12
メリーメリー・バレンタイン

#アスリートアース #戦後 #キャンプ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アスリートアース
🔒
#戦後
🔒
#キャンプ


0




●素敵なバレンタイン日和
 本日、二月十四日と言えばバレンタイン。
 世には素敵なバレンタインイベントが目白押し! 素敵なホテルやパティスリーのチョコレートビュッフェにバレンタインアフタヌーンティー、不思議の国のチョコパーティなんかもあるだろう。そんな中、深山・鴇(黒花鳥・f22925)がグリモアベースを訪れた君達に案内したのは、アウトドアでのチョコレートな一日だった。
「アスリートアースのグランピング施設のひとつでね、バレンタインを過ごさないかって話なんだけど……どうだい?」
 このグランピング施設はオーソドックスなキャンプから、ラグジュアリーなドーム型テントにベルツリーテント、ヴィラなど宿泊客のスタイルや好みに合わせて選べる巨大施設。およそどんな我儘なプランでも叶えてくれると人気のスポットだ。
「今回はね、手作りチョコレートがテーマになっているそうだよ」
 手作りと言っても幅広く、それこそ凝ったチョコレートスイーツや料理を作るのもいいし、お手軽簡単! でも美味しい! なレンジを使ったものや混ぜて冷蔵庫で冷やすだけのものを作るのも楽しいだろう。
 勿論、ユーベルコードを用いて作ったって構わないと鴇は言う。
「要は、作ったものをきちんと食べればいいってことさ」
 気持ちが籠っているならば、それは自ずと美味しいチョコレートになるはずだ、とも。
「持ち込みも歓迎しているそうだから、こだわりの材料や器具があるなら持っていくのもいいんじゃないか?」
 調理器具やチョコレートの材料は揃っているし、宿泊用のアメニティなんかも充実している為、手ぶらで行っても問題ない。なんなら、このままふらりと向かったって充分に楽しめるはずだ。
「人数は一人でも大人数でも受け入れている施設だからね、気軽に出掛けてみたらどうかな」
 ペットの同伴も可能だからね、と鴇が笑いながら手のひらに煙のようなグリモアを喚び出して、ゲートを開く。
 行先はアスリートアースのグランピング施設、天気は快晴、夜は星空が美しく見える事だろう。
「いってらっしゃい、良いバレンタインディになるといいね」
 その言葉に背中を押されるようにして、猟兵達はゲートの先へと足を踏み出した。


波多蜜花
 閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
 バレンタインじゃん!!! って寝る前に三秒で思い付いたような内容ですが、楽しんでいただければ幸いです。
 グランピング施設を楽しみつつ、チョコレートなひと時をお過ごしくださいませ! 一章でチョコ作り、二章で作ったチョコを食べる、を想定しておりますが好きに過ごしてくださって構いません。トンチキだってどんとこい。

●プレイング受付期間について
 タグやMSページ記載のURL先にてご案内しております、参照いただけますと助かります。
 また、参加人数やスケジュールの都合、予期せぬ出来事によっては再送をお願いする場合がございます。なるべく無いように努めますが、再送となった場合はご協力をお願いできればと思います(この場合も、タグとMSページ記載のURL先にてお知らせ致します)
 オーバーロードで参加をご予定の方は受付期間前でも送っていただいて構いません。

●グランピング施設について
 超巨大グランピング施設です、オーソドックスなキャンプからラグジュアリーなグランピング施設まで、各種取り揃えて御座います。
 なんなら温泉とかある、無いものは無いのでは? の精神でプレイングかけてみて下さいね。

●できること
・一章
 グランピング施設で楽しくチョコ作り! が基本ですが、楽しけりゃいいんだよなのでチョコは作った! 遊ぶぞー! ってなっても大丈夫です。大抵のプレイングは採用予定です。時間帯はざっくり、朝から夕方まで。
 POW/SPD/WIZは気にしなくて大丈夫です。

・二章
 一章で作ったチョコを食べるぞ! が基本ですが、やっぱり好きにしてくださって構いません。バレンタイン要素があればいいんだよ、です。
 時間帯はざっくり、夕方~夜中まで。
 POW/SPD/WIZは気にしなくて大丈夫です。

●同行者について
 同行者が三人以上の場合は【共通のグループ名か旅団名】+【人数】でお願いします。例:【チョコ3】同行者の人数制限は特にありません。ペアの場合は人数表記はなしで大丈夫です。
 プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります(プレイング受付締切日はこの限りではありません、受付時間内に送信してください)
 未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。

 また、プレイングにてご希望があれば、二章に限り私が所持しております猟兵がお邪魔いたします。何かあればプレイングにてよろしくお願いいたします。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
155




第1章 日常 『キャンプめしを食べよう!』

POW   :    出来立てを沢山美味しく食べる

SPD   :    現地で何らかの食材を調達してくる

WIZ   :    キャンプならではの調理法に挑戦する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リュカ・エンキアンサス

晴夜f00145お兄さんと。
(壊滅的自覚無し味音痴&常時野宿派)
…キャンプ?
お兄さんこれ、キャンプじゃないよ、ホテルだよ
俺たちの住む場所はここじゃないと思う。ほらあの雪山に行こう

…え。これでいいの?
そんなものかなあ…
(落ち着かない

あ、うん、キャンプ飯ね
バレンタインだからチョコレート…
分かった。この鉄板にまずはチョコレートを流して
焼きそばにしよう
お兄さん知らないの
鉄板は焼きそばを作るものだよ

…しょうがないなあ
じゃあタコ焼きにする
野菜いっぱい入れるから体にいいと思う
(お兄さんが固まっている間にてきぱき作成
いや、たこ焼き好きでしょう?多分

後はキャンプだから…魚釣って猪狩ったら添え物にはなるでしょう


夏目・晴夜

リュカさんf02586
キャンプ飯と洒落込みましょう!

確かにホテル並みに豪華ですが…
ええ、私が住む場所ではないですね
ハレルヤに相応しいのはロイヤルな宮殿ですので!
雪山は春になったら行きましょうね
今は冬ど真ん中ですから、此処でキャンプ飯を楽しむのが正解です

バレンタインとは、ほろ苦くも甘くてクリーミーなハレルヤの人間性を讃えてチョコを食べる日です
なので今回は!
この鉄板と、溶かしたチョコで!チョコフォン、焼きそば…?
焼きそばは…ソース以外認めません
タコ焼きは…体に良くはないでしょ(偏見

まあ何を言っても最後には食べる事になるので
好きにさせつつ、チョコフォンデュの用意もしたく
折角のバレンタインですので!



●バレンタインとキャンプ飯
 アスリートアースの中でも広大な敷地を持ち、様々なニーズに応えるをモットーとしたグランピング施設。敷地内には一般的なキャンプ場からグランピング施設、更にそこからランクを上げたラグジュアリーな施設もあれば、ホテルのような造りをしたコテージやヴィラまであり、和風の宿まであるというのだからかなりのものと窺えるだろう。
「……キャンプ?」
「はい、キャンプですよリュカさん!」
 キャンプ飯と洒落こみましょう! とリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)を誘いやってきた夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は、目の前に広がるお洒落で豪華なヴィラを前にしてリュカに笑顔を向ける。対するリュカはといえば、怪訝そうな顔をしてキャンプと言われた場所をもう一度見てから、ゆっくりと首を横に振った。
「お兄さん」
「なんでしょう、リュカさん」
「これ、キャンプじゃないよ、ホテルだよ」
 残念そうなものを見る目つきで晴夜を見ながら、これは違うとリュカが主張する。
「確かにホテル並みに豪華ですが……ここはれっきとしたキャンプ施設ですよ」
「…………?」
「そんな理解できないって顔しないでください」
「しっかりして、お兄さん。俺たちの住む場所はここじゃないと思う」
「世界が違うみたいな事を……ええ、まあ私が住む場所ではないですね」
 ふむ、と考えるようにそう言って、晴夜がよくわからないシリアス顔をし――顔を上げて。
「ハレルヤに相応しいのはロイヤルな宮殿ですので!」
「そうだね。じゃあ、あの雪山に行こう」
「聞いておられました??」
 どうして宮殿が雪山になるのか、それに雪山はどう見てもくっそ寒そうだから断固拒否したい。いや、あの雪山にも山小屋風の宿泊施設があるようだが、リュカが考えている雪山キャンプは間違いなく過酷だと晴夜の勘が告げている。
「リュカさん、雪山は春になったら行きましょうね」
「春になったら雪山じゃないと思うよ」
「ええ、春になったらキャンプに適した恵み豊かな山になるでしょうね。今は冬ど真ん中ですから、此処でキャンプ飯を楽しむのが正解です」
「冬は冬で恵みがあると思う、シカとか、クマとか」
「うーん、野生! それはまた今度にしましょうね、今日はここです!」
「……え。これでいいの? 本当に?」
「そうですとも、このハレルヤが言うのですから間違いないです!」
「そんなものかなあ……」
 晴夜の話は話半分で……場合によってはゼロで聞いていいとして、と思いつつリュカは首を傾げつつも晴夜に誘われるままにキャンプ飯が作れるようセッティングされた調理場へと向かった。
「さてリュカさん! キャンプ飯、そしてバレンタインです!」
「あ、うん、キャンプ飯ね。あとバレンタイン」
 キャンプ飯とバレンタイン、何の関係も因果もないと思うけど、そういうものなのだなとリュカが頷く。
「そしてバレンタインとは、ほろ苦くも甘くてクリーミーなハレルヤの人間性を讃えてチョコを食べる日なのです!」
「ああうん、そうだね」
 いつものやつだね、とリュカが右から左に聞き流しながら相槌を打つ。
「なので今回は! この鉄板と、溶かしたチョコで!」
「バレンタインだからチョコレート……分かった、この鉄板にまずはチョコレートを流して」
「そうです! チョコフォ」
「焼きそばにしよう」
「ン、焼きそば……?」
 おかしい、途中までは完全にチョコフォンデュって流れだったはずだ。
「リュカさん、どうして焼きそばに……?」
 てきぱきとチョコと焼きそばの麺を用意しだしたリュカに、晴夜が疑問を呈す。
「お兄さん知らないの?」
「何をでしょう」
「鉄板は焼そばを作るものだよ」
 ならばチョコ焼きそばにするべき、完璧でしょう、という顔でリュカが晴夜を見遣った。
「確かにそうなんですけど……このハレルヤ、焼きそばは……ソース以外認めません」
「ソースも混ぜれば?」
「地獄かな? そうじゃないです、ソースオンリーしか認めません」
「……しょうがないなあ」
 あれ、私そんな我儘言ってます? 隠し味程度のチョコレートならありかもですが、隠し味にされるのは間違いなくソースの方でしょう、と晴夜が言おうとした瞬間、リュカが口を開く。
「じゃあタコ焼きにする。野菜いっぱい入れるから体にいいと思う」
「タコ焼きは……身体によくはないでしょ」
「大丈夫、野菜いっぱい入れるから」
 ついでに焼きそばの麺も入れてしまおうと、リュカが野菜を刻み麵も刻む。
「嘘でしょう、どうして人参とピーマン、セロリも刻んでるんですか」
「体にいいと思って」
「タコ焼きってキャベツだけじゃなかったです??」
「体にいいと思って」
 駄目だ、全てを体にいいと思ってで押し通される……!! と晴夜が戦慄しているうちに見る間に野菜もりもりたこ焼きfeat.チョコレートが出来上がっていく。いやそれ、野菜をチョコで固めているだけでは……?
「どうしたの、お兄さん。味見する?」
「あっ、いえ、ハレルヤにはやるべき事がありますので」
 どうせ食べる事にはなるのだが、その時間を先延ばしにしたい。あと普通にチョコレートフォンデュも食べたい。そう思った晴夜は鉄板の端っこを借り、フォンデュ鍋にチョコレートを無心で刻み入れた。
「タコ焼きはこれでいいかな、後は……」
「まだ何かするんです?」
 これ以上?? って顔で晴夜がリュカを見る。
「キャンプだから……魚釣って猪狩ったら添え物にはなるでしょう」
「魚はまだわかるんですけど、猪? 猪は添え物ではないのでは?」
 寧ろメインになるのでは? ジビエでは? と晴夜がリュカを見遣った頃には既に山へ向かう彼の背中だけが見えていたのであった。
「……まぁ、何とかなるでしょう」
 なんとかなーぁれ、の気持ちで晴夜はチョコフォンデュ用のフルーツをせっせと準備するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
【夜桜2】
心情)ほほう…ご存知だったかね、坊。へェ…なかなか坊も『なうい』桜になってきたじゃアねェか。もちろんさァ、最近(*神基準)の流行語だからなァ。ふむ、(己に結界を張る) ふむ、(器具に結界を張る) ふむ。(食材に結界を張る) いいじゃないかね、食べる役が必要なら俺が喚ぼう。坊は存分に腕をふるっておくれよ。
行動)おいでェ、ちびら。愛情こもった美味いモンが食えるぜ。ン? はいはい、しー、な。(調理台の下に隠れて脅かそうとする子どもらに、内緒のポーズをする) ひ、ひ。すぐバレたなィ。


雨野・雲珠
【夜桜2】

挨拶回りや付け届けの意味をこめたのはもはや昔の話。
昨今では、純粋にいろんなちょこを楽しむほうが
『なうい』そうです。
ふふふ、ご存じですか…なういを。
今時って意味なんですって!
えーへ(褒められて嬉しそう)

とはいえ(割烹着装備)
いくらちょこがおいしくとも(お手軽レシピ本どさっ)
ひとりで頂いたってつまらないですし(手の消毒オッケー!)

いかがでしょうかみさま。
ここはひとつ、片っ端から色々作ってみるというのは…
! はい、お任せください!
ブラウニー、がとーしょこら、生チョコ
ちょこがごろごろ入ったすこーん…
ン?

調理台の下の気配に気が付いて覗き込みます
クッキーの型抜き、手伝ってくださいませんか?



●今どきの、なういチョコレートの作り方
 目の前のラグジュアリーなグランピング施設を前にして、雨野・雲珠(慚愧・f22865)は目を瞬かせると後ろにいる朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)にくるりと振り向いた。
「見てください、かみさま! 随分と……豪華です!」
「そうだなァ、ちょっとした一軒家くらいあるんじゃね?」
 見た目は少しレトロな雰囲気漂うコテージ、中に入れば最新の調理器具が取り揃えられた現代テイストな部屋が広がっていて、雲珠があちこち見て回るのを逢真は|ちびすけ《軍馬サイズの子猫》に座って優しい目で眺めていた。
「ふぅ……わかったことがあります!」
「なンだい、言ってごらンな」
「このコテージ、とっても……はいてく、というやつですよ!」
「ひ、ひ、じゃあバレンタインのチョコレート作りってのも楽勝ってやつかい」
 逢真の言葉に、雲珠が大きく頷く。
「はい! バレンタインデーに贈るちょこれーと……挨拶回りや付け届けの意味をこめてちょこれーとをお配りしたのはもはや昔の話ですからね」
 えっへん、と胸をはった雲珠に唇の端を持ち上げ、逢真がほほう……と感嘆する。
「さすが、ご存じだったかね、坊」
「これでも帝都のハイカラな百貨店にお使いに行く事もありますし、様々な流行を耳にすることもありますから! 昨今では、純粋にいろんなちょこを楽しむ方が『なうい』そうです」
「へェ……なかなか坊も『なうい』桜になってきたじゃアねェか」
「ふふふ、かみさまもご存じですか……なういを。今どきって意味なんですって!」
 褒められて、嬉しそうにえーへ、えへへ、としている雲珠に、逢真が笑って口を開く。
「もちろんさァ、最近の流行語だからなァ」
 完全に神基準、いや逢真基準の最近である。この調子だと多分チョベリバとかチョベリグとかも最近の流行語って言いだすに違いない、最近の誤差範囲が広すぎるのだ。
 しかしこの場にツッコミを入れる人物はいない、つまりはボケとボケしかいないということ。たいへん。
「とはいえですね、かみさま」
 持参した割烹着と桜の精専用の三角巾を手慣れた手付きで身に付けた雲珠がキッチンに立って、逢真に視線を向ける。その視線を受け、逢真がちびすけから降りて己に結界を張った。
「いくらちょこがおいしくとも」
 どこからともなく取り出した、簡単美味しい! や、初心者でも安心! 等の文字が躍るレシピ本を雲珠がどさっと置いて。
「ふむ」
 相槌を打つ逢真がキッチンに近寄りながら、器具に結界を張る。
「ひとりで頂いたってつまらないですし」
 蛇口を捻り、水を出すと石鹼でしっかり手を洗い消毒液を塗布して揉み込み、完璧ですと雲珠がオペを行うお医者さんのように手をかざす。
「ふむ、ふむ」
 頷きながら逢真が食材にも結界を張り、なんなら自分にもう何重か結界を張り巡らせる。
「いかがでしょうかみさま。ここはひとつ、片っ端から色々作ってみるというのは……」
 逢真が飲食せぬ――出来ぬのは当然のことと受け止め、雲珠がどうせひとりで食べるならば色々作って楽しもう、残ったなら持って帰って仲のいい人達に食べて貰おうと提案する。
「いいじゃないかね、食べる役が必要なら俺が喚ぼう」
「わ、いいんですか?」
「いいとも、坊は存分にその腕をふるっておくれよ」
「! はい、お任せください!」
 そうと決まれば俄然やる気が漲って、雲珠がレシピ本を捲ってどれにしようかと悩みだす。そんな可愛い悩みを横目で見つつ、逢真が『食べる役』を喚び出す為に、まるで新月の夜に囁くような声を出す。
「おいでェ、ちびら。愛情こもった美味いモンが食えるぜ」
 その呼び掛けに応え、子どもの霊が姿を見せる。それは一様にみな楽しそうな顔で、くすくす、きゃあきゃあと人には聞こえぬ声を上げてキッチンでレシピ本を熟読する雲珠の方へと向かって行った。
「ブラウニー、がとーしょこら、生ちょこ、ちょこがごろごろ入ったすこーん……このふかふかココア蒸しパンというのも……」
 レンジで出来るのも魅力的だし、オーブンでじっくり焼くのも待つ楽しみが……と雲珠が考えていると、調理台の下の方に何かの気配を感じて首を傾げる。
 あ、ばれた? ばれちゃった? 驚かそうと思ったのにって顔をした子どもの霊達が逢真を見れば、逢真も唇の前に人差し指を立てて『しー』というジェスチャーをして見せた。
 それに『はぁい』と返事をして子どもの霊達が暫し大人しくなると、首を傾げたものの気のせいかと再びレシピ本に雲珠が目を落とす。
「クッキー……チョコチップがたっぷりのクッキーも美味しいですよね……」
 チョコチップクッキー! と子ども達が再び騒ぐので、その気配に今度こそ気のせいではない筈と雲珠が調理台の下を覗き込んだ。
「わあ、可愛いお客さんですね」
「ひ、ひ。すぐバレたなィ」
「ふふ、こんな可愛いお客さんなら大歓迎です! あ、もしよければクッキーの型抜き、手伝ってくださいませんか?」
 きっと一緒にすれば楽しいはずだと雲珠が子どもの霊達に話し掛ければ、悪戯しようと思ってたいたことなんて忘れたように霊達がはしゃぎだす。
 やがてキッチンにはチョコレートの甘い匂いが漂ってきて、逢真も少し鼻先をひくつかせる。
「ああ、甘くって子ども達が好きそうな匂いだねェ」
 他はよくわからねど、匂いだけはわかるかみさまは――桜と子どもの霊達が楽しそうにバレンタインのチョコレート菓子を手作りするのを眺め、慈愛に満ちた笑みを浮かべたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
『…ホテルのアフタヌーンティーか…(重要)』
押しかけ同居の露からの説明を聞いて少し考える。
豪華なホテルということは茶葉に期待が持てるはず。
まだ私の知らない茶葉を楽しむにはいい機会だろう。
「…泊りに行こうか。露」
…解ったからくっつくな。朝の紅茶が飲み難い…。

ラグジュアリーなホテルの部屋を選択して宿泊希望。
個別を選ぶつもりが露に全力で却下され共の部屋に。
露は何か作るつもりのようだが私は紅茶を飲みに行く。
「私はホテルの紅茶を飲みに行くが…君は?」
念の為に聞くが露は不満そうだ。何?共に作りたい?
…。仕方がないから共に作る。さて。作るのは何だ?

さっさとチョコを製作しホテルの紅茶を飲みに行く。
…。
ふむ。ゴールデンチップスにシルバーニードルズ。
シルバーティップス・インペリアルもあるのか…。
ん♪これは一ポットずつ堪能するしかないな。

初めは無論ストレートで。香を十分に堪能し一口。
そしてミルクと相性が良い茶にはミルクティーに。
…♪素晴らしい…。これは…。言葉が出てこない。
チョコも食べよう。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
みーちゃんの説明を聞いてから一旦帰宅して説明よ。
説明を聞きながらスマホで調べてたけど即答で参加ね♪
…グランピングって意味を調べてからウキウキしてる?
「わーい♪ レーちゃんとお泊りできるわ♪」

レーちゃんは豪華そうなホテル施設に泊まるみたいで…。
えぇー。個別?違うわ!嫌よ!駄目よ!一緒の部屋で!!
いそいそとチョコ作りする場所を探して…一緒に♪
って考えてたけどレーちゃんお茶のみに行くの?えぇー!
優しいから付き合ってくれたのはとっても嬉しかったけど。
チョコのことは聞いてなかったみたい。むぅ。むぅ。

完成したから今度はあたしがお付き合いする番よね~♪
すっごく豪華な場所で。凄い高そうなメニュー手に取って。
…なんだかUCみたいな良く解らない単語が沢山だわ…?
「え…? …これって全部が茶葉のお名前…なの?」
へーへー。とっても面白いわ。これって不思議な感じね。
…♪
飲むレーちゃんの表情は今までにみたことないお顔で。
えへへ♪また一つ可愛いレーちゃん見つけたわ♪
あ。あたしも同じの飲むわ♪



●欲張りバレンタイン!
「……グランピング?」
 グランピングって何かしら、とグリモア猟兵からの説明を聞いた神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)はスマホを片手に検索を掛ける。
「ぐらんぴんぐ、と……えーっと、グランピングとは、グラマラスとキャンピングを掛け合わせて作られてた造語……豪華で魅力的なキャンプ……ですって!」
 迷わずシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)を誘うと決め、スマホから顔を上げると今回の案内を務めるグリモア猟兵に向かって口を開いた。
「みーちゃん、みーちゃん、一回帰ってから来てもいいのよね?」
 みーちゃん、と呼ばれたグリモア猟兵はスマホを片手に真剣な顔をした露に勿論と頷き、ゆっくりどうぞと声を掛ける。
「わかったわ、またあとで!」
 善は急げ、思い立ったが吉日――とばかりに、露は一旦帰宅する為にグリモアベースを後にした。
「レーちゃん、レーちゃんっ! 一緒にグランピングに行きましょ♪」
「何だ、帰ってきたと思ったら藪から棒に……」
 押しかけ同居人がいなくて静かだと思っていたのに、という顔をして朝の紅茶を楽しんでいたシビラが露に視線を向ける。
「グランピングよ、レーちゃん! グランピングでバレンタインなのよ♪」
「グランピング……?」
「これよ、これ!」
 これ、と露が見せたのは今回泊まる施設のホームページ。興味なさそうにしつつも、シビラが露に半ば押し付けられる形でスマホの画面に目を通す。
「……ふむ、つまりは宿泊施設ということか」
「そうなの、レーちゃん! 素敵なベルツリーテントにヴィラ、自然を楽しみながらのバレンタインなのよ!」
「豪華なホテルもあるな」
「すーっごく大きな施設だって言ってたから、ホテルもあるみたいね♪」
 ふむ……とシビラがスマホの画面をスクロールし、とある文字を見つけて動きを止める。
「……ホテルのアフタヌーンティーか……」
 見れば、バレンタインの時期だけ行うというバレンタイン・アフタヌーンティーが開催されているのだとか。アフタヌーンティーということは、紅茶が飲めるということ。しかもこれだけ豪華なホテルならば、茶葉にも期待が持てるというもの……つまりは、まだ見ぬ茶葉を楽しむにはいい機会ということだ。
「ね、いいでしょ? レーちゃん!」
「……仕方ない、泊まりに行こうか。露」
「わーい♪ レーちゃんとお泊りできるわ♪」
 ウキウキでシビラの腕にくっついて、露が全身で喜びを表す。
「……解ったからくっつくな。朝の紅茶が飲み難い……」
 溜息をひとつ零しながら、シビラが紅茶を飲み切ると立ち上がる。
「準備をするぞ、露」
「手ぶらでも困らないらしいわよ~?」
「とはいえ、泊りだろう。着替えくらいは持っていくべきだ」
「それもそうかしら、わかったわ♪」
 荷物は少なく、けれど必要な物はしっかりと鞄に詰めて、いざグランピング――!
「えぇー、レーちゃんはホテルに泊まるの?」
「そうだが?」
 グランピングは……? 豪華で魅力的なキャンプは……? と、露が目を瞬かせる。そんな露を尻目に、シビラはてきぱきと手続きを進めてこの施設で一番豪華でラグジュアリーなホテルの部屋を選択していく。
 その隣で露は、あれぇ……? おかしいわね、レーちゃんと二人でお洒落なテントに泊まるつもりだったのに……? くっつけたベッドで一緒に寝転がって、キャッキャしようと思っていたのに……? と、どうしてこうなったのかしらという顔をしていたのだが。
「ああ、部屋は個別で」
 という、シビラの言葉で我に返った。
「個別? 違うわ! 嫌よ! 駄目よ! 一緒の部屋で!!」
 お洒落なテントでお泊り、という計画は駄目でも、一緒の部屋で寝るのだけは譲らないわ! とばかりにシビラに詰め寄る。その勢いに負け、シビラが同じ部屋でと言うのを満足気に頷きながら露が笑う。思っていたのとは違うけれど、レーちゃんとお泊りだものね、とご機嫌だ。
 カードキーを受け取り、希望した部屋へと向かう。ふかふかの絨毯が敷かれた廊下を通り、部屋の前でカードキーをかざしてロックを解除し部屋へと入れば、まるで王宮の一室かと思うような広さと調度品が目に入った。
「……中々いい部屋だな」
「すごーい、豪華だわ! 見て、レーちゃん! ここの窓から施設が一望できるみたいよ♪」
 どれ、と覗き込めば眼下に広がるのは湖と山、あちこちに点在するキャンプ施設、それからミニチュアのように見えるテントやコテージにヴィラの数々。
「本当に広いな」
「素敵ね~! あたし、お部屋を探検してくるわ!」
 洗面所にお風呂場、寝室にバルコニー、どこも豪華で露がキラキラと瞳を輝かせる。
「キッチンもあるのね、あるのね♪ ここでチョコレートも作れるのね、素敵!」
 レーちゃんにも教えなくちゃ! と露がシビラの元へ戻ると、シビラが鞄の中身を片付け出掛けようとしているところであった。
「レーちゃん? どこに行くの?」
「私はホテルの紅茶を飲みに行くが……君は?」
「えぇー! レーちゃん、ここにはチョコレートを作りにきたのよ?」
「……何を言っているんだ? 私はアフタヌーンティーを楽しみに来たんだが」
「あれぇ……?」
 これはチョコレートの事は全く、何ひとつ聞いてなかったらしいと露が気付く。
「むぅ、むぅ……」
 むぅ~~~とふくれっ面になった露に、シビラが溜息を落とす。
「言いたい事があるなら言え、露」
「……あたし、レーちゃんと一緒にバレンタインのチョコが作りたいわ!」
 むぅ! と拳を握った露に、これは無視して行くと後々厄介なことになるなとシビラが察する。
「……わかった、なら作ってから行こう」
「ほんとに!? わーい! レーちゃんとチョコレート作りよ♪」
 今泣いた烏がもう笑う、とはこの事。すっかり機嫌を治した露がシビラをキッチンへと引っ張っていく。
「引っ張るな……で? 何を作るんだ」
「えっと……難しくないチョコレートケーキがあるの♪」
 これよ、と露がスマホをタップして見せたのは電子レンジで作れるというガトーショコラ。
「ふむ……電子レンジで加熱し、混ぜる……手間がかからなくていいな」
 いそいそと露が用意してきた揃いのエプロンをシビラに手渡し、着たのを確認して満足そうに笑い、調理開始よ♪ と材料をキッチンのカウンターへと並べていく。製菓用のチョコ、バター、砂糖に卵、それと牛乳。耐熱ボウルに向かい、小さなおはじきのようなチョコレートを入れていく。
「包丁も使わなくていいのか」
「そうよ~♪ 泡だて器で混ぜるくらいかしら」
 露の言葉通り、チョコレートを入れた後はバターをボウルに入れてレンジで加熱し、取り出した後に砂糖を入れてよく混ぜ合わせる。それから溶き卵を数回に分けて混ぜ合わせたあと、牛乳を少し加えて更に混ぜるのだ。
「ここまで出来たら、あとは型に流し込むだけよ~」
 クッキングシートを敷いた型に流し込み、再び電子レンジで加熱をすれば出来上がったも同然。あとは冷蔵庫で冷やして固まるのを待つだけ――!
「これで終わりか?」
「そうよ♪ とっても簡単でしょう?」
 拍子抜けするくらいだな、とは思ったけれど、早く紅茶が飲めるならそれに越したことはない。冷蔵庫に仕舞われたのを見届けると、シビラは今度こそアフタヌーンティーを楽しむ為に、露を連れてホテルのレストランへと向かった。
 バレンタイン・アフタヌーンティーと言うだけあって、レストランの入り口から中に案内された途端に甘く芳醇なカカオの香りが鼻腔を擽る。
「美味しそうな匂いね、レーちゃん!」
 手作りチョコレートが完成したからには、今度はあたしがお付き合いする番よね~♪ と露が笑いながらシビラを見ると、彼女の意識はディスプレイとして並べられている紅茶の缶へと釘付けだ。
「レーちゃん?」
「ん、ああ」
 遠目から見ただけでも、ストレートにブレンド、フレーバーティーそれぞれの種類も豊富で、来た甲斐がある品揃え。席について、お代わり自由だという紅茶のメニュー表を開けば、そこに躍る文字はシビラの胸を高鳴らせた。
 そんなシビラに対し、露はメニューを片手にぱちぱちと目を瞬く。だって、なんだかユーベルコードみたいなよく解らない単語が沢山並んでいたのだから。アールグレイにダージリンくらいなら露にだってわかるけれど、更にそこから色々と書かれているのだから首を傾げてしまうのも致し方ないことだろう。
「ふむ。アッサムのゴールデンチップスに、ダージリンのファーストフラッシュ……これはシルバーティップスだな。シルバーニードルズに……む、ダージリンのシルバーティップス・インペリアルまであるのか……」
「レーちゃんが新しいユーベルコードを……?」
「何を言っているんだ露、これは全部紅茶だ」
「え……? これって全部が茶葉のお名前……なの?」
「そうだ、紅茶の茶葉は摘む時期や製法によって味わいが変わるからな」
「へーへー。とっても面白いわ!」
「初めは無論ストレートで、だな」
「あたしも! あたしもレーちゃんと同じのがいいわ♪」
 どうせなら、シビラと同じ味を楽しみたいと露が笑った。
 早速ポットで運ばれてきた紅茶を品のいいティーカップに注ぎ、香りを充分に堪能してから一口。
「……ん♪」
 鼻から抜けていく爽やかな香気、広がる味わいにシビラが満足気に頷く。
「美味しいわね、レーちゃん♪」
「ああ、これの次はアッサムだな。ミルクと相性がいいんだ」
「そうなのね~」
 機嫌よく紅茶を飲み、紅茶について語るシビラの顔は今までに見た事がないくらいに楽しそうな顔で、露も思わず笑顔が浮かぶ。
「ミルクは勿論成分無調整の牛乳だな」
 ミルクピッチャーにたっぷりと入った牛乳と濃く淹れた紅茶の相性は最高以外の何物でもない、好みで砂糖を入れるのもいいが、やはり牛乳の甘さだけで頂きたいとシビラがミルクティーに口を付ける。
「……♪ 素晴らしい……これは……」
 言葉が出てこない程、深く甘く胸に響くミルクティーの味にシビラが甘い溜息を零す。
「ふふ、美味しいわね~♪ レーちゃん、ほら、お菓子も食べましょ♪」
 ティースタンドに品よく盛られたチョコレートをテーマにしたケーキにスコーンが早く食べてと待っているように、艶々と光っていた。
「そうだな、きっと紅茶との相性も抜群に違いない」
 二人のティータイムはまだまだこれから、全ての紅茶を飲む気概でシビラは再びメニューに目を落とし、気になる紅茶を頼むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

楊・暁
【朱雨】◎

夙夜オリジナルバレンタインチョコも昨日で完売できたし
あとは藍夜とのんびりしてぇな

えっと…そうだな…
…ん?ヴィラってなんだ?
…!すげぇ!家だ!!

屋内外をぐるっと探検
めちゃくちゃ広ぇ!!ここ全部使って良いのか!?
ここがいい!ヴィラにしよう、藍夜!
珍しくハイテンションできょろきょろ&声弾ませながら
藍夜に抱えられてソファで跳ねて笑い合って

はー…すげぇ…豪邸ってこういうの言うんだろうな…

ん?我儘?なんだ?
あははっ、温めるくらいお安いご用だ
俺の淹れた珈琲…!?
そ…それは…ハードル高ぇな…
完全に素人だぞ…?

…う…ミルまであるのか…
強請る姿が可愛くて断り切れず
じゃあ…やってみるか
あんまり期待すんなよ?

俺の食べたいもの?
んー…それなら、チョコプリン!

キッチンで並んで調理開始
藍夜の手元も気になりつつも
藍夜の手際を思い出しつつ珈琲を真剣&丁寧に淹れ
…こう、か…?
不本意だけど藍夜にも渡し
やっぱりお前の淹れた方が美味ぇような気が…(試飲

すげぇ…本当にチョコプリンだ…!アイスまでついてる…!
早く食いてぇ!


御簾森・藍夜
【朱雨】◎

バレンタインにグランピングって豪華だな…
全て売り切って余裕の日は、良いもんだ…しかも心音と一緒。最高だ

テントはどれにする?
ツリーかヴィラか
広くてふわふわなところで、キッチン付がいいな
本当だ、家みたいだな…豪華すぎる
嬉しそうにはしゃぐ心音を見てただ穏やかに微笑んでいたものの、ふっかふかなクッションに心音を抱えてダイブ

笑いあってそっと離したら一通り確認し、カフェタイムの準備へ

ん…で、その、我儘なんだが…
心音の月餅、温めて食べたい。焼きたて風だ
でな、珈琲
俺、心音の珈琲飲みたくて…で、持ってきたんだうちのミル
ほら、いつもの
俺は心音の心音のがいい絶対
で、俺は心音がじっくり珈琲を淹れてくれている間に…
うん、心音が食べたい店のメニューチョコバージョン

ふむ、リクエストはプリンか…
丁寧に漉し、蒸しプリンとゼラチンプリンの二種
ついでにアイスも同時進行
合間に心音の問いかけに「そうだな、ゆっくり…上手だ
と答えて、試飲に笑顔で頷く

トッピングにアイスを添えクリームでデコすれば完成

特別な一皿、準備しよう



●二人の、二人だけの特別を
 バレンタインと言う日には、人の数だけ意味があるもの。
 友人同士で楽しんだり、恋人同士で楽しんだり、家族で楽しんだり。そして、そんな楽しいひと時を提供する為にパティスリーやカフェを営む者はバレンタインの為の製菓を作る日であったり――ここ、アスリートアースの巨大グランピング施設に訪れた御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)と楊・暁(うたかたの花・f36185)にとっても、バレンタインは一大イベントであった。
「バレンタインにグランピングって豪華だな……」
 目の前に広がる広大な施設に、藍夜が思わず言葉を零す。その声音にはほんの少しだけ疲れが滲んでいたようにも思えるが、それもそのはず。この日の為に、藍夜は自身が営む喫茶店【夙夜の雨宿り】のオリジナルバレンタインチョコを作り続け、更には前日である十三日に全て捌ききってみせたのだから。
「全て売り切ったんだよな……大変だったが、だからこそ生まれたこの余裕……しかも心音と一緒」
 じわじわと実感が湧いてきたのか、藍夜の頬に笑みが浮かぶ。
「最高としか言いようがないな……!」
「何が最高なんだ?」
 ひょこ、と後ろから顔を出した暁に、藍夜が蕩けんばかりの笑みを向ける。
「いや、チョコも売り切ったし、今日という日を心音と過ごせて何よりだなってな」
「ああ、昨日は忙しかったもんな」
 売れ残るかも、なんて心配は杞憂と言っていいくらいに夙夜オリジナルバレンタインチョコは飛ぶように売れ、閉店を前にして完売の案内を出さなければならなかった程。
「俺も、あとは藍夜とのんびりしてぇな」
「心音……! ああ、今日はのんびりとしよう。ところで心音」
「ん?」
「テントはどれにする?」
 テント、と言われて暁が目を瞬かせる。
「えっと……そうだな……どんなのがあるんだ?」
 それこそ色々あるのだが、確かに見てみなければわからないだろうと、藍夜が実物を見る為に施設内の簡易地図を片手に歩き出した。
「ベルツリーかコテージ、それにヴィラか。できれば広くてふわふわなところで、キッチン付きがいいと思っているんだが」
「いいな、キッチン……ん? ヴィラってなんだ?」
「ヴィラは……ここだな」
 簡易地図とも照らし合わせ、此処にある建物だと立ち止まる。
「……! すげぇ! 家だ!!」
 それはまるで一軒家のような綺麗な建物で、庭にプールもあるような代物。
「本当だ、家みたいだな……豪華すぎる」
 通りかかった従業員が良かったら中もご覧になってくださいと声を掛けてくれたので、二人は屋内外をくまなく見て回る。一階は芝の生えた庭に面した大きなガラス張りの居間に、広々としたシステムキッチン、バストイレも広く充実している。二階は天窓の付いた寝室があり、一階とはまた少し雰囲気が違ってそれもまた良い。
「めちゃくちゃ広ぇ!! ここ全部使って良いのか!? 俺、ここがいい! ヴィラにしよう、藍夜!」
「そうだな、キッチンも広いし……ふかふかのふわふわだな」
 ベッドも、居間にある大きなソファも、何もかも手触りがいい。満場一致でヴィラに決めると、待ってくれていた従業員に此処にすると伝えて手続きを済ませた。
 改めてヴィラの中に入ると、暁が再びあちこちと見て回って藍夜の元へ戻ってくる。
「藍夜! ヤバい、ここ楽しい!」
 弾む声と同じに、暁の耳と尻尾も嬉しそうにぴょこぴょこぶんぶんと動いていて、俺の心音は可愛いなぁと穏やかに微笑んでいた藍夜のテンションは一気にぶち上がった。
「心音」
「ん? どうし……わっ」
 藍夜がぎゅっと心音を抱き締めると、そのままふっかふかなソファの、もっふもふのクッションへと飛び込んだ。
「ふ、あはは! すっごい、藍夜、ここ、めちゃくちゃふかふかだ!」
「ああ、ふかふかだ。さっき触って確かめたんだが、どうしても体感したくなってな」
 心音と一緒に、と藍夜が前髪が崩れるのも構わずに、暁を抱き締めたままごろごろと転がる。スプリングの効いたソファは二人の身体を優しく包み込んでは押し戻し、その感覚がまた楽しくて何度か二人で跳ねては笑い合う。
「あは、はー……すげぇ……豪邸ってこういうのを言うんだろうな……な、藍夜」
 藍夜の腕の中から彼を見上げ、暁が感心したようにクッションをぽふぽふと叩く。触り心地もいい、と尻尾を振っている姿の可愛らしさに、思わず藍夜がその額に唇を落とした。
「な、何だよ」
「いや、俺の奥さんは可愛いなぁと」
 常に可愛いのだがと思いつつ、そっと抱き起こす様にして起き上がる。
「さて、そろそろカフェタイムの準備といこうか」
「あ、そうだったな」
 あまりの豪華さについ二人ではしゃいでしまったが、バレンタインのチョコレートを用意するのが本題だったと暁が居住まいを正す。
「その前に……その、我儘を聞いてほしいんだが……」
 いいか? と藍夜が隣に座る暁に問い掛ける。
「ん? 我儘? なんだ?」
 我儘と言われ、暁は頭の上にクエスチョンマークを浮かべるように小首を傾げる。それから、藍夜の我儘ならどんな我儘だって聞いてやりたいと、静かに笑みを浮かべて頷いた。
「その……心音の月餅、温めて食べたい。焼き立て風だ」
「あははっ、温めるくらいお安いご用だ」
 もっと難解な事を言われるのかと思ったと、暁が笑う。
「それと、もうひとつ」
「ん? もうひとつ?」
「珈琲なんだが……俺、心音の珈琲を飲みたくて……」
「俺の淹れた珈琲……!?」
 珈琲と言われ、暁の耳がピンと立つ。それから、尻尾が頼りなさげに揺れて、困ったように眉根が寄った。
「そ……それは……ハードル高ぇな……」
 普段珈琲を淹れるのは藍夜で、それを美味しく頂くのが暁なのだ。
「それに関しちゃ完全に素人だぞ……?」
「俺は心音のがいい。だから……持ってきたんだ、うちのミル」
 いつものやつ、と藍夜が言って持ってきたミルを見せた。
「……う……ミルまであるのか……」
 どう考えても藍夜が淹れた方が美味しいに決まってる、という視線を向けるけれど、藍夜から返ってくる視線は『|絶対に心音が淹れた珈琲がいい《淹れてくれるまで諦めない、絶対飲みたい》』である。
「……駄目か?」
 捨てられた子犬のような瞳で藍夜が強請るものだから、暁は断り切れずにこくりと頷く。
「じゃあ……やってみるか。あんまり期待すんなよ?」
「大丈夫だ、絶対に美味しいに決まっているからな」
「ば……っ、ハードルを上げるんじゃねぇよ!」
 にこにこと笑う藍夜にそう言って、暁が立ち上がる。
「そうと決まればキッチンに行くぞ、藍夜」
「そうだな。ああ、心音は何が食べたい? 珈琲を淹れてくれている間に何か作ろうと思うんだが」
「俺の食べたいもの?」
「うん、心音が食べたい店のメニューのチョコバージョンなんてどうだ?」
 んー……、と考えながら二人でキッチンに向かい、藍夜が用意してきたミルと珈琲豆を手にして暁が思いついた様に口を開く。
「それなら、チョコプリン!」
「ふむ、リクエストはプリンか……承った。特別に美味しいチョコレートプリンを作ってみせよう」
「期待してる!」
 さて、期待した分こちらも珈琲を美味しく淹れなければと暁が珈琲豆をミルへと入れる。それから、いつも藍夜がどうやって豆を挽いていたかを思い出しながら、ゆっくりとハンドルを回し始めた。
 自分の為に珈琲を淹れようとしてくれている暁を横目で見つつ、藍夜も彼の為にと手を動かす。作るのは蒸して作るプリンとゼラチンで作るプリンの二種、ついでにアイスも同時進行で進めていく。
 蒸しプリンは卵と牛乳を混ぜ合わせた物を小鍋に入れて弱火にし、そこへ刻んだチョコレートと砂糖を加えていく。高温で溶かすと卵が固まってしまうから、温度管理に気を付けながら溶かすのがポイントだ。
 完全に溶けたら型に流し入れ、蒸しあげていく。その間にゼラチンのプリンを作りつつ、アイスもと段取りよく進めていると隣からの視線を感じて藍夜が笑みを浮かべた。
「味見まではまだ掛かるぞ?」
「ち、違ぇし! ちょっと見惚れ……じゃない、手際がいいなって思ってただけだからな!」
 実際、その手際の良さに見惚れていたのだが、そこは照れ隠しというもの。気を取り直して、ゆっくりと挽いた豆を取り出しグラスポットにセットしたドリッパーへと入れる。それから――確か、藍夜はお湯が沸騰する前に引き上げていたはずと沸かした湯を火から下ろす。
「……こう、か……?」
 ドリッパーの上にゆっくりとお湯を回し注いで、手を止める。蒸らすのが大事だって言ってたはず、とちらりと藍夜を見れば合っているというように頷いた。
「この後は……こう、で」
 二十秒ほど待って、再び『の』の字を描く様に注ぎ、珈琲が落ちてきたら湯筋を太く。液面が上がったところで少し休ませ、再びお湯を継ぎ足して……という繊細な作業を数度繰り返した後にドリッパーを外せば、グラスポットには綺麗な色をした珈琲がたっぷりと出来上がっていた。
 味はどうだろうかと、小さなカップに試飲する分だけ注ぐ。不本意ではあるが藍夜の分も淹れて渡すと、嬉しそうな顔をして藍夜が受け取る。
「うん、いい匂いだ」
「匂いはまぁ……」
 味が良くなければ、と一口飲んでみる。
「……やっぱりお前の淹れた方が美味ぇような気が……」
「俺にとってはこれが最高の一杯だ」
 美味しい、と藍夜が笑顔で頷くものだから、それならいいけど……と暁もカップの中の珈琲を飲みほした。
「こっちも、もうすぐ出来るぞ」
「わ、すげぇ……本当にチョコプリンだ……!」
 本来なら冷やして食べるところだが、温かい出来立てのプリンも美味しいもの。そこへトッピングにアイスを添えて、生クリームでデコレーションすれば――特別な一皿の出来上がりだ。
「完成だ」
「アイスまで付いてる……!! 早く食いてぇ!」
 待ちきれない、というように暁の尻尾が揺れている。
 出来立てのチョコレートプリンに、温め直した月餅。それに、拙くとも愛情だけはたっぷりと注いだ珈琲。最高のバレンタインの時間まで、もうすぐ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨絡・環
【雲蜘蛛】

ぐらんぴんぐ?
……嗚呼、野営のことでございますね
本当に色々と揃っているようで便利になりましたねえ
しかも、
ちょこれぇと、を作る事が出来るようですよ
任せて下さいまし
わたくし、これでも西洋の世界に身を置いて幾年
洋の食べ物にも詳しくなりましたし
ニンゲンの台所仕事にも慣れたと思うのです
ま、それはだって
勧めて下さるもの全て美味しゅうて…
ともあれ、
魂が堕ちる様なちょこれぇとを作って魅せましょうぞ
アルフィードさんのお力添えがあれば、ですけれど……よろしくて?

まずはちょこれぇとを粉砕、溶解するのでしたね
先日頂いたばかりの薙刀(斬燈狩)で切り刻み、焚火へ
……そうでしたわ、直接では焼けてしまいますね
火にくべた鍋の中へと放り
あらあら?みるみる間にちょこれぇとが紫色に
物珍しいものは特になにも
健康の為に少々漢方の類を入れた位で
あら、何やら蠢いておりますね
このちょこれぇと、活きがいいですこと

虫や植物も堕ちる香り、という事かしら
良い兆候ですわ
ほほほ、もう少しですよ
後でたんと召し上がって下さいませね


アルフィード・クローフィ
【雲蜘蛛】

グランピング!
野営でもなんか沢山テントがあるね!
昔は野宿とかしてたけどこういう施設があったら便利!!
お外でチョコレート作るなんて面白い!
うんうん、俺の教会に来てから色んなモノ知ったし、色々食べたものねー
ふふっ、洋食食べて楽しそうにしてる環ちゃん良き!!
そう言ってもらえて嬉しいな
わぁ!わぁ!!魂が堕ちるチョコなんて情熱的だね!楽しみだなー
うん!チョコ作りお手伝いするよー

じゃ俺が用意したこのチョコの塊を砕いてね!
あははっ、薙刀で砕いてる!凄い!環ちゃん器用だね!
プレゼントしたアイツに教えよう!きっと面白い反応しそう!
うんうん、それを溶かして
鍋で溶かすのかな?
あれれ?紫色になったね?何か入ったのかな?
どろどろ?うねうね?
ぐつぐつしてるのかなと思ったけど動いてるねコレ!
凄ーい!
ん?近くに居た虫かぐったりしてる?
後、植物が枯れてるのかな??
面白い現象だね!!
環ちゃんのチョコ完成かな?
うん!楽しみー!美味しく頂くね!



●わんだぁ・ちょこれぇと・くっきんぐ
「ぐらんぴんぐ?」
 聞きなれない横文字に、雨絡・環(からからからり・f28317)がアルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)をそっと見上げる。
「グランピング! えーっとねぇ、簡単に言うとキャンプ……?」
「きゃんぷ……嗚呼、野営のことでございますね」
「そう、それー! それのね、豪華版みたいだよ」
 ほら、とアルフィードが指さした先には、様々な形のテントが見えた。
「野営でもなんか沢山テントがあるね! あれがベルツリー型で、こっちがドーム型だって! 他にはコテージやヴィラなんかもあるんだってー」
 手にしたパンフレットと見比べてアルフィードが説明すると、感心したように環が頷く。
「まぁ……色々種類がありますのね」
「環ちゃんは気になるのある?」
「そうですわね……あのどぉむ型とやらが気になるところですわ」
 丸くて、ころんとしたフォルム。それを作り出す枠組みがどこか蜘蛛の巣にも見えて、なんだか親近感が……と環が笑った。
「じゃあ、ドーム型にしよー!」
 早速とばかりにドーム型テントへ二人で向かうと、遠目で見ていたよりも大きく中も立派で、まるでホテルの一室のよう。
「すごーい! 昔は野宿とかしてたけど、こういう施設があったら便利!!」
「本当に色々と揃っているようで便利になりましたねえ」
 テントの中はふかふかのベッドやソファ、それに冷蔵庫やバストイレなんかも完備されている。テントとは思えないような充実した施設に、二人は興味津々だ。
「アルフィードさん、アルフィードさん」
「なーにー?」
「この施設、ちょこれぇと、を作ることが出来るようですよ」
 しかもテント内ではなく、ドーム型テントの外に備え付けられているバーベキューもできる野外キッチンで、と環がテントの中から見える外へ視線を向けた。
「お外でチョコレート? 作れるの? すごーい、面白い!」
「お外での料理……野営ならではですものね」
「作ってみる?」
「ええ、任せて下さいまし」
 チョコレート作りの為の材料を吟味する為に大きな冷蔵庫の中を覗き込みながら、環が微笑む。
「わたくし、これでも西洋の世界に身を置いて幾年……洋の食べ物にも詳しくなりましたし、ニンゲンの台所仕事にも慣れたと思うのです」
「うんうん、俺の教会に来てから色んなモノ知ったし、色々食べたものねー」
 和食しか知らなかった環からすれば、アルフィードが教えてくれる食べ物は全て物珍しく、そして舌を喜ばせてくれるものばかり。
「ふふっ、洋食食べて楽しそうにしてる環ちゃん良き!!」
「ま、それはだって、勧めて下さるもの全て美味しゅうて……」
「そう言ってもらえて嬉しいな。これからも、もーっと美味しいもの食べようね!」
 洋食に限らず、中華にインド料理と世界にはまだまだ自分達の知らぬ食べ物があるのだとアルフィードが笑う。その笑顔に頷きつつ、環は改めてニンゲンの食べ物、奥深い――と痛感したのであった。
「ともあれ、今回はわたくしの腕の見せ所。魂が堕ちる様なちょこれぇとを作って魅せましょうぞ」
「わぁ! わぁ!! 魂が堕ちるチョコなんて情熱的だね! 楽しみだなー」
 きっと甘くてほっぺたがとろりと蕩け落ちそうな、そんな美味しいチョコレートに違いないとアルフィードが夢想して頬をゆるゆるに緩めていると、環が恥じらうように手をもじもじとさせるので、どうしたのかとアルフィードが問う。
「……その、アルフィードさんのお力添えがあれば、ですけど……よろしくて?」
「うん、勿論! チョコ作り、お手伝いするよー」
 大船に乗ったつもりで任せてと、アルフィードが胸をどんと叩いた。
 チョコレートを作る、と一口に言っても作りたいものによって工程は様々。取り敢えず、まずは肝心のチョコレートをとアルフィードがどーんとチョコレートの塊を野外キッチンのテーブルへと置く。
「まずはちょこれぇとを粉砕、そして溶解するのでしたね」
「そうそう! じゃ、環ちゃんは俺が用意したこのチョコの塊を砕いてね!」
 砕くにも包丁がいるよね、とアルフィードが包丁はどこだろう~とキッチンを見回す。そんなアルフィードを横目に、環はすっと手の中に漆黒の柄を持つ薙刀を顕現させる。
「包丁でしたら、先日頂いたばかりの薙刀が」
「え?」
 薙刀って包丁の代わりになる? とアルフィードが口にするよりも早く、環は巧みに薙刀を操りチョコレートを刻んでいく。その鮮やかな手並みにアルフィードが笑いだす。
「あははっ、薙刀で砕いてる! 凄い! 環ちゃん器用だね!」
「これくらいは嗜みですわ」
 台ごと切り刻んでしまう勢いがあるのに、不思議とチョコレートだけが切り刻まれている。
「ひー、環ちゃん最高! プレゼントしたアイツに教えよう! きっと面白い反応しそう!」
 きっとあの気怠げな表情に皺を寄せ、苦虫を嚙み潰したような顔になるに違いない。
「あ、もしかしたら吹き出すかも? なんにせよ楽しみだなー」
 なんて事を考えていたら、環がチョコレートを刻み終わる。
「これを……溶かすのでしたかしら?」
「うんうん、それを溶かして」
 溶かす、と頷いて環が刻んだチョコレートを焚火にダイレクトインしようとしたので、アルフィードが慌てて止める。
「えっと、鍋で溶かすのかな? 多分!」
「……そうでしたわ、直接では焼けてしまいますね」
 焼きチョコレートも美味しいでしょうけれど、と言いながら環が鍋を火にくべた。それから、そこに向けて刻んだチョコレートを放り込み――。
「あらあら?」
「あれれ?」
 二人で鍋を覗き込めば、そこには艶々のカカオ色をしたチョコレートが……見る間に紫色になったではありませんか。
「……不思議ですわね」
「うん、不思議……何か入ったのかな?」
 見てた限り、とっても普通だったと思うんだけど、とアルフィードが環を見遣る。
「物珍しいものは特になにも……健康の為に少々漢方の類を入れた位で」
「漢方かー! 健康に良さそうだね!」
 健康にはいいだろうが、チョコレートに入れるものではないのではないか。そんな事を言う者はこの場にはいなかった、これはワンダーチョコレートまっしぐら!
「どろどろ? うねうね? してる……あれ、ぐつぐつ煮えてるのかなと思ったけど、動いてるねコレ!」
「あら、本当ですわね。何やら蠢いておりますね」
 新しい生命体を作り出したのではないか、というくらいにはうねうねしている。
「これは……あれですわね」
「知ってるの? 環ちゃん」
「ええ、このちょこれぇと……とっても活きがいい……そういうことですわ」
「活きのいいチョコレート……凄ーい!!」
 こんなチョコレート、きっと他の誰も作れないだろう、凄いチョコレートだとアルフィードが瞳を輝かせる。それから、ふと気付いたように辺りを見回した。
「ん? 何か近くに居た虫がぐったりしてる? 後、植物が枯れてるのかな??」
 青々と生い茂っていた木がちょっと枯れている、正確に言うとチョコレートを煮ている鍋の真上に当たる部分が枯れている。その辺を飛んでいた羽虫も今はすっかり姿を見せず、よく見ればその辺に落ちていた。
「面白い現象だね!」
「なるほど……虫や植物も堕ちる香り、という事かしら」
 明らかに毒物を生成しているのではないだろうか? あ、鳥が落ちた。
「わー、鳥まで! そろそろ環ちゃんのチョコ、完成かな?」
「ほほほ、もう少しですよ。後でたんと召し上がって下さいませね」
「うん! 楽しみー! 美味しく頂くね!」
 気絶した鳥をそっと自分達のテントから離れた場所に寝かせ、アルフィードが環に向かって元気よく返事する。空は青く、鍋のチョコレートは紫色で元気に蠢き、環とアルフィードの笑顔はピカピカに輝いて――。
 試食タイムがどうなるかは、神にも悪魔にも、誰にも分らないのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『キャンプの夜を楽しもう』

POW   :    ゲームやお喋りに興じる

SPD   :    歌やダンスで盛り上がる

WIZ   :    満天の星空を眺める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ハッピーハッピー・バレンタイン
 バレンタインのチョコをグランピング施設で作るというイベントは意外と盛況で、あちこちから甘い匂いや楽しそうな声が聞こえていた。
 簡単なレシピで手軽にチョコレート作りを楽しむ者や、本格的なチョコレート菓子作りに精を出す者と、様々に楽しんだ彼らのチョコレートも無事に完成した頃だろう。
 空はゆっくりと暮れて、テントに光が灯りだす。外で焚き火をしている煙も幾つも上がっていて、一番星が月を呼ぶように光っている。ここからは作ったチョコレートを食べたり、グランピングの夜を楽しんだり――どうそ、思い思いの時間をお過ごしくださいませ。
朱酉・逢真
【夜桜2】
心情)どうやら、ちびらは"お兄ちゃん"があまりにも気に入った様子。ああきっと、愛を持って還ることができよう。所詮、俺は共にあるだけの影、手を取りて引くはいのちの強さよなァ。ひ、ひ…。まったく、あまねく|慈《いと》しいねェ。
行動)遊ンでる子らと坊を、ちびすけに乗ったまま見守ろう。移動した先でも子らは元気なモンだ。菓子食って風呂入って、"危ないですよ"なンて注意が聞こえて。しばらくしたら素っ裸で走り去るちびを追いかける坊の姿。ひ、ひ…愛いこと。眠る子らに無限に絵本せがまれる坊を見るのもいいが、さすがに疲れたろう。変わろう。とっておきのがあってね…それでは読もうか――『ボサノバ太郎』


雨野・雲珠
【夜桜2】

鬼ごっこしてかくれんぼして、
おちびさんたちが騒いでも大丈夫そうな
広めのヴィラにお邪魔します!
普段は萎縮しちゃうような豪華さも、
子守モードの俺は気になりません
おちびさんたち!お風呂入りますよー!

甘いお菓子も、お風呂も、
すっぽんぽんで走り回る子たちを捕まえて着替えさせることも。
幽霊に必要かどうかは考えずにおきます
小さい子はそうやってお世話されるべきで、
俺もそういう行為を愛情だと思うから

とはいえ絵本三冊でそろそろ限界
か……かみさまー!交代お願いします
ちびっこに背中にのられて寝落ちしそう…
……ボサノバ太郎???(起きた)
手に汗にぎる、不条理とトンチキと迫力の冒険…
あっ気が付けば誰も寝てない!



●おちびさんたちとバレンタインの夜に
 さて、お菓子作りを終えた雨野・雲珠(慚愧・f22865)と朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)はおちびさんたちを連れてコテージからヴィラへと移動していた。
「わぁ……! 先程のコテージも広かったですけど、こちらはもっと広い……! 鬼ごっこしてもかくれんぼしても、おちびさんたちが騒いでも大丈夫そうな場所ですね!」
「ヴィラって言うらしいぜ」
「ヴィラ……! 早速お邪魔致しましょう!」
 コテージの数倍広くて豪華な建物に、喜び勇んで雲珠が入っていく。その後をおちびさんたちが追い掛けて、その後ろから逢真がゆっくりとちびすけに乗って入っていった。
 中も外観に劣らず煌びやかで、雲珠とおちびさんたちが探検ですと中を練り歩く。いつもであれば、この豪華さに委縮してしまう雲珠だけれど、子守モードになっているせいか遠慮は見当たらない。なにせ、お兄ちゃんなのだから!
「ひ、ひ、どうやら、ちびらは『お兄ちゃん』が気に入ったようだねェ」
 それもちょっと気にいったどころではなく、とっても、だ。
「かみさま、かみさまー! 見てください、お風呂、お風呂すごいですよ! 小さな温泉みたいです!」
「どれどれ……ほう、檜風呂ってやつだな」
 檜で出来た湯船は広く、大人でも四人くらいは並んで入れそうな大きさ。雲珠とおちびさんたちなら、その倍か。
「これはお風呂に時間が楽しみですね……! さ、お風呂の前にバレンタインのお菓子を食べましょう!」
 雲珠の言葉におちびさんたちが歓声を上げる。空気を震わせるようなその声に、雲珠は張り切ってお菓子をテーブルへと並べていく。お手伝いをする子、つまみ食いをする子、特等席に座ろうとする子、その子らの誰もが笑みを浮かべている。それを見守りながら、逢真はちびすけの背の上で穏やかに笑んだ。
「ああ、どの子も楽しそうじゃないか」
 どの子らも満たされぬまま死んだ子ども達だ、それがすっかり満たされた顔をしている。
「あ、いけませんよ! つまみ食いしなくてもたーっくさんありますからね! 皆で仲良く食べましょう、手を合わせて……こうですよ」
 雲珠が手を合わせて、と見本を見せると、おちびさんたちが見様見真似で同じようにして。
「いただきます」
 同じように、いただきますと声を出して。
「さ、沢山召しあがってくださいね」
 見る間にテーブル上のお菓子が消えていく、雲珠も幾つか摘まんでは子らの口元を拭ったりお代わりを出してあげたりと楽しそうだ。
「夜明けには愛を持って還ることができよう。所詮、俺は共にあるだけの影、手を取りて引くはいのちの強さよなァ」
 これだからいのちは愛いのだと、かみさまは|咲《わら》う。
「ひ、ひ……。まったく、あまねく|慈《いと》しいねェ」
 どれ、と怪異スマホで写真を撮って、その出来栄えに目を細めた。
 お菓子をすっかりと食べ切ると、お片付けをしましょうねと雲珠が立ち上がる。それをおちびさんたちが手伝って、テーブルも綺麗に拭き上げる。
「皆さんお手伝い上手ですね、もう終わりましたよ」
 褒められた子らが嬉しそうに、誇らしそうに胸を張る。
「では、おちびさんたち! 次はお風呂に入りますよー! かみさま、ちょっと行ってきますね!」
「はいよォ、足滑らさンよになァ」
 ひらひらと手を振ると、雲珠がおちびさんたちと共に風呂へと消えていった。
 それで居間が静かになるかというとそうでもなく、風呂場から聞こえる『走ったら危ないですよ!』なんて雲珠が注意する声や、子らがはしゃぐ音やお湯の掛けっこでもしているのか、ばしゃばしゃという水音が聞こえてくる。
「元気なモンだ」
 逢真が人知れず笑っていると、雲珠に身体を拭いてもらった子らが居間へと走って来るのが見えた。
「髪の毛がまだですよ! それに服も着てないでしょう!」
 素っ裸で走り回る子らを雲珠が追い掛けて、一人ずつ捕まえては着替えさせていく。幽霊に着替えって必要なのかしら、と頭をよぎらなくもなかったけれど、そこは考えずに着替えさせる。
 だって、小さい子はそうやってお世話されるべきだと雲珠は思うから。そして、そういった愛情はきっとおちびさんたちには必要なものだから。
「全員完了です!」
「ひ、ひ、お疲れサン」
「あとは寝るだけですね、二階にいきましょう」
「はいよォ」
 二階の寝室はこれまた広く、ベッドをくっつければ何人だって眠れそうな程。
「す、すごい……ふかふか、ふかふかですよ!」
 なのに柔らかすぎず適度な硬さが……と雲珠がベッドに感動しながらもおちびさんたちに布団を掛けていく。全員お布団に入ったならば、と雲珠が箱宮から絵本を取り出して読み聞かせを始める。一冊、二冊、三冊と読んだところで、そろそろ寝ますよと声を掛けた。
 すると、おちびさんたちからブーイングが上がり、もっと読んで欲しいとせがまれる。
「え? もっと……ですか」
 読んであげたい気持ちはあるけれど、雲珠も朝から動いている身。絵本を三冊読んだところでそろそろ限界なのだ、何せ早寝早起きの桜なので。
「どれ、俺が変わろう」
 無限に絵本をせがまれる雲珠を見るのも可愛らしくていいのだが、さすがに疲れただろうと逢真が交代を申し出た。
「か……かみさまー! はい、交代お願いします!」
 背中に乗ったおちびさんをそのままに、思わず寝落ちしそうになっていた雲珠が逢真にバトンタッチ。
「かみさまは、何を読まれるんですか……?」
 うとうととしつつ、何を読むのかと雲珠が問う。
「ああ、とっておきのがあってね……」
 す……っと何処からともなく取り出した絵本。
「それでは読もうか――『ボサノバ太郎』」
「……ボサノバ太郎???」
 その、どこかで聞いたことがあるようなタイトルに雲珠がしょぼしょぼしていた瞳をカッと開いた。
「むかしむかし、あるところに――」
 よくある始まりだった、けれど内容はとてもよくあるものではなかった。
 山はバブリーになるし、ダンスは始まるし、爆発もした。
「手に汗にぎる、不条理とトンチキと迫力の冒険……!」
 続きが気になって眠れない、と雲珠がおちびさんたちを見れば、おちびさんたちも真剣な顔で聞き入っているではありませんか。
「あっ誰も寝てない!」
 気になって眠れない……!! そう、雲珠もおちびさんたちも思っていたのだけれど、いつの間にか逢真の静かな声に合わせるように寝息がひとつ、ふたつ。
「ひ、ひ、おやすみなィ。良い夢を」
 すっかり静かになった寝室の灯りを落とし、夜の暗闇に溶けるように逢真もそっと目を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
それじゃ、始めようか。
ん?何って、タコパ(タコ焼きパーティー)だよ
あと焼きそばもある。バレンタイン仕様の
ちゃんとチョコはここにあるだろう?

というわけでお兄さんと美味しくご飯を食べながらお喋りをする
ついでに折角だし、ゲームでもしようか
…実はこの中に、(俺基準でも嫌になるくらい)激辛たこ焼きがある!
俺、お兄さん、お兄さんの順番で食べて、
当たった人が…ええと、健康診断をするとか?(適当
ええ。ダメなの。じゃあお兄さんはどんな罰ゲームがいい?
あ、いいよ
俺の好みのタイプは長生きしそうな人です
(勝敗はお任せ

折角のキャンプでし、外で星も一緒に見て…
…そわっとする
…やっぱり寝袋しない?


夏目・晴夜

リュカさんf02586
ええ、始めますか…我々のチョコフォンデュパーティーを!

違うのですか?え、タコパ?
タコ焼きも悪くないですけど、このチョコフォン…
いや焼きそばもいいですけどチョコフォ…
チョコ…

というわけでチョコフォンデュは泣く泣くデザートに回します
へえ、ロシアンルーレットですか!
く、正直ちょっと面白そうですね…!
辛いのを引いてもチョコフォンデュで相殺できますし
よし、受けてたちましょう

健康診断はダメです
食事制限したくないので!
そうですね…バレンタインらしく『好みのタイプを暴露する』とか
ハレルヤは妻一筋です
(勝敗お任せ

星を見た後は豪華な場所でお休みタイムですよ
…寝袋!?豪華な場所で寝れるのに!



●バレンタインはタコパで決まり!
 チョコフォンデュの準備は万端、あとはリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)が帰ってくればバレンタインに相応しいチョコフォンデュパーティーが始められると夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は満足気に頷く。視界の端に映るリュカが作成していったあれそれからはそっと逃避しつつ、だが。
「あ、帰ってきましたね」
「ただいま、お兄さん」
「おや、獲物は?」
「うん、係の人が捌いてくれるらしいよ」
 本当は自分で捌いてしまいたかったのだけれど、専用の施設があるらしい。衛生面がなんとかで、大変だねとリュカが担いでいたライフルを仕舞う。
「なるほど、血塗れバレンタインは回避されたということですね!」
 何よりです! と晴夜が笑顔になる。
「仕方ない……それじゃ、始めようか」
「ええ、始めますか……我々のチョコフォンデュパーティーを!」
「ん? チョコフォンデュ?」
「え? 違うのですか?」
「やだな、タコパだよお兄さん」
「え? タコパ?」
 笑顔が見る間に曇っていくのが面白いな、と思いながらリュカが頷く。
「タコパ、知らない? タコ焼きパーティーの事だよ」
「いえ、ハレルヤもタコパは存じ上げてますけど」
 知っていますが、バレンタインにタコパ? と晴夜は不安になりつつも軌道修正を試みる。
「あの、リュカさん」
「何?」
「手際よく準備なさっているところ恐縮なんですけども」
「うん」
「タコ焼きも悪くないですけど、このチョコフォン……」
「あと焼きそばもある。バレンタイン仕様の」
 阻止したと思ったバレンタイン焼きそばがある? なんで??? いや、これは一万歩くらい譲ってあってもいいとして。
「いや焼きそばもいいですけどチョコフォ……」
「お兄さん、ちゃんとチョコはここにあるだろう?」
 よく見て、と示された場所にはなんかもうそれをチョコと呼んで許されるのだろうか、みたいなソースが隠し味なチョコ焼きそばとチョコタコ焼きの姿が――!!
「チョコ……」
 チョコフォンデュ……ハレルヤはチョコフォンデュがしたかっただけなのに……!
「良かったね、お兄さん」
「うう……はい……」
 いいんだ、チョコフォンデュはデザートにすれば……と、晴夜は思い直してリュカの提案したタコパを開催することに頷いた。
 テーブルの上には白い湯気を立てるタコ焼きに焼きそば、そしてカラフルなチョコスプレーが!
「……リュカさん、これは」
「彩りになるかなって。チョコだよ、お兄さん」
「チョコフォンデュに良さそうですね!」
「何言ってるの、こうだよ」
 こう、でリュカが躊躇いなくチョコスプレーをたこ焼きに振りかけた。
「あ、ああ~~~~」
 晴夜はタコ焼きがカラフルになるのを為す術もなく見ているしかなく、思わず悲壮な声を上げてしまったが、誰がそれを責められようか。
「あ、そうだお兄さん」
「これ以上何か……!?」
「うん、折角だしゲームでもしようか」
「どのような?」
 ゲームと聞いて、晴夜の表情がパッと変わる。
「……実はこの中に、激辛タコ焼きがある!」
「へえ、ロシアンルーレット……ロシアンタコ焼きってわけですか!」
 晴夜の言葉にリュカがこくりと頷き、山と積んだタコ焼きに視線を向けた。
「これを俺、お兄さん、お兄さんの順番で食べて」
「ハレルヤの番多くないです???」
「そんな事ないよ。で、当たった人が罰ゲーム、かな」
「罰ゲームですか? く、正直ちょっと面白そうですね……!」
 ふむ、と晴夜が思案する。辛いのを引いてもチョコフォンデュで相殺できるだろうし、そもそも勝てばいいこと。
「よし、受けて立ちましょう」
「じゃあ、当たった人が……ええと、健康診断をするとか?」
 特に思いつかなかったので、リュカが適当な罰ゲームを提案する。
「健康診断はダメです、食事制限したくないので。食べ物ってのはカロリーが高い程美味しいんですよ」
 今このテーブルの上に並んでいるものはちょっとどうかな、と思うけれど。
「ええ。ダメなの。じゃあお兄さんはどんな罰ゲームがいい?」
「そうですね……バレンタインらしく『好みのタイプを暴露する』とかはどうですか?」
「あ、いいよ。じゃ、俺、お兄さん、お兄さん、俺、お兄さん、お兄さん、お兄さん、俺、で」
「カスタネットです??」
 休んで叩いて叩いて休んで? と晴夜が訝しむ。
「まぁまぁ、はい」
 先に俺から、とリュカがタコ焼きへと手を伸ばした。
「うん、美味しいよ」
「美味しいですか、そうですか。そういえばリュカさん、当たりを食べてもわかるんです?」
 弩級の味音痴でしょうに、と口には出さず訊ねる。
「大丈夫、激辛だから」
「……ちなみに、どれくらいです?」
 問われ、軽く首を傾げて考えて、リュカが口を開く。
「俺でも嫌になるくらい?」
「それ激辛越えて獄激辛じゃないです??」
 死では? と言いながら晴夜がタコ焼きを口に運んだ。
「あ、はい、辛くはないんですけどね、ええ、はい」
 野菜とチョコレート味の主張が激しいタコ焼きをゴリゴリ食べて、飲み込んだ。
「じゃ、次もお兄さんだよ」
「絶対おかしいんですよね」
 そうは言いつつも食べる辺り、晴夜である。カスタネットみたいなリズムで互いに食べて、最終的に|当たりを引いた《ダイス勝負で負けた》のは――。
「◎△$♪×▼※¥○&%#!!?!!?!?!?!?」
「あ、当たったね」
「~~~~~~~!!!」
「はい、お水」
 渡された水を受け取り、全て飲み干してもまだ口の中が燃えているようで、晴夜は最後のお楽しみとしていたチョコフォンデュを口にする。辛い甘い辛い辛い、みたいな訳の分からなさに汗が流れ落ちる。何とか喋れるくらいに回復した晴夜が、ぐったりしながら言葉を振り絞る。
「これ多分オブリビオンにもダメージ与えられると思います」
「食べ物を武器にするのはちょっと」
「武器レベルになってるんですよねぇ」
「あ、お兄さんのタイプは?」
 罰ゲーム、とリュカが問う。
「このハレルヤ、妻一筋です」
 そのまま妻自慢が始まりそうだったので、リュカが晴夜の口にタコ焼きを突っ込む。
「むぐー!」
「いいね、俺の好みは長生きしそうな人です」
 何も罰ゲームではないのでは? と言う目をしつつ、晴夜はなんだかんだでタコパもチョコフォンデュも楽しんだのであった。
 折角のキャンプなのだから食い気だけではなく星も見ようと二人で星を眺め、ハレルヤ座を作り出したりなんかして。あっという間に楽しい時間は過ぎていく。
「さ、リュカさん。そろそろ寝る時間ですよ。今日は豪華な場所でおやすみタイムです!」
 歯磨きもしっかりとして、ベッドへダイブするように寝転がる。
「……何かそわっとする」
 むくり、とリュカが起き上がり晴夜を見る。
「お兄さん」
「どうしました?」
「……やっぱり寝袋にしない?」
「……寝袋!? 豪華な場所で寝れるのに!」
 嘘でしょう、という顔をした晴夜が、それなら折衷案ですとベッドの上に寝袋を敷く。
「どうぞ、リュカさん」
「……何か違わない?」
「大丈夫です、寝袋です」
 そうかなぁ、という顔をしつつリュカが寝袋に入ると、晴夜が電気を消した。
「おやすみなさい、リュカさん」
「……おやすみ、お兄さん」
 なんだか違和感はあるけれど、寝袋の中は少し安心する。いつしかひとつだった寝息はふたつになって――バレンタインの夜は更けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

楊・暁
【朱雨】◎

俺へのべた褒めは日常茶飯事だけど
やっぱりちょっと…いや結構恥ずかしい

…珈琲は元々こんな色だろ…
ぼそっとツッコミ&しょうがねぇなと苦笑漏れ
褒めてくれるのは嬉しいけど、贔屓目過ぎやしねぇか?
本職なんだから、忖度なしで――

愛ってんならそれ以上何も言えず
…ったく、じゃあ本当に美味く淹れられたって自惚れちまうからな?
何かあっても責任取れよ?

藍夜も。作ってくれてありがとう
ハッピーバレンタインの声重ねカップで乾杯

チョコプリンはまじまじ眺め
スマホで撮ってから食う
ん~~美味ぇ!
一気に食っちまうのは勿体ねぇから味わいつつ
藍夜には温めた月餅をあーん

胸一杯の幸せが
一緒に飲む珈琲の味まで極上なもんにしてくれる


御簾森・藍夜
【朱雨】◎
艶々な珈琲が心音に似てるとしか思えない
…はっ!淹れたのが、心音だからか!?最高だ
贔屓目なんて言うな。純粋に当然にこれを人は愛と呼ぶ
可愛いことを言う心音を抱きしめ、こつんと額を合わせて笑おう
責任なら、勿論喜んで

狐色の焼き色が美しい月餅
キャンプらしいライブ感で作ったチョコプリンには黒狐色の珈琲と

ふわふわのクッションに並んで身を預けてカップで乾杯を
淹れてくれてありがとう。ハッピーバレンタイン、心音

店以外で飲むコーヒーというのは、また格別
しかも心音が淹れてくれた珈琲というスペシャルだ

写真撮る心音可愛い…
楽しそうに食べる姿を横目に見ていたが、差し出された月餅に口を開けぱくり
この日常が、しあわせ



●バレンタインに愛を重ねて
 楊・暁(うたかたの花・f36185)がオーブンを使って月餅を温め直す後ろ姿を眺めつつ、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)がソファに面したテーブルにプリンと珈琲をセットする。
 後ろ姿も可愛いな、耳と尻尾がぴこぴこ動いているのもポイントが高い……という気持ちを隠す様に小さく息を吐く。全く隠しきれてはいないのだけれど、暁はオーブンの中で温め直されている月餅を見ていたので藍夜の様子には気が付かない。
「可愛い……」
 思わず声が漏れ出たが暁はちらりと藍夜の方を向いただけで、気のせいかと再びオーブンに向き直る。温めすぎない丁度いいところでオーブンの扉を開け、ミトンを嵌めた手で天板を取り出してキッチンに置くと丁寧に皿へと移し替えた。
「出来たぞ、藍夜!」
 両手で皿を持ち、藍夜が待つソファへと向かい隣へと座る。お皿を藍夜の方へと置くと、準備万端だなと微笑んだ。
「ああ、早速いただこうか」
 藍夜がコーヒーカップを手に取り、そのふくよかな香りを堪能しつつ珈琲の水面に視線を落とす。
「この艶々の珈琲、心音に似てるとしか思えない」
「何言ってるんだ?」
「……はっ! 淹れたのが、俺の心音だからか!? 最高だ……!」
「……いや、珈琲は元々こんな色だろ……?」
 本当に何言ってるんだ? とは思ったが、暁に対しての藍夜は大体いつもこんな感じだ。しょうがねぇな、と困ったように笑うけれど藍夜は気にしない。だって俺の妻は最高だし一番可愛いのだ。
「色はともかく、味だろ」
「味も最高だぞ」
 カップに口を付け、一口を味わうように飲む。
「キレがあるのにまろやかな味わい、香りもいい。店に出してもいいくらいだ、ああでも心音の珈琲が飲めるのは俺だけがいいな」
「……っ、いや、褒めてくれるのは嬉しいけど、贔屓目過ぎやしねぇか?」
 藍夜が暁をべた褒めするのは日常茶飯事だけれど、これはちょっと譲れないと暁が藍夜へと身を乗り出す。
「本当だ」
 コーヒーカップをソーサーに戻し、藍夜が暁を真っ直ぐに見つめて笑う。
「贔屓目なんて言うな。純粋に当然に、これを人は愛と呼ぶ」
「う……っ」
 愛だというなら、それ以上は何も言えない。だって、藍夜が自分に向ける愛に嘘は一つもないからだ。それだけは間違いなく信じられる――けれど、恥ずかしくなるのは仕方のないことで。
「……ったく、じゃあ本当に美味く淹れられたって自惚れちまうからな?」
 照れ隠しも手伝って、唇を軽く尖らせながら暁が藍夜を上目遣いで睨む。
「何かあっても責任取れよ?」
 は??? 可愛いすぎるんだが??? という言葉を飲み込み、藍夜が暁を抱き締めて額をこつんと合わせて笑う。
「責任なら、勿論喜んで」
「絶対だからな」
 おずおずと藍夜の背に手を回し、暁がへにゃりと笑った。
「さ、冷めないうちに食べようぜ!」
「そ、そうだな」
 余りの可愛さに倒れるかと思った……と思いつつ、改めて藍夜がテーブルの上へ視線を戻す。狐色の焼き色が美しい月餅に、キャンプらしいライブ感で作ったチョコプリン、合わせるのは黒狐色の珈琲。
「完璧なバレンタインだな」
「美味そうだよな~」
 ふわふわのクッションに並んで座り、二人コーヒーカップを手に取って。
「淹れてくれてありがとう」
「藍夜も。作ってくれてありがとう」
 そっと、心を触れ合わせるように互いのコーヒーカップをくっつけて。
「ハッピーバレンタイン、心音」
「ハッピーバレンタイン、藍夜」
 声を重ね、笑い合いながら珈琲を口にした。
「店以外で飲む珈琲というのは、また別格だな」
「いつもと違う場所っていうなら、そうかもな」
「しかも心音が淹れてくれた珈琲というスペシャルだ……!」
「も、もうそれはいいから……っ!」
 頬を少し赤くしつつ、暁がコーヒーカップを置くとチョコプリンに視線を向ける。
「藍夜のチョコプリン、美味そうだ」
 しかも綺麗だ、とまじまじと眺めてから、おもむろにスマホを取り出してシャッターを切った。
 写真を撮る心音も可愛い……いや、何をしていても可愛いのだが、と見ていたらスマホを置いて食べ始めたので、味はどうだと聞いてみる。
「ん~~~美味ぇ! すっげー美味ぇ!」
 一気に食べるのは勿体ないと、一口一口を味わって食べ進める。
「あ」
「ん? どうした?」
 スプーンを置いた暁に何かあったかと藍夜が視線を向けると、暁が艶々した焼き色の月餅を手に取って、藍夜へと差し出す。
「藍夜、あーん」
「……! あーん」
 差し出された月餅に齧りつき、味わうように咀嚼する。
「どうだ?」
「美味しい、すごく」
 蕩けるような藍夜の笑みに、暁が小さく溜息を零す。
「不思議だな。胸一杯の幸せってのは、一緒に飲む珈琲の味まで極上なもんにしてくれるんだな」
「……そうだな」
 君が隣にいる事こそが、この日常が。
「それがきっと、しあわせってことだ」
 なにものにも壊されぬよう、いつまでも守り抜くと藍夜が暁の手を取って握りしめると、それに応えるように暁もその手を握り返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルフィード・クローフィ
【雲蜘蛛】

チョコ作り面白かったね!!
せっかくだからテントで過ごそう!
あのまん丸テント可愛いね!アレにする?

テントの外で椅子を用意して
環ちゃんどうぞ!
その隣に座り、空を見上げて
みて!みて!環ちゃん、星がとても綺麗だよ!
寒くなったかな?
ちょっと待っててね!
そっと環ちゃんに上着を覆った後
ん?俺の心配もありがとう!
体温高いから大丈夫だよ!
テキパキと火をおこし
はい!と抹茶ラテを渡す
じゃ俺も頂きます!

あっ!そうだ!
さっきの環ちゃんの手作りチョコを食べよう!
うねうねゴボゴボ
ふふっ、生きがいいね!
じゃ頂きまーす!
紫の動く物体(チョコ)を躊躇なく食べる
ん、美味しいね!
全く気にして無いというか余裕で食べてる
うんうん、口の中でうごうごしてて面白い!

近くでパタパタと飛んでいた使い魔の丸いコウモリ達が不思議そうにしている
食べたコウモリはそのまま堕ちて気絶
他の子は口から泡を吹いたりピクピクと痙攣したり

刺激的な味だっかな?
コウモリ達を介抱しつつ

『残りはスタッフ(俺)が美味しく頂きました!』

また作ってね!とにっこり


雨絡・環
【雲蜘蛛】

ええ、大変楽しゅうございました
一仕事終えた後というのは心地よい充実感があります

ありがとう存じます
ええ、次はぐらんぴんぐ、の方も堪能いたしましょう
それでは失礼して、と隣へ座り
本当にうつくしい空ですこと
あら、大丈夫ですよ
わたくしは化生ですから
それよりヒトのアルフィードさんの方が温かくしませんと
――ま、火熾しに行ってしまわれたわ
暫くして差し出された抹茶らてを受け取りながら
ありがとうございます
アルフィードさんもご一緒に
そうすれば二人とも温まりますからね

はい、こうして飲み物もご用意頂けて
先程のちょこも食べ時でしょう
ほほほ、冷凍庫で固めておいたはずなのに
まだ活きがよいこと
此方へと補足伸ばされた紫の触手?手足?を手折って
頂きます、と口へ運ぶ
痺れる程の甘みに刺激的な香り
悪くないと思うのですが
まあ良かった
ほほ、好い食べっぷりねえ

またひとつ、触手を手折って
傍の使い魔(黒球鬼)へと分けてやる
ひと口齧ると――あらあら
お前のことも(物理的に)墜とせたよう
蝙蝠はちょこは不向きですのね

喜んで
また作りましょう



●わんだぁ・ちょこれぇと・ないと
 傍から見れば地獄のような、二人からするととっても楽しいチョコレート作りが終わり、アルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)た雨絡・環(からからからり・f28317)に向かって屈託のない笑みを向ける。
「チョコ作り面白かったね!」
「ええ、大変楽しゅうございました。わたくし、ちょこ作りにも自信を持ちましたわ」
「うんうん、活きのいいチョコレートだったもんね!」
 艶々としたいい笑顔で環が頷き、一仕事終えた後の心地よい充実感に柔らかく息を吐く。
「あ、環ちゃんお疲れだよね? せっかくだからテントで過ごそう!」
「ありがとう存じます。ええ、次はぐらんぴんぐ、の方も堪能いたしましょう」
 疲れよりもやり遂げた満足感の方が強かったけれど、何よりその気遣いが嬉しいもの。環はアルフィードの言葉に頷いて、彼の横を歩いた。
「やっぱりあのまん丸テントかな、可愛いもんね! アレにする?」
「ええ、第一印象からあのテントは可愛らしゅうございましたから」
 ついでに、このうねうねと元気なチョコレートを完成までしっかり冷やしておこうと環が冷蔵庫へと向かう。
「じゃあー、俺はテントの外に椅子を用意してくるね!」
「はい、お願いしますね」
 アルフィードがいそいそとテントの外へと椅子を運び、小さなテーブルもセットする。夜になれば昼よりも冷えるもの、吐く息が白くなってきたことに気付く。
「ひざ掛けもあった方がいいかな」
 テントの中にあったはず、とひざ掛けを取りに行くと環が覗き込んでいた冷凍室をそっと閉めるのが見えた。
「環ちゃん、準備できたよ!」
 あったあった、とひざ掛けを手に取りながら声を掛け、エスコートするように外へ案内する。
「さ、環ちゃんどうぞ! 座って座って!」
「それでは失礼して」
 どうぞ、と案内された椅子へ座ればアルフィードがひざ掛けを渡してくれたので、ありがとうございますと膝に掛けた。
「どういたしましてー!」
 環が座ったのを確認するとアルフィードがその隣へと座り、同じようにひざ掛けを掛ける。それから何気なく空を見上げて、わぁっと口を開けたまま夜空に見入って、すぐに環にもこの感動を共有したくて言葉を紡ぐ。
「みて! みて! 環ちゃん、星がとても綺麗だよ!」
「まあ……満天の星……」
 夜空いっぱいに宝石を鏤めたような輝きに、暫し空を見上げて。
「あ! 流れ星!」
「あちらにも流れましたわ」
 星空から零れ落ちるように流れていく光に、あっちにも、こっちにもと声を上げて笑い合う。
「本当にうつくしい空ですこと」
 ほう、と息を吐けば殊更に白い息が上がって、アルフィードがパッと環を見遣る。
「やっぱり夜は冷えるよね、寒くなっちゃったかな? ちょっと待っててね!」
 婦女子たるもの体を冷やすべきではないと、アルフィードが勢いよく立ち上がると来ていた上着を脱ぎ、それを環の肩へと掛けた。
「あら、大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃないよー、冷えてる!」
「わたくしは化生ですから」
 冷えているのはそのせいでは、と言おうとして環は止めた。アルフィードがせっせと上着の前を締めて完璧! と笑みを浮かべたからだ。
「……それより、ヒトのアルフィードさんの方が暖かくしませんと」
 風邪を引いてしまいます、と環が心配するようにアルフィードを見上げる。
「ん? 俺の心配もありがとう! 俺はね、体温高いから大丈夫だよ! あ、でももっと暖かい方がいいよね」
 任せて! とアルフィードが二人の座る椅子から少し離れた場所にある焚き火台に薪を乗せ、火を熾していく。
「――ま、火熾しに行ってしまわれたわ」
 アルフィードさんたら、と環が笑いながら夜空を見上げれば、すぐにパチパチと火の爆ぜる音が聞こえてくる。穏やかなその音と、キラキラと輝く星空に身を委ねるようにして、環は中々隣に戻ってこないアルフィードの方へ視線を向けた。
「アルフィードさん? 何を……」
「すぐ出来るからね! 待ってて!」
 待ってて、と言われるままに暫く待っていると、アルフィードが焚き火台の上に小鍋を置き何やら温めているのが見えて。
「何を作ってらっしゃるのかしら……?」
 ほんのりと香るのは甘い、それでいてやさしさのある香り。何だったかしらと考えていると、答えを手にしてアルフィードが戻ってきた。
「はい!」
 差し出された保温カップを受け取って、中を覗けば綺麗なミルクグリーンが広がっていて、環が顔を上げる。
「抹茶ラテだよ!」
「抹茶らて……美味しそうですね」
「熱いから気をつけてね!」
「ありがとうございます、是非アルフィードさんもご一緒に」
 一緒に飲もうと、環が微笑む。
「そうすれば二人共温まりますからね」
「じゃ俺も頂こうかな! 抹茶ラテで乾杯だね」
 小鍋にたっぷり作ったから、二人でお代わりしても余裕がある。カップを手に戻り、椅子に座ると向き合って乾杯する。カチン、と金属の音を小さく響かせて抹茶ラテを楽しんだ。
「甘くてほろ苦い……大変美味しゅうございますわね、抹茶らて」
「気に入って貰えてよかった! あったまった?」
「はい、こうして素敵な飲み物もご用意頂けて……ああ、そうでしたわ。先程のちょこも食べ時になっているかと」
「あっ! そうだ! 環ちゃんの手作りチョコ食べよう!」
 環がテーブルにカップを置き、少々お待ちくださいませねと席を立つ。すぐに戻って来て、手に持っていたチョコレートを……チョコレート? を置いた。
「ほほほ、冷凍庫で固めておいたはずなのに、まだ活きがよいこと」
 それは本当にチョコレートですか? と問う人がいるわけもなく、アルフィードは目を輝かせて環お手製のチョコレートを覗き込む。
「うねうねゴボゴボしてるね! ふふっ、活きがいいね!」
 紫色をした、うねうねと動き時折ゴボゴボと音を立てて泡のような気泡から紫の煙のようなものを吐く物体にひとつも臆することなく、アルフィードは早く食べたいと環にねだる。
「ええ、頂きましょうね」
 うにょん、と抵抗するように細く伸ばされた紫色の触手のようなものをポキッと手折って、環がどうぞと手渡した。
「わーい! じゃ、頂きまーす!」
「どうぞ、わたくしも頂きましょう」
 もう一本手折ると、アルフィードが躊躇なく食べる姿を見て環も口へと運ぶ。口の中に広がるのは痺れる程の甘み、そして鼻に抜ける刺激的な香り――スパイシーなチョコレートに仕上がったと、環が笑む。
「悪くないと思うのですが」
 あなたはどうかしら、と環がアルフィードに視線を向けた。
「ん、美味しいね!」
「まあ良かった」
 口の端からにょろりと出た紫色の|チョコ《触手》を口の中に押し込んで、アルフィードがにこにこと食べ続ける。
「ほほ、好い食べっぷりねえ。気に入って頂けたみたいで嬉しいです」
「うんうん、口の中でうごうごしてて面白い!」
 チョコレートの活け造りだね! とアルフィードが笑う。
「活け造り……ええ、そうですわね」
 とっても活きがいいですものね、と環もまたひとつ|チョコ《触手》手折ると、傍で物珍しそうに見ていた丸いコウモリ――|使い魔《黒球鬼》にも分けてあげようと差し出した。
 不思議そうにうねうねと動くそれを見つつ、主人たる環が食べているならと使い魔が一口齧った瞬間、ぴたりと動きを止めて地面へと墜ちた。
「――あらあら、お前のことも墜とせたようね」
 物理的に、である。
「環ちゃん、他の子もダメみたいだよー」
 バタバタと続く様に地面に墜ちて、泡を吹いたりピクピクと痙攣したりしている。
「まあ……蝙蝠にちょこは不向きですのね」
 多分そうじゃない、そうじゃないんだと蝙蝠達は思っていただろうけれど、全員墜ちていたので伝えるどころではない。
「コウモリには刺激的な味だったかな?」
 大丈夫? とアルフィードが蝙蝠達を少し離れた場所に移動させて介抱し、戻ってくると再びチョコを摘まみだす。残りは|スタッフ《俺》が美味しく頂きました! というやつである。
「環ちゃん」
「はい?」
「とっても美味しかったから、また作ってね!」
 嘘偽りのない笑顔に、環もまた柔らかな笑みを返して――。
「喜んで、また作りましょう」
 腕によりをかけて、と頷いた。
 こうして、次回の|チョコレート《紫の動く物体》作りは決定したのでありました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
十分に茶を堪能して満足で部屋に帰る。満足だ。
帰った後で風呂に入り睡魔が訪れるまで読書を…。
「……どうした?」
ベットの上。露が目の前でチョコを咥えていた。
しかもメイド服姿でひざから下を左右に開き座る。
ん。ヴィクトリアンメイドか…どこで入手した?
よくわからないので視線を本へと戻して読書再開。
再び読み始めようとしたら横からぐいぐい来る。
「読み難いから、咥えたチョコで頬を突くな」
今度は何時ものようにくっついて来てうっとおしい。
…。
「…なるほど。自作のチョコを食べろ、と…」
理解はしたが何故またチョコを咥えるのかは疑問だ。
…まあ。しかし折角作った物だし食べてやろうか…。
咥えていたチョコを摘まんで口に含む。…ん。甘い。
これは紅茶が必要だな。部屋に置いてある茶葉は。
「…君も紅茶はいるか? 甘い物には必要だろう?」
何故か不満そうな露へ声をかけ紅茶を二人分用意。
ゆっくりしようと考えていたが仕方がないな。やれやれ。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
お茶がとってもとっても美味しかったわ♪
そしてレーちゃんが満足そうで嬉しいわ~♪
あたしはずっと紅茶のお話をしていたわ。
お部屋に帰る時も一緒のお風呂の時も。

さて。ここからがあたしの本番ね。本番よ。
作ったチョコをレーちゃんに食べさせたいわ。
だからヴィクトリアンメイドを借りて準備万端♪
レーちゃんの前で女の子座りしてチョコ咥えてみる。
…!むぅ…。本に目を通し直したわ。むぅ!
だったらくっついて頬にダイレクトアタックするわ!
これでもやっぱりダメで。仕方ないから説明する。
やっと読書をやめて呆れた声。
「だって…せっかく作ったんだもん。食べて欲しいわ?
レーちゃんの為に作った物だから食べて欲しかったんだもん」
再度口に咥えて待っていたらチョコは摘まんで食べてくれて。
…うん。食べてくれたのは嬉しいけど。そのままでもいいのに…。

「あれ? どこ行くの?」
チョコ一つ食べただけでベットから降りようとしてたから聞くわ。
え?紅茶?じゃあじゃあもっと食べてくれるのね♪
「うんっ♪ あたしも欲しいわ」



●チョコレートのように甘いひと時を
 最高のロケーションでのアフタヌーンティー。シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は気になる紅茶を全て味わい、気に入ったものは再度口にし、フレーバーティーやノンカフェインが売りだというフルーツティーも頂いて、満足そうに頷くと立ち上がる。
「いいお茶だった。行くぞ、露」
「はーい♪」
 シビラのレクチャーの元、同じ紅茶を堪能した神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)もまた、満足そうな表情でシビラの腕を取ってくっつく。常ならば鬱陶しいと振り払われるのだけれど、今日のシビラは美味しいお茶で機嫌がいい。まぁいいか、とそのままにして歩き出した。
「お茶、とってもとっても美味しかったわ♪」
「ああ、気に入った茶葉を帰る前に買っていこう」
「あのお皿……スタンド? に載ってたお菓子も美味しかったわ~」
「焼き菓子も紅茶に引けを取らない味だった」
 互いに感想を言いあいながら部屋へ戻ると、シビラがそのまま浴室へと向かう。
「お風呂に入るの? レーちゃん」
「ああ、あとは風呂に入って寝るだけだからな」
 広い浴室を軽く見回し、バスタブへ湯を張る為のボタンを押した。それから、寝室に戻って荷物の中からナイトウェアを取り出し、てきぱきと風呂へ入る準備をすると再び浴室へ向かった。
「レーちゃんが入るならあたしも~♪」
 絶対に一緒に入るという意志を見せながら露もお風呂の準備を始め、シビラに遅れること数分。
「レーちゃん~~一緒に入りましょ~~」
「……風呂ぐらいひとりで」
「うふふ、とっても広いバスタブね~二人でも足が伸ばせるわ♪」
 有無を言わさずシビラが髪を洗う横に座り、自分も髪を洗い出す。
「……はぁ」
 入ってきたものは仕方ない、溜息をひとつ零しながらシビラも再び髪を洗うことにした。
 しっかりとシャンプーを流すとコンディショナーを付け、少し置いて流しタオルで水気を切って巻き上げて、と普段の手順通りにして顔を上げると露がにこにこしてシビラに肌を寄せる。
「レーちゃん、背中流してあげるわ~♪」
 必要ない、と言おうとして諦めた、既に柔らかなタオル地が背中を優しく擦っていたからだ。
「レーちゃんって、やっぱりお肌が綺麗ねぇ」
 艶々で、しっとりとしてて、真っ白で、と露がご機嫌で背を洗い終える。本当はもっと洗っていたいけれど、繊細な肌を擦りすぎては赤くなってしまうから。
「露もしっかり洗え、耳の後ろも洗うんだぞ」
「もう、子どもじゃないんだから」
 そう言いつつもしっかりと耳の後ろも洗い、先にバスタブに浸かったシビラを追いかけた。
 温かな湯に浸かり、心地よい溜息をついて思い出すのはやはり美味しかった紅茶の味。
「レーちゃんはどの紅茶が一番美味しかったの?」
「そうだな……」
 爽やかで繊細な渋みを持つダージリン、ベルガモットの香りが華やかなアールグレイ、濃い味わいに優しい渋みがミルクと合うアッサム、オリジナルブレンドされた紅茶も捨てがたい。
「……選びきれないな、どれも美味しかった」
「そうなのね~、あたしも全部美味しかったわ♪」
 ホットでもアイスでも、ストレートでもミルクでも美味しいなんて、と紅茶談議に花を咲かせながら風呂から上がる。髪を乾かし、しっかりとケアをしてから寝室へシビラが向かう。程良い眠気がくるまで、本を読む気なのだ。
「先に行くぞ」
「はーい」
 その後姿を見つめながらゆっくりと支度をしていた露が、にんまりと微笑む。
「さて。ここからがあたしの本番ね。本番よ」
 アフタヌーンティーも美味しかったけれど、せっかく作ったチョコレートなのだからシビラに食べさせようと露が張り切る。
「ふふ、こういうのは本格的にしなくちゃね♪」
 髪を整え、持ってきたナイトウェアの更に下から露が取り出したのはヴィクトリアンメイド服。手早く着替え、鏡の前でポーズを決めてみせる。
「うふふ、うふふ、これで準備万端だわ♪」
 いざ! と、露が冷蔵庫からチョコレートケーキを取り出し、スティックサイズへ切り分けると皿へと載せてシビラが寛ぐ寝室へと向かったのであった。
「レーちゃん♪」
「ん」
 本に視線を落としたまま、シビラが返事をする。
「もう、レーちゃんったら! んー!」
「だからなんだ……どうした?」
 このままでは本の続きが読めないと判断したのか、シビラが顔を上げるとそこには――メイド服を着て、可愛らしく女の子座りをした露がこちらを見てチョコレートケーキを口に咥えていた。
「ん!」
「……ん。ヴィクトリアンメイドか……どこで入手した?」
 出所を聞きつつ、何故あとは寝るだけだというのにメイド服を着てチョコレートケーキを口にしているのか。さっぱりわからん、とシビラが再び視線を手元の本に戻して読書を再開しだす。
「……! むぅ……」
 まさか再び本を読みだすとは思ってもいなかった露が、不満の声を漏らす。
「むぅ!」
 こうなったら、ダイレクトにアタックよ! とシビラにぴったりとくっついて、口に咥えたチョコレートケーキを頬へと押し付けた。
「……露」
「むぅ!」
 何が不満なのかわからないが、めちゃくちゃぐいぐいくるな。しかも何時ものようにくっついてきて、鬱陶しさも倍増だとシビラが僅かに眉根を寄せて顔を上げる。
「露、読み難いから、咥えたチョコで頬を突くな」
「むぅ……!」
 これでもダメなのね、と露が諦めて咥えていたチョコレートケーキをもぐ、と食べてから口を開いた。
「レーちゃん、一緒に作ったチョコレートも、一緒に食べたいわ」
 その言葉にシビラが目を瞬いて、軽く溜息を落とした。
「……なるほど。自作のチョコを食べろ、と……」
「だって……せっかく作ったんだもん。食べて欲しいわ? レーちゃんの為に作った物だから食べて欲しかったんだもん」
 そう言って、露が再びチョコレートケーキの端を口に咥える。
「……ふぅ」
 理解はした、理解はしたが何故再びチョコレートケーキを口に咥えるのか? 甚だ疑問であるが――。
「ん」
 せっかく作ったチョコレートケーキだ、食べてやろうかとシビラが指を伸ばして露が咥えたチョコレートケーキを半分に手折ると、己の口へと運ぶ。
「……ん。甘い」
「レーちゃん……!」
 食べてくれたのは嬉しい、けれどそのまま食べてくれてもいいのにと露が唇を尖らせる。そんな彼女に気付かぬまま、シビラが美味しいとは思うがこれは紅茶が必要だな……と本に栞を挟んで閉じるとベッドから降りた。
「あれ? どこ行くの?」
「紅茶が飲みたくなった。……君も紅茶はいるか? 甘い物には必要だろう?」
 なんとなく不満そうな顔をした露にそう声を掛けると、尖らせていた唇は嬉しそうな笑みを形作って。
「うんっ♪ あたしも欲しいわ」
 すっかり機嫌を直した顔で、ベッドから降りる。
 だって、紅茶を淹れてくれるということは、もっと食べてくれるということだから。
「こら、くっつくな。紅茶が淹れられない」
「手伝うわ、手伝うわ♪」
 まったく、ゆっくりしようと考えていたが仕方がないな。やれやれ――と、シビラが諦めたような顔をしながら、紅茶の茶葉をどれにしようか吟味し始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年03月20日


挿絵イラスト