バトル・オブ・オリンピア⑲〜コーヒーに月と星を浮かべて
●運と実力が足りなかった|計画《プロジェクト》
顧客が説明した要件:共にこの世界を滅ぼし、多世界侵略に乗り出そうぞ……!
プロジェクトリーダーの理解:この力があれば、『バトル・オブ・オリンピア』を復興できる!
アナリストの設計:異世界の敵にも対抗できるよう、スポーツの技量を磨き続けなければならない。
プログラマのコード:児戯に等しきユーベルコードを全て受けきった後に、堂々と反撃させてもらおう。
営業の表現、約束:いそがしそうだね〜たまには無理せずゆっくりしようね〜。
プロジェクトの書類:ここは、本当に良き場所だ。殺し合わず、競い合う事で生まれた恒久の平和。
実際の運用:あれに負けたら、アタシ達みんな支配下に置かれちゃうんですけど……???
顧客への請求金額:さあ、もう少しそのパワーを使って貰うぜ。
得られたサポート:全力で私に挑み、私を越えてゆけ……!
顧客が本当に必要だったもの:コーヒーどうぞ〜。
●本当に必要だったもの
「すばらしいです……みんなの心が一つになって……」
グリモア猟兵、リア・アストロロジーさんは感動していました。
いわゆる「どうしてこうならなかった?」という、だれも悲しまない、損をしない完全な理想形のような展開。それが今回に限っては向こうの方からやってきてくれたのです。
……一人か二人ほど泣きを見てる子がいる気がするよ? そんな疑問は聞こえません。それはささいな事なのです。それくらいはどんな星だってあるのです。わたしだってそういう経験はあります。
「でも今は、そんなことはどうでもいいんです。重要なことじゃないんです」
何となく霧が深そうな、プレイヤーの好感度とか共感とかダダ下がりしそうなセリフを吐きながら、リアさんは続けます。いやあ……ガチデビルは強敵でしたね、とか言い出したら、もう末期かもしれません。
「このあとガチデビルさんがコーヒーをご馳走してくれる……ご馳走するのはキャンピーくんの宝珠だっけ? とにかく、おいしいコーヒーを飲みにいきませんか?」
|単身で《独りでも》猟兵にガチ戦闘を挑もうとしているガチデビルさんをそういう扱いするのはやめましょう。
とはいえ、なけなしのデビルパワーを注ぎ込んだであろう宝珠(未完成)は無事爆死し、何だか勇者リリリリの洗脳支配まで解けつつあるガチデビルさん。
「皆さんと戦う為にガチデビルさんはKING宝珠を作ってパワーアップしようとしてたんですが、キャンピーくんの宝珠は未完成でまだ『おいしいコーヒーをだせる』だけみたいなんですよね……それで、宝珠は一定のダメージを与えると猟兵の皆さんの味方をしてくれるようになるはずだったんですけど」
爆死したガチデビルさんが八つ当たりでもしてしまったのでしょうか、宝珠は初めから猟兵側らしく。
「つまり、こうなります」
1.まず、お菓子を準備します。
2.キンキンキンキンキン!!!(戦闘)
3.リリリリさんとコーヒーブレイク。
4.リリリリさんとおやつタイム。
5.リリリリさんと楽しくおしゃべり。
6.キンキンキンキンキン!!!(おまけ)
リアさんによれば、だいたいこんな感じで戦闘(?)が進むようです。リリリリさん自体は流石の5thKINGだけあってすさまじい強さのようですが、それを操っているガチデビルさんも色んな意味でいっぱいいっぱいなので、シリアスな状況はそんなに長続きしないようです……。
「コーヒーには甘いお菓子が良く合いますよね。アメリカではキャンプでの定番は、焼いたマシュマロとチョコレートをビスケットで挟んだ『スモア』ってお菓子だったそうですよ」
とうとうリアさんはお菓子の話をし始めました。これって何の依頼だっけ? キャンプじゃないよね?
「おいしいコーヒーを飲みにいく依頼です」
そうでした。
おいしいコーヒーを、のみにいきましょう!
常闇ノ海月
「ガチデビルにとって、KING宝珠ってのは単なるボールじゃないんだ」
「そうよそうよそれぞれのKINGとの思い出がいっぱい詰まってるのよ」
「初めて会った時のことからゲットした時のことや!!」
「一緒に旅をしたことや」
「一緒になって、世界征服で頑張ったことまで、そんな思い出の結晶がKING宝珠なんだ!」
それを奪うだなんて……お前ら人間じゃねぇ!! 常闇ノ海月です。
ガチデビルさんを煽るのもほどほどにしておきましょう。彼の許容範囲はもう限界らしいです。
このシナリオは一章で完結する特殊な「戦争シナリオ」です。
書ける分だけ書く少人数採用の1リプレイ完結方式でいこうかと思っています。
●参加受付について
執筆可能なスケジュールが限られています。
募集は断章後にお知らせしますので、お待ちください。
●このシナリオですること
普通に戦闘をして頂いても構いませんが、一切戦闘行為を書かないプレイングでもどうにかなる仕様です。
その場合、戦闘パートはキンキンキンキンキンで進みます。
どちらかというと戦闘はほどほどにコーヒーを飲んでまったりしましょう。
どうせ魔界出身のKINGなんてキング・ブレインさんみたいに根は|善良《よい子》なので、また魔界の話でもしてあげれば喜ぶんじゃないかな。
ガチデビルさんはカフェイン覚醒したリリリリさんの協力で割と楽に倒せるか、憤死する予定です。
ではでは、皆さんのご参加をお待ちしています。
第1章 ボス戦
『勇者リリリリ』
|
POW : 5thKINGブレイド
霊力を帯びた【斬霊刀 】で斬る。対象にこの斬撃を防ぐ装備や能力があれば、全て無効化し、更に威力を増大する。
SPD : 堕天シールド(ガチデビル形態)
【宝珠のついた盾 】から、斬撃・投擲・盾受けに使える【小さなガチデビルの顔がついた空飛ぶ小型盾】を具現化する。威力を減らせばレベル×1個まで具現化可能。
WIZ : 大罪魔法「六つの大罪」
戦場全体に【大罪を司る無数の祭壇 】を発生させる。レベル分後まで、敵は【祭壇より現れる『六大罪獣』】の攻撃を、味方は【祭壇より放たれる『闇色の炎』】の回復を受け続ける。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●令和6年1月30日
ガチデビルは、死んだ。
「オマエはもう死んでいるんじゃないの〜?」
「納得がいかぬ……」
そう、時すでにおスシ。猟兵がコーヒーを飲みにいったときにはもう、ガチデビルは死んでいました。オブリビオンなので元々死んでいるようなモノだったかもしれませんが、追加で死んでいました。ゆっくりし過ぎた結果です。
しかしその時、
「でも……そう思わせることが犯人の狙いだったんじゃないの〜?」
「!?」
「たしかに、36回も死んだら普通は致命傷。でもそう見せかけて……どっこい生きてるんじゃないの~?」
思えば、死んだハズのガチデビルはオブリビオンになって蘇り、そして7thKING WARで撃破されたにも関わらずこうしてリリリリの体に取り憑いて生き延びていたのです。二度あることが三度はないと、だれが言いきれるでしょうか。
「つまり……紅茶が無いならコーヒーを飲めば良いんじゃないの〜?」
自我を取り戻したリリリリの灰色の脳みそがコペルニクス的転回によって既存の常識の枠を突破し、新たな境地を切り拓こうとしていました。
リリリリの助言に着想を得たガチデビルは、
「ボストン港をティー・ポットにする! ボストン港をティー・ポットにする!」
と、叫びながら東インド会社の船を襲おうとしましたが、ここはボストンではありませんでした。惜しむらくは、ガチデビルにはツキがなかったのです。
「くそう……くっそう……」
orzして悔しがるガチデビル。外見はリリリリなので、まるでリリリリが情緒不安定になってるみたいに見えました。
更に、いかにもスポーツをしてそうな人たちがガチデビルの脳裏に次々と現れては、容赦なく心無い言葉を浴びせかけていきます。
『何が|カタストロフ《多世界侵略》じゃあい! ちくしょおおおおおおおお』
『悪魔契約書? まったく興味はないね。反吐が出る!』
『そんなことよりキャンプキャンプ〜』
『ウッフッフ……ベースボール・フォーミュラは世界を滅ぼしたりしない。フハハハハ……』
諸悪の根源。(ガチデビル視点では)頭のおかしいアメリカ人ベースボーラーの哄笑が響きわたります。
「KING宝珠が……ギャグを生むなら……もう、」
――死ぬしかないじゃない!
切なさと分からなさと許容範囲の限界さが溢れて、ガチデビルがとうとう挫けそうになったとき。
そんなガチデビルに、リリリリが言いました。
「……あきらめたらそこで試合終了じゃないの〜?」
「……!! 勇者リリリリ……」
「どんなことにも教訓はあります。ルイスも、そうだそうだと言っています」
ルイス“も”ではなく、ルイスが書いたセリフでした。リリリリは彼の作中キャラの|名言《迷言》をパクったのです。さすが元魔界のKING。勇者なのに中々のワルでした。
「バトルが……したいです……」
ですが、ガチデビルはそんなリリリリに希望を見ました。どんな時にも逆転のチャンスは残されているのだと、そう思ったのです。絶対にあきらめない。あきらめてなんかやるものか。ペナントレースはまだ、終わってなんかいないんだから……ッ!!
――……ガチデビルはすでに錯乱していました。
リリリリはそんな彼の人格(?)をせっせと|小型盾《打点シールド》に移し替えては『5thKINGブレイド』でぶった切る千本ノックを始めました。自我を奪われ憑依され、勝手に体を使われた恨み……
「ほれほれ。このように|バット《斬霊刀》を振ることもできます(ぶんぶん……カッキーン☆)」
ほれほれしたり、屈伸したり、ぶんぶんしたりとやり放題のリリリリさん。
初代デビルキングのくせに❤ ざこ❤ ざ~こ❤ とか言い出しそうなふいんきさえ醸し出していました。
「げん゙がい゙ッ!!」
ガチデビルは死にました(X回目)。
でも、今思えばガチデビルの許容範囲わりと広かったな〜って気がします。ならもうちょっとくらい……イケるんじゃないでしょうか。
「ガチデビルはおもちゃじゃないんじゃないんじゃないの〜?」
リリリリが、冷え切った瞳で言いました。
激おこだから煽りまくってるわけではない……弄ばれたから、激おこなのです。
そんな殺伐とした(?)オブリビオン界隈をよそに、キャンピーくんの宝珠がそっとあなたへと語りかけました。
「たいへんそうだね〜たまには無理せずゆっくりしようね〜」
キャンピーくんも、こう言っています。
ゆっくりし過ぎた結果が……だとか気にしてはいけません。
そんなことより、おいしいコーヒーをのんで、ゆっくりしましょう!
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
【SPD】
『リリリリさん!…大丈夫そう…みたい…?』
(リリリリに呼びかけ
リリリリの反応と
ガチデビルの苦悩ぶりを見)
お菓子は
手作りの
チョコレートタルトを
持参
先制攻撃は
翼で飛翔
【空中機動】や
【第六感】【心眼】【早業】
総動員し
【残像】【結界術】【オーラ防御】で
攻撃等
防御・回避
リリリリさんに
自我が戻ったら
みんなで
【お茶会】に
お誘い
『リリリリさん♪えっと…拙い手作りですけど…どうぞ♪』
持参した
お菓子を振舞い
ジャッジメントガールさんや
アイスエイジクイーンさん達の
ご健在等
魔界の様子を伝えたり
リリリリさんと
お喋りなど
楽しみ
『そういえば…リリリリさんは、剣をお使いになられるんですよね…私も、剣を使う事がありますけど…まだまだ未熟で…剣を使う時のコツとか…ありますでしょうか…?』
(自身の剣の
「ヴォーパルソード」をお見せしつつ)
その後
リリリリさんの協力で
戦闘
外傷や苦痛等を伴わない
【浄化】【精神攻撃】を込めて
UCを発動
味方のリリリリさんを
回復しつつ
ガチデビルさんに攻撃
(ちょっと心苦しい気も…?)
臥待・夏報
大罪の獣か
ま、夏報さんの主たる罪は……いちおう戦争だってのに、何もしていない『怠惰』かな(コーヒーずずー)
スポ根、得意ではないからな……
なあ聞いてくれよキャンピー(珠)くん
最近、必死になって戦う意味がわからなくなってきちゃったんだ
なんだか手の中にあるもので精一杯でさ……
世界は誰かが救ってくれるし、それでも給料は言い値で出るし
いい感じのコーヒーメーカーとか買うほうが、こんなことより大事なんじゃないかって
自分の人生が自分のものじゃなくなるのが
昔はあんなに嫌だったはずなのになぁ
……なーんてクダを巻いてたら、そのうち熱血勇者さまの叱咤激励が飛んできたりするかもしれない
ひえぇ
もうスポ根はこりごりだよ〜っ
御鏡・幸四郎
リリリリさんはまだお見えでないようですね。
まずはテーブルを整えておきましょう。
(後ろで姉がガチデビルとキンキンキン)
「ようこそ、お待ちしておりました」
リリリリさんが現れたら椅子を引いて座らせます。
コーヒーの良い香りが漂う中、並べるのはショートケーキ。
キャンピーくんのコーヒーには、シンプルながら丁寧に仕上げた
このケーキが合うでしょう。
他愛無い話に花を咲かせ、笑い合う。
美味しいお菓子は人を幸福にする。
その信念の元にお菓子を作って来たけれど。
ああ、リリリリさんもよい笑顔をしてくれる。
この至福が、ガチデビルさんにも届いてくれると良いのですが……
どうでしょう、ガチデビルさん?
(今度は自らキンキンキン)
●準備
「リリリリさんは……まだお見えでないようですね」
「呼びました〜?」
「えっ……あっ、そんな感じなんですね」
その名前を口に出した途端、ガチデビルから容易く体の主導権を奪い取って。リリリリは真顔で「猟兵さんのご用事なあに」と尋ねてきます。
これでは「ガチデビル、まだ消えてなかったんですね……」とかそんな表現が正しい気がする状況でした。
「いえ、まだ準備ができていないので、」
「そうですか。では〜……」
「はい。また後程お声がけさせていただきますね」
「――……チックショオオオオオ!! やってやる、やってやるぞぉぉぉ……!!」
そうしてまた人格(?)交代したのだろうガチデビルがヤケクソ気味の咆哮をあげて。
雑にキャラ崩壊させられた魔王は荒い息を吐きながら再びセーラー服姿の『姉』や猟兵さんたちと熱いバトルを繰り広げ始めます。
――キンキン、キンキンキンキキンキンキンキンキンキンキンキンキン……ッ!!
壮絶なキンキンキンをBGMにしながら御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)さんはその間にとテーブルを整え、お茶会のための支度をしているのでした。
「な、なんかちょっとかわいそうな気もしてきました……」
いかにも『アリス』っぽい少女、アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)さんは|リリリリ《ガチデビル》の攻撃をその背の翼を羽ばたかせ、器用に空中を駆けることで避けに徹しています。
(攻撃すると……成仏してしまいそうですし)
そうはいっても防御不能の『5thKINGブレイド』などを持つリリリリは侮れないポテンシャルではあるのですが、やはりほぼ覚醒しているリリリリが邪魔をしているのでしょう。それを操るガチデビルは体のキレもいま一つのようで、この戦いでは猟兵に危険が及ぶ可能性は低そうでしたが……。
「油断も容赦も……別にしても良いかもですけど……同情しては、いけません」
「!! リリリリさん……」
そう、かつて魔界の悪魔たちがガチデビルに“騙されて”皆殺しにされそうになったのは周知の事実。良い子ちゃんのままでは、皆してガチデビルの餌食なのです。この期に及んでまで彼に体を乗っ取られるなんてヘマをやらかしているリリリリさんが言うと、それなりに説得力がある忠告でした。
大体、アリスさんのような幼女の前でさえ、
「同情するなら体をくれ! 同情するなら体をくれ!(ワンワン! ワオーン!!)」
などと言って騒ぐガチデビルは、ガチで悪いヤツなのです。
それに、兵は詭道なりといいます。こうして弱っているようにみせたりコメディ路線に誘導しているのが実は彼の計略だという可能性も、ゼロではないのです。
「そうそう。そういえばなんだかんだでカタストロフにかなり近づいてたんだよね、今回……」
臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)さんは手に汗握る緊迫した|戦闘の様子《キンキンキン》を眺めながらも、特に手伝う気も起きずにいるようで。リリリリの権能によって戦場に現れた『無数の祭壇』を椅子代わりに、今はキャンピーくん(宝珠)をつかまえてコーヒーの用意をしていました。
「……大罪の獣、か」
祭壇より放たれる『闇色の炎』はいい感じの火加減で、何ならお料理にも使えそうです。
そして、そんな腰掛けるのにも丁度いい『大罪を司る無数の祭壇』はリリリリのユーベルコードによるものでしたが、その祭壇から現れた『六大罪獣』も彼女と同じくやる気が起きないのか、その辺でゴロゴロと寝そべっていたり、メェェェェとかワオーンって鳴いています。
「ま、夏報さんの主たる罪は……いちおう戦争だってのに、何もしていない『怠惰』かな」
そんなけものたちに囲まれ、スポ根、得意ではないからな……と独り言ち。
のんびり淹れたてのコーヒーを啜る夏報さん。
確かに、熱血スポ根路線の夏報さんというのはちょっと想像しにくいかもしれません。別に運動神経が悪いというわけでも無さそうですが……。
「今回は戦争というより“祭典”が前面に出ていましたしね。危機感が湧かないのも無理はないかと」
お茶会の準備をしながら、幸四郎さんが言いました。
UDCアースでもかつて聖地オリンピアで行われていたという、ゼウス神に捧げる競技祭。古代ギリシアではこの祭典の期間中は休戦期間が設けられていたのだといいます。由来に従うならば、この戦争で戦争をサボるのはむしろ正当なことと言えるのではないでしょうか。
「ややこしいな……」
『メェェェェ』
そして、リリリリやガチデビルの故郷であるデビルキングワールドの『デビルキング法』によれば、悪事を行うことはむしろ推奨されています。魔界の裁判長だって何十年もの職務怠慢を誇らしげに語っていたくらいなのです。
つまり、サボりは悪魔的には正しいことなのですが……リリリリは『勇者』なのでそんな『デビルキング法』にも愛や勇気を振りかざして反逆しようとする、悪魔たちにとって恐ろしい存在なのでした。
故に、リリリリの呼び出した『大罪の獣』さんたちが象徴するのも、あんがい愛や希望、正義といった、本来は美徳とされる概念だったのかもしれません。
「……ほんとうにややこしいな」
『くぅ~ん……』
でも今はそんなことはどうでもいいのです。重要なことじゃないのです。
そんなことよりも、(以下略)!
●お茶会
「リリリリさん!」
「はいな」
「……大丈夫そう……みたい……?」
呼べばすぐ出るリリリリです。
ガチデビルの霊圧は…………消えました。
「大丈夫? 大丈夫ですとも! ほれこのとおり」
斬霊刀をぶんぶん振って好調をアピールするリリリリ。
一方、左肩あたりにとりついているっぽいガチデビル頭部はもう白目をむいています。キンキンキンで消耗した結果、早くも消滅が近づいているのかもしれません。
「えっと、お茶の準備ができましたので、よかったらご一緒にいかがです?」
「おお、かたじけのうござる」
「ござる?」
アリスさんのお誘いを快諾するリリリリ。
なんだか口調が定まらない気がしますが……それも無理はありません。NPCの口調は予兆を参考にしてそれに沿って描くものですが、彼女の場合はセリフも少なくそもそも公式の一人称すら不明なのです。
「拙者、ありがたくご相伴にあずかるでござる……」
「……拙者?」
おかげで、本戦役ではボクっ娘だったり一人称自分の名前だったりとさまざまなバリエーションのリリリリが誕生したのです。拙者と語尾「ござる」を使いこなすリリリリが一人くらいいても、問題ないでしょう。どう見ても両刃の剣を『刀』と言い張るリリリリは、きっとNinjaかぶれの外人さんみたいなみたいなモノなのです。
「そんなわけないんじゃないの~?」
「ようこそ、お待ちしておりました」
幸四郎さんはそんなリリリリさんがやってきたのを見て、椅子を引いて彼女を座らせます。
コーヒーの良い香りが漂う中、テーブルに並べられているのはおいしそうなショートケーキ。
「キャンピーくんのコーヒーには、シンプルながら丁寧に仕上げたこのケーキが合うでしょう」
「おお……ありがとうございます」
「そこはかたじけのうござるじゃないんだ……」
「……かたじけのうござる」
リリリリのキャラは、ブレブレでした。
そう……すべては白紙。リプレイを書きあげるまでが、自分探しの旅なのです。
迷わず書けよ。書けば分かるさブレブレブレ!
「ッ!! ……先代……ボクは……」
「……今の流れで先代(KING)さんを偲ぶようなところありましたっけ?」
「くっ、おかしいひとを亡くしたのでござるよ……」
幸四郎さんは依頼で直接会ったことはないのですが、彼女を見ているとデビルキングワールドのKINGなんて実はおかしい人しかいないんじゃないかって気もしてきました。
ともあれ、ティ……コーヒーブレイクのお時間です。
「リリリリさん♪ えっと……拙い手作りですけど……どうぞ♪」
アリスさんも持参した手作りのチョコレートタルトを振る舞い、おいしいコーヒーでほっと一息ついて。
苦味の余韻が残る舌を楽しませてくれるのは定番のショートケーキに濃厚なチョコレートタルト。生クリームもチョコレートも、やっぱりコーヒーとは相性抜群で。
「…………おいしい」
「ふふ、よかったです♪」
きっと自分の口で食事をとるのも久々だったのでしょう。リリリリは一見してクールな表情なのでわかりにくいものの、ちょっとジーンときているようでした。
すでにオブリビオンである彼女に食事が必要かどうかはさておいて、
(美味しいお菓子は人を幸福にしてくれますからね)
その信念の元にお菓子を作って来たけれど。
それがこうしてだれかの笑顔を生むというのなら、幸四郎さんとしても本望でした。
「ガチデビルさんは、一度は倒したはずなんですが……」
「悪魔は、とっても頑丈なのです」
「そういう問題かなぁ……」
そうして、猟兵さんたちはリリリリとのお喋りに興じます。
何十年もの職務怠慢から目覚めたジャッジメントガールさんや、7thKINGの座を巡って行われた魔界での戦い、そこで共に戦ってくれた|ラスボス《氷の女王》――アイスエイジクイーンさん達の健在などなどをリリリリに語り聞かせるアリスさん。
「そう。皆を守ってくれたのね……ありがとう」
「そういえば……リリリリさんは、剣をお使いになられるんですよね……」
堕天シールドによる固い防御――護る力こそリリリリのKING宝珠が司る権能でしたが、本人は5thKINGブレイドによる比類なき攻撃力や、大罪魔法『六つの大罪』の魔法力を兼ね備えた、攻防万能なまさに勇者のような存在。
「私も、剣を使う事がありますけど……まだまだ未熟で……」
そこで、アリスさんは剣を使う時のコツなどあればこの機会に尋ねてみようと思ったのです。
空色の光焔を纏い輝く剣、アリスさんが差し出したその美しい剣身を検めてから、リリリリは言いました。
「良い剣ですね。ただ、私とあなたでは体格も肉体強度も戦闘スタイルも何もかも違うだろうから、アドバイスになるかは、分かりませんが……」
「……」
相変わらず一人称がブレブレなリリリリが、それでも心なしか真剣な顔と口調で言いました。
武具とは戦場において自らの命を預けるモノでもあり、その扱いもまた生死を分かつことがあるのです。根は真面目な悪魔の端くれとして、適当な返答などおいそれとできようもありません。
「……オサレな方が、勝つわ」
「……オサレ?」
「ええ。知り合いのヲークが教えてくれました」
「ヲークが……」
そう、猟兵たちの戦いは基本的にユーベルコードによるトンデモ超能力バトル――最後には、よりスタイリッシュでオサレな方が勝ちなのです!
だから、憑依されたリリリリもばっちりポージングが決まっていたんですね。
「むやみに強い言葉を使ってみたり、序盤からイキがっていたら……大抵は逆転負けてしまうのです」
「そ、そうなんですね……?」
「………」
一方、夏報さんはそんな馬鹿馬鹿しくて他愛のない会話を聞きながら、その理論に従えばリリリリは後できっとひどい目にあうんじゃないかなぁ……と察しましたが、黙っていました。
彼女には今はそんなことよりも、もっと大事なことがあったのです。
「なあ聞いてくれよキャンピー(珠)くん」
キャンピーくんの宝珠をつかまえて、
「最近、必死になって戦う意味がわからなくなってきちゃったんだ」
(╹◡╹)をトントンと指でつついて転がしながらクダを巻いているお姉さんが、そこにはいました。
アリスは、大人って大変なのね……と思いました。
「なんだか手の中にあるもので精一杯でさ……世界は誰かが救ってくれるし、それでも給料は言い値で出るし。いい感じのコーヒーメーカーとか買うほうが、こんなことより大事なんじゃないかって」
夏報さんとて納得のいく答えを期待しているわけではなく、相手がキャンピーくんのような存在だからこそ零せる愚痴のようなものだったのかもしれません。
とはいえ強い怒りが、あらゆる怪異を吹き飛ばし世界の法則をも捻じ曲げるような力だけが、未来を創るわけではありません。
手の届く範囲を、小さな幸福で照らすことができたなら。きっとそれだけで世界は変わっていくのでしょう。
それは例えば、
(╹◡╹)「……ブランデーいれようか~?」
「!! いいのかい、キャンピー(珠)くん」
おいしいお酒とかです。
ひとさじの|命の水《ブランデー》が、大人の香り漂うオサレなコーヒーを創り出してくれるのです。
そうしてカップに注がれる琥珀色の液体――キャンピーくんのコーヒーとブランデーの芳醇な香りを楽しみながら、こんなことしててもお給料を言い値で貰えてしまう夏報さんは、思いました。
(……自分の人生が自分のものじゃなくなるのが、昔はあんなに嫌だったはずなのになぁ)
時間という質量に押し流され、いつまでも同じ場所にはとどまれないのだとしても。
何より大切だったはずの感情でさえ、新しく手に入れたモノたちに埋もれて遠ざかっていくような感覚は、忘却は、こうしてふとした瞬間に……まるで過去の自分を置き去りにしてしまったような、痛みをもたらすのかもしれません。
(╹◡╹)「たいへんそうだね〜たまには無理せずゆっくりしようね〜」
だからこそ、世界にはきっとキャンピーくんのコーヒーが必要なのでしょう。しらんけど。
●ガチデビル、死す!
「ご満足いただけたようで、何よりです」
「うん、おいしかったです。ありがとう」
それからも他愛無い話に花を咲かせ、笑い合い、すっかり打ち解けた猟兵さんたちとリリリリ。
リリリリのまっすぐな感謝と柔らかな笑顔に魅せられて、幸四郎さんもまた幸せを感じていました。
ですが、
(この至福が、ガチデビルさんにも届いてくれると良いのですが……)
そんな願いもむなしく。
どうでしょう、ガチデビルさん? と尋ねるまでもなく。
「――おのれぇ~貴様らぁ~……」
ほわほわしていたリリリリからストンと表情が落ちて、次に再び浮かんできたのは、紛れもない凶相でした。
同じ顔、なのにまるで別人のような表情は、憎しみで人が殺せるというのならこの場にいる猟兵を皆殺しにしてもなお余りあるほどの憎悪に彩られています。
「……やむおえませんね」
キンキンキンキンキン!! キン、キキンキンキンキンキンキン――!! キンキンキンキンキキキンキンキンキン!!! キンキンキン……ギギンギン!! キンキキンキンキンキン!!!
今度は『姉』だけでなく自らもバトルに参加する幸四郎さん。
その死闘の激しさは、キンキンキンに時々ギンギンが混じるほどはげしいものでした。とても、はげしいものでした。キンキンキン!!
「――受けつぎし力……是は……」
アリスさんの髪には桃の花が咲き乱れ、『光と生』の側面の力が溢れ出していきます。神なる桃が咲き誇り、神氣が満ちる領界。
「『苦難に逢う者あれば……その者の力となれ』と――」
そう願われた、《|月黄泉之淡島姫・意富加牟豆美命《ツクヨミノアハシマヒメ・オオカムヅミノミコト》》の権能。
(ちょっと心苦しくも……ありますけど)
邪なものを討つ神桃の光氣――その破魔の力はガチデビルを照らし、苦痛や外傷は与えぬままに彼の存在をキンキンキン! していきます。お茶会で英気を養ったリリリリの協力もあって戦況は順調にキンキンキン! キキンキンキンキンキキン! でした。
夏報さんはそんな世界の命運をかけた猟兵と魔王の熱いバトルをコーヒー片手に鑑賞しながら、言いました。
「ひえぇ。もうスポ根はこりごりだよ〜っ」
警戒していた熱血勇者さまの叱咤激励は飛んできませんでしたが……とはいえ、オチはつけなければなりません。
アイリスアウト――いわゆるトホトENDの演出。画面の端っこから円形に映像が暗くなり、最後に青い顔して冷や汗を流す夏報さんのお顔を残して止まって。
(╹◡╹)「おつかれさまだね~。スポ棍?はわかんないけど、アイコンフレームどうぞ〜」
夏報さんは、アイコンフレームを手に入れました。
やったぜ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マオ・ロアノーク
【ドヴェルグ@4】
皆でお茶会をするって聞いて、色々準備してきたよー!
…むむ、でもちょっぴり厳つい雰囲気。お茶会を楽しむためには、やっぱり雰囲気も大事だよね!
UCで白い花畑の情景を再現、敵の|情景《祭壇》を上書き。
|戯れ《戦闘し》ている皆を微笑ましく眺めながらレジャーシートと折畳みテーブルを広げ、お茶会場のセッティング。
手作りの、全員の似顔絵が描かれたアイシングクッキーもお皿に並べる。
…あっ、ウォルターさんっ。お砂糖とミルクある?
実は苦いの苦手なんだ…えへへ。
恋かあ…。そういえばイクシアさんも『もっと恋というものを理解したい』って言ってたっけ。
僕は好きな人、っていうのが、よく分かんないからなあ。
リリエル・エルヴィータ
【ドヴェルグ】
リリリリが大変だと聞いてお助けに来たんだけど……元気そうで一安心♪
ガチさんはお久し振り~♪
んんん?何だかお疲れのご様子?
そんな時は甘いものに限るんだよ♪
抗うガチさんを宥めつつプチお茶会♪☕🍪
わわわ♪マオのクッキーが可愛いんだよ♪
ウォルターはリリリリみたいな子がタイプなのかな♥かな♥リリウスはどうかな♥
みんなの恋バナを聞きながらリリ仲間のリリリリとはお友達になって連絡先とか交換したいかも♪かも♪
ガチさん?悪い子したらダメなんだよ?
堕天シールドを矢の【弾幕】とリリウスのスライムで迎撃♪
ドヴェルグのリリリリことリリウスと我の愛の連携攻撃なんだよ✨(UCを放つ)
リリウス・テイケー
【ドヴェルグ】4名にて参加
こちらもリリリリを名乗らせてもらっている故、気になってね
(リリウス、リリエルのコンビ)
開幕は「フェイント」「空中機動」で避けに専念するが、各種耐性を信じて「かばう」ことも
そうしている間に、小スライムたちで小型盾の迎撃や宝珠への突撃を狙っていこう
弱いとされつつも人気のスライムたちは無数にいる
我々の矢とスライムが尽きるのが先か、そちらの体力が尽きるのが先か
お茶会ならネリネ(からくり人形)も同席で
(椅子に座る人形の膝に乗るスライム)
む、好み? 私はネリネ一筋だが?
コーヒーの種類はどんな感じだい?
苦めなら甘いものが、酸味のある浅煎り系ならクッキーやクラッカー等が合うらしいよ
ウォルター・ウェパル
【ドヴェルグ】アドリブ歓迎
マオ様、リリエル様、リリウス様と一緒に、リリリリ様とコーヒー!
(哀れなガチデビルを眺めて)美しい。これほどの芸術品はそうそう在りはしないでしょう!
先制対策は両手の袖口から『大炎界』の火炎を放ち目晦まして斬霊刀に斬られないようロケットエンジンの推進力で逃れるのです!
バトルは終わり、後はコーヒーブレイクです!
バックパックからお茶会のためのお菓子を提供します!
どうぞ、マオ様!自分の船倉に直通しているので、在庫はたっぷりありますよ!
ほほう、コーヒーの組み合わせは多様なのですね。勉強になります、リリウス様!
恋バナはー……うーん……まだ未熟者の自分には、難しい話です、リリエル様!
●ガチデビル、死す!
「ガチさん? 悪い子したらダメなんだよ?」
黄金の矢――愛の力に満ち溢れるハート型をした鏃が、ガチデビルの眉間にZUBURIと命中しました。
「みんな良い子ちゃんになるんだよ~♪」
「グ、グワァァアアーーッ!!」
ので、ガチデビルは死にました。
諸悪の根源は、ほろびました。
これでこの物語はオワリです。
解散っ!
………。
……。
…
「……と、思いきや……もうちょっとだけ続くんじゃじゃないの~?」
「――クックック……バレたか」
「!? そ、そんなっ」
……なんということでしょう。リリエル・エルヴィータ(記憶喪失の彷徨う謎神・f32841)さんの放った矢玉はたしかに一時はガチデビルを屠ったかに見えましたが――驚愕すべきことに、ガチデビルは実はまだ生きていました。リプレイ文字数が足りてなかったのです。
――キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!!
「わわ……我、神なんだけど? ……神なんだよ?」
「私は、|魔王《ガチデビル》だーッ!!」
フリル……? のメイド服が似合ってるんですけど! とは言ってない、そんなリリエルさんが放つある意味洗脳っぽい《|心変わりを誘う愛の女神《ウェヌス・ウェルティコルディア》》の黄金の矢と数多の堕天シールド(ガチデビル形態)とが空中で激しくキンキンキンしあい、キンキンキンを散らします。
そう、いくらリリエルさんが黒いリボンとフリルが可愛らしい、クラシカルでありながらミニ丈のメイド服を着用していたとしても、リリリリに憑依した今のガチデビルにも|魅惑の絶対領域《SUGOI防御力》が存在するのです。
つまりは、
キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!!
加速していく、異次元のキンキンキン!!
「まずいよ、このままじゃ……!」
「ククク……フハハハハハ!! いまさら気づいても、もう遅いわァ……!!」
キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキンンキンキン……ッ!! キンキンキンキン! キンキンキンキンキキンキーング!!
「フーフハハハハー!! どうだァ!?」
――|ノルマ《規定文字数》達成です。
やったね!
「くっ、さすがは初代デビルキングだね……でも!」
こんなにもキンキンキンが必要だったということは、実はソロリプレイではないのです。
いまこの戦場にいるのはリリエルさんひとりだけではなくて――、
「くっらえー! ドヴェルグのリリリリことリリウスと我の愛の連携攻撃なんだよ✨」
「うむ。弱いとされつつも人気のスライムたちは無数にいる……」
空中工房ドヴェルグの頼れる仲間。二人はリリリリ! なリリウス・テイケー(自称悪くないスライム・f03261)さんも一緒になってガチデビルをはげしくキンキンキンキンしはじめました。
大量に生み出されたちっちゃいスライムたちはゆっくりと、それでも確実に包囲を狭め、ガチデビルにたどり着くと容赦無いキンキンキンを仕掛けます。スライムだからキンキンキンはおかしい気もしますが、仮にぬっちょぬっちょとかぬめぬめとか溶解液とか書きだすと、途端にイヤラシくなる気がしますよね。
「グ、グォォオオオオオアアアーッ!!!」
ので、ガチデビルは死にました。
「我々の矢とスライムが尽きるのが先か、そちらの体力が尽きるのが先か……って」
「!? し、死んでる……」
どうしてガチデビルはすぐ死んでしまうのでしょう?
それは、もうこれで終わってもいい……そんな『覚悟』はないけど『限界』超えてキンキンキンしていたからです。でも、もうこれ以上キンキンキンしつづけることにつかれちゃったのです。
「なるほど……つまり、このシナリオはキンキンキンとキンキンキンで十分だったんだな……」
開幕は「フェイント」「空中機動」で避けに専念……とか各種耐性を信じて「かばう」とか。
リリウスさんはいろいろ考えていましたが、そういうのも全部キンキンキン一つでダウンでした。
ですが、それでも。
「ふ……ククク、いったいいつから……先制攻撃アリだと……錯覚していた……?」
「!? ガチさん!!」
「なん……だと……?」
……なんということでしょう。おどろくべきことに、ガチデビルはまだ生きていました。
なんとなくで先制攻撃させて貰えないのに、がんばっていました。リリウスさんの権能《|SchwarmSchleime《シュラームスライム》》によって放たれた小スライムの群れに突撃されスライム塗れになりながらも、邪悪っぽいふいんきでまだまだ魔王っぽくふるまっていました。|リリリリの左肩《ガチデビルの眉間》にぶっ刺さった黄金の矢のおかげで湧き上がってくる『愛おしいリリエルの眷属となり仕えたい』という衝動に必死に抗いながら、何度も死んだり実は死んでなかったりしていました。
「……美しい。これほどの芸術品はそうそう在りはしないでしょう!」
そんな哀れなガチデビルの姿を眺め、ウォルター・ウェパル(船の悪魔の飛空駆逐艦・f34061)さんが感動したように叫びます。相手は真に邪悪なオブリビオン――ガチデビルとはいえあくまでリリリリの姿をしているので、傍から見るとちょっと危険っぽい香りのする言動でしたが……ウォルターさんの見た目は健康的な美少女っぽいので、ぎりセーフでした。
ウォルターさんは「侵略とか殲滅とかカッコイイですね! ワルです!」と思っちゃう、ある意味テンケテキなデビルキングワールド民だったのです。あくまでこれは、矢が突き刺さって力尽きたようにうずくまり、本来雑魚であるはずのスライムなんかに寄ってたかって嬲られている負け勇者を辱める時の、魔王としてのたしなみなのです。
「……それは、どのみち変態っぽいんじゃないの~?」
「!! いまですっ!」
ウォルターさんはすかさず艦載砲である『大炎界』――両手の袖口からの火炎を目眩ましにとブッパし、更に《ROCKET DIVE!》を発動。ロケットエンジンの推進力で以て、リリリリのツッコミ有効範囲からマッハで逃れました。音が伝わる速度よりも高速で遠ざかれば、理論上はどんなツッコミも、煽りプレイだって無効化できるのです。
そんなダイナミックバックステッポー🦐の型を魅せるウォルターさんに、ガチデビルもとうとう堪忍袋とかその他いろいろの限界を迎えたようでした。
「ハァ、ハァ……敗北者?」
「のるな、ガッチー!」
リリリリの警告も聞かずにいきり立つガチデビルが猪口才な悪魔にキンキンキンキン! キキンキンキンキキンキン!! キンキンキンキンキンキキキン……ッ! を仕掛けます。
が、魔界の溶岩を放つ『大炎界』の前では『闇色の炎』もただの火です。悪魔らしく真面目に先制対策してきたウォルターさんは、それがプレイングボーナスだからと油断しちょりゃあせんのです。
「まっすぐいってぶっ飛ばすのです!」
「グ、グッハァァアアアー!!!」
ので、ガチデビルは死にました。
「バトルは終わり、後はコーヒーブレイクです!」
颯爽と勝利宣言するウォルターさん。
ところが、誰にも想像がつかなかったことにガチデビルは実は……と見せかけて。
「わぁい。おやつの時間だ~」
おお、死んでしまうとはなさけない勇者は復活し今はもうVer.リリリリに戻ったらしく、普通に喜んでいました。
体を奪われるかどうかはリリリリ自身が判断する――此処はそんな、無駄にリリリリにやさしい世界線なのです。
でも、だとすれば……あの変なガチデビルは、もうこの世界にはどこにもいないのでしょうか……。
「それはちょっとさびし……くはないけど、物足りないですね。どうせまだ生きているんでしょうけど」
「クックック……。それについてはいまはまだ秘密だが……まぁそうだ」
なんということでしょう……まさに、事実は小説より奇なり。
ガチデビルは、実は(以下略)。
「ですよね! ただでさえしぶとい悪魔にギャグ時空でとどめを刺すのは至難なのです。それに、逆転はできなくとも次善の策に向けて努力するタイプなので、まだ何か企んでる気もしますが……!」
「フハハハハハ……それもいまはまだ明かせないが……まぁその通りだ」
但しボコボコにされたガチデビルは、まだ生きていはいましたが色々と錯乱しているようでした。
「皆でお茶会をするって聞いて、色々準備してきたよー!」
そんなこんなで楽しそうに|戯れ《戦闘し》ている皆を微笑ましく眺めながら。
レジャーシートと折畳みテーブルを広げ、お茶会場のセッティングをしていたのはマオ・ロアノーク(春疾風・f40501)さん。今日はどんな|物語《風景》と出会えるかなっ? と期待に胸を膨らませるドラゴニアンの少女は、
「……むむ、でもちょっぴり厳つい雰囲気」
激しいキンキンキンによるキンキンキキン……ッ! が残る戦場の光景に眉をひそめて。
やがて、ショートボウと一体化したような小型のハープ――琴弓をとりだすと、弦にそっと指を添えて爪弾きはじめました。指先が繊細な動きで弦を撫でる度、素朴で、どこか懐かしい温かみのある旋律が紡がれていきます。
「♪森の奥で木々が歌う 白い花咲き誇る……」
マオさんの奏でる琴弓から響く音色は心地よいゆらぎをはらんだ歌声とともに《|再生の詩《レヴァイヴソング》》を響かせ、その美しいメロディは音の波が震わす空間へと彼女の心に刻まれているのだろう心象風景を世界に再現していきます。
「♪朽ちた廃墟の中で蘇る 命の響き 風に揺れて……」
それは、木漏れ日が差し込む森の奥、緑あふれる地には白き花々が咲き誇って、そこで遊ぶ小鳥たちも――木々さえも静かに歌っているような、どこまでも安らかで生命の喜びにあふれた歌でした。
「お、おぉ〜……」
「わんわんお!(U^ω^)」
曲が終わり、キラキラ✨ したお目目でぱちぱちと拍手するリリリリ。
六大罪獣さんたちも、なんだかうれしそうにしています。
「ふふ……お茶会を楽しむためには、やっぱり雰囲気も大事だよね!」
マオさんは流離の吟遊詩人らしくペコリと一礼して、準備が整ったテーブルへと皆を案内するのでした。
●コイバナ
キャンピーくん(珠)の出すコーヒーはおいしいコーヒーと言われていますが、一言でおいしいといってもコーヒーには豆や焙煎方法などにも種類があり、人の好みやその主観にも多様性というものがあります。
故に、リリウスさんは魔術師のような姿をしたからくり人形のネリネさんに抱っこされる形で席に着くと、そのお膝の上から素朴な疑問を投げかけました。
「コーヒーの種類はどんな感じだい?」
「クックック……それは、秘密だが……実際はまぁ私にもわからない」
(╹◡╹)「んにゃぴ……わからないね~」
黒幕に聞いてもわかりません。
そして何故かキャンピーくんに聞いても分かりませんでした。おそらくは、魔法的なあれこれで個々人にとってそれぞれおいしいと思えるコーヒーを出していそうな気がしますが……。
「ふむ……まぁ、苦めなら甘いものが、酸味のある浅煎り系ならクッキーやクラッカー等が合うらしいよ」
「ほほう、コーヒーの組み合わせは多様なのですね。勉強になります、リリウス様!」
(╹◡╹)「べんきょうになるね~」
素直に感心するウォルターさんとキャンピーくん。
ウォルターさんはリリウスさんの言葉を参考に、バックパックからお茶会のためのお菓子を色々とチョイスして並べ始めます。コーヒーのかぐわしい香りが漂い、彩りも綺麗なお菓子の数々が並んだテーブルを皆で囲んで。
「わわわ♪ マオのクッキーが可愛いんだよ♪」
リリエルさんが小さく歓声をあげて手に取ったのは、リリエルさんの似顔絵が描かれたアイシングクッキー。マオさんの手作りでもあるそれには、デフォルメされた皆の似顔絵が描かれていました。
「おぉ……すごい」
「ほう、ネリネのもあるのか。あんまり可愛いと、食べるのがもったいなくなりそうだが……」
「……あっ、ウォルターさんっ。お砂糖とミルクある? 実は苦いの苦手なんだ……えへへ」
「どうぞ、マオ様! 自分の船倉に直通しているので、在庫はたっぷりありますよ!」
少し照れたように微笑むマオさんに、ウォルターさんが応えてバックパックから物資を取り出します。本体であるガレオン船の倉庫へと通じるバックパックは、見た目の質量を無視して何でも出てくる宝物庫のようでした。
だから、そこでは足りないものなんかなくて。皆は自然と――マオさんが作ったクッキーに描かれたアイシングでできた似顔絵のように、楽しそうに笑っていたのです。
「リリリリが大変だと聞いてお助けに来たんだけど……元気そうで一安心♪」
「うむ。こちらもリリリリを名乗らせてもらっている故、気になってね」
「え? それって……」
ドヴェルグのリリリリから心配されていた事実を知ったリリリリは、思わず胸をトゥンクさせました。この後、リリエルさんがコイバナにつなげる流れだったからです。好きとか嫌いとか、最初に言い出したのはだれなの~?
「ウォルターはリリリリみたいな子がタイプなのかな♥かな♥リリウスはどうかな♥」
「む、好み? 私はネリネ一筋だが?」
「恋バナはー……うーん……まだ未熟者の自分には、難しい話です、リリエル様!」
しかしコイバナは男性陣相手にはあまり発展しませんでした! 魔王に操られ抵抗できない勇者の体にあんなことやこんなことをしておいて、リリウスさんはネリネさん一筋で揺るぎそうにもありません。せめて綺麗なクリスタリアンや可愛いミレナリィドールだったら話は違ったのかもしれませんが……。
そして、ウォルターさんもそういうのはまだ早いと主張しています。でも……そんな甘いことばかり言っていると、いつの間にか掛け算されてオチのない世界で消費されていくんじゃないの~?
「恋かあ……。そういえばイクシアさんも『もっと恋というものを理解したい』って言ってたっけ」
一方でマオさんはふと優しい心を持ったレプリカントの友人を思い浮かべました。記憶に残っていた彼女の言葉をなんとはなしに反芻。ミルクとお砂糖で甘くまろやかになったコーヒーを飲んでほっと一息いれて。
「僕は好きな人、っていうのが、よく分かんないからなあ」
「……出会いと男どもの見る目が足りなかったんじゃないの〜?」
こちらも縁がなさそうな体で語るそんなマオさんに、彼女がくれたクッキーを大事そうにチビチビとあじわっていたリリリリが疑わしい目をむけます。すごくモテそうなのに。いたいた、はいっ! ハッピーバレンタインっ! とか言ってチョコ渡してそうな女の子なのに。……ほんとにぃ〜?
「!? な、なんで僕だけ追求されてるんだろ……」
「命短し恋せよ乙女、といいます。キャンピーくんも、そうだそうだといっています」
(╹◡╹)「うんうん、そうかもね~」
「ほれこのとおり」
軽いノリではありますが、今となっては過去の残骸に過ぎないリリリリが言うとそれなりに説得力がある……かもしれない台詞でした。
「そ、そういうリリリリさんこそどうなんだよ」
「あっ。それは我も聞きたいかも♪」
「……リリリリは勇者だから、それどころじゃなかったのです……コイツのせいで! コイツのせいでっ!!」
リリリリは思い出しオコを発動すると、ハイライトさんにサヨナラバイバイした目になって。さっきまで刺さっていたハート型の矢でもって自らの左肩――白目をむいたガチデビル頭部をザクリザクリと刺しはじめました。
良い子になぁれ♥ 良い子になぁれ♥ ほらほら、ガマンしてないで良い子になっちゃえ……♥
きっとそんな積年の|願い《恨み》を込めて執拗に魔王を刺しているのだろうリリリリは――間違いなくよい子!(名推理)
「ぷるぷる。私は悪いスライムじゃないぞ……」
「自分はあくまでワルだし魔王ですが……なんだか、恋をする日は遠のいた気がします!」
そんなキャッキャウフフ(?)な皆の恋バナを楽しそうに聞きながら、リリエルさんは言いました。
「あっ、そだ! リリ仲間のリリリリとはお友達になって連絡先とか交換したいかも♪かも♪」
「連絡先? はわかんないけどフレンド登録どうぞ〜」
リリエルさんとリリリリはめちゃくちゃ軽いノリでお友だちになりました。TOPに立った人の報告では戦後もリリリリの生存は保証されていたので、またどこかで会う機会もあるのかもしれませんね。
ですが、こうなってしまっては面白くないと感じる者が、この場にもまだ一人だけ残っていました。
「いやおかしいだろ。そういうのじゃないだろう……!! だいたい、この女だってオブリビオンなんだが!?」
たしかに、ガチデビルの言うことももっともでした。オブリビオンと猟兵――不倶戴天の宿敵同士。ならば新生フィールドナインの面々にしても、互いにもっとサツバツとしているべきではないか? なのになんでお祭り始めちゃってるの? 戦おうよ! キンキンキンで済ませることじゃないよ!
彼は、そう問題提起しているのです。
「おっ。ガチさんはお久し振り~♪ んんん? 何だかお疲れのご様子?」
けれどリリエルさんは、相手にしませんでした。
ガチデビルあなた疲れてるのよ……と軽くあしらいました。天真爛漫なリリエルさんは、キンキンキンよりも甘いものとか、恋愛話の方がもーっと好きだったからです(好みの問題)。
「そんな時は甘いものに限るんだよ♪」
「お、おのれぇ……だがいまは……やむおえんか」
そうして抗うガチデビル……はちからをためている! を適当に宥めつつ、プチお茶会♪☕🍪は続いてくのでした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ。
まだイケるわよね❤とガッチーの|魂をリリリリさんからきゅぽんと抜き出してお姉様(男の娘)化《素材採取、料理、化術肉体改造、錬金術》させて、|お膝抱っこしてもらって《大食い、魔喰》決して中身が見えない鉄壁のスカートの中でクリームパイ作りを♪
ガッチーがお顔を真赤にして時々びくんびくんしてるのは|頭セカンドカラーになった《精神汚染された》結果だから|大丈夫だ、問題ない《えっちなのうみそおいしいです❤》。
で、お茶会でコーヒーを楽しみながらリリリリさんを|口説き《精神汚染し》ましょうか。勇者的には|一晩のアヴァンチュールなワル《頭セカンドカラーになってみるの》もたまにはいいでしょ?
●頭セカンドカラーとは
……キンキンキンキン! キンキンキキンキンキキキンキンキンキンキンギシキンキンキンキンキンキンギシアン! キンキンキンキンギンギンギシギシギシキンキンキンキンギシアンアン……!!
「くっ……き、貴様ぁ……ッ!」
「えっちなのうみそおいしいです❤」
キンキンキンキン――ギンギンギギンギシギシキンギシアンッ! ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギンギシアンキンキンキンキンギンギンギシギシギシキンキンキンキンギシアンアンギシギシアンアンアン……ッ!!!!
――それは、はげしいたたかいでした。
そのはげしさたるや、ちょっとあのこまりま……
「うん? あなたも混ざりたいの……?❤」
もといええとはげしすぎたので、他の参加者さんとまとめたリプレイにするのは自重するくらいでした。くわしくは描写できないくらい、はげしいものでした。キンキンキンキンというよりはもう禁🈲禁🈲でした。
「よいこのみんなは、みてはいけません……!」
「あは❤ 着衣でシてたのに……バレちゃった……?」
だいじょうぶ。何もバレていません。健全です。
ただ険しいお顔をしたリリリリさんが堕天シールドで結界を張って、堕天使の翼をバサバサ広げてよいこの皆さんを守護ろうとしなければ、|たいへん《HENTAI》なことになっていたかもしれません。その代わり、良い子になれないガチデビルさんは犠牲になったのです……古から続く《|セカカラちゃんの法《アタマオカシイルール》》……その犠牲の犠牲にね……。
「やめろ、頼む、これ以上は……!」
「まだイケるわよね❤」
「は、はなしが通じな……アアアーーーッ!!!」
では、何が起こったのかを振り返って見ていきましょう。
もう二度と、こんな犠牲の犠牲を繰り返さないために――。
§
「はぁい、今からこの場は私の|”法”《ルール》が支配しまぁす❤ そうね、今回は……」
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)さんはまずそう言って、ガチデビルさんの魂を丁寧に|抽出《ドリップ》しました。
……何を言っているのかわからない? わたしにも、わかりません。
「「言葉」でなく「心」で理解してね❤」
とにかく、アリスさんはリリリリさんに触れたかと思うと、その肉体に取り憑いていたガチデビルさんの魂をリリリリさんからきゅぽんと抜き出してお姉様(男の娘)化してしまったのです。
素材採取とか、料理とか……断じてそんなカワイイモノじゃあないと思います。あたまがどうにかなりそうでした。化術、肉体改造、錬金術はともかくとして、どっちにしろおそろしいもののへんりんを感じます。
「あは。ガッチーのガッチーがもうこんなにガッチガッチ、ね……❤」
「き、貴様はなにをいっとるだー!!」
アリスさんはそのままパニックに陥ったガチデビルさんに向かい合ってお膝抱っこしてもらう態勢をとると、首に両手を回して抱き着き、決して中身が見えない鉄壁のスカートの中でクリームパイ作りをはじめました。
――これは……そう、お料理だったのです。
あくまで健全な料理行為――アリスさんはきっと、おなかがへっていたのでしょう。大食い、魔喰を発動させながら、ガチデビルさんを急かすように何かをねだるようにゆさゆさ揺さぶったり甘えたりしていました。
「んっ……そうよ❤ これはただの……アンッ❤ おかしづくりっ……なんだからぁ……っ❤❤」
……でも、ガチデビルさんがお顔を真っ赤にして時々びくんびくんと痙攣してるのは、どうして?
「それはね……|頭セカンドカラーになった《精神汚染された》結果だから大丈夫だ、問題ない❤」
「ひ、ひだりてはそえるだけ……」
「あん❤ ヤるわね、ガッチー♪」
ふにゅふにゅ。
ガチデビルさんは必死に反撃しようとして繊細な手つきで、パイをこう……なんかこねたりして結果アリスさんのおてつだいをしていくことにより、おかしづくりにいっそうはげんだアリスさんが活躍したことで、ガチデビルさんはついにげんかいを迎えてしまいました。
「あ、あああ……やめろ、頼む、これ以上は……!」
「まだイケるわよね❤」
「は、はなしが通じな……アアアーーーッ!!!」
そして、ガチデビルさんはしにました。
魂とか生命力とか尊厳とか、そういうものをたくさん奪われてしまったようです……。
せんそうって、かなしいですね。
「――ふぅ。ごちそうさま……♪」
それから。
アリスさんは次の獲もn……もといリリリリさんにまで声をかけようとしましたが、
「勇者的には|一晩のアヴァンチュールなワル《頭セカンドカラーになってみるの》もたまにはいいでしょ……って、あら?」
リリリリさんはすでに逃げてしまっていました。
なぜかダブルピースしてぴくぴくと痙攣しているガチデビルさんのお顔や声を見て聞いてしまっていたリリリリさんは、ガチでアリスさんにおびえていたのです。あんな風に、頭セカンドカラーになりたくなかったからです。
「ガチデビル……お前のこと大嫌いだったけど……それでも、お前のそんな姿……見たくなかったよ」
「あら……こんなに、かわいいのに❤」
「!? ピィィー……ッ!!!」
一筋の涙をこぼしながら、でも振り返らずに去ろうとしていたリリリリさん。そんなリリリリさんを頭セカンドカラーなアリスさんが捕まえると、彼女は野生動物が生命の危機に瀕したときみたいな悲鳴を上げて、アリスさんから逃がれようとしていました。勇者のくせに。ざこ❤ ざぁこ❤ って言われても仕方ないくらいに、ガクガクプルプル震えてしまっていました。
「大丈夫よ❤ なにもしない。なにもしないから……。一緒にお茶するだけだから……❤」
「ほ、ほんとうに、なにもしない……?」
「……|チョロイわね《もちろんよ》♪」
リリリリさんは良い子だったので、その言葉をかんたんに信じてしまいました。これではガチデビルさんに騙されて絶滅しそうになってしまうのも納得です。でも、いくら頭セカンドカラーなアリスさんとて悪い子以外には見境なく手を出したりはしませんので、実は結果的には命拾い(?)をしていたのでした。
そんなこんなで、アリスさんはガチビビリと化したリリリリさんとお茶会でコーヒーを楽しみながら、隙を見てはリリリリさんを|口説いてみたり《精神汚染》して優雅な一時を楽しんだのでした。
●今日の教訓
みんな、よい子にしていましょう。
わるい子のところには、アリスさんがやってきて……
「おいしく食べちゃうゾ❤」
大成功
🔵🔵🔵
千代川・七尾
アドリブ連携歓迎なのです!
え!?ん?
あなたはもう死んでるのです??
いや、生きてるのです???
よくわからないけど生き返るのです!??
(お目目ぐるぐる)
えーと、お菓子を持ってきました!!!
おばあちゃんちに行った時にもらったやつなのです!
はい、オブラートにつつまれたゼリー!!
あと、丸い缶に二段重ねになってるクッキー!!
あと他にもいっぱいあって、お団子とか羊羮とか、どれがいいですか!?
一緒においしいコーヒーを飲むのです!!
バトルがしたいのです??
バトルじゃなくてバスケをしましょう!!
だってここはアスリートアースだもの!!!
戦闘おまかせです
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキング
キンンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン
和田町・いずみ
常闇ノ海月マスターにおまかせします。かっこいい和田町・いずみをお願いします!
電脳魔術士×ワールドハッカーです。
大人しい20歳の女性です。
天然クールで少々ポンコツ。
基本的口調は一人称は私、相手に対しては~さん付け、です、ます、でしょう、でしょうか?と穏やかで丁寧な話し方。
熱中すると猪突猛進します。
電脳魔術でハッキングするのが得意。
趣味は鉄道が好きな乗り鉄です。
アドリブ・連携は大歓迎。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
●キツネのおやつ、ガチデビルのひみつ
「このあたりからコイバナの匂いがしたのです!」
大好物の匂いにつられて、千代川・七尾(好奇心旺盛な狐・f18443)さんがやってきました。
ですが🦊の狩りには当然リスクも付きもの。自然界には野生のおじさんやヤンデレ女子など危険もいっぱいです。
いつか白馬に乗った王子様に壁ドンされるのが夢だという妖狐🦊の少女は、無事に恋愛話にありつけるのでしょうか……(ドキュメンタリー風ナレーション)。
「このお耳にちょうどいいコイバナ下さいな」
「ごめんなさいね。それ、もうやってないんですよ……」
「ガーンなのです😨」
ダメでした。
ふるふると首を横に振ってお断りするリリリリに、七尾さんはいきなり出鼻をくじかれてしまいました。
「……しょうがないのです。では、死んだと思ったら死んだと思っていたけど実は生きていた魔王に体を奪われて蘇った勇者のわたしがなぜか|満月《フルムーン》を探していた死神代行に執着されて夜しか眠れない~とかそんな感じの下さい」
「ですからごめんなさい。そういう妙に具体的な注文されてもちょっと……だいたい、需要もないんじゃないの~?」
「そうですか……どうしよう」
大自然のあまりの厳しさ冷たさに(´・ω・`)ショボンとする七尾さん。
そんな時、おなかをすかせた🦊さんに手を差し伸べたのは、意外な人物でした。
「なければ……作ればいいではないか……」
「え!? ん?」
ガチデビルです。
とっくに死んだハズの魔王は、死んだと思ったら死んだと思っていたけど実は生きていたのです。リリリリの体を奪ってとりついて、生き延びて機会を窺っていたのです。
「どういうことなのです? そもそも、あなたはもう死んでるのです?? いや、生きてるのです???」
「クックック、質問は一度に一つにしたまえ。そして、悪魔は滅びんよ……何度でもよみがえる!」
「!? よくわからないけど生き返るのです!??」
「そうだよ」
あまりに理不尽な悪魔の能力。
「!? キェェェェェェアァァァァァァイキカエッタァァアアア……!!!」
七尾さんはお目目ぐるぐるハッピーセットをキめた小学生みたいになってしまいました。
こんなの……どうやって倒せばいいっていうのです!?
それでも、好奇心旺盛な若い七尾🦊さんは、なんとかしてその『謎』を解き明かすことにしました。
「そこで、今回使うユーベルコードは《超最強》……これで勝てるのです!!! アドリブ連携歓迎なのです!」
それは、ランダムなユーベルコードをひとつ使用(執筆マスターが選択)する。種類は選べないが必ず有効利用できるという権能でした。要はおまかせです。
「――話は聞かせていただきました。連携歓迎……そういうことなら、私も協力いたしましょう」
「!? あ、あなたは! ……だれ?」
「電脳魔術師のいずみです! よろしくお願いしますね~」
「よろしくなのです!」
「ではさっそくですが……私の行動はマスターにおまかせします。かっこいい和田町・いずみをお願いします!」
さっそう登場した協力者。一見すると知的でクールな和田町・いずみ(人間の電脳魔術士・f07456)さんもまた、おまかせの民でした。ダイナミックにおまかせしていくスタイルの猟兵さんでした。
「くくく、おまかせだと? 馬鹿め! かつてマスターに同じことを頼んだ猟兵が……いったいどうなったと思う?」
「!? ど、どうなったんでしょうか……?」
ニヤリ、と勝ち誇ったように笑っていずみさんを見下すリリリリ(ガチデビル)。いずみさんがそのはったりとは思えない妙な迫力に思わず動揺していると、七尾さんが沈痛な表情で言いました。
「……死んだのです。死んで、お☆さまになっちゃったのです。かっこよく……なれなかったのです」
「!? え、死……???」
「フーフハハハー!! そうだ! おまかせなど……雑に処理してくれるわァァァ……!!!」
「……ッ!!」
「くっ! しょうがないのです、こうなったらやるしかないのです……戦闘おまかせです!!」
キンキンキンキンキンキンキンキリン! キンキンキンキンキングキンンキンキンキンキン!! キンキンキンキンキンキンキンキンキン……ッ!!! キンキンキンキンキツネキンキンキンキンコンキンコンキンコンキンコン🚉 コーンコーン🦊!!
ローカル線列車と化したななお5号でいろいろな世界を旅する、七尾さんといずみさん。本当は《超ななお》ではなく《ここは夢世界》でプロットを組んでいたのですが、少女漫画脳になれなかったこととガチデビルと七尾さんの絡みがいまいちピンと来ませんでした。
「そこで、急遽このキャンピングカーを使うことになったのです。七尾、行きまーす!」
「グ、グワァァァアアアアーッ……!!!」
ので、ガチデビルは死にました。
あといずみさんはかっこよく活躍しました。
「雑っ! ええと、死んでも油断できないのですよね。それならこれで……ピーピングアナライズ!」
敵を知り己を知れば百戦危うからず、と昔の人も言っています。そこでいずみさんは《|peeping analyze《ピーピングアナライズ》》を発動してガチデビルの個人情報を暴こうとしました。
「!? くっ……見るな……見ないでぇ……っ!!」
「!? ……大変です! 七尾さん、この人……友達がいませんっ!」
「え、ええー!!?」
……なんてむごいことをするのでしょう。いずみさんのユーベルコードはガチデビルが皆の玩具にされていたり、女性(リリリリ)の体にとりついて操る変態扱いされていたり、かと思えば変態(猟兵)さんに乱暴されていたりと散々な目にあっていることを、白日の下にさらしてしまいました。
「|運《ツキ》と|実弾《☆》が足りてさえいれば……」
思えば、割と準備とかにも時間をかけて陣容も充実させて、と魔王らしい繊細な心配りで作戦を練り上げてから戦争に臨んできたガチデビルでしたが……今回のフィールド・オブ・ナインは勿論のこと、前回召喚した魔王もあんまり作戦通りには動いてなかったのです。デストローイ! とか言って勝手に暴れてたのです。つまりは恐らく人望とか統率力も足らんかったのです。
七尾さんは、そんなガチデビルがちょっと哀れになってしまったのか、
「えーと、お菓子を持ってきました!!!」
おばあちゃんちに行った時にもらったやつなのです! とお菓子を持ち出しておやつタイムの休戦を提案しました。
敵同士とはいえ、『Ver.ここは夢世界』だったらラブロマンスを繰り広げていたかもしれない相手。それに、素ガチデビルだったらともかく今の肉体はリリリリなので顔面偏差値は高いのです。
七尾さんは、イケメンとか好きだったのです。
「お菓子ですか……では、私はコーヒーを準備しますね。カモン、キャンピー(珠)くん!」
「お願いするのです。一緒においしいコーヒーを飲むのです!!」
「お、お前たち……」
うろたえる、もしくはうろたえるふりをするガチデビル。結局のところ、彼の本心は分かりません。
なんで死なないのか謎を解くとかそういう伏線も、分かりません。思い付きと展開の都合で置き去りにされました。
「……本当のことを言うと私が死なないのは単にまだ未消化プレイングか残っているからなのだよ!」
「そ、そういう身も蓋もないこと言っちゃダメですよ……」
「おなかが減ると悲しくなるのです。そんなことよりお菓子を食べるのです! はい、オブラートにつつまれたゼリー!! あと、丸い缶に二段重ねになってるクッキー!!」
きっとたぶんおそらく、確実に消滅に近づいているガチデビルに七尾さんが持参したお菓子を薦めます。昔なつかしい駄菓子風のチョイス。ですが、ガチデビルはカラフルな寒天ゼリーや缶入りのクッキーにも、あまり興味は無い様子でした。
「あと他にもいっぱいあって、お団子とか羊羮とか、どれがいいですか!?」
「菓子などいらぬぅ!!」
まさに花より団子な七尾さんのお世話を、しかしガチデビルは強い口調で断って。
それでもコーヒーカップに注がれた黒い液体だけはしっかり飲み干すと、キリッとしたお顔で言いました。
「――お前が……欲しい……ッ!!」
「!? バトルがしたいのです??」
「いやちがう」
「バトルじゃなくてバスケをしましょう!!」
「いや好敵手がほしい的な意味じゃなくてだな」
「だってここはアスリートアースだもの!!!」
「お前たち……お前たちを、私が全国大会に連れて行ってやんよぉ!!!!」
固く誓うガチデビル――そう、あきらめない限りは、まだ試合終了ではないのです!?(疑問形)
それから、七尾さんはきっとまだいろいろな事を諦めてはいないのだろうガチデビルと、バスケの練習をしました。キャンピー(珠)くん(╹◡╹)を🏀代わりにぼよんぼよん弾ませながら、
「残り時間もあとわずか。此処から逆転するには……スリーポイントシュートしかありませんね」
「つまり、3Pの練習なのです!?」
「ひだりては、そえるだけ……」
3人はさわやかな汗を流して、バスケの練習をしました。
この時の経験が、のちに猟兵との戦いでも生きたとガチデビルさんは語ります。
でも、ふつうに負けたそうです。
「はぁい❤ 今からこの場は――」
そう――これは時系列の順番前後して、一個前のリプレイの直前のお話なのでした。
おしまい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
東・よるは
要は甘かったんですよ。
この世界そのものが破壊と支配を受け入れないことを計算に入れるべきだった。
君の未来などもう決まっているのですガチデビルさん。
お茶会を始めましょうか。
故郷からいくつか和菓子も持ってきていたのです、コーヒーに合うものを。
ふふ、そちらもお菓子を?
ありがたくいただきます――
…ええ、普段はこんなにゆっくりするような性質でも無かったし、時間もそんなには無かったのですがね。こういう時間が好きじゃないわけではないから…あっ、美味しい。
何かとリリリリさんも苦労は絶えなかったでしょうから…よくぞ正気に戻られましたね。
折角です、魔界の話というものを是非お聞かせください。わたくしも桜の世のお話をしたくて…ええ、年中桜が咲いて、とても綺麗なんです…。
十分楽しんだら…こういう日くらいはこんなのんびりも許されましょう。
その結果がキンキンキンでは些か不味いのですがね。
だから穏やかに終わらせる。
色は深紅、
|微笑《あざわら》う|善性《あくま》の色。
このUCにて一太刀――はい、とても楽しかったですよ。
蒼乃・昴
そう、これこそ皆が想い描いた平和な世界なのだろう
世界は平和な方が良い
善人も悪人も…誰も悲しまない方が良い
だが兵器として生まれた俺にとって
戦いの中でこそ俺を俺たらしめる
最も己の存在意義を感じる瞬間だ
だからお前との戦いを楽しみにしていたんだ、ガチデビル
どうしてこうなった?
お前は『魔王』だろ!しっかりしろ……!
お、おい……
リリリリ、これ以上は辞めてあげてくれ……
彼はもう限界だ……あぁ……(ガチデビルを心なしか庇う)
メガコーポ時代を思い出す
あの頃の俺のように
お前はきっと悪人だったのだろうに
大丈夫か?
……こうなったら、コーヒータイムで一時休戦に入るしか無いようだな?(?)
今日のおやつはデビルスイーツだ
エキセントリックなこの毒々しい色が、懐かしいだろう
ガチデビルもリリリリも一緒にどうだ?
コーヒーと共に頂こう
美味しいか?
口に合うと良いんだがな
ガチデビル
俺は待っているぞ
今回は運が無かったようだが――
次に会う時こそ勝負しよう
お前が悪事を働くより先にお前の息の根を止めてやる
その時を楽しみにしているよ
●魔王と勇者の、限界バトル!
「フハハハハ! いいぞいいぞ! 実になじむ! このコーヒーがあれば、私は……!」
和やかなお茶会の会場には似つかわしくない、邪悪さに満ちた哄笑が響き渡ります。
それは悪魔の目論見がとうとう猟兵による阻止限界点を超え、故に限定的とはいえ勝利を確信したガチデビルが堪えられなくなってとうとう零した、勝利の快哉でした。
まだだ……? まだ笑うな? こらえるんだ?
いえ、いいえ。
もう、我慢しなくても良いのです。
「私の勝ちだ、|猟兵《イェーガー》! 世界侵略は、目前だァ!」
ずっと求めていた理想のコーヒー。
それは香り高く、ほろ苦く、マイルドでコクがあって、とってもおいしいコーヒーでした。
――そう、つまりは。
「キャンピー・コーヒー・勝利! の方程式が成り立つ、ということだ! リリリリ、見よ。これがデビルキングワールドの夜明けぜよ! モーニングコーヒー、のもうよー!!」
「……そんなお話だったかしら~?」
「ですよ! そうですよ! もちろんですよ!」
ガチデビルは、胸にこみあげてくるその熱くはげしい思いの丈を、力強く、雄弁に語りだしました。
ここで戦った人々が、気高くもここまで勇敢に推し進めてきた未完の事業……。
『グロロロロ、猟兵など、1人残らず骸の海に放り出してやったわ!!』
『ガチデビル……彼は、“|本物《ガチ》”の|悪魔《デビル》だ』
『もはや何人たりとも、生き延びること能わず』
『特訓したけど、何回やってもガチデビルには勝てなかったよ……』
かつての仲間、そしてライバルたちも、闇の階段を駆け下るガチデビルを|呪って《祝福して》くれています。
あの頭のおかしいアメリカ人ベースボーラーも、いまは両膝をつき無様にorzとうなだれていました。
『バトル・オブ・オリンピアは失敗した。もう、滅びは避けられない……orz』
『……アハハッ、アヒャヒャヒハハハハハ……ッ!!!(゚∀゚)』
ガチデビルの信念に共感し、命がけで後押ししてくれた|彼ら《戦死者》の死を決して無駄にしないために、と。
走って、走って、走り続けて――そうして、最後に辿り着いたこの場所で。
生命を、善悪の別なく、その何もかもを餐んだ骸の海で。
ガチデビル(リリリリ)は、拳を突き上げ高らかに宣言します。
「それは、あらゆる世界に悪魔の下で等しく破滅を迎えさせるために!」
「そして、悪魔の、悪魔による、悪魔のための支配を地上から決して絶滅させないために!!」
「我々が! 固く決意することであるのです!!!」
強者たるガチデビルにとって、かつて齎された死と破滅は真に終焉たるモノではありませんでした。
そうして、邪悪な己を保ったまま骸の海を揺蕩うこととなったガチデビルは、そこで知ったのです。
骸の海に浮かぶという36の世界。
その全ての世界の中でも――我ら悪魔たちこそ、群を抜いて、圧倒的に最強の存在であった――と。
ならば全ての世界の頂点に立ち、これを滅ぼし尽くすことこそ、我ら悪魔の権利にして本懐というもの。
そんなガチデビルの悲願も、ついに、もうすぐ叶おうというのです。
今まで、思い通りにならない悪魔たちや異世界の魔王たち、新生フィールド・オブ・ナインにあの厄介な猟兵たち……散々思い通りにならなくて苦労させられてきましたが、その苦労もようやく報われるのです。
「できます。可能です。できるんです!」
「ガチデビル、お前……」
「そう、このキャンピーくんのKING宝珠さえあれば、ね……!」
ガチデビルはキャンピーくん(珠)由来のおいしいコーヒーをカップにトクトクと注いで。
それから、白い湯気を立てるその黒い液体をリリリリの体でコクコクと飲み、飲み干しました。
……うん、おいしいーーー!!!
「……ね、ねえ、ひょっとしたら……だけど。……ガチデビルは、もしかして、もう……」
上質なコーヒーを飲み、満足げにクククと笑うお顔。堕天使にして勇者でもある愛らしいリリリリのお顔でも覆い隠せないほどの邪悪っぽい邪悪さを感じさせる、悪質な悪魔の笑み。
そんな表情から一転して真顔に戻ったリリリリが、重大な何かに気付いてしまったかのように、言いました。
――もしかして、彼は。ガチデビルは、もう……
「……もう、限界なんじゃないの~?」
「!? 私、言ったよな!? 予兆の時点で! もう限界だって! 言ってたよなああぁぁ……!?」
そこに気付くとは、さすが5thKINGです。
ガチデビルの憑依・洗脳から抜け出しつつあるかしこい勇者リリリリは、そのずば抜けた慧眼によってガチデビルがすでに限界っぽいことを目ざとく見抜いたのです。
「それでもガチデビルなら……ガチデビルならきっと何かとワルいことしてくれるんじゃないの~!?」
「ふ、そうだな。まぁまぁ、まだまだあわてるような時間じゃ……あわ、あわわわっわわわばばばば」
――ですが、それでも。
何もかも思い通りにはならない世知辛い現実を離れて|夢《空想》の世界に旅立とうとしていたガチデビル。
それでも、コイツなら……と。
初代KINGたるガチデビルならきっとまたなんかワルいことをする気だろう、と期待を寄せるリリリリ。彼女は生まれながらの悪のその未来さえ推定有罪でジャッジメント! していくことで、ガチデビルをさらに土俵際へと追い詰めていきました。
天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰! 天罰!
「グ、グワァァァァアアアアアー……ッ!!」
リリリリは、猟兵さんに蹂躙され大ダメージを負った、残りカスみたいな彼の人格(?)をせっせと小型盾に移し替えては、幕末を席巻した人斬りみたいな目になってぶった斬っていきます。
人斬りとリリリリは、語感が似ているのです。
天 天 天 天 天 天 天 天 天 天 天
罰 罰 罰 罰 罰 罰 罰 罰 罰 罰 罰
更に、漆黒の翼をはためかせ飛天しながらスタイリッシュにガチデビルを切り刻んでいくリリリリ。
「ウ、ウギャァァァァーーーッ!!」
「天罰! 天罰! 天罰! てんばつ! てんばっ」
まさに悪即斬! 徹底いたします! といった風に、容赦なく無慈悲な鉄槌を下していく勇者の姿。
それはまるで某北の将軍様のような、ムシケラを撃ち殺すチャージマンのような、無慈悲さでした。
すると、
「お゛っ❤ おっほぉぉぉぉぉおおお❤ ……んひぃぃぃぃ……んんほぉぉぉぉおおおお………っ❤」
「……ひぇっ」
ガチデビルはおもむろに汚くて気持ち悪い悲鳴をあげはじめました。
これにはリリリリも思わずびっくりして、無慈悲な鉄槌の手を止めてしまいます。
「はぅ……わ、わるい。クセになってんだ……🐷みたいな悲鳴であえぐの……」
「そ、そうなんだ……」
気まずい空気が、お茶の間にただよいました。
それは、先だってちょっとアレな猟兵さんに敏感なとことかしつこく責められたのが、原因でした。
「……私は死後、様々な『世界』の存在を知った。そして業界では、これをご褒美と呼びます。ブヒィィィ……❤」
「……ガチデビル、こわれちゃったァ……」
リリリリは愕然と震え、項垂れました。
そう、驚異の分解・洗浄力を持つ猟兵さんの手にかかれば、しつこい|邪悪なヨゴレ《過去の化身》もこうして尊厳とかその他いろいろをぶっこわされて、キレイで無害な塵になって骸の海に還っていくのです。その過程でちょっと別のかなしみが生まれてしまっている気もしますが、そんなことはどうでもいいのです。いまは重要じゃないのです。……たぶん。
そんなこんなで、特にオチもないしょーもない漫才(?)を二人が繰り広げていた時でした。
「お、おい……」
「!!」
半ば呆気にとられながら様子を見守っていた猟兵さんが声をかけると、リリリリはびくりと肩を跳ね上げ、あわててガチデビルを容赦なく折檻する作業を再開しようとしました。
「お見苦しいところをお見せしてしまい、たいへん申し訳ございません。きびしく改善指導いたします!!」
リリリリは、だって、こうでもしないと……またコイツにヘンなことをする気でしょう? ヲークが描いたエロ同人みたいに! ヲークのヲタクが描いたエロ同人みたいに! とか思っていました。
きっとまともな人なんて、猟兵さんには数えるほどしかいないんだぁ……と疑っていました。(風評被害)
しかし、
「リリリリ、これ以上はやめてあげてくれ……」
「ひょっ?」
「彼はもう限界だ……あぁ……」
こんな汚い場面にいちゃいけないような|美形《イケメン》のお兄さん――蒼乃・昴(夜明けの|六連星《プレアデス》・f40152)さんはそう言うと、心なしか満心創痍な人面瘡っぽいガチデビルをかばうような仕草さえ見せたではありませんか。
その予想しなかった意外な場所からの意外な言葉に、リリリリは目を丸くして驚いてしまいました。
「どういうことですか? ……あげて、おとす。おかわりもいいぞ、的なアレですか……? 来週も、リバース🌈リバースゥ🌈 ってことですか? わたしの体に、なんてことをさせるおつもりですか」
「だまされんぞ」
いぶかしむリリリリに、ガチデビルも警戒をあらわにしています。
しかしなんというか気が抜けるというか、漂ってくるのはいまいち緊張感のない空気……実はこいつらあんがい仲良いんじゃないかって、そんな風にも見える二人へと。
……リバース🌈ってなんだろう? と思いながらも、そんな疑問はさておいて。
「世界は平和な方が良い。善人も悪人も……誰も悲しまない方が良い」
昴さんはポツリとそう呟いて。
憂うように、そっとその青い瞳を伏せたのでした。
●この世界の、|真実《うらがわ》
(過酷な世界、というものを知っているからこそ……その有り様に憧れを抱いてしまうのだろうか?)
だれかを、何かを思いやる余裕さえ失われた世界。
ただただ己が今日を生き延びるために汲々としている世界。守るべき倫理や規範の何一つないそんな世界では、人は弱肉強食の摂理に従う倫理なき獣以下のケダモノにもなって、この世に新たな地獄さえ作り出してしまうものでした。
けれど、かつてのアスリートアースの住人たちはそうではなく。彼らは力を得る手段として“スポーツ”で競い合うことを選んだのです。例え争いがこの世界からなくならないのだとしても、無暗矢鱈に凶器を振るい、世界にいたずらに傷を痛みを増やしていくことを、由とはしなかったのかもしれません。
「……そう、これこそ皆が想い描いた平和な世界なのだろう」
電波塔の立ち並ぶ区画、見下ろす眼下の世界。
アスリートアースの街並みは良く発展していて、そこに暮らす人々も溌溂としており健康的に見えました。
夜を駆逐するがごとき煌びやかな光を放つ街並み。天を貫く摩天楼。
超テクノロジーに支えられ、人類が繁栄を謳歌する、豊かな……豊かなはずの世界で。その裏側で。
路地裏で痩せ衰えた人が、虚ろな目でまもなく訪れる死をただ待っているようなことはありません。
大企業の実験によって人生を狂わされ、骸の海を過剰投与され狂ってしまった『|改造生物《オブリビオン》』が、一人でも道連れにとギラついた目で無差別殺人を犯す機会を窺っていたりも、しません。
この世界では|金目の物《機械化義体》だけをはぎ取られた死体が、足早に通り過ぎる人々の誰にも見向きもされずに、やがてただ事務的に義務的に不潔な|ゴミ《廃棄物》として処理されていくようなことも、きっとないのでしょう。
「スポーツで競い合う。そうして、正々堂々と倒す……そんな余裕がある世界なんだな、ここは」
人間の、命の価値がまるで違う世界。
その根底にあるのはおそらく他者への敬意であり、ある種の仲間意識だったのでしょう。
アスリートたちにとってライバルとは自らの欲望を、勝利への渇望を満足させるために互いに貶め合い、どんな手を使って陥れてでも排除すべき敵――などではなくて。
ライバルとは、競い合うと同時に互いに切磋琢磨し自らをより高みへと導いてくれる目標であり、敬意を払うべき仲間でもあり……乗り越え、打ち克つべき“敵”は、本当はいつだって未熟な己自身なのです。
「自分のことばかりではなく、だれかを思いやれる。そうして、いつか世界に生まれた綻びにだって気づくことができる。……そんな余裕があるってのは、素晴らしいことだ……そうは思わないか?」
「わたしの生きた世界だって、かつてはそんな世界でした。こいつが……こいつさえ、いなければ……」
穏やかに問いかける昴さんの言葉に、リリリリは剣を下ろすと少し悲しそうな顔で答えました。
彼女の故郷――此処ではない別の世界。
善良すぎる悪魔たちが暮らしていた魔界に争いを、再び『悪』という概念を復活させたのは、他でもない……。
「クックック。貴様らはそんなだから、私のような者に利用され、いずれは征服される運命なのだよ!」
「……お前ぇッ!!」
ガチデビルの、めちゃくちゃわかりやすい挑発にリリリリが乗っかってしまいます。
けれど、彼女のその怒りは決して故なきものではありませんでした。
魔界に生まれた唯一の悪。ガチデビルの手によって絶滅の危機に瀕した悪魔たちの起死回生の一手。
それは、悪には悪を返す――すなわち、キング・ブレインが定めた『デビルキング法』に従い闘争心を燃やすことでした。勇者とはこのデビルキング法に背く存在であり、故に悪魔たちに最も恐れられる、魔界の異端児ともなってしまったのです。
まぁ、その割にはちゃっかり5thKINGになってたりするあたり、魔界って懐が深いなって感じですが……。
「簡単にいうと、良い子だから素直に悪に従う悪魔。そんなワルい悪魔たちをしばくのが勇者のお仕事だ!」
「なるほど。ガチデビルに人生……悪魔生? いや、堕天使生? を滅茶苦茶にされた……というわけか」
その上、お亡くなりになったあとでまでこうして洗脳され肉体を乗っ取られと、散々な目に合わせられているのです。それは、お怒りなのももっともなことでした。むしろまだ穏便すぎるくらいでした。
もしも世界が平和であれば、そんなリリリリには全く別の生き方があったのかもしれません。
戦士が――戦うことを選んだ者たちの全てが、必ずしもその道を自ら望んでいたとは限らないのです。時にそうせざるを得ない理由があって、望まずとも往かざるをえなかった旅路も、あるのです。
(だが、兵器として生まれた俺にとっては……)
戦いの、争いの渦中。
その場所こそが昴さんにとって自らを自らたらしめる舞台であり、最も己の存在意義を感じる瞬間でした。
自らを自らたらしめる何か。
ヒトに造られた存在である昴さんにとって、それは生まれたときに既に内包されていた自らの構成要素の一部であり。その存在を証明することはできなくとも、たしかに息づいている強い衝動でした。
だから、正直、昴さんはガチデビルとの戦いを楽しみにしていたりもしたのです。
身を焼くほどのスリルと高揚。
死線を超えた先でしか感じることのできない、生の実感。
あるいは、自らを最強の種族と豪語する魔王ガチデビル相手ならそんな戦いが……と思ったものでした。
……ですが、
「どうしてこうなった? お前は『魔王』だろ! しっかりしろ……!」
「フフ、ククク……あまい、あまいのだよ貴様らは……あま、あまぁい……」
「……ガチデビル。これは、キャンディではありません。これは、キャンピーくんだよ……」
(╹◡╹)「……ぼくのかおをおたべに~?」
ガチデビルは、もはやもうろうとする意識でキャンピーくん(珠)をしゃぶしゃぶしていました。
そう……彼はもう、ほぼイキかけだったのです。
昴さんが今この場でバッサリぶった切ってしまえば、きっとそれで簡単に終わりなのでしょう。
けれど、
(お前はきっと悪人だったのだろうに)
所詮はオブリビオンだから。
生まれながらの悪党だから。
世界とは、それを映す人の心とは、そう簡単に割り切れる事ばかりでもありません。
(……あの頃の俺のように)
なにせ昴さん自身、かくあれかしと造られた悪逆無道の殺人兵器だったのです。
自らを創り出したメガコーポ。
その組織の為に力を振るった過去を思い出してしまえば、こうして今、限界を超え衰弱しきったガチデビルを一方的に処断することはどうしてもためらわれてしまうのでした。
それに……それに、です。
もう、なんかいろいろとむずかしく考え過ぎましたが――
……じつはこれは、そもそも、ただコーヒーを飲みに行くだけの|世界線《シナリオ》だったのです!
コーヒーをっ! のまないことには! なにもっ! なにひとつはじまらないのです!
そうして、はじまらないということはおわらないということであり、それはつまり……はじまらないのです!
「……大丈夫か?」
だいじょうぶ、わたしはげんきです。
「……こうなったら、コーヒータイムで一時休戦に入るしか無いようだな?」
善と悪。分け合うこと、奪い合うこと。
実は境界があいまいな、その二つの勢力の狭間で常に揺れ動く……不安定な世界。
そうして、いまこの時。
昴さんはせめてこの流れ過ぎてゆくわずかな時間を、ただ一杯のコーヒーをともに味わう時間を、滅びゆく者たちと分かち合うことを選んだのでした。
●さいごのデザートを
そして、最後のお茶会が始まりました。
姿形も可憐で華やかな、桜舞い散る世界から持ち込まれた和菓子。そんな、小さな宝石のようなお菓子の数々が並ぶテーブルを、壊れかけの悪魔とキャラの安定しない駄天使と、6番目の猟兵とで囲んで。
「要は甘かったんですよ」
コーヒーにも良く合う、甘い和菓子を持参してくださった、ぬばたまの髪に桜を咲かせた麗人 ――ちょっと呆れたような目を向ける東・よるは(風なるよるは・f36266)さんと、甘くないはずの悪魔とのお喋りだって弾むというもの。
「この世界そのものが破壊と支配を受け入れないことを計算に入れるべきだった――」
「……なるほど。確かに、こうなっては認めねばなるまい」
ガチデビルは、苦々しい表情ながら素直に指摘を受け入れました。
予定外が重なりすぎて、最後には猟兵に単騎で挑まざる得なくなったこの結果を見れば、それはそう……。
でもまぁ、とある|時間遡行の観測者《時宮・朱鷺子》によれば本来ならガチデビルはカタストロフに至っていたようですから、逆境の中めちゃくちゃ善戦した方だという説もあります。
「つまり、貴様らを相手取るのであれば、最低でも|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》を――ハビタント・フォーミュラを手に入れておくべきだったと。出直して来いと。……要は、そう言いたいのだな?」
「違います」
きっとまだまだ全然懲りていないのでしょう。
この期に及んで“次”を見据えた反省会をはじめたガチデビルに、よるはさんはため息ひとつ零し、
「はぁ……君の未来などもう決まっているのですよ、ガチデビルさん」
と、ばっさり冷たく切り捨てますが。
「クックックック……素人め。野球は9回裏3アウトからが本番ということを、知らぬと見える……!」
――そう、たとえ27アウトとられても、悪魔が本気でゴネまくれば、ゲームセットではないのです!
あきらめない気持ちが、奇跡を起こすのです!
「絶対に、アリカメナーイ!!」
「………」
……やはり今すぐ粉々に粉砕して、コンクリに詰めて骸の海の底に沈めるべきでは?
よるはさんは、思わず半ば本気で愛刀に手を伸ばしそうになりましたが、自重しました。なぜなら、ついつい忘れそうになっていましたが……。
「そう。これは実は、ただ一杯のおいしいコーヒーを楽しむための、シナリオだったんだな……」
(╹◡╹)「ぼくたちは、いつのまにか、たいせつななにかを見失っていたんだね~……(?)」
一時休戦の席に着いた悪魔と猟兵へ、昴さんも持参したお菓子を提供します。
キャンピーくん(珠)も、おいしいコーヒーをだす準備はばっちりのようでした。
「あら、そちらもお菓子を?」
並んだ甘味を前にどこかウキウキとした様子の同僚。見た目は十分大人なのですが、まるで少年のようにかわいらしいそんな様子を見て、ふっと微笑むよるはさんでした。が……昴さんが出した“ソレ”を目にして、ほんのちょびっとだけ、その口の端が引きつったように見えたのは、気のせいでしょうか?
「ああ。今日のおやつはデビルスイーツだ」
「……」
ポップでポイズンなビジュアル。
ソレはいかにも自然界にはありえなさそうなケミカルな色彩で、自らの危険性を主張する毒ガエルのように毒々しくて、カロリー摂取量もとんでもないことになりそうな、背徳的な魔界のお菓子でした。
「エキセントリックなこの毒々しい色が、懐かしいだろう。コーヒーと共に頂こう」
「わぁい。おやつタイムだぁー」
「クックック……さぁ飲めリリリリ、おかわりもいいぞ!!」
そんな、サイバーザナドゥーにも探せばありそうな、いかにも罪深いお菓子を美味しそうに口にするリリリリ(ガチデビル)。ガチデビルも、機嫌よさそうにリリリリにコーヒーを勧めていたりします。
甘いお菓子ばかりではきっとさすがに飽きがくるだろうお口の中も、コーヒーがその苦みや酸味でリセットすることで、それぞれ単体では味わえないマリアージュを――至福の時間を奏でてくれました。
「美味しいか? 口に合うと良いんだがな」
昴さんはなんだかほっこりした気分で、今こうして笑っている悪魔や堕天使を見守り目を細めて。
「よるはも一緒にどうだ?」
「あ、はい。ありがたくいただきます――」
昴さんの勧めで、エキセントリックな外見に躊躇していたよるはさんが意を決して口に運んだ魔界のお菓子は、
「……あっ、美味しい」
その大味そうな見た目に反して上品で、繊細な味わいで。上質な和菓子に慣れたよるはさんの舌を満足させるに足るスイーツでした。
サクラミラージュの菓子職人が丹精込めて仕上げた芸術品。それと同じで、この一見不気味で毒々しいスイーツも、きっと魔界のパティシエが|ガチ《真剣》で作り上げた逸品だったのでしょう。
デビルキングワールドの悪魔たちって、そういう変なところで生真面目で情熱的なところがありますよね……。
「そうか。良かった……ああ、これも美味いな。少々、食べてしまうのが勿体なくもあるが……」
口元を微かに、けれど確かに柔らかくほころばせ、昴さんもよるはさんの持参した和菓子に舌鼓をうちます。
それから、
「こういう機会もあまり無いかもしれないが……慣れないか?」
「……ええ、いえ。ただ、普段はこんなにゆっくりするような性質でも無かったし、時間もそんなには無かったので」
互いに必殺の剣さえ届くだろう間合いで。
どこか落ち着かなげにリリリリたちを見ていたよるはさんに昴さんが尋ねれば、よるはさんはふるふる頭を振って。
「こういう時間が好きじゃないわけではないから」
ふわり、とやわらかく微笑んでみせたのでした。
ガチデビルもすでにほぼ無力化されており、リリリリに至っては敵意の欠片も見せていないのです。
(……こういう日くらいは、こんなのんびりも許されましょう)
差し迫った生命の危機。一刻の猶予さえ許されない、極限の戦い。
いまこの時が、この場所がそうでないのならば、こうして敵意なき存在にまで刃を振りかざしながら迫ることなどせずとも良いのかもしれません。
ましてやサクラミラージュにおいて桜の精とは、影朧――傷つき虐げられた者達の「過去」から生まれた、不安定なオブリビオンを“癒やす”ための権能を生まれ持った種族なのです。その力をより良く活かすのであれば、こうして話が通じるオブリビオンと交流し、その話を聞いておくのも損は無いでしょう。
「何かとリリリリさんも苦労は絶えなかったでしょうから……よくぞ正気に戻られましたね」
「それは、実際運がよかった……いえ、貴方たちのおかげなのでしょうね。……ありがとう」
「ふふ、どういたしまして。折角です、リリリリさんの故郷……魔界の話というものを是非お聞かせください。わたくしも桜の世のお話をしたくて……」
そうして、雷の落とされた地に生まれた堕天使と、神秘の桜に産み落とされた妖精は其々の故郷を――その生命が生まれ、育まれた世界についてしばし語らいます。
「さくら……|桜の幻想《サクラミラージュ》?」
「ええ、年中桜が咲いて、とても綺麗なんです……」
満開の桜が咲き乱れる、美しい世界。
「そう……まるで、天の国みたいだね」
と、リリリリは言いました。
地獄じみた魔界で生まれて、死んだ堕天使は、どこか遠い目で遥かな空を仰ぎながら。
「……そこでは、一年中きれいな花が咲いていて。食べものもたくさんあって、」
生きるということを、だれかに脅かされることもないから。
善人も悪人も。きっと、みんなが……。
「……そうでもありませんよ」
「……そうなのですか?」
――天国、極楽、理想郷。
おそらくはそういった世界を連想したのであろう堕天使に、桜の妖精は少し苦笑して、言いました。
「ええ。母は……幻朧桜は時に危険で凶暴な影朧すらを呼び寄せてしまいますから。よるはたちはその脅威から人々を護り、日々、戦わねばなりません」
悪辣で、狡猾なオブリビオンでさえ呼びよせてしまう|桜《母》が何を思ってそうしているのかを、よるはさんは知りません。ただ、もしも放っておいたならば、やがて彼ら彼女らがその大樹に憎悪の炎を浴びせかけ、尊ぶべき存在を枯らし燃やしてしまうだろう未来は、容易に想像がつくものでした。
だからこそ、幻影のように儚く、壊れやすい平和を守るためによるはさんは日々苦心しているのです。
「そうなんだ……でも、だとしたら」
リリリリは、少し考えてから呟きます。
「それはとてもいいことだね。もしもあなたが、だれかが見ていてあげることで、一人きりでは正しく生きられなかっただれかが、そのおかげで罪を犯さずに済むのなら……それに」
積極的に悪事を犯そうとする善良な悪魔たちにとっては恐怖の象徴でもあった『勇者』――リリリリは、愛と勇気の名のもとに魔王をぶちころがして回った、在りし日を懐かしむように目を細めて。
「本当に、不幸なのは……」
破滅を迎え、骸の海へと至り。
そこでただ静かに眠ろうとしていたこの骸すら、尽きることのない悪意に利用されても。
それでも、苦悩する誰かに問われたのなら、尚も律義に答えを返そうとしてしまうかつての|魔王《デビルキング》は、血糖値でも上がったのか先ほどから静かになった左肩に――ガチデビルにそっと触れて、
「……ほんとうに、しょうがないヤツ」
かすかな声で、そう囁いたのでした。
●満開の花が似合いの
――せめて、穏やかに終わらせよう。
楽しく過ごした時間のその結果がキンキンキンでは些か不味い……とは思うものの、既にその風前の灯火といった様子のガチデビルは、血眼になって、鬼と化してでも葬り去るべき脅威にも見えません。
「お覚悟、よろしいでしょうか?」
そうしてよるはさんが『閃夜』の名を持つ霊刀の鞘を払えば、その刀身は深紅に染まり、|微笑《あざわら》う|善性《あくま》の色を湛え煌々と輝いていました。
限界を超えた霊力。苦悩や嘆きに寄り添う心を以て成立する、《|不殺剣〜開花《フサツケン・カイカ》》。
槍よりも、弓矢よりも純粋な『兵器』として造られた『剣』の存在意義と矛盾するソレは、邪心を――穢れを払い、|未来《いつか》を切り開く為の権能で。
「どうか、囚われないで……」
別離は生命に定められた規約で。
そうして、生命とは常に変化を続けるものです。
天から下り、大地を流れゆく水が海へと注ぎ、やがてはまた雲と変じ天を目指すように。そうして常に相を変え、巡り続けるように。……訪れる別れは悲しくとも、せめて良き終わりが良きはじまりへと繋がっていけるように、と。
ソレは遠い日に託された願いの――己が身を焼き焦がすほどの憎悪にすら、それでも手を差し伸べずにはいられないだれかの、祈りの具現のようでした。
「ククッ……道半ば、今生の命運も……もはやこれまで、か……」
掲げられた刃の気配にガチデビルが目を開け、億劫そうにため息を零し。
そこへ、覚悟を呑んだ表情で、昴さんが声をかけました。
「ガチデビル。今回は運が無かったようだが――」
二度と生まれてくるな……とは言いません。
それは、もしかしたら、あり得たかもしれない自分に対して突きつける言葉と同じなのですから。
だから、いまは。
「次に会う時こそ勝負しよう。俺は待っているぞ」
「クックック……是非もなしだよ。猟兵」
「お前が悪事を働くより先にお前の息の根を止めてやる……その時を楽しみにしているよ」
その邪悪へと、宣戦布告。
凶悪犯罪を企む悪魔をその圧倒的武力で犯行前に葬り去るのだと、不器用な約束を交わしました。
そうして、遂に刃は振り下ろされて。
「――はい、とても楽しかったですよ」
よるはさんが告げた別れに、たぶん、9割9分くらいは邪心で出来ていたガチデビルは、その憑依したリリリリの体は、最期にフゥ~……と長い息を吐いて。
……そうして、猟兵と悪魔たちのお茶会は終わり。
永遠に満ちることなき過去は、ただそのあるがまま、在りし日のまま、あるべき|場所《過去》へと帰って――
「……いくとでも、思ったか?」
……!?
「クックック……一体いつから……洗脳が完全に解けたと……錯覚していた?」
「だ、だって、お前は、もう……」
罪人のように地面に跪いて、よるはさんの刃を受け入れた勇者リリリリの顔が、驚愕に彩られます。
左肩に張り付いていたガチデビルの顔は邪悪な笑みの形に歪んでいました。そうして、黒い塵となって解けていきながら、その口が発したのは――
「それは水中の月の如く、|乾闥婆《ガンダルヴァ》の城の如く……下らぬ|幻想《蜃気楼》なのだよ、リリリリ! そして……フハハハハ!! 最後に、私は私の目論見は果たした……貴様らとて敗北者だ! |猟兵《イェーガー》!」
勝ち誇る悪魔の哄笑。
そして猟兵と堕天使に残す、不吉な呪詛の言葉でした。
純粋な善意や慈悲ですら、尽きせぬ悪意によって食い物にし、骨の髄まで利用する――。
悪魔は、グリモアすらを欺いてこの不利な条件の中で陰謀を成したとでも、いうのでしょうか。……ですが、考えてみれば前回の『7thKING WAR』に於いても限定的とはいえその目標を達成していたのがガチデビルなのです。無策のまま破滅を受け入れるなど、あろうはずがなかったのに……。
「あわっわわわ。わた、わたしのさいごのミスです……キャンピーくんを死なせてしまった……」
(╹◡╹)「まだ死んでません(素)」
リリリリははげしく動揺し、死んでしまうノートに名前を書かれた名探偵Rみたいになっていました。
そんな彼女と、ガチデビルが消滅すれば共に消えていくキャンピーくん(珠)、猟兵を嘲笑い、
「クックック……悔しがる貴様らの吠え面を拝めないことだけが、心残りだが……いずれ、また相まみえようぞ、猟兵! その時こそ、貴様らの最後だ……ッ!!!」
その挑発的な言葉を最後に。
今度こそ、ガチデビルは黒い塵となって虚空に溶け、やがて跡形も残らずこの世から消えてしまったのでした。
そして――
「…………………まさか、そんな。そんな、方法が……あるって、いう……の……?」
劇的に訪れた、何らかの変化によって。
リリリリがひどく青ざめた顔で、滝のような脂汗を流して、小刻みに震えだしていました。
「!? リリリリ? どうした!?」
「……っ! くぅ……あ、ぅ……」
「そんな……邪なるモノは、確かに祓ったはずなのに」
勇者リリリリは、抗いがたい衝動にそれでも必死で抗っているように見えました。
何か……何か悪いことが、取り返しのつかない異変が起こってしまったことだけは、確かでした。
――オブリビオンの、暴走。
そんな言葉が、猟兵さんたちの脳裏をよぎります。ガチデビルはひょっとしたら、意図的に範囲を絞り、その洗脳に指向性を持たせることで、彼女を欺き……気づかぬうちに“限界”を超えさせていたのかもしれません。すっかり完全催眠が解けたと思い込んだリリリリがだいぶ調子に乗って、スタイリッシュにオサレにガチデビルをボコっていたシーンは、猟兵さんたちも目にしていました。
「うぅ……こ、ここでは……、まずっ……く、ぁ、ぁぁ……っ……」
せめて、此処ではないいずこかへと飛び去ろうとしたのでしょうか。内なる衝動に抵抗を続けるリリリリはその漆黒の翼をバサリと広げようとして……けれどすぐに、そんな力も猶予もすでに残っていないことに気づいたのでしょう。
やがてその唇から零れたのは、哀切の響きをはらんだ、か細い懇願でした。
「……お……おねがい、ころ……して……」
それは、今この場での、自らの消滅を願うこえ。
かつて勇者であった己が、罪を戒めるべき立場であった者が、悪魔たちを導くKINGであった存在が、これから為すであろう罪業によって穢されてしまう……それが、何よりの屈辱だったのでしょう。
「………わかり、ました」
悲しくとも、これも世の習い。
たとえば、狐に狩られ食われるうさぎにとっては一巻の終わりであっても、それが狐にとっては久々にありつけたごちそうで、幼き子狐の命をつなぐ糧となるように。どうあっても、何も殺さずには生きていけないのが、生命という存在の業。
そしてそれと同じように、リリリリを闇へと落とした功績は流石に自力のみでの復活は出来なさそうなガチデビルにとって、か細い希望を紡ぐのかもしれません。未だ残るフォーミュラをも凌駕する怪物たちの目に留まり、耳に届くような破滅の音韻。
ですが……そんなことをただ黙って指をくわえて見ているわけにはいきません。
よるはさんが再び霊刀を掲げ――、
「ちょ、ちょっと待てよるは……!」
けれど、昴さんはこの結末にまだ納得がいかないようで。
「一体、何が起こっているんだリリリリ。頼むから、せめて俺たちにも分かるように話してくれ……」
――お前が悪事を働くより先にお前の息の根を止めてやる。
すでに陰謀は為され、罠にかけられた勇者は自らの死より重い苦しみに喘いでいます。
あるいは、今こそが、悪魔と交わした約束を果たすべき時なのかもしれません……が。
このまま何もわからないまま、かつて世界を愛し、愛する者のために尽くしたのだろう英雄が……その意思が報われることなくただ消えていくだけの末路なんて、できるならば見たくありませんでした。
リリリリは、そんな焦燥に駆られる昴さんをチラリと見あげて、いまにも泣きだしそうな顔で、
「お、おし…………むくろの……あめ、が……」
「……おし? いや、骸の雨……だって!?」
ああ、まさか……ガチデビルはリリリリを人間爆弾のように利用し、炸裂させ、破裂させ、爆発させることで、この平和な世界に大量の『骸の雨』を降らせようとしたとでもいうのでしょうか。
汚染された骸の雨が降り注ぎ、人が、そのままの肉体ではもはや生きていくことすら出来ない故郷の惨状が、昴さんの脳裏に浮かびます。たしかに、そんな悲劇は必ず防がねばなりません……。
……けれど、同時に。
昴さんは、こうも思うのです。
(でもいま……何か別のことを言いかけてなかったか?)
本来ならばそれは、一瞬一秒を争う危機でした。
そして、昴さんのその一瞬の迷いが……結果として、この世界に破滅の音を響かせたのでした。
――じょばー!!!!!
「じょばー? ……うわっ!?」
「!?」
「………ぁぁ……」
ついに、そして呆気なく訪れた、破滅。
平和だったお茶の間に骸の海(?)が堰を切って流れ込み、氾濫する……地獄のような風景。
その滅びの光景を、猟兵さんたちは言葉もなく、ただ呆然と見ていることしかできませんでした。
人類が潜在的に恐れる天災の一つである、洪水。
かつて世界を洗い流したという、大洪水が思い浮かびます。地に溢れかえった水の暴威には何者も抗えず、人がその知恵を絞り創り出した劫火を以てしても、海の如き膨大な質量を焼き尽くすことなど、到底出来ようもないのです。
「……あっ……あっ……ああぁぁ~……」
リリリリはボロボロと涙をこぼしながら、未だに骸の海(?)を大量に放出し続けています。
彼女が国宝の阿修羅像のように思いつめた表情をしていたその理由が、今なら分かる昴さんでしたが……全てはもう、手遅れでした。
制御不能な衝動はリリリリの意思を離れて、その暴走を止めることはもう彼女自身にもできないのです。
「……………リリリリ。なんていうか、その……」
「ぐすっ……『うわぁっ』て……、いったぁ……」
「………」
やがて、骸の海(?)を放出しつくしたリリリリがぶるぶるっと身を震わせました。
それでもなお嗚咽し続けるその背に声をかけようとしても、ふさわしい言葉は見つかりません。
「リリリリさん……ええと。……そう。そうです。ほら、一滴潤乾坤ともいいますし……」
「えぐっ……ふぐ……りょ、猟兵さんがっ……こーひー……たくさん飲ませるからぁ……」
「…………気づかなくて、ごめんね? でも、コーヒーがおいしかったんですよね……?」
「…………う゛ん゛……っ……ひくっ……」
えぐっえぐっ、と。
子どものようにボロボロに泣き続けるかつての勇者を、よるはさんはお世話してあげました。
🐷『見るのですぞガチデビル氏。ふだん凛々しいリリリリ氏のあの泣き顔……ゾクゾクするのですぞ?』
🐷『これが、我ら新世代の悪魔が目指すべき、新しい世界のカタチなのですぞ……』
👾『……げにげに。リリリリあはれなりて、いとおかし……ものぐるほしけれ……???』
どこからか、悪魔たちのほくそ笑む声が聞こえました。
……毒電波かな?
「ええ……いえ。本気で頭おかしいんじゃないですかっ?!」
そこは、柔軟というのです。
視点を広げれば、突破口は見つかるのです。
紅茶がないなら、コーヒーを飲めばいい。
そして此処にボストン港がないのなら――そう、リリリリをその代わりにしてしまえばいい。
そうして、勇者に希望を見たガチデビルの陰謀によって、リリリリはティーポットにされてしまったのです。
……かくして、新たな|地獄《性癖》の扉を開いたガチデビルによって、リリリリは死にました。
勇者として5thKINGとしての尊厳とか、乙女的な部分とかが……ぶちころがされてしまいました。
――これが、分かち合う喜びと共に、猟兵にほろ苦い敗北(?)の味をも残していったお茶会の顛末です。
………。
……。
…。
ええと……。
「……俺は……俺には、何が……」
悩み、苦悩する昴さんです。
何だか最低な結末な気がしますが……最後にこうして|美形《イケメン》を映しておけば、何とかなりませんか?
「なるわけないだろ……ッ! ぐすっ……もう、ガチデビルとのコーヒーはコリゴリだよぉ……」
――この後、泣きベソかきながらどっか行っちゃった彼女の姿を見た者は、まだ誰もいないそうです。
やっぱり、あらそいは、むなしいものですね……(今日の教訓)。
大成功
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