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バトル・オブ・オリンピア⑱〜サメ🦈キャン

#アスリートアース #バトル・オブ・オリンピア #キャンプ #キャンプ・フォーミュラ『キャンピーくん』 #UDCアース #無人島 #サメ

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#キャンプ・フォーミュラ『キャンピーくん』
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●豊かな自然とテントがあればキャンプでいい
「おお~いいね~。キャンプ地にぴったりだよ」
 白い砂浜の上で、テントが声を弾ませていた。
「キレイな海が広がっていて、大きなお魚も元気に泳いでるね~」
 確かに謎のテントの前にはエメラルドグリーンの海が広がっているし、その波間からは魚の背ビレが幾つも見えているではないか。
 所謂パニック映画の類を良く視る人ならば、とても見覚えのある形の背ビレだろう。
「よし、ここをキャンプ地にするよ~。だれか、いっしょにキャンプしようよ~」
 そんな事は欠片も気にせずに、喋るテントはこの地をキャンプ地認定するのだった。

「テントってなんだっけ」
 流石に喋る上に異世界間を自在に移動するテントなんて存在に関わる日が来るとは、ルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)も思っていなかったのだろう。
「まあいいや。キャンプ行って来て」
 色々飲み込んで、ルシルは今回の目的を告げた。
 異世界間を自由に移動できる謎のテントにしてキャンプフォーミュラ・キャンピーくんに、UDCアースのとある無人島がキャンプ地認定されたのだ。だからキャンプしなければならない。
「うん。ガチの無人島。本当に誰もいない」
 島の中央部には、ヤシの木などの南国の植物が生えているくらい。
 他には砂浜と海が広がるばかりの、本当に無人島。
「水道? ガス? 電気? ――そんなものはないよ」
 中々の僻地である。まあ無人島だし、仕方がない。
 それにキャンピーくんはキャンプ道具の持ち込みを禁じるようなこともないので、何とかなるだろう。
「話はまだ終わりじゃなくてね。無人島の周りの海にはサメが良く出る」
 なんて?
「無人島があるのはUDCアースの南半球――オーストラリア近海だからね。多いんだ」
 周りの海にはサメがうようよしてる。
 しかも急深――少し沖に行くと一気に深くなるという、サメが波打ち際近くに出没し易い地形である。
 南半球なので今時分でも暖かいからと海に入ると、うっかりサメに襲われかねない。

 でも大丈夫。キャンピーくんがいるから。

「常時発動しているユーベルコードの効果で、キャンピーくんの周囲ではダメージを伴う全ての戦闘行為が無効化されるからね」
 そう、『全ての戦闘行為の無効果』なのだ。
 ユーベルコードに限った話ではない。
 UDCでも何でもないサメに襲われたって血の一滴も流れはしない――と言う事になるのだ。
 まあ猟兵ならサメに襲われても平気だろうけれど。
「何ならサメを食材にしてしまっても良い。釣りなら出来るから」
 ――出来るの?
「キャンピーくんに訊いたら、『釣りもできない海キャンプは楽しくないよ~』だって」
 釣り、戦闘行為認定されないようである。
「どうしてもサメが気になるなら、海に近づかずにキャンプすれば良いだけだよ」
 極々普通のサメだ。飛んできたり陸に上がってきたり砂の中を泳いできたりはしないので、安心(?)である。
「まあそんなわけで、キャンピーくんを満足させるために、南国無人島キャンプを楽しんできて欲しい」


泰月
 泰月(たいげつ)です。

 東京オフで、なんか出さないんですか?的な事を言われたので出しました。
 サメキャンです。

 周囲の海にサメがいる無人島でキャンプするだけのお仕事です。

●環境について
 UDCアースの南半球の無人島です。ザ・絶海の孤島。
 電気も水もガスもない、結構ガチ目のキャンプ環境です。
 キャンピーくんが目を付けたのが、アスリートアースじゃなくてUDCアースだからね。仕方ないね。
 市販のキャンプ道具類の持ち込みに特に制限はありません。
 電源がいるようなものでもバッテリー持ってきてOKです。
 どうしても使えなさそうなのはインターネット環境くらいですかね……?

 気候的な所は南半球なんで、夏です。夏。

●サメについて
 普通のサメです。いわゆるシャークです。
 ホホがシロい感じのサメです。いわゆるサメです。
 ごく普通のサメです。
 海にいます。沢山います。今回は噛まれても大丈夫。

 なおサメに限らず、釣りはダメージを伴う戦闘行為認定されません。
 いや個人的には釣りは魚との戦闘ではないかと思ってはいますし、釣り針はダメージ与えるのではと思うかもしれませんが、今回はキャンプを楽しむ目的ですから。
 泰月の中のキャンピーくんが、釣りもできないキャンプなんていやだ、と釣りはOKとしました。

●期間
 キャンピーくん、デイキャンプで満足しそうなので、日帰りデイキャンプでOK。
 希望するなら1泊してもいいです。
 それ以上長期を希望されても1泊以上は描写しないと思います。

●プレイングボーナス
 キャンピーくんとキャンプを楽しむ。

 なんですけど、キャンプしかする事ないので、多分ボーナス満たさない方が難しいですよね。

●受付期間
 OP公開されたらどうぞ。
 締切はタグに記入します。1/16いっぱいくらいまでは空けておく予定です。
 緩い雰囲気なんで忘れそうですけど戦争シナリオなんで、再送はなるべくしない方向で考えてます。
 もし人数が再送なしじゃ無理かなってことになったら、その時考えます。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 ボス戦 『キャンピーくん』

POW   :    ここをキャンプ地にするよ〜
レベルm半径内を【キャンプ地】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ダメージを伴わない全ての行動】が強化され、【ダメージを与える全ての行動】が弱体化される。
SPD   :    ここをキャンプ地にするよ〜
レベルm半径内を【キャンプ地】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ダメージを伴わない全ての行動】が強化され、【ダメージを与える全ての行動】が弱体化される。
WIZ   :    ここをキャンプ地にするよ〜
レベルm半径内を【キャンプ地】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ダメージを伴わない全ての行動】が強化され、【ダメージを与える全ての行動】が弱体化される。

イラスト:まめのきなこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クオ・メアン
うわぁ、キレイで楽しく泳げそうな海だね♪キャンピーくんありがとう!
夏でも冬でも海は大好き♪

キャンプ道具を脇において、着てきた水着でそのまま海へ。
(服装は2023年の水着だよ)

ぼくは鮫魔術士だから、サメさんと遊ぶのもへっちゃら。
仲良しのサメの『ガレくん』、リュウグウノツカイの『レクスくん』を呼んで一緒に遊ぼう♪
背中に乗せてもらってキレイなお魚さんやサンゴ達を見たり、競走したり(【深海適応】【水泳】)、たくさん遊んだら、UDCアースのサメさんとももう仲良しのお友達だよ!

サメさん達にまた遊ぼうね、と手を振って。
いっぱい遊んだら、お腹空いちゃった。カレーライス作ろうっと。キャンピーくんも食べる?



●サメフレンドシップ
 島のどこから見ても透明度の高い海が広がっている。
「うわぁ、キレイで楽しく泳げそうな海だね♪」
「うん、良いキャンプ地でしょ~」
 そんな光景にクオ・メアン(氷雪の精霊術士/天使で悪魔・f30569)が声を弾ませれば、キャンピーくんが誇らしげに返して来た。
 この短いやり取り――実は若干噛み合ってない感があった。
 季節を問わず海が好きなクオは、無人島の周りの海を褒めたのだ。
 けれどキャンピーくんは、無人島のキャンプ地としての良さを誇っている――様であった。
「キャンピーくんありがとう!」
 そこに気づいていたにせよ、クオは何も言わずにキャンピーくんに端的な感謝を告げ、アウトドア調理器具をはじめとしたキャンプ用品を近くのヤシの樹の木陰に置く。
 そして、海に向かって走り出した。
 クオの姿は、無人島に来るためにキャンピーくんの中に入る前から、既に去年新調したセーラー服と合わせた水着である。
 最初から海に入る気だったのだ。
「おいで、ガレくん、レクスくん」
 いつものお供のサメと深海魚のリュウグウノツカイを呼び出すと、クオは2匹を伴って海に駆け込んだ。

「わぁ……すごい」
 『ガレくん』の背に乗って、クオは無人島周りの色鮮やかなサンゴ礁を進んでいた。
 サンゴの周りにはこれまた南国らしいイエローやオレンジ、ブルーと言った鮮やかな色合いの熱帯魚が見える。
 けれどもクオが近づくと、熱帯魚たちは驚いた様にぴゃっとサンゴの隙間に逃げ込んだ。
「あれ? 驚かしちゃったかな?」
 熱帯魚たちが驚いたのはクオではなく『ガレくん』にだろう。
 熱帯魚に、他のサメと『ガレくん』の区別がつく筈もない。

 そして周囲のサメからすれば『ガレくん』は、縄張りに侵入してきた新たなサメ、と映ったのかもしれない。

「サメさんだ! 集まって来た!」
 いつの間にかサメが周囲に集まって来ていたのに気づいて、クオがぱっと声を弾ませた。
「よーし。競争だ。ガレくんとレクスくんもだよ!」
 言うが早いか、泳ぎ出すクオに、おともの2匹が続く。
 そしてサメの群れも、クオ達を追って泳ぎ出した。

 競争は、中々に熾烈なものになった。
 まず『ガレくん』は、ほぼ独走だった。
 天然のサメも何かを悟ったのか、『ガレくん』に攻撃する個体はいなかった。代わりに狙われたのは『レクスくん』とクオである。
 特にクオは何度か追いつかれ、サメに噛まれる事になった。
 例えば得物を狩る時など、サメが本気で泳ぐとかなりのスピードが出ると言う。
 けれども、サメが何度追いついて、噛み付いても、その牙はクオに傷ひとつつけられなかった。
 ついにはサメの方が根負けする形で、クオ達の周りから離れていく。
「あ、帰っちゃうの? また遊ぼうねー」
 仲良しのお友達――そう思ってるサメ達を、クオは手を振って見送る。
「ぼくたちも上がろうか。いっぱい遊んでお腹すいちゃったから、カレーライス作ろうっと。キャンピーくんも食べるかな?」
 そしてクオは再び『ガレくん』に乗って、荷物を置いた砂浜へ戻って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルザ・ルーナマリア
キャンプ…安全に楽しむ?
普段から荒野とか旅してるけどどんなのかな。よくわかんねーけど楽しむぜ!

…暑い!
南半球…さっきまで冬にいたから落差で余計堪える…!
ここは海に飛び込むしかねーな。
ざばーんと飛び込み深く潜れば程よい感じ…ってサメが!
でもただのサメならそんな怖くないし攻撃もお互い効かねえし気にしなくてもいいかなー。
…素潜りで捕まえてくるのはできるんかな?
無理なら海から上がって釣りで粘って手早く解体。
キャンプと言えば料理、他にも食べれそうな貝とかの素材集めて豪快に焼いて楽しむぜ!
寝床は適当に草茂ってるとこ選べば大丈夫だろ。
満天の星空見上げて…あんまいつもの生活と変わらない?

※アドリブ絡み等お任せ



●食物連鎖の上も楽じゃない
 生まれは遥か遠い北の海。
 育ちは嵐で流された先の、争い絶えぬ殺伐とした都市跡。
 荒野を旅するは日常茶飯事。
「……暑い!?」
 そんな境遇を持つウルザ・ルーナマリア(月に泳ぐ白き獣・f39111)は、キャンピーくんの中から外に出て、環境の変化に驚愕の声を上げていた。
 多くの世界がそうであるように、ウルザが少し前までいたのも冬の環境だ。
 しかしこの南の無人島の上に広がる青空では太陽がギラギラと輝き、降り注ぐ陽光で砂が温められている。全方位からの熱で夏だと主張してくる環境とでは、気温の落差がすごい。
 その落差がなくとも、ホッキョクグマの様な姿形を持つ『シーベアルグ』であるウルザに、この熱気は堪えるものだろう。
「だめだ……海に飛び込むしかねーな」
 島の周りに広がる海に活路を求めたウルザは、波間に見える背鰭など目に入ってないかのように、猛然と砂を蹴って駆ける。

 そして躊躇なく、ざばーんっと海に飛び込んだ。

「ふぃー……」
 すっかり温まっていたウルザの身体が、海の水に冷やされ――。
「ってまだ暑いな」
 今自分のオーストラリア近海の海水温は、平均25~6℃。ぬるめの水風呂と言った所か。
 砂浜よりずっとマシになったとは言え、海面にも陽光は降り注ぐ。ウルザの背中はじりじり焼かれているし、海面も温まっている。
「潜るか」
 海の中の方が良かろうと、ウルザは息を吸い込んで海の中に沈んだ。

 サメと言う魚類は多くの場合、その海域での食物連鎖の頂点、ないしは上位の存在だ。
 そしてそれは、ウルザが似ているホッキョクグマも同様である。
 現れた、自分達の地位を脅かす存在。
 ウルザの事をそう見たサメが、潜って来たウルザに襲い掛かったのはそんな本能的なものだったのかもしれない。
 どうあれ、ウルザはサメに襲われた。
 いきなり頭からガブッといかれた。
「ふーん、本当に効かねーんだな」
 けれどサメの牙は、ウルザの体毛ひとつすら傷つける事は出来なかった。
 ――!?
 サメが驚愕したように、齧りついたまま固まっている。
 キャンピーくんの無効化能力は、海の中にもある程度及んでいるようだ。
「ただのサメなら、そんな怖くないな」
 ウルザは未だ固まっているサメの口をこじ開けると、自分の頭を抜いて――そのままサメに両腕を回す。ガシッとウルザに捕まえられたサメは、成す術もなく海の上まで引っ張り上げられるのだった。

 サメは軟骨魚類に分類される。
 その名の通り軟らかい骨が多く、骨まで食べられる部分も多い。
 夜も更け、空がすっかり暗くなった頃には、ウルザの横にはサメの頭部と背骨くらいしか残っていなかった。
「美味かったなー、ここのサメ」
 他にもエビやらホタテっぽい貝やら、潜って適当に食べられそうなものを獲ってきて、サメと一緒に焼いただけ。シンプルな調理法だが、それ故にサメが持つ旨味も感じられた事だろう。
 サメの身は白身だが、マグロに匹敵する旨味があるという人もいるらしい。
「……これじゃ、あんまいつもの生活と変わらない気もするけど」
 ごろりと寝転がれば、視線の先には文字通りの満天の星空。これもいつもの事。
 けれどこんな風にくちた腹を無防備にさらしていられるのは――ここがキャンプ地だからだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
サメと聞いてやってきました。

せっかくなんで今回はサメがいっぱいいる海でダイビングを楽しみたいと思います。
オーストラリアということであれば季節は夏。海を楽しむには絶好のタイミングです。
普段は竜巻をまとうサメとかゴーストなサメとかそういうのとばかり遊んでいるので、たまには普通のサメと戯れるのもいいものです。

釣りが可能であればダイビングの合間に魚を釣って、夜にテントを張った砂浜でそれを焼いて食べるとかも楽しそうですね。

あ、キャンプで発生したゴミは持ち帰ります。
それがキャンパーとしての礼儀です。



●実際の所は普通に泳いでいてサメに襲われる確率はかなり低いとされています
 青い空、白い砂浜。
 波打ち際より少し内側には、ヤシの樹などの南国の樹々が聳える。
 本来ならば、羽を休めに降り立った海鳥くらい生き物の姿が無い無人島。
 しかしキャンピーくんにキャンプ地認定された今は、猟兵達のキャンプ場となっている。
「~♪ ~~♪」
 そんな中、エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は1人波打ち際を歩いていた。
 海に入るつもりなのか、既に水着姿である。
 いつものメイド服をはじめとした荷物はテントの中に置いてきたのだろう。

 サメと言う魚は、人間が、特に水着姿で波打ち際を歩いていると海の中から襲い掛かるものである。
 それが習性なのかは定かではないが、そう言うものだ。
 |自然の摂理《おやくそく》と言うやつである。
 ともあれ、サメとはそう言う魚類なので。
「キターーーーー!」
 突如、海から飛び出してきたサメがエミリィに噛みついて、海に引き摺り込んだ。
 悲鳴とはかけ離れた声が上がっていた気がしないでもない。

 キャンプの筈がサメ映画展開――にはならない。
(「やったー! サメに襲われダイビングです!」)
 エミリィの狙いと言うか、希望通りであった。
 そもそもエミリィが今回のキャンプに乗ったのは、島の周囲の海にサメが出ると聞いて。
(「砂浜で、海の中から。すっごく普通でオーソドックスな襲われ方を体験できました!」)
 サメに食いつかれて引き摺られるまま、エミリィは胸中で声を上げていた。
 サメの襲われ方に、普通とかあるのだろうか。
(「普段は竜巻をまとうサメとかゴーストなサメとか、そう言う類のサメとばかり遊んでいますからね。たまには普通のサメと戯れるのもいいものです」)
 胸中で続けるエミリィの口元に、小さな笑みが浮かぶ。
 実際、エミリィの中でこれは戯れであった。
 腕だろうか足だろうか腹だろうが、サメに噛まれても傷つかない。何か尖ったものを押し付けられている感覚はあるが、それだけだ。
 ――!?
 逆にサメの方が困惑しているような気配すら伝わって来る。
 なんだ、なんだ、と様子を見に来た他のサメが噛みついても、同じことだ。エミリィは傷つかない。
(「えー? 帰っちゃうんですか?」)
 ついには『良くわからんがこいつは食えない』と悟ったサメが諦めて、エミリィの周りから離れていった。
(「……他のサメを探してみましょうか」)
 まだ戯れ足りないのか、エミリィは別のサメの群れを探して海の中を泳ぎだした。

 そして――夜。
 なんだかよくわからない南国の魚に、エビっぽいものに、サザエっぽい貝。
「焼いて食べるとか、楽しそうですね」
 メイド服姿に戻ったエミリィは、自らのテントの前でグリルの準備をしていた。食材はダイビングついでに獲った魚介類。
 ところでエミリィの通称は『かじできないさん』である。
 メイド姿なのに、家事は壊滅的らしい。黙って立っていれば楚々としたメイドさんに見えるのに、家事は壊滅的だそうである。
 料理は家事の範疇ではないだろうか?
 果たして、エミリィの料理はどうなるのだろうか――。
「どうあれキャンプで発生したゴミは持ち帰ります。それがキャンパーとしての礼儀です」
「うんうん。キャンプ地は綺麗に使う、正解~」
 キャンピーくんがOKなので、OK。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜久・灯火
【黒猫】
サメは見なかったことにして…ヤシの木が有るなら実もあるよね。
折角だから、ココナッツミルクでキャンプスイーツでも作ろうか。

有栖ちゃん達もよろしくね♪

キャンピングカーにキャンプ道具を持ち込んで参加。
有栖ちゃん達にヤシの実を割って貰ったら、中のココナッツをナイフで取り出すよ。

取り出したココナッツを飲料水と一緒にハンドブレンダーで撹拌。
後はふきんでこせば、ココナッツミルクの完成だよ。

そして、出来上がったココナッツミルクに、はちみつと卵を加え、バゲットを浸すよ。
浸したバゲッドを、スキレットで弱火で焼けば、南国風フレンチトーストの完成♪

ココナッツジュースも氷を入れて冷やしたから、一緒にそうぞ♪


結城・有栖
【黒猫】
ヤシの木も生えてるんですね…まさに南国って感じです。

「…サメはスルーで良いのカナ?」

ええ、流石に陸までは上がってきませんよ。
灯火さんがスイーツを作ってくれるそうなので、ヤシの実を採りましょうか。

まずはオオカミさんを実体化させ、風の爪を使ってもらい、ヤシの実を採取です。
硬い実も、風の爪で真っ二つに割ってもらいます。

「中のココナッツジュースも、零さないように採っておくヨー。後で飲もうネ」

中のココナッツを取るのもお手伝いして、灯火さんに渡しますね。

そして出来上がったのは…わぁ、フレンチトーストですか。
ココナッツジュースも付いて、とっても美味しそうですね。

「私も勿論食べるヨー」



●黒猫~アウトドアで作れる南国スイーツ
 暑さに負けたりだったり、狙ってだったりと理由は様々なれど。
 何人かの猟兵が、周囲の海にうようよしてるサメに襲われた。まあノーダメージだけど。
 それで、サメ上等、となる猛者ばかりでもないわけで。

「サメは見なかったことにしよう」
 夜久・灯火(キマイラの電脳魔術士・f04331)は迷わず海に背を向けると、喚び出したキャンピングカーにそそくさと乗り込んだ。
「スルーで良いのカナ?」
「ええ、流石に陸までは上がってきませんよ」
 結城・有栖(狼の旅人・f34711)は、コテン、と首を傾げる自分と同じ姿――オウガの『オオカミさん』の手を引いて、灯火の後に続いてキャンピングカーに乗り込んでいく。
「これも良いのカナー?」
 無人島にキャンピングカー。
 キャンピーくんは大丈夫だろうかとオオカミさんは気になっていたが、動き出したキャンピングカーはキャンピーくんに止められる事もなく、ガタゴトと舗装もされてない陸地を進みだす。
「大丈夫だと思うよ」
 灯火には、勝算もあった。
「もう着くから。って言ってる間に、着いたよ」
 距離を走るつもりはなかったから。何ならキャンピングカーを置くだけで、歩いたって良かったのだ。
「モウ? 何するノ?」
「灯火さんがスイーツを作ってくれるそうですよ」
 首を傾げながら車を降りるオオカミさんに、有栖が移動した目的を伝える。
 とは言え、有栖も詳しい話は聞いていないのだけれど。
「スイーツ? ここって無人島だよネ?」
 無人島でどんなスイーツを作れるのかと、オオカミさんがますます首を傾げる。
「アレを使うんだよ」
 その答えは、後から車を降りて来た灯火が向けた指の先にあった。

 ココヤシ――所謂ヤシの樹である。

 この島ならそこら中に生えているが、灯火が指したものは樹の天辺近くに大きなヤシの実が成っていた。
「思った通り。ヤシの樹が有るなら実もあるよね」
 灯火がそう予想したのは、十分に育ったヤシの樹であれば、その実は年中収穫が可能とされているからだ。成った実が成熟する頃には次の花を咲かせる性質を持っている為、自然豊かな無人島ならば何処かには収穫可能なヤシの樹がある可能性は大いにあった。
「と言うわけで、お願いして良いかな?」
「オオカミさん。採りましょう――と言うか採ってください」
「――え?」
 灯火と有栖に視線を向けられて、オオカミさんの表情が固まった。
 二度三度、パチクリとその両目が瞬く。
「オオカミさんの風の爪なら届くでしょう?」
「ん。このくらいなら、登れるヨ」
 有栖に返す言葉を言い終わる前に、オオカミさんは地を蹴って跳んだ。更にヤシの樹の脚をかけて幹を蹴って登っていく。ヤシの樹を登るのは難しいとされているが、オオカミさんは難なくその天辺に辿り着いた。
「落とすヨー」
 ゴゴゴンッと落とされたヤシの実が、地面に当たって硬い音を立てた。

 ヤシの実は硬い事で知られている。
 もしも樹から落ちた実が人間に直撃したら、最悪はケガでは済まない事態にもなり得るのだとか。
 けれどそんなヤシの実も、オオカミさんの風の爪の前にはあっさりと真っ二つにされていた。
「有栖。中のココナッツジュースも、零さないように採っておこうヨー……ってアレ?」
「……あまりないですね?」
 けれども二つに切り割られ、中の白い果肉が見えたヤシの実――ココナッツの中には、いわゆるココナッツジュースと呼ばれる液体は殆ど入っていなかった。
 予想に反する光景に、有栖とオオカミさんは思わず顔を見合わせる。
「これは成熟したココナッツだからね」
 ココナッツミルクを作ろうと言う灯火は知っていた事だが、ココナッツジュースが多く取れるヤシの実と、ココナッツミルクに適しているヤシの実は同じものだが、違うものだ。
 ココナッツジュースもココナッツミルクも、ヤシの実の胚乳と呼ばれる組織である。
 まだ熟してない緑色の実の中に多いのは液状胚乳と呼ばれる状態であり、これがココナッツジュースになる。そして身が熟すにつれて、液状胚乳は白い果肉――固形胚乳へと変わるのだ。
 つまりココナッツの上部だけ切って、種子にストローを刺して中のジュースを飲む――そう言う事が出来るココナッツは、ヤングココナッツなどと呼ばれる、まだ成熟してない若い種子。
 対して灯火が欲しかったのは、果肉を多く取れる熟した種子。
「こういう色じゃない、緑色の実ならココナッツジュースも採れると思うよ」
「探して来るヨ」
 灯火からココナッツの色と熟度の関係を聞いたオオカミさんは、ココナッツジュースを探して車を降りた。

 一方、灯火と有栖の2人はキャンピングカーに戻って調理に取り掛かる。
「じゃあ、この中身を取り出そうか」
「お手伝いしますよ」
 2人で割り終えたココナッツの中にある白い果実をこそいで、大きなボウルの中に落としていく。
「ここからはボクが」
 温かい水をボウルに加えながら、灯火はハンドブレンダーで攪拌していく。
 様子を見ながら水を増やし、大きな塊が無いくらいに果肉が崩れたら布で濾して別の容器に移していく。
 こうして作られたのが、いわゆるココナッツミルクである。
 けれどそれは、灯火が作る南国のスイーツの材料のひとつにすぎなかったりする。つまりここまでは準備段階。本番はこれからだ。
「タダイマー」
 丁度そこに、オオカミさんが帰って来た。
 無事に見つけられたようで、まだ若い、緑色のヤングココナッツを抱えている。
「って、何か甘い匂いがするネ」
 さっきまでなかった香りを確かめる様に、オオカミさんは何度も深く息を吸い込んだ。
 丁度、灯火がココナッツミルクにハチミツと卵を加えて混ぜている所だ。これが、ココナッツミルクベースの卵液となる。
 あとはやや厚めに切ったバゲットを卵液に浸して、しばし寝かせる。
 その間にスキレットを熱しておいて、あとは卵液から出して両面を焼いていくだけだ。
「そっち、任せていいかな?」
「大丈夫です」
 オオカミさんが見つけて来たヤングココナッツは、有栖達に任せて、灯火は続きの作業にとりかかる。と言っても、熱したスキレットにバターを溶かし、卵液に浸しておいたバゲットを次々と投入し、焼いてくだけだ。
「……わぁ、フレンチトーストですか」
「南国風フレンチトーストってとこかな♪」
 スキレットから立ち昇る湯気にふわりと混ざる、ココナッツの甘い風味に、有栖が思わず覗き込む。
 次々焼かれたフレンチトーストが3つの皿に並べば、キャンピングカーの中は甘い香りに包まれた。
「私も、私も食べるヨー」
「勿論、オオカミさんの分もあるからね。折角だから、外で食べようか」
 キャンピングカー備え付けの簡易テーブルを外に出し、その上にフレンチトーストの皿と氷を入れて冷やしたココナッツジュースのコップをそれぞれ3つ、並べて行く。
 南の島の風に吹かれながら、3人は灯火特製のフレンチトーストにナイフを入れた。
 バゲットの硬さはなくスッとナイフが入る。それでいて崩れる事もない、良い焼き加減だ。
「ん……優しい甘さですね。美味しいです」
 フレンチトーストはメープルシロップなりをかける事も多いが、ココナッツの甘さに灯火が卵液の段階でハチミツを足したことで、何もつけずそのままで甘くて美味しい仕上がりになっていた。
「ココナッツジュースもあうネ」
 氷を入れて冷やしたココナッツジュースが、ココナツミルクベースのフレンチトーストに合わない筈がない。
「上手く作れて良かったよ」
 有栖とオオカミさんの様子に、灯火の口元には小さな笑みが浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城田・紗希
キャンプって喋るんだっけ…?
……まぁ、最近は話しかけたら音楽の流れるスピーカーもあるし、キャンプも喋るぐらい普通だよね(思考を捨てた)

という訳で、出てこい釣り竿!
……釣り竿?(想定より太いなぁ、って顔しつつも、疑似餌を投擲&鮫釣り)
…釣れたら釣れたで、どう料理しよう?三枚おろしとか、知らないよ?
(キャンピーくんが教えてくれるなら鮪包丁含め、適切な加工を実施)
(余ったらキャンピーくんに預けて別のキャンパーにおすそ分け)



●焚き火して焼けば、キャンプ飯っぽくなる説
「テントって喋るんだっけ……?」
 無人島でサメ釣りに興じる猟兵の暇を潰す話し相手になっている――テント。
 他の猟兵達は受け入れているそんな謎の存在に、城田・紗希(人間の探索者・f01927)の中には色々な疑問が渦巻いていた。
 何かこう色々とおかしい。キャンピーくん、おかしすぎる。
 けれど、紗希がどんなに悩んでも、いるのだ。そう言う存在が。
「……まぁ、最近は話しかけたら音楽の流れるスピーカーもあるし、テントも喋るぐらい普通だよね」
 紗希は深く考えるのをやめ、キャンピーくんをAI搭載のスマートスピーカー的なものと一緒くたなカテゴライズに置いておく。

 そんな事よりもキャンプをしなければ。

「という訳で、出てこい釣り竿!」
 他の猟兵達に倣ってサメ釣りキャンプに挑戦しようと、紗希は必殺武器の召喚を試みた。
 サメ釣りの必殺武器は、釣り竿の筈である。
「……釣り竿?」
 出て来たものが思っていたよりも随分と太いと、紗希は首を傾げる。だが糸が付いているし、その先には疑似餌っぽいものも一緒に出て来ているので、釣り竿なんだろう、多分。
「まあいいや。釣れるかなー?」
 推定釣り竿をブンっと振って、疑似餌を海へ飛ばす。
 ポチャンと海に疑似餌が落ちた音がした。
「……釣れたら釣れたで、どう料理しよう? 三枚おろしとか、知らないよ?」
 サメが掛かるのを待ちながら、今更な疑問に紗希はキャンピーくんに救いを求めて視線を向ける。
「丸焼きにするのは~? 焚火で焼けばキャンプだよ~」
 キャンピーくんからは、大雑把で火力の強い答えが返って来た。
 確かに焚き火で焼けば、キャンプっぽさは一気に高まりそうだ。腸くらいは取った方が良いだろうけど。
「食べたいように自由に食べていいんだよ~」
 キャンプのご飯に、縛りなどない。
 その場を荒らさなければ、何でも良いのだ。
 買って来たお弁当を湯煎で温めるだけとか、お湯を沸かすだけで食べられるもので済ませたって良いのだ。海にサメや他の魚類がいるからとて、何かを釣らなければいけないと言う事もないし、釣ったサメを上手に料理出来なくても良い。

 ――出来ることを自由に。

 キャンピーくんが言いたいのは、多分きっとそんなところだろう。
 動くテントにそこまで深い考えがあるのか甚だ疑問ではあるが――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第四『不動なる者』盾&統括役武士
一人称:わし 質実剛健古風

陰海月がキャンプブームでなぁ。
南半球はあまり来たことがないので、良い機会でもある。

釣りはできると聞いたので、わしなのよな…。
※釣りが趣味な人
焚き火はわしでもできるし、これで魚を焼けばいいであろうしな。
味付けは塩の味にした。そのほうが良かろうて。
飲み物は、水筒に緑茶を入れてきたでの…。

陰海月「ぷきゅー」
せっかくなので、海をざばざば泳いでる。サメさんだー、こんにちはー!
泳いだ後は、焼き魚モグモグ。
霹靂「クエッ」
海を眺める。友、ゆうゆうと泳いでる…。
そして、焼き魚をバリムシャ。



●武士の釣り
「ここが良さそうだの」
 どこからか流れ着いたのか、最初からそこに在ったのか。
 程よく大きく天面が平らな岩を見つけた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、その上に飛び乗るなり腰を下ろした。
「陰海月よ、良いぞ」
 そう呼びかければ、背中に伸びた義透の影から『ぷきゅ』と言う短い鳴き声が返って来る。
 そして義透の背後に、影から出て来た大きなミズクラゲ『陰海月』が姿を現した。
『クエッ』
「む?」
 更に影の中から予想外に聞こえた声に、義透の片眉がぴくりと動いた。
「霹靂も出て来たのか」
 続けて背後に現れたのはヒポグリフの『霹靂』だ。陰海月が出て来るのはなぜかキャンプブームがかのミズクラゲの中で到来しているのでわかるしだからこそ呼んだのだが、霹靂までとは。友が外で何をしているのか気になったのだろうか。
『ぷきゅきゅ』
「ああ、良いぞ。但しあまり遠くには行かぬ様に。わしはここで釣りをしているのでな」
『ぷっきゅーっ』
 早く海に行きたい――そう忙しなく鳴いた陰海月は、義透の許可に嬉しそうに海に飛び出した。

「さて。わしも始めるか」
 友の様に飛び出すでもなく海を眺めている霹靂の傍らで、義透は釣りの準備を整える。
 仕掛けを投げれば、ぽちゃん、と小さな水音が眼下で響いた。
 あとはかかるのを待つばかり。
「……静かだの」
『……クエ』
 義透は竿と糸の様子を、霹靂は沖を泳いでいる陰海月の様子をそれぞれ注視していて、たまに口を開く程度。
 どちらもほとんど動かず、寄せては引く波の音だけが響き続ける。
 あとは時折、ズズッ……と義透が緑茶を啜る音が混ざるくらい。

 ――不動なるもの。

 義透を形成する四つの悪霊。今、表に出ているのは第四にして統括。風林火山に準えた『山』の人格。
 この人格がこの場に最もふさわしいのだ。
「何か釣れるとよいな。南半球に釣りに来る機会など、そうそうないであろうからな……」
 その理由は、釣りが趣味であるから。
「さて、鮫が出るか魚が出るか」
 他の猟兵達の様に敢えてサメは狙わない。まあサメがかかったらかかったでその時、程度の覚悟はしているだろうけれど。
「ふむ……」
 竿の先端が、くん、くんとしなり出す。
 義透は片眉上げただけで微動だにもせず――。
「っ!」
 ぐーっと大きく竿がしなった瞬間、短い呼気と共に義透は竿を振り上げた。
 糸がぴーんと張り、リールがぐるぐる回り出す。
「これは中々に引きの強い……活きの良い魚であるな」
 糸を通して感じる魚の重さに、義透の口元に小さな笑みが浮かぶ。
 背鰭が見えないのでサメではないだろう。
 魚が引く勢いに逆らわずに竿を動かせるよう、義透は岩の上に立ち上がる。無理に魚を引こうとはせず、竿を立てて糸が緩まず張り過ぎぬようにいい塩梅を保ち、魚が疲れるのを待つのだ。
 焦った方が負けである。
 やがて糸の出る勢いが弱まって来た。
 それでも一気に引くのではなく、少しずつリールを回して糸を巻き取り、魚を引き寄せていく。
 そうして釣り上げたのは、少し背中が青みがかった銀色の魚だった。
「……何という魚であろうかの?」
 オーストラリアではテイラーと呼ばれる、釣り人に人気の魚によく似ている。だとしたら食べておいしい奴だ。
「もう2,3匹釣って、焚火で焼くとするかの。その頃には、腹を空かした陰海月も戻って来るであろう」
 自分と、霹靂と、陰海月の分。
 そう数えるとせめてもう2匹は何か釣らなければならない。
『クエ』
 仕掛けを直して再び釣りを始めた義透の背後で、霹靂が一声鳴いた。

 塩だけ振って焼いてみた魚は中々に美味しく、陰海月にも霹靂にも好評で、義透がもっと釣るべきであったかと苦笑することになるのは少し後の事である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
まあ、生きるか死ぬかのダークセイヴァーで長く野営生活やってたから南の絶海の無人島のキャンプはどうということはない。逆にワクワクする。律も同じようだ。まあ、ある程度危険あった方がいいと感じるのは経験からだろうね。

まあ、一通りのキャンプ用具あれば大丈夫だろう。鮫は危険だが、アタシと律にかかれば釣り上げるのは簡単だろう。暴れ回る前に捌いてしまおう。(凶暴夫婦によってたちまち三枚おろしにされる鮫)

鮫は竜田揚げにして、と。ムニエルにもできるか?海賊鍋にもしてしまおう。まあ、料理上手の律にかかれば美味しく仕上がるだろう。


真宮・律
妻の響(f00434)と参加

絶海の南の無人島か。まあ、鮫とて首筋やられなければ問題ない。(首の傷さすりながら)まあダークセイヴァーの生きるか死ぬかの環境に比べれば安全にキャンプでテント設営できるだけで大分マシだ。家族で使い込んだキャンプ用具持ち込めばデイキャンプはできるな。

噛みつかれないように気をつけて鮫を釣り上げ、暴れられる前に捌くぞ!!(たちまち凶暴な夫婦によって捌かれる鮫)

鮫肉って案外美味しいらしい。竜田揚げ、ムニエル、海賊鍋、フィッシュバーガー。大きい分一杯料理作れるな。

まあ、絶海の無人島はとても一人ではキャンプできない。響がいてこそだな。



●どんな所でも2人なら
 海から飛び出して来た巨大なサメに、猟兵がひとり、咥えて海に引き摺り込まれた。
「どうと言う事はないね」
 そんな事件が起きても、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は平然と海を眺めていた。
「律もそうだろう?」
「まあ、鮫とて首筋をやられなければ問題ない」
 響に同意を求められ、真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)も首に残る傷跡を擦りながら返す。
 律も、他の猟兵がサメに襲われた様子は見ていた。
 見ていたからこそ、問題ないと言っている。
 十数分は経っただろうか。海は朱く染まることもなく、変わらぬ透明度を誇る綺麗なままの海で、2人の前に広がっていた。その光景こそが、キャンピーくんの戦闘行為無効化能力が海の中にも届いている証左である。

 つまり――鮫を釣ろうとしてうっかり噛まれても心配ないと言う事。

「それじゃ釣ってみるかい、鮫」
「そうだな」
 響と律は、並んで海に向かって行った。
 勿論、2人に泳ぐ気はない。普段着のまま、手にしているのは頑丈そうな海釣り用の釣り竿と釣りの道具。
 口元に笑みすら浮かべて、鮫を釣る気満々の2人である。

 2人並んで釣り糸を垂らし、暖かい潮風を浴びながら掛かるのを待つ。
 その瞬間は、唐突に訪れた。
「かかった!」
 反応があったのは、響の方だ。
 響の両腕に、一気に重みが加わる。負けじと強く握った竿の先端が、ぐぐぐぐっとしなっていた。折れてしまわないかと思わせそうな程に竿が曲がって、リールから糸がどんどん出て行く。
「行かせないよ!」
 けれどその勢いがふっと少し緩んだ瞬間、響はその緩みを見逃さずに竿を引いた。
 竿尻を胴体に付けて竿を固定しながらリールを引いて、獲物を引き寄せる。
 その気になればかなりの怪力を持つ響だ。力でサメに負けていない。
「確かサメは血の匂いに敏感なのだったな。もう少し寄せられるか、響」
 傍らでその様子を見ていた律は、自分の釣り竿を手放した。
 代わりに構えるのはタモ――ではなく、使い慣れた手に馴染んだ赤銅の剣。
「暴れ回る前に捌いてしまえばいいね! 任せて!」
 律がどうしようとしているのか気づいた響は、糸が切れないギリギリの力でリールを巻いて少しずつサメを引き寄せる。近づくにつれ、背鰭だけ見えていたその姿が背中全体、鼻先と、見える部分が増えていく。
「行くよ、律!」
「ああ!」
 そして、サメのほぼ上半分が見えるようになった所で、響が竿を一気に振り上げサメを海の外へと引っ張り上げる。同時に律は砂浜を蹴って跳躍し――。
「サメだろうが魚だ。まずは締めるのが基本だろう」
 活締めと言う名の一閃。
 あくまでこれは料理の一環だと言う体で、律が振るった刃がスパァンッとサメの頭を一思いにぶった切る。
「よし、他のサメが寄って来る前に離れるぞ」
「はいよ!」
 切り口からこぼれた落ちた腸とかが他のサメを呼ぶ前にと、律が頭を落としたサメの尾を掴んで、響が2人分の釣り道具を抱え、2人は急ぎ波打ち際から離れていった。

 料理の一環で活締めにした、と言う体でサメを仕留めたのだ。
 しなければならないだろう。キャンプ的な料理を。
「それで、どう料理するんだい?」
「そうだな……」
 釣り上げた鮫を前に、サメを前に、響と律は少し考えこんでいた。
 とりあえず残った腸を取りさり、背鰭胸鰭を落として、背中に切り込みを入れて鮫肌の皮を剥いではある。そこを放置しておくとサメの肉は臭みが出てしまうらしいのだ。
 残ったのは、仄かに赤が指しているが白身と言って良いサメの肉。
「竜田揚げ、ムニエル。フライにしてフィッシュバーガー……他の具もあれば海賊鍋も行けるか」
 料理を主に担当する律の脳裏には、幾つかのサメを使った料理が浮かんでいる。
「サメの肉は案外美味いらしいし、他にも色々作れそうだ」
 微笑むの律の言葉に、響もつられて笑みを浮かべる。
 料理は律に任せておけば、美味しく仕上げてくれる事だろう。
「無人島キャンプも良いものだね。こんな風に、周りを気にせずどんな料理にするか話を出来るなんてさ」
「確かにな。こんなに安全にキャンプ出来るなんて、|生きるか死ぬか《ダークセイヴァー》の環境に比べたら随分とマシだ」
 苦笑交じりの響の言葉に、律もしみじみと頷いた。
「ある程度は危険があった方がいい――なんて思っちまうのは、経験からかね」
「お互いに、平穏には馴染み切れないか」
 2人が思い浮かべていたのは、こことは別の世界。ダークセイヴァー。
 あの世界で野営した所で、こんなにも穏やかな時間を過ごせる筈もない。まあ、違う世界と比べるものでもないだろう。
 それは単に、世界が違うからというわけではないだろうから。
「響がいてこそだしな」
「そうだね。律と一緒だからか」
 どちらからともなく顔を見合わせ、笑い合う。
「ところで律。ちょいと気になってるんだけどさ」
「何だ? 料理のリクエストか?」
 話題を変えて来た響に、律はサメを捌く手を止めずに返す。
「料理は任せるけどさ。1匹で足りるの?」
 いつの間にか背骨を外して三枚に下ろされていたサメの身を刺して、響がそんな事を言い出した。
「……」
 律の返答は、無言だった。
 ブラックホールと形容される娘程ではないにせよ、律も相当な――と言うか物凄く、と付く健啖家。その食欲が、サメ1匹だけを分け合って足りるのかだろうか。
「……足りなかったら……また釣ればいい……」
「それもそうだね」
 足りる、とは言えなかった律の肩を響が笑って叩いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「鮫っすか〜。料理人としての腕が唸るっすね〜」
宇宙バイクに釣竿をセットして釣りを始めるヒーローマスク。バイクの【怪力】や自分の【念動力】で鮫を釣り上げるっすよ

「ここは肉を料理してみるっすかね」
調理器具を念動で動かし綺麗に捌いて【料理】
鮫肉は臭みが出ないよう下処理し、一部はスパイスで下味をつけてバーベキュー。
別の肉は細かく刻んで炒めて首位分を飛ばし、マヨネーズを加えてツナマヨ風に。それをパンに乗せたりパスタにあえたり
「キャンピーくんは何かリクエストあるっすか」
他にも色々作ってみんなに食べてもらうっすよ〜
贅沢言えば、もっと料理食べてくれる人が欲しいっすけどね



●狐のフィッシャーにして料理人
 海の上を、1台の宇宙バイク『アルタイル』が走っている。
 そのハンドルを握るリカルド・マスケラス(希望の|仮面《マスカレイド》・f12160)は、いつもの様に本体である狐面を側頭部に付けた姿で潮風を切って走っていた。
 その後部にはアルタイルにつけて来た『キッチンセット』はなく(砂浜に置いてきた)、代わりに丈夫そうな釣り竿が取り付けられている。釣り竿からは勿論糸が伸びていて、その先は海の中に続いていた。宇宙バイクでトローリングである。
「海の上を走るのも気持ちいいもんっすね~」
 暑い日差しと潮風。南の島の海の上でなければ味わえない感覚を楽しんでいると、不意にガクンッと強い衝撃がリカルドを襲った。
「うおっと!」
 少し驚きながら、リカルドはバランスを取りつつ後ろを振り返る。
 後部座席の後ろに取り付けた釣り竿は、大きくしなっているではないか。更に視線を海に向ければ、釣り糸の先で特徴的な背鰭がぐるぐると動き回っているのが見えた。
「鮫っすね~」
 ハンドルを握るリカルドの手に、力が込もる。
 この『アルタイル』は、機動力よりパワーや運搬力を高めた機体だ。サメ相手にだって負けはしない。
「一本釣りっすよ!」
 アルタイルを上昇させてつつ自身の念動力を釣り糸を繰り、リカルドは大きなサメを一気に釣り上げた。

「さて、どうするっすかね~?」
 砂浜に戻ったリカルドの後ろには、釣り上げたサメが念動力で宙に浮かんでいた。
 既に頭を斬り離し、腸の処理と血抜きまでは済ませてある。
 サメの身は臭いと言われているが、このような処理を出来るだけ早く行わない事で、臭みが強くなってしまうのだとか。
 ただそこさえ早く処理してしまえば、どう調理するかじっくり考える事も出来る。
「フカヒレは……時間がかかるから無理っすね」
 ザクザク切り落とした胸鰭と背鰭。
 この世界では高級珍味として知られるフカヒレの材料になるのだが、その工程はとにかく長い。幾つかの下処理をした上でじっくりと乾燥させてやっとできるものだ。一朝一夕で出来るものではない。
「ここはサメ肉っすね。料理人としての腕が唸るっすね~。使うのはこれとこれと……これも!」
 リカルドはキッチンセットの中から数本の包丁をはじめ、複数の調理器具を念動力で浮かべて同時に操りサメの胴体を捌き始めた。
 軟骨魚類であるサメの胴体には背骨以外の骨がほぼない。腸を取るのに開いた腹を更に深く開いて行けば、背骨を取る事は出来る。あとはそのまま皮と身を切り離していく。
 釣ってすぐ捌いたからか、臭みは殆ど感じられなかった。
「ま、後から臭み出るかもなんで、スパイスしとくっす」
 それでも時間が経つと出るやもしれぬ臭みを抑えるのと下味を兼ね、リカルドは大きめに切り分けたサメ肉の幾つかにタイムやセージを使ったハーブスパイスをまぶし、揉み込んで、しばらく寝かせておく事にした。
 これはあとで一口大にして串焼きにでもどうだろう。
 けれど、サメとスパイスの串焼き1種類と言うのも、味気ない。
「もっと色々作りたいっすね……」
 他のサメ料理を思案していたリカルドは、ふと、前に何処かで見聞きしたことを思い出した。
 サメの肉は、トロに匹敵する旨味があるという。
 ならば――。
 細かく刻んだサメの肉を鉄板の上に乗せ、塩と胡椒、スパイスも少々加えながら炒めていく。火が通りホロホロと崩れてきたサメの肉を別皿に挙げて、マヨネーズと和えれば、ツナマヨならぬサメマヨの完成だ。
「あとはあとは……キャンピーくんは何かリクエストあるっすか?」
 他にサメ料理のリクエストを貰えないかとリカルドはキャンピーくんに話を振ってみる。
「みんなが楽しんでくれればなんでもいいんだよ~」
 返って来たのは、あくまでキャンプ自体を楽しみたいという答え。
 と言うかそもそもである。

 このテント――ものを食べられるのだろうか?

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
なんで楽しい海キャンにサメがうようよいンだよえーっ!?
まァいい、泳げねェなら釣りしよ釣り。
折角釣り竿類借りてきたンだし。
まずはその辺の小魚狙って捕まえてみっか。
コイツを活餌にすりゃ小魚狙いで泳いでる大物が食いついてくるって訳よ!
釣った魚は『ダガー』で捌いて厚めのステーキにしたら食いごたえありそうだなァ…
メタルマッチ付きのダガーで起こした火種を
乾いた木の枝だの皮に移せば火起こせるしな!
釣りたての新鮮なら生で食うのもいいな!
飯出来上がったらお前にも分けてやるよキャンピー!
あぁ?ンだよ…引いてる?うおっマジだ!!
タモ持って来いキャンピー!コイツぁ大物…

…あ、巨大サメさんちっす。



●狼と鮫
「なんで楽しい海キャンにサメがうようよいンだよえーっ!?」
 バルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)の魂の叫びが、無人島の海に響き渡り、水平線の向こうに消えて行く。
 叫ばずにはいられなかったのだろう。
 こんなにも、大量のサメの背鰭が見えてる海だなんて。
「まァいい、泳げねェなら釣りしよ釣り」
 一度叫んでそれですっきりしたのか、バルドヴィーノはあっさりと海に入るのを諦める。
 その切り替えの早さは、脱獄を繰り返す中で磨かれたのだろう。出来ない事に固執せず、出来る事を探す。場当たり的とも言えるかもしれないが、そうでもなければ脱獄王と言う噂が流れる程に繰り返すことは出来なかったろう。

「どうせなら大物釣りてェなァー。折角釣り竿類、借りて来たンだし」
 口ではそう言いながら、バルドヴィーノはしかしまずは浅瀬に仕掛けを放り込んだ。
「お、来た来た」
 ぼんやりしていたら見逃しそうな小さな刺激。僅かにしなった竿を立て、しばらく泳がせしっかりかかったのを確かめてから、バルドヴィーノは一気にリールを回して竿を引き上げた。
 糸の先にいたのは、バルドヴィーノが名前も知らない銀色の魚。サイズ的には中型のやや小さいものだろうか。
「おめでと~」
「キャンピーか。コイツは餌だよ」
 いつからそこにいたのか。背後にいるキャンピーくんからの賛辞に、バルドヴィーノはへらっと笑って返す。
「コイツを活餌にすりゃ小魚狙いで泳いでる大物が食いついてくるって訳よ!」
「なるほど~。海老で鯛を釣るんだね~」
 感心したようなキャンピーくんの声を背中に聞きながら釣ったばかりの魚を仕掛けに付け直しすと、バルドヴィーノはさっきよりも沖の方へ投げ込んだ。
「なるべくデケぇの釣りてェなァ」
「釣れたあとは~?」
「あ? そりゃ勿論、食うんだよ。赤身の大物なんかだったら、厚めに切ってステーキにしたら食い応えありそうだなァ……」
 釣れたらどうするのかとキャンピーくんに訊ねられ、バルドヴィーノは頭の中で想像しながら返す。
 バルドヴィーノが至る所に隠し持っているダガーの中には、野営を想定したメタルマッチ付きのものもある。
 こすれば簡単に火花が散るので、火種と薪となるものがあれば火は熾せる。
 ヤシの樹は彼方此方にあるのが見えている。落ちた枝や樹の皮などを、何かしら使えるものは見つかるだろう。
「それか、もし火がねェなら釣りたての新鮮なんだし生で食うのもいいなァ!」
 色々と考えてる内に、頭の中に浮かぶ色々なアウトドア魚料理。バルドヴィーノの意識はそれに埋められつつあった。
「逃げちゃうよ~」
 そんなバルドヴィーノの背後から、再びキャンピーくんの声。
「あぁ? ンだよ……キャンピー。欲しいなら、出来上がったらお前にも分けてやるよ」
「そうじゃないよ~。引いてるよ~」
「……引いてる?」
 適当にあしらおうとしたバルドヴィーノの意識が、キャンピーくんの言葉で釣り竿に戻る。
 グググググッ!
 めっちゃしなって引いていた。
「うおっマジだ!! コイツぁ大物……!」
 咄嗟に引こうとしたところを逆に引っ張られ、進まされたバルドヴィーノの足が砂浜から寄せる波の中に入る。
「タモ持って来いキャンピー!」
「要らないと思うよ~?」
「あん?」
 流れでキャンピーくんに魚を入れる網を頼んだバルドヴィーノだったが、キャンピーくんは動こうとしない。
 その理由は、すぐに判明した。
 逆に食ってやろう――とでも思ったのだろうか。
 サメの方から向かってきていたのだ。
「……あ、巨大サメさんちっす」
 勢い良く海から飛び出して来た巨大サメが砂浜まで乗り上げて来て――バルドヴィーノの目の前で、ガチガチと歯を打ち鳴らす。
「ってこれどーすんだよォ! デカすぎんだろォ!」
 思わぬ流れでサメを釣れた形になったもののそれはそれでサメの扱いに困ったバルドヴィーノの叫びが、砂浜に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
偶には通信機器の一切を手放して、自然の中で過ごすのも良いな
オートキャンプなら経験があるが、電源無しのキャンプは初めてだ
自然に対して敬意を払いつつ、キャンピーくんと共に楽しもうか

初心者にはワンタッチテントがお勧めと聞いてはいたが、設営が楽だな
此れは有難いと思いながら、バーナーで湯を沸かし、珈琲を淹れる
先ずはお気に入りの豆で一服してから、釣りに出掛けよう

ワカサギ釣りの経験しかないので協力者を喚びたい
指定UCで妖精さんを召喚したら、話し相手ことアドバイザーになって貰う
見様見真似で餌を付けたら、思い切り海へと放り投げる
頼んだぞ妖精さん、俺が引き負けそうになったら応援してくれ
キャンピーくんにも応援を頼む



●時計卿のサメチャレンジ
「――良い香りだ」
 ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が砂浜でひとり、カップから立ち昇る珈琲の香りを楽しんでいる。
「偶には通信機器の一切を手放して、自然の中で過ごすのも良いな」
 潮風に吹かれながら飲む珈琲は、不思議と美味しく感じられた。
 お気に入りの豆を手ずからミルで挽き、|直火式の珈琲抽出機《パーコレーター》をバーナーで沸かして淹れたからか、或いはこれもキャンプ飯効果と言うものか。
 そんなニコの元に、ノソノソと近づく大きな影一つ。
「君……もしかして、プロキャンパー?」
「ふ……そう見えるか?」
 足音を隠そうともせず接近してきたキャンピーくんの問いに、ニコは口元に小さな笑みを浮かべた。
「俺は初心者だ」
 そうは言うが、珈琲片手にアウトドアチェアで寛いでいるニコの様子は、キャンピーくんでなくても慣れを感じてもおかしくはない。
「テントもワンタッチ式だしな。設営が楽で大変有難かった」
 初心者にお勧めと聞いてニコは選んだのだが、このタイプのテント、ポールを組み立てる必要が無い為、今回の様な砂浜などで設置するのに丁度いいと言う人もいるのだとか。
「オートキャンプなら経験があるが、電源無しのキャンプは初めてだ」
「そっか~。じゃあ初めてのキャンプ地を楽しんでね~」
「ああ。そうさせて貰おう」
 丁度、珈琲も飲み終えた所だ。
 キャンピーくんに頷きカップを置いて立ち上がったニコは、テントの中から釣り竿を取り出した。

「いでよ、|我が伴侶《イマジナリーウサミ》!」
 足が波に浸からないくらいの所で、ニコは釣りの準備よりも先に声を上げた。
『おう、どーしたニコ!』
 応えて現れたのは、垂れうさ耳が生えたピンク色の可愛い妖精さん。何処かで見た事あるあの人の公認妖精らしい。
「俺はこれから釣りをするから、話し相手と言う名のアドバイザーになってくれ」
『仕方ねーな! で、何を釣るんだ?』
「サメだ」
 他の猟兵達の見様見真似で仕掛けに餌を取り付けながら、ニコは妖精さんに釣りの対象を告げた。
『ん?』
「サメだ」
 聞き間違いかなと首を傾げる妖精さんに、ニコは釣りの対象を再び告げた。
『ニコ……お前、サメ釣った事あったか?』
「ワカサギ釣りの経験しかないから、アドバイザーを呼んだんだが?」
 恐る恐る聞き返した妖精さんに、ニコはいい笑顔で告げる。
『よし帰――』
「頼んだぞ、妖精さん。俺が引き負けそうになったら応援してくれ」
 くるっと反転した妖精さんを、ニコは素早く手を伸ばしてガシッと捕獲した。
 イマジナリーだと、まあまあ容赦がない。
 そしてニコは妖精さんを捕獲したまま、片手で釣り竿振って仕掛けを沖にぶん投げた。
「チャレンジャーだね~」
 後ろでニコたちのやり取りを眺めていたキャンピーくんが、感心したように呟く。
 だってワカサギからのサメである。
 ワカサギ釣りも環境は過酷だが、魚のサイズがまるで違う。ゲームで例えるなら、最弱の敵を倒した次にいきなりラスボス登場するくらい違うんじゃなかろうか。
 そりゃキャンピーくんも感心する。
 程なくして、ニコの手にした竿はすぐにググッとしなってアタリを告げた。
「フィーッシュッ!」
 竿を振り上げたニコの両手に、っぐんっと重みが掛かる。
『ニコ! お前なら出来る! サメなんか釣り上げてフカヒレにしてしまえ!』
 こうなっては仕方ないと、ニコの手を離れた妖精さんも声援を送り始めた。
「これがサメの引きか……!」
『怯むなニコ! 踏ん張れ! 今こそサメ釣りシュタインになるんだ!』
 妖精さんの声援のおかげか、釣り糸が出て行く一方だったリールをニコが少しずつ回せるようになって来る。
 そして――。
『なあ、ニコ。眠り粉散布した方が楽だったのでは?』
「――あ」
 苦労して釣り上げたサメの前で妖精さんが放った一言に、その手があったかとニコの目が丸くなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

楊・暁
【朱雨】

暑っつ…すげぇな南半球
完全に夏だ
…海入れねぇのは残念だけど…
え?釣るのか!?
(やっぱり腹ん中は気になるんだな…
疑問点そこ(捌き方)かよ釣る事には疑問ねぇのかよ…
まぁ、魚だし捌けるだろうけど…

藍夜とキャンプの準備して
鮫って肉食だろ?
とりあえず罠仕掛けて野鳥採ってきたけど、これ餌に使えるか?
キャンプってよりサバイバルだな…
…一応、釣り糸と釣竿にオーラ防御掛けとくか…
釣りは俺もやってみるぞ

すげぇ藍夜!釣れるもんなんだな!
藍夜も噛まれねぇようにしねぇと…
びちびち動いてて捌きにくそうだな(瞬速グーパン一撃
よし、大人しくなった
戦闘じゃねぇ。これも捌く一環だ

うん。鮫肉で何する?カルパッチョできるか?


御簾森・藍夜
【朱雨】暁を心音と呼ぶ

釣るか、鮫
別にキャンピー……さん?くん?を殴るわけじゃない
あのテントの中というキャンピーくんの腹の中の方が正直気になったが、今は鮫だ
ところで、鮫って捌けるのか…?
悪戯に命を貰う気はない
捌いて旨く食って初めて釣った意味があるんだ

水は持参
一通りのキャンプ道具は広げた
心音を転がし寛がせ…てきたはずだが今、鮫を釣ろうとしている
一緒に
まぁ…あれだあの危なくなったらパワーで解決しよう
男なら拳だ

釣れて勝てたら絞める
神経絞めしたいが技術がないので万色の雷…だめか
ダメージ無いからなんて心音噛もうもんなら生きたまま歯ぶっこ抜くからな鮫
おれはほんきだ

鮫肉って色々チャレンジしてみたい感じあるよな



●朱雨~サメで得られる経験と満たされる好奇心
「暑っつ……」
 砂浜に広げたシートの上に、楊・暁(うたかたの花・f36185)が転がり込んだ。
 この世界では、北半球が冬な今時分、南半球が夏になる。
 その上、無人島とくれば――青い空にギラつきっぱなしの太陽から降り注ぐ日差しを遮るものは、ほとんどない。タープでも張らなければ日陰もなかったのだ。
「すげぇな南半球。完全に夏だ」
「まあ無人島だからな」
 無人島の洗礼にやられてる様子の暁に、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)が苦笑する。
「水、飲んでおけよ」
 藍夜が荷物から取り出した水の冷たさと準備の良さが、暁にはありがたかった。
「ふぅ……」
 喉を潤した水が身体にも染み渡るような感覚に、暁は思っていた以上の身体の渇きを自覚する。
 潤いは余裕となって、暁の視線を遠くへ向けさせた。
「……海、入れねぇのは残念だな……」
「行くなよ?」
「あれ見て海に入ろうとは思わねぇよ」
 小声で呟いてもきっちりと釘を刺して来た藍夜に、暁が曖昧な苦笑を返す。

 2人とも、見ていた。暑さに負けて海に飛び込んだり、或いは波打ち際を歩いていたら海の中から飛び出してきたサメに――と、極一部の猟兵がサメに食いつかれたり、海に引き摺り込まれたのを。
 そんな海で、泳ごうとは思わない。

「なら良い。さて……釣るか、鮫」
「え?」
 なのに釘刺しておいて、自分は鮫を釣りに行くと言う藍夜に、暁の目が丸くなった。
「釣るのか!? てか釣れるのか?」
「出来ると言う事だしな。そのために釣り竿も持ってきた」
 驚きが丸くなった目と忙しなくパタパタする耳に現れてる暁に、暁はしれっと返す。どうやら今回の藍夜は、好奇心の方が勝っている状態らしい。たまにある事だ。
「……あのテントの中というか、キャンピーくんの腹の中の方が正直気になるが……」
(「やっぱり腹ん中は気になるんだな……」)
「ふふふ~それは秘密だよ~」
 藍夜の好奇心はキャンピーくんにも向かっているようだが、その手の視線に慣れているのか、さらりと躱されてしまう。
 そもそもあのテント何なのだろう。生き物なのか?
「まあいい。今は鮫だ。心音は寛いでいて良いぞ」
 キャンピーくんへの好奇心は封じて、藍夜は釣り竿と道具を手に海に向かって行った。

 そして――。

「意外とかからないものだな」
 砂浜に立つ藍夜の釣り竿は、しばらく経ってもまだ碌に動いていなかった。
 サメの背鰭は海の中を動いているのだけれど。
「餌が違うんじゃねぇ?」
「心音?」
 聞こえた暁の声に、藍夜は声のした方に視線を向ける。
「……なんだ? その鳥は」
 そこには、暁が立っていた。片手にむんずと鳥を掴んで。
 日陰で転がって寛いでいるかと藍夜は思っていたのに、何をしているのか。
「これ? とりあえず罠仕掛けて採ってきた野鳥だけど。餌に使えるか?」
「餌?」
「鮫って肉食だろ?」
「そうだが……心音も鮫、釣るのか?」
「ああ。俺もやってみるぞ」
 何事も経験――と思ったそうな。とにかく、釣るのか!?、と驚いていた暁はそこにはいなかった。日々成長である。
「心音と並んで鮫を釣ろうとする日が来るとはな」
「俺も自分が鮫を釣ろうとする日が来るとは思わなかったよ」
 しみじみと呟く藍夜に、暁が首を縦に振る。
 人生、いつどこで何が起こるかわからないものだ。
「しかしキャンプってよりサバイバルだな……」
 無人島で、餌も現地で調達したもので釣り。釣り竿こそ持参しているが、暁の言うように中々のサバイバル感である。
「サバイバル、か」
 思わず反芻する藍夜がその言葉に感じたのは、不意な危機感だった。
「まぁ……あれだあの危なくなったらパワーで解決しよう。男なら拳だ」
「……一応、釣り糸と釣竿にオーラ防御掛けとくか……」
 藍夜の『いざとなったら力業』宣言に、暁がオーラを釣り竿に纏わせていく。
 やや不安を感じているのは、尾の動きに現れていた。
「ところで、鮫って捌けるのか……?」
「疑問点そこかよ」
 そんな空気を和らげようとしたのか。今更な疑問を口にした藍夜に、暁からツッコミが飛ぶ。
「釣る事には疑問ねぇのかよ……まぁ、魚だし捌けるだろうけど……?」
「そうか。捌けるのならいい」
 自信はなさそうな暁の答えに、藍夜は真顔で頷く。
「悪戯に命を貰う気はない。捌いて旨く食って、初めて釣った意味があるんだ」
 糧とする為に釣る。
 それは釣り本来の持つ姿と言えよう。日々の糧を海に求めた――それがきっと最初だったのだろうから。
「その考え方は嫌いじゃねぇけどな」
 暁が返したその時だった。

「かかった!」

 藍夜の纏っていた空気が瞬時に変わり、バッと全身を使って竿を振り上げる。
 ぐんっとしなった竿がミシッと軋むような音を立てた。
 けれどもそれを気にしてられない勢いで、リールが激しく回り出す。
「すげぇ……けど糸足りるのか?」
 このまま出続けたら、釣り糸が足りなくなるのでは――暁がそう危惧するほどに、藍夜の竿からは糸がどんどん伸びて行く。
「みすみす逃がしはしないさ。まあ、見ていろ」
 糸が切れない程度に、サメの動きに負荷をかける様に。藍夜はそう竿を動かしていた。
 鮫だろうが、釣りの基本は変わらない。魚が疲れるのを待つ。焦ったら負けだ。
 その成果は不意に訪れた。サメの勢いが、ガクンッと落ちたのだ。
 あとは鮫自体の重さで糸が切れないように気を付けてリールを回し、糸を巻いて引き寄せるの身。
「どうだ。釣れただろう?」
「すげぇ藍夜! 釣れるもんなんだな!」
 ついに波打ち際まで引っ張り上げたサメの姿に、暁が珍しく興奮した様子で声を上げた。
「びちびち動いてて捌きにくそうだな。藍夜も噛まれねぇようにしねぇと……」
 おのれーこんちくしょー。
 なんて言いたげな感じで、サメは砂浜の上でビチビチしている。
「なに、すぐに締めるさ」
 一応、口の方は警戒し、藍夜は尾鰭の方から近づいて、そっとサメの尾に触れる。
「万色の雷……ダメか。神経締めとはいかないな」
 試しに放ってみたそれはしかし、サメの体表を流れて砂浜に消えていった。
 神経締めの代わりになればと思ったが、その締め方を知らなければただの攻撃扱いになってしまうと言った所か。
「じゃあパワーで行くか」
 代わって前に出た暁が、グッと拳を握る。
「ん? どした?」
 その瞬間、サメがピタリと動きを止めた。
(「心音噛もうもんなら生きたまま歯ぶっこ抜くからな鮫」)
 暁の後ろから、藍夜が視線に殺気を込めて睨みつけてるからである。
「まあいいや。戦闘じゃねぇ。これも捌く一環だ!」
 パァンッ!
 キャンピーくんに告げた暁の言葉に、空気の壁を破る音が重なる。
 サメの鼻先と、腹部。瞬速の拳が続け様に叩き込まれた。

「これは包丁の代わりだからな」
「オッケ~」
 そんな建前と共に藍夜が刃を振るい、グロッキー状態のサメから胸鰭背鰭と落としていく。
 鰭を取ったら、一思いに頭をズバッと落とし、腹をかっ捌いて腸を取り出していく。腹の中が空になったらそこで身、特に腹の内側を洗い流しておく。サメの臭みを出さないためには大切な処理だ。
 その後、既に開いた腹を更に大きく深く開いて、背骨を取り除いていく。身の方に残った骨まわりの血合いの身を削ぎ落し、身があまりつかない様に皮も削いでいけば、残るのは仄かに赤みがかった綺麗な白身。
「鮫肉って白身なんだな。そんで、何する?」
 凶暴なイメージが付きまとうサメとは思えないツヤツヤとした白身に、暁も感心したように視線を送っていた。
「カルパッチョできるか?」
 ――食べてみたい。
 暁の表情よりも、パタパタと左右に揺れる尾の方がそう主張している。
「カルパッチョか。出来るんじゃないか。新鮮なサメなら刺身でも食えるらしいからな」
 暁の尾には触れず、藍夜は微笑みながらサメの身を少し切り分け、醤油をつけて一口。
「お、いけるぞ」
「どれどれ……?」
 藍夜に勧められるままに、暁も一口大の切り身を同じく醤油つけて口に入れてみる。
 脂が乗っていて、普通に美味しい。サメと言われなければわからなかったかもしれない。
 鮫の身は臭いと言われる事もあるが、今回のように釣り立ての内に処理をすれば、臭みは出ないものだ。
「デカいのが釣れたから量はあるしな。鮫肉、色々チャレンジしてみたい感じあるな」
「例えば?」
「……天ぷら?」
 キスを始め、タラに、タチウオ、アナゴ――天ぷらで美味しい魚は白身が多い。サメもいけそうな気がする。多分きっと。
「天ぷら……」
「考えてばかりいないで、作っていくか」
 パタタッと左右に揺れる勢いが増した暁の尾に緩む口元を抑えるのを諦めながら、藍夜は今度は普通の包丁を手に取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三上・くぬぎ
サメさんがいっぱいいる無人島ですか
こんなところでもキャンプできるなんて、すごいですね!

わぁ、おっきいサメさんだらけですー
せっかくなので、くぬぎは釣りに挑戦するのです
釣り竿と、エサにお魚の切り身を持ってきたですよ
じゅんびOKです! えいっ

キャンピーくんとおしゃべりでもしながら食いつくのを待つですかね
くぬぎが住んでるところでは、サメさんけっこう食べるですよ
おしょうゆに漬けて焼くと、とってもおいしいです
スーパーでサメさんの頭とかも売ってるですね。そっちは食べたことないですけど

もきゅっ? ヒットです!
これは大物で……もきゅー!? 引っ張られるですー!
海に引きずり込まれちゃうですー!



●小さな釣り人
「わぁ、本当におっきいサメさんだらけですー」
  サメの背鰭がうようよしている海の砂浜で、三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)が声を弾ませる。
「こんなところでもキャンプできるなんて、すごいですね!」
「すごくないよ~。キャンプをしようと、キャンプをしたいと思えば、キャンプはどこでも出来るんだから~」
 くぬぎの賛辞に、キャンピー君からは哲学的なようでそうでもなさそうな答えが返って来た。
「なるほどー」
 けれどくぬぎもキャンプ好き。何か通じるものがあるようだ。

「せっかくなので、くぬぎも釣りに挑戦するのです」

 だからくぬぎはサメの存在も気にせず、釣りにチャレンジする事にした。
「釣り竿とエサは持ってきたですよ」
 いつもの虫取り網を釣り竿に持ち替えて、その先に取り付けるのは何処かで買って来たサーモンの切り身。
 竿と餌の準備が出来たら、ふよふよと波打ち際に向かう。
 押し寄せる細波の上でくぬぎは止まり――。
「飛んでけーっ」
 えいっと全身を使たフルスイングで、くぬぎの仕掛けは随分と離れた沖合にどぼんっと落ちた。
「あとは食いつくのを待つだけですねー」
 釣り糸が弛まないように抱えて浮かびながら、くぬぎは海にじっと視線を向ける。
 けれどかからない間と言うのは、他にやる事がない。

 ――ざざーんっ。

 ――ざざーんっ。

 響くのは、波音ばかり。
「キャンピーくん、おしゃべりしませんか?」
「いいよ~。小粋なキャンプトークだね」
 待っているのは退屈だと、くぬぎはキャンピーくんを相手におしゃべりしてみることにした。
「キャンピーくんは、サメさん食べた事あるんですか?」
「どうだろ~?」
 そもそもこのテント、ものを食べるのだろうか。
「くぬぎが住んでるところでは、サメさんけっこう食べるですよ」
 曖昧な答えにめげず、くぬぎはサメトークを続ける。
「おしょうゆに漬けて焼くと、とってもおいしいです」
 醤油――それは対魚の万能調味料と言っても過言ではないだろう。
 ほぼ全ての魚に合う筈だ。サメにだって、合わない筈がない。
「スーパーでサメさんの頭とかも売ってるですね。そっちは食べたことないですけど」
「サメが多い所なんだね~? キャンプにも良い所かな?」
 サメが売られている。
 つまりサメが多い。
 つまりこの無人島と似ている?
 つまりキャンプ地に良い?
 そんな四段論法でキャンピーくんがくぬぎの住まう地域に興味を抱きかけた、その時だった。
「もきゅっ?」
 くぬぎのからだが、急に引っ張られたのは。
「ふぃーっしゅ、です!」
 勢いに負けないように両手両足で竿にしがみつき、くぬぎは力を込める。
 けれども、くぬぎはモーラット。
 体格の小柄さは否めない。
「これは大物で……もきゅー!?」
 くぬぎの身体が、竿ごと吹っ飛んだ。
「引っ張られるですー! 海に引きずり込まれちゃうですー!」
 覚悟を決めた直後、くぬぎの身体がざぶんっと海に落ちて――少し沈んで――また浮き上がった。
「ぷはぁっ!」
 顔を出したくぬぎの身体が、釣り竿ごと海面で跳ねる。
 竿を手放せば良いのだが、そうあっさりと諦める事も出来ない。
「釣ってみせるですー!」
 まるでバナナボートの様に何度も跳ねたりちょっと沈んだりしながら、くぬぎは他の猟兵達よりも遥かに長い時間をかけて――けれど最終的には、見事サメ一匹釣り上げてみせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
おや…いきなり無人島に放り出されてしまったぞ。
さて、丸一日ここでどう過ごそうかな。

まずはボトルを海に浮かべ、シルバーホエール号を出現させる。
そしてユーベルコードを発動させれば、現れるのは
グリードオーシャンの屈強な男たち。うちの船乗りだよ。
「今日はここでキャンプをしよう」
いきなり呼び出されて何言ってるかわからないだろうが、
そういうルールなんだからしょうがない。

《団体行動》《運搬》で船に積んでいた食料や水、燃料、
野営に必要な備品を運びだしていこう。
私は《空中浮遊》するマン太の背中に座って、魚釣りを。
大物が釣れるかな?

さあ、宴の準備が整ったら海鮮鍋と鏡割酒で乾杯だ!
みんな、今年も一年がんばろう!



●鍛えられた船乗り達
 ――無人島。
 文明のぶの字もない筈そこは今、猟兵達とキャンピーくんの一時のキャンプ地となっている。
 その周囲の海に、一隻の巨大な帆船が浮かんでいた。
 少し前まで、そんなものはなかったのに。
 普段はボトルの中に収められている、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)のシルバーホエール号である。
「さあ、仕事だぞ、ガーネット商会!」
 更にガーネットがユーベルコードを発動すれば、さっきまで誰もいなかったシルバーホエール号の甲板の上に、商会員と言う名の屈強な船乗り達が現れた。
「ここは……?」
「綺麗な海ですが、なーんもねえですよ」
「仕事……?」
 何で呼ばれたのかと、一様に首を傾げる船乗り達。

「今日はここで、キャンプをする!」

 そんな彼らに、ガーネットは海上に浮かぶオニイトマキエイ『マン太』の上から呼び出した目的を端的に告げる。
「「「キャンプ……?」」」
(「まあいきなり呼び出されてこんな事を言われても、何を言ってるかわからないだろうが……そう言うルールなんだからと納得して貰うしかないな」)
 まだ首が傾いたままの船乗り達の様子に、さてどう納得させたものかとガーネットは胸中で思案する。
 だが、それは杞憂だった。
「わっかりましたぁ!」
「要は宴会ってことっすね!」
 ガーネット商会の船乗り達、やたらと飲み込みが良かった。
「あ、ああ。呼び出しておいてなんだが……良いのか?」
「お頭に知らねえ所に呼び出されるの、初めてじゃねえでさぁ」
 逆に不安になったガーネットが訊ねるも、船乗りの1人が笑って返して来た。
 確かにガーネットは商会を『多元世界商業組織』として立ち上げた。知らないであろう世界に呼び出した事も――あったか。あったな。少なくとも一度はあったな。
「メシと……水と……」
「おい、酒も忘れるなよ!」
 ガーネットが指示を出すでもなく、宴会と聞いた船員達はシルバーホエール号から食料や水、酒、燃料と言った必要な積み荷をテキパキと降ろし始めている。
「気を付けろよ。海にはサメが――」
「あれ普通のサメでしょう? 竜巻から飛び出したりしないでしょう?」
「海も穏やかですからなぁ」
 ガーネットがサメの存在を告げるも、船員達はまた笑って返して来た。
 流石は|海洋世界《グリードオーシャン》の船乗りである。
「さすが私の商会員たち。頼もしいな」
 頼もしすぎやしませんかね。

 宴の準備は船乗り達に任せて、ガーネットはマン太に乗ったまま少し沖へと出てみる。
 ガーネットとマン太の気配を感じたのか、眼下ではサメが集まり背鰭がぐるぐると円を描いていた。
「ここで良いか。大物が釣れると良いんだが」
 大物を狙うなら、餌は奮発した方が良いに決まっている。ガーネットは竜肉の欠片を餌に釣り糸を垂らしてみた。
 バシャバシャバシャバシャッ!
「うおっ」
 思わず引く程にサメが数匹暴れ出し、一匹が仕掛けに食いつく。
「これは、間違いなく大物だな」
 糸を引く強さにガーネットは長期戦になりそうだと、全身を巡るエーテルの力を少しだけ解放した。

 それからしばらくして。
 無人島の外周ほぼ全てに広がる砂浜の一角で、ガーネット商会の宴が始まろうとしていた。
「では皆、酒は持ったな?」
 ガーネットが掲げた杯の中身は、木元村産の鏡割酒。
 船乗り達も同じものを掲げ、輪の中心にはさっき釣って来たサメのステーキや海鮮鍋が並んでいる。
「では、みんな。今年も一年がんばろう! 乾杯!」
「「「乾杯!」」」
 ガーネットの音頭に合わせて船乗り達が手にした杯を掲げ――始まった宴は空が満天の星空になって月が中天にを過ぎても終わらず、船員達の大半が酔い潰れるまで続いたそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュート・アコルト
【LL】3名
アドリブ歓迎
いよし!UDCアースで鮫狩りだ!
陽里は焚火するのか
火がねえと始まらねえもんな
頼んだぜ!
ユディトは釣り班か
どっちが大物釣りあげるか競争しようぜ!
来い、クロ(黒竜)!沖ででっけぇ鮫釣りあげるぞ!
ユディトの釣果に負けてられねえからな!

海面に着水したクロの背中で釣糸垂らしてたら
海の色が黒くなって
巨大鮫がクロめがけて食いついてきやがった!
鮫の餌はドラゴンだったんだな
…って言ってる場合かよ!
食いつかれる!と覚悟を決めたけど
あれ、痛くねえ
戦闘行為禁止だから甘噛みされて
まさか鮫に甘噛みされるとは思わなかったぜ

そのまま波打ち際まで引っ張ろうとしたら
追い越してく陽里のバイクに対抗意識
お?どっちが早く岸まで戻れるか競争しようぜ!
指定UC発動して一気に引き上げるぜ

鮫や魚は嬉々として捌き
ユディトも一緒に料理しようぜ!
鮫の臭いはハーブや調味料で抜いて
塩釜焼だろ、ホイル焼きだろ、煮つけにムニエルに
ヒレは旨いんだろ?ふかひれの姿煮にチャレンジするぜ

料理ができたら乾杯!
今日は貴重な経験ができたよな


櫟・陽里
【LL】
宇宙育ちで自然の知識全然わからない…なんて言ってられない!
コソ練でキャンプ知識をつけて彼女に良いとこ見せるんだ
リュートとユディトが採ってくるサカナ?(サメはサカナ?)のために
焚き火を行うこととする!
海に出ていった2人の姿をチラチラ気にしつつ
薪を組めばいいんだよな、と
最高の組みバランスを考察し積み木遊びを繰り返す

えっ…噛みつかれてないか?救助が必要か?
えっ大丈夫なの??
なるほどつまり…

無茶しても無傷で済む世界線ってことだな!(違う)

いや実は試してみたいパーツがあるんだよ
バイクが水に浮くには、沈む前にジェット噴射で浮き上がればいいんじゃないかって
嬉しそうに愛車に謎の追加装備を取り付ける
さあ!いざ!水平線の彼方ああああ駄目ださすがの俺でも水面にジェット噴射はいつもと違いすぎて練習が必要だったーー
辛うじてUターンし地上に戻りそのままガッシャーン

い…いたくないもん…怪我しない世界線ではなかった…
体育座りをして料理の完成を待つのであった

俺もサカナは馴染みがなくてさ
色んなメニューがあるんだな!


ユディト・イェシュア
【LL】
無人島キャンプいいですね
陽里さんはこの前のキャンプでも火を熾したって聞きましたよ
リュートくんは鮫狩りですか
俺は魚介類を捕まえられたら
お互い頑張りましょう

カニハントには慣れましたが
釣りも上手くなりたいですし
UCで小さめの船を作って沖に出てみます
釣り糸を垂らしてのんびりと

おや、あそこにリュートくんとクロノスの姿が…
えっものすごく大きな鮫にリュートくんが食べられ…
キャンピーくんのおかげで無傷のようですね
こういう平和な釣りもいいですね
…いや、鮫を釣るのは平和な釣りではないと思いますが
食べるのに十分な釣果が上がれば戻りましょう

陽里さんは水上走行の練習ですか?
あ、痛そう…
料理が出来るまで待っててくださいね

さすがリュートくん魚も捌くの上手ですね
教えてもらいながら手伝います
確か義姉が夏休みに鮫のフルコースを食べて
刺身もいけるって言ってました
フカヒレを作っておけばお土産になりますね

砂漠育ちなので魚は食べる機会が少なかったのですが
とっても美味しいです
はい、カニハントに続き鮫ハントする自信もつきました



●男達の南国キャンプ
「ここがUDCアースの無人島か! いいとこじゃん!」
 猟兵達とキャンピーくん。
 他には野鳥が時折下りてきたり飛んでったりと、そのくらいしか動くものの気配がない、まさに無人島。
 そんな環境も、リュート・アコルト(竜騎士・f34116)はいつもと変わらない様子だった。
「いいですね、無人島キャンプ」
 ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)もいつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべ、海を眺めている。
「2人が頼もしすぎるんだぜ……」
 そんな2人の後ろでは、櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)が羨望の眼差しを向けていた。
「そうか?」
「そうでしょうか?」
「俺、宇宙育ちだから。自然の知識全然わからないし」
 そんなものかと首を傾げるリュートとユディトに、陽里は何処か自嘲気味な笑みを返す。
 知らない、わからない――未知なるものを懼れる。そうした感情は、ある種、生物が本能的に持ち得る部分と言えよう。
「でも、そうも言ってられないからな! こう男だけのコソ練でキャンプ知識をつけて彼女に良いとこ見せたいので、よろしくな?」
「それは良いですけど……去年のカニハントの時は、もっと自信持ってたじゃないですか」
「カニは慣れてたから! サメだっていなかったし!」
 昨年の春、別の世界での事を思い出して首を傾げるユディトに、陽里は海を指しながら返す。
 3人のいるこの砂浜の先に広がる海にも、他の場所とは変わらずにサメの背鰭がうようよしている。それでも数で言ったら、先程ユディトが話に上げたカニハントの時の巨大カニの方が数も多かったのではなかろうか。
「確かに。俺もカニハントは慣れてますけどサメ釣りは全然なんですよね……」
 けれどしみじみと、ユディトも頷いた。
 カニとサメ。違うと言えば違うけれども、あっちのカニと比べれば、こっちのサメは普通の生物である。
「2人とも、サメ慣れてねーのか? じゃあ俺がサメ釣るぜ」
 そこに、リュートが事も無げに言い放った。
「え? いいの?」
「おう。だってサメなんてただのデカい魚じゃんか。ドラゴンの方がでかいし」
 それはそうである。
 そこでドラゴンを持ち出せるのは、赤子の頃にドラゴンの住むの島に捨てられ人語を解するドラゴンたちに育てられた――と言う中々にハードモードな人生を歩んできたリュートだからこそであろう。しれっと言っていても、言葉の重みが違う。
 ともあれ、ドラゴンを比較対象にされては、サメも形無しである。
「さすがだ……」
「ええ、さすがです」
 これには陽里もユディトも、それはそうだと頷くしかなかった。
「じゃ、俺がサメでオッケだな。いよし! サメ釣りだ! 行くぞ、クロ!」
『きゅ』
 2人も納得したならと、リュートは肩の上に相棒の黒竜『クロノス』を伴って海へと歩き出していく。
「では俺は他の魚介類を狙いましょう」
 その後に続いて、ユディトも海へ向かい出した。
 そして陽里は――。
「俺は、2人が釣って来るサカナを焼く為にも|焚き火を行う事とする《意訳:釣りは任せた》!」
 そうきっぱりと言い放った。
「陽里さん、焚き火は得意なんですか。そう言えばこの前のキャンプでも火を熾したって聞きましたよ」
「火がねえと始まらねえもんな。頼んだぜ!」
 焚き火もキャンプには欠かせないと言って良いだろう。
 どんな魚を釣って来ても、火が無ければ生で食べるしかない。
 野営では、それぞれに出来る事をするものだ。

●サメは捕食者
「ユディト、どっちが大物釣りあげるか競争しようぜ!」
「サメ相手だと分が悪い気もしますが……良いですよ。お互い頑張りましょう」
 あと一歩で海に足が届くと言う所で、リュートとユディトは足を止め、互いに笑みを交わす。
 勝負と言っても、何を賭けるでもない。仲間内の気楽な勝負。
「クロ、騎乗形態だ!」
『きゅっ!』
「夜明けをもたらすために必要なものがあるなら、作り出しましょう」
 なのに、リュートは肩の上の黒竜に本来のサイズに戻る様に告げ、ユディトはユーベルコードで小舟を作り出して海に漕ぎ出す。
 気楽な勝負だからと言って、本気を出さない理由もない。

「クロ! 沖で、でっけぇ鮫釣りあげるぞ! ユディトの釣果に負けてられねえからな!」
『きゅ』
 リュートを背に乗せて海面すぐ上を飛んでいたクロノスが、ゆっくりと着水する。
 その背の上で準備していた釣り竿を持ち、リュートは海面が静かになったのを見計らって仕掛けを海に投じた。
 前言通り、狙うはサメ。
 既に周囲にはサメの背鰭が見えている。
「これなら何匹か釣れそうだな。クロの分も釣ってやるからな」
『きゅー』
 腹ばい状態で脱力して海に浮かんだまま、クロノスはリュートの言葉に嬉しそうに鳴き声を上げる。
 しかし――。
「おかしいな……全然アタリが来ねえ」
 リュートが垂らした釣り糸は、ゆらゆらと波に揺られ続けていた。
「なんでだ?」
 サメの数は変わらず、大量にいる。何なら増えてる気がするくらいだ。
 理由が分からずリュートが首を傾げていると――周囲の海の色が変わり始めた。
「ん?」
 なんか、海が黒くなっているではないか。
「なんだ……?」
『きゅーっ!』
 リュートが首を傾げたその時、クロノスが驚いたような声を上げて尾を振り回し、巨大なサメが吹っ飛んだ。
「あの巨大サメ、クロめがけて食いついてきやがったのか!」
 サメにも縄張りと言うものはある。クロノスの事を侵入者と思ったか。
 或いは、サメがクジラを襲った例もあると言う。クジラの方が大きいからか、生きている個体を襲う事は稀らしいが、そう言ったケースもないわけではないそうだ。
 今回、クロノスはリュートを乗せて海に浮かんでいるだけだった。
 何か知らないけれど大きくて動かないのがいる――とでも思われた可能性は無きにしも非ず、であろう。
「鮫の餌はドラゴンだったんだな」
『ぶきゅ』
 リュートの言葉に抗議するようなクロノスの声が上がる。
 だが、そんな事言ってる場合じゃなかった。

 ザバァッ!

 大きな水音が鳴り響き、巨大サメが海から飛び出して来る。その先にいるのはクロ――の上にいるリュート。
「って俺かよ!」
 食いつかれる、とリュートは咄嗟に身構える。
「……ん? あれ? 痛くねえ?」
 けれどいつまで経っても、想像した痛みは来なかった。代わりに来るのは、得も言われぬ生臭さ。
「ってこれ、もしかしてサメの口の中か!?」
 そうである。
 今のリュートを外から見ると、肩までサメに食いつかれている状態だ。
 キャンピーくんの戦闘行為の無効果能力のおかげで、痛みはなく、サメの歯の感触も甘噛み程度しか感じない。さっき食いつかれたクロノスも同じだったのだろう。
「まさかサメに半分飲み込まれて甘噛みされるとは思わなかったぜ」
 力任せにサメの口を開いてスポッと頭を抜くと、リュートはサメをそのままクロノスの背の上でひっくり返して抑え込む。
「こういう時、獲ったどーって言えばいいんだっけ?」

●天然フラグ建築士
 時間は少し遡る。
 リュートとほぼ同時に海に出たユディトは、創り出した小舟をゆっくりと漕いでいた。
 愛用の銀色の戦根を、櫂の代わりにして。
 黒ずんだ銀製品を綺麗にするのに塩水を使う事もあるくらいだ。海水も大丈夫だろう。多分。
「しかし本当にサメが多いですね」
 ユディトが狙っているのは、宣言通りにサメではない魚だ。
 だからサメの背鰭が見えない所で釣りたいのだが、かと言ってあまり沖に出ない方が良いのも事実。
「仕方ないですね。何とかサメを避けて……おや?」
 もうこの辺りで釣りを始めてしまおうか。
 ユディトが諦めかけたその時だった。
 周囲にいたサメが、同じ方向へと動き出したのだ。
「おや、あそこにリュートくんとクロノスの姿が……」
 サメの向かう方に視線を向けたユディトは、遠くに漂う黒い竜とその上の人影に気づく。
 なんだか、サメの動きからして、狙われてそうだが――。
「まあ、普通のサメですからね。大丈夫でしょう」
 クロノスも普段の肩乗りサイズではなく、ドラゴン本来の姿に戻っているのだ。
 心配ないだろうと、ユディトは自分の釣りを始める事にした。
「お」
 ややあって、ユディトの竿の先が、くっ…ぐんっ、と立て続けにしなり出した。
「かかった……かな?」
 やや自信なさそうに、ユディトはリールを巻いて糸を引いてみる。
 なにやらシュッとした長く大きな銀色の魚が掛かっていた。
「よし。どんどん釣っていきましょう。カニハントには慣れましたが、釣りも上手くなりたいですからね」
 幸先の良いスタートに、ユディトは少し良い気分で再び釣り糸を垂らす。
 その後も、鯛の様な魚、背中が濃く腹が白く細長い魚、マグロっぽいのなどが釣れた。
「こういう平和な釣りもいいですね」
 すっかり上機嫌になったユディトは、そんな事を口走る。

 ――フラグになる言葉を。

 だが時として、フラグは言った本人の元に生えるとは限らない。

 ――きゅーっ!

 海に響いた、ユディトも聞き覚えのある鳴き声。
「今のはクロノスの……え?」
 声に釣られて視線を巡らせたユディトは――見た。
 クロノスの背中の上に向かって、巨大なサメが飛び掛かる瞬間を。
「ものすごく大きな鮫にリュートくんが食べられ……」
 リュートが頭からサメに食いつかれるのは、ユディトのいるこの場所からでも見えていた。
「あ、平気そう」
 平然とした様子でリュートがサメを持ち上げて、黒竜の背中の上に背負い投げっぽく落として押さえつけるのも。
「キャンピーくんのおかげで無傷のようですね」
 無効化能力の効果は出ているのだろう。ならば安心だと、ユディトは自分の釣りに戻る。
「あ、また来ました」
 獲物をサメに獲られることもなく、ユディトは調子よく釣果を重ねていく。

●無人島チャレンジ
「あ、一緒に釣るんじゃないんだ」
 リュートとユディトが、波打ち際から別々に海に出て行く。
 その姿が遠ざかっていくのを眺めながら、陽里は穴を掘っていた。
 焚き火用の穴である。
 平面のままだと、風の影響を受け易い為だ。また穴を掘っておいた方が中で熱が滞留すると言う利点もある。
「んで、この中に薪を入れたら、周りに薪を組んでいけばいいんだよな」
 この場で検索は出来ない為、覚えて来た知識で準備を進めていく。
 穴の中に置いた薪は、火床用。
 この上で火種を作って着火し易くなるし、火床があった方が下が冷えず焚き火が長持ちし易くなる。
 上に組む薪は、あまり敷き詰め過ぎず空気の通り道を残すのがポイント。
「これをこうして……次はこう。いや、こっちの方が良いか?」
 薪を組み合わせて積んでは降ろしてまた別の積み方をして――最高の組みバランスを模索し、陽里は薪を積み上げていく。
 こうでもない、ああでもないと、考察する時間もたっぷりある。
「よーし! これだ、きっとこれがベストだ!」
 そしてついに、陽里が納得のいく形に薪が組みあがった。井桁に似ているが、上から見ると六角形。陽里のオリジナルである。
「さーて。リュートとユディトはどうだ? 釣れてたみたいだけど」
 薪を積みながらチラチラと様子は見ていたが、本格的に海に視線を向けてみる。
 そして――陽里も見た。
「えっ……リュートあれ噛みつかれてないか? 救助が必要か?」
 リュートの上半身が、巨大なサメの口の中に消えているのを。めっちゃ食われている感。
 だけど陽里が慌てて海に駆け出そうとした所で、リュートはスポッと言う感じでサメを引っこ抜いて、背負い投げっぽく落とした。
「えっ! 大丈夫なの??」
 大丈夫なのである。
 キャンピーくんの無効化の効果である。

「なるほど、つまり……無茶しても無傷で済む世界線ってことだな!」

 全然違う。
 違うのだが、リュートもユディトも未だ海の上。
 違うよ、と陽里にツッコミを入れられる者が、この場に誰もいなかったが故に。始まってしまった。

 ――陽里の無謀な挑戦が。

「いやー、実は試してみたいパーツがあるんだよな」
 嬉々とした様子で、陽里は荷物の中から何かを取り出して来る。
 キャンプに関係なさそうなそれを手に駆け寄ったのは、愛車のバイクである。
「バイクが水に浮くにはどうすればいいかって考えてたんだよ」
 誰に言うでもなく独り言ちながら、陽里は謎のパーツをバイクに取り付けて行く。どうやら追加装備らしい。
「で、閃いたんだ。沈む前にジェット噴射で浮き上がればいいんじゃないかって」
 沈むよりも早く前に出れば水の上を進める理論。
 いわゆる理論的にはそうだけど――の典型例。大抵、それを言い出した人は碌な目に合わないと言うものでもある。
「さあて、行くぜ!」
 そんな事を気にした風もなく、陽里は波打ち際で愛車に跨りゴーグルをしっかりかけて――。
「いざ! 水平線の彼方ああああ――!」
 陽里自身も思っていた以上の速度で、沖の方へぶっ飛んで行った。
(「あ、駄目だこれ」)
 予想以上の勢いに悟って胸中で呟いた時には、既に遅し。
(「さすがの俺でも水面にジェット噴射はいつもと違いすぎて練習が必要だったー!」)
 どうしてぶっつけ本番でやろうと思ってしまったのか。
 とは言え、飛び出してしまった以上、何とかしなくてはならない。
(「せ、せめて戻らないと!」)
 このままどんどん進んだら、ひとりで漂流する羽目になりかねない。
「まっ…………………がれぇぇぇぇぇっ!」
 反動で振り落とされないようにしがみ付きながら、陽里は何とか海上でUターンを決める。
「曲がったあああああああ!」
 そしてまた、海の上でぶっ飛んだ。

『きゅ?』
「うお! なんだ?」
 何かがクロノスの真横をばびゅんっと通り過ぎていった。
 それは少し先で大きくターンする。
「陽里じゃん。こんな所で何してんだ?」
 気づいたリュートの声は、多分陽里には届いてなかったろう。あっと言う間に、ぶっ飛んでったから。
「お? どっちが早く岸まで戻れるか競争しようぜ! 行くぞ、クロ!」
『きゅ!』
 抜かれて対抗意識が芽生えたリュートの声に応えて、クロノスが翼を広げて浮かび上がる。大きく羽ばたくと、そのまま来た時同様に低空を飛び出した。
「って、なんだあれ。速すぎんだろ!」
「水上走行の練習ですかね?」
 けれど陽里に追いつける気がしない。思わず声を上げたリュートに、ユディトの声が返って来る。
 ユディトも同じく、陽里に気づいて小舟を漕いで来たのだろう。
 そして――。
「ああああああとまらなあぁあああぁぁぁい!」
 ガッシャーンッ!
 リュートとユディトが見守る前で、陽里は砂浜に突っ込んだ。

「おい、大丈夫か!」
「痛そうでしたね……」
 濛々と上がった砂煙が収まる前に、リュートとユディトは砂浜に戻って来た。
 それぞれの釣果をクロノスの背と小舟の中に残したまま、砂煙の方に駆け出す。そして――見つけた。
 頭から砂に突っ込んで、半分埋まってる陽里を。
「「……」」
 リュートとユディトはどちらからともなく顔を見合わせ、それぞれ陽里の足を片方ずつ掴んで、砂の中から引っこ抜く。
「ぶはぁっ! はーっ! 助かったぜ……」
 引っ張り出された陽里は、バサバサと身体に付いた砂を払うと――よろよろと膝を抱えて座り込んだ。
「い……いたくないもん……」
「痛かったんだな」
「痛かったんですね」
 ナノマシンプロテクターで身体は無事の様だが精神的にしょんぼりしている陽里に、リュートもユディトも苦笑するしかない。
「でも何でだ? 俺はサメに噛まれても平気だったのに」
「多分……戦闘行為と見做されなかったんでしょう。陽里さんが勝手に事故っただけですからね」
 首を傾げたリュートに、ユディトは自分の想像の範囲で答える。
 確かにあれは、戦闘でもない。陽里が勝手に無茶して事故っただけと言われてしまえば、その通りだ。
「怪我しない世界線ではなかった……か……」
 それを悟った陽里は、ますますシオシオになっていた。

●南国魚尽くしBBQ
「よっしゃ俺の勝ち!」
「結構な大物が釣れたと思ったんですけど、やはりサメにはかないませんね……」
 どっちが大物を釣り上げるか。
 リュートとユディトの釣り勝負は、リュートに軍配が上がった。
 まあ、無傷だったとは言えサメに齧られる目にあったのだ。これくらいの恩恵はあっても良い。
 尤も、大物勝負ではなく釣果の数で勝負だったら、結果は逆だった。
 つまりそれくらいの大量の魚類が、3人の前に並んでいるのだ。
「じゃあ、始めようぜ。サメと魚でバーベキュー!」
 そして上機嫌のまま、リュートは魚を捌き始めた。
「ユディトの釣って来たの、美味そうだよな」
 名前も良くわからない南国の魚でも、リュートは躊躇う事無く捌いていく。
「さすがリュートくん。魚も捌くの上手ですね」
 その手つきに、横でユディトが感心したように頷いている。
「砂漠育ちなので、魚は食べる機会が少なかったのですよね」
「けど料理は出来るんだろ? 一緒にしようぜ! わかんないとこは教えっから!」
 リュートがユディトを巻き込んで、2人で魚をせっせと捌いていく。まあ、どの魚でも大体やる事は同じだ。鱗がある魚は先に鱗を落としてから、頭を落として腹を開いて腸を取っていく。
「ユディトの釣って来たこの鯛みたいなの、塩釜焼にしてみるか」
 中には頭を落とさず、鱗と腸だけ取る事もあるけれど。
「ユディトはそっちから包丁入れてくれ。俺はこっちから」
「わかりました」
 巨大なサメは鰭を取った後で、2人で協力して頭を斬り落として、腹を開いて腸を取っていく。あとは背骨と血合いを落とせば、仄かに赤が刺した白身となった。見た目はとても綺麗な肉だ。
「……サメはどうすっか。臭み出るかな?」
「どうでしょう。確か義姉が夏休みに鮫のフルコースを食べて、刺身もいけるって言ってました」
 サメは流石にどう料理したらと悩むリュートに、ユディトは聞いた話を伝える。
 確かに釣り立ての内に臭みが出ないように処理をしたサメの肉は、生でも美味しく頂けるのだとか。
「なら食えるな。ハーブたっぷり入れてホイル焼きにしとけば、臭みも抜けるだろ」
 半身はクロノス用に分けて、残りの部分を3等分してハーブを振っておく。
「サカナも色んなメニューがあるんだな!」
 様々な魚料理のアイディアが出て来るリュートに、陽里が感心したように呟く。
「俺、サカナも馴染みがなくてさ。勉強になるぜ」
 2人の料理を眺めながら、陽里は焚き火の最後の準備をしていた。
 銃弾の中の火薬を火口の代わりに薪の中に撒いて、火を付ける。

 ――パチッ、パチパチッ。

 徐々に炎が燃え上がり、焚き木が爆ぜる小さな音が鳴り出した。
「あったけえな……」
 自分で組み上げた薪が煌々と燃え上がるのを眺め、陽里がポツリと呟く。
 炎の音と揺らめきには、人の心を鎮める効果があるのだとか。
「さすが陽里さん。綺麗な焚き火ですね」
「イイ感じじゃん。どんどん焼いてこうぜ!」
 そこに、ユディトとリュートが準備を終えた魚を持ってきた。
 鯛のような魚――多分ロウニンアジ――は卵白を混ぜた塩を大きな鉄の鍋の中に敷いて、ヤシの樹の葉を敷いてから魚を乗せて塩で塞いで蓋をして、焚き火の中へ直に突っ込む。数種のハーブとそこらで拾ってきた貝類と一緒にホイルに包んだサメ肉も、同じく焚き火の中へ。
 他の魚は焚き火の上に焼き網や鉄板、鍋を置いて、網焼きやムニエル、煮つけにしていく。
 そして残ったのは――。
「どうすんだ? これ」
 陽里がつまんでる、サメの鰭。
「ヒレは旨いんだろ?」
「そう聞きますね」
「それは俺も知ってる! フカヒレって高級食材なんだよな」
 3人は顔を見合わせ、誰からともなく頷き合う。
「じゃあ、ふかひれの姿煮にチャレンジしてみるか!」
「フカヒレを作っておけばお土産になりますね」
「2人ともがんばれ! 俺は応援してる!」
 こうして3人は、フカヒレも料理することになった。
 だが――フカヒレだけは残念ながら、うまくいかないだろう。
 何故ならば、物凄く手間と時間がかかるものなのだ。自然乾燥で大体3ヶ月、機械乾燥でも約1ヶ月は掛かると言う。乾燥前にも、水分を抜いたり血を抜いたり余分な部分を取ったりと、手間のかかる作業があると言う。如何に猟兵でも、こればかりは一朝一夕でどうにかするのは流石に難しいだろう。

 蓋を開ける、立ち昇った湯気が晴れると、ほんのり焦げた塩の塊が露わになる。
 それを砕いていけば、中からはふっくらと焼き上がった魚が出て来た。
 焚き火の中から取り出したアルミホイルを開けば、焼き魚とハーブの匂いが混ざった良い香りが広がった。
「サメも上手く焼けたみたいだな」
 サメの臭みとして知られるアンモニア臭などは感じられない。
「おおー! どっちも美味そう!」
「煮つけも良い感じですよ」
 陽里が歓声を上げる横で、ユディトが鍋を開く。
 リュート主体で進められた南の海のバーベキューの出来は、どれも上々だ。
「じゃあ、乾杯しようぜ」
 リュートはノンアルのドリンクで、ユディトと陽里は酒杯を片手に。
「今日は貴重な経験ができたよな」
「ああ。キャンプ知識がぐぐっと上がったぜ」
「カニハントに続き鮫ハントする自信もつきました」
 焚き火を傍らに料理を囲んで、3人はコップを打ち合わせる。
 きゅ――と、乾杯の音に合わせて、リュートの肩の上でクロノスが小さく鳴いた。

●キャンピーくん大満足
 陽が沈む頃には、帰路に着き出す猟兵達がいた。
 少しずつ島にいる人影が減る中、一夜を明かした猟兵達もいる。
 それでも夜が明ければ、一人、また一人と無人島を去っていく猟兵達。
 皆、きちんと後片付けをして帰っていったので、その痕跡はほとんど残っていない。
 足跡や轍も、程なく消えて行くだろう。
 この島はまた、名もなき絶海の孤島に戻るのだ。
「楽しかったよ~」
 最後まで残っていたキャンピーくんも、そう言い残して何処かへ転移していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月25日


挿絵イラスト