【天変地異・戦後】それでも、こころは温かく
●注意
当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
公式サイト:(https://koinegau.net/)
公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)
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常であれば初夏のような気候を保つ人工島、|希《こいねがい》|島《じま》。だがしかし、つい最近までこの島が氷雪に閉ざされていたことは記憶に新しい。
――【天変地異】。そう呼べるほどの気候の変化は、気候を調整する巨大な輪の防衛と、雪女洞窟の荒ぶる魂を鎮めたことで落ち着きを取り戻すことができた。あとはこの災害による傷跡を復旧させながら徐々に元の気候へと戻すのみ――。
「とはいえです! みなさん、バレンタインをお忘れではないでしょうか!」
情報屋の|希人《きじん》ソフィア・アマティスタ(ポンコツな私立探偵・f41389)は力説する。……彼女は商業地区の商店たちが用意していたバレンタイン商戦のポップと共にバレンタインのCMを流す携帯テレビを背負っていた。明らかにお金を渡されている。
災害の影響で広告の張り変えが進んでいないため彼女の出で立ちでバレンタインを思い出した住民も少なくはないだろう。
さて彼女の突然で強引なバレンタインのプッシュは商業的な理由が大きいのは違いない。それでも『とはいえ』なのだ。このまま悲しみや苦しみに打ちひしがれても気が滅入る一方で、健康が落ち込み復旧も遠のくというもの。
お金だけではなく気持ちの問題としても嵐が去ったら楽しめることを楽しむべきだろう。
ちょうどあたりはまだ冬を思わせる気温で雪もそこかしこに残っている。ときおり淡く雪がちらつくことも含めて白が入り混じる景色はこの島では珍しく、美しい。
恋人同士。友人同士。そしてこれから仲良くなりたい者同士で冬らしい冬を楽しむのも良いのではないだろうか。
「いまならなんと! 3月のホワイトデーとのダブルチャンスキャンペーン中! 男女のペアでご来店の方は、商業地区でのお買い物や飲食店の利用が割引になっています♪」
そんな広告宣伝を行いながらソフィアは道を歩いていくのだった。
ウノ アキラ
注:この依頼は、【天変地異・戦後】の共通題名で括られる戦後シナリオの連動シリーズです。
なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
注2:戦後依頼の一覧表は以下です。
椿油MS「戦闘」担当。工業地区で島内警備。
ウノ アキラMS「日常」担当。ホワイト・バレンタイン&ホワイトデー。
にゃんさん。MS「お色気」担当。ホワイト・バレンタイン&ホワイトデー。
●依頼について
ホワイト・バレンタイン&ホワイトデーの日常です。
だいたいのことは出来ますが、自由すぎても悩ましいと思うためテンプレートを添えさせていただきます。これにない事も行えます。
テンプレ【1】雪景色の散策。
各地区のうち気になる所を訪れて雪景色をのんびり見ます。知り合いを誘って雪合戦をするのも良いですし、一人で黄昏るのも良いかもしれません。
テンプレ【2】バレンタイン商戦。
場所は商業地区限定になります。
お店でチョコやクッキーを買ったり、カフェなどでケーキを食べたりします。
以上となります。
よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
イラスト:YoNa
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セシル・バーナード
プラチナちゃんと一緒に、雪景色の公園を散策しよう。
うちの荘園でも年に何度か積もるから雪自体は珍しくないけれど、ここまでなのは滅多にないね。
壮観だと思わない、プラチナちゃん?
たまには童心に返って雪だるまでも作ろうか? ぼくが下の大きい方作るから、プラチナちゃんは上に乗せる方をお願い。
雪玉をごろごろ転がすと、大きくなるなぁ。よし、これくらいでいいだろう。プラチナちゃんも出来たらこっちへ持ってきて。ああ、手伝うよ。
のっぺらぼうの雪だるまだけど、後にゴミが残るよりはマシだ。
さてと、ベンチの雪を払って座ろうか。疲れたでしょ。
そんな時のとっておきの薬をあげるね。
不意打ちのディープキス。心も体も温まって。
「セシル様~!」
名前を呼ばれて振り向いたセシル・バーナード(サイレーン・f01207)に、雪玉がぶつかった。
それは柔らかく握られていて、服に当たるとすぐにサラサラと地面に落ちてゆく。見れば、投げつけた犯人は悪戯を成し遂げた笑みを浮かべていた。
「びっくりしたなぁ。それじゃあお返しだ。えいっ」
「きゃっ。ふふーん、外しましたね! 今度はまた私からです。えーい!」
セシルが雪を投げ返すと、投げ返された少女はセシルへ再び雪玉を投げるべく雪を集めていく。
この島では珍しく吐息が白くなる気温だった。そのため積もる雪質はサラサラして軽やかであり、量もこのとおり遊ぶのに十分なものがある。
最初に雪玉を投げた少女はプラチナという。彼女はセシルが過去の戦いで出会った複製体であり、そして妻にした相手だ。彼女はこう見えて強い戦闘力を秘めているのだが、今こうして雪にはしゃぐ姿を見ているとただの少女にしか見えない。白い肌と白い髪が、白い雪に覆われた公園に溶け込んで美しかった。
このように二人は雪で遊びながら雪景色の公園を散策していた。プラチナは島の珍しい姿に目を輝かせており、この外出を楽しんでいる様だ。こうやって様々なものを見て経験していくことは、|彼女《プラチナ》の望む自由な日々になるだろう。
そして、そんな彼女の姿に触発されてセシルも雪遊びを思いついた。
(たまには童心に返って雪だるまでも作ろうか?)
セシルは雪をぎゅっと固め、体温で少し解かすところころと転がしてゆく。それは水分で周りの雪を張り付けて、少しずつ大きくなっていった。
「何しているの? セシル様」
プラチナが興味深げにやって来たので。セシルは雪だるまを作っているんだよ、と説明をした。
「ぼくが下の大きい方作るから、プラチナちゃんは上に乗せる方をお願いするよ」
「わかった。任せて!」
二人でそれぞれ別の雪玉を転がしてゆく、転がして、育てて大きくなったら二つ重ねて頭と胴体だ。
「よし、これくらいでいいだろう。プラチナちゃんも出来たらこっちへ持ってきて」
「上に乗せるんですよね? ……んー……?」
「ああ、手伝うよ。」
頭部を乗せる高さがちょうどプラチナの顔辺りなものだから、プラチナは持ち上げた雪で視界が塞がっていた。それをセシルが手伝う形でカバーする。無事に上に乗れば完成だ。
「顔は作らないんですか?」
「それは良いんだ。後で雪だるまが溶けてしまったら、例え木の枝や石でもその場に残ってしまうからね」
そういったゴミの類は残したくないとセシルは考えていた。
雪だるまを作り終えると、セシルは近くの自販機で温かい飲み物を二本買った。そしてそのうちひとつをプラチナへと渡す。
「はい。どうぞプラチナちゃん」
「ありがとうございます! あったかい……♪」
「ちょっと休もうか、疲れたでしょ」
セシルはベンチの雪を掃うとプラチナへ休憩を促していく。二人は隣り合って座り、飲み物で身体を温めた。ふう、とひと息をつくと温まった体からひときわ白い息がほうと立ち上ってゆく。
「うちの荘園でも年に何度か積もるから雪自体は珍しくないけれど、ここまでなのは滅多にないね。壮観だと思わない、プラチナちゃん?」
「全部真っ白に塗り替わって、別の世界みたいですね。それに、雪もたくさんあるから色んな事ができました」
そう言ってプラチナは雪だるまを見つめていた。やがて溶けてしまうけれど、あの雪だるまは二人で作った思い出だ。
セシルがプラチナの顔を見ると、寒さで顔が赤くなっていたのでさらに言葉をかけていった。
「さすがにじっとしていると冷えてくるかな?」
プラチナがどう答えようかと考えると、その隙にセシルは顔を近づけてゆく。
「そんな時のとっておきの薬をあげるね」
セシルはプラチナを抱き寄せると不意に唇を重ね合わせた。はじめは不意打ちに驚いたプラチナだったが、唇がいちど離れて目が合えばセシルに腕を回して再び唇を受け入れる。二度目は舌を互いに絡ませるディープキスだ。
体温を交換するかの様に、二人は抱き寄せ合って口を重ねる。口内の粘膜には服や肌もなく、絡み合うと互いの温度と質感をより近くで濃厚に感じさせてくれた。火照っているのは心か身体か。この気持ちの高揚と充足感は、胸の奥を温めてゆく。
寒いけれど温かい。寒いからこそ、温かい。
身体と心の温かさを感じながら、二人は二人だけの時間を過ごしていった――。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
これからまた暑くなるのか。
アタシは今ぐらいの方が過ごしやすいんだけどな。
それでだ。バレンタインか。すっかり忘れてたな!
チョコをバラ撒くつもりもなかったけど、色々なチョコが食べられるし、見られるし、好きなんだよね。
あんな騒動があった後だけに、チョコはまるまる余ってるんだろうな……。
せっかくだから、アタシが少し救ってあげよう。
男女ペアなら安く買えるのか。
ならば、適当に男子誘って(攫って?)、ペア作ってしまおう。
お礼にチョコあげるから。
たくさんのチョコが買えるなんて楽しみだな。
雪が残る商業地区。そこでは機会を逃したバレンタイン商品を改めて売るべく、活気がうまれていた。
商業地区を訪れたシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は、その賑やかさを目の当たりにしてそうか! と手をぽんと打つ。
「バレンタインか。すっかり忘れてたな!」
商業地区が早くも復旧しつつあると聞いたシモーヌは、美味しい物を食べようとここを訪れたのだが、今ここではどこを見てもチョコレートの宣伝で溢れている。
シモーヌはバレンタインが好きだ。しかしそれはチョコを贈り合うイベントというよりも様々なチョコと出会える機会としてのもの。この期間は工夫を凝らしたチョコレートが店頭に華やかに並び、それらはもちろん買えば食べる事が出来る。それが素晴らしい。
「あんな騒動があった後だけに、チョコはまるまる余ってるんだろうな……」
シモーヌは残されたチョコレートに思いを馳せる。もったいない。それはとても、もったいない事だ。
「せっかくだから、アタシが少し救ってあげよう」
そう結論づけたシモーヌは、このまま店を見てまわってチョコを買い漁ることにした。
そうして各店の新作チョコをチェックしようと歩き出したシモーヌは、やがて広告に書かれたあるキャンペーンに気が付く。
「男女ペアなら安く買えるのか」
シモーヌを周囲をぐるりと見渡した。
……できるだけ大人しそうな人物の方が連れて移動しやすいだろうか? 手間賃はチョコで良いだろう。なるべく甘いものが好きな者が良いだろう。
そんなことを考えて、シモーヌは適当な男子へ駆け寄っていく。
「ちょっと良い? いきなりで悪いけど、いまは暇だったりするかな?」
声をかけられた男子は高校生くらいだろうか。服装は軽装で荷物はなく、軽い買い物かあるいはゲーセンなどに遊びに来た雰囲気がある。
彼は青い瞳に見つめられて驚きながらも、暇かどうかの問いに肯定して頷いた。するとシモーヌはにこりと微笑んで言葉を続ける。
「それは良かった。この後も特に予定がないのなら少しアタシに付き合ってよ!」
「つ、付き合う……?」
「うん。付き合ってほしい! お礼もするから!」
そう言ってシモーヌは彼の手を強く握る。シモーヌは一刻も早くチョコを買いに行きたいという一心で、戸惑う彼をこのまま強引に連れ去るのだった。
「さっきの店はイチゴだったけれど、ここはラズベリーなんだね。うん。これも美味しいな」
無事(?)に男女ペアを成立させたシモーヌは、攫った彼を連れてさっそく複数の店を周っていた。今は買ったチョコを開封しての味見タイムだ。
「ほら、お礼にチョコあげる」
そう言ってシモーヌはチョコレートを彼に渡す。
付き合わされている彼はシモーヌの目的が男女ペアの割引だと知るとちょっとがっかりした様子だったけれど、美人と過ごしてチョコも貰えるとなればまんざらでもなさそうだ。
買い込んだチョコを頬張るシモーヌはとても美味しそうで、嬉しさが溢れたホクホク顔になっている。それは見ているこちらまで笑顔になるほどだった。
シモーヌは地図を見る。これは今行われているダブルチャンスキャンペーンのチラシに描かれた地図であり、割引をしてくれる店の地図でもある。
「よし、じゃあ次はこの店だな。行こう!」
シモーヌは次に向かう店を決めるとペア相手を連れ立って歩き出した。
割引は良い。ひとつひとつは小さな差額でも沢山買うとその差額はバカにならず、シモーヌのように片っ端から大量に買うならば確実にお得になるのだ。
つまり、沢山食べられる。
そして何より、こんなにおいしいものが在庫として破棄されてしまうことも阻止したい。
花を模った凝ったチョコに、装飾はないがカカオの香りが高いチョコ。中にベリーやマスカットやオレンジなどフルーツのソースが入ったチョコに、ミルクや紅茶が入ったチョコ。この時期は様々に工夫が凝らされた、香りや味が豊かな商品がこの世に現れる。
これらのチョコを救うのだ。
そんな美味しい満足のためにシモーヌは上機嫌に各店舗を巡っていった。その道中では様々なチョコと出会い、様々な香りと味が堪能できることだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ミッドナイト・フェアリーズ
本日は、戦後処理として島の受付も稼働するわ!
受付でもチョコを配るわよ!
商業地区にある島受付の案内所でもチョコの配給場所を作るわ。
私が元々が商人だから、チョコは商業地区から仕入れてあるわよ。
色々なチョコを用意しておくわね。
「はい、迷子にはコレ!」
戦後の混乱期で迷子が案内所に来たらチョコを渡して励ますわ。
「作業でお腹がすいた人にはコレ!」
戦後の復旧作業をしている人達にチョコを渡して元気を出して貰うわ。
「日本からの救援の人にはコレ!」
日本の救援船で支援に来た人達にチョコを渡してお礼をするわ。
島の受付って、戦後でも何気に忙しいのよね!
希島が完全に復旧するまでは、受付業務からも努力するわ。
アドリブ歓迎。
「おはよう! 島受付のミッドナイトよ。本日は、戦後処理として島の受付も稼働するわ!」
ミッドナイト・フェアリーズ(フェアリーの遊園地商人なお姉さん・f36847)の元気な姿が見られるこの場所は|希《こいねがい》|島《じま》の受付施設。そこでは|希《こいねがい》|島《じま》に関する様々な手続きを行う場であり、そして各地区の案内を受けられる場所だ。
その島受付でミッドナイトは業務をこなしながらチョコレートを配っていた。
「はい、作業でお腹がすいた時にみんなで食べてね!」
ミッドナイトは復興作業の書類を出しに来た作業員にチョコレートがたくさん入った紙袋を渡す。これはミッドナイトが商業地区から仕入れたチョコレートだ。バレンタインを逃したことで行き場を失っていた在庫を買い取って、現場に配ることで復興の活力にしようというわけだ。
外ではまだ島の復旧作業が続いているためこの贈り物は復旧作業を進める彼らを元気づける力になる。それは日常が戻るまでのあと一息を頑張るための活力となるはずだ。
島全体が凍結する災害を受けた|希《こいねがい》|島《じま》では、その原因こそ取り除けたもののまだ復旧の対応をすべき箇所が残っている。雪や氷が残っているのはもちろんの事、急速な凍結は膨張した水分がコンクリートをひび割れさせる事があるため、そういった破損はいち早く修繕する必要があるだろう。さらに水道管や排水路がまだ凍っていたら早く溶かさなければ詰まったままになってしまう。そのため島の人々は各所を点検しては状況を島受付に報告し、必要な人員や物資を確保して作業に当たってた。
また、島受付には|希《こいねがい》|島《じま》の現地の人だけではなく|希《こいねがい》|島《じま》と同盟関係にある国から救援のために派遣されてきた人々もやって来る。
ちょうど港に救援船が到着した様だ。
ミッドナイトは島の受付として、チョコレートが沢山入った紙袋を手に彼らを出迎えた。
「日本からの救援の人だね。来てくれてありがとう! 長旅は疲れたでしょう? まずはチョコをどうぞ!」
小さな身体で飛び回り、ようこそ|希《こいねがい》|島《じま》へ♪ と歓迎の言葉と共にチョコレートを配るとミッドナイトは彼らを手続きのための受付へと案内していく。
外交関係は良好とはいえいち早く人手と物資を送ってくれた『秋葉原解放自治区』の行動は大変ありがたい。他の関係国からも近いうちに何かしらの支援が来るだろうが、まずは、いま来た彼らを滞在できる場所まで案内することが大事だろう。
ミッドナイトが案内するのは復旧作業に当たる人々だけではない。島受付の案内所には日常に困りごとがある人達も訪れるのだ。
暖房や水道がダメになった人には修理をする作業員を案内し、必要ならば復旧までの避難所も紹介する。そしてもちろん迷子も、ここに連れて来られる。
ミッドナイトは不安がる子供たちへ優しく話しかけて、励ました。
「はい、チョコレートだよ! 大丈夫、お母さんとお父さんがきっと探しに来るからね」
お菓子の甘みは子供たちの不安を和らげるのに役立った。チョコレートは身体の疲れだけではなく、心の疲れも和らげてくれる。
ミッドナイトは迷子を避難所へと案内すると、もう一度、大丈夫だからね。と伝えて飛んでいった。
このように、商売が再開しているとはいえまだ|希《こいねがい》|島《じま》の日常は戻ってはいない。不安の渦巻く混乱期の中で、ミッドナイトはチョコレートを配り人々の不安を和らげながら受付と案内の仕事を続けていく。
(島の受付って、戦後でも何気に忙しいのよね! 希島が完全に復旧するまでは、受付業務からも努力するわ)
そんな合間に水分補給をしてちょっと一息。
ミッドナイトはすこし休むと、よしと気合いを入れて再び仕事に戻っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
五木・瑳良
&&&
※捕捉
『』括りは召喚した悪魔の台詞
悪魔の容姿は乙女ゲーの攻略対象っぽい雰囲気の「褐色銀髪で長身細マッチョの怜悧なイケメン」
※プレイング
『瑳良。そろそろ氷壁破壊や電精蠕虫駆除に尽力した報酬を頂きたいのだが?』
ああ、うん
あんたが妙に大人しいから警戒してたけどさ…
もしかしてこういうイベントが興るって知ってた?
『まさか!勿論確信等無かったとも』
…ほんっとーにわざとらしい
あたしもこういう雰囲気を無碍にはしたくないけどさ
あんたの掌の上で転がされた感があるのは納得できない…
『心外だね。君の事をよく見ているだけだよ』
『君とデートを楽しむ為ならば骨を折るのも吝かではないというだけだ』
デート…
デートかぁ…
回りからはそう見えるんだよね…
判ったよ
それが代償なら付き合うよ
何なら腕でも組めば良い?
『おや?随分と積極的だね?』
『君の嗜好にも適っていたかな?』
勘違いすんな!
割引の為だから!
『解っているとも。そう言う事にしておこう』
何かむかつく言い方だけど…
あーもういいや!
どうせ同じ事ならこの復興の雰囲気を楽しむよ
商店が並ぶ商業地区を一組の男女のペアが訪れた。
片方は五木・瑳良(多重人格者のハイウェイスター・f41529)であり、もう片方は彼女が契約する悪魔のアスモデウスだ。
アスモデウスは褐色の肌と銀髪に合わせ、赤い襟付きシャツと縦じまのベストを重ねた上で黒いスーツを着ている。それは彼の細くも引きしまった肢体と相まって美しく、襟元のボタンを開けたラフな着こなしもありホスト業を連想する風貌をしていた。
そんなオシャレな格好で上機嫌なアスモデウスに対し、瑳良は気持ちをどう置くか決めかねている。
(デート……デートかぁ……回りからはそう見えるんだよね……)
果たしてこの二人組は周りにどう見えているのだろう。恋人同士か、それともビジネスのデートに見えるのか。いずれにせよ瑳良がアスモデウスを求めている感じには見られたくない。これまでならこういったデートは断るか、アスモデウスにもっと普通の恰好を迫るところなのだが、この日の瑳良には強く拒否出来ない理由もあった。
(こいつには、氷壁破壊や電精蠕虫駆除で助けられたからね……)
これは正当な報酬であり、代償であった。
事の始まりはもっと前の事になる――それは災害が落ち着いて島の気温も徐々に上がり始めた頃の事だ。
アスモデウスがふと、真顔でこう言った。
『瑳良。そろそろ氷壁破壊や電精蠕虫駆除に尽力した報酬を頂きたいのだが?』
瑳良はアスモデウスの力を借りてこの災害の対応にあたっていた。とはいえアスモデウスもどさくさに紛れて瑳良を抱きしめられたりと、役得は得ていた様な気がするのだが……。どうも彼によるとそれでは足りないらしい。
『凍えさせない様にと抱きしめはしたがそれ以上は触れていなかっただろう? あれではあまりに生殺しというものさ』
こうして瑳良はデートを承諾したのだが、復興が始まり活発になりつつある商業地区を訪れてみればそこはバレンタインとホワイトデーのイベントの真っ最中。
「あんたが妙に大人しいから警戒してたけどさ……もしかしてこういうイベントが興るって知ってた?」
到着して開口一番に瑳良はアスモデウスを問い詰める。しかしこの悪魔も慣れたもので瑳良の視線を微笑んで受け流していた。
『まさか! 勿論、確信等は無かったとも』
(……ほんっとーにわざとらしい。何より爽やかなのがちょっとムカつく)
とはいえ、商業地区は災害の爪痕を見せつつも人々は日常を取り戻すために恒例のイベントをやりきろうとしているのが解る。日常の幸福は悲しんでばかりではやってこない。こうして少しずつ進む事で、きっと手繰り寄せる事ができるのだ。
(あたしもこういう雰囲気を無碍にはしたくないけどさ)
瑳良は一息、はぁとため息を漏らした。目線を隣に向ければそこにはオシャレをきめたアスモデウスがこちらに微笑みかけている。
「あんたの掌の上で転がされた感があるのは納得できない……」
『心外だね。君の事をよく見ているだけだよ。君とデートを楽しむ為ならば骨を折るのも|吝《やぶさ》かではないというだけだ』
「骨を折るって……結局は事前に調べてたんじゃん。判ったよ。それが代償なら付き合うよ」
こうして瑳良はアスモデウスのデートプランに同意するのだった。
アスモデウスはその契約成立にひとときだけ無邪気な喜びを見せた。そんな彼の一瞬の姿を、瑳良はちょっとだけかわいいなと思ってしまう。だから。
(仕方ない。付き合ってあげるか……)
「何なら腕でも組めば良い?」
『おや? 随分と積極的だね? 君の嗜好にも適っていたかな?』
要望に応えてみるかと瑳良が腕を差し出せば、彼は見透かしたのか様に瑳良の瞳を覗き込んだ。これは自分の顔に魅力がある事を知っているやつの行動だ。
この不意打ちは先の可愛らしい一面との落差を生み出し瑳良にアスモデウスを意識させていく。
「――! か、勘違いすんな! 割引の為だから!」
『解っているとも。そう言う事にしておこう』
「何かむかつく言い方だけど……あーもういいや!」
『ふふっ。そうとも、今は二人の時間を楽しむとしようじゃないか』
いつもとは違う、そんな一日が日常に刻まれる。
島を覆った雪や氷も徐々に解けて、やがていつもの常夏の気温に戻っていくだろう。
それでも、今日という日の思い出はきっと温かい思い出として残るはずだ。
大成功
🔵🔵🔵