空飛ぶ|魔王《ウィッチキング》
『戦争にはフェアも何も無いと思うがね』
魔王は、学園の郊外に降り立った。
『私の爆撃を止めた奴の顔が見たくなった。えーと、こうすればいいんだったか』
そして魔王は、オジギした。
『ドーモ、ハンス=ウルリッヒ・ルーデルです。この学園を壊しに来ました』
『うむ、緊急連絡だ! まずは相手のデータを送る』
(自称)レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)がいつもの如くゆったりと椅子に座って手を組んでいる、ような気がするが既に君達は現場であるけものマキナのアルワーツ魔術学園に居るので遠隔ブリーフィングだ。
『ハンス=ウルリッヒ・ルーデル。UDCアースで実在した人物であり、第二次大戦中数多の戦車を鉄屑に変えた恐るべき空飛ぶ|魔王《ウィッチキング》だ。まあ、魔法を使う訳では無いのだが』
●40mmアヴェンジャー
【40mmガトリングガン】を最大レベル秒間連射し続け、攻撃範囲にダメージと制圧効果(脱出・侵入を困難にする)を与える。
●可変型キャバリア
自身の装備する「【可変キャバリア】」を変形させ、防御力・回避率・状態異常抵抗率・回復力のいずれかを10倍にする。
●AGMミサイル
【搭乗機体から大量のペイロードを持つ飛行翼】を生やし、レベル×5km/hの飛翔能力と、レベル×5本の【空対地攻撃ミサイル】を放つ能力を得る。
●サイドアーム
レベル分の1秒で【短機関銃】を発射できる。
●異能生存体
状態異常や行動制限を受けると自動的に【何者にも捕われぬ魔王の覇気】が発動し、その効果を反射する。
『先の|猟兵殺し《イェーガースレイヤー》が幹部クラスならこっちはフォーミュラークラスか。空戦型の可変クロムキャバリア”VCKA-10 サンダーボルトネクスト”に搭乗している。対地攻撃の名機A-10をモチーフにした機体故に機動力は低い物の尋常じゃない対地攻撃力と空戦型とは思えない耐久力を持つ。メイン武器の40mmアヴェンジャーはそれだけでもアルワーツを更地に出来る攻撃力はあるし、大量のペイロードに満載した対地攻撃ミサイルも侮りがたい』
ちなみに赤くは無い。色はグレーベースでバルキリーっぽい変形をする。どちらかと言うとVF-25かも。
『あくまでも本質は対地攻撃機なので空対空能力は低いのだが……逆に格闘形態で地上に着陸されると尋常じゃない口径のガトリングガンを振り回せる重砲撃キャバリアにもなれるんだよな。加えてパイロットの操縦精度の高さもある。間違えても正面から行こうとは思うな』
既に現場に居る猟兵も居るが、今すぐ現場に増援に行く事も出来る。対処せよ!
Chirs
ドーモ、Chirs(クリス)です。何かは魔王でした。
連作シナリオの二本目ですが、別にここから参加して戴いても構いません。あと、展開によってはもう一本続きます。
今回もいつも通りアドリブも連携もマシマシになります。ある程度の人数が集まってから書き始めます。皆さんに魔王との死闘を提供出来れば良いなと思う所存でございます。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
イラスト:仁吉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空野・プゥピィ
(急降下した魔王を追跡中)
顔が見てみたいなら昇ってくるプゥ!なんて怖くて言えないプゥガタガタ。
ん~、110つの航空師団を召喚すれば対空に強くなさそうな魔王さまはある程度じゅうりんできるかなプゥ。
という訳で110の師団長と師団の皆さん!よろしくお願いしますプゥ!
(サムズアップを送って攻撃の情報収集に向かう偵察機、爆撃に向かう爆撃機、射撃攻撃を始める攻撃機。なお全員エリートの赤いヒコーキ乗りの豚)
あたいも加勢しますプゥ、ベルリーニ師団長!カーチス師団長も!?それにフェラーリン師団長まで!
よし……気まぐれなロッソ師団長が居ないけど、この4匹で畳みかけましょうプゥ――!
一斉掃射ぁぁーーーッ!!
●魔王VS伝説の航空師団
「顔が見てみたいなら昇ってくるプゥ!」
空野・プゥピィ(飛ばない仔豚はただの仔豚・f38289)は急降下した魔王を追跡するべく急降下をしていた。
「なんて怖くて言えないプゥガタガタ」
まあ、威勢よく啖呵は切れなったようだが。それに、魔王はアイサツの作法に則ったアイサツをしているので今攻撃するのはかなりシツレイに当たる。
『手古摺っているようだな、ポーク1』
「その声は、ベルリーニ師団長!」
プゥピィのデモンズコード【|こぶたの師団召喚術《ザ・ピッグディヴィジョン》】により集められた全110機の残滓ヒコーキ航空師団がこの領空にエントリーしてくる。
『ドーモ、異世界の|魔王《ウィッチキング》ハンス=ウルリッヒ・ルーデル=サン。ベルリーニです』
『カーチスだ』
『フェラーリン、介入させてもらう』
「カーチス師団長も!? それにフェラーリン師団長まで! よし……気まぐれなロッソ師団長が居ないけど、この4匹で畳みかけましょうプゥ――!」
航空機は単に空を飛ぶだけではない。地面を走る戦車や海上に浮かぶ戦艦と比較して、空と言う何の支えも無い戦場を往く戦闘機はより使える重量が限られる。故に、戦闘機は必ず|役割《ロール》毎に特化した性能が与えられる。
近代の戦闘機はその多くが装備の換装で他の役割に変更できる設計になってはいるが、それは戦闘機の需要が落ち着いた事によるコストカットの影響であり、単一の役割に特化した機体の方がその役割においては優秀である。
目の前の魔王が設計した攻撃機A-10がそうであるように。
『アルファ1、|接敵《エンゲージ》』
偵察機はその名の通り偵察に特化した機体だ。残滓ヒコーキの偵察機は双眼鏡による目視偵察と武装を最低限まで削ぎ落とす事により高い機動性を確保し得た情報を持ち帰る能力に秀でている。
『デルタ1、標的は現在接地中だ。お見舞いしてやれ』
『|了解《コピー》、デルタ小隊後に続けッ!』
残滓ヒコーキの爆撃機は胴体下部に固定した爆弾を落とす事に特化している。あくまでも落とすのは爆弾であり誘導性能は無い。それ故に彼らがやる事はただ一つ。
「ほう、急降下爆撃か!」
魔王の十八番、急降下爆撃である。ただ空中から爆弾を落とすのではなく、急降下により爆弾に慣性を与える事で正確な位置に爆弾を落とす。それが急降下爆撃と言う技術である。
幾つもの赤い残滓ヒコーキが空から急降下し、魔王目掛けて爆弾を落とす。エリート揃いの急降下爆撃は高精度で局所的爆撃驟雨を齎す!
「やられる側は初めてかな、私は」
魔王は僅かな動揺すら見せず機体を飛行形態に変形させ、機首の40mmアヴェンジャーで爆撃を下から撃ち落として穴を開けつつ上昇!
『ブラボー隊、的は大きい。外すんじゃないぞ』
だが、上昇し迎撃に出る事を読んでいた攻撃機隊のロケット弾一斉射撃が空中で包囲網を形成する。偵察機から与えられた情報を元にした正確な偏差射撃で上からでは無く横からの爆撃。
「いい腕だ、練度が高いな」
魔王は腕と脚のみを変形した|半格闘《ガウォーク》形態になり推力を残したまま抜き撃ったサブマシンガンでロケット弾を迎撃。
『ポーク1、ポイントへの誘導は成功した。|幸運を《グットラック》』
『ベルリーニ師団長、カーチス師団長、フェラーリン師団長! ありがとうございましたプゥ!』
サムズアップしたフェラーリン師団長にサムズアップを返すプゥピィ。
近代における航空機の主兵装はミサイルである。だが、残滓ヒコーキはそうではない。翼下固定機銃こそが残滓ヒコーキにとっての主兵装であり、残滓ヒコーキ乗りの誇りである。
『一斉掃射ぁぁーーーッ!!』
誘導に参加しなかった半数の機体を総動員しての全方位からの固定機銃一斉掃射。これこそがぶた師団を伝説足らしめる必殺の戦術!
「そう来るかッ!」
残滓ヒコーキの見た目はレシプロ機に酷似している。魔王がかつて数えきれないほどの武勲を上げたスツーカもまたレシプロ機。だからこそ、魔王はその性能を誤認した。かつて自分が良く知る戦場で使われていたそれに、大きさこそ違えども。
魔王の判断は一瞬であった。即座に飛行形態に戻し、最低限のダメージでの強行突破。全方位から嵐の如く撃ち付ける銃弾を避けようともしない。元より、この機体にそんな機動性は無い。
「やってくれるじゃないか」
無数の敵機の反応に魔王が出した判断はまず地上からの対空銃撃であった。爆撃機を落とすには対空銃座が最も効果的であると知っていたからだ。そして、この機体ならそれは可能であった。
だが、魔王は結果として上空への強行突破を選択した。それは急降下爆撃の精度による物だ。撃ち付ける驟雨をすべて撃ち落とすのは魔王であっても不可能と判断させた。単に一か所に落とすのではなく、角度と時間差を付けて誘爆を防ぎ、回避を選択させた兵の練度がもたらした選択だ。
回避を選ばせた時点でエリートぶた航空師団の戦術は成功したと言ってもいい。空対空戦に持ち込みさえすれば攻撃機の名機であるA-10でも不利なのは明白であったからだ。
そう、これがただのA-10であれば。
「プライマルアーマー損耗度95%か、大して当てにはしてなかったが」
VCKA-10 サンダーボルトネクストには高い防弾性能がある。プライマルアーマーもその一環で、射撃攻撃によるダメージをパルス電圧壁で形成したバリアによって融解防御する機能だ。無限に防げる訳ではないし、今の攻撃でほぼ可動限界を迎えているが。
「これだけの数が集まったとなれば好都合だ」
一斉掃射を強引に抜けると瞬時に格闘形態へと移行。手に持った40mmアヴェンジャーは既にスピンアップ済み。撃ち出されるのは40mmと言う逆に対空砲として使われる脅威の口径の銃弾。
「さ、散開プゥ!」
エリートぶた航空師団の判断は迅速だった。一斉射撃を防がれた時点で後は離脱するしか選択肢など無い。掠めるだけで機体ごと捩じ切られる銃弾は果たして何十人のエリートぶた航空師団員を犠牲にしたのだろうか。
数で攻めるという事は、犠牲を伴う戦術である。エリートぶた航空師団員はそんな事は十分承知の上。それでも死神に落とされるその日まで、彼らは空を飛び続ける。
ただの豚では無いが故に。
大成功
🔵🔵🔵
五ヶ谷・グレン
アドリブ連携歓迎
■心情
果し合いに矜持を傾ける系の武人で無い様で良かったが、
落として終わりでもなかったな…
しかし、
電脳上の今の年代と実際にけものたちが過ごした年月、そしてこの魔王さん(デビキン感覚)はオブリビオンでもなく生没年…
うん、考えても仕方ないな
■願いの叶え方
魔女ってのは白兵戦用員ではないんだが、
俺は白兵戦しか出来ないんだよなぁ。
幸いここには学園を守りたいと言う願い、猟兵の力になりたい並びたいという願い、ついでに血の気の多い連中だ、あんたを一発殴らないと気がすまないって言うのもあるからな引き受けよう形どろう
(他にも不発を願ったりもあるが、皆まとめて一緒に殴りに行くが、まあ、死なないだろう)
●願いの叶え方
「果し合いに矜持を傾ける系の武人で無い様で良かったが、落として終わりでもなかったな……」
五ヶ谷・グレン(竈の魔女はだいたい筋力で解決する・f33563)は空で始まった戦いを見ながら言った。
「しかし、電脳上の今の年代と実際にけものたちが過ごした年月、そしてこの魔王さん(デビキン感覚)はオブリビオンでもなく生没年……」
UDCアースならオブリビオンとして出てきていてもおかしくない|彼《ルーデル》だが、ここはけものマキナであり、彼はオブリビオンではない。クレイドル内はUDCアースに酷似した環境が作られているらしいので、戦史に空の魔王の名が刻まれていてもおかしくはないのだが。
「うん、今考えても仕方ないな」
今は交戦の真っ最中であり、狙われているのはこの魔術学園だ。考察は倒してからすればいい。
「先生! 僕達も戦わせてください!」
「爆弾の脅威は去ったんだ! 箒で追って数で落とせばいい!」
「あんな小さい豚のヒコーキでやれるんだ、俺達だって」
「バカモノ!」
数学のミシガン先生が叱責した! コワイ!
「奴らは貴様らの2000倍強い! 奴はそれより50倍強いと言うだけの話だ。一体貴様らの何倍の強さになるか、そのスカスカの脳みそで計算してみろ!」
「えー、100000倍ですセンセイ!」
「答えている暇があったら手を動かせ! 流れ弾が来るぞ! |防御魔術《プロテゴ》!」
ミシガン先生が|防御魔術《プロテゴ》を唱えると魔王の放った流れ弾が着弾する。
みしり、と。まるで隕石でも叩き付けられたのような衝撃。それが一発では無く数秒で何発も飛んでくる。
「|防御魔術《プロテゴ》! |防御魔術《プロテゴ》! |防御魔術《プロテゴ》!」
ミシガン先生はその一発一発に適切な強度の|防御魔術《プロテゴ》を局所展開した。一発で砕かれるが、一発の効果を完全に殺せている。
「今のに対応出来る奴なら戦線に行かせてやる。言っておくが今のはただの流れ弾だ。奴が本気でこっちを狙えば数秒と持たずに地獄行きだ」
そうならないのはエリートぶた航空師団員とプゥピィの奮闘による物である。上空で対応を強いているからこそアルワーツへの攻撃に本気を出せない。だが、エリートぶた航空師団員も徐々に数を減らされているので突破されるのは時間の問題でもあった。
このまま何もしなければ、ではあるが。
「10万倍だろうと足し算で勝てばいい!」
「やらせてくださいミシガン先生!」
「なるほど、それで私は貴様らの両親に謝罪しなければならないという事か。役立たずを役立たずのまま死なせた失格教師だとな!」
「あー、いやミシガン先生? 力になりたいっていう生徒の気持ちは汲んであげてもいいんじゃないかな」
「五ヶ谷特別教員か。いい魔法でもあるのか?」
グレンは大きな鏡を生徒達の前に置く。
「この鏡に向けて君達の学園を守りたいと言う願い、戦線に立つ者の力になりたい並びたいという願い。ついでに血の気の多い連中だ、|魔王《アイツ》を一発殴らないと気がすまないって言うのもあるだろう。その願いと欲望を代償にして願いの化身を作り出す」
「|守護霊召喚《エクスペクト・パトローナム》に近いが、別物だな。いいだろう、命知らずの流儀を見せてみろ」
「ちょっと待った、願いと欲望を代償にするってどうなるんだ?」
生徒の一人が声を上げる。
「その感情を失うから場合によっては気絶するかもね。願いが強ければ強い程抜き取られる力も大きい。魔女に代償を払うと言うのはそう言う事だ」
そう言うと、怖気着く生徒達も居るようだ。
「大丈夫だ、後遺症やら副作用やらは出ない。君達の有り余る元気を少し分けてもらうだけさ」
「よし、俺はやる、俺はやるぞ!」
「分かった……やってみる!」
「役立たず共、要領は|守護霊召喚《エクスペクト・パトローナム》と同じだ。気合を入れて役立たずも役立たずなりに役に立つ事を証明して見せろ!」
「「「ハイ、センセイ!」」」
教員達は引き続き流れ弾を警戒。優秀な上級生達はそのバックアップ。戦線が抜かれなければこのアルワーツに被害は出ない。防御に参加しない生徒は鏡に向かって杖を構えた。
「よし、準備はいいな?」
グレンの【|無色の鏡《ムシキノカガミ》】が魔女術の輝きを帯び始める。
「応法、因果、悪因、善果。報い酬いは巡り廻るってなぁ……!」
鏡の中に生徒達の思い描いた守護者のビジョンが浮かび上がる。ふらっと倒れる生徒も出始める。元より鏡とは、見る人によって見える映像が異なる不思議な物体。生徒達はそれぞれ鏡の中に別な姿の守護者を見ている。あいまいな、光子の輝きめいた像。それがゆっくりと鏡に向かって近寄って来る。
続々と生徒達は倒れていく。まだ立っている生徒達も疲労の色が強い。汗が滴り落ちる。それでも、それでも……鏡に杖を向け只管に願い続けた。
不確かだった像が鏡に近付くにつれて明確な輪郭を描き始める。そして、殆どの生徒が倒れ伏した時。ついにそれは鏡から現世へと顕現した。
『ドーモ、カノープスです』
そして、光り輝く天使めいた猛禽の翼を持つ守護者はアイサツをした。
『もう大丈夫。安心してお眠りなさい』
その声は荘厳にして慈愛に満ちていた。まだ立っていた生徒も安寧に沈む。後に聞けば、既に倒れた生徒達もカノープスの声を聞いたと言う。
「ドーモ、カノープス=サン。これは凄い願いの密度だ」
『ええ、貴方によって指向された願いの結晶体。この刹那の時のみの身なれど、捧げられた願いを叶える事に幾許かの躊躇も無し』
そして、カノープスは大きく広げた翼で空を打ち、垂直拘束リフト射出めいて大空へと飛び立った!
『私のカラテが、魔王を討つ!』
大成功
🔵🔵🔵
グラン・ボーン
よう、凪
強い奴がいるって聞いたんで来てみたが、あのハンス・ルーデルだってな
あの人類史上最も多くの機甲戦力を破壊した男
地上を進む巨人なんて的でしかないだろう
ただ、俺は景品棚から簡単に落ちる的じゃないぜ
全身に気を通す
打たれることを覚悟したプロレスラーはどんな打撃にでも耐えるという
撃たれることを覚悟したグランも耐える
ただ全弾真正面から食らうような真似はしない
自身のキャバリアに乗り、戦場を駆け巡りながら耐える
たまには隙を見て投石や、キャバリア用の槍も投げる
相手が弾切れになるまで撃って、こっちがまだ立ってられたなら、相手に中指たてて、あとは凪に任せる
余力があれば投石、一緒に凪をA10に投げてもいいな
●魔王を知る者
「よう、凪」
グラン・ボーン(巨人の巨人拳伝承者・f34134)はコトホギによって担ぎ込まれた凪に声をかけた。
「ドーモ、グラン=サン。凪です。突然の連絡だったのに来てくださってありがとうございます」
「強い奴がいるって聞いたんで来てみたが、あのハンス・ルーデルだってな」
「えぇ……かなり名の知れた人だとか……さすがのボクもこの有様です」
凪の両手両足は血の滲む包帯で応急処置されている。常人であれば両手足ケジメを免れないほどの重傷だったが猟兵耐久力とウィゲンウェルド薬による迅速な応急処置で事なきを得る、とまでは行かなくとも多少は動ける位にはなっていた。
「あれは人類史上最も多くの機甲戦力を破壊した男だ。地上を進む巨人なんて的でしかないだろう」
ルーデルが魔王と仇名される理由の半分は尋常ではない戦車の撃破数である。
「ただ、俺は景品棚から簡単に落ちる的じゃないぜ」
グランは好戦的に笑い、自身のキャバリアへと乗り込む。
それは、キャバリアと言えども大き過ぎた。
キャバリアの体高は規格で5mに統一されているが、グランは身長だけで553.8cm。自分より小さい機体に乗れる筈は無い。とは言え、けものマキナの世界には巨人もキャバリアも存在する為、規格より大きいキャバリアは割と存在してはいるのだが。そもそも、クロムキャバリアの規格と同じ物かは疑わしい。
それでもグランが乗れるキャバリアと言う時点でもう規格外サイズなのは間違いないのである。むしろ、グランの大きさと比較すると頭二つ分大きいと言う程度に留まる。
そのキャバリアはあまりに大きく、大雑把であった。巨人用の鎧にブースターを無理矢理溶接し、身体能力拡張の為の外部動力をやはり無理矢理取り付けただけの代物である。初期の|不屈の男《アイアンマン》のような感じだ。
「そぉらよッ!」
その有り余る膂力に任せて岩を投擲する。人間の体は投げる事に特化した作りになっていて、それを大きくした巨人の投擲もやはり侮れる物ではない。と、言うか投げる岩が大き過ぎて侮る訳が無いのであるが。
ただ、これには大きな弱点がある。投石とは本来屋外ならいくらでも弾を見付けられるのがメリットだ。だがグランの場合、大き過ぎて投げるのに適したサイズの岩が中々無い。
「|引き寄せ《アクシオ》ッ!」
そこでコトホギが協力を買って出た。
グランの巨体は鈍重ではない。大きいという事は歩幅が広いという事であり、それがそのまま速度へと繋がる。重力の影響は大きくなるのでやはりジンライ・フォックスのように機敏に動くと言う事は出来ないが、早い事に違いは無いのだ。その速度差で随伴できる戦力は限られる。
そもそもグランは誰かを随伴させる気も無かったが「義を見てせざるは腰抜け野郎です!」と熱く押し切られた。|馬人《セントール》もまた、速度は出るが機敏に動くという事は苦手だ。ただ、速度の一点で言えばおおよそ三倍のグランよりも速い。その機動力で投げるのに適した岩を引き寄せてグランに渡しているのだ。
「まずはこっち見てもらわねーとな!」
隕石が地上から上空に打ち上げられているかのような投石。いくら耐久力に優れた機体とは言え、当たったらただでは済まない。だが、はるか上空に飛び交う機体に当てるのはやはり現実的ではない。
上空ではエリートぶた航空師団員に加えて、生徒の願いから呼び出された呼び出されたカノープス、迦楼羅の獄炎翼が飛び交っている。新たな参入者によって数の減ってきたエリートぶた航空師団員の消耗は抑えられて来たが、それでもまだ膠着状態だ。
いや、むしろ魔王を相手に膠着状態に持ち込めているだけ十分な働きをしているとも言える。確かに、魔王の機体の機動力は低い。だが、尋常ではない操縦精度でその鈍重さをカバーする所か逆に落としに来る。
「相手はルーデルだからな。戦闘機に落とされたことないし、逆にロシアのエースを落としてるやつだぜ。空中戦は不利」
そう、ルーデルは30回以上撃墜されているが、それは全て対空砲による物だ。スペック的には不利な筈であっても全く油断は出来ない相手だ。一応グランのキャバリアもキャバリアではあるので飛行能力はあるのだが、下手に飛んだ所で撃ち落とされるのは不可避。
不意に、ロックオンアラートが鳴り横っ飛びに回避する。AGMミサイルが降り注ぎ、全力で回避に専念せざるを得なくなる。コトホギはこうなったら先に離脱すると約束しているので既に遥か彼方だ。この先で巻き込まれる心配は無い。
「ようやくこっちに食い付いたか。そら、来いよルーデル。お得意の相手だぞ」
グランははるか彼方の魔王に手招きする。
この戦闘が決したのは、この時から刹那の時間であった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
何で学園を破壊したがるのか
ちょいと気になるけど
そいつは後回しだ
アルワーツの皆を守るぜ
戦闘
連戦じゃない分
余力はある
暴れさせてもらうぜ
迦楼羅と合身
地獄の炎を纏う猛禽の姿で登場
機動力と空対空能力は低いんだったよな
様子見がてら掻き回させてもらう
ネクストの側面や背後、腹面に回り込んで
口や翼から地獄の炎を放って攻撃だ
機動力が低いんなら
速くても軌道は読めるから
そっちから炎に突っ込んでもらうぜ
敵攻撃を
炎の弾幕を張りながら
翼と爆炎による急制動で回避だ
何度かこんなカンジでやり合って
ハンスがこっちの動きや能力を把握してきた
ってのが頃合いだ
敵攻撃に対して真正面から突っ込み
一筋の赤を宙に描きながら
俺の姿は消える
そう、狭い隙間に入り込む能力で
攻撃の隙間を掻い潜った
僅かでもハンスの反応が遅れれば充分だ
その機に回り込み
変形機構の隙間から機体内部へ
機構を焼却&融解させながら内部を翔け貫き
外へ飛び出しざまヒトの姿へ戻って
獄炎纏う焔摩天で串刺しにし
ダメ押しの獄炎を放って仕留める
事後
鎮魂曲を奏でる
今度は海で安らかにな
●迦楼羅
「何で学園を破壊したがるのか、ちょいと気になるけどそいつは後回しだ。アルワーツの皆を守るぜ」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は焔摩天を地面に突き立て、迦楼羅と向かい合う。
「須弥山の四天を翔り。行くぜっ、迦楼羅合身ッ!」
突き立てた焔摩天を勢いよく頭上に掲げ、刀身の先に迦楼羅が翼を広げる。赤黒の獄炎が巻き起こり、三つの力が一つになるかのように溶け合って融合していく。
それはウタであり迦楼羅であった。燃え盛る獄炎の翼に猛禽の脚。胴体はウタの姿を残しつつ、頭部は猛禽を象った鋭いハーフフェイスの兜を被ったような姿をしている。形状的にはハーピーに近いか。
これが空戦に特化した姿となるユーベルコード【|迦楼羅《カルラ》】の能力だ。燃え盛る獄炎の翼で空を叩き、一気に垂直上昇する。その勢いは放たれた矢の如し!
膠着状態のエリートぶた航空師団との戦いに真っすぐに突っ込む。
『燃え盛る炎の矢か、魔法学校らしくなってきた』
だが|魔王《ルーデル》は余裕すら感じる動きでそれを回避。問題は無い。今のはただの|挨拶代わり《アンブッシュ》だ。
「行くぜぇッ!」
ウタが翼を横薙ぎに振うと獄炎の刃が飛ぶ。ウタは合身したとて大きさは元から一回り大きくなった程度。5メートルのキャバリアの半分ほどの大きさだ。
|一次電磁防壁《プライマルアーマー》を切り裂き、|二次物理装甲《セカンダリーアーマー》に刀傷が刻まれる。先んじてエリートぶた航空師団が一次電磁防壁を負荷限界まで追い込んでおいた事による結果だ。
「なるほど、ただの燃える鳥でもないと」
当然である。迦楼羅には焔摩天も合身しているのだ。
「厄介ではあるか」
魔王は|瞬発加速器《クイックブースト》を使わず、|強襲加速器《アサルトブースト》を点火した。元よりサンダーボルトネクストの機動力の低さは|瞬発加速器《クイックブースト》の推力不足に起因している。だが、その分|強襲加速器《アサルトブースト》による巡航速度は決して低くは無い。
「コレに付いてこれるか」
飛行形態のエンジンが展開し、アフターバーナーが吼える。発動時の隙にもう二発ほど喰らわせてやったがどこ吹く風か。一気に最高速に達して上空へと退避する魔王。
「あの足にゃついて行けん、任せた!」
「任された。逃がしはしないぜッ!」
ウタは獄炎爆破で瞬発的に加速し追い迫る!
だが、それでも。サンダーボルトネクストの|強襲加速器《アサルトブースト》には追い付けない。どんどん距離を放されるが、それは問題無い。何せ、そんな加速は長続きしないと相場が決まっている。数秒間で燃焼が終了したと思えば慣性のまま上昇しながら|瞬発加速器《クイックブースト》を使って機首を180度転換。飛行形態では機首に固定されている40mmアヴェンジャーは既に|撃てる状態《スピンアップ》である。もし、追い付こうと全力飛行していればこれは飛んだ不意打ちになっていたであろう。
だからウタはそうしなかった。獄炎を空蝉めいて空に残しながらのランダム飛行。40mmの死が空を突き抜ける。
「なんて威力だ。これは撃たれたら避けるしかないぜ」
通常の銃弾であればウタは獄炎の壁を張り溶解して無力化する事が出来る。だが、この砲弾は溶かし切る前に貫かれるだろう。避けるしかない。
「でも、追い付いたぜ」
上昇推力の慣性が残っているとは言え強引な機首転換は大幅な減速になる。迦楼羅の口から獄炎を吐き出し機首を炙る!
装甲に焦げ目がついた。それだけと言えばそれだけだが、確実な|二次物理装甲《セカンダリーアーマー》へのダメージである。更にエンジン部を狙って吹き付けるが、今度は|瞬発加速器《クイックブースト》回避。ウタは側面や背面を取ろうとするも魔王の巧妙な|航空起動《マニューバ》で優位な位置取りは出来なかった。
何せこの|魔王《ルーデル》は被墜回数30回とか言うどこの誰にも破れそうにない記録を持ちながら、戦闘機に堕とされた事はただの一度も無い。もちろん、爆撃機でだ。それがキャバリアに乗っているとなればその空戦能力は低い訳が無いのである。
ただ、機体その物の機動力が低いのは確かであり突くべき弱点ではある。逆を言えば、操縦の腕でカバーする事を強要しているのだ。当然、その間は攻撃に回る事は出来ない。
普通なら、だが。片腕だけ変形させると|短機関銃《サブマシンガン》を撃って唐突に反撃が飛んでくる。こっちは獄炎で軽減は出来るが無効化までは難しい。ウタも回避を強要される。
一進一退の攻防。ウタは相手の移動先に獄炎壁を置いて突っ込ませようとするも、数発の40mmで突き破られ有効打にならず。獄炎弾幕は何発か当たりはしても大した有効打にはなっていない。
だが、それでも。ウタは役割を果たしているのである。
追いついて来たエリートぶた航空師団と、猛禽の翼を持つ守護者がその空域まで追い付いたのだから。
時間にすれば数秒の攻防に過ぎない。だが、高機動の空中戦とは近接カラテの如くその数秒で大きく状況が変わる。再び|強襲加速器《アサルトブースト》で離脱するにはエネルギーが足りない。
「イヤーッ!」
猛禽の翼を持つ守護者、カノープスのトビゲリが機体胴部に食らい付き、猛禽の爪が僅かに喰い込む。
「イヤーッ! イヤーッ!」
そこに左右のストレートを叩き込む! |瞬発加速器《クイックブースト》で引き剥がす!
「|物体遅延《アレスト・モメンタム》、|引き寄せ《アクシオ》ッ!」
魔術の光が煌めき、僅かに魔王の動きを鈍らせ、機体に自身を引き寄せる!
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
三段蹴りの猛追! 何たるカラテと魔術を融合一体化したカラテ&マジック|達人《ウィザード》カラテか!
『今度は素手で殴りかかって来るのか。全く、退屈しない。だが』
魔王は瞬時に変形、そして!
『イヤーッ!』
ジェット炎を吹き出しながらの凄まじい横薙ぎの蹴りを放った! おお、なんという事だ。魔王はカラテも出来ると言うのか!?
「でも、脚は止まったプゥ!」
「「「ヤッちまえーッ!!」」」
そこにエリートぶた航空師団の一斉機銃掃射! |二次物理装甲《セカンダリーアーマー》に弾痕が刻まれていく! だが、そこに危険な輝き!
空に、蒼の光球が輝いた。防御に使われるパルス波を攻撃に転用する事で全周囲を一気に薙ぎ払うアサルトアーマーだ。
「「グワーッ!!」」
避ける暇が無い! エリートぶた航空師団は何とか回避した物の、張り付きを狙って近接距離に居たウタとカノープスは大きく弾き飛ばされる。
「まだ、こんな武器があったのかよ」
「でもアレは一度使ったら結構な時間再使用は出来ないプゥ!」
そう、アサルトアーマーは再使用する為には長いクールタイムが必要。更に、使用後は|一次電磁防壁《プライマルアーマー》を展開できなくなる。手札を一枚使わせた。
確実に追い詰めて来ている。
大成功
🔵🔵🔵
桃枝・重吾
アドリブ連携歓迎
引き続き梵天丸搭乗
■心情
うーん、
ここってちょっと郷里に似てると思ってたけど…
(重吾は生体兵器が独立して開拓した星系出身)
レイリスさんからの情報、
なんでUDCアースの近代史引用?
経過している年代と斉藤さんの自覚している年代とかもそうだけど…
『マスター、攻撃予測に感あり、考え事は後にした方がいいですよ』
あ、梵ちゃんごめんね、後続の人も来てくれたしこのまま予定通りだね
■備考
梵天丸
中距離(重吾基準)探索用可変型航宙キャバリア
既存としては空中給油機が近い。
大型重装甲大気圏内ではアブホランスウィールによる重力制御を併用している、実践経験は乏しい。
■梱包
星降丸はアルワーツでいざという時に備えてもらって。
私と梵ちゃんで引き続き、
ミサイルは悠々荷台と重力糸で信管作動させて封殺!
荷台?
梵ちゃん、あれは本来星降丸の追加装甲だよ。
さて、普通に避けると流弾とか心配だから上を取るよ。
『そろそろまともな火器も必要ですね』
取り敢えず今は重力糸で補足補正完了、重力加速度、悠々荷台を増装、変形垂直下降キック
●魔王墜ちるべし
「うーん、ここってちょっと郷里に似てると思ってたけど……」
桃枝・重吾(|スペースデコトラ使いXL《スペース食べ歩き道中》・f14213)は生体兵器が独立して開拓した星系出身だ。確かにその経歴はけものマキナの成り立ちと似ている。
「レイリスさんからの情報、なんでUDCアースの近代史引用?」
『それは本拠地のクレイドル内の時代設定がUDCアースの現状と酷似しているからだろう』
「そもそも、それが不思議なんだよ。経過している年代と斉藤さんの自覚している年代とかもそうだけど……」
『マスター、攻撃予測に感あり。考え事は後にした方がいいですよ』
「あ、梵ちゃんごめんね、後続の人も来てくれたしこのまま予定通りだね」
「そんなもの使ったらよ」
グランが好戦的に笑う。
「俺に落としてくれと言わんがばかりだろうが」
手にした岩を、空中に生じた光球に向けて思いっきり投げ付ける。
人間の骨格は投擲に特化している。巨人もまた、大きくなっただけであり投擲への適正は高い。投げる岩が大きくなり過ぎて簡単に見付からないと言う欠点を除けば。
アサルトアーマーのパルス波を突き抜け、剛速球の岩が直撃する。
『今度は下からか』
アサルトアーマーはクロムキャバリアに標準搭載された兵装だ。デモンズコードではない。戦いを決めるには役が足りない。魔王は背中に畳んだ翼が展開し、翼下固定されたミサイル群が一斉に火を噴いた。その狙いはグレンのみ!
「それはさせないぞっと」
そこに梵天丸が割り込みアブホランスウィールでミサイルを絡め捕る。減速したミサイルに【|悠々荷台解放《ユニヴァースユナイトキャリア》】が次々と衝突し空中爆破処理!
『マスター、荷台の使い方としてこれはどうかと』
「梵ちゃん、あれは本来星降丸の追加装甲だよ。使い方としては正しい」
だが、ミサイルの数が多い。半数のミサイルが網を抜けてグランに殺到!
「今度は避けるには遅いか」
『FOX2』『回避困難』『カラダニキヲツケテネ』の無数の無慈悲なるアラート! グランは地上で踏ん張りクロスガード姿勢! ミサイルが次々と着弾する。
大きな爆炎が上がり、周辺の地形すらえぐる程の衝撃。ガードしたグランの腕が、砕けて落ちる。その頭も……いや、とくと見よ! 砕けているのはグランではない!
「借り物なのに壊しちまったぜ」
鎧めいて砕け墜ちたのはキャバリアの装甲部分のみ! 中身のグランは殆ど無傷だ! 【|金剛の構え《コンゴウノカマエ》】による防御力はキャバリアの装甲すら凌駕する!
「やっぱり最初から自分のキャバリア使ってりゃよかったな」
そこに猛然と走り込む白馬! いや、この大きさはキャバリアだ。白馬の……キャバリア!
「ハイヨーッ!」
グランは白馬のキャバリア、白王に跨り地上を爆走する! 巨人サイズの巨大馬の齎す馬力はもはや計り知れない!
『まだ手を残してたか。羨ましいな』
魔王は今の一投で姿勢制御システム負荷が許容値の半分を超えている事を確認する。|姿勢制御システム《Attitude Control System》、通常頭文字を取ってACSと呼ばれるシステムは被弾時に自動で角度を逸らしてダメージを抑えるシステムだ。人間で言えば痛覚が脊髄反射するような物か。だが、キャバリアのACSは許容以上のダメージを受けると一時的に機体制御システムその物がダウンすると言う欠点がある。
「体制を崩したプゥ!」
その隙を逃すエリートぶた航空師団ではない。一斉に反転し機銃で更にACS負荷を蓄積させていく。ACS負荷は性質上エネルギー攻撃は軽減し難いが、負荷も受け難い性質を持つ。機銃による実弾攻撃は効果が高い。
『実に厄介だね』
魔王は機銃を避けもしない。元より装甲は固く、ASCの許容量も多い。ならば強引でも反撃を撃つ方が効果的と言う判断だ。サイドブースターを左右逆噴射しその場で回転! ミサイルを全方位に向けて乱れ撃った!
『マスター、FOX3!』
地上への流れ弾を避けて上方で隙を伺っていた重吾は冷静に対処する。
「積んでるのって|空対地《AGM》じゃなかったっけ?」
『キャバリアに搭載している時点で空には撃てないって事にはならないかと』
「それもそうか」
全方位に向けて乱れ撃たれたミサイルが個々に標的を捉えて自己誘導を開始する。このミサイルにはミサイルその物に誘導性能が備わっているので適当に撃っても当たるのだ。
「やる事は同じだけどね」
アブホランスウィールでミサイルを絡め捕って減速、悠々荷台を衝突させて空中迎撃をしようとした瞬間、猟兵第六感が緊急回避動作を取らせた。
直後、40mmの死が突き抜けて行った。回避の判断が僅かに遅ければ空中で鉄屑にされていたかもしれない。それでも自立稼働も出来る悠々荷台はミサイルの半数を落とす。エリートぶた航空師団は回避を強いられ、地上にもミサイルが降り注いだ。
「空中のは牽制、本命はこっちって感じか」
グランの跨る白王は素早く切り返してミサイルを回避。避け切れないミサイルにはグラン自身が盾となる。
「いつまでも好き勝手は」
「させません!」
赤黒い地獄の矢と、白銀に輝く矢が魔王を挟み撃ちにした。ウタとカノープスの戦線復帰だ! |空対地《AGM》ミサイルでは魔王とて生身を捕らえる事は出来ない!
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
カノープスのディバインカラテ! トビゲリからの二段回し蹴り!
「こっちも持ってけ!」
ウタは執拗にエンジン部を狙って獄炎放射! 実際、そこはこの機体の弱点!
『ACSが持たないか』
いまだ致命打と言える程のダメージは無い。だが、受けた衝撃力はもはや無視できない領域!
「ここだろ」
地上からグランが、乗騎の勢いを乗せたキャバリア用の騎兵槍を投擲! 直撃すればハヤニエになるその一撃を、しかし魔王はギリギリで弾く!
そう、弾いた。当たってはいる。到底避け切れる攻撃では無かったのだ。機体が軋みを上げる。ACS負荷限界!
『補足補正完了、重力加速度問題無し。マスター、今です』
「|悠々荷台《ユニヴァースユナイトキャリア》を増装、その硬直は頂きだ」
梵天丸の【|悠々荷台解放《ユニヴァースユナイトキャリア》】を収束し合体! 片足だけ異常巨大化し、アブホランスウィールにより重力を増加! 真上からの変形垂直下降キックを叩き込んだ!
CRAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!
システムダウンしている状態では当然回避不能! バキバキバキっと致命的構造物崩壊音を立てながら梵天丸とサンダーボルトネクストは地面へと落下する!
巨大な足に踏み付けられた魔王はついに、地上へと堕とされた。だが!
『ふーむ、変形機構がダウン。推力は30%まで減少か』
魔王は地面に叩き付けられる寸前に手動復帰させたブーストを吹かし、地上へとプレスされる事だけは回避していた。だが、もはやこの機体では空を飛ぶ事は出来ない。
『まだ戦えはするがね』
その手にはほぼ無傷の40mmアヴェンジャー! 度重なる攻撃からこれ一つだけは手放すまいと機体全体を使って守り通したのだ!
『これ一つでも任務は達成出来る、と言いたい所だが流石に残弾的に厳しいかな』
当然ながら、口径が大きければ弾丸も大きくなり装弾数も減る。残った弾は2割を切っている。
「撃って来いよ魔王」
グランは馬上から中指を立てる! ブッタも顔を背ける挑発行為だ!
「全部こっちで受け止めてやるぜ。それでお前はおしまいだがな」
『そうなるだろうね』
いかにグランとて40mmの砲弾を受け続ければ無事では済まない。殆ど無敵ではあっても多少のダメージは通るのだ。残った弾数を全部受けきれるか、それはグランにとっても賭けではある。だが、受けきれれば相手は弾切れで確実な勝利だ。
『だから、そうはしない』
残った僅かな推進剤を使い切る勢いでブーストを吹かす! 狙ったのは、グランが背後に守ろうとしたアルワーツ魔術学園!
「ああ、アンタはそうすると思ってたよ」
だが、その射線に割り込む二翼!
「突き合わせて悪いな!」
「元より、これが私の使命!」
カノープスはウィザードカラテを滾らせた! 40mmの砲弾を全弾ブロックしようと言うのか!? ではウタは? 獄炎とて40mmの砲弾を防ぐ事は出来ない。
「この瞬間を待ってたんだ」
ウタに迷いは無い! 放たれる40mmの猛獣! 後方でカノープスがそれを防ぐ音を置き去りにしてウタと一体となった迦楼羅が消えた。無様にもやられてしまったのか? そんな訳は無い。
『何だと?』
魔王は、動揺した。ここまで徐々に追い詰められていっても冷静に対処し続けた魔王が初めて動揺を見せた。
ウタに入り込んだ。即ち、放たれた銃弾と銃弾の隙間に。【|迦楼羅《カルラ》】の隙間に入り込む能力を用いて! そのまま回転する銃身の隙間に入り込み40mmアヴェンジャーを内側から焼却し融解!
だが、魔王の動揺もまた一瞬。瞬時に40mmの砲身を投げ捨てると既にウタが入り込んだ右腕ごと左腕で殴り飛ばした!
『これでは戦果としては不十分だが』
ジェネレーターが危険な放電音を立てる! これは、アサルトアーマー!? クールダウンが不十分な状況での強制励起はもはや自爆に等しい! この場の誰もが無事では済まない!
魔王は確実に死ぬ。グランは大した怪我を負いそうには無いが、隙間に入り込む為に構造体が細くなっているウタにとっては致命傷。
「イヤーーッ!!」
一筋のカラテシャウトが、それを断ち切った。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・凪
SPD
「ドーモ グラン=サン 凪です」
「突然の連絡だったのに来てくださってありがとうございます」
グランさんの発言に対して
「えぇ… かなり名の知れた人だとか… さすがのボクもこの有様です」
(両手両足の包帯を見せる)
グラン=サンが注意を引いてくれるのなら秘策がある。だが…それには生徒の協力が多少なりとも必要だ
「チバくん キミの協力が必要だ」
教員は防御魔法で手が空いてない そうなると必然的に成績トップの彼を頼るのがベストだ。
「転移魔法… あるいは遠くに移動できる魔法を使えるかい?」
作戦はシンプルだ。転移限界距離まで離れて【助走をつけてのキツネ・トビゲリ】を叩き込む。意識外のアンブッシュだ。それには【距離】が必要だ。
「おっと さすがのキミでも使えないかな?」(露骨な煽りジツ!)
転移したらクラウチングスタートの姿勢をとり全速力で走り始める(ダッシュ+リミッター解除+残像)
シンカンセンめいた超光速で飛び込みキツネ・トビゲリ!!
「イヤァアアアーーー!」
その後はグランさんと協力してインファイトだ
●|それは稲妻の如く《ライク・ア・サンダーボルト》
「チバくん、キミの協力が必要だ」
叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)は生徒の一人、オモト・ドラゴ・チバに協力を呼び掛けた。
「どうして僕なんだ。お前のお気に入りはアイツだろ」
チバは先の【|無色の鏡《ムシキノカガミ》】には参加しなかった。彼の取り巻きは参加したが、チバは自分は何か出来る事があるに違いないと考えたのだ。
「教員は防御魔法で手が空いてない。そうなると必然的に学年成績トップのキミを頼るのがベストだ」
「なるほど合理的な理由ではある」
凪は畳み掛ける。
「転移魔法……あるいは遠くに移動できる魔法を使えるかい? 作戦はシンプルだ。転移限界距離まで離れて”助走をつけてのキツネ・トビゲリ”を叩き込む。意識外のアンブッシュだ。それには”距離”が必要だ」
「なるほど、なるほどな」
チバは納得する素振りは見せつつ首を縦に振らない。一度決闘で恥をかかされている相手の頼みだ。
ここで恥も外聞も無くドゲザで頼み込めば或いは、と言うのは浅はかだ。先生が生徒にドゲザするのは余程重大なケジメインシデントが起きた時であるべきだろう。
「おっと、さすがのキミでも使えないかな?」
露骨な露骨な煽りジツ。
「言いたい事が三つある」
「聞こう」
「まず一つ目。僕はそんな魔術を知らない。姿現しはあるが、狙った場所に移動できる訳じゃない」
「えっと、本当に使えなかったの?」
煽ったつもりが逆効果だったかもしれない。
「二つ目。その作戦で行くならもっといい手段がある」
「なんだ、出来るんじゃないか! だったら」
「三つ目! どうして僕がお前の言う事を聞かなきゃならないんだ! お前の指図を受ける理由が無い」
「オネガイシマス! このとーり!」
ドゲザはしないが両手を合わせて頼み込む最敬礼オジギ!
「……ふん、まあいいだろう。その代わり、僕の指示には従ってもらうからな」
「……それでチバくん、これは一体……?」
「見れば分かるだろう。ヤクザベンツだ」
見るからに高級そうな黒塗りのヤクザベンツだ。いつぞやの授業の時はひっくり返されたりもしてたが、その位で壊れたりはしない。これも立派な残滓の一つだ。
「乗れ」
「アッハイ」
言う事に従う、と言った以上はチバの指示には従おうとする凪。
「違う、中に乗ってどうする。お前とドライブする気は無い」
「えっ、じゃあどうすれば」
「”助走”が要るんだろう?」
チバはにやりと笑ってボンネットを叩いた。
「特別だぞ」
「なるほど、それはいい”助走”になりそうだ」
凪もにやりと笑い、瞬時にしてジンライ・フォックスへと転じてボンネットの上に飛び乗った。
「アクセル全開で行く。振り落とされるなよ!」
チバは運転席に座ると慣れた手付きでハンドルとギアを握る!
チバの運転するヤクザベンツは素晴らしい加速度で校舎の外を爆走している! チバのヤクザベンツは様々な残滓の技術を組み込まれ、戦闘にも対応できるハイスペック仕様。緊急時にはマシンガンを展開し、ミサイルも撃つ。伐採バズソーを備え、短時間ではあるが飛行も出来る。当然の事としてオフロードでも問題無く爆走できる!
『『『ザザザザザザッケンナコラコラコラコラーッ!!』』』
「ムッハハハハッ!!」
盛大にヤクザクラクションを鳴らしながら交戦地点に回り込んで側面の位置でドリフト! その時、丁度巨大な脚が魔王を踏み付けんとしていた。
「いいタイミングじゃないか。横から一発、ぶん殴るには丁度いい」
「ああ、一手で決める!」
実際、応急処置はされていても今は十全のカラテは振るえない。だが、ただ一手。一手のみであれば!
「ムッハハハハハハ! フルスロットルだッ!」
ヤクザベンツがロケットブースト点火し猛然とキャバリアに向けて突っ込む! ジンライ・フォックスは地面とほぼ垂直になる程の前傾姿勢!
「イィィヤァァァーーーッ!!」
ジンライ・フォックスがボンネットを蹴る様にして跳躍! ヤクザベンツより更にハヤイ! ハヤイスギル! 地面を蹴る脚が殆ど見えない程の超高速リニアシンカンセンめいて疾走!
ジェネレーターが危険な放電音を立てる! これは、アサルトアーマー!? クールダウンが不十分な状況での強制励起はもはや自爆に等しい! この場の誰もが無事では済まない!
魔王は確実に死ぬ。グランは大した怪我を負いそうには無いが、隙間に入り込む為に構造体が細くなっているウタにとっては致命傷。
そこにジンライ・フォックスが水平超高速リニアシンカンセンめいて疾走!
「イィィィヤァァァァァーーーッ!!」
【キツネ・トビゲリ】を叩き込んだ! ACSは当然復旧ならず直撃!
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
ジンライ・フォックスは止まらない! ガトリング・ケリが胸部装甲を貫き、ジェネレーター摘出!
「イヤーッ!!」
トドメの蹴り上げで空高くジェネレーターを蹴り飛ばした! ジェネレーターは誰も巻き込む事無く空中で爆発四散!
「まだだ!」
グランが叫ぶ!
「ハンスの恐ろしさはここからだぜ。機体が堕ちても終わりじゃない」
バシュ! っと音を立てて緊急脱出ポットが作動。コクピットブロックが飛ぶ。
「アレを壊せば!」
迦楼羅から人の姿に戻り、焔摩天を振り上げるウタ!
甲高い金属音が響いた。ウタは脱出ポットを串刺しにしようとした。だが、そこに乗っているのは人間だ。作られた存在でも、学園を爆撃しようとした者であっても、人間だ。オブリビオンではない。躯の海には還らない。
だからポットだけを破壊した。前面を切り開き、即座に中の魔王を拘束しようとした。
「え?」
だが、そうはならなかった。
「中に、誰も居ないぞ?」
脱出ポットは無人だった。
「どこに行ったんだ? もしかして、最初から誰も乗ってなかった……?」
最初から中のパイロットなど存在せずに機体だけだったのだろうか。それは十分あり得る話だが、ウタの猟兵第六感はそうではないと断じていた。
中に魔王は確かに居たのだ。己の死を悟り自ら胞状分解した? それも違う。
「……やられたぜ」
答えに最初に行き着いたのはグランだ。
「そのポットは囮だ。もうとっくに脱出してたんだ。たぶん、ACS負荷限界の辺りだな」
「え? だってその後も戦ってたじゃないか」
「遠隔操縦か自動操縦だろ。あの辺から動きは悪くなってたしな」
「待とうぜ。負荷限界で硬直した時って空中に居ただろ。どうやって脱出したっていうんだ」
「俺達だってあの高度から生身で生還する手段位あるだろ」
「確かに、グレーター・ウケミで衝撃を地面に逃がせば」
「そんなの出来るのはニンジャだけだろ。いや、俺も爆炎だけでも飛べるし」
「ウイングスーツでも使ったんだろ。たぶん光学迷彩付きで。じゃなかったらエリートぶた航空師団が見落とさない」
『戦闘中では使っているように見えなかった魔王のデモンズコード【異能生存体】による物だろう』
決着が付いたので私から通信を入れた。
『お疲れさまだ。君達の活躍で学園は救われた』
「待てよレイリス。相手はあのハンスだぞ。追撃しなくていいのか?」
『あの|魔王《ルーデル》だから追撃するなと言っている。何をどう予知して視てもどうしても魔王を殺す事は出来なかったんだ。だがまあ』
私は、誰も見ていない執務室で嗤う。
『逃げると分かっている相手をただで逃がすと思うか? まあ、学園の危機は去ったのは保証する。そこは安心しろ』
◆このシナリオとしてはここで終了します。後に日常シナリオの断章でこの後日談を公開予定です。備えよう。
大成功
🔵🔵🔵