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バトル・オブ・オリンピア⑪〜VoltageStage

#アスリートアース #バトル・オブ・オリンピア #超人プロレス

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「皆様、続いての競技はプロレスですわ! あの『天空要塞デスリング』に乗り込み、ダークレスラー達とプロレスにて勝負するのですわ!」
 グリモア猟兵、金城・ジュリエッタ(|脳筋《フィジカルエリート》お嬢様・f37793)は集まった猟兵達を前に気炎を上げる。
 これまで数多のダークレスラーを送り込み、猟兵達ともプロレスでの戦いを演じてきた彼らの本拠。其もまた、バトル・オブ・オリンピアの開催に伴い、地上へと降下してきたのだという。つまりこれは、ダークレスラー達と決着をつける好機でもある。
「既に首魁たる『デスリング総統』との直接対決も組まれてますが、前座も疎かにはできませんわ! 『ダーク王位決定戦』へと出場し、これに勝利するのですわ!」
 これはデスリングの最終決闘法であり、2つの勢力が最大10名まで、互いに同数の選手を選抜し対戦、相手チームの選手を全員打倒した方の勝利という団体戦だ。
 ダークレスラー側からは『闇の巨漢レスラー』達のチームが出場する。名前通りの巨体を誇るレスラー達だが、見た目通りのパワーとタフネスに加えスピードとテクニックもある程度備えており、スタンダードな戦法で戦う、平均的なレスラー達と言えるだろう。
「最大の特徴は『ポジション』というシステムですわね。先鋒・次鋒・中堅・副将・大将の5つのボジションから好きなポジションを選ぶことで、それに応じた能力が強化されますわ!」
 先鋒は機動力が倍増し、次鋒は手数が1.5倍になる。
 中堅は最初の攻撃が確実に命中させられるようになり、副将は全ての能力が1.2倍になる。
 大将は耐久力が実に10倍になる代わり、ギブアップができなくなるというデメリットもある。
「尚、この恩恵は敵側も同様に得られます。これらポジションの特性を充分に活かして戦うことこそ、この戦いに勝利する鍵ですわ!」
 ポジションの強みを敵以上に引き出し、圧倒する。そうしてこそ、この戦いを制することが叶うだろう。
 因みに、通常の団体戦と異なり、各ポジションの名称はそれ以上の意味を持たない。必ずしも全てのポジションを埋める必要は無く、何なら全員先鋒とか全員大将でも良い。対戦順も、いきなり大将から出ても良いしその大将が負けても他に選手が残っていれば試合は続行できる。深く考えず、己に適したポジションを選ぶと良いだろう。

「来たるデスリング総統との決戦に向け、この戦い確実に勝ちますわよ! それでは、転送開始ですわ!」
 ジュリエッタがぐいっと押し開いた空間の向こう、グリモアが輝き。猟兵達をかの決戦の舞台へと送り出してゆく。


五条新一郎
 暗黒大舞台。
 五条です。

 バトル・オブ・オリンピア、続いての競技はプロレス団体戦。
 ポジションによって強化される能力を存分に活かし、ダーク王位決定戦を勝ち抜いて参りましょう。

●目的
『ダーク王位決定戦』に出場し勝利する。
 対戦相手は『闇の巨漢レスラー』となります。

●会場
 アスリートアース、天空要塞デスリング。ダークレスラー達の本拠地です。
 現在は地上に降りてきています。

●プレイングについて
 OP公開と同時にプレイング受付開始、ある程度の参加者様が集まったところにて締め切り予定。
 募集状況はタグにて。締め切りと書いてなければ基本受付中と考えて頂いてOKです。
「ポジションを選び、それにふさわしい戦法で戦う」ことでプレイングボーナスがつきます。ポジションの内訳は以下。
 先鋒:機動力2倍。
 次鋒:攻撃回数1.5倍。
 中堅:一撃目が必ず命中する。
 副将:全ての能力1.2倍。
 大将:耐久力10倍+ギブアップ不可。

●備考
 現時点で既に支援対象である⑬が攻略可能となっている状況を鑑み、若干早めの完結を目指す方向となる可能性があります。予めご了承くださいませ。

 それでは、皆様の炎のプレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『闇の巨漢レスラー』

POW   :    馬殺し
対象の【首を抱えて投げ飛ばした後、そのまま対象】を【スリーパーホールド】で締め上げる。解除されるまで互いに行動不能&対象に【窒息】属性の継続ダメージ。
SPD   :    虫殺し
【ハンマーパンチ】【膝蹴り】【DDT】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ   :    「そんなもんかオラ! 効いてねぇぞ!」
【挑発的アピール】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜刀神・鏡介
先鋒
あの総統にしてこの配下あり……って感じかな?

体力はもちろん速さや技術も兼ね備えているとはいえ、やはり巨体相手にはかき回していくのが良いだろう

無手のままで弐の型【朧月:周】の構え。精神を統一して行動の最適化。(指定技能:見切り+心眼、受け流し、集中力、カウンター、怪力)

細かく動き回りながら相手の攻撃を回避と受け流しつつ、適宜カウンターを入れていく
相手の耐久を考えれば、攻撃を一点に集中させて崩していこう。狙いやすさと効果を考えれば足元だな

もちろん攻撃を集中させれば、敵も狙いに気付くだろうから、カウンターに合わせた反撃を受けないように動きを調整していく
足元を崩したところで一気に攻勢にでる



 天空要塞デスリング、此度の大会に合わせ地上へ降下してきたダークレスラー達の本拠地は、地上において巨大なリングを形成していた。
 地上での競技開催ということで集まった、大勢の観客達の歓声が響き渡る。客席は超満員。ダークリーガーとしては彼らをダーク化せんとする打算もあろうが、それ以上にやはり、プロレスは観客の前で行ってこそ、という考えもあるのかもしれない。
『今回は猟兵とかいう奴らが俺達の相手だ! 奴らに負けたダークレスラーも大勢いるがなぁ……』
 そしてリング上では、一人のダークレスラーが観客へ向けマイクパフォーマンス中。此度の対戦相手となる『闇の巨漢レスラー』、その最初の相手だ。
『此処は俺達ダークレスラーの本拠! ダークレスリングの流儀も知らねぇ素人なんざ、相手にならねぇんだよ!』
 吐き捨てるが如く言い切れば、観客から歓声やブーイングが上がる。どちらであれ、マイクパフォーマンスに煽られ観客のヴォルテージも上がってきているようだ。
「あの総統にしてこの配下あり……って感じかな?」
 其処に立つ猟兵チームの一番手、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、一連の流れを見て考える。予知に見たデスリング総統と、今目の前に在るダークレスラー。共に、悪辣ではあれどプロレスの理念には忠実と言える者達。その辺りはオブリビオンであっても歪まぬ矜持、なのだろうか。
「ともあれ、来たからには勝たせてもらう」
 なれどリングに立った以上、考えるは只それだけだ。無形に構えると共に、目を閉じ意識を集中。刹那、会場を包む歓声も熱気も遠くへ吹き飛び、鏡介は静寂の中で知覚を研ぎ澄ます。
 普段は刀を得物とする鏡介だが、無手の格闘術にも心得はある。行使したユーベルコードも合わせれば、格闘の専門家と渡り合うことも充分に可能。
「いいぜ、かかって来やがれ! その前にオレがてめぇの全身バキバキに圧し折ってやらぁ!」
 世界の音が戻れば、マイクを置いて来たダークレスラーが挑発めいて鏡介を指差しながら言い放つ。にらみ合う両者。互い、闘志は充分。
 双方準備完了、そう判じられたが故か、会場に甲高い打音が響き渡る。即ち、ゴングが鳴ったのだ。
「おらおらおらおらおらぁぁ!!」
 ゴングを聞くや否や、ダークレスラーが飛び出す。雄叫びと共に立て続けに繰り出される拳と膝、その速度は見目に反して速く、且つ的確に効果的な部位を狙ってくる。一つでも受ければ、そのまま殴り倒されかねない勢いだ。
(成程、体力だけでなく速さが技術も兼ね備えているというのは確かなようだ)
 鏡介は内心にて敵の攻勢を評する。グリモア猟兵が語っていた評を、頭だけでなく感覚でも理解した。加えこの攻勢、どうやらポジションは次鋒か。
(だが、見えない程じゃない)
 なれども迫る攻勢に狼狽えなどしない。元々の積み上げた経験に、ユーベルコードで底上げした集中力と視覚感覚による見切りの技を合わせれば、これだけの攻勢も十二分に知覚が叶う。そして。
「ちぃっ!? くそっ、速ぇ……!」
 前後左右の足捌き、最低限の動きを以て、繰り出される打撃をすり抜けるが如く躱してゆく。鏡介が選んだポジションは先鋒、その身のこなしは常に増して素早く。瞬く間に敵レスラーの横合いへと移動し、更に。
「そこだ!」
「ぐっ!?」
 踏み込んでいた脚に、ローキックを撃ち込む。硬い肉の感触が蹴り足に伝わると共に、ダークレスラーの口から呻きが漏れる。
(やはり、巨漢相手に狙うならば足元か)
 重量級の敵に対してのセオリーと言える戦法は、どうやらこの敵にも通用しそうだ。頷き、一歩下がって敵の出方を窺う。
 尚も攻め込んでくるダークレスラーの拳を、腕で回し受けて流しつつ、再度ローキック。反撃のストレートが繰り出された時には、既に鏡介の身は側面へ回り込んでいた。
 巨体とはいえ決して鈍重というわけではない敵レスラーだが、今の鏡介の機動力は平時の二倍。ならば、速度を以て掻き回す戦法は充分に効果的だろう。その判断のもと、右へ左へと身を滑らせ、敵の意識を乱しにかかる。
「この野郎……! いつまでも好きにできると思うなよ……!」
 ローキックを決めること数発、ダークレスラーの動きに変化が出て来た。ストレートを潜ってローキックを打ちにいく鏡介だが、其処に前蹴りが放たれてくる。ローキック封じのカウンターか。
「悪いが、見えている」
 だが、そのうち相手も対応してくるだろうというのは鏡介としても想定内だ。踏み込み位置をずらして前蹴りの軌道から己の身を外しつつ、再度ローキック。
「ぐ……ぁっ……!?」
 呻くダークレスラー、前蹴りから足を戻したその身が傾ぐ。度重なる足へのダメージに、とうとう充分身体を支えることができなくなったらしい。
「限界のようだな」
 其処へ踏み込む鏡介。敵が充分な戦闘態勢を維持できなくなった今、此処が攻め時だ。
「な……めんじゃねぇぞ! 俺はプロレスラーだ、この程度……!」
 意地を以て立ち上がり、鏡介の攻勢を迎え撃たんとするダークレスラー。なれど振るう拳にはそれまでの力は無く。
「いいや、これで……終わりだ!」
 紙一重で拳を躱してのクロスカウンター、よろめいた処へのアッパーカット。吹き飛んだダークレスラーはそのままマットに沈み、決着のゴングが鳴り響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

笹乃葉・きなこ
●POW
ポジション→次鋒
ケモ状態

次の相手はコイツだべな?
わぁーでけぇなぁ
投げごたえがありそうだべぇ

掴んで投げることを意識しするべ
掴んだら怪力のユーベルコードでぶん投げるべぇ

ポジション効果も使って更にぶん投げるべぇ
一方的にぶん投げられた気持ちいいけど…

相手からの攻撃で投げ飛ばされたら、空中浮遊と空中戦で相手を掴んで怪力のユーベルコードでぶん投げるべぇ

スリーパーホールドされたら、両手で腕を掴んで、から怪力のユーベルコードぶん投げるべぇ

なに殺したら、こっちが負けみたいだから半殺し程度にぶん投げるべぇ

何度でも何度でも降参するまで投げてやるかなァ♥(にっこり)

覚悟しろよ



 続いての試合。リングに上がったのは、白い毛並みと太い角を持つ獣人。毛皮越しにも分かる肉感的な肢体を必要最低限の着衣に覆った笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)は、対峙するダークレスラーを円らな瞳で見上げる。
「わぁー、でけぇなぁ。お前さんがオラの相手だべな?」
「てめぇみてぇなチビが俺の相手とはな。舐められたモンだぜ」
 対するダークレスラーは、侮りを隠しもせぬ態度できなこを見下ろす。ただでさえ小柄なきなこ、巨躯を誇るレスラーと並べば尚更体躯の差は大きく見える。観客からも、最早勝負が成立するのか疑問に思う声が上がっているようだが。
「こんだけでかけりゃ……投げごたえもありそうだべぇ」
「!」
 続くきなこの不敵な声音と視線に、ダークレスラーは直感し、警戒するように身構える。このチビ、勝ち目が見えていやがる、と。
 直後に鳴ったゴング。其を合図に駆け出すきなこ、跳びかかりながら左右の手を敵レスラー目掛けて伸ばす。対するダークレスラーはその手を払い退けんと腕を振るが、弾かれたきなこの手はすぐさま彼を目掛けて再度伸ばされる。
「ちぃっ!? こいつぁ……」
「捕まえたべぇ!」
 次鋒か、ダークレスラーがそう悟った時には、きなこの手は既に彼の腕を掴んでいた。そして、掴んでしまえばきなこの本領発揮だ。
「おりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぬおぉぉぉぉ!?」
 そのままきなこが腕を振り上げれば、ダークレスラーの巨体は軽々と宙を舞い吹き飛んでいく。小柄な女性が片手で巨漢を放り上げるその様に、観客からも度肝を抜かれた驚愕の声が上がる。
「ぐぉっ! ……ぬわぁぁぁ!?」
 マットに背中から叩きつけられ呻くダークレスラー、だが彼の身体は即座にまた宙へ放り上げられる。彼の足を掴んだきなこが、再び彼の巨躯を投げ飛ばしたのだ。
 ユーベルコードによって一層高められた怪力を活かし、ひたすら相手を投げ飛ばす方針を採ったきなこ。ポジション効果で増えた手数も活かし、ひたすら一方的に投げ続ける。そのような意図のもとで戦ってはいるが。
「な……めんじゃねぇ!!」
 だが敵も然るもの。空中で身を捻りマットに着地すると、そのまま猛然ときなこ目掛けて突進。掴もうとする手をすり抜けて――首を脇に抱え込んだ!
「うぐ!? し、締まってるべ……!」
「締めてんだよ! おらぁぁぁぁぁ!」
 そのまま、突進の勢いを乗せてきなこの姿勢を崩し、投げ飛ばす。常人ならば命に関わりかねぬ危険な投げ技。其を躊躇なく繰り出すあたりは、やはりダークレスラーという処か。
「ぐはっ! ぁ、ぐぅ……!」
 背よりリングに叩き付けられ、きなこの口から呼気が丸ごと吐き出される。だが、ダークレスラーの攻勢はまだ終わらない。
(く……首、絞められてるべ……!)
 きなこの首を解放することなく、その太い腕を以て締め上げにかかってきた。呼吸ができず悶えるきなこ。
「おら、死にたくなけりゃギブアップしやがれ!」
 でなくばこのまま絞め殺すのみとばかり、益々腕に力を籠めるダークレスラー。その腕へときなこの腕が伸びるが――其は、ギブアップの為では無論無い。
「……あ?」
 小さな手は、しかし締め上げる両腕をがっしりと掴む。そして次の瞬間。
「ぬおぉぁぁぁぁぁ!?」
 ダークレスラーの巨体が再度、宙を舞い。リングへと強かに叩きつけられたのである。
「よくもまぁ、好き勝手締め上げてくれたべなぁ」
 呻くダークレスラーを見下ろすきなこ。その背から、殺気じみたオーラが漂っているのが見えようか。
「殺しちまったらダメっちゅう話だべなぁ、そこまではしねぇけど……」
 その手は、未だダークレスラーの腕を掴んでいる。即ち。
「何度でも何度でも、降参するまで投げてやるからなァ♪」
 凄絶に笑うと共に、ダークレスラーの身体が再度宙を舞う。その腕は、未だにきなこが掴んだままで。

 結局、ギブアップするまで十数回、ダークレスラーは散々に投げ飛ばされ続けたとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
中堅さんに初手必中で締め上げられて大ピンチなのでっす!
“大将”故の耐久力で耐えてますが、窒息のせいで歌えないのも藍ちゃんくん殺しなのでっす!
ですがええ。
独力で脱出不能というのならカットしてもらえばよいのでっす!
投げ飛ばしから締め上げられるまでの隙にご招待したファンの皆様、よろしくなのでっすよー!
見えないが故の奇襲で絞め技が緩んだ隙に脱出!
からのジャイアントスイングなのでっす!
この技、怪力よりも平衡感覚と身体的なバランス感覚が大事でっすし、バレエのフェッテのコツを活かせるのでダンス得意な藍ちゃんくん向きなのでっす!
平衡感覚を失わせてリングアウトやダウンさせちゃうのでっす!



 リングを取り巻く観客達から歓声が上がる。ゴングからものの数秒で現出したクライマックスの予感を前とし、これは早期決着かと沸き上がっているのだ。
「オラァ! 女みてぇなナリしてたって手加減しねぇぞコラ!」
 決めたのはダークレスラー。中堅ポジションの初手必中の特性を活かし、開幕直後に|必殺技《ユーベルコード》を仕掛け。見事、相手の首を掴んで投げ飛ばし、そのまま締め上げるに至ったのである。
(うぐぐ! し、締め上げられて大ピンチなのでっす……!)
 一方の決められた側は紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)。完全に首が締まってしまっており、呼吸すら覚束ない状況。抜け出そうにも腕力の差は如何ともしがたく、締め付ける腕を剥がそうとはしているものの太く逞しい双腕はびくともしない。
 選択したポジションが大将であるが故に耐えられてはいるが、其は同時にギブアップが不可能ということも意味している。そしてそれ以上に。
(窒息のせいで歌えないのも藍ちゃんくん殺しなのでっす)
 藍ドル活動において重要な歌が歌えないのはあまりに痛い。良いところなく出オチという事態を避けるためにも、何とかして脱出せんと抵抗を続け――

 その好機は、意外と早期に訪れた。

『藍ちゃんくんがんばってー!!』
 観客席から届いた声援、同時にダークレスラーから漏れる呻き。伴って、己の首を絞め上げる力が僅かに弱まったのを藍は見逃さない。
「今でっす!」
「しまっ……なにっ!?」
 一気に腕を押し広げ、生じた隙間から頭を抜き取って脱出。のみならず、横に寝そべる姿勢を取ってチョークスリーパーをかけ続けていたダークレスラーの両脚を掴み、抱え込んでみせる。
「それでは反撃開始なのでっす!」
 腰を落として何らかの技を繰り出さんとする構えに入る藍、だがダークレスラーはその意図を察し訝しむ。
「……てめぇみてぇなヒョロいヤツが、こんな技を使えるはず――うおぉぉぉぉぉぉぉ!?」
 使えるはずがない、その予想はしかし直後に覆される。その巨体が丸ごと、予測した通りに振り回される――藍を軸とした円運動によって。
 其はまさしくジャイアントスイング。相手の足を掴んで回転しながら振り回すという豪快な見た目から、繰り出すに必要なのは人並み外れた怪力と思われるが、実際はそうではない。腕力も相応に必要ではあるが、それ以上に求められるのは身体的なバランス感覚と、回転に耐える平衡感覚。
(バレエのフェッテのコツも活かせるのでっす!)
 即ち、ダンスを得意とする藍にとっては適性の高い技と言える。且つ、やはり見目には力強く豪快な技と映るが故、男性としては華奢な方の藍が巨体のレスラーを振り回す様は強烈なギャップを生み、人々に熱狂を齎す。
 大歓声の中、藍は益々回転の速度を速めてゆく。最初は抜け出そうと抵抗していたダークレスラーは、遠心力に負けてか回転に平衡感覚をやられたか、次第に動きを鈍らせて。
「それでは皆々様! 行くでっすよー!」
 回転が最高潮に達すると共に藍の呼びかけ。何がと言えば言うまでもなく。
「そーーーーーれぇぇぇっ!」
「うぉあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 掛け声と同時、藍がダークレスラーの足を離す。悲鳴を伴って、遠心力のままに射出されたその巨躯は豪快にリングから射出され、観客席にまで飛んでいかんとして――
『藍ちゃんくんかっこいいーーーー!!』
「ぐえっ!!」
 その直前、声援が発されると同時に何かへぶつかり失速。そのままリングサイドに落下した。一連の衝撃で受けたダメージによって彼は完全に伸びてしまい、制限カウント内にリングには戻れそうにない。即ちリングアウト負けである。
「ファンの皆々様! ありがとうございまっす!」
 ゴングと歓声の響く中、ダークレスラーを投げ飛ばした方向へ手を振る藍。其処には誰にも見えない、然し確かに其処に在る者達の姿があった。
 其は藍がユーベルコードで|招待し《よびよせ》た、スピリチュアルなファンの皆さん。彼のピンチには声援を発して陰ながらサポートしていた者達である。勿論、投げ飛ばされたダークレスラーが観客席へ飛び込むのを防いだのも彼らである。
「皆々様の応援のおかげで! 藍ちゃんくん大勝利なのでっす!」
 リングの真ん中、目元の横ピースと共に決めポーズを取ってみせれば。上がる歓声はまた一段階大きくなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
大変そうですが、やってみますぅ。
ポジションは『中堅』で。

開始と共に【讎堡】を発動、『X=1万』を指定し『帳』を纏いますねぇ。
移動力が極度に低下する為、此方からの接近は難しいですが、相手が仕掛ける為に接近してくる筈ですので、間を合わせ[カウンター]を入れましょう。
仮に攻撃を受けても『X倍の防御』を抜くのは難しく、通常では到底当たらない『命中低下』は『中堅』の『一撃目命中確定』が有る以上問題有りません。
『X倍』に強化された素手攻撃([怪力]付)に耐えるのは困難ですので、一撃で沈められれば良し、続くなら『攻撃/防御』の何れかを『命中』と相殺させ『カウンター』を繰返しますねぇ。



「オラオラオラオラオラオラァァ!!」
 続いての試合は、ゴング直後からの巨漢レスラーによる苛烈な攻めで始まった。拳、膝、時には頭突き。次鋒として攻撃回数を大幅に強化しての猛攻である。
「くぅっ、流石に激しい攻めですねぇ」
 其を受けるは夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。両腕を掲げ守りの姿勢を取り、猛攻を耐え凌ぐ。
「ハッ! 受けずに守るたぁとんだ臆病者だなぁ!」
 るこるの防御に徹する姿を見てか、ダークレスラーが嘲るように声を上げる。その姿勢を詰らんばかりに。
「攻め返す度胸も無ぇってんなら、黙ってさっさとやられちまえってんだ! オラオラァ!」
 笠にかかって更なる連続攻撃を繰り返すダークレスラー。その動きを見据え、るこるは思案する。
(やはり大変な戦いですねぇ……)
 無論、るこるとしても只々黙って守りに徹しているわけではない。寧ろ、その気になれば一撃でダークレスラーをノックアウトできるだけの策を携えている。
 だが、聞けばプロレスは単純な勝敗以上にそれまでの過程も重視される競技という。であれば、開幕一発ノックアウトでの決着というのは望ましくないのだろう。此度はダークレスラーとの試合というのもあり真剣勝負寄りではあるが、それでもある程度は盛り上がりを考慮した方が良いかもしれない。るこるはそう考えた。
 ただ勝てば良いというわけではない、という意味では普段と随分異なる戦い。戸惑いはあるが、為すべきことが分かっているなら迷いは無い。仕掛ける好機を見据え、るこるは尚も攻撃を耐え凌ぐ。
 不意に、るこるのガードが下がる。ダークレスラーの口角が上がる。此処が好機と見ただろうか。
「こいつでトドメだ! 行くぜ――」
 るこるへと飛び掛かりつつ、両手を伸ばす。狙うは彼女の首を捉えての投げ技、そしてチョークスリーパー。これで一気に彼女をギブアップ、或いはノックアウトに持っていこうという狙いだ。

 が。

「そこですぅ!」
 飛び掛からんとしたダークレスラーが見たのは、るこるが繰り出した拳。何の変哲もない、だが妙に緩慢な、それでも避け得ないその一撃は、ダークレスラーの顔面をまともに捉え――

「ぐふぇあぁぁぁぁぁぁ!!?」
 次の瞬間。ダークレスラーの巨体は、砲弾かと紛うばかりの勢いで吹き飛ばされ。そのまま観客席さえ飛び越えて、会場の外壁へと深々めり込んで漸くそこで止まった。
 白目を剥き、顔面も半ば変形してしまったという無残な有様だが、壁に埋まったその身はぴくぴく震え、呻きも漏らしているので、とりあえず生きてはいるようだ。
「ふう、何とか上手くいきましたねぇ」
 一瞬の静寂。安堵の吐息を漏らするこる。衝撃的な決着に静まり返っていた観客席は、ゴングの鳴ると共に爆発的な歓声に満たされた。
 この決着を演出したのは、るこるが試合開始と同時に発動していたユーベルコード。命中力と回避力と移動力の減少割合と同比率で攻撃力と防御力を強化するという代物。るこるはこれを以て、攻防を大幅に強化していたのだ。
 自ら攻めに出ず、受けに徹していたのは、それ故に移動力も大幅に低下していたが故と、もう一点。此度の試合の重要な要素が影響していた。即ち、ポジション効果である。
 彼女が選択していたポジションは、初撃必中の特性を持つ『中堅』。その特性によって命中力の極端な低下を補えるが故、此度の戦術が成立したのであるが、この恩恵は初撃にしか齎されぬ。即ち、仕掛けるべき時でなければ攻撃を仕掛けられないのである。
 なればこそ、るこるは機の巡るまで防御に徹し、然るべきタイミングを待っていた。この結果は、その忍耐が齎したものとも言えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
プロレス……わたしには無理かなって思ってた、けど。このルールなら戦える、かな。
ポジションは先鋒を選んで、スピード勝負。あの大きな体で連続攻撃されたらひとたまりもないし、とりあえず、逃げ回る。一回は攻撃を受けても、そよ風の腕輪で受け流せば、何とか大丈夫、かな。わたしは本当の選手じゃないし、これくらいのずるは、いいよね。
そしてここが、チャンス。再攻撃前に【プリンセス・ブースト】で一気に加速して相手を、すり抜ける。これでわたしの方が遥かに、速い。そのまま反対側のロープを使って、後ろから勢いを乗せたドロップキックを、決めるよ。ん、スピードならわたしも、負けないから。



 プロレスとは、基本的に肉体の頑強さが最も重要とされるスポーツである。そう考えるが故に、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は、己にプロレスは無理だと考えていた。
「けど。このルールなら戦える、かな」
 ポジション選択によって己の能力をブーストできるこのレギュレーションならば。そう考えて、此度の試合へとエントリーしたのである。
「ヘッ、怪我しねぇうちに帰った方が身の為だぜお嬢ちゃんよぉ」
 とはいえ、見目は飽くまで小柄で華奢な少女。それでプロレスを戦えるとは思えぬとばかり、対戦相手のダークレスラーは薄ら笑いと共に彼女へ侮蔑の言葉を投げる。
「ううん。わたしは、戦う。戦って、勝つ」
 そう決めたのだから。見返すミアの眼には決意が籠る。其を見て取ったか、ダークレスラーもまた薄笑みを消して真顔で身構え――そしてゴングが鳴り響く。
「オラオラオラァァ!」
 まず仕掛けてきたのはダークレスラーだ。拳を振るいながらミアを目掛けて突き進む。次鋒として更に手数を増した連撃で攻めたてんというのだ。
「わ、それはひとたまりも、なさそう」
 対するミアは飛び退き距離を取る。体躯の差は圧倒的、真っ向から立て続けに殴られては堪ったものではない。故に、先ずは逃げ回る。追って迫ってきたダークレスラーの脇を、身を屈め素早く駆け抜ける。
 元々、走力には自信のあるミアだ。ポジションとして先鋒を選んだことで、そのスピードはまさに眼にも留まらぬ程のものにまで高まっていた。
 限られた広さしか無いリングの上と言えど、ミアの走りはまさに縦横無尽。ロープも使って加速しながら駆け回り、ダークレスラーの攻撃を巧みにすり抜けてゆく。
「ちぃ! ちょこまか動きやがって! だがなぁ!」
 とはいえ、敵も然るもの。ミアが撹乱に徹していると見れば、増えた手数を利して牽制攻撃をばら撒き始める。脇を抜けようとすればローキックが阻み、跳躍を咎めるかのようにチョップが振るわれる。
「ヘッ、追い詰めたぜ! 観念して捕まりやがれ!」
 移動を制限されたミアはやがてコーナーへと追い詰められる。此処まで追い詰めれば最早逃れられぬだろうと、ダークレスラーの手が伸ばされる。ミアを掴み寄せ、危険な投げ技を仕掛けようとばかりに。
「………!」
 其を見据えるミアの眉根が寄る。最早此処までか。ダークレスラーの大きな手が、ミアの肩を掴もうとした、まさにその時。
「――ぬおっ?」
 レスラーの手が逸らされ、その巨躯がつんのめる。空を掻いたレスラーの手。まるで、見えない大気の流れに逸らされたかのように。
 否、其は文字通りの事態。ミアが身に着けたそよ風の腕輪の魔力により、彼女の身の周りに風の流れが形作られ、以てダークレスラーの手を逸らしたのだ。
(これくらいのずるは、いいよね)
 己は本職のプロレスラーではないのだから。内心で言い訳するミアだが、何が起きたかを第三者の目から知るのは困難故か、実際に其を咎める者はいなかった。
 何であれ、敵の隙を作ることはできた。即ち、此はミアにとり大きな好機となる。
「ここが、チャンス――」
 ミアの眼が見開かれる。その全身が、眩い虹色の光に包まれる。ユーベルコードの発露である。
「わたしの本気の本気、みせちゃうよ!」
 叫ぶが早いか、ミアの身がその場より消失する。ダークレスラーにはその動きを目で追うが限度、だが、振り向いた先にミアの姿は既に無い。
 走りだしたミアの速度は、実に時速27800kmにも達する。音をも軽く置き去りにせんばかりの速度で駆け出したミアは、次の瞬間にはその先のロープを蹴って跳躍していた。
 加速を乗せた跳躍は、ミアの身を更に加速させる。跳躍先には次なるロープ。其に足をかけ踏み込むと共に、ミアの視線がリングを見渡す。ダークレスラーは完全にミアを見失っている――どころか、反応がミアの速度に全く追い付けていない。
(なら、ここで、決めるよ)
 決意と共に跳躍。更なる加速を遂げる身を空中で捻り、進行方向に足を向けた姿勢へと移行。そうして飛翔する先には――ダークレスラーの背中!
「ぐはぁぁぁぁ!!?」
 ミアの姿が消えて僅か数瞬後。背中から襲った衝撃に、ダークレスラーは盛大な叫びを上げて。そのまま、コーナーポストに叩き付けられた。
 観客が見たのは、ダークレスラーの背中へと矢の如き見事なドロップキックを決めたミアの姿。ユーベルコードでの攻撃力の底上げに、加速の勢いを乗せたその一撃は、屈強なダークレスラーをも一撃のもとにノックアウトする程のものであった。
「ん、スピードならわたしも、負けないから」
 己の恃む最大の武器、其を誇るように。ミアは確と言い切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
デスリング総統との決戦を前にしたアンダーカード……
だからと言って手抜きはしません、すべての試合に全力を尽くします!
ポジションは耐久力を強化する大将!

体操服に赤いブルマでリングイン!
拳を掲げて観客へアピール(注目を集める・パフォーマンス)

【怪力】のチョップやキックを繰り出して派手に打ち合う
【功夫】の身のこなしで猛攻を掻い潜り、膝蹴りが当たった――と見せかけて【受け流し】、蹴りの威力を借りて天高く【ジャンプ】!
そして肩車のような状態で着地、首を太ももで圧迫する首4の字固めの形を取った【獣絞縛鎖】!
完全に極まった【グラップル】を外す術はない、【気絶】するまで絞め上げる!



 猟兵とダークレスラー達によるダーク王座決定戦も、いよいよ最後の対戦カードとなった。これに勝てば、此度の試合は猟兵達の完全勝利だ。
(デスリング総統との決戦を前にしたアンダーカード……この試合は、謂わばそういうもの)
 既に本段たるデスリング総統との対決は組まれている。此度の試合がその前座という扱いとなるのは、致し方ない局面と言えた。だが。
(だからといって、手抜きはしません)
 其は此度の試合に関わる者達全て、そしてプロレスという競技への侮辱とすら言える。最終戦へと臨むオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)はそう考える。故に。
「私は! すべての試合に全力を尽くします!」
 堂々宣言すると共に、ロープを飛び越え堂々リングイン。均整取れた抜群のプロポーションを体操服と赤いブルマに包み、豊かな胸元には『おりう゛ぃあ』と書かれたゼッケンを貼り付けた姿にて、決戦の舞台に立てば――片手の拳を、力強く頭上へと突き上げる!
 直後、其に触発されたかのように観客達が大歓声を上げる。此度の試合の最終戦、オリヴィアのアピールを受け、観客達のヴォルテージも最高潮に達しているようだ。
「やってくれるぜ、猟兵共」
 対戦相手たるダークレスラーは苦々しげな笑みを浮かべる。何しろ、既に全体としては勝敗は決しているのだ。有体に言ってしまえば、これは消化試合に過ぎぬとも言えた。
「だがなぁ――」
 ダークレスラーの顔から笑みが消える。その眼が鋭くオリヴィアを見据える。殺気にも似た強き意志を宿す光と共に。
「――だがなぁ! 俺らにだって意地ってモンがあんだ!」
 闘志衰えぬを感じさせる咆哮。かのレスラーの闘志は寧ろ、この場に在って尚も熱く激しく燃えているとすら言える。
「ダークレスリングの底力、てめぇに見せてやる!」
 腰を落とし、堂々構える。せめて全敗だけは避けたいとか、そうした後ろ向きの思考ではない。勝つにせよ負けるにせよ、己の持てる全てを此処にぶつけるという意志の顕れ。
「――良いだろう」
 オリヴィアも応え、身構える。互いに全力を尽くす、その意志で以てぶつかり合うに異論は無し。
「私は、私の全てを以て、貴様を打ち倒してみせよう!」
 その宣言に続くように。最終戦のゴングが、一際強く打ち鳴らされた。

「おおおおおおおおお!!」
「オラオラオラオラオラァァ!!」
 互いに雄叫びを上げながら、拳を、脚を繰り出す。オリヴィアは膂力の限りを込めたチョップやミドルキックを、ダークレスラーは力強いハンマーパンチや膝蹴りを。
「がっ! ぐ、おぉぉ……っ!」
「ぐはっ! ま、だだ……ぁっ!」
 それらの攻撃は、全てが互いを捉え、打ち据える。だが両者ともに怯むことはなく、即座に次なる打撃を繰り出して反撃を為す。
 両者が選択したポジションは、奇しくも両者ともが大将。大幅に高められた耐久力を恃みとした、ノーガードの殴り合いがリングの上では繰り広げられていた。互いの雄叫びと、互いの身を打つ派手な打音が、絶え間なく会場に響き渡り、観客の熱狂を更に煽る。
(――とはいえ、このままでは分が悪いか)
 剥き出しの闘志にて殴り合いに応じつつも、オリヴィアはあくまで冷静に戦況を分析する。己は持ち前の膂力と体術のみにて殴り合っているが、敵はユーベルコードも交えて攻めてきている。適宜体術を以てダメージは抑えているものの、このままいけば恐らく先に倒れるのは己だ。
「オラオラオラオラァァ! まだまだ行くぜぇ!?」
 戦況が己の側に傾いたと見たか、攻勢を強めるダークレスラー。あわよくば、このまま一気に決着をつけようというのか。
「――良いだろう! 来い!」
 ならば己にとっても此処が勝負処だ。意を決し踏み込むと同時、繰り出すは大振りのチョップだ。
「ぐっ! 何のこの程度ぉ!」
 ダークレスラーは構わず攻撃続行。力任せのハンマーパンチがオリヴィアの脳天目掛けて振り下ろされる。
「当たらん!」
 オリヴィアは身を沈め間合いを詰めにいく。そのまま組み付き、何らかの組み技を仕掛けようという構えと見える。
「甘ぇ!」
 だがそのオリヴィアへと、ダークレスラーの膝が襲い掛かる。其は鳩尾を捉えんとする鋭い一撃。命中すれば少なからぬダメージとなるだろう、今この局面では致命的な打撃が――命中した!
「………!」
 然しダークレスラーの浮かべた表情は驚愕。手応えが硬い。命中したのは鳩尾ではなく――腹筋!
「此処だ……!」
 悟った時、彼の前にオリヴィアの姿は無く。頭上で身を捻りながら宙返りを決めていた。今の蹴りの勢いをも乗せて、跳躍していたのだ。
 そして跳躍前とは180度向きを変えてオリヴィアが着地したその位置は、ダークレスラーの肩の上。彼に対し肩車をさせるような姿勢だ。
「これで、決める……!」
「ぐえぇぇ……っ!?」
 そして太腿を彼の首へと食い込ませ、以て其処を絞め上げる。所謂、首四の字固めの形だ。ユーベルコードをも注いで繰り出した其は、かの終末の魔狼を縛めた鎖紐の如く確と首を絞める。
「が……は、まだ……だ!」
 なれどダークレスラーも諦めぬ。肩車したオリヴィアに首を絞められる状態のままで倒れ込み、オリヴィアの身をマットへ打ち付けにかかる。
「がは……っ! なん、の……!」
 肺の空気を絞り出され、苦悶に呻くオリヴィアだが。絞め上げる力を緩めはしない。固める姿勢を維持し続けること、実に数分。
「あが……が、ぁ……」
 どうにか耐えながら暴れていたダークレスラー、その体力もとうとう尽き果て。口の端から泡を吹いて、白目を剥き――完全に、気絶した。
 其を確かめたオリヴィアが立ち上がると共に、決着を告げるゴングが鳴り響き。最後の十数秒は固唾を飲んで見守っていた観客も、雄叫びじみた歓声を上げた。
 己の勝利を示すかの如くオリヴィアが拳を突き上げてみせれば、響く歓声はより一層その勢いを増す。彼女の勝利を祝福するかのように。



 以上の如く、ダーク王座決定戦は猟兵達の完全勝利によって幕を下ろした。
 これを以て、ダークレスラー達との戦いにも一つの決着を見て。残るはいよいよ、ダークレスリングの首魁たるデスリング総帥との決戦のみ。
 かのプロレス・フォーミュラの待ち構えるバトリンピア遺跡、かの地にて猟兵達を待ち構えるは、果たして如何なる戦いか――

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月10日


挿絵イラスト