●
一月の終わり。アポカリプスヘルに新たな色が加わった。灰の大地を上書きするように降り注ぐのは白、雪の色だ。しかし、オブリビオンストームによって文明すらも崩壊したこの世界の雪は他の世界のように白くあらず、汚染物質や塵埃が混じった濁った色味だった。
大地の上を覆う破滅的な雪。それを跳ね飛ばす存在がいた。跳ね上がる雪は直線的で、駆動音が伴っている。
トラックだ。複数で車列を組んだその姿を|護送船団《コンボイ》という。護衛車両と輸送車両で構成された鋼の大群は雪の大地を削り、進んでいく。
しかし、船団のすべての車両には共通する奇妙な点があった。
『――――』
車両のガラスが全てスモーク貼りなのか、内部の様子を窺えないのだ。
駆動音と大地を蹴る音だけを発しながら船団は前進を続けていていく。
●
「今回皆様に向かって欲しい現場はアポカリプスヘル。文明崩壊後の物騒な世界ですわね」
猟兵達の拠点、グリモアベースでフォルティナ・シエロは言う。
『アポカリプスヘル』は近未来の地球だが、破壊したものをオブリビオン化させる暗黒の竜巻“オブリビオンストーム”によって文明が崩壊し、交通・情報インフラといったものも壊滅的となった世界だ。
「オブリビオン発生から数年、荒廃した雰囲気ですわね……」
しかし、と言葉は続く。
「この世界は“終戦”後の世界ですの」
この世界で起こった“戦争”を“アポカリプス・ランページ”という。2021年9月に起こったその戦いは、北米大陸を中心にアポカリプスヘルを暴力と恐怖で支配していた狂気のオブリビオン集団、ヴォーテックス一族によって引き起こされた熾烈なものだったが、猟兵たちの勝利に終わった。
「そして戦争の最中、この世界にオブリビオン・ストームをもたらし文明社会を破壊した“マザー・コンピュータ”が著した論文『時間質量論』を猟兵たちは獲得しました。その膨大なデータの解析を進めたところ、更に大量のデータが世界中の「隠された研究所」に点在している事が判明しましたの。
重複データも多いのかもしれませんが集めることで情報精度が高まることは間違いありませんわ」
転移の準備を進めながらフォルティナは地図を表示し、座標を示す。
光点。
それは移動していた。
「論文から得た情報では、秘密研究所はアポカリプスヘルの荒野をひた走るキャラバンと奇しくも座標を一致させていますの」
それが意味することは何か。
「現場へ赴かないことには、確かなことは解りませんわね。
今から皆様をキャラバンの進路上まで転移させますの。皆様でこの奇妙な状況を見極め、秘密研究所からデータを奪取してくださいまし!」
シミレ
●目的
・“マザー・コンピュータ”の秘密研究所を見つけ、データを奪取する。
●説明
・アポカリプスヘルの戦争イベント『アポカリプス・ランページ』の際にグリモア猟兵は『時間質量論』という論文を獲得し、そのデータを解析したことで秘密研究所の一つが解かりました。
・そこは荒野をひた走るキャラバンと同じ座標でした。
・何故?どうして?猟兵たちはそれを確かめるために現場へ向かいます。
●他
皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!
第1章 冒険
『謎の荷物を運ぶキャラバン』
|
POW : ●『キャラバンを検問する』
SPD : ●『看板やナビに細工をし、拠点から遠ざける』
WIZ : ●『キャラバンを丸ごと買い取ってみる』
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
転移を果たした猟兵たちの視界に入ったものは少なかった。曇天から降り注ぐ雪、禿げ上がっているか異常成長した木々に覆われているか極端な山々、薄暗い雪で覆われていた大地。その程度だった。
道は無い。どちらへ踏み出そうかと思っていれば、それが来た。
車列だ。遠方から猟兵たちの方へやって来る。
『――――』
向こうも猟兵たちに気づいたのか、先頭車両が一瞬迷うような小さな揺れを見せたが、それだけだった。揺れは数両に波及したが、列の後ろに行くにしたがって小さくなり、やがて吸収されたように消えていった。
整然と隊伍を組んだトラックの集団は、車両に搭載された銃器を猟兵たちに向けたまま、彼らと距離を保った位置で静かに停車した。
『――用件は』
車外スピーカーから聞こえたのは合成音声だった。
エリー・マイヤー
物騒な世界ですか…
悲しいことに、全くもってその通りですね。
もう少し、平穏な世界になってくれてもいいとは思うのですが。
まぁ、いいです。今は時間質量論です。
ひとまず念動力で銃器の向きを変えられるようこっそり準備します。
その上で、用件を伝えます。
探しているものがあること。
反応を追っていて、キャラバンにぶち当たったこと。
可能なら車両にそれらしきものがないか調べさせてほしいこと。
探られたくないなら、それらしきものがないか確認してもらいたいこと。
まぁ、ぶっちゃけ回答は期待してません。
適当に応答をしている隙に、【念動ソナー】で密かに車両内部を探ります。
データってことなら、書類やPCやメモリが狙い目ですかね。
●
エリーは雪の地面を踏み、グリモア猟兵の言葉を思い返した。
物騒な世界ですか……。
全くもってその通りだと思う。自分の意識を過去の言葉から現在の状況に向ければ、目の前には武装して全面スモーク貼りのトラックが複数存在し、そのすべてが車載兵器を搭載している。しかも、数と位置は様々だがどの銃口もこちらを狙っていた。
「――――」
なので、真っ先にそれらを掌握した。銃口や銃身の周囲を念動力で包み、己の支配下に置いたのだ。
……これで、もしもの時は相手の銃口を明後日の方向に跳ね飛ばせますね。
気付かれてはいない。それだけの技能はあるし、相手を直接コントロールしているというわけではないからだ。安全が保証されたのならば、あとはこちらの用件を伝えるだけだ。
「実は私達には探しているものがあります。その反応を追っていたところ、あなた方のキャラバンから反応がありました」
『あなた方に、我々の積み荷を調査する権限はありません』
にべも無く断られたが、これは予想していた反応だった。
「じゃあそういったものがないか、そちらで確認してみてください」
『どのようなものか、具体的な情報が無いと調査できません』
「見た目は……」
そうですね、と言いながら己は先頭車両のスモークガラスを見ながら言った。
「書類やPC、記録媒体などです」
『――――』
動きがあった。こちらに向けられている銃身がほんの僅かに震えたのだ。念動力で警戒しているからこそ解る微弱な反応だった。
ビンゴ。その一語を脳内に浮かべていると、キャラバンからもさらなる反応があった。車外についているランプが点滅し、そしてスピーカーが震えた。
『全車両チェック完了。存在しません』
「もう? 早いですね……」
実際のところ、回答に期待はしていなかった。キャラバンの言っていることが嘘だということは解っていた。それは車載兵器の反応からもそうだし、出会った瞬間から念動力は別の事にも用いていたからだ。
“念動ソナー”。念動力を放つことで対象を探知するこのユーベルコードの効果範囲は、約150メートル。トラック一台が10メートル前後考えると約十両をその場でチェックできる。
果たして十両目、車列の中央に位置する輸送車両に反応があった。その車両だけコンテナ内部が丸々、サーバールームのような様相なのだ。
『用件はそれだけですか? 十秒以内に我々の進路から離れてください。明確に認められない場合、または不審な動きが認められた場合、我々は発砲します』
大成功
🔵🔵🔵
アイクル・エフジェイコペン(サポート)
猫っぽい舌足らず口調にゃ。こんにゃ感じで、末尾だけじゃにゃくて途中にも入れてほしいにゃ。めんどいならなくてもいいけど。
ちなみに機嫌悪い時は「に゛ゃ」って濁点入る感じにゃ。
基本は底抜けに明るいというよりおばか入っている。
「……ちょっと裏に来るに゛ゃ。」
基本はとにかく騒ぐ。そりゃもうハイテンションで。
でも存外気が短いので割とキレやすいとか。
自分ではツッコミだと思っているボケ体質かもしれない。
なわけなので事件の際にはとにかく突撃する。
あんまり考えるのは得意ではないらしい。
「何に゛ゃって?失礼に゛ゃ。」
『せーとーはなれでぃー』を気取っているのでスマートかつエレガントを目指す……つもりではいる。
●
異常が起こっていることを察知したキャラバンの選択は早かった。
『――!』
突破だ。アクセルを踏み込み、出力を上げ、その質量と速度で猟兵の検問を突破する。
そのはずだった。
『……!?』
しかし、それは果たされなかった。
それは何故か。
「行くにゃあああああああああ!!」
正面、いきなり猟兵が拳をぶち込んできたからだ。
●
単純な問題にゃよねぇ……、とアイクルは思った。
自分たちに必要なものがあって、関係してると思われる連中が怪しいのだ。それもかなり。ちょっと検問張って職務質問したらさらに怪しくなったのだ。
だから自分は行った。先ほどそう宣言したし、ならば今言うべきことは何か。
「まだまだ行くにゃああああああああ!!」
ボンネットからガントレットを引き抜き、もはや走れなくなった先頭車両を足場にして数歩でルーフとコンテナを駆け抜ける。
跳躍。
眼下にある車両群はまだこちらに反応できていないように見えたが、車外のランプが一斉に明滅。直後、
お……?
一気に動き始めた。先頭車両が潰され、本来の前進ルートが使えなくなったことを察知すると、奇数両目と偶数両目でそれぞれ左右に尻を振り、車体の向きを変えたのだ。
……にゃんかの魔法かにゃ?
完全に不意を突いたと思ったが、相手の反応に乱れが無さすぎる。ただの訓練などではここまで出来ない。ならば魔法だ。どの世界にも似たような技術はある。人だと面倒や不可能な作業を肩代わりするような存在が。
「でも遅いにゃあー!」
一両目と同じく、ボンネットへ直上撃ち下ろしの打撃をぶち込んだ。
ヘッドライトやバンパーが砕ける音が響き渡る。フロントガラスも割れ、内部が無人なことが解っても自分としては“やはり”という感だ。振り下ろした拳を追うように着地し、気にも留めない。
「にゃははは! 軽い軽い!」
ボンネットに突っ込んだままの拳でトラックの基部を掴むと、そのまま三両目へ振り回してぶつけ、四両目まで巻き込む。どちらも雪の上を滑り続け、五両目に衝突したところへ、
「投擲にゃ……!」
手に持ったままの二両目を放り投げた。
成功
🔵🔵🔴
アビー・ホワイトウッド
【POW】
戦争は終わった。でも世界は大して変わらない。やる事は同じ。
車列から距離を取った場所に自分のトレーラーを停めてルーフの上から車列を観察する。
大型トラックとトレーラー。何処かにデータがある。積荷は食糧?弾薬?もし車列が敵なら依頼は別にしても積荷でひと稼ぎできる。役得。様子を見る。
車列に接触する人影。たぶん猟兵。
車列の足は止まったらしい。
…始まった?オーケー。準備する。
トレーラーに載せた私の戦車に搭乗して起動。
いつも通り。仕事の時間。
●
アビーは離れた位置で車列を観察しながら、思う。
……戦争は終わった。
グリモア猟兵の言った通り、この世界での“戦争”は終わった。この世界に住む己はそのことを深く知っている。
「――でも」
と、言葉が続くということをだ。
でも、
「世界は大して変わらない。やることは同じ」
停車した自分のトレーラーのルーフ上で、件の車列を詳細にチェックしていく。
十両以上の編成で移動をしているそれらは、輸送車両に比べて護送車両側の比重が大きかった。
「厳重な護衛。何処かにデータがある」
過剰とも言える護送の目的は一体何か。この世界に住む者としてそれを直感的に理解していた。
となると、偽装として輸送車両に何かを積んでいる可能性もある。それは食料かもしれないし弾薬かもしれない。何にせよ、あのキャラバンが“敵”であるならば、依頼とは別に稼げる可能性があるのだ。
「役得」
なので今、全体が見える位置から様子を見ている。しかし外から確認できる手がかりは限定的だ。窓はスモーク貼りで内部が伺えず、車体を彩る装飾やペイントは様々だが、そこから何らかの関連性も読み取れなかった。というより、
「無機質的」
無感情的とも言えるだろうか。車の装飾だけでなく、車列の間隔や動きからもそれを読めなかった。しかし思想は感じる。
「効率的……。軍隊と同じだ」
間違いなくレイダーではない。
ともあれ、
「そうなると、偽装の積み荷もコストをかけてないかも」
長期保存が出来て、本物の積み荷に影響を与えない安全な物品。燃費のことも考えたら軽量なものかもしれない。
……梱包材しか詰まってなかったらどうしよう。
まあその時は車載銃器の方をいただこうと、そう思っていたら、車列の前方に人影が現れた。恐らく自分と同じ猟兵だ。車列もその人物に気づき、停車する。
交渉か検査か、いずれにせよあの“キャラバン”にコンタクトを図るのだろう。
「始まった?」
疑問したが、状況はすぐに動いた。もう一人の猟兵が飛び出し、先頭車両を文字通り殴打したのだ。激突と言っていい状況だった。
始まったのだ。
「オーケー。準備する」
すぐにトレーラーのルーフから降り、積まれていた歩行戦車であるラングレーへ向かった。スムーズな動きで搭乗と起動を果たす。
「いつも通り。仕事の時間だ」
ラングレーの各部へ出力を送ると、トレーラーから外へ踏み出した。足先の爪が雪の大地をしっかり掴み、背後へ捨てるように飛ばした。
行くのだ。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
おお~、見事な暴れっぷりですね。
口八丁で誤魔化すか、力づくで止めるか悩んでましたが…
陽動してくれる方がいて、手間が省けました。
この騒ぎに便乗して、例のトラックに忍びこみましょう。
まずは【念動バブル】で身を隠ます。
そのまま念動力で空を飛び、空中から例のトラックに接近します。
そして潜入…ドアを開けて簡単に入れるなら楽なんですが…
まぁ、大事なものは厳重に閉じ込めちゃいますよね。
仕方ありません、とりあえず念動力でドアの隙間を探りましょう。
ラッチを見つけたら直接力をかけて、ロックを解除します。
どんな構造の鍵であっても、ラッチに直接干渉すれば開け放題です。
さて、鬼が出るか蛇が出るか…
●
「おお~、見事な暴れっぷりですね」
今、エリーは目の前で生じた混乱を見ていた。猟兵がキャラバンに突撃し、先頭の数両を打撃したのだ。
口八丁で誤魔化すか、力づくで止めるか悩んでましたが……。
今、後者を選んでくれた仲間がいた。それも派手な動きで、陽動もしてくれている。手間が省けましたね、とそう思いながら、己は依然として念動力で相手の銃器や火砲は制限下においたままだ。キャラバンは最初の数度発砲したが、そのどれもが発砲の直前に明後日の方向へ跳ね飛ばされた。
攻撃は出来ないと既に理解しているはずだが、相手の混乱は薄かった。目の前で破壊されたフロントガラスから車内が無人だったのが解ったが、つまり相手は恐らくAIだ。人間のような“混乱”や“動揺”といったものが見られないのも納得だった。
整然とした車列でやって来て、やはり整然とした撤退陣形へ今、瞬時に移っていく。車列先頭で他の猟兵がそれを阻止しているが、
「時間はありませんね」
逃がしてはならない。己はすでにユーベルコードを発動していた。
●
周囲に衝突の激突が鳴り響く中、キャラバンのAIは情報を並行処理していた。今、キャラバンは猟兵たちの検問を突破できず、先頭から妨害を受けている。先ほどの応答で猟兵たちがこちらへの違和感を強め、介入を選択したのだ。
車載兵器での迎撃は衝突の初期に試したが、異状な結果に終わった。発砲は出来るが、銃身の制御が効かないのだ。
何故。
思考する。
何故、接触を図ってきたあの猟兵は、銃口を向けられながら堂々と姿を現したのか。
そして、
『――――』
何故、今その姿を視覚素子は感知していないのか。
●
エリーは変わらずそこにいた。ただユーベルコードによって姿を隠していただけだった。
“念動バブル”。泡状の念動力で己を覆うことで、視覚や嗅覚による探知から逃れた今、この現場において自身は不可知だ。そして、自分がこれからどう動くべきかは解っていた。
まずは念動力で自身を上昇させ、キャラバンの頭上を飛び越えて行く。
確かあの車両は……。
眼下の最早乱れが大きくなった車列の中から、先ほど探知した車両を探す。十両目だ。件の輸送車両は依然としてそこに存在していた。猟兵の妨害によって周囲の護送車両らが動き、行き場を塞がれているが、なんとか脱出を探そうとしている様子が見える。
車両の背後に自身を着地させ、己はリアゲートへ触れた。案の定ロックがされているが、構わなかった。
電子錠ですね……。
念動力を放って内部の構造を把握してラッチの位置さえ確認すれば、錠などというものは自分にとって障害になり得ない。
「――――」
いった。手で直接触れたわけではないが、“手ごたえ”と言えるものを己は確かに感じた。
さて、鬼が出るか蛇が出るか……。
この中がサーバールーム、つまり記憶装置が整然と並んでいるだけだということは、先ほどの探知で解っていた。しかしここが本命であるとするならば、相手が何らかの対策をしていることは想像に難くなかった。
「…………」
ハンドルを慎重に掴むと、ゆっくりとゲートを開いていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『戦術二足歩行戦車-M109『ランドルフ』』
|
POW : 試験型超高出力粒子防御フィールド
全身を【粒子力場を機体全面に展開する防御態勢 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 試作プラズマ粒子加速砲
【最大出力の粒子加速砲 】で攻撃する。[最大出力の粒子加速砲 ]に施された【機体負荷を厭わないリミッター上限】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ : オブリビオン・ストーム
自身の【黒い嵐の影響で変質した主砲機構 】から【混沌としたオブリビオン・ストームの奔流】を放出し、戦場内全ての【飛行能力、高度な電子機器、ユーベルコード】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アビー・ホワイトウッド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
直後。キャラバンの様子は一変した
『緊急事態発生。緊急事態発生。』
全車のスピーカーが震え、車外ランプも赤一色だ。そんな中、一両だけは他とは違う動きをしていた。
『機体チェック……オールグリーン
武装チェック……オールグリーン』
最後尾だ。そこにいた輸送車両のゲートが激しい音とともに開き、内部に眠っていた戦車が雪の大地に降り立った。
『戦術二足歩行戦車-M109――ランドルフ、起動完了』
全高十二メートルの歩行戦車の赤い視覚素子は、猟兵たちの姿を捉えていた。
●
|護送船団《コンボイ》全体を把握できる最後尾、そこにいたランドルフはすぐに状況を理解した。自分達が襲撃に遭い、そして相手がこちらの“積み荷”にアクセスしようとしているということをだ。
己に入力された命令はこのような場合を想定していた。
《“積み荷”を含めたいかなる犠牲を払ってでも、敵に“積み荷”を奪取されてはならない。》
そして、己は命令を果たすために存在している。
他の車両を踏み台にして射線を確保すると、猟兵たちに全武装を向けた。
エリー・マイヤー
くっくっく、お宝は無事確保させていただきました。
後はこいつを人質に、無抵抗の敵を好き放題攻撃して、楽々任務完了…
とか、そんな適当な作戦を考えていたんですけどね。
まさか最大出力で即座に証拠隠滅を図るとは。
【念動フラッド】で防がなければ、お宝も私もまとめてお陀仏でした。
まったく、行動が的確すぎてイヤになりますね。
まぁ、仕方ありません。
きっちり守りを固めて、お宝に被害が出ないよう戦いましょうか。
大技は引き続き念動フラッドで防ぎつつ、【念動グローブ】を同時発動。
その辺に落ちてるトラックの残骸を掴んで動かし、バリケードを構築します。
トラックが余るようなら、敵目掛けてぶん投げて攻撃に使いましょう。
●
リアゲートを開いたエリーが見たものは、念動力で探知していた通りやはり大量の記憶装置だった。
「くっくっく……。――って喜べたら良かったんでしょうけど……」
目当てのものだ。だが、単純に喜べないことを己は知っていた。ゲートを開いたと同時に全車両からから警報が鳴り、背後で大きな開閉音や起動音が聞こえたからだ。
振り向けば、最後尾の車両から出てきた歩行戦車がこちらに近づいてくる。警報が知らせた名を、ランドルフと言う。
「この“人質”を使って後は――、って考えてたんですけど……」
『――――』
「どうにも通用しそうになさそうですね」
銃口と視線は、データにたどり着いた張本人であるこちらへ間違いなく向けられていた。彼我の距離は数十メートル。重火器なら至近と言える距離だった。
刹那。ランドルフの腹部にある機関砲が空転した。
射撃の前兆だった。
「……!」
対する己はサイキックエナジーを全力で開放し、目の前に集束。直後、機関砲から放たれた大口径の銃弾が連続で飛来する。
鋼鉄すら引き裂く銃弾の群れは、しかしこちらにたどり着くことは叶わなかった。まるで壁にぶち当たったようにこちらの眼前で次々とひしゃげ、地に落ちていく。
無尽蔵と言っていい己の念動力を一点に集中すれば、それは防壁となる。それによって弾丸はすべて防がれているのだ。
打撃の勢いによって揺れ動く念動の壁は、激震の一語だ。向こう側の様子が歪んで見えるが、明確に解ることはある。
……光?
ランドルフの一部分が眩く光っていた。何か、と疑問する必要は無かった。自分としてはただ備えるだけだ。
念動力の壁を一層厚くしたところで、それは来た。
光が飛沫くように散ったかと思えば、閃光が防壁に突撃する。壁面に衝撃が走り、大気を焼き焦がす音が遅れて聞こえてきた。
「プラズマ砲ですか? 空気が綺麗になっていいことですね」
波打っていた壁面を整調させると、己は手を外に構え、さらに念動力を解放した。今発動しているユーベルコード“念動フラッド”とは別に、もう一つのユーベルコードを発動するのだ。
“念動グローブ”。周囲のトラックを掴んで即席のバリケードを作り、自分だけでなく背後の輸送コンテナを守ると、次は攻撃のためにその力を使う。
方法は単純だ。離れた位置にあるトラックを掴み上げ、空中で振りかぶるように背後へ振って勢いをつけると、
「……!」
ランドルフ目掛けて一気に投擲した。数トンもの質量が空中を突き進んだことで、周囲の大地から雪が舞い上がっていく。加速度の乗ったトラックはまるで鉄柱だった。ランドルフの装甲へ勢いよく衝突すると、巨大な管楽器をぶちまけたような大音が戦場に鳴り響いた。
二足歩行の戦車は激突の勢いに踏ん張れず、もんどり打ったようにトラックの上から吹き飛ばされ、雪の大地の上を転がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生
正義感が強く困っている人は見過ごせない
UCは業火の一撃、灼熱の束縛に加えて
自分たちが押し切られそうになったらオーバーヒートバッシュ
🔴の数が多い場合はバーニングリベンジャーだ
攻撃には怪力、属性攻撃、2回攻撃、グラップルなどの技能をのせる
逆に敵の攻撃をからみんなをかばう、耐えるために
武器受け、挑発、おびき寄せ、時間稼ぎ、激痛耐性なども使用
敵に一撃入れられそうなら咄嗟の一撃や捨て身の一撃、カウンター
こいつがボスか…
みんな大丈夫?助けにきたよ!
そんなの許せない、ボクの炎で焼き払ってやる!
技能の勇気、覚悟、気合いは常に発動状態
アドリブ絡み歓迎
影朧などの場合は説得もしたい
●
ランドルフは己に搭載された人工知能で思考し、判断していた。猟兵たちとの衝突は己の想定以上である、と。
機体がトラック上から撥ね飛ばされ、宙に浮いていたのも束の間。今、己は雪の上をかなりの勢いで転がっている。すぐに大地へアンカーを立てることで急制動をかけ、立て直した。
が、衝撃は大きい。すぐに機体の各部をチェックし、修復にあたりたいがそれよりも優先すべき事項が迫っていた。
「……!」
追撃だ。
剣に炎を纏わせた少年がこちらへ突っ込んでくる。
●
モユルは駆けた。一歩目から全力だった。手に持つ剣は腰の高さで、刃を後ろに流している。
機械化された身体はトラックの残骸や雪の大地をものともせず、一気に身体を運んでいく。
今、視界の先には体勢を立て直したランドルフがいる。
デカいな……!
体高十二メートル。見上げざるを得ない、城壁のような存在感だ。だが、その城壁も他の猟兵の攻撃を受けてダメージを負っており、今が勝負を決める絶好のチャンスだった。
「燃ゆる命の炎、見せてやるぜ!」
腰の高さで流していた剣を構え直せば、刃に纏う炎がさらに輝きを強くした。そして、ランドルフの目前まで距離を詰めると、その燃えさかる剣で一気にスイングした。
横薙ぎに払う軌道によって刃がランドルフの脚部に激突。鋼同士の硬い衝突音が響き渡る。
そのはずだった。
「な!? シールドか! クッ……!」
装甲に辿り着くより前に、刃が何かによって押し止められたのだ。見れば、ランドルフを覆うように輝く粒子が広がっている。無数と言っていい光の粒は果たして一気に膨れ上がり、留めていた刃が圧力によって押し返された。
力場だ。粒子によって形作られたその空間はかなり強固なようで、押し戻された剣を構え直して幾度か振り下ろしたが、破ることは叶わなかった。ならばと、剣に蓄えていた火炎を一気に解放してみる。
“|業火の一撃《フレイムインパクト》”。傷ついたランドルフを火炎によって内部から攻撃するために発動していたユーベルコードだったが、今や火炎は光のドームとなった力場の上を舐めるように広がっていくだけだった。
突破力が必要だった。
「なら、もっと強い攻撃でぶち抜けばいい!!」
己は、剣を傍の大地に突き刺した。
●
ランドルフは力場の中で自身のシステムチェックと修復プログラムを稼働させながら、それを見ていた。
猟兵が武装である剣を手放したのだ。大地を覆っていた雪は熱で一気に溶けていく。猟兵を中心にして融解していくその範囲は、しかし剣の火炎によるものだけではなかった。
猟兵の腕が、莫大量の高熱を発しているのだ。腕部が砲と形容すべき姿に変形していた、否、あれは変形ではない。機械である己はそれ以上に適した言葉を知っている。
それは、
「換装っ!
――ボクの体、こんなことだってできるんだぜ?」
直後。猟兵の腕に蓄えられていた高熱が、一気にこちらへと放たれた。
成功
🔵🔵🔴
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
ハル・エーヴィヒカイト(サポート)
▼心情
手の届く範囲であれば助けになろう
悪逆には刃を振り下ろそう
▼戦闘
殺界を起点とした[結界術]により戦場に自身の領域を作り出し
内包された無数の刀剣を[念動力]で操り[乱れ撃ち]斬り刻む戦闘スタイル
敵からの攻撃は[気配感知]と[心眼]により[見切り]
[霊的防護]を備えた刀剣で[受け流し]、[カウンター]を叩き込む
アビー・ホワイトウッド
相手は似た様な歩行戦車、いける。
IFF(敵味方識別装置)に反応…友軍機?これは驚いた、軍があった頃の同型機らしい。しかも新型。
まだこんな状態の良い軍用歩行戦車が残ってた。倒せばパーツは取り放題。
いこうラングレー。
歩行モードで全速力で接近、対戦車ミサイルと機関砲を浴びせながら戦車の質量で体当たりする。それからゼロ距離で135mm砲をお見舞い。電光石火。
…あまり効いてない。なるほど、とても頑丈。
さすが上位機、手に余る。
反撃に対しては電子照準器でランドルフの電子機器にダメージを与えつつ回避機動。装備兵装を使って全力で応戦する。
連携できそうな猟兵がいればいいけど。
●
現場へ急ぐアビーはラングレーを望遠にし、相手の姿を確認した。それはこちらと似た様な歩行戦車だった。なので、いける、と、そう思った時、ラングレーのコンソールがあることを知らせて来た。
「――友軍機?」
|敵味方識別装置《IFF》はそう示している。前方にいるオブリビオン、ランドルフが自分と同陣営であると。
もう一度、己は相手の姿を確かめた。先ほどよりもズームで詳細に注目すれば、事情が分かった。
「驚いた。軍があった頃の同型機らしい」
ラングレーよりも大型なその姿はしかも新型だ。まさかあんなに良い状態で現存していたとは。しかし、これはチャンスだった。上手く倒せばラングレーに共通するパーツが大量に手に入る。
「行こう、ラングレー」
移動は歩行モードで、全速力。万全の整備によってその速度はかなりのものだ。そうして、彼我の距離はやがて縮まっていけば、射程距離と等しくなる。
画面上、電子音と共にロックされらのは貴重な同型機、それも新型だったが、己は構わなかった。迷わず引き金を引いた。
直後。二種類の音が生じた。それは対戦車ミサイルが推進剤を燃やす甲高い音と、機関砲から放たれた雷のような大音だ。
「命中。――命中」
ロックされた時点で相手もこちらに気づいている。モニターに映っていたランドルフはミサイルの爆炎に包まれる前、確かにこちらに向き直ろうとしていた。
今や巻き上がった煙で姿は見えず、レーダーの反応と機関砲の弾着音でしかその存在を窺えない。
両者の距離はもはや間近だった。だが己は減速せず、最高速のまま黒煙を突っ切ると、その向こう側にいるランドルフへ最接近した。
否、
「……!」
ぶち当たりに行った。体当たりだ。
激しい激突音が鳴り響けば、それと同じだけの衝撃がコックピットを襲っている。ベルトで締め付けられている自分の肉体が、激しく揺さぶられた。
しかし、まだだ。己は攻め手を緩めなかった。揺れる視界の中、コンソールに手を走らせ、もう一つの武装を稼働させる。
それは右肩にある長大な主砲だった。角度を調整された砲は、その先端をランドルフに至近距離で向けていた。
刹那。装填されていた135ミリの砲弾を、至近距離で放った。
●
砲撃の衝撃は、周囲を等しく圧倒した。
音速超過の砲弾は衝撃波を全周に発生させ、戦場に舞っていた黒煙や塵埃、大地の雪を一気に吹き飛ばした。殆どのトラックの窓ガラスはその衝撃波に耐えられず、割り砕かれていく。
「……あまり効いてない」
アビーが自分で作りだした戦場の感想としては、それだった。砲撃の勢いに逆らわず、後退した自機の前方、ランドルフがまだ健在しているのが見えた。
対戦車ミサイルと機関砲、体当たり、そして極めつけの135ミリ砲を電光石火の勢いで一気に叩き込んだが、しかし、さすがは上位機ということか。
『――――』
見れば、ランドルフの全周に超高出力の粒子防御フィールドが漂っていた。装甲も武装健在であるのは、パーツを取ろうと考えているこちらとしては有り難くもあるが、手に余るという感もあった。
どうやらあの防御フィールドを発動中、ランドルフは移動できないようだが“稼働”は出来るようだった。
ランドルフの武装の照準は、今もこちらに調整されていたからだ。
「――!」
己はすぐにラングレーへ回避機動を叩き込み、次の瞬間襲い掛かって来た敵の砲撃を可能な限り凌いでいった。こちらも再びミサイルや砲撃、そして電子照準器も加えて応戦しているが、あの防御フィールドを急ぎ突破しなければならなかった。
援護が必要だった。
そして、己は知っている。先ほどのあの主砲の激音と衝撃に耐えられるものが、ラングレーとランドルフ以外にこの戦場に存在していたのを。
「…………」
猟兵だ。数は二。
鉄と火炎の暴風雨が吹き荒れる戦場の中、無傷の姿で立っていた。
●
リズは、己の周囲にある大地が、以前の姿のまま保たれているのを見た。戦車同士の砲撃戦の最中であっても、その円形の範囲では雪すら散っていないのだ。
無傷。
そう言っていい空間を作り上げたのは、目の前にいるハルだった。
「守っていただき、感謝いたしますわ」
「私が勝手にやったことだ」
その会話の直後、再び流れ弾が飛来した。
が、
「――――」
“円”へ侵入した瞬間、微かな硬音がしたかと思えば、その砲弾は纏っていた衝撃波もろとも消え失せた。
そのような現象が、先ほどから無数に続いている。
●
戦場に作り上げた己の領域の中で、ハルは意識を研ぎ澄ませていた。“円”の正体は自分の殺界を起点とした結界だからだ。
背後にリズが置かれているが、それ以外に存在しているのは結界に内包された無数の刀剣だ。その時だった。
前方から、力の圧が来た。それは流れ弾であり、爆炎であり、雪とガラス混じりの土砂であり、激しい衝撃波であった。
「――――」
あらゆる角度から迫るそれらすべてを、己は結界に入った瞬間に剣の捌きだけで対処した。
砲弾であるならば刀によって受け流し、爆炎であるならば刃で切り裂き、土砂や衝撃波であれば斬撃によって霧消させていったのだ。
そうして一掃されて出来上がった空白を踏み越えるように、数多の刀剣が即座に疾走していく。それはやがて敵戦車、ランドルフの元へたどり着いたが、
「防御が厚いな」
全周を覆っている防御フィールドが厄介だった。己だけの攻撃では通じない。歩行戦車に乗った猟兵の砲撃に合わせて斬撃を送ってみたところ、粒子の力場に乱れが生じるのが見えた。しかし、突破には至っていない。
「あともう一歩……、というところですわね。
――加勢いたしますわ」
リズの声は、そこで終わらなかった。
「――――」
詠唱だ。
●
リズは現状を打破するために、精神を集中させた。オブリビオンの防御を打ち破るには、砲撃と斬撃の威力を増幅させる必要があるのだ。そして、自分にはそれを叶える力があった。
「――――」
手に持っていた魔導杖を構え、詠唱を始めていく。唱える口上は戦神の加護を得るためのものだ。
最前線。己が今立っている現場はまさしく戦神の求むる状況であるが、詠唱という繊細な振る舞いには本来適していない。砲火と塵埃、轟音と烈風が吹き荒れているのだ。
しかし、今、それらはハルの刀剣によってすべて無効化され続けている。結界の中、己に不安や不足は無かった。
「皆様に戦神のご加護がありますように――」
直後。己を中心に、光が波のように広がった。神聖さと活力ある輝きは、まさしく戦神の加護の証だ。広がった輝きはやがて指向性を持つ。オブリビオンに相対する二人の猟兵の元へ、光が一直線に走っていった。
光のオーラに包まれた一人と一機のそれからの動きは、圧倒的だった。
『……!』
戦車の砲撃は間断無く叩き込まれ、その威力も跳ね上がっていた。ミサイル、機関砲、主砲、その他全ての武装が間断無い連射で防御フィールドへ叩き込まれていく。その勢いに粒子の力場が大きく波打ち、僅かな綻びが見え始めていた。
そして、その綻び目掛けて無数の刀剣が飛翔していった。刀剣の速度も斬撃の鋭さも、やはり強化されていた。綻びに一閃が走ったかと思えば、その残像が消える前にさらに一閃。連続していく。掻き毟るようなラッシュが、怒涛に積み重なっていく。
一点に集中し続けていった爆発音と閃光が、やがてその様子を変えた。今までのように粒子の壁に弾き返されることなく、内部へ突き抜けたのだ。
突破した瞬間だった。
●
速く、鋭利な力の疾走を斬撃と言う。
戦神の加護によって増幅された今、それはもはや割断と言っていい威力だった。
綻びから小さな孔となったそこを始点とするべく、ハルは刀剣を走らせた。孔が修復されるより先に多重に差し込み、花開くように外側へ切り払えばどうなるか。
快音が戦場に鳴り響いていく。空白を埋めんとする力場の圧力に、刀剣の斥力が打ち勝ったのだ。
フィールドの消失を示す粒子の明滅の向こう側、現状を処理しきれなくなったのか、オブリビオンは動作を一瞬の間だけ硬直し、兵器の照準も曖昧となった。
己はその瞬間を逃さず、乱れ撃つように刀剣を放った。狙いは兵装の接続部だ。両肩の砲、胴体下部の機関砲、腕部のシールド、すべての兵装を解体するように、一息に斬り落とした。
武装が消失し、狼狽えるように身を捩らせたオブリビオンだったが、
「! “積み荷”を狙っています!」
すぐに踵を返し、車列の中央へ向かっていた。溶けた雪でぬかるんだ大地の上をバランスが突然変わった機体で駆けることは難しいのか、足取りは縺れるようだった。だが、その様子は決して無力というわけではなかった。
「自爆する気か」
機体の動力に過負荷を与えているのか、ランドルフの動きは激しく揺れ始め、装甲上のパネルも不規則に明滅していた。
看過は出来なかった。すぐに制圧するべく己は刀剣を放とうとしたが、その必要はなかった。
『――――』
ランドルフと相対していた猟兵の歩行戦車だ。主砲とは逆の肩に積まれたアンテナの様な照準器から、高周波パルスが放たれたのが見えた。
それは一瞬で、そして何の妨害も無くランドルフのもとへたどり着き、すぐにランドルフの動作を停止させた。
シャットダウンさせたのだ。
それは、猟兵たちの勝利と、移動研究所であるキャラバンから秘密データの確保に成功した瞬間だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
最終結果:成功
完成日:2024年02月09日
宿敵
『戦術二足歩行戦車-M109『ランドルフ』』
を撃破!
|