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メリークリスマス・イン・ゴッドゲームオンライン

#ゴッドゲームオンライン #挿絵

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#挿絵


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●クリぼっちとは言わせねえ
「ねえみんな、今年のクリスマスって何か予定あるかしら?」
 グリモアベースの一角で、尋ねる相手によっては地雷にもなりかねない発言をしたミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)は、妙に浮かれた格好をしていた。
「予定がある人はそっち優先でいいんだけど、もしも力を貸してくれるならゴッドゲームオンラインのクリスマス限定イベントで起きる事件を解決してきて欲しいの」
 クリスマス限定イベントで事件? どういうことだろうか。
「クリスマスだけじゃなくて、季節限定のイベントクエストって基本的には難易度がそんなに高くない、カジュアルにクリアできる易しい内容なんだけど……」
 ちなみにクリスマスクエストのクリア報酬は|コレ《・・》ね、と言いながら、ミネルバは自身が身にまとったサンタクロースモチーフの衣装の裾をつまんでその場で一回転。
「デザインこそ初期装備の使い回しだけど、初期レベルから装備できて、クリスマスイベント期間中は防御力が最大値まで上がるっていう結構実用的なアイテムなのよね」
 で、と一区切りしながら、ミネルバは中空にホロビジョンを同時に二枚展開する。
 一枚目には煌びやかな街並み、二枚目には半身が白と黒に分かれた男性の姿がそれぞれ映し出されていた。
「クエストを受注できるのは『レーシュ』っていう名前の結構大きな街ね。そこの中央広場にある噴水近くにサンタさんの衣装を着てるNPCがいるから、話しかけるとクエストスタートと同時に『おためし』ってことで同じサンタ装備が渡されるわ」
 ミネルバ曰く、その装備はクエストをクリアすることで正式に入手することが可能となるため、手に入れただけでは好きなデザインに変更するなどの強化や処分するための売却はできないとのこと。
 その代わり、おためしとはいえイベント期間中最強装備になるという特攻性能は健在らしく、装備しておくに越したことはないらしい。
「ここからが本題ね、イベント限定装備を正式に手に入れるためにはフィールドに出て、モンスターも出てくる特別なクエストをクリアしないといけないんだけど、それをバグプロトコルがまるっと乗っ取っちゃったのよ」
 それがコイツ、と言いながら、ミネルバは二枚目のホロビジョンをコツコツ叩く仕草をしてみせた。
「元々は貴族のNPCだったんだけど、バグプロトコル化しちゃってね。無駄に高いステータスの暴力で、誰彼構わず襲いかかるようになっちゃって」
 プレイヤーが大挙する期間限定イベントに目を付けて、バグの嵐で一網打尽にしようという目論見は実に合理的で理解できなくもないが、到底看過できるものではない。
「最初のエリアからしてもうバグり倒してるみたいだから、気をつけてね。本来ならほんわかお使いストーリーにちょっと戦闘があるよ程度のクエストだったのに、どうしてこうなったって感じよ、ホント」

 話をまとめると、ゴッドゲームオンラインの世界で催されているクリスマス限定のイベントクエストがバグプロトコルに乗っ取られてしまったので、イベント特攻のサンタ服を装備した上でこれを完全攻略して、元の平和なイベントクエストに戻してきて欲しいということになる。

「無事に事件が片付いたら、レーシュの街でクリスマスの雰囲気を楽しんできてもいいんじゃないかしら? 一般プレイヤーの大多数は|統制機構《コントロール》のせいでクリスマスだって好きに楽しめないでいるかも知れないし、せめてゲームの世界の中でくらい好きにやりたいじゃない」
 みんなだって、その輪の中に入っていったっていいはずよ。
 ミネルバはそう言うと、雪花のグリモアを輝かせる。
「それじゃ、よろしくお願いするわね。死なない程度に頑張って頂戴な」
 彼女なりの激励と共に、猟兵たちはゴッドゲームオンラインの世界へと転移していく――。


かやぬま
 クリスマスは毎年やって来るとしても、今年のクリスマスは一度きりなんだよ!(迫真)
 特にネトゲのアイテムってそういう……ほら、期間限定って大事じゃないですか……。
 という訳でかやぬまです、よろしくお願い致します。

●章構成
 第1章:集団戦『クリスマス台無し男』。
 ご覧の通り、クリスマスイベントをことごとく台無しにしてくるバグプロトコルです。何故か分裂します。
 幸せそうなお子様やカップルに嫉妬して、本物のサンタさんからプレゼントを盗んだという設定です。
 クリスマス限定クエストのフィールドは、今やこいつらがわらわらと闊歩するめちゃくちゃな状態となってしまいました。まずはこいつらを蹴散らしましょう。

 第2章:ボス戦『バグ・ノーブル』。
 今回のイベントシナリオバグ化の元凶です、全力で倒しましょう。
 注意点としては、ボス戦のフィールドには『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』が仕込まれており、これお祭りクエストに搭載する強さのギミックじゃないだろ的な凶悪さで戦闘の妨げをしてきますので、これの対処もしなければなりません。
 ちなみに当シナリオでの|終末機構群《エンドコンテンツギミック》は『範囲内極大ダメージ』となります。
 発動条件は『召喚系ユーベルコードの使用』、具体的な範囲は『直線範囲』ということが分かっていますので、ご注意下さい。
 このギミックはバグ・ノーブルも例外なく対象となるため、猟兵の皆様が上手に立ち回れば勝手に極大ダメージを負ってくれる可能性もありますので、参考にしてみて下さい。

 第3章:日常『煌めく街灯り』。
 バグプロトコルを一掃し、クエストもクリアして限定アイテムを正式にゲット! これにて一件落着です。
 サンタ装備はお好みのデザインに加工(強化)しても良し、記念に取っておいても良し。
 せっかくだからと装備したままクリスマス気分を堪能しても良いと思います。過ごし方は自由です。
 この章に限り、グリモア猟兵のミネルバがバグの影響が残されていないかのチェックを兼ねて街に滞在していますので、プレイングでお声掛けいただければ顔を出すことが可能です。

●プレイングボーナス
 全章通して『クリスマス限定装備』を身につけた状態で参加する。

●プレイング受付について
 断章投稿後、タグとMSページで受付期間を設けて運営させて下さい。
 合わせて、プレイング送信前にMSページもご一読いただけますと幸いです(アドリブ歓迎や合わせ希望の際の説明書きも含まれています)。
 運営はゆっくりめ、完結は年を越してしまう可能性が高いです、ご容赦下さい。

 それでは、よろしくお願い致します!
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第1章 集団戦 『クリスマス台無し男』

POW   :    そんなにプレゼントが欲しいならくれてやるよ!
着弾点からレベルm半径内を爆破する【バグ化プレゼント爆弾】を放つ。着弾後、範囲内に【様々な状態異常を与えるバグ化した炎】が現れ継続ダメージを与える。
SPD   :    なんだ?オマエもプレゼントが欲しいのか?
対象への質問と共に、【背負った袋の中】から【バグ化プレゼントを持った悪人面のサンタ】を召喚する。満足な答えを得るまで、バグ化プレゼントを持った悪人面のサンタは対象を【バグ化プレゼントやダイナマイト】で攻撃する。
WIZ   :    おい、プレゼント用にオマエの大事なものを寄越せ!
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【|遺伝子番号《ジーンアカウント》を奪い】、否定したら【必中のバグ化プレゼント爆弾攻撃を受け】、理解不能なら【プレゼント用に全ての装備】を奪う。

イラスト:聖マサル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●本当に台無しにするやつがあるか
 グリモア猟兵の説明通りに、レーシュの街でクエストを受注するまでは良かった。噂の限定装備も無事(仮ではあるが)入手することができた。
 だが、いざクリスマス限定クエストを攻略するべく街の外のフィールドに出た猟兵たちを待ち受けていたのは、到底クエストとは呼べないバグの嵐であった。
 指定されたマップに足を踏み入れた途端、周囲の景色にノイズが走り、色彩も極彩色に変化し、とにもかくにも視認性が悪いどころかもう通常の景色とは言えない。

「縺ゥ縺?@縺セ縺励g縺??繧ッ繝ェ繧ケ繝槭せ繧定ソ弱∴繧九◆繧√↓縺ッ縺ゅ?繧「繧、繝?Β縺悟ソ?ヲ√↑縺ョ縺ォ窶ヲ窶ヲ」

 クエストを進めるために話しかけなければならないNPCもこの有様、会話ができなければストーリーを進めることもままならない。
 明らかに異常をきたしたクエストだと分かったところで、さらに追い打ちをかけるように変なバグプロトコルが猟兵たちの前に立ちはだかる!
『何がクリスマスだ! 俺はクリスマス台無し男、その名にかけて徹底的にクリスマス限定クエストを邪魔してやるぜ!』
 うーんこの分かりやすい悪役。倒していい? どうぞどうぞ!
神臣・薙人
×

初めての世界…
緊張しますが
一般プレイヤーの皆さんのためにも頑張らないといけませんね

あまり似合わないと思いますが
クリスマス限定装備を着用して
早速フィールドへ
悪夢みたいな景色ですね
なんで増えるんでしょうか
取り敢えず倒しましょう

敵が射程に入った段階で
桜花燐光撃を使用
蟲笛で白燐蟲を呼び出し
1体でも多くの敵に傷を付け
刻印を刻みます
成功すれば敵が射程から外れないよう
適宜立ち位置を調節
まだ刻印を刻んでいない敵がいれば
改めて攻撃を
UCの効果中も白燐蟲で追い打ちをかけるようにします

要求は拒否
貴方に渡すものなどありません
爆弾は白燐蟲をけしかせて空中で爆破させるか
蟲笛で弾いて軌道を逸らし
直撃を受けないようにします



●ホワイト・クリスマス
 普段はシルバーレイン世界で暮らす神臣・薙人(落花幻夢・f35429)がゴッドゲームオンラインの世界に降り立つのは、今回が初めてのことであった。
 昔々のその昔、オンラインゲームに関わったことがあったような気がしないでもないけれど、どのみちあの頃とは勝手が違う。何しろ、今回は生身でゲームの世界にダイブしているのだから。
(「初めての世界……緊張しますが、一般プレイヤーの皆さんのためにも頑張らないといけませんね」)
 クリスマス限定クエストに浮かれるよりも先に、今目の前で起きている|事件《バグ》を解決することに意識を向ける薙人は、常通り真面目である。うーん頼もしい。

 クエストを受注した際に受け取ったサンタ衣装ともいうクリスマス限定装備は、普段あまり派手な色合いの服を着用しない薙人としては「あまり似合わないと思う」という予感を抱いていたものの、いざ着用――不思議なことに『装備しよう』と頭で考えた瞬間身に纏っていたのだが――してみたら、首までもこもこで案外悪くない。
 何より、想像以上に暖かい。寒がりここに極まれりといった薙人にとっては非常に重要なポイントだった。サンタの帽子も、頭部の桜の枝を避けてなおしっかりとかぶれるあたりが有難い。恐らく、装備品の方が着用者の方に合わせてくれる便利仕様なのだろう。

 ちょっと気分が上がったところで、早速薙人はクエストで指定されたフィールドへ向かう。向かった。足を踏み入れた。――うわあ、これはひどい。
「悪夢みたいな景色ですね……」
 それはまさに|悪夢《ナイトメア》、見たくもない幻覚のような有様だった。
 さらに、バグプロトコルと化した倒すべき敵である『クリスマス台無し男』が、一体のみならず複数わらわらとあたりを徘徊しているものだから、まさに地獄絵図である。
「なんで増えるんでしょうか」
 薙人の口から純粋な疑問が飛び出す。ホントに何でなんでしょうね?
「取り敢えず、倒しましょう」
 そう、取るべき行動はただ一つ。相手がオブリビオンだというのならば、倒すのみ!

『おい、プレゼント用にオマエの大事なものを寄越せ!』
 何たる突然の横暴! 出会い頭に言う台詞じゃない! さすが悪役!
 我らが薙人さんがこんな狼藉に屈するはずもなく、毅然とした態度で言い返す。
「貴方に渡すものはありません」
『何っ!? オレたちに刃向かうというならこいつをプレゼントしてやる!』
 あっ何かくれるんだと思いきや、ノイズまみれのプレゼントボックスを手にした袋から取り出し、クリスマス台無し男はそれを薙人目がけて投げつけてきた。とんでもねえな!
「爆弾……? 渡すものもなければ貰うものもありません、お覚悟を」
 薙人は素早く愛用の蟲笛を口に当て、吹き鳴らす。すると、丸くてころころな白燐蟲「残花」たちがワッと群れをなして飛び出して、飛来したプレゼントという名の爆弾を空中で爆破させていく。
『むむっ、小癪なヤツ! プレゼントはまだまだあるぞ!』
「ですから、不要ですと先程から……」
 最短距離で飛んできたプレゼント爆弾を、薙人は直接蟲笛で打ち弾いて軌道をそらし明後日の方向へと受け流す。
「……言っているでしょう」
 そう、必中とは言っても必ずしも『狙った相手に必ず当たる』とまでは言っていない。
 白燐蟲や蟲笛にさえ当ててしまえば、薙人本人は無事で済むのだ。

「今度はこちらの番です」
 言葉短かに、薙人が鋭い眼光でクリスマス台無し男を睨んだ。
 同時に、主の意を汲んだ白燐蟲たちがいっせいに動く!
「【|桜花燐光撃《オウカリンコウゲキ》】、発動」
 薙人にプレゼントをぶつけようと、クリスマス台無し男たちは逆に薙人の攻撃の間合いに完全に踏み込んでいた。そこへ、薙人の反撃が始まる!

 ~~♪

 美しい音色を奏でる蟲笛に導かれるように残花が舞い踊り、迫り来ていたクリスマス台無し男たちに消えない桜花の刻印を刻み込んでいく。
『な、何だ!? この妙な刻印は!』
 異変に気付いたクリスマス台無し男たちが刻まれた刻印のあたりをはたいて落とそうと試みるが、そんなことでは当然消えるわけもなく。
 そこへ刻印を目印に白燐蟲たちが次々と食らいついていき、クリスマス台無し男たちを一体一体確実にノイズへと還していく。
『皆ァ! あの白い蟲に当たるなァ!』
『もう遅い……オレはもう駄目だ……』
 ひとところに留まらず、立ち位置を変えて攻撃範囲を広げて群がるクリスマス台無し男たちを目視できる限り刻印で捕らえた薙人は、白燐蟲に喰われて消えていくバグプロトコルたちを確認しながら、呟いた。
「私からのプレゼントは受け取ってもらえたようで、何よりです」

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
早速NPCさんに話しかけてクエストを始めましょう。
ふふ。実はサンタ衣装にはあこがれがあったんですよね。
さすがに二十歳も過ぎましたしそういった服は着れないかなって、そして10代の頃はそれどころではなかったので。
ですがここはゲームの世界。老若男女、誰が着ても許される世界たぶん
頑張ってクリアしましょう。

白銀を召喚、その機動力を生かして敵の攻撃を回避していきます。回避しきれないものは青月で当たる前に破壊してしまします。ダイナマイトなら導火線を切ってしまえば。
あとはその隙を縫って接近し攻撃します。
申し訳ありませんが貴方のような人からはまったく欲しくありません。
絶対何かしら他(悪)意がありますでしょう?



●あこがれ・クリスマス
 煌びやかな装飾に包まれたレーシュの街。
 予知で告げられた通り、中央広場にある噴水のそばに、サンタ衣装の|NPC《ノンプレイヤーキャラクター》が佇んでいるのを夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は確認した。
「……という訳で、クリスマスの準備には近くの森の中にある……」
 早速話しかけると、NPCのお約束通りテンプレート通りの台詞をスラスラとしゃべり始め、最後に「それじゃ、よろしくね!」という言葉と共にイベント限定アイテム――サンタ衣装を渡してくれた。
「……ふふ」
 受け取ったサンタ衣装に視線を落とし、人知れず微笑みをこぼす藍。
(「実は、サンタ衣装にはあこがれがあったんですよね」)
 さすがに二十歳も過ぎましたし、そうった服は着られないかなって。
 そして、十代の頃は色々あってそれどころではなかったものだから。
「ですが、ここはゲームの世界」
 キラキラの街を見回せば、さまざまな人々がサンタ衣装を身に纏い、楽しげに過ごしている。そこには、何の違和感もなかった。
「そう、老若男女誰が着ても許される世界」
 ――多分。きっとそう。
 気がつけば、手にしていたサンタ衣装は藍の身体にしっくりと馴染むように装備されていた。上は帽子から下はブーツまで、すらりとした美しいボディラインをそれとなく際立たせつつも下品にはならないデザインで、しかも防御力は最強とくれば、非常に心強い。
「頑張って、クリアしましょう」
 あこがれのサンタ衣装を身に纏い、藍は意気軒昂でフィールドへと繰り出していった。

「話には聞いていましたが、これは確かにひどいバグですね……」
 クエストエリアに足を踏み入れた途端、森だと言われていたはずの景色は極彩色に変色し、ノイズが走り続け、クエスト進行のために話しかけなければならないNPCは虚ろな顔で聞き取れない言葉らしき何かを発し続けている。実際目の当たりにしてみると想像以上であった。
『何だァ? 可愛いサンタのお嬢さんじゃねえか』
『オマエもプレゼントが欲しいのか?』
 その上、クリスマス台無し男なるしょうもないバグプロトコルがわらわらと集まってきては、藍に何やら甘い言葉でこう尋ねてくるではないか。
 しかも、答えを聞く前からクリスマス台無し男たちは背負った袋の中から(!)すっごい悪人面のサンタクロースを|取り出した《・・・・・》のだ。怖い。怖すぎる。
 悪人面のサンタクロースはそれぞれがバグ化したプレゼントやダイナマイトを手にして、クリスマス台無し男と共にじりじりと藍に迫ってくる。ひどい絵面だった。
「申し訳ありませんが」
 しかし藍も負けてはいない、「月」のタロットカードを高々とかざしながら、凜然と言い放つ!
「貴方のような人からは、まったく欲しくありません――【|銀狼招来《ギンロウショウライ》】!」
 召喚には召喚を。藍は翼持つ狼「白銀」を喚び出すと同時に、その背に飛び乗ると天高く舞い上がり、クリスマス台無し男たちの包囲網から抜け出した。
「あら? 白銀……」
 クリスマス限定装備は召喚したものにも付与されるのか、白銀の姿もちょっぴりだけサンタ仕様になっていた。頭にはサンタ帽、首元には翼を邪魔しない程度の大きさのケープが巻かれ、ちょっとしたコスプレのようになっていたのだ。
「一緒に頑張りましょう、白銀」
 藍はクリスマス仕様の白銀をひと撫ですると、地上でワアワアしているバグプロトコルたちを見下ろした。
『何でプレゼントが要らないんだ!? クリスマスなんだからプレゼントが欲しいに決まってるだろ!』
『強がってないでプレゼントが欲しいって言ってみろよ!』
 ホントこいつらひどいなあ! 口々に難癖つけながら召喚した悪人面サンタたちにノイズまみれのバグ化プレゼントやらダイナマイトやらを藍目がけて投げつけさせる!
「……」
 藍はしばし無言で、クリスマス台無し男たちのわめき声を完全に無視したまま、白銀の優れた機動力で次々飛んでくる攻撃を回避していく。
 それでも、いかんせん数が多い! 白銀が回避しきれず思わず目で追ったダイナマイトが背に乗せた藍に迫る――。

 ざんっ!

 藍は白銀にまたがりながら、器用に打刀「青月」を抜き放つと、ダイナマイトの導火線だけをすっぱりと斬って起爆を阻止した。そして、返す刀で反対側から飛んできたバグ化プレゼントをこれまた斬り捨てて破壊する。
『お、オレたちからのプレゼントを無碍にしやがって……!』
 クリスマスを台無しにすると言う割には贈り物をしたがる妙な台無し男たち。そんなことを言っているから召喚した悪人面サンタも攻撃の手を一瞬緩めてしまう。
 その隙を縫って、藍が白銀と共に天より飛来する稲妻が如く駆け抜ける!
 
「答えは――貴方がた、絶対に何かしら|他《悪》意がありますでしょう?」
『スミマセン、メッチャアリマス』

 満足というか、納得というか。
 藍の答えに完全に論破された悪人面サンタは沈黙し、クリスマス台無し男たちは為すすべもなく藍と白銀によって蹂躙されていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユニ・エクスマキナ
アドリブ歓迎

限定装備…とっても心惹かれる言葉なのねー!
いいなぁ、ユニも欲しい~

受注したら、早速ユニもコスチューム着ちゃおうっと
じゃーん!どうでしょう?可愛い?(悦
何言ってるのかわかんないや…

あ、これがバグだ…
しかも何か飛んできた!(慌てて避け
これ、当たったらダメなヤツなのね…っ
よーし、こーなったら…落ち着いて…打つ!
(プレゼント爆弾をマニュアルで撃ち返そうとする
失敗したら、ユニが燃えちゃうから本気!
飛んできた方向からスピードと角度を予想して…えーい!
あれ?全然当たらない…ぎゃー!?(必死に避け

もう!バグにはこれしかないでしょ
叩いて直す!(エイっ☆
諦めずに叩けば、きっと直る!……よね?



●頭部殴打・クリスマス
 期間限定、それは魅惑の言葉。
 例えば、ケーキ屋さんでどれか一つ好きなケーキを選んで良いと言われたら、君はどうするだろうか。
 定番の約束された美味しさ、苺ショートケーキ? それともモンブラン? いやいや、チーズケーキも捨てがたい。
 けれどもしもそんなレギュラーメンバーの中に、どんと『期間限定』と書かれた旬のフルーツをふんだんに使ったタルトが置いてあったら、どうだろう。
 君はさんざん迷った末に、恐らくは『期間限定』の文字に負けて、旬のフルーツタルトを買って帰ってしまうと思うのだ。
 それはそうと、ここゴッドゲームオンラインにもそんな『期間限定』という名でプレイヤーを沸き立たせるイベントが季節ごとに催される。
 そして今はまさにクリスマスイベントの真っ最中! クリスマスといえばサンタクロースということで、イベント期間中にクエストをクリアした者のみがサンタモチーフの衣装を手に入れることができるのだ。
「限定装備……とっても心惹かれる言葉なのねー!」
 そしてここにも魅惑の言葉に導かれた乙女が一人、ユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)である。
「いいなぁ、ユニも欲しい~」
 求めよ、さらば与えられん。折しもユニの眼前には、限定クエストを受注するためのNPCが立っていた。今まさにユニが発した言葉がトリガーになったか、NPCはユニの方を見て口を開き、街から少し行ったところにある森の中であるアイテムを取ってきて欲しいといかにもな説明をしてきた。
「それじゃ、よろしくね!」
 そんな締めの台詞と共に渡されたのは、念願の限定装備――サンタコスチューム!
 今はまだ仮入手の状態とはいえ、装備はできるし、性能も最高級。しかもイベント特攻とあらば、今すぐ着替えない手はない。
 ユニは電子の申し子なので、えいっと念じるだけで衣装をチェンジできるのだ。手にしたサンタコスチュームはあっという間に普段着に取って代わってアクティブな装備品となる。
 ではいざ行かん、フィールドにある森の中へ!

「じゃーん! どうでしょう? 可愛い?」
 森の中に足を踏み入れた途端、ノイズまみれの景色に包まれるも、念願だったサンタ衣装に身を包んだユニはご機嫌でそれをものともせずに突き進み、見つけた人影にウッキウキで話しかけた。とにかく誰かとこのご満悦っぷりを共有したかったのだ。可愛い。
「縺ゥ縺?@縺セ縺励g縺??繧ッ繝ェ繧ケ繝槭せ繧定ソ弱∴繧九◆繧√↓縺ッ縺ゅ?繧「繧、繝?Β縺悟ソ?ヲ√↑縺ョ縺ォ窶ヲ窶ヲ」
「……何言ってるのかわかんないや……」
 しゅーん。ユニさん、目に見えてしょんもり。できれば褒めて欲しかったのに。
 そしてようやく周囲の極彩色やノイズに気付き、ポンと手を打った。
「あ、これがバグだ……」
 気付きを得ると同時に、あたり一帯から男たちの不穏な声が響く。

『何だ何だ、まぁた可愛いサンタさんが浮かれてやって来たじゃねえか!』
『そんなにプレゼントが欲しいなら、くれてやるよ!』

 えっ今可愛いって言った? と目を輝かせられたのも一瞬のこと、四方八方からノイズまみれのプレゼントボックス型爆弾が飛来したではないか。ひどい!
「えっ、わっ、きゃー!?」
 ユニは慌てて何とかそれらを避けたが、顔を上げるとクリスマス台無し男たちにすっかり囲まれてしまっていた。褒めてくれるのは嬉しいが、こんなプレゼントは嫌すぎる。
「これ、当たったらダメなヤツなのね……っ」
『ちょこまかと逃げ回りやがって、だがそんな格好をしてるってことは……』
『プレゼントが欲しいに決まってる! ほらほらァ!』
 再び投擲されるバグ化プレゼント爆弾。クリスマス台無し男たちが手にした袋から際限なく出てくるものだから、避けても避けてもキリがない。
「よーし、こーなったら……」
 ユニは覚悟を決めて逃げるのを止め、分厚くて重い桜色のマニュアルを取り出した。
 そしてそれを両手で持つと、飛来する爆弾をよおく見て――。

(「失敗したら、ユニが燃えちゃうから――本気!」)

 眼光鋭くキリリと構え、爆弾が飛んでくる方向からスピードと角度を予想して……!
「えーーーい!」

 ――すかっ。

 ああ、気持ちいいくらいに空振りした! スイングの勢いで危うく転びそうになる!
「あれ? 全然当たらない……ぎゃー!?」
 そして姿勢を崩した所を狙うように迫るバグ化プレゼント爆弾! あぶなーい!
 ユニ、危機一髪状態。さっきから、何やかやで必死に避けることで何とか生きながらえている状態だ。マニュアルで爆弾を撃ち返す作戦はちょっと失敗しちゃったので……。
 そして、気付けばクリスマス台無し男のすぐ近くまでユニの方から迫る形になってしまっていた。
『こいつ、いつの間にこんな懐まで……!?』
 ある種、攻撃の間合いに飛び込む形になったユニ。いつまでも避けてばかりでは埒があかないことも分かっているから、覚悟を決めたというか――ひらめいてしまった。
「もう! バグにはこれしかないでしょ!」
 ユニは手にしていた自身のトリセツ――「* Uni's Manual *」を思いっきり振り上げた。こうなったらなり振り構っていられない、最後の手段だ。

「叩いて直す!!!」
『グエーーー!!!』

 ごいーん! と、すごい音がした。頭部をしたたかに打たれたクリスマス台無し男は、一撃のもとにノイズと化して消えていってしまう。
『ヒッ……!? 一撃で、だと……!?』
『ヤベえヤツだ、近寄るなァ!』
「ひどいの! ユニはヤベえヤツなんかじゃないんだからー!」
 ごっつんごっつん、今度は逃げ惑う番になったクリスマス台無し男たちを追いかけ回しては頭部を分厚いマニュアルで叩いて『直す』を繰り返すユニ。
「諦めずに叩けば、きっと直る!」
 ユニは一瞬視線をカメラに向けて、小首を傾げながら言った。
「……よね?」

成功 🔵​🔵​🔴​

ルナ・キャロット

んへへサンタ兎…可愛いですね。(早速自撮り)イベント装備は確実に入手しないとです!

ひい露骨に悪者サンタ……倒すのに躊躇がいらなくていいですね。
ザクザク倒しますよ!双剣でアクセルコンボをしていきます!
プレゼント?くれるんですか!欲しいです!
質問にはとりあえず素直に答えます(貰えるものはもらいたい姫兎)

ひいい怖い人はいりません!ダイナマイトもいりません!!斬撃飛ばして切り裂きます!
もっとまともなものはないんですか!ケモノスキンとかケモノアクセとか!
何もなさそうならプレゼントも本体も全部切り裂いちゃいます!



●キラキラ・クリスマス
 レーシュの街では、クリスマス限定イベントが謎のバグで進行不能になっていると大騒ぎになっていた。|ゲームの管理者《ゲームマスター》たるドラゴンプロトコルの元には大挙してプレイヤーが押しかけ「どうなってるんだ」とワイワイするが、何せ原因がバグプロトコルなものだから、当のドラゴンプロトコルもアワアワするばかり。
 そんな中、数名の猛者たちがバグり倒したクリスマス限定イベントのクエストを嬉々として受注しているというのだから、事態はますます混迷を極めていく。
「あっ、あの子ケモケモしてて可愛い~」
「装備もイケてるなあ、あれ集めるの相当大変だっただろ……」
 そんな声を背中に、わちゃわちゃするレーシュの街中を進むのはルナ・キャロット(†月光の聖剣士†・f41791)。目指すは中央広場にある噴水前のNPC――から渡されるというクリスマス限定イベント装備!
「わっ、あなた相当強そうね。ひとつお願いをしてもいいかな?」
 特定のレベルを超えたプレイヤーにのみ冠される冒頭の台詞もまた、NPCのAIが為せる技。それでも、ルナは悪い気はしなかった。
(「ふへへ……こういうちょっとした|ご褒美《リワード》があると、頑張ったかいがあったというものなんですよね……」)
 ルナさんはいつだって「求:ちやほや」。NPCからのシステムメッセージだって嬉しい。
 そんなこんなで、街を出て少し行ったところにある森の中で指定のアイテムをゲットしてきて欲しいというお使いクエストを受注すると同時に、仮入手ではあるが無事念願のサンタモチーフ衣装を受け取ることができた。

「んへへ、サンタ兎……可愛いですね」

 早速装備したサンタ衣装は、同時装備できるケモノスキンとも干渉しないように上手くモデリングされていた。分かってらっしゃる。ルナはここぞとイルミネーションでキラキラなレーシュの街の絶景ポイントで|SS《スクリーンショット》を撮りまくる! うーんうちの子可愛い!
 だが、いつまでも自撮りに耽ってばかりはいられない。このイベント装備を正式に入手するためには、何としてもクエストを完遂しなければならないのだから。
「イベント装備は確実に入手しないとです! 行きますよ!」
 愛らしいサンタ兎姿となったルナは、元気良く街を飛び出していった。

 指定されたフィールド上の森はすぐに見つかった。外から見る分には普通の森だったが、いざ足を踏み入れてみるとさあ大変。極彩色の景色にノイズまみれのオブジェクト。噂に違わぬバグり倒しっぷりであった。
「うっ……本来ならここでもう一人のNPCに話しかけてフラグを立てないといけないはずなんですが……」
 予知にもあった通り、森の中のNPCもバグの影響に巻き込まれ、何を言っているのかさっぱり分からない状況であった。
『ウサギサンタか、面白い! どうやら今年一年元気に周回していたようだな!』
『さてはオマエもプレゼントが欲しいのか? 欲しいんだろ! なあ!』
 しかも、ようやくまともに理解できる言語が聞こえてきたと思ったら、声の主は何だか見た目からして悪そうな連中ではないか。手にダイナマイトとか持ってるし。
「ひい、露骨に悪者サンタ……」
 ルナの前に立ちふさがったこのクリスマス台無し男たちがバグプロトコルなのは、もはや疑いの余地もない。
「倒すのに躊躇がいらなくていいですね」
 今や手放せぬほどの愛用品となったSSR装備「宝双剣ローゼンクイーン」を抜き放つと、ルナはクリスマス台無し男たち目がけてケモノのあんよでダッと駆け出した。

「それはそうとプレゼントですか? くれるんですか! 欲しいです!」
『良く言った! それじゃあコイツをくれてやる!』

 |華麗な足さばき《アクセルコンボ》でクリスマス台無し男たちの間を駆け抜けながら、双剣でザックザックと斬り裂いて、ついでに質問にも素直に答えるルナ。もらえるものはもらいたい姫兎、自分に正直であった。
 すると、クリスマス台無し男たちはよし来たとばかりに背負った袋の中からめっちゃ悪人面のサンタクロースを召喚したではないか。コワイ!
「ひいい怖い人はいりません!」
『プレゼントじゃよ~~~』
「ダイナマイトもいりません!」
 とにかく近寄るなとばかりに、ルナは双剣で斬撃を飛ばしまくってダイナマイトの導火線を切り、ついでに悪人面サンタも斬り裂いて、徹底抗戦の構えを見せる。
 そりゃあ確かにもらえるものはもらいたいけれど、ルナさんにだって選ぶ権利はある。いかにもSSRなキラッキラの軌跡を残す斬撃を放ちながら、ダメ元で聞いてみた。
「もっとまともなのはないんですか!? ケモノスキンとかケモノアクセとか!!」
 理想を言えば、そう――クリスマス限定仕様のケモノスキンとかケモノアクセとかだったら最高なんだけどなぁ~~~。ふへへ。
『そんなものはない!』
『バグ化プレゼントならある!』
「いらなさすぎます~~~!」
 これ以上の問答は不要そうだった。飛来するバグ化プレゼントごと、目にも留まらぬ素早さで、ルナはクリスマス台無し男の大群を一気に斬り裂いて蹴散らしていった。
 こんな所で足止めを喰らっている場合ではない、さっさとクエストを正常化させて、クリスマス限定装備というレアアイテムをゲットしなければならないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テッカ・ロールナイト
クリスマス限定イベント、参加しない手はねえなッ!
と、言う訳でクエスト受けてお試しのサンタ装備を装備するぜ。
クリスマス期間限定とはいえトンデモないぶっ壊れ装備だ。これならちょっとやそっとの敵には負けようがねえぜッ!
さっそくバグプロトコル退治といこうかッ!

敵が悪人面のサンタを召喚したな。プレゼント?嫌な予感しかしないから要らないが…。
って、どおおおッ!?ダイナマイトやらなんやらで攻撃してきやがった!?
なら【ワイルドアクセル】ッ!
超スピードで掻い潜って肉薄してやる。
俺もプレゼントをくれてやる。『エンジンブレイド』のフルスイングの一撃ってプレゼントをなッ!
メリークリスマァァァスッ!!


【アドリブ歓迎】



●ブレイド・クリスマス
「クリスマス限定イベント、参加しない手はねえなッ!」
 テッカ・ロールナイト(神ゲー駆けるは、魔喰者の騎士・f41816)もまた、今が旬の期間限定クエストに参加するべくレーシュの街にやって来たプレイヤーの一人だった。
 中央広場にある噴水の前にたたずむNPCに話しかけて、例の「近くの森に行ってアイテムを取ってきて欲しい」という内容のクエストを受注すると、仮入手ということでお目当てのイベント特効装備であるサンタクロースモチーフの衣装を手渡された。
「よし、早速コイツを装備するぜ」
 アイテム欄から受け取ったばかりのサンタ衣装を選択すれば、あっという間にサンタのお兄さんスタイルになるテッカ。これがなかなかさまになっている。
 プレイヤーの大多数がこの装備に『可愛さ』や『格好良さ』を見いだす中、テッカはどちらかというとその『性能』の方に注目していた。
 装備後のステータスを確認すると、設定されている攻撃力と防御力の数値は最大に。
 本来ならばレア装備を手に入れた上でさらに強化するか、トリリオンで課金して最強装備をガチャで回すかでもしないとこれだけの性能の装備は手に入らないのだ。
(「クリスマス期間限定とはいえ、トンデモないぶっ壊れ装備だ」)
 そういうことである。ゲーム内で設定されているイベント期間を過ぎれば攻撃力も防御力もゼロになってしまうという本当に期間限定の特別装備なのだが、逆を言えば期間中は誰でもお手軽に入手できる初心者にも優しいとんでもねえ性能を発揮する。
「これなら、ちょっとやそっとの敵には負けようがねえぜッ!」
 キャラクリしたての頃と比べると、テッカさんもあれから随分と魔喰を繰り返して強くなった。けれどこれから相手にするのはバグプロトコル、油断は禁物だから準備は念入りに。
「よっしゃ、さっそくバグプロトコル退治といこうかッ!」
 サンタ衣装を軽く腕まくりして、テッカは意気揚々とイルミネーションが煌めくレーシュの街を飛び出していった。

 街を出て広大なフィールドに足を踏み出せば、指定された目的地である森はすぐに見つかった。どうやら、外見上は異変が起きていないようだ。
(「……つうことは、フィールドインすればバグプロトコルが襲ってくるって感じか」)
 テッカは油断せず、ある程度の危機予測をしつつ慎重に森へと進んでいく。今回は急ぎの仕事となるので、道中での|魔喰《つまみ喰い》は我慢だ。モンスターがアクティブにならないように上手に進路を取りながら、テッカは森の入り口にたどり着いた。

「おわぁ!? 何だよコレはッ!」

 事前に『バグり倒している』とは聞かされていたが、これほどまでとは聞いてない。そんな感じだった。自分は確かに森の中に入ったはずなのに、景色は極彩色で到底森とは言えず、オブジェクトもことごとくノイズにまみれている。
 これ一回カセット抜いて接触部分息でフーフーした方がいいんじゃないの、と古のゲーマーは言ったかも知れない。そんな状況であった。
 だが、テッカはすぐに気を取り直して敵の襲撃に備えた。四方八方から『敵対者』の気配がする――魔喰者(モンスターイーター)の本能と言うべきか、すぐに察知できた。
『おうおう兄ちゃん、クリスマスをエンジョイしてるようじゃねえか』
『そんな兄ちゃんには、取って置きのプレゼントをくれてやるが?』
(「何か、うすぼんやりとキャラ被りしてるみたいで嫌だな……?」)
 わらわらと現れたクリスマス台無し男たちの、特にその口調に対してほんのりと「止めて欲しい」なんて思ったところに、プレゼントをやるという怪しい申し出が。
「プレゼント? 嫌な予感しかしないから要らないが……」
『答えは聞いてねえ! 喰らえっ、オレたちからのクリスマスプレゼントだ!』
「じゃあ聞くなよなッ!? 訳わかんねえッ!」
 テッカが冷静にお断りをしたところ、ひどい答えが返ってくると同時に、クリスマス台無し男たちの背負った袋の中から悪人面のサンタクロースがのっそりと召喚された。顔もそうだが、何より絵面的にめっちゃおっかなかった。
 悪人面サンタは、ノイズだらけのバグ化プレゼントボックスやダイナマイトを手にしていた。それらが全員、いっせいにニヤリと笑い――。
「って、どおおおッ!? 物騒なモン投げつけてくるんじゃねえッ!?」
 プレゼントを投げるヤツがあるか!
 いや、そもそもバグったオブジェクトやダイナマイトをプレゼントにするヤツがあるか!
 だが、始まってしまった戦いは止まらない。テッカはここぞと身を低くして、ググッと足腰に力を込める。そして、鋭いまなざしで飛来する危険なプレゼントの軌道を見極めると、一気に地を蹴った!
「行くぜ、【|魔喰技能【魔猪の剛脚】《イータースキル・ワイルドアクセル》】ッ!」
 バグの嵐をもものともしない高速悪路走破の能力は、とあるモンスターをめっちゃ魔喰して手に入れたもの。頑張ったかいがあったというものだ。
『なっ、何だと!? オレたちからのプレゼントを全部避けて……』
 そうして危険なプレゼントの嵐を掻い潜ったテッカは、クリスマス台無し男たちの懐深くに入り込む。
 今度は、テッカがニッと笑う番だった。
「俺もプレゼントをくれてやる」
 素材とトリリオンを惜しみなく使い強化を重ねたエンジンブレイドを、低く構える。
 そして、クリスマス台無し男たちをまとめて薙がんばかりのフルスイングの一撃という名のプレゼントを――ぶちかます!
「メリィィィ、クリスマァァァスッ!!!」
『『『ギャアアアアア!!!』』』
 テッカサンタからのプレゼントは、それはもう強烈だったという。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
【竜鬼】

ねっとげーむででーと。
なるほど、そういうのもあるんですねっ!
(新鮮味があって楽しみ)
まあ、バグり散らかしてるといっても敵が強いとかそういう――
(視界に入ってくるやべー景色に固まる)
――いくらなんでも限度ってものがありません!?
(思わず突っ込んだ)

何やらプレゼントとして大切な物が欲しいそうなので、姉さん謹製の新作筋肉同人誌を渡す
要求を否定しないと遺伝子番号を奪うそうですが、元々わたし達異世界出身の猟兵に遺伝子番号ありませんしね

ということでお邪魔虫にはさくっとご退場願いましょう
【風と氷の葬送曲】発動し、周辺の敵を纏めて攻撃&凍結
討ち漏らしのトドメはリューさんにお願いします


リューイン・ランサード
【竜鬼】

ひかるさんと初めてのGGOを楽しみます。
クラスはレア職?のマジックナイトを自称。

しかしこの世界でもクリスマスを台無しにしようという輩が出てくるとは。
さっさと倒して、ひかるさんとクリスマスを楽しみましょう。

クリスマス台無し男の要求に対しては、「じゃあ、(アルダワ迷宮で見つけたダガー+1)これをあげましょう。」と手渡す。
ひかるさんが喝破した通り、僕達は遺伝子番号をそもそも持っていないので奪いようが無いですし。

それでは覚悟は良いですね。
ビームシールド盾受けとオーラ防御展開により、ひかるさんをいつでもかばえるようにして、UC:次元刀を使用。

”チェスト”の掛け声とともに首ドロップして倒します。



●ラブラブ・クリスマス
 リューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)と荒谷・ひかる(|精霊寵姫《Elemental Princess》・f07833)の二人にとっては、ここゴッドゲームオンラインの世界ははじめましての世界。
 ネットゲームの中に|生身で入り込む《・・・・・・・》という新鮮な体験をすることとなった二人は、降り立ったレーシュの街並みがまるで現実世界と変わらないことに驚く。
 俗に言う|NPC《ノンプレイヤーキャラクター》はAIらしく決められた台詞しかしゃべらないが、ログインしているプレイヤーたちは各々思い思いに街の中を歩き回ったり、仲間同士でたむろったり。
「ねっとげーむででーと。なるほど、そういうのもあるんですねっ!」
「ここ|GGO《ゴッドゲームオンライン》では、|統制機構《現実世界》で抑圧されている人々も多いと聞きました……せめてゲーム内では、という人も多いんでしょう」
 ひかるが目を輝かせれば、リューインもクリスマスムード一色の街並みを眺めながら事前に得ていた世界知識で状況を察する。
 そんなレーシュの街に集まる人々は、皆一様に『クリスマス限定イベントの進行不可能バグ』に悩まされていた。このままでは念願の期間限定レア装備が手に入らないからだ。
 もちろん、それは放置しておけばせっかくの『ネットゲームでクリスマスおデート』を楽しみに来たリューインとひかるにも差し障りが出るというもの。ここは一肌脱がねばなるまい。
 プレイヤーが一番多く集まる中央広場の噴水前に立っていたサンタ衣装のNPCに話しかければ、お約束の『近くの森でアイテムを入手してきて欲しい』というクエスト受注が成立する。
 リューインとひかるも無事クエストの受注を完了させ、期間限定レア装備であるサンタ衣装を仮入手することに成功した。
 ゲーム内の仕組みなのか、二人が『装備したい』と頭の中で考えた瞬間に、普段の装備からあっという間にサンタ衣装へと換装が完了した。すごい。
「ひかるさん、良く似合っていますよ」
「リューさんも、すごくカッコいいですっ」
 特に、ドラゴンの翼と尾を持つリューインがこの世界の装備を身につけると、まるでドラゴンプロトコルのようにも見えるらしく、遠目から複数のプレイヤーの視線を感じる。
「あのプレイヤー、ドラゴンプロトコルなんじゃないか……?」
「じゃあ、今起きてるバグも解決してきてくれるかも!」
 聞こえてきた小さな声に、アワアワと焦るヘタレが抜けないリューイン。
「ぼ、僕のクラスはレア職のマジックナイトということでお願いします!」
 誰へともなしに頭を下げたリューインを見て、ひかるが事情を察してくすくすと笑う。
「大丈夫ですよ、二人ならきっと解決できます」
 頑張りましょう、とリューインの手を取るひかる。その手を握り返し、リューインも笑った。
「はい! せっかくの新世界、楽しみましょう!」
 どの世界でも、クリスマスを台無しにしようという輩は出てくるのだなあと思いつつ。
 かくして、二人は仲良く街を出て、目的地である森を目指すこととなった。

 フィールドは見渡す限りの平原ではあったが、それ故に目的地の森はすぐに見つかった。
「まあ、バグり散らかしてるといっても敵が強いとかそういう――」
 ひかるが笑顔で森に足を踏み入れた途端、その笑顔は凍り付いた。
 森とは何だったのかと言いたくなるような極彩色の風景に、ノイズまみれのオブジェクト。視界に入ってきたのは、想像を遙かに超えたやべー有様だったのだ。
「――いくらなんでも、限度ってものがありません!?」
「ひかるさん、落ち着いて――とはいえ、これはさすがにひどいですね」
 思わずツッコミを入れたひかるをリューインが何とか落ち着かせようとするが、この空間自体が落ち着かないものだから、同意せざるを得なかった。
 これで森の中のNPCが人の形を保っていなかったら正気度チェックのお時間だったのだが、不幸中の幸いにしてそこは無事であった。何言ってるのか分からないけど。
『クックック……クリスマスにお揃いのサンタ衣装でデートとはエンジョイ勢だな……』
『オマエらは特に念入りにおもてなししてやろう! 覚悟しやがれ!』
 何か出た。いや、敵だ。バグプロトコル『クリスマス台無し男』の群れだ! 何かカップルに対して思うところでもあるのかな?
『という訳で早速だがオマエの大事なものを寄越すんだな! ほら早くしろ!』
「ええ……」
 これではただの追い剥ぎでは? リューインとひかるは顔を見合わせた。そして、リューインの方が懐を何やらごそごそと探ると、何かを取り出してにこやかに言った。
「じゃあ、これをあげましょう」
『……? 短剣?』
「はい、アルダワ魔法学園の地下迷宮で見つけたダガーです。ステータスに「+1」と書かれているのが分かりますか? ちょっとレア度が高い証拠です」
 笑顔でダガー(+1)を手渡すと、リューインは何事もなかったかのようにひかるのもとへと戻っていく。対するクリスマス台無し男たちは、しばし呆然とした後、急に怒りだした。
『ふざけるな! この程度の武器がオマエの大事なものの訳がないだろうが!』
「待って下さい、|それ《・・》で納得できないなら、|これ《・・》を差し上げます」
 今度はひかるが何か冊子のようなものを手にして進み出た。
「わたしの姉さん謹製、『筋肉同人誌』の新刊です」
『筋肉……同人誌……?』
「はい! 年末の某まんがまつりに合わせて発行する新刊だそうです! 貴重ですよ!」
 くもりなきまなこでひかるがそう言うと、ぐいっと同人誌をクリスマス台無し男に押し付けて、リューインのもとへと戻っていった。
『これは……』
『うーん……』
『まだ世に出ていない新刊を先に読めるというのは確かに貴重だがなぁ』
 審議してる!? 思わぬ反応にひかるがリューインを見た。リューインは「さすがは|義姉《ねえ》さんの本だ……」と独り感心していた。
 やがて、クリスマス台無し男たちが二人に向き直り、こう宣言した。
『よおし! 合格だ! 要求を受け入れたとみなしてオマエらの|遺伝子番号《ジーンアカウント》を奪わせてもらうぞ!』
 言われた側の二人は、同時にこう返す。
「「そんなものはありませえん!!」」
『なん……だと……!?』
「元々わたし達異世界出身の猟兵に、遺伝子番号なんてありませんし」
 差し上げようにも持っていないものはあげられません、とひかる。
「その通りです、僕達はそもそも遺伝子番号を持っていないので仕方がないですね」
 あきらめて下さい、とリューイン。見事な論破っぷりであった。

『ぐぬぬぬぬ! こうなったら他の方法でオマエらを物理的に抹殺……』
「それでは覚悟は良いですね?」
「お邪魔虫にはさくっとご退場願いましょう」
 もはや話は尽きた。あとは剣を交えるのみ!
 ひかるが「Nine Number」と「THE EARTH」、二挺の精霊銃を構える。
「風の精霊さん、氷の精霊さん、お願いします!」
 願いと共に引かれた引鉄は、銃口から猛吹雪を巻き起こしてあっという間にクリスマス台無し男たちを巻き込んでいく!
『ぐ……っ』
『動けん……!』
『動けるヤツだけでも、あの小娘を狙え!』
 数の暴力で押し切ろうとするクリスマス台無し男たちを、しかしビームシールドと防御障壁を並列展開したリューインが守り切る。
「ひかるさんに手を出そうとした罪、その身を以て償っていただきます」
 そこに、ヘタレを自称する青年の姿はなく。
 手刀に魔力を宿し、一気に振り抜いたあとに、クリスマス台無し男たちの首はなく。

「――おチェスト、失礼します」

 良家の子息らしく、丁寧な首切りをしめやかに実行したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御桜・八重

衣装:2020年12月17日公開・やとなみ絵師・SD

クリスマスはみんなが楽しみにしてるんだから、邪魔なんてさせないよ!

と、現れた台無し男。
え。
お前の大事なモノを寄こせ?
ななな、なに言ってんのーっ!?

今年のクリスマス、通くんへのプレゼントはまだ決めてないけど……
(お友達(ひかるちゃん)のラブラブっぷりを思い出す)
『わたしをあ・げ・る♪』(妄想に発展)
きゃーっ、いやいやいや、わたしにはまだ早いからーって、
あんたにあげるわけないでしょーっ!!
(傍目には理解困難な一人芝居)

う、だから手をワキワキさせながら寄るな触るなーっ!
い・い・かげんに、しろーっ!!(電光石火の蹴撃)
ふしゅうううっ(目がビカアッ)



●妄想炸裂・クリスマス
 御桜・八重(桜巫女・f23090)、ゴッドゲームオンラインの世界に降り立つ。
 普段は桜舞う世界を拠点として活躍している八重だが、新世界でも困っている人がいると聞いて、それは聞き捨てならないと勇んでやって来たのだ。いい子!
 転移を受けた先のレーシュという名の街は、予知で見た通りのクリスマスムード一色。街行く人もほとんどが期間限定レア装備のサンタ衣装で、仮初めの自由を満喫していた。
 だが、この装備。バグプロトコルのせいで仮入手のままの人がほとんどだ。猟兵たちが一刻も早く事件を解決しないと、イベント期間が終了し、レア装備は没収されてしまう。
「クリスマスはみんなが楽しみにしてるんだから、邪魔なんてさせないよ!」
 もちろん、わたしだって――。
 そんな想いは今は伏せ、八重は事前に説明を受けていた通りにクエストを受注するべく中央広場に向かう。噴水の前に、サンタ衣装のNPCがいるはずだ。
「居た!」
 サンタ衣装の人々は多かれど、噴水前でただ立ち尽くしているだけの存在はまさしくAI、NPCの証。八重が「あの」と話しかけると、それがトリガーとなってNPCはクエストの内容を一方的に説明し始めた。まるでゲームの世界――いや、本物のゲームの世界だ。
 要約すると、街の外にある森の中でアイテムを入手して戻ってきて欲しい、ということだった。「それじゃ、よろしくね!」という締めの言葉と共に、噂のレア装備であるサンタ衣装が八重にも手渡された。クエストの受注が完了したのだ。
「よし、じゃあ早速――」
 どこかに着替えられる場所はないかと『考えた』途端、普段着である巫女服から、あっという間にサンタコスチュームへと装備品が変わったではないか。さすがはゲーム世界。
 トレードマークとも言える桜の髪飾りはそのままに、愛らしいサンタ帽が頭を飾り、モコモコのケープは二つの鈴とリボンで留められ、ミニスカートに黒いニーハイや手袋が良いアクセントとなった、愛らしいサンタガールの誕生だ。
 しかも、ただ可愛いだけではない。この世界では、クリスマス期間中この格好をしているだけで攻撃力も防御力も理論上最大値まで上昇するというのだから、着ない手はない。
「何かよく分からないけど……準備オッケー! 頑張るぞー!」
 気合十分、八重サンタは早速街を出て少し離れた場所にある森を目指すのだった。

「う、わぁ……」
 事前に『バグり倒している』とは聞いていたものの、これではまるで異空間ではないか。
 森の中に足を踏み入れたはずなのに、周囲は極彩色に包まれ、オブジェクトはことごとくノイズまみれ。救いだったのは、森の中でクエストを進めるために存在するNPCが人の形を保っていてくれたことだけだった。
「大丈夫!? 今、助け――」
「縺ゥ縺?@縺セ縺励g縺??繧ッ繝ェ繧ケ繝槭せ繧定ソ弱∴繧九◆繧√↓縺ッ縺ゅ?繧「繧、繝?Β縺悟ソ?ヲ√↑縺ョ縺ォ窶ヲ窶ヲ」
 ダメだった。言語機能がバグってた。
『おやぁ~? 大きな袋を持って、サンタの嬢ちゃんがプレゼントを持ってきてくれたのかな~?』
『その袋の中には、さぞかし大事なものが入ってるんだろうなぁ~』
 そこに現れたのは、心なしかねっとりとした口調のクリスマス台無し男たちだ!
 クリスマス台無し男たちは両手をわきわきさせながら、八重サンタが背負った大きな袋を見つめて、こんなことを言い放った。

『おい! プレゼント用にオマエの大事なものを寄越せ!』

 その時、八重サンタに衝撃走る――!
「え」
 大事なもの。大事なもの――?
 八重ちゃんは基本的に真面目なので、クリスマス台無し男の言葉を真に受けて、真剣に『大事なものって何だろう』と考えてしまう。
 考えた結果、もしかしてとんでもないことを言われているのでは? という結論に至ってしまった。どうして。
「な、ななな、何言ってんのーーーっ!?」
 顔を真っ赤にして、八重サンタがクリスマス台無し男たちに向けて叫ぶ。

 ~しばらくお待ち下さい~

(「今年のクリスマス、通くんへのプレゼントはまだ決めてないけど……」)
 そこで八重は、良き友人である荒谷・ひかるのことを思い出す。ひかるにも素敵な恋人がいて、二人の関係はまさにラブラブという言葉がぴったりで。
 直接聞いたことはさすがにないけれど、具体的には|どこまでラブラブなんだろう《・・・・・・・・・・・・・》?
 お付き合いも長いことだし、く、く、口付けくらいは当然こなしているだろう。
 でもそれを言ってしまえば、自分だって去年のクリスマスに……まあ、している。
 ならば、ひかるちゃんはそれ以上のことだって……とっくの昔に……!?

『わたしを、あ・げ・る♪』

 これはあくまでも八重の妄想なのだが、ひかるなら一糸まとわぬ姿にリボンだけを巻き付けて、ベッドの上でそんなことを言っちゃったりやっちゃったりしていてもおかしくない――と思う。思った。思ってしまった。

「きゃーーーっ! いやいやいや、わたしにはまだ早いからーーーっ!」
『? 何を一人でクネクネしているんだ、このサンタガールは』
『もしかして、何を言われてるのか理解できてないのか?』
「って、あんたにあげるわけないでしょーーーっ!」
 傍目には理解困難な一人芝居を繰り広げる八重サンタに、さすがのクリスマス台無し男たちも困惑を隠せない。
 だが、そういうことならとクリスマス台無し男たちは、八重のクリスマスを台無しにすべく再び手をわきわきさせながらジリジリと迫ってきた。
『そういうことなら……』
『身ぐるみ剥がせてもらうぜぇ!』
 怖い。妄想効果抜きにしてもおっかない光景だった。八重サンタが怯えるのも無理はない。背負った袋の口をギュッと握って、逃げ場を探すが、完全に包囲されている!
「う……だから、手をわきわきさせながら寄るな! 触るなーーーっ!」
 臨界突破である。八重サンタの目がクワッと見開かれた。
「い・い・か・げ・ん・に」
 赤いブーツが電光石火の如き速さで振り上げられ――。
「しろーーーっ!!!」
『……!!!』
 超常【|真・黄金玉砕蹴《ゴールデン・ボール・ブレイク》】が見事に炸裂した。具体的に何が起こったのかは、ユーベルコードの名称から察していただきたい。
「ふしゅううう……っ」
『……』
 目をらんらんと光らせる八重と、その場に倒れ伏したまま動かないクリスマス台無し男。
 その光景を目の当たりにした他のクリスマス台無し男たちは、蜘蛛の子を散らすように退散してしまった。しょうがないね!

成功 🔵​🔵​🔴​

ギルフォード・アドレウス
。oO(いやなぁ〜いや、良いんだ良いんだ、|現実世界《ケルベロスブレイドの世界》でもこの時期にこの手の阿呆を征伐するのはあったから良いんだけどさぁ、まさかゲームの世界でこの行事をするとは思わん訳だよ同胞よ……)

まあ、暴走したのが中の人が居るPCじゃなくてバグプロトコルなのが救いか……救いか?

ん?あ〜はいはいサンタ服ね、あんがとよNPCさんよ。
まあ、装備してみろってんで装備するけど、さ。
ん〜…あれだな、正に馬子にも衣装って奴だな。俺には似合わないと思うんだけどな、コレ。

いや、いいよテンプレートなお世辞は。

んじゃまぁ、そろそろ珍獣の相手でもしますかね。
あ???いや、どう見ても珍獣だろうがよ、あんたら。
人の真似事しないでくんない?

敵の攻撃が投擲物だから、光の壁や鎖で遮断したり、明後日の方向に飛ばす。最悪、俺の周りに着弾しなけりゃ良い訳だし。

次元斬は視認してるなら距離は離れててもオーケー、距離取って蹂躙しようかね。

いや、ほら、近寄り難いと言うかさ、あれだ…分かれ

【アドリブ歓迎】



●終末機巧・クリスマス
 キラキラのイルミネーションが美しいレーシュの街を、フードを目深に被った男が一人歩く。その名を、ギルフォード・アドレウス(|終末機巧《エンド・オブ・マキナ》・f41395)という。
 クリスマスムードに包まれた街の中ではむしろ浮いて見えるまである格好で、ギルフォードはある思いに耽っていた。
(「いやなぁ~、いや、良いんだ良いんだ」)
 彼にとってのおおもとの|現実世界《ケルベロスブレイド》でも、この時期にこの手の阿呆を征伐する依頼はあったのだから、今更驚くことでもないけれども。
(「まさか、ゲームの世界でこの行事をするとは思わん訳だよ、同胞よ……」)
 ギルフォードは軽く上を向いて、天を仰ぐ。夜空は冴え渡り、星がとても綺麗で。
「まあ、暴走したのが中の人が居るプレイヤーじゃなくてバグプロトコルなのが救いか……救いか?」
 その考え方はある意味で正しかった。ゲームプレイヤーの中には、悲運にも|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却されて最低限の人権さえ失ってしまう者だっている。そうしたものの一部は、残滓となってバグプロトコル化して、今度はプレイヤーたちに牙を剥く存在に転じてしまうことだって実際にあるのだから。
 だが、今回の事件では幸いにしてまだ致命的な被害は出ていない。今ここで猟兵たる自分たちがバグプロトコルを退治してクエストを正常化させれば、一件落着なのだ。
 そういったことに対して正義感を抱いているかどうかはともかくとして、ギルフォードは猟兵としての仕事を完遂するべくここにいるのだ。
「お、アイツかな」
 中央広場にある噴水、と言われれば街にはひとつしかないだろう。それらしき場所に、いかにもなサンタ衣装を着て立ち尽くす存在――間違いない、クエスト担当のNPCだ。
「よっ、お務めご苦労さん」
 話しかけること自体がトリガーとなるため、台詞は何でも良かった。労いに対する返事の代わりに、今がクリスマス期間であること、街の外にある森の中でアイテムを取ってきて欲しいということ、そのために役に立つ限定装備を渡すことを一方的に喋ってきた。
「ん? あ~はいはいサンタ服ね、あんがとよNPCさんよ」
「それじゃ、がんばってね!」
 お決まりの台詞で締めたNPCに一旦別れを告げて、ギルフォードは手渡されたサンタ衣装に視線を落とす。手触りが心地良く、上等な生地で仕立て上げられているのが分かった。装備品としての性能だけでなく、きっと純粋な着心地も良いのだろう――なんて。
「まあ、装備してみろってんで装備するけど、さ」
 そう言った矢先に、ゲームの世界あるあるで自動的に今まで着ていた外套一式からサンタ衣装へと装備品が変わったではないか。便利と言えば便利な仕組みだった。
 青と黒を基調にした普段着から赤と白で彩られたサンタ衣装へと早着替えしたギルフォードは、まじまじと自分の身体を見回して、ひとつ大きなため息を吐いた。
(「ん~~~……あれだな、まさに馬子にも衣装って奴だな」)
 今のギルフォードは、どこからどう見てもサンタクロースのお兄さん。笑っていれば子供たちが喜んで近付いてくるに違いない。だが、本人の感想はちょっと違った。
「俺には似合わないと思うんだけどな、コレ」
「まあ、よくお似合いですよ!」
 驚いた。クエスト担当のNPCが、ギルフォードの言葉に反応して喋ったのだ。どうやら、限定装備を身につけた状態で話しかけると台詞が変わるらしい。
「いや、いいよテンプレートなお世辞は」
 誰にだってそう言うんだろ? なんて、拗ねている訳ではないけれど。
 とにかく、街での準備は済ませた。ギルフォードは早々に街を出て、目的地である森を目指して歩き出した――サンタ衣装で。

 森の場所には迷わなかったが、足を踏み入れた途端に軽い目眩がした。森とは言いがたい極彩色の景色にノイズまみれのオブジェクト、森の中を担当するNPCは何を言っているのかさっぱり分からない。
「こりゃ、確かにバグり倒してるっつう表現になるわな……」
 長居していると気が狂いそうな空間に、これまた珍妙な連中が姿を現した。
『クリスマス気分でめでたいヤツが来たな!』
『プレゼントが欲しいのか? ああん?』
 口ではそう言いつつ自分たちもちゃっかりサンタ衣装の、クリスマス台無し男たちだ。
 それを確認したギルフォードは、得物の鍵剣を手に不敵な笑みを浮かべた。
「んじゃまぁ、そろそろ珍獣の相手でもしますかね」
『何ィ?』
『珍獣? どこに居るってんだ』
 本気で分からないといったていのクリスマス台無し男たちの様子を見て、ハンと鼻で笑うギルフォード。
「あ??? いや、どう見ても珍獣だろうがよ、|あんたら《・・・・》」
『はあぁ!? 誰が珍獣だとぉ!?』
 ようやく自分たちへの罵倒だと気付いたバグプロトコルたちが喚く中、ギルフォードの顔つきが変わる。――殺意に満ちた、|戦士《いくさびと》の目をしていた。

「――人の真似事、しないでくんない?」

『『『やっちまえぇ!!』』』
 クリスマス台無し男たちは、いっせいにノイズまみれのバグ化プレゼント爆弾を投げつけてきた。数が多い!
(「めんどくせえなぁ」)
 内心で舌打ちしつつ、鍵剣を「|破局《カタストロフィ》」の形態に変化させる。
 それは、滅亡の光を指揮する力を持つ。
 故に、ひとたび振るわれれば光の壁や鎖を生み出して投擲物を防いだり、明後日の方向に弾いたりすることが可能だ。
(「最悪、俺の周りに着弾しなけりゃ良い訳だし」)
『卑怯なヤツめ! 正々堂々とかかってこい!』
『この人でなし!』
 敵は敵で言いたい放題だが、言わせておけばいい。知ったことではない。
 別に剣で斬り合ったりする必要すらないのだ――【|次元斬《ジャッジメント・カット》】ひとつあれば、それで済む。一体ずつ倒さねばならないのだけが、面倒なだけで。
 そうして、距離を取り続けたまま蹂躙は続いた。
 どうして、あくまでも近付こうとしないんですか?

「いや、ほら、近寄り難いと言うかさ、あれだ……」
 その辺は分かって欲しい、そう目で訴えるギルフォードだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『バグ・ノーブル』

POW   :    ノーブル・レイピア
【細剣型トリリオンソード】に【貴族の資金力】を注ぎ込み変形させる。変形後の[細剣型トリリオンソード]による攻撃は、【服従】の状態異常を追加で与える。
SPD   :    ノーブル・ドミナント
【貴族社会】に密着した「己が武器とみなしたもの」全てを【口頭の命令】で操作し、同時一斉攻撃及び防御に利用できる。
WIZ   :    貴族私兵団
【配下の傭兵団の中】から1体の強力な【バグプロトコル化した伝説的な傭兵NPC】を召喚する。[バグプロトコル化した伝説的な傭兵NPC]はレベル秒間戦場に留まり、【設定された武器とスキル】で攻撃し続ける。

イラスト:落葉

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●バグプロトコルの親玉、現る
『クリスマス台無し男が倒されたか……』
 バグにまみれた森であった場所の奥で、一人の男が呟いた。森の奥には開けた空間が存在し、本来であればサクッと倒せる程度のクエストボスが存在していたのだが、今はバグプロトコル――『バグ・ノーブル』が猟兵たちを手ぐすね引いて待ち受けていた。
『来るが良い、恐れを知らぬ者どもよ。私が仕掛けた|終末機構群《エンドコンテンツギミック》を以て、貴様らを灰燼に帰してくれよう』
 半身を黒いノイズに侵食された男は、不敵に笑う。
 その頭上には、不穏な黒雲が漂っていた――。

●|終末機構群《エンドコンテンツギミック》について
 マスコメでも事前にお知らせしましたが、今回の戦闘では『召喚系ユーベルコードの使用』によって『範囲内極大ダメージ』のギミックが発動します。
 該当するユーベルコードを使用したからといって即ダメージを喰らうという訳ではなく、事前にバトルフィールドの地面に『直線範囲』の効果範囲が表示されます。そして三秒後に表示された範囲内に存在する対象全てが極大ダメージを受ける、という仕組みです。
 バグ・ノーブルも召喚系ユーベルコードを所持していますが、ギミックを把握しているため、何も対処しなければ範囲外に出て事なきを得てしまいます。
(召喚される伝説的な傭兵NPCは、片手剣と盾を装備しており、盾による強烈な叩きつけ「シールドバッシュ」で一定時間こちらの動きを止めるスキルを持っています)
 皆様も同じように対処するか、そもそもギミックを発動させないようにするか、などの対策を練る必要があるでしょう。
 それ以外は、通常の戦闘と判定は変わりません。サンタ衣装の装備でのプレイングボーナスも継続します。
神臣・薙人
×

厄介な相手のようですね
簡単に倒せる筈はありませんが
私に出来る限りの事をしましょう

引き続き限定装備着用
暖かいのは良い事です

敵が射程に入ったら
白燐桜花合奏使用
白燐蟲がギミックを誘発した場合は
効果範囲の表示が出た段階で脱出
召喚される傭兵達は桜吹雪に巻き込んで
数を減らして行きます
盾による叩きつけは
兆候が現れ次第距離を取って回避します
その際もギミックの範囲に入らないよう留意

蟲笛による演奏を継続しつつ
少しずつバグ・ノーブルに接近
手が届く位置まで来れば
ギミックの範囲に引っ張り込んで
ダメージを与えるよう試みます
私もダメージを受けるでしょうが
元より一人で倒せる相手ではありません
少しでも体力を削っておきましょう



●終末機構群は誰に微笑むか
 クリスマス限定クエストを乗っ取り、バグ化させた張本人。その名も『バグ・ノーブル』は、本来のクエストボスが待ち受けるはずの場所であった森の奥の開けた場所で、猟兵たちを待ち構えていた。
 そこへ真っ先にたどり着いた神臣・薙人は、相変わらずバグに侵食された森に囲まれた広い空間と、そこに佇む白黒の貴族と対峙することとなった。
『やはりバグプロトコルを恐れぬもの相手では、クリスマス台無し男には荷が重かったか』
 ゆらりと身構えるバグ・ノーブルの表情は真剣そのもので、先程のある種トンチキな戦いとは違い、一筋縄では行かないと感じさせるものがあった。
(「厄介な相手のようですね……」)
 薙人は、蟲笛を握る手がやや汗ばむのを感じる。無意識に緊張しているのだろうか。
(「簡単に倒せる筈はありませんが、私に出来る限りの事をしましょう」)
 油断なくそう考える薙人の姿は――引き続きイベント限定装備のサンタ衣装。
 決してふざけている訳ではない、これこそがこの決戦に於ける正装にして、最強装備なのだから。モコモコで暖かいしね!
『サンタ衣装、その装備を求めてこの時期はプレイヤーどもが群がってくる。そこを一網打尽にすれば、この世界の破壊も容易く進むというもの』
 バグプロトコルが何故ゴッドゲームオンラインの世界を破壊しようとするかの理由こそ分からないが、その正体がオブリビオンだという以上は、倒さなければならない。
『貴様らが何者かは知らないが、邪魔立てするならば消し去るまでよ!』
「……!」
 ノイズを散らせながら、バグ・ノーブルが戦闘態勢に入る。
 薙人も、それに合わせて蟲笛を構えた。

「黙って倒されるほど、私は甘くありませんよ」
 そう言うと、薙人は蟲笛に口を当て、美しい音色を奏で始める。すると、一面に舞い踊る桜の花吹雪が薙人を中心に一気に広がり、バグ・ノーブルに迫る!
『随分と優雅な攻撃をするのだな、だがそれを踏みにじるのもまた一興よ』
 対するバグ・ノーブルはバグプロトコル化した伝説的な傭兵NPCを複数召喚し、数で負けじと花吹雪を散らすかの如くけしかけてきた。
(「召喚で反撃してきた、ということは……」)
 薙人は花吹雪の勢いを増すためにより強く蟲笛を吹きつつも、思考を巡らせる。事前に聞かされていた『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』の発動条件は――?
『行け、傭兵たち! 貴様らの力を見せつけよ!』
 剣と盾を持った傭兵たちは、薙人が巻き起こす桜吹雪によって着実に数を減らすものの、それでも残った傭兵の一部が、薙人の動きを封じるべく盾を振りかぶる――。
「!!」
 モーションが大振りだったのが幸いした。シールドバッシュの兆候を見切って、薙人は後方に飛び退って痛烈な一撃を回避した。
(「そろそろ、ですかね」)
 着地地点のちょうどつま先あたりの地面に、線が引かれるように不自然な光が走った。帯状の淡い光は開けた戦場を横切るように点滅している。恐らくは、これこそが『極大ダメージ』の範囲を示すマーカーなのだろう。
 あらかじめギミックの範囲に入らないように留意していた薙人の立ち回りは巧みで、バグ・ノーブルはあからさまに渋い顔をする。

『賢しいものだ、そう容易くは引っかからないか』
 バグ・ノーブルは、ギミックの範囲外に逃れた薙人を見て、目論見が外れたことを素直に吐露する。
 だが、薙人は安全地帯に留まり続けるという選択を――捨てた。
『何っ!?』
 蟲笛の演奏はそのままに、白燐蟲「残花」を従えて、薙人は少しずつではあったがバグ・ノーブルに迫っていく。傭兵たちを殲滅した桜吹雪と、白燐蟲が美しく絡み合った。
(「あと少しすれば、ギミックが発動するはず。そこを、狙います)」
 口が塞がっているため、言葉を発することが出来ない薙人がただ迫ってくるのは、バグ・ノーブルから見ればある意味鬼気迫るものがあったろう。
『貴様、何を考えて……』
 地面の輝きが増していく。
 薙人とバグ・ノーブルの距離は詰められていく。

 ――がっ!!

 やおら蟲笛を口から離した薙人が、全身全霊の力を込めてバグ・ノーブルの腕を掴み、ギミックの範囲内に|自分ごと引っ張り込んだ《・・・・・・・・・・・》のだ!
「貴方が仕掛けたギミックです、その身を以て味わって下さい」
『ば、馬鹿な! これでは貴様まで――』
 カッ、と。二人の頭上で蠢いていた不穏な黒雲が光った。
 そして、終末機構群――天より降り注ぐ甚大なダメージを与える雷が降り注いだ!

『ぐああああ……ッ!』
「……あ、あれ、思ったより痛くない……?」

 元より一人では倒せる相手ではない、相討ち覚悟での策であった。
 だが、ここぞという所で薙人を守ってくれたのは、モコモコのサンタ衣装であった。
(「期間中最強防御力の名は、伊達ではなかったということですね……」)
 着ていて良かった、期間限定サンタ装備。
 捨て身の作戦は、バグ・ノーブルに一方的な大ダメージを与える結果となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
先程とは雰囲気がシリアスに変わったような気がします。
……先程の方々は名前自体がやや残念ではありましたし。

あえてギミックを利用するのも面倒ですよね……直線範囲とやらも実際に見ないとその幅によって回避の難易度がわかりませんし。
ですから召喚ではなく複製で参りましょう。
雷鳴にて複製した鳴神がある限り連続攻撃をしかけ、口頭の命令を防御にだけ集中させます。
私は鳴神を操作しながらも攻撃に紛れるように近づき、雷鳴が途切れたと思わせた瞬間、すなわち防御を崩した瞬間に青月で直接攻撃をします。
サンタ服の防御力に頼った方法ではありますが、でもせっかくのサンタ服ですし、ね。



●終末機構群、起動せず
 バグ・ノーブル。その名の通りバグプロトコル化する前は貴族のNPCだっただけはあり、先程のトンチキ度合いとは打って変わって、油断ならない気配を漂わせていた。
「先程とは雰囲気がシリアスに変わったような気がします」
 夜鳥・藍は、率直な感想を口にする。
「……先程の方々は、名前自体がやや残念ではありましたし」
『クリスマス期間限定イベントを台無しにする、という私の目論見に深く賛同してくれた同志ではあったのだがな……如何せん、貴様の言う通り色々と残念な連中であった』
 バグ・ノーブルの方でも、配下にしたクリスマス台無し男に対しては|そういう《・・・・》認識を持っていたことが判明した瞬間だった。
「ならば、ますます気を引き締めて戦わなければなりませんね」
 藍はそう言うと、天を覆う黒い雲を見上げた。恐らくは、あの雲こそが|終末機構群《エンドコンテンツギミック》の正体なのだろう。あからさまに怪しいからすぐ分かる。
『連中の仇を討つ、という訳ではないが……』
 バグ・ノーブルが、何やらじゃらじゃらと音を立てて小さな金属製の『何か』をばら撒いた。それらは宙に浮かび、バグ・ノーブルの周囲を取り囲む。
『忠義に殉じたことには報いねばならぬ、今度は私が相手をしよう』
「もとよりこちらも戦うつもりでしたので、望むところです」
 藍も視線をバグ・ノーブルへと戻し、凜然と言い放つ。至極真っ当な、真面目な戦いが、今まさに始まろうとしていた。

(「あえてギミックを利用するのも、面倒ですよね」)
 神器のひとつとされる天叢雲剣「鳴神」を手に取りながら、藍は思考を巡らせる。
(「直線範囲とやらも、実際に見ないとその幅によって回避の難易度がわかりませんし」)
 利用してもいいし、しなくてもいい。そう言われた。
 ならば、後者を選んだっていい訳だ。
 自分が条件を満たさず、相手にも条件を満たさせない――これで、凶悪と呼ばれる|終末機構群《エンドコンテンツギミック》を完全に封じることができる。そういう戦い方だって許される、別に何の問題もないというもの。
『……む?』
 バグ・ノーブルが藍の動きを見て、一瞬訝しむ声を上げた。
「響け! 【|雷鳴《ブロンテス》】!」
 藍が天高く掲げた鳴神が、ユーベルコードの発動と同時に百を超える数に『複製』される。これは決して召喚ではないため、終末機構群の起動には引っかからない。
「行きます、お覚悟を」
『! 我が勲章たちよ、私の身を守り抜け!』
 藍が複製した無数の鳴神が、念力で全てバラバラに操作され、四方八方からバグ・ノーブルに迫る。
 それをバグ・ノーブルは金属製の小さなもの――自らの身分を証明する『武器』たる勲章でことごとく弾き返す。
「くっ……」
『数には数を、か……』
 小さな勲章ごとき、神器で一撃のもとに砕けるかと思いきや、流石は貴族社会の武器としてみなされる道具。そう容易くは砕けず、藍の神器から主をしっかり守っている。
(「こうなったら、根比べですね」)
 幸いなことに、バグ・ノーブルが防御に徹しているおかげで、藍は神器による苛烈な攻撃を止めない限り押し込むことが可能だ。
 じり、じり。
 気取られぬように、じわじわとバグ・ノーブルとの間合いを詰めていく藍。
『貴族の私を相手に、よくぞここまで立ち回れるものよ……!』
「今のあなたはただのバグプロトコル、貴族の誇りなど微塵も感じられませんが」
 じり、じり。
 口撃を交わす隙にも、鳴神の複製を操作する集中力は切らさず、藍はどんどん間合いを縮めていく。

「……っ、はあ、はあ……」
『……ハハハ! 流石に集中力が切れたか、娘!』
「……なんて、思いました?」

 藍がよろめいた『ふりをした』。バグ・ノーブルがそれを見抜けなかった時点で、勝敗は決していたと言っても良かった。
 とめどなく続いた鳴神の攻撃が止んだ――即ち、藍の集中力が切れたと判断したバグ・ノーブルが勲章による防御を解いて反撃に転じようとしたその瞬間を、藍は待っていた。

 ――ざんっ!!

『馬鹿、な……』
 血しぶきの代わりに、ノイズが散る。
 藍が、神速で抜き放った打刀「青月」でバグ・ノーブルを袈裟斬りにしたのだ。
『貴様、私の反撃が間に合っていたら、死んでいたのは貴様の方だったのだぞ……!?』
「いいえ、それはあり得ません」
 打刀を鞘に収めながら、藍は服を――装備していたイベント限定サンタ衣装をつまんだ。
「この期間限定最強装備がある限り、大丈夫だと信じていましたから」
 せっかくのサンタ衣装だもの、利用しない手はないと。
 藍は全てを織り込み済みで、立派に戦い抜いたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルナ・キャロット
白黒貴族イケメン……かっこいいけどケモ度が足りません!
ギミックゲーには慣れてますよ!有効活用したいですね

双剣突撃です!ジャンプで飛び入って密着しに行きます
武器いっぱい飛んできても双剣乱舞ではじきながらゴリ押しますー!
そのまま満月召喚です!これでギミック発動するはず
時間ギリギリまで攻撃しまくって直前逃げです!最悪イベント服の防御力と回復バフがあるので当たってもいいくらいでいきます。
(極大ダメージが思ってたよりやばい感じだとビビる兎)
逃げようとしても連続攻撃能力アップで逃しません!ザックザクです!



●ケモ限定ギミックも存在しそうなGGO
 ルナ・キャロットは、バグ・ノーブルに遭遇するやいなや、その全身を上から下まで舐めるように観察した。やだ、この姫兎ちゃん視線がめちゃくちゃいやらしい……。
『な、何だ貴様は。不躾な輩め』
「白黒貴族イケメン……かっこいいけど、ケモ度が足りません!」
『勝手に人を値踏みして不満げな顔をするのは止めろ!』
 ルナにとって最も重要なのは、そう、ケモ度がどれだけ高いか! ただでさえ人型NPCが圧倒的多数で、ルナ(の中の人)のケモナーとしての需要を満たしてくれるNPCとの出会いはそうそうないというのに、お前もかバグ・ノーブル! という心地なのだった。
『そうは言うがな貴様、私の姿がもしも獣に近かったとしたらどうしたのだ』
「それは……」
 逆に問われて、思わず言葉に詰まるルナ。
 バグ・ノーブルの姿がケモケモしていたとしたら……多分、倒せない……。
 だから、逆に人型で良かったのだ。心置きなくぶちのめせると思えば、惜しくはない。
「やめやめ! この話はこれでおしまいです!」
『貴様が始めた話であろう!?』
「そんなことより、ソロ周回の鬼と呼ばれた私です! ギミックゲーには慣れてますよ!」
 割とけしからんお胸をむんっと反らして、ルナはかかって来いと言わんばかりに言い放った。
「有効活用して、双剣の錆にしてくれます!」
『……言ったな子兎、では狩りの時間と行こうか!』
 殺るか、殺られるか。戦いの火蓋はここに切られたのであった。

 ルナが自らの手足が如く使いこなす双剣が抜き放たれ、軽やかかつ勢いのあるジャンプで一気にバグ・ノーブルの懐深くまで突撃し、密着を狙う!
『くっ、妙に破廉恥な格好をしていると思ったら、貴様は聖剣士(グラファイトフェンサー)か……!』
 バグ・ノーブルはルナの脅威的な身体能力を見るや、即座にジョブとその特性を見抜いて納得を得る。だが、それだけでは終わらない。
『我が誇りを示す勲章たちよ、我が身を守れ!』
 主の命令を口頭で受けたバグ・ノーブルの所持する金属製の勲章がばら撒かれ、ルナの飛び込みを阻止せんと一気に飛来する!
「数打ちゃ当たると思いました? 残念、こっちは双剣さえあれば……こうです!」
『なっ、斬撃が……見えないだと!?』
 きん!
 きぃん!
 がきん!!
 金属と刃が激しくぶつかり合う音が響き渡り、勲章が次々と叩き落とされていく。ルナの乱舞とも言える双剣捌きが、血路を切り拓いたのだ。

 ふわっ。

 ご自慢のたれ耳をゆらりとたなびかせて、ルナはバグ・ノーブルの懐に入り込む。
 ルナの顔は地面を見ていて窺い知ることはできないが、その時、金の右眼が妖しく輝いていた。
 ――【フルムーンビースト】、発動の時だ!
『満月を……』
 バグ・ノーブルは、黒雲を通してなお輝く『満月』を見た。
『召喚したな、子兎!』
(「よし、これでギミック発動するはず。狙い通りです!」)
 地面に真っ直ぐに伸びる、不穏な光る帯状のエリアの中に、二人は居た。
 バグ・ノーブルが勲章に防御を任せてエリア外に離脱していこうとするのを、キッと顔を上げたルナが再び双剣の乱舞で圧倒し、その場に足止めをする。
『……っ、貴様、このままでは』
「こういうのは、時間ギリギリまで攻撃しまくって直前逃げするんですよ!」
『メタな攻略方を解説せんでよろしい!』
 ある意味しっちゃかめっちゃかなルナとバグ・ノーブルの攻防が続く中、範囲攻撃対象エリアの光はどんどん強まっていく。
 それと共に、頭上に広がる黒い雲が帯電していくのが目に見えて分かった。
(「あ、極大ダメージってもしかして……雷系ですかね……?」)
 それは確かにまともに喰らうとヤバそうだ。獣の勘というべきか、本能的に身の危険を感じたルナだったが――それを上回る『決意』があった。
「今の私には期間限定イベント装備のきゃわいいサンタ衣装があります!」
『どうした急に』
「最悪、このイベント特効の防御力と満月による回復バフがあるので、巻き込まれても構わないってことです!」
『貴様……!』
 捨て身の獣は恐ろしい。バグ・ノーブルは何とか攻撃範囲から逃れようとするも、ルナの鬼気迫る双剣乱舞を勲章で防ぐのが精一杯。
(『この子兎……攻撃のスピードが先程からさらに上がっている、だと……!?』)
「やああああああああっ!!!」
 達人の領域に至った双剣使いの腕前、とくとご覧じろ。
 バグ・ノーブルはその場に完全に縫い止められ、範囲からの離脱が叶わない――!
「ザックザクです! ケモじゃないあなたに用はありません!!」

 ――カッ。

 一撃離脱とは、まさにこのこと。
 ルナは無事、勲章の防御を掻い潜って双剣の連撃を叩き込み、ギリギリのところで終末機構群の範囲から離脱した。
『ぐ……あ……っ!』
 自らが仕掛けたギミックに撃ち抜かれ、ルナの斬撃も相まって、バグ・ノーブルは大ダメージを受けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テッカ・ロールナイト
終末機構群、何かヤバそうだなッ!?
効果は『召喚系ユーベルコードの使用』によって『範囲内極大ダメージ』ギミック発動だとぉッ!?…俺、召喚系無いけど。
………(ニヤァ)
突撃じゃあああッ!

はっはっはっ、残念だったなッ!このまま一直線でぶった斬ってや…る…?
あれ?なんか貴族っぽい武器が一斉にこちらに……。

うおおおッ!?【ワイルドアクセル】&急旋回ッ!
ダッシュで攻撃を回避してやるッ!そのまま攻撃を掻い潜って接近だッ!
接近したらエンジンブレイドを叩き付けるぜッ!
防御されるかもだが関係ねぇッ!今のおれは攻撃力カンストのぶっ壊れ装備身に付けたサンタさんだぜッ!このままぶち抜いてやるぜえええッ!!


【アドリブ歓迎】



●メリィィィ、クリスマァァァス!!!(二回目)
 テッカ・ロールナイトは基本的に『エンジョイ勢』と呼ばれる『楽しければオールオッケー』なプレイスタイルでこのゴッドゲームオンラインの世界を楽しんでいる。
 だが、今回のクエストボス戦で発動するという『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』の話を聞いて、流石に真面目に取り組まないと自分が死ぬわコレと考えるようになっていた。
「終末機構群、何かヤバそうだなッ!?」
 そう、ヤバいんです。
「効果は……『召喚系ユーベルコードの使用』によって『範囲内極大ダメージ』ギミック発動だとぉッ!?」
 ヤバいじゃん。どどどどどーすんの、テッカさん!?

『フッ……恐れおののくが良い、哀れな平民よ。我が仕掛けた終末機構群は……』
「……俺、召喚系無いけど」
『えっ』

 バグ・ノーブルがテッカの様子を見ては悦に入っていたところに、コレである。
『……私に傭兵を召喚させることもできないのか?』
「……(ニヤァ)」
 せっかく用意したギミックを結果的に無効にされるのは、正直残念なバグ・ノーブル。何とかならないかとテッカに確認してみるが、返ってくるのは不敵な笑みばかり。
 クールに戦術的回避をされるのは、それはそれで策士相手ということで戦い甲斐があったけれど、手段がないから実質無効化というのは……その、何だ、切ない……。
「突撃じゃあああああッ!!!」
『おのれえええええ!!!』
 ギミック抜きのガチンコバトル、ここに開幕である。

 もはや戦友とも呼ぶべき武器になったエンジンブレイドを構えて、テッカは駆ける。
「はっはっは、残念だったなッ! このまま一直線でぶった斬ってや……る……?」
 終末機構群さえなければ余裕じゃん、余裕。そう思っていた時期が、テッカさんにもありました。
 ところがどっこい、バグ・ノーブルが貴族社会に密着した武器として愛用する金属製の勲章の数々をテッカに向けて浮遊させている姿を見て、考えを改めた。
『行け、我が敵を討ち滅ぼせ!』
「うおおおおッ!?」
 ひとつひとつは小さな勲章でも、作りは金属。それが猛スピードでいっせいに飛来してきたら。その直撃を喰らったとしたら。それを想像できないテッカではなかった。
 ヤベえヤベえと咄嗟に発動したのは、今やテッカの代名詞とも言える【|魔喰技能【魔猪の剛脚】《イータースキル・ワイルドアクセル》】! 常人であれば回避不可能であったろう勲章の攻撃を、脅威的な勢いの急旋回で紙一重の回避を見せた。お見事!
『何だ、今の化け物じみた動きは!?』
「へッ、魔喰者(モンスターイーター)を舐めんなよッ!」
 何のモンスターを魔喰しまくったかは企業秘密なのでナイショだが、とにかくテッカはこの|技能《ユーベルコード》を会得するまでめちゃくちゃ頑張った。もう魔喰者は産廃職だなんて言わせない。
(「よしッ、このまま攻撃を掻い潜って接近だッ!」)
 地面が抉れるほどの勢いで再び方向転換をして、テッカは再びバグ・ノーブル目がけて突進を開始する。
『勲章よ、私を守れ!』
 今度は勲章を防御に使用して、厚い壁のように固めてテッカを遮ろうとするが――。
「オラァッ!!!」
 ダイナミック防御破壊! 猛ダッシュの勢いをそのままに、エンジンブレイドを叩きつけて勲章の盾を木っ端微塵に粉砕したのだ。
『ち、近付くな、それ以上は……』
 流石の勢いに、バグ・ノーブルが一歩、二歩と後ずさる。
 だが、貴族の矜持なのか逃げ出すことはしなかった。
 そしてテッカは止まらない。遂にバグ・ノーブルの懐に潜り込むと、エンジンブレイドを全力で叩きつけるべく、遠心力を利用して横薙ぎに振るう!

「防御されるかもだが関係ねぇッ!」
『ぐ、ぐううううっ! 勲章よ、戻れ……! 急げ……!』
「今の俺は! 攻撃力カンストのぶっ壊れ装備身に付けたサンタさんだぜッ!」
『待て、話せば分かる、その件に関しては……』
「このままぶち抜いてやるぜえええええッ!」

 ――どごぉッ!!!

 バグ・ノーブルが呼び戻そうとした勲章たちは、間に合わず。
 テッカサンタ渾身の一撃は、バグ・ノーブルの脇腹をしたたかに打ち据えた。
 多分GGO内で一番カッコいい魔喰者サンタさんからの、クリスマスプレゼントだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
【竜鬼】

召喚で発動するギミックですか……
わたしだとどう動いても発動しますよねコレ。(WIZ特化&ほぼ全コード召喚系)
ならばいっそ、逆利用させて頂きましょうか。

【電脳探査・雷の精霊さん】発動
コレでギミック発動させつつ、召喚したメディア(銃弾型)を精霊銃に装填
敵の足元に撃ち込み外したように見せ掛けつつ、召喚されたNPCとリューさんの戦闘を電撃弾で援護
そのまま、二人で警告エリアに留まります
狙いは、電子幽霊でもある雷の精霊さんたちによるギミックプログラムの書き換え
攻撃範囲を逆転させることで、警告エリアを安地に、それ以外を危険地帯にして敵にギミックダメージを与える狙い

策士、策に溺れるというやつですね!


リューイン・ランサード
【竜鬼】

トラップを仕掛けるのは悪役の常套手段ですし、対応も何通りかありますが、どうしようかな?
と考えていたら、ひかるさんからグッドアイデアが。

前に出て召喚される伝説的な傭兵NPCの相手をします。
シールドバッシュは避けたいので、結界術・高速詠唱で構築した防御壁、フローティングビームシールドの盾受け、見切りによる回避で対応。
ひかるさんには近づけさせません!

ひかるさんの策でギミックが真逆に発動してバグ・ノーブルがダメージを受けたら、UC:極星殲煌弾に光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱を上乗せして使用。
バグ・ノーブルと傭兵NPCに半分ずつ分けて発射。

僕達が力を合わせれば、単なる二人以上の力になりますよ。



●二人なら、どこまでも強くなれる
『おのれ、私がせっかく用意した|終末機構群《エンドコンテンツギミック》を無視して殴りかかってくるとは……蛮族か……?』
 血反吐を吐き捨てながら、バグ・ノーブルは呻く。その辺りはプレイヤーの攻略方法次第なのだから言いがかりも甚だしいのだが、仕掛けを用意した側としては愚痴りたくもなるのだろう。
 何かしらを『召喚する』能力を発動させると同時に起動するギミックは、時に|それを得意技とするものを完封する《・・・・・・・・・・・・・・・・》力を持つ。
 例えばそう、本人はごく普通の少女にして精霊さんたちと心を通わせ、その力を借りて戦う荒谷・ひかるなどは、ほぼ避けては通れないギミックであったと言えよう。
「わたしだと、どう動いても発動しますよね、コレ」
 ひかるは、隣に立つリューイン・ランサードに向けて呟く。リューインはリューインで、どうしたものかと対応策を何通りか考えている最中であった。
「トラップを仕掛けるのは悪役の常套手段ですし……どうしようかな?」
 ううむと頭を悩ませる二人。それを見て、バグ・ノーブルは口の端を上げて笑う。
『どうした、攻めあぐねているといった感じだな?』
「そちらこそ、僕たちの出方を待ってくれるだなんて、余裕ですね」
 リューインが負けじと言い返すと、ひかるがハッとした顔でリューインを見た。
「リューさん、良い作戦を思いつきました!」
 そして、ひかるはリューインの耳元で手を当ててひそひそ話をする。こそこそ。
「……それは、グッドアイデアです!」
「はいっ、早速実践してみましょう!」
 二人は顔を見合わせて、ぱあっと顔を輝かせた。
 バグ・ノーブルにとっては面白くない展開ではあるが、あまりにも歯応えがないというのもいささか退屈が過ぎるというもの。
『良かろう、名案とやら、見せてもらおうか!』
 貴族らしい余裕を見せて、バグ・ノーブルはノイズを散らしながら身構えた。

 ひかるが精霊銃を構え、弾丸を装填する構えを見せる。
「雷の精霊さん、丁寧にお願いね?」
 その呼びかけに応じ、雷の精霊さんが召喚され、銃弾型の記録メディアがひかるの手の平に乗せられた。うっかりショートや過負荷を起こすこともあったりなかったりするユーベルコードだが、今回は無事何事もなく成功した。
『なるほど、召喚を敢行したか! ならばこちらもそれに応えようか』
 バグ・ノーブルが、傭兵のNPCを召喚してひかるとリューインへとけしかける。
「僕が相手です!」
 リューインが積極的に前へ進み出て、傭兵NPCへと立ち向かう。盾を引いて叩きつけの構えを取る傭兵NPCに対して、フローティング・ビームシールドを滞空させ、得意の結界術を高速で詠唱して防御障壁を拡大展開すると、自らの正面へと浮かべた。
 ばぁん!! と、轟音がして、盾と盾がぶつかり合った。
「くっ……」
 浮かべたビームシールドが吹き飛ばされないようにリューインは何とか堪えつつ、一歩も引かずに傭兵NPCの前に立ちはだかり続ける。
「ひかるさんには、一歩も近づけさせません!」
「リューさん……!」
 リューインの献身に応えるべく、ひかるは精霊銃に電撃弾を装填し、援護射撃よろしく傭兵NPCを狙い――撃つ!
「あっ!?」
『ハハハ、残念だったな小娘。どんな攻撃も当たらなければ意味がないというものよ』
 弾丸は、傭兵NPCの足元を抉っていた。命中には至らず――である。
「ひかるさん、大丈夫です。このまま援護をお願いします」
「頑張ります……!」
 再び、盾と盾がぶつかり合う。
 弾丸が撃ち出され、しかし傭兵NPCには命中せず、地面に着弾するばかり。
 そうこうしている間に、終末機構群が起動する! 弾丸が撃ち込まれた地面に光の帯が走り、バグ・ノーブルは悠々とその範囲外に出て行く。
 追いかけようにもその場を離脱しようにも、傭兵NPCが剣と盾による攻撃で足止めをしてくるものだから、二人は警告エリアから動くことができない。
「ひかるさん……っ、僕は大丈夫ですから、ひかるさんだけでも」
「ダメですっ! リューさんを置いて逃げるだなんて絶対にダメですっ!」
 警告エリアの光が強まっていく。
 3、2、1……。

 カウントダウンが始まり、ゼロになった瞬間。
 突如として光の帯――攻撃範囲が『反転した』!
『ぎゃあああああ!!?』
 安全地帯に逃れていたはずのバグ・ノーブルが、極大ダメージを与える落雷に打たれて絶叫を上げる。一体、何が起こったのか?
 召喚主であるバグ・ノーブルが強烈なダメージで地に伏したためか、傭兵NPCがその姿をフッと消す。召喚を維持する力も尽きたのだろうか。
 そこで、本来攻撃範囲内に立っていたはずのひかるが、リューインに守られながら口を開いた。
「弾丸を外したのは、|わざとです《・・・・・》」
 今度は、ひかるが不敵な笑みを浮かべる番だった。
「私が撃ち込んだ電撃弾には、電子幽霊でもある雷の精霊さんたちが宿っていました。わたしがお願いして、ギミックプログラムを書き換えてもらったんです」
『何、だと……?』
 地面に倒れ伏していたバグ・ノーブルが、震えながら上半身をもたげた。
「攻撃範囲を逆転させることで、警告エリアを安全地帯に、それ以外を危険地帯にして、あなただけにダメージを与える狙いでしたが、無事成功して良かったです」
『ギリギリまで私に気取られないよう、小芝居までしたというのか……』
 歯噛みするバグ・ノーブルに対し、ひかるは言い放つ。
「策士、策に溺れるというやつですね!」
『くっ……!』
 起き上がることができずにいるバグ・ノーブルに向かい、リューインが進み出た。
「これで終わりだと思われては、困ります」
 リューインはここまで、耐えに耐えた。傭兵NPCの苛烈な攻撃からひかるを、そして自分の身を守り抜いた。今度は、リューインの番だ!
 すいっと右腕を天高く突き上げると、ギミックの肝であった黒い雲が渦を巻いて穴を開ける。日が落ちかけた、夕暮れ時の空が見えた。
「天の中央に煌めく星よ」
 薄ら明るい空に、小さな輝きがいくつも生じる。
「我が元に来たりて、全ての存在を貫く槍光となれ――!」

 ――その名は、【|極星殲煌弾《キョクセイセンコウダン》】。
 どんな護りをも貫き、敵を穿つ光の槍を無数に放つ超常。
 リューインはそれに光の力と、己が持つありったけの魔力をつぎ込んで、叩きつけた。

『――』
 慢心というには、哀れであったろう。よもやまさか、己が仕掛けがギミックを逆に利用されようとは、想像だにしなかっただろうから。
 まんまとしてやられたバグ・ノーブルは、蒼き光の槍に貫かれ、再び地に伏した。
「僕達が力を合わせれば、単なる二人以上の力になりますよ」
 力強く言うリューインに、寄り添うひかる。
 この二人の前に、きっと、敵う相手はそうそういまい。バグ・ノーブルとて、例外ではなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御桜・八重

【御鏡桜】

以前戦争で知り合ったシルバーレインの幸四郎を呼び出す。
(サクラミラージュの従兄と同一存在)

あはは幸にぃ、忙しいとこごっめーん♪(てへりんこ)
それはともかく、盾持ってたよね。なんでも跳ね返すやつ!
あのね……(ゴニョ)

せーの、ふーっ!(分身ズ召喚)
蜘蛛の子を散らすように広がる自分と同じサンタ姿の分身ズ。
一部は周囲に身を隠し、
残りは幸にぃと一緒にノーブル・ドミナントを迎撃!

分身召喚に終末機構群が反応したら、幸にぃの後ろに退避。
分身ズと力を合わせて背中を支えます!
受けきったら反撃開始。
潜んでいた分身ズがバグ・ノーブルに群がって、
雑霊弾の着弾まで抑え込む!

あ、はい。お疲れさまでした!(敬語)


御鏡・幸四郎

【御鏡桜】

急に呼び出して何事かと思えば……
八重。今はクリスマス直前です。
今の私の戦場はここではなく、自分の店なのですよ。

盾?
ありますが……ふむ。
よし、速攻でカタを着けますよ。(サンタ姿で)

ノーブル・ドミナントの攻撃は射撃、斬撃で払い落します。
口頭の命令で動くなら口元の動きでタイミングは測れるはず。
合間を縫ってバグ・ノーブルを撃ちますが、本番は八重が召喚したその時。

「私の後ろへ!」
詠唱銃にルークのピースを籠めてUC発動。
巨大な盾を構え八重と分身ズを庇います。
直線攻撃ならこの盾が必ず防御する。そして、
「行きなさい!」
バグ・ノーブル目掛け、無数の雑霊弾が盾から発射されます。

では、帰ります!(転送)



●ご多忙の中恐れ入ります
 森の奥の開けたエリアで、御桜・八重とバグ・ノーブルが対峙してにらみ合っていた。
『サンタ衣装をこれでもかと着こなして、浮かれ気分なことだ』
「そう思うなら、あんたも着ればいいじゃない。バグプロトコルなんだから、早着替えくらいできるんでしょ?」
 イベント限定サンタ衣装は、バグプロトコルにも適用されるのだろうか。もしも適用範囲内だとしたら、攻略難易度が爆上がりしてしまうが大丈夫なのだろうか。
『ふん、私はクリスマスイベントを乗っ取った身。その私がサンタ衣装など、散っていった部下たちに示しがつかぬ』
 何だか、妙なところで律儀なお貴族様であった。
「その、クリスマス限定クエストなんだけど……」
 バグそのものは未だ解決していないが、道中の邪魔者たちはひとまず排除してきた。レーシュの街でクエストを受注さえしていれば、最強装備のサンタ衣装を身につけた状態で真っ直ぐこのボスエリアまでたどり着くことができるだろう。

「急に呼び出して、何事かと思えば……」

 そんな訳で、ぜえぜえと肩で息をしながらボスエリアに到着した人影がひとつ。八重の従兄である御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)だった。
『何だ小娘、一人では敵わぬと思い仲間を呼んだのか』
「何とでもどうぞ!」
 肩をすくめるバグ・ノーブルに向けてあっかんべーをする八重。そんな八重に向けて、幸四郎は真顔でこう言った。
「八重、今はクリスマス直前です。今の私の戦場はここではなく、自分の店なのですよ」
「あはは幸にぃ、忙しいとこごっめーん♪」
 反省しているのかしていないのか、てへりんことウインクする八重を見て、だんだん渋い顔になる幸四郎。
 幸四郎の言い分は至極もっともで、クリスマス直前のお菓子屋さん即ち戦場というのは決して過剰な表現ではない。文字通りの過酷な戦場である。有難いことにクリスマスケーキの予約が殺到し、当日購入分の用意も必要とあらば、既に|そこ《菓子工房》は死地も同然。菓子職人は武器をお菓子作りの道具に持ち替えた戦士となるのだ。
 そんな超絶多忙な幸四郎をわざわざ呼び出して、八重はどうしようというのか。
「それはともかく、盾持ってたよね。なんでも跳ね返すやつ!」
「盾? ありますが……」
「あのね……」
「……ふむ」
 手短に交わされたひそひそ話で、二人の意思疎通はおおよそ完成した。余裕の面持ちで構えていたバグ・ノーブルに対し、サンタ衣装の二人は改めて向き直る。
「よし、速攻でカタをつけますよ」
「がってん承知!」
『そうそう貴様らの思い通りには行かんぞ、思い知るが良い!』
 八重と幸四郎が散開すると、バグ・ノーブルもたくさんの勲章を宙にばら撒いた。

 バグ・ノーブルが『貴族社会に密着した武器としてみなしたもの』の最たるものが、ばら撒かれた金属製の勲章たちであった。貴族としての身分を証明するものとして、これ以上に分かりやすいものはない。
『勲章たちよ、我が敵を蹴散らせ!』
 こうして口頭で命令することによって、自らの手足が如く操作することができるのだ。
(「なるほど、思った通り」)
 幸四郎は冷静に、バグ・ノーブルから視線を外さずにリボルバー式ガンナイフを構える。
(「口頭の命令で動くなら、口元の動きでタイミングが容易に計れます」)
 飛来する勲章の群れを、的確な射撃と斬撃で次々と弾き返していく幸四郎。その合間を縫って、反撃の銃撃をくれてやるが、今度は勲章が防御に転じて弾き返される。
「八重!」
 だが、それで良かった。本命は、八重の行動だったのだから。
「せーの、ふーっ!」
 八重が手の平に乗せた桜の花弁を思い切り吹き散らすと、舞い踊る花弁が次々と小さな八重の姿に変じていく。それらは皆、八重と同じサンタ衣装を身に纏っていた。
「行けっ、分身ズ! あ、みんなで行かないでね。ちょっとだけ残っててね」
 召喚された分身たちは八重の言うことを良く聞いて、一部が周囲に身を隠し、残りは幸四郎と共に迫り来る勲章を打ち返す。

『喚んだな? 小娘!』

 バグ・ノーブルが勝ち誇ったように笑う。|終末機構群《エンドコンテンツギミック》が反応し、地面が帯状に光り出す。
「これが、攻撃範囲……!」
「私の後ろへ!」
 幸四郎が鋭く言いながら、ガンナイフを詠唱銃に持ち替える。そして、手元も見ずに素早くチェスの駒――ルークのピースを籠めて構えると、前方に向けて発砲した。
 これこそが、【|雑霊障壁《ゴースト・ウォール》】! 幸四郎の正面には巨大な雑霊の盾が出現した。それを構えて、後方に避難してきた八重と分身たちを庇う姿勢を見せる。
 だが――。

『ハハハ、愚か者どもめ! その目で天を仰ぎ見ろ!』
「な……!?」

 二人の――特に幸四郎の戦闘経験が、この場では仇となった。『直線範囲』と聞けば、銀の雨降る世界の能力者は『真っ直ぐに迫ってくる攻撃』と解釈するのが一般的だ。
 だが、今回の終末機構群がもたらす攻撃範囲は『直線範囲内全ての存在に極大ダメージ』という意味合いだったのだ。バグ・ノーブルの言葉通りに頭上を見上げた二人は、帯電する黒雲を目撃する。この光る範囲の中に居ては、|頭上からの攻撃をまともに喰らう《・・・・・・・・・・・・・・・》!
「幸にぃ!」
「間に合え……!」
 上から来るなら、盾の向きを変えるのみ!
 幸四郎は巨大な盾を天高く掲げ、必死に支える。八重も一緒に支え、攻撃に備えた。

 ――どぉ、おん!!!

 轟音が鳴り響き、激しい衝撃が盾を伝って二人に届く。
「くう、っ……!」
「……あれ、成功した……?」
 咄嗟の判断だったが、攻撃が飛んでくる方向にさえ盾が向いていれば、そのエネルギーを吸収し蓄積することで必ず防御するという効果を活かすことが可能だったのだ。
『防いだか、小賢しい連中よ……!』
 攻撃範囲外から様子をうかがっていたバグ・ノーブルが忌々しげな顔をする。次は攻撃をするべきか、反撃に備えるか、思考を巡らせていたそこへ、幸四郎が鋭く言い放った。
「行きなさい、雑霊たち!」
 極大ダメージをもたらすエネルギーをたっぷり吸収した盾から、強烈な威力を伴う雑霊弾が無数に放たれる。ならばと勲章たちを防御に向かわせようとした、その時だった。
「分身ズ、今だよ!」
 周囲に潜んでいたミニ八重サンタたちが、ワッとバグ・ノーブルに飛びかかり、押さえ込んでその動きを封じたのだ。
『なっ……止めろ、この雑魚風情が!』
「うちのミニ八重を舐めると、痛い目見るんだから!」
 群がられて、簡単に振りほどけるかと思いきや、全然身動きが取れないではないか。
 そうこうしているうちに、バグ・ノーブルに雑霊弾が思いっきり着弾した。
『ぐあああああ!!!』
「やった!?」
「そういう台詞はフラグになるから止めなさい、八重」
 雑霊弾を撃ち尽くした盾は消滅し、幸四郎は冷静に八重をたしなめる。
 その視線の先には、地面に倒れ伏すバグ・ノーブルの姿があった。
「……大丈夫そうですね。では、帰ります!」
「あ、はい、お疲れさまでした!」
 どうやら本気で速く帰りたかったらしかった幸四郎の様子を見て、思わず敬語になる八重。これは、ひと段落したら何かしらのお礼をしないといけなさそうであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユニ・エクスマキナ


んー……終末機構群ってどんな感じなんだろう?
きっと、考えるよりも直接見た方が早いのね

あ、今使った?
何だろ?いきなり目の前に謎の線が……っ!?
この中にいちゃダメってこと?
傭兵NPC邪魔っ(盾の攻撃を本で防ぎ

(線の外へ避難しつつ敵の動きをじっと観察
ふむふむ敵もこのタイミングで逃げるのね
なるほど…
じゃぁ、さっきの技をもう一度、ユニも使っちゃうのねー!
さっき貴方の動くタイミングは見てたから
その動きを予測して先回りさせた傭兵NPCで足止め
範囲外には逃がさないもーん!
その隙にユニは範囲外に逃げるっ!
間に合わなくてもこのサンタ衣装でなんとかなる…よね?

初めてだったけど、ユニ、上手に真似出来てたでしょ?



●録画して、再生して、真似をする
 サンタ衣装を着こなしてクリスマス台無し男たちを蹴散らしたユニ・エクスマキナは、森の奥にある開けたエリアに到達した。
 目に飛び込んできたのは、変わらずバグに侵食された森の景色と、天を覆う黒い雲。そして、諸悪の根源ことエリアボス、バグ・ノーブルの姿であった。
『まだ来るのか、邪魔者どもめ……今度こそ|終末機構群《エンドコンテンツギミック》の餌食にしてくれようぞ!』
 既に何度かご自慢の終末機構群を逆に利用されてダメージを負った身とは思えぬ発言で、ユニを迎えるバグ・ノーブル。学習ができない残念なAIなのだろうか。
(「んー……」)
 終末機構群が恐ろしいものだとどれだけ聞かされても、どうにもピンと来ない。
(「終末機構群って、どんな感じなんだろう?」)
 考え込むユニを見て、恐れおののいたかと思い込んだバグ・ノーブルが、悪そうな笑みを浮かべながら天を指差した。
『今までは後れを取ったが、今度はそうは行かぬ! 先手必勝よ!』
 その声と共に、ユニの足元が帯状に光り出す。
「きっと、考えるよりも直接見た方が早いのね……あ」
 この、目の前に突然現れた謎の線は何だろう?

「もしかして、今、終末機構群使った?」
『使ったとも! さあ、伝説の傭兵に足止めされて大人しく喰らうが良い!』

 実際に終末機構群が発動したことで、ユニもとうとう気付きを得た。
「この中にいちゃダメってこと? って、きゃー!」
 ならばと急いで光の帯の範囲外に逃れようとするユニを、傭兵NPCの盾による痛烈な打撃が襲う! 間一髪、分厚い取扱説明書でそれを防ぎ、手の痺れをこらえながら、今度はユニが取扱説明書を傭兵NPC目がけて叩きつけた!
「もう! 邪魔しないの!」
 一撃離脱で光の帯の中から抜け出した瞬間、範囲内に天より降り注ぐ激しい雷が襲いかかり、逃げ遅れた傭兵NPCがじゅわっと蒸発する。すごい威力だった。
『チッ、間一髪で逃れたか……』
 貴族らしからぬ舌打ちをするバグ・ノーブルは、何やら一人で納得しているユニの姿を目にした。その視線は、じっとこちらに向けられているではないか。
「ふむふむ、敵もこのタイミングで逃げるのね」
 なるほど、と深く頷くユニは、その実すごい勢いで状況を把握していた。やはり実際見てみるに限る――とは言うものの、理解力が尋常ではない。
(『この娘、何を企んでいる……!?』)
 愛らしいばかりだと思っていたユニから不穏な気配を察知したバグ・ノーブルは、再び傭兵のNPCを召喚して、今度こそ終末機構群で葬り去るべく身構えた。
 対するユニは、空中にディスプレイを展開させ、先程の傭兵NPCによる一連の攻撃を再生させた。そして、それを確認すると、元気良くこう言った。
「じゃぁ、さっきの技をもう一度、ユニも使っちゃうのねー!」
『何っ!?』
 バグ・ノーブルが驚愕の声を上げるのも無理はなかった。ユニが、伝説的な傭兵のNPCをそっくりそのまま自分と同じように召喚してみせたからだ。
「さっき貴方の動くタイミングは見てたから……」
 二人の召喚行使により、再び終末機構群が起動し、地面に光の帯が走る。
『どういうことだ……!? 私の能力を複製したというのか!?』
 予想だにしなかった事態に、思わずうろたえるバグ・ノーブル。とにかく光の範囲外に逃れなければと動くその行為自体、ユニにはお見通しであった。
「範囲外には、逃がさないもーん!」
『がっ……!』
 先回りさせた|ユニの傭兵NPC《・・・・・・・・》の方が、ユニ本人がバグ・ノーブルの動きを把握していたために先手を取る! 盾による強かな打撃で、バグ・ノーブルをその場に一時昏倒させた。
「その隙に、ユニは範囲外に逃げるっ!」
『――』
「えっ!?」
 猛然と光の帯から抜け出そうとしたユニの足を、バグ・ノーブルの傭兵NPCが掴んだのだ。危うく転びそうになるところを何とか堪えたものの、足の部分が範囲内に留まっている……!

 ――どぉん!!!

 強烈な雷の攻撃が降り注ぐ音がして、ユニはぎゅっと目をつぶった。けれど――痛くない?
 恐る恐る足元を見れば、サンタコスチューム一式に含まれていたブーツが、しっかりとユニの足を守ってくれていたのが確認できた。
「さ、サンタ衣装、すごい……!」
 一方、シールドバッシュで足止めをされたバグ・ノーブルは極大ダメージの直撃を受け、起き上がれずにいた。
「こういう攻撃を、貴方はやりたかったのね?」
 ユニさん、これまた納得。
「初めてだったけど、ユニ、上手に真似出来てたでしょ?」
 にっこり笑ってそう問いかけるも、バグ・ノーブルからは呻き声しか返って来なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギルフォード・アドレウス


ん〜〜??おっとぉ……。予想に反して見てくれが、普通な奴が出て来たなー

あんな珍獣共の親玉だっつー話だから、パンツ被ったブラジャー姿の変態が出てくると思ったんだがなぁ
はっはっは〜、こりゃ一本取られたわ〜

何を血迷ったら、あんなのを配下に加えんかねぇ
俺だったら…ゴブリンにサンタ帽被せるのが関の山だな、うん

。oO(そんな、ぷりぷり怒られてもなぁ。あんたらプログラムだから融通効かなさそうだし。いやまぁ、同情はしないけどさ)

ぺちゃくちゃ喋って悪かった。俺、喋ってないと落ち着かなくてさ

んじゃま、やりますか

武器が何なのか分からん以上、月輪で氷を駆使して徐々に距離を詰める。飛び道具に対しては、白刃による斬撃波で応戦。明後日の方向に飛ばした斬撃波も誘導して、撹乱
日輪で、周りの焼却出来る物を燃やす。
まぁ、あれだ、要は奴さんに肉薄したい訳だ

肉薄出来たら、UC発動
(右手の篭手が日輪に変化)
3秒間敵を握っててくれ
召喚した座標を参照するなら、敵も巻き込めるはず

え?俺?……逃げるけど?
頑張れ日輪、ナントカナルサ



●軽口サンタさんからのラストプレゼント
 自分で仕掛けた|終末機構群《エンドコンテンツギミック》を散々敵に利用され、既に数度極大ダメージの直撃を喰らっているバグ・ノーブル。
 いくらクエストボスとして持ち合わせている大量の|HP《ヒットポイント》と無駄に高い|能力値《ステータス》をもってしても、あと一度しくじればおしまい、という所まで追い詰められていた。
『よくも、よくもこの私をここまで……! 連中は一体何者なのだ……!?』
 そう歯噛みしているところに、ギルフォード・アドレウスがサンタ衣装姿でゆらりと現れた。彼は満身創痍のバグ・ノーブルを見るなり、少し驚いたような表情を見せた。
「ん~~~? おっとぉ……」
 上から下までジロジロと、遠慮なくバグ・ノーブルを眺め倒す。
『な、何だ』
「ああ、予想に反して見てくれが普通な奴が出て来たなーと思ってよ」
 あからさまに嫌そうな声を上げるバグ・ノーブルに対し、率直な感想を言ってのけるギルフォード。何を想像していたのだろうか。
「あんな珍獣共の親玉だっつー話だから、パンツ被ったブラジャー姿の変態が出てくると思ったんだがなぁ」
『ぐ、ぐぬぬ……アレは、アレはだな、大人の事情でやむを得ず配下になってだな……』
 クリスマス台無し男たちがぶっちゃけイロモノ枠だったことは否定しないらしい、バグ・ノーブルは色々と言いたいこともあろうにそれを飲み込んで有耶無耶にした。
「はっはっは~~~、こりゃ一本取られたわ~~~」
 ギルフォードは赤いサンタ帽の先を揺らしながら、心なしか上機嫌で笑い続ける。
「何を血迷ったら、あんなのを配下に加えんのかねぇ」
 せっかくバグ・ノーブルが誤魔化そうとした辺りを、容赦なく掘り返していく。
「俺だったら……ゴブリンにサンタ帽被せるのが関の山だな、うん」
『何なのだ貴様は先程から! そんなにクリスマス台無し男のことが気に入ったのか!?』
「いや別に、そういう意味じゃねぇよ。まあまあ、そう怒んなって」
 遂にぶりぶり怒り出してしまったバグ・ノーブルを相手に、あくまでも笑うギルフォード。正直なところ、ギルフォード自身に悪気はなかったのだ。
(「あんたらプログラムだから融通利かなさそうだし、まあこういう反応になるわな」)
 先程から猟兵たちに散々いいようにされてきた怒りも相まってか、頭に血が上っているかのように見える。小粋なトークなど、元より期待するまでもなかったが。
(「いやまぁ、同情はしないけどさ」)
 ギルフォードはそう思いつつも、サンタ衣装のまま、頭を掻いてこう言った。
「ぺちゃくちゃ喋って悪かった。俺、喋ってないと落ち着かなくてさ」
『フン、そんなことだろうと思ったわ。口から先に生まれてきたような顔をしおって』
 結構失礼なことを言いながら、バグ・ノーブルは手の中で金属製の勲章を握り込む。
「――んじゃま、やりますか」
『言葉は尽きた、望むところ』
 そして両者は、同時に動き出した。

(「武器はアレか、小さな勲章を飛ばしてアレコレする系ってか」)
 対面するまでどんな武器で攻撃してくるのかについての詳細な情報がなかったため、現地で迅速な判断が求められた。今回は飛び道具であることが分かったので、左手の篭手「月輪」はお休み。その代わりに白刃「|亜覇刀《アハト》」を抜き放ち、鋭く振るうことで斬撃波を生じさせ、飛来する危険な勲章を迎撃する。
『攻めよ! 勲章たち、攻め続けよ! もはや防御は不要!』
「おーおー、覚悟キマってんじゃねぇの」
 明後日の方向に斬撃波を飛ばせば、それにまで反応して勲章が飛んで行く。その反応を巧みに利用して、ギルフォードは自らに迫る勲章の数を徐々に減らしていった。
(「何だ、無駄に開けてる戦場だから燃やすモンもねえな」)
 ギルフォードの狙いはひとつ、バグ・ノーブルに肉薄すること。そのために邪魔な可燃性のオブジェクトがあるならば燃やしてでも排除する腹積もりだったが、どうやらその必要はなさそうだった。
 守りを捨て、攻撃に全てのリソースをつぎ込んだバグ・ノーブルには、大量の勲章による飛び道具の攻撃にさえ対応できれば、じりじりと間合いを詰めることだって可能だ。

 ――が、きィん!!

 ああもうめんどくせえ、と言わんばかりに白刃を横薙ぎに振るえば、武器と化した勲章がまとめて地に落ちた。
『くっ……!』
「悪ぃな」
 その隙を突いて、ギルフォードは一気に地を蹴ってバグ・ノーブルの懐に飛び込む!
「ちょっと手ぇ貸してくんなぁ」
 ニィと笑って、ユーベルコードを発動させた。
 右手が光り、|攻勢機巧《オフェンス・ギア》「日輪」に転じる。これこそが、【|日輪招来《ニチリンショウライ》】なるギルフォードの超常だ。
 劫火を司る巨大な篭手――であった右手は、召喚されるやいなやがっしりとバグ・ノーブルの身体を掴んで拘束した。
『な、何だこの手は! 離せ、離さんか!』
「いいぞ、そのまま三秒間そいつを握っててくれ」
 召喚系ユーベルコードの使用と見なされ、広い戦場を光の帯が照らし出す。その範囲には、ギルフォードとバグ・ノーブルも含まれていた。
『離せと言っている! このままでは貴様も……』
「え? 俺? ……逃げるけど?」
『えっ……ぐえっ!?』
 しれっと言ってのけて、言葉通り光る地面の範囲外に飛び退るギルフォードを見て、バグ・ノーブルが変な声を上げた。同じく驚いた日輪に、力を込めて握られたからだ。

「頑張れ日輪、ナントカナルサ」
『棒読みが過ぎる!!!』

 三秒後。轟音と共に、天より降り注いだ極大ダメージを与える雷が、情け容赦なくバグ・ノーブルを日輪ごと打ち据えた。
『……』
 もう後がなかったバグ・ノーブルは、拘束を解いて手を広げる形でその場に落ちた日輪と共に、地面に倒れ伏す。そして、二度と動くことはなかった。
「俺の得物だぜぇ? これしきのことでそう簡単に壊れてたまるかよ」
 0と1のエフェクトに分解されて、徐々にその姿を消していくバグ・ノーブルを見送りながら、熱を持つ日輪を拾い上げるギルフォード。
 同時に、バグに侵食されていた森のフィールドも、本来の姿を取り戻した。

 ――バグプロトコル討伐クエストは、幾多の猟兵たちの尽力により、見事成功となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『煌めく街灯り』

POW   :    イベントを楽しむ

SPD   :    のんびり街めぐり

WIZ   :    イルミネーションを眺める

イラスト:羽月ことり

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●メリークリスマス・イン・ゴッドゲームオンライン
 猟兵たちがバグプロトコルを撃破してクエストを正常化させたおかげで、一般プレイヤーはもちろんのこと、猟兵たちも道中で仮入手していた期間限定アイテムであるサンタ衣装を無事正式に自分のものとすることができた。
 レーシュの街に戻る頃には、ゲーム内の時間とはいえすっかり日も暮れて、夜空に雪のエフェクトが舞い踊る冬の装いを見せてくれた。
 元々キラキラだった街並みが、クリスマスイベントらしい雪に彩られる。ゲームの世界だからといってしまっては身も蓋もないが、演出の仕方が分かっている運営である。

 さて、このまま直帰で引き上げても良いけれど、せっかくサンタクロースの衣装を手に入れたのだから、クリスマスムード満載なレーシュの街で、少し遊んでいくのはどうだろうか。
 一般プレイヤーたちは思い思いにたむろしてグループチャットに興じていたり、NPCに話しかけると無料でもらえる雪玉を使って雪合戦を繰り広げたり、街外れではイイ感じになった二人が|統制機構《現実世界》のしがらみを忘れるように語り合ったり。
 宿屋のNPCに話しかければ、一階の酒場に入ってクリスマス料理を振る舞ってもらうことも可能なようだ。お祭り期間ということで、お金は取られないらしい。
 つかの間の平和を取り戻したゴッドゲームオンラインのクリスマス、今年の分を楽しめるのは今、この時だけ。
 期間限定イベントの最後を締めくくるお楽しみを、味わってみては如何だろうか。

●できること
 クリスマスらしいことであれば一人でも複数人でも何でもできます。結構自由です。
 また、正常化したクリスマスクエストを爆速でクリアしてきた、というていでこの章のみのご参加も歓迎です。よろしければ遊びに来て下さい。
 グリモア猟兵のミネルバも、ちゃっかりクエストをクリアしてサンタ衣装で街を練り歩いていますので、プレイングでお声掛けいただければ大体のことにはお付き合いできます。初対面の方でも人見知りしませんので、お気軽に構ってあげて下さい。
 酒場での注意事項ですが、未成年の方は飲酒喫煙厳禁です。それだけ気をつけて下さいませ。美味しいケーキやチキンなど色々ありますので、皆で楽しみましょう。
 それでは、メリークリスマス・イン・ゴッドゲームオンライン!
神臣・薙人
×

平和になって良かったです
折角ですから
街を出るまでは限定装備のままでいましょう

そう言えば、ミネルバさんは
バグの影響が残っていないか
チェックされているのでしたね
今までも何度かお世話になっていますし
今回も予知と転送で助けて頂きましたから
私もお手伝いしましょう

ミネルバさんを見付けたら
まずはご挨拶とお礼を
今回もお世話になりました
私にお手伝い出来る事はありますか?
手分けした方が効率が良いかもしれません

おかしな所が無いか確認しつつ
街中を歩きます
何も無ければそれが一番です
それを確認するのも大事ですから
街の皆さんも楽しそうです
これは帰った後にお土産話が沢山できそうです
改めて
ミネルバさん、ありがとうございました



●バグプロトコルのあとしまつ
 バグプロトコルの魔の手によって進行不可となっていたクリスマス限定クエストも、猟兵たちの活躍によって無事正常化した。
 大半の一般プレイヤーは詳細を知るすべもないが、とにかく期間限定クエストが問題なくクリアできるようになったという事実こそが重要で、今やレーシュの街には正式入手した限定装備のサンタ衣装を身にまとったプレイヤーたちであふれかえっていた。
 そんな様子を、神臣・薙人は少し遠巻きにしながら眺めて、しみじみ思う。
(「平和になって良かったです」)
 思えばクエストのキーアイテムとなったレア装備のサンタ衣装だが、受け取った直後こそ『自分には似合わないのでは?』と思ったものだが、いざ装備してちょっとした苦楽を共にしてみれば、案外愛着も湧くというもの。何よりモコモコで暖かくて良い。
「折角ですから、街を出るまでは限定装備のままでいましょう」
 人知れず緩く微笑んで、桜の精のサンタクロースは雪降る街を歩き始めた。

 サンタ衣装のプレイヤーだらけの街並みをゆっくりと歩きつつ、薙人は考える。
(「そう言えば、ミネルバさんはバグの影響が残っていないかチェックされているのでしたね」)
 一足先に限定装備を手に入れていたグリモア猟兵は、事件が終わったら皆をグリモアベースに帰還させるため街にしばらく留まると言っていたが、ついでにその辺りの確認もするとも告げていた気がする。
(「今までも何度かお世話になっていますし、今回も予知と転送で助けて頂きましたから」)
 薙人も同じグリモアを持つもの同士、どうにも放っておけなかったか。
「私も――お手伝いしましょう」
 そんなささやかな決意を胸に、薙人はミネルバを探し始めた。

 レーシュの街はそれなりに広く、しかも建物の屋根の上にも登れたりする上に、今は特にイベント期間中でとにもかくにも人が多い。挙げ句ほぼ全員がサンタ衣装と来れば、その中からミネルバを探し出すのは困難に感じられた。
 だが、薙人は『自分ならこういう場所を確認する』という予想の元で行動範囲を絞って捜索した結果、案外すぐにサンタ衣装のミネルバを見つけることができた。
「あら、薙人じゃない。どうしたの? 楽しんでる?」
 ミネルバが念入りにチェックしていたのは、イベント進行に欠かせない噴水前のNPCだった。きちんとクエストの説明ができるか、限定装備を手渡せるかなどを、新規にクエストを受注するプレイヤーを遠目に見守ることで確認していたのだ。
 そんなミネルバから開口一番問われた薙人は、帽子を脱いでまずは一礼をした。
「ミネルバさん、今回もお世話になりました」
「え、ちょっと待って、そんなに改まらなくてもいいのに」
 こうしてきちんと謝意を伝えられるという経験はそうそうないものだから、ミネルバは思わず両手を振ってあわあわと返してしまう。心なしか照れているようにも見えた。
「バグチェックの最中とのことですが、私にお手伝い出来る事はありますか?」
「やだ、そんなことまで気にかけてくれるの? 何だか悪いわ……」
 ミネルバとしては、ひと仕事やり遂げてくれた猟兵たちには、ゆっくりとこの世界のクリスマスを楽しんで欲しいと考えていたのだろう。薙人のまさかの申し出に、珍しく申し訳なさそうな態度になる。
「手分けした方が、効率が良いかもしれません。よろしければ、協力させて下さい」
「……うう、そこまで言われると無碍にはできないわね……」
 薙人の純粋な厚意が、ミネルバの心を動かした。それじゃあとミネルバは懐から何やら折り畳まれた紙のようなものを取り出すと、薙人に手渡す。
「これ、レーシュの街の地図よ。気になる場所にチェックを入れてあるから、薙人はそうね……ちょうどここ中央広場から北の方を見てきてくれるかしら」
「分かりました、終わったら改めてこの場所に集合で良いですか?」
「ええ、よろしく頼むわね」
 そう言うと、ミネルバは南の方へと向かおうとして――薙人の方を振り返り、言った。
「ありがとう、薙人。限定装備、よく似合ってるわよ」

 街を散策ついでにバグチェックを行うが、あの森で見られたようなあからさまなバグは幸いにして見つけることはなかった。途中でNPCと思しきAIキャラクターに声をかけてみても、お約束のクリスマス限定台詞が普通に聞けるばかり。ある意味安泰だった。
「何も無ければ、それが一番です」
 それを確認することも、大事な仕事だ。決して徒労に終わるなどということはない。
 街で思い思いに過ごす人々の姿はとても楽しそうで、幸せそうで、それを確認できたことも薙人にとっては十分な収穫だった。
(「街の皆さんも楽しそうです、これは帰った後にお土産話が沢山できそうです」)
 銀の雨降る世界でも、きっとクリスマスパーティーが開かれるだろう。その時に今回の一部始終を話したら、友人たちにもさぞや楽しんでもらえることだろう。

 そう考えながら、手分けして街中のバグチェックを終えた二人は再び噴水の前で合流する。ミネルバの方でも、見た限りでは異常は発見されなかったそうだ。
「そうですか、良かったです――改めて、ミネルバさん、ありがとうございました」
 薙人が再び頭を下げると、ミネルバは慌ててその肩に両手を置いて軽く揺さぶった。
「ちょっとちょっと、そんなに改まらなくてもいいから」
 薙人は真面目なんだから、とため息交じりに言うミネルバだが、表情は晴れやかだ。
「でも……こちらこそ本当にありがとうね、いつも力を貸してくれて感謝してるのよ」
 正直、一人でバグチェックをしていたら、恐らくはそれだけでクリスマスが終わっていただろうなあ、なんて考えると、薙人の申し出は本当に助かったのだ。
「今度こそ本当にお疲れさま、せっかくだから楽しんでいってね」
「はい、こうして暖かい限定装備も手に入りましたし、そうさせて頂きます」
 雪降るレーシュの街で、薙人はしばしのクリスマス気分を満喫するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テッカ・ロールナイト
(酒場でクリスマス料理のでかい骨付きチキンに齧りついているテッカ。)

モグモグ、流石神ゲーゴッドゲームオンライン。味まで完全再現とは恐れ入ったぜ。こんなでかいチキンをかぶり付く機会なんて現実でもそうはないんじゃないか?
んぐんぐ、ぷはー。ゲームでも流石に未成年だから酒は駄目だったが大ジョッキにオレンジジュースを飲み干すのは堪らないなッ!あっ、おかわりお願いしゃーっす。
ひゅー、ケーキ丸ごとホール1つを1人で食い荒らすなんてそうできないぜッ!

さてと…腹ごしらえも済んだしサンタ装備が期間限定壊れ装備のうちに経験値や素材を稼ぎに行きますかッ!
今ならどんなモンスターにも負けねえしなッ!


【アドリブ歓迎】



●食べて食べて飲んで喰って
 クリスマスムード一色のレーシュの街で、テッカ・ロールナイトの姿は酒場の一階にある食堂にあった。もちろん、正式入手したつよつよサンタ衣装はそのままである。
 太っ腹なことに、飲食にも一切|T《トリリオン》がかからないということで、テッカは手始めにとびきり大きな骨付き鶏もも肉の照り焼きにがじりとかじりついていた。
 器用に肉をかじり取る姿は、さすが魔喰者(モンスターイーター)というべきか。モグモグと咀嚼して甘じょっぱい照り焼きの風味ともも肉の柔らかさを堪能すると、テッカはご満悦な表情を浮かべる。
「流石、神ゲーゴッドゲームオンライン。味まで完全再現とは恐れ入ったぜ」
 猟兵たちが今まで発見した世界の中でも、トップクラスに文明が進歩していると思われるGGOならではの素晴らしい体験と言えるだろう。テッカも存分にその技術を享受していた。
 骨付き肉は、実際食べてみれば分かると思うのだが、綺麗に食べるのがかなり難しい。骨の間などにどうしても肉が残ってしまったりで、もったいないと思うことも多かろう。
 しかし、前述の通りテッカはある意味食のプロである。でっかい骨付きチキンを綺麗に骨だけにしてみせたのだ。ある意味お行儀が良かった。
「こんなデカいチキンをかぶり付く機会なんて、現実でもそうはないんじゃないか?」
 そう、何から何までがんじがらめの|統制機構《現実世界》においては、日々のささやかな生活ひとつ取っても管理されている。極端な話をすれば、今日は何が食べたいとかそういう欲求さえ抑制されており、日々の食事に至るまで人生設計図に基づいて粛々と提供されるのだから。
 なればこその、ゴッドゲームオンライン。
 統制機構に生きる人々にもたらされた、非合法の楽園。
 テッカは、エンジョイ勢として今日のこの日を存分に楽しむことにした。

「んぐんぐ……ぷはーーー!」
 ドンッと置かれた空のジョッキには、おビール……はまだダメなので代わりにオレンジジュースが注がれていた。チキンとオレンジジュースって結構合うんですよ、分かってらっしゃる。
「ゲームでも流石に未成年だから酒は駄目だったが、大ジョッキでオレンジジュースを飲み干すのは堪らないなッ!」
 テッカさん、めちゃくちゃ食事をエンジョイしてる。良いことです。
「あっ、おかわりお願いしゃーっす」
「あいよ! ケーキももう食べるかい?」
「おなしゃっす!!」
 酒場の女将さんに声をかければ、デザートのケーキの用意にも気を回してくれた。骨付きチキンでベタベタになった手指をおしぼりで拭きながらワクワク待っていると、大ジョッキに注がれたオレンジジュースのおかわりと、ホールケーキがまるごとひとつやって来たではないか。仮想空間での食事とはいえ、どれだけ健啖家なのか。
 テッカは満足げにホールケーキを眺める。クリスマスと言えば――ということで、オーソドックスに苺ショートケーキを選んだが、こちらのお味はどうだろう。
「そいじゃ、いっただっきまーす!」
 元気良く宣言して、今度はフォークを手にケーキに食らいつくテッカ。一口食べた瞬間、テッカは自分の全身に電流が走ったような気がした。
「や……やべぇッ! このケーキ、口の中でまろやかにとろけるッ!!」
 思わず口に出して叫ぶと、女将さんが笑う。
「あっはっは、クリスマス特製のちょっと豪華なショートケーキだからねぇ」
 聞けば、普段酒場で簡易的に提供されるショートケーキと比べて、クリスマスバージョンは使用している生クリームやスポンジの間に挟む内容を少し上等なものにしているのだとか。
「ひゅー、そんな美味いケーキを丸ごとホールで、しかも一人で食い荒らすなんてそうできないぜッ!」
 普通のケーキでも十分嬉しいというのに、スペシャルなケーキだというからなおのこと食が進む。普通なら二、三人で切り分けるサイズのホールケーキを、あっという間に食べ尽くしてしまうテッカ。
「美味すぎるから食べてたらなくなっちまったぜッ! 飲み物みたいだったなッ!」
「おいしかったかい? そりゃあ良かった」
 テッカの気持ちいい豪快な食いっぷりに、女将さんも満足げだ。オレンジジュースのおかわりを飲んでいたら、お口直しにとアメリカンコーヒーを追加で出してくれた。

「ふぅ、食った食った」
 一通り飲み食いを済ませて食堂を後にしたテッカは、脅威的な消化力で食後特有の眠気にも負けず、腹をさすりながら息を吐く。
「さてと、腹ごしらえも済んだし……」
 そう言って、テッカは身にまとった限定装備のサンタ衣装を改めて眺める。クエストは無事クリアできたので、正式にテッカの所持品となった訳だが……。
 自身のステータスを確認してみると、攻撃力も防御力もカンストしている。クリスマスイベント期間中に限るが、ここまでの性能を発揮する装備品はそうそうない。
「よし、サンタ装備が期間限定壊れ装備のうちに、経験値や素材を稼ぎに行きますかッ!」
 えええ!? せっかくのクリスマスなのに!?
 そう思われる人が大半かも知れないが、メタな目線で見れば正しい選択であった。
 最強装備を身につけているということは、余程のことがない限りそんじょそこらのモンスターにはほぼ負けないということでもある。それを利用して狩りをするのは、すごく効率が良い。
 そうしてテッカは、意気揚々とレーシュの街を出て、モンスターが出現するエリアへとサンタ装備のまま消えていく。
 さあ、美味しい食事のあとは、どんなモンスターを魔喰しようか――?

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
雪も降ってきましたし少し町の中を散歩してみましょう。
一人ではなんですし白銀も頑張ってくれましたから彼も呼んで。
先程は戦いながらでしたからよく衣装も見れませんでしたし、うん、やっぱりよく似あってる。
白銀の毛並みに赤い色は良く映えますね。

……ゲームの世界なんですねぇ。あくまでもエフェクトで、本物の雪とは違う降り方。
一通り回って雪のエフェクトの様子を楽しんだら宿屋で食事をいただきましょうか。
白銀も一緒で大丈夫ですか?
私はあまり量が食べられないので軽めのメニューでお願いしますが、白銀はしっかりお肉で。だって男だものね。
あら、どうして微妙は表情をするのかしら?男の子扱いはダメ?



●ゴッドゲームオンラインの降雪事情
 夜鳥・藍は翼持つ銀狼「白銀」と共に雪降るレーシュの街を歩いていた。道行く人々は二人(?)の姿を見ると、物珍しげな視線というよりは羨望の視線を向けてくる。「あの狼、綺麗な毛並みで翼も生えててカッコいい!」とか「どこで手に入るんだろ? あんなお供初めて見たよ」などの言葉がちらほら聞こえてくるあたり、この世界でもバディペット的な存在は普通に認知されているのだろう。
 そんな声を背に、密かに藍は柔らかな笑みを浮かべて、白銀の背を撫でた。
「ふふ、いいでしょう。白銀は私の自慢の相棒ですからね」
 撫でられた白銀は、喜びで返すかのように、藍の手にすりっと頭部を擦り付けた。
「雪も降ってきましたし、少し街の中を散策してみましょう」
 そう白銀に呼びかけ、比較的歩きやすく景色もよく見える大通り沿いを、藍は白銀を伴ってゆっくりと歩き出――そうとして、突然その場にしゃがみ込んだ。
「?」
 小首を傾げる仕草をする白銀を、じいっと眺める藍。
「――うん、やっぱりよく似あってる」
 そう、サンタ衣装で召喚された白銀の姿を、バグプロトコル退治中は戦いながらだったためよく見ることができなかったのが、藍はずっと気になっていたのだ。
 こうして改めて見てみると、白銀の毛並みに赤い色がよく映えて、本当に似合っている。道行く人々の注目を集めるのもさもありなんという感じだった。
 藍自身も、銀と青をベースに赤いサンタ衣装に彩られ、これまた美しい。
 満足した藍は、すっと立ち上がると、今度こそ街をそぞろ歩きすべく足を踏み出した。

 天より舞い降りる雪のエフェクトは、一定の周期で降ったり止んだりを繰り返す。
 手に取ってみようとしても、手の平に乗せた途端に霧散してしまうのは、やはりプログラムの一部であるが故か。
「……ゲームの世界なんですねぇ」
 藍が納得したようにそう呟く。故郷のサクラミラージュの雪は桜と共に舞い散るものだからそれはそれで異世界の人々からすれば現実離れしているように思われるかも知れないが、あちらは実際に手に取れるし、冷たさも感じられる。
 その代わり、ゴッドゲームオンラインの世界で降る雪は際限なく積もるということがないので、除雪だ何だといった世知辛い話とは無縁で済む。
「あくまでもエフェクトで、本物の雪とは違う降り方」
 雪を降らせる量や時間があらかじめプログラムされているのか、適度な見映えのする降雪が一定のリズムで繰り返されるようだと、しばらく街を巡る中で藍は気付いた。
 大半の一般プレイヤーは、現実から逃れるためにこのGGOへとログインする。ならば、無理に現実に寄せなくとも、理想的な世界を実現した方が好まれるのだろう。

 そんな雪が降るレーシュの街並みを一通り回って楽しんだ藍と白銀は、宿屋の前にたどり着く。一階は酒場になっており、無料でクリスマスの食事を振る舞ってくれると聞いた。
「白銀も一緒で、大丈夫ですか?」
「あら立派なお供だねぇ! いいよいいよ、お肉もあるから一緒に楽しんでいきな」
 藍が念のために宿屋の女将さんに確認すると、快い返事が返ってきた。
 酒場に足を踏み入れると、基本の世界観が中世ファンタジーというだけあって、木製のテーブルや椅子が並ぶ、風情のある光景が目に飛び込んできた。
 その中の一つに藍が腰をかけると同時に、女将さんが椅子のひとつを退けて白銀が座る場所を作ってくれた。
「今日はたんと食べて飲んでいっておくれよ、まずは飲み物から注文を聞こうかね」
 サービスする気満々の女将さんには申し訳ないが、藍はあまり量が食べられないため、飲み物も含めて全体的に軽めのメニューでお任せとお願いした。その分、頑張ってくれた白銀にはしっかりとお肉を食べてもらおうと告げれば、女将さんが笑う。
「じゃあ、お嬢ちゃんには度数低めの|蜂蜜酒《ミード》とペアリングした軽食をセットで出そうかね? で、そっちのワンちゃんには新鮮な肉を用意しようじゃないか」
「ありがとうございます、そうしていただければ。白銀は男ですし、たくさん食べますし」
 女将さんと藍のやり取りを聞いていたのか、白銀は何故か微妙な表情をしていた。
「……」
「あら、どうしてそんな微妙な表情をするのかしら?」
 ワンちゃん扱いがダメだったのだろうか。それとも、もしかして。
「……男の子扱いはダメ?」
 白銀は、何とも言えない表情で床にぺたりとなった。狼ごころは難しいものだ。
 それでも、しばらくして赤身が瑞々しい生肉がデン! と目の前に置かれると、サンタ衣装の白銀は目を輝かせて肉に食らいついた。良かった良かった。
 そんな様子を、藍は甘い蜂蜜酒とローストしたラム肉の組み合わせを楽しみながら、微笑ましく眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
【竜鬼】

無事終了、ということでここからはでーとの時間ですっ!
(ここまでも半ばデートっぽかったのは言わないお約束)

クリスマス仕様の街並みや演出、パフォーマンスを二人で楽しみながら歩きます。
と、見かけた露天の装備に気になるものが。
『クリスマスプレゼントのリボン 分類:アクセサリー』
……リューさんが景色を見てる隙にササッとこっそり購入。
気づかれてません、よね?(どきどき)

このあと自分のしようとしてることに、食事中もちょっと上の空で。
そんな時に目を見つめられてあんなこと言われたら……もうっ///(身を任せ無抵抗で連れ込まれ)
入室前に、買ったばかりのリボンを装備して……

あとは、二人だけのひみつ、ですっ♪


リューイン・ランサード
【竜鬼】

入手したサンタ衣装でひかるさんと一緒にクリスマスを楽しむ。

(見事な演出を見て)さすがですね。
イルミネーションで飾られた大きなツリーや教会などもあるのでしょう。

手を繋いで街の中を散歩。

見て回ったら宿屋でクリスマスの料理とケーキを頂きます。
料理やケーキを味わい「すごい、本当に食べている感じがするし美味しい。
どういう仕組みなんだろう?
僕達が生身でログインできるあたり、マトリッ●スとも違うだろうし。」

折角のクリスマスだし他にも色々とお試ししよう。
ひかるさんの目を見つめて、「ひかるさんがほしいけど良いかな?」と聞いてみます。

OKなら宿屋の寝室に移動して、「ゆうべはおたのしみでしたね」に挑戦です。



●クリスマスのお楽しみ
 バグり倒したクリスマス限定クエストも無事正常化し、荒谷・ひかるとリューイン・ランサードも無事正式に限定装備のサンタ衣装を正式に自分の所持品とすることができた。
 これで心置きなく『でーと』を楽しめるというもの、今までの道中も半ばデートだったのでは? というのは置いておいて。
 出発時はクエストの受注を完了させたらすぐに出発してしまったのでしっかりと確認できなかったレーシュの街並みは、こうして落ち着いて見てみると見事なイルミネーションに彩られ、中央広場には大きなクリスマスツリーも飾られていた。
「さすがですね、これだけの規模の街ですときっと教会などもあるのでしょう」
 リューインが感心したように街の様子を見回せば、ひかるも頷く。
「NPCさんからもらえる雪玉で、雪合戦をしている人たちもいますね」
 ガチの雪玉というよりは、誰かにヒットすると雪のエフェクトが花開くアイテムといった感じであった。それでも、遊び道具としては十分に楽しそうである。
 どちらからともなく手をつないで、クリスマスらしいイルミネーションに彩られた街中をゆっくりと歩き出す二人。見事なツリーも気になったが、記念撮影の行列があまりにも長かったので、遠巻きに見るだけに留めておいた。
 無理に記念撮影をしなくても、こうして二人で過ごしているだけで、十分だ。時折降ってくる雪のエフェクトも、いい感じに雰囲気を出してくれてとても良い。
 装備しているサンタ衣装のおかげもあるのか、寒さを全然感じない。季節感に合わせた適度な気温に調整されているのか、つないだ手が温かいからか。

 大通り沿いを歩いていると、露店を出しているエリアがあった。恐らくこれも期間限定で入手できるアイテムを販売しているのだろう、人々の目を惹くものが並んでいた。
「……あ」
 そんな中、ひかるの目に留まったのは大きくて長い布のようなもの。赤と緑のクリスマスカラーで彩られた|ソレ《・・》から、ひかるは目が離せなくなっていた。
 人波にさらわれるフリをして、一度そっとリューインとつないでいた手を離すひかる。リューインはキラキラ輝くイルミネーションと雪の共演に見惚れて、気付いていない。
 その隙に、ひかるは運命的に出会ったアイテムを確認すべく、露店の前に駆け寄りしゃがみ込む。そこには、布の正体が書かれたプライスが貼ってあった。

『クリスマスプレゼントのリボン 分類:アクセサリー』

 一般的なリボンと比べると、やたら大きいのが気になるが、これはいわゆる『分かる人には分かるアイテム』なのだ。そして、おませなひかるはその用途を理解してしまった。
「あの、これ……下さい」
「毎度あり、使い方は……分かるね?」
 聞くのも言うのも野暮かと、ひかると店主は顔を見合わせるとそれだけ言葉を交わす。
 バグプロトコル討伐で入手したトリリオンでリボンの代金を支払うと、まるで闇取引のようにひかるは店主からリボンを受け取り、無理くり懐に収めると、ひかるを探すリューインの元へと小走りに駆けていった。
「ひかるさん! す、すみません、うっかり手を離してしまって……」
「いえ、わたしの方こそごめんなさい……!」
 そこそこの人出に、皆してサンタ服を着ているものだから、一度はぐれると大変だと思いきや、リューインには翼と尾があり、ひかるには羅刹の角があるため、意外とすぐに見つかった。
(「気づかれてません、よね?」)
 ドキドキしながら、ひかるは改めてリューインの手を握る。いけないことをしてしまったようで、顔が熱い。手の平を通じて、熱が伝わってしまってはいないだろうか。ひかるは落ち着かない心地で、リューインと共に再び歩き始めた。
(「……?」)
 リューインは、そんなひかるの様子には気づいていない模様。一先ずはセーフだった。

 純粋に景色を楽しむリューインに、何だか心ここにあらずといった様子のひかる。そんな二人は、街並みを見て回るうちに、宿屋の前にたどり着いた。
「ひかるさん、一階が酒場になっていてクリスマスのディナーを楽しめるそうですよ」
「え、あ! そう、みたいですね……!」
 リューインとしては、ひかるをエスコートして美味しい料理とケーキを楽しみたい一心で声をかけたのだが、当のひかるはどこか上の空。さすがに様子がおかしいと感じたリューインが、ひかるの顔を覗き込むように尋ねた。
「……ひかるさん、大丈夫ですか? どこか具合でも悪いとか……」
「いえ! いえいえ、決してそんなことはないですよ! 行きましょう、酒場!」
 それに慌てたひかるは、誤魔化すようにリューインの手を引いて、自ら酒場の扉を引き開ける。すると、ワッと酒場ならではの喧騒が押し寄せてきて二人を包む。
「……ロマンチックなクリスマスディナー、という感じにはならなさそうですが……」
 いいですか? と苦笑いでリューインが問えば、ひかるはすっかり気を取り直して笑う。
「もちろんです、リューさんと一緒ならどこでも歓迎ですっ」
 クリスマスを祝う楽しい気持ちはみんな一緒。酒場に足を踏み入れると、恰幅の良い女将さんらしき人が二人をちょうど空いていた席に案内してくれた。
「お二人さん、デートかい? お任せで良ければコース料理を用意できるよ」
「それじゃあ、是非コースでお願いします。ひかるさん、食べられないものは?」
「大丈夫ですっ、何でも食べます!」
「あっはっは、いいことだ! それじゃあ、美味しい料理を用意しようじゃないか!」
 待ってな、と言い残して、豪快な女将さんはカウンターへと引っ込んでいった。
「……」
「……」
 席についた二人は、珍しく無言で互いを見つめ、その後に周囲の光景を眺めた。どうやら現在は自分たち以外の猟兵は居らず、酒場の客はすべて一般プレイヤーらしい。それでも、ごくごく普通に飲食を楽しんでいるように見えるのが、不思議でならなかったのだ。
「わたしたち、ゲームの世界に生身で|出現《ログイン》してるんですよね……?」
「今までほとんど違和感を感じませんでしたが、食事は普通に楽しめるんでしょうか?」
 ひかるとリューインが小声で疑問を口にした時、女将さんが水の入ったボトルとコップを二つ、そして木のボウルに入ったサラダを持ってきた。
「はいよ、前菜のシーザーサラダ! 取り分けて食べてちょうだいね。この後は鹿肉のパテとビーフステーキ、それにデザートのクリスマスケーキが待ってるよ」
 いっぱい食べるんだよ、と笑顔で言うと、女将さんはまた忙しなく別のテーブルへ向かった。それを見送った二人は、いざ疑問を解決すべく――二人同時に取り分け用のトングに手を伸ばし、指と指が触れ合い、思わず引っ込めてしまう。
「あ、すみません……ひかるさん、ここはお任せしていいですか?」
「はいっ! 張り切って取り分けますっ!」
 トングを手にして、リューインの方が気持ち多めになるように気遣いをしつつサラダを取り分けるひかる。取り皿を渡せば、嬉しそうに笑うリューインの笑顔があった。
「ありがとうございます、ひかるさん。本当に助かります」
「あ、いや、そんな、これくらい」
 何気ない感謝の言葉一つが、胸に染み渡るようで、嬉しい。
 しかし、それ以上にひかるの胸を占めているのは――先程買ったリボンの存在。
 これから、このあと、自分が|何をしようとしているか《・・・・・・・・・・・》を考えると、どうしても思考が上の空になってしまう。
 サラダを口にしたリューインが「美味しい!」とか「すごい、本当に食べている感じがするし美味しい」とものすごく嬉しそうにしているのは目に入ったが、ひかると来たらどうにも食事の味が分からないでいた。
 鹿肉のパテの想像以上の肉々しさに舌鼓を打ちながら、それに気付かないリューインはしっかり味わいながらも首をひねる。
「どういう仕組みなんだろう? 僕達が生身でログインできるあたり、精神だけデータ転送されるとかそういう訳でもないだろうし……」
「……」
「ひかるさん?」
「ひゃいっ!?」
 鹿肉のパテを半分食べたところで動きが止まっていたひかるを案じてリューインが声をかけると、ひかるは弾かれたように声を上げ、再びパテに向き合う。
「あの、本当に大丈夫ですか? さっきから何だか、具合が悪いような……」
「ぜぜぜ全然そんなことないですって! この後のメインディッシュも楽しみだなーなんて!」
「そうですか、僕の気のせいならいいんですが」
 リューインは柔らかく笑うと、ひかるを見守るように藍色の瞳を向けた。ひかるは、その視線を真っ直ぐに受け止めると、向日葵のような笑顔で返した。

 メインディッシュのステーキは想像以上に分厚くて、いい感じのレア焼きで、食べている内に全ての疑問が吹き飛んで割とどうでも良くなるくらいに美味しかった。GGO、恐るべし。
 肉を切り、口に運びながら、合間合間で会話を交わす。
 今年一年の振り返りが中心だったが、色々あった一年ももうすぐ終わり。
「クリスマスをこうしてひかるさんと二人で過ごすのも、これで何回目でしょうか」
 しみじみとリューインが言えば、ひかるがほんのりと顔を赤らめてうつむく。
「何回目でしたっけ……思えば、長いお付き合いをしていただいて、本当に嬉しいです」
「……ひかるさん」
 下を向いてしまったひかるに呼びかけて、こちらを見るように促すリューイン。その意図を察したか、顔を上げたひかるに向けて、リューインは意を決してこう告げた。

「今年のクリスマスプレゼント……ひかるさんが欲しいけど、良いかな?」
「……!」

 最早、クリスマスケーキの味はしなかった。
 美味しいのは間違いなかったけれど、意識がそちらに向けられないほどに。
「……ダメ、かな」
「……もうっ」
 二人して、水を飲み干す。そして、女将さんにご馳走様を言ってから、二階の宿屋のカウンターに向かい、部屋は空いているかと確認する。
「この時間なら、まだ空き部屋があるね。お二人さんでいいかい?」
 宿屋の主人と思しき男性は、多くは問わない。それが二人にはありがたかった。
「それじゃあ、一晩お願いします」
 リューインはそう言うと、部屋の鍵を受け取り、ひかるの腰を抱き寄せるようにして二階へと続く階段に向かって歩き始めた。ひかるは完全に無抵抗だ。
「……」
「……」
 部屋に続く道のりでは、終始無言であった。密着した身体から、互いの心音が聞こえる。
 そして、いよいよ部屋の鍵を開けて二人が入室すると、リューインが後ろ手で鍵を閉める。ひかるの方を振り返ると――。
「!?」
 先程までサンタ衣装を着ていたひかるの姿が、いかなる早着替えか、下着姿に赤と緑のリボンをぐるぐる巻きにした格好に変わっていた。これにはリューインも驚きを隠せない。

 当然、驚くだけでは収まらず。
 この後のことは、二人だけの秘密である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルナ・キャロット

クエストクリアーです!これでサンタ衣装も私のものですね!
早速黒っぽい感じに染色して…ちょっとだけスケルトンパスも使って露出度もあげて…んへへ…(とりあえず黒染色しちゃう系兎)
装備どやどやも兼ねて街の探索です。
映スポットを見つけたら自撮りですぐへへ…私可愛い…。

…どこ行ってもカップルがいちゃいちゃしてますね。GGO充どもめです(小声)
落ち着いたら酒場でやけ食いです。無料なうちに食べまくって食事バフの効果時間をカンストさせますよ!(お腹にはたまらないけど味はわかる)
酒場のNPCや酔っぱらいプレイヤーにチヤホヤしてもらえたらラッキーです!



●装備品を弄る醍醐味
「クエストクリアーです! これでサンタ衣装も私のものですね!」
 そう、今回発生したクリスマス期間限定イベントのバグり倒し事件は、ルナ・キャロットの尽力もあり無事解決に至った。その報酬として、仮入手状態だった限定装備のサンタ衣装が正式にルナの所持品となったのだ。
「早速黒っぽい感じに染色して……」
 そう、本入手をすると加工や染色などのカスタマイズが自由になるのだ! これはうちの子可愛い勢にはたまらない仕様である。ルナも例に漏れず、早速加工を開始する。
「ちょっとだけスケルトンパスも使って露出度も上げて……んへへ……」
 これは結構強めに断言しても良いが、装備品を自分好みにカスタムしたり組み合わせてコーディネートしている時ほど楽しい時間は早々ない、と思う。
 ルナの場合はとりあえず黒に染色できるならしちゃう感じであり、さらに可能なら露出度も高めにして己のケモっぷりを際立たせられるようにするのがお約束のようだった。
 そうして完成したカスタマイズ版サンタ衣装は、結構際どい露出度のブラックサンタ衣装となった。紫を基調とした毛色に黒が良く似合っている。
(「完成っと……次は装備どやどやも兼ねて街の探索です!」)
 普段から高レア装備でガチガチに固めたルナには分かるのだ、珍しい装備や洒落たコーデをしている他プレイヤーを見かけると、人は|SS《スクショ》を撮りたがるものだと……!
 イルミネーションに彩られたレーシュの街には、中央広場に大きなぴかぴかのクリスマスツリーも用意されていた。周囲には他のプレイヤーが集まり、記念撮影をしている。
 そこへルナもスススと近付いていき、人が途切れたタイミングですかさず自撮り! そしてそのままさりげなく放置のフリをして軽くポーズを決めたまま静止! するとどうだろう、周囲に数名の見知らぬプレイヤーがそっと写真を撮っていくではないか! 案の定、ルナのクリスマススペシャルコーデは大好評だったようだ。
 あんまり長時間放置すると勝手に見抜きするけしからん者も現れていけないので、適度なところで切り上げて移動するルナ。しゃなりしゃなりとクリスマスムード一色の街を闊歩するブラックケモサンタことルナは、先程自撮りした画像を確認しながら歩く。
(「ぐへへ……私可愛い……」)
 これだから、限定装備は見逃せない。頑張った甲斐があったというものだ。

 とてとてと、さらに街中を歩いて他にも映えスポットがないかどうかを探すルナ。だが、先程のクリスマスツリーに勝る場所はそうそう見つからない。その上、すれ違うのは団体様やカップルばかりで、何ならだんだんいたたまれない気分になってきてしまう。
(「……どこ行ってもカップルがいちゃいちゃしてますね。GGO充どもめ、です」)
 声に出るか出ないかギリギリのラインで、ルナはそう考える。うちの子可愛い勢は基本的に自分自身が一番の推しなので、決してさみしいとか自分もいい人が欲しいとかそういう訳ではないのだが、こうしていざ見せつけられるとやっぱりね、こう、面白くないというかね……?
 そんなことを考えながら改めて大通りに戻ってくると、目に入ったのは宿屋であった。
「確か、一階が酒場になってるって話でしたね……」
 事前に聞かされた話だと、イベントにかこつけてか飲食にトリリオンがかからないのだという。こうなったら無料期間中に酒場でヤケ食いするしかない。幸いにしていくら食べても体重が……という懸念はないので、食べまくって美味しい食事を堪能しながら、食事バフの効果時間をカンストさせてしまおうというのがルナの目論見であった。
「たのもー!!」
 元気良く酒場の扉を引き開けるルナ。すると、酒場の喧騒がルナを歓迎した。

「いらっしゃい! おやまぁ、愛らしい獣人ちゃんが来たもんだね」
「おーおー、珍しい装備してんじゃねーか! どこで手に入れたんだ?」
「お前よく見ろよ、サンタ装備を上手にカスタムしてあるんだって」

 Oh……ちやほや……! ルナは酒場の入り口に立ち尽くしたまま、思わず己を抱きしめて感激に浸る。これこれ、これが顧客が本当に欲しかったものなのです……!
「そんな所に突っ立ってたら風邪引くよ、こっちおいで! 一杯おごるよ」
 女将さんがそう言いながら、用意してくれたのはホットミルク。お酒はまだ我慢だ。
「ありがとうございます! いただきます!」
 温かいミルクが入ったマグカップを両手で持ってゆっくり飲むルナは、その後も酔っ払っていい感じに出来上がったプレイヤーたちから賛辞の嵐を浴びて、悦に入っていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユニ・エクスマキナ


わーい、限定装備ゲットーっ!
せっかくだから、ちょっとカスタマイズとかしたいなぁ…
お店とかに行けば、よろしくやってくれるかな?

ユニ、可愛いミニスカサンタさんの衣装にしたいんだけど
アレンジできる?
白い雪みたいなふわもことレースでアレンジしたくて
そそ、で胸元にはリボンと雪の結晶モチーフの飾り
うんうん、素敵~やったぁ!
で、どこかいい感じのフォトスポットで写真を…
あ、クリスマスツリーの下がいいかな!
ミネルバちゃんも!一緒に写真撮ろう~
サンタさん同士で可愛く~
あれ?なんかユニ見切れてる…
もう一度…え、ミネルバちゃんはちゃんと可愛く撮れてるのに…っ
哀しい気持ちは、ケーキで癒すしかないのね…っ(ぐっ



●ままならない記念写真
「わーい、限定装備ゲットーっ!」
 キラキラのイルミネーションに包まれたレーシュの街で、喜びを隠せず飛び跳ねるのはユニ・エクスマキナ。クエストを正常化させたおかげで無事正式入手となったサンタ衣装は、標準のデザインでも十分可愛いとは言えたが……。
「せっかくだから、ちょっとカスタマイズとかしたいなぁ……」
 そう、街を行く他のプレイヤーを見ると、デフォルト状態の人ももちろん居るが、自分好みのデザインに衣装をカスタマイズしている人もちらほら見受けられる。それを一度見てしまうと、自分もやってみたい! と考えるのは至極当然のことであった。
 慣れたGGOプレイヤーであれば、自力でカスタムも可能なのかも知れないが、いかんせんユニは衣装のカスタム方法が分からない。けれども、実際にやっている人が居る以上は何らかの方法があるはず。
「お店とかに行けば、よろしくやってくれるかな?」
 そう考えたユニは、一番それらしい場所――防具屋さんへと足を運んだのだった。

 果たしてその選択は大正解で、防具屋さんでは装備品の販売だけでなく、有料にはなるが手持ちの装備品のカスタムサービスも請け負ってくれていた。やったね!
「いらっしゃいませ、あら……期間限定装備のアレンジ依頼ですか?」
 デフォルト状態のサンタ衣装を身にまとったユニが入店してきたのを見た女性店主のNPCが、何かを察したかのようにそう声をかけてきた。きっと、この時期は同じような依頼が多いのだろう。
「そうなの! ユニ、可愛いミニスカサンタさんの衣装にしたいんだけど、アレンジできる?」
「もちろんですとも! 他にご要望はございますか?」
 防具屋の店主は大歓迎といった様子で、他にも同時に変更したい点はないかと問う。
「んー、白い雪みたいなふわもこと、レースでアレンジしたくて……」
「ふむふむ、なるほど……一度、そのアレンジで仕立ててみましょうか。少しだけ目を閉じていていただけます?」
 女性店主がサンタ衣装の裾を引っ張ったりしながら、ユニに目を閉じるよう求める。ユニが言う通りにすれば、何やら衣装の着心地が少し変わった気がした。
「はい、目を開けて大丈夫ですよ。一度、確認をお願い致します」
「そそ、こんな感じ! で、胸元にはリボンと雪の結晶モチーフの飾り……」
 GGOならではの仕様なのか、あっという間に仕立ては完了し、ユニのオーダー通りの愛らしいミニスカサンタさんができあがっていた。想像以上の可愛さに、ユニの頭の中にはさらなるアイデアが浮かんでくる。装飾の追加を相談すると、それも快諾されて、手際良くリボンと雪の結晶をデザインした飾りがつけられた。
「こんな感じ、でしょうか?」
「うんうん、素敵~~~やったぁ!」
 店主と最終確認をして、理想のサンタ衣装が完成したことに感激するユニ。懐からクエスト報酬で手に入れたトリリオンを取り出そうとした時、店主から待ったがかけられた。
「お客様、今回のクエスト進行不可バグを取り除いて下さった方ですよね? ほんのお礼ではございますが、お代は結構です」
「ええっ、いいの……!?」
「いいんです、是非その衣装でGGOのクリスマスをお楽しみいただければ」
「わぁ、ありがとう! それじゃ、お言葉に甘えるのね!」
 ペコリと頭を下げて、ユニは防具屋を後にする。
 再び街中に繰り出せば、ユニも唯一無二のサンタ衣装でクリスマスを楽しむプレイヤーの仲間入りだ。せっかくだからと、中央広場でぴかぴか光るクリスマスツリーを目指した。

「ミネルバちゃん!」
「あら、ユニじゃない。サンタ衣装カスタムしたの? よく似合ってるわよ」
 クリスマスツリーの近くには、街中の様子を見て回っていたグリモア猟兵が居た。
「ありがとう、防具屋さんに可愛くしてもらったの! で、写真撮ろうと思って……」
 そうだ、とユニが手をポンと叩く。
「ミネルバちゃんも! 一緒に写真撮ろう~~~」
「い、いいの? お誘いはうれしいけど」
「いいのいいの! サンタさん同士で仲良く~~~、ハイ!」

 ――ぱしゃっ。

 ぴかぴかのクリスマスツリーをバックに、ピースサインで記念撮影。さぞかし映えていることだろうと、ユニがミネルバにも写真データを送ろうと画像を確認した、その時だった。
「あれ?」
「どうしたの?」
「なんか、ユニ、見切れてる……」
 浮かない顔のユニを見かねて、ミネルバがユニのスマホを覗き込めば、確かにユニがちょっぴり見切れてしまっている。これはがっかりしちゃっても無理はない。
「もう一度いい? せーの……!」
 ユニが再びスマホでの撮影を敢行する。ミネルバも、気持ちユニに寄り添うようにして、極力見切れないように頑張った――つもりだった。
「え、ミネルバちゃんはちゃんと可愛く撮れてるのに……っ」
「ええ、どうしよう、何でかしら……?」
 再チャレンジしたものの、またしても絶妙に見切れてしまうユニ。どうして。
「ね、ねえ、今度はわたしが撮ろうかしら? もしかしたらスマホの不具合かも知れないし……」
「う、ううん、ユニもともと写真撮るの下手だし、これはこれで大丈夫なの……」
 そう言うと、ユニは宿屋の方を見て呟いた。
「哀しい気持ちは、ケーキで癒すしかないのね……っ」
 握りしめた拳に、ミネルバがそっと手を乗せた。
「ケーキ、一緒に食べてもいいかしら? ちょうどわたし、休憩しようと思ってて」
 写真の件は残念だったけれど、この後二人は、今回の事件の話でしばし盛り上がったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御桜・八重


ネリーちゃんとクリスマスデザートを堪能♪
やー、ゲームとは思えないね、これ!

「そういや、禄郎さんへのプレゼントは決まった?」
わたしは今考えてるけど……
と、台無し男との戦いを思い出して顔が赤くなる。
どうしたのって、いや、そのね……

「だって、あいつらが大事なモノって言うからー」
大事なモノ=下着リボン姿の自分をプレゼント♪
ひかるちゃんのラブラブっぷりを想像してるうちに
そんな妄想に行きついてしまった顛末を話す。

うぁ、視線が冷たい!
うう、ネリーちゃんだって人妻なんだし
禄郎さんと下着リボンどころか
あーんなことやこーんなことしてるんじゃないの!?
(内容は考えてない勢い任せ)

(ほわほわ浮かぶリボン三人娘の図)



●乙女たちのクリスマス事情
 レーシュの街にある宿屋は、一階が酒場になっている。酒場とはいっても未成年でも入れる実質食堂のようなもので、出されるメニューも酒類から甘味まで幅広い。
 そんな酒場の一角で、御桜・八重とグリモア猟兵のミネルバが、喧騒の中でクリスマスケーキをつつきながら談笑していた。
「すごいでしょ、本物のケーキを食べてるのとまったく変わらないこの感覚」
「うん! やー、ゲームとは思えないね、これ!」
 クリスマスといえば苺が乗ったショートケーキだろうと、用意されたのはとびきり贅沢に生クリームや苺を使った、口に運べばとろけるようなショートケーキ。元々が電子の申し子であるミネルバはともかく、生身の人間に他ならない八重がGGO内の食べ物を食べたらどうなるかというのは気になっていたが、実際食べてみたら普通に美味しかった。
 ケーキはまるで飲み物のように、あっという間に皿の上から消えてなくなる。

「女将さーん! ケーキのおかわりってできますかー!?」
「はいよー! ブッシュドノエルもあるけど、今度はそっちにするかい?」
「いいわね、じゃあ次はそれでお願いするわ」

 八重が元気良く女将さんに尋ねると、素敵な提案が返ってきたので、ミネルバが全力で乗っかる。少しすると、切り分けられたチョコレート仕立てのケーキがやって来た。
 ありがとうと女将さんに礼を言いつつ、次なるクリスマスデザートに着手する二人。
「そういや、禄郎さんへのプレゼントは決まった?」
「んー、今年はまだ考えてないかしら。お互い忙しいし、毎年贈るのも何だし……」
 八重がミネルバに旦那様へのクリスマスプレゼントについて問えば、意外とドライな答えが返された。そして今度は、逆にミネルバが八重に問う番だった。
「八重はもう決めたの? 通へのプレゼント」
「えっと、わたしは、今考えてるけど……」
 そこまで言って、八重はいきなり顔を赤くした。これにはさすがのミネルバも訝しんで「どうしたの?」と問いを重ねる。
「どうしたのって、いや、そのね……」
 何をどこから説明したものか。いや、そもそも誰が聞いているかも分からないこの状況で説明しても良いものか。まずはそこから悩むような案件だった。
「……多分、みんな自分たちの話に夢中でしょうから、誰も聞いてないと思うわよ」
 そんな八重の葛藤を察したか、ミネルバはさりげなくフォローを入れる。
 八重は「それなら……」と、あくまでも小声で、ぽつりぽつりと語り出した。

「バグが起きた森の中で最初に遭った敵にね、オマエの大事なモノを寄越せ! って言われて……」
「? それで、予定してたプレゼントを取られたとかそういうこと?」
「じゃなくって! あいつらが『大事なモノ』って言うから、わたし……」
 下着姿にクリスマスカラーのリボンをぐるぐる巻きにして、『プレゼントはわ・た・し♪』という妄想を、友人でもある荒谷・ひかるを基準にして展開させてしまったということを、八重は顔を真っ赤にしてしどろもどろになりながらも、何とかミネルバに伝えきった。
「う、うん、ああ、そう……」
「うぁ、視線が冷たい!」
「だって、どう反応したらいいのよ……」
 八重は頑張って頑張って、精一杯自分の妄想を正直に打ち明けたというのに、ミネルバの対応はあんまりにも塩ではないか。元々そういう娘だとは分かっていても、だ。
 何とかやり返せないかと、八重はケーキをもしゃっと一口乱暴に食べてから、ミネルバに逆に質問を仕掛けた。
「うう、ネリーちゃんだって人妻なんだし、禄郎さんと下着リボンどころか、あーんなことやこーんなこと、してるんじゃないの!?」
「してるけど」
「!!!」
 具体的なことはほぼ考えずに、勢い任せに『あんなことこんなこと』とは言ってみたものの。当のミネルバが一切否定せず認めたものだから、八重は耳まで真っ赤になってぐぬっと言葉を詰まらせてしまう。
「禄郎も大概よね、バーチャルキャラクターの小娘捕まえて|あんなことこんなこと《・・・・・・・・・・》よ? 今度会ったら何か言ってやって欲しいくらいだわ」
 顔色一つ変えずに、ミネルバはケーキをつつく。
「それよりも、八重ってそっちの話に興味持って大丈夫なの? 一応巫女さんなのに」
「む、むぐぐぐ……!」
 それを言われると弱い。だが、好きな人に求められたら何だって差し出したいという気持ちも否定は出来ない。その辺りは完全に八重次第となるので、ミネルバも深くは追求しなかったが。
(「ネリーちゃんも、下着リボン、本当にやったことあるのかな……」)
 どうやら八重は、一度妄想のスイッチが入ると、結構暴走してしまうタイプらしかった。
 脳内には、下着姿にリボンを巻いた乙女たちの姿が浮かんで離れなかったという。
 そして結局、愛しの彼へと贈るクリスマスプレゼントは決まらないままだったとか。
 どうなる!? 八重ちゃんのクリスマスin2023!

大成功 🔵​🔵​🔵​

氏家・禄郎

(ネリーさん、ネリーさん聞こえますか?今、貴女の脳内に直接)

……なんてね、お疲れ様。
しっかりクエストに参加してまで滞在するとは熱心なものだ

私?
秘密かな?

まあ君も大人だし、人付き合いというものもあるだろう、まずは街を歩いて来なさいな
折角の時間だし、勿体ない

勿論、終わったら僕と付き合ってもらうよ
折角のクリスマスなんだから貴重な時間は大事に使いたいしね

……嫉妬?
どうだろうね、当ててみな、おまえ
どうやってクエストをクリアした件も含めてね


というわけで仕事終わりのクリスマスデートに誘います
RTAを決めれたのは多分いつもの『思考』なんでしょうね。



●サプライズ・メリークリスマス
(「ネリーさん、ネリーさん聞こえますか? 今、貴女の脳内に直接」)
「……早速個人チャットまで使いこなすだなんて、ずいぶんと適応力が高いのね?」
 GGOのシステムをいつの間にやら理解した様子である氏家・禄郎(探偵屋・f22632)の悪戯に、ミネルバは思わず小さな笑みをこぼす。
「……なんてね、お疲れ様」
「ううん、わざわざ来てくれてありがとう。正直、忙しいだろうと思ってたわ」
「君こそしっかりクエストに参加してまで滞在するとは、熱心なものだ」
 ミネルバは禄郎の方へと走り寄り、向かい合ってきちんと言葉を交わした。しっかりと期間限定装備のサンタ衣装を装備しているあたり、律儀にクエストをクリアしてきたのだろう。
(「どうしよう、全然似合ってないって、言ったほうがいいのかしら」)
 禄郎のサンタ姿を上から下まで一通り眺めてから、ミネルバはそんな容赦のないことを考える。考えてから、思い切って口を開いた。
「クエストクリアしてきたのね、お疲れさま。似合ってるわよ、その格好」
「そうかい? 僕は落ち着かなくて仕方ないんだがね」
 禄郎本人も、据わりの悪い心地でいたのだろう。サンタ衣装をばふばふと叩いては、苦笑いをしてみせる。それを見たミネルバは、やや真顔で禄郎に尋ねた。
「ねえ、あなた本当に忙しかったんでしょう? 大丈夫? 無理してない?」
「僕? うーん、秘密かな?」
「夫婦間で隠しごとは感心しないわよ?」
 本当は、わざわざ聞くことでもなかったかも知れない。それでもはぐらかされるのは何だか面白くなくて、ミネルバは珍しく食い下がる。

「……嫉妬?」
「へ?」
「いや、どうだろうね。当ててみな、|おまえ《・・・》」

 言ってみてから、禄郎は少し意地悪をしすぎたかな、などと考える。言われた側のミネルバは真に受けてうんうん唸りながら考えているようだが、正直なところはサンタ衣装の嫁さんとクリスマスデートがしたかったからに他ならない。
 そのために抱えたタスクを気合と根性でこなした後、出遅れながらも爆速でクリスマス限定クエストをクリアしてきたのだ。レーシュの街で事前に情報収集をした上での、立派なRTAであった。我ながら良くやったと思う。
「……まさかとは思うけど、わたしが他の人とクリスマスを過ごすのが面白くなかった?」
 そんな若いカップルみたいなことを言い出す訳が、なんて思いながらの回答に、禄郎はただ笑って眼鏡の位置を直すばかりだった。
「まあ君も大人だし、人付き合いというものもあるだろう。まずは街を歩いて来なさいな」
 せっかくの時間だし、もったいないと禄郎が言えば、ミネルバはにこりと笑った。
「うふふ、言われなくてもそのつもりよ。まだあとちょっと、案内したい人がいるから」
 恐らく既に誰かを待たせているのだろう、ミネルバはそう言うと背後でぴかぴか光るクリスマスツリーを振り返った。
「でも、せっかくだからって言うなら、それが終わったら」
「――勿論、終わったら僕に付き合ってもらうよ」
 ミネルバの言葉を継ぐように、禄郎が大事な用件を告げる。
「折角のクリスマスなんだから、貴重な時間は大事に使いたいしね」
「禄郎……」
 ミネルバは、ほんの少しだけ俯いて、コツンとその額を禄郎の胸元に当てて言った。
「……転移でベースに返さないといけない人たちの中にね、朝帰りになりそうな連中がいるのよ。だから、今日はわたしも帰れないかなって思ってて、それで」
「……うん」
「正直、今年は、禄郎と一緒にクリスマス過ごせないかもって思ってて」
「……早く行っておいで、僕は酒場で一杯やりながら待ってるから」
「来てくれてありがとう、|あなた《・・・》。なるべく早く戻るわね」
 そう言葉を交わすと、ミネルバは禄郎の顔を見ることなく走り出した。
 思わず浮かんだ嬉し涙を、見られたくなかったから。
 それを温かい視線で見送った禄郎は、約束を果たすべく一足先に酒場へと向かう。

「さて、部屋はまだ空いているかな?」
 久方ぶりにゆっくりと二人で過ごすのだ、どうせなら喧騒の中よりは誰にも邪魔されない場所を確保したいというもの。
 そして何より、急いであれやこれやをこなしたものだから、腹が減っている。無料で楽しめると噂のクリスマス料理を、せっかくだから楽しませてもらおうではないか。
 とにもかくにも、可愛いお嫁さんの帰りを待たなければならないけれども――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪

爆速クリアして来ました
というわけで、ちゃんと男の子スタイルなサンタ衣装でミネルバさんに声掛け
ちょっとだけご一緒いいですか?

今回はちゃんと男の子だよ、似合うでしょ(えっへん

僕まだこの世界慣れてないからさ
どんな雰囲気かなーって見てみたくて
ふふ、雪綺麗だね
ゲームの世界といっても、あんまり違和感無いや
僕らが生身だからかな

いつもなら真っ先に食事…主に甘味?
見に行きたくなっちゃうところだけど
折角綺麗な景色なんだし、もう少しゆっくりしてからでもいいかなって

お互い10代最後のクリスマスじゃない?
だから、振り返りも兼ねたこれまでのクリスマスの思い出とか
あ、クリスマスじゃなくてもいいけど
色々お話ししようよ



●魅惑の思い出話と、これからのお話
「ミネルバさん!」
 ぴかぴかのクリスマスツリーの下でグリモア猟兵を見つけた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、元気良く声をかけた。
「……?」
 だが、当のミネルバは声の主を探して辺りをきょろきょろするばかりで、見知った顔であるはずの澪を見つけることができずにいた。どうしたことだろうか。
「ミネルバさぁん、こっちこっち! 僕だよー!」
「えっ、あっ!? 澪!? ご、ごめんなさいね気づかなくって」
 澪が声をさらに大きくして、両腕をぶんぶん振れば、ミネルバはようやく澪の姿を認めて目を丸くしながら駆け寄ってきた。
「クリスマス限定クエスト、爆速でクリアして来ました」
 えっへんと胸を張る澪の姿は、それを確かに証明する限定装備のサンタ衣装。普段と違う点を挙げるとすれば、男子が着るデザインのサンタ衣装を身にまとっていたことだろうか。
「すごく失礼なこと言うけど、ちゃんと男の子な装備してたから、澪だって気づかなかったのよ……」
 ミネルバが正直に打ち明けると、澪はあははと笑った。
「今回はちゃんと男の子だよ、似合うでしょ」
「ええ、これはこれでちゃんと似合ってるわ」
 サンタ衣装に白いオラトリオの翼と髪に咲いた金蓮花が良く似合う。まるで聖夜に舞い降りた天使のようだと、ミネルバは素直にそう思った。
 事実、澪は天使のような慈愛の持ち主だ。人々に夢を届けるサンタクロースの姿が似合わない訳がなかったのだ。
「ちょっとだけ、ご一緒いいですか?」
「もちろん、今日はいろんな人とクリスマスを過ごせてうれしいわ」
 澪の申し出に、快く応じるミネルバ。二人が同時に見上げたのは、空から降ってくる優しい雪と、立派なクリスマスツリーだった。
「僕、まだこの世界慣れてないからさ」
「そっか、わたしは元々似たような世界の出身だからすぐなじめたけど、普通は『は?』ってなるわよね」
「うん、だからどんな雰囲気かなーって見てみたくて」
 有事の際は率先して前線に立つ勇気を持ち合わせる澪のことだ、きっとクリスマス限定クエストもその行動力で瞬殺したのだろう。
 そんな澪は、舞い散る雪をそっと手に取ろうとして、あっという間にかき消えてしまうのを残念そうに見送りながら、それでも微笑んで呟いた。
「ふふ、雪、綺麗だね」
「そうね、いい感じに雰囲気出してくれてて、粋な計らいだと思うわ」
 ミネルバがちょっと夢のない返しをするが、澪は全然気にしない。
「ゲームの世界といっても、あんまり違和感無いや」
 僕らが生身だからかな、と澪は自分の両頬に手を当てた。吐く息が白いのも、きっとクリスマス限定のエフェクトなのだろう。

 澪が誰かと遊びに行くとなると、いつもならだいたい真っ先に食事――主に甘味を堪能したくなるのが常だけれど。たとえば、クリスマスケーキの誘惑が真っ先に脳裏をよぎったり。
「一応、酒場でケーキが食べられるけど……やっぱり、そっち系がいい?」
 ミネルバが問えば、澪は意外にもふるふると首を横に振った。
「ううん、折角綺麗な景色なんだし、もう少しゆっくりしてからでもいいかなって」
「そう、じゃあ大通り沿いを歩いてみる? イルミネーションが一番楽しめるわよ」
 ならばとミネルバは、道案内を買って出る。ありがたくも声をかけられたのだ、これくらいは頑張らねばというミネルバなりの心遣いだった。
 街を彩るイルミネーションに包まれて、同じサンタ衣装の人々の間を縫うように、二人でゆっくりと歩を進めながら、ぽつりぽつりと言葉を交わす。
「お互い、十代最後のクリスマスじゃない?」
「ああ……そうね、わたしも歳を取るようになったから、そういうことになるわね」
「だから、振り返りも兼ねた、これまでのクリスマスの思い出とか……あ、クリスマスじゃなくてもいいけど、色々お話しようよ」
 澪がイルミネーションにも負けないキラキラした表情で提案してくるものだから、ミネルバは普段滅多にしない思い出話に花を咲かせても良いかと考えてしまう。澪による無意識の誘惑も、多少なりとも効果を発揮しているのかも知れない。

「クリスマスは……だいたい旦那様と過ごしてるから、まあ、それなりかしら……」
「あはは、いきなりのろけた! ごちそうさまです♪」
「だって、澪のこと思い出そうとすると、基本的に戦争頑張ってるなーとかそういう話になっちゃうんだもん」
「う、それは……そうかも知れないけど……」
「でも、それだけじゃないわよ。今までの話っていうより|これからの話《・・・・・・》で悪いけど……」
 一度言葉を切ると、ミネルバは澪を見てにっこりと笑った。

「澪、近いうちに式を挙げるんでしょう? それとも、二人だけでもう済ませた?」
「……っ!」

 澪の顔が、分かりやすく真っ赤になった。
「そ、そそそ、それは……っ」
「えっ、まさか触れちゃいけなかった? やだ、わたしてっきり公認の仲だと……」
「いやその、か、隠してる訳じゃない、けど……ええと……」
 ミネルバが思わず口を手で覆い、澪は両手で顔を覆う。大惨事だった。ごめんて。
「澪がしあわせなら、いいんだけど」
「……うん、ありがと」
 雪が、イルミネーションの輝きを受けながら舞い踊る。
 今日は、楽しいクリスマス。バグプロトコルなんかに、邪魔なんかさせない。
 平和になったレーシュの街で、誰もが素敵なひと時を過ごすのだ。
 今は、すべてのしがらみから解放されて――メリークリスマス・イン・ゴッドゲームオンライン!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月03日


挿絵イラスト