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電気の流れるニオイがする

#サイバーザナドゥ #電脳の侵略者 #暴走する頭脳戦車 #ドスソードエビルヤクザアタック #サナン #スバル #巨大企業群「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」 #悪徳企業「極鷲会」 #夕狩こあら

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#電脳の侵略者
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#巨大企業群「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」
#悪徳企業「極鷲会」
#夕狩こあら


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 潤沢な資金があるから集まった、とも云えようか。
 とある地下の賭場で起きた逆転劇は、強大な権力に抗わんとする若者達を刺激したか、日も経たぬ裡に多くの有志を集めていた。
「寄せ集めでも十を超えれば、俺達も立派なレジスタンスさ」
 そして、優れたハッキング技術を持つ博徒スバルも、件の事件を知る者として組織に加わっていたが、彼は自分達が情報を集める以上に、巨大企業「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」も此方を探っていようと警戒はしていた。
 いつか奴等は制裁に来る。
 ――唯だ、その出方は想像以上だった。
「おい、スバル! 街中の頭脳戦車が大暴れしてる!」
「どういう事だ!?」
 件の企業は奪われたカネを回収するという|吝嗇《ケチ》はしない。
 それならばカネの流れたであろうエリアごと消し潰そう。
 窓外を見るや夥しい数の戦車の暴走を目の当たりにしたスバルは、外に出てはならぬと皆々に指示して回りつつ、連中の遣り口に冷や汗を流す。
「……思考型AIがハッキングされたんだ! 街中パニックになってる!」
 標的は賭場を潰した自分達だけではない。
 噂を聞きつけて集まった若者達と、無関係の人々まで消しに来たのだ。
 連中にとってこれらの命に違いは無いのだと歯切りしたスバルは、急いでハッキング元の特定に掛かる。
「焦るな、だが早くしろ! 逆にこっちから攻めてやるんだ……!」
 元々凄まじいパワーを制御していた戦車にて、屋内に避難していようと壁をブチ抜いてくる。
 人々の悲鳴が聞こえる中、スバルがダッシュでラボに向かおうとした時――レジスタンスのアジトがゆっさと揺れた。


「何人かを探し出して殺すくらいなら、界隈を丸ごと潰そうという事かな」
 巨大企業群はグループの壮大な野望、或いはくだらない小競り合いの為に倫理を逸脱した行動を起こす事がある。
 これもその一つという訳か、賭場を潰された報復をするにしては「規模が大きすぎる」と頭を振った枢囹院・帷(夜帷の白薔薇・f00445)は、先ずは頭脳戦車の暴走によって脅かされる命を救って欲しいと言を継いだ。
「スバルをはじめとしたレジスタンスの潜伏場所を含む区域一帯に、何者かがハッキングを仕掛けたようだ」
 標的は、自立思考型AIが組み込まれた頭脳戦車。
 このエリアにジャミング電波を送出し、周波数の合った者を狂わせる――謂わば無差別攻撃のようなものだが、これによって多くの頭脳戦車が暴走し、積載兵装を解放して市民を攻撃している。非常に危険な状態だ。
「而して彼等も被害者……いや被害車にて、なるべく無力化して収めた方が良いだろう」
 重要なのは、頭脳戦車との交戦ではなく攻撃元の特定。
 目下、ハッキング能力に長けたスバルが逆探知しようと奮闘しているので、彼から情報を得た後は、電脳ハッキングを仕掛けているオブリビオンを特定し、潜伏先に乗り込んで撃破して欲しいと願い出る。
「相手は|篠突黎明《シノツクシノノメ》グループと予想は出来ているが、ハッカーの居場所は特定できてなくてね。――何、君達なら割り出せる筈だ」
 而してその科白には、場所を特定できれば後は上手くやってくれるだろうという信頼が見える。
 続く言を意味深な眼差しに示した帷は、ぱちんと弾指するやグリモアを召喚して云った。
「如何だろう、派手に暴れてきてはくれないかな。そうすれば上層にも君達の脅威が届くと思うんだ」
 エリア殲滅の報告など聞き流そうが、そうでなければ傾く耳もある。
 面白い反応を見せてやれと、小気味よい艶笑が精鋭を送り出すのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さり、ありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ゆうかり)こあらと申します。

 こちらは、オブリビオンによる電脳ハッキング事件のひとつ、メガコーポの策略によって暴走した頭脳戦車からレジスタンスを守りつつ、ハッキング元を辿ってカチコミする「電脳の侵略者」シナリオ(難易度:普通)です。

●シナリオの舞台
 サイバーザナドゥ、極限まで頽廃したIR(総合型リゾート)地区の一画。
 賭けスチェンカの賭場が壊滅した後、反骨心ある若者が集まってきたようで、スバルもレジスタンスのメンバーに加わっています。ただ、それもメガコーポ「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」グループに知れてしまったようです。

●シナリオ情報
 第一章『暴走する頭脳戦車』(冒険)
 メガコーポの策略により、頭脳戦車の思考型AIがハッキングされ、街中を暴走しています。
 レジスタンスをエリアごと壊滅させようとしているようですが、暴走戦車を無力化し、人々を救出しましょう。
 スバルを救助するとハッキングを仕掛けてきた攻撃元を教えてくれますが、技術のある猟兵なら自力でも割り出せます。

 第二章『ドスソードエビルヤクザアタック』(冒険)
 攻撃元であるメガコーポ所有の巨大サーバービルにカチコミします。
 最上階に至るまでに、ドスソードを構えた悪のヤクザ軍団(警備員です)を倒し、何なら監視システムやサーバー等も潰していきましょう。多くの損害を与えれば、末端の不祥事も上層に届くかもしれません。

 第三章『サナン』(ボス戦)
 CJGG3-THUNAN、メガコーポに雇われて活動する狐系レプリカントです。
 無数に伸びる有線電気ケーブルによって、ハッキングや破壊工作等の様々な仕事をこなし暗躍します。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。呼び名があると助かります。
 また状況によりサポートさん方のご支援を頂いて物語を進めて参ります。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 冒険 『暴走する頭脳戦車』

POW   :    力技で暴走を押さえつける

SPD   :    トラップを駆使して暴走を止める

WIZ   :    策略を用いて暴走を停止させる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

日下・彼方(サポート)
人間のUDCエージェント × 月のエアライダーの女です

戦闘での役割はレガリアスシューズを使っての空中戦、
影の狼を使役して斥候・偵察ができます
武器は通常大型ナイフを使用しますが
強敵には太刀・槍を持ち出す事もあります

普段は(私、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)
機嫌が悪いと (私、~様、です、ます、でしょう、ですか?)

性格は受けた仕事はキッチリこなす仕事人のような感じです
仕事から抜けると一転惚けた風になります

ユーベルコードは必要に応じて、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「既に何件か事故が起きたか。處々で炎が上がっている」
 現地に降り立って直ぐ、ビル間を吹き抜ける風に煙の臭いを嗅ぎ取る。
 火粉が花葩のように踊る街を駆け出した日下・彼方(舞う灰の追跡者・f14654)は、頭腦戰車の暴走によって大混亂・大澁滞に陥った大通りを見つつ、【影狼投影】――実体のない影の狼の群れを召喚した。
「やる事は分かってるな? ――行ってこい」
 我が足元、寸斷された道路を這う「影」から滲出した狼達が、一斉に進路を違えて疾駆する。
 極めて優れた嗅覺と聽覺を備えた彼等は、戰車に轢かれた者の悲鳴や血の匂い、瓦礫の下敷きになった呼吸を拾うべく街中を探索し、また際立った機動力で被害が発生した地点に移動する。
 而して狼達と五感を共有する彼方も、危難へ飛ぶように駆け付けよう。
「挟まれたのか。直ぐに助ける」
「頼む……!」
「そのまま伏せていろ」
 物言いは不愛嬌だが、美鳥の如き佳聲を紡いだ彼方は呼吸を置くなり『Managarmr』の出力全開!
 爪先に瓦礫を引っ掛けるや蹴り上げるよう粉砕し、ものの一瞬で圧迫を解いてやる。
「立てるか?」
「あの、はい。ありがとうございます」
 次いで差し出される繊手の前、男は喫驚に空いた口より謝意を零すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

太目・乃子(サポート)
 サキュバスの戦場傭兵×戦闘猟兵、10歳の女です。
 普段の口調は「無口(私、あなた、呼び捨て、言い捨て)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「――人命救助は基本の『き』。世界が變わっても、私達がやる事は變わらない」
 デウスエクスの侵攻する世界、ケルベロスは常に然うだった。名もなき命を顧みていた。
 太目・乃子(サキュバスの欠食児童・f40815)がこの世界を訪れるのは初めてであったが、骸の雨より涙の雨を見た彼女は、壞れた店舗の前で泣き崩れる女性の前に立つなり超常の異能を解放した。
「! お嬢さん、気を付けて! 崩れたばかりなの、私のお店……」
「破壞されたばかりなら、きっと上手くいく」
 女性が引き留めるより早く発動したのは、【|模倣再現《エミュレーテッド》ヒールグラビティ】。
 白手袋に包まれた繊手が瓦礫の前でスイスイ動くと、忽ち|回復魔法《ヒールグラビティ》が働いていく。
「ちちんぷいぷいっと」
「嘘……まるで魔法みたい……!」
 元の建物を直した訳では無いが、これに限りなく近い偽物を作り上げた乃子は、ショックで動けなくなった女性を立ち上がらせると、暫くは此処をシェルターにして耐えるよう指示する。極めて精巧に作られた其は、強度も本物と遜色ない。
「元通りとはいかないけれど、より良い未來がある筈だから」
 花唇を滑る佳聲は透徹と冱えて。
 絶望にある女性に希望の光を見せ、奮い立たせるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミーヤ・ロロルド(サポート)
『ご飯をくれる人には、悪い人はいないのにゃ!』
楽しいお祭りやイベント、面白そうな所に野生の勘発動させてくるのにゃ!
UCは、ショータイムの方が使うのが多いのにゃ。でもおやつのUCも使ってみたいのにゃ。
戦いの時は得意のSPDで、ジャンプや早業で、相手を翻弄させる戦い方が好きなのにゃよ。

口調だけど、基本は文末に「にゃ」が多いのにゃ。たまににゃよとか、にゃんねとかを使うのにゃ。

食べるの大好きにゃ! 食べるシナリオなら、大食い使って、沢山食べたいのにゃ♪ でも、極端に辛すぎたり、見るからに虫とかゲテモノは……泣いちゃうのにゃ。
皆と楽しく参加できると嬉しいのにゃ☆

※アドリブ、絡み大歓迎♪ エッチはNGで。



 頭腦戰車の暴走によって負傷した市民が、懸命な捜索活動によって次々と救助されていく。
 猟兵が守る建物に集められた彼等は、そこで応急処置を受ける事になるのだが、未だパニックにある彼等を迎えたのは、七彩に輝ける極上の歌聲だった。
「さぁみんな、ミーヤの歌を聽いてにゃ♪ 心と体を癒してあげるのにゃ~♪」
 優しくて、穩やかな、何より愛嬌のある聲。
 旋律の紡ぎ手たるミーヤ・ロロルド(にゃんにゃん元気っ娘・f13185)は、【シンフォニック・キュア】――心身を癒さんと広がる五線譜に可愛らしい歌聲を乗せ、建物いっぱいに安らぎを響かせる。
 猫の足跡マークがピカピカと光るヘッドセットは、彼女の想いを聽き手に聢と伝えよう。
「もう大丈夫、怖くないにゃ~♪」
「噫、クリアボイスが心に染む……!」
「頑張って命を繋げるのにゃ~♪」
「奥底からチカラが湧いてくる……!」
 |巨大企業群《メガコーポ》がエリア一帯の殲滅に掛かるなら、今は「生き残ること」が何より抵抗になる。
 連中はネットニュースで三行も語られぬ「事故」など目も呉れぬだろうが、想定外の事態が起きれば否應にも注目しよう。
 その奇跡を起こすのにゃ、と――。
 建物に滿つ透徹の歌聲が、奇跡の第一歩を示すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エミリィ・ジゼル
賭場潰されたぐらいでキレるとか沸点ひっく…
メンツを保つという意味では理解できなくもないですが

まあ、そっちはひとまず置いておいて、先にスバル様の救助ですね
先日の賭場で知り合った手前、放置するのも忍びないですし

はい、二度目の開幕メイドチョーップ!
登場と同時に暴走した頭脳戦車を両断してきます、それはもうズッバズバと
やはり暴力…暴力はすべてを解決する…

で戦車鎮圧後の攻撃元の割り出しですが、こちらはスバル様に丸投げしましょう
自力でできなくはありませんけど、命を助けた見返り的な?
本職の方のほうがスマートにやるでしょうし、ギブアンドテイクの関係のほうが後腐れないですしね

そんなわけで、よろしくおなしゃっす!



「何処からハッキングされてるか調べる! 逆にこっちから攻……――うおっ!!」
 スバルがラボへ向かおうとした矢先、建物がゆっさと搖れる。
 複数の頭腦戰車が暴走した末に衝突したか。瓦礫と化した壁を踏み越えて來る鐵塊に喫驚したスバルは、刹那、それらがズバッと切斷されるのを見ると、更に仰天した。
「はい、ちぇすとー!」
「君は……スノーフレーク! 來てくれたのか!」
 嘗ての邂逅を鮮明に呼び醒す、二度目の開幕【メイドチョップ】ッ!!!
 川から流れてきた桃並みにパカンと割れた車体から覗く影は、エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)!
 かの賭場で見出した“勝ち馬”の登場に、スバルは嬉しくない筈が無かろう。
「はは、ヒロインになった気分だね。こんなピンチも悪くない」
「知り合った手前、放置するのも忍びないですし。こういうのは默らせるのが一番と思いまして」
「そ、そっかぁ」
 幾許の言を交す最中にも、エミリィの繊手は聖剱の如く閃いてズバーン!
 壞れた壁を防衛ラインに、運悪く進路を結んだ暴走車をズバッ、兵裝をズバッ、砲彈をズバッ! 忽ち逆巻く爆風と灼熱に銀髪を靡かせて立つ彼女こそ暴の塊か。やはり暴力……暴力はすべてを解決する……ッ!
 その鬼神の如き戰いっぷりに蒼褪めたスバルは、蓋し件の賭場で知り合った彼女が駆け付けた事に納得も得たようで、機材を整えながら肩越しに聲を投げた。
「なぁジゼル、君も|篠突黎明《シノツクシノノメ》が噛んでいると思うかい」
「そうですね。賭場潰されたぐらいでキレるとか、沸点ひっく……とは思いますが」
 水を向けられたエミリィは、何機目かを瓦礫に加えた後で言を継ぐ。
「メンツを保つという意味では理解できなくもないですが、別の理由があるかもしれません」
 何より利と益の爲に動く連中だ。
 一抹の警戒を示した彼女は、然し今は攻撃元の割り出しが最重要とスバルを促した。
「では、ちゃっちゃと特定して下さい。集中、集中!」
「えっ丸投げ!?」
「わたくしも出來なくはありませんが、命を助けた見返り的な? ギブアンドテイクな関係の方が後腐れないですし」
 ワールドハッカーなエミリィに遣り樣はある。幾らでも。
 だが、よりスマートに事を運ぶなら彼が適任だ。
「そんなわけで、よろしくおなしゃっす!」
 而してスッキリと割り切った瞳に映されたスバルは、「參った」と吐息を零した佳唇に微笑を萌すと、急ぎキーボードに十指を走らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暁星・輝凛
篠突黎明、あのスチェンカ場の元締めメガコーポか。
妙な縁でも結んじゃったかな?

まずはエリアで暴れる暴走戦車を無力化しつつ、アジト方面へ向かうよ。
操られてるだけだし、寝ててくれればそれでいい。
僕の剣とUCで、脚と武器を潰させてもらう。
殲剣黎明刃を広域展開。近くを通った敵の関節部に突き刺して動力伝達を【断】つ。
攻撃を【受け流し】つつ接近し、武器を【切断】。

「大人しく、寝てなよ!」

その状態で蹴り倒せば、暫くは起き上がれないでしょ。

ある程度鎮圧したら、スバルくんと合流。
年上だったらスバルさん、だけど……まあそんなことは置いといて。
「やあ、また会ったね。でも話はあとだ。――ハッキング元、突き止められた?」



「赤い靴にでも囚われてしまったかな? てんで踊り狂ってる」
 進路の先、砲彈をブッ放して走り回る戰車群を烱瞳に射る。
 無秩序に降り注ぐ彈雨をジグザグと疾駆して切り抜けた暁星・輝凛(|獅輝剣星《レディアント・レオ》・f40817)は、猛然と逆巻く熱風を頬に掠めながら拔剱すると、眩く輝ける鋩を前方に結んだ。
「君達は操られてるだけだし、寝ててくれればそれでいい」
 滾々と光を溢れさして閃くは、獅子黎明流・殲剣が一、【|殲剣黎明刃・人《フォトンビット・クラウン》】ッ!
 輝凛を中心に放射状に広がった光は、輪郭を形成して141本の小剱に、その刀鋩を頭腦戰車の下肢関節部に結んで全方位から斉射――!! 先ずは機動の要を切り離す。
 果して首切り役人は狂える脚を斬った訳だが、|蹲踞《つくば》って猶も砲撃を続けるなら、次は砲筒を接合する背部へ光剱を突き刺し、動力伝達を斷って無力化する。出が速いからか、制圧するのもあっという間だ。
「大人しく、寝てなよ! じゃあね!」
 最後、窮余の一策ならぬ一発の砲彈を肩口に掠めた輝凛は、一縷と臆せず前進して|蹴撃《キック》!
 間もなく顚倒した頭腦戰車がジタバタと道路でもがく中、今度は実体ある愛剱レグルス・レガリアで武器を切斷し、エネルギーの尽きるまで見送らせる。
 そうして戰車を鎮圧しながら向かった先は、若者が集まっているというスバルらレジスタンスのアジト。
 先の賭けスチェンカで遭遇していた二人なれば、話はスムーズに進んだ。
「やあ、また会ったね。スバルくん!」
「おっ、メチャいい所に來てくれんじゃん! こっちだ!」
 急ぎラボへ案内したスバルは、何やら小難しい器材を操作しながら輝凛に説明する。
 聽けば数日前に|尾行《つけ》られた感覺があったらしく、これ程の威力攻撃を仕掛けられる相手は|巨大企業群《メガコーポ》しか在り得ないと云う。而して考えられる相手は、一社。
「|篠突黎明《シノツクシノノメ》……慥かあの賭場の元締めだったよね。妙な縁でも結んじゃった?」
「かもなー」
 溜息がちに答えるスバルは、然し口元には不敵な笑みを湛えている。
 彼は十指をキーボードに滑らせながら、ひとつ、仮定の話をした。
「もし俺が縁の“結び目”を見つけられたら、切ってきてくれるかい」
 鋭い刃を届けるべく、攻撃元の座標を割り出さんとするスバル。
 彼が向かう画面を身を乗り出して見た輝凛は、漸う絞られゆく場所に玉瞳を研ぎ澄ませるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヌグエン・トラングタン
あー、あのあとどうなったのか気になったんだが。動きがでかすぎんだよ。
そういうことしても、騒ぎを抑えられる自信はあるんだろうな。
つーわけで、俺様も一枚噛む。

硝子のギルドペンで『一』を書く。で、UC使ったうえで空気を武器と認識すれば…立派な壁になるってな。
空気を破壊なんざ、そうそうできねぇだろうよ。
『魚欲鉄望』で浄化できそうならしておくが。
その間に、スバルと接触して…一緒にカウンターハックといこうぜ。
俺様も『天欲渾望』でできるんだけどな、多くは『GGOプレイヤーを統制機関のハックから守る』やつなんだわ、これ。だから、スバル頼った方が早いんだよ。



「……動くにしても、規模が|巨《でか》すぎるんだよ」
 事の発端は知っている。何せ当事者だ。
 事件の後、界隈がどうなったか気になっていたのだが、成程こうなったかと炎と煙の立ち昇る街を見渡したヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は、熱風に舞う火粉を頬に掠めながら言つ。
「これ程の事をしても、騷ぎを抑えられる自信はあるんだろうな」
 向こうは「事故」として雜多なニュースに押し流す|心算《つもり》か知らないが、その程度の覺悟で事を起こすとあらば、クエストのボスとして|いただけない《・・・・・・》。
「つーわけで、俺樣も一枚噛むぜ」
 連中の株価を見るのに忙しい目を無理矢理にでも向けさせる、と小気味良い微笑を浮かべたヌグエンは、懷から硝子のギルドペンを取り出すと、空中に「一」と文字を描いた。
「これより空気を“武器”とする。そうすりゃ立派な壁になるってな」
 魔竜の術式によって解放されるは、【限定権限:全ては俺様の意のままに】。
 エリア一帯を我が庭としたヌグエンは、破壞不可能な空気の防壁を広げながら移動し、暴走戰車による被害を抑えつつレジスタンスのアジトを探す。彼の周囲、空中を海のようにして游ぐ『魚欲鉄望』がウイルスを淨化すれば、ヌグエンが移動した場所でそれ以上の暴走事故は発生すまい。
「今回は後で謝りに行く手間もなくて樂だぜ」
 トイツオック地方以外のエリアを掌握すると、爾後のフォローが必要になるのだが、此たび遠慮は無用。
 途中、被災者の捜索や救助に当たる仲間と現状確認しながらアジトに至った彼は、建物をぐるりと回って「一」の字を繋げた後、奧のラボで反撃の準備に掛かるスバルと接触した。
「よう、スバル。一緒にカウンターハックといこうぜ」
「トラングタン! アンタも來たとなれば、敵は|篠突黎明《シノツクシノノメ》に間違いないな」
 直ぐに椅子を譲ろうとするスバルに対し、その儘「座っていろ」と手で制するヌグエン。
 彼も『天欲渾望』で外部からのハッキングを阻害・反撃できるのだが、多くは「GGOプレイヤーを統制機関のハックから守る」爲のものなので、ここはスバルを頼ることにする。
「向こうも默っちゃいないと思ってたが、此方も默っちゃいられねぇよな」
「噫、そうだ! 吼えて、吠えて、嚙みついてやるぜ」
 ヌグエンの加勢で勇気を得たか、キーボードの打ち込みを加速させるスバル。
 その瞳には搖るぎない反骨心が炎の如く灯り始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
自立思考AIを狙ってきたか……電脳化した人間よりもコンタクト手段多くて楽なのかな……
…取り合えずは頭脳戦車を治療して攻撃元を特定しようか…
…まずは【我が身転ずる電子の精】を発動……目を粒子化するよ…
…データを目で見て暴走を促している箇所を検出…医療製薬術式【ノーデンス】でワクチンプログラムを作って
そのプログラムを持たせた自己判断型伝令術式【ヤタ】に暴走戦車達に潜り込ませて治療をしようか…
…あとはジャミング電波を「見て」辿ってどこから来るか攻撃元を逆探知するとしよう…



 先日、暴徒鎮圧に出向いたデスブリンガーが電腦をハックされ、街を壞滅させる事件が起きていた。
 そして今回は、自立思考型AIが組み込まれた頭腦戰車への無差別攻撃。
 義体化と電腦化が進む世界なれば、當然の流れと云うべきか――これまで集めた事件の情報を、電子型解析眼鏡のレンズに表示したメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、その画面越しに見る惨憺に佳聲を挟んだ。
「……最高レベルのプロテクトが施されている電腦をハックするより、コンタクト手段多くて樂なのかな……」
 ハッキング対象を「誰」と決めず、「誰でも良い」なら効率的だ。
 成程、攻撃する側にすれば合理的かもしれないと、狂ったように砲撃を繰り返す戰車を捉えた佳人は、華奢に祕める魔力を一気に励起させた。
「……取り敢えずは“治療”しようか……」
 我が軀よ、變われ――と。
 花唇が言の葉に術式を編んだなら、【|我が身転ずる電子の精《コンバート・テクノマンサー》】は魔女の目を粒子化させよう。
 次いで「集え」と命じたなら、粒子はデータを直接見る視覺集合体となって問題を――暴走を促している箇所を検出し、直ぐさま分析した後、医療製藥術式『ノーデンス』にワクチンプログラムを送出する。
 ここまでの処理が、戰車が次彈を撃ち出すより迅いのだから流石。
 目下に放物線を描く砲彈を的確な演算で回避した魔女は、灰色の髪を熱風に梳らせつつ靜然と言ちた。
「……毒は藥に、藥は毒に……」
 畢竟、兩者が表裏一体なのだと呟く間に、自己判断型伝令術式『ヤタ』が戰車に潜行する。
 かの精靈AIがプログラムと共に機体に入り込めば、頭腦戰車は眼部液晶にグルグルと車輪を回して幾許――再起動して正常化する。治療完了、という訳だ。
 而して暴走車を鎮圧……いや靜養させたメンカルは、更に視界を広げて電網を手繰ると、攻撃元の特定に掛かる。
「……ジャミング電波を『見て』辿って……どこから來るか逆探知する……」
 伏せた瞼の奧、ニューロンの樣に緻密に編まれた電腦の網を駆ける。
 随分と遠くまで來たような感覺があると、メンカルが周囲を見渡せば――成程、高層ビル群が聳え立つ摩天楼の中に、電波の発信元が「見」えた。
「……ここが……」
 而して彼女が見た巨大ビルは、スバルが割り出した座標と一致しよう。
 その頂には、|篠突黎明《シノツクシノノメ》の企業マークが飾られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイカ・ヴァンスタイン(サポート)
フェアリーの聖者×プリンセス、11歳の女です。

戦闘は苦手で援護や救助、支援など中心です。
武器は人間大の人形(銃火器持)ですので、運搬作業も可能です。
普段は悪戯(許せる範囲)で遊ぶ※戦闘とは別です。

普段の口調は「マイペース(ウチ、相手の名前+ちゃん、なの、なの?)」
苦しい時は「愛想笑い(ウチ、相手の名前+ちゃん、なの、なの?)」です
難しい漢字は使わずに喋ってます。

・ユーベルコードは必要に応じて、多少の怪我は厭わず積極的に行動(支援中心)します。
・他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。公序良俗に反する行動はしません。悪戯も笑って許される範囲までです。
・あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 砲彈に破壞された建造物と、見境なく突進して自壞した頭腦戰車たち。
 そうした瓦礫や鐵塊がゴロゴロと転がる道路には、事故に巻き込まれた市民が下敷きに、或いは闇雲に逃げ回っているが、この惨憺に駆け付けたのは、透いた繊翅の美しい|妖精《フェアリー》。
「はろはろ、けが人居ませんか~? ウチがちりょうしますの~」
 春風のように爽やかな佳聲を囀るは、レイカ・ヴァンスタイン(銀光精・f00419)。
 炎と煙の中で恐慌にある人々を瞳に映した彼女は、優れた瞬間思考力で状況を把握すると、己が取るべき行動を溢れる光に示した。
「さぁみんなでお手伝いしましょうなの」
 小さな軀より迸る万彩の|赫耀《かがやき》は、【夢幻之瑞光】――友達を喚ぶ光。
 レイカが高らかに告ぐや141体の妖精達が現れ、其々が苦難にある市民を応援し、繊翅の羽搏きに避難所へ導き、瓦礫をどかす手伝いをしてくれる。
 而してレイカ自身も『彩光隊』なる七色の和裝人形を糸で操って怪我人を運び、街の混亂を少しでも収めんと駆け回る。
「ウチも悪戯はしますの。でも、これはいけませんの」
 妖精から見ても、目下の状況は度が過ぎる。
 花唇をきゅっと結んだレイカは、巨悪に抗うべく人命救助に奔走した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
内容にもよるけど、行動指針となる確実な情報を得るのが有意義だと思うわ。
着替えるなり変装するなり色仕掛けなり、手段は状況に寄りけりかしら。
それとどんなときも落ち着いて行動ね。
あと、物証とか何かを集める必要があればうまく詰め込んで、
効率よく運びたいわね。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.潜入・変装・誘惑等で確実な情報一つの入手を試みる
 (または情報の裏を取る)
2.斥候・探索役として周囲を探り、情報収集を行う。
3.戦闘にて囮役または攻撃補助に徹する。

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎



「ハッキングを仕掛けた相手は、事件ではなく事故として終わらせたいようね」
 今更世論を気にする相手では無かろうが、株価に影響するのは避けたいか。
 |巨大企業群《メガコーポ》がレジスタンスを街ごと壞滅させたと云えば波が立とうとも、頭腦戰車の暴走であれば無関係を裝える――賭場を潰された報復をするにしても、實に卑怯な遣り口だ。
「情報は、眞實を示す爲に正しくあるべきよ」
 故にラムダ・ツァオ(影・f00001)は、現場で物証を確保しよう。
 炎と煙、そして混亂の中で埋没していく其を集めるに、彼女は至る所で狂奔する頭腦戰車と擦れ違いざま【シーブズ・ギャンビット】ッ! 黑い外套を目眩ましに翻しながら、諸刃の短剱を関節部に突き入れ、先ずは武器と車体を切り離す!!
「ハッキングされた形跡は残さないと」
 而して外套を脱いでからは、更に身軽になって駆動部へ刺突――!
 自立思考型AI自体は暴走状態にあるものの、攻撃的な部分のみ損壞する事で無力化したラムダは、彼等の頭腦に外部から悪意あるプログラムが流れ込んだ証拠を確保する。
「――後は数も必要かしら」
 大規模に行われた事を証明するには数も欲しい。
 ラムダはその機動力を活かして広範囲を移動し、敵方が揉み消したいであろう眞實を集めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
電脳やはっきんぐというのには無知ですが人々は助けます。
街がとても広いのでロベルタさんとは別々に行動しますね。
ロベルタさん曰く空気を伝わる振動で妨害する術のようで。
ならば…その振動をなんとかすれば『事』は納まりますね。

リミッター解除後に限界突破してから範囲攻撃付与の技を。
【幻魔葬刻『黒死蝶』】を戦車を包むように展開しますね。
この黒い蝶で壁を作れば戦車の動きを停められるかもです。
なるべく複数の戦車を一度に停めたいと考えていますが…。
装甲を喰らっても構わないので戦車にとまって貰いますよ。

戦車を無力化しながら周囲の人達の手当てや誘導をします。
黒い蝶がとまっている間は戦車も動けないはずですから。
もし動いても良いように気をとめながら警戒はしています。
…ロベルタさんの方は上手くいっているでしょうか…。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
ジャミングが何かと問われたら振動による妨害だね。
こーゆーのが全く無い世界の墨ねーには難しいかも。
だから僕なりにすっごく簡単に説明してみるじぇ。
『空気を伝わる特別な振動で妨害できるんだ』って。
墨ねーは少し考だけえて納得してくれたようだねぃ。
「う! 街は広いし別行動で戦車を何とかしよー♪」

暴走戦車を停める…かぁ~。どーしよーかなぁ僕は。
逆ハックはスバルにーちゃんがしてるみたいだしねぃ。
面倒だし上手い手が思いつかないから『物理』でいく!

先ずは準備運動しながらパフォーマンスで底上げして。
次に封印を解いた後に限界突破して準備は完了だじぇ♪
最期に多重詠唱しながら利き足に重量攻撃と鎧砕きを。
戦車へ向けて駆けてジャンプ。【金色の大槌】を一撃!
超重力の二度蹴りで地面に押し込んじゃえ♪うぇ~い♪

分厚い装甲だろうから砕き割ることは難しそうだよねぃ。
うー。もしかすると地面に埋めるのも難しいかもかな?
ま。いいや。素早く左右に避けつつ何度でも蹴り入れる。
回避は見切りと野生の勘と第六感でするよ。



 巨大企業「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」にとって、賭場を潰したスバルと仲間のレジスタンス、そして彼等の潜伏先とエリアを同じくする市民に区別は無し。等しく潰す命に變わりない。
 蓋し猟兵も命の区別は爲まい。
 彼等は踏み躙られる全ての命を救い出さんと、炎と煙に揉まれる惨憺に向き合おう。
 而して、然う、この二人も。
「……攻撃方法が……いまいち……りませんが……人々、は……助けま……」
 じゃみんぐ。はっきんぐ。
 電腦に関しては頓と疎い浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)だが、危機に晒される人々を守りたいという気持ちは、どの世界に行こうと變わらない。
 濡羽色の髪が熱風に梳られる中、次々と爆ぜる衝撃に烱瞳を結ぶも間に合わず――餘程の広範囲で暴走事故が起きていると墨が花唇を引き結べば、佳人の隣、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)が早速その優れた電腦魔術によって界隈の地図を入手していた。
「墨ねーの世界にはこーゆーのが全く無いから、全部を理解するのは難しいかもねい」
「……れは?」
「う! ジャミング電波の浸食エリアを調べているんだじぇ~♪」
 ――成程、分からない。
 とまれ、墨が五感で拾う情報を数値で読み取ったロベルタは、彼女の云う通り波及範囲が広いようだとホログラムに示すと、二手に分かれて対応に當たろうと決める。
「たぶん相手はアジトの精確な位置まで判らなかったんだじぇ。だから街全体に仕掛けてる」
「……それが……じゃみんぐ……ですか?」
「そうだねい。ざっくり言えば、“空気を伝わる特別な振動で妨害できる”んだ」
 ことりと小首を傾げる墨の前、ロベルタなりに要点を掻い摘んで説明する。
 橫文字を使わぬのが優しいか、墨も墨なりに考えて納得を得たらしく、電子図像に記された地図を見つつ凛然を萌した。
「振動……。……なら……其をなんとか、すれば……『事』は収ま……すね……」
「うぇ~い♪ 手分けして暴走戰車を止めにいこ!」
 墨ねーはあっちで。僕はこっち。
 ロベルタが人差し指をスイスイッと動かせば、こっくりと頷いた墨は「それでは」と小さな鈴音を置いて大通りを疾走ッ! 忽ち巻き起こる風にポニーテールを搖らしたロベルタも、意気揚々と駆け出す。
 目下、闇雲に降り注ぐ砲彈の雨さえ、彼女達を止める事は出來なかった。

  †

「……洗腦に似た……感じでしょうか……不本意に……人を傷つけて、仕舞うのは……辛かろう、と……」
 頭腦戰車達に自らを止める術が無いなら、ここは己が動くべきだろう。
 彼等とて被害車なのだと、狂奔する鐵の塊を捉えた墨は、幻魔葬刻【黒死蝶】――白魚の如き繊指を進路に向けると、闇夜に染まれる|蝴蝶《ちょう》を召喚した。
「舞、喰らえ……」
 差し伸べた掌指に黑斑を落とす、合計1,480匹の蝶、蝶、蝶!
 片々と音もなく羽搏く黑翅は熱風を擦り抜け、猛然と走り回る戰車に觸れるやエネルギーと混乱状態を「喰らい」、スン……と停止させる。
「……せめて、暴走が……止まれば……被害が抑えられ……救助も進む……筈、です……」
 この蝶は術者の意の儘に動き、壮麗な幾何学模様を描きながら半径148m圏内を囲繞し、複数の暴走車を纏めて鎮圧する。黑蝶が蜜を求めて留まる限り、頭腦戰車は移動する事も思考する事も叶うまい。
 一帯の戰車が沈默するのを確認した墨は、急ぎ彈雨の止んだ周辺を見渡し、要救護者を見つけては傷の手当をし、歩ける者は安全な場所へと誘導した。
「……お怪我、は……。……今、止血……す……!」
「うぅっ……すまない……助かる……」
 手拭と襷を取り出し、応急処置を施す。忽ち白布に血が滲むが、意識があるのが幸い。
 墨は懸命に聲を掛ける一方、万一にも戰車が再暴走した場合に即応できる位置取りを心掛け、特に被害者と戰車を結ぶ射線には黑蝶を壁の如く布陣している。
「……お気を、強く持って……きっと……この騷動は……収ま……すから……」
「くっ、俺達は目を付けられてしまったんだ……こんな事する連中にどう立ち向かえば良いんだ……!」
 何処にも逃げられない、と悔しそうに聲を絞る男はレジスタンスの一員か。
 墨は彼の瞳に涙が滲むのを見つつ、並の者では|巨大企業群《メガコーポ》に反駁を示す事も出來ぬ、この世界の不条理を見る。
 並の者で敵わない。
 ならば埒外の者なら――果して。
「お嬢さん、頼む。俺をある所に運んでくれ。スバルって奴が居るんだ」
「……かり、ま……た……」
 レジスタンスのアジトに連れて行って欲しいという男の頼みを聞き、移動を始める墨。
 噎せ返るような黑煙を潜る中、つと、佳人は別行動を取る戰友を気に掛けた。
(「……ロベルタさんの方は上手くいっているでしょうか……」)

  †

 ――而してロベルタはと云うと。
 腦内でローディング円環をぐるぐる、どうも思い倦ねている樣だった。
「暴走戰車を停める……かぁ~。どーしよーかなぁ僕は」
 火粉と煤の舞う街を走りながら考えてはいたのだが、中々良い手が浮かばない。
 目下に送出されるジャミング電波は、スバルというにーちゃんが逆ハックして攻撃元を辿っているらしく、電腦魔術士として働く事もなかろうか。
 では如何しよう? と、紡ぐ疾風に疑問符を連れていたロベルタは、進路の先、交差点を抉るようにドリフト進入する暴走車を捉えると、ほぼ反射的に踵を蹴って加速した。
「う! 色々面倒だし、蹴っ飛ばすじぇ~!」
 答え:物理。
 策を巡らせるよりシンプルでスマートだと、花顏をスッキリ晴らした少女は、そうと決めれば頗る迅速。
 小気味佳く弧を描いた櫻唇に祕呪を唱えたロベルタは、詠唱を重ねる毎に身体能力を飛躍させ、凄まじい重力を帯びながら肉薄ッ! 標的と見定めた頭腦戰車を目前に彈ッとジャンプするや、高高度から鋭く踵を振り下ろした――!!
「何とかしよっ♪ そんでもって……何とかなれー!」
 Questa è la chiave per vincere! 其は勝利に嚮導く鍵。
 戰車の頭部へ垂直に打ち落さる【|金色の大槌《ゴルディオン・ハンマァー》】は、先ずは利き足で装甲を拉げさせ、次いで空中で軀の軸を旋回して繰り出る逆足が二撃目を閃々! まるで鐵鎚で釘を打つように戰車を押し込み、地面にメリ込ませた――!!
「装甲が分厚いから砕き割るのは難しいと思ったけど、うぇ~い♪ 上手くいったじぇ♪」
 斯くして地面に埋め込まれては、他の部位が生きていようと動けまい。
 罅割れた舗装路の下でギチギチと藻掻く戰車に「ふぅ♪」と息を零したロベルタは、別なる駆動音を耳に拾うや即ダッシュ! 今度は橫薙ぎに閃く左右の|脚撃《ラッシュ》で超重量車輛を吹ッッッ飛ばす!!
「これは埋められなさそう? ま、いいや。こうやって……だるま落としだじょ♪」
 攻撃を『物理』と決めたロベルタは、判斷も反應も迅い速い。
 槌を水平方向に振る事で胴を抜く、「達磨落とし」の要領で暴走車の兵裝を切り離した少女は、頭腦は暴悪に犯されつつも、其を駆動に出力できない状態へ持ち込み、無力化を成功させる。
「一帯が片付いたら、墨ねーと合流するじぇ♪」
 地図を取得している彼女なれば、レジスタンスと共にアジトへ向かった墨の座標は直ぐに割り出せよう。
 墨が想像した以上に|上手くやった《・・・・・・》ロベルタは、晴々しく合流するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
ゴーグルにスマホ『トマト』を繋げ潜る準備を。
準備しつつ露に彼女(露)の役割を説明しておく。
「頼んだ」

整ったら全ての戦車AIを停止させるためネット世界へ。
この際【智慧なる女神】と【電子の精】を利用しよう。
【女神】は他UCも行使可能だからもう一つ行使可能なはず。
技能で魔術の底上げして私の作業の技量を上げておこうか。
(リミッター解除と封印を解く限界突破と全力魔法行使)
「…さて、始めよう」
ジャミングしている位置を特定し乗っ取り電波発生を消す。
恐らく何かしらの妨害策を講じているだろうから慎重に。
妨害策はその都度【女神】で解析鑑定しその場を制圧する。
ジャミング装置からハッカーの位置特定を試みてみようか。
装置の不具合などに対応するため常に装置を視ているはず。
それを逆に利用しようと思う。
スバルの邪魔はせず裏から彼のサポートをしようと思う。

ついでにそのハッカーを少しからかってやろうか♪
使用するシステム内に侵入し誤った情報を流してやろう。
もし作業しているのが電子ロック付きの部屋なら細工を。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
難しいことはよくわからないけど人は助けないと。
何か準備してるレーちゃんに説明を聞いて外へ出るわ。
「うん♪ レーちゃんも頑張ってね」

街の人を助けながらなるべく時間を稼ぐのが役目よ。
リミッター解除した後に限界突破して人を探してダッシュ♪
逃げてる人達の誘導とか怪我人さんの応急処置とかするわ。
もし戦車が人を襲っていたら戦っちゃうわよ!ふんす!!
わー。戦車って装甲が厚そうね。剣が中まで通るかしら…?
だったら【天津神『月讀』】で斬れば大丈夫かもしれないわ。
長い刃の『クレスケンスルーナ』でならいずれ斬れちゃうはずよ。

そーいえば戦車の心臓部ってどこかしら?中心にあるのかしら?
…あれ?心臓部じゃなって操作してる人入ってるんだっけ?あれ?
うーんうーん…いいわ。時間もないし適当に滅多斬りしちゃうわ。
はっきんぐってゆーので操られてる戦車だから人は乗ってないわ!
うーん。自信はないけど…多分乗ってないわ。うん。乗ってない。
街の人を巻き込まないようにしながら戦車と戦うわね。



 仕掛け先と思われる巨大企業「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」にとって、街一つ潰すなど|どうという事は無い《・・・・・・・・・》。
 凡そ連中は人死より株の値動きが気になるし、企業間の小競り合いで忙しかろうが、上層部が見向きもしない裡に動く者が数人――。
 彼等こそ、三行程度のネットニュースで収められてしまう闇に差し込む、一縷の光であった。
「とにかく街の人を助けないと。これだけの規模で起きてたら、皆パニックになってる筈よ」
 暴走戰車が突進したか、引っ繰り返った車輛によって道路は大澁滞。
 脇の歩道には砲撃によって破壞された建物の瓦礫が転がっており、此方も市民の逃げる足を塞いでいる、と――現地に降り立つなり被害状況を確認した神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、炎と黑煙の立ち昇る中に烱瞳を絞る。
 ここで爆音か悲鳴を耳にしたなら直ぐさま飛んでいきそうな露だが、彼女の急く心を落ち着かせたのは、何か準備を整え始めるシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)だった。
「露は私が潜る間の時間を稼いで欲しい」
「……もぐる? 何處へ?」
「そんなに長くは掛けないつもりだが」
 云って、電腦ゴーグルにスマホ『トマト』を接続する。
 電子や電腦の世界に疎い露には、シビラが何をしようとしているのかは計り兼ねるが、彼女が万事をスマートに解決してきた実績を知っている爲、疑問は浮かぶものの信頼は搖るがない。
 道具以外は普段通り、華奢に祕める膨大な魔力を供給源に身体能力を飛躍し、増幅術式を組み上げていくシビラを見た露は、自身も神気を練り上げ、我が身を強靭と堅牢に固めれば――準備万端。
「頼んだ」
「うん♪ レーちゃんも頑張ってね」
 短く言葉を交わし、片や定点に立って靜的に、片や動的に救助に掛かる。
 次に二人が交点を結ぶ時には、事態は大きく動いているに違いなかった。

  †

「他の皆も色々動いているのね……助かるわぁ」
 目下、悲惨な現場に降り立った仲間が、安全地帯の確保や誘導、負傷者の手当や運搬を行っている。
 己も力になりたいと街中を走った露は、濛々と立ち込める煙の奧に裂帛の悲鳴を聞くや猛ダッシュ!
 烟たい風を裂いて間もなく、逃げ惑う市民の背に迫る頭腦戰車を玉瞳に射た。
「止まりなさーいっ! 人を襲うなら戰っちゃうわよ!」
 ふんすっ!! と花顏に萌すは強い義憤。
 暴悪に脅える人々に「脇へ!」と指示した露は、擦れ違いざま弧刃クレスケンスルーナを拔剱!
 冬月のように靑白く煌く片刃が、頭腦戰車の眼部液晶に一条の光を疾らせたのも一瞬。花葩のように翻る華奢と共に閃いた。
「戰車って裝甲がぶ厚そうだから……中を斬らせて貰うわよっ!」
 戰車の重厚な裝甲を透過するは、|天津神《アマツカミ》【|月讀《ツクヨミ》】――!
 精靈の力を帯びた刃が内部から破壞せんと袈裟に走った時、その手に硬質な手應えを得た露は、瞳をぱちぱちと瞬きながら考えた。
「そーいえば、戰車の心臓部ってどこかしら? 頭部? 胸部?」
 今、めちゃくちゃ何か駆動部を斬った気がするのだが……これは何だろう?
 自立思考型AIが組み込まれた車輛なら腦に相當するものを斬ったか分からないが、ちょっと待って、若しか戰車を操作している人間が入っていたりする? する!?
 シビラが居たなら的確な言葉をくれたろうが、露の足元にごうろり轉がった戰車は答えをくれず――。
 而して別なる暴走車が続々と進入してくるのだから、餘り惱んでもいられないと次の標的に爪先を結んだ佳人は、市民に危害を加えんとする者達を手早く成敗した。
「うーんうーん……いいわ。適当に滅多斬りしちゃお♪」
 多分、彼等は何処まで斬っても鐵と機械だ。
 シビラの云う事には、「はっきんぐ」とやらで制禦を手放した戰車にて、操縦者は居ない筈なのだ。
「臓腑を斬った感覺は無かったし、うーん。自信はないけど……多分乗ってないわ。うん。乗ってない」
 優しさに基づく逡巡が露を迷わせるが、歷戰に鍛えられた身体より繰り出るは迷いなき「滅多斬り」!
 月弧の剱士は我が身を防衛ラインに、市民が暴走に巻き込まれぬよう冱刃閃々、戰車の内部構造をずんばらり、そうでなければ外からずんばらり、華麗に立ち回る周辺に鐵の塊を轉がしていく。
「これで結構積み上げたけれど……レーちゃんは大丈夫かしら?」
 而して己が役儀は「時」を作ること。
 難しい事は分からないが、我が親友は潜れているかと――黑煙に閉ざされた道を振り返るのだった。

  †

「――扨て、始めよう」
 シビラは吸血鬼の血を宿した|魔女《ウィザード》であり、|電腦魔術士《ウィザード》である。
 いつもなら現実世界に魔法陣を描くが、此度【|電子の精《フェルミオン・シー》】となって電腦世界に潜り込んだ彼女は、自身の領域でないとはいえ高パフォーマンスで電子の海を泳ぎ、問題のジャミング電波を探りに掛かった。
「Toate informațiile existente sunt reale și fantomă... これより虚實を明らかにする」
 虚僞と眞實の混じ入る莫大な情報網の中、外部から送出される悪意の波を感知したのは間もなく。
 其はエリア一帯への無差別攻撃――特定の機体を狙うでなく、奇しくも波長を同期させた不特定多数の機体を暴走させる「場当たり的ハッキング行為」と確認したシビラは、ここで溜息をひとつ。
「悪趣味な事だ」
 と、皮肉を添えてユーベルコードを重ね掛けた。
「Înțelepciunea de a debloca... 悪意を顕かにするべく、智慧を解き放つ」
 相手は|巨大企業群《メガコーポ》から依頼を請けたハッカーだ。腕も立てば肝も据わっているに違いない。
 恐らく何かしらの妨害策を講じているだろうと【|智慧なる女神《ニュクス》】を発揮したシビラは、鑑定プログラムを放ってジャミング電波を解析し、攻撃元であるハッカーの位置を特定に掛かる。
「|敵方《むこう》も突発的な不具合などに対応する爲に、常に監視を――ジャミング裝置を視ている筈だ」
 己が攻撃主なら万全を敷く。それを逆に利用する。
 而してレジスタンスの技術屋スバルも同じ手法で割り出しているだろうと、電腦の海を見渡したシビラは、彼の邪魔は爲まいと潜行を継続。更に相手の領域へ踏み込んだ。
「ついでだ。少し揶揄ってやろう♪」
 高みの見物では無いにしろ、対岸の火事を決め込む相手に火粉くらい浴びせたいもの。
 敵方に近付くほど嚴重に敷かれるプロテクトプログラムを巧みに搔い潜ったシビラは、システム内部に侵入した所で「誤情報」を流してやる。それこそ|虚僞《うそ》と|眞實《ほんとう》の混じった厄介なものだ。
「肝要なのは、此方から反應が返ってきた事だ。――さぁどんな|表情《かお》をする」
 見に行ってやろう、とは大胆不敵な言。
 見事ハッカーの潜伏先を突き止めたシビラは、獲物を前にした猫のように玉瞳を輝かせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
ハッキングだジャミングだと用意周到なこった。
俺は生憎、そっちには適正がなくてね。…手を借りるとするか。
アンタら、レジスタンスもこのまま解散なんてオチはイヤだろ?

スバルが行きそうな場所に心当たりは?
適当に情報収集して散歩にでも出かけるような気軽さでアジトを出ていく。
アジトが揺れた、って事は一発ぐらい撃ち込まれたって事かい?それとも、撃ち込まれる直前?
ま、どっちでもいい。これ以上はさせねぇよ。

UCで頭脳戦車をひっくり返す。
シンプルだろ?砲塔部分を明後日の方向に向けた鈍重な図体、荒れ地を駆ける自慢のキャタピラは虚しく空を切るばかりってね。
(右手を握ったり開いたりしながら)……こっちの負荷も最低限で済む。

スバルの救出も同じ要領さ。
破壊するのが楽だが、なるべく無力化って依頼内容に含まれてる。
ま、コレを破壊して請求書を突き付けられてもスチェンカの余り金でした賭けポーカーで、全て磨った俺には払いようもないんだが。

それで?連中の居場所は特定出来たのかい?
――へぇ、巨大サーバービル、ね。そいつぁ、愉しみだ



「連中にとっちゃ何人死のうが、街一つ潰れようが関係ないんだ……畜生ッ!」
 狂ったように降り注ぐ砲彈に窓硝子が震えていたが、遂に建物がゆっさと搖れる。
 暴走車が突進して壁を破壞したのみならず、崩れた瓦礫を踏み敷いて侵入し始めたのだ。
 |啊呀《あなや》、轢き殺される――! という瞬間、颯然と影が割り入るや、超重量の頭腦戰車が引っ繰り返り、腹を天井に見せた。
「――よう。玄関から入りもしなければ土足で上がろうなんて、随分行儀が良いな」
 みっともなくヘソ天になった戰車に呼び掛けるは、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。
 マナーを知らぬ不届き者を、これ以上好きにはさせぬと【|邪神の右腕《イーヴィル・ブリンガー》】に戰車を摑んだ彼は、砲塔が此方に向いた瞬間に明後日の方向へ捻じ曲げると、鈍重な図体を輕々と持ち上げて瓦礫に叩きつける!
「撃ってみろよ。暴発して腹が避けるぜ?」
「す、すげェ……!」
 頭から地面にダイブした戰車は、荒野を駆ける自慢のキャタピラを空転させるばかり。
 ハッキングを解除した訳では無いが、暴走状態を出力できぬ状態にしたカイムは、悲鳴に似た駆動音に柳眉を顰めつつ、大きな聲で若者に訊ねた。
「――で、スバルが見えないんだが。あいつが行きそうな場所に心當りは?」
「ラボだ! 頭腦戰車のAIをハッキングした、ジャミング電波の発信元を辿るって言ってたぜ」
 技術屋のスバルは、電子機器のジャンク品を集めて作ったラボで「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」の情報を盗んでいた。
 彼なりに潜伏先を隱していたようだが、尾行されている気配もあったらしいと、若者が直前まで彼と話していた内容を聽いたカイムは、今しがた鬼神の怪力を見せた右手でヒラリと空を撫でると、散歩にでも出掛けるようなお気樂さで歩き出す。
「だがまぁ上手く撒けていた。でなきゃエリア一帯を攻撃するなんて帳尻が合わない」
「そ、そうか……。でも、それだけヤベー連中に目ェつけられたって事だよな?」
「噫、ハッキングだジャミングだと用意周到なこった。生憎そっちには適正がないから、頼らせて貰うぜ」
 数歩歩いた先で兩掌を広げるのは、ラボまでの案内を求めるから。
 この男も|巨大企業群《メガコーポ》相手に喧嘩するというのか――若者が進む足を躊躇えば、カイムは飄々たる科白ながら音色を鋭くして云った。
「アンタ、レジスタンスもこのまま解散なんてオチはイヤだろ?」
「……噫、イヤだ。俺達は變わらぬ毎日に抗おうと集まったんだ!」
 語気を強めて勇気を示した若者は、急ぎラボへ案内するのだった。

  †

「Hey,スバル。相變わらず危ない橋を渡ってるな」
「よぅ便利屋! 丁度いい仕事があるぜ!」
「……俺はアンタに手を借りるつもりだったんだが」
 救われたような笑顔で旧知を迎えたスバルは、挨拶もそこそこに親指ひとつでカイムを外へ放る。
 蓋しカイムは肩を竦めただけ。元々暴走車の無力化を依頼されていた彼は、依頼料が増えただけだと右手を握ったり開いたりすると、間もなくラボに突進する戰車を摑み、玩具のように持ち上げ、引っ繰り返す!
「ま、コレを破壞して請求書を突き付けられても、スチェンカの餘り金でした賭けポーカーで|全て磨った《・・・・・》俺には払いようもないからな」
 最低限の負荷で、|眞面目《シンプル》に働く。
 而して勤勉に門番を務めたカイムは、室内から衝き上がる雄叫びを聽くと、振り返りざま聲を投げた。
「それで? 仕事には集中できたかい?」
「噫、連中の居場所が特定出來た! オーテマチにある巨大サーバービルだ!!」
「良い立地じゃないか。そいつぁ愉しみだ」
 其処は超高層ビルが林立する一等地のオフィス街。
 中々の景色が觀られそうだと、佳唇が不敵に弧を描いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ドスソードエビルヤクザアタック』

POW   :    ヤクザの暴力を超えた猟兵の暴力を見せつける

SPD   :    紙一重でドスソードをみかわし技量の差を見せつける

WIZ   :    ヤクザの言動から黒幕を言い当てる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ハッキングを仕掛けてきた攻撃元が特定できた。
 超高層ビルが林立する一等地のオフィス街、「オーテマチ」の巨大サーバービルからジャミング電波が発信されていると突き止めたスバルは、猟兵に命を救われたレジスタンスの仲間と共に、彼等を改造バイクで送る。
「――ここだ。間違いない」
 顎が疲れるほど見上げるビルの頂に、「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」の企業マークが飾られている。
 このビルはサーバーを管理するビルにて、他のオフィスビルと違って從業員などは居ないのだが、重要な情報を管理するだけあってメチャクチャ強い警備員がメチャクチャ配置されているらしい。
「警備業務を委託されているのは『極鷲会』という大手派遣会社なんだが、こいつらはヤクザだ」
 頼れる派遣は鷲のマーク♪ という喧伝車が有名な派遣会社だが、実は反社会的な組織。派遣業務以外にも色々とやっていると、黒い噂の絶えぬ企業だ。
 そんな極鷲会から派遣された警備員は、どいつもこいつも軀の一部に鷲の刺靑を入れており、ドスソードなる武器を手にエリアを見回っている。
 |篠突黎明《シノツクシノノメ》との繋がりも気になる所だが、兎に角、このエビルヤクザ集団を何とかして上層へ向かい、攻撃主であるハッカーの所まで辿り着いて欲しい、というのがスバルの要望。
「っし、カチコミだぜ!!!」
 途中、嚴重な監視システムやサーバーを破壞していくのも良い反抗だろう。
 スバルとレジスタンスがドキドキして見守る中、猟兵達は堂々とビルに乗り込んでいった。
大宝寺・朱毘
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。

アイドルでありロッカー。
ロック(漢気があるとほぼ同義)な様を好み、「ロックだ」と感じれば味方はもちろん敵でも賞賛することがある。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。

使用武器は黒いボディに炎の模様が入ったギター『スコーチャー』
演奏によって音の爆弾や衝撃波を生み出してぶつけるという戦法を好む。
必要なら演奏を続けつつ蹴りなども行う。

冒険では、魔力任せに障害を吹き飛ばすといった行動が得意。ただし地頭が悪いわけでもないので、搦め手が必要ならその都度考える。

台詞例
「いいね、ロックじゃん」
「こっちゃ世界の命運背負ってんだよ!」


大宝寺・風蘭
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。

へらへらしているが、やると決めたことはちゃんとやるタイプ。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。

使用武器は、木刀のような見た目の革命剣『木刀れぼりゅーしょん』
正規の格闘技の心得はなく、斬撃とパンチ、キックを雑に組み合わせた喧嘩殺法で戦う。
オウガ(二足歩行の人間大の猫のような見た目で、名前はモチズキ)との連携を好む。

冒険では、力任せに障害を吹き飛ばすといった行動が得意。ただし地頭が悪いわけでもないので、搦め手が必要ならその都度考える。

台詞例
「アタシだってヤるときゃヤるんだぜぃ!」
「つまり、全員ぶっ飛ばしゃ解決っしょ」



「――いいね、ロックじゃん」
 |巨大企業群《メガコーポ》という強大な権力と、理不尽な暴悪に反抗する。
 まるで産業ロックに死を突き付けたパンクの産聲のようだと、改造バイクがアスファルトに刻むスキール音を心地佳く聽いていた大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は、蘇芳色の虹彩を眼眦へ――隣するバイクの後部座席に跨る大宝寺・風蘭(狂拳猫・f19776)に水を向けた。
「これからカチコミだって。ヤクザがうじゃうじゃ居るらしいけど」
「ま、全員ぶっ飛ばしゃ解決っしょ」
 喧嘩は得意なのだと、疾風に黑髪を梳らせながら言ってのける妹。
 高層ビルの上層に居ると思われる極悪ハッカーをブン毆るに、ヤクザの警備員を薙ぎ倒していく――實に分かり易いと|艶笑《えみ》を結び合った二人は、巨大サーバービルの正面で停車したバイクから降りると、堂々たる歩みでフロアへ踏み込んだ。
『――失礼。|予約《アポイント》は?』
 而して直ぐに割り込んだのは、脇に控えていた警備員。
 サーバービルに足を運ぶ者など保守業者か関係者しか居らず、年若い女の子の二人組など明らかに「可怪しい」と引き留めた警備員は、ここで痛烈な洗礼を浴びた。
「たった今からこの場所は、あたしが支配するステージになる。革命の旋律を奏でる――ゲリラライブだ!」
『な、に――ッ!!』
 It’s showtime! と溢れる笑顏が【ザ・ライブ】の開演を告ぐ。
 朱毘の繊指がロックギター『スコーチャー』を搔き撫でるや、黑艶のボディに刻めるファイアパターンは熾々と鮮やかに燃え上がり、痛快なエレキ・サウンドをフロアいっぱいに響かせた!
「あたしが紡ぐ歌、あたしが奏でる音色は、あたしの仲間をより強くする。――勿論、あたしもだ!」
『……ッッ、フロアがライブ会場に變わっていく……!!』
 肌膚をヒリつかせる音撃は、警備員連中を怯ませるだけでは無い。
 彼女の音は無機物に觸れるや、壁は大型スピーカーに、或いは巨大液晶ディスプレイに。
 見上げる天井には無数の照明が吊られ、燦光を瞬かせて歌い手と音楽を引き立てる――まさにライブ!
 餘りの變容に警備員たちが戸惑う中、ピンスポットの光を一手に集めた朱毘は、麗顏を明々と照り上げながらシャウトした。
「階層を登って上階に居る主犯を叩く、リアル下剋上だ!」
 迫力あるハスキーボイスに背を押された猟兵が、強靭と堅牢を得てビルに突入する。
 元気よく飛び出した風蘭もその一人で、實姉のラウド・ボイスに雄渾を逞しくした彼女は、革命剣『木刀れぼりゅーしょん』を振りかぶるなり【|独楽《ツムクリ》】ッ!
 水平に構えた木剱ごとスピンして突撃し、異變に気付いて押し寄せる警備員らを纏めて吹ッ飛ばした!!
「GO! DIE!(逝けぇー! 死ねぇー!)」
『ッ! ッッ……ごわー!!』
 相手はエビルヤクザ「極鷲会」の構成員。
 この手の連中を默らせるには、問答無用の物理先制に限る! ヨシ!
 風蘭に剱術や体術の心得は無いものの、全き実戰にて磨かれた喧嘩殺法は、今回の「ヤクザの巢窟でめいっぱい暴れ回る」みたいな場面で燦然と輝こう。――これぞカチコミ!
「アンタ達も力尽くで街を潰そうとしたんだ。こっちも力尽くだぜぃ!」
『上等じゃゴル……ぁぁああ嗚呼!!』
 予測不可能な角度からの拳打、不意を衝きまくる蹴撃、そして強引に押し込まれる斬撃!
 集まって來たヤクザ警備員らは、迫り出すドスソードを次々と彈かれ、かの邪刃が宙をクルクルと躍る裡に本人がブチのめされる。反逆の音楽が流れている所爲か、その光景は實に痛快だ。
「何階あるか知らないけど、全ステージ全力で歌ってやるよ!」
「アタシもヤるときゃヤるって見せておかないとな!」
 最高層に至るまでノンストップだと、姉妹なら示し合わせずとも意気を揃えよう。
 朱毘と風蘭は凛乎堂々、花嵐の如き勢いで上層に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キノ・コバルトリュフ
マーツータケ、キノコセラピーはいかがかな?
かぐわしいキノコは香りマツタケ、味シメジ!!
美味しそうなキノコ香りはみんなを元気にさせちゃうよ!
ナメコ!?なんだか、目が血走ってるね。
キノは食べても……おいしいけど食べちゃダメだからー。



 ピュアリィが一種「キノコつむり」の集落を抜け出し、三千世界を巡る旅に出たキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)。
 風の吹くまま胞子の飛ぶまま、此度は骸の雨降るサイバーシティへやって來たキノは、件の高層ビルにぶらりと侵入。気紛れな星靈バルくんの尻尾を追う裡、サイケなネオン光を耀わせるフロアへ至ると、そこにズラリと並ぶ黑塊――タワー型サーバーの大集合に紫彩の瞳を瞬いた。
「……キノ? 夜行茸みたいにキレイだね」
 仄暗い空間で妖しく明滅する光の集合体に、妙な親近感が湧く。
 大きなキノコ笠を不思議そうに傾けつつ、然し興味深げにサーバールームを散策したキノは、そのフロアを警備する派遣スタッフに見つかると、ちょっと乱暴に呼び止められた。
『オイオイオイオイ、仕事増やしちゃってくれてよぉ!』
「ナメコ!? なんだか怒っているような焦っているような……」
『どっから侵入ったか分かんねーけど。許可証提げてねー奴は片付けねーとダメなんだわ』
 下層の者はちゃんと働いているのかと嫌味を零しつつ、懷からドスソードを取り出す警備員。
 この男が刃を振りかぶった瞬間、袖から覗く鷲の刺靑からヤクザ者と知れようが、キノは「お腹が空いているのかな?」と解釈すると(解釈違い)、繊麗の軀をくるりん。頭部の笠を搖らす事で、超絶猛毒胞子を振り撒いた。
「キノは食べても……おいしいけど……食べちゃダメだからー」
『……なん、このっ……むぁ……シビ、痺れる……!』
 被っているのか生えているのか、謎めいた笠も超絶猛毒ながら、襞から零れる胞子も激ヤバの劇毒。
 其は謂わば不可視の毒撃で、勢いよく接近した警備員の鼻腔から侵襲するや忽ち神経の鈍麻を齎し、意識を朦朧に――ドスソードがキノに届くより迅く膝を折らせる。
「香りマツタケ、味シメジ!」
『……ぐっ、身体が動かねー……っ!!』
「あぶないキノコは、キノ!」
『……ッ、ッッ……――』
 キノコセラピーは癒しにもなるが、此度は毒に。
 ばたりと倒れた警備員の沈默を確認したキノは、またぶらり、炎を燈す尻尾を追い掛けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
いよいよ反撃ですね。いっちょやったりましょう

まずはビルに正面から乗り込み、大声を張り上げて宣戦布告を兼ねて【挑発】します

「まいどー!カチコミに伺いましたー!」

おそらくはメチャクチャ強いヤクザたちがいっぱい出てくると思いますので、こちらもメチャクチャ強いサメを呼び出して対抗します
呼び出すサメはガトリングドスシャーク
その名の通り、ガトリングのようにドスソードを無限に発射する極めて凶暴なサメです

そのサメでヤクザを返り討ちにし、監視システムやサーバを破壊し、すべてをメチャクチャにしてやります
わたくし自身に襲い掛かってくるヤクザはチェーンソーで返り討ちです
ヤクザを超える真の【暴力】をお見せいたしましょう



 向こうは街一つ潰そうと掛かって來たのだ。
 ならば此方もビルひとつ潰すくらいで行くのが礼儀だろう。
「――いっちょやったりましょう」
 スバルが駆るバイクの後席からチョイチョイ繊指を動かし、正面に回るよう指示したエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)が、停車するなりふんわと降りる。
 夜風に髪は冷えたが、鋭氣は十分。
 メイドが掃除に來て何が可怪しい? とばかり自然な歩みでビルに乗り込んだ彼女は、用件を尋ねようと警備員が近付くより早く肺腑に息を吸い込み、フロア中に佳聲を澄み渡らせた。
「まいどー! カチコミに伺いましたー!」
 まいどー! まいどー……まいどー……!
 吹き抜けの立派な建物には、フードデリバリーの如きお手輕さで毆り込みに來た者の聲が響こう。
『誰だ出前頼んだ奴は』
『カチコミ!?』
 案の定、その場に立っていた警備員やら、見回り警備員やら、階上の警備員やら、屈強な男達がわらわらと集まってくるが、その熱烈な歡迎っぷりを想定していたエミリィは涼しい顏をした儘。
 翠緑の瞳は『ワレェ!』とか『ゴルァ!』とか哮える人型の兇暴を映しつつ、玲瓏と澄める虹彩を冱々と、我が身に祕める鮫魔力を練り上げた。
「メチャクチャ強いヤクザたちがいっぱい出てきましたね。では、こちらもメチャクチャ強いサメを呼び出して搗ち合わせましょう」
 玉臂をくるり旋回して描いた鮫魔法陣から吻を現すは、想像より創生されるちょー強いサメ!!
 宙空に飛び出すなり大口を開けた巨鮫は、その口腔からドスソードを超高速連続射撃し、向かい來るヤクザを橫薙ぎに、疾ッと鮮血を繁噴かせた!
「こちらはガトリングドスシャーク。その名の通り、ガトリングのようにドスソードを無限に発射する極めて凶暴な鮫です」
『なんてロマンシングなネーミングぐあぁぁ嗚呼!!』
「皆様方に眞の暴力をお見せ致しましょう」
『ここ室内やぞッ!? なんちゅうぐぁぁあああ!!』
 ヤクザは返り討ちに。
 監視システムやサーバはクズ鐵に。
 かの巨大企業がした樣にむちゃくちゃにしてやると、灼光を迸って発射される白刃に白皙を白ませた佳人は、自身もシャークチェーンソーをギャァンッと唸らせ、觸る者をみな傷付けるッ!
「世界最強の生物がドスを連続発射するんです。勝てる訳ないでしょう」
『その発想が鬼ンンンン!!』
 想像力が暴力になるとは猟兵なればこそ。
 エミリィはスバル達が肩透かしを食らうほど歷然たる力差を見せて階層を上がるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヌグエン・トラングタン
GGOにもあるわ、こういうの。『雑魚たちをなぎ倒してボスに向え』ってやつな。
それのこの世界版か。わかりやすくていいじゃねぇの。

スバル&レジスタンスに協力してもらう。やってほしいのは、監視システムの破壊な。
お前らも、この企業相手に暴れたいだろ?そういうの、俺様は肯定するんだよな。

俺様は…あのエビルヤクザ集団相手にUC使って派手に暴れてくるからよ!
はは、真ん中に移動したら、あとは手刀で薙ぎ払ったり…おまけで尻尾で薙ぎ払ったりな!
ああ、よそ見したら…金翅蝶の切り刻みが行くからな。誰があいつ等のところへ行かせるかよ。



「雜魚達を薙ぎ倒してボスに迫れ……と。分かり易くて良いじゃねぇの」
 シンプルである事は樣々な意味で最良だとは、高層ビルを悠然と仰ぐヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)の言。クエストのボスを預る慾望の竜は、此度は逆の立場を樂しんでいるよう。
 GGOでも見かけるが、これがサイバーザナドゥ式の下剋上かと佳唇に弧を描いた彼は、振り返りざまスバルらに烱瞳を結んで云った。
「ここまで案内して貰って有難いんだけどよ。中に入らなくて良いのか?」
「アンタみたいに強けりゃなー」
 皆の口をスバルが代わるが、彼等が燻っているのは判然る。
 躊躇う若者達の前、小気味佳く片眉を持ち上げたヌグエンは、彼等に「|依頼《quest》」を示す事で踏み出す一歩を助けた。
「調べた限りじゃ、監視カメラがそこら中にあるんだっけ?」
「噫、カメラの死角を潜って行くのは不可能だね」
「そんじゃ、そいつらを任せる」
 嚴重に守られるビルのうち、ヤクザはヌグエンが潰し、監視カメラはスバル達が壞す。
 今の提案に一同の表情がみるみる變わるのを見たヌグエンは、親指をビル正面口に向けて云った。
「お前らも、この企業相手に暴れたいだろ?」
「勿論さ!」
「その慾望、俺樣は肯定するぜ」
 吃々と不敵に笑った彼は、急ぎバイクを降りる若者達を連れてビルに乗り込むのだった。

  †

「俺樣がド眞ん中で引き付ける。スバルらはその間にカメラを潰してくれ」
「了解ッ!」
 忽ち殺到するヤクザ連中を正面に、上背のあるヌグエンが兩手を広げて誘い込む。
 餘裕たっぷり挑発的な微笑を浮べるのはスバル達を守る爲でもあるが、敵対感情を煽る爲でもあるとは、次に閃いた|超常の異能《ユーベルコード》が示して見せよう。
『ワレ、入館証見せてみい!』
「今から許可を貰いに行くんだよ」
『な、に――ぶぉおおっ!!』
 一切の予備動作なく閃いた手刀がドスソードを彈き、邪刃が|可欄《カラン》ッとフロアを搏つより迅く軸を回した軀が、竜尾を鞭のように撓らせて脇腹を強襲ッ! 見極める時の猶予も無ければ、躱せもせぬ瞬速の連撃にヤクザが吹き飛ぶ。次いで迫る者に向かって軀を投げつけるのも、實に喧嘩慣れしていよう。
 近接戰に長けるヌグエンは視野も広く、スバルらを追わんとする者を金翅蝶に斬り刻ませる用意もある。
「誰があいつ等のところへ行かせるかよ」
 傍見をする余裕は無いと、今度は握り込めた拳を一發ッ!
 ぐうらり倒れる男をそのまま床に轉がしたヌグエンは、ぴょいと跨いで上階を目指すだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暁星・輝凛
話合いで全てが解決するならいいけれど、現実はそうじゃない。
でも暴力で仕掛けるなら、暴力で返される覚悟も――当然あるよね?

ってわけで、さあ、手あたり次第ボコしますか!
そんな守りじゃ守りにならないって、分からせてあげるよ。
力の差を見せつける為にも、スチェンカよろしく無手でお相手しよう。

「剣を抜くまでもない。足だけで相手してあげるよ」

力の抜けた笑みで挑発。
【心眼】で攻撃を【受け流し】、体勢を崩したところに強烈な蹴りを一発叩き込む。
僕も師匠に言われたことがあるけど……なまじ武器に頼るとさ。
動き、読みやすくなるんだよね。
さあ、どんどん倒すよ!

「心技体――どれも今一つかな。鍛え直して、出直すんだね!」



「話し合いで全てが解決するならいいけれど、現実じゃそうもいかない」
 言葉で|一切《すべて》の答えが見出せたら、どれだけ――。
 燦々と煌く摩天楼に向かってバイクを走らせていた時、佳唇から零れたのは世の實相。
 ハイウェイを駆けて幾許、程無くして件のビルに到着した暁星・輝凛(|獅輝剣星《レディアント・レオ》・f40817)は、その頂に飾られる企業マークを仰ぐと、小気味佳く語尾を持ち上げた。
「でも暴力で仕掛けるなら、暴力で返される覺悟も――當然あるよね?」
 己を案内したレジスタンスの悔しげな表情を受け取り、正面から中に入る。
 アポ無しで現れた彼を部外者と認めた警備員は、本性を、いや本職を露わに集まってくるが、これを笑顏で迎えた輝凛は、吹き抜けに朗々と聲を響かせた。
「さあ、手當り次第ボコしますか!」
 にっっっこり。
 晴やかに咲んだ輝凛は、次々とドスソードを拔き放つヤクザ達に有構無構、連中が邪刃を振りかぶった瞬間に身を低くして侵襲しつつ、伸び上がる勢いを使って蹴撃を閃かせたッ!
「そんな守りじゃ守りにならないって、分らせてあげるよ」
『く、ぉをを!!』
 スチェンカから繋がった奇縁にて、無手で相手する。而して力差を見せつける!
 一人目を橫薙ぎにした右脚は、撞ッと倒れる軀を擦り抜けざま急旋回して二人目を背面蹴りッ!
「剱を拔くまでもない。このまま足だけでお相手しよう」
『ぶお――ッ!!』
 獅子黎明流の攻性基本型【|黎明牙・壱咬《フォトン・ドライブ》】は、内功の練度を高めるほど威力を上げ、盾と差し出たドスソードごとヤクザの頤を砕いて床面へ。
 時に旋風を連れて巻き上がる前髪の奧、竜胆色の瞳はゆるゆると笑んで連中を煽る、煽る!
 拳を一度開き、人差し指でドスソードを示した輝凛は、どうも刃に力が籠り過ぎていると助言さえした。
「僕も師匠に言われたことがあるけど……|憖《なまじ》武器に頼るとさ」
『ッ、ッッ!』
「――動き、読み易くなるんだよね」
 其を|實證《あかし》して見せる処が「剣聖」と呼ばれるまで上り詰めた者ならでは。
 戰うほど心眼を研ぎ澄まし、妖しく光れるドスの切先を目尻に送り流した輝凛は、今度は飛び二段蹴り!
 鼻頭から鮮血を噴くヤクザ者を床に轉がすと、「次は」と|面《おもて》を持ち上げるのだからゾッとする。
 而して怯懦の萌した者を、輝凛は「侠」とは認めまい。
「心技体――どれも今一つかな。鍛え直して、出直すんだね!」
 彼は激痛に蹲う者達に一瞥を呉れると、颯の如く上階へ駆けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…さて。挨拶代わりに攻め込むとしよう…
…まずはビルにハッキングを仕掛けて照明を落す…
そして【闇に潜りし貪食の群狼】を発動…影狼の群れを召喚してエビルヤクザ達を攻撃…動きを封じて貰うとしよう…
…あとは電子型解析眼鏡【アルゴスの眼】を暗視モードにして…
…ハッキングで得たデータから敵のハッカーの意場所を特定…
スバルやレジスタンス達が行動しやすいように警備システムや監視システムを逐一潰しながらそこに向かって行くとしようか…
…私メリーさん…いま1Fにいるの…と(位置偽装しつつ嫌がらせメールを送りつけることも忘れない)



 他人の支配域に|侵入《はい》るのだから、“挨拶”をせねばなるまい。
 先に「視」た|篠突黎明《シノツクシノノメ》の企業マークをビルの頭頂に認めたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、|魔女《ウィザード》らしい自己紹介をするに最良の方法を知っていた。
「……さぁ……攻め込むとしよう……」
 先ずはハッキング用精靈AI『ヤタ』を壁際の制御盤に潜り込ませる。
 而して設備システムにアクセスしたメンカルは、初手に照明をOFF! 吹き抜けに吊られたシャンデリアを消し、目下にドスソードを突き付けようとしたヤクザ連中の視界を奪った!
『あっ!? 何も見えない!』
『瞬停だ、きっと直ぐに収……収まらんな!?』
 誰もが動搖する眞ッ暗闇は、エビルヤクザだって怖い。
 不法侵入者に集まってきた連中が狼狽える中、「想定通り」と|響動《どよ》めきを拾ったメンカルは、第二手として【|闇に潜りし貪食の群狼《オペレーション・ウルフパック》】を発動――今の|黯黮《くらがり》より影狼の群れを染み出させた。
「動流喰らう闇の牙よ、貪りの顎よ。魔女が望む儘に襲え、奪え」
 其は陰影、其は餓狼。
 闇中を翔ける群狼は、ビルの管制に連絡せんとするヤクザ達を掠めるや「動的エネルギー」を奪取し、動きを緩慢に――間もなくその場で靜止させる。
「ん……止まった」
 彼等が脇に飾られた彫像の如くなったとは、電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』を暗視モードにしたメンカルには瞭然。
 大きな時のアドバンテージを得た彼女は、ハッキングデータを持って戻るヤタと、連絡を取ろうとしたヤクザのスマホを照合すると、今頃は照明の異變に気付いているであろうハッカーの居場所を特定した。
「……システム管制室、か……丁度いいかもしれない……」
 其処はビルの設備を一括して制御する、謂わば心臓か腦にあたる中枢部。
 而してこれもアクセス&ハックしたメンカルは、敵が防衛に出るより迅く警備システムや監視システムを潰し、スバルやレジスタンス達も上層へ向かえるようサポートする。
「サンキュ、灰色の魔女さん! お陰で遠足気分……――何やってんの?」
「……“私メリーさん……いま1Fにいるの”……と。……位置を偽裝したメールを送ってる……」
「背筋の凍る嫌がらせだなー!」
 一流の魔女ともなれば、おちょくり方も狡猾でユニーク。
 スバルはとんでもない相手を敵に回したものだと、忌まわしい巨大企業にすら同情を覺えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘(サポート)
※語尾に「のじゃ」は不使用
はっはっは、妾、推っ参!
敵は決してディスらんよ、バトルを彩るもう一人の主役なのでな!
強さも信念も、その悪っぷりも誉める! だが妾の方が、もっとスゴくて強い!

バトルや行動は常に生中継+後で編集しての動画配信(視聴者が直視しては危ない系は除く!)
いかにカッコ良く魅せるか、見映えの良いアクションが最優先よ
とはいえ自身の不利は全く気にせんが、共にバトる仲間にまで不利を及ぼす行動はNGだぞ?

戦法は基本的に、テンションをアゲてボコる! 左腕とか尾で!
敵の攻撃は回避せず、受けて耐える! その方がカッコ良いからのう!
はーっはっはっは! さあ全力で来るがよい、妾も全力で応えよう!



 ビル上層の管制室に居るハッカーは、監視カメラを通して今の光景を見ていると云う。
 そして仲間が制御システムをハックした今、生配信中の映像を「猟兵がジャックした」「敵が見ている映像」に換えようと、LIVE動画『妾、メガコーポにカチコミに行ってみた』配信者の御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が大胆なコラボに打って出た。
「はーっはっはっは! 妾、推っ參!!」
 目下、何百台もの監視カメラの映像を出力するデジタルサイネージに、菘、菘、菘!
 敵ハッカーと、彼奴と同じ映像を見る視聽者にサービス全開で目線を寄越した麗人は、豪快な高笑いに集まるヤクザ連中を前に、クイッと手招きした。
「侠の者よ、全力で來るがよい!」
『んおおっ! 入館証なき部外者め!』
 ドスソードを逆手に握り、近付きざま思い切り振りかぶるエビルヤクザ。
 菘なら躱せたろうが、これを堂々と肩口に受け取った邪神は、疾ッと迸る血で頬を濡らしつつ、妖々たる艶笑を返した。
「はっはっは、中々の刃撃! だが妾はもっとスゴくて強い!」
『んな――ッ!!!』
 丫の舌をちろりんと出しながら、笑顏で繰り出る左フック――!
 刹那、ミシリと拉げる軀に尾撃を叩き込んだ菘は、カメラに向かってドヤァ!
「皆の衆~、見ておるかの~?」
 と、視聽者に興奮を與えると同時、敵を大いに挑発するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

小宮・あき(サポート)
お困りの方がいる、と聞いて参りました。
スポット参戦のような形でフラリと。



◆性格・人柄

敬虔な聖職者として猟兵に目覚めた、人間の聖者。
です・ます口調の礼儀正しい女性。
ピンクの髪に、透き通る水色の瞳が特徴的。
ふふ、と微笑み、愛らしい見た目で佇んでいますが、
本業は商人。ホテル経営者。冷静で非情な心も持ち合わせています。
また敬虔な聖職者故、邪教徒や魔女に寛容さが無く、苛烈な面も持ちます。

既婚者。
神と夫に報告できない行動は、絶対に取りません。



◆戦闘
ユーベルコードは指定したもので臨機応変に。
基本は後衛の魔法職。

・範囲魔法(神罰)
・回復(コルセオ)
・拘束(光の鎖)
・人手が必要な作業(戦場のハレム) 等



 巨大企業「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」に街ごと潰されそうになった若者達は、然し勃々たる|瞋恚《いかり》を力とする|方法《てだて》が無い。
 而して齒痒い思いをする彼等に「お困りなら」と手を差し伸べた小宮・あき(人間の聖者・f03848)は、先ずは一同に「ヤクザと云えば」の対抗策を訊いてみる事にした。
「相手はドスソードを持ったジャパニーズ・エビルヤクザだ。クレイジーだぜ!」
「ジャパニーズ……エビルヤクザ……?」
 祖父がアメリカ人な日系三世のあきにとって、日本と云えばスシ、テンプラ、フジヤーマ。
 ドスソードもエビルヤクザも馴染みが無いと、佳人が|空色《チェレステ》の瞳をぱちくりと|瞬《しばた》けば、スバルは得意げに(多分映画から仕入れたであろう)情報を提供した。
「あれだな、ヤクザと鬪り合うなら銃だ」
「なるほど!」
 銃ならと合點した佳人は、花顏に|微咲《えみ》を湛えるや【愛雨霰】!!
 夫のイニシャルを刻んだマスケット銃を149挺複製し、自身の頭上に半円状に配置して間もなく――邪刃を振りかぶる者達に向かって一斉射撃ッ! 彈彈彈彈彈ッと吹き抜けのフロアに銃聲を響かせると同時、高波の如く鮮血を躍らせた!!
『ずァッ!!』
 これぞカチコミ。これぞ抗爭。
 絵に描いたようなドスとチャカの戰いに、スバルらレジスタンスのメンバーは快哉を叫ぶのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クリスティナ・バイエンス(サポート)
火の神の名を持つキャバリアに選ばれたサイキックキャバリア乗り
水着みたいな格好なのは、コックピットが蒸し風呂みたいに熱いから仕方なくだからね

正直キャバリアを降りての戦闘はあまり得意じゃないのよ
でもキャバリアを使っての戦いは任せてね、みんな炎で薙ぎ払ってやるわ
とはいえ、必要ないところで炎を使うつもりはないの危ないもんね
使わなくても私の〔炎神機カグツチ〕は十分強いもの

よろしくね!



 猟兵達をオーテマチへと導くレジスタンスのバイクの後方、ネオン煌くハイウェイを『炎神機カグツチ』で駆けていたクリスティナ・バイエンス(炎のキャバリア乗り・f30044)は、件のビルに到着した後もキャバリアは停止させず――その儘、正面より乗り込む。
「マトリックスエリアにアクセス。ドアが開き始めた処へ、前傾させた軀体を……滑り込ませる!」
 玄関の自動ドアは高さ3m。
 これを上体を屈める事で難無く通過したクリスティナは、とんでもない機体が侵入ってきたと喫驚を揃える警備員たち――ヤクザ軍団をモニタ越しに捉えると、直ぐさまオーバーヘッドパネルに繊指を伸ばした。
『なんっ……何じゃこりゃー!』
「|煙幕弾発射機構《スモーク・ディスチャージャー》を起動」
『野郎共集まれ! ロボだろうと何だろうと……――』
「――展開」
 集音機器が男達のどよめきを拾う中、カグツチが鋭い気送音を連れて白煙を噴く。
 忽ち広がるは「催眠煙幕」――クリスティナは一階のフロアいっぱいに煙を充滿させ、ヤクザ達がドスソードをカグツチに突き付けるより迅く眠らせていく。
「吹き抜けには煙がよく回るね」
 煙幕の波及範囲は半径134m。
 これには高さも含まれると、事象を以て示した佳人は、モニタ越しに男達の安らかな寝顏を見るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロト・ラトキエ(サポート)
基本、戦闘中は無口。
静かに、密やかに、確実に…
鋼糸やワイヤーを張り巡らせ、陸空構わず足場とし、武器として、
他に、毒にナイフ…と多彩な暗器で敵を討つ。

物心ついた時から戦場に在り、
仮令、相手が誰であっても、如何なる強者や数だろうと、
ふわり、いつも通りの微笑みを絶やさない、生粋の戦場傭兵。
かわいい小動物から猛獣まで、生き物には避けられがち。
かなしみ。

常に周囲を視。
敵の動きや特性を見切り、回避や攻撃へと繋げる、
距離・範囲拘らずの攻撃orサポートタイプ。
温かな癖に、凍れる感情。
特に色仕掛けは効かない。

状況に合わせ、動きやUCはご自由に。
物語にとって良い様に、上手いことサポートさせて頂ければ幸いです。



 若しか十分な損害を與えれば、末端の出來事も上層に届くかもしれない――。
 ただ其は派手に暴れずとも構わず、靜粛に、而して確実に、額面で示せる被害を見せるのも|痛快《おもしろ》かろう。
「――然う、譬えば」
 譬えば、このビルの殆どを占める巨大サーバーは如何だろう。
 情報の森を形成するネットワークを破壞したなら、電子的なデータと物理的な筐体に與えられる損害は、他企業との小競り合いに忙しい連中も看過できまい。
 そうして仄昏いサーバー室に至ったクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、人工的な光を明滅させる筐体の黑叢を前に、綺羅と白銀の煌きを瞬かせたのも一瞬。繊指に操る鋼糸をフロア一帯に張り巡らせた。
「斷つは、截つ。而して絶つ」
 遍く総てを斬り裂けと、艶帯びたテノール・バリトンが花唇を掠めたなら、美し鋼糸は縦、横、斜めにと、多方向に光を彈きながら筐体を斷截する。
 瞬く間に機械の塊を斬り崩したのは、十三の業が一、【|拾式《ツェーン》】。
 繊麗なる十指の精緻な操作によって、鋼糸の檻に囲繞した情報筐体群を悉く破壞したクロトは、伊達眼鏡の奧、瑠璃色の瞳を階上に向けて吐息ひとつ。
「扨て、これを階数分と」
 エレベーターが使えないのは中々に骨だと、昏闇に潜む白皙に塊麗の微笑を湛えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
システムなどの制圧のために途中で私は別行動をとる。
露も来る…か。確かにバックアップは必須だな。任せた。
「頼むぞ、ポイントマン」
ん?ポイントマンの解説?君は斥候ということだ。露。

企業ビルだから必ず外部接続用の端末はあるだろう。
存在しなければ緊急端末でもいい。露と共に捜す。
端末を発見したらそのまま有線でシステムへ侵入。
まずは私達自身の安全確保から始める。
仲間の行動確認後にエリア内の鍵を全てロック。
前回同様【智慧なる女神】と【電子の妖精】を行使。
要所要所にデコイを三重に配置し慎重に進んでいく。
私が使用する端末の特定防止に疑似侵入の細工を。
さて。ではセキュリティを私のものにしようか…。
ハッカーと私…どちらの腕が上か試すのも面白い。

他の者達が最上部へ侵攻しやすいようにもしておく。
最短ルートの扉を解放。それ以外の扉を全てロック。
エレベーターを二つ三つこちらの制圧下に置いておく。
『トマト』で制圧状況を監視可能なようにしておこう。
全て完了したら私達も最上階へ急ごう。
「私達も行くぞ。露」


神坂・露
レーちゃん(f14377)
…わー。このビル雲に届いてるんじゃないかしら~。
空が狭いわって思ってたらレーちゃんに声かけられて。
「あ。待って、行くわ~」
あれ?レーちゃんだけ別行動?ならなら。あたしも♪
「…え? ぽいんとまん? …それっ…て…?」
聞いたことないこと言われたからレーちゃんに聞く。
!!そっか!あたし斥候ね!うん♪頑張るわ頑張るわ♪

『はっきんぐ』とかそーゆーのはレーちゃんにお任せね。
だって説明してくれてもチンプンカンプンなんだもの。
だからあたしは周囲を警戒して襲ってくる人達と戦うわ。
安全確保はしてくれてるけど愛剣の柄に手をかけておく。
…。それにしてもレーちゃん楽しそうよね~。笑ってるわ。
なんだか新しい本を手に入れた時みたく瞳がキラキラしてる。
ずっと見てたいけど…あたしはちゃんと周囲警戒しなくちゃ。

強面の男の人が襲って来たら迷わず愛剣で応戦よ!わーい!
もし大人数だったら一撃必殺のメルギト…え?ダメ?
うーん。そっかー。じゃあじゃあ【月華】で眠らせちゃうわ♪



 |高速道路《ハイウェイ》から見る摩天楼の櫛比も壮觀であったが、近くで見ればその高さは本物。
 宛で“|天をも摩らんばかり《skyscraper》”巨塔が、景色ごと瞳に降り掛かるよう。
「……わー。このビル、雲に届いてるんじゃないかしら~」
 件のビルの正面、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)が白い咽喉を露わにして頭頂を仰ぐ中、到着するなりバイクの後座から降りたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、正面玄関から脇に逸れ、関係者用通用口へ向かう。
「他の者達が正面突破を仕掛けるなら、この機に乗じて私は裏から攻める」
「なんだか空が狭いわ~。星々さえ押し潰されそうな……って、レーちゃん? もしかして別行動を取るの?」
「噫、先ずは設備システムの制圧に掛かる」
「あ。待って待って、あたしも行くわ~♪」
 迷わず裏口へ回るシビラに対し、袖を摘むようにして追從する露。
 彼女なら表でヤクザ相手に派手に暴れ回る事も出來たろうが、成程バックアップは必須だと露を見たシビラは、今にもくっつく仔犬娘をその儘に、前方警戒を任せる事にした。
「ならば頼むぞ、ポイントマン」
「……え? ぽいんとまん? ……それっ……て……?」
「君は斥候という事だ」
 聞き慣れぬカタカナ言葉に小首はコトリと傾くが、斥候と言われれば理解る。頼もしき精鋭だ。
 信頼の程を感じる重要任務に与った露は嬉しそうに頬を紅潮させると、足取りも輕やかに先行し始めた。
「!! そっか! あたし斥候ね! うん♪ 頑張るわ頑張るわ♪」
「――噫、宜しく」
 潜伏前からヤル気充分な彼女の後方では、シビラも侵入に備えて義気凛然。
 今回の仕事は多いとタスクを洗った麗人は、間もなく聞こえる正面の騷動に紛れ、人通りの少ない通用口から潜入を果たすのだった。

  †

 ――このビルにも必ず外部接続用の端末がある。或いは緊急端末でもいいから、接続可能機器を捜そう。
 ――は~い♪ それじゃ、お邪魔しまーす♪
 館内では多くの警備員が慌しく動いているが、如何な緊迫の中でも二人は冷靜。
 特にシビラは颯の如く迅速で、関係者用通用口のパスコードをハッキングしたのを皮切りに、配電室を通り、守衛室を抜け、安全に作業に掛かれそうな場所からアクセスを開始する。今回は有線で繋げられるが、その分リスクも高くなるので、先ずは自身の安全を確保する事も拔かりない。
「露は目視での監視を継続してくれ」
「うん♪ 万一に備えて警戒は十分に、いざとなったら戰うわ」
 瞬時に対應できるよう繊手を愛剱の柄に掛けた露は、周囲に烱瞳を注ぎつつ、折にシビラの作業を見る。
 目下、着々と進められているのが『はっきんぐ』なるものか――たぶん説明を聞いても|珍紛漢紛《チンプンカンプン》だろうと割り切った露は、手際良く罠を仕掛けていく親友に全てを任せる事にした。
「仲間の行動を確認した。これよりエリア内の鍵を全てロックする」
 解析鑑定機能を強化する拡張プログラムを適用し、万物を解析する【|智慧なる女神《ニュクス》】を以て館内の解像を終えれば、全ての位置と動きが可視化される。
 同時に【|電子の妖精《フェルミオン・シー》】を活性化して処理速度を加速させたシビラは、この異變に気付いているであろうハッカーへの|防御《まもり》も同時に固めていった。
「相手も侵入には気付いている。だが向こうの出方を見る前に手は打っておこう」
 要所要所にデコイを、ここは三重に配置する。
 また敵は此方が使用する端末を特定しようと掛かるだろうから、疑似侵入の細工を施しておこうと、次々と策が浮かぶのは流石だろう。
「扨て。ここまで慎重に進めたなら、愈々セキュリティを私のものにしようか。ハッカーと私……どちらの腕が上か試すのも面白い」
 目には見えぬ電腦の世界では、|攻め手《シビラ》と|守り手《ハッカー》がチェスの如く盤上の駒を動かしているのだろう。
 而して勝ち筋が見えたか、シビラの麗顏に挑発的な嗤笑が萌すのを見た露は、その冱々とした美しさに吐息を零した。
(「……なんだかレーちゃん樂しそうね~。笑ってるわ」)
 宛で新しい本を手に入れた時のような、ページを捲る度にキラキラと煌く双瞳と一緒。
 きっと好敵手に結ばれているであろう橫顏の、弓張月の如き凛々しさを見た露は、ずっと見ていたい樣な――いや、この集中こそ守らねばならぬと周囲への警戒を強くした。

『……おい、何してる! 入館証は!?』
『正面で暴れている奴等の仲間だな!?』

「わ、強面さんがこっちに來ちゃう」
 拙い! と慌てるより「出番が來た」と|微咲《えみ》を浮かべる露とて中々。
 物凄い形相で走りくる警備員に喜び勇んで正対した佳人は、連中が無線を手に増援を要請するのを認めると、肺腑いっぱい息を吸い込み、神をも滅する灼光一条を放とうとした。
「ここは一撃必殺の――!」
「露、止せ。強すぎる」
「……え? ダメ?」
 この時、端末に視線を結んでいたシビラが白魚の如き手を差し入れる。
 ヤクザを相手に神殺しのチカラを解放するまでもないか、シビラが|頭《かぶり》をふるふると振ったなら、露も「そっかー」と咆哮を止め、代わりに月光の如き靑白い輝きを全身に纏った。
「じゃあじゃあ、ここは穩便にいきましょ♪」
 猛る警備員を優しく迎えるは、【|月華《セレニテス》】――安けき夢寐へと連れる癒しの光。
 露を中心にして放射状に広がった|慈光《ひかり》は、彼等に觸れるや忽ち瞼をトロンと落とさせ、その場でグーグー。深い眠りへ誘う。
 而して通話相手を失った発信先も、猟兵の急襲を受けてそれどころでは無かろうか。無線機越しに悲鳴を聽いたシビラは、音声を跨ぐようにして進み出す。此処でのタスクは完了したという訳だ。
「私達も行くぞ。露」
 他の者達が最上部へ侵攻しやすいよう、最短ルートの扉を解放。それ以外は全施錠。
 エレベーターを二つ三つほど支配下に置いておけば、雲にも届きそうな階数を登る必要もあるまいと|冗戯《じょうだん》を添えたシビラは、現在の制圧状況を逐一確認できる『トマト』を手に先を急ぐ。
「あ、待ってレーちゃん。ここはあたしが先に行かないと」
 ――だって、『ぽいんとまん』だもの!
 自信たっぷり、胸を張って斥候を務める親友を先行に許したシビラは、擦れ違いざま微笑を置くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
空が狭いのは高い構造物のせい…でしょうか。
私にはこの世界は少し窮屈に感じられますね。
故郷とは全く異なった世界だからでしょうか?

ロベルタさんとレジスタンスの方々と最上階へ。
行く手を阻んでくるヤクザの方々は峰打ちで。
重量攻撃の早業を付与した【鍔鳴】を使用しますね。
戦況次第でフェイントなどを取り入れて戦いますよ。
ヤクザの方々の動きは見切りと野生の勘と第六感で。
可能な限り長物を狙って破壊するに留めます。
無駄な怪我はお互いにしたくないと…思いますし。
しかし素手で構わず向かってくる場合容赦しません。
抵抗する場合には胴や腕を狙い動けなくしたいと!
肋骨を折るかもしれませんが仕方ありませんね?
「…お、鬼で…か?! …あぅ…私…そ…な風…」
途中からヤクザの方々に色々と言われて衝撃です。
戦闘中…私ってそんな風に見えているのでしょうか?
…あぅ…。

ロベルタさんの心配はしていません。
…ただ…ロベルタさんの方が容赦ない気がしますね…。
時々顎骨や腕の骨などが砕ける凄い音がしているような?


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
ビルを見上げてる墨ねーは悲しそうだねぃ…?
この世界と墨ねーの世界に違いがあるからかも。

まあとにかくカチコミだじぇ!うぇ~い♪うぇ~ぃ♪
殴りこみってことは自動ドア蹴り砕いてもいいよね♪
「たのもぉ~!」って重量攻撃込みの蹴りで侵入だ!

おー♪おー♪ヤッちゃんがワラワラと出てきたじょ♪
一人ずつにーちゃん達の相手するよ。誰からがいいかな?
利き脚に重量攻撃と鎧砕きに鎧無視攻撃籠めて蹴るよ!
…あ。パフォーマンスで底上げして【魔女の一撃】だ!
「うぇ~い♪ 最初に手合わせしたいのは、誰だぁ~♪」
防御しよーとする腕ごと顎とか蹴り抜いちゃうじぇ~♪
怪我してもどこの骨折れても色々と納得ずくだよねぃ?
だってお互いに荒事が専門の人間だもの!うぇ~い♪
筋肉が凄くて守り固いなんて気にしないじょ!
零距離とクイックの2回攻撃【魔女】で解決だから!
同じところを同時に蹴ったら腕は砕けるはずだじぇ♪
もし二回だけじゃ足りなくても何度も一か所蹴ればいい♪
う?なんだかヤクザのにーちゃんとの距離感感じるじぇ?



「ひゃ~、高いねい……ビル同士が背伸び競爭してるみたい」
「……。…………何だか……空、が……苦しそ……すね……」
 恐らく、そして多分に|巨大企業群《メガコーポ》が「他社より高く」と見榮を張り合ったのだろう。
 黑々とした鏡面にネオン光を鏤める摩天楼が、夜穹の星を翳らせている、と――。繊手を胸に宛てて噤んでしまった浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、サムライエンパイアとは全く異なった世界で何を思ったろう。
「墨ねー、なんだか悲しそうだねぃ……?」
「私の……故郷では……こんなに……高い……構造物、は……せんから」
 長屋と違って、この街のビル群は空を窮屈にする。
 まるでモラルも地球環境も崩壞させたメガコーポを映し見るような――と、頂に飾られる「|篠突黎明《シノツクシノノメ》」のマークを仰ぎ見た二人は、レジスタンスのメンバーがバイクを降りるのに合わせ、自分達も正面に向かった。
「行くぜ、巨大サーバービルにカチコミだ!!」
「うぇ~い♪ カチコミだじぇ~♪」
 スバルら血気盛んな若者達に混じって拳を突くロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。元気良し。
 一方、カチコミとは何たるかを教えてくれる彼等にコクコクと赤ベコのように頷いていた墨も、楚々たる蓮歩で眼前の大きな自動ドアを目指す。
 その墨の眞橫を風のように走りゆくロベルタは、何故かカチコミの手順を知っているようで、
「うぇ~ぃ♪ 先ずは自動ドアを蹴り砕くんだじぇ~♪」
 と、ガラス割りから始まる抗爭の定石をやってのける。えっすご!
 この時、リズミカルなステップで正面入口に向かった少女は、ワンピースの裾より瑞々しい脚を覗かせるやキック一閃!! 重量戰車が乗り込んできたかの如き超衝撃と大音量を以て、フロアに居る警備員達を一斉に振り向かせた――!
「たのもぉ~!」
『んな!? こんボンクラが、どこの|組織《モン》じゃあ!!』
 而して相手は派遣会社の皮を被った|無頼《ヤクザ》にて、こちらの反應も實にポピュラー。
 唯だ本当のボンクラならバイクに跨って逃げたろうが、ロベルタは精鋭も精鋭、手練も手練。極めて肝が据わった少女なれば、そのままフロアへ進み、続々と駆け付ける男達を愉しそうに見渡した。
「おー♪ おー♪ ヤッちゃんがワラワラと出てきたじょ♪ 誰からがいいかな?」
 ガラスの割り合いが喧嘩でないとは誰が云ったか。
 連中が懷からドスソードを取り出すのを見たロベルタは、爪先で輕~く床を叩く間に踏力脚力を増進させると、フリーキックを打つような華麗さで蹴撃を繰り出す! ――この堂々たる気概、広島ヤクザかな?
「うぇ~い♪ 超重力シュートだじょ♪」
『どわぁぁああ嗚呼!!!』
 ドスが間合いを犯すより迅く閃く、集団ごと押し返す【|魔女の一撃《コルポ・デッラ・ストレーガ》】ッ!!
 華奢ながら極めて優れたバネを持つロベルタは一点集中! 体幹ごと旋回して繰り出る超回転シュートを撃ち込む事で、ドスを彈き、其を握る手を彈き、衝撃に浮かせた男達を後続にぶつけてドミノ倒しにする!
 この時、激痛を絞る絶叫が床を叩くが、ロベルタはケロリとしたもの。
「うぇ~い♪ 次に手合わせしたいのは、誰だぁ~?」
『ぐぐ、ぐっ、なんちゅう奴じゃ!!』
「ドスも腕ごと、顎とか心窩とか蹴り抜いちゃうじぇ~♪」
 相手がヤクザだろうとお構いなし。高殺傷力の武器を持ってようとお構いなし。
 一発目で体勢を崩し、間隙許さぬ二発目をズドンと沈めれば|解決《オッケー》♪ と花顏に咲みを広げたロベルタは、とてもカタギとは思えぬ超絶喧嘩殺法で、一人、二人、纏めて三人! と景気よく轉がしていく。
 可憐な少女がこれ程の足技を使うなんてアンバランスは、間もなく恐怖に變わろう。
「怪我してもどこの骨折れても色々と納得ずくだよねぃ?」
『……こん……ッ!』
「だってお互いに荒事が専門の人間だもの! うぇ~い♪」
 而してヤッちゃんの理をより解しているのはロベルタ。
 ドスを振りかぶっておいて返報の足技を卑怯とは云うまいが、純然と練磨された技能とユーベルコードに|難癖《ケチ》はつけさせぬと、爪先は頤を衝き上げ、踵は腦天を叩き潰し、「ゴリィ!」とか「ボグゥ!」とかいう鈍い音で默らせていく。

 ――だが然し。
 先程は鎖骨が砕けた音で、今のは腕の骨が折れた音だと、聡い耳で聽き拾う墨とて|強者《つわもの》。
「……ロベルタ、さん……容赦ない……です……ね……」
 成程、これがカチコミかと學びを得た墨は、間もなくドスソードを手に襲い掛かる警備員に烱瞳を結ぶや、居合術【|鍔鳴《ツバナリ》】ッ! 黑漆の鞘より拔き放った白刃一条を綺羅と閃かせた――!!
「鳴り響け」
『むっ、くぉお嗚嗚――ッ!!』
 ひやうと疾った斬撃は、ドスを兩斷して後、有り餘る衝撃で男を壁まで吹ッ飛ばす! 叩きつける!
 仲間の警備員らが目ン玉むいて悲鳴を追う間、墨は拔刀して暴いた冱刃の背を見せて八相の構え!
 猶も向かってくる連中を相手に、ドスを払い落し、手首や肩口を強かに打ち、無手にても肉薄する者には擦れ違いざま刀背打ち!! こちらも絞るような悲鳴を床に|蜿打《のたう》たせる。
「……お互い、に……無駄な怪我は……したくない……の……すが……」
『鷲のモンがイモ引く云うんかァ!』
「それでも……向かって……來る、と……なら……仕方ありま……ね?」
 ドスソードとは|究竟《つまり》匕首にて、その長さも間合いも心得ていると感覺を研ぎ澄ませた墨は、鈍く光る切先を見つつ自ら踏み込んで柄落とし! 愛刀の柄頭を胸元へ打ち付け、肋骨を砕いた!!
『ぜはっ……っっ!!』
「……退いて……貰いま……!」
 主犯格が要る最上階まで、スバルらレジスタンスのメンバーと共に行くのだ。
 道を阻むなら容赦はせぬと、蘭麝の髪を躍らせるは風でなく気迫か。或いは刃を隱して猶も迸る剱圧か。
 切揃えの前髪の奧にチラと覗く白皙の、涼やかにも醒めるような靜けさに肝を冷やされよう。
『ひぃぃいいい……なんちゅう強さ……鬼やな!!』
「……お、鬼で……か?!」
『あぁああ鬼なら敵わなくて當然だ……謝ろう……ごめんなさい……』
「……あぅ……私……そ……な風……」
 顏面蒼白にしたヤクザの前、怖がられた墨こそショックを受けよう。鬼って!
 気付けば足元に組み敷いた者達のみならず、今から組み合わんとする者達にも恐怖の色が差しているような……。ふと周囲を見渡した墨は、鬼神か魔神を見るような視線に頗る困惑した。
「……戰鬪中……私って……そんな風、に……見えて……る……でしょうか?」
「う? なんだかヤクザのにーちゃん達と距離を感じるじぇ? どーしてだろうねい」
「……あぅ……」
 すごい、距離感――。
 今回のように歷然と力差を見せつけられた時は、獅子とて猫のようにしおらしくなるもの。
 腫れた顏を隱すように土下座する無頼連中を前に、墨は大いに戸惑いつつ、ロベルタは堂々と前進して上層を目指すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
頂上に聳える企業マークは鷲。
まるで、俺達を見下すかのようで──。
右手でガンスピンさせた銃口を鷲に向けて狙い撃つ。
鷲の企業マークに穴を空けたのはスバルやレジスタンスからは見えないだろう。
なに、気にするな。ちょいとした宣戦布告さ。

出迎えはあるのかい?
サーバービルのホールで、銃声を一発。
お客様の出迎えぐらい惜しむ必要ないだろ?
それとも警備員だから客の相手はしなくても良いって?オイオイ、一流企業の名が泣くぜ?

ホールに警備員を集めれるだけ。
警備してる連中はメチャクチャ強いんだって?全員集めれば、掠り傷ぐらいは俺に負わせられるかも知れないぜ?
ミンチになるだろうって、俺の心配をしてくれるってんなら──don't worry。
そっちこそ同士討ちに気をつけな?死なないよう手加減はしてやるが、仲間の銃弾で御陀仏ってのは、流石に気の毒だ。(肩竦め)

機械化の部位を破壊して。
全部終われば、残しておいた監視カメラに向けてボウアンドスクレープで挨拶でも。
一目で忘れられなくなる、イケメン顔を良く覚えておくと良いさ。



 レジスタンスのメンバーがバイクを降りるのを見つつ、視線を上に――高層ビルを仰ぐ。
 ハイウェイを走る道すがらにも見えていたが、正面に至れば猶のこと目に迫ると片眼を眇めたカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、強いビル風にコートが翻った瞬間、腰のホルスターから引き抜いた愛銃を手元でスピンさせると、銃口をビルの頂に向けて一発。銃彈を撃ち放った。
「!? ――どうした、便利屋」
「なに、気にするな。ちょいとした宣戰布告さ」
 オルトロスの咆哮に振り向いたスバルが見る彼は、相變わらず不敵な微笑を湛えた儘。
 見下すかのように空にある鷲の片翼を射抜いたのだとは云わず――カイムは一同から遅れること数歩、大企業の役員さながらの歩みで正面に向かうと、間もなく入館証を確認しに來る警備員に嫣然を湛えた。
「VIPのご來社だ。お出迎えはあるのかい?」
『失礼ですが』
「警備員だろうと挨拶くらいするもんだぜ」
 紳士なら、と付け添える程度には彼等の素性を知るカイム。
 而して相手も彼を歡迎すべき手合でないと悟ったか、直ぐにも襟につけた無線で増援を呼ばんとすれば、視界に留め置いた“要注意人物”は予想通りに……否、予想以上の迅さで黑銃を掲げた。
「折角出向いたのに応接はナシか? オイオイ、一流企業の名が泣くぜ」
 今度は吹き抜けの天井に向かって一発! 広大な空間に銃聲を響かせる。
 これだけ大きな呼鈴を鳴らせば、目下、フロアにはわんさと|警備員《ヤクザ》が押し寄せよう。
 ドスソードを拔身で持ってくる連中の仕事ぶりに微笑を浮べたカイムは、ニッと口角を持ち上げて云った。
「集められるだけ呼べばいい。|銃彈《タマ》が多けりゃ掠り傷ぐらい負わせられるかも知れないぜ?」
『なめくさって! おんどれェ!!』
「――ハ、勤勉だ」
 荒々しい怒号が迫ろうと笑顏はその儘、輕口を添えながら紫雷を迸る。
 刹那、麗顏を照り上げた灼光が幾条の筋となって閃き、紫雷を纏った銀の銃彈が広い空間を疾るや連中のドスを彈き! 無線を壞し! 靴を貫いて跪かせる! ――三度目に哮る銃聲こそ美しき【|銃撃の輪舞曲《ガンズ・ロンド》】!!
『クソがぁ……っ、キサマ今にミンチになるぞ……ッ!』
「俺の心配をしてくれるってんなら有難いが、Don't worry. そっちこそ気をつけな?」
 ――噫、警告した瞬間だった。
 連中より速く増援の到着に気付いたカイムは、彼等が拳銃を懷から取り出す樣子も勿論見ていたが、この超高速輪舞を踊りこなせる狂人など餘程居まいと云おうとした矢先、視界の脇で警備員が倒れる。同士討ちだ。
「俺は手加減してやったんだが。仲間の銃彈で御陀仏ってのは……お気の毒だぜ」
『くっ……おぉぉおおっ……口の減らん奴め!!』
 怒れる連中は、彼の口の多さが手数の多さで、目下にも挑発の成功率を上げているとは気付くまい。
 凄腕の撃手から放たれる銀彈は、粉々に砕いたドスの破片を躍らせ、制服に祕めた機械化義体を暴き出し、相手が構えた銃の筒を射抜いて暴発させる。
 斯くも精緻な銃撃が警備員を踊らせる樣子は、監視カメラに聢と捉えられていたが、これが「映させていた」と判然るのは、視界に入ったカイムが恭しくボウ・アンド・スクレープを見せた時。
「良く覺えておくと良い。一目で忘れられなくなる、イケメンさ」
 輪舞曲を踊りきった役者の、再び頭を持ち上げて見せる麗顏の疎ましいまで端正なこと!
 スバル達が監視カメラを潰して進む中、ただ一台を残しておいたのはミスでは無く――カメラ越しに不敵な微笑を見たハッカーは、間もなくその麗姿を実際に見る事になるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『サナン』

POW   :    サンダーテイル
【電気エネルギーを纏った尻尾の一撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に高圧電流を流し込み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    ケーブリング・カリギュラ
戦場内に【無数の電線】を放ち、命中した対象全員の行動を自在に操れる。ただし、13秒ごとに自身の寿命を削る。
WIZ   :    エレクトロポイズンAD
レベル×10m内のどこかに【電子ホログラム映像】を召喚する。[電子ホログラム映像]を見た敵は全て、【遠隔ハッキング】によるダメージを受ける。

イラスト:雲間陽子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――巨大サーバービル最上部、システム管制室。
 其處は電源や空調といったビル全般の設備やネットワークを管理・制御する、謂わばビルの心臓に當たる場所だが、何百基ものデジタルサイネージが出力する画面を監視していた「狐」は、その支配域がどんどん削られていく樣子に慥かな脅威を感じていた。
『……ネットワークに異常を検出しました。ジャミング電波の送出を停止します』
 外部からの不正アクセスを確認したのは、特定エリアに攻撃を仕掛けた約一時間後。
 依頼主は「街一つ潰れるまで」と注文をつけてきたが、攻撃元が特定されるのは悪手と判斷した「狐」は、この時点で攻撃プログラムを書き換えたのだが、どうも「敵側にも凄腕のハッカーが居る」と判明ったのは、このビルの電源が落ちた時。
 直ぐに復旧させたものの、監視システムの制御権を奪われた時には、疑惑は確信に變わったろう。
 蓋し現地にまで足を運ぶ連中を止めるに、手を拱く怯懦は無かった。
『ビル内の電源を管制室に集中……当機の戰鬪用エネルギーとして供給を開始します……完了』
 電源コードを兼ねる尻尾をブスッと柱に差し、自らを充電する。
 監視カメラの映像を出力するサイネージが、警備員連中をドスドスやっつけながら上階を目指す猟兵と、監視カメラをバキバキに壞しながら同行するスバルらレジスタンスを映しては消える中、管制室階下の照明や空調などを全て遮断した「狐」は、その電力を管制室に集約する事で「戰場」を作り上げていく。
『此れよりCJGG3-THUNANは戰鬪用モード_雷霆の魔女に移行します』
 依頼者に「狐」と呼ばれる彼女こそ、超攻撃型ハッカーの『サナン』。
 街ごと潰す筈だったレジスタンスのメンバーが來ているなら、此處で彼等を消してしまえば良いとプログラムを變更したレプリカントは、管制室にサイバースペースを構築して待ち構える。
『このままタスクを遂行します』
 結果が同じなら構わない。
 戰場を電腦世界から現実世界に持ち出した彼女は、先ずはスバルの首を灼き斬ってやろうと無数の電線を巡らせるのだった。
ヌグエン・トラングタン
俺様の管轄地方にはほとんど居なかったから、ある意味ロボとかには疎いんだが。
こういう形のもいるのな…。

で、やってることは『力の一点集中』『自らの有利な場の形成』だな。いかにもってやつだ。
クエスト的にはお約束な感じだわな。そうするしかねぇだろうし。

で、俺様…たぶん今までは近接偏重で見せてたと思うが。
本当はな…遠距離攻撃もいけるんだよ!
【それはまるで氷のような】ってな。これやるの、結構レアなんだぜ?
で、機械ってのは極端な気温に弱いよな。とくに充電するバッテリーな。
凍結属性だ。食らったら機能低下を覚悟しな!

遠隔ハッキングに関しては、『天欲渾望』やスバルのカウンターハッキングで対処する。
頼りにしてるぜ。



「――別に悪手じゃねぇ。クエストなら定石を踏んだ感じだわな」
 力を一点集中させる事も。
 自らに有利な場を形成する事も。
 いかにもボスが用意する「お約束の展開」だと、無数の電線が張り巡らされた管制室に至ったヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は、鋭利な双瞳に雷霆の庭を見渡すと同時、
「そうするしかねぇだろうし」
 と、嘆聲の混じるバリトンを掠める。其は同じく最後を預る者としての、或る意味での|共感《シンパシー》――。
 とまれ、サナンが整えた|戰場《にわ》を兩掌を広げて受け取ったヌグエンは、握れば拳となって警備員をブッ飛ばした手をその儘、肩の位置で水平に構えて見せた。
『Mr.トラングタン。貴方も賭けスチェンカの挑戰者であった事は|判明《われ》ています』
「成程、情報はいってるみたいだが。俺樣が近接偏重という訳でも無い事は……知ってるか?」
 不敵に口角が持ち上がった瞬間、無数の剱が壮麗な幾何學模様を描く。
 一帯に広がる【それはまるで氷のような】――凛々と凍れる炎の剱が1,420本!
 術者を煌々と照り上げる|赫耀《かがやき》は、間もなく浮かび上がる電子ホログラム映像に鋩を結んで切り裂き、その延長線上にある電線や電気設備を凍てる炎に灼き斬っていく!
『ッ、これは――!』
「俺樣の管轄地方には殆ど居なかったから、ロボやらメカやらには疎いんだが。機械ってのは極端な気温に弱いよな。特に充電するバッテリーなんか、直ぐ弱っちまう」
『……負のエネルギーを燃やしている……!?』
 サーモカメラモードで視れば、宙空を踊る炎剱が蒼白く光っているのが確認出來る。
 凍結属性とは「相性が悪い」と後退したサナンは、モノリス型ホログラムを構築してこれを拒むが、既に機能が低下し始めているのか――視認した瞬間に適用される筈のプログラムが動かない。鈍い。
 而してヌグエンは、今の遅効をよく捉えていたろう。
「これやるの、結構レアなんだぜ? 充分に食らって機能を低下させな!」
『ッ、ッ!!』
 覺悟しろと放たれた凛冽の炎剱がサナン自身に迫る中、背後に置いた『|天欲渾望《てんよくこんぼう》』が心棒と外枠を旋回させて【エレクトロポイズンAD】を解析し、これを元にスバルがカウンターハッキング! ヌグエンの遠距離攻撃に合わせ、遠隔ハッキングを仕掛けた――!
「頼りにしてるぜ」
「噫、期待には應えないとな!」
 兩者の佳聲が重なって須臾。
 鈍化したサナンの左脚に、凍てる炎の鋩が鋭く|刺突《つきささ》った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
あ、危ない!スバル様の首が灼け落ちちゃう!

そんな時でも大丈夫。聖剣めいどかりばーなら高圧電流の通った電線であろうと切断や【部位破壊】も思いのまま。カジニウムの優れた【電撃耐性】によって感電の心配もありません。

と、通販めいたノリで迫りくる電線を切断。同時に大きく戦場に声を張り上げます。

「レジスタンスの方々は少しの間、持ちこたえてください!そしてスバル様はハッキングで敵のホログラムを防いでくだち!」

そんなお願いで詠唱の時間を確保。このUCは制御が難しいですからね。
今回使うUCはサメンタル・ファンタジア。

これによりサメ属性の流星群を発生させ、敵の頭上に落としてやります。

「落ちろ、サメテオ!」



『エントリーNo.56、スバル。貴方は抗ってはいけない相手を敵に回しました』
 左脚の激痛に止まったサナンが、その場で反撃に出る。
 狙いは飽くまで賭場を潰した男であると、無数の電線がスバル目掛けて襲い掛かれば、其が首に巻き付くより迅く、灼光一条が射線を割った。
「あ、危ない!スバル樣の首が灼け落ちちゃう! ――そんな時でも大丈夫!」
「ッ、スノーフレーク!?」
「こちらの聖剣めいどかりばーなら、高圧電流の通った電線の剪定も思いのまま。絶縁性に優れたカジニウムによって感電の心配もありません」
 ふわり、エプロンを躍らせて冱刃を振るうはエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)!
 高枝切鋏を売る通販番組みたいなノリで電線を斬った佳人は、その抜群の切れ味に見惚れて「おー」とか「あらー」とか云うレジスタンスのメンバーに振り返ると、大きく聲を張り上げた。
「レジスタンスの皆樣は少しの間、持ち堪えてください!」
「おっおう、この戰いを最後まで見届けるぜ!」
「そしてスバル樣は、ハッキングで敵のホログラムを防いでくだち!」
「OK.得意分野だ」
 傍のパソコンチェアに飛び乗り、キャスターを走らせながら操作台に据わるスバルと、半円状に組まれたデスク付近で身を固める若者達。
 サナンが狙う彼等が一か所に集まるのは危険か――否。盾となって護るエミリィにとっては、これが最良。
『撃滅対象の座標を確認――』
「させないぜ」
 サナンが立体映像を生成する度、その指向性に干渉して画像の出力を阻むスバル。
 彼が戰う間に詠唱の時間を確保したエミリィは、全集中――今より合成する現象の波及範囲を前方に絞って発動させた。
「制御が難しいのですが、從えてみせましょうとも。――落ちろ、サメテオ!」
『な、ん……これは……ッ!』
「サメテオです」
 目下、見上げる天井には滿天の星……ならぬ、万種のサメ!
 此たびサメ属性と流星群現象を結合させた【|鮫魔術を操るメイドの術《サメンタル・ファンタジア》】は、鮫を隕石の如く降らせてどっかーん! 戰場中に巡らされた電線を千切り、ホログラムを霧散させ、またサナンの頭にもズガズガと鮫を落とす!
『ぐっ……Ms.ジゼル……スバルと同じ消去対象が居るのに……痛だだだ!』
「はい。痛いと思います」
 鮫の重量に流星の速度を乗算させたサメテオは、直撃すれば首が捥げよう。
 蹲うばかりの狐を見たスバルは、佳人の背後で吃々と竊笑し、
「やぁ胸が空く。これは買えないのかい?」
 と、スマホを搖らして見せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はっはっは、もちろんカチコミ完了前に妾が撤収するはずなかろう、最後まで付きあうとも
街一つ潰せると豪語できるとは素晴らしい!
が、ハッカーが現実世界でまでイキり始めたら危ないと丁寧に教えてやるとしよう!
あ、良ければスバルたちは生声援よろしく!

なかなか良いビジュアルな尻尾だが、もちろん堂々と受けるぞ
妾を全身黒コゲに、できるものならやってみるがよい!
無理なら多分アフロ止まりだ!

妾の左腕は雷纏う尾すらも容易く掴む!
尾を身体にがっちり巻き付けて固定、…全力で電流を流せば緩むかもな? その死力が妾は見たい!
はーっはっはっは! 天井が低い分、回転を増やしてやろう!
地上階までブチ抜くつもりで、脳天を杭打ちだ!



 家に帰るまでが遠足なら、|頭《カシラ》の|命《タマ》を取るまでがカチコミ。
 故にカメラは止めぬと最上階へ驀進した御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、サナンが映像で確認していた豪快な咲みを見せて云った。
「はっはっは、街一つ潰せと言われ、應を諾すとは見事な胆力!」
『肉聲で80㏈を検出しました』
「唯、ハッカーが現実世界でまでイキり始めたら危ういの~?」
 四方を圍う何百基ものサイネージに己を映し、折に全面どアップで迫る菘。存在感が凄い。
 高嶺の鼻梁が觸れるほどカメラに近付いたと思いきや、つとスバルらレジスタンスを振り返った彼女は、右手をクイクイ。
 何かに気付いた者達が「いけー!」「がんばれー!」と拳を衝けば、花顏は生聲援にニッコリ。
 ネット越しにも肉眼にも派手なバトルを魅せてやらんと、邪神のオーラを漲らせた。
「さぁ、お主の危うさを教えてやるとしよう! 丁寧にな!」
『訓導は不要です。排除します』
 雷霆の|戰場《にわ》を浸蝕する「圧」に警戒したサナンは、迷わず突進! 稲妻の如く疾るや、肉薄した瞬間に体軸を旋回ッ、紫電を迸る尻尾を鞭のように叩きつける!!
 この時、ブンと撓る尾撃を堂々と正面で受けた菘は、レントゲンを撮ったように骨が透けて見えたが、肌膚も鱗も黑コゲになるかと思いきや、なんと、クールでファンキーなアフロヘアーになった!!!
「中々に良ビジュアルな尻尾! ちょっとキツめのパーマをあてた位にはなったぞ」
『!? !? 高電圧強電流を浴びて火傷もしない……!』
「しかもプラグがあって摑みやすい!!」
 尋常なら動けもせぬ電撃だが、菘は左腕でサナンの尻尾をガッチリ掌握!
 そのまま巻き付けるように軀を旋回すると、ぐるんぐるん回転数を上げてホールド力を高めた。
『っ、引き離さなければ……!』
「全力で電流を流せば緩むかもな? 死力の絞り合いだ!」
 バババババ! と持てるエネルギーを全力で迸るサナンと、電撃に耐えつつ猛旋回する菘。
 次第にパーマもツイストスパイラルに、かなりキマッてくるが、イメチェン上等と艶笑を増した麗人は竜巻と化し、高スクリューのドリル・ア・ホール・パイルドライバーを仕掛ける――!!
「はーっはっはっは! 天井が低い分、回転を増やしてやろう!」
『いけない……何とか外して……っ!』
「行くぞ! 地上階までブチ抜き、母なる大地と超熱烈な接吻をさせてやろう!」
 最上階から逆落しの地獄を見せるは【|大地とのマリアージュ《サイクロン・パイルドライバー》】!!
 がっつりホールドされたサナンに成す術は無し――何層ものコンクリートマットに腦天を叩きつけられるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルト・ラムバルド(サポート)
ハイカラさんのクロムキャバリア ×今は 宇宙騎士!

普段の口調は私、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?

騎士道精神を胸にキャバリア《パロメデス》に乗って戦うぞ
弱きを助け強きを挫く誇り高き光明の暗黒騎士だ!
でも実はお調子者でおっちょこちょいな奴だ!いわゆる残念なイケメンだ!
生身でも戦えるけどあんまし強くないかも…?でもタフな奴!

基本はキャバリアの乗って戦うぞ!
キャバリアに乗れない時は…なんとか生身で頑張って戦うぞ!
時々コミュ力で知り合った異世界の人やモノ?を召喚したりするんだ!

仲の良い想い人がいるけどぞんざいな扱い方をされてるけどめげないぞ!頑張れ!


仇死原・アンナ
ダークセイヴァー出身の処刑人です。
普段はぼんやりですが敵には冷酷な処刑人と化します。
鉄塊剣振るい怪力で攻撃したり妖刀で斬り付け串刺したりします。
鎖の鞭や拷問具で敵の行動を阻害し、肉体より生じる地獄の炎を操り範囲攻撃で敵を燃したりします。

口調(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
敵には(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)



 賭場を潰された借りを返すに、街一つ潰さんとするとは橫暴が過ぎよう。
 |騎士道《シュヴァレスク》を重んじるベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)にとって、此たび|篠突黎明《シノツクシノノメ》が「狐」に依頼した案件は、義憤を示すに十分だった。
「私は弱きを助け強きを挫く、誇り高き光明の暗黑騎士! 正々堂々、生身で戰おう!」
 いくら大規模な暴走事故を起こした主犯格とはいえ、相手は等身大のレプリカント。たぶん女性型。
 その三倍はあるであろう愛騎『パロメデス』に乗って戰っては、それこそ強権を振るった敵と同じであると搭乗を辞した彼は、操作慣れしたカリブルヌスソードの代わり、細身の刺突剱を拔いて構えた。
「伝説にある首斬り処刑人の名を冠した剱で、君の行いを――」
『ケーブル延伸。細剱を奪取します』
「君の行いを……あれっ!? あれぇ!?」
 騎士らしく口上を云う間に、雷霆の戰場に巡らされた無数の電線がシュルンと伸び、細剱を絡め取る。
 13秒足らずで丸腰になったベルトは、紫電を迸る電線が更に延伸し、我が身を縛さんと這い寄るのを見るや躊躇いだ。
「ッッ……いやいや徒手空拳でも(何とか頑張って)鬪えるとはいえ、電気はちょっと……痺れる程度じゃ済まないぞ!?」
 くるりと踵を返し、先ずは無数に伸び出る電線の束を躱す、避ける、逸らす! 巧い!
 我が騎士道の爲に戰鬪前から劣勢を余儀なくされたベルトだが、なんやかんやでタフだし、運にも絆にも惠まれた男である。
 ピンチの時には、嘗て縁を結んだ東方妖怪や野良モーラットなどが助けに來てくれるのだが、今回窮地を救ってくれるのは、白馬の王子樣……ならぬ、我が愛しのマドンナであった。

「……誰かに呼ばれた気がしたが……ベルトだったか……」
「あーっ! アンナさん!!」

 宙空に翻る漆黑の羽、大鴉の群れと共に|顕現《あらわ》れたのは、仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)――彼女もまた|巨大企業群《メガコーポ》の悖德と戰う猟兵の一人。
 力強い羽搏の音を連れて降り立った凄艶は、こちらも伝説の処刑人の名を冠した妖刀を一振り! ベルトに襲い掛かる電線へ一刀を浴びせるや、紫電を放って斷ち切れる其をズンッと床に橫臥えた。
「……それで……敵は鐵の狐か……」
「噫、アンナさんが來てくれたなら頼もしいし、嬉しい……が! 逆の立場ならもっと良かった……!」
「……敵は……あいつでいいな……?」
 既にアンナは処刑モード。
 美し雪嶺の鼻梁は既にサナンへと結ばれているが、どうせなら自分が今の役をやりたかったと拳を握り込めたベルトは、今こそ雄姿を見せようと奮起一発! 光り輝くカリスマオーラを全開に、堂々アンナと竝び立った!!
「We are Jaeger!! 我等猟兵、異世界を駆け抜け敵を倒す騎士也! レジスタンスよ、君達のメガコーポに抗う勇気の燈火、我等が護ろう!」
「おお、格好良い!」
 ベルトの言葉に雄渾を得た者は、彼と同じ|赫耀《かがやき》を纏って戰鬪力を増す。無論、アンナもだ。
 眩き光は高圧電線など敵で無し、狐の尾撃すら払い落としてやろうとは、これより二人の騎士が示してみせよう。
「……行くぞ……ベルト……!」
「合わせます、アンナさんっ!」
 而して須臾。
 若者達に希望を見せる二条の光が、サナンに向かって飛び込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アスハ・ゾート(サポート)
…ラスボスの魔女×UDCエージェント、28歳の女だよ。
…普段の口調は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」。
…時々「神のような(私、あなた、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」だね。
…普段の口調の時は全ての台詞をひらがな表記にしてね。

…基本的に眠たげ。
…敵が攻撃してきたとしてもどうでも良さげに振舞うよ。
…他者には見えないナニカが認識できていて、会話する時もあるね。

…ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動するね。他の猟兵に迷惑をかける行為はしないよ。
…絡みOK、NGなし。
…後はおまかせするよ。よろしくおねがいするね。



 サナンが猟兵を迎えるに整えた雷霆の|戰場《にわ》は、目下、紫電と灼熱、凍気と衝撃が猛然と渦巻いている。
 而して此度の戰いの結末を見る爲に、スバルらレジスタンスのメンバーも最上階まで同行した訳だが、一市民に過ぎぬ彼等をどう護るかについては、アスハ・ゾート(万物知らぬ有害なる魔女・f34478)が万事解決してくれよう。
「……しごとをさせてあげない。それがいちばんじゃないかな」
 サナンの任務は、賭場を潰したスバルと彼の仲間を抹殺する事。
 その主目的を果させぬ爲に「戰う」という選択肢もあったろうが、なにぶん眠るのが好きで面倒臭がりな彼女だ。今ラスボスを預る者の生死など「どうでもいい」とばかり、とろんと瞼を重たくしたアスハは、管制デスクの付近に集まる若者達へ近付くと、自前の枕をぽふっ。
 ふんわりイイ匂いのする彈力に吸い込まれるように……――眠り始めた。
「……ZZZZ……ZZ……」
「えっあの……寝た!?」
 スバル達が仰天する中、惰眠を貪らんとするアスハの胆力たるや。
 元々寝間着とナイトキャップという完全おやすみ装備で現れた彼女だが、電線が紫電を迸り、鮫が流星と降り注ぐ大混亂の中で「安眠用絶対無敵形態」へ――諸有る攻撃を跳ね除ける鉄壁となり、|篠突黎明《シノツクシノノメ》と通じるサナンの報酬を取り上げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メンカル・プルモーサ
…おっと……管制室をスタンドアロン化してきてる…相応のハッカーだなこれは…
…ふむ…スバル達と自分の装備に浸透破壊術式【ベルゼブブ】が潜んだ紋様を書き込んでおこう…
…そしていざ対決…ホログラム像からの遠隔ハッキングに対しては【汝、意のままに動く事能わず】を発動…ハッキングのための機器操作をミスらせることで隙を作ってスバル達にも教えて回避しよう…
…時間を稼いで紋様から浸透破壊術式【ベルゼブブ】によってワームを感染…ワームの自己増殖で相手のメモリと処理能力をガンガン食いつぶさせよう…
…これで動作が遅くなるのを確認して雷撃の術式を放ってスバル達と連携して攻めに転じるとしようか…



 二人の|魔女《ウィザード》は、まだ生身を晒さぬ裡から戰っている。
 それこそ街で頭腦戰車が暴走してから、ずっとだ。
 最上階へと続く非常階段を駆け上がっていたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、誘導灯がフッと消え、空調の音が止まった瞬間、繊指に眼鏡を押し上げて云った。
「……おっと……管制室をスタンドアロン化してきてる……相應のハッカーだなこれは……」
 電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』が、ビル内の電力が管制室に集約される現状を可視化して伝える。
 ならばと交睫ひとつ置いたメンカルは、浸透破壞術式『ベルゼブブ』を織り込んだ紋樣を己に書き込むと同時、同行するスバルらレジスタンスのメンバーにも適用して準備を整えた。
「これは最終戰のドレスコードかい?」
「ん……。……これだけの相手になると……手を打たせない事が肝要になる……」
 一手ずつ動く駒を取るより、打つ手を止めた方が良策か。
 刻一刻と解析結果を映し出す鏡面を見ながら管制室に至った彼女は、侵入者を捉えるや忽ち構築される電子ホログラム映像に対し、間隙許さずプログラムを組み上げた。
「……攻撃を放つ……その動作を“改竄”する……」
 彼の現よ、鈍れ、霞め。
 汝は隷属、汝は被操。
 魔女が望むは彼の掌離れし人の形――。
 花唇を滑る鈴音が命ずは、【|汝、意のままに動く事能わず《モーション・ハッキング》】――詠唱によって解き放たれた現実改竄術式が、ハッキングを行うべく機器を遠隔操作する際の僅かなタイムラグに侵襲し、送出される信号を阻害して「隙」を生ませる。
「……スバルはこの隙を抉じ開けて回避を……」
「了解! 1秒も100回繋げれば100秒になるって事だろう?」
 コピペは簡單と、佳人が組み上げた術式をスバルが連続して行う中、メンカル自身は次なる一手へ――件の紋樣に潜ませた|浸透破壞術式《ベルゼブブ》からワームを感染させ、今や全てを統括したサナンの仕事量を倍化させた。
「……喰って……喰って……喰い潰せ……餌は飽きる程ある……」
『ッッワームにメモリがやられる……! 処理能力が急激に鈍化していく……ッ!』
 自己増殖が可能なワームは、如何に優れたセキュリティを敷いても駆逐に「時」を要する。
 サナンが時を消耗する間、逆にメンカルは時を稼げるとは、間もなく放たれる紫電が|證左《あかし》となろう。
「……次はこれをコピペで……」
「Ms.プルモーサの仰せの儘に!」
 而して今が攻め時。
 メンカルが生成した雷撃の術式をスバルが増幅して叩きつければ、目下、サナンは灼け上がるほど|感電《ショート》した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

網野・艶之進(サポート)
「正直、戦いたくはないでござるが……」
◆口調
・一人称は拙者、二人称はおぬし、語尾はござる
・古風なサムライ口調
◆性質・特技
・勤勉にして率直、純粋にして直情
・どこでも寝られる
◆行動傾向
・規律と道徳を重んじ、他人を思いやる行動をとります(秩序/善)
・學徒兵として帝都防衛の技術を磨くべく、異世界を渡り武芸修行をしています
・自らの生命力を刃に換えて邪心を斬りおとす|御刀魂《ミトコン》の遣い手で、艶之進としては敵の魂が浄化されることを強く望み、ためらうことなく技を用います
・慈悲深すぎるゆえ、敵を殺めることに葛藤を抱いています……が、「すでに死んでいるもの」や「元より生きていないもの」は容赦なく斬り捨てます



 邪心を斬る活人剱『|御刀魂《みとこん》』の遣手は、骸の雨降る世界では刀を納める間も無かろう。
 目下、管制室中に張り巡らされる電線は、この超高層ビルを動かす膨大な電源を動力としており、まるでケーブルの先に|巨大企業群《メガコーポ》の際限なき欲望を見るよう。
 最上階に至るや自覺えず花唇を結んだ網野・艶之進(斬心・f35120)は、ただ靜かに――紫電のうねりと対峙した。
 この世界もいつかは刀を振るう必要のない、泰平の世になろうか――。
 或いは己の命が盡きるが早いかと、|憂愁《うれい》を帯びた漆黑の瞳を伏し目がちに、身に宿す神祕力を迸った艶之進は踏鳴――! 驒ッと爪先を蹴るや|雷火《いかづち》の如く駆けた。
「參る、でござる」
 急激に放出される靈氣を推進力に、一瞬で神速の域に至る。
 踏み出る一歩と同時に拔かれた退魔刀「久遠丸」は、眼路いっぱいに迫る電線めがけて白光を放つや、袈裟斬一閃ッ、持ち主の命を刃に換えて電線を切斷した――ッ!
「桜とは、散ることと見つけたり、――でござる」
 はらりずんと電線を斷ったのは、【禁手《|此花散外《コノハナチルアウト》》】。
 ふらついて脱力した樣に繊躯を傾ける艶之進の背後、切斷面からはつはつと紫電を迸った電線が力なく床を打った。

成功 🔵​🔵​🔴​

向・存(サポート)
もし手助けが必要でしたらお手伝いするのですよぉ~。
得意なのは近接戦闘とか、【情報収集】も兼ねた見回りとかお話を伺うのも好きですよぉ~。
非道なことをなされる方には手加減無用、全力で参らせていただきますねぇ~。
大丈夫ですよぉ~。手足の二・三本くらいもげてもなんとかなりますのでぇ~。

ユーベルコードの出し惜しみをするつもりはありませんよぉ~。
使いどころに迷ったときはぁ、ご同輩に相談するのも良いですねぇ~。
あとは最後まで油断大敵、【咄嗟の一撃】も放てるように【逃亡阻止】は意識しておきましょう~。
堅実にきちんと片づけたら、皆で美味しいものでも食べて帰りましょう~。
※アドリブ・連携歓迎



 猟兵めがけて延伸した無数の電線が、白刃一閃によって斷ち切られる。
 而してバッサリ斬り別たれた電線が床を打つより迅く、ひやりとした冷風がその間を拔けた。
「聽けば頭腦戰車を暴走させ、街に無差別攻撃を仕掛けたそうですねぇ~?」
『ッ、ッ――!』
「非道なことをなされる方には手加減無用、全力で參らせて戴きますよぉ~」
 須臾に肉薄する、柔らかな鈴音。
 佳聲の主は、近接戰を得意とする向・存(葭萌の幽鬼・f34837)。
 サナンが咄嗟に電子ホログラム映像を召喚する中、その遠隔ハッキングによるダメージを受け取りながら前進した彼女は、激痛に軋む玉臂を鞭のように撓らせて攻撃ッ! 袖を翻しながら拳撃を叩きつける!!
「腕の一本や二本、使えなくなっても大丈夫ですよぉ~」
『!! 腕が取れた……ッ!?』
「四肢は勿論、ユーベルコードを出し惜しむ|心算《つもり》はありませんからぁ~」
 刹那、鐵の軀を強撃した反動で千切れた兩腕から繰り出る――【|四肢抱絞《シシホウコウ》】!!
 靈力を流し込んで鞭の如くなった包帯が伸び出で、喫驚した瞬間のサナンを捕縛した!
『くッ、外せない……!!』
「逃がしはしませんよぉ~」
 依頼か知らぬが、手を下したのはサナン本人。
 罪からは逃れられぬと、強靭を増した包帯が彼女をきつく締め上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
管制室へ行く前に…と思いついたが遮断されているな。
ウィルスでも送り込んでやろうかと考えたが困難か…。
最上階へ上る前にでも仕掛けてやればよかった。残念だ。

眼前の『狐』が今回の黒幕のハッカーか。
ビル制圧がスバルの所為にされているようだがまあいい。
優秀な技術者がレジスタンスに居ると解れば今後楽だろう。

「露、少しこの床を斬ってくれないか?」
パフォーマンスで身体機能の底上げ後にリミッター解除を。
次に封印を解いて限界突破し全力魔法付与して属性攻撃を。
露に壊して貰った床下に腕を突っ込み【氷凍蔦】行使だ。
魔術の威力を上昇させる為高速詠唱で多重詠唱を続けよう。
床下に這わせたケーブルを凍結させれば戦闘が有利になる。
可能ならば床下と壁中の全てのケーブルを凍結させたい。

露には参戦を…と思ったがくっつかれてしまった。やれやれ。
全くこの子は物好きだな。仕方がない。
「…なら、私の護衛をしてくれ。頼む」


神坂・露
レーちゃん(f14377)
最上階へ行く途中で停まってたけど何でかしら?
なるほど。黒幕さんへの悪戯したかったのね!
うん!…専門用語だからよくわからなかったわ…。

最上階の黒幕さんはとっても可愛い『狐』さんだわ。
でもでも外見だけって勿体ないわ~。残念ね。残念。
こー。もっとパッチリおめめとか愛らしいお顔とか…。
「…うん。残念だわ。もっと愛嬌あれば可愛いのに…」

残念がってたらレーちゃんからお願いされたわ。何々?
「え? 床板を…斬っちゃうの? …まあ、いいけど」
『クレスケンスルーナ』ですぱぱーって斬っちゃうわ♪
斬ったらぎゅーって抱きしめちゃわ。わーい♪レーちゃん。

「うん! うんうん! レーちゃんの護衛するわ、するする♪」
えへへ♪ あたしが『狐』さんからレーちゃんを護っちゃうわ。
リミッター解除してから限界突破で【女皇の剣舞】使うわよ♪
先ずは何処から斬ったらいいのかしら?うーん。腕とか脚?
「あ! そっか♪ 頑張るわ♪」
レーちゃんから尻尾って言われたから目標は尻尾ね!
見切りと野生の勘と第六感で攻撃回避ね。



 電腦の世界での戰いは、或いは現実で刃を交えるより繊細な心理戰になる。
 最上階へ至るまでにもう一手、ハッカーを搖さぶりたいと考えていたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、支配下に置いたエレベーターで上層に向かう途中、昇降機内の照明が落ち、空調が止まった事に気付くと、電腦ゴーグルに隱した烱瞳を鋭く眇めた。
「――遮斷したか。相見える前にウィルスでも送り込んでやろうと思ったが……残念だ」
「あら? 止まっちゃった……まだ最上階には着いてないわよね?」
 非常灯も誘導灯も消えた暗闇に佳聲を置くは、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)。
 蓋し怖がる事も無し。露が直ぐさま愛剱を差し入れて開閉扉を抉じ開ければ、その間にウィザードロッドに光を燈したシビラが先行し、幾歩か進んだ後に「二階下か」と鈴音を置く。お互い闇は慣れたものだ。
 而して非常階段に進路を變更したシビラは、この時、まだ見ぬハッカーの判斷と行動を認めもしていた。
「不正アクセスに対し隔離を躊躇わなかったのは賢明だろう。今から介入するのは困難だ」
「レーちゃん、もしかして黑幕さんに悪戯したかった……?」
「噫、管制室に着く前に仕掛けるべきだったが……惜しい事をした」
「うん! 専門外だからよくわからないけど、相手にとって不足なしって事よね?」
 ――然う。此度の敵は中々の実力者で、戰いを挑みに行く甲斐がある。
 会敵が樂しみだと足早に階を昇れば、果して、雷霆の|戰場《にわ》には鐵の人形が待ち構えていた。

「……狐、か」
「わ、電気の尻尾が大きくて可愛いわ~♪ でもでも外見だけって勿体ないと云うか……残念ね。残念」
 凄腕ハッカーの正体は、狐型レプリカント『サナン』。
 彼女こそ街中の頭腦戰車を暴走させた黑幕だ。
 成程、これだけの冷酷をやってのける面構えをしていると、シビラが無機質な鐵面を|睼《みむか》う中、露はその表情の冷たさを惜しみ、不意に差し出る繊手をサナンの顏回りに向かって動かす。
「……うん。残念だわ。こう、もっとパッチリおめめとか柔かい笑顏とか、愛嬌があれば可愛いのに……」
『当機にキャラクター性は不要です。依頼を完遂させる実行力が重要です』
「――それで、今回はスバルの抹殺が最優先と」
『彼は賭場を潰した“|要注意人物《Suspect》”に指定されています』
 この愛嬌に乏しいサナンの瞳が、ずっとスバルに結ばれている事に気付いたのはシビラ。
 ビルを制圧したのもスバルと思っているのか――とまれ、優秀な技術者がレジスタンスに居ると解れば、今後は樂になろうと「未來」を見据えた麗人は、その未來を呼び込むべく櫻唇を開いた。
「露、少しこの床を斬ってくれないか?」
「え? 何々? ……床を拔いちゃうの? ……まあ、いいけど」
 砂遊びで「|隧道《トンネル》を掘ってくれ」というくらい簡單に頼むシビラだが、これにゼロタイムラグで應じる露も露。
 弧刃の玲瓏たるクレスケンスルーナを直ぐに拔いた彼女は、すぱぱーっと、これまた簡單に床を刳り貫いてみせる。重厚な鉄筋コンクリートを豆腐のように斬る剱技には、スバル達もあんぐりだ。
 そうしてレジスタンスのメンバーが驚愕して見る中、二人は次なる行動へ、
「――良し、ここを攻め口にする」
「イイ感じに出來た? わーい♪ レーちゃん」
 早速、片腕を床下に突っ込むシビラに対し、露は嬉しそうに逆側の腕をぎゅっ。
 毎度の如くピッタリくっつく彼女に「物好きな」と流眄を置いたシビラは、それでいて頗る仕事のデキる仔犬娘にもうひとつ頼み事をした。
「やれやれ、仕方ない子だ。それほど傍に居たいなら私の護衛を任せたい」
「うん! うんうん! レーちゃんの護衛するわ、するする♪」
 斯く申し入れたなら、露は違える事なく己を護ってくれるだろう。
 この間に詠唱を重ねられると鈴音に魔力を織り交ぜたシビラは、【|氷凍蔦《ルゲオ・グロル》】――床下に差し伸べた玉臂より「氷の蔦」を這わせ始めた。
「Târâtoare, viță de gheață... Opriți mișcarea a ceea ce atingeți! ――今に雷霆の庭を荒らして遣ろう」
 刹那、凄まじい勢いで繁茂した氷の蔦は、床下に巡らされたケーブル類に絡みつき、忽ち凍結させていく。
 幾ら耐候性に優れていると云っても、直接氷点下に包まれて痛まぬケーブルはあるまい。音を立てて生じた亀裂は床面を一気に疾走すると、そのまま壁を這い進み、電源の集まる管制室を氷の檻に閉した!
『……室内が急激に冷却される……っ!』
「氷の鳥籠だ」
 極めて靜かに、そして苛烈に狐を追い込んだシビラは、今にサナン本体も鈍り始めると読んでいよう。
 間もなく麗人は交戰中の露へ烱瞳を投げ、防衛から攻撃に転じるよう呼びかける。
「露。狐として愛嬌のある部分を斬ってくれ」
「愛嬌……あ! そっか♪ 頑張るわ♪」
 ここで持ち出したのは、会敵時に交わした幾許の言葉。
 たった一瞬でシビラが云う攻撃部位を理解した露は、鈍色の疾風を纏って戰場を駆けた。
「狐さんらしさが無くなるようで心苦しいけど……レーちゃんを護る爲だもの!」
『……まさか|目標《ねらい》は……ッッ……電源プラグ……!』
 ハッとするサナンの眼前に閃くは、華麗なる【|女皇の剣舞《ダンシング・クィーン》】ッ!!
 最高速度15,000km/h、このフロアなら一足で獲物を捕えられる神速の剱舞が三日月の刃を躍らせながら肉薄し、直前で颯ッと飜るや背後へ回り込むようにして――尻尾を刈り取る!!
「銀の風を……刃に!」
 而して刻下。
 月白の艶髪を風に梳らせながら弧刃を振り拔いた露の頭上、紫電を迸る大きな尾が宙空に舞った。
『ずぁッ、ッッ!!!』
 機体としてのバランスは勿論、最も電力を供給できる部分を斷たれたのは致命的。
 空中で踊る尻尾とは逆に重力に結ばれたサナンは、金属に覆われた躯を凸凹の床に叩きつける。地面は既に氷の蔦に覆われており、その超低温にまたも機動力が奪われていく。まるで電力が吸われるよう。
『……ぐっ……まさか私が……!!』
 その鐵面は感情を表すよう緻密には造られていなかったが、狐の人形は明らかに焦燥を滲ませていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
黒幕さんの居る場所は広く機会で部屋が占められていて。
勢い余って壁や床を斬っても文句は言われないですね。
…管理する方には後で怒られてしまいそうですけれど…。
「…まあ…、言わな…ればわか…ませ…か…」(小声)

「…いざ…!」
リミッター解除後に限界突破してから多重詠唱の開始を。
鯉口を切り構え身を低くし【黄泉送り『彼岸花』】です。
集中し気を限界まで練ってから一息に駆けて斬ります!
私が狙うのは『狐』さんの尻尾の付け根辺りでしょうか。
理由はどうやら尻尾から栄養?を取っている様子なので。
尻尾はロベルタさんと拍子を合わせて斬ろうと思います。

鎧砕きと鎧無視攻撃を付与し首を狙ってもよさそうですね。
項から生えている線を断つ感じで首を斬り飛ばしましょう。
首の方は私に余裕があればになってしまいますけれど。
…っ!こんな考えだからヤクザさんに恐れられるのかも…。
…ぁぅ…。ヤクザさんと変わらない気がしてきました…。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
おー!スパコンが沢山あるじぇ!ここが管制室だね♪
カッコいいじぇ~。ぶっ壊し甲斐がありそうだよねぃ。
勿論このスパコンだよ!街のデーターもあるだろうし。
レジスタンスの情報とかデーターもあるかもしれない。
今後のことも考えて管制室のスパコンは全て破壊だ!
どんどんスパコンに僕の【足跡】つけちゃうじぇ♪

パフォーマンスで身体の機能上げてから封印を解くじぇ。
重量攻撃と鎧砕きと鎧無視攻撃付与の【魔王の足跡】だ♪
まずは命中しやすい身体に足跡付けるじぇ。うぇ~い♪
もし身体に跡つけられたらそのまま首を狙ってみようかな。
零距離の早業のクイックで突き上げるように蹴ってみるよ。
攻撃は見切りと野生の勘と第六感で回避してみるじょ♪

…おー。そーいえば墨ねーが落ち込んでる…ような気が…?
あの黒幕『狐』が何か言ったのかねぃ?そーは見えないけど。



 ビルの管理と監視を統括する管制室は、謂わば「機械の心臓」。
 |警備員《ヤクザ》の土下座ロードを通って最上階に至った芙蓉二花は、コンピューターとディスプレイに埋め尽くされた空間に至るや、喫驚に瞬く双瞳をぐるりと巡らせた。
「おー! スパコンが沢山っ! カッコいいじぇ~♪」
 まるで情報の森だと、額に手を翳して見渡すはロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。
 超高層サーバービルならではの大設備に少女が唸る中、傍らの浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は小さく鸚鵡返しに問うた。
「……すぱこん……?」
「う! このでっかいやつ。中には標的にされた街のデーターもあるだろうし、レジスタンスの情報も入ってるかもしれないじぇ」
「……れは……」
 ――それはとても重要なものに違いない。
 結び合わせる視線に含みを持たせた二人は、兩脚を踏み込めるや戰鬪態勢に――重心は落としつつ、魔力や靈圧を光柱の如く立ち昇らせると、花顏を煌々と輝かせながら云った。
「今後のことを考えると、まるっと破壞するのがいいねい」
「……い……。……被害が大きければ……企業の上層にも……届くかも……ませんし……」
 よし、決めた。
 敵をビルごとやっつける。
 斯くして方針を固めたロベルタと墨は、なかよくいっしょに全損壞・超粉砕モード! 鈴音に紡がれる祕呪に身体能力を飛躍させ、詠唱を重ねる事で際限なくスピードとパワーを練り上げていく――!
「うぇ~い♪ ぶっ壞し甲斐がありそうだじぇ♪」
「勢い餘って……壁や床を斬って……管理する……方には……後で……怒られて……そうです、けど……」
 元気いっぱい物損事故を起こしにいくロベルタと、少々躊躇いながら蹂躙に掛かる墨。
 対峙するサナンの前、颯爽と二手に分かれた二人は、須臾に群がり始める無数の電線めがけて有り餘るパワーを叩きつけ、脇目も振らず床に轉がしていくのだが、
「……まあ……、言わな……ればわか……ませ……か……」
 |繊細《かぼそ》く囁く墨が更なる小声で呟いた物騷は、ロベルタがあちこちで巻き起こす衝撃が有耶無耶にしよう。
 ビルの管理人が見れば卒倒する光景が訪れたのは、間もなくの事であった。

  †

『賭けスチェンカの挑戰者リストに合致無く、レジスタンスのメンバーとも照合しない……貴女達は何者……ッ』
 墨とロベルタは、|篠突黎明《シノツクシノノメ》に恨みを持つ者では無い。
 では何故こんなにも!? と、次々と電線をブツ切りにされるサナンは不思議に思ったろうが、畢竟、彼女は強権に從うだけの人形。人々が流した涙を知らなければ、二人の強さも測れない。
 目下、觸手の如く襲い掛かる電線の束を黑鞘に払いのけた墨は、自ら巻き起した疾風に舞い上がる前髪より麗眸を暴き、身を低く――鯉口を切る。
「……いざ……!」
 拔刀して閃くは、【黄泉送り『|彼岸花《ヒガンバナ》』】――森羅万象を斷つ至高の斬れ味。
 蘇芳色の虹彩を烱々と澄ませた刀は、魚鱗の如き白光を帯びながら橫一文字の胴斬りッ! ちょうど対角、回り込むようにして背襲した露が尻尾を切るに合わせ、サナンが体勢を崩した瞬間を急襲する!!
「散れ……」
『ッッ、――ずァッ!!』
 尻尾から“栄養”を得ていたサナンは、各動力部へ配電する腰部機構を破壞され、エネルギーの代わり激痛を全身に疾らせる。レプリカントとして相應に頑丈な筈が、裝甲から内部裝置まで深く刻まれた斬撃は、稲妻の如き迅速を斷つに十分だった。
「……ロベルタ、さん……!」
「うぇ~い♪ |こっちにも《・・・・・》足跡付けるじぇ~♪」
 阿吽の呼吸で躍り出たのはロベルタ。
 管制室に備えられたコンピューター群を足場に、筐体が拉げる程の足跡を置いて走った少女は、矢の如く飛び込みながら【|魔王の足跡《ルシファス・ショット》】ッ! “|明けの明星《Lucifer》”の足音を響かせた!!
「Orme della stella del mattino! ――利き足の全力キックだじぇ~♪」
『ぜぇぁああ嗚呼っ!!』
 超威力・超高速の蹴撃は、宣言通りにサナンの脇腹へ「足跡」を――まるで箔押しのように刻み付ける。
 この時、バチバチと紫電が迸ったのは、かなり危険な状況に追い込んだからだろう。
 凄まじい勢いで吹き飛ばされた身体は、しゅるりと伸びる電線によって壁への激突を回避したが、その間に合流を果した墨とロベルタは、「次は」と攻め口を揃えんとしていた。
「墨ねー、今度は首を狙ってみる? 尻尾から項まで通っている線が気になるよねい」
「……私も思い、ま……た……。脊椎を、斷つ感じで……斬り……飛ばし……しょう」
 尻尾を電源プラグにした獸人型レプリカントに、背骨に似た部位があると見解を同じくした二人は、次なる照準を「頸椎」に絞って再び出撃! 急ぎ後退するサナンに追撃を仕掛ける。
「くび♪」
「首……」
 可憐な花唇を擦り拔ける言葉は、揃って「首」。
 これには然程感情を持ち合せぬサナンも薄寒いものを感じよう。
『凄まじい殺意の波動を検知しました。回避に徹した後、挽回を図ります』
 其が「恐怖」とは知ろうか。尻尾を巻いて逃げるにも、その尻尾すら失ったサナンは、無数の電線を障害物と置いて距離を取るが、彼女を追いざま今の科白を拾った墨がハッとする。
「……首を……、……っ! こんな考え……から……ヤクザさんに……恐れられるのかも……」
 |不圖《ふと》、最上階に至るまでに通ってきた土下座ロードを思い出す。
 エビルヤクザ連中にすら「鬼」と恐れられた墨は、最短かつ最速で命を摘む劔の達人なのだが、この効率を求める戰法が原因かもしれないと、ちょっぴり傷つく。
「……ぁぅ……」
「……おー? 墨ねー、なんだか落ち込んでる……? 黑幕の狐に何か言われた?」
「ヤクザさん、と……變わらない……気が……してきました……」
「う?」
 ロベルタがことりと小首を傾げる中、消え入るような聲で言う墨。
 先刻はヤクザ達との間に大きな距離を感じたが、此たび物理的に距離を隔てられた墨は、いよいよ自分が鬼神めいているかも、と思うのだが――。
「墨ねー、一緒に首とろうねい♪」
 然う。ぜんぜん大丈夫。
 隣するロベルタもまた「魔王」と恐れられる少女にて、實にバランスの取れたコンビは、間もなく望みのものに仲良く迫るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
…で、だ。コレは何のサプライズだ?
(背後から銃を俺に向けるスバルやレジスタンスを見て、振り返らずに)
戦場内に張り巡らされた無数の電線は対象者の動きを自由に操れるらしい。
機械の制御だけじゃなく、現実でも自由を盗めるそうだ。
Hey、スバル。質問だ。
――今の気分は?
(振り返らないまま、茶化すような質問)

無数の銃弾は振り向き様に【クイックドロウ】とUCで弾いて。
動きを操ってる電線も一本残らず、撃ち落としてやるよ。
余裕があり過ぎてね。遊び半分で巨大モニターに銃弾で文字でも描こうか。
ぶっ壊れて真っ暗な画面になった今なら読めるだろうぜ。
内容は――|I'm yawning《欠伸が出るぜ》。

【盗む】のはハッカーのアンタの専売特許じゃないって事さ。
スバルに依頼料をまだ払って貰ってない。此処でくたばられたら、払うモノも払えなくなるだろ?
盗まれたなら取り返すだけってね。
カードの負けじゃなけりゃ、やり様はいくらでもあるのさ。

一応、聞いとくぜ。
篠突黎明の情報をこっちに渡して、降参する気は?
(銃をサナンに向けたまま)



 ホログラムを出力するプログラムは封じられ、尻尾型電源プラグは切斷された。
 街一つ潰す依頼を受けたが、逆にビルごと潰されそうだと、機械人形の『サナン』が冷や汗を流したかは判然らないが、彼女に打つ手が無くなった訳では無い。
『依頼が未達になる処か、活動の保全も危ぶまれる現状を打破します』
 残るエネルギーを一部の電線に絞って注いだ彼女は、勢いよく延伸する電線の先をレジスタンスのメンバーへ。
 猟兵の活躍に拳を突く若者達と、サナン自身に妨害を仕掛けるスバルを背後から絡め取ると、彼等をマリオネットの如く操った。
「……で、だ。コレは何のサプライズだ?」
 最上階に至るまでは監視カメラを破壞していた銃だろうと、振り向きもせず告ぐバリトン。
 目下、迫り來る電線を双魔銃で撃ち彈き、或いは|握把《グリップ》で毆り落していたカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、己の眞後ろで銃の撃鉄を起こす音を聽く。
 焦燥の滲む注意喚起が届いたのは、間もなくの事だ。
「逃げろ、便利屋!! この儘じゃ俺達がアンタを殺しちまう!!」
「……へぇ、最新の機械人形は|人間《ヒト》の自由も盗めちまうのか」
 照準を腦天に結ばれながら、敵のハイテクぶりに感心するカイム。
 危難に際しても動じない彼は、然し一同が束縛に抗おうと電線を搖らす音を聢と聽き拾っており、その抵抗を快く思いながら問うた。
「Hey、スバル。ひとつ質問だ」
「頼む、こんな時に|洒落《じゃれ》るな」
「こんな時だからさ。どうだい、今の気分は?」
 How do you feel now? ――なんて。
 己に銃口を突き付ける相手を茶化すなど、餘程狂っているとスバルも奇矯が伝染ったか。
 彼は吃々と嗤いつつ、そして大いに震えつつ、カイムを笑わせる一言を銃聲に掠めた。

「先刻の依頼料、払いたかったぜ……!」
「おっと、そりゃ腦漿ブチまけてる場合じゃない」

「此処で|斃死《くたば》られたら、払うモノも払えなくなるだろ?」
 ニヤリと振り返ったカイムが被せるは【|銃撃の輪舞曲《ガンズ・ロンド》】ッ!
 僅かに先行したスバル達の銃彈めがけ、紫雷を纏った銀の銃彈を放った撃手は、それらが宙空で手を繋ぐように射線を結んで爆ぜるのを見つつ、二挺の黑銃を橫薙ぎに斉射!!
 メンバーの四肢に絡みつく電線も、周囲を巡る電線も、一本残らず撃ち落とす――!!
「これだけ曲が短いと、踊り足りないか?」
 まだまだ餘力があると不敵に咲んだカイムは、銃口を巨大モニターに滑らせて連射ッ!
 今や悉く破壞された液晶画面をキャンバスにして銃彈を撃ち込み、器用にも文字を書いて見せる。
 其は全てを統括したサナンに対する挑発であり、力の誇示であり、勝利の示唆であり――。何より彼の悪戯な性格を如実に示した一文であった。

『|I'm yawning.《欠伸が出るぜ》 ……くッ、愚弄して……!』
「へぇ、読めるのかい。お利口さんだ」

 流石だとカイムが高性能を讃える最中、ブツ切りにされた電線より拔け出たメンバーが安堵の息を挟む。
 一同の無事を眼眦の際で認めたカイムは、今度こそ二挺の銃をサナン自身へ突きつけて云った。
「何も盗むのはハッカーの専売特許じゃないって事さ」
 盗まれたから取り返したのだと簡單に言ってのけるが、これこそ彼の技能の賜物。
 カードの絵柄と数札だけは儘ならぬものの、「遣り樣は|如何《いくら》でもある」と口角を持ち上げたカイムは、硬質の指を銃爪に沿えつつ――初めて声色を落とした。
「一応、聞いとくぜ。雇い主の情報をこっちに渡して、降參する気は?」
『契約上、情報の譲渡は禁じられています』
「……鑑だぜ」
 |訣別《わかれ》に輕口は云うまい。
 カイムは最後の銃彈をサナンの眉間に沈ませると、扨てこの件は上層部が注視する株の値動きより関心を煽るニュースになろうか、と――靜かに天井を仰ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月02日


挿絵イラスト