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モンゴルより来た少女

#アリスラビリンス #戦後 #【Q】 #ホワイトアルバム #ホワイトデー

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#【Q】
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●3戦目にして初の村襲撃
『あー、おなかぺこぺこ』
 かつて猟書家だった見た目少女なオウガのホワイトアルバムは飢えていた。
 彼女が好んでいたのはアリスの肉、それも絶望に打ちひしがれた者の肉であった。そのため、ホワイトアルバムはアリス適合者のトラウマを復活させて暴走させるという事件をたびたび引き起こしていた。これによりオウガ・フォーミュラたる鉤爪の男は彼が好む地獄めいた光景を、ホワイトアルバム自身は絶望しきったアリスの肉を得るという流れだったが、これらの陰謀は猟兵たちにことごとく潰され、鉤爪の男も猟兵たちによって倒された。そんな中、いまだにホワイトアルバムは生き残っていた。猟書家としての使命も従うべきフォーミュラも亡き今、彼女が行うべき事はただひとつ。
『お肉が……食べたいな』
 すなわち、オウガとしての本能を満たす事。そしてその足が向かった先は……。

「おう!ひさしぶりだな!」
 アリス適合者の少女ふたり、炎のハルナと氷のユキに声をかけたのは、力持ちの愉快な仲間スティーブだった。
「まだ扉は見つかってねえのか」
「はい、残念ですが……」
「……」
 心底悲しそうな顔のハルナに、無表情でうなずくユキ。それに対して迎えたスティーブは満面の笑顔だった。なぜなら。
「そいつぁ残念だが、まあちょうどいいタイミングでもあったかもなあ。せっかく来たんだ!食ってってくれ!」
 そう。ちょうど村を挙げての焼肉パーティーが行われていた真っ最中だったのだ。なんでも先日猟兵がこの村でとある元猟書家に勝利したということで、まさにその祝いの真っ最中だったのだ。
「わあ!ありがとうございます!」
「……」
「おっと!ついでにこいつもだ!」
 焼肉に向かおうとした少女ふたりに、スティーブは何かを手渡した。
「これは……お菓子ですか?」
「おうよ!世間じゃホワイトデーとかいうらしいじゃねえか!なんなら肉ばっかりじゃなくて甘いモンも必要だろうと思ってな!」
「すっごいうれしい!来てよかったねユキ!」
「……」
 ハルナは扉を探している苦境も忘れ満面の笑顔を見せた。ユキもわずかに笑顔を見せる。こうして新たな客を迎えてさらに祭りが盛り上がろうとしている、そんな最中であった。
「……お?あんたも客か?肉食ってくか?」
『お肉……いいね、それ』
「!!離れて!そいつは!!」
「……!!」
 いつの間にか現れていた3人目の少女の姿を見たハルナとユキは途端に表情を険しくした。そんな様子を気にする事もなく、ホワイトアルバムは邪悪な笑みを深くする。
『できれば、|生肉《レア》でね』

 同時刻グリモアベース。
「……ホワイトデー依頼ぽくはないなあ」
 なにやらわけのわからない事を言う大豪傑・麗刃(24歳児・f01156)。
「ともあれこのままでは村人たちとたまたまそこに来てた旅人ふたりがタルタルステーキにされてしまうのだ!ホワイトデーに生肉はさすがに合わないのだ!なんとかしてほしいのだ!」
 これまで単独行動だったホワイトアルバムだが、今回はどうも手下を大量に引き連れてきたらしい。村人たちもアリス適合者ふたりも戦う力はあるが、ホワイトアルバムが強大な上に手下たちの数もあり、多勢に無勢となってしまうようだ。猟兵の介入は絶対に必要だろう。
「やることは簡単なのだ。まずは敵の手下をとにかくやっつけて、最後にホワイトアルバムをやっつければ終了なのだ。そうなったらあとは焼肉でもホワイトデーを楽しめば……」
 そこまで行って麗刃はなぜか押し黙った。残念ながらそんな第3章は存在しないようだ。
「……と、ともあれ!よろしく頼むのだ!」
 とりつくろった感もある麗刃の一礼を受け、猟兵たちはアリスラビリンスへと向かうのだった。


らあめそまそ
 タイトルは生肉からの連想。らあめそまそです。
 ともあれアリスラビリンスの村を舞台に、たまにはチャンピオン・スマッシャー以外でやってみました。かつてはホワイトアルバム戦では、暴走したアリスの心を救うシナリオという関係上『アリス適合者と語る、あるいは共に戦う』というプレイングボーナスがありましたが、今回は純戦ですので、まあ語るに関してはそこまで必要でないかもしれません。ちなみにふたりのアリス適合者、ハルナとユキに協力してもらうならデータはこんな感じです。

 ハルナ:【氷のごとき怒り】(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=44023)に登場。自らの怒りをコントロールできず荒れた生活を送っていた。猟兵たちに救われた今では明るく快活になったようだ。怒りを具現化したような炎の力を使用。
 ユキ:【ホワイトクリスマスと呼ぶにはあまりにも】(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=45962)に登場。ひどい失恋と裏切りのため心を閉ざしていた。猟兵たちに救われたがいまだに表情は戻り切っておらず極端に無口。悲しみを具現化したような氷雪の力を使用。

 ついでに力持ちたちについても。

 スティーブ(をはじめとする愉快な仲間の力持ちたち):らあめそまそのチャンピオン・スマッシャー依頼多数に登場。ユーベルコード『びったんびったん』『もっと愉快な仲間達』を使用。

 それでは皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『グリードキャタピラー』

POW   :    キャタピラーファング
【無数の歯の生えた大口で噛みつくこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    脱皮突進
【無数の足を蠢かせての突進】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    汚らわしき蹂躙
全身を【表皮から溢れる粘液】で覆い、自身が敵から受けた【敵意や嫌悪の感情】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:猫背

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●モルガ
『うーん、愉快な仲間のお肉は筋張ってて固そうだね』
 後方に控える手下たちにホワイトアルバムは指示を出した。
『みんな、食べちゃっていいよ』

 これまで単独行動していたホワイトアルバムだったが、どうやって得たのかは不明だが今回は大量に部下のオウガを引き連れていた。食欲繋がりというわけでもなさそうだが。ともあれ【グリードキャタピラー】の能力は以下の3つだ。
【キャタピラーファング】は巨大な口による噛みつきだ。単純な攻撃ではあるがグリードキャタピラーの動きは存外素早いため油断していると容易に接近されるし、またなんでも食ってしまう口での攻撃は強烈極まりないだろう。一瞬の気の緩みも許されまい。
【脱皮突進】は高速移動による攻撃だ。巨体がゆえに高速で体当たりをするだけでも十分な破壊力であろう。回避も困難が予想される。さらに悪い事に戦闘中にその動きはどんどん早くなっていくらしい。一瞬の気の緩みも許されまい(2回目)。
【汚らわしき蹂躙】は、もともと嫌悪感を催す外見の敵が全身粘液で覆われる事でさらに醜悪さを増すらしい。それは単に見た目だけの問題ではなく、猟兵が嫌悪感を覚えれば覚えるほどにその強さが上がるというきわめて厄介な能力を持つらしい。一瞬の気の緩みも許されまい(3回目)。

 以上、さすがはオウガというだけあって多彩な技は結構相手をするのが面倒だが、それでもこいつらは尖兵に過ぎない。なんとか片づけて本番に備えようではないか。
高崎・カント
「もぐもぐむぐむぐもむもっきゅ?」
スティーブさん達と焼肉を食べていたら、何やら事件なのです?
でもカントはまだまだおなかがぺっこぺこなのです
急いで食べて向かうのです!(もぐもぐもぐ)

もきゅ! お腹いっぱいなのですー!
ご機嫌でぴょんぴょん跳ねて歌っちゃうのです!

やきに~く♪ カントの、食べたものはなんでしょう~♪
牛肩ロースとミスジステーキとざぶとんとテールとハラミと♪
ミノタンロースとリブキャップ~♪
ソーセージ♪ 鳥もも肉♪
それからカルビなのです~♪

お腹いっぱい元気いっぱい!【UC使用】
あおむしさんに思いっきりパチパチ火花なのです!
はらぺこあおむしが満腹モーラットに敵うわけがないのです!



●羊斟の恨み
「もぐもぐむっきゅむっきゅ」
「おー、いい食いっぷりじゃないか!」
 そも、この焼肉パーティーは猟兵の勝利を祝うためのものであったが、高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)はその戦いに参加していたひとりであった。そのため大手を振って焼肉を食べられるというものである。まあ愉快な仲間は別に村人や戦った猟兵であるないにも関わらず基本誰でもウェルカムではあるのだが。それにしてもモーラットの小さい体のどこに入ってるのだろうかという食事量である。そりゃあ肉を出す側としてもうれしくなるわけで。
「どんどん食え!」
「むきゅー!もぐもぐむぐむぐもむもっきゅ?」
 で、まさに今カントが焼肉を堪能している最中に。
「もきゅ?」(何やら事件なのです?)
 なんということか。よりにもよって人が食事を楽しんでいる最中に敵襲、それもオブリビオン、人喰いオウガの襲撃とは。
(でもカントはまだまだおなかがぺっこぺこなのです!)
 さて本来ならカントはすぐさま食事をあきらめて敵へと向かわねばならない所である。それが猟兵のつとめなれば。しかし昔から腹が減っては戦ができぬというではないか。万全の状態で敵にぶつかる事も重要だろう。かといって食事を優先して敵を後回しにするのもなあ。さて一体どうしたものか。
(急いで食べて向かうのです!)
 結局カントが選んだの折衷案であった。できるだけ早く量を詰め込んで敵に急行する。もっきゅもっきゅとカントは急ピッチで肉をできる限り胃に詰め込んだ。こんな食い方でもうまいのはさすが焼肉はえらい。思わず歌なんか飛び出したりもする。
(やきに~く♪ カントの、食べたものはなんでしょう~♪)

 牛肩ロースとミスジステーキとざぶとんとテールとハラミと♪
 ミノタンロースとリブキャップ~♪
 ソーセージ♪ 鳥もも肉♪
 それからカルビなのです~♪

(もきゅ!お腹いっぱいなのですー!)
 実に上機嫌である。おいただ食ってるだけで策もなく突っ込むとか大丈夫か?と思う向きもあるかもしれないが、カントは別に意味もなく戦闘開始を遅らせたわけではない。実はこれは単に腹ごしらえをしてから戦おうではない。勝利のために必要な事だったのだ……ともあれカントは改めて最前線に向かった。戦った後はもっとよく味わって食べようそれまで肉残ってればいいなと思いつつ。
『キシャー!』
 戦いは既に始まっていた。グリードキャタピラーたちが次々に愉快な仲間たちに襲い掛かっていくのがカントにもよく見えた。力持ちの愉快な仲間たちはさすがにオウガを相手にしているだけのことはあって結構鍛えられているようだが、それでも多勢に無勢、押し込まれているのは明らかだ。
「た、た、助けてくれえ」
「きゅぴー!」
 力持ちのひとりが今しもグリードキャタピラーに頭から飲み込まれようとしていた所を、カントは横から体当たりで吹き飛ばした。体格差など感じさせない強烈な打撃だ。猟兵特有のパワーとも言えるが、それだけではなかった。
「もっきゅ!きゅぴぴぴぴぴぃ!きゅいきゅい!」(今のカントはお腹いっぱい元気いっぱいなのです!)
 そう。カントは意味もなく食事を済ませてから戦いに挑んだわけではない。ユーベルコード【はらぺこモーラット】は戦闘開始前にうまいものを食べれば食べるほどに元気いっぱいになり戦闘力が上がるというものだったのだ。愉快な仲間たちが焼いたお肉は質量ともにカントを元気にしてくれたようだ。
「きゅぴー!」
 攻撃目標を力持ちからカントに変え、噛みつこうとしたグリードキャタピラーに、カントのほっぺから放出されたパチパチ火花が炸裂した。普段の数倍の威力に、たちまちグリードキャタピラーは黒焦げになる。
(はらぺこあおむしが満腹モーラットに敵うわけがないのです!)
 人の食事を妨害した恨みは怖いぞとばかりにすぐさまカントは次の敵に突っ込んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
大変なことになっている様で。
参りますねぇ。

『FAS』を使用し飛行、芋虫さん達が容易に『牙』の射程内に入れない様にしまして。
『FLS』で|全『祭器』《未装備含》を召喚、空間歪曲障壁を展開しますねぇ。
更に【鴻鉀】を発動、『祭礼の女神紋』により『祭器』共々『巨大化』し『即時修復』付きの『天鎧』で覆えば、『祭器』を狙われ破壊されても即修復可能となりますので、この状態の『FMS』のバリアで適合者さん達や愉快な仲間の方々の周囲を囲えば、彼らが巻込まれる心配もいりません。
後は『跳躍』等に備え『FGS』の重力波で動きを抑え、『FRS』『FSS』の[砲撃]による[範囲攻撃]で叩きますぅ。



●ゴッドマン拡大
「お?なんだ?肉食いに来たのか?」
 村を訪れた夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の姿、特に体格を見て、愉快な仲間のひとりがこんな風に声をかけるのは当然の流れといえた。
「今なら肉も甘いものも食べ放題……と言いたいところだったが、ちょうど間の悪い所に来ちまったなあ」
「大変なことになっている様で」
 愉快な仲間たちのパーティーは基本誰でもウェルカムだし、実に食欲旺盛に見える体格のるこるは迎え入れる側にとっても実に食わせ甲斐があることだろう……こんな敵襲真っただ中な状況でなければ、の話ではあるが。実際の所、るこるは体格に相応しいかなりの健啖家だったようだが、むろん今回るこるが村を訪れた目的は食べ放題ではない(はずだ)。
「それでは、参りますねえ」
 こんな状況でもなければ普通にパーティーに乱入して普通に食べ放題食べていたかもしれないが、あくまで今回るこるは猟兵として、村の危機を救いに来たのである。食べ放題楽しめるとしたら、全てはその後の事だ。
「FAS!FLS!作動ですぅ!」
 3対6枚のエネルギー翼を広げてるこるは宙を舞った。今回の相手グリードキャタピラーは芋虫というものの特性からいっておそらくは地上戦主体だろう。なので牙の届かない高空から叩くのは間違いなく有効と思われた。同時に敵の様子を俯瞰する目的もあった。
「芋虫さんの数はかなり多いようですねえ」
 村のあちらこちらで激戦が繰り広げられていた。既にるこる以外にも猟兵が到着しているようで、その手が届く所ではグリードキャタピラーを押し返していたが、まだまだ力持ちたちが単独で苦戦を強いられている地域もあるようだ。敵は多数、出し惜しみはなしとFLSの力でありったけの神器を展開した。そして。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『天鎧の加護』をお与え下さいませ」
 そのユーベルコードの名は【鴻鉀】と言った。『鴻』は大型の水鳥を指す言葉だが、単に巨大という意味でも使われるらしい。『鉀』は鎧だ。現代では元素のカリウムを指すらしいが。読みは『ボウバクナルグソク』らしいが、すなわち『茫漠なる具足』ということであろうか。その効果は全身を『天鎧』なるもので覆い、かつ3倍に巨大化して身体能力を大幅に上昇させるというものであった。で、戦場に巨大なるこるが登場したわけだから、当然敵味方関係なくみんなの目を引いたわけで。空飛ぶるこるの威容はまさに熱気球か飛行船か。
「FMS!皆さんにバリアを張ってくださぁい!」
 愉快な仲間たちやアリス適合者2人の驚愕の視線を気にする様子もなく、るこるは彼らを守る行動に出た。神器もるこるの一部とみなされているため、高い修復力と環境耐性を持つ天鎧の影響を受ける事になるとのことで、人々を守るバリアもその防御力は強大なものとなり、グリードキャタピラーといえどもそう簡単に破壊する事はできないだろう。そして何よりるこるの巨体自体がデコイとして働く事になった。グリードキャタピラーたちにとっては巨大なるこるは実に食べでのある肉として映った事だろう。キャタピラーたちは愉快な仲間たちを放置してるこるに殺到してきた。
「FGS発動ですぅ!」
 なにせ敵はオウガだ。芋虫の分際で空飛ぶるこるに向けていきなり飛んでこないとも限らない。るこるは天鎧で強化されたFGSより発せられた重力波でキャタピラーの動きを抑え込みにかかった。強烈なGを受け、飛び掛かろうとしたキャタピラーの動きが止まる。
「一斉放火ですぅ!!」
 そこに浮遊砲台からの集中攻撃が飛ぶ。カリウムを水に投じた時を思わせる大爆発の前に、さすがになすすべなくキャタピラーたちは次々に粉砕されていった。バリアのおかげでフレンドリーファイアもない。戦況は一気に猟兵側に傾いたといっても良いだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
アドリブ連携歓迎

「ハルナさん、ユキさんも、お久しぶりですね
覚えておいででしょうか? 先日共に戦った魔法の鏡です」
二人共、帰還はできないまでも元気そうで良かった
「このような形ですが、また会えて嬉しいです
……あっち(ホワイトアルバム)との再会は嬉しくありませんが」
まあ、手早く片付けてしまいますか

「ユーべルコードが使える人は、戦えない人の避難誘導を!
可能なら敵の足止めをお願いします」
直接の戦闘は、敵意や嫌悪の感情を高めてしまいがちです
ここは機械であるレギオンに攻撃させましょう
芋虫一体につき、レギオンを一体囮にして隙を作り数体で包囲攻撃します

ついでに、二人のアリスの今の強さと戦術を観察しておきます



●追記:ハルナとユキは【ガラスのラビリンス】を使用可能
 これまでアリス適合者を狙ってきたホワイトアルバムだったが、今回は事情が違っていた。かつてホワイトアルバムと関わった事のあるアリス適合者ふたり、ハルナとユキにとってみれば、たまたま訪れた村が戦火に巻き込まれてしまったという事になる。
「私たちも行きましょう!」
「……うん」
 それでもこれも何かの縁、ましてや敵は憎きホワイトアルバムだ。恐怖はあるだろうがかつて世話になり、今もまた世話になろうとしている村のために自分たちも戦うべく一歩を踏み出した、まさにその時であった。
「ハルナさん、ユキさんも、お久しぶりですね」
「あなたは……!」
「……!」
 呼びかけた者の姿を認め、ふたりの顔が驚愕に彩られた。
「覚えておいででしょうか?先日共に戦った魔法の鏡です」
 自然な、とも、どことなくぎこちない、とも取れるような笑顔を浮かべ、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)はふたりに呼びかけた。むろんハルナもユキも鏡吾の事を忘れるはずがない。鏡吾はハルナとユキの両方の事件に関わっていたのだ。
「二人共、帰還はできないまでも元気そうで良かったです」
「まあ、あたしたちもどうにか元気ではやってますよ」
「……」
 戦場とは思えないような笑顔のハルナに、無表情ながらも顔にほころびを見せたユキ。
「このような形ですが、また会えて嬉しいです」
 あくまで笑顔のまま、鏡吾はふたりを……そして、敵の方を見た。
「……|ホワイトアルバム《あっち》との再会は嬉しくありませんが」
 鏡吾の言葉にハルナもユキも表情を引き締めた。残念ながら今は再開を喜んでいる場合ではなかった。それはまあ、終わった後にいくらでもできるだろう。今は村を襲撃しているグリードキャタピラーを、そしてホワイトアルバムを撃破すべき時なのだ。戦況は徐々に猟兵側に傾いているが、まだまだ戦いは道半ば、一瞬の油断もできない戦況だ。
「ユーべルコードが使える人は、戦えない人の避難誘導を!可能なら敵の足止めをお願いします」
「おっけい!俺らも反撃だ!」
 鏡吾の呼びかけに力持ちたちが呼応する。そして。
「私たちも行きます!」
「……うん!」
 ハルナとユキも最前線へと駆けていった。そして鏡吾本人はといえば。
「うーん、やはり嫌悪感や敵意はどうしても沸いてしまいますね」
 あくまで笑顔ではあったが、その口調には隠しきれない成分がどうしても含まれてしまう。ただでさえ美的センスからかけ離れているグリードキャタピラーの姿は、戦闘に備えてか、食欲旺盛を反映してか、その全身が粘液で覆われて醜悪そのものになっていたのだ。
「直接戦闘したら、なおさらそういった感情が高まってしまうでしょうね」
 厄介な事にグリードキャタピラーは敵意や憎悪を向けられるほどに強化されてしまうという。ならばどうするか。敵意や憎悪など関係ない者に戦わせればよいのだ。
「感情がない者はなんでしょう……それは機械です」
 むろん機械なのに感情のある一部猟兵種族の事を言っているわけではない。鏡吾は|小型の戦闘用機械兵器《Electro legion》を召喚した。その数実に690体。それらを一匹のキャタピラーに対し数体送り込んだ。レギオンはそこそこの戦闘能力を持つ代わりに防御は紙であり、一撃で破壊されてしまう。鏡吾は1体を囮として敵に攻撃させ、その隙に他のレギオンが包囲攻撃する策を取ったのだ。
「さて、むこうは……」
 レギオンがキャタピラーと戦っている間に鏡吾はハルナとユキの強さと戦術を確認する事にした。ふたりはそれぞれ真っ向から炎と吹雪を敵にぶつけていた。それなりに威力は有りそうだが戦法は原始的で単純に見えた……が、力持ちが教えてくれた事によれば、『鉤爪の男』と戦った時にはユキの氷で【ガラスのラビリンス】で作った壁を強化するとか器用な使い方もしたらしい。わりと融通はききそうだ。
「さて、こちらもカタがついたようですね」
 振り向くと、レギオン軍団はかなり数を減らしてはいたが、キャタピラーも相当数が倒されていた。決着の時は近いだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェリチェ・リーリエ
おうユキ!久しぶりだべな、元気してたべか?
…なんかまだテンション低いべなぁ…こういう時はパーッと宴会してうまいもん食って、ってあれ?宴会パートは?

って今はどのみち宴会どころじゃねえべな!ユキ、お前さんも手伝ってくんろ!あいつら凍らせて動き鈍らせるだ!
寒けりゃ脱皮もしねえべ…たぶん()

スピードならおらも負けねえべ!
指定UC発動、嫉妬のオーラを纏い疾走しスピードを活かして突進を素早く回避。走りながら爆破スイッチをポチポチ押して【爆破】攻撃!走ってる間は攻撃力も回避力も上がってるでな!当たんなきゃどうってことねえべ!
ユキを苦しめた腐れ二股リア充男に制裁を加えるその日まで、嫉妬戦士は止まらねえだ…!



●疾風怒濤略してしっと
 戦況は猟兵側へとはっきり傾いていた。当初は劣勢だった村人たちも奮闘の度合いを強め、徐々にオウガどもを押し返しつつあった。巻き込まれた形になったアリス適合者ふたりも因縁ある敵に対して奮闘を続けていたのだが、そんな最中。
「ユキ!」
 呼びかける声に振り替えると、そこにいたのはフェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)。かつてホワイトアルバムの犠牲になりかけたユキを助けた猟兵だった。とんでもない失恋で暴走しかけたユキを、リア充死ねを謳う者が救わない理由はないのであった。
「……!」
「久しぶりだべな、元気してたべか?」
「……」
 無表情の中にもほんの少し微笑みを浮かべてユキはうなずいた。その様子にフェリチェの顔にも不安が浮かぶ。
「……なんかまだテンション低いべなぁ……」
 ユキの極端な無表情が生来のものなのか、それともひどい傷心から回復し切ってないがゆえか。ともあれフェリチェはユキを元気づけるのが最優先とみたようだ。
「こういう時はパーッと宴会してうまいもん食うのが一番だべ!」
 実に料理人らしいフェリチェの言葉であったが、あながち間違ってはいない。鬱だと思ったら肉を食えと誰かが言ったらしいが、実際肉には俗に幸せホルモンとか呼ばれるさまざまなものの放出を促す力があるらしい。また他人の交流を持つ事もそれを促進してくれるとのことで、つまり食える上に他人と交流できる宴会はまさに幸せホルモンドバドバである。むろんそれで解決しない本物の鬱もあるので注意は必要だが。
「……ってあれ?宴会パートは?」
 お気づきになりましたか。そう、割とこの間までオウガによるむーざんむーざんな光景が日常茶飯事だったアリスラビリンスは、オウガ・オリジンが倒され、オウガ・フォーミュラも倒され、それでもなお完全な平和とはほど遠いようで、いまだに平和的なパートというものがないのである。
「まあ、今はどのみち宴会どころじゃねえべな!」
 いずれそういう平和なシナリオができるようになるならないはともかく、今は眼前のオウガどもに対応しなければならない。フェリチェはユキの方を見た。
「ユキ、お前さんも手伝ってくんろ!あいつら凍らせて動き鈍らせるだ!」
「……」
 瞳に確かな意志の力を込め、ユキはうなずいた。そしてそんなふたりに向けてグリードキャタピラーどもが数匹突っ込んできた。
「ユキ!」
「!!」
 ユキが力を込めるとキャタピラーの体がたちまちに凍り付いた。それでもそこはさすがにオウガ、多少速度を鈍らせたような気がしないでもないが完全に止める事はできないようで構わず突っ込んでくる。
「よくやったべユキ、あとはおらに任せるだ!」
 フェリチェはユキを守るように前に出た。そしてユーベルコード【|嫉妬戦士は止まらない《jealous high》】を発動させた。フェリチェの全身を嫉妬のオーラが覆う。
「スピードならおらも負けねえべ!むこうは寒けりゃ脱皮もしねえべ……たぶん」
 女偏に疾いと書いて嫉、女偏に石と書いて妬。すなわち嫉妬である。すなわちそれは疾さと石のような攻撃力やを与えるものであった。なお耐久力は石どころかむしろ柔くなるようだが回復力の上昇で無理やり石のような防御力を実現……しているのだろうか?まああれだ。脱皮で速度が上がるキャタピラー側はその脱皮が封じられてしまったようだ。つまり。
「当たんなきゃどうってことねえべ!」
 とあるエースパイロットの名言に従えば良いのである。嫉妬のオーラが赤いかどうかはわからないが、速度は通常の1.3倍よりも3倍よりも間違いなく上がっているだろう。敵の攻撃を回避しつつ、フェリチェは必殺のリア充爆破スイッチの連打でキャタピラーどもを次々爆破していった。キャタピラーがリア充かどうかは……まあ外見だけなら美少女なホワイトアルバムに使役されるんだからリア充ってことでいいだろうたぶんね。
「ユキを苦しめた腐れ二股リア充男に制裁を加えるその日まで、嫉妬戦士は止まらねえだ……!」
 憤怒の表情でフェリチェは言った。その視線はキャタピラーではなく、その先に向けられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒風・白雨
焼肉パーティーと聞いてやってのじゃが――
焼肉どころか、肉の下拵えすらまだのようなじゃな。

仕方があるまい。
わしも少し手伝ってやろう。
働かざる者食うべからず、などと後で言われてはかなわぬからな。

〈仙術〉で空を舞い、地表を見据える。
煙管の雁首を天に向け、巨大な雷雲を招来。
|神鳴《雷》をもってオウガ達を打ち据えよう。

オウガ達の動きが鈍ったならば、《竜神武者》の出番。
その巨大な太刀でもって、ぶつ切りにさせよう。

なお暴れるものがいるようならば仕方がない。
拳に集めた《力》を空中から叩きつけ、地面ごとに粉微塵に潰してやろう。
まぁ、あれだけの巨体じゃ。
数匹程度食えなくなったところで支障はあるまい。



●タンパク質には違いない
「焼肉パーティーと聞いてやってのじゃが――」
 到底パーティーとはほど遠い戦場の光景を目の当たりにして、思わず黒風・白雨(竜神・f31313)はつぶやいた。
「……焼肉どころか、肉の下拵えすらまだのようなじゃな」
 白雨は竜神である。なんでもかつてはかなり荒っぽい性格だったようだが、他の竜神のように人間からの信仰を受け、その際にいろいろとおそなえものを頂いた事でずいぶんと丸くなったらしい。とある神話で凶暴な神が別の地域で守護神として崇め奉られる事は世界中で見られる現象だが、存外こういう裏事情があったのかもしれない。ともあれ、そんな事もあってか白雨はかなりの健啖家なようで、今回の焼肉もかなり楽しみにしていたらしい。実際はパーティー開始後に襲撃で中断されたのだったが、準備中だろうが準備後だろうが今焼肉を楽しむような状況でない事には変わりはない。
「仕方があるまい。わしも少し手伝ってやろう」
 食い物の恨みは恐ろしい。焼肉を邪魔する不埒な輩は許してはおけんと、白雨は煙管を持つ手に力を込めた。
「働かざる者食うべからず、などと後で言われてはかなわぬからな」
 まあ愉快な仲間たちなら別にそんな事は言わないかもしれないが、何より労働すればその後の食事がうまいというのもまた、世のことわりなのである。食前の軽い運動とばかりに、白雨は仙術を発動させ、宙に舞った。
「ふむ、皆がんばっておるようじゃのう」
 眼下に戦場を見下ろすと、村人たちや猟兵たちが巨大な芋虫どもを徐々に追い詰めているのがよくわかった。しかし敵もさるもの、不利な状況ながらその中でも必死の抵抗を続けているようだ。
「では、わしがもう一押しを加えてやるかのう」
 白雨が煙管を天に向けると、その雁首より立ち上った紫煙がもうもうと広がり、やがて空一面を覆う黒雲と化した。これこそまさに天の威光、竜神の力である。その【天威】は本来持つ力を大幅に上昇させるという。それにより、竜神として本来持っていた仙術による天候操作の力を増幅させてこのような大技を可能にしたのだ。
「我が神鳴を受けるがよい」
 そも竜とは雷の神格化だと言われている。ならば、それはまさに竜神たる白雨に相応しい技と言えたかもしれない。黒雲より轟音とともに電光が幾筋も落下し、グリードキャタピラーたちを直撃したのだ。それはまさに天の怒りか食い物の恨みか。だが食欲だけなら負けていない、というより食欲しかないグリードキャタピラーたちは動きを鈍らせつつもなおも進撃を止めようとしない。
「さすがにしぶといの。ならば出番じゃぞ」
 白雨は四方に控えていた四騎の巨大な竜神武者たちに命を下した。武者たちは太刀を携えるとグリードキャタピラーたちに向かっていく。その力も当然天威によって大幅に強化されており、噛みつかんと襲ってきた芋虫どもに逆に刃を食らわせて次々に切断していく。他の猟兵たちの活躍もあり、このまま十分な時間をかければオウガ達を全滅させる事もできただろう。が。
「ふむ、ちょっと時間も惜しいの、仕方がない」
 どうやら白雨は早いところ肉を食べたくなったようで、自ら手を下す事にしたのである。白雨は拳に力を込め、そして。
「喝!!」
 大喝とともに思い切り拳を大地に向けて突き出すと、溜めた力が大地に飛んでいき、キャタピラーどもを巻き込んだ。天威で増幅された強大なる暴力の前に、キャタピラーは瞬時に粉微塵となった。それを見て白雨がつぶやいた事は。
「まぁ、あれだけの巨体じゃ。数匹程度食えなくなったところで支障はあるまい」
 ……ちょっと待って。筆者は当初『肉の下拵え』を、愉快な仲間たちが用意した肉がまだ準備できてないって解釈したんですが、もしかしてグリードキャタピラーの事だったの?食べる気満々ですかいッッッ。あるいは愉快な仲間たちに頼めば焼いてくれるかもですが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
ハルナもユキも久しぶりっすね。どうやら再会したくない相手もいるみたいっすけど
ぶっ飛ばすのに力を貸すっすよ!

2人に順番に憑依をして、その力を引き出す
「トラウマを利用された力っすけど,今度は利用し返すっすよ!」
ハルナにはアリスや仲間を守る為の憤怒を宿す勇者の力、ユキには雪原を生み出し敵を凍りつかせるクライオニクスブリザードの力を引き出させる
「突進もよく見てれば避けられなくはない。相手の進行方向に攻撃を置くイメージっす。脱皮もスピードは上がるっすけど、その分防御が落ちるっすから、そこを狙うっす!」
などとアドバイスしながら彼女達の力を引き出しながら戦う
「自分達がついてるっすから、安心するっすよ」



●突進に対しては起き技を
 リカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)がこの村を訪れるのはもう何度目になるだろうか。調べてみたらチャンピオン・スマッシャーで4回、鉤爪の男で1回か。なので他の猟兵のように焼肉を食いに来たのかと思いきや、どうも今回は別件だったようだ。
「ハルナもユキも久しぶりっすね」
「あ、あなたは!」
「……」
 アリス適合者の少女ふたりは鉤爪の男との戦いでリカルドと顔を合わせていた。その時はなかなかめったにできない経験をさせてもらったようで、これのおかげでふたりは単に戦闘で敵に直接ぶつけるだけではない自分たちの力の使い方を学んだという点ではなかなか有用な体験ではあったようだ。そういう点でもふたりにとってリカルドは忘れがたい人物といえた。
「あの時はどうもでした!」「……」
 戦況がはっきり猟兵側優勢になった事もあり、ハルナとユキにもリカルドに頭を下げるぐらいの余裕はあったようだ。いろいろあったが元気そうなふたりの様子にリカルドもまた笑顔を作りかけた(ヒーローマスクなので明確に表情が変わるわけではないが)が、その顔はすぐに真剣なものへと変わる。
「どうやら再会したくない相手もいるみたいっすけど」
 その視線の先にはいまだ残存しているグリードキャタピラーの群れ。そしてその奥には……。
「……」「……」
 無口なユキは当然として、活発なハルナもまた表情を硬くした。そこにいた者こそふたりにとっての仇敵にして、今回の元凶、ホワイトアルバム。
「ぶっ飛ばすのに力を貸すっすよ!」
 そして、リカルドがここに来た今回の理由でもあったのだ。早速リカルドは宙を舞うとハルナの頭上に着地するとユーベルコードを発動する。
「さあ、眠った力を引き出すっすよ!」
「え?……こ、これは……」
 ユーベルコード【シークレットポテンシャル】はヒーローマスクであるリカルドをかぶった者の技能を『リカルドの力で』行使するものである。ほとんどの場合熟練した猟兵であるリカルドは一般人よりも強いので純粋に超絶強化になるわけだが、今回はそれにとどまらなかった。
「トラウマを利用された力っすけど,今度は利用し返すっすよ!」
 ホワイトアルバムに暴走させられた時、ハルナは炎をまとった剣士の姿に、ユキは氷の女王めいた姿に変わり、強大な力を振るってアリスラビリンスは地獄めいた光景になり果てかけた。いわばハルナやユキが使う力はその一部でしかない。単に使いこなせないためかもしれないし、その姿がふたりにとってトラウマであるがゆえに自在に振るう事を恐れているのかもしれなかった。
 リカルドはあえてそれを全て引き出そうとしていたのだ。それはむろん眼前の敵を倒すのにつながるのは当然として、自らのフルポテンシャルを知る事はそれ自体良い経験だろうし、本当の意味でトラウマを乗り越えるためにも役に立つ。そう考えたのだろう。
「その憤怒の力をアリスや仲間を守るために使うっす。自分たちがついてるっすから、安心するっすよ」
「……う、うん!」
 そして次の瞬間、ハルナの全身は燃える焔で覆われ、手には真実の剣を握りしめていた。
「じゃ、自分が指示を出すから、相手に全力を叩き込むっす」
 リカルドの力を得て強大に膨れ上がったハルナの力に反応したのか、残存するグリードキャタピラーが一斉に向かってきた。すかさずリカルドの指示。
「突進もよく見てれば避けられなくはない。相手の進行方向に攻撃を置くイメージっす。脱皮もスピードは上がるっすけど、その分防御が落ちるっすから、そこを狙うっす!」
 高速で突っ込んでくるキャタピラーにハルナが超高速で駆けよると強烈極まりない斬撃を繰り出し、斬られたキャタピラーの全身はたちまちのうちに燃え上がった。それを見て、すかさずリカルドはユキの頭上に移る。引き出させるは戦場を雪原に変えて敵のユーベルコードを無力化した上生命力を奪うクライオニクスリザードの力。ユキが指を向けるとキャタピラーの動きは瞬時に止まり、全身が凍り付いた。
「さて、と」
 気が付いた時にはグリードキャタピラーはほぼほぼ掃滅されていた。残るは今回の元凶、ただひとり。ふたりの力を制御できた事を安堵する間もなく、リカルドの意識は既に次へと移っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ホワイトアルバム』

POW   :    デリシャス・アリス
戦闘中に食べた【少女の肉】の量と質に応じて【自身の侵略蔵書の記述が増え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    イマジナリィ・アリス
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【虚像のアリス】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    イミテイション・アリス
戦闘力が増加する【「アリス」】、飛翔力が増加する【「アリス」】、驚かせ力が増加する【「アリス」】のいずれかに変身する。

イラスト:ち4

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ライカ・リコリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●好き嫌いはしない主義
「あ~あ、つまんないの。みーんなやられちゃった」
 配下のグリードキャタピラーたちが倒された事にも、ホワイトアルバムはまったく動揺を見せようとしない。
「ま、いっか」
 巨大なキノコに腰かけていたホワイトアルバムが、立ち上がった。
「その分、お肉を独り占めできるからね」

 ホワイトアルバムは見た目少女だが中身はもともと猟書家を張るぐらいに強大なオウガがゆえ、パワーやスピードはかなりのものがあると考えるべきだろう。以下の3つの能力もかなり強力だ。
【デリシャス・アリス】は戦闘中に肉を食べる事で自己強化を行う技だ。おそらくホワイトアルバムが真っ先に狙うのはアリス適合者の少女ふたり、ハルナとユキだろうが、そのふたりを食べるのが不首尾に終わった場合、不本意ながら愉快な仲間たちを狙う事もあるかもしれない。アリスふたりや村人たちを守りながら戦わなければならないだろう。
【イマジナリィ・アリス】は受けたユーベルコードを2倍の威力で返すというものだ。オブリビオンを倒すほどに強力なユーベルコードが威力倍で自分に襲いかかって来るのではたまったものではあるまい。さりとて返って来る事を見越して手加減して撃っては敵を倒せず本末転倒だろう。どうにか手段を講じなければなるまいが、果たして。
【イミテイション・アリス】は戦闘力、飛翔力、驚かせ力のいずれかが大幅に上昇するものだ。ただでさえ強いホワイトアルバムが強化されるのは驚異でしかない。戦闘力、飛翔力はわかりやすいが、驚かせ力も攻撃を通しやすくしたり逆に相手の攻撃を驚かせて止めたりとか考えれば侮れるものではあるまい。どの形態が来るかを予想し、適切な対処をする必要があるだろう。
 いずれのユーベルコードも強力だが、それでもこいつを倒さない事には平和は訪れないのだ。その、なんだ。なんとかしてください。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
相変わらず、と言って良いですかねぇ?

『FAS』により飛行、私と彼女を含む戦域を『FMS』のバリアで覆い、外のアリスさん達や愉快な仲間の皆さんへの手出しを禁じまして。
更に【禩覉】を発動、『半神姿』に変異すると共に全『祭器』に『即時修復』を付与すれば、彼女でも破壊自体が困難な上、壊せても即修復される為突破はまず不可能ですぅ。
『奉』の性質上負傷は全て「解除後の『反動』」に置換されますので、私を食べて強化することも困難でしょう。
そのまま『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FBS』の斬撃、『FES』の魔力矢等、攻撃用『祭器』各種の|連撃《2回攻撃+追撃》を集中、一気に叩きますねぇ。



●脂身も嫌いではない
「相変わらず、と言って良いですかねぇ?」
 夢ヶ枝・るこるはホワイトアルバムとは一度交戦経験があった。今のホワイトアルバムには確かにあの時と違う点はある。今回の個体はアリス適合者の封印されたトラウマを復活させて暴走させる事はない。鉤爪の男がいない今、地獄めいた光景を作る必要がないからだ。その代わりに純粋に食欲を満たすための行動を取っているのであった。だからオウガに相応しい肉食への欲求や渇望という点では、相変わらずとも言えただろう。
「!!」「……」
 そしてある意味トラウマを蘇らせている者たちがいた。ホワイトアルバムによって一度封じた心の傷を再び抉り出された者たち、ハルナとユキ。その顔は恐怖と怒りに凍り付いている。
『いい顔』
 そんなふたりをいつものアルカイックスマイルを浮かべ、ホワイトアルバムは見つめた。
『今のあなたたち、すっごく、おいしそう』
「そうはさせませんです!FAS!FMS!起動ですぅ!」
 ホワイトアルバムがふたりに向けて動き出す前に、るこるは3対6枚のオーラ翼を広げて舞い上がるとバリアを張った。だがそれは自分を守るためではない。むしろ自らを危険にさらし、アリス適合者ふたりや村人たちを守るためのものだったのだ。バリアはるこるとホワイトアルバムのふたりを囲むように張られたのだ。
『ふうん』
 動じる事なくホワイトアルバムはるこるを見据えた。ホワイトアルバムは肉を食べて自己強化を行う。特に少女の肉がもっとも適した素材であるらしい。アリス適合者ふたりから隔絶された今、ホワイトアルバムに自己強化の手段が失われ、大幅に不利になると思われたのだが。
『……食い出はあるけどちょっと固そうで、しかもあぶらみが多そうなお肉だね』
 あくまで無邪気に、それでいて冷静な言葉をホワイトアルバムは放った。どうやらるこるを食の対象として見定めているようだ。19歳のるこるはホワイトアルバムが好む少女という範疇からはちょっと外れつつあるようではあるが。
『でもその分、霜降りになってるかな』
 ちなみに人間の筋肉は本来脂肪は入らないもので、そこに脂肪がついていて俗に牛肉で言う『霜降り』になっているなら、それは異所性脂肪といい、要は皮下脂肪や内臓脂肪でおさまりきらない分の脂肪が筋肉についている事だからあまり望ましい状態ではない。
「残念ですが食べられて差し上げるわけにはいきませんねえ……大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その変遷の理をここに」
 食われればダメージを負う上に敵が強化するとあってはるこるとしても絶対避けねばならない事態だ。早速発動したユーベルコードは【禩覉】といった。『禩』=『祀』、すなわち神を祭る事である。『覉』は旅人の事だ。つまり読みの『ジンミョウヘノリテイ』は『神明への里程』であろうか。たちまちるこるの姿は半神のものへと変わる。そしてその効果はふたりを壁のように囲むバリアにも及んだようで、障壁にオーラのようなものが纏われたのが見て取れた。
『そういうことか』
 ホワイトアルバムは即座にその位置を察した。ためしにバリアを軽く小突いてみた所、軽くたたいたとは思えないほどの衝撃が障壁に伝わったが、わずかに入ったヒビは即座に修復された。絶対に他の者を危険にさらさないというるこるの強い意思だったが、ホワイトアルバムはどのみち関係ないようだ。
『でも、まずはこっちのお肉を先に食べちゃえばいいし』
 ホワイトアルバムの体がわずかに浮いた。そして足を動かす事のないホバー移動で、見た目から想像できないような高速でるこるに一気に近づいた。
『まずは|ブレスト《むね肉》から』
 そして音もなくるこるの食い出ありそうな部位にかぶりついていった……が。
『……?』
「残念ですねえ、私を食べる事はできませんよお」
 食われたはずのるこるの部位はいまだ健在だったのだ。ホワイトアルバムの顔に疑問が浮かんだ。タネを明かすなら、ダメージを効果終了後に受けるというユーベルコードが存在するが、るこるの【禩覉】はそれを疑似的に作り出すものだったのだ。ただし効果終了後に来るのはダメージではなく『反動』らしい……具体的に言うと超絶的にデブるらしい。
『……反動というより、むしろそちらの界隈ではご褒美だったりしない?』
 よくわからぬ感想を述べたホワイトアルバムだが、どうやらるこるを食べて強化できないという事は理解した。しかしホワイトアルバムは折れず曲がらない。
『それなら、反動とやらを超える以上に食べちゃえばいいわ』
 そして自分にはそれができる自信があった。オウガの、猟書家と呼ばれた程の者ならそれくらいの食欲はある。文字通りるこるの全てを食いつくすつもりでホワイトアルバムは再度の突撃を試みる……が。
「私だって黙って食べられるわけにはいかないんですぅ」
 すでにるこるは攻撃用の神器を大量に展開していたのだ。真正面から突っ込んでくるホワイトアルバムに苛烈極まりない攻撃が集中され、さすがに限定された戦場ではホワイトアルバムもこれを回避するのは非常に困難だった。
『くっ……い、痛い、お肉食べてないから……』
 ホワイトアルバムにはるこるのユーベルコードが切れてバリアから脱出できるようになるまでひたすら耐える以外に道はなかった。なおその際にはるこるにきっちり反動は来たらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高崎・カント
とっても強そうな相手なのです
でも今回はプロレスじゃないのでみんなで戦えるのです
ここは偉大なモーラットの先祖達の出番なのです!
【おいしいおやつ】を触媒に【UC使用】なのです!

黄巾党のシンボル、黄色を纏ったモーラット
それはつまりモーラットヒーローの精鋭達なのです!

「もきゅっ!」「きゅい!」「ぴぴぴぴぃ!」
え、おやつもいいけど焼肉も食べたい?
わかったのです! やっつけたら焼肉パーティーの続きなのです!

連携して攻撃なのです
素早く動いて攪乱したり、声を掛け合って驚かせ力に対抗するのです!
最後はみんなで大きな大きなパチパチ火花なのです!
もっきゅ! カントもご先祖様達のように強いモーラットになれたのですか?



●オレたちこうきん賊
 前提として。シルバーレイン世界にモーラットという種族が存在する。かつてこの世界の敵はオブリビオンではなくゴーストであり、モーラットはかつてはゴーストの中でも妖獣と分類される存在だったが、人とのつながりを得た事で能力者たちの敵ではなく友となり、ともにあの激しい戦いを潜り抜けて、現在では猟兵にまで至った者もいる……高崎・カントのように。で、モーラットと人との絆は昔から存在しており、中国は三国志の時代に既に人とモーラットが協力しあっていた記録が残されているというのだ。その具体的な内容はカントが編纂して大豪傑出版から発売された【注釈三国志|猛裸闘《モーラット》伝】を見ていただきたい……らあめそまそってやつのページから読めるらしいよ。閑話休題。
(とっても強そうな相手なのです!)
 外見的には到底戦える事などできそうにない純粋で真っ白な少女のホワイトアルバムだが、カントが見た目でごまかされる事は決してなかった。このあたり、カントが見た目のかわいらしさに反して戦闘に際しては勇敢とされるモーラットである事も関係していたような気がしないでもない。で、逆にホワイトアルバムがカントを見る目は。
『ころころしてて、とってもおいしそう』
 当然こうなるのであった。
「もきゅ!?」
『量はちょっと少ないけど、オードブルにはちょうどいいかな』
「も、もきゅきゅ!」(カ、カントは食べてもおいしくないのです!)
 さすがに笑顔のままでこんな事言われたらカントもびびる。そりゃびびる。ちなみにこう見えて21歳なのでカントがホワイトアルバムが特に好むとされている少女の肉という範疇に入るかはちと難しい判断ではあるが。
(でも今回はプロレスじゃないのです!)
 むろん食べられたくはないカント、相手の強さは察知したものの、それでも対抗手段はあった。つい先日、カントが村で戦った時は1対1の形式を強いられる事になったが。
(なのでみんなで戦えるのです!)
 で、カントがいきなり地面に持参したおやつなど置いたものだから、ホワイトアルバムもさすがにその意図を図りかねたようで。
『なあに?これを食べろっていうこと?わたしはお菓子よりはお肉の方がいいんだけどな』
(これはみんなで食べるものなのです!ひとつたりともあげないのです!)
『みんな?』
(みんなーここに来るのです!)
 そして、おやつを触媒にしてカントのユーベルコードが発動した。
「もきゅぴきゅい、もっきゅー!」「もきゅっ!」「きゅぴー!」「もっきゅ!」
 カントの呼びかけに呼びかけに現れたのは数多くのモーラットたち。みなモーラットヒーロー……ここで注釈を。かつてのシルバーレイン世界ではモーラットには成長に応じてモーラットからスーパーモーラット→グレートモーラット→モーラットピュア→モーラットヒーローと段階を経て進化していた。ちなみにカントはヒーローだ。むろん猟兵になったモーラットにおいては見た目がそのまま成長段階を示しているとは限らず、見た目は好みで選べるようなので良い時代になったと言えるかもしれない。ともあれそのモーラットヒーローたちがここに集結したのである。しかし彼らはみなただのモーラットヒーローではなかった。
(黄巾党のシンボル、黄色を纏ったモーラット!それはつまりモーラットヒーローの精鋭達なのです!)
「な!なんだってー!!」
 カントの言葉に力持ちたちが驚愕の面持ちで絶叫した。カントのユーベルコードの名は【三国|猛裸闘《モーラット》集結】といった。そう、ここに集まっているのは、冒頭で説明した三国時代に実際に活躍したモーラットたちの霊だったのだ!
「な!なんだってー!!(2回目)」
「もきゅっ!」「きゅい!」「ぴぴぴぴぃ!」
 で、呼び出された歴戦のモーラットたちはカントに何やら話しかけていた。当然猟兵でもないモーラットなので人語は話せないが、同じモーラットであるカントにはむろん通じる。
(え、おやつもいいけど焼肉も食べたい?)
 そして改めてカントたちはホワイトアルバムの方に向き直った。その目には確かな決意の色。
(わかったのです! やっつけたら焼肉パーティーの続きなのです!)
『ふふっ、うれしいな、食べ放題を用意してくれたのね』
 むろん食欲という分野に関してはホワイトアルバムとて負けてはいない。【イミテイション・アリス】を発動させると、呼び出されたモーラット全てを食いつくす気満々で大軍に対峙した。
(いくのです!)
 ホワイトアルバムに一斉に飛び掛かるモーラットヒーローたち。しかし。
『わっ!!』
 強化された驚かせ力によるいきなりの大声にモーラットの一部の動きが止まった。早速足が止まったモーラットを食べようとするホワイトアルバムだったが、カントもそれを読んでおり、対策を練っていたようだ。
(しっかりするのです!)
 動けるモーラットたちは仲間がホワイトアルバムのあぎとに捕らえられる前に素早く回収し、声をかけて正気を取り戻させた。そして今度は驚かされないようにみんなで素早く動き回った。
『食前のおやつのくせに、ちょこまかと逃げ足だけは速いのね』
「むぎゅー!!」(逃げ足だけではないのです!みなさん!!)
 そしてカントの号令でみんなで集まると、大量のモーラットが発した火花が集まり、それはそれは巨大なパチパチ火花と化した。もはや静電気などというレベルではない超強大な火花はたちまちのうちにホワイトアルバムを飲み込んでいった。
「もっきゅ!」
 そしてカントをはじめとするモーラットたちは勝利の雄たけびをあげたのだった。自分もご先祖様達のような強いモーラットになれたかなと、そんな事を思いつつ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「これが終わったら焼肉パーティの続きっすね。いいっすね〜、いいお肉焼いちゃうっすか」
などと軽口叩くっすかね。第3章はなくともノベルがあるっすよ

前衛で戦うハルナに憑依
「そばで戦ってくれるのが一番安心っすからね」
ユキの冷気と合わせ、温度差で陽炎や蜃気楼を作ったり、氷を熱で蒸気にして身を紛らわせながら炎を灯した剣で斬り込んでゆく
途中で深追いしてホワイトアルバムに捕まるが
「油断した、とでも思ったっすか?」
身を紛れさせた際にハルナと分身をすり替え、【微塵隠れの術】で食いついてきたホワイトアルバムを爆破
「ここなら安全と思ったことはないっすよ。それでも守るっすけどね」
あとはみんなを堅実に守りつつ戦闘継続っす



●始めるか俺の自爆ショーを
 猟兵たちの活躍によりホワイトアルバムとの戦いは優勢に進んでいる。それでもなお元猟書家のホワイトアルバムはいまだ健在であり、傷を負っていてもなおその力は決して侮る事ができないだろう。にも関わらず、リカルド・マスケラスの目は既に勝利の先を見据えていた。
「これが終わったら焼肉パーティの続きっすね」
 今回のリカルドの目的は焼肉ではなく村を救う事だと第1章では書いたが、やはり焼肉目的でもあったようだ。愉快な仲間たちは焼肉パーティーは基本誰でもウェルカムである事は前提としてはいるが、それでも先だってのチャンピオン戦に参戦したリカルドに焼肉を楽しむ権利は十分にあったといえよう。ただしヒーローマスクであるためか、ちょっと立場が違っていたようで。
「いいっすね〜、いいお肉焼いちゃうっすか」
 どうもリカルドは食べる側ではなく焼く側に回るつもりのようだ。まあ焼く人も必要だろう。特にリカルドは料理に関してもいろいろな所で実績あるようなのでそっち側に回ってくれるなら愉快な仲間たちも大歓迎だろう。ただ残念なことにこの物語は第2章で終わりで……
「第3章はなくともノベルがあるっすよ」
 ……さすがに★のかかる事なのでこの場でプレイングお待ちしております言うのはちょっと憚られはしますが、たしかにそういう手段もアリかもしれないな、程度には言及はしておきますか。そういえばこれも一応ホワイトデーシナリオなわけですが、そういうイベント系はかつてみたいなシナリオではなくノベルに移行した感は確かにあるようで。
 ともあれ。いずれにせよ、まずはホワイトアルバムを倒さなければ先には進めないわけで。さすがのリカルドもいったん軽口を止めてハルナとユキのもとに飛んでいった。

『あなたは……骨と皮ばかりでまずそうね』
 戦場に現れたリカルドを一瞥し、ホワイトアルバムは言い捨てた。人間年齢に換算して28歳しかも男性なリカルドはただでさえ少女の肉を最も好むホワイトアルバムからすれば好みの範疇からかなりかけ離れているだろう。その上ヒーローマスクとあっては、人喰いの化け物にとっても可食部位があるのかははなはだ怪しいと言えたかもしれない。
『まあ、タンパク質は期待できないけどカルシウムは豊富かもしれないね』
「自分を煮干しかなんかと一緒にしないでほしいっす」
 それでもあくまで殺意ではなく食欲を向けてくる相手に対して軽口を返すと、リカルドはいまだ緊張感が取れ切れていないハルナの頭上に飛び乗った。
「あ、リカルド……さん?」
「そばで戦ってくれるのが一番安心っすからね」
 リカルドはハルナとユキを後方に下げるより、自ら力を貸す事で守る道を選んだのである。ふたりとしても自らの手で憎き相手と戦えるのならそっちの方が今後のためにも良い事であるかもしれなかった。
「じゃ、ふたりとも、自分の指示で頼むっすよ」
「おっけ!任せて!」「……うん」
 リカルドを頭に乗せたハルナは炎の剣を構え、ユキはその後ろで氷雪の力を溜める。そんな様子にも構わずホワイトアルバムは真っ向からハルナに高速のホバー移動で突っ込んでいった。
『何するのかわからないけど、食べちゃっていいんだよね』
「今っす!」
 リカルドの指示でユキが冷気を飛ばしてハルナの炎の剣にぶつける。瞬間、大気が揺らぐとハルナの姿もまた、揺らいだ。
『何それ?かくれんぼのつもり?』
 構わずホワイトアルバムはぼんやりとした影のようなハルナに食らいついていったが、その顎は空しく空を切った。
『え?』
「え?」
 驚いたのはホワイトアルバムだけではなくハルナも一緒だった。なにせホワイトアルバムが何もない空中に歯を突き立てようとして当然のように空振りしたからだ。
「蜃気楼って知ってるっすか?」
「……ん、まあ、名前ぐらいは」
「今のはその応用っす」
 蜃気楼。空気の温度差による光の屈折で本来そこにはない物が見える現象である。リカルドはハルナの熱とユキの冷気で疑似的に蜃気楼を作り出したのだ。そしていわば疑似的な分身の術でホワイトアルバムの目をごまかしたのである。
「今っす!」
 リカルドの指示で再度ユキは冷気を発生させた。それはまたハルナの炎と反応を起こし、今度はもうもうとした厚い蒸気を作り上げて煙幕のようにハルナの姿を隠していった。
『なあに?まだかくれんぼを続けるの?』
「覚悟!」
 ホワイトアルバムの挑発に応じるかのように煙幕の中から炎の剣を振り上げたハルナが突っ込んできたが、これはさすがに無謀だった。ホワイトアルバムは剣をやすやすと回避すると、ハルナの喉元を掴んで動きを止めた。
『ふふっ、かわいらしいこと。じゃ、いただきまーす』
「……油断した、とでも思ったっすか?」
『え?』
「さあ、派手に散らせてもらうっすよ!」
 声はハルナではなく、リカルドだった。そして次の瞬間、ハルナの体は大爆発を起こした。
『きゃあっ!?』
 これにはさすがのホワイトアルバムも甚大なダメージとなった。そしていつしか蒸気は晴れ、そこには無傷のハルナとリカルドの姿。
「どうっすかね?驚いたっすか?」
『……ま、まさか?』
「そのまさかっすよ」
 そう。蒸気で煙幕を作っている間、リカルドはハルナを模した分身を作ってホワイトアルバムに自爆攻撃を仕掛けたのである。これぞ忍法・微塵隠れの術。よもや本来戦闘不能になるユーベルコードで生還を果たすとは。
「ここなら安全と思ったことはないっすよ。それでも守るっすけどね」
『こ、この……!!』
 これまで余裕の笑顔を見せていたホワイトアルバムが初めて怒気を露わにした。戦いは大詰めを迎えようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
直接戦闘は不得手なので、作戦を立てる代わりにアリスのお二人に攻撃をお願いします
但し、お二人には言っておきたい
「忘れないでください
貴女達と猟書家との因縁は、以前の戦いで終わりました
これは、善良な村人をオウガから守るための戦いです」
過去に捕らわれ過ぎませんように
しかし『あっち』は過去を克服できるでしょうか

照魔鏡での質問にかこつけてホワイトアルバムを挑発、怒りで脱力を中断させてから、氷の足止めと炎の攻撃をお願いします
「これからどうしますか?」
「いえ、そうではなく
アリスのトラウマを弄ぶ貴女の幼稚な計画は悉く失敗し
猟書家の立場も失い
ついでに配下も失いました
この上貴女に何ができるのか、とそういう質問です」



●個性が強いので出す側として使いやすいのはある
「作戦は私が立てますので、戦いはお二人にお願いします」
 禍神塚・鏡吾もこの前の猟兵同様、守るべきハルナとユキに戦ってもらう道を選んだ。しかし、ふたりを助けつつ自らも火力担当となった他の猟兵と違い、鏡吾自らはふたりのバックアップを選んだ。本来鏡吾は後方支援が主体であり、直接戦闘は得意ではないのである。
「申し訳ありませんが私は戦いは不得手でしてね」
「……はい、わかりました」「……」
 さすがに緊張した面持ちのふたり。普段から無表情なユキのみならず、ハルナですら普段の快活とした表情をこわばらせていた。そんなふたりに鏡吾は優しく声をかけた。
「忘れないでください。貴女達と猟書家との因縁は、以前の戦いで終わりました」
「もう、終わった……」「……」
「そうです。これは、善良な村人をオウガから守るための戦いです」
 鏡吾の言葉に嘘はない。ハルナとユキのホワイトアルバムとの因縁は、猟兵がふたりを開放し、その時のホワイトアルバムの個体を滅ぼした事で既に完結した事なのだ。今のホワイトアルバムはふたりとは関係のない、ただのオウガであり元猟書家なのだ。恐れる気持ちは当然だが。
「どうか、過去に捕らわれ過ぎませんように」
「……はい!」「……」
 鏡吾の言葉にハルナは笑顔を作り、ユキも表情を和らげた。少なくとも今この瞬間についてはふたりは大丈夫だろう。そう確信した鏡吾はホワイトアルバムの方に目をやった。
「……しかし『あっち』は過去を克服できるでしょうか」

『あなたは……肉ですら、ないのね』
 かつてホワイトアルバムと2回戦った鏡吾であるが、その2人のホワイトアルバムが同一でありながら別個体であるのと同様に、今こうして鏡吾と相対している個体もまた別人であり、鏡吾とは初対面だ……それはつい先刻、鏡吾自身が触れた事ではあるが。そんなわけで、あくまで初対面であるかのごとくホワイトアルバムは鏡吾を見定めた。
『……食べられそうには、ちょっと、ないかな』
 それは鏡吾がホワイトアルバムの『好み』からかけ離れた39歳の男性という事を指しているわけではなかった。鏡吾は実は西洋鏡のヤドリガミである。それがゆえに人間に見えるその肉体は仮初のものに過ぎず、仮にホワイトアルバムがそれを食べたとしてもさすがに栄養にはできまい。さすがに正体までは見抜けなかったようだが、その事についてはどうやら察したようであった。
『食べられないならいらないかな、こわしちゃってもいいよね』
 笑顔のままで物騒な事をのたもうホワイトアルバムに向け、鏡吾はむしろ一歩前に出た。火力担当のアリスふたりより支援担当が前に出るという奇妙な並びになった。
「禍神塚さん」
「大丈夫ですよ」
 さすがに心配そうに声をかけるハルナに、鏡吾は笑顔を向けた。確かに鏡吾は直接戦闘は苦手かもしれない。だがホワイトアルバムを恐れて他人を盾にしようなどという臆病者の理屈などは持ち合わせていなかった。猟兵として、一個の人間として、ふたりを救いたい気持ちはむしろ強いものだったのだ。その気持ちが鏡吾をしてホワイトアルバムの前に立たせたのである。
「あなたは」
 笑顔の中に確かな殺気を秘めるホワイトアルバムを前にして、鏡吾もまた笑顔を崩さずに問いかけた。
「これからどうしますか?」
『これから?』
 ホワイトアルバムもまた笑顔で答えた。
『変な事聞くのね、わたしはおなかいっぱいになりたいだけ。だからみーんな食べちゃう、それだけ』
「いえ、そうではなく」
 たしかに、いちオウガとしてはホワイトアルバムの回答はこれ以上ないものだろう。だがそれは鏡吾の望む答え、そして望む反応ではない。照魔鏡の光を輝かせつつ、ふたたび鏡吾は問う。
「アリスのトラウマを弄ぶ貴女の幼稚な計画は悉く失敗し」
 今回の出現までに、これまで現れたホワイトアルバム、実に30体。その全ての企ては猟兵の前に無に帰した。
「猟書家の立場も失い」
 ホワイトアルバムを使役してアリスラビリンスを地獄めいた光景に作り替えようとしたオウガ・フォーミュラ【鉤爪の男】も今は存在せず、与えられた侵略蔵書はいまだ彼女に力を与えはするものの、アリス適合者を暴走させる力は失われた(と思う、たぶん……実際はわからないが)。
「ついでに配下も失いました」
 今回の襲撃に際して集めたグリードキャタピラーたち。これらも猟兵の活躍の前にほぼ掃滅され、生き残りももはや四散してどこかに逃げ去ってしまったようだ。
「この上貴女に何ができるのか、と。そういう質問です」
『何言ってるの!』
 追い詰められた事もあるだろう。挑発めいた鏡吾の言葉に、もはやホワイトアルバムは笑顔を保てなくなっていた。
『なにが配下よ!そんなのまた集めればいい!みーんな食べちゃった後で!なにが猟書家よ!あんな人いなくたって!あんたたちみーんな食べるぐらい!ひとりでだってできるんだから!』
 少なくともその言葉はホワイトアルバムにとっては真実だっただろう。問われた者が偽りを述べれば傷つける照魔鏡の光は此度は掻き消えたようだ。だが鏡吾の狙いは他にあった。
『まずはあんたから粉々にしてあげる!』
「……今です」
 瞬間、ホワイトアルバムの足元が凍り付いた。驚愕したホワイトアルバムの視線の先にいたのは、鏡吾の後ろに控えていた、ユキ。そしてそこに炎の剣を構えたハルナが突っ込んできた。
『ま、まさか……狙いはこれだったの!?』
「ご明察です」
 そう。完全に脱力した状態でユーベルコードを受けて跳ね返す【イマジナリィ・アリス】を破るために、鏡吾はホワイトアルバムを激怒させた。それにより脱力状態を解除されたホワイトアルバムはユキの氷結を2倍の被害で被った。
「くらえこんにゃろー!!」
 そしてハルナの怒りの一撃がホワイトアルバムに下された。当然その被害も、2倍。戦況は間違いなく猟兵に傾いていた。そしてふたりがホワイトアルバムのトラウマを乗り越えつつある事を、鏡吾は笑顔の下で確信したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒風・白雨
娘を喰らうことで力を増す、か。
その方が喰いでがありそうじゃが、流石にそうはいかぬな。
他の者達も既に手を打っておるが、念のため《竜神武者》を娘らの護りに当たらせよう。

雷では先程の有象無象さえ動きが鈍る程度であったな。
他の者達に当たる惧れもある。
横着せずに初めからわしが直に叩いてやろう。

〈仙術〉の縮地をもって一跳びで距離を詰める。
単純に《力》を込めた暴力をもって本を払い、身体を掴み、捻り、裂き、叩きつけよう。

ホワイトアルバムじゃったか。
その姿はおぬしがかつて喰らった少女のものと聞く。

そのような紛い物の肉に興味はない。
おぬしの魂そのものを味わうこととしよう。

《竜神体》の本性を現し、喰らいつこう。



●弱肉強食
 黒風・白雨はかなりの健啖家らしい。そんなわけなので、今回のホワイトアルバムの事を聞いて思った事は。
「娘を喰らうことで力を増す、か」
 少女の肉と限定されているあたりは美食家、あるいは偏食家なのかもしれない。そしてこれまでの行動を見ている限りでは小柄に見える体躯に関わらず、かなり食事量は多いようだ。そういう点でもしかしたら共感できる点があるのかもしれない、と思いきや。
「……その方が喰いでがありそうじゃが」
 そう来た。先刻もグリードキャタピラーを後で食べるような事を言っていたが、よもやそっちも狙いに行くとは。白雨は健啖家ではあるが少なくとも偏食家ではないようだ。
「まあ、流石にそうはいかぬな」
 もしかしたらアリス適合者を食えばホワイトアルバムがよりおいしくなるかもしれないが、さすがにそれを試さないだけの良識は白雨にはあった。何よりホワイトアルバムが少女の肉を食べれば強くなるのは確かにせよ、それで味が良くなると決まったわけではないのだ。時として不確実な事をやらねばならない事もなくはないが、少なくとも今回はその時ではないだろう。見るとホワイトアルバムも猟兵たちにかなり押されているようだが、猟兵でない身で必死の抵抗を行っていたアリス適合者のふたりも消耗の度合いは激しいようだ。白雨は四方に控える竜神武者たちに指示を出した。
「行ってやるがよい、あやつはわしが相手をしよう」
 命令を受けた竜神武者はハルナとユキの前に立ち、ホワイトアルバムから守るための壁となった。そしてその前、ホワイトアルバムとアリス適合者のちょうど間に白雨が降り立った。
『ふうん』
 突然眼前に現れた白雨にもホワイトアルバムは全く動じる事なく、見定めるように上から下まで眺めた。そして。
『筋張って固そうな肉ね』
 外見年齢25歳の白雨はその時点でホワイトアルバムの『好み』からはかなり外れているようだ。だがホワイトアルバムが言いたいのはそれだけではない。
『ずいぶんと長い事熟成してたみたいだけど、むしろ固くなっちゃってる。やっぱり新鮮な方がいいな』
 白雨は最近まで眠りについていたらしい。すなわち実年齢は25よりかなり上である事が予想された。こういう場合、猟兵には実年齢派と外見年齢派がいるが、実年齢派の弱点は100歳より上がない事なのでもしかしたら外見年齢の方が都合が良い……の、かもしれない。ともあれホワイトアルバムの食事対象としては白雨は好ましくない部類なようだが。
『……でも、おなかぺこぺこだし、こんなのでもおなかに入れておかないとだね』
「おもしろいことを言う娘じゃの」
 ホワイトアルバムに対し、白雨も笑顔を返した。
「ホワイトアルバムじゃったか。このわしを喰らおうてか、しかも言うに事欠いて人を熟成肉か何かのように言いおって」
 互いに笑顔で相対する両者だが、その言葉の内容は表情に反してあまりに物騒なものであった。
「逆にわしに食われる事にならねば良いがの」
『ふうん』
 ホワイトアルバムは目を細めた。
『あなたが、わたしを、食べるっていうの?残念、食べるのはいつも、わたしなの』
「小娘ごときが言いおるわい」
 言葉の応酬をかましつつ、白雨は相手の実力について冷静に判断していた。
(雷では先程の有象無象さえ動きが鈍る程度であったな)
 それは先刻のグリードキャタピラー戦で得た経験であった。連中を従わせているホワイトアルバムは間違いなくグリードキャタピラーより実力ははるか上であろう。それほど効果的であるとも思えない上にアリスや村人たちに被害を及ぼしかねない雷を撃つわけにはいかない。それがゆえに、白雨はこうしてわざわざ敵の目の前に降りてきたのだ。
(やはり横着せずに初めから直に叩くべきじゃろうな)
『来ないならこちらから行くわよ』
 ホワイトアルバムがわずかに前傾姿勢を取った。次の瞬間、まるでワープしたかのような超高速で白雨の眼前まで迫っていた。相手の血肉を自らの力にせんとした必殺の一撃を、白雨はすんでのところで回避する。
『おばさんの割に反射神経いいのね』
「お、おば……」
 ホワイトアルバムの言ってはいけないひとことにさすがに白雨の笑顔もひきつりを見せた。
『でも、いつまで続くかしら?』
「……おもしろい」
 この不遜な小娘には天罰を与えねばなるまい。大人として!ついに竜神が本気になった。
「その小賢しい技を、もう一度見せてみるがよい」
『やせ我慢はやめた方がいいよ、一度見たぐらいで見切れるはずが』
 再度超高速移動で間合いを詰めるホワイトアルバムが、その一歩を踏み出そうとした瞬間。
「遅いのう」
 既に白雨が眼前に立っていた。仙術の縮地による瞬間移動であった。相手が超高速移動で来るならそれを上回る高速移動を行えば良い。実に明快な論理だ。
『そっちから来てくれるなんてむしろ好都ごっ!?』
 機先を制された事にも動じず返り討ちを狙ったホワイトアルバムだったが、やはり機先を制された事は大きかったようで白雨の強烈無比な一撃をまともに受けてしまった。その威力はまさしく暴威と呼ぶにふさわしいもので、ホワイトアルバムの侵略蔵書を破壊すると、勢いのままに身体を掴み、捻り、裂き、叩きつけた。
『……くっ、おばさんのくせに……』
「かく言うおぬしは人の事を言えるのかの?その姿はおぬしがかつて喰らった少女のものと聞く」
『……そうだったかな、よく覚えてないな』
「そのような紛い物の肉に興味はない」
 白雨はその本性を露わにした。すなわち、竜神体としての姿を。
「おぬしの魂そのものを味わうこととしよう」

『……わ、わたしが……』
「ふむ、まだ動けるとはの」
 捕食者であるはずの自分が食われ魂の一部を失い、心底悔しそうな顔のホワイトアルバムとは対照的に、白雨は相手の生命力に感心したような笑顔を見せた。
「まあ、もはやそう長くはあるまい、せいぜい最後まで抗ってみることじゃな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェリチェ・リーリエ
あー!お、お前さんはあん時の…!人をBBA呼ばわりしてくれた人喰い女!…いやあん時とは別個体だべか?そんなことはどうでもいい!
ともかくユキとその友達には指一本触れさせねえべ!ユキ、もうひと頑張りだ、吹雪で援護頼む!

強化さえさせなきゃ勝機はある!こっちも戦闘力上げてくべ!
自分用に調整した激辛唐辛子を食べ身体機能アップ、ユキ達に近づけないように爆破スイッチで敵周辺の地形を【爆破】しまくり【吹き飛ばし】たる!
戦闘力上がってるから爆破の威力もマシマシだべ!
それでもユキ達を喰おうとすんなら【武器巨大化】で巨大化した中華鍋で殴る、焼いて食われるのはお前さんの方だべ!

…でも性悪だから食材にしたくはねえなあ。



●食うか食われるか
「あー!お、お前さんはあん時の……!」
 ホワイトアルバムの姿を認めたフェリチェ・リーリエはのっけからフルスロットル前回の大激怒であった。
「人をBBA呼ばわりしてくれた人喰い女!」
 外見年齢26歳(前回遭遇時は25歳)のフェリチェは確かにホワイトアルバムの『好み』からはかけ離れてはいる。さらに言うならフェリチェはエンドブレイカー世界出身であり、同世界出身者は気合で外見をコントロールできるとかで、実年齢はもうちょっとアレらしい。具体的には称号を参照のこと……ともあれ。確かにあの時のホワイトアルバムはフェリチェを称して『筋張ってて固そうなお肉』と言ったのだ。
『ん~?なんのこと?わたしはあなたに会うのははじめてだよ』
「……いや、あん時とは別個体だべか?」
 ホワイトアルバムの言葉に嘘はない。確かにこのホワイトアルバムはあのホワイトアルバムと同一人物であるが同一個体ではない。このあたりはオブリビオンというもののめんどうな所であろう。その事はフェリチェもわかっていた。そして。
『でもたしかに、消費期限は切れてそうだね』
「……こいつ……」
 別個体だとかそういう事はフェリチェにはどうでもいい事であった。今、改めてその事が確定した。こいつは倒さねばならない。自分のために、そして。
「ともかくユキとその友達には指一本触れさせねえべ!」
「ちょっと変わってるけど、いい人だね」
「……」
 その友達の方の指摘に、ユキは少し微笑んで、うなずいた。それに気付いてか気付かないでか、フェリチェはユキに声をかけた。
「ユキ、もうひと頑張りだ、吹雪で援護頼む!」
「……ん」
 ユキのリアクションは薄いが、それでもフェリチェに対する信頼は見て取れた。
『どこまでも、わたしの食事の邪魔をするつもりなのね』
 ホワイトアルバムとしても、これまでの猟兵との戦いで消耗は限界に達している。ユキかハルナを食べて自己強化と回復を果たしたいのは当然だが、他の猟兵がふたりの守りをしっかり固めてしまっている。加えて眼前のエイジングビーフが
「次それ言うたらお前から爆破するべ」
 フェリチェがきっちりとふたりを守るべくホワイトアルバムの前に立ちふさがっている。ならば取るべき道はひとつであった。
『……不本意だけど、まずそうな肉の方からかな』
 まずはフェリチェを食べる。好みではないが多少なりとも回復はできるだろう。全てはそこからだ。むろんフェリチェもホワイトアルバムの狙いは重々承知であった。
「まずそうは余計だべ!まったくもう、少しはおらの事を若いと言ってくれるものと思いきや!」
 まあ若者老人のいずれに認識されたとしても、結局食われるのは同じか。そんなのはごめんこうむりたいのも一緒だ。
「強化さえさせなきゃ勝機はある!」
 とフェリチェが取り出したのは一本の青唐辛子。その形は|ピッキーヌ《prik-kee-noo》というものに似ているが、アース世界のそれよりもかなり大型だ。
『なあにそれ?あんまり辛いのは好きじゃないんだけどな』
「誰がおまえに食わせるって言ったべか?こいつはこうするだよ!」
 フェリチェ、一瞬の躊躇ののち、その唐辛子を……口に放り込んだ。たちまち口の中が熱く痛くなり、全身が燃え上がるような灼熱感に襲われた。明日のトイレは悲惨な事になるかもしれない……これは個人差あるのでフェリチェが悲惨にならない人である事を祈ろう。
「……え?」
「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」
『……何してるの?それ、おいしいの?それともちょっとおかしい人?』
 敵味方、それぞれのやり方で困惑を見せた。むろんフェリチェは意味もなくこんな事をしたわけではない。エンドブレイカー世界の『アビリティ』に『ブーストピッキーヌ』というのがある。自分用に調整した激辛唐辛子をかじる事で身体機能を上昇させるというなかなか激しいものだ。フェリチェが食べたのはそれをユーベルコードとして昇華させたものであった。それはまさにスーパーブーストピッキーヌと呼ばれるほどの威力を持っているのだ。そして全身の痛みと熱がおさまった時。
「うおおおおおおお!燃えてきたべー!!」
 フェリチェの全身はこれ以上ないほどに活性化し、体中からオーラが発散されていた。まさに今のフェリチェはスーパー嫉妬人とでも呼べる強さだっただろう。それを見て、一時は唖然としたホワイトアルバムも気を取り直したように超高速ホバー移動を開始する……が。
「おっと!近づかせないべ!」
 フェリチェの手には既に爆破スイッチが握られていた。それをポチポチするとホワイトアルバムの周囲で爆発が連続した。むろんその威力もピッキーヌにより超絶強化されている。これではさすがにホワイトアルバムも容易に近づけない。それでもなんとか近づこうとするも、そのたびに爆風により押し戻されてしまう。
『もう、素直に食べられちゃえばいいのに!』
「まだ言うべか!そんならこれを食らうべ!」
 なおもフェリチェを喰らおうと近づく事をやめないホワイトアルバムに対し、フェリチェは中華鍋を巨大化させた。さらにユキの冷気を付与して強化を施してある。
「焼いて食われるのはお前さんの方だべ!」
 超高速で突っ込んできたホワイトアルバムにカウンターの巨大鍋の一撃が入り、その体が力なく崩れ落ちた。

(……ああ、おなかぺこぺこ……次はおなかいっぱい、食べられるといいな……)

「で、本当に焼いて食べるの?」
 一応焼く準備をした方が良いか問うハルナに対し、だがフェリチェは。
「……でも性悪だから食材にしたくはねえなあ」
 そうこうしているうちにホワイトアルバムの体は消えて骸の海に戻っていった。まあ安心しよう。そんなもの食べなくても、これからいくらでもおいしいものが出てくるのだから。さあ焼肉パーティーの再開だ……

 残念な事にこの物語は第2章で幕となるのだが。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月02日


挿絵イラスト