星降る夜明けの空へ
●星降祭
――明ける穹に、祈りと願いを込めて。
雲海に堕ちて消え逝く島々が、征くべき道を迷わぬよう。
灯る星の花を導きに、その先を照らすように。
* * *
元々は雲海に堕ちた島を弔う目的で始まったと云われている、今宵の祭り。
もちろん、今でも儀式的な執り行いはされているようだが。
広く大衆的には、空に願いを託すイベントとして人々に愉しまれるようになっていた。
「――そういう方向への変化は、悪いとは思わないけどね」
ノヴァ・フォルモントはグリモアベースの一角で、集った猟兵たちと向き合いながら小さく口許を緩ませた。
彼自身もこの祭りを楽しみにしているような、そんな表情にも見える。
「今回の件は依頼……という程の内容でもないのだが。皆にはちょっとした手伝いをしてもらって、あとの時間はそのお祭りを楽しんできてもらえたらな、と」
●星の花
星降祭はその名の通り、星を空に降らす祭り。
といっても、実際の星を手に掴めるわけではない。
<星の花>と呼ばれる、この浮島にしか咲かない花がある。
星のように五枚の花びらをもつ、片手に収まるサイズの小さな花だ。
その花は陽の光や明るい場所では無色透明に見えるのだが。
夜、暗い場所などでは仄かに光り輝く。
灯る色彩はさまざまで、育て方の些細な違いによって変わるものだという。
「今回はその花を育てる栽培者のひとり、老夫婦の手伝いをしてもらいたいんだ」
その老夫婦はこの島で長年、星の花を栽培してきたらしいのだが。
近年は祭りの日に花を売るため島の中心部まで出向いたり、運搬や接客も楽ではないらしい。
老夫婦が丹精込めて育てた星の花たちが無駄にならないためにも。
皆にはぜひ協力してもらいたい、とノヴァは代弁するように軽く頭を下げた。
祭り会場には既に花を売る露天スペースは確保されている。
そこまで花を運搬し、店の支度を整え、売り子などをする。
様々な依頼や世界に赴いてきた猟兵たちならば、さして難しいことではないだろう。
実際に老夫婦が育てた花を自分で買い取るという手段もある。
「どのようにするかは皆に任せるよ。当日は祭りで人も賑わっているからな、客足に困ることはないだろう」
●星降る露店めぐり
手伝いが滞りなく終われば、あとは星降祭を好きに楽しんでいい。
まずは今宵の祭りを賑わせる夜の露店巡りだろうか。
祭りの主役となる星の花を改めてゆっくりと探してみるのもいいだろう。
気に入りの灯る光の色を見つけてみたり、敢えて自由に選び、降らせる時まで袋の中に大事に仕舞っておいてもいい。
星の花を模した、夜光石の装飾品なども人気だそうだ。
ブレスレットにペンダント、ストラップやガーランドなど、そのどれもが小さな星の光を秘めている。
花と同様に無色透明な五枚の花びらは暗い場所で淡い光を輝かせる。
光り方も色彩も石によって細やかに違う。今宵の夜を共に過ごす光を探してみるのも悪くない。
「……そうそう、星の花を降らすタイミングは夜明けと決まっているんだ。それまでの時間をどう過ごすか考えておくのも良いかもな」
じきに大型飛空艇が浮遊大陸に到着する。
その飛空艇に乗り、雲海上の星を降らすポイントまでゆったりと移動することになる。
日の早い夏場といえど、夜明けまではそれなりの時間があるだろう。
飛空艇内部にはゆったり休める個室や、大勢の人達が寛げる広いラウンジなども完備されている。
夜明けまでの時間、どう過ごすかは各々の自由だ。
「俺も皆を送り出した後に赴くが、夏の夜と夜明けの時間を楽しんできてくれ」
雲海の空に、夜色のヴェールが舞い降りる。
――さあ征こうか。
今宵、祭りで賑わう星穹に揺蕩う浮遊大陸のひとつへと。
朧月
こんにちは、朧月(おぼろづき)です。
揺蕩う星の海で、淡く灯る花と願いを降らせましょう。
空の上より、ゆるやかな夜明けの時間をお届けします。
●シナリオ構成(日常/日常)計二章
全編ゆったり過ごす日常シナリオです。
しっとりと静かに、楽しくワイワイ、どちらも歓迎です。
時間帯は、1章(夜)~ 2章(夜明け)となっております。
進行や受付状況はシナリオタグ、マスターページでご案内します。
2章のみノヴァを始めとする当方グリモア猟兵へのお誘いも歓迎です。
●詳細
『星降祭』
ブルーアルカディアのとある島で行われるお祭り。
元々は雲海に堕ちた島を弔う目的で始まりましたが、
現在は星の花を降らせ、願いを託すイベントとなっております。
『星の花』
暗い所でほの光る、星のかたちをした花。島の特産品です。
明るい場所では無色透明ですが、灯るひかりは様々な色彩に変化します。
●第1章『天空のナイトマーケット』(日常)
お祭りで賑わう夜の露天市を見て回りましょう。
イベントで降らせる星の花を調達したり、
夜食やお菓子などを露店で買っておくのもあり。
星の花を模した装飾品なども購入することも出来ます。
※上記以外にもありそうなものならば何でもOKです。
※商売パートの描写は控えめか省略の場合あり。
お仕事後のお遊びをメインで考えていただき大丈夫です。
●第2章『ブルーアワーを夢見て』(日常)
大型飛空艇に乗り、星夜の雲海へと出航します。
星の花を降らせるタイミングは日の出前、空の色が変わり始めた頃です。
時刻になるまでのんびり過ごしたあと、
夜明けの空を眺めながら星の花と共に願いを降らせましょう。
※こちらの章では大型飛空艇の個室やラウンジなどで過ごすのはもちろん、
小型飛空艇の貸出もされています(自動操縦で周囲の空をゆったり周回します)
おひとり様や少人数で楽しみたい方はそちらもぜひご利用ください。
●グループ参加について
通常プレイング:2名様まで。
オーバーロード:人数不問。
※送信日、オバロの使用不使用は全員揃えてください。
※【相手のお名前(ID)】or【合言葉】を文頭に。
3名以上の場合はグループ人数(代表者のみでOK)もご明記ください。
●公序良俗に反する行為、周囲への迷惑行為、未成年の飲酒喫煙は描写しません
以上です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 日常
『天空のナイトマーケット』
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POW : ナイトマーケットを楽しむ
SPD : ナイトマーケットを楽しむ
WIZ : ナイトマーケットを楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御影・龍彦
弔いの祭り、ブルーアルカディアで
…そうか。そうなんだね
教えてくれてありがとう
そういう祭りなら行かないと
祈るなら、この世界じゃないといけない
ちょっとした理由があるんだ
老夫婦から花を買い取って…
さて、飛空艇の時間までだいぶあるね
夜食を買っておこうかな
僕、結構食べる方だから
がっつりめにいけるものがあるといいんだけど
例えば、肉料理とかあるかな?
この世界には食べられる魔獣もいるって聴いたけど
そういうの取り扱ってる屋台もあったりする?
ぴったりのものを見つけたら
飲み物も欲しくなっちゃうな
軽く楽しめる程度の度数のお酒を探そう
大丈夫。今日は呑みすぎたりしないよ
ちゃんと目的があるからね
出発までは喧騒を楽しもうか
蒼穹の世界、弔いの祭り。
失くなったものへ、祈り、願う。
(「……そうか。この世界でそんな祭りが」)
御影・龍彦は、星降祭の本来の意味を聴きながら、金の瞳を僅かに伏せた。
――そういう祭りなら、行かないと。
祈るなら、この世界じゃないといけない理由があるんだ。
件の老夫婦には軽く挨拶を済ませ、星の花も自分が使う分を幾つか買い取らせてもらった。
どの色に灯るか、親切な老夫婦は教えてくれる様子だったけれど。
龍彦は敢えて聞かず、袋に大事に仕舞っておくことにした。
役割を果たすその時まで、楽しみにとっておきたいと微笑んで。
「……さて、飛空艇の出立まではまだ時間がありそうだね」
一足先に飛空艇の様子を見に来たものの、乗船できるまでも小一時間はあるそうで。
「それなら、先に夜食を買っておこうかな」
ぽつりと独り言ち。腹が減ってはなんとやら。
幸いにも祭りを賑わす屋台の数も選り取りみどり。
(「がっつりめにいけるものがあるといいんだけど……例えば肉料理とか?」)
存外、自分は食べるほうだ。
そしてこの世界では食べられる魔獣もいると聞いたことがある。
そういうのを取り扱っている屋台も何処かにあるだろうか。
――探していたそれは案外あっさり見つかった。
この世界ではオブリビオンである魔獣料理もポピュラーなのだろうか。
香ばしい匂い、なにやらド派手なのぼりに目を引かれ、揺れる文字を口遊む。
「……ブレイドホーク?」
小首を傾げた龍彦の声に、店主の粋の良い応えが返ってくる。
『でっけぇ鳥の魔獣だよ、ここらの島も度々群れで連中がやってくるのさ』
店主が云うには、そいつらを追っ払いがてら、退治した魔獣は解体して皮膚から肉まで全て有り難く利用させてもらうのだとか。
陸地の限られた世界だからこその、人々の逞しさが伺えた。
『んで、そのブレイドホークの肉を使った料理はどうだい、兄ちゃん?』
鳥の魔獣、というくらいなのだから食感は鶏肉に近いものなのだろうか。
じゅうじゅうと網で焼く串焼き、衣をつけて油でサクッと揚げた唐揚げ、たっぷりのタレをまとったサンドイッチなど、どれも食を唆られるモノばかりで。
「そうだね……あとで飛空艇で食べようかなと思ってるから」
『それなら、照り焼きサンドはどうだい? 冷めてもおいしいぜ!』
レタスにトマト、甘辛い照り焼きのタレで味付けした肉をふかふかなパンで挟んだ一品。
シンプルながらも厚みはなかなかのボリューミー。これは確かに食べごたえがありそうだ。
「うん、それじゃあこれをひとつ」
ほかほかと温まる包みを手に。
美味しそうな夜明けまでのお供を見つけたなら、それに合う飲み物もやっぱり欲しくなってしまうもので。
(「せっかくだしコレに合うお酒も探そうか」)
ふわりと軽やかな足取りで屋台を廻り、出会ったのは地元で作られたというビール。
俗に言うクラフトビールというものだろう。
購入した店主の話によれば、爽やかで軽い口当たりなのだとか。
保冷魔法がかけられたボトルには、今宵の星降祭に因んだ美しい星空が描かれている。
呑み終えた後にも良い土産になりそうだと龍彦はボトルを見つめながら目を細めた。
(「あの場に居たら、つい他のボトルも欲しくなってしまったけれど」)
大丈夫、今日は呑みすぎたりしないよ。
誰ともなく心のなかで言い聞かせながら。
ちゃんと、目的があるからね。
飛空艇が出発する時間まで、祭りの喧騒をゆるりと楽しもう。
大成功
🔵🔵🔵
リヒト・ヴァイスアードラ
花の運搬、ですか。
でしたら空路も問題なく行ける私におまかせを。ひとっ飛びで運んでみせましょう。
さて、ナイトマーケットですか。
見ているだけでもいいものではないですか。
……あの人の好きだったキラキラした祭り(※イルミネーションのこと)を思い起こさせますね。
そうですね。降らせる花の調達に行きましょうか。それこそ例の老夫婦の所で買わせていただきましょうかね。
色はどれにしましょうか……うん、青と白のを選びましょう。
もしかしたら、今宵ばかりは空の上からあの人(前の主)も見ているかもしれませんから……なんて、ね。
「花の運搬、ですか」
星の花を栽培する老夫婦の手伝いと聞き。
それならばと、リヒト・ヴァイスアードラはその運搬を買って出た。
翼を持つ自分ならば、空路も問題なく行ける。花が痛む前に届けることも大切だろうと。
「私におまかせを。ひとっ飛びで運んでみせましょう」
誇らしげに胸を張りつつ。その背に氷纏う翼を煌めかせ、リヒトは悠々と蒼穹を羽ばたいた。
――そうして幾度か往復を繰り返し、いい汗をかいたと老夫婦からのお礼に笑顔で応えるリヒト。
「そういえば……降らせる花はまだ調達していませんでしたね」
仕事に熱心ですっかり忘れていたけれど、それこそ世話になった老夫婦の所で買わせていただきたいとリヒトは申し出た。
老夫婦が嬉しそうにリヒトに用意してくれた星の花。
どんな色に灯る花が良いかと聞かれれば、リヒトは暫く腕を組み悩んだあと。
「……うん、青と白がいいですね」
選んだ色は氷晶の澄んだ色彩。
二種類の星の花を幾つか購入し、老夫婦に別れを告げると再びリヒトは空に舞った。
気付けば空の宵もより深みを増して、昼間の火照った空気を冷ますような夏の夜風が頬を撫でる。
気持ちの良い風を感じつつ、空から見る街の様子は確かに賑やかで。
軒を連ねる屋台のカラフルな屋根、石畳の道路には行き交う人々で溢れていた。
「ナイトマーケット、ですか。見ているだけでもいいものではないですか」
上空から見下ろす街の輝きは、何時しか見た祭りのようでもあって。
(「……あの人の好きだった、キラキラした祭り」)
イルミネーションで彩られる光景、浮かぶあの人の姿。
リヒトはそっと自身の首に付けられたそれに手を伸ばす。
ザラリとした錆びた感触、ちぎれた鎖。
けれどこれは、未だあの人と繋がっている証なのだ。
「あの人にも……この光景を見せてあげたかったですね」
――ううん、もしかしたら。
「今宵ばかりは空の上からあの人も見ているかもしれませんから」
(……なんて、ね)
独り言ちたリヒトは軽く目を細めつつ、祭りの輝きを金の瞳に映していった。
大成功
🔵🔵🔵
落浜・語
【狐扇】
そうだね。きっと綺麗だろうし、楽しみだな。
手伝った分ひいき目っていうのもあるだろうけど、それを含めたってきれいだよな。
せっかくのご縁だもの、買っていったら喜んでもらえると思うよ。
俺はこっちの青と白のにしようかな。
狐珀と一緒に露店巡りを。
本当に星がモチーフのものがいっぱいいあるな。
クッキーなんかのちょっとしたお菓子も買いつつ
狐珀が足を止めるのに合わせて、装飾品店へ。
うん、似合ってる。
そういう仕草がかわいくて思わず頬が緩む。
俺も何かキーホルダーとか買っていこうかな。せっかくだから、お揃いみたいな感じで。
まだ時間はあるから、ほかの店も見ていこうか。
吉備・狐珀
【狐扇】
星の花を降らす星降祭、楽しみですね!
想像するだけでわくわくする気持ちが抑えられなくて お手伝いしたご縁、というのもあるけれど あのご夫婦の育てたお花、話に聞いた通り丹精込めて育てられていて綺麗でしたよね
あのご夫婦からお花を買いたいと思うのですけれど
(花を運んでいる最中に若紫色と常磐色の鮮やかに咲いた花を見つけたから、というのもあって)
買い取った花を大事に袋にしまい、時間まで露店巡りを
美味しそうなお菓子も気になるけれど
惹かれたのは装飾品店
星の花を模した耳飾りに目が止まって
わぁ、この耳飾りすごく可愛いです!
光の加減で色が変わって綺麗
耳に近づけ合わせてみる
語さん、どうでしょう?似合いますか?
「星の花を降らす……星降祭、楽しみですね!」
「そうだね。きっと綺麗だろうし、楽しみだな」
蒼穹の世界、どこまでも続く宵色と、明ける空を待ちわびる。
星の花が降る光景を想像するだけで心踊らせる気持ちが表情にあふれるようで。
そんな吉備・狐珀の様子に、落浜・語も嬉しそうに目を細めて。
現地に転送された二人はまず、花運びなどの手伝いに精を出した。
「星の花……あのご夫婦から買いたいと思うのですけれど」
お願いされた手伝いを通し、間近で花を目にしたというのもあるだろう。
老夫婦が丹精込めて育てた星の花たちは、ひときわ美しく感じられた。
「そうだな、手伝った分ひいき目ってのもあるだろうけれど」
その気持ちを含め、せっかく紡いだ縁なのだから。
「買っていったら喜んでもらえると思うよ」
「ふふ、よかった。じゃあ一緒に選びましょうか」
――実は。花を運ぶ最中に若紫色と常磐色の鮮やかに咲いた花を見つけたから、という理由もあったのだけれど。
ひそりと狐珀は嬉しそうに微笑んで、心に留めていた二色の花を選んだ。
「俺は……こっちの青と白のにしようかな」
そんな彼女の様子を見つつ、語が手を伸ばしたのは涼やかなふたつの色彩。
ふたりは買い取った星の花を大事に袋へしまい、老夫婦へお礼を済ませると祭りの喧騒へと舞い戻る。
「まだ飛空艇の時間までありそうだな、少し露店巡りをしようか?」
「そうですね! お菓子とか、装飾品もちょっと見てみたいです」
賑わう露店市は人の往来も多く、二人は離れないようにと寄り添いながら人波を揺られてゆく。
そうして立ち止まったのは、甘くて香ばしい匂いのもと。
どうやら菓子を中心としたお店のようだ。
「本当に星がモチーフのものがいっぱいいあるな」
星型のふわふわしたパンケーキ、一口サイズのさっくりデニッシュは見た目にもかわいくてお腹が満たされそうで。星の海をイメージしたソーダフロートなどのドリンクなども売られている。
「かわいいし、美味しそうだし……迷っちゃいます」
どうしようかと嬉しい悩みをしながらも、ふたりは一緒に食べられそうなクッキーの詰め合わせ袋を買うことに決めた。
「小腹が空くかもしれないし、ちょっと買っておこうか」
「ふふ、星型クッキーかわいいですね」
表面にはキラキラとしたザラメが煌めくクッキーはなんだか食べるものも勿体ないかもなんて。
クッキーのお供に軽いドリンクも購入し、向かった次に足が止まったのは装飾品の露店。
狐珀が並べられたアクセサリーを見て、藍色の瞳を輝かせる。
「……わぁ、この耳飾りすごく可愛いです!」
思わず惹かれてしまったのは、小さな夜光石の星が揺れるイヤリング。
光の加減で移り変わる色彩は淡い虹色のようなきらめきで、ずっと眺めていられるような――。
「語さん、どうでしょう? 似合いますか?」
狐珀そっと耳に近づけて合わせる仕草をしてみせる。
そんな彼女の仕草がかわいくて、語は思わず頬が緩んでしまった。
「うん、似合ってる」
「ほんとですか? じゃあ買ってみようかな!」
「そうだな、俺もなにか……揃いのキーホルダーでも買っていこうか」
「わぁ、お揃いのお星さまですか?」
語は同じ色彩の揺れる星のキーホルダーを手に、二人は幸せそうに視線を合わせて微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真宮・響
【雷炎の絆】で参加
ブルーアルカディア。魂人としてこの世に戻ってきた律の事実上の初陣だったから、律にとって思い入れが深い土地だ。いつまでも気がかりだろう。こうして人生の先輩夫婦が大事に育てた星の花。
最高じゃないか。星である奏と星羅にお揃いの青系統の星のストラップを。月である瞬と朔兎にもストラップを。金色がいいかね。
アタシには・・・これは?赤い星の花の指輪?結婚指輪贈れなかったから今おくらせて欲しい?全く。粋な事してくれるねえ。アタシからも贈らせてくれ。白い星の花の指輪だ。ふふ、やっと指輪交換できたねえ。
全世界は激動の日々だ。でも今日は二人だけで素敵な星の祭りをふたりで。
真宮・律
【雷炎の絆】で参加
魂人として帰ってきたらいきなり戦争だったしな。ブルーアルカディアは傭兵としての感を戻すのに凄い経験をした。規模が大きかった分、平和になってもこの空の世界の行く末は気になる。
俺ら夫婦も40代だが、星の花を見事に咲かせた老夫婦にはまだまだ届かないな。楽しませてもらう。
星といえば奏と星羅、並んで輝く月は瞬と朔兎。ストラップを買う響に内緒で指輪を買う。蓄えはある。とっておきのを買うぜ。
響、結婚指輪贈れなかったからな。改めて、この赤い星の花の指輪を贈る。今度こそ、永遠に一緒にいよう。ああ、この白い星の指輪、ずっと付けてるな。
外の世界は騒がしいが、こうして穏やかな時間も必要だな。
「ブルーアルカディア、か……」
真宮・響は宵色に染まる空を見上げ、ふと言葉を零した。
「ん? どうかしたか」
傍らで小さく相槌を打つ夫の真宮・律は響に疑問を返す。
「いや……魂人としてこの世に戻ってきた律の事実上の初陣だったから、律にとって思い入れが深い土地だって思ってね」
そういえば――と、律も数年前のその時を思い返すように。
「魂人として帰ってきたらいきなり戦争だったしな」
まあそれはそれで、あの戦争はは傭兵としての感を取り戻すのに良かったと律は笑って見せた。
「だが……規模が大きかった分、平和になってもこの空の世界の行く末は気になっていたんだ」
そりゃまあ、そうだろうと。響も頷いて見せて。
それが今宵の祭りに訪れたひとつの切っ掛けでもあるのだから。
星の花の運搬を手伝いつつ、ふたりは仲睦まじい老夫婦の様子を眺め、何方ともなく顔を見合わせた。
「俺ら夫婦も40代だが、星の花を見事に咲かせた老夫婦にはまだまだ届かないな」
「ふふ、そうだね。人生の大先輩には学ぶことが多そうだ」
自分達もあの夫婦のように何時までも寄り添いあえたらと。
ふたりは言葉に出さずとも互いがそう思うように笑い合って見せる。
ひと仕事終えたなら、祭りの露店市をふらりと見て回ろう。
せっかくなので家族への土産物をと、ふたりは装飾品を取り揃えている店を覗いてみた。
星降祭りに因んだ、星に関連するモチーフの品が多く目に映る。
「――星といえば奏と星羅、並んで輝く月は瞬と朔兎か?」
「最高じゃないか。星である奏と星羅にお揃いの青系統の星のストラップを。月である瞬と朔兎にもストラップを。こちらは金色がいいかね」
家族の喜ぶ顔を想像しつつ、嬉しそうに会計を済ませる響の隣で、律はひそりともう一つの品を手に響に気付かれぬように手早く購入を済ませていた。
「――響」
「ん?」
祭りの喧騒に戻るやいなや、改めて名前を呼ばれて不思議そうな顔をする響の手を取り、律は少し静かな通りの片道へと連れてゆく。
「どうかしたのかい?」
「ああ、響に渡したいものがあってな」
律が差し出したのは簡素な紙袋に包まれた小さな箱。
さきほどストラップを購入した店と同じもののようだ。
いつのまに、と響は笑って見せて、なんだろうと小さな箱を開けてみる。
「……これは? 赤い星の花の指輪?」
星の花を象った夜光石が赤い色を灯す指輪だった。
「結婚指輪、贈れなかったからな。改めて、この赤い星の花の指輪を贈る」
魂人として還ってきて、猟兵として慌ただしく働いて。
気付けば長い時が過ぎようとしていた。改めてというのもアレだが、今だからこそとも思えて。
「――全く。粋な事してくれるねえ」
出先の露店市でさり気なくこうして渡してくれるのも夫らしいと、響はさっそく指輪を手に嵌めてみる。
「ああ、キレイだね……ありがとう」
と、そうだ。ちょっと待ってておくれ。と響は律を静止して足早に駆け出し、そして軽く息を切らせて急いで戻ってきた。手には小さな紙袋が握られている。
「アタシからも贈らせてくれ。白い星の花の指輪だ」
自分にくれた赤い星の花と同じかたち。対となるような白い星の花が淡く煌めく。
「はは、せっかく内緒で買ったのにな。……うん、でもありがとう」
律も響から指輪を受け取り、手に嵌めてみた。
「ふふ、やっと指輪交換できたねえ」
「ああ、遅くなったけどな」
――今度こそ、永遠に一緒にいられるように。
猟兵をめぐる世界は激動の日々だ。
けれども今日だけは、素敵な星の祭りをふたりで過ごそうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
壽春・杜環子
【空環】
沢山のお客様でしたが無事に終えられ何より
あら、そらくんも慣れて―…
言葉に瞬きののち自然な笑顔に頬染め
…―えぇ、えぇ、そう。ふふ、そうね
ねぇそらくん
内緒話のフリで頬にキス
悪戯が成功したけどお返しに結局照れて
繋いだ手を握り返す
まぁ本当?嬉しいわ
欲しい物…そう、ねぇ
散策しそらくんのプレゼント探し
あれも似合うこれも似合うと唸った末に
先端に精巧な星飾りのついたリボンをそらくんへプレゼント
わたくしも、これが貴方に一番似合うと思いましたの
流れ星のようで素敵でしょう?
…―あら
ふふ、大変とっても素敵なお星さまに会えてしまうのね?
大変、わたくしのお願いが叶ってしまうわ
ねぇそらくん、耳飾り…付けてくださる?
蓮見・双良
【空環】
お疲れ様でした
売り子姿も可愛かったですよ
…将来、二人で骨董品屋を営むのも良いですね
僕の家、アンティークショップですし
不意打ちのキスには一瞬驚き
笑み深め彼女の頬へお返し
星の花は先に調達
杜環子さんと恋人繋ぎで露店巡り
夜食やお菓子は用意してありますから
何か杜環子さんの欲しいものがあれば
横顔眺め無意識に緩む頬
こんな自分も悪くはない
…まぁこんな顔、杜環子さん以外に見せるつもりはないし
さっと普段の顔に整え
心惹かれた星の花の耳飾りを贈り
この露店市で一番あなたに似合うと思って
僕にも…?ありがとうございます
ええ、とても…
大事にしますね
僕が流れ星なら
流れ着く先はあなたの許ですね
笑んで
付けた耳飾りへ口付けを
「沢山のお客様でしたが、無事に終えられ何より……」
「ええ、お疲れ様でした」
客足も落ち着いた頃に、ふたりはふぅと一息付いて顔を上げた。
「――杜環子さんの売り子姿も、可愛かったですよ」
美しく咲き誇る星の花に囲まれ、花屋のエプロンを纏う彼女はいつも以上に愛らしく見えて、ふと零れてしまう。
そんな蓮見・双良の言葉に、壽春・杜環子はぱちりと藍の瞳を瞬いて。
ふわりと紅色に染まる、花のような彼女の笑顔もやっぱり愛らしかった。
「ふふ、そうでしたか? そらくんも、随分と慣れている様子でしたよ」
「僕の家、アンティークショップですし。接客の経験もありますから」
「……将来、二人で骨董品屋を営むのも良いですね」
片付けを手際よく行いながら、ふたりでこうして居ると思い浮かぶ光景だった。
父の骨董屋を継ぎ、時を刻む品々に囲まれて、ゆったりとした人生を過ごすのも悪くない。
その時は彼女も隣に居て欲しい、と。
「……――えぇ、えぇ、そう。ふふ、そうね」
いつかのそんな光景に杜環子も表情を綻ばせて。ふと小さな手で彼を招く。
「ねぇねぇ、そらくん」
「はい、どうしました?」
口許に手を添えて、こしょりと内緒話を招く杜環子の仕草に双良は屈んで耳元を近づける。
ふと返ってきたのは声ではなくて、頬に触れる柔らかなぬくもりだった。
そんな彼女の不意打ちに少し驚いたように青の瞳を瞬かせて。振り向いた彼女の表情は悪戯成功、と小さく微笑んでいた。
双良はにっこりと笑みを深めつつ、彼女の頬へふわりとぬくもりを返す。
「おかえしですよ」
「……もう、そらくんったら」
せっかく不意打ちが成功したのにと杜環子はちょっぴり拗ねつつも、彼の自然なお返しにはやっぱり照れてしまって。頬が熱くなるのを感じた。
「――それじゃあ、お仕事も終わりましたし。露店巡りしましょうか?」
「ふふ、そうね。実は楽しみにしてましたの」
指を絡めて手をつなぎ、彼女の歩幅に合わせて夜の喧騒をゆるりと歩く。
星降祭の露店市はその名の通りキラキラと眩く輝いていた。
そんな光景を楽しそうに藍の瞳に映す彼女は、ひときわ煌めく星のようで。
杜環子の横顔を眺め、双良は無意識に自分の頬が緩むのに気づく。
――こんな表情をしてしまう自分も悪くはないと、思えるようになったけど。
(「……まぁこんな顔、杜環子さん以外に見せるつもりはないし」)
緩んだ表情も束の間に。普段の微笑み湛えた顔へとササッと整える。
「夜食やお菓子は用意してありますから、何か杜環子さんの欲しいものがあれば」
「まぁ、本当? 嬉しいわ。欲しい物……そう、ねぇ」
ふと杜環子の目に留まったのは、藍色に星が煌めく天幕が揺れる露店市だった。
その美しい星の世界に、惹かれるように足が止まる。
「こちらのお店を少し覗いてみましょうか?」
「ええ、素敵ですね」
星を象った夜光石のアクセサリー、夜空の色を映した装飾品、無数に輝く星彩。
その中でも双良が心惹かれたのは、小さな星の花の耳飾り。
灯りの下では透明に煌めく小さな星が、なんだか彼女らしい気がして。
「杜環子さん、僕からはこれを。この露店市で一番あなたに似合うと思って」
「……まあ。わたくしも、これが貴方に一番似合うと思いましたの」
そんな杜環子の手には夜空に流れる銀色の流星――。
柔らかな藍色の先端に精巧な星飾りのついたリボンだった。
「流れ星のようで素敵でしょう?」
「僕にも……? ありがとうございます。ええ、とても……大事にしますね」
「ふふ、わたくしも」
互いに贈りあったプレゼントを手にとって。
星が揺れるリボンは確かに空を駆ける流星のようだった。
「僕が流れ星なら、流れ着く先はきっと……あなたの許ですね」
「……―あら。ふふ、大変。とっても素敵なお星さまに会えてしまうのね?」
大変、わたくしのお願いが叶ってしまうわ。なんて、花のような笑みを咲かせる杜環子に双良の表情もほころんで。
「ねぇそらくん、耳飾り……付けてくださる?」
「ええ、いいですよ」
杜環子は白砂の髪をさらりとかきあげて、そっと目を閉じた。
耳に触れる彼の指先が少しだけくすぐったい。
小さな星の花が揺れる杜環子の耳元に、双良はそっとぬくもりを落とす。
宵に包まれた夜光石の花は、ふわりと青い色を灯していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
暁を本名の心音で呼ぶ
やはり祭の客はどこも多いな…
心音、お疲れ様。やはり慣れていると違うな、とても小慣れていた
紅く輝く星の花と紫に輝く星の花を胸ポケットに
心音の髪には藍と紫の星の花を飾って
手袋を取った左で心音と指を絡めて繋ぐ
探すのは心音を飾る物
折角だ心音、露店を見よう。面白い掘り出し物があるかもしれん
うん?そうだな、やはり夜鉱石が多い
勿論、行こう
一つ一つ答えながら隣を歩く心音を見る
耳が震えて尻尾が揺れて…可愛い
考え、夜鉱石のロケットペンダントに
心音が大切だと思う物を一片納め―…俺?
くくく、うん…ふふ、そうだな俺“達”の写真にしよう
着ける時は、必ず俺がつけても…?
君だけの俺で、俺だけの君へ
楊・暁
【朱雨】
藍夜もお疲れ様
それを言うならお前の方だろ?
露店商も様になってたぞ(くすくす
髪の星の花にはにかみ
へへ…ありがとう
藍夜の選んだ赤と青
もう自然と手に取っちまう俺達の色
当たり前って言えるくらい一緒に居られる誰かができるなんて
妖狐軍に居た頃は思いもしなかった
恋人繋ぎに頬綻び
うん!こんなデカい市、早々ねぇからな
全部まわってみてぇ!
藍夜!あっち何かあるぞ!
なぁ、あれ何だ?
すげぇ!ちょっと見ていかねぇか?
興味津々
耳ぴこぴこ尾も揺れ
…俺が大事に…?
ロケットと藍夜を交互に見て
…藍夜は入らねぇし…
じゃあ…お前の写真!入れとく
…!――ん、そうだな。俺“達”の
ふふ、と笑み深め
…ああ
藍夜がつけてくれ
ずっと一緒、な
賑わう露店市、並べられた星の花たちは次々に訪れた人の手へと渡ってゆく。
売り子に会計に花のラッピング。
ふたりで手分けをし卒なく熟していれば、あっという間に時間は過ぎていった。
「やはり祭の客はどこも多いな……心音、お疲れ様」
「ああ、藍夜もお疲れ様だ」
開放感から思い切り伸びする楊・暁に、御簾森・藍夜はふふ、と笑みを零して。
「やはり慣れていると違うな、とても小慣れていた」
「それを言うならお前の方だろ? 露店商も様になってたぞ」
いつか何処かで、露店喫茶を開いてみるのも悪くないか? なんて。くすくすと顔を見合わせて笑い合い。
「そうだ、俺達の星の花も選んでおこうか」
藍夜が灯る色彩の中から手に取ったのは、自分達のいろ。
紅と紫に輝く星の花は自身の胸ポケットに挿して。
藍と紫の輝く星の花を心音の髪へふわりと飾る。
「わぁ。へへ……ありがとう」
藍夜の選んでくれた星の花を、そっと指先で触れると思わず笑みが咲く。
赤と青。自然と選び、手に取ってしまうくらい当たり前になった自分達のいろ。
こんな風に思えるくらい、一緒に居られる誰かができるなんて――。
妖狐軍として戦いの身を置いていたあの頃は思いもしなかった。
「さて、折角だ心音、露店を見よう。面白い掘り出し物があるかもしれん」
「うん! こんなデカい市、早々ねぇからな。全部まわってみてぇ!」
互いに差し出した手を自然と絡める。
直に伝わる手のひらの体温に、ふたりの頬もほわりと緩んだ。
「藍夜! あっち何かあるぞ!」「なぁ、あれ何だ?」「すげぇ! ちょっと見ていかねぇか?」
露店市の賑わい、空の世界特有の珍しい物品など、心音の興味は惹かれるばかり。
楽しさと驚きと嬉しさで、耳はぴこぴこ尾もふりふりと揺れながら、感情を全身で表す心音の様子に藍夜は(可愛い……)と思わず口許を抑えて何かを堪えていた。
「なぁなぁ、なにかここに来た思い出になるものとか、ないかなー」
「ふむ、そうだな……それなら」
心音の要望に、藍夜は装飾店の品物を眺めた。
煌めく星のアクセサリー、輝く装飾品、確かにそれらも思い出になる飾り物だけれど。
しばし考えたのち、藍夜が手に取ったのは夜鉱石のロケットペンダントだった。
「ペンダントか?」
「ああ、でもこうして開くと。中に何か大切なものを入れられるようになってるんだ」
「……大切なもの? ……俺が大事に……?」
心音はロケットと藍夜を交互に見て、うんうんと悩むように小さく唸った。
「……藍夜は入らねぇし……」
「そうだな、心音が大切だと思う物を一片納め――……って俺?」
だめか? と真顔で見上げる心音の表情に、思わずふはと笑いを零して。
「くくく、うん……ふふ、そうだな俺“達”の写真にしよう」
「なるほど、そっか! じゃあ…お前の写真…!――ん、そうだな。俺“達”の、だな!」
帰ったらいい写真を一緒に選ぼうと。互いにふふ、と笑みを深め。
「そうだ。着ける時は、必ず俺がつけても……?」
君だけの俺で、俺だけの君へ。その胸元にそっと忍ばせたいから。
「……ああ、もちろんだ! 藍夜がつけてくれ」
胸に灯る夜光石と共に、ずっと君と一緒に――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・陽桜
【桜葵】
葵さん(f44015)と
*登録名は「榎木」姓ですが、現状は恋人同士
外にはこんな世界もあるのですね!
星の花もとても綺麗です
お手伝いにも力が入っちゃいますね
(段差への注意に頷き、差し出された手をぎゅっと握り返し)
ありがとうございますっ
ふふ、ご夫婦、とても素敵ですよね
露天市にも珍しいものがいっぱいなのです
ほんとです、桜みたいな星の花なのです
え、よいのですか?
えっと、それじゃあ…あたしの髪に飾っていただけますか?
(葵さんに星の花を飾ってもらえば嬉しそうに微笑み)
確かに、このお茶は見た目も味も抹茶ぽいのです
(似てる、の言葉にこくこく)
和洋折衷な感じがよいですよねぇ
(ふと見れば、カフェのお茶で使用されているものと
同じティーカップが売られているのに気がつき)
では、これはあたしから葵さんにプレゼントなのですよ
(手渡した箱の中には小さな星の光を秘めた、
葵色の輝きを放つティーカップ)
ここで見た星空と、素敵なお茶のことを忘れないように
そして、お店にいらしたお客様ともこの時間を共有できたらいいですよね
榎木・葵
【桜葵】
まだ恋人同士
老夫婦の花畑で収穫を手伝って
足元の段差に手を差し出して
ここに段差があります
気をつけてくださいね
ギュッと握ってくれる手を握り返し
仲睦まじい老夫婦の姿に目を細めて
ええ、本当に素敵です
夜店を見て回りましょう
桜色に輝く星の花の髪飾りを見つけ
同じ五枚の花弁なのに印象が違いますが
これは桜に似ていますね
よろしければ記念にプレゼントさせてください
これからの旅路を照らしてくれる気がするのです
陽桜さんの髪に飾れば
毬の形に整えられた小さな星の花が淡く輝いて
綺麗ですよ陽桜さん
良く似合っています
立ち寄ったカフェで出てくるお茶が抹茶に似て
一口飲めばほろ苦さがなんだか懐かしくて
このお茶
抹茶に似ていますね
ティーカップで出てくるのがなんだか新鮮で
こういう出し方も面白いですね
(カップに嬉しそうに微笑んで)
ありがとうございます陽桜さん
この色…葵の色、ですね
なんだか少し照れますね
ええ
このカップをお出ししたお客様は
きっと今みたいに幸せな気持ちになります
そう思っていただけるよう精進しますね
お店の再開が楽しみです
「わぁ……外にはこんな世界もあるのですね!」
どこまでも続く蒼穹の世界、雲の上にふわりと揺蕩う浮島。
はじめて訪れた世界の光景に、榎木・陽桜は藍色の瞳を瞬かせた。
そんな陽桜の横顔を見て、榎木・葵も自然と表情を綻ばせる。
風に揺れながら、ほの光る不思議な星の花たちは輝く宝石のようで。
ふたりは老夫婦が丹精込めて育てた花を丁寧に収穫していった。
「ふふ、お手伝いにも力が入っちゃいますね」
「あ、ここに段差がありますよ。気をつけてくださいね、陽桜さん」
傾斜に広がる花畑は広大で、その光景に見惚れていた陽桜に葵はそっと手を差し出す。
「ありがとうございますっ」
差し出された手をぎゅっと握り返し、陽桜は嬉しそうに笑みを咲かせた。
ふと見れば、畑へ様子を見に来た老夫婦が自分達と同じように手を取り合っている姿が目に映り、ふたりは互いに見合ってその光景に目を細めた。
「ふふ、ご夫婦、とても素敵ですよね」
「ええ、本当に素敵です」
仲睦まじいその姿に、ふたりは繋いだ手を確かめるようにもう一度ぎゅっと握り直して。
花畑での手伝いを終え、老夫婦へ挨拶を済ませたふたりは街の中心部へと足を運んでいた。
気付けばとっぷりと日も暮れ、空には宵色のヴェールが降りてゆく。
暗さを増す空の色とは逆に、浮島の夜は賑やかさを増していった。
露天市の灯り、人々の喧騒が祭りの雰囲気を盛り立てる。
「せっかくですし、夜店を見て回りましょうか」
「わぁ、いいですね。珍しいものがいっぱいなのです」
蒼穹の世界ならではの食べ物や装飾品、中でも一際目に留まるのは、やはり星の花を模したアクセサリーの数々だろうか。
葵は桜色に輝く星の花の髪飾りを見つけ、手にとって見る。
「これは……桜に似ていますね」
「――ほんとです、桜みたいな星の花なのです!」
星を模した五枚の花弁、けれど色が違うだけで随分と印象も違って見える。
葵は髪飾りと陽桜を交互に見ながら、そっと髪飾りを彼女の髪に充てがって。
「よろしければ、記念にプレゼントさせてください。陽桜さんの、これからの旅路を照らしてくれる気がするのです」
「……え、よいのですか?」
わぁ、と陽桜は喜びの笑みを咲かせ、葵が会計を済ませる横でそわそわとしつつ。
「えっと、それじゃあ……あたしの髪に飾っていただけますか?」
頬を桜色に染める彼女の仕草に、葵はくすりと笑みを零し。
「ええ、もちろん」
陽桜の桜色の髪に、淡く輝く星の花が咲く。
毬の形に整えられた小さな星の花の髪飾りは、光を受けて美しく燦めいていた。
「綺麗ですよ陽桜さん。良く似合っています」
「ふふ、ありがとうございます。大切にしますね」
付けてもらった髪飾りにそっと指先で触れながら、陽桜は嬉しそうに頬を綻ばせた。
露天市をぐるりと巡り、少し足も疲れてきた所でひと休憩にと、カフェスペースが設けられた店 でふたりは一息つくことにした。
「このお茶、なんだか抹茶に似ていますね?」
何気なく注文してみたグリーンティー。
抹茶のようなほろ苦い味わいに、星の形をしたシュガーがぷかぷかと浮かぶ。
「……確かに、このお茶は見た目も味も抹茶ぽいのです」
――コクリともうひとくち。
砂糖の甘みはほのかにするが、味は和で仕立てる抹茶に近いもののようだ。
自分達の知る世界とは全く別の世界ではあるけれど、似たような飲み物があるのだと懐かしさと 新鮮さを感じながら。
「ティーカップで出てくるのがなんだか新鮮で……こういう出し方も面白いですね」
「和洋折衷な感じがよいですよねぇ」
ほんわりとした夜のティータイムを楽しみつつ、陽桜はふと店頭の隅に置かれているティーカップに目が留まる。
「――あ。葵さん、ちょっと待っててくださいっ」
どうしたのかと小首を傾げる葵に一言告げて、陽桜は店頭のカウンターまで小走りに駆け寄ると店員と話しつつ、小さな箱を手にして急いで戻って来る。
「陽桜さん、それは……?」
「ふふ、これはあたしから葵さんにプレゼントなのですよ!」
「プレゼント……僕に?」
どーぞっ! と嬉しそうに差し出す陽桜から小箱を受け取り「開けてもいいですか?」と内心わくわくしながら葵はそっと箱の蓋を開けた。
「これは、ティーカップ。この色……葵の色、ですね」
手渡した箱の中には小さな星の光を秘めた、葵色の輝きを放つティーカップが収められていた。
葵の花のような暮れる宵色に染まるティーカップは、此処で見上げた空の色そのもののようで。
「ありがとうございます陽桜さん。なんだか少し照れてしまいますね」
「ここで見た星空と……、素敵なお茶のことを忘れないようにって思って」
――それにね、と陽桜は幸せそうな笑顔を浮かべながら。
「お店にいらしたお客様とも、この時間を共有できたらいいですよね」
「……お店。ええ、そうですね。きっと、このカップをお出ししたお客様は今みたいに幸せな気持ちになります」
今はまだ、戻ることが出来ないけれど。
いつしか全てが終わった時に、ふたりであの喫茶店へ戻ることを夢見て。
「そう思っていただけるよう精進しなければ」
「ふふ、あたしも頑張ります! 一緒に頑張りましょう」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『ブルーアワーを夢見て』
|
POW : 温かい飲み物片手に時を待つ
SPD : 何か作業をしながら時を待つ
WIZ : 談笑しながら時を待つ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●星降る船に乗って
――宵の空へ、飛び立つ船に乗り込もう。
明ける穹、満ちる朱を待ちわびて。
祈りと願い込め、灯る星の花降らす。
降らせた煌めきはきっと、広大な空が受け止めてくれる。
風に乗り、灯る光の導きに誘われて。あなたの願う、その先へと。
* * *
大型飛空艇は人々を乗せ、星夜の雲海へと出航した。
ゆるりと夏の風を受けて辿り着く先は、白い雲海が広がる空の地。
嘗て大きな浮遊大陸が沈んだとされるこの場所で、星の花を降らす儀式が行われる。
星の花を降らせるタイミングは日の出前、空の色が変わり始めた頃なのだそう。
時間になれば人々はそれぞれの願いを託し、星の花を空へと還す。
雲海に零れ落つ幾百もの煌めきと共に迎える朝日は、きっと今迄のものとは違った輝きをみせてくれるはず。
――未だ空の色は宵色に包まれている。
夜明けの時間までどのように待つかは其々次第だ。
飛空艇内にはゆっくり休める個室や、のんびりと過ごせるラウンジも完備されている。
また、小型飛空艇も借りることが出来るようで、広がる雲海を独り占めも出来てしまう。
夜明けの空、宵と朱が交じるブルーアワーを夢見ながら。
星の花と共に願いを降らせるその時まで。
さて、どうやって過ごそうか。
御影・龍彦
個室にて食事を済ませ
時間までぼんやり空を眺める
酔いもすっかり醒めている
夜明け前の雲海の色に
弔うべき者達の表情が映っている気がして
彼女達はあの日、僕が殺した
かつてたった一度だけ
この世界に来たことがある
とある浮遊大陸が沈められそうになった事件
悲劇を阻止する為に殺した
奴隷として生きるしかなかった少女達を
空賊に身をやつしたエルフ達を
彼女らを取り纏める気高き女騎士を
皆、オブリビオンだった
倒すべき世界の敵だった
理解はしていても弔いたいんだ
彼女達は影朧じゃない
魂がこのままで安らげるのかわからないから
さて、時間だ。行こう
今、貴女達に花を贈るよ
そうすることで、送り出すよ
もしも来世があるのなら
今度こそどうか幸せに
夜色の空が、薄らと明るみを帯び始める。
もうすぐ夜明けが来る。夜の青と、陽の朱が交じる黎明の空に。
龍彦は個室で食事を済ませ、ぼんやりと空と雲の移り変わりを眺めていた。
(「……そろそろ、時間かな」)
酔いはすっかり醒めていた。
飛空艇のデッキへと出て、広大な空を一望する。
ふわりふわりと揺蕩う雲の影が、ときおり人の形となって金の瞳に映り込む。
――彼女達はあの日、僕が殺した。
嘗てこの世界に、一度だけ訪れたことがある。
とある浮遊大陸が沈められそうになった事件だった。
その悲劇を阻止する為に、僕は殺した。猟兵として。
奴隷として生きるしかなかった少女達を、
空賊に身をやつしたエルフ達を、
そして彼女らを取り纏める気高き女騎士を。
皆、オブリビオンだった。それは即ち「倒すべき世界の敵」だ。
今でも思い出す、彼女達の命をこの手で引き裂いたあの感覚を。
僕はこの世界を守るため、彼女らを葬った。
頭では理解している。けれど、弔いたいんだ。
彼女達は『影朧』じゃない。
荒ぶる魂を鎮め、転生へと導ける存在とは違う。
(「この空の何処かに、貴女達の魂もあるのかな……」)
もし存在しているならば、この星の花と共に届けばいいと。
龍彦は袋から取り出した花を空へと降らせた。
「――もしも来世があるのなら、今度こそどうか幸せに」
煌めく星の花は青く。まぶしいほどに、青く輝いていた。
大成功
🔵🔵🔵
リヒト・ヴァイスアードラ
さて、花を降らせるまで時間がありますね。
どうしましょうか。
そうですね。個室でのんびり過ごしましょう。夏ですから冷たい飲み物もあるかもですしそれも楽しみつつ。
……空をゆく船の窓辺を見て思い出します。かつての主とこういう船に乗った時も、翼なき人間もなかなかやるではないかと思ったものです。空を飛ぶ技術、それで人を楽しませること……いいものですね、これは。
花を降らせる時間になったらそうですね……これからも無事旅が続けられますようにとでも祈っておきましょう。
ほら、綺麗ですよ。見えていますよね?(鎖に語りかけながら)
綺麗な景色を、これからもっと貴女に見せてあげますからね
キンと冷えてしゅわりと弾けるレモンソーダを啜りつつ、リヒトは個室でのんびりと夜明けまでの時間を過ごしていた。
窓から覗く景色を眺めながら、雲や風を抜けて飛空艇が進んでいく様子を感じる。
(「そういえば……かつての主ともこういった船に乗ったことがありましたね」)
翼を持つリヒトにとって、空を舞うことは造作もない。
けれど浮島に住む人間たちも知恵を集め、大勢の人を乗せて移動できるこのような空飛ぶ船などを生み出した。
こうして乗せられて移動するというのも、意外と悪くはないものだ。
(「はじめて乗った時は、翼なき人間もなかなかやるではないかと思ったものですね」)
ゆらりゆられて見る空の景色は、自らの翼で飛ぶ景色とはまた違って見える。
これが人を楽しませること……というものなのだろう。
移りゆく空の光景を眺めつつ、やがて夜明けの時が近付いてきた。
リヒトは船のデッキへと出ると、甲板の柵から少し身を乗り出す。
今は船が空中で静止しているのだろう、ゆるやかな夏の風が肌を撫でる。
空の先を見れば、雲海の色が徐々に変わり始めていた。
夜の青に溶けるように、陽の朱が少しずつ滲んでゆく。
「……そろそろ、時間ですかね」
リヒトは大事に仕舞っておいた星の花を空へと降らせた。
青と白、灯る光は燦きながら、小さな星屑のように夜明けの空を舞い踊る。
祈る願いは……これからも、無事旅が続けられますようにと。
「――ほら、綺麗ですよ。見えていますよね?」
錆びた鎖にそっと触れながら、リヒトは金の瞳を瞬かせた。
この翼があれば、何処へだって飛んで行ける。
そしてこんな風に綺麗な景色を、これからもっと貴女に見せてあげますからね。
大成功
🔵🔵🔵
吉備・狐珀
【狐扇】
星の花を降らせるのは日の出前のようですし、それまで飛空挺内を見て回ってもいいですか?
なかなか乗る機会のないものですから珍しくて
(子供の様にそわそわしている自覚があり少し恥ずかしい)
食堂や個室を見てまわり、通路の窓から雲海を眺めつつラウンジまでぐるりと一周
時間がくるまでラウンジで過ごすことに
袋の中の星の花に目線を落とし、今度は花を降らす時が待ち遠しくなって再びそわそわ
きっと綺麗に違いないから
うっかり見惚れてしまわないでしょうか、何をお願いしましょうか、何て楽しみで仕方なくて
―何を願うかは決まっているのですけれど
星の花の煌めきに願うはただひとつ
語さんとこれからも沢山の時間を過ごせますように
落浜・語
【狐扇】
そうだね。まだ、だいぶ時間もあるし、普段から乗るようなものじゃないし、折角だから中の探検行こうか。
(ソワソワしてる狐珀にこっそりにこにこ)
窓の外の雲海をみながら、ぐるりと中を一周。
そうはいっても船だから、海の船と似た感じではあるんだな。
ラウンジに戻ってそこで休憩がてら時間を潰して。
日の出前の、夜と朝の境の、紫と青が混ざり合う色って綺麗でなんか好きなんだよなぁ。
星の花を降らせると、きっともっときれいだろうな。
これからも、狐珀といっしょに色んな所へ行って色んな物を見れますように。
きっと、狐珀と一緒なら、楽しい事はいい思い出になるし、大変な事も乗り越えられるだろうから。
星の花を降らせる時間まではまだ暫くありそうだ、ということで――。
ふたりは飛空艇内の探検へと繰り出していた。
「――わぁ、雲の流れが早いですね……!」
飛空艇の窓から覗く景色にすっかり夢中になりながら、狐珀は藍色の瞳をきらきらと輝かせていた。
そんな彼女の様子を見つめる語も、一緒に窓の外を覗き見て。
「そうだね、普段から乗るようなものじゃないし、目にする機会のない光景ではあるかな」
「ふふ、ですよね! なんだか珍しくて……」
はっと子供のように燥いでしまっている自分に気付き、狐珀は少し恥ずかしそうに声を小さくすると、語は微笑ましそうに笑みを零した。
大きな飛空艇をのんびりと探索するのはなかなかに飽きないものだ。
広々としたスペースの食堂は美味しそうな香りにつられるのをちょっぴり我慢しつつ。静かな個室エリアを覗いてみれば、いつかのんびりとした空旅も良いねなんて話してみたり。
「でもやっぱり、構造は海の船と似た感じではあるんだな」
ゆらゆらと揺れる感覚も地上の海を揺蕩う船にすこし似ている気もする。
泳ぐ海が、水か雲かの違いだけなのだろう。そう考えてみるのもまた面白い。
そんなこんな、ふたりはぐるりと船内を一周したあと、ラウンジでのんびりとした時間を過ごす。
狐珀はゆったりとしたソファに包まれながら、そわそわと袋の中に仕舞ってある星の花に目線を落とした。
淡く灯る二色の花は袋の中で光輝いていて、空降らす時を待ちわびている。
うっかり見惚れてしまわないでしょうか、何をお願いしましょうか。なんて、楽しみで仕方なくて。
「――花降らす時、とても楽しみです」
「ああ、そうだな」
日の出前、紫と青が混ざり合う夜と朝の境のいろ。
その光景は、星の花を降らせればきっともっと綺麗に見えるだろうか。
――薄らと空の色が変わり始める。
ふたりは飛空艇の甲板へと出て、少しずつ移り変わる空の色を眺めつつ、星の花を手にした。
何を願おうか? それは既に決まっていた。
「……語さんとこれからも沢山の時間を過ごせますように」
狐珀がお願いしながらふわりと笑いかけると、語もつられて笑みを零す。
「うん、これからも。狐珀といっしょに色んな所へ行って色んな物を見れますように」
きっと二人一緒なら、どんな旅路でも大変なことも乗り越えられるだろうから。
ふたりの願いを乗せ、星の花の燦めきはふわりと夜明けの空に溶けていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・陽桜
【桜葵】
(葵さんの言葉に静かに耳を傾ける)
(宵色の空と同じくらい落ち着いた、美しく響く、大好きなあなたの声
紡がれる言葉の中に時折混ざり揺れるのは、苦悩の色
「揺るぎない事実」へ抱く絶望と先の見えない不安はどれほどだろう
それでも気に掛けるのは自分ではなくあたしのことで)
(見えない未来への不安を抱くのはあたしも同じ
今までもそれはあったけれど、猟兵に目覚めてからはもっとだ
けれど、それでも強くあろうと思えたのは、葵さんがいてくれたからだ)
(星桜花の指輪と共に紡がれた言葉に、溢れたのは嬉し涙)
頼りないなんてことないです
いつだって、あなたはあたしの傍にいてくれました
あなたは、あたしが「希望をくれた」というけれど
あたしにとっては…あなたこそが、あたしの希望なんですから
あたしは、ずっとあなたと一緒にいたい
あたしの人生をかけて…あなたの未来の旅路についていきたいです
(涙を拭い、頷き
差し出された指輪へ触れようと手を伸ばす)
…あたしの意思は、あなたと共に、なのです
(嵌めてもらった指輪と葵さんを見つめ、微笑んで)
榎木・葵
【桜葵】
(雲海を見下ろして)
武蔵坂学園で世界の広さを知ったつもりですが
異世界があるだなんて思いもよりませんでした
でも変わらないものもありますね
あの老夫婦の姿は僕の理想です
自分が作った世界で、大切な人を守り、養い、育み生きる
それが幸せだと思います
ですが、僕は僕の守るべき小さな世界(神社と喫茶店)を失いました
これは揺るぎない事実です
戻るために半身を探す当てのない旅
保証なんて何もありません
そんな身勝手にあなたの人生を巻き込んでいいのか
ずっと悩んでいました
ですがあなたは希望をくれました
旅を続けたその果てで
またあの幸せの形に戻ってもいいのだと
未来はもっと素晴らしいのだと
もしあなたが僕の旅路についてきてくれるというなら
(跪いて星桜花の指輪を差し出し)
陽桜さん
僕と結婚してください
未来(カップ)も見えなくて頼りない僕ですが
きっとあなたを守ってみせます
あなたを守る権利と
あなた自身の意思を今
僕にください
(差し出された手を取り指輪を嵌めて)
ありがとうございます
あなたと共にある未来
必ず素晴らしいものにしますから
宵色の空へ、幽かに東雲の彩が滲む。
夜明けを待つ雲海を見下ろす葵のレンズに、ふわりと星の灯火が映った。
広がる景色は雲の上、不思議に浮かぶ島々に、空を駆ける大きな船。そのどれもが新鮮で、
「――こんな異世界があるだなんて、思いもよりませんでした」
武蔵坂学園で世界の広さを十分に知ったつもりだったけれど、世界は無限に広がるものだと痛感させられた。
けれど。世界や種族が変わろうとも、変わらないものもあった。
「あの老夫婦の姿は、僕の理想です」
星の花畑に囲まれて暮らす、ふたりの仲睦まじい光景を思い出す。
自分が作った世界で、大切な人を守り、養い、育み生きる。
きっとそれが……自身も思い描く“幸せのかたち”なのだろう。
「……葵さん」
陽桜は葵の言葉を静かに聴きながら、小さく頷いた。
宵色の空と同じくらい落ち着いた、静かで美しく響く、大好きな声。
けれども紡がれる言葉の色は、時折混ざり揺らめいて。
彼の様子に陽桜はほんの少し心配そうに首を傾げながらふわりと笑顔を向けて。
そんな陽桜の表情に葵も柔く目を細める。
描いた未来、平穏な日々はあのままずっと続くと信じていたけれど――。
「……ですが僕は、僕の守るべき小さな世界を失いました。これは揺るぎない事実です」
葵は静かに瞼を伏せて、小さく言葉を零す。
そっと自分の胸に手を当てれば、ぽっかりと空いた穴が感じ取れるようだった。
「大切な世界を取り戻す。その為の、半身を探す当てのない旅です」
――本当にいつか取り戻せるのか?
そんな保証なんて何処にもない。
探して探し求め、結局何も掴めない儘かもしれない。
「……そんな身勝手な僕の旅に、あなたの人生を巻き込んでいいのか。ずっと悩んでいました」
「――身勝手だなんて……そんなこと……!」
陽桜は俯く葵の手にそっと触れ、藍色の瞳を瞬かせる。
彼の苦悩が声色に、表情に溢れていて。
抱く絶望と先の見えない不安はどれほどだろうか、それでも気に掛けるのは自身ではなく自分のことで。その優しさに胸がきゅっとイタくなる。
(「見えない未来へ不安を抱くのは、あたしも同じ」)
今までもそれはあったけれど。この世界に来て、猟兵に目覚めてからはもっとだ。
初めて見る、知る世界は心踊る気持ちもあり、同じくらい不安も沢山だった。
けれど、それでも強くあろうと思えたのは、葵さんがいてくれたから。
そんな彼が抱える不安や痛みがあるのなら、共に分かち合えたらと――。
揺れる藍色の瞳を見つめ返し、葵は陽桜の手をそっと握り返す。
その顔からは先程までの不安気な表情が消え、優しげな微笑みを湛えて。
「――ですが、あなたは希望をくれました」
旅を続けたその果てで、またあの幸せの形に戻ってもいいのだと気付かせてくれた。
未来はもっと素晴らしい光景に溢れているのだと。
「もし、あなたが僕の旅路についてきてくれるというなら……」
葵は静かに跪いて片方の手で小さな指輪を差し出した。
淡く桜色に灯る、星桜花の指輪が夜明けの光に燦めく。
「――陽桜さん。僕と結婚してください」
「未来も見えなくて頼りない僕ですが、きっとあなたを守ってみせます」
「あなたを守る権利と、あなた自身の意思を今。僕にください」
「……葵さん……」
彼の手に輝く星桜花の指輪と共に紡がれた言葉。
驚きと嬉しさと、いっぱいの感情が溢れるように陽桜は大粒の涙を零す。
「……頼りないなんてこと、ないです」
「いつだって、あなたはあたしの傍にいてくれました」
「あなたは、あたしが『希望をくれた』というけれど」
「あたしにとっては……あなたこそが、あたしの希望なんですから……」
ずっと、あなたと一緒に居たい。
あたしの人生をかけて……あなたの未来の旅路、そしてその先に、ついていきたい。
陽桜は零れた涙を指で拭いながら頷き、差し出された指輪へ触れようと手を伸ばした。
「……あたしの意思は、あなたと共に、なのです」
葵は笑顔で頷くと、陽桜の細い手を取り桜色の星の指輪をそっと嵌める。
彼女の指に嵌められた星桜花はよりいっそう、輝いて見える気がした。
「ありがとうございます。あなたと共にある未来、必ず素晴らしいものにしますから」
「……ふふ。はいっ!」
葵は陽桜の手を取りつつ立ち上がると、視界へ射し込む光に思わず目を細めた。
「――わぁ、夜明けですね」
「ええ、雲の海に陽が昇るようです」
刻々と色付く空を望みながら、船は星の花の軌跡を残して空を舞う。
ふたりの心にも、この瞬間と美しい光景を刻みながら。
大成功
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