フェアリーテイルは終わらない
●伝説と生きる街
それは、人間から見ればずうっとちいさなお祭り騒ぎ。
鮮やかな桃や青の枝垂れ花カーテンをくぐり、街へ入ってすぐには、伝承を謳うブロンズの妖精像があって。
土っぽい道を挟んで両脇に、奥まで市場と並木とが続いていた。
色とりどりの背の低いテント。並ぶ品は、手の平大の華やかなドレス、虫眼鏡が欲しくなるサイズの本、雨粒に似た水晶玉に森の香るポプリ、不思議な生物の丸焼きまで様々賑やかしく。
勇者由来の品もそのひとつ。"勇者大好物の木の実"、"勇者の家の庭で育ったキノコ"なんて怪しげな触れ込みのものもあるのだから逞しい。
「そこ行く冒険者さん、見てってくれよ。採れたての茶葉があってね……」
「うちで扱ってる加護付きピアスは野犬も尻尾を巻いて逃げ出す優れ物さ」
「この街一番の人気商品はこれ! リリティカまんじゅうよ!」
背の翅ではたはたと飛び回る彼ら彼女らによって、上下左右から降り注ぐ明るい客引きのコール。
道端の若葉だって、客人を前に誇らしげに揺れた。リリティカ、勇者伝説と生きる妖精の街は、今日も看板に恥じぬ活気を見せている。
●フェアリーテイルは終わらない
「最近話題の勇者伝説。聞いたことある?」
ちょうど妖精くらいにちいさなボールをいじくるアビ・ローリイット(献灯・f11247)。
勇者。アックス&ウィザーズにおいては、過去に帝竜ヴァルギリオスとの決戦に出向いた者たちがそう呼ばれている。
「ちょいと調べに行ってほしいんだよなあ」
転移先はリリティカ。勇者の血を引くとされるフェアリーらが暮らす、商いが盛んな街。
もっとも居住区は森に隠されており、人の目に触れるのは市場だけ。今回は、そこで伝説の名残を探してきてほしい。
この地は勇者の生まれ育った場所であると、ちょっとした名所ともなっているらしい。遠足気分で見て回るだけでも、得られるものもあるだろう。
訪れる他種族のためか、妖精族の住処としては市場は大きめに構えられているので一息つけはする筈だ。まぁ……すこしくらい頭をぶつけたって。
妖精のパンって何個食ったら腹膨れんのかな?
犬男素朴な疑問ののち、思い出したかのように「よっしく」の声。
勇者の足取りを辿っていけば、未だ所在の掴めぬ群竜大陸――そしていつか、帝竜へと繋がるかもしれない。
物語に真白いページが足されるかの如く、世界はまばゆく移り変わって。
zino
ご覧いただきありがとうございます。
zinoと申します。よろしくお願いいたします。
今回は、ちいさな勇者の伝説を辿りアックス&ウィザーズへとご案内いたします。
●流れ
第1章:日常(市場)
第2章:冒険(???)
第3章:集団戦(オブリビオン)
●リリティカ
三方は森、緑豊かな妖精族の街。商いも盛ん。
尚、伝承の真偽は不明。
●第1章について
時間帯は朝。市場を見て回ることができます。
雑貨、装飾品、衣類、書物、食べ物等。店番もフェアリー。基本的に品はミニサイズですが、中には他種族向けのものもあるようです。
どうぞ心の赴くままご想像ください。
アイテムの発行はございません。また、聞き込みや調査は必須ではありません。
お手数となりますが……。
複数人でのご参加の場合、【お相手のIDと名前(普段の呼び方で結構です)】か【グループ名】をプレイングにご記入いただけますと幸いです。
個人でのご参加の場合、他参加者様と時間を共にする場合もございます。確実な単独描写をご希望でしたら、【単独】とご記入ください。
●その他
プレイング受付締切等はマスターページにてお知らせしております。
セリフや心情、結果に関わること以外で大事にしたい/避けたいこだわり等、プレイングにて添えていただけましたら可能な範囲で執筆の参考とさせていただきます。
以上、ご参加を心待ちにしております。
第1章 日常
『のんびり市場巡り!』
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POW : 食べ物や装備のお店へ!
SPD : アクセサリーや道具のお店へ!
WIZ : 書物や骨董品のお店へ!
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
小宮・あき
●アドリブ・連携、歓迎します。
まあ、妖精さんの街だなんて初めて来ました…!
まるで子供の頃に夢見た、絵本の中の世界みたい。
アックス&ウィザーズの世界は、キラキラして大好きです!
●食べ物や装備のお店へ!
木の実を扱っているお店はありますか?
私は、よく依頼の中で【動物と話す】を使用します。
その際、手伝っていただいた動物さんに木の実をプレゼントする事が多く。
アイテムにドライフルーツを持っているのですが、私のものはUDCアース産。
アックス&ウィザーズ産のドライフルーツや木の実も見てみたいなって。
きっと、知らない木の実が沢山あるんだろうなあ、楽しみ!
お店の方に、勇者の伝承について聞いてみようかな。
レイラ・アストン
『』:技能
絵本の中のような街、本当に存在するのね
ぜひこの目で見てみたいわ
勇者の伝説の件も気になるしね
そうね、装飾品のお店を見てみましょう
『コミュ力』『礼儀作法』で、失礼の無いように
私が身に付けられるサイズのもので、おすすめはあるかしら?
何か加護が付いていると尚良いのだけれど…
店主さんとのやりとりを楽しみつつ
記念にひとつ、お買い物していくわね
そうそう、店主さんにはもう少しお話を伺いたいわ
この街に伝わる勇者のこと、もっと詳しく学びたいのだけれど
勇者の物語とか、縁の深い場所とか
何かご存知ないかしら?
何かしら伝説に関わる情報を得られるといいけれど…
※アドリブ歓迎
エンジ・カラカ
珍しい街並みに足取りはいつもより軽い気がする。
ぜーんぶがいつもより小さいンだ。
コレはとってもとーっても大きなオオカミだったのかもしれない。
アァ……そうだなァ。そうに違いない。
大きなオオカミはドコに行けばイイ?ドコに行こうカ。
…小さな小さな、それはもう小さなコレは――時計?
よーく見てみたら真っ白な砂が落ちているなァ……。
なァ、コレの他にも面白いモノはあるカ?
何かほしいほしい。小さいのがほしい。
本はダメ、読まない。小さいピアスは間違えて食べてしまう。
アァ……、綺麗なのでも汚いのでもなーんでもイイ。
コレに似合いのなにかをくれ。
グリツィーニエ・オプファー
小さな英雄殿に御座いますか
それはそれは…さぞ勇敢な御仁だったのでしょう
ええ、伝承の類は嫌いでは御座いません
耳にするだけで心が躍ります
ふむ…成程、これが少年の心なるものやも知れませぬ
おや…ハンス、如何されました?
先程から視線が彼処の店に向いておりますが
相棒の様子にふと店先を覗いてみましょう
もしかすると光り物が置かれているのやも…精霊と言えど鴉故
とはいえ肩に鴉等乗せていると店主殿が驚かれるでしょうか
念の為いつでも杖に戻せる様しておきます
…買い物中と云えど目的は忘れておりませぬ
ハンスの眼鏡に叶った品を購入しつつ店主に伝承についてお聞きしてみましょうか
少なくとも我々よりも多くは知っている筈に御座います
●
「まあ、妖精さんの街だなんて初めて来ました……!」
小宮・あき(人間の聖者・f03848)の瞳に映る世界は、子供の頃に夢見た絵本の中からそのまま飛び出してきたかのよう!
ふわりとスカートの裾を躍らせ一歩踏み出す少女の姿も、そんな物語の登場人物としてぴったりの可憐さ。歓迎する風に花のアーチから瓜二つの桃色が降る。
「……本当に存在するのね」
いざ目にするまでは半信半疑だったけれど。人々も品々も、どれもが手に触れられる本物だ。
あきの声が一層弾む横、UDCアース生まれのレイラ・アストン(魔眼・f11422)はまるで同じ感想を抱きながら、時折頭の横をすり抜けてゆく妖精たちのおしゃべりに耳を傾けていた。ささやかで、楽しげで、小鳥の囀りにも似た。
人には視えず自分には視えてしまうものが、こんなものばかりなら良かったのに。
硝子で隔てた瞳こそ涼しいまま微か口の端を持ち上げて、思考はすぐに本日の目的、勇者伝説の情報収集へと移る。なにせ興味もあった。どこかで……そう、アクセサリーを見繕うついでにでも。
夜にしか行動できぬわけではないが。こうも眩しい陽の下というのも、体感以上に久しい気がして。
「なんだかみーんな小さいなァ」
白色地面の照り返しも一役買っている。せかせか低空で移動する妖精なんて、踏んづけてしまっても気付けないかもしれない。今日のエンジ・カラカ(六月・f06959)はとってもとーっても大きなオオカミ。
とはいえ危なげなく常より軽い足取りで、男が行きついた先は雑貨の並ぶテントだった。なにを匂うでもなくすんと鼻を鳴らす。ほしいもの。そういえば、考えていなかった。
「本はダメ、読まない。小さなピアスは食べてしまう、輪っかは息が詰まりそう」
使いも、要りもしないのに湧く"欲しい"をひとつずつ潰していって。どうしようカ。呟きは相棒たちへと尋ねたものであったが、落とした視界の端で妖精以外に動きあるものが応える形となった。
音もなくさらさら落ちる白い砂。小さな小さな、それはもう小さな砂時計。
ぐんと顔を寄せるエンジ。お客さん、魔法の砂時計に御用ですか? 声が掛かれば屈んだ姿勢から絡繰りじみた動きで視線だけ上げ、今は少しばかり高い位置にある妖精店主の顔を見た。
「魔法の砂時計」
「えぇ! そいつはね、勇者様の家の庭の砂でできてるんだ。きっかり一時間ずつを刻むんですよ」
魔法も何もそれは時計として最低限あるべき姿であろう。だがエンジはそうした野暮な話よりも、物珍しいものとの出会いに夢中で。話を遮る風にも大きな手を開いてだした。店主がぴゃっと居住まいを正す前、牙覗かせ。
「なァ、他にも面白いモノはあるカ? コレに似合いのなにかをくれ」
はいただいま!
緊張と興奮の混じった返しで、価値のわかる客にだけ見せようとテントの下に隠されていた魔法のクッションやら魔法のマグカップやらが転がり出てくる。
そのうち満月色した魔法のベル・オブ・勇者の家の呼び鈴とおそろいを掌に収めじぃっと見つめあう狼男。グリツィーニエ・オプファー(ヴァルプルギス・f13858)も傍で眺めてはいたものの口を挟むでなく、勇者のと名の付くものすべてがほんとうに小さい事実を興味深く思うくらいで。
(「小さな英雄殿に御座いますか。さぞ勇敢な御仁だったのでしょう」)
伝承の類は耳にするだけで心躍るもの。これが少年の心なるものやも――思い巡らせていればふと、連れている鴉が手元から飛び立った。
「私が身に付けられるサイズのもので、おすすめはあるかしら?」
失礼のないようにとあいさつも欠かさず、装飾品商へレイラが問えば差し示される人間用の――これは、グラスコードか。曰く、冒険者は戦いのとき眼鏡を吹っ飛ばしたくないだろうからと。
「ネックレスにもなる。もちろん加護も込めてるよ、大事なものをなくさないようにって物忘れのね」
「……ありがとう。記念にひとつ、お願いします」
手に触れればしゃらりと冷たい音が鳴る。極細かで薄い硝子状の素材が練りこまれた藍の絹糸は、時に黒へも水へも色を変えるらしかった。溶け入るレイラの瞳の色が主張することはない。
まぁ、テーマパークの絶叫系乗り物程度には役立つかもしれない――そうそう、と、糸を指で梳かしながら娘は話を変える。この街に伝わる勇者について、もっと詳しく学びたい――故にと問うたのだ。
「勇者の物語かぁ。すまないね、あたしゃ流れのもんであまり詳しくないんだけど。ここで商いをしようってとき許可をくれた長がその家系だって聞いたね。奥の道さ、行ってみたらどうだい?」
「なるほど、血筋は今も続いているのね。本人に聞いてみるのが一番かしら。奥……道、あるように見えないけれど」
あっちあっち、指される先は猫ならばなんとか滑り込めるかもしれない狭いスペース。
話し込む二人の傍らで鴉が一羽。自らの顔が映り込む近さで水晶玉をのぞき込んでいるのには、主であるグリツィーニエしか気付いていない。
「あぁ……啄んでは、」
「あっはは、元気な鳥さんだ。食べたいならうちの木の実はどうだい? 宝石みたいにキラキラだろう!」
遅れて横から宣伝が入るや否や、およそ人語を理解しているすばやさで鴉は隣の店へと飛び移る。売り物に汚れなどつけていないことを確かめてから、装飾品商にお辞儀をして主も続いた。
次のテントの下ではちょうど先客のあきが、普段動物へそうするようにハンスに対してどこから来たの? と声をかけているところで。
「あっ、ご主人さまですか? 綺麗な子ですね」
にっこり笑顔で顔を上げるあき。いつもは依頼で手伝ってくれた動物への礼としてUDCアース産ドライフルーツを持ち歩いているけれど、アックス&ウィザーズ産のものも見てみたくて。
鴉より一足先に食べられる宝石に瞳輝かせていた少女は、場所を譲ろうとスペースを作る。それに再び頭を下げてキマイラの男は、精霊である筈なのですが、とすこし眉下げた笑みで濡烏を撫ぜる。
赤、青、緑……隣り合う木製のバスケットたちにざらりと流し込まれた木の実、果実の一粒ずつが朝日に煌めいていた。
「このへんの動物にやるならこの黄色いのがいいね。腹減ってる群れに狙われたとき、俺も命拾いしたってもんよ」
「わ、中のとげとげな種が透けてて不思議……どんなお味でしょう?」
痺れ薬みてぇなもんさ! 興味津々に問うあきにおどけた調子で答える店主。危なくなくておいしいのがいいですー! 慌てた娘の声と、繰り返される問答にこの街の陽気さを改めて感じつつ。右へ左へ頭を振っていたハンスがこれだと見初めたものをグリツィーニエは手に取った。
青。いくらか硬めで突っ張った皮は多角形を形成していて、光の当たり加減で面ごとに色を変える様はまさに鉱石のそれ。
お目が高いね、手を鳴らす店主によれば甘露の味わいなのだとか。
「ふふ……それではこの青い果実を、ひと包みいただけますでしょうか」
「カラスさんのお眼鏡にかなったもの、私もください! それとそれと、あの赤いのと白いのと」
かわいいの、そうあきが指したドライフルーツはダイスの形。そりゃ勇者のお気に入りだ、観察眼を褒め称えるみたくびしっと親指を立ててかざしてみせた妖精が、手慣れた様子で緑の葉に商品を包みはじめる。
勇者。……もちろん忘れていないとも。
一瞬だけ視線を交わした猟兵二人は、そのお話をもう少し詳しく、と声を揃え。
ぴたりと店主の手が止まる。もともと多弁であったのだろうが、そこからはガトリングトークもいいところ!
噂によれば、勇者は"そりゃもう愛らしい娘っ子"だったらしい。街の入り口の妖精像は彼女がモデルだ。探検と果物とが大好きなお転婆で、十と少しの頃、この街へ訪れた冒険者一行についていく形で旅に出たのだとか。
ちなみにそんな彼女が好んだこの四角い果実はバームクーヘンよろしく層になっていて、味が上から順にストロベリー、オレンジ――流れるように商品説明に移りはじめたあたりで、利口に過ぎるハンスがカァと声を上げた。
「おっと、話し込みすぎちまったか。いやぁ俺も勇者様のフアンでね。さっ、楽しんでってくれよ!」
「ありがとうございます。っと……失礼、こちらは?」
代金はそのまま頼んだ覚えのない包みまで。サービスだと送り出されれば、ご機嫌な鴉を肩に乗せたグリツィーニエは本日早くも三度目の礼。
お兄さんもいっぱいいっぱいお店が繁盛しますように! 手を振るあきが包みから一粒味見をしてみたなら、なるほどこれは、動物さんも勇者だって満面の笑みになれそうなお味。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夏目・晴夜
【WIZ】
ピアスを見たくも思いますが、今回は書物を購入しに参ります
気になる一冊を自分で探し出すのも面白いですが、
たくさんあるのであちこち目移りしてしまいますね…
なのでここはおすすめの書物を一冊、
お店の方の好みで見繕って頂きたく思います
文字の読み書きを最近マスターしたのですが、
それでも文字に触れて学び続けることが大事でしょうからね
あと最近は物を読むのが少し、ほんの少しだけ楽しくなってきたもので
大きいほうが読みやすいので助かりますが、
小さくても全然構いませんよ
ああ、でも宝物にしたいので内容も表紙も素敵だと嬉しいです
楽しく文字に触れて学んでいくために、
特別な物語が綴られた一冊をよろしくお願いしますね
アリス・フェアリィハート
アドリブや他の方との絡みも歓迎
フェアリーさん達って
ちっちゃくてかわいい種族さん
って、
おもってましたけど…
帝竜ヴァルギリオスさんと
戦った、
勇敢な勇者さんの血を引く
すごいフェアリーさん達の街なんですね…
【WIZ】を使用
フェアリーさんの
書物や骨董品のお店に行きます♪
『フェアリーさんのお使いになる魔法とか、ご興味あります…フェアリーさんの魔導書とか、ありますでしょうか…?』
お店をまわって
店主のフェアリーさんから
お話をお聞きしたり
魔導書などを
見せて頂いたり
購入したりします
『私も、魔法は少しは覚えがありますけど…勇者さんの血を引くフェアリーさんのお使いになる魔法って…やっぱりすごい魔法なんでしょうか…?』
千頭・定
鹿糸さん(f00815)と遊びに来ました!
…失礼致しました、依頼です。
気を引き締めて取り掛かりましょう。
伝承について調べるなら【WIZ 書物や骨董品のお店】で情報収集するのが良いですね。
鹿糸さん……お腹ペコリですか…。
しかし、ご飯は後です。まずは情報です!
本は良いですよう。
自分の知らないことや、感じたことの無い体験が詳しく書かれていますから…知識になります。
鹿糸さんもどうです?
この、赤い表紙の本とか綺麗です。
中身も面白そうですよぅ。
ちゃっかり自分たち用にお持ち帰りする本も選びつつ、伝承について調べます。
お仕事をきちんとしつつ、遊びも忘れない賢い行動ですとも。
※アドリブ等はおまかせですよう
氏神・鹿糸
【サダ(惹かれ者の小唄・f06581)と参加】
(WIZ)
妖精の国は可愛らしいお店がたくさんだわ。
さて、伝承について調べるのね。
お買い物がてら[情報収集]をしましょうか。
「私お腹が空いたのだけど。あのおまんじゅうとか…」
「サダどう行動を取るべきだと思うの?」
情報優先…まぁ、張り切っているみたいだしね。
小さな友人に従うわ。
「伝承なら…本にも残っているかしら?」
「本は眠くなるのよね……折角の機会だし、選んでくれる?」
本はフェアリーのサイズじゃないのかしら。
私、本を読む習慣は無いから探すのも一苦労なのよね。
でも今回のお買い物で、サダが選んでくれたなら頑張って読んでみるわね。
(アドリブ・連携歓迎)
ほわぁ、と。
自分よりもうんと小さなフェアリーたちが大勢で過ごす姿に、改めて感嘆の息をつくアリス・フェアリィハート(猟兵の国のアリス・f01939)。
(「フェアリーさん達ってちっちゃくてかわいい種族さんって、おもってましたけど……」)
帝竜ヴァルギリオスと戦った勇者の血を引くすごい妖精なのだと聞けば、そこにかっこいいも加わって尊敬のまなざしになるのも無理はない。
「さっ、鹿糸さん。我々も気を引き締めて取り掛かりましょうか」
「…………」
鹿糸さん? きゅきゅっと帽子のつばを引いて気合を入れる千頭・定(惹かれ者の小唄・f06581)が返らぬ声に若干つんのめりかける。前へと向けたはずの足を軸に振り返ることに。
見てみれば服の端を氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)に掴まれているではないか。
「可愛らしいお店がたくさん。サダ、見て。あのおまんじゅうなんておいしそうよね」
「鹿糸さん……お腹ペコリですか……」
いえ分かります、とても分かりますとも。ですが! ご飯は後、まずは情報です! その手首をわっしと掴み返す定は模範的なまでに真面目なよいこであった。より長身の鹿糸を割と引きずる形で目的の店まで進む。
当の鹿糸はといえばあらこれ楽だわ、くらいの面持ちで。
「頼もしい限りねぇ。うーん、でもどうすべきだと思う?」
「本はどうでしょう。勇者ともなれば伝記のひとつくらい」
それに本は良いですよう、と、定の声色もどこか遠く、自らの内面と対話するかの如くやわらいだ。知らないことや、感じたことの無い体験が詳しく書かれている。それは知識になるのだと、頷いて。
そうと聞かされたなら、いやもとより、拒否する気は鹿糸にはない。小さな友人の判断に従おうと、行先を任せた。
進行方向、隙間なくかごへ並べられた本の前には定の知った男が。男――夏目・晴夜(不夜狼・f00145)。声を掛けられるよりも先に振り向くと、ふさがった手の代わり挨拶として尾をひとたび上下。
「おや定さん。それにお連れさん……筋トレですか?」
「違います! 本を調べに来たんですよぅ、晴夜さんのそちらは?」
あぁ、これは店主おすすめの一冊です。つまんで軽く開いてみせれば片手にすっぽり収まる程度の本の表紙が窺えた。宵空を背景に光の雨が降る"Holy rain"、傷付いた戦士に寄り添う妖精の絵。
いずれ英雄へと至る青年とその旅を支え続けた妖精――ありふれたそんな物語が、この街では人気なのだとか。
「ほぉぉ、冒険ものラブロマンスですか? そういったものも嗜まれるんですねぇ……」
「ははは。ハレルヤは取り込む知識を選り好みしませんので」
笑いというよりただの"は"の連続からなるすまし顔。とはいえ近頃文字の読み書きをマスターした晴夜にとって、物を読むのが少し、ほんの少しだけ楽しくなってきたのは事実。
そっと薄い紙に指を添える。文字に触れて学び続けることは大事でしょうから、と繋げれば。サダと同じようなこと言うのね、なんて鹿糸が微笑んだ。
「けど本まで小さいから驚いちゃった。それって読むの大変じゃない?」
「えぇ、このくらいでしたら肉眼でも問題なく」
覗く女にも見えるよう、晴夜が裏返して開いたページには深緑色のインクで文字が綴られている。妖精語なんて難解なものでなくてほっとして、ありがとうとともに視線は早速むむむと品定めを始めている友へ。
「妖精、妖精……妖精がテーマのものばかりで逆に迷ってしまいますね」
「伝承みたいなタイトルのものもたくさんね。やだ、表紙を見ているだけでも眠くなっちゃいそう……折角の機会だし、選んでくれる?」
鹿糸さんもどうですか、と尋ねる気でいたから。もちろんですと答える定のトーンは喜ばしい気持ち隠さず、中でも美しい発色をした赤い表紙のものを差し出した。
中身は――花の精が枯れた大地をしあわせいっぱいに生まれ変わらせる冒険譚。赤い表紙は春を、そこからページを捲るにつれて挟まれるカラーページは全三色、巡る四季を表している模様。
「先ほど、そちらもおすすめだと教えていただきました。ページ数も少なめですしね」
「本当? っふふ、それにサダが選んでくれたんだもの。頑張って読んでみるわ」
晴夜が相槌を入れれば、両手でしっかり受け取った鹿糸も満開に花咲く。あなたはどうするの? との問いを受け、定の手には今や二冊が同じだけの強さで握られている。
「こっちは妖精伝……こっちは勇者フェアリーのススメ。なんとも悩ましいところでして……」
両方買っちゃえばよくない? いいんじゃないんですか? の声はほぼ同時。
ところで、ほかのお店も見てみませんか。ピアスも気になっていた晴夜の提案に、二人は二つ返事。
女二人が買っていきましょうと指したまんじゅうだって、これから文字と触れ合う時間において、良い供となるに違いない。
読み終わったら皆で交換もいいかもと。そこに書かれた冒険がたとえ嘘偽りであったとて、物語を共有する楽しさはきっと"ほんもの"だ。
フェアリーの商人は気ままなもので。
ふらりとお散歩へ行っていたらしい骨董品商の主が帰ってきたところで、求めて寄り付いたアリスはちょうど鉢合わせとなる。
「あのぅ、フェアリーさんの魔導書とか、ありますでしょうか……?」
女店主は珍しいものを見る風に。ちょっと待ってね、と体を沈めて棚の下の方をごそごそ。そわり、お手伝いしようかと迷いながらも、お客は自分だけ、ゆっくりお話をするなら今な気もして。
「勇者さんの血を引くフェアリーさんのお使いになる魔法って……やっぱりすごい魔法なんでしょうか……?」
自らも魔法の覚えは多少あるが、真似なんてできないほどなのだろうと。アリスの口からおずおず零れた問いかけへ、すこしきょとんと抜けた間ののち、店主は手を挙げてみせる。
「それじゃ今見せてあげましょうか? そぉれ、」
「ぇ、あわっ、そっちはっ」
妖精がふわふわ平和に、買ったばかりの木の実を楽しんでいる。魔法は気になるけれど誰かに痛い思いはしてほしくない、考えるよりも早く両手を伸ばして止めに入ったアリスであったが、そんな彼女に降り注ぐのは氷の槍でも滾る業火でもなく。
「――こっちに特化しててね。この街生まれって、痛めつける方はからっきしなの」
あたたかな癒しの光。
ぽわんと弾けて消えたあとには、やわらかな羽毛に包まれた夢見心地だけが残っていた。ご期待に沿えずごめんなさい、妖精は肩を竦めるけれど、アリスはむしろ弾む心のまま胸の前でぎゅっと手を組んで。
「とってもすてきな魔法使いさんです……!」
その瞳があまりに澄んだ青にきらめくものだから、得意げ……を通り越してすこし恥ずかしげな妖精は、目隠しをつくるように己と少女との間にタワー同然どっさり治癒魔法に関する書を積むこととなる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エン・ギフター
市場!つったら飯だよな飯
見て回るぞハチ公(f09059)
大体一口サイズだから腹は膨れねえけども
逆に言や全屋台制覇して行けるってわけだ
つまりハチ公はあっちの端から頼む
こういう場所だとケットシー便利だな
頭ぶつけねえし
勇者が好んだとかいう蜂蜜の瓶は一舐めで終わる
…そういや情報集めに来たんだっけ、か?
買った端から口に放り込むのは続行しつつも
呼び込みやってる妖精に話でも聞いてみるか
勇者の生家だの末裔だの、この辺りで見られるものあんのか?
ってな
ハチ公と合流したら情報と買い物の成果の交換
なんだこれ妖精印の魚の干物?猫かよ
猫だったわ
鶏とは筋肉の付き方が違えよ舐めんな
さて
適当に腹膨らませたら勇者探し続行といくか
一文字・八太郎
ご当地ご飯、心が躍るでござるな
…いや、目的は情報収集だとは分かってはいる
うむ
狭い場所などは
拙者は得意とするところであるからなぁ
手分け、了解したでござる
エン殿(f06076)こそ、はしゃぎすぎて
そこいらの物を壊さぬようにな
しかし勇者の故郷だと聞いてはいたが
あれもこれもと由来品が多いでござるな
ならばそれに纏わる話などは詳しく聞けぬだろうか
家で取れたというならその場所を
好物になったのならその切っ掛けを
いやはや、皆さまお話がうまい
エン殿と合流すれば情報と成果交換
魚はうまい、猫でなくとも正義!
エン殿は鳥モモの丸焼きとは豪快で…共食いであろうか?
言いながら目に入ったのは彼の脚
さて、有益な話が聞けると良いが
オルハ・オランシュ
勇者の伝説って、根本的には現実だったとしても
年月が経つにつれて微妙に話が盛られたりねじ曲げられたりする気がする……
ねぇ、君
勇者の家って今も残ってるの?
だとしたら誰が住んでるのかな
叶うなら直接話を聞きたくて
好物以外の情報も掴みたいよね
決戦に出向く前後の話が残っていればいいんだけど
よし、調査は切り上げ
こんなに可愛い一番だもの、楽しまなきゃ損だよね!
フェアリーの食べ物は私達には一口サイズ
あっ、フォカッチャはこのサイズならジャムのおともにぴったりかも?
試しに買ってみたら味も美味しかったから、
持ち帰る分も追加で買って
後はお店に飾れそうな置物も探してみようか
っとと……身体をぶつけないように気を付けなきゃ!
柊・雄鷹
いーちーばーやっ!!賑やかで華やかで良ぇなぁ
ワイも楽しませてもらおかー!
んー…勇者の伝説っちゅーのも、気にはなるんやけどな
ま、今を楽しむのも大事ってことで
やっぱりここは食べ歩き、やな!
フェリーサイズなら、あれもこれもちょっとずつ楽しめそうや!
サンドイッチ、肉まん、唐揚げ、たい焼きにたこ焼き…
どれも美味しい!ワイは大満足やっ!
何や何や、珍しい料理も売ってるなぁ
何?トカゲの丸焼き?こっちは…蝙蝠の素揚げ?
えっ…美味しいんか?それは…いや、勧められたら食べるけど
これってご当地の料理なんか?
ほな、勇者もこれを食べて育ったわけや、ほーん…
なかなか肝が据わっとるな!!
でも折角やから、甘いもんも食べたい
――勇者の伝説。
根本的には現実だったとしても、年月が経つにつれて微妙に話が盛られたりねじ曲げられたりしていてもおかしくはない。
いつでも元気印のようでいて仕事への姿勢は堅実と評してもいいオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は、うまい話に手放しで飛び込まぬ慎重さをも併せ持っている。
今は往来の邪魔にならぬよう槍は仕舞っているけれど、短剣はいつでも取り出せる懐だ。
(「詳しそうなひとがいればいいんだけど……」)
きょろ、と軽く視線を巡らせれば主張してくるのは妖精の中にあって大サイズ際立つ柊・雄鷹(sky jumper・f00985)。
「いーちーばーやっ!!」
ワイも楽しませてもらおかー!
知った仲というだけでない。目につく限りで誰より元気に駆けまわっているものだから。声を掛けるのは、うん――後にしておこう。
見送る過程で目についたフェアリーは重たい壺を背によろよろ飛行。ねぇ、君、手伝うよ。さりげなく指を伸ばしたオルハへと両手を合わせて頭が下げられ。
「あぁーつぶれるかと思ったぁ! 冒険者さんですよね。この街へは噂を辿って?」
「そう、それについての話が聞きたくて。勇者の家って今も残ってるの?」
しわっとなった翅を伸ばしながらの同意が返る。さして立派でもない木の家に、勇者の家系……今は長とその一人娘が住んでいて、勇者関連の商品制作だとか市場での商いの許可を出しているのだと。長は顔にこーんな傷が、と、指でつくるバッテン。
「庭はすごく広いのでいろいろ育つんですってねぇ。あ、その壺の中身、勇者も大好き・庭の採れたてシロップなんですけどおひとついかがですか?」
「なんかぜんぜん元気そうだね?」
持つ? 寄せれば途端にしおらしくなる。すぐそこだからと男が案内した己のテントには、いろいろな形のミニミニパンが並ぶワゴンがあった。薬草が練りこまれているのか、ミント系の緑や香も目立つ。
(「うーんまた好物の話……そんなに重要情報なのかな」)
商売のネタにしたいのなら当然か。同じく店を持つものとして納得は早く。それはそれとして手の中のシロップはいい香りで、たまにはジャム以外のものをつけたパンも楽しいかもしれない。
運んでいただいたお礼に、あとで"勇者の家"までご案内しますよ。ぱたぱた羽音が鳴ればうんと頷き、可愛い市場を満喫することとする。
ミニサイズなればこそ腹は中々膨れない筈。実質食べ放題じゃね? とはしゃぐのはなにも雄鷹だけではなく。
「市場! つったら飯だよな飯」
「ご当地ご飯、心が躍るでござるな」
エン・ギフター(手渡しの明日・f06076)に一文字・八太郎(ハチ・f09059)。凸凹した男二人の背はこれから合戦でも始まるかのような空気を醸し出すが、始まるのはフードファイト――いやいや情報収集。
「こういう場所だとケットシー便利だな、頭ぶつけねえし。わかってると思うがハチ公」
「手分けでござろう。エン殿こそ、はしゃぎすぎてそこいらの物を壊さぬようにな」
視線を交わすまでもない。ガッと握り拳の横をぶつけ合い、二人は真逆の方向へと歩みだした。
テントひとつずつ両端から攻め落とすという大胆にして綿密な作戦――やはりフードファイトかもしれない。
(「しかし、勇者の故郷だと聞いてはいたが」)
妖精たちの合間をするりするりと抜けながら、八太郎は食べ物につけられた売り文句を流し見て進む。
勇者なんたらチーズ、チョコレート、サンドウィッチ……あれもこれもと由来品の多いこと。
猫の心を惹いたのはひときわ異色を放つ"かつおぶし(勇者の好物)"の文字。
「これは一体、どのようなきっかけで好物となったのかお聞きしても?」
「わぉ! 子ネコのお客さんは珍しいね、大丈夫? 売り物見える?」
エンはああいったけれど。妖精族は飛ぶものだから、商品棚はむしろちょっとケットシーには高くて――足場の台を勧められることとなる。おとなの男としてそれを丁重にお断りした八太郎が今一度同じ内容を問えば、店番妖精の笑いは一層深まって。
「その昔、街を襲ったこわーい魔獣をおやつに食べてたこのかつおステッキ一本で封印したのさ。勇者の家の庭で釣った魚の干物もあるけどどうする?」
「あぁ、うむ……いや、いただこう」
話がうま――あやしい。
あやしいが、魚に罪はない。
サンド肉まん唐揚げたい焼きたこ焼き……あるなし別に目につくもの片っ端から満喫食べ歩きしていた雄鷹と、エンが出会うのも必然といえた。
青年キマイラの手にはいまいち美味さの分からなかった"勇者が好んだハチミツ"の口直しに、肉。ジャーキーではない肉汁したたるやつ。店先にでかでか名物トカゲの文字。
「おぉ……えぇ……? それトカゲの丸焼きやないの」
「あーうん。そうだったかもしんねぇ。うまいぞ」
こんがりパリパリな皮を噛み千切るワイルドな喰いっぷりに、勇者を幻視る雄鷹。
そうか、美味しいのか……。複雑な面で長躯を折る男のもとへも、妖精によって真っ青串焼きトカゲが一匹ずずいと差し出された。出来ればそっちの男と同じ種類のトカゲでと注文を加えれば、店主は不思議そうに。
「? へぇ、そちらのにいさんのは鶏肉っすよ」
「~~ちょお!」
抗議のまなざしを受けたエンはといえば口いっぱい詰め込んだ肉にもごごとしつつ軽ぅく手刀を切ってみせた。いやぁ鶏だった気もしないでもない。何分トリアタマなもので。
「しっかし勇者は本当にこれ食べて育ったわけやろ、ほーん……なかなか肝が据わっとるな!!」
「食った食った。そういや勇者の生家だの末裔だの、この辺りで見られるものあんのか?」
ゲテモノ肉、チャレンジしてみれば意外といけることに雄鷹がひっそり感動する横で、ほんのついでのようにエンは話を切り出す。妖精店主は気持ちよい食事風景を見せてくれた二人の周りをぐるり飛びはじめて。。
「ふっふふ。あっしも親父から聞いた話なんですけれどね、なんでも勇者が愛用した剣が今もご生家のどこかに残されてるらしくてですねぇ。あの商い好きの長が、ですよ? そう、狩り落した首の数、北はドラゴンから南は大魚――……」
「これ長話はじまるヤツちゃう? ワイはくわしいんや」
ジジババによる耳タコ話がふっと頭に過る雄鷹、じりと一歩引く。
と、そこへからんからんと耳障りのよい足音が。
「ここで一周、か。首尾の方は」
腕いっぱい、尻尾にも引っ掛けるほどの戦利品を抱えた八太郎だ。
「ああ、そこそこってとこ。ハチ公は……なんだこれ妖精印の魚の干物? 猫かよ。猫だったわ」
「魚はうまい、猫でなくとも正義! エン殿は鳥モモの丸焼きとは豪快で……」
共食いであろうか? 鶏とは筋肉の付き方が違えよ舐めんな。ぎゅいぎゅいと押し合う二人であるが、おいしいものはちゃんと分け合うあたりファイターとしての紳士ぶりが光る。
それでは自分も甘いものでもと腕をぐるぐるさせる雄鷹の瞳は、パン屋の前で屈むオルハを捉えた。
「このフォカッチャおいしい! 持ち帰り用にいくつか包んでくれる?」
あとお店に飾る置物も増やしたいから……等と弾む会話、すっかり店主と意気投合している姿を。
不意に。 そんな娘と真っ向から衝突しかねないコースで、背の高い人影が突っ込んでくる。
「わっ、と」
が。利用者の多い市場、ひととぶつからないようにと注意していたため軽く肩が触れる程度で身を躱すことができた。よろめく少女の肩を支え、振り返らず走りゆくローブ姿へ口を尖らせるのはすぐに駆け寄った雄鷹お兄さんの方。
「おうケガしてへんか? 今の……なんや危なっかしいヤツやな。あんな急いでどこ行くんやろ」
あっちは長の家の方ですし、外から来た商人ですかねぇ。
平和ぼけした暢気な声で、妖精店主は大あくび。
大成功
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コノハ・ライゼ
ぉおー、ミニチュアがいっぱい!
妖精の街は初めてで
綺麗なモノや可愛いモノにも目が無いのだからテンションも上がりっぱなし
食べ物は仕事柄興味が沸くし
お酒なんかがあればゼヒ試してみたいトコ
妖精たちには生活道具でも、コチラには飾るのに丁度イイ雑貨だね
椅子とか店に飾るのにイイかなぁ、とうろうろ
ふと目に留まったのは
小さな色とりどりの服が並ぶ店
――そういや、あまり気にした事なかったケド
女性向けらしく華やかな店先で、小さな友人の顔を思い浮かべひとつ頷く
「ねぇ、小さな女の子が好きそうなとびきり可愛いの、見繕ってくれる?
そう言えば伝説の勇者というのも妖精だったのかな
お土産にその話も聞かせたら、どんな顔するだろ
絢辻・幽子
WIZで
あらあら、まぁまぁ、小さくて可愛らしいものがいっぱい
触れても大丈夫なんでしょうか?
お酒、とか……そうですねぇ
呪術系の怪しげなものとかそういうのがあれば
きっととても心が惹かれてしまうかも。
伝説には何かしら呪術とか関わっていたり……しません?
写しとかそういうのでもよいのですけど。
語り継がれて、ちょっと変化しちゃったりしそうですけども
あ、お酒に合うおつまみみたいなのとかもあればとても
もちろん、勇者の足取りも、忘れてませんよ。
(のらりくらり、ふわり、とした狐
怪しげなオカルトが好き、ウィジャボードから
呪の蝋人形やら
キラキラしたものも、お酒も好き
お好きなようにおまかせします)
榎・うさみっち
アックス&ウィザーズ来るの初めて!
いつもはちっちゃい扱いされる俺も
この村だと皆と目線が同じ!なんだか落ち着くなぁ
リリティカまんじゅう、ふわふわ生地がうまい!
でも大きいサイズの食べ物に慣れたせいか
ちょっと物足りないなぁ。もう3個追加で!
買い物の一番の目的は
「うさみっちゆたんぽ A&W Ver」に
着せる衣装や小物探し!
まず、うさみっちゆたんぽとは俺そっくりの
可愛いぬいぐるみ型ゆたんぽである!
全世界Verのご当地ゆたんぽを作って売るのが夢なんだぁ
魔法使い服の「まほみっち」も良いけど
勇者服の「ゆうしゃっち」も忘れちゃいけないな!
…ところで勇者ってどんな服着てるの?
ゴツゴツの鎧と剣?
※アドリブ絡み大歓迎
●
夜の街に身を浸すのは染み付くに近く慣れたものだけれど。初めての街は、やはり心の躍るもの。
歌詞もしらない鼻歌なんて口ずさんで、あちこちのテントへ顔を突っ込むコノハ・ライゼ(空々・f03130)。ミニチュアがいっぱい! 椅子や箪笥、靴のなんてことない日常すら店へ飾れば絵になりそう。
「うはぁーコレだと十回で一口分しか掬えねぇカモ」
指でどうにか摘まめるおたまをはじめ、調理器具に興味が向くのは仕事柄。おままごとセットの様相。フェアリーのお客サンにはあり? 眺めるほどに財布の紐も緩むというもの――この男、これでいて綺麗なモノや可愛いモノに目が無い。
さぁこれを使って調理してくださいといわんばかり、隣のテントではとれたて野菜の展覧会だ。
"勇者が倒した"紫色のひっこ抜くと絶叫するアレなんかもあるものの、このサイズなら猫の鳴き声レベルに違いない。それに……こちらは酒。試供品香水瓶と見紛うクリアボトルの中、たぷたぷ揺れる果実。葉っぱ。
「んん、カクテルの隠し味にちょうどよさげ……」
「あらコノちゃん、昼間っからお酒?」
屈む背に届く、しっとりと艶のある音。幽ちゃんと振り返れば予想通りにそこへ立っていた絢辻・幽子(幽々・f04449)はすでに手に空き瓶を輝かせているわけで。尾がふわん、ふわ。混ぜる空気に甘やかな杏。
「なぁんだ、考えるコト同じじゃナイの」
「ふふ、一口なんですもの。でもねぇ、香りはよかったですよ。お店でいただけるなら、そちらなんて嬉しいです」
ちぐはぐな薄桃色マスカット風味と、こがね色シナモン風味。お得意様がすっと指したなら、俄然張り切った様子のオーナーはお買い上げ決定!
――ふふふ。ふふふふふ!
榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)にとってアックス&ウィザーズは初めてだけれど、どこを見てたって目線の同じフェアリーばかり。ちっちゃい扱いされることもない。なんだか落ち着く……これはあれ、実家のようなというやつ。
「リリティカまんじゅう、ふわふわ生地がうまいし!」
だが大きいサイズの食べ物に慣れた身だ、物足りなさに追加注文も欠かせない。ちょっと驚いた様子の店番妖精は、気にいってくれて嬉しいともひとつおまけ。ほんのりしょっぱいカラメル地に、神絵師たる身からすれば描き直してあげたい感じのぐにゃっとした似顔絵がチャームポイント。これも多分、勇者?
他種族には簡単な市場制覇も、うさみっちたちフェアリーには気合の要る話だ。探し物を伝えたならいくつ隣のテントかを教えてくれるやさしさを、ここの商人たちは忘れないのがありがたい。
そうして辿り着いたのはミニミニお洋服の並ぶ華やかワゴン。
そう! 調査とかそんなの置いといてうさみっち一番の目的は、自分そっくりに愛らしいぬいぐるみ型ゆたんぽ"うさみっちゆたんぽ A&W Ver"に着せる衣装や小物探しだったのだ。
「みんなどんなのだと喜んでくれるかな? やっぱり王道ファンタジィィ! って感じなのがいいよなぁ」
魔法使いのまほみっち? それとも勇者のゆうしゃっち? しめしめ悪だくみするようでいて、布を手にする顔は真剣そのもの。
全世界を――あたたかなアレやソレやで包みたい。そんな想いがきっと、あったりなかったりするのだろう。
ところで勇者ってどんな服着てるの? あんまりごついのは……。
そこへ気配薄く、横からにゅっと伸びてきた人間・成人・男性の腕に少年妖精はびゃっと跳ね飛ぶ。
わりぃビックリさせちゃった? ウインク。コノハがへらりゆるり、その視線をふんわり漂う店番へと向けて。ねぇ、と呼びかけた。
「小さな女の子が好きそうなとびきり可愛いの、見繕ってくれる?」
そんな、友人の顔を思い浮かべながら。
ひとつ返事で前へ出されたドールは麦わら帽にひまわり飾り、セーラーカラーのワンピース姿。青天めいた淡いブルーにアイボリーのライン、シルエットはバルーンのよう。背面の翅用仕掛け、細部のフリルやレースも繊細、物語へひかえめに彩を添えるメルヘンな一着――曰く、"勇者の幼少期のお気に入りとおそろい"。
外遊びの好きな妖精だったのかな。ついでにと続きを促せば、土産話がどっと増える。
ぴこり。 彼らの会話を幽子の心の耳が聞き取った。
よく木にぶつかってしまうほど鈍臭い子で? 街を発つまでは野犬にだって一番に逃げ出していたのに? 極寒だったか灼熱だったかの大地へ行くっていうから心配したもんだ……。
伝説には呪術なんて関わっていたりするのではと思っていたけれど、なんだか平和に尽きる話が続いている。
「もしもし、お尋ねしたいのですが。呪物などを扱っているお店はどこでしょう」
「呪物? やぁそんな恐ろしいもんここいらじゃ見つかってないね。あぁ、けど」
けど?
近々大口の商談があるって、長が言ってたなぁ。どこぞで見つかったらしいんだよ。勇者様が魔王の魂を封じた壺が!
「へぇ……それはそれは」
含む笑みの形へ狐の瞳が細められた。
嘘か真か。これまでの話を統合するに、街のものたちは勇者の存在と活躍を心から信じている。お遊戯並のおしゃべりを重ねるのもまた、悪くはない味わいだけれど。
「では、お酒に合うおいしいおつまみのお店を教えていただいても?」
そりゃうちさ別嬪さん! 先を飛ぶ妖精。追う歩みは、酔いとは違ってかろやか――あたたかい日、ひなたぼっこする獣のように。もうすこしだけ楽しんでいたっていいでしょう?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
メーリ(f01264)と
メーリはなにが見たい?
見るもの全部ちいさくてわくわく
拡大鏡の眼鏡をかりて本をぺらり
似合うと言われたらふふっと笑ってポーズ
これは勇者の冒険譚かな
メーリもみてみてっ、と眼鏡を渡して
わあ、メーリ似合うね
しんせんっ
あっちからいいにおいがするよ
いこっ
ひとくちサイズだもの、たくさん食べ歩きができるね
ちいさなケーキを見つけたら
かわいいっ
マジパン細工に目をきらきら
このクッキー、メーリのひよこににてるね
あ、ほんとだ。わたしの帽子みたい
食べるのもったいないね
あっちのワゴンはなんだろう?
みつけちゃうのはメーリが好きそうなものばかり
すごいって目をきらきらさせるメーリを見たくて
ふふ、たのしいねっ
メーリ・フルメヴァーラ
オズ(f01136)と
並木道の向こうに広げる世界に
きらきら目を輝かせる
すごい!小さくて可愛いー!
何でも見たい!なんて欲張り発揮し
オズの珍しい眼鏡姿にすごいね似合うねってはしゃいで
拡大鏡眼鏡を借りて豆本をふむふむ読もう
これ続きも気になるね~!
続きはあるかな、と指先さ迷わせたら
鼻腔を擽るいいにおいに反応しちゃう
行くー!と大賛成
確かにいろいろ食べられると思えば贅沢な気分
小さなケーキを飾るベリーが宝石みたい
ほんとだひよこだ
こっちはオズの帽子に似てるよ!
どれもがミニチュアサイズで
でもわくわくはいつもと同じ
ううんもっとたくさんあるね
オズが誘ってくれてよかったなあ
うん、すごく楽しい!
春めいた笑顔が綻び咲いた
あたらしい世界。はしゃいでジャンプして、躓きかけたって、それすらプラスのどきどき!
二人、踏み出す先はどこまでもぽかぽか陽気。
「すごい! 小さくて可愛いー!」
「ね! ねぇメーリ、メーリはなにが見たい?」
メーリ・フルメヴァーラ(人間のガジェッティア・f01264)にオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は瞳に映すものすべてへわくわくが尽きない。どこから行こう? なにから見よう? でも二人なら半分ずつ見る方向を分ければ無敵!
何でも見たい! なんて欲張り発揮も大丈夫、メーリがひとたび半周視線を巡らせたなら、オズも同じだけ好奇心たっぷりにすてきな眼鏡をかけているものだから。
「わぁオズどうしたの? すごいね似合うねっ」
「ふふ、かわいい本屋さんがあったから」
年齢をも霞ませるゆるふわスマイルとともにいぇいいぇい、とピースを作ってみせたオズは続いて豆本を手に取る。たっぷり拍手を送ったのち、倣うみたく、メーリも隣で山積みされた本たちを眺めた。このひとつひとつに込められた物語があるのだろうか? それはとっても、すてきなこと。
すっかり心奪われた様子の少女の横顔を認め、くすり笑みを零すオズは外した花蔦フレーム眼鏡をすすっとかけてあげる。
一気に何倍にも見えるようになった視界にぱちくり瞬くその手へは、メーリも似合うね。これみてみてっ、ぱぁっと明るく手渡す目を通したての本。勇者の冒険譚、そのいち。
「わーい、眼鏡マイスターに仲間入りしちゃうぞ」
眼鏡を指でちゃちゃっと、キリリ豆本と向き合って。ふむ、ふむ。……ふむふむ? 竜退治へ旅立った妖精が山越え谷越え、出会いと別れ、挫折に涙、それから?
――そのにへ続く!
「オズどうしよう! これ続きも気になる~!」
「この山からそのにを見つけるのも、たからさがしみたいでわくわくしてくるね」
続きを求めて指をさ迷わせたとき。ふわんと風に乗り、やさしく届くはバターとキャラメリゼの香ばしさ。
宝探しは、またあとにする? いこっとオズが誘うなら、行くー! と大賛成でメーリ。
かわいい!
次なるミニチュア、硝子板の向こう綺麗に整列された焼き菓子へと二人の感想は揃う。マジパン細工の愛らしい――羊だろうか? もくもくとした生き物たちが、ホイップと一体化しててのひら大のスポンジ上でおやすみ中。
一段下、淡い桜色の大地へおすまし顔で煌めくベリーは宝石みたい。サイズ的に果実の比率が大きくて、ますます女王様の貫禄だ。
「食べるのもったいないくらい……あっ。このクッキー、メーリのひよこににてるかも」
「ほんとだ、こっちはオズの帽子に似てるよ!」
ちらちらりと互いに横目で特徴を探していれば、ふと視線が交わる瞬間。息を漏らすように笑いあって。
どれが食べたい? なんて聞かずとも、きっと、どれも食べたいってきみがいう気がして。まるっとお迎えしたオズが、追いおたんじょうび祝いだと人差し指を口元に添えればメーリははにゃり、あとで一緒に食べようねってその時間こそが嬉しいと語る風。
「ひとくちサイズだもの、たくさん食べ歩きができるよ。あっちのワゴンはなんだろう?」
「たまご型だ! アイスかな? 行こう行こうっ」
出会う度に、サイズじゃ測れないたくさんのときめき。まだまだ二人の探検は始まったばかり!
オズが見つけるのはいつもメーリの好きそうなもの。すごいって目をきらきらさせる、姿はしあわせをくれるから。
たのしいねっ。 うん、すごく楽しい! オズが誘ってくれて、よかったなあ。春めいて綻び咲う笑顔は、ほら、こんなにも。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
終夜・嵐吾
キトリ(f02354)とチロ(f09776)と
今日の主役はキトリじゃな!
チロが持ってきた服をいっしょにみつつ
ほほう小さい……すごいの、わしが持つと相当小さい
しかしつくりが良いのはわかるぞ
キトリどれも似合う、かわいいんじゃよ!
……時間かかりそうじゃの。
ふたりが楽しそうなのでその間に――リリティカまんじゅうを調達してこよう!
これがリリティカまんじゅう…!
小さくて、でもおいしそうじゃ!ここで味見は良いかの?
勇者も好きじゃったんかな。
なんか面白い話とかあれば聞かせておくれと買いつつ話を聞いてみよう。
話聞き終わった頃にはそろそろ…おう、まだじゃったな
うん、先に買ってきたんじゃ、食べると良い
キトリ・フローエ
嵐吾(f05366)とチロ(f09776)と
素敵なものがたくさん!
見て回るだけでも楽しそうだけど
折角だからアビに大きいお土産でも探えっ、あたし?
…チロ…!(感激)
今日はチロがあたしを着せ替えするのね
いいわよ、着せたい服、全部持ってきて!
色々な格好は照れくさいけど新鮮
お姫様とか、…あたしに似合う?
試着しつつお店の人とお話がてら情報収集
例えば街の近くに勇者様に縁のある…伝説の剣の祭壇とか泉とか…
お参りしたらご利益がありそうな所の情報とかないかしら
あとでおやつも食べましょうね…ってあら、嵐吾が…いない?
…あっ、嵐吾!それはもしかして、リリティカまんじゅう!?
伝説の手がかり、うまく見つかるといいわね!
チロル・キャンディベル
嵐吾(f05366)とキトリ(f02354)と
ようせいのお祭りってことは、キトリのお祭りなの!
いつもはチロのためにいろいろしてくれるキトリに
今日はお返しがしたいのよ
いつもお花みたいなキトリだけど
お姫さまのドレスとか、カッコいいのとか
キトリににあいそうなものをいろいろ持ってくるの
小物もだいじ!キラキラのティアラとかにあうと思うのよ
んー…どれもにあうから何がいちばんかしら
いちばんにあうのプレゼントしたいの
嵐吾はなにが…
ってあれ、いないの!
ゆうしゃ…?わすれてたの!
それよりチロ、おなかすいちゃった
リリティカまんじゅう食べたら、ゆうしゃのこと分からないかしら?
あとアビのおみやげにするのよ!
素敵なものがたくさん! 折角だからアビに大きいお土産でも――キトリ・フローエ(星導・f02354)のすこしだけ前を歩いていたチロル・キャンディベル(雪のはっぱ・f09776)が前触れなく、きゅっと靴を鳴らして歩みを止めた。振り返る。
チロね、すごいことに気付いちゃったの……瞳は光取り込み虹がかる。ようせいのお祭りってことは、キトリのお祭りなの! 手に、いつ握ったのか、フェアリー用ドレスが。
「えっ、あたし?」
「うん。いつもはチロのためにいろいろしてくれるキトリに、今日はお返しがしたいのよ」
チロ……!! ぎゅー。その背丈差約五倍、感極まって狼少女へ抱きつく妖精の姿は、夢色蝶々のブローチみたいでメルヘンチック。
仲睦まじい光景に舌鼓もとい手を打つ終夜・嵐吾(灰青・f05366)も、今日の主役はキトリと頷いて。二人の近くへ、チロルセレクトとワゴンとを覗く。
「どれ、チロはせんすの塊よな。……すごいの、わしが持つと相当小さい」
「嵐吾もおきがえしたかった? また今度、チロがおすすめしてあげる」
えっへん得意げに胸を張ったチロルが、まずキトリへおねがいしたのはお姫さまのドレス。常は星月夜の幻想を纏う彼女には、きっと明けも同じだけ似合う。淡い紫から桃へのグラデーションカラー。着込んだならドレープも上品に、靴先だけ覗く絢爛豪華なプリンセスライン。
「小物もだいじ! キラキラのティアラとね、ネックレス!」
「お姫様とか、……あたしに似合う?」
着たことどころか、見たこともないかも。予想以上に魂燃やすチロルの前、キトリはといえばどぎまぎ。お客様、ぜひぜひこちらへ……見守る妖精店主が手招いた、縦幅一メートルくらいの試着室へはキトリはもちろんチロルも膝立ちで楽々お邪魔できる。
人間用の長椅子で、嵐吾はちょっぴりお留守番。
数分で――じゃじゃん! コーディネーター・チロルが手を広げてみせる先で、ちょこんと佇む妖精の姫はそれはもう絵になるうつくしさ。
「キトリ似合う似合う、かわいいんじゃよ!」
こくこく頷く狼の子も見える。慣れた相手からこうも真顔で言われればそわりともするもの。
「えと……まぁ、本当によくできたドレスよね。いいわよ、着せたい服、全部持ってきて!」
こんな時くらい、ステージの上の女優のように。ちょっと以上に照れくさいけれど、新鮮でそれに……なにより、気持ちが嬉しい。
「きゃー! キトリが王子さまになっちゃった!」
「ふふふ、剣の腕を磨けば様になるかしら?」
おもちゃのレイピアを真っすぐに空へ突き立ててみせる麗し異性装。次はね次はね、きゃっきゃ喜ぶチロルが別な衣装を抱いて姿を消した。
カーテンを挟み、嵐吾の耳に届く限りでキトリは魔法使いからの町娘からのカエルになったりで忙しない。
「……うん、時間かかりそうじゃの」
女の子のショッピングは、時の概念なんて消し飛ぶほどすごいのだ。膝を抱える具合にその場へころんと横になろうとしたところで、ふと。 天啓が。
さらに十数分後。
「んぅーどれもにあうからいちばんが決められないの。嵐吾に選んでもらお?」
「それがいいわ。おやつも食べに行きましょうね……ってあら、」
シャッと引いた布の先。嵐吾が――――いない?
隙間時間をも有効活用してこそ漢。
二人が楽しみにしていて、あと実は自分が一番楽しみだったりもする名物まんじゅうを求めひとり旅立っていた嵐吾。
そこで目にしたテントたちには、リリティカまんじゅうの文字がずらり。隣も、その隣も。
土産屋が所狭しと競い合う場所なんかへ足を運べば見かける、名が同じでも売っている店ごとに品が異なる――あの。
「切磋琢磨して洗練されとるに違いない。いんふぇるのぷでぃんぐ味ってなん……?」
禁術にでも辿り着いたか?? うろ……うろ。これは上客の気配と四方から客引きも降る市の賑わい。
だが梅に金時、黒糖の味わいに似た三種セットが見つかったなら嵐吾もほっとひと心地。友の口にも入るものだからと、あやしいものにも臆さず味見させてもらった中で選んだのだから大正解。
手土産は、まんじゅうの包みと得た情報。あんたの好みは長と似てるだとか、今朝も長の娘が買いにきてただとか、ここに朝顔の露を一滴垂らすともっと美味いだとか――ま、何に使えるかしれないが面白いではないか。
「あー! 嵐吾、まいごになっちゃだめよ!」
「その包み、もしかしてリリティカまんじゅう!? でもあなたなんだかヨレヨレね……どこまで行ってたの?」
戻り来た姿を見るや声を掛けてくれる少女らへ、ちょっと戦場にな――そうハードボイルドに横顔で決めておく男、嵐吾。十秒と持たず、食べると良いと差し出すときの喜色溢るる面持ちは大概いつも通り。
「ありがと! 嵐吾はできるまいごなのね。アビへのおみやげと……食べたら、ゆうしゃのこと分からないかしら?」
勇者。すぽーんと忘れていたチロルと、試着の傍ら店主とお話していたキトリ。
長の家の場所は教えてくれたものの、勇者商売はしていない行商で明日には街を離れる身とのこと。この場所へは別なテントが入ることになっている。
下見に来てるみたいと、妖精連れのローブ姿の人間たちを指していたのが記憶に新しい。
三人並んでさぁ、次はどこへいこう?
口へと放り込んだまんじゅうは物静かだけれど、おいしいことだけは、確か。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
出水宮・カガリ
※アドリブ絡み歓迎
エル(f01792)と、ニキ(f04315)と
小さな、小さな…門だった頃に見下ろしていた景色を、少し思い出すような
エル、エル ああ、ニキも、そんなにはしゃいで
カガリも確かに、美味そうな匂いに興味はあ、痛っ(太い枝にぶつかったり)
いや、いや…二人とも、とても楽しそうで
カガリも、ひとつもらっても?
英雄の像に、英雄の絵本、か…
読む事に、依存はないが…話が進む内に思う
勇者は、帰ってこなかったのだろうか
ここにいれば…勇者の伝説で、後世を賑わす事も無かっただろうが
…ただのフェアリーとして、平穏に過ごせたのにな、と
どうした、また何か食べに行くのか
よく食べる二人だなぁ、はっはっは
エレアリーゼ・ローエンシュタイン
ニキ(f04315)とカガリ(f04556)と
かわいい…!
見て見て、凄いわ、どれもドールハウスの小物みたい!
(2人の前をぱたぱたと駆けて)
お茶菓子のお店はあるかしら?
フェアリーのお菓子を食べてみたいの
んー!小さいのにどれもふわふわ!おいしいの!
一口でなくなってしまうのが寂しいわ
絵本、エルにも読ませて欲しいの!(ぴょんぴょん)
むー、小さくてうまく読めないけれど、
勇者様…男の子が好きそうなお話かしら
エルくんは…お話には興味ないんですって、残念
カガリはこういうお話は好き?
賛成、賛成よニキ!
エルも少し食べ足りなかったの
もう一度お菓子屋さんに行きましょう!
ニキ・エレコール
お友達のエル様(f01792)とカガリ様(f04556)と。
わぁ、とっても可愛い市場!
あっちもこっちも、おいしそうな匂いが気になって仕方ないよ…!
どれもこれもオススメだなんて言われたら全部気になっちゃう!甘くてとろけて幸せ…!
おやつばっかりじゃなくて、ここに勇者様の生まれ育った伝説があるなら、その伝説を書いた子供向けの絵本が売ってないか探したいな。
勇者様の像の公園があったら、3人でゆっくり座っておやつを食べながら読むのも楽しいね!
食べてばっかりじゃなくて、ちゃんと読んだら何か掴めるかもしれないんだから集中集中…。
……さっきの、もう一回食べたいなぁ…二人も食べない?(ちらっと2人を見やる)
駆け行く姿は鬼ごっこ? いいえ、彼女たちが追いかけているのは心ときめく妖精お菓子との出会い。
「見て見て、凄いわ、どれもドールハウスの小物みたい!」
「あっちもこっちも、おいしそうな匂いが気になって仕方ないよ……!」
エレアリーゼ・ローエンシュタイン(メロウマリスの魔女・f01792)、ニキ・エレコール(黒枝手繰り寄せるイリア・f04315)は手を取り合ってぱたぱたぱた。
「エル、エル……ああ、ニキもそんなにはしゃいで」
転ぶなよ、と一声かける。そう歳は変わらぬ筈が、すっかり保護者ポジションに落ち着いてしまう出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)の三人組。
否、"門"として過ごした日々を含めたのなら話は変わるか――眼前に広がる小さな、小さな世界はカガリに、いつか静かに見下ろしていた景色を思い出させて。
「カガリ! はやく来ないとカガリの分も食べちゃうよー?」
お目当てのお茶菓子を発見したエレアリーゼがぶんぶん手を振った。ニキはといえばその隣、じゅるり……とでも音のしそうなたれ具合でケースの中を見つめている。
「待ってくれ。カガリも確かに、美味そうな匂いに興味はあ、」
痛っ。 ひとの身を持つ"今"へと心が帰ってくる途中でぎくしゃく足を踏み出したものだから、並木の幹にぶつかってしまうのもしかたない。中々、慣れないものだ。
綺麗な金色の髪についた葉っぱを教えてあげながら、エレアリーゼは店主のおすすめ上からいくつかを抜かりなくオーダー。
「どれもこれもオススメだなんて言われたら、全部食べなきゃだもんね!」
うんうん賛同したニキがもうワンセット。おやつを楽しむならゆっくりできるスペースも欲しいところ、問えば、店主からは次の並木の切れ目から出られる他種族向け広場の情報が得られた。
お菓子タイム! 早速出発する二人。ようやく払った緑の葉、向かう方角だけ確かめて、ヤドリガミの青年は妖精店主へと人差し指を立てる。
「カガリも、ひとつもらっても?」
全種類ひとつずつとは言っていないのだが――。断る理由も特にない。
リリティカの名が縫われた布の隙間から中身が零れ落ちぬよう大事に腕に抱え、カガリは友の姿を探す。すぐに見つけることができた黒色頭は、パステルカラーのテントが鮮やかな絵本売りの前。
「何かあったのか?」
「勇者様の伝説を描いた絵本をね、探していたの」
かっこかわいい表紙だよ、そうニキが顔の前に掲げてみせる本のタイトルは"あいとへいわのものがたり~りりてぃか~"。妖精が、獣耳が生えたり魚の下半身をしていたり多様な種族の戦士とともに剣をかざすイラスト。向かい合う、帝竜と思わしきドラゴンはデフォルメが効きすぎてゆるキャラじみているが。
「おやつを食べながら読むと楽しいかなって!」
「なるほどな。一石二鳥というやつだ」
合点がいった、それではいざ。
「甘くてとろけて幸せっ……!」
「ニキ、ほんとにとろけてるよ! でもそうよね、小さいのにどれもふわふわ……おいしいの!」
頬が落ちる代わりとろりとしたタールを恥ずかしげにニキが戻す中、エレアリーゼはご満悦で食べ進めてゆく。木苺タルト、森ぶどうのぷちぷちモンブラン……どれも一口でなくなってしまうのがさみしい限りだけれど。
残り一個で見つけたとびきりステキなヘクセンハウスだって、人間にはジオラマのパーツめいて。煙突ウエハースをぱりりと砕き、二口でごちそうさま!
「んー! おいしかった。あっ、ニキのそれはなぁに?」
「勇者様の絵本だよ。すごいんだぁ、はじめはスライムにも負けてるんだけどね……」
エルにも読ませて欲しいの! エレアリーゼが顔を寄せれば、どうぞと笑って物語のはじまりから、もう一度。
ぺらりとめくる。さくり、もぐりと味わう。
手書きの字が小さくて、更にはあまり綺麗でなくて、大筋を絵から察するくらいしかできないものの。
「ドラゴンと勇者様……男の子が好きそうなお話かしら。エルくんは興味ないんですって、残念。カガリはこういうお話は好き?」
「あぁ、カガリは――」
(「――英雄の像に、英雄の絵本、か……」)
情報収集は大事だ。読むことに異存はないが、ページをめくるごとにどうしてもカガリの胸でわだかまるのは勇者と呼ばれし娘への想い。
彼女は、帰ってこなかったのだろうか。
ここに留まれば後世を賑わす事も無かっただろうが、ただのフェアリーとして平穏に過ごせたというのに。"英雄"と呼ばれるものたちは、いつも己の身を顧みない。守られるのを、好しとしない。
ぱたんっ。
めでたし、めでたしで括られる物語の終わりへと辿り着いて、ニキが絵本を閉じる。頷く。
「……さっきの、もう一回食べたいなぁ」
――とはいえ特段何かを読み解けたわけでは、ない。
二人も食べない? ちらと見遣れば目が合うこと数秒。椅子からぴょいんと立ち上がるエレアリーゼはむしろ手を引く勢いだ。
「賛成、賛成よニキ! エルも少し食べ足りなかったの」
もう一度お菓子屋さんに行きましょう! 意気投合した二人に残された絵本を、そっと抱え上げてカガリも立ち上がる。先ほどのケーキらもまだ半分は残っているのだが――さて。
「よく食べる二人だなぁ、はっはっは」
辛い、伝説のことは気にはなるが。今はこうしてひととして、甘いを味わいきるとしよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ノ・ノ
【SPD】
ほへーん、ちっちぇー街なのねぇ
わちきは形帰れるから、腕の部分を妖精と同じサイズのミニノノにして話してみようかちら
んぁ?
別にサイズ合わせる必要はないって?
ええのええの、りんじょーかんってやつだに★
あ、ワイ様アクセサリー好きーっ
カラフルじゃらじゃらキラキラりんなもんは、いつ見ても心惹かれますにゃー
妖精サイズの指輪でも、おいちゃんなら付けられるしにぇ、ニチャチャ!
勇者の伝説ってやつは…ま、ついでだし、覚えてたら聞いてみよかの
あろー、あろー
おめさんらの先祖の話聞きたいんじゃけど、ええかい?
行き道がてら、これ見よがしに立ってる銅像もチェックするかの
何か伝承の歌い言葉一つも乗ってなかろか?
エリック・レイ
【SPD】
わあ!わあ!ちっちゃい!かわいい!すごい!
楽しそうな雰囲気に心も踊る、歩みも跳ねる
並べられたアクセサリーを眺めながら時折手にとって見たりもして
小さくてかわいいアクセサリーを見ては
どうやって作ったの?
オレに似合いそうなオススメある?
なんて終始楽しそうに店の妖精たちとお喋り
オススメされたアクセサリーをひとつ、ふたつ購入して
そういえば、と
勇者伝説の話の事を切り出し聞いてみる
相手の話にはしゃがみこんでしっかり目線を合わせ
うんうんと頷きながら時折へぇー!すごい!などと相槌を
お喋りするのは大好きだから、お仕事関係なく色んな話を聞きたい!
話を聞けたらその妖精さんと指先でハイタッチとかしたいなぁ!
●
ノ・ノ(ノーナンバー・f05650)の体色はタールの黒さだけれど。
だからこそ、じゃらじゃらカラフルキラキラアクセがスペシャルに彩るというもの。
「んっんー、これぞワイ様! ちゅう感じですにゃー」
装飾品を扱うテントから出てきたノノの腕は、妖精サイズにまで細く小さく分かたれた小枝な指とでひとつの樹木のようになっていた。そのどれもに宝石付きのリングが光る。
十本やそこらでない触手をそれぞれ意のままわさりさせては満足げ。弾んで歩む先に銅像が突っ立っているのに、その陰から飛び出してくる一体の妖精に、体当たってむにんと跳ね返すまで気付かない。
「ほよ。わちきのファンかしら、にゃにか用かえ?」
きゃっと声上げ、危うく地面へ墜ちかけた体をしゅるん! ノノの手が巻いた。思わぬ優しさにピンク髪のフェアリーは気まずそうな沈黙。ブラックタールはこの街としては物珍しい旅人だったのか、なんというかつまりは――あぶないモンスターだと勘違いしていて。
「うぅ、これって冒険者じゃない……そうよね? ごめんなさい」
「ニチャチャ! まっ、六点もののタックルでしたなぁ」
ノノは気にした様子もなく笑い飛ばす。でも何で街中で棒切れを振り回してと問うのは、次に心惹かれる店を見つけるまでの暇つぶし。
「今日は大事なお客様がくるから、外で遊んでなさいってお父さんがいうんだもん。森はモンスターもいるから禁止だし、じゃあ街で腕を磨くしかないでしょ?」
「ヒマヒマ星人にゃのネ。ちょっとなら遊んであげてもよいじょー」
足をぶらぶら銅像の端に腰掛ける妖精娘へと、彼女と同サイズの触手指たちをにょろつかせるノノ。そういえば勇者伝説なんてのもあったっけと、ついで程度に聞いていくのもいい。
それすごいわね……。黒い体は次は攻撃でなく興味として、小さな指でつんつんつつかれることに。
ちっちゃくて、かわいくて。そんなアクセサリーたちに心躍るのはエリック・レイ(🌸ココロ・マンカイ🌸・f13960)も同じ。
妖精が首飾りにするものが、指に通すにはちょうどいい塩梅。
どうやって作ったの? オレに似合いそうなオススメある? フレンドリーさ全開、いろんな品を試しては心からのすごいを贈る少年のかんばせはどの石以上にもキラキラと。
近くの岩場で採れるのだという翡翠色に流る星影閉じ込めたシルフストーン・リングはその名の通り、風の精の加護を受けていて。世界のどこまでも駆け、エールを届けるエリックの親指に特別ぴったり。
「さっきの子もすごかったけど、あなたもとってもアクセ映えするひとね。どこかの妖精さん?」
「キミの心に棲む、ね? なんて、でもなかよくしてくれると嬉しい!」
ネットやってる? と滑らかに自身のチャンネルをおすすめするのも忘れない。しゃがんで目線を合わせて傾げる小首、懐っこい笑みのエリックはすぐに妖精と打ち解ける。
話し込んだあたりで出されたもうひとつのリングは燃える炎色、土の精。"勇者の~~"シリーズもステキだけれど、私は自分で採ってきたこっちが好きと店番妖精はころころ笑った。
気に入ったいくつかを購入したエリックが勇者伝説の話を切り出したなら、じゃあ名所巡りする? と返る。ありがとう! のハイタッチは指先にて、妖精とふたり、なんだか本当に勇者様ご一行になったみたいな心地で歩みは元気いっぱい。
「勇者もこの街のもの、大好きだったんだろうなぁ。なんかわかるもん、オレ」
「エリくん、こっちが勇者像でー……あっ、長の娘さんも来てるよ」
店主がまずふわふわ案内した先は、ブロンズ像の前。そこではちょうど派手目なブラックタール――ノノと、ひとりの妖精がおしゃべりしていて。
「んぁ? 長? おめさんそんなイカしたご身分だったのけ?」
「知ってて声掛けてるんだと思ってたわ……そうよ、私がこの街の長の娘。勇者伝説を継ぐもの、マリーベル!」
勇者とは形から入るものらしい。
しゃきんと掲げる"剣"は伝承に謳われるかつおぶしブレードだったりするが……娘、マリーベルは腕を組み、ピンクと緑の頭二つを見比べるように浮いた。
「わあすごーい! ホンモノ? ってことはめちゃめちゃ強かったりするんだ!」
「もちろん。もしも今日、魔王がやってきたって、リリティカもあなたたちもみーんな守ってあげるんだから」
どやりとしてみせる妖精であったが、続くエリックからの全力・ちっちゃかわいいの評価にはすこしふくれっ面である。
あ。
言われてみればよく似ていると、銅像とを見比べたノノは思って。
(「でもこの像……歌い言葉詰めすぎじゃなかろか?」)
――リリティカの空覆う暗雲より出でし悪魔、勇者一行により討ち滅ぼされる。彼らの勇姿に心打たれた幼きマリーゴールド、旅の同行を申し出たのが伝説のはじまりで――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギド・スプートニク
シゥレカエレカ(f04551)と
なかなか賑わっている
妖精の街に立ち寄るのは随分と久し振りだ
折角の機会、色々買い物をして行ったらどうだ?
そうだな
うっかり壊してしまわぬよう気を付けなければ
木の実については
そうだったかと少し惚ける
あの頃の自分はまだ幼な過ぎて擽ったい
シゥレカエレカの言葉にどこか寂しさを感じ
そうか
だが最近は食が細り気味でな
このくらいのサイズがちょうど良い
ここまで他種族に開かれた街は珍しく感じる
勇者の末裔としての矜持
といったところだろうか
勇者像を眺めつつ
その名くらいは確認
この世界の勇者は数多おり
竜の討伐へと向かったのだろう?
ならば妖精の勇者とは
それこそ勇者一行の導き手だったのやもしれぬな
シゥレカエレカ・スプートニク
夫、ギド(f00088)と!
そうね、こんなにフェアリーばっかりなところに来るのは本当に久しぶり
懐かしい、……この、サイズ感とか!
ギドは大丈夫?頭、ぶつけてない?
あ、――ねえギド、見て!
あの木の実、憶えてる?
子供の頃よく一緒に食べたよね、あなたは小さいってぼやいてたけど…
…あは、もっとちいちゃくなっちゃったね
それにしても、勇者伝説ねえ
わたしたちから出るのは珍しい伝承ね
旅の導き手としての矜持、みたいなものはわたしにもあるのよ
そういう伝承はよく聞いたし……憧れたりもしたわ
(だけど、いまは)
(あなたと一緒にいられさえしたらいいって)
(それもわたしの、旅の導き手としての矜持なのよ)
……なーんちゃって!
――光翅のきらめき絶えず、亡者の国、灼熱の山と極寒の海をも越え。
幾多の仲間が倒れる中、見事帝竜に終わりを与え、生きてリリティカへ舞い戻った――か。
(「マリーゴールド。妖精の勇者とは、勇者一行の導き手だったのやもしれぬな」)
入り口で花のカーテンをくぐったとき見かけた、妖精像に刻まれた伝承を心のうちで思い返す。ギド・スプートニク(意志無き者の王・f00088)の袖を、白く透き通った妖精の手指がくいと引いた。
「――ねえギド、見て!」
永く連れ添う妻、シゥレカエレカ・スプートニク(愛の表明・f04551)。あの木の実、憶えてる? 子供の頃よく一緒に食べたよね。そう、逆の手で女が指して示す店先に、葉で編まれた籠と陽光弾く赤い実の山。
「そうだったか?」
「そうよ。あなたは小さいってぼやいてたけど……」
……あは、もっとちいちゃくなっちゃったね。ぽつりと続いた呟きにさみしさの色を感じ取ってギドは、惚けるのをやめにして指輪が光る小さく愛おしい手に触れる。ちょうど王子が姫へお手をどうぞ、と差し伸べるように。
「だが最近は食が細り気味でな。このくらいのサイズがちょうど良い、見ていくか」
あの頃の自分を思うと、幼すぎて擽ったい。しかしそれもまた伴に在ったかけがえのない時間なれば。そっと触れ返される妖精の指、賑わいの中へとはぐれぬために。
「それにしても、妖精の街に立ち寄るのは久し振りだ」
「そうね、こんなにフェアリーばっかりなところに来るのは本当に」
ずっと小さな昔背比べをした風な花のとなり並んで、どうかしら? うぶな娘めいて尋ねる囁き声にはてと、肩を揺らしては歩くのだ。
妖精の暮らしはシゥレカエレカにとってみれば、懐かしいものづくし。物で溢れた市を器用に飛ぶにも何不自由ないけれど、夫の方はときに看板などへ頭をぶつけかけてしまうもので歩道側――否、テント側を飛んで守るのが妻の役目。
またいつ烏よろしく、かたい地面を使って鉱石を砕く妖精が現れないとも限らない。
「ギド、さっきのたんこぶになってない?」
「岩が空から降ってくるとは思わんだろう。なに、この通り大したことはないさ」
さす……と撫ぜたシゥレカエレカの手に届くは常通りやわらかな黒髪の手触りだけ。ほっと、時に足早すれ違う人間の立てる風はギドの後ろでやり過ごして。
随分と他種族に開かれた街だ。勇者の末裔としての矜持といったところか――吐息にもほど近い呟きを拾えば、男のその肩でひととき翅を休めた。
「旅の導き手としての矜持、みたいなものはわたしにもあるのよ。そういう伝承はよく聞いたし……憧れたりもしたわ」
「ふ、」
きみの導く路のしあわせは、誰よりも知っている。ゆるり青く、緩めた眦で同じ世界を見るギドに――笑われてしまったかしら? 心の声までは読めぬから、妖精は指先でつんと頬を押すまで。本当、本当よ?
(「だけど、だって、いまは。あなたと一緒にいられさえしたらいいって――それもわたしの、旅の導き手としての矜持なの」)
「……なーんちゃって! あっ」
またもや空から突然の襲撃があったとて、肩のシゥレカエレカのためならば目を瞑っていようと避けることなど造作ない。想い合う絆は深く、妖精の乙女が見初めたギド・スプートニクとは、そうした男だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イトゥカ・レスカン
まさにフェアリーランド、ですね
この世界に暮らしている身なら彼女たちも見慣れないものではないですが
これほど小さなものに囲まれるのは新鮮
けど(彼女たちとしては)大きめの市場と言え、気をつけないと頭をぶつけそうです
……うっかり割れないようにしなくては
あちこちから聞こえる勇者伝説を交えた客引き
話を聞くだけでも楽しいものですね、これは
まるで蛍を閉じ込めたような小さな、不思議な火の灯ったランプに
小さいながらよく磨かれた宝石
吊り下げられたハーブは彼女たちが日常的に使うものなのでしょうか?
おや、こちらの紅茶は特製のフレーバーですか
妖精ならではのお茶は少し興味があります
一つ買ってお土産にしましょう
ペチカ・ロティカ
仕入れをかねて骨董品を見に行くの。
以前にも、フェアリー由来のランプを扱ったことがあるけれど
指先ほどのちいさなものなのに、ずいぶんあかるかったような記憶があるの
光に癒し効果のあるものだとか、かわったものもあったのね
今日は、何か”いいもの”が見つかるかしら。
お花のかたちのランプ?が飾られているの
…?ランプじゃなくて、ランプ草?森ではこのまま生えてるの?
光蟲が住み着いて、ランプ草がその虫を食べてしまうことでこうなるって
このひかりは器物じゃなくて、いのちでできてるのね
すてきだけれど、ペチカに扱えるものではないみたい
ちゃんとランプもあるの?
じゃあ、そちらを見せてもらうことにするの
灯りのいらない空には澄み渡る、青。
ぽつぽつと、夜にゆくよりも更にひとまわり縮んで見えるような。纏う色の薄れたペチカ・ロティカ(幻燈記・f01228)は仕入れをかねて骨董品を探し歩いていた。
今日は、何か"いいもの"が見つかるかしら。
「ごきげんよう。ここにランプがあると聞いたのだけれど、お花屋さんみたいね」
覗く先は、身を屈めずとも少女の背丈にちょうどいい。テントの天井から吊るされた花々がペチカの髪に頬に触れるみたく、それがすこし擽ったいくらい。
「……おや」
ちいさなレディに気付いた先客はおっとりとした調子で会釈した。イトゥカ・レスカン(ブルーモーメント・f13024)。男もまた灯りを求めこの場所へ。
隣店の妖精とのおしゃべりに興じている店主に代わり、正解のお店ですよと淡くうたう。
今や少女を飾る花、それもランプなのだと続く説明に不思議そうに、うち一本のまんまる鈴蘭を引いて手にするペチカ。手中に収めればほわり熱が伝わる。規則正しい灯の揺れはまるでほたるの光が明滅するときの、息づく命の呼吸。
「いき、てるの?」
「ええ。ランプ草といって、中に光蟲が住んでいるのだとか」
不思議で、面白いものですよね、ふっと吐く息まで微かに。イトゥカのてのひらには花芯に炎ゆらぐ水仙が乗っている。触れても熱くはないだろうことは、壊れものを扱う風に包む指の動きで見て取れた。
そう……、ペチカはお礼を口にし鈴蘭の花をもとの天井へと戻す。いのち。器物でないものを連れ歩くのは、なんだか――できない気がして。
ほぼ無意識に。そろりと落とした視界には、瑞々しい水滴をつける花で編まれたかごが飛び込む。小鳥、或いは妖精サイズ。対照的にマントルは錆びつき、あしらわれた扉はかたく閉じていた。
「お花のとりかごランプもあるみたい。ふしぎね、灯りはどこへもいかないのに」
「そちらは勇者の時代からの年代物らしいです。いつか暗闇を恐れた気持ちの表れ、なのかもしれませんね」
平和なこの地にも混沌満ちた時代があったのだろう。とらえて――縋っておきたかったものは、光。勇者の存在そのものかもしれず。
それでは私は、これで。
ランプひとつ手に宝石めいた男が去り行けば、ペチカはまたぽつり。
だが、ここは明るい。いつか扱った記憶のとおりに妖精のランプは小さくとも眩しいほど。冷たい灯に癒しの灯、みんないいけれど。彼のような青から赤へと移り変わる灯も、あるのかしら?
ちょうど戻ってきた店主に問うたなら、下の戸棚から引っ張り出された木枠のそれは埃をかぶりながらもあたたかな夕暮れ色をしていた。
「ふぅ……まさにフェアリーランド、ですね」
同じ世界の出身として見慣れぬものではないものの、これほど囲まれるという体験は"新鮮"の一言に尽きる。
まして体当たりにも近い客引きもセット。
クリスタリアンの身体は繊細だ。割れぬように、同じだけ潰さぬようにとできるだけ道の端を歩くようにしてイトゥカは品々を眺め歩む。よく磨かれた小指の先ほどの宝石には、自身のこころも洗われるよう。
「おっと、これは――」
戻ってきてしまった?
雨中の如く花々が吊り下げられるテントに行き着いたときには首をこてり、と。
「うちでは薬草を扱ってるよ。よそから来たひとだろ? 茶に入れる楽しみ方も人気だぜ」
「なるほど、ハーブティー。どのような効能があるのかお聞きしても?」
控えめなその注文に、待ってましたとばかりずらり花が並べられる。定番のカモミール、レモングラス、ラベンダー、……見たことのないものも。
角を持つ獣が牙を剥くに似たおかしな赤紫は、勇者の庭で育った縁起物とのこと。効能は――ガッツ?
「ふふ。味の方は、お楽しみということで」
いっそ楽しむ素振り。臆さず土産にと選んだ男は、今はまなうらにしかとともに味わってくれるひとが浮かぶことに、笑み。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
矢来・夕立
【いつもの】
ラッカさん(f15266)が誘ってくださったお仕事なんですけれど、確か穂結さん(f15297)にもお声がけしてるんですよね?
三人揃って調査になるわけないじゃないですか。観光ではありませんか。何が現地調査だ。
……まあ、付き合ってもいいですよ。何かの縁ですし。迷子になられてもアレですし。
オレは調査に来ただけですけど。
▼行動
お二人の意見を総合して。
食べ歩きから雑貨屋なりなんなりのコースでしょうか。お店の選択はラッカさんに任せします。
『失せ物探し』で加工紙の類を捜索。いいものは全部買います。
正方形なら守備範囲ですよ。
フェアリーの製紙技術には期待できそうですね。楽し
……目的なんでしたっけ?
穂結・神楽耶
【いつもの】
ラーク様(f15266)のお誘いで、矢来様(f14904)と三人で妖精の市場に遠足……ではなくて、調査でございます。
蜜菓子とか、おまんじゅうとか、珍しい茶葉に何某の丸焼きだとか。妖精仕様の木の実クッキーなんていくらでも食べられそう。 …え? あ、はい。調査ですよね。ええ、調査ですとも。……あら、あちらの方から芳しい香りが。見に行ってもいいでしょうか?
▼行動:誰かと共に行動するというのは新鮮で心が躍りますね。矢来様とラーク様にひとまずくっついていこうと思います。お二人のお望みのものが見つかるように、お店の方々から話を聞ければよいのですが。食べ物を購入がてら雑談といきましょう。
ラッカ・ラーク
【いつもの】面白そうな話が聞こえたからな、旅は道連れってことでユーダチ(f14904)とカグヤ(f15297)を誘って観光……おっと、現地調査に。
勇者伝説も気になるし、妖精の市場だぜ? 気になるよなあ!
異世界の伝説とかその土地ならではのモノとか、やっぱ旅人を自称するからには知っておきたいじゃねえか。
▼行動
いつもひとり旅だったし、三人で旅ってのも新鮮だな。やっぱ誘ってみてよかったぜ。本題は調査だし、仕事ってのも嘘じゃないぞ?
旅の経験と『野生の勘』を頼りに、伝説をちゃんと知ってて商売してるヤツを探して買い物がてら話を聞いて回りたいね。空飛ぶ種族同士、空で役立つ品々様々、あるんじゃね?
退屈ではなくリラックス。両手を頭の後ろで交差、くぁりとあくび噛み殺すラッカ・ラーク(きまぐれクラッカー・f15266)を先頭にこちらはお気楽道中。
「絶好の遠そ……調査日和でなによりですね」
「おう、お天道様も惚れ込む晴男たぁオレのことよ」
小走りで隣へ並ぶ穂結・神楽耶(守れずのヤドリガミ・f15297)の両手には串に刺さった木の実団子。片手ずつに五本一気に持てるなんて、なんだかとても贅沢気分。味だってひとつずつ違うのだ。知人との遠出とも合わされば、その新鮮さに心躍らぬわけがない。
彼らとまとめられるのは釈然としないような。もうどうだっていいような。矢来・夕立(無面目・f14904)のため息はこれで何度目か。
「まあ、わかってましたしね。せいぜい迷子にならない程度に前見て歩いてください」
「わぁーかってるって。オマエ、このオレが考えなしに歩いてるとでも思ってたのか?」
妖精の口には大魚、ラッカの口には小魚。咥えていたその骨まで呑んで、顎で指した先には"リリティカまんじゅう"の看板。あっ、わたくし、食べてみたかったのです。漂う香りに神楽耶は一も二もなく引き寄せられゆく。
これだ。
無言で見送った夕立は背中側のテントを振り返る。ラッカの目星うんぬんはたしかに悪いものではなかったようで、ちょうど自分の探していた加工紙を扱う店がそこにあったものだから。
緑みどりしい街というだけあり、植物モチーフの柄が多い。押し花よろしく花を織り込んだもの、硝子の透明度を持つもの、光に透かせば燐光の灯るもの――……時に混じる和紙の手触りは製法から凝っていると知れる。折り紙にもってこいの正方形の品ぞろえも豊富、これはもう、持てるだけ買っておくべきでは?
(「楽し……」)
「これうめぇなー、苦くねえけど薬草ってマジ?」
「蜜の風味がとてもやさしい味わいにございますね」
はい、矢来様。おかいものに精を出す夕立のため、彼の分もと手にした神楽耶がリリティカまんじゅう(串)を差し出した。――先の団子は全てすでに腹の中か。
「なんか食べかけに見えますが」
「味見しといてやったんだよ、旅先で毒見は大事だろ」
「あら失礼を、わたくしの分と逆になっていましたね」
落ち着いたショッピングというのは難しそうだ――ん? 目的なんでしたっけ?
いつもひとり旅だった。
三人での旅というのも、悪くない。観光じみた軽い足取りのその実、本題は調査と割り切っているラッカの気分がぐんと良いのはなにもご当地飯がうまいだけだからではなく。
その後も香ばしい香りがする度にすこしずつ道を逸れてゆく神楽耶などがいたものの、端から端まで練り歩きあやしきを探すならば、このくらい街の雰囲気に馴染めた方が良いのかもしれない。
逆に"外れた"空気を纏う輩がいたならば、違和感を覚えるようになるから。
足を止めるラッカ。
「ラーク様? お望みのものが見つかりましたか?」
頬の内側でころんと花蜜飴を転がしながら、横へついた神楽耶が男の視線を辿って見遣る。
屋根のないテント? ワゴン上の物をひとまとめに風呂敷へ放り込んでいる妖精の姿が、そこにあった。
みーっけた。
とん、骨組みだけの屋根に手をかけぐんと覗き込んでからの「こんにちは」。いきなり大きな影を作ってきたキマイラの姿に、妖精店主は唖然、品を取り落としてしまう。
「なんの店ですかここ。やめときましょう、噛みついてきそうな目してますよ」
「いや……この妖精にしちゃ残念なツラのおっさんは絶対その筋のヤツだ」
「ケンカ売ってんのかてめぇらッ!」
とはいえ男二人の不躾な眼差しにすぐに気を取り直した。
転がった棒……メイスからして武具を扱う店か。ラッカとしては妖精族が戦いの際、空で役立ている品々云々に興味があったわけだが――その旨伝えたところで、店主はふんと鼻を鳴らすばかり。
「まだそんだけ売り物あんのに、門前払いはひどくねえ?」
「急いでんだ俺は。そこのガラクタが欲しいなら勝手に持ってけ」
ガラクタ。称されたナイフや翅の受ける空気抵抗を減らすためのパウダーには、どれも"勇者も愛用"のラベルがついていた。まだ使えそうですが……、無関係であれ物を粗末に扱われるのはどこかさみしく、神楽耶は拾い上げた刀身を撫ぜる。刃こぼれひとつない、飾りに過ぎない刃。
へぇ。 夕立の瞳は同じだけ切れ味鋭く冷え冷え、
「オレ、あなたを捕まえにきたんですよね。ウソですけど」
適当を言った――だがその言葉に妖精は先ほど以上、びくりと肩を跳ねさせた。そうだ。見飽きたほどの、これは何かにひどく怯えている者のとる態度。いじめてやんなって、肘でどつくラッカと場所を替わり。
「おーい、じゃモノは諦めっけど面白ぇ勇者話のひとつふたつは持ってんだろ? ハネ持ちのよしみで教えてくれよ」
「へっ! 勇者ゆうしゃって持て囃してるがなぁ、俺ぁ誰より長くここで店やってるがもうけが出たこた一度もねぇや」
よく見れば荷造りをしている妖精の隣にはカラの酒瓶がごろごろ……といったって、絵の具の容器程度のサイズだが。呂律が怪しいあたりよほど度数でも強いのか。
それに――教えてやろうか? 風呂敷包みの結び目を自らの首へかけながら、男はかぶりを振ってみせる。
「話ばっかデカくなって、あんなもんうそっぱち。"本物の勇者様"をほっぼり出しておめおめと逃げ帰ってきたのさ、マリーゴールド様はよ」
ガタンッ!
街の入り口の方向から、なにか重いものが崩れる音がした。
「もうひとつ。さっきから市をうろついてるローブ野郎ども……ありゃ"クロ"だ。わりぃことは言わねえ。てめえの身がかわいけりゃ、あんたたちも逃げた方がいい」
小さく。飛び去る間際、三人にだけ聞こえる声量で酔いの感じられぬ声が静かに告げる。
それがおわりで、はじまりだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『フェアリーの村を守れ!』
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POW : 身体を張って襲撃者からフェアリーたちを守るんだ!
SPD : 罠や射撃で襲撃者を足止めしてフェアリーたちへ近付かせないぞ!
WIZ : 魔法や未知のエネルギーを襲撃者にぶっ放してフェアリーたちに触れさせないぞ!
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
あのひとたちのように、なりたかった。
どんな困難にも恐れず立ち向かう。心配ないと笑う。
守るもののため、傷付いても何度でも立ち上がる――けれども私はひどく、ひどく弱い……結局はただの、マリーゴールド。
●
伝説の旅から逃げ帰ってきた病の床で、うわごとのように懺悔を繰り返す"勇者様"の姿をまだ覚えている。
月日は流れ。長の役目を任された気弱な男には、街の者たちの夢希望にあふれた瞳、勇なる街リリティカの一層の繁栄をと励む姿を裏切ることなどできやしなかった。
うちのお姫様はとってもすごかった!
あの帝竜を討ち果たしたんだ!
――疾うに察していたものもいるだろう。勇者の武器、好物、在り方に子ども時代の過ごし方、語られる伝承はどれもが自由にひとり歩きして枝葉の増えたもの。
真実がいくつあろうと。一番重要な部分は、誰にも語れない。
「やめてくれ、全部嘘なんだっ……うちの街の者には勇者の血なんか流れていやしないんだ!!」
「往生際の悪いやつだな、別に俺らは真偽なんざどうだっていいんだ。魔力さえ本物ならマニアに高く売れる。内臓の一片まで可愛がってやるからよ!」
床に手をついて頭を下げる初老の妖精こそ、この街の長。
それを見下ろし証拠ならあるんだとローブ姿の人間の男は、苔生したちいさな壺を手の上で遊ばせた。付き従う妖精――男の"商品"は、たしかにこの街の民と同じ魔力残滓を感じると頷く。
「それはだから、大昔に本物の勇者様たちがうちを救ってくださったときのもので……」
「あぁ羽虫の音は小さすぎて聞こえねえなあ。おい、連れてけ」
それともなんだ、戦うか?
伝説の勇者みたいに! 広々とした庭にまで漏れる挑発にも、頭を上げることは、できず。
同刻、市場。
蹴倒された妖精像。欠片散らばる道の真中。摘み上げたフェアリーを、眺めてその何倍も大きな闇商人――市場の影から滲み出たようなクロの一行は満足げに。
「んー、見目も魔力の含有量も悪くない。妙なウワサに釣られてきてみたが、当たりだったかもなぁ」
「彼女を離せ! 貴様ら、ここがリリティカと知っておいての狼藉かッ!」
鬼の形相で飛びかかった妖精族の男は拳の一振りで払い落とされる。乾いた音が響き、地面に二人分、じわりと赤色が広がった。
「オイオイ、お前が暴れるから大事な嬢ちゃんまで売りモンにならなくなったじゃねぇか!」
仲間殺したぁ勇者様ってのは随分と残酷なんだな、下卑た笑いが耳打てば翅持つ民がきつく歯をくいしばる。
混乱、恐怖、絶望、祈り――その中で。怯むな! 長の娘、マリーベルが声を張った。
気を失った同族の腰元から抜き取るはじめての真剣を、震えぬよう両の手で握り込み、キッと前を見据えて。
「私たちは勇者の末裔なんだからっ……!」
こんな悪い奴らに負けていてどうするの!
一喝、細剣構えた娘は果敢に飛びゆく。顔を見合わせる青年妖精らも、頷きあってそれに続く。
彼らは、絶えず勇者の存在を強く信じていた。
だが、英雄譚は幕を下ろして久しいのだ。
リリティカはもとより治癒魔法にのみ特化した風土。伝承にも劣らぬ勇気は、より強大な力の前に無残にも打ち砕かれてしまう。
筈だった。
コノハ・ライゼ
へぇナルホド。最近の商いってのはそーゆーのが流行りなの?
まるで最初からソコに居たかのように飄と声を掛け
でもそれってサ、脅しとか強奪って言うンだよネ
くーちゃん、ちょっと遊ンであげて
【黒影】を悪商人らに嗾けつつ割り込み村長を安全な位置へ
くーちゃんは相手の数+α、ちょこまかおちょくるように飛び交わせる
内一体に牙剥く威嚇させ
その壺も預かっとこかと掠め取り
真偽なんざどうでもイイってのは同感だネェ
だがソレは日々を楽しくする為の方便じゃなくちゃ
阿漕な商売や人身売買のクソネタにする為じゃねぇデショ
「柘榴」抜いて楽しげに笑い
とっとと帰った方が身の為だと思うケド
それとも美味しく料理されてみる?
(アドリブ歓迎)
レイラ・アストン
『』:技能
【】:UC
(長の家に向かう最中。異変に気付いて身を隠し、全てを聴いた)
勇者のお話を伺いたかったけれど、それどころではなさそうね
…たとえ伝承の真偽がどうであろうとも
この素敵な街が壊されていい理由なんてないわ
※wiz
鎖蛇を伸ばして『範囲攻撃』
人間の男に『マヒ攻撃』を入れてから
彼に付き従う妖精の捕縛を試みるわ
長には敵から距離を取るよう促すわね
人間の男に対してはさらに【邪視】を発動
『呪詛』を流し込み、死なない程度に弱らせて『ロープワーク』で捕縛
「街に送り込んだ戦力は如何ほどかしら、白状なさい!」
敵の反撃は『第六感』で察知
可能なら『見切り』で回避
避けられないなら『オーラ防御』で対処
千頭・定
(アドリブ絡み大歓迎です)
はぐれました……一緒に来ていた方が迷子です!
決して私が迷子なわけではありません。
さて、本も買えて幸せいっぱいな気持ちがぶち壊しです!
許しません。お仕事に切り替えていきましょう。
[先制攻撃]です。
素早く敵の死角に回り込みながら槍で切りつけ、距離を取る事を繰り返しましょう。
また[怪力]を使い、戦いの中で徐ろに敵を掴みで危険な角度で投げ飛ばします。
驚かれましたよねぇ。
それではどうぞ、『聞け、ーーーーーの声を!』
UC発動です。
私の身体から滲み出た暗闇から、UDC「ヴェー」を呼びます。
締め上げるなりなんなり、ヴェーに任せますよう。
エンジ・カラカ
アァ、悪いヤツ。
チイサイモノをいじめるのは格好悪い…。
賢い君、賢い君、そう思わないカ?
足止めが得意な君の出番。
真っ赤な真っ赤なアカイイト、敵サン結ぶアカイイト。
ソコで立ち止まったらアラ不思議。
コレがやって来る。
チイサイノは隠れてくれヨ。間違えて潰しちゃあ意味が無いからなァ……。
張り巡らせた賢い君のアカイイトは敵サンには刺激が強すぎるかもなァ……。
なんたって君は毒が強い。ご機嫌を損ねるとお前は立ち上がることも出来なくなる。
わかった?わかった?えらいネェ、たのしいネェ。
「へぇナルホド。最近の商いってのはそーゆーのが流行りなの?」
その声は。
悲鳴のひとつ漏らせぬ妖精の長の耳にも、滑らかに響いた。笑いさえ含んでいた――嘲る種の。視線を集めた戸口脇には、どうもお邪魔してますとでも云う風にひらと手を掲げる紫雲連れたひとの姿。 人間が、なぜここに?
「な――おい、外のヤツらはどうした! 見張っておけと……」
「あっは、やましいコトしてる自覚はあンだ」
そう。それってサ、脅しとか強奪って言うンだよネ。コノハと、己をかたる男の声色は俄かに低く。一歩。踏み入った体とは別に残された影が手品の如くにしゅるり解ければ、小さな管狐の形となり立ち昇る。
が、霧中で目を凝らす風に訝しげに構えるローブ男らのお留守な足へ先ず触れるは紐――否、蛇。生ける蛇を象った鎖だった。
「は、」
蹴って払わんとする動作よりも蛇が身を閃かせる動作が早い。赤色の狩人がひとたび鞭のように風切ってしなれば人身が弾かれ、唖然と顔を上げた長の周囲に人ひとり滑り込めるだけの空間を生む。それはただの生物、武具ではなく呪いの一種……鎖の先は、低い戸をくぐり続いて姿を見せたレイラの手が引いていた。
「……たとえ伝承の真偽がどうであろうとも、この素敵な街が壊されていい理由なんてないわ」
外まで筒抜けよ、間の抜けた盗人さん。言って少女は空間を舐めたのち手元へと収まった蛇を掌上で垂らす。どこから喰ってしまおうか? 重力に逆らいゆるり鎌首をもたげる姿は、儘、獲物を見遣るそれ。
息を呑む徒党。同感とコノハはひと跳び、長の元へ。次の歩で男らから十分に引き離す。へたりこむ身へ積もる話は後で、口の形のみで伝え――視線を戻したとき、女の硝子越しの青と交わったなら瞬きで示した。では心置きなく、と。
「っくそ……ぼさっと見ていないで働け! なんのためにお前らを生かしてやってると思ってるんだ!」
打ち据えられ尻餅をついて手を震わせるクロのひとりが声を荒げ、使いの妖精に命じる。畏怖――若しくは、期待? 猟兵らの登場に固まっていた小人は、びくりと肩を跳ねさせて瞳を閉じ両手を合わせる。
イメージするは火球。収束しはじめた魔力はだが、直後混ぜられる空気に散らされる。
「勿体ナイ、やりたいコトだけやってなヨ」
偽るならば楽しくなくては。常に"選んできた"妖狐は嘯く。
くーちゃん――ちょっと遊ンであげて。ごく軽い一言でごうと荒れた突風は風の精にも似て獰猛な獣の、早駆け。
妖精を、クロを相手取り黒影の狐はぶつかり、弾け、再び影より出でてと自由気儘に飛び回る。振り落とそうとて狙いを定めるには難く。ついにはひと同士、互いに殴り合う醜態の見れるまでに翻弄し尽くす。
「がァッ、てめぇ……」
「邪魔すんな!」
――ばかばかしい。
知能の低さはとどまるところを知らず。最中、管狐に体当たられコントロールを失った妖精のひとりを見て取ったレイラは、鎖の蛇へと命じて捕縛を成す。簀巻になってすぐ傍へ連れられた妖精はまだ幼く――先のやり取りからして、"商品"であるのだろう。
「ご主人様を助けたい?」
「…………」
首は縦にも横にも振られず、仄暗い藍は力無く少女を映す。知れていたとも。抵抗する気は無いと見た鎖が解かれて、それから。
頭を低く床を這って外へと逃げようとしていた男の真横に、槍の鋭さで突き立てられる。短く上がった悲鳴をも踏み潰すかつりと歩み寄る足音。影が差したその次に、"呪われた"青い瞳が逆さに覗き込む。
「ぁ……」
身の奥底から恐怖に支配される感覚――すぐにおそれは痛みへ、幻覚をも引き寄せる。
床板をめくり上げて顔を出し、胸から肩をひと巻きにして首にまで絡んだ赤色蛇の、覗いた二股の舌が男の頬をちろりと舐めた。
「ヒィィッ」
「街に送り込んだ戦力は如何ほどかしら」
白状なさい!
引き絞る鎖、拘束を強めれば言葉ならぬ泡が吐かれる。ありゃもう壊れちゃったカモね、薄ら笑いでコノハは管狐の合間を縫い踊り。
「なんなんだこいつらッ……どこから計画が漏れ、」
ダンッッ!
壺を庇い身を縮めるクロの足元に穴が開いた。
「っと……手ぇ滑っちゃった。な、とっとと帰った方が身の為だと思うケド」
煌びやかな紅を纏う刃によって。 取り落とす壺が転がれば、拾い上げる別な手。中腰に頭を下げ――上げたとき、コノハの手で遊ばれる柘榴はおもちゃめいててらりと光る。流れる血を、想起させるに十分の。
「それとも美味しく料理されてみる?」
長の家の庭。またの名を勇者の家の庭――か。
「ふぅー……鹿糸さんが迷子になっちゃったときは焦りましたけど。間は良かったですかね?」
ぱん、ぱんと手を払う。準備運動でも終えた風な、汗ひとつ零さぬ定の足元には大の男がひとりふたりと伸びていた。
でも本当に咲いているなんて、面白いです。零す視線の向こうには獣のような牙を生やした奇怪な見目の植物などが植わっていて、市場で見かけたものたちがまるきり嘘というわけでもないのだと伝える。
同意を求める先の相手といえばまだたのしげに遊んでいる。闇商人の手により突き出されたナイフを躱した衣にだけ穴が増す。エンジは、襤褸切れごと体を捩じって巻き取る腕から自由を奪い、続いて"相棒"の名を呼ばう。――賢い君、賢い君。
黒衣の下からざわりと湧き出た赤い糸は数多の手指の如く。声の主に仇なす存在へ、一斉に喰らい付いた。助けを呼ぶためか、開かれた口もおよぐ瞳も包み包んでおしずかに。
「オオキイモノにいじめられて、気分はどうだ?」
酸素を求めてばたばたと口元を引っ掻く様が滑稽。悪いヤツ。チイサイモノいじめの格好悪さは、身を以って教えてあげるがやさしさというものだろう? そう思わないカと辰砂へ問えば、糸の締め付けはよりきつく。
乱れたフードの下から露になる髪色もまた黒い。ローブ男とローブ男、はてさてどっちがクロなんだか。
「なになに、ごめんなさいゆるしてくださいって聞こえますね」
そこへすこーしばかり前屈、顔を寄せてみた定がふむりと頷いた。それでもね、素敵な本も買えて幸せいっぱいだった私の気持ちは戻ってはこないんですよ? ……奇襲を狙ったつもりかもしれないが。柱の陰から、剣を携えタックルを仕掛けてきた闇商人の腕を身を起こす流れで弾き上げるその手に、槍。
「許しません」
怒れる緑色を前にして、崩れた構えを整える間などない。姿勢低く跳べば足元の土がいっしょになって弾ける、それすら目眩ましに作用させ娘はすれ違い様に黒色の三叉で穿つ。零れ落つ剣と指数本とを視界の端にして止まらず、痛み悶える男の衣を握り込めば腕力任せで――、"驚愕"に目を見開いてみえるお仲間まで、
「そんなお顔をしてたんですか。驚かれましたよねぇ」
投げ叩きつける、プレゼント。もひとつオマケは特上品、定の身体は滲み出した闇に揺らぎ。
聞け、――――!
囁き、叫び。そのどちらにも似た号令ひとつ、ぞろりと形を変えた暗闇の色は白と黒、刃にも近い。それがクロたちへと次々に伸びるのだ。触れると形容するにはおぞましい。引き摺り込む強さで、方々から掴む体を土へ埋めながら。
「完全に埋めちゃダメですよう、お庭に変な植物が増えてしまいます」
いくつかの触手がきゅっと跳ねて応える。光景に、欲しがり狼はくつりと喉を鳴らした。
アァ……これもまたオモシロい。
「色んなセカイがあるもんだなァ」
わき見に興じた視線を戻せば、今やすっかりそこら中に張り巡らされた赤糸に掛かったローブ男らがもがいている。蟻地獄に蜘蛛の巣、そうした類と同じ。この領域にあって自在に動けるものは、主以外になく。
「そういえばコレにも答え、聞かせてくれないカ」
よく聴こえるように――ざり、と、歩み寄れば激しく被りが振られる。出来損ないの喜劇じみて、だから手を差し伸べてやった。もっとよろこばせてあげよう!
またひとつ。雁字搦めに巻いた体をエンジが蹴倒した。
賢い君の毒はご機嫌次第と教えてやれば一転して静かに倒れ伏すクロを……或いは既に気絶したいくつかを見遣って、小さく息を漏らす。感心した風に。
「わかった? わかった? えらいネェ、たのしいネェ」
そこに滲むは身震いする喜色であったろう。
闇商人の数は十を数えない――経験を積んだ猟兵が相手だ、見張りをやり遂げるには手薄過ぎた。
よし! と、男たちが這い出ぬよう地面を固めていた定も清々しい面持ちでおもてを上げる。
大方、市場の異変を長へ報せに飛んだのだろう。隠れていろとエンジから釘を刺されていた妖精は、二人の戦い慣れた様子に息を吸って吸って、そろりと草の合間から顔を出す。
「あ……ありがとう、ございます。お強いんですね」
それを二つの手が制した。
市場側から駆け込んでくるローブ姿が見える。逃げているのか、助太刀にきたのか。
なんにしろさて、もうひと仕事。そのあとには――市場へ再度足を運んだり、迷子を探すという大事な予定も待っているのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
メーリ・フルメヴァーラ
オズ(f01136)と
やだ
やだやだ!
こんなのおかしい!
リリティカのみんなは何も悪くない!
勇者とかそんなの関係ない
勝手に誰かを傷つけるほうがおかしいよ
傷ついた妖精がいたら起きるのを助けながら
大丈夫だよ
何もこわくないよって声をかけたい
マリーベルの勇気を引き継ぐんだ
オズの声に頷いて
闇商人を天翔ける綺羅星の在処で牽制
出来れば得物を壊せれば
鼻っ柱を折れたらそれでいい
リリティカで血を溢れさせたくない
だから退いて!!
妖精に注意を割く暇を与えず詠唱銃を連射
水属性の弾丸は水鉄砲みたい
鬼さんこちら!
勇者って周りに勇気を与えるひとなんだって
だからマリーベルもリリティカのみんなも
オズもみんな勇者だよ
目を逸らさず、前へ
オズ・ケストナー
メーリ(f01264)と
叫び声に走る
状況を把握するより先に
妖精と闇商人の間に入り攻撃を武器受け
顔を見ればどっちを守るべきかわかるもの
たおれているひとを治せる?
妖精に声をかけて
わたしにまかせて
メーリっ
相手の武器を押し返して
メーリの射撃を貰ったら【ガジェットショータイム】
退く様子がないなら
打ち合いながら妖精たちと逆方向へ進んでいくよ
勇者の末裔を守らなくちゃ
勇者だって、ひとりで戦っていたわけじゃないんだもの
わたしたちにも手伝わせてね
ふふ、それならメーリも勇者だね
メーリが呼んでも、鬼はいかせないよ
下がらずに攻撃を食い止め続けて斧を振るうね
負けない
わたしたちはこの市場で、たのしい気持ちをもらったんだから
ノ・ノ
おーおーおーおー
アタリもアタリ、オオアタリよ
テメェさんの頭にだがな
ネクロオーブ握りしめ、じゃらじゃらのアクセサリーを拳に集めてナックル代わり
奴さんの頭にぶちかます
ヒトが? うんにゃ、タールが?
きもちよーくイイ買いもんしちゅーときに、邪魔しねーでくれんかのう
とりま一発カマしたったら、後はUCでオブリビに任す
後はテキトーに虐めてやってくんろ
あー
これ以上バカやらないよに腕と足ぐらいは折ってもいっかな
なんちって★
べーつーに、わたくしはおみゃーさんらが突っかかりたいってーなら止めねぃけんど
一応、フェアリーたちは庇っちゃるわ
ほれほれ、ちみっこいのは後ろ下がっときー
デケーのの相手はデケーのがやるわいな
アリス・フェアリィハート
アドリブや他の方との連携も
歓迎
『この街のフェアリーさんは…確かに勇者さんの血を引く方です!…あんなに素敵な魔法を使えるのですから…私達猟兵が勇者の末裔さん達に加勢します…!』
他の猟兵さんとも連携
【WIZ】使用
フォースオーラ『スート・ザ・ワンダーハート』を纏い
魔法の炎や氷等【属性攻撃】に【衝撃波】や【誘導弾】
魔法等を駆使
襲撃者さん達に放ち
フェアリーさん達を護ります
敵さんの攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】で回避
もし
負傷したフェアリーさんが
いたら
シンフォニック・キュアで回復
『素敵な魔法を見せて頂いたお礼です…☆』
襲撃者さんを撃退後
【情報収集】で
フェアリーさん達に事情を
聞きます
『あの方々は一体…?』
●
無謀と呼ぶ他ないマリーベルらの檄、特攻。
それを黙らせたのはクロではない。命乞いの声でもない。
がづん、 銅像が倒されたときと同等――以上に痛烈な打撃音は黒く、空を掠めた手ならざる手から。凸凹とした厳ついメリケンサックを思わせる配置の指輪が鈍く陽光を返す。
「おーおーおーおー。アタリもアタリ、オオアタリよ」
テメェさんの頭にだがな。にゅっと、ハンマー状に伸び切った触手をひとの形へ近づけてはノノが体を傾けた。場違いにもぽよんと賑やかしく。
「あなた……」
殴られた頭を押さえ崩れ落ちる男の近く、感情が顔に出易いのだろう、零れそうなほど目を丸くしたマリーベルは二者を交互に見つめどちらへ向かおうか迷う素振りを見せたのち、ブラックタールの方へ。
その背へと伸ばされる別の手を、猟兵の眼は見逃しはしない。入れ替わりざまに飛び込む影がふたつ。
握ったちいさな手をくんと確かに引いて。メーリは、マリーベルの身体を後方へ逃がしながらも前だけ見据える。まなざしが、貪欲な色を宿したフードの下の赤とかち合う。地面に散った、妖精のそれと同じ。
――やだ。やだやだ!
「こんなのおかしい! リリティカのみんなは何も悪くないっ!」
声は悲痛に震えていたかもしれない。しかし瞳は揺るがずに真正面から、綴られる筈であった物語を否定する。邪魔が入ったと知った男が剣に手をかけたとき、メーリの肩にとんと手を添え更に一歩前へ出るのは友。そうだねと、耳打つ肯定もやわらかに。
「なんだお前ら、どうせここのネズミどもに騙されて……」
「その先はいらないよ。顔を見ればどっちを守るべきかわかるもの」
決して、間違ってはいない。Hermes――蒸気駆動の凛々しい戦斧とともに迫る鋼をオズが受け止めた。砂糖菓子のように甘い空気を纏っておきながら、意志に支えられた守りは堅牢。頭ひとつ分は大きな男を相手にぎちりと軋む柄を握って離さず、声を飛ばす先は妖精たち。
「おねがいがあるんだ。たおれているひとを治せる?」
わたしに、まかせて。一句ずつ、届かせ告げてみせるオズが生んだ一瞬の好機。最短の直線、大胆にも大男の脇をくぐり血だまりに沈む男女を胸に抱き上げたメーリが、その足で跳んだ。道の端、手を挙げて友の呼びかけに応えてくれたもののもとまで。
「わたっ、わたしが命にかえてでもっ」
「……、大丈夫。何もこわくないよ。あなたも、大丈夫」
怯えに声を上ずらせる妖精の娘へ託し分けるのは救うべきひとだけでなく、胸に灯る火。勇なるこころ――マリーベルの勇気を、引き継ぐんだ。あたたかくも凪いだ声は芯まで響き。
「お手伝いします! どうか私のうたがみなさんに届きますように……」
スカートの裾を持ち上げ、駆け寄ったアリスも幼くして責任感のつよい猟兵。汚れも厭わず座り込み身を寄せる娘の唇から紡がれる癒しの調べ、その安らぎも相乗効果となって幾分和らいだ妖精らの顔色へ、安堵とともにありがとうを残して。
ギィン! 背後で刃同士弾き合う音が聞こえたなら誰の呼びかけよりも早く水晶の娘は踵を返す。
「メーリっ」
オズ! 首肯は一度。ホルスターから抜き取り滑らせた二丁の詠唱銃に指をかけて刹那、曇りかけの空に彩を取り戻したいと煌めき躍る、己が青髪のヴェールを撃ち割いて解き放たれる星のきせき。
狙いは正確に――力強い斧の押し返しにより、ひときわ高く跳ね上げられたクロの剣へ。
吹き飛ばされからんからんと冷めた音を立てるひとごろしの道具と、ローブ男の余裕と。ふっと失せた均衡に身を預け傾ぐ体、オズはそうして一層深く踏みしめる左足で地を蹴って空いた右前方……男のわき腹へと、得物を叩き込む。
触れる瞬間にはガジェットは斧から姿を変じさせ、ひとつの棒と化していた。
――かなしむひとは、少ないほうがいい。磨いた腕を不殺のため駆使する友の意をも汲み選んだ形状、骨のいくつかにヒビの走る手応えは届いたが、その程度。
「わかって、くれるかな」
「リリティカで血を溢れさせたくない。だから退いて!!」
痛打を受けた男は転がりまわるのに忙しい。
見える範囲では他にひとり、ふたり――十ほどのクロがいるが、どれもがフード越しにも滲む明らかな動揺を浮かべ踏み出せずの状態でいた。
「ゆうしゃさま……」
ぽつり呟く末裔たる娘の声は、ノノにだけ辛うじて届くほど微か。このタールが時折立てる水音めいたものが笑いだと、知れていたならきっとまた頬を膨らませたのだろうけれど。
「ヒトが? うんにゃ、タールが? きもちよーくイイ買いもんしちゅーとこ邪魔したもんに相応しい末路よの」
しみじみ、うむりと満足げ。鮮やかな連携に視線を奪われていたマリーベルは、そこでハッとしてノノの触手を引っ張った。握手のつもりなのかもしれない。ぶんぶん、縦に二度。
「さっきはその……ありがとう。サポートをね! もちろん私ひとりでもやれたけど、」
「にょー。そうかもしれん、そうじゃないかもしれん。べーつーに、我にゃあどっちでもよござんす」
三度目の上下でぽーいと放り出すノノ。
割とそばに、まだまだ活きのよいピーポーがいることに気付いたもので。液体が音もなくそのかたちを移ろわせるように、体の位置をずいとずらしたブラックタールは妖精へと振られた棍棒を体で引き受けた。べぢんっっ。またも戦場に響くには気の抜けた音。
「なんてったって、デケーのの相手はデケーのがやるわいな」
ノノの肉体がわずかに弾けたかと思えば、地に落ちた黒色はむくむく形を変えはじめる。空気を入れられ暴れる風船の如く不安を誘う挙動――やがて一体ずつのヒトガタとヘビとに分離したそれは色も薄れ半透明の霊体に、剣と牙とを武器としてローブ男らへ襲い掛かるではないか。
「あぁ!? チキショウ、シャーマンまでいやがんのか!?」
「テキトーに虐めてやってくんろ。とくべつにBまではサービスだゾ★」
B――腕と足までならセーフ。意味は分からねど次こそ本気で物怖じした様子で、マリーベルはノノのふかふか頭へと逃げ込んだ。
「せめてケース一箱分は捕まえて帰んねぇと無駄骨だぁ!」
「あああッ、どいつが……どいつなら……!」
ひとの体が出してはならぬ音を立てながら締め上げられる仲間を助けようともせず、クロたちの視線は一角に注がれる。けが人ども! こいつらならば無理にでも――――だが。
ハートの形をした炎の球が猛然と現れたならば、なめずった舌すらただちに乾燥してしまう。それはシンフォニック・キュアで献身的に治療を続けていたアリスの力。"降りかかるかもしれない"程度の害意をも敏く知覚したのは身に纏うスート・ザ・ワンダーハート、姫の道行きを祈るふしぎの魔法。
「この街のフェアリーさんは……確かに勇者さんの血を引く方です! 触れさせませんっ」
お嬢ちゃん、逃げた方が……とアリスの手を押し返していた老妖精もこれには目を丸く、奇しくも共に治癒魔法を唱え上げていた骨董品商の驚きはそれ以上。
「……あなた、魔導書なんていらなかったんじゃない?」
「てへへ。素敵な魔法を見せていただいたお礼です……☆」
ちょっとだけ、いつもよりがんばっちゃいました! はにかんだ笑顔もまた、少女の生まれ持った治癒の光を放つようであった。
(「それにしても……黒い、あの方々はいったい?」)
けが人の傷があとすこし癒えたのならば、語られる話もあるだろう。皆の痛みを取り除くまでは離れない。その一心で、アリスは祈りをうたい続ける。
妖精や市は傷付けぬように、と意識を研ぎ澄ませた魔法弾があちこち飛び交う。
――すごい。アリスの炎と己の水とが混ざって滲むせかいは、白昼にあってもうつくしいオーロラ景色みたいで。メーリが銃を繰る手さばきは水鉄砲の速射そのもの。リロードいらず、ありったけ!
「鬼さんこちら!」
小柄な体躯を存分に活かし舞う彼女へ闇商人の意識が逸れたところを、ガジェットの端で強かに殴打し沈黙させるのがオズのつとめ。当然、踊り子へお手は触れないように?
クロの戦意はひとり目が沈んで以来右肩下がり。対して頼もしいの一言に尽きる友の姿へ、油断なくともメーリのかんばせにも自然笑顔が戻りくる。
「ね。勇者って周りに勇気を与えるひとなんだって。だからマリーベルもリリティカのみんなも、オズもみんな勇者だよ」
「ふふ、それならメーリも勇者だね」
みんな、すごい。本心で思うオズはテント陰より戦いの行く末を見守る妖精たちを見つけて、ふっと破顔し今更ながら贈る言葉をふたつ。今日は本当にありがとう、と。
「勇者だって、ひとりで戦っていたわけじゃないんだもの。わたしたちにも手伝わせてね」
そうだ。もらった沢山のたのしいを――今日という日を、すてきなままで終わらせたい。
だから、負けない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギド・スプートニク
シゥレカエレカ(f04551)と
悲鳴を耳にし
彼女がクロに摘まれ品定めされている光景を目にすれば
その汚い手を離せ、下郎
告げると同時に男の腕は斬り落とす
貴様、何のつもりだ
男を蹴り転がし
口内に刃を突き入れ
何を言っているのか聞こえぬな
喋る気がないのならこの場で死ね
この程度の事で殺すつもりはない
目に付くゴミを始末するだけ
ただし妖精殺害の現場を見たなら皆殺しに方針転換
邪魔する者は対立も辞さない
人質を取られた場合も魔眼で動きを封じ即殺
呪いなぞ知った事か
人であろうが亡霊であろうが
このようなクズどもに生かしておく価値などあるまい
ならば聞いてみるがいい
村の者らが彼らの命を助けて欲しいと懇願するなら
私も刃を収めよう
シゥレカエレカ・スプートニク
ギド(f00088)と
…え、何の音?
っひゃん!
不意に翅を掴まれて、驚いて振り返り
その目を見て目的が解らないほど、うぶじゃないの
でも、抗う前に腕ごと地面に落っこちて びゃんっ
――ギド!
いったい何が
…ううん、皆を助けないと!
このひとの狙いは…妖精だわ!
妖精たちを保護しつつ、
襲撃者は見かけ次第UC、雷の鎌鼬でバチッといくわ!
場を迅速に鎮圧します
もしギドが敵を殺め始めたら、正面から首に抱きついてでも止める
駄目、ギド!
いまあなたがそこまでする必要は、ない
それを選ぶのは此処の妖精たちだわ
それに…人間はあなたを呪うかもしれない
オブリビオンと違って、彼らはこの世界に遺るから
どうか、あなただけがそれを負わないで
ギドとシゥレカエレカ。同時多発的なクロの悪意は、つい今しがたまで森の香のする香水瓶を手に笑い合っていた二人のもとまで波及する。
「……え、何の音?」
最初の異変は絹を裂くような悲鳴。はたと揺れて音の方を振り仰ぐ妖精の翅を、並ぶテントの合間から躍り出た影の広げた指が鷲掴んだ。
「っひゃん!」
「――ふは、やっぱりこいつは極上だ! この翅だけでも結構な値がつくぞ」
ぐいと乱暴に反転させられるシゥレカエレカの体は、自らをモノとして見下ろすローブ男の眼前に晒される形となる。
満足に動けぬ身。だが術士たる女はうぶなお飾りでも嗜好品でも、ない。両腕さえ自由が効けば、否、抗うという意志のひとつあれば御覧に入れてみせんと――瞳に力を込めるよりも下賤なる暴威へ裁きがくだされる方が格段に迅かった。
「その汚い手を離せ、下郎」
いつ刃を抜き放ったのか。白刃のあとすら残さず、ギドの腕のひと振るいで肩から切り離された男の腕とともに妖精は地へと落下する。びゃんっ、と衝撃に目を瞑るも、直後にはよろこびと安堵とすこしの不安――彼の横顔へ――、ない交ぜに顔を上げ。
「――ギド!」
「貴様、何のつもりだ」
残った腕で傷を押さえ転がるクロの騒々しい動きを、靴底で踏み躙り仰向かせる。虫と称するにも生ぬるい、ゴミのぽっかり開いた口へと突き入れる刃には一切の手心なく。僅かでもどちらかが身を捩ったならば、カラカラに乾いたここへたちまち血の池が出来上がる――抜き身の鋭さを湛えていた。
もごりと舌を動かす気配だけあったが、到底声など出せるものではない。素振りだけは耳を傾ける風にギドが膝を折れば、揺れた切っ先がつうと、薄い喉奥の肉に触れた。
「何を言っているのか聞こえぬな。喋る気がないのならこの場で死ね」
「ねえ、ねぇったら! わたしは大事ないのよ。それよりも、皆を助けないと!」
しかし愛するものの髪引く手。
このひとの狙いは……妖精だわ! 告げればすぐさま悲鳴の止まぬ道へとはばたく彼女を追うことが命題。
――次はないと思え。
腰を抜かして起き上がれぬ男へは、去り際射貫く眼光がなにより語るのだ。
姿は一本の矢の如く。シゥレカエレカがゆく道で雷を伴う風が巻き起こる。
「やめなさい!」
ローブ男らの指が妖精へ届く前にばちりと弾き返す。スタンガンほどに制御された力は命奪わず昏倒させ、鎮圧に大いに貢献していた。
人質などという卑劣な手を使う輩はギドの月の瞳が逃しはしない。魔眼使い――その血統で、とらう"敵"の四肢から自由を削ぎ落とす。ぱんっ、袋を突いたときのような呆気なさでローブ男の半身が吹き飛んだ。
掴まれていた妖精の男は既に翅も千切れ腹に大穴、木の葉同然空を墜つ。ふたつを視界に、抜いた刃を赤が伝う。駄目、ギド! とどめをと当然の如く踏み出した夫の首へ懸命に抱きついて、シゥレカエレカは。
「選ぶのは此処の妖精たち……いまあなたがそこまでする必要は、ない」
「人であろうが亡霊であろうが、このようなクズどもに生かしておく価値などあるまい」
人間はあなたを呪うかもしれない。この巡り続ける世界の中、どうか、あなただけがそれを負わないで――想い人の言葉は耳へ届いていて、しかし呪いなぞ知った事かと男はまた一歩。
血の粒が跳ねるその足元で。
「……旅の、ひと。ねえちゃんの言うとおりだ、おれは……だいじょうぶだからよ」
途切れ途切れの声が、連れを悲しませてやらないでくれと願うように紡ぐ。自身とあろうことかギドの痛めつけた男までをも包むべくほわりと漂う光は――リリティカの、癒しの魔法か。
「……妖精族とは、どうしてこんなものばかりなのか」
"ばかり"ではないとも知っている。だが、きみはいつもそうだ。
あなたに凍えてひとり苦しまずいて欲しい、そう微笑むつよさ。あやうさ。刃を収めた手へそっと重ねられた熱はいつかからすこしも変わらず、慈しむぬくもりのまま。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
柊・雄鷹
おーハレちゃん(f00145)良い所におったなぁ
良かったら共闘せぇへん?
だってこんなん見せられたら、胸糞悪くてしゃーないわ
あとで串焼きトカゲ奢ったるから、なぁ良ぇやろ?
意外と美味いで、これ
ほな、遠慮なく【空中戦】と行こかー
【2回攻撃】でダガーを【投擲】
ただでさえお気に入りのダガーや、外すわけあるかいっ
ばんばんUCも使っていくで!
フェアリーが攻撃されそうになったら【かばう】
正直、護衛戦とかは不慣れなんやけどなー!
バンバン殴る方が向いてるわ、ワイ
まぁハレちゃんもおるし、いけるいける!
ほらほら、今のうちにフェアリーちゃんも早よ逃げなあかんでー
あとでお礼に美味しいもん、めっちゃ期待してる!
夏目・晴夜
まさかユタカさん(f00985)ごときが、このハレルヤを無償で扱き使うおつもりですか?
ああトカゲ、美味しいですよね。肉が少ないですけど
いいですよ、乗りました。招かれざる客には早々に退場して頂きましょう
無礼な輩がフェアリーたちに近付く前に、【謳う静寂】にて片っ端から落雷で貫いていきます
こうも五月蝿くては選んで貰った本に集中できませんしね
なるべく撃ち漏らしの無いように努めますが
撃ち漏らしてもユタカさんが片付けてくださる事でしょう、多分
落雷が及ばなかった敵も、雷光での目眩し(【目潰し】)で倒しやすくしておきたく
本音を言うと、報酬とか別に無くてもいいんですよね
私、この街のことが結構気に入っていますので
――良かったら共闘せぇへん? だってこんなん見せられたら、胸糞悪くてしゃーないわ。
――まさかユタカさんごときが、このハレルヤを無償で扱き使うおつもりですか?
騒ぎの渦中に相棒の姿を見つけたとき、もうけもんだと男は笑った。
乱戦状態となった市では、地上よりも空に自由がある。
ばさり、と、風打ちて大鷹が飛び回るものだから、時に晴夜の艶々な毛並みもかき乱されて。文句のひとつ言ってやるのもいいが、それはあとで――菓子をとっておく少年の如くの心模様で、鳥を避けて指先は新たないかづちを地へ導いた。
ぴしゃんと光が爆ぜたのちには上出来に黒焦げた人間が出来上がる。ローブの切れ端ひとつ残らず。何処へでも突き出せるようあとで目印のひとつでもつけておくかと、それが些か面倒な程度か。
「やぁしかしハレちゃんがトカゲ少年やったとはな、さすがに思わへんかったわ」
「語弊が生じそうですし、もう少しありませんかね」
うまいしえーやんと言えば味のほどは否定しませんと返る。雄鷹が晴夜へ約束した共闘の報酬は市場で食べたトカゲの丸焼き、余程多い頭数を相手取り二人には、軽快に雑談交わす余裕すらあった。
そも闇商人らは只人で、かつ大半が冒険者崩れ程度の実力だ。
大方ギルドでも碌な仕事が見つからなかったのだろう――口振りにはかわいそうにと同情をも含みつつ、雄鷹が手向けるものとしてはダガーの雨なのだから容赦がない。
「今日は大盤振る舞いや、全部喰ろうとけ!」
カカカカカッ!
音は地面をダーツボードに見立てたような。足を踏み出そうとした先、転んだ目と鼻の先、指と指との隙間まで精密に縫う刃は一切の抵抗を許さない。次に投擲した花意匠の一本は、逃げ惑う過程で蹲るフェアリーを踏み潰さんとしていたクロの足の甲を貫いた。
おずおずと……突き立つナイフで足裏と土との間に生じた空間から身を逃れさせた妖精が、また立ち上がって空へ逃げる。良しと、見送る男へは下方から注がれる視線。
「おやユタカさん、あれなるは先ほどからわざわざ外しているんですか?」
「ただでさえお気に入りのダガーや、外すわけあるかいっ」
わかっとるくせにと口を尖らせる様はさて、どちらが年上だったか。あれ――と晴夜が指していた空間には、ダガーに追い込まれひとかたまりとなった闇商人らの姿。
なんて狙いやすそうな――もちろん、分かっているとも。怒号、命乞い、口々に叫ぶローブ男らを品定めするみたく眠たげな紫は眺めた。
穏やかじゃないですね、などと吹かせて重ねる"命令"。
「ちょっと黙っていてください。それか、そうですね……その場に這い蹲って私を崇めてくだされば、今なら許してさしあげてもいいですよ」
謳う、静寂。
抗議もでまかせの賛美も一緒くた、その瞬間に口を開いた男たちはことごとく命令無視による裁きの雷に身を焼かれることとなる。役目を果たした雄鷹のダガーも花弁の刃へと姿変えそこへ加わったなら、掴む果ては語るまでもなく――――。
気を失い倒れ伏す、怒りに握られたのであろう人の拳を見て取れば怒りたいのはこちらの方だと不器用な表情筋の下、晴夜は思う。
騒動がなければ今頃、選んで貰った本に集中していたはずが――「やるやん!」と割と痛い強さで肩を叩いてくる相方まで出てきたわけで。
……本音を言うと、報酬なんて別に無くたって構わない。
「早く終わらせましょう。私、この街のことが結構気に入っていますので」
「ん? っしし、気ぃ合うなぁほんま」
にっと相好崩しオラトリオは、泥だらけで落ちたフェアリーを引き上げるついで空へ舞い戻った。
ふるりと翅を震わす彼女はまだ、まだずっと、どこまでも飛べる。開いた両手から発つ背へ掛ける言葉は――あとで美味しいもん、めっちゃ期待してる!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
叶・都亨
【遊空】
なんともけしからん!
けしからんぞぉ!俺、ご立腹!
暴力的なやつは大嫌いなんだ!
あー!オルハちゃーん!(きゃっきゃっ)
って駆け寄ってみたけどなんかすごい大変なことになってますね!
もうこれどうなってんの!
正直こんな市場だとあんま動けないんだよね
俺ってば長距離専門だから!
2人の後ろに隠れて【援護射撃】しよう
つってもどこまでやっていいか分からんから
危害を加えそうなやつの服や足元やらを狙おうか
あとは…応援だな!
オルハちゃーん!ヨハンくーん!
が・ん・ば・れ!!!(めっちゃいい笑顔)
男共がおとなしくなったら、
とりあえず腹パンしとこっかな
これがフェアリー達の痛みじゃぼけぇ!!
穏便にするならやめときます!
オルハ・オランシュ
【遊空】
例の勇者様もマリーベルのように
勇敢な人だったんだろうなって想像はつくよ
大丈夫、守ってみせるから
合流してくれた2人と一緒にね
助太刀ありがとう!
ヨハンの頼もしさはよく知ってる
君がいてくれたら百人力だよ
都亨と一緒に戦場に立つのは初めてだよね
どんな戦い方を見せてくれるのかな?
三叉槍はフェアリー達に当たったら大変だし
ここは短剣で
2人やフェアリーに危害を加えるつもりなら、
その汚い腕を躊躇いもなく斬りつけて
ヨハンと都亨が立ち回りやすいように
フォローに重点を置くつもり
都亨の元気な応援が糧になるね!
男に隙が生じたら後ろから【早業】で間合いを詰めて
切先を喉元に
穏便に済ませるかどうかは場の空気に合わせようか
ヨハン・グレイン
【遊空】
着いた途端に何やら不穏な雰囲気ですね。
やれやれ……。
一先ず都亨さんを宥めながらオルハさんと合流を。
助太刀……、しますけれど。
加減が難しそうですね。
しかし胸糞悪い輩である事は間違いなさそうだ。
遠慮は然程必要ないだろうな。
蠢闇黒から闇を呼び出し這わせ、
絡めて動きを封じましょうか。
近付く者はオルハさんが対処してくれるでしょうし、
その前に敵を近付かせぬように。
都亨さんの応援は……まぁ、はい。
うるさいですけど放っておこう。
ああ、多少は暴力的に行ってもいいでしょう。
妖精達を叩き潰していましたよね。
同じことをされても文句は言えまい。
「あー! オルハちゃー……これどうなってんの!?」
頭上を駆けゆく稲妻、飛び交うナイフに魔法弾――……どきわくおでぇと空間はどこ?
無理もない。
叶・都亨(空翔・f01391)は知った姿見つけ全力で尾を振って駆け寄ったはいいが、そこで待ち受けていた天変地異にキキッとブレーキをかけることとなる。察していたとはいえ。とはいえ、だ。
一笑に付したオルハは助太刀ありがとう、と声を投げて。まさにいま友を狙って投げられていたナイフの一本を短剣の柄尻で叩き落した。
「いっしょに戦場に立つのは初めてだよね。楽しみにしてる」
そうと言われて奮わぬ都亨ではない。早速守られてしまった気もするがそこはそれ、スッ……と取り出せば手に馴染む大弓はこんなときでも勇気を授けてくれる。オルハともうひとりの助っ人、やれやれと言いたげなヨハン・グレイン(闇揺・f05367)との後ろに回ってきりり前を見た。
「でも定位置はそこなんですか」
「ほらぁ俺ってば得物コレだし? 泥船に乗っといて、寄らせやしないからさ!」
スマート且つ鋭利に抉るヨハンの声に大袈裟身を縮めるも一呼吸ののちには矢をつがえて、離す。ふさりとした鷲羽根が一直線に飛び立ち、同時に駆けだしたオルハとさながら空競う二羽の鳥のように。
大丈夫、守ってみせるから。
"勇者様"とマリーベルはきっと同じだけ勇敢なひとだったのだろうと、オルハの胸に過る輪郭。自分はそこへ肩を並べる風なガラでもないが、それでもなにへ手を差し伸べるべきかは、確と。
タンッ、
まず的へ突き立った矢はローブ姿の衣へ。背にしていたテントの屋根とひとつに貫いて縫い留めてしまえば、迫る娘への対応は一気に難しくなる。
ナイス、唇に乗せた笑みは後方へ贈るとして――妖精を集めた箱だろう。肩掛けされた木の籠を、その戸を、閃かせる諸刃が断ち切った。空いた手で分捕って、上体反らすオルハへと慌て振るわれる拳はかすりもしない。
ああ、その無様を晒す暇があるならローブの端でも切って逃げていれば!
「さっき妖精達を叩き潰していましたよね」
同じことをされても文句は言えまい。 うごめくヨハンの、影。
しかして闇を煮詰めたそれは指に光るシルバーリングから解き放たれた。風の流れに乗るわけでもない、"生きている"としか形容しがたい動きで這い寄る黒は途端に男を頭から呑みこんだ。
浮かせた体を地面へ叩きつける。ほんの僅かばかり、呼吸させるためだけの穴を残して。えらいもん見ちゃったと言いたげな都亨が口元にはわわと手を当てるのを横目に、ドラゴニアンは眼鏡を押し上げて。
「難しいものですね、加減というのも。ま、遠慮の必要な手合いでもないでしょう」
「やっぱりヨハンがいてくれたら百人力だよ」
「そ、そういうもん? そっかぁ……」
そう、なのかもしれない。怯えるフェアリーを実際目にして、すっごくけしからんとも俺ご立腹とも思ったし、今も思ってるし――うん、理不尽に暴力的なやつは大嫌い!
テント脇の木箱陰に身を潜めるひとのニオイにぴんと毛を逆立たせ、次は都亨は、文字通り狩るつもりで射た。気持ちよく的は砕け、気付かれていたと青ざめた小柄なクロが這う這うの体で逃げ出すのが見える。
「あいつ妖精! もってる!」
――が・ん・ば・れ!!!
任せたと狼少年の力強いエールにはなぜだろう、とびきり笑顔までセットで見える気がする。振り向かないけれど。そしてうるさいけれど。放っておくことにしたヨハンはただ黒光石へと心傾け、刃めいて細まった同色の塊を手繰り。
散らばった木箱を踏み跳んで、キマイラは猛追する。両脇をざわりと伸びゆく闇が目に映れば、それが標的の肉へ絡むまでにはまたたきほどの時しか要しなかった。
牛裂きの刑よろしく両手両足を引かれ、大きく体勢を崩したその後頭部へと膝蹴りを食らわせつつ押し倒すオルハ。ちょうど肺のあたりか――体重をかけたならぐっと喉を詰まらせる音がして。
「逃げられると思った?」
「残念でしたね」
もう一度やりますか? 淡々とした問いにしんと沈黙だけが返っては、さも詰まらなさげにヨハンは肩を竦めてみせた。
あわや宙へ放り出されるといった箱は、すれすれで受け止めた闇の一部がクッション代わりとなってやんわり地へ寝かせている。転がりでる妖精たちは目を白黒させ、事態を理解するのに必死だ。
反対に。 ひたりと喉元に触れる切っ先のつめたさは、冷や汗塗れであっても男によく伝わったことだろう。
私はどっちでもいいんだけど。リリティカの民が命まではという考えに寄っていると見て取って、ぺち、ぺち。薄皮をなぞるに留めた短剣の先をぬぐい、揮い手、オルハはふうと腕を伸ばした。
一息ついたそこへ飛び込む都亨の毛並み。このときを待っていた――拳をかたく握り、
「これがフェアリー達の痛みじゃぼけぇ!!」
拘束された男へと! ぼこんと叩き込む思い知れ・ボディーブロー。
弾みで一時撓んだ拘束によってグーで反撃される姿から視線を外し……残る二人は、周囲への警戒を続けることにした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
居住区と市場とを繋ぐ細道のひとつには、戦禍を逃れたフェアリーが寄り集まっていた。
逃れた――逃げ出してしまった。
知り合いが、捕まえられていたのに。立ち向かっていたのに? さしたる広さもないこの街に、隠れ場所などそう多くない。段々と近づいてくる足音。妖精が決して立てる筈のない大きな、性急な。
数分前まで震えて仕方のなかった手を見つめる妖精の兄弟は、互いに顔を見合わせて。
「っオレは行く! マリーにだけいいかっこさせてらんないよ!」
「うん、それなら僕だって……」
飛び出す背へやめろの声がいくつもいくつも降ってきた。きっと"勇者様"も同じように見送られたのだろうと――それがただ、誇らしかった。
エン・ギフター
おーおー、立派に勇者の末裔してんじゃねえか!
昔話ってのは話半分で聞くモンだが
手前らより明らかに強い相手に立ち向かう
その矜持は現在進行形のホンモノ勇者だろ
義によって助太刀いたす
ってとこかハチ公?(f09059)
旨い飯食えた恩のぶんはきっちり返していくかね
抗議は耳を伏せて聞き流すけども
自前のナイフで狙うのは
怪しい奴らの武器落としと行動阻害
手元や腱狙って攻撃してみるかね
怯んで逃げるなら放置
まだ居座るなら最悪蹴刄でぶちころがす
猫と鳥どっちの爪がお好みか
選んでくれていいんだぜ
リリティカの街の住人は
勇者の名に恥じぬよう
悪しきを見事やっつけました、ってな
新鮮な英雄譚に組み込まれとけよ、悪者さんがた
一文字・八太郎
蛮勇は褒められるものではないが
拙者も英雄譚は好きな方でござってな
ああいったものを見ると
ひとつ助太刀したくなるというもの
縁あった旅人が勇者へと手を貸す
よくある話でござろう
…拙者の台詞を取るではないぞエン殿(f06076)
だがまぁ、確かにこの恩
きちんと返さねばこの耳と尾が廃ってしまうな
先ほど購入した肉をペロリと一つ平らげて気合い入れ
街の妖精達を狙おうとした者から中心に
爪で引っ掻き刀で強かに峰打ち
襲撃者の攻撃を打ち払って落としていくでござる
我らどちらの爪も容赦はせんぞ
その不埒な手、彼らに届かぬと知れ
伝説の真偽はどうであれ
この街の彼らが今正しく勇者であろうとするのならば
ここで倒されるのは貴様らの方だ
グリツィーニエ・オプファー
…ハンス、怒りをお抑えなさい
ええ、ええ、分っております
生憎、罪人に語る口等持ち合わせて御座いませぬ
御無体を強いる輩には躾が必要だと、母は申しておりました
故に――御覚悟は宜しいでしょうか?
【黒き豊穣】を発動
ハンスを花と変え、恐怖を与える花吹雪にて暴漢を退けてご覧に入れましょう
無論、フェアリーを傷つけたりは致しませぬ
傷つき悶えているであろう暴漢を尻目に逃げ遅れたり怪我をしたフェアリーへ手を差し伸べ安全な場所へ
…ああ、こう見えて油断はしておりませぬ故
救出時、万一攻撃を仕掛けられれば黒き剣にて阻止
おや、母の慈悲のみでは足りませんでしたか?
穢らわしい手で触れようものならば、私も心を鬼にする他ありますまい
そして今。
案の定、片手の一本のみで楽々捕らえられた兄妖精は巨人の指にがぶりと噛みつく。
「いってェ!?」
「リリティカは――勇者の街はっ負けないんだあぁ!」
兄ちゃん! 別のフード姿がお手玉している弟は、既に消耗が激しい。やっと指の合間、抜け出た片腕をどれだけ伸ばしても遠すぎる――――だれか、なにか、
かろん。 ひとつ、ちいさな世界に、耳馴染みのない音が増えた。
「どうやら演者の席が空いている様子」
「おーおー、立派に勇者の末裔してんじゃねえか!」
串に通された肉をぺろりと口へ運んでいる、ねこと。
鳥か驢馬か山羊か、奇怪な見目の男の二人連れ? そして更にはどちらも坊やときた!
「な――ビビらせんなよ。こんな街まで観光でちゅかぁ? しかし見かけねぇ生き物だ、おい、こいつらも高く売れんじゃねぇか?」
「へへ、逃げ足の速ぇ妖精どもの分も働いてもらおうぜ」
やんやと一層の盛り上がりをみせる闇商人らであったが、そこまで。
ケットシーによる身の丈超える太刀の抜刀。一振り、遠心力のかかって放られた鞘は、それだけで十分な凶器と化して無防備な腹を打ち据える。
「義によって助太刀いたす」
――ってとこか、ハチ公?
剣豪、八太郎が口上を述べるよりも先にエンの爪が地面を掻き。くの字に折れるクロのわざわざ近付いてきた顔面を頭突いてやれば、受けた側は後方へと崩れ落ちる他ない。
よく研がれたナイフは優れもの。エンはそこへ映る自分たちと、クロと、唖然とした妖精との顔とを見てからゆるゆると取り回した。切っ先、向ける先は当然。
「そんで、働いてくれだっけ? 任せな、旨い飯食えた恩のぶんはきっちり返していくからよ」
「……拙者の台詞を取るではないぞエン殿」
そそくさと串を懐にしまい刀を逆刃へ持ち替える八太郎。
蛮勇は褒められるものでないとしても、英雄譚は好ましい。ここへ来るまで目にしてきた奮闘の数々を瞼の奥思い返しながら、
「だがまぁ、確かにこの恩。きちんと返さねばこの耳と尾が廃ってしまうな」
斬り込む。我らどちらの爪も容赦はせんぞ。
その不埒な手、彼らに届かぬと知れ。
二人の続く一挙で数多の剣と体とが地を舐める。言葉通りにたまらず掌から零されて、妖精の兄弟らも宙を舞った。
他方。
ひどく苛立った鳴き声を上げる精霊を宥めては、グリツィーニエは細道のいくつもを回っていた。漸く落ち着いたかに思えた鴉が再び声を荒げたそこが争いの只中。
金になる翅は傷付けぬようにと髪を掴まれぞんざいに扱われるフェアリーの姿が、いち、に――。
「……ハンス、怒りをお抑えなさい」
ええ、ええ、分っております。そう、続ける男は次は鎮めず鴉の天駆けをゆるした。
御無体を強いる輩には躾が必要だと、母も申しておりました。
「故に――御覚悟は宜しいでしょうか?」
雅やかな黒は藤の花と解けても褪せはしない。小人をのみ避けて、意思持つ花弁は暴漢の衣を、肉を巻き上げる。腹を決めるいとまなど与えずに。
「ギャッ!?」
「なにも見えねえ!!」
喜悦に歪めていた瞳にもひとひら躍り込んだか。暗夜に堕ちた視界を取り戻そうと必死に掻き毟る足元、グリツィーニエがすくいもたらすは妖精のみ。
手当たり次第に振るわれた腕がまぐれでも近寄ろうものなら、穢れを躊躇なく黒剣が斬り払った。生や死、そうしたものにすら然程動じぬ愁眉はおや、と不思議そうにも。
「母の慈悲のみでは足りませんでしたか?」
しかして目的は見失わず、追撃の手が緩んだところで場を離れる。手の内で女のか細い声がした。ありがとうございますとまずひとつ。それから言い辛そうに、もうひとつ。
「皆で隠れていたところを、襲われて……あの、息子たちがまだ飛び出したままで……」
――――。
猟兵による鎮圧が済んだ市の端まで連れたその足で一路、男は、新たな苦悶の響きの呼ぶ方へ。
そうして向かう先。
「捕まえてくれんじゃなかったのか?」
ひょいと軽い身のこなしで獣は縛めを逃れる。妖精ならばいざ知れず、この装備で自分たちを等と――つくづく笑わせてくれる。縄を細切れにするに終わらず、蹴倒すフード頭へくっきりと足型贈ってエンが跳んだ先では八太郎が大立ち回り。
ぶおん! 頭を引っ込めるのがあと数拍遅ければ耳か角かが削げるかと。
「っぶね! 後方注意だろそのデカブツ」
「仕様がなかろう、どうにも狭い」
本日一身の危険を感じた一閃は、エンの後ろで悶えていた数人をもより深い眠りへ導いたようで。
それにちょうど振り返ったとき、こちらへ駆け来るひとの姿が見えたのだ。
「ご無事でいらっしゃいますか、……」
男――グリツィーニエも一目で事態を把握して、二人へ感謝の意込めた頷きのみ残し別な道へ歩を向けんとすそこへ、八太郎の尾がぴょこり、柱の陰で身を隠させている妖精兄弟らを指すべく揺れた。
「よければ、子らの保護を頼めるでござるか?」
「このお二人は……先の集いのご子息で御座いましょうか」
容姿から伝え聞いた特徴を確かめほっと息をつく。探しておられましたよ、抱き上げる男の声色は熱は持たずともやさしい。
しかしそれに慌てた顔をしてみせるのは当人ら。勇者に、マリーベルに負けていられないって飛び出してきたのにこれでは――。
「でも、オレたちなにも……」
「ホンモノ勇者、シャキッとしろっての」
下がる頭をわしゃりかき混ぜんとすれば軽くデコピンになってしまう突っ慳貪さながら、エンは認めていた。自分より明らかに強い相手へ立ち向かうその矜持こそ、現在進行形で勇者の証であると。
「リリティカの街の住人は、勇者の名に恥じぬよう悪しきを見事やっつけました。だよなぁ、ハチ公」
「然り。さ、家のものが待っておるぞ」
先ほどまで業物を振り回していたと思えぬやわい手でねこがふにりと押すので、二の句は継げずに妖精はグリツィーニエの腕に収まる。
「では、確かに任されました」
肩は譲らず鴉の姿に戻った精霊が、見慣れぬ小人を間近にして興味深げに見つめている。小さくも潤む瞳が好む光り物にも似ていた。
やっぱり、"勇者様"を見送るときはちょっと、みんなこわいんだ。
それでも戦う彼らへと今できることはきっと、祈りしかなくて。 けれどもいつかは。
服の袖を握りしめてくる力が二人分強まったのを感じて、駆ける男はほんの僅かにだけ目元を綻ばせた。
――行ったか。
近付く新手の足音にも耳をそば立てては、こきりと鳴ったのはどちらの指か。
「新鮮な英雄譚に組み込まれたいやつから掛かって来い、ってな。つうかよ、これいつまで相手してやりゃいいんだ?」
「さて……腹が減るまで、でござろうかな」
示すまでもなく覚悟は同じ。
ここからのち、この道の先へは何人たりとも通さない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
終夜・嵐吾
キトリ(f02354)とチロ(f09776)と
やれ楽しく過ごしとったのに…
リリティカまんじゅうを満喫中に無粋なのがおるようじゃな(もぐもぐ
フェアリーの皆はちょっとさがっとり。ここは大きいのが片付けよ。
キトリは、フェアリーじゃけど……勇者にも負けぬ可憐な強さぞ。
あっ、今は王子様じゃったの。
わしは周囲のものに危険が及ばぬように。
皆に手を出そうと近づいてくるものがおったら狐火で対抗じゃ。
キトリとチロがせーばいしてくれるからの。わしは後ろから見守りどうしても手が回らん時はお手伝い。
わしの主な仕事は――買ったものを守る事なのでな!
キトリ・フローエ
嵐吾(f05366)とチロ(f09776)と
さっきのお店で買った王子様スタイルで
髪もチロにお団子に纏めてもらったの
そうよ、あたし達は大きいみんなに比べればとても小さいけれど
こんな悪い奴らなんかに絶対に負けたりしないわ!
おもちゃのレイピアをビシッと突きつけて決めポーズ
さあ行くわよ、チロ!嵐吾は…うん、荷物をお願いね!
高速詠唱、全力のエレメンタル・ファンタジア(聖なる雷)で
悪い奴らはまとめて成敗してあげる
小さいからってフェアリーのこと、甘く見ないでちょうだい
どんな絶望や恐怖の嵐が来たって
それに打ち勝てるだけの力があなた達にはあるはずよ
だって伝説の勇者の想いは確かにここに、皆の心の中にあるんだから!
チロル・キャンディベル
嵐吾(f05366)とキトリ(f02354)と
キトリかっこいい…!
王子様のかっこうで、いつもよりキリっと見えるのよ
お団子は不器用ながら精一杯
チロも、みんなをきずつける人はゆるさないのー!
みんなへのおみやげは、嵐吾がまもってくれるのよ
キトリといっしょにエレメンタル・ファンタジア
炎でみんなもやしちゃうの!
チロはまだまだこどもだけど
お兄さんたちみたいには、ぜったいぜったいならないんだから!
えいゆうさんのお話も力もだいじでぜったいあるの!
だから街の人たちは、キズついた人を助けてあげてほしいの
チロたちがケガをしたら、それもなおしてくれるかしら…?
街はできるだけ、ぐちゃぐちゃにならないように気をつけるの
●
いやはや矢張り、このまんじゅうはうまい。まず皮が求肥餅の食感に似ている。
蜂蜜絡めど確かな酸味の梅肉がごろりと詰まっておきながら白あんの甘みを引き立てていて、抹茶のひとつでも合わせたくなるというもの。
座敷でゆっくりと――。
「――したいところだったんじゃがなぁ」
無粋な輩へ掌底を一発。もんどりうって倒れる男から嵐吾が庇ったのは、手提げ袋。"リリティカまんじゅう"の手書き文字が愛らしい紙袋である。
ポジション・荷物番。前で戦う面々に、任せられたならば守ってみせようと男の決意は固い。そして逆の手にしていた梅味をもう一口食べ進めた。
「フェアリーの皆はちょっとさがっとり。ここは大きいのと……それに王子様とが任された」
王子様。
「マリーベルの言う通り! あたし達は大きいみんなに比べればとても小さいけれど、こんな悪い奴らなんかに絶対に負けたりしないわ!」
はためくマント。金ぴか王冠に、突きつけるおもちゃのレイピア。
市で選んでもらった衣装に身を包んだキトリはまさに絵本の世界の登場人物。けれど翅はフェアリーのそれ、見るものらに勇気を与える妖精の戦士。
「さあ行くわよ、チロ!」
「はぁいっ。チロも、みんなをきずつける人はゆるさないのー!」
それなら傍ら控える白き狼娘はその使い?
いいえ彼女もひとりの戦士。キトリの握る剣の先から放たれた一条の稲光へと重ねる風に、打ち出す炎は渦を巻いて湿っぽい空気を焦がす!
王子様の頭のちょっとぴょんぴょん元気なお団子だって、チロルが纏めてあげたのだ。
リリティカのフェアリーたちの心配も、背に嵐吾が控えてくれているから大丈夫。
「へっ、女どもに戦わせて日和見たぁだらしねぇヤツだな」
「なんとでも。わしの主な仕事は――買ったものを守る事なのでな!」
キリィッッ!!
揶揄した筈が……何故か圧すら放つ隻眼の目力にじりとたじろぐクロ。それも作戦だったのかもしれない。そうではなかったのかもしれない。いずれにせよ、生まれた隙は大きなもの。
「そうよ? 背中を守っていてくれるひとがいるありがたさ、あんたたちには分からないでしょうね!」
絆の強さが連携を成す。
足を止めたローブ姿へと、キトリの雷が炸裂した。ぷすぷすと音立てて傾く体を支えるものはおろか巻き込まれぬようにと逃げ出すものばかり、それにすこし心痛むけれど、瞳に雷光の輝き分けられたままチロルの炎はやわらかくも風に散る。
キトリも嵐吾も、リリティカのひとたちも、たくさんすてきなのに。
「チロはまだまだこどもだけど、お兄さんたちみたいには、ぜったいぜったいならないんだから!」
「あっち、あちぃィィ!?」
チロルの巻き起こした力は、時にその純真な幼さからか加減知らずに燃え立った。
地面に擦り付けたって消えぬ熱さに戦々恐々、水を求めて彷徨ったり早くもへたりこみ戦意をなくすものが幾人か。
「てめぇら散れ、散ってあたれ! 一匹ずつ叩き倒して箱に押し込めっ!」
半ば鎮火への願いも込めていたのかもしれない。
男が力任せに大きいだけの棍棒を振るい起こす風が地面すれすれまでキトリを煽るけれど、だが墜ちることなどない。背に友らの翳すすくい上げるようにあたたかな炎の熱が迫り、ふわり、妖精の体を空へ引き戻す。
故に、声高く。
どんな絶望や恐怖の嵐が来たって、それに打ち勝てるだけの力があなた達にはあるはず――。
「だって伝説の勇者の想いは確かにここに、皆の心の中にあるんだから!」
炎渦の中を一筋飛ぶ光。 あるものは瞬きも忘れ、またある者はちいさな拳を握る……己が身に根付くなにかを、確かめるように。
完全に場の空気を変えられてしまったクロはといえば焦りと悔しさを隠しもしない。とはいえチリチリに身を焼く炎から身を隠さねばならないのが所詮ひとの身の性。ひとり、髪と肌を焦がしながらも突っ込んでくるものはいたが。
「チッ! 羽虫風情が調子に乗りやがっ……、」
「小さいからってフェアリーのこと、甘く見ないでちょうだい」
台詞ひとつ言わせてはもらえない。間髪入れずに尖ったブーツの先でえいやと前蹴りしたキトリ。うまい具合に鼻っ柱に当たったらしく、悶える一瞬の隙にひゅんと距離を離した妖精は先刻世話になった行商人の店を背に。
「ぁ……」
「あんなに素敵なお洋服たちが汚れちゃ大変だものね」
うん。 隣り合うチロルの返事は早く、身を縮める店主の驚嘆する前で、ちいさな火球をいくつも灯らせ灰青の空へと撃ち出した。
街をできるだけ傷付けずに終わらせたい。
考えることもいっしょ。ちょうど嵐吾が放っていた狐火もその通り、チロルの炎に逃げまわる男らの足元を狙い鬼火の如くにふうと湧き出る。逃れ得ぬ熱に転び、折り重なる男たち。傍から見たならば狼娘の齎した火の粉が跳ねたことによる成果めいたさりげないお手伝いは、兄心のような、ちょっとした心配り。
(「二人の勇姿、しかと焼き付けておいてくれな」)
もちろんわしの瞳にも!
にっこり笑顔で目くばせし合うキトリ、チロル、それに服屋店主の姿が目にうれしい。
「えいゆうさんのお話も力も、だいじでぜったいあるの!」
ふわふわ耳をまっすぐ。ちいさな娘は、転がったいくつもの前にどんと仁王立った。
数分前まで下に見ていた彼女らをただただ見上げる形となるクロは、命こそ奪われはしないが焦げるわ転ぶわ泥だらけになる様はそれはもう見るも無残なもの。
はい……おっしゃるとおりです。
返ってくるのは心身ともボロボロな弱弱しい声ばかりである。
先のキトリの言葉と。チロルのおねがいとを聞き届け、自分たちにできる限りで役立ちたいと治癒のまじないを唱えていた妖精たちの光が自分にも及んだことで、精一杯険しくしていたチロルの顔がほわりと綻んだ。
「チロ、かっこよかったわよ」
「キトリこそ!」
ありがとうの言葉が飛び交い、望む日常がこの場へひとまず戻ってくる――善哉。
嵐吾が手元の箱へとほぼ無意識に伸ばしていた指がすかっ。空気を掴む。見れば中にあった筈のまんじゅうが随分と減っていた。爆風でやられ……いいや確かに守り切った筈。となれば、拙い――。
ちょっと食べ過ぎたかもしれない。
「こしょっと買い足しておけばせーふよの……?」
このあとまた店、開けてくれるじゃろか?
ぺたんと力なくあらゆる種族特徴を垂らす狐男に、身を寄せていたまんじゅう売りの妖精たちは笑って、もちろんですと声を揃えた。ところで旦那。新商品のネタが浮かんだんですが、リリティカ王子様まんなんて――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
矢来・夕立
【いつもの】
ここからだと市場側か。
ラッカさんも穂結さんも考えるより先に動いてるでしょうし、派手にやってくれるはずです。
その隙に『忍び足』で救助と避難に回ります。
『紙技・橿葉庫』。暫くこの中に避難して貰います。
…疑われますかね?
そうだな。あっちの間の悪いダメ悪党の仲間ならわざわざ助けません。
これで説得には充分じゃないですか?
『フェアリーランド』と同じことができないか、考えてました。
土壇場で上手く発動したのは、妖精の街の……リリティカの紙だったからかもしれません。
……と、買ったばかりのいい紙を使う羽目になりましたので。
そっちの間の悪いダメ悪党の方々、財布持ってますよね?
迷惑料って言葉、分かります?
穂結・神楽耶
【いつもの】それが真であれ偽であれ、語り継がれるほどには大切に守られてきたもの。伝説と共に積み重ねた歴史。
……個人の感傷はともかく、まずは街に迫った危機からフェアリーたちを守るのが先決ですね。
ここからでしたら市場の方が近いでしょうか。
後方のことは矢来様(f14904)が上手くやってくださるでしょう。わたくしはラーク様(f15266)と共にせいぜい目立って気を引きます。
【錬成カミヤドリ】。刀を飛ばすことでの威嚇はもちろん、空を往くラーク様の足場も兼ねられますね。もちろん妖精達に当てる無様は致しません。鬼さんこちら、刃の鳴る方へ!
ラッカ・ラーク
【いつもの】
伝説ってな事実である必要はねえのさ。面白い方へ信じたい方へと流れていく。信じるなら、綺麗なイイ話を信じたいモンだろ?
ま、今見るべきは目の前だ。ユーダチ(f14904)なら察してくれんだろ、フェアリー達の避難は任せたぜ。
オレたちゃ空を踊るモノ、『スカイステッパー』。カグヤ(f15297)の支援もあるし、空中での足場にゃ困らねえだろ。真っ黒ご一行の道行きを、羽ばたき宙を蹴り爪で掠めてできるだけ鬱陶しく邪魔しよう。あとで財布探して後悔しても遅いぜ?
逃げ遅れたフェアリーは他の仲間の方にすっ飛ばしてやろうかね。悪いな上手く着地なりなんなりしてくれよ!
絶望の最中にこそ飛び込む物好きが。"愚者"。或いは"勇者"と称されるその存在が。
ここにもまた、いた。
「よお――オレも混ぜてくれってなァ!」
ネコやトカゲが空を飛べぬなどと誰が言った?
スカイダンサー。文字通りに空渡りて、悪しきものへと派手に叩き込む跳び蹴りひとつ。すら足場に、ラッカは自在にいくさばの宙を駆ける。
どさりと、ローブ姿が倒れ伏す音だけが後に続いて。
何が起きたかわからぬ顔をするのはクロだけでなく。
今、自分の身が救われたのだと、フェアリーが悟るのは麗しい見目をした巫女が足元も微か隣へと歩み寄ってからだった。
「お怪我はございませんね? それではそのまま……動かずに、是非」
花の咲きて散るような、魔法のような。鈴の音とともに、神楽耶の周囲へとふわり象られるは十を超す刀の分け身。
墨を溶かしこんだ色持つ黒髪がはらりと一筋風に吹かれるのが合図。爪弾く強さで撃ち放たれた刃は弾丸そのもの、先ゆくラッカの遠のいた背を追う。
じきに、迎えのものがまいります。
笑み、今の一射でこの場すべての悪が退いたと見れば乙女は再び先へと舞った。
「……何人か死んでませんかね」
まぁ。目立つくらいがちょうどいい。別行動を選び今はやや離れた場所から空を見上げた夕立は、自身の身の置き場を救助まわりと心得る。
適材適所という言葉もあるし。
戦闘音にまぎれ、忍びてされど確かな歩調で草を掻き分け着いたひとつの集まりの前、ひらと両手を開いてみせた。血色薄い顔に愛想笑い浮かべる努力は捨て置きつつも、なにも持ってませんと示すみたく。
「助けが必要そうに見えますが。いい話がありますよ」
声を掛けられた小人たちは小人も小人、こどもばかり――これは面倒かもしれないと夕立が思ったとき。
「あっ、このひと知ってるよー! うちにおかいものきてた!」
「ほんとう? わるいひとじゃないの?」
加工紙を扱っていた店の、子か。ひょこひょこ体を揺らして自分から近付いてくるひとりに、肩透かしを食らわされたような。疑われるなど慣れたものと頭の中で即座に組み上げていたあらゆる"ウソ"と"ホントウ"が一度に崩されてしまう。
(「そんなのだから捕まるんだろうが」)
ふうと――伏せた瞳を、焦点は合わせぬまま上げた。それじゃあ今からオレの言うことを聞いてくださいね。ポケットから取り出した紙一枚、自分ちの店で売っているものだとはしゃぐ声を浴びながら、すぐに立方体の形を取った千代紙を地面へ置く。
「どうぞ。触るだけです」
説明も大概端折りがち、だが妖精らの興味を引くには十分だったらしく。
特段恐れることなくまずタッチした紙屋のこどもがひゅんとその中へ吸い込まれる風に姿を消した。
「わぁっいなくなっちゃった!」
「えっ、なになに!? おもしれー!」
紙技・橿葉庫――フェアリーランドと同じことができないか、考えていて。この土壇場で上手く発動したのはきっと妖精の。リリティカの紙だったからかと、次々吸われてゆく彼らを眺める夕立にはぼんやり過った。
あたりが静かになれば、立方体を手に腰を上げる。
次にすること? ――決まっているだろう。
ガッッ!!
「やぁめてえェェ!!」
「どうぞ落ち着いてくださいませ、暴れられては狙いがくるってしまいます」
穴だらけの衣をまとって震え上がる男たちを前に、憂い顔で己の頬に手を添える神楽耶。
せっかく威嚇に留めようとしているのに――しかし、ラッカの足場を作るという役目は十二分に果たしていた。たんとまた刃を踏み高きを目指した獣は、落下に任せクロらの側へ飛び入って。
「根性ねぇなったく、ちょぉっと遊んでやったらこれか? フェアリーのがよっぽど勇敢だっつうの!」
弾く陽光すら味方につける、鋭く尖った爪が空を裂いたなら頭を抱えて座り込む頭がひとつふたつ。同じくハネ持つものとして必死に空を逃げていた妖精は、その烈しさが己をも断つのではないかと目を瞑るけれど。
すいと差し伸べる手は意外にもやさしい。
「わりぃがここの空はオレの貸し切りで頼むわ」
そして指が触れたかと思えば、ちいさな体をつかみ後方へと大きく放り投げるのだ。
――やはりすこし、荒い。
なぜ妖精がゴムボールになって飛び込んでくるのか。
送り先、いつしかそこへ合流していた夕立がミットの代わり立方体ですんと受ければちいさな生き物は安全圏へと直送される。
「盛況なようで」
「ああ、矢来様。そちらもご無事でなによりです」
ぺこりお辞儀する神楽耶は錬成したうちの一本を手に、ラッカへと放たれんとしていた網状の捕獲具を叩き斬る。慌て女へと合わせられ直した射出機の照準は、ぐるんと中空に輪を描いて躍る刃の群れとヒバリの踏みつけにより直後には地面を向いていた。
「移り気なのもいただけねぇな。マイナス十点」
「わたくしは歓迎ですよ。さぁ――鬼さんこちら、刃の鳴る方へ!」
ふふっ。淡い笑みで神楽耶が念じ、並べられた切っ先がしゃんと音を立てる。
それが真であれ偽であれ、語り継がれるほどには大切に守られてきたもの。伝説と共に積み重ねた歴史。
絶やすには惜しい、刃閃かせる理由はそれだけで十分の。
やるねぇと戦友を見る顔。ラッカはもはや立っている者の方が少ない地面、それでもやっとの思いで起き上がろうとしていたクロの脳天を殴りつけた。どうせこれも盗品だろう、粗末な衣が裂けたなら、身に隠していた宝飾品らが零れ落ちる。
「おっさんはああ言ったがよ」
伝説ってな事実である必要はねえのさ。面白い方へ信じたい方へと流れていく。信じるなら、綺麗なイイ話を信じたいモンだろ?
例えばある日、下衆に襲われた街をバカみてぇに強いヤツらが突然現れて救っていった――とか。
土産話にしていいぜ。引いた腕でも一発お見舞いしてやった男はきっと、目を覚ましたとき何も憶えきれちゃいない。
夕立はといえば。
買ったばかりのいい紙を使う羽目になりましたので。そう、手の上の小箱を転がして。
「そっちの間の悪いダメ悪党の方々、財布持ってますよね?」
「さ、さいふですぅ……?」
迷惑料って言葉、分かります?
平坦ながら凄み帯びる声が催促。顔面蒼白の男はぱたぱたぱたと死に物狂いで体中探すも無い、どこにもない! あの世に金は持っていけないというのに!!
ラーク様、よろしいのですか?
よく見ていたもので、友に引き裂かれ飛び散ったどちらさんかの財布の中身などを見つめる神楽耶へと、ひらひら。やらせときなと獣の手が振られた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
氏神・鹿糸
食べ歩きは最高の贅沢だったわ。
連れとはぐれてしまったけど…大丈夫よね。
「どうしたの?綺麗な街並みが台無しだわ。」
相手の出方を見つつ、[属性攻撃]の土の精霊の力を借りて攻撃。
土石流の柱を噴出させたり、足元を崩したりしましょう。
「争いは良くないわ。一度頭を冷やさない?」
「それとも、さらに熱くなるほうが良いかしら?」
相手に[手をつなぐ]ことで[グラップル]。離さないわよ。
そのまま零距離でUCを発動。
私も巻き込む形で、火の精霊を竜巻に乗せて襲わせるわ。
私は[火炎耐性]があるからある程度平気だけど…
やっぱり煙たいわね。
髪もぐしゃぐしゃになってしまったじゃない。
あなた達のせいよ。
(アドリブ・連携歓迎)
絢辻・幽子
SPDで
ふふ、うふふ。狐の耳にはよぉく、聞こえましたよ。
……壺に興味があって来たのですが
小さな人に寄ってたかって悪い人
お酒とおつまみ、とても美味しかったですから手助けいたしましょ
治癒魔法がお得意なら、どうかお願いね?
室内から逃げようとするなら扉に糸を仕掛けましょう
フェアリーなら通れるくらいの
ふふ。蜘蛛の巣みたいでしょう。
私狐ですので、狩猟本能でしょうか
逃げられると追いかけたくなるんですよねぇ……?
お人形さんもいるんですよ、背後と足元に気をつけてね。
それと、首にも、
マリーゴールドの花言葉には
勇者という意味があると聞いた事がありますねぇ、
(のらりくらり、ふわり、とした狐
アドリブなどお好きなように)
●
「サダったら、どこへ行っちゃったのかしら」
こっちの方だと思ったんだけど……呟きながらもさして気にせず。あたりにきな臭さが増す中、鹿糸は尚も観光を楽しむかの足取り。食べ歩きは最高の贅沢だった。
道の向こう見える居住区へ、フェアリーたちのおうちって小さいのね、なんて感想にほっこり胸を躍らせている。
「おもちゃみたい。でも迷子なんて大変、それともかくれんぼみたいで楽しいものです?」
そして。何故だか隣には当たり前のように、似た歩みをした幽子の姿があったりもした。
目指す先が偶然同じだったのだ――狐の耳は此方の方角から聞こえた怪しい音を、よぉく捉えていたもので。……それにしたって急ぐ素振りはない。マリーゴールド。その名の意味へ思い馳せるくらいには。
談笑交えつ女二人、すこし足を進めたあたりで崩れた塀と瓦礫を見たならば、ぱちくり。
更にはそれを作り出す現行犯のフード姿。
「っとに狭ぇ道ばっかだな、めんどくせぇ」
「おいさっさとハンマー……をぉ?」
目が合う。
「あら。妖精さんのおうちに興味があって来たのですが、お邪魔でした?」
「どうしたの? 綺麗な街並みが台無しだわ」
黒と、青。余所から来た女か――黙らせとくか? 見目こそかよわいと称しておかしくはない二人連れに闇商人らは大きくでる。だんと、威嚇するつもりで構えたハンマーを壁へ打ち付けた。
ほろ、ほろり。土煙が舞い。
「死にたくなきゃ金になりそうなもん置いて帰んだなぁ!」
「へへ、上等そうな服着てやがる」
なるほど。
あと一発入れたなら新たな塀がひとつ崩れ落ちていたのだろうが、突如、その塀が反撃してくるとは誰も想像できぬだろう。
エレメンタル・ファンタジア。真横へ突き出した土属性の柱が不届き者を横殴りに吹き飛ばす。引き潰される蛙の格好で舞う体は、向かいの塀に叩きつけられてずり落ちて。
「一度頭を冷やした方が良さそうよね」
でも土になっちゃった――塀の恨みかも? チャーミングに瞬き、鹿糸はとんとんと歩み出る。すこし後ろでゆうらり風に遊ぶ幽子の指にはどこから湧いたか赤い糸、さらりと、空間の円を撫ぜて翳す手。
「ご一緒いたしましょ。道も塞がっていることですし」
まずはお掃除。
扉に糸を仕掛けるように。
反対側の退路へと、張り巡らされた糸の罠にまた自らすすんで獲物が飛び込む。
「ふふ。蜘蛛の巣みたいでしょう」
フェアリーならば通り抜けられる程度に間隔を調整した幽子の編み方は、たまたま――そう呼ぶには凶悪な面構えをして、潜り抜けるべく駆けた人間の頭をすっぽり捉えていた。
首に糸が、食い込む。
そこへ叩きつけられた土石流は救いであったかもしれないし、その逆だったかもしれない。
ごおっと雪崩れる土に胸まで埋まれば逃げるどころの話ではない。たすけてください……? 懇願しかできることはないが、術者、鹿糸は一瞥もくれず別な男へと手を伸ばす最中。
「よっ、寄るな……!」
「どうして? もっと熱くなりたかったんでしょう?」
熱い――例えば、欲しいものを手にしたときのこころをそう云うのだろうか。私があげられるのはこれくらいだけど、と、繋いだというべきか強引に握り込んだというべきか、そんな手を伝い沸き起こる爆風。
火の勢いは激しく、生きている方が奇跡なこれは――もしも招かざる客の死をも厭うものがいたのならば好きにするだろうと、治癒を得意とする妖精らの姿を思い返し。
同様に遠慮もなく。
炎に縁を彩られ、黒の女は糸を手繰る。
「私狐ですので、狩猟本能でしょうか。逃げられると追いかけたくなるんですよねぇ……?」
敢えて綻ばせる囲いへすこしの光明見出させておきながら、その足首へ別の一本巻きつけ引きずり戻す。
「さぁさ、気をつけてね」
足元と、それから背後。声掛けにひしゃげた鼻押さえ顔を上げたクロへと、悪魔めいて麗しいかんばせとぞろり覗き込む人形の虚とがわらった。
そういえばこの街のお酒とおつまみ、とても美味しかったですよ。
記念に買って帰ったらいかが? 帰れるなら――ですけれど。
大の字に潰れた男たちが動かぬ道の上、ころんころんと転がって幽子の靴先にぶつかる黒い壺。
汚れひとつ受けていない細い指が拾い上げ、顔の傍でかるく振った。
「へぇー。皆さんも壺、持ってたんですか」
「……? すこし古めかしいけど、小花用の花瓶にちょうどよさそうね」
ぐしゃぐしゃに"されてしまった"髪を手櫛で梳かしつつ、いっしょになって覗く鹿糸。
これなぁに? 触れ、突っつく指を跳ね返すような――鼓動めいた。なにかの動きがそこに感じられたなら、二人はわぉと声を揃える。
魔王を封じただとか。悪魔、ドラゴン、大魚とかとかとか……市で耳にした内容はどれも御伽噺めいていたけれど。
「本物の香りですねぇ」
妖狐の呟きは、いっそ嬉しそうに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
出水宮・カガリ
※アドリブ絡み歓迎
エル(f01792)と、ニキ(f04315)と
いつの間にか村長宅の近くまで来ていたらしい
何やら争っている声を聞いたのだが
エル、ニキ、少し付き合ってくれるか
村長宅で、村長から事情を聞き、壺とフェアリーの返却を求める
駄目なら、怪力と念動力でローブ男の骨を折る
悲鳴が出ても、聞こえんな、と
カガリにとっては、フェアリーも他種族も、大差ないのでな
クロも、マリーベルも、この街も
勇者に憧れている風で、利用し、祀り上げて甘えているだけだ
どうして、勇者に縋らせてしまったのだ
死したマリーゴールドを縛り付けて、なおも苦しめ続けるのか
マリーゴールドを、もう許してほしい
彼らはもう、自力で立てるだろう?
エレアリーゼ・ローエンシュタイン
ニキ(f04315)とカガリ(f04556)と
言い争いの声…
…ごめんなさい、嫌な予感がするの
二人に先んじて駆け出して村長の家へ
…やっぱり
ああ嫌、私ああいう大人が一番嫌い
【先制攻撃】で男達の背後から鞭で一撃を加えて拘束、【殺気】を隠さずに
ねぇ、真偽なんでどうでもいい、魔力さえあれば、と言ったわね
じゃあどうして、他の土地じゃなくて
わざわざ此処を狙ったの?
小さな彼らなら蹂躙するに容易いから、そう思ったからじゃないの?
ねぇ、村長さん
街を脅かして、勇者様の無念を穢したこの男達
これからどうするのがいいかしら?
これから先、この場所を守っていく為にも
コレには人の裁きが必要だわ
ニキ・エレコール
お友達のエル様(f01792)とカガリ様(f04556)と
騒ぎ?それは放っておけないよ。
大事な物を奪ってるのなら、悪い人が変な事をしそうなところで【影縫い士召喚】を『高速詠唱』、狩人様に動きを止めてもらうよ。
村長様、マリーゴールド様の話、もっと聞かせてほしいの。(『手をつなぎ』落ち着かせる)
こんな素敵なところで育ったんだもん、素敵な女の子だったんでしょう。
勇者様も、勇者じゃない子も、スライムに負けたって、恐怖に負けたっていいんだよ。街の事を大事に思ってた一番優しい人が、一番強いんだよ。
街のことはこれからも大丈夫。私達もいーっぱい美味しいお土産買って帰って宣伝するんだからね!
散策を続けていた三人は、娘二人の好奇心の赴くままに妖精居住区そばまで足を運んでいて。
偶然。或いは必然にも。長の宅方面から漏れる諍いを、耳にすることとなっていた。
「エル、ニキ……聞こえたか?」
「言い争いの声……」
カガリへと応えるエレアリーゼのそれは緊張を帯び。
付き合ってくれるかと続けて問おうとした友の脇をエレアリーゼはすり抜け駆けだす。……ごめんなさい、嫌な予感がするの。やわく跳ねる髪の、ふわんと甘い菓子の香が後を引く。
「っエル、」
「……ん。騒ぎ?」
それは放っておけないよ。
いつかどこかで似たものを見たろうか。植えられた花のそば漂う、妖精にも似た青く光る蝶を見つめすこし時間に取り残されながら。ひょん、髪のさきっぽを揺らしニキが振り向いたとき、既に三人目の姿はそこになく。
大人は、好きじゃない。
怒鳴り声なんて大嫌い。なのに何故自ら関わろうとしているのかと、頭の中だけは嫌に冷静だった。
辿り着いた妖精住居、広さだけはそこそこの木の家。だだ広い畑を跨いだ、こちらは裏口らしい。
「……おいどうする、ボス置いて逃げるか」
「そうしようぜ。いまのうちにちゃちゃっとそのへんの家のやつ捕まえてよ。壺だってまだある、脅しにゃ支障ねぇさ」
エレアリーゼが前にしたのはいくつかの黒い人影と、ひそひそとしたやり取り。家の中からは何かがぶつかり合う音とさっきまでわめいていた誰かの汚い叫びが聞こえていて――先に突入したものが、悲劇を好しとしないものがいるのだと、それだけが救いであったか。
しなる棘鞭が前触れなくローブ姿たちを打ち据えた。
「ぅぎぃッ!?」
「やっぱり、ね。どうせ中のやつとお仲間なんでしょ?」
木陰から姿覗かせたこどもの足取りには、搾取される側としての脅えなどどこにもない。当然だ。エレアリーゼはもはやひとりの猟兵であるのだから。
振るった鞭はぐるんと一周ローブに纏わって。
漏れる殺意が歩ごと強まる――できればともだちになってくれた二人が追い付いてくる前に、全て処理してしまいたいけれど。
「ねぇ。そっちの"ボス"とやらは真偽なんてどうでもいい、魔力さえあれば、と言ってたわね」
ならば如何してわざわざこの街を。
――小さな彼らなら蹂躙するに容易いから、そう思ったからじゃないの?
言葉詰まらせ答えはなくとも現に今、大きい力を持つものの前でおとなしくする他ない情けなさを見れば。
反吐が出そうな心地に、自然鞭引く手に力籠るとまたひとつ苦し気な呻きが届く。
そんな少女の背へ。
暗所より降りかからんとしていた毒の矢を、弾いて落とす影縫いの矢。
「あのね、悪いことはしちゃいけないの」
射手、喚び出した狩人の霊への礼を口にしては、タールに模られた娘――ニキは宝石の瞳を向けた。
声に気付いたエレアリーゼがはっとして殺気を薄れさせる中、数歩分程度遅れカガリも姿を見せる。
「まったく……無茶をする、エル」
「……カガリ、走るの上手になった?」
なんて。ふふっと笑ってみせるエレアリーゼの声色はすっかり解けたいつものゆるさを覗わせ。
三人、視線交わし合う今を好機と見たのか。
逃げねばと足を縺れさせて草陰より飛び出したローブ男がひとり、前へ振り出そうとした腕をなにかに巻かれた端から肩を矢に貫かれ、弾みで地面へ転んだところでぬうと掛かる影。
「これから長話になりそうなのでな。少し黙っていてもらおう」
ゴキリ、
明らかにオーバーキルの様相――上がる悲鳴も聞こえぬといった面持ちの平静さで、両脚を順に折ってやったカガリは視線を長の家へと。
そのとき。
屋内での戦いが加速するにつれ逃がされたのだろうか、小窓から滑り落ちてきたのは初老の妖精。
「あ……ぁ、あなたがたも我が街を――リリティカを、救いに……?」
「長のひとよね。盗み聞きしたかったわけじゃないけど……聞こえちゃったから」
全部。そうエレアリーゼが紡ぐと、上げていた顔をすこし俯かせ、男は肩を震わせる。
誰もが体を張ってくれた。
尽くしてくれた。
それなのに自分はこうして弱いばかりで――。
「勇者に憧れているのか?」
だが、逃げはゆるさぬとしんとした声は注がれる。語るはカガリ。そうではないだろう、言葉は続く。
お前もこの街も勇者に憧れている風で、利用し、祀り上げて甘えているだけだ。
どうして縋らせてしまった。死したマリーゴールドを縛り付け、なおも苦しめ続けるのか――。
「それでいいのか」
マリーゴールドを、もう許してやってほしい。
ただ、ただ重い。ことのはひとつに込められた熱は積年の感傷を燻ぶらせていた。ひとにしか持ち得ぬ心、ヤドリガミの男は戦地へと見送り続けた英雄らの背負う荷の重さを忘れた日などない。
「……あなたの、いう通りです」
今や垂れた頭で表情の読めぬ長から、ぽつと声が落ちる。
ともに落ちた雫が土にしみ込んだ。
「私は、ずっと、甘えてきた。あの方と街を守るようで結局、自分が責められることから逃げてきた……目にしたあの日から。他の幼子たちと同じように、ずっと勇者の実在を信じていたかったッ! いつか嘘も真実になればいいと、そうッ……」
地面へ打ち付けられんとしていた傷だらけの拳。
それを、やわらかい何かが受け止めた。
「遅くないよ。村長様」
ずっと、誰にも言えずにきたんだね。
声の主――ニキは、ほよんと傍へ膝をついて包んだ長の手を引く。そうすると自然持ち上げられることとなる妖精族の軽い体は、地面に立つべく上向いた。
「マリーゴールド様の話、もっと聞かせてほしいの。こんな素敵なところで育ったんだもん、素敵な女の子だったんでしょう」
勇者も、勇者じゃなくてもスライムに負けたって、恐怖に負けたっていいんだ。市で見かけた夢見る絵本のストーリーをなぞっては、街の事を大事に思ってた一番優しい人が、一番強いんだと語る。
数多の嘘をも、抱きとめる黒色。
「お話することがなくなったら、そしたらね、明日からマリーゴールド様のリリティカじゃなくて、みんなのリリティカとして頑張ろう?」
街のことはこれからも大丈夫。私達もいーっぱい美味しいお土産買って帰って宣伝するんだからね!
そうだ。勇者様のって名前じゃなくてもケーキ、とってもおいしかったよ――……たくさん笑ってたくさん喋る、タールの娘はひだまりのようで。
「彼らはもう、自力で立てるだろう?」
カガリの囁きがそこへ降れば、すすり泣きの中で小さくも確かに一度、――はい、と声が返った。
湿っぽいのは得意じゃないもの。
口を噤んで成り行きを見守っていたエレアリーゼは伸びをひとつ、それで、と話を切り替える。
「この男たち。どうするのがいいかしら? これから先、この場所を守っていく為にもコレには人の裁きが必要だわ」
「……ええ、後ほど――……っこ、これは!?」
目を真っ赤に面上げた長の視線は男よりも、その脇。
昏倒した男の近くに転がる黒塗りの苔むした壺へと注がれた。蓋が、 ――ない?
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●
長の家で。市で、細道で、外れで。
街中のあちこちで騒ぎが起き、そして同じ数だけ鎮圧されてゆく。
行くも帰るも地獄とはこのこと。己の命運を悟ったクロの残党らが、僅かに残された時間で取った行動は。
「すいやせん、オレら今日の食い扶持にも困ってて……ほんの出来心だったんですよぉ……」
銅像が倒れたままの市の入り口、脅かした者たちの面前、頭を地面へ擦り付けての謝罪。
あわせてついた両手両膝、そこらへ投げだされた武器の類こそが無抵抗の証明とでも云うように。
「食い物に困ってたのか……? たしかにうちの市場の飯はうまいが」
「そんなことなら、はじめからそう言えばまけてやったのに。森で困ったときはお互い様だろう」
猟兵らの健闘により、被害の程度が浅く済んだこともあったか。そしてなにより長い歴史で染みついた助け合いの精神、特別気の良い一部のフェアリー商人は戸惑いながらも己の扱う果実や菓子を抱えはじめる。
イトゥカ・レスカン
居合わせて良かった、と言ってよいかは分かりませんが
……けれど、お陰で守ることは叶います
小さくも勇敢な隣人たち
あなたたちなどに奪わせはしません
差し伸ばした手の平から解き放つは青の群れ
お往きなさい、青の散花
妖精へ伸ばされる手を切り裂いて
追われる彼らを守るよう壁にして
花弁などと侮りましたら、少々痛い目を見るかもしれませんよ
害なすならば刃として振るいましょう
彼らを守るのは勿論第一ですが
後を思うと一人と逃さぬように
逃亡のそぶりあれは花で行く手を遮り足へも一撃
後から報復などあっては困りますから
先に手を出されたのはあなた方。どうか、ご覚悟を
ペチカ・ロティカ
鳥かごは逃がさないため、だけのものではないのね。
くらやみさんをかごにして
悪漢から隔てるように、囲うのはフェアリーたち。
決まった形をもたない影。強度はなくとも、
フェアリーを襲おうと触れた悪いものはぜんぶ、このこが食べてしまうの。
食べたものは燃料に。ペチカがよりつよくともるなら
くらやみさんのすがたも、より色濃く。
希望のひかり。かごのなかで咲いていた花。
そのすがたを勇者を誇る、あのフェアリーたちに重ねて。
かごは、そう。護るためのものでもあるのだもの。
早くも明日からの商いを見据えた逞しさも同様に。
それぞれに別なテントから呼び止められ、散った荷の片付けを手伝っていたイトゥカとペチカは偶々そこで再び顔を合わせることとなった。
「ランプ、ですか。本当にお好きなのですね」
「ええ。いたいって、ペチカのことを呼ぶんだもの」
何かの衝撃でひび割れたらしい。灯途絶えさせた硝子ランプの肌を労わる幼い手が、それをワゴンの上へと寝かせる。
おけがはひどい? いいや、これくらいなら一日あれば――少女と店主との話し声をぼんやり耳に入れながら、イトゥカも手の内の宝石たちを籠へと注ぐ。ところどころに欠けが目立つ赤、紫、青に黒。
脆いものだ。
ひとの容をしていても砕ける痛みの分かるからこそ、青年は長い睫に縁どられたまなこを伏す。
そして。 こうした傷をもたらす強欲な者が、なにも得ぬままああして身を引くとはとても結びつかず。
――――ひ。
――ひゃひゃひゃ!
「のこのこ近付いてくるだなんてよぉ! 小人ってのは脳ミソまで小せぇのか!?」
バッと上げてフードのめくれたクロの顔に"だいせいこう"の喜色。差し出された果実の乗るざるを払いのけ突き出す手が、掴まんとしているのはフェアリーそのひと。
けれども。
ぱくん、と、次の瞬間五本の指は細い数本のアーチ描いて地から湧いたまっくらやみに食べられてしまって。妖精を内へやさしく抱いてちいさくまぁるいこれは――影の、鳥かご?
「ンな、」
「さっき、すてきなお話をきかせてもらったのよ。ひとり占めするにはもったいないほどの」
花で編まれた、錆びても息衝くエバー・グリーン。土塗れ転げていた最後のランプひとつを抱き上げながら、人形めいた娘はそこへただ立っている。
希望のひかり。かごのなかで咲く花。ふたつに重ね見るは、勇者を誇るちいさき彼ら。
触れる手から伝わる温度がとくとくと、永き眠りより伝承の灯を揺り起こす。光は仄か娘の纏うランタンの燈へ足され、大きく伸びる影がよろめいたクロから殊更に血色を奪っていた。
「そしてペチカは思ったの」
かごは逃がさないため、だけのものではなく。護るためのものでもあるのだと。
このこみたいにかしゃんと音はないけれど――。 おしえてあげる、の一声で、悉く害意通さぬべく影の扉は確かに閉じられた。
親切な商人らの数だけ点々と、ペチカの"くらやみさん"で編まれたかごは望まぬすべてを喰らう。
下手な芝居で妖精へ近付いたクロたちの指や腕がぱつんぱつんと途切れゆくなら、脳足りんが何方であったかは火を見るよりも明らか。
それでも足はあるものだから、舐める地面を頭と肩とで無様に押しやってでもなんとか立ち上がって――逃げるが勝ち、幸いここは街の出口にほど近い。すぐそこまで――!
そう脇目も振らずにまろびでたことが次なる不運。もはやフェアリーなど構っていられる状況ではないのに、足元にいた彼らを蹴り飛ばしかけようものなら。
「居合わせて良かった、と言ってよいかは分かりませんが」
……けれど、お陰で守ることは叶います。
黙っていない者はこの場に数知れず。うちひとり、不穏な予感にすぐ退路潰しへ回り込んでいたイトゥカは駆け来るローブ姿らへ焦りの欠片なくすうと片手を翳した。
小さくも勇敢な、そしてあんなにも心あたたかな隣人たち。
「――あなたたちなどに奪わせはしません」
どの命の煌めきひとつ。お往きなさい、青の散花――囁きに乗りて解き放たれる蝶の姿の宝石花弁。ひらり、ひら、さあぁぁぁぁ……静かな夕の小雨の音にも似たはばたき魅せて、迎え撃つ一時、すべてを青く染め上げる。
きれい、と。
呟き頭上行き交う群れを見上げる妖精は瞳輝かせ、己に向けられる筈であった拳や蹴りがまぼろしのうちに絡めとられ妨げられていたことも知れはしない。
「ッてぇぇ……! あっちの檻もこの虫も本物じゃねぇ、どうなってやがる!?」
「本物……ふふ。こちらを手土産に差し上げられないことは、少々申し訳なくはありますけれど」
イトゥカがてのひらを翻せば動きに倣って蝶も躍る。春の嵐の如くかろやか吹きつける花舞に捕らえられたクロは、血飛沫く我が身を抱きもう進めない。自分たちがフェアリーへ、弱き者たちへずっとそうしてきたように、掌上転がされる有様。
その分味わって行かれてください。若しくは――どうか、ご覚悟を? こうしたときにはこちらでしょうか、揮い手のゆったりと淡い声が風に溶ける。
散った食べ残しは、かごから解かれた真黒い影がひとのみ。
「そう、お片付けの途中だったものね。ねぇ。お手伝いしてくれないかしら」
よいこをよしよし褒め、灯色付く瞳をヤドリガミはズタズタ闇商人らへ。手の一本。足の一本、口のひとつ。必要などうぐは無くしていないみたいだから、きっとだいじょうぶ。
●
リリティカの街から争いの音が絶えるまで、そう時は要しなかった。
そして東の空から――白くゆるやか流れる雲へ点を打ったように、黒きなにかが漏れいずるのも。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 集団戦
『レッサーデーモン』
|
POW : 悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――リリティカの空覆う暗雲より出でし悪魔、勇者一行により討ち滅ぼされる――。
あれなるは災厄の壺。
市へ出向いて、集ってくれた猟兵たちひとりひとりへと深く頭を下げたのち、長を任された妖精はもう俯かずに語りはじめた。
「かつて――私も伝え聞くばかりではありますが。この地へ魔の手が伸びたとき、救いをもたらしてくださった勇者様方が、魔王の魂をいくつかの壺に分けそこへ封じたのです」
猟兵が回収した壺は変わらずおとなしく転がっている。
"問題のもの"はひとつきり。闇商人らが道中どこぞかで蓋を無くすか壊すかしたようだ。現に背では、誰が開けただのこれじゃ俺らまで巻き添えだのと縄に縛られながらも罵り合っている。
…………。
猟兵のひと睨みで再びしんとした空間で、長の指は街の外、東の空を指した。
飛び来る"それら"は既に形の分かるほど――長い年月を封じられたうらみか。はたまた過去を繰り返しているだけか、いずれにせよその暗雲の目指す先は此処。リリティカの地であると、誰の眼にも明らかであった。
魔王。か弱くちいさな妖精の目にはよほど強大に映ったであろうが、実態はレッサーデーモン。猟兵にとっては決して歯の立たぬ相手ではないと、拳を打ち合わせる音がどこかから響いた。
音に、また僅か逡巡するような色を滲ませた長の前へ娘――マリーベルがふわんと寄り付く。
「お父さん、話長いのよ」
みんなにこう言いたいんでしょ? ここにも勇者はいるぞって!
マリーベルの手にはあの木の棒に過ぎぬ剣。そんな彼女に続いて姿を見せたフェアリーたちが老若男女、猟兵のそばへ次々降り立った。
癒す力のみその身に宿す、しかし役立てたそれが何より誇らしいと今日こそは胸を張って前を向く。見渡してふうと息をついた初老の男は、今一度だけ頭を下げた。
「勇者たる……いえ、この街を救うだけの価値があると、そう思ってくださった大事な隣人たる皆様方」
すぐに此処を発ってくださいと言うべきが長の務め。
それでも、もし。
もしも皆様が望んでくださるのならば。
「我々も――リリティカも共に、次こそはともに、戦わせてください」
●
青天を呑む暗黒。降り落つ槍の雨。
然れどもそれは、絶望の訪れではなく。
アリス・フェアリィハート
アドリブや他の方との連携も歓迎です
マリーベルさん…
リリティカのみなさん…
私の思った通り…貴方がたは
勇者の血を引く
誇りあるフェアリーさん達です
はい…みなさん…
私達と共に…戦いましょう…!
他の猟兵さん達とも連携して
フェアリーさん達を後方に
敵さんに囲まれない様に
布陣して戦闘
各個撃破を目指します
自身の剣
『ヴォーパルソード』で
【属性攻撃】、【2回攻撃】での時間差攻撃、【なぎ払い】や、
剣から【衝撃波】、【誘導弾】
の遠距離攻撃等や
UCで攻撃
敵さんの攻撃は
【第六感】、【見切り】、【オーラ防御】、【残像】で回避
フェアリーさん達から
回復支援や援護して頂いたら
『有難うございます♪…マリーベルさん、フェアリーさん…』
小宮・あき
●連携・アドリブ歓迎。
後衛。【空中戦】に適した【戦闘知識】を引き出しつつ展開。
●SPD対抗
UC【愛雨霰】で攻撃。
愛用のマスケット銃をレベル分(31本)を宙に浮かせ打ち落とします。
自身の後方に10本、前方高めに10本、前方低めに11本。
前方低めを、遠距離から【一斉発射】【援護射撃】で撃ち、
前方高めを、個別に動かし抜けた個体を【早業】の【零距離射撃】で撃つ。
時折2本クロスさせ【武器受け】【盾受け】の要領で動きを止めさせ攻撃。
金縛り状態でも、念力でマスケット銃は動かせる!
【呪詛耐性】【オーラ防御】【激痛耐性】
【第六感】【野生の勘】レガリアスシューズ加速で
【ダッシュ】【スライディング】で確実に交わす。
レイラ・アストン
『』:技能
【】:UC
蘇りし魔王を、勇者の魂を受け継ぐ者が迎え撃つ
…ふふ、素敵な物語ね
ハッピーエンドの為に、私もできることをしましょう
敵から十分に距離を取った位置にて
【ヴァルプルギスの篝火】を発動
炎を1体1体にぶつけたり
合体させて炎の壁を作って取り巻いたり
敵を撹乱して思うような動きをさせないよう努めるわ
勿論、味方の行動を阻害しないよう
火力はしっかり調整、延焼にも注意するわね
敵の三叉槍での攻撃は特に厄介そうね
『見切り』『第六感』で動きを察知して
隙が見えたら、鎖蛇で槍を絡め取ってしまいましょうか
どうしても避けられない攻撃は
『オーラ防御』でダメージを抑えるわ
※他猟兵との連携、アドリブ可
エンジ・カラカ
賢い君、賢い君、ココに勇者がいるらしい。
ドレだろう?
まァ、いい。コレは支援に徹するだけだなァ……。
小さな子ら、今度はココに隠れておく?近くで勇者が見れるイイ場所。
ほら、コレの懐。
危なくなったら逃げ込むとイイ。コレの懐はとーっても楽しい楽しい場所。
先制攻撃で敵サンの腕を狙う。
アァ……アイツの手はよろしくないとコレは思う。
賢い君もきっとそう思っている。
属性攻撃は賢い君の毒。じわじわと蝕んで行くンだ。
小さい子ら、味方との連携は惜しまずに敵サンの近くで支援。
自慢の足で見切り、賢い君には薬指の血を捧げようか。
幾人もの猟兵が駆け出せば、決して出過ぎないように。しかし全てを任せ切りにはしないように。
妖精がそれに続く。
そこにあるのは溢れんばかりの信頼と、誰かの灯した勇気の火。視界の端、飛ぶフェアリーにアリスの手は白銀のつるぎを強く握る。
(「私の思った通り……貴方がたは勇者の血を引く、誇りあるフェアリーさん達です」)
「みなさん、私たちならきっと……大丈夫です!」
「まぁ! 本当に雲みたい。あれだけ居るなら、じっくり狙うまでもありませんか」
呼び声に応え煌く刃が一段と輝きを強める隣、犇めく闇に目を凝らすあき。だが瞳に怯えの一片もなく、愛銃のバレルに落とす口付けひとつでふわり、空を指して掲げる銃身。
途端、空間を歪め娘の周囲に分け出た同型の銃は揮い手を囲い守る形に前後へと規則正しく展開される。愛雨霰。刻まれた名の意思がそこに宿ったかの如く、超自然的な念操作。
「それじゃあ、今日もお願いしますね」
数には数で――Fire!
あきの手の一振りで、宙にずらりと並べられたマスケット銃が一斉に火を噴いた。
十一の銃口から放たれた弾丸は向かい来る悪魔の姿をした獣たちとぶつかり合い、複数の翼と肉とを引き裂いて地へと近づける。最前列にいた数体は特に被弾が激しかったか、制御を失い叩きつけられるようにも着地を試み――。
たんっ!
ひとつ、跳ねたそれは舌をだらりと垂らした山羊の首が土の上を転がる音。
「こぉンな芸は見たコトある? ナイかなァ、覚えとくと便利なンだけどなァ」
何も居ぬかに見えた着地先。過る黒い獣……影踏み疾駆したエンジが揮った微細な糸は、それだけで刃物の鋭利さを以って肉を断つ凶器と化していた。骨なんてものは、力づく。へし折ればいい。
「糸は何でも切れるンだ。こうやって、サ」
ぐるん、 体勢を整え槍を構えたレッサーデーモンの腕を飾るアカイイト。身を低く巨体の脇を潜り抜け駆けこんだ先で、手繰り手が一息に引き絞ったなら。
くんっと釣り糸にかかった魚に似た抵抗と、直ぐの解放感。断ち切られ宙舞う獣の腕二本とともに、エンジは止まらず斜め前方へと飛び退いた。狼男にばかり見惚れていてはいけない、追従して襲う火球は待ってはくれないのだから!
――ごぉっ!
「突っ立ってると火傷するわよ」
あら、遅かったかしら。大きく弾けて獣呑み込む赤の向こう、白々しく言ってのけたレイラが靡く髪を鬱陶しそうに払った。
炭と化す仲間を憐れむ心等、果たしてあるのかどうか。周囲で雄叫びを上げた悪魔から三、四本の三叉槍が男と女めがけ放られる。
「そうはさせませんっ」
そこへ飛び込み、掬い上げるように斬って払うのはアリスの剣。マジックナイトは魔法使いであると同時に、仲間を守る騎士なのだ。
ちいさな体は大振りに振り回されながらも挫かれることなく、かち合った鋼を衝撃波とで押し込み勢いを殺す。一瞬さりとて十分、得物を取りこぼした一体が娘に向かって繰り出さんとす突進を絡めとるだけのいとまが生まれて。
「シィー」
踏み出したその、一歩は云わば泥の中。
赤糸に跳ね上げられた巨体は地面に形を残しながら滑り……それでも傷は浅いと立ち上がらんとした先で、がくんと肘が、肘が崩れた。力が、入らぬのだ。
わが身に起こった異変へ理解及ばずいるのだろう、横たわりはくはく繰り返す呼吸は微弱ながら瞳だけは驚愕に見開かれていて。行き場のない疑問を、拾い上げてやる、金色。
「アァ……言ってなかったカ? 賢い君はサァビス精神が旺盛でな」
誰に似たのか。そう、見目麗しい処刑道具には猛毒のおまけつき。
にんまりと口端を上げ狼男は、痙攣しはじめた一体にはしかし終わりなど与えてやらずにまた別な個体へ。忠告のひとつでも口に出来たなら――獣に許されたのはそんな思考すら霞むまで、次々に毒糸の餌食となる同族を瞳に映すことだけ。
「すげぇよ勇者の兄ちゃん……!」
潜めて懐から小さな声が上がれば、勇者とははてさてドレのことだろうと何処吹く風、男の瞳はともに探すみたく愉しげに細められた。エンジの言葉は此度、全てがすべて独り言というわけでもなく。
間近で勇者を見せてやろうと懐に迎え入れていた妖精少年。相棒へ捧げる血を薬指から調達していたところ、その傷すら塞ごうとするものだから面倒ではあったが――大層ご満足いただけたらしい。
見遣った先では今まさに光の柱が立つ最中。大気に溢れた粒子が傍まで舞うのをエンジが手にしたのと、光剣を振り上げたアリスが声高らかに告げるのとは同時。
「受けてください、ヴォーパルの剣閃……!!」
はためくエプロンドレス、泳ぐリボン、目一杯の背伸び。そして、刃の先は宣告通りに落とされる。
どうっと零れた光焔の奔流は空の色をして宙を走り、膨れ伸び突き進んで、直線上に蔓延っていた暗雲を切り開いた。その先の本物の青空――一瞬だけ見えた望む色を、瞳に湛え。
間近に舞っていた妖精らが歓声を上げ、奮う心に癒しの光がひときわ明るさを増す。小石でも掠ったか、アリスの手の甲にできていた微かな傷はすぐに消え失せ――ありがとうございます、の声は勇なるもの同士、互い互いに。
蘇りし魔王を、勇者の魂を受け継ぐ者が迎え撃つ。
(「……ふふ、素敵な物語ね」)
荒れて吹きつける風がレイラの金の髪をも撫でつけていった。なるほど、飛ばないものだとグラスコードの紐が立てる清涼なBGMを耳に、齎すは炎。ぱぁと咲いた火の粉が散り、形を成し。
「ハッピーエンドの為に、私もできることをしましょう」
「おとぎ話は幸せな方がいいですもん、ねっ」
かたちを保ったままこの地の土を踏ませてやらぬという一念。
炎弾は光に灼かればらばら墜ち来る的へ撃ち出された。あきの銃弾も炎を纏いながら共に空へ、二つの力が五体揃わぬ状態へ幾つもの標的を吹き飛ばす。
休みなく交わし合う刃が、バトンのように回し振るわれる三叉槍の柄が、斉射の火薬が生じさせていた白煙を散らした。投げ槍の有効射程、猛る悪魔らは一度に構えをとる。
が。
視界が晴れたとて時既に遅し。ヴァルプルギスの篝火は如何なる死者を、過去をも見逃"せ"ない。
「私の前から消えてちょうだい」
明日は約束されし祝いの日なのだから。
漂う焼却残渣を巻き込んで、揺らめきせり立つ炎の壁。直上に位置していたものは触れるそばから叫びごと黒い灰となって降る。手放された槍が赤色を切り裂いて逆さに落ち来るのを、術者レイラの頭に届く前、一発の弾丸が彼方へ弾いた。
「眠りから覚めてすぐの運動には、向かなかったかもしれませんね?」
壁――或いは檻の出口は一方のみ。抜け出ようとしたならば銃弾の出迎え。塞ぎ、歩み寄るあきはご愁傷様でした、と、親しみと労りすら感じさせる柔い語調のまま銃口を人のつくりと変わらぬモンスターの胸元へひたり、重ねて。
くす。 笑って引き金を引き至近で注いだ力は、体の内で小さくされど致命的な爆発を起こし悪魔をどうと大の字に倒れ伏させた。重みに潰される後続。 これで道は、ゼロ。
胸の穴から細く煙が昇る中、炎の壁は狭まって――出来上がった死骸も含め、内にいた数体を呑んで風に消えてゆく。折り重なった体が火除けとして作用していたのか、火傷で済んだ一番下に潰されていた悪魔が三叉槍へ手を伸ばしたとて、するり掠め取る鎖の蛇が阻むのだ。
「いかにも呪われてそうな武器よね。これ以上、へんなものに寄り憑かれたくないし……」
主の腕へ巻き付きもどる鎖蛇。過程で槍を手にすることとなったレイラが両手に握り込むグリップ。きゅと短い音が鳴いて、次には獣の頭へ――返すわ、なんて短い別れの言葉とともに突き立てた。
おつかれさまです。ちょうど一体を屠ったアリスも顔を上げ、誰もに深い傷がないことに安堵の吐息。エンジとアリス、妖精が彼らの服と髪とを引いて振り返った先、新たな一団のご到着にも得物構えなおして歓迎の意向を見せるのだから、瞬きの暇も与えない。
勇者とは、力強く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
グリツィーニエ・オプファー
いやはや…勇ましい御令嬢に御座いますね
これ程迄に心強い援軍も然う然うおりますまい
肩に乗るハンスを黒き花と変え
【黒き豊穣】にて多くの敵を巻き込み切り刻んでご覧入れましょう
下級の悪魔が、残滓では御座いますが邪神たる母に叶うとでも?
槍は黒剣をナイフと変え投擲
爆発の被害が此方に迄及ばぬよう、鎖に繋がれた後は一旦花と変え解除出来ぬか試します
猟兵のみではなく勇敢なる街の皆様へ被害が及ばぬよう
私が出来る支援は欠かしませぬ
前に立ち盾となり得るならばそれも良し
…これでも丈夫故
激痛耐性である程度凌げる筈
私に、ハンスに優しく接して下さった皆様の暮らす街
私からも胸を張って言いましょう
――この街は必ず守り抜いてみせます
ノ・ノ
(傘くるくる)
儂は曇りも雨もキライじゃないんじゃのー
ここまで遊んだ縁ですからな
槍の雨も降ることだし、オイラが珍しい事してもかまわんでちょ
っつー事でマリ子(マリーベル)、勇者らしく前線行ってみるとかどーお?
ってもまぁ、わっちもバリバリ前衛ではないし、後衛寄りの前線だどもにゃ!
答えがどちらでも、僕は戦いへ
UCでミニノノ出して応戦するでありんす
とりま合体数字は3ぐらいからスタート
敵の強さ見て、数字足りなかったら適当に合体して戦ってくんろ
んでもって、全方位の敵の動きを警戒してもらいますん
マリ子が来てる場合は、オレちゃんの後ろに庇っちゃる
新しい英雄譚として、meたちの事語り継いでもええで?べチャチャ!
シゥレカエレカ・スプートニク
夫、ギド(f00088)と
もう、ギド!
ごめんなさい、夫が少しきつい言い方を
…でも、わたしもそう思うわ
わたしたち妖精って…悔しいけど、小さくて、すごく非力
自分の活かし方がわからないと弱い存在だわ
そしてまだ、あなたたちはそれぞれ、それがわかっていない
戦うって剣を握ることだけじゃないわ
守ることも、癒すことだってそのうちのひとつよ
わたしが強くなれたのは、きっと
導きたいと思えるひとに出逢ったからなの
かのマリーゴールドもそうだったんじゃないかって、わたしは思うわ
今日のわたしはギドについて回って、回復役として立ち回ります
もちろん、ギドだけじゃなく他の猟兵さんも
来てしまったら妖精さんたちも
張り切らなくっちゃ!
ギド・スプートニク
シゥレカエレカ/f04551と
共に戦うだと?
その棒きれで?
勇者に憧れるのは構わぬが
身の程を弁えるがいい
貴様のそれは勇気ではない
蛮勇と言うのだ
その勇気で誰かを救えたか?
貴様の力では人間どもにすら太刀打ちできなかっただろうに
悪戯に仲間を焚き付けて
あのまま行けば死人を増やしていただけだろう
他にすべき事は
出来る事は無かったのか
貴様はマリーゴールドではない
実力も弁えず憧れだけで剣を振るう
子孫がこれではマリーゴールドも浮かばれぬな
死にたいのなら勝手に死ね
私は私の大義によって彼奴らを滅す
彼らは同じ過ちを繰り返す
力量を弁えるのもまた勇気
それを学ばぬ限り遅かれ滅びを迎えるだろう
オブリビオンではなく
人の手によって
「共に戦うだと? その棒きれで? 勇者に憧れるのは構わぬが、身の程を弁えるがいい」
貴様のそれは勇気ではない、蛮勇と言うのだ――。
ギドが長の娘へと向けた一言一言は、街での妖精族の有様を苦心の内見てきた故に語ることができたとも云えよう。
幾人かの妖精が飛び立つ中、マリーベルといえば今はひとり己の身の置き場を迷う様子で街の入り口近くを漂っていた。
「その勇気で誰かを救えたか? 悪戯に仲間を焚き付けて、あのまま行けば死人を増やしていただけだろう」
「もう、ギド!」
夫が少しきつい言い方をしてごめんなさいね、シゥレカエレカが二者の合間に花弁にも似てふわりと舞い降りる。窘める眼差しははじめ連れへ。次に同族の娘へと。
「……でも、わたしもそう思うわ。わたしたち妖精って……悔しいけど、小さくて、すごく非力」
考えるべきは自分の活かし方。他にすべき事は、出来る事はなかったのかと声を揃える二人を前に、何かを言い淀む風に肩を揺らしたのち、街のみんなをありがとう……娘の声はそんなか細い呟きから始まる。
「ごめんなさい、この剣はちょっとした……カッコつけなの。いつかはそりゃ使いこなしてみせるつもり! だった、けど……」
身を縮こまらせて、そういえば父親にもよく似た注意をされたものだと思い返してマリーベルは、暗雲と戦う猟兵とを眺めていた体をくるんと引っ込め二人に正対した。
妖精族は小さく、非力。それは変えられない事実。
「街を守ってくれるみんなの姿を見ていて、私も思ったんだ。お兄さんたちの言うみたいに、力で立ち向かう以外にも色んな方法があるんだって」
猟兵は強かった。強いと一言にいえど敵を圧倒するだけでなく民を守り切ったその力。
憧れるのはきっとそれで――街の皆はさっさと支援すべく向かっているのに、自分ときたら真似の仕様も分からずに途方に暮れていた。これはそうした顔だった。
吐露される胸の内に耳を傾け、青髪の妖精はその言葉の先を継ぐかたちに。
「そうよ。戦うって剣を握ることだけじゃないわ。守ることも、癒すことだってそのうちのひとつ」
「でも私、治癒魔法も得意じゃなくて……」
勇者の末裔のくせ何も――やんちゃを演じる理由はそこだったのかと、納得と。
はじめから強いひとはいない。そうシゥレカエレカは、一度だけ遠くを見るように瞳を細め――ほんのり頬を薔薇色に染めながら、歩み来たそこに一片の後悔もないとただひとつ首肯した。
戦火の中へ飛び込む旅となれど、幸せを選び取った自らを誇るみたく。
「わたしが強くなれたのは、きっと、導きたいと思えるひとに出逢ったからなの。かのマリーゴールドもそうだったんじゃないかって、わたしは思うわ」
「導きたいと思えるひと……」
夫婦の姿を交互に見つめるマリーベルは、口を開こうとして――頭上で大きく弾けた炎に慌てて頭を抱え下げる。
「戦場でいつまで長話をしているつもりだ。良い的になっていると自覚しろ」
尤も、死にたいのなら勝手に死ね。私は私の大義によって彼奴らを滅す。
恐る恐る娘が視線を上げたなら、降った魔槍を魔法の矢で相殺したギドがひややか言い放ち踵を返すところ。
落ちてくるひとの小指の先程度の残骸がこつんと頭に当たる、その程度でこんなにも痛いのだ。涙目になりかけた目元をぐしっと拭い、はばたいて。
「うん、できることをする」
それを答えにした気でいても、先行く男の表情は窺えず。困った風に、"らしい"という風にくすりと笑うその妻が、透き通った翅越しに街と空を映して後を追う。
「こうすると心に決めたなら、前を向くだけよ。お迎えも来ているみたいだし、ね?」
はてな、と女を見返すマリーベルの前にそのとき黒い物体が伸びてきた。これはどこかで――街で、何度も差し伸べてくれた!
「ノノ!」
曇りも雨もキライじゃないけれど。
片手にご機嫌カラーの傘をくるり回してブラックタールはそこにいる。べろんとめくり上げた妖精のピンク前髪の下、なんだか赤い目元なんか見て取って。
「おうマリ子、辛気臭ぇツラしてるじゃにゃーの? さては我様とはぐれてお泣きになって?」
「そっ、そういうんじゃないわよ……あのぅ、足手まといだと思うけど、私、」
一緒に行っても……ごにょとした呟き全てが終わるか終わらないか、ひとはそれをデジャヴとも呼ぶが、ノノの触手がまた降った鋼の欠片を払う音がより大きく響いた。
行くもなにも此処が戦場!
「まっ、ここまで遊んだ縁ですからな」
戦うんでしょう、勇者らしく?
空いた穴から溶け出すかの如くにぼたぼた崩れはじめたノノの片腕であったが、これもユーベルコードの力。地面に落ちたタールが次は死霊ではなくちいさなノノの姿を形取り、それぞれに動きだす。
かつてならば驚きに竦ませていたであろう体は、今は驚くほど自然に――頷きノノの肩に手をかけたマリーベルが、お願い! と大きく声を返した。
その勇ましさには、翳りがない。
(「これ程迄に心強い援軍も然う然うおりますまい」)
勇気とは魔法の使い手であったとて、欠かせぬ要素の一。今は何かに後押しされているらしいそれが、いずれ彼女の心に確と根付く筈と――グリツィーニエは思う儘、肩の一羽を見送った。
或いは空覆う闇よりも濃い黒色。
雲の切れ間を目指すように高く、高く風打って、迎える槍に自ずと飛び込む鴉の精は解けて花弁に散った。楽々排除できたと視線を外したレッサーデーモンらへ、けれど花はその場に留まり害意を宿して襲い掛かる。
「下級の悪魔が、残滓では御座いますが邪神たる母に叶うとでも?」
ふっと――零す吐息。
山羊角、悪魔。
黒藤に巻かれ肉を削がれる半獣の姿へ、傾ける想いなどひとつとしてなく。
指触れるBarmherzigkeit、抜き放ってからは早かった。形移ろわせ矢同然に投擲した黒剣は空を暴れのたうつ翼を二つ三つ重ねて貫き、地の底へと引き摺り落す。 槍を扱う間など、与えない。
ともに落下する剣……今はナイフを、空での役目を果たし爪でつかまえたハンスが主のもとまで運び来る。
掲げた手に彼を導く男のそばでは、地を駆け来ていた二つにギドが応戦していた。
「失せろ」
頭狙いの三叉槍の刺突。布いちまいくれてやって顎を引き、左右から襲う槍が一点に交わった刹那を一振りに斬り捨てる杖――玲瓏と銘受けた仕込み杖。防御と攻撃はほぼ同時に、横へと抜いた刃は槍ごと目線の高さにあった二匹分の腹を掻っ捌いていた。
同じ過ちを繰り返し、オブリビオン以前に人の手により滅びを迎えるか。
勇気の在り方を見つけるか。
告げるべきは告げた。ここから先、物語の続きは彼らの選ぶことだと声無く宵闇の黒衣がはためいている。
踏み行く臓物、浴びる血すら斬り払って突き進む男の歩みに揺らぎはない。しかし静かに行使した血統の力は、代償として傷ひとつ受けていない筈の口元に薄らと血の跡を残す。
「あなた、血が……」
思わず声を掛けたマリーベルに対し、戦いに身を浸すギドの冴えた双眸はといえば鋭いもので。息を呑んでしまった少女の肩をそっと押し、シゥレカエレカがその耳元へ祈りの文句を捧げる。
二人にだけしか知り得ぬまじないが癒しの力となれば、たちまち傷は塞がれて。
――強さ、か。
「ねぇ……あなたもそういうひといる?」
「ハへ? わっちは常にオンリーワンワンよ!」
べちんっ。
ミニノノたちはよじ登ったレッサーデーモンの頭をぶん殴っている。ミニと呼ぶには些か不思議な……マリーベルの三倍はある体長からの一撃は脳を震わすには十分だったらしく、白目を剥いて倒れ込む体からゴムのように飛び跳ねまた別の一体へへばりつくのだから逞しい。
そう……と呟いた妖精の娘と、周囲への警戒を命じられていたミニノノとがハッと顔を上げ瞬間に一方を見た。悪魔がいち。槍を抱えての高速突撃、この距離では――。
「ノノあぶなっ、」
「前を失礼」
秒を数える暇があったろうか。ノノと槍との間に捻じ込まれたのは影……否、その色を持つ男、グリツィーニエの体だった。
槍の切っ先が腕に沈んでひとと変わらぬ血を散らせば、骨以上進む前、カウンターに繰り出していたノノ本体の不定形拳が邪なる山羊頭を殴り飛ばす。
寄り集まって覗くミニタールらへこれでも丈夫故、と腕を振ってみせるキマイラ男。
一拍宙に取り残されていた使いの鴉が、もう動かぬ悪魔をこれでもかと啄むのが見えるが……危ないと、声を上げる他なかったマリーベルは唇を噛み自分のできること、すべきことは何かを頭の中に繰り返して。――今はと、傷付いた男の片腕に手を伸ばした。
「そのつよそーなソードは今日は使わんのかえ?」
「……うん。実は私、魔法の方が得意なんだもの! ほらすぐ痛くなくなるわ」
グリツィーニエの肌を触れるマリーベルの意気込みは十分――でもちろりと舐める程度にしか癒せぬ光に、風に乗せ重ねられた癒しはシゥレカエレカの歌声だ。
如何なる力が襲い来ようとギドの傍らに離れず、しかし茶目っ気と余裕とを添えて乙女はちいさくウインクを向けてみせた。
頑張りなさい――遠い、焦がれた誰かの声がそう言うように。
「ほぇーん、やるじゃナイ」
「おかげ様でより一層の恩返しをさせていただけそうです」
恩返し?
現に引き戻されぱちり瞬くちいさな瞳へ、蒼にも白にもすこしも顔色変えずいたグリツィーニエはゆっくりと瞼を伏せ、次には振り仰ぐ先を見据えた。
平和と緑と青空の似合う……自身に、精霊に優しく接してくれたひとびとの暮らす街。
「――この街は必ず守り抜いてみせます」
「おうおう。新しい英雄譚として、meたちの事語り継いでもええで? べチャチャ!」
ぴょんぴょこ跳ねるタールの群れに、唸る悪魔たち。
花嵐が湧けば剣閃がそれに続き――。
勇者とは、思慮深く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
矢来・夕立
【いつもの】
ラッカさん(f15266)や穂結さん(f15297)みたいなお人好しじゃないんですよ。
柄じゃありません。助けるだの、勇者だの。
ただですね。リリティカの製紙技術が失われるのは惜しまれる。
いい紙を作る土地は、守られるだけの価値がある。
ラッカさんと穂結さんが引き続き目立ってくれるはずです。
【忍び足】で影に紛れて闇討ちと参りましょう。
【だまし討ち】と【暗殺】の要領でもって、脇差で斬ります。深々と。
……それでは、いつものようにお願いします。
空には雲雀、陸には女神。向かう所に壁はない。言わなくても道は開く。
オレ達が動けばそのようになります。
──【刃来・緋縁】。
残念でした。オレが本命ですよ。
ラッカ・ラーク
【いつもの】
隣人って括りなら素直に返事もできるぜ、見上げられるのは飛んでる時だけで十分だ。
んじゃあオレは引き続きハデにやるのを担当しよう。多少の傷は気にしないことにしてもいいだろ? 任せたぜ、隣人方。
『増やせば軍団!』で数で撹乱といこうかね。攻撃は『野生の勘』と『見切り』で躱しつつ相棒たちと敵さんらを『挑発』、注意を引いてる間にカグヤ(f15297)の刃にかかってもらうぜ。もちろんオレも数減らすのに少しは貢献しないとな。
それに本命は別にいる、戦いにオレより確実に慣れてるユーダチ(f14904)が自由に動けるようにしときゃ、上手くやってくれるさ。頼んだぜ!
穂結・神楽耶
【いつもの】
『勇者』なんて柄ではありません。ただおいしい食べ物があって、好ましい方々が住んでいる。手を差し伸べる理由はそれだけでよいのではないでしょうか。ね、矢来様(f14904)?
先陣はラーク様(f15266)が切って下さいますね。わたくしは二の矢を務めましょう。
【神遊銀朱】。ラーク様が引き付けてくださっている敵をまとめて『なぎ払い』ます。とはいえ止めまでは至らないでしょうが…こちらを狙って頂けるならどうぞご随意に。複製した太刀を簡易的な盾として使いつつ本命の到着を待ちましょう。
勇者伝説の再演にございます、どうぞお楽しみあれ。
…あ。これはフェアリー様方の治療魔法でしょうか。温かいですね。
"勇者"なんて柄ではない。ただおいしい食べ物があって、好ましい人々が住んでいる。
「手を差し伸べる理由はそれだけでよいのではないでしょうか。ね、矢来様?」
はぁ。
「オレはお二人みたいなお人好しじゃないんですよ」
そもそも柄じゃありません。助けるだの、勇者だの――神楽耶の声掛けにも、夕立の手はリリティカで買った陽に透く四角い紙片を遊んでいた。ここから見たなら本の向こうの出来事のようだ。開かれた戦端も、フェアリーたちの姿も。
「ただですね。いい紙でしょう」
「? はい」
ピッと指先で弾かれた紙は、風に揺られ神楽耶の手へ。守るだけの価値はそこにある。見送ってちいさく夕立が呟き零し、行かなくていいんですか、と伏せた目を合わせるどころかまたあらぬ方向へ流した。
「ッはは、ヘタっぴぃ――の!」
がちんと金属音がしたならば槍同士がぶつかった後。その先、見上げる空では悪魔とラッカとが顔つき合わせケンカ中。
ところがラッカは一段とおしゃべりになったようで。チュンチュンチュンチュ……そう、電脳魔術士の力で以て、喚びだした鳥型バーチャルペットたちを連れているのだ。
キマイラ本人だけでもぬるりと宙を地上同然闊歩するというのに、加えて数十のスペアがある小鳥たちはミサイルめいて体当たり、槍の狙いを逸らし続けていた。突き出された一本を軽々跳んで躱し、新たな足場として踏みつけてやる男の横顔は楽し気……それ以外表現のしようがない声とで、まさに今、戦地と化した空を我が物顔で遊ぶ。
肩だか腕だか、チリリと熱い感覚がして肌に引かれる赤一筋。
生きている証明。塞ぐも塞がぬも"隣人"任せ、ラッカが強く蹴り上げた槍がくるんと回転しながら友二人並び立つ間の地面へ突き立ち、整った舞台へ誘う。
「本当。お呼びらしいです」
「ハッ」
笑み綻ばせる戦巫女と、鼻で笑う……にも乾ききった音で飛び退くひねくれもの。
ただいま――応えた神楽耶が一振り、むすびのたち。既に鞘を手放した刃は、負けではなく勝つまで収める宛てを知らない。横へ引いた太刀筋をなぞるように現れ出たまったく似た見目の刃は残像と異なり、寄らば斬れる魂鎮めの矢。 放つ、空。
その狙いを察知してたんたんっ、より高きへ駆け上った鳥足をも掠めるほどに激烈な刃の横殴りの雨が直後に空間を貫いた。色の帯引く朱と黒と鉄は処刑台のつくりのように、撥ね飛ばす肉、肉、肉。骨。
「オレより派手なんざ聞いてねぇけど!」
ヒュウッと口笛吹いたキマイラが、逃れ出た一体を宙返りからのかかと落としに下方へと叩き落とせば漏らさずあの世送り返し決定。
――ガアァァァッッ!!
墜とされ、剥きだした骨すら捩じれたレッサーデーモンが叫ぶ。仰々しい呼ばれ方をしていても結局ただの獣に過ぎぬと――浮かんだのは嘲りだったか、知らねど。
どっ、 鈍い音ののち、振りかぶった三叉槍は力無く取り落とされる。
ずるりと巨体が前へ崩れ、その影から抜け出たかの如く代わりに身を起こしたのは夕立。突き立てた刃はもとより紅く、羽織の赤裏地がそれこそ悪魔の翼みたいにやけに鮮やかに風打った。
空には雲雀、陸には女神。向かう所に壁はない。言わなくても道は開く。
「テストに出るほど簡単な話ですよね」
仇なすものに待つ未来――などと。
終始猟兵サイドに分がある中、やがて空に咲いた爆炎が小鳥を突き抜けラッカの半身を捉えた。
「っ!」
風に圧され、高い空から滑り落ちるに見える男の体と群がって絡まる鎖の束と。
ようやく捉えた獲物を逃がしはしない! 鎖を引き絞る悪魔らは完全に意識を空へと引かれていて、辺りなど二の次だったのだ。
致命的なまでに。
音は、ザッと。一度きり。その一度で数多の"刃"が振るわれた。
鎖断ち切る結の直刃群。 "舞い降りた"先で鋭く見舞う爪撃。
「お戯れを」
「あーイテかった。つって、うっそに決まってんじゃーん?」
そして、空仰ぐ悪魔の背を突く雷花の脇差。
「残念でした。オレが本命ですよ」
赤一色の瞳が這う。
ぱっくりと割られたオブリビオンの体は自らの重みに耐えきれず、前後へ分かたれて沈んだ。舞い立つ土煙に狩人は容易に姿を溶かす。応戦するにも投げた槍は出払っていて、つまりは、悪魔に許されたのは僅かな祈りの時間と――。
「今のは本当です」
そんなひとときすら与えられていないと、結論づけるための時間だ。
返して斬って、また断って。刹那にひらりと夕立が躍ったならば、その懐から漏れ出た紙――折られた蝙蝠の式が痛みに戦慄く獣肉へ喰らい付いて沈黙させた。伸ばす手ひとつ影へも触れられない。
傍から見たなら墜ちて映ったキマイラを案じてだろう、ふわり降り注ぐこれは……リリティカの妖精の癒しの光。ひととしての肌身に伝わるぬくもりに、神楽耶は頼もしい思いで刀に遣った視線を上げる。
「ラーク様ったら。矢来様がわぁって驚いてしまわれたら大変でしょう?」
一体どんな顔をなさるものか――ころころと鈴を転がす風な笑いで案ずるのはまったく別ななにかだとして。互いの手の内を知っているこそ乱れのない連携、楽しむ豪気さを潜めた女は刃が帯びた鮮血をぴ、と辺りへ飛ばし。
さて、勇者伝説の再演。お楽しみいただけたでしょうか。
そうして敵へと向けたなら、矛に盾にと組み替えられ従っていた複製の刃たちは今一度雨の姿を取った。あとかたづけまでしっかりと、肉の山へ。
ごおと吹く風が藍毛を撫でつけてゆく。血の匂いが濃くたちまち混じり、おーこわこわ、手首を鳴らして引き千切った鎖の余りを放り出すラッカ。咄嗟に集め壁に使っていた焼き小鳥の横、見慣れた黒靴が視界の端に見えたなら、ニッと口角持ち上げ「どだった?」。
「この程度、小芝居抜きでやれたと思いますけどね」
「もっと楽しめよご両人ん~。しかしなかなかイイ演技だったろ?」
うそうそーってユーダチの真似してみたんだけどさぁー……。
べ、と舌を出してみせるキマイラ男へは雑と称する他ない疎らな拍手が贈られて。
勇者とは、驕らず。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チロル・キャンディベル
嵐吾(f05366)とキトリ(f02354)と
ようせいのみんなも、チロたちといっしょにがんばろう!
ここはみんなの街だから
ゆうしゃの力で、平和をいっしょにとりもどすのよ!
嵐吾と王子さまのキトリがいっしょだもの
だからぜったいにだいじょうぶ、まおうになんて負けないのよ!
ソルベの背からエレメンタル・ファンタジア
ぴかぴかの光で消しちゃうの!
わるいのには、光ってチロきいたことあるのよ
わるいのはみんなみんな、バイバイするの!
ちいさなゆうしゃさんたちが、ケガをしないようにちゅうい
ソルベだって、ゆうしゃさんを守ってくれてるの!
帰ったらみんなでいっしょに
リリティカまんじゅう食べながら、ゆうしゃのお話するのよ!
終夜・嵐吾
キトリ(f02354)とチロ(f09776)と
街を守るものはたくさんおるからの!
さぁ参ろうか、キトリ王子、チロ。ソルベもな!
怪我をすれば癒してもらえるとはいえ、皆に怪我はさせたくない。
危ないときは庇いにでよう。
それから小さな勇者殿、共に参るなら少々荒事ふるう場よ。わしの後ろに隠れておってな。
ふたりがなかよにしとるのに、今度はわしもまぜとくれ!
二人の攻撃に、右目の主よ。共に戯れてくると良い。
キトリ、チロ。あれな暗雲なぞ、払ってみせよう、皆のためにも。
はよ果てよ、招かれざるものよ。
わしらにはやらねばならぬことがあるんじゃ。
リリティカ饅頭の新作を、皆と共に堪能するという大事な使命が。
キトリ・フローエ
嵐吾(f05366)とチロ(f09776)と
リリティカの皆も、一緒に戦いましょう!
力を合わせれば、どんな絶望だって希望に変えられる。
皆の力で、再び魔王を封じるのよ!
回復は任せて、全力で攻撃すればいいのね
行くわよ嵐吾、チロ、ソルベも!
街の皆が攻撃されないよう気をつけながら
二人とソルベの攻撃に合わせて、全力籠めた空色の花嵐で攻撃
近づいてくる敵はみんなベルの花びらで覆ってあげる
それでも向かってくる敵がいるなら、レイピアでえいっ!って目を攻撃
そもそも市場も全部回れてないし
勇者様のお話だってもっと聞きたいわ!
リリティカまんじゅうだってちょっとしか食べてないし
だから一刻も早く、この戦いを終わらせないとね!
●
街を背に飛ぶキトリの背にも、同族たちのあたたかい声援は届いていた。
――リリティカの皆も、一緒に戦いましょう!
――皆の力で、再び魔王を封じるのよ!
(「……そう。力を合わせれば、どんな絶望だって希望に変えられる」)
ひとりじゃないことの強さ。
皆の前で語った言葉を、ちょっと大きくでちゃったかも、なんて思いはしない。なんでもない、ちっぽけな"わたし"の言葉をも信じさせてくれる大事な仲間がすぐそばにいるから。
「……ん? キトリ、どした。腹でも減っとるんか?」
「おまんじゅう、嵐吾がたくさん食べちゃったもんね」
視線を感じた二人がすっと見返せば合う目と目。ちいさな友の一言に嵐吾は一瞬鈍器で殴られたように頬を押さえるも、うむ……その節は……と眉尻を下げた。
ぷくぷく頬を膨らませてみせたチロルは今、ソルベ――白熊の背の上。もっふりとした毛皮は柔らかくだいすきなもりとおひさまの香り。リリティカも同じにおいがしていたなって、思いながら。
「お仕事明けのおまんじゅうへのわくわくが強まったし、そこは嵐吾に感謝してあげてもいいかも?」
からかいっこもきっとなかよしの証。ふふっと笑ったキトリの思案も朗らかほどけ、つと、あとは前を見るだけ。
三人飛び込む先の悪魔の群れ。
「さぁ参ろうか、キトリ王子、チロ。ソルベもな!」
「行くわよ嵐吾、チロ、ソルベも!」
「うん。ぜったいにだいじょうぶ、まおうになんて負けないのよ!」
こわくなんて、ない。
――真っ向から撃ち込まれた三叉槍をまず跳ね上げるのは熊の腕のひと振るい。
ぎゅっと掴まって身を低くしていたチロルは、自らの足より何倍もはやく流れゆく景色の中、白い毛の間から顔を覗かせて獣奏器を握りしめた。
あそこはみんなの街。
ゆうしゃの力で、平和をいっしょにとりもどす!
一途な願いが呼び起こす力は、炎よりもまばゆいひかりの色形をしている。放射状に放たれた魔力は光線と化して槍を放ったばかりの一体の体を灼き、奥へ奥へと貫通して侵攻の足を縺れさせて。
「わるいのには、光ってチロきいたことあるのよ。わるいのはみんなみんな、バイバイするの!」
「ナイスよ二人とも!」
すぐさま追撃に入るキトリ。今も装いは妖精王子のもので、凛々しさも同様に――しかし薙ぐ細剣を合図に生じさせるのは真空波よりもよっぽど鮮烈な。
アズール・テンペスト。
手にはせずとも大切に腰へ携えていた花杖が、その先端から解き放たれるかのようにほろりひらり花弁へ姿変えてゆく。ついにはキトリの体を包み込んだ青と白のそれは、よろしくねとの吐息に応じ、花の嵐となり一様に吹き抜けた。
煌めいて、華やいで。
チロルの齎した光にも寄り添って結びつき、一層強まる舞はレッサーデーモンの動きを封じる。
悪だ魔だ王だと云えど結局は五感に頼る他ないらしく、塞がれた目と耳とを煩わしがって振るわれる槍。
さすがは自慢のともたち。
街の妖精はこの距離ならばどうやら巻き込む恐れはないと見えた。ソルベのおおきな体も彼らをオブリビオンの視界から遮るのに一役買っている。直ぐに状況判断を終えた嵐吾は今日はまだおねむの右目、華封の下へと心傾け。
要は、この場を明け渡さねばよいだけ。
「なんぞ難しゅうないの。のう、右目の主よ」
共に戯れてくると良い。――はらりと封を解いたなら、キトリの花よりは幾らかハラヘリの貌をしていたであろうか。傍で遊ばず真っすぐに血肉へ群がる様はほとほと現金なやつと思えるような。
だが血を咲かす様すら見目には麗しい。本日の色は、紅。紅梅だ。
「――よし。ふたりがなかよにしとるのに、今度はわしもまぜとくれ!」
「なぁに、気にしてたの?」
「チロね、ほんとはおこってないのよー」
戦いの最中にも交わす笑みは翳らず。
白、青、赤。華喰の彩が加わって、ひかる花嵐の雨はいよいよ本降りへ。
足をつけていられず、或いは失い後方へ転げ飛ばされてゆくもの。
それに巻き込まれ潰されるもの。踏ん張っていても地へ槍を突き立ててやっとであるからして、攻勢に転じるのは難しいのだろう。
完全に乱した一塊、より多くをと脇を駆けゆく最中に完全に眠らせておくのも抜かりなく。
ソルベが爪でえいやと肉裂けば、たまらず開かれた瞳へ王子様必殺の刺突。おもちゃのつるぎだって尖っているのだから、痛いものは痛い。
悶えて指がくさびである得物から離されたなら、あとは花弁に巻かれるだけという寸法だ。
やったの! 流れるような連携にぴょんと跳ねるチロルが相棒の背からずり落ちそうになればキトリがすかさずその背へ手を添え。
「でも、そうよね……そもそも市場も全部回れてないし、勇者様のお話だってもっと聞きたいわ!」
「ねっ。帰ったらみんなでいっしょにリリティカまんじゅう食べながら、ゆうしゃのお話するのよ!」
一刻も早く終えようと娘二人の会話に熊の鳴き声が重なり、それらに深く深く頷く狐男。
「そういうわけじゃ。はよ果てよ、招かれざるものよ」
わしらにはやらねばならぬことがある。
告げた声を拾ったか。闇雲に投げ撃たれた魔槍がこちらを目指すとあれば、誰より早くずいと前へ身を出すのも嵐吾。
手向けた嵐の勢いは落ちず。そしてこちらが風上だ。
風を裂くにつれ勢いを殺がれた槍の投擲は、ひとの手で掴み取るにも無理はない。
はしっ、と、嵐吾の手指が鋼を握れば間髪入れず大きく振りかぶって、
「リリティカ饅頭の新作を、皆と共に堪能するという大事な使命が!」
――投げた。
溜めた力に物言わせて、投げた。追い風に煽られびゅんと飛び立った刃は一路、自身の槍を送り出したはずのものの腹へとずんと埋まって絶えさせた。
「嵐吾がほんきなの……!」
まんじゅうへ向けたチロルの期待が天井知らずに高まる中、きっと彼らに守られた市では今頃、新たな計画が無事進行していて。
王子様は青い瞳をしていたから、ミントを加えては如何だろうか。いいや、夜蜜林檎の芳しさがお似合いに――。
愛していただける味わいを。街を。
力持たぬ商人が共に戦えるとするならば、守るため立ち向かう、尊いその心の安らぎのため。
勇者とは、想い合い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
メーリ(f01264)と
みんながいっしょに戦ってくれるなら
こんなに頼もしいことはないよ
メーリを見て笑み
わたしも、そう思ってた
街の外で迎え撃とう
攻撃は【武器受け】
ここで食い止める
後ろへは行かせないよ
印を結ぶ姿を見つけたら
積極的に倒しに行く
手を狙って印を組ませないよう
あるいはその前に倒してしまえれば
もしメーリが鎖に繋がれたら
回復をリリティカのみんなにお願いして
わたしは鎖の先を真っ先に狙う
メーリの一撃に微笑むのは
心配する間もあたえられないくらい、頼もしいから
でももう、呪いの鎖にはつながせない
勇者一行に打ち滅ぼされる
ものがたりはそう結んであったなら、今回だって
これだけ勇者がいるんだもの、まちがいないよ
メーリ・フルメヴァーラ
オズ(f01136)と
長の言葉に目をぱちり
…一緒にがんばろうね!
覚悟決めて銃を構える
絶対しあわせなリリティカを取り戻すよ
ねっオズ!
街の外
みんなの希望を携えて往こう
出来るだけ多くを巻き込めるよう
天翔ける綺羅星の在処を連射
手で複雑な印を結ぶ間を与えない
槍を投げる姿勢見せた個体は
肘狙って氷の属性弾を撃ち
矛先を逸らせたら嬉しいけど
追いつかなくて漆黒の鎖で繋がれたって臆さず
逆に好都合だと思おう
私は!
それでも負けないもん!
呪いも全部跳ね返す気概で
銃を眼前に据えて全力射撃
絶望なんか全部粉々にするよ!
最後も魔力籠めた渾身の一撃を見舞う
そう、まちがいないよ
勇者の物語はハッピーエンドって相場が決まってるんだから!
共に、と。
長の言葉に覚悟を決めたのが、もうずっと前のことのよう。
「絶対……しあわせなリリティカを取り戻すって誓ったもんね。ねっオズ!」
街から十分に離れ、メーリは引き金を引く。これで何度目か分からない。
指の感覚がすこしずつ鈍っているのは自分にだけ分かるけれど、だからこそ、すこしだって面に出さぬように。嬉しいにも楽しいにもたくさん彩り変えるのに、気丈に律するすべては瞳のつよさに滲むだけ。
知っていても、知らなくたってオズは微笑む。
「うん。きみと、わたしとで決めたもの」
手の内の力はずしりと重い。
けれど放り出したりしない。
ふたり携え来たのは希望――背負うものがあるから。
「次、いくよっ」
メーリの撃ち放った綺羅星が夜空のひかりを振り撒いた。ミルキーウェイめいて帯になり散らばったそれらはすべてが魔力の結晶体。周囲へ吸い込まれるが如く消えて、しかしたしかにオブリビオンの頑強な肉体へ傷跡を刻み付けている。
痛みをもたらすものでありながらきらきらと、齎された奇跡のようで。そこにも自身の"すき"を見つけたオズが一歩、突き入れられる槍の一撃を斧腹で防ぎ切った。
互いに睨み合う束の間に、しかし心通わせた二人分の判断の方が上手。
三叉槍を放り出し指で印を結ぼうとした悪魔の片手を水弾が貫く。追って、たじろぐ巨体は頭上高くへと振り上げたオズの斧が竹みたくに裂き割った。別な一体がすぐ脇へ見えるほどの混戦、半ばの骨で刃が止まったならば噴き出す蒸気が加速度を増し。通す。
股まで割って屈めた頭上を槍が過ぎ、ついた片膝片手をバネにすぐ身を起こした青年は、寝かせた斧刃で次には新手の足をも斬り払ってみせた。
「はっ、」
すこし荒くなる呼吸と。足首を失い崩れた山羊頭へは弾が見舞われて――きゃっ、と。
短い悲鳴はメーリの口から。
「!」
ぬるい風は槍が巻き起こした爆風の余波か。本来の狙い自体は迎え撃つ弾丸で逸らすという芸当をやってのけた娘は、傷負った肩と腕とへ繋がれた呪いの鎖に今、その力を減じられている。
幾つもの重しが乗せられたような。
昏い、星ひとつない底へ引き摺り込まれるような。
「みんなっ、メーリを」
「……っ私は!」
――それでも負けないもん!
ぎ、ぎ、と体軋ませる重圧に逆らい両の拳を振り上げて、じゃらと音を立てて、そして。
眼前に据えたメーリの二丁は鎖を振りほどくでなく、絶望そのものを打ち砕くため。
構えられる新たな魔槍の穂先をスローモーションに感じ見据えながら、動きの悪い指を気力で捻じ伏せる。かちかちと小刻みな震えが二度、三度とトリガーを擦ったのち、カチリと。意志が錆付きかけた歯車をも回すのだ。
瞬時に飛び出たその結晶、二粒の水の弾は放射状に広がって並ぶ剥きだしの胴へと風穴を贈り、もう一発。ぐぅっと痺れるほど強く押し込んだ指が導いた弾丸は、狂いなくレッサーデーモンの頭を撃ち抜いた。
だがひとたび放たれた槍は止まらない。
ぐんぐんと翔く力が友の命を刈り取らんとするのを、黙って見逃すわけが――。
「ないに決まってる」
もう、呪いの鎖になんてつながせない。
合間に割り込んで振りかぶっていたオズがぶつける斧は渾身の力を以て、脅威を地へと埋めさせた。深く抉れた足元を一瞥し、ほうっと……落とした息に今更に知るすこし戦慄いた手。
馴染みのない感情。ぐー、ぱーと鎮めてそれでも、漸くと振り返った先で信じてたと少女が笑うから。
「どこまで頼もしいんだろう、メーリ」
「そっくりそのままお返ししまーすっ」
みんなもありがとう! 明るい一声で手を振れば後方から、オズの一声に治癒を唱えたフェアリーが振り返す。先刻、市で見かけた姿も中にはあって。自分たちが守れたものの大きさに、どちらともなくこころの高鳴る音がした。
――勇者一行に打ち滅ぼされる。
「ものがたりはそう結んであったなら、今回だって。これだけ勇者がいるんだもの、まちがいないよ」
キトンブルー。あどけなく澄んだミレナリィドールの瞳には勇敢なる友と、そして数え切れぬほどの妖精と猟兵と……すべての想い同じくするものが映って。
「そう、まちがいないよ」
交え、汲み、頷きメーリは己を戒めていた呪縛をグリップの底で砕き落とす。
まだまだいけるって、指の腹で撫ぜる愛銃はほんわりと輝きを返す。きっと駆け抜ける。
――勇者の物語はハッピーエンドって相場が決まってるんだから!
勇者とは、見失わず。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
夏目・晴夜
このハレルヤが気に入った、
この街やフェアリー達を守る理由としては十分すぎる位ですね
ユタカさん(f00985)は私の足を引っ張らないようにしてください
【怪力】を誇る戦闘特化の人形で敵を蹴り付けさせ、
【踏みつけ】にて地面に固定させます
はいどうぞ、ユタカさんの好きなダガーチャンスですよ
人形ごとグッサリやっても構いませんが、後で存分に褒め称えてくださいね
折を見て【死の抱擁】で敵を拘束できた際には、
妖刀に【殺気】を込めて人形ごと敵を全力で【串刺し】に
加えて【傷口をえぐる】で更に追い打ちをかけておきたく
あ、人形はその身体が壊れてしまうまで敵を拘束させ続けます
後でちゃんと綺麗に直して差し上げますからご勘弁を
柊・雄鷹
リリティカあーんど猟兵の共同戦線!
胸アツな展開やなー!ハレちゃん(f00145)、もうひと暴れ行くでっ!!
綺麗な街に、綺麗な空。…禍々しさなんていらんのや
ここいらでハッピーエンドにしよや、なぁ
ハレちゃん、ワイの足を引っ張らんように…って先に言われた!?
【空中戦】なら任せて貰おかー!手加減はなしや
【コミュ力】を活かして妖精ちゃんとも連携
その強靭な体も、ダガーで【串刺し】にさせてもらうでー
ハッピーダガーチャーンス!!
空から地上への攻撃が鬱陶しそうやから、積極的に地面へ叩きつけていく
地上戦はハレちゃんにお任せ!
手持ちのダガーが無くなったら腰に差したこいつの出番
凍刃の鷹で氷の【属性攻撃】、UCで攻撃
叶・都亨
【遊空】
いやぁーーー…すごいね!!!
俺逃げたい!!逃げていい?!
なんか好戦的なこと言ってる人がいるよぉーーう!
2人がなんとかしてくれるって俺信じてる!!
でも俺も男の子だからね!それなりに頑張るぞ!!
とにかく俺は近付かれたら最後だから
めちゃくちゃ隠れて攻撃するよ!
長距離攻撃の強みを活かして【先制攻撃】を仕掛けるぞ!
【スナイパー】で敵の目や翼を狙い撃ち
【援護射撃】で2人を助ける!
空から来るなら観察し放題だよなー!
【流星】で遠くの敵も射抜いてみせよう!
いえーーい!!見た見たー?
俺めっちゃがんばった!
褒めて褒めてー!!
なんか俺はヨハンくんが終始怖かったです!!
オルハ・オランシュ
【遊空】
逃げちゃ駄目……!
都亨のこと、頼りにしてるんだから
ね、ヨハン?
数こそ多いけど一体一体はそこまで強くはなさそう
さっさと終わらせようよ
ヨハンは中衛、都亨は後衛
後ろからの援護が頼もしいな
私は心置きなく前線で暴れてくるね
敵の攻撃は得意の【見切り】でどうにかできそうだけど
呪言への対処は難しそう……
サポートに期待してもいいかな
【力溜め】の後に【範囲攻撃】で一気に【なぎ払い】
一体でも多く巻き込もう
【見切り】と【カウンター】はワンセット
2人に攻撃を仕掛ける敵には【2回攻撃】
生じた隙は見逃さない
出てきたから、というよりは
ヨハンと戦ったのが運の尽きって言うべきだよね
2人とも助太刀ありがとう!
ヨハン・グレイン
【遊空】
空覆う暗雲か。あの数は確かに厄介ですね。
しかし、全てを打ち祓えば空も晴れよう。
倒し甲斐があるというものです。
都亨さんが頼りに出来るかはさておき、
逃げたら俺も敵になりますよ。
俺はさしずめ中衛というところですかね。
二人が得意な距離で戦えるよう、
間からサポートに徹します。
遠距離からの攻撃は届かぬうちに
蠢闇黒から闇を這わせ打ち落とす。
【降り注ぐ黒闇】で広範囲に牽制をかけ、
印を結ばせぬよう動きましょう。
呪詛による2回攻撃を繰り返し、
敵の攻撃阻害を第一に。
封じられていればまだ永く生きられたのではないか?
出てきたのが運の尽きだったな。
翼を捥いで地べたに這い蹲らせてやろう。
怪我がないようならなにより。
猟兵の戦いぶりにより、戦線はリリティカの街から大きく離されていた。
あれほど犇めいていた暗雲の様も合間合間に青が透けるほど。
綺麗な街に、綺麗な空。
雄鷹が本来飛びたいのはそうした風の中。――と、思い馳せるからこそ。
「ここいらでハッピーエンドにしよや、なぁ。ハレちゃん、」
「ユタカさんは私の足を引っ張らないようにしてください」
からこそ強く手にしたダガーを思わず取りこぼしそうになる。先に言われた……!?
が、塩対応も慣れたもの。
逆手に掴み取った羽刃をくるんと手遊びし、空中で握り直して投げ打つ先は真正面から向かい来る一個体。
肩口の肉とともに雑なつくりの翼を破ったなら、自然、下で待ち構えている相棒までお届けだ。だってそうでしょう、朗々話を続ける晴夜が気を抜いているかといえばそうしたこともなく。
「このハレルヤが気に入った。この街やフェアリー達を守る理由としては十分すぎる位ですので」
麗しく髪をかき上げるごく自然な所作に従ってぬう、と、その指に糸で結ばれた使いの人形を目覚めさせる。体育座りからゆるゆる身を起こす人形はみるみる主の体長を超え――ついには数倍の大きさとなって、立ち上がった。
戦闘特化からくり人形。むきむきうさぎ頭男、ニッキーくん。
彼は降る雄鷹からのプレゼントへ手を伸ばすと大事そうに剛腕で抱き留め、めきめきと骨をへし折りはじめるのだ。曰く、優しいので相手を選ばない――と。
快い音を耳にしつつ晴夜の指先が地を進む悪魔を指したなら、折れた骨が内蔵まで達して血達磨となった遊び相手を途端に投げ出す人形は跳ねてその先へ。
「……今日のあちらさんのご機嫌はどうなん?」
「ご覧の通り、うきうきです」
うさぎはさみしがりとも云うし。割と近しい図体をしたレッサーデーモンを抱き締める様は絵になって……なって、――――ぼごぉ!! とニッキー・ニー・キックがヒットし、転がされた悪魔。
「はいどうぞ、ユタカさんの好きなダガーチャンスですよ」
「ンン、いよぉし!」
ハッピーダガーチャーンス!!
人形ごとぐっさりやってもいいと聞いている。繰り返す空対空でのダーツに比べれば止まった敵を狙う等容易に過ぎて、張り切った掛け声での一投は人形の片耳と引き換えに、するり山羊頭の正中へ吸い込まれた。
小さくガッツポーズ。くん、と、そのとき雄鷹の襟を引くちいさな手は妖精のもの。右……ニッと笑った男は察して、というよりも疾うに察していて、
「はは、ありがとう! 見えてんで」
マジックみたくに袖口から滑らせたホークダガーが次なる一本。器用に空で体を捩じり、振り返りざまに男が突き出した波打つ刃が間近に迫っていた悪魔の腕を裂いた。
男二人とは背中合わせとなる具合に戦場を分けたこちらは三人。
「いやぁー……すごいね! なんかすごいのいるよ?!! 味方サイドにも!!」
「あぁ、あれね。ニッキーくんだよ、かっこいいよね」
ニッキーくん!?!?!
けろりとしたオルハの声を耳に、生まれたてな具合にがくがく足を震わせてみせる都亨。両手に握りしめた大弓がもはや縋る祈りの道具のように。
その頭の横をしゅーんと魔槍が通過して背後の地面へ突き立ったなら、はらり……舞った毛一束摘まんで隣の二人へ目線送り、
「逃げ……」
「逃げちゃ駄目……! 都亨のこと、頼りにしてるんだから。ね、ヨハン?」
「都亨さんが頼りに出来るかはさておき、逃げたら俺も敵になりますよ」
――逃げていい?! は先読み完封されていた。
ぱくぱくと空気を吐くだけの生き物となった狼をよそに、オルハとヨハンは相対す相手の値踏みを始める。数は厄介、だとして一体一体の強さは知れている。更には打ち祓うほどに空は晴れる。ならば。
「倒し甲斐があるというものです」
「さっさと終わらせよう」
ちゃき。 馴染む槍、ウェイカトリアイナ。手首で回したそれがくるんと風を掻くのを皮切りにオルハが翔ければ、ヨハンの闇が掌から零れ足元で蠢いた。
「なんか好戦的なこと言ってる人がいるよぉーーう! あっちょ」
頭上へと槍の雨が止まぬものだから。悪気はないのだ。ないがしかし、思わず友の……恩人の背に身を潜めた都亨。その身長の都合でぴょこんと飛び出てしまう獣耳を掠めていったのは爆炎ではなく、黒。
生野菜に包丁を振るったような軽い音が宙で数回続いて、たちまち鋼の欠片があたりへ降り注いだ。術者同様多くを語らず闇だまりへと戻っていくこれは……蠢闇黒がもたらした、力。
獣がそろりと身を乗り出したなら、硝子越しの夜色した瞳が流し気味にこう言っている。
"どちら"がいいですか? ――と。
「やりまァす! 男都亨、お見せします!」
頭に乗った金属片をふるふる振って吹っ飛ばし、引き絞るアルデバラン。ちょっと煩いことになった手汗をしぱぱぱっと衣の端で拭い、番えるアルタイルは鷲の羽根。
怯えてしまうのは、正しく脅威のかたちを認識しているから。射手として大事な観察眼が双つ目には宿っている。射貫くなら――やはりあの腕か。
「的だって大きいんだしな……それに」
それに、自分よりもちいさなキマイラ少女はあんなにも勇猛に舞っている。
敵の只中に突っ込んだオルハの三叉槍はレッサーデーモンのそれと噛み合い、振り払われたなら身軽さと背の翼を活かして危なげなく宙で体を反転させ、背や横を取る悪魔の胴を串刺していた。
もしもその視野の外、印を組み上げ拘束しようと目論む小賢しきものがいたならば。
「生憎、目はふたつじゃないもので」
降り注ぐ黒闇。
ザン、と、刃の冴えで放たれたヨハンの使役す闇たちが喰らう。一波で終わらせてやる慈悲もなく。二波、三波と空舐める死を敷く矢――今や緑の草をも呑んで男の靴先へ広がった黒色は、地獄の窯の中のように、ぽこぽこと音立てた。
「封じられていればまだ永く生きられたのではないか? 出てきたのが運の尽きだったな」
地べたに這い蹲らせてやろう。
結ぶ言葉通り、翼もがれた悪魔がどちゃりと傍まで落ちてきて飛び退いた都亨の心拍数はまたも上がってしまうが、ちょうどいい。
このデカブツを遮蔽物に使おう。
身を潜め、オルハもヨハンも届かぬ空高く――狙って。
「ここっ!」
ひゅん、空気切り裂いて飛翔する鷲は悪魔に気付かれるよりも早く、その身へ杭打たれた。
器用に腕と翼を断つ一矢。勢い乗じて番える次の矢は素早く、次々次と……いざ心鎮め意識を傾けたならば息継ぎも忘れて獲物だけ追う都亨は狩人。
ギッ、グアァァァ!
墜とされた同族が降ってきて、地ではレッサーデーモンの間に混乱が広がる。
どんと背を押された数体が横並びに崩れ、オルハの前に隙を晒す有様となった。
そこをすかさず、捉えて。踏み込み長く持ち替える柄、殴りつけるように穂先沈ませる一体目の横腹。
「――ッらあァ!」
止まらず。腰を落として、煮上がったばかりのジャムのように重たい肉と大気とをかき分けながらウェイカトリアイナをさらに横へ薙ぐ。
薙いで……、つぷんと軽くなった手応えに娘の足がたたらを踏む頃には、一様に腹を割られ呻きを漏らす悪魔らがあった。
ゆら、 伸ばされた手はゆるしを求めるものだったのかもしれないが。
「穿て」
僅かの迷いもなく黒刃が地へ縫い付ける。それで、おわり。
「怪我がないようならなにより」
取り澄ました揮い手はつと巡らせる視線の先、弱弱しく槍へ伸びかける手のひとつでもあろうものなら闇の餌食へと徹底している。
羽が濡れるのは嫌いだが、黒い雨の心強さにはただ安堵。
動くものの減った視界で、空の色はもう随分と本来の色に近付いていた。さっきの、切り出すオルハが手を払い。
「出てきたから、というよりはヨハンと戦ったのが運の尽きって言うべきだよね」
それに都亨も。そう振り返った先ではなにやら狼男がぴょんぴょんと。
「いえーーい!! 見た見たー? 俺めっちゃがんばった!」
褒めて褒めてー!!
手放しでジャンプする都亨は連携に協力できたことへ嬉しさ溢れんばかり。
が、めでたく目立つ的ともなる彼へ向かい来ていた槍を弾いての「楽しそうですね」さめざめとしたヨハンの声色は、依然刃ごと切れ味抜群。刃毀れ知らず。
はひ……と声を漏らした狼からの慎ましやかな援護射撃が再び自身に寄り添ったのをみて、オルハは。
(「ふふ」)
一歩、身を引き躱した地面へ魔槍の穂先が沈むなら、それを踏み蹴って顔面へ返してやりつつ自慢の相棒で胸を抉る。ぐらり傾ぐ巨体に潰されそうなんて心配は必要ない、追撃の形で撃ち込まれた矢と闇が押し返してくれるから。
こうして前で暴れられるのは、サポートがあってこそ。
全部終わったら……リリティカで見つけたおいしいお店案内と、それからちゃんと言おう。二人とも、今日はありがとう! って。
ほほぉ。
「なんやあっちも盛り上がっとるみたいやんなぁ、ハレちゃん?」
「それは素敵な話ですね。あぁ……遊び相手が減ってしまって、彼は残念かもしれませんが」
めきめき、めき……疲れというものを感じさせぬからくりは未だ、万力の如くに締め付けを極めている。三者のコンビネーションで転がる肉はもはや数えるのが馬鹿らしい数。
レッサーデーモンも彼らの領域へ無策に飛び込むのではなく、遠距離から槍を投げての戦法へ切り替えはじめた節があった。
そうしてひとふた飛び来た槍。ぎぃん、と高く空で弾くのはその瞬間の火花すら染めるほど、白く冷気を散らす諸刃の刃であって。
「しっかしまぁ、伝説言うたらワイのコレも負けてへんと思うねん」
コレ――青く透ける凍刃の鷹。
だってジジお墨付きやで? 何十年ものやっちゅうの! 笑い混じりの言葉だけ後に残し、むざむざ得物を放り捨てることとなった悪魔へひととびに急接近した雄鷹が振るうはひとたび。
庇う腕がまず凍り付く。割れ、次に首。そこから這い上がる氷は頭部をも覆って……「ほならな」返す刃が突き立てば粉々に砕け散った。
きらきらと結晶が降る。
本で見た光の雨と比べれば物騒に過ぎるが。己を飾るものとして、之は之で悪くない。
帽子を深く被りなおし目にはいらぬよう工夫して、魔槍をもその熱き抱擁で受け止めた使いの背を蹴り跳び白狼は駆ける。巨体の陰となり見えていなかったのだろう。突如影落とす晴夜の存在に口を開けてももう、遅い。
ザ、
「案外、勇者の武器と語り継がれるかもしれませんね」
綺麗に魅せておくのをオススメしますよ――ユタカさん。首を刎ねた妖刀を伝い血が落ちて、そっくりに両腕を広げてみせる晴夜と、彼の不死身のからくり。
さぁ、次のお相手はどなた?
勇者とは、曇りなく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
氏神・鹿糸
【サダ(f06581)】と
「早い動き。猟兵じゃなくて猟犬ね」
「頑張ってね、サダ。……あら、今日は特に綺麗にお花が咲くわね」
サダが戦う間に、私はお花畑を作るわよ。
遊んでるんじゃないわよ。
「本当に立派な獣人ね。友人に似て……ない?そう。」
お花畑に立って、敵の隙を伺いつつ[力溜め]。
光の精霊を飛ばして敵の気を散らせてましょう。
UC攻撃をされそうになったら、[呪詛耐性]の[オーラ防御]をサダと敵の間に張るわ。
「素敵な街にあなたは必要ないの。」
サダが敵を拘束したら、トドメよ。
[全力魔法]に光の精霊の力を乗せて最大威力で攻撃。
サダはうまく避けてくれるわよね?
私のお友達。信頼しているわよ。
(アドリブ他歓迎)
千頭・定
迷子だった【鹿糸さん・f00815】と!
最初からUCです。
四足歩行の体勢なので、移動の際には[毒使い]で仕込んだ解体ナイフは口に咥えます。
お花に楽しそうな鹿糸さんはツッコミませんよ!
―それでは、お仕事を開始します。
高速移動をしながら、同じ部位を[2回攻撃]で切りつけ。
敵のUCには咆哮による衝撃波で、被害を抑えましょう。
猟犬って言ったのは聞こえてますよう!
それにご友人………いえ、微塵も似てませんよッ!?
―存分に喰らってくださいな。
高速移動しながら武器を鋼糸に切り替え。
[ロープワーク]で[敵を盾にする]形で拘束。
素敵なリリティカへ危害を加えようなどとは以ての外。
では、鹿糸さんお願いしますよう。
千頭・定は人間だ。
――"だった"と。そう語る方が正しいか。
人の皮を被ったまま、娘はその四肢で力強く大地を蹴っている。手は今や前足に。四足で駆ける獣……身に下した妖の怨念が彼女をそうさせる。
槍の雨中をジグザグに駆け抜け襲い掛かる呪われた肉へ喰らい付く。
咥えたナイフを、牙として。
「猟兵じゃなくて猟犬ね」
頑張ってね、サダ。
ほう、と息ついて眺める鹿糸は弱まっている日差しのもと、半ばまで畳んだ日傘をくるりと回していた。すこし鉄っぽいけれど、風は相変わらず気持ちいいのね――なんて。
迷子のふたりはこうして合流を成していたが、呪獣と化してまで一途に仕事を果たそうとする定に対して鹿糸の方はのんびり、ほんわりと。
徐に傘の先を地面に向けたかと思えば、そこへ地割れを引き起こすでもなく。炎の柱を打ち立てるでもなく。咲かすのだ、色とりどりの花を。
「……あら、今日は特に綺麗にお花が咲くわ」
くすりと笑い声零せば、聴覚をも妖へ明け渡した連れの眉がほんの僅か下がる。もうー、だとか声を出す代わりにその口で音立てさせるのは背掻き切った悪魔の呻きなれど。
(「お花に楽しそうな鹿糸さんにツッコんでもムダですしね!」)
機敏なひと型の獣へ、指と指とを組んだ怒れる巨拳が振るわれた。
それを敢えて懐、駆け入り躱す定の後方で地がめくれ上がる。目と鼻の先、金にあやしく輝く虹彩と自身のいろ、どちらが禍々しいかなんてもうだれにも分からない。
きゅっ、
押し付けるナイフをかぶりごと横へ引いたなら開く山羊の喉仏から、乾いた空気の音が漏れ。もう一度。左へ。ほつれた皮を掻いて、重ねる二度目の斬撃がより内側を覗かせた。
こちらのナイフは毒仕込み。
空気を求め――或いは単に悶え。我が身掻き抱く悪魔の腕と腕とが交錯するのを邪魔せぬように、やさしく親切に、身を屈め地を踏みしめた定は跳躍しすり抜けその場を譲ってやった。
本当に立派な獣人!
「うーん、見れば見るほど友人に似てるわね」
「――いえさすがに微塵も似てませんよッ!?」
鹿糸のこれには思わず口を開いてしまう定。ついでにぺっ、と、駆ける最中に血濡れナイフを吐き捨てる。それから息をたっぷり吸い。
「――――!!」
咆哮。
言語ならぬ定の叫びが酷く鼓膜を震わせ幾つもの足と槍持つ手を惑わせた。
その一瞬で肩口に歯を立て、替わって引っ張り出すのは輝く鋼糸。一瞬女の周りへふわんときらめく帯が何層にも広がって、そんな何気ないひかりにも楽し気に瞳細めるくらい、鹿糸はご機嫌だ。
立派なお花畑もできたことであるし。
「そう? 褒めているのよ、もちろん。あなたのおかげで支度も終わったもの」
傘をくるくると開き直して肩に寄せ。ヤドリガミの女、鹿糸が立つ花の足場は彼女だけのステージ。ユーベルコード、Nothing but Flowers。
存分に高められた力は、戯れのしぐさで傘地から漂わせた光の小精霊たちをも凶悪な使いとする。サダがひとりじゃつまらなさそうだもの。笑って――差し向けた向こう、友を追う数体のレッサーデーモンを横っ面からまばゆさの中へ呑み込んだ。
(「まぶしっっ!」)
鹿糸さんったら……過るも妖の唇は笑みを描く。
目を押さえる犠牲者らの前、ザッ、と勢いそのまま止めた足が土を抉る。
追うようで、囚われていたと彼らが気付くことはもうない。脚の合間を、槍の隙間を、腕の周りをと幾重にも巻きとっていた鋼の糸がここでぴんと張りつめた感覚。
素敵なリリティカへ危害を加えようなどとは以ての外。
「では、鹿糸さん」
お願いしますよう。
まかせて――そう、返ったろうか。叩きつけられる光の熱量があまりに強かったもので、そのとき正しく事象を認識できたものが、いたかどうか。
なびかせる青髪ばかりはどこまでも穏やかなくせ、鹿糸が齎した全力の魔法は惚け顔で立ちすくむ他なかった山羊頭の幾つもを首から下ごとジュッと蒸発させて。
「うん、もっと綺麗になったわね」
生み出した景色へ一層の笑み咲かせる。
もはや破天荒な女であったが、こと友人の無事に関しても当人任せ。
数秒の静寂ののち。
盾として引き付けたぼろっぼろに崩れた悪魔だったものの体を放り出し、ひとの面をした娘は、ひょこりと物言いたげな顔を見せた。
勇者とは、うつくしく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
出水宮・カガリ
※アドリブ絡み歓迎
エル(f01792)と、ニキ(f04315)と
…本当は、カガリは悲しい
街の皆が戦おうと、勇気を得てしまった
そのことが、とても
しかし、これが戦いであるならば
今こそカガリは壁とならねば
城壁の無い、小さなこの街の
壁の内からも外からも、誰一人零すことなく
降り落つ槍の雨に対し、最大範囲の【追想城壁】を
【不落の傷跡】【拒絶の隔壁】で強化した【鉄門扉の盾】を地に打ち立て、破魔の属性も付与して鎖ごと弾いてみせよう
この城壁より内には、如何なる脅威も立ち入らせない
城門であるカガリが、お前を拒絶する限り
槍の第一波を防いだ後は、エルとニキに攻撃を任せよう
カガリはその後も城壁を維持する
エレアリーゼ・ローエンシュタイン
ニキ(f04315)とカガリ(f04556)と
魔王には程遠いケダモノ達だけど、
全部倒してハッピーエンドにしなくちゃ
それに、またここの可愛いお菓子を食べたいもの!
でもエルの魔法は、街を守るのには向いてない
始めはカガリに守ってもらうわ(彼の背後に屈んで隠れる
…勇気を持つって、そんなにいけないことかしら?
何でもないわ、ありがとう!
さぁ、今度はエル達の出番ね
ニキが呼んだ戦士の炎に合わせて、
鞭の先を向けての【ベイクド・カース】
アレは焼いてもおいしくなさそうだもの
お菓子の家の魔女みたいに、燃える炎に閉じ込めて
全て灰にしてしまいましょう、ニキ!
せーーのっ!!
ニキ・エレコール
お友達のエル様(f01792)とカガリ様(f04556)と
村長様…きっとマリーゴールド様も、街のために今日までずっとあの壺を守ってたんだね…とても怖かったと思うの。
よーし、『みんなのリリティカ』のお土産をいっぱい買って帰る為にも頑張るよ。
黒い空も槍の雨もこの街には似合わないもん。
カガリ様に守ってもらったら私たちの出番!
【槍戦士召喚】を使用。戦士様、力を貸して!
炎の魔法を『属性攻撃』『2回攻撃』で大きな炎を作って…エル様、いけるよ!
せーのっ!!(召喚した戦士の槍に大きな炎を纏わせ鋭い刺突を放つ、敵は三叉槍ごと焼き尽くす)
●
守るべきに背を向け、広大な大地で湧き起こる光、嵐、炎にいかづち剣戟の音色。
そのどれもが勇なるものたちの奏でる抗いの軌跡。
レッサーデーモンの破れかぶれの攻勢は強まっていて、しかしそれも最後が近付くからこそ。
優勢。 けれどもカガリにとっては華々しいと、喜ばしいと思えるばかりではない。
本当は、悲しい。
(「街の皆が戦おうと、勇気を得てしまった……そのことが、とても」)
戦うことと傷付くことはほぼ同義。
胸裡、思い描いてしまう未来に流れる血の色を――しかしと。己の意志で得物を構えるのもまた、カガリ自身だ。
「これが戦いであるならば、今こそカガリは壁とならねば」
がしゃん、と重厚な音。
志強く、左の手に触れる盾。城門の鉄門扉を模したようなこれは、ヤドリガミである男の核たる部分であった。
「んー、難しいことはわかんないけれど。全部倒してハッピーエンドにしなくちゃね。それに、またここの可愛いお菓子を食べたいもの!」
「そうだね。"みんなのリリティカ"のお土産をいっぱい買って帰る為にも、頑張るよ」
その足元でエレアリーゼとニキとは頷き合う。拳をぶつけ交わせば、やわらかい水音が立った。
ひそめた声にも決意のほどを認め――始めるぞ、そう、カガリは一言口にして。
打ち立てる盾が在りし日を呼んだ。
追想城壁――ロストウォール。
「誰一人零すことなく」
城壁の無い、小さなあの街の壁の内からも外からも。
草原の緑を一面撫ぜながら、閉じた瞳を開いた男が顕現させた景色は不思議なほどに馴染んでそこに在った。
今は昔、失った城壁の幻影。男を起点に数十メートルを覆う巨大な"門"。
だがそれはまぼろしに終わらず、雨脚を強めた魔槍が次々に触れる端から崩れてゆく。力振るわずして万民を守る、そのためのユーベルコード。
「この城壁より内には、如何なる脅威も立ち入らせない。城門であるカガリが、お前を拒絶する限り」
戦わずに。傷付かずにいてほしい――けれども、彼自身のそれはどうなるのだろう?
エレアリーゼがそうっと見上げる横顔にはすこしの迷いもないし、跳ねたつぶてに傷を受けたって、己の信じるもののためまっすぐ立っている。いいや、だからこそ立っていられる。
「……勇気を持つって、そんなにいけないことかしら?」
「ん?」
すまない、もう一度……律儀に問うカガリの言葉を、何でもないわ、ありがとう! 努めて明るく遮って己をも守護する盾の陰から飛び出したエレアリーゼは、槍を失い困惑の色を浮かべるものたちへと向き合う。
「さぁ、今度はエル達の出番ね。ニキ、いけそう?」
「うん。……戦士様、力を貸して!」
その隣肩を並べたニキが祈りを唱えれば、甲冑姿の古のつわものが風巻いて姿を現した。城壁に、戦士。なんだかドラマみたいにお似合いで、くすりと笑んだ桃髪の娘も手に鞭を掴む。
頭上高くで不発に終わった爆発が起こる中、ニキの喚び出した戦士の構える槍が纏う炎は一段と烈しさを増す。そうして、その熱がごうごうと己の心奥底にも染み渡ったったとき、術者は声を上げた。
きっと怖いことばかりだったマリーゴールド、そして長。それもすべて、今日でいちど終わりだから。
「……エル様、いけるよ!」
「全て灰にしてしまいましょう、ニキ!」
「「せーーのっ!!」」
鞭の先、燃ゆる穂先。同時に空を指す。
隕石、もしくは大砲の如くに放たれた魔力の炎塊の周囲でぐるんととぐろ巻いて燃え立つ赤がエレアリーゼのベイクド・カース。灰になるまでゆるさない呪いの業火。
――アレは焼いてもおいしくなさそうだもの。
お菓子の家の魔女みたいに、燃える炎に閉じ込めて。そうしたら……次は、しあわせになれるといい。
混ぜ合わせ、叩きつけた力と力が空をいっとき夕焼けのような色に染めた。
「…………」
いつか誰かを見送った色。
遠く目を凝らすカガリは巡らせた視線の中に猟兵、妖精……確りと守れたものたちの姿を見つけ、盾に添えた手に今一度力を込める。城壁の維持は、必ずと。
守護者としての在り方。男の姿へなにも思わぬ身ではない故に、ニキが煌めかすこんじきの涙石は炎以上、爛々と照って。
そうするうち生き残ったとて、焼け落ちた翼を畳み地を踏むものが増えてくる。
爛れた皮は本来の役目を果たせず、黒棘の鞭の一振りが出迎えに食い込めばおもしろいほどに容易くその中身を弾けさせた。
「魔王を名乗るには何もかも足りないわね。ケダモノで十分よ!」
「ふふふ。壺全部が合わさるとどうなってたのかなぁ?」
少女と背を守りあう風に、タールの娘もほわんと体を跳ねさせ追撃に乗り出す。頭の中にはおっきい魔王様がきしゃーって牙を剥いている姿が浮かんで……それでもやっぱり、妖精をはじめとした勇者たちに倒されてしまうんだ。きっとそんな、物語。
連れる槍戦士の鋭い刺突が薄くなった悪魔の体をふたつ重ねて串刺した。炎は未だ絶えず、穿った穴からたちまち燃え広がって全体を燃え滓へとつくり変える。
ぱらり。ぱら……。
灰を被ってもこの舞踏会は終わらない。
ところで、ニキはどのお菓子が一番おいしいと思った? エルはね――。
花咲かせるなら未来の話。再度の火の獄を手向けながらほどけた笑顔でエレアリーゼが語るこのあと食べて帰りたいものリストへ、英霊にかち合わさせた魔槍をどろりとした金属の液体へ戻しては、微笑みニキが挙げたなら同率一位がずらずらり。
カガリの声も加わって、三人まだ楽しみ尽くしたい旅空の下。
戦う――この先、つづきを確たるものとするまで。
勇者とは、如何なるときも前へ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
いいねぇ、ホントかウソかと俯いてるより、その目の方がよっぽどキレイだ
美味しいモノしっかり持ち帰る為にも、もうひと働きしちゃお
支援があるとは有り難いコト
それじゃエンリョなく、初めての手を試させてもらおうか
集団相手にゃもってこいだと思うンだよね
ざっと目視で敵を確認
範囲内の全敵に向け指先から【黒電】を放つ
続けて『高速詠唱』からの『2回攻撃』でもう一撃
槍の攻撃は『オーラ防御』で躱し次の攻撃対象と目星付け
距離詰め振るう「柘榴」で『生命力吸収』
さあアイツらからは、ダシくらい取れるかねぇ……
いつも通り喰らい付きたいトコだけど
「勇者」らしからぬ事は控えておきましょか、なんてネ
(アドリブ歓迎)
絢辻・幽子
あらあら、壺はそういう事だったんですねぇ。
ふふ。治癒をして下さるなら
私も頑張らなくては、……本気で行きましょうね。
今日くらいは毛並みの心配も置いておいてあげます。
が、汚した分だけ悪い牛さんは殴らせていただきましょう。
糸を木々や建物などに張り足場やトラップにしてみたり
ざぁんねん、上ですよー?
赤い糸を三叉槍に繋げられればよいですが
そんなわがままは言いませんので、牛さんの足元に繋いであげますね。
敵が少しでも傷付いているなら、傷口をえぐるのも手ですね?
防御とフェイントは私のお人形さんを使いましょうねぇ
(のらりくらり、とした狐)
※真の姿は狐耳が出現して、尻尾が4つ。
イトゥカ・レスカン
傍へ並ぶ小さき隣人たち
ふふ、頼もしいですね。癒やしを頂けるのなら、戦うことに集中出来ます
けれど、どうかご無理はなさらぬ様に
私たちには耐えられる攻撃も、あなた方には重く響くでしょうから
いざという時は壁になりますね
心配は御無用。こう見えてそれなりには固いので、この身体は
とは言え、当たらず済むものは躱したり打ち払ったりして対処しましょう
動きを縛されては厄介ですので、特に呪いの鎖には警戒を
振りかぶる動作が見えたら予め眼前へ青の散花を広げて、勢い殺し躱しやすい様に
此度の勇者はご覧の通り、人数が揃っておりますので
容易く打ち破らせませんよ
悪しきは討たれ暗雲は晴れ
物語の終わりはハッピーエンドと参りましょう
ペチカ・ロティカ
おそらにも。
ねぇ、くらやみさん。ペチカたちにはあれは届かないのね?
そう、影はおちるものだもの。ペチカのあかりは手元にあるのだもの。
けれどそれって、少し不便ね。だから、ねぇ
くらやみさんも、飛べるようになったらいいとおもうの。
【真の姿】大鴉(くらやみさん)に騎乗
これで届くの。わるものなのに、たかいところにいるなんて偉そうなのよ
その翼をたたきおとしてあげる。【捨て身の一撃】
地上では落ちてくるのをくらやみさんでキャッチ
無茶をしてもへいき。だってみんないるものね
次こそは、って言ってたかしら
ペチカは知らないし、わからないけれど
ずっと、共にあったんじゃないかしらっておもったりもするの。
――そうして心の火を決して絶やさない。
壮観だこと。
各々が揮う力によって、見下ろす景色はまさに七色。槍の雨のあとに虹がかかるなんて、とってもおとぎ話の世界。もっとも今は自分もその登場人物のひとり、だなんて、狐にはてんで興味はないけれど。
「今日くらいはいいですよねぇ? ……本気でも」
細くほそい、編んだ赤糸を綱渡りする身は軽い。
ふさりと自慢の尾っぽを掠めてゆくのが誰の齎した火や爪だとて、ぬるい眼差しひとつで許してあげようというもの。女、幽子は自らへ向けられていた魔槍の一投を翻すドレスとともに散歩のついで同然に躱す。高い空に吹き荒ぶ風が揺らすうち、蕾が花開くみたくにその尾の数は四つへ増していた。
木々にかけた糸を自在に渡る女のそばを、次にはいかづち纏う子狐が宙翔け昇る。幽子が木に咲く花ならこちらは空咲く花火。ぱぁんと弾け、まばゆく喰らい付く影の牙。
眼下、仕掛け人コノハは着弾まで確かめもせず次の獲物を見つめている。ああ狩り放題だ、ダシくらい取れるかしら?
……ホントかウソかと俯くよりもよほど綺麗に見えた、あの光を胸に。
「ケド幽ちゃんのソレうらやましーわぁ。オレも空からキラキラ青とか赤見てみたぁい」
「ふふふ、残念。おひとりさま用なんです。そのかわり」
獲物は分けてあげますよ。
今しがた男の影が撃ち落とした悪魔一体、墜落するそれを足場と踏み跳んで女狐の体は空を舞う。蹴った空間へ一拍遅れ針山よろしく突き立てられた槍の束へとくすり微笑、最中躍らせた狐火はてんてん、空へ色線を引き灯る直後に四方へ放たれた。
目線近くしたレッサーデーモンらへと、真っ向から。
左右へ散開し回避を試みる半獣の体は、しかし地からの追撃が"よびとめる"。
「まぁたまた。そりゃコッチのセリフかもしンないヨ?」
騙り飾り立てたって根っこは獣同士。競い合うもまた楽し――コノハが呼ばう黒電狐は幽子の狐火と同じ数だけ、すうと溶け込む風にして悪魔の体へ纏わりついては深く深くいざなう底……本能的な危機感すらも、蝕む痛みとともに芯から痺れさせ。
どうっと、抵抗ひとつゆるされず、五体の悪魔が次の刹那には棒立ちのまま狐の業火に呑まれていた。
猟兵が揮う力は真に手品か魔法か奇跡めいていて。
誰かがつくりあげた不落の防壁の向こう小人たちのまんまるにした瞳と感嘆の声とが窺えたなら、近く風に髪を遊ばせていたイトゥカの口元もあわく綻ぶ。
いざとなれば身を投げ出してでも彼らの壁にと決めていた男は、その逆、微かでも絶えずあたたかな光が注がれていることに気付いていた。本日はまだ罅のひとつもらっていないけれど、何故かこころ奮い立たされるような。不思議な……沈まぬ陽のような。
(「頼もしいですね。戦うことに集中出来ます」)
故に、振り仰ぐ先へ三つ目の花を。
散りてこそ生ける蝶の羽ばたき、見送った空はすっかり、青。
次こそは。共にと願ったフェアリーの言葉が、等しく降り注ぐ光にリフレインする。
ペチカは知らないし、わからないけれど――ずっと、共にあったんじゃないかしらっておもったりもするの。
ぱちり。
花と、糸と影ともまたたくペチカのもとへ挨拶にやってくる。どれだけ背伸びしたって届かぬ頭上の戦いに、ひとり取り残された。屈みこんで少女は、なんだかやっぱり同じに元気がない足元の影へ指を触れて。
「ねぇ、くらやみさん。ペチカたちにはあれは届かないのね?」
そう、影はおちるもの。右手のあかりは変わらずことことペチカを照らすけれど、それだけ。それがすこし不便で――不便だから。
くらやみさんも、飛べるようになったらいいとおもうの。
甘く乞う。囁き落とせば闇が揺蕩い――その昏いくらい胎の中へ、ひとくちに娘を招き入れた。
ッッ!
突如として後方から吹きつけた風に、誰ともなく声を上げる。
そして旋風吹き抜けた先、視線で追えば波立つ大鴉の背に身を寄せる幼子を見るのだ。
「これで届くの」
「あらあら、コノちゃんのこと笑っていられないかも」
さぞすてきな景色が拝めそう――樹上にある幽子の脇をも秒でくぐり、望み叶えた影のとりは更に高く。残り僅か、一塊となった空の黒まで。
わるものなのに、たかいところにいるなんて偉そうなのよ。
盾へと構えられた悪魔の槍に触れる端から、影刃と化したその翼で斬り刻んで。
それは捨て身の体当たり――熱持つ肉へと染みこむかのように、喰い千切るたび影はほつれゆく。すべてなくなってしまったら、背に乗ったペチカの体は投げ出されるのが自明。けれどもそうした末路をも恐れぬ風に使いの鴉は二度、三度と宙を泳いで餌を啄む。
「っハ、無茶する!」
「私が」
支えを、そう同時に飛び出しかけたコノハとイトゥカは一瞬の目配せにて意思を通じさせ。
胸を、胴を翼を、鋭利に切り開かれたレッサーデーモンが敢行した反抗の槍投げを狐男が闘気乗せ抜き放つ刃にて逸らすと同時、繊細な――しかして強かなクリスタリアンの両腕がふわんと落ち来る娘の体を抱き留めた。
爆風を押し返す青の散花は、誰をも欠けさせぬため。
ばらばらに裂かれて尚蠢こうとする怨念満ちた四肢ならば「上ですよ」好物と華やぎ、赫ゐ絲が包み込む。かたち良い唇が零す吐息はどこまでも火照ったような、憂えるような。
「二度も繰り返す物語の悪役。さぞうらめしいでしょう。えぇ、えぇ、分かります」
だからこそ、おもしろい。
しゅる、 覆った囲いがほどけたならば、血肉の一片をも余さず平らげて涼しげな赤。すこし色濃くなっただけの糸をくんと手指に巻き取って、ごちそうさまでした、女狐はしあわせそうに頬を寄せた。 空気の震えは……、悪魔らが戦慄に揺れたものか。
それとも地を這う影が波立てた?
下してくれたイトゥカの横。ランタンだけ大事に抱きしめていたペチカの足元から伸びた濃い闇は、くらやみは、ばぐんと喉を鳴らして食事を再開している。何をどう喰らおうと関せずお洋服の土を軽く払ったのち、娘は隣を見上げ。
「ペチカ、おもたくなかったかしら」
「心配は御無用。こう見えてそれなりには固いので、この身体は」
すこし屈んでやりながらふっと笑み深めイトゥカが応えるのに重なって、響く悪魔の絶叫がいくつか。ハイハイ、と相槌を打ってやるのはコノハ。
「――だからネ、ハラに入りそびれちゃったミンナも哀しむこたねぇの」
直ぐだ。
槍弾いた勢いで倒した体をさらに前へと飛ばし、逆手に握った鉱石ナイフを指の遊びでよりたべやすい形へと正しては、ペチカが墜とした生き残りへとコノハは迫っている。否、迫って"いた"。
震え突き出される魔槍を最小の傾きで頭の横へと避け、ピッと目元に引かれた血の彩すらもはや第三の目の如くに獰猛な色で嘲笑い。
このまま喰らいつきたいところだったけれど。
「今日のオレは勇者サマだから、やさしくしてアゲル」
お戯れ抜き、晒された首筋への一閃だけ。
骨割る鈍い音すら軽く、鞠のシルエットをして刎ねたそれが地面へと潰れ落ちる前に、ブルーエルフィンの群れがさらう。
ただただ、このうつくしい大地をこれ以上汚す必要もなかろうと――広がる青琥珀の海はおだやかなしとねのように。その只中で、術者たるイトゥカは片手の指で足りる数となった諸悪の根源をしずけき瞳に映した。
「此度の勇者はご覧の通り、人数が揃っておりますので。……終のお別れの時間です」
悪しきは討たれ、暗雲は晴れ。
物語の終わりはハッピーエンドと参りましょう。
はたはた、はた。
次々舞い上がった青き蝶はまたの名をちいさな妖精。希望を運ぶ風に、躍って。
光って。
咲って――――永く書きかけだった英雄譚のページを、皆の手で、めくった。
●
命が惜しけりゃあそこへ手は出さねぇ方がいい。引き渡された牢獄にたっぷり繋がれたのちクロが土産にできたのは、そんな体験談のみ。
災厄の壺はまじない重ねて地中深くへ。
リリティカまんじゅうはますます品ぞろえを増やしたし。
長の家の庭に生えていた不思議な植物はちゃんと名前をもらったし。
食べ物も本も洋服も装飾品も雑貨も、すべてそう。旧きを尊びながらも新しきかたちを取り入れて。
街中がともの道行きへ花を撒く。
みんなの旅についていきたい、マリーベルは、そうは口にしなかった。
新商品の話が続々出てるからお父さんの手伝いをしなくちゃ、なんてはにかみ笑って、だがその後ろ手には分厚い魔導書なんて隠したりして。
でも――いつでもまた来ていいわよ? 勇者の街へね! それが見送りの言葉。
フェアリーテイルは終わらずに。
あなたが守った笑顔を浮かべ。
あなたを守ったひかりを誇り。
あなたと守ったこの街を愛し。
明日からも、リリティカは伝説と生きてゆく。
――ひとつ困ったことはといえば、入り口に建てる銅像の数が土地に収まりきらないってこと!
大成功
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