闇に立ち向かう者たち
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ダークセイヴァー第四層、鬱蒼と木々が茂る森の奥深くに、レジスタンス組織『闇の救済者』の拠点があった。松明の灯りに照らされた広場の中心で、武装した兵士たちが火を囲んで何事か話し合っている。
「ハハ、ようやく戦力が整ったな、オッサン。これで大体百人……ってところか?」
「ああ……だいぶ時間がかかったが、これで我々も『貴族』の軍団に太刀打ちできる筈だ」
黒髪を肩の辺りで雑に切りそろえた若い女が、くすんだ金髪の壮年男に向かって話し掛けた。二人はこの砦の幹部で、『爪痕』と名乗る戦士のグループの主要メンバーである。
「これで『ラヴァリアの都』に攻め込むメンバーは揃ったな。いよいよ、貴族どもに長年の恨みを晴らす番ってわけだ」
そう言いながら、女はさっきから手で弄んでいた短剣を的に向かって勢いよく投げつけた。彼女の名はベル。闇の救済者に加入する前は、盗賊として暮らしていた女である。それを見ていた金髪の男ライは、出来の悪いワインを煽ると、深く息を吐いた。
「もう後戻りはできんぞ」
「へっ、何を今更。ここに集まった奴らは、化け物と戦うことだけが生き甲斐みたいなモンだろ。なぁみんな?」
ベルの視線の先には、ダークセイヴァーの各地から集まった戦士たちの姿があった。出身地も種族もばらばらだが、吸血貴族達に反撃の刃を突き付けるという目的の下、彼らは固く結束している。そして皆、厳しい鍛錬と実戦経験の末にユーベルコードの力に目覚めていたのだ。『闇の救済者』の中でも、特に腕の立つ精鋭と呼んでもいいだろう。
「ああ、とことんやってやろうぜ」
「連中に、俺達の『爪痕』を刻み付けてやる!」
此処に集まった戦士たちは皆、士気も練度も高い。ライもまた、彼らやベルの実力を侮っているわけではない。彼女は些か、計画性に難があるようだが。
「アタシは細かいことを考えるの苦手だからな。いつもの通り戦闘の指揮はオッサンに任せるぜ。よろしくな?」
「まったく、面倒事はいつも俺任せだな」
そう言ってライは苦笑すると、大振りの鋼鉄剣を杖代わりにして椅子からおもむろに立ち上がった。
「……いくぞ。ラヴァリアへ向けて、出撃だ!」
「やあ、お疲れさま。これからダークセイヴァーに向かって、『闇の救済者』たちを支援してきてくれないかな」
ある日のグリモアベースにて。ミーティングにやってきた猟兵たちに向かって、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964))は輝くグリモアを指で操りながら語り掛けた。
先の『闇の救済者戦争』において世界の支配者『五卿六眼』を撃破したことにより、ダークセイヴァーにおけるオブリビオンの支配力は徐々に揺らぎつつある。
今や人類のレジスタンス組織『闇の救済者』達の戦いは、微力な抵抗運動ではなく、『第五の貴族』との決戦段階にシフトしているのだ。
「ダークセイヴァーの世界でも、ユーベルコードの力に目覚める人たちが次々に現れているのは知っているね? 『闇の救済者』では、そういったユーベルコード使いを中心にした精鋭部隊を結成して、第五の貴族との決戦の準備を整えてるってわけさ」
今回、『爪痕』という名の精鋭チームが比較的大規模な街『ラヴァリア』に侵攻するという情報が得られた。その街は長らく『第五の貴族』によって牛耳られているわけだが、そこを奪還することができれば大きな戦果となるだろう。
「ラヴァリアはダークセイヴァーの中では割と繁栄している街だけど、それは吸血鬼の支配による影響が強いからだ。街の中は奴隷市や賭博場、娼館といったモラルのない施設がひしめいている。まともな人間は寄り付かないところさ」
猟兵は『闇の救済者』と共に街に入り、吸血鬼たちの城砦を目指すことになる。吸血鬼たちに見つからないようにするためには、多少の工夫も必要だろう。
「街の中心部に位置する城砦に近づくことができたら、いよいよ敵との戦闘だ。……ただ、敵はかなりの手勢のうえに、全員が『紋章』の力で強化されている。そこで、君達猟兵が先陣を切って、敵軍にあらかじめ打撃を与えてほしいんだ。そうすれば、敵の態勢が崩れたところに『闇の救済者』が突撃をかけて、致命的なダメージを与えることができる」
闇の救済者たちも猟兵ほど強くはないが、全員がユーベルコードを使えるため、うまく彼らと協力すれば勝算はある筈だ。
「猟兵と『闇の救済者』、どちらが欠けてもこの戦いに勝つことは難しいだろう……だけど、私達はこれまでも気持ちをひとつにして強力なオブリビオンを退けてきた。大丈夫、皆ならきっとできるさ」
ガーネットのグリモアが輝きを強め、猟兵たちは常闇の世界へと旅だっていく。闇の軍勢が支配する都を取り戻すための、激闘が今始まる。
弥句
こんにちは、弥句です。よろしくお願いします。
今回はダークセイヴァーの戦後シナリオで、『闇の救済者』たちと共闘する作戦となっております。舞台は『ラヴァリア』という名の都市で、ここは長らく『第五の貴族』によって支配されてきました。吸血鬼による殺戮や、犯罪者の巣窟となっているこの街を解放することが今回の目的です。
第1章は冒険パートで、闇の救済者とともに街の中心にある砦を目指すことになります。百名ほどの武装した戦士とともに行動するため、警備の目をごまかすための変装や陽動などが必要かと思われます。
第2章は集団戦で、砦から出撃したオブリビオンとの戦闘に突入します。敵は凄まじい数のうえに『紋章』の力によって強化されており、命中した攻撃に《生命吸収》の効果がつきます。紋章への対策も必要となるでしょう。
戦闘では、『闇の救済者』との共闘が推奨されます。こちらで用意したNPCの情報は、以下の通りです。必要であれば、彼らに用事を頼んでいただいても構いません。
ベル:咎人殺しの女戦士。元野盗で身のこなしが素早い。武器は小剣とボウガン。
ライ:ブレイズキャリバーの男性。その昔、小さな町の警備兵をしていた。『爪痕』のリーダー格。武器は鉄塊剣とマスケット銃。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『血線区域』
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POW : 敢えて目立つような振る舞いで注目を集める
SPD : 見つからないよう秘密裏に行動して情報を集める
WIZ : 売買される「商品」や利用客に扮して潜入する
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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ラヴァリアの都へ向かう道中、『闇の救済者』のメンバーと猟兵たちは街道で合流を果たした。
「アンタ達かい、作戦に協力してくれる猟兵ってのは。アタシはベル、よろしくな?」
「俺はライという。今回はかなり大がかりな戦いになりそうだ、猟兵が加勢してくれるのならとても心強い」
精鋭チーム『爪痕』の幹部二人は、助太刀にやってきた猟兵を快く受け入れてくれた。猟兵の参加も決まり、軍団の士気も否応なく高まった。
「街に入ったら、できるだけ目立たないように行動しないとな」
「いや、逆に騒ぎを起こして、陽動に利用するのはどうだ?」
小休止がてら、ライが用意した街の概略図を基に作戦会議が開かれた。猟兵たちの意見も取り入れられ、『闇の救済者』たちは改めて侵攻作戦の手筈を確認する。
「……よし、では出発だ!」
一行の前方には、高くそびえる城砦を取り囲むようにラヴァリアの夜景が広がっていた。吸血鬼に支配された、背徳と享楽の都を戦場に、『闇の救済者』の決戦が始まる。
ブラミエ・トゥカーズ
街に潜み、中の住人を殺しつくす。
昔よくやっていたことであるから、安心して着いてくるがよい。
街には正面から堂々と街に遊びにきた吸血鬼とその護衛兼下僕に扮する
疑われたらUCにて一時的な眷属化により通過や道案内をさせる
目的地に近い高級な食事処で待機する
護衛達にも食事を提供させる
断るようなら店員も眷属化
自身は血しか飲めない
出所は気にしない
銘柄を聞いて楽しむ感性はある
最近は期限切れ輸血ばかりだから生き血は久しぶり
戦士たちから受ける感情も食べる
貴公等、堂々と余の下僕をするがよい。
でなければ怪しまれるぞ?
下僕仕草は慣れておるだろ?
街の観光や恐怖を与える事
それ自体は本気で楽しんでいる
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絶望が支配するダークセイヴァーでは、人の心も容易く闇に染まってしまう。命惜しさに同胞を売った者。他者を蹴落としてでも利益を得ようとする者。そういったクズの吹きだまりが、魔都と化した今のラヴァリアだ。
「街に潜み、中の住人を殺しつくす。昔よくやっていたことであるから、安心して着いてくるがよい」
優美なゴシッククロスに身を包んだ男装の麗人、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は、従者に扮した『闇の救済者』を引き連れて通りを闊歩する。道すがら奴隷商が馴れ馴れしい態度で『品物』を勧めてきたが、ブラミエは視線も合わさずに素っ気なく通り過ぎる。
「この辺りで後続の部隊を待つか」
見慣れない集団がたむろしていては目立つし、夜風が寒い。ブラミエらは手頃な料理店を見つけると、中で食事を摂って時間を潰すことにした。そこそこ繁盛しているらしく、内装の質感は悪くない。
「何か適当に、料理と酒を頼む。この者達のぶんもな」
「畏まりました……」
一行に提供された料理は、明らかに吸血鬼であるブラミエを慮ったものであった。パンと炙った肉、そしてワイン。だがその杯の中には、
「――生き血が混ざっているな。気が利く店だ」
「はい。今日捌いたばかりのものです。ご賞味あれ……」
ブラミエは、UDCアースにおける吸血鬼伝承を体現した西洋妖怪である。ブラミエがいつも飲んでいる、鮮度の悪い輸血用ではない、久々の生き血の香りに、食欲を刺激される。
「貴公らも何か腹に入れておかないと、全力で戦えんぞ」
「し、しかし……!」
ダンピールでもなければ、好き好んで生き血など飲んだりしないだろう。だが、このまま出された料理に手をつけないというのも失礼だし、万が一にも怪しまれてはならない。店主がブラミエらを密告しないとも言い切れない。
「貴公等、堂々と余の下僕をするがよい。でなければ怪しまれるぞ? ここは芝居の一幕と思え。役を演じろ。今宵のお前達は余の従僕だ。余が楽しめと言ったのだから、素直に楽しめばよいのだ。下僕仕草は慣れておるだろ?」
そう言ってブラミエは、自らのユーベルコードの力を解き放つ。空間に散布された『転移性血球腫瘍ウイルス』によって吸血鬼化した『闇の救済者』たちの目が爛々と輝きはじめ、鋭く発達した犬歯を剥き出しにさせる。
「ウゥ……!」
生き血の混ざったワインで喉を潤し、皿に盛られた料理を乱暴に掴み取って貪り食う。浅ましい様子は、まるで獣だ。だが、
「そうだ、それでいい。余も今だけは楽しんでおきたい」
優雅な仕草でグラスを弄び、ブラミエは一口、また一口とワインを煽る。この血の持ち主はどんな者だったか? どんな最期を遂げたか? 店主に対して質問を投げかけていくブラミエ。そんな彼女に対し、店主の男は表面上は愛想よく、内心は生きた心地のしない心境で質問に答えていた。
大成功
🔵🔵🔵
御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎
Pow判定
事前に
わたしが きをひく
皆は、こっそり反対側から…
空中浮遊陽動釣りダンス催眠術団体行動UC
軽く町中を飛び回り、芳香と気を引く外見で引き寄せ
「侵入口」と逆の場所(広場)に町人を誘導
時に陽気に、時に激しく、時に蠱惑的に、時に人形的に…
みて みて わたしをみて
浮世の些事は置いて忘れて
いまこのときは ゆめのとき
夢に、幻に、酔い痴れて…
集められるだけ集めて自分の方に引き付ける
「合図」が来たら
目潰しマヒ捕縛催眠術結界術UC
パン!柏手一つ打って一時的にその場の全員を朦朧状態に
棒立ちの群衆の頭上を飛び越えて、合流地点まで飛翔
夜会に間に合うかしら?
ぱーてぃー たのしみ♪
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退廃と享楽の魔都ラヴァリアには、様々な匂いが満ちている。行き交う人々や家畜の体臭。燃え盛るトーチから立ち上る、煙と薪の匂い。そして、仄かに漂ってくる血の香り。
「おおきな街ね、人がたくさん……」
ふわりと夜風に乗って、花の香りが通りを吹き抜けていく。瑞々しく芳醇な果実の匂いに、道を行き交う通行人がはたとその足を止めた。
「なんだか、良い匂いがするな……」
吸血鬼の貴人の中には、バラをはじめとする様々な花を再現した香水をつける者もいる。だが、この匂いはダークセイヴァーには馴染みのない、桃の花に似た香りだ。
「わたしが きをひく。皆は、こっそり反対側から……」
御堂・伽藍(がらんどう・f33020)が提案した潜入方法は、伽藍自身を囮とした陽動作戦であった。冷たい躯に備わった『宝貝・五桃花七宝』の力を以て、伽藍はふわりと夜空へ。魅了の効果をもつ芳香を放ちつつ空を舞えば、眼下で蠢く大衆はその不思議な舞い姿に釘付けとなる。
みて みて わたしをみて
浮世の些事は置いて忘れて
いまこのときは ゆめのとき
夢に、幻に、酔い痴れて…
時に陽気に、時に激しく、時に蠱惑的に、時に人形的に。夢か現か、闇の中で自在に舞い踊る伽藍を眺める人々は、惚けた顔で彼女に導かれ、歩いていく。その方角は、『闇の救済者』が侵入する予定の地域から真反対にあたる。
どこかで、口笛の甲高い音が鳴った。そして周囲に十分人が集まったのを見計らい、伽藍は大きく柏手を打つ。冷たい夜気を裂くように、パン!と音が鳴り響いた。その瞬間、伽藍が纏っていた魅惑の芳香に、人々の意識を混濁させる仄かな毒気が混じった。ダンスの時間は終わりだ。
「夜会に間に合うかしら? ぱーてぃー たのしみ♪」
ポカンと口を開け、涎を垂らしながら立ちつくす民衆の頭を飛び越え、伽藍は高くそびえる城砦へと向かう。そして伽藍の後を追うように、武器を隠し持った『闇の救済者』たちが現れると、次々にラヴァリアの街の暗がりの中へと溶け込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
…忌まわしきは第五の貴族…吸血鬼共め!
さぁ行くぞ…私は…処刑人だッ!
【シュバルツァ・リッター】で亡霊馬を召喚し、街を駆け抜けよう
街を駆けながら鉄塊剣を振るい市場や建物を破壊
警備と吸血鬼共の注目を集め惹き付け、その隙に闇の救済者達を街に入らせて城砦へと向かわせよう
警備や吸血鬼共を武器や亡霊馬の突撃で蹴散らして
己の肉体から生じる地獄の炎を武器に纏わせ吹き飛ばし
範囲攻撃で炎を広めて街中に大火を起こして混乱させてやろう
あらかた暴れたら亡霊馬を消し、迷彩布を被り
迷彩で闇夜に紛れながら地獄の炎をきれいさっぱり消し去り城砦へ向かうとしよう…
敵はこの奥にいる…!
逃がすまいぞ…私は…処刑人だッ!
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都市ラヴァリアの入り口近くに集合しているのは、思い思いの武器を携えた闇の救済者の精鋭部隊『爪痕』のメンバー達。皆目立たぬよう一様に黒衣に身を包み、頭巾や覆面で素顔を覆い隠している。
「……では、手筈通り私が先陣を切ろう。同志達は、私が突破口を開いた後に続いてくれ……」
「了解した。猟兵殿、お気を付けて」
戦士達の輪の中から独り抜け出し、長身の女が門へ向かって大股で歩いて行く。ツバの広い帽子を目深に被り、一切の光を吸い込むような黒い甲冑を身に着けている。そして背には、処刑器具『鉄の乙女』を模した意匠の鉄塊剣。
「……忌まわしきは第五の貴族……吸血鬼共め!」
吸血鬼への憎しみを沸々と滾らせる仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)の双眸に、昏い地獄の炎が灯る。
「さぁ行くぞ……私は……処刑人だッ!」
アンナの殺気に応じるように周囲に夜霧が立ちこめ、程なくしてその霧の中から一頭の大柄な馬が現れた。もちろん只の馬ではない。アンナのユーベルコード【シュバルツァ・リッター】で召喚した、彼女専用の亡霊戦馬である。
「はっ!」
鞍に跨がり、横腹に踵を入れて合図すると、逞しい青鹿毛の馬体は闇の中を颯爽と駆けだした。アンナは左手で手綱を執りつつ、背負っている『錆色の乙女』の柄に右手を伸ばした。
「何者だ……止まれぇーっ!」
「うるさい、そこを退け!」
強引に衛兵を弾き飛ばすと、アンナは強引に街の中へと雪崩れ込んだ。その勢いを保ったまま市街を縦横無尽に駆け回ると、馬上から大剣を振るって破壊工作を始めた。まずは奴隷市場の牢獄を一刀両断に斬壊し、返す刀で赤々と燃えるトーチを力任せに叩き斬る。
「ブルルルッ……!」
そんなアンナの闘争心に呼応するように、亡霊馬が低く嘶いた。すると、研ぎ澄まされた馬体は瞬く間に青白い地獄の炎を帯び、妖しく輝き始めた。地面に刻まれた蹄の跡から炎が噴き上がると、それらは強風に煽られ、たちまちへ周囲へ燃え移っていった。
「鬼神のごとき戦いぶりだな」
「よし、今のうちに俺達も突入だ。一直線に砦を目指すぞ」
アンナが馬で暴れ回っている隙に、闇の救済者たちは首尾よく街への侵入を果たした。そして夜の闇に乗じ、吸血鬼が待ち受ける砦へと向かっていく。
「敵はこの奥にいる……! 逃がすまいぞ……私は……処刑人だッ!」
屋根の上を飛び跳ねて追跡する吸血鬼どもを振り切って、アンナは彼方に聳える砦を目指す。十分に敵を引き離したのを見計らって愛馬から降りると、アンナの姿もまた暗がりへと消えていく。警備兵がようやく現場に辿り着いた時には、既に大破壊の痕跡を残すのみとなっていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『闇に誓いし騎士』
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POW : 生ける破城鎚
単純で重い【怪物じみた馬の脚力を載せたランスチャージ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 屠殺旋風
自身の【兜の奥の邪悪なる瞳】が輝く間、【鈍器として振るわれる巨大な突撃槍】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 闇の恩寵
全身を【漆黒の霞】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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夜が更けていく。堅牢な石造りの砦は、都市ラヴァリアの守りの要であり象徴でもある。今や邪悪な吸血鬼の手の中にある城砦は、闇の中で炎に照らされ、圧倒的な威容を放っていた。
「ようやく、ここまで来たか……」
闇の救済者『爪痕』を束ねるブレイズキャリバー、ライが感慨深げに呟く。その傍らで、咎人殺しの女戦士ベルが煙草の煙を勢いよく吐き出していた。決戦前の、景気づけの一服だ。
「オッサン。アタシらの手で、絶対に街を取り返してやろうぜ」
この煙草を人生最後の一本にするつもりなど、ベルにはない。他の『爪痕』メンバーも同様だ。今宵この場所に集った一人一人が、地獄のような人生を送り、そしてその地獄から生き延びてきたのだから。
「門が開いたぞ……!」
重々しい音と共に、砦の門が開かれた。そこから現れたのは、板金鎧に身を固め、|突撃槍《ランス》で武装した吸血鬼の騎兵たちだ。
「小賢しい反乱軍どもめが」
漆黒の軍馬に跨った騎兵たちが、堰を切ったように次々に砦の中から現れた。大規模な街の守備を任されているだけあり、練度も装備の質も高い。そして何よりも恐ろしいのはその数だ。百騎やそこらではない。
「それだけの兵力で我々を討ち、このラヴァリアを落とせると思っているのか? 随分舐められたものだな。貴様らの修練など何の意味も無いということを、我らが証明してやる。ここで死ねッ!!」
ランスの矛先をこちらに向けた一人の騎兵が、そう吐き捨てた。その台詞は決して、慢心からくるものではない。彼の板金鎧の胸部には、昆虫のような奇怪な意匠の『紋章』が施されていた。これが、第五の貴族から与えられた力の証なのか。
「皆、覚悟はいいな!? ――行くぞォ!!」
仲間を鼓舞する叫び声と共に、ライが先頭に立って敵陣へと切り込んだ。彼が翳した鉄塊剣に地獄の黒炎が纏わりつき、戦友を導く灯火となる。都市ラヴァリアの命運を賭けた死闘が今、ここに幕を開けた。
ブラミエ・トゥカーズ
折角、宴を共にしたのだ、このまま縊り殺されるのも眺めるのは優雅ではないな。
敵の数が多いならこちらも増やしてやろう。
一章でのUC効果は終わっている
吸血鬼狩りの騎士団を呼び出す。
吸血鬼、魔女、邪悪な災害を滅ぼす為に命を懸けた騎士団
【対吸血鬼・浄化】属性にて吸血鬼を狙う
同じく吸血鬼を敵とする闇の救済者達とは連携する
ブラミエは前線に出て自身の御伽噺的不死性に任せてUC範囲内に誘導、または目標地点の目印になったりする
で、だ。
余の周辺を狙ってくれるのはよいが、余にも刺さっておるのだが?
自身のUC攻撃が普通にブラミエも巻き込む
吸血鬼は滅ぼさなければならない
たとえ、その身がどのような様になろうとも
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「いよいよ、今夜のメインイベントか」
そう言ってラヴァリア城砦に乗り込んだブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)を待ち受けていたのは、重武装で固めた厳めしい吸血騎兵団の威容であった。随伴する『闇の救済者』の戦士たちに、一斉に緊張が走る。
「総員、突撃せよ。奴らを捻り潰せ!」
部隊長の号令一下、ランスを構えた騎馬隊が一斉に前進し始めた。地鳴りの如き蹄の音と共に押し寄せる騎馬の軍団は、さながら黒い津波だ。
「折角、宴を共にしたのだ、このまま縊り殺されるのも眺めるのは優雅ではないな」
こちらも百名に及ぶ精鋭を揃えているが、オブリビオンの兵力はそれを軽く凌駕している。まともにぶつかり合えば、ひとたまりもないだろう。
「敵の数が多いなら、こちらも増やしてやろう」
鞘から『浄剣・ウィッチバインド』を抜き払い、ブラミエはこの任務のために温存していた戦力をユーベルコードで呼び出した。それは、古い伝承に謳われた『吸血鬼狩りの騎士団』。吸血鬼、魔女、邪悪な災害を滅ぼす為に命を懸けた騎士達だ。野太い鬨の声が湧きたつと、無数の松明を掲げた部隊が暗闇から姿を現した。
「おおおおーーーっ!!」
まずは焔の雨が放物線を描き、敵陣へと降り注ぐ。弓兵が放った火矢による先制射撃だ。甲高い馬の嘶きが響き渡り、矢に射抜かれた騎士達が落馬していく。続いて長槍を構えた騎馬隊が突撃を敢行、『闇に誓いし騎士』達と真正面からぶつかり合う。槍の穂先と甲冑が激突し、闇の中で火花が瞬いた。
ブラミエもまた軍馬に跨ると自ら陣頭に立ち、剣を振りかざして切っ先で弓兵の射撃を誘導したり、騎兵の突撃目標地点の目印となって目まぐるしく駆け回った。ブラミエの指揮の下、騎士団は巨大な一体の獣のごとく戦場を動き回り、敵を仕留めていく。
「むう、トゥカーズ殿があれ程の強大な軍を率いるとは」
「我々も前線に出るぞ! モタモタしていると敵が体勢を立て直してしまう」
闇の救済者、『爪痕』の戦士たちがフードを取り、その素顔を露わにする。様々な種族の垣根を越えて集まった勇士達が、それぞれのユーベルコードを発動させて敵陣に切り込んでいく。
呪いの武具、地獄の黒焔、鮮血の拷問具、魂を宿した人形、浮遊する死霊、神聖な光。闇の世界で生まれ落ちた異能の力を振るい、彼らは牙を剥く。
「おのれ、叛逆者どもがぁー!」
吸血鬼たちも、負けじとその闇の力を解き放つ。鬼気迫る殺意はドス黒い靄となって、彼らに生命を奪い取る力をもたらした。何百という刃が閃き交錯するたびに血の雨が降り、命の灯火が消え、骸の海へと還っていく。
「で、だ。余の周辺を狙ってくれるのはよいが、余にも刺さっておるのだが?」
無論自身のユーベルコードで自滅することなどないのだが、降り注ぐ矢を剣で弾き、ゴシッククロスの外套で跳ねのけながらブラミエは苦笑する。だが、手を抜いていて勝てるような相手ではないことは百も承知している。
「まあいい、攻撃の手は緩めるなよ。悉く浄化してやるのだ」
吸血鬼は滅ぼさなければならない。たとえ、その身がどのような様になろうとも――。狂気的なまでの信念の下、ブラミエと麾下の騎士たちは最前線で剣を振るい続けた。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
騎兵どもめ…!
貴様等を屠る為にここへ来た…!さぁ行くぞ…私は…処刑人だッ!
鉄塊剣を抜き振るいライという男と共に戦おう
敵の放つ攻撃を軽業による跳躍で回避しながら鉄塊剣を振るい
怪力と鎧砕きで馬ごと敵を切断し切り捨ててやろう
己の肉体に地獄の炎を灯し回復力と不眠不休の力で敵群の生命力吸収に立ち向かおう
そして地獄の炎纏わせた鉄塊剣を振るい【火車八つ裂きの刑】を発動
地獄の炎纏う斬撃波を放ち鎧無視攻撃で敵群を焼却
地獄の炎で敵群の生命力を吸収し、回復阻害攻撃で紋章ごと焼き尽し蹂躙してやろう…!
…一人も生かしてなるものか!
逃がすまいぞ…私は…処刑人だッ!!!
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夜風に煽られて火の粉が舞い、空を赤く照らしていた。都市ラヴァリアを巡る攻防戦も、いよいよ大詰めだ。先発部隊が放った火矢がそこかしこに突き刺さり、砦の至る所から火の手が上がっている。
「騎兵どもめ……! 貴様等を屠る為にここへ来た……! さぁ行くぞ……私は……処刑人だッ!」
地獄の坩堝を彷彿とさせる戦場に駆け付けた仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)が、『錆色の乙女』を構えて大声を張り上げた。
「そこの戦士、ライと言ったか? この私に付いてくるがいい!」
アンナの傍らには、彼女と同じブレイズキャリバーの力を持つライがいた。武骨な鋼の剣を強く握り締め、ライは頷きアンナに応える。
「ああ、共に行こう。俺達の炎であいつらを焼き滅ぼす!」
「小癪な反乱軍が……かかれっ!」
二人を迎え撃つ騎兵隊が、|突撃槍《ランス》を構えて迫りくる。だが、敵の姿を視認した瞬間アンナは既に駆けだしていた。甲冑を装着し、大振りの剣を携えながらも、その動きは極めて身軽かつ迅速だ。
「――フン!!」
「ぐわぁぁあっ!!」
板金鎧をひしゃぐ鈍い音と共に断末魔が響き渡り、誰もが息を呑んだ。アンナは体操選手の如き美しいムーンサルトを披露し、馬ごと敵兵をぶった切るという離れ業をやってのけたのだ。歴戦の猟兵であるアンナだからこそ可能な芸当である。
「(一撃で……!)」
自分の想像を遙かに上回るアンナの戦闘力に、ライは戦慄を覚えた。『闇の救済者』の精鋭を自負してはいたが、猟兵と自分の間には大きな隔たりがあることを実感する。血の雨を降らせながら着地すると共に、アンナはすぐさま次の標的へと襲い掛かった。
「数多の『貴族』共を葬って来た腕前、流石だな。だが、俺も地獄の炎を宿す身……!」
ライの体に刻み付けられた古傷から、青黒い炎が噴き上がった。怒りと憎しみを源流とする地獄の炎を武器に纏わせ、獣じみた咆哮をあげながら、ライは騎士たちと激しく斬り結ぶ。彼のブレイズフレイムは、まだ粗削りで未熟だ。アンナからすれば、危なっかしくて見ていられないだろう。だが、何度も突き飛ばされ、地面に這いつくばりながらも、彼は決して挫けない。
「ライ、私が本当の『地獄の炎』を見せてやる。その眼にとくと焼き付けろ! ……うおおぉぉッ!!」
アンナの体を駆け巡る地獄の炎が、彼女の肉体を食い破って体外に放出された。目にも鮮やかな紅蓮の炎を愛剣に纏わせ、アンナは今狂戦士と化す。
「貴様らを、【火車八つ裂きの刑】に処す!」
処刑人の、無慈悲な死刑宣告だ。炎を帯びた『錆色の乙女』を横薙ぎに振り抜けば、猛火と熱風を帯びた斬撃波が放射状に広がっていく。
「……一人も生かしてなるものか! 逃がすまいぞ……私は……処刑人だッ!!!」
アンナはカッと目を見開くと、更に剣を二度、三度と振るって追撃を叩き込む。地獄の炎は戦場を包み込む紅い嵐となり、闇に誓いし騎士たちを邪悪な『紋章』ごと焼き滅ぼし、灰燼に変えていった。
大成功
🔵🔵🔵
シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦
称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。
複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を殲滅しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!
●
「闇の救済者たちよ、僕についてくるがいい」
武器を手にラヴァリア城砦に集った『闇の救済者』の前に、白い肌の謎めいた青年が現れた。細身の躯に仕立ての良い服を纏った姿は、まるで貴族の御曹司だ。だが、隙の無い所作と鋭い眼光は、研ぎ澄まされた戦闘技巧を身に着けた戦士のそれである。ミレナリィドールの傭兵、複数の銃を用いた独自の戦闘体系『彩色銃技』を操るシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は、愛用の精霊銃を備えて前線へと向かっていく。
「敵は騎兵か。弱者を虐げる、吸血鬼の尖兵め」
義侠心に駆られて参じたシェーラの憤りに呼応するように、彼を守護している精霊の力が荒ぶりだす。手にした四挺の精霊銃――それをジャグリングのように操りながら、シェーラは敵群の前へと躍り出た。
「総員、突撃せよ! 敵は少数だ、ひねり潰せ!」
「殲滅してくれる」
高々と跳躍すると、騎兵の頭上を越えながら弾丸を斉射する。放たれた弾丸は、狙い違わず騎士達の甲冑の胸部に埋め込まれた『紋章』を捉えていた。
「しまった、『紋章』が……!」
第五の貴族から授かった『紋章』を破壊されると、敵兵の戦闘能力は目に見えて低下していった。『闇の救済者』はその好機を逃す事無く、各々のユーベルコードを発動させて敵陣に切り込んでいく。
「成る程、そういう仕掛けか。奴らの主人が与えた『紋章』が、力を引き出していたんだな。……では、『紋章』は僕に任せておけ」
銃声が立て続けに鳴り響く。敵の数は多いが、四挺の精霊銃を巧みに操るシェーラの『彩色銃技・婦怨無終』を以てすれば、多数の騎兵を相手取ることも可能だ。『紋章』を破壊すると同時に防具にもダメージを与え、そこを『闇の救済者』がトドメを刺す。
「これでおしまいだよ!」
咎人殺しの女戦士・ベルが、鮮血から生み出した矢をボウガンで撃ち込む。断末魔を上げる間もなく絶命した騎兵達は灰へと変わり、骸の海へと還っていった。
成功
🔵🔵🔴
御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎
やっとこやっとこ とびだした
前座は、ブリキ玩具のマーチか
残像ダンス陽動フェイント忍び足でゆるゆると接敵
射程に入り次第念動怪力雷属性破魔衝撃波UC
フェイント二回攻撃追撃を織り交ぜ鎧貫通誘導弾急所突き
「紋章」を次々刺し貫く
マヒ捕縛吹き飛ばし
付与した雷で敵の動きを止める
敵の攻撃を落ち着いて見切り
残像ダンス陽動フェイント忍び足迷彩で躱す
窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃追撃
くろい かたい むし?
ふむ…宛らカブトムシか
やっとこやっとこ とびこんだ
玩具は我楽多♪ラッタッタ♪
ダンス釣り陽動
敵を誘き寄せカウンターで針鼠に
ぜんざおどりは もうおしまい
鎮め沈め骸の海へ
さあ!花形を♪
●
闇の中にそびえ立つラヴァリアの砦が、赤々と燃えている。『闇の救済者』と、街を支配する吸血鬼軍団との戦闘は熾烈を極め、そこかしこから怒号と剣戟が聞こえてくる。
「やっとこやっとこ とびだした 前座は、ブリキ玩具のマーチか」
「何だ、貴様は……」
板金鎧で重武装した騎兵らの前へ、御堂・伽藍(がらんどう・f33020)がそろそろと現れた。奇妙な歌を口ずさみながら前衛に進み出る彼女に、騎士たちは嫌悪と警戒を込めて槍の穂先を向ける。、
「ええい、忌々しい猟兵め。貴様らさえ居なければ!」
吸血鬼達の殺意に呼応し、彼らの邪悪な精神を具現化したような漆黒の霞が立ちこめる。彼らはそのまま|突撃槍《ランス》を構えると、手綱を扱いて一斉に伽藍へ襲いかかった。
「くろい かたい むし? ふむ……宛らカブトムシか」
確かに、長い槍を手にした黒づくめの騎士は、カブトムシに似ているかもしれない。迫りくる騎兵の胸部には、『第五の貴族』から与えられた奇怪な寄生虫オブリビオン――『紋章』が鎧に根を張るように癒着し、鼓動を打つように不気味な光を点滅させていた。その紋章が敵の力の源と見た伽藍は、己のユーベルコードを発動させて立ち向かう。
「やっとこやっとこ とびこんだ 玩具は我楽多♪ ラッタッタ♪」
|行進曲《マーチ》を歌いながら、伽藍は無数に分裂させた武器群を操り敵陣へと飛び込んだ。軽やかなステップを刻み、残像を描きながら急速な方向転換を行い、槍の穂先から器用に逃れる。そして虚空を疾走する三種の刃――『びょうしん、ふんしん、じしん』に雷の力を纏わせ、フェイントを交えながら敵の胸元にある『紋章』をピンポイントで刺し貫いていった。
「ぬおおおっ……!」
騎兵は正面からのぶつかり合いには滅法強いが、側面や上からの包囲攻撃、特に飛び道具にはほぼ無防備だ。千を優に超える刃に貫かれ、精強を誇った騎兵団が、瓦解していく。
「こ、こんな筈では……」
「よし、今だ。一気に畳みかけるぞ!!」
敵の陣形が崩れたのを見計らい、『闇の救済者』達が雄叫びを上げながら切り込んでいく。そんな彼らの姿を、伽藍は武器を収めながら静かに見守っていた。
「ぜんざおどりは もうおしまい 鎮め沈め骸の海へ さあ! 花形を♪」
夜が明けていく。闇に閉ざされた世界、ダークセイヴァーに仮初めの朝が訪れる。やがて有るか無きかの弱い陽光が天から射し込むと、最早そこに吸血騎兵の姿は影も形もなかった。
「吸血鬼どもは、アタシ達が全て討ち取ったよ!」
「――俺達の、勝ちだ! ラヴァリアを取り戻したぞ!!」
砦の最上階に姿を現した『爪痕』の幹部、ライとベルが高々と武器を掲げて叫んだ。
「おおおおおっ……!!」
人々の歓喜の叫びがうねりを上げ、夜明けの街に絶え間なく響き渡る。初めは皆、ただの力なき死にぞこないだった。だが、この世界に『猟兵』と呼ばれる者達が訪れてから、次第に戦士達は生存率を高め、やがて『闇の救済者』は支配者たる貴族達とも対等に渡り合うまでに戦力を整えたのだ。
猟兵とともに長い夜を戦い抜いた『闇の救済者』達は、遂に吸血鬼に勝利し、ひとつの街を奪還したのである。これは、絶望の世界に生きる人々にとって大きな希望の光になることだろう。
大成功
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