17
Spring full bloom!

#ケルベロスディバイド #黄道神ゾディアック

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ケルベロスディバイド
🔒
#黄道神ゾディアック


0




●Spring has come
 カレンダーの月が3に変わり春らしくなってきた頃。
 アメリカ某州名物である公園も春に染まっていた。
 広大な池は穏やかな空を映して青く輝き、池をぐるりと囲う桜は薄桃色の花をふんだんに纏って華やかに。気温は少し肌寒いものの、雲ひとつない空からの陽射しもあって過ごしやすい。
 そんな天気に包まれた毎年恒例の春祭りとなれば、公園開場時から大盛況。
 桜が植えられている池の沿道は、春の絶景を楽しもうと普段以上に緩やかな足取りとなった人々で賑わい、池を臨む形で置かれたベンチにいるのは、桜越しに春を楽しみたいという人々ばかり。
 広々とした石畳の道のサイドにはキッチンカーが並んでいる。
 一方にはホットドッグやケバブ、ベーグルサンドにハンバーグといった国民食グルメの。その向かい側には、お好み焼き鯛焼きたこ焼き、かき氷にクレープに唐揚げといった、日本の祭でお馴染みのグルメのキッチンカーばかり。
 噴水広場では春をテーマにしたバザーの真っ最中。
 大小様々なパッチワーク、アンティークの食器、カラフルな|現在《いま》やセピアな昔の写真、ポストカード、絵画、風呂敷、着物、ちりめん細工、富士山アイテム、箸、茶碗などなど。グルメと同じく、アメリカらしさを感じるものと日本産のものが賑やかに並んでいて彩り豊かだ。
 なぜならこの春祭りは、春の日和を日本文化と共に楽しむもの。
 星条旗と日の丸が仲良く青空にはためく、春爛漫の祭だ。

 ――けれど公園の北側。大小様々な石の大地を、どこからか現れた新緑がしゅるしゅると覆い始め、新緑に咲いた可憐な花が不気味に蠢いた。それからぷつぷつ、ぷつりと実って育っていく蜜色の塊は1、2、3――10――20――……。

●Spring full bloom!
「そういうワケで、君達に頼みたい事は2つ。攻性植物プランツプラネットの大群の撃破と、その奥にいる大型デウスエクスの撃破だ。……こういうの久々だな」
 ラシード・ファルカ(赫月・f41028)は「猟兵になる前に似たような役目を少々ね」と笑ってから、まず現れるのは攻性植物である事、大型の方は配下が居る間姿を現さない事を告げる。
「両方同時に相手取らなくて済むのはいいニュースかな。いいニュースといえばもう1つ」
 キリッと真顔になったラシード曰く。
 プランツプラネットが実らせる蜜は明るく色鮮やかな黄金色。香りは豊か。すっきりとした上品な甘み。舌触りは良く、するりと喉を通っていく。そして喉にもいい――と、何かと『良い』尽くし。しかも大体が可愛らしい形をしているとなれば。
「売れるんだ」
 なぜ知っているのか。
「調べた。ちなみに俺はまだ買えていない」
 プランツプラネットの蜜は、オンラインショップに出せばその日のうちに、小売業者に見せれば大喜びで買い取ってくれるという。
 見た目も味もいい蜜は、恐らく標的を捕らえる為の罠だろう。しかし『アレ美味いらしいぞ』と知られた側が途端に狩られる側になるという話は、どこの世界でもまあ在るものだ。
「そういえば、今回のは兎みたいな形が目立ってたな。春だからかな?」
 今年のイースターはいつだったっけ。
 そんな事を言いながらグリモアを展開する男の表情は明るく穏やかだ。君達『猟兵』の評判はバッチリ届いてるんだ、なんて笑い、ケルベロスディバイトへと繋いでいく。
 そして広がる青い空。頬を撫でる穏やかな春風。
 それから、新緑に実る黄金の――。


東間
 |東間《あずま》です。ケルディバ世界の米国へご案内。

●受付期間
 タグや個人ページ、X(https://twitter.com/azu_ma_tw)でお知らせ。
 オーバーロードは受付前送信OKです。

●各章について
 導入場面あり。
 緊張感薄め・ゆるふわ集団戦な1章と、シリアスなボス戦2章となっています。
 1章は「美味しい蜜、ゲットだゼ!」「これで臨時収入ガッポリだ!」なノリ。
 蜜のサイズは大きかったり小さかったり色々。形は兎っぽいものを中心に色々と。
 採らずに放置(普通に倒)しても大丈夫です。安全になったら地元民やお祭りに来た人々が収穫してくれます。
 2章の詳細は開始時に、導入場面にて。

 |決戦配備《ポジション》ご利用の際は下記略称でどうぞ。
 クラッシャー→Cr/ディフェンダー→Df
 ジャマー→Jm/キャスター→Cs
 スナイパー→Sn/メディック→Md

 3章は春祭りのターン。桜を楽しんだり、自然を楽しんだり、グルメを味わったり、バザーでお買い物したり出来ます。
 桜の下でお弁当や買ったグルメを広げる事(お花見)は出来ません。専用エリアでの食事のみ可能です。
 ラシードへのお声がけはお気軽にどうぞ。

●グループ参加:2人まで
 プレイング冒頭に【グループ名】をお願いします(【】は不要)
 送信タイミングは同日であれば別々で大丈夫です。
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びてお得。
 グループ内でオーバーロード使用が揃っていない場合、届いたプレイング総数によっては採用が難しい場合があります。ご注意下さい。

 以上です。
 皆様のご参加、お待ちしております。
190




第1章 集団戦 『プランツネット』

POW   :    トキメキシロップ
【愛らしい形状に変えた蜜(固形) 】を飛ばし、命中した対象をめろめろにする。対象の傷を治してもよい。
SPD   :    スケープ・ハニー
【頑張って蓄えた蜜を置いていく事 】による素早い一撃を放つ。また、【蜜をいっぱい置いていく】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    テンプテーション・フレーバー
攻撃が命中した対象に【上品な蜜の香り 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【蜜の香りに魅入られてしまう事】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:すずや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Spring honey
 枯れていた大地が水を得て息を吹き返すように、石の地面が緑に染まる。花が芽吹く。
 けれどそれは奇跡でも何でもない。間違いなく攻性植物であるそれは目覚ましい速度で灰色の地面を緑に塗り替えながら、獲物を確実に得る為の罠を次々に実らせた。
 ぷくーっと膨らんで出来上がった大きな卵形。そこから更にぷつっと生えるように現れた、小さめの卵形が2つ。下の方からひゅるりと上ってきた光が3つ。丸とバツのそれがハッキリと浮かべば、蜜色バニーの出来上がり。
 小さなバニーは「あら指先くらいだなんてこれは丁度いいサイズだわ紅茶に1つ2つ入れたりしてね」と高評価間違いなし、抱えるほど大きなバニーは「シロップパーティだヤッター!」と飛びついた所をアレしてこうよクックック――なんてプランツネットが思っていたかどうかは解らない。
 ただ、その攻勢植物が『ついつい近付き、手を伸ばしてしまうもの』を理解している事だけは確かだ。小鳥。花。星。キリン。恐竜。クマ。猫。犬。アルファベット。リボン。クルマ――透き通った黄金色の蜜は、どれも目に付けば自然と好感を覚える形ばかり。

 けれど、プランツネットは知らない。
 地球側にはもう「あの蜜、美味いぞ」とバレバレだ。

 ちなみにプランツネットが実らせた蜜は、小さいものが指先サイズ、大きいものは週間少年やら少女やらの雑誌くらいある。触れれば外膜は意外としっかりしており、思い切り衝撃を与えなければ、敢えて表面を切らなければ、割れて中の蜜がこぼれる事もないだろう。

 ――そしてそんな地球側の情報を知らない攻勢植物は、せっせせっせと蜜を実らせ、獲物が近付く時を待っている。
 
インディゴ・クロワッサン
長らく愛飲してるアルダワの夜糖蜜や、UDCやA&Wの蜂蜜とかを順繰りに飲むのも良いんだけど、流石にそろそろ新規開拓したーい!って思ってたから、今回の件は渡りに船!
「よーし、蜜類の新規開拓だー!!!」

蜜は小さい物から大きい物まで何でも見つけ次第即回収ー!
そして、蜜袋が割れちゃう前にUC:無限収納 に即収納!
襲い掛かってくる攻勢植物は、回収してる片手間に取り回し易い鎖付きの短剣:Piscesで、周囲の蜜袋に被害が及ばない程度の強さで切り払って(第六感とカウンターも併用)、ぶちぶち…ぷちぷち…
「そう言えば、グリモア猟兵のヒトも買えてないとか言ってたっけ…」
そんな事を考えながら無限に収穫してくぞー



 獲物が来たと感知したプランツネットの葉が一斉に揺れる様は、丁度吹いた風のおかげでそよ風を感じる心地よい光景に見えた。――もしかしたら、攻性植物だとバレないよう風に合わせ揺れたのかもしれないが。
(「そんな知能があるかどうか謎だけど」)
 ま、いいか。
 インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、名前の通りの鮮やかな青髪をなびかせながら笑う。
 長らく愛飲してるアルダワの夜糖蜜。UDCやA&Wの蜂蜜。それらを順繰りに飲む日々はどうかといわれたら、そりゃあ『良い』のだけれど――流石にそろそろ新規開拓したーい! という気持ちがぐわーっと湧き上がる感じでもあった。だからこそ今回の件は、インディゴにとってまさに渡りに船。
「よーし、蜜類の新規開拓だー!!!」
 味よし見た目よし、採っても採っても怒られないどころかこの世界の為にもなる、一石二鳥を飛び越え百――いや、万は手堅いこの依頼に完全勝利の四文字を!
 インディゴは軽やかに大地を蹴って大きく跳び、着地したそこでプチッ! 摘んで捻って一瞬で回収した小さな蜜を、茨纏う扉へポイッとしながら次の蜜をプチッ、更にプチッ、またまたプチッと手際よくもいでいく。
「ん? これ兎形かと思ったけど何か違……あっ、ブタだ!」
 ちょっぴり気の抜ける顔立ちをした、ゆるキャラのようなその蜜は固形石鹸ほどのサイズだ。それも扉へポイッとすれば、これまでに放った蜜と同じく、扉に触れた瞬間その『中』へしゅるんっと吸い込まれて消えた。
 持ってきて良かった|無限収納《インベントリ》。
 このUCがあって良かった|無限収納《インベントリ》。
 採れば採るだけ増えていく実食への期待と共に、余計な緑の排除も忘れていない。インディゴは蜜を『扉』に回収するのと同時進行でぶちぶちと緑――プランツネットを切り払っていた。あまりにも手早く鮮やかにこなすものだから、プランツネットが蜜の香りをふんわりさせる暇もない。
「そう言えば、グリモア猟兵のヒトも買えてないとか言ってたっけ……」

 ふと思い出したそれを頭の隅に、インディゴは無限に蜜を集めていく。
 彼が通ったには当然、蜜も、緑も残らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、すごくかわいい蜜さんがいっぱいです。
えっと決戦配備:Mdをお願いします。
ふえ?何で今から決戦配備を使うのかですか?
決まっているじゃないですか、これだけかわいくて売れるんでしたら転売ヤーさんが絶対現れます。
なので、その対策です。
ふえ?一般の方に危害が及ばないようにする為ではないのかですか?
……それもあります。

さて、どんな運命的な出会いがあるか楽しみです。
ふえ!?こ、これは!!
ふええ、蜜の中にこんな可愛らしい子が入っているのもあるんですか。
是非その子をください!
衝撃?的な出会いから逃げ(吹き飛ばされ)ないでくださーい。
この心のトキメキは止められませんからー。



「ふわぁ、すごくかわいい蜜さんがいっぱいです」
 春の青空とそよ風。芽吹いたばかりの緑と花と――可愛らしい蜜。フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は絵本の中を思わす光景を前に、湧き上がった感動をそのまま目と声に乗せていた。
「では早速……はい、はい。決戦配備メディックをお願いします」
『ガア?』
 トランシーバーで要請を飛ばす姿にアヒルさんが首を傾げる。
「ふえ? 何で今から決戦配備を使うのかですか? 決まっているじゃないですか」
 きりっ。いつもと違う雰囲気のフリルに、アヒルさんも『おや?』と真剣な顔。フリルはこくりと頷いて――。
「これだけかわいくて売れるんでしたら転売ヤーさんが絶対現れます。なので、その対策です」
 あれっ?
『……グワグワ、ガア?』
「ふえ? 一般の方に危害が及ばないようにする為ではないのかですか? ……それもあります」
 けれどそれはそれ、これはこれ。
 平和の為にも、転売ヤー出現の芽は摘むべきなのだ――。


 さて、どんな運命的な出会いがあるか楽しみです。
 そんな想いを胸に戦場に飛び込んだフリルは驚愕した。
「ふえ!? こ、これは!!」
 震えながら見つめるのは、掌サイズの蜜ひとつ。生成時のエラーか、卵形をした蜜の中に兎の形をした蜜がぷかぷかと浮いているのだ。
「ふええ、蜜の中にこんな可愛らしい子が入っているのもあるんですか。是非その子をください!」
 エッ、思テタント違ウ反応。
 早々にフリルへ花形の蜜を投げてぶつけていたプランツネットが、急にざわざわ蠢いて遠ざかり始める。チョット用事思イ出シタワ――そんなつれない態度を取られても、今日のフリルは諦めなかった。
「待ってくださーい!」
 食パンくわえた乙女のダッシュも裸足で逃げる全力疾走。ドッシーン★ とポップな文字も浮かぶ衝撃で、緑の塊はゴロゴロぼてっと吹き飛ばされながらも、すぐにヨレヨレと起き上がった。が。
「お願いです、その子をくださーい! この心のトキメキは止められませんー!」
 今日のフリルはやる気元気情熱的。
 運命的な出会いへ、まっしぐら!

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍之宮・翡翠
アドリブ等歓迎

常在戦場とまではいかないものの、若干己が場違いなのではと思いつつ向かう事になる

デウスエクスにも多様性があるとはいえ、緊張感を放り投げた生態と外見だなコイツ等は……
季節柄も相まって非常に、こう……場違いな気がしてくるな

ともかく、任務は任務だ

さて、表面を斬らなければ良いとはいえ、飛び道具が下手に当たるのも後で面倒な事になりそうだな
攻撃そのものも出来るだけ蜜に影響が無いよう狙って行くのが打倒だろうな
そんな方針でUCを振るってデウスエクスの無効化に励むとする

蜜自体は回収に来るだろう一般人にできるだけ譲る方針で往く
(が、甘いものが嫌いという訳ではないので、手に入りそうなら味見もしてみる)



 物心ついた頃から戦場に身を置いていた。己にとって戦場とは、ひどく身近なものだった。
 しかし今。龍之宮・翡翠(未だ門に至らぬ龍・f40964)は若干「己が場違いなのでは」という思いを抱えていた。
 今回の戦場ですと転移させられた先は、都市の間際に在る穏やかな春の風景だった。自然が創り出した、のどかで、清涼感のある風景と――これでもかと実っている、黄金色の固形物。蜜が詰まった物体はどれも、キュートだのプリティだのが添えられて然るべき形をしていた。
(「デウスエクスにも多様性があるとはいえ、緊張感を放り投げた生態と外見だなコイツ等は……季節柄も相まって非常に、こう……」)
 場違いな気がしてくる。
 しかし猟兵でありケルベロスでもある翡翠は切り替えが速かった。任務は任務。ふいに感じた不穏な気配には冷静に飛び退き距離を取り、一瞬前まで己がいたそこをぶっすりと刺す緑の束を静かに捉える。
「成る程。緊張感を放り投げた生態と外見だが、一応は攻性植物ということか」
 ぷりぷりと丸い兎形蜜を置いてまで放った一撃を躱され悔しいのか、緑の束がぶるっと震えるように蠢いた。こちらの言葉を理解しているのだろうか。それとも、否か。
(「どちらでもいい話だな」)
 翡翠は抜刀と同時に斬霊刀を閃かせた。瞬間翔けた一撃が緑の束を綺麗に両断し、繋ぐ力を無くした緑から蜜がコロコロ、コロリンと次々外れていく。
(「本当に外膜が丈夫なんだな。どれも蜜がこぼれていない」)
 蜜の表面を斬らず、植物部分のみ攻撃する。
 これが妥当な戦法と解れば、その手段で以って粛々と討伐任務を進めるのみ。鈴なりに実っていた蜜を一気にどばっと放った所を見た時は、流石に少しばかり驚きもしたけれど。
「無駄だ」
 ぎゅんっと束ねられた緑が刺突剣の如く迫るより先に駆け、片足を軸に思い切り地面を踏んでターンした勢いのまま斬霊刀を揮う。刎ねるように断たれた緑の塊が空に散れば、残った蜜は先程と同じく、ひとりでに外れ――その1つが足元まで転がってきた。摘み上げた苺形の蜜が指先にきらきらと黄金の光を降らす。
「……1つくらい味見してみるか」
 回収を望むだろう一般人の分はたっぷりある。
 ひょいと口に放り込み歯を立てれば、蜜と共に芳醇な香りが口いっぱいに芽吹いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

香良洲・巽
話を聞くに、攻性植物の連中って
デウスエクスの割に頭が足りてないんじゃ…
植物だから頭脳は無いのか、そういう問題でも無いのか
まぁいいプランツネットだったか
さっさと仕事は済ませてしまうに限る

ウサギだか卵に似た形には
やはり思い浮かぶのはイースターの頃合いで
春分のあとの満月後の日曜…とかだったか?
その辺は兄貴たちのが詳しいんだよなァ
…多少は土産がわりに蜜も刈り取っていくか
小鳥に花に星に…擬態する能力は高いんだか何だか
指先サイズの小さいものは集めて
抱えるほど大きな蜜は流石にオレは必要ねぇな
残りはUC煉獄でも片付けていって
…なんだか春を感じる光景ではあったな



 ――獲物を油断させ捕まえる為、愛らしいものの形を取った蜜をつける。
(「まあ、理解出来るな。食虫植物と似たようなもんだろ」)
 ――その蜜は、美味い。
(「口にする側からすりゃラッキーか」)
 ――獲物に“美味いと知られている”と把握していない。
(「攻性植物の連中って頭が足りてないんじゃ……いや、敵の心配する必要はねぇけど」)
 聞いた話を振り返れば振り返るほど、香良洲・巽(Krähe・f40978)は攻性植物に対する知識がアップデートされているのか、ダウングレードされているのかわからなくなった。
(「いや、植物だから頭脳は無い……のか?」)
 まあまあの大きさをしたイースターバニーらしき形の蜜を、獲物である自分の眼の前でこれみよがしに置いてシュババと素早い移動を始めた敵――プランツネットとかいうデウスエクス討伐任務は、さっさと済ませてしまうに限る。
(「イースターって春分のあとの満月後の日曜……とかだったか? その辺は兄貴たちのが詳しいんだよなァ」)
 脳裏に浮かんだ2人の兄、癖の強い長兄と話しやすい次兄の顔に、巽はうっすら溜息を吐きながら得物を片手でぐるんと揮う。
「……多少は土産がわりに蜜も刈り取っていくか」
 両断するのに特化した形の刃は、豚くらいはあろうかという緑の厚みをものともせず、容易く食い込みながら蒼焔で呑み尽くした。
「お前のはでか過ぎる」
 ぐんと捻って爆破したプランツネットの置き土産は、やはり持ち帰り辛い。巽はもう少し手軽なやつはと視線を巡らせながら、次々に迫るプランツネットをひょいひょい躱していく。
「小鳥に花に星に……ふーん」
 眼の前で蜜を置いて行くくせに、擬態能力は高いんだか何だか。
 感想を脇に、指先サイズの蜜をもぎ取っては胸ポケットに突っ込む。外膜が丈夫でなければこうはいかない。ただしいくら丈夫でも抱えるほどあるものは――。
「オレには必要ねぇな」
 けれど、喜ぶ誰かはいるのだろう。
 巽は燃やすべきものだけを蒼焔で片付け、ふと、足を止める。
 緑の上に咲いた花や、実った蜜の姿。大丈夫かこいつらと思う相手ではあったが――。
「……なんだか春を感じる光景ではあったな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
美味しい蜜が取れると聞いてやってきました!
いざ、蜜狩りパーティの時間です!

蜜を沢山集めるためにはとにもかくにも人手が必要でしょう。
なのでUCを使ってかじできないさんズを召喚。数にものを言わせた人海戦術という名の【集団戦術】を採用し、蜜の採集に励みます。

素早く逃げようとするプランツネットたちの移動経路を【弾道計算】で【見切り】、かじできないさんズと共に取り囲んで世界樹のバッドをフルスイング!
そうやってプランツネットを無力化していき、せっせと蜜を回収していきます。

採集した蜜は自分用を除いてすべて地元の方々や観光客の皆さんにおすそ分けしましょう。
楽しみは分け合ってこそですからね。



 すっきりと穏やかな色をした春の空。
 優しく肌を撫でる心地よい春風。
 そして。
「美味しい蜜が取れると聞いてやってきました! いざ、蜜狩りパーティの時間です!」
 明るさと生命力が抜群に溢れる声。それはプランツネットに対する宣戦布告だったが、宣言したエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)の頭の中は攻性植物が実らせる蜜の事でいっぱいだ。それでいて、フンフンッとやる気漲らせるその心は判断も適格だった。
「蜜を沢山集めるためにはとにもかくにも人手が必要ですね。という事で、みなさーん!!」
 蜜狩りパーティを制するのなら、数にものをいわせてしまえばヨシ。
 エミリィの喚び声に人海戦術発動の為に集った者達が、仲良く声を揃えて「はぁーい!!」と返事をした。その声の高さはぴったり同じで声もまるでそっくり――どころか、エミリィそのものだった。
「ねえねえ私、蜜狩りパーティ始まるって本当ですか!?」
「本当です、かじできないさんズ! ほら見て下さい!」
「わあー!」
「あれ全部狩っていいんですか!?」
「いいんです!」
「うわあー!!」
 本人含めて総勢150名になるエミリィ達は無邪気に笑って喜んで――ギラッ。一斉に飛び出した。その気迫はクマも蜂蜜もびっくりの蜜まっしぐら。
 あまりの迫力に『コレデ罠ヲ』という考えすら吹っ飛んだか、蜜をぽいぽい放って置いて逃げようとするプランツネット達の前に、俊足メジャーリーガーも真っ青のスライディングを決めたのは、おでこに『1』の文字を持ったコピー・エミリィだった。その手には何やらやんごとなき気配を漂わせるバッド――世界樹から作られた1本が握られていた。
「えーい!」
「ナイスホームランです!」
 敵の行く手を見事阻んだコピーを称えながら、エミリィ自身も見逃しかねないスピードを出したプランツネットの前にずしゃあっと割り込んで――フルスイング!
 そんな風にあっちこっちで遠慮なく数でフルボッコにした後に残るのは、美味しい蜜ばかり。
 せっせと回収する蜜は1つずつ形が違い、見るだけでも面白いけれど。
「このシャーク形とかは自分用にして、っと。後は地元の方々や観光客の皆さんにおすそ分けしましょう。楽しみは分け合ってこそですからね」
 今は遠くに見える、あの桜のように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナザク・ジギタリス
オルト(f01477)と
捕食者のつもりが、か
おれも、人間を取り込むつもりが取り込まれた側だからわかるけど
ヒトというのは案外逞しいんだよね、うん

インフェルノ・レイジで攻撃回数を増やして
Phalanx——空飛ぶブレード群で相手を斬り刻むよ
変化形態は地獄の炎を纏ったダモクレス
いつも以上に表情薄く攻性植物を屠っていくけれど
蜜を浴びた辺りから胸部がきゅうって軋むような感覚がある
損傷ではなさそうだけど、これは何だろう?
うん、大丈夫だよ、ありがとう

蜜、他の人に分けてあげてもいいけど
折角だから今日の屋台で使う為のお金に変えさせて貰おうかな
オルトはどうするつもり?
じゃあ目いっぱい楽しまないとね


オルト・クロフォード
ナザク(f41230)ト。

わァ、アース系世界でもニホンという国から出た事はなかったから、こんな風に海の向こうに行けて嬉しいゾ!

それに今回の敵は何だか学校でやってきた採集してくるタイプの授業を思い出すナ! 私の好きな授業なんダ!

さて、 攻撃が素早いナ。そんな時は【時計仕掛けの魔法陣】ダ! これで敵の動きを遅くして【見切り】避けつつ、置いていかれた蜜を採取していくゾ!

ナザクは大丈夫カ? 胸がきゅうっととは一体……後で見て貰うカ?

蜜はそうだな。私も売ろうと思っていタ。
貰ったお小遣いで、この仕事が終わってから美味しいものを食べようカ。どんなものが出てくるのか楽しみダ!



 密集して大地を作っている大小様々の石が、弾む足取りに合わせてぎゅっぎゅっと歌う。靴越しに伝わる感触は固く、けれどオルト・クロフォード(クロックワーク・オートマトン・f01477)はその感触も含めて今いる場所への喜びを露わにした。
「わァ、アース系世界でもニホンという国から出た事はなかったから、こんな風に海の向こうに行けて嬉しいゾ!」
 あっちが春祭り中だという噂の公園だナ!?
 桜色の先へと視線を注いでいた顔は、嬉しさを大爆発させながら隣のナザク・ジギタリス(とおり雨・f41230)へと元気に向けられる。その勢いにナザクは驚いた様子もなく、ぴかぴか笑顔をじっと見ていた。
「それに今回の敵は何だか学校でやってきた採集してくるタイプの授業を思い出すナ!」
「魔法学園でも、こういうことってあるんだ?」
「ああ、あるゾ。私の好きな授業なんダ!」
 あの日の続きを話すように語るオルトに対し、ナザクの反応は今日も極薄だ。けれど長い睫毛で縁取られた目は笑顔のオルトをちゃんと見ていた。その目が静かに、プランツネットへと向く。
 猟兵が現れても堂々と姿を晒し逃げる様子はなく、中には新しい蜜を実らせている個体までいるところから、今でも捕食者側のつもりでいるのだろう。けれど無数の黄金を映した静かな眼差しは、ほんの僅かに細められた。
(「おれも、人間を取り込むつもりが取り込まれた側だからわかるけど。ヒトというのは案外逞しいんだよね、うん」)
 とある魚を『毒があるけれどこの部分を切除してこう調理すれば食べられる!』と解き明かした人種もいるくらい、『美味しい』という情報は逞しさの根幹になる。
 そんな人々にデウスエクスの攻撃が向かわないように。
 視線だけを自分に向けてきたナザクに、オルトはきりっとやる気満ちた笑顔で頷き返した。
「攻性植物退治だナ!」
「そうだね」
 善は急げと動き出した2人に、プランツネット達が茎や葉、花をざわざわ揺らし反応する。その動きはじっと獲物に近付こうとする蛇のような緩やかさだったが、そこから景気よくポーンッと蜜を置いていった瞬間に速度が増す。
 しかし、ぽてぽてフォルムのポニー、抱っこをせがむようなテディベア、ギザギザ歯のティラノサウルス、三段バースデーケーキなどなど。実らせていた蜜をせっせと置いていくにつれ、顕著になる変化を前に、2人は突っ込んできた数体をサッと避け、着地と同時に更に飛び退いて距離を取った。
「攻撃が素早いナ」
「荷物を捨てて身軽になる……理にかなってはいるね」
 さて。どうするか。
 2人の口が閉ざされる。
 けれどオルトもナザクも、出身世界や他世界で様々なものを見て、経験してきた。それがどれくらいの厚みかは自身で計りきれなくとも――こういう時に何が役立つか、自分自身で導き出せる。
「これでどうダ!」
 オルトの声と共に翔けた魔力が見る間に魔法陣を描き出した。光り輝くその形は、細部に至るまで緻密に設計され組み立てられた時計のよう。かすかに目を瞠ったナザクは、魔法陣を通過したプランツネット達のスピードがガクンと下がった事に気付いた。
「成る程ね」
 これなら荷物をどれだけ捨てようが関係なく――。
「斬り刻みやすくなった」
 淡々と告げた瞬間、炎がナザクの視界を包んだ。
 友人の胸部から噴出した業火にオルトはポニー形の蜜を採取した姿勢のまま仰天したが、「大丈夫」とだけ返したナザクが炎を纏ったまま変化したのを見て、目をぱちぱちさせた。
「これ、おれの真の姿」
「そうなのカ! その炎は、熱くないのカ?」
「平気」
 淡々と返したナザクの周りで銀光の風が巻き起こり、螺旋を描き上昇していく。その煌めきはナザクの頭上で四方に別れ、縦横無尽に翔け回るたび2人の周りから何かが斬られる音がした。それに合わせて散るのがプランツネットの緑だと気付いたオルトの視界を、群れて飛ぶブレードが彩る。
「凄いナ、どうやって操作しているんダ?」
「念動力だよ」
「おオ!」
 驚いて、感心して、興味が湧いて、目を輝かせる。そうしながら蜜をしっかり採取していくオルトに向くナザクの表情は、いつも以上に感情が薄い。何も感じていないような表情のまま、速度を落とされた個体、そうでない個体問わず斬り刻み続け――。
『――!!』
 投げ付けられたヒヨコ形蜜が胸部で弾けた。
 けれど、それだけだ。ナザクは顔色を変えずに攻撃してきた個体にトドメを刺して――自分の胸部をじっと見る。
「ナザク、大丈夫カ?」
「蜜を浴びた辺りから胸部がきゅうって軋むような感覚がある。損傷ではなさそうだけど、これは何だろう?」
「ふーむ、胸がきゅうっと一体……後で見て貰うカ?」
「うん、大丈夫だよ、ありがとう」
 胸部に意識を集中してみるが、本当に何も損傷しておらず、不快さも無い。
 何がしたかったんだと首を傾げた2人は、周りがすっかり静かになっている事に気付いた。賑やかなのは、プランツネットが残した蜜の色だけだ。
「蜜、他の人に分けてあげてもいいけど、折角だから今日の屋台で使う為のお金に変えさせて貰おうかな。オルトはどうするつもり?」
「蜜はそうだな。私も売ろうと思っていタ。貰ったお小遣いで、この仕事が終わってから美味しいものを食べようカ。どんなものが出てくるのか楽しみダ!」
「じゃあ目いっぱい楽しまないとね」
 春はまだ、始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日下部・香
あの蜜、敵の罠なんだがな……確かにウサギの形でかわいいし美味しいんだろうけど……。まあ、皆の楽しみとしてはいいのかもしれない。地球側だってそんな余裕あるわけじゃないし、こういうのも必要だよな。

【螺旋弓術・黒雨】で敵を攻撃しよう。蜜を割らないように気をつけないとな。あれを楽しみにしてる人がいるんだし。
蜜以外のところを射貫けば大丈夫かな(【スナイパー】【部位破壊】)。しかし、小さくて指先サイズの蜜に当てないってのも難しいな……! いい修行になりそうだ。
敵の攻撃で蜜の香りに魅入られるのは困るな。決戦配備Dfで、敵の攻撃を防いでもらいたい。

私は蜜の収穫はいいかな。DIVIDEからお給金もらってるし。



 それはどう見てもキュートな形をした――今風に言うなら、映え系アイテムだった。
 しかしそれをつけているのは、どうみても攻性植物だった。
 日下部・香(断裂の番犬・f40865)は両腕を組んで唸る。
「あの蜜、敵の罠なんだがな……確かにウサギの形でかわいいし美味しいんだろうけど……」
 あれは敵の罠だ。それでいて、兎の形をした蜜は確かに可愛い。美味しいという評判も聞いた。その通りなのだろう。
「うん」
 香はこっくり頷き弓を構える。飾り気のない無骨なそれは、より速く鋭く射る事を第一に創り上げられており、内包する螺旋の力がその目的にしっかりと添う武具だ。そこに薫は難なく矢を番え、狙いを定める。
(「まあ、皆の楽しみとしてはいいのか。地球側だってそんな余裕あるわけじゃないし、こういうのも必要だよな」)
 あれを楽しみにしている人がいるのなら、この一射を仕損じるわけにはいかない。
(「蜜を割らないように」)
 あの、緑だけを。
(「射貫く」)
 指を放した瞬間翔けた一射が100を優に越える矢の雨と化した。圧倒的な量となった矢が春空に幾何学模様を描きながら、射程内にいた全てのプランツネットを包み込み――。
「よし……!」
 ひとつひとつが狙い通りプランツネットのみを貫き、倒れた本体からぽろりころりと蜜が転がり落ちる。香は弓を手にすぐさま場所を変えに走って――その視界へ飛び込んできた緑の鞭に目を見開いた。
 だが香の肌を叩き引き裂く筈だったそれは、衝撃を受けた時だけ虹色に現れる不可視の盾により阻まれる。魔法で編まれたその盾は、盾の内側からの攻撃は通す特別仕様。基本的には透明な為、一切視界の邪魔にならない決戦配備だ。
(「しかし、小さくて指先サイズの蜜に当てないってのも難しいな……!」)
 いい修行になりそうだ。
 香は笑い、矢を射続ける。
 その最中どうしたって蜜は目に入るものの、香の心がそちらへ傾く事はなかった。
(「私はいいかな。DIVIDEからお給金もらってるし」)
 これを聞いたら両親あたりは勿体ないと言うだろうか。
 けれどやはり自分は、そんな『ケルベロス』で在りたい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
月風

エッグハント…ならぬ蜜ハント…だろうか
おっ早速見つけたぞ
んっこれは…兎か?
ぷにぷに二本指で押しつつ
味見…してもいいと思うか?
首傾げ
じゃあ一つ
爪で引っ搔き
んっ甘

こっちは猫…犬…
これは耳の垂れた犬…いや
尻尾が丸いしやっぱり兎か?
なかなか…芸が細かいな
とりあえずTシャツの裾広げてぽい
って大量になってきた
瑠碧袋か何か入れ物ある?
礼言い受け取り
何か面白い奴見つけたか?
おっひよこ
黄色いしらしいじゃん
…しばらく飾っとけば?

おっでかい奴発見!
これって紅茶に入れる?
シロップ的な使い方以外に
何か作ったり出来んのかな?
成程
俺クッキー食いたい

さて
宝探しみたいで楽しかったが
一応敵だしな
被害が出る前に減らしとくか
UC


泉宮・瑠碧
月風

攻性植物、不憫と言いますか…
せっせと頑張っているだけに
…イースターまでご存じとは

蜜ハント、ではありますね
小さな蜜を発見し
口や耳の感じからして、兎みたいです
味見は良いと思いますよ

頑張って用意した罠に申し訳ないので
ごめんなさい、いただきますね、と声を掛けてから
私も幾つか摘んでいきます
…この蜜
黄色で丸いので、ひよこみたいです、可愛い
…可愛いので、食べられないと思いますが
星や花といった蜜を集めますね

理玖の声に
簡単な袋なら…と
折り畳みのバッグを出して広げます
理玖、と先程のひよこ蜜も見せますね

…蜂蜜と同じ使い方、ですかね
お菓子に混ぜ込んだりとか

…はい
攻性植物達…不本意だったとしても、ありがとう

円環命域



 攻性植物。言葉を発しない、植物型のデウスエクス。故にその生態は謎が多く――けれどこのプランツネットは、どうやら頑張り屋らしい。ただしその頑張りが報われるかというと。
「不憫、と言いますか……」
「だな」
 困った声をこぼした泉宮・瑠碧(月白・f04280)と、それにウーン、と同意した陽向・理玖(夏疾風・f22773)の見ている前でも、プランツネットはあちこちで可愛らしい蜜をせっせと実らせている。
「……イースターまでご存じとは」
 熱心な姿勢が垣間見えるだけに覚えた不憫さが濃さを増す。
 ヒーローズアース出身の理久もイースターを知っているからこそ、宇宙からの侵略者でが地球文化に合わせたような蜜をこさえていく様に、驚きを隠せない。
「エッグハント……ならぬ蜜ハント……?」
「蜜ハント、ではありますね」
「だよな。おっ、早速見つけたぞ。んっ、これは……」
 一応気を付けながら摘み上げる。思ったよりもだいぶしっかりしていて、親指と人差指でぷにぷにしているとグミを摘んでいる気分だ。けれど鮮やかな黄金色を作るのは間違いなく液体――蜜。そして形はというと。
「兎か?」
「口や耳の感じからして、そうみたいです」
「味見……してもいいと思うか?」
「良いと思いますよ」
「じゃあ1つ」
 爪を気持ち強めに入れて引っ掻くと、ぷつっと外膜の割れる手応え。裂けたそこからぷくーっと溢れて玉を作った蜜を、こぼれる前に舐めてみる。
「んっ、甘」
 舐めた瞬間輝いた目と、すぐに自分へと向いた目が語る『美味いぜ』。瑠碧はこくりと頷いてから、実った蜜へと手を伸ばす。――頑張って用意した罠に申し訳ないので、「ごめんなさい、いただきますね」と声をかけてから、ぷち、ぷちり。
 大きさは、ビー玉サイズから大粒の葡萄くらいまでと様々で、掌にころころと収まる様に瑠碧はほっこりと微笑んだ。見て下さい、と摘んだ1つは特にころりと丸いものだ。
(「……この蜜。黄色で丸いので、ひよこみたいです、可愛い」)
「お、瑠碧も見つけた?」
「はい。こっちは……星、ですね。花の形をした蜜もあります」
「凄ぇな、色んな形がある」
 ――バリエーション出すのに本気過ぎじゃね?
 浮かんだ疑問をぶつけても、植物であるプランツネットから答えはもらえない。理久は疑問を胸に他の蜜にも目をやり、へえ、と目を丸くした。
「こっちは猫……犬……これは耳の垂れた犬……いや、尻尾が丸いしやっぱり兎か? なかなか……芸が細かいな」
 見た目が何種類あるか数えたら、どうなるだろう?
 ――ひたすら増えて収集がつかなくなるかもしれない。
 とりあえず、と理久はTシャツの裾を広げ、そこへと蜜を取ってはポイッと入れていく。けれど実った蜜のサイズはバラバラで、それなりに大きいものもあると来れば――。
「ふふ。理久、たくさん取りましたね」
「やべ、気づいたら大量になってきた。瑠碧、袋か何か入れ物ある?」
「簡単な袋なら……」
「わり、入れさせて!」
「いいですよ」
 折り畳んで持ってきていたバッグは、出して広げれば十分な収容力の持ち主だとわかる。ありがとなと礼を言いながら、Tシャツの裾からバッグへと蜜のプチ移動。外膜同士が触れ合う音は硬いような、けれど少し柔いような、不思議な音をしていた。
 バッグの中を黄金色に染める蜜は――どれも割れていない。
「よし。なあ、瑠碧は何か面白い奴見つけたか?」
「はい。……ほら、これです」
「おっ、ひよこ!」
「はい。ひよこです」
 見つけた時はひよこ“みたい”と思ったけれど、こうして改めて見ると――紛う事なき立派なひよこだった。クチバシもちゃんとある。
「黄色いし、らしいじゃん」
「蜜の色と形が、ぴったりですよね。可愛い……」
 思わず指先で撫でてしまう可愛さだ。けれど瑠碧の浮かべていた微笑がふいに翳った。エルフ耳が、しょんぼりと下がる。
 可愛いけれど、蜜だ。蜜なのだ。食べるものだ。
 という事は、ずっと食べずにいると――悪くしてしまう。蜜が傷んで、綺麗な黄金色は緑がかったものとなり、甘い香りも酸っぱさを帯びてしまうだろう。
 さっきまで微笑んでいた瑠碧のしょんぼりとした様に、理久は彼女が何を想って元気をなくしているのかすぐにわかった。このひよこが蜜だという現実は変えられないけれど。 
「……しばらく飾っとけば?」
 そうしてから、蜜をダメにしない為の――悲しくならない頂き方を考えればいい。もしかしたら名案が浮かんだり、名案と出会えるかも? 蜜ハントをしながら考えていた理久は、大きな黄金色に目を輝かせた。デフォルメされた蜂蜜形だ。
「おっ、でかい奴発見! これって紅茶に入れる? シロップ的な使い方以外に、何か作ったり出来んのかな?」
「……蜂蜜と同じ使い方、ですかね。お菓子に混ぜ込んだりとか」
「成程。俺クッキー食いたい。このサイズの蜜だと、クッキーどんくらいになるかな?」
「そうですね……」
 2人ふわふわ思い浮かべた蜂蜜クッキーは――大きなお皿“いっぱい”分。焼いている時と焼いた後、蜂蜜香るティータイムの予感についつい笑顔がこぼれるけれど。
「さて、っと。宝探しみたいで楽しかったが……一応敵だしな。被害が出る前に減らしとくか」
「……はい。攻性植物達……不本意だったとしても、ありがとう」

 作った罠が大歓迎されていた。
 そんな事実を、彼らはきっと、最期まで知らなかっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐東・充
【🍯🐰】
アメリカはラビオくんの育った国だったね
この国は広いけれど少しは馴染みのある場所だったりするのだろうか
何にせよ此処にきみと来られたのはとても喜ばしい事だ

無事に祭りを楽しむ為にも討伐は迅速に…
…実にやり辛い姿形をしているな
ぷるぷる揺れる兎耳に知れず漏れる嘆息

Ebonyの銃撃で牽制しつつ
回避されないタイミングでプログラムド・ジェノサイドを発動
一体ずつ確実に仕留めていく

蜜は美味しいとの事だったか
この後の軍資金にしてもいいけれど
少しくらい持って帰ろうか?
…ん?何?
口元に伸ばされた指先に
……全く、こっちの兎も困ったものだな、なんて心の中で苦笑しながら
そっと甘い雫を舐め取ろうと


ラビオ・ブラフマン
【🍯🐰】
俺の育ちはヒーローズアースだけど、コッチの世界にもあるんだねェ。
この公園の桜って有名だけど、噂に聞くぐらいだったしィ
充とこーして|オシゴト《デート》に来られてラッキーってカンジィ?

うさぎ型に案の定動揺する充を後目に
持参した和風巾着にミニうさシロップを捥いで詰めていこう。
充ゥ、俺囮役するねェ?

Böse Fußspurenを密かに展開して
蜜を取っては屠りを繰り返し、充と連携して除草作業を。
充を攻撃しようとする悪いコにはUCの高威力攻撃でお仕置しちゃお。

摘むのに夢中になってたら、指にいっぱい蜜付いちゃったァ。
唇で軽くシロップを拭ったら
悪戯に充の口元へ指を運ぼうか―ねェ、充も味見してみる?



 陽射しも、風も、全てが心地良い。
 全身で感じる春が来る前は、それはそれは厳しい冬がこの国全体を包んでいただろうに。
 アメリカという国を知るラビオ・ブラフマン(Abyssal fish・f36870)は、春風に遊ばれて頬を擽る自分の髪を軽く押さえて笑った。
「俺の育ちはヒーローズアースだけど、コッチの世界にもあるんだねェ。この公園の桜って有名だけど、噂に聞くぐらいだったしィ」
 その横顔と、青空に映える髪。数秒、けれどしっかりと見ていた佐東・充(オルタナティブ・f21611)も優しく目を細める。
「アメリカはラビオくんの育った国だったね」
 UDCアースを始めとしたいくつかの世界は不思議と共通の国を抱えていて、どの世界でも『アメリカ』は広大な国だった。少しは、馴染みのある場所だったりするのだろうか。
 これからを共にする関係となった後も、ラビオについて知らない事はまだあって。けれど。
(「何にせよ此処にきみと来られたのはとても喜ばしい事だ」)
「充とこーして|オシゴト《デート》に来られてラッキーってカンジィ?」
 同じ事を口にしたのは偶然か。充が何を考えていたか、向けられる眼差しから見通したのか。くすりと笑い合った2人の傍らには、それぞれの得物や能力が。足は、今も侵食を進める攻性植物へと堂々スマートに向かっていく。
 無事に祭りを楽しむ為にも討伐は迅速に。故に、充が握る拳銃は2丁あるうちの通常型。グリップを握りもう片方の手を迷わず向け――た瞬間、ぽいんっと弧を描いて置いていかれた物体が、宝石の目へと蜜色をキラキラ映す。
(「……実にやり辛い姿形をしているな」)
 しかも兎形の蜜が地面に落ちた時、ちんまりとした兎耳部分がぷるぷる揺れた。
 掌に収まる小さな小さな兎の形なものだから、本当に、余計に、やり辛い。
 しかし素早く伸ばされた緑の蔓は容赦なく撃ち抜くが。
(「案の定ってヤツゥ? ま、カワイーウサちゃんがいっぱいだもんねェ」)
 充本人も知らず漏らしていた嘆息を後目に、ラビオは持参していた和風巾着の口をしゅっと開く。置いていかれたてのミニうさとそっくりの、まるで双子なシロップをもいだら素早く収納して――ニヤリ。
「充ゥ、俺囮役するねェ?」
 返事を聞くより先に、行ってきまァすと片手をひらり。兎形が目立つ蜜畑へ向かっていく姿はどこか不思議の国を思わすけれど、迷えるアリスではないと、その頼もしさを充は知っているから。
「ああ。牽制は任せてくれるかな」
 パートナーが『行ってきます』を決定事項としたように、尋ねるようでいてそうすると決めた支援を言葉に引き金を引く。狙うは緑の部分、移動や攻撃に使うそこ。一度の銃撃で全てを抑える事は出来ず、撃たれなかった緑が蜜をぽいっとして即座にラビオへ向かうけれど。
「除草作業の邪魔しないでよねェ」
 ずっ。
 突如地面から生えた墨色の何かが、絡みついた緑を地中に引きずり込む。
 太陽光が燦々と降り注ぐ中であまりにも明瞭かつ異質な影。それと似たものを充は知っている。ラビオの触手だ。ただし今のは影業だろう。しかし――。
(「ラビオくん、いつの間に……」)
 囮役を宣言した時だろうか。それとも、それ以前から?
 蜜もしっかり確保していくパートナーの姿に流石だと感嘆する宝石の双眸に、容赦ない牽制で大人しくさせられた緑が多数映れば、好機は今とプログラムが産声を上げて、2人の除草作業を力強くアシストする。
 思考するより先に。
 本能よりも速く。
 予め脳に刻まれたプログラムが引き起こす連続攻撃が、絶える事のない銃声を響かせる。時折運良く回避した緑はいるものの、笑顔で除草作業に勤しむラビオの影業によって、蜜だけを地上に残し、日の当たらない場所へと沈められてばかりだ。
 それでも、2人の共同作業から逃げ切っていた運の良い個体はいた。
 とはいえ、運が良かったのはその時だけの事。
 散った同胞の緑に紛れ、いくつもの蜜を同時に置き、一気に身軽になる。そうして同胞を多数屠った猟兵を捉えている様を、青い青い海の色にしっかりと見られていた。
「悪いコ見ィーつけた」
 落ちた声は、とろりと染み込む蜜のように。
 けれど声に含まれたものは、決して甘くない。
 ラビオの触手がざあっと墨色に染まった直後、空中に現れた無数の銃器。冷たい重厚の数は88。その全てが充を狙ったプランツネットに向き銃声が何重にもなった瞬間、充を狙っていた緑色がバンッと弾けて消えた。

 その後も『除草作業』は恙無く行われ、元々あった石の大地、その灰色がしっかりと見えるようになった頃。充は卵くらいはあるメンダコ形の蜜を拾い上げる。琥珀のように鮮やかな黄金色のそれを、ラビオが集めた蜜の仲間にと巾着に入れようとして、ふと、思い出した。
「この後の軍資金にしてもいいけれど、少しくらい持って帰ろうか?」
「ンー……」
 美味しいのなら、トーストやヨーグルトなど、普段の食事に大活躍だろう。
 充の提案にラビオはちょっと考えて――指先が蜜だらけな事に気付いた。夢中になっていた証に、うっすら弧を描いた唇が寄せられ、軽く拭われる。それから。
「……ん? 何?」
「充も味見してみる?」
 口元に運ばれた指先に男は目を瞬かせた。
 これは、また。なんて悪戯だろう。
(「……全く、こっちの兎も困ったものだな」)
 心の中で苦笑して、甘い雫へとそっと唇を開いた。

 ああ。
 こんなにも自分を困らせる兎は他にいない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎

食えるって言ってたし食えるだろ!
しかもどんな味でもアレスが調理してくれたらうまいから
きっと2倍うまいぞ!
期待に胸を弾ませいざ討伐

元より花より団子の性質でな
見た目の可愛さよりうまそうな色が気になっちまうなぁ
歌で身体強化して
風の魔力を靴に込める
できれば蜜をいっぱい拾いたいから今日は脚中心だ
早い敵は苦手じゃねえが
今日は数を狩るって決めてるんでね
効率よく狩る為にも…
とりあえずアレスの方に追いたてる!
きっとどうにか隙を作ってくれるだろ
俺は、ここぞという瞬間確実に敵より速く
【閃迅烈脚】を叩き込む!

いっぱい取れた蜜をご機嫌で両手に抱える
アレスが持ってくれるならもっといっぱい抱えられる…
だってアレスが作ろうと思ったやつは全部食いたい
窘められたらしぶ…という顔で置いて行きはするけど
未練でチラチラ見ていたら
アレスが味見してた
俺も俺もと口を開けて待機する
ん〜!コレが更にうまくなるの楽しみだなぁ!
味わった甘さにすぐご機嫌になったけど
アレスの発言に目をぱちくりさせてからもっともっとご機嫌になった


アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎

本当に食べても大丈夫なのか…?
思わず心配するが
…君からの信頼と期待の前ではそれも吹き飛んでしまうな
正直僕もどんな料理に合うか気になっていたんだ

小鳥に猫…確かについ見てしまうが油断はしないさ
【光の速さで】
追い立てられた植物の行動を予測
速くなろうとも盾で弾き飛ばし
氷属性を宿した剣を地面に突き刺し凍らせ
隙を作り出そう
今だ、セリオス!

蜜は料理鞄に保管しようか
彼が抱えてるも預かって入れて
また預かって…こら、食いしん坊さん
いっぱい食べてくれるのは僕も嬉しいよ
けど、収穫はこのくらいにしておこう?
これだけでも沢山作れるよ
…残念そうな彼に心が…
…うん、よし
先程の戦闘で凍った蜜を手に取り
安全確認も兼ねてひとつ味見
ん、大丈夫そうだ
勿論、君も召し上がれ。|可愛らしい黒歌鳥さん《セリオス》
彼の口に星形蜜シャーベットを運ぼう
ーああ、いけない。料理をする前につまみ食いをしてしまったな
だから、この大きな蜜達も持って帰ろうか

(…僕は蜜よりも彼に甘いのかもしれない
それでも…やっぱり君には笑ってほしいんだ)



 花や樹木から蜜が採れる事は何もおかしくないのだけれど、それがメイド・イン・|攻性植物《デウスエクス》となると――やはり、こう思わずにはいられない。
「本当に食べても大丈夫なのか……?」
「食えるって言ってたし食えるだろ!」
 悩むアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)の背中に響いた、ぱしっと軽い音。セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は明るく清々しい笑顔で、「しかも」と期待に目を輝かせていく。
「どんな味でもアレスが調理してくれたらうまいから、きっと2倍うまいぞ!」
 それだけで、アレクシスの顔から悩みの色が消え失せる。
 口にしたあれは、思わず抱いていた心配だったのだけど。
(「君からの信頼と期待の前ではそれも吹き飛んでしまうな」)
 ほんのついさっきまで、自分のすぐ傍にあったのに。今はもう、どんなに目を凝らしても見えない彼方の光だ。
「正直、僕もどんな料理に合うか気になっていたんだ」
「おっ。期待してるぜ、シェフ?」
 胸弾ませるセリオスの笑顔に、アレクシスが胸元に手を当てて「お任せあれ」と恭しく礼をして――ふはっ。小さく吹き出した2人はそれから不敵な笑みを浮かべ、プランツネットの討伐へと動き出した。
 セリオスはたんっと軽やかに、アレクシスはぐっと力強く。2人が地面を蹴ればその音や振動に反応したか、サイズも見た目も様々な蜜があっちへポーイ、こっちへポーイ。そこから始まるスピードアップは視界内が緑でやかましい事になるけれど、戦い慣れた2人の目はしっかりと捉えていた。
「小鳥に猫か……確かについ見てしまうな。けれど油断はしないさ」
「俺も。元より花より団子の性質だしな、っと」
 ぴゅいんっと突っ込んできた緑の塊。何かになり損なった四足歩行の生き物をセリオスはあっさりと躱して、今しがた避けた個体がまだ持つ蜜に舌先をちろりと覗かせた。
「どいつもうまそうだよなぁ」
 アレクシスの頭の中にはもう、あの蜜を使ったレシピがいくつか浮かんでいる。
 『うまい』が2倍になる未来が、どんどん近付いている。
 順調に育つ期待をしっかり抱えたまま、セリオスは走って跳んでと緑を躱し、風喚びの歌を紡いでいく。髪や服を一度大きくはためかせた風の魔力はセリオスが望むまま靴へと宿り、その脚に、この場にいる誰よりも自由になれる力を与えた。
「よし」
 呟き、つま先に力を込めて、軽く地面を蹴る。たった数歩で背後を取ってみせれば、プランツネット達が驚いた猫のように緑の体をぼぼッと膨らませた。蜜を置いて四方八方に散る様は、視界内がまあまあやかましい事になる。けれどセリオスはきらきらとした目で戦場全体を捉え、楽しげに笑った。
「ほらほらどうした! もっと蜜置いてかねぇと、どいつもこいつもすぐに捕まえちまうぞ!」
 シンフォニアの肺活量で脅かすと、プランツネット達が更に慌てた様子で蜜を放り投げ、シュバシュバカササと動き回る。植物の筈が妙に虫じみた動きに、セリオスは「何だこいつら」と怪訝な顔になるも、追い立てながら視線を向けた先。自分とは違う動きでプランツネットに対応しているアレクシスの姿に、心が躍る。
 アレクシスがいる所までは、距離があって。
 何をどうするとか、作戦らしいものの相談もしていないけれど。
(「きっとどうにか隙を作ってくれるだろ」)

 だって、アレスだ。

 その証拠に、きらきらとした青い目が自分を見て笑って、頷いた。

 セリオスという星からの少々荒々しい導きによってアレクシスのいる方へと追い立てられていた、何体もの緑。蜜を放れるだけ放って速度を上げたプランツネット達からなる濁流が、流れに飛び込んできたアレクシスというたった1人が構えた盾に激突し、衝撃音と共に派手にたわむ。
 弧を描いて宙を舞う緑。ぼんぼんばいんと転がる緑。
 吹っ飛び方は様々だが――その全てがアレクシスの剣の射程内。
 急速に纏った冷気でより白く輝き始めた剣が地面に突き立てられる。そこから一瞬で全方位に迸った力は、プランツネットをたちまち凍らせた。
 地面に触れていなかった、まだかろうじて空中に在った個体も無事では済まない。空気を伝って伸びた氷が触れた所から冷気が全体に広がり、冷たさの中に囚われる。
 水分のほとんどを氷に変えられた緑は、動けたとしても身じろぐ程度が精一杯。
 きしっと乾いた音がこぼれたのは、一度だけ。
「今だ、セリオス!」

 任せろと応えるように、夜空色の目が煌めいた。

 靴は変わらず自由で軽い。風のようだ。そこに注ぎ込んだ過負荷レベルの魔力が遠くなっていた重みを思い出させるけれど――問題ない。何より。
(「アレスが作ってくれた隙を逃すワケねぇだろ!」)
 笑って視線で射抜く先は、凍える緑のど真ん中。あそこに叩き込んだら最高だろと感じた場所。そこへと翔けたセリオスの髪が、黒い流星の尻尾めいてアレクシスの視界に残った。
 次の瞬間、凍りついていたプランツネット全てが砕け散る。
 しゃらしゃらとした美しい音色と共に、緑の欠片が空に舞う。

 
「凄ぇなアレス、大漁だ! あっ見ろよこれ、犬の形してるぜ!」
「本当だ。こっちの蜜は猫だね。蜜は料理鞄に保管しようか」
「わかった。おっ! あっちにもまだ残ってる!」
 両手に抱えた成果をニコニコで預けたセリオスが、ぱっと駆けてすぐ戻る。両手は蜜でいっぱいで、アレクシスも嬉しそうに笑っては、空間の拡張魔法が施された鞄へと詰め込んだ。
「アレスが持ってくれるならもっといっぱい抱えられる……」
「こら、食いしん坊さん。いっぱい食べてくれるのは僕も嬉しいよ。けど、収穫はこのくらいにしておこう?」
「だってアレスが作ろうと思ったやつは全部食いてぇし」
「これだけでも沢山作れるよ」
「……わかった。戻してくる」
 渋々と置きに行く後ろ姿からこぼれる、しょんぼりの気配。ビフォーとアフターの落差にアレクシスは心が痛むが――閃いた。戦闘の余波で凍った蜜を摘み、口を開け――ぱくっ。
「ん、大丈夫そうだ」
「あっ! アレス、俺も! 俺も!」
「勿論、君も召し上がれ。|可愛らしい黒歌鳥さん《セリオス》」
 あ、と開けられた口に星形の蜜シャーベットを、ころりん。ひんやり感のすぐ後、しゅわりサクッと外膜がほどけた。中の蜜が口内を甘く潤しながら未練を綺麗に吹き飛ばす。
「ん~! コレが更にうまくなるの楽しみだなぁ!」
「――ああ、いけない。料理をする前につまみ食いをしてしまったな」
「え?」
「だから、この大きな蜜達も持って帰ろうか」
「やった! サンキュ、アレス!」
 アレスの作るやつはいっつもうまいからなぁ。更にご機嫌になったセリオスに、アレクシスは柔らかに目を細め、楽しみにしててと呟き――もしかして、と思う。
(「……僕は蜜よりも彼に甘いのかもしれない。それでも……やっぱり君には笑ってほしいんだ」)
 今、一緒に過ごしているこの春も。
 その、先も。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『星座獣レグルス』

POW   :    アターナト・リオンターリ
光輝く【星のオーラを纏った姿】に変身する。武器は【自身の牙と爪】しか使えないが、[自身の牙と爪]の射程外からのダメージは全て100分の1。
SPD   :    獅子の狩猟
全身に【恒星の輝き】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【爪と牙】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
WIZ   :    星の焔
【しし座を象る爆炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:朝梟

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Star beast
 プランツネットが全て撃破され、その体を構成していた緑の部分は、急速に萎れながらひび割れ消えていく。残ったのはプランツネットの置き土産、向こうは立派な罠のつもりだったのだろう『可愛くて美味しい』と評判の蜜と――青々とした緑に覆われていた大地の、本来の姿だ。
 いつから在るかもわからない石の群れが、長い年月をかけて創り上げた、白や灰色からなる大地。そこに点々と黄金色の可愛らしい欠片が覗く光景は、そこでひっそり暮らしていた妖精に遭遇したかのような穏やかさ。

 けれど。
 ひりつくような殺気と共に轟音が一帯を覆った。

 それは、獅子の姿をしていた。
 ちりちりとした光の欠片を立ち上らせる毛並みは、炎の熱を抱いた銅に似ている。煌々と輝く目は純白で――命尽きた後も輝き続ける星が獣となって甦ったら、こんな姿をしていたのかもと、星というものの生命力を感じられたかもしれない。
 けれど、現れた獅子は紛れもなくデウスエクスだ。
 星座獣レグルスと呼ばれる獣は猟兵達を見つめ――その鬣を、ごうごうと輝かせた。
 
インディゴ・クロワッサン
Md)
うひょー!カッコいいライオン!
「敵なのが惜しいくらいだねー!」

基本は第六感で攻撃を見切りつつ、|Pisces《鎖付き短剣》をロープワークで操作しながらチクチクと攻撃してくよ~
敵が|星のオーラを纏った《UCを使った》ら、こっちも覚悟を決めて、オーラ防御と諸々の耐性を発動させながら、爪…いや、牙攻撃を僕の肩辺りで受ける!
痛いのは気合いと激痛耐性で堪えながら、UC:血に溺れよ、藍の薔薇 を発動ー!
牙での攻撃って言う超至近距離からのお返しUCだから、相当効くでしょ☆
まだ薔薇が生えててしんどいけど…
「ついでにその血も吸わせろー!」(吸血/生命力吸収/早業

Mdのヒト達ありがと~
流石にちょっと痛いや…


香良洲・巽
…殺気に轟音、如何にも侵略しに来た
デウスエクスの風体だよなァ
獅子の姿をした白い星の焔、か
流星でも相手にしようとすれば
こんななのかもしれないが
ケルベロスとして市民を守るのが
本来の仕事だろうよ、っと

UC幻影槍の詠唱にて
マントを羽織り、対の紅矛槍を両手に
ケモノ狩りの時間…ってヤツだぜ、星のライオン
放たれる爆炎の威力は
火炎耐性や鎧で多少軽減されるとは言え
なるべく被弾しないよう躱すに限る

爪も牙も硬そうでメンドウなんだよな…
二本槍は薙ぐより突き刺す動きで、
星にも在るなら心臓でも貫いてやろうか
穏やかな春の景色に似つかわしくない
オマエはさっさと消えてくれ

アドリブ歓迎



「……殺気に轟音、如何にも侵略しに来たデウスエクスの風体だよなァ」
 静かに獅子を見つめる巽の横で、現在のテンションを綺麗に丸っと映した「うっひょー!」を響かせたのはインディゴだった。
「カッコいいライオン! 敵なのが惜しいくらいだねー!」
 まあ敵だから|コレ《・・》だけど!
 黒の直剣を構えてニッコリと。倒す、討つ、殺る。清々しいほどの明るさとセットの決定事項に、巽も得物を手に頷き――ふいに自分達をすっぽり覆った影から、2人それぞれ別方向に飛び退いた。
 一瞬前までいたそこを猛々しく圧し潰したレグルスが、四肢に力を込め飛びかかろうとした先。インディゴは「あーはいはい」と明るく言って、別の得物へと素早く持ち変える。
 即、じゃららと連なって響く鋼の音。同時に鋭く閃いたものがレグルスの周りで弧を描いて翔けたと思えば、ぐんっと急降下。すれ違いざまに刺して斬ってと、インディゴが意のままに揮う|Pisces《鎖付き短剣》にレグルスが見せた反応は素早い。
 牛よりも大きな体だが鈍重ではなく、動きは力強く、かつ俊敏。成る程ねー。インディゴは鎖に片手を引っ掛け、自分の手にぐるんっと巻き付けついでに思い切り引っ張った。一瞬で速度を増した鎖の先――短剣が星座獣の体を斬る。
「コレは確かにボスってやつだね――っと!」
 ぶわっと膨れ上がった、肌をひりつかせる殺気。感覚のままに飛び退いたインディゴは見事レグルスの爪から逃れてみせる。
 獲物を逃したレグルスはそのまま青色を追いかける、かと思いきや、耳をぴんっと揺らした瞬間に巽に反応した。
 光と熱を孕んだ真っ白な眼。風とは違う、内からのエネルギーでうねる鬣。
(「獅子の姿をした白い星の焔、か」)
 流星でも相手にしようとすれば、こんななのかもしれないが――流星を墜とした事は、さすがに無い。だが、デウスエクスなら経験済みだ。
「ケルベロスとして市民を守るのが本来の仕事だろうよ、っと」
 薄ら笑って紡いだ詠唱が戦神の鎧を喚び、羽織ったマントが音を立てる。対の紅矛槍を手にすれば、体中の組織が、臓器が、自分という存在を削りにかかるのが解った。だが巽は構わず動いた。戦女神の加護だ、|無償《タダ》で得られるとは思っていない。
「ケモノ狩りの時間……ってヤツだぜ、星のライオン」
 地面を蹴った瞬間レグルスが吼え、獅子座の爆炎が巽の視界を灼く。一気に広がった爆炎は石の大地を灼熱に彩るほど。
「直撃したらかなりまずそうだな」
 ならば、直撃しなければいい。持ち得た耐性や加護が、苛烈な爆炎をいくらか削いでもくれた。おかげで、紅矛槍の連撃でざっくりと狩り始めの一撃もお見舞い済みだ。
「同感、アレの直撃だけは絶対に嫌だね~」
 笑うインディゴは軽々戯れているようでいて、獅子からの殺気や動きを感覚で捉えては巧みに躱している。その技量を理解したのだろう獅子の輝きが急激に増した。赤みがかった銅色の体に星のオーラが宿る。
(「あ。これは」)
 覚悟決めるやつだ。
 インディゴは突っ込んでくるレグルスを真っ直ぐ見たまま身構えた。開かれた口は大きく、牙は自分の指より遥かに太い。すごい痛いんだろうなという予想通り、肩に突き立てられた牙が感覚全てを熱と痛みで染め上げに来る。
「ッ……!」
 だがインディゴは膝をつかなかった。使ったものは、気合を始めとする激痛に耐える為の全てと――胸を突き破って咲いた藍薔薇。血濡れの華が、受けた攻撃をたちまち“無い”ものにする。
 だが藍薔薇がそういうものであるが故に、増えゆく薔薇による痛みは対象外。正直言うと『しんどい』の4文字だ。けれど。
「ついでにその血も吸わせろー!」
 笑って宣言し奪った、星座獣レグルスという生命力。一気に吸い上げたそれは、意識がなかなか鮮烈になる味わいだった。吸われた側は大きく跳んで距離を稼ぐが、すかさず巽が仕掛けていく。嵐の源ふたつが鍔迫り合う隙、果敢にインディゴの元へ駆け飛び込んだのは――。
「お待たせしました自分メディックです今すぐ治療しますソレーッ!」
 痛み止めをブスッと射しガーゼや包帯で止血し固定してと、対処は非常にスピーディ。おお、と目を丸くしたインディゴはすぐに笑顔で礼を言う。今もレグルスを相手取っている巽のおかげで、流石にちょっと痛いや、なんて一息つく余裕だってあった。
(「あっちは大丈夫か。……にしても、爪も牙も硬そうでメンドウなんだよな」)
 対になっている得物でどちらも突き、弾くその度、至近距離で小さな星が爆ぜるよう。それの源でもある獅子の中に、星の核たるモノは在るのだろうか? 在るのなら――。
 手にしていたニ本槍をぐんと回し、穂先で指し示すのは赤く白く燃えるその内側。心臓が在るだろうそこへ、折角だから両方ともくれてやる事にした。
「……この景色に似つかわしくねぇんだよ。オマエはさっさと消えてくれ」

 星は夜空に輝くものだ。
 穏やかな春の景色を、灼くものではない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
月風

Df

すっげー
かっけぇ
モフってみたかった
ってそもそもライオンならそうもいかねぇのか
祭りの前に猛獣退治と行くか
そうだな
勇気付けるように手に触れ

変身し衝撃波飛ばしつつダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴ると見せかけてフェイントで足払いでなぎ払い
体勢崩させたところを追撃で蹴り

支援で動きを阻害するようにいくつもバリケード築いて貰い
利用しヒット&アウェイ
UC起動し上空からも攻め
捕捉されないように
また瑠碧の援護活かし動く

そのでかい身体じゃ牙と爪しか使えないと動きにくいだろ?
俺の攻撃はお前の懐入ってだし
それに
牙と爪しか使わないなら
動きも見切りやすいしな
加速し避けカウンター
部位破壊で足の関節狙い拳の乱れ撃ち


泉宮・瑠碧
月風


獅子座、ですか
いえ、獅子も猫科なので、出来ないとは言い切れませんが
ただ、この子は鬣の様子からして難しそうです
…炎は怖くても、岩面なら被害が少なそうなのは幸いでも
小さな花は巻き込まれない様に守りたいですが
理玖の手を握り頷き

私は杖を手に理玖へ連理夜曲
理玖が空へ飛ぶ等で距離を取る隙には
攻撃と注意を引く事の両面で風の槍を放つ様に

爆炎の気配には
発動前に氷と水の精霊達の力を借りて
氷水で包む様にし
その上から風で繭の様に包み
広がる被害を少しでも抑えられれば

自分達へも氷や水に風のヴェールで覆い
獅子座のマーク状なら
空いている箇所へ退避するように試みます

爆炎の兆候を含め
嫌な予感や直感には素直に従い

おやすみなさい



 すっげー。
 かっけぇ。
 モフってみたかった。
 見た瞬間に理久が口にしたそれらは、星座獣レグルスの鬣が強く輝きうねるのを見た瞬間すんっと引っ込んだ。
「そもそもライオンならそうもいかねぇのか」
「いえ、獅子も猫科なので、出来ないとは言い切れませんが……ただ、この子は鬣の様子からして難しそうです」
 人に慣れた、本物の――それと、お腹をいっぱいにした後のライオンだったなら。だが星座獣レグルス相手では、もふもふを感じる前に火傷してしまう予感がひしひしとする。
「だな。祭りの前に猛獣退治と行くか」
 この世界の侵略者と考えると猛獣にも程があるけれど、それを恐れる理久ではない。
 瑠碧もまた、燃える星そのものじみたレグルスの見目に怖れを覚えはしても、しっかりと獅子の目を見つめ返していた。戦場となったこの場を作る大地はほぼ岩だ、レグルスが齎すものの被害が少なく済みそうな点は幸いだろう。それでも、小さな緑は確かに存在しているから。
「小さな花は巻き込まれない様に、守りたいです」
「そうだな」
 力強い言葉と共に理久が瑠碧の手に触れ、その手を握り返し頷いた瑠碧の長い髪が静かにそよいだ。2人の手が静かにほどけるようにして離れる。だが、2人の願う先は同じ。心はいつだって、繋がっている。
 理久が大地を強く蹴って飛び出すその頭上、瑠碧の招いた生命の精霊が春の空を翔け、光雨を降らせていく。石の大地に灰色のまだら模様を生んだ光雨は、全身を七色に輝く龍に覆われた理久をより眩く彩った。
「変身ッ!!」
 覚悟の炎を胸に宿した変身は、その瞬間に凄まじい衝撃波を生んだ。その衝撃波は何よりも速く何よりも重い。故に、理久より一足先にレグルスと激突した瞬間、周辺を大いに震わせる。
 その真っ只中へと理久は迷わず飛び込んだ。勢いは殺さず、体を捻り、握りしめた拳にパワーを乗せ星座獣へ――と見せかけ、身を低くし躱そうとしていた脚へと思い切り足払いを仕掛けた。
(「おっ、も!? けど負けねぇ!!」)
 倒す。守る。自分にはその覚悟と――瑠碧と、瑠碧の精霊から貰ったパワーがある。
 どうっと体勢を崩した腹に叩き込んだ蹴りが星座獣の巨体を大きく吹き飛ばし、“壁”に叩きつけた。があんと響いた音は壁の頑強さを知らしめるよう。
 事実、その壁は岩の大地とはまた違った、ちょっとやそっとの衝撃では砕けない頑強な塊――守りに特化した決戦支援。現れた星座獣を効率よく抑える為の、普段とは違う趣向で用意されたものだった。
 先程まで無かったものが戦場へ割り込むように現れた事に、レグルスが唸り声と共に周囲への警戒を露わにしていた。1つ2つに留まらない壁に、獣は壊す手間より獲物を狩る事を優先したらしい。壁を蹴って空へと飛び、一撃叩き込んではまた空へと素早く飛び回る理久を見上げるレグルスの鬣が、白く輝き始める。
「あれは――!」
 急激な熱上昇による変化、浮かび上がる獅子座の煌めき。膨れ上がる炎の気配に、瑠碧は胸の裡がぞっと冷え込む気がした。けれどそれに飲まれはしない。
(「お願い、力を貸して」)
 一瞬で編み上げた風の槍を次々に浴びせながら、獅子の周りに氷水の膜を広げ、その上へ更に風の壁を作って包み込む。2つから成る繭が完成したのは、爆炎が放たれようとしたまさにその瞬間。爆ぜる炎は瑠碧が作ったものに押さえつけられ、しかしそれを消し飛ばそうと暴れる爆炎により、凄まじい音と蒸気が巻き起こる。
(「なんて、威力……でも……!」)
 創り出した氷水と風の繭を、より、厚く。
 公園に届かせたくない。広がる被害を少しでも抑えたい。想いを胸に瑠碧は自分と空にいる理久を氷と水、そして風のヴェールでぴったりと覆った。
「サンキュ、瑠碧!!」
 パワーを貰って、守られて。だからこそ、今この瞬間に一撃叩き込める。
 急降下した理久の全体重を乗せた容赦ない踏みつけが、獅子の骨を砕きながら深々と胴に沈んだ。理久はすかさず空へと戻り、勇ましい姿に自然と微笑みを浮かべていた瑠碧は、背筋を駆けた感覚に、考えるより先に行動していた。
 氷と水。風。
 再び創った繭で、爆炎ごと獅子を強く封じ込めれば――今だ、と直感する。
 間違いなく好機と呼べるもそれは、星座獣からすれば真逆のものだろう。赤色を超え、金、更には白へと一気に変化した獅子の色に、瑠碧の中で怖ろしさが再び呼び起こされそうになる。だが――あの獣が、星という命のひとつならば。
「おやすみなさい」
 瑠碧の想いに、否を唱えるようにレグルスが全身を輝かせる。浮かぶ輝きはいくつもの点と、揺らぐ波めいた――星のオーラ。炎を封じる繭を大きく鋭い爪が裂き、石の大地を鋭く抉る。だが。
「そのでかい身体じゃ牙と爪しか使えないと動きにくいだろ?」
 獣の懐に飛び込んだ理久は瑠碧の守りに包まれたまま。白炎の色と熱に染まりながら、見開かれている獣の目を覗き込む。これだけ近いと相手の攻撃を躱すのは至難だが。
「牙と爪しか使わないなら、動きも見切りやすいんだよな」
 加速し、躱す。それだけでいい。
 その次は――一瞬を永遠と錯覚するような、拳撃の雨を与えるだけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

龍之宮・翡翠
アドリブ等歓迎

大物のお出ましか
プランツネットはデウスエクスとはいえ、まだ可愛げがあったが、こちらはどう見ても敵性体だな
こういう方が色々と気にせずに戦える

「|決戦配備《ポジション》要請――|攻撃配備《クラッシャー》」

初めから出し惜しみせずに|決戦配備《ポジション》を要請し、UCを発動し攻撃を重ねる

此処にはイベントを楽しむ一般人も居る
彼等に被害が及ばぬように立ち回る
グラビティ・チェインを求めるのは習性のようなものかもしれない
だが、生命と背中合わせである以上、易々を渡せるものではない
つまりある種の生存競争なのだから、全力で倒す為に武器を振るいUCを重ねて戦う



 燃え続ける星の色。獅子の姿。巨体。
 そして、繰り出す技。
 星座獣レグルスという存在は、ボスという器に相応しい大物のようだ。
 だが翡翠の表情は静かに落ち着いたまま。一度鞘に収めていた斬霊刀を抜き、自分へと向き直るレグルスの視線と殺気を正面から受け止める。
(「プランツネットはデウスエクスとはいえ、まだ可愛げがあったが、こちらはどう見ても敵性体だな」)
 それで困りはしない。プランツネット戦――戦、と言って良いのかも迷うものが相手だったが。あの時とは違い、こういう方が色々と気にせず戦える。
「|決戦配備《ポジション》要請――|攻撃配備《クラッシャー》」
『了解』
 支給されていたインカムに告げれば彼方の声がクリアに届く。短くも堅実さを感じる返答があってすぐ、硬く低い音が地面を叩きながら迫るのがわかった。
 それに警戒を露わにしたのはレグルスのみ。翡翠はすぐそこにまで来た音を確認もせず、堂々立ったまま。動きらしい動きは、自分の左右に並んだ音の主――遠距離操作型の戦闘機械兵を、ちらりと見たその時くらいだ。
「行くぞ」
 告げたそれは、要請に答えてくれた彼らに対してか、それとも討伐対象である星座獣に向けたものか。どちら宛てかを翡翠は告げる事なく斬霊刀を構え、それと同時に戦闘機械兵が一斉に動き出す。
 前衛はざあっと横に大きく広がりながら前進し、その間を後衛の機械兵による銃弾が一瞬で駆け抜ける。後衛からの牽制からすぐ、翡翠の斬霊刀、そのの切っ先が獅子をなぞるようにすとんっと落とされた。
 幾重にもなった衝撃波が迸ったのは、そんな、速く静かな動作の直後。
 形にするならば漣が適したその一撃は、漣に収まらない威力で以ってレグルスを撃った。
 攻撃の間を機械兵の銃撃が繋ぎ、更に前衛に出ていた機械兵らの拳や専用直剣が叩き込まれようとする。だがレグルスが石の大地を砕くほどの力で飛び退き、石の砕ける音が何重にもなって響いた。
「無駄だ」
 恒星の輝きを纏い、太陽の下で何より眩くなろうとも。機械兵を次々にその爪と牙で襲おうとも。まだ在る機械兵は動く限り動き続け、自分もまた、手にした斬霊刀から何度でも屠る為の漣を起こすだけ。あちら側が求めるグラビティ・チェインが生命と背中合わせである以上、易々渡せはしない。
(「つまりこれは、ある種の生存競争か」)
 ならば自分は、脅威が消えるその時まで、全力で狩り続けよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ?星座獣レグルスさんですか、この蜜さんは絶対に渡しませんよ。

それにしても、どうしましょうか?
あんなに強そうなライオンさんにあんな事を言ってしまって、私は全然戦う力なんて持ってませんよ。
ふえ?自分で言ったんだから自分で責任を持てって、アヒルさんは手伝ってくれないんですか?
ふええ、こうなったら破れかぶれです。
決戦配備:Jmをお願いします。
恋?物語で突撃です。
煙幕でこちらの姿は見えないでしょうが、レグルスさんは光っているのでこちらからは丸わかりです。



 星座獣レグルスの真っ白に燃え輝く目がフリルを映し、防具を着けた四肢が石の大地を蹴る度に鋭い傷跡を残す。大きく開かれた口には驚くほど大きく太い牙が並び、雷鳴のような音が轟いた。
「ふえ? 星座獣レグルスさんですか、この蜜さんは絶対に渡しませんよ」
 フリルは手に入れた密をしっかり抱えたまま、レグルスに捕まるまいと必死に距離を保――っては、いるものの。どうしましょうか、と眉をしょんぼりさせた。
 相手は見るからに強そうなライオンだ。他の猟兵達との戦いぶりから、“強そう”が“その通りでした”になるまであっという間に違いない。なのに、自分は宣戦布告じみた事を言ってしまった。
「ふええ、私は全然戦う力なんて持ってませ――」
『グワグワッ』
 アヒルさんからのツンツン、そして身振り手振りならぬ翼振りを交えた言葉に、フリルは「ふえ?」と目を丸くした。
「自分で言ったんだから自分で責任を持てって……アヒルさんは手伝ってくれないんですか?」
『ガア』
「ふええ」
 アヒルさんがこうなのはいつも通りといえばいつも通りなのだが、ちょっとは手伝ってくれてもとフリルが恨めしく思った時だ。追いかけてきていたレグルスの全身にゆらりふわりと立ち上る、幻想的な光――星のオーラを纏ったその雰囲気に、フリルの中で非常ベルが鳴り響く。今すぐ何かしないととにかく危ない!!
「ふええ、こうなったら破れかぶれです……! 決戦配備、ジャマーをお願いします……!」
『了解!』
 半ば悲鳴になっていた要請に、遥か頭上を飛んでいたヘリからすぐさま音声が届いた。人語を理解しているのかレグルスが上を気にしたそこへ、次々に真っ白な煙のラインが落ちて獅子の視界を濃霧のように包み込む。
(「上手く行きました、煙幕でこちらの姿は見えてないですね……でも……!」)
 振り返ったフリルの視界も真っ白だが、星のオーラを纏い輝くレグルスの居場所は煙幕の中でも丸わかりだ。
 フリルは急激なUターンをする。追われていたから、きっと、蜜集めの時よりも速く飛び込めるだろう。その行き先は『怖いライオンさん』だが、走り出したら止まらない、止められない――それが、衝撃?的な出会いから始まる恋?物語だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
蜜集めに夢中ですっかり忘れていましたが、そういえばこれデウスエクス退治でしたね。仕方ない、目的の|ブツ《蜜》は入手しましたし、サクサク退治するとしましょう。

今回使うUCは暴走鮫鱗弾。着弾点に極めて屈強な鮫の群れを召喚する鮫魔術を、デウスエクスの眼前で発動します。
相手は牙と詰めの射程外からの攻撃を軽減するようですが、かまうこたあありません。だったら射程内で発動させりゃいいだけです。

サメこそが世界最強の生物であり、鮫魔術ことが世界最強の魔術だということを思い知らせてくれるわ!



 激しさを増す戦闘とその余波で起きた震動やら煙幕やらレグルスの咆哮やらに、エミリィは両腕を組んで両目を閉じ、真面目な顔でうんうんと頷く事数回。目をぱちっと開き、現状をしっかりと両目に映す。
「蜜集めに夢中ですっかり忘れていましたが、そういえばこれデウスエクス退治でしたね。何ですっけ、星座獣?」
 決戦配備でやって来たクラッシャーな戦闘機械兵だったか、お空でバリバリ音を立てて支援していたジャマーだったかが、そう呼んでいた気がする。
「仕方ない」
 エミリィの長い髪が大きく翻る。さらさらと髪を揺らすのは春風で、しかしその中に、こちらを捉えた獅子の刺すような視線と殺気が濃厚に混じっていた。だがエミリィはニッコリと笑い返す。
「この通り目的の|ブツ《蜜》を入手しましたので、サクサク退治してあげましょう」
 その言葉へ返すように、星座獣レグルスが鮮烈なオーラを全身に纏った。小さな光の欠片や、極寒の空を照らすオーロラ。それら星が創り出す輝きをオーラとして纏った獅子が咆哮を轟かせ、大地を蹴る。
「接近戦ですか? ですがざんねーん! 何とわたくし、鮫魔術を! 嗜んで! います!!」
 1、2、3――レグルスが大地を蹴った僅かな回数の間に、エミリィは先程のものよりも更にキラッと明るいニッコリ笑顔で人差し指を立て――。
「バーン!!」
 銃に見立てた手で迫るレグルスの眼前を指した。たったそれだけで、エミリィの選んだそこがゴリゴリに屈強な鮫達の入場口と化す。鮫の群れはそれはもう爆発的な勢いで溢れ出し、ご自慢の屈強な体と鮫肌で星座獣の全身を強烈に叩き、払い、吹き飛ばし、ドラム型洗濯機に放り込まれた服の如く、デウスエクスという侵略者をもみくちゃにした。
「フッ……牙と爪の射程外からの攻撃を軽減するようですが、だったら射程内で発動させりゃいいだけですからね。どんな性能だろうと、こっちがかまうことあありません」
 それでも、もみくちゃのボコボコにされながら牙と爪で鮫達と死闘を繰り広げている点は、さすがはボス級という所。だがエミリィの鮫魔術はまだまだ続いていた。
「冥土の土産に思い知らせてあげますよ。サメこそが世界最強の生物であり、鮫魔術ことが世界最強の魔術だということを!」

 やはり鮫!
 鮫が全てを解決する!

大成功 🔵​🔵​🔵​

日下部・香
新手か!? 獣、いや星……? 何にしても、強力な相手だってのは間違いなさそうだ。
だが、デウスエクスが襲ってきたなら戦うまで。行くぞ!

敵の武器は爪牙だけ、ってことはそれを封じられれば大きな隙を作れそうだ。【魂断ノ剣】で敵の爪牙を狙って攻撃しよう。
相手の射程外からの攻撃はほとんど効かないようだけど、斬霊刀の間合いなら大丈夫かな。そうでなくても、攻撃が当たりさえすればその部位を一定時間使用不能にできるはずだ。

とはいえ、近づけば相手の攻撃を受けやすくなる。対策が必要だな。
決戦配備Jmで、敵の攻撃を妨害してもらいたい。ほんの少しでも構わない、敵の攻撃が阻害されれば軌道を【見切り】躱す隙も生まれるだろう。



 星座獣レグルスが現れた時は、見た目そのままに獣が現れたのだとまず思った。だがこの世界のライオンでは決してありえない、内部から燃え、熱を宿して光り輝くような体毛と目は、星を思わせる。
 獣か、星か。考えかけた香だが、すぐに思考を切り替えた。
(「何にしても、強力な相手だってのは間違いなさそうだ」)
 相手は紛れもなくデウスエクスだ。
 ならば自分の仕事は――戦う事。地球を、守る事。
「行くぞ!」
 今日、ここで、倒す。その意志を強く宿し響かせた声に、星座獣レグルスが咆哮を轟かせながら突っ込んできた。日を浴びた石の大地よりも、空に輝く太陽よりも、全身を眩いものとなった獣の姿は、香の視界に峻烈な白色を焼き付ける。
(「成る程、これは星だ」)
 ぐわと振り上げられた爪は鋭く方向転換する事で躱し、腹を狙って剥き出された牙は大きく飛び退き逃れる。
 獲物を捕らえきれなかったレグルスの尾が大きく揺れる。焚き火から昇る火の粉めいて、小さな煌めきがザワザワと溢れていくのが見えた。
 香は斬霊刀を手にじりじりと間合いを測る。
 どうも相手の武器は爪と牙だけのようだ。星座を象った爆炎は――技も武器と呼べはするが、正確に武器と呼べるのはやはり、甲冑めいた武具を纏ったあの爪と牙だろう。
(「ってことはそれらを封じられれば、大きな隙を作れそうだ」)
 それは決して容易くない。
 だが、香の中で、それをやらない理由はなかった。
(「やれる。やれなくても、やるんだ」)
 自分はケルベロスだ。
 ここで退いたら、あの獅子を討てない。
 この場所を、世界を、守れない。
「ジャマー。頼む」
 短く告げ、思い切り大地を蹴る。風となって飛び出した瞬間、星座獣レグルスも自分目掛け跳んだのが見えた。大きく開かれた口と、広げられた前脚。射程内に飛び込めば、あれで肉を抉られる可能性は爆発的に上がってしまうが――そこに香の要請に応えたジャマーの一手が降れば、話は変わる。
 戦闘ヘリからの機銃攻撃。短い間隔で連なる銃撃は、今の星座獣に対し有効な傷を与えるには至らないが、何にもならないワケではなかった。ほんの僅かでも前進を妨げれば、香の目と感覚はそこに十分な好機を見出せる。
(「今だ」)
 レグルスの射程内に入った瞬間で斬霊刀を振り上げ、跳ぶ。
 爪から牙へ。当てた刃で鋭く描いた太刀筋は、空へ昇る星の如く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐東・充
【🍯🐰】

【慈愛】でこの星を護る者すべてに加護を
万一にも会場に避難が及ばぬようDfに防衛を要請
Vallisneriaの煙を吸い精神作用効果で肉体のリミッターを解除させる

電撃銃で牽制
射程外からの損傷は著しく減少するとの事だが
電撃による麻痺や痺れはどうだろうか
多少の負傷は厭わず距離を詰め
強化した身体能力で肉弾戦
毒刃仕込んだ靴での蹴りを叩きこむ

無茶な戦い方を咎められれば
抱きかかえられながら「甘えているんだよ」と喉を鳴らす
何せこの身が砕け切っても継ぎ止めてくれそうな名医が
すぐそばにいるのだから
耳元と指に宿る青に、満足そうに眼を細める


ラビオ・ブラフマン
【🍯🐰】
Md要請
戦闘エリアの隔離をお願いするねェ。

…その|煙《モク》、俺にかけてくれたらいいのにィ。
喫煙する充の口元ってセクシーなんだもん。
俺もキメてハイになっちゃお…―UC、発動ォ。

握ったGemutを口元へ。絶えず音波攻撃を浴びせ続けよう。
鮮やかな蹴撃に脳内では拍手喝采。
俺のハニーはさ、銀幕スター顔負けのイイ男なんだよォ?

充が被弾しそうになったら即座に飛翔して庇いに行くね。
必要に応じて、充をハグしたまま上空へ一時退避を試みたい。

ちょっと充ってば無茶し過ぎィ。
デートはこれからなんだから、医者泣かせは程々に…ね?
充は欠片も残さず全部俺のモノだもん。
さっきの蜜みたいに大盤振る舞いしちゃダァメ。



 星座獣レグルスの巨体がガクンと傾きかけ、燃え輝くようだった銅色が僅かに翳る。だが、レグルスはすぐに片方の前脚に力を入れしっかりと体を起こし、顔を上げ、元の輝きを宿していく体に星のオーラが浮かび上がる。
「へーぇ?」
 風に髪を揺らして愉しげなラビオの隣、ぴたりと並ぶ充の視線もレグルスへと注がれていた。
 星座獣と猟兵。1体と2人の視線が、ただ、じっと交わる。
「どう思う、ラビオくん」
「脳震盪を起こしかけたってトコじゃない? 左前脚も調子悪そうだよねェ。……ま、他の猟兵に容赦なくやられてたし、当然の結果だけど」
 そしてあの獅子には、溜まった痛みや疲労を癒やす術も、それを施してくれる者もいない。状態を診て、ある程度の判断を下してくれる猟兵ならば居るけれど、ラビオがやるのは、そこまでだ。
「行こうか、ラビオくん」
「オッケー」
 ――この星を護る者すべてに加護を。
 想いを乗せたよく通る低い声が、想いを同じとする存在に機械腕ヨマンダの加護を贈る。充の要請に応え、レグルスを祭会場へ行かせまいと自らを壁としたディフェンダーと、その更に奥を固めるメディックにも。
 充はというと、特別な煙草を1本咥え、火をつけていた。しっかりと吸い込んでから、吐いた息に煙がうっすらと乗って空に昇っていく。あーあ、と残念そうな声はすぐ隣から。
「……その|煙《モク》、俺にかけてくれたらいいのにィ」
 瞠られた青色にラビオはゆるりと目を細め、だってさ、と燃える獅子座へとその視線を移していった。
「喫煙する充の口元ってセクシーなんだもん。俺もキメてハイになっちゃお」
 俺のは煙草じゃないけど。電子ドラッグを含み、そして握ったハンドマイクは、いつだって手にも心にも馴染む。それを口元に寄せたなら――特大パフォーマンスの始まりだ。
『Bring the beat――Spin the shit!』
 世界は変われど『DJ Nirvana』は変わらない。言葉のひとつひとつがズドンとレグルスの内臓に響き、神経までも染めていくように、何度も何度も重ねられていく。
 そんなパフォーマンスの直前に向けられた『一緒にいくよ』という言葉が、充に小さな笑みを浮かべさせ――ガシャンッ。構えた電撃銃から即座に稲妻めいた軌跡を迸らせる。
 連続パンチのように浴びせられるラビオからの音と、この電撃銃。射程外からのこの2つは目に見えた傷を与えるには至らない。だが2人が絶えず与えるそれは決して無などではなく、無ではないからこそ、重ねられた分がふいに顔を出すのだ。
 バヂンッ。
 音と光が爆ぜ、レグルスの巨体が弾かれるようにぐらついた。倒れまいと前脚で大地を強く踏みつけたその顔に、痛みを堪えた為の皺がハッキリと浮かぶ。
(「よし」)
 その反応に充は躊躇わず距離を詰めた。吼えたレグルスが振り上げた前脚、自分の腕よりも遥かに分厚く大きなそれを見上げながら、電光石火の勢いで落とされた爪へ掌底を叩き込む。
 鋼の防具と宝石種の掌底。ふたつの激突が、ラビオのパフォーマンスの合間に大きな音を差し込んだ。遠くまで響きそうなそれは、祭り会場で聞いたなら鐘の音と錯覚したかもしれない。
(「春のお祭りを祝う鐘の音、って思われてそう」)
 くすりと笑うラビオの視界で、充の掌底を受けたレグルスの巨体が仰け反った。そのまま後ろへスッテン、なんて可愛い事には残念ながら成らず、レグルスは全身の筋肉を使って無理矢理体勢を戻して飛び退いた。そこからすぐ、バネのような勢いで充に飛びかかる。
 だがレグルスが離れた直後、充もまた次の動作にしっかりと入っていた。
 身を低くしながら体を捻り、足に力を込め――思い切り振り上げる。
 毒刃を仕込んだ靴による蹴りは気持ちいいくらいレグルスの腹に決まり、ラビオはつい感嘆の声を漏らした。すぐに星座獣の為のパフォーマンスを綴り響かせるが、脳内では充への拍手喝采が収まらない。入れられた蹴撃のスピード、角度、そして様子から推測出来るその威力。どれもが鮮やかだった。
(「俺のハニーはさ、銀幕スター顔負けのイイ男なんだよォ?」)
 そんなハニーの、とびきり男前なアクションを特等席で見られた。肩を上下させ笑っていたラビオは、レグルスが見せた次の動きに「あ」と目を瞬かせる。勿論、言葉という音の波は止めていない。
 レグルスの全身に被る獅子座の輝き。あれはまずい。
 急速に輝きと熱を増すレグルスの傍にいた充をハグして、一気に空へ。遠くなった地上から一度、レグルスの咆哮が聞こえた気もするけれど。ラビオにとって大事なのはそれではなかった。
「ちょっと充ってば無茶し過ぎィ。デートはこれからなんだから、医者泣かせは程々に……ね? 充は欠片も残さず全部俺のモノだもん。さっきの蜜みたいに大盤振る舞いしちゃダァメ」
 その言葉に、急に空へと連れて行かれ瞠っていた充の目がゆるゆると細められた。無茶。確かにそうなのだけれど。
「甘えているんだよ」
 この身が砕け切っても、継ぎ止めてくれそうな名医がすぐそばにいる。
 安心と、信頼と――いる、という幸せ。
 耳元と指に宿る青を映した目は、より満足気に細められた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルト・クロフォード
ナザク(f41230)と一緒ニ。

すごく強そうな敵が来たナ……!
お祭りを楽しむためにも、頑張るゾ!

敵から距離を置いて、【フリージング・ロングハンドソーズ】を撃ち込む。
もし地面に刺さったなら刺さった剣を線で繋いで形作るような範囲に氷の魔力を展開して【凍結攻撃】をして動きを少しでもにぶらせるゾ。

これで少しでもナザクの助けになれ、バ……
ナザク、大丈夫カ?!
いくら修理で直るとしても……友人の体が傷つくのは、なんというカ……私は不安になル……どうか、命を軽く扱わず、無茶だけはしないでくレ。お願いダ。(懇願するように


ナザク・ジギタリス
オルト(f01477)と
そうだね、手早く着実に行こう
引き続き【インフェルノ・レイジ】で交戦
脚部パーツ(Petaurista)で空中戦を展開
ガトリング砲を構え弾幕での目くらましと
オルトの力を借りて軽減されない間合いに踏み込み
ブレード群で斬り刻む
強力な牙や爪を極力喰らわないようヒット&アウェイを心掛ける
ただ、おれの負傷は修理でどうにでもなるから
オルトや周囲に危害が及びそうなら盾になるよ

怪我を心配されたら、予想外の言葉に少し目を見はってしまうかも
オルトがそう言うなら、気をつける
……優しいんだね、あなたは

彼の妨害がうまくいったらガトリングとブレードの双方を一斉に叩き込む



 空を睨み、吼えた星座獣レグルスの目が地上へ戻る。
 ぐるる低い声を数度響かせたレグルスの白く燃え輝く目、枯れない殺意にオルトはむむっと表情を引き締めた。
「すごく強そうな敵が来たナ……! お祭りを楽しむためにも、頑張るゾ!」
「そうだね、手早く着実に行こう」
 手に入れた蜜もあるし。ぽつり添えたナザクの目と、頷いたオルトの目。討つべき獣をしっかりと見つめるそれぞれの目に、完全に2人の方を向いたレグルスの巨体が映る。
 ぐるんと半円を描くように尾を揺らし、大きく一鳴き。雷鳴の塊に似た咆哮を轟かせたその姿を、眩い星のオーラがぴたりと覆う。そしてまた、ぐるると低い音を1回。太く大きな脚が1歩前に出て――ぐっ、と力を溜め込むような動きの直後、どうっと飛び出してきた。
 その瞬間、地獄の炎を強く噴出させたナザクの姿が鋭く飛翔し、オルトは後ろへと跳ねるように移りながら数え切れないほどの剣を現した。
 真の姿のまま空を翔けるナザクと、オルトが放った時計の長針を思わす剣。2つが華麗に混じり合いながら獅子へと向かい、きらきらとした軌跡を無数に生む。それは突風に乗って舞う花びらのような縦横無尽さでレグルスを翻弄し、剣からはシャララと音の波も生まれていた。
 翔ける2つにレグルスが吼え、爪と牙で抗おうとし――だがそこへ、凄まじい銃声が何小節かのメロディめいた長さで届けられる。おお、と感嘆の声と共に目を丸くしたオルトが見たのは、左手のガトリング砲から容赦なく銃声を響かすナザクの姿。それから、急激に烟っていくレグルスの周囲だ。
「そうカ、煙幕!」
 どれだけ強力な攻撃でも、十分な環境で揮われないのであれば恐ろしさは正常時以下だ。
 ぱっと目を輝かすオルトが見上げる先、ナザクが表情筋をぴくりともさせずに頷いて――ガギィンッ! 響いた音の詳細を捉えるべく、感覚を開けながらガトリング砲を使い続ける。
 音は一度だけでなく数度起きた。それが何なのか理解したのは、大地に刺さる剣を見た時だ。
 レグルスを追って翔けた剣のいくつかが、レグルスの爪や牙に軌跡を砕かれて、または獣の身を貫けず地面に刺さっている。今のレグルスは手負いの獣だが――それでもまだこれだけ動き回れるんだ。静かに評価するナザクはしかし、次の瞬間僅かに目を瞠った。
「こういう事もできるんだゾ!」
 どうだ! と誇らしげなオルトの声と共に、刺さった剣から剣へと冷気のラインが奔ってゆく。1つ、2つ、3つ――どんどん剣同士が繋げられ冷気で結ばれていく度に、氷の力が高まっていく。そして。

 キィンッ!

 石の大地も、その上を満たす空気も。周囲が纏めて凍りついた瞬間、煙幕の中から獣の悲鳴が起きた。どうっと何かが倒れる音も。ぶわりと大きく揺らいだ煙幕が、ある箇所を中心に荒れている。
「ナザク!」
「うん」
 あそこだ。
 ガトリング砲の轟音が消え、煙幕の中にナザクが流星のように突っ込む。その勢いで大きく晴れていく煙幕の内側に、氷の魔力に捕まった獣がいた。
 獰猛な牙が何本も覗く口が開かれ、咆哮が轟くより先。ナザクはレグルスの間合いに踏み込んだ。すぐ近くで巻き起こるブレード郡の飛翔。視界を灼くような無数の軌跡。痛みと怒りに満ちた咆哮と共に飛びかかろうとした獅子に捕らわれるつもりはない。ナザクは再び空へと翔け――ギャリリという耳障りな音と感触に「ああ、」とだけ感じていた。
(「少しやられたかな」)
 だが、それだけだ。自分はまだまだ、問題なく稼働出来る。
 そしてオルトが張り巡らせた氷の結界も、時を刻むような剣の舞も、まだ存在してる。
「ナザク!」
「大丈夫。続けよう」
 あいつはまだ、あそこにいるのだから。
 冷たく静かに指し示す声にオルトはしっかりと頷き、まだ空を翔けていた剣を差し向けた。熱く輝く星座獣への恐れはない。この獅子を倒して、お祭りを楽しむのだ。
(「ナザクと、一緒ニ!」)
 負けない。勝つ。
 その想いは冷めも薄れもせず――そしてそれは、レグルスも同じだった。ごうごうと轟く雷鳴のような凄まじい咆哮同時に、爆炎を齎す獅子座の輝きを猟兵の目に灼きつけたのである。
 数秒と待たず熱は暴力的に膨れ上がり、周囲へと容赦なく喰らいついた。爆炎の勢いは凄まじく、だが、それに呑まれたオルトは目をパチパチとさせ目の前のものを見上げていた。地獄のものとは違う炎を遮る盾となったナザクの目が、何度も瞬く目を静かに見返している。
 ひく、と喉が震えてすぐ、オルトの頭は目の前の友人の事でいっぱいになった。
「ナザク、大丈夫カ?!」
「……おれの負傷は修理でどうにでもなるから、大丈夫だよ」
 修理すれば直る。きっとそれは事実で、ナザクは嘘を言っていない。そう、解るのに。オルトは頷けなかった。
「友人の体が傷つくのは、なんというカ……私は不安になル……。どうか、命を軽く扱わず、無茶だけはしないでくレ」
 お願いダ。
 懇願するような言葉に、ナザクが一度だけ瞬きをした。
「オルトがそう言うなら、気をつける。……優しいんだね、あなたは」
 その優しさを――心の機微を、いつか、正しく理解出来るだろうか。
 それがいつになるのか。出来るのか。今は全く解らないけれど。

「これ以上、私の友人を傷つけさせないからナ!」
(「本当に、優しいな」)

 色も濃さも違うけれど、同じものを胸に。
 2人の武器が獅子の体に叩き込まれていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
【白夜】
気持ち良い天気
桜も綻び、公園に祭りを楽しみにする方々のわくわくが伝わってくるよう
勿論、それは僕らもだが

荒ぶる獅子の纏う輝きは…美しくもあるが
うん、うさ蜜とこの地
どちらも焼かれるのは避けたいね
君や夢路と共に駆けられるなら
頼もしいし取れる手も増える
なるべく接近戦の方向でいこうか

相棒から借りた風の魔力を刃に降ろし
攻撃力強化
リティがつく隙を作りたい
攻撃引き付け役にと、薙ぎ払いで仕掛け
獅子の牙や爪の攻撃は見切りで放たれる機を注視
弾き、軌道を逸らし届かせないように
視線を誘いに舞うめろとも連携を意識

伸び動きを縛る彼女のしなやかな茨に
視線で感謝と、仕掛ける好機だと笑み
踏み込み、体勢を崩す為脚元へ攻撃を


城野・いばら
【白夜】
愛称:リティ

はる、らんらん
心地良い春、おはようの春
巡る訪れを喜ぶこの世界のコ達から
春を奪う何てさせられないね

まだウサ蜜さんもあるから
被害が広がらないよう接近戦でと
駆けるなら共にと言ってくれた頼もしい旦那さん達
夢路も一緒に先行し、
視線をお誘いして陽動をお願い

私では追いつけなかっただろう獅子さんの動き
類達が作ってくれた隙に、
不思議な薔薇の挿し木を伸ばして捕縛
持ち前の怪力と
絡ませた茨からの生命力吸収で
一度捕まえたなら、離さない
私の家族に牙は向けさせないのよ

視線重なった、体勢が崩れた先
ぐっと至近まで踏み込んで
挿し木を突き刺す

ポジション要請:DF
範囲外に被害無いよう
バリケード等で周囲の防御強化を



 陽射しも。空気も。風も。匂いも。
 全てが柔らかくて温かで、気持ちがいい。
 今は遠い桜も綻んでいるのが見え、冴島・類(公孫樹・f13398)は自然と目を細めていた。何だか、公園での祭りを楽しみにする人々のわくわくが伝わってくるようだ。
(「勿論、それは僕らもだが」)
 隣にいる城野・いばら(白夜の魔女・f20406)を見てふわり微笑めば、くるり。公園の方に柔らかな視線を向けていたいばらの目が類に向く。目が合った途端、いばらの眼差しはふわっと綻んだ。
「はる、らんらんね。類」
 心地良い春。
 おはようの春。
 沢山の命が元気になって、眠っていた命とまた再会したりして――そうして巡る訪れを喜ぶ存在を想うと、星座獣への怒りがぽこぽこっと沸騰し始める。
「この世界のコ達から春を奪うなんて、させられないね」
「ああ。荒ぶる獅子の纏う輝きは……美しくもあるが」
「ね、類。まだウサ蜜さんもあるから……」
「うん、うさ蜜とこの地。どちらも焼かれるのは避けたいね。なるべく接近戦の方向でいこうか」
「ええ!」
 若草色と女郎花色は優しく笑み、花緑青が喜びでぱあっと輝く。
 交わった視線は時折動きがガクつくようになった星座獣へ。
「夢路、お願いね」
 いばらの頼みに、鮮やかな青に染まった幽世蝶が勇ましく羽ばたき、類と並んで翔けていく。視界の隅、端っこも端っこな所に続々と出来上がっていく守りの壁にも、いばらは嬉しそうに咲って――きりり。えいえいおー、の拳を握って駆け出した。


 駆け、距離を詰める自分達を出迎えるように、レグルスは星のオーラ纏う体を向けていた。
 もしかしたら。自ら駆け、飛びかかる労力を抑えているのか。その可能性を胸に留めながら、類は手にした刃をそうっと撫でた。
 絡繰の相棒から、己を伝って刃へと。しゅるりと清流のような涼やかさで降りた風の魔力が、類の髪でふわりと遊ぶ。
(「ありがとう」)
 ふ、と笑った眼差しが凛々しいものへと変わる。
「いざ」
 獅子へと短く告げ、だんっと石の大地を蹴る。刃を払う動作の前、レグルスの視界を幽世蝶が軽やかに過ぎた。真っ白に燃えて輝く獣の目は、眼球がそちらへ向いたかどうか少々判りづらい。だが、四肢の僅かな動きが『誘われた』と教えてくれた。
 ああ。なんて頼もしい。
 芽吹いた喜びはその頼もしさに応えようという想いに変わり、それを乗せた薙ぎ払いがレグルスの輝く体に傷を与える。ごおおと至近距離で轟いた咆哮と共に突き出された獣の前脚は、気付けばそこにあったと錯覚するほど速い。しかし四肢を注視していた類は、風の魔力を得た刃で受け止め、ぶわっと膨らませた風で以って強く押し返した。
 刃を構え直す僅かな間は、ひらりと飛び込んだ夢路が繋いでくれる。今日の空に似た淡い青の幽世蝶は、レグルスの頭上や爪と牙が届きそうで届かない距離を行ったり来たり。敢えて近付けば、鋭い爪が翅を引き裂こうとして――ガギィン! 類の刃が風と共にそれを防ぎ、弾くと同時に刃を閃かせて、獅子の武器である爪に真っ直ぐな傷を残す。
(「わ、ふたりとも凄いわ!」)
 ぐるぐると旋回する風に乗った葉っぱさんみたいに速い、といばらは目を瞠りながら、しっかりとレグルスの動きを見る。
 力強さも兼ね備えた俊敏さが、先んじて挑んだ猟兵達によって削がれているとはいえ、自分では獅子の動きに追いつけないだろう。だからこそ花緑青の目は真摯に見つめ――。
(「あら? 獅子さん、もしかして左前脚が……?」)
(「――庇っている」)
 花緑青の視線が注がれる先を感じていた類も、同じものに気が付いた。
 夢路という頼もしい仲間を伴にしても、疲労を重ねていようともなお油断出来ない相手だ。ならば見えた弱点は――申し訳ないが、利用させてもらおう。何せ、共に獅子と戦ってくれている夢路にも、大切なリティにも、獅子の一撃を届かせたくはない。
 躱す時、立ち位置。レグルスから見て左側に在る事を意識しながらの、夢路との連携。牙も爪も届かず掴めない相手との戦いは、思うよりも早く限界を迎えさせた。
 ふいにがくんと崩れ落ちた、燃え輝く巨体。それでも牙を剥き、すぐに体を起こし、右の前脚で肉も骨も抉ろうとするレグルスの爪を、類の刃が真っ直ぐ横に薙ぐ。
 空に舞った欠片は、鋭い弧を描く――獅子の爪。
 刹那満たした静寂を素早く翔けた緑が絡め取る。突然現れた緑は暴れる巨体の上を一瞬で駆け抜け、捕まえた巨体が暴れても全く緩みはしない。不思議な薔薇の挿し木はとてもしなやかだけれど、一度捕まえた悪いコを決して離さない強さも持っているのだ。
「私の家族に牙は向けさせないのよ」
 むん、と頬を膨らませたいばらの表情は、感謝と好機を伝える類の笑みに触れて綻んだ。
 はる、らんらんの、その為に。胸元に類の刃が突き立てられ、体勢を崩したそこへいばらがぐっと至近まで踏み込み――挿し木をひとつ、ぷっすりと。
 たちまち立派な成長タイムに入った緑が後ろ足に致命的な傷を与えれば、赤く燃えるようだった銅色が翳りだしてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
ハッ…こりゃまた随分立派な爪と牙だ
けど…こっちだって負けちゃいねえんでな!
剣に風の魔力を送り斬撃を飛ばす
…っと、あんま効かねえってことは
ビビってないでよって来いってかぁ?
アレスを見て頷き一つ
任せたぜ、俺の盾
拳を合わせて先に出るアレスから視線をそらさず
靴と剣に魔力を送りながら力を溜める
アレスがタイミングを作ったら
一気に距離を詰めて叩いてやる…!
アレスがいるからカウンターなんて考慮に入れず
その分攻撃に力を注ぐ

けどまあ、さすが星ってか
数撃入れただけじゃ無理そうだ
なら、星には星をぶつけてやろうぜ
相手が疲弊した頃合いを狙って
ふたりで特大のヤツをぶちかましてやるよ
【彗星剣・熾天赤星】…!


アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎

まるでしし座の化身だね
(敵から彼を庇うように前へ)
…成る程
ならば今度は僕が相手だ
相手が星の獣であろうと、我が盾はそう易々と破れはしないと示そうじゃないか
任せてくれ、僕の剣
拳を合わせ、駆ける

さあ、僕を見てもらおうか!
剣に光属性を強く眩く宿し
衝撃波を放つ勢いで地面にも魔力を叩き込み
囲うように光を噴出させ範囲攻撃
謂わば挑発
狩ってみろと僕へ意識を惹かせよう
攻撃が来ればオーラ『閃壁』を纏わせた盾に噛み付かせるよう受け止め
閃壁に麻痺を込めた雷属性を叩き込み放電
その場に縫いとめ、セリオスの援護を!

ああ。獅子の星を討つ双つ星をお見せしよう
敵が疲弊した隙へ接近
ふたりで【彗星剣・『熾天赤星』】!



 星座獣レグルスが吼える。四肢に力を入れ、立ち上がろうとして――がくんと崩れ落ちる己の体に、理解が出来ぬと怒るように吼え続ける。燃えて輝くような赤い銅色が、翳ってはまた光を宿し、翳ってはまたを繰り返す。
「まるでしし座の化身だね」
 最後の最期まで決して諦めない様は、獅子の見目に相応しくもあるのだが。
 アレクシスの感想にセリオスは頷き、一部を斬られても未だ、武器として揮えば脅威になるだろう四肢を見て口の端を上げる。
「ハッ……こりゃまた随分立派な爪と牙だ。けど……こっちだって負けちゃいねえんでな!」
 爪と牙はないが、何を前にしても折れない剣がこちらには在る。
 剣に風の魔力を送り、そのまま斬撃を飛ばす――力強さも鋭さも十分である筈のそれは、星のオーラを纏う巨体に届きはしたものの、思っていた結果とは程遠い。
「……っと、あんま効かねえってことは、ビビってないでよって来いってかぁ?」
「……成る程。ならば今度は僕が相手だ」
 セリオスを庇うようにアレクシスは前に出る。手にするものは、共に戦場をくぐり抜けてきた白銀の騎士剣と盾。形あるものはいずれ壊れるというが、このふたつは、それとは無縁の如くアレクシスの手に在る。
「相手が星の獣であろうと、我が盾はそう易々と破れはしないと示そうじゃないか」
「任せたぜ、|俺の盾《アレス》」
「任せてくれ、|僕の剣《セリオス》」
 拳を合わせた音が互いの耳を心地よく打ってすぐ、アレクシスは駆けた。その姿からセリオスは視線を決して逸らさない。自身の靴と剣に魔力を送りながら、ただただ、力を溜め続ける。

 ――まだ。
 ――まだだ。

 じっと機をうかがえるのは、アレクシスだからだ。かの盾がどれほど強く頼もしいか、セリオスは小さい頃からよくよく知っている。あの頃も、そして今も、アレクシスは強い。
 その時を待って静かに熱を宿す星夜の瞳に、ふいに眩い光が映った。
「さあ、僕を見てもらおうか!」
 騎士の声と共に剣が聖なる光を宿す。その眩さは空に輝く太陽よりも白く、レグルスの双眸よりも強い眩しさで獅子の視界を灼いた。放たれた衝撃波は星座獣の巨体を激しく揺さぶり、更には大地の内を駆けてレグルスの周囲から光の柱を迸らせる。

 僕を、狩ってみろ。

 胸の裡まで突き刺し射抜くような、鮮やかな青の眼差しに、レグルスの純白に輝く目がより強い輝きを宿す。低い低い唸り声と共に起こされた巨体。必要最低限の動きに留められたそれは、獅子の限界が近いと示すが――致命を与える機を決して逃すまいという獰猛さと殺気には、全く翳りが見えない。レグルスが抱くそれには、決して限界がないのだ。
 だからこそ、アレクシスは万全の状態でレグルスの跳躍を正面から受け止める。
 光の壁を纏った盾を、ここだと誘うように自身の前に構える。
 獲物を狩るには邪魔になるそこにレグルスの爪と全体重が掛かれば、当然の結果として相当な重みに見舞われる――が、アレクシスは両の脚で石の大地をしっかりと踏みしめ、レグルスの体が確かに縦に触れているその瞬間に雷の力を叩き込んだ。
 光とはまた違う峻烈な輝きが爆ぜ、凄まじい衝撃がレグルスの全身を貫く。
 飛びかかった時の体勢のまま、その場に縫い留められたレグルスの姿は、そのように創られた巨像のよう。しかし、がくり、がくんと体を震わし、無理矢理にでも動こうとする獅子は巨像になれはしない。
 この獅子は紛れもなくデウスエクスで――日常を奪い、蹂躙する、許し難い侵略者だ。
「セリオス!」
「おう!!」
 セリオスは力いっぱい地面を蹴り、一気に距離を詰める。その姿に防御の『ぼ』の字も存在しない。必要ないからだ。世界一堅牢で、強くて、信じられるアレクシスがいる。カウンターなんて考慮に入れず、その分を――全てを攻撃に変え、星を宿す黒鳥の一撃が獅子の巨体に叩き込まれた。
「けどまあ、さすが星ってか。あと何発か……いや、数撃入れただけじゃ無理そうだ。なら、」
 星には星をぶつけてやろうぜ。きらきらと輝く星夜の目に、朝焼けの空気が澄んだ時のような、鮮やかな青い目が笑って応える。
「ああ。獅子の星を討つ双つ星をお見せしよう。……多分、これがお見せ出来る最後の機会だろうしね」
 アレクシスの言葉とセリオスの視線に、レグルスが低く唸る。
 視線と体は2人に向いているが、巨体を支える筈の四肢には力が入り切っていない。左の前脚はまだ何とか、という印象だが、後ろ足が限界を超えている。先程の跳躍と――そのお返しである放電が引導を渡したのだ。
「冥土の土産にはいいと思うぜ? とっておきの星だからよ」
 そう告げて、セリオスはアレクシスと視線を交え、誇らしげに笑む。
 青宵の剣と、赤暁の盾の光。その2つに2人の魔力が合わさる事で完成する聖なる剣は、どんな困難も乗り越える、導のような輝きを見せてくれる。その色と輝きは、独りの痛みや苦しみを味わおうとも、立ち上がる力をくれるものだ。
「見せてやろうぜ、アレス。俺とお前の2人で!!」
「ああ。僕ら2人の星を、見せてやろう!!」



「――ん?」
「あらどうしたの、あなた」
「いやあ……今、桜の向こうにね。彗星が見えた気がして……」
「あらあら、やあねえあなた。今はお昼よ? ……でも」

 春の空に見る彗星はきっと、忘れられないくらい綺麗でしょうね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『青空の下でイベントを』

POW   :    とことん楽しもう

SPD   :    効率よく楽しもう

WIZ   :    のんびり楽しもう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Shiny spring day
 空の青。風と陽射しの柔らかさ。それから、桜が魅せる輝き。
 行き交う人々は思い思いに春に触れ、春を愛で、春を味わっている。
 春も。人々も。全てが、今日の戦いが始まる前と変わらない姿で、そこに在る。

 整備された遊歩道は公園のあちこちに通じている。煌めく水面と桜の共演が見事な池には、案内板に従えば大丈夫。ベンチが空いているかどうかは運次第だけれど、春の優しさに触れた人々がそのうちに空けてくれるから、大いに待たされる事はない筈だ。

 グルメを味わうのなら、キッチンカーが並ぶ石畳通りの隣、今だけの飲食専用エリアへ。残念ながらそこに桜は咲いていない。その代わり、テーブルに付いているパラソルの内側が桜の造花でふわふわと満たされており、爛漫の春にささやかな彩りを添えている。
 ちなみに飲料専門のキッチンカーも出店中。地元のコーヒーショップではベーグルサンドも販売中で、日本からやって来た日本茶専門店もある。アルコール方面は、アメリカと日本の企業が共同で出したキッチンカーが、アルコール好きから大評判。

 噴水広場でのバザーは、アメリカと日本の品々と巡り会える、賑やかなマーケットのよう。新しいもの、伝統的なもの、「もしかしたら掘り出し物では」と心くすぐられる骨董品まで様々だ。

 そんな爛漫の春は誰も彼もを等しく迎えてくれる。
 難しく、厳しいルールはない。大事なのは――。
「桜の樹に触らない、根を踏まない。あと食事は飲食エリア限定になっていますね。以上です。眠くなったらあっちの芝生広場がおすすめですよ。我々が絶えず巡回してますので、ご安心を」
 そう言ってベーグルサンド片手に笑ったのは、休憩中の警察官だった。
 
フリル・インレアン
ふわぁ、さっそく戦利品の鑑賞です。
転売ヤーさんに攫われず、星座獣さんに壊させずに守り切った私の宝物です。
ふえ?そういえば、最後の関門がまだ残ってました。
アヒルさん、この蜜さんは食べさせませんからね。
いくら美味しそうだからって、絶対にダメです。
ふええ、この蜜さんは絶対に渡しません。



 春祭りと人々の命を摘み取ろうとしていた脅威が無事に取り除かれれば、全ての人にと開かれた門をくぐって、いざ、春祭り会場へ! という事でフリルも人々と桜で賑わう公園を訪れていた。早速と始めたのは、勿論――。
「ふわぁ……」
 うっとり。キラキラ。
 大きな赤い目に、蕩けるような黄金色の煌めきがひらひらと降る。
 フリルが夢中になって見つめているのは今日の頑張った成果そのもの、戦場で一生懸命手に入れた戦利品――プランツネットの蜜だ。
「私の、宝物です……」
 星座獣に壊させる事なく、守りきった。
 そして星座獣がきらきらとした星屑になって消えた後、どこから情報を入手したかいそいそと現れた邪悪なる転売ヤーに攫われる事もなかった。
 これは、紛れもなくフリルの――自分だけの宝物だ。
「ふわぁぁ……」
 掌に乗せれば、掌にほわりと黄金色の光が映る。空にかざせば、また違った煌めきと透明感を見せてくれる。フリルは心がぽかぽかするのを感じながら、上機嫌で宝物を眺めていた。が。
『クワァ~……』
「ふえ?」
 すぐ傍から聞こえた、自分のものではないうっとりボイス。
 どこからどう聞いてもアヒルさんのうっとりボイスである。
 ハッとしたフリルがアヒルさんに目を向けると、待ってましたとばかりにアヒルさんがフリルを見つめ返してきた。それはもうキラキラうるうるのお目々で。
(「そ、そういえば最後の関門がまだ残ってました」)
『ガァ~♪』
 きゅぴりん。
 アヒルさんからのスイートでホットな視線に、フリルはぷるぷると首を振る。
「アヒルさん、この蜜さんは食べさせませんからね」
『グワ?』
「ふえっ。何言ってるかわからないって……いくら美味しそうだからって、絶対にダメです」
『……グワワ~?』
 ずい。ずずい。
「ふええ」
 迫りくるアヒルさんにフリルは半分たじたじになっていたが、もう半分は違った。それは勇気や希望の類で、アヒルさんに簡単に啄まれてしまうかもしれないけれど――フリルは蜜を抱えて走り出す。
『グワ!?』
「この蜜さんは絶対に渡しません~!」

 だってだって。
 この蜜さんは、宝物なんです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
花!より!お団子!
って訳で、早着替えで私服に着替えたら、
サーモンたっぷりベーグルサンドとドネルケバブ、それからお好み焼きと焼きそば、たこ焼きとからあげも買っちゃうぞー!
「いっただっきまーす♪」
飲み物はちょっと贅沢に専門店のキッチンカーでほうじ茶と玄米茶を注文だー♪

ある程度もぐもぐ食べてたら、グリモア猟兵さんを見つけたので、呼び止めて…
|ちょっと欲張りすぎたもの《ケバブとお好み焼きと焼きそば》を収納する為に開いてたUC:無限収納 からブタさんの蜜とオマケに小さいのを幾つか渡すよ~
「はい、良い依頼を見付けてくれたお礼☆」
その蜜は好きにしちゃっていーよー
僕は桜ガン無視でお食事再開だ~!



 蜜はしっかりばっちり確保した。
 星座獣も、ペンペン草が残らないほど叩きのめした。
「となればやっぱり……」
 インディゴはニヤリと笑い、春祭り会場である公園入口――アンティークな印象の、開かれたままの門を軽快に通り過ぎた。桜が特に見事という池はかなりの人気スポットなのか、入ってすぐのそこで警官が拡声器片手に案内しており、尋ねる・尋ねられる手間を可能な限り省こうとする努力が見えた。
(「ふーん、あっちか。けど僕は花よりお団子なんだよねー♪」)
 早着替えで私服にぱっと着替えたのも、その為だ。
 門を通過した時以上の軽快さでインディゴの足が石畳通りへと向かう。最初に鼻をくすぐった良い匂いは――よくわからないけれど、これは肉が焼かれている時の、あの美味しい匂い!
 インディゴは目を輝かせ、気になった店からどんどん並び、じゃんじゃん買い、買ったもので両腕を満ち満ちにしていく。そうして満足行くまで買ったなら、飲食エリアまで一直線。潤沢に用意されていた席のひとつを取ると、テーブルの上に広げたグルメ達を見て――ぴかーっと明るい笑顔を浮かべた。
「いっただっきまーす♪」
 サーモンをけちらず使ったベーグルサンド。ソースも美味いドルネケバブ。日本の祭といえばのお好み焼きは具がたっぷりで、焼きそばは甘辛く濃い味付けがキャベツや豚肉と素晴らしく絡み合ってたまらない。
「んー、このたこ焼きも美味しい! じゃあこっちのからあげは……うっま!?」
 サクサクの衣の奥には、ぷりぷりジューシーな幸せがぎゅぎゅっ。
 食べ物だけでなく、飲み物もしっかりと贅沢路線だ。専門店キッチンカーで買ったほうじ茶と玄米茶は、ほっと落ち着く味わいと一緒にインディゴの喉を潤してくれる。
 これは? じゃあこれは? 順に楽しんでいたインディゴの目が、ぱちっと瞬いた。
「おーい、グリモア猟兵さん!」
「ん? お、楽しい事してるじゃないか!」
 豪華なテーブル上を見たラシードの笑みにインディゴはおかげさまでと笑い、『扉』をコツン。ぱかりと開いたそこに手を入れて――ごそごそごそ。
「あったあった。はい、良い依頼を見付けてくれたお礼☆」
「はい!?」
 凄まじくシリアスな顔で驚くラシードに、インディゴはホントホントと笑い、豚の形をした蜜と木の実のように小さな蜜を指さした。
「その蜜は好きにしちゃっていーよー」
「えっ」
 そう言われた男の脳内では、蜜と相性抜群だろうあんな料理こんなレシピがぐるんぐるん。お祭状態なんて知らないインディゴは、頭上でふよふよそよぐ『桜』も他所に、ご機嫌笑顔で何個目かのたこ焼きをぱくっと頬張るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
月風

まずは腹ごしらえするか
手を繋ぎキッチンカーを眺め

折角来たんだし本場っぽい奴食ってみたいな
ハンバーガーとかないんかな?
なかったらまぁベーグルサンドでもいいけど
何か肉が沢山入った奴
瑠碧はどうする?
お、いいな
コーヒー買う?折角だし
成程レモネードかそれも旨そう
…かき氷は?

造花か
こういうの洒落てるよな
パラソル指しつつ腰を下ろし
じゃ食うか
いただきますと手を合わせてぱくつき
んっ肉旨っ
コーヒー啜り
うん…まぁ苦いけどこうして合わせるとコーヒーも
…やっぱ砂糖とミルク入れとこ
差し出されぱくり
さっぱりしてて旨っ

瑠碧食べ終わったし
桜見てから芝生広場まで行って休憩しないか?
立ち上がり手を取り
ちょっと膝枕とか…駄目か?


泉宮・瑠碧
月風

では落ち着いてお祭り、ですね
手を繋いでキッチンカーへ

色々な食べ物がありますね
日本文化もあって、迷いますが
私は…ベーグルサンドにしてみます
クリームチーズにサーモンやオニオンのおかず的な
コーヒーは後で…御飯のお供にはレモネードを
かき氷も後で食べますよ、勿論

買い終えたら飲食専用エリアへ
パラソルがお洒落と思ったら
造花なので、ほっとして
後で、実際のお花も観に行きたいです
いただきますと手を合わせて
ん、こちらも美味しい
理玖も一口いかがです?
あーん、と差し出し
理玖、珈琲飲めるように…あ、はい、無理せず

食後にかき氷も食べ終え
はい、行きます
…公園に着いたら、で
照れつつ、膝枕に了承して手を取って立ち上がります



 青い空の下に広がるものは、日常と隣り合う特別な日、春の日和を日本文化と共に楽しむ春祭り。デウスエクスが齎すものは欠片も見えない。瑠碧と理久はそれぞれの目に同じものを映して、穏やかに笑った。
「では落ち着いてお祭り、ですね」
「だな。まずは腹ごしらえするか」
 手を繋いだ先、白い石畳の通りはキッチンカーと人々でカラフルに賑やかに彩られている。キッチンカーから漂ってくる香りも彩りのひとつで、2人の視線はキッチンカー同士をゆるゆると結ぶように移っていく。
「色々な食べ物がありますね。日本文化もあって、迷いますが」
 知っているもの、知らないもの。祭り会場に来ているキッチンカーなら、美味しさは保証済みだろう。瑠碧の言葉に真剣に頷いた理久は、うーん、と考える。
「折角来たんだし本場っぽい奴食ってみたいな……おっ、ハンバーガーだ!」
 しかも肉の枚数が選べるという、嬉しいサプライズ仕様。好きな肉系グルメを見つけた理久は、隣からくすりとこぼれた音に「だって肉だしよ」とくしゃりと笑う。
「瑠碧はどうする?」
「私は……ベーグルサンドにしてみます。あそこの、クリームチーズにサーモンとオニオンを使ったものにしようかと」
「お、いいな。ああいうおかずっぽいのも旨そう。あと飲み物だよな。コーヒー買う? 折角だし」
「コーヒーは後で……御飯のお供にはレモネードを」
「成程レモネードか、それも旨そう」

 ……かき氷は?
 かき氷も後で食べますよ、勿論。

 食後のデザーモ含めて全て決まれば、そこから先はスムーズだ。
 メインとドリンクを買って、かき氷はシロップの種類と値段をチラッと確認して、『後で』に備えたら、春風で時折はためくパラソルの下――落ち着いてグルメを楽しめる、専用エリアへ。
 椅子に腰を下ろした瑠碧は、ずっと目に入っていた桜色を見上げ、ほっと笑顔を綻ばせた。パラソルの下をふわふわ満たす桜は、全てが造花だ。そこに、この祭りに関わった人々の桜への愛情が見えるよう。
 瑠碧の様子に気付いた理久も、すぐそこで咲く春の花に「へえ」と目を丸くする。
「造花か。こういうの洒落てるよな」
「理久。後で、実際のお花も観に行きたいです」
「ん、行こうぜ! じゃ、食うか」
「はい」
 いただきます。手を合わせるタイミングも言葉も一緒の2人は、それぞれの春祭りグルメへと手を伸ばす。
 理久が取ったハンバーガーは、包み紙に触れて感じたホカホカ感が食欲を刺激する。包み紙を開いて対面叶ったハンバーガーは、厚めのパティにソースとチーズがとろりと重なっていて、ビジュアル面もたまらない。あー、とかぶりつけば、その瞬間に理久の目にキラキラがいくつも瞬いた。
「んっ肉旨っ」
 パンチをきかせた味付けは正に主役。がぶっといった二口目では、パンズもなかなかの旨さとわかって食が進むというもの。
「ん、こちらも美味しい」
 瑠碧も、はむっと食べてすぐ広がった味わいで、青い目に小さなキラキラを踊らせた。
 ベーグルの香りも、サーモンと新鮮野菜とのハーモニーも素晴らしい。肉料理のようなパンチ力とは違う魅力が、次の一口へと向かわせるパワーを持っている。
「理玖も一口いかがです?」
「サンキュ。あー……」
 瑠碧からの「あーん」と、すぐに「あーん」と口を開ける理久。すっかりお馴染みの、当たり前になった幸せのお裾分け後。どうですかと見守る微笑みに、再び目をきらっとさせた理久が頬張りながら何度も頷いた。
「さっぱりしてて旨っ」
 それでは、飲み物はどうだろう?
 理久は紙コップを手に取った。中を満たすホカホカと温かなコーヒーを啜って――ふむ。ふむふむ。その様子に、瑠碧はちょっぴり目を丸くする。
(「理久、珈琲飲めるようになったんですね……」)
「うん……まぁ苦いけどこうして合わせるとコーヒーも……」
 と、思ったのだけれど。
「やっぱ砂糖とミルク入れとこ」
 悪くない。
 悪くないのだけれど、こうした方が、自分はより美味しく楽しめるというアレがソレ。
「あ、はい、無理せず」
 深い深いコーヒー色へ、さらさらと投入される砂糖の小さな流れに、真っ白ミルクが渦を描いて加わって――うん、今はこっちの方が自分に合う。
 瑠碧のレモネードは主張控えめな爽やかさと甘さのバランスがほど良いもので、ベーグルサンドとの相性もいい。
 食後のかき氷もしっかり味わった2人は、ひらりと吹いた春風で肌を撫でられながら、ふう、と一息。春祭りが終わるまで、たっぷり時間がある。
「桜見てから芝生広場まで行って休憩しないか?」
「はい、行きます」
 立ち上がった理久は瑠碧の手を取って――その指先に、きゅっと力が入った。
「理久?」
「その……ちょっと膝枕とか……駄目か?」
「……芝生広場に着いたら、で」
 照れを混じえた微笑。重ねられた手。
 了承のサインに、やった、と明るい声が重なった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルト・クロフォード
ナザク(f41230)ト。

ふぅ! 何とか倒せてよかったナ!
ナザクもお疲れ様だゾ!

いっぱい動いたからナ! せっかくだし沢山食べるゾ! そう宣言して飲食エリアに向かおウ。

何から食べようカ……まずはベーグルサンドを食べてみようカ。もちもちしたパンという感じのベーグルはとても新鮮な感触だナ! あと、クリームたっぷりの甘いクレープや甘いジュースも貰おうカ。しょっぱいものも甘いものも私は大好きだゾ!

ナザクはどんなものを食べル? 良さそうなものがあったら私にも教えてくレ! 美味しいの共有、大歓迎ダ!

お好み焼キ!! ソースがいい匂いだナ!
くれるのカ? ありがたく頂くゾ!


ナザク・ジギタリス
オルト(f01477)と

オルトもお疲れ様
そうだね、エネルギーを消耗した筈だ
たくさん食べよう

まずはケバブかな
食べたことがないから
それから鯛焼きと…唐揚げと…クレープと…
ん、味の濃いものと甘いものを交互に食べると双方が引き立つ気がする
(新たな気づきを得る機械人形)

ふと上を見上げれば
桜が咲かない場所にまで人工の花が飾られている
人々の花への情熱を感じるね
食べ終わったら本物の桜も見に行ってみたいな

とは言うもののなかなかエネルギーが満たされる気配がない
おれはどうやら燃費が悪い方みたい

お勧め?
これ、色々な具が入っていて面白いよ
お好み焼きって言うんだって
一切れ分けようか?



 星座獣レグルスの体が殺気やプレッシャーと共に消えた途端、周りの空気がふわっと明るくなったようだった。春祭りが開催されている公園へと近付くにつれ、それは実感となって2人を包んでいく。
「ふぅ!  何とか倒せてよかったナ! ナザクもお疲れ様だゾ!」
「オルトもお疲れ様」
「ありがとウ。いっぱい動いたからナ! せっかくだし沢山食べるゾ!」
「そうだね、エネルギーを消耗した筈だ。たくさん食べよう」
 疲労回復と新たなエネルギー入手に食事が欠かせないのは、どの種族も同じ。だからこそ、キッチンカーが集う石畳の道は公園入口とはまた違う賑わいに満ちていた。
 並ぶキッチンカーのビジュアル。漂う匂い。食べるぞという気持ちでここに来た人々。その中へと迷わず加わった2人は、キッチンカーに挟まれた道をゆっくり歩きながら視線を左へ右へ、ゆるゆると移していく。
「色々あるんだナ。うーん、何から食べようカ……」
「おれは、まずはケバブかな。食べたことがないから」
 あそこの、とナザクが指した先には、スタッフの1人がせっせとドネルケバブに刃を入れていた。インパクトある光景にオルトの目が好奇心いっぱいのキラキラを宿――す間に、ナザクの目は他のキッチンカーにも順調に移っていく。
「それから鯛焼きと……唐揚げと……クレープと……」
「いっぱいだナ! 私は……うん、決めたゾ。まずはベーグルサンドを食べてみよウ!」
「じゃあ……買うのはそれぞれ別がいいかな」
「そうだナ。買ったら、ここで合流しよウ」
 そんなやり取りの後に2人はお目当てのキッチンカーへ。どのキッチンカーもこういうイベントは日々の商売で慣れているのだろう。それほど待たず自分の番が訪れ、気になっていたメニューも完売の心配なく買う事が出来た。合流も買い物と同じく無事完了すれば、2人は次なる賑わいの輪――飲食エリアへと移る。
 テーブルの上に2人が買った物が並ぶと、ちょっとしたピクニックめいた豪華さだった。早速ベーグルサンドをオルトの両手がふかりと掴んで――はむっ。一口頬張ってすぐ、新緑色の目が嬉しそうに煌めいた。
「とても新鮮な感触だナ! もちもちしたパンという感じデ……ん? 噛んでいるうちにほのかに甘みが出てきたようナ?」
 この甘みは、とベーグル生地だけを食べてみれば発生源は間違いなくそこから。発見とセットでサンドされている具にも舌鼓を打ったなら、ベーグルサンドの後に買っておいたデザートやジュースにも、ほくほくと手を伸ばす。
 オルトが食べたベーグルサンドの味を、ナザクはちらりと見えた具と合わせて想像しながら自分のケバブサンドをむしゃり。ゆっくり噛みながら、ふむ、と考えたその手が鯛焼きを掴んだ。
「ん、味の濃いものと甘いものを交互に食べると双方が引き立つ気がする」
 “これ”は、知らなかったものだ。
 新たな気付きを得た機械人形が普段と変わらない静かさでこぼした感想に、わかるゾとオルトの溌剌とした声が返る。ベーグルサンドを食べてにこり。クリームたっぷりの、ふわもち生地のクレープを食べて、またにこり。
「しょっぱいものも甘いものも私は大好きだゾ! このジュースも甘くて美味しいんダ」
「へえ……」
 しょっぱいに合わせる甘いものを飲み物にすれば、効率がいいのでは? なんて考えが過ぎりかけた時。ふと上へ向いた目を、ふわふわとした桜の色彩が満たす。どうしたんダと尋ねたオルトも上を見て、嬉しそうに目を細めた。
「これなら、ここでも桜を見ながら食事ができるナ」
「そうだね。パラソルの下は、桜が咲かない場所だけど……人々の花への情熱を感じるね。食べ終わったら本物の桜も見に行ってみたいな」
「それはいいナ。とても綺麗だという話だし、楽しみダ!」
 それじゃあ食後に池の方へと話は纏まったのだけれど、ナザクは唐揚げを食べながら腹部に手を当て、考える。――なかなかエネルギーが満たされる気配がない。
(「おれはどうやら燃費が悪い方みたいだ」)
 自分に対する気付きを得た時、オルトの視線が自分の手元に注がれているのに気付いた。
「どうかした?」
「ナザク、良さそうなものがあったら私にも教えてくれないカ?」
 美味しいの共有、大歓迎ダ! 今という時間と食事を心から楽しむ笑顔に、お勧め、と呟いたナザクの手が伸びたのは――。
「パンケーキにちょっと似ているカ? でも生地が具でいっぱいみたいダ」
「そうなんだ。これ、色々な具が入っていて面白いよ。お好み焼きって言うんだって」
「お好み焼キ!! ……ソースがいい匂いだナ!」
 チョコソースのように濃いのに、鼻を擽った匂いは非常に食欲そそるという摩訶不思議。
「一切れ分けようか?」
「くれるのカ? ありがたく頂くゾ!」

 爛漫の桜は逃げたりしない。
 だからまずは――今は、2人一緒に。この満開グルメを楽しもう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

龍之宮・翡翠
アドリブ等歓迎

ニュース等で春祭りの話は見たことがあったんだが、実際に来てみると思っていた以上に賑わってるんだな
DIVIDEの任務で海外遠征に出ることはあっても、こういうイベント事まで参加するのは凄く久し振りな気がする

普段と違う景色と見慣れたものが混じり合っていることに少し不思議な気分も抱えて、散策へ足を向けることにする
空いたベンチで池の水面に写る桜や花筏に魅せられ
それだけ(恐らく)己の故郷(であるはずの日本)の樹が大事にされているのだと納得しつつ、そういう接し方をする人々や人々にそうさせる桜に敬意を抱く

(……また、機会があれば来てみたいものだな)

彼にしては珍しくそう思いながら、その場を後に



 春祭りの話は毎年お馴染みのもので、ニュース等で今年もそれが開催されるのだと知るのも、毎年の事。けれど実際に来てみた翡翠を包む賑わいは、モニター越しに見ていた時以上のものだった。
(「任務で海外遠征に出ることはあっても、こういうイベント事まで参加するのは凄く久し振りな気がするな」)
 この公園をニュースの中で見た回数だって、一度やニ度ではないのに。
(「……少し、不思議だな」)
 祭りの空気と人々で明るく満ちる景色は普段と違っていて、けれどそこには確かに見慣れたものが在る。知っているのに、どこか真新しい。
 ふたつが混じり合う景色の中を、翡翠は人々に混じって足を進め――この公園内で、どこよりも春を感じる場所に辿り着いた。
 草葉の緑。土の茶色。空の青。そして、かすかな淡桃を宿した桜色。
 春を迎えた公園の中でも特に眩い場所は、ただ歩くだけでも春の絶景に包まれる。けれどベンチに座り、春の只中にゆく幸せも当然ながら大人気。そんな場所で、丁度ベンチから立ち上がった老夫婦と視線がパチリと合ったのは幸運だろう。
「良かったらどうぞ」
 朗らかな笑みに会釈を返し、空いたベンチに腰を下ろす。天蓋めいた桜の先に広がる池は、空の青と桜色を映して煌めいていた。水面にあっても輪郭が揺らぐ事なくある桜色は――、
「パパー、ストロベリーミルクいっぱい!」
 肩車してもらった子供が花筏を指し、美味しそうとはしゃいでいる。翡翠とは違った形で花筏に魅せられた子供の声は、そのまま穏やかに遠ざかっていった。けれどベンチに腰掛けていると、花筏に目を留め、魅了される人が1人、また1人と現れる。
 目を瞠る人。無言で暫し立ち尽くす人。様々な反応に、彼らの中で芽吹いた桜への想いが見えるようだった。桜をスマホやカメラで接写する時も、触れてしまわないよう気を付けているのが解る。
(「故郷の樹は、かなり大事にされているんだな」)
 日本が己の故郷であるかどうかは少々あやふやだけれど――人々をそうさせる桜というものに、自分の中にも敬意と呼べるものが芽吹いている事に気付いた。
(「……また、機会があれば来てみたいものだな」)
 こんな風に思うなんて己にしては珍しい。
 そう思いながら腰を上げ、ベンチを後にする。
 空いたそこへ次の誰かが座る前に、桜色がひとつ、静かに下りた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐東・充
【🍯🐰】
こちらでも桜は好まれているんだね
世界は違えどきみの故郷と同じ国でこの光景を見られたのが嬉しくて
池のベンチに運よく腰掛けられたら
肩を寄せてのんびりと桜を観賞しよう

春の空はどこか眠たげで
薄紅色のカーテンとの共演を眺めていると
こちらまで眠くなってくるような
…ん、少し恥ずかしいけれど…
折角の機会だからお願いしようかな

既に甘えっぱなしだよと微笑み返しつつ
意識はだんだんと夢の中へ
…不思議だな
こうしていると、なんだか昔を思い出すような
|杠《元妻》ではなくて…もっと昔、うんと子どもの頃
こんな風に冷たくて温かい脚に身を委ねていた気がするんだ
あれは誰だったんだろう?


ラビオ・ブラフマン
【🍯🐰】
確かにィ…アメリカ人は桜大好きだねェ。
日本とアメリカ。
性質とか全然違うクセに、こうしてキレイに並木を創っちゃうの。
実は気が合うんだよ、きっとォ。充と俺みたい。

ベンチに腰掛けて視線を送れば
ちょっぴりおねむな雰囲気のマイハニー。
充ったらお疲れなんじゃなァい?俺の膝貸してあげるゥ。
ぽんぽんと膝を叩いてご招待。
照れつつも素直に応じる様につい悪戯したくなるけど
瞼を閉じた表情が、まるでちっちゃな子供みたいにあどけなくて。
傷付けないように、優しく何度も髪を梳いて撫でたくなる。

…イイコイイコ。俺にはたァくさん、甘えてイイんだからねェ?
耳朶に唇を寄せて囁こう。
交差する黒と赤茶と、桜色。悪くないよね。



 広がる桜色に、人々の視線と笑顔が向くのを何度見ただろう。スマートフォンやカメラのレンズが爛漫の春を写そうと向けられる場面も、とっくに両手の指を超えている。
「こちらでも桜は好まれているんだね」
「確かにィ……アメリカ人は桜大好きだねェ。あんなちっちゃい子も夢中だし?」
 くすりと笑ったラビオの隣で、同じものを見た充も柔く微笑んだ。
 父親らしき男に持ち上げてもらった少女が、小さな手でスマホを持ち、真剣な顔で桜を撮っている。撮れたものを確認する表情も真剣で――むぅっと口を尖らせた。
「上手く撮れなかったのかな」
「みたいだねェ」
 小さなカメラマンに2人で心の中でエールを送りながら、運よく空いたベンチに腰を下ろす。そうすると、歩いていた時とは違った角度で春を楽しめて――ほらねと、ラビオは充の肩に頭をもたれさせて笑う。
「日本とアメリカってさ、性質とか全然違うクセに、こうしてキレイに並木を創っちゃうの。実は気が合うんだよ、きっとォ。充と俺みたい」
「……そうだね」
 ついこぼれた笑みに滲んだ嬉しさに、ふふ、と笑う音が返った。
 満ちるものを感じながら、充は肩にかかる重みから、ベンチと向かい合う春の風景に目を移す。歩きながら見た桜の道はこの世界のもので、それは、UDCアースやヒーローズアースと同じではなくて――けれど。
(「きみの故郷と同じ国で、この光景を見られた」)
 その嬉しさが、体中に染み渡っていく。
(「いい、天気だな」)
 ふとした拍子に暑く感じそうな春の陽気は、頭上を覆う桜が淡く散らしてくれる。揺らぐ桜の木漏れ日は幻想的で、時折春風に頬を撫でられながらのんびりと桜を見ていると、その先に広がる春の空がどこか眠たげに思えてきて――。
「……、」
 薄紅色のカーテンと、穏やかな青。今だけの共演を眺めていた充の瞼が、ぱちり、ぱちり。緩やかに繰り返される瞬きは、ちょっぴりおねむのサイン。気付いたラビオはふんわりと目を細め、ねェ、と自分の膝をぽんぽんと叩く。
「充ったらお疲れなんじゃなァい? 俺の膝貸してあげるゥ」
 おいでよと招くラビオに、充の口からは、んん、と考えるような声。
 愛しいパートナーの中では、とことん甘やかすプランは既に決まっている様子。それは困るな――なんて事は、勿論、ない。
「……ん、少し恥ずかしいけれど……折角の機会だからお願いしようかな」
「んふふ。どォぞ? 甘やかしてあげる」
「きみには既に甘えっぱなしだよ」
 知ってるだろう? 招かれた膝の上に頭を乗せて微笑み返した充の瞼が、そっと閉じられる。
 照れながらも素直に応じた充に、ラビオの中でちょっぴり悪戯心が芽吹いて――けれど自分の膝を枕にした表情が、まるでちっちゃな子供みたいにあどけないものだから、伸ばしかけた手をそっと引っ込めた。
 温かくて、無垢な宝物みたいだ。
 傷付けないように、指先で何度も髪を梳いて撫でたくなるけれど。その、代わりに。
「……イイコイイコ。俺にはたァくさん、甘えてイイんだからねェ?」
 瞳と同じ色のピアスを着けた耳朶に唇を寄せて、囁きをひとつ。
 とびきり甘くて、とびきり優しい声。頬を擽った、滑らかな質感。
 すっかり自身に馴染んだ音や感覚に、瞼を閉じた男の唇がかすかに弧を描いた。
(「……不思議だな」)
 こうしていると昔を思い出すような気がする。
 けれど“それ”は、どれくらい前のものだろう?
 今のように、誰かの膝を借りて――けれどそういう事をしたのなら、自分とそれなりに親しい間柄で――でも、わからない。
(「|杠《元妻》ではなくて……もっと昔、うんと子どもの頃の、ような」)
 こんな風に冷たくて、温かい脚に、身を委ねていた気がする。
(「あれは誰だったんだろう?」)
 ふと浮かんだ昔の輪郭は木漏れ日以上に朧気で、水で滲んだインクのように不透明だった。そこに、春の心地良さとラビオの膝の温もりが加わって――充の意識は、とろりとろりと、緩やかに沈んでいく。
(「……あ。寝ちゃったかな」)
 規則正しい静かな呼吸と、瞼を閉じたままの顔。
 パートナーの意識はすっかり夢の中らしい。眉間に皺はなく、口も静かに結ばれている。ラビオは小さく笑ってから顔を上げようとして、目を瞬かせた。
 ふいに入り込んできた桜の花びらひとつ。髪に引っかかっていたものが、動いた拍子に落ちてきたのだろう。するりと目の前に現れた花びらはそのまま充の前髪にあって、そこにはまだ、自分の髪も掛かっている。
(「ふふ。悪くないよね」)
 黒と赤茶と、桜色。
 交差したその色は、“今、ここに共に居る”という幸せのしるし。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨河・知香
ラシード(f41028)と軽く話せたら

よく知る日本とは異なる異国の春、どんなものか楽しもうじゃないか。

マナー守りつつバザーを歩き回ってみるよ。
なんともまあこれだけ色々集めたもんだね。
アメリカ風のも沢山あって見てるだけで楽しい…この賑やかなパッチワークはお土産によさそうだし買いだね。
途中ラシード見かけたら多分知った顔だし挨拶。
|元同僚《ヘリオライダー》なら問題なし、そっくりな別人でもまあそれはそれで。
その格好は警官?
ここでの生活も楽しんでる?
アタシは医者とかやってるよ。たまに戦ったりもしたり…ああ怪我とかあったら治せるから気軽に言ってな。
…とりあえず元気ならそれでよし、だ!

※アドリブ絡み等お任せ



「へえ。ここが例の春祭り会場?」
 雨河・知香(白熊ウィッチドクター・f40900)は「ふうん?」と周りを見ながら、青い目を楽しげに煌めかせた。
 国はアメリカ。都市名は、国名のように自分がいた世界と同じものだ。けれど、よく知る日本とは、国も世界も異なっている。。
(「ま、何であれだ。どんなものか楽しもうじゃないか」)
 開かれたままの門、祭り会場入口に掛かるアーチ状の看板にも『WELCOME』と歓迎の文字が書かれている。その招きに応えるべく、歩き回る際はマナーを守りつつ――。
(「ん? あれは……」)
 公園に入ってすぐ目に付く、デデーンとビッグな物体。大きく見やすい春祭りマップに知香が目を留める事数秒。ニッと笑ってさくさく軽快に向かった先は、お目当てのバザーエリア――なのだけれど。
「はぁ、これは、また……」
 噴水を中心とした広々円形空間は、思った以上に賑やかだった。その賑やかさは、軽く歩いてみただけでちょっとしたテーマパークのよう。
「なんともまあこれだけ色々集めたもんだね……おっと?」
 感心しながら歩いていたその足を止めさせたのは、アメリカらしさ溢れる生活雑貨とインテリアでいっぱいのブースだ。古き良きアメリカを思わすアイテムから、アメリカらしい原色パラダイスまでと、なかなかの品揃え。その中で知香の心を射止めたものはというと――。
「これお願いするよ」
 土産によさそうだとピンと来たパッチワークは、チョイスされている生地の色・柄共に賑やかだ。そのパッチワークと同じくらい賑やかな店主にササッと袋詰めしてもらい、さあて他には何があるかなと歩き出した足は、暫くしてまた止まった。
「あれ、ラシードじゃないか」
「お? やあ知香、君も来てたのか」
「まあね。……で、その格好は? 警官にしてはちょっと手作り感溢れてるねえ?」
 |元同僚《ヘリオライダー》の男が着ているのは、春らしいカジュアルなものだ。けれどその上に交通誘導員が付ける安全ベストを着ており、背中には子供向け英語で『おまわりぼらんてぃあ』と書かれた紙が安全ピンで留められている。
「詳細を省くと手伝う事になった」
「あはは、本当にざっくりと省いたね。そういや、生活はこっちで?」
「いや、それは変わらずあっちで。そういう君は?」
「アタシは医者とかやってるよ。たまに戦ったりもしたり……ああ怪我とかあったら治せるから気軽に言ってな」
「じゃあ、その時が来たらお言葉に甘えて」
 その時がやたら起きないよう、一応気を付けるよ。そう言って笑う男に知香も笑い、親指をぐっと立てる。あの頃とは色々な変化が起きた|自分達《ヘリオライダー》だけれど。
「とりあえず、元気そうでよかったよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎

近くで見ると食べたことねえヤツもいっぱいあるなぁ
全部…は、多すぎだし…悩む…
むむむっと眉を寄せ思案顔
それがアレスの一言にピカンと閃いて
なら他のしょっぱいのとも合うんじゃね?
あの蜜に合うグルメ発掘隊だ!

俺が買ったのはポテトを上げて塩バターをかけたやつと〜ジンジャーティーと〜
ドヤっと買ったものを並べていく
んん!うまい!
どういう理屈でうまいのかはさっぱりだけど
きっとアレスは今日の経験も活かして料理をしてくれる
楽しそうなアレスを横目で見て
その顔に嬉しそうに笑った
ああ、帰ってからも楽しみだなぁ

キッチンカーに未練が無くなった頃あいで
アレスに誘われるまま桜の方へ
おーー!すっげえいっぱい咲いてる!
…ああ、これがなくならなくてよかった
ふにゃりと笑って頷いた
写真なら城に飾れるもんな!
よーし撮ろうぜ!

ちゃんとカメラを見て…っとしてたらフワッと浮いて
アレスの顔が近くなった
ビックリしたけど舞う花びらの視点から見るアレスはすごくキラキラしてて
眩しそうに目を細めた

次は…カメラ目線になるようにもう一枚


アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎

まずは飲食エリアで春を味わおう
まだ知らない料理もあって…僕も迷ってしまうな
チーズと蜂蜜の料理もある。確かに相性がいいよね
先程の蜜にも合うのかも…
隣を見れば何やら閃いた顔
なるほど…!
使いすぎない量を料理鞄から出し
この蜜で色々試してみようか

と言う訳で
クリームチーズのベーグルサンドやコーヒーなどを買ってみました
君は中々挑戦的だな…!
蜜をかけて実食
…!蜜の甘さと塩味も合う…!
…僕の料理も楽しみにしてくれる彼に笑みが溢れる
ああ、任せて
(此処でも、帰ってからも
嬉しそうに笑う君を僕は見たい)

そろそろ花も見に行こうか
桜も人々も…この街の春を守れてよかった
…セリオス
一緒に写真を撮らないかい?
アルバムにもこの景色を綴るけれど…
“君と一緒の”景色も残したいんだ

携帯のセルフタイマーで撮影…の前に閃いた
セリオス
失礼するよと彼を抱え上げる
こうすれば桜をもっと近く…いつもと違う視点で楽しめるんじゃないかなと思ってね
どうかな?
(返事は満開の桜と君の笑顔
今だけは…この景色は僕の特権、だね)

勿論、何枚でも



 それは待ちに待ったひとときへ至る為の、決して欠かせない最重要任務。
「うわ、凄え……!」
 キッチンカーの数と漂う匂いで、セリオスの双眸はいつも以上に星空めいて輝く。その様子にアレクシスが笑みをより綻ばせた事はいうまでもない。
「まずは春を味わう準備から、だね。セリオスは何にするんだい?」
「んー……ちょーっと迷ってんだよなぁ」
 キッチンカーに近寄れば食欲そそる匂いは存在感を増すし、知っている知らない問わず、グルメのビジュアルがどれもこれも食欲と興味をバッシバシに引くものだから、あっちにするかいやでもこっちの、と定められずにいる。
「近くで見ると食べたことねえヤツもいっぱいあるなぁ。全部……は、多すぎだし……悩む……」
「うん、まだ知らない料理もあって……僕も迷ってしまうな」
 えっ、アレスもか。むむむっと眉を寄せて思案していたセリオスが更にむむむっとなった時、そのアレクシスが、「あ」とヒラメキを得た。
 朝空色の目に映る、とろりとした黄金色と柔らかイエロー。色の系統は同じでも素材は完全に別、という2つをマリアージュさせた料理が売りのようだ。
「チーズと蜂蜜の料理もある。先程の蜜にも合うのかも……この2つは確かに相性がいいよね」
「! なら他のしょっぱいのとも合うんじゃね?」
「なるほど……! ふふ。それじゃあ、この蜜で色々試してみようか」
「ああ! あの蜜に合うグルメ発掘隊だ!」
 料理鞄から取り出されたプランツネット産シロップ――帰ってからのお楽しみの為、使い過ぎない量のそれにセリオスがぐっと拳を握る。2人ともわくわくとした笑みでキッチンカーという秘宝の懐へと挑み――……。

「と言う訳で、クリームチーズのベーグルサンドやコーヒーなどを買ってみました」
「凄え美味そう! 俺が買ったのはポテトを上げて塩バターをかけたやつと~ジンジャーティーと~、こっちはカリカリベーコンと目玉焼きがついたパンケーキ、これはトッピングがチーズだけのでっかいピザだろ~」
 セリオスのドヤッは戦果を並べていくにつれドヤ度もキラキラも増していた。
「君は中々挑戦的だな……! うーん、これは試し甲斐が凄い……」
「アレスの料理経験値がまた上がるな! じゃ、早速食べようぜ」
「ふふ、そうだね。それじゃあ」
 いただきます。
 声を重ねて笑顔を混じえ、蜜をかけ、煌めく黄金色シロップを纏ったグルメをぱくり。途端、2人の目にはとびきりのキラキラが瞬いた。
「蜜の甘さと塩味も合う…!」
「んん! うまい! アレス、これちょっと食べてみろよ」
「ありがとう。セリオスもほら、食べてみて」
 ぱあっと感動が咲いたものを交換して、ぱくりと食べて、またキラキラリ。
 食べる度に美味しくて新しい発見が訪れて、2人とも舌鼓を打つのが止まらない。
 そんな中、ふと、どうしてこんなに美味しいのかとセリオスは疑問を抱いたのだけれど――ニッと笑うと、蜜をとろりと掛けてあったピザ一切れに追い蜜をし、あ~んっとぱくり。チーズに蜜はしつこいかと思いきや、驚くほどに違和感がない。1つ2つと、軽々食べられる。
(「ま、こいつも『どういう理屈でうまいのか』はさっぱりだけど」)
 ちらり。横目でアレクシスを見る。
 食材はアレとアレと、それからアレかな。焼き加減は、見た目から大体――。味わいながら分析していたアレクシスが、セリオスの視線に気付いて照れくさそうに笑った。
(「きっとアレスは今日の経験も活かして料理をしてくれる」)
 楽しそうな様子と表情に、胸の中が嬉しさでじんわりといっぱいになる。
「ああ、帰ってからも楽しみだなぁ」
 心からの声には嬉しさと幸せと、期待が満ち溢れていて、その音色と――セリオスの笑顔に、アレクシスにも笑みが溢れた。
「ああ、任せて」
 セリオスは今一緒に食べているものの|未来《先》、自分が作る料理も、楽しみにしてくれている。それがとにかく嬉しくて、そして自分もこの先の事を望んでしまう。
(「此処でも、帰ってからも……嬉しそうに笑う君を僕は見たい」)
 どんなものを作ろうか。食材は何を使おうか。
 前菜、主菜、デザート――セリオスが「美味い!」と喜んでくれるものを届けたい。食べて笑う君を、もう一度といわず、その先もと願いが芽吹く。

「ふー、満腹だ~」
「僕もだよ。そろそろ花も見に行こうか」
「お、行く行く!」
 グルメと蜜の共演を心ゆくまで楽しんで、キッチンカーへの未練もなくなった。満足満腹後の腹ごなしに、桜はこれ以上ない適役だろう。
 矢印めいた道標に従って進み、春の公園イチの絶景と名高いそこへ近付くにつれ、足元や茂みに掛かる桜色の欠片が増えていった。そしてその源はというと。
「おーー! すっげえいっぱい咲いてる!」
 伸びる枝はベンチと池沿いをゆく道の上を覆うようで、けれど圧迫感は全く無い。眩さと神秘的な透明感を魅せる桜色の天蓋から降る煌めきに、アレクシスは黙って目を細めた。唇が、柔らかな弧を描く。
「桜も人々も……この街の春を守れてよかった」
「……ああ、これがなくならなくてよかった」
 桜の花の隙間から見える空の、優しい青が心地いい。ふにゃりと笑って頷いたセリオスは長い髪を風に遊ばせながら池の方を見、おお、と感嘆の声をこぼした。すっげえ。二度目の言葉に、アレクシスの呼ぶ声が繋がる。
「……セリオス。一緒に写真を撮らないかい? アルバムにもこの景色を綴るけれど……“君と一緒の”景色も残したいんだ」
「写真なら城に飾れるもんな! よーし撮ろうぜ!」
 携帯のセルフタイマーを使えば誰かの手を借りずともツーショットは楽ちん――の前に、アレクシスはふいにくすりと笑い、手を伸ばした。
「セリオス、失礼するよ」
 ちゃんとカメラを見るぞとそちらを気にしていたセリオスを、フワッとした浮遊感が包み込む。いつもより近くなったアレクシスの顔が、優しく微笑んだ。
「こうすれば桜をもっと近く……いつもと違う視点で楽しめるんじゃないかなと思ってね。どうかな?」
「……ああ。すっげえ名案」
 舞う花びらの視点から見るアレクシスが、すごくキラキラしている。眩しくて目を細めるけれど、その姿を、瞼で閉ざしたくない。
「な。次は……カメラ目線になるようにもう1枚撮ろうぜ」
「勿論、何枚でも」
 満開の桜を背景に得た、笑む星空色の返事。
 今だけの――自分だけの特権に朝空の青も笑い、シャッター音が刻まれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
【白夜】
麗らかな陽射しの中
賑わう市や、桜見る方々の笑顔を見ると…
守れて良かったねぇ
僕らも早速楽しませていただこう

噴水広場のばざーでお買い物でーと
リティのお目当ての手作り製品見つつ
僕も布製品が気になるから
春の植物の草木染めした布や
それを使った小物があれば探したいな
こういう市は、道中予想外の発見も醍醐味かも

手芸や編み物好きなリティには
並ぶ品は、想像と創造が膨らむ宝物だろうか
華やかななちりめん生地は見ていて楽しい
眺める君の横顔からもだが
るんるんが繋ぐ手から伝わって
どんな形が浮かんでるのだろう

僕の目当ても見つけたら
あちらにあったよー
蓬や、桜の枝でも染められると聞いて
興味があったんだ
葉や花弁は勿論
枝でもこんな色がでるって面白くないかい
小物や敷き布の淡い紅色や優しい緑に惹かれ

できると思うし、僕らも挑戦してみる?
芽吹きの気配に笑って

素敵な品をお迎えできたら
あんなに綺麗に咲いているんだ
桜も見ていこうとお散歩に
青空に満開のさくらと、君
好きなものだらけな景
かめらでも残したい…おっと
ふふ、上手く撮れたらよいな


城野・いばら
【白夜】
愛称:リティ

皆で守った春祭り
無事開催できて良かった
うん、桜さん日和のお買物デートだもの
時間許す限り楽しみましょう

ね、ね
何処から見て周る?
リティはパッチワークさんやつまみ細工さんの
ハンドメイドなコ達が気になるわ
類の気になるコも教えて?

春の心地良さに合わせて
るんるん、らんらん
私の創作意欲も芽吹きまくりな
素敵なコがいっぱいなの…!
旦那さんが好きな桜さんを、寝室にお迎えと思ったけど
…やっぱり私も挑戦したくなって
ちりめん生地さんを探す旅に予定変更かな
これが醍醐味…!

草木染めさんも見つけたら教えてねと繋いだ手を揺らし
旦那さんの惹かれる先を追いかけ
わぁ…素敵…!
自然とココロに馴染んでくれる
落ち着いたお色味に私も惹かれて
葉枝から生まれた色って聞いたら
新しい出会いの衝撃に目をパチクリ

薔薇の花でも染められるかなぁ
あなたの興味を擽るコ
私ももっと他の色をみたいと
やりたいの種が芽吹いた瞬間

無事、お買物出来たら
素敵なピンクの雲さん達の方へ
それならリティの好きも一緒に
類の腕引いて自撮りに挑戦
ほら、好きが満開よ



 空に雲はなく、青空から麗らかな陽射しが降り注ぐ。けれど思わず目を細めてしまう理由は、目の前に広がる春祭りの賑わい――今いるこのバザーを満たす人々の、春を楽しむ笑顔にあった。
 猟兵と特務機関DIVIDEが力を合わせ、皆で守った春祭りに、2人の胸にぽかぽか温かなものが広がっていく。
「守れて良かったねぇ。僕らも早速楽しませていただこう」
「うん、桜さん日和のお買物デートだもの。時間許す限り楽しみましょう」
 お買い物デート。その響きにいばらはふくふく笑って、繋いだ手を嬉しそうに揺らしながら類を見上げた。
「ね、ね。何処から見て周る? リティはパッチワークさんやつまみ細工さんの、ハンドメイドなコ達が気になるわ」
 素敵なコがいそうなのは、あっち?
 出逢いが待っていそうな方を見てキラキラしていた目が、再び類を見てふんわり咲う。
「類の気になるコも教えて?」
「うん、ありがとうリティ。僕も布製品が気になってるんだ」
 お揃いだね。
 内緒話するようにわざと声をひそめて――くすり。
 笑いあった2人の足は、いばらが出逢いの予感を覚えた方へと向かう。
「春の植物の草木染めした布や、それを使った小物があれば探したいな」
「お店にいるアリスに訊いてみる?」
「うーん、そうだねぇ……」
 ここの事に詳しいのはきっと、煙草を吹かす芋虫さんではなく、この世界に根付いているひとだから。芋虫さんが居たならそれはそれで楽しそう――だけれど。
「こういう市は道中予想外の発見も醍醐味かも」
「醍醐味……ふふっ。うん、そうね」
 楽しげな空気や声、そして春の心地良さも優しく満ちている。笑顔で頷いたいばらの足取りはそこに合わせて、るんるん、らんらん。その調べがぴょんと跳ねたのは、並ぶ品々の中に運命を感じるコを見つけた瞬間だ。
「わ、わぁ……」
(「ふふ」)
 震えながらもキラキラを浮かべる花緑青に、類は口を閉じたままニコニコリ。どうやら、並ぶ品は手芸や編み物が好きなお嫁さんの心をぐっと掴んだだけでなく、可能性の詰まった宝物だったらしい。
(「私の創作意欲も芽吹きまくりな、素敵なコがいっぱいなの……!」)
 白地に若草色のくるくるとした蔓と山吹色の花咲くコ。
 向日葵色をしたチューリップでいっぱいの、ミルキーブルーのコ。
 色んな生地が並ぶ隣にはすべすべとした光沢を誇る糸が何色も吊るされていて、このコ達は刺繍で大活躍する予感でいっぱい――とソワソワしていたけれど、そのソワソワを頑張って押さえた。
(「ううん……ここは旦那さんが好きな桜さんを、寝室にお迎えしたいわ」)
 と。
 思ったのだけど。
「……あのね、類」
「うん?」
「やっぱり私も挑戦したくなって……ちりめん生地さんを探す旅に予定変更、かな」
「ふふ。うん、そうしよう」
 もしかして、これも?
 きっと、これも。
 醍醐味ゲットに、いばらの瞳にはお星様がぴかり。繋いだ手を改めてきゅっと握って、サムライエンパイアと似た様を魅せる生地達が集うそこへ。
 色の風味の違いや、柄の種類、合わせ方など、洋とは違った和の華やかさ溢れるちりめん生地に、類の笑みが自然と和らぐ。こうしているだけで楽しい。
「ね、類。草木染めさんも見つけたら教えてね」
「勿論」
 繋いだ手が、るん、と弾んだり。
 うきうき、きらきらとした横顔であったり。
(「君の中で、どんな形が浮かんでるんだろう」)
 針と糸を手にいばらがお裁縫の魔法を起こす時を楽しみにしながら、あちらかな、こちら側かなと視線をひらりひらり。そうするうちに無事出会えたお目当てに、ぱあ、と類の表情が明るくなった。
「あちらにあったよー」
 類の惹かれる先を追いかけたいばらの花緑青が、並ぶ色を映して煌めいた。ふんわり染まる頬に、類の笑みがふわりと温かさを増す。
「蓬や、桜の枝でも染められると聞いて興味があったんだ」
「わぁ……素敵……!」
 草木と触れ合って染まった生地はどれも、自然といばらのココロに馴染んでくれる落ち着いた色味をしていた。それは陽に当たって明るく見える所も、影になっている所も、同じ。
 光と影の変化も優しい草木染めを使った敷布を、類は笑顔の店主から勧められるまま、そっと手に取りいばらにもよく見えるよう傾けた。
「葉や花弁は勿論、枝でもこんな色が出るって面白くないかい」
「葉っぱさんや、枝さんから?」
 新しい出会いは衝撃的で、いばらは目をパチクリさせた。けれどすぐ嬉しそうに咲い、類が持つ敷布の表情を堪能する。
「類が持っているコは、ふんわりとした紅色ね。……あ。あっちのコの緑色、類に似てるわ」
「僕に?」
 優しいトコロがそっくりよ。
 耳元での内緒話の後、裡に芽吹いたのは――。
「薔薇の花でも染められるかなぁ」
「できると思うし、僕らも挑戦してみる?」
 やりたいの種が顔を覗かせたその気配に、優しく笑った類と、ぱっと笑顔輝かせたいばらの視線が交差する。
 素敵と思う色や生地を無事に迎えた2人の心は、どこからか飛んできた花びらの色――その持ち主の事で染まった。少し歩けば、咲き誇る春の花が見えてくる。
「あんなに綺麗に咲いているんだ、桜も見ていこう」
「ええ! 素敵なピンクの雲さん達のところへ!」
 距離が近付けば眩いほどの桜色は溢れんばかり。けれど目を灼くような苛烈さはなく、花と花が重なる所は色が重なり、うすらとした影が生うまれた事で透明感があった。蜜好きの小鳥達による食事は控えめなのか、綺麗な桜色ばかりだ。
 その春の色彩に掛かるのは、穏やかな青空と――、
「どの桜さんも綺麗ね、類」
 草木の柔らかな色に染まった金糸を春風にふわふわ遊ばれながら、こちらを見て咲う君。
 幸せが、芽吹き続けて止まらない。
「好きなものだらけな景だ。かめらでも残したいな……ええと、かめらかめ――おっと」
 腕を優しく引かれ、お散歩中よりもぎゅっと体を寄せられる。
 ぱちりと瞬く目に、無垢な笑顔が映る。
「それならリティの好きも一緒に。自撮りに挑戦よ、類」
「挑戦か……ふふ、上手く撮れたらよいな」
 君との写真なのだから、頑張るのは勿論かつ当然なのだけど。
 悪戯っぽく笑う類に、くすくすと楽しげな音が寄り添う。
「大丈夫。ね、見て」

 ほら、好きが満開よ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月03日


挿絵イラスト