平安を裂く白妖
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「アヤカシエンパイアの宮中に『妖の裂け目』が生じ、妖の群れが攻め込んできています」
貴族と庶民による平安な世が営まれているかに見える世界。だがそれは荒れ果てた大地に敷かれた織り物のようなかりそめの平安であり、ひとたび「裂け目」が生じれば真実が露わとなる。死の大地にはびこる妖から人々の平安を守り抜く、それがアヤカシエンパイアにおける猟兵の使命だ。
「アヤカシエンパイアで宮仕えする貴族はみな、妖と戦う使命を持った陰陽師――ユーベルコード使いです。そこに強力な妖が『裂け目』を開き、大量の妖を送り込んできました」
この奇襲攻撃に貴族達は動揺し、対応に乱れが生じている。もしここで彼らに被害が出れば、妖に対抗できる戦力が減り、ひいては平安時代の維持にも影響するだろう。直ちに救援に駆けつけ、妖の群れを退治して「裂け目」を閉じなければならない。
「『妖の裂け目』から湧いてきたのは低級の妖ですが、宮仕えをする下級貴族『|雑色《ぞうしき》』に化けて貴族達を惑わせようとしています」
この『化け雑色』は手足が蜥蜴の如く異形化し、尾も生えているため正体の看破は難しくないが、混乱に乗じて宮中に紛れ込まれてしまうと厄介だ。数も多いため全て滅ぼすには、現場にいる貴族との連携も重要になるだろう。
「『妖の裂け目』を開いた敵の大将は、『白酔狐』という妖です」
見た目は神聖な立ち居振る舞いをした白狐だが、その本性は至極残忍で残虐。人をじわじわと蝕むように嬲り殺すのを好むたちで、この一件でも混乱に陥る宮中の様子を眺めて楽しんでいる。なので配下の妖どもが一掃されるまでは表に出てこないだろう。
「自らの力で『裂け目』を発生させることができる強大な妖ですが、皆様の実力であれば討伐は不可能ではありません」
この白酔狐を倒せば『妖の裂け目』も塞がれ、妖の発生も止まる。事件は内々に処理され、庶民は妖の襲来を知ることすらないだろう。そうやっていつわりとまぼろしの結界で真実を覆い隠すことによって、この世界は辛うじて平安を保っているのだ。
「無事に事件が解決すれば、貴族の方々も皆様の功労を讃えてくださるでしょう」
妖に立ち向かえるユーベルコードの使い手ならば、いかなる容貌・氏素性の者であっても重く用いるのがアヤカシエンパイアのしきたりである。宮中の危機を救った猟兵には、歓迎の宴などが催されることもあるかもしれない。
「妖がまだ残っている可能性もありますし、しばらくは歓迎を受けながら現地に逗留したほうが良いでしょう」
もし討ち漏らした『化け雑色』が宮中に潜んでいて、後から悪さを働きださないとも限らない。見回りをするついでに雅な平安貴族の宴を楽しめれば一石二鳥だろう。傍目には遊び呆けているようでも、これもまた平安の世を維持する大事な行事なのだ。
「かりとめといえど平安の時代。人々の暮らしを守るためにも、皆様の力をお貸しください」
説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、アヤカシエンパイアの宮中へと猟兵達を送り出す。
死の大地より押し寄せる妖どもから、まぼろしの「平安の世」を護り抜く。猟兵達の新たな戦いが幕を開けた。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはアヤカシエンパイアにて、宮中に生じた『妖の裂け目』から攻め寄せる、妖の群れを撃退する依頼です。
1章は『化け雑色』の群れとの集団戦です。
貴族に化けて人を惑わせる低級の妖ですが、変化は甘いので正体を見抜くのは難しくありません。戦闘の混乱に紛れて宮中に潜伏されるのが一番厄介なので、なるべく討ち漏らしがないようここで殲滅してください。
2章は群れの大将である『白酔狐』とのボス戦です。
神聖そうな見た目に反して、中身は残忍で悪辣な妖らしい妖です。
この妖を討てば敵の侵攻も止まり、『妖の裂け目』を塞ぐことができます。
無事に戦いを終えれば、3章では平安貴族達が猟兵の労をねぎらってくれます。
宮中での雅な宴に参加しつつ、倒し損ねた妖の生き残りがどこかに潜んでいないか、見回りや戦後のケアも行ってくれれば幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『化け雑色』
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POW : 隠し尾の一撃
【蜥蜴の如き尾】が命中した対象を切断する。
SPD : 蜥蜴草子
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【手足の爪】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 見様見真似の歌詠み
敵のユーベルコードを【和歌を書くための短冊】に呪文として記録し、戦闘終了まで詠唱で使用可能。敵を倒せば戦闘後も永続。
イラスト:佐鳥キヨ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
都々逸防・晩楽
さてさてっと、初任務が地元っちゅうのも何かの縁やさかい、気ぃ張っていこか。
奴さんは化けとるつもりかも知れんが、【雅を解する】っちゅうことを知らんのなら見つけ出すのはカンタンやろ?
逃げられて宮中で暴れられるとかなわんから、「ゆぅべるこぉど」っちゅうので幻の屋敷を作って囲ませてもらおかな。物も柱も最低限の屋敷なら、あの手足で這いまわるのも難儀やろうし。万が一攻撃してきても、【幻影使い】として影分身で誤魔化すことくらいは出来るやろ...多分。
これで御膳立ては出来たやろうし、現地の貴族のセンセに殲滅はお願いしよかな。もちろん、屋敷式神をつこうて協力はするで?
「さてさてっと、初任務が地元っちゅうのも何かの縁やさかい、気ぃ張っていこか」
猟兵にして平安貴族の一人として、宮中に現れた妖退治を引き受けたのは都々逸防・晩楽(平安貴族(従五位下)の平安歌人・f42822)。突如として開いた「妖の裂け目」より、今まさに大量の妖がこちら側の世界に現れ、平安の世を脅かさんとしている。
「奴さんは化けとるつもりかも知れんが、雅を解するっちゅうことを知らんのなら見つけ出すのはカンタンやろ?」
妖は雑色の格好をして宮中に潜伏しようとしている、という話も事前に聞いていた彼は、混乱の渦中にある人々の姿や立ち振舞を見比べ、即座に怪しい奴を暴き出す。生まれながらの平安貴族の目にかかれば、外面だけ取り繕った輩の違いなどお見通しだ。
「あんさんらやな」
『ゲゲッ?!』『なぜバレた!』
晩楽に正体を見抜かれた『化け雑色』達は、汚い口調で喚き散らしながら慌てて逃げ出そうとする。が、ここはもう彼の【まぼろしの歌詠み】の術中。和歌から作り出された幻のからくり屋敷が、妖どもの行く手を遮り、退路を阻む。
「逃げられて宮中で暴れられるとかなわんから、『ゆぅべるこぉど』っちゅうので囲ませてもろたで」
『グヌヌ……おのれぇ!』『忌々しい貴族めが!』
和歌にて詠った光景を現実のものとする、これぞ平安歌人の妙術。物も柱も最低限の屋敷ならば、蜥蜴じみた化け雑色の手足でも這い回るのは難儀だろう。袋の鼠となった連中はますます語気を荒くし、牙を剥いて襲いかかってきた。
『八つ裂きにしてやるッ!』
醜い妖の本性を露わとし、鉤爪を振るう化け雑色の群れ。その単純で無粋な暴力を前に、雅な平安歌人はあっけなく引き裂かれる――ように、見えた。しかし晩楽の身から血飛沫が吹き出すことはなく、その姿は幻の如くかき消えて、また別の場所に忽然と現れる。
「どないしたん? ボクはこっちやで」
『なッ……このォ!』
幻影使いである彼にかかれば、己の所在を影分身で誤魔化すことくらい朝飯前。虚実を自在に操る業前を披露され、敵はすっかり翻弄されていた。何度襲いかかったところでそこに獲物の実体はなく――そうこうしている間に、宮中にいた他の貴族らが駆けつけてくる。
「これで御膳立ては出来たやろうし、現地の貴族のセンセに殲滅はお願いしよかな」
「あなや、見事なり!」「あとはお任せあれ!」
宮中の貴族達は見事に敵を暴き捕らえた晩楽の手腕を讃え、各々が得意とする陰陽の術で化け雑色どもを攻撃する。
彼らも晩楽と同じ、平安の世を守る使命を授かった生まれながらの霊能者だ。体勢を立て直せばこれしきの低級妖に遅れは取らない。
「もちろん、ボクも協力はするで?」
晩楽も女房としての業をふるい、屋敷式神を使って彼らの戦いをサポート。幻の屋敷に閉じ込められた化け雑色は、瞬く間に駆逐されていった。風流を解さぬ身で宮中に土足で踏み込んだことを、彼奴らはきっと後悔しただろう――。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
妖怪であることは隠す
あくまで人に近い形の別種族の猟兵というスタンス
人に化け、人に紛れ、内より人に害するとは妖とは姑息で卑怯で情けないモノであるな。
化けた妖に自分のことを棚に上げて声をかける
今は吸血鬼の能力、病に関するUCは使用しない
切断は人目につかないように誤魔化す
ただの身体能力がすごい猟兵を装う
逃げる妖を優先で襲う
人が襲われていたら今は助ける
人の貴族には今は友好的
文化は異なっても貴族的礼儀は通じると考えている
貴公等よ、あのような妖の言葉を信じるでないぞ。
ああいったモノは身内の振りをして人を騙し、惑わせるモノであるからな。
今は味方の振りをするので妖怪の本性を人には見せない
「人に化け、人に紛れ、内より人に害するとは妖とは姑息で卑怯で情けないモノであるな」
自分もまた人に化けていることは棚上げして、アヤカシエンパイアの妖どもをあげつらうのはブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)。怪異なれば本来は堂々とヒトを恐れさせてこそ。こちらの世界の妖とカクリヨファンタズムの妖怪は別種族なのだろうが、それ故に相容れぬことは明白であった。
『なにおう……?!』『言わせておけば!』
かくも真っ向から罵られれば、『化け雑色』達も黙ってはおれぬ。陰陽師どもが張り巡らせた忌々しき「平安結界」さえ無ければ、このようにコソコソする必要もないと言うのに。なればこそ、多くの貴族が集まる宮中に打撃を与える今回の作戦は、妖にとって大きな意義があった。
『この世は我ら妖が支配するのだ』『邪魔をするな!』
平安の世を滅ぼさんとする邪悪な妖どもは、衣の下にしまった【隠し尾の一撃】をブラミエに食らわせようとする。
だが彼女は俊敏な身のこなしでひょいと攻撃を躱すと、逆にむんずと尻尾を掴み、引っ張り倒す。その人間離れした怪力に、敵は「ぐえっ?!」と悲鳴を上げた。
「あまり調子に乗らぬことだ」
今のブラミエは妖怪であることを隠し、あくまで人に近い形の別種族の猟兵というスタンスで振る舞っているため、吸血鬼に由来する能力、病に関するユーベルコードは使わない縛りを設けている。だが武器も特殊能力も用いない純粋な身体能力だけでも、並みの人間や低級の妖を圧倒するには十分だった。
『ヒッ……拙い、散れッ!』
たちまち恐れをなした化け雑色どもは、散り散りになって【恐怖伝承・暴威の主】から逃れようとする。だが、そんな臆病者どもをブラミエが許すはずもなく、逃げた者から優先的に標的とされる。宮中がいかに広くとも、吸血鬼の足から逃げ切ることは不可能だ。
「おや? そなたは……」
『た、助けてく……ぎゃッ!!』
化け雑色が逃げた先には、たまたま本物の貴族がいる。戦いに巻き込まれた負傷者を装って助けを求めるが――余計な口をきく前に、追いついてきたブラミエに叩き伏せられた。ただ拳で殴りつけただけで、妖の体躯が床にめり込む。
「貴公等よ、あのような妖の言葉を信じるでないぞ」
ぱんぱんと手を払って血を拭いながら、ブラミエは貴族達に友好的な態度で呼びかける。文化は異なれども貴族的な礼儀は通じると考え、高貴な立ち振舞を心がけてみたが、どうやら相手の心象は悪くはなさそうだ。少なくとも、妖の一味と混同され、いきなり攻撃されるようなことは無かった。
「ああいったモノは身内の振りをして人を騙し、惑わせるモノであるからな」
「おお、助けてくださったのですな……かたじけない」
よくよく見ればたった今殴り倒されたモノが人ではなく妖であることはすぐに分かる。もし同僚と誤認して手を差し伸べていれば、不意を突かれていただろう。危ういところを救ってくれた異界の猟兵に、貴族は心から感謝を述べた。
「余としても奴らの狼藉は見過ごせぬ。ともに妖を討ち果たそうではないか」
「これは心強い! 私めも精一杯お力になりましょうぞ」
かくして平安貴族の信用を得たブラミエは、あくまで妖怪の本性を見せず、ただの身体能力がすごい猟兵を装って、人の味方の振りをする。人が襲われていれば助けもしよう、切断など凄惨な技は人目につかぬよう誤魔化しもしよう。ただ、その振りをいつまで続けるかは彼女の気分次第だが。
『く、口惜しや……!』
少なくとも現状において、ブラミエの存在が宮中を守護する者らにとっては大きな助力であることは間違いなく。
一時は調子に乗っていた化け雑色どもは次々と倒され、また潜伏していた者も見つけだされ、力ずくで調伏されるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
禰宜・剣
…あたしは平安貴族としては未熟…だけどそれでも上位貴族達にも意志は負けるつもりはないわ!
「その意気だよ剣ちゃんー」(のほほんと狩衣の黒髪少年の姿の使役鬼
あんたらを通させる訳にも…逃がさせる訳にもいかないわ!
UC発動
この混乱で侵入しようとしてるみたいだけど…そうはさせないわよ!
あたしに陰陽の技の素質はなくてもこういう事は出来る!
通さず足止めして後は刀で切り捨てる!
泰河叔父様もお願い!
「僕も頑張るんだよー」
泰河叔父様は基本鬼の手で殴り
「本当は陰陽師としても戦いたいんだけどねー?今の僕に出来るのはこれくらいかなー?」
…ごめんなさい
「剣ちゃんは気にしないー♪それにすぐ色々出来る様になるんだよー♪」
「……あたしは平安貴族としては未熟……だけどそれでも上位貴族達にも意志は負けるつもりはないわ!」
未だ経験不足を自覚しながらも、使命に燃える若き平安貴族、禰宜・剣(銀雷閃・f42842)。没落した禰宜家を再興するためにも、妖どもの跳梁跋扈を許すわけにはいかない。ここ宮中には大勢の貴族がいるが、彼らに任せる気なんて微塵もなかった。
「その意気だよ剣ちゃんー」
そんな意気盛んな剣を応援するのは、狩衣を纏った黒髪少年の姿の使役鬼。その名を『泰河』という彼は、生前は剣の叔父にあたる陰陽師であり、死後は羅刹に変じて剣を助けるために行動する。のほほんとした雰囲気だが、その身から発せられる霊威は尋常ではなかった。
「あんたらを通させる訳にも……逃がさせる訳にもいかないわ!」
『妖の裂け目』から溢れ出した妖の群れに立ちはだかった剣は、刀を構えて勇ましく叫ぶ。奴らの狙いは宮中の貴族に紛れ込み、平安の世に混乱をもたらすこと。卑劣な企みをもって現れた『化け雑色』どもの好き勝手にはさせない。
「この混乱で侵入しようとしてるみたいだけど……そうはさせないわよ!」
『ウグッ?! 足が動かん……貴様!』
事前に貼っておいた【凶方暗剣符】の力によって、妖どもの移動方向は制限される。自分を無視して宮中に入り込まれないための策だ。ここを通りたくば私を倒していけとばかりに、刀を突きつける少女武者から敵は目を逸らせない。
「あたしに陰陽の技の素質はなくてもこういう事は出来る!」
『おのれッ……ぎぇぇぇっっ!!!』
道を通さず足止めした後は、片っ端から切り捨てるのみだ。陰陽師にはなれなかった剣の武器は、坂東武者仕込みの武術。稲妻の如き踏み込みから繰り出される斬撃は、一刀のもとに化け雑色を両断し、断末魔と共に冥土に送り返す。
「泰河叔父様もお願い!」
「僕も頑張るんだよー」
可愛い姪っ子の頼みに応えて、泰河も鬼の手で妖どもをぶん殴る。緩そうな雰囲気に反してその打撃は豪快であり、単純な膂力だけで低級の妖を葬るだけの強さがある。「ぐぎゃぁっ?!」と汚らしい悲鳴を上げて、化け雑色は次々に潰されていった。
「本当は陰陽師としても戦いたいんだけどねー? 今の僕に出来るのはこれくらいかなー?」
使役鬼の能力は使役する主人の実力に左右される。生前は凄腕の霊能者だった泰河でも、今はその能力を存分に発揮することはできなかった。これでもご覧の通り、そこらの式神よりは遥かに強大だが、本人以上に剣にとってはもどかしさを感じる事実である。
「……ごめんなさい」
「剣ちゃんは気にしないー♪ それにすぐ色々出来る様になるんだよー♪」
己の未熟を謝罪する剣に、鷹揚にひらひらと手を振る泰河。叔父の贔屓目を抜きにしても、彼女の才気は確かなものだ。まだ13歳では何もかもできなくて当然――これから経験を積むことで、彼女は飛躍的に成長を遂げていくだろう。
そんな叔父の信頼と期待に報いるためにも、剣は「はい!」と元気よく応え、刀を振るう。今は自分にできることを精一杯やること。それ以外に近道など無いことを知っているから、彼女は目の前の妖退治に勤しむのだった。
大成功
🔵🔵🔵
無門・華蓮
かりそめの平安とはいえ、それを人知れず守る事の苦労は想像に難くない。
これも仏の導き。急ぎ貴族たちに加勢するとしよう。
戦いはわしが引き受けるとして、まず動揺している貴族たちを落ち着かせる。
「わしの聲を聴け。そして全てを受け入れよ」
言葉の意味?そんなものは自分で考えるが良い。全ては己の思うがままだ。
これで場の混乱は鎮まったか。わしの言葉が解せず、混乱している者もいるが今は捨て置く。
次は雑色に化けた妖の対処だがこれは容易だな。こんなお粗末な変化ではわしの目は誤魔化せん。
一体ずつ【灰燼拳】にて捻り潰し、逃げる者は【法輪】を投げて屠るとしよう。
どうだ、わしの法力(物理)もなかなかのものだろう。
「かりそめの平安とはいえ、それを人知れず守る事の苦労は想像に難くない」
仏門に身を投じ即身仏となりながら、極楽浄土であらゆる快楽を体験したことで、享楽に耽る奇人と化した破戒僧、無門・華蓮(乾坤獨歩・f42835)。そんな彼女にとっても平安時代を守護する貴族達の働きは敬意に値するものであり、また妖による平安の崩壊も望むものではなかった。
「これも仏の導き。急ぎ貴族たちに加勢するとしよう」
極楽の法衣に身を包み、法輪と大連珠を携えて、淑やかに宮中へと向かう華蓮。この立ち居振る舞いだけを見れば、さぞ徳の高い尼僧のようだ――それも決して間違いではないのだが。仏僧の最高位「阿闍梨」の称号を戴き、最強の力たる神威を操る彼女を、単なる生臭坊主と侮ってはならない。
「わしの聲を聴け。そして全てを受け入れよ」
宮中にやって来た華蓮はまず、動揺している貴族達を落ち着かせるために声をかける。ここに居るのはみな妖退治の使命を背負う霊能者だが、突如開いた『妖の裂け目』による混乱は大きい。まずはこれを鎮めぬ事には妖の思う壺だ。
「法師様、仰る意味がよく……」
「言葉の意味? そんなものは自分で考えるが良い。全ては己の思うがままだ」
もっとも彼女の説法は独特で、世間に知られるそれとは異なる『極楽浄土』のイメージに基いている。快楽や性愛を否定せず、己が望むがままにあれという教えは、寛容だと肯定的に捉えられることもあれば、既存の価値観にそぐわず困惑されることもあるだろう。
「これで場の混乱は鎮まったか」
華蓮の言葉が解せず、混乱している者もいるが今は捨て置く。総体として貴族達が落ち着きを取り戻したなら良い。
次は雑色に化けた妖の対処だが、これは容易だ。しょせんや低級な妖の力量では完璧な人に化けることなどできず、文字通り尻尾が出てしまう。
「こんなお粗末な変化ではわしの目は誤魔化せん」
『ゲッ、バレた!』『ぐぬぬ、おのれ!』
一目で正体を見抜かれた『化け雑色』は悔しそうに唸り、かくなる上はと【隠し尾の一撃】を食らわせようとする。
が、華蓮はそれに合わせて【灰燼拳】を放ち、純粋な破壊力にて粉砕する。肉体は享年時のままの幼い容姿ながら、その力は想像を遥かに超えていた。
『グギャァ?!』『ヒッ……これはいかん!』
仲間の一人が一瞬にして捻り潰されたのを見て、力の差を思い知った化け雑色どもは、慌てて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。そんな奴らの背後から、華蓮は法輪を投げつける。ビュオンと風を切って飛んでいった御仏の法具は、たちまち妖の血に染まった。
「どうだ、わしの法力もなかなかのものだろう」
『ギエェェェーーッ!!! く、口惜しや……』
どう見ても法力というよりは力技で妖を地獄送りにしつつ、得意げな様子で胸を張る華蓮。その姿が妖には恐怖を、貴族には畏敬をもたらしたのは言うまでもない。少なくともこの場において、彼女の法力(物理)に敵う者などいないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
すでに滅びし世界……しかし人々は未来を諦めていない
そのか細い希望を手折ろうとするならば、我が金剛不壊にて斬り捨てる
身に纏うのは刀を携えたセーラー服
宮中の貴族に手足を晒し、私自身が妖ではないことを証明
次いで幾人かの貴族の手足を検め、彼らが化け雑色ではないことを確認
即席の徒党を組んで宮中を警邏
油断なく、注意深く、観察しながら練り歩く(情報収集・集中力)
妖を発見すれば――抜刀! 吶喊!(ダッシュ) 間髪入れずに斬り捨てる!(切断)
人に紛れようと逃げを打てば、徒党を組んだ貴族に凶方暗剣符や臘月陰陽符で足止めしてもらう
【鏖殺の魔剣】でより効率よく次々と斬り捨てる
「すでに滅びし世界……しかし人々は未来を諦めていない」
まぼろしの結界に覆われたいつわりの平安であれ、それを守り抜こうとする者達のたゆまぬ努力に、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は心打たれた。真実がどれほど絶望的でも、妖を殲滅し世界を取り戻すために、アヤカシエンパイアの人々は戦い続けているのだ。
「そのか細い希望を手折ろうとするならば、我が金剛不壊にて斬り捨てる」
今まさに窮地に陥る平安貴族の救援として駆けつけたオリヴィアは、セーラー服を身に纏い、日本刀を携えていた。
得物はともかくとして、平安時代の常識からするとかなり奇抜な服装だが、それには手足を晒すことで自分自身が妖ではないことを示す意味もあった。
「申し訳ありませんが、貴方達の手足を検めさせてください」
「ふむ、仕方ないのう」「これでよいかえ?」
身の潔白を証明した後、次いでオリヴィアは幾人かの貴族の手足を検め、彼らが『化け雑色』ではないことを確認すると、即席の徒党を組んで宮中を警邏する。『妖の裂け目』から出現した妖どもは、すでに混乱に乗じて紛れ込んでいると考えられ、そやつらを発見して退治するのが彼女の目的だった。
「妖の変化は完璧ではありません。手足の鱗や尻尾に注目してください」
「あいわかった」
変化を見抜くポイントを伝え、油断なく、注意深く、観察しながら練り歩く。このような非常事態につき、貴族達も彼女の警邏に協力的だ。たとえ貴族でなくとも妖に立ち向かう力と志を持つものは厚遇する。氏素性など選んでいられないのがこの世界の実情なのだ。
「――抜刀! 吶喊!」
『なッ、やめ……ギエェーーーッ!!』
そうして宮中に潜んだ妖を発見すれば、間髪入れずに斬り捨てる。弁明の暇もなく両断された相手は獣のような悲鳴を上げ、その醜き正体を晒した。一匹見つければ立て続けに二匹、三匹と、宮中の奥深くまで潜り込んでいた妖が次々に見つかる。
『おのれ、あと少しだったものを……!』
計画を暴かれた妖は悔しげに舌打ちすると、再び人に紛れようと逃げの一手を打つ。正面切っての戦いでは分が悪いと彼らも理解しているのだ。だが、そう簡単に逃げられるとは思わぬほうがいい――ここにはオリヴィアだけでなく、妖退治のエキスパートである平安貴族がいる。
「皆さん!」
「うむ、任せよ!」
オリヴィアが合図を出せば、徒党を組んだ貴族らが【凶方暗剣符】や【臘月陰陽符】を放ち、妖の移動を妨害する。
足止めを食らった化け雑色は『うげっ?!』と慌てふためくが、時すでに遅し。即座に切り込んだオリヴィアの刀で、刹那のうちに首を刎ねられる。
「禍き凶刃よ、生き血を啜れ――!」
【鏖殺の魔剣】を発動した彼女の剣技は敵を斬るたびにその弱点を覚え、より効率的に生命を奪う術を極めていく。
次々と斬り捨てられた妖の血で、彼女のセーラー服と銘刀「金剛不壊」は赤く染まり。その姿は凄絶ながら美しく、共に戦う者達にとっては頼もしき勇姿であった。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
イクシア(f37891)と
本家の陰陽師のいる世界ね。興味はあるけど、あたしは自分なりに術を極めていく。我流なんて言わせない。
それにしても宮中か。派手なことは出来ない。
なら、見鬼法でユーベルコードの流れを「見切り」、化け雑色の気配を察知するわ。霊視すれば人と妖の区別なんて簡単。
イクシア、あの辺に固まってるのが妖。殲滅お願い。
あたしも単体の妖に「破魔」を込めた薙刀を振るって、「衝撃波」「斬撃波」で攻撃する。
イクシア、敵の動きはどう?
反撃は相手のUCの発動で分かるから、薙刀で「受け流し」攻撃を逸らす。
蜥蜴の尻尾ね。切り捨てられるあなた達みたい。さあ、次の相手は誰かしら? 纏めてかかってらっしゃいな。
イクシア・レイブラント
ゆかりさん(f01658)と。
了解、ターゲット補足。
ゆかりさんが識別してくれた敵に対し、
エクスターミネーターで[レーザー射撃、威嚇攻撃、時間稼ぎ]、【強襲支援】。
足止めした相手に接近して大型フォースブレイドで[なぎ払い]。
敵の攻撃は回数が増えた分もシールドビットで[盾受け]。
今のゆかりさんは視力を失っているから、
常に安全な場所で戦えるように、手を繋いで引き寄せたり、[情報伝達]でナビゲートする。
あと、戦闘をこなしながら隠れ潜む敵を誘い出す。
立体映像を被せたデコイドローンを宮中に先行させて[索敵、おびき寄せ、変わり身]。
奥にもいるみたい。私に掴まって。
ゆかりさんを抱きかかえて飛翔。奥まで進む。
「本家の陰陽師のいる世界ね。興味はあるけど、あたしは自分なりに術を極めていく。我流なんて言わせない」
陰陽の技を磨いた平安貴族によって守護される世界、アヤカシエンパイア。世界は違えど東洋呪術の専門家として、村崎・ゆかり("|紫蘭《パープリッシュ・オーキッド》"/黒鴉遣い・f01658)は対抗心を抱いたようだ。これまでの修行の成果が妖にも通じるかどうか、腕試しの相手としては丁度いい。
「それにしても宮中か。派手なことは出来ない」
いくら妖が紛れ込んだといっても、ここは平安の都の中心。大勢の貴族がいる中で無造作に暴れようものなら、逆に混乱を拡大させてしまう。妖側もそれが分かってここに『妖の裂け目』を開いたのだろう、なかなか悪辣な輩が裏で糸を引いているとみた。
「でも、霊視すれば人と妖の区別なんて簡単」
そこでゆかりは【見鬼法】でユーベルコードの力の流れを見切り、『化け雑色』の気配を察知する。通常の光による視覚から切り替わった彼女の目には、常人には視えないものが視えている。流石は宮中だけあって、複数の力の流れが複雑に渦巻いているが――。
「イクシア、あの辺に固まってるのが妖。殲滅お願い」
「了解、ターゲット補足」
ノイズに惑わされずに標的を暴きだしたゆかりは、同行中のイクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)に指示を出す。彼女はゆかりが識別した敵を即座にロックオンすると、アームズフォート「エクスターミネイター」を起動。分離浮遊させた主砲を思念操作でコントロールし、エネルギーをチャージする。
「エクスターミネイター展開、索敵完了。強襲支援を実行する」
砲塔より発射されたレーザーが浴びせられると、化け雑色は『ギャッ?!』と悲鳴を上げて尻尾を出した。顔や服装はうまく人に化けられていても、鱗に覆われた蜥蜴のような手足は明らかに人外のそれ。しょせんは低級の妖どもだ。
「追撃する」
『くっ、なぜバレた……グゲェェ!?』
そのままイクシアは【強襲支援】で足止めした相手のもとに切り込んでいくと、大型フォースブレイドを一閃する。
サイキックエナジーでできた光の大剣に薙ぎ払われ、化け雑色どもが断末魔の悲鳴を上げる。この世界には存在しない超科学兵器の火力は、妖にも有効なようだ。
「あたしも行くわ」
続いてゆかりも薙刀『紫揚羽』を振るって、破魔の霊力を込めた衝撃波と斬撃波を浴びせる。【見鬼法】の視界から敵の妖気が消えていくのが視えるので、どうやら効き目はあるらしい。油断なく気配を探りながら、彼女は相方に声をかける。
「イクシア、敵の動きはどう?」
「こっちに来てる。気をつけて」
敵の位置や動きは霊視で分かっても、通常の視力が失われていると建物の壁や柱の位置が分からず、思わぬところで躓く恐れがある。それをフォローするためにイクシアはゆかりと手を繋いで引き寄せたり、常に安全な場所で戦えるようにし適時ナビゲートを行っていた。
『グギギ、調子に乗るなよ……!』
正体を暴かれこのままやられる訳にはいかないと、化け雑色どもも決死の抵抗をする。蜥蜴の四肢を活かして天井や壁を這い回る【蜥蜴草子】、そして【隠し尾の一撃】による奇襲性の高い反撃は、猟兵にとっても侮れない威力を秘めていた。
「上から来る」
「ええ、視えてるわ」
対するイクシアは「シールドビット」を展開して蜥蜴の爪を防ぎ、ゆかりは薙刀で尻尾を受け流し、攻撃を逸らす。
敵がユーベルコードを使ってくれたほうが、むしろ【見鬼法】ではっきり動きが分かるようになる。二人の連携に隙はなく、互いの死角をしっかりとカバーしていた。
「蜥蜴の尻尾ね。切り捨てられるあなた達みたい」
『なにおうっ……グエェーッ!?』
挑発に乗って牙を剥いた化け雑色が、次の瞬間ゆかりに斬り倒される。どう粋がろうと雑兵はしょせん雑兵だった。
一方でイクシアのほうは、戦闘をこなしながら立体映像を被せたデコイドローンを先行させて、まだ宮中に隠れ潜む敵を誘い出そうとしていた。
「奥にもいるみたい。私に掴まって」
「わかったわ」
この場にいた敵を掃除し終えると、イクシアはゆかりを抱きかかえて「サイキッククリアウィング」で飛翔。デコイの反応を辿りながら先に進む。『裂け目』から溢れ出した妖はまだまだ大勢いるようで、宮中全体が騒然としていた。
「さあ、次の相手は誰かしら? 纏めてかかってらっしゃいな」
「ターゲット再補足。攻撃準備完了」
群れなす異形の妖どもに、怯まず立ち向かうゆかりとイクシア。どれだけの数が紛れ込もうと見逃すつもりはない。
その活躍ぶりは宮中の貴族も感嘆するほどで、討ち倒された妖は数十体に上る。それでも疲れを見せることもなく、彼女らは都の平安を守るために戦い続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
一見ごく普通の古風で平和な街並みに見えますが
それらがすべて結界で作り上げたものとは驚きです!
どうすればこんな凄い結界ができるのか仕組みを知りたいので
大活躍して重宝されるよう頑張ります!
まずは{ダーティアイ}で『情報収集』です!
裂け目と同じ瘴気を纏った方を探し出してロックオンします!
後は先ほどの名乗りで集めた視線をチャージして…
『恐れ慄け!泣き叫べ!終焉告げる花よ咲け!』
【酷悪!濁穢花蕾狂咲】!
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
雅な宮中に降臨する魔界の悪魔。新世界でも平常運転のダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は、まずは高らかに名乗りを上げて衆目を引き付ける。周囲に居合わせた平安貴族も妖たちも、一瞬呆気にとられて彼女のことを見ていた。
「一見ごく普通の古風で平和な街並みに見えますが、それらがすべて結界で作り上げたものとは驚きです!」
一方のダーティも、この世界の風景を興味深そうに観察している。妖によって滅ぼされた死の大地の上に、織り物を被せるように「平安結界」で構築された虚構の平穏。いわば二層構造となっているのがアヤカシエンパイアの特徴だ。平安という幻想を作り上げ、維持している陰陽師たちの力には、まったくもって驚嘆を禁じ得ない。
「どうすればこんな凄い結界ができるのか仕組みを知りたいので、大活躍して重宝されるよう頑張ります!」
悪魔らしく野心を隠そうともしないダーティは、いざ宮中での妖退治に挑む。ここで有能さを発揮できれば、貴族の生まれでない彼女でも丁重に扱われるだろう。氏素性を問わず、妖と戦えるユーベルコードの使い手が重く用いられるのがアヤカシエンパイアである。
「まずはダーティアイで情報収集です!」
魔力や電流等の流れを見ることもできるダーティ自慢のオッドアイは、『妖の裂け目』を通じて此方側に漏れ出す、死の大地の瘴気を捉えていた。それと同じ瘴気を纏っている者がいれば、そいつは人間のふりをした『化け雑色』だと分かる。
「あなたと、あなたと、それとあなた! 妖さんですね!」
「なんと?!」『チィッ、バレたか!』
ダーティにビシッと指を突きつけられると化け雑色はたちまち正体を現し、蜥蜴のような手足と尻尾が露わになる。
いつの間にこんな所まで潜り込まれていたのかと、貴族達も吃驚だ。ダーティの眼力がなければ事態の発覚は遅れ、もっと深刻な事態になっていたかもしれない。
『こうなれば場所を変えてもう一度……!』
「もう遅いです!」
正体のバレた妖どもは逃げ出そうとするが、すでに彼らはダーティにロックオンされている。最初に名乗りを上げた時、自身に集まった注目の視線――視線誘導の悪魔である彼女は、それを「ゲイズ・パワー」に変換してチャージできるのだ。身体から溢れ出した赤紫色のオーラが矢印の形を取り、目前のターゲットに突きつけられる。
「恐れ慄け! 泣き叫べ! 終焉告げる花よ咲け!」
いかにもワルそうな詠唱と共に発動する【酷悪!濁穢花蕾狂咲】。矢印のオーラが無数の閃光となり解き放たれる。
敵は壁や天井を這って逃げようとするが、ターゲットを自動追尾する悪魔の矢から、逃げ切れる者などいるものか。
『『ギ、ギエエェェェーーッ!!!!?』』
矢印に射抜かれた化け雑色どもの断末魔が宮中に響き渡る。しょせん低級の妖が悪魔に太刀打ちできるはずもない。
その光景は他の貴族達の目にも入っており、活躍を見せつけるという目的はバッチリ果たされただろう。それでも、まだ満足していない様子のダーティは、次のターゲットを探して宮中を飛び回るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
桐藤・紫詠
殲血の大祓矢よ、余の血を破魔矢に
そしてUCの触媒となりなさい
貴族に化けた妖に自身の血を用いて作られた破魔矢を放ち、UCを発動
我が地に触れた妖は、無限に時間を輪廻する『世界と生命の回帰』を五感に埋め尽くされる
このまま、我が妖滅の血を食らうと良いでしょう
宮中の 謀に紛れる 彼岸かな
一句読み、歌人としての力を紡いでいく
彼岸より来たりしもの、妖よ
平安の世を脅かすそのものに、余はこう告げましょう
ーー無間の輪廻の果に、朱雀に啄まれよ
瞬間、妖が燃え上がりながら啄まれるように身を削らせていくーー
「殲血の大祓矢よ、余の血を破魔矢に。そしてユーベルコードの触媒となりなさい」
貴族に化けた姑息な妖どもに、紅い血の矢を番えるは桐藤・紫詠(黄泉詩の皇族・f42817)。彼女は若年ながらも皇族のひとりであり、その身には妖を滅する高貴な血が流れている。故にこそ、平安を脅かす妖と戦うことは彼女にとって義務であり、宿命であった。
「余は謡う、この世界を浄土とする為に。我が緋色に触れた知性体よ、あえて余は生命と世界の真理に抗えなかった輪廻を汝に見せよう」
体外で増幅した紫詠の血は『大祓』の概念を宿した矢となって『化け雑色』の胸に突き刺さる。【平安詩浄土変・真理とは鈍色なるかな】の効果により、その血に触れた者は無限に時間を輪廻する『世界と生命の回帰』に五感を埋め尽くされる。すぐに血を除去しなければ正気を保っていられないだろう。
『グエェッ!?!』『あ、頭が割れそうだ……!!』
時の輪廻に囚われた妖どもは頭を抱えてのたうち回り、悲鳴を上げる。一体どのような光景が彼らの目に視えているのか、それを識っているのは紫詠だけだろう。これが皇族の家系に伝わる術式のひとつ、妖を滅するために編み出された血の秘儀である。
「このまま、我が妖滅の血を食らうと良いでしょう」
前後不覚となった妖どもに、紫詠は容赦なく追加の矢を射掛ける。またたく間に矢衾となった連中は、皇族の血の力で悶え苦しむ。だが、これで終わりではない――殲血の大祓矢を撃ち終えた彼女は、おもむろに和歌を詠むための道具を取り出した。
「宮中の 謀に紛れる 彼岸かな」
一句詠み、平安歌人としての力を紡ぐ。世界を維持する要でもあるその異能は、聞くものの認識を歪め、歌に詠まれた光景を現実のように錯覚させる。風雅なる「平安の世」で民草から真実を覆い隠すこともできれば、地獄の如き光景を詠い上げ、敵を責め苛むことできる。
「彼岸より来たりしもの、妖よ。平安の世を脅かすそのものに、余はこう告げましょう――無間の輪廻の果に、朱雀に啄まれよ」
その瞬間、妖どもが燃え上がりながら啄まれるように身を削らせていく。妖を滅する皇族の血と、平安歌人の和歌の合わせ技で、彼らはさぞや恐るべき苦痛を味わっていることだろう。もはや断末魔の悲鳴すら上げられぬくらいにだ。
『『――……!!!!!?!』』
絶望的な輪廻の中で、先に限界を迎えたのは彼らの肉体か、それとも精神か。いずれにせよ紫詠の矢を受けた妖どもは一人残らず絶命し、彼岸へと送り返されることとなる。宮中にて知らしめられた皇族の威光は、未だ平安の世が盤石であることを天下に見せつけるが如しであった――。
大成功
🔵🔵🔵
暁星・輝凛
……とんでもない世界だな、ここ。
さて。何だろうと、僕のやることは変わらない。
守り切る、だけだ。
「えーと、貴族の方々? 見るべきは頭じゃなく、手足だ。偽物に惑わされないでね!」
僕自身も【心眼】を駆使して敵を見抜くけど、
判別方法を伝えておけば、貴族たちの混乱も抑えられるはずだ。
貴族の人たちには連携して人の壁として敵を包囲して貰う。
逃げ場を潰して、後は僕が片付ける!
UCを発動。
141本の光の刃で、戦場内の敵を一斉に斬り付ける。
かりそめだろうと何だろうと、そこに生きる人がいるなら、僕は迷わない。
「――僕を呼ぶ人がいるなら、必ず応える。何をどれだけ敵にしても、ね!」
そういう生き方を選んだのが、この僕だ。
「……とんでもない世界だな、ここ」
一見すると雅で穏やかな世界なようでいて、その真実は妖が跳梁跋扈する死の大地。陰陽師の張った結界によって、かりそめの平安を享受する――それがアヤカシエンパイア。暁星・輝凛(|獅輝剣星《レディアント・レオ》・f40817)が言う通り、とてつもない危機に見舞われた世界であった。
「さて。何だろうと、僕のやることは変わらない。守り切る、だけだ」
故郷の世界でもそのために戦いの人生を歩んだ彼は、終戦後も鍛錬と実戦を重ね、ここにいる。全ては守るべきものを守るために。この世界が妖に脅かされているのなら、そやつらを斬り、「平安の世」を守り抜くのが自分の使命だ。
「えーと、貴族の方々? 見るべきは頭じゃなく、手足だ。偽物に惑わされないでね!」
混乱の渦中にある宮中に駆けつけた輝凛は、貴族達に忠告を伝える。『妖の裂け目』より現れた敵は『化け雑色』、人を欺く妖だが変化の精度はそれほど高くはない。彼自身も心眼を駆使して正体を見抜くが、判別方法を伝えておけば貴族達の動揺を抑えられるはずだ。
「なるほど、手足か」「よき事を教えてもらったわ」
敵味方の見分けが付くようになれば、妖退治を生業とする平安貴族の立ち直りは速い。生まれ持った霊能力や陰陽術を駆使して、妖どもに反撃を仕掛けていく。正体を暴かれた化け雑色は『ゲゲッ?!』と悲鳴を上げ、惑わす立場から追い立てられる立場となった。
「逃げ場を潰して、後は僕が片付ける!」
「あいわかった!」
輝凛の要請に応じて貴族達は連携し、人の壁として化け雑色を包囲する。化け直して人混みに紛れ込む隙を与えなければ、切った張ったで遅れを取るつもりはない。愛剣「レグルス・レガリア」を抜いて前に出てきた輝凛を見て、敵は明らかに狼狽えた。
『グヌヌ……かくなる上は!』
せめて一矢報いようと【蜥蜴草子】を発動し、手足の爪を振りかざす妖ども。対して輝凛も【殲剣黎明刃・人】を発動――141本の光エネルギーの小剣を召喚し、捕捉した敵を一斉に斬り付ける。宮中に乱れ舞う閃光の刃は、彼の気高き意志の体現であった。
「かりそめだろうと何だろうと、そこに生きる人がいるなら、僕は迷わない」
この平安がまぼろしでも、その生命は本物だ。妖に脅かされながらも足掻き続ける、勇敢な者達の人知れぬ戦いも。
では輝凛に迷う理由などなかった。「獅子座の騎士」の名にかけて、この剣は誰かを守るためにこそあるのだから。
「――僕を呼ぶ人がいるなら、必ず応える。何をどれだけ敵にしても、ね!」
『お、おのれェ……グギャァァーーーッ!!!』
誇り高き信念のもと、振るう斬撃は極光を呼び、その輝きに照らされて妖どもは消え去っていく。闇と死の住民たる彼らが、これ以上生者を脅かすことは許されない――宮中より全ての敵を駆逐するまで、輝凛は戦い続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
西恩寺・久恩
あの…足、妖のままですよ
目の前にいる貴族は…どう見ても妖であると確信した
UC超越者の肉体は無意識で発動しています
いきなり何するんですか…危ないじゃないですか
妖はお礼を言った後襲い掛かってきた
のでしゃがんで回避する
おっと…そこ壁ですよ?
敵は壁を蹴り私の背後へと回り込み爪を切り裂こうとしてきたので推力移動で壁の方へ近づきギリギリまで引き付けて回避した
無限天理陰陽術式…地獄落
腕が刺さった敵を背後から掴むと呟き空中に飛び上がり空中で敵の向きを変えてパイルドライバーの体勢に入る
一網打尽にしてあげましょう…
そしてパイルドライバーを敵が大量にいる場所に向かって叩き込んだ
さて、もっと妖に術式を叩き込まなきゃ…
「あの……足、妖のままですよ」
宮中に開いた『妖の裂け目』と、それに伴う騒乱。今、西恩寺・久恩(妖怪陰陽師(物理)ここに見参!・f42881)の目の前にいる貴族は、どう見ても妖であると確信できた。指摘を受けた相手は慌てて化けきれなかった足元を隠そうとするが、もう遅い。
『ウヌヌ……親切に教えてくれてありがとうよ!』
皮肉交じりの礼と共に、開き直った『化け雑色』は牙を剥く。異形の手足で壁や天井を這い、襲い掛かるさまは蜥蜴の如し。変化すら完璧にこなせない低級な妖といえど、小娘ひとりを血祭りに上げるくらいは造作もない。故にこそ、妖は恐れられるのだから。
「いきなり何するんですか……危ないじゃないですか」
だが、久恩はひょいとしゃがんで妖の攻撃を回避する。無造作な動きながら、反応速度と身体能力が尋常ではない。
彼女の正体は庶民でも貴族でもなく狐の妖怪。自衛の為に鍛え上げた【超越者の肉体】は常人離れした筋力を誇り、超常現象すら引き起こすのだ。
「おっと……そこ壁ですよ?」
『ッ?! しまった!』
初撃を回避された化け雑色は、壁を蹴って背後へと回り込み、追撃を仕掛けるが――久恩は霊力を推進力に変えて壁のほうに近付くと、ギリギリまで引き付けて回避する。勢い余った化け雑色の爪は壁に深々と突き刺さり、腕を抜けなくなってしまった。
「無限天理陰陽術式……地獄落」
この隙に久恩は敵の背後を取ると、ぽつりと呟きながら胴体を両腕で掴む。そのまま空中に飛び上がると、滞空中に敵の向きを変えさせ、脳天から落下する――いわゆるパイルドライバーの体勢に入った。陰陽術と言うよりはどう見ても格闘技だが、これが彼女の【無限天理陰陽術式『地獄落』】である。
「一網打尽にしてあげましょう……」
『ヒッ?! ま、待てッ!』『おい、こっちに落ちてくるな!』
落下先は他の妖どもが大量にいる場所。持ち前の怪力に位置エネルギーを加えて叩き込まれたパイルドライバーは、隕石衝突ばりの破壊力を炸裂させる。慌てふためく化け雑色を巻き込んで、衝撃波が地震のように宮中を揺さぶった。
『ウギャァァーーーーッ!!!?!』
哀れ化け雑色どもは断末魔の叫びと共にノックダウン。死屍累々の惨状から起き上がってくるものは誰一人いない。
陰陽師としては異端ながらも見事な戦果を挙げた久恩は、穏やかで淡々とした物腰のまま、次の標的を探して歩きだす。
「さて、もっと妖に術式を叩き込まなきゃ……」
彼女が陰陽師として戦う理由は、自分を人として育ててくれた、大切な義父との暮らしを守るため。それを脅かす妖は一匹残らずぶっ飛ばす気だ。その精強なる肉体から無限天理陰陽術が炸裂するたびに、妖どもの悲鳴が響き渡るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『白酔狐』
|
POW : 煌々と
【瞳】を見せた対象全員に「【跪きなさい】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【五感の感度】が半減する。
SPD : 揚々と
自身の【牙】を【猛毒】化して攻撃し、ダメージと【四肢鈍化】の状態異常を与える。
WIZ : 滔々と
【酒が湧き出る朱盃】から、戦場全体に「敵味方を識別する【強い酒香を纏う渦潮】」を放ち、ダメージと【呼吸困難】の状態異常を与える。
イラスト:稲咲
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「夏目・晴夜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『やれやれ、使えない奴らです……もう少し楽しめるかと思ったのですが』
裂け目より湧いた『化け雑色』の群れを、猟兵達が粗方片付けた頃。
不意に宮中に奇妙な声が響き渡り、新たな妖が姿を現した。
『昨今の人間共も意外とやるではありませんか。見慣れぬ輩も混じっておりますし』
それは強い酒の香りを漂わせた、神秘的な雰囲気をまとう一匹の白狐。
立ち居振る舞いと厳かな口調から、それを神と見紛う者もいるかもしれない。
だが誤ってはならぬ。此奴こそが宮中に『妖の裂け目』を開いた張本人、『白酔狐』なのだから。
『かくなる上は妾が相手をしなければなりませんか……光栄に思いなさい?』
残忍、残虐、そして傲慢。自らの手で宮中の者共を嬲り殺さんとする狐の語気には、隠しきれない喜悦が含まれる。
此奴を討たぬことには『裂け目』を閉じることもできぬ。何より、これは生かしておくには危険すぎる妖だ。
宮中の危機を救い、「平安の世」を守り抜く。
大義と使命を背負い、猟兵達は再び戦闘態勢に入るのだった。
ブラミエ・トゥカーズ
余の生きる世界では現世に憂いたヒトが異界の外様を呼ぶという面倒事があってな。
まぁ、余の理に背くわけであるから余の様なモノ達に退治されるわけであるが。
この世の多数はそちらであるのだろう?
故に異界の侵略者として余は謡おう。
この隔離世の中で生き延びる多数の同胞達のためにもな。
強い酒精の消毒効果での致命に至る被害を承知で接近戦を行う
至近からの事象による血液の噴出を行い敵に病を与える
余は酒には酔えぬが、酔うことを知らぬわけではないぞ?
貴公も余と共に血に酔おうではないか。
病による幻覚・喘息を与える
なお、湧き出る酒を直接被れば普通に焼失する
その場合は1章で殺した雑色の払った血から蘇生する
「余の生きる世界では現世に憂いたヒトが異界の外様を呼ぶという面倒事があってな。まぁ、世の理に背くわけであるから余の様なモノ達に退治されるわけであるが」
ブラミエが語るそれは、猟兵なら一度は耳にしたことがあるような事件のパターンだ。現世に降臨した化外のモノを討ち、世の平穏を守り抜く――それが自分達に課せられた使命なわけだが、ここアヤカシエンパイアについては情勢が少し違う。
「この世の多数はそちらであるのだろう?」
庶民や貴族達の暮らす「平安の世」はいつわり。妖どもが蠢く死の大地こそが、この世界における「現世」である。
いつわりを守ろうとする平安貴族も猟兵も、本質的に見れば異分子なのだ。ある意味で妖達はこの世界を本当の姿に戻そうとしている、とも言える。
「故に異界の侵略者として余は謡おう。この隔離世の中で生き延びる多数の同胞達のためにもな」
時代の流れに消えていった妖怪の隠れ里、カクリヨファンタズムの住人として、まぼろしの平安を生きる人々にある種の既視感を抱いたのか。あえて大義を掲げることなく、ブラミエは『白酔狐』と対峙する。もしも世の理が向こうに味方しようとも、ここを退く気は一切ない。
『愚かなものです。人間如きに肩入れして』
まるで理解できないとばかりに、頭を振る白酔狐。その口に咥えた朱盃からは【滔々と】酒が湧き出し、強い酒香を纏う渦潮を引き起こす。よもや、これもただの酒ということはあるまい――呑み込まれれば無事では済まない荒波に、しかしてブラミエは怯まなかった。
「余は酒には酔えぬが、酔うことを知らぬわけではないぞ?」
病魔を起源とする《妖怪》ヴァンパイアのブラミエにとって、強い|酒精《アルコール》の消毒効果は有害である。浴び過ぎれば致命にも至りうる危険を承知の上で、彼女は白酔狐に接近戦を挑んだ。優雅な足さばきで渦潮の飛沫を躱しながら、「浄剣・ウィッチバインド」と名付けられた人殺しの剣を振るう。
「貴公も余と共に血に酔おうではないか」
『なにを……?』
それは敵ではなくブラミエ自身を切り裂き、噴出した血液を敵に浴びせる。彼女の血はこちらの世界ではまだ治療法の存在しない病の源であり、古くは赤死病、もしくは転移性血球腫瘍ウイルスと呼ばれた致死性の伝染病を媒介する。たとえ相手が人ならざる妖であっても。
「余は歌おう。嘗ての敗残者として。余は告げよう。未だ健在であることを。余は再び示そう。この赤き死の狂乱を」
『ぐ、げほッ、ゴホッ……!!?』
【災厄流行・赤死病】。伝染性ウイルスによる血液の悪性腫瘍を発症した白酔狐は、幻覚・喘息を始めとした様々な症状に襲われる。まだワクチンという概念すら存在しない平安時代において、これは重症化すれば死に至る病である。
『やってくれましたね……!』
怒った白酔狐が盃から酒を浴びせると、酒精を被ったブラミエはジュッと音を立てて焼失する。どう足掻いたところで酒と病気は相性が悪いのは致し方なし。もっとも彼女を殺したところで、すでに感染した病が治るわけではないが。
「とくと堪能するがよい」
妖しげに目を細めながらそう言って、ブラミエは白酔狐の前から姿を消した。今頃は、先刻「化け雑色」を殺した時に払った血あたりから蘇生しているだろう。病であるがために弱点が多く、それ故に完全に滅ぼすことも難しい。病魔という楔を打ち込んだ彼女は、あとは事の顛末を見守るのみであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
これはまた注目を集めそうな妖さんですね!
さぁ平安貴族の皆さんに私の活躍を見せるためにも
ド派手に戦いましょう!
おや?盃のお酒がすごい勢いで溢れて…うわー!渦潮になって襲ってきました!
おまけに凄く…お酒臭いです!ゴホッ!ゴホッ!
呼吸ができない!?こういう時は落ち着くのが大事です!
(息をゆっくり吐きながら{立て看板}をサーフボード代わりにすると酒の渦潮の波に乗る)
よーし!凄い技を見せてくださったので今度は私の番ですね!
(UC【姦悪!穢憎憐恋火】を発動し酒に着火、延焼させ炎の渦潮を作って反撃する)
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
一人でも多くの相手に名前を覚えてもらうためか、ダーティは何度でも同じ名乗りを上げる。注目されるほど視線誘導の悪魔は力を増すのだから、彼女がやっていることは至って合理的。世界中の人達の目線を我が物とした先に、彼女が目指すデビルキングの頂はあるのだ。
「これはまた注目を集めそうな妖さんですね! さぁ平安貴族の皆さんに私の活躍を見せるためにも、ド派手に戦いましょう!」
『まあ。見栄のために戦うなんて下品なこと』
そんな悪魔らしい行動原理は『白酔狐』には騒々しく節操なしと映ったのか、不愉快そうに尻尾を揺らす。お高くとまった輩だが、宮中に『妖の裂け目』を開ける高位の妖には違いない。だからこそ、それをやっつければ自分の注目度もうなぎ登りだろうと、ダーティは意気揚々と戦いを挑んだが――。
「おや? 盃のお酒がすごい勢いで溢れて……うわー! 渦潮になって襲ってきました!」
白酔狐が【滔々】と放ったユーベルコードの奔流は、あっという間に宮中を酒びたしにしてダーティを呑み込んだ。
慌てて手足をバタつかせても、流れが強すぎてうまく泳げない。果たしてどんな妖術の産物なのか、朱盃より湧き出る酒に限界はないようだった。
「おまけに凄く……お酒臭いです! ゴホッ! ゴホッ!」
『そのまま溺れてしまいなさい』
強烈な酒精にむせるダーティを、冷ややかな目で見下ろす白酔狐。自分はその場から一歩も動かぬまま、酒の渦潮で悪魔を溺死させるつもりだ。風雅な見た目とは裏腹に残酷な死をもたらすユーベルコードは、この妖の性格をよく表していた。
「呼吸ができない!? こういう時は落ち着くのが大事です!」
一瞬動揺しかけたダーティだが、息をゆっくり吐きながら気持ちを落ち着けると、バタ足で水面に浮上する。そして普段は配下募集のアピール等に使っている「立て看板」をサーフボード代わりにすると、酒の渦潮で波乗りを始めた。
「いい波が来てます!」
『なにっ……?!』
荒れ狂う渦の中で華麗なサーフィンを披露されては、流石の白酔狐も驚きを隠せない。悪魔は体感能力も優れているのか、どんなに激しい波が来ても、もはや沈没する様子はなかった。もしここが真夏のビーチであれば、人々の視線は彼女に釘付けだろう。
「よーし! 凄い技を見せてくださったので今度は私の番ですね!」
そう言ってダーティが発動したのは【姦悪!穢憎憐恋火】。酒精が充満する空間で火のユーベルコードなど使えば、どうなるかは自明の理――酒に着火した炎はたちまち延焼して、赤紫色に燃え上がる巨大な炎の渦潮ができあがった。
「憎しみの膿を垂れる穢れた恋の臓よ! 今ひとたびの鼓動を鳴らし憐憫なる炎を揺らめかせ!」
『ッ、来るな……あぁァァァッ!!!?』
反撃とばかりに押し寄せる炎の渦潮に呑まれ、悲鳴を上げる白酔狐。紅白の毛並みに赤紫が燃え移り、焼き焦がす。
ド派手に戦う目標をきっちり達成しつつ、宮中を燃やしてしまわないように延焼をコントロールしているのも見事。宮中務めの貴族の中で、この光景を目にしなかった者はいないだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
イクシア(f37891)と
陰陽師の集まる宮中に現れるとは大した度胸ね。すぐにも骸の海へ送り返してあげる。
「全力魔法」重力の「属性攻撃」で天威千里法。
さあ、あなたこそその場に跪きなさいな。その毒牙も、届かなければ意味は無いわね。
今のうちにイクシアは全力攻撃をお願い。
イクシアが白酔狐に攻撃を仕掛ける間に「式神使い」で偶神兵装『鎧装豪腕』を喚び出しておく。イクシアの一撃であたしの方向に吹き飛ばされてきたら、式で「盾受け」。そのまま、「怪力」で首を絞めちゃって。
その間に薙刀で「なぎ払い」、身体を叩っ切る!
いい様ね、酔っ払い狐。人の世の平安を乱す輩はあたしたちが須く討滅するから、そのつもりでいることね。
イクシア・レイブラント
ゆかりさん(f01658)と。
まずは私が相手。
各部を発光させて[推力移動、存在感、おびき寄せ、時間稼ぎ]。
接近して大型フォースブレドで[なぎ払い]。猛毒の牙は[見切り、武器受け、盾受け]で防ぐ。
ゆかりさんの天威千里法の起動にあわせて、武器を裁判槌に持ち替えて【決戦武装、解放】。
[高重力適応]し1000倍の重力を乗せた裁判槌で[武器巨大化、重量攻撃]。
[戦闘演算、瞬間思考力]により正確にゆかりさんの方向へ殴り飛ばす。
ゆかりさん、トドメはお願い。
「陰陽師の集まる宮中に現れるとは大した度胸ね。すぐにも骸の海へ送り返してあげる」
妖にとっては敵地のど真ん中となるだろうに、白昼堂々と姿を現した『白酔狐』に、ゆかりも威勢よく啖呵を切る。
先程の『化け雑色』どもとは格の違う妖だろうが、そんなことは関係ない。人に仇なすなら悉く討ち果たすのみだ。
「まずは私が相手」
『ふん。誰が来ようと同じことです』
戦いの先陣を切ったのはイクシア。ボディの各部を発光させながらスラスターで飛行し、あえて存在感を誇示する。
明らかに注意を引き付けるのが狙いだが、白酔狐はあえて誘いに乗る。「平安の世」を生きる者への侮りと傲慢が、その態度からは透けて見えた。
『早々に跪き、許しを乞うたほうが身のためですよ』
神気取りの不遜な態度を保ったまま、白酔狐は【揚々と】牙を剥く。彼女の牙には猛毒があり、噛まれればダメージと四肢鈍化の状態異常を受ける。レプリカントであっても油断ならないと判断したイクシアは、即座にシールドビットを展開した。
「反撃開始」
『ふん、からくり風情が!』
光の盾で毒牙を防ぎつつ、大型フォースブレイドで切り返す。サイキックエナジーを攻防に利用した彼女の戦法は、高位の妖とも互角に太刀打ちできていた。奇抜な式神程度の認識でいた白酔狐にとって、これは少々誤算だったろう。とは言えまだ動揺するほどの事態ではないが――。
「待たせたわね。さあ、あなたこそその場に跪きなさいな」
イクシアが時間を稼いでいるうちに、ゆかりが組んでいたユーベルコード。それは局所的に極重力領域を発生させる【天威千里法】だった。彼女が足を踏み鳴らしたところから、輝く同心円状の波紋が地面を走り、白酔狐がそれに触れた瞬間、凄まじい重圧がのしかかる。
「その毒牙も、届かなければ意味は無いわね」
『グッ……!?!』
いくら高位の妖と言えど、千倍の重力下ではまともに動けず、強制的に地面に押し付けられた白酔狐から苦悶の声が漏れる。さぞや屈辱であろうことは表情で分かるが、これが猟兵を侮った代償であり、ゆかりが磨いた東洋の秘術だ。
「今のうちにイクシアは全力攻撃をお願い」
「了解、ゆかりさん……リミッター解除。決戦武装、ファイナル・モード」
ゆかりの【天威千里法】の起動に合わせてイクシアは武器を「マレウス・アウレリオス」に持ち替え、【決戦武装、解放】を起動。|裁判槌《ガベル》の形をした大型兵器が変形を遂げ、真なる力を解き放つ。その効果・威力・射程は瞬間的に3倍にまで増幅される、ここぞという時のための最終形態だ。
「軌道計算完了。出力最大」
『待ッ……グハァッ!!!?』
1G環境以外での戦闘も想定して開発された戦闘用レプリカントであるイクシアは、千倍の重力下でも動きを止めず、逆にその重力を乗せた質量攻撃を叩きつける。全身がバラバラに砕け散るような衝撃を受けて、殴り飛ばされた白酔狐――その先にはゆかりが待ち構えていた。
「ゆかりさん、トドメはお願い」
「ええ、任せなさい」
戦闘演算の結果通りの方向に敵が飛んでいったのを見送り、あとは相方に任せるイクシア。一方のゆかりは偶神兵装『鎧装豪腕』を喚び出して、敵が来るのを見越して迎撃準備を整えていた。まるで最初から打ち合わせていたかのような、完璧な連携だ。
「いい様ね、酔っ払い狐」
『き、貴様……ぐえェッ!!』
一対の籠手型式神の手で受け止められた白酔狐は、そのまま雑巾のように首を締められる。漏れ出た悲鳴は優雅さとはかけ離れたもので、こうなれば神秘的な佇まいもあったものではない。嘲るように口元を歪めながら、ゆかりは薙刀を手に取った。
「人の世の平安を乱す輩はあたしたちが須く討滅するから、そのつもりでいることね」
『ウギャッ!! お、おのれぇぇ……!!』
紫にきらめく刃にて、一刀のもとに斬り伏せられる白酔狐。美しい紅白の毛並みが、鮮血によってまだらに染まる。
何度来ようが、誰が来ようが、この「平安の世」は壊させない。確固たる自信をもった宣言に、邪なる妖は悔しげに唸ることしかできなかった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
似ている――特定の誰かに、ではない
己が絶対的強者であるという増上慢、他者を跪かせ嬲る精神性
私の世界の吸血によく似ている
即ちどういうことか……決まっている、気に入らない
叩っ斬る
命令を無視
【気合い】で一歩踏み込む
重ねて命じられようと聞く耳持たぬ
【根性】と【負けん気】で抗い踏み込む
何の対策もなく、真っ向から踏み込んでくる意味不明な行動は、正気を疑わせ、妖の【注目を一身に集める】
薄気味悪さを感じて距離を取る――ことはできない
私に気を取られていた隙に、徒党の貴族たちが凶方暗剣符と臘月陰陽符で逃亡と身動きを封じている
刀圏に捉え、金剛不壊を抜刀
秒間750回の神速斬撃、【閃光無窮の太刀】で滅多斬りにする
(似ている――特定の誰かに、ではない)
己が絶対的強者であるという増上慢、他者を跪かせ嬲る精神性。平安の世を脅かす大妖『白酔狐』の振る舞いから、オリヴィアは既視感を抱いていた。起源も性質もまったく異なる存在でありながら、あれは彼女の世界の吸血鬼とよく似ている。
(即ちどういうことか……決まっている、気に入らない)
これ以上、あのお高くとまった態度で好き勝手されるのは虫唾が走る。言葉に出さずとも分かるほど、彼女の瞳には殺意が宿っていた。妖の血に濡れたセーラー服を纏ったまま、鞘に納めた刀に手をかけて――ただ一言、声を発する。
「叩っ斬る」
『なんと身の程知らずな……跪きなさい』
不遜にも斬り掛からんとする異国の女剣士に、白酔狐は【煌々と】命令を下した。かの妖の瞳を見てしまった者は、命に逆らうと五感の感度を奪われる。視力、聴力、嗅覚、触覚、それらが鈍ったまま戦うのがいかに困難か、戦士なら分からぬはずがあるまい。
『――聞こえなかったのですか? 跪きなさい!』
だが、オリヴィアは無言のまま命令を無視し、気合いで一歩踏み込んできた。重ねて命じられようと聞く耳持たぬ。
妖術が効かない体質だとか、特別な備えをしている訳でもない。だのに彼女は妖から視線を逸らそうとしなかった。
『このッ……跪きなさいと言っているでしょう!』
白酔狐が何度命じても、オリヴィアの足は止まらない。なんの対策もなく、根性と負けん気だけでユーベルコードに抗い、真っ向から踏み込んでくる彼女の行動は、妖には意味不明であり正気を疑わせるだろう。あまりの不気味さに、此方から目を逸らすこともできない。
『止まりなさい! なんなのですか、貴女は……ッ?!』
これまでに嬲ってきた人間や貴族どもとは違う。薄気味悪さを感じた白酔狐は距離を取る――ことはできなかった。
オリヴィアに気を取られていた隙に、徒党の貴族たちが妖の周りに【凶方暗剣符】と【臘月陰陽符】を貼り、逃亡と身動きを封じていたのだ。
『いつの間にッ!!』
本命となる者が妖の注目を一身に集めるうちに、他の者が布石を打つ。気迫に呑まれていた時点で白酔狐の負けだ。
棒立ちの敵を刀圏に捉えたオリヴィアは「金剛不壊」を抜刀。魔人の手で鍛えられたと伝わる、不朽の銘刀にて繰り出すは、【閃光無窮の太刀】であった。
「繚乱せよ、剣閃の嵐――!」
残像すら捉えることは叶わない、秒間750回の神速斬撃。ただ眼前の敵を屠る、その一念のみに集中して刀を振るう。
平安貴族たちの陰陽術で拘束された白酔狐に、これを躱す術はない。まばたきする暇もない内に、全身を滅多斬りにされる。
『ギッ、ギィィャアァァァァァ―――!!?!』
増上慢な態度がようやく崩れ、白酔狐の口からほとばしるのは甲高い絶叫。いかに高位の存在を気取ったところで、殺せば死ぬのは吸血鬼とも同じだ。総身の力が尽きるまで、オリヴィアは全霊の殺意を込め、刀を振るい続けた――。
大成功
🔵🔵🔵
桐藤・紫詠
光栄に思うのはそちらの方です
余が直々に滅するのですから
世を回し 桜が芽吹く 赤き未知
瞬間『世界を回して触れた存在を削り取る』能力を持つ帝竜を召喚
……これは、不完全な……しかし何という強大な……
まるで竜神親分や書架の王、ダイウルゴスやパラダルクの様な権能を持つが如き……
いえ、今はかの妖を討つまでです……やや、過剰戦力に思えますが
瞬間『回転する世界そのもの』が『強い酒香を纏う渦潮』諸共妖のUCそのものを巻き込んで消滅させる
中々に強力なUCですね……
では、覚悟はできましたか?
次は、妖そのものを世界の回転に巻き込んでいく――
「光栄に思うのはそちらの方です。余が直々に滅するのですから」
神秘的な雰囲気をまとう『白酔狐』に対して、紫詠も皇族らしい気位の高さで応じる。彼女らは平安貴族達によって存在を隠匿されており、政務などにも携わらぬ身なのだが、生まれ持った「血」の特異性ゆえか、只者ではない風格を纏っていた。
『皇族がのこのこと出てきてくれるとは好都合。我が酒にて溺れ死になさい』
一方の妖側からしても、妖を滅する力を持つ皇族は最優先の抹殺対象だ。その忌まわしき血を絶やさんと、白酔狐が咥えた朱盃からは【滔々と】酒が湧き出し、巨大な渦潮を作る。それは強い酒香を漂わせながら、宮中の全てを呑み込まんと襲い掛かってきた。
「世を回し 桜が芽吹く 赤き未知」
対する紫詠は和歌を詠み、【平安詩浄土変・帝竜招来せし剣の詩】を発動。瞬間、一頭の竜が虚構より具現化する。
このユーベルコードは、歌詞に沿った能力を持つ竜を作り上げるのだが――此度出現したそれは当の本人でさえ驚くほどの力を秘めていた。
「……これは、不完全な……しかし何という強大な……まるで竜神親分や書架の王、ダイウルゴスやパラダルクの様な権能を持つが如き……」
異世界の猟兵から聞き齧った知識を元に、それを形容する語彙を考える。不完全であるが故に可能性に満ちた、未だ名すら持たぬ竜。その全容は紫詠も測りかねたが、和歌の内容からそれがどのような能力を持つかだけは読み取れた。
「いえ、今はかの妖を討つまでです……やや、過剰戦力に思えますが」
『なにを……!?』
紫詠がそう言った瞬間、ぐるりと空間の一部が回転し、酒の渦潮が巻き込まれていく。より正確に言えば、回るのは空間ではなく『世界そのもの』。紫詠が具現化した竜は『世界を回して触れた存在を削り取る』力を持っていたのだ。
「中々に強力なユーベルコードですね……」
回転が止まった後、そこには何も残されていない。妖のユーベルコードの効力そのものを消滅させてしまったのだ。
荒唐無稽な現象を目撃した白酔狐は、言葉を失い硬直している。目の前にいる竜が自分の手に余る存在だと、これで理解しただろうか。
「では、覚悟はできましたか?」
『ま、待ちなさいッ……!』
次は、妖自身が世界の回転に巻き込まれる番だ。宮中もろともブラックホールのように全てを消滅させる世界から、白酔狐は必死に遠ざかる。そんな無様な姿を傲然と見下ろしながら、紫詠は竜に命じて敵を追い詰めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
無門・華蓮
雑色に化けていた妖の親玉が狐とはな。合点はいったが、少々化け方の教育が足りていないのでないか?
朱盃から溢れ出る酒はただの酒ではないようだ。これほどに強い酒香を放つ酒は極楽にもなかったぞ。
それにわしの体は幼い。極楽でならいざ知らず、現世では毒にしかならん。
うむ、酔った。酒気混じりの空気を吸った所為か酔ってしまったぞ。
故に加減ができん。すまんな皆の者……【神威】を解き放つ。
止めても無駄だ。最早わしにも止める事はできん。全て受け入れよ。
化け狐よ、お主は浄土はおろか地獄にすら往けぬ。ただ消えゆくのみ。
……さて、已む無き事とは言え妖以上に宮中を荒らしてしまったな。
いやはや平謝りする他無いな。はっはっは。
「雑色に化けていた妖の親玉が狐とはな。合点はいったが、少々化け方の教育が足りていないのでないか?」
化術といえば狐の十八番。部下どもの不甲斐なさをからかうように華蓮が呼びかけると、『白酔狐』は微かに表情を歪めて不快感を示した。貴族に扮した妖を宮中に蔓延らせ、内側からの崩壊を狙うという策が、ここまで簡単に破られるのは想定外だったのだろう。
『まったく無能な連中です……お陰でこうして妾が出る羽目になったのですから』
殺された配下の命を惜しむでもなく、怒りと苛立ちを込めて吐き捨てる。この妖の腐った性根が窺い知れる所作だ。
ただ、その実力だけは先程の化け雑色とは比べ物にならない。咥えた盃より【滔々と】湧き出す酒は、宮中を水浸しにするどころか、巨大な渦潮を作り始めていた。
「朱盃から溢れ出る酒はただの酒ではないようだ。これほどに強い酒香を放つ酒は極楽にもなかったぞ」
酒気混じりの空気を吸った華蓮は、ふらり、とよろめきながら顔を赤らめる。大人でも酩酊するほどの強烈な酒精に加えて、彼女の肉体は享年のまま成長が止まっており、幼い。極楽でならいざ知らず、現世で酒浸しにされても毒にしかならなかった。
「うむ、酔った」
ふらりふらりと千鳥足、目線はさまよい定まらぬ。五感はぼんやりと鈍り、意識はあっても感情の抑えが効かない。
誰がどう見ても完璧な酔っ払い。これでは酒の渦に呑み込まれるまでもなく、戦力には数えられないだろう――彼女が阿闍梨でなければ。
「故に加減ができん。すまんな皆の者……【神威】を解き放つ」
「なっ?!」「お、お待ちあれ!」『神威だと?』
おもむろに華蓮が言い放った内容に、敵だけでなく味方の貴族達までもが慌てだす。【神威】とは阿闍梨が到達した平安最強の力。「平安の世」を維持する結界すら破壊しかねないため、行使には細心の注意が求められるはずだが――それを酔っ払った状態で放つと?
「止めても無駄だ。最早わしにも止める事はできん。全て受け入れよ」
「「あなや……!!!」」
理性の箍が外れた華蓮の身体が輝きだすと、貴族達は慌てて散り散りになり。直後に発射された霊波光線が、宮中の一部を文字通り消滅させる。この恐るべき破壊力こそ【神威】の最強たる由縁。しかもそれは一発限りではなく、毎秒ごとに連射されるのだ。
「化け狐よ、お主は浄土はおろか地獄にすら往けぬ。ただ消えゆくのみ」
ろくに狙いも定めず滅多矢鱈に【神威】を放ちながら、赤ら顔で説教する華蓮。無尽蔵に湧き出る酒の渦潮も、湧いたそばから消されてしまっては意味がない。よもや宮中でこのような無差別攻撃に及ぶ者がいるとは、白酔狐だった思わなかっただろう。
『こ、こやつ、正気か……ひえっ?!』
無論正気ではないのだが、そうなったのも全ては酒のせいだ。思わぬ形で因果応報を食らった白酔狐は、血相を変えて光線の射程外に逃げていく。だが、付近に着弾した神威の霊波に巻き込まれ、尻尾や耳の先からじりじりと削られていくのだった。
「……さて、已む無き事とは言え妖以上に宮中を荒らしてしまったな。いやはや平謝りする他無いな。はっはっは」
ようやく酒気が抜け素面に戻った華蓮が見たものは、壁も床も天井も神威で穴だらけになった宮中の惨状であった。
妖が受けたダメージはこれ以上であろうから、務めは果たしたと言えるものの、修繕には相当手間がかかるだろう。
それでも果たして反省しているのやら、彼女は悪びれない態度で笑う。あわや巻き添えを食らいかけた貴族達から、胡乱な視線を浴びながら。
大成功
🔵🔵🔵
西恩寺・久恩
無意識にUC超越者の肉体を発動する
…随分酷い事言いますね、傷付きました
敵は私に妖力が無い事を見抜き私を嘲り笑っていた
でも私に負けたら貴女が劣っているという事ですよね?それに霊力は一応あるのですが…
と言いながら気配感知と心眼で敵の様子を伺う
…随分短気ですね、簡単に入りますよ?狐さん
敵がUCを発動し牙に気をつけながら霊力の推力移動で牙の攻撃を躱し敵を怪力で強化した拳で殴り飛ばす
無限天理陰陽術式…疾風迅雷
そう言うと敵に近づき殴り飛ばした
臨!
吹き飛ばされた敵に背後から蹴り飛ばす
兵!
敵も抵抗して牙を噛みつこうとしたが横に回避して殴り飛ばし歯を破壊する
闘!
回転して裏拳で攻撃
者!
壁に叩き付けられた敵を空中に蹴り飛ばす
皆!
空中に飛ばされた敵を殴り飛ばす
陣!
地面にバウンドする敵を蹴り飛ばす
列!
回り込み敵を殴り飛ばす
在!
敵を上に蹴り飛ばす
前!
敵を更に上に蹴り飛ばす
と九字を切りながら四方八方殴り飛ばしながら飛び回る
悪鬼滅殺…急々如律令!
空中にいる敵を捕まえバックドロップを決めた
ふう…これが無限天理陰陽術式です
土師・智実
「宮中、宮中ねェ。殿上人だけなら滅びちまえと思わなくもねェが。下人やら奴婢やらまで巻き込まれるなンざ我慢ならねェ。手前ェ、消えろや」
「どォせなら飲める酒寄越せや、今畜生ッ」
着物の袖を口元に当ててゲホゲホ咳き込みつつ式神に敵捕縛命じる
「俺が倒れても式神への命は覆らねェ。ざまァみさらせ、ゲホッゲホッ」
自分で攻撃する余力はないので敵への攻撃その他は他の猟兵に任す
「手前ェと一緒に臨終なンぞしてたまるか!」
「こちとら深曽木の儀の前に出家してンだ。殿中なンぞ気にもならねェ。まァだ寺の方が馴染みがあらァ」
「宮中、宮中ねェ。殿上人だけなら滅びちまえと思わなくもねェが。下人やら奴婢やらまで巻き込まれるなンざ我慢ならねェ」
政争に敗れた皇統の子であり、現在の宮中には少なからず思うところのある土師・智実(実は皇族のおっさん歌人・f42830)。それでも皇族の端くれとして「平安の世」そのものが崩壊しかねない危機を見過ごすことはできなかった。ここで妖どもの暴挙を見て見ぬふりするようであれば、わざわざ還俗した意味もない。
「手前ェ、消えろや」
『その血の匂い……不快です、貴方こそ消えなさい』
破れ編笠を被って風来坊のなりをしても、その身に流れる妖滅の血は隠しきれぬか。一目見るなり『白酔狐』は敵意を露わにし、口に咥えた朱盃から【滔々】と酒を湧き出させる。たちまち辺り一面は渦潮に巻き込まれ、強烈な酒香が漂い始めた。
「どォせなら飲める酒寄越せや、今畜生ッ」
妖がユーベルコードで出した酒を口にするほど智実も愚かではない。着物の袖を口元に当てて、ゲホゲホと咳き込みつつ符一式を操り、早打ちで【臘月陰陽符】を付与した式神を喚ぶ。彼もまた陰陽師の一人であり、その腕前は宮中の貴族に劣るものではなかった。
「あンの呆け狐を捕まえろ!」
智実の命令に応じて式神は【黄金護符嵐】を発動し、白酔狐の捕縛にかかる。荒ぶる無数の護符が宮中を飛び回り、標的の全身にべたべたと貼り付く。その一枚一枚に込められた臘月の霊力は、高位の妖であれ脅威となりうるものだ。
『おのれ皇族め……!』
身動きを封じられた白酔狐は激昂し、我が身の代わりに酒の渦潮を荒れ狂わせる。酒香は喉を焼くほどに強くなり、渦に呑まれずとも呼吸することさえ辛いほど。長く留まれば貴族や皇族であっても命に危険があるだろう――しかし。
「俺が倒れても式神への命は覆らねェ。ざまァみさらせ、ゲホッゲホッ」
咳き込みながらも智実は得意げにそう語る。そもそも呼吸せず酔っ払いもしない式神であれば、渦潮の影響は最小限となる。辛そうな術者とは対照的にそれは粛々と命令を継続し、「敵を捕縛する」その一事のみに全力を注いでいた。
『貴様、まさか刺し違える気で……!』
「手前ェと一緒に臨終なンぞしてたまるか!」
白酔狐の危機感に反して、智実はきっぱりとそう言いきった。無辜の民が巻き添えを食うのが嫌で参戦したものの、幼き日の自分を捨てた宮中に、そこまでの義理を尽くす理由は彼にはない。ついでに言えば、これ以上攻撃する余力も残っていなかった。
「こちとら深曽木の儀の前に出家してンだ。殿中なンぞ気にもならねェ。まァだ寺の方が馴染みがあらァ」
斜に構えた態度で遠慮容赦なく悪態を吐く智実だが、今は非常時ということもあって咎める者はいない。あるいは、一部の者は彼が皇族であることに気付いていたかもしれない。何にせよ、妖を滅する為には彼のような素性の者でも、貴族どころか人でない者に頼ることすらも、アヤカシエンパイアではよくある話だった。
「ってェ訳で、あとは頼むぜ」
「任せてください!」
後方で完全にサポートに徹することにした智実に代わって、前に出てきたのは久恩。人間の陰陽師を装っているが、その正体は奇しくも敵に近しい狐の妖怪である。だが、似て非なる同族を目にした白酔狐はフンと鼻を鳴らし、露骨に蔑む目で彼女を見た。
『誰が出てくるかと思えば……妖力を持たぬ野狐風情ですか。そちらの皇族のほうが余程脅威です』
「……随分酷い事言いますね、傷付きました」
嘲り笑われた久恩は不満げに眉を潜めるが、彼女が妖力を全く持たないのは事実だった。白酔狐は一目でそのことを見抜いたようで、完全に侮りきっている。何よりも自身が強大な妖力を持つがゆえの傲慢、あるいは慢心と言えよう。
「でも私に負けたら貴女が劣っているという事ですよね? それに霊力は一応あるのですが……」
『この妾が貴様如きに負けるはずがないでしょう!』
久恩が言い返すと、白酔狐は護符に捕らわれたまま牙を剥いて怒鳴る。まだ身動きは取れないようだが、下手に近付けば【揚々と】猛毒化した牙で噛みついてくる気だ。それを察していた久恩は心眼にて敵の様子を窺い、怒気が膨れ上がる気配に合わせて動いた。
「……随分短気ですね、簡単に入りますよ? 狐さん」
『なッ……?!』
無意識に発動していた【超越者の肉体】の運動能力、そして霊力推進による加速は一瞬にして毒牙を躱し、敵の懐に入る。彼女はそのまま拳を握り、挨拶代わりに一撃。超常現象の域に達した高速のジャブが、白酔狐に突き刺さった。
「無限天理陰陽術式……疾風迅雷」
『ぐはっ?!』
護符のせいで抵抗もできず、無防備に殴り飛ばされる白酔狐。間髪入れずに久恩は走り出すと、飛んでいった相手に追いつき、背後に回り込んだ。これより披露するは無限天理陰陽術の真髄、霊力とフィジカルとテクニックの融合だ。
「臨!」
『げほっ! こ、この野狐めが……!』
背後より蹴り飛ばされた白酔狐は抵抗して噛みつこうとするが、智実の式神が張った護符は執拗に行動を阻害する。
すっと横に半歩動くだけで、やすやすと反撃を回避した久恩は、お返しとばかりに相手の横っ面を殴り飛ばした。
「兵!」
『あぎッ!! あ、あがが……!』
文字通り人間離れした打撃を食らわされ、白酔狐の歯がへし折れる。久恩は間髪入れずにくるりと回転すると、逆の頬に裏拳を叩き込み、壁に叩きつけてから空中に蹴り飛ばす。まるで蹴鞠のようにぽんぽんと、妖の身体が宙を舞う。
「闘! 者! 皆! 陣!」
『げふっ、ぐげっ、ごぐぁッ!?』
さらに空中から蹴り落とし、地面にバウンドした敵をまた蹴り飛ばす。九字を切りながら戦場を四方八方飛び回り、途切れることのない連撃を食らわすさまは、陰陽師としても異端な光景であった。よもや白酔狐も、妖力を持たぬ者に徒手空拳でボコボコにされるとは思いもしなかったろう。
「列! 在!」
『や、やめ……ぎゃはぁッ!』
抵抗はおろか逃亡さえ許されぬまま、殴り飛ばされ、蹴り上げられる白酔狐。宮中の天井に叩きつけられた彼女に、久恩は驚異のジャンプ力で追いつくと――全身のバネを躍動させ、最後の九字とともに渾身のひと蹴りを叩き込んだ。
「前!」
『おごぁぁぁッ!?』
その一撃で天井が突き破られ、二人の狐はそろって外に飛び出す。時刻は丁度逢魔ヶ時、夕焼けが全てを染める昼と夜の境界。そこで久恩は満身創痍の白酔狐を捕まえ、レスリングで言うところのバックドロップの体勢に。これで最後だと、全身全霊を込めて叫ぶ。
「悪鬼滅殺……急々如律令!」
『グ、グァァァ―――ッ!!!』
重力加速度を利用して投げ飛ばされた白酔狐は、隕石の如き勢いで宮中に叩きつけられた。なんという衝撃、なんという威力か、敵は悲鳴を上げたきりピクリとも動かない。気持ちいいほど完璧に一連のコンビネーションを決めた久恩は、すたっと地に降り立つと額の汗を拭った。
「ふう……これが無限天理陰陽術式です」
術式と呼ぶにはえらく肉弾戦に偏っていた気もするが、本人が言うならそうなのだろう。敵は明らかに深手を負い、当初の神秘的な威厳はもはや見る影もない。宮中を騒がせた今回の事件も、そろそろ決着の時が迫りつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
暁星・輝凛
「忙しそうだけれど、まだお相手してもらえるのかな?」
強敵相手だ、油断はしない。
だからこそ、隙を作るために挑発する。
ここまで猟兵の相手をしてきてるんだ、当初の余裕はだいぶ無くなってる筈さ。
どんなに強烈な毒牙だって、体に打ち込まれなければ意味はない。
攻撃が単調になれば、見切るのは難しくないよ。
【心眼】をもって【受け流し】、すれ違いざまに獅輝斬滅閃を叩き込む。
ダメージを与えたうえで敵の体を引き寄せ、更に体勢を崩させるんだ。
そこに追撃を叩き込んでやる、ってのが僕のプランさ。
「どうした白酔狐、楽しむんだろう? ならそうしようじゃないか、僕はまだ満足してないぞ!」
気迫で凌駕し、この攻防を制してみせる。
『ぐぬぬ……おのれ人間どもめ……!』
「忙しそうだけれど、まだお相手してもらえるのかな?」
形相を歪め苛立ちを露わにする『白酔狐』に、飄々とした態度で声をかけたのは輝凛。振る舞いは自然体だが、強敵相手に油断はしない――だからこそ、隙を作るための挑発だ。あえて敵のプライドをくすぐるような発言をして、怒りの火に油を注ぐ。
(ここまで猟兵の相手をしてきてるんだ、当初の余裕はだいぶ無くなってる筈さ)
事実、今の白酔狐は見るからに負傷が目立ち、満身創痍と言っても良かった。「平安の世」を守る貴族達を、そして猟兵を侮ったツケである。神秘的な振る舞いも装えなくなり、残忍で残酷な妖としての本性が露わになりつつあった。
『舐めた口を叩くな、下郎めが!』
あっさりと挑発に乗った白酔狐は、【揚々と】牙を剥き出しにして輝凛に襲い掛かる。猛毒へと変化したその牙は、ひと噛みで四肢の機能を鈍化させ、やがては命を奪う。だが、どんなに強烈な毒牙だろうと、体に打ち込まれなければ意味はない。
「攻撃が単調になれば、見切るのは難しくないよ」
輝凛は心眼をもって敵の動きを予測し、「レグルス・レガリア」で受け流す。一手読み誤れば重傷を負いうる攻防、しかし彼には自信があった。我を忘れて感情任せになった相手に対して、こちらは冷静沈着だ。精神的な余裕の差は、そのまま戦いの結果として現れる。
「――輝き、閃き、塵と為せ!」
紙一重で敵の毒牙を凌ぎきったのち、輝凛はすれ違いざまに【獅輝斬滅閃】を叩き込む。気高き勇気の輝きを帯びた星剣が、空間もろとも白酔狐を切り裂いた。『グガッ?!』と野獣のような呻き声と共に、白の毛並みが血に染まる。
『ッ、ぐおぉ……!!』
「まだまだ!」
その直後、超次元の斬撃が引き起こした空間の裂創は、周囲のものを異次元に吸い込もうとする。その引力に引き寄せられた白酔狐はさらに体勢を崩し、隙を晒す。そこに間髪入れず輝凛が追撃を叩き込めば、真っ赤な血飛沫が戦場に舞った。
「どうした白酔狐、楽しむんだろう? ならそうしようじゃないか、僕はまだ満足してないぞ!」
プラン通りの展開に笑みを浮かべながら、輝凛はなおも相手を焚きつけるように挑発する。思考は冷静なままでも、心は高揚感に満たされ、全身に気迫が漲っている。剣聖という高みに上り詰めてもなお、彼はいまだ更なる闘争を求め続けていた。
『調子に……乗るなァ!!』
一方の白酔狐に、もはや戦いを楽しむ余裕などない。ただ眼前の敵を葬らんがため牙を剥くが、悲しいかな殺意を剥き出しにするほど、輝凛に行動を予測する余地を与えてしまう。術中に嵌まりきった妖に、状況を打開する術はなく。
「この程度だなんて、がっかりさせてくれるなよ!」
『げはぁッ……!!』
戦いが苛烈さを増す中、妖の猛攻を気迫で凌駕し、攻防を制するのは輝凛。それは、もはや圧倒的と言っても良い。
完全にペースを掴みきった彼は、流麗かつ容赦のない太刀筋で煌星剣を振るい、敵を追い詰めてゆくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
禰宜・剣
御三家
妖…!あんたらはこの領域すら潰そうというのか…!
そんなの許すわけにはいかない!
平安貴族の意地…思い知らせてやるわ!
銀静叔父様…どうかお力をお貸しください…!
御三家が一角…皇家の絶技をもってあんたを叩き潰す!
「君達は勝ったつもりのようだけど…まだまだ決着がついているわけじゃないんだよー?」
UC発動
超高速で飛び回りながら刀で牙を叩き折る!
「剣ちゃん凄いねー…僕も手助けするんだよー」
鬼の手で殴るんだよー
「狐も本当は豊穣を司るんだけど…災いしかもたらさないなら君には退場してもらうんだよー…あと剣ちゃんにはお酒はまだ早いんだよー?」
叔父様は何言ってるの!?
「猟兵の規則らしいんだよー?」
「妖……! あんたらはこの領域すら潰そうというのか……!」
禍津妖大戦によって滅んだ大地の上に、陰陽師達が築いたまぼろしの平安。結界により保たれたかりそめの世界を、無情にも破壊せんとする妖への怒りで、剣の身体はわなわなと震えていた。アヤカシエンパイアをまったき死の世界に変えるまで、彼奴らの侵攻は止まるまい。
「そんなの許すわけにはいかない! 平安貴族の意地……思い知らせてやるわ!」
『許さぬから、なんだと言うのです!』
はなから貴様らの許しなど求めておらぬと、宮中に『妖の裂け目』を開いた大妖『白酔狐』も吠える。妖と平安貴族は不倶戴天の敵同士、相見えればもはや言葉は要らず。双方ともに一歩も退かぬ構えのまま、戦いは最終局面を迎えようとしていた。
「銀静叔父様……どうかお力をお貸しください……!」
かつては皇族に仕える御三家と呼ばれながらも、妖との戦いで滅びていった三つの一族。その縁者の名を唱え、剣は【四門開門・桜花】を発動する。玄武、朱雀、白虎、青龍の四門より解放された霊力が彼女を満たし、輝く桜の花弁が身体を包み込んだ。
「御三家が一角……皇家の絶技をもってあんたを叩き潰す!」
『なにが御三家か、しょせんは滅んだ一族……跪きなさい!』
【煌々と】瞳を輝かせながら、怒号じみた命令を発する白酔狐。その視線に捉えられた者は、命令に従わねば五感の感度を下げられる――しかし、それしきの事で今の剣は止まらない。戦う遺志に比例して高まる霊力が、重力の軛から彼女を解き放った。
「食らえ!」
『ガッ!?』
超高速で飛び込んできた剣の一太刀によって、白酔狐の牙が叩き折られる。東国のサムライが愛用する無骨な刀に、皇家の絶技と禰宜の武を合わせた攻撃だ。「平安の世」を守らんとする者達の遺志と力は、脈々と受け継がれている。
「君達は勝ったつもりのようだけど……まだまだ決着がついているわけじゃないんだよー?」
妖の勢力は強大であり、御三家の生き残りも僅か。それでも戦い続ける限り敗北ではないと、羅刹『泰河』も言う。
これ以上奪われないために、そして奪われたモノを取り戻すために刀を振るう――剣の存在こそが禰宜家の希望だ。
「剣ちゃん凄いねー……僕も手助けするんだよー」
『ごはッ!』
若き平安貴族への助太刀として、泰河も鬼の膂力を大いに振るう。殴り倒された白酔狐の悲鳴が響き、間髪入れずに剣が追い打ちをかける。流石は血族と言うべきか、多くの言葉を交わさずとも自然な連携が取れており、敵に反撃の隙を与えない。
「狐も本当は豊穣を司るんだけど……災いしかもたらさないなら君には退場してもらうんだよー……あと剣ちゃんにはお酒はまだ早いんだよー?」
「叔父様は何言ってるの!?」
「猟兵の規則らしいんだよー?」
そんな軽口を交わせる余裕もあるほどに、もはや戦況は決定的だった。酒を湧き出す盃は割られ、毒牙は折れ、瞳に光はなく――満身創痍の白酔狐は『おのれぇッ!』と最後の反撃を試みるものの、その殺意は彼女らの生命に届かず。
「これで……」「終わりだ!」
泰河の拳が叩き込まれた直後、剣の渾身の一太刀が妖の首を跳ねる。くるくると宙を舞った白酔狐の頭は、一瞬信じられぬという顔をしたあと、憎々しげに猟兵達を見下ろし――地獄の底から響くような断末魔の絶叫を上げて、骸の海へと還っていく。
『おのれ……おのれええええええええッ!!!!!!』
かくして、宮中を騒がせた大妖『白酔狐』はここに討ち取られ、『妖の裂け目』は閉じられたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『貴族の宴』
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POW : 大いに飲み食いし、主催者のもてなしを褒め称える
SPD : 他の参加者と共に遊戯や歌に興じる
WIZ : 花や月を愛で、その美しさを語らう
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「此度の働き、まことに見事であった。宮中の貴族を代表して、救援に感謝する」
猟兵達の活躍によって妖どもは撃退され、『妖の裂け目』は無事に閉じられた。
平安貴族の勤める宮中が直接狙われる一大事であったが、被害は最小限に留められ、死者も出さずに済んだ。
「貴公らがいなければ、宮中は今頃妖の巣窟となっておったであろう」
宮中の貴族らはこの功績を讃え、心より感謝の意を表した。
こと妖との戦いにおいて身分の上下や氏素性は関係ない。「平安の世」を守るべく戦った功績は正当に評価される。
「感謝の証として、ささやかではあるが宴の席を用意しもうした。どうか楽しんでいってくりゃれ」
猟兵達の労をねぎらうために、貴族達は料理や雅な音曲を用意し、もてなさんとしてくれる。
折角の誘いを断るのも無粋であるし――首謀者は討ち取ったとはいえ、まだ宮中のどこかに『化け雑色』の生き残りが潜んでいないとも限らない。警戒の意味も込めて、しばらくはここに留まるのが良いだろう。
かくして平安を取り戻した宮中にて、雅な貴族の宴が始まる。
こうした日常風景の積み重ねもまた、「平安の世」というまぼろしを保つために必要なのだ――。
ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
もうご存じでしたか?ということは覚えてもらえたということですね!嬉しいです!
(並ぶ料理に舌鼓を打ちながら)
んー!美味しい!これも平安結界の中で育んだ食材なんですよね?
食べ物ですら育てることの結界なんて凄すぎます!
ぜひとも私もその結界が使えるようになりたいです!
え?目的ですか?
それはもちろん私にとっての理想郷を作ることです!
朝を起きたら空に浮かぶ太陽な私を見上げ、夜になったら輝く星の私を見る…
そんな世界です!
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
宮中にて宴の席が始まると、列席する殿上人の方々に向けて、ダーティは再三名乗りを上げる。もっとも此度の戦いでは華々しき活躍を見せつけ、その都度名乗りを繰り返していた彼女のことは、すでに知っているという貴族も多い。
「うむ、だぁてぃ殿。そちの活躍は麿も見ておったぞ」
「もうご存じでしたか? ということは覚えてもらえたということですね! 嬉しいです!」
彼女の目的は元々、ここアヤカシエンパイアで自分の名前と顔をアピールし、平安貴族から重宝されることだった。
そのために妖相手に派手な大立ち回りをした訳だが、結果は上々と言える。宮中の危機を救った猟兵に対する、貴族の印象は軒並み良い。
「この宴はそちらのための祝勝会である。存分に飲み、食い、楽しんでくりゃれ」
「では、いただきます!」
貴族たちに勧められるまま遠慮なく、ダーティは並ぶ料理に舌鼓を打つ。贅沢をするのも貴族の務めのうちなのか、各地から取り寄せられた新鮮な食材をふんだんに使ったごちそうは、異世界から来た猟兵の舌も満足させうるものだ。
「んー! 美味しい! これも平安結界の中で育んだ食材なんですよね? 食べ物ですら育てることの結界なんて凄すぎます!」
「ほっほっほ、そうであろうそうであろう」
率直な感想で褒め称えるダーティに、貴族たちも満足げな表情。まぼろしを具現化する平安結界の力は、人間が生存可能な環境を維持するだけでなく、農作物の生産可能な土壌や水まで生み出している。あらゆる世界を探してみても、これほど大規模で特殊な結界は稀有だ。
「ぜひとも私もその結界が使えるようになりたいです!」
「ほう。そちは何のために結界を用いようと?」
興味津々といった様子のダーティに、平安貴族から問いが投げかけられる。自分達が平安の世を守るためにこの結界を保ち続けてきたように、なにか深刻な理由があるのやもしれない――そう思ったのかもしれないが、彼女の回答はいたってシンプルだった。
「え? 目的ですか? それはもちろん私にとっての理想郷を作ることです!」
自分の欲望に忠実に、ワルくてカッコいいことが理想とされる悪魔の道徳心に則れば、それは模範的な願いだった。
まぼろしを現実にする結界を私利私欲のままに使えば、どんな世界だって思いのまま。王様どころか神様にだってなれてしまうだろう。
「朝を起きたら空に浮かぶ太陽な私を見上げ、夜になったら輝く星の私を見る……そんな世界です!」
「そ、そうかえ……」
幸いなことに根が善良な悪魔は、ガチで凶悪な悪事はなかなか思いつかない。ダーティが想像するのは誰もが自分の存在を(物理的に)仰ぎ見る、視線誘導の悪魔にとっての理想郷。まるで子供が考えるようなユニークな世界観に、貴族たちも毒気を抜かれてしまう。
「ま、まあ……本気で会得したくば、陰陽術と和歌を学ぶところから、かのう」
「わかりました!」
日本全土ほどの巨大な結界を作り上げるのはそれでも大変だろうが、ダーティに諦めの文字はない。宴のごちそうをたっぷり食べて英気を養いながら、自らの理想郷のため、デビルキングの座のため、次はどんな悪事を働こうかと思案を巡らせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
髪を解き女房装束に着替えてる
昼間なら屋内から夜なら庭先にいる
飲食制限により人への酌や人との会話を楽しむ
彼らの知る妖怪の話やこの世界の事を聞く
化け雑色も敵意がない限り席に在る事を認める
余は様々な世界を旅しておってな。興味があれば話してやってもよいが、まずは貴公等の世界の話を聞かせてはくれぬかな?
UCにて周囲の人に感染
友好・多幸を与える
それ以外の効果は潜伏
妖怪は化かし、騙し、潜り込み、恐怖を喰らうモノである
病には潜伏期間という物がある
無害な振りをして災厄をまき散らすその時まで人の内で静かにしているのだ
生き残った化け雑色にも感染させ何か言おうとしても言えなくする
貴公等、妖怪には気を付けたまえよ。
「故有って余は食事ができんが、貴公等の気持ちは有難く受け取ろう」
妖との戦いを終えたブラミエは、髪を解き女房装束に着替えて、宮殿の庭先に佇んでいた。後始末を終えて宴が始まる頃には夜も更けており、澄んだ夜空には美しい月が浮かぶ。風流を絵に描いたような光景に、彼女の表情も普段より穏やかに見えた。
「余は様々な世界を旅しておってな。興味があれば話してやってもよいが、まずは貴公等の世界の話を聞かせてはくれぬかな?」
「おお、喜んで」「そちの話もぜひ聞かせてたもれ」
飲食制限があっても宴に興じれない訳ではない。ブラミエは貴族たちに酌をしつつ、彼らとの会話を楽しんでいた。
貴族の知る妖怪の話や、この世界の事物はとても興味深い。それは結界に包まれた「平安の世」で育まれた文化と、妖との戦いの記録だ。
「これは麿の領地であった話なのじゃがな……」「そういえば、儂の祖父がこんな事を言っておった」
「成程。興味深い」
ブラミエと話をする貴族らはみな楽しげに、するすると色んな話をしてくれる。酒の助けもあるのだろうが、それだけではない。密かに発動されていた【旅する災厄・ちぐるひわづらひ】の病に、気が付かないまま感染していたのだ。
(妖怪は化かし、騙し、潜り込み、恐怖を喰らうモノである)
ブラミエの体内から漏れた赤死病ウイルスは、風邪に似た経路で感染し、本人の体調に応じた複数の症状を起こす。
今回、貴族たちに出た症状は友好・多幸感。それ以外の症状は潜伏させておけば、彼らは病に罹ったことすら知らぬまま、ブラミエを"善き友"だと信じ込むだろう。
(病には潜伏期間という物がある。無害な振りをして災厄をまき散らすその時まで人の内で静かにしているのだ)
此度宮中を襲った妖どものやり口は、ブラミエから見ればまだまだ甘く、手緩い。まことの妖怪はこうやるのだと、ちらりと視線をやった先には一人の雑色――そやつの着物の下からのぞいた足が、異形のものであるのに気付かぬ彼女ではない。
「貴公も、一杯どうだ」
「い、いえ、私は……!」
ブラミエはその『化け雑色』の生き残りにも酒を飲ませるふりで病を感染させ、何か言おうとしても言えなくする。
折角の宴の興を削ぐことがなければ、あとは敵意がない限り席に在る事は認めるつもりだ。彼女からすれば、害なさぬ妖をことさら敵視する必要はないのだから。
「貴公等、妖怪には気を付けたまえよ」
「ん? うむ、そうであるな」
その忠告の真意を、浮かれ気分の貴族たちが理解することはないだろう。薄っすら微笑むブラミエの表情の意味も。
ときに心躍る異界の話を語り、ときに相手の話に耳を傾ける。誰にもその危険性を知られぬまま、彼女は十分に宴を堪能したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
イクシア(f37891)と
お疲れ様、イクシア。あたしたちなら、この程度何でもないわよね。
それじゃ、どこかでくつろがせてもらおう。
あの回廊の上がり框があるとこに腰掛けて、邪魔にならないようにしながら、夜桜見物としゃれ込もう。
遠くから宴の声が聞こえてくるね。
「式神使い」で器物覚醒。お料理乗せたお盆やお酒の入った|瓶子《へいし》を式神にして、こっそりこっちへ持ってこさせる。
手酌は寂しいわ。杯に一献注いでくれる、イクシア?
|清酒《すみさけ》よ。平安時代では貴重品。イクシアは何を飲む? 牛乳はあるはず。後は麦茶ね。沸かし立てのお茶みたい。どっちにする?
風に桜の花が揺れる。これさえこの世界では幻なのね。
イクシア・レイブラント
ゆかりさん(f01658)と。
ゆかりさんもおつかれさま。危なげなく討滅できた。
確認した限り宮中にアヤカシは残っていないし、後はゆっくりできるね。
じゃあ、隣いい?
お酌をたのまれれば、もちろん喜んで。
私も一緒に飲めたらいいのだけど、あと5年かかるね。少し残念。
そう呟きつつも、和食の原点ともいえる平安時代の料理を堪能しようかしら。
飲み物は暖かい麦茶にするね。
いい景色ね。
澄んだ夜空の星々を眺めながら、ゆかりさんに身体を寄せて。
うん。いつか、本物を取り戻していきたいね。
「お疲れ様、イクシア。あたしたちなら、この程度何でもないわよね」
「ゆかりさんもおつかれさま。危なげなく討滅できた」
妖どもは悉く退治され、『妖の裂け目』も閉じられた。平安を取り戻した宮中で、ゆかりとイクシアは互いを労う。
事後処理を終えた貴族たちは祝勝の宴を開いており、賑やかな音がこちらにも聞こえてくる。此度の功労者である猟兵を交えて、楽しくやっているようだ。
「確認した限り宮中にアヤカシは残っていないし、後はゆっくりできるね」
「それじゃ、どこかでくつろがせてもらおう」
彼女たちはその宴に混ざるのではなく、二人で落ち着いた時間を過ごすことにした。他の貴族たちや猟兵の邪魔にならないようにしながら、夜桜見物と洒落込む。平安結界にて保たれた季節は春の初め、まさに花の見頃の時期だった。
「じゃあ、隣いい?」
「もちろん」
回廊の上がり框があるところに並んで腰掛けて、夜空を背景に咲く桜を眺めるイクシアとゆかり。空気はまだすこし冷たいが、戦いで火照ったあとの身体にはそれも心地よい。もしも歌人がここに居れば、一句詠みたくなるような光景だ――あるいは逆に、ここも誰かが詠った幻想が形になったのやもしれない。
「遠くから宴の声が聞こえてくるね」
何もないのも口寂しいと思ったか、ゆかりは近くの宴席から、料理を乗せたお盆や酒の入った瓶子を【器物覚醒】で式神にして、こっそりこちらに持ってこさせる。流石は貴族が集う宮中の宴だけあって、雅で豪華な料理が山盛りだ。
「手酌は寂しいわ。杯に一献注いでくれる、イクシア?」
「もちろん喜んで」
ゆかりが差し出した杯にイクシアは快く酒を注ぎ、彼女がそれを傾けるさまを微笑んで見守る。瓶子に入っていたのは|清酒《すみざけ》――彼女たちのいた時代では珍しくもないが、濁り酒が一般的な平安時代では貴重品。一杯分を作るのにも相当な手間暇がかかっているのを知るゆかりは、大切にその一杯を味わう。
「イクシアは何を飲む? 牛乳はあるはず。後は麦茶ね。沸かし立てのお茶みたい。どっちにする?」
「なら暖かい麦茶にするね。私も一緒に飲めたらいいのだけど、あと5年かかるね。少し残念」
そう呟きつつもイクシアはゆかりから麦茶を受け取り、冷えた身体を温めながら、この世界の料理を堪能する。平安時代の食文化は和食の原点とも言われ、主菜や副菜、デザートまで揃った豪華なものだ。アヤカシエンパイアのそれは他世界の過去と完全に一致しないところもあるが、宮中の料理人が腕をふるったのだろう、見栄えも味も絶品だった。
「いい景色ね」
食事を終えて麦茶でほっと一息つくと、イクシアは澄んだ夜空の星々を眺めながら、ゆかりに身体を寄せる。ほのかに香る花のにおい、月灯りに照らされた二人の影が重なり、穏やかな時間が流れる――嗚呼、なんて風流なのだろう。けれども二人はこの世界の真実を知っている。
「風に桜の花が揺れる。これさえこの世界では幻なのね」
「うん。いつか、本物を取り戻していきたいね」
まぼろしで覆われた『平安の世』は泡沫の夢のように脆い。妖の介入でいつ壊れてしまってもおかしくないほどに。
それでも、こんな世界から妖どもを退け、いつの日か死の大地をも蘇らせる。そんな夢を夢で終わらせないために、二人の猟兵は決意を新たにするのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
土師・智実
「不調法ゆえ殿上に侍るのは固辞させていただきたく。某は初手にも遅れましたゆえ、此度は所衆や滝口との顔合せに努めさせていただければ幸いで御座います」
子供の自分は思い出せなくても、今の人相から誰某の血縁ではと連想される方が困るので平身低頭して辞去
所衆や滝口の集まっている場所で今回の話や今までの怪異の彼是を聞いたら酒を取りに行く振りをして下郎に混じり外へ
「この年で詔勅に逆らったンじゃ流罪待ったなしじゃねェか。寿命が縮まァ」
外から宮中眺め
「遠流は構わねェが、何にもしてねェ、何にも成してねェのに儚くなるンじゃ生まれた意味も寺を出た意味もねェ。一廉の護法者になったら、大手を振って参内してやらァ」
背を向ける
「不調法ゆえ殿上に侍るのは固辞させていただきたく。某は初手にも遅れましたゆえ、此度は所衆や滝口との顔合せに努めさせていただければ幸いで御座います」
宮中の妖退治で活躍した猟兵が歓待されている中、智実は平身低頭かつ丁寧な口上で、宴への参加を辞去していた。
ここで貴族に顔が売れたところで良いことはない。子供の自分は思い出せなくても、今の人相から誰某の血縁ではと連想される方が困るのだ。
「ほうほう、謙虚なことよ」「また何かあれば期待しておるぞよ」
いかにも風来坊らしい格好と破れ編笠のお陰で、幸いにも彼の正体が皇族だとバレた様子はない。豪勢な歓待を望まない姿勢は謙虚とも捉えられただろう。総じて好印象を受けているうちに、彼はそそくさと殿上人たちの前から去るのだった。
「少しよろしいですかな」
「おや、あなたはさっき妖と戦っていた……」「我々になんの御用でしょう?」
智実が向かったのは、内裏の清掃担当である所衆や、警備担当である滝口が集まっている場所だった。彼らは宮中の関係者ではあるが、いわゆる「殿上人」とは違って位が低く、職務上必要な場合を除いて昇殿を許されない。今の彼にとっては声をかけやすい連中だ。
「なに、少々話を伺いたいだけで御座います」
今回の件や過去の怪異のあれこれなど、自分が出家していた間の出来事を尋ねるには、彼らは丁度いい相手だった。
いかに歌人や陰陽師が結界の維持に務めても、まぼろしの「平安の世」は常に脅かされている。公にこそならないものの、この数年、妖による事件は増えることはあっても減ることはなかった。
「……と、私が知っているのはこんな所ですが」
「成程。貴重なお話に感謝致します」
一通りの話を聞き終えると、智実は「ちょいと酒を取りに」といって席を立ち、そのまま下郎に混じって外へ出る。
やんごとなき身分の方々がひしめく所からようやく出られた彼は、ほっと大きく息を吐き、背筋をうんと伸ばした。
「この年で詔勅に逆らったンじゃ流罪待ったなしじゃねェか。寿命が縮まァ」
皇族は基本的に貴族庶民の区別なく尊敬の対象とはいえ、彼の場合はいささか事情が複雑なのだ。出家して俗世から切り離されたはずの者が、許しも得ずに還俗したとバレれば物議を醸すことは間違いない。このことは本人が一番よく分かっているだろうに、なぜ危険を承知で戻ってきたのか。
「遠流は構わねェが、何にもしてねェ、何にも成してねェのに儚くなるンじゃ生まれた意味も寺を出た意味もねェ」
出家当時はまだ深曽木の儀も済んでいなかった智実も、今や30も手前である。平均寿命の短い平安時代においては、あまり先が長いとは言えない。ならば最期まで誰かの温情で「生かして貰う」のではなく、生きてみたい――己の人生の意義をこの世に刻みつけたい。それが彼の望みであった。
「一廉の護法者になったら、大手を振って参内してやらァ」
しばし外から宮中を眺めていた智実は、そう言って背を向ける。彼の瞳には静かな野望が、胸には志が宿っていた。
大成功
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無門・華蓮
わしは戒律がどうとかでもてなしを断るほど料簡は狭くない。ありがたく受け入れるとしよう。
しかし酔っていたとはいえやり過ぎたのは反省せねばな。
思えばここに来てから僧侶らしい事を何もしていない気もする。
いくら生臭とはいえそれではいかん。ここはひとつ真面目な説法でもして威厳を示すか。
錫杖はただ音を鳴らす道具に非ず。
「聞錫杖聲 速得解脱」と言われ、要は錫の音を聴けば速やかに惑いから解き放たれるとされている。
では鳴らすとしようか。心を清める清廉なる音を聴くがいい。
しかし錫杖を鳴らしだした途端に貴族の一人が悶えだした。
どうやら化け雑色の生き残りが貴族に紛れていたようだな。
ふむ、これぞまさに仏の導きよ。
「わしは戒律がどうとかでもてなしを断るほど料簡は狭くない。ありがたく受け入れるとしよう」
宮中の貴族たちが猟兵の活躍を讃えて宴を開くとあらば、快くもてなされるのが華蓮だ。あらゆる快楽を受け入れる彼女の戒律に「禁欲」の二文字はあるまい。傍目には臆面なき破戒僧だが、その験力をもって妖を退けた功績に、誰が文句を付けられると言うのか。
「しかし酔っていたとはいえやり過ぎたのは反省せねばな」
盆に盛られた飯を食い、酒杯を傾けながら、彼女は自分が壊した建物を見やる。宮中に勤める陰陽師や大工の尽力によって修繕は速やかに進められているが、流石に一昼夜で元通りとはいかなそうだ。面と向かって不満は言われなかったが、苦労をかけたことだろう。
(思えばここに来てから僧侶らしい事を何もしていない気もする。いくら生臭とはいえそれではいかん)
ここはひとつ真面目な説法でもして威厳を示すかと、腹八分目になったところで華蓮はおもむろに立ち上がった。
身に纏うは天上の織り糸で編まれた「極楽の袈裟」、手には「六環金錫」と「極楽の蓮華」。こうして真面目な顔をすれば、流石に高僧らしい風格が漂う。
「錫杖はただ音を鳴らす道具に非ず。『聞錫杖聲 速得解脱』と言われ、要は錫の音を聴けば速やかに惑いから解き放たれるとされている」
仏具とは単に権威をアピールするだけの飾りではなく、それぞれに用途があるところを説けば、宴に居合わせた貴族も「ほほう」と耳を傾ける。もともと即身仏になるためには人並み以上の修行と敬虔さが求められるのだから、彼女の言葉には相応の含蓄が詰まっていた。
「では鳴らすとしようか。心を清める清廉なる音を聴くがいい」
話を終えたところで、華蓮はしゃらん、しゃらんと錫杖を振る。耳に心地よいその音色は、まさに聞いているだけで心が洗われるよう。普段は俗世の欲やしがらみに塗れて気苦労も多い平安貴族たちも、穏やかな顔で聞き入っている。
「うっ、うぐおおぉぉぉぉ……!!」
「おや?」
しかし錫杖の音が鳴りだした途端、頭を抱えて悶えだす貴族が一人。よく見れば其奴の手と足には鱗が生え、尻からは尾も出ているではないか。どうやら先程の戦で仕留め残った『化け雑色』の生き残りが、貴族に紛れていたようだ。
「ふむ、これぞまさに仏の導きよ」
予期しない事態とはいえ、結果的に見逃されていた妖の残党を炙り出した華蓮。清めの音を聞かされた化け雑色が、貴族たちの手で宮中より叩き出されたのは言うまでもなく。宴の席は改めて、彼女の功績と高徳を称える場となった。
「いやはや、お見事!」「上人様がおらねばどうなっていた事か!」
改めて示された御仏の威光に、心からの敬意を表する貴族たち。もちろん感謝の気持ちは酒やごちそうとセットだ。
華蓮は「うむうむ」と満足げに笑いながら腰を下ろすと、再び心ゆくまで豪華な宮廷料理を堪能するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
禰宜・麻斗
御三家
剣姉様に泰河叔父様もお疲れ様
って僕も…
うん、僕も禰宜家当主として力を尽くすね!
御挨拶
…御三家が一家…禰宜家が当主…禰宜麻斗と申します(深々)
我が一族の剣共々お見知りおきを
食事はしっかりと味わう
没落寸前なので食事は家では質素なので美味しいのはやっぱり嬉しい
今回の報酬も備蓄する
しかし…猟兵…とても凄い力を持った人達ですね…
UC発動
五感を共有して化け雑色の生き残りの発見の為に式神は独自に動いて調査
僕は他の貴族の方々や猟兵の方々の戦いなどを熱心に聞いておきます
僕もまた平安貴族…戦い…力をつけていかなくてはいけませんから…ええ…世界を取り戻す為にも!(とっても気負いがちな当主様でした
禰宜・剣
御三家
麻斗も呼ぶ
他の貴族への挨拶も行う
…本当は凄く苦手なんだけどね!
「大丈夫だよ剣ちゃん?もうしっかりと力を示したからね?」
とはいえまだ残党が残ってるかもしれないからね…!
「そうそう!後はお土産も貰っておこうね?」
もー泰河叔父様ったら…
でも…うん…料理…美味しい…!
「麻斗君も剣ちゃんももっと美味しい物食べないとダメだよ?しっかりと精をつけるのも貴族の役割だよ?」
え、でも家の為に…
「今回凄い報酬貰えるみたいだからね?しっかり食べないと強くなれないよ?」
う、うん分かった!
やっぱり美味しい…!
「さーって…剣ちゃんと麻斗君がご飯堪能してる間に僕は化け雑色のお掃除だね?」
という訳で麻斗の式神とお掃除時間
「いやはや、流石はかの禰宜家のご令嬢。素晴らしいご活躍でありましたな」
「ありがとうございます。まだまだ未熟者ですが、宮中の危機を救う一助となれて幸いです」
妖との戦いを終えた後、剣は宴席で他の貴族への挨拶を行っていた。御家再興のためには武勲を挙げることは勿論だが、こうした処世術も欠かすことはできない。平安貴族の人間関係には複雑な政治が絡み合っており、宮中は違う意味でも戦場なのだ。
「……本当は凄く苦手なんだけどね!」
「大丈夫だよ剣ちゃん? もうしっかりと力を示したからね?」
泰河が言うように、今回の事件で剣が為した実績は確かなものだ。妖を退けられるユーベルコードの使い手ならば、若輩者とて無碍に扱われることはない。実際に宮中にいた多くの貴族たちが、彼女の活躍をその目で見たのだから。
「剣姉様に泰河叔父様もお疲れ様」
そんな剣達をねぎらうのは、彼女の弟であり禰宜家の現当主である禰宜・麻斗(平安貴族(従五位下)の臘月の陰陽師・f42869)。今回の事件には故あって参加が遅れたものの、彼も姉と同じユーベルコードの使い手であり、平安の世を守護する陰陽師だ。
「……御三家が一家……禰宜家が当主……禰宜麻斗と申します。我が一族の剣共々お見知りおきを」
「おお、これはご丁寧に」「お若いのにしっかりしておられる」
深々と一礼して御挨拶する、その所作は宮中の礼法にならったもので、まだ10歳の幼子とは思えない態度に貴族たちも感心している。妖との戦いで一族のほとんどが帰らぬ者となってしまった禰宜家だが、この様子なら将来は安泰だろうと彼らは笑うのだった。
「とはいえまだ残党が残ってるかもしれないからね……!」
「って僕も……うん、僕も禰宜家当主として力を尽くすね!」
いかに褒めそやされても浮かれずに、務めを果たさんとする禰宜家の姉弟。『化け雑色』の残党が一匹でも残っていれば、再び宮中の災いになるやもしれぬ。勝利したからといって気を緩めないのは、まことに平安貴族の鑑と言えた。
「そうそう! 後はお土産も貰っておこうね?」
「もー泰河叔父様ったら……」
が、そんな二人とは対照的に泰河は軽薄。引き締めっぱなしでは弓の弦も弛んでしまうことを彼は知っているのだ。
警戒するのも大事だが、今は宴の最中だ。休める時はしっかりと休み、優雅な日常を過ごすのも貴族の務めである。
「でも……うん……料理……美味しい……!」
「そうだね……食べようか」
泰河に促され、豪華な宮廷料理に舌鼓を打つ剣と麻斗。没落寸前の家では質素な食事ばかりなので、美味しいものはやっぱり嬉しい。おかわりだってもちろん自由である――ふたりとも本来は食べ盛りの子供たちにとっては、それが一番嬉しいかもしれない。
「麻斗君も剣ちゃんももっと美味しい物食べないとダメだよ? しっかりと精をつけるのも貴族の役割だよ?」
「え、でも家の為に……」
「今回凄い報酬貰えるみたいだからね? しっかり食べないと強くなれないよ?」
「う、うん分かった!」
まだ少し気後れのある様子だった剣も、泰河にそう言われると嬉しそうに食事を口に運ぶ。大盛りのご飯、主菜副菜にデザートまで揃ったお盆、どれもこれも宮中の料理人が腕によりをかけた品だ。勝利に貢献した彼女が、これを遠慮する必要はない。
「やっぱり美味しい……!」
と目を輝かせる剣の表情は、年相応の少女のそれだった。周りにいた貴族らも、その様子を見ればほっこりと和む。
姉がすっかり食事を楽しんでいる一方、弟の麻斗のほうはと言えば、しっかり食事はいただきつつも、何やら思案を巡らせている様子だ。
「しかし……猟兵……とても凄い力を持った人達ですね……」
貴族や庶民にも覚醒する事例があると聞くが、近頃は別の世界からも現れたという、ユーベルコードの使い手たち。
此度の戦いにも駆けつけ、妖の大将を討ち取って勝利に大きく貢献したという彼らの力に、麻斗は興味津々だった。
「僕もまた平安貴族……戦い……力をつけていかなくてはいけませんから……ええ……世界を取り戻す為にも!」
この宴は直接話を聞ける機会だからと、麻斗は他の貴族や猟兵の方々の戦いなどに熱心に尋ねて、学びを得ようとしていた。今回の件で得た報酬も、しっかり備蓄して御家再興に役立てるつもりである。いささか気負いがちではあるが、はやく立派な当主になろうとする姿勢は貶されるものではなく、貴族たちからの覚えもめでたい。
「これはこれは、見上げた心がけよの」「お二人の将来が楽しみですな」
御家の運命を双肩にしょって立つ、禰宜の若き姉弟。彼らの未来にはまだまだ多くの障害が立ちはだかるだろうが、それでも彼らは自らの意思でこの道を選んだのだ。彼らの成長は次の世代の、すなわちアヤカシエンパイアの未来にも関わっていると言っても、決して過言ではなかった――。
「さーって……剣ちゃんと麻斗君がご飯堪能してる間に僕は化け雑色のお掃除だね?」
二人が食事や話をしている間に、泰河はこっそりと宴を抜け出し、麻斗が召喚した【凶方暗剣符】の式神と一緒に、妖の生き残りを探していた。五感を共有しているためいざという時は麻斗に報せが行くが、たかが残党の調査と後始末くらい、あの姉弟の手を煩わせるまでもない。
「見つけたよ」
「ゲッ、拙い……ウギャッ!!」
発見された化け雑色は逃げる間もなく護符嵐で拘束され、羅刹の手で頭を握り潰される。貴族や陰陽師だけでなく、彼ら式鬼も陰日向に平安の維持に務めているのだ。真実を知る全ての者の尽力なくして、この世は守れないのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
桐藤・紫詠
余は異世界を知った事で様々な音楽を奏でる事が出来ます
しかしここは21世紀の雅楽等を奏でましょうか
アース系世界の近畿地方の名家等に教わった伝統の雅楽を披露し、詩を奏でていく
平安歌人である余の歌は、平安結界を修復する
雅な歌を奏でて世界に『平安』を齎しましょう
――妖との決戦の果て、勝利した後は『平安の先』も見据える必要がありましょうが、今は宴を楽しみましょう
料理もアース系世界におけるフライドポテトやサンドイッチ等手軽に食べられるものを持ち込み、彩を更に豊かにしましょう
「余は異世界を知った事で様々な音楽を奏でる事が出来ます」
平安貴族の嗜みには、舞踊や演奏といった芸事も欠かせぬもの。紫詠も皇族のひとりとして、そうしたものは一通り修めている。いや、人並み以上と言っても良いだろう――平安歌人の才能に加えて、アヤカシエンパイアにはない楽曲の知識もあるのだから。
「しかしここは21世紀の雅楽等を奏でましょうか」
「おお? よく分かりませぬが、楽しみですな」
いきなり文化圏がまるで違う音楽を聞かせても、普通の平安貴族は付いてこれまい。彼女の選曲はアース系世界の近畿地方の名家等で教わった、伝統の雅楽であった。長い年月を守り伝えられ、同時に洗練されてきた音色が、宴の席に響き渡る。
(平安歌人である余の歌は、平安結界を修復する。雅な歌を奏でて世界に『平安』を齎しましょう)
紫詠は雅楽を披露しながら詩も奏でていき、【平安詩浄土変・黄泉詩の基礎】で自らの言葉を現実化する。妖どもが開いた『裂け目』も、こうやって他の歌人や陰陽師との共同で塞いだのだ。彼女たちの存在なくして平安時代は存在し得ない、大事なお役目である。
(――妖との決戦の果て、勝利した後は『平安の先』も見据える必要がありましょうが、今は宴を楽しみましょう)
未来への希望を胸に抱きながらも、今なすべきことを見据え、休むべき時には休む。自分達が平安を忘れてしまっては、誰がこの世に平安をもたらせると言うのだろう。想いを込めて一曲奏で終えれば、穏やかな拍手が彼女を包んだ。
「こちらは余が知った異世界の料理です。どうぞご賞味あれ」
「ほほう。これはまた面妖な……」
異界の音楽を披露した後、紫詠はフライドポテトやサンドイッチ等、手軽に食べられる料理をアース系世界から持ち込み、食事の彩りをさらに豊かにする。見たことも聞いたこともない不思議な料理を前にして、いささか戸惑う貴族も多かったが、好奇心はそれを上回ったようで――。
「ふむ。いや、これはなかなか」「新鮮な味わいだ。いやはや美味ですな」
実際に食べてみた貴族たちからの評価はおおむね好評で、紫詠が用意した分はあっという間になくなってしまった。
食もまた「平安」を支える大事な文化のひとつ。彼女は異世界からの文物をこの世界に取り入れることで、平安の世をより豊かにしようとしているのかもしれない。
「お楽しみ頂けてなによりです」
にっこりと微笑みを浮かべながら、紫詠自身もこの宴を存分に満喫する。傍目には遊び呆けているようにも見える、この光景がかりそめと知りながらも、それを守り続けるために。これが黄泉詩の皇族たる彼女の務めなのだから――。
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
丁重なもてなし、痛み入ります
すでに成人しているので、酒宴に応じ一献傾ける
ふむふむ、アスリートアースのビールやサイバーザナドゥのケミカルなお酒とはまた違った味わいですね
大盛りに盛ったご飯や川魚など、酒や料理に舌鼓
【ダンス】や神楽の動きを戦闘に取り入れることもあるので、音楽や舞いを楽しみながらも勉強の一環として見学する
さて、楽しんでばかりはいられませんね
化け雑色を探らんがため宮中へ
少々の酒精で刀を操る手元に狂いなし
鋭く速い【轟衝穿裂破】は狙い過たず悪しき妖を突き穿つ
「丁重なもてなし、痛み入ります」
宮中にて支度された雅な宴会の席で、招待にあずかったオリヴィアは感謝を述べる。目の前に並ぶのは全国より集められた食材をふんだんに使った豪勢な料理。すべて此度の妖事件における功労者、すなわち猟兵のために振る舞われるものである。
「いやはや、素晴らしき武勇を拝見させていただきましたぞ。ささ、まずは一献」
先刻の戦いぶりを見ていた貴族たちは、敬意をもって彼女に接し、瓶子を差し出してくる。オリヴィアもすでに成人しているため、断ることなく酒宴に応じ、盃を傾ける。平安時代の酒と言えば濁り酒が一般的だが、今回用意されたのは貴重な清酒。後の世の日本酒に通じる逸品だ。
「ふむふむ、アスリートアースのビールやサイバーザナドゥのケミカルなお酒とはまた違った味わいですね」
これまでにも様々な世界の酒を飲んできたオリヴィアだが、こちらの酒も口にあったようだ。すっきりとした淡麗な味わいを楽しみながら、大盛りに盛られたご飯や川魚などの料理に舌鼓を打つ。平安結界の保護下で花開いた豊かな食文化は、他世界のフルコースにも劣らない。
「ほほっ、お気に召しましたかな?」「では、ここで一つ余興でも」
貴族のひとりがぱんぱんと手を叩くと、綺麗な装束を纏った踊り手と、笛や琴などを携えた楽人たちが現れ、舞と演奏を披露する。この時代の芸事は貴族の嗜みであると同時に、神事や宮中行事にも欠かせぬもの。「平安の世」を表現するその調べには、神秘的な美しさがあった。
「これは素晴らしい。とても興味深いです」
自分でもダンスや神楽の動きを戦闘に取り入れることがあるオリヴィアは、この世界ならではの音楽や舞いを楽しみながらも、勉強の一環として見学する。独特のリズムに合わせた踊り手のステップや身のこなしは、ただ美しいのではなく、深い鍛錬によって洗練されていた。
「楽しんでいただけましたかな?」
「ええ。とても」
舞と演奏が終わると、宴席にいる貴族たちからは拍手が。オリヴィアも一緒になって拍手を送り、微笑みを見せる。
まことに優雅な「平安の世」を絵に描いたような光景。人類が生きるための幻想を守り抜くために、この営みを欠かすことはできないのだ。
「さて、楽しんでばかりはいられませんね」
宴もたけなわといったところでオリヴィアは席を辞し、生き残りの『化け雑色』を探らんがため再び宮中へと赴く。
少々の酒精で刀を操る手元に狂いなし。こそこそと人目を忍んで暗躍する妖を見つければ、即座に切っ先を向ける。
「尻尾が見えているぞ」
「グゲェッ?!」
鋭く速い【轟衝穿裂破】は、狙い過たず悪しき妖を突き穿つ。絶命の断末魔は雅楽に紛れ、宴会の席には届かない。
この世界の出身ではなくとも、猟兵として「平安の世」を守る使命に変わりなし。異界の制服に身を包みながらも、その佇まいは立派な防人であった。
大成功
🔵🔵🔵
西恩寺・久恩
無意識に超越者の肉体発動
勝利勝利勝利勝利勝利勝利
貴族達の雅な音曲に合わせて高速でお手玉をする私
『感謝感謝感謝感謝感謝』
『あざっす』
他の貴族の謎の舞を踊りながらお礼?を言って来た
いいって事よ
そしてその貴族達と肩を組んだ
何とか終わりましたね
その後は料理を食べながら他の出し物を見ていると
『さあ、カモカモ!悪い妖を退治して強さと可愛さを皆に見せつけるのです!』『カモカモ〜!』
何か変のが2体もいた
『この世から消えなさい!』『カモ〜!』
何か口から2体の式神が変な光線を放ち化け雑色を消し飛ばしていた
あっ遠距離攻撃出来るんだあの式神達
すみません、仲間になってくれませんか?
『やりました!新しい主さんです!』『カモカモ〜!』
どうやらずっと主を探していたらしく2体の式神は喜んでいた
それはそうと…
逃げようとしている化け雑色を蹴り飛ばして
無限天理陰陽術式…地獄落
敵の背後を掴み空中へ飛び上がり体勢を変えてパイルドライバーを叩き込んだ
『フラウディ・スパーク!』『カモカモ〜!』
再び式神達は敵を謎の光線で消し飛ばしていた
「勝利勝利勝利勝利勝利勝利」
宮中にて催された宴の席で、貴族達が奏でる雅な音曲に合わせ、久恩は高速でお手玉をしていた。【超越者の肉体】の身体能力と動体視力を活かせば、ただの子供の遊びもとんでもない神業に。ビュンビュンと目で追いきれないほどのスピードでお手玉が宙を舞うさまは、なかなか見られないだろう。
「あなや、面白い」「もっと見せてたもれ」
『感謝感謝感謝感謝感謝』『あざっす』
貴族たちは彼女の曲芸を楽しそうに眺め、やんやと拍手を送る――が、その中には妙な貴族も何人か混ざっている。
彼らはお手玉のリズムに合わせて謎の舞を踊りながらお礼を言ってきた。『裂け目』から湧いた妖を討伐し、宮中を救った功績のことを言っているのだろうか。
「いいって事よ」
久恩はその貴族たちとがしっと肩を組む。宮中の作法としてはフランクすぎるが、これは貴族以外の猟兵も招いた宴であるため問題視はされない。そのまま一緒になって舞や芸を披露すれば、他の貴族からも「見事なり」と賞賛の言葉が届いた。
「何とか終わりましたね」
かくして好評のまま余興を終えた久恩は、料理を食べながら他の出し物を見る。妖と戦うだけが平安貴族の仕事ではなく、雅な日常を過ごすために芸事に達者な者も多い。和歌、笛、太鼓、舞踊、蹴鞠などなど――どれも風流で見応えのある演目だ。
『さあ、カモカモ! 悪い妖を退治して強さと可愛さを皆に見せつけるのです!』『カモカモ〜!』
そんな中に、何か変なのが2体も紛れ込んでいる。ただの人ではないし、かといって妖でもない。おそらくは式神――それも突然変異によって自我を獲得した個体のようだ。見たところ主人らしき陰陽師の姿はなく、いわゆるはぐれ式神なのかもしれない。
『この世から消えなさい!』『カモ~!』
「ギャ~ッ?!」
その式神達が変な光線を放つと、獣のような悲鳴が上がる。どうやら宴席に『化け雑色』が紛れ込んでいたらしい。
まだ生き残りがおったのかと、周りの貴族達はびっくりしている。が、それよりも久恩は先に、あの式神達の能力に興味を持った。
「あっ遠距離攻撃できるんだあの式神達」
久恩の習得した無限天理陰陽術は、自らの肉体を武器とした肉弾戦が主体であり、遠距離攻撃の手段が少なかった。
なので、ああいった自分にはできない技を使える者が仲間にいれば、なにかと助かるかもしれない。そう考えた彼女は式神達に声をかけた。
「すみません、仲間になってくれませんか?」
『やりました! 新しい主さんです!』『カモカモ~!』
式神達の返事は即決だった。どうやら二人はずっと主を探していたらしく、妖退治もアピールの一環だったようだ。
大いに喜ぶ二人を見て、久恩は「よろしくお願いしますね」と微笑む。ちょっと変わり者のようだが、これから頼もしい仲間になってくれるだろう。
「それはそうと……」
「グヘッ!?」
どさくさに紛れて逃げようとしていた化け雑色を、無造作に蹴り飛ばす久恩。そのまま背後から掴んで空中に飛び上がると、体勢を変えてパイルドライバーの構えに――先程の戦いで、お仲間に食らわせたのと同じユーベルコードだ。
「無限天理陰陽術式……地獄落」
「グギャーーーッ!!!」
脳天から叩き落された化け雑色はそれっきりピクリとも動かず、骸の海に還っていった。相変わらず陰陽術らしからぬ豪快な技に、周囲からは拍手喝采。妖をぶっ飛ばせるならどんな術式だろうと認めるあたり、平安貴族は意外とおおらかであった。
『フラウディ・スパーク!』『カモカモ〜!』
そして久恩の仲間になった式神達も、新たな主人に自分達の実力を示すため、張り切って妖を謎光線で消し飛ばす。
こちらも原理は分からないが、創造主が有能だったのだろう。平安の世における変わり者の主従が、これからどんな物語を紡いでゆくのか、それはまだ神のみぞ知る所である。
かくして、妖どもから宮中を救った猟兵達の物語は、これにて一件落着となる。
結界に覆われたまぼろしの平安時代。泡沫の夢のごとく儚き世界を守るため、猟兵はこれからも戦い続ける――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2024年04月01日
宿敵
『白酔狐』
を撃破!
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