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フィアー/IVI/オリジン・シン

#ケルベロスディバイド #原罪蛇メデューサ #IVI

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●4・5・6
 八卦、即ち『震』にして雷、『巽』にして風、『坎』にして水。
 風が吹いている。
 この風は『おそれ』を運ぶ。
 夜ごと人が死ぬ。
 理由のわからぬ死が、そこかしこに転がっている。
「一体全体どういうことだい、これは」
 湾岸の決戦都市の責任者『エイル』博士は、頭を抱えていた。
 都市には二十四時間体制でデウスエクスの到来を察知するために監視カメラが設置されている。その上魔術的なセンサーも張り巡らされている。

 デウスエクスの脅威は未だ衰えるところを知らない。
 故に襲来に備えることは急務であるが、いつ来るとも知れぬ襲撃に備えることは至難を極めた。
 だが、ケルベロスの中にも猟兵に目覚めるものたちが出現している。
 予知によってデウスエクスの襲来を察知する彼らの存在がこの地球を異星よりの侵略者への抵抗の篝火となっていることは言うまでもない。
 故に監視カメラと魔術センサーは無用の長物……にはならなかった。
 如何なる兆候を見逃してはならぬと決戦都市の『エイル』博士は、未だ二十四時間体制で都市のデータを取り続けていた。

 なのに、今、湾岸の決戦都市において殺人事件が頻出しているのだ。
 犯人は未だ確保できていないどころか、容疑者すら上げられていない。なぜなら、二十四時間体制の監視カメラにも魔術センサーにも殺人の様子が捉えられていないのだ。
 つまり、見えぬ何者が突如として人を襲い、これを殺しているというのだ。
『博士、都市内において『見えぬ殺人者』に対する噂が飛び交っています。ネットワーク上でも制限を掛けても、効果を確認できません』
 サポートAI『第九号』の言葉に『エイル』博士は亜麻色の髪をくしゃくしゃにかきむしった。
「一体何者なんだ……! この殺人者は! 何故、捉えられない! それにこの噂……『見えぬ殺人者』は何度規制をかけてもすり抜けて人々の間に入り込むようにして立ち上がるんだ……!?」
 理解できない。
 何故、このようなことが可能なのか。
『エイル』博士はいいようのない『おそれ』を覚える。
 それは底知れぬ悪意を覗くかのような行為であり、またそれは此方を見ているどころか、大口を開いて己を一呑みにせんとしているようでもあったのだ――。

●呪咒哭哭哭大内裏
 呼んでいる。
 呼んでいる。
 呼んでいる。
「呼呼呼 しもべ達が呼んでいる」
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』は禁所にて首をもたげる。
 呼び声が己の耳に響いたからである。
 そうか、とも思う。
「爻爻爻 ならばそろそろ収穫にゆこう」
 胸に湧き上がるのは愛。
 そう、愛している。地球に生きる者たちは全て愛し子。
「歓歓歓 知恵を与えて愛したのは 全て いずれ私が喰らうため」
 彼女に|小剣《グラディウス》はいらない。必要ない。なぜなら、彼女は『おそれ』を触媒として転移することができるからである。
 生命である限り、『おそれ』は生存に必要な要素の一つである。
 故に彼女には地球への道程など一瞬のことであった。
「禍禍禍 誰にも 誰にもやらぬ 愛し子達は皆、私の飯なのだから」
『おそれ』抱く愛し子たちのことを思う。
 歓びがあふれる。
 それは咒いであった。生命に課せられた『おそれ』という機能であると同時に逃れ得ぬ咒い――。

●ケルベロスディバイド
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の予知でケルベロスディバイドの世界、その湾岸の決戦都市にて『見えぬ殺人者』事件が頻発していることが判明致しました」
 ナイアルテは示す。
 そこにあるのは湾岸の決戦都市の地図であった。
 ピン留めされているのは、これまでの殺人が行われた箇所である。
 そこに法則性は見えなかった。まるで『どこでも殺人者が現れる』と言うかのようにあらゆる場所で時刻を問わず、人が殺されている。
 それも大量殺人ではなく、単発で、一日ごとに一人ずつ殺されているのだ。

「明らかにおかしい、と言えるでしょう。決戦都市の監視カメラや魔術センサーにも引っかからぬ殺人……デウスエクスによる仕業であることは疑いようがありません。この狡猾なる『見えぬ殺人者』たるデウスエクスの正体を暴かねばなりません」
 だが、どうすればいいのか。
 ナイアルテは頷く。
「そこで私達グリモア猟兵の予知です。次なる殺人が行われるの現場を知るには、『見えぬ殺人者』への『おそれ』を媒介にして現れるデウスエクスたち……その第一波を撃滅せねばなりません」
『おそれ』? と猟兵たちは首を傾げる。
 そう、『おそれ』である。
『見えぬ殺人者』への『おそれ』こそがデウスエクスたちの到来の触媒となっているのだ。
 これらを全て撃滅することで『見えぬ殺人者』たるデウスエクスの所在が知れるのだ。

「この『おそれ』は時間をかければかけるほどに黒幕たる十二剣神の顕現を苛烈なるものへと変えていくのです」
 決戦都市に紛れたデウスエクスたちを全て倒すのは骨が折れるだろう。
 手分けして猟兵たちはことに当たらなければならない。
「迅速に、というのが今回の肝です。もしも、手間取ることがあれば……考えたくもありませんが『極めて強力な状態の十二剣神の降臨』を許すことになるでしょう」
 それはなんとしても阻止せねばならない。
 そして、何よりも『見えぬ殺人者』に対する人々の『おそれ』を拭わねばならない。
 人々が夜ごとに『おそれ』震えて眠るなどあってはならない。
 故にナイアルテは猟兵たちに頭を下げて送り出す。

 誰しも『おそれ』を抱く。
 それはこらえようのないことだ。一人ではどうしようもないことだ。
 けれど、人は一人ではない。
 理性と善性という燈火でもって、『おそれ』という闇を振り払うのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回の事件は『ケルベロスディバイド』。この世界における湾岸都市にて頻出する『見えぬ殺人者』事件を解決するシナリオになります。
 また出現する十二剣神『原罪蛇メデューサ』の撃退も行うことになります。

 ※『決戦配備』とは。
(https://tw6.jp/html/world/441_world25.htm)
 に記されたものです。プレイングの冒頭に各々の単語を書き込むことで上記のプレイングボーナスを得ることができます。

●第一章
 集団戦です。
 市井に蔓延る噂『見えぬ殺人者』を媒介にして湾岸の決戦都市に送り込まれている『ツギハギタキシム・アルファ』を探し出し、これを撃退しましょう。
『見えぬ殺人者』の噂の性質上、彼らは夜に現れ、影から影を縫うようにして移動し、犠牲者を見定めています。
 彼らを一体残らず打倒できなければ、それだけ時間がかかることになるでしょう。
 それは『おそれ』がデウスエクスのもとに多く集まるということでもあります。

●第二章
 ボス戦です。
 第一章のデウスエクスを全滅させると『見えぬ殺人者』として暗躍していたデウスエクスが襲来します。
 それは己が正体が知られることによって『見えぬ殺人者』の噂による『おそれ』が弱まることを畏れてのことです。
 これを返り討ちにして、事件を解決し、人々の『おそれ』を払拭しましょう。

●第三章
 ボス戦です。
『見えぬ殺人者』のデウスエクス撃破しましたが、これまで集まっていた『おそれ』を触媒にして十二剣神『原罪蛇メデューサ』が顕現します。
 ですが、これまでの戦い、事件の解決で弱体化しているはずです。
 仮に弱体化させることができなかった場合は、極めて強大な敵故に撃破は困難になるでしょう。

 それでは『見えぬ殺人者』という『おそれ』によって、その力を増す十二剣神『原罪蛇メデューサ』の言う『愛し子』たちの収穫を阻止せんとする皆さんの物語の一片となれますよう、たくさんがんばります!
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第1章 集団戦 『ツギハギタキシム・アルファ』

POW   :    siネ
【幾度も振り下ろされる流体金属のハンマー 】の【衝撃波】で、レベルmの直線上に「通常の3倍÷攻撃対象数」ダメージを与える。
SPD   :    つbuス
【腹部にある巨大な口 】で装甲を破り、【鉤爪】でダウンさせ、【流体金属のハンマー】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
WIZ   :    逃ルna
【自身の腐敗した身体 】から【吸い続けると意識を失う、耐え難き悪臭】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[吸い続けると意識を失う、耐え難き悪臭]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。

イラスト:猫背

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 噂が蔓延るようにして広がっていく。
 湾岸の決戦都市において、それは致命的であった。
『見えぬ殺人者』は、決戦都市のどこでも出現し、夜ごとに人間を殺す。
 一夜に一人。
 まるでじわじわと都市をなぶるようにして殺していくのだ。
 一夜に一人。されど、確実に起こる殺人は人々の心にある『おそれ』を増幅させていく。
「なんで捕まえられないんだ」
「何をやっているんだ! こんなにも俺達は不安を抱えているというのに!」
「今夜も誰かが殺されてしまう……身近な人かもしれないし、自分かもしれない」
 悪循環だった。
 噂は噂を呼び『おそれ』をも呼び込んでいく。
 そうすることで雪だるまのように『おそれ』は、そこかしこで膨れ上がっていく。

 そのさまを『ツギハギタキシム・アルファ』たちは見やる。
「ta易い」
「度si難い程に愚kaだ」
 彼らは夜の闇に紛れて、今夜の犠牲者を見繕う。
 彼らが媒介にして送り込まれるには『おそれ』が必要である。そして、己達にそれを命じたデウスエクスは計算高い存在である。
 姿見えぬからこそ、目撃者がいないからこそ、人々は正体不明の『見えぬ殺人者』をさらに『おそれ』る。
 それこそが己たちが奉じる十二剣神の望み。
「恐reろ。それこそgaお前達人間の本質」
 今日も殺そう。
 明日も殺そう。
 その先もずっと。一人ずつ。少しづつ。
 あの御方が最高の状態で顕現するその日のために。
『ツギハギタキシム・アルファ』たちは、ビルの影から影に飛ぶようにして、今宵の犠牲者の頭上へと飛びかかるのだった――。
才堂・紅葉
これはまた難儀な構図ね
念入りに詰めていかないと無理かな
街でも一際高いビルの上に立ち、眼下を睥睨する
【地形を利用】【情報収集】【戦闘知識】を併用し、蒸気ドローンによる【偵察】【メカニック】で得た情報を整理、『見えぬ殺人者」の出現ポイントとターゲットを予測し、その姿を視認する

「そこ!」
後は手にした六尺棒を超重力で加速し、天高く打ち上げるだけだ
この瞬間に、あの殺人者の未来は確定したも同じである



 湾岸の決戦都市のビル群の影に紛れるようにしてデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』たちはいた。
 彼らは互いに示し合うようにして頷き、今日の獲物を探す。
 一夜に一人。
 彼らデウスエクスにとって必要なのは生存エネルギー、グラビティ・チェインである。これは地球に住まうものを殺すことによって得られるエネルギーである。
 故に一夜一殺はあまりにも非効率。
 しかし、彼らはそのルールを守るように夜ごとに哀れなる犠牲者を殺す。

 |小剣《グラディウス》なくとも彼らが現れるは奇異なることだ。
 そう、彼らは『おそれ』を媒介にして十二剣神より送り込まれた尖兵。彼らが非効率過ぎる一夜一殺を行うは、全ては十二剣神のためである。
「見つkeた」
『ツギハギタキシム・アルファ』は今宵の犠牲者を今まさに殺そうとビル群の影から影へと飛び移り、見下ろす。
 簡単なことである。
 ケルベロスでもなんでもない一般人。
『見えぬ殺人者』の噂を補強するために『ツギハギタキシム・アルファ』たちは姿を捉えられぬことを意識して動いている。
 つまり、決戦都市に配された魔術センサー、監視カメラの死角をつく行為である。

 だが、それが逆に猟兵たちに気取られる要因となっていた。
「なるほどね。これはまた難儀な構図ね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は見た。
 湾岸の決戦都市においても一際高いビル群。
 電波塔である。
 その直情にありて彼女は街を睥睨する。
『見えぬ殺人者』は不可思議な力を使っているのではない。
 監視カメラの死角と魔術センサーの死角に重なり合う場所を見つけ出し、空白たる一瞬を狙って殺人を犯す。

 決戦都市のあちこちで頻出する殺人は、言ってしまえば単純な仕組みだったのだ。
 現場が点在しているのではない。
 死角を生み出すようにして時刻や状況を利用して空白を作り上げているのだ。
「念入りに詰めておいて良かったわ」
 蒸気ドローンから得られた情報を元に彼女は予測していた『見えぬ殺人者』たるデウスエクスの尖兵『ツギハギタキシム・アルファ』の姿を、その瞳に捉える。
「そこ!」
 認識した瞬間、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 超重力で投擲した六尺棒が天高く打ち上げられる。それは未来予測が如く睥睨した『ツギハギタキシム・アルファ』の首へと落ち、その喉を地面に縫い留める。

 超重力で加速した落下する六尺棒の一撃。
 それは弾丸のように放たれ、今その瞬間にそこに『ツギハギタキシム・アルファ』が来ることを知っていたように、かの体を縫い止めたのだ。
「Gaッ!?!?」
 正確過ぎる一打。
 それによって『ツギハギタキシム』の体は、今宵の犠牲者に襲いかかる前にまるで昆虫標本のように屈するしかなかったのだ。
「まだ数はいるようだけれど、あんたたちの未来は確定しようなものよ」
 誰も今宵は殺させない。
 死者はでない。
 そう、『おそれ』募らせる『見えぬ殺人者』の噂は今日此処でパタリと消え失せるのだ。それを示すように紅葉たち猟兵は、集ったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第四『不動なる者』 盾&統括役武士
一人称:わし 質実剛健古風
武器:黒曜山(刀)

なるほど、厄介な手合いであるが…やりようはある。
四天霊障を広げて探知結界を張りつつ…黒曜山の刀身にて未来を見る…視力を凝らし、その兆候さえ分ればよい。

その場所に向かって、UCつきの斬撃波である!
まあ、当たらずともよいのよ。そこは、敵の攻撃が一切効かぬ場所になるのであるからな!
さらに、広げていた四天霊障を攻撃へ転化。重量攻撃による押しつぶしも行う。

しかし、おそれを利用する敵とはな…ほんにここも難儀な敵がおるのう…。



 地面に縫い留められたデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』を見た、その同じく影に潜んでいた者たちは一様に目を見開く。
 己たちは影から影に移動するもの。
 気が付かれるわけがなかった。
 なのに気が付かれ、『見えぬ殺人者』のさらなる犠牲者を守られた。
 狙いすましたかのようなピンポイント狙撃じみた一撃。
 これによって『ツギハギタキシム・アルファ』の一体は撃滅されたのだ。
 その事実に同胞たる『ツギハギタキシム・アルファ』たちは一瞬動揺する。
「何zeだ」
 何故、己達の位置がわかったのか。
 いや、それ以上にどうして己たちが人間を今まさに襲うとわかったのか。

 その事実に緊張が走る。
 だが、その緊張とは即ち弛緩であることは言うまでもない。
 影に隠れた彼らの姿を馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『不動なる者』は見逃さなかった。
 踏み込む。
 手にした黒曜石の如き黒き刀身を持つ剣がひらめくようにして、その振り下ろした一撃より放たれるは斬撃波。
「はッ――!」
 その一撃を『ツギハギタキシム・アルファ』は躱す。
 間一髪であった。
 見上げる先にあるのは『不動なる者』。
「なるほど、厄介な手合であるが……」
「ケルベロス、いや、猟兵ka」
 あらゆるデウスエクスの体をツギハギにした体躯よりあふれるは異臭。
 それは死臭とも言うべき耐え難い悪臭であった。

 吸い込み続ければ意識を奪われると思うほどの強烈な悪臭は一気に『不動なる者』へと迫る。
 しかし、『ツギハギタキシム・アルファ』は怪訝なる表情を浮かべる。
 己が放った異臭はすでに『不動なる者』へと到達しているはず。なのに、どうしてか『不動なる者』は動かない。
 何故、と『ツギハギタキシム・アルファ』は理解できぬまま、しかし己の脳天に振り下ろされた一撃に、その頭部を拉げさせる。
「やりようはある。先程の斬撃は、我が奥義。四更・山(シコウ・ザン)。主が見たのは、黒曜石に照り返るわしの姿よ」
 そう、『黒曜山』の放った斬撃は『ツギハギタキシム・アルファ』に躱された。
 しかし、躱された斬撃は『ツギハギタキシム・アルファ』を取り囲む黒曜石で覆われていたのだ。
 つまり、ユーベルコードである異臭は封じられ、また黒曜石によって位置の誤認までさせられていたのだ。

 背後より振り下ろされた鉄槌の如き一撃を『ツギハギタキシム・アルファ』は認識していても実際には正反対の位置から叩き込まれたのだ。
 これを躱す手立てなどなかった。
 押しつぶされた『ツギハギタキシム・アルファ』を見やり、『不動なる者』は周囲を見回す。
 すでに他の『ツギハギタキシム・アルファ』たちは湾岸の決戦都市のあちこちへと散開している。
「逃げたか。だが、わしら猟兵から逃れられると思うなよ。しかし、『おそれ』を利用する敵とはな……ほんにここも難儀な敵がおるのう……」
 いずれ『不動なる者』は知るだろう。
 この『おそれ』を触媒にしてデウスエクスを転移させるだけではなく、それそのものを力と為す恐るべき十二剣神の力を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
●SPD

『見えぬ殺人者』、か
さながら都市伝説の怪談話めいているが、実害が出ている以上は…デウスエクスの仕業でしかあるまい
市民は自警団を組織し始めているようだが、こうも疑心暗鬼に駆られては思い込みによる暴走も懸念される
尤も、それも狙いなのだろうがな

では、ケルベロスコートで非武装である事を装った私自身が釣り餌となって引っ掛けてみるか
決戦支援は…そうだな、ディフェンダーで市民の夜間外出を物理的に制限して貰おう
少々強引だが人命に関わるなら理解を得られるだろう

後は巡回だが、予め【フルムーンブレイク】で腕を獣化しておこう
襲撃のカウンターに一発二発見舞ってやるが、それでも駄目ならコートを脱ぎ我が愛剣で勝負だ



『見えぬ殺人者』
 それはどこかのオカルト、都市伝説の一節でもあっただろうし、文面を飾る言葉でもあったようにも思えたことだろう。
 しかし、この湾岸の決戦都市においては違う。
 噂であれど、しかして事実、一夜事に一人の犠牲者が確実に出ている。
 人々は『おそれ』る。
 噂など噂に過ぎないのだと虚勢を張るのだとしても、しかして己が生命が奪われるその時まで、それが真実であったと思い知ることしかできない。

 デウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』たちは、そうした『おそれ』を媒介にして地球に送り込まれてきた。
『見えぬ殺人者』の生み出した噂に後押しされるように、さらなる犠牲者を増やすべく街の影から影へと飛び交うようにして彼らは走る。
「猟兵、ケルベロス、その両方ni露見したとなれば」
「次なるは我raの撃退を目論むは必定」
 彼らはツギハギだらけの異形の体躯を走らせ、影から影へと走る。
 此処で己たちが打倒されることが、何よりも己が主、十二剣神の損害になると知っているからだ。

「『見えぬ殺人者』、か。さながら都市伝説の怪談話めいているが」
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は闇夜に染まる湾岸の決戦都市の街中を見やる。
 行き交う人々の中には自警団めいたものを形成するものたちだっている。
 ケルベロスに対する疑心暗鬼。
 忸怩たる思いをしているのはケルベロスも同様であろう。だが、不満というのはぶつけて初めて発散される。
 そのぶつけどころがわからない以上、その身に堆積し、人の認識を容易に歪める。
 故にジークリットはケルベロスコートのみの姿となって街中を歩む。

 今も猟兵たちによって『ツギハギタキシム・アルファ』たちは殺人を阻止されている。
 もはや誰でもいいから一人でも殺そうと躍起になっているはずだ。
「となれば、無防備な私のことを殺そうとするだろう。決戦配備……市民への動線を制限してもらおうか」
『良いのかい? それでは君が危険に晒されるが』
 通信の向こう側で湾岸の決戦都市の責任者である『エイル』博士が言う。
 ジークリットは構わないと頭を振る。
 人命に関わるのならば、己が矢面に立たないでどうするのかと言わんばかりであった。故にジークリットは無防備に己の姿を夜の闇にさらす。

 これが強引な手段だとわかっている。
 だが。
「いta! 人間!」
 デウスエクスは必ず己を狙う。
 人通り少なく、そして無防備な存在。
 これは殺せと言っているようなものだと、釣り餌たるジークリットへと『ツギハギタキシム・アルファ』は迫る。
 瞬間、ジークリットの瞳がユーベルコードに輝く。

 空に浮かぶは満月。
 いや、何故満月があるのだと『ツギハギタキシム・アルファ』は思っただろう。
 闇夜だったはずだ。
 月の明かりもない夜。
 なのに、何故満月が己を照らしているのだと顔を見上げた瞬間、その月光を背に己が脳天へと狂月化した獣の腕部が振り下ろされる。
 その一撃が『ツギハギタキシム・アルファ』の異臭すらも切り裂いて脳天から唐竹割りのように一刀両断するのだ。
「na――」
「何故、だと? わかっているだろう。デウスエクス。お前達が殺すからだ。『おそれ』を生み出すために。ならば、私達がいるのは当然だ」
 ジークリットの一撃は『ツギハギタキシム・アルファ』を切り裂き、その体躯を偽りの満月の月光の元に照らす。
『見えぬ殺人者』など月光の前には白日に晒されると同じであるとジークリットは示すように己がケルベロスコートを脱ぎ去るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル02操縦。
【視力】『眼倍』【第六感情報収集】にて一帯の敵の位置把握、
【迷彩】透明化、重力制御で音無く高速【推力移動】

残さず、逃がさず、全部……壊せ、ディスポーザブル…!!!

【不意打ち】強襲六腕に持った六本のRX騎兵刀で【重量攻撃】突き刺し、
脚部から灼熱光剣発火【焼却】ブースター【推力移動】

疾く早く!恐怖を感じさせるより速く!
恐怖を与えるよりも速く!
壊し尽くせ!!

眼倍が捉えた敵の位置、動きを【瞬間思考力】で高速処理で【見切り】
機体操縦透明化維持【空中機動】敵の攻撃を【早業】で躱しながら、
重力制御による空中機動と合わせ、六腕で騎兵刀を振るい連続【切断】
撫で斬りだ!撫で斬りにしろ!!



 異形のキャバリアが湾岸の決戦都市のビル群の合間を縫うようにして飛ぶ。
 不可視なる透明化によって、その異形の姿は見えぬ。
 しかし、確実にそこにいる。
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、その異形のキャバリア『ディスポーザブル02』を駆り、重力制御によって飛行していた。
 敵が影から影に飛ぶようにして獲物を狙うのならば、己はそのさらに上を往く。
「残さず、逃さず、全部……壊せ、ディスポーザブル(コワレロコワレロコワレロ)」
 小枝子の人口魔眼がユーベルコードに輝く。

 すでに己の心に痛みはない。
 恐怖はない。
 そして己が悪霊という自覚すらない。
 あるのは破壊するという意志のみ。
『おそれ』を媒介にして地球に送り込まれたデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』たち。
 彼らは『見えぬ殺人者』という噂を補強するために、そして、その噂によって人々に拭えぬ『おそれ』を植え込むためだけに行動している。
 一夜にして一殺。
 それはグラビティチェインという生存エネルギーを求めるデウスエクスにとってはあまりにも非効率的な行動であっただろう。
 デウスエクスが求めるのはいつだって大量殺人である。
 殺せば殺すだけ彼らはグラビティチェインを得ることができるからだ。
 
 けれど、何故こんな回りくどいことをするのか。
 言うまでもない。
 その『おそれ』の先にこそ、彼らの主たる十二剣神の顕現があるからだ。
 フルパワーの十二剣神の顕現。
 それが成されるのならば、これまでのちまちまとした殺人も全てが報われるのだ。
「させるものか……!」
 小枝子の人口魔眼が敵を捉える。
 すでに猟兵達によって殺人は防がれている。だからこそ、『ツギハギタキシム・アルファ』たちはなんとしても一夜一殺を成立させるために夜の闇に紛れるようにして疾駆する。

 そのうちの一体を小枝子は見つけ出したのだ。
「疾く早く! 恐怖を感じさせるより速く!」
 そう人々に『おそれ』させてはならない。小枝子はそれを良く理解していた。
 人々に己達の戦いさえも知覚させない。
 そのために小枝子は己の瞳をユーベルコードに輝かせ、『ディスポーザブル02』の異形の副腕を振るう。
 一瞬で振るう騎兵刀の一撃は『ツギハギタキシム・アルファ』の認識の外から飛来し、その体躯を一刀の元に両断するのだ。
「Ga――!?」
「貴様たちが恐怖を与えるより速く! 壊し尽くす!!」
 小枝子は一気に『ツギハギタキシム・アルファ』の体躯を空へと弾き飛ばす。
 重力制御の飛行は風切音しか響かせない。
 誰にも見られることなく、痕跡さえ残さず小枝子は『ディスポーザブル02』の六本の腕に備わった騎兵刀を振るい、空中で『ツギハギタキシム・アルファ』の躯体を粉微塵に切り刻むのだ。
「撫で斬りだ! 痕跡すら残さない。人々を狙うデウスエクスという存在は撫で斬りにする!!」
 そう、それこそが人々を『おそれ』から守る手段。
 如何に拭えぬのだとしても、それと知覚させないのならば、『おそれ』が膨れ上がることはないのだ。
 小枝子は誰にも知られることなくデウスエクスを打倒し、未だ人々を狙うデウスエクスの影を求めて飛翔するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
ボクは怖い話は嫌いですけど、今回のは平気ですよ!
あ、嫌いなだけであって怖いんじゃねーですからね!ほんとーに!
それは置いといて、黒幕がデウスエクスとかゆー奴だってんならこの事件を起こしてる奴も似たような奴に違いないです。
あいつらが何なのかは正直良く知らねーですけど……それが生き物でも、機械でも、オバケでも!ぶっ飛ばしてやるです!
うん、その為にはまず見つけないとですね。
全速力で飛び回って、瞬間思考力と気配感知で探します。
情報は足で……いや、スラスターで稼ぐです!
見つけた瞬間、その勢いで体当たりして吹き飛ばしてやるですよ!
攻撃準備と情報収集を同時に、効率良く。
ボクの高性能さを見やがれってんですよ!



 言い知れない恐怖というものは、未知なるものに由来するものである。
 知らぬがゆえに恐れる。
 人は理性を持つがゆえに、知ることで未知を踏破してきた生物である。
 知ることができたのならば、恐れ足らず。
 故に『見えぬ殺人者』は人に所在を知られることなく、その正体を隠したまま一夜一殺を敢行し続ける。
 目的も判然としない。
 その知り得ぬという恐怖こそが人々の心に拭えぬ『おそれ』を植え付けていくのだ。
「ボクは怖い話は嫌いですけど、今回のは平気ですよ!」
 ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は、湾岸の決戦都市のビル群の合間を縫うようにして飛ぶ。

 航空戦力である彼女の性能は人型であること、人現大であるというメリットをこのビルが立ち並ぶ市街地でこそ発揮していた。
「あ、嫌いなだけであって怖いんじゃねーですからね! ほんとーに!」
 誰に言い訳しているわけではないが、ファルコは叫ぶ。
 こんなところを部隊の隊員たちに見られたら、またからかわれることは言うまでもない。
 とは言え、それは今は置いておくべきことである。
 今ファルコがしなければならないことは、デウスエクスの発見である。

 デウスエクス。
 オブリビオンとは違い、滅ぼすことのできぬ敵。
 しかし、撃退することができるのならば、これを捨て置くことはない。
「見つけた、です!」 ファルコは影から影に飛ぶデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』の姿を認める。
 敵。
 ならば、己は飛ぶだけである。
「ROCKET DIVE! スタートです!」
 ロケット噴射により、ファルコはその瞳をユーベルコードの輝かせて飛ぶ。
 猛烈な速度。
 その速度は『ツギハギタキシム・アルファ』には認識できなかっただろう。
 ファルコはけれど、敵を見据えていた。
 いくつもの生物をつなぎ合わせたかのような異形。

 暗闇の影に隠れるのだとしても、彼女の瞳は敵を一瞬でも捉えれば充分だった。
「あいつらが何なのか正直良く知らねーですけど……それが生き物でも、機会でも、おばけでも! ぶっ飛ばしてやるです!」
 一気に空中を飛ぶファルコの体躯が『ツギハギタキシム・アルファ』の体躯に激突する。
 凄まじい一撃だった。
 装備したファルコの武装とロケット噴射によるスピードが掛け合わされることによって、ファルコ自身が質量弾となって『ツギハギタキシム・アルファ』の体躯を空中に吹き飛ばしたのだ。
「Ga――な、なんda?!」
 一瞬のうちに空中に跳ね飛ばされた『ツギハギタキシム・アルファ』は理由もわからぬままに己が空に舞い上げられたことを認識する。

 だが、その認識。
 その一瞬の認識の遅れ。
 それがファルコにとっては決定的な隙だったのだ。
「遅い、です!」
 ファルコは空中で踏み込むようにしてロケット噴射でさらに加速する。
 拳を突き出す。
 空中で無防備な『ツギハギタキシム・アルファ』は漸くにして己がファルコによって空中に弾き飛ばされたのだと理解しただろう。
 けれど、何もかもが遅い。
「ボクの高性能さを見やがれってんですよ!」
 一瞬でファルコは拳を『ツギハギタキシム・アルファ』に打ち込む。
 それは天高く再び『ツギハギタキシム・アルファ』を吹き飛ばし、その衝撃でバラバラになった体躯がファルコに降り注ぐ。
 しかし、それすらもファルコは躱し、さらなる敵を見定め、湾岸の決戦都市の空に空気の壁を破る音を響かせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧崎・天音
【ディフェンダーを希望】
戦いは続いているけど…
この調子だと、他の人が行ってない場所を狙って敵が行動を起こしそうな予感がする…

あたりの偵察を注意深く行って、他の猟兵の人が来ていない場所に
ユーベルコードで攻撃を仕掛けにいく。

きれいな桜が、その影を照らし出して
敵の姿を白日にさらす…それで一気に倒す。



 湾岸の決戦都市にて開発された人型の戦術兵器『セラフィム』――それこそがこの都市の『決戦配備』である。
 ケルベロスの要請によって数々の支援を行う人型戦術兵器は霧崎・天音(異世界のラストドラゴンスレイヤー・f40814)に随行していた。
『『セラフィム』の性能は過信しないでおくれよ。開発した私が言うのもなんだけれど、デウスエクスにはいまだ負けっぱなしなんだ。でも、君等の盾になることはできる』
 この決戦都市の責任者『エイル』博士の声が通信で聞こえる。
 天音は頷く。
「ポジション、ディフェンダーを希望。まだ都市部では戦いが続いているようだど……」
『ああ、幾人かの猟兵やケルベロスがデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』の撃破を確認しているよ。けれど、連中がこれで引き下がるわけがない』
「一夜一殺。これを確実に実行する。途切れることなく必ず人を殺すことで噂の拡散を確立しているのなら」

 天音は理解する。
 デウスエクスが撃破されても、残された『ツギハギタキシム・アルファ』たちは必ず一夜一殺を敢行しようとするし、達成しようとするだろう。
 今はまだ犠牲者がでていないとは言え、人々を守る猟兵やケルベロスたちの目をかいくぐらないとも限らない。
「すでに一般人の襲撃が行われた地点の情報を」
『転送済みさ。確認してみてくれたまえ』
「了解」
 天音は注意深くビル群の合間を走る。
 他の猟兵達のカバーしきれぬ場所を己がカバーしなければならない。

 それほどまでに『ツギハギタキシム・アルファ』たちの行動は予測ができない。しかし、闇から闇に紛れるやり方をするというのならば。
「殺su」
 街頭の明かりも届かず、さりとて監視カメラや魔術センサーの及ばぬ箇所にこそ『ツギハギタキシム・アルファ』は潜み、哀れなる犠牲者となる人間を物色している。
 跳ねるようにして『ツギハギタキシム・アルファ』は無防備なる人々の頭上に飛ぶ。
 一人でいい。
 一人殺せば良い。
『見えぬ殺人者』であるがゆえに見られてはならないという条件はあるが、圧倒的に劣る地球人を殺すなど造作もないこと。
 一瞬で。
 そう思った瞬間、天音の要請に応えた『セラフィム』が『ツギハギタキシム・アルファ』へと組み付く。

「木偶人形ga!」
 振るわれる腕に人型の戦術兵器『セラフィム』は破壊される。
 破片が舞い散る。
 やはり、デウスエクスにはかなわない。けれど、充分だった。
 わずかでも一般人に『ツギハギタキシム・アルファ』の凶刃が及ばぬ隙ができればいいのだ。
 天音は飛び散る破片の中を走る。
「『地獄の刃、華となって奴の命を攫え!」
 ユーベルコードに瞳が輝いていた。
 地獄化した右足が踏み出す。
 瞬間、炎でできた桜の花びらが放たれ、『ツギハギタキシム・アルファ』の体躯へと走るのだ。

 獄炎斬華・死桜(ゴクエンザンカシザクラ)。

 それが彼女のユーベルコード。
 目を奪うような煌めき放つ桜の花弁が明かりにも月光にも照らされぬ闇を照らす。
 晒された『ツギハギタキシム・アルファ』の異形。
 されど、天音は踏み込み、己の右足から放たれた桜の花弁でもって、その異形を包み隠す。
 断末魔さえ届かせぬ花弁の嵐は、その存在を抹消するように渦巻き、敵を打ち倒すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍之宮・翡翠
人の噂を利用して、人を獲物として刈るか
裏に居るデウスエクスも、その主の十二剣神も気に入らないな……
とはいえ、ケルベロスであり猟兵である以上、やる事は一つしか無い
尖兵共を速やかに排除する

|決戦配備《ポジション》は|救護配備《メディック》を要請
狙われた一般人の保護を担ってもらう
ケルベロスが、DIVIDEが、彼等を護る為に動いてるというアピールにもなるだろうしな

「お前達の勝手にはさせない」
敵に向けてUCを発動する
あちらは一夜一殺らしいが此方にその縛りは無いし、そんな悠長な事は言わない
索敵し、見つけ次第UCを使い仕留めていく

「俺達は、お前達の玩具じゃない」
ましてや、お前達の裏に居るモノたちの餌でもない



 夜ごとに人が死ぬ。
 それは言い知れぬ恐怖を人々の間に齎すものであったことだろう。
 当然だ。
 人は未知なるものを恐れる。
 理解できないものを排斥しようとする。
 それもまた当然のことであろう。
 未知は『おそれ』である。遠ざけることで生命の危機から遠ざかることができるのだ。故に人は噂するのだ。

『見えぬ殺人者』

 未知を解明したい、詳らかにしたい。
 その欲求は伝聞によって尾ひれはひれを得て人々の間を泳ぐ。
『おそれ』は増していくばかりである。
「人の噂を利用して、人を獲物として刈るか。裏にいるデウスエクスも、その主の十二剣神も気に入らないな……」
 龍之宮・翡翠(未だ門に至らぬ龍・f40964)はケルベロスディバイド世界にあるSNSに流れる情報に顔をしかめる。
 そこかしこで『見えぬ殺人者』を恐れる発言が蔓延っている。
 当然湾岸の決戦都市にてもこれを制限する試みは行われているだろう。けれど、そうした試みを嘲笑うかのように人々の間に噂は独り歩きをしては、その心にある『おそれ』を芽吹かせていくのだ。

「やることは一つだ」
 翡翠は暗闇の決戦都市の都市部を走る。
「要請、決戦配備……メディック」
『まかせておきたまえ』
『エイル』博士の通信によって人型の戦術兵器『セラフィム』が翡翠に随行する。
 人々が狙われている。
 しかし、一夜一殺。
 これを忠実に遂行しているデウスエクスたちにとっては、あまり効果が薄い用に思えるようなポジション要請であった。

 しかし、翡翠の考えは違う。
「『セラフィム』……! DIVIDEが動いてるのか……?」
 その存在はこの湾岸の決戦都市においてはケルベロスたちに次ぐ対デウスエクスに対する象徴でもあったのだ。
 その『セラフィム』市街地にあれば、人々はそれらがデウスエクス、ひいては『見えぬ殺人者』から己たちを守ってくれる存在であると理解できるあろう。
『なるほど。これは武威行為なんだね』
「武威、とは違うがアピールにはなるだろう。人々は不安なんだ。なら、その不安を払拭するためにDIVIDEが動いていると知ることができれば」
 人の心にはこれ以上『おそれ』が蓄積することはない。

「そして、お前達の勝手にはさせないという俺の意志だ!」
 翡翠はビル群の影に隠れたデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』の姿を捉え、一気に残霊刀を抜き払う。
「ケルベロス共ga!」
「空の泣く声を聞け」
 翡翠の瞳がユーベルコードに輝き、『ツギハギタキシム・アルファ』がその異形より耐え難い異臭を放つよりも速く踏み込み、その残霊刀より放たれた水飛沫でもって『ツギハギタキシム・アルファ』より戦うという意志を、そのエネルギーを削ぎ落とす。

「naんだ、これは……戦う、意志ga」
「お前たちは一夜にして一殺を掲げているらしいが、此方にはその縛りはない。そんな悠長なことは言わない。言っておく」
 翡翠は己の抜き払った残霊刀の切っ先を地面に膝つく『ツギハギタキシム・アルファ』に突きつける。
「俺達は、お前達の玩具じゃない」
 振るう一撃が異形たる『ツギハギタキシム・アルファ』の首を落とす。
 重たい音を立てて落ちる首に背を向け、翡翠はさらなる敵を求める。
「ましてや、お前達の裏に居るモノたちの餌でもない――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁす(ウィスパーボイス)
はい、叫ぶとエイル博士が驚かれますので
今日は囁いてみました通信越しに!
貴女のメイド、ステラ参上しました(はーと)
そして第九号様の位置はいつか奪わせていただきます

さてルクス様…は既に瀕死
というかシリアスに弱すぎませんか?

おそれ……この感情こそは原罪に対して生命が抱くものなのかもしれません
ゆえに私たちは|熾火《希望》を掲げましょう
ええい、ルクス様静かに
理性と善性、その極みは文化
というわけでルクス様演奏いいですよ敵味方判別するように
私は希望を歌いましょう
【アウルム・ラエティティア】
さぁ|闇《おそれ》を振り払うとしましょうか


ルクス・アルブス
【ステルク】

えー……。
この世界、ほんとにシリアスが過ぎますよぅ。

それにしてもよくわからない相手ですね。
『エイル』博士はともかく、『第九号』さんでも捕らえられないなんて、
なかなかいない感じに思います。

うう……ラムネが、ラムネの効きが悪いです。
あああああ、ステラさんどうしましょうー!シリアスが襲ってきますー!

なんですか、シリアスって原罪なんですか!?
こっちこないでくださーい!

え、えんそう?えんそう!
そうですよね、こういうときは演奏ですよね!
わたしの演奏でおそれを払うのがいいですよね!
みんなにとどけ、勇気の【ボレロ】ー!

あ、ステラさん、ラムネの追加って持ってないですか?
大粒のやつがいいんですけど!



「えー……この世界、ほんとにシリアスが過ぎますよぅ」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はため息を吐き出す。
 彼女はアレルギーである。
 シリアスアレルギーである。
 何度も言うが、彼女は極度の雰囲気に対するアレルギー反応を起こす世にも珍しい体質なのである。
 こんな重っ苦しい空気なんてルクスにとってはいるだけで蕁麻疹がでてしまうものなのである。
 ラムネをボリボリやってなんとかアレルギー症状を抑えているが時間の問題でもあった。
 シリアスの大本。
 それはこの世界においては、デウスエクスである。

 そして、そのデウスエクスが齎す『見えぬ殺人者』という噂。
 この捉えられぬ殺人者こそが人々の『おそれ』を増幅さえ、媒介としてデウスエクスが送り込まれる要因となっているのだ。
「それにしてもよくわからない相手ですね。『エイル』博士はともかく、『第九号』さんでも捉えられないなんて、なかなかにない感じです」
『今さらっと、私のことをディスっていなかったかい!?』
『博士、気のせいです』
 通信の向こう側で『エイル』博士が突っ込んでいる。
 これこれ、とルクスは思ったし、通信が繋がるのならばステラ・タタリクス(紫苑・f33899)がもう黙ってはいないだろうな、と思った。

「|『エイル』様《主人様》の!」
 ほら来た。
 ルクスは耳をふさぐ準備をした。
「香りがしまぁぁす」
 ん!?
 なんかささやき声にも似た声が通信先に響く。
 ビクッとした気配が伝わってくるようであった。
「ステラさん、なんで今日はそんな感じなんですか?」
「それは勿論、『エイル』博士が驚かれますので。今日は囁いてみました通信越しに!」
 そういうステラは自信満々であった。
 しかし、どちらにせよ今回の事件的には、そっちのほうが驚かれるんじゃないかなってルクスは思った。

 なにせ『見えぬ殺人者』の噂を媒介してデウスエクスが送り込まれてきているのだ。
 そこに耳元で囁かれてしまえば、驚きと恐怖のほうが勝るであろうから。
『ひぃぁ!?』
「いただきました! 貴女のメイド、ステラ参上しましたはーと」
 はーと、じゃない。
「そして、『第九号』様、そのポジションはいつか奪わせていただきます」
 謎の宣戦布告。
 ルクスはラムネの効きが悪くなってっきたのを感じる。
 この上なくギャグな雰囲気なのに、ルクスの蕁麻疹が止まらぬ。ということは!

「ステラさんーん! あああああ、シリアスが襲ってきますー!」
「これは便利なセンサーですね。監視カメラ、魔術センサーすらもかいくぐるデウスエクスであっても、シリアスという雰囲気までは打ち消せないのでしょう。ならば!」
 ステラはルクスのシリアスに弱すぎる性質を逆手取る。
 そう、ルクスが瀕死になればなるほどに現場は近いってことである。
「なんですか、シリアスって原罪なんですか!?」
「『おそれ』……この過剰こそは原罪に対して生命が抱くものなのかもしれません。故に私達は|熾火《希望》を掲げましょう」
「ステラさーん! 蕁麻疹が止まりません! シリアスが止まりません! なんかあっちの方角からすんごいシリアスの波動を感じます!」
「ええい、ルクス様静かに。今まさに私がキメてるところなのですから!」
「そんなの知りませんよー! 蕁麻疹止めてくださいー!」
 ほら、あれ! とルクスは指差す。

 その指の先にあるのはデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』の姿である。
 今まさに人々を襲わんとしている姿。
『見えぬ殺人者』の噂を補強するために一夜一殺を標榜するものたち。
「理性と善性、その極みは文化。というわけでルクス様、えんそういいですよ」
「え、えんそう!? えんそう! そうですね、こういう時は演奏ですよね!」
 ルクスはステラの言葉の意味を半分も理解できなかった。
 けれど、構わない。
 演奏できるのならば!
「わたしの演奏で『おそれ』を払うのがいいですよね! みんなにとどけ、わたしのボレロー!」
 グランドピアノから放たれる魂の演奏。
 それは一般人に襲いかからんとしていた『ツギハギタキシム・アルファ』の三半規管を破壊し、その体勢を崩させる。

「!? なnだ、これha!?」
「それが文化、歌というものです。|闇《おそれ》払うのは、いつだって歌なのです!」
 ステラのアウルム・ラエティティアが迸る。
 ルクスの演奏に乗って放たれる歌は、三半規管を破壊された『ツギハギタキシム・アルファ』にとって躱すことのできぬ一打であったことだろう。
 その身を吹き飛ばされ、そして、これまで蓄積した『おそれ』を振り払うようにステラは高らかに歌い上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「命をものとしか見て居ない輩。
実に合理的だが、だからこそ。
これ以上繰り返させる訳には行かない。」

アンノウンブレスを発動し幽霊を街に放ち、
幽霊の超感覚で敵や
孤立している等の敵に狙われそうな人を探す。
探しながらも移動時に最短距離を通れるように
街の構造も把握しておく。
自身は敵を発見した時に移動し易い様に放った幽霊の
中心付近で敵を捜索。
敵を発見出来たら幽霊にテレパシーで連絡させつつ
龍翼の翔靴で空中を走ってショートカットしながら現場へ。
敵が射程距離に入ったら確実に仕留める為に
呪装銃「カオスエンペラー」で攻撃、死霊による【マヒ攻撃】や
【呪詛】の幻覚で足止めした後
デモニックロッドから闇の魔弾を放ち仕留める。



 生存エネルギー、グラビティチェイン。
 デウスエクスが求めるのは、そのエネルギーである。言ってしまえば、糧を求めるのと同じであったことだろう。
 しかし、そのやり方はあまりにも人の心を踏みにじるものであった。
 言ってしまえば熟成させるような行い。
 人の心に『おそれ』は常にあるものだ。
 未知なるものを『おそれ』、見えぬものを『おそれ』、遠ざけるために言葉というコミュニケーションで持って周知する。
 個ではなく社会という群れで生きる人間であるからこそ、そこには知性という輝きがあった。

「生命をものとしか見ていない輩。実に合理的だが、だからこそ」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は湾岸の決戦都市を走る。
 すでに多くのデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』たちは猟兵たちによって打倒されている。
 後残されたデウスエクスの尖兵たちは多くはないはずだ。
 一夜一殺。
 この法則性さえ崩せれば、人々の間に蔓延る『見えぬ殺人者』の噂は弱まっていくだろう。 
 そうなれば、この事件の裏にて糸引く十二剣神の思惑を外すことができる。
「これ以上繰り返させる訳にはいかない」
 ユーベルコード煌めくフードの奥の瞳。
 放たれるは実態不明たる幽霊たちを開放する棺の群れであった。
 アンノウンブレスと呼ばれたフォルクのユーベルコードによって棺から這い出した無数の幽霊たちが湾岸の決戦都市の都市群を走り抜ける。

「どこに居るかわからない。完全なランダム性を敵が用いているのならば、虱潰しにするだけだ」
 フォルクは物量作戦で持って都市部の影に隠れるデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』たちの姿を探す。
 誰ももう襲わせはしない。
 誰も犠牲にはさえない。
 その思いは猟兵もケルベロスも変わらぬところであったことだろう。

「見つけた」
 テレパシーで繋がる幽霊たちが見つけた『ツギハギタキシム・アルファ』の姿をフォルクは幻視で捉え、一騎に走り出す。
 宙を蹴って飛び、ビルの壁面を蹴っては道成らぬ道を走り抜け、『ツギハギタキシム・アルファ』の頭上へと躍り出るのだ。
「……どうしてここgaわかったのだ!?」
「どこにでも目はあるということだ。お前達が如何に影から影に潜むものであったとしても、逃れられない。天網恢恢疎にして漏らさず、というやつだ」
 フォルクは呪装銃『カオスエンペラー』から放たれた弾丸を『ツギハギタキシム・アルファ』に叩き込み、さらに召喚した幽霊たちに寄る足止めを行いながら、『デモニック・ロッド』から放つ闇の魔弾で『ツギハギタキシム・アルファ』を仕留める。

「残存する敵は……いないようだな。全て都市部に送り込まれた尖兵は仕留めたか」
 フォルクは、『おそれ』をかき集めていたデウスエクスたちを全て打倒したことを確認する。
 これら『ツギハギタキシム・アルファ』は『見えぬ殺人者』ではない。
 彼らは『見えぬ殺人者』の噂を媒介にして送り込まれてきたデウスエクス。
 ならば、本命が必ずいる。
 そして、一夜一殺を実行できなかったと知れば、己達を排除するために姿を表すに違いないのだ。
 フォルクは、その考えが正しいことを知る。
 振り返った先には、闇夜に浮かぶデウスエクスの姿があったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヒュパティア・アレクサンドリア』

POW   :    思考を放棄する前にまず考えよ
戦場内を【演算速度と理論と答弁が支配する学術的】世界に交換する。この世界は「【暴力行為禁止】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
SPD   :    対猟兵運命観測機
【未来予測】【運命固定】【時空操作】と【概念防護】【物理防護】【属性防護】を組み合わせた独自の技能「【絶対防衛システム】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
WIZ   :    恒星間重砲撃支援要請
戦場にレベル×5本の【物質分解弾頭搭載FTLミサイル】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【ダモクレスに対し脅威である】対象を優先して攻撃する。

イラスト:櫻 ゆうか

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はユキト・エルクードです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『見えぬ殺人者』の噂、その『おそれ』を媒介にして送り込まれたデウスエクス『ツギハギタキシム・アルファ』たちは猟兵とケルベロスたちの活躍によって全てが打倒された。
 今宵において一夜一殺は成立しなかったのだ。
 それは人々にとって『見えぬ殺人者』への恐怖を薄れさせるものであったことだろう。
 これまで唯一知ることのできた『見えぬ殺人者』の情報、一夜一殺。この前提が覆ったことにより、人々は『見えぬ殺人者』が決して不可視であり、絶対たる法則を持ち得るものではないということに一抹の安堵を覚えたのだ。
「……なるほど。如何にしても諸君らは、我が一夜一殺という法則を突き崩したいというわけか。『おそれ』とは理性のゆらめき。その振れ幅が大きければ大きいほどに得られる『おそれ』も大きい。だが、絶対たる法則、その天秤の支柱が揺らげば、そもそもが成り立たぬと」
 猟兵とケルベロスたちは見上げる。
 闇夜に浮かぶは、一体のデウスエクス。

 ダモクレスと呼ばれる勢力を率いる機体の一つ。
 聡明さを感じさせる理知的な声色。
 されど、その瞳に浮かぶのは感情ではなかった。
「ならば、我は成立させるとしよう。今はまだ夜のうち。諸君ら猟兵、ケルベロスを打倒し、邪魔するものなき夜を生み出せばいい。一夜一殺は未だ崩れず。我が主の顕現のための礎……絶望はいらぬ。ただ『おそれ』だけが必要なのだ。故に、猟兵、ケルベロス両名諸君に告げよう。諸君らの一人でも死ねば、それでいいのだ」
 それ以外は無駄な争いだとデウスエクス『ヒュパティア・アレクサンドリア』は告げる。
 そう、彼は言うのだ。
 ただ一人死ねば、ほかは見逃す、と。
 だが、猟兵とケルベロスは聞かぬだろう。
 それは戯言でしかないのだ。
 仮にそうだとしても、その後に訪れるは『おそれ』を得た十二剣神。

 顕現を許せば、一人の生命では贖えぬ生命が奪われると知るからこそ、それを戯言だと突っぱねるのだ――。
馬県・義透
引き続き『不動なる者』にて

誰が頷くものか。
それは、そちらに都合が良すぎるというもの。

というわけでな、即座にUCを使うこととしよう。
…これ使うとな、脅威度は上がろうが…排除もまた、無理になるのだ。
しかし、優先順位の決定からして…
攻撃はこちらへ来ることとなろう。
攻撃はそのまま受けよう。強化にしかならぬ。
はは、この地球の者らの犠牲は出させぬよ。
そのまま、強化されたままに斬撃波を飛ばしていこう。
ああ、四天霊障での見えぬ重量攻撃もするがな?

『我ら』は死なぬよ。ここに倒れるものは、誰もおらぬのだ。



 都合が良すぎる。
 そう一笑に付す。
 デウスエクス『ヒュパティア・アレクサンドリア』の言葉に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『不動なる者』は言う。
 そう、都合が良すぎる。
 多くを救うために個を捨てる。
 それは社会という生き物においては常道であった。
 そうするのが自然であったし、多くを救うためならば致し方のない必要な犠牲であったことだろう。

 だが、風が吹いている。
 それは清らかな風ではなかったかもしれないし、善性の発露ばかりが見せるものではなかったかもしれない。
 生きていたい。
 生命があるものが見せる明滅であり、また同時に息吹でもあった。
 故に、風が吹く。
「誰が頷くものか」
「何故」
「それは、そちらに都合が良すぎるというもの。どの道、ぬしらは地球の全てを奪うつもりであろう。生存エネルギー、グラビティチェインを。枯渇するまで、全て奪うつもりなのだろう。その算段と今の状況を顧みれば」
 それが如何にしても飲み込めるものではないと『不動なる者』は、その名が示す通り、立ちふさがる。

「そうか。ならば諸君らは我の脅威だ」
 物質分解弾頭搭載FTLミサイルが注ぐようにして『不動なる者』へと打ち込まれる。
 凄まじい威力であった。
 己が身が吹き飛ぶ。
 あまりにも強烈な一撃であった。物質を全て分解するミサイル。その爆風が全て『不動なる者』に吸い込まれていく。
 余さず脅威は粉砕する。
 その意思を込めるような爆風に『不動なる者』の体躯が引きちぎれていく。
 
 だが、『ヒュパティア・アレクサンドリア』は訝しむ。
 己が放ったミサイルは物質を分解する。
 爆風は周囲のビル群もまた分解するはずなのだ。なのに、爆風が広がらない。まるで爆縮するようにして『不動なる者』へと吸い込まれていく。
「……再構築しているのか」
「然り。この呪詛は、尽きぬ」
 己が身には四柱分の呪詛がある。滾々と湧き上がるはオブリビオンへの怨念。
 デウスエクスには関係のないものであったかも知れないが、しかし、命を奪うものは全て己が敵。
 故に、因果は巡りて回る。
「四悪霊・『回』(シアクリョウ・マワル)。どこまでも」
 爆縮するようにして集まっていく物質分解の爆風を吸い込み、『不動なる者』は、一切の被害を周囲にもたらさなかった。

 あらゆる爆風を己が身に受け止め、誰一人の生命とて喪われることを厭うたのだ。
「『我ら』は死なぬよ」
「なるほど。諸君は、そういう存在か。ならば、我らと」
 同じだ、と言う永遠不滅なるデウスエクスの言葉を『不動なる者』は耳に入れなかった。
 必要なかったからだ。

 己が見据えるは敵。
 生命の敵。
 命なき悪霊が、生命の敵であるとは限らぬ。
「己は守護するもの。此処に倒れるものは、誰もおらぬのだ」
 風が吹く。
 猛烈に吹き荒れる風が、生命奪わんとする者を押し止めるように、その剣の一閃となって迸り、再び放たれようとしていたミサイルを切り捨てながら『ヒュパティア・アレクサンドリア』の体躯へと一撃を叩き込む。
「この地球の者らの犠牲は出させぬよ」
 それが己の力の意味であると言うように『不動なる者』は、周囲への被害を一切許さず、その斬撃で持って永遠不滅を斬るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
分かりやすい『おそれ』の産み方ね
でも、余りに直球で美学が無さすぎないかしら?
まだ先程の連中の方が風情と言う物を理解してたわね

さて、相手さんの世界の法則で暴力は通りにくい
だが真心なら通る
狂気とは二種類。理性無き感情、そして感情無き理性だ
彼はそれが分らないからオブリビオンに堕ちたのだろう。教えてやるのが慈悲だ
これは暴力ではなく拳によるコミュニケーション、つまり意志の伝達だ。つまり拳こそが真心なのだ

「考える前にまず感じなさいな……この私の真心を!!」

ユーベルコードは現実の改変だ。奴が世界の法則を改変するなら、私はこの拳を真心であるとささやかに改変しよう



 一進一退。 
 いや、そうではない、とデウスエクス『ヒュパティア・アレクサンドリア』は理解する。
 これは一方的の己の攻勢が防がれているだけに過ぎない。
 彼にとって、己が姿を現したのは一夜一殺を実行するためである。
『見えぬ殺人者』という噂の正体がデウスエクスである、とうのは、確かに『おそれ』の正体を暴かれることであったが、人間にとっては関係のないことである。
『見えぬ殺人者』であろうとデウスエクスであろうと、人間にとっては生命を奪う存在であるからだ。

 故に彼は姿を現した。
 そして、猟兵とケルベロスの誰でもいい一人でも殺せば良いと判断したのだ。
 だが、それを阻む力がある。
「わかりやすい『おそれ』の産み方ね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)の言葉に『ヒュパティア・アレクサンドリア』は、その瞳をユーベルコードに輝かせた。
 世界にテクスチャが張り巡らされる。
 そこには暴力行為を禁じる力が満ちていた。
 答弁と理論。
 それによってのみ行使することが可能たる世界。
「でも、あまりに直球で美学が成さすぎないかしら? まだ先程の連中の方が風情というものを理解してたわね」
「風情? そんなものがなんだというのだ」

 その言葉に紅葉は確信を強める。
 合理の塊。
 あらゆる点において『ヒュパティア・アレクサンドリア』は合理性を突き詰める。
 姿を現したのだって、『見えぬ殺人者』という噂によって『おそれ』を集める手法だって『正しい』。
 だが、それだけだ。
 たった、それだけしかないからこそ、その理外を理解できない。
 故に紅葉は踏み出す。
 暴力行為の全てが禁止される世界。
 もしも、違反するのならば、その行動のすべてが規制されるものであった。
 
 だが、紅葉の右手に輝く紋章が告げる。
 風が吹いていた。
 あらゆる理性と理論を打ち砕くのは、いつだって一念である。
 ただ一つの願いが、祈りが、感情が。
 合理性という強大な壁すら打ち砕くのだ。
「……何をしている」
「何って、コミュニケーションに違いないでしょ」
 紅葉は笑っていた。
 その瞳にユーベルコードが輝いている。

「これは真心。あんたは理解していない」
「我に理解していないことなどない。この世の全てに対して、我は理をもって解をもっている。故に」
「いいえ、狂気という事柄に対してあんたは理解を得ていない。理性なき感情、そして、感情無き理性。その二面性をあんたは理解していない。だから」
 存在であれど生命ではない。
 ダモクレスという種族であれど、その先を、進化を認めない。
 だからこそ、紅葉は『教えたい』と思ったのだ。
 殴りたい、打ち倒したい、ではなく。
 慈悲という己の一念においてのみ、突き進む存在となったのならば、これは暴力ではない。
 他ならぬ彼女自身がそう理解しているからこそ、その拳は言葉にも似た一種の手段に変貌する。
「考える前にまず感じなさいな……」
「何を」
「この私の真心を!!」

 撃ち抜くための弾丸は慈悲。
 ユーベルコードとは即ち現実の改変。
 この世界のテクスチャが『ヒュパティア・アレクサンドリア』のユーベルコードであるというのならば、紅葉は己が拳が宿す真心と言う名の慈悲でもって改変するのだ。
 故に、概念破壊(カンガエタラマケ)。
 テクスチャは酷く薄い。
 故に、一点から破け、避ける。
 輝くは紋章。
 響くは真心。
 砕くは慈悲。
 紅葉の拳は『ヒュパティア・アレクサンドリア』の頬を打ち据え、砕く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「俺達も生贄にしようと言うのなら、
死ねない理由が、死なせられない理由が一つ増えるだけだ。
分っている筈だろう。俺達が取引きなど出来る関係じゃないと。」

ミサイルが飛来したらそれが着弾する前に
【高速詠唱】を行い混沌の回廊を発動。
「もう、それは俺に当る事はない」
敵のミサイルを迷宮に捉えたら、爆発する前に
ミサイルを部品レベルにまで巻き戻して分解する。
「なぜなら、お前達にとっての脅威は俺より迷宮そのものだからな。」
自分自身が狙われない状況を作った後
敵周辺の空間を操ってその場に止めつつ
時間を加速させる事でその身体を朽ちさせる。
「他者の死を見る前に己の死を受け入れて貰う。」



 デウスエクス『ヒュパティア・アレクサンドリア』の言葉は確かに取引めいた言葉であっただろう。
『見えぬ殺人者』の目的は一夜一殺。
 そして猟兵、ケルベロスの目的は生命を守ること。
 全てを救うことなどできはしない。
 ならば、多くを助けるために少数を切り捨てるのはある種の論理的な帰結であったことだろう。
 だが、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)たち猟兵、ケルベロスには到底受け入れがたいことであった。
「俺達も生贄にしようというのなら、死ねない理由が、死なせられない理由が一つ増えるだけだ」
 打ち込まれた拳にたたらを踏むようにしてよろめく『ヒュパティア・アレクサンドリア』の眼光が、フォルクを見据える。

「わかっている筈だろう。俺達が取引などできる関係じゃないと」
「そうだろうか。少なくとも諸君らは懸命なる生命だと思っていた。我の言葉を聞けば……いや、十二剣神の力を知るのならば、結局問題を先送りにすることしかできないものであると。諸君らの力は、それほどまでに頼りないものであると」
『ヒュパティア・アレクサンドリア』の言葉と共に掲げられた掌が呼ぶは、物質分解弾頭搭載FTLミサイルであった。
 空より飛来するミサイルは、物質を分解する爆風を解き放つ。
 それが雨のように降り注ぐのだ。
 触れればあらゆる物質を分解する弾頭。
 フォルクには、その脅威が理解できた。

 己がたとえ躱せても、爆風は湾岸の決戦都市の市街地を破壊するだろう。
 ならばこそ、その瞳はユーベルコードに輝く。
「この領域は既に我が手の中に在り。鋼を切り裂く刃も立ち塞がる果て無き空の前では届く事なく。幾星霜の時を過ぎれば禍も全て朽ち果てる」
 詠唱と共に生み出されるは、混沌の回廊(コントンノカイロウ)。
 時間、空間が不規則に変化する惑う領域が降り注ぐミサイルを飲み込んでいく。
「無駄だ。どれだけ囲うのだとしても、物質である以上、このミサイルはすべからくを分解する。防ぎようのないものだ」
「そうだろうな。だから、こうする」
「……!?」
 フォルクの瞳がユーベルコードに輝き、魔導領域の中にあったミサイルが分解されていく。
 何故、と問いかける間もなくフォルクは『ヒュパティア・アレクサンドリア』へと走る。 

 この魔導領域において時間と空間は不規則な変化を持つ。
 ならばこそ、『ヒュパティア・アレクサンドリア』には、その不規則性を理解できなかった。
 彼は規則性を見出す。
 どんなものにも因果があるからこそ、彼は理解を深めてきた。
 だが、フォルクのユーベルコードは其処に不規則性を付与する。それにより、ミサイルは部品レベルまでに巻き戻され、分解されたのだ。
「何故、ミサイルは猟兵である諸君を狙わない。確かに諸君らはダモクレスの脅威であるはずだ」
「わからないか。お前達にとっての脅威は俺よりも迷宮そのものだからだ。お前は見誤った。猟兵という存在を恐れるあまり、目の前の事象そのものがお前達ダモクレスの脅威であることを理解しなかったんだ」
 恐怖は理解を誤らせる。
 故に、フォルクたち猟兵を『ヒュパティア・アレクサンドリア』が恐れている証明でもあったのだ。

「他者の死を見る前に己の死を受け入れて貰う」
「そのつもりはない」
「いいや、どうあがいても、それは必ず訪れる。永遠不滅の存在、デウスエクス。お前達は必ず滅びる。今は滅びないというだけで、必ず滅びがやってくる」
 フォルクは魔導領域たる混沌の回廊の力をもって、『ヒュパティア・アレクサンドリア』の時間を加速させる。
 永遠不滅を謳う存在なれど、加速していく時間は駆体をもろく、朽ち果てさせるだろう。
 加速していく時間の中でフォルクは、告げるのだ。
「如何なる禍も全て朽ち果てる。永遠さえも例外ではないと知るがいい――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧崎・天音
ダモクレス…敵の論理に従うつもりはない。
私はおそれを与える存在のことをよく知っている…

一度譲歩すれば相手はどんどんと要求を大きくしてくる。
最終的に断ることが一番だってことにも気づかないで…

私は絶対そんなコトさせはしない。
許されることは絶対にない。

敵の防御が絶対防御だと言うなら
私のグラビティ…もとい、ユーベルコードでねじ切って見せる。
どんなに優れた盾でも重力のねじれに勝つことは出来ないんだから。



 猟兵とケルベロスのユーベルコードが戦場に明滅する。
 その様を見やる霧崎・天音(異世界のラストドラゴンスレイヤー・f40814)は知っている。
 敵の理屈に従うことの無意味さを。
 一夜一殺。
 この法則をダモクレスたるデウスエクス『ヒュパティア・アレクサンドリア』は求めている。
『見えぬ殺人者』としての噂を確立させ、夜毎人が死ぬという『おそれ』を継続的に得るために猟兵とケルベロスに彼は求めたのだ。
 今宵の一人の犠牲者を。
 多を救うために一つを切り捨てる。
 それは社会を形成する生命である人間にとって至上命題であったことだろう。また同時に議論し尽くせぬ問題であったかもしれない。
 だからこそ、『ヒュパティア・アレクサンドリア』は言うのだ。
 己の言葉こそが最も論理的であり、理性に沿うものであると。
「なのにそれでも諸君らは否定するか」
「当然。ダモクレス……私は『おそれ』を与える存在のことを良く知っている……」
 天音は踏み込むようして『ヒュパティア・アレクサンドリア』に迫る。

 だが、『ヒュパティア・アレクサンドリア』を覆うは絶対防衛システム。
 いくつかの技能を組み合わせた『ヒュパティア・アレクサンドリア』だけが持ち得る特殊な技能である。
 それはあらゆる攻勢を無意味にするだろう。
「一度譲歩すれば相手はどんどんと要求を大きくしてくる。一人が、二人に。二人が三人に……いずれは地球全てを要求してくる。結局、最終的に断ることが一番だってことにも気づかないで……」
「愚かしい。それは支配というものだ。我等が求めているのは搾取だ。それとは違う」
 一緒だ、と天音は思う。
 己の目の前にある絶対防衛システムにかち当たる。
 強固な防衛システムに地獄の炎をまとった右足が激突する。

 ユーベルコードが火花を散らすように明滅している。

「私は絶対そんなコトさせはしない」
「いいや。人が『おそれ』を抱く生き物であるかぎり、必ずやあの御方は現れる。そういうもなのだ。猟兵、ケルベロス! その感情は大局を見ていない。諸君らのしていること先延ばしだ」
「だったら何。生命を奪うことを許されたわけではない。絶対にない」
 蹴り込んだ地獄の炎と絶対防衛システムが激突する。
 渦巻く炎が螺旋のエネルギーと複合し、回転していく。
 螺旋の頂点は絶対防衛システムをねじ切るのと同時に天音の炎の足が吹き飛ぶ。
「地獄の刃…その新たな一撃を今…!」
 ねじきられた絶対防衛システムを穿ちながら天音は地面を蹴る。
 飛ぶようにして彼女の体が翻る。

「打ち砕け! 地獄の魔槍!」
 獄炎斬華・烈旋(ゴクエンザンカレッセン)の一撃が『ヒュパティア・アレクサンドリア』の駆体へと叩き込まれる。
「どんなに優れた盾でも重力のねじれに勝つことはできないんだから」
 受け止める『ヒュパティア・アレクサンドリア』の腕部がねじ切れていく。
 天音の一撃は至近距離で放てば放つ程の威力が増大するのだ。その勢いのままに天音の左足は『ヒュパティア・アレクサンドリア』の右腕をもぎ取るようにして吹き飛ばす。
 背後には獄炎の華が咲く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
はぁ?なーにほざいてやがるんですか。
もうてめぇの負けは決まったようなもんですよ、諦めの悪ぃ奴ですねぇ。
そんなに誰かに死んで欲しいってんなら叶えてやるですよ、てめぇの命で!

でも暴力行為禁止ってのは面倒ですね、撃っても殴っても上手く行ってる気がしねーです。
成功するまで試してやっても良いですけど、イライラしそうなので……攻撃するのはヤメです。
その代わり、このせっかくの夜空を飛んで楽しむです!
大サービスでてめぇの周りをぐるぐる飛んでやるですよ、その描く円をどんどん小さくして……どっかで衝突事故起こさねーように、精々急いで逃げやがれです!
間に合やいいですね、楽しく飛んでる時のボクは速いですから!



 獄炎の華が『ヒュパティア・アレクサンドリア』の右腕をねじ切る。
 炎に包まれながらも、ユーベルコードの輝きが未だ彼の瞳にはあった。
 世界を書き換えるユーベルコード。
 暴力行為の禁止。
 それは敵対する猟兵、ケルベロスにとっては攻めがたき力であったことだろう。そもそも『ヒュパティア・アレクサンドリア』は防衛を主にする駆体であったのかもしれない。
 絶対防衛システムと世界の法則を書き換える力。
「だというのに、それすらも乗り越えてくるか。だが、まだだ。猟兵、ケルベロスよ。諸君らは履き違えている。今この戦いに意味はない」
 先延ばしだ、と『ヒュパティア・アレクサンドリア』は言う。
 
 そう、彼を送り込んだ『おそれ』求める十二剣神の強大さは『ヒュパティア・アレクサンドリア』の比ではない。
 今此処でダモクレスたる彼を打倒しても些細な時間稼ぎにしかならないと説くのだ。
 けれど、ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)はその言葉を一笑に付す。
「はぁ? なーにほざいてやがるんですか。もうてめぇの負けは決まったようなもんですよ、諦めの悪ぃ奴ですねぇ」
「事実だ」
「なーにが事実だ、ですか。自分に都合の良い夢物語みたいなことを言っちゃって、そんなもんでボクらが止まると思ってんですか!」
 暴力行為の禁止を突きつける世界のテクスチャの中、ファルコは飛ぶ。
 ロケット噴射による加速で『ヒュパティア・アレクサンドリア』の周囲をぐるぐると飛び回る。
 音速を超えるような速度。
 空気の壁をぶち抜く度に轟音が響く。

 それは雷鳴に似た音だった。
 ファルコは今、まさにユーベルコードの輝きを宿した瞳でもって『ヒュパティア・アレクサンドリア』を睨めつける。
「そんなに誰かに死んで欲しいってんなら叶えてやるですよ、てめぇの生命で!」
 飛ぶ。
 ただ只管に飛ぶ。
 ファルコは笑っていた。
 確かに『ヒュパティア・アレクサンドリア』のユーベルコードは厄介だ。
 暴力行為の禁止というルールは戦いに際しては、あまりにも不条理。けれど、ファルコは笑う。
 攻撃してもよかった。
 失敗するかも知れない可能性が高いことは承知している。
 けれど、試す価値はあったし、当たるまで攻撃し続ければいいとさえ思っていた。
 だが、それは結局イライラするだけだ。
 なら。

「この夜空を飛んで楽しむだけです、ボクは!」
 笑う。
 楽しいと思う。
 戦いの場にありながら、ファルコは大空を飛ぶことに喜びを見出していた。そうだ。そのとおりだ。己は飛ぶために生まれてきたのだ。
 生まれた場所を間違えたのかもしれない。
 けれど、ファルコは思うのだ。
 あの場所で生まれたからこそ、今の己がある。今の己を形成するものたちがいたからこそ、ファルコはファルコになれたのだ。
 ならばこそ、ファルコは音速のままに『ヒュパティア・アレクサンドリア』の周囲を飛び続ける。

 これは、攻撃行為ではない。
 ただ、飛んでいるだけ。
「無意味な……」
「そんなのてめぇに決められるこっちゃねーんですよ! 飛ぶのは、ボクばボクだからですよ! ただそれだけです!」
 逃げ場などない、というようにファルコは『ヒュパティア・アレクサンドリア』を囲むようにして飛び続ける。
 その円が徐々に狭まり、彼女の生み出したソニックブームが『ヒュパティア・アレクサンドリア』を打ち据えるのだ。
「衝突事故起こさねーように、せいぜい急いで逃げやがられです! 間に合やいいですね!」
 だが、それは無理な話だ。
 最早逃げ場などない。
 なぜなら、今のファルコは笑っている。楽しく飛んでいる。
 ならば、彼女に追いつけるものはいない。逃げられぬ音速波が『ヒュパティア・アレクサンドリア』の躯体を打ち据え、空へと打ち上げた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
死ぬのは、壊れるのは、貴様だ!!
デウスエクス!!!

『禍集・無量呪躯』三眼六臂の破壊権現と化し、
メクサラブースター発生飛翔【早業推力移動】
敵ダモクレスとの距離を詰め【怪力】で殴り掛かる。
シンプルに暴力で以て脅威と認識させミサイルを集中させてやる。

……壊れろ、壊れろ!!壊れろ壊れろ壊れろぉおおおおお!!!!

破壊の【呪詛】と己が【闘争心】の劫火霊障を放ち【オーラ防御】
劫火の【念動力】でミサイルを破壊し、爆炎をねじ伏せ、
物質分解の力を己が破壊の呪詛に取り込み【エネルギー充填】
【継戦能力】戦闘継続。六腕の拳を振るいたて、破壊の呪詛と、
劫火の【焼却】でダモクレスを壊し、分解し、蒸発させる!!!



 空にうちあげられた『ヒュパティア・アレクサンドリア』の駆体が宙に浮かぶ。
 夜空にありて彼の瞳は明滅する。
 右腕はもがれ、全身を打ち据えた音速波に駆体は軋む。
 だが、彼は未だ存在している。
 そもそもがデウスエクスは永遠不滅の存在。
 今なお猟兵であっても滅ぼせぬ存在。撃退することはできれど、根本的な意味で滅ぼすことはできないのだ。
 だからこそ、これが先延ばしだと『ヒュパティア・アレクサンドリア』は言う。
「今を、現場を維持したいと思うのならば、一人を差し出せばよいものを。先延ばしだと何故わからない」
「黙れ」
 その言葉に否を突きつけるものがいた。

 確かに異星よりの侵略者デウスエクスを滅ぼす手段はなく。
 その言葉通りに先延ばしでしかないのだとしても。
 それでも。
「死ぬのは、壊れるのは、貴様だ!! デウスエクス!!!」
 咆哮が轟く。
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の駆る『ディスポーザブル02』の周囲に数え切れないほどの『ディスポーザブル02』が集まり、圧縮されるようにして合体していく。
 繭のような鋼鉄の塊。
 内部には赤熱する光があった。
 それはユーベルコードの輝き。

 禍集・無量呪躯(デッドギヤ・ディスポーザブル)。
 亀裂走る鋼鉄の繭を弾き飛ばしながら現れるは三眼六臂の破壊の化身である。
 小枝子は、三眼持ちながら六腕を握りしめる。
 飛翔する。
 一気に『ヒュパティア・アレクサンドリア』へと肉薄するのだ。
「いいや、破滅は諸君らの頭上にこそ降り注ぐ」
 降り注ぐはミサイル。
 物質分解の弾頭を備えたミサイルが迫る小枝子へと叩き込まれる。
 だが、小枝子はミサイルを殴りつける。
 弾頭に振れた瞬間に爆風が巻き起こり、小枝子の腕を分解していく。
「……壊れろ」
 叩き込む。
 構わずに拳を叩き込み続ける。
 それしかできないと己は知っているのだ。

 壊すこと。
 ただそれだけである。
 如何に物質を分解する攻撃であろうと、分解するだけ、だ。
 ならば、その分解する性質そのものを壊す。
「壊れろ!!」
 破壊への呪詛と己が闘争心が燃える。
 これは分解できない。
 物質ではないからだ。体躯が壊されようとも破壊の化身を壊すことなどできようはずもない。再構成された拳でミサイルを叩き落とす。
「壊れろ壊れろ壊れろぉおおおおお!!!!!」
 凄まじい咆哮が大気を揺らす。
 その咆哮に『ヒュパティア・アレクサンドリア』は慄くようにして身を震わせる。

「なんだ、君は」
 物質分解の爆風すらも破壊の呪詛は飲み込んでいく。
 吹き荒れる度に体躯は分解されていくはず。なのに、小枝子は、そのエネルギーすらも飲み込み、その腕部に溜め込んでいく。
 肥大化した筋繊維から紡ぎ出されるは、損壊灼熱弾。
 六腕が振るわれる。
 目の前にある損壊灼熱弾を打ち出すようにして振るわれた一撃は『ヒュパティア・アレクサンドリア』の駆体へと走り、その溜め込まれたエネルギーを解き放つ。
 あらゆるものを分解し、蒸発させるほどの熱量が立ち上り、小枝子は気炎を上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

『しりあす』(涙文字

って!
ステラさん、放置はひどくないですか!?
ツッコむとか、足持って引きずるとかしてくださいよー!

ラムネ、足りてないんですから!

……さいきんわたしの扱い雑になってないですか?
『エイル』さんばっかり構ってる……のはいつも通りでした。はい。

こうなったらラムネがなくなる前に倒すしかないです。

『おそれ』が必要な相手に『勇者』は天敵なはずです。
なぜなら『おそれに立ち向かう勇気ある者』それが勇者だからです!

しかもわたしは奏勇者!
音楽でみんなの魂を鼓舞する勇者ですからね!
あなたにとってはクリティカルヒットですよ!

ステラさんとのコンボで、おもいっきり吹っ飛ばしてあげちゃいます!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
一夜一殺……その積み重ねが大罪となる
そして『おそれ』はタチの悪い風邪のようなもの
伝染するのならばそのやり方は最適だったのでしょう
ですが当たるも八卦当たらぬも八卦
噂はその程度がベストですね

というわけで全力で倒しますよルクス……様?
あれ?どこいきました?私の視界に居ない……ま、いっか
って足元で何してますか光の勇者!?
え?あ、はい、エイル様の香りがします??(条件反射

何かいつになくやる気ですね?
これは……乗っかっておきましょう
ええ、ルクス様はYDK
【アウクシリウム・グロウバス】で援護します
足さえ止めてしまえばルクス様の|奏魔法《破壊音波》を防ぐ手立てなど無し!
滅びを受け入れるがいい!



『しりあす』
 それは涙で濡れた地面に刻まれた慟哭であった。
 いや、断末魔であったのかもしれない。
 しかし、涙は乾くのだ。
 如何に大地を濡らす涙があれど、それはいつしか乾いて風化していく。
 いつかの誰かの涙も、風化していくことを止められないのだ。
 そういうものだと割り切ることができたのならば、どんなによかっただろうか。涙を涙として思うからこそ、人の善性がきらめく。
「一夜一殺……その積み重ねが大罪となる。そして『おそれ』はタチの悪い風邪のようなもの。伝染するのならば、そのやり方は最適だったのでしょう」
 だが、とステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は涙で濡れた大地を踏みしめる。

「ですが当たるも八卦当たらぬも八卦。噂はその程度がベストですね」
 風が吹いている。
 雷はは遠く。
 されど、天地を満たすは咒い。
「というわけで全力であれを倒しますよ、ルクス……様?」
 あれ!? とステラは周囲を見回す。
 己が相棒光の勇者の姿が見当たらないのである。お客様の中に光の勇者サーチを行える方はいらっしゃいませんかー?
「ステラさん、放置は人毒ないですか!? ツッコむとか、足持って引きずるとかしてくださいよー!」
 それでいいのか、という要望であるが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思わず涙で濡れた大地から立ち上がっていた。
 あ、下にいたのか、とステラは無言で頷いた。

 ま、いっか、とか思っていたのは秘密である。
「足元で何をしてらしたのです、光の勇者様?」
「ラムネが足りてないんです! さいきんわたしの扱い雑になってないですか?」
 自覚はあったんだな、と思わないでもない。
 というか、毎回言っているような気がする。意見が受け入れられていないところは、改善の余地はないのだろうか?
 いやまあ、それはご両人の問題であるので、そこはね?
「『エイル』さんばっかりかまってる……」
「え? あ、はい、『エイル』様の香りがします?」
 条件反射である。
 パブロフの犬的なあれ。
 ステラはメイドです、と返すかも知れないが、喜んで犬ですとも言うかも知れない。怖い。けれど、ルクスは頭を振る。

 いつも通りである。
 これで先程まで流れていたシリアスな空気はどこかに吹き飛んだ。ヨシ。
 ラムネの残量を確認する。
 やばい、もう在庫がまずいことになっている。
「こうなったらラムネが無くなる前に倒すしかないです」
 幸いにして他の猟兵たちもいる。
 できないことはない。やってやれないことはないのだ。
「愚かしい。どこまでも。諸君らのやっていることは先延ばしだ。無意味な延命に他ならない。あの御方が顕現なされれば、全てが無意味になるというのに」
「だったらなんだっていうんですか。『おそれ』がなければ顕現すらできない相手に『勇者』は負ける道理なんて持ち得ていないのですよ。『おそれ』を拭うのは勇気。なら、『おそれに立ち向かう勇気ある者』、それが勇者なら!」
 バグパイプをルクスは構える。

 シリアスなんて知ったことではない。
 え、とステラは思った。なんかルクスがいつになくやる気である。いや、やる気はいつだってあるのだ。ただシリアスと相性が悪いってだけなのである。
「音楽でみんなの魂を鼓舞する勇者。あなたにとっては、クリティカルヒットですよ!」
 暴力行為の禁止たるルールが世界に付与される。
 だが、ルクスはこれを暴力だと思っていない。
 如何に暴力的な超破壊音波が迸るのだとしても、ルクスは演奏しているのだ。
 吹き荒れる音波が『ヒュパティア・アレクサンドリア』の駆体を打ち据える。
 凄まじまでの衝撃に、その駆体覆う装甲が拉げていくのだ。

「ええ、ルクス様はYDK、即ち! Yやれば! Dできる! K子!」
 そうなの?
 そうなのである。
 ステラは破壊音波に乗って召喚した巨大アンプでもってルクスの演奏を増幅させるのだ。
「ルクス様の|奏魔法《破壊音波》を防ぐ手立て等無し!」
 今、破壊音波ってルビで言った?
 言ったよね?
 ステラは否定すら許さない。問答すら許さない。
 そう、ステラにとって、ルクスの魔法は破壊音波。魔法って言っているけれど、もはや魔法の域を出ているアレである。
 説明しろって言われても、説明できないアレなのである。
「ぶっ飛んじゃえばいいんですよ!」
 増幅された破壊音波は一気に『ヒュパティア・アレクサンドリア』の駆体を吹き飛ばし、その身を砕かれるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

皇・絶華
おお…エイルか
フルーⅦぶりじゃないか
気付いたら美女になるとは機神の嗜みか?
「いやどうみたって別人ですよ主様!?」
成程…おそれに囚われているなら我がチョコでパワーを得るがいい(ぜっちゃんチョコを馳走(!?

決戦配備
キャスター
敵の絶対防御の妨害減弱無効化
…ダモクレスか
「あんな鉄くず俺ら神機と比べれば大したことないですよ主様!時空操作とか生意気だなてめー!?」

うむ…そこまで死を求めるという暴走を果たしてしまったお前…お前には足りないものがある!(びしっ
「ぴぃ!?」
そう…お前がそのような狂気に染まったのはパワーが足りないからだ!(狂気的解釈
故に…お前にも圧倒的なパワーを授けよう!
【戦闘知識・念動力】
敵の絶対防御能力を解析

【二回攻撃・切断・爆破・弾幕】
UC発動
超絶速度で飛び回り
「おいおい…時空を操れるのがてめーだけと思うなよ!」
時空転移による念動光弾を叩き込み
次元切断で切り
真・ぜっちゃんチョコを敵の咥内に転移!
「…味覚に対する防御とかはどうよ?」
圧倒的なパワーによる此の世の地獄と爆発が発生する…!



 湾岸の決戦都市の責任者『エイル』博士。
 それは亜麻色の髪を持つ女性であった。
 その名を知る者にとって、久しい名だったことだろう。少なくとも皇・絶華(影月・f40792)にとってはそうだったのだ。
「おお……『エイル』か。『フルーⅦ』ぶりじゃないか」
 その言葉に通信先の『エイル』博士は怪訝な表情を浮かべた。
『何? なんて?』
 その言葉を木にもとめずに絶華は続ける。
「気づいたら美女になるとは機神の嗜みか?」
『美女と言われるのは悪い気はしないが、機神? 一体何を言っているんだい、君は』
「いやどう見たって別人ですよ、主様!?」
 絶華の言葉に連環神機『サートゥルヌス』は突っ込む。

 彼が言っているのは他世界で同じ名を持つ者のことを指すのだろう。
 その言葉に絶華は頷く。
「成程……『おそれ』に囚われているのなら我がチョコでパワーをえるがいい」
 ますますなんで? と『エイル』博士の困惑は深まっていくばかりである。
『通信を入れてきた、ということは決戦配備の要請だろう? チョコは、なんていうか、わからんが、それで』
「ふむ、『キャスター』を所望する。術式の支援があるのだろう? 敵はどうやら世界のルールそのものを書き換えるユーベルコードを持っている様子。加えて、あの絶対防衛システムは厄介だ」
「あんな鉄くず俺等神機と比べれば大した事ないですよ主様! 時空操作とかなまいきなんですよ!」
『サートゥルヌス』の言葉に絶華は頷く。
 
 対するはデウスエクス『ヒュパティア・アレクサンドリア』。
 その力は絶対防衛システムであるが、しかし猟兵とケルベロスのユーベルコードによって、打ち破られている。
 とは言え、未だ力は健在でる。
 体躯を覆う装甲が拉げ、右腕を喪って尚、その力は隆盛を極めるようであった。
「随分な物言いだな」
「他者の死をもって『おそれ』となす。それは暴走というのではないか」
「いいや。これは必要なことだ。あの御方にとって『おそれ』こそが顕現に必要な力。『おそれ』なき生命など存在しない。『おそれ』とは知性の影。故に、知性ある存在は、等しくあの御方の飯なのだ。それを」
 広がる絶対防衛システム。
 未だ健在たる力を前に『サートゥルヌス』は激突する。
 なるほど、とも思う。

 時空操作、未来予測、運命固定。
 それらをたぐり、あらゆる防護でもって守りを固めるユーベルコード。
 骨が折れそうだ、お思ったのだ。
「お前には足りないものがある!」
「ぴぃ」
 いやな予感がした。
 主の言う所のそれは、つまり。
「そう……お前がそのような狂気に染まったのはパワーが足りないからだ!」
 絶華の言葉に誰もが沈黙した。
 なんでそうなるのだと思ったのかも知れない。
 飛来した人型戦術兵器、決戦配備『セラフィム』が術式支援の魔法陣を放出する。
 その魔法陣を『サートゥルヌス』がくぐるようにして飛翔する。

 アイセンサーがユーベルコードに輝いている。
「故に……お前にも圧倒的なパワーを授けよう!」
「えっ!? 俺!?」
「そうだ。さっちゃん! お前の力を見せる時が来たぞ! 亜空間戦術級制圧機構『巨神の王』(キョジンゾクノオウ)!」
「承知! 時空を統べる俺こそが最強ってことを見せてやるぁ!」
 時空転移による通常の飛翔にはない軌道を描きながら『サートゥルヌス』は『ヒュパティア・アレクサンドリア』へと迫る。
 絶対防衛システムに隙はない。
 だが、『サートゥルヌス』は笑う。
「おいおい……時空を操れるのがてめーだけだと思うなよ!」
 念動光球が絶対防衛システムに打ち込まれ、一点に集約されていく。歪むシステムに亜空切断の一撃が叩き込まれ、差し込んだ両腕が絶対防衛システムをこじ開けるのだ。

「主様!」
「これが。狂気のパワー。真・ぜっちゃんチョコだ」
「なにを」
 その口へと絶華はチョコレートを叩き込む。
 それは凄まじいまでの……この世の地獄と形容すべき味だった。
 食べ物が出して良い味ではない。
 筆舌に尽くし難い味が広がり、『ヒュパティア・アレクサンドリア』が悶絶するようにして、その拉げた装甲の内側から爆発を起こす。
 その様を『サートゥルヌス』は見やり、自分の口に叩き込まれなくてよかったと安堵するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
●SPD

これが『見えぬ殺人者』…いや、|装置《ダモクレス》の類であったか
まさに幽霊の正体見たり枯れ尾花
『見えぬ殺人者』の正体はどんなものか想像に尽きなかったが、いざ正体を知ってしまえば『おそれ』る事などないものだ

取引を持ちかけられたが、私の答えは斬霊刀の抜刀で言葉無く応えよう
ただ一人死ねば他は見逃すとだが、今宵の|生贄《スケープゴート》となるのは貴様なのだからな

鬱陶しい小細工は戦術支援キャスターで抗ってみよう
貴様が示し出す運命観測の結果と我々が切り拓く未来の姿
まさに最強の矛と盾の故事な禅問答であろうが、その答えは『絶空斬』による剣の一振りが示し出すであろう



「これが『見えぬ殺人者』……いや、|装置《ダモクレス》の類いであったか」
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は、湾岸の決戦都市にて蔓延る噂『見えぬ殺人者』の正体を知る。
 それはダモクレス。
 デウスエクスの一種であり、『ヒュパティア・アレクサンドリア』であったのだ。
 彼は言う。
 一夜一殺。
 これにより今宵は己たちを見逃す、と。

 だが、ジークリットは笑い飛ばす。
「まさに幽霊の正体見たり枯れ尾花、というやつだな。『見えぬ殺人者』の正体はどんなものか想像は尽きなかったが、いざ正体を知ってしまえば『おそれ』ることなどないものだ」
 軋む駆体を押して立ち上がる『ヒュパティア・アレクサンドリア』の姿がった。
 明滅するユーベルコードの光の最中に彼はいた。
 猟兵とケルベロス、その双方からの攻勢に永遠不滅なれど『ヒュパティア・アレクサンドリア』は撃退されようとしていたのだ。
「『おそれ』ない、と?」
「そうだ。未知なるものだからこそ、我らは恐怖する。理解できないもの、克服できないもの、そういうものを恐怖するのは生命として当然だ。だがな、我らは、それを知ることで踏み越えてくる。そうやって連綿と紡がれてきた生命の歴史の最先端こそが我らなのだ」
 手にした残霊刀の刀身がきらめく。

「一人の生命を差し出せば、今宵は見逃すと言ったな。だが、私の答えはただ一つだ」
 ジークリットの構える残霊刀は美しい刀身の切っ先を『ヒュパティア・アレクサンドリア』へと向けられる。
「今宵の|生贄《スケープゴート》となるのは貴様だ」
「できるものか。永遠不滅なる存在を、そのように」
「いいや、できるとも。その鬱陶しい小細工……絶対防衛システムと言ったか。それは……決戦配備要請! キャスター!」
 ジークリットの通信に応えるようにして人型の戦術兵器『セラフィム』が飛翔する。
 身に携えた魔法陣が展開し、『ヒュパティア・アレクサンドリア』の絶対防衛システムを中心に取り囲むのだ。

 言うまでもないが、『セラフィム』の出力では『ヒュパティア・アレクサンドリア』の絶対防衛システムを突破できない。
 無意味に思えたことだろう。
 だが、違う。
「貴様が見るのは未来予測……あくまで確定していない未来。ならば!」
『セラフィム』が放出する魔術的な力は、運命固定の力を削ぎ落とす。
 絶対防衛システムそのものを無効化でくても、その力を構成している要因の一つは削ぎ落とすことができる。
 運命を固定する力を断ち切る『セラフィム』の支援を受けてジークリットは絶対防衛システムへと切り込む。
「貴様が示す出す運命観測の結果と」
 振りかぶるは残霊刀。
 その刀身が霊力を帯びていく。

「我々が切り拓く未来の姿」
 ユーベルコードに輝くジークリットの瞳が『ヒュパティア・アレクサンドリア』を捉える。
「まさに最強の矛と盾の故事なる禅問答であるが、その答えは!」
 振りかぶった一撃が絶対防衛システムを切り裂く。
 そう、斬撃を防ぐ力その全てを無効化する恐るべきユーベルコード。
 無効化して削ぎ落とされる力などではない。
 むしろ、勢いを増した斬撃は『ヒュパティア・アレクサンドリア』の躯体を切り裂く。

「この絶空斬が示す――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍之宮・翡翠
そもそも対話での相互理解が望める相手では無いから、接敵前に|決戦配備《ポジション》を要請しておく

「――|攻撃配備《アタッカー》。俺の攻撃に併せて攻撃を」

(デウスエクスの弁を受けて)
巫山戯るな
この星に生きるもの達は貴様達の自己満足の為に居るわけじゃない

しかも、貴様達の都合だけで語られるそれがとおると思っている傲慢さ
デウスエクスと俺達の理が同じでなく、相容れる事はあり得ないと理解していても、気に入らない

阻止したいのはお前達の企てる一夜一殺だけじゃない
貴様達デウスエクスがこの星を食らうこと、そのものだ

「俺達が此処に居るという事は、お前達の企ては尽く成就し得ない」

問答無用でUCでセラフィムと共に攻撃を



 絶空斬の一撃がデウスエクス『ヒュパティア・アレクサンドリア』の絶対防衛システムを切り裂き、その駆体を袈裟懸けに切り裂く。
 よろめく体。
 しかし、まだ立っている。
「愚かしい。何故理解しない。あの御方を前にしては、全てが先送りでしかない。決まった破滅を持つ生命であるのならば、我らデウスエクスでないのならば、それは」
 無意味、と『ヒュパティア・アレクサンドリア』は言う。
 確かにデウスエクスは永遠不滅の存在。
 未だ滅ぼすことのできぬ敵。
 それ故に地球は常に防戦一方である。

『ヒュパティア・アレクサンドリア』の言う通りなのかもしれない。
 現状を先送りしているだけの戦いであるのかもしれない。
 だが、龍之宮・翡翠(未だ門に至らぬ龍・f40964)の青い瞳は確かに敵を見据えていた。
 無意味と言われても。
 諦観だけが待ち受けるのだとしても。
 それでも彼は踏み込む。
「――|攻撃配備《アタッカー》」
 つぶやくようにして通信が『エイル』博士へと届く。
 そう、今までもそうだったのだ。諦観に塗れそうになる意志を奮い立たせて今まで戦ってきたのだ。
 そもそもデウスエクスが対話での相互理解など望めるべくもない存在なのだ。
 故に、翡翠は踏み込む。

 無意味だと言った。
 先送りなのだと言った。
 その言葉を翡翠は受け止め、歯をきしませるようにして食いしばる。
「巫山戯るな」
 終わりが定まる生命。
 されど、その生命の道程を見ぬ者が、愚かと生命を謗る。それが許せなかった。
「この星に生きる者たちは貴様たちの自己満足のためにいるわけじゃない」
 目の前の敵には傲慢さしか感じない。
 己達の都合。己達の永遠不滅。
 それを理として語る悪辣さ。
 相容れることはないと理解するからこそ、遠ざけることさえも己が心を慰めることにはならないのだ。

 気に入らない。

 ただ一言で示すのならば、今の翡翠の中にあるのは、そrだけだった。
「今宵、一人の生命が差し出されれば、明日という安穏は得られるのに」
「知ったことか」
 翡翠は裂帛の気合と共に残霊刀を振りかぶる。
 迫るは絶対防衛システム。
 弾き飛ばされるようにして翡翠の体が傾ぐ。
 けれど、それを支えるようにして『セラフィム』たちが突貫していく。いや、それは自爆とも言うべき吶喊だった。
 爆発が巻き起こる。
「俺が阻止するのは、一夜一殺だけじゃあない。貴様たちデウスエクスがこの星を喰らうこと、そのものだ」
 踏み込む。

 輝くユーベルコードの刀身。
 残霊刀覆う力は、己が攻撃を防がんとするものすべてを無効化する。
「俺達が此処に居るということは、お前達の企ては尽く成就し得ない。それを!」
 示すのだと逆袈裟懸けに振るわれた残霊刀の一閃が『ヒュパティア・アレクサンドリア』の駆体に言えぬ十字の傷跡を刻み込む。
 その核とも言うべき動力炉は、その膨れ上がった一撃によって砕け散る。
「知るが良い。お前達が思う以上に、定められた生命を持つ者は弱くはない。永遠不滅が見せる灰色の景色など、刹那の虹の輝きを放つ定命には及ばないんだ!」
 ふるった一撃と共に翡翠は『ヒュパティア・アレクサンドリア』の爆発を背に、残霊刀を納めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『十二剣神『原罪蛇メデューサ』』

POW   :    蛇蛇獄魔獄狡兎殺
【全身から染み出す「超次元の蛇」】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
SPD   :    朧朧蛇蝎奇霊夜行
自身が対象にとって未知の存在である限り、通常の行動に追加して「【広域感染型の金縛り】」「【鎮火できず永遠に追尾する鬼火】」の心霊現象を与える。
WIZ   :    歓歓禍禍大虞呪咒
【底知れぬ恐怖をもたらす笑い声】を放ちダメージを与える。命中すると【「おそれ」】を獲得し、自身が触れた対象の治癒or洗脳に使用できる。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『それ』は六等星の如き僅かな煌めきだった。
 か細い光。 
 星の光と呼ぶにはあまりにも小さな輝き。
 しかし、猟兵とケルベロスたちは知るだろう。闇夜にきらめく、その小さな星が放つ圧倒的な重圧を。
 そう、六等星はあまりにも小さき星の輝き。
 されど、その星は幾千、幾万の光の先に在りて尚、地球を見つめるかのような光なのだ。
「震震震 声が震えている しもべたちの断末魔は 私にしかと届いた」
 それは、他を圧倒する存在。
 謂わば、咒いの集大成。
「巽巽巽 それは風に乗って私に届いた 故に喰らおう 今が収穫の時と私は知った」
 六等星の輝きは、針の糸を通すような僅かな隙間を生み出し、そして、その僅かな穴を広げるように、いや、引き裂くようにして『それ』は現れた。

 十二剣神『原罪蛇メデューサ』である。
「坎坎坎 『おそれ』てよいのだ愛し子たちよ 私は汝らの収穫者 これは必定 定められた事柄 故に私の飯として歓びのままに」
 咒いが振りまかれる。
 六等星は人の視点より定めた等級に過ぎぬ。。
 その輝きは、あまりにも巨大。
 矮小たるは観測者たる人。
 故にそれは許し難き罪状。しかし、『原罪蛇メデューサ』は笑む。
「哭哭哭 赦そう その咎を赦そう 私を殺し得る者はなく 故に私は寛大である」
 全て|赦そう《喰らおう》。
 そう、『原罪蛇メデューサ』は笑み、『おそれ』を減ぜられてもなお、その圧倒的なる猛威を示すように重圧を解き放ち、湾岸の決戦都市に不可避なる滅びの定めを知らしめるのだった――。
アンジェリカ・ディマンシュ
別の事件では不覚を取りましたが……故に貴方はわたくしに取って『未知の存在』足り得ない
通常行動にも気を付けながらUCでダモクレスの機械化能力を用いて心霊現象にも対処し、オラトリオの時間操作能力で未来属性ディアブロホワイトと過去属性アンヘルブラックを用いて『わたくしに攻撃が命中する時間軸』を破却
そのまま破却された時間軸からデータを解析
原罪蛇に最適な機械化兵装を作り出して叩きつけていきますわ

人は失敗とおそれを乗り越え、成長する生命体
貴方はそれ故にかの存在に無敵足りうると同時、自身を討ち果たすに足る存在になるのです
自身の『|剣《ブレイド》』を展開し、トドメを刺していく――



 未知と既知。
 その間に隔てるは、大きな溝であったことだろう。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』――その『おそれ』を持って現れた重圧放つ存在。デウスエクスの頂点に立つと言っても過言ではない存在のプレッシャーは猟兵やケルベロスにとっては、凄まじいものであった。
「巽巽巽 私は喰らう者 愛し子たちよ 私は愛している」
 何を、と問うまでもない。
 地球に住まう生命全てが彼女の飯である。
 それ以上でも以下でもない。

 愛したのは喰らうため。
 知性を与えたのは、『おそれ』を知るため。
 自分たちがどうしようもない被食者であることを知る知性こそが、『原罪蛇メデューサ』の喰らうに値する存在であると証明しているのだ。
「一度は不覚を取りましたが……故に貴方はわたくしにとって『未知の存在』足り得ない」
 アンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)は戦場に降り立つ。
 目の前の存在。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』は、彼女が敵にとって未知なる存在であるのならば、その未知なる恐怖によって縛る事のできる力を有している。
 それはあまりにも理不尽たる力であったことだろう。

 だが、アンジェリカは既に知っている。
 戦い、そして知ったのならば人はそれを乗り越えることができる。
 歴史に紡がれてきた戦いが今まさにアンジェリカの背中を押す。
「震震震 震えているぞ 私を前にして震えるのは正しき行いである それは何ら恥じることではない 決定された未来を見ているだけにすぎないのだから」
 その言葉にアンジェリカの瞳がユーベルコードに輝く。
「歯車は翼を広げ、時空の調律者にして存在しない魂を駆動させる進化の剣となる。つまりは、我は神の戦車として進撃する番犬である」
 技能を組み合わせた新たなる技能『クロックワーク・メルカバー』によってアンジェリカは己が体躯を機械化する。
 時間操作でもって、己が未来を覆すのだ。

 己に『原罪蛇メデューサ』の攻撃が命中するという時間軸を未来と過去をたぐる力によって切除する。
 即ち『今』という到達点の焼却である。
 命中した、という事実がないのならば、アンジェリカは己が身を縛る金縛りにも、身を苛む心霊現象にも悩まされることはない。
「禍禍禍 浅はか 『今』とは連続した時間 軸を如何にずらそうとも、『今』はすぐさまに お前に追いつく それは影ではなく ましては光でもない 過去を踏みつけ 未来に進むのが時間だというのならば お前はお前の足元を消し飛ばしただけだ」
 笑う声が聞こえる。

 たしかにそうなのだろう。
 だが、『今』という足場をなくしてでもアンジェリカが願ったのは、『原罪蛇メデューサ』に対抗するための機械化兵装を作り上げる時間である。
 確かにアンジェリカは失敗した。
 それは拭いようのない事実である。
『今』という足場を為しくて尚、求めたことが間違いであったとしても、それが連続した瞬間の積み重ねであるというのならば、失敗こそが糧となるのだ。
 成功から得られることはあまりにも少ない。
 けれど、恐れる失敗の渦中にこそえがたきものがあるとしるのならば、それは成長というかけがえのないものである。
「貴方はそれ故にカの存在に無敵足り得ると同時に、自信を討ち果たすに足る存在に鳴るのです」
『おそれ』とは即ち、未知と既知との間に横たわる暗き闇。
 その闇に飛び込む覚悟があるのならば、人はそこに光明を見るだろう。
 アンジェリカは生み出された機械カ兵装たる剣を振りかぶり、その一撃を『原罪蛇メデューサ』へと叩きつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
決戦配備:スナイパー
引き続き『不動なる者』にて

『おそれ』を糧に…というたところで引っかかっておったのだが。
あり方がたちの悪い『幽霊』なのよな…。たちの良い『幽霊』?うちにおる。

だが、おぬしの飯になるわけもなく。
故に…このUCの攻撃対象は『原罪蛇メデューサ』よ!
心霊と呪詛…まあ同じような感じであるが。まあ、わしは金縛りにあってもよいのだよ。
本命は…スナイパーによる遠距離攻撃+四天霊障による押しつぶしであるからな!

四天霊障は鬼火ごと潰す勢いであるな…鎮火できずとも、広がるのは阻止しておろう。
わし?燃えても悪霊であるから、あまり痛手ではないが?



『おそれ』とは知的生命体にとって拭えぬものである。
 未知なるものへの恐れ。
 危険とは即ち未知より現れるものであるからこそ、それを遠ざけようとするのだ。しかし、未知なるものを知らぬままに遠くに置くのならば、人の歴史というのは其処で終わりを告げるものであっただろう。
 未知を未知のままにしない。
 既知へと至らしむるには、横たわる深き海溝の如き闇をまたがねばならない。
 または飛び越えなければならない。

 本来であれば越えることのできぬ溝を越えたからこそ、人は人足らしめられているのだ。
 未知と既知との間に横たわるのが『おそれ』であるというのならば、その溝を乗る越えるために必要なものを人は勇気と呼ぶのだ。
「在り方が悪い『幽霊』なのよな……」
 目の前に迫るは十二剣神『原罪蛇メデューサ』。
 その重圧は悪霊たる馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)を震わせるほどであった。
 圧倒的な存在感。
 あらゆる生命を食らわんとする意志が己たちにすら波及していることに『不動なる者』は驚愕する。
 たちの良い『幽霊』であるのならば、己が屋敷にいる。
 とは言え、ただ大人しく喰らわれるだけなど、己に許されるわけもなし。
「震震震 意味のない言葉だ その言葉で如何に私を既定するのだとしても 私は私のままに此処にある 愛し子の残穢よ 私は喰らうために此処に在るのだ」
「ただでお主の飯になるわけがなかろうよ!」
 身を縛る金縛り。
 鬼火が己が体躯を灼く。

 言い難い程の痛み。
 悪霊と成り果てて尚、身を灼く力に『不動なる者』は身どころか魂の芯にまで傷が入り込むような錯覚を覚えただろう。
 否、それは錯覚などではない。
『原罪蛇メデューサ』は確かに『不動なる者』を喰らおうとしているのだ。
 鬼火に寄る灼熱の如き痛みは、まさしく己を料理しようとしているのと同じなのだろう。
「四悪霊・『塊』(シアクリョウ・カタマリ)……我が身を喰らうか」
 瞬間、『原罪蛇メデューサ』の顎の内側が爆ぜる。
 それは彼女が食らった『不動なる者』の一部。呪詛の塊であった。
 己が標的と見定めた敵にのみ有効なる一打。
 それにより、『原罪蛇メデューサ』の力を『不動なる者』は知る。
 
 これは呪詛でもなんでもない。
 咒いである。
 生きとし生けるものに仕掛けられた咒い。
 生きている以上死なねばならぬという咒いである。
 あらゆる生命を咒う力。
 それこそが『原罪蛇メデューサ』のちからの源である。
「巽巽巽 無駄である 私は呪詛ですら愛おしいと思うのだ これもまた生命 愛し子らの放つものであるから」
「だったらなんだというのだ。如何に魂まで灼く力を発露するのだとしても、それでも人の生命はもとより燃えておる。わしは『不動なる者』。我が魂を、我が呪詛を灼き、喰らうのだとしても!」
 生きる者の執念は咒いをも凌駕する。

「決戦配備、スナイパー……今であるよ!」
『任せ給え!『セラフィム』!」
『不動なる者』の言葉と共に人型戦術兵器『セラフィム』より放たれる光条の一射。
 それを受けて『不動なる者』が掲げた霊障が光条の一撃を受け止め、帆のように力を集約させながら『原罪蛇メデューサ』の体躯を打ち据える。
 よろめくようにして巨体が揺れる。
 これだけの一撃を放って尚、よろめくだけ。
 あまりにも強大。
 されど、『不動なる者』は笑む。
 己たちは一人ではない。『原罪蛇メデューサ』を抑え込むようにして放たれた霊障が、その体躯をそのばに押し止める。
 誰も犠牲にはさせない。
 そのためにこそ、己が名を示すのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
・ディフェンダー
エイル殿、都市の防御を固めておいてください。
……進め…!

【結界術】己が【闘争心】を以て霊障怨念結界を張り、
【念動力】で結界内の超次元干渉を制限し、
【早業】人工魔眼の【第六感】で蛇たちを感知、02達を束ね成した禍集壊腕の六腕を振るい、纒て超次元の蛇どもを【怪力】で掴み上げる。

赦しもおそれもない。貴様は、

『削ぎ颪』発動。掴み上げた蛇共を破壊の念動竜巻と劫火の霊障で殺し、メデューサへと投げ飛ばす【弾幕】攻撃。
メデューサへメガスラスター【推力移動】

唯の、大敵だ!!!

灼熱光剣で【焼却切断】蛇を焼き払い掴んで【追撃】
削ぎ颪で本体を、投げ飛ばす!!

るうううらぁあああああアアアア!!!!!!!



「『エイル』殿」
 それは短くつぶやかれた通信だった。
 亜麻色の髪の女性、『エイル』博士は通信に応える。
 決戦配備の要請であろうと理解したからだ。
 アタッカーか、スナイパーか、それともキャスターか。
 いくらでも応える準備はあった。
 だが、通信の主、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が彼女に告げた決戦配備は何れでもなかった。
「都市の防御を固めておいてください」
『君はどうする。君を守るために『ディフェンダー』を……ではないのか?』
 猟兵やケルベロスを守るための方策。
 それが決戦配備のディフェンダーである。『セラフィム』が盾になれば、及ばずとも一撃くらいは十二剣神『原罪蛇メデューサ』の攻撃を防げたかもしれない。
 けれど、小枝子はそれを是としなかった。

 彼女が望むのは都市部の防御。
 戦いの被害が及ばぬようにと願うその言葉に『エイル』博士はもう何も聞かなかった。
 小枝子がそうしてくれというのだから、そうする他ない。
 信じて託すほかないのだと知っているのだ。
『頼んだよ』
「……進め……!」
 小枝子は『ディスポーザブル02』と共に『原罪蛇メデューサ』へと進む。
 迫るは超次元の蛇。
『原罪蛇メデューサ』より這い出す無数の超次元の蛇たちが一斉に小枝子に襲いかかるのだ。
 凄まじい重圧を放つ『原罪蛇メデューサ』は『おそれ』を充分に集められていないにもかかわらず、その圧倒的な力を示していた。
『ディスポーザブル02』を囲む結界は超次元の蛇にとってないものと等しかった。
 食い破るようにして迫る蛇たちを前に『ディスポーザブル02』の腕が次々と引きちぎられていく。
 砕かれ、締め上げられ、『ディスポーザブル02』たちはただの鉄くずへと変わっていく。
「震震震 私を前にして阻むものは何もない 私を殺しうるものはなく 故に愛し子らよ お前達は私の飯でしかないのだ 『おそれ』ることはなにもない ただ身を委ねればいい」
 その言葉に小枝子の瞳が見開く。
 人口魔眼によって燃える瞳が見つめる。
 いや、睨めつける。

 凄まじい重圧あれど、それでも小枝子は踏み出す。
 砕けた『ディスポーザブル02』の残骸をさらに束ね、己が六腕へと集積していくのだ。
 迫る蛇たちを小枝子は六腕で束ねるようにして掴み上げる。 
「ぐっ……!」
 痛みが走る。
 体躯の全てに、その体の神経全てに毒を流し込まれているかのような言いようのない痛みが小枝子の脳を灼く。
 だが、それでも小枝子は睨めつけるのだ。
「巽巽巽 何故 そこまで私を睨みつけるのだ 私の愛し子よ」
「自分は、赦しも『おそれ』もしない。貴様は」
 小枝子の瞳が亜ユーベルコードに輝く。

 束ねた超次元の蛇たちを握りしめ、念動竜巻と共に投げ放つ。
 破壊の化身たる小枝子にとって、超次元の蛇であろうとつかめるのならば破壊できるものでしかないのだ。
 投げ飛ばした蛇たちの残骸を振り払いながら『原罪蛇メデューサ』は笑う。
『禍禍禍 何をした所で」
「そうだ! 貴様は! 唯の、大敵だ!!!」
 再び迫る超次元の蛇が小枝子の六腕を噛みちぎる。
 振り下ろされた『原罪蛇メデューサ』の一撃が小枝子の体躯を打ち据える。
 地面に叩きつけられながらも、しかし小枝子は『原罪蛇メデューサ』の腕を掴んで離さない。
 投げ飛ばす。
 ただその一つのことだけに小枝子は意識を集中させる。
 
 だが、それでも『原罪蛇メデューサ』のちからが強いのだ。
 引き寄せられるようにして小枝子の体が宙に浮く。
「るうううらぁああああアアアアア!!!!!」
 次の瞬間、小枝子は己が足に灼熱光剣を突き立てる。
 アンカーのように己の足を己が武装で縫い止め、裂帛の気合と共に小枝子は『原罪蛇メデューサ』の巨体を宙へと舞い上げる。
 竜巻が舞い上がるようにして、直情へと巨体を持ち上げた瞬間、その脳天より地面へと小枝子は『原罪蛇メデューサ』を叩きつけるのだ。

 これぞ削ぎ颪(ソギオロシ)。
 その必殺の一撃は『原罪蛇メデューサ』の脳天をかち割るようにして大地に叩きつけられ、凄まじい衝撃波を防壁に囲まれた湾岸の決戦都市の市街地へと吹き荒れさせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
無理矢理に出てきたみたいだけど、流石に無理を押してるみたいね
ここで狩らせてもらうわ

「天蛇王!」
紋章の【封印を解く】と、神器の蛇矛を呼び寄せ、緑の戦装束をまとう真の姿で構えを取る

『おそれ』が足りない今が勝機だ。奴から染み出す「超次元の蛇」を舞うような突きと薙ぎから放つ超高圧の水刃で斬り飛ばし、そして【吹き飛ばす】
奴の近接攻撃の間合いを外して刻み、奴が焦れて力押しを誘って、【カウンター】で【怪力】に重力【属性攻撃】を乗せた【重量攻撃】を狙う

「絶ッ!!!」



 地面に叩きつけられた十二剣神『原罪蛇メデューサ』が立ち上がる。
 その威容、重圧。
 いずれもが規格外であることは言うまでもない。
 充分な『おそれ』が得られていないにしても、これだけの力を有しているということは。
「十全の状態だったのなら」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は如何に敵が強大な存在であるかを知る。
 今此処に顕現している力は減ぜられた力。
「爻爻爻 然り 愛し子らの『おそれ』は足らず しかし 私にはこれで充分だ 全て喰らう それだけのこと」
『原罪蛇メデューサ』は笑う。
 どれだけ猟兵とケルベロスが迫るのだとしても、己が体躯が健在であるのならば、全てを喰らうと言う。

 彼女にとって、愛するとはそういうことだ。
 何れ己の腹に収まるものでしかないのだ。
 それを愛と言う咒い。
「無理矢理にでてきたみたいだけど、流石に無理を押してるみたいね。ここで狩らせてもらおうわ」
 紅葉は今が好機というほかないことを知る。
 どれだけ己達の肌を焼く重圧が凄まじかろうが、現に『原罪蛇メデューサ』は力を大きく減ぜられているのだ。
 ならば、此処で倒す。
 これ以上の『おそれ』は人々に必要ない。
「『天蛇王』!」
 左手の甲に浮かぶ紋章の封印を解き、空より飛来する神器の蛇矛を握りしめる。

 翻るは緑の戦装束。
 振るう蛇矛の柄に染み入るように力が注ぎ込まれ、空を切る刃が音を響き渡らせるえ。
「『おそれ』が足りない今が勝機」
「震震震 勝機? 違うな 私にとっての好機だ」
 紅葉にへと襲い来る超次元の蛇。
 それは一瞬で紅葉との距離を詰め、彼女の体を打ち据える。
 したたかに打ち据えられた一撃は紅葉の体を吹き飛ばす。湾岸の決戦都市の市街地を守るために立ち並ぶ障壁に紅葉は背中から叩きつけられる。

 砕ける障壁。
 五体が砕けると思うほどの衝撃に紅葉は血反吐を撒き散らす。
 しかし、彼女は不敵に笑ったのだ。
「巽巽巽 何がおかしい 『おそれ』に正気を喪ったか?」
「いいえ。やはり、これは勝機だと確信したまでよ。本来なら今の一撃で私は死んでいたのでしょう。けれど、私は生きている。なら!」
 迫る超次元の蛇を蛇矛が舞うように振るわれ、超高圧の水刃が切り捨てる。
 その瞳にはユーベルコードの輝きがあった。
「断ち、穿ちなさい『天蛇王』!」
 紅葉は障壁を蹴って飛ぶ。
 迫る超次元の蛇を切り捨てながら、押し入るようにして『原罪蛇メデューサ』の間合へと飛び込むのだ。

 振るわれる巨腕の一撃。
 その一撃をかいくぐるようにして紅葉は飛ぶ。
 眼下には『原罪蛇メデューサ』の顔があった。
 ユーベルコードきらめく瞳で見つめる。圧倒的な存在を前にして『おそれ』はある。
 けれど、その『おそれ』を乗り越えることができるのが理性だ。
 故に紅葉は蛇矛を振るい上げ、裂帛の気合と共に水刃と重力を乗せた一閃を叩き込む。
「絶ッ!!!」
 振るわれた一撃が『原罪蛇メデューサ』の顔面を切り裂き、その血潮を噴出させるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧崎・天音
…人間の可能性を侮らないほうがいい。
私はヒトがそんな「絶対」を打ち破ってきたことを知っている…
だから私は抗い続ける。
決して諦めるつもりはない。

ディフェンダーの支援要請で
隔壁を利用させてもらう。
周囲に展開した隔壁を飛び越えながら
敵の動きを撹乱して、隙をついてユーベルコードを急所を狙って一撃を加える。

ダメージが与えられるってことは、倒せるということだからね…
倒れるまで攻撃をし続ける。



 血潮が雨のように降り注ぐ。
 それは巨体たる『原罪蛇メデューサ』の顔面から迸るものであった。
 猟兵のユーベルコードによる一撃によって『原罪蛇メデューサ』は、その顔に裂傷を刻まれていたのだ。
「震震震 この私に一太刀浴びせるか だが哀しいかな 些細なことだ これより喰らう飯が愛でもって私に反抗しただけのこと それも私は|赦そう《喰らおう》」
 彼女は笑っていた。
 猟兵達のユーベルコードですら、彼女にとっては思春期の子らが反抗した程度の可愛げしかないものだと笑ったのだ。

 あまりにも此方を舐めている。
 確かに人間は矮小なる存在なのだろう。天にきらめく六等星を見て、その小ささを指差す。
 けれど、その強大さは言うまでもない。
 その矮小さ。
『原罪蛇メデューサ』が取るに足らぬと笑うのも頷けるところであった。
 だが、と否定する言葉が響く。
 圧倒的な存在を前にしても立ち向かう者がいる。
「……人間の可能性を侮らないほうがいい」
「巽巽巽 異なことを言う 可能性? それは結局言葉だ 言葉は言葉のまま 力でもなんでもない それは愛し子らの知性だ 可能性という言葉に踊らされている 絶対のちからを前には何の意味もないことだ」
 霧崎・天音(異世界のラストドラゴンスレイヤー・f40814)は迫りくる超次元の蛇の一撃を受け止めながら、頭を振る。

「私はヒトがそんな『絶対』を打ち破ってきたことを知っている……」
『おそれ』は確かに絶対であるだろう。
 知的生命体にとって『おそれ』とは備わった機能であり、咒いである。
 未知なるものを恐れ。
 危機を恐れ。
 生命を脅かすものを『おそれ』るからこそ、こうして連綿と歴史を紡いできたのだ。
 だが、だからこそ『おそれ』を前にして踏み出す勇気がある。

 迫る超次元の蛇が躱し難き一撃でもって天音に迫る。
 けれど、そんな彼女と蛇の間に割って入る者があった。
『防御は任せ給え!』
 通信。
 湾岸の決戦都市の責任者『エイル』博士の言葉と共に決戦配備の人型戦術兵器『セラフィム』が天音を守るようにして壁になったのだ。
 一撃で砕ける『セラフィム』。
 しかし、天音は止まらなかった。
 多くの人々が抗っている。
「だから私は抗い続ける」
 踏み越えるようにして天音が飛ぶ。
 瞳にはユーベルコードの輝きが在った。

 超次元の蛇は『セラフィム』に食い止められている。
 ならばこそ、天音は振りかぶったパイルバンカーに力を込める。
 炎と冷気を宿した一対のパイルバンカー。
 その切っ先を叩き込まんと踏み込む。
「決して諦めるつもりはない」
「爻爻爻 その先にあるのが定められた死だとしても 愛し子よ それでも行くというのか?」
「無論。どれだけ十二剣神が強大であろうとも、抗い続ける人々がいるのなら、私もまた諦めない。抗い続ける。それが」
 振るう一対の一撃が『原罪蛇メデューサ』の体躯へと叩き込まれる。
 吹き荒れる炎が『原罪蛇メデューサ』の肌を焼き、冷気が血潮すら凍りつかせる。
 どんな防護を持っていたとしても、貫き穿つ。
 それが、天音――ラスト・ドラゴンスレイヤーなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユキト・エルクード
SPD判定 (アドリブ連携歓迎)
決戦配備:ジャマー

……俺を呼んだのはテメェじゃなさそうだな? まぁいい
テメェからは俺の世界を滅茶苦茶にしたクソ女と同じ匂いがする
悪いがお帰りいただこう、何度でもな

【戦術】
先に攻め込んでくれた同僚の攻撃の終わり際に決戦配備の発動を要請
同時発動可能UC【刻影蝕】をガスや【投げナイフ】に紛れて使用
これ以上ない明確な“敵”だと分かっている以上金縛りに付き合ってやる義理はない
神火による【浄化】や【霊的防護】を行いながら奴の悪意をUC【怪祟忍殺】で遡り急速接近

愛? 奴のそれなんて悪意に砂糖ぶっかけたようなもんだろう
手足も首もへし折ってテメェ自身のきたねぇモツでも拝ませてやる



『おそれ』が広がっている。
 目の前に存在する十二剣神『原罪蛇メデューサ』は多くの存在にとって未知なる者であっただろう。
 言いようのない感情がこみ上げてくる。
 人は未知を恐れる。
 暗がりの闇に何があるのかを知らぬからこそ、足を止めてしまうのと同じように。
 だが、それを誰が咎めることができようか。
 知性あるがゆえに、その先がなんであるのかを知ろうとし、見通せぬ闇に『おそれ』を抱く。それは生存に必要不可欠な感情であったことだろう。
「爻爻爻 愛そう その愚かしさも愛そう 愛し子らよ その『おそれ』は正しい 私に喰らわれる飯として正しい」
 猟兵とケルベロスのユーベルコードを受けて尚、いや、『おそれ』を減ぜられてなお『原罪蛇メデューサ』は笑う。

 確かに十全な力で顕現していない。
 だと言うのに、この強大さは如何なることか。
 だが、ユキト・エルクード(亡霊夜警・f38900)は吐き捨てる。
 如何に『おそれ』が己の胸のうちから隠しようがなく溢れようとも、彼は『原罪蛇メデューサ』を睨めつける。
「……俺を呼んだのはテメェじゃなさそうだな? まぁいい。ああ、いいんだ。そんなことはどうでもいい」
 ユキトの瞳が言う。
 そう、些細なことだと。
 己がこの戦場にあることは、些細なきっかけにすぎないのだと。
 問題なのは。
「テメェからは俺の世界を滅茶苦茶にしたクソ女と同じ匂いがする」
「巽巽巽 私は私だ ただ一つ 愛し子らを|赦そう《食らわん》とするただひとつの存在だ 愛し子よ 我が腹に収まるが良い」
「そういうところだよ。悪いがお帰りいただこう、何度でもな」
 ユキト瞳がユーベルコードに輝く。

 悪意が己の体躯を貫くというのならば、その悪意に対する報復は既に相成る。
 ユキトの身を縛るよりも速く彼のユーベルコードがきらめく。
 身を縛る金縛りや心霊現象を振り払うようにして踏み込む。
「これまでどれだけの悪意でもって生命を喰らってきた」
「震震震 覚えているとも 我が腹に収まった愛し子らのことは 私が与えた 私の愛が知性を生み出し『おそれ』に塗れた生命は」
「愛?」
 ユキトは迫る巨腕が己を捉えようとしているのを認め、身を翻す。

 ユーベルコードが煌めいていた。
「テメェのそれは悪意に砂糖ぶっかけたようなもんだろう。愛と、愛と吐きながら、己の行いを自己肯定しているだけにすぎない」
 迫る腕を砕くようにして蹴り上げる。
「これまで奪ってきた生命の報いを受けろ」
 怪祟忍殺(シノビレトリビューション)は此処に結実する。
『原罪蛇メデューサ』の腕を叩き折り、さらに巨体へと踏み込む。
 巨大な腕がユキトを抱擁するかのように交差される。
 己を喰らうつもりなのだとユキトは理解した。
 けれど、彼の瞳に輝くユーベルコードがそれを許さない。己を喰らうことなどさせるつもりはなかった。

 振るうナイフの一閃が『原罪蛇メデューサ』の腹を切り裂く。
「テメェ自身のきたねぇ腹の内、モツでも拝んでろ!」
 血潮が噴出する。
 ユキトは抱擁迫る腕から逃れ、宙を舞うようにして飛ぶ。
 因果応報というのならば、知性を生命に与えたという原罪持つ『原罪蛇メデューサ』の腹に収まるのが生命の回帰であるのだろう。
 けれど、それは悪意に塗れている。
 喰らうための愛などあっていいはずがない、とユキトは己が手にしたナイフの一閃で、その悪意に塗れた臓腑を『原罪蛇メデューサ』に見せつけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルコ・アロー
決戦配備、クラッシャー!
こいつ野放しにしたらやべーってんなら出し惜しみすんじゃねーです!
派手に行くですよ、やろーども!

そんな感じで、ちょっと離れた所から撃ちまくってもらうですよ!
ド派手な爆発でヤツの周辺ごと吹き飛ばしてやれです!
まぁこれで倒せちまうならボクらはいらねーんですけど、あいつの蛇の邪魔は確実に出来るはずです。
って事で、砲撃の爆音と硝煙に紛れて変身!
この状況でもバカでかいてめーの気配感知くらいは出来るです。
Gバリアの輝きを爆発の閃光に紛れさせながら、蛇共諸共体当たりでぶっ飛ばしてやるですよ!
味方の砲撃に巻き込まれてもバリアのあるボクは平気です。
そう、ボク自身が一番デカい砲弾ですよ!



 出し惜しみはできない。
 この湾岸の決戦都市の全戦力を用いて十二剣神『原罪蛇メデューサ』を打倒しなければならない。
 そうしなければ『おそれ』の拡散によって、どうしようもない咒いが世界に満ちる。
 そうなればケルベロスディバイドの世界は全て『原罪蛇メデューサ』の腹のうちに収まることになるだろう。
「こいつを野放しにしたらやべーってんなら出し惜しみすんじゃねーです!」
『わかっているとも。決戦配備は!』
「クラッシャー! です!」
 ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)の言葉に『エイル』博士は応える。
 飛翔する彼女に合わせるようにして決戦配備の人型戦術兵器『セラフィム』が随行する。

「派手に行くですよ、やろーども!」
 彼女を戦闘にして隊列を組む『セラフィム』たち。
 引き連れるようにしてファルコは飛ぶ。
「撃ちまくれ、です!」
 火砲が吹き荒れるようにして『原罪蛇メデューサ』へと打ち込まれる。
 すでに多くの猟兵やケルベロスたちのユーベルコードの明滅が彼女を打ち据えている。だが、まだ足りない。
『おそれ』が不十分な顕現であっても、『原罪蛇メデューサ』は強大そのものであった。
 超次元の蛇がファルコを襲う。
 やはり、と思う。
『セラフィム』の火力だけで押し切れるのならば世話ないのである。

 故にファルコは飛ぶ。
 一気に超次元の蛇を振り切るようにして『原罪蛇メデューサ』の周囲を飛ぶ。
「まあ、やっぱりね!」
『ああ、すまない。動きも止められないか……!』
「これで倒せちまうようならボクらはいらねーんですけど、でも!」
 ファルコは超次元の蛇が『セラフィム』たちの火砲で押し込められている様を見やる。無意味ではない。
 戦える、とファルコは判断した。
 けれど、笑い声が聞こえる。
「爻爻爻 なんとも可愛げのある抵抗だ だが それも私は認めよう 知性あるがゆえに『おそれ』る それの証明だからだ 愛し子よ もっとこの私に抵抗を見せておくれ」
 笑う。 
 臓腑まろびでるような傷跡を刻まれながらも『原罪蛇メデューサ』は笑っていた。
『……! 機体温度の上昇……オーバーヒートか……!』
「上等、です!」
 ファルコは飛ぶ。
 
『セラフィム』の火砲によって超次元の蛇たちは抑え込まれた。
 その爆風の中をファルコは紛れるようにして飛ぶ。
「シールド全開……この状況でもバカでかいてめーの気配感知くらいはできるです!」
 ユーベルコードにきらめくファルコの体。
 その体が爆風より飛び出す。
 光り輝くバリアをまとった小型戦闘機へと変じたファルコは一気に加速する。
 己自身を砲弾へと変えたファルコは迫る超次元の蛇すらも、ものともせずに『原罪蛇メデューサ』へと突っ込む。
「そう、ボク自身が一番デカい砲弾ですよ! 最大戦速ぅ!」
 Gディフレクターアタック(ジーディフレクターアタック)の一撃が『原罪蛇メデューサ』の体躯に激突する。

 凄まじいユーベルコード同士の激突。
 その火花が散る最中、ファルコは咆哮する。
 押し負けるわけには行かない。
 己が持てる力の全てを出し切ってファルコは推進力に変えていく。その一撃は『原罪蛇メデューサ』の巨体を吹き飛ばし、打ち倒すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍之宮・翡翠
|決戦配備《ポジション》は引き続き|攻撃配備《アタッカー》を要請
問答無用でUCを発動し、攻撃する

デウスエクスである時点で相互理解などあり得ないのは、先刻と同じだ
特にこの十二剣神にとっては、この星は熟れた果実と同程度と宣っている
それならば猶の事、諸々について議論をするのは互いに無駄な時間にしかならない

この星を喰らいに来た|デウスエクス《敵性体》であり、十二剣神である原罪蛇
それが判っていれば、未知の存在であり得ない
俺にはそれで十分すぎる

殺す事は無理だと言う事は判っている
だが、此処で貴様を押し返せば、力を減じる事は出来るんだろう
この星を喰らいに来る事すら難儀する程に力を削ぐ事が出来れば……!



 打倒されるようにして大きく体を傾がせる十二剣神『原罪蛇メデューサ』。
 その巨体が地面に倒れ伏すも、しかし噴出するは未知への『おそれ』であった。
 相対する者にとって『原罪蛇メデューサ』は未知なる存在である。どうあがいても彼女のことを知ることはできない。
 何故なら、彼女は咒いの集大成である。
 生命を愛していると嘯きながら、その本質は咒いだ。
 喰らうことと赦すことを同義とする者は、知的生命体にとっては度し難い存在である。
「爻爻爻 その抵抗すらも私には愛おしい 愛し子よ 見せておくれ お前達の抵抗という名のいのちの輝きを」
 笑う。
 笑い声が響いている。

 その笑い声を聞きながら、龍之宮・翡翠(未だ門に至らぬ龍・f40964)は通信でもって湾岸の決戦都市の『エイル』博士へと告げる。
「|決戦配備《ポジション》……|攻撃配備《アタッカー》を要請」
 問答はいらなかった。
 どれだけ目の前の未知なる存在が己に言葉でもって語りかけるのだとしても、翡翠にとっては意味のないことだった。
 喰らうことと赦すことが同義たる存在。
 そんな者と相互理解などできようはずがない。
 奪う者と奪われる者でしかない。
 どんな言葉で取り繕うのだとしても、それは変わらないのだ。
 そして、同時に翡翠の胸に湧き上がるのは、赦せないという思いだけだた。
 赦せるわけがない。
 赦していいわけがない。

 数多の星の生命が『原罪蛇メデューサ』に喰らわれてきたのかは知る由もない。
 けれど、此度と同じことが何度も行われてきたことは想像に難くない。
「あんたにとって、この星は熟れた果実程度の意味しかないんだろう。ならば、なおのこと」
 迸るはユーベルコード。
 金縛りは翡翠を縛れない。
 目の前の存在は十二剣神。されど、翡翠にとってはデウスエクスと変わらない。
 倒すべき敵だという認識以外ない。
 未知なる存在であろうと変わらない。
 あれは、敵だ。

「この星を喰らいに来た存在|デウスエクス《敵生体》でしかない。俺にはそれで十分過ぎる」
 番犬の顎がもたげるようにして翡翠の瞳がきらめく。
 ユーベルコードは、手にした残霊刀の刀身に纏うようにして満ちていく。
 迫る心霊現象。
「巽巽巽 永遠不滅なる私を滅ぼすというのか その顎で 噛み砕こうと だが それも無駄だ 永遠不滅は滅ぼせない わかっているだろう それでもなお抵抗するというのか糸塩よ」
「とうにそんなことは委細承知の上だ。わかっている。殺すことは無理だということは」
 翡翠は残霊刀より漣のような衝撃波を放つ。
 それは己の守りを一切に捨てたものである。
 迫る心霊現象を切り裂きながら、人型の戦術兵器『セラフィム』が飛ぶ道行きを示すようにして進む。

 身を穿つ痛みが走る。
 心霊現象。
 切り裂いた筈なのに、と翡翠は思っただろう。
 だが、それも僅かな時間であった。痛みを振り切る。『おそれ』がある。
 生命を失うことへの『おそれ』。
 それは仕方のないことだろう。
 生きているのだから。
 けれど、翡翠は歯を食いしばる。痛みを越えるものが胸のうちにあるからだ。それは『おそれ』ではない。
 理性がある。
 誰かのためになりたいという善性がある。
『おそれ』が人の悪性を刺激するのならば、光が影を色濃くするのと同じようだった。けれど、影なくば光なく。

 影が色濃く闇という『おそれ』を増幅させるのならば、翡翠の胸に宿る善性もまた強烈に輝くのだ。
「この星を喰らいに来ることすら難儀するほどに力を削ぐ!」
 咆哮する。
 己は番犬である。
 地球という生命を守る番犬。ならば、翡翠は『セラフィム』たちが特攻する爆発の中を走る。
 掲げた斬撃が『原罪蛇メデューサ』へと叩き込まれ、その体躯に言えぬ傷跡を遺すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
決戦配備メディックを要請。
「民間人を此方に近づけないで貰いたい。
可能であれば戦いを目視する事も避けて欲しい。」
敵の攻撃対象になるのが自分だけになる様に。

「神を名乗るのに足る傲慢さだ。
だが、その通り。人は神を、悪魔をおそれる。」
「それでも人は抗う術を持つ。
真の勇気はおそれから生まれるからだ。」

輪廻天還を発動して敵の鎌張りや鬼火を相手に返しながら
その状態(敵が未知の存在)を維持する為に
敵についての余計な考察等は行わない。

敵が金縛りで動けなくなったところを
フリージングエッジで氷の刃を作り出して敵を囲み。
一斉に攻撃を仕掛け切り刻む。
「おそれ故に俺に油断はない。
人の感情を道具としか見ないお前とは違う。」



「民間人の避難を優先してくれ。俺の|決戦配備《ポジション》に力を注ぐ前に」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は通信先の『エイル』博士へと告げる。
 決戦配備、メディック。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』との戦いは苛烈を極めている。
 今はまだ防壁によって市街地への決定的な打撃は抑えられている。けれど、それも長く続くわけではない。
 いまだ『原罪蛇メデューサ』を打倒できていないのだ。
 これを打倒するまで戦いは続き、いずれ人々に類が及ぶこともあるかもしれない。
 それだけは避けたいとフォルクは思ったのだ。
「可能ならば戦いを目視することも避けて欲しい」
 そう、敵は『おそれ』を集め強大になっていく。

 今は不完全な顕現であるが、この戦いを見ることで『おそれ』が生まれ、敵に利する所になるかもしれないからだ。
『わかった。だが、君は』
「言うまでもない。敵が見るのは俺達だけでいい」
 フォルクは駆け出す。
 多くのユーベルコードの明滅がある。
 誰もが戦っている。
『おそれ』を振り払うように、『おそれ』を拭うために。
 そのために彼らは戦っている。自分だってそうだ。
「震震震 私は歓びに打ち震えている 愛し子らよ こんなにも抵抗を示してくれている 活きがよい飯は好ましい」
『原罪蛇メデューサ』は笑う。

 生命の抵抗に歓びを見出している。
 煩わしいというのではなく、それこそが生命であるというように。
「神を名乗るのに足る傲慢さだ、『原罪蛇メデューサ』」
「爻爻爻 私をまえにして『おそれ』ながら それでも私に相対することを望むのか」
「そのとおり。人は神を、悪魔を恐れる」
 人智の及ばぬものに対して人は未知以上の『おそれ』を抱く。
 どうしようもないと思うからだ。
 けれど、人は。
「それでも人は抗う術を持つ」
『おそれ』とは理性と本能との間に横たわる溝。
 それを乗り越える時、人は。
「真の勇気は『おそれ』から生まれるからだと知っている」

 それが人が『おそれ』に立ち向かうただ一つの方策である。
 身を縛る金縛り。
 心霊現象がフォルクへと迫る。
 だが、同時に『原罪蛇メデューサ』はフォルクの姿を認識できなくなっていた。
「巽巽巽 どこへ行った? 愛し子よ 隠れていないで姿を 見せるがいい」
 その言葉にフォルクは答えなかった。
 フォルクの瞳がフードの奥にてきらめく。

 その輝きすら『原罪蛇メデューサ』は見ることがなかっただろう。
 呪力覚醒したフォルクは呪詛返しによって『原罪蛇メデューサ』の金縛りを反射し、その体躯を縛り続けているのだ。
「震震震 これは面白いことだ 私の体が動かない なぜだ?」
 その言葉にフォルクは答えない。
 応える理由もない。
 あるのは、ただ一つ。
「『おそれ』ゆえに俺に油断はない」
 確かに『原罪蛇メデューサ』は人の感情を良く理解しているのだろう。
 だからこそ『おそれ』を媒介にして転移さえ可能にしている。けれど、それは感情を道具としてしか見ていないからだ。

「お前とは違う」
 感情の色も、形も、一つ一つ人によって異なることを知らぬ者にフォルクは捉えられない。
 輪廻天還(リンネテンカン)たる戒めの力と共に氷の刃を生み出し、動けぬ『原罪蛇メデューサ』を取り囲み、一斉に解き放つ。
 身を穿つは氷の楔。
『原罪蛇メデューサ』の体躯を縫い留めるように、氷の刃は穿つ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

はっけ? そんなのもうなんでもいいです。はっけよいのこっておけばいいんです!
そんなことよりなんでこんなにシリアスなんですか。
これってもう、シリアスじゃないです。死リアスですよぅ……あうー。

か、帰ったらごはんですか?もうちょっとでいいんですね?
な、ならなんとかがんばります(ぼりぼり

って。え?
援護って、なんでわたし飲み込まれてるんですか!?

一寸ルクスちゃんするんです?
……身体の中で演奏って、どのくらい効果あるんでしょうか……。

な、なにはともあれ!
ステラさんが外から、わたしが中からってことですね。

それでは魂の【ラデツキー行進曲】いっきまーす!

ス、ステラさん、ちゃんと助けてくださいね!?


ステラ・タタリクス
【ステルク】
そういえば八卦……方角で言うと、北東、南西、西ですか
鬼門と裏鬼門ですかね?
鬼門にて雷は震え、裏鬼門へと至る道を風は巽り、
渡った『おそれ』は水のごとく|坎《くぼみ》へと
まさしく災いというべき存在
されど運命は八卦にて定められるものではなく
私たちはそのおそれすら乗り越えられる!
ルクス様……はもうシリアスに耐えられないのです(なでなで
帰ったら美味しいごはん食べましょうね?
もう少し我慢しましょうね?

雑に決めに参ります……!
ルクス様は援護お願いします
決戦配備はクラッシャーを要請

この一撃は魂を燃やした一閃
戦いに際しては心に平和を
その体現を為す一撃
【トニトゥルス・ルークス・グラディウス】!



 顕現するは咒いの集大成。
 生命咒う『おそれ』その元も言うべき存在、十二剣神『原罪蛇メデューサ』であった。
 明滅するユーベルコードの数々。
 これをもってしても『原罪蛇メデューサ』は未だ健在であった。
 氷の楔に縫い留められてもなお、その猛威は迸るようにして超次元の蛇を解き放つ。
「爻爻爻 雷が満ちている  風が吹いている 水が悪性を溜め込む いずれにしても 詮無きことである 愛し子らよ どの道 死はお前達を取り逃がさない 必ず終わりが来るように 定められた生命を持つ知性があるのならば」
 それこそが終着であると『原罪蛇メデューサ』は笑う。
 この抵抗も、あらゆる意味で無意味だと笑うのだ。
 生命は己が飯。
 己が喰らうもの。
 それ以外の意味など持ち得ないのだと笑っている。

「鬼門にて雷は震え、裏鬼門へと至る未知は風を巽り、わたった『おそれ』は水のごとく|坎《くぼみ》へと。まさしく災いと言うべき存在」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、その威容を見上げる。
 恐るべき敵である。
 だが、それでも打倒しなければならない。
「されど、運命は八卦にて定められるものではなく、私達はその『おそれ』すら乗り越えられる!」
 どんな境遇が目の前に迫るのだとしても、それでも抗う者がいる。
『おそれ』が生命の根源的な咒いなのだとしても、それでも立ち向かう者たちがいることをステラはもう知っている。

「はっけ? ほっけ? そんなのもうなんでもいいです。はっけよいのこっておけばいいんです!」
 そんな空気をぶち壊すかのようにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はもう耐えられない! と叫んだ。
「そんなことよりなんでこんなにシリアスなんですか。これってもう、シリアスじゃないです。死リアスですよぅ……あうー」
 ルクスは叫んだ。
 叫んだ後にへたり込んでしまう。
 もう色々と限界なのである。
 シリアスアレルギーも此処に極まった感じがある。
「ルクス様……もうシリアスに耐えられないのです」
 仕方ないですね、とステラはルクスの頭をなでる。もう撫でる以外なかった。

「帰ったら美味しいご飯たべましょうね? もう少し我慢しましょうね?」
「か、帰ったらご飯ですか? もうちょっとでいいんですね? な、ならなんとかがんばります」
 ぽりぽりとラムネを頬張るルクス。
 お腹いっぱいにならない?
「雑に決めに参ります……! ルクス様は援護をお願いします」
 おらぁ! とステラはルクスを『原罪蛇メデューサ』へと投げつける。
 決戦配備の『セラフィム』がルクスを抱えるようにして飛び込む。
 迫る超次元の蛇の顎の中へと一緒に飲み込まれてしまったのだ。
「えっ? なんでわたしの見込まれてるんですか!?」
「一寸ルクス様ということでございます」
「……えぇ……体の中で演奏って、どのくらい効果あるんでしょうか……」
 ルクスはなんとも言えない気持ちになる。
 でもでも、ステラは己を頼っているのだ。
 ならば、やることは一つ!

 そう、演奏である。

「ステラさんが外から、わたしが中からってことですね」
 それでは! とルクスは蛇に飲み込まれてもルクスであった。
「魂の! ラデツキー行進曲(ラデツキーコウシンキョク)いっきまーす!」
 炸裂する演奏。
『セラフィム』をアンプにしてルクスは巨大バイオリンの旋律で蛇を内側から引き裂き、飛び出す。
 さらにグランドピアノの一撃を『原罪蛇メデューサ』に叩き込み、さらにユーフォニアムの強烈な音波でもって傾がせるのだ。
「震震震 音が満ちている 生命の鼓動が聞こえなくなるほどに」
「ええ、そうでしょうとも。ルクス様の演奏は、なんでもかんでも破壊してしまうのです。鼓膜なんて簡単にバン! でございます! 天使核、コネクト!」
 燃えるは魂。

 天使核へと接続された迸る雷光の剣。
 ステラはそれを掲げていた。
「ブレイド、形成。この一撃は魂を燃やした一閃」
 ステラは旋律を受けて掲げた剣の光と共に踏み出す。
「『戦いに際しては心に平和を』」
「ステラさん、やっちゃえ!」
 ルクスの声が聞こえる。
 掲げた雷光の剣が振り下ろされる。
「トニトゥルス・ルークス・グラディウス!」
 その一閃は『原罪蛇メデューサ』の体躯を切り裂き、その鮮烈なる光の柱を空に刻むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

皇・絶華
機神搭乗
輝く瞳でこの忍者はメデューサを見つめていた

UC準備開始

嗚呼…そうだ…収穫の刻はきた…!
「ぴぇぇぇぇ!!」
決戦配備
キャスター
メデューサの調理の為に動きを封殺する術式要請

私は理解しているぞメデューサよ!
お前は…我がチョコとしてデウスエクスや人々に圧倒的なパワーを与える為に降臨したのだな!(狂気的解釈

対SPD
私にとってお前は未知の存在ではない!そう!お前はデウスエクスと人々に圧倒的なパワーを与える為にチョコになりに来たハッピーチョコスネークだ!(狂人がここに居た

【念動力・弾幕・切断・二回攻撃】
念動光弾を叩き込み動きを封じて鎌剣で切り刻み
UC準備完了
【爆破】
邪神チョコによる地獄発生と共に爆破!



 きらめく瞳があった。 
 それは別の意味での煌めきであった。
 ユーベルコードの輝きにも似た輝きであったが、しかし、それはユーベルコードを意味していない。
 瞳の主、皇・絶華(影月・f40792)は笑む。
「嗚呼……そうだ……収穫の刻は来た……!」
『サートゥルヌス』の良くわからない悲鳴が聞こえた。
 それは己が主が何をするのかを理解しているからであったことだろう。
「決戦配備、キャスター。あの『原罪蛇メデューサ』の動きを封殺する術式を要請する」
『無理だ。あれを封殺などできない! できるのはわずかに動きを止めることだけがぞ!?』
『エイル』博士の声が聞こえる。
 そう、『セラフィム』にできるのは、せいぜい一瞬動きを止める程度の支援でしかない。
 出力が圧倒的に足りていないのだ。
 加えて、敵は十二剣神である。

 一瞬でも動きを止められたのならば。
「僥倖! 構わない!」
 絶華は笑って『サートゥルヌス』と共に『原罪蛇メデューサ』へと飛ぶ。
「爻爻爻 私の腹におさまるために飛ぶか」
「私は理解しているぞメデューサよ! お前は……我がチョコとしてデウスエクスや人々に圧倒的なパワーを与えるために降臨したのだな!」
 その言葉はあまりにも都合良すぎる解釈であった。
「ぴぇぇぇぇ!!」
 誰もその言葉を理解しなかった。
 けれど、『サートゥルヌス』だけは理解していた。主が何をしようとしているのかを。
 機体が軋む。
 心霊現象と金縛りが機体を縛り上げているのだ。

「私にとってお前は未知の存在ではない! そう! お前はデウスエクスと人々に圧倒的なパワーを与える為にチョコになりに来たハッピースネークだ!」
『サートゥルヌス』は己が主が圧倒的狂人思考に至ることを理解していたようだった。
 もう諦めていたかも知れない。
 主がこうすると決めた以上、自分ができることは覚悟を決めることだった。
 念動光弾の乱打でもって高速を振りほどきながら、鎌剣で他の猟兵たちが刻み込んだ腹部、その臓腑へと飛び込むのだ。

「巽巽巽 何を言っているのか理解出来ない だが それでも私の腹におさまるというのならば」
「そうか! ならば、ハッピーチョコスネークになるがいい!」
 ぜっちゃんとチョコの神々(チョコニオセンサレタカナシキジャシンタチ)は此処に降臨する。
 カカオ濃度一万%。
 それは正直な所、どういうことなのかまるでわからない理屈であった。
 漢方チョコ邪神植物が出現し、絶華は『原罪蛇メデューサ』の臓腑に直接圧倒的なパワーを叩き込む。
 それは膨れ上がっていく。

『おそれ』が足りぬのならば、他の力で補填すれば良い。
 だが、同時にそれは地獄のような味であった。
 味覚が破壊される。
 同時に肉体を内側から爆破するような地獄めいた感覚が襲うのだ。
 言いようのない、例えようのない味。
 それが『原罪蛇メデューサ』の中に駆け巡っていく。
「これがチョコになるということだ!」
「主様、そういうことじゃないと思うんだ。なんか、あいつ光り輝いているし……」
「うむ。それこそがハッピーチョコスネークになるということ!」
「全然わからない!」
 炸裂した味に『原罪蛇メデューサ』は声を発することも忘れているようだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
●SPD【ケルナノ】

遂に十二剣神が一柱『原罪蛇メデューサ』のお出ましか
ナノ、『おそれ』る事はない
人は古来より闇を畏れた
怖れたからこそ、火をもって闇に潜む者どもの正体を暴き今日まで発展を遂げてきた
しかし、人は今も尚も闇を恐れる
その闇を祓うのが…我々|猟兵《ケルベロス》だ
ならば、ナノ
その呪詛染みた『おそれ』を力なき人類が培ってきた科学の力で祓ってみせるぞ

|決戦配備《ポジション・オーダー》、キャスター
まだ怪奇特集をする時期ではないが、正体を暴き未知の存在でなくさせるさ
だが、これだけは季節通りとさせて貰おう
『桜花除霊斬』…心霊現象を起こそうとも精神エネルギーの塊である|貴様《『おそれ』》ごとの一閃だ


ナノ・ナーノ
●SPD【ケルナノ】

遂に顕現したなの…あれこそが『原罪蛇メデューサ』なの!
ジーク達の活躍で『おそれ』を集めきれずだいぶ弱体化しているようだけど、それでも強大な相手に変わりないのなの(ぷるぷる

なの!
『おそれ』知らずな頼もしい言葉を聞いたら、そんなに怖くない気がしてきたのなの
任せてなの
ボクは戦闘が苦手だけど、サポートはお任せのプロデューサーなの!
エイル博士、|決戦配備《ポジション・オーダー》キャスターでセラフィムの支援でケルチューブ生配信なの
今まで『おそれ』ていた恐怖の正体に立ち向かうケルベロスの勇姿、そしてボクの【ウィング・オブ・フリーダム】でメデューサに『おそれ』る必要はないと啓蒙するなの!



 熾火のような光がある。
 暗闇の中に揺らめいている。
 それは暗闇を切り裂くように照らすものであった。
「遂に顕現したなの……あれこそが十二剣神『原罪蛇メデューサ』なの!」
 ナノ・ナーノ(ナノナノなの・f41032)は動画配信サービス、ケルチューブのプロデューサーである。
 彼が構えるカメラの向こう側には明滅するユーベルコードの光があった。
 猟兵とケルベロスたちの戦う様を避難している人々に伝える。
 それこそが彼の役目であった。
「猟兵やケルベロスたちの活躍で『おそれ』を集めきれず、だいぶ弱体化しているようだけど、それでも強大な相手に変わりないの」
 身が震える。
 それほどまでに『原罪蛇メデューサ』は強大な存在であったのだ。

 その身に刻まれた数々の傷跡。
 だが、それでも未だ猛威を振るうように『おそれ』を振りまく咒いの集大成。
『おそれ』てしまうのも無理なからぬことであった。
「爻爻爻 知性という燈火があるから『おそれ』という暗闇が生まれる それは知的生命体にとって仕方のないことだ 避けよがないことだ 『おそれ』るなとは言わない 『おそれ』ていいんだよ 愛し子らよ」
 その言葉は甘美だった。
『おそれ』を否定するのが理性であるというのならば、受け入れることは罪ではないのだと甘やかすような言葉だった。
「『おそれ』ることはない」
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は震えるナノの体を抱きとめ、言う。

「人は古来より闇を『おそれ』た。『おそれ』たからこそ、火を持って闇に潜むものどもの正体を暴き、今日まで発展を遂げてきた。しかし、人は今も尚闇を恐れる」
 それが根源的な咒いであるのだとしても、ジークリットは言う。
 言わなければならないことだった。
「その闇を払うのが……我々|猟兵《ケルベロス》だ」
 そう、誰かが闇を照らさなければならない。
 暗闇の中に一歩踏み出さなければならない。
 それがどんなに困難な道であり、未知であるのだとしても、それでも進まねばならないとしる。
「ならば、ナノ。その呪詛じみた『おそれ』を力なき人類が培ってきた科学の力で祓ってみせるぞ」
「なの!」
 ナノの体の震えは収まっていた。
『おそれ』を知らないのではない。『おそれ』てなお、それを踏み越える勇気があるからこそ、『原罪蛇メデューサ』へと立ち向かうことができるのだ。
「そんな『おそれ』知らうな言葉を聞いたら、そんなに怖くない気がしてきたなの」
「任せたぞ。|決戦配備要請《ポジション・オーダー》、キャスター」
「『エイル』博士、お任せするなの!『セラフィム』を中継して、ケルチューブ生配信なの!」
 ナノの言葉に『セラフィム』たちが中継となってナノの構えたカメラから得られた映像を世界に配信する。

 それは『おそれ』を誘発するものであったかもしれない。
 けれど、ナノは確信していた。
 確かに人は恐れる。
 仕方のないことだ。けれど、知らないから恐れるのだ。なら、知ってしまえば。
「ジーク、戦ってなの!」
 ナノの瞳がユーベルコードに輝く。
 背より広がる翼。
 それはウィング・オブ・フリーダム。
 ナノの翼を見たもの全てに『おそれ』塗りつぶす希望を与える力。
 中継から配信を見た人々の心に芽生えた『おそれ』を希望が塗りつぶしていく。世界にありし未知が希望に取って代わられた瞬間であった。

「頼もしい限りだ」
「ナノにお任せなの! 今まで『おそれ』ていた恐怖の正体に立ち向かうケルベロスの有し、そして希望があれば、なの!」
 その希望の翼を見上げたジークリットは笑う。
「まだ怪奇特集をする時期ではないが……正体を暴き、未知の存在ではなくさえるさ」
 だから、とジークリットは己が剣を構える。
 迫る心霊現象を切り裂くは、残霊刀。
 桜花浄霊斬。
 放たれる花びらは嵐のように。
「この花弁だけは季節通りとさせてもらおう」
「巽巽巽 『おそれ』が切り裂かれていく? なぜ なぜ なぜ」
「簡単な話だ。貴様の言う所の『おそれ』とはすなわち精神の波。その波は波動となるのならば、すなわちエネルギーだ。故に、私の残霊刀は、それを切り裂く!」
 放たれた一撃が『原罪蛇メデューサ』の力の源たる『おそれ』を切り裂き、その勢いのまま、体躯を切り裂く。

 それは希望に溢れた光景であったことだろう。
 未知なる『おそれ』も、人の瞳に映る希望があるのならば、これを乗り越えることができる。
 そう示すように、ユーベルコードの輝きが人の厭う暗闇を照らす――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
決戦配備:クラッシャー

まったくオソレを集めないとならないなんて不便な神サマだね!
そこのところはボクなんて無償でボランティアで|∞《無限大》の愛でやってるっていうのに!
そしてこう畏れられたのさ…
お願いですからどうか何もしないでくださいって!
――――アレぇ???

●いっけー!鉄人なんとか号!
と決戦ロボくんズを突っ込ませてボクの回避する余地、蓋然性を高めていこう!
そうしてボク自身は【第六感】の思うままに距離を詰めてー
最終的には【ドリルボール】くんでヘビくんを巻き取ってもらいながらUC『神撃』でドーーーンッ!!

あ。でも……お菓子とかくれるならお願いきいてあげてもいいよ!



『おそれ』が霧散していくのを十二剣神『原罪蛇メデューサ』は感じただろう。
 猟兵とケルベロスたちのユーベルコードによって、彼女の存在は人々にとって未知なる存在ではなくなっていったのかもしれない。
 その『おそれ』を掻き抱くようにして彼女は手を伸ばす。
 拉げた腕。
 切り裂かれた腹部。
 傷だらけの体躯。
 血潮が河のように流れ、滴り落ちる様は、まさしく人の咒いそのものであったことだろう。
「爻爻爻 何故此処まで『おそれ』が集まらない 何故『おそれ』ない? 我が愛し子らは知性を与えたもの ならば『おそれ』なければならない」
「まったくオソレを集めないとならないなんて不便な神サマだね!」
『原罪蛇メデューサ』に対して、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はそう言い放つ。

「ボクなんて無償でボランティアで|無限大《∞》の愛でやってるっていうのに!」
 彼の言葉を『原罪蛇メデューサ』は聞いていなかったかも知れない。
 己の身から滴り落ちる『おそれ』という血液。
 それが元に戻らぬことを憂うようでもあった。
「んもう、人の話を聞かないってどういうことさ! でもね、やっぱり愛なんだよね、愛。
愛があればなんでもできるし、してあげたいって思うのさ! でも、同時にボクも神サマなんだよね。こう畏れられたのさ……お願いだからどうか何もしないでくださいって!」
 なんでだろうねぇ、とロニは笑いながら迫る超次元の蛇の一撃を決戦配備の人型戦術兵器『セラフィム』に受け止めさせる。

「いっけー! 鉄人なんとか号!」
 ロニは『セラフィム』たちが次々と打倒されていくさまを見やる。
 まるで歯が立たない。
 これだけ猟兵達のユーベルコードで弱体化してなお、『セラフィム』は役に立たない。
 出力の差もあるだろうが、それ以上に『原罪蛇メデューサ』の力が強大であるのだろう。
『やっぱりダメか! 済まない、やはり最後は……!』
 湾岸の決戦都市の責任者『エイル』博士の通信にロニは頷く。
「んもーやっぱりボクじゃあなくっちゃね!」
 迫る超次元の蛇の猛攻をかわしながら球体を蹴り出し、未知を切り拓く。

 跳ねるようにして飛び、その球体を蹴ってさらに高く飛び上がる。
 敵は巨体。
 ならば、己の拳はこれを砕く。
 人は『おそれ』を知覚する知性を持つ。同時に、その『おそれ』を別のものへと返ることができる。
 踏み越えることもできるが、それはやはり一握りのものだけであろう。
 故に、人は縋るのである。

 何に。

『おそれ』と同一たる神性に。
 人の心の縁となるのが神であるというのならば、その拳に輝くものはまさしく神性であったことだろう。
「ド――ンッ!!」
 放つ拳の一撃は十二剣神であれど、その瞳に神々しさを感じさせるものであったことだろう。
 理解など及ばなくてもいい。
 ただ手を組み、祈るだけでいい。
 神とはそういうものだ。
 故にロニの拳は『原罪蛇メデューサ』を打ち据え、その巨体を大地に沈めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
は、はは
大敵、大敵だ。それ以外の何者でもない
未知でも恐怖でもない。至極単純だ。壊し甲斐のあるものだ
壊して良いものだ

『禍集破顔』三眼六臂の破壊権現へと再度成る
【闘争心】を燃やし劫火の災害霊障を放つ

|カ《禍》

【継戦能力】怨念を喰らう。人が畏れを抱くように、
己が、人がデウスエクスへ向ける怒りを、恨みを喰らい熱へと換える
自身の躯体に劫火の霊障を纏い、メガスラスター【推力移動】
六腕を構え、メデューサへ腕を叩きつけ【焼却】

|禍禍《カカ》!!

同時使用UC:|『災禍葬頭脳』《歓歓禍禍大虞呪咒》
壊れろと、破壊衝動の|【呪詛】《感謝》を込めて笑おう
楽しいからじゃなく、|頂きます《この笑い声》は感謝の言葉だから
だから笑いを以て戦闘を続行する

|禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍《カカカカカカカカカカカカガガガガガガガガガガガガ》!!!

メデューサの動きに合わせメガスラスターで【空中機動】
巨体を走り焼き、蛇たちを燃える腕から放つ劫火の霊障で【なぎ払い】
呪詛と劫火と【怪力】を込めて、本体の顔を殴り付ける!!



 砕けた大地より立ち上がる巨体があった。
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』。
「爻爻爻 及ばぬ 及ばぬ 私の『おそれ』が及ばぬ所にある力が在る これは」
 想定外であったのか。
 それとも、己が今まさに撃退せしめられんとしている現実を受け入れようとしているのか。いずれにせよ、『原罪蛇メデューサ』は追い詰められている。
 デウスエクスは永遠不滅。
 滅ぼすことも殺すこともできない。
 できるのは先延ばしだけだ。
 けれど、それで諦めるほど人類は諦観に塗れていない。
 絶望さえもしていない。

 これほどまでの戦いが目の間に繰り広げられて尚、『原罪蛇メデューサ』は未知なる存在ではなく、ただの『おそれ』という咒いでしかないと知らしめられているからだ。
「は、はは」
 やはり、と朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は笑った。
 目の前の『原罪蛇メデューサ』は永遠不滅の存在なのだろう。
 だがもう未知ではない。
「ただの大敵、大敵だ。それ以外の何者でもない」
 己に迫る心霊現象。
 身を縛る力も、小枝子は振りほどきながら、その三眼をユーベルコードの輝きに満たす。

 三眼六臂の破壊権現。

 その姿は闘争心に燃える小枝子の心にこそ在所を見せるものであった。
 劫火の霊障が迸り、心霊現象を押し止める。
 力と力の拮抗。
 そう、何も『おそれ』る必要はないのだ。
「結局、貴様は未知でも恐怖でもない。至極単純だ」
「爻爻爻 何故そう思う 愛し子よ」
「壊れ難いだけだ。自分にとっては壊し甲斐があるものだ。壊してよいものだ!」
 劫火が迸り、霊障が心霊現象を押し戻していく。

「|カ《禍》」
 歯が打ち鳴らされる。
 音が響く。
 怨念を喰らうようにして小枝子は歯を慣らし、何かを咀嚼するような素振りを見せた。
 人はどうしようもなく畏れる。
 仕方のないことだ。
 知性があるから。
 心があるから。
 だが、同時に心とは均一なるものでもなければ、全てが同じものでもない。故に、己がそうなのだ。
 人がデウスエクスに向ける怒りも、恨みも、全てが同一ではない。
 自分と他者とを隔てるものは、どうしようもない溝に満ちている。
 理解さえ及ばない。

 何故、という問い掛けすら届かない者がいる。
 ならば。
「|禍禍《カカ》!!」
 それは底しれぬ恐怖を齎す笑い声だった。
 同じ声。
『原罪蛇メデューサ』の上げる笑い声と同じだった。けれど、そこに違いを見出すのならば、小枝子の笑い声には熱があった。
 どうしようもない冷めた笑い声ではなく。
 そこには怒りと恨みを喰らうことによって生み出された熱量があった。
 劫火を纏い、小枝子は六腕でもって『原罪蛇メデューサ』と組み合う。
 片腕が拉げていてもなお、六腕で漸く均衡に持ち込むことができる程の力の差。
 だが、小枝子は笑う。

 壊れろ、と唯それだけを持って笑う。
 破壊衝動は己が|呪詛《感謝》である。己という存在を肯定してくれるのは、敵以外にありえない。
 故に、笑う。
 楽しいと笑うのではなく、|いただきます《この笑い声》は感謝の言葉だからこそ、小枝子は笑いもって軋む六腕と共に一歩を踏み出す。
 ひしゃげる。
 骨身が砕け、六腕が『原罪蛇メデューサ』の力に押し負けるのだ。
 だが、小枝子は笑ったのだ。

「震震震 なぜ笑う」
「感謝しているからだ。ただ、それだけだ」
 意味がわからなかった。
 愛で喰らうというのならば、わかる。
 だが、目の前の存在はそれではないという。感謝していると言うのだ。何故。理解できない。
 愛することと喰らうことが同義たる『原罪蛇メデューサ』にとって、それはあまりにも理解できないことだったのだ。
 その不理解の極みに到達する彼女を小枝子は笑う。
「|禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍《カカカカカカカカカカカガガガガガガガガガガガ》!!!」
 けたたましいと言って良い程の笑い声と共に小枝子は己が六腕に得た『おそれ』を注入し、砕けた六腕を再生する。 
 背を押すメガスラスターが熱で溶け落ちる。
 勢いが削がれた瞬間を『原罪蛇メデューサ』は見逃さず、小枝子を圧倒しようとした。

 だが、彼女の背を押すのは『セラフィム』であった。
 決戦配備の人型戦術兵器が小枝子の背を押し、その再生した六腕を叩き込めと言うようにアイセンサーが煌めいていた。
 そうだ、そうなのだと小枝子は思っただろう。
 呪詛と劫火、そして膂力。
 己が全てを込めた一撃を持って小枝子は『原罪蛇メデューサ』へと拳を叩きつける。
 それは最後の一撃。
 己の渾身を込めた一撃であった。
 砕かれた『おそれ』は霧散して消える。

 よろめく『原罪蛇メデューサ』の体躯は背に生まれた小さな小さな輝きの中に吸い込まれていく。
 殺すことはできない。
 滅ぼすことはできない。
 また何れ現れるであろう『原罪蛇メデューサ』との戦いは果てがないのかもしれない。
 けれど。
「いつでも来い。幾度でもその『おそれ』を祓ってやろう」
 小枝子は拉げた腕と共に六等星の輝きの中に消えゆく『原罪蛇メデューサ』を見やり、十二剣神との戦いの終わりを知らせるように、己が拳を天に突き上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月07日


挿絵イラスト