バトル・オブ・オリンピア⑱〜エンカウンター・セラフィム
●聖なる哉、聖なる哉
未公式競技『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』の世界大会が行われていた『WBC』スタジアムは『バトル・オブ・オリンピア』が始まって以来、深刻なダメージを負っていた。
異星よりの侵略者『ギャラクシィリーガー』たちによっサッカーフィールドへと変貌させられに、更には変形した豪華絢爛たるテニスコートは猟兵とダークリーガーとの頂上決戦によって、それはもうズタボロのボロという具合に痛み切っていた。
壊滅的な破壊に見舞われていたと言ってもいい。
そして、それに追い打ちをかけるように『新生フィールド・オブ・ナイン』の一柱、キャンプフォーミュラ『キャンピーくん』が突如出現したのだ。
「……な、なんだアイツ可愛いー!?」
『アイン』と呼ばれる少女は、突如として現れた『キャンピーくん』の姿に黄色い声を上げた。
そう、彼女の瞳に映るのはオブリビオンにしてキャンプフォーミュラ。
黄色いテントに兎耳めいたターフと手足ついたゆるキャラめいた謎の存在だった。
それは古代アスリートアースにおいては『マスコット』と呼ばれる種族であったようだが、ここにおいては知る由もない。
「うん、キャンピーくんだよ」
「しゃ、しゃべったー!?」
「え、喋るんですか? 喋れるんですか? 意思疎通が可能なんですか!?」
『ツヴァイ』は理解できないと言わんばかりに『キャンピーくん』登場にめまいを覚えたようだった。そりゃそうである。
マスコットキャラクターっていうか、ゆるキャラな存在が中身など存在しないというお約束をぶっちぎるように、それ単体で生物であることを主張したのだから。
「うん、喋れるよ。意思疎通出来るかどうかはキャンプしてみたらわかるんじゃないかな~? とりあず、コーヒーどうぞ~」
「これは丁寧にありがとう!」
「え、えええ……どう考えても味方っぽい感じなんですけど、だ、ダークリーガーさんなんですか?」
『ドライ』と呼ばれる少年と『フィーア』と呼ばれる少女はステンレスマグのコーヒーを受け取って尋ねる。
「『フィールド・オブ・ナイン』だよ~。一緒にキャンプしようよ~」
「きゃ、キャンプ? 今? こっち大変なんだけど……」
そう、めちゃくちゃになった『WBC』スタジアムを修繕して『プラクト』世界大会の再開を目指しているのだ。
そんな折に『キャンピーくん』が現れたものだから、手が止まってしまっているのだ。
こんな時にキャンプしている暇なんてないのだ。
「そうなの~? でも、少しくらいは休憩しちゃってもいいんじゃないかな~? それに大変な時にこそ息抜きって大切だよ~」
「で、でででも……」
「復興は早ければ早いほどいいだろう! そうじゃあないか!」
「う~ん、『キャンピーくん』はむつかしいことはわからないけれど、そうだ! 僕のなかに入ってきて~君たちも、皆一緒に~」
そう言って『キャンピーくん』はニッコリマークみたいな顔のまま己の体たるテントの入り口を示す。
「此処に入れってのか……?」
『アイン』たちは誘われるままに『キャンピーくん』の示した入り口へと足を踏み出す……。
そこにグリモア猟兵、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は駆けつけたが、しかし間に合わなかった。
「一足遅かったようですね……! 皆さん『キャンピーくん』は『自由に異世界を移動できる』という恐るべき能力を持ち、情事『どこでもキャンプ』を常時発動しています」
つまり、周囲ではすべての戦闘行為が無効化されるということだ。
そもそも戦って滅ぼすことができない。
どう考えても最強に近いオブリビオンである。
だが、幸いにして『キャンピーくん』は此方と交戦の意志を見せていない。
ただ彼は目一杯キャンプを楽しんでくれることだけを望んでいる。
彼が満足すれば、『キャンピーくん』はいなくなるのだという。
「しかし、この先は……一体何処に……」
「それは『クロムキャバリア』だよ~ちょうどよく『難民キャンプ』があるから、そこが『キャンプにピッタリの場所』だよね~大変かもだけれど、キャンプを楽しんでよ~」
『キャンピーくん』は相変わらずニッコリ笑顔で猟兵たちを己の体たるテントの中に手招きしている。
おそらく現状では倒すことなど不可能たるキャンプフォーミュラ。
彼を満足させることだけが、唯一。
ならば、猟兵たちは恐れなく踏み込むだろう。罠である可能性もなきにしもあらずだが、臆することはない。
猟兵たちは『キャンピーくん』の中に足を踏み入れるのだった――。
●トーラーは示す、エースの所在
そこはかつて『第三帝国シーヴァスリー』と呼ばれた小国家であった。
だが、オブリビオンマシンの蠢動によって徹底的に破壊されてしまっていた。
平和の園としての姿はもうない。
かろうじて奪われなかったプラントのおかげで人々は生きることはできた。だが、圧倒的に物資が足りていない。
小国家としての体裁はなく。
あるのは『難民キャンプ』だけだった。
「……な、なんだよ、これ……こんな……!」
少女アスリート『アイン』は目を見開いた。
荒廃した『難民キャンプ』に、ではない。
彼女の瞳に映るは、鋼鉄の巨人。
それは体高5m級の戦術兵器キャバリア。サイキックキャバリアに分類される機体。
四騎の『セラフィム』だった。
赤と青の装甲を持つ機体。
それを彼女は知っていた。
「あ、あれは……私が作った『セラフィム』! なんでこんな、でっかくなっちまってんだよ!」
眼の前に立つ『セラフィム』は大型突撃槍を手にしていた。
装備も、シルエットも、塗装も、全てが彼女の作り上げたものと同一だった。
そして、他の三騎もまた『ツヴァイ』たちの作り上げたプラスチックホビーと同一だった。
理解が追いつかない。
けれど、此処は『難民キャンプ』だ。
まごうこと無き戦争状態から脱したとは言え、問題を山積した……|彼女たちの知る世界《しあわせなゆめ》とは程遠い世界だった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『バトル・オブ・オリンピア』の戦争シナリオとなります。
恐るべき『自由に異世界を移動できる』という能力を持つキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』の誘いによってアスリートアースではなく、クロムキャバリアの『第三帝国シーヴァスリー』の『難民キャンプ』へと転移しています。
目一杯キャンプを楽しむことで『キャンピーくん』は消えるようです。
とは言え、クロムキャバリアの『難民キャンプ』を目一杯楽しむ、というのはなんとも難しい気がしないでもないでしょう。
この場合の『目一杯楽しむ』というのは、おそらく『難民キャンプ』の人々を笑顔にする、ということなのでしょう。
また『第三帝国シーヴァスリー』の『難民キャンプ』には周辺小国家の『ビバ・テルメ』から四騎のサイキックキャバリアに乗った『神機の申し子』たちが救援にやってきているようです。
ここが『難民キャンプ』になっているのは、猟兵からの提案によって彼らが行動した結果なのです。
言い出しっぺは『援助ついでに『第三帝国シーヴァスリーfeat.温泉国家』とかに改名して傀儡政権作ろうぜ!』ということだったのですが、『神機の申し子』たちは手をこまねいているようです。
難民となった人々を元気づけることをしてもよいでしょうし、毎日同じ食事で飽き飽きしている彼らに美味しいキャンプめしを振る舞ってもいいでしょう。
とにかく、この『難民キャンプ』に楽しい、生きることは希望だということを示せるようにすれば『キャンピーくん』は満足して消えることでしょう。
まあ、単純に『みんなとキャンプした~い』と願っているだけなのかもしれません。
プレイングボーナス……キャンピーくんとキャンプを楽しむ。
それではアスリートアースに巻き起こる熱きスポーツバトルの祭典を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますように、たくさんがんばります!
第1章 ボス戦
『キャンピーくん』
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POW : ここをキャンプ地にするよ〜
レベルm半径内を【キャンプ地】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ダメージを伴わない全ての行動】が強化され、【ダメージを与える全ての行動】が弱体化される。
SPD : ここをキャンプ地にするよ〜
レベルm半径内を【キャンプ地】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ダメージを伴わない全ての行動】が強化され、【ダメージを与える全ての行動】が弱体化される。
WIZ : ここをキャンプ地にするよ〜
レベルm半径内を【キャンプ地】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ダメージを伴わない全ての行動】が強化され、【ダメージを与える全ての行動】が弱体化される。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シルヴィ・フォーアンサー
SPD
……よりにもよってクロムキャバリア。
『楽しくキャンプというにはダークセイヴァーやアポカリプスヘルと並んで向かない場所だな』
笑顔ね、シルヴィはお腹いっぱいになれば満足だから炊き出ししようか。
キャンプはカレーっていうし材料をキャバリアで満載して持ち込み。
調理は人型端末のヨルにお任せ……適材適所って便利な言葉。
シルヴィは混乱してるアイン達にこの世界を説明しようか……多少は慣れたしなんとか話せる、たぶん。
説明終えたら出来上がった炊き出しのカレーの配膳でも手伝ってもらおうか、暇でしょ?
シルヴィもやるの……うう(ガチガチになりながら行う)
終わったら残ったカレーでも皆で食べようか……残ってればだけど。
戦乱が続く世界。
それがクロムキャバリアである。常に戦争の火種はくすぶり続け、平和を求めれど、しかし。
願いはいつだって砲火に吹き飛ばされていく。
平穏を得たとしても仮初でしかなく。
いつだって戦火は足元に迫っている。そうと知ることもできぬままに生命散ることだってあるだろう。
「……よりにもよってクロムキャバリア」
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)はキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』の中に足を踏み入れ、目の前に広がった光景に絶句するしかなかった。
そこにあったのは荒廃した小国家の有様。
かつては平和の園とさえ呼ばれた小国家『第三帝国シーヴァスリー』の荒れ果てた光景。
広がるは『難民キャンプ』。
オブリビオンマシンの蠢動によって破壊され尽くした小国家の跡を人々は離れられないでいる。
この荒野において人が行きていくにはあまりにも弱々しい。
プラントが奪われることなく残ってはいるが、しかし、人々が多すぎるのだ。破壊され尽くした跡から離れられないのは、きっと彼らもかつて在りし平和の残影に未だ取り憑かれているからだろう。
『楽しくキャンプというにはダークセイヴァーやアポカルプスヘルと並んで向かない場所だな』
AIの『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは頷く。
『キャンピーくん』は猟兵たちが目一杯キャンプを楽しんでくれたら満足して消えるのだという。
だが、こんな『難民キャンプ』の中において何をどう楽しめというのだろうか。
誰もが鬱屈とした顔をしている。
生命あれど、生命以外のすべてを失ったのならば、人は果たして生きていけるだろうかか。
生きているだけ、といういのならば死んでいるのと同じではないか。
生きることは頼まれなくてもしなければならないことだ。
だったら、とシルヴィは決意する。
「笑顔。笑顔。笑顔。シルヴィはお腹いっぱいになれば満足だから、炊き出しをしよう」
『それは良い考えだ。だが、どうするね』
「キャンプはカレーっていうし、材料を持ち込もう。できるよね」
『それはできるさ。何のためのキャバリアだい』
『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは頷く。
だが、彼女は頷いただけであった。
『まさか』
「そう、ヨル、お願いね。人型端末なら料理もできるでしょ。適材適所って素敵で便利名詞」
『君は何をするんだ』
「シルヴィは混乱している『アイン』たちにこの世界を説明するよ。多少は慣れたし、なんとか話せる多分」
なんとかなれ! とシルヴィは『アイン』たちに近づく。
だが、ちょっとまだおっかなびっくりである。
「結局、えっと、何? え?」
「だから、あれはキャバリア……正確にはサイキックキャバリアと呼ばれる機種で」
「私達の作ったホビーと同じ形なのは」
「え、わかんない……」
「わかんないことが増えたな!」
「でも、そういうことなんだって。現実なのこれが」
「あ、ああの、なんだかあの呼んでいますよ?」
『アイン』たちになんとか説明しようとシルヴィはしどろもどろになりながらも頑張っていたところに『ヨルムンガンド』からカレーの調理が終わったと呼びかけられる。
『配膳を頼んだよ』
「そりゃするけどさ……でも」
『アイン』が見たのはシルヴィだった。彼女はガチガチにゴチゴチになっていた。
緊張で体が動かないのだろう。
「シルヴィもやるの……うう」
やりたくない。
でもやらなければならない。みんなを笑顔にさせる。それはきっとお腹が膨れれば自然と成るものはずだ。
そう思ってシルヴィは、意を決して『難民キャンプ』の人々にスパイス香るカレーをがちゴチになりながらも配り、その笑顔の輪の中に足を踏み入れるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
三上・くぬぎ
わーいわーい、キャンプですー!
……もきゅ、難民キャンプ?
よくわからないですけど、キャンプって付いてるですからキャンプですよね
楽しくキャンプしましょうです!
くぬぎ、この前とってもおいしいキャンプごはん作れたですよ。材料持ってきたですから、みなさんにも食べてもらいたいですー!
フライパンにマシュマロとバナナとチョコを入れて焼くです
これだけでとってもおいしいですよ。みなさんも、キャンピーくんもどうぞどうぞですー♪
おいしいもの食べたら、楽しくなるですよね!
「わーいわーい、キャンプですー!」
三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)はとっても浮かれていた。
大いなる戦い、アスリートアースにて起こった『バトル・オブ・オリンピア』は正しくスポーツの祭典じみた戦いが繰り広げられていた。
凄まじいまでの超人アスリートたちとの競い合い。
それは手に汗握るようなものばかりであったが、時にキャンプのように楽しく過ごすことを目的とした戦いもあったのだ。
「そうだよ~一緒にキャンプしようよ~」
キャンプフォーミュラ『キャンピーくん』のゆるい声が聞こえる。
彼は確かにオブリビオンでキャンプフォーミュラである。
だが、一つも戦意を感じない。事実、彼自身は戦うつもりはないのだろう。
『どこでもキャンプ』と呼ばれるユーベルコードが常に発動している状態ゆえ、ここでは戦闘行為が一切行われない。
だが、くぬぎが『キャンピーくん』の中に入って転移した世界は、荒廃した『難民キャンプ』だった。
「……もきゅ?」
楽しいキャンプ。
なら、そこにあるのは広大な自然であったり、グランピングのような整備された場所であろうと思っていたのだ。
だが、くぬぎの目の前に在ったのは荒廃した小国家の跡。
困窮した人々が集う『難民キャンプ』だった。
「これは?」
「『難民キャンプ』だよ~キャンプってついているからキャンプなんだ~」
『キャンピーくん』のニッコリマークみいたいな顔は変わらなかった。
問答は無用ということだろう。
キャンプとついていれば、みんなキャンプなのである。本来のキャンプという楽しさからは程遠い光景であれど、くぬぎは深く頷いた。
「よくわからないですけど、キャンプですね! 楽しくキャンプしましょうです!」
「よかった~気に入ってくれて~それじゃ~良いキャンプを~」
一緒に楽しもうね~と『キャンピーくん』はゆるい笑顔のままだった。
くぬぎはもこもことした体でふわふわと浮かびながら『難民キャンプ』を見て回る。
誰も彼もが鬱屈とした表情をしていた。
そんな彼らの顔を見ていると、くぬぎは心がシクシク痛むのを感じた。
自然と御主人様からもらったお花の形をした虫かごを撫でた。
彼らは生命以外のすべてを失ったものたちだ。憐憫の感情以上に、くぬぎは己の中にある主人との思い出を思い出す。
どれもが温かいものだった。
だから、と思う。
生命以外のすべてをまだ、人々は失ったわけではないのだと。
まだ心のなかには平和だった頃の思い出があるはずだと、そう思って、くぬぎは声を上げる。
小さな子供らがくぬぎを見上げていた。
「くぬぎ、この前とっても美味しいキャンプごはん作れたですよ」
「きゃんぷごはん?」
「そうです。キャンプごはん。とっても美味しかったので、みなさんにも食べてもらいたいですー!」
くぬぎは子供らと共に火を起こす場所を来て回る。
「火を使っていい場所はこっちです?」
「そう、こっち。どこでも火を使って良いわけじゃないんだって」
「そうなんですねー。お母さんたちは今何を?」
「色んな場所を直すのに忙しいんだって……だから」
だから、と子供らは表情を暗くする。その顔に、くぬぎは思う。そうだろう。寂しいはずだろう。寂しくないはずがない。見通せぬ暗闇のような人生において親の存在は、子供らにとっては光だ。
危なくないよ、と道行を照らすことができるのが親だ。
その親がそばに居ないという不安を彼らは抱えていrのだと理解し、くぬぎは発奮する。
「まかせてください。くぬぎ、とっても美味しいの作れます。みなさんも一緒に作って、お母さんたちに食べさせてあげましょう!」
そう言って、くぬぎは持ち込んだ材料を広げる。
子供らと共に広げたのはフライパンにマシュマロ、バナナ。
そう、マシュマロとバナナを敷き詰めていく。なんだかそれだけで楽しい。子供らの表情も幾分和らいできたように思えた。
「次は? 何する?」
「ふふ、ここにチョコを入れるのです。火をつけて……あとは焼くだけです♪」
くぬぎたちは火にフライパンをかける。
熱でトロトロになったマシュマロとバナナ。そしてチョコレートが合わさっていく。
単純だ。
簡単だ。
けれど、それでも子供らは笑顔になっていく。甘い匂いが広がっていき、それだけで、ぐう、とくぬぎのお腹がなったのを皆で笑う。そうすると子供らのお腹もぐうぐうなって、さらに笑い声が環になっていくのだ。
「さあ、できあがりましたー♪ さ、みなさんも『キャンピーくん』もどうぞどうぞですー♪」
くぬぎの屈託のない笑顔が環の中心にあった。
それはきっと困難な境遇にあっても忘れることのない味。
くぬぎは思う。
どんなに悲しいことがっても、辛いことがあっても、それでも人は笑顔になれる。
美味しいものを食べたら、それだけで楽しくなるのだと証明するように、人々の環の中でくぬぎは笑顔を振りまくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…此処に繋がるか~
此処に繋がるか~~~~!!
キャンピーくんめ!こんな所に繋げたか~~!!
ぐぬぬ、ちょっと変装していこ
深めのハンチングキャップに、なんか良い感じのサングラス
そして鋼鉄製のマスク
そう、さながらアニメのマスクキャラのように正体を隠して行動しよう
食事も大事だけど、後はあれだ
お風呂!そう、温泉国家の傀儡にするなら、風呂の素晴らしさを此処で刷り込む!
キャンピーくん、風呂沸かしたいからユベコ使っていい?
いいよ
ありがと
よし!
ドラム缶を拾ってきてドラム缶風呂だ!
仕切りとかはまあ良い感じにしつつ、ドラム缶を並べて水を入れて…【偽書・焔神】起動
そう、私は謎のマスク風呂屋…
存分に浸かり清潔になるのだ!
恐るべきはキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』の異世界移動能力である。
自分だけではなく、己の中に入った者たちをも巻き込んで世界を移動する。その力はハッキリ言って規格外であったし、またユーベルコード『どこでもキャンプ』を常時発動しているため、戦うことはできない。
戦って勝利することのできない存在が世界をひょいひょい移動する。
それはハッキリいって最強に近しい力であったことだろう。
「……此処に繋がるか~」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思わず天を仰いだ。
『キャンピーくん』のテントの中、その先にあったのはクロムキャバリアの小国家『第三帝国シーヴァスリー』だった。
かつては平和の園とまで呼ばれた小国家は、しかし、戦乱によって徹底的に破壊されていた。
小国家の要たるプラントをこそ奪われていないが、あらゆるものが破壊されていた。
未だ復興の兆しが見えないのは、その増えすぎた人口故であったことだろう。
生きている人々を優先しなければならない。
物的な資源はどうにでもなるが、人的な資源は一朝一夕で取り戻せるものではないからだ。
「此処に繋がるか~~~~!!『キャンピーくん』め! こんなところに繋げたか~~!!」
そう、目の前にあるのは『難民キャンプ』である。
キャンプってついているから、キャンプ。
まあ、理屈は通ってる。通っているが! だがしかし、玲は『援助ついでに『第三帝国シーヴァスリーfeat.温泉国家』とかに改名して傀儡政権作ろうぜ!』と言い出した張本人である。
やばい。
身元が割れるのはやばいので、ちょっと変装しようと、見ればキャンプルックめいたハンチングキャップを目深にかぶる。
此処で『神機の申し子』たちにでも見つかろうもんなら大変っていうか面倒くさい事になりそうだった。あとサングラス。なんか良い感じのサングラスをかければ、正体不明の『プラクト』アスリートで通せるだろう。
他の皆が絶対にあれ、玲だよなって思っていても空気読んで謎のマスクドイェーガーとして扱ってくれるはずなのである。
そういうもんなの。
アニメのキャラだってこれでやり通せたでしょ。ならやれるはずだろう!
「……食事も大事だけどね。後はあれだ」
そう、と玲は『難民キャンプ』の様子をみやり思う。
彼らを笑顔にしなければならない。
衣食住足りて、とはよく言うことだ。ならば、此処に足りないのは『住』である。衣食は足りていても、住まう場所がない。
過密なキャンプの居住性。
どうしても心が狭まってしまう。
人のパーソナルスペースというのは案外狭いようで居て広いのだ。
「お風呂! やっぱり生命の洗濯とも言うしね! それに! 温泉国家の傀儡にするなら、風呂の素晴らしさを此処で刷り込む!」
やることなすこと全部玲はえげつない。
温泉の魔力に人々を取り込もうというのだ。
「『キャンピーくん』、風呂沸かしたいからユーベルコード使って良い? いいよありがとよし!」
「いいよ~」
『キャンピーくん』が返事する前にすでに玲はユーベルコードで持って模造神器から炎を噴出させていた。
どっからともなく拾ってきていたドラム缶の底に木板を敷いて水を打ち込む。
温泉とは言い切れないが、温かいお湯というのはそれだけで体を温め、結構を良くする。筋肉の緊張をほぐせば、神経だってささくれていた部分が落ち着いてくるってもんである。
「問題は! 数!」
そう、ドラム缶一つや二つじゃあ無理なのである。
ならばこそ、玲はドラム缶を片っ端から集めてきては水を注ぎ、ユーベルコードの炎でもって廃材を燃やしてドラム缶風呂を作り上げるのだ。
「あったかいよ~いい感じに沸いてるよ~」
玲はハンチングにサングラスというクソみたいに怪しい格好で謎のドラム缶風呂屋を経営し始める。
どんなときだって商機を逃さない。
これが商売人の鉄則である。
「……あの人って」
「どう見ても」
「ああ、そんな気がしていたが」
「でも、声掛けんなオーラがすごいです……」
『神機の申し子』たちは玲の姿を認めていたが、あふれるオーラに尻込みしていた。
「そう、私は謎のマスク風呂屋……誰がなんと言おうとも謎のマスク風呂屋なんだ……さあ、存分に浸かり清潔になるのだ!」
玲は『難民キャンプ』の人々を次々とドラム缶風呂に叩き込み……いや、誘引してはその体と心をぽっかぽかにしていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
常に笑顔を絶やさず対応
いくつかの肉野菜とウインナー、コンソメ
水と塩コショウを持ち込みポトフ作り
スープ系は量産しやすいからお代わり確保も出来るし
栄養も安心も貰えるから
キャンピーさんも…神機の申し子の皆さんもどうぞ
子供には食後のおやつ用に飴も配る
それと…ねぇキャンピーさん
この人達の思い出作りの為だけに、UC使っていいですか?
OKならUCで優しい光と花の雨を生成
駄目でも聖痕の力で花園だけでも
僕の魔力で出来た花園はそのうち消えてしまうけれど
花冠や栞作りとかに加工すれば、思い出として残す事も出来るから
貴方達の幸せは、これからちゃんと見つかるよ
例え少しずつだとしても、必ず
僕が保証する、だから信じて。ね?
クロムキャバリアという世界において戦乱というものは常なるものだった。
常に戦乱が芽吹く。
炎が吹き荒れるように平和への祈りさえも吹き飛ばしていく。
そういうものだと知っていたのならば、何かが違っただろうか。いいや、何も違いはしないだろうと思う。
争いなき平和を求めながらも、しかし、平和というものがなんであるのかを知らぬのならばまだ幸せだったのかもしれない。
平和を知ったがゆえに争いの恐ろしさを知ったというのならば、それもまた酷であった。
「『キャンピーくん』さんも……『神機の申し子』の皆さんもどうぞ」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は笑顔を浮かべていた。
笑顔を絶やすまいと決めていた。
そう、此処は戦乱の中。
破壊された平和の園とも言うべき小国家の痕跡ばかりが残る場所だ。
『難民キャンプ』である。
此処に生きる人々は明日すらも知れぬ者たちばかりだ。
澪が差し出したのはポトフだった。
幾つかの野菜とウィンナー、コンソメと水、塩コショウを持ち込んでいたのだ。コトコトと焚き火で煮込んで作ったのだ。
冬の季節にはありがたい暖かさだっただろう。
「いいの~ありがと~」
『キャンピーくん』はお礼を言っている。本当に敵か? と思ってしまうほどに彼は澪から受け取ったポトフを口に運んで、アチチチと言っている。
「ありがとうございます。食料自体はプラントが残っているのでどうとでもなるんですが」「でも、温かい食料というのは貴重で」
『神機の申し子』と呼ばれる彼らは澪に礼を告げる。
元々彼らは『シーヴァスリー』から侵攻を受けていた『ビバ・テルメ』という小国家の救援部隊だった。
この状況に敵味方ないと駆けつけたのだ。
「いいえ。よかったらみなさんに配ってあげて」
澪はこの状況を歯がゆく思っていた。
誰もが鬱屈とした表情を浮かべていた。
それもそうだ。
生きていたとしても、破壊された自分たちの住居や生活圏が目の前に広がっているのだ。身が無事でも心が傷ついている。
子どもたちにおやつ用の飴を配ってみたが、それも焼け石に水だろう。
今は良くても彼らの心にできた傷跡にはかさぶたように戦乱がのしかかっている。
だから、澪は『キャンピーくん』に尋ねる。
「ねぇ……『キャンピーくん』さん……この人たちの思い出づくりのためにユーベルコード使っていいですか?」
澪は尋ねる。
そう、確かに食料はある。
生命だってある。
けれど、心に負った傷はどうしようもない。
なら、と澪は思うのだ。
「いいよ~」
「ありがとう。みんなの。貴方の闇に、希望の輝きを」
それはユーベルコード。
この世のものとは思えぬ美しい花と破魔の光が降り注ぐ。
それは悪を浄化する天上世界へと変貌させるユーベルコードだった。
「わあ……」
それはかつて在りし平和の園と酷似した光景だっただろう。
人々は見た。
もうそれがないということを。けれど、胸のうちにはあの平和な日々があることを思い出したのだ。
だから。
「貴方達の幸せは、これからちゃんと見つかるよ。例え少しづつだとしても、必ず」
澪は生み出された花を一つ摘んで、子供らに手渡す。
難しいかな。
そう思ったけれど、子供らの前に膝を折って微笑む。
「僕が保証する、だから信じて。ね?」
約束、と澪は『難民キャンプ』にて彼らの心に寄り添う花を咲かせ、『いつか』を約束するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
取り敢えず…おいキャンピー君!キャンプフォーミュラならチャンプ道具存分に用意しろ!食材はいけるか!?
「いけなかったら此方で用意だぞ☆」
つー訳でお久しぶりだな?五月雨ーず?
フュンフはいるのか?
まあ…ここはあーいうのに乗って国同士が生きるために戦い続けてる世界だよ
そしてあれはあれはセラフィム
この世界で活躍してる超高性能機だ
よーう(神機の申し子達に呼び掛け)
互いに紹介させとく
折角ならエイルやACEの物語も聞かせてやりな
僕も話すからよ
セラフィムも…ここ以外も沢山いるぜ?(お前らもな)
つー訳で炊き出しと復興手伝いに来たぜ?
「ご主人サマー☆こういう時はあれの出番だぞ☆」
うっがー!
地獄のUC発動!
「「ひゃっはー☆」」
【情報収集・視力・医術】
全軍散らばり建物復興や片付け手伝い
そして何か怪しい痕跡諸々も調査しておく
キャンプ飯諸々
「焼き玉蜀黍☆焼きまんじゅう☆アヒージョもあるよ☆これからこの国をジャパニアツーにするぞ☆」
炊き出し
五月雨ーずは…手伝いと…プラクトやってな
申し子達も休憩がてらやってみろ
面白れーぞ
キャンプフォーミュラ『キャンピーくん』の能力は凄まじいものだった。
世界を自由に移動するというデタラメさ。
常時発動しているというユーベルコード『どこでもキャンプ』。
これらによって彼を戦闘行為で害することはできない。
倒すことの出来ぬ存在は、しかし猟兵たちがキャンプを目一杯楽しむことで消えるという。ならば、このクロムキャバリアにおいてもキャンプをしなければならない。
とは言え、彼らが連れてこられたのは『第三帝国シーヴァスリー』の跡地だ。
「つー訳でお久しぶりだな? 五月雨ーず?」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は一足先にクロムキャバリアに『キャンピーくん』と共に転移してしまったアスリートアースの少年少女アスリートたちの前に立つ。
「変な愛称つけんなよ! なんだよ此処は!」
『アイン』と呼ばれる少女は目を丸くしている。
いや、動揺してると言ってもいいだろう。
彼女たちの生きるアスリートアースとはかけ離れた世界。
戦乱ばかりが渦巻く世界。
それがクロムキャバリアであるからだ。あまりにも違いすぎる。その有様に彼女たちの心は揺れ動いていたのだ。
「まあ……ここはあーいうのに乗って国同士が生きるために戦い続けている世界だよ」
「そういうんじゃねーよ! なんで此処の人たちはこんなことになってんだ! どうしてだ! なんでこんなことになる!」
『アイン』たちの言葉も尤もだ。
闘いといってもアスリートアースの争いは人の生死は関与しない。超人的であり殺人的なスポーツであっても、鍛え上げているがために滅多なことでは生死に関わることがないのがスポーツだ。
だからこそ、わかる。
「人と人がいるからだ。そして……争いの火種をバラまく連中がいるってーことだ。そしてあれは『セラフィム』。この世界で活躍してる」
とは言ってもカシムが知っているのは『神機の申し子』たちの駆る『セラフィム』とオブリビオンマシン化した『セラフィム・リッパー』に系列を持つ機体ばかりである。
どうして『アイン』たちの作ったプラスチックホビーと全く同一の、スケールが違うだけの『セラフィム』が存在しているのかはわからない。
けれど、とカシムは『神機の申し子』たちと『五月雨模型店』のアスリートたちを引き合わせる。
「コイツらは『神機の申し子』。互いに自己紹介しときなよ」
カシムはそう言って彼らを引き合わせる。
彼らはどうやら互いを初めて認識するようだった。なんとも言い難い空気が流れているな、とカシムは思った。
それもそうだろう。
何の因果かはわからない。
けれど、数字の名前を持つ少年少女たちは此処に邂逅したのだ。
これが何を意味するのか。何を導くのか。
それもまたわからない。
わからないことだらけだ。『セラフィム』のことも。彼らのことも。
だが、それでも自分はやるえきことがある。
「それじゃ、僕は炊き出しと手伝いしてくるぜ?」
『ご主人サマー☆ こういう時はあれの出番だぞ☆』
『メルシー』が耳元で言うものだから、カシムは思わずうめいた。
「うっがー! やめろ! どう考えても『キャンピーくん』が許さねーだろうが! 戦闘行為はよー!!」
『えー、戦闘しなければいいんでしょー? なら、これは戦闘行為じゃあなくってただの人海戦術だから大丈夫☆ んねー?』
「いいよ~」
「いいのかよ!!」
『キャンピーくん』のあまりにもゆるいノリにカシムは思わず天を仰いだ。
でもまあ、人海戦術というのならば、対軍撃滅機構『戦争と死の神』(メルシーハルノヨウジョマツリ)は最適であったかもしれない。
幼女メルシーたちが飛び出す。
「ひゃっはー☆」
一斉に飛び出して『第三帝国シーヴァスリー』の建物の残骸を片付け始める。
未だこの『難民キャンプ』は多くの人々がテント生活を余儀なくされている。それに単純なスペースの問題もある。
居住区を失った彼らにとって、パーソナルスペースの問題は当然在っただろう。
慣れぬテント生活に神経をすり減らしている者たちだっているはずだ。
そのためにも瓦礫の撤去は急務だったのだ。
幼女メルシーたちは次々と瓦礫を撤去していく。
「なんか怪しい痕跡があったら知らせろよー」
カシムの言葉に幼女メルシーたちが敬礼する。
怪しいと言えば、地下にあった坑道というか、地下鉄道施設だろう。
あれはもう使われていなかったようだが、何処かに繋がっているようだった。とは言え、それを此処で知るのは難しいかもしれない。
「なあ、私達に何が出来る?」
『アイン』たちが目の前に居た。
カシムは息を吐き出す。
『さー☆ これからこの国をジャパニアツーにするぞ☆』
「アイツを止めること」
あと、とカシムは笑って言うのだ。できることは多くない。けれど、と思うのだ。
彼らがどんな思いを抱いているかを。
知ってどうなるものではないだろう。けれど、それでもと思う心が育つのならば、『アイン』たち『五月雨模型店』のアスリートたちの心は健全に育っているということだ。
「ってのは冗談だけど、笑っとけよ。誰かが笑ってれば、他の誰かも笑う。そういうもんだ。なあ、『神機の申し子』のお前らもさ」
そう言ってカシムは『神機の申し子』たちを見やる。
彼らだって年端も行かぬ少年少女たちだ。
『五月雨模型店』の面々よりは年上だろうが、しかし、まだ子供に変わりない。
なら、とカシムは言うのだ。
難しいことは大人に任せて、今という少年時代を楽しめば良いのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
なるほど、難民キャンプ…。
ということでー、まあ私は飯盒炊飯での炊き出し…になりますねー。
塩おにぎり作りまして、配りますー。『食』って大切なものですからねー。
そして陰海月がUC使いたそうなので、使ってもいいですかねー?
※
陰海月「ぷきゅ」
枕にどうぞ、とUC使う。ふかふかだよ!
おにぎりも配るよ!
霹靂「クエッ」
友のぬいぐるみはふかふかなのだ。
「なるほど、『難民キャンプ』……」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は『第三帝国シーヴァスリー』の破壊された街並みをみやり深く頷いた。
確かにキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』はキャンプを楽しむことを第一に考えている。いや、それしか考えていないのかも知れない。
キャンプとは楽しむもの。
良いものである、と考えているからこそ、『一緒にキャンプしよ~』と戦闘行為を禁じるユーベルコード『どこでもキャンプ』を常時発動している。
だが、恐るべきはそこではない。
戦って倒せない、という点である。
オブリビオンである以上、存在していることで世界が破滅に導かれてしまう。
だというのに、戦って滅ぼせないということは、世界の破滅を座して待つしかないちうことである。
一つだけ方策がある。
それは『キャンピーくん』を自分たちがキャンプを目一杯楽しむことで満足させることだった。
とは言え、この『難民キャンプ』を楽しむ?
「難しいことでしょうねー。彼らはすみかを失った者達。その心の傷はどれほどのものか」
『疾き者』は飯盒炊飯で炊き出しを、と行動している。
塩おにぎりを作って配る。
食は確かに大切なものだ。だが、それだけは、人の心は癒えるものではない。
特に此処『第三帝国シーヴァスリー』の跡地にはプラントが手つかずで残っている。
物資も食料も足りていると言えば足りているのだ。
けれど、と思う。
そう、それだけでは人々の心は癒えない。笑顔とは心が癒やされて初めて生まれるものだ。そういう意味では『難民キャンプ』を楽しむ、というのは無理難題にも近しいものがあった。
「ぷきゅ」
「なんです? ユーベルコードを?」
共に配っていた『陰海月』が『疾き者』の裾を掴んで引っ張っている。
ユーベルコードを使いたいようだが、此処は戦闘行為を禁じる『どこでもキャンプ』が常時発動しているのだ。
果たして許可されるだろうか。
「いいよ~」
『キャンピーくん』は戦闘さえ行わなければいいと言うようにあっさり許可してくれる。
「ぷきゅ~」
『陰海月』が鳴くと降り注ぐはカラフルな動くミズクラゲ型のぬいぐるみたちであった。
それは極めて柔らかく、同時にクッション性も十分すぎるものであった。
ふかふかである。
「クエ」
『霹靂』も鳴く。前脚でぼふぼふぬいぐるみを押して見せる。
『難民キャンプ』の子供らはおっかなびっくりであった。いきなり現れたぬいぐるみたち。
触れて良いものなのか。
「いいのですよーどうぞ遊んであげてくださいー」
『疾き者』の言葉に子供らが現れたぬいぐるみたちに体を埋める。
フカフカなぬいぐるみはクッションだけではなく、遊具のように扱うこともできる。
つまり、ジャンプ台だ。
「わー! すっごい!」
跳ねる体。
視界がぐるぐる変わる光景に子供らは笑っている。
それは本心からだっただろう。
心癒えることは難しいことだ。それは他者が簡単にどうこうできるものではないのだ。心は、本人が自身で救うものである。
だからこそ、『陰海月』たちの呼び出したぬいぐるみたちによって子供らは、心から笑うということを思い出したのだ。
「笑えたのならば、次は立ち上がることだってできるでしょう。人の心はそこまで弱くはないのですから」
『疾き者』はそう頷く。
生きていればこそ。
きっと戦乱に破壊された平和な日々も思い出だけではなくなるだろうから――。
大成功
🔵🔵🔵
ワルルーナ・ティアーメル
馬鹿ものー!野生のテントは子連れデビル熊よりもずっと危険なのだ!不用意に入り(居心地よくて)二度と出てこなかった悪魔がどれだけいた事か……!
気を付けるのだな!
さて……こ奴らには「頼れる隣人」が必要であるな?
早速【魔王軍第7か―――あれ?呼べぬぞ?なんで?まさか「各種フェチ属性の戦闘能力を持つ」のがNG?
……仕方ない、即物的で悪いがプランBである!
ワルルーナアイで周囲の者たちの願望を読み取り……うわホントにあの動くテント、キャンプの事しか頭にないぞ……願望より食材を具現化させ、【魔王軍招集:第6冠】で呼び出した料理人たちに調理させて振舞わせるぞ!気にするな、全て貴様らのもの、存分に食うが良い!
『五月雨模型店』の少年少女アスリートたちがキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』と共に異世界へと転移したという報を聞いて、ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は肩を震わせた。
グリモア猟兵の転移でもって彼女たちが転移したクロムキャバリアの『第三帝国シーヴァスリー』へと到着したワルルーナは『五月雨模型店』の面々を探し当てた。
くわ、と目を見開く。
ついて出た言葉は叱責だった。
「馬鹿ものー! 野生のテントは子連れデビル熊よりずっと危険なのだ! 不用意に入り二度と出てこなかった悪魔がどれだけ居たことか……!」
まず最初に野生のテントって何、と『アイン』と呼ばれる少女は思ったし、デビル熊っていうのもわからなかった。
あと、二度と出てこなかったのは居心地がよかったからで、別にいいのではないかと思ったが、ワルルーナの剣幕を見れば、それは口にしないほうが良いと彼女は思ったのだ。
「気をつけるのだな!!」
ワルルーナはあくまで注意しているのだ。
親切心である。そういう意味ではラスボス魔王っぽくなかったが、しかし、自分たちを心配してくれて駆けつけてくれたことがわかるのだ。
「ごめんな。ありがとう」
「わかればよいのである! とは言え、『難民キャンプ』とな」
ワルルーナは荒廃した『第三帝国シーヴァスリー』の光景を見やる。
何処を見ても鬱屈とした人々ばかりである。
なら、とワルルーナは思ったのだ。彼らの心を支えるものが此処にはない。
ならばどうするか。
そう『頼れる隣人』が必要なのだ。
共に居てくれる誰かが。
だから、と早速ユーベルコードを使おうとして呼び出せぬことに違和感を覚える。
「どういうことだ? 我が魔王軍第七の……」
「戦闘しちゃだめ~」
『キャンピーくん』が腕を交錯させている。
「ぬな、ダメなのか? まさか『各種フェチ属性の戦闘能力を持つ』のがいけないのか? 何? 火種の元? それもそうか」
ワルルーナは納得する。
だが、困った。どうすればよいだろうか。此処の『難民キャンプ』を楽しむには誰かを助けることが必要だ。
「なら仕方ない。即物的で悪いがプランBである! 見よ、このワルルーナアイ! 貴様らの願望を読み取ってくれるわ……って、うわ」
ワルルーナは『キャンピーくん』を見て思わずうめいた。
彼の頭の中はキャンプすることばっかりであった。
マジで? とワルルーナは思ったがマジである。見事にキャンプ一色であった。
「ふむ、とは言え他の連中の願望は簡単であるな。あったかい料理が食べたい、か。なるほどな」
確かにプラントは残っている。
食糧問題は深刻ではないのだ。だが、彼らはプラントから生み出されるレーションのような温かみのないものではなく、人の手の入った調理されたものを欲しているのだ。
「ならば、まかせよ! さあ、来るがよい、我が第六の軍勢よ!」
魔王軍招集:第6冠(ソンナコトヨリメシニシヨウゼ)にて呼び出されるは魔族の料理人達であった。
彼らは即座にレーションを切り刻んでいく。
圧倒的な速度だった。
「味気ないレーションも、こやつらの手に掛かればなんということでしょうである!」
ワルルーナは器用に皿を手にとって調理されたレーションを人々に振る舞う。
それは言ってしまえば高級フレンチのような独創的なデビルめいた料理の数々だった。
見栄えもさることながら、味も抜群。
「こんなのを……いいのか?」
「良いに決まっておる。すべて貴様らのもの、存分に食うがよい。そして、その願望を糧に明日も生きるがよい!」
ワルルーナは闊達に笑う。
そう、全ては暖かさから始まるべきなのだ。
戦乱に凍えた心を溶かすのは戦乱の火ではない。誰かと共有できる温もりこそが人の心を溶かしていく。
そういうものだと言うようにワルルーナは料理人たちと忙しなく人々に、悪魔……良い子の種族たる己たちの心を配るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(「キャンプを楽しめって言われたってねぇ…難民キャンプでバーベキューなんてやれるほど面の皮は厚くないわよ」と頭の中の教導虫が話しかける)
では難民の皆さんに食べる機会がないものをお渡しするというのはどうでしょうか?
きっと喜んでもらえますよ!
(「それはいい考えだけど量が用意できるかどうか…」)
お皿は用意してもらう必要がありますが
食料に関しては問題ありません!
(「へぇ何を提供する気なの?」)
クリームコロッケです!UC【神の創りし贋物】で作ります!
難民キャンプで揚げ物を口にする機会はそうそうないはず!
さらにこれの凄いところは味も食感も本物そっくりなのに
食べ過ぎても胸焼けしないという点です!
なにせ偽物ですからね!
(「それ食べて大丈夫?ってか今更か。黒影、アンタ毎日食べてるもんね」)
そういうことです!さぁ至高の逸品を皆さんにお届けしましょう!
キャンプフォーミュラ『キャンピーくん』を滅ぼすことはできない。
それは常時発動しているユーベルコード『どこでもキャンプ』があるからだ。それは一切ん戦闘行為を禁じる力。
そして、世界を自由に移動することのできる能力。
すべてが規格外である。
猟兵にとっては戦って滅ぼせぬ相手など対処しようがない。
けれど、たった一つだけ方策がある。
それは……。
『キャンプを楽しめって言われたってねぇ……難民キャンプでバーベキューなんてやれるほど面の皮が厚くないわよ』
黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の頭の中で教導虫が溜息をついた。
確かに、と兵庫は思った。
眼の前に広がるのはクロムキャバリアの小国家の荒廃した有様だった。
かつては平和の園であったようだが、見るも無残なものである。徹底的に破壊されている。これが戦乱というものであるのならば、許しがたいことだった。
「わかります。でも……」
『何かをしたいという心があるのならば、良いことだわ』
「はい、では皆さんに食べる機会がないものをお渡しするのはどうでしょうか? きっとよろこんでもらえますよ!」
兵庫は思ったのだ。
確かにこの小国家ではプラントが奪われていない。
だから、食糧問題は深刻じゃあないのだ。けれど、画一的なレーションばかりの食事は味気ないものだろう。
だったら、と兵庫は思ったのだ。
これはキャンプだ。
『難民キャンプ』であるが、しかし、楽しめるものがあるのならば、多くの人に楽しんでもらいたいと兵庫は思ったのだ。
『それはいい考えだけど量が用意できるかどうか……』
そうなのだ。
他者が得られたものを自分が得られない。その不平等感は人々の中にじくじくと蝕む悪意を育てていく。
それはきっと争いの種として芽吹く。
「大丈夫です! お皿を用意していただく必要がありますが、食料に関しては問題ありません!」
やけに自信満々である。
教導虫は訝しむ。
『何を提供する気なの?』
兵庫はニッコリと笑った。
「クリームコロッケです!」
瞳がユーベルコードに輝いた。
え、と教導虫は思った。なんて? となんでクリームコロッケを?
「難民キャンプでは揚げ物を口にする機会はそうないはずです!」
『いえ、そういうことではなくて』
「さらに!」
神が創りし贋物(ゴッド・フェイク・クリエイション)――それは兵庫のユーベルコードであると同時に実物を模した偽物を作り出すユーベルコードである。
造りは荒いがクリームコロッケの見た目、味、食感を含むすべてを精巧に作り上げることができるのだ!
つまり!
「これなら量を気にしなくっていいのです! それに食べすぎても胸焼けしないんです!!」
教導虫は少し呆れ混じりであったが、しかし、兵庫が真剣なのも理解していた。
彼にとって、これがごちそうなのだ。
心が沈んだ時、これを食べれば大丈夫だと思える必殺料理なのだ。弱った心を倒して、強い心を作るために必要なものなのだ。
それを教導虫は理解した。
だからこそ、笑ってしまった。
『そう、そうなのね。それは……ええ、良いことだわ』
教導虫は頭の中で微笑む。
この子ならば大丈夫だ。他の誰かの心に寄り添うことができる。人の憂いに寄り添うから優しさ。
だというのならば、自分がこの子を育てた意味がある。
「はいっ! さぁ、至高の逸品を皆さんにお届けしましょう!」
兵庫は張り切っていた。
自分が嘗て与えられたものを誰かのために分け与えることのできる心が其処にある。
それは汎ゆる人の悪性を打ち砕く善性であったことだろう。
教導虫は思う。
これが人の優しさだ。誰かのためにと力を振るうことができる人間の強さだ。
どんな逆境だって、乗り越えていける。
それを示すように兵庫はユーベルコード輝く瞳と共に優しいクリームコロッケを作り上げ、己の心の暖かさを凍えるような難民キャンプの人々に配り、笑い合うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
スイート・シュガーボックス
行くよ、ディオちゃんッ!
「合点承知☆」
(『キッチンカー』の助手席にディオニュソス(男の娘形態)を乗せ運転するスイートは、キャンピーくんに突っ込みクロムキャバリアに移動する)
難民キャンプの人達を笑顔をする為に何が必要か。そうだね、お菓子だね。
というわけでキッチンカーフルオープンッ!【甘い幸せ彩る調理錬金】ッ!
ディオちゃん、皆に配って来てッ!
「りょ~かい、ついでにウチの『豊穣葡萄』とスイート君の『不思議なティーポット』でお酒やジュースも一緒に配るし☆」
【甘い幸せ彩る調理錬金】連続使用でジャンジャン作るよ。
アスリートアースの子達や神機の申し子達、キャンピーくんもお菓子どうぞ。
【アドリブ歓迎】
世界を自由に移動する能力と常時発動するユーベルコード『どこでもキャンプ』によって撃破することの出来ないキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』。
彼の体であるテントに入ることで世界を転移することができる。
それはもしかしたら、何処に繋がるかわからない転移であるようにも思えたことだろう。ともすれば、臆することもあったかもしれない。
けれど、スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)は止まらなかった。
『キッチンカー』に乗り、幻惑神機『ディオニュソス』が変じた男の娘と共に『キャンピーくん』の体へと突っ込んだ。
「いくよ、ディオちゃんッ!」
『合点承知☆』
二人にためらいはなかった。
まったくなかった。
だって、キャンプである。
行き着く先が、クロムキャバリア……その荒廃した小国家の無残たる『難民キャンプ』であっても関係ない。
「ここがクロムキャバリア……」
『見事に荒れてるね☆』
見れば誰もが鬱屈とした顔をしている。
それもそうだろう。失ったのは全てだ。生命以外のすべてを彼らは失ってしまっているのだ。
例え、生命が残っていたとしても。
それでもその他のすべてを失ったという心は傷つくのだ。
凍えるように動かぬ心が底に在った。
なら、とスイートは思う。
彼らを笑顔にするために必要なものは何か、と。
『当てていい?』
「もっちろん!」
『お菓子だよね!』
「そうだね、その通り! さあ、キッチンカーフルオープンッ!」
その言葉と共にスイートはユーベルコードに瞳を輝かせる。
調理と錬金術を組み合わせた至高にして究極のクッキングの始まりである。
「ディオちゃん、皆に配ってきてッ!」
スイートは次々とキッチンカーで持ち込んできた食材を10秒ごとに見事な料理を作り出し始める。
あまりにも高速すぎて、スイートの手……っていうか手何処!?
そう、彼はミミックである。
足しかない。
傍目にはすごく奇妙な姿である。けれど、甘い幸せ彩る調理錬金(スイートハッピークッキング)によって、そのミミックボックスの体から甘いお菓子を振る舞っていくのだ。
それはケルベロスディバイド世界では子供なら誰でも知っている有名な都市伝説。
ほっぺたが落ちそうなほどに素晴らしいお菓子を振る舞い去っていくミミックの不思議なお話。スイートはそれを体現したミミックなのだ。
『りょ~☆ ついでにウチの『豊穣葡萄』と『不思議なティーポット』でジュースも一緒に配ってくるね☆』
「よろしくね~! さあ、じゃんじゃん作っていくよ!」
スイートは笑う。
甘いものは誰かの心を暖かくする。
凍えた心に甘味は効くのだ。そうやってこれまでも生きてきたのだ。誰かの笑顔のために。子供らの笑顔のために。
だから、自分はスイート・シュガーボックスというのだ。
おかしなミミックなのだ。
「遠慮なんてしないで! アスリートアースの子も、『神機の申し子』も、『キャンピーくん』もお菓子どうぞ」
其処に立場も種族も関係ない。
あるのは甘いお菓子だけだ。一緒に頬張れば、甘くて美味しい味わいは記憶に刻まれるだろう。
どんなに辛くたって。
どんなにくじけたって。
生きてるのならば、明日が来る。そうやって一歩一歩と歩いていくしかないのだ。
それが人間だ。
だから、スイートは人間たちが好きだ。その道行に自分が甘さという彩りを添えようと、ユーベルコードの輝きと共に『難民キャンプ』を明るく照らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
チェスカー・アーマライト
……マジで、なんで、よりにもよって此処なんだよ
まあ、来ちまったモンはしゃーない
戦場ど真ん中じゃないだけマシだ
火薬と鉄錆の世界へようこそってな
とりあえず模型店の子供らにいつも通り飴をやってるとキャンプの子供らもチラホラ寄ってくる
物資が限られてりゃ甘味も貴重だかんな
ほれ、一人一個ずつなら行き渡るだろ
他のガキ共にも声かけてきな
今から、このねーちゃん達が遊んでくれるってよ
つっても遊具もなんも無ぇ
漸く片付けが進んだ空き地があるだけだ
アインらも知ってる遊びがありゃ教えてやりな
武装を外したビッグタイガーをアスレチック代わりに置いとく
子供の笑い声が聞こえ始めりゃ、一応そこは平和って事だ
(自分はアイン達ぐらいの年齢で戦場に出た
この世界ではよくある話
だからこそ、そうなるまでは、無邪気に遊ぶ位で良い)
まさかこんな形で相棒を紹介する事になるたぁな
そ、あのジャングルジムになってんのがあたしの相棒
|古《ボロ》いって言うな
そりゃあのサイキックキャバリアに比べりゃ、そうも見えるだろーがよ
あれ、お前らのか?
……乗るのか?
眼の前に広がるのは荒廃した街だった。
あらゆる建物が瓦解し、瓦礫となっていた。その合間から立ち上る煙は人々の営みであったが、その煙同様にか細いものだった。
頼りないものだった。
そして、己の鼻腔をくすぐるのは硝煙の匂いだった。
「……マジで、なんで、よりにもよって此処なんだよ」
チェスカー・アーマライト(〝錆鴉〟あるいは〝ブッ放し屋〟・f32456)はキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』の中がクロムキャバリアに繋がっていた事に驚愕した。
キャンプを楽しむ。
そういうことなのならば、どう考えてもこの場所はおかしい。
いや、『難民キャンプ』である、というのならば何ら間違っては居ない。
だが、楽しめるものではない。
此処は生きる者たちが鬱屈たる感情を何処にもぶつけようない場所だ。楽しい、という感情からは程遠い世界であったとも言えるだろう。
それ以上にチェスカーが憂いていたのはアスリートアースの『五月雨模型店』のメンバーたちもまた転移してきてしまっている、という点だった。
「まあ、来ちまったモンはしゃーない。戦場ど真ん中じゃないだけマシだ。火薬と鉄錆の世界にようこそってな」
努めて軽い口調でチェスカーは戸惑う『五月雨模型店』の少年少女たちに声をかける。
「ちぇ、チェスカーねーちゃん……これはむぐっ!?」
『アイン』が何か言う前にチェスカーは飴を彼女の口に突っ込んだ。
何を、と眦を釣り上げているがチェスカーは構わなかった。
彼女が何を言おうとしているかなんてわかりきっている。
けれど、彼女たちはまだ子供なのだ。
「ほれ、お前らも」
チェスカーはぶっきらぼうに。
いつもどおりに子供らに飴を配る。すると『難民キャンプ』のあちこちからちらほらとこどもらが此方を伺っているのがわかる。
たしかに自分の顔は恐ろしく思えるのだろう。
けれど、手にした飴の魅力には抗えないようだった。正直でよろしいとチェスカーは思っただろう。
この『第三帝国シーヴァスリー』は壊滅的な打撃を受けているが、しかしそれは物的、人的な被害、という意味だ。
幸い、というわけではないが小国家の要たるプラントが略奪されていないだけまだマシだ。食糧問題はそこまで深刻ではないようだ。
「とは言っても甘味は貴重だかんな。ほれ、こっち来いよ。他のガキ共にも声掛けてきな」
集まってきた子供らにチェスカーは飴を配り終えて手を上に掲げる。
「今からこのねーちゃん達が遊んでくれるってよ」
そう言って示したのは『五月雨模型店』の面々だった。
ねーちゃんたちと言っても、集まってきた子供らと年かさは変わらないだろう。けれど、心の余裕が違う。
片や戦乱が常なる世界に生まれた子供ら。
片や戦乱とは程遠い世界に生まれた子供ら。
其処に価値観に違いは生まれど。
チェスカーは思う。いや、願うといってもいいだろう。根っこの部分は同じであって欲しいだろう。
「でもよ、ねーちゃん。遊ぶって言っても……」
何が在るんだと『アイン』たちは周りを見回す。あるのは瓦礫ばかりだ。
だからこそ、チェスカーは笑う。
「ガキ共ってのは大人が思う以上に物事を考えてるもんだ。あるだろ、空き地ってのが」
ほら、とチェスカーは示す。
そこには瓦礫を撤去したばかりの空き地があった。更地、とまではいけないが空間はあるのだ。
そこに降り立つのは遠隔操作によって降り立つ『ビッグタイガー』だった。
武装はすべて取り外している。
重たい音を立てて降り立つ『ビッグタイガー』の威容に『アイン』たちは目をむく。
「こ、これ……『ミニタイガー』……!」
「こんなものまで……」
大きくなっている……と彼らは驚愕するしかなかった。
「まさかこんな形で相棒を紹介することになるたぁな」
チェスカーは苦笑いするしかなかった。
むしろ、紹介することなどなければよかったとさえ思ったかもしれない。アスリートアースに生きる彼女たちにとっては無縁の代物であったはずだから。
「お前ら、いいか。変なところさわんじゃねーぞ。それ以外だったら好きにしていいからよ!」
クロムキャバリアの子供らはすぐさま歓声を上げて『ビッグタイガー』によじ登っていく。
所謂即席のジャングルジムだった。
笑い声が聞こえる。
それは時に耳障りだったかもしれないが、しかし、笑っているのだ。こんな戦乱渦巻く世界にだって笑い声は満ちる。
無邪気な、それでいて戦乱を知る者たちの笑い声が。
「そ、あのジャングル事務になってんのがあたしの相棒」
「古い」
「ボロい」
「ウェザリングがすごい!」
「お、おおおっきいです!」
いや、今なんか古いとボロいって聞こえたな、とチェスカーは首を傾げる。
「|古《ボロ》いって言うな。そりゃあの……」
四騎のサイキックキャバリアに比べたらそう思えるだろう。
けれど、と思う。
あれは確かに『アイン』たち『五月雨模型店』の面々が作ったプラスチックホビーそっくりだ。
彼女たちの機体ではない。
そもそも彼女たちがキャバリアに乗ることなど想像できない。
あれは『ビバ・テルメ』と呼ばれる温泉小国家の『神機の申し子』たちが駆るキャバリアだ。
チェスカーはほら、と『アイン』たちの背中を押す。
遊べ、と。
自分は彼女たちと同じくらいの年の頃にはすでに戦場に居た。
この世界ではよくあることだ。
だからこそ、と思う。今は戦乱じゃあない。なら、無邪気に遊ぶくらいでいいのだ。
報酬と刺激のために戦場に出ている己であっても、子供らの無邪気さくらいは守りたいと思うのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「ふっ、キャンプということであれば、キャンプアスリートたる我の出番だな!」
『ここ3日何も食べていないから、難民キャンプの食料にありつこうとしているのでございますね』
さあ、早速、キャンプの用意だ!
我の煉獄の炎、とくと味わうが良い!
『フィア様お得意のキャンプファイヤーでございますね。
あ、見た目が派手なだけですので、ご安心ください』
「この炎で存分に肉でも魚でも焼くが良い!
そして、我にも食べさせるのだ!」
『魔力を使ってさらに空腹になったフィア様は、今にも倒れる寸前なのでございます。
とはいえ、この難民キャンプに食料の余裕はなさそうでございますね』
ならば鋼鉄の巨人を焼いて食らうとしよう!
鉄くらい食える!
天が呼ぶ地が呼ぶ。
誰が呼んだかは知らぬが、ぐぅぐぅと腹の音は響き渡る。
そう、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)の腹の虫が唸りを上げていた。
「ふっ、キャンプということであれば、キャンプアスリートたる我の出番だな!」
彼女は荒廃した『難民キャンプ』を見下ろして盛大に言い放つ。
だが、腹の虫の音が全部台無しにしてくれていた。
『ここ3日ほど何も食べていないから、難民キャンプの食料にありつこうとしているのでございますね』
使い魔『フギン』の言葉にフィアは何も言わずに、その口をふさぐように押さえつけた。
むぐぐ、と呻く声が聞こえたがフィアは無視した。
「さあ、早速、キャンプの用意だ!」
フィアの瞳がユーベルコードに輝く。
廃材として集められていた瓦礫の前に立ち、手をかざす。すると、その掌から放たれるは煉獄の炎。
それは一瞬で瓦礫を燃え上がらせ、天を衝くように立ち上るのだ。
「フハハハ、これこそが我の煉獄の炎(キャンプ・ファイヤー)よ! とくと味わうが良い!」
盛大な笑い声。
無駄に尊大な態度。
その様子に『難民キャンプ』の人々が何事かと集まってくる。当然である。不審火って言われてもおかしくないくらいである。
ともすれば放火犯か? と思わせるほどであった。
『ああ、これは違うのです。これはフィア様お得意のキャンプファイヤーでございまして。あ、見た目が派手なだけでございます。ご安心ください』
「そうは言っても派手に燃えてるんだが……」
住人たちの心配も尤もだっただろう。
なんか、地獄の業火かってくらい燃え盛っている。
「この炎で存分に肉でも魚でも焼くが良い! そして我に食べさせるのだ!」
火起こししたから褒めて。
そう言わんばかりであるが、フィアはもう魔力切れ寸前でフラフラであった。
「あんた、大丈夫か? 顔が真っ青だが……」
「それにやせ細って……」
かわいそう、という憐憫の視線が突き刺さるが、魔力切れなフィアには気にする余裕すらなかった。
『魔力を使ってさらに空腹状態なのでございます。どなたかフィア様に食べ物を、食べ物を下さいませんか!』
『フギン』は思った。
此処は『難民キャンプ』なのだから、食料も乏しいのではないかと。
だが安心めされい。
すでに猟兵たちや、残っているプラントのお陰で食糧事情は其処まで深刻ではないのだ。
「最悪、鋼鉄の巨人を焼いてくらおうと思っておったが……」
「はい、あーん」
「こっちもお食べ」
「あめちゃんはいるかい?」
フィアは孫を可愛がるムーヴをしたがる老人たちに取り囲まれてお世話されまくっていた。
魚や肉はなかったが、余っていた糧食の類いがあったのだ。
それをフィアは今、老人たちに甲斐甲斐しく世話を焼かれて、食べているのだ。
うん、悪くない。
むしろ、3日まるで何も食べていなかった胃にはとっても優しい。
苦しゅうない。
「もっとだ。もっと我に食べさせるのだ!」
幼い容姿のフィアと老人たち。
その在り方はなんていうか、魔女としてどうなのかなって『フギン』は思いつつも、魔力切れとなったフィアが『難民キャンプ』ライフをエンジョイしているのならば、まあいいか、と納得するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
クロムキャバリアのフォーミュラともいずれ決着をつける日が来る。
他世界のそれとはいえ対峙するのは来るべきその時に役立…
は?キャンプ?…移動先俺の世界じゃねーか!!
あーはいはい委細把握。
じゃあ…テント張って中で上映会でもしますか。
アスアスの皆さんには映像作り手伝って欲しいっす。
キャンピーくん?…まあ参加したいなら。
いや、技術とかは必要ねえっす。
見たり経験した試合映像を思い出して念じてもらえたら
俺が『アズライト』で読み取って『モルダバイト』で出力した映写機に記録するんで。
…塞がってると楽しいって想像も行き詰るんすよ。
それを打ち破れるのは…やっぱ外からの新しい|刺激《娯楽》っしょ。
世界にオブリビオンマシンを出現させる存在。
それがオブリビオン・フォーミュラである。
未だクロムキャバリアにおいて、そのフォーミュラの存在は確認されていない。何れ決着を付けねばならぬということを安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は理解している。
ならばこそ、彼は同じくフォーミュラと呼ばれる存在と対峙することは来るべきその時に役立つはずだと考えていたのだ。
アスリートアース。
それは己の知る世界、クロムキャバリアとは対照的な世界であったことだろう。
戦乱無く。
人の生き死にに関わることのないスポーツで決着をつける。オブリビオンであるダークリーガーでさえ、人々を殺すのではなく配下としてダーク化させるだけなのだ。
だから、というわけではないが。
「は? キャンプ?」
それだけでも穣は驚くに値しただろう。
何を言ってんだこのキャンプフォーミュラは、と思った。
「みんなと楽しくキャンプした~い」
『キャンピーくん』と呼ばれるキャンプフォーミュラの体はテントになっていた。
その中に入り込めば世界を転移し、キャンプにぴったりの場所に行くことができるのだという。
「っていうか、ここ俺の世界じゃねーか!!」
眼の前に広がるのは戦乱の傷跡だった。
小国家『第三帝国シーヴァスリー』……オブリビオンマシンの蠢動によって平和の園と言われていた市街地は破壊し尽くされていた。
幸いにプラントを奪われることはなかったが、物的、人的な被害が酷いものだった。
『難民キャンプ』があちこちで立ち上がっている。
「あーはいはい委細把握」
穣はなんとも言えない気持ちになっていた。
それもそうだろう。
キャンプとは楽しいものである。だが『難民キャンプ』はキャンプとついていても、少なくとも心浮き立つような感情は沸いてこないものである。
「何をするべきか、かな……」
「僕も何か手伝えるかな~? みんなで何かするのって楽しいよね~」
『キャンピーくん』があとを付いてきている。
なんで?
いや、考えるのはよそう。今考えるべきはそれじゃあない。如何にして『難民キャンプ』の人々の心を解きほぐすか、だ。
「なあ、なんかすんの?」
見れば『五月雨模型店』の子供らもやってきていた。
彼らを見て穣は思う。彼らは平和しかしらない子供らだ。この世界の子供らとは違う。
なら、と思うのだ。
「……そっすね。みなさんは『プラクト』スポーツのアスリートっすよね。なら、手伝って欲しいっす」
「何を……」
「『アズライト』……こいつで皆さんの記憶にある試合を思い出して念じてもらって出力するっす」
「つまり?」
「ハイライト映像の上映会ってことっすよ」
「そんなのでいいのか?」
『アイン』と呼ばれた少女たちは首を傾げる。
それもそうだろう。確かに疑問を抱くのも尤もだ。
「けど、それでいいんすよ。塞がってると楽しいって想像も行き詰まるんすよ。特にこういう世界ならなおさらのことっす」
何処まで行っても戦乱が影のように人々の背についてくる。
そのような状況に置かれていて、心が疲弊するのは止めようのないことだろう。
なら、それを打ち破ることが出来るのは内側からではなく、外側からだと穣は思うのだ。
「みなさんはこの世界の外からやってきたっす。なら、それは新しい|刺激《娯楽》ってことっすよ」
それでいいのだ。
アスリートアースでスポーツに興じた楽しいという思いが、この世界の閉塞感を打ち破ってくれる。
穣はそう願って人々を集め、『アイン』たちのアスリートアースでの楽しいスポーツのハイライト映像を映写機を通して映し出す。
それが人々の心に熱狂という感情を呼び起こすことを願いながら――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
まあね、「異世界を自由に行き来できるうえに、戦闘行為を強制的に不可にしてしまう」ときましたか。
あれって放っておいたら最悪、グリモアベースまで行っちゃうんじゃないでしょうかねぇ?(ぇ)
(で、困惑しているアスリートの皆さんを見かけて)
まあありますよね、「自分たちがフィクションと思ってた出来事が、実は別次元では現実だった」ってこと。
ああ、よかったらあれのスペック見ます?(と、「セラフィム(キャバリアの方)」を指してUC発動(事前にグリモア猟兵から【情報収集】してる))
――ああ、そうだ、「キャンプを楽しめ」ってのがありましたね。
じゃあとりあえず【楽器演奏】で場を盛り上げますか。
※アドリブ・連携歓迎
キャンプフォーミュラ『キャンピーくん』は恐るべき存在である。
「まあね、『異世界を自由に行き来できる上に、戦闘行為を強制的に不可にしてしまう』と来たらね……」
シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は深く頷いた。
正直言って最強格のオブリビオンである。
戦って滅ぼせぬ敵。
それは猟兵にとってはあまりにも脅威であった。
「あれって放っておいたら最悪、グリモアベースにまで行っちゃうんじゃないでしょうかぇ?」
その可能性は捨てきれない。
だからこそ、この場で『キャンピーくん』を満足させることが唯一の方策であると言えよう。
とは言え、たった一つ。
唯一なのだ。
『キャンプを目一杯楽しむ』
それだけのことなのだが、転移してきた世界がよりによってクロムキャバリアである。
戦乱満ちる世界でキャンプはキャンプでも『難民キャンプ』を楽しめっていうのはどういうことなのだろう。
アスリートアースから巻き込まれる形で『五月雨模型店』の少年少女たちがクロムキャバリアに転移してきている。
困惑しきっている彼らを見てシャルロッテはまた深く頷いた。
わかる。
「自分たちがフィクションと思っていた出来事が、実は別次元では現実だってってこと」
いや、あるある、みたいに言われても。
「よくわかんねーけど……でも、これも現実だってんだろう? 私達が作った『セラフィム』も……」
「まあ、そうかもですね。でも、ステータスオープン!」
シャルロッテの瞳がユーベルコードに輝く。
視界内の『セラフィム』の一騎をの情報を開示する。
すでにシャルロッテはオブリビオンマシンの絡んだ事件の情報を予め情報収集してある。
精度はさらに上がるはずだ。
「あれのスペックです」
「なんか少年誌で見た徹底図解! とかそんなの思い出すな……」
「わかりますとも。でも見てください。このスペック。キャバリアっていう戦術兵器の中ではかなり高性能なんじゃないですか?」
武装は四騎とも異なっている。
大型突撃槍を携えた先鋒型。汎用装備とシールドを持つ指揮官型。高出力のライフルを持つ狙撃型。幻影装置と呼ばれる欺瞞装置持つ撹乱型。
そうした四騎の性質をシャルロッテはユーベルコードでもって開示するのだ。
だから、というわけじゃない。
それで『五月雨模型店』の彼らが何を思うのかはわからない。
けれど、とシャルロッテは思うのだ。
知らないことを知ること。そこから導かれるなにかもあるのかもしれないと。そう思えばこそ、シャルロッテは気がつく。
「そうでした。こうしてはいられなかったのです」
そう『キャンプを楽しめ』と言われていたのだ。そうでなければ『キャンピーくん』は納得してくれない。
うーん、とシャルロッテは悩んだ。
この『難民キャンプ』で、と言えば何ができるだろう。
そうしていると旋律が耳に響く。
音楽! そうだ、とシャルロッテは頷く。他の猟兵だって音楽を使って『難民キャンプ』を盛り上げるかもしれない。
なら、自分も何か手伝うことができるはずだ。
そう思って、シャルロッテは駆け出す。
何ができるか、ではない。何をしようと思ったかが大切なのだ。
「わたしも楽器演奏できますよ!」
そう言ってシャルロッテは音楽を奏でる猟兵たちと合流し、その軽快な音で、場を盛り上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
敵を壊せない。
『物騒な考えは止めようか奏者!今、彼らは、心を病んでしまっている。慰めるにはどうしようか?』
…どうしたら良いのですか…?
『…うん、じゃあ、こうしよう!』
拡音機としてデモニック・ララバイ召喚。クレイドルの要請に従い「陽月光」で瓦礫を破壊し舞台と多数の楽器群に再構築。
『問題を解決できなくてもね、音楽は彼らの心を慰め、そして働きかける事はできる。腕前次第だけどね』
……何を演奏すれば良いのですか?
『それは奏者が決める事さ!どんな音色を届けたい?』
……失ったモノへ哀悼する鎮魂、喪失に寄り添い、もう一度夢を得たいと思わせてくれる様な夢想、そして、明日がくる事を知らせる夜明けと、前を向いて進む、背を押す行進の曲…とても絞り込めません
『よし!じゃ全部奏ろうか!』了解しました【楽器演奏】
曲に合わせ魔楽機【早業】変形。足りない腕前は|リピート《周回》で補おう
『さぁさぁお立合い、演奏会の始まりだ!あ、そこの君!楽器を手にとり給え!!音色に合わせてとにかく鳴らし給え!君の想いを世に発散しよう!?』
「敵を壊せない」
『物騒な考えは止めようか奏者!』
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の物騒なつぶやきに『クレイドル・ララバイ』は思わず口を挟んだ。
そう、小枝子はキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』を敵と認識している。
当然であろう。
オブリビオンであるダークリーガー。
『フィールド・オブ・ナイン』の一柱であるのだから、滅ぼして然るべきである。
だが、『キャンピーくん』は滅ぼせない。
世界を自由に行き来する能力に加え、ユーベルコード『どこでもキャンプ』を常時発動し、戦闘行為の全てを禁じているのだ。
猟兵たちにとって戦って滅ぼせぬ敵、というのは大敵である。
故に小枝子は途方にくれていたのだ。
壊せぬのなら倒せない。倒せぬのならば、破壊しか出来ぬ己には何もできない。そういう理屈だたのだ。
『よく考えるんだ奏者。今彼らは、心を病んでしまっている。慰めるためにはどうしたらいいと思う』
「……どうしたら良いのですか……?」
小枝子は途方にくれるままに『クレイドル・ララバイ』を見やる。
どうしようもない、という顔だと『クレイドル・ララバイ』は思ったことだろう。
本当は自分で気がついてくれるのが一番なのだが、この際仕方あるまい。
『……うん、じゃあ、こうしよう!』
拡音機として『デモニック・ララバイ』を召喚し、小枝子は彼の勧めに従うよにしてユーベルコードを発露する。
陽月光(ヘリオスフェガリ)によって瓦礫とかした街並みを再構築していくのだ。
瓦礫を粉砕し、さらに組み替えていく。
目の間にそびえるのは、一つのステージと数多の楽器群であった。
再構築によって生み出されたのだ。
『うん、立派なものじゃあないか!』
「これが一体何になるというのです」
小枝子の言葉は尤もだった。ステージを、楽器を作り出したからと言って今すぐ彼らの生活が元に戻るわけではない。
気休めでしかないのではないかと小枝子は『クレイドル・ララバイ』に問いかける。
『確かに奏者の言う通りだろう。ただ音が出るだけだ。問題を解決できるわけではない。けれどね、音楽は彼らの心を慰め、そして働きかけることができる。まあ、腕前次第だと言ってしまえば、それまでなんだけれどね!』
笑う『クレイドル・ララバイ』に小枝子はなんとも言えない表情を浮かべた。
破壊しか出来ない。
破壊の権化とも言われた己に、この状況で何が出来るわけでもないとさえ思える。
仮に演奏したからと言って何だというのだとも思う。
けれど、小枝子の瞳に映るのは戦火に全てを喪わされた者達の鬱屈たる表情だった。
その表情は嫌だった。
見ていたくなかった。
その顔は壊さなければならないと思った。そんな顔は似合わないとさえ思った。だから、彼女は『クレイドル・ララバイ』を掴む。
『おっと』
「……何を演奏すれば良いですか?」
『それは奏者が決めることさ! どんな音色を届けたい?』
どんな、と小枝子は思う。
あの鬱屈たる表情をどうにかしたいと思う。
「……失ったモノへ哀悼する鎮魂、喪失に寄り添い、もう一度夢を得たいと思わせてくれるような夢想、そして、明日が来ることを知らせる夜明けと、前を向いて得進む、背を押す行進の曲……とても絞り込めません」
小枝子の言葉に『クレイドル・ララバイ』は笑う。
『よくばりだね! でもまあ、それくらい貪欲でいいと思うんだよ! せっかくだ、奏者が演奏りたいと思った演目すべて奏ろうか!』
ステージを生み出した小枝子は、その中央に立つ。
構えた『クレイドル・ララバイ』の弦に指をかける。
音色が響いた。
荒廃した『難民キャンプ』には似つかわしい音色。
けれど、その音色が切っかけだった。
この『難民キャンプ』を楽しいものにする。それは多くの猟兵たちが願ったことだったし、また同時に何をすればよいのかと思い悩むものだった。
だが、答えはもっと単純で良かったのかも知れない。
駆け寄ってくる猟兵がいる。
自分も、と言ってくれた。
「ならば、ご一緒に」
そう言って小枝子はステージにやってくる猟兵たちを迎える。
自分ができることは多くない。物を壊すこと。再構築すること。それくらいだ。
演奏の腕前はまだまだだし、『クレイドル・ララバイ』はまるで納得してはくれない。
けれど、人前で演奏することが最も、己を成長させてくれる。
成長。
それは悪霊である己にはないものだ。
なのに、今自分はそれを感じている。
『さぁさぁお立会い、演奏会の始まりだ! あ、そこの君! 楽器を手に取りたまえ!!』
『クレイドル・ララバイ』が近づいてきた『難民キャンプ』の人々に呼びかける。
楽器ならたくさんあるのだ。
そう、瓦礫から生み出したもの。
全てを失った者達に何も失っていないと示すように『クレイドル・ララバイ』は瓦礫より再生した楽器を人々に示す。
「でも、俺……使い方がわからない」
「関係ないのであります!」
『そうだとも。とにかくかき鳴らし給え! 君の想いを世に発散しよう!?』
「自分が合わせます。ですから!」
共に、と小枝子は人々に目配せするのだ。
共に在るとういうことを。
まだ何も失っていないと示すように、ただひたすらに魂の赴くままに小枝子は世の理不尽を破壊する音色を奏でるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
あの子達の『セラフィム』によく似たキャバリア
持ち主はどんな人なのかしら
これを見たあの子達は、大丈夫かしら
きっと心穏やかではないでしょう
少しの間、そばに居てあげたいわ
なにも話さなくてもいいし
もしも聞きたいことがあるなら
私が知っていることを答えましょう
この子達は異世界を知った
もう知らない頃には戻れない
それがどんな意味を齎すのかわからないけれど
どうかこの子達の中から光の翼が失われないように願うわ
それそはれとしてキャンプをしなくてならないから
噂のキャバリア泊をしてみたいわ
多分、猟兵ならキャバリアも借りられると思うの
ちょっと乗せてもらいましょう
見上げる先にあったのは四騎のキャバリアだった。
サイキックキャバリアというものに分類されるらしい機体。
名を『セラフィム』。
それは姿かたちだけでなく名前さえもアスリートアース『五月雨模型店』のアスリートたちが作り上げたプラスチックホビーに酷似していた。
小国家『第三帝国シーヴァスリー』。
この小国家が侵攻していた『ビバ・テルメ』にて戦っていた『神機の申し子』たちが駆る機体でもある。
その機体が此処に来ているのはオブリビオンマシンの蠢動によって破壊され尽くした『第三帝国シーヴァスリー』への人道的な支援のためである。
敵対していたにも関わらず捨て置くことができずに『難民キャンプ』を切り盛りしているのだという。
ならば、と薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は『セラフィム』の持ち主であろう彼らが悪い人間ではないと理解したことだろう。
けれど、と彼女は思う。
この『セラフィム』を見た『五月雨模型店』の子らは心中穏やかではないだろうと思ったのだ。
「『アイン』……」
見知った背中を追いかけて静漓は呼びかける。
振り返った彼女の顔を見た時、自分が抱いていた想いは杞憂であったことを彼女は知るだろう。
頬を汚し、衣服が煤だらけになっていても構わずに『五月雨模型店』の四人は『難民キャンプ』のために奔走していた。
誰かに何かを言われたわけではない。
自ら何かをしようと駆け回っていたのだ。
「何、どうしたんだよ、静漓ねーちゃん」
「……いえ」
その、と彼女はどうしたものかと思った。
ただそばに居てあげたいと思ったのだ。何も話さなくてもいいし、何か聞かれたのならば包み隠さず自分の知っていることを話そうと思っていたのだ。
自分が答えられるのならば、と。
それが動揺しきった彼女たちの心を慰めるものになればと思ったのだ。
あの子たちはもう異世界を知った。
自分たちの世界が如何に『しあわせなゆめ』なのかを知ってしまった。
知らない頃には戻れない。
それがどんな意味をもたらすのかはわからないけれど、それでも、と静漓は思った。いや、願ったのだ。
どうか、と。
あの子達の中から光の翼が喪われないように、と。
「……いいえ、なんでもないわ。呼び止めてしまって悪かったわね」
「? そう? なら私行くな! あっちにこれ持っていかないといけないんだって!」
そう言って『アイン』たちが医療品やら食料品を運び出していく背中を見送る。
杞憂だった。
本当に杞憂だったのだ。
あの子たちは自分が何かをしなくても、きっと大丈夫だと。息を吐き出す。それは安堵の吐息だっただろう。
そして、気を取り直す。
これはキャンプフォーミュラを満足させる一環でもあったのだ。
なら、と静漓は『第三帝国シーヴァスリー』のあちこちを見て回ったが、狙いのキャバリア泊というものをするためのキャバリアがないことに気がつく。
どういうことだ、と思えば。
「ああ、この市街地にキャバリアがないんです。この『第三帝国シーヴァスリー』は殆の戦力を外に頼っていたので……」
『神機の申し子』と呼ばれる四人のアンサーヒューマンの一人『エルフ』と呼ばれる少年が総説明してくれる。
「困ったわ。キャバリア泊というものをするのにキャバリアが必要なのだけれど……」
「それなら、僕の『セラフィム』を使ってください。一泊くらいなら、なんとかなりますから」
そう言って貸し出された『セラフィム』を見上げる。
『エルフ』の『セラフィム』は大型突撃槍を持つ機体だった。
そのコクピットに収まって静漓はぼんやりと空を見上げていた。
星空にあちこちで奏でられる音色が心地よい。猟兵たちが開催した音楽祭の音だろう。
その音を聞きながら静漓はコクピットの中で空を見続けている。
「わっ!」
そうしていると目の前に『アイン』の顔があった。コクピットハッチを開けていたせいか、上ってきたのだろう。流石アスリートである。
「静漓ねーちゃん、一人でどっかいくなよなー」
「『アイン』、あなた。どうして」
「え、だってなんかさっき言いたそうだったし。それに一人だけずるい。こんなでっかいのコクピット? に座るなんて夢みたいなもんじゃん!」
他の皆も同様に『神機の申し子』たちに申し出て静漓を真似るようにキャバリア泊へと洒落込んでいるようだった。
そうなの、と静漓は頷く。
その隣に『アイン』は当然のように潜り込んできて、日中の疲れからかすぐに眠ってしまう。
「……今はおやすみなさい。しあわせなゆめを」
見て、と静漓は彼女の頭を軽く撫でるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
なるほどなのでっす!
夢を魅せるというのなら、藍ドルの出番なのでっす!
歌うのでっす!
踊るのでっす!
皆々様が元気になる歌を、ダンスを!
空腹などは皆々様が満たしてくれてるようでっすし!
藍ちゃんくんは、藍ちゃんくんならではのことを!
というわけで!
コラボ先の洋裁師の皆様、お手伝い下さいなのでっすよー!(裁縫
皆々様にお洒落を楽しんでいただくのでっす!
衣食住とも言いますし、大事なことなのでっす!
こういう状況では資材がないだけでなく、お洒落に対する自粛ムードがあるやもでっすがー。
最高に輝いている藍ちゃんくんの姿を通して、自分も夢を見ていいのだと、変われるのだと己に夢を持っていただく。
それこそが藍ちゃんくんでっすよー!
皆々様のずっとしんどいままなんだという諦めを変革しちゃうのでっす!
皆々様の手持ちの服等も少しのアレンジで様変わり!
かっこよくも可愛くも渋くや風流にだって!
皆々様のなりたい自分や思ってもみなかった新しい自分に!
藍ちゃんくん達が変えていくのでっす!
皆々様のためのファッションショーなのでっすよー!
荒廃した小国家。
あるのは生命だけ。生命以外の全てが破壊され、失った。
確かに生きているだけで希望はあるのだろう。けれど、その希望を覆い隠すほどの喪失感が『第三帝国シーヴァスリー』の『難民キャンプ』には曇天のように重たくのしかかっているように思えた。
少なくとも紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)にはそう思えた。
「なるほどなのでっす!」
これはキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』を満足させる戦いであるが、しかし、戦いですらない。
彼は言っているのだ。
この鬱屈たる『難民キャンプ』を楽しんでいるものなんていない。
ならば、この人々を全て楽しいという感情で満たして見せろ、と。いや、それはうがった見方だったのかもしれない。
ただ単純にキャンプをみんなと楽しみたいという純粋な感情だったのかもしれない。
「ならば夢を魅せまっしょう! 藍ドルの出番なのでっす!」
藍は他の猟兵が作り上げた音楽祭ステージの上に降り立つ。
光が満ちた。
きらびやかな音。演出。そうしたもの全てでもって藍は難民キャンプの人々に訴えかけるように――。
「歌うのでっす! 踊るのでっす!」
想いを込める。
皆が元気になる歌を。ダンスを!
空腹は他の猟兵たちが満たしてくれる。なら、と藍は思うのだ。
自分らしいことを。
自分でなくては出来ないことをやろうと。
なら、と藍の瞳はユーベルコードに輝く。
「縁・逢い(アイチャンクン・コラボステージ)、藍ちゃんくんコラボステージへようこそ! よろしくお願いしちゃうのでっす!」
その言葉と共にステージに出現するのは藍のファンでもある洋裁師たち。
彼らはお手伝いをすると同時にコラボレーションステージに躍り出る。いや、それだけじゃあない。ステージの外に駆け出していくのだ。
「な、なんだ?」
「え、なになに、何をするの!?」
難民キャンプの人々は目を丸くする。
藍が歌うだけではなかった。踊るだけではなかった。
そう、飛び出した洋裁師のファンたちが一斉に難民キャンプにてくたびれた格好をしている人々に対して一気にアレンジを加えていくのだ。
ほつれたボタンも、破けた布地も、すぐさまに補修していく。
「これが藍ちゃんくんからコラボの皆様と共に皆々様にお届けするサプライズプレゼントなのでっすよー!」
自分を見てくれ、と藍は歌う。
フリル揺れる衣装。
それは光の演出を受けて更に輝くことだろう。
資材は乏しい。
生きるために最低限のこと以外は出来ない状況なのだろう。そうしなければならないというムードだってあるだろう。
明るい色の服を着れないこともあるだろう。
どんなものにも蓋をする人の感情はあるものだ。けれど、夢を見たって良い。夢は眠る時だけに見れるものじゃあない。
「藍ちゃんくんを見てくっださい! 皆々様は諦めていらっしゃるでしょう! 多くを捨てなければならなかったでしょう! でも、そのずっとしんどいお気持ちを、その諦めを藍ちゃんくんは変革しちゃうのでっす!」
藍の言葉に洋裁師たちがステージに戻ってくる。
ステージの上から見る観客たちの姿は、皆色とりどりの華のようだった。
みんなの顔がよく見える。
明るい表情になっている。
かっこよくも可愛くも渋くや風流にだって! 何にだってなれる。なんであってもいいし、どうあってもいい。
そういう自由があるってことが心の支えになることだってあるのだ。
だから、藍は歌うように叫ぶ。
「皆々様のなりたい自分や思ってもみなかった新しい自分に!」
自分ではできないのなら、と。
「藍ちゃんくんたちが変えていくのでっす! さあ、ミュージックは止まらないのでっす! ステージは皆々様の花道なのでっす!」
だから、と藍はステージの上から手を差し伸べる。
上がっておいで、と。
誰か一人が特別に光を当てられるのではない。
皆が陽の光を浴びて良いのだと。
塞ぎ込まなくて良いのだと。
そういうように明るい声と共にステージの上には華やかな人々の笑顔が咲く。
これが自分の思うキャンプだと藍は歌い続け、難民キャンプを夜まで続く盛大な音楽祭として盛り上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
キャンプはいいものだけど。
わたしの『フィーア』さんを連れてくとか、どういうことかな?
それは、わたしの、役目だ!!
っと、まぁ、そこはおいておいて、
いまはこの『難民キャンプ』でできることをしないとかな。
せっかくだから、クロムキャバリアでも、
プラクトっぽいものができるようにするのはどうだろう。
娯楽があるって大事だよね。
実際に動かすのは厳しそうだけど、
手作りの人形とかを、バーチャルで戦わせるフィールド、とかなら、
なんとか作れそうな感じだよね。
設計しつつ、必要なものは【偽装錬金】で作成。
フィールドが完成したら、
『フィーア』さんとサージェさんで模擬戦とかどうかな?
もちろん『フィーア』さんを応援するよ!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!
安心してください五月雨模型店の皆さん
って塩対応すぎません!?
ふーむ模擬戦ですか?
でもこの世界なら私はシリカさん呼んじゃいますよ?
かもんっ!『ファントムシリカ』!!
というわけでフィーアさん相手ですが遠慮なしでいきたいと思います!
ファントムクォーツユニット作動!
エンジェライトスラスター展開!
からのー
フローライトダガー二刀流で
攻撃回数重視の【疾風怒濤】です!
「手数こそ正義! 参ります!」
さぁフィーアさんあそびましょー!
え?私が別人みたい?そんなわけないじゃないですかー
いつものクノイチムーブですよ!!
キャンプはとってもよいものだ。
同意する。
心の底から。けれど、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は思った。
「わたしの『フィーア』さんを連れて行くとか、どういうことかな?」
いや、誰のものでもないがという至極真っ当なツッコミは聞き入れられなかっただろう。理緒はいろんな事柄が絡むと止められない猟兵の一人である。
ノンストップなのである。
故に、理緒はキャンプフォーミュラ『キャンピーくん』に食ってかかっていた。
「それは、わたしの、役目だ!!」
「え~『キャンピーくん』よくわかんない~」
「ええい、話しならないよー! でもまあ、そこはおいておいて」
「そうだよ~キャンプしよ~みんなで楽しもうよ~」
「わかってるけど、此処『難民キャンプ』だよ……でもまあ、できることをしないとかな」
理緒は気を取り直して、『キャンピーくん』の中から転移したクロムキャバリアの光景を見やる。
『第三帝国シーヴァスリー』。
そこは嘗ては平和の園とも言うべき市街地が広がっていたが、オブリビオンマシンの蠢動によって破壊され尽くしていた。
あらゆる建物が破壊され、その瓦礫の撤去も今は遅々として進まぬが故にこうして『難民キャンプ』で人々は生活せざるを得ないのだ。
幸いにしてプラントを奪われることがなかったので、食糧事情は深刻ではない。
だが、いつまでも難民キャンプのテントぐらしというのは人の精神を鬱屈たるものへと変えていくだろう。
「なら、やっぱり娯楽だよね。せっかくだからクロムキャバリアでも、『プラクト』っぽいものができるようにするのはどうだろう」
「なるほど、それは良い考えですね!」
理緒の背後からいつの間にかやってきていた、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)が深く深く頷いた。
「あ、サージェさん」
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が」
「あーはいはい、どいてどいて。胸がちょっと邪魔。よっこら」
暖簾をくぐるみたいにして『アイン』と呼ばれた少女がサージェを退かせる。
「って塩対応すぎません!?」
サージェは最近『五月雨模型店』の面々が己に慣れてきたのか、扱いが雑になっていることに驚愕する。いやまあ、さもありなんっていうか。
「そう? でも、今忙しいの。手伝ってるんだから」
「うぐっ、至極真っ当な理由!」
「はいはい、サージェさんはこっちね。私が作ったバーチャルフィールドのテスターしてね」
理緒はいつのまにか『プラクト』に似たバーチャルフィールドを偽装錬金(ギソウレンキン)で作り上げていたのだ。
なんとか作れないかなと思っていのだが、やってやれないことはなかったのである。
「おお、これは」
「所謂シュミレーターみたいなものだけど、手作りの人形とかを使って遊べる簡易的なものっていうのが正しいところかな?」
理緒の説明にサージェは頷く。
なら、自分の機体である『ファントムシリカ』のデータを使えば、無双できるのではないかと思ったのだ。
「ふふふ、というわけで相手が『フィーア』さんでも容赦しませんよ!」
「え、えええ……いきなり呼ばれてきたら、すぐにこれとか聞いてませんっ」
「いいからいいから。ちょっとテストしてもらうだけだから。ちょっとだけだから」
んねー、と理緒は『フィーア』を呼びつけて、自分の作り上げたバーチャルフィールドによる模擬戦をサージェと行わせるのだ。
無論、理緒は『フィーア』を応援する。知ってた。
「手数こそ正義! 参ります!」
「な、ななななんだか別人みたいじゃないですか!?」
「えーいつものクノイチムーブですよ!」
いつもは『プラクト』で四足歩行の『トラメ』を使っているせいか、『フィーアからすれば印象がだいぶ違ったことだろう。
けれど、これは遊びだ。
目一杯楽しむだけでいいのだというようにサージェは『フィーア』と共に理緒の作ったバーチャルフィールドで遊ぶ。
その光景は難民キャンプの人々の耳目を引き付けるだろう。
戦いは常に起こっている。
でも、そこにあるはずの人の生死がバーチャルフィールドにはない。ならばこそ、人々は好き勝手に応援もするし、トトカルチョだって始まる。
それは熱気があるということだ。
「ふれー、ふれー、がんばれがんばれ『フィーア』さんー!!」
「私にも応援ないんですか!?」
バーチャルフィールドで乱舞する二機の機体。
それは戦いを遠ざけるだけではなく、人々の心に明日の活力を与えるもののように公開され、娯楽として難民キャンプに定着するのだった――。
大成功
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ルクス・アルブス
【ステルク】
いつものがあると、やっぱり落ち着きますね。
今日もアスリートアースは平和で……あれ?
クロムキャバリアです!?
ここだと、雄叫びますよね。エイルさんの本場みたいですもんね。
ステラさんのやべー|力《ちから》も倍増ですよね!
それにしましても、キャンプなんですか?
しかもみなさまを笑顔に、とか。
みなさまを笑顔にするといえば、もちろん音楽ですよね!
これはもう、キャンプファイアーでの演奏しか……って。
ステラさんのコンテナでごはんつくるんですか?
ごはんも笑顔にはなりますけど、音楽の方が……。
難民キャンプだし、ごはんは大事?
わかりました。
おいしいのしっかりつくりますから、夜は演奏させてくださいね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の香りがしまぁぁぁぁっす!!(ドリフト走行進入
出張『タベルナ・タタリクス』参りましたー!
はい?これ?私の家兼店舗ですが?
ええ、運び屋のステラといえば
この|界隈《クロキャ》では多少名の通った商人ですし?
誰がやべーメイドですか
さて物資を運びましょう
あ、五月雨模型店の皆様も手伝っていただけますと
まことに不本意ですがコンテナのひとつをキッチンカーにしました
ルクス様出番です
材料は【ステラ'sコンテナ】の中から全力で
それにしても…この2つの世界が交わりましたか
片や枷を外して|可能性《未来》を描き
片や枷などそもそもなく|夢《未来》を描く
この邂逅は……何をもたらすのでしょうね?
それは地鳴りのような音だった。
ある者にとっては、いつものことであったが、大抵の人間においては、それは通常のことではなかったのだ。
瓦礫と化した小国家『第三帝国シーヴァスリー』の市街地の向こうから土煙を上げながらドリフト走行してくる一台のキッチンカー。
いやまあ、そのエンジン音がけたたましい、という意味ではないのだ。
大概騒音であったけれど、それを上回る雄叫びが響いていたのだ。
「|『エイル』様《主人様》の香りがしまぁぁぁぁっす!!」
察しの良い方々はもうお気づきであろうし、ご存知であろう。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)ことヤベーメイドの雄叫びであった。
いつもの、と言われたらバーカウンターをシャーって横滑りしてくる漢字のイメージでステラは『タベルナ・タタリクス』と呼ばれるコンテナを連結させたキャンピングカーの爆走と共にやってきていたのだ。
「出張『タベルナ・タタリクス』参りましたー!」
元気は百点である。元気は。
「いつものがあると、やっぱり落ち着きますね。今日もアスリートアースは平和で……あれ? ここクロムキャバリアです!?」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は今気がついたとばかりに周囲を見回す。
確かにアスリートアースのアの字もない感じである。
荒廃した市街地。
瓦礫ばかりの街並み。
其処に立ち上る難民キャンプの煙。それは生活している人々の営みの証拠であったことだろう。
なるほどなぁ、とルクスは思った。
そりゃ、ここならステラも叫ぶだろうさ、と。
「『エイル』さんの本場みたいですもんね。ステラさんのやべー|力《ちから》も倍増ですよね!」
「誰がやべーメイドですか」
ステラは運び屋ステラとしてクロムキャバリアにやってきていた。
『難民キャンプ』に援助を、となれば彼女が出てこないわけにはいかないのだ。この界隈では多少名の通った商人なのだ。そうなの? そうなのである。
決してヤベーメイドとして通っているわけではないのである。
多分。自信ない。
「さて、物資を運びましょう」
「それにしましても、キャンプなんですか?」
この状況で? とルクスは思ったがステラはあんまり取り合わなかった。状況はステラにとって関係なかったのだろう。
「しかもみなさまを笑顔に、とか」
なら、とルクスは笑む。
満面の笑みであった。
『キャンピーくん』も良い笑顔~とかのほほんとしているが、ステラの動きは迅速だった。
笑顔のルクスの体をぶっこ抜くようにして抱えて、展開したコンテナの一角に打ち込む。
そこはキッチンである。
そう、キッチン。
キッチンですることは? そう、ただ一つ。
「そう、もちろん音楽ですよね! ってあれー!?」
「ルクス様出番です。ええ、出番です」
「な、なんでですか!? 今の今までの展開なら演奏する流れだったはずです! わたしの読んでいたリプレイは何処に!?」
「そんなものはありません。さあ、材料はステラ'sコンテナ(ステラズ・コンテナ)から選り取り見取りです。全力です」
「そ、そんなぁ……確かにご飯も笑顔にはなりますけれど……音楽のほうが……」
確かにルクスの言うとおりである。
この『第三帝国シーヴァスリー』の難民キャンプはプラントを奪われなかったために食糧事情は深刻ではない。
けれど、余裕がある、という意味ではないのだ。
そういう意味では確かに食料は助かる。けれど、他の猟兵だって同じようにしてくれている。逼迫せずとも余裕がない、とうのならば音楽などの娯楽でもって心を豊かにすることもまた必要だっただろう。
けれど、ステラはルクスに考える時間を与えない。
遠くを見るような瞳でもって彼女は呟く。
「……この2つの世界が交わりましたか。片や枷を外して|可能性《未来》を描き、片や枷などそもそもなく|夢《未来》を描く。この邂逅は……何をもたらすのでしょうね?」
「ステラさーん! 材料足りないですー! 作り終わったら、演奏して良いんですよねー?」
「良い訳ありません。少々お待ちを!」
「えー!?」
ルクスは演奏したくってしかたない。
だって野外ステージを作り出した猟兵たちがにぎやかに音楽祭をやっているのだ。
自分だって飛び入りしたい。
演奏したい。
でも、ステラは知っていた。
あの音楽祭ステージでルクスの大規模破壊音波魔法を炸裂させるわけにはいかないのだ。
そのために自分ができること。
皆を笑顔にするキャンプを、となれば!
「まさか、ここに来て私が世界の命運を握るなど……!」
尽きることのない材料でルクスの手を緩めさせてはならない。
一進一退の攻防をステラはルクスと共に行い、なんとしてでも、夜の演奏だけは避けるべく奮闘する。
そんなシッチャカメッチャカな様子を見やり『キャンピーくん』は満足そうにニッコリマークを浮かべたまま薄っすらと消えゆく。
「みんな~よいキャンプを~みんなが楽しんでくれて『キャンピーくん』も嬉しいよ~まったね~」
そう言って彼は消えゆく。
何処に往くのか。
それはわからないけれど。しかし、世界を移動し続けるのならば何れまた邂逅する時もやってくるだろう――。
大成功
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