庶民たちの蹴鞠祭~平安の空に鞠は輝く~
●アヤカシエンパイア 山の麓に存在する町
「じゃじゃーん! みてみてー!」
町に住む少年は、真っ白な鞠を掲げた。
それを見た少女は、首を傾げる。
「それってなあに?」
「へへっ! あの山にある森に落ちてたんだ! あの危険な森にだぜ!」
どうだ勇気あるだろ! と、少年は得意げに鼻をこする。
「でも、こんな丸いモノ、何に使うの?」
「さあ……食ったらうまいんじゃないのか? うまそうな匂いはしないけど」
「あ、それボク知ってるよ!」
ふたりが鞠を見つめていると、横から別の少年が話に加わってきた。
「それは貴族様が『ケマリ』という遊びに使う、『マリ』って言うんだよ!」
「「え!? 貴族様の!!?」」
話を聞いた少年と少女は目を輝かせ、再び鞠を見る。
「すげー! これで貴族様は遊んでいるのか!」
「あたし、貴族様の遊びをするのが夢だったの! ねえねえ、どうすればいいのー?」
「えーっと……そこまでは……」
知識を披露した少年が戸惑っていると、最初に鞠を拾った少年は鞠を上に投げてみた。
「とりあえず、蹴ってみようぜ!」
落ちてくる鞠を足で打ち上げると、
鞠は天高く飛び上がり……落ちる直前に、輝いた!
「わぁ! じょうずー!!」
「すごい! あんなに飛ぶなんて!」
3人の子供たちには先ほどの光は見えなかったものの、その興奮は冷めることがなく蹴鞠を続けていく。
やがて次々と子供たちは集まり、大人も興味を持ち、賑わい始める。庶民達による蹴鞠祭が、小さな町で開催されようとしていた。
「みんな! “ケマリ”やろうぜ!! 地面に落としたら交代な!」
次々と観客が集まってくる中、少年は鞠を空に輝かせ続けていた。
そんな町の外れにある山奥の森に、立ち止まった者がひとり……いや、1匹。
それは人間ではなく、小さな炎。かわいらしい目と両手を持つその炎は、『怪火』と呼ばれる妖だ。
「キュー?」
どこからか視線を感じたように立ち止まった怪火は、キョロキョロと辺りを見渡す。
そこへ、ふわふわと水が飛んでくる。
「キュー! キューキュー!」
怪火と同じように目と両手を持つ水の妖『水妖』。怪火に対して手を振る様子は、まるで急かしているようだ。
「キュー」
怪火は水妖とともに、ある方向へと飛んでいった。
その方向へ、1匹、2匹、3匹と、たくさんの怪火や水妖が向かって行く。
まるで、何か目的を持っているかのように。
●グリモアスペース
「先ほどの鞠、一見するとただの鞠に見えますが……アヤカシエンパイアの陰陽師たちによると、実は彼らの使う妖の索敵を行うための道具というのです」
ノキ・エスプレッソ(色を求めて走るレプリカント・f41050)はヴィヴィッドバイクに腰掛け、猟兵たちに予知の内容を話していた。
今回の予知と舞台となった場所は、アヤカシエンパイア。滅びた大地と妖を隠蔽する平安結界に囲まれた日本全土で、平安貴族を始めとした陰陽師たちが妖と戦いを繰り広げる世界。そこに新たな妖……即ち猟兵たちにとってのオブリビオンが、庶民の町へ進撃を企てているというのが今回の予知内容だった。
平安結界によって隔離された妖は、結界内に出現する『妖の裂け目』から現われる。だが、厄介なことに今回はその裂け目の出所がわからない。先ほどの予知に出てきた怪火と水妖が、術によって裂け目の姿を消しているのだという。
裂け目を探すには、怪火と水妖の群れを倒して術を解くしかない。しかし、町の外にある山は広く、小さい体格の怪火と水妖を見つけるのさえ難しいだろう。
「そんな時に使うのが、あの鞠です。どうやら、数年前にこの近くで妖と戦い殉職した陰陽師の持ち物が、草木に隠れて見つけられず放置されていたようです」
その鞠は、妖の気配を察知する力を持つ。美しく跳ねることで輝き始め、そして力が十分に貯まると、光は妖がいる場所へと飛んでいくのだ。
「光は町の住民など力を持たない者には見えません。見えるのは現地の陰陽師……そして、ボクたち猟兵だけです。残念ながら術で隠蔽された裂け目は見つけられませんが、術を使うために現われている妖の居場所は見つけられるでしょう」
あとは妖の群れを倒し、姿を現した裂け目を防げば町を救うことはできるだろう。
「ですが……2つほど気をつけて欲しい点があります」
1つ目は、妖や平安結界のことを何も知らない庶民たちには悟られてはいけないという点だ。
一見平和に見えるこの世界の外は妖によって崩壊した世界が広がっており、しかもその妖が結界を壊そうとしている……その事実が広まってしまえば、たちまち大混乱に陥るだろう。
「それを避けるためにも町人に気づかれないように事を運びたいのですが……そうなると鞠の回収は至難の業になりますね」
猟兵たちが現地に向かったころには既に子供たちは蹴鞠に夢中。無理に取り上げたりすると猟兵たちを怪しむ者も出てくるだろう。かといって蹴鞠が終わるまで待つ余裕なんてない。
「そこで提案なのですが……みなさんも、蹴鞠やってみませんか?」
純粋にやってみたいと頼み込むのもいい、手本を見せたいと申し出るのもいいだろう。なにか子供たちが欲しがるようなものをちらつかせて、それを賭けて勝負をしてみるのも面白い。
鞠が手に渡った後は、美しく蹴鞠を行うだけだ。飛んだ高さか、速さか、放物線か……どれが美しいのかは人によって違うだろう。ひとりで力を発揮するまで飛ばし続けるのは骨が折れるが、少し合間が空いても数分程度なら力は維持し続ける。猟兵たちで順番に回していけば問題ない。
幸いにも、町の住民たちは|余所者《よそもの》に対して歓迎の姿勢を見せるそうだ。子供たちと共に蹴鞠を行うことで、平安結界の秘密を守りつつ鞠の力の恩恵を受けることができるだろう。
「2つ目の注意する点は単純です。裂け目の元にたどり着いても、油断はしないでください」
裂け目から出てくる妖は怪火と水妖だけとは限らない。それこそ、時間をかければより強力な妖が出てくる可能性もある。それは裂け目にたどり着いた際の戦闘も備えると同時に、迅速に裂け目を塞ぐ必要性を裏付けていた。
打ち合わせは終わり、ノキは猟兵たちがアヤカシエンパイアに向かう決意をした様子を確認してその手にグリモアを出現させる。
「アヤカシエンパイアの庶民たちは、この平和が真実だと信じ、幸せに生きている。その幸せを壊さないように、陰陽師たちは人知れず戦い続ける。死んだ鞠の元の持ち主もそうだったのでしょう」
先ほどまで無表情だった彼女の顔に、笑みが浮かんだ。
「それなら見てみたいですね。彼の望んだ、平和であり続ける平安の世の……景色の色を」
オロボ
こんにちは、オロボです!
三章構成のシナリオはマスターとして初めてのシナリオ『P・K・K・K ~キラーたちの化かし合戦~』以来ですね! よろしくおねがいします!
今回の舞台は新たな世界『アヤカシエンパイア』。世界の真相と妖の危険を知らない町の住民たちに悟られないように、町の近くにある山奥のどこかにある妖の裂け目を特定、その裂け目を封印することが目的となります。
第1章では、結界や妖のことを悟られないように注意しつつ、子供たちが夢中になっている蹴鞠に参加します。
『美しく』蹴ることで鞠の持つ妖を察知する能力を発動させますが、その『美しさ』の基準は飛ぶ高さ、速さ、放物線……猟兵の考えによって違ってきます。得意分野も考え、その猟兵らしい蹴鞠に挑戦してみましょう!
好奇心で頼み込んでみたり、蹴鞠のコツを教えてみたり、珍しい物をかけて勝負を仕掛けるなど……怪しまれないように参加することで、蹴鞠に集中できるかも?
第2章では、鞠から放たれた光を頼りに妖の元へ急行、裂け目を隠す術を使っている『怪火・水妖』との集団戦です。
個々の戦闘力はさほどでもありませんが、火と水の連携には十分気をつけてください。周りが森である点も意識しておくといいでしょう。
『怪火・水妖』を倒し、裂け目の在処がわかっても油断しないように。裂け目にたどり着いた際、新たな妖が出てくる可能性があるのだから……!
それでは、散っていった陰陽師の思いを引き継ぐために……みなさん、鞠を蹴りましょう!!
第1章 日常
『蹴鞠祭』
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POW : 天高く鞠を蹴り上げる!
SPD : 目にも止まらぬ速さで鞠を蹴り続ける!
WIZ : 美しき放物線を描くように鞠を蹴る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ジャクリーン・メドゥシアナ
【ムゲンネットワーク】アドリブ連携歓迎
ヒーロー《メドゥシアナ・ガーディアン》見参!
蹴鞠ね、蹴鞠。時代的には知ってる時代だけど、当時の私は日本にいなかったから詳しくないわね……。
以前私をナンパしてきた知り合い(ムゲンの事)のさらに知り合いのアスリート(夜見の事)に助けと教えを乞うことにしたわ。
素直に助けを呼べるのも、ヒーローの条件よね。
二人が子供たちに取り入っている間に、私は【視力】で周囲をしっかり警戒。妖が近くに来ていないか油断なく警戒しておくわ。
えっ、私も、やるの?
仕方ないわね。
蹴って、慎重に落とさないように、落としそうになったら、こっそり足を蛇に変えて伸ばして蹴るわ。
虹ヶ崎・夜見
【ムゲンネットワーク】アドリブ連携歓迎
また、食べ物奢ってくれるって言葉に釣られてムゲンと共闘かぁ。
え、今度はこちらのヒーローさんが主役でそのお手伝いなの? 綺麗な人……、よろしくお願い致します!
ムゲンと一緒に子供達に声をかけるよ。
「やぁ、それ蹴鞠だよね、どうしたの?」
「ふふん、実は私も球技全般それなりに自信あるんだよね」
と【情熱】的にアピールして、子供達との遊びに加わろう。
私の全力を思う存分見せちゃうよ。UCを発動して、【軽技】全力全開。
アクロバティックな動きでボールを蹴って、みんなの注目を集めちゃおう。
うーん、気持ちいいね。
あれ、ジャクリーンさんはやらないの? やってみなって
ムゲン・ワールド
【ムゲンネットワーク】アドリブ連携歓迎
以前にナンパして釣れなく振られたお方から、協力要請。
抜け目なく利用出来そうと分析と調査をされていたと思うとびっくりですが、その抜け目のなさも素敵ですね。
早速、ジャクリーン嬢と夜見嬢を引き合わせるとしましょう。
子供達との接触には申し訳ないですが、UCを使用してから接触しましょう。私はこの街に時たまやってくる貴族の知り合い、と言う記憶を植え付けて、接触します。
「やぁ、みなさん、今日もお元気ですね。おや、蹴鞠ですか」
「もちろん、私も出来ますよ。貴族と懇意にしてる身ですからね」
などと【コミュ力】。
あとは【パフォーマンス】程度に蹴鞠を少々。本命は夜見嬢
「抜け目なく利用出来そうと分析と調査をされていたと思うとびっくりですが、その抜け目のなさも素敵ですね」
町の近くの森で、ムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)は自身に協力要請を出した女性に話しかけていた。以前もナンパを行い、振られた相手だとしてもめげずにお世辞を口にする彼とは対照的に、その女性は無言を貫いている。
「また、食べ物奢ってくれるって言葉に釣られてムゲンと共闘かぁ」
そこへもうひとり、|虹ヶ崎《にじがさき》・|夜見《よみ》(止めうるもの無しパルクールの申し子・f37905)がうんざりした表情で歩いてくる。夜見もムゲンにナンパされたことがあり、今回はその縁でこの場所に呼ばれたのだ。
そんな彼女は、ムゲンの隣に立つ女性を見て思わず目を見開く。
「夜見嬢、お待ちしておりましたよ。今回は……」
「え、今度はこちらのヒーローさんが主役でそのお手伝いなの?」
綺麗な人……と思わず見とれる夜見に対して、その女性……ジャクリーン・メドゥシアナ(メドゥシアナ・ガーディアン・f42789)は黙って頷いた。
ノキから今回の予知を聞いたジャクリーンはダークヒーロー『メドゥシアナ・ガーディアン』として現場に向かうことを決意した。だが、今や悪霊である彼女は平安時代に近い時代の生まれたが、その場所は日本とは別。平安時代の知識がない彼女は蹴鞠を成功させるであろう人物をナンパの件で知り合ったムゲンを通じて夜見に協力を求めたのだった。
(素直に助けを呼べるのも、ヒーローの条件よね)
そう言い聞かせつつもジャクリーンは口に出さず、そのまま町に向かって歩き出す。
「あ! よ、よろしくお願い致します!」
夜見は慌てて挨拶しつつ、ムゲンは微笑ましそうに笑いながら、彼女の後についていった。
「あ、落ちちゃったぁ」
一方町の中では、子供のひとりが地面に落ちた鞠を見つめていた。
先ほど鞠を拾った少年が鞠を落とした後も、交代しながら庶民たちは蹴鞠に挑戦していた。だが、最初の少年ほど長くは続かず、2、3回ほどで落としてしまう者がほとんど。庶民には見えない鞠の光も、最初の少年以外に出すことができた者はいなかった。
「せめて、お手本見てみたいなぁ」
子供の声に、大人たちは困ったように顔を潜める。貴族ではない彼らの中に経験者なんているはずがない。となるとお手本に相応しいのは貴族。たしかにこの村には屋敷の暮らしに飽きた貴族が気まぐれに――本当は妖が出ていないかの見回りに――訪れることもあるが、そう都合良く来るはずがない。
自分たちも盛り上がっていたことは棚に上げて、貴族様の道具で勝手に遊ばないと取り上げてしまうか……そんな考えが浮かび始めた時だった。
「やぁ、みなさん、今日もお元気ですね」
頭を悩ませたところに聞こえてきた声に、町の住民たちは振り返る。
「……あ! ムゲン兄ちゃんだ!」
「夜見お姉ちゃんとメドゥシアナお姉ちゃんもいるー!」
子供が指さした方向にいたのは、先ほどの猟兵たち。そのうち先頭に立つムゲンが親しげに住民たちへ軽く手を振ると、子供たちは3人の元へ群がってきた。
まるで、|元《・》|か《・》|ら《・》知り合いだったかのように。
本来ならばこの3人、この町に来たのは初めて。それどころか、町の住民たちとは初対面である。
ならばなぜ庶民たちは彼らのことを知っているのか? 答えはただひとつ。ムゲンのユーベルコードによるものだ。
ユーベルコード『|指輪が見せる悪夢《ナイトメア・オブ・ニーベルング》』。それは対象の無意識の領域に、任意の偽りの過去の記憶を植え付けるネジを出現させる。庶民たちは、「この3人は以前、貴族様とともにこの町に来ていた、貴族様の友人だ」という本来は存在しない記憶が植え付けられていた。
最も、世界の加護を受けた猟兵である3人はどんな外見でも住民に違和感を与えない特性を持っており、余所者でも受け入れる住民たちの性格もあってユーベルコードを使わなくても輪に入ること自体は難しくないだろう。
それを差し引いても、面識があるだけで全然違うものだ。
「ねえねえ、お兄ちゃんたちにお願いがあるんだけど……」
「やぁ、それ蹴鞠だよね、どうしたの?」
子供たちからの申し出に、ムゲンの隣に立っていた夜見は子供たちの目線にしゃがみ、子供たちの持つ蹴鞠を見つめる。
「お手本、見せてよ! 貴族のお友達ならできるでしょ?」
「お手本というと、蹴鞠ですか」
ムゲンは鞠を受け取ると、子供たちの視線に答えるように笑みを浮かべた。
「もちろん、私も出来ますよ。貴族と懇意にしてる身ですからね」
やったあ! と、子供たちの歓声。
鞠を持ったムゲンはまるで特等席に案内されるVIPのように子供たちの中心へと案内される。これが初対面の相手だったら、子供たちが終わるまで順番待ちになっていた可能性もあっただろう。たとえそれが植え付けられた記憶であろうと、信頼という力は絶大なのだ。
「ふふん、実は私も球技全般それなりに自信あるんだよね」
「本当!?」「ムゲンお兄ちゃんのあとで見せて見せてー!」
情熱を瞳に込めてウォーミングアップを始めた夜見に、子供たちは尊敬の眼差しを向ける。
その横で、ジャクリーンは町の出口側に存在する森の様子をうかがい始める。
森はまだ、静かだ。
町の住民たちに囲まれたムゲンは、一息吐くと、手から鞠を落とす。
その鞠が地面に落ちる直前、素早くムゲンは鞠を蹴り上げる! 高く飛び上がった鞠を、次に左足で受け止め、素早く右足へと移す!
右、左、右……と次々と鞠によるリフティングをこなしていくムゲンの蹴鞠。本命はアスリートである夜見であるため、あくまでも軽く行う程度。飛ばしすぎて自身が受け止められないことのないように、ほどよい高さで鞠を蹴り続ける。
その中で、ムゲンは鞠が宙に浮いている間にくるりとターンし、落ちる直前に再び鞠を蹴る。余裕のあるパフォーマンスに、住民たちの拍手が響き渡る。
子供たちを始めとした町の住民たちの視線を感じても、焦ることなく華麗に蹴鞠を続けられるのは、孤児院で子供たちと接していた経験によるものだろう。
素早い鞠さばきと冷静さによるパフォーマンスをたたえるように、鞠は微かに輝いた。
「夜見嬢、そろそろいいですか?」
「いつでもいけるよ!」
ムゲンは再び高く鞠を蹴り飛ばすと、夜見は地面を蹴る。
その鞠は、夜見に届かずムゲンの手前に落ちようとしていた。
だがそれはムゲンのミスではなく、わざとだった。
届かない、そう住民たちが思った瞬間。
既に夜見は鞠を蹴っていた。
先ほど地面を蹴った瞬間、夜見は低く遠くに飛び、鞠の下で着地していたのだ!
「私の全力を思う存分見せちゃうよ!」
つま先、膝、かかと、頭……五体をフル活用して次々とトリックを決めていく。夜見の得意分野はパルクールと呼ばれる障害物を相手にした競技なのだが、さすがはアスリートアースと呼ばれる世界のアスリート。|頭の後ろに鞠を通すトリック《首のまわりをボールを通す技》を取り入れるなど、サッカーの技術も活用してく!
それだけではない。まるで、竜巻が踊っているかの如くのスピード。まるで、夜見の体は羽で出来ているのかと錯覚してしまうような身のこなし。幼少期からパルクールによって鍛え上げてきた軽業は、彼女のユーベルコード『|止めうるもの無し《パルクールマスター》』によって100倍以上に跳ね上がっている!
文字通り、誰も止める者のいない夜見の蹴鞠に、鞠は強く輝いた!
「わあああ!」「夜見おねえちゃん、すごい!」「ねえねえ、私にもできるようになる?」
光は見えずとも、子供たちは興奮したように夜見へ話しかける。
「うーん、気持ちいいね」
夜見は子供たちに手を振りつつ、全身で蹴鞠を楽しみ続けた。
一方、ジャクリーンは観客の中に紛れながら周囲を見渡していた。
(今のところは問題なさそうだけど……油断は禁物ね)
ムゲンと夜見が蹴鞠の力を引き出そうと奮闘している分、ジャクリーンもまた己の使命を果たそうと警戒を強めていた。幸いにも、森から町へ妖が近づいている気配はない。また、この町に妖が紛れていることもなさそうだ。
それでも警戒を解かず、その灰色の瞳で見渡し続ける。
「あれ、ジャクリーンさんはやらないの? やってみなって」
「えっ」
そんな彼女に向けて、夜見は鞠を蹴り飛ばす!
「こんどはジャクリーンお姉ちゃんの番だ!」「どんな蹴鞠をしてくれるのかな?」
「私も、やるの?」
呆然とする暇もなく、ジャクリーンは慌てて足を伸ばすが……距離が足りない。普通の人間ならば。
彼女の伸ばした足は蛇となり、鞠を飛ばす!
その高さは町の屋根よりもはるか高く、天高く飛び、鞠を輝かせた。
肉体の一部もしくは全部を毒蛇に変異させる自身のユーベルコード『怪奇ヘビ人間』に救われたジャクリーンは、足を元に戻しつつ、歓声を上げる子供たちに目を向ける。
「……仕方ないわね」
子供たちの前で醜態を晒すわけにはいかない。ヒーローとしての信念を胸に秘め、慎重に落とさないよう……落としそうになったらこっそり蛇の足で乗り切り、子供たちの前で蹴鞠を続けていく。
ムゲンのパフォーマンスに、夜見の情熱、そしてジャクリーンの信念。
3人の蹴鞠は鞠を輝かせつつ、町の住民を大きく賑わせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
八秦・頼典
●WIZ
山々の何処にある妖の裂け目、か
虱潰しに式神を放って妖らに感づかれるよりは利口だな
さて、問題はどう|童《わらべ》らに接近するかだが…
女性であればボクの甘い顔と口説き落としでどうにもなるが、年端も行かぬ子にすれば…不審者極まりないからね
ここは|阿近《あこん》と|吽近《うこん》の助けを借り、もふり甲斐ある【かわいい】姿で取り入る切っ掛けを作ろう
ほう、蹴鞠な
中々と上手いではないか
ひとつ、ボクにも蹴らせては貰えぬか?
交代する対価として阿近と吽近を童らにもふらせ、ボクは【宮廷作法】に則った優美な蹴鞠をひとつ披露してあげよう
名残惜しいだろうが、もっともふりたければボクの屋敷においで
いつでも歓迎するよ
ムゲンたち3人が子供たちと交代した後、ひとりの貴族が2匹の獣を従え町へ足を踏み入れた。
「わあああぁっ! かわいいー!」
獅子と犬に似たその獣を見て、蹴鞠の順番待ちをしていた子供たちは思わず声を上げる。
「ほう、蹴鞠な。中々と上手いではないか」
子供たちの視線が獣に集まる中、貴族は鞠を落とした子供に話しかけた。
「ひとつ、ボクにも蹴らせては貰えぬか?」
|八秦《やはたの》・|頼典《よりふみ》(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は優秀な陰陽師探偵である……が表では女癖が悪い好色家貴族として噂される身。貴族が訪れることでこの町にもその噂は広まっているだろう。
そこで彼は自身の従える霊獣のかわいらしさに便乗し、蹴鞠の参加を申込むことにしたのだ。
「えー、次はオイラの番だよー」
次に鞠を蹴るはずだった子供が眉をひそめる。順番を割り込まれたのだから当然の反応であろう。それを想定していた頼典はその子供に目線を合わせるためにしゃがみ込む。
「そうだな……では、交渉としよう」
彼の元に、霊獣たちはお座りをした。
「ボクが蹴鞠をしている間、阿近と吽近を見てもらいたいのだが……最初は貴殿に任せてもよいか?」
「え! いいの!?」
子供はさっそく、2匹を撫でてみる。
「わぁ……もふもふだぁ」
「えー、いいなぁ」「先にもふるなんてずるいー」
他の子供たちの声に、まあまあと頼典はなだめる。
「彼はボクに蹴鞠の権利を譲ってくれた。これはその対価だ。もちろん、彼が存分にもふり終えたら他の者も順番にもふるといい」
頼典は2匹をもふる子供に対して「ちゃんと交代するのだぞ」と声をかけてから、地面に落ちている鞠の元へと歩き出す。
「わぁ、すっげえ尻尾振ってる!」「次はアタシにもふらせてよー」
子供たちに囲まれ、2匹は上機嫌に尻尾を振っていた。
「さて……」
蹴鞠の権利を譲ってもらった頼典は一息つくと、持っている鞠をその場に落とす。
「宮廷作法に則った優美な蹴鞠、ひとつ披露してあげよう」
落ちてきた鞠を、一蹴り。
軌道は歪むことのないキレイな楕円系を描き、流れに任せるように、乱れることのないリズムで鞠を蹴る音を響かせる。幼いころから貴族の作法をたたき込まれた頼典による、美しき蹴鞠。
「……」
その蹴鞠に大人はもちろん、霊獣をもふっていた子供たちも手を止めずに見入っていた。
「!」
鞠が高く飛び上がった瞬間、鞠はこれまで見せたことのないような光を放ち……!!
山へと光を放った!!
光は町の入り口から森へ入り、離れた位置で止まる。すぐに消えないことから、あの光の下に妖が集まっていることに違いはない。
「そこの|童《わらべ》、貴殿の番だ」
「え、わっ」
頼典は子供でも取りやすいように鞠をパスすると、町の入り口まで歩き出す。すると霊獣たちはスッと立ち上がり、彼の元へ駆けだしていく。
「もう行っちゃうの?」「あたし、もっともふりたーい」
子供たちからの声に、頼典は振り向いて微笑む。
「名残惜しいだろうが、もっともふりたければボクの屋敷においで。いつでも歓迎するよ」
「……わかった!」「今度はもっともふらせてねー!」
子供たちを始めとして、猟兵たちの蹴鞠を見せてもらった町の住民たちは手を振って頼典を見送った。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『怪火・水妖』
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POW : 水炎連撃
【水のカッター 】で装甲を破り、【炎のブレス】でダウンさせ、【袋叩き】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD : 氷炎弾雨
【氷の弾丸または炎の矢 】が命中した部位にレベル×1個の【凍傷または火傷】を刻み、その部位の使用と回復が困難な状態にする。
WIZ : 捨て身の業爆
【お互いの体 】から【火種と水蒸気】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
一方、山奥の森の中では。
「キュー! キューキュー!」
たくさんの怪火と水妖たちが怒っているように飛び跳ねていた。
彼らの上空にあるのは、先ほど飛び立った鞠の光。
この光は陰陽師たちが使う道具によるものだ。自分たちの計画を邪魔する光だ。そう認識しているのか、妖たちはあっち行けと言わんばかりにパタパタと手を動かしている。
今、彼らは上空の光に気を取られている!
ジャクリーン・メドゥシアナ
【ムゲンネットワーク】アドリブ連携歓迎
敵発見。数が多いなら、石化の魔眼の全力発光でまとめて石にしてやるわ。
ムゲンが敵に攻撃を仕掛けて、その注意を惹いて、敵が明後日の方向を向いているうちにUC発動。
視界内の全員まとめて石にして戦闘不能に追い込むわ。
このUCは物質組成そのものを変更するから、石にしてしまえば後はもうただの石のはずよ。
敵に気付かれたら、夜見に続いてUCを発動しながら、逃げの一手。
近づいてくる敵には【蛇の髪の毛】のひと睨みで【マヒ攻撃】して麻痺してもらって、その間に肉薄し、【蛇の髪の毛】に喉元を噛み切ってもらうわ。私の蛇は毒蛇だから、【毒使い】で毒にもなるわよ。
虹ヶ崎・夜見
【ムゲンネットワーク】アドリブ連携歓迎
体を思う存分動かせて大満足。
さて、次は戦闘だね。
私の仕事は敵を石化させるジャクリーンさんの援護。
敵に気付かれるまでは【トラップカード「防弾遮蔽物」】で出現させた遮蔽物に隠れて、様子を伺う。
敵がジャクリーンさんに気付いちゃったら、UC発動。敵の真上を|飛び越え《プレシジョン》で飛び越えて虹の橋をたくさんかけて、その上にジャクリーンさんを逃す。
地形を爆発炎上させても、この虹の橋の上なら安心だよ!
後は、飛び回りながらも【バトロワ式サブマシンガン二丁】のうち一丁で【制圧射撃】を【自動射撃】の如く行って、敵の接近を阻んでいく。
ムゲン・ワールド
【ムゲンネットワーク】アドリブ連携歓迎
探索のための光が予期せず陽動となったか。
なら、ジャクリーン嬢の作戦はそのままに私がより効果的に活躍出来そうだ。
初手はUCを使わず、闇に紛れ【目立たない】ようにしてからの【「教会」時代の仕込み杖】を用いての【不意打ち】【暗殺】で敵にダメージを与える。
敵がこちらに気付けば、UC発動。ペガサスの姿になって、空高く飛び上がる。
【詠唱アサルトライフル】の【自動射撃】で牽制しながら、敵のUCを高速で飛翔することで回避していく。
敵の注意を惹ければ惹けるほどジャクリーン嬢が有利になるため、牽制の狙いはまだこちらを向いていない敵を優先していく。
「キューッ!!」
先ほどから光を追い払おうと必死だった彼らだが、ついに痺れを切らした一組の怪火と水妖が両手を挙げる。
そこから生み出されたのは、火種と水蒸気の塊。それをあの光へ打ち込もうとしたその時……!!
その近くにいた妖の首が、宙を舞った。
「キュ!?」
思わず振り向いたその一組の怪火と水妖も、仕込み杖の刃によって首をはね飛ばされる。
「……探索のための光が予期せず陽動となったか」
ムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)は、地面で消滅する妖たちの中心で光を見上げた。かつて暗殺者として育てられた過去を持つ彼にとって、木の陰からの暗殺はお手の物だ。
ジャクリーン、夜見との協力、そして頼典の蹴鞠によって鞠が光を放った際、彼はジャクリーンたちとともに光を追いかけ、妖の群れを発見、奇襲をかけたのだ。
「キューッ!!」「キュキュー!!」
もちろん、1度に全滅させるのには限界がある。生き残った妖たちはムゲンから距離を取り、攻撃の構えを取る!!
「……」
だが、ムゲンは妖たちの方向を見るだけで、行動には移さなかった。
怪火の手に火種が、水妖の手に水蒸気の塊が出現! 辺りは赤い光に包まれ……!!
手にある物とともに、妖たちの体は石となった。
バラバラバラ。
宙に浮いていた妖たちの彫刻は、重力にそって地面へと落下、衝撃で砕かれる。
その奥の茂みから、ジャクリーン・メドゥシアナ(メドゥシアナ・ガーディアン・f42789)は緑髪に手を触れながら洗われる。その髪から覗く魔眼は足元の石ころに向けられていた。
彼女の後ろでは、|虹ヶ崎《にじがさき》・|夜見《よみ》(|止めうるもの無し《パルクールの申し子》・f37905)が、茂みに隠していた防弾遮蔽物から顔を出し、ムゲンとジャクリーンに向けて親指を立てていた。
ジャクリーンの右目に宿る赤き魔眼……石化の魔眼。その魔眼と目が合った者は物質組成から改竄され、石に変えてしまうという。
それを全力で発光させる彼女のユーベルコード『|石化の魔眼《メドゥシアナ》・|全力発光《フルフラッシュ》』。目が合わなくとも、ジャクリーン自身が決めた任意の対象に効果を及ぼすそれによって、怪火は体を構成する炎を、水妖は水を石へと変えられた。たとえ形を保っていたとしても戻ることはないだろう。
ひとまず周辺の敵を片付けた3人。だが、まだ安心はできない。
「キュー!」「キューキュー!!」
あらゆる方向から、妖たちの声が風の音とともに聞こえてくる。
石ころとなった妖とは別行動をしていた妖たちが、上空に現われた鞠の光を見て駆けつけてきたのだ。
「「キュキュキュキュキュ……!」」
茂みから飛び出した怪火と水妖は、既に大きな火種と水蒸気の塊を構えている!
「「キュゥゥゥゥゥゥー!!」」
放たれた火種と水蒸気は、3人の足元で違いに重なり合い……!!
森を揺らす大爆発を引き起こした。
水蒸気爆発。それは高温の物に水が接触することによって発生する爆発現象。
怪火と水妖によるユーベルコード『捨て身の業爆』は、その現象と自身の体質、そして相方となる妖との連携を活かした連携技だ。
さらに自身の炎または水……すなわち寿命を削ることで、その威力を増すことができる。
3人がいた場所に、次々と打ち込まれる爆発。
身を削り小さくなってしまった妖たちは、炎上する地面を眺めたのち、鞠の光がどうなったのかを確かめるために空を見上げた。
「……キュ?」
妖の1匹が、思わず声を上げる。
地上の状態には似使わない、虹が浮かんでいたからだ。
その虹は、まるで爆発地点から発生し、爆風から逃れるようにかかっている。
虹の先にいたのは……!
「ジャクリーンさん、この虹の橋の上なら安心だよ!」
華麗なプレシジョンで妖たちを飛び越える、夜見の姿! そしてその虹の上を走るのはジャクリーン! 夜見のユーベルコード『プレシジョン・レインボー・ブリッジ』によって、その軌跡には虹の橋が出来ていたのだ!! 落下していく夜見は、木から伸びる丈夫な枝の上に着地。狂いのないバランスを見せつつ、まるで雲から雲へと飛び移るように次々と虹の橋を作り上げていく!
幼いころから遊びとして障害物を飛び越える日々を送り、パルクールと呼ばれる競技の才能を開花させた夜見。その才能が爆風から遠く離れた126mの跳躍に、丈夫ながらも細い木の枝の上への着地を実現させたのだ。
「キュ、キュ~!!」
1匹の怪火が慌てて、夜見とジャクリーンのいる場所へ飛ぼうとする。
「キュッ!!?」
だが、怪火は飛んできた弾丸に頭を貫かれ、消滅した。
空にいるのは夜見とジャクリーンだけではない。
ムゲンもまた、己のユーベルコードで爆発から逃れていたのだ!
アサルトライフル型の詠唱兵器を構えるムゲンの下半身は、4本足の悪魔。彼のユーベルコード『ナイトメアビースト・ユニゾン・バージョンペガサス』によって白馬型の来訪者種族「ナイトメア」と融合した、神話のケンタウロスを彷彿とさせるその姿。そのナイトメアの背中から翼が生えている姿は、ベガサスにも見えた。
「キュー!」
妖たちは火種と水蒸気の塊を放つものの、空を飛ぶムゲンは次々とかわしていく。
その間、ムゲンは手に持つ詠唱型アサルトライフルを構え、ジャクリーンたちの方を狙っている妖に向けて発砲。さらにこちらに気づいていない妖もターゲットにし、その注目を集めていく!
それに合わせるかのように、夜見は1度地面に降り、アスリートアースで使われるバトロワ式サブマシンガンを一丁取り出した。彼女に向けられて次々と降り注ぐ爆破攻撃。それを自慢の脚力で飛び跳ね回避しながら、自動射撃の如き制圧射撃をばらまいていく!
まだ自分を狙っていない相手に射撃し、注意を引くことで、広範囲に攻撃できるジャクリーンの赤い光を確実に当てる……それが2人の狙いだ!
ムゲンと夜見の射撃に阻まれ、なかなかジャクリーンへ攻撃を加えられない妖たち。
それでも弾幕をくぐり抜け、1匹の水妖がなんとか虹の橋の上へとたどり着いた。
「キュッ!?」
そんな水妖の目の前に蛇が突然現われる。瞬間、水妖は痺れたかのようにその場で身を震わせ、そこへジャクリーンが自ら接近し……!
「キュ……ウ」
緑髪と同化した蛇で、首元を噛み千切る!
後ろからついて来ていた妖たちも、睨んだ対象を麻痺させる能力を持ったジャクリーンの蛇によって身を封じられる。近場にいた妖は同様に首を噛み千切られ、遠くにいた妖は1度距離を取ろうと背中を向ける。
ジャクリーンは消滅寸前の水妖を蛇の口で拾い上げ、その背中に向けて投げつけた!
ジャクリーンの髪の毛と一体化した蛇は毒蛇。今まさに元の水へと戻ろうとしていた水妖の体にも、毒は回っている……!
ぶつけられた怪火や水妖は首を押さえ、ジタバタともがき続けた上で地面へと落ち、息絶えた。
付近の妖を一掃したジャクリーンは、下の様子をのぞき見る。
「……あなたたちも、石になってみる?」
そう呟き、義眼を赤く光らせ虹の橋から飛び降りた!
虹の下で、空を舞い弾丸の雨を降らすムゲンと夜見に気を取られている怪火と水妖たちは……!!
『石化の魔眼・全力発光』によって、石へと姿を変える。
その姿は、虹からこぼれ落ちた石の雨のようだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
八秦・頼典
●WIZ
このままやり過ごしたいところだけど、放っておけば光の発生源だった麓の村が襲われかねないからね
そうなったら村童達との約束が果たせないし、可哀想な気もするけど上の光に気を取られているうちに片付けてしまおう
『形代召来』!
形代のひとつひとつにボクの霊力で『破魔』と『電撃』の力を宿しているから、一撃で倒されようとも貼り付けさえすれば低級の妖なら簡単に祓うという仕掛けさ
勿論、仲間が消えていけば更に怒って仕返しをするだろう
怪火と水妖は互いに捨て身となって爆ぜる妖
互いに交わらないよう形代で分断するか、爆ぜたとしても形代らが盾となってボクを守るなりして相手側の巻き添えも狙ってみようか
ジャクリーン、夜見、ムゲンが鞠の光の下で戦っている一方、|八秦《やはたの》・|頼典《よりふみ》(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)もまた森の中を走っていた。
「……ッ!」
頼典が茂みの後ろに素早く伏せたその先には、怪火と水妖の群れが鞠の光に向かって行進していた。
「このままやり過ごしたいところだけど、放っておけば光の発生源だった麓の町が襲われかねないからね」
光は麓の町から妖たちのいる位置へと飛んできた。ならば飛んできた方向をたどれば町へたどり着くことは容易いだろう。
――今度はもっともふらせてねー!――
自分の屋敷で、子供たちに霊獣をもふらせる。
鞠を蹴らせてもらう代償として交わした子供たちとの約束を果たすためにも、妖が町へ向かうことは阻止しなければならない。
「可哀想な気もするけど……片付けてしまおう」
かわいらしい姿の怪火と水妖を奇襲することに少し気が引けるものの、相手は妖。躊躇している場合ではない。
「『|形代召来《カタシロショウライ》』!」
頼典が詠唱した瞬間、剣を持った人型の形代が出現!
その内1体の形代は剣を構え、妖へと突撃し……!
「キュッ!?」
詠唱の声に振り返った妖の腹に剣を突き刺す! 瞬間……!!
「キュビビビ!!?」
張り付けられた形代に、電撃が走った! 張り付けられた妖は雷に打たれたように声を上げ、消滅した。形代とは神霊が依り憑く依り代の一種。この形代に触れれば、頼典の霊力によって込められた破魔と電撃の力があふれ出す仕組みになっているのだ。
そんな戦闘型とも呼べる形代が、次々と妖を取り囲む。頼典のユーベルコード『|形代召来《カタシロショウライ》』によって呼び出されたその数は……720体!! 歴戦の平安貴族で例えれば正四位上ほどの実力を持つ彼の霊力がなせる技であろう。
無論、1体1体の強さは弱い。怪火の炎に燃え、水妖の水でふやけてしまう個体も存在していた。
だが、破魔と電撃の力を発揮させるには触れるだけでよい。形代の燃えかすが風に吹かれ、触れた怪火に破魔を送り込む! ふやけた形代から水滴が飛び散り、水妖の電気を通しやすい水で構成されたその体を電流が走る!
その身が砕けてもなお、小さな兵士たちは小さな敵を殲滅させて行く……!
「「キュー!」」
まだ祓われていない妖たちが、仲間の消滅に怒るように叫ぶ。
そして、怪火と水妖による連携ユーベルコード『捨て身の業爆』の体制へと入り……火種と水蒸気の塊を放つ!
「……貴殿たちも理解しているはずであろう?」
その中でも、冷静に頼典は形代へ指示を出す。
「ひとつひとつは弱くとも、戦いの基本は数さ」
その火種と水蒸気の塊の間に、2体の形代が挟まる!
1体は火種でその身を焦がし、もう1体は水蒸気をその身に吸わせることにより、火種と水蒸気の激突を回避したのだ!
捨て身の攻撃が無効化された、そのことに呆然と小さくなった妖たちが呆然としている中……頼典は自身の周りに形代を纏わせ、妖へと走り出した!
「キュ~!?」
怪火と水妖たちは近づいてくる頼典に対して慌てて|至《・》|近《・》|距《・》|離《・》|で《・》火種と水蒸気の塊を放ち……!!
発生した爆発の勢いに、妖たちははじけ飛んだ。
爆風が去り、炎上する周辺の草木。
その炎の中から出てきたのは……形代によって守られた無傷の頼典、ただ1人だ。
成功
🔵🔵🔴
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
「うう、まだなの……?」
頼典が妖を祓っていた同時刻、|音駆螺《ねくら》・|鬱詐偽《うさぎ》(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)はドレス型のバーチャルレイヤーの裾を掴み、森の小道を進んでいた。
彼女が顔を見上げた先にあるのは、鞠の光とこちらを見つめる一機のドローン。鬱詐偽の姿は今、あのドローンのカメラによって世界を超え、鬱詐偽主演の番組『鬱るな!鬱詐偽さん』として放送されている。その番組の企画のために、彼女は他の猟兵とともにアカシアエンパイアへと来る羽目になったのだ。
「日も暮れちゃうし……こっちの茂みから近道するしかないのね……」
鬱詐偽の通ってきた道は、鞠の光までの距離からすると回り道になっている。衣装を汚しそうで不本意ながらも、ドローンから視線を感じた彼女は道から逸れていった。
「……キュ?」「キュー?」「キュキュー?」
「あ……」
茂みから出たところで顔を合わせた相手は……妖の群れ。
慌てて来た道を戻ろうとしても……
「「「キュー?」」」
「……」
その方向から、鞠の光に向かっていた妖が来ていた。
「「「「キュー!!!」」」」
敵に囲まれるという不運に見舞われた鬱詐偽に、妖たちは容赦なく攻撃を仕掛ける!!
水妖はその手から出した水のカッターを発射し、怪火はその口からブレスを放つ構えを取る。わざわざ自らの体を削るまでもないと判断した彼らは、ユーベルコード『水炎連撃』で確実に仕留めに来たのだ。
「……キュ?」
鬱詐偽はその場でうずくまってしまった……かと思うと、杖を取り出し、上空に向けて突き出す。
その杖の先端からは、複数のシャボン玉が広範囲に飛び出す! シャボン玉は水のカッターによって割られたかと思うと……!
勢いは弱まり、水のカッターはただの水となって鬱詐偽の衣装を濡らした。
水妖が呆気にとられている間に、鬱詐偽は杖を怪火に向け、シャボン玉を放つ! 怪火の前でシャボン玉が割れた瞬間……!
「キュ~ゥ……」
怪火の体はどんどん小さくなり、ついに消えてしまった。
この杖、『バブル・ショック』から出したシャボン玉は、割れると『何か』が暴落する。先ほどのカッターは『勢い』が暴落したことで形が崩れ、怪火たちは『温度』が暴落したことによって体内を構成する火が消滅したのだ。
そんなシャボン玉をこの範囲まで放てたのは、鬱詐偽のユーベルコード『グッドナイス・ブレイヴァー』でこの番組を見ている視聴者からの応援で強化されたため。その不運が魅力だからこそ、その不運をはねのける期待に答えてくれるのを視聴者たちは望んだのだ。
「キュ~」
相棒である怪火を失い、水妖たちは恐れから空を飛んで逃げだそうとする。だが、強化されたシャボン玉は彼らよりも早いスピードで、1匹残らず接触し……!!
「キュー!!!」
温度が暴落したことにより、固体の氷となって地面に落下! そのまま地面に打ち付けられてバラバラとなった。
「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上……はぁ」
そんな彼らに背を向け、ドローンに向かって決めポーズを決めるものの……茂みを通った上にびしょ濡れになったことで汚れてしまった自身の服装を見て、ため息をつく鬱詐偽であった。
成功
🔵🔵🔴
大宝寺・朱毘
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。
アイドルでありロッカー。
ロック(漢気があるとほぼ同義)な様を好み、「ロックだ」と感じれば味方はもちろん敵でも賞賛することがある。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。
使用武器は黒いボディに炎の模様が入ったギター『スコーチャー』
演奏によって音の爆弾や衝撃波を生み出してぶつけるという戦法を好む。
必要なら演奏を続けつつ蹴りなども行う。
冒険では、魔力任せに障害を吹き飛ばすといった行動が得意。ただし地頭が悪いわけでもないので、搦め手が必要ならその都度考える。
台詞例
「いいね、ロックじゃん」
「こっちゃ世界の命運背負ってんだよ!」
次々と猟兵たちに殲滅されていく妖たち。
その生き残りたちは、森の中で集まり作戦会議を開いていた。
「キュ、キュー」
裂け目の姿を隠す術を使っている自分たちが倒されれば、その裂け目は猟兵たちに気づかれてしまう。鬱詐偽によって倒された妖たちもなかなか合流しない中、彼らはこの状況の打開策を必死に練っていた。
「おっと、ミーティング中に邪魔するぜ」
そんな彼らは、茂みをかき分け現われた|大宝寺《だいほうじ》・|朱毘《あけび》(スウィートロッカー・f02172)に視線を向けた。彼女はスコーチャーと呼ばれるロックギターを鳴らし、チューニングをしながら妖たちと対面する。
「キュー……!」
「お前たちも仲間の思いを背負っているのか……だがな」
唸る妖たちの意思を読み取りつつ、朱毘は弦を引く手を止める。
「町の奴らに手出しはさせねえ。こっちゃ世界の命運背負ってんだよ!」
「「キュー!!」」
朱毘が啖呵を切ったのと同時に、妖たちは一斉に攻撃を放つ!!
水のカッター! 続いて炎のブレス! 向かってくるその攻撃に対して……朱毘は空へピックを掲げる。
「降臨しろ、羽黒の山の烏天狗! ハグ・ロック!」
そのピックをスコーチャーへと振り下ろし、音色を山中に響かせる!
すると、突然現われた無数の烏羽が朱毘を包み込み……空高く舞い上がった! 朱毘のユーベルコード 『ハグ・ロック』によって現われた烏羽で攻撃を回避した朱毘は、すかさずギターの音を響かせる。その音は実態を持ち……音の爆弾と化して地面の妖たちを吹き飛ばしていく!
「キュー!」
一方で生き残った妖たちは負け時と攻撃を放つ! 彼らのユーベルコード『水炎連撃』の初撃は装甲を裂く水のカッター。朱毘を包む烏羽を破壊すれば、地面へとたたき落とすことができるだろう。
しかし、その程度の攻撃で朱毘の|攻撃《ライブ》は止められない。アイドル活動によるダンスで培われた瞬発力で、左右へとかわしながら音の爆弾を送り続ける!
妖たちは思った。こうなれば持久戦に持ち込んでやる……と。
だが、朱毘は違った。
たった今、手早く妖たちを一掃する|方法《アドリブ》を思いついたのだ。
頭を下にし、演奏の手は止めずに空気抵抗を最低限にしたその姿勢で妖たちの待つ地上へ急降下する。
妖たちはカッターとブレスで牽制しつつ、彼女が地面に着地した瞬間を伺った。
その朱毘が向かう場所は……地面ではなく、木の枝!
身を1回転して木の枝に足をかけた朱毘は、それを足で蹴り再び跳躍する!
「キュッ!?」
フェイントに惑わされた妖たちは慌てて構え直すが、もう遅い。避ける暇もなく音爆弾の餌食となる。それどころか……!!
「キュー!!?」「キュ!? キュ~!!」
なんと、水妖の放ったカッターが怪火の首をはねた! あまりの予想外の攻撃に混乱した彼らは仲間を攻撃してしまったのだ!
仲間割れの状態となった彼らに、朱毘は容赦なく音の爆弾を放っていく……!
地面に着地し、ピックでギターの弦をはじく。
その瞬間、散りばめられた音爆弾と同時撃ちによる水蒸気爆発が火柱代わりに、彼女の背中で舞い上がった。
想像以上の手応えに笑みを浮かべる朱毘だったが、ふと感じた気配に顔を上げる。
急に風が強くなり、合唱するかのように音を立てて木が揺れ始めたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『鬼面の群れ』
|
POW : 爆裂鬼火
着弾点からレベルm半径内を爆破する【鬼火】を放つ。着弾後、範囲内に【恨みの炎】が現れ継続ダメージを与える。
SPD : 鬼火翔け
【鬼面状の体】から【鬼火】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
WIZ : 鬼火雨
レベル×5km/hで飛翔しながら、【降り注ぐ鬼火】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
山中で怪火と水妖を討伐した猟兵たちは、風に揺れる木の音を聞く。怪火と水妖が全滅したことで術が解け、どこかで裂け目が姿を現した。その裂け目によって発生した風が、木を揺らしているのだろうか。
そう分析していた彼ら猟兵たちの上空を、なにかが通過した。
あれは……鞠の光だ!!
猟兵と妖たちとの戦闘を繰り広げている間も、町では住民たちによる蹴鞠祭が続いていた。
「いっけえっ!!」
少年が蹴鞠を天高く飛ばす。初めに鞠を蹴った時よりも高く飛んだその鞠は、光を放ち山へと飛んでいく。
「次はあたしー!!」
「よっと!」
落とすまでの時間が長くなったためルール変更でもしたのか、少年は落ちてきた鞠を少女へとパスする。受け取った少女は猟兵たちに迫るスピードで右左と鞠のリフティングをこなす。そして再び鞠から光が放たれ飛んでいった。
妖に対抗する力を持たない彼らは飛んでいく光を見ることなく、蹴鞠を楽しんでいた。猟兵たちの蹴鞠を見て憧れた子供たちは、徐々にその技術を高め……庶民であるにも関わらず鞠も認める蹴鞠をこなせるようになったのだ!
「はい! 交代するよー!」
「うん!」
少女はまた別の少年へと鞠を回す。その少年は大人たちも見とれるような美しい鞠裁きを見せ、鞠はさらに光を放っていく。
放たれた鞠の光たちは、森の上空を駆け抜ける。
そして立ち止まった場所は……開けた地形。川の流れる音、そして禍々しい音が下から聞こえてくる。
川辺の砂利の上に佇む紫色の裂け目。その近くで恨めしそうに光を見上げるのは……鬼火を纏った鬼面の群れだ。
このままでは裂け目が陰陽師たちに知らされてしまう。なんとしても消さなければ。そう思った鬼面は上空にある鞠の光に向かって恨みの炎を放ち、光を消し飛ばす。だが、再び飛んできた鞠の光に、鬼面はうなり声で苛立ちを表わしていた。
その行動は、鬼面たちにとってまだ裂け目を隠す必要がある……つまり、彼らより強い妖が存在することを意味する。
鞠の光を追いかけ、より強力な妖が現われる前に裂け目の元にたどり着かなければ!
ジャクリーン・メドゥシアナ
【ムゲンネットワーク】連携アドリブ歓迎
あの子たち、随分上手くなったみたいね。
さて、私達も負けていられないわ、行きましょう、二人とも。
ムゲンの背中に乗って現場に急行しましょう。
現場に着いたら、ムゲンの背中に乗って奴らの飛行に追従。
UCを使って攻撃するわ。
【毒使い】に加えて、魔眼と蛇睨みによる【マヒ攻撃】も交えることで、相手の速度を低下させ、常にムゲンが有利な位置どりを出来るよう心がけるわ。
相手の速度が低下してきて、ムゲンがランスチャージするか前に入ったら、《祟り縄》から【呪詛】を放って遠隔攻撃してみるわ。あんまりこれ使ったことなかったのよね、どんな感じなのかしら。
ムゲン・ワールド
【ムゲンネットワーク】連携アドリブ歓迎
あの鞠、あのまま放置しておいて良いのだろうか……。貴族と知り合い設定を利用して回収することも検討した方が良いかもな。
えぇ、行きましょう。
UCを発動し、ジャクリーン嬢と夜見嬢を背中に乗せて、現場に急行。
《詠唱アサルトライフル》の【自動射撃】で牽制しつつ、【空中機動】で攻撃を回避しながら、敵と並走する。
ジャクリーン嬢の攻撃で動きが鈍ったら、速度を上げて、一度天高く距離を取った上で、《白銀の騎乗槍》で【ランスチャージ】【貫通攻撃】をお見舞いする。
夜見嬢がピンチそうなら、《詠唱アサルトライフル》で援護します。
必要なさそうですけどね。
虹ヶ崎・夜見
【ムゲンネットワーク】連携アドリブ歓迎
うん、絶対に勝とうね。
ムゲンの背中に乗って現場に急行。
現場に着いたら、UCを発動。
周囲に足場に使えるフライトドローンをたくさん展開して、そっちに飛び移る。
ずっと男の人の背中に跨ってるのはどうかと思うからね、ジャクリーンさんは平気なのかなぁ。
あとはドローンにも攻撃してもらいつつ、【軽業】でドローンの間を飛び回って移動しつつ、《スカイソード》で攻撃!
敵を切ったら、そのまま風の力で飛び上がってさらに移動するよ。
ドローンは脆いから、飛び移ろうと思ってた足場が壊れちゃう時もあるかも、そんな時はムゲンの援護を受けつつ、風の力で飛距離を伸ばして凌ぐよ。
石ころが散乱する地面の上で、空を駆ける鞠の光を見上げていたムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)は心配するように眉をひそめていた。
「あの鞠、あのまま放置しておいて良いのだろうか……」
町の住民たちのおかげで時間をかけずに裂け目の場所へとたどり着けられるのは事実だ。風の様子から自力で探していると、自分たちでは対処できない強さの妖が裂け目から出てくる可能性もあったかもしれない。
一方で、別の場所で戦っていた頼典が危惧していたように、鞠の光から町の場所が特定できる危険性も存在していた。それがなくても人の気配から妖たちは進軍するとはいえ、住民たちから貴族の知り合いと認識されている間に鞠を回収するべきかとムゲンは検討していた。
「……あの子たち、随分上手くなったみたいね」
そんな彼とは対照的に、ジャクリーン・メドゥシアナ(メドゥシアナ・ガーディアン・f42789)は微笑んでいた。
怪奇人間として生まれ、生前に迫害されたことで悪霊として蘇ったジャクリーン。猟兵として目覚めなければ、すべての人間を恨み危害を加える姿もあったのかも知れない。
ダークヒーローとしてその力を使う今の彼女は、鞠の光を飛ばす子供たちの姿に思いを馳せていた。
「さて、私達も負けていられないわ、行きましょう、2人とも」
2人に顔を向けたジャクリーンに、木の上から鞠の光を見ていた|虹ヶ崎《にじがさき》・|夜見《よみ》(|止めうるもの無し《パルクールの申し子》・f37905)は笑顔でうなずく。
「うん、絶対に勝とうね」
ムゲンはジャクリーンの表情に驚きつつも、同じく笑みを浮かべた。今は鞠の対処について考えるよりも、町を狙う妖を出現させる裂け目の封印が最優先だ。
「……えぇ、行きましょう」
そう呟き、彼は光の進行方向を向く。
「もう一度だ! 俺とひとつになり、空を駆けろ、俺のナイトメア!」
先ほどの怪火たちとの戦闘でも活躍したユーベルコード『ナイトメアビースト・ユニゾン・バージョンペガサス』によって、ムゲンは再び翼の生えたケンタウロスへと姿を変える。ジャクリーンと夜見が背中に乗ったのを確認した彼は、その翼を羽ばたかせ光の追跡を開始した。
現場である川辺の上空にたどり着いた3人が見たのは、絶え間なくやって来る光を炎で消し飛ばす鬼面の群れ……だけではない。その外れでは、光を無視して町へと飛び立つ鬼面たちの姿もあった!
消しても埒が明かないと気づいたであろう彼らの背中をムゲン、ジャクリーン、夜見の三人は追いかける。
長銃、縄、長剣とカード……それぞれの武器を手にして。
「……!!」
1匹の鬼面が横を振り向いたころには、ムゲンは彼らの横から詠唱アサルトライフルを構えていた。その銃口から放たれた弾丸が、鬼面の額を打ち抜く。
それに気づいた他の鬼面たちは、その身に纏う鬼火を並走するムゲンたちに向けて撒き散らす!
鬼面たちのユーベルコード『鬼火雨』。ムゲンは文字通り火の雨と呼べるその弾幕かいくぐり、こちらも銃弾の雨を散らしていく……!!
二種類の弾幕が空を舞い、お互いがそれを回避していく中……鬼面たちは、ムゲンの背中に乗っている人物が1人だけであることに気づいた。
先ほどまでいたもう1人はどこに行ったのだろうか? あの弾幕に紛れて転落してしまったのだろうか。
……否、そのもう1人である夜見が、パルクールの申し子と呼ばれる彼女が地に落ちることなどありえない。
夜見は今、死角から長剣による斬撃を鬼面にたたき込んでいた。
真っ二つになり地上へと落ちていく鬼面の上を、手に持つ長剣『スカイソード』によって発生した上昇気流で夜見はさらに高く飛ぶ。鬼面の群れを超えた先にあったのは……ドローンだ。
足場と呼べるには十分な大きさのそのドローンに着地した夜見は、次の足場である別のドローンに目を向けた。彼女のユーベルコード『パルクール用フライトドローン』で呼び出した630機のドローンが、鬼面の群れを包囲している。そのドローンを夜見は得意のパルクールで飛び移り先回りしていたのだ。
ドローンの機能は飛行と足場だけではない。搭載された銃口から無数の弾丸が飛び出し、ムゲンとは別方向から射撃を加えていく!
「それにしても、ジャクリーンさんは平気なのかなぁ……おっと!!」
ケンタウロス型に変身しているとはいえ、男性の背中へ乗り続けることに抵抗があった夜見はポソリと呟くが、すぐさま次のドローンへと飛び移る。瞬間、乗っていたドローンは飛んできた炎によって爆発した!
鬼面たちにとって、夜見の足場であり攻撃手段でもあるドローンを放置する理由はない。狙いをドローンたちに変え、鬼面たちは次々と炎を放っていく……!
だがそれは、注意を逸らされているとも呼べた。
アサルトライフルによるムゲンの射撃が、また1体の鬼面を打ち抜いた。ドローンを追いかけていたその鬼面はムゲンに背中を見せていたのだ。その攻撃はそのまま夜見の移動に対する援護射撃にもなっている。
その様子を見た他の鬼面たちは攻撃の手を止め、反撃のチャンスが来るまで回避に専念し始める。だが、彼らに攻撃のチャンスはもう来ない。
壊されたドローンの数をスカイソードによって風を操り飛距離を伸ばすことで埋めた夜見。射撃だけでなく、彼女の斬撃も彼らに襲いかかるからだ。
「ッ!!!」
そんな鬼面たちが一瞬だけ、空中で静止した。
何体かは弾丸に打ち落とされる中、生き残った彼らに襲いかかるのは……蛇!
「止まっている暇はあるの? この毒はなかなか癒せないわよ」
ジャクリーンの言葉とともに、彼女の髪でもある蛇が一斉に鬼面たちへ噛みつく!
自身の髪の毛を蛇化して攻撃させるジャクリーンのユーベルコード『蛇の髪・噛みつき(メドゥシアナ・バイト)』。その噛みつきは急所に当てずとも毒が対象の体の中を駆け巡るのだ。
噛みつかれた鬼面たちは距離を取ろうとするも毒によって徐々に動きを鈍らせる……一網打尽にするチャンスだ。
ムゲンは飛行スピードを上げたかと思うと、鬼面たちよりもはるか高い位置まで飛び上がる。
その手に持っているのは円錐形の槍。その槍は、白銀色に輝いていた。
一箇所にいては危険だ。そう判断した鬼面の群れは、全滅を避けるため散り散りに逃げだそうとする。
その様子を見ていたジャクリーンは、手にしている太縄を構えた。
(あんまりこれ使ったことなかったのよね、どんな感じなのかしら)
災厄の呪いを籠めた、敵に恐るべき“たたり”をもたらすと言われているその太縄……『祟り縄』を、ジャクリーンは振りかぶる!
その先端が、1体の鬼面に命中した瞬間……!!
突如下から竜巻が発生し、鬼面の群れを巻き上げた!
夜見は警戒してドローンの上で身構える。だがその竜巻は夜見を吹き飛ばすことも、ムゲンの飛行を阻害することもなく、鬼面たちだけを巻き上げていく。
自分たちだけがその被害を受ける……鬼面たちにとってその竜巻は、まさしく“たたり”であった。
風が止み、一箇所に固まり地上へと落ちていく鬼面たち。
彼らはこちらへとやって来る2つの光を目にした。空を駆ける鞠の光と、ムゲンが持つ白銀の騎乗槍の輝きを。
鞠の光が上空を通過すると同時に……ムゲンの槍は鬼面の群れを貫いた!!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
西恩寺・久恩
無意識にUC超越者の肉体を発動
(指定UCの効果でUCを発動しています)
第六感と瞬間思考力と怪力は常に発動
うわぁ…何か多い
『頑張りましょう!カモカモ!』『カモ!』
鬼面の群れを見てそんな感想を述べながらも戦闘態勢に入る
フラウディとカモカモも戦闘態勢に入る
さっさと避けた方がいいですね…
敵UCは霊力により推力移動しながら心眼で鬼火を回避し回避出来ないならお祓い棒でシャドウパリィと衝撃波で鬼火を払う。気配感知で鬼面に囲まれないように立ち回る
『フラウディ・スパーク!』『カモ〜!』
フラウディとカモカモが口から謎の光線を放ち敵に攻撃
無限天理陰陽術式…至大至剛!
敵を一網打尽にする為にUCを発動し衝撃波を放ち攻撃
飛行する鬼面を追いかけて空を駆けるムゲンたちとすれ違うように、その下にある川辺へやって来た|西恩寺《さいおんじ》・|久恩《くおん》(妖怪陰陽師(物理)ここに見参!・f42881)。彼女は目の前の光景を眺めていた。
「うわぁ……何か多い」
鬼の面が鞠の対処を行っている間にも、鬼面たちは次々と増えていく。眺めている場合ではないと、久恩はお祓い棒を構えた。
「頑張りましょう!カモカモ!」「カモ!」
久恩の側でお互いに声を掛け合うのは、饅頭の形をした少女式神フラウディと鴨式神カモカモ。ふたりの声は、久恩の戦意も高めてくれる。
自身を育ててくれた義父を守るためにも、久恩は妖たちを見過ごすわけにはいかないのだ。
「……ッ!!」
鬼面の群れの1体が、久恩に気づき飛び出す。かと思えば……!
背中の鬼火を撒き散らしながら、高速で突進してきた!
「さっさと避けた方がいいですね……」
そう呟いた瞬間、久恩は自身の霊力を使った垂直移動でへと避ける。式神たちも上を飛んでかわし、鬼面は森へと突っ込んでいく……と思いきや、急に方向を変え、久恩の方へと突っ込んできた!
鬼面のユーベルコード『鬼火翔け』。その恐ろしさは、鬼火による範囲攻撃と突然の方向転換にあった。
それでも慌てず、久恩は手に持つお祓い棒を振りかぶる。
お祓い棒はこちらに飛んでくる鬼面に振れ……木の方向へとはじき飛ばしたッ!!
木の幹に叩きつけられた面が粉々になるほどの衝撃に加え、振りかぶった際の勢いから生み出された衝撃波が飛ばしていた鬼火を消し飛ばす。それを生み出したのは、久恩自身の怪力だ。
狐妖怪でありながら、妖力をまったく持たない久恩。それを補うために自らの肉体を鍛え続けた彼女は並の妖怪以上の筋肉量を持つようになった。その怪力は彼女のユーベルコード『|超越者の肉体《フォフォノカラダ》』によってさらに引き上げられていた……もっとも、このユーベルコードを発動している自覚は彼女にはないのだが。
「!!」
後ろから感じた気配に振り返り、すぐさま久恩は横へと避ける。鞠の光に集まっていた鬼面たちが一斉に『鬼火翔け』で突進してきたのだ!
鬼面の群れは久恩を取り囲むように追い詰めていく。が、久恩は避け続け常に包囲網の外側にいた。
『鬼火翔け』による方向転換の限度は2回まで。それ以上は1度止まる必要がある。『超越者の肉体』による動体視力と速度、そして『鬼火翔け』の弱点を見抜いた瞬間思考能力があるからこそ、久恩は常に有利な位置へ立つことができるのだ。
久恩に翻弄され続ける鬼面たちが、あるタイミングで同時に停止する。
今だ! 久恩の側でふたりの式神がうなずき合う!
「フラウディ・スパーク!」「カモ〜!」
式神のフラウディとカモカモが放った正体不明の光線。それを見た鬼面たちは避けようとちりぢりになろうと移動する。
「無限天理陰陽術式……」
攻撃を止めた……その一瞬が、彼らの敗北を確定させた。
久恩はお祓い棒を手に体全体を動かし……!!
「|至大至剛《シダイシゴウ》!」
他のユーベルコードとの両立を実現させる、久恩のもうひとつのユーベルコード『無限天理陰陽術式「至大至剛」』。強化された怪力を込めた遠心力から生み出されたその衝撃波は、鬼面たちをまとめて砕いていった。
成功
🔵🔵🔴
八秦・頼典
●SPD
へぇ、この短い間に随分と上達したじゃないか
これなら自ずと蹴鞠の上手さが風の便りで都に届き、やんごとなき御方らの耳にも入って招かれる日も近いかもね
さぁて、あの妖らが慌てふためいている様子を見るにそろそろ終点の裂け目かな?
妖らが騒げば騒ぐほど丸わかりだし、今まで地べたを這いずり回って山登りしていたから楽させて貰おうか
オン、アビラウンケン、ソワカ
永盧遮大日如来、ソワカ…『雷電の大鷲』!
相手は空を飛ぶ鬼面の妖だけど、こちらも空を飛ぶ化身となれば地の利は得られないよ
華麗に舞って直進突撃を誘発させたら物理攻撃無効の身をもって同士打ちを誘い、雷鳴雷撃をもって祓っていこう
「へぇ、この短い間に随分と上達したじゃないか」
森の中を駆け抜ける|八秦《やはたの》・|頼典《よりふみ》(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は、上空を飛ぶ鞠の光を眺めて思わずつぶやいた。
あの光が飛んだということは、町の住民たちの蹴鞠が鞠に認められたこと。最初は苦戦していた子供たちの姿を思い返し、笑みがこぼれた。
(これなら自ずと蹴鞠の上手さが風の便りで都に届き、やんごとなき御方らの耳にも入って招かれる日も近いかもね)
そんなことを思っていた頼典だが、光をかき消す爆風が目に入り改めて行き先の妖に考えを切り替える。
いくら吹き飛ばそうともやって来る鞠の光。次第に爆発の頻度が早くなっているその焦り様から側にあるものを推測するのは、まだ川辺にたどり着いていない頼典でも容易だった。
「オン、アビラウンケン、ソワカ。永盧遮大日如来、ソワカ……」
走る足を止めずに印を結び、まぶたを閉じ呪文を唱える頼典。川辺で戦っている久恩の飛ばした衝撃波の音が森を揺らした瞬間、その目が開かれ、地面を蹴った。
「|雷電の大鷲《ライトニング・イーグル》!」
その身は天まで昇る稲妻に包まれ、やがて大鷲のシルエットを形作る。
地べたを這いずり回り山登りしてきた鬱憤を晴らすかのように稲妻の大鷲は大きく羽ばたき、光に向かって飛び立った。
先ほどの稲妻の音を聞いたのか。それとも、仲間たちが久恩に一掃される姿を見て地上は危険だと勘づいたのだろうか。
光にたどり着く頃には、既に空を飛ぶ鬼面の妖たちは既に空中へと移動していた。とはいえ、こちらは空を飛ぶ稲妻の化身。地の利の点でいえばお互い同等であった。
あえて差を付けるならば……数では、鬼面たちの有利。それすら霞んでしまう優位性を、稲妻の大鷲と化した頼典は持っている状態であろう。
大鷲が誘うようにその場で1回転すると、先制攻撃を食らわせようと1体の鬼面が突撃してくる!
その翼に直撃してしまえば、普通の鳥ならバランスを崩し地面へと墜落するだろう。だがその大鷲は稲妻の化身。物理攻撃を無効化するその体に、突進してきた鬼面は突き抜けていった。
それに続き、他の鬼面たちはユーベルコード『鬼火翔け』を発動。鬼火を撒き散らしながら次々と走り出す! その鬼火は妖力を込められているため化身の体であっても効果はあるのだが、体を動かし回避する大鷲に命中することはなかった。
攻撃が当たらないという恐怖ではなく、華麗に舞う大鷲の余裕さに対する苛立ちによって、冷静さを失っていく鬼面たち。
彼らは大鷲の誘導によって、仲間の位置が近場になっていることに気がつくこともなかった。
「!!?」
やがて鬼面の1体が、別の1体と衝突する。
それに他の鬼面が動揺する瞬間を、この誘導作戦が成功した瞬間を頼典は見逃さなかった。
1度宙返りをして十分な加速を身につけ、今度はこちらから向かい……!
雷鳴雷撃の如き突進で、空にいる鬼面の群れを祓った!!
成功
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ステラ・スターライト
私の世界では|仮想の世界《GGO》は現実から逃げるための場所だった。
でもここでは、この仮想の世界こそが人が生きていける唯一の場所。
この世界を壊させたりはしない。
裂け目に逃げ込んだり、他の妖を連れてくる前に一匹残さず倒す!
UCを発動。
まずは《雷撃》を強化し、雷撃魔法を発動。落雷で敵の群れを打ち据える。
敵がダメージを受けている間に、強化した《封魔》により鬼火の力を封じる。
鬼火の力を封じている間が勝負。
既に存在する炎は《衣》の属性耐性で緩和しながら、《腕環》の力で飛行して接近。
強化した《剣》の威力をもって敵を薙ぎ払い、斬り倒す。
敵を掃討することができたなら、《浄化》をもって妖の残滓を消し去る。
頼典を初めとした猟兵たちの活躍で、一掃されてゆく鬼面たち。
裂け目の中から覗いていた鬼面の生き残りたちは、最後の手段を使うタイミングを見計らうように目を光らせていた。
突然飛び出した鬼面が、巨大な鬼火を放つ。鬼火が地面に着地した瞬間、鞠の光をかき消した時よりも大きな爆発を引き起こした!
着弾点の広範囲を爆破するユーベルコード『爆裂鬼火』。裂け目の周辺は、赤色に揺らめく恨みの炎に覆われる。その炎の中を、鬼面の群れは町に向かって駆けていく。
そんな彼らの進行方向で、ステラ・スターライト(星光の剣・f43055)は金髪のポニーテールをなびかせ炎の中に立っていた。
(私の世界では|仮想の世界《GGO》は現実から逃げるための場所だった。でもここでは、この仮想の世界こそが人が生きていける唯一の場所……)
寝たきりである体の代わりに、ゴットゲームオンラインのアバター姿で立つステラ。仮想の世界ではなく本物の異世界に足をつけた彼女は、実在する町の住民たちを助けるべく空へ手を伸ばし、炎から飛び出した鬼面たちを睨む。
「この世界を、壊させたりはしない」
鬼面たちがステラを爆殺せんと鬼火を出そうと構えた時、既にステラの手は振り下ろされていた。
瞬間、鬼面たちの目の前に雷が落ちるッ!
ステラの装具である魔法印が呼び出した落雷は、まるで壁のように彼らに立ちふさがった。
それに触れた前衛は全身が麻痺し、後衛は急ブレーキをかけて立ちすくむ。その隙を逃さずステラは両手を前に突きだし、別の魔法印を輝かせる。
「……!?」
鬼面たちは周りの仲間たちの姿を見て目を見開き、やがて自分の体にも異変が起きていることに気づく。
鬼面たちの背中で燃えていた鬼火が、消えているのだ!
先ほど輝かせた魔法印から発せられたのは、封魔の魔法。周辺にいる対象の能力を封じる魔法である。
だが、本来の射程を超えてステラから離れた位置にいる鬼面たちも、鬼火を失っていた。先ほどの落雷も合わせて、その射程は、一種のユーベルコードと読んでもいいほどの広範囲となっていた。予め発動させておいた彼女のユーベルコード『|光の祝福《シャインブレシング》』の力だ。
鬼面たちが状況を把握しきれていない内に、ステラは走り出す。足元に広がっている炎はまだ消えないが、あらゆる属性に耐性を持つ衣を纏った彼女を止めることはできなかった。
腕輪に刻まれた彗星の紋章が輝くのと同時に、ステラは地を蹴る。立ちふさがる炎を超えながら、その手に持つ勇者の剣に『光の祝福』を込め、鬼面たちに向けてなぎ払う!!
ユーベルコード並の破壊力とリーチを持つそれに切られ、地面へと砕け散る鬼面たち。
そこから離れた位置にいる他の鬼面たちは、もはやこの状況に打つ手はないと悟る。1度裂け目に撤退し、より強力な妖に要請を頼まねばと走り出す。
だが、ステラは逃さなかった。
裂け目の周辺に集まった彼らと鉢合わせる形で鬼火から姿を現し、すれ違い様に切り払っていく!!
鬼面の群れを一掃した彼女はすぐさま裂け目に向かって手を伸ばし、浄化の魔法が込められた魔法印を輝かせた。
周囲の鬼火が消えていくのと同時に、裂け目は徐々に閉じていき……ついに消滅した。
ふと空を見上げると、再び鞠の光が飛び出していた。その鞠の光は方向を変えることなく、ただまっすぐ天に向かって突き進んでいた。
鞠の光は、妖を察知していない。
それは町の付近に妖が存在しないこと……即ち、町を脅かす危機を打ち払ったことを意味していた。
町で響くのは鞠の音に、元気な子供たちと微笑ましく笑う大人たちの声。
「やった! 新記録だよ!!」
「わぁー! 本当にすごーい!」
「よぉーし! 今度は俺が追い抜いてやる!!」
いずれ貴族の使者が鞠の回収のために町を訪れる。そうしたら、彼らの蹴鞠祭は終わりだ。
だが、彼らの笑い声は蹴鞠のようにこれからも続いていくだろう。笑顔という鞠を落とさないように、アカシアエンパイアの陰陽師と猟兵たちが守り続けるのだから。
鞠の光は、日が暮れるまで天高く飛び続けていた。
成功
🔵🔵🔴