バトル・オブ・オリンピア⑬〜シュート・セラフィム
●ヒート・ザ・ヒール
不気味な笑い声が古代バトリンピア遺跡に響き渡る。
暗闇の中に響く笑い声は、如何なる存在のものであったか。
天に光あり。
落ちる影は四つ腕の異形。
たてがみの如き髪束ねるは鍬形の如き装飾。
光り輝く黄金率のごとき体躯。
「グロロロロ、遂に相まみえたな、猟兵どもよ!」
不気味な笑い声の主、プロレス・フォーミュラは、その筋骨隆々たる体躯を揺らし、四つ腕を構えた。
一部の隙すらない見事な構え。
いや、隙だらけであるとも言えただろう。
まるでどこからでも打ち込んでこい、と言わんばかりの構えだったのだ。
「そう、ワガハイこそがダークレスラーの総統、その名も『デスリング総統』である! 幾度となくワガハイの『プロレスによる世界征服』を阻んだ貴様ら、もう許してはおけぬ!」
怒り満ちる赤い眼光が射抜くように猟兵達を貫く。
覆面の奥にある表情は怒りに満ちていた。
「この総統自ら、四本の腕から繰り出す『四次元殺法』で、貴様ら猟兵を一人残らず骸の海へと放り出してくれるわ!」
満ちる力は恐るべきものであった。
彼の言葉はどれもがハッタリではなかった。事実、彼の四つ腕に捕まれば猟兵は骸の海へと放り投げられることは止めようがないだろう。
そこまで彼の膂力は凄まじいものだったのだ。
「……だが」
けれど、彼は猟兵たちに向かってくることはなかった。
『デスリング総統』はただ四つ腕を広げ、ただ立つのみだった。ただ立っているだけだというのに凄まじい重圧を放っている。
そのまま迫れば、猟兵たちは為す術もなく骸の海へと放り出されることだっただろう。
それで勝負は終いだったはずだ。
「何を……」
転移を維持するグリモア猟兵、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は訝しむ。
『デスリング総統』は闊達に笑う。
グロロロロとよくわからない笑い声であったが笑ったのだ。
「まずは貴様らが先に仕掛けてくるが良い!」
「どういうおつもりですか。此方に先制攻撃を譲る、と?」
ナイアルテはそれが罠ではないかと疑ったのだ。
だが、その疑念を払拭するように『デスリング総統』は笑い飛ばした。
「プロレスの真髄とは!『受け』である! 貴様らの児戯に等しいユーベルコードを全て受けきった後に、堂々と反撃をさせてもらおう!」
自身に満ち溢れた言葉。
それは虚飾でもなければ、驕りでもなかった。
事実であるというように『デスリング総統』は攻撃を仕掛けて来ない。
ただ、四つ腕を広げているだけだったのだ。
「ルールだって別にプロレスでなくとも構わん! ワガハイを叩きのめせるというのなら、如何なる手段でも使うが良い。なんでもだ!」
「……なんという自負。マイクパフォーマンスが過ぎるのではないですか、『デスリング総統』」
「グロロロロ! ワガハイのヒールっぷりに痺れておるな猟兵! だが忘れるな。ワガハイとて凶器や反則ぐらい平気で使うからな!」
「徹底しておりますね。ロックアップもなしにただ来い、とは」
ロックアップとはリング中央でがっつり組み合うことを言う。
手四つともいうらしいが、この場合あんまり関係ない。単純にナイアルテがプロレス用語を調べてきて、なんかそれっぽいことを言いたかっただけである。
「グロロロロ! 笑わせるな! しょっぱいユーベルコードなど打ち込んできてみろ、貴様らは骸の海のもずくへと変わると知れ! さあ、ごちゃごちゃ言っていないでかかってくるがいい! グロロロロロロロ……!」
「なんだか最後の笑い声だけ長いですね!?」
ナイアルテは思わず突っ込んでいた。
だが、それは些細な問題である。
プロレス・フォーミュラ『デスリング総統』の言葉は全てが真実だろう。
彼が望むは『プロレスのルールに縛られることなく、猟兵が最高の全力を出してかかって来ること』である。
あまりにも無茶無謀なる挑戦状である。
言ってしまえば、舐められている。
全てのユーベルコードを受けきった上で猟兵たちを圧倒できるという自負が彼にはあるようだった。
「確かに『デスリング総統』の力は凄まじいものなのでしょう……ですが! 皆さんの『最高の全力』であれば!」
かの『デスリング総統』にだって敗北を認めさせることができるだろう。
ナイアルテは猟兵達をリングサイドから送り出す。
セコンドのつもりなのだろう。
ぐ、と拳を握って。
「フレ、フレ、がんばれがんばれ、みーなーさん!」
猟兵たちは思った。
もっと真面目にやって、と。
「やってますけど――!?」
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『バトル・オブ・オリンピア』の戦争シナリオとなります。
古代バトリンピア遺跡にて待ち受けるプロレス・フォーミュラ『デスリング総統』との決戦になります。
『デスリング総統』は普通に戦っても、リングに上がってプロレス勝負をしてもいい、と告げています。
彼は先制攻撃できるだけの強敵ですが、絶対に先制攻撃をせず、皆さんの攻撃を受けきった後に四次元殺法で反撃を行い、四つ腕による異次元怪力でもって『攻撃を食らった者を骸の海に放り出す』恐るべき能力を発揮します。
彼は殺し合いでも死なないぐらい頑丈ですが、倒したら潔く敗北を認め猟兵を称賛した上で配下に下るようです。
ルール無用! ただ求めるは最高の全力攻撃なのです。
つまりこれは『超強力なオブリビオン相手の通常戦闘』ということです!
とは言え、敵は皆さんのユーベルコードを受け切る自信に満ちています。
これを打ち破るために最高の全力ユーベルコードを叩き込みましょう。
プレイングボーナス……最高の全力」を出し切り、デスリング総統に叩きつける。
それではアスリートアースに巻き起こる熱きスポーツバトルの祭典を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますように、たくさんがんばります!
第1章 ボス戦
『デスリング総統』
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POW : デスリングスープレックス
掴んだ対象を【四次元】属性の【骸の海送りのデスリングスープレックス】で投げ飛ばす。敵の攻撃時等、いかなる状態でも掴めば発動可能。
SPD : デスリングスイング
自身の【四本腕で相手の体を掴んで】から極大威力の【骸の海送りのジャイアントスイング】を放つ。使用後は【マイクパフォーマンス】状態となり、一定時間行動できない。
WIZ : デスリングラリアット
【四本腕を伸ばしての高速回転】からレベルmまでの直線上に「神殺しの【骸の海送りの四次元竜巻】」を放つ。自身よりレベルが高い敵には2倍ダメージ。
イラスト:雲間陽子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
やっと、やっとこの武を振るう時がきたの!
※今まで、サッカーとか野球とかしてた人※
はは、その自信は根拠ある自信はと見た!
ああ、わしは『オブリビオンを呪う悪霊』としてではなく、『一回の武人』として行こうではないか!
というわけでな、全力を示すはこのUCであって。
さらに武器は黒燭炎とな!
突き…と見せかけてからの跳ね上げ、それから石突での薙ぎ払いに、UCを乗せていこうかの!
掴まれるわけにはいかんから、内部三人が四天霊障で弾きの結界やっとる。
久々よな…。
※
陰海月と霹靂、ナイアルテさんの隣で、同じくフレフレと応援!
古代バトリンピア遺跡はリングへと変形している。
その中央に立つは四つ腕の怪人――否、プロレスフォーミュラ『デスリング総統』である。
彼の爛々とした瞳の輝きは、来る猟兵たちの最高の一撃を待つがゆえに闘志が漲っていた。
「グロロロロ……来たか、猟兵! さあ、もはや問答は無用! 貴様らの全力を『受け』きってみせようではないか!」
そう、彼は先制攻撃を仕掛けることが出来る技量を持ちながら、それをしない。
それどころか猟兵たちに先制攻撃を仕掛けて来いとさえ言うのだ。
「やっと、やっとこの武を振るう時がきたの!」
対する馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『侵す者』は嬉々としていた。
バトル・オブ・オリンピアが始まって要ら、サッカーやら野球やらトライアスロンやらなんやらかんやら、己の武を振るう時がまったくなかったことにフラストレーションが溜まっていたのだろう。
確かに武とスポーツは異なるものである。
同じ体躯を使うものであったとしても、到達点が違う。
故に『侵す者』は己の有り余る武の才能を発露する機会を此処に至るまで得られることがなかったのだ。
「自信があるようだが、グロロロロ、ワガハイを前にしてもその武、示すことができるか!」
「はは、その自信根拠在る自信と見た!」
「当然である! ワガハイは『デスリング総統』! あらゆる攻撃はまず『受け』なければならぬ。さあ、来い、猟兵!」
「ああ、わしも『オブリビオンを呪う悪霊』としてではなく、『一介の武人』として立ち合おうではないか!」
構える槍。
黒色の槍の穂先が炎を宿すように赤熱していく。
『デスリング総統』が求めるは全力の一撃。
それも最高の一撃である。
それを受けなければプロレスフォーミュラとしての沽券に関わる。
「見事な重圧! だが!」
『侵す者』は槍の突きにフェイントの跳ね上げを加えて、石突での薙ぎ払いを加える。
「小手先の芸事ならば、他所でやってもらおうか!」
薙ぎ払う一撃の寸前に己たちの張り巡らせた結界が砕ける音が聞こえる。
四つ腕の一撃がただ触れただけで結界が砕けるのだ。
「ワガハイの言葉を忘れたか、猟兵! ワガハイは最高の一撃を以て、と言ったのだ! そのような小手先でワガハイの『受け』が破れるものか!」
「そうさな、そうよな。故に、ヌシも見誤っておるよ」
煌めくはユーベルコードの輝き。
砕けた結界を薙ぎ払うようにして放たれた槍の一撃。
それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)に放たれた横薙ぎの一閃。
そう、これが己が出せる最高の一撃。
突きはフェイントではない。
予備動作。
『デスリング総統』は見誤ったのだ。
その一撃が武人であるのならば。だが、彼はレスラーである。故に理解が及ばなかったのである。
振るう横薙ぎの一閃は『デスリング総統』の脇腹を捉え、その見事に鍛えられた体躯を打ち据える。
みしり、と音が響く。
それは『デスリング総統』の骨がきしむ音であり、同時に『侵す者』の体躯の内側で振るう膂力に骨格が耐えきれぬ音でもあった。
渾身の一撃は『デスリング総統』の巨体を吹き飛ばす。
「久々よな……」
走る痛みに『侵す者』は己の体躯が傷ついたことを理解し、リングの外で己を鼓舞する声援あげる『陰海月』と『霹靂』に手を上げて応えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神臣・薙人
対峙するだけでこの重圧…
ですがルールに縛られる事なく
最高の全力を出すのであれば
私にも些少の勝機はある筈です
ヤドリギの織姫使用
初撃は足を狙い植物の槍で攻撃
すぐに反撃が来るでしょうから
腕が動きを見せた時点で
直線上に立たないよう位置を調節
うまく避けられれば
また槍で攻撃
可能であれば多重詠唱を使用して
立て続けに撃ち込むようにします
なるべく足を狙い
まずは機動力を削ぐよう意識
少しでも動きが鈍れば
狙いやすい腕の一本に標的を変更
こちらが負傷した際は
余裕があれば生命の実で回復
何処まで通じるかは不明ですが
装甲は強化されています
攻撃を優先して行動
骸の海送りには常に警戒
食らえば猟兵といえども
どうなるか分かりませんからね
「グロロロロ……やはり良いものであるな! 最高の一撃といものは! 強者を強者足らしめる至高の一撃! これを受けきってこそのプロレス! そう、『受け』とは相手の全力を引き出した上で打ち倒すという喝采のためにこそあるのだ!!」
プロレスフォーミュラ『デスリング総統』は猟兵の一撃を受け体を吹き飛ばされたが、古代バトリンピア遺跡のリング、そのロープを巧みに使ってリングの中央へと復帰していた。
仁王立ちである。
四つ腕を大きく広げ、己を打倒するには至らぬというように彼は笑っていた。
ただそれだけだというのに。
「対峙するだけでこの重圧……」
なんという力量であろうか。
手合わせするまでもなく、その圧倒的な膂力、体躯、技量。あらゆるものが己よりも格上であることを神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は理解しただろう。
確かに強敵だ。
だが、最高の全力を出すことに『デスリング総統』はルールは無用であると言った。
ならば。
「勝機を見出すか、猟兵! ならば、見せてみろ。このワガハイに!!」
「ええ、私にも些少の勝機を!」
薙人がリングへと飛び出す。
ユーベルコードに輝く瞳。
生み出された植物の槍の一撃を『デスリング総統』に叩き込む。
だが、その一撃は筋骨隆々たる体躯に阻まれ、僅かでも傷をつけることはあたわなかった。
「しょっぱい攻撃をしてくれる! その程度でワガハイをどうこうしようなぞ! つまらぬ!!」
振るわれる四つ腕。
掴まれれば、恐るべき力によって薙人は骸の海へと放り投げられてしまうだろう。
それは避けることのできない未来であった。
だが、そのいちげきを薙人は躱さう。腕の動きを見せたじてんで位置を調整するように動き回り、ヤドリギで編んだローブでもって防ぐのだ。
引きちぎられるローブ。
あまりにも凄まじい膂力故にユーベルコードさえも『デスリング総統』は投げはなってしまうのだ。
足を狙う、という点においてはやはり小手先ということだろう。
だが、薙人は構わなかった。
これは確かに『デスリング総統』の言うところの全力の戦いなのだろう。
ならばこそ、自分もそうだ。
「続けざまにワガハイにこんなしょっぱい攻撃をするとは!」
「いいえ、これもまた私の全力です!」
編み上げられるヤドリギ。その都度引き剥がされながらも、薙人は立ち回る。
至高の一撃を叩き込む事ができなくても、敵の力を削ぎ落とすことはできる。
これは自分だけの戦いではないのだ。
自分のために戦うことは出来なくても、誰かのためになら戦うことが出来る。そのためにこそ薙人はヤドリギの槍を振るう。
狙うは足。
動きを阻害し、戦い続ける。
「もう良い! 貴様には飽き飽きしておる!」
振るわれる四つ腕。
だが、『デスリング総統』は己の足が踏み出した瞬間、がくりと体制が崩れるのを知る。
そう、薙人が常に攻撃を当てていた足。
「ふんばりが効かぬだと!? このワガハイが、こんなイージーな……!」
「この時を待っていました。あなたの四次元殺法を喰らえば猟兵とてどうなるかわかりません。なら!」
この一瞬を生み出すためだけに、その隙を生み出すためだけに薙人はしょっぱいと言われながらも『デスリング総統』の足を狙い、その体勢を崩した瞬間を狙って植物の槍を『デスリング総統』の覆面覆う頭部へと叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
一般アスリートの体を借りて戦うっすよ
「ならば、遠慮なく行かせてもらうっすよ!」
総統をドロップキックで吹き飛ばし、リングの端へ。そして【怪力】【グラップル】【ロープワーク】で【猟兵絞狩刑】を仕掛けるっすよ。総統用に、残った腕もロープに絡ませて動きを抑える特別版っす
「さあ、ロープブレイクなんてないっすからね」
これでも相当なら抜け出せそうっすけど、パワーを落とすことはできたんじゃないっすかね
ジャイアントスイングを喰らうことになるっすけど、そこは【念動力】で軌道修正しつつリングロープを掴んで場外(骸の海)まで飛ばされるのを防ぎ、戻ってくる反動で頭突きをかます
「猟兵魚雷、行くっすよ!」
放たれた槍の一撃がプロレスフォーミュラ『デスリング総統』の覆面覆う頭部、その額へと叩き込まれ、頚椎がきしむ音を響かせながらのけぞらせた。
「ヌゥ……! だが、ワガハイの体はこれしきではな!!」
のけぞった体を強引に戻し、『デスリング総統』は四つ腕を広げる。
この期に及んでなおも猟兵たちに先制攻撃を譲る潔さ。
それは己の美学のためであっただろうが、いっそ高潔ささえ感じさせるものであったことあろう。
「来るが良い、猟兵! ワガハイは『デスリング総統』である! 全ての攻撃を受け止めてこそワガハイのプロレスの至高さを知らしめるに値するのだ!!」
「ならば、遠慮なく行かせてもらおうっすよ!」
リカルド・マスケラス(希望の仮面・f12160)はアスリートの体を借りて、ヒーローマスクたる己の力を発露させる。
リングの上を駆け抜け、跳躍する。
本来の戦いならば、その動きはあまりにも直線的で隙だらけだった。
だが、リカルドは知っている。
『デスリング総統』は必ず此方の攻撃を『受け』る。
躱すことも、防御することもなく、ただ真っ向から受け止める構えを取っているのだ。故に大仰な助走であっても彼は見守ることしかしないのだ。
「食らうっす、ドロップキック!」
放たれた一撃が『デスリング総統』の体を傾がせる。
いや、違う。
派手に吹っ飛んだように見せて『デスリング総統』はリカルドの一撃の威力を殺してるのだ。
ロープを利用し跳ねるようにして『デスリング総統』が――。
「笑止! この程度でワガハイを!」
「いいや! 違うっすよ!」
迫らんとした巨躯がリングサイドのロープに絡まって動きを止める。
「何ぃ!? ロープが絡まる、だと!?」
「そうっす! これを狙っていたんすよ! よもや反則とは言わないっすよね!」
さらにリカルドは『デスリング総統』へと組み付く。
両腕での関節へのクラッチ。
さらに体を回転させての両足を『デスリング総統』の太い首へと絡めての絞め技。
「さあ、ロープブレイクなんてさせないっすからね!」
これぞ、猟兵絞狩刑(ハンティング・ストラングル)!
ドロップキックの派手さから流れるようなロープサイドでの攻防。
関節技と絞め技を同時に繰り出すデスロックに『デスリング総統』の顔色がみるみる間に青ざめていく。
だが、リカルドは理解していた。
『デスリング総統』は絞め技では落とせない。
これを必ず抜け出す。
「グロロロロ! なかなかやるではないか猟兵……! だがな!! ワガハイを舐めてもらっては困る!」
振りほどかれるロック。
その足を掴んで『デスリング総統』はリカルドを投げ飛ばす四次元殺法を繰り出すのだ。
ユーベルコードの輝き。
それによってリカルドは骸の海へと投げ捨てられるだろう。
体が浮く。
重力を感じる。だが、リカルドは装着者の腕をもってリングのロープを掴んで場外たる骸の海から脱出するように念動力を使って舞い戻るのだ。
「なんと! だが!!」
「猟兵魚雷、行くっすよ!」
投げ飛ばされた力をロープで倍増しての突撃。
それはリカルドの言葉通り、魚雷じみた突進だったことだろう。狐面のマスクと『デスリング総統』の覆面が真正面から激突する。
迸るユーベルコードの激突に寄る火花がリングに炸裂し、互いの額から血を噴出させながら互いに不敵に笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎
HAHAHA!
ハロー、デスリング総統! お会いできて光栄デース!
ご要望にお応えして、児戯に等しい我輩の……バルタンたちの最高の全力を叩きつけてあげマース!
ミニ・バルタンにスコールの操縦を託して、参りマス!
カモン、ビッグ・バルタン! そして、「骸式兵装展開、争の番!」
ミニ・バルタン! ビッグ・バルタン! スコール!
ジェットストリームアタックを仕掛けマスヨ!
ビッグ・バルタンのブレードで切り、スコールのフォースセイバーで切り、そして我が身のプラズマクロウで切り、またビッグ・バルタンのブレード!
順番に攻撃を続け、何度でも再攻撃を繰り返す!
怒涛の連続攻撃であります!
ヒャッハー!
噴出する血潮は赤い。
当然かも知れない。生きているのだから。
だからこそ如何に強大なプロレスフォーミュラと言えど傷つくのだと理解できただろう。
そう、倒せるのだ。
この不撓不屈の如き意志でもって猟兵の先制攻撃を『受け』きろうという『デスリング総統』は。
「HAHAHA! ハロー、『デスリング総統』! お会いできて光栄デース!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は古代バトリンピア遺跡のリングへと飛び込み、指を突きつける。
その威勢のよい態度に『デスリング総統』は額より滴る血潮を舌で舐め取って不敵に笑む。
「グロロロ! ワガハイと対峙してなお、そのような口を聞けるとはな。ならば来るがよい。貴様らの児戯に等しいユーベルコードを全てワガハイは受けきってみせよう!」
その言葉に偽りはない。
そう騙し討ちをすることすらない。
どれだけ反則を行おうが、それだけはしないのが『デスリング総統』であった。
「ご要望にお応えして我輩の……バルタンたちの最高の全力を叩きつけてあげマース!」
煌めくユーベルコードの輝き。
バルタンの背後に降り立つは『ビッグ・バルタン』と『スコール』と呼ばれるキャバリアだった。
キャバリアには『ミニ・バルタン』が搭乗している。
そして、バルタンの姿が変じる。
「骸式兵装展開、争の番!」
鉤爪を持つ姿へと変身したバルタンが駆け出す。
『ビッグ・バルタン』が突進し、ブレードの一撃が『デスリング総統』へと叩き込まれる。
しかし、その一撃を『デスリング総統』は四つ腕を交差させて受け止める。なんたる体であろうか。
鋼鉄の如き鍛え上げられた肉体はブレードの一撃すら受け止めてみせるのだ。
だが、それでバルタンのユーベルコードが終わるわけがない。
『ビッグ・バルタン』の背後から迫るは『スコール』であった。手にしたフォースセイバーが煌めく。
「甘い! この程度でワガハイを仕留めようなど!!」
四つ腕のうちの二つが迫るフォースセイバーを真剣白刃取りのように挟み込むようにして受け止めているのだ。
フォースセイバーの熱量に『デスリング総統』の皮膚が焼ける。
しかし、彼はそんな事を気にもとめていなかったのだ。
「見事といっておきマース! ですが!」
プラズマクロウの一撃が『デスリング総統』の体へと叩き込まれる。
先行した『ビッグ・バルタン』と『スコール』の一撃は、バルタン自身の一撃を叩き込む為の布石。
「だが軽い! ワガハイを倒すには至らぬ!」
「いいえ、このユーベルコードは一撃でも叩き込めれば、さらに攻撃できるのデース! つまり!」
バルタンは叫ぶ。
そう、『デスリング総統』は此方の先制攻撃を望んでいる。
けれど、彼女のユーベルコードは一撃さえ通れば、さらに次の攻撃につなげることができる。
一撃で打倒できないのならば、重ねるだけだ。
もしも、『デスリング総統』が六腕出会ったのならば彼女の攻撃は全て防がれただろう。
けれど、そうではないのだ。
「『デスリング総統』! アナタには怒涛の連続攻撃を味わっていただきマース!」
それは嵐のような……それこそジェットストリームアタックの名にふさわしい連撃でもって『デスリング総統』を追い込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……プロレスは全然知らないけど何でもありっていうならキャバリア使って遠慮なく。
『遠慮は無用というかすればやられるのはこちらだな、徹底的にやりたまえ』
一応パラライズ・ミサイルしてシルエット・ミラージュ。
からのハンドレッド・イリュージョンで自分複製含めて含めて1185機のミドガルズを並べる。
当然リング内に収まるわけないので場外やら空中やらギッチリと。
ドーピングで瞬間思考力を強化して並列操作。
全方位からミサイル、ガトリング砲、ハイペリオンランチャーを一斉発射で撃ち込むよ。
数多すぎて不都合なら撃ち尽くした機体を下げて交代とか。
(流石に多すぎる場合は数を減らすなり可能な感じにアドリブ可で(^_^;))
嵐のような連続攻撃がプロレスフォーミュラ『デスリング総統』の体を打ち据える。
凄まじい。
その一言に尽きる。
だが、それ以上に凄まじかったのは『デスリング総統』のタフネスであったことだろう。
あれだけの攻撃の一切を防御も回避もせずに『受け』止めているのに未だ倒れないのだ。
「グロロロ! やるではないか! だが、まだワガハイは倒れぬ! 全て『受け』きってみせようではないか!!」
反則であっても、凶器を使用しても。
なんであっても構わないと彼は言った。
そう、如何なる攻撃であっても『受け』きってこそプロレス。
故に彼は笑うのだ。
「グロロロ! 恐れなすか猟兵!」
「……プロレスのことは全然知らないけどなんでも在りっていうならキャバリアを使って遠慮なく」
させてもらうよ、とシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)はリングの外からキャバリア『ミドガルズ』と共に『デスリング総統』を見下ろす。
『遠慮は無用というか、かすればやられるのは此方だな。徹底的にやりたまえ』
AIの『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは頷く。
ユーベルコードに輝く瞳。
その瞬間、シルヴィの『ミドガルズ』より放たれるは高圧電流を撒き散らすミサイル――パラライズ・ミサイルの掃射であった。
その飴のようなミサイルが古代バトリンピア遺跡のリングへと降り注ぐ。
爆風が荒ぶ。
「グロロロ! 電流マッチというわけか! だが、ワガハイにとってこの程度の電流など生ぬるいものよ!!」
「だろうね。けれど、なんでもありといったのはそちら。なら、これでも構わないよね」
シルヴィの言葉を聞く『デスリング総統』は爆煙の彼方に浮かぶ無数の機影を見た。
それは全てが『ミドガルズ』だった。
ハンドレッド・イリュージョンによって複製された千を越える『ミドガルズ』の複製体たち。
無数のアイセンサーが煌めいた瞬間、さらに降り注ぐパラライズ・ミサイル。
さらにシルヴィの首元に薬剤が投与される。
思考が加速していく。
複製体とは言え千を越える『ミドガルズ』を並列に操縦するのは、脳への負荷が凄まじいものとなるだろう。
けれど、それでも構わなかった。
『デスリング総統』を打倒するためには、このくらいやらなければ到底勝ち目などないだろう。
リングを取り囲む無数の『ミドガルズ」たち。
ミサイル、ガトリング砲、ハイペリオンランチャー。
搭載した武装の全てを叩き込む。
とめどない爆風。
それはシルヴィの持てる全力だった。これほどの火力を前にしても『デスリング総統』が 『受け』に徹していたのは見事というほかなかった。
圧倒的な火力と手数。
これによって猟兵たちは『デスリング総統』を押し留めている。
彼に反撃を許せば、四次元殺法によって骸の海へと叩き込まれる未来は確定してしまう。
故にシルヴィは猛火力でもって『デスリング総統』をリング中央に縫い止め続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
マイクパフォーマンスは完璧ってか。いいぜ、てめえみたいのは嫌いじゃねえ。
なら全力でいかなきゃ無作法だよなッ!俺達のユーベルコードが児戯かどうか、その身で確かめなッ!
妖刀憑依ッ!後は任せたぜ、相棒ッ!
「…|鬼面の大霊剣《ソードオブヒーローマスク》。私達の全霊でお相手します。」
小細工無用ッ!大霊剣になった俺を相棒に振るわせてリングごとぶった斬ってやるぜぇぇぇッ!
てめえが力尽きるのが先か俺が力尽きるのが先か、根比べといこうじゃねえかッ!
「…ちなみに骸の海送りのジャイアントスイングをされたら、『結界霊符』で結界を展開し壁にして骸の海に送られるのを防ぎます。私は小細工をしますよ?」
【アドリブ歓迎】
爆風が古代バトリンピア遺跡のリングに吹き荒れている。
それほどまでに猟兵の放つユーベルコード、その火力は凄まじいものだった。
だが、その爆煙の中から笑い声が聞こえる。
「グロロロ!」
この笑い声の主はただ一人しかいない。
そう、プロレスフォーミュラ『デスリング総統』である。
「これしき! どれだけワガハイを縫い止めようともな! この四次元殺法を前にして抵抗は無意味と知るがよいのである!」
彼は爆煙の中を踏み出す。
圧巻の『受け』であった。
防御も回避もなく。ただひたすらに攻撃を受け止め続ける。その潔さ、タフネス。脅威であり、称賛に値するものであったことだろう。
『マイクパフォーマンスは完璧ってか』
「ぬっ!」
『いいぜ、てめえみたいのは嫌いじゃねえ』
神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の鬼面がカタカタと揺れる。
巫女服が風に揺れ、リングサイドのコーナーに立つのは、二人で一人の猟兵である凶津と桜であった。
『全力でいかなきゃ無作法だよなッ! 俺たちのユーベルコードが児戯かどうか、その身で確かめなッ!』
「グロロロ! 面白い! まだワガハイに歯向かう猟兵がいるというのならば、全力で『受け』てやろう!」
煌めく凶津の鬼面。
眼窩に光宿した瞬間、相棒たる巫女、桜は鬼面を掲げる。
『妖刀憑依ッ!! 後はまかせたぜ、相棒ッ!!』
掲げた鬼面が変化する。
それは妖刀の形。
一時的にオブリビオン化した体。
みなぎる力。大気を震わせるは、身にまとう紫電が打ち鳴らすものであったか。
「……鬼面の大霊剣(ソードオブヒーローマスク)。私達の全霊でお相手します」
変化した凶津の体、その妖刀を構え桜は『デスリング総統』を睨めつける。
此処まで来たのだ。
もはや小細工は無用である。
力を込めた瞬間、妖刀の刀身が巨大化する。
紫電迸る力が集約されていき、桜は振りかぶる。ハッキリって、隙だらけであったことだろう。
最大の力を発揮するためとは言え、最上段の構えた姿は打ち込んでくださいと言っているようなものだった。
だが、『デスリング総統』は動かない。
そう、『受け』るためだ。
目の前に渾身の一撃を放とうとしている猟兵が居る以上彼は動かない。
「グロロロ! 面白い! その一撃受け止めてへし折ってくれる!」
『できるかな、てめえに! 行くぜ、相棒ッ!』
「……はいッ!」
振り下ろされる斬撃。
迸る紫電と共に打ち下ろされた斬撃はリング毎叩き割るほどの強烈な一撃であったことだろう。
凶津は後のことなど何も考えていなかった。
ただぶった斬る。
それだけのことを考えていたのだ。
後のことは相棒たる桜が考えてくれる。
自身が考えることは、ただ一つでよかったのだ。
『デスリング総統』はその一撃を受け止めながら笑う。
「やはりな! 貴様の一撃、それは気力を消費していくのだろう!」
『そうよッ! これはてめえが力尽きるのが先か俺が力尽きるのが先か、根比べよッ!』
そして、己を任せることの出来る相棒たる桜がいるからこそ、全力を打ち込める。
凶津の咆哮とともに桜が打ち下ろした一撃がリングを割るように凄まじい斬撃を『デスリング総統』の体躯に刻み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
プロレスはレスラーだけでならず、観客の皆さまがいてくださってこそ!
観客の皆様も、配信で見てくださってる皆様も、藍ちゃんくんと一緒に歌うのでっす!
藍ちゃんくんのファンだけでなく、総統さんのファンの皆様にもマイクパフォーマンスで呼びかけるのでっす!
皆様が大好きな総統の心意気に応えてこそのファンでっすよー!
それでは皆様、ご一緒に!
藍ちゃんくんでっすよー!
総統さんが反撃しようにもほんの少し、技のかけ方が甘くなるかと。
何故なら!
藍ちゃんくんの最高の全力を望んだが故に、総統さんもまた気づけば歌ってるからなのでっす!
猟兵以外の皆様との合唱ですからねー!
オブリビオンフォーミュラーだって含まれるのでっすよー?
リングを割るかの如き斬撃の一撃が走る。
それは確かにリングを切り裂く。
一文字。
凄まじくも美しい斬撃だった。しかし、その斬撃の一撃はプロレスフォーミュラ『デスリング総統』の強固なる肉体を分断するには至らなかった。
「グロロロ……! このワガハイの黄金の体を傷つけるか!」
しかし、彼の体には一文字の斬撃が血潮と共に刻まれている。
それでもなお、彼は膝をつかない。
いや、つくことを許さないのだろう。彼にとってプロレスとは『受け』きり、華麗なる反撃で持って勝負を決めるものだ。
故に彼は猟兵の一撃を受け止める。
例え、先制攻撃できるほどの力量を持つのだとしても、だ。
それこそがプロレスだからだ。
「プロレスはレスラーだけでならず。観客の皆様がいてくださってこそ!」
「くだらんなっ! ワガハイの最強たる所以に観客の有無など無用よ!」
紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)の言葉に『デスリング総統』は頭を振る。
彼にとって観客は己の最強を証明するにたり得ない。
だが、藍は告げる。
斬撃刻まれたリング。
其処に立ち、マイクを握りしめた。
「いいえ。観客の皆様も、配信で見てくださってる皆様も、藍ちゃんくんと一緒に歌うのでっす! 藍ちゃんくんにとって!」
それは、と藍はマイクを掲げる。
そう、自分のファンのためだけではない。
圧倒的な強さを誇る『デスリング総統』がヒールであっても、その強さに魅了されたファンだっているだろう。
だからこそ、藍はマイクを天に向けた。
声を届けようというように。
「皆様が大好きな『デスリング総統』の心意気に応えてこそのファンでっすよー!」
「何だ、何を言っているのだ、貴様は!」
「それでは皆様」
藍は構わなかった。
『デスリング総統』は先制攻撃してこない。ならば、藍は確信していたのだ。
「ご一緒に! 藍ちゃんくんでっすよー!」
共に歌おうと藍は己のファンと『デスリング総統』のファンに呼びかけたのだ。
「涙色の空に笑顔の虹をかけるのでっす!(リーアー・アイリス) 歌うのでっす! 皆々様と歌うのでっす! 藍ちゃんくん達は、独りじゃないのでっす!」
それは単純な言葉であったのかもしれない。
応援は魂が込められている。
誰もが熱中する存在がいる。自分がそうであるように『デスリング総統』だってそうだ。
だからこそ、その声は届く。
魂にさえ届き、震わせるのだ。
「お、おおおっ!? グロロロ! なんだこれは、なんでワガハイまで歌うのだ!?」
「気が付かないのでっすかー!『デスリング総統』、あなたもまた歌いたがっているのでっす! 藍ちゃんくんの全力を望んだが故なのでっす!」
そう、これが自分の全力。
此処には自分も敵も味方も、ない。
あるのは大合唱する仲間たちでしかない。
故に、『デスリング総統』は、藍の魂の歌に震わされるようにして、その喉を張り上げる。
そう、これは大合唱。
猟兵も、オブリビオンも関係ない。
歌うことに全てを懸けた者にこそ到達できるユーベルコード。
児戯と笑ったのだとしても。
「グロロロ! ワガハイの歌が、止まらぬのである!」
「いい感じなのでっすよー! 例え、フォーミュラであっても、皆々様の想いのこもった魂の歌は響くのでっす――!」
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
ふむ、最高の全力か。なら|欲界権限・星辰界他化自在天《アストラルエフェクト》を使いましょう。レベル秒後に昏睡するけど、どのみち最高の全力を出し切った直後に総統の技を回避する余力などないから大丈夫だ、問題ない。
|6倍に強化された全能力《高性能を駆使する》で|なかなか使える機会ないから今こそ使うチャンス《欲望開放》とばかりにノーザンライトボムを放って|ジャイアントキリング《大食い》とイキましょうか。
古代パトリンピア遺跡のリングに響くは歌声。
猟兵の歌声。
観客たちの歌声。
さらにはプロレスフォーミュラ『デスリング総統』の歌声さえも聞こえてくる。
リングは猟兵たちの攻撃に寄って傷ついている。
『デスリング総統』もまた同様だった。
だが、それでも彼は未だ健在である。猟兵たちのユーベルコードを全て『受け』きるまでは倒れぬというように彼は、中央に立ち続けているのだ。
なんたるタフネスであろうか。
先制攻撃する技量を持ちながら、それを放棄する潔さ。
それは彼のダークレスラーでありながらも高潔な意志を見出すことのできるものであっただろう。
だからこそ、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の混沌魔術師艶魔少女・f05202)は思う。
余力を残すだとか、攻撃された時どう対処しようだとか。
そんなことは無意味だと。
応えなければならない。
「最高の全力と言ったわね」
「グロロロ! そのとおりである! ワガハイが求めるのは小手先のものではない、貴様ら猟兵の全力よ! 最高の! 持てる力を全て尽くした一撃よ! それを『受け』きれないで何がプロレスフォーミュラか!」
その言葉にアリスは頷く。
覚悟を決める。
「不可説不可説転もの数多の星辰(アストラル)界に具象化せし我が精神よ、我が欲望を具現化せよ。其は六欲天が最上位他化自在天なり」
ユーベルコードに輝く瞳。
己の精神を具象化する不可説不可説転の星辰界。
それは最大を示す。
森羅万象全てに置いての最大の数。
天の高きことを知るのならば、己の力は増幅される。
幼い体躯でありながら、アリスの体に満ちるは陣城ならざる力。
そのほとばしりを感じて『デスリング総統』は笑う。
「グロロロ! その全力をへし折ってこそよ!」
「ならば、受けなさい」
アリスもまた笑った。
欲界顕現・星辰界他化自在天(アストラルエフェクト)。
そのユーベルコードは己の全力をさらに駆使する力である。六倍にまで強化された……いや、一時的に増強された力の反動は言うまでもない。
このユーベルコードを使った後、彼女は昏睡状態に陥る。
正しく不退転の決意。
背水の陣の如き状況である。
同時になかなか使える機会がない力でもある。
「だからこそ、よね!」
アリスが『デスリング総統』の巨躯へと飛びかかる。
巨大な体躯。
筋骨隆々であり、四つ腕。
その偉業ながらも黄金律の如き見事な体をアリスは抱えあげる。
ボディスラムの体勢で持ち上げた『デスリング総統』の体は謂わば、槍のようであった。
「グロロロ! 来い! その一撃受けて止めてやろう!」
「|ジャイアントキリング《大食い》とイキましょうか!」
振るうはノーザンライトボム。
そう、それは垂直になった『デスリング総統』をリングに叩きつける凄まじい一撃。
放たれた爆発するようなアリスの一撃は彼の頭部をリングに打ち込むかのように叩きつけ、切り裂かれたリングに更に亀裂を走らせ、凄まじい衝撃音を響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミレア・ソリティス
任務了解しました。
ミレア・ソリティス、出撃します
近接戦闘用5型兵装装備で出撃、副腕クローを変形・展開し、ジャミングミサイル全弾発射での認識妨害を実行後、リミッター解除、UC【コード・ベルセルク:Ω】を発動します。
副腕クローによる打撃、プラズマグリーブによる蹴撃、ショートブラスターによる近距離でのスタン弾での銃撃を軸に交戦、掴まれた際は接触個所の装備をパージし自爆させ離脱、交戦限界時間まで攻撃を続行します
最終的にはこちらからの組付き、もしくは掴まれた状態でそのまま私の躯体そのものを物質変換で反物質へと変換し「自爆」させ、現地へ再転送された4型砲撃戦兵装の「私」が全兵装一斉発射を放ちましょう
垂直にリングへと叩きつけられたプロレスフォーミュラ『デスリング総統』の体躯は、正しく大地に打ち付けられた槍のように直立不動であった。
頭部が完全にリングへと埋め込まれるようにして叩き込まれている。
無事ではすまないはずだ。
だが、『デスリング総統』はひび割れたリングより己の四つ腕を持って頭部を引き抜きながら、首を鳴らす。
「良い一撃である! だが、ワガハイは倒れぬ! まだ足りない。足りないぞぉぉぉッ!!!」
咆哮。
それは凄まじい重圧となってリングへと迸る。
なんたることだろうか。
これまでの猟兵たちの一撃はどれも軽いものではなかった。
それを防御も回避もなく彼は受け止め続けているのだ。なのに、まだ倒れない。
「任務了解しました」
ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は軽く頷くと近接戦闘用5型兵装を装備してリングへと飛び込む。
副腕のクローが展開する。
プロレスにおいて凶器の使用は例に漏れず反則である。
だが『デスリング総統』もまた反則を認めている。如何なる凶器であろうと己の体躯を傷つけるに能わずというように恐れず迫るミレアを鋭き眼光で認め、笑うのだ。
「グロロロ! 来るが良い!!」
ジャミングミサイルを展開し、放つ。
打ち込まれたミサイルは『デスリング総統』を傷つけるには至らない。
爆風の中に未だ彼は立っている。
「これで終わりではあるまい!」
「そのとおりです。同型機への情報通信及び転送準備完了、本機体のリミッター解除……“コード・ベルセルク:Ω(コード・ベルセルク・オプションオメガ)”発令。カウント・スタート」
爆風を切り裂く副腕クロー。
その斬撃は、『デスリング総統』の交錯した四つ腕を切り裂く。
鮮血が迸る。
さらに蹴撃の一撃が四つ腕のガードを跳ね上げる。
「もはや止まりません」
爪撃、蹴撃。
さらに加わる銃撃。
「ぬるいわッ!!」
その嵐のような攻撃の中から伸びる『デスリング総統』の腕。
掴まれたら終いである。
それをミレアは知っているからこそ、掴まれた腕を自切し爆散させる。
「小手先を!」
「構いません。これができるのならば」
ミレアは副腕と共に『デスリング総統』に組み付く。
リングの中央でミレアは真っ向から『デスリング総統』に掴みかかっていたのだ。無謀極まる行いだった。
組まれたのならば、四次元殺法によって彼女は骸の海に叩き込まれることだろう。
だが、それよりも早くミレアは決断していた。
「同型機への情報転送完了。次なる私に託します」
次の瞬間、ミレアは己の躯体を反物質変換による自爆でもって吹き飛ばす。
身を厭わぬ自爆攻撃。
「ぐっ、ぬっ……自爆だと!?」
「ええ、次なる『私』が押し込みます」
転送された情報をダウンロードしたミレアが砲撃戦兵装と共に現れ、その砲火の全てを持って『デスリング総統』の体を爆風に包み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
あ、あれ?
ナイアルテさんがメイド服じゃない!?
『地獄黙示録冥土』大復活だと思ってたのに、なんで?ねぇなんで!?
しかたないなー。
『地獄黙示録冥土』ことナイアルテさんがセコンドってだけでよしとしよう。
『地獄黙示録冥土』こと! ナイアルテさんが!(大事なことなので2回
さぁナイアルテさん、わたしたちに……。
『地獄黙示録冥土』の意思を継ぎし、『女王様奈落冥土』に命令を!
服装はもちろん【電脳メイド服】
身体能力補助と【マスターズオーダー】でパラメータを底上げだよ!
といってもわたしなので!
初手毒霧から、ハンマーやチェーンなどをスカートから取り出して攻撃。
その後も椅子や長机とか上手に使って、反則おんぱれーど!
ヒールメイドは健在だよー♪
さ、サージェさん、いまこそその反則なブレストアタックを炸裂させるとき!
窒息フォールしちゃえー!
え?そんなクノイチいない?
いやいつもクノイチムーブなんてしてな……あっ、はい。
とりあえずレフェリー抑えてて!
締めの、金的からの横入り式エビ固めでフォールするから!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!
というか、クノイチとプロレスって相性悪くないですか?
私ほどプロレスに向いてない猟兵っていないと思うんですけど……?
ところで地獄黙示録冥土とは?(その依頼不参加クノイチ)
ほう?私の知らないナイアルテさんがまだあったとは!!
さすが理緒さんですね!
というか女王様奈落冥土ってなに!?
とってもりおりおってる理緒さんに正面はお任せしまして
私は横から攻めますか!
っていうか理緒さんの反則オンパレードがえげつない!?
いえ、プロレスですからこれくらいは大丈夫
私もいっきますよー!
コーナーに登って【威風堂々】と告げましょう!
「ひっさつ! クノイチ・バースト!!」
ええ、高高度からのフライングドロップキックですが!
え?足じゃなくて体使え?
それはともかくとしてブレストアタックは反則じゃないと思うんですけど!?
というかクノイチらしくないですよね!?
ともあれ勝利までの道筋は確保しましょう
え?レフェリー抑えるんですか!?
凄まじい爆発が古代バトリンピア遺跡に吹き荒れる。
それは亮平のユーベルコードとプロレスフォーミュラ『デスリング総統』の激突によるものだった。
黄金律の如き体躯。
誇るが故に『受け』きる。
それが彼の美学である。
「グロロロ! ワガハイは負けぬ! なぜならプロレスは全ての技を受け止め、反撃してこそであるからだ! ここからの逆転こそ我が花道よ!!」
笑い声は高らかに。
勝利を確信しているかのようであった。
だが、その確信に変わる思考を断ち切る閃光の如き前口上が走る。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
そう、ご存知サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)である。
彼女はコーナーリングに立つ。
忍ぶと言いながらそういうところに立っちゃうところだぞ。そういうところが忍べてないとか言われちゃう要因なんだぞと誰かが言ってました。
「というか、クノイチとプロレスって相性悪くないですか?」
覆面レスラーだって顔面隠しているでしょ。
隠れてるってことで謎のってなるでしょ。
そしたら、謎のクノイチレスラーっていそうでしょ。
「私ほどプロレスに向いてない猟兵っていないと思うんですけど……?」
そういうことにしておこう。
だが、サージェは共にコーナーリングに立っていた菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が乗ってこないことに訝しむ。
「あ、あれ?」
「どうしました理緒さん。『デスリング総統』、律儀に理緒さんの名のりを待ってるっぽいんですが」
「『地獄黙示録冥土』大復活フラグ立ってるんですけど! いないんですけど! メイドさんが! なんで? ねぇなんで!?」
知らぬ。
『地獄黙示録冥土』なんて知らぬ。
メイド服は良いものである。見てるだけで幸せな気持ちになれる。そういう服装である。だがしかし、地獄黙示録なんて物騒なものがくっついたメイドなぞ知らんのである。
「わたし、『地獄黙示録冥土』がセコンドって聞いたんですけど!『地獄黙示録冥土』が!」
大事なことなので二回言う。
ですが、そこになければないですねというやつである。ないものはない。
「ほう、私の知らないメイドというやつですね! 流石、理緒さんですね!」
「セコンドである『地獄黙示録冥土』から意志を継ぎし、『女王様奈落冥土』で行くよ!」
理緒は己の電脳メイド服を翻してリングに飛び込む。
見事なメイド服だった。
『女王様奈落冥土』っていうのがちょっと引っかかったが、些細なことである。
理緒の瞳はユーベルコードに輝いている。
「御下命、仰せつかります! すなわち、勝て、と!」
「あ、なんかそれクノイチが主様から拝命する時のなんかいいかんじのやつ! というか『女王様奈落冥土』ってなに!?」
本当にそれである。
理緒はユーベルコードに寄って靄のような陽炎まとい、その身体能力を底上げしている。
だが、悲しいかな。
理緒である。
運動音痴というにはあまりにも凄絶すぎるほどに身体能力のない猟兵なのである。デスクワークが一番似合うといっても過言ではない猟兵ナンバーワンなのである。
当社調べなので、信憑性はない。
「グロロロ! 来るが良い! ……ぬっ!」
理緒の初手は毒霧であった。
なんか毒々しい霧状の液体がぶっしゃーとまき散らされ『デスリング総統』の顔面を塗りつぶす。
視界を奪われた『デスリング総統』がのけぞった瞬間、理緒はスカートの奥からハンマーチェーンを振り回し叩きつける。
筋肉と鉄球のぶつかる音が響き渡る。
さらにチェーンが『デスリング総統』の体躯を縛り付けるのだ。
「とってもりおりおってますね! っていうか……」
「さあ、いくよ! 次はパイプ椅子! 長机! あとゴング!」
えいや! と理緒は次々と凶器のオンパレードを『デスリング総統』に見舞うのだ。
本当に遠慮がない。
チェーンで拘束しているから、やりたい放題である。
「『女王様奈落冥土』ってそういうことなんです!? 反則オンパレードがえげつないですけど!?」
いや、とサージェは思う。
まあ、プロレスだから、これくらいの反則は織り込み済みだろう。
ならば、と彼女もまたコーナーから威風堂々(シノベテナイクノイチ)と告げるのだ。いや、忍び。いいのか。それで。威風堂々として。いや、プロレスだからいいかもだけど。いいのかな。本当に。
「私はクノイチ、影より悪を討つ者なり!!」
「グロロロ! 面白い! ベビーフェイスを気取るか! ならば、来るがいい!」
ノリいいなぁって理緒は思った。
『デスリング総統』、プロレスのお決まり事は大抵許してくれるのではないかと。ならば、と彼女は己もヒール冥土として振る舞わなければならないと決意しただろう。
そして、サージェがコーナーリングが飛ぶ。。
「ひっさつ! クノイチ・バースト!!」
彼女のフライングドロップキックが『デスリング総統』の顔面を捉える。うわっ。痛そう! と思ったが、それ以上にサージェの叫びであった。
足?
バーストっていうから体を使っての一撃かと思ったのだ。
「そうだそうだー! その反則なブレストアタックを炸裂しないと! 窒息フォールさせなきゃ!」
「ブレストアタックは反則じゃないと思うんですけど!? ていうか、それクノイチらしくないですよね!?」
いや、クノイチ的にはアリだと思います。
ワイもそう思います。
確かにサージェは凶器を持っている。
二つも。
これ以上は訴えられそうなので明言は避けるが、もっているのである。とにかく!
理緒の窒息フォールというのも頷けるものである。
「そんなクノイチいません!」
「いるよーいるでしょーあ、いや、いつもクノイチムーヴなんてしてな……」
「してますけど!?」
「あっ、はい。ていうかとりあえずレフェリー抑えてて!」
「な、何故です!? 勝利までの道筋を確保しなければならないのにレフェリーは必須では!?」
にこ、と理緒は微笑む。
あ、とサージェは思った。倒れ伏した『デスリング総統』が立ち上がろうと四つん這いになった体勢の後ろに理緒が居た。
おい、まさか。
やめろ! それはまじでやばい!
「これで締め!」
理緒の足が振り上げられ、メイド服のスカートが翻る。
放たれるはゴールデンクラッシュ! 明言は避けさせていただこう。ヒュンとするからね!
そのまま理緒とサージェは二人がかりで『デスリング総統』をフォールすべくのしかかるのだった。
ある意味羨ましいやつですやん――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
倒す為には…自分が為すべきは唯一つ。
壊せ!!『この命が壊れても』!!!
【闘争心】励起、騎兵刀から破壊物質を引き出し、
破壊の【呪詛】纏う騎兵刀を振るい、総統へ全力で叩きつける!
敵を!!壊せ!!!
闘争心と呪詛で後押しした全力の一撃。
回避を考えない全力の後、当然、反撃のデスリングラリアットを喰らう。
【継戦能力】骸の海から黄泉還り即座に戦線復帰。
【結界術】竜巻風を小空間で【受け流し】再度呪詛纏う騎兵刀を振るい、全力攻撃を叩きつける。反撃を喰らう。|骸の海《死》から蘇る。
どれだけ強かろうが、それでも自分は壊す!!!
再度呪詛纏う騎兵刀を振るい、全力攻撃を叩きつける。
反撃を喰らう。甦る。百篇送られようが、
それでもこの心は殺せない。この|破壊衝動《闘争心》は終わらない!!
プロレスは受けが真髄といったな!総統!!
自分は!!貴殿が倒れるまで!!壊し続ける!!!
再度騎兵刀を振るい、全力でこの呪詛を叩きつける!!!
全力の一撃を振るい、反撃を喰らう。それを延々と繰り返す
一撃と反撃、先に折れた方が負けの、心の戦い。
猟兵の二人がかりのフォールを吹き飛ばしながらプロレスフォーミュラ『デスリング総統』は立ち上がる。
額からは血潮が流れ、体躯に刻まれた傷跡は浅からぬものであった。
だが、それでも彼は立ち上がっている。
満身創痍とも取れるほどの傷跡だ。
「グロロロ! まだ足りぬ! 至高の全力。その一撃を『受け』きるまでは!!」
そう、例え己の肉体が破壊されたとしても『デスリング総統』は立ち上がってくるだろう。そのタフネスの凄まじさを朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は見ただろう。
なんたる力であろうか。
「倒すためには……自分が為すべきは唯一」
小枝子の中にある闘争心が励起する。
震えるような血脈の鳴動が体を突き動かす。手にした騎兵刀から破壊物質を引き出し、呪詛まとう刀身の一撃を『デスリング総統』へと叩きつける。
全力の一撃。
四つ腕を交差させ『デスリング総統』は小枝子の一撃を防いでいた。
生身の体躯。
だというのに彼は金剛石の如き強固な筋肉だけで破壊物質を込めた一撃を受け止めていたのだ。
「敵を!! 壊せ!!!」
「グロロロ! 無駄よ! ワガハイは壊れぬ! 壊れ得ぬものを壊すことなど!」
できるはずもないと『デスリング総統』は小枝子の一撃を弾き飛ばす。
「倒す、ではなく壊す、とのたまう己の愚かさを呪いながら骸の海へと沈むが良い、猟兵!!」
迫るラリアットの反撃。
その一撃は回避を考えない全力の一撃を放った小枝子の顔面に振り抜かれる。
凄まじい音が響く。
体が重力を感じる。
それほどまでの一撃だった。視界が真っ白に染まり、次に赤く染まり、次に真っ黒な暗闇へと変わる。
吹き飛ばされたのは骸の海。
それはすなわち死を意味するだろう。
だが、それは小枝子が通常の猟兵であったのならば、だ。
生命あるのならば、生きているのならば。
しかし、此処にあるのは死の先を歩む者である。呪詛持ち、怨念満たす悪霊である。
故に、死んでも黄泉返ってくる、自覚なき狂霊として小枝子は、その人口魔眼を燃やし、舞い戻る。
リングに降り立つ彼女の姿は、ディスポーザブル(コワセコワセコワセ)。
「ほう、貴様もワガハイと同じくプロレスのなんたるかを知るか!」
「知らない! 自分は知らない! 自分が知っていることは!」
咆哮する。
「この生命が壊れても! どれだけ貴様が強かろうが、それでも自分は壊す! ただそれだけだ!!!」
呪詛まとう騎兵刀を叩きつける。
それは先程と変わらぬ一撃であっただろう。
だが、『デスリング総統』だけは違うものを感じたようである。
「見事な闘争心であるな! だからこそ、ワガハイも答えよう!」
再び振るわれるラリアットの一撃。
吹き飛ばされ、再び小枝子は戻ってくる。
そう、小枝子の闘争心が突きぬ限り、彼女はリングに幾度となく舞い戻ってくる。
「プロレスの真髄は『受け』と言ったな、総統!」
「応ともよ! それこそがワガハイの美学!」
「なら、自分は!! 貴殿が倒れるまで!! 壊し続ける!!!」
それは互いの全力の応酬であった。
ラリアットが炸裂し、機兵刀が折れてもなお続く全力。
これは肉体的な損失が敗北を意味しない戦いである。
心の話だ。
心折れた時に敗着が決定する。故に心の戦い。悟りにも似た戦いである。
飽くなき闘争心は涅槃に至ることを許さない。
「もっとだ! 自分は!!」
戦えるのだと咆哮するようにして小枝子の一撃が『デスリング総統』の鍬形の髪飾りを断ち切り、その黄金の体躯へと己の意志を届かせるように打ち込まれる。
かしぐ。
その足が一歩後退した。
それは、小枝子にとっての勝利であり、『デスリング総統』にとっての敗北であった――。
大成功
🔵🔵🔵
風車・拳正
……こんな形でまたリングに立つとは思わなかったぜ
俺が使うのはボクシング。さしずめ今回の試合は異種格闘って所か。(再びリングに上がるつもりはなかった。その資格はない、チャンスはないと思っていた。しかし)
……いいぜ、ならぶつけてやるよ、俺の拳を、全力の一撃をな
(ーー集中しろ、集中して力をただ一点に、拳に溜めろ。それが俺に出来る、相手への最大の返事だ)【集中力、力溜め、気合い】
(ーー今だ!)
(これが俺の最大、最高の一撃!)
ーーぶっ飛べ! ショック・ザ・ビックバン!!【限界突破、覚悟、捨て身の一撃】
後退した己の足をプロレスフォーミュラ『デスリング総統』は見た。
如何なる攻撃をも『受け』きってこそのプロレス。
己の美学であり、矜持であった。
しかし、猟兵の全力に寄って遂に彼の足は後退を見せた。
「グロロロ! なんたる、なんという……! これが猟兵の全力か! グロロロロロロ!!!」
『デスリング総統』は笑った。
額は割れ、体躯に刻まれた傷跡からは血潮が溢れ続けている。
だというのに彼は笑っていた。
己の敗北が近づいているというのに笑っていたのだ。
楽しいのだろう。
これぞ己の求めたプロレスである。
全力と全力がぶつかる戦い。この熱き血潮を言葉で表すことはできない。
「グロロロ! だが、もっとだ! もっとだ!!」
そう叫ぶ『デスリング総統』を風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は複雑なる心境で見た。
リングに立つ。
こんな形でリングに再び立つとは思わなかったのだ。
「言っておくが」
「なんだ、猟兵。いつでも来い」
「俺が使うのはボクシングだ。さしずめ今回の試合は異種格闘技ってところだろう」
拳正はリングに上がるつもりはなかった。
その資格など己にはないと思っていたのだ。
巡ってくることもないと思っていたチャンスが眼の前にある。葛藤はあっただろう。
けれど。
「おべんちゃらはよいのである! 四の五の言う前に上がって来るがよいのである!!」
「……いいぜ、ならぶつけてやるよ、俺の拳を」
拳正はリングに上がる。
見据えるは巨大にして強敵。
誇り高き『デスリング総統』の姿だった。みなぎる重圧は凄まじいものであった。
故に拳正は呼吸を整える。
集中だ。
集中しなければならない。
あの体躯は黄金にして鋼鉄。ならば、己の持てる力をただ一点に。己の拳に込める。
それが己が『デスリング総統』……そのプロレス競技の頂点にたつ男へと出来る最大の礼儀にして返事だった。
「全力の一撃をな!」
踏み込む。
大地を蹴る足は力を足首、膝、股関節、腰部に伝える。
伝導するたびに力が増幅されていく。
ひねる腰。それは螺旋のよう体を駆け上がっていく。躍動する筋繊維が引きちぎれていく。生み出され、増幅した力に耐えられなかったのだろう。
それはロスだ。
わかっている。
だが、それでも拳正は己の拳を振り抜く。
肩から伝わるエネルギーがまっすぐ伸ばされた肘を抜けて拳へと集約される。
己の最高の一撃。
最大の一駅。
「――ぶっとべ! ショック!(ヒッサツノイチゲキ)ザ・ビックバン!!」
放つ一撃が『デスリング総統』の胸を打つ。
衝撃が吹き荒れ、その一撃は彼の心臓を撃ち抜くような力となって巨体を揺らすだろう。
拳がひしゃげる音が拳正の中に響く。
「見事な一撃であった! ごふっ……っ!」
「あんたもな」
拳正の前で血反吐を撒き散らす『デスリング総統』。
己の一撃を受けてなお、ただ一歩の後退もなく。リングに立つことを辞めぬ存在を見上げ、拳正は、己の最大の一撃を見事といった男の生き様を見るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…変な奴しか居ないのか!
もう兎に角、癖が強い!!
どいつもこいつも…
まあ、真っ当に戦いに来られるよりはマシだけど…
完全に受けに回るって言うんなら、遠慮なく仕掛けさせて貰うよ
超克…オーバーロード
外装転送、抜刀は無し!
そっちが腕四本なら、こっちも同じ手数で戦う!
出力最大、全力で投げる!
【アームデバイス起動】
デスリング総統の腕をがっつり掴む
外装の腕で、奴の上の手を拘束
『オーラ防御』、私の生身の腕をシールドで強化
下の手は私自身の手で掴み、がっつり組み合おう
そして掴んだデスリング総統を振り回し、何度もリングへ叩き付ける!
そっちが受け切るつもりなら、全力の超克でこっちの力をぶつける!
叩き付けた後、此方を掴んで来たら私自身は掴まれないよう外装を掴ませる
投げ飛ばされる寸前に外装パージ、生身でリングに飛び出そう
外装は後で修理しなきゃね
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀して、戦闘継続の意思を見せ付けておこう
確かに君ほどの強さは無いかもしれないけれども
負けるつもりは、全然無いよ!
心臓が破裂してもなお、プロレスフォーミュラ『デスリング総統』はリングに立つ。
己の生きる場所は其処しかなく。
己の死す場所もまた其処なのだ。
そういうように亮平たちのユーベルコード、その全力を『受け』続けた彼は遂に体を傾がせた。
だというのに。
「グロロロ! 心臓失ったとしてもワガハイが! これしき!」
黄金律の如き体躯。
心臓が血潮を全身に送り出す役割を果たしているというのならば、全身の筋肉を躍動させ、血潮を送り出すまで。
心臓失う程度、と『デスリング総統』は、その超人っぷりを発露させる。
「破裂したのならば! 心臓が再生するまで我が体躯、筋肉で持って命脈を紡げばよいだけのことよ!!」
謎の超人理論である。
自分で心臓掴んで心臓マッサージするくらいにデタラメであった。
そう、『デスリング総統』は敗北を認めていない。
後ひと押し。
「……変な奴しかいないのか! もう兎に角、癖が強い!」
どいつもこいつも、と月夜・玲(頂の探究者・f01605)はうめいた。
まあ、たしかに真っ当に真正面から此方を滅ぼしに来るというのならば、どうしようもなかっただろう。
けれど、『新生フィールド・オブ・ナイン』たちのいずれもが、あくまで超人スポーツとしてのルールを逸脱すること無く猟兵たちに戦いを挑んでくるのだ。
「超克……オーバーロード。外装転送!」
玲の瞳が超克の輝きを宿して、転送されてきた外装副腕と共に『デスリング総統』へとふいこむ。
抜刀することのなかった模造神器の蒼き光が外装副腕にエネルギーを満たしていく。
「そっちが腕四本なら、こっちも同じ手数で戦わせてもらう!」
「面白い! ロックアップといのならば!!」
四つ腕が互いに組み合う。
みしり、と音が響く。
玲は己の腕にオーラでもって強化していた。シールドのように、膜を張るようにして防御の力を強化しているのだ。
なのに、きしむ。
恐るべきは『デスリング総統』の膂力であろう。
「見せてみろ、猟兵! このワガハイに! 貴様の全力を!!」
「こな、くそ!!」
玲は己の頭の血管がぶち切れるかのような感覚を覚えた。ユーベルコードに輝く瞳。外装副腕のパワーと玲自身の強化された膂力で持って『デスリング総統』の巨躯を持ち上げる。
宙に浮かぶ体。
「そっちが受け切るつもりなら、全力の超克でこっちの力をぶつけるまでだよ!」
おらぁ!! と玲は裂帛の気合と共に『デスリング総統』の体をリングに叩きつける。
衝撃が走る。
リングに激震が走り、雷鳴の如き轟音が響き渡る。
一度ではない。
何度も、何度も、何度も。
しかし、それでもなお『デスリング総統』は敗北を認めない。
なんたる敵であろうか。
ここまでのタフネスを経験したことはない。
互いの四つ腕でくみあいながら『デスリング総統』が立ち上がる。揺らめく闘気。
「受けろ、ワガハイの四次元殺法を! 骸の海送りのデスリングスープレックス……すなわち、デスリングスープレックスを!!」
玲の体が持ち上がる。
踏ん張ることができない。四次元のちからが働いているのだろう。組み合った体がリングに叩きつけられれば、玲は骸の海へと吹き飛ばされるだろう。
猶予はなかった。
「パージ!」
外装副腕が砕けるようにして玲の背面から吹き飛ぶ。だが、『デスリング総統』は不敵に笑った。
「グロロロ! 逃れるものか! ワガハイは貴様の腕を掴んでいるのだからな!!」
「――ッ!!」
念動力。
パージされた外装副腕から模造神器が二振り、加速して玲の生身の腕を掴む『デスリング総統』の腕部へと突き立てられる。
さらに飛び出した模造神器の残す二振りが『デスリング総統』の足の甲を貫く。
「ぐおっ!?」
緩んだ瞬間、玲は掴まれていた腕を振り払って、足の甲を貫いた模造神器の二振りを取る。
縫い留められたのは一瞬。
だが、それで十分だった。
たしかに。
「たしかに君ほどの強さは私にはないかも知れないけれども」
「ならば何がある!」
「負けるつもりは、全然ないよ! 後は!!」
残されたのは、踏み込む勇気。
玲の手にした模造神器の交差させた一撃が『デスリング総統』の体を切り裂く。
血潮が噴出し、『デスリング総統』は満足げに頷いた。
「ナイスファイトだ、猟兵! ワガハイの」
負けだ、とリングに上がった全ての猟兵を称賛するように、彼は頭を垂れるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵