意に介さぬ、謎めいた壁。
「なんだありゃあ……」
呆然とする狼獣人。其処に在った彼の仲間達も、先の虎獣人を助けに来た仲間らしき者達も、敵と己らを分断した『それ』の正体を掴みかねているようで――
「あれはわたくしが展開した暗黒星雲のバリケード。生半な呪の通り抜けるを許さぬ防壁よ」
その答えを示すかのように響く声。振り返れば、其処には二人の女性の姿があった。頭部の角から、二人とも鹿獣人と分かる。
「こんにちは、香港島九龍城の皆様」
今一人の女性が、丁重なる所作で以て一礼する。穏やかな微笑に、確かな闘志を滲ませて。
「時計頭共と戦うイングランドの猟兵が、加勢に参じましたわ」
己らをそう名乗った彼女はエドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)。猟兵となるより遥か以前、物心ついた頃から|超大国《オブリビオン》を相手に戦い続けてきた歴戦の兵。
「これ以上、クロックワーク・ヴィクトリアに好き勝手はさせないわ」
エドワルダに続いて決然たる態度を示すレヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)共々、猟兵としてもクロックワーク・ヴィクトリアとの戦いに多く参じてきた経歴を持つ。敵の本土たるイングランドから遠く離れた中国といえど、其処にかの時計頭共が蠕動するなら、参戦の理由は充分だ。
「猟兵……お前らが……!?」
ざわつく九龍城の獣人達。そんな彼らをよそに、エドワルダは並び立つレヴィアへと確認を向ける。
「レヴィア、敵の動向は如何?」
「この正面と、右の街路、あと左の建物から上を取りにいくつもりのようね」
問われたレヴィアは淀みなく答えを返す。彼女が展開した暗黒星雲のバリケードは、近づいた者のあらゆる『過去』を詳らかとする。この場へ到達するまでの思考や作戦を読み取るなど造作も無い。
「成程、では――」
答えに頷いたエドワルダ、視線を左の建造物へ向ける。その壁面で、何やらエレベーターじみた鉄板群が上昇駆動する建物へ。
「あちらへ参りますわ! 皆さん、ついていらして下さいませ!」
コンバットナイフを掲げ、真っ先に鉄板の一枚へと飛び乗る。続いてレヴィア、そして獣人達が、応えて鉄板群へ飛び乗り、上へと上がってゆく。
建物上部には、本来そこに存在しなかった漆黒の防壁めいたものが幾つも並んでいた。これもまた、レヴィアのユーベルコードで構築されし要塞の防壁である。
「其処の曲がり角から接近中よ」
近づいた者の過去を読み取る力は此方も有している。読み取った情報を基に、未だ視界に収まっておらぬ敵の居場所を皆に伝達する。
「ならば、これで先手を取りましょう」
応えたエドワルダの手には、幾つもの投擲用のナイフが握られる。レヴィアが告げた曲がり角を見据えれば、徐に身構えて――そして投げる!
「さあ、存分に狂いなさい――!」
全く無意味とも見えた投擲は然し、直後に劇的な変化を生じる。曲がり角に達したナイフの悉くが飛翔機動を90度曲げて通路へ飛び込み。そして幾つもの小さな呻きが響いてきた。
「皆さん、叩き潰しにいきましょう!」
其を確かめてエドワルダはナイフ構えて突撃。獣人達も後へ続き、曲がり角を曲がれば。其処にはナイフを突き立てられて呻く射手達の姿。致命部位に突き刺さったか、骸の海へ還ってゆく者も。
無論、容赦などしない。獣人達は其々に得物の銃を構え、弱った射手達へと次々に止めを刺してゆく。
全ての敵を仕留めた直後、建物の外壁に変化。それまで無かった階段が、正面から攻めてきた射手の居場所へ向けて現れ出て来たのだ。
(まさに地の利、人の和を手にした戦いですね)
状況は油断ならぬと言えど、地形の情報を把握し現地の獣人達と連携し戦うならば負けはしない。
「さあ、この調子で参りましょう、皆さん!」
「進撃なさい! 歯車仕掛けの支配をいつも通り跳ね退ける為に!」
二人が呼びかけるに、意気高く声が上がり。その後も彼らは、攻め寄せる敵達を次々に打ち倒していくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
結城・有栖
…随分と入り組んだ建物ですね。
まるでダンジョンです。
「私達も迷わないように注意しないとネ。
罠も多いらしいし、敵を嵌めちゃおうヨ」
了解です。では、まずは惑ってもらいましょう。
敵や罠の位置を【野生の勘】で把握し、物陰に隠れて、まずは【先制攻撃】で幻惑の雷さんで攻撃です。
【催眠術】の効果でこっちの位置を誤魔化し、幻覚を見せて罠に自ら接触するように誘導してあげます。
…罠ってどんなのがあるんでしょうね。
「壁からなにか飛び出すんじゃないカナ?」
気づかれても、【野生の勘で見切り】、壁や罠を利用した【地形の利用】で対処。
【カウンター】で想像暗器(クナイグレネード)を【念動力】で飛ばして反撃しましょう。
曲がり角を曲がれば直ちに行き止まり。かと思えば、片隅の隙間から先へ進める。時間ごとに動く壁や床が、つい先程まで通り道だった路地を行き止まりと変える。
「……聞いていた通り、随分と入り組んだ建物ですね」
ダンジョンの如く複雑怪奇な九龍城の内部構造に迷いかけつつも、結城・有栖(狼の旅人・f34711)は敵を探して城塞内を進む。今はとあるビルの中、敵の気配を察知し、通路の脇の小部屋に身を隠している処だ。
『罠も多いって聞くしネー』
有栖の内から声がする。オウガブラッドたる彼女と一体化しているオウガ『オオカミさん』の声だ。
『ここは敵を罠に嵌めちゃおうヨ』
「了解です」
オオカミさんの提案に、こくりと頷く有栖。野生の直感が、己の潜伏している周辺の敵の存在を幾つか捉える。まず狙うべきはこれだ。
「――来て、幻惑の雷さん」
想像力を励起する。己の影を追いかける敵の姿を想起する。想像は雷のイメージを生み、イメージはやがて形となって有栖の掌から溢れ出る。アリスナイトの力の源泉、想像力から成る業だ。
掌を掲げれば、雷は通路に溢れて駆け巡り、敵らしき影を次々と貫いてゆく。響く幾つかの呻き声。直後、駆け出す同じだけの足音。
うまくいった、と有栖は手応えに頷く。彼女が放った雷は、被弾した者に単純なダメージのみならず幻覚をも齎す。今の敵達は、存在しない有栖の幻覚を追って通路を駆け回っている最中。その先に、罠が存在することも知らずに。
丁度、部屋の窓越しに、駆けてゆく敵兵の姿が見えた。向かってゆく先は、有栖が罠の存在を直感して通行を避けた細い通路。
「……あそこに罠があるような気はしましたが。どんな罠なのでしょうね」
ふと、口から疑問が漏れる。罠の気配は察知したものの、具体的にどのような罠であるかまでは分からなかった。幾つか想像は思いつくが。
『さあネエ? やっぱりこう、壁からなにか飛び出すんじゃ――』
応えてオオカミさんが推測を語りかけた、その直後。一帯に轟く轟音と共に、有栖の見る先、通路の壁が突如として閉じ、通路内を進んでいた敵兵を押し潰してしまったのだ。
「――あれは、壁自体が飛び出した、というところでしょうか」
『……そうとも言えるっぽいネ』
再び開いた壁、無残な圧死体となった兵士が消滅してゆくのを見届けながら呟く両者。大掛かりな罠、彼らの想像の範疇を超えていただろうか。
と、その時。
「!!」
有栖の脳裏に過ぎった、危険な予感。反射的に反対側の壁際へ跳躍すると同時、元居た場所をライフル弾が薙ぎ払う。入口に視線を向ければ、二人の敵兵士が小部屋へ進入してきた処だ。
「見落としてた敵がいたようですね」
『やっぱり直感だけだと限度があるネー』
内省を口にする有栖と応えるオオカミさん。とはいえ、直感頼みの索敵に見落としが生じるのは想定の内。このような展開も考慮して、有栖はこの部屋を潜伏場所に選んでいた。
着地場所の壁を叩くと同時、その床がカタパルトじみて勢いよく跳ね上がり。有栖の身を窓へ向けて射出する。その速度、射手達が銃口を向けようとするより尚速い。
加速しながら窓の外へ身を躍らせつつ、有栖は飛び出してきた窓へ向けて腕を大きく振るう。そこから放たれたのは数本のクナイ。これも想像力の産物だ。
射出の反動も乗せて投擲された其は、勢いよく窓の中へと飛び込んで――直後、仕込まれたグレネードが猛烈な爆発を巻き起こし。有栖を追撃しようとしていた兵士達を、爆風と爆炎の中に呑み込んでいった。
「どうやら、次のポイントへ向かった方が良さそうですね」
『そうダネー』
着地、爆炎の噴き出る窓を見上げる。これだけ派手にやった以上、同じく索敵を漏れた新手が来ることは充分考えられる。ならば移動だ。新たな潜伏ポイントを探し、有栖は別の建物の中へと身を滑らせた。
成功
🔵🔵🔴
ヴァンダ・エイプリル
アドリブ連携歓迎
「おうおう、おいでなすったなぁ」
んー、同じオオカミなのにシブさが出ないや
あ、そうこうしてるうちに本当においでなすった!
モノマネはイマイチだったけど、こっちの方は任せといて!
ふざけた調子で場を砕いてUC発動
味方側のムードを盛り上げつつ加速!
罠に自分から突っ込んでいって作動!
起動した罠は身のこなしと高速移動で避けて、敵をどんどん巻き込んでいくよ!
これぞ地獄の罠くぐり!
ヴァンちゃんの芸に着いてこれるかな?
敵を見てたらなんか目が回る…!
なら、見なきゃいいんだ!
目を瞑って、音で攻撃と罠の発生を感知…罠くぐりを再開!
パフォーマンスにはハラハラが必要だからね!
さぁ、絶体絶命をひっくり返そう!
劉・涼鈴
九龍城砦! ごちゃごちゃしてて面白いトコだよね!
私は劉家拳の涼鈴だよ! あいつらをやっつけに来たんだ!
罠やギミックを教えてもらおう!
教えてもらった【地形を利用】して先制攻撃だ!
【怪力】で天覇強弓を放って攻撃! 見つかったらぴゅーっと逃げる!
追っかけてきたら罠のあるエリアに誘い込む!
私の動きは警戒されるから、罠の作動は現地の獣人たちにしてもらうよ!
敵が罠で【体勢を崩し】たら引き返して距離を詰める!
命中率はそんなに上がってない肉体改造の魔弾!
髪の毛をちょびっと切って縫い付けたで布で【受け流す】!
呪いは縫い付けた髪にしか影響しない!
再充填される前に【劉家奥義・鷹爪嵐迅脚】で蹴散らす!(功夫)
九龍城に在するヤクザ組織『狼頭会』。彼らが外敵の迎撃拠点とした建物の窓から身を乗り出し、ヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)はにやりと笑う。
「おうおう、おいでなすったなぁ」
口に出すのは、グリモア猟兵の予知に見えた狼頭会のボス、彼が発していた台詞の物真似。しかし口に出してすぐ、ヴァンダは首を傾げる。
「……んー、同じオオカミなのにシブさが出ないや」
彼と同じ狼獣人である自分なら、もうちょっと良い感じに真似られると思った様子。あちらの年の功だろうか?
「……何やってんだテメェは」
そんなヴァンダの様子を、呆れ気味に眺める狼獣人達。いきなりやって来て共闘を申し出てきたと思ったら徐にこれである、訝しむのも無理はない。
「いやほらー、命張ってるのは判るけど、あんまりガチガチになってると色々やりづらいじゃん?」
故にひとネタやって場を弛緩させようとしたらしい。その場の獣人達の彼女を見る目は冷ややかだが、一先ず目的は達成できたと言えるかもしれない。
と、そこに。
「いやー、やっぱり九龍城塞ってごちゃごちゃしてて面白いトコだねー」
歩み入ってきたのは大きな牛の角を持つ少女。思わず身構える獣人達だが。
「ああ大丈夫、私はみんなの味方! 劉家拳の涼鈴だよ!」
軽く手で制すると共に名乗った名前は劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)。修めたる拳法の名こそ異なる世界故に伝わってはいないが、身のこなしの時点で素人ではないと見たか獣人達は彼女を信用した様子。
「私達は、あいつらをやっつけに来たんだ!」
言いつつ窓の外を指差せば、街路を駆ける変幻の射手達の姿。丁度此処までやって来た処だったらしい。
「ってやってる間に本当においでなすった!」
先のネタについて一部の獣人達となんやかんやしていたヴァンダも気付く。となればネタよりも戦うべき時だ。
「よっし迎え撃つよ! 皆、何処か罠とかギミックとか仕掛けられてるトコある?」
気炎を吐く涼鈴だが、歴戦の猟兵である彼女でも無策では厳しい数だ。ならば利用できるものは利用してゆくに越したことはない、ということで罠について質問すれば。
「そんなら、この建物の一階二階だ。真っ直ぐ階段を上ってけば何も無ぇが、一歩外れりゃ罠だらけだぜ」
返ってきたのはそんな返答。つまりは脇道へ外れさせる必要がある、ということだろう。
「ん、おっけー! それじゃ行くぞー!」
「モノマネはイマイチだったけど、こっちの方は任せておいて!」
頷いた涼鈴、迎え撃つべく強弓を手に階段を駆け下りてゆく。ヴァンダも其に続き、いざ戦いの始まりだ。
「隙ありー!」
街路を駆けていた射手の一人が、横合いから放たれてきた矢に貫かれ吹き飛んでゆく。他の兵達が矢の飛来してきた方向を見れば、建物入口に弓を構える涼鈴の姿。
「これ以上先には行かせないぞ!」
更にもう一発矢を討てば、また別の射手が射抜かれ吹き飛んでゆく。常人ならば引くだけで困難な強弓を涼鈴の膂力で引き放てば、その破壊力は砲弾の如し。一射ごとに敵を撃ち抜き吹き飛ばしてゆく。
「「敵性存在を確認、これを殲滅します」」
だが、敵も本格的に反撃を開始。流石に数で上回る相手の一斉攻撃ともなれば、さしもの涼鈴でも捌くには難い。
「わわっ、やば……!」
踵を返して建物内へと逃げ込んでゆく涼鈴、其を追って次々と建物内へと突入してゆく射手達。真正面の階段を目指して駆けてゆくが。
「おっと、皆の相手はヴァンちゃんだよ!」
その階段から飛び降り気味に飛び掛かってゆくのはヴァンダ。ボクシンググローブを嵌めた拳を振るって一撃の後、兵士達の反撃の銃撃を躱して通路脇へ。そう、脇へ。
直後、壁や床や天井から無数の銃弾やレーザー、投げナイフじみた刃までが飛び出してくる。いずれ劣らぬ殺傷力を発揮するだろうそれらを前に、ヴァンダはしかし、尚も加速する。
「ちゃんと罠は動くね、それなら……!」
機銃弾の間をすり抜け、レーザーを掻い潜り、己目掛けて飛来するそれら攻撃を、見のこなしを駆使して切り抜けていき――その流れ弾が、敵兵士達へと襲い掛かってゆく。
回避しようにも敵の数は多く、充分な回避行動を取れぬ。次々と撃ち抜かれ、倒れてゆく。
「おっと、私もいるよ!」
更に階段からは涼鈴が降りてきた。絶対に敵を通さぬという意思のもと、跳躍と共に繰り出した飛び蹴りが、敵射手を吹き飛ばす。
「そこを退いてもらいます」
無論、敵も大人しくやられはしない。ヴァンダを止めんと銃撃を繰り出す兵、涼鈴を仕留めんと銃弾を放つ敵とがいるが。
「効かないよ!」
涼鈴は布を振るって銃弾を弾く。この布には涼鈴の髪が少しだけ縫い込まれており、銃弾が持つ強制改造効果もこの髪にしか及ばない、という寸法だ。
「もう一丁!」
銃弾を凌げば次は反撃。再びの飛び蹴りを放ち、射手を蹴り飛ばし仕留めていく。
(うっ、敵を見てたらなんだか目が回る……!)
一方のヴァンダは、敵射手が発動したユーベルコードを前に苦戦している様子。自身を目撃した者に陶酔の感情を与えるこれらの効果で、ヴァンダはまさに前後不覚というべき状態にあった。
(……なら、見なきゃいいんだ!)
そんな敵の前に取った対策は、何と目を閉じるというもの。確かに敵の姿を見る必要はないが、果たしてそんな状態でまともに戦えるのか――そんな危惧は、直後に奇遇と分かる。
「さあ、ヴァンちゃんの芸はまだまだこれからだよ!」
ヴァンダは目を閉じた状態でも、襲い来る罠を容易く駆け抜ける。伴って励起した罠が、敵兵士を襲う。怯んだところに拳を繰り出し、殴り倒す。
その動きはあくまで、音で敵や罠の動きを察知し躱すというもの。故に挙動は粗く、命中率も回避率もやや低い。だが、それ故にこそハラハラするパフォーマンスとなり、見逃せない動きとなる。
一頻り罠を作動させたと見れば、上階で待機していた獣人達も加勢する。其々が仙道式の殺人術や|機械化義肢《サイバーザナドゥ》を駆使した拳法を繰り出し、弱った兵達を打ち倒してゆく。
「よーし、この調子でどんどんやっつけていくよ!」
「うん、ここから絶体絶命をひっくり返そうね!」
涼鈴とヴァンダが呼びかけるに、狼達も喊声で応え。残る変幻の射手達も、残さず仕留めていってみせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メアリー・ベスレム
メアリがよく知る|九龍城砦《あのお城》の雰囲気は
淫蕩・退廃・堕落とかそういう、復讐し甲斐があるもので
|九龍城《このお城》も2度目だけれど……ふぅん?
なんだか今回のはちょっと雰囲気が違うのね
言葉にするならそう、気骨・矜持とかそういうもの?
いいわ、メアリの趣味とは違うけれど助けてあげる!
擺弄符・魂で自身を【肉体改造】僵尸になって
符の一部を適当なところに貼り付け【附身器化】!
お城の機械仕掛けを自身の一部にしながら戦いを
敵にも味方にも自慢のお尻を魅せつけ【誘惑】するように
わざと戦いに割り込んで注意を惹いてみせてから
【軽業】【逃げ足】動き続けて敵の狙いを外して
撃たれても【野生の勘】で身を躱す
機械仕掛けで防いでみせてもいいかしら
そもそもただでさえメアリは人狼だっていうのに
今こうして僵尸になってて機械になってて、小さくなったり大きくなったりもして
これ以上、改造なんてされたらメアリの身体どうなっちゃうのかしら!
気にはなるけれど残念。楽しんでる暇はないみたい
次の魔弾を撃たれるより早く一網打尽にしてあげる!
黄・於菟
気に喰わねえヤツには従わねえ
喧嘩を売ってくるならブッ殺す
いいね、それでこそ虎だ
この喧嘩、|虎《オレ》も手を貸してやるよ
ア? 狼? 知らねえよそっちは
(トラ獣人相手には馴れ馴れしく、オオカミ獣人相手は露骨に塩対応)
罠だの仕掛けだの、いちいち利用するのはめんどくせえ
ンな小賢しい真似をしなくても|虎《オレ》は強えんだよ!
(本能のままに暴れまわる【暴力】しか能がないだけ)
敵を睨んで吼えて【恫喝】しながら虎牙刀を振るい
大立ち回りで【悪目立ち】、群がってくる雑魚どもを片っ端からブッ殺す
撃たれて呪いを受けたとしても【縱虎出柙】がそれを反射する
ンだあ? 舐めた真似してくれんじゃねえか
|虎《オレ》は|虎《オレ》だ。テメエ如きがそれを|改造でき《変えられ》ると思ってんじゃねえぞ!
虎牙刀の刃に怒りの雷火を乗せて、舐めた真似したヤロウをぶった斬ってやらあ!
「ちィ、大分数は減ってきたと思ったが……」
通路の曲がり角から見遣るその先、ライフルを構えて向かい来る変幻の射手達の姿に、虎獣人の男が呻く。全体としてはその数は減ってきたようだが、ことこの一帯に関しては未だ脅威たるに充分な数がいるようだ。
「何だ、黄道の。今更怖気づいたかよ」
反対側の壁際に身を隠した狼獣人の男が、そんな彼を揶揄うように笑う。笑いながら、携えたリボルバーに弾を込め直す。
「アァ? 誰にモノ言ってやがる、狼頭の」
其を受けて虎獣人は目と牙を剥いて怒りの意志を示す。尤も、真に怒りを向ける先は狼獣人ではない。其は、今まさに迫り来るクロックワーク・ヴィクトリアの軍勢にこそ。
「あのクソ時計頭から尻尾巻いて逃げるなんざ、死んでも御免だぜ」
拳を握り己の意志を示してみせる虎獣人。と、其処に。
「いいねぇ、それでこそ虎だ」
「あン?」「誰だ!?」
唐突に聞こえてきた声。振り向けば、肉感的な肢体に黒き租界服を纏った長身の女。
「気に喰わねえヤツには従わねえ、喧嘩を売って来るならブッ殺す」
歩み寄る毎に虎の尾が揺れ、頭上の虎耳が跳ねる。その姿は、戦禍階梯の虎獣人を思わせるが。
「気に入った。この喧嘩、|虎《オレ》も手を貸してやるよ」
虎獣人の男の前まで歩み寄り、獰猛に笑うその女は黄・於菟(人呼んで「一摸就跳」・f36346)。その気性故か、人間として生まれながら肉体に虎の特徴を得るに至った人虎である。
「――ハッ、言ってくれるじゃねぇか」
男の方も牙を剥き笑う。同じ虎の形を持ちつつも先天と後天の差を持つ両者なれど、在り方に通ずるものは感じたらしい。
「そうね、こういうの何て言うのかしら――気骨とか矜持とか、そういうもの?」
と、其処に更なる声。今度は少女のものだ。驚く獣人二人が見れば、此方は露出高い道士服めいた衣を小柄な体躯に纏った少女。兎の耳と尾を思わす装飾を付けた姿は兎獣人とも見えるが、実際は異なる。
「いいわ、メアリの趣味とは違うけれど助けてあげる」
微笑むその表情は、獲物を狩らんとする肉食獣の獰猛さを色濃く示す。メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)、人狼の|殺人鬼《アリス》である。
「有難ぇな、俺達だけじゃちょっと厳しいと思っていた処だったんでな」
援軍たる猟兵の到着に、安心したような表情を浮かべる狼獣人の男。であったが。
「あ? テメェらの事なんざ知らねぇよ」
於菟の返答はまさかの拒否。於菟、虎獣人に対しては馴れ馴れしいとすら言える友好的な態度を示すのに対し狼獣人には塩対応であった。
「大丈夫よ、メアリはちゃんと助けてあげるから」
唖然とする狼の男にメアリーがフォローめいて声をかける。人狼とはいえ狼獣人を特別視はしていない彼女だが、冷遇する理由もまた無かった。
と、その直後。
「そんじゃまァ……行くとすっかァ!!」
咆哮めいて叫ぶが早いか。得物たる虎牙刀を手にした於菟が、敵が隊列を組む幅広の通路へと踊り出ていった。その姿に気付いた変幻の射手達が銃を構えるが。
「しゃらくせェんだよ!!」
吼えると共に、虎牙刀を横薙ぎ一閃。身の丈の半分はあろうかという長大な刃が、最前列の射手達を吹き飛ばす。
直後、戦場となった通路の壁が開き、其処から現れるは回転式砲身の機関銃。其は真正面の於菟を――狙うと思いきや、徐に銃口を射手達へと向け。直後に銃身が回転開始、吐き出された銃弾が次々と射手達へと浴びせかけられる。
「もう、いきなり突っ走って危なっかしいんだから」
振り返った於菟のもとへやって来たのはメアリー。しかし先程までとは雰囲気が大きく異なる。額には符が貼り付けられ、肌は青ざめて。その様子は僵尸めいている――否、今は実際に僵尸であるのだ。
「ああいう仕掛けも、ちゃんと使った方が便利なのに」
尚も銃撃を続ける機関銃を示しつつ、窘めるように語る。その傍らには、メアリーの額にあるものに似た符が貼り付いている。此を介してユーベルコードを行使、以て機関銃を制御下に置いたのである。
「んなモン面倒臭ぇ!」
回答と共に、丁度機関銃の射撃が止む。なれば攻め時とばかりに於菟は踏み込む。
「ンな小賢しい真似しねえでも!」
振り下ろした虎牙刀が、機関銃の掃射を浴びて弱っていた射手を両断。これを仕留める。
「|虎《オレ》は! 強えんだよ!!」
更に吼えつつ、刃を斜めに奔らせれば。更に二人の敵兵を斬り倒して致命の一撃と成さしめた。
猟兵としてはこれが初任務でありながらも、其を感じさせぬ盛大な大立ち回りを繰り広げる於菟の戦いぶりは、成程、罠や策に頼らずとも十分戦えるとも見える。決して、本能のまま暴れ回るしか能が無いわけではないのだ。
「敵の攻勢が緩みました。反撃を開始します」
「陣形再編成、一斉射撃」
其処に態勢を立て直した敵兵達が一斉にライフルを構え発砲してきた。此処までの暴れぶりによって存分に敵の意識を惹き付けた於菟へと。
「ちィッ!」
咄嗟に急所を庇い、腕や脚に銃弾を浴びる於菟。着衣が裂け血が滲むが、戦闘続行が困難になる程の傷ではない。と、直後。
「テメエら……|虎《オレ》を飼い慣らそうとしやがったな?」
憎々しげな唸りと共に、於菟の鋭い視線が射手達を睨み据える。それと同時、傷口から噴き出るかのように激しい炎と雷電とが彼女の周りを荒れ狂う。
射手達が放った銃弾には、単純な物理的効果のみならず肉体変異の呪詛も伴っている。以て於菟を屈服せしめんとしたのだろうが――於菟のユーベルコードは、それらの効果を雷火と共に反射するという代物であった。
「|虎《オレ》は|虎《オレ》だ――」
溢れる雷火が、虎牙刀の刀身へと纏われる。呪詛を弾かれて苦悶に呻く射手達を睨みつけ、刃を構えるが早いか。
「テメエら如きに! |改造でき《変えられ》ると思ってんじゃねえぞ!!」
吼えると共に一閃。斬撃に雷と炎をも伴ったその一撃に、射手達は全身を焼き尽くされ忽ち炭化のち消滅してゆく。
「すっごい大立ち回り。でも、メアリも負けてないのよ?」
其処へメアリーも飛び込んでくる。振り下ろした肉斬り包丁で射手の頭蓋を叩き割ると、即座に跳躍。射手達の射線を外れたところに、今度は於菟の斬撃が彼女らの一人を斬り倒す。
また別の射手の脳天に肉斬り包丁を叩き込みつつメアリーは着地。前傾気味の姿勢で着地したが為に、敵のみならず、於菟やその後方――二人に続かんと打って出て来た獣人達にも白く巨きな臀部が見せ付けるように突き出される。メアリー自慢の豊かな尻だ。
そんな彼女に気を取られた者は、於菟に斬り倒され、或いは後続の獣人達に殴られ撃たれる。そうでなくとも、メアリー本人の刃を受ける羽目となる。敵の軍勢は、総崩れの様相を示しつつあった。
それでもメアリーへ狙いをつけ、発砲せんとした兵士もいたが。その前に天井から降ってきた鉄板――通路を区切る隔壁にギロチンじみてその身を垂直両断される憂き目を見る。ユーベルコードによる、通路内の機械仕掛けの掌握によるものだ。
「もう、ただでさえメアリは人狼だっていうのに」
口を尖らせるように呟くメアリー。戦闘の合間にばら撒いた、己の魂の一部を仕込んだ符。此を介して行使したユーベルコードの作用によって、今やこの一帯の機械仕掛けはメアリーの身体の一部の如く行使できる。範囲が大きい分複雑な制御は困難だが、今の隔壁のような単純な上げ下げぐらいは何とかなる。
「今こうして僵尸になってて機械になってて、小さくなったり大きくなったりもして――」
かつての任務での経験も思い返しつつ。隔壁が上がると共に飛び込み、其処にいた兵士を斬り倒す。
「これ以上、改造なんてされたら……メアリの身体、どうなっちゃうのかしら」
倒れ行く射手、その手のライフルから放たれた銃は天井を穿つに留まる。その銃弾が自らに突き刺さっていたら、如何なる改造がされていたのか。興味はあったが。
(でも、楽しんでる暇はないみたいね)
まだまだ敵は多数。己と於菟で存分に敵の注目は引いているが、獣人達を助けるなら更なる誘引と大暴れが必要となるだろう。
気にはなるけど残念、と未練は感じながらも。メアリーはそれらの敵も殲滅せんばかり、更なる敵中へと飛び込んでいった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『首無き第六疫災王『ミアスマ』』
|
POW : 我が肉よ、給仕せよ
自身の【病に侵された肉と暴力衝動】を代償に、【病原菌そのもので出来た百体の“病騎”】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉を腐らせ骨蝕む零度の紫炎と巨大な処刑剣】で戦う。
SPD : 我が喰らいし我が同胞よ、我が身に新生せよ
全身を【これまで喰った数万の人間と同質量の腫瘍】で覆い、自身が敵から受けた【あらゆる種類の苦痛と腫瘍へのダメージ】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 我が未来の友よ、我が声を聞け
【聞く者の心狂わせ打ち砕く自滅衝動】を籠めた【存在そのものに叩きつける意思の咆哮】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【理性、自制心、論理的思考能力】のみを攻撃する。
イラスト:こがみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「レナ・ヴァレンタイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達の活躍により、クロックワーク・ヴィクトリアの軍勢は壊滅状態。最早、散り散りに残る残存兵力を掃討するのみとなったが。
「友軍壊滅、敵軍に有為な損耗認められず。我々のみでの任務目標達成は困難な見通し」
「邪神降臨儀式の実行要件は見なされたものと判断します」
その状況を認識した変幻の射手達の肉体が、突如どろりと融解を開始。赤黒い泥めいた液状物体と化して、九龍城の床へと広がってゆく。
「邪神降臨儀式を実行――我らの肉を贄として、降臨せよ。首無き第六疫災王『ミアスマ』」
それらさえもが蒸発するかのように姿を消したその直後。九龍城全体に、声無き咆哮が轟いた。
「な、なんだこいつぁ……!?」
「ちぃ……! 見てるだけで背筋がゾクゾクしやがる……!」
九龍城の大通りに集まった獣人達が驚愕に叫ぶ。その声音には驚きだけではない、恐怖もまた滲む。
彼らの視線の先にあるもの、其は巨大な人型存在の姿。身長10mはあろうかという巨大な、然し頭部を持たない異形の人型が、大通りの道路を踏みしめて聳え立っていたのだ。
これこそが、クロックワーク・ヴィクトリアの軍勢が己らの存在を贄として呼び寄せた邪神――首無き第六疫災王『ミアスマ』。疫病を以て弱者を殲滅し、強者を喰らう狂える王。以て神と堕したモノ。
異様なる威容が醸す圧倒的な存在感と、在るだけでその場の理を歪めんばかりの狂気的様相。目撃した獣人達にすら、恐慌を来たしかける者が出ていたが。
「ビビってんじゃねぇぞテメェら!!」
「狼狽えるな若造共!!」
其処へ響く叱咤の声。振り向けば、若いながらに凄みを帯びた容貌の狼獣人と、老齢と見えつつも威厳を感じさせる佇まいの虎獣人の姿。
「し、|迅風《シュンフォン》の兄貴!」
「た、|泰元《タイユェン》大老!」
獣人達が其々の名を呼ぶ。そんな彼らと、その向こうに在る巨大な邪神とを眺め渡し、泰元と呼ばれた老虎は厳しく吼える。
「何が相手だろうが、我らの敵とあらば為すことは一つ! 忘れたとは言わせぬぞ!」
迅風と呼ばれた狼もまた、牙を剥きながら呼びかける。
「ビビって逃げりゃそれまでだ! 此処をクソッタレの時計頭共に明け渡したくねぇなら、やるしかねぇだろ!」
其々の組織を率いる二人の叱咤に、獣人達が落ち着きを取り戻す。そうだ、恐れている場合ではない。己らの居場所たるこの城を、超大国より守る為ならば。
拳を握る。得物を握る。獣人達が邪神に立ち向かうべくその意志を固める。いざ、決死の戦いへ臨まんとする。
そんな彼らのもとへ、猟兵達も到着を果たす。
視線の先の邪神はあまりに強大、罠や仕掛けも劇的な効果は発揮できまい。
故に、彼らの力も借りつつ、共に邪神へ立ち向かって貰いたい。
※『首無き第六疫災王『ミアスマ』』とのボス戦です。
※戦場は九龍城のメインストリート。道自体は広いですが、左右に雑然と建造物が積み重なってます。
※味方勢力として「黄道幇」「狼頭会」の所属者を中心とする獣人達がいます。其々が様々な武装を所持。彼らとの共闘でプレイングボーナスがつきます。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
大物の様ですねぇ。
『FAS』を使用し飛行、『FLS』で|全『祭器』《未装備含》召喚後、空間歪曲障壁を展開しまして。
“病騎”召喚に合わせ【廑傎】を発動、「運命干渉:侵略者撃退支援」の「法則」を呼び掛けますねぇ。
此方は『従わない相手に総数%の全能力低下の付与』が可能、百体召喚されている以上「-100%以上」のデバフが掛かりますので、『病』への警戒も併せ「法則」で強化された獣人さん達に遠距離から“病騎”達を叩いて頂きましょう。
同時に「法則」に従う人数に比例し私の能力も強化されますので、『病』は『FQS』で治癒しつつ、攻撃用の全『祭器』で邪神を中心に[範囲攻撃]し叩きますねぇ。
オオオオオオ……と大気を震わせんばかりの存在感、威圧感を以て、九龍城の大路に聳える首無しの邪神。
「大物のようですねぇ」
その正面にてオーラの翼で滞空しながら、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は其を見据える。完全ではないとはいっても、感じる力の程は凄まじい。
「ですが、やらせはしませんよぉ」
展開するは携えたる無数の祭器。以て戦意を示すと共に、前方の邪神に動き。その身に纏わる包帯めいた布が、無数の蛇のごとくうねり踊って、るこるを目掛けて鋭く突き出され振るわれる。
だがそれらは悉くるこるを逸れ、付近の建物へと叩きつけられこれを破壊するに留まる。祭器の力で周囲に展開された障壁が空間を歪め、邪神の一撃を逸らしたのだ。
「うおぉっ!? ち、何だこの野郎……!」
「っちぃ、ちょっとガタイでかくて力が強ぇ程度で調子に乗んじゃねぇぞ!」
だがその下方、戦列に加わった獣人達は、破壊された建物から降り注ぐ瓦礫を必死に躱す。直後に其を為した疫災王への悪態をついている辺り、戦意は萎えていないようだが。
『―――――』
更にミアスマに動き。声無き声が辺りへ響くと共に、足元に現れるは肉塊めいた人型の群れ。その数は百。いずれもが肉体に紫炎を纏い、巨大な処刑剣を携えている。
(これは早急に何とかしないといけませんねぇ)
るこるは眉根を寄せる。あれは病原菌そのもので肉体を形作られた『病騎』。纏う紫炎は肉を腐らせ骨を蝕む代物。己はまだしも、獣人達には対峙するだけでも危険な相手だ。
如何にして守るか――その答えは既にるこるの中に。その手を合わせ、祈りを捧げる。己の奉ずる正しき神――豊饒の女神へと。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『聖令の加護』をお与え下さいませ――」
祈りはユーベルコードとして結実し、空間に流れるは静謐にして厳粛なる空気を孕んだ風。|女神の御力《ユーベルコード》が、空間にひとつの法則を布く。
「さぁ、皆さん。今この場に『侵略者は撃退されるもの』という法則を布きましたぁ」
そしてるこるは呼びかける。獣人達に、邪神に、病騎達に。布かれた法則と。
「『法則に従い』侵略者を撃退致しましょう」
法則に従うべし、という宣言の形を取った命令を。獣人達には「離れたところから攻撃して欲しい」との依頼も添えて。
「言われねぇでも!」
「俺達のシマは荒らさせねぇってなぁ!」
応えた獣人達は一斉に攻撃を開始。|機械化義肢《サイバーザナドゥ》から展開した銃器、自らの手の銃器を乱射する。中には仙術を以て炎や電撃を放つ者もいる。
それらが病騎達へと着弾すれば、その肉体は容易く引き裂かれ崩れ落ち、正しく肉体となり果ててゆく。るこるの発した命令は、其に従わぬ者にその数に比例した弱体効果を齎す。病騎の数は百体、本来持ち得る力をほぼ完全に喪失した状態となった怪物達は、最早常人でも容易く殲滅叶う状態と化していた。
そうして病騎達が数を減らしてゆくにつれ、やがて徐々に殲滅のペースが低下してゆく。弱体効果が敵数に比例する以上、敵数が減れば弱体効果も低下するのだ。それでも現状なれば獣人達は病騎を一掃できようが。
「今のうちに叩かせて頂きますよぉ」
ミアスマ本体にも弱体効果がかかっているうちに、ダメージを稼ぐ必要がある。展開せる攻撃祭器群を疫災王へと向け、一斉砲撃開始。
炸裂弾、熱線、爆弾、光線、魔力矢、重力弾――様々な属性と性質を帯びた弾体群が凄まじい勢いで撃ち放たれ、残存する病騎共々、邪神の巨躯を呑み込んでいった。
成功
🔵🔵🔴
雨飾・樒
厄介そうなのが出てきたけど、大丈夫、数は有利になった
意思の咆哮、精神攻撃は耳を塞いでどうにかなるものじゃなさそう
理性も思考も潰されるなら、それでも何とかなるように戦えば良い
「あの敵を仕留める」、それだけを心に決めて立ち向かうように、黄道幇と狼頭会の人達に呼び掛ける
私も「"眠り薬の魔弾"を撃ち込み続ける」ことに集中
巨体を活かした攻撃も来そうだけど、思考できないなら勘で避けるしかない、今までの戦闘経験が活きてくるって信じてる
敵への殺意さえあれば戦える、私の魔弾が効いてくれば皆の攻撃も集中しやすくなるはず
戦おうとしてる時点で理性や自制なんて欠片程度しか持ってないんだ
私達の心、砕かせはしない
先の猟兵の攻撃を受け、それなりに傷を負った様子の第六疫災王『ミアスマ』。なれど悠然と城塞の大路に聳える姿は、敵の損耗の僅少ぶりもまた物語る。
『―――――!!』
更には、その健在ぶりを誇示するかの如く、声無き声にて咆哮を上げる。其は自滅衝動を込めた。叩きつける意思を帯びた咆哮。
「ウアアアアアア……!」
「ヒィィィッ、ヒィィィ……!」
咆哮に晒された黄道幇と狼頭会、戦線を為す組織の獣人達が発狂、或いは恐慌状態に陥り。戦線は大混乱に陥る。このまま無力化され、殲滅されるのみか――そうとすら見えたが。
「――余計な事は、考えないで」
其処に呼びかける声。未だ正気を保つ獣人達が振り向いた先には雨飾・樒(Dormouse・f41764)の姿があった。
「あの敵を仕留める――それだけを、心に決めて立ち向かえばいい。あれさえ倒せば、私達の勝ち」
あれこそが敵の切り札。なればこれが最後だ。巨大で強大な、厄介な敵だが。数の上では此方が有利。故に勝てる、と。そう説く樒に。
「そうだ……あんな奴に俺達の|居場所《シマ》を好きにさせるかよ……!」
「やるぞオラぁ!」
二組織の獣人達は奮起の声を上げる。己の心を苛む恐怖を振り切ろうとするかの如く。各々が銃を、剣を、各々の得物を構える。
ならば彼らの援護を為さんと、樒もまた愛用の拳銃を構える。魔弾の触媒たる六式拳銃丙型。
(――そう、それだけ考えていけば、戦える)
獣人達に呼びかけたその対策は、樒自身も己の心を保つ為の術であった。これだけの咆哮、耳を塞いだところで如何にもならぬ。ならば防ぐのではなく、影響を受けて尚戦う為の術を。理性も思考も潰されて尚、それでも立ち向かう術を。
(殺意さえあれば――戦える)
拳銃の引鉄を引くたび、ペールブルーの魔力弾が空を裂き邪神を穿つ。巨体故に狙いをつけずとも容易く命中する銃弾は、着実に邪神の巨躯を削ってゆくが、ダメージは軽微に留まる。だが。
『―――――!!』
再びのミアスマの咆哮。理性を、思考を根こそぎ持ってゆくかのような咆哮は、しかし初回程の威力は伴わず。樒は踏み留まり、尚も魔弾を放つ。更に。
「アアアアアアア!!」
「オオオオオオオ!!」
半ば発狂したような叫びを上げる獣人達が、次々とミアスマへ向けて突撃してゆく。銃撃、或いは斬撃、打撃。巨躯の邪神に対し、次々と攻撃を叩き込む。
それらの攻撃に、疫災王の反撃は鈍く。煩わしげに足元を払うような仕草しか見せぬ。獣人達には避けきれず受けてしまう者もいるが、その一撃で致命とまではいかない様子。
(――効いている)
千切れかけた思考の中、一心不乱に魔弾を撃ち続ける樒は実感する。己の用いる『眠り薬の魔弾』は敵に眠りを齎す魔弾。ミアスマ程の巨大で強大な存在には効き目は鈍くも、重ねることで一定の効果は発揮する。眠気による思考力や判断力の鈍麻。其を以て獣人達への損耗の発生を抑え、彼らが攻勢を維持すること。樒は其を考え攻撃を重ねてきた。どうやら、その狙いは当たっていると言えようか。
(なら、このまま――)
攻撃を続ける。引鉄を引き続ける。例え、元より理性や自制が欠片程度しか無いとしたって。其処にあるのは紛いなく、己の心なのだから。
(私達の心、砕かせはしない)
この土地も、其処に在る者達の心も。侵略者の好きにはさせぬ。その意志を以て、樒は魔弾を撃ち込み続けてゆく――
成功
🔵🔵🔴
エドワルダ・ウッドストック
【UCV】アドリブ連携歓迎
第六疫災王『ミアスマ』……!
見るからに異形、存在するだけで九龍城に被害をもたらす巨大な邪神。
……ええ、例え神を名乗るモノであろうと、臆することはありませんわ。
迅風様、泰元大老に続きましょう!
レヴィアの放つUCが疫病をもたらすこのオブリビオンに特効ですわね。
彼女の術を中心に、獣人たちと連携して立ち回りましょう。
病騎の群れの足止めをするため、《鋼鉄弾雨》で攻撃しますわ。
動きが止まったところにレヴィアの切断者で切り裂いてもらいましょう!
皆様、ストリートの地の利を活かしましょう!
零度の紫炎も処刑剣も届かない、建物の中や屋根の上から投擲や射撃で敵を削りましょう!
数は力ですわ!
レヴィア・イエローローズ
【UCV】
疫病操作系UC…しかし病気も行ってしまえば『物質に対する影響』
ならば、このUCはいかがかしら?
瞬間、自然階梯のシカへ変身
領域を展開し物質を『あらゆる法則を無視』して再構築していくわ
再構築するのは『病理』の切断者…それはあらゆる『病理』の概念を切り裂き、その結果病理に蝕まれていた者を救う鋸刃
その性質を保ったまま再構築し…病原菌そのもので出来た百体の病騎を『病理』の切断者の性質を宿した刃で切断
ついでに巨大な処刑剣も再構築してなまくらに、肉を腐らせ骨蝕む零度の紫炎には『病理』の切断者を
更には獣人達の援護も活用した上でサポートするわ
どうやら…貴方はわたくしに対して相性が悪すぎた様ね
「これが第六疫災王『ミアスマ』……!」
先の猟兵の攻撃により傷を負いながらも、邪神ミアスマは変わらず其処に在る。其を前としてエドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)は唸る。
「ああ。この野郎、とんでもなく禍々しい気に満ち満ちてやがるぜ」
「それにこの禍々しき存在感……惰弱な者では直ちに己を失いかねん」
|迅風《シュンフォン》と|泰元《タイユェン》、各々組織を率いる二人の獣人は其々に身構えながら、その脅威の程を口とする。
首を持たずして悠然と其処に立つ姿は紛れなき異形、数多の疫病を宿すその存在は只其処に在るだけで九龍城へ被害を齎す。恐るべき邪神である。果たしてこれ程の脅威、如何にして退けるべきか――
「――ですが」
なれども、この強大な疫災王に対しても勝利の術はある。自信を以てレヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)は宣言する。
「わたくしのユーベルコードと、皆様のお力。其を合わせて挑めば、決して敗北はありません」
其は只の精神論ではない。彼女は、この邪神に対して極めて相性の良いユーベルコードを有している。それ故にこそ、敗北は有り得ぬと確信しているのだ。
「……そうですわね」
其を感じ取ってか。エドワルダも納得を以て頷く。そもそも、如何に敵が強大であろうとも。
「例え神を名乗るモノであろうとも――臆することはありませんわ!」
愛用のライフルをかの邪神へと突きつけ。声を張り上げる。
「――参りましょう、皆様!」
エドワルダの呼びかけるに、迅風と泰元は其々に一歩踏み出す。狼はその手に風めいて仙力を巡らせ、虎は|機械化義肢《サイバーザナドゥ》の拳を握り込む。
「おうよ。行くぞてめぇら! |覚悟《ハラ》決めてけやぁ!」
「余所者風情に頼りきりなど黄道幇の名折れよ! 気を張れ! 牙を剥けぃ!」
各々が配下に檄を飛ばすが早いか駆け出すに続き、獣人達も次々に喊声を上げて邪神へと向かってゆく。
そんな彼らを迎え撃たんとばかり、ミアスマの足元に湧き出すは醜怪極まりなき肉塊の群れ。『病騎』、病原菌そのものにて形作られる邪神の眷属。その身に腐敗齎す紫炎を纏い、巨大な処刑剣を振りかざし、獣人達を迎え撃たんと――
「そうは参りません! 制圧しますわ!」
直後。エドワルダの声に続いて横合いから降り注ぐは、夥しき勢いで撃ち放たれるライフル弾。ユーベルコードの作用によって本来の連射性能を大幅に超越した速度で吐き出される銃弾の雨はまさしく『|鋼鉄弾雨《フルメタルバレット・ストリーム》』。さしもの病騎共も、足止めを受けざるを得ない代物。
その隙を縫って、獣人達の先頭へと踊り出たのは、光輝く角を生やした一匹の鹿。其は、レヴィアがユーベルコードによって変身を果たした鹿神。エドワルダの制圧射撃によって動けぬ病騎共へ真っ直ぐ駆け抜けるその姿に、幾つもの帯状の光が纏われる。
其は鹿神として有する権能。あらゆる物質を分解再構築し己の望む形を創り出す力。以て顕現せしめたその光は、鋸刃の如き刃を備えた帯状を成す。其はレヴィアの思念に応えて振るわれ、最前の病騎へと打ち付けられ――其を粘土めいて容易く切断する。
光の纏う力とは即ち『病理』の切断者。あらゆる病理の概念を斬り裂く刃。病原菌そのものである病騎に対しては、絶対的とすら言える優位を示す代物である。紫炎も容易く払われ、処刑剣もまた物質再構築の権能で塵と還る。
瞬く間に減ってゆく病騎共。レヴィア自身の見立て通り、彼女のユーベルコードはこの邪神及びその眷属に対し、まさに覿面と言って良い効果を発揮していた。
「手下共が減った! 後はこのデカブツだな!」
其を確かめれば、迅風が何やら印を結ぶ。するとミアスマの足元で巻き起こる風が真空を生み、生ずる刃が腐肉の巨体を切り刻む。
「如何に図体が大きくとも、我らの力を以てすれば……!」
更にその風に乗って泰元が高く跳躍。ミアスマの腹辺りまで一気に昇れば、鋼鉄の拳を振りかぶり、蒸気の噴出と共に其を叩き込む。一際大きな打音と共に、邪神の巨体がよろめく。
「お見事ですわ! 皆様、迅風様と泰元大老へ続いてくださいませ!」
其に快哉を上げるエドワルダ、なれど攻め手は緩めんとばかりに声を張り、自らもライフルの引鉄を引き続ける。
彼女の周囲には二組織の獣人達のうち銃器など遠距離武器を使う者達が集まり、各々が投擲や射撃をミアスマ目掛けて撃ち込み続けている。
更には地上でも、エドワルダの呼びかけるに応えて獣人達がミアスマへと飛び掛かり、刃を振るってその身を刻んでゆく。
邪神の膨大な存在格に対し、それら一撃一撃は些細なもの。なれど其が積み重なれば、いずれはこの邪神をも打ち倒し得る。数は力なのだ。
猟兵達と、黒幣極道の連合軍。集う獣人達の決死の攻勢が、巨いなる邪神を少しずつ揺らがせてゆく――
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
結城・有栖
アレが話に聞いた邪神ですか…。
「あの邪神は疫病そのものみたいダネ。
このままじゃ獣人さん達が危ないヨ」
ええ、まずはあの病毒をなんとかしましょう。
今回はトラウムに搭乗し、シュトゥルムで飛翔させて出撃。
側には蒼星の書も展開します。
まずはUCで芭蕉扇を創造し、トラウムに装備です。
込める幻想は病毒を浄化する風の魔法、技能は【浄化】に特化。
上から芭蕉扇を振るって浄化の風を起こし、敵の病毒を浄化して弱体化させ、獣人さん達を援護します。
攻撃が来たら、【野生の勘で見切り】、【空中機動と残像】を駆使して回避を優先。
そして、芭蕉扇の浄化の風と蒼星の書の【レーザー射撃】で【カウンター】して反撃です。
劉・涼鈴
うじゅうじゅして気持ちわりーやつになったぞ!
よっしゃあ! みんな【気合い】入れろー!!
なんかばっちいから、直接攻撃じゃなくって銃火器じゃんじゃん撃ちまくって!
仕掛けは敵を足止めするより、自分で使ってしっかり距離を取ろう!
メインストリートってことはお店もあるじゃんね?
なんか役立ちそうなものは……お酒だ!
でっけー酒甕を【怪力】で持ち上げて……ぶん投げる! アルコール消毒を喰らえー!
びっちゃびちゃにしてやったら、突撃~!
掲げた手の甲に輝く太陽のルーン(覇気)! 病気に負けない【元気】のパワーだ! いっくぞー!
|爆滅《ばぁぁぁくめつ》!!! |閃光掌《サンシャイン・フィンガァァァアア》!!!!!
ヴァンダ・エイプリル
顔がない! なんとびっくり!
ヴァンちゃんから一本取るとは、なかなかやるね!
異様さを本当は感じつつ、とぼけたフリで場を緩める
恐怖を笑いで塗り替えなきゃ、笑える世界は来ない
さーて、びっくりを倍にしてお返ししちゃおっと!
みんなも仕返ししたいよね?
味方を鼓舞して相手に接近
UCの効果で病騎たちを同士討ちさせて形勢逆転を狙う
隙があれば味方にも雪崩れ込んでもらって、戦場をぐちゃぐちゃに!
ドタバタ劇の舞台上みたいにね!
知ってる?
ホラーとギャグは紙一重
だからちょっと崩せばヴァンちゃんの領域です!
混乱に乗じて本体を攻撃!
上昇した戦闘力で蹴る殴る、最後は【ドッキリ看板】で【おどろかす】!
笑える世界、返してもらうよ!
猟兵達と九龍城の獣人達の猛攻に晒され、疫災王『ミアスマ』はその巨躯をよろめかす。己に比すれば遥かに矮小であろう存在から、これ程の反撃を受けたことに、さぞや驚愕の表情を浮かべて――
「顔が無い!! なんとびっくり!」
その身体の最上部へと目線を向けたヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)はいっそ清々しいくらいにわざとらしい声音で驚いてみせる。この邪神に顔がないことなど最初から分かっていたが、敢えてこう言うのだ。
「ヴァンちゃんから一本取るとは、なかなかやるね!」
鼻の下を人差し指で横に擦りつつ妙に得意げな表情。獣人達から向けられるのは、やはりというか胡乱げな視線。
なれどもヴァンダの表情に揺らぎは無い。彼女とて、異様さは十二分に感じ取っている。それでもとぼけたフリをするのは彼女の仕掛人としての矜持。即ち、恐怖を笑いで塗り替えなければ、笑える世界は来ないのだと。
「まー、うじゅうじゅして気持ちわりーやつだしねー」
「疫病そのものみたいな邪神、となれば、それは怖がるに値する代物ですしね」
並び立つ劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)は邪神を見遣って嫌悪感の滲む声で漏らし、結城・有栖(狼の旅人・f34711)は納得げに頷く。疫災王と称されるだけあり、その蠢き絶えぬ肉体には数多の病原菌が宿る。そのような敵は、この場にあるだけで大きな脅威。確実に討たねばならぬ。
「そういうコト! というわけで――」
乗っかり気味に同意を示してみせるヴァンダ、改めて獣人達へ視線を向けると。
「――みんなも、あの邪神に仕返し、したいですよね?」
即ち、このように己らの居場所を蹂躙せんとした仕返し。ヴァンダの行動に半ば呆れかけていた獣人達の瞳に、炎が宿る。
「よっしゃあ! 皆、気合い入れろーー!」
其を見て涼鈴が呼びかければ、気合い充分の雄叫びめいた応えが返る。己らの住まう地は己らが守る、そんな矜持を感じさせる叫びである。
「あ、でもあの敵なんかばっちぃから攻撃は銃火器とかでね!」
なれども気合い任せではなく、注意事項の伝達は抜かりなく。かの疫災王の宿す病毒の脅威たるは変わらぬ故に。
「ならば私達は病毒を何とかしましょう、オオカミさん」
『あいよー』
ならば其へ対処するは己の役割、と。有栖は『オオカミさん』へと呼びかけると共に、背後に現れたキャバリアへと乗り込む。『トラウム』、魔女を思わせる意匠のサイキックキャバリアである。
其を認めてか、ミアスマの周囲へと姿を現すのは幾体もの肉塊じみた人型存在。『病騎』、疫災王の眷属たる百の兵。その身に紫炎を纏い、処刑剣を掲げて猟兵と獣人達とへ向かわんとする。
そうはさせじとトラウムが飛翔。その片手が掲げられると共に、有栖はそこへ想像の祈りを込める。
『幻想は今此処に形となる……いでよ、幻想魔導具』
アリスナイトとしての想像力が励起するユーベルコードが生み出すは、幻想を宿せし武具。掲げられたトラウムの手へ、光と共に現れ出るは、その身の丈に迫らん程の大きな奥義。芭蕉扇である。
其を一振りすれば、伴って戦域を清浄なる風が駆け抜ける。浄化の力を帯びた風に撫でられて、病騎達の動きが見る間に鈍り、纏う紫炎が吹き飛ぶように鎮められてゆく。さながら、火焔の山の炎を鎮めるが如く。
「うーん、爽やかで良い風だね! それじゃあこの調子で畳みかけていこうか!」
敵陣の状況を見て取ったヴァンダもまた動く。その身より溢れる魔力は、ある種の志向性を持った魔術体系の力。即ち『笑い』。故にこそ、彼女は戦場において笑いを追求するのだ。その目指す処は。
「さあ、皆――『もっと笑える世界にしよう!』」
宣言するや否や、敵陣に異変。病騎達が、次々に互いを処刑剣で斬りつけ始めたのだ。否、其はさながら、処刑剣自身が自ら手近な病騎を斬りつけたというが適切な状況。中には持ち主たる病騎自身を斬る剣もある。
其は宣言と共に発動したヴァンダのユーベルコードの力。彼女の願いに沿わぬ者は、その得物に叛逆されるという代物だ。
「なんか妙なコトになってやがるな?」
「だが好都合だ、一気にやるぜ!」
その様子を訝しんでいた獣人達だが、好機と見れば一斉に攻撃を開始。自らの手に構えた、或いは|機械化義肢《サイバーザナドゥ》から展開した銃器で以て、病騎達を撃ち抜いてゆく。反撃しようにも、紫炎はトラウムが起こす浄化の風によって吹き消され、処刑剣は叛逆を続ける。何一つ対抗手段を取れぬまま、病騎達は倒れ、消滅してゆく。
そうして敵の数が減ってきたところに、涼鈴が飛び込む。その腕で抱えるは、彼女自身の身の丈程もあろうかという巨大な酒甕。近くの酒屋からかっぱらってきた代物だ。
「アルコール消毒を! 喰らえぇぇぇぇ!」
叫ぶと共に投げ飛ばす。其は涼鈴の膂力によって力強く飛翔、真っ直ぐにミアスマ目掛けて飛んでいき――衝突、そして粉砕。伴って中から溢れでた大量の酒が、邪神の身体へと浴びせられてゆく。
『敵は総崩れのようです。今のうちに攻め込みましょう』
病騎が粗方殲滅されたのを見届け、有栖は攻撃をミアスマへと集中させる。芭蕉扇を振るい浄化の風を浴びせると共に、傍らに浮かべた魔導書型砲台からレーザーを撃ち放ち、以て疫災王の身を焼き浄めてゆかんとする。
有栖の呼びかけに応え、獣人達もミアスマへ向けての一斉攻撃を開始。驟雨の如く放たれ続ける弾丸の嵐が、邪神の巨躯を少しずつ、着実に削ってゆく。
其処へ駆け込む涼鈴、対する邪神も病騎の全滅を受けて蘇った暴力衝動で以ての迎撃を試みるが。
「おおっと、そっちじゃなくてこっちだよー!」
突如、涼鈴の向かい来る方向とは別方向からの衝撃。ヴァンダがユーベルコードの恩恵で強化された能力を持って殴りかかってきたのだ。
「笑える世界を取り戻すため、倒させてもらっちゃうよ!」
そのまま拳を、足を振るっての連続打撃。さしもの邪神も揺らぎだす中。
「病気に負けない元気のパワー! いっくぞー!!」
掌を掲げて涼鈴が叫ぶ。その手の甲に輝くは太陽のルーン。光と炎のエネルギーが溢れ出し、腕を包む。
跳躍、肉薄。光炎纏う手を振りかぶりながら、涼鈴は叫ぶ!
「|爆滅《ばぁぁぁくめつ》ッ!! |閃光掌《サンシャイン・フィンガ》ァァァァァァァァ!!!」
振り抜いた掌が、ミアスマの胴へと叩き込まれた瞬間。ヴァンダもまた、反対側へと『大成功』と書かれた看板のフルスイングを叩き込んで。
直後、涼鈴の掌に集束した閃光が大爆発。邪神の巨躯を、その中へと呑み込んでいった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
メアリー・ベスレム
まあ、こわい!
なんて、心にもない事を言ってくすくす笑い
それに……ふぅん? あなたも人喰いなのね
メアリが知ってる食べ方とはずいぶん違うみたいだけれど
まずは適当な獣人にすり寄り【誘惑】し
ねえ、あなた。ちょっと協力してくれる?
そのまま擺弄符を押し付けて
【屍身傀儡】の為に命令させる
もちろん、メアリは命令されるのなんて嫌いよ大嫌い!
ええ、大嫌い|だからこそいい《・・・・・・・》の
とっても屈辱的だからこそ、その後の復讐はより甘美なものになるでしょう?
あは、いやらしい命令をするならあなたも殺してやるけれど
ああ、それとも……|兎《アリス》より|狼《メアリ》の方がお好みかしら?
オーバーロードで真の姿、半獣半人の人狼へと変身してみせる
敵の攻撃が獣人達に向かないよう
【挑発】的に【切り込み】
【誘惑】するよう注意を惹き付け
【軽業】【野生の勘】で身を躱す
残念、食べさせてなんてあげないから
時には【功夫】の動きで【受け流し】
そのまま【体勢を崩し】たところを【武器巨大化】させた爪で
腫瘍ごと本体を【引き裂き】【貫通攻撃】!
黄・於菟
ハ、王だか神だか知らねえが見下してんじゃねえぞ
|虎《オレ》達ゃそんなモンにはハナから従わねえからこその虎なんだよ
そうだろ、兄弟!
馴れ馴れしくそう呼びながらトラ獣人達と共闘する
おうおう、また頭数ばっか揃えやがって
それっぽっちで虎の群れを相手すんのに足りると思ってんのか?
長大な虎牙刀を【ぶん回し】
【殺気】漲らせ【暴力】振るい
病騎どもを片っ端から叩き斬る
忌々しい紫炎とやらは【虎軍獨戰】で使われる前に妨害してやらあ
それに今回ばかりは|虎《オレ》だけの独戦ってワケでもねえ
トラの獣人なら|【虎軍奮闘】《おなじユーベルコード》が使えるハズだろ
なら|虎《オレ》が【悪目立ち】してる隙に兄弟達が妨害を噛ましゃあいい
アイツら相手に爪はともかく牙を使うのは辞めといた方がいいだろうけどよ
逆に兄弟達に向けられた紫炎は|虎《オレ》が対処すりゃいい
それすら抜けてくるヤツの攻撃は【野生の勘】で身を躱してやる
ちったあできるヤツもいるみてえだがよ
クセエんだよ、テメエらは! とっととくたばりやがれ!
大気が鳴る。深く傷つき、焼け爛れた巨躯の邪神を中心に。疫災神『ミアスマ』、恐るべき災厄の邪神は、猟兵達の猛攻の前にその存在格を著しく衰えさせている。響き渡る大気の鳴動音は、邪神の最後の抵抗――或いは、この状態に及んで尚、己が他を圧する上位存在なるという矜持の誇示であろうか。
「――ハ」
其を嗤うと共に息を吐く黄・於菟(人呼んで「一摸就跳」・f36346)。気に入らない。王だか神だか知らぬが、見下されるは我慢ならない。敵には眼も顔も頭すら無いが、彼女の感覚は理解する。
「|虎《オレ》達ゃそんなモンにはハナから従わねぇからこそ虎なんだよ」
そうだろ、兄弟。振り返る先には黄道幣の虎獣人達。その長たる老虎、泰元は渋面を浮かべるも。
「――気安いぞ、小娘。だが、貴様の言う通りだ」
権力に阿るを良しとせぬ無頼の生。安寧を代償としてでも求めた独立独歩。九龍城に集った全ての者が等しく持つ、反骨の魂。
「我らの領分を侵す者は、神であろうと赦しはせん」
|機械化義肢《サイバーザナドゥ》の拳を握る。後に続く虎達もまた、各々に得物を構え闘志を示す。
「まあ、こわい。あなた達も、そう思わない?」
一方、狼頭会の者達のもとでは。大気唸らす邪神を見上げたメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)がくすくすと笑いながら狼獣人達に話しかける。
「心にもねぇ事言ってんじゃねぇよ。それより――」
獣人の一人が応える。その言い回しは苛立たしげとも思えるが、声音はまた異なるニュアンスを帯びている。何かといえば。
「――そいつは、何のつもりだ?」
続けた声には劣情が滲む。向ける先は己のすぐ真下――己の下腹へ、そのむちり豊かな肉尻を押し付けるメアリーへ。その行為の意味する処など、一つしかないのに。
「ええ。ちょっと協力して欲しくって」
応えるメアリー、その手にぺらりと一枚の符をひらめかせる。男は其に見覚えがあった。其は確か僵尸に命を下す為の――
「――へぇ、俺に命令されたいってか」
狼の貌に好色げな笑みが浮かぶ。対するメアリーの表情は憮然。何故なら。
「もちろん――命令されるのなんて嫌いよ大嫌い!」
余程特殊な嗜好でなくば当然の答えだろう。だが。
「でも、ええ――|大嫌いだからこそいいの《・・・・・・・・・・・》」
其は紛いなき屈辱。だがそれ故にこそ、その後の復讐はより甘美なものとなる。それこそがメアリーの趣向であり、力だ。
「ふぅん? まあ、いいだろう――」
そんな意図が何処まで男に伝わったか。好色な笑みのまま狼獣人は頷くが。
「あは。いやらしい命令をするならあなたも殺してやるけれど?」
続けての釘刺しめいた一言に、真顔とならざるを得なかった。
そうこうしているうちに、邪神ミアスマの周囲には肉の兵の群れが現れ、猟兵達と獣人達を目掛けて前進を始める。その数は実に百体。紫炎を纏い、処刑剣を掲げ迫る病原体そのものの肉体持つもの『病騎』。
「おうおう、また頭数ばっか揃えやがって」
牙を剥き、於菟は獰猛に笑う。|たったの百体《・・・・・・》で、虎の群れを相手取ろうとは――
「――ナメてんじゃねーぞ!!」
吼えると共に疾駆。振り回すは長大なる虎牙刀。膂力を乗せてぶん回せば、最前の病騎の反応すら許さず叩き斬り、吹き飛ばす。
「おらぁ!!」
処刑剣を振りかざし迫り来た次なる病騎。其が振り下ろされる前に踏み込めば、左腕を思い切り叩きつける。その手に生えた虎爪が、病騎を斬り伏せ地へ叩きつける。
その先では、二体の病騎がその身の紫炎を燃え上がらせる。やがて塊を成した病んだ炎が、於菟を目掛けて撃ち放たれんとして――
「ざってぇんだよ!!」
於菟の総身を、燃え盛る縞模様が包む。其は虎の闘志を形にしたが如きの様相。怒号と共に虎牙刀一閃。炎を帯びて振るわれた長刀の斬撃が、紫炎諸共病騎を斬り裂く。
その隙を狙ってか、左右から処刑剣を振りかざし更なる病騎が迫る。だが、於菟は其へ意識を向けぬ。何故ならば。
「喝ッ!!」
裂帛の声と共に飛び込んできた影もまた、燃え盛る虎縞を纏う。以て振るった腕、備わる爪が病騎を引き裂き怯ませる。其処へ更なる斬撃銃撃が浴びせられ、病騎の身体は粉々に砕かれてゆく。
「やりおるわ小娘。ならば我らも負けてはおれんな」
飛び込んできた影の主は、不敵なる笑みを浮かべた泰元。於菟を挟んだ反対側でも、彼ら同様に炎の虎縞を纏った虎獣人達が病騎の攻勢を挫いていた。
其は虎獣人の多くが身に着けるユーベルコード『虎軍奮闘』。泰元含め、其を行使可能な者達に、脇を任せたのだ。
「クセエんだよ! テメエらはよぉ!!」
再びがなり立てながら、また一体の病騎を斬り捨てる。己が暴れ回って敵を引き付け、其処へ『兄弟』達の妨害を差し込む。虎の群れの攻勢は獰猛に、且つ巧みに敵群を削ってゆく。
其処を突っ切って地を駆け、ミアスマへ迫るはメアリーだ。半獣半人、人狼としての姿を露とした真の姿。なれどその身は青白く染まって生気を失い、額には呪符。メアリーを生きながらにして屍――僵尸へと変じせしめる、忌むべき呪符。
なれどメアリーは敢えて其へ身を委ねた。他者からの命令を以て己の技巧を強化するユーベルコード。励起された技巧の数々が、迫りくる病騎の攻勢への対処を容易とする。
獣の四足疾走で姿勢を下げ、病騎の群れの只中へ突入。豊かな尻の上で揺れる狼尾は、病騎の意識を強く惹く。なれど迫る手も、刃も、一つとしてメアリーの身を捉えるは叶わぬ。右へ、左へ、時には地を滑り。まさに野生の狼の如き俊敏な動きが、病騎の攻撃を容易くすり抜けてゆく。
「残念、食べさせてなんてあげないから!」
振り下ろされた処刑剣の腹へと掌を当てて押し退ければ、その病騎の頭上へ飛び上がり。頭を蹴って更に上昇。目指すは邪神の、首なき頭部。
後に残った病騎達は、獣人達によって粗方殲滅された。今し方メアリーの踏み台とされた病騎もまた、於菟の虎牙刀に斬り倒され。行く手を斬り開いた於菟はそのまま、ミアスマへの肉薄を果たす。
「――あなたも、人喰いなのね?」
虚空、頭があれば眼があるだろう位置へと目を向け、メアリーは語りかける。どうやら|己の知る人喰い《オウガ》とは随分違うようだが、其処が同じであるならば。
「なら、あなたにも、仕返ししなきゃね!」
生きながらにして僵尸とされた屈辱を、此処に叩きつけるのみ。掲げた右腕が、見る見るうちに巨大化し。メアリー自身の腕部に匹敵する程にまで膨張を果たす。
「ウザってぇ神気取りめ! とっとと――」
於菟もまた、虎牙刀を大きく振りかぶる。纏いたる炎の虎縞が、より一層熱く、激しく燃える。
「これで――」
「くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
振り下ろされた狼の爪と、横薙ぎの虎の牙が。邪神の巨躯を、十文字に引き裂いて。
よろめく邪神、傾ぎだした巨体は、どろどろの泥濘の如く溶け崩れ――其も含めて、然程の時間を駆けずに消え去っていった。
以て、第六疫災神『ミアスマ』は滅ぼされ。クロックワーク・ヴィクトリアの九龍城制圧作戦は、猟兵達と獣人達の奮闘の前に頓挫したのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『獣の踊りをご存知か?』
|
POW : みんなでワイワイ熱狂的に!
SPD : 巧みなダンスの技術を披露!
WIZ : アーティスティック、またそれもいい!
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
乱舞する極彩色の光と、響く重低音。けばけばしい店内で、人々が飲み、騒いでいる。
此処は、九龍城の一角に店を構えるクラブ『禄存』。此度の戦いを乗り越えた獣人達は、この店で戦勝パーティを開いていた。
「ようお前達! 今回の戦い、勝てたのはお前達のおかげだ!」
訪れた猟兵達に声をかけるは狼獣人の青年。|極道《ヤクザ》組織『狼頭会』の長『迅風』である。
「せめてもの礼ってコトで、存分に呑んで喰って踊って、目一杯楽しんでってくれ!」
その表情と言動は、親しい友へ向けるそれ。気付いた他の獣人達も、一様に似たような表情を向けている。共に死線を潜った者として、猟兵達へ強い信頼を抱くに至ったようだ。
一方、『禄存』の店外では。
「――フン。戦に勝ったとて浮かれ過ぎだ」
店の外、通りに設えられた席に座し、憮然と杯を傾ける虎獣人。|黒幣《マフィア》組織『黄道幣』の長『泰元』である。
元々『禄存』が存在するこの一帯は狼頭会の縄張りとなっている領域である。黄道幣は元々、狼頭会とは敵対に近い関係にある組織であり、此度の戦においては共通の敵を前に共同戦線を張ったに過ぎない。如何に共に死線を潜ったとて、必要以上の馴れ合いは好ましくない――彼らはそう判じていた。
尤も、それで個人の行動を縛る心算も無い為、幣の若い者達には店内で騒ぐも良しとしていたが。態々『禄存』の店先に席を設けたのも、一つの歩み寄りの形、であるのかもしれない。
「と、お前達か。此度の戦、見事な戦いぶりだった」
そんな泰元だが、猟兵達に気付けば厳めしかった表情を幾分か緩める。彼も、彼と共に在る獣人達もまた、一様に猟兵達を戦友として認めているのだ。
「折角だ、呑んでいけ。狼頭会の連中と騒ぐも良いが、落ち着きたいなら此方が良かろう」
言いつつ、杯を寄せる。無論、其を受けるか否かは猟兵次第だ。
また、複雑怪奇な九龍城には各所に様々な施設や設備が存在する。それらを探索するもまた一興だろう。
但し注意せよ。気を抜かば、敵の迎撃に活躍した罠や仕掛けが、今度は猟兵達に牙を剥くが故に。
※獣人達と戦勝会をする章です。
※行動は大まかに「クラブ『禄存』店内でパーティに参加」「『禄存』前の宴席に参加」「九龍城内を探索」を想定しています。
※その他の行動も、この場にそぐうものであれば採用させて頂く所存。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
一先ず何とかなりましたかねぇ?
とは言え、この気質は心配ですぅ。
折角の機会ですし、九龍城を観光させて頂きましょう。
泰元さんに話を通し、私への『見張り』をつけて貰いますねぇ。
【征境】を発動し『罠や仕掛け』の位置を把握、必要に応じ一時解除すれば問題なく見て回れますので。
この気質ですと「大国の間者が猟兵同様の『外部協力者』として討伐に協力、信を得て間諜に入る」流れが容易なのですよねぇ。
今は問題なくても、今後そういう手段を使われる危険も有りますので「私に見張りをつける理由」を伝える際、その可能性と警戒の必要性を示唆しますぅ。
今回『領域』で間諜が確認出来たら、此方で始末しますので。
「なるほどぉ、こうなっているのですねぇ」
折角の機会であるから、と、九龍城の観光を行うこととした夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。雑然たる構造の街路を、建物内を、あちらこちらと歩き回っている。
彼女が巡っているのは、戦勝記念パーティが行われているクラブ『禄存』から西の区画、黄道幣の縄張りであるという領域。比較的に開けた通りには食料品や雑貨、時にはネジ屋やコード屋など、それを専門に扱う店などあるのかという店舗がちらほら見える。
一歩裏へと歩めば、一転して薬物やら銃器やらの真っ当とは言えぬ店舗が現れる。更には臓器売買を請け負う闇医者やら奇妙な生物の肉を扱う店舗やら、違法的だったりそもそも理解困難だったり、表にも増して奇妙な施設や店舗が軒を連ねている。
歩き回っていた中には、迂闊に引っかかれば命に係わる危険な罠が仕掛けられた路地もあった。だがそれらはどういうわけか、一切作動することなきままに彼女をその先へと通してしまう。
その秘密は、るこるが発動しているユーベルコードにある。半径152m圏内における、あらゆる存在の位置や情報を把握できる代物。あまりの情報量というのもあってか、複雑怪奇極まりない九龍城のすべてを把握することは叶わなかったが、己の今在る位置の周辺程度ならば問題無い。以て周囲に仕掛けられた罠を把握し、一時的に解除して通過、という行動を繰り返し、此処まで来た。
(――彼はしっかりついてきていますねぇ)
ユーベルコードの領域内、己を後から尾行している虎獣人の青年を認め、るこるは内心で頷く。監視だろうか――否、実際に監視である。だが、監視は監視でも|るこる自身が依頼した監視《・・・・・・・・・・・・》である。
時間は少し遡り『禄存』の店舗前にて。
「――お前に見張りをつけろ、と?」
るこるの申し出を受けた黄道幣の長、泰元は、その意図を測りかねてか怪訝な表情をする。何故、戦友として信を置いた者を態々監視せねばならぬのか、と。
「ひとたび戦を共に戦った方へ全幅の信頼を置く、という皆さんの気質が、どうも心配なのですぅ」
だがそれこそが、るこるの最も懸念する点。此度は猟兵達が外部協力者として超大国の軍の迎撃に貢献した訳だが、同じ手段を超大国のオブリビオンが実行する可能性も考えられる。即ち、自作自演の討伐戦闘に参加し、以て信を得て九龍城を内部から崩す為の間諜に入る――そんな流れが簡単に実行可能なように思えてならぬのだ。
「それはつまり、己の命を顧みず、利益も求めずして。以て我らの戦を助けんとした者であっても、容易く信用してはならぬ、という事か」
杯を傾けつつも、泰元の視線はるこるへと真っ直ぐ向けられる。何処か、その在り方を見定めんとするかのような視線。
「その通りですぅ。今こうしている間にも、かの国の間諜が内部へ侵入を果たして――」
ややもすれば、先の猟兵達と共に戦場に立った者の中にも、超大国の間諜が紛れているやもしれぬ。懸念するるこるの言を遮るように、泰元は咳払いを一つ。杯を卓へ置く。
「――真に命を賭して戦場に立つ者なれば、斯様な発想には至らぬものよ」
やがて口を開いた泰元が語るは、無頼に生きるもの故の論理。即ち、何らかの企てを以て戦場に立つ者は、どうしても保身を考慮した立ち回りとなるのだと。行動そのもの以上に、その在り方自体がそうなるものだ、と。
「我らとて、単に轡を並べて戦っただけの者を容易く信じはせぬ。真に死線を共にした者でなくば、な」
その意味において、先の戦いを共に戦った者達は、猟兵もそうでない者達も、全員が死線を共にした――泰元はそう語る。
「――お前が、保身を重んじて立ち回った上であの戦果だったというのであれば、我らもこの認識を改めねばならぬが」
言いながらるこるへ向けられる視線は言外に『お前も身体は張っていたのだろう?』と問うかのようであったとか。
そんなやり取りの後、るこるが納得するならば、と監視役をつけられた上で、こうして九龍城の探索を行うに至ったのである。いわば、真に間諜だった場合を想定した訓練とも言えようか。
「とはいえ……やはり心配ですねぇ」
最終的にやはり『心配には及ばぬ』との結論へと至ったが。やはり論理的に考えると、潜入しやすいことには変わりがない。何らかの理由で、超大国側に彼らの気質を知る機会が存在しないと考えれば、まあ納得はできるが。
「今後、何事もなければ良いのですがぁ……」
一先ず、今回は間諜の類は潜入していない、と確かめることはできた。今回は、これで良しとするしかないのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
レヴィア・イエローローズ
【UCV】
さて、わたくしはマフィアの方にアプローチしましょう
極道の方はエドワルダが担当するとの事だし
…わたくしはクロックワーク・ヴィクトリアに、国を、父を奪われたわ
関係のない事というかしら?大陸の向こうのシカ達が不条理に人生を奪われていくのは
そんな言葉をかけながら、本題を切り出す
アメリカを支配するFONという超大国は、既に極東での小競り合いに干渉している
その目的は『世界大戦の勃発』……ここも、戦禍に巻き込まれると思うわよ
だとしたら、非超大国組織で同盟を組むべきじゃない?
少なくともわたくしとエドワルダは同盟を組んでいるわよ
そんな風に言葉を交わしながら、アイスティーを飲んでいく――
エドワルダ・ウッドストック
【UCV】アドリブ歓迎
同じ土地の中でも、いえ、同じ領域で生きてるからこそ、住み分けは必要なのかもしれませんわね……。
では、わたくしは狼頭会(ヤクザ)と親交を温めるとしましょう。
今回のように、また共闘する機会があるかもしれませんし。
両方に顔が通る方がよいでしょう。
皆さん、お疲れ様でしたわ。
ええ、目一杯労わせていただきましょう。
迅風様の術も獣人の皆様の技量もとても見事でしたわ。
祝杯を交わし、互いのことを話しながら楽しく騒ぎましょう。
香港のこともイングランドのことも、良く語り合い知ることで親しくなりますわ。
……超大国は強くとも、互いに反目している。
なら、わたくしたちは和を以て対抗すれば良いのですわ。
結城・有栖
戦勝会ですか…折角ですし、私達もご相伴に預かりましょう。
ただ、私はお酒は飲めないので烏龍茶で乾杯です。
「ねぇ、有栖。私も一緒に食べたいナー」
分かってますよ。オオカミさんも実体化させますね。
一緒に烏龍茶で乾杯しましょう。
騒がしいのはちょっと苦手なので『禄存』前の宴席に参加。
オオカミさんと一緒に宴席の料理をいただきます。
場所が中国だけ有って、色んな中華料理がありますね。
本場の青椒肉絲や、中華まんや小籠包などの点心も美味しいです。
「点心系は熱々だから火傷しないようにネー。
あ、ごま団子もあるヨ」
ごま団子…この国だと芝麻球っていうらしいですね。
これも熱々ですが、甘くて美味しいです。
劉・涼鈴
クラブ『禄存』店内でパーティに参加 だよ!!
勝ったらお祝いぱーちー!
【大人化】変身で身長がギュっと伸びる!
ふふー、これであやしまれずにおしゃけを…………んみゃ、匂いで私だってバレちゃった
ん-みゅ、しゃーない! ジュース飲むー!!
ラーメン! 炒飯! 麻婆豆腐!
みんな大盛りで! じゃんじゃん持ってきて! むっしゃむっしゃ!(大食い)
【ダンス】? 腹ごなしにちょーどいいや!
踊るぞ踊るぞ! うぇいうぇーい!!
お、劉家拳に興味ある?
ふふー、じゃあ套路をちょっと見せてあげよっかな!
シュバ! シュババ! 【功夫】の技の冴えを披露(パフォーマンス)するよ!!
ヴァンダ・エイプリル
イエーイ!踊れ踊れ踊れ~!
と、はしゃいでみるけれど
こういう場所は来たことないから本調子になれないや
お酒は飲めないし、普段やってる大道芸も浮いちゃうし
ドリンク片手に迅風さんに絡みにいこう
やーやーお疲れ!みんないい笑顔だね!
…お仲間さんを守れてよかったよ
ヴァンちゃん、ワケあって今は一匹オオカミだから
生き残れても一人じゃ意味がないもの
雑談を交えつつ、盟友の証として握手を求める
迅風さんが手を握り返したらいきなり音が!
【コントの小道具】、押すと響くブザーを手に仕込んでいるのでした!
最後の最後にドッキリ大成功!
追いかけっこでもして和気藹々と過ごすよ
漏らした言葉は少し本音だけど
戦勝の笑顔に隠しちゃおうかな
クラブ『禄存』内外で其々に行われる宴。猟兵達は思い思いにそれらへと参加していた。
店の前に開かれた、黄道幣の宴席。卓を囲むは幣の長たる泰元と数名の古参構成員達と、三人――正確には二人の猟兵。
「然らば、此度の戦の勝利――我らの地を護り通せたこと。勇猛なる同胞と、異邦の同志達に――乾杯」
杯を掲げる泰元の音頭に合わせ、その場の者達が一斉に杯やグラスを掲げ。次いでそれらの打ち合う涼しげな音が響き合う。
「ええ、乾杯」
この場に参加する猟兵の一人、レヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)は自前のグラスに注いだアイスティーにて乾杯に応じる。
「はい、乾杯です」
「乾杯だヨー」
杯に注いだ烏龍茶を以て、結城・有栖(狼の旅人・f34711)が乾杯に応じ――その隣には、何と有栖の姿がもう一つ。酒で乾杯に応じた構成員達は、早くも酔いが回ったかと驚き瞳を瞬かせるが。
「ああ、こっちは『オオカミさん』です。普段は私の中にいる相棒です」
「折角の宴会だし、私も一緒に食べたかったからネー」
そんな彼らに、有栖は己と同じ姿をした相棒――ユーベルコードで一時的に分離実体化した『オオカミさん』を紹介する。よく見れば、表情が微妙に有栖と違う気がする。最初は面食らった獣人達も、そういうものと納得はした様子。
「それでは、早速頂きましょうか」
「いただきマス!」
烏龍茶を杯の半ばまで飲んだ二人、早速とばかり料理に手をつけてゆく。オオカミさんは大皿の青椒肉絲を皿へよそっては、もぐもぐと勢いよく食べてゆく。
「おう、嬢ちゃん良い食べっぷりじゃねぇか。こいつも食ってみな」
そんなオオカミさんの食べっぷりに感心した幹部獣人の一人が、回鍋肉やらエビチリやらを皿に盛って寄越してくる。断ることなど勿論無く、これらももぐもぐ口の中へ。
「ンー、これが本場の味、ってヤツかナ? どれも美味しいネー」
日本の中華料理店などで食すそれとは少々異なるも、いずれ劣らぬ味わいの料理群。オオカミさんはご満悦げだ。
「そっちの嬢ちゃんは肉饅頭とかどうよ」
「ありがとうございます、頂きますね」
一方の有栖は、別の幹部獣人から点心を中心に勧められていた。受け取った肉饅頭へとかぶりつくと、肉汁がじゅわりと口中へ流れ込み。
「……ん。肉汁と旨味たっぷりで美味しいです」
控えめながらに笑みを浮かべながら。その様は、心底その味わいを楽しんでいるのが明らかなものであったとか。
さて一方のレヴィアは、料理を食しつつも泰元と会話を交わしていた。
「……わたくしは、クロックワーク・ヴィクトリアに国を、父を奪われたわ」
「――ほう」
レヴィアが語るのは、己の身の上話。祖国たるイエローローズ王国はかの超大国に滅ぼされ、今は僅かな生き残りを纏めて王国臨時政府を率いる身。なれど、尚も続く超大国の暴威は多くの人々に禍を齎し続けている。
一方の泰元、レヴィアの語るに相槌は打つも、その表情に大きな反応は無く。義憤などの情を見せる様子は全く無い。
「……関係ない事と言うのかしら。大陸の向こうのシカ達が、不条理に人生を奪われていくのは」
冷淡とも見えるその反応に、少々苛立たしげな言葉を投げるレヴィア。泰元は杯を飲み干すと、ふう、と一つ息を吐き。
「同情はする。だが、それ以上に何ができるというのだ。このちっぽけな城を守るが精一杯の我らに」
関係の有無以前に、其方へ意識を割く余力が無い。それが泰元の答え。猟兵ほどの圧倒的な力を持たぬ身では、そのような広い視野を持つことなどできないのだと。
「……アメリカを支配するF.O.N.という超大国を知っているかしら」
「聞いたことはある。自由かつ平穏なる理想の国、と」
本題を切り出すべくアメリカの話題を切り出すレヴィアだが、其に対する泰元の認識は、かの超大国のオブリビオンによる虚構のもの。奴らの情報操作は国内ですら十全、他国の目から真実を見出すはやはり不可能か。
「いいえ、それは虚構。奴らは自国の民を秘密裡に拉致改造し、極東での小競り合いにも干渉し――最終的には『世界大戦の勃発』を目論んでいる」
厳しき表情で泰元を見据えるレヴィア。そうなれば、この地も戦禍に巻き込まれるは確実と。
「であるならば。超大国に組せぬ組織同士で同盟を組むべきじゃない?」
己と、相棒たるエドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)がそうしているように。そうして一丸となって戦うことで、超大国の支配を打ち崩すことが叶うのだと。確信を以て、レヴィアは語る。
「――お前の理想は、まあ分からんでもない」
なれど泰元は渋い顔。杯を卓に置き、レヴィアを真っ直ぐに見返す。
「だが。やはり理想以上の意義を感じぬ、というのが正直な処だ」
そも、彼が纏める黄道幣とて、この九龍城に割拠する数多の組織の一つでしかない。それと同盟を結んだところで、その事実以上の意味があるとは、泰元には思えなかった。
「――そう」
であるならば、無理に同盟を結んだとて、形ばかりのものとしかなり得まい。アイスティーのグラスを傾けつつも、レヴィアは其を認めるより他に無かった。
「――っつっ」
其処に有栖の声。少し痛そうな声音の元を見れば、箸に挟んだ小籠包を口にしようとした処だったようだ。
「点心系は熱々だからネー」
そんな有栖に遅まきながら注意事項を口にするオオカミさん、宴席の料理や点心へ一通り視線を巡らすと。
「あ、ごま団子もあるヨ」
と、小皿に乗ったそれを取ってきて有栖のもとへ。これも見た目随分と熱々そうだが。
「これ、甘くて美味しいんですよね。レヴィアさんも、どうですか?」
小籠包の熱さに慣れたか、其を食しつつ応える有栖、ふとレヴィアへと声をかける。
「そうね、折角だし頂きましょうか」
アイスティーにも割と合う筈。頷き、其を受け取るレヴィアであったとか。
一方の『禄存』店内。
大音量の重低音にも負けぬ、獣人達の喧騒の中。エドワルダは店内を一望できるテーブルについて杯を傾けていた。
同席者はこの場の顔役たる『狼頭会』の頭目たる狼獣人の青年・迅風。そして彼の腹心たる狼獣人達。
「改めて、先の共闘お疲れ様でした」
杯を卓へ置き、エドワルダはそんな同席者達へ視線を巡らす。レヴィアが黄道幣と交わりを持っているのと同様、彼女もまた狼頭会と親交を温めることを目的に彼らへと接触を果たしていたのだ。
「迅風様の術も、他の皆様の技量も大変に見事で。皆様のお力あっての勝利と言えるでしょう」
「ハハハ、謙遜すんなよ」
改まった調子のエドワルダに、迅風は笑って応える。その声音にも表情にも、彼女を侮る意図などは微塵も無く。
「今回の戦い、勝てたのはお前達の協力のおかげだ。俺達だけじゃ、あの邪神相手はどうしようも無かった」
顕現した邪神の悍ましき様相を思い出しつつ。仮に勝てたとしても、相当の犠牲を払うことになっていただろう、と迅風は見立てているようだ。
「いえ、わたくし達だけでもかの邪神は手に余るものでした。ですので――」
そんな彼へ、奥ゆかしく頭を振りつつエドワルダは告げる。即ち。
「――この勝利は、わたくし達と、皆さんの。共闘の成果でありましょう」
和を以て対抗すれば、如何に強大であろうと反目しあう存在である超大国へも力の差を覆すが叶う。其を意識させんとばかりの見解であった。
「おーい、こっちにお酒あるー?」
と、其処へ近づいてきたのは銀髪に牛の角と耳とを生やした長身美女。妙にあどけない口調で問いながら、酒を探して辺りをきょろきょろしている。と。
「あ、これ美味しそー! ちょっと一杯もら」
「コラ待て嬢ちゃん」
エドワルダ達の卓の上にあったそれを視認、手を伸ばす美女だが。迅風がその手首をがっしり掴んで止めた。
「お前さん、さっき戦ってた嬢ちゃんだろ。変身の仙術でも使ってんだろうが、俺の鼻は誤魔化せねえぜ」
「んみゃ、バレちゃった」
続いて彼より為された指摘に、美女の姿は瞬く間に縮んでいき。元の姿――劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)本来の姿へと回帰する。
どうやら涼鈴、ユーベルコードを以て成人女性の姿に化け、酒にありつこうとしていたらしい。だが、|超常の力《ユーベルコード》による変身も、迅風の嗅覚を出し抜くことは叶わなかった。
「っつー訳で、未成年はあっちで飯でも食ってな。ジュースもあるぞ」
「はーい」
とはいえ然程の執着も無いのか、迅風の言うに従って別の卓へつく涼鈴。早速何やらサイダーっぽい飲み物が運ばれてきたので口にしつつ。
「よし、じゃあ折角だしじゃんじゃん食べさせてもらおうかな!」
どうやらこの卓では、注文に応じて料理を作って貰えるらしい。ということで。
「えーと、ラーメンに炒飯に麻婆豆腐! 全部大盛りで!」
ならばがっつり食べるとしよう、とばかり、次々と料理の注文を始めた。勿論、全て食べきるつもりである。
さて一方、響く爆音の中心たるステージの方では。
「イエーイ! 踊れ踊れ踊れ~!」
はしゃいだ声を上げて、ヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)がステージ上で踊る獣人達を煽っていた。何故自分も踊らないかといえば。
(うーん、こういう場所は来たことないからどうも本調子になれないや)
内心で冷静にその要因を分析する。クラブという場所が初めてのヴァンダ、調子が出ないのはそのためかもしれないと推測している様子。未成年ゆえに酒は飲めず、普段の大道芸も場にはどうもそぐわない。
あっちでお世話になるか、とドリンク片手に場所を変える。向かった先は、エドワルダがいる迅風の卓。どうやら彼ら、其々に己の|故国《ホーム》について語り合っているようだ。
「やーやーお疲れ! みんないい笑顔だね!」
やや大仰な身振りを交えながら、卓の皆へと声をかける。その場の獣人達は皆一様に面食らいこそしたようだが、直ぐに応えて笑ってみせる。その様子をヴァンダはうんうんと満足げに見ていたが。
「……ホント、お仲間さんを守れて良かったよ」
続く言葉は妙にトーンが落ちる。とはいえこれも偽りない彼女の本心。ワケあって一匹オオカミとして在る彼女にとり、群れを成す同族を守ることには格別の意味がある様子で。
「生き残れたって、一人だけじゃ意味ないもんね」
「そうだな、誰一人欠けることなく勝てたのは本当に何よりだ」
語るヴァンダに、迅風は実感を込めて頷く。組織の長として、配下の身の安堵には責任を感じているようで。
「ええ。何事も生き延びてこそ。生き続け、戦い続けることでこそ、我らの身の安堵が叶うというものでしょう」
その遣り取りを聞いていたエドワルダもまた、感慨と共にヴァンダの言を肯定する。彼女もまたガーター騎士団の副団長――事実上の団長という立場ゆえか、共に戦う同胞や部下の生死には責任を覚える性分と見えた。
「うんうん。これからも一緒に戦っていこうね、迅風さん」
語り終えたヴァンダ、すっと片手を差し出す。握手のつもりか。応えて迅風が彼女の手を取った、次の瞬間。
「―――――!?」
突如響き渡ったけたたましきサイレンじみた音。クラブ内の誰もが面食らい、迅風の方へと視線を注ぐ。当の迅風は、まさかの事態に唖然とすること暫し。
「ふふふー、最後の最後にドッキリ大成功!」
してやったり、とばかりヴァンダは得意げ。彼女の右手には、押すと大音量を発するブザーが仕込んであったのだ。仕掛人たる彼女故の、ある種とっておきの仕掛けである。
「――お、ま、え、なぁ……!」
事態を知った迅風の顔に怒気が満ちる。とはいえ本気の怒りではない。彼女の気質をある程度理解した上での、一種の突っ込みとも言える怒り。
「この迅風を謀るたぁいい度胸だ! シメてやるから覚悟しろ!」
「きゃー、こわーい!」
卓より飛び出し、ヴァンダを捕まえんと手を伸ばす迅風。逃げ出すヴァンダ。
追いかけっこはクラブ中を巡り、ステージの下にも。ステージではいつの間にか、涼鈴が演武を行っていた。
「ふふーん、これが劉家拳の套路の一端さっ!」
幾つかの技を取り入れての拳の、蹴りの応酬。その動きは舞踏じみた優雅さを含みつつも、あくまで実戦本位の鋭く無駄のない動き。獣人達に乞われて披露した、まさに劉家拳の業の一端である。
「――ふふ、平和ですわね」
そんな光景を、微笑ましげに見届けながら。エドワルダは杯を傾けるのであった。
(その一言は、少し本音だけどね)
今はまだ、戦勝の笑顔の裏側に。内心で、ヴァンダはそっと呟いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨飾・樒
戦闘の後は、やっぱり落ち着いて過ごせる方が良い
黄道幣の宴席に参加させてもらうよ
お酒は呑めるようになっても呑まないつもり、水かお茶が欲しい
美味しそうな料理があれば遠慮なく頂く
泰元は、黄道幣の人達は、これからも九龍城を居場所にして、攻めてくる敵と戦い続けるつもりなのかな
此処を放棄するつもりは何があってもなさそうなのは、一緒に戦っていて分かった
戦力を充実させた上で打って出るとか、そういう選択肢は考えてないのか、訊いてみたい
故郷も家族もない私には分からないかもしれない、何か
この人達は知っている、持っている、うまく言えないけど、そんな感じがする
話してみて、それが少しでも掴めれば、何よりも得難い報酬になると思う
「こっち、お邪魔させてもらって良い?」
「勿論だ。好きなだけ付き合ってゆくが良い」
クラブ『禄存』の店先、黄道幣の宴席に顔を出した雨飾・樒(Dormouse・f41764)。頭目の泰元以下、同席の獣人達は皆、快く彼女を迎え入れた。
店内からは、騒がしい音楽と人々の声が店内の喧しさを容易に想像できる程に聞こえてくる。樒としては、あのような賑やかさも嫌いではないが、やはり戦闘の後は落ち着いて過ごせる方が好みに合う。それが故に此方へ顔を出したのだ。
「思う存分呑んで喰ってってくれ。まずは何を呑む?」
「私はまだ未成年。水かお茶が欲しい」
そんな樒の傍らにやって来た獣人が杯を差し出す。なれど未だ成人しておらぬ身ゆえにその旨返せば、問うた獣人もまた応えて烏龍茶を杯に注ぐ。
「来て貰えて何よりだ。ささやかな宴席ではあるが、楽しんでいってくれ」
注がれたところで、泰元が己の杯を差し出しつつ告げる。意図を察した樒、頷けば自らの杯を差し出して、軽く打ち合わせ。戦勝の宴は、静かに始まった。
「んん……この春巻きも美味しい。さっきの小籠包も、熱かったけど美味しいし」
始まって暫し、樒は並べられた料理を堪能していた。どれも美味しそうな料理であるからと遠慮なく食していたが、実際に美味となれば箸はより一層進むものである。
「……ふう。――ところで」
「ぬ。何だ」
然しただ飲食するだけというのも良くはない。一通りの料理を食した処で、樒は切り出す。それまで静かに杯を傾けるか、別の獣人と言葉を交わしていた泰元だが、樒の視線と言葉とに気付き応えれば。
「皆は、これからも此処を居場所にして、攻めて来る敵と戦い続けるつもり、なのかな」
それは純然たる興味。故郷も家族も持たない樒にとって、この地を守ることに拘る彼らの考えは分からない。故に知りたかった。
「無論だ。この地は我らが超大国の奴輩の手を逃れに逃れ、辿り着いた安住の地」
最早真っ当な生き方など選べぬ己らにとっては、混沌たるこの地こそが唯一にして最後の楽土。其処は狼頭会の者達も、他の組織の者達も、組織に属さぬ者達も。九龍城の住人はほぼ全て、そうした者達であるのだと泰元は語る。
それで、か。納得を以て樒は頷く。先の戦いを通して、彼らにこの地を放棄するつもりは何があっても無さそうだと感じていたが。この地が唯一安住叶う場所とあらば、其処を守るに決死となるも納得はいく。
「ということは、超大国を倒す為に打って出るとかは――」
「考えておらん。我らにとっては、この地を守ることが全てに優先される」
己らの楽土は九龍城の外には無し。例え超大国が全て滅びようと其処は変わりなく。ならば、この地をさえ守れる限り、己らに超大国を打ち倒す意味は薄い。それは、例え己らが超大国を倒し得る武力を得たとて変わらない――それが泰元の考えのようだった。
「我らの如き無頼の輩の寄る辺として。我らの唯一帰り得る地として。我らは只々、この地を守るだけだ」
言い切って、泰元は杯を傾け酒を飲み干す。其を眺めつつ、樒は思考する。
(――故郷も家族もない私には、分からないかもしれない、何か)
幼い頃、幻朧帝国の手で滅ぼされたそれらの記憶は、今の樒には無い。故に持たないものを、彼らは持っているかもしれない――それが、樒がこの場に在る大きな理由。
彼らとの交流を経て、その心に齎すものあらば、其は何よりも得難い報酬となろうが――何かを掴み得たか否かは、彼女のみぞ知る処、である。
大成功
🔵🔵🔵
黄・於菟
若いトラ獣人の兄弟達と店ン中で騒ぐとする
オオカミどもと必要以上に慣れ合うな、ってのには|虎《オレ》も同意見だがよ
折角の酒と肉だぜ。楽しまなきゃ損ってモンだ
ア? |糧食《レーション》? ンだソレ?
……美味けりゃいんだよ、美味けりゃ
気が付きゃ若いオオカミどもも交えて乱痴気騒ぎ
上機嫌で酒を呑み肉(じゃねえらしい)を喰いバカ笑い
糧食だの合成酒だの聞いた時はどんな酷えモンが出てくンのかと思ったが
なんだよ美味えじゃねえか!
そうしてるうちに全員、酔いが回って遠慮ってモンがなくなってくる
(|虎《オレ》は最初からしてねえが)
だからか? 誰かが|虎《オレ》のケツに手を伸ばしやがった
……いつもの|虎《オレ》ならここでブチキレてるとこだがよ
今夜の|虎《オレ》はめちゃくちゃ機嫌がいい
相手もまあ、相手だ。知らねえ無礼なヤツが馴れ馴れしくってワケでもねえ
むしろよ……おいおいテメエ、触っといてそれだけで済ませる気か?
・
・
・
その後、若い連中を何人か食い散らかした(比喩表現)……らしいぜ
酒の所為で細かい事は覚えてねえけどな
メアリー・ベスレム
もう! 耳がおかしくなっちゃいそう!
そう文句を言ってはみるけれど
お行儀よくお茶会、なんて柄ではないし
(|メアリが知ってる《アリスラビリンスの》お茶会はいつだって|滅茶苦茶《マッドティーパーティー》だもの!)
いいわ、メアリの踊りを魅せてあげる
こういう【パフォーマンス】は得意だもの
壇上で観客を【誘惑】するように
ポールがあるならそれ使い、それとも誰か一緒に踊って下さる?
お尻を押し付け擦り付け挟んでみせて
あるいは逆に縋って突き出すように
踊りと共に自慢のお尻を魅せつける
特にさっき命令された(させた)男には念入りに魅せつけるよう
それは命令された鬱憤を晴らす為?
それとも、いやらしい命令をしなかった事を後悔させる為?
さあ、どっちかしら
あは、こんな事したら今度こそあのお札を悪用されちゃうかも
もちろん、そんな事されたら復讐してやるけれど……
なんて考えながらくすくす笑う
|獣人前線《こっち》のお城と|封神武侠界《あっち》のお城
ずいぶん違うと思ったけれど……そうじゃないところもあるみたい
ここで過ごすのも楽しそう!
宴の始まりより時を経ても、『禄存』の店内は音楽と喧騒に満ち溢れ。宴の始まりから変わらぬ賑々しさ、或いは騒々しさを醸し出す。
「ハハハハハ! いい気分だぜ! そら、その酒も|虎《オレ》に寄越しな!」
そんな店内の一角で、黄・於菟(人呼んで「一摸就跳」・f36346)は豪気に笑いながら骨付きの肉――を模した|糧食《レーション》を齧りつつ酒を所望する。その顔は仄かに紅潮し、良い感じに酔いが回っている様を如実に示す。
「ハハ、良い飲みっぷりだなぁ姐さん。だが大丈夫か?」
応えて手近な酒瓶を渡すのは若い狼獣人。於菟の豪快な振る舞いに好ましさを示しつつも、既に相応の酒量を呑んでいる彼女を案ずるが。
「ア? |虎《オレ》を誰だと思ってやがる。この程度は屁じゃねぇっての!」
なれど於菟は平然と酒瓶を受け取り、杯に注いでゆく。先の戦いでは虎獣人達に比して露骨に塩対応だった狼獣人相手だが、口調も表情も上機嫌そのものである。
「そうそう! 姐さんだったら今この店にある酒全部呑み干せるだろうさ!」
「ハハハ、調子いいコト言ってやがンなぁテメェ!」
傍らに侍るように座す虎獣人の若者が調子良く囃したてる。そんな彼にも於菟は上機嫌に応えながら、注いだばかりの酒を飲み干してゆく。
「――ッハァ! 酒も肉も美味ぇし最高だなァ! ハハハハハ!」
そして一息に飲み干し杯を掲げれば、同席する獣人達もまた彼女と共に馬鹿笑い。この場の空気は、すっかり乱痴気騒ぎの様相を呈していた。
(オオカミどもと必要以上に慣れ合うな、ってのは|虎《オレ》も同意見だがよォ)
そんな中で於菟はふと、店外に留まった黄道幣の虎獣人達とのやり取りを思い返す。彼女自身、実質的な同族である虎獣人以外には気を許してはいなかったが、それでもこの場での宴に参加したのは。
(折角の酒と肉、楽しまなきゃ損ってモンだろうよ)
宴とあらば馬鹿騒ぎしたいもの。彼女はそう考える側であったが故に。そして実際、こうして馬鹿騒ぎするのは大変に楽しい。その場に少なからぬ狼獣人達が同席していることも、全く気にならない程に。
「おら、テメェらももっと飲め! 宴はまだまだこれからだってなァ!」
再びの馬鹿笑いと共に、肉(|糧食《レーション》)を勢いよく食い千切る。彼女達の宴はまだまだ終わりそうもない。
「もう! 耳がおかしくなっちゃいそう!」
さて一方、店内に設えられたステージの上。響き続ける重低音と喧騒に満ちた店内の様相にメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)は叫ぶ。
辟易しているかのような言い方だが実態は全くの逆。何しろ彼女はアリスラビリンスよりやって来たアリス。彼女の知っている宴――お茶会ときては滅茶苦茶なのが普通という有様。なればこそ、今の禄存の有様は性に合うというもの。
「よう嬢ちゃん、お前さんが躍るのかー?」
「いいぞいいぞ、嬢ちゃんの踊りを見せてくれやー」
だから、ステージに上がった彼女を見て囃し立てるように踊りを所望する獣人達を見ても、特に悪い気はせず。
「いいわ、メアリの|踊り《ダンス》を魅せてあげる!」
メアリー自身、この手のパフォーマンスは得意とする処だ。其をこの場で示さんとばかり、店内に流れる音楽の切り替わりと共に、ステージ上にて踊り始める。
ステージ中央に据えられたポールへと歩み寄れば、其を掴んで己が身を引き寄せて。そのままポールを抱き締めるような姿勢を取って、腰をくねらせ、或いはその場で上下運動を始める。
そうすれば必然、観客の目へ飛び込むのはメアリーの巨きく丸く突き出た臀部。其が悩ましげに上下へ揺さぶられ、或いは誘うように左右へ振りたくられ。魅惑の曲線が躍動する様は、雄の視線を釘付けとする。
更には一旦ポールへ背を向けたかと思えば、尻の狭間へポールを挟み込み、そのまま緩急つけた腰使いを伴って上下動作を繰り返したり。
再びポールへと縋りつくように抱きつくと、今度は巨尻を観客席目掛け突き出して。音楽に合わせてくいくいっと跳ねさせるような動きを見せつけて。
(ふふ、みんなメアリのお尻に釘付けね?)
丸く豊かな双臀は、メアリーとしても自慢する処。故に、其処へ視線が集中することにも、メアリーは寧ろ喜悦を覚える。
視線を流せば、観客達の中、一人の狼獣人が食い入るようにメアリーの尻へと視線を注いでいるのが見えた。先の邪神との戦いの中、己へ命令を発する役割を担わせた男だ。
(見てる見てる。どうかしら、さっきまであなたのモノだったメアリのお尻は)
かの男の様相を見れば、メアリーの心中に優越感めいたものが浮かぶ。それは先程命令された鬱憤を晴らす為なのか、厭らしい命令をしなかった事を後悔させる為なのか。メアリーにも分からないが。
(あのお札を今度こそ使ってくるかしら。メアリに好き放題するために)
先程委ねた幾つかの符。あれで己の身体を掌握され、再び命令を出される様を想像する。無論、実際に実行したとあらば直ちに復讐してやるつもりではあるが――
そんな事も考えつつ、くすくす笑う。その笑みに正しく少女の様相を示しながら、なれど踊りは艶めいて。メアリーのダンスステージは、まだまだ続く。
「いやぁ、なかなか良いモンじゃねぇか――って」
そんなメアリーのパフォーマンスを、於菟とその周りの獣人達もまた愉しんでいた。満足げな笑みを浮かべる於菟――その笑みが、不意に凍り付く。
「……………」
視線を向ける。先程から隣にいた虎獣人。怯えと媚びと欲と、様々な感情が綯い交ぜとなった笑みを浮かべている。その腕が――於菟の、巨きくむちりと肉の乗った臀部へ伸ばされていた。
そのような狼藉、普段の於菟ならば直ちに怒りを爆発させ、完膚無きまでに叩きのめしていたことだろう。だが。
「――おいおい」
漏れた声音は喜悦。己が為された行いに、快の反応を示すもの。何しろ知らぬ相手ではない。ある程度でも気心を知った間柄。ならば。
「――|虎《オレ》のケツ触っておいて、それだけで済ませる気か?」
若虎へと向ける視線は、何処か濡れているかのようで。其を向けられた若者は、ごくり、と生唾を呑み込んだ――
●
そうして時は過ぎ、宴も終わりの時間を迎えた。
めいめいに店を出て、或いは離れ。明日からはまた、住民同士で対立したり協調したりする日々の繰り返し。この混沌たる城塞の日常が戻ってくるのだ。
店の入口、メアリーは辺りを見回し思う。遠く封神武侠界、香港租界にある、此処と同じ名の城塞を。
「――ずいぶん違うと思ったけれど……そうじゃないところもあるみたい」
当初の印象は似て非なる、といった処だったが。今は双方に相通ずる処を感じる。全く同じではなくとも、似通った二つの九龍城。
ここで過ごすのも、また楽しそうだ。くすくすと笑いながら、メアリーもまたグリモアベースへ帰還していった。
「……………」
続いて出て来た於菟は、何やら微妙な表情をしていた。散々飲み散らかしたせいか、宴の途中から先の記憶がどうも曖昧だ。何故、己の周りで何人かの獣人が干からびたようになっていたのか皆目見当がつかぬ。
共に楽しんでいた獣人達によると『凄かった』らしいが――具体的な言及は、何故か皆一様に避ける。一体どういうことなのか。
「……まあ、良いか」
とはいえ、そんな些末事は気にするだけ損というもの。割り切るように、於菟は呟いた。
●
斯くして、猟兵達と現地の人々の活躍により、九龍城は超大国の侵略を退け、その独立を保った。
だが、間もなく巻き起こった世界大戦――その戦火に、この城塞もまた、巻き込まれてゆくのである――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵