|ガッデム・ゲーム・オーバーパワード《GGO》
●夢の中で悪夢を見るように
『学園』と呼ばれる拠点は嘗て『バグシティ』であった。
破壊された巨大な施設。
まるで学園めいた形をしているために復興された今も、そう呼ばれている。
巨大な倉庫を思わせるような体育館。
謎の地下施設。
充実しすぎたアイテム合成施設。
何もかもが、本当に『学園』という名にふさわしくはないように思える場所だった。
とは言え、かつてはゲームプレイヤーやノンプレイヤーキャラクターが行き来する『学園』として機能していたことだけは確かだ。
多くの記録が散逸しているし、データが欠損している。
よくわからないことだけがわかっているという。そして、この『学園』を拠点にしたクラン『憂国学徒兵』の面々は一つ首を傾げた。
そう、それは謎の地下施設である。
「なんでこっから先はロックされてんだ?」
『アイン』と呼ばれるゲームキャラクターは首をかしげていた。
此処は拠点なのだ。
ならばこそ、多くの拠点機能を開放していくのは当然だっただろう。
けれど、地下の施設に入るための条件がわからないのだ。ノンプレイヤーキャラクターの亜麻色の髪の少女『エイル』に問いかけた。
「どうしてだろうね? 何か条件が達成されていないのかも」
彼女にもわからないのだろう。
「困ったわね。きっと地下施設には重要なアイテムがまだあるのではないかと思ったのだけれど」
『フィーア』の言葉に『ツヴァイ』と『ドライ』も頷く。
確かに『学園』は多くの施設が存在している。データベースの図書館や売店。学園らしい学園にある施設は一通り揃っている。
なのに、地下施設だけがアンロックされていないのだ。
それも頑なに、である。何故かわからない。
「図書館で調べてみっか。何かわかるかもしれねーし」
「そうだね。そうしてみようよ」
『エイル』は同意している。むしろ、積極的に彼女はクラン『憂国学徒兵』のメンバーを地下施設から遠ざけようとしていた。
意図的と言っても良い。
何故か。
そう、彼女は知っていたのだ。
地下施設がロックされているのは彼女の仕業である。なんでそんなことを、と問われたのならば彼女は猟兵だけに打ち明けるだろう。
その先にある隠しダンジョンがバグプロトコルの影響を受けて理不尽な『即死バグ』に汚染されているのだと――。
●ゴッドゲームオンライン
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。究極のゲームにようこそ!」
そんな言葉とは裏腹にナイアルテの顔は晴れやかではなかった。有り体に言って曇っていた。
どうしたのかと猟兵達が尋ねると彼女は難しい顔のまま口を開く。
「皆さんは『クソゲー』というものをご存知でしょうか?」
は?
猟兵たちの一部は間抜けな声を上げただろうし、もしかしたら、逆に興味を惹かれたかもしれない。
そう、彼女が言うには究極のゲームであるゴッドゲームオンライン上のバグプロトコルの影響を受けた汚染クエストが出現しているのだという。
つまり、バグプロトコルが出現しているということかと問いかける猟兵にナイアルテは、それだけだったのならばよかったのだと言う。
「どうやら汚染クエストには『即死バグ』が発生しているのです。それはクエスト内のモンスターの攻撃を『一撃受けるだけで問答無用で即死させる』というバグなのです」
なんたることだろうか。
そう、何も知らない一般ゲームプレイヤーがクエストに参加してしまえば、ほぼ間違いなく即死からの遺伝子番号焼却となるだろう。
この被害を拡大させぬために猟兵たちは元凶のバグプロトコルを排除しなければならない。
とは言え、まだ『即死バグ』が発生したクエストはノンプレイヤーキャラクターによって厳重に封鎖されている。
「以前、復興した『学園』と呼ばれる拠点施設を覚えていらっしゃる方もいることでしょう。その地下施設がクエストのフィールドとなります。出現するモンスターはすでにバグプロトコル化しており、『抵抗不能の即死攻撃』を放ってきます。それも大量に」
確かに恐ろしいことであるが、これはゲーム内部のことである。
仮に一撃死しても猟兵にはクエストからの退場という形になるだろう。とは言え、退場すれば、クエストに再参加できなくなってしまう。
この攻撃を上手く回避して殲滅しなければならない。
その上、である。
このクエストを乗っ取ったバグプロトコルは、このクエストのボスの座に収まっている。
ボスの座すフィールドへと急行したいのだが、地下施設の内部には複数の幽霊めいた謎の美女が現れ、此方を誘ってくるだという。
けれど、それは罠である。
幽霊めいた謎の美女に気を取られた瞬間、即死のトラップが発動するようになっているのだ。
これも避けなければ即刻クエストから退場することになるし、ゲームキャラクターは遺伝子番号を焼却されてしまう。言うまでもないが注意が必要だ。
そして、そうした罠をかいくぐりたどり着いたボスフィールドでの元凶たるバグプロトコルとの対決となるだろう。
「このバグプロトコルも当然のように即死攻撃を放ってくるでしょう。ですが、このバグプロトコルの即死攻撃は道中の幽霊めいた謎の美女が手にしていたアイテムを入手していると一定期間、無効化できるというのです」
つまり、この即死攻撃を一定時間無効化するアイテムという穴を突くことができれば、元凶バグプロトコルを打倒することも可能であるということだ。
そのためには道中で罠を回避しつつアイテムをゲットしなければならない。
難しいクエストであることは言うまでもない。
「それでもこのままでは拠点の中に即死バグを持ったクエストが頻出するという、いつ一般プレイヤーが餌食になってしまうかもしれない可能性の芽を放置することになります。どうか、一般プレイヤーたちのゲームライフのためにも」
ナイアルテはそう言って頭を下げ、猟兵たちを送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はゴッドゲームオンラインにおける事件です。
即死バグによって理不尽なクエストを内包してしまった拠点『学園』。今はまだ地下施設の一角がバグに汚染されたクエストのフィールドになっているに留まっていますが、これを放置すれば内部からまたバグプロトコルが湧出することになるでしょう。
これを排除し、元凶たるバグプロトコルを打倒することが目的となっております。
●第一章
集団戦です。
すでに『学園』のノンプレイヤーキャラクター、亜麻色の髪の少女『エイル』との話はついています。
ロックされた地下施設へと赴き、内部にあふれかえるバグプロトコルたちを打倒します。
大量に湧いているバグプロトコルたちは皆『即死バグ』攻撃を行ってきます。
一撃ももらうわけにはいきません。
これを躱す方策を打ち出しつつ、地下施設の奥へと進みましょう。
●第二章
冒険です。
ボスフィールドまでの道中、この地下施設の入り組んだ内部には幽霊めいた謎の美女の姿が頻繁に出現します。
彼女に目を取られた瞬間、『即死バグ』のトラップが発動し皆さんを襲うでしょう。
ですが、彼女を追いかけアイテムを手に入れなければなりません。
このアイテムは、このバグを撒き散らす元凶の『即死バグ』攻撃を一定時間無効化する効果をもっているからです。
危険な罠ですが、これを躱しアイテムを手に入れましょう。
●第三章
ボス戦です。
このクエストを乗っ取って理不尽な即死バグで一般プレイヤーを陥れようとしていたバグプロトコルとの決戦です。
当然のように『即死バグ』攻撃を行ってきます。
ですが、第二章で手に入れたアイテムがあれば一定期間ならば無効化することができます。
とは言え、即死バグ無しでも、このバグプロトコルは強敵です。
それでは再びバグプロトコルによって汚染されようとしている拠点『学園』を救うために危険な『即死バグ』まみれのクエストに挑む皆さんの物語の一片となれますように、たくさんがんばります!
第1章 集団戦
『竜牙兵』
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POW : 竜牙兵の剛撃
単純で重い【武器】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 竜牙兵の連撃
【武器】【シールドバッシュ(盾による殴り)】【蹴り】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ : 竜牙兵の真撃
自身が装備する【武器】から【闘気の刃】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【回復不能】の状態異常を与える。
イラスト:津奈サチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロックされた地下施設の前に亜麻色の髪の少女ノンプレイヤーキャラクター『エイル』が立っていた。
猟兵達が現れたことに胸をなでおろしているようだった。
「ありがとうございます。お話は伺っています。此処から先がクエストのフィールドになります。すでにダンジョン化していて、バグプロトコルが湧出しています。それと……」
彼女は言いにくそうにモジモジとしていた。
猟兵たちは頷く。
委細承知の上だと。
そう、『即死バグ』――一撃でも貰えば、それでクエストから退場してしまうこと。そして、ゲームキャラクターであれば遺伝子番号が焼却されてしまうこと。
だが、それでも猟兵たちはやってきたのだ。
この脅威を拭うために。
「どうか気をつけて。蔓延っているバグプロトコルは『竜牙兵』。竜の牙を触媒に創造された魔法生物ですが、集団戦闘に秀でています。それに一体でも侮れないモンスターです」
彼女の言葉は続く。
即死バグがなくても厄介な敵であることが見て取れた。
「囲まれたら、一撃死の攻撃を躱すことはできないと思って下さい。こんな高難易度なクエストを頼めるのが皆さんしか思い付けませんでした……私が解決できたらよかったんですけれど……それも叶わず」
彼女は申し訳無さそうな顔をして星写す黒い瞳を伏せる。
確かに脅威だ。
けれど、猟兵たちはその程度で立ち止まらない。止まらない。
困難な道ほど、厳しい道ほど、猟兵たちは果敢に踏み出すのだ。その先に迫る『竜牙兵』たちがどんなに強敵であったとしても、一般プレイヤーに対する脅威を許さぬと――。
テッカ・ロールナイト
よお、エイルだったか。百連ガチャ以来だな、久し振り。…誰だ?って顔だな。俺だよ、テッカ・ロールナイトだよ。
見た目が禍々しくなってて分からなかった?…ですよねー。
ともあれ攻略開始だ。アクションゲームと洒落込もうかッ!【スタイリッシュジャンパー】ッ!
機動力を上げてジャンプで敵のシールドバッシュや蹴りを回避しつつ敵を踏みつけたりしながら戦うぜ。
さあ、愛用のエンジンブレイドにさらなる強化を重ねた姿『ゴッドブレイカー』のお披露目だ。
その盾や鎧ごと力任せの怪力でぶっ潰してやるぜッ!
ハッハーッ!ノッてきたーッ!このままノーコンティニューでクリアしてやるぜッ!
【アドリブ歓迎】
ゆらりと揺れるようにして現れるは襤褸外套を纏うゲームプレイヤー。
騎士鎧と言われなければ、それがそうであると理解できぬほどに禍々しいフルプレートアーマー。ゲームに詳しいものであれば、それが即座に『紅き月の骸鎧』であると知れたであろう。
騎士鎧系最上位レア装備。
それが『紅き月の骸鎧』である。
骸、と呼ばれている所以は、その禍々しさ。ステルススキルのついた死神の外套と相まってビジュアルはどう見たってエネミーモンスターであった。
だが、拠点『学園』の地下施設の入口には一般プレイヤーが立ち入ることができぬようにロックをかけてある。
つまり、この場を訪れるということは猟兵である、ということの証明に他ならなかった。
「よお、『エイル』だったか。100連ガチャ以来だな、久しぶり」
その異形なる騎士鎧を纏うゲームプレイヤーの姿に亜麻色の髪の少女ノンプレイヤーキャラクター『エイル』は一瞬、ビクっとした。
さもありなん。
死神のような様相のテッカ・ロールナイト(神ゲー駆けるは、魔喰者の騎士・f41816)は一つ頷く。
「誰だって顔だな。俺だよ。テッカ。テッカ・ロールないとだよ」
「え、え……ず、ずいぶんと見た目が、その……」
「ですよねー。わかる。だがまあ、あんしんしときな。こっから先はノーコンテニューでクリアしてやるから」
「は、はい……『即死バグ』のことはご存知なんですよね?」
「ああ、しっかりとな。まあ、任せときなって」
テッカは『エイル』の言葉を受けて頷く。
此処から先へと踏み込めば、『即死バグ』によって強化されたバグプロトコル『竜牙兵』たちは襲いかかってくる。
かすってもダメだ。
一撃もらっても論外。
完璧なる回避によってしか、即死バグは防げない。
なら、どうするか。
「簡単な話だ。言ってみりゃ、アクションゲームみたいなもんだろう!」
踏み込んだ瞬間、ワラワラと迫る『竜牙兵』たち。
彼らの手にした剣と丸盾が体術と合わさって、凄まじい速度でテッカに襲いかかるのだ。
だが、テッカのフードの奥、その眼光がユーベルコードに輝く。
結局『竜牙兵』の『即死バグ』攻撃は2次元的な動きしかできない。ならば、とテッカは己のユーベルコード、魔喰技能【魔猿の跳脚】(イータースキル・スタイリッシュジャンパー)によって、ジャンプと軽業を組み合わせた同時のスキル『スタイリッシュジャンパー』でもって縦軸に飛んで一撃を躱すのだ。
それは華麗なる回避行動。
『竜牙兵』たちがどれだけ囲おうと動いても、所詮横軸の動きでしかない。
縦軸のジャンプを行えるテッカにとって、その攻撃は単純な攻撃モーションにしか見えなかったのだ。
「これが俺のスキル! どれだけステータスが高かろうが、即死攻撃だろうが当たらなきゃ意味ねぇぜ!」
それに、とテッカは己のエンジンブレイドを掲げる。
強化に強化を重ねた『ゴッドブレイカー』と名付けたエンジンブレイド。
それは初期装備の頃から愛用している武器だ。
そう、どれだけ初期装備といわれようと自分はこれを気に入っているのだ。そして、このゴッドゲームオンラインは究極のゲーム。
愛着を持って強化を続ければ、神すら喰らう剣と為るだろう。
それを証明するようにテッカのエンジンブレイドの一撃がうなりを上げる。『竜牙兵』の体を空中から振り下ろす一閃でもって切り裂くテッカはフードの奥で眼光を怪しくきらめかせる。
「ハッハーッ! ノッってきたーッ! このままノーコンテニューでクリアしてやるぜッ!」
テッカは振りかぶるエンジンブレイドでもって『竜牙兵』たちを寄せ付けず、まるで嵐のように彼らを吹き飛ばしながら即死バグ満ちるダンジョンと化した『学園』の地下施設へと一番乗りで切り込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
明和・那樹
●SPD
このアンロックされた地下空間は、さしずめ『学園』の開かずの間…かな?
僕の学校でも噂程度に七不思議は語られているけど、動く骸骨や泣く女性の霊とか類似点が多いのはちょっと面白いなとは思う
…けど、バグプロトコルがあるなら話は別だ
失敗すると死んでしまう怪談話は生還しなきゃ成り立たないからね
おびき寄せながらフェイントを仕掛けて抜け出せば造作はなさそうだけど、地上に出すと面倒なので殲滅しながら進むよ
連撃は出すタイミングやパターンを見切れば問題なさそうだし、いざとなれば夢想霜月の凍結攻撃で動きを鈍らせれる
聖剣士の早業と双剣の連携攻撃を活かした【薔薇の剣戟】を瞬時に叩き込む即死攻撃返しで道を切り拓くよ
拠点『学園』の地下施設。
其処が嘗て如何なる設備であったのかを知ることは未だできないが、しかし、広大なダンジョンめいた光景が広がっているのを明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は見やり、首を傾げる。
明らかに巨大すぎる。
通路一つとっても、なんていうか人間のサイズではない。
まるで巨人の住処にも思えただろう。
「このアンロックされた地下空間は、さしずみえ『学園』の開かずの間……かな?」
那樹の現実……即ち『統制機構』によって管理され通う学校にも噂程度に七不思議めいた話がまことしやかに語られている。
動く骸骨であったり、泣く女性の霊など、すべて憶測に過ぎないものばかりである。
実際に那樹が見たことはない。
けれど、そういう噂というのは大抵どの学校にも存在していて、類似点が多いのもまた面白いと思うところであった。
「……けど、バグプロトコルがいるなら話は別だ」
確かに那樹たちゲームプレイヤーたちは高難易度クエストを好む。
けれど、今回のクエストはその範疇にない。
なにせ『即死バグ』が発生しているのだ。
かすめただけでも、一撃もらうだけでも即座にクエスト失敗となってしまう。そして、このゴッドゲームオンライン上での死はログアウトだけを意味しない。
そう、遺伝子情報の焼却。
即ち、現実での事実上の死を意味している。
「失敗すると死んでしまう怪談話は生還しなきゃ成り立たないからね」
那樹はダンジョンと化した地下施設を走る。
すでに猟兵一人踏み込んでいる。
倒されたバグプロトコル『竜牙兵』の残骸が転がっていた。
道筋がわかるのはありがたいが、ゲームプレイヤーとして未踏破のダンジョンこそ心躍るものであったことだろう。
負けてられない、と那樹は『閃光のシデン』の名前に違わぬ活躍をしなければならないと意気込む。
「――」
「あれか」
『竜牙兵』――エネミーの中でも上位に位置するステータスを持っている。
それがしかも『即死バグ』攻撃をしてくるというのだから、なんともゲーマー泣かせ……いや、ゲーマー魂を燃え上がらせる存在であろう。
迫る一撃を那樹は躱す。
ステップを踏む。敵は此方を囲もうとしている。当然だ。敵は数で此方に利する者。
なら、囲うのは常套手段であると言えただろう。
「だから、わかりやすいとも言えるけれどね。行動パターンがあるってんなら!」
後方にステップしたのは敵の突出を誘うため。
そして、囲いにくくするためだ。伸び切るようにして敵の数が一列に並ぶのを確認して、那樹はバラの花弁を撒き散らしながら、空中を蹴る。
ユーベルコードに輝く瞳。
「薔薇の剣撃……」
抜き払った『夢想霜月』の刀身から凍気が走る。
それは『竜牙兵』たちの足元を凍りつかせ、一瞬ではあったがタイムラグを生み出す。その一瞬さえあればいい。
「聖剣士とのスピードを舐めるなよ!」
手にした二振りのツインブレードが閃いた。
超高速の連続攻撃。
一瞬の内に己に襲いかかった『竜牙兵』たちの体に叩き込まれる四連撃。
それは四撃にて確実に死へと至らしめるユーベルコードにして那樹の絶技。敵は一撃でこちらを『即死バグ』で即死させる。
なら、と那樹は笑う。
「即死がそっちだけの独壇場ってわけじゃあないんだ。例え四連撃入れないと即死させられないのだとしても」
そう、聖剣士のスピードがあれば、四撃いれるのは容易い。
砕けていく『竜牙兵』たちを視界の端に入れながら那樹は走る。
道を切り開く。
そう、敵の数を減らせば減らすほど後続の猟兵達が『即死バグ』の脅威にさらされることはない。
この地下施設、ダンジョンの制覇は、きっと猟兵たちの数にかかっている。
多くの猟兵をクエストから排斥されぬためにこそ那樹は己のツインブレードでもって迫る『竜牙兵』たちを切り刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナリュー・コンクルード
クエストがあるというのならクリアするのが俺達だろう?
ゲームを安全にする為にも、行かせてもらおう
一撃で即死?なに、俺にとってはいつもの事だ
スキル起動、『アクセルスウィープ』
囲まれぬ様に|黒刃の聖剣《ブラックキャリバー》による高速攻撃と|意想外の侵入者《イントルード》で立ち位置を調整
相手の攻撃を回避しつつのカウンターも絡め、一体一体確実に、速攻で殲滅させてもらう
先にもいったが俺にとって一撃で即死は|いつものこと《紙装甲聖剣士》でな?
この程度の戦況、押し通れずして上位は名乗れんよ
どうするかな? などと考える必要はない。
踏み込んだダンジョンが『即死バグ』に満ちた高難易度を越えてクソゲーと呼ばれるたぐいのものであったとしても、思考は多く必要としなかった。
思考停止でもなければ、自棄になったわけでもない。捨て鉢になったわけでもない。
ダークエルフの聖剣士は、『学園』と呼ばれる拠点の地下施設にためらいなく足を踏み込む。
そうだ。
ナリュー・コンクルード(黒き刃の闇妖精・f41995)は其処にクエストがあるのならばためらわない。
難易度など歯牙にもかけない。
クエストがある。クリアする。
単純明快な図式しか見ていない。
そして、此処にあるのがバグプロトコルと呼ばれる存在なら、ナリューはゲームを安全にするために立ち向かうだろう。
「敵は『即死バグ』による一撃死攻撃を常に放ってきます。最悪、触れるだけでも発動される可能性があるので……」
亜麻色の髪の少女ノンプレイヤーキャラクター『エイル』の言葉にナリューは、それ以上は良い、というように手で制した。
「ほ、本当なんです! 本当に一撃で……」
「なに、俺にとってはいつものことだ」
「えっ!?」」
ナリューの言葉に『エイル』は目を見開く。
そう、ナリューにとって、一撃死のリスクなど常なるものだ。
いつもそうだったのだ。
一撃受ければ己のHPゲージは一瞬で0に傾く。
そういうスキルビルドなのである。つまり、有り体に言うなら、それは『紙装甲』というやつであった。
「スキル起動、アクセルスウィープ。限界まで……駆け抜けさせてもらおうかッ!」
煌めくユーベルコード。
ナリューはためらわない。立ち止まらない。眼の前に倒すべき敵がいるのならば、その手にした黒刃の聖剣を振るう。
いつだってそうなのだ。
彼は、スキルによる加速によって戦場を疾駆する。
迫るバグプロトコル『竜牙兵』の一撃は触れるだけ、かすめるだけで即死させる『即死バグ』を持っているのだという。
けれど、当たらなければ。
触れさせなければ、意味のない攻撃だ。
つまり、なリューは最高速度と最高精度の回避スキルでもって生み出されるカウンターを以て『竜牙兵』を一瞬にして切り裂くのだ。
胴を十字に切り裂く一撃。
『竜牙兵』の残骸を盾にするようにして彼女は身を翻す。迫る『竜牙兵』たちが己を囲おうとしている。
常套手段だ。
敵は此方に触れるだけでいいのだ。
対する此方は手数で劣る。
一対多なのだ。当然のことだろう。けれど、それでもナリューのスキルビルドは一瞬で後手の先を取る。
「これは俺にとっては|いつものこと《紙装甲聖剣士》でな?」
言葉を紡ぐ。
ゲームプレイヤー『流田結那』は己の大好きな本の登場人物をモデルにした『ロールプレイ』を淀みなく行なう。
考える必要はない。
迷いはない。
自分の中にナリューはいるだ。なら、それを己はトレースするだけだ。
「この程度の戦況、推し通れずして上位は名乗れんよ」
ナリューはさらなる新しき景色を見るために、黒刃の聖剣を振るう。
その剣閃の煌めきを如何に『即死バグ』を持つ『竜牙兵』とて、一歩たりとて止めることはできなかったのである――。
大成功
🔵🔵🔵
シアン・ループス
やーどーもどーも。
クソゲーって聞いてやってきたよー。おもしろそーだし。
即死バグかーなるほど。
まーでも、レイドモンスターとかだと全員が同じ行動しないと全滅確定とかあるし、これもほぼそんなもんでしょ。
一撃でも触れたら、っていうのが分かりやすくて助かるねぇ。
それなら【傀儡蜘蛛】で襲いかかってくる竜牙兵たちへ蜘蛛の巣を纏わりつかせようかー。
ほら、これでチートモンスターはこっちのもの……これってプレイヤーだけじゃなくてモンスター同士でも一撃死するのかなー?
ま、僕の周りに円陣みたいに組んで貰って肉壁……骨壁?になってもらおう。
僕は後方から藍絲で攻撃して支援。
さ、攻撃してどんどんやっちゃってねー。
踏み出したダンジョン。
そこに溢れているのはバグプロトコル。
『竜牙兵』と呼ばれるステータスの高い群れ。彼らの手にした武器は勿論のこと、腕や足、盾に至るまで触れれば『即死バグ』が仕込まれているのだという。
つまり、これは高難易度の中であっても攻略不能とも言われるクソゲー仕様であるということだ。
けれど、そんなクソゲーと呼ばれるヤケクソ地味た難易度に挑んでこそのゲーマーとでも言うかのようにシアン・ループス(デバフ聖剣士・f42306)は気だるげに青い髪をかきあげた。
「やーどーも。どーも」
クソゲーと聞いては居ても立っても居られない。
いや、とてもじゃあないが、そんな雰囲気は彼にはない。常に気だるげな雰囲気を纏い、『学園』と呼ばれる拠点の地下施設……ダンジョンと化したフィールドに足を踏み出す。
『竜牙兵』たちはシアンを認識すると即座に襲いかかってくる。
手にした剣も、盾も、全てに当たり判定がある。
「『即死バグ』かーなるほど。まーでも、レイドモンスターとかだと全員が同じ行動しないと全滅確定とかあるし、これもほぼそんなもんでしょ」
いつもと変わらないじゃん、とシアンは息を吐き出す。
違うのは即死=現実での社会的な死であるということ。
遺伝子番号を焼却されれば、そこに人権はない。人権がなければ『統制機構』の名の元に強制労働だ。
もう二度とゴッドゲームオンラインにログインすることはできない。
なら、これはわかりやすいデッド・オア・アライブ。
「わかりやすくて助かるねぇ」
迫る『竜牙兵』たちに走るは見えぬ『時蜘蛛の藍絲』が軌跡を描く姿。見えざる蜘蛛の巣が『竜牙兵』たちの手にした剣や盾に絡みつく。
瞬間、その絡め取られた腕が隣に走る『竜牙兵』へと振るわれるのだ。
「――!?」
当然、エネミー同士であっても『即死バグ』というチートスキルは適応される。
つまり、同士討ちである。
「――!?!?」
「混乱しているねー。やっぱり思った通りだよ。『即死バグ』を持っているのに物量で真正面から押し切ればいいのに、なんでか一人のゲームプレイヤーを取り囲もうとしているのか」
シアンは気がついたのだ。
『竜牙兵』たちの行動パターンを。そう、彼らは必ずゲームプレイヤーを取り囲む。それは一見すると力押しに見えるが、彼らは自分たちの武器が互いに接触しないように囲んでいたのだ。
なら、『即死バグ』はエネミー同士にも適応される。
「ほらね、やっぱり」
鈍った、とシアンは思っただろう。
傀儡蜘蛛(トキシック・シアター)によって敵味方の認知逆転を起こされたバグプロトコル『竜牙兵』たちは、その『即死バグ』が付与された体を味方にぶつけ、次々と相打ちで消滅していくのだ。
「クソゲーって言ってたけど、簡単じゃないかー」
そう言って悠々とシアンはクソゲーと呼ばれた高難易度のダンジョンを踏破していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エミリィ・ジゼル
即死バグとはたのしs……いえ、恐ろしい話です。
ともあれ、まずは目の前の問題に対処しましょう。
当たったら即死ということであれば、当たらないように立ち回りましょう。
具合的にはUC暴走鮫鱗弾により遠距離攻撃に徹して、相手のレンジ外から一方的に攻撃を仕掛けます。
暴走鮫鱗弾を掻い潜ってきた敵にはオブリビオンマシン『M-1D メイド・システムα』をけしかけ接近を阻みつつ、攻撃は見切ったり第六感的なもので回避したりして対処します。
剛撃に関しては空中浮遊と空中浮遊で対処。周辺地形が破壊されても浮いていればノーダメでしょう。
竜牙兵などデウスエクスでもよくいるモブ、ケルベロスの相手ではないわー!
「『即死バグ』とはたのし……いえ、恐ろしい話です」
今、楽しいって言った?
エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は慌てて口をつぐんでいた。
此処はゴッドゲームオンライン。
究極のゲームと呼ばれるゲームの内部である。とは言え、現実と変わりない。いや、現実以上の仮想空間が広がっているように思えただろう。
敵であるバグプロトコル『竜牙兵』は『即死バグ』を付与されているのだという。
武器に当たるだけではなく、その体に触れただけでも一撃死してしまう。
それはこのゲームのクエストからはじき出されるだけではない。『統制機構』に生きるゲームプレイヤーたちにとっては、遺伝子番号の焼却という社会的な死を意味する。
そのためエミリィはこうしてゲームの世界に転移してきたのだ。
「ともあれ、まずは眼の前の問題に対処しましょう」
『学園』と呼ばれた拠点。
その地下施設がダンジョンとなっている。
天上は高く、まるで巨人が生活していたかのような空間だと思えたことだろう。だが、狭い空間で触れるだけでアウトという『即死バグ』を持つ敵がいる以上、広い空間が使えるというのは、エミリィたちにとっては僥倖である。
「当たれば即死。というのならば、当たらないように立ち回るのが吉というやつでしょう。はい、どーん!」
エミリィの瞳がユーベルコードに輝く。
迫る『竜牙兵』たちに向けて、暴走鮫鱗弾(シャークボム)を放つ。
鮫魔術による一撃。
それは着弾後、範囲に極めて屈強な鮫の群れを召喚するのだ。
空も飛べる鮫。
もはや、鮫とは言えないのではないかと頭のどこかの冷静な部分が言っているような気がするが、鮫魔術の鮫は飛ぶのである。鮫とはそういうものなのである。海を泳ぐことができるのならば、空だって飛べるはず。きゅーいーでぃー。
「――!!」
振るう『竜牙兵』の一撃が空飛ぶ鮫が発生したフィールドを砕く。
なるほど、湧出する鮫たちの大本を叩こうというのだろう。
けれど、エミリィは空中に浮遊して見下ろす。
「面白い挙動をしますね。ですが、地形を破壊した程度で鮫が止まるとでも?」
エミリィは不敵に笑う。
そして掲げた手に集まるは魔術。
「『竜牙兵』などデウスエクスでもよくいるモブ、ケルベロスの相手ではないわー!」
どう見ても悪役のムーヴ。
それでいいのかと思ったが、鮫を手繰るのである。
悪役も正義役もあったもんではない。
鮫はすべてを蹂躙するのだ。なぜなら鮫だからだ。
エミリィの放った鮫魔術はフィールドに凄まじい爆風を生み出し、その中から屈強な鮫を放つ。
どんなに『即死バグ』を持っていたとしても、恐れ知らぬ鮫の群れ、その押し戻せぬ群れを前に『竜牙兵』たちが持ちこたえることなどできなかったのだ。
地下施設に満ちる鮫の群れ。
その背びれを掴んでエミリィはサーフィンのようにダンジョンの奥へ、奥へと向かおう。
「はいどーもー、かじできないさんでーす」
できるのはバグプロトコルのお掃除だけである。
掃除は家事のうちではないか? いいや、違うのである。これとそれとは別物。掃除というが、排除の方である。
だからこそ、エミリィはなぞの鮫のきぐるみをいつのまにか着込んで鮫の群れと共に『竜牙兵』たちを理不尽に蹂躙していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
クレイドル『なんていうのかなぁこういうの!?せっかく作った秘密基地を台無しにされた感じ?もー最悪って奴だね!私が作ったわけじゃないけどさ!』
ピー!!
ダブルブレード変形フォースサーベルを【投擲】
|ホイッスル型魔楽機《揺籃の子守唄》を【楽器演奏】寄ってきた竜牙兵へ〈森羅牙道砲〉増幅した音の【衝撃波】で【吹き飛ばし範囲攻撃】
強かに壁へ叩きつけ粉砕したり、体勢を崩させ、【念動力】で高速回転・軌道制御したフォースサーベルで【なぎ払い切断】
『折角ダンジョンを用意したエイル君が不憫でならないよ!』
ピピー!!
再度森羅牙道砲で吹き飛ばし。寄ってきた端からぶっ飛ばしていく。
|ピーピーピーピー《こーわーれーろー》!
『クレイドル・ララバイ』は憤慨していた。
その憤慨は、なんとも言葉にしがたい感情であった。
上手く表現できないことがもどかしい。確かに己は怒っている。怒っているのだが、こう、うまい言葉が出てこないのだ。
不覚。
『でも、ああ、なんていうのかなぁこういうの!?』
そんな『クレイドル・ララバイ』の言葉に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)もまた答えを持っていなかった。
他者の、それも『クレイドル・ララバイ』のような自分とは対極にいるような存在の胸の内を言葉で表現しろと言われても土台無理な話であったからだ。
代わりに小枝子は、ピー!! と変形したホイッスルを鳴らす。
敵が来ている、と伝えたつもりであったが『クレイドル・ララバイ』は構わず続ける。
『せっかく作った秘密基地を台無しにされたような感じ!? もー、最悪ってやつだね! 私が作ったわけじゃないけどさ!!』
『クレイドル・ララバイ』は大げさに嘆いて見せていた。
いや、嘆いた、という感情が小枝子にわかるのは、そこそこに付き合いが続いているからだろう。構築されてきた関係性。
しかし、小枝子は魔楽機である『クレイドル・ララバイ』が喚いてばかりで、迫る『竜牙兵』たちの姿が見えていないのだと思った。
手にしたダブルブレードへと変形させたフォースサーベルを投げ放つ。
敵は『即死バグ』を持っている。
触れるだけで一撃死してしまうのだという。ここがゲームの世界であるがゆえに、仮に一撃死されても猟兵である小枝子はクエストからはじき出されるだけで済む。
けれどゲームプレイヤーは違う。
彼らは遺伝子番号を償却され、社会的な死を強いられる。
そんなこと許されうrハズがない。
「ピー!!」
『ああ、本当に遣る瀬無いよ。せっかくダンジョンを用意したエイル君が不憫でならない! 楽しんでもらおうと思って構築したあれこれ! それが横槍入れてきた連中の手柄になるなんて許せるわけない。許せるわけがないよね、奏者!!』
「ピー!!」
小枝子はいいから、と言うように瞳をユーベルコードに輝かせる。
手にしたダブルブレードから放つ一撃で『竜牙兵』の振るう武器と打ち合う。触れてはならない。
だが、至近距離では敵の体に触れるだけで一撃死してしまう。
ならば、なんとするか。
「ピピー!!」
ホイッスルから放たれた衝撃波。
それは、森羅牙道砲となって『竜牙兵』たちの体を吹き飛ばす。
かたっぱしからぶっ飛ばす。
理屈や戦術はいらない。そう、目についたものを片っ端からぶっ飛ばす。単純明快過ぎて、あまりにも野蛮であったが、『クレイドル・ララバイ』は奏者たる小枝子に、そう小言を呈する気も起こらなかった。
『いいさ、奏者。今回は小言無しだ! あんな無粋な連中なぞに演奏を聞かせる義理はない。さあ、思いっきり吹き鳴らせ!!』
「|ピーピーピーピー《こーわーれーろー》!」
さっきからずっと小枝子はそのつもりだった。
というか、『クレイドル・ララバイ』だけが、ずっと憤慨していただけなのだ。
小枝子は、元よりバグプロトコルを、奴らを壊すことだけに注力していた。言われるまでもない。
オブリビオンであるバグプロトコルは壊す。
この灰色の現実に疲れたものたちを癒やす極彩色のようなゲームの世界を守る。
そのために壊すのだと言うように小枝子のホイッスルは高らかに響き渡り、衝撃波と共に『竜牙兵』をぶっ飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ティルライト・ナハトギフト
んー?
とりあえずもらわなければいいんでしょ?
『雪華六方魔呪想紋』展開、
『スキルアンバー』解放っと
さて、高機動近接型の戦い方お見せしましょうか
『スノウチャクラム』で遠距離から牽制
倒せたらラッキーだけど
態勢を崩させるのが目的
距離を保ちながら衝撃波攻撃なんかも織り交ぜながら
囲まれないように釣り出さないと、ね
足場習熟とダッシュのスキルを活用
距離を保ちながらなるべく1対1のシチュを作り上げて
後はヒット&アウェイの一撃必殺!
【ソニックブロウB《ソニックブロウ!!》】
仕留めても仕留めきれなくてもすぐに距離を開けて
休まずに攻撃を仕掛け続ける!
回避は見切りのスキル頼り
でも距離を保って無茶しなければ…いけるはず!
グリードサインがフィールドに煌めく。
魔法と呪術を取り込んだ力の源。
雪の華を模したかのような紋。それは、ティルライト・ナハトギフト(ブルーゲイル/ゲッカビジン・f41944)固有のグリードサインだった。
琥珀の宝石が胸に煌めく。
スキルセット。
複合したスキルを呼び出すメモリとしての役割を果たす琥珀の宝石は、ティルライトに高機動近接戦闘のスキルを読み込ませる。
「触れたら終わりの『即死バグ』なんて、一撃ももらわなければいい、一撃放たれるまえにやっちゃえばいいんでしょ?」
手にしたスノウチャクラムを構え、投げ放つ。
放たれた戦輪が宙を走り、『竜牙兵』たちに迫る。
だが、それは牽制にしかならなかっただろう。戦輪を剣で弾きながら『竜牙兵』たちが迫る。
ティルライトを囲むようにして『竜牙兵』たちは動く。
彼らは『即死バグ』を持っている。あたった、と判定したものを一撃させるバグ。
それは互いにも適用されるのだろう。だからこそ、ゲームプレイヤーを一人ひとり囲んでから一撃死させようとしてくる。
「なら、囲まれないようにすればいいんだよ」
だからこその牽制。
遠距離からの牽制と言えど、『竜牙兵』たちは対応しなければならない。なら、その一瞬の隙をついてティルライトは囲いから脱すれば良いのだ。
幸いにして『学園』と呼ばれる拠点の地下施設は広い。
それに天井が高い。まるで巨人が生活するように作られているかのような空間なのだ。それが『竜牙兵』というバグプロトコルの群れの戦術と噛み合っていないのだ。
「――!!」
「そんなに慌てたって仕方ないよ」
ティルライトの瞳がユーベルコードに煌めく。
『竜牙兵』たちの『即死バグ』に対してティルライトが打ち立てた戦法は2つ。
一つは距離を取ること。
そして、一対一の状況を作り出すこと。
そうすれば、必然。
「後はヒット・アンド・アウェイ! ソニックブロウ!!」
ユーベルコード、ソニックブロウB(ソニックブロウ・ビー)。
それは魔法による身体強化を乗せた拳の一撃。叩き込まれた一撃は『竜牙兵』の体を吹き飛ばす。
「そして、触れただけで一撃死っていうなら、その敵の体も『即死バグ』の対象になるってことでしょ」
吹き飛ばした『竜牙兵』の体躯に触れた別の個体が一瞬で砕けて散る。
そう、『即死バグ』は触れただけでも適応される。
なら、味方の体躯であっても同然なのだ。
「休んでいる暇はないよ」
ティルライトは迫りくる『竜牙兵』たちを次々と拳で吹き飛ばしていく。
一撃で二体を仕留められるというのならば、囲いを突破することなど容易そのもの。
「無茶にもならないね。さあ、おいで。片っ端から全部倒してあげるから」
ティルライトは手招きするように掌を揺らし、挑発するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ステラさんの雄叫びのテンションが……。
って思ったら、ここゲームの世界じゃないですか!
いえ、そこは危険人物で間違ってないですけど、
ここだと|メイド《ステラさん》もやべーですよね!?
こないだの、即死バグとかじゃないですし!
あのとき大変だったんですからね。
今回はAEDとか準備していかないと……え?
いえ、ですから!
何度も言いますけど、わたしのは『光の波動』ですからね!?
とはいえ、|攻撃され《バグに触れ》たらダメみたいですから、
ここは先手必勝ですね。
いきます!全・力・【Canon】!
え!?ステラさんダメですよー!?
それ、寿命が減るどころかいっきになくなるやつじゃないですかー!
めでぃーっく!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁぁぁすっ!!
というかそこにいらっしゃいますねエイル様!(hshs)
いえ、危険人物ではありませんメイドです
今回もお任せくださいエイル様!
あの、即死バグとぶつけようとかしてます??
まぁエイル様に対する考察も進めたいのですが
まずはご尊顔から憂いを取り払いましょう
ルクス様出番です
ルクス様の破壊音波なら即死バグと対消滅も可能です!
ええ、たぶんきっとめいびー
私は全てを振り切ります!
久しぶりの【メイドズ・ホワイト】でスピードと反応速度を爆上げ
破壊音波も即死攻撃も全てはスピードで回避!
減った寿命はエイル様のなでなでで補給しますので超全力で!!
参ります!!
いつもの、と言えば通るだろうか。
いや、いつもの、で済まされるのならばあまりにもその熱情は凄まじいものであった。だからこそ、その雄叫びというか咆哮というか、なんていうか。
地下施設たるダンジョンにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)のいつものと言ったら、いつものやつが響き渡った。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!」
彼女の雄叫びにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はいつものように、うわぁ、という顔をした。
地下施設だから反響してすごいことになっている。
ビリビリと肌を震わせるほどの声量。
入口付近にいた亜麻色の髪の少女ノンプレイヤーキャラクター『エイル』が手を耳に当てている。普段から慣れていないものにとっては、ただの鼓膜破壊兵器でしかない。
「ステラさんの雄叫びのテンションが……って思ったら、ここゲームの世界じゃないですか!」
「は、はい……ゴッドゲームオンラインです」
「というか、香りとかなんとかよりも、現物がそこにいらっしゃいますね!『エイル』様!」
ハスハス、とステラは猛然と公然と『エイル』の亜麻色の髪に鼻をうめている。やばい絵面である。はっきり言って逮捕される絵面である。
「ヤバイですよ、ステラさん! 此処がゲームだっていうのなら、ゲームマスターさんがいらっしゃるはずです。BANされますよ!」
「いえ、危険人物ではございませんので、BANされません。あくまでメイドですので! 今回もお任せください『エイル』様!」
ステラのムーヴに『エイル』は若干ビビっていた。引いてるというか、ちょっと怖いなって思っていた。
「ここだと|メイド《ステラさん》もやべーですよね!?」
ルクスは思った。
『エイル』との距離が近いから。
それはステラにとっては幸いであったが、フォローする身からすれば大変なのである。
「まぁ『エイル』様のご尊顔を曇らせるものあれば、これを取り除くのがメイドの務め。さあ、ルクス様、出番です!」
「えっ、あっ、え?」
迫る『竜牙兵』たち。
いかにも強そうなバグプロトコルである。しかも『即死バグ』を付与されているのだという。武器ならずとも触れるだけで一撃死。
そんな危険極まりない相手にルクスの出番とは。
「ルクス様の破壊音波なら『即死バグ』と対消滅も可能です!」
「いえ、ですから! 何度も良いますけど、わたしのは『光の波動』ですからね!?」
その言葉にステラはまたまた、みたいな顔をしていた。
「できます。できますとも。ルクス様ならば。ええ、たぶんきっとめいびー」
「自信なくなってませんか!?」
「気の所為でございましょう。ほら、そんなことおっしゃっているから敵が迫ってきています」
そう、二人のいつものコントをやっている間に『即死バグ』持つ『竜牙兵』たちが迫ってきているのだ。
「ええい、先手必勝です! いきます! 全・力・Canon(カノン)!」
お、なんかの曲名かな?
インディーズレーベルから出てそうなタイトル! と誰かが思ったかも知れない。
けれど、これはれっきとしたユーベルコード。
タイトルとは裏腹なバイオリンの旋律。
それは破壊音波魔法。迸る衝撃波が『竜牙兵』たちを押し戻す。吹き飛ばせなくても、旋律が響いている限り彼らは一歩も踏み込めないのだ。
「私はすべてを振り切ります! メイドたるもの、この程度は基本、ですので」
見事なカーテシーを決めたステラの速度が上がる。
爆発的なまでの反応速度。
超有能なスーパーメイドに変身したステラは、一瞬で『竜牙兵』を討ち倒す。もうずっとこれでいて。戻らないで。
だが、このユーベルコードは解除するまで寿命を削るのである。
一瞬でステラはスタート地点に戻ってノンプレイヤーキャラクターである『エイル』のもとに駆け込む。一瞬すぎた。
「『エイル』様、寿命が減ったのでなでなでを所望いたします」
「えっ!?」
「あ、だめです、ステラさん! それ、寿命が回復するどころか、一気になくなるやつじゃないですかー!」
困惑する『エイル』。でもやってくれるのは優しい。
しかし、ルクスは知っている。
それは逆に昇天するやつである。比喩ではなく。
ぶぱっ! となんかこう鮮血が飛び散った気がする。まだまだ序盤。スタート地点んだっていうのに。
その光景を前にルクスは叫ぶ。
「めでぃーっく!」
決戦配備があったらよかったのにね――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
設置した|ドラゴンプロトコル《同胞》の胃が痛くなるやつ…。
こちとら!人死でないように調整してんのに!
死なねえように、その前に演出で戦闘地域やダンジョンから弾いたりしてんのに!!
バグプロトコルは!!
根本的にどうにかするにしても、奥にいかなきゃなぁ…。
空中に『硝子のギルドペン』で『一』書いてってな…この状態でUC使う。
俺様は『空気』を武器と見なしたからな!そのまま、面攻撃していく。
瓦礫があったら、それにも『一』を書いておくか。
その攻撃は当たるわけにはいかねぇから、UCによる空気の押出で対処するか、見切って回避するしかねぇな。
ダンジョンにバグプロトコル。
それは管理者としては頭痛の種である。そもそもドラゴンプロトコルはゲームマスターとしてダンジョンを運営する。自費で。
トリリオン不足はいつものことなのでこの際置いておく。
だが、バグプロトコルが湧出するのだけは許せない。
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は『学園』と呼ばれる拠点の地下施設、そのダンジョンにバグプロトコルが湧き出したということに胃が痛くなる思いだった。
自分のダンジョンではない。
けれど、身をつまされれる思いである。
あのバグプロトコルたちの厄介さは言うまでもない。
そして、『即死バグ』である。
「触れただけで一撃死とか! んだよ、そのゲームバランス! こちとら人死にがでないように調整してんのに!」
初心者が向かうクエストの多くが存在する地域を担当しているヌグエンにとって、それはとても大変な仕事だったのだ。
演出を入れたり、ダンジョンにそもそもレベル不足は入れないようにしたり。
それはもう涙ぐましい努力をしてきたのだ。
だというのに!
「『即死バグ』で一撃死たぁな! バグプロトコルは!!」
許せない、と彼は手にした『硝子のギルドペン』で数字を描く。
限定権限:全ては俺様の意のままに(アトデアヤマリニイクヤツ)である。
何が、と問われたのならばヌグエンは不敵に笑う。
このユーベルコードは描いた線を含む文字に密着した『己が武器とみなしたもの』すべてをドラゴンの魔力でソスアし、同時に一斉攻撃と防御に利用できるのだ。
「俺様は!『空気』を武器とみなす!」
このフィールドに満ちる空気。
そのものを武器とみなす拡大解釈。
そのすべてを、大量の空気をドラゴン魔力で操作するのは、凄まじい消費を強いることだろう。だが、それでもヌグエンの怒りのほうが勝る。
このダンジョンを組み上げたものの思いがある。
楽しませようとしているノンプレイヤーキャラクターたち。
彼らの努力を無に帰すかのような行いをバグプロトコルたちはしたのだ。
ならば!
「許すわけにはいかねぇんだよ!」
迫る『竜牙兵』たちに落とされるは空気の圧縮された鉄槌の如き一撃。
触れれば一撃死なのはヌグエンも変わらないことだ。
ならば、近寄らせなければ良い。
一切近づけさせぬ叩き潰す。それは周囲に満ちた空気を圧縮することで生み出された不可視の鉄槌。
防ごうにも防げず、その大気の圧縮によって押しつぶされるしかない『竜牙兵』たちが地面にひしゃげていく。
「どれだけお前らが俺様を囲おうとしたって無駄だ。なんてったって周囲には空気が満ちているんだからな」
ヌグエンは怒りを発露するように鉄槌を振るい続ける。
このな一撃死のバグを持ったバグプロトコルなんて一体たりとて残してはおけない。
怒りに震えるようにしてヌグエンは、執拗に『竜牙兵』たちの体を叩き潰しつづけ、地下施設ダンジョンを虱潰しにしていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『危険なお誘い』
|
POW : 敢えて美女についていって囮になる
SPD : 隠れて美女を観察あるいは尾行する
WIZ : 目撃情報などから行方不明者が姿を消した場所を特定し周辺を調べる
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バグプロトコル『竜牙兵』たちを退けた猟兵たちは、『学園』の地下施設……ダンジョンの奥へとさらに進んでいく。
まるで巨人の住処のような高さの天井と横幅を持つ通路。
扉も巨大であれば、内部の構造も巨大である。
巨人の体高は大体が人間の三倍ほど。つまり5mクラスなのである。
まるで、この地下施設は巨人の住処のような印象を受けただろう。
そして、確か、と猟兵たちは思い出す。
グリモア猟兵は、この地下施設には複数の幽霊めいた謎の美女が現れて此方を誘ってくるのだという。
そして、彼女に気を取られた瞬間、即死トラップの水晶体による光線が発射されると言っていた。つまり謎の美女の幽霊を無視すればいいのだ。彼女に気を取られることなく最奥を目指せば良い。
だが、問題はここからだ。
謎の幽霊の美女。
その美女が手にしているアイテムを手に入れなければ、『即死バグ』は無効化できない。
このダンジョンのボスとしての座に収まっているバグプロトコルを倒すには、美女の幽霊は無視できず、即死トラップの水晶体よりの光線を上手くかわし、アイテムをゲットしなければならないのだ。
此処までは良い。
だが、猟兵たちは思った。
謎の美女の幽霊とあのグリモア猟兵は言っていた。確かに、と思う。眼の前に歩く……いや、闊歩する美女は巨人だった。
幽霊であるから半透明。
意思を感じさせない瞳。
手にしていると言っていたアイテムは、恐らく髪飾りの宝玉だろう。それが長い髪のあちこちに点在している。どうしたって彼女を見てしまうし、そうなれば即死トラップが発動して水晶体の光線が襲ってくる。
発動避けられぬ即死トラップ。
この光線を躱しつつ、謎の美女の……巨人の幽霊の髪飾りの宝玉を手にしなければならないのだ――。
明和・那樹
●SPD
何か思っていたのと違うけど、あの通路の大きさを考えれば納得の大きさ…なのか?
でも、そのお陰で巨人サイズの物が置かれていたりしているから、相手の死角に入って隠れる事は容易そうだ
まずは即死トラップの発動条件にもなってる気を取られる事なく四周にも警戒しながら、巡回するルートや行動パターンを見極めてから作戦を練ろう
大まかに分かったら、今度は周りにある物で使えそうなものは…巨人の頭ほどの高さの壁に掛けられた燭台かな
灯りが灯されていない所で【スカイステッパー】で音もなく上がったら、息を殺して巡回してくる時間を待とう
タイミングを見計らって…長い髪にある髪飾りの宝玉を掠め取って、通過し終えたら脱出だ
『閃光のシデン』こと明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は、『竜牙兵』を退けダンジョンの奥……『学園』地下施設の先へと進んでいた。
此処までは順調である。
けれど、一つだけ那樹にとって予想外と言える出来事があったというのならば、眼の前の巨人である。
いや、正確に言うなら巨人の美女の幽霊である。
確かに美女の幽霊、とは聞いていた。
だが、巨人であるとは聞いていない。彼女に気を取られれば即死トラップが発動し、水晶体の光線が飛んでくるのだ。
当然のように光線にも『即死バグ』が適応されていると考えていいだろう。
試すつもりなんてない。
一瞬の判断ミスが一撃死……つまりはクエストからの除外、果ては遺伝子番号の焼却につながるからだ。
『統制機構』という現実に生きる那樹にとって、それはなんとしてでも避けなければならないことだった。
「何か思っていたのと違うけど、あの通路の大きさを考えれば納得の大きさ……なのか?」
ダンジョンに踏み入った時から違和感を覚えていたのだ。
人を想定したダンジョンの大きさではないと。
「とは言え、その御蔭で隠れることはできるけれど……いや、そもそもあの巨人の幽霊に此方が気が付かれてもいいの、か……」
そう、即死トラップの発動条件は彼女に気を取られたら、である。
そういう意味では巨大な人型であるというのは、嫌でも視界に入ってしまう。あちらに攻撃する意志やモーションはない、と那樹は判断し、燭台めいた点滅灯へと駆け上がる。
ユーベルコード、スカイステッパーを使えばなんなく点滅灯まで駆け上がっていくことができる。
「……あの髪についた宝玉、飾りが『即死バグ』を一定時間無効化させるアイテムだっていうのなら」
那樹は息を殺し、己のそばを巨人の幽霊が通り過ぎるのを待つ。
己が飛び出せば、光線が襲ってくるだろう。
これを躱すためにユーベルコードの空中を蹴る回数は節約しなければならない。
息を潜める。
失敗は許されない。失敗すれば遺伝子番号の焼却。
息を殺していても鼓動が高鳴る気がした。
視界が霞む。
「いや、しっかりしろ。一発で終わらせればいいだけだ!」
那樹は飛び出す。
空中を蹴った瞬間、己の視界に映るのは無数の水晶体。
即死トラップ!
光線が走る。それを空中を蹴って躱す。
縦横無尽に走る光線。それを那樹は空中で方向を転換しながら一気に駆け抜け、巨人の幽霊の髪に飾られた宝玉の一つを手に取る。
まるで樹木から果実をもぎ取るかのような動きだった。
汎ゆる行動が人生設計図によって決められている那樹にとって、樹木から果実をもぎ取るなんて経験はなかったかもしれない。
だからこそ、新鮮な思いだった。
手にした宝珠アイテムをボックスに収納し、那樹はさらにダンジョンの奥へと走る。
これで少なくともボスであるバグプロトコルの『即死バグ』は一定時間無効化できる。
「これで最低条件は揃った……後は!」
自分のプレイヤースキルの見せ所だ、と那樹はボスの待つフィールドへと走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エミリィ・ジゼル
(巨大な美女の幽霊を見上げ)なんかでかくないです?
いやまあたしかに美女の幽霊ではありますけど。どちらかというとこれ巨人の幽霊……あ、やべ、認識しちゃった。
「ターイム!」
ふぅ、なんやかんやで光線で即死するところでしたが、時間を止めてしまえばこちらのもんです。ついでにこのまま【空中浮遊】で上まで飛んで(ふわぁ)、髪飾りを【略奪】してトンズラしましょう。
OK、髪飾りゲット。ミッションコンプリート。
それではアデュー!(脱兎)
巨人が過ぎる。
確かに謎の美女の幽霊とは言っていたが、これは想定外というか、どう考えても意地の悪いトラップである。
彼女を認識した瞬間に『即死バグ』のトラップが発動するという。
それは浮かぶ水晶体より放たれる光線。
これを躱すことができればいいのだが、無数に迫る水晶体はいずれ猟兵たちに一撃死たる光線を命中させるだろう。
はっきり言って、この罠を考えたヤツの底意地がワル過ぎる。
「なんかでかくないです? いやまあ確かに美女の幽霊ではありますけど」
エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は鮫のきぐるみを着てのスニーキングミッションに挑んでいた。
この巨大な地下施設は、何処をみても巨人……体長5m級の生命が生活するように作られているように思えてならなかった。
扉だって巨人サイズ。
なんか天井も証明も高い位置にあるものだから、影があちこちに落ちている。
それはスニーキングミッションにはうってつけのシチュエーションであったのだが、色々と突っ込むべきところが多すぎた。
「どちらかというと、これ巨人の幽霊って説明したほうが早くなかったですか……あ、やべ、認識しちゃった」
ということは、とエミリィは恐る恐る顔を見上げる。
そこにはコンニチワ、とでもいうかのように水晶体が煌めいていた。
一斉に放たれる光線。
一撃でも受ければ、かすめれば、それでエミリィはこのクエストからはじき出されてしまう。
絶体絶命である。
エミリィを取り囲むようにして水晶体が光線を放っているのだ。
「ターイム!」
だが、エミリィは猟兵である。
ユーベルコードを使うことができる。つまり、時を止めるメイドの術(トキヲトメルメイドノジュツ)である。
なんて?
どういう理屈?
わからない。けれど、エミリィはメイドであり、メイドであるのならば時くらい止めてみせようってもんである。
かじできないのに、時は止められる。アンバランスが過ぎないか。
「ふぅ、なんやかんやで光線で即死するところでしたが、時間を止めてしまえばこちらのもんです」
よいしょっとエミリィはさめぐるみのまま空中に浮遊する。
ふわぁっと光線の隙間を縫うようにして飛ぶのはなんとも手間のかかることであったが、エミリィは謎の美女の幽霊の巨体……その髪に点在する宝珠の一つをもぎ取る。
キラキラ輝いていて、いかにも重要そうなアイテムである。
これさえあれば、ボスの『即死バグ』を一定時間無効化できるのだ。
これがないとボス攻略できないとか、クリアさせる気がまるでない。アイテム1つでクエストの成否が左右されるなんて、自由度の高いゴッドゲームオンラインではあまりないことなのではないか。
とは言え、しっかりとアイテムを手に入れたのだ。
時間を止めるユーベルコードが解除される前にさっさとトンズラしようとエミリィはさめぐるみのままトタタタ、とダンジョンフィールドの端まで走っていく。
「アイテム、ヨシ。ミッションコンプリート。それでは……」
止めていた時間が動き出し、エミリィの背後で光線が乱舞している。
それを見やり、エミリィは頷く。
とても満足気であったし、楽勝とガッツポーズすら取っているのである。
「それではアデュー!」
だが、そんな彼女を見つけた水晶体が追ってくる。
あ、やっべ、とまたエミリィはやらかしそうになりながら、光線飛ぶフィールドを脱兎のごとく駆け抜けて最奥へと滑り込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナリュー・コンクルード
ほう?これはまた大きいダンジョンだな
出て来る幽霊も合わせて考えると、ボスも巨人か?
それなら俺にとっては即死バグを無効にした所で、即死するのには変わりなさそうな気もするが……
まぁ、変わったアイテムを入手できると言うのならば、無駄にはならないだろう
相手が、ではなく俺が感知すると発動する罠か……となると、隙を見てとはいかないか
まぁ避ける事に徹するのならば問題は無い、スキル『リバースカウンター』を起動
光線をスキル効果込みで完全に回避する事をトリガーに連続行動、そこら辺の壁を|蹴っ《攻撃し》て足場にしつつ目的の物を奪取しよう
別にスキル無しでも回避はできると思うが……連続行動と加速効果がつくからな
『学園』と呼ばれる拠点の地下施設は、すべてが人間のサイズではなかった。
少なくとも、自分の等身を考えた時、ナリュー・コンクルード(黒き刃の闇妖精・f41995)は其処が人間の住処であるとは思えなかった。
ゲームプレイヤー、その現実世界での己は多くの本を読んだ。
その中に巨人の御伽噺にも似た物語があったかもしれない。
彼女には、この光景がそのような巨人の住居にも思えたのだ。けれど、それは『流田結那』の抱く感想であって、ナリューの思い描くものではなかった。
「ほう? これはまた大きいダンジョンだな」
グリモア猟兵の言葉では謎の美女の幽霊が徘徊しているという。
だが、この地下施設ダンジョンの在り方を見ていると、自分たちと等身大の幽霊がでてくるとは限らないと思っていた。
しかも、幽霊を認識すれば即死トラップでる飛翔する水晶体の光線が襲ってくるのだという。当然光線は『即死バグ』を付与されている。
かすめるだけでも当然のように一撃死してしまうだろう。
だからこそ、『即死バグ』を一時的に無効化するアイテムを手に入れなければならないのだ。
とは言え。
「俺にとっては『即死バグ』を無効化したところで、即死するのには変わりなさそうな気もするが……」
そう、己は『紙装甲』である。
元より一撃貰えば終わりなのだ。そういう意味では『即死バグ』無効化アイテムを取る必要性はないように思えた。
だが、彼女はゲームプレイヤーである。
変わったアイテムが入手できるというのならば、無駄にならないと考えてしまうのだ。
「虎子を得るには、というやつだな。とはいえ、相手がではなく俺が感知すると発動する罠か……」
そう、謎の美女の巨人の幽霊。
あちらが自分たちを認識して罠が作動するのではなく、自分たちが認識すると罠が発動するというなんとも悪質な罠である。
「隙を見て、とはいかないか」
ナリューは巨大な美女の幽霊を認識する。
すると即座に飛翔する水晶体が光線を発してくるのだ。だが、ナリューは構わなかった。
そう、躱す、ということだけに徹するのならば、ナリューは捉えがたき存在であった。
「その程度か!」
ユーベルコードに輝く瞳。
迫る光線の間隙を縫うようにしてナリューは身を翻す。
完全回避。
それがナリューのユーベルコード。
そして、躱すだけではない。リバースカンターと呼ばれる回避と同時に繰り出す黒刃の一撃が飛翔する水晶体を砕くのだ。
さらにナリューの体が壁へと飛ぶ。
「何も足場は地面だけではない」
壁を蹴る。
そう、立体的な動き。2次元的な動きではどうしたって飛翔する水晶体からの光線を躱せない。だからこそ、壁を利用して跳躍するのだ。
その3次元的な動きに水晶体たちが翻弄される。
さらに恐るべきことにナリューは水晶体すら足場にして跳躍する。
目指すは巨人の美女の髪。
そこに宝珠めいた髪飾りがある。それこそが『即死バグ』を無効化することのできるアイテムなのだ。
手を伸ばす。
「これか」
もぎ取るようにして宝珠を手に収めながら、乱舞するようにして迫る光線をナリューは躱しながら走る。
彼女にとって光線の一撃はスキル無しでも十分に躱せるものであったことだろう。
目的のアイテムを手に入れることができたのならば、後は疾駆するだけだ。
ダンジョンの最奥まで一気に走り抜け、ナリューは今回の事件の元凶たるバグプロトコルの元へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
いや、くぐりましたよね!?
川の向こう岸にタッチしてターンしてきましたよね!?
100mやべー型でよかったですよ!
50mなら帰ってこれませんでしたよ!?
えっ?
急なシリアス!?
ですからラムネは在庫切れで……似てる?
んー……お二人のほうが可愛かった気がします!
って!
いくら勇者でも即死防御はできないですよ!
だってドラゴンなクエストの勇者パーティだって即死魔法で全滅しますし、
わたしみたいな可愛いだけの勇者では絶対無理です(どやぁ
いやそこは役割逆にしてくれるんじゃないんですか!?
不可能ないなら変わってくださいよー!
あっ、あっ、押さないでください!?
わかりましたから!【皇帝賛歌】しますからー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
……ふぅ、危うく|死線をくぐる《エイル様で昇天する》ところでした
メイドったらうっかり(てへぺろ)
何ですかルクス様その顔は
誰がやべーメイドですか
さて
地下に美女の巨人……というキーワードに引っかかってくるのは
クロキャのライスメキア様ですね
SOWにも|鳥のプロメテウス《鳥メテウス》様の際にお会いした皇女様がいましたね
どう思いますか?ルクス様?似ています?
まぁ私はルクス様を盾にして征くだけなのですが
え?ダメ?勇者力で即死を防御とかできません?
そうですか
では役割分担で
私が髪飾り取ってきますのでルクス様は囮役で
え?何も変わってない?
そんなことありませんよ
メイドに不可能はありませんので!
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は息を整える。
荒い息は何処か艷やかであるように思えた。
紫の髪の一筋が頬に張り付いているのは、汗を浮かべていたからだろう。
なんとも言えない空気感の中、彼女は吐息一つで整え、なんでもない風を装った。
「……ふぅ、危うく|死線をくぐる《『エイル』様で昇天する》ところでした」
「いや、くぐりましたよね!? ていうか、三途の川を渡りかけていませんでしたか!」
そんなステラにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思わず突っ込んでいた。
ボケとツッコミ。
時折逆転する漫才めいたやり取りはいつものことであるが、これもまたルクスのシリアスアレルギーを緩和するためのやり取りである。
……そうだよね? そうだと言って。
「川の向う岸にタッチしてターンしてきましたよね!? 100mやべー型でよかったですよ! 50mなら帰ってこれませんでしたよ!?」
「メイドったらうっかり」
てへぺろ。
ステラのてへぺろにルクスはなんとも言い難い顔をしていた。きっつ。って思ったわけではない断じて。
「なんですかルクス様、その顔は。誰がヤベーメイドですか」
言ってないが、言っているようなものである。
「さて、それは横に置いておいて。地下に美女の巨人……というキーワードに引っかかっているのですよ」
「何の話です!? 急なシリアスですか!?」
「いえ、クロムキャバリアの『ライスメキア』様を想起させるワードだな、と思いまして。スペースオペラワールドにも|鳥のプロメテウス《鳥メテウス》様の際にお愛した皇女様がいましたね?」
「本当に何の話です!? シリアスならお断りしてますよ! ラムネが在庫切れなのえ!」
「にていませんか?」
あれ、とステラが指差すは謎の美女の幽霊である。
ただし、巨人。
言われてみれば、とルクスは頷く。
クロムキャバリアの地下帝国『バンブーク第二帝国』の皇女『ライスメキア』とスペースオペラワールドの『惑星バブ』の『ライスメキア3000世』。
その二人に美女の幽霊は良く似ているように思えたのだ。
「んー……お二人の方が可愛かった気がします!」
幽霊だから血色が悪いように見えているのも要因の一つかもしれない。
「そうですか……と、こちらが認識したせいでトラップが発動していますね」
「えっ!?」
「そう説明されたではありませんか。此方が幽霊を認識するとトラップが発動して水晶体が襲ってくる、と」
「そ、そうでしたっけ!?」
「はい、ですが、私はルクス様を盾にして進むだけなのですが」
「なーる……って、いくら勇者でも即死防御はできないですよ!」
「え? ダメ? 勇者力で即死を防御とかできません? できるものと思っていたのですが、では、役割分担と参りましょう」
ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
本当にこのメイドは主人が絡まないと有能すぎるメイドなのである。本当に。そこが唯一の欠点というか、最大の欠点というか。最大の長所っていうか。なんともごっちゃな、ピーキーなメイドなのである。
「大体ですね、ドラゴンなクエストの勇者パーティだって即死魔法で全滅しますし」
何の話?
「わたしみたいなかわいいだけの勇者では絶対無理です」
どやるルクスにステラは、すんっ……としていた。
「私が髪飾りを取ってきますので、ルクス様は囮で」
「いやそこは役割逆にしてくれるんじゃないんですか!?」
「そんなことございませんよ。メイドには不可能はございませんので」
「なら変わってくださいよー!」
いいから、とステラに背中を押されてルクスは水晶体の放つ光線乱舞するフィールドに押し出される。
「あっ、あっ、押さないでください!? わかりましたから!」
皇帝讃歌(コウテイサンカ)が響きわたり、ダンジョンに騒々しいドタバタ劇を繰り広げながら、二人はなんとか宝珠を手に入れてダンジョンの奥へと駆け抜けていく。
いや、本当に騒々しい。
というか、即死トラップという凶悪極まりない状況にありながらシリアスムードをぶっ飛ばすような騒々しさは一体何が原動力となっているのだろうか。
ルクスのシリアスアレルギーが発症するのが先か、それともステラが尊死するのが先か。それはまだ誰にもわからん――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
テッカ・ロールナイト
わ〜、おっきい。
…って、光線飛んで来やがったあああッ!急いで離脱して物陰に隠れるッ!
くそがッ!巨人の幽霊だなんて聞いてねぇ!?
あー、このままじゃ近付けねぇ。
なら作戦変更だ。
いくぜ、【スライムチェンジ】ッ!
スライムに変身したら、粘着力を増やして壁を登り天井に張り付くぜ。
俺の考えじゃ巨人幽霊は同じルートを徘徊してんじゃないか?ならさっき目撃した場所の上で待機して奇襲を仕掛けるぜ。
幽霊が来た気配を感知したら粘着力を減らして落下。ギリギリまで幽霊を見ないようにして髪飾りの宝玉を視界にいれたら伸縮してキャッチ&ゲット!
後は飛んだり伸びたりしながら光線を回避してトンズラだッ!頑張れ、俺ッ!
【アドリブ歓迎】
地下施設のダンジョンの中を徘徊する謎の美女の幽霊。
確かにその字面だけ見るのならば、なんともファンタジックなダンジョンと言えるだろう。
けれど、此処は『学園』と呼ばれる拠点なのだ。
どこか学園モノの雰囲気を残している地下施設にはアンマッチが過ぎるように思えただろう。けれど、怪談の一つと考えればそうでもないな、とテッカ・ロールナイト(神ゲー駆けるは、魔喰者の騎士・f41816)は思っていたのだ。
だがしかし。
「わ~、おっきい」
思わずテッカは見上げていた。
遭遇した謎の美女の幽霊。
その体躯。明らかに人のサイズではない。此方に敵意はなく、何か行動することはない。だがしかし。
光線が煌めく。
「……って、おわああああっ!?」
そう、即死トラップである。
この即死トラップの発動条件は謎の美女の幽霊を此方が認識した瞬間である。
なら、無視していけばよい。
だが、この先にあるボス、バグプロトコルの『即死バグ』を無効化するためには、その謎の美女の幽霊の髪飾りとして点在している宝珠をゲットしなければならないのだ。
認識すれば即死トラップ。認識しなければ宝珠をゲットできない。
なんとも悪辣なことである。
無理が通れば道理が引っ込むみたいなあれである。
「くそがッ! 巨人の幽霊だなんて聞いてねぇ!?」
テッカは光線に追われながら物陰へと飛び込む。
なんとか光線を放つ水晶体から逃れたが、このままでは近づくことができない。
「あんな馬鹿でかいんだったら、認識しないはずがないだろうが……あー、このままじゃ近づけねぇ」
どうする? とテッカは考える。
認識しなければ、あの宝珠アイテムをゲットするのは難しいだろう。だが、認識すれば飛翔体が飛んでくる。
二進も三進も行かない状況である。
いや、進めないというのならば進まなければよいのだ。
「スライムチェンジッ!」
テッカは魔喰技能【スライム変身】(イータースキル・スライムチェンジ)によってルビーのような赤い色のぷるぷるスライムへと変化させ、天上に張り付く。
そして視線を伏せる。
そう、あの謎の美女の幽霊はこのダンジョンを徘徊している。徘徊している以上、パターンがあるはずだ。
必ず通るルートがあるはずなのだ。
ならば、そのルート上の天井に張り付いて待ち伏せすれば言いのだ。
これならば、ギリギリまで近づくことができる。
「……やっぱりな!」
しばらく舞っていると気配がする。
大きなものが動くような気配。テッカは伏せていた瞳を見開く。いや、スライムだからどこに目があるのかはわからないが、ともかくテッカの伏せられた視界に映るの謎の美女の幽霊の髪。
瞬間、水晶体が飛翔する。
光線が乱舞する。
そのさなかをテッカはスライムの軟体なる体を天井から落とし、躱しながら自由落下で謎の美女の幽霊の髪へと手を伸ばす。
「これだなッ! ゲットだ!」
伸びるスライムの体。その腕部が髪飾りの宝珠をもぎ取る。
べちょ、と床に落ちた体を即座に変身解除でもって元のテッカの体に戻して走り抜ける。
「おわぁっ!? まだ光線ぶっぱしてくんのかよ!」
テッカを襲う水晶体の光線。
かすれば、それだけで一撃死だ。なんとしても躱さねばならない。
飛んだり跳ねたりしながら、さらにもう一度スライムへと変身し、その特性を大いに活用しながらテッカはなんとかダンジョンの最奥へと飛び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『さて、巨大な幽霊だそうだよ奏者!巨人の幽霊なのかなぁ?
もしかして昔ここに住んでいた人達なのかな?広いし、大きいし、
まさかキャバリアって事もないだろう。あ、でも家具はあるかなぁ?
うーん、まぁゲームだからねぇ、特に設定のないそういうものなのかもね?』
フェ~
笛型魔楽機で【楽器演奏】目を閉じ演奏に集中しながら進む事で幽霊を認識せず、【聞き耳】クレイドルが反響定位で周囲を認識し小枝子を誘導。
鎮魂曲を奏でよう。彼女たちがなんであれ、死した者達には、その御霊には安らぎがあってしかるべきだろう。
〈瞋憎喰〉にてこの|戦場内の《ダンジョン》彼女らの怨念執着を喰らい強制昇天させ、残った髪飾りの宝玉を回収する。
ホイッスル型へと変化している魔楽機『クレイドル・ララバイ』を咥えながら朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)はなんとも言えない気持ちになっていた。
いや、そう思うのは『クレイドル・ララバイ』が一方的にテンションを上げているからだ。
『さて、巨大な幽霊だそうだよ奏者!』
フェ~と息を吐き出す。
それはため息にも似たような音色であった。
けれど、『クレイドル・ララバイ』は構わず続ける。
『巨人の幽霊なのかなぁ? もしかして昔ここに住んでいた人達なのかな? 広いし、大きいし、まさか……キャバリア?』
このAI。
なんとも想像力の豊かなことであると小枝子は思った。
というか、即死トラップの発動条件が此方が謎の美女の幽霊を認識することであるから、大声で喋っていても問題ないというのは幸いであった。
音にも反応していたら、確実に今頃、小枝子たちは水晶体の放つ光線の乱舞に追い立てられていたことだろう。
場合によっては一撃死でクエストからはじき出されていたはずだ。
フェ~。
『でもまあ、家具なんかもないし、なんていうかキャバリア整備場って云われたら、それはそれで納得できる装いをしているしねぇ。うーん、まぁゲームの世界だからねぇ。特に設定のないそういうものなのかもしれないね?』
奏者はどう思う?
と『クレイドル・ララバイ』が問いかけてきても小枝子は解らない。
なにせ、小枝子は自分には破壊することしかできないと思っていたのだ。ならばこそ、彼のいうところの考察、というのには向いていないのかもしれない。
けれど、小枝子は自分がすべきことを理解していた。
あの巨人の謎の美女の幽霊を認識することが即死トラップの発動条件であるというのならば、見なければよい。
瞼を伏せる。
真っ暗な視界の中、演奏に集中するのだ。
それだけでは対象である謎の美女の幽霊を認識することはできなかっただろう。
だが、小枝子は理解していた。
物体を、存在を認識する術は視覚だけではないのだと。
そう、なんのために己が今笛を鳴らしていると思ったのだ。
反響定位というものがある。
物体に音波がぶつかり跳ね返ってくることで、その物体の大きさ、形、材質といったものを認識するのだ。
「……『クレイドル』、これは」
『うん、どうやらこれはホログラムに似た何か、だね。ホログラムではないが、しかして怨念や霊物質じゃあない』
そう、認識できる範囲では確かにそこに巨人の存在がある。
なのに、小枝子はそれが言葉通りの幽霊ではないと理解する。プログラム? ホログラム? だが、物体として存在している。
その不可思議な感触に小枝子は己が奏でる鎮魂歌が通り抜けていくような感覚を覚えたのだ。
『どうやら鎮魂歌を必要としていないらしい、彼女は』
「だからなんだというのだ。彼女達がそうでなかったから奏でることをやめるのか。そうではないだろう『クレイドル』。これはそういうものではない」
『おっと、これは失礼したね。けれど、反響定位でわかるだろう。あのアイテムと彼女の姿を出力しているモノの所在は』
「ああ、わかる」
小枝子は瞳を伏せたまま、反響定位によって知り得た位置へと歩み寄り、手を伸ばす。
それは樹になる果実に手を伸ばすようなものだった。
それほどまでに自然に伸ばした手に触れたアイテム……宝珠を手に小枝子は暗闇の中をしかし、迷うことなくダンジョンの奥へと踏破していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
内部構造から考えて…おそらく、幽霊の大きさ・罠の内容とかはそのまんまなんだろうな。レーザーも、少しのダメージとかでさ。
あ゛ー、バグプロトコルもふざけんな。どうやっても認識しちまうだろうが。
あと、妻たちのほうが美しいんだよ。
仕方ねえ。俺様の魔力度外視でいく。トリリオンと違って、寝たり食べたりしたら回復するしな!
また硝子のギルドペンで『一』を書いていって、空気を武器とみなして防御に活用する。まあレーザーに対する防壁結界みたいなもんだ。
それに、髪飾りの宝玉をとったら、そりゃあ一目散に奥へと走って、水晶体レーザーの範囲外へ出るようにする。
今回の土産話、とんでもねぇことになりそうだ。
地下施設。
その内部構造を考える上でヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)はあることに気がついていた。
徘徊する巨人。
謎の美女の幽霊と言っていたが、あれは確実に即死トラップを発動させるための姿だ。
巨大であればあるほどに此方は認識を強いられる。
そうすれば『即死バグ』を付与された飛翔する水晶体から放たれる光線は確実にゲームプレイヤーたちを襲う。
「本来なら光線のダメージは、最小のものに設定していたんだろうな……」
ヌグエンはこのダンジョンをデザインしたであろう存在の思惑というか、目的というか、そうした工夫に思いを巡らせる。
「あ゛ー、バグプロトコルもふざけんな」
こんなふうに意図していないダンジョン改変をされるなんて管理者側からすればたまったものではない。
ゲームプレイヤーを楽しませるために己たちは多くはないトリリオンを工面してあれこれ工夫しているのだ。
なのにバグプロトコルが為すのは『即死バグ』である。
まったくもって楽しませるつもりなんてない。
その思惑に彼は怒りを覚える。
そして何より。
「妻たちの方が美しんだよ!」
巨人の、謎の美女の幽霊。
認識せざるを得ない状況において己の妻よりもとは思わない。
「ええい、こうなったら力押ししかないってのかよ!」
手にした『硝子のギルドペン』でもってヌグエンは空気を再び己が武器としてみなす。
放たれる水晶体からの光線。
これを圧縮した空気によって光を屈折させて躱す。
膨大な魔力を消費するが、どうあっても巨人の美女の幽霊を認識してしまう以上、ヌグエンにはこれ以上の方策がなかった。
「トリリオンと違って、魔力は食ったり寝たりすれば回復するもんだしな! 今ここは! 俺様の場だ!」
限定権限:全ては俺様の意のままに(アトデアヤマリニイクヤツ)、というのは人様のダンジョンで使うのは気がひけないでもなかった。
だが、状況は逼迫しているのだ。
他人のダンジョンだからとか言っている場合ではないのだ。
「あの髪飾りか!」
光線を屈折させながらヌグエンはなんとか謎の美女の幽霊の髪に配された宝珠めいたアイテムをもぎ取る。
なんでこんなことをさせるのかという思惑は解らない。
けれど、それでもこの宝珠が『即死バグ』を一時的に無効化するアイテムだというのならば、得なければ続く最奥のボスバグプロトコルに対する対抗策にならないのだ。
「って、まだ光線打ってくるのかよ!」
ヌグエンは宝珠アイテムを手に入れた自分を更に水晶体が付け狙うようにして迫るのを振り返り、見やる。
「まったく今回の土産話、とんでもねぇことになりそうだな!」
なんとも仕事熱心なプログラムだ、と拭えんは思いながら乱舞する光線を退けながらなんとかダンジョンの最奥へと滑り込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『プロメテウス・キャレット』
|
POW : 炎の歌
見えない【炎を具現化したサイキックエナジー】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 鳥の歌
【己の骨格の一部】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【超人皇帝機形態】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ : 六番目の歌
ランダムなユーベルコード(執筆マスターが選択)をひとつ使用する。種類は選べないが必ず有効利用できる。
イラスト:すずや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ナイアルテ・ブーゾヴァ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
冷えて燃える。
燃えて凍える。
赤と青。
それは矛盾しているように思えたことだろう。燃える水が存在するように、凍る炎が存在するように。
「――」
声なき声が聞こえる。
軋むように体高5mほどはあろうかという巨体が動く。
『学園』の地下施設、その最奥にダンジョンのボスとして成り代わった赤と青の炎まとう骸骨地味たフレームを持つ巨人が立ち上がっていた。
そのすべての攻撃が『即死バグ』を付与されていることは言うまでもない。
巨体であることは、この戦場の何処にでも攻撃が届くということ。
『即死バグ』を有していることからも、距離を無意味にするのは対する猟兵たちにとっての脅威であったことだろう。
だが、猟兵たちは『即死バグ』を無効化するアイテムをすでに手に入れている。
とは言え、それは一定時間という短い時間でしかない。
この僅かな時間にすべてを掛け、赤と青の炎の巨人にしてバグプロトコルである『プロメテウス・キャレット』を打倒しなければならないのだ――。
ヌグエン・トラングタン
だーっ!魔力切れた!!
それもこれも、全部即死バグ仕掛けたバグプロトコルのせいだ!
(2章にわたって、ほぼ全域の空気固めてたらそうなる)
にしてもなぁ…燃える水はともかく。凍る炎の方は何となく親しみがあるだよな。俺様、遠距離攻撃はその属性だし。
が、今回は魔力切れたからなぁ、こっちでやるしか。最大打点的にも向いてら。
なんの攻撃が来るかわからねぇが…そこはさっき手に入れたアイテムの効果+鉄壁+硬化で凌いでやる。組合員之固さを舐めるんじゃねぇ!
しかもこのまま、UCで…今回は拳でやっとくか。殴りつける!
んで、これがボスなら…クエストから弾き出されるとか考えなくてもいいんでな!
(帰りに使う魔力もないし!)
「だーっ! 魔力切れた!!」
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)はダンジョンを踏破するために多くの魔力という名のリソースを使い切ってしまった。
そうしなければ踏破できぬ悪辣なる罠の仕掛けられたダンジョンである、というところに思い憤ることはない。
けれど、バグプロトコルのボス……赤と青の炎纏う巨人『プロメテウス・キャレット』は打倒せねばならない。
まったく持って面倒なことである。
それもこれも全部『即死バグ』なんてものを仕掛けたバグプロトコルのせいである。
「――」
声なき声。
眼の前の巨人『プロメテウス・キャレット』に意志があるのかないのかどうにもヌグエンには判別がつかなかった。
燃える氷。凍える炎。
その二律背反を抱える巨人の有り様にヌグエンはなんとなしに親しみを覚えてもいた。
「俺様に似たような属性を持っていやがって……とは言え、今回は魔力切れだ……っ!?」
吹き荒れるは炎。
青い炎まとう腕がヌグエンを襲う。
それは不可視なる衝撃だった。いや、ヌグエンには、それがなんなのか理解できていた。
「似たような、とは言ったが、ここまでそっくりかよ!」
『プロメテウス・キャレット』の身に纏う炎に密着した『プロメテウス・キャレット』が己が武器と認識したものすべてを念動力で操っている。
不可視なるは、それが空気であるがゆえ。
そう、これまでヌグエンがダンジョンを踏破するために扱った空気を『プロメテウス・キャレット』は自在に操り、不可視の鉄槌としてヌグエンを打ち据えたのだ。
軋む骨身。
だが、ヌグエンは不敵に笑う。
同じ技。同じ使い方。
ならば、空気を防御にも使うことは容易に想像できただろう。
「ったく……『即死無効』のアイテムがなかったら、いまので俺様は一撃死かよ。ったく、たまらねぇな!」
仮に『即死バグ』を無効化できていたとしても、『プロメテウス・キャレット』の一撃は凄まじいの一言に尽きる。
骨身が此処まできしみ、骨に罅が走っている。
ヌグエンは理不尽なる硬さでもっている。それをして、この痛み。このダメージ。
「しかも防げるのは良くて二撃と来たもんだ……だがなぁ! 組合員の固さ、舐めるんじゃねぇ!」
踏み込む。
己の握りしめた拳に込められるは戦意。
例え、己の強固なる防御を『プロメテウス・キャレット』がぶち抜いてくるのだとしても、それでもヌグエンは笑う。笑って拳を握りしめる。
此処まで痛みを覚えたのはどれくらいぶりだろうか。
だからこそ、攻撃的な感情が燃え上がるのをヌグエンは感じたことだろう。
「避けられるなら避けてみろ!」
それに予備動作は必要なく(ミキワメテミロ)、ただ拳を瞬時に『プロメテウス・キャレット』へと叩き込む。
ただそれだけだ。
それだけの単純なる一撃。
振り抜いた一撃が『プロメテウス・キャレット』のむき出しになった頭蓋へと叩き込まれる。
それは奇しくもヌグエンへと打ち下ろされた空気の鉄槌と似た一撃であったことだろう。
やられたのならば、やり返さなければならない。
それがヌグエンの戦意の顕れであったことだろう。
赤と青の炎がフィールドに吹きすさぶ。
だが、それ以上にヌグエンの拳が響き渡らせる轟音がバグプロトコルと猟兵との戦いを知らしめる――。
大成功
🔵🔵🔵
シアン・ループス
ちょっと乗り遅れたけどボス部屋に失礼しますよっと。
うーん、骸骨だし不定形だし、僕の蜘蛛糸のデバフは効果薄そうだねぇ。
それならここからは聖剣士として頑張りますか。
グラファイトブレイドを構えて突撃。
骨格の一部が形態変化、ってのはなんか大きくなったりするのかな?
即死無効アイテムを使用。
プロメテウス・キャレットの攻撃動作を、『軽量化』した防具の俊敏力でぎりぎりで回避しながら、【スキルクロス・リユニオン】で『マキシマムカウンター』を決めていこう。
一撃当たってもただのダメージで済むなら安いもんだし、まあそこまで緻密に回避はしないけど。
だけど、巨体で攻撃も当てやすいねぇ。死にゲーは回避してなんぼでしょー。
すでに戦いは始まっていた。
ダンジョンである『学園』地下施設の最奥。
そこに座す今回の事件の元凶たるボスバグプロトコル。『プロメテウス・キャレット』と呼ばれる体高5mほどはあろうかという赤と青の炎に包まれた巨人。
その一撃が猟兵を捉えた瞬間、シアン・ループス(デバフ聖剣士・f42306)は最奥にたどり着いていた。
「おっと、乗り遅れたけれどボス部屋に失礼しますよっと……うーん、骸骨だし不定形だし」
なんとも、とシアンは『プロメテウス・キャレット』の容姿を見やり首を傾げる。
己はデバフを基軸にして戦う聖剣士である。
その起点ともなる蜘蛛絲がどうにも効果が薄そうだと彼は判断し、グラファイトブレイドを構える。
その動きに呼応するようにして『プロメテウス・キャレット』の頭蓋が消え失せる。
それは猟兵の一撃によってひしゃげたがゆえに失われた、のではなく、敢えて消費することによって己が力を強化するモーションのようにもシアンには思えた。
「なになに、なにするつもりー?」
「――」
声なき声が上がる。
そこに意志があるようにはシアンには感じられなかったが、しかし体高5mの巨人の体躯を包み込むのは異形なる機械の体躯。
巨人であった『プロメテウス・キャレット』の体躯をさらに一回り大きくしたかのような巨体。あちこちに天使の翼めいた装飾が施された巨腕と人型の顔。
咆哮が響き渡った瞬間、振るわれる巨腕の一撃がシアンをへと迫る。
瞬時にシアンは理解しただろう。
あの一撃は『即死バグ』を無効化して有り余る威力を持っている、と。
故にシアンの瞳がユーベルコードに輝く。
己の軽量化した防具の俊敏性を信じる。踏み込む速度は振るわれる巨腕の一撃よりも速い、と正しく認識していなければ、ただ一撃に向かって走るだけの行為だった。
これは捨て身。
正しく捨て身だ。
己が身を顧みない踏み込みこそが、カウンター技能と組合わさり、まったく新しいスキルへと変貌を遂げる。
スキルクロス・リユニオン。
捨て身とカウンターを組み合わせることによって編み上げられる独自の技能への昇華。
「マキシマムカウンター」
それが新たなるスキル。
本来ならば同時に発動しないスキル。捨て身の踏み込みが己の俊敏性をさらなる極地へと至らしめ、その加速によってられた一撃がカウンターという相対的な威力の向上を助けるのだ。
頬をかすめる巨腕の一撃。
『即死バグ』無効化アイテムがなければ、今の一撃でシアンはクエストからはじき出されていただろうし、遺伝子番号を焼却されていただろう。
だが、そうはならなかった。
アイテムによる即死無効。
そして、ユーベルコードの輝き。
「巨体っていうのは当て易いねぇ」
シアンはどこか間延びしたような声を上げながら、己がグラファイトブレイドの一撃を『プロメテウス・キャレット』の巨体へと叩き込む。
それは超人皇帝機たる巨腕を打ち砕き、その核ともいうべき炎に包まれた骨格へと吸い込まれる。
衝撃が走る。
それはカウンターによる痛烈なる一撃。
言ってしまえば、確定クリティカルヒット。シアンはさらに捨身の一撃によって威力を増大させている。
「死にゲーは回避してなんぼでしょー」
頬にひりつく痛みを覚えながら、まだ死んでいないのならば己の勝ちだというようにシアンは『プロメテウス・キャレット』の腕を断ち切るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
テッカ・ロールナイト
あの半分こ怪人がボスって訳か。全攻撃が即死らしいが、手に入れた宝珠でそれも無効だぜッ!…まあ、一定時間だけらしいが。
なら短期決戦だ。いくぜ、【カースドケンタウロス】発動ッ!
ハッハー!右手に『ゴッドブレイカー』左手に『日蝕』。
さあ、轢き潰してやるから覚悟しやがれッ!
高機動で一気に接近。
放たれた敵のサイキックエナジー攻撃もこの超重装甲である程度無視して突貫だ。
その攻撃は遠距離でこそ真価を発揮するんだろ?近付けばこっちのもんだッ!
そのまま轢き潰す、避けられたらすり抜け際に武器で攻撃よ。そのまま折り返して連続轢き逃げアタックだッ!
最早どっちがボスエネミーか分からない?じゃかましいわッ!
【アドリブ歓迎】
『プロメテウス・キャレット』の声無き咆哮が響き渡る。
「――」
それは意味ある言葉に思えなかった。
ただ猟兵たちの与えるダメージに反応しているだけに過ぎなかったのかも知れない。それほどまでに意味のない方咆哮だった。
だが、脅威であることに変わりはない。
迫る炎は見えず。
そして、その炎は『即死バグ』を付与されているがゆえに、回避しようのない一撃死として放たれていた。
「なるほどな。あの半分こ怪人がボスって訳か」
テッカ・ロールナイト(神ゲー駆けるは、魔喰者の騎士・f41816)は片腕を喪った『プロメテウス・キャレット』を見上げる。
体高5mはあろうかという巨体。
正しく巨人とも言うべき姿である。
しかも『即死バグ』。見えない炎。どれもがプレイヤー側にとっては最悪のシナジーとなって発揮されているのだ。
「だが、手に入れた宝珠で一撃死は無効だぜッ!」
とは言え、一定時間だけだということをテッカは理解している。
なら、やるべきことはただ一つ。
「短期決戦と行こうか!」
走り出す。そのフードの奥で禍々しい気配放つ双眸が煌めいた。
「超・重・装・甲ッ! 魔喰技能【人馬呪体】(イータースキル・カースドケンタウロス)!!」
超重装甲型高機動ケンタウロス形態へと変貌したテッカがフィールドを疾駆する。
一気にスピードに乗ったテッカに迫る無数の見えぬ炎。
だが、そこに『即死バグ』が乗っていないというのならば、テッカは恐れることはなかった。確かにダメージはあるだろう。
けれど、この重装甲である。
多少のダメージなど無視できるのだ。
そして、それを示すようにテッカの体が巨体へと飛び込むようにして突撃する。
「さあ、轢き潰してやるから覚悟しやがれッ!! ハッハー!!」
チェーンソー型エンジンブレイドとダイカタナの二振りを構えたテッカが一気に『プロメテウス・キャレット』へと迫る。
すでに片腕を喪った巨人は防戦一方になるだろう。
「やっぱりな! この見えない炎ってのは遠距離でこそ真価を発揮すると見た! なら、間合いが近ければ満足に使えないってわけだ! ならよ!」
そう、後は轢き潰すだけだというようにテッカは構えた二振りの武装と共に巨体に激突する。
火花散る凄まじい激突。
ぎりぎりと炎とチェーンソー型エンジンブレイドがせめぎ合う。
ここまできてなんという力だろうか。
片腕を喪ってなお、こちらの突撃に耐えている。
「さすがはボスと言っておこうか! だがなよぉ! 俺だって負けはしねぇんだ! おらあああッ!!」
テッカは咆哮する。
その姿は装備品と相まって、あまりにも邪悪極まる姿であったことだろう。
どちらが悪役かわかったものではない。
ともすれば、他のゲームプレイヤーから誤解すら受けかねない姿。
「はっ、どっちがボスエネミーか分からないなっ、って、じゃかまいしいわッ!」
見た目のことを割と気にしているのだろう。
テッカはセルフでツッコミながら、それでも十字に交差させた己の武装を振り抜く。
その斬撃は『プロメテウス・キャレット』の胸骨に深々と傷を残し、一気に巨体を押し切って吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
…赤と、青の炎
『こいつは驚いた。奇妙な縁があったものだねぇ奏者!』
ええ。…縁か、敵前ですが、ならばあれを歌うしかないでしょう!
『ようし!今日は大分奏者が演る気だ!!』
メガスラスター【推力移動空中機動】敵攻撃を回避し双剣変形フォースサーベルを敵目掛け【投擲】魔楽機ギター【早業】変形【楽器演奏】
|〈君の歌〉《オーバード》を【歌唱】する
己が【|闘争心《悪性》】と【|優しさ《善性》】の精神を消耗し、
…歌戦せよ、セラフィム!
赤と青の炎を纏うセラフィムを召喚!
クリスタルビットで【オーラ防御】無敵斬艦刀で【重量攻撃】
『さぁ奏者、まだ演じられるだろう!!』無論だ!!
【継戦能力】クレイドルの指示と【瞬間思考力】で並列思考。
人工魔眼の動体【視力】で戦闘を【見切り】
演奏と歌唱とメガスラスターで跳び攻撃を回避しつつ、
片手で鞘から騎兵刀を抜き、破壊呪詛物質開放。
セラフィムと敵の戦闘の間隙をつき、敵へ騎兵刀を投げつけ【解体】
攻撃を妨害する!
セラフィム!!高らかに、歌い上げろ!!!
セラフィムによる【追撃】を叩き込む!
凍れる炎。燃え盛る氷。
そう表現されるかのような赤と青。
眼の前の体高5mほどはあろうかという巨人の姿、この事件の元凶たるバグプロトコル『プロメテウス・キャレット』は咆哮する。
それは声なき声であったが、しかし、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)には歌のように聞こえた。聞こえてしまった。
「――」
そこに意志はない。
なのに、どうしてか、それが歌のように聞こえてしまったのだ。
「……赤と、青の炎」
『こいつは驚いた。奇妙な縁もあったものだねぇ奏者!』
『クレイドル・ララバイ』の言葉に小枝子は頷く。
「ええ」
縁。
そう言葉で表現するにはあまりにも数奇なる縁であったことだろう。
いくつかの偶然が重なれば、それは必然となるのだという。
ならば、このいくつかの縁が重なった時、それは何になるのだろうか。それは因縁というのだ。
「ならばあれを歌うしかないでしょう!」
『クレイドル・ララバイ』は驚いた。
だが、むしろ、望むところだと言うように負けじと声を張り上げた。どこか楽しげに聞こえたのは気のせいか。
『ようし! 今日はだいぶ奏者が演る気だ!! いいね、テンションが上がってきたのかな! 情熱が先走るなんて良い傾向だよよ!』
その言葉を無視して小枝子は踏み出す。
迫る咆哮。
それはユーベルコードとなって形を変える。
|霊鬼《グリム》が召喚される。
それは騎士のような形をした『プロメテウス・キャレット』と同じ体高を持つ存在だった。
「……あれは『セラフィム』!」
『ちょうどよいじゃあないか、奏者!』
「……歌戦せよ、『セラフィム』!」
小枝子の喉が震える。ギターへと変貌した『クレイドル・ララバイ』の弦をかき鳴らす。旋律と共に歌うは、君の歌(オーバード)。
己が|闘争心《悪性》と|優しさ《善性》を持って召喚せしめるは、やはり同じ『セラフィム』。
互いが激突する。
火花が散る。
だが、己の精神を消耗して呼び出す『セラフィム』たちは赤と青の炎を撒き散らしながら、霊鬼を討ち倒す。
「――」
「わからないか。この歌の意味を。この歌が響くことの意味を!」
振るわれる巨腕の一撃を小枝子は横っ飛びに推力任せに躱す。
体が軋む。
『セラフィム』を召喚したことによって精神が摩耗している。
けれど、構わない。己が人工魔眼が燃えるように熱を発していたとしても、構わなかった。己の存在意義は戦うことだ。破壊することだ。
ならば、此の戦い『プロメテウス・キャレット』が齎すであろう悲劇を破壊すること。
抜き払った騎兵刀が歌に震える。
ここには歌が満ちている。
『クレイドル・ララバイ』は思う。
あれなる巨人に足りないものは悪性でも善性でもない。
己が奏者は優しさこそが善性だと言った。ならば、悪性とは、闘争心だと。
だが、眼の前の『プロメテウス・キャレット』は、その名の通り分かたれている。何が足りないのかもわからぬ、怒りと悲しみの理由さえなくした存在を『クレイドル・ララバイ』は哀れに思った。
『君は何も覚えていないんだね。どこかに置き去りにしてきた、その理由を探しているのか……奏者!』
「『セラフィム』!! 高らかに、歌い上げろ!!!」
小枝子の精神がさらに消耗される。
霊鬼の如き『セラフィム』を数で圧倒する。
押し切るようにして『セラフィム』が赤と青の炎を撒き散らしながら『プロメテウス・キャレット』へと迫る。
そこへ小枝子は己が騎兵刀を投げ放つ。
片腕を喪っている『プロメテウス・キャレット』はもう片方の腕で防ぐしかない。
「怒りと悲しみの理由がわからぬというのならば、知ればいい!『セラフィム』! その権化を滅ぼせぇえええええっ!!!!」
小枝子の言葉に従うようにして『セラフィム』たちは悪性と善性宿す赤と青の炎でもって『プロメテウス・キャレット』の身に纏う炎を相殺していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナリュー・コンクルード
ああ、やはり巨人だったか、いくつか対処方法は浮ぶな
位置を調整すれば回避しやすくなるだろう
相手の行動は……殺傷力を増す?
……やはり俺にとってほぼ即死には変わらんか……一応アイテムも使ってはおくが
しかしこのままだと、ただの紙装甲の回避剣士に思われてしまうな
聖剣士らしい攻撃力と手数を見せるとしようか
『|意想外の侵入者《イントルード》』を絡めて回避しつつ懐に入り込み『レイザーファング』だ
斬撃と発生する斬撃波、それを|連続で叩き込む《アクセルコンボ》
距離を離しても斬撃波が届くだろう、それを相手の攻撃を避けつつ行う
幾ら慣れているとはいえ、あまり長時間続けたいものではないからな……速攻でカタをつけるとしよう
この『学園』と呼ばれた拠点の地下施設。
その寸借がおかしいとナリュー・コンクルード(黒き刃の闇妖精・f41995)は思っていた。
あまりにも広すぎる通路。
フロアをつなぐ扉。
そのどれもが人間のサイズではなかった。
疑念が推測に変わったのは、あの巨人の女性の幽霊だ。明らかに人間とは違う体躯。人の三倍はあろうかという巨体。
まるで、誂えたかのようにこのダンジョンの寸借とあっていたのだ。
ならば、と思っていた。
「ああ、やはり巨人だったか」
バグプロトコル『プロメテウス・キャレット』の威容を認め、ナリューは頷く。
人の三倍はあろうかという体高5mほどはあろうかという巨躯。
吹き荒れる炎は、触れれば『即死バグ』で一撃死。
けれど、今のナリューは謎の女性の幽霊から得た無効化アイテムがある。これがどれほどの効果があるかわからないが、ナリューにとってはどちらにせよ関係のないことだった。
「――」
歌が響いている。
いや、歌と言ってよいのかすらナリューには判別できなかった。
骨格の一部が失われ、『プロメテウス・キャレット』の体躯が異形の機械に覆われていく。
名を超人皇帝機形態。
巨腕めいた鋭い腕が現れる。片腕が失われ、頭蓋すら砕けれてなお、その異形の機械の咆哮は轟く。
「……無効化アイテムがあっても、やはり俺にとってはほぼ即死と変わらんか……」
ナリューの瞳がユーベルコードに輝く。
無効化アイテムすら無意味になってしまっているというのに、ナリューには怯えも恐怖もなかった。ナリュー・コンクルードには、そうした感情はない。
あるのは、眼の前の敵を倒すという目的と意志のみ。
そうだと、己の心が叫ぶようだった。
迷わない。
決断している。考えるよりも早く。
ナリューの体が踏み込む。
一瞬。
それは『プロメテウス・キャレット』にとっては意想外の侵入者(イントルード)めいた動きであったことだろう。
急加速の踏み込む。
振り下ろされた巨腕の一撃など遅すぎる。
地面が砕けた瞬間、ナリューは飛ぶ瓦礫の上を蹴って『プロメテウス・キャレット』へと迫っていた。
その死角から一瞬で、だ。
敵を認識できなければ攻撃ができない。此方を認識しようとした瞬間に生まれる空白地帯にこそナリューは踏み込む。
「悪いな。此処が俺の間合いだ」
煌めくユーベルコード。
放たれた斬撃波。
それは一瞬にして数百を越えていた。まるでひとつの斬撃波のように見えたかもしれない。それほどまでにナリューの剣速は常軌を逸していた。
なぜなら、ナリューの装備はほぼ紙装甲と言ってよいほどまでに削減されているのだ。
そして、ナリューのユーベルコードは己の装甲を減らすことによって異次元の攻撃速度……即ちDPSをはじき出すのだ。
「速攻でカタをつけるとしよう」
猟兵たちのユーベルコードによって相殺された赤と青の炎。
そのむき出しの骨格に叩き込まれ続ける無数の斬撃。
『プロメテウス・キャレット』は最後までナリューの姿を捉えることなどできないまま、ただひたすらに無防備に斬撃を受け続けるしかなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
はわわわわわ……。
ステラさんのお顔がシリアスです。なんか微妙に劇画チックです。
ラムネ、ラムネが足りませんー(かゆいかゆい)
あ、あう。撫でてもらえるのは嬉しいのですけど……。
ステラさん、最近わたしのこと|便利な盾《都合のいい女》だと思ってないですか!?
えっ。フォルさんを呼ぶ!?
ま、ままままままた紐なしですか!?
そ、それはもういやですー! かもん! 【ソナーレ】!
最大増幅で【アイネ・クライネ・ナハトムジーク】いきますよー!
わたしの演奏を聴けー!
ステラさん、シリアスタイマーがもう点滅してます!
今のうちにお願いしますー!
って、獣が人に?
ステラさんが普通のメイドに、みたいな感じでしょうか?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
プロメテウス……熾火、篝火、あるいは火種
|青《善性》と|赤《悪性》の間を揺らぎ
表情を変えるならば
まさしく炎
……ルクス様のシリアス耐性が限界のようです(なでなで
でも、これはキャバリアのフレーム?
生身では対抗できそうにありませんね
ルクス様を盾に……勇者力でなんとかなりません?
そうじゃないとフォルを呼ばざるを得なくなります
頑張れ!勇者!
その間に私は【トニトゥルス・ルークス・グラディウス】の準備を
一撃必殺です
メイドの気合い受けるがいい!
しかし|∧《キャレット》……
またここでもセラフィムを狙って?
|プロメテウス《怪物》が何を得ようとしているのか
さながら獣が人になろうとしているような?
「はわわわわわ……」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、なんとも言えない表情をしていた。
具体的に言えば、なんともコメディチックな表情で青ざめていた。後、なんか腕に蕁麻疹がひどい。かゆい。かいてはダメだけど、かゆい。
それほどまでにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の顔はシリアスだった。もっというと劇画調にさえルクスには見えていた。
お顔がシリアスすぎる。
ルクスはこういうのが苦手だった。ラムネをぼりっても足りないくらいだし、なんならラムネがない。
二進も三進もゆかないとはこのことである。
そんなルクスの思いを知ってか知らずか、ステラの顔は真剣だった。
「『プロメテウス』……熾火、篝火、あるいは火種。|赤《悪性》と|青《善性》の間を揺らぎ、表情を変えるならば、まさしく炎ということですか」
ステラは『プロメテウス・キャレット』の姿を認める。
体高5mほどはあろうという巨体であったのは、このダンジョンに合わせた結果なのか、それとも逆なのか。
どちらにせよ、答えはでない。
だが、ステラは思う。
『プロメテウス』という名の怪物。
悪性と善性に揺れ動くからこそ良心が生まれるというのならば、怪物は如何にして怪物というのか。
「――」
声ならぬ声は咆哮にも似た歌だった。
理解できぬ歌。
そこに意志はなく。あるのは眼の前に迫る猟兵を排除せんとする力のみ。
赤と青の炎は猟兵たちのユーベルコードによって払われている。むき出しの骨格。
「……あれは、キャバリアのフレーム?」
「ステラさん、シリアスかゆいです」
「生身では体高できそうにありませんね。ルクス様、盾……勇者力でどうにかなりません?」
なでなでとステラはルクスの頭を撫でている。
よしよし。
ルクスはシリアスのさなかにあって、しみる優しさにほわほわしていた。
いや、ていうか違う。
「今、盾って言いました? ステラさん、最近わたしのこと|便利な盾《都合の良い女》だと思ってないですか?」
「頑張れ! 勇者!」
ごまかしている。
勇者って言っておけばいいと思っていやしないか、このメイド。
「そうじゃないとフォルを呼ばざるを得ないのですが」
「えっ」
つまり、それはまた紐なしバンジーである。正確には嘴の先に咥えられてのダイブである。まだバンジーのほうが温情ある。
「そ、それはもういやですー!」
「では、なんとかしてください」
「ええい、かもん!『ソナーレ』!」
出現する『ソナーレ』が見えぬ炎を防ぐ。
壁となってそそり立つ巨人。その『ソナーレ』にルクスは触れる。アンプのようにルクスは己のユーベルコードを発露するのだ。
「わたしの演奏を聴けー!」
その言葉と共に吹き荒れる旋律が『プロメテウス・キャレット』の動きを止める。演奏を聞く、という行動以外を封じたのだ。
「ステラさん、シリアスタイマーがもう点滅してます! おはやく! 今のうちにお願いしますー!」
「ええ、さすがは勇者です。天使核、コネクト」
ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
心臓である天使核より流入したエネルギーを持って生み出されるは、迸る雷光の剣。
「メイドの気合、受けるがいい!」
振るう斬撃が『プロメテウス・キャレット』へと叩き込まれる。
軋む骨格のごときフレームがひしゃげていく。
その様を見やり、ステラはつぶやく。
其の名を。
『プロメテウス・キャレット』
何故、分かたれし存在が此処にあるのか。
「何を得ようとしているのか。怪物が、何を……さながら獣が人になろうとしているとでもいうのですか」
「え、獣が人に? ステラさんが普通のメイドに、みたいな感じでしょうか?」
もうシリアス限界、と言わんばかりにルクスが首を傾げている。
からかいなどない。
あるのは純度ひゃくぱーの疑問であったが、ステラは雷光の剣の代わりにスリッパを構えた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エミリィ・ジゼル
わお、またしても巨人。まあ美女が巨人だった時点でそんな予感はしていました。
即死バグ対策のアイテムは確保しましたが、あまり時間はありません。ここは短期決戦でいきましょう。
巨体には巨体。今回はサメダディにお願いします。
「カモン、サメダディ!あのデカブツに、サメダディの強さを思い知らせてやってくだち!」
サメ子に乗って機動力を確保しながらオブリビオンの攻撃を【第六感】で【見切り】つつ、UCで|すべてのサメの父《サメダディ》ことリヴァイアサン(メス)を召喚。
説得が完了したら、サメダディに巨人への攻撃をお願いします。
「いっけー!ハイパー水鉄砲!」
バグプロトコル『プロメテウス・キャレット』の威容を見やりエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は思わず感嘆の声を上げていた。
「わお、またしても巨人」
だが、その言葉とは裏腹に彼女はそんな予感がしていたのだという己の推測が正しかったことを知る。
この『学園』と呼ばれる拠点の地下施設。
そのあまりにも人の身の丈にあわぬ作り。
そして、道中で見た謎の女性の幽霊……その巨人のような体躯にエミリィは、予感していたのだ。
手には『即死バグ』を一定時間無効化するアイテムの宝珠。
一撃死がなくなったとはいえ、あまり時間を掛けてはいられない。
「やはり、此処は皆さんのように短期決戦でいきましょう。巨体には巨体。カモーン、サメダディ!」
エミリィの瞳がユーベルコードに輝く。
サメ召喚「すべてのサメの父」(シャークサモン・リヴァイアサン)。
説明しよう。
それはエミリィのユーベルコードであり、謎のかじできないさん空間からアポートされる海とサメの術を操る悪魔『すべてのサメの父』、通称リヴァイアサンの召喚を成さしめる力である。
とは言え、エミリィの命令に従わせるためには、それ相応の交渉が必要である。
すでにエミリィはなんらかの交渉を終えているのであろう。
「サメダディ! あのデカブツに、サメダディの強さを思い知らせてやってくだち!」
その言葉に答えるようにして召喚されたリヴァイアサンが咆哮する。
あ、ダディと言っていたがメスのようである。なんで?
「――」
響き渡るは歌のような意志宿らぬ咆哮。
同時に吹き荒れるは衝撃波であった。すでに猟兵たちのユーベルコードによって『プロメテウス・キャレット』の身を覆っていた赤と青の炎は剥がれ落ちている。
その骨格めいたフレームしか残していない。
だが、それが却って『プロメテウス・キャレット』の力を増幅させる。
細い骨のような腕を振るうだけで生み出される衝撃波。
それは圧倒的な速度と数とでもってエミリィに襲いかかる。
「おっと! 即死無効とは言え、あたったら痛いやつじゃないですか!」
召喚されたサメの背びれをつかんでサメぐるみを着込んだエミリィがフィールドを疾駆する。
己が囮になることによってサメダディことリヴァイアサンの攻撃の隙を生み出しているのだ。
「と言っても、圧倒的DPS! 攻撃の手数と一撃の重さが釣り合ってなくないですか? でも、やれるんですよ、サメダディならね!」
説得という名の煽て。
いや、本心からの言葉であったことだろう。敵の炎は消えかけている。
ならば、鎮火させるのならば今! と言わんばかりにエミリィは『プロメテウス・キャレット』へとヒレの先をビシィっと指す。
「さあ、今ですよ! いっけー! ハイパー水鉄砲!」
エミリィの言葉と共にサメダディから放たれるは激流のごとき水圧をもった一撃。
それは『プロメテウス・キャレット』の放った衝撃波すらも吹き飛ばしながら、その巨体をも討ち倒す。
強烈に過ぎる水圧。
それは時として、あらゆるものを切断する威力を発揮するだろう。
正しく今のサメダディの一撃は高水圧のカッターそのもの。
打ち込まれた一撃が『プロメテウス・キャレット』の骨格を寸断し、その巨躯を傾がせるに至るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
明和・那樹
●WIZ
これがこの即死バグダンジョンの主のようだけど…本来居たはずのボスと成り変わったのなら、巨人サイズだった迷宮の謎はまた深まるところか
もしかしたら、エイルが地下施設から遠ざけさせたアイン達が図書館で何か見つけているかもしれないし、さっさと倒して帰還…これは歌?
言語は分からない
けども、何故か聞き入ってしまう歌詞が頭の中に…危ない!
奪った髪飾りのお陰で即死攻撃を無効化出来たけど、これでワンミス
まだ効力が残っているかは受けてみなければ分からないから、実質これで安全策は喪ったも同然と考えていいだろう
だけど…だからこそ、現実と同じで失敗が一切許されないひりつく緊張感が最高に堪らない
初めて遭遇したバグプロトコル戦で覚悟した死の瞬間
絶体絶命の中で猟兵に覚醒して倒せた時の言葉に言い表せない達成感
灰色の現実には無い自らの手で未来を切り拓く悦びで、バグプロトコル狩りを始めたとも言っていいけど…今は違う
帰るべき場所、そして仲間達…
それが今の俺…いや僕の歓びとなりつつある…
悪いけど、生きて帰らせて貰うよ!
巨体が傾ぐ。
猟兵たちのユーベルコードが明滅するたびに、バグプロトコル『プロメテウス・キャレット』の巨人の如き体躯が傾いでいく。
すでに片腕を失い、その頭蓋は砕けている。
身にまとっていた赤と青の炎は削ぎ落とされ、軋むフレームのような骨格には罅走り、水圧の一撃で倒れ込もうとしていた。
倒した、と誰もが思ったかも知れない。
けれど、明和・那樹(閃光のシデン・f41777)はまだだ、と思った。
まだ、倒れない。
僅かに残っている。
その力が残っているのならば、最後までクエストの成否はわからない。
自分たちがそうであるように、バグプロトコルにもまたHPゲージが0になるまで勝負はわからないものである。
燃え盛る炎。
赤と青の炎が、念動力を発露するように破壊された超人皇帝機の武装を骨格のごときフレームへと取り込んでいく。
機神でいた体躯を立て直すかのように更に巨大化していくのだ。
「やっぱりな……これは」
「――」
「歌……?」
那樹は、この即死ダンジョンの主となったバグプロトコルを見やる。
歌のような咆哮。意志宿らぬ声。
されど、それが歌であると那樹には認識できた。できてしまっていた。
だから、聞き入ってしまった。
言語がわからない。なんと表現していいかわからない。
得た即死無効化のアイテムがなければ、今頃自分はHPゲージを0にされていたことだろう。
「これでワンミス……!」
迫る巨腕の一撃がフィールドの地面を砕く。
壁面を吹き飛ばし、さらに那樹へと迫るのだ。追い込まれて更に力を発揮するのがゲームプレイヤーだけではないことを示すように『プロメテウス・キャレット』は意地を見せるように攻勢を強めてくる。
すでに安全策はないに等しい。
ひりつく。
己の心が、肌が、意識が。
一撃貰えば、死。
遺伝子番号を償却され、社会的に死ぬ。そうなれば、もう二度と此処にはこれない。それはもう己が死んだのと同然の事実であろう。
だからこそ、那樹は、この命のやり取りをしているという緊張感がたまらないと思ったのだ。
始めて遭遇したバグプロトコルとの戦い。
覚悟した死。
それを想起するのだ。そして、同時に思い出す。
あの時、己が猟兵へと覚醒し、バグプロトコルを倒したときの言い表せない達成感。
灰色の現実にはない、自らの手で未来を切り開いた悦び。
その悦びを味わうためにバグプロトコルを狩るようになったと言っても良い。
だが、今は違う。
衝撃が走る。
迫る『プロメテウス・キャレット』の咆哮。
ひりつくのは生命だけか。違うと思ったのだ。己だけではない。この『プロメテウス・キャレット』を捨て置けば、必ず多くの人々を害する存在に成長するだろう。
自分が帰るべき場所も。仲間たちも。
そのすべてが滅ぼされる。もう二度と会えないのだと思った瞬間、那樹の瞳はユーベルコードに輝く。
「パージ!」
己の装備をすべて外す。
手にした二振りのブレード以外の装備をすべて外したのだ。
加速する。
そう、敵が防御力を上げたというのならば、己はそれ以上のDPSでもって討ち倒すのみ。
振るう斬撃から衝撃波が束ねられていく。
それは圧倒的な加速によって得られた斬撃。
「――」
「何を言っているのかわからない。けれど、みんなが現実を忘れて楽しむことができるのが、ゴッドゲームオンランだ。みんなのために! それが今の俺……いや、僕の歓びなんだ……!」
だから、と那樹は迫る巨腕を躱しながら『プロメテウス・キャレット』へと踏み込む。
防御力を上回る圧倒的手数。
それによって取り込まれた超人皇帝機の装甲を引き剥がすように彼のツインブレードが叩き込まれていく。
そう、歓びが今己の胸の中にある。
また再び仲間たちと笑うために。
「悪いけど、生きて帰らせて貰うよ!」
ふるった斬撃が赤と青の炎を振り払った瞬間、巨人の体躯は弾け飛ぶようにして霧散するのだった――。
大成功
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