7
ロスト戦記~|宵闇の襲撃者《イブニングダークネス》

#クロムキャバリア #地下帝国 #ロスト戦記 #リ・ヴァル帝国 #ロスト共和国

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#クロムキャバリア
🔒
#地下帝国
#ロスト戦記
#リ・ヴァル帝国
#ロスト共和国


0





 国際会議の開催に沸く、自由都市ウェルディン。会議初日の早朝、エリクはキャバリアに乗り込んでいた。
 ロスト共和国内部に巣食っていたテロリスト集団「バレット兵団」首領の公開処刑から4カ月。処刑されるはずだったグランマは処刑人として立ったセレネと共に連れ去られ、その行方は未だに分からない。
 エリクも八方手を尽くして探したが、彼らの行方は杳として知れない。セレネは無事だろうか。グランマに酷いことをされていないだろうか。分からないことだらけで、不安だけが先走る。
 抑えきれない気持ちを抱えたエリクに、父である大統領の補佐官をしているフユが「国際会議の期間中にセレネが現れる」という情報を持ってきてくれたのだった。
 フユが操縦するキャバリアに同乗したエリクは、無機質な通路を見渡すと首を巡らせ問いかけた。
「ねえ、フユ。本当にセレネがこの先にいるの?」
「もちろんです。我が国の諜報部は優秀ですから」
 自信に満ちた目で頷くフユに、エリクは頷くしかない。そうでなければ、無理をしてウェルディンまで来た甲斐がない。
 昨年大規模な襲撃を受けたウェルディンは、未だ復興が完全に終わっていない。かつてウェルディンの市長が提唱し、毎年開かれていた定例の国際会議の開催も危ぶまれたが、「こんな情勢だからこそ、一致団結してテロに対抗する姿勢を見せるべきだ」というロスト共和国大統領の呼びかけもあり開催されたのだ。
 エリクは留守番ときつく言いつけられていたが、同じく本国で待機していたフユがこっそり連れ出してくれたのだ。
 フユに連れられて訪れたのはウェルディン近郊、ロスト山脈の山肌に作られたウェルディン浄水場。ロスト川から取水された水は、ここで浄化されてウェルディン中に配水されるのだ。最先端の技術は周辺各国にも高く評価され、その特許技術や製品は主要な輸出品目の一つでもある。
 エリクはどうしても、セレネに会いたい。会って話したいことがある。聞きたいことがある。ようやく掴んだセレネの手がかりを無にするなんて、彼にはできなかった。
 決意を新たにしたエリクは、長い通路を抜けた先に広がる広々とした空間に目を見開いた。
 浄水場には似つかわしくない祭壇が、中庭に設置されている。社会科見学で来たこともあった場所だが、その時はこんな施設は無かったはずだ。光輝く石を祭った祭壇の前にいる三機のキャバリアと三人の女性たちに、キャバリアから飛び降りたエリクは駆け寄った。
「セレネ! 良かった無事だったんだね!」
「エリク! どうしてここに……」
 驚くセレネの隣には、グランマがいる。唇を噛み締めたエリクは、割って入るとセレネを背中に庇った。
「グランマ! セレネはテロ集団とは縁を切ったんだ! もう自由にしてあげて……」
「そんなことを話している場合じゃ……」
「エリク様、こちらへ」
 突然のエリク訪問に混乱した二人の隙を突き、もう一人の女がエリクに手を伸ばす。強引にキャバリアの中へ引きずり込まれたエリクは、自分を乗せた護衛の姿に叫んだ。
「ハル! 無事だったんだね!」
「お久しぶりですエリク様」
『儀式の準備ご苦労だった、ハル。そのままエリクシルを捕えていなさい』
「かしこまりました陛下」
 頷くハルは、キャバリアを起動させると臨戦態勢を取る。身動きできないエリクは、上空に現れた無数の機影に目を見開いた。同時に響く警報。ウェルディン市街地から響く戦闘の音を背景に、フユが高らかに宣言した。
「さあ、始めましょう。全てを起き上がらせる、終わらない宴を!」
 フユの声に呼応するように、戦闘の音がファンファーレのように鳴り響くのだった。


「仕事だよアンタ達」
 冷徹な声で言ったパラスは、状況を映し出すグリモアを見ると状況を補足した。
 大規模な国際会議が開かれる、自由都市ウェルディン。この会議を狙い、大規模な作戦が繰り広げられているのだ。
「ウェルディンは再び、戦場にされている。国際会議に合わせて集まった各国要人を狙って、大軍が動いているよ。この予知は他のグリモア猟兵がしているから任せるとして、こちらは裏で画策する連中の対処だ」
 大統領補佐官であるフユが手を回し、大統領の護衛として派遣したキャバリア部隊に加えて地中から現れた大規模な私兵を動かし、要人暗殺を狙っている。この私兵は全て、有毒装甲に覆われていて、触れれば周囲が毒に汚染されてしまう。この毒に対処することも必要だろう。
 浄水場から出撃した機体は狙撃に長け、今破壊しなければ混乱に乗じて要人暗殺に動く。
「そちらの対処も大事だが、フユは何か良からぬことを画策しているようだね。現地に残ったキャバリアに対処しながら、何か手を打った方が良いが、判断はアンタ達に任せるよ」

 現在、その場にいる全員がキャバリアに搭乗している。セレネとグランマの目的は不明だ。怪しく輝く石が供えられた祭壇の前にはアキとエリクを乗せた機体がある。その周囲には要人暗殺に使われたのと同型機が多数配備されている。

「事態は同時に進行している。できることは少ないが、それぞれ最善を尽くしておくれ」
 パラスは猟兵達を見渡すと、グリモアを展開した。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 佳境を迎えた本シリーズ。クライマックスに向けて走って参ります。

 概要はオープニングの通りです。
 今回は長野マスターの下記シナリオと連動しております。

 リ・ヴァル帝国録~|強襲者《 エミュレーター 》

 時系列が同じですので、両方の作品に参加するのは不可とします。
 また、♯ロスト戦記 のシナリオと設定を共有していますので、よろしければご確認お願いします。読まなくても全く問題ありません。

 また、こちらでは二つの選択肢から一つをお選びください。同時進行していますので、両方のプレイングを掛けても片方に参加したという扱いになります。
 第一章の成否で、第二章以降の状況が変化します。

A 暗殺部隊を迎撃する
 市街地へ向かう暗殺部隊を迎撃します。市街戦が予想されますので、市民の避難誘導などの対処もこちらでお願いします。
B 祭壇に対処する
 現在、この場にいる全員がキャバリアに搭乗しています。便宜上、フユ以外全員同じユーベルコードを使うキャバリアに搭乗しています。
 話をすることもできますので、何かありましたらプレイングまでお願いします。

 すべてのキャバリアは有毒装甲を持っていますので、これに対処するとプレイングボーナスとなります。
 それでは、よろしくお願いいたします。
143




第1章 集団戦 『60式量産型キャバリア『ユニコーン』』

POW   :    密集狙撃陣形【ファランクス・シフト】
【防衛戦線を死守すべく敵を狙撃する仲間 】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[防衛戦線を死守すべく敵を狙撃する仲間 ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    武器切替即掃射【スイッチ・バースト】
【RS-AL-059 アサルトライフル 】から【弾幕】を放ち、【その威圧効果】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    虚空からの一刺し【ユニコーン・チャージ】
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【RS-SL-058 スナイパーライフル 】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


訂正
✕怪しく輝く石が供えられた祭壇の前にはアキとエリクを乗せた機体がある。
〇怪しく輝く石が供えられた祭壇の前にはハルとエリクを乗せた機体がある。
×便宜上、フユ以外全員同じユーベルコードを使うキャバリアに搭乗しています。
〇便宜上、フユ以外全員、集団敵と同じユーベルコードを使うキャバリアに搭乗しています。
九十九・白斗
【SIRD】
毒装甲か
まあ、キャバリア相手に接近して戦うことなんてしねえから問題ないな
接近戦するようなことになったら、毒なんて関係なしに死ねるぜ

俺は高いビルにでも上って狙撃と通信妨害をしておこう
通信ができない状態だとそれだけで動きが鈍るからな
ホウレンソウを封じたら、次はビルから狙撃だ

アンチマテリアルライフルで、頭部のセンサーを破壊していこう
スコープは反射で位置がばれないように外しておく

キャバリアぐらいのデカさがあるならスコープはいらない

一応デコイを使って位置がわからないようにするが、仲間が闘ってくれているなら狙撃の位置もわかりにくいだろう

まあ、任せなパラス
軽く蹴散らしてきてやるぜ


藤崎・美雪
A
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

あー…これは
本格的に起き上がりの量産をしようという腹か?
…ま、阻止一択だな(嘆息)

事前準備として『ロスト戦記~|公開処刑《リバースセレモニー》』3章で得た情報を陽太さんと共有しておく
あ、賢者の石の現在の在処は知っているが、厳に秘匿します

祭壇対応は陽太さんに、暗殺部隊迎撃は攻撃得意な方に任せて
私は避難誘導を担当しよう
指定UCで「救助活動100」のハリセン構えたデフォルメもふもふさんを9体召喚し
「大声」で避難所への避難を呼びかけながら走り回ろう

もふもふさんは自力避難が難しい市民の救助を頼む
あ、暗殺部隊を見かけたらハリセンぶちかますがよろし
…気休めにしかならんが


木鳩・基
【SIRD】アドリブ連携歓迎
A

本当に荒事が尽きないなぁ!
何考えてるかはわかんないけど…極端なのは直感でわかる!

市街地に潜伏して【情報収集】
どの道を使って攻めてくるか、連携しつつ予測を立てよう
市民の避難誘導をこなしつつ
行軍してきた敵へUCで壁を構築
敵が狙撃特化なら近接破壊はさして得意じゃないでしょ
道を塞いで敵を壁の内側に閉じ込められたらベストかな
毒を撒き散らされたら後々困るし
街の形は変わっちゃうけど…後で元に戻すから!

基本は走行妨害と避難誘導がメイン
前線でうろちょろしても狙撃されるだけだし
囲い込みに成功したら屋上に登ってピースの大群で押し潰す!
少し運が悪かったかな?
…威張れるほど私も強くないけど




 市民の避難誘導へと向かった藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は、ネコ吉から送られる儀式場の状況に大きく嘆息した。
「あー……これは。本格的に起き上がりの量産をしようという腹か? ……ま、阻止一択だな」
「ま、こっちはこっちで仕事をするだけだ」
 美雪を後部座席に乗せたジープを運転しながらぶっきらぼうに言い放つ九十九・白斗(傭兵・f02173)は、助手席のアンチマテリアルライフルの砲身を軽く叩くと所定の位置で車を止めた。場所は市街地の裏路地。背の高い建物が密集する、迷路のようなエリアだ。
 無言で持ち場につく背中を見送った木鳩・基(完成途上・f01075)は、美雪の隣で微笑むと親指を立てた。
「こっちはこっちで頑張ろう! 敵を要人暗殺なんかに行かせないんだから!」
「そうだな。では、手筈通りに」
 親指を立て返した美雪は、ジープを降りると基と反対方向へと駆けだした。大通りの直前で詠唱を開始。やがて輝くチャームから現れた9体のもふもふな羊に語り掛けた。
「もふもふさんもふもふさん、ちょっと色々お手伝い願えるかな?」
「ンベメ!」
 もうツッコミを入れる気にもならない聞きなれた声を上げながら、もふもふさん達が敬礼する。微苦笑を浮かべた美雪は、もふもふさん達の頭を撫でるとビル街を見渡した。
 浄水場の方からも市街地からも、爆撃音が鳴り響く。ようやく落ち着いてきた生活が脅かされ、市民たちは皆逃げ惑っている。要人暗殺に向かうキャバリアも阻止しなければならないが、彼らをそのままにしておく訳にはいかない。
「もふもふさんは自力避難が難しい市民の救助を頼む」
「ンベメ!」
「あ、暗殺部隊を見かけたらハリセンぶちかますがよろし」
「ンベメ!」
「……気休めにしかならんが」
「ンベメ!」
 大丈夫だと胸を張り元気に返事をしたもふもふさん達が、避難誘導のために駆け去っていく。その背中を見送った美雪は、逃げる市民に向けて大声で呼びかけた。
「避難する人はこっちへ! 地下シェルターがあるから、そこまで頑張ってくれ!」
 大声で叫びながら、避難民を誘導する。途中もふもふさん達の手伝いをしながらも避難を進めていた美雪は、ふいに感じる悪寒に眉をしかめた。なんだか、気分が悪い。吐き気と頭痛を堪えた美雪は、次々に倒れる避難民の姿に目を見開いた。
 近くに敵キャバリアがいる。有毒装甲から漏れる毒素が、美雪や市民たちを冒しているのだ。
「大丈夫か? すぐに仲間が……」
 言いかけた美雪は、視界の端をかすめた光に顔を上げた。ユニコーンのスコープだ。狙われた子供を庇った美雪は、響く銃声に思わず目を閉じた。


 美雪を狙ったユニコーンに狙いを定めた白斗は、アンチマテリアルライフルを放つと敵キャバリアの頭部センサーを撃ちぬいた。
 白斗の役割は、避難誘導班の援護と情報攪乱。基の仕事から漏れた敵キャバリアの始末も白斗の仕事だ。敵を撃ちぬいた白斗は、通信妨害装置の起動を確認するとその場を離れた。デコイをばら撒いてあるし、現場は混乱している。スコープも外してあるから、反射の位置バレもしづらいだろう。狙撃の位置は分かりにくいだろうが、リスクヘッジはしておくに限る。
 移動しながらも、敵味方の位置を手元の機器で確認する。美雪はどうやら有毒装甲が放つ毒素から逃れて、避難を完了させたらしい。白斗も基も生身だが、風向きと接近戦に気をつければなんということはない。
「まあ、キャバリア相手に接近して戦うことなんてしねえから問題ないな」
 一人嘯いた白斗は、肩を竦めると先へ急ぐ。敵味方の動きを見ていると、通信妨害は成功したようだ。多勢の敵に少人数が勝利するには、ゲリラ戦法に限る。白斗達が立てた作戦は、ネタが割れてしまえば回避されてしまう。倒しきるには火力が足りない。
 連携を阻害し、こちらは連携を密にし、敵を倒すのではなく足止めする。それが今回のやり方だ。
 敵の通信網のみ阻害しホウレンソウを封じた白斗は、再び配置につくと基を狙う敵機に狙いを定め、撃ちぬいた。
「接近戦するようなことになったら、毒なんて関係なしに死ねるぜ」
 嘯く白斗の目の前で、敵機が大量のピースに押しつぶされていく。その様子に気付いた別動隊のユニコーンが、こちらに向けてRS-AL-059 アサルトライフルから弾幕を放った。建物の影に隠れた白斗は、銃弾の雨が止むまでやり過ごす。破壊されたガラスやコンクリートの破片が白斗を強かに打ち付けるが、防御に徹する白斗に致命傷には遠い。こんなところで死ぬわけにいかないのだ。
(「まあ、任せなパラス。軽く蹴散らしてきてやるぜ」)
 グリモアを守り戦況を見守っているパラスの顔を思い浮かべた白斗は、わずか頬を緩めると弾幕が止んだ隙に敵の頭部センサーを撃ちぬいた。


 美雪や白斗と別れ市街地に潜伏した基は、地鳴りのように響く戦闘音に思わず身体を縮こませた。荒事に何度も参加しているが、こういう雰囲気はやっぱりなじまない。
「本当に荒事が尽きないなぁ!」
 自分を奮い立たせるように呟いた基は、市街地の地図を広げると敵の進軍経路の予測を立てた。ここは旧市街に近く、道も細い。敵の目的が要人暗殺ならば、進軍ルートは自ずと予測できる。
 狙いを定めた基は、ビルの屋上に登ると仲間に配置についたことを伝えた。避難誘導は美雪に任せたから、走行妨害がメインの仕事。前線でうろちょろしても狙撃されるだけだし、倒すのではなく足止めをするのならば基にもできる。
 潜伏してしばし。音もなく進軍する精鋭部隊を見下ろした基は、すうっと目を細めると敵の武装を睨みつけた。敵が要人を暗殺して、その後何をするのか。何のためにそんなことをするのか。基には分からないが、極端なのは直感で分かる。そして得てして、極端なものは良くないものだ。
「毒を撒き散らされたら後々困るし、街の形は変わっちゃうけど……後で元に戻すから!」
 誰にともなく言った基は、詠唱を完成させタイミングを見計らうと精鋭部隊へと放った。
「解は無理やり捻り出す! やりたいようにやらせてもらうぜ!」
 突き出した腕が空中で分解し、巨腕が再構築される。敵を通せんぼするように現れた巨大な腕は、精鋭部隊の道を塞ぐように前後に展開した。
「敵が狙撃特化なら、近接破壊はさして得意じゃないでしょ」
 高いビルに囲まれた一角に精鋭部隊を閉じ込めた基は、こちらに向けられる銃口に目を見開いた。基が狙撃に気付いたから、即座に敵が狙った場所にほぼ確実に命中する訳ではない。だが、相手はキャバリア。こちらは生身。かすっただけでどうなるかは火を見るよりも明らかだ。
 巨腕を防御に向かわせるか。それでは捕えた敵を逃がしてしまう。そうなっては元も子もない。
 ダメージを覚悟したとき、銃声が響いた。基の援護に来た白斗がユニコーンの頭部センサーを撃ちぬき沈黙させたのを確認した基は、巨腕を無数の巨大ピースに分解すると物量で押しつぶしにかかった。
「私たちに当たるなんて、少し運が悪かったかな?」
 無数のピースで行動不能に陥る敵キャバリアの姿に得意げに胸を張った基は、バツが悪そうに苦笑いを浮かべた。
「……威張れるほど私も強くないけど」
 誰にともなく肩を竦めた基は、完全に沈黙した精鋭部隊を確認すると次の現場へと向かい駆け出していく。
 確認されたユニコーンを行動不能にした基は、浄水場の上空がにわかに不穏な空気に包まれるのを見ると急いで駆けだした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベティ・チェン

「死から生を生む、なら。人造賢者の石だろうと、思ってたけど。ホントに、そうか」
薄く笑う

巨神スペランサに騎乗し登場
登場と同時に敵と正対したままノータイムで誰の言葉も聞かず祭壇をスペランサ専用武装脳波対応オールレンジ用無線ビーム兵器で攻撃
それで壊れなければ何某かのバリアやシールドが張られていると考察
それっぽい機材や周囲岩壁をどんどん破壊
敵の攻撃回避させながら並行して祭壇攻撃続けさせる
自分はスペランサの偽神兵器使いUC使用
目を真っ赤に充血させ鼻血垂らしながら敵集団に突撃
操縦者は全部起き上がりだと判断しているのでどの機体も本当に物理的に動かなくなるまで油断せず叩き壊す
操縦席をぶち抜く機会があれば迷わずぶち抜く
ハルとエリクの機体も機会があれば迷わずぶち抜く
「エリクとは、この前、話した。死を選んだキミに。もう言葉は、いらない。だろ?」

グランマ達への声掛けは戦闘開始後行う
「敵は、毒装甲。キャバリアに乗った方が、いい」
「毒が流れる、なら。水源が壊れても、同じ」
「グランマと。同じ戦法を取った、だけ」


灯璃・ファルシュピーゲル
B対応
【SIRD】一員で密に報告連携

浄水場ですか…ライフライン狙いは都市攻撃の常套手段ですが
ただの無差別テロでは無さそうですね
事前に情報収集で浄水場の構造図等を自治政府を通じて
入手し把握に努める

仲間の迎撃開始と同時に自機は正面戦闘を迂回しつつ、
指定UCで爆撃機を随時召喚。
敵は祭壇を守る為に、浄水場の建屋を利用し密集で狙撃防御陣地を形成すると予想し、覚えた構造図から敵が射界を確保しやすく尚且つ動きやすい
高さ・広さのある場所を割り出し、対装甲用子弾満載のクラスター誘導爆弾を絨毯投下。確実なダメージを与えつつ、攪乱し連携妨害を図ります

うまく爆撃機の方へ敵の意識を誘導できたら、自機は密かに敵部隊側面へ回り込み、横合いを叩く形で狙撃(スナイパー・兜砕き)し頭部及び動力部に繋がる排熱機構を突いて確実に仕留めて数を減らすよう戦います

なるべく敵全体を監視し、祭壇や敵機から有毒物を上水へ送り込みそうな兆しがある場合は強硬手段として大型地中貫通爆弾を配水場への送水管ラインへ投下し阻止に動きます

※アドリブ歓迎


ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動
アドリブ及び他者との絡み歓迎
【B】

これが祭壇ですか。何やら邪な雰囲気ですねぇ。まぁ兎に角、まずは降りかかる火の粉を何とかしなければなりませんね。浄水場の水に毒が盛られる可能性も否定できません。それに、エリク様やセレネ様、グランマ様の身柄の安全を局長様より仰せつかっております。やる事が多いですねぇ。

戦闘時にUCを展開。SIRDや味方の皆様の壁役になりつつ、搭載した火器で敵を攻撃します。
わたくしの|特火点展開《ワンマン・ピルボックス》ならば、敵の攻撃や毒もほぼ無効化できます。それに第一、わたくしはウォーマシンですので毒に対する耐性は生身の皆様方より遥かに上です。


森宮・陽太
B
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

…始めやがったか!
ウェルディンの未来のために、何が何でも阻止してやらぁ
たとえ、大統領やエリュシオンを暗殺することになったとしてもな!

事前に『ロスト戦記~|公開処刑《リバースセレモニー》』3章で得た情報を美雪と共有しておく
賢者の石の現在の在処は厳に秘匿するぜ
…気にしすぎかもしれんが

巨神『ガヴェイン』に搭乗し乱入
グランマ、セレネ
ここに来た目的は…聞くまでもねぇな
以前も言ったが、俺は復讐を肯定する
復讐は、生者に与えられた正当な権利だ
これが復讐だというなら…手を貸すぜ

指定UC発動し黄金色の長剣を2本具現化
基本はグランマとセレネを護衛しつつ
接近してきた敵を長剣の斬撃で切り裂いてやる
グランマとセレネを狙撃しようとする敵を発見したら
長剣を投擲しスナイパーライフルを貫いてやらぁ

…ところで、一つ気になることが
エリクを捕らえているのは確かにハルか?
ハルは以前、リズを誘拐しようとしたところで俺らが捕らえて、ウェルディンの南地区収監所に収容していたはずだが
…いつ脱走した?


文月・ネコ吉
【B】
仲間と連携
防毒スーツを着用し、オーラ防御も重ねて有毒装甲に対処する

通信機で統哉や他の猟兵達とも情報共有し
空からの襲撃や暗殺部隊の状況も可能な限り把握して状況変化に備える

空と地下からの同時攻撃
国際会議に合わせての暗殺計画
戦渦の拡大による大量の死者
まるで生贄の儀式の様だ

賢者の石は生者の治療を促進する道具だという
起き上がり自体はオブリビオンではないらしいが
エリュシオンの、彼女達の望みは
愛する者の蘇生であるのだろうか
気持ちは分からなくはないが
だがそれはオブリビオンを生み出すという事

敵の位置と行動に注意しつつ
仲間の行動を陽動に闇纏いで隠密行動
儀式の実行を阻止するべく
要となる石を確保或いは破壊したい




 時は少し遡る。
 グリモアの光から浄水場にほど近い高層ビルの屋上に降り立った灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)は、即座に状況を確認した。
 市街地を挟んで離れた場所に見える、公共建築物らしい武骨な建屋はロスト山脈の中腹に建てられている。時刻が早朝ということもあり人の気配はあまり感じられないが、小さな赤い光が建屋の中心部に確認できる。あそこが儀式場だろう。キャバリアの望遠スコープで敵兵の配置を確認した灯璃は、未だ人影のない儀式場の様子に目を細めた。予知にあった時間まで、わずか余裕がある。この間に作戦をSIRD各員および協力猟兵に伝達しなければ。
 事前に自治政府を通じて入手した浄水場の構造図を確認した灯璃は、立てた作戦を伝えると目を細めた。
「浄水場ですか……。ライフライン狙いは都市攻撃の常套手段ですが、ただの無差別テロでは無さそうですね」
「空と地下からの同時攻撃。国際会議に合わせての暗殺計画。戦渦の拡大による大量の死者……。まるで生贄の儀式の様だ」
 真剣な目で浄水場を睨みつける文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)の声に、ラムダ・マルチパーパス(ドロイドは電気羊の夢を見たい・f14492)も大きく頷いた。
「あれが祭壇ですか。何やら邪な雰囲気ですねぇ」
 ラムダの隣で大きく頷いた灯璃は、決意を持って浄水場を見渡した。
「もし祭壇や敵機から有毒物を上水へ送り込みそうな兆しがある場合は、強硬手段に出てでも止めるしかないでしょう」
 そんなことにならなければ良いが、状況次第では浄水場の破壊も視野に入れなければならないだろう。
「敵は有毒装甲を持っているという情報もあります。各員、対毒装備をお願いします」
「わたくしはウォーマシンですので、毒に対する耐性は生身の皆様方より遥かに上です。任務は全うしますよ」
 ラムダの言葉に頼もし気に頷いた灯璃は、見取り図の暗記と解析を終るとえ迫る作戦開始時間に儀式班を振り返った。避難誘導班は既に持ち場へと向かっている。そちらの連絡を受け取った灯璃は、何も言わずに突然敵軍へ向かい飛翔するキャバリアの姿に叫んだ。
「SIRD各員へ作戦を伝達……ベティさん!?」
「ちぃっ! 追うぞ! 儀式だか何だか知らねえがウェルディンの未来のために、何が何でも阻止してやらぁ!」
 真剣な目で拳を掌に打ち付けた森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)が、ベティの後を追うように巨神ガウェインを駆って飛び出していく。
 一瞬で混乱を立て直した灯璃は、キャバリアの姿に呼びかけながら戦場へと向かった。


 他猟兵達の作戦には加わらずに神経を尖らせていたベティ・チェン(|迷子の犬ッコロ《ホームレスニンジャ》・f36698)は、エリクとフユを乗せたキャバリアが儀式場に到着した瞬間飛翔した。
 いつでも起動できるように待機させていた巨神スペランサは、ベティの操縦に応えてなめらかに飛翔する。狙うは祭壇。それを守る集団敵。敵が誰でも構うものか。
 猟兵の声が通信機から聞こえてくるが、返事もしない。誰の言葉も聞かずに展開する敵機と正対したベティは、スペランサ専用武装を展開すると脳波対応オールレンジ用無線ビーム兵器から収束させたビームを祭壇に向けて放った。
 問答無用の攻撃は、防護バリアと思われる障壁と相殺して消える。ベティの接近を察知したユニコーンは、防衛戦線を死守すべくベティに向けて一斉攻撃を開始した。味方と連携せず速攻を仕掛けたため、敵の数も装備も万全。密集狙撃陣形【ファランクス・シフト】により強化された狙撃が集中し、容赦なく装甲をえぐるがベティは構うことはなかった。
 脳波で動かしている10基1組の巨神スペランサ専用武装は、防御ではなく攻撃へと動く。祭壇と、祭壇の周囲にあるそれっぽい機材が据え付けられた周辺建屋を容赦なく破壊していく。猟兵達の声掛けに、ベティはそっけなく言い放った。
「毒が流れる、なら。水源が壊れても、同じ。グランマと。同じ戦法を取った、だけ」
 祭壇を守るように接近してきた敵機を前にしたベティは、専用武装の操作で飛びそうになる意識を叱咤すると詠唱を開始した。
「……我が為に作られし神器、その真の姿を解き放て……出でよ、ディヴァインウェポン」
 詠唱と同時に巨神スペランサの手に現れた巨神の大剣を手にしたベティは、集団敵に向けて凶刃を振るった。操縦者は全て起き上がりだろう。ならば遠慮はいらない。どの機体も物理的に動かなくなるまで破壊する。
 ただでさえ脳に負担を掛ける武装を操作しながらの詠唱は、ベティに過大な負荷を掛ける。目を血走らせ、鼻血を流しながら振るう剣の威力と吹き飛ばし力は既に常時の9倍に達していた。
 防御を捨て援護を拒み、集中攻撃に傷ついた機体を引きずるように動かしたベティの目的は、儀式の破壊。そして……。
『ベティさん!?』
 通信機から聞こえるエリクの声に、目の前が真っ赤になる。思い出すのは、最後に会ったあの夜の出来事。起き上がりは危険だ、共に来いと差し出した手を払いのけたエリク。裏切られた誠意がベティの心に新しい傷を生み、膿んだ血から吐き出した言葉は明確な殺意を乗せていた。
「エリクとは、この前、話した。死を選んだキミに。もう言葉は、いらない。だろ?」
 エリクとハルを乗せた機体のコクピットに巨神の大剣を突き出した時、一機のキャバリアが割り込んだ。


 ベティと陽太の特攻に、灯璃が即座に指示を出した。
「作戦を開始します! 各員、可及的速やかに持ち場についてください!」
「了解しました」
 その指示に頷いたラムダは、エリクの乗る機体に向けて飛翔した。浄水場の水に毒を盛られる可能性も否定できないが、今ラムダが対応すべきはそちらではない。SIRD局長からの指示を遵守できるのは、現状ラムダだけだ。
 ベティの身を削るような攻撃に紛れて、現場へ急行する。敵との戦闘は極力避け、こちらに気付いた機体のみ搭載した火器で沈黙させる。幸い敵の注意はベティに集中しているから、多少迂回して祭壇へ向かってもこちらの方がわずかに早く着くだろう。急行したラムダは、ベティの声に|特火点展開《ワンマン・ピルボックス》を開放した。
「エリクとは、この前、話した。死を選んだキミに。もう言葉は、いらない。だろ?」
 エリクの乗る機体に巨神の大剣を突き出すベティの間に割って入り、間一髪必殺の一撃を受け止める。直後感じる衝撃。ラムダ機のコクピットの真上に突き刺さった巨神の大剣は、高密度電磁防御フィールド展開状態になったラムダ機を貫くことができずに停止する。
「どいて。邪魔!」
「できかねます。エリク様やセレネ様、グランマ様の身柄の安全を局長様より仰せつかっておりますので」
 いらだちを隠そうとしないベティに、ラムダは冷静に応える。巨神の大剣と高密度電磁防御フィールドがせめぎ合い飛ぶ火の粉を浴びたラムダは、小さく苦笑いを浮かべた。まずは降りかかる火の粉を何とかしなければと思っていたが、この状況は想定外だ。
 矛が勝つか盾が勝つか。永遠に思える一瞬の後、爆撃音が響いた。灯璃が召喚した無人爆撃機が、儀式場で応戦するユニコーン達の頭上に対装甲用子弾満載のクラスター誘導爆弾を絨毯投下しているのた。
 単純で重い攻撃はベティに気を取られたユニコーンを攻撃し、その余波は地下にある浄水施設を直撃地点の周辺地形として影響を及ぼす。取水を止めずに破壊された地下配水地から溢れた大量の水は、周囲を破壊し暴れ出し大洪水となり、瓦礫もろともウェルディン市街地へ……市街地で戦う猟兵や、避難の済んでいない市民へと雪崩を打って襲い掛かる。
 そんな最悪な未来予想図は、ラムダの高密度電磁防御フィールドにより回避される。灯璃と連携し攻撃を受けきったラムダは、涼しい顔で言った。
「わたくしの|特火点展開《ワンマン・ピルボックス》ならばどんな攻撃も、毒でさえほぼ無効化できます」
 防御フィールドを展開し続けるラムダは、ようやく攻撃をやめたベティが向かう視線の先を追うと情報収集モードに切り替えた。


 巨神ガウェインに搭乗した陽太は、敵機を排除しながら儀式場へと急行した。ベティよりも少し遅れて飛翔するガウェインにも、敵は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。二機の外敵として攻撃対象になった陽太は、こちらに迫る攻撃を具現化した黄金色の長剣二本で迎撃する。
 絨毯爆撃によりダメージを受けたユニコーンを、灯璃と連携して片づけていく。やがて静かになった戦場に立ち上がる土煙の中、陽太は索敵を掛けた。今そこにあるのは、猟兵達と最初に儀式場にいた四機。伏兵がいるかも知れないが、ここを守っていた敵の排除はあらかた終わったようだ。
 グランマの搭乗した機体を見つけた陽太は、警戒する彼女に語り掛けた。
「グランマ。ここに来た目的は……聞くまでもねぇな」
「言うまでもない。邪魔をするなら……」
「邪魔はしねぇよ」
「……」
 陽太の静かな言葉に、グランマが沈黙する。銃口をこちらに向けたまま動かないグランマに、改めて語り掛けた。
「以前も言ったが、俺は復讐を肯定する。復讐は、生者に与えられた正当な権利だ。これが復讐だというなら……手を貸すぜ」
「……それじゃ、遠慮なく手を貸して貰おうか」
 に、と笑んだらしい声色に、陽太は黄金の大剣を振るった。遠距離から狙撃してくるユニコーンの弾丸を一振りで切断したガウェインは、お返しとばかりに長剣を投擲した。
 迷いなく投げられた長剣は、ユニコーンのスナイパーライフルを貫く。そのまま機関部を破壊され沈黙した機体を一瞥した陽太は、疑問符に首を傾げた。
「セレネはどうしたんだ?」
「セレネにはセレネの仕事があるのさ」
「そうか」
 頷いた陽太は、猟兵達と距離を取るハル機の姿を目で追った。ラムダ機の後ろから抜け出したハル機は、祭壇の前からフユ機の隣に移動している。エリクは未だ、ハル機の中にいるだろう。
 不気味な沈黙を保つフユ機とハル機の姿を油断なく睨んだ陽太は、さっきから感じている違和感を口にした。
「……ところで、一つ気になることがあるんだけどよ」
「何だい?」
「エリクを捕らえているのは確かにハルか?」
「間違いない」
 静かに答えるグランマに頷いた陽太は、破壊された祭壇を一瞥した。光輝く石の破壊までは至っていないが、怪しげな祭壇は既に破壊されている。なかなか大がかりな祭壇だったが、あれを作り上げるには人手も労力もいるだろう。ハルが指揮を執っていたような気配もあるが、それがなおのこと引っかかる。
「ハルは以前、リズを誘拐しようとしたところで俺らが捕らえて、ウェルディンの南地区収監所に収容していたはずだが……いつ脱走した?」
「手引きした連中がいるのさ」
 あっさり答えるグランマに、陽太は先を促す。
「去年の襲撃で、多数の重軽傷者が出た。その「救護」に駆け付けた青十字の連中が、人造賢者の石を埋め込んで「蘇生」させて、代わりに仕事させてたんだろう」
「なんだって!?」
 驚いた陽太は、思わずグランマを振り返る。死の淵にいたリズを人造賢者の石が蘇生させたのは、かなり昔のこと。それからも研究を続けていたのならば、量産体制まで至っていてもおかしくはない。死者を蘇生させることこそできなかったようだが、瀕死の重傷を治療できるというだけで利用価値は相当高い。
「賢者の石を埋め込まれた連中の中には、収監所や浄水場の職員もいた。そんなところだろう。青十字の考えそうなことさ」
「そうか」
 陽太の声に、グランマは含み笑いを浮かべるのだった。


 仲間の攻撃を隠れ蓑に祭壇へと近づいたネコ吉は、祭壇間近で闇纏いを発動させるとゆっくり近づいた。
 現場は未だに混乱している。土煙が舞い上がり視界が悪く、ほんの少し先が視認できないほどだ。この土煙の中に有毒装甲の毒素も含まれているだろうが、ネコ吉はその影響を最小限に収めていた。
 防毒スーツにオーラ防御を重ね有毒装甲と言えるほどの防御力を得、防毒・防塵マスクもしている。視界は悪いがゴーグルもしている。周囲の情報を集め、それを処理しながら祭壇に近づいていたネコ吉は、陽太とグランマの話に耳をピンとそばだてた。
 賢者の石は生者の治療を促進する道具だという。それが量産化され、実際に使われている。瀕死の重傷を負ったリズの命を救った石ならば、例えどんな副作用があっても使いたいという人間は後を絶たないだろう。
 周囲を警戒しながら祭壇の光る石に手を伸ばしたネコ吉は、ふいに感じるキャバリアの気配に慌てて振り返った。
 土煙で接近に気づかなかったが、間近にセレネ機がいる。透明になったネコ吉と接触したセレネ機は、驚いてこちらに銃口を向けた。
「誰!?」
「落ち着けセレネ。俺だ、ネコ吉だ!」
「驚かせないでよ」
 慌ててユーベルコードを解除するネコ吉に、セレネ機は銃口を下げる。ホッと胸を撫でおろしたネコ吉は、同じ方向へ進もうとするセレネに問いかけた。
「どこに行くんだ?」
「あの石を奪うの。もともとあれはグランマのものよ」
 警戒するように言うセレネに、ネコ吉は問いかけた。
「あの石は何なんだ?」
「あれは、エネルギーインゴットよ。グランマの愛機を復活させるのに必要な物。私たちはあれを取り返しにここに来たの」
「エネルギーインゴット……」
「ネコ吉達は、私たちの敵じゃないって思ってるわ。あの石を取り返すのを、手伝って頂戴」
「それは……」
 ネコ吉が返事をしかけた時、ふいに石が輝きを増した。場を埋め尽くすような光がエネルギーインゴットから溢れだしてしばし。ふいに歪んだ空間から、一機のキャバリアが現れた。
 黒い鱗粉を纏った、有毒の異形。バレット兵団の本拠地で見たキャバリアの姿に、フユが嬉しそうな声を上げた。
「よく来てくれた、エリュシオン! きみを本国外に迎えるための儀式が間に合ってよかったよ」
「フユ……」
 困惑した声を上げたエリュシオンが、キャバリアから降りるとナツの姿で猟兵達と向き合った。何か躊躇するような姿に、フユはいらだったような声を上げた。
「さあ、時は満ちた。きみがエリクと共に配水地に身を沈めれば、起き上がりは世界に広がる!」
「フユ、本当に良いのでしょうか。人間は……」
「確かに、想定よりも相当前倒しなのは認めるよ。機は熟していない。だが……」
「黙れ、フユ!」
 ネコ吉の一喝に、場がしんと静まる。注目を集めたネコ吉は、立ち竦むエリュシオンに問いかけた。
「エリュシオン。聞いていいかな?」
「なんでしょう」
「起き上がり自体はオブリビオンではないらしいが、エリュシオン達の望みは愛する者の蘇生なのか?」
「はい。私は、骸の海に落ちたロスを助けたい。彼が愛した民と共に、永遠の時を生きたいのです」
 頷くエリュシオンに、ネコ吉は切なそうに眉を顰めた。
「気持ちは分からなくはないが、だがそれはオブリビオンを生み出すという事……」
「オブリビオンとして生まれてくれれば、どれほど良かったでしょう!」
 叫んだエリュシオンは、毅然とした声を上げた。
「ロスは、骸の海に溶けたまま、帰ってきてはくれません。この世界に生まれるのは、オブリビオンキャバリアばかり。そこに、ロスは、いないのです!」
「ならば……」
「お喋りは終わりだよ、我が契約者。きみはロスをサルベージするため、私たちは起き上がりの世界を作るため、共に契約を交わしたのだ。代々続く、|四季《屍鬼》帝国と契約を!」
 邪悪な笑みを浮かべたフユの声に、エリュシオンは頷き顔を上げるとハル機へと歩み寄る。ハルからエリクを受け取ったエリュシオンは、キャバリアに乗り込むと臨戦態勢を整えた。
「私は、巨神エリュシオン。契約の下、世界の全ての人を起き上がりへと……小さなジャイアントキャバリアへと変えましょう。邪魔をするのならば、あなた方を排除します猟兵!!」
 叫んだエリュシオンは、エリクと共にキャバリアに乗り込むと毒鱗粉を放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『エヴォルグ玖號機『Diffusion』』

POW   :    狂機拡散『Trance』
【機体からキャバリアに侵蝕する鱗粉を放出。】【キャバリアの中枢を侵蝕し、暴走させる。】【人にも高い毒性を持ち、自己進化する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    黒殲拡散『Diffusion』
【感染侵蝕し体を黒く染める鱗粉を込めた刃】で攻撃する。[感染侵蝕し体を黒く染める鱗粉を込めた刃]に施された【理性低下、空気感染、凶暴化、衰弱】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ   :    国死拡散『Lost paradise』
【機体から放出される黒い鱗粉】を降らせる事で、戦場全体が【高い毒性を持つ瘴気が蔓延する死の土地】と同じ環境に変化する。[高い毒性を持つ瘴気が蔓延する死の土地]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 始まる戦闘に細く笑みを浮かべたフユは、そっと戦場を抜け出した。
 本当ならばロスト共和国正規軍の紋章が入ったユニコーン部隊が市街地を蹂躙し、要人を暗殺。その罪を全てアレス大統領に背負わせる算段だったが、思わぬ邪魔が入った。
 エネルギーインゴットによる魔法陣へのチャージを防がれたのは痛かったが、エリュシオンを本国外に連れ出せたのだから目的の半分は達成できた。
 巨神の化身に与えたキャバリアは、搭乗者をも蝕む。凡人たるエリクはもちろん、エリュシオンとて本国から出たのであれば、普通の人間と大差ない。さほど時間もかからず、骸の海に冒されるだろう。
 エリュシオンが倒されても良し。倒されなくても良し。二人が配水地に身を沈めれば完璧だが、来れなくても問題ない。
「確かに、まだ機は熟していません。失敗したとて、今回は次の機会への布石にするだけです」
 くつくつと笑ったフユは、地下配水池へと急ぐ。
 例え自分が死んでも、目的は叶う。
 誰も死なない、病も遠い。フユ達が望む死者の楽園が作られるのであれば、喜んで人柱になろう。
 ーーそして、終わりなき戦争を。
 戦闘音を背中で聞きながら、フユは通路を急いだ。

※ ※ ※
 第二章はボス戦です。
 エリュシオンが搭乗したエヴォルグ玖號機『Diffusion』を倒さなければ、フユの後を追うことはできません。
 特に手立てを講じない場合、エリュシオンとエリクは戦闘終了後起き上がりとなります。何らかの手段で防ぐことは可能です。
 セレネとグランマは、引き続きユニコーンと同じユーベルコードを使う機体に搭乗しています。グランマはエリュシオンに攻撃を仕掛けます。セレネはエネルギーインゴットを入手しようとしながら、グランマを援護します。
 要請があれば、共闘は可能です。プレイングまでおねがいします。
 長野マスターの連携先シナリオ『リ・ヴァル帝国録~|強襲者《 エミュレーター 》と同時進行していますので、両方への参加はできません。シナリオ間の移動は可能です。
 有毒装甲に対する対処をすれば、プレイングボーナスとなります。
 プレイング受付時期はタグにてご連絡いたします。

 それでは、よろしくお願いします。
灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で緊密に連携戦闘

…永遠の時をですか…可哀そうな話ですね。戦火に耐える身体に生まれ変わらせても、根本的には何も解決せずに紛争だらけの世界のままでは、心はいずれ蝕まれますよ?…永遠に苦しむ地獄がお望みですか?

指定UCで火炎放射器を搭載した無人車両と除染剤噴霧器を搭載したドローンを複数台作成召喚(損耗機分は随時生成し常に数を確保)
味方を敵の毒から除染ミストで防護しつつ、敵周囲を火炎放射で囲い込み鱗粉の拡散を極力抑える様に図り味方の攻撃を支援

同時に自身は、自機の機動力を活かして動き回りつつ、
味方の攻撃と火炎放射を目くらましに、敵の死角を見切りで突いて精密射撃を加え鱗粉を放出する敵武装や手脚の関節を優先的に狙い(スナイパー・鎧無視攻撃)敵の攻撃と機動を妨害しつつ、エリク君となるべくエリュシオンも怪我をさせない様に注意しつつ、確実に敵機にダメージを与えて弱らせて戦闘不能に追い込むよう戦います

戦闘後は除染ドローンを二人の周囲に展開、除染剤噴霧して
二人の保護に努めます

※アドリブ・絡み歓迎


文月・ネコ吉
不意打ちで予告状を石に命中させ
UCで石を奪取
だがグランマには渡さずセレネを説得

セレネ、グランマの本当の望みは何だ?
復讐か?違うだろう!
抑えきれぬ怒りで悲劇を生みたくないからこそ
起き上がりになる事を彼女は拒んだ
復讐は彼女を苦しめるだけだ
従うだけが道じゃない
大切だからこそグランマを止めるんだ!

遠隔操作で黒いキャバリア召喚し搭乗
仲間と連携し
戦いながらエリュシオンを説得
二人を生きたまま保護したい

憎しみ渦巻く地獄の中を
戦いながら生き続ける
死にたくても死ねない兵士達が
終わりなき戦争を繰り返す
そんな世界、楽園だなんて呼べるのか?

とある世界に輪廻転生という概念がある
人々の魂、いやオブリビオンさえも
その荒ぶる魂と肉体を鎮めた後に
新たな命へと転生する事が出来るんだ

お前の大切な人が骸の海にいないのは
既に輪廻の輪の中で
新たな生へと向かったのかもしれない
例え記憶を失くしても
生きて再び巡り合う為に

オブリビオンとなれば滅びを齎すは必至
彼が大切な人の未来を願い転生を選んだのだとしたら
その願いを、君の手で壊さないで欲しい


森宮・陽太
【闇黒】
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

真の黒幕はフユだったってか?
「四季」と「屍鬼」を掛けるなんざ、悪趣味にも程があらぁ

巨神『ガヴェイン』搭乗状態で真の姿解放
ガヴェイン、驚くんじゃねえぞ

セレネ、グランマと共闘しつつ
あえてエリュシオン機に吶喊しコックピットを狙う
ガヴェイン、コックピット破壊を狙いつつエリュシオンの注意を惹き続けてくれ
足元から注意が逸れれば…その時が毒鱗粉を封じる好機だ

エリュシオンの気が完全にガヴェインに向いたら
「高速詠唱、魔力溜め」+指定UCでブネ召喚
ブネをガヴェインの足元の影に隠しつつ、隙を見て一気に影経由でエリュシオン機に憑りつかせ毒鱗粉を封じてやる
放出済みの鱗粉は残るとしても、それ以上の侵食は防げるはずだ

エリュシオン機のコックピットを破壊したら
ガヴェインを自律機動状態にして攻撃を継続させつつ
俺自身はコックピットに飛び込みエリクを搔っ攫い脱出
エリュシオンが妨害するなら二槍伸長「ランスチャージ」で両腕を突き刺し怯ませる
…エリク、俺と来い

グランマ
事を成すなら今が最大の好機だ


藤崎・美雪
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

キャバリアの調達、ギリギリ間に合った!
というわけで、ラウンズ国から貸与されたクロムキャバリア『ラウンズくん3世』に搭乗し現場に急行
ただし、ラウンズくん3世の武装は一切使わない

現地に到着したら、真っ先に取水を停止
これ以上の流水は防がんとヤバい

セレネ、グランマとはもちろん共闘
この機体「ロスト戦記~|逆境の選択《アンダードッグ》」でセレネの副官が搭乗していた機体と同じだな
おそらくアレも、用意したのはフユなんだろうなあ
…となれば、毒鱗粉対策もあの時の対策が流用できる
指定UC発動し限度いっぱいまでネズミサイズのもふもふさん召喚
味方猟兵全員、セレネ、グランマ、エリク、エリュシオンに数匹ずつ取りつかせ、毒鱗粉と有毒装甲の影響を速攻で治療させよう
エリュシオンを治療するか否かは賛否両論になりそうだが
今は起き上がりにしないことが優先かと

エリュシオンよ
本当に骸の海からロスがサルベージが出来ると信じているのか?
サルベージできたとしても…それが本物のロスとの証明はできるのか?


木鳩・基
【SIRD】アドリブ連携歓迎

見覚えのある機体と毒…!
エリクがあの中にいるなら悠長に戦ってる時間もなさそう…!

味方かグランマの機体の上に乗って身体をワイヤーで固定
UCで片腕を大砲に変形
移動力度外視、攻撃力特化の超重量武装に
ヒットアンドアウェイで動いてもらって鱗粉の影響を逃れつつ
接近の度に攻撃を叩きこんで削っていく
鱗粉を被りそうになったら砲身で振り払う
付着した物質ならバッチの効果でピース化できるはず…確信ないけど!

戦闘が終わったら同じ方法で二人から毒を落とせないか試してみよう
状態自体は回復させられないけど…除去には使えるはず

フユさん、止められないのかな…
知ってる人が傷ついてくのは見ててもしんどいし


ベティ・チェン
外部スピーカーも使いセレネに警告
「セレネ。可能なら、ここから逃げろ。ナツが、全損したら。エリュシオンは、存在を残すために、キミに憑く。そうなったら、ボクは。キミを肉片にするのを、躊躇わない。…警告は、した」

「ドーモ、シビト=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
ナツフユハルを肉片にする機会があれば躊躇わない
エリクも同じ
セレネもエリュシオンに憑かれたら肉片にするのを躊躇わない

スペランサでの戦闘継続
寿命戦闘で起き上がり化が進むと考察
無事の開放はないと判断

巨神の偽神兵器でUC
貫通攻撃で敵武装ごと敵機破壊何度も狙う
固有兵器は起き上がり狙い
倒す隙は逃さない

「…オブリビオンも、敵も。全て、倒す」


ヴィルマ・ラングカイト
SIRDとして参加

レイター22より、フクス08及びハンマー05へ。現在、そちらへ急行中。こちらが戦闘に加入する迄、何とか持ちこたえてくれ。

戦場到着後、直ちに戦闘に加入。
あれが…巨神か?よかろう、相手に不足はない。こちらも全力で行くぞ。
|戦車、前へ!《パンツァー・フォー》!

可能な限りの遠距離射撃を行いつつ、ハンマー05やフクス08、他の猟兵を援護。好機を見計らい、UCで巨神を召喚する。巨神に対抗するには、巨神をぶつけるのが一番だ。

エリクは巨神の中か。悪いな、エリクを操縦席に乗せたのは、私の|PanzerkampfwagenVI AusfuhrungE《ティーガー》が最初なんでな。返して貰おうか。


ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動
アドリブ及び他者との絡み歓迎

これはまた、随分と厄介な事になりましたねぇ。よもや、巨神になってしまうとは。とりあえず、局長様に現状を報告しておきましょう。
敵は相変わらず有毒装甲の様ですが・・・のわたくしは耐えられるとはいえ、わたくしのボディの腐食が進みますので、可能な限り距離を置きます。

UCで射撃戦を展開し、他のSIRDメンバーや味方猟兵を援護。同時に、グランマ様とセレネ様の安全にも留意します。とはいえ、やはりエリク様の無事が懸念されますね。援護射撃を行いながら、巨神をわたくしの様々なセンサー等で解析、ウィークポイントを探し出し、判明すれば味方に伝達する事を試みます。




 文月・統哉との通信を終えた文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)は、不審な気配に振り返った。
 膨大な量の毒鱗粉で閉ざされた宵闇の中、隣にあったキャバリアが動く気配がする。毒鱗粉が放たれる直前、隣にいた人物とその目的を察したネコ吉は、即座に予告状を放った。
「セレネ!」
 ネコ吉の気配に気付いたセレネ機が、エネルギーインゴットに手を伸ばす。
 間一髪。セレネ機が触れる前にエネルギーインゴットに予告状が命中する。その直後、ネコ吉の黒猫袋にずしっとした重量が生まれた。
 アルダワの魔法技術によって内部は無限に拡張可能となっているにも関わらず、存在感を示す石。膨大なエネルギーを発する石を手にしたネコ吉は、セレネの声に顔を上げた。
「ネコ吉、その石をよこしなさい!」
「断る」
「なら、そのままグランマに渡してくれてもいいわよ」
「グランマにも渡さないさ」
「ネコ吉?」
 端的に言ったネコ吉に、セレネが不審そうな声を上げる。近づく気配を感じながら、ネコ吉はグランマ機を振り返った。グランマは今にも飛び掛かりそうな気配を見せながらも、機を伺っている。この宵闇のような毒鱗粉の中では、彼我の位置さえ把握しづらい。復讐に燃え戦っているグランマを見たネコ吉は、セレネに問いかけた。
「セレネ、グランマの本当の望みは何だ? 復讐か? 違うだろう!」
「それは……」
「抑えきれぬ怒りで悲劇を生みたくないからこそ、起き上がりになる事を彼女は拒んだ。復讐は彼女を苦しめるだけだ」
「起き上がりにならないことと、復讐を諦めることは別の話よ」
「従うだけが道じゃない。大切だからこそグランマを止めるんだ!」
「ここで止めたって、グランマは諦めないわ」
 諦めたように首を横に振るセレネに、ベティ・チェン(|迷子の犬ッコロ《ホームレスキリング》・f36698)が鋭い声を投げた。
「セレネ。可能なら、ここから逃げろ。ナツが、全損したら。エリュシオンは、存在を残すために、キミに憑く。だろう。そうなったら、ボクは。キミを肉片にするのを、躊躇わない」
「ありがと。でも、私はグランマの側にいるって決めたの」
「……警告は、した」
 そっけなく言い放ったベティは、巨神スペランサを駆り戦場に向かう。
 風圧を受けたネコ吉は、決意で見守るセレネの姿に小さくため息をついた。


 時は少し遡る。
 浄水場からの急報を受けた藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は、ふいに陰る朝日に空を仰いだ。開かれた目が半目になり、眉間の皺と共に閉じられるまでわずか数秒。
 グリモアの転移光から現れたのは、ラウンズ国の広告塔でよく見かけるキャラクター『ラウンズくん』……の姿を模したクロムキャバリア『ラウンズくん3世』だ。市街地に上がった人工太陽の光を背にすると、妙に神々しく見えるのは気のせいか。
 有毒装甲対策に借り受けたのだが、本当に大丈夫だろうか。不安に駆られた美雪は、湧き上がる疑惑をポジティブな事実でねじ伏せた。
「キャバリアの調達、ギリギリ間に合ったか!」
 ホッとしたのもつかの間、浄水場が闇に覆われる。有毒装甲で増幅された国死拡散『Lost paradise』が放たれたのだ。
「これは、現場に行く前にやらねばならぬことがあるな」
 ラウンズくん3世に乗り込み操縦桿を握った美雪は、急いで浄水場の当局に通信を入れた。突然の戦闘にパニックに陥っていた当局者達に喝を入れ、取水と給水を止めて貰う。これから毒を用いた激しい戦闘が予想される。市街地が断水しようが、一旦水を止めなければ二次被害が予想されるのだ。
 やるべきことをやった美雪に、木鳩・基(完成途上・f01075)が駆け寄った。
「美雪さん! 私も連れて行って!」
「基さんか。勿論だとも……って、どこに行く?」
 頷いた美雪が差し出す手に飛び乗った基は、そのまま肩まで駆け上がった。もふもふの機体は足場も多く、猟兵の身体能力ならば登り切るのにさほど時間はかからない。黒く霞む戦場を見渡した基は、真剣な声で美雪に伝えた。
「美雪さん、私の身体をキャバリアに固定してもいいですか?」
「何をするつもりだね?」
「移動力度外視、攻撃力特化の超重量武装で攻撃するの。美雪さんにはヒットアンドアウェイで動いてもらいたいです」
「おいおい。生身であの毒鱗粉に飛び込むつもりか?」
「エリクがあの中にいるなら、悠長に戦ってる時間もない! リスクは承知、でもやらなきゃ! 美雪さんがダメならグランマに頼んで……」
 真剣な声色の基に、美雪は頭を掻いた。攻撃はせずとも、援護で向かうつもりでいたのだ。ならば、基に攻撃を任せて自分は防御と移動を担うのは理にかなっている。
「分かった。だが、少しだけ待て。……もふもふさんもふもふさん、存分に励ましてあげてくれ」
 詠唱と同時に現れた144体のもふもふさんが、整列して美雪の前に並ぶ。味方猟兵から送られたデータによると、あの機体はセレネの副官が搭乗していた機体と同じ。おそらくアレも、用意したのはフユなんだろう。
「もふもふさん達は手分けして、味方猟兵全員とセレネにグランマ、エリクとエリュシオンの毒の影響を排除してくれ」
「「ンベメ!!」」
 頼りになる声で答えたもふもふさん達が、それぞれの持ち場につく。自分の元に来たもふもふさんを撫でた美雪は、肩口から聞こえる歓声に頬を綻ばせた。
「かわいい! この子、前にあの機体と戦った時の子だよね?」
「そうだ。毒鱗粉対策もあの時の対策が流用できると思ってな。……準備はできたか? ならば行くぞ!」
「もちろん」
 大きく頷いた基を確認した美雪は、ラウンズくん3世を駆り戦場へと急いだ。


 敵ユニコーン部隊の足止めを終えた基は、味方猟兵からの通信に顔色を変えた。
 今まで幾度か相対した、謎の女。他人の体を乗っ取り現れては、意味深なことを言い残し去っていく黒幕。エリュシオンは伝説の巨神だったのだ。
 以前戦った時と同じ機体に乗っているという。もう既に、戦場全体が高い毒性を持つ瘴気が蔓延する死の土地に変わってしまっている。ここは浄水場。毒に汚染された水を下流の人たちが飲んだらどうなるか。身震いした基は、駆け付けようとした足を止めた。
 生身の足で浄水場まで行くのでは、とても間に合わない。移動力という力の差に唇を噛んだ時、飛び込んできたグリモアの転移光に目を眇めた。
 追加で送られてきたもふもふな巨大着ぐるみは、さすがにキャバリアだろう。そう考えた瞬間、基の心は決まった。南方の市街地に上がる人工太陽の光を浴びながら急いで駆け寄り、もふもふの機体を登って美雪と交渉する。身体をワイヤーで固定することも考えたが、肩にある謎の出っ張りが丁度椅子になっていい感じだ。長い毛で身体を固定すれば危険も少ないだろう。あ、ちょっと座り心地と肌触りが良い。思わずワクワクした思考を叱咤した基は、小さなもふもふさんに解毒を預けると戦場へと向かった。
 この事件の黒幕の一人は、大統領補佐官・フユ。基は彼とは面識があった。常識的で物腰の柔らかい人だと思っていた。こんな大事件を起こすなんて、未だに信じられない。
「フユさん、止められないのかな……。知ってる人が傷ついてくのは見ててもしんどいし」
「そうだな。いずれ会えた時、真意を聞いてみるとよかろう」
「そうだね」
 頷いた基は、頬を叩いて気分を変えると伸ばした腕をパズルのピースに変えて、巨大な大砲に変化させた。浄水場までの距離を一気に詰めた基は、纏わりつくような毒鱗粉に一瞬息を詰めた。高い毒性を持つ瘴気が蔓延する死の土地となった戦場は、もふもふさんの補助があっても基を蝕んでいく。危険と警鐘を鳴らす理性を強引に振り切った基は、砲口をエリュシオン機に向けた。
「今は私にできることを!」
 叫ぶと同時に一撃。攻撃力に特化した砲弾はエリュシオン機の両肩に次々と突き刺さり、上体を大きくのけぞらせる。一撃入れた基とラウンズくん3世はすぐにその場からの離脱を試みるが、迫る気配に目を見開いた。
 腹筋の力だけで態勢を整えたエリュシオン機が、黒い鱗粉を纏った刃を構えるとラウンズくん3世に迫る。あの黒い刃をまともに受けたらひとたまりもない。それはラウンズくん3世も同じようだった。
「あなた方の正義を、見せてください猟兵!」
「正義……って、あんなものラウンズくん3世の装甲で受けきれる訳がなかろうが!」
「もう少し距離を取って美雪さん!」
 目の前に迫る毒鱗粉の塊を、基は砲身を振って受け止めた。いくらもふもふさんの癒しがあっても、猛毒の鱗粉塊を生身でまともに受けたらひとたまりもない。砲身をパズルのピースに変化させることで無毒化を試みる。そこに隙ができた。一時的に無防備になった基と美雪を追いかけるように、エリュシオン機が踏み込む。
 行動成功率が上がったエリュシオン機は早い。敵わないまでも迎撃しようとした時、白い光が闇を切り裂いた。


 放たれる毒鱗粉から咄嗟に吸気口を庇ったラムダ・マルチパーパス(ドロイドは電気羊の夢を見たい・f14492)は、じりと後ずさると思わず呟いた。
「これはまた、随分と厄介な事になりましたねぇ。よもや、巨神だったとは」
 キャバリアの中枢を浸食する毒鱗粉の第一波は、辛うじて防毒フィルタで防いだ。中枢への侵入は防いだが、空間を黒く染める毒鱗粉はじわりとラムダのボディを浸食していく。今はまだ表面塗装がダメージを引き受けているが、戦闘が長引けば本体への影響は避けられない。ボディの腐食が進めばいずれ動けなくなってしまい、それが中枢に及べば自律AIにも危険が及ぶ。
 現在、味方との通信も妨害され、連絡が取れない。通信可能な周波数を探りながら可能な限り距離を置こうとした時、ふいに上がる二つ目の太陽に目を眇めた。鱗粉に閉ざされた宵闇の中からも視認可能な、真っ赤な太陽。自由都市ウェルディンの南方から上がった巨大な熱源に警戒した時、通信が入った。ラムダが所属する組織・通称SIRDの局長からだ。
『……此方、グイベル01。聞こえていますかハンマー05』
「こちらハンマー05。局長ご無事でございますでしょうか?」
『私達の方は、無事です。ハンマー05、其方の状況の報告を』
 端的な返答に、ラムダはわずか安堵の息を吐いた。混戦が続く中、互いの詳細な戦況は分からない。だが、互いに互いの戦争を『任せた』のだから、局長が『無事です』というのであれば市街地の方は無事だ。問題はこちらだ。
「報告します。現在……」
 エリクが人質に取られていることも含めて端的に現状を報告したラムダに、ネリッサは少しの間を置き指示を出した。
『其方の状況は承知しました。ハンマー05。では、此方からレイター22を派遣します。それまでどうにか持ち堪えて下さい』
「ハンマー05了解。情報を水平展開します」
 それだけ言って通信を切る。味方に情報を伝達しようと試みるも、戦場内の通信は未だ阻害されていて味方の位置も把握しづらい。闇に包まれているかのような状況を打破しようと思考を巡らせた時、もふもふが飛び込んできた。
 新手か。警戒したラムダは即座に識別コードを確認する。キャバリアの概念からは少し離れた機体は美雪のものだ。機体の肩に乗った基が攻撃を、機動力を美雪が、それぞれ担当しているのだ。基の攻撃に毒鱗粉が弱まったが、後手に回ってしまっている。状況を確認したラムダは、全兵装自由斉射を放った。
「FCSオール・グリーン。射撃モード・フルファイア。全兵装照準完了。斉射開始」
 全砲門からの連続射撃に、エリュシオン機が足を止める。二人が難を逃れたのを確認した時、センサーカメラが復活した。
 ドローンから放たれる除染ミストが、空気を染める毒鱗粉を浄化していく。センサー類が復活したラムダに、灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)から通信が入った。
「……こちらフクス08。SIRD各員及び協力猟兵、応答願います」
「こちらハンマー05。局長様よりレイター22が援護に向かっていると通信がありました」
「レイター22の増援、承知しました。続けて状況の確認を願います」
「ハンマー05了解」
 端的に答えたラムダは、各種センサーで味方の状況把握に入った。黒い霧の向こうでうごめくようにしか見えない味方の正確な現在位置と、機体の破損状況。厳密には味方ではないが、グランマとセレネの状況も報告する。二人とも最初の攻撃をやり過ごし、次の一手に向けて準備をしているような挙動が感じられる。周囲を走り回る11匹のもふもふさんに目を細めたラムダは、入る通信に応答した。
『こちらピジョン58! 私達は無事! 今そっちに向かってる。到着次第、援護に回るね!』
『治療はもふもふさんに任せてくれ。エリュシオンを治療するか否かは賛否両論になりそうだが……今は起き上がりにしないことが優先と思い、行かせたぞ』
『問題ありません』
 灯璃の返答に一部から不服そうな気配もあるが、発言は無い。
「となると、やはりエリク様の無事が懸念されますね」
 エリクは生身のまま、エリュシオン機に搭乗している。センサーを向けたが、詳細な状況までは掴めない。熱源反応はあるから、まだ死んではいないようだ。
「これより、皆様の援護と巨神の解析に入ります」
『了解。各員、戦闘配置についてください』
 灯璃の声に返事を返した時、火炎放射が闇を裂いた。


 味方を除染ミストで防護した灯璃は、指示を出すと同時に生成した火炎放射器搭載の軍事車両をエリュシオン機に差し向けた。エリュシオン機にダメージを与えるためには、まず毒鱗粉を除去するのが先決だ。
「目標は毒鱗粉の焼却、及びエリュシオン機の足止めです。ーーFeuer!」
 灯璃の号令と同時に、四方から火炎が放たれる。炎に包まれ薄くなる毒鱗粉に、エリュシオン機が軍事車両を薙ぎ払う。あっさり吹き飛ばされた軍事車両が鉄くずとなり視界の外に消えるが、即座に新規車両を召喚する。除染ミストの散布も順調だ。モニタ類も復活の兆しがあるが、宵闇のような毒鱗粉は一定以上はどうやっても濃度が下がらない。
「何か、あるのかも知れませんね」
 呟いた灯璃が原因を探ろうとした時、黒い影が動いた。
 無言の敵意を感じた直後、灯璃は反射的に銃身を構えた。瞬時に飛び出したエリュシオン機が繰りだした、鱗粉を込めた刃が銃身に食い込む。散る火花の向こう側から狂気めいた気迫で迫るエリュシオン機を、灯璃は真っ向から見据えた。
 美雪と言葉を交わした後から、エリュシオンは何も言わない。浸食が進んでいるのか。ならば心配なのは、同乗しているエリクだ。
「エリク君、聞こえたら返事をしてください!」
「……か、り、さん?」
 弱弱しく答えるエリクの声に安堵したのもつかの間。圧を強めた攻撃に、灯璃は眉を顰めた。封印を解いたのは理性低下か凶暴性か。いずれにせよ、寿命が削られれば起き上がりへの階段をひとつ登ることだろう。唇を噛んだ時、ふいに圧が緩んだ。
「グランマ。事を成すなら今が最大の好機だ」
「言われなくても!」
 冷徹な声を上げた森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)が、巨神ガウェインから連続攻撃を仕掛ける。勢いよく吶喊した陽太は、執拗にコクピットを狙っているようだ。刃で応戦するエリュシオンに、無数の銃弾が突き刺さった。グランマが陽太と共闘しているのだろう。二人の攻撃に気を取られた隙を突き刃から逃れた灯璃は、距離を取ると気配を消した。
 戦闘中も収集し続けた情報で、エリュシオン機の有毒装甲が破壊されたのは把握済みだ。だが、宵闇を思わせる毒鱗粉は未だ消えていない。どういうことか、一瞬思考を巡らせたが考えて答えの出るものではない。
 思考を切り替えた灯璃は、スコープを覗き込むとMk 88 Bushmaster SOPⅢから銃弾を放った。
 消音機で消された銃声が、わずかに空気を震わせる。灯璃が放った銃弾はエリュシオン機の脚部関節を貫き破壊する。続けて2発。機動を奪われたエリュシオン機が膝をついた時、ふいに視界が晴れた。宵闇のような鱗粉が消え通信が復活した瞬間、膝をついたエリュシオン機に声が響いた。
「グスタフ! 全て薙ぎ払え!」
 詠唱と同時に放たれるグスタフの砲火に、エリュシオン機は咆哮のような声を上げるとガウェインに刃を繰り出した。


 時は少し遡る。
 戦場に昇った人工太陽を背に浄水場へと向かったヴィルマ・ラングカイト(パンツァー・ヴィルマ・f39899)は、モニタリングを続ける浄水場の状況に唇を噛んだ。
 祭壇があった中庭は今、夜の闇のように濃い鱗粉に包まれている。通信と連携を阻害し、エリュシオン機を強化する宵闇に閉ざされた戦場では全力を出し切れず、苦戦を強いられているという。この宵闇を何とかしなければ、いずれ犠牲が出てしまうだろう。PanzerkampfwagenVI AusfuhrungEを駆ったヴィルマは、唯一通じる周波数で通信を開いた。
「レイター22より、フクス08及びハンマー05へ。現在、そちらへ急行中。こちらが戦闘に加入する迄、何とか持ちこたえてくれ」
『フクス08了解』
『ハンマー05了解』
 端的な答えが返ってきた直後、浄水場の闇が少し晴れる。姿を現したエリュシオン機は、人工太陽に照らされて禍々しい姿を露わにした。
「あれが……巨神か?」
 事前情報では、「以前交戦した時と同じ機体に搭乗している」とあった。ヴィルマも直に相対した相手だが、あの時とは比べ物にならないほどの禍々しさだ。
「よかろう、相手に不足はない。こちらも全力で行くぞ。|戦車、前へ!《パンツァー・フォー》!」
 決意を新たに再加速した時、エリュシオン機が射程に入った。スコープ越しに見えるエリュシオン機に向けて主砲を放つ。絶妙なタイミングで放たれた砲撃はしかし、空中に現れた小型機によって阻まれた。眉を顰めたヴィルマは、センサーで戦場を再サーチする。
 エリュシオン機の周囲に、何かが浮いている。更に連続して攻撃を仕掛けるが、まるで何かの意思を持ったかのように攻撃を通そうとしない。
 更に近づいたヴィルマは、センサーが捉えた物体に口の端を歪めた。
 蟲だ。多数の小さな蟲が何らかの振動を発する度に、周囲の鱗粉が濃度を増す。何かーーおそらくはフユ機が何らかの目的を持って残したのだろう。こちらに攻撃を仕掛けて来ないが、宵闇のように戦場を閉ざす異常な鱗粉の正体はあれか。
「馬鹿にしてくれるな!」
 怒りも露わにしたヴィルマは、詠唱を開始すると巨神を召喚した。
「出番だ、グスタフ!」
 ヴィルマの召喚に応えて現れたのは、西洋のドラゴン型巨神キャバリア『G-O-リアス』。
大きな翼を羽ばたかせるグスタフと呼ばれた巨神は、エリュシオン機を遠目に睨むと咆哮を上げた。同じ巨神同士、何か通じるところがあるのかも知れない。巨神に対抗するには、巨神をぶつけるのが一番だ。
「グスタフ、周囲の蟲を全て捕捉後、私に構わずエリュシオン機に向かえ!」
 ヴィルマが指示した直後、グスタフは戦場に向けて真っすぐ飛翔する。グスタフとヴィルマは、標的を共有できる。召喚されたグスタフが上空から捕捉した全ての蟲に照準を合わせたヴィルマは、一斉に砲門を開いた。
 狙いたがわず放たれた砲弾が、蟲を次々に撃破していく。一匹破壊されるたびに戦場の闇が薄れ、夜が明けていく。エリュシオン機を有効射程内に収めたヴィルマは、一気に攻撃を仕掛けた。
「グスタフ! 全て薙ぎ払え!」
 同時に放たれたグスタフのブラスターキャノンが、膝をついたエリュシオン機に突き刺さる。有毒装甲を完全に破壊されたエリュシオン機は、苦し気な咆哮を上げると間近にいるガウェインに刃を繰り出した。


 巨神ガウェインに搭乗した陽太は、真の姿を現わしたままエリュシオン機のコクピットに向けて攻撃を仕掛けた。
 白のマスケラに包まれた陽太の表情を、窺い知ることはできない。初めて搭乗中に真の姿を現わした陽太に、ガウェインは驚いたような気配をさせたが今はそれも感じない。
 ガウェインに信頼の念で応えた陽太は、グランマに視線を送るとエリュシオン機に吶喊を仕掛けた。エリュシオン機はこれまでの度重なる攻撃でダメージが積み重なっている。
「グランマ。事を成すなら今が最大の好機だ」
「言われなくても!」
 端的に答えたグランマは、アサルトライフルを構えると一斉掃射した。狂ったように刃を振り回すエリュシオン機は、憎悪で放たれる無数の銃弾に動きを止める。猟兵達の攻撃を援護した陽太は、灯璃の通信に返信を返すエリクの声に方針を確定させた。
 エリクが生きているのなら、全力であの機体から引きずり出す。決意した陽太は、エリュシオン機に吶喊を仕掛けた。
 突然の攻撃に怯んだエリュシオン機は、顔を上げると銃弾に構わず黒鱗粉に染まった刃を振るった。
 接近したガウェインに向けて、刃が振り下ろされる。装甲で受け止めたガウェインは、凶暴化したエリュシオンのコクピットに向けて拳を突き出した。腹を強かに打ち付けられたエリュシオン機が怯んだ隙を突き、執拗にコクピットを攻撃する。黒い刃で抵抗するが、グランマの援護でそれもしきれない。
 コクピットカバーに手を掛けたガウェインは、力任せに引きちぎった。露わになったコクピットには、二人の姿があった。
 闇色に染まった操縦席にいるのは、血の涙を流すナツとエリク。憔悴しきった顔のエリクは、外気に触れるとゆっくり顔を上げる。猟兵達の姿に弱弱しい笑みを浮かべるが、それが精一杯のようだった。
 エリクとナツの姿を目の当たりにした陽太は、眉を顰めると詠唱を開始した。一瞬だけ見えたエリクは、ほとんど意識を失いかけている。あれだけの毒鱗粉の渦中にいてまだ無事だったのは良かったが、もう長くはもたないだろう。
「まずいな。急いだほうがいい。ーーガウェイン、そのままエリュシオンの注意を引き付けていてくれ」
『承知した』
 答えたガウェインが、大きな動作で攻撃を仕掛け続ける。後退したエリュシオン機がコクピットを片手で庇いながら出鱈目に刃を振り回すが、構わずコクピット破壊を狙い攻撃を続けた。ガウェインに自律行動で攻撃させた陽太は、ユーベルコードを解き放った。
「竜の姿取りし強壮な悪魔ブネよ、彼の霊と共に彼奴等の力を削ぎ落とせ!」
 陽太の召喚に応じて現れた悪魔ブネは、小さく咆哮を上げると配下の精霊と悪霊を呼び出した。ガウェインとの戦いに気を取られたエリュシオン機は、足元の様子など気にも留めない。エリュシオン機の影に悪魔ブネ達を取りつかせた陽太は、素早い身のこなしでコクピットから抜け出すとエリュシオン機に向かった。
 陽太に気付いたエリュシオン機が毒鱗粉を放とうとしたが、ユーベルコードは発動しなかった。
 悪魔ブネによりユーベルコードを封じられたエリュシオン機が一歩下がる。その隙にコクピットに飛び込んだ陽太は、青い顔のエリクに手を伸ばした。
「……エリク、俺と来い」
「……うん」
 頷いたエリクが必死に手を伸ばそうとするが、指先が動いただけだった。エリクを引っ張り出そうと更に手を伸ばした時、ふいにエリクの体が宙に浮いた。
 ナツがエリクを突き飛ばしたのだ。エリクを受け取った陽太は、真下に待機するキャバリアに視線を投げるとエリクの身柄を預けた。
「ヴィルマ! エリクを頼んだぜ!」
「承知した。--エリュシオン」
 コクピットの中にいるエリュシオンに、ヴィルマは声を上げる。エリクを支えたヴィルマは、血の涙を流す姿に笑みを浮かべた。
「エリクを操縦席に乗せたのは、私の|PanzerkampfwagenVI AusfuhrungE《ティーガー》が最初なんでな。返して貰おうか」
「ーー」
 エリュシオンが何かを言いかけるが、意味のある言葉にはならない。コクピットに戻った陽太がエリュシオンに問いかけようとした時、影が動いた。


 宵闇の鱗粉に取り巻かれたベティは、巨神スペランサに搭乗したまま静かに好機を伺っていた。
 ユニコーン部隊を殲滅するために、先陣を切って飛び出した。味方の援護も、声も意見も何も聞かずに吶喊したことに後悔はない。ただ己の正義に従い、行動しただけ。
 結果として巨神スペランサはダメージを負い、膨大な量の毒鱗粉の浸食を食い止めるために沈黙と潜伏を選択せざるを得ない。ベティは戦況を伺いながら、時を待った。
「あなた方の正義を、見せてください猟兵!」
 エリュシオンの声に、心の底から軽蔑の笑みを浮かべる。敵が、屍人が正義を語るなど片腹痛い。敵は倒す。肉片になるまで磨り潰す。それが誰であろうとも。
 戦況を注意深く伺っていたベティは、エリュシオン機に視線を送った。起き上がりを、オブリビオンを量産する敵の親玉。
 アレがユーベルコードを使うたびに、凶暴性が増している。特に刃を使った攻撃を仕掛けた後でその傾向が顕著だから、寿命戦闘で起き上がり化が進むと考察。同乗しているエリクも同様だろう。
 無事の開放はないと判断。ならば叩き潰すのみ。
 あれを止めない限り、|起き上がり《敵》は増え続けるのだから。
 起き上がり、の思考にベティはセレネを探した。宵闇の毒鱗粉の中では最初、誰がどこにいるのか把握できなかったが、その宵闇も少しずつ晴れてきている。ネコ吉と話をするセレネを見つけたベティは、二人の話に割って入った。セレネは起き上がりだが、敵ではない。二秒前と今現在は。
「セレネ。可能なら、ここから逃げろ。ナツが、全損したら。エリュシオンは、存在を残すために、キミに憑く。だろう。そうなったら、ボクは。キミを肉片にするのを、躊躇わない」
「ありがと。でも、私はグランマの側にいるって決めたの」
 微笑んでいるような声色のセレネに、気持ちがスッと冷めていくのを感じる。ベティが差し出した手を、出した警告を、払いのけられた。所詮、分かり合えない。ならば、いずれ磨り潰すまで。
「……警告は、した」
 冷徹な声を投げたベティは、気配を消すとエリュシオン機と距離を取った。戦いは進み、エリュシオン機は満身創痍。機は満ちた。今すぐにでも攻撃を仕掛けたいが、陽太とヴィルマが邪魔だ。今行ってもどうせ止められる。ベティは経験上それを知っていた。
 やがてエリクが救助され、エリュシオン機から二人が距離を取る。一緒にエリクも磨り潰したかったが、それは別の機会に譲ろう。今倒すべき敵はただ一人。潜伏の時は終わった。
「ドーモ、シビト=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
 吠えたベティは、巨神の大剣を構えると一気に振り切った。ベティから150m先までの直線上に放つ「神殺しの斬撃」は、途上にある全てのものを両断して敵に届く。大地を割り、建屋を砕く斬撃は、エリュシオン機を真っ二つに叩き割った。
 元より満身創痍の機体が、神殺しの斬撃により崩壊を始める。搭乗していたナツの身体も縦に両断されるが、ベティの気がそれで収まるはずもない。
 地面を蹴りエリュシオン機に取りついたベティは、倒れた機体に馬乗りになると凄惨な笑みを浮かべた。
 振り上げた巨神の大剣を振り下ろし、叩き潰す。何度も。何度も。機体が破壊され毒鱗粉に砕け風に乗り消え、搭乗していたエリュシオンも、ナツも、そのどちらもぐちゃぐちゃに磨り潰す。丹念に刻み、破壊し、踏みにじる。もう二度と起き上がれないように。もう二度と立ち上がれないように。
 何かに取り憑かれるように敵を破壊するベティの機体に、ネコ吉機がそっと触れた。
「……おい、もういいだろう」
「……オブリビオンも、敵も。全て、倒す」
「もう倒した。少し落ち着け」
 ネコ吉の言葉に、ようやく手を止め顔を上げる。手の中にあるのは、ただの赤い塊。もはや人間だったことさえ分からない肉片を見下ろしたベティは、ふいに浮かぶ光球に再び巨神の大剣を構えた。



 かつてナツと呼ばれた肉塊は、再生を始めている。その上に、光球が浮かんでいた。あれがエリュシオンだ。直観的に悟ったネコ吉は、エリュシオンの言葉に耳を傾けた。
「……私が作る楽園は、どうあっても、受け入れられない。それが貴方たちの正義なのですね」
「憎しみ渦巻く地獄の中を、戦いながら生き続ける。死にたくても死ねない兵士達が、終わりなき戦争を繰り返す。そんな世界、楽園だなんて呼べるのか?」
 諭すようなネコ吉の声に、エリュシオンは小さなため息をついた。
「この世界は戦いばかり。戦争は死を呼び、死は悲劇を生みます。悲劇を未然に防ぎ、永遠の時を紡ぎ続ける。受け入れてしまえば、隣人が全て起き上がりとなれば、常識も書き換わることでしょう。なのに……」
「永遠の時をですか。……可哀そうな話ですね」
「可哀、そう?」
 憐れむような灯璃の声に、エリュシオンは戸惑いの声を上げた。理解できないようなエリュシオンに、灯璃は諭すように言った。
「戦火に耐える身体に生まれ変わらせても、根本的には何も解決せずに紛争だらけの世界のままでは、心はいずれ蝕まれますよ? ……永遠に苦しむ地獄がお望みですか?」
「ならば、戦いをやめれば良いのです。私は人の心に干渉しません。人は人の意思で戦いを続けたまで。きっと……人は戦いが、戦争が好きなのでしょう」
 エリュシオンの言葉に一瞬押し黙る。そう。人間は結局、戦い続けている。今もどこかで戦火は絶えず燃えている。どうすればいいのか。灯璃はその問いに、明確な答えを出せるだろうか。考え、口を開こうとした時、エリュシオンが続けた。
「それとも、『真なる永遠の平和』を望みますか? あなた方がそれを望むのでしたら、私は何も口を出しません」
「『真なる永遠の平和』? それは一体……」
「ロスが望んだ、平和な世の中。その真意は、失われてしまいました。その答えを知りたい。それもまた、ロスをサルベージしたい理由の一つです」
 静かに語るエリュシオンに、黙って話を聞いてた美雪が静かに口を開いた。
「……エリュシオンよ。本当に骸の海からロスがサルベージが出来ると信じているのか?」
「無論。そのために骸の海を汲み上げたのですから」
「サルベージできたとしても……それが本物のロスとの証明はできるのか?」
「それは……」
 美雪の言葉に、エリュシオンが口を閉ざす。そんなことは誰にもできない。ロスだと証明することも、ロスじゃないと証明することも。
 黙り込んでしまったエリュシオンを諭すように、ネコ吉がそっと寄り添った。
「……とある世界に輪廻転生という概念がある」
「輪廻転生……」
「人々の魂、いやオブリビオンさえも。その荒ぶる魂と肉体を鎮めた後に、新たな命へと転生する事が出来るんだ」
「……」
「お前の大切な人が骸の海にいないのは、既に輪廻の輪の中で新たな生へと向かったのかもしれない。例え記憶を失くしても、生きて再び巡り合う為に」
「そう……ならば素敵ですね」
「オブリビオンとなれば滅びを齎すは必至。彼が大切な人の未来を願い転生を選んだのだとしたら、その願いを、君の手で壊さないで欲しい」
「……もし、ロスが、ロスの魂がまだそこにあるのなら、もう一度会いたいです。私はもう……」
 答えを返そうとするエリュシオンに、ふいに腕が伸びた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『エヴォルグ漆號機『Rust』』

POW   :    RustBelt
装備中のアイテム「【EP腐蝕蟲鞭腕『Rust』】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD   :    RustScene
自身が装備する【4本のEP腐蝕蟲鞭腕『Rust』】から【粘着性の液状腐蝕網】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【腐蝕と拘束】の状態異常を与える。
WIZ   :    RustCall
【4本のEP腐蟲鞭腕『Rust』から腐蝕液】を降らせる事で、戦場全体が【腐蝕液で満ちる戦場】と同じ環境に変化する。[腐蝕液で満ちる戦場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「そこまでですよエリュシオン様」
 ふいに聞こえる声に猟兵達が戦闘態勢を整えるよりも早く、腕が伸びた。肉塊から再生したナツは、手を伸ばすとエリュシオンを抱きしめた。まるで愛し子を抱く母親のような笑みを浮かべたナツは、そのままエリュシオンを取り込むとゆっくり起き上がった。
「エリュシオン様。私は幾度となくあなたに身体を貸し、その魂の形を学びました。有毒装甲と猟兵との戦闘で消耗した今、ようやく私が優位に立つことができる。キャバリアの中で、エリクの因子は取り込み済。ーーああ、この時を、どれだけ待ち望んだことか」
 聖母の笑みを浮かべたナツの周囲に、無数の蟲が現れる。即座に仕掛けた猟兵達の攻撃は、蟲のバリアに防がれてしまう。にっこり微笑んだナツは、蟲に支えられ宙に浮かぶと両手を広げた。
「さあ、時は満ちました。エリクの因子とエリュシオンの魂を宿した私は|『ジルド帝国』の末裔《アロンダイト》の子を孕み、二人の子をもうけましょう。その子たちは、この世界に『真なる永遠の平和』を齎すのです。|屍鬼帝国初代皇帝《ロス》の、|現皇帝《フユ》の、望みを叶えるために!」
 高らかに笑ったナツの姿が南に消える。
「真の黒幕はフユだったってか? 「四季」と「屍鬼」を掛けるなんざ、悪趣味にも程があらぁ!」
 叫んだ陽太は、ガウェインで飛翔するとナツを追いかけた。

※ ※ ※
 第三章はボス戦です。
1.長野聖夜MSの連携先シナリオ:リ・ヴァル帝国録~|強襲者《 エミュレーター 》との同時参加は不可とします。
2.両シナリオの戦場は極めて近い場所になります。皆様には、どちらの戦場に主軸を置くのかを選ぶという形で、行先を決めて頂けますと幸甚です。
3.『戦場全体に効果を及ぼす』ユーベルコードは、参加したシナリオにのみ、効果を発揮します。
4.敵は絶対先制で『RustCall』を使用します。
 この為、先ずは上記UCに何らかの形で対応するプレイングが必要となります。
 尚、上記UCは、複製・反射・無効系のUCの効果を無効とし、且つ『1度使われたユーベルコード』の制限等にも掛かりません。
5.敵は生身を汚染する『有毒装甲』で覆われています。その為、『有毒装甲』から放たれる毒に何らかの対策を取って下さい。
6.エリクは解毒と治療の結果、生存しています。特にプレイングが無ければ、このまま病院へと運ばれます。
7.グランマとセレネは健在です。特にプレイングが無ければ、このまま姿を消します。お声がけがあれば、援護として駆け付けます。使用UCは同じです。
8.ナツは無数の蟲を引き連れた状態で強化型ユニコーンに搭乗しています。捕えたアロンダイトを連れ去ろうと近づき、フユはそれを援護します。何も手を打たなかった場合、二人はいずこかへと立ち去ります。ナツ機を止める行動はプレイングボーナスとなります。
9.フユ機を倒せば、ナツを捕えることができます。それ以前に捕えるのは、蟲が妨害しますので難易度が跳ね上がります。
10.エリュシオンはナツに囚われています。声を掛けることは可能です。

 プレイング受付開始時期は、タグにてお知らせいたします。
 それでは、良き戦いを。
雁帰・二三夫
30m級竜型巨神G-O-リアス|3号機《トレス》で参戦
アロンダイトを奪わせない為エリュシオンをナツから引き剥がす
砲撃はトレスに任せ説得と回避(操縦)専念
先制攻撃はUCで回復

「ナツさんの中に居るエリュシオンさん。起きて下さい。貴女がここで人を全てジャイアントキャバリアに変えても、ロスさんは多分サルベージ出来ません。不当契約を結んだままでいいんですか」

「貴女が苦心惨憺してもロスさんに会えなかったなら、それはもうアプーチの仕方が間違っているのです。ロスさんに近しい貴女が国1つ試して達成出来ないなら、それを世界に広げても無駄です」
「ロスさんが生きて死んだ世界がここではないと考えます。落ちた人間が元の世界を知覚していることはまずありません。比較出来る他者だけが、どの世界から落ちたのだろうと推測するだけです。わたくしは貴方達が、ブループラネットから落ちてきた屍人だろうと思っています。ならば貴女がすべきは、殲禍炎剣を排して界を超え、ブループラネットでロスさんを喚ぶのです。協力出来る範囲で協力しますよ」


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で連携
真の平和ですか…|無限の戦争《生き地獄》で心が壊れた臣民なら、
さぞかし、貴方々には都合のいい国民になるでしょうね?

先ずは戦闘区域の安全確保、
UC:Nebel des Kriegesで黒霧を放出し腐蝕液という現象を極力、吸収中和し除染を図り仲間の戦闘を支援。

ある程度、腐蝕影響を低下させられたら、指定UCで周囲の1・2章で無力化した敵部隊を利用し対空車両及び機関銃兵部隊を創出。数に対しては数で対抗と、飽和攻撃で蟲迎撃に当たらせボスの防衛陣の無力化に努めます

自身は突発的な状況に備え、敵味方の動きも含め、なるべく戦場全体を監視するよう【情報収集】しつつ戦闘にあたり、局長にも逐次情報交換を実施。同時に、仲間の攻撃等でボスの動きに隙がある時は即時に腕を集中狙撃。腐蝕攻撃を妨害し味方の攻撃支援にあたります

結局の一足飛びの平和なんてありませんよ。毎日、戦争があるのと同時に毎日、どこかで戦争を止めるため動く人達がいます。平和は、日々積み重ねられた先にのみある道ですよ

アドリブ・絡み歓迎


森宮・陽太
【闇黒】
【POW】
アドリブ連携大歓迎
引き続き真の姿で巨神『ガヴェイン』搭乗

ちっ!
勢いでナツを追いかけたらフユが割り込んできやがった!
しかも狙いはアロンダイトの子だぁ!?
悪趣味を崇高だと勘違いするてめぇらこそ
この世界の真の「敵」だ!
(人格変更、陽太から『零』へ)

ガヴェイン、驚かせてすまない
屍鬼帝国とやらの所業には俺も怒っている
…帝国を殺す暗殺者になろう

先制攻撃の腐蝕液は「ジャンプ」して「空中戦」しつつ回避
フユ機の攻撃の要らしき4本腕を速攻焼き尽くし無力化を図る
ガヴェイン、獄炎連華弾(指定UC)発動
「属性攻撃(炎)、制圧射撃」で炎弾を連射し、腐蝕液を蒸発させつつ4本の腕に炎弾を集中し焼き尽くせ
ついでにナツ機にも炎弾を浴びせ、蟲の焼却を狙え

…ただ腐蝕液を蒸発させ、蟲を焼くだけと思ったか?
本命は炎弾による制圧効果のほうだ
4本腕が無力化したら飛翔しフユ機に接近し
右手に黄金剣を構えコックピットを両断する

フユ機を無力化したらナツ機を追いかけ背後から両断
エリュシオン、これは本当に貴様の望んだ形か?


藤崎・美雪
【闇黒】
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
2章に引き続きラウンズくん3世搭乗中

あーなるほど…屍鬼帝国ねぇ
名前が四季で統一されているとは思っていたが、そういうことでしたか
しかもリ・ヴァル帝国皇帝アロンダイトとの子をもうけるとな?
それ、はっきり言って大変趣味がよろしくないぞ

…ま、今のフユやナツには言うだけ無駄か(嘆息
一応、ダメもとで先輩(敬輔)とアインさんに通信を入れて知らせておこう

絶対先制の腐蝕液は、一か八か高い場所に逃げて回避
有毒装甲はラウンズくん3世に乗っていれば防げるが
ぶっちゃけ武装は使いたくないんだ…ネタだから
というわけで、2章同様「鼓舞、元気」+指定UCで限度いっぱいまでもふもふさん召喚し、猟兵達に取りつかせて回復と治療をば

お二方、詭弁はそこまでにしておけ
私にはあなた方の言う『平和』が『闘争』と聞こえるのだが

ところで…大統領はこの件、存じているのか?
念のため、一連の流れは映像に収めさせていただいて
終わったら大統領に突き付けてやろう
(ラウンズくん3世の目に仕込んであるカメラ起動し録画)


文月・ネコ吉
仲間と連携して行動
防毒スーツ着用
可能ならキャバリア搭乗
オーラ防御と建物や廃材を盾に腐蝕液を回避


グランマを説得
協力可能なら石も渡す

フユの目的の一つは
エリュシオンのオブリビオン化だろう
民に生きる力を授けても
戦争は止まらず人々は殺し合う
憂う彼女を取り込めば
起き上がり達の全てを屍人として
屍鬼帝国の民とする事も容易だろう

その中にはセレネも含まれる

グランマ
俺は復讐なんぞに同意する気はない
過去に囚われたまま破壊して命を奪って
それじゃオブリビオンと何が違うんだ?
だからこそ問いたい
復讐の先に描く真意を
その先に護りたい者の未来はあるのかを

俺はエリュシオンを救済したい
協力してくれないか?


戦闘しながらエリュシオンに呼びかけ
ナツの意識に隙を生じさせて捕縛する

屍鬼帝国初代皇帝か
だが現屍鬼帝国にロスはいない
屍人ならキャバリアでなくとも何度だって蘇る筈なのに
それでもいないという事は
それはロスの願いではないのだろう
目を覚ませエリュシオン
真なる永遠の平和とは何なのか
君と民の歩む未来を奪う事が
本当に彼の願いだと思うのか?


ベティ・チェン
エリク見る
「今日が、シャドランなら」
このまま憂いを断ったのに

「ドーモ、シビト=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
UC使いスペランサで強引にフユに吶喊
専用武装のオールレンジ用無線ビーム兵器はナツを攻撃
皇帝への接近邪魔しナツ機頭部破壊狙う
自分は炎属性乗せた巨人用偽神兵器振り回しフユと蟲を焼き払う
「握り潰すだけじゃ、ダメ、なら。炭も残さず、焼き払う。何百回も、炭にして。まだ、キミでいられるか。試そう」
敵の攻撃は素の能力値で回避

「次の目星が、ついた、から。ナツがフユを見捨てるのは、当たり前。だから、キミは。永遠に、ここで、死ね」
フユとして再生出来なくなるまで跡形もなく燃やし尽くすのを延々繰り返す


ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動

はてさて、厄介な事になってきましたねぇ。屍鬼帝国やらジルド帝国やら、局長様に伝えねばならない事が山積みです。とりあえず、エリク様を無事に救出できましたが…まずは、目の前の敵を排除致しましょう。毒や腐食に対しては、わたくしはともかく、他の猟兵の皆さんへ損害が出てしまいますしね。

まずは、ナツ機を何とかしなくてはなりません。搭載した火器全てを使用した全力射撃を行い、蟲を可能な限り排除。取り巻きの蟲が一時的にでも減少し、空白が出たらすかさずUCのアンカーをナツ機へ射出、ウィルスソフトを注入し、行動を阻害します。

アロンダイト様が連れ去られたら、局長様に面目が立ちませんので。


ヴィルマ・ラングカイト
SIRDとして参加

本性を現したか。だが、まずはエリクの身柄を後送するのが先決だ。
安全な場所まで一時後退し、エリクの容態を確認する。

エリクを後送できたら、そのまま戦闘に加入。
真なる永遠の平和、か…馬鹿げている。はっきり言おう、貴様は狂っている。死は、時に安息となり、救いにもなる。それがなくなるのは、平和などではなく、永劫の地獄に陥るだけだ。

有毒装甲を警戒し、距離を置いての射撃戦を展開。少しの隙間でもいいから、味方が蟲を駆逐しチャンスが出来たらフユ機を狙ってUCを使ってフユ機を攻撃する。何、僅かな隙間から射撃を命中させるのは、難しくはあっても不可能ではない。ゾルダートグラード戦車兵を舐めるなよ?


木鳩・基
【SIRD】アドリブ連携歓迎

少し、安心はしたかな
エリュシオンにもそういう人間っぽいところがあるんだって
私も死別の経験はあるし
わけわかんない存在と戦ってるわけじゃないんだよね
…とにかく今は、あの人たちを止めようか

戦場全体を駆け回る適応力は生身の私にはない
後ろから援護しよう

UCを発動
降り注ぐ腐食液は大砲を盾に防いで
それから足場にもして液から逃れる

腐食網を撃ち落しつつ砲撃で援護
攻撃で相手の挙動を制限して味方の攻撃を支援するよ
後方に陣取ったからには戦場の【情報収集】もしておきたいね
ここで退かせるわけにもいかないし

相手が撤退を図ろうとしたら情報共有
地形から逃走方向を算出しつつ、砲撃で足止めを狙う




 エリュシオンと同化したナツが、南へと去っていく。
 その姿を追いかける猟兵達を見送った文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)は、黙って立ち去ろうとするグランマ機に声を掛けた。
「グランマ! 俺はエリュシオンを救済したい。協力してくれないか?」
「なんで私が、あの女を助けなきゃいけない?」
「セレネのためだ」
 冷徹な声に冷静に反論したネコ吉は、一瞬押し黙ったグランマ機を見上げると南の空を見た。
「フユの目的の一つは、エリュシオンのオブリビオン化だろう」
「だろうね」
「民に生きる力を授けても、戦争は止まらず人々は殺し合う」
「エリュシオンがいようがいまいが、人間は殺し合う。違うかい?」
「そうだな。残念だが、否定はできない」
 グランマの言い分に、ネコ吉は頷き肯定を示す。クロムキャバリアに限らず、どの世界でも戦いは絶えない。オブリビオンがいなければ戦争のない平和な世界が来るかも知れないが、本当にそうなのかはネコ吉に正確なことが言える訳ではない。
 だが、このロスト共和国の状況に限れば話は別だ。数多くの戦いで様々なことを見聞きしたネコ吉には、確かに言えることがあった。
「この国にいる起き上がりは、エリュシオンが齎す水が大きく関係している。憂う彼女を取り込めば、起き上がり達の全てを屍人として屍鬼帝国の民とする事も容易だろう」
「……」
「その中にはセレネも含まれる。セレネを永遠の闘争の中に放り込むつもりか?」
 ネコ吉の声に、沈黙が落ちる。回線を繋いでいるから、セレネもこの話を聞いているはずだ。だが、セレネは何も言わない。グランマも何も言わない。落ちる静けさに、ネコ吉は口を開いた。
「グランマ。俺は復讐なんぞに同意する気はない。過去に囚われたまま破壊して命を奪って、それじゃオブリビオンと何が違うんだ?」
「私は、私からすべてを奪ったあの連中が憎い。あの連中を赦せない。自分の感情に嘘をついてまで、他人にとって都合のいい子でいるなんてまっぴら御免だね!」
「そうだな。その気持ちは分かる。だが、だからこそ問いたい。復讐の先に描く真意を。復讐を成し遂げたその先に、護りたい者の未来はあるのかを」
 落ちる沈黙。真剣な眼差しのネコ吉に、グランマは口を開いた。
「……私は復讐を諦めない。少なくともまだ、何も成し遂げられちゃいない。何かの決着がつくまでは、誰になんて言われても知ったことじゃない」
「そうか」
「だが、それは私の都合だ。ネコ吉の言う通り、セレネも私の都合に付き合わされて酷い目に遭わされるのは、たまったもんじゃないだろう」
「グランマ、私は……」
「復讐は諦めないよ。でも、その結果セレネを私と同じ戦禍の獄に閉じ込めるのは、確かに寝覚めが悪いね」
「そうか」
「エリュシオンを救いたいなら、ナツから出てきた魂をインゴットに触れさせな。力になるだろうよ」
「分かった」
 頷いたネコ吉は、黒猫袋にそっと触れた。復讐を諦めるという言質は取れなかったが、歩み寄りは見れた。それで良しとしよう。
 頷いたネコ吉は、ふいに降り出す腐食の雨に慌てて建屋に駆け込んだ。どこかでキャバリアを借りて、戦地に向かわなければ。南へ向かうグランマを見上げたネコ吉は、キャバリアを借り受けるべく格納庫へ急いだ。


 その場にいた猟兵達と共にナツ機の背中を追った藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は、彼女の言葉を思い返すと頭を掻いた。
「あーなるほど……。屍鬼帝国ねぇ。名前が四季で統一されているとは思っていたが、そういうことでしたか」
「そうだね。ナツとフユ。ハルもいたし、この分だとアキもそうだって考えるのが自然だよね。……それにしても、ナツさんのあれ、本当にいいのかな?」
 搭乗したラウンズくん3世の肩に乗っている木鳩・基(完成途上・f01075)が、小さなため息と一緒に腕を組んで同意する。あれとは何か。無論、声高に語っていたナツの目的のことだろう。リ・ヴァル帝国皇帝を屍鬼帝国皇帝が捕らえる理由は理解できたが、理解はしたくなかった。
「そうだな。リ・ヴァル帝国皇帝アロンダイトとの子をもうけると言っていたな? あれ、はっきり言って大変趣味がよろしくないぞ」
「本当に悪趣味だよね」
 真剣な目の基が決意も新たに拳を握った時、ふいに先行する猟兵の動きが止まった。慌ててラウンズくん3世を停止させた美雪は、ナツ機との間に割って入ったフユ機の姿に警戒を強めた。
「行かせませんよ猟兵!」
 エヴォルグ漆號機『Rust』がナツとの間に割って入った直後、腐食液が放たれた。四本のEP腐蟲鞭腕『Rust』から空高く放たれた黄色みを帯びた腐食液は雨のように降り注ぎ、戦場を満たしていく。降り注ぐ腐食液の雨は、キャバリアならばまだもつが生身はひとたまりもない。
「わわっ! 大丈夫か基さん!」
「大丈夫! ありがと美雪さん!」
 慌てて基の頭上に手を翳して、腐食の雨から生身の彼女を庇う。土砂降りの雨のように降り注ぐ腐食液は猟兵達の足元を腐食液で満たし、ラウンズくん3世の装甲を削っていく。
 咄嗟に高い場所に移ったはいいが、ビルの屋上も同様に腐食液に冒されている。ネタ枠の色合いが強いラウンズくん3世の装甲がどこまでもつか。正直心もとない。
「これはやばいぞ」
「美雪さん! これに乗って!」
 肩に乗った基が詠唱を終えた直後、大量のピースで構築した大型遠距離武器が現れた。高さはキャバリアと同じくらいあり、何より腐食液で汚染されていない。急いで大砲の上に移動した美雪は、俯瞰で見る戦場に目を細めた。
 本格的な戦闘が始まった北側の戦場。そこから少し目を移せば、南側の戦場が見える。視界に入る国際会議場の姿に、美雪はふと眉を顰めた。
(「ふうむ……。大統領はこの件、存じているのだろうか?」)
 国際会議場にエリクの父はいたのか。確認しようと通信を入れるが、妨害されているのか応答はない。
「まあ念のため、一連の流れは映像に収めさせていただこうか。終わったら大統領に突き付けてやろう」
 大統領がどこで何をしているにせよ、有力な証拠になるはずだ。ラウンズくん3世の目に仕込まれたカメラを起動した美雪は、撮影を始めるともふもふさんを召喚した。再び現れた144体のもふもふした小動物達は、前回の召喚で現場の状況を学んだのだろう。防毒マスクに防毒スーツを着込んでいて頼もしい。
「もふもふさん……いや、今は防毒スーツでもふもふではないな。さておき、また毒の戦場になる。皆の回復を頼んだぞ」
『『『ンベメ!』』』
 少しくぐもった声で答えたもふもふさん達は、リペアキットを手に一斉に戦場へと駆けだしていく。その背中を見送った美雪は、戦闘とそこで交わされる会話を余すことなく記録していくのだった。


 迎えに来たキャバリアに乗り込んだナツが、南へと去っていく。その後ろ姿を、ヴィルマ・ラングカイト(パンツァー・ヴィルマ・f39899)は睨みつけた。
「本性を現したか」
「っ……!」
 パンツァーキャバリアのごつい手の中で、エリクが苦しそうに呻く。さっきまであった意識は既になく、顔色もひどく悪い。ここもいつ戦闘の余波を受けてもおかしくない。一刻も早く、エリクの身柄を後送しなければ。
 そのまま避難所まで移動しようとした時、ふいに雨粒がキャバリアの肩を叩いた。否、雨ではない。敵キャバリアが降らせた腐食液だ。今のエリクに一滴でも当たったら、そのまま致命傷になりかねない。コクピットに避難させるにはハッチを開く必要があり、腐蝕の雨に対して弱点を晒すことになる。だが、言っている場合ではない。
 ハッチを開こうとした時、ふいに腐食液の雨が止んだ。巨神スペランサに搭乗したベティ・チェン(|迷子の犬ッコロ《ホームレスキリング》・f36698)が、その機体でエリクを腐食液から庇っているのだ。一時はエリクごと破壊しかねない気迫を見せていたベティだが、満身創痍の機体でエリクを庇う姿に思わず呟いた。
「ベティ……」
「今日が、シャドランなら」
 それだけ言って黙り込むベティに小さく笑みを浮かべたヴィルマは、急いでキャバリアの中にエリクを避難させた。
「シャドランが何かは分からないが……。貴殿のおかげでエリクを守れた」
「ふん」
 小さく答えるベティに、ヴィルマは敢えて何も言わない。容赦なく降る腐食液の雨の中を移動するのは危険だ。ベティも腐食液対策をしているだろうが、ダメージは拭えないようだ。装甲で腐食液をやり過ごしたヴィルマは、やがて止んだ雨にスペランサを見上げた。
「私はこのまま、エリクを安全な場所まで後送する。貴殿は?」
「ボクは、フユを、焼き払う。そのために、少し、リペアする」
「そうか。では、また後で」
 頷いたヴィルマは、ベティの下から抜け出すと後方へと向かう。避難所についたヴィルマは、医療関係者にエリクを預けた。
 やるべきことはやった。後は任せるしかない。急ぎ愛機に乗り込んだヴィルマは、急いで南方へ向かった。重装甲を誇るパンツァーキャバリアは、腐食液の雨でも機能に影響は少ない。軽量級キャバリアに比べて速度に難があるのは否定できないが、それは補ってやればいい。
「こちらレイター22。射撃位置に現着。これより援護を開始する」
 56口径88mm KWK36で戦場に狙いを定めたヴィルマは、スコープを覗くと黒い壁のように見える蟲を焼き払うべく援護射撃を開始した。


 巨神ガヴェインに搭乗した森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)は、アロンダイトの許へ急ぐナツの背中を追った。
 無数の蟲と共に空に舞ったナツは今、キャバリアに搭乗している。あの女を止めなければ、世界にどんな悪影響があるか分かったものではない。必死に追いかけた陽太は、ふいに動きを止めるガヴェインに顔を上げた。
「ガヴェイン!?」
「ほう、勘が良いな」
 一瞬前までガヴェインがいた空間に、滝のような腐食液が降り注ぐ。同時に戦場全体に降り注ぐ腐蝕の雨を割り、百足の足がガヴェインの腕を捕えた。周囲を飛ぶ無数の蟲は密度を上げ、放つ毒気で飛びそうになる意識を叱咤する。
 エヴォルグ漆號機『Rust』に搭乗したフユは、降りしきる腐蝕の雨の中で悠然と声を上げた。
「新世界の尊父と賢母を邪魔するような野暮は、控えて貰おうか」
「新世界の尊父と賢母だぁ!? 気色悪いこと言ってるんじゃねえ!」
 吐き捨てるように言った陽太の脳裏に、ナツが言っていたことが再生される。リ・ヴァル帝国皇帝アロンダイトが、巨神エリュシオンの魂を奪い起き上がりの子を産むのだと。考えるだけで怖気が走る。
「悪趣味を崇高だと勘違いするてめぇらこそ、この世界の真の「敵」だ!」
 怒りと共に吐き捨てた陽太は、もうひとつの人格である『零』と意識を交代する。突然変わる契約者の人格に驚きと警戒を露わにするガヴェインに、零は軽く手を上げ応えた。
「ガヴェイン、驚かせてすまない。俺は陽太の……別人格、とでも言っておこう。陽太に危害を加えるつもりはない」
 零の言葉に、ガヴェインも納得したようだ。意向を確認するガヴェインに、零は眼前の『敵』を睨みつけた。
「屍鬼帝国とやらの所業には俺も怒っている。俺は、帝国を殺す暗殺者になろう」
 決意を新たにした零は、響くアラートに眉を顰めた。EP腐蝕蟲鞭腕『Rust』に締めあげられた左腕装甲の腐蝕が危険域に達している。腕を掴まれている間に炎を放てば自分自身も延焼の危険があるが、やるしかない。決意を新たにした時、声が響いた。
「|Achtung!《傾注!》……|Widme ein Gebrull!weiter Vorwaerts!《咆哮を捧げ!続いて進め!》」
 今まで無力化させた敵キャバリアを使役した灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)が、周囲の蟲を一斉に攻撃する。張られる弾幕は的確に蟲を撃ちぬき、徐々に濃度が薄くなる。灯璃の攻撃に呼応するように、凛々しい声が響いた。
「初弾|硬芯徹甲弾《APCR》、続けて|粘着榴弾《HESH》及び|徹甲焼夷弾《API》装填、主砲三連射、行くぞ!」
 ヴィルマの詠唱の直後、砲撃が放たれた。灯璃の攻撃で薄くなったとはいえ、未だ蟲は健在だ。わずかな隙間を縫うようにして放たれた放たれた硬芯徹甲弾は、狙い違わずフユ機の脚部装甲を穿つ。脆くなった足に着弾した粘着榴弾がフユ機の動きを止めた直後、徹甲焼夷弾が次々に突き刺さった。
「なっ!? この蟲の間を抜けてきただと!?」
「何、僅かな隙間から射撃を命中させるのは、難しくはあっても不可能ではない。ゾルダートグラード戦車兵を舐めるなよ?」
 自分の言葉を裏付けるように、ヴィルマは立て続けに蟲を落としていく。粘着榴弾で地面に縫いつけられたフユ機の前に、猟兵達は立ちふさがった。


 降りしきる雨に打たれた灯璃は、腐蝕液で満ちていく戦場に眉を顰めた。
 粘度のある腐蝕液はキャバリアの装甲を削り、泥のようになった地面は足元に絡みつき行動を阻害する。生身で対応に当たっている猟兵もいることから、まずは除染と戦闘区域の安全確保が急務と思われた。その時。
『ンベメ!』
 詠唱を開始しようとした灯璃の前に、防毒スーツに身を包んだコミカルな小動物が現れた。先刻に引き続き、美雪のユーベルコードだろう。敬礼するもふもふさんに敬礼を返すと、一斉に除染に取り掛かってくれる。持ったモップで磨かれたキャバリアの表面からは腐食液が除去され、一時的に耐蝕性能が強化されたようだ。
 愛らしい姿に目を細めた時、グランマから通信が入った。対話してしばし。頷いた灯璃は即座に詠唱を切り替えた。
「|Achtung!《傾注!》……|Widme ein Gebrull!weiter Vorwaerts!《咆哮を捧げ!続いて進め!》」
 朗とした詠唱が完成した直後、ユニコーン部隊が現れた。本来は射撃戦に特化した機体だが、ユニコーン部隊のフォルムはそのままに対空及び機関銃の装備を強化した機体に変わっている。灯璃に指揮権があるのは24時間のみ。個々の戦闘力はオリジナルに劣るが、数は余るほどいる。それで十分だ。
「数には数で対抗です。ーーFeuer!」
 号令一下、ユニコーン部隊が一斉に砲撃を開始する。フユ機の周囲にいる蟲を叩き落した時、ヴィルマの攻撃が放たれた。
「初弾|硬芯徹甲弾《APCR》、続けて|粘着榴弾《HESH》及び|徹甲焼夷弾《API》装填、主砲三連射、行くぞ!」
 立て続けの主砲三連射に、フユ機が地面に落とされる。ユニコーン部隊に周囲を警戒させた灯璃達の共有回線に、フユが回線を開いた。
「さすがは|暴走列車の英雄《スタンピードヒーロー》。ここまで追いつめられるとは思いませんでしたよ。ですが、理解できませんね。あなた方ならば、真なる永遠の平和を理解してくれると思っていたのですが」
「言葉面はお綺麗ですが」
 いかにも独裁者が言いそうなセリフに、灯璃は失笑のため息をついた。
「|無限の戦争《生き地獄》で心が壊れた臣民なら、さぞかし、貴方々には都合のいい国民になるでしょうね?」
「心が壊れるなど。そんなことはありませんよ。身体もそうですが、心もまた死しても蘇る。それが、真なる永遠の平和を生きる民達なのです」
「真なる永遠の平和、か……馬鹿げている」
 きっぱり言い切ったヴィルマは、フユ機に狙いを定めたまま冷淡に言い放った。
「はっきり言おう、貴様は狂っている。死は、時に安息となり、救いにもなる。それがなくなるのは、平和などではなく、永劫の地獄に陥るだけだ」
「なるほど。だから戦争をやめないのですね? 平和に生きれば、なかなか死ねませんから」
「詭弁はそこまでにしておけ。私にはあなた方の言う『平和』が『闘争』と聞こえるのだが」
「詭弁で結構!」
 呆れたような美雪の声に、フユ機が立ち上がると四本のEP腐蝕蟲鞭腕『Rust』を放った。不意打ちで放たれた四本の腕が、猟兵達を貫かんと放たれる。即座に反応した灯璃が、四本の腐蝕蟲鞭腕を集中攻撃し破壊する。できた隙を突いたガヴェインが、無数の炎弾を放った。
「全てを焼き尽くすその時まで、我はそれを撃ち続けるであろう」
 四方から嵐のように叩きつける炎弾に、フユ機が容赦なく炎上する。炎と煙に紛れてわずかに胸部ハッチが動くが炎弾の制圧効果で外へ出ることはできない。
「……ただ腐蝕液を蒸発させ、蟲を焼くだけと思ったか?」
 静かな怒りを込めたガウェインの右手が閃く。上空から一気に接近したガヴェインは、黄金剣でコクピットを両断する。
 声もなく大爆発を起こすフユ機に、ガヴェインは立ち上がると先行するナツ機を追いかける。フユ機の炎上を確認した灯璃は、ユニコーン部隊を引き連れるとナツ機の許へと向かっていった。


 巻き起こる激しい戦闘を背に、ナツ機は飛ぶ。もうひとつの激戦に介入すべく先を急ぐナツ機に、ラムダ・マルチパーパス(ドロイドは電気羊の夢を見たい・f14492)は狙いを定めた。
「はてさて、厄介な事になってきましたねぇ。屍鬼帝国やらジルド帝国やら、局長様に伝えねばならない事が山積みです」
「本当にそうですよねぇ」
 突然聞こえる声に隣を見たラムダは、直後上空を通過する30m級竜型キャバリアを振り仰いだ。データベースを検索。巨神G-O-リアス|3号機《トレス》である確率は、97.5%。頷いたラムダは、その主である男を見下ろした。
 どこかのんびりとした口調の雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)が、生身のまま腐食液の沼と化した地面に降り立っている。先刻まで南方の戦場に参加していたと報告を受けていたが、巨神G-O-リアス|3号機《トレス》に乗ってこちらに移動したのだ。突然現れた巨大な竜に行く手を阻まれたナツ機が、足を止めて応戦している。それにしても。
 生身で沼にいるのは痛くないのだろうか。疑問に思うラムダに、二三夫は腕を組んで尋ねた。
「それで、こっちの状況はどうですか?」
「エリク様を無事に救出できました。その後、エリュシオンを奪ったナツがリ・ヴァル帝国皇帝アロンダイト様の許へ向かっています」
「そうですか。では、アロンダイトを奪わせない為にも、エリュシオンをナツから引き剥がさなければなりませんね」
「そうですね。そのためにもまずは、目の前の敵を排除致しましょう。毒や腐食に対しては、わたくしはともかく、他の猟兵の皆さんへ損害が出てしまいますしね」
「いやぁ、確かにそうです。実は私もさっきから足が痛くてですね」
 ははは、と笑う二三夫からそっと視線を外したラムダは、搭載した火器全ての砲門をナツ機にーーナツ機を守る蟲に向けた。ロックオン。同時に射撃。ナツ機を護衛する蟲を次々落とせば、G-O-リアス|3号機《トレス》も蟲を落としていく。一刻も早くと先へ急ぐナツ機だが、巨体がそれを押しとどめている。
 可能な限り蟲を排除したラムダは、生まれたわずかな隙を突きアンカーの銃口を向けた。
「目標確認。照準固定。コンピューターウィルス、活性化確認。有線式ホーミングアンカー、射出」
 詠唱と同時に射出。特殊ワイヤーで繋がったホーミングアンカーがナツ機に突き刺さった直後、コンピューターウィルスを活性化させた。
 アンカーに込めたウィルスソフトが、ナツ機を狂わせる。突然エンジンが停止したナツ機はそのまま失速し、アロンダイトの遥か手前で墜落する。一気に距離を詰めたラムダは、キャバリアから這い出たナツの眉間に銃口を突きつけると静かに凄んだ。
「詰みです、ナツ。アロンダイト様が連れ去られたら、局長様に面目が立ちませんので」
「っ……!」
 唇を噛んでラムダを睨むナツの周囲に、再び蟲が沸いて出る。粛々と蟲を排除するG-O-リアス|3号機《トレス》の機体をねぎらった二三夫は、ナツ機に静かに近寄った。


 しゃがみ込んだナツの前に立った二三夫は、視線を合わせるように腰を落とすと目の奥を覗き込んだ。青い目の奥に、わずかに金色の光が見える。よく分からないが、あれがおそらくエリュシオンだろう。まだ完全に同化していないのならば、こちらの声も聞こえるはずだ。
「ナツさんの中に居るエリュシオンさん。起きて下さい。貴女がここで人を全てジャイアントキャバリアに変えても、ロスさんは多分サルベージ出来ません。不当契約を結んだままでいいんですか」
「不当契約など……」
「ナツさんには聞いていません。エリュシオンさんに聞いてるんです」
 ピシャリと言い切った二三夫は、わずかに揺らぐ金の光にニッと笑みを浮かべた。
「貴女が苦心惨憺してもロスさんに会えなかったなら、それはもうアプーチの仕方が間違っているのです。ロスさんに近しい貴女が国1つ試して達成出来ないなら、それを世界に広げても無駄です」
「そのようなこと。母数を広げ……」
『……そう、なのでしょう、か』
 ナツの声を遮るように、通信機器からエリュシオンの声が聞こえる。未だ完全に取り込まれていないことに飄々と頷いた二三夫は、一歩前に出るネコ吉にその場を譲った。感謝の視線を軽く手を上げ受け取った二三夫は、痛む足をさすりながらネコ吉の話に耳を傾けた。
「エリュシオン。お前がもう一度会いたいと願うロスは、屍鬼帝国初代皇帝か」
『そのようです』
「だが現屍鬼帝国にロスはいない」
『はい。ですから……』
「屍人ならキャバリアでなくとも何度だって蘇る筈なのに。それでもいないという事は、それはロスの願いではないのだろう」
『……』
 黙って考え込むエリュシオンに、ネコ吉は真剣な声で訴えた。
「目を覚ませエリュシオン。真なる永遠の平和とは何なのか、自分の頭で考えろ!」
『自分の……頭で……』
「君と民の歩む未来を奪う事が、本当に彼の願いだと思うのか?」
『……』
 黙り込んだエリュシオンの言葉を、根気よく待つ。やがて口を開いたエリュシオンは、どこか晴れやかに言った。
『……もう、ロスには会えないのですね。私はそれを、受け入れなければならない』
「ああ」
「でも、希望は見いだせるかも知れませんよ?」
 ネコ吉とエリュシオンの話を聞いていた二三夫は、立ち上がると空を見上げた。いつの間にか明けた夜は宵闇の色を無くし、不安定なくらい綺麗な水色の空が広がっている。どこまでも続く青い空に、眼下に望む白い雲。どこまでも続く大地などどこにもない世界を、二三夫は知っていた。
「ロスさんが生きて死んだ世界がここではないと考えます。落ちた人間が元の世界を知覚していることはまずありません。比較出来る他者だけが、どの世界から落ちたのだろうと推測するだけです」
『そんなはずは……』
 困惑する声を軽やかに無視した二三夫は、がしっとナツの手を取ると縦に振り回すように握り締める。そのままナツを立たせた二三夫は、青い空をビシッと指さした。
「わたくしは貴方達が、ブループラネットから落ちてきた屍人だろうと思っています。ならば貴女がすべきは、殲禍炎剣を排して界を超え、ブループラネットでロスさんを喚ぶのです。協力出来る範囲で協力しますよ」
『は、はあ……?』
『こらこら二三夫さん。ブループラネットとはどの世界かね? それにエリュシオンが困惑しておるではないか』
『ンベメ!』
 美雪のツッコミに呼応するように、もふもふさんが裏拳ツッコミを入れる。二の腕に感じる軽い衝撃に、二三夫は頭を掻いた。


 エリュシオンには近づかずに後方から戦いを援護していた基は、軽いノリツッコミが聞こえる通信にクスリと笑みを浮かべた。
「ふふっ。……少し、安心はしたかな」
「何にだね?」
 キャバリアの中から問う美雪の声に、基は戦場を見渡した。通信機器から聞こえたエリュシオンの声はとても困惑していて、ちょっと可愛らしかった。
「エリュシオンにもそういう、人間っぽいところがあるんだって」
「そうだな。動機も人間らしいと思うぞ。方法はさておき」
「うん。私も死別の経験はあるし。大事な人ともう一度会いたい、っていう気持ちは、よく分かるよ」
 そう言った自分の言葉に触発されて、怪死した父親のことが脳裏によぎる。胸の奥から湧き上がる感情を頭を振って追い払った基は、青い空を見上げると大きく息を吐いた。
「わけわかんない存在と戦ってたわけじゃないんだよね。……とにかく今は、あの人たちから目を離さないようにしないと」
 気分を切り替えた基は、改めて戦場全体を俯瞰すると地形を頭に叩き込んだ。さっきは一瞬の隙を突かれて、エリュシオンを連れ去られた。同じ轍を踏む訳にいかない。もし逃走の兆しが見えたなら、すぐに阻止できるようにしなければ。
 今回の戦いで、基は何ができただろう。戦場全体を駆け回る適応力がなくて、結局後方支援しかできなかった気がする。ならば、自分にできることを精一杯やろう。決意を新たにした基は、悲し気に呟くエリュシオンの言葉に耳を傾けた。
『私は、人の心に介入したことはありません。私が知る人間はみな、平和を求めます。ならば、真なる永遠の平和もまた、人間が普遍的に求めるもの、なのではないのですか?』
 真剣なエリュシオンの問いに、灯璃は首を横に振る柔らかく微笑んだ。
「結局のところ、一足飛びの平和なんてありませんよ。毎日、戦争があるのと同時に毎日、どこかで戦争を止めるため動く人達がいます。平和は、日々積み重ねられた先にのみある道ですよ」
『ならば……』
 エリュシオンが更に何かを問おうとした時、視界の端で何かがふいに蠢いた。焼き尽くされ、放置されたフユ機の残骸だ。エリュシオンと話をしている間に再生しようとしている。即応した基は、砲口を向けると警告を発した。
「皆!」
 声と同時に基が放った一撃は間一髪、蟲の召喚を防ぎ魔術が空中に霧散する。即応態勢を取る猟兵達から視線が離れた隙を突いたナツは、キャバリアを再起動させアンカーを引き抜いた。直後放たれる、RustSceneの粘着性の液状腐蝕網が猟兵達を襲う。再生したフユの攻撃に対応する隙を突いたナツは、エリュシオンを再度乗っ取るとキャバリアに乗り込んだ。
「戯言はそこまでですよエリュシオン様!」
「皆! ナツは九時の方向に逃げるよ! フユは……」
 言いかけた基は、飛来するキャバリアの姿に目を見開いた。


 度重なるダメージからのリペアを終えたベティは、満身創痍の巨神スペランサに乗り込むと詠唱を開始した。
 戦いは猟兵の勝利に終わり、捕虜にしたエリュシオンとの会話が通信機器から聞こえてくる。その会話から察するに、焼き尽くしたフユから視線が離れているに違いない。
 それはダメだ。ベティはナツを叩き潰した。丹念に。骨の一片も残さないくらい丹念に。もう二度と起き上がれないだろう。そう思っていたナツは、予想以上の速度で再生した。親玉のフユならば、それ以上の再生力があっても不思議ではない。
「起き上がりを、倒すには。一度潰すだけじゃ、ダメ」
 時速150kmで飛翔したベティは、戦場に吶喊すると逃走を図るナツ機に向けてオールレンジ用無線ビーム兵器を放つ。頭部破壊を狙い放った攻撃はしかし、掠めるだけで終わる。舌打ちしたベティは、逃走の姿勢を見せるフユ機の姿に眉を顰めた。
 皇帝の許へ向かうナツ機を止めるか。
 逃走を図るフユ機を破壊するか。
 選択を迫られたベティは、ふいに熱くなる身体に眼下を見下ろした。
「誰であっても熱血に限界はありませんよ。……燃え上がれブレイブハート!」
 握り締めた拳を振り上げた二三夫が、燃え上がる心を視覚化させた炎を放つ。二三夫が放つ熱血に限界無しは巨神スペランサの損傷を癒し、再行動の気力をベティ達に与えた。
 逃走を図るナツ機が、背後から両断される。ならば、ベティが狙うのはただ一人。フユ機に吶喊したベティは、凶悪な笑みを浮かべると礼儀正しくアイサツした。
「ドーモ、シビト=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
 炎属性を乗せた巨神用偽神兵器振り上げたベティは、迎撃に放たれた蟲を焼き払うとフユ機を引き裂いた。肉を裂き、骨を断つ。炎を内側から叩き込み、丹念に焼き尽くす。
「握り潰すだけじゃ、ダメ、なら。炭も残さず、焼き払う。何百回も、炭にして。まだ、キミでいられるか。試そう」
「ナ……ツ……」
「次の目星が、ついた、から。ナツがフユを見捨てるのは、当たり前。だから、キミは。永遠に、ここで、死ね」
 手にした偽神兵器に炎属性を乗せたベティは、フユ機を切り裂き燃やし尽くす。完全に炭となるまで延々攻撃を続けたベティは、燃え続けるフユ機に凄惨な笑みを浮かべた。

※終断章を投稿予定です。完結のお知らせが来ましたら、ご確認お願い致します。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 頭部を破壊され、背中から斬りつけられた機体から、ナツが転がるようにして出てくる。自身を取り囲むように立つ猟兵達の姿に、ナツは観念したように両手を上げた。
「私を、どうするつもりですか? 先に言いますが、今エリュシオン様を無理に私から引き離したり、これ以上私の肉体が損傷すれば、そのまま消滅……」
「詭弁と時間稼ぎはもう沢山だ」
 冷徹な声と共に、グランマとセレネが歩み出た。使役されたユニコーン部隊に紛れて戦い、機会を伺っていたのだ。
 ナツに歩み寄ったグランマは、その眉間に銃口を突きつける。無言で銃口を見つめるナツの目の奥に金の光が宿った時、グランマは静かに口を開いた。
「エリュシオン。アンタは自分が何をしてきたか、分かってるかい?」
『無論です。私はロスをサルベージするために、屍鬼帝国と契約しました。巻き起こる戦争は多くの死傷者を生みます。それらを献体に、私は起き上がりの技術を発展させました』
「そのくだらない目的のせいで、私は全てを奪われた!」
『ならば、引き金を引きなさい。復讐は成就するでしょう』
 目を閉じたエリュシオンに、引き金に力を籠める。エリュシオンが小さく笑った時、銃声が響いた。
 空に向けて銃を撃ったグランマは、代わりにエネルギーインゴットをナツの額に押し当てる。
「……今アンタを殺したら、本国にいる帝国の連中がアンタの本体を掌握するだろう。そうなったら、もう止める手立てはない。エリュシオン。アンタは本国に戻って責任を取って貰うよ」
「そんな! やめて! エリュシオン様、どうかお戻りください! あなた様が私と共にいれば、真なる永遠の平和が人類に齎されるのですよ……!」
 騒ぐナツの目から、金の光が消える。代わりに淡い金に輝く石は、小さく空気を震わせた。
『……人が人として生きて、死も病も遠い。新しい世界でロス達と生きたい。そんな世界を夢に見て来ました。屍鬼帝国の望みも同じだと思って……いまし、違……』
 エリュシオンの声が静かに途切れる。金の光は消えていないから、眠ったのだろう。何事か騒ぐナツに猿轡を噛ませた猟兵達をよそに、グランマはエネルギーインゴットを懐にしまい込んだ。
「私は本国に戻る。縁があったら、また会おうじゃないか」
 それだけ言い置いたグランマは、セレネと共に北へ去る。
 フユとナツを捕虜にした猟兵達の頭上に、朝日は静かに降り注ぐのだった。

最終結果:成功

完成日:2024年03月21日


挿絵イラスト