塵芥アンサンブル
~♪
義体疾走らせ 聖夜が為に
安心 安全 早くて 安い
疾風 迅雷 届くよ 愛情
運ぶ輝き にゃんこの輝き
あゝ 迅雷運輸 迅雷運輸
●任務完了?
「全く……とんだトラブルだったな」
夜明けの町の一角で、そのハイウェイスターは一匹のネコを抱き上げた。それはこの世界でよくあるバイオ何とかやサイバー何とかではない、オーガニックで血統書付きの個体だ。
貴重なこのネコを巡り、何やら激戦が繰り広げられたのであろう、男の姿はボロボロで、その表情にも濃い疲労が滲んでいた。
「だが、もう大丈夫だ。連中はそれどころではないだろう」
そう言うと、彼は口元を緩める。だがその緩みが、義体の発するアラートへの反応を遅らせた。
上空から降ってきたのは、巨大な多脚の義体を持った女。油断したハイウェイスターを蹴り飛ばし、踏み付けにした彼女は、男の抱いていたネコを摘まみ上げる。不意を打たれたハイウェイスターは、悔し気に呻き、敵を睨みつけた。
「クソッ、こうまで追っ手を出すのが早いとは……このネコに秘められた情報は、余程重要らしいな」
「いや、別に」
無感動に彼を見下ろし、現れた多脚義体の女は担いでいた重厚なケース――頑丈で生体移送にも適したメガコーポ特製梱包箱に、ネコを仕舞いこんだ。
「このネコは依頼主の『愛人に対するクリスマスプレゼント』として配送される。以上だ」
「……なんだって?」
全然別件?
●エクストラミッション
「そんな流れで、横から現れた『配達員』によって、このハイウェイスターの尽力は無に帰してしまうわけだ」
どうやらこの男は随分と運が悪いらしい。予知した内容を一同に伝えて、グリモア猟兵の高峰・勇人(再発性頭痛・f37719)は肩を竦めた。
さすがにそれは忍びないし……どうやらレジスタンスの一員らしいこの男に協力すれば、間接的に|巨大企業群《メガコーポ》に打撃を与えることができるだろう。ついでにこの『配達員』を雇った企業の信用も墜とせて一石三鳥くらいの成果は見込めるはず。
「今から向かえば、『配達員』に逃げられた直後のハイウェイスターと合流できるはずだ。彼から情報を得て、『配達員』と――そんなに価値があるものなのか俺にはわからないが、とにかく攫われてしまったネコを取り返してきてやってくれ」
予知に出てきた『配達員』は、|巨大企業群《メガコーポ》『迅雷運輸』のエージェントであることがわかっている。昆虫の脚部を思わせる巨大な義体からして、かなりの速度と走破性能を備えていることが予想される。
「対抗できる移動手段がほしいところだが、さすがにそこまでは手を回せなかった。自前で用意していくか、うまいこと現地調達してくれ」
頼んだぞ、と簡潔にそう締めくくって、グリモア猟兵は一同を現地へと送り出した。
つじ
人の命など塵芥、みたいな状況に飛び込んで頂こうと思います。
●目的と状況
攫われたネコちゃんを奪取してください。
また、詳細は序文などで都度記載しますが、移動経路の全域にわたってニンジャとヤクザが交戦状態にあります。どちらも別々の|巨大企業群《メガコーポ》傘下の兵隊達ですので、扱いはご自由に。
●第一章 集団戦
ハイウェイの入り口でニンジャとヤクザが戦闘中です。フラグメントはニンジャ戦になっていますが、銃器やドスで武装したヤクザ側と戦闘することも可能です。どちらかに協力する、両方張り倒すなど自由に選択して戦ってください。
この後本格的に抗争地帯に突っ込みますので、先の展開も踏まえての行動をおすすめします。
●第二章 ハイウェイチェイス
『配達員』を追ってハイウェイを移動していただきます。道中ではヤクザと忍者が先程よりも派手にドンパチしています。
自前の乗り物が使えるほか、一章で倒した相手の乗り物を奪ったり、味方した陣営の乗り物に相乗りすることで運転を任せることもできます。
●第三章 ボス戦
とあるヤクザの組のアジトである高層ビルに入ります。順調にいけばここで『配達員』に追いつけますので、ビルの内外を移動しながら戦闘し、目的のモノを奪い取ってください。
このビルは全面的に武装されている上、組長の首を取りに来たニンジャと迎撃中のヤクザが命を賭けた大戦争をやっています。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしています。
第1章 集団戦
『カゲロウ級・駆逐型ニンジャ』
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POW : カゲロウブンシン・タクティクス
【任意の数の自身の分身】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : スニーキング・イクサ・プログラム
【高周波サイバークサリガマ】【絶命鉄球爆弾】【瞬殺無音ブーツ】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : フライ・シャドウ・カムアウト
【任意の数のニンジャ】と合体し、攻撃力を増加する【大型機動兵器に変形し、強靭な装甲】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【誘導クナイ弾、ビルすら断つハイパー忍者刀】が使用可能になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ハイウェイスター
倒れ伏したレジスタンス、ビル・D・フラガという名の男は、駆け付けた者達の姿を見て、安堵したように息を吐いた。見覚えがあるかは――まあ確証はないけれど、彼はこれまで、『猟兵』と名乗る者達に幾度も助けられている。
そのカウントに、さらに1が足されることに忸怩たる思いはあるが。
「あいつの首輪に発信機を仕込んでおいた」
任せたぞ、と例の『配達員』が去って行った方角を示す。ハイウェイへと続くその道は、夜明けの陽に照らされてなお、打ち棄てられたゴミや何らかの液体の後で薄汚れて見えた。
その中に、『配達員』が義体で蹴り飛ばした自分のバイクを発見し、男は顔を歪める。
「相手は|巨大企業群《メガコーポ》のエージェントで、ばかでかい義体で強化されてはいるが、所詮は『配達員』だ。戦いに慣れたあんた達なら、倒すのは容易いだろう」
色濃い疲労に押されるようにもう一度息を吐いて、彼は――恰好をつけたかったのか、ニヒルに笑ってみせた。
「まあ、『向かう先が戦場になってる』、とかなら話は別だろうけどな」
まさか、そんなことはあり得ないだろう。くだらない冗談で彼等を見送った。
●追走開始
向かった先、ハイウェイの乗り口に当たる場所には、正に地獄絵図が広がっていた。
「こんなところで足止め食ってる場合じゃねえぞ!」
「さっさとこのニンジャどもを――」
殺せ、と言いかけたチンピラの首が、鎖鎌の刃に捕まり宙を舞う。
猟兵の側からは彼等の事情などわかりようもないが、とにかくニンジャとヤクザ、二つのグループが抗争中らしい。
とにかく、ここを切り抜けなければハイウェイにすら入れないが――。
カルマ・ヴィローシャナ
カワイイネコちゃんをアブナイ目に遭わせるなんて駄目だニャン♪
って、あれは|飛影見参《フライ・シャドウ・カムアウト》!?
おのれアミダ……ニンジャを出すなら私にいい考えがあるわ!
ニンジャが合体するなら私もニンジャになって
大型機動兵器を乗っ取っちゃう!
フォトンドライブ、ステルスセル、アクティベート!
|光学迷彩《ニンジャフォーム》で姿を隠してカゲロウ級の出方を見切り突入!
そして早業で内側からハッキング!
自身が巨大になってヤクザごと功夫で叩き潰してあげるわ! イヤーッ!
最後は自身を覆うニンジャを|斬撃波《カルマドミネーション》でまとめて成敗! 撮れ高十分!
合体解除したらマシンXXに乗り込んで追撃開始よ!
暁星・輝凛
「あー、なるほどなるほど。ほんと運悪いんだなあ、あのビルって人は」
予知の内容を踏まえて、ニンジャの味方をしておこうかな。
最後に突入する高層ビルがヤクザの本拠なら、後々共闘できるかもしんないし、ね。
それに僕、むかーし忍の技も使ってたことが……じゃなくて!
ヤクザに攻撃を仕掛けてニンジャを助ける。
「ここを通りたいんだよね。さっさと終わらせて欲しいから、手伝うよ」
「強い方に付いた方が早く終わるでしょ?」
ニンジャに僕の【コミュ力】が通じるかどうかはともかく。
【見切り】、【シャドウパリィ】を駆使して攻撃を避けつつ、
格闘と剣術を操って確実に一人ずつ倒していくよ。
「ねぇニンジャさん達、始める前にお辞儀要る?」
●ニンジャの一員
ハイウェイスターに示された道の先、ハイウェイの入り口では、ものの見事に派手な抗争が巻き起こっていた。話が違うというか、見立てが甘いというか――まあ、「そんなことある?」というのが率直な感想になるだろうか。怒声と悲鳴と銃声と爆音が響くその惨状を前にして、暁星・輝凛(獅輝剣星レディアント・レオ・f40817)はそれに対し、一つ結論付ける。
「あー、なるほどなるほど。ほんと運悪いんだなあ、あのビルって人は」
現状ではそうとしか言いようがない。だがそうすると、『この先』も運悪く酷いことになっている、という可能性もあるわけで。
その辺りも考慮に入れるのならば、無理に全てを蹴散らすよりは、この抗争のどちらかに肩入れするのがより確実と言えるだろう。
「協力するなら……こっちかな」
ヤクザとニンジャの命の取り合い、そのさなかに身を躍らせた輝凛は、交戦状態にあったヤクザを一刀の下に斬り伏せ、ニンジャを包囲しかけていたその陣形に穴を開けてやる。突破口が見えれば、個の実力において勝るニンジャ達は、すぐにそれを食い破り始めた。
形勢が傾いていく中、輝凛もまたヤクザへと応戦する。共に戦う形となったニンジャ達からは、若干の困惑と警戒の視線を浴びることになるが。
「えーっと、どうかな、こういう時ってお辞儀した方が良いの?」
『何奴……?』
「助っ人みたいなものかな」
軽い調子で応じた輝凛は、とにかくここを通り抜けたいこと、そしてそのために手を貸すことを彼等に伝える。
『なぜ、我等の側に?』
「僕もむかーし忍の技を……いやそれはいいか。単純に、強い方に付いた方が早く終わるでしょ?」
少なくとも、双方共にここで敵対する意義は薄い。利害の一致を見たためか、それともただ保留し目の前の敵を排除することにしたか、ヤクザへと反攻に出るニンジャ達に合わせて、輝凛もまた攻勢を仕掛けた。
ドスによる刺突を輝かしい剣の刀身で払い、傾いだ敵の胴に回し蹴りを叩き込む。続く斬撃でとどめを刺して――ヤクザの第一波を振り払ったところで、ニンジャ達は輝凛へと謝意を示した。そして。
『感謝致す。後は我々が――』
連中を蹴散らしてみせよう。そう告げた一人のニンジャに合わせて、周りのニンジャ達がその場に集う。身体を形作る義体がそれぞれに展開、変形し、彼等は合体した巨大兵器へと変貌を遂げた。
「……なるほど」
さすがにかつての自分も、こんな術までは使っていなかった。ある種の感嘆を口にしてから、輝凛は巨大ニンジャロボがヤクザを蹴散らしに向かうのを見送る。
ただ、そう、伝えておくべきことがあるとするなら。
「そっちには、行かない方が良いと思うんだけどな……」
カゲロウ級ニンジャ達の特殊な術、戦場を蹂躙しかねないその動きに対し、それを『知っているもの』として認識した人物が一人。
「あれは……|飛影見参《フライ・シャドウ・カムアウト》!?」
因縁深い|巨大企業群《メガコーポ》の気配を察知したカルマ・ヴィローシャナ(|波羅破螺都計《ヴォイドエクスプロージョン》・f36625)は、それならばとそちらに踏み出す。
「おのれアミダ……ニンジャを出すなら私にいい考えがあるわ! フォトンドライブ、ステルスセル、アクティベート!」
合体、巨大化して暴れ回るその特性はよく理解している。光学迷彩で姿を消して、相手の動きを窺った彼女は、そのまま巨大機動兵器へと飛び着いた。
この巨大兵器は、複数のニンジャが合体して形作るもの、ゆえにその合体材料の一つとして、カルマはそこに一体化する。
ただし、身体を任せるのではなく、乗っ取るためだ。内側からハッキングの根を伸ばし、中枢の個体から操縦権限を奪取、すると巨大ニンジャロボの姿が俄かに崩れ、カルマを象った形に再構築されていった。
足の止まった巨大兵器に、ヤクザがとっておきのロケットランチャーやら義体内蔵のマシンガンやらで攻撃を仕掛ける。彼等にしてみればこの異変は好機以外の何物でもなかったのだが。
「イヤーッ!」
次の瞬間、カルマの手足として再起動した機体は、そのままヤクザの集団を叩き潰した。
路面が穿たれ窪みを作り、肉と義体の残骸がそこに押し込められる。そうして力ずくで道を開いたところで、カルマは合体を解除。
ただし、解除の方法は|斬撃波《カルマドミネーション》によるものだ。
自分の周囲のニンジャ達とまとめて薙ぎ払い、豪快に期待から離脱した彼女は、マシンXXを駆ってその場を駆け抜けていった。
嵐の通り過ぎた様相、蹂躙の果ての光景に、「やっぱりこうなったか」という顔で輝凛が踏み込む。
『無念……後を頼む』
かろうじて息のあったニンジャに一人は、『助っ人』であると信じた輝凛にそう告げて、恐らくは自分達が乗ってきたものだろう、ニンジャ仕様の改造バイクや個人用のフライトユニットなど、もはや使い手の居なくなったそれらの搭乗権限を、彼に渡す。
彼等の遺志を叶える必要は特にないのだが、少なくともあれに乗っていれば、この先でもニンジャ達の協力を得られるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
久礼・紫草
【アルミィ殿(02059)と】
アルミィ殿、細かな所はお任せしましたぞ
目に入る敵を手当たり次第に斬り捨てる
安心めされい
幾ら耄碌爺とて斬ってはならぬ物はわかるわい
|ヤクザ《かぶきもの》とニンジャどちらも黒ずくめ、黒を斬ればよいこと
敵の攻撃に合せ武器受け
膝蹴りで態勢崩し斬り捨てる
はっはっはっ!増えても無駄じゃ無駄じゃ
全て斬れば良いだけじゃ
ヤクザとニンジャの殺り合には嬉々として混ざり
まとめて薙ぎ払い
多少斬られても激痛を堪え忍ぶ心得はある故
アルミィ殿の車のばんぱぁに飛び乗って
ますます刀をぶんまわし斬る
なぁに揺れても全く構わん
アルミィ殿も打ち首獄門引き回しを愉しまれるがよい
振り落とされても転がり足首を刻む
アルミィ・キングフィッシャー
久礼・紫草(死草・f02788)のサポートに回るよ
あの爺さん腕は立つけど全部切り倒してから考えるからね
先にこっちで足回り確保しておこう
盗む車とやらには事欠かないようだ、大体この手のって足がつかないようにいじってあるだろうから、機械に疎い私でも盗れるだろう
盗賊の七つ道具から万能鍵を取り出して、無理矢理移動手段を奪ってしまおう
で、大丈夫だろうけど爺さんを狙っている敵を轢き殺しつつ、回収しよう
まあ走ってる車の上でも立ち回れるだろ
運転?
見様見真似さ、初心者運転で安全なんかないさ
それでもいいなら近づく事だね
ま、手の空いた時でもリビングロープで引廻しの刑ってのもありかねえ
泥棒から盗むってのは心躍るもんさ
●剣豪と盗賊
破壊された車に、道路脇に転がっていた建材の残骸、わずかな遮蔽物にからヤクザ達が散発的に銃撃を仕掛けるが、ニンジャ達はそれをゆらめくような動きで躱してしまう。数の多寡としては概ね互角だが、その趨勢はすぐに傾いていくだろう。
銃器に対して鎖鎌、一見すれば無謀な戦いではあるが、義体で強化されたニンジャならばその限りではない。変幻自在の鎌の刃が、敵の首を掻き切ろうというその瞬間に、そのニンジャは二つに断たれて崩れ落ちた。
黒い義体ごとその身体を叩き斬ったのは、久礼・紫草(死草・f02788)の一刀である。無造作なそれがさらに一体のニンジャを斬り捨てるに至って、目を丸くしていたヤクザ達は俄かに勢い付いた。
『誰か知らんがいいぞ爺さん!』
『やっちまえ!』
だがそんな声援が終わる間もなく、次なる一太刀は車の影に身を潜めたヤクザの一人を、その遮蔽物ごと断ち斬っていた。
なんだこいつ、イカレてんのか? そんなことを騒ぎ出す彼等に、紫草は飄々とした様子で告げる。
「安心めされい、幾ら耄碌爺とて斬ってはならぬ物はわかるわい」
仲間をやられ、双方ともに警戒状態の両陣営が、固唾をのんでその続きを待つ。
「ヤクザかぶきものとニンジャどちらも黒ずくめ、黒を斬ればよいこと」
ダメだこいつ、全員で始末しないと。居合わせたヤクザとニンジャの思いが一つになった、記念すべき瞬間だった。総員がかりで攻撃に回る相手に対し、紫草は刀ひとつで応戦する。
「……まぁいいんだけどさ、あの爺さん絶対この先のこと考えてないよね?」
大立ち回りしている紫草の方を横目に、アルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)は放置されているヤクザ達の改造車を検分していく。敵を斬るのは確かに重要だが、今回の標的はハイウェイの先、そこまで追走する足が必要になるはず。
幸いと言うべきか、改造車はよりどりみどり、やたらと前後に長い高級車から厳つい装甲車両まで揃っている。
「大体この手のって足がつかないようにいじってあると思うんだけど……」
そもそもが盗難車というものだってあるだろうし、乗り捨ててドンパチを始めたという事情もあるだろう、彼女の見立て通り、大半の車はちょっとした細工ですぐに走り出せそうだ。
となればあとは車両の選定基準か、今回は一人旅ではないこともあり、同行者のことも慮る必要がありそうだが……。
「あの爺さんなら走ってる車の上でも立ち回れるだろ」
その辺りは割と雑な方向で結論付けて、彼女は完全に自己基準で選択した車両に乗り込んだ。
銃弾とドス、ヤクザの仕掛けを捌いた紫草に向けて、ニンジャがそれを取り囲むように展開する。揺らめくように見えたその身体は、残像ならぬ分身を形作り、一斉に飛び掛かった。
「はっはっはっ! 増えても無駄じゃ無駄じゃ!」
何人に増えようが、全て斬れば良いだけの話。シンプルに捉えて刃を振るい、陽炎も本体も構わず斬り裂いていく。とはいえ数で押す形はやがて功を奏し始めたか、剣豪の刃の向こうまで、ニンジャの鎖鎌が届こうとしていた。
しかしながらその寸前に、黒塗り金装飾の高級車が突如として突っ込んできて、ニンジャを撥ね飛ばして止まった。
低いエンジン音の響く中、側面のウインドウがゆっくりと降りて、運転手が顔を出す。
「ごめん、急に後ろに走り出してさ」
なんかまたヤバいのが来た。戦々恐々とするニンジャとヤクザを他所に、「ふむ」と鼻を鳴らした紫草はそのバンパーに飛び乗った。
「前にも走れるんじゃろう?」
「たぶんね」
絶対無免許みたいな返しをしながら、運転席に座ったアルミィが見様見真似でステアリングを操作する。
『くそっ、引きずり下ろせ!』
『テメェ、人様の車を勝手に――』
「いやあ、泥棒から盗むってのは心躍るもんだよ」
慌てて飛び掛かる彼等を紫草の刃が迎え撃ち、合間にアルミィの振るったリビングロープが伸びて、残りの追手を絡め取った。
「打ち首獄門引き回し、といったところか」
「それ楽しいの?」
まあ、やってみればわかるわね。バンパーに紫草を乗せて、幾人かの敵をロープで引きずったまま、という威嚇効果十分の構えで、アルミィの車はハイウェイへと駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
烏護・ハル
まぁ……ここじゃ抗争の一つや二つ、日常茶飯事よね。
……お兄さんがフラグ建てたからじゃないわよね。
そうよね、式神さん。
しっかし、数が多すぎるわね、数が。
どちらに肩入れするでもなし。
めんどくさい時は薙ぎ払えばいいよって、お師さんも言ってたっけ。
……言ってたっけ?
……まぁ、いっか。
お師さんなら言うわね!
高速多重詠唱で魔力を練り上げ、まずは最短経路上の敵群目掛けて特大の呪殺弾をブチ込んで。
ニンジャさんでもヤクザさんでもいいや。
手近なのを適当に引っ掴んで、と。
ここでUC発動。片脚を狐火変化。
推力増し増し、最大スピードでかっ飛んで敵群を突破しちゃえ。
大丈夫!ダメージは全部盾代わりにした敵さんが受けるから。
オリバー・ハートフォード
おいおい血統書付きのネコっていったらとんでもねぇお宝じゃねぇか。そりゃあこんだけ血眼になるのが人情だよな。ま、本官に眼はもうないんだけどサ!
こっちは正義のお巡りさんだからな、ニンジャもヤクザも纏めて相手してやるさ。UC発動してご挨拶代わりに白バイで乱戦のど真ん中に〈スライディング〉で突っ込むぜ。クサリガマやら銃弾やらを〈盾受け〉しつつ〈武器落とし〉の警棒術もお見舞いだ。道を拓いたらアクセル全開でハイウェイに突っ込むぜ。
楽しそうなことやってるじゃねェか、本官も混ぜてくれよ! オレもこの先に用があってね、さぁ轢かれたくないなら退いた退いた!
(アドリブ連携負傷等々歓迎)
「まぁ……ここじゃ抗争の一つや二つ、日常茶飯事よね」
人の血と、義体を動かす油の舞い散る戦場を前に、烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)は小さく呟いた。『容易い仕事』という話はこれで反故になった形だろうか、あのハイウェイスターが絡む話は大体そんな流れな気がする。
「……あのお兄さんがフラグ建てたからじゃないわよね」
まさかそんなはずがない。そう否定して欲しかったが、彼女の従える式神は、聞こえない振りをしてそっぽを向いていた。
まあいいけれど、と溜息交じりに詠唱を開始する。行く手を塞ぐ敵の数は、おかげでやたらと多いけれど、「めんどくさい時は薙ぎ払えばいいよ」と彼女の師匠も言っていたはず。
「……言ってたっけ?」
式神側も首を傾げているが、強く否定してこないのはいかにも言いそうな台詞だったからだろう。
とりあえず道を開くべく放たれた特大の呪殺弾は、相争うニンジャとヤクザの間に着弾した。
●タテノハ組下部組織のタナベ
同じように義体で強化されているとはいえ、自分達のようなチンピラと、鍛え上げられたニンジャとでは随分質が違うらしい。暴力を行使することに慣れているはずの自分達が、いとも容易く屠られていく様は、まるで悪い夢を見ているようだった。
分身した連中に取り囲まれ、首筋に刃が当たる、その感触を覚えたような気がした一瞬に、吹き荒れる闇色の風が、それらを薙ぎ払っていった。
『な、なんだァ……?』
自らも吹き飛ばされ、地に背中を付けていたタナベは、わけもわからず体を起こす。味方の新兵器か何かだろうか、とにかく先程までこちらを殺そうとしていたニンジャ達の姿はなくなっていた。
『おいおい嬢ちゃん、こんなところに来たら何されても文句は言――』
「わー、こわーい」
明らかな棒読みの声に視線を向けると、仲間の一人がこの場に不釣り合いな風体の娘を脅しにかかっている。そんなことをしている場合ではない、だが反射的にそういう物言いが出るのがこの手の人種である。
彼が女に向かって手を伸ばしたそこで、両者の身は宙に浮き上がった。
『……何?』
その娘の片脚が、赤々と燃える炎と化しているように見えるのは、義体眼球の不調だろうか?
「ちょっと借りてくわね」
そんな言葉と同時に、その炎は爆発的に燃え上がり、彼女は猛スピードで戦場へとすっ飛んでいった
仲間が連れ去られた状況に、慌ててヤクザ達はそちらに銃を向けるが。
『待て、撃つんじゃねえ! あいつに当たる!』
持ち上げられた同僚は、完全に盾にされていた。こちらが撃たなくとも、ほどなくニンジャ達の攻撃の身代わりにさせられ、ズタボロになっていそうだが。
チクショウ、ふざけやがって。そう毒づいて彼女を追おうとしたところで。
『危ねえ!!』
その前に、武装警官用のバイクが突っ込んできた。咄嗟に飛び退いたそこを、その白バイは勢いよくスライディングし、路面にタイヤ痕を刻み付けながら止まる。
『テメェ、どこに目ェ付けてやがる!』
「悪い悪い、本官にはもう眼はなくってサ!」
彼等の脅し文句に対し、軽い調子で応じながら、その乗り手は制帽のつばを上げる。そこには肉も皮膚もない、頭蓋骨だけが存在していた。空洞となった眼窩には、目玉の代わりのように青い炎が浮いている。
なんだこいつは。驚愕と共に、警官の存在に身構えていたヤクザ達は一斉にトリガーを引く。拳銃から飛び出した銃弾が、殺到するが。
「おいおいやめとけって、弾が勿体ねェぜ?」
展開された盾がそれを阻み、残りの弾丸も骨の隙間をすり抜けていった。
「それともヤクザってのはそこまで景気が良いのかね、あやかりてェもんだなあ」
威勢よく声を上げてかかっていったヤクザ達も、素早く警棒で打ち据えられて地に転がる、タナベ自身もドスを抜いて突進するが、刃先を弾かれ身体が泳いだところに、脳天へ一撃を受けて、地へと叩きつけられた。
「オレもこの先に用があってね、邪魔はされたくないんだよな」
だから、そのまま寝てな。カタカタと、恐らくは笑っているのであろうリズムで顎の骨が鳴っている。
――どうやら、悪夢はまだ終わっていなかったらしい。瞼の裏に焼き付きそうなその光景を最後に、タナベの意識は闇へと落ちた。
「さぁ轢かれたくないなら退いた退いた!」
骸骨警官のそんな声と、バイクの唸り、倒れ伏した彼の耳に、それは届いていたかどうか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎
基本潰し合いさせての漁夫の利狙いと行こう
|猫科《虎》の手で良けりゃ貸してやらあ。ま、取扱いには
気ぃつけた方がいいけどな!
「やっちまいな!レージング!」
序盤はUC不空羂索で複製したグレイプニルでの拘束や
武器落とし等で戦闘をアシストし激化させていく
一応【迷彩】【ジャミング】しておこう
互いの数が減ったら「認識」した敵(ニンジャヤクザ問わず)を
ガンディーヴァによる銃撃にて攻撃
「どいつもこいつも個性のねえこった!一匹『認識』しただけで
まとめて当たりやがる!」
個性的なヤクザが突っ込んできたら応戦
但し【残像】【カウンター】でだ
「|命《タマ》取った積りのトコ悪ぃ、俺はもうそこにはいねえんだ」
●タテノハ組下部組織のハタサ
やっちまえ。彼のそんな号令に応じて、ヤクザ達は一斉に銃口を引く。銃弾を難なく捌くニンジャ達であっても、数で押せば活路は開けるはず――そんな無謀なかけではあったが、対するニンジャの一人が圧力に負けたか、体勢を崩してつんのめる。殺到する弾丸は、すぐさまそれを蜂の巣に変えた。
『よし、いけるぞ!』
言ったそばから別のニンジャの放った手裏剣が風を切り、傍らの仲間の額を叩き割る。悲鳴とも怒りの声ともつかないものが喉を鳴らすが、それが何か明らかになる前に、ハタサは手裏剣に続いて投擲された手榴弾を目にした。
まさかこれで終わりか、と諦めかけた直後に、それは突如空中で跳ねて、誰も居ない彼我の中間地点で爆散した。
何が起きているのかわからない彼にの脳裏には、『神がかり』という言葉が閃いている。当然ながら、それがある猟兵の意図によるもの、などという発想は浮かばない。
絶望的なこの戦いも、彼のようなものにしてみれば貴重な成り上がりな機会である。目覚ましい戦果を残せば上の覚えもよくなるもので、この業界の『伝説』は大抵こういうエピソードから始まるのだから。
『怯むな! 撃て!』
まだかろうじて生きている仲間を鼓舞しながら、彼はニンジャに応戦し続けた。
――勝てる、なんだか知らないが、今ならば。最後のニンジャに銃撃を仕掛け、とどめを刺す。うだつの上がらない人生に光が差したような気がして――しかしそんな希望は、周辺の味方が一瞬で額を貫かれた時点で瓦解する。
『なに……?』
「どいつもこいつも個性のねえこった!」
それが自動照準のスマートガンによるもの、と気付けたかは怪しいものだった。だがその銃の持ち手が現れた男、ロウガ・イスルギ(白朧|牙《我》虎・f00846)によるものだとは彼にも理解できていた。
猫の手も欲しいところではあったが、現れたのは虎。白虎の顔で笑う彼に、ハタサは湧き上がる感情のままに駆ける。手にしたドスにそれを乗せて、真っ直ぐに突き出す。鉄砲玉としての役割を持つ彼は、こういう時の為の心構えをしてきていた。
刃は確かに虎男の胴を貫いた、はずだった。
「|命《タマ》取った積りのトコ悪ぃ、俺はもうそこにはいねえんだ」
けれど、所詮それは残影に過ぎない。ロウガのそんな言葉を最後に、彼の意識はそこで途切れた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『ハイウェイチェイス』
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POW : 邪魔する奴を体当たりで跳ね返す
SPD : 最高速度でかっ飛ばす
WIZ : 敵の移動ルートを読み、別ルートから攻める
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●タテノハ組系三次団体運転手
緊急招集、それも上位の組織からの声が、こんな下部組織の下っ端にまでかかるのは異例の事だった。何よりもメンツを重んじるこの業界では、なりふり構わぬ、言ってしまえば無様な行いの影響は、後々まで尾を引くことだろう。
ある種、物見遊山でハイウェイに上がったところで、ハナムラという名の運転手は認識の甘さを思い知る事になる。
本家のビルへと向かう道のりでは、既に自分と同じような援軍の組員と、それを阻止しようという勢力が並走しながら相争い、それらの残骸がそこかしこに転がっていた。
――メンツだの何だのは、組が存続して、さらに命があって初めて意味があるのだと。
そんな言葉が脳裏を過ぎって、ステアリングを握る手に汗が滲む。前方でバイクを傾けたニンジャが何かを放ると、10数メートル先を走る車の下でそれが爆ぜて、ハナムラが操るのと同じ車種の車が炎上しながら宙を舞った。
急ハンドルを切って、路上に開いた新鮮なクレーターを躱す。窓から身を乗り出した先輩が、怒声を響かせながらニンジャへと銃撃を仕掛けていたが、その声もそこで途切れていた。
ほんの一周時計の針を戻せば、笑い合いながら市民を脅し、タダ飯を食っていたところだったのに。どうしてこうなったのか、と答えの出ない問いを繰り返しながら、彼はアクセルを踏み続ける。
『……!?』
一瞬の後、異様な雰囲気を感じてステアリングを切る。脇に避けて道を譲った形だが、空いたその中央車線を、多脚の義体が凄まじい勢いで駆け抜けていった。
ニンジャか、と疑うもののそうではなかったらしい、その『歩行』に見境はなく、巻き込まれた前方のニンジャビークルが撥ね飛ばされ、乗っていた者はあえなく路面に転がった。
『アアアアアァ!!』
仲間の仇だ。その一瞬を焼き付けるように目を見開いて、ハナムラはアクセルを強く踏み込み、そのニンジャに向けて車を突進させた。
仇は取った。だが目的の場所はまだまだ先だ、車を止めぬままに、彼は前を向く。
後方からさらに異様な気配、猛スピードで迫るそれを感じ取ったのは、ここから少しだけ後の話。
あちこちが陥没し、車や街灯の残骸が転がり、今なおヤクザとニンジャを乗せた車両が潰し合っているこのハイウェイを、猟兵達が駆け抜けてくる。
久礼・紫草
【引き続きアルミィ殿と】
ぱんぱぁの上で敵を迎え撃つ
斬るのは進むの邪魔になるニンジャとヤクザ
民草に迷惑をかけるは赦し難き愚行よ
聞けばヤクザとやら、無辜の民を食いものにしているとの話、もはや容赦する必要なし
追い越しぶつかりに来たらその車に飛び移り斬首
振り落としは車体を掴み間髪入れず突き
落ちたら転がり下から突くまで
戦闘時は一般人を巻き込まぬよう充分注意
一般車両が巻き込まれるなら運転手は生かし車を一刀両断、その後ひっ捕まえた敵を斬る
敵の車から拾える武装はアルミィ殿へ「受け取ってくだされ」
運転しながら器用なことよ
眼前の敵が串刺しになったら礼を言う
人体なら引っ掴み新たな敵のフロントガラスに投げつけ進路妨害
アルミィ・キングフィッシャー
久礼・紫草(死草・f02788)と続けての『仕事』だ
とは言ってもこっちは運転に専念、って感じだけども。
…この車、明らかに狙われるよなあ、ある程度は爺さんに頼めるだろうが…
とりあえず凶鳥像でも投げて進路上の邪魔なデカいのは片付けてもらうか
つってもそれだけだとちと足りないだろうか
…爺さんなら、他の車の上に飛び乗って立ち回れるんじゃね?
ほらハッソウトビとかそういう技使う敵もいたし、あいつも剣士だったし
あとは爺さんを狙う敵がいたらクロスボウでタイヤとか撃ち抜いてやろう、できれば後ろから来るのとかの邪魔になるように
なんか他にこの車の中に使えそうな得物積んでないかねえ、火を吹くでかい筒とか
●危険運転
そこら中に戦闘痕が残るハイウェイを、アルミィの操る車両が駆け抜けていく。段差やら穴やらタイヤを取られそうなものは極力避けて走っているが、さすがにそれも限度がある。盗んだ車で走り出す感覚は悪くなかったが、この道自体の走り心地は最悪の部類だった。
「爺さん、この道揺れるけど――」
大丈夫か、と問いかけようとしてやっぱりやめる。走行中のバンパーに乗っかっている紫草は、この程度の揺れでどうこうなるタイプでもないだろう。
行く手の障害物――中でも突破するのが難しそうな類のものを見かけたところで、アルミィは咄嗟に『魔鉱の凶鳥像』を投げ放つ。すぐさま自立飛行を始めたそれは、戦闘に巻き込まれたらしいトレーラーの残骸を見事にぶっ飛ばした。
この調子ならば、『配達員』の背に追いつくのもそう遠くないだろう。
「とは言っても……明らかに狙われるよなあ、この車」
先の戦闘から、この車はロープで捕えたヤクザを市中引き回しにしたままである。周囲に他の車両がいないこの辺りなら大丈夫だが、ここから先はそうもいかない。
『居たぞ、あの車だ!』
『ひでェ真似しやがって……!』
やはり通信で連絡が入っていたのか、前方で同じ方向に向けて走っているヤクザの車が、明確にこちらを狙ってきた。
行く手を遮るようにブレーキを踏んできた車をハンドル操作で躱して、交戦中のニンジャのバイクに車のサイドをブチ当てる。そのまま逃げ切りを図ったアルミィだったが。
「数が多いな……!」
取り囲むように迫る複数台に、ついに捕まってしまう。密着しかけた車両のボディ同士が火花を散らし、隣の車の助手席から、ヤクザがこちらに銃を向けているのが見えた。
が、それが銃声を鳴らす前に、そのヤクザの右手がぶった斬られた。
『そんな、どこから……』『上だ、上に居るぞ!!』
接触のタイミングで車から車へ、屋根の上を飛び移っていたらしい。
「まじで飛び移れるんだ……?」
あの爺さんハッソウトビとかもできるんじゃないの? そんなアルミィの感想を他所に、紫草は刃を車体に突き立て、振り落とそうという動きに対応していた。
「聞けばヤクザとやら、無辜の民を食いものにしているとの話」
『はァ? それが一体――』
「ならば容赦はせん、ということだ」
そのまま斜めに走った紫草の刃は車両の屋根ごと中のヤクザを斬り裂いた。
周囲を取り囲み、威勢よく吠えていた車両から順に悲鳴が響く、高速走行する車両の外を跳び回る人間に、他の車両も何とか対処しようとしているようだが。
「まあ、それはさせないよ」
運転席の窓から片手を伸ばしてクロスボウを発射、隣の車のタイヤを撃ち抜き、紫草への体当たりを妨害する。制御を失った車は、そのまま後続を巻き込んで盛大にクラッシュした。
「かたじけない」
運転しながら器用なことよ、と感心しながら、彼は獲物を次々と仕留め――最後に、アルミィの車のバンパーへと着地の音が鳴る。
「ご苦労さん」
「アルミィ殿、ちなみに土産が」
ついでにバンパーに着地したのは、ぶった切られた機関銃の銃身だった。
「へ? ああ……あの車からぶんどってきたんだ」
車体に仕込まれていたそれを、先程威嚇するように撃っていたような気がする。
とはいえ銃身だけでは如何ともしがたい。「捨てていいよ」と声を掛けながら、アルミィは運転席のつまみやら何やらをガチャガチャと動かして。
「何やら窓のところで水芸が始まっておるが?」
「いやー、こっちの車両にも似たものが付いてるんじゃないかって――お?」
がこん、と音を立てて車体前方のパーツがスライドする。中から現れたのは、先程見たようなガトリングの砲身、つまりは当たりを引いたらしい。
「それじゃこっからは、こいつの出番ってことで」
前方に立ち塞がる敵車両に、轟音を上げて機関銃が斉射される。
どうせ人の金だし、打ち尽くしちゃっていいよね。気前の良い音色を奏でながら、ハイウェイのその先へ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
烏護・ハル
うっわぁ……。
ヤバそうな予感はしてたけど、ここまでとはね……。
UCで片脚を狐火に変化させたまま、最大推力で翔ぶよ。
補助のため、式神さんを一人肩に掴まらせとく。
止まらない事を最優先に、障害物や敵を躱しながら全速前進。こちらからは特に仕掛けない。
構ってる暇はないっての……!
ネコちゃんに用があんのよ、こっちは!
攻撃してきた敵や、ちょっとした飛来物程度は、風の盾を起動してシールドバッシュで弾き返すよ。
邪魔すんじゃないわよ、この!
爆発物、車両レベルの重量物が飛んできたら、流石に回避に専念。
躱しきれなきゃ、式神さんと共に高速多重詠唱。防御結界の構築でやり過ごす。
かっ飛ばすっていうのも、楽じゃないわね……!
●飛翔物体
途中まで盾にしていたヤクザのひとを放り投げて、ハルは速度を緩めぬままにハイウェイの上を飛翔する。狐火と化した片足をジェットエンジンの代わりにするその姿は、かつてミサイルと称する者も居たくらいだ。
空を飛ぶ彼女にはあまり関係のない話だが、絶え間ない戦いに苛まれた路面の状態は酷いを通り越した地獄の様相。「うっわぁ」と思わず声が出る。
「ヤバそうな予感はしてたけど、ここまでとはね……」
なりふり構っていられない、そんな事情が彼等にもあるのだろう。
とはいえ同情の余地はないし、助けてやる謂れもない、だがニンジャとヤクザ双方に喧嘩を売る形になった彼女は、しっかり両者から狙われることになっていた。
『撃ち落とせ!』
車両のルーフから顔を出したヤクザの下っ端が、フルオートの銃を乱射し始める。とはいえ双方の速度と軌道を考えれば、そんなものが当たるはずもない。「うるさいなあ」という程度で追い抜いていった彼女は、しかし後方で爆音に似た音を聞いて、思わず振り向いた。
「は?」
何でそんなもの積んでた? という疑問に答えは返ってこない。ただその代わりに、熱源目掛けて追尾する類のロケットが一発、こちらに向かって飛んでくる。
「式神さん、結界! 急いで!!」
もー無茶言わないでよ、くらいの反応で、彼女の肩に捕まっていた式神が補助を回し、ハルは防御結界を張って着弾に備えた。
炎と爆風、五感を引っ掻き回すそれが行き過ぎて――。
『無傷かよ!』『クソッ、一発切りだってのに!!』
なるほど、どうやら凌いだらしい、とハルが溜息を吐いたところに、爆煙を割って飛び込んでくる影が一つ、いや複数。タイミング悪く、今度はニンジャのお出ましである。
「邪魔すんじゃないわよ、この!」
咄嗟の動きで初撃を躱し、追撃のビームクナイに対しては迎撃するのではなく振り切る形で対処する。
「構ってる暇はないっての……!」
そのままおさらばしようとしたハルだが、ハイウェイの行く手が突如狭まる。変わった作りのビルの内側を駆け抜ける、という景観に重きを置いた場所のようだが、ニンジャ側はこの閉所を活かす構えだ。
逃がさない、とばかりに距離を詰めてきたバイクのニンジャを、彼女は展開した風の盾で迎え撃つ。
「邪魔すんじゃないわよ、この!」
目的のネコと、配達員の居場所まではもう少し。だが追い付くには、もう少しこの戦場を生き抜く必要がありそうだ。
大成功
🔵🔵🔵
オリバー・ハートフォード
ヒューッ、まだまだネコまでは遠いってのにハイウェイもかなりホットだな! このまま置いてかれちゃあ勿体無い、最高速度でかっ飛ばすぜ!
UCを発動して加速だ。あちこち障害物だらけだが、高速取締りで鍛えた〈操縦〉テクと〈追跡〉術で駆け抜けるぜ。邪魔な奴らには拳銃の〈乱れ撃ち〉でどいてもらうが、撃ってくるならショットガンでタイヤを〈部位破壊〉してやるサ。流れ弾なんかは黒色粒子でバイクやジャケットを〈硬化〉して突き進むぜ。
随分と大所帯でお出ましだが、パーティを始めるには日が高いんじゃねぇか? コイツはプレゼントだとっとけよ、ニンジャもヤクザも一昨日きやがれ!
(アドリブ連携負傷等々歓迎)
カルマ・ヴィローシャナ
|RS35マシンXX《V6ツインターボ》の咆哮を轟かせ、凸凹になったハイウェイを|疾駆《運転》する
って、こんな器物損壊放っておいて、ポリスは何やってんのよ!
……いや何もしない方がいいか、うん
スゴイヤバイ知り合いの姿が脳裏を過りつつアクセル全開
道が無いなら作ればいい、今までの様に!
|RIDE A TIME《救済の終末時計》!
自身が通る破壊された道を
これまで|破壊が無かった時まで巻き戻す《・・・・・・・・・・・・・・》!
ついでに光学迷彩で姿を隠した|遮導《ドローン》を展開して
障害も追撃も制圧射撃で吹っ飛ばす! 道を空けろー!
これでこの道を通れるのは私だけ
狙いはネコチャンを攫った迅雷運輸ただ一つ!
●交通整理
ヤクザとニンジャの争いは、ただただ激化の一途を辿っている。彼等には彼等なりの命を懸ける事情があり、ここが正念場……なのかもしれないが、まがりなりにも公共のハイウェイがズタボロになっているのはどうなのか。
|RS35マシンXX《V6ツインターボ》の咆哮を轟かせ、ハイウェイを疾走するカルマだが、この路面状態ではいまいちスピードが出し切れないわけで。
「こんな器物損壊放っておいて、ポリスは何やってんのよ!」
「すまねぇなァ、この時期はどこも立て込んでんだよ」
苛立ち紛れの一言、それに答えが返ってきたことに驚いて、そちらを振り向く。そこには丁度、白バイに乗った警官――オリバーが併走していた。
「骨になるくらい忙しいの……?」
「そういうこった、勘弁してやってくれ」
軽口に対して飄々と返しつつも、白バイは速度を維持している。弾痕に爆発痕に故障車両、障害物だらけの状態ではあるが、高速取り締まりで鍛えたオリバーにとっては走れないほどのことではない、ようだが。
「それじゃちょこっとだけお手伝いしてあげようかな!」
道がないなら作ればいい、の精神で、彼女はユーベルコードを展開する。
『救済の終末時計』、局所的に時間そのものに働きかけ、荒れ果てた路面を破壊が無かった時分の状態へと巻き戻していく。
かつては市民の生活を豊かにするために作られたのだろうか、それとも建設当時から|巨大企業群《メガコーポ》の利権まみれだったのか、それはもはや知りようもないが、上でヤクザとニンジャが暴れる前の路面はそれなりに綺麗に凪いでいた。
「さあ、道を空けろー!」
平らになった路面をタイヤが蹴り付け、カルマの車体がその真価を発揮する。一気に加速した彼女は、ついでにドローンを展開、それらの射撃で立ち塞がる連中を蹴散らすようにして、ハイウェイの彼方へと走り抜けていった。
そんなカルマの後方で、オリバーは「派手にやったもんだ」と苦笑していた。とはいえ、今回ばかりはない瞼を瞑っておいても良いだろう。
随分と走りやすくなったものだが、いくらか生き残りも居るようで、どうやらあまり楽はしていられないらしい。
「そこの車両、脇に寄せて停車しなさい――ってなァ!」
そんなもの聞くわけないのはわかっている。だがこの状況下で取り締まりに来る者が居るとは思わなかったのだろう、面食らった様子のヤクザ達は、すぐさま『引っ込め』だの『邪魔をするな』だのとわめきながら銃撃を仕掛けてくる。でたらめに発射された銃弾は、それでもなおオリバーの身体を捉えるが、その悉くが身体の表面で弾き飛ばされた。
『は?』
「歓迎ありがとよ! だがパーティ始めるには日が高いんじゃねぇか?」
彼の身体をなぞる|謎の暗黒物質《ダーク・マター》が硬化し、即席の装甲となってオリバー自身と車体を守る。そのまま速度を上げてヤクザ車両に追いついた彼は、拳銃を乱射して攻撃手の腕をぶち抜く。ついでに銃弾塗れの車を蹴り付けて、側道へと押し出した。
「そのまま帰って寝てな!」
減速、停車した車はあっという間に視界のから消えていく。だが代わりに見えてきたのは、高速バイクを駆るニンジャ達だ。
――こっちは普通に帰ってくれそうにねえな、そう考えたオリバーはショットガンを手に取る。
馬鹿正直に全てを相手にしてはいられない、タイヤをぶち抜くことでさっさと戦線離脱させることを狙って、それを構えた。
「コイツはプレゼントだとっとけよ、一昨日きやがれ!」
銃火また、ハイウェイの上を彩る。
街中を血管のように伸びた高架道路の中の一本、戦場と化したその道筋は、やがて一つのビルの前へと辿り着く。
一帯を睥睨するように建てられた高層建築、一般人には近寄り難い高級感あふれるそこは、今まさに荒廃していく真っただ中にあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ジンライ・ウォーカー』
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POW : ブルータル・ウォーキング
単純で重い【義体化脚部】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : アンチトラフィックジャム・メソッド
自分の体を【周囲に構わず突撃させる】させる攻撃で、近接範囲内の全員にダメージと【転倒】の状態異常を与える。
WIZ : ブラックワーク・オーバードーズ
【休憩なしでの連続勤務】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠高峰・勇人」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●迅雷運輸『配達員』No.405ーZ3
徹夜明けの眼に朝日が沁みる。
配達物であるネコを詰め込んだ特製運搬ボックスを抱えた彼女は、多脚の義体で地を駆けながら、向かう先の高層ビルを見上げた。
元々下層住まいであった彼女からすると、聳え立つ尖塔は歪な虫の住処に見える。多数の兵隊を抱えるその巣は、今まさに他種の虫から襲撃を受けているところだった。
ビルの周囲には個人用のジェットパックやらカイト型の飛行装置やらでニンジャが飛び交い、食い破る隙を窺っている。一方のヤクザも『巣』に据え付けた迎撃装置を起動し、機関砲やらミサイルやらでそれを追い払おうとしている。
羽音がうるさいな、という感想を捨て置いて、『配達員』は届け先の現在地を本部に問い合わせる。ほどなく、タテノハ組の長はペントハウス辺りの自室に居ることがわかった。
「お届け物です」
抱えていたボックスを前面に押し出し、機関銃の雨から身を守りながら、彼女はビルへと飛び込む。
迅雷運輸の運搬ボックスは提携している兵器企業の素材を回してもらっているため、砲弾くらいまでならびくともしない。ついでに中身には耐振動耐回転の特殊機構がどうのこうのと言われていたが、その辺は|『配達員』《使い走り》にはよくわからない。何にせよ我が命よりも重い届け物は、その分厳重に保護されているということだろう。
強化ガラスを突き破ったところ、制止の声を上げていたスーツのヤクザを踏み潰していた。この調子だと、品物は本人の所まで直接届ける必要がありそうだ。
ビル内は既にニンジャの侵入を許しているらしく、そこかしこから銃声が聞こえる。
エレベーターは使えそうだが、いつ止まるかわからない。階段を使うか、エレベーターのシャフトを上るか、あまり外には出たくないが外壁を登るという手もある。
ルートを考えるよりも先に、義体の脚部を蠢かせ、『配達員』は仕事にかかった。
●猟兵達
ハイウェイを駆ける有象無象を蹴散らした彼等は、駆け付けようとしていたニンジャとヤクザの援軍達よりも先に、戦場の中心に辿り着くことになった。今回の目標であるオーガニックのネコ……そしてそれを連れ去った『配達員』の背も、もはや目前まで迫っている。
一足早くビルの中に飛び込んだ『配達員』を追って、一行もそれぞれの手段で抗争の場へと踏み込んでいった。
アルミィ・キングフィッシャー
久礼・紫草(死草・f02788)と、できれば他の奴の手も欲しい
爺さんは輩を下から切り捨てに行くだろうから、アタシは空気交換の管の中を登って上から猫の受け取り手を抑えて、あの鉄雲女の仕事を妨害しよう
ある程度戦えるだろうが屋上へ向かうルートに罠を仕掛けてあえて逃がして網の罠で身柄を確保
どうせヘリポートみたいなのがあるんだろうから、そこで敵と交渉して時間稼ぎだ
「待ちな、ここでこいつが死んだらお前の仕事は終わりだろ?」
「猫をそこに置きな、そうした考えてやる」
ま、全部フカシだけど
どっかで襲って来るだろうから、油の広がる罠を前に仕掛けて置くよ、滑りな
あとは爺さん達と合流して終わらせる、油に火でもつけるか
久礼・紫草
【アルミィ殿と】
おおぅアルミィ殿とはぐれてしまったわい
然し
此処まで来たならば儂の成すべき事は一つであろろう
変わらず奴らめを斬り捨てる
アルミィ他の猟兵が配達員へ向かえるよう
|ニンジャとヤクザ《奴ら》を抑える
奴らぶった斬り極力多くを階段へ置いたてる
踊り場に押し込んだ所で下り階段へ剣刃一閃、退路を断つ
落ちる階段を蹴り上側の階段へ着地
すかさず敵を斬り刻む
数を減らしたら上側階段も剣刃一閃で切断
抗争組を減らしたら
階段を落としながら屋上へ
「若い者が命を無駄にするではないぞ」
アルミィ殿の説得に真実味を増す為
庇い叩きつけられた脚を切断
取引にのるまで繰り返す
剛力をくらうとひとたまりもないわい、動きを見切り斬り返す
カルマ・ヴィローシャナ
ヴァイオレットシティにいた奴と同型?
だったらジッサイ厄介ね……早くネコチャン助けてあげないと!
ビル内の端末を早業でハッキングして状況を確認し仲間にも共有
配達員を発見したら陽動開始
光学迷彩で隠蔽した|遮導《ドローン》をエレベーターに展開
遠隔操作でドアが開くと同時に制圧射撃!
敵を引き付ける囮にするよ
そしたら私は階段ダッシュ! したくないけど!
対象を見つけたらまずアイサツ
ドーモ、ジンライ=サン
カルマちゃん参上! カイシャク仕るッ!
|年末進行《ブラックワーク》でガンギマリの配達員
挑発すればすぐに乗って来る筈
そこに功夫で|カラテを流し込む《終末を刻む秒針》!!
|動きを止めて《強制休憩》ネコチャン救出よ!
烏護・ハル
突っ込んでったのは見えたけど、どの辺にいるんだろ……。
式神さん。配達員の居場所、探ってくれる?
位置がわかれば、後は道を作るだけ。
高速詠唱で特大、高純度の呪殺弾形成。
天井や壁を貫通できる程に魔力を練り上げ、割り出した方角へ向けて発射。
どんどん進んでくわよー。レッツ陰陽術。
接敵できたら、体表に防御結界、拳に呪詛と電気属性の魔力を纏う。
防御は最小限。
生身には呪詛、義体には電撃。UCの連続コンボを叩き込む。
追撃に追撃を重ね、とりあえず脚部の一本や二本ベッコベコにできれば。
正直、そのネコちゃんの重要性、イマイチ分かんないけど!
そんな狭いトコに押し込めるなんて可哀想でしょ!
さっさとネコちゃんを離しなさい!
●地上階から続く階段
広告料でも取っているのか、スクリーンと化したビルの外壁には、様々な企業の広告や動画が流れている。もっとも、今回の襲撃と突入によって、それは歪み、虫食いだらけになっているようだが。
そんな穴の一つ、『配達員』が突っ込んでいった大穴を潜って、カルマはビルの内部に侵入する。怒号と銃声、光学兵器が空気を灼く音色、ある種聞き慣れたそれらが響く中、彼女は手近な端末に接続してハッキングを仕掛ける。警備機構など掌握に時間がかかりそうなものは後回し、まず必要なのは情報である。
まだ稼働している監視カメラに手を伸ばして、リアルタイムの映像をこちらに送らせる。激闘と惨劇、各所の争いで情報量が無闇に多いが、彼女は程なく目的のものを発見した。ヤクザともニンジャとも違う企業ロゴ入りのユニフォームの女、コンテナを担いだ彼女が件の『配達員』で間違いないだろう。
「ヴァイオレットシティにいた奴と同型?」
下半身を丸ごと換装した馬鹿でかい義体に、パワードスーツじみた保護具、その特徴的な姿には見覚えがあった。義体を含めた本人のスペックは高いが、即死技や搦め手など、事前対策が必要な能力は持っていない――こと戦闘に当たってはやりやすい相手だと言って良いだろう。
「でも今回みたいなケースだと……厄介かもね」
一抹の嫌な予感を覚えつつ、カルマは敵の現在地点を仲間と共有できるようにして、目の前の問題……つまりは階段と向き合った。
「これ上らないとダメ……?」
敵の現在地を考えるとうんざりしてくるが、追う側である以上それしかないだろう。覚悟を決めた彼女は、身軽な体を活かし、数段飛ばしで階段を駆け上がっていった。
『配達員』が刻んでいったであろう、深く突き刺したような足跡を追えば、同じように侵入者を追っているヤクザと、さらにそれを狙うニンジャが幾人も姿を見せる。
「ああもう、邪魔なんだけど!」
関係ない殺し合いから身を躱しながらさらに上へ。だがその姿は、やはりその連中の眼にも止まってしまう。
『ニンジャだ! そっち行ったぞ!』『オヤジの所には行かせねェ――!』
別にそういうつもりはないんだけど。とかそういう言い分は聞いてくれそうもない、身構えるカルマだが、代わりの剣風が、その障害物を薙いでいった。
「ふむ、アルミィ殿が居るかと思ったが……」
違ったなぁ、というのんびりとした呟きの後に、紫草の刃によって裂かれたヤクザがゆっくりと倒れる。そのまま駆け抜けていったカルマの姿を一瞥して見送り、紫草はその場でもう一度刃を振るった。
ここまで同行してきたアルミィとは逸れてしまったようだが、先程の者と同様、彼女も上に向かっているはず。となれば、紫草のやることは一つだった。
階段そのものが両断されて、一部区画が崩れ落ちる。下からの追手を断ち、上の者の退路を断つ。
「ここは行き止まりじゃ。迂回も出来んから、お主等は諦めよ」
この場で行われている『抗争』が上の仕事に影響を及ぼす前に、邪魔者を極力減らしておく。そう決めた彼の刃は容赦なく、区別なく、居合わせたニンジャとヤクザへと向けられた。
『ふざけんな!』『何者か知らぬが、我等の邪魔をするなら――』
剣風が吹き荒び、周囲を見飽きた血の色で染めていく。
●中層エレベーターホール
お届けするべき荷物を抱えた『配達員』は、蟻を思わせるその脚を鳴らして、ビル内を進む。ヤクザ側が守りを破られ、ニンジャの侵入の許したか、抗争の激化した階段の状況を察した彼女は、別の道を模索して中層階を歩いていた。企業のオペレーターから連絡を受け、エレベーターシャフトを目指していたようだが、そこで「ぽーん」という軽やかな電子音が響く。
エレベーターの到着を知らせるその音と共に開く扉。だが開いたそこにエレベーターキャビンはなく、上下に通じる深い穴だけが口を開けていた。
『――!』
否、そこには光学迷彩で姿を隠蔽したカルマの|遮導《ドローン》が居る。咄嗟にコンテナを掲げたそこに、ドローンからの一斉射撃が見舞われる。そのまま後退した『配達員』は、反撃に出るか別ルートを探るかの選択を迫られるが、それを吟味する前に、床に大穴が空いた。
「あ! 居たわよ式神さん!」
下から上がってきたのは、呪殺弾でその大穴を形作った猟兵、ハルだ。推進力にしていた片足の狐火を解いて、彼女は敵の前へと切り込む。
陰陽術とは先手必勝、たしか師匠もそう言っていたような気がする。式神さんに確認は取ってないけどたぶん。
「そんな狭いトコに押し込めるなんて可哀想でしょ! さっさとネコちゃんを離しなさい!」
初撃はともかく思い切りよく、真っ直ぐに放った拳に対し、『配達員』は腕を上げて防御姿勢を取る。呪詛による強化を乗せた拳がその身を穿つが、しかし『配達員』はそのまま怯まず反撃に出た。防御は最低限に、一気に敵を押し切る――その姿勢はどうやら両者共通らしい。
振り下ろされる義体の脚、重量感からしてまともに喰らえばまずいと判断したハルが身を捻った所に、その『一歩』は突き刺さり、ただでさえ大穴の開いていた床に罅を入れる。ハルは掌に電気属性の魔力を纏わせ、その脚部を掴もうとするが、そこで彼女の周りの床が崩落した。
咄嗟に飛行したハルに対し、『配達員』は重い音を立てて一階したの床に落下する。そこには丁度、階段を駆け上がってきたカルマの姿があった。
「ドーモ、ジンライ=サン。カルマちゃん参上! カイシャク仕るッ!」
名乗りとその姿からするとニンジャの仲間だろうか、何にせよこれまで踏み潰し、蹴散らしてきた相手とは違う。そう判断したのであろう『配達員』は、おもむろに側面の窓にコンテナを叩きつけた。
「ああ! やっぱり!?」
ぶち開けた穴から外壁へ、『配達員』は躊躇なく迂回を選ぶ。やっぱり厄介なことになった、と嘆くカルマに先だって、ハルが外壁部分へと飛び出していった。
「ちょっと! 待ちなさいよ! ネコちゃん返せー!」
カルマが予感したように、このタイプの敵は戦闘以外に優先事項がある場合に面倒くさいことになる。|迅雷運輸の歩行配達員《ジンライ・ウォーカー》は移動に特化しており――平たく言えば、逃げ足がめちゃめちゃに速い。足を止めさせるにはそれなりの手が要るだろう。
●屋上ヘリポート
追手の攻撃と周囲の抗争の流れ弾、それらをコースを変えて、時に強引に突破しながら、『配達員』はどうにか屋上に辿り着いた。
オペレーターからの連絡によると、そこには荷物の受け取り手であるタテノハ組の組長が居るはずだった。恐らくはこの窮地から脱出を図って、何か特殊な乗り物に逃げ込んでいる――という彼女の予想に反して、組長はロープでぐるぐる巻きにされた状態で転がされていた。
何故、と聞きたくなるところだが、『配達員』にとってその辺りはどうでもいいと思い直したのか、担いでいた荷物をそちらへと向ける。
「待ちな、ここでこいつが死んだらお前の仕事は終わりだろ?」
が、組長と共に居たもう一人、アルミィが組長の首元へと短剣を突きつけていた。
ビルへの侵入直後から、邪魔者の居ない通気口をひたすら上っていた彼女は、他の猟兵達は敵の気を引いてくれている間に、先回りすることに成功していた。最上階まで来た彼女は、部屋を出た組長を罠にかけて拘束し、こうして待ち構えていたのだ。
そんなアルミィの言葉に、『配達員』の足が止まる。確かに彼女の言う通り、受け取り手が死んでしまえばこの配達任務自体がご破産である。
「猫をそこに置きな、そうしたら考えてやる」
実際のところアルミィの画策したこの状況は絶妙なところを突いていた。『配達員』からすれば客先の問題なぞ業務範囲外なのだが、ここまでの仕事が徒労に終わるというのも抵抗がある。さらに言うなら『まだ生かされている』以上配達契約は未だ有効なので、ネコを攫ってバックレることもできない。
ただ『配達員』がどの選択を取るにしろ、ネコを解放するという線はほぼないだろう、ゆえにアルミィが狙った内の一つは、時間稼ぎだ。
「若い者が命を無駄にするではないぞ」
屋上と階段を繋ぐドアが開いて、紫草が姿を現す。外壁部からは、ハルとカルマが追い付いていた。
目の下に濃い隈を浮かべた『配達員』は、眉根を寄せて表情を歪める。時間が彼女に味方することは無い、そう悟ったのだろう。ならば、と地を蹴り彼女は進む。受取人がそれで殺されたならその時で、そうでなければ邪魔者を踏み潰すまで。
だがその反応こそが、アルミィのもう一つの狙い。決断し仕掛けているように見えるが、それは焦れただけの散漫な攻撃に過ぎない。
そんなものに屈する者はここにはいない。踏み込む一歩は空を切り、アルミィがそこで仕込んでいた罠――敵の足元の油に火を付ける。熱と光に五感が鈍ったそこで、ハルの拳が電撃を伴い義体を打って、その動きを止める。硬直したそこには、カルマのカラテ――『終末を刻む秒針』が撃ち込まれていた。ほんの一瞬、彼女の意識が暗転する――。
「少しは眠れたかしら?」
そう、これが介錯というもの。一瞬意識を飛ばしたことで、徹夜から続いていた『配達員』の集中は途切れてしまった。
精彩を欠いたそこを、紫草の刃が一閃、前方の二本の脚を両断した。
『あ』
配達員が、驚きに目を丸くする。散漫な意識の中で咄嗟に防御に回した配達物のコンテナが、脚と一緒に両断されていた。
封が空いてネコが飛び出し、驚きに毛を逆立たせる。同時に、配達ボックスに同封されていたメッセージが再生され始めた。
『メリークリスマス! あなたへの感謝と愛を込めて素敵なプレゼントを用意したの。あなたが私の人生にもたらしてくれる喜びや温もりは、かけがえのないものだけど――』
場違い極まりない送り主の声が、一方的に流れ出す。
配達員と猟兵、咄嗟は両者に腕を伸ばす。空中でネコをキャッチしたカルマとは逆に、ハルの攻撃を受けた『配達員』は、バランスを崩して屋上の外へと飛び出していた。
伸ばした腕は届かず、頼みの脚は半ばがボコボコに歪められ、一部は両断されて残っていない。状況を悟った『配達員』は、ただ本部へのチャンネルを開いて。
「報告します。|脚部義体《ジンライ・ウォーカー》に重大な損傷、業務続行不可能――」
回収を、というところまで聞こえただろうか。そのまま真っ逆さまに、『配達員』はビルの屋上から落下していった。
『――だからあなたには、このネコを贈るわ。かわいがってね!』
他人のネコを強奪させたとは思えない、図々しくも甘ったるいメッセージの再生が終わって、にゃあ、とネコが一声鳴いた。
落ちていった『配達員』は中層や下層で起きている戦いの爆煙の中へ消えて、戻ってくるような気配はない。何にせよ、目的のネコを取り返した以上、任務は成功したと言っていいだろう。
「でも、この子の何がそんなに重要なの?」
「さあ……?」
他の世界ではよく見かける、一般的な猫の姿を見降ろして、彼女等はそう首を傾げる。まあ何かしら理屈なり仕掛けなりはあるのだろうが、その辺りはきっと依頼主側の領分だ。
確保したネコを囲んでどうのうこうのとしている猟兵達に、そこで忘れ去られていた組長が、簀巻きで転がされた状態のまま声を掛ける。
『待てよお前ら! 俺を……どうにかしにきたんじゃねえのか?』
殺すとか、助けて恩を売るとか。それに大して、アルミィは首を傾げて返した。
「……いや、べつに?」
抗争は未だ終わっていないし、この場にはまだまだ援軍が来ると思われる。いつまで、そしてどの規模までやるのか知らないが、その件について猟兵達は『ただの通りすがり』だ。関わる必要はないだろう。
「それじゃ、今の内に帰りましょうか」
「ふむ、階段は道中で粗方斬り落としたが」
「何やってんの爺さん」
一時の静寂を享受するように、そんな軽口を交わして。任務を果たした猟兵達は帰途に就いた。
大成功
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