ペンタチュークは織りなすか、エースの系譜
●花の7
小国家『フルーⅦ』を語る上で、同じく小国家『グリプ5』は欠かせない存在だった。
かつては友好国であったが、オブリビオンマシン化した最新鋭キャバリア『ブレイジング・バジリスク』の盗用事件によって関係は悪化し、一時は国家の滅亡さえ危ぶまれていた。
しかし、猟兵たちの活躍によって、それは押し止められた。
そして、泥沼の戦いから脱却するべく、両国は互いの保有する多くのキャバリアを同時破棄することで友好条約を締結した。
その最中にもオブリビオンマシンの暗躍はあった。
さらには古代魔法帝国の末裔たる『サスナー第一帝国』の流れを組む巨人の地底帝国『バンブーグ第二帝国』との戦いにも巻き込まれた。
秘匿されていたスーパーロボット――『レーギャルン』は、数機が破壊されて失われているが、その炉は簡易型『レーギャルン』に受け継がれている。
そもそも『フルーⅦ』はかつて、『グリプ5』の前身となった集団『憂国学徒兵』の最初の9人……『ハイランダー・ナイン』の一人である『ズィーベン・ソグン』が興した国だ。
故にこれまでも友好国として互いに存在してこれたのだ。
『憂国学徒兵』――100年前に突如として現れた高性能キャバリア『熾盛』と『グリプ5』国父たる『フュンフ・エイル』に率いられた集団。
彼らが使った機体は『熾盛』を原型としたデッドコピー『熾煌』であると言われている。
デッドコピーであれど、その機体性能は当時の水準を遥かに凌ぐものだった。
謎多き存在である。
彼らは|『超越者』《ハイランダー》と呼ばれていた。
通常の兵士では太刀打ちできず。
単騎で軍団単位の敵機すら退ける技量を持ち、『エース』を正しく超越した存在と言えるだろう。
それが九人存在していたのが『憂国学徒兵』である。
●士官学校
「そんな連中が九人で連携してくるっていうんだから、百年前に他大陸にまで進出する勢いを持っていた『サスナー第一帝国』が滅びるのもわかるぜ」
「いや、九人が一堂に介した戦いはない」
「は? じゃあ……どうやって」
「九人がそれぞれ周辺小国家に単騎で対応していたらしい。時に同盟を結び、時に滅ぼして」
『フルーⅦ』の士官学校に通う学生たちは、過去100年における戦いの歴史を学んでいた。
と言っても、それはこの周辺地域に関連するものだけだった。
このクロムキャバリアにおいて、他の小国家の情勢というのは知ろうとしても知り得ない情報だった。
それも全て、空に座す暴走衛生『殲禍炎剣』のせいである。
通信網は途絶している。
わかるのは己たちの小国家の周辺のことばかりである。
故に、人は疑心暗鬼になって争い続ける。
「正しく『悪魔』だな」
「他大陸まで出張って行って、二国間に単騎で介入するとか正気じゃない。『フュンフ・エイル』が不世出の『エース』だって言うんだとしてもな」
士官候補生たちは、そんな化け物の如き存在の戦闘データとこれからシュミレーションとはいえ、戦わなければならないということに頭を抱える。
どう戦えというのだろうか。
軍団単位を圧倒するほどの存在。恐るべき事に『フュンフ・エイル』の駆る『熾盛』は過去の戦いに置いて形態装備を変えども、一度も傷を追うことがなかったのだと言う。
「なんだって、そんなデータが『フルーⅦ』にあるんだよ」
「さあな。だが、教官たちは毎年これで俺等士官候補生たちの鼻っ柱を折るのが慣例になってるって言ったぜ?」
「鬼かよ」
「悪魔かよ――」
●潜入
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。クロムキャバリア……小国家『フルーⅦ』の士官学校でパイロット候補生たちの集団戦闘訓練中、突如オブリビオンマシン化した彼らのキャバリアによって校内で虐殺が起ころうとしているのです」
ナイアルテは己の予知を告げる。
ならば話は簡単だ、と猟兵たちは思っただろう。事件が予知できるのならば、そこへピンポイントで向かえばいい。
だが、ナイアルテは頭を振る。
「……事件が起きる現場は予知できたのですが、正確な日時が……わからないのです」
肝心なところがわからないのだという。
原因たるオブリビオンマシン化するキャバリアを即座に叩くことができない。
つまり、と猟兵たちはナイアルテを見やる。
「はい……この事件を止めるためには予め、士官学校に潜入する必要があるのです」
臨時招聘された教官であったり、他国からの留学生、もしくは他の身分でもってなんとかして士官学校に潜入し、オブリビオンマシン事件の発生を待ち構える必要があるのだ。
「『フルーⅦ』はこれまで何度もオブリビオンマシンによる事件による憂き目に遭遇してきました。ですが、『グリプ5』と同じく平和を模索する小国家でもあります。この小国家をオブリビオンマシン事件で破滅へと向かわせることはなりません」
ナイアルテはそう告げ、猟兵たちに頭を下げる。
彼女の言うことは尤もだ。
確かに平和に兵器は必要ない。
けれど、平和を勝ち取るために戦わねければならないというのならば、オブリビオンマシンの蠢動を看過できないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、小国家『フルーⅦ』の士官学校に出現するとされるオブリビオンマシン事件を防ぐシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
日常です。
士官学校に教官や学生、その他の身分でもって潜入します。
学校生活を過ごしながら、いずれかの訓練で発生する『学生たちのキャバリアがオブリビオンマシン化する瞬間』を待ち構えなければなりません。
直近の訓練では、100年前の『憂国学徒兵』の一人、『フュンフ・エイル』の駆る『熾盛』の戦術データとシュミレーションですが戦うことができます。
●第二章
集団戦です。
士官学校で訓練を行っていた皆さんですが、キャバリアを用いた集団戦訓練の最中に学生たちの駆る訓練機『グレイル』が次々とオブリビオンマシン化し、暴走し始めます。
教官機はペイント弾しか装備していません。
しかし、学生たちのオブリビオンマシンはいつの間にか実弾にすり替わっています。
このオブリビオンマシンらを破壊し、学生たちを助け出しましょう。
●第三章
ボス戦です。
いつの間にか紛れ込んでいた、一体の謎のオブリビオンマシンが訓練場に存在することに気が付くでしょう。
正体不明の機体ですが、この機体が何らかの特殊なユーベルコードに寄って訓練機をオブリビオンマシン化させたのでしょう。
現況たる機体を破壊し、この事件を終わらせましょう。
それでは、100年続く戦乱から連なる戦いの連鎖に生きる現在の人々をさらなる戦禍に飲み込ませぬ挑む皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『士官学校潜入』
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POW : 自前のキャバリアと共に訓練に参加する
SPD : 他の士官学生達と積極的に交流する
WIZ : 士官学校内部の様子を観察する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
小国家『フルーⅦ』の士官学校は、比較的穏やかな空気が流れていた。
隣国である小国家『グリプ5』との友好条約もあってか、戦乱からは程遠い。だが、新興小国家『プラナスリー』の台頭も噂されている。余談を許さぬ状況であることには変わりない。
「でも、このシュミレーションめちゃくちゃだろ!」
悲鳴めいた声が響く。
それは訓練の一環たるシュミレーション室から響く。
「バカにしてんのかってくらいめちゃくちゃな動きしてるよな……俺も何がなんだかわからない内に終わってた……」
「開幕で狙撃されて終わりとかなんだよ! クソゲーかよ!!」
「開幕を運良く交わしても、次の瞬間には踏み込んできてんだもんな……」
「しかも、プラズマブレイドと射撃以外の攻撃すら引き出せてないとか……」
学生たちの鼻はべっきりへし折られていた。
本当にこんなシュミレーションをクリアできる者なんているのかと、彼らは教官たちの意地の悪さに辟易していた。
「私、勝ったことあるよ」
その言葉に学生たちは目を見開く。
そこに居たのは『フルーⅦ』に『グリプ5』から出向してきている整備技師主任の少女だった。
名を『ツェーン』と言う。
彼女はかつて小国家『フィアレーゲン』のトップとして君臨していたキャバリア操縦の才能を持つ存在だった。だが、今の彼女はキャバリアには乗らない。
学生たちに操縦技術を教えているのは、共に出向してきているキャバリアパイロット『クリノ・クロア』である。
なんか彼と良い仲であることは、男子学生たちを絶望させたが、しかし、彼女の言葉に学生たちは嘘だぁ、と信じられない目を向ける。
「本当だって。私、こう見えて強いんだから」
むふん、と胸を張る彼女に学生たちはからかいながら笑い飛ばす。
穏やかな時間が流れている。
だが、確実にこの『フルーⅦ』の士官学校にオブリビオンマシンの影が迫っているのだ――。
シルヴィ・フォーアンサー
……いつ来るのかわからないのは困ったね。
というか普通のキャバリアがオブビリオンマシンになるのってどういう現象なんだろう。
『さて想像しかできないが超越的な力で存在そのものを弄ってるのではないか』
……考えても仕方ないか生徒として潜入するよ。
人付き合い得意じゃないから目立たないようにしたいな。
思いと裏腹に手加減する思考のなさから『熾盛』のシュミレーション訓練で操縦技能の高さを
見せつけて容姿も相まって入って早々に注目される羽目に。
人付き合いの経験不足と口下手な結果男子には好かれ女子とは距離のできちゃう感じに。
どうしてこうなったと表情に出ないながら他人との接触多さに内心涙目になりながら学生生活送る事に。
オブリビオンマシンによる事件が起こる、という予知は出来ても、その正確な時間がわからないというのは厄介なことだった。
グリモアによる予知。
それは確かに敵であるオブリビオンマシンに先んじることのできる暴虐の如き剣であっただろう。
「……いつ来るのかわからないのは困ったね」
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)はどうしたものかと、小国家『フルーⅦ』の士官学校へと生徒として潜入を果たしていた。
人付き合いは得意でない。
自分でもよくわかっていることだ。だから、目立たないように、と極力人付き合いを避けて彼女は士官学校の中で過ごす事に決めていた。
「というか、普通のキャバリアがオブリビオンマシンになるのってどういう現象なんだろう?」
インカムの向こうには己の乗機であるクロムキャバリア『ミドガルズ』のAI『ヨルムンガンド』である。
誰も居ない士官学校の屋上に独りごちるようにしてシルヴィは問いかける。
『さてね。想像しかできないが超常的な力で存在そのものを弄ってるのではないか』
その憶測にシルヴィは結局わからないってことね、と返して空を見上げる。
暴走衛生は見えない。
ただ青い空だけが広がっていた。
とは言え、予鈴が聞こえる。
授業だ、とシルヴィは頭を振る。目立たないようにしよう。本当にそう思っているからこそ、彼女は教官の目にも止まらぬように真面目に授業へと向かうのだ。
とは言え、手加減という思考はない。
それだけの余裕があるとも言えないし、戦場においてそんな考えは即座に己の死に直結するのだ。だからこそ、シルヴィは何事にも手を抜かない。
目立たぬためには己の技量というものを抑える必要があるのは重々承知である。
だが。
「すっげぇ……おいおいマジかよ、あの子」
「みんな開幕で終わっちまうのに」
「まだ保ってる……!?」
シュミレーションの授業。
特別な戦術データである『熾盛』とのシュミレーションにシルヴィは挑んでいた。目立たぬためには他の学生と同じように即座にやられるべきだったのだろう。
けれど、前述した通りである。
彼女は手が抜けない。手加減ができない。
だからこそ、シュミレーションであっても全力で迫りくる青いキャバリア『熾盛』の動きに食らいついていく。
「弾幕兵器!」
眼の前に広がるクリスタルビットの乱打。こっちを仕留めるつもりがない。いや、その一つ一つが必殺の一撃のタイミングで打ち込まれてくる。
だが、それすらも布石であることをシルヴィは理解していた。
目眩ましが必殺になるなどと誰が思うだろうか。
迫りくるクリスタルビットをシルヴィは遮蔽物を利用しながら爆発の中を跳ねるようにして飛ぶ。
機体性能がおかしい。
それ以上にあの動きは何だ。
まるで人。いや、人以上。人の動きの拡張性を見せつけるかのような動きにシルヴィは決め手がない、と理解する。
己の機体がシュミレーションの機体ではなく、『ミドガルズ』であったのならばまだ決め手はあっただろう。
だが、シュミレーションの機体では、とシルヴィは思う。
シュミレーションは互いに決定打がないまま時間だけが経過し……。
「タイムアップ! 惜しいなっ!」
「すごいじゃないか、君! えっと名前なんていうんだっけ?」
あ、とシルヴィは汗を拭ってシュミレーターから顔を出すと男子学生たちに取り囲まれてしまう。
彼女の容姿を考えればわかることだった。
少しでも目立てば、それが彼女の注目されないように、目立たぬように、という思惑を全て御破算にしてしまうことを。
「……」
どうしてこうなった、とシルヴィは思う。
表情にはでていないけれど、他人とのコミュニケーションの雑多さになんとも言えない気持ちになってしまう。
助けて、ヨル。
『がんばりたまえ』
潜入という状況である以上、手助けはできない、とAIからのにべにもない言葉にシルヴィは内心涙目になりながら一刻も早く事件のその時が来てくれと祈るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジュディス・ホーゼンフェルト
●塩沢家
大昔にやんちゃしてた国の成れの果てねぇ…
現代の内情を探るには丁度良い機会かな?
ついでにオブリビオン騒ぎを収めれば心証も良くなって動き易くなるでしょ
どーもー
バーラントから来ました、ジュディス先生でーす
面白そうなシミュレーターがあるじゃん?
ちょっと遊ばせて貰おっか
ガルムとシミュレーターを繋いで…
ってあの機体…どこかで聞いたような見たような…
初手はジャミングスモークで目眩し
センサーで狙いを定めてビームキャノンで狙い撃ち
続けて動き回りながら耐電子ミサイルを連射して撹乱
ブースターで突っ込んでパルスクローの斬殺執行!
こいつのふざけた設定が歴史を忠実に再現してるなら…やんちゃしてただけはあるらしいね
ソフィア・エルネイジェ
●塩沢家
未来を担う騎士達の学舎に魔の手が浸透しつつあると
私情ながら騎士学園の出の身としても看過し難い状況です
私は招かれた講師の体で潜入致しましょう
流石にこの歳で学生は無理もありますので…
100年前の英雄が駆っていたとされる機体のシミュレーターですか…
今日に至るまで情報が事細かく残され、保全が続けられていたという点から並ならぬ価値を感じますね
圧倒的な強者との噂ですので私も手合わせを…
あの機体は…ガルム?
バーラントの機械神が何故ここに…
いいえ、乗り手が誰であれ、この場で国同士の不和を持ち出すのはあってはならない事です
ガルムと熾盛の戦いを見届けましょう
ホーゼンフェルト…それがガルムの巫女の名ですか
『フルーⅦ』という小国家はアーレス大陸中央を部を支配下におくバーラント機械教国連合に比べれば新しい小国家である。
ジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)は、その最高指導者の命を受けて士官学校に潜り込んでいた。
身分を隠しての潜入などお手の物である。
「どーもージュディス先生でーす」
彼女の存在に学内の男子生徒たちは沸き立つ。
それもそうである。
美人の! 先生である!!
年若い彼らにとっては大変な刺激である。わからんでもない。いや、ジュディスはわからんな、と思ったが知れないが、下手に詮索されるよりはこうして盛り上がってくれていた方がありがたいというものである。
ともあれ、ジュディスはここまで得た情報をまとめる。
過去にこの周辺で猛威の如き活躍を振るっていた|『超越者』《ハイランダー》とも呼ばれた存在の集団。
曰く『ハイランダー・ナイン』――『憂国学徒兵』……そのうちの二人が興した国が今もなお残っているという事実。
現代の情勢、内情を知るという意味では絶好の機会であった。
ついでに、とジュディスは思う。
ここでオブリビオンマシン騒動を収めれば此方の心証もよくなるだろう。
動きやすくなる、ということだ。
ともあれ、学生たちは色めきだっていた。
だって、年若いキャバリアパイロット育成の女性講師が二人もやってきたのだ。それもとびきりの美人である。
「どうぞよしなに」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)である。
彼女は未来を担う士官……即ち、彼女の出身小国家で言うところの騎士たちにオブリビオンマシンの魔の手が浸透しつつあると聞き及んで、こうして講師として潜入してきたのだ。
騎士学園の出身でもあるソフィアとしても、看過し難い状況であると言えただろう。
彼女は己の身、その年齢がどうしても学生には見えないと思っているのか、講師という身分でやってきたのだが、まだまだ行ける。行けるよ、ソフィア王女! 無理なことなんて一つもない!
学生たちの盛り上がりジュディスは慣れっこであったが、ソフィアは面食らってしまう。
「お、面白そうなシュミレーターがあるじゃん?」
「ジュディス先生も興味ある? でも、このデータはやめといた方が良いよ」
「なんで?」
「ばかみたいな設定だから。訓練にならないよ」
その言葉にジュディスは益々気になる。止める学生たちを制してジュディスは己の機体『ガルム』にシュミレーターを通していく。
眼の前のモニターに浮かぶ文字は『熾盛』。
「『熾盛』……?」
ジュディスは首を傾げる。
シュミレーターの画面に現れる青い騎士めいた姿を持つ一騎のキャバリア。
幻視する。
炎の照り返しによって赤と青の装甲を持つように見えた機体。
煌めくアイセンサー。
「ジャミングスモーク!」
即座にジュディスは決断していた。
シュミレーター開始の瞬間に撒き散らされる煙幕。己の機体を隠し、狙いを付けさせない。それだけではない。
放たれた狙撃のビーム粒子を軽減させる効果まであるのだ。
センサーで機体位置を把握する。
だが、『ガルム』が動かない。
「ちょっ! なんで!?」
動きなさいよ、とジュディスはコンソールを動かすがまるで動かない。
何が起きているのだとジュディスは理解が追いつかない。そして、煙幕の中に構うこと無く飛び込んできた『熾盛』のアイセンサーが見える。
瞬間、シュミレーターが、ぶつん! と音を立てて中断される。
「……どういうこと?」
ジュディスは感じただろう。
『ガルム』が動くことを拒否していたのではない。これは『トラウマ』をえぐられているかのような痛みだ。
彼女は感じただろう。
いつか見た幻視。
そのなかにあった青いキャバリア。こいつだ、とジュディスは直感的に理解する。あの記録。幻視。その全てに彼女は糸が結びつく。
過去、二国間の争いにさえ介入した『憂国学徒兵』の『フュンフ・エイル』。
人機一体の最たる存在。
「こいつのふざけた設定が歴史を忠実に再現してるってのは……眉唾じゃあないわね」
やんちゃしていただけのことはあるとジュディスは理解するのだ
そして、その光景をソフィアは見ていた。
あの狼型の機体。
「あれは……『ガルム』?」
ソフィアもまた100年前の英雄が駆っていたとされる機体のデータと手合わせしたいとやってきていたのだ。
けれど、彼女は足を止める。
あれはバーラント機械教国連合の機械神の一騎である。それが何故此処にいるのだと、彼女は身構える。
確かに彼女の出身国エルネイジェ王国はバーラント機械教国連合と敵対している。
だが、ここで二国間の不和を持ち出すのは猟兵として違うと思ったのだ。
「しかし、何故中断を……?」
ソフィアは訝しむ。
明らかに初手で動きが止まっていた。その後に中断されていたのだ。
ソフィアはデータを学生から受け取って、そこに理由があるのかと思う。圧倒的な強者。『悪魔』とも『救世主』とも呼ばれた『グリプ5』の国父『フュンフ・エイル』。
その噂は彼女も知っている。
だからこそ、『ガルム』が見せた反応が気にかかる。
「ボーゼンフェルト先生、大丈夫?」
「え、ああ? うん? まあ、大丈夫みたいねー。こっちの機体が古すぎたせいかしらーなんて」
学生たちとのやり取りを見てソフィアは小さく頷く。
同じ猟兵。
そして、バーラント機械教国連合の機械神の一騎、『ガルム』の巫女。
その名をソフィアは己の記憶に刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
教練用キャバリアがオブリビオンマシンにね。事件の規模としては、『殲禍炎剣』を墜とすとか平和条約締結式をぶち壊すとかに比べたら、まだマシ。
ソフトターゲットではあるけど、士官学校の襲撃にどんな意味があるんだか。陽動くらいしか思いつかないね。
『殲禍炎剣』に狙われない程度の高度を取った『GPD-311迦利』の上から、「式神使い」で黒鴉召喚。探査範囲は士官学校のみでなく、『フルーⅦ』全域!
市内や軍のキャバリアの運用状況を把握する。
『ツェーン』には式を通じて挨拶しておきましょうか。それと事情説明に、教練の時間割ね。
実機を使用しての訓練なんて、常にやっているはずはない。一番ことが起こりそうな時間を絞り込む。
グリモアの予知による事件の解決。
それが猟兵の使命である。とは言え、グリモアの予知の力も万能ではない。
今回の事件のようにいつ事件が起こるのかがわからない事態だって存在するのだ。
「教練用キャバリアがオブリビオンマシンにね」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は一つ頷く。
事件の規模から考えれば、まだ小さいと言える。
これまでの事件を思えばこそでもある。
『殲禍炎剣』を破壊するつもりが逆に砲撃を打ち込まれてしまうかもしれない破滅や、平和条約締結式典をぶち壊されるだとか、そんな大規模な事件に比べたのならば、まだマシだと思ったのだ。
とは言え、彼女は訝しむ。
これまでオブリビオンマシンが引き起こす事件は多くの場合、世界の破滅につながるものであった。
だが、今回は士官学校が虐殺に見舞われるということであった。
それだけで世界が破滅するか、ということを考えればゆかりは甚だ疑問であった。
「どんな意味があるのかしら。陽動くらいしか思いつかないけれど」
とは言え、やらねばならないことは変わらない。
己の機体である無人機キャバリアを『殲禍炎剣』の影響高度以下でゆっくりと飛ばす。
飛行船程度の高度と速度であれば、『殲禍炎剣』の砲撃を受けないことは判明している。
さらに式神使いたる黒鴉召喚(コクアショウカン)によって、ゆかりはカラスに似た鳥型の式神を召喚し、士官学校の周囲を飛ばす。
探索範囲を『フルーⅦ』全域にしたのは、些か無謀であったが、市内や軍の扱うキャバリアの運用状況から事件発生のタイミングが推し量ることができるかもしれないと思ったのだ。
「そうだ、『ツェーン』も来ているんだっけ。式で挨拶を通しておきましょ」
ゆかりは己の式神を操作して士官学校の格納庫で整備を続けていた『ツェーン』の姿を探す。
彼女は一人の少年……『クリノ・クロア』となにか話をしているようだった。
何か機密的な話をしているのかと思ったら、ゆかりは、あ、と耳をふさぐ。
これはプライバシーを侵害するあれであると思ったからだ。
確かに彼らは良い仲である。
だから、まあ、その。
「ねーなんで?」
「なんでって、そりゃ出向している最中だからとしか」
「いいじゃん。たまには。私、結構がんばってる」
「知ってるよ。でもさ」
甘酸っぱいやつである。
それを見て、ゆかりは、あー、と頭を振る。初々しいが過ぎる。
「あのちょっといいかしら」
「うぇ!?」
その言葉に『ツェーン』がビクッと体を震わせる。それもそうだろう。どう見たってカラスにしか思えないものが人の声を発したのだから。
「こんなナリで申し訳ないわね。事情が事情だから簡潔にね」
ゆかりは事情を説明する。
その言葉に『ツェーン』たちは頷く。オブリビオンマシンは一般人には感知できない。だからこそ、パイロットたちが乱心したとしか思えないが故に、破滅的な思想に染まっていくのだ。
何度もその様を見てきた彼らだからこそゆかりの言葉を飲み込む。
「わかりました。教練の時間は、此処と、ここ……時刻がわかっていなということは」
「ええ、日もわからないの」
「でも、実機を使う、という以上は」
カリキュラムを洗えばある程度は狭めることができるかもしれない。
「直近ではいくつか候補日があります」
「じゃあ、そこを重点的に張りましょう。ご協力感謝ね。ああ、あと」
ゆかりは、笑って言う。
「こういう格納庫みたいなあからさまな場所は、バレやすいわよ――」
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
シュミレーションでつよつよ機体と戦えるの!?
じゃあ、僕も割と大人しく(当人比)して訓練に参加だー!
…ひっそりとUC:運を天命に任せるが如く を発動するけどね(笑)
僕さー、戦闘はさー(操縦/推力移動)、自分の身体動かす方が好きなんだよねー(見切り/野生の勘/悪路走破)、でも、他のヒト達と、比べ、たら、さ!(咄嗟の一撃)
「そーとー頑張った方だよね、僕!?」
いやまぁ、基本|この世界《クロムキャバリア》での戦闘は僕Vrykolakas頼みだから、また別の機体となると、操作のラグとかがあってさぁ…
(ん?つまりVrykolakasって以外と優秀なのでは?)
…今度、別世界の高級オイルでも買ってあげよーっと
インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、少しだけ気が逸っていたのかもしれない。
なぜなら、シュミレーションとは言え、ほぼ無敵のようなキャバリアとの戦闘ができると聞いていたからである。
とは言え、猟兵であるインディゴは小国家『フルーⅦ』の士官学校に潜り込むのは本来の目的とは異なる。猟兵たちが士官学校に潜入するのは、いつ起こるかわからないオブリビオンマシン事件に対応するためである。
厳密に言えば、強いシュミレーションデータと戦うためではないのだ。
「でも、学生の身分で潜り込むんだから逆にシュミレーションデータとやらないのは逆に嘘っぽいでしょ」
だから、とインディゴは割りと大人しく訓練に参加しようと思っていたのだ。
「これがそうなんだ?」
「そうそう。これがまた凶悪でさ」
インディゴは学生たちと共にシュミレーターの元へとやってきていた。
本来の自分の機体はシュミレーターでは使えない。機体と接続しないといけない、というのもあるが、ハッキリ言って面倒だった。
慣れない機体でのシュミレーションというのは、ちょっと荷が勝ちすぎている気がしないでもないが。
「ふんふん。なるほどね。開幕狙撃あるんだ?」
「わかっててもアレ無理。運ゲー」
「へぇ、そんなに……」
インディゴは唇をしめらせる。上であると思える。
彼は戦うというのなら自分の体がを動かすのが好きだ。得意であると言っても良い。
だから、このようなキャバリアを使っての戦闘というのは、それに比べれば見劣りするかもしれない。
でも、それは他のヒトと比べたら、という意味だ。
「開幕ビーム! ならさ!」
シュミレーターの中で己の機体を動かす。
見えている。
学生たちのアドバイスがなくともインディゴは開幕直後にビームの狙撃が飛んでくることを読んでいた。
いや、見ていた。
運を天命に任せるが如く(ロール・オア・チョイス)ではなく、絶望の福音が響くように、彼の瞳には『まるで10秒先の未来を見てきたかのように』ビームの一撃を躱すのだ。
「おっとぉ!?」
さらに次は尋常ならざる速度で飛び込んでくる青いキャバリア『熾盛』の姿。手にしたプラズマブレイドの斬撃の軌跡はすでに見えている。
機体を傾けて躱す。
だが、さらに蹴撃が飛んでくる。
見ていた、とは言えあまりにも流れるような連携だった。
蹴撃の一撃をインディゴは組み付くようにして機体同士を密着させる。
「此処まで接近すればさあ!」
頭上でぐるん、と『熾盛』のマニュピレーターが回転する。手放したプラズマブレイドを逆手に取って突き立てようとしてきているのだ。
それさえもインディゴは機体を押し込むようにして『熾盛』を吹き飛ばす。
空を切るプラズマブレイド。
けれど、機体のセンサーブレードが寸断されている。
さらにビームの光条が飛ぶ。牽制射撃。だが、その一撃一撃が確実に此方を直撃するコースになっている。
「こなくそっ! そーとー頑張ってるよね、僕!?」
「いや、マジですげーよ!」
「あの連続攻撃を凌ぐのかよ!」
「あーもー! くそ、本当にラグがすごいなこれ!」
インディゴは己の機体の性能を思わず恋しく思う。基本的に己の機体に頼るところが多いことをインディゴは実感したのだろう。
ユーベルコードに寄って10秒先の未来は見えた。
だが、それ以上が見えない以上、慣れぬ機体であるがためにインディゴは『熾盛』の前に屈するほかなかっただろう。
けれど、とも思う。
機体が違えば、このような結果にはならなかっただろう。
「本当、優秀だったんだな……今度、別世界の高級オイルでも買ってあげよーっと」
己の機体の優秀さにインディゴは認識を改めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
疋田・菊月
ふむふむ、軍学校に潜入ですか
桜學府になら多少関わりはありましたが、学生というのも体験したことはないんですよねー
それに、番号のついた方々ですか……ちょっとだけ親近感です
それはともかくとして、まずは皆さんと交流を持ちつつ、おかしくなり始めるその機微を見極めるというのが重要ですかねー
私もキャバリア操縦はまだまだ精進あるのみ
ヴァルラウンの性能を引き出すためには経験を積んでおかなくては
ふむふむ、熾盛という機体のお話で持ちきりですね
戦闘データについて知っておく必要があるかもしれません
私もシミュレータで何度が挑んでみましょう
勝つ必要はありません
どの様な勝ち筋を描くのか見るのが目的です
生まれた生命に意味があるというのならば、造られた生命にもまた意味があるのだろうと思う。
きっとそうなのだ。
たとえ、番号で呼ばれた生命にだって意味はあるのだ。
「ふむふむ、士官学校に潜入ですか」
疋田・菊月(人造術士九号・f22519)は人造生命体である。
九番目の実験体。
それゆえに菊月は思う。
『フュンフ・エイル』という存在について。そして小国家『フルーⅦ』を興したという『ズィーベン・ソグン』について
彼らもまた数字を冠する名をもっている。
ちょっとだけ親近感を覚える。覚えなければ逆におかしいな、とさえ彼女は思っていた。とは言え、今回の事件に関して、その名は関係ないかもしれなと彼女は割り切って士官学校に潜入する。
彼女がいる世界においては、多少の教育機関などには縁があったが、学生という身分を体験したことがないのだ。
「ふむふむ。できますかねー。いえ、やらねばならないのです」
「何が?」
同じ女生である士官学校の学生が首を傾げている。
「いえ、こちらのお話です。それより、訓練はじまっちゃいますよ」
菊月は誤魔化しながら、学生の中に溶け込んでいた。
事件は彼らがオブリビオンマシンによって歪められ、虐殺に走る、ということだった。
グリモアの予知とは言え、日時まではわからなかった、というのがネックである。だが、有事の際に動けるように士官学校に潜入しておく、というのは今の菊月にとっては幸いだった。
確かに彼女は己のキャバリア『ヴァルラウン』の操縦技術においては未熟な点があると思っていた。ここがキャバリアパイロット育成の機関であるというのならば、彼女にとっても得難い経験を積ませてもらえるだろう。
「ふむふむ。あれはどうしたんでしょう?」
「ああ、シュミレーターだよ。ものすごい設定のデータがあってね。新入生が挑むのが寒冷になってるんだよ」
交流を持った学生が教えてくれる。
へえ、と菊月は思う。
『熾盛』と呼ばれる百年前のデータであるそうだが、その話題でもちきりのようだった。
「私も挑んでもいいのでしょうか?」
「いいんだけど、あんまりおすすめしないかなぁ。本当に馬鹿みたい強いから。クリア捺せる気ないでしょ、っていうぐらいだから」
「なるほど。でも、挑戦することが大切だと思いませんか、何事も」
そう言って菊月もシュミレーターに挑む。
そう、勝つ必要はない。
必要なのは勝ち筋を描くことである。自分が、そして相対する敵が。
敵を知ることも、己を知ることも、止めてはならない。
学びというのは、いつだって終わりがないものである。学びすぎた、ということはない。学んでも学んでも新たな発見が眼の前に転がってくるものだ。
そういう意味では『熾盛』とのシュミレーターは菊月にとって得難いものだった。
「開始直後にビーム狙撃!?」
「そう、いきなり」
馬鹿みたいでしょ、と学生が言う。
けれど、何度もトライしていく。失敗はよくあることだ。成功から学ぶことは少ないが、失敗から学ぶことは多くあるのだ。
開幕直後に狙撃される、ということは敵は此方を正確に捉えているということだ。
なら、それを逆手に取る。
「狙撃が来るというのなら、その前に動くんです!」
左右に、ではない。
前に、である。そして、それを潰すように踏み込んでくる『熾盛』。しかし、菊月は失敗を恐れない。
果敢に飛び込むようにしてプラズマブレイドの一閃の起こりを潰すように機体をぶつけるのだ。
「これで……ッ!」
だが、次の瞬間、菊月の機体を撃ち抜くビームの光条。
突進で体制を崩しているはずなのに、正確に己の機体を貫いているのだ。
「……どんな体勢からでも攻撃を放ってくる、と」
菊月は面白い、と砂漠に水を滴らせるように何度も『熾盛』に挑んでいく。確かに勝てなかった。けれど、それでも彼女は得難い経験を得て、キャバリア操縦を向上させ、己の機体の性能を引き出すための活路を見出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
なーるほど、学校に通って事件が起こるのを待つ!それを華麗に解決する!って事か!
うるうは学校通ってるし学生っぽくするのは得意だよ!
でもこの国のキャバリアの事は良く分かんないんだよね、テルビューチェとは全然違うもん。
じゃあ今回は集団戦の授業に参加しよう!
せんせー、うるうにリーダーやらせてー?おねがーい!
今のリーダーの人、うるうと代わって?お願いったらおねがーい!
2分ちょいしかユーべルコードの効果はないけど、一旦約束しちゃえばこっちのもん!
うるうは部隊が良く見える所で指揮をとろう。
キャバリアを一か所に目一杯集めれば、事件が起こってもすぐに分かる可能性が高いからね。
いつでも対応できる準備しとこうっと!
「うーん?」
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は少しだけ困っていた。
オブリビオンマシンによる事件が起こると予知された小国家『フルーⅦ』の士官学校。そこに潜入すること事態は苦ではなかった。どちらかと言えば簡単だった。
彼女の年の頃も良い塩梅であったし、元々学校に通っている猟兵であったものだから、別段怪しまれることもなかった。
いい意味で学生らしさ、というものを演技無しで発揮できているのが潤という猟兵だったのだ。
彼女が思う華麗にオブリビオンマシン事件を解決する! という思惑は正しく結果として導かれるものであったはずなのだ。
けれど、士官学校において訓練に使用される機体がよくわからなかった。
自分もキャバリアを有しているが、ぜんぜん違うのだ。
『テルビューチェ』と呼ばれるはそもそもがオブリビオンマシンである。魔力と思考でもて操ることのできる魔法のキャバリア、ということになっている。
が、だからこそ、通常のキャバリアとは一線を画す存在でもあるのだ。
そんな機体を自在に操れる潤もまた規格外である。
「うまくできると思ったんだけどなぁ……うるう、こういうの使ったことがないんだよね」
「まあ、最初からできるんなら苦労はしないさ」
「そうそう。できないことをできるようにする場所なんだしさ。気にすんなよ」
学友となった学生たちが、潤を慰めてくれる。
だが、潤はめげなかった。
だって、こんなに気の良い学生たちがオブリビオンマシンによって狂気に導かれ虐殺を起こす事件なんて許せないのだ。
だからこそ、潤は集団戦の授業には欠かさず参加していたのだ。
実機を使った訓練でキャバリアがオブリビオンマシンに変貌して暴走を起こすというのならば、その訓練に居合わせなければならないからだ。
「せんせー、うるうにリーダーやらせてー?」
「え、また?」
せんせー、と呼んだのは小国家『グリプ5』から出向してきていた少年『クリノ・クロア』であった。
彼も潤と同じ年の頃であるが、戦闘経験が士官学校の面々よりも多くあるのだ。
言ってしまえば『エース』であった。
そんな彼に潤は上目遣いでおねだりするのだ。
そう、彼女はもしも訓練でキャバリアがオブリビオンマシンになったとしても俯瞰した位置で状況を把握できれば、即座に対処できるとふんだからである。
そのためにはリーダーとしていつも動かねばならないのだ。
「ねぇおねがーい!」
その瞳に輝いているのは、ユーベルコード。
For Me,Please!(フォー・ミー・プリーズ)と瞳で訴える。そのユーベルコードを前にして生命体は無意識に友好的に振る舞ってしまうのだ。無機物や自然現象であっても例外ではないのだ。
「し、仕方ないな。じゃあ、やってみて」
「はーい!」
潤はこのユーベルコードの効果時間が短いことを理解している。
だが、こうした約束事ならば、一度承諾してしまえば効果が切れても関係ない。
「うん! じゃあ、みんな、うるうの指揮で動いてね!」
「おー! 今度こそ模擬戦勝とうぜ!」
「勝たせてやるからな、潤!」
潤は、そんな学友たちの言葉に答える。彼らは気の良い者たちばかりだ。
誰も失いたくない。誰も傷ついてほしくない。
だから、潤は備えるのだ。いつオブリビオンマシンの事件が起こってもすぐさま動けるように。
でも、残念なことに、その思いとは裏腹に今回の模擬戦も相手チームにコテンパンにされてしまうのだった。
「うわーん、負けちゃったー!」
「ドンマイ! 次だ、次!」
「そうだぜ! 次!」
そう、彼らの言葉通りである。本番で勝てれば良いのである――!
大成功
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大町・詩乃
久しぶりの学校潜入です♪
と、いそいそとセーラー服に着替えて士官学校に入ります。
誰が何考えてこのような画策をしたかは判りませんが、オブリビオンマシンは1匹見つけたら、近くに100匹くらいいるものですし、駆除するしかないですね~。
学校では正体を隠しつつ、ほんわかした雰囲気とコミュ力を活かして男女問わず話しかけて仲良くしますよ~。
シミュレーションでは機体を頑張って操縦しましょう。
心眼・第六感で相手の攻撃を予測し、空中戦・見切りで回避行動を。
レーザー射撃・スナイパーで反撃です。
《慈眼乃光》と幸運にも助けられて、相手と程々に良い感じで戦い、恥ずかしくない形でシミュレーションを終われたらいいなあ。
足取りが軽い。
士官学校の廊下を歩む大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の表情は明るい。
そう、彼女は久しぶりの学校潜入に薄っすらと笑みを浮かべていた。いそいそとセーラー服に着替えて士官学校にやってきているあたり、ノリノリである。この神様。
「誰が何を考えてこのような画策をしたかはわかりませんか」
詩乃は、この小国家『フルーⅦ』にて起こるオブリビオンマシン事件のことを思う。
士官学校の訓練機がオブリビオンマシンにいつのまにか置き換わり、学生たちに寄る虐殺が起こるのだという。
起こる、ということだけがわかっていて、いつ起こるのかがわからない。
だからこそ、猟兵たちは身分を偽って潜入しているのだ。
「オブリビオンマシンは一匹見つけたら、近くに百匹くらいいるものですし、駆除するしかないですね~」
そんな黒くて素早くてたくさんいるアレじゃないんだし、と誰か突っ込んでほしかったが、今の詩乃は単独で士官学校に潜入している。
一般人にとってhキャバリアとオブリビオンマシンの区別はつかない。
これがクロムキャバリアにおいて戦乱が絶えぬ理由である。
高潔な思想を掲げた人間であっても、突如乱心したかのように破滅的な行動を取り始めるのだ。
破滅とは周囲を巻き込むものである。
小国家だけであるのならばいい。己の領地だけならば、まだいいと言えるのがクロムキャバリアの状況を物語っている。
「飛び火して他の小国家も巻き込んでいくからこそ、なんですよね~」
詩乃はほんわかした雰囲気とコミュ能力でもって士官学校に通う学生たちと交流を測っていく。
男女問わずに忌憚なく付き合う彼女は、言ってしまえば生徒会長というか、そういう役職についていそうな雰囲気をもっていた。
「委員長、行け! 初撃を躱せたのなら!」
「次! プラズマブレイドの斬撃、踏み込んでくる!」
詩乃は委員長と渾名されて、シュミレーターに挑んでいた。
無理ゲーとも言われた『熾盛』とのシュミレーションである。確かに尋常ならざる挙動でもって『熾盛』は詩乃に襲いかかっている。
凄まじい、という他無い。
これほどまでに人間以上の動きができるキャバリアは見たことがない。
いや、正確に言うなら、これは。
「人間の拡張性……とでも言いましょうか」
「距離を取ったら弾幕兵器が来るよ!」
「はい!」
詩乃は学友たちのアドバイスを受けてシュミレーションの機体を走らせる。
己の持てる技能。
心眼、第六感。そうしたものを総動員しても凌ぐことしかできない。ジリジリと削られている。
空を埋め尽くすかのようなクリスタルビットが詩乃の機体に降り注ぐ。
だが、その全てが必殺の一撃となって迫ってくるのだ。
「だめだ……!」
「いえ、できますとも!」
迫るクリスタルビットを詩乃はレーザー射撃で撃ち落とし、手にした武装で叩き落しながら回避運動を行っていく。
クリスタルビットが慈眼乃光(ジガンノヒカリ)によって躊躇うように挙動を変える。そこに踏み込む。
けれど、『熾盛』の青い装甲が詩乃の眼前に迫る。
そう、クリスタルビットは弾幕兵器。
本命はキャバリア格闘戦。手にしたプラズマブレイドが詩乃の機体に振り下ろされた。
「あー! 惜しい!」
「もう少しだったよ、マジで!」
詩乃の健闘に学友たちが沸き立つ。
シュミレーターをクリアできなかったのは少し悔しいが、けれど、それでも恥ずかしくないどころか、大健闘を果たした詩乃は少しだけ満足気に彼らに微笑むのだった――。
大成功
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朱鷺透・小枝子
【メカニック】技術専攻の学生として潜入
口調も大人しい感じに変えないと…眼帯や包帯も、これなら技術専攻の言い訳が立つでしょう
『授業、ついてけてる?』
故国で一通り叩き込まれており、るから、なんとか…この機に学べる事は学ぼう
…ツェーン殿、さんやクロアさんがいるのは想定外でしたが、彼らも歴戦の勇士、有事の際には頼りになるでしょう
『知り合い?親睦を深めないのかい?』
戦場で対峙したり助けたり共闘した程度です。
予知から外れても困りますから、こちらから接触は控えます
【視力】『眼倍』で【情報収集】士官学校敷地内把握。
眼帯越しに異変へ目を光らせておく。
クレイドルも、いつでもサイキックキャバリアを召喚できるように。
猟兵たちは様々な立場を利用して士官学校に潜入していく。
時に学生として。時に教官として。
その多くはすんなりと受け入れられるものであった。逆に考えれば小国家『フルーⅦ』のセキュリティが大丈夫か? と思わないでもなかったが、相手が生命の埒外たる猟兵であるのならば、仕方のないことだったのかもしれない。
「おーい、こっちの方手伝ってくれないか!」
己に呼びかける声を聞いて、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は振り返る。
額と首元に包帯を巻き付け、眼帯のように片目を隠した小枝子はメカニック、即ち技術専攻の学生として潜入していた。
訓練に使うキャバリアの整備を手伝っていたのだが、どうにも手が足りないようだった。
彼女の大人しい見た目と包帯などでキャバリアパイロットではない、という説得力を増した結果であったが、しかし、こうも忙しいとは思わなかった。
この整備に加えて授業もあるのだ。
はっきりいって学生身分というのは大変なものなのだな、と小枝子は思っただろう。
『授業、ついていけてる?』
耳元でサポートAIの『クレイドル・ララバイ』の声が聞こえる。
わかっている、と小声で答える。
「こう見えても故国で一通り叩き込まれいるであります」
だから、と大丈夫と思ったのだが、案外難しい。
小国家ごとに規格が違ったりするのかもしれない。え、こういうこともあるのか、と小枝子は新しい発見に驚かされる。
「とは言え、『ツェーン』殿、さんや『クリノ・クロア』さんがいるのは想定外でありました……」
『顔見知りなのかい?』
「はい。彼らは歴戦の勇士。有事の際には頼りになるでしょう」
小枝子は彼らのことを知っている。
かつてオブリビオンマシンによる事件に彼らもまた渦中にあったのだ。
一人は小国家『フィアレーゲン』のトップとして。一人はただの少年として。
けれど、二人は迫りくる戦乱という逆境、オブリビオンマシンによる策動。そうしたものに利用されながらも、けれどそれらを乗り越えて生きている。
その様が小枝子は眩しいと思えた。
キラキラしている、とも思えた。
言ってしまえば、それは小枝子が手を伸ばしてはならない宝石のようなものだった。
『親睦を深めたりしたほうがいいんじゃないかい。それこそ有事の際には、というのなら連携は必須だろう? 話を通した方がいいんじゃない?』
「いえ、それは止めておきましょう。戦場で対峙したり助けたり共闘したりした程度です。それに予知から外れても困りますから。不用意な接触はしないほうがいいはずであります。それに私が声をかけてもご迷惑でしょう」
つらつらと出てくる『やらない理由』に『クレイドル・ララバイ』は困ったような感情を浮かべる。
けれど、それが小枝子の本心だった。
自分は破壊しかできない。
そんな存在が近くにいれば、彼らとて、その余波に巻き込まれてしまう。
それは本意ではないのだ。
だから、と彼女は距離を取ろうとして。
「あー!」
びく、と肩を震わせる。
『ツェーン』の声だった。何か不意の事態が起こったのかと小枝子は眼倍(ガンマ)を人工魔眼でもって発動させる。
だが、特に以上はなかった。
なんだ、と思った瞬間彼女の手を取る感触があった。いつのまに、と小枝子は思っただろう。
眼の前に居るのは『ツェーン』だった。
「あなた!」
あ、と彼女は声をひそめる。
「猟兵の人よね、そうよね。私わかるよ。そうだよね?」
「え、あ、え」
「そんな格好して何か理由があるんでしょ。わかってるよ。気にしないで。ただ、あなたの姿を見たら嬉しくなって」
それだけ、と『ツェーン』は笑って取った小枝子の手を離す。
何か特別なことをしていると彼女は即座に理解していたのだろう。これ以上の接触は小枝子の迷惑になると理解しているようだった。
小枝子はぽかんと立ち尽くすしかなかった。
『君はああ言ったが、彼女らはそう思っていなかったようだね――?』
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
やれやれね。
まあちょうどいい機会だし、この国の未来のエースたちの力を魅せてもらっちゃおうかしら?
判定:SPD
臨時教官役でもぐりこむよ。
「やーやーみなさん。よろしく頼むよ。」
キャバリアはレスヴァントシリーズは目立つからね。
ここのキャバリアを借りるよ。
キャバリアの訓練や戦術シミュレーションで士官生徒と結局的に交流をおこなうよ。
アドヴァイス?後ろにも目をつけるんだよ。
生徒の動きを『読心術』で『見切り』回避
『瞬間思考力』で見切った動きから、ボクの『戦闘知識』に照らしたアドヴァイスを生徒に返しつつ、『カウンター』で撃破判定
実力で生徒の信頼を獲得していくよ。
「やれやれね」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)はため息を吐き出す。
仕方ないことだった。
このクロムキャバリアという世界は常に戦乱に塗れている。
平穏な日々に思えて、その裏では戦火がくすぶっている。いつだって、その炎が己達を焼くことを人々は知っているのだ。
逃げ場はない。
大地も、海も、空も。
どこもかしこも滅びの炎のきっかけを探しているように思えたことだろう。
そんな世界にあって、今日もオブリビオンマシンによる事件は予知されている。
「まあちょうどいい機会だし、この国の未来の『エース』たちの力を魅せてもらっちゃおうかしら?」
小国家『フルーⅦ』の士官学校に潜入する。
それはオブリビオンマシン事件が起こると判明していても、正確な日時がわからないためである。本来であれば、ピンポイントで事件が起こった瞬間に飛び込めばいいのだが、今回はそうはいかないのだ。
ユーリーはセキュリティをハッキングして自身の身分を臨時教官として潜り込ませていた。
担当の授業へと向かう。
講義室に入れば、一斉に視線が自分に突き刺さる。
思ったより年若い、とユーリを値踏みする視線だ。臨時、というのだから尚更だろう。
「やーやーみなさん。よろしく頼むよ」
「よろしくお願いします!」
一斉に敬礼する学生たち。
だが、その視線は未だ己の実力を見定めているようだった。まだまだ青いな、とユーリーは思っただろう。
己の立ち振舞い。所作から実力を瞬時に推し量れないのであれば、戦場であっても尚更だ。キャバリアという鋼鉄の巨人を身にまとうように搭乗するのだから、尚更生身の人間にもまた敏感にならなければならないのだ。
「じゃあ、とりあえず、実機で動きを見てみようか」
「はい!」
ユーリーは実機に寄る訓練を学生たちと行う。
自分の機体は目立つため、訓練機を借りての実機訓練を行っていく。確かに自分の機体ではないから動きが硬い、と思うが学生相手にはこれで十分だと言える。
自分で思う以上に学生たちの動きは硬い。
直線的である、とも思えただろう。
「まだまだ動きに臨機応変さがないね!」
「は!」
「でも、癖をつけろって話じゃないからね。わかるかな?」
「っ、う……わ、わかりません! でも、敵の動きはセンサーで感知できるので……」
「だめだめ、そんなんじゃ。反応が遅いよ。後ろにも目をつければセンサーだよりじゃないでしょ!」
弾く武装を手にとってユーリーは学生の機体に武装を突きつける。
わ、わからん……と学生たちはユーリーの指導を受けながら首を傾げる。
『エース』の感覚というのは、未だ発展途上の学生たちには受け入れがたいものであったのかもしれない。
「でも、さっきの攻撃は悪くなかったよ。踏み込みがいいね。思いっきりがいいってのは身を危険に晒すけど、一人で戦ってるんじゃないんだから」
だから、僚機を頼るのも手だね、とユーリーは学生たちにアドバイスしていく。
ただ、操縦に関してはあんまり、という学生たちの評価だった。
戦術の幅は見事にわかりやすいのに、肝心な単騎での操縦技術はユーリーの説明では感覚的過ぎたのだろう。
「でもまあ、いい先生だよな」
「うん。訓練に付き合ってくれるし」
そうして信頼を徐々に獲得していったユーリーは、人に教えるのも悪くないなって訓練で流した汗を拭うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
潜入…
流石に学生はうわキツ案件だし、教官とか技師とかでワンチャン…
これがデビキンなら、私は留年学生やぞ!で済ませられるのに…
とりあえず、その時が来るまで何してようか
目立たないように目立たないように…
…そうだ、シミュレーターを解析して敵の行動パターンや攻略法を纏めてよう
『ハッキング』で戦闘データ設定を解析、攻略虎の巻を作ろう
そして一部無料で公開して、良い感じの所で続きは有料会員向け!って感じのwebページを作って…
ちょっとした『お金稼ぎ』に使える、怪しい情報商材っぽい感じの攻略ページ作っちゃえ
後は無料部分を書いたチラシを刷って…シミュレーターの近くにそっと置いておこう
続きはwebで!って感じで!
小国家『フルーⅦ』の士官学校の制服を身に当てて、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思った。
まだまだ全然いけるじゃん、と。
確かに自分の年齢を考えたのならば、生徒として潜入するのは無理があったかもしれない。流石にうわキツ案件だしなーって思っていた。
教官とか技師のほうがまだワンチャンあるわ、と思っていたのだ。
だが、案外悪くない。
学生服なんてさー、て……いやさぁ、馬鹿にしてたさ。けれども情熱を秘めたなんちゃらかんちゃら。
玲は案外まだまだ行ける。
むしろ、逆に良くない? とまで思えた。無論、誰の意見かというと客観的事実からである。天の声とかではない。
「これがデビルキングワールドとかなら、私は留学生やぞ! で済ませられるのに……」
とは言え、ごまかしが効かなかった時のことを考えたら、安牌が取れるのに取らない手はないのである。
そういう意味では目立たない、ということが玲の条件だった。
なるべく目立たないように。
ある意味それは正解だっただろう。玲のようなできる雰囲気の教官がいたら男子学生の風紀が乱れに乱れるだろう。わかる。
だからこそ、玲は技師の不利してつなぎを着込んで士官学校のシュミレーター関連の整備を行っていた。
「あ、そうだ」
玲は思いついた。
そう、難攻不落のクソゲー無理ゲーと言われた『熾盛』のシュミレーション。
そのデータをちょいと拝借して、解析を行う。
学生たちは教官たちに、これで鼻っ柱をへし折られてきたのだという。
長らく士官学校は存在しているが『フルーⅦ』において、このシュミレーションをクリアしたものはいないのである。
なら、と玲は悪い顔をした。
これを攻略できる方法があったのなら?
虎の巻があったのなら?
でっかいシノギの臭いがしてくるではないか。
「はんはんなるほどねー。本来の『熾盛』の動きの全部じゃないのか。あくまで此処に残されているデータだけで行動パターンが組まれているんだね」
『熾盛』と呼ばれる青いキャバリアは、いくつかの形態をもっていたと言われる。
汎用型のA、砲撃型のB、近接型のC、指揮官型のD、妨害型のE、そして最終型と呼ばれる|F型《フォーミュラ》。
これらのいくつかを組み合わせた行動パターンのようだった。
「はーん、開幕狙撃ね。躱されたら近接戦闘。それも凌がれた弾幕兵器で距離を詰めてさらにプラズマブレイドで瞬殺、と」
ふんふん、と玲は頷く。
攻防一体の行動を行う人間みたいな動きをしてみせる『熾盛』。
人間じみた動きを再現しているが、その実、その動きは人間の拡張性を示すような動きであった。
こんな化け物が居るのか、と思わせるほどであった。
そして、理解する。
以前戦った『セラフィム・エイル』――あれが『熾盛』と呼ばれていたのならば、あのサブアームを含めた六本腕と三面の頭部は……。
「これを再現するためだったってわけね。んよし、これで攻略できるでしょ」
あとは、と玲はこれを一部無料で公開し、更にチラシを作って誘導URLまで拵える。
そう、無料は一部だけ。
これ以上は有料でね! というわけである。
マジで怪しい情報商材っぽい雰囲気にしてしまったのは玲の趣味だろう。
チラシをシュミレーターの横にそっと置いて、と後はトンズラである。
「あー! 玲さん!!」
げ、と玲は思った。玲? 何その超美人有能猟兵みたいな名前は、と聞こえないふりをしたが玲は『ツェーン』が己を見つけたのを察知して逃げる。
面倒なことになりそうだと思ったのだ。いや、実際なる。
「なんで逃げるんですか! 私、わかるんですからね!」
「いや、なんでわかるの」
玲は隠れ、逃げ、『ツェーン』を撒く。
なんか犬じみてるな、と思ったが玲はそさくさと自分が怪しい商売をしていることを彼女に悟られまいとスニーキングミッションを続行するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
【POW】
判別困難で神出鬼没な汚染源……ほんと、予知が無かったらと思うと嫌になるわね
生徒として潜りこむけど……正直言うと人が多い環境に慣れてないし、どう接したらいいかがわからないのよ
だからこの際だし極力人と関わらないようにしつつ、キャバリア現行機種の資料とか戦術論や操縦論とかの知識を徹底的に仕入れるつもりでいたら、何故か例のシミュレーターに挑むことになってたわ
こっちの操縦技術は我流だし、改めて、慣れているプロトミレスと特異な機体なアルカレクスだから何とかなっていたのを実感する、けど…!!
(それでも食い下がる。多分、その挙動が何処か「アハト」を思い出すから。
ちなみに調べ物の事は完全に忘れた)
オブリビオンマシンに寄る事件は、原因さえ定かにならない。
少なくとも猟兵ではないものにはオブリビオンマシンとキャバリアの相違はわからない。何処かに原因があるはずだと理解していても、差異を見つけ出すことができないのだ。
そういうものなのだ、と割り切れたのならばよかっただろう。
だが、それで国が滅びる。
納得しろという方が無理だ。
判別困難。
神出鬼没。
汚染源を特定することすらできない何者かの暗躍。
グリモアの予知がなかったらと思うと、とアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は息を吐き出す。
己が思い出すのは己の故国。
忌々しい記憶である。
だからこそ、このような思いを他者にさせぬために彼女は戦っているのだ。
小国家『フルーⅦ』の士官学校に潜入したアルカは生徒として溶け込んでいた……とは言え、正直に言うと人が多い環境というものに彼女はあまり慣れていなかった。
元が王族のレプリカントである、という出自も相まってのことであった。
「どう接したらいいのかしら」
同年代の学生たち。
彼らは朗らかだった。確かに彼らは今は平穏の中にいる。
けれど、一度戦乱が起こってしまえば、否応なしに渦中へと飛び込まなければならない。
だからこそ、関係を持つことは避けるべきことであったのかもしれない。
故に彼女は学生という身分のまま資料倉庫に入り込む。
『フルーⅦ』における現行の機体の資料を漁る。
「この士官学校での訓練機は『グレイル』、ね。そこまで突出した性能というわけじゃないけれど、十分に戦える汎用性を持っている……」
資料を頭に叩き込んでいく。
出力、稼働時間、運動性能。
そうしたものを理解すればこそ、キャバリアというものは己の手足の延長となって性能を発揮してくれるのだ。
「あー、こんなところにいた!」
資料倉庫に籠もっていたアルカを見つけた女子生徒の姿にアルカは目を丸くする。
「え、あ」
「シュミレーターの時間だってば! ほら、はやくこっち!」
「え、え」
アルカはその勢いに釣られて、そのままシュミレーターまで引っ張り出されてしまう。
百年前の機体『熾盛』。
その機体とのシュミレーションに何故か参加することになっていた。
「まー、一瞬かもだけど、がんばってね!」
「せ、説明を」
「やればわかるから」
そう言われて始まるシュミレーション。
開幕直後に放たれる狙撃の一撃をアルカなんとかシールドで防御する。
けれど、すぐさま踏み込んできた『熾盛』のプラズマブレイドの一閃が機体の腕部を切り裂く。
「くっ、く……! これは!」
「しのいだ! でも!」
アルカは理解する。
己の操縦が我流であることを。そして、改めて己の機体「プロトミレス』の性能と特異性を。
あの機体であったからこそ、これまでアルカはなんとかなっていたのだと。
だが、それでも彼女は食い下がる。
その動きの端々に彼女はかつて戦った『憂国学徒兵』――『ハイランダー・ナイン』と呼ばれた『アハト・スカルモルド』の動きを幻視する。
全てが同じではない。
けれど、それでも思い出したのだ。
「次は弾幕兵器でしょう」
アルカの読みは当たった。空に浮かぶクリスタルビット。
その膨大な牽制の一撃が全て必殺となって機体に降り注ぐ。致命傷を伏せぐように突貫し、アルカは弾幕の一撃を凌ぐ。
けれど。
「っ、機体が保たない……この程度で!」
機体が弾幕で撃ち抜かれ、動きを止める。
其処に打ち込まれるビームの光条。
足を止めた機体にできることはなく、アルカの機体は撃破される。食い下がることができただけでも凄まじいと言えるだろう。
その賞賛を浴びながらアルカは学生たちから、さらなる拍手でもって出迎えられるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
凶事に備えて、私も教官として潜入しましょう
学校は人が沢山いて賑やかなところね
あの『学園』もこんな感じになるのかしら
教官としての仕事の傍らこの国の歴史を調べるわ
興味を惹かれるの
きっと聞き覚えのある名があるからでしょうね
でも……これは過去の話
『あの子』達とは別の誰かの歴史
そう思うのに、何故か気にかかってしまうわ
彼等の歴史を教えてくれる人がいれば話を聞いてみたいわね
なんだかとってもミステリアスな教官がいる、と小国家『フルーⅦ』の士官学校では噂になっていた。
とても人とは思えない美貌を持つ顔立ち。
冷たい印象を与える瞳。
立ち振舞、所作、そうしたものが全て絵になる、と士官学校の学生たちは皆、こぞって彼女の――薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)の姿を見ようとコソコソしては、他の教官たちに見つかって追い出される、というのを繰り返していた。
彼女は確かに教官としての身分を得て士官学校に潜入していた。
学校とはこのように人がたくさんいてにぎやかな場所なのだと、理解する。あの『学園』もこんな感じになるのかと静漓は顔立ちとは裏腹に思う。
「静漓教官、頼まれていた資料のデータはこちらに」
教官室に詰めていた彼女の元にやってきたのは、小国家『グリプ5』より出向してきているキャバリアの整備技師の『ツェーン』と呼ばれる少女だった。
何か頼んだだろうかと、と彼女は思ったが、どうやら自分がこの小国家の歴史を調べていることを何処かで知ったのだろう。
手渡されたデータメモリを手元に遊ばせながら静漓は『ツェーン』を見やる。
「ありがとう。でも、これ」
「どうやって使うのか、ですよね。えっとですね、これを、このスロットに差し込んで……」
丁寧に教えてくれる。
優しい。
そんな風に彼女は思ったかも知れない。いや、そもそも彼女は自分に違和感を覚えていないのだろうか。
むしろ、猟兵であると気がついていて、その上で此方に協力してくれている節さえあるように思えてならない。
「はい、これでオッケーですよ」
「こうやるのね」
「こっちのがフォルダになってるので、纏めてます。『皆さん』にはお世話になりましたから。これくらいのフォローはしますよ」
そういって『ツェーン』は手を振って教官室から出ていく。
不思議な子だと、静漓は思った。
どこか『アイン』という少女に少しだけ、半分だけにているように思えたのだ。
「……『フルーⅦ』……国家の興りは『ズィーベン・ソグン』と呼ばれる『憂国学徒兵』の一人……」
その名前。響き。数字の単語。
それらがどうしても彼女は気にかかったのだ。『アイン』もそうであったように彼女が深く関係する者たちの名前は数字が冠されている。
きっと、と彼女は理解しているのだろう。
『あの子』たちとは別の誰かの歴史なのだろう、これは。
わかっているのだ。
けれど、どうしても気にかかってしまう。
何故か、と。
フォルダの中身を展開していく。そこに在ったのは、過去の『憂国学徒兵』に関するレポートの類だった。
圧倒的なキャバリア操縦技術だけで混乱を極めていた、この大陸を収めたこと。
この地にて巨大な勢力を持ち、他の大陸にさえ進出しようとしていた『サスナー第一帝国』さえ滅ぼしてしまったこと。
多くのことが記されている。
そこで静漓は見知った単語を見つける。
『アイン・ブリュンヒルド』
『閃光』と渾名された『憂国学徒兵』、その一人。
その生涯が記されている。
元は『サスナー第一帝国』のキャバリアパイロットであったが、『八咫神国』との戦端の最中に『フュンフ・エイル』と交戦。
その後、離反し『憂国学徒兵』として活躍し始める。
「……その後、二年後に戦死……」
あまりに早すぎる。
静漓は、その事実を瞳に刻む。戦死。死んだということだ。
戦乱の世界にあっては、ありふれた出来事なのかもしれない。けれど、とも思う。
あまりにも早い。
強大な力を持つ|『超越者』《ハイランダー》とも呼ばれた者が、そんなに早く戦没してしまうのか、と。
その資料をたたみ、彼女は瞳を伏せる。
浮かぶのは、あのしあわせなゆめをみる屈託のない笑顔だった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
俺っすか。学生国家からの留学生っすよ。
生徒の雰囲気はここと似たようなものっす。
本当っすよ…俺が正規の留学生ではなく潜入で来たことを除けば。
まあクソゲーであっても無理ゲーではないのなら、
やるうちに見えてくる意図もあるでしょ。
という訳で俺が試行繰り返してパターン引き出すので、
他の学生には対抗策の考察と実践をしてほしいんすよね。
死に覚えができるのはシミュの特権っしょ。
俺の方からも皆の力量を見つつ提案行うんで。
少なくとも何やってるかは分かる、までいけたのなら。
教官らもさぞ驚くとは思わねえすか。
というかいるじゃねえすか見知った顔が。
息災っすか二人とも。
…そっすか。それならよかった。
「あー、きみ、きみ。見ない顔だが」
そう呼びかけられて、安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は振り返る。
「俺っすか?」
「そう君。所属IDの提示、良いかな?」
あーはいはいと穣は己のIDを士官学校の教官の一人に手渡す。
スキャンされたIDから偽装された情報を読み取って、提示されたのは彼の顔写真と名前、そして所属であった。
「ああ、なるほど、出向組か。すまないな。どうしても見覚えのない顔があると、こうして尋ねるのが規則になっているんだ」
気を悪くしないでくれよ、と教官が言うので穣も釣られるようにして笑う。
「あーなるほどっすね。いやまあ、大変っすね。ご苦労さまであります」
なんて言って見せる。
いやまあ、確かに嘘は言ってない。留学生としての身分を持っていることは確かである。まあ、正規ルートじゃあなく、潜入でやってきたことを除けば、であるが。
潜入と言ってもいつ起こるとも知れぬオブリビオンマシン事件を解決するためである。
事件が起こる、とは言われているが、いつ起こるのかがわかっていないのだ。
だからこそ、その有事に備えてこうして潜入しているのだ。
「で、これもその一つっすか」
「そうそう。みんなやらされるんだよ。留学生だろうがさ」
そう言って穣が座らされたのはキャバリア戦闘のシュミレーションだった。
どうやらこの士官学校に入った者は皆最初にこのシュミレーションで鼻っ柱を折られるのが慣例になっているようだった。
この学校が始まって以来、一度たりとも破られたことのないデータ『熾盛』。
「まあでもクソゲーだけどな」
「でもま、無理ゲーじゃないんでしょ? なら、やる内に見えてくる意図もあるでしょ」
「あるかなぁ、そんなの」
「ないだろ。いやマジで。本当に洒落にならんから」
そう言われても穣はやるしかない、と思っていた。
仮に己が無理でも試行錯誤でパターンを引き出していけば、他の学生が考察し、対策を打ち出せるかも知れない。
「死に覚えができるのはシュミレーションの特権っしょ」
でもさ、と彼らは言う。
無理あって、と。
だが、穣は頭を振る。
「これで少なくとも皆が覚えて技量上がれば教官らもさぞ驚くとは思わねえすか。そういう顔、見てみたいと思えねぇっすか?」
その言葉に学生たちは確かに、とうなずく。
見てみたい。
教官たちは、己たちが心折られる姿を見たいと思っているに違いないと思っているのだ。ならばこそ、やってやらー! と穣の言葉に奮起するのだ。
「やる気になったんなら早速……」
と、穣も挑んでみたが、無理だった。
どれだけパターンを考察しても、その考察を簡単に踏み越えてくる。
とは言え、ある程度の法則性があるのは、このデータの元となった機体の情報を十分に読み切れていないからだろう。
シュミレーターの横に置いてあった謎の攻略法虎の巻、という誘導URLの無料公開分を参考にしながら穣たちは『熾盛』攻略をねっていく。
「あー! 此処にも在った! これだめだよ、ずるだから!」
そう叫ぶのは『ツェーン』と呼ばれる少女だった。
あ、と穣は目を丸くする。
これは潜入なのだ。己が偽装しているということがバレてはならない。なのに、知り合いがいたのだ。
「……あー!!」
「そ、息災っすか二人とも」
「話し反らした!」
「いやあ、あれから仲は進展したっすかねぇって思って」
「そ、それは、そのぉ、ね?」
穣は、これはリア充の香りがするな、と思った。だが、まあ、それでもいいと思ったのだ。
二人に大事がなければ。
オブリビオンマシンに寄る事件に巻き込まれながらも、けれど、こうして青春みたいな時間を過ごしているのなら。
「……そっすか。それならよかった」
さっと、虎の巻を隠して穣は曖昧に笑う。
だが、よかった、と思う心は本心なのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
『エイル』さんと『熾盛』のデータで、士官候補生の鼻っ柱を折る。かぁ。
『絶対に勝てない存在がいる』ってことは教えられると思うけど、
新兵への戒告にしてはやり過ぎな気もするね。
ま、そこは『フルーⅦ』のことだから口はださないけど、
それでもびっくりはさせてあげたくなるね。
って、忍べないバスケットボールですが何か?
もはやツッコミ待ちだよね!
サージェさんとわたしで生徒として潜り込んだら、
こっちも『熾盛』のデータで戦っちゃおう。
……20歳に制服キツイとか言ったの誰?
こほん。
『希』ちゃん、わたしたちの機体にデータのインストールよろしく!
あ、わたしだけじゃ制御無理だから、サポートもお願い、ねー!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!!
え、潜入ミッションですか!?
いやー私の最も得意とするところですね!!
え?ナンデ!?
それにボールなんて持ってませんけど?!
しかし何でそんなデータがあるのかは気になりますが
理緒さんの方針に賛成なので
生徒として潜入ですね
15歳なので年齢もバッチリです!
ふむふむ
それじゃ久しぶりにシリカさんとミニシリカを並列起動しましてっと
フフフ、実は生身でもファントムシリカのシステムは使えるのです!
そんな感じでシミュレートにフィードバック
私も|暴れちゃいますよー《やっちゃいますよー》!
クノイチの実力を見るがいい!
高難易度シュミレーターというものが存在しているのだとして、それがいかなる意味を持つのかを理解しているのとしていないのとでは、存在意義が大きく異なるだろう。
小国家『フルーⅦ』においての『熾盛』という名のデータは、士官学校に在籍する学生たちの鼻っ柱を折るためだと彼らは理解している。
どうあがいても倒せない存在。
単騎で戦うことなかれ、という教訓を示すものであもっただろうし、ともすれば、何もかも自分でことが為せると思っている思い上がりを正すものであったかもしれない。
「『エイル』さんと『熾盛』のデータで……てことなんだろうけど、これは」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は士官学校に潜入し、シュミレーターのデータである『熾盛』を見やる。
ある程度パターン化されている、というのは先んじて参加していた猟兵達のシュミレーターの結果を見ていればわかるところである。
これは『絶対に勝てない存在がいる』ということを示しているものではない。
仮にそうだとしても、新兵への戒めとしてはやりすぎな気がしないでもないと思うのだ。
「仮に『エイル』さんの『熾盛』だったら、こうは動かないんじゃないかな。少なくとも、パターン化なんてしないはずだもの」
そう、『悪魔』とも『救世主』とも呼ばれた『フュンフ・エイル』ならば、パターン化されるような戦い方はしない。
であれば。
これは意図的にデータが抜かれている、とさえ勘ぐられる。
「でもま、そこは『フルーⅦ』の事情だからね。口は出さないけど、それでもびっくりさせてあげたくはなるね」
「ふっ、そこで参上私ですよ!」
ばーん! とまったく忍ぶ気配のない、威風堂々(シノベテナイクノイチ)たる立ち振舞を見せるのが、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)であった。
まるで忍ぶ気がない。
「およびとあらばさんじ――」
「あーはいはい、びっくりさせたいってそういうことじゃないから」
「え!?」
サージェのたゆんとするバスケットボールで男子学生をびっくりさせたいとかそういうわけではないのである。
そういう時間じゃないから、と理緒はあっさりとサージェの前口上をキャンセルする。
「えー……こういうのって私が最も得意とするところなんですけど」
「いや、冗談にしては面白いよ」
「え!? 冗談!? ナンデ!?」
「そのバスケットボールで忍のは無理でしょ」
「バスケットボールなんて持ってませんけど!?」
そんな二人のやり取りは、別な意味で注目を集めまくっていたが、当人たちは知る由もない。
「今、二十歳に制服キツって言わなかった?」
誰も言ってませんが。
むしろ、イエス! とさえ言っておこう。大人のに学生時代の制服が入って、まだまだ行けるって思っちゃうのもイエスだし。やっぱり無理で恥ずかしそうにしているのもイエスだと思います。ボブもそう言ってます。
「こほん」
「いやぁ、でも此処の制服ってキツイですね!」
サージェはそりゃそうであろう。
何処がとは言わんが。何処がとは。
でもまあ、パツパツになりながらもちゃんと着れてる。うん着れてる。着こなしの一つだと思えば。
うん。
「……『希』ちゃん、わたしたちの機体にデータのインストールよろしくね!」
『わかりましたけど……』
「あー!? ボタンが弾けるのナンデ!? ナンデ!?」
ばすん! とパツパツだった制服のボタンが理緒の後頭部にフレンドリーファイア。
振り返った理緒の顔が怖いな、とサージェは思ったが、今はね、ほらね、シュミレーターをね、となだめる。
「今、潜入中ですよー理緒さん。潜入。スニーキングミッションです。目立ってはだめなんですよー!」
「……なんかサージェさんにそれ言われるのすごいヤ」
「そんなー」
そう言いながらも二人は学生としてシュミレーターに挑戦する。
二人がかりの変則的なシュミレーションであったが、しかし、『熾盛』は尋常ではなかった。
2対1であっても関係がない。
まるで此方の攻撃が来るのを理解しているかのような挙動で持って二人の機体を翻弄していく。
あまりにも凄まじい挙動にサージェは追いつけない。
いや、追いつこうとするのがそもそも間違いなのかもしれなかった。あの人間の身体機能の延長線にあるような、拡張性を示すような動きは、キャバリアという人型戦術兵器との戦いを想定してはいないのかもしれない。
もっと、それ以上と戦うための、とも言える。
「うーん、サポートもお願いしても、ここまで、かー……」
「ふーむ、暴れ足りない気もしますが、でも」
二人は理解する。
これは明らかにパターン化されている。言ってしまえば、まだ加減されている類なのだと。
一体どれだけの技量を『フュンフ・エイル』が持っていたのかはわからない。
けれど、理緒がそうであったようにかつて見た『熾盛』のデータとは遜色がない。けれど、欠けた部分もある、と思わせる。
それだけが二人の収穫だった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
明和・那樹
●SPD
何時来るかわからないとなれば、現実で学校生活がある僕のログインは途切れ途切れになってしまう
幸い時差があるのか、GGOを経由してログインすると良い時間帯なのがありがたいけどね
そんな僕に用意して貰ったカバーストーリーは、架空の他国から士官学校視察にやってきた飛び級エリートの高級将校…何か物凄く無理がありそうだけど、それが通っちゃう世界なのは良く分かった
だからと言って威張り散らす気はないし、寧ろGGOの『学園』とは別の趣向な学校だから興味津々だし、同じ年頃の士官候補生との交流もするよ
けど、憂国学徒兵に同じ名前…か
見知った名前を聞いて思わず初めてのシュミレーターに挑戦するけど…手加減はしないよ
オブリビオンマシンに寄る事件はいつ起こるか予知では判明していない。
その事実はゴッドゲームオンラインへのログインを経由してクロムキャバリアへと転移している明和・那樹(閃光のシデン・f41777)にとっては、あまりにも不都合だった。
彼には彼の生活がある。
とは言え、幸い時間差というものがあるのか、士官学校での生活と現実世界での生活はうまい具合に重ならないようになっている。
それはありがたいとは思う。
けれど、と彼は改めて己が小国家『フルーⅦ』に潜入するカバーストーリーを見て、こんなのがまかり通るのかと頭を抱える。
架空の他国からの士官学校視察にやってきた飛び級エリートの高級将校である。
「無理がないか、これ」
流石に、ともり過ぎじゃないかと思ったのだ。
無理もある。
どう見たって今の自分は子供なのだ。
けれど、実際にはすんなりことが運んでしまった。この世界には自分の年の頃であっても当たり前のように戦場に出る者が多くいるのだろう。
それがまかり通る世界なのだと、彼は理解する。
とは言え、それで威張り散らすつもりなんてない。むしろ、興味津々だ。
ゴッドゲームオンラインでみた『学園』もそうであったが、このクロムキャバリアの士官学校もまた違った雰囲気がある。
彼に取っての現実である『統制機構』の学校とは打って変わった雰囲気があるのだ。
「おっと、これは失礼」
教官である『クロノ・クロア』と呼ばれる少年だってそうだ。
青年と言って良い年の頃であるが、彼もまた多くの戦場を経験してきた兵士であると那樹は理解したことだろう。
「いや、こちらこそ。これから何を?」
「ああ、今皆シュミレーターに夢中になっているから、そろそろ止めないと、と思って」
彼が言っているのは『熾盛』と呼ばれる機体のデータを取り入れたシュミレーターのことだろう。
あっちで学生たちがどうにか攻略できないかと躍起になっていたのを那樹は見ていた。
『フュンフ・エイル』と呼ばれる過去『憂国学徒兵』を率いた人物のデータらしい、ということを聞いて彼は少し驚いていた。
なぜなら『エイル』という名前も『憂国学徒兵』という名称も、彼はゴッドゲームオンラインで聞いたことがあるからだ。
「同じ名前、か……」
見知った名前である。
『クリノ・クロア』がシュミレーターに群がっている生徒たちを連れて実機の訓練に引っ張って言っているのを見やる。
ちょうどいいタイミングだな、と那樹はシュミレーターに腰を下ろす。
今なら誰も居ない。
使い放題だ、と彼は機体のデータを読み込んでシュミレーターを起動させる。
『熾盛』と呼ばれる青いキャバリア。
その動きはゴッドゲームオンラインで鍛えた反射神経を持つ那樹をしてもでたらめな動きだった。
人型がこんな動きをするのか。できるのかと思わせるほどの動き。
人体の美しさを誇るようでありながら、しかし拡張性をも見せつけるような動きだったのだ。
射撃も正確であれば、踏み込む速度も凄まじい。
機体性能のせいだけじゃない。
あの動きはパイロットの技量も加味されているのだろうことがうかがえる。
「手加減はしない、と言ったけど……これは」
勝てない。
少なくとも、このシュミレーター上では勝てない、と那樹は判断するほかなかった。
そして、彼はシュミレーターから出ると実機訓練の場へと向かう。
事件はキャバリアがオブリビオンマシン化することで起こると言っていた。なら、実機訓練こそが狙い目だろう。
そう思って那樹はシュミレーターの画面が歪むのを見逃した。
『熾盛』という文字が『Prometheus Caret』という文字へと変化していた
けれど、それはオブリビオンマシン事件とは関係していない。そう、オブリビオンマシンとは――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『グレイル』
|
POW : シールドストライク
【シールドを使用した格闘攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【パイルバンカー】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : バレッジ
【友軍と共に繰り出す一斉掃射】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を制圧し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : グレネードショット
単純で重い【榴弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それは突如として起こったことだった。
少なくとも『クリノ・クロア』と呼ばれる小国家『グリプ5』から出向していた教官である青年は思った。
自分の駆る教官機『グレイル』以外の全ての訓練機である『グレイル』の挙動が一気におかしくなったのだ。いや、パイロットたちがおかしくなった、というのが正しいのかも知れない。
「これは……!」
そう、猟兵たちにはわかる。
これは学生たちの駆るキャバリアがオブリビオンマシンに変貌した兆候であると。
ついに予知された事態が引き起こされたのだ。
だが、『クリノ・クロア』の駆る教官機はオブリビオンマシン化していない。
「『クロア』!」
『ツェーン』と呼ばれる少女が叫ぶ。
そのことで幾人かの猟兵たちは気がついただろう。
この士官学校を何故オブリビオンマシンが狙ったのか。何故、教官機だけがオブリビオンマシン化していないのか。
狙いは。
そう、次代の『エース』の抹殺。
『クリノ・クロア』を『フルーⅦ』の学生たちが殺すこと。それによる『グリプ5』との再度生まれる軋轢を、修復しようがない亀裂を生み出すこと。
オブリビオンマシンは知っているのだ。
『ツェーン』と呼ばれる少女が、『熾盛』のシュミレーションで打ち勝ったことも。
そして、彼女がキャバリアに乗らないのは、ひとえに『クリノ・クロア』という青年の存在が楔に、鎹になっていることに。
故に狙う。
教官機を駆る『クリノ・クロア』を――。
シルヴィ・フォーアンサー
……来たみたいだね……これで帰れる。
『終わったらな、救助第一だ、帰りたければしっかり達成したまえ』
ハッキングかけながら残像分身とシルエットミラージュを使って
一斉掃射の狙いをバラけさせてやり過ごし。
お返しとパラライズ・ミサイルで敵機体を麻痺させるよ。
麻痺してる間に無力化しよう。
手数がほしいからイマジナリー・マイセルフで
別のシルヴィとミドガルズを呼び出すよ。
ここから『』内は分身発言。
『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン、麻痺ってるの殺っちゃえばよいの?』
はぁ……やらないから四肢破壊していって。
ロケットパンチを外してビームサーベルで腕と足を破壊して
無力化していくよ救助はその後で。
士官学校の学生たちが駆るキャバリア『グレイル』がオブリビオンマシン化する瞬間。
それをある意味で心待ちにしていたのが、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)だった。
彼女は早く帰りたいと思っていた。
確かに士官学校での生活は、目立ちたくない彼女にとっては苦痛な時間でしかなかったことだろう。
目立ちたくないと願いながらも、しかし結果として目立ってしまう。
彼女は、シュミレーションである『熾盛』との戦いに引き輪変えたパイロットだ。
無論、言うまでもなく優秀なパイロットであることが認められたのだ。
それ故に彼女は、今日という日がやってくるまでずっと学友たちに引っ張り回されていたのだ。
「……でも、これで帰れる」
『終わったらな、救助第一だ。帰りたければしっかり達成したまえ』
サポートAIの『ヨルムンガンド』もそう言っている通り、オブリビオンマシン化した学友たちの駆る『グレイル』を打倒しなければならない。
打倒、と言っても撃墜ではない。
戦闘能力を奪わなければならないという制限付きだ。
「……そういうことなら」
シルヴィの瞳がユーベルコードに輝く。
機体から発せられる光は残像分身となって戦場に走り抜ける。それは残像であったとしても、本物の機体と遜色ない形をしていた。
それに故に撹乱を目的とした行動だと思われたのだろう。
『グレイル』たちの放つ一斉射撃によってシルヴィの生み出した残像がかき消される。
だが、それさえも布石であった。
己の機体の残像たちは一斉射撃をやり過ごすための力。そして、次なるユーベルコードが輝く。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
無駄に明るい声が響き渡る。
「頭痛くなりそうなこと、その声で言わないで」
頭痛が痛い、みたいなことを言いながらシルヴィは呼び出した己の分身が駆る『ミドガルズ』を見やる。
「えー? 手数がほしいから呼んだんでしょー? なら感謝感謝☆」
「いいから早くして」
シルヴィは『ミドガルズ』から『パラライズ・ミサイル』を放ち、その爆風で持って『グレイル』たちの動きを止める。
「はーい、じゃあ、麻痺ってるのを殺っちゃうね!」
「殺らないで。行動能力だけ奪えばいいから」
「つまりつまりー?」
はい、ともう一人のシルヴィの底抜けに明るい声にシルヴィ自身は頭を抱える。
「四肢だけ壊して」
「だるまってことね! おけおけ! そんなのかんたーん! はいなー!」
その言葉と共にシルヴィの分身が操る『ミドガルズ』がパラライズ・ミサイルの爆風に紛れながら『グレイル』たちへと接近しビームサーベルの斬撃で持って彼らの機体の手足を切り裂く。
地面に落ちる機体。
コクピットに誘爆しないように切り裂く技量は大したものであった。
「無力化完了ねっ!」
「救助は後でするから、今は」
「はいはい、次の標的にゴーてわけね! おけまる!」
「……」
もう少しなんとかならないかな、と自分の分身ながらシルヴィはまた頭が痛いなぁと思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
明和・那樹
●POW
…始まったようだね
変装が変装だから貴賓席で事の成り行きを見守っていたけど、この慌ただしさは並の事じゃないと直ぐ分かる
問題はこの混乱に乗じてでも、ここから格納庫まで走るにしても距離があるし、警備として控えているグレイルを強奪するのも趣味じゃない
それならどうするかなんて決まっている…このまま戦うだけさ
あの程度の大きさならGGOのゴーレムや巨人と大差はないし、乗り慣れてないロボットを操縦して『もしも』の事があっては本末転倒だから、やり慣れた方法が一番さ
接近すれば射撃装備を誤射すると判断しての白兵戦か
なら、それを切り払いで受け流しての『天地無双剣』だ
一瞬の内に腕と頭を落として無力化してみるさ
訓練の様子を視察していた高級将校としての立場から、明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は戦場となった訓練場を見下ろす。
訓練機である『グレイル』がオブリビオンマシン化することは予め知っていた。
とは言え、この光景はあまりにも混沌めいていたことだろう。
ここまでオブリビオンマシンはキャバリアに擬態することができるのかとさえ、那樹は思った。
「……始まったようだね」
この混乱はクロムキャバリアにおいて日常茶飯事であるとも言える。
突如として将校が狂ったように破滅的な行動に出ることも。それによって二国間の軋轢を生み出し、互いに血で血を洗う凄惨たる状況に陥ることも。
全てがこの世界では100年以上も繰り返されてきたのことなのだ。
故に、那樹は走る。
いや、と思いとどまった。
今から『グレイル』などのキャバリアを格納庫に求めるのは時間が足りない。
強奪するのも趣味じゃない。
そして、そもそも、だ。
那樹はキャバリアをうまく操縦できるかと言われたら、それは付け焼き刃にしかならないだろうと理解する。
「どうするかなんて決まっている……このまま戦うだけさ」
彼は訓練場に飛び込む。
すでに生徒たちを取り込んだオブリビオンマシン『グレイル』は教官機である『グレイル』を駆る『クリノ・クロア』を狙って、そのシールドを構えながら突撃している。
アサルトライフルの弾丸が飛び交う中、教官機はペイント弾鹿装備していないにも関わらず、よく持ちこたえていたと言えるだろう。
「くっ……、っ!? 人!?」
彼は見ただろう。
センサーに反応した人体反応。
そこに那樹の姿があったことを。
「正気か!? 戻れ!」
「いいや、戻らない。このまま戦うさ。僕……いや、俺ならできるさ。この程度なんてさ!」
那樹の瞳がユーベルコードに輝く。
放たれた弾丸を手にした二刀でもって切り払い、さらに踏み込む。
凄まじい衝撃波が頬を撃つが、それでも那樹は前に進む。
手加減をしなければならない。
眼の前の敵は鋼鉄の巨人。だが、ゲームの世界のようなモンスターではない。
あの胸部装甲の向こう側には生きている人間がいるのだ。
『もしも』があっていいわけがない。
だからこそ、那樹はやり慣れた方法がよいと踏み込み、振り上げられるシールドに内蔵されたパイルバンカーの切っ先を見つめる。
なるほど、と思う。
射撃が当たらないと判断して、すぐさま白兵戦でこちらを潰すつもりなのだろう。
「判断が早い、と褒めるところかもしれないけれど、それは俺には、この『閃光のシデン』には逆効果さ!」
瞳がユーベルコードに輝く。
打ち込まれたパイルバンカーの切っ先を二刀で火花ちらしながら受け流し、双刃がひらめく。
それは瞬足の斬撃。
己を閃光と呼ぶ彼が持つユーベルコードにおいて、最速の一撃。
その名を。
「天地無双剣(テンチムソウケン)!」
一瞬の内に『グレイル』のオーバーフレームたる腕と頭部が切り落とされる。
頭部のカメラさえ潰してしまえば、狙いは付けられない。
そして、装備を振るう腕がなければ、無力化など容易い。
「さあ、さっさと無力化して事件を解決しようじゃないか」
クエスト報酬も何もでないけれど。
それでも那樹は己が知ったこの学校生活の和やかさが失われてはならないと、その双刃を閃かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
なるほどね。得心がいったわ。首謀者は『フルーⅦ』と『グリプ5』の関係に楔を打とうとしている。
生徒達を殺しても、今度は『フルーⅦ』側からの反発が避けられない。生徒の非殺は必須。よく考えられてるわ。
この条件で使える術式は限られるわね。
まずは「式神使い」で眷属召喚。アヤメ、ゆりゆり、頼むわね。ゆりゆりは籠絡の|香気《パフューム》を生徒達の機体に流し込んで。実習機なら、いやだからこそ、搭乗席の密閉はされていないはず。
そして、「全力魔法」の紅砂陣で、地面を流砂に変えて生徒達の機体を砂で足止め。
アヤメ、今のうちに生徒達を機体から引きずり出して。
『クロア』、まだ無事ね? 『鎧装豪腕』に「盾受け」させるわ。
わからなかったオブリビオンマシンの狙い。
それが今まさに得心がいったと村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は呟く。
このオブリビオンマシン事件を裏で糸引く存在は、小国家『フルーⅦ』と『グリプ5』の関係に楔を打ち込もうとしている。
決定的な軋轢たる要因を、だ。
仮に『クリノ・クロア』が殺されなくても、士官学校の学生たちが死ねば『グリプ5』に矛先が向く。
逆に『クリノ・クロア』が殺されれば『グリプ5』から『フルーⅦ』へと追求が飛ぶ。
原因がわからないオブリビオンマシン事件は、こうして戦乱たる火種を撒き散らす。
憎しみは憎しみを生む。
「たとえ、その因果を断ち切ったとしても、火種はくすぶり続けている。そんなものを撒き散らそうっていうのがあなたたちの狙いだっていうのなら」
殺さず。
非殺傷を貫くしかない。
それがどんなに難しいことかなど言うまでもない。
敵の狙いはよく考えられていた。だからこそ、猟兵というイレギュラーが舞い込むことを是としなかったのだろう。
そういう意味では、ゆかりは己のユーベルコードの多くが封じられていることを理解する。
「この条件であたしを封じられると思ったのなら大間違いよ!」
戦場に飛び込み、ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「急急如律令! 陰に潜みし杜若。大輪咲き誇る芳しき花王。汝らの主が勅を下す。我が元に来たりて手足のごとくなれ!」
「牽制を放ちます!」
召喚されたエルフのクノイチが放つクナイの一撃が訓練機のコクピット装甲を穿つ。
放たれたクナイはコクピットを貫くことはなかったが、しかし、気密性を失わせるには十分だったことだろう。
そして、さらに召喚されたリリスの女王が放つ無差別籠絡術の香気が訓練場に満たされていく。
「アヤメ、ありがと。ゆりゆり、たのんだわ!」
その言葉に満たされた香気がアヤメのクナイによって失われた気密性、その『グレイル』のコクピットへとなだれこんでいく。
それは汎ゆる存在を籠絡する術。
十分な経験を積んだ兵士や、強烈な意志を持つ者であれば抵抗できたかも知れないが、此処に居るのは士官とは言え未熟な学生たちばかり。
彼らにこれに抗え、というのは無理な話だった。
だが、その香気がコクピットに満ちる前に攻撃されては本末転倒である。
「地面を流砂に変えて、動きを止める!『クロア』は!」
「動けます! まだ!」
その言葉にゆかりは『クリノ・クロア』の教官機である『グレイル』を見やる。
武装は訓練であるが故にペイント弾だけだ。
だが、そのペイント弾でもって『グレイル』たちのカメラアイを塗りつぶしているのだ。
「やるじゃない。流石ね。まだ行ける?」
「はい! 彼らを放ってはおけませんから」
「じゃあ、この子に護衛させるから……でも過信しないで」
そう言ってゆかりは『クリノ・クロア』に『外装剛腕』をつけさせる。これならば、不意なるコクピットに攻撃がとんでも一度だけならば防ぐことができるだろう。
とは言え、余談を許さぬ状況であることには変わりない。
「そちらは任せたわ、『クロア』。こっちが破壊した『グレイル』のコクピットから生徒たちを救出お願いね」
そう言ってゆかりは己の手繰るユーベルコードの輝きと共に、このオブリビオンマシン化を引き起こした機体を探るべく、訓練場の中央へと走り出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソフィア・エルネイジェ
●塩沢家
動き出しましたね
ですが先に明らかにしておかねばならない事があります
ガルムの巫女よ、私はエルネイジェ王国第一皇女、ソフィア・エルネイジェ
あなたの名をお尋ねしても?
バーラントで生まれた猟兵がよりによって執行官とは…
しかし彼女の言葉は事実です
この場で成すべきはオブリビオンマシンの無力化
そちらに専念致しましょう
クロア様が狙われている?
生徒もですがクロア様も失ってはなりません
イオンスラスターで急行
クロア様と敵機の間に割り込みラウンドシールドを構えます
展開した聖光城壁で一斉射撃を引き受けましょう
コクピットを避けつつショットガンの反撃で動きを阻害します
強引に突破を図るならばランスによる迎撃を
ジュディス・ホーゼンフェルト
●塩沢家
また謎が増えちゃったじゃないの
まあいいや
ようやくオブリ…ってインドラ!?
まったく面倒なのが…
ご機嫌ようソフィア殿下
バーラント機械教皇庁三等執行官のジュディスでーす
お戯れならまた他所で!
今はやるべき仕事が目の前にあるでしょうが!
クロアって子に引き寄せられてるようだから利用しよう
生徒諸君にはちょっと痛い思いさせるけど授業料って事で
まずはジャミングスモークを焚いてこっちの姿を隠す
闇に紛れて集団の中に突っ込む
パルスクローの斬狂惨禍で盾を持ってる左腕を切り飛ばす
ついでに電子回路をパーにしちゃえば動けないでしょうよ
取り溢しに殴られる前に一撃離脱
追ってくるなら適当にビームキャノン撃って脅かすよ
ジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)は己の機体『ガルム』がシュミレーターで動かなかったことに関して思いを巡らせる。
何故と問いかけても己の機体は答えない。
答えることを拒否しているように思える。これが人間であればトラウマというのだろうが、それさえも定かにならない。
「また謎が増えちゃったじゃないの」
あのシュミレーターに繋げば、幻視した青い騎士の如きキャバリアのこともわかるかと思ったのだが、逆効果だったとさえ彼女は思えた。
とは言え、状況は動き出している。
蠢動していたオブリビオンマシンは行動を開始している。
あの教官機である『グレイル』を狙って動き出している。
「確か、あの教官機には『グリプ5』から出向のパイロットが乗っているんだったわよね……」
なるほど、と思う。
あの教官を『クリノ・クロア』と言ったか。
彼を訓練事故とは言え、暴走した学生たちが殺せば小国家間の軋轢を生み出せるというわけか、と彼女は理解する。
なら、と『ガルム』で助ければ、と思う。
だが、その前に一騎のキャバリアが現れる。
「『インドラ』……エルネイジェの姫が戯れようっていうの、こんな時に!」
「わかっております。ですが、先に明らかにしておかねばならないことがあります」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)の駆る『インドラ』が目の前にあってもジュディスは頭を振る。
「何を」
「『ガルム』の巫女よ。私はエルネイジェ王国第一皇女、ソフィア・エルネイジェ。あなたの名をお尋ねしても?」
「はいはい、バーラント機械教皇庁三等執行官のジュディスでーす。こういうお戯れをやってる暇なんてないでしょう! 今はやるべ仕事が眼の前にあるでしょうが!」
「わかっております」
ソフィアはバーラントで生まれた猟兵がよりによって執行官になっている事態に憂う。だが、と彼女の言葉も理解できる。
今この場で為さねばならないことはオブリビオンマシンの無力化である。
わだかまりは捨て、ここで排除に専念しなければならない。
「わかっているのなら、さっさと動くのが人間ってものでしょう! あの『クロア』って子に引き寄せられてるようだから!」
使わせてもらう、とジュディスの駆る『ガルム』がジャミングスモークを解き放つ。
煙幕が撒き散らされ、そのさなかを『ガルム』が駆け抜ける。
「あの方が狙われている……? 生徒も『クロア』様も失ってはなりません」
『インドラ』のイオンスラスターが噴射し、一気にオブリビオンマシン『グレイル』へと飛びかかる。
構えたシールドの一撃が『グレイル』を吹き飛ばす。
その動きに『グレイル』たちは『インドラ』へと狙うを定めたようであった。
ラウンドシールドを構え、聖光城塞(シャイニングフォートレス)たるユーベルコードの輝きを解き放つ。
「こちらに引き付けます、バーラント……いえ、『ガルム』の巫女、ジュディス!」
「わかってるってーの!」
ジャミングスモークの最中を駆け抜け『ガルム』が『グレイル』へとたちへと飛びかかる。
パルスクローに寄って放たれる衝撃波が『グレイル』たちのシールドに覆われた左腕を切断し、さらに電子回路をショートさせる。
「次、来ます!」
「しっかりと攻撃を引き付けてくれないとさ!」
「『クロア』様は動けますか」
「機体は動きます。援護をします!」
ソフィアの言葉に『クリノ・クロア』の『グレイル』が動き出す。援護を、とソフィアは思ったが、彼の機体は即座に動き出す。
実弾が装填されていないが、シールドに内蔵されたパイルバンカーは機能するようだった。つまり、接近戦しかできない、ということだった。
「その機体では」
「やれることはやる、それが信条ですから」
彼は『グレイル』という不慣れな機体であっても見事な操縦技能でもってオブリビオンマシンの『グレイル』を翻弄しながらジュディスの駆る『ガルム』を援護していく。
「授業料ってことで!」
ジュディスの放つビームキャノンが牽制でもって放たれる。
一撃離脱の動きに『クリノ・クロア』の機体は連携するように動いてくる。
「やるじゃん。でも、あんまり無理はしてほしくないんだけど!」
明らかにオブリビオンマシンの狙いは彼だ。
ならばこそ、護られてくれていれば思うのだ。
「わかってますよ。死ぬつもりなんてないです。でも、あいつらだって死なせたくなんてないでしょう!」
その言葉にジュディスは笑う。
そういう人間か、と。
なら、とジュディスは『ガルム』と共に戦場を駆け抜ける。
「ガルムの巫女、援護しましょう」
ソフィアの言葉にジュディスはうなずく。
「必ずや、このオブリビオンマシン化をもたらした元凶が存在しているはずです、その機体を打ち倒せば」
「この状況を終わらせられるってわけね」
なら、とソフィアとジュディスは『クリノ・クロア』と共にオブリビオンマシン『グレイル』たちを無力化していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大町・詩乃
焔天武后を操縦して、誰も死なせないように戦います!
雷月と天耀鏡を焔天武后用に武器巨大化&変形。
相手の攻撃は、結界術・高速詠唱で防御壁を展開したり、天耀鏡にオーラ防御を纏わせて盾受けしたりで防ぐ。
尚、天耀鏡の一つはクリノさんに付けてかばいます。
《自然回帰》発動でオブリビオンマシン全ての行動を大幅に阻害。
焔天武后の各所に内蔵された武装によるレーザー射撃・スナイパー・一斉発射・貫通攻撃により、コクピットを外して頭部や手足を撃ち抜き、誰も傷つけずにオブリビオンマシンを倒します。
近接戦を挑まれたら操縦・見切り・ダンスで軽やかに躱し、雷の属性攻撃を宿した雷月の鎧無視攻撃でコクピット以外を斬って倒します。
「『焔天武后』! 誰も死なせはしません!!」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の声に従うようにして虚空より現れるは、スーパーロボット『焔天武后』であった。
真紅の装甲を持つ美しき機体。
その周囲に飛ぶ一対の鏡と手にした神力宿す懐剣。
煌めくはユーベルコード。
「自然の営みによらずして生み出されし全ての悪しき存在よ、アシカビヒメの名において動きを止め、本来あるがままの状態に帰りなさい」
機体の全身から解き放たれるは若草色の神気。
それはあらゆる装甲や障壁を突破するものであり、オブリビオンマシン『グレイル』たいてぇと殺到する。
機体の制御を司る機能のシステムを停止させ、電源を落とすのだ。
しかし、オブリビオンマシンにとっては、エネルギーインゴットの容量さえ持つのならば思想狂わせた学生たちを破滅へと突き動かすことなど容易かった。
「あの機体、まだ動きますよ」
「そのようですね……やはり、機体を無力化するしかありませんね」
詩乃は『クリノ・クロア』と共に訓練場に在る『グレイル』たちへと走る。如何にエネルギーの残量を少なくさせたとは言え、放たれる一斉射撃を前に鏡の盾を展開し、詩乃は己と『クリノ・クロア』を守る。
「狙いは此方なら!」
「ダメです、今動かれては……!」
だが、詩乃の心配は杞憂だった。
彼の動きは放たれる一斉射撃を縫うようにして躱すものだった。見事な動き。次代の『エース』と呼ばれるのも理解できる動きだった。
「これは下手に守るより援護したほう良いようですね」
「足手まといにはなりませんよ」
「そのようで!」
詩乃は『クリノ・クロア』の『グレイル』と共にオブリビオンマシン『グレイル』の機体、そのオーバーフレームの頭部や腕部を切り裂く。
レーザー射撃で打ち抜き、さらにコクピット以外の部位を貫く。
「誰も死なせはいたしません!」
詩乃はあくまで学生たち全てを救おうとしている。
その彼女の機体へと『グレイル』たちが接近してくる。手にしたパイルバンカーの一撃を叩き込もうというのだろう。
しかし、彼女はその一撃を華麗に躱す。
舞うように、軽やかに。
そして、返す刃でもって雷を宿した懐剣を翻す。
走る剣閃は『グレイル』の四肢を一瞬の内に切り裂く。
「学友の皆さんを傷つけるつもりはありません。少しむち打ちになってしまうでしょうが、それはご勘弁頂けたらと思います」
ごめんなさい、と詩乃は微笑んで戦場を走る。
僅かな時であっても彼らと共に学び、笑い、語らったのだ。
オブリビオンマシンのもたらす破滅に巻き込ませてはならない。その一念でもって詩乃は戦場を駆け抜け、一騎でも多くのオブリビオンマシンを無力化するために力を振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『分かってた事だけど、まったく忌々しいねぇ!』
戦時だ。|クレイドル《魔楽機》で演奏【催眠術】
俄かに騒がしくなる整備班の学生達を落ち着かせ、ツェーン殿や教職に避難を先導するよう声を掛け、戦場へ駆ける!
整備した機体が敵に成るのはとにかくやるせない。そして
ただ一人を狙った、この謀も気に食わない!壊すぞ、クレイドル!!
『「|呪え《唄え》ララバイ!!!」』
〈揺籃の子守歌〉発動。戦場全体へ無数のドロモス楽団を継続召喚
楽団が敵機の攻撃からクロア殿と学生達をかばい、【楽器演奏】
他の楽団が【衝撃波】で敵機の体勢を崩し、【斬撃波】で戦闘力を奪い、
【狂気耐性】魔法楽曲による催眠術で敵の中の学生達の正気を叩き起こす!
オブリビオンマシンがもたらすの破滅だ。
個としての破滅ではない。周囲を巻き込む破滅だ。それは時として小国家という単位で語られることだろう。
どんなに強大な勢力を持つのだとしても、瓦解する時は一瞬だ。
そして、その瓦解の始まりを誰一人として理解できない。理解できるのは後の歴史カだけであろうことは言うに及ばずである。
故に『クレイドル・ララバイ』は毒づく。
『分かっていたことだけれど、まったく忌々しいねぇ! オブリビオンマシンのやることというのは!』
混乱に満ちる士官学校の訓練場。
整備技師たちの逃げ惑う中、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は彼らを落ち着かせる。
「これは戦時だ。『クレイドル』!」
『わかっているとも!』
手にした魔楽機が奏でられる。その音色は催眠のたぐいであったが、しかし、彼らの心を落ち着かせるには十分だった。
「『ツェーン』殿!」
「うん、わかってる。でも、『クロア』が……! まだ教官機で……!」
「戦っていると……わかっておりますとも! 避難誘導を!」
小枝子は駆け出す。
己が整備した機体がオブリビオンマシン化することなどやるせない。そして、何よりも。小枝子の瞳には炎が宿っていた。
苛烈なる意志。
破壊しなければならない。
悪辣なる意志を。
この戦場を生み出した存在を破壊しなければならない。この謀の全てが気に食わない。
次代の『エース』を潰さんとするこの謀の全てを破壊しなければならないと彼女は咆哮する。
「壊すぞ、『クレイドル』!!」
『「|呪え《唄え》ララバイ!!!」』
重なる言葉と共に小枝子の体を包み込むようにして虚空よりサイキックキャバリア『デモニック・ララバイ』が現出する。
楽器構えた『ドロモス・コロス』が音を奏でる。
それは斬撃波と衝撃波となってオブリビオンマシン『グレイル』を襲う。
揺籃の子守唄(クレイドル・ララバイ)は止まらない。
止むことを知らない。
響き続けている。
故に、小枝子は走る。
「小枝子さん、こっちは!」
「任せました。貴殿は戦うというのならば!」
『あの子に心配欠けないでやってくれ、といってあげたらいいのに』
「それは自分の役目ではないのであります!」
『クリノ・クロア』は教官機、それも射撃武器に弾丸が装填されてない状態で迫りくる『グレイル』たちをしのいでいた。
後退すべきだ。
だが、彼は退かない。その理由を小枝子走っている。
救うためだ。守るためだ。己とは違う。だから、小枝子は彼が救わんとした者たちを救おうとは走るのだ。
「唄え、存分に、『クレイドル・ララバイ』!!」
『言われるまでもなくさ!』
吹き荒れる衝撃波がオブリビオンマシン『グレイル』たちの体勢を突き崩し、オーバーフレームの腕を次々と切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
あの優しい子――『ツェーン』の叫びを聞き理解するわ
愛する者を目の前で失うことの意味を私は知っている
なすべきことは『クリノ・クロア』教官を守り
生徒達を保護すること、命を守ること
キャバリアを借りて戦いましょう
大丈夫、学校生活中に動かし方は覚えたわ
重くて硬い金属の感触は、玩具とは段違いだけど、やれるわ
相手がペイント弾で視界が悪くなっているのを利用し
キャバリアから護符の蝶を放ち『皓月結界』で相手の動きを封じるわ
攻撃を防ぎ、狂気を浄化することが狙いよ
過去を変える事はできないけれど……
だからこそ、彼等の明日を守るために、今は力を尽くしましょう
誰かを失うということは悲しいことだと知っている。
そういう意味であると知っている。
理解は共感を呼ぶ。
だからこそ、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は虚ろな瞳に意志を宿す。
なすべきことをなす。
「あの優しい子のために」
あの叫びに応えなければならない。
『ツェーン』は叫んだ。
『クロア』、と。それは彼がどんな人間であるかをよく理解しているからだろう。
確かに彼の教官機は訓練のために銃火器の弾丸を積んでいない。ペイント弾しかないのだ。それでも、彼が後退しないのはたった一つのためだ。
オブリビオンマシンに囚われている学生たちを傷つけずに助け出すためだ。
仮にそれが全て自分を狙う凶刃と凶弾を持つのだとしても、それでも恐れずに前に進んでいる。
それが尊いことだとわかっている。
だが、その尊さが『エース』の生命を奪うこともまた静漓は知っている。
「あの子を守り、生徒たちを保護すること。生命を守ること」
私は、と静漓はキャバリア格納庫に走る。
助けなければならない。
そのためには力が要る。鋼鉄の巨人達。動かし方はこの士官学校で生活する中で覚えた。
重たく、硬い金属の感触。
これは彼女がこれまで経験してきたことのなかで、やはり異質だった。
でもやらねばならないのだ。
今なお傷つけられようとしている者がいるのならば。
「機体は……」
「使ってください、整備は終わっているから!」
その言葉に静漓は振り返る。
其処に居たのは『ツェーン』だった。彼女が示すのは、『クリノ・クロア』の機体。
彼女が『クリノ・クロア』を思って作り上げたキャバリア。
鈍色の機体。
「いいの」
「キャバリアは使い方次第でしょう。使って、壊すことも奪うこともできるけど、守ることも救うことだってできるものだって、私は知っているから」
その言葉に静漓は機体に乗り込む。
「優しい子」
呟く。
アイセンサーが煌めく。
起動する機体と共に静漓は駆け出す。鈍色の機体の装甲が染まっていく。
青に。善性を受けた機体の色は青。
ジェネレーターが唸りを上げて、静漓は理解する。
この機体は、と。
迫るオブリビオンマシン『グレイル』が脅威を排除しようと格納庫まで迫ってきているのだ。
それを認め、静漓はアイセンサー煌めくユーベルコードの輝きと共に皓月結界(コウゲツケッカイ)を解き放つ。
蝶の形に変化した護符が『グレイル』たちのセンサーを惑わし、さらには月光の結界術でもって動きを封じる。
「動かないで。その狂気を浄化する」
機体の指先が『グレイル』にふれる。
腕部が軋み、脚部が膝を折るようにしてひしゃげていく。
「……過去を変えることはできないけれど……だからこそ、彼らの明日を守るために、今は力を尽くしましょう」
モニターに映るは機体コード『プロメテウスV』――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
プロトミレスを遠隔操作し搭乗、転移出現したドラグレクスと
アルカレクス・ドラグソリスへと融合合身するわ
銃撃にはEフィールドを張り対抗するわ、場合によっては味方への攻撃からも庇う
狙い目はシールドによる敵の接近攻撃の時よ。
大方、手駒であるパイロットは人質でもあるから手を出せないと見たんでしょうけど……、
そういう連中だというのは、よく解っているのよ…!!
UC【カエルム・インフェルヌス】……!
不用意に接近戦を仕掛けてきた敵機に対しフィールドの性質を変え拘束、
さっき得た機体情報から生体反応の位置を詳細にサーチしEフィールドで包み保護、
そのままコクピットブロックを掴みだして救助し、機体は破壊するわ……!!
厄介な事態だ、と改めてアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は理解する。
訓練場で突如として起こった学生たちの乱心。
それは傍目から見れば、正しく青天の霹靂のごとき光景だっただろう。クーデーターと取られても仕方のない行動。
それも他国から出向してきている『エース』を狙った行動。
どう転んで二国間の関係に軋轢を生むものであると思えた。
だが、それは己たちが居なければ、の話だ。
「大方、手駒であるパイロットは人質でもあるから手を出せないと見たんでしょうけど……『プロトミレス』!」
アルカの言葉に応えるように遠隔操作された己のキャバリアが降り立つ。
さらにその頭上には転移出現した機龍の姿があった。
「融合合身!『アルカレクス・ドラグソリス』!!」
彼女の言葉に応えるようにして、鋼鉄の巨人は姿を変える。
降り立つ巨躯は、その威容は、怒りを宿しているようにも思えただろう。
「そういう連中だというのはよく理解っているのよ……!!」
アルカの瞳がユーベルコードに輝く。
コクピットに乗り込んだ彼女は見据える。迫るオブリビオンマシン『グレイル』たちのがシールドを構え、突進してきているのを。
その一撃を受け止める。
防御する力を籠めた腕部がパイルバンカーの一撃を受け止め、さらに受け止めたエネルギーが螺旋を描く。
守護の力と殲滅の力が『ドラグソリス・アルカレクス』の腕部に二重螺旋を生み出していく。衝角の如き力。
「コクピットを狙えないと接近戦をしてきたのでしょうが、甘いと言わざるを得ないわね、オブリビオンマシン……!」
アルカは受け止めたパイルバンカーを破壊する螺旋の力と共に拳を突き出す。
それは『グレイル』のコクピットを狙うものだった。
猟兵はオブリビオンマシンに捕らわれたパイロットを殺さない。その原則を逆手に取ったような人質の如き作戦はアルカを前にしては意味をなさない。
彼女のユーベルコードは。
「フィールド全開……! カエルム・インフェルヌス!!」
守護と破壊の力。
その螺旋は矛盾しているし、交わり合わない。
だが、アルカの振るうユーベルコードは、人を傷つけず、オブリビオンマシンのみを破壊する。
打ち込まれた衝角の如き拳の一撃は『グレイル』のコクピットを貫く……いや、貫いてはいない。
コクピットブロックを守護の力で覆い、それ以外を破壊しつくすのだ。
マニュピレーターの中にあるのは無傷のコクピット。
そして、それ以外の全てが破壊され尽くしているのだ。
「守ると決めたのよ。未来を。そして、過去を滅ぼすのだと。霧散しなさい、オブリビオンマシン。お前たちがもたらす停滞した過去に未来の行く末を阻ませはしない」
故に、とアルカは『ドラグソリス・アルカレクス』と共に戦場を走る。
守ると決めた。
破壊すると決めた。
その力の振るい方を。そうやって、アルカは敵を穿つ。
その意志の輝き放つ機体のアイセンサーが残光のように戦場に軌跡を描く――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
来た!
待ちかねて……はいなかったけど、やらなきゃね。
ここの友達皆を守る為、絶対に負けないんだから!
行くよ、テルビューチェ。
ここからが本番だよ!
まずはテルビューチェをユーベルコードで強化。
これでこっちは砕けない!
そう、矢でも榴弾でも持って来いって事!
そしたら後は近付いて、怪力で組み付くよ。
継戦能力もばっちり強化されてる。
相手の攻撃の事は気にせず、じっくり無力化できるよね。
キャバリアには悪いけど、皆や教官さんの命には代えられない。
手足を切断して、装甲を引き裂き、オーラ防御と念動力を上手い事使ってパイロットを助けるよ。
オブリビオンマシン……テルビューチェみたいに良い子ばっかりなら良いのになぁ。
「来た!」
待ちかねた、と杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は思った。いや、そういうわけではないけれど、やらねばならないときが来たのだと彼女は思った。
確かに士官学校での生活は悪くなかった。
この時のために苦手なチームのリーダーを張り続けた。
決して成績がよかったわけではない。
失敗ばかりのリーダーであったことはいなめない。
けれど、それでも彼女の学友たちは呆れることなく彼女と共に戦ってくれた。あの優しさを知っているからこそ、潤は、彼らがオブリビオンマシンによって囚われたのならば、救わねばならないと決意したのだ。
「行くよ、『テルビーチェ』!」
咆哮するように己の機体のジェネレーターがうなりを上げ、出力を上げていくのだ。
戦場たる訓練場にみちるは『グレイル』。
これまで潤も使ったことの在るキャバリアだ。訓練機であったのに、いつのまにか彼らの機体には実弾が装填されている。
オブリビオンマシン化した時の影響なのかはわからない。
けれど、迫る榴弾は爆炎を上げて、己の機体を包み込む。
「ここからが本番だよ!」
ユーベルコードに煌めく『テルビーチェ』のアイセンサー。
榴弾の爆発に晒されても、その機体に傷は一つもついていない。
何故ならば、今の『テルビーチェ』の機体には魔法で圧縮された水に変えられているからだ。榴弾の爆発程度で吹き飛ぶことなどない。
汎ゆる物質より硬く、決して壊されることのない存在へと変貌した『テルビーチェ』が封戸する。
「砕けないよ。うるうが絶対みんなを助けてあげるっていう意志は! だから、矢でも榴弾でももってこいってこと!」
後は、と潤は『テルビーチェ』と共に『グレイル』に掴みかかる。
コクピットは傷つけられない。
学生たちを護らねばならない。保護しなければならない。そのためには、まずは戦闘力を奪わなければならないのだ。
「『テルビーチェ』!」
潤の言葉に応えるようにして『テルビーチェ』は組み付いた『グレイル』の両腕をつかみ、凄まじい出力でもって引きちぎる。
あまりにも簡単に引きちぎるものだから、それは現実離れした光景のように思えたことだろう。
他の『グレイル』たちの動きが一瞬硬直する。
「びっくりしたって、本当のことなんだから! うるうの『テルビーチェ』はとっても強いんだよ!」
迫る弾丸も。爆風も。
今の『テルビーチェ』には関係が居ない。攻撃の全てを受け止めながら、強引に踏み込んで腕部を引きちぎっていく。
怪力無双たる機体の力を見せつける。
「教官さんや皆の生命にはかえられないから、ごめんね! 壊すから!」
潤はオブリビオンマシン化した機体も本意ではないだろうと思う。
けれど、生命は。
失われれば、回帰しないと知っているからこそ、機体の戦闘能力を奪う事に終始する。
「潤、大丈夫!? まだやれるのか!?」
教官機の『クリノ・クロア』の言葉に潤はうなずく。
力強く、まだ戦えると。
「無理はするなよ。死んだらだめだ」
「大丈夫。うるうは魔法使い! 本物の魔法使いなんだから、みんなを守って見せるからね!」
その言葉を力強く発して潤は未だ迫りくる『グレイル』たちと向き直る。
あの優しい学友たちを守るために。
己の力を最大限に使おうと、『テルビーチェ』、己が良い子と呼ぶオブリビオンマシンと共に走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
ヤレヤレだよ。
未来のエースを蕾のうちに摘み取る…つまりは、そんなにも恐ろしいか。未来のエースが呼ぶ、新時代がッ!!
おっと、クールダウン。
レスヴァントは…間に合いそうにないね。
教官機を引き続き借りるよ。なーに、ペイント弾でもやりようがあるさ。
ボクの『操縦』テクで教官機の機体性能を限界まで…いや『限界突破』してやるさ。
言ったはずだよ。後ろにも目をつけろってね。
敵機の動きを『見切り』『瞬間思考力』で先読みして回避、ペイント弾でセンサーを塗りつぶして『目潰し』して隙を作るよ。
そして『ダッシュ』で一瞬で後ろに回り込む。
隙ありだよ、コックピットを外すように、キャバリアキックをお見舞いするよ。
オブリビオンマシンの蠢動はいつから始まっていたのだろうか。
それはわからない。
けれど、確実に言えることが一つだけある。
この状況。
訓練中の事故とでも片付けるつもりだったのかどうかはわからない。けれど、標的は教官機に乗る『クリノ・クロア』だ。
小国家『グリプ5』より出向している次代の『エース』。
彼が喪われることによって、二国間の関係は破綻するだろう。
仮に彼が生き残って、学生たちが生命を落としても同様だ。どちらにしたって未来の『エース』たる者たちが喪われる。
ならばこそ、とユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は思う。
「ヤレヤレだよ。未来の『エース』を蕾のうちに摘み取る……つまりは、そんなに恐ろしいか」
彼女は己もまた教官機である『グレイル』を駆る。
自身の『レスヴァント』は間に合わない。逼迫した事態であるからだ。銃火器に装填されているのは、やはり訓練用のペイント弾だ。
だが、関係ない。やりようはいくらでもある。
「ユーリーさん、此処は」
「逃げろってのは無しね。この絵図を描いた連中に見せてやろうじゃないか。未来の『エース』が呼ぶ、新時代ってやつをさ!」
ユーリーの瞳がユーベルコードに輝く。
彼女のキャバリアを操縦する技能は卓越していた。
機体性能がどうあれ、彼女は迫りくる『グレイル』たちの制圧射撃を交わし切って飛び込む。
機体の限界など知っている。
けれど、その限界を超えるやり方だって知っている。
迫りくる『グレイル』たちに取り囲まれる。確かに良い動きだ。まあ、自分が教えたのだから当然かとも思う。
囲い込んでからの一斉射撃。
躱しようのない攻撃。
けれど、ユーリーは笑う。
「言ったはずだよ。後ろにも目をつけろってね」
瞬間的に思考を走らせる。
射線。弾速。
そして、位置関係。
それらをもう一人の己が俯瞰して見つめる。
空を切る弾丸の音さえ聞こえるかのような集中力と、一瞬の機体性能を越えた動きでもってユーリーは囲われてからの一斉射撃を最小限の動きで躱し切って、引き金を引く。
「こうやるんだよ! 実践と行こうかっ!」
ペイント弾が『グレイル』のセンサーに叩き込まれ、カメラアイを塗る潰す。
そして、一瞬で彼らの機体に回り込むのだ。
「これがアンリミテッドモードってやつさ!」
サポートモーションシステムを切って、ユーリーの機体が大きく跳ね上がる。
「これが、キャバリアキックってやつさ!!」
まるで空気を蹴るようにして飛び上がった機体が『グレイル』たち頭部を蹴り上げ、弾き飛ばす。
コクピットを避けた蹴撃の一撃は見事に『グレイル』たちの頭部を弾き飛ばし、センサーの類を見事に潰すのだ。
「やればできるもんなのさ、こんな動きだってね」
「流石に参考にならないですよ」
『クリノ・クロア』の苦笑いが聞こえてくる。
「そう? キミだってできるでしょ」
そういう問題じゃないんだけどな、と『クリノ・クロア』はこの状況にあっても、頼もしき『エース』の僚機として学生たちをオブリビオンマシンから開放するために駆ける。
ユーリーも同じ気持ちだった。
なら。
「オブリビオンマシンの思惑通りになんていかないってことを見せつけないとね――!」
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
やっぱりさすがのオブリビオンマシンだったね。
『希』ちゃん、【ネルトリンゲン】で出るよ。
『クロア』さんと『ツェーン』さんが最優先目標。
【Density Radar】で位置特定よろしくね!絶対に保護するよ。
位置が特定できたら、【Internal Rush】を発動して、火力3倍でまっすぐ行くよ。
【殲禍炎剣】のせいで高度と速度はだせないから、そのぶん火力で!
サージェさん、援護はするから、『クロア』さんと『ツェーン』さんのフォローお願い!
え?ただの無差別射撃?援護になってない?
そ、そんなことない……よね?
な、なにはともあれ!
2人とサージェさんをネルトリンゲンに収容して、急速離脱ー!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
これは穏やかじゃない案件
さすがオブリビオンマシン、やることが汚いですね
クロアさんもツェーンさんも新しい道を歩み始めました
出番はないですよオブリビオンマシン
ということでー!
かもんっ! 『ファントムシリカ』!
久々な気がします!
それじゃ高機動型キャバリアの真価をお見せ
って理緒さーーん!?援護が雑すぎませんかぁぁぁぁ!?
ええい、シリカ! 女は度胸です!
壊さないのでこのまま突っ込みぎにゃぁぁぁぁ!?
せ、セラフィナイトスピアで斥力フィールド展開
【疾風怒濤】を攻撃回数重視で
「手数こそ正義! 参ります!」
刺突の弾幕で全部押し返してみせましょう!
あと、理緒さんは早く助けてフレンドリーファイアで死ぬ
オブリビオンマシン事件が引き起こす結果を菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は知る。
この事件の予知がされた時、その目的が見えなかった。
わかっていたのは、士官学校で学生たちが乗るキャバリアがオブリビオンマシンへと変貌し、虐殺を起こすということだけ。
しかし、その目的が明らかになる。
蠢動より這い出す悪意。
それは小国家『グリプ5』から出向してきた『クリノ・クロア』の殺害。
もしも、それが成されるのならば友好関係に罅を淹れることになるだろう。決定的な罅だ。
「やっぱりさすがのオブリビオンマシンだったね」
理緒は『ネルトリンゲン』でもって低空を飛行し、訓練場の屋根へとやってきていた。
「『希』ちゃん、『クロア』さんと『ツェーン』さんが最優先目標ね! 位置を特定して! 絶対に保護するよ!」
彼女の言葉にAIが即座に座標を割り出す。
『クリノ・クロア』は今も教官機でもってオブリビオンマシン『グレイル』に囚われた学生たちを救い出そうとしている。
周りには猟兵たちの姿もある。
これならば、少しは安心だが、『ツェーン』はどこに、と見やれば格納庫にいるようだった。
「うーん、『殲禍炎剣』のせいで高度と速度が出せないのがもどかしい……でも、火力は三倍!」
Internal Rush(インターナルラッシュ)たるユーベルコードの輝きと共に『ネルトリンゲン』は訓練場の屋根を突き破って、場内に存在していたオブリビオンマシン『グレイル』に照準を定める。
敵の数は多い。ならば、火力で圧倒するしかないのだ。
「穏やかじゃない案件ですが、理緒さん! 流石にそれはまずいですってば、無力化しましょう!」
「わかってるけど、これじゃあ……」
「いいえ、ここは私にお任せを! かもんっ!『ファントムシリカ』! ものすごっく久々な気がします! いえ、トラメちゃんに浮気しているとかそんなんじゃないです!」
サージェの呼びかけに応えて現れる『ファントムシリカ』に乗り込みサージェは意気揚々と疾風怒濤(クリティカルアサシン)たる突進を見せようとする。
だが、すぐさまにばりぃってされる。様式美である。
「なんで!? なんでばりぃってしました!?」
「すぐに突っ込もうとしたからじゃない?」
「うぇっ!? 高機動型キャバリアの真価をお見せするときじゃあないのですか! って理緒さんも理緒さんもで援護が雑では!?」
『ネルトリンゲン』から火力支援は無差別射撃めいたものだった。
「え? なってない? え、そんなことない……よね?」
理緒はトリガーハッピーかな? というくらい『ネルトリンゲン』の火力を解き放っていた。
幸いに『グレイル』のコクピットに甚大なる被害を与えるような直撃こそないものの、爆風が百花繚乱の如く吹きすさんでいるのだ。
「……これはやりすぎですよ」
「で、でもでも、これでサージェさんもやりやすくなったでしょ?」
「この爆風の中を……? ええい、『シリカ』! 女は度胸です! 壊さないのでこのまま突っ込みぎにゃあぁぁぁぁ!?」
いつものとおりである。
セラフィナイトスピアを構えた『ファントムシリカ』が爆風の中をかき分けるようにして『グレイル』へと突っ込んでいく。
その直線的な動きは確かに捉えやすいものであったかもしれない。
だが、それ以上にサージェの操る『ファントムシリカ』の手数の方が早かった。
一撃を叩き込まれるより早く数撃が打ち込まれる。
四肢を砕く一撃は、一瞬。
「手数こそ正義!」
「なら、わたしの射撃もそうじゃない?」
「狙いすましてこそだと思うのですが!」
「な、なにはともあれ! 『ツェーン』さんたちを収容できるまでは踏ん張って!」
「その前にフレンドリーファイアで、私が死にそうなんですが!」
爆風荒ぶ中をサージェは命からがらという風体でもって駆け抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
うーんつまるところ、2国間の関係悪化とツェーンちゃんをパイロットに戻したいっていうのが今回のホワイダニットって事?
欲張りさんだなあ…
まあでも、それなら話は早い
全員無傷で事を納めれば良いだけ
ま、キャバリアは壊れちゃうけどそれについては…知らない!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
グレイルの集団の下へと駆ける
コックピットは狙っちゃ駄目だから…頭部とマニュピレーターを狙い斬る!
【剣技・蒼嵐剣】起動
『居合』一閃、斬撃と風の刃で斬り落とし戦闘能力を奪っていこう
残った竜巻を足場に宙を駆け、射撃を回避しながらアクロバティックにいこう!
さっさとこんな機体壊して、正気に戻してあげないとね
何故、士官学校がオブリビオンマシン事件の渦中にあったのか、という点を考えた時、真の狙いは小国家『フルーⅦ』の学生たちではなかった。
それは副産物に過ぎない。
真の狙いは小国家『グリプ5』より出向してきている『クリノ・クロア』であった。
彼をオブリビオンマシンによって殺すこと。
そうすることで確かに二国間の関係悪化は免れないであろうし、戦乱の火種は撒き散らされることになるだろう。
そして、何よりも。
「『ツェーン』ちゃんをパイロットに戻したいっていうのが動機、ホワイダニットって事?」
それはならば、しっくり来る、と月夜・玲(頂の探究者・f01605)は理解する。
まったくもって欲張りなことだ、と彼女は思った。
戦争の火種は多ければ多い方がいい、というのがオブリビオンマシンの思惑であろう。
ならばこそ、だ。
『ツェーン』は今は亡き小国家『フィアレーゲン』の元トップ。
彼女がキャバリアパイロットでなくなったのは猟兵たちに起因するところが大きい。そんな彼女を整備技師に留め置いているのは、間違いなく『クリノ・クロア』という青年であった。
彼がいなければ。
「あの子はパイロットに戻る。それも復讐に塗れた鬼みたいな」
それはオブリビオンマシンの望むところだったのだろう。
確かに悪辣である。けれど、玲は笑う。
「ま、それも全部全員無傷でことを収めればいいだけ話が早いってね! ま、キャバリアは壊れちゃうけど、それについては……知らない!」
責任持てないし、持たない! と彼女は二振りの模造神器を引き抜いて戦場たる訓練場に飛び込む。
敵はオブリビオンマシン『グレイル』。
確かに訓練機であるが、スタンダードな使いやすい機体だ。
だが、パイロットがまだ未熟である点が狙い目だった。
「そんな動きで自分より小さい相手を捉えられると思っているのかな?」
彼女の言葉は尤もであったが、しかし、マッハ5.0で飛ぶ存在を捉えろ、という方が無理であろう。
彼女は即座に頭部とマニュピレーターを斬撃で持って切り裂く。
それは明らかに人間サイズの武装が到達していい射程ではなかった。
彼女の斬撃は風の刃となって、体高5m級の戦術兵器の間合いすらも凌駕するものであったのだ。
剣技・蒼嵐剣(プログラム・ストームソード)とは、そういうものなのだ。
しかも、放たれた斬撃は蒼き竜巻として戦場に残りる。。
玲はその竜巻を足場にして飛び立ち、さらに居合一閃たる一撃で持って次々と『グレイル』たちを行動不能にしていくのだ。
射撃が放たれるが、狙いが定まっていない。
定められるわけもないだろう。
「当たらないってば! そんな雑な射撃じゃあね!」
竜巻を蹴って飛んだ玲の斬撃が直上から『グレイル』のセンサーを切り裂き、脚部を横薙ぎに払って転倒させる。
重たい地響きを立てながら崩れ落ちる『グレイル』を背に玲はさらな得物を求めるように蒼き竜巻と共に走る。
「さっさとこんな機体壊して、正気に戻してあげないとね」
彼女は二振りの模造神器の輝きを示し、迫りくるオブリビオンマシンを見つめる。
如何に彼らの目的が小国家同士の争いを加速させ、さらなる悲劇を呼び込むものであったとしても、それをさせぬのが己達だ。
故に玲は、柄ではないけれど、とその二振りの模造神器の残光と共に戦場に嵐を呼び込むように刀を振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
なるほど、どちらが殺されてもエース候補は潰され国家間に亀裂が生まれる。
場合によっては凄腕のパイロットを戦場に引きずり出して戦乱の拡大も狙える…
腹立つくらいよくできたプランだな…!
『カサンドラ』!『ジェード』展開、【虚空】発動!
掃射は『ローレル』で受けて道をこじ開け<戦闘演算>で未制圧地帯を算出しつつ移動、
学生達の駆る機体群は『エクリプス』の鎖で拘束すると共に
武装を改竄し<ハッキング>で無力化。
命削ってんだ、来たばかりの奴の言葉にも耳を傾け動いてくれた人らが巻き込まれてるんだ、
これくらいはやって然るべきだろ安野・穣…!
小国家『フルーⅦ』と『グリプ5』は互いにキャバリアを一定数のキャバリアを破棄することで、友好条約を締結した。
それは完全とは言えないまでも、しかし互いに歩み寄ることを為した結果であった。
多くの惨劇があった。
乗り越えなければならない問題だって山積していたことだろう。
どれもが容易な道などなかった。
けれど、それでも人々は平和を臨んでいたのだ。
「なるほど。どう転んでも戦火の火種になるってことか」
安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は突如としてオブリビオンマシン化したキャバリア『グレイル』を見やる。
オブリビオンマシンの狙いは教官機に乗る『クリノ・クロア』だった。
彼は少国家『グリプ5』より出向してきている。彼が殺されれば、どうあがいても戦乱になる。けれど、逆に『フルーⅦ』の士官学校の学生たちが死んでも、狂乱のままに破滅的な行動に出るのは既定路線。
場合によっては、これを鎮圧するために『フルーⅦ』は部隊を動かすだろう。
そうなれば、もう雪崩のように戦火が押し寄せてくる。
「腹立つくらいよくできたプランだな……!」
つまり、仮初めの平和は焼かれるということだ。
「『カサンドラ』! やらせるかよ!!」
穣の呼びかけに応えるように虚空より現れるサイキックキャバリア『カサンドラ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「『ジェード』展開! 虚空(コクウ)発動!」
その言葉と共に穣は『カサンドラ』に迫る『グレイル』たちの一斉射撃を受け止める。
敵の数は多い。
けれど、幸いにして士官学校の学生たちが乗っているだけだ。
それに訓練機であるがために機体の性能は高くはない。
「なら、無力化する!」
穣は思考を止めない。
最期の瞬間まで加速し続ける。
己は高速演算を可能にしたアンサーヒューマンである。
背面に背負った盾型の浮遊放題が一斉に放出され、『グレイル』たちを一斉に撃ち抜く。
高速演算に寄って算出された徹底したコクピットへの被害を避けた一撃に『グレイル』たちは次々と沈黙していく。
「コクピットは避けられる。動きもそこまで大したものじゃない……ならさ!」
『カサンドラ』の機体より飛び出す鎖。
それは『エクリプス』と呼ばれるプログラムを具現化した武装であった。『グレイル』たちを次々と拘束する鎖。
そして、同時に内部の武装制御プロトコルを一気に破壊し、装備を使用させない。
「……っ!」
己の寿命が削られていくのを穣は感じる。
このユーベルコードは生命を削る。だが、関係など無い。
生命を削っているのは自分だけではない。『クリノ・クロア』だってそうだ。自分が狙われているのならば、即座に逃げたって誰も文句は言わないだろう。
なのに。
「穣さん、だめだ! それは!」
「いいや、やるんだよ! これくらいはやって然るべきだろ……」
安野穣! と穣は己を叱咤する。
『クリノ・クロア』の機体が『カサンドラ』の傍に駆け寄る。
穣は構わなかった。
平和に生きるべき者たちが闘いに巻き込まれている。それが許しがたい。だからこそ、彼は命を張る。
それだけの価値があると信じるからこそ、彼は力を振るうのだ。
「はっ……ハッ!」
「あなたが死んでしまっては、それこそ意味がない。投げ出すことと、投げ打つことは違うでしょう!」
その言葉に穣は周囲の機体が全て無力されたことを知る。
ユーベルコードの光が明滅し、光を失う。
息を整え、穣はうなずく。
「……そうっすね」
だが、と穣は見据える。この戦場に在る元凶を。
士官学校のキャバリアをオブリビオンマシン化した存在を――。
大成功
🔵🔵🔵
疋田・菊月
なるほどー、エースパイロットを挫いておこうという狙いでしたか
丹念に強敵のデータで学ばせたならば、新兵とて恐るべきに至るやもしれませんねー
味方がいきなり敵になってしまうと、識別信号とか色々と大変ですからねー
さてさて、さしものエースさんとはいえペイント銃では辛いですね
ここは私とヴァルラウンに策有りですよ
なるほど、品質の高い量産機ですね
足回りで撹乱しつつ、範囲攻撃でモストロで敵を縫い付けます
まあ、当たりを付けてばら撒いてるだけなので破壊するにはちょっとパワー不足かもですが
注意をこちらに、引き撃ちしますよ
さて、いくつか銃を鹵獲できませんかね
拾いものとはいえ、無いよりかはマシのはずですよね
えへへ
専用機が戦場と成り果てた訓練場を疾駆する。
疋田・菊月(人造術士九号・f22519)の駆る『ヴァルウラン』は、即座にオブリビオンマシン化した『グレイル』たちの識別信号を書き換える。
これまで機体が認識していた味方機が敵機に突如として変わるのは、混乱の元であったからだ。
「なるほどー」
こうやってオブリビオンマシンは人々を狂わせていくのかと菊月は理解したいだろう。
他国の『エース』を殺すこと。
そして、それを友好国が為してしまうこと。
それによって生まれる軋轢は、戦乱の火種を各所にばらまくことと同義であった。
士官学校で強敵とのデータと戦わせ続けることで新兵とて恐るべき存在へと昇華することも考えられる。
それはオブリビオンマシンのもたらす悪辣さに拍車を駆けるようでも在った。
とは言え、その標的たる『クリノ・クロア』もまた『エース』と呼ばれるには十分な技量を持った存在であったのだ。
彼は教官機を駆り、さらには銃火器にペイント弾しか装備していないにも関わらず、果敢に学生たちを救わんとしている。
「質の高い量産機ですね。訓練機としても十分過ぎる性能……なら!」
菊月の駆る『ヴァルウラン』の手にしたキャバリアライフルが榴弾を放とうとしていた『グレイル』たちの足回りへと弾丸を叩き込む。
敵が距離を詰めてくるのは脅威であったからだ。とは言え、ただ足を止めさせるために弾丸をばらまいた程度では、『グレイル』たちを戦闘不能にすることはできないだろう。
だが、こちらに注意を引き付けることはできる。
「ちょっぴりお騒がせしますよー!」
ヘビーガンズオーケストラとも言うべき盛大なるキャバリアライフルでの斉射。
それは弾幕によって『グレイル』たちの足を止めさせ、さらには『クリノ・クロア』から注意を『ヴァルウラン』へと惹きつける。
とは言え、弾丸にも限りが在る。
「おっと、他の皆さんが無力化してくれた『グレイル』の火器が転がっているのなら」
それを掴んで菊月は引き金を引く。
武装のロックを解除し、引き金を引けば、弾丸がさらにばら撒かれることだろう。
「拾い物ですが、無いよりはマシですよね。えへへ」
手癖が悪い、と言われるかも知れないな、と菊月は思ったが、緊急事態故許して貰えることだろう。
いや、きっとそうだ。
そうでなければ困ってしまう。
「でも、標的の人からはだいぶ引き剥がせましたよね。なら、もう弾幕は終わりです。お見せしましょう『ヴァルウラン』の力!」
アイセンサーが煌めく。
菊月は己の駆るキャバリアと共に引き付けた『グレイル』たちを瞬く間に戦闘不能に陥らせていく。
この状況を作り出した敵がいるというのならば、恐らく自分たちの介入を許さないだろう。
たとえ、自分たちがいるのだとしても、最低限の目標だけは達成しようとするだろう。
即ち、『クリノ・クロア』の殺害である。
ならばこそ、と菊月は戦場を見渡す。
いるはずなのだ。
確実に、この元凶たるオブリビオンマシンが!
「一体何処に……この乱戦の状況なら……!」
菊月は見ただろう。
いつのまにかセンサーに引っかかる一騎の反応。
それは人型ではなかった。獣のような、いや、言ってしまえば、それは……古の時代に存在した恐竜の如きシルエットを持ちながら、中世の騎士の如き盾と槍を携えた奇異なるオブリビオンマシンの姿だった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『インドラ・ナイトオブリージュ』
|
POW : ハイパーチャージ
【EPイオンブースター】によりレベル×100km/hで飛翔し、【敵の攻撃を盾で防いで弾き返しながら、速度】×【移動距離×攻撃を防御した回数】に比例した激突ダメージを与える。
SPD : 撃打衝突
【ショットガン・格闘戦術・】【実体盾・】【大型突撃槍】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : 断罪の雷
【広域殲滅兵器BSライトニングバスター】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を破壊する余波で追撃、場に電気を滞留させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠メサイア・エルネイジェ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それはあまりにも奇異なる体躯だった。
いや、通常のキャバリアからすると、という意味であった。
戦場へと変貌した訓練場。その場に突如として現れた一騎のオブリビオンマシン。
それは恐竜の如き体躯を持ちながら、中世の騎士のごとき槍と盾を持つ。
「……」
誰が騎乗しているのかはわからず。
されど、黙して佇む姿は一部の隙もない。
その姿はある小国家においては伝説のキャバリアの姿と似通っていたことだろう。模造品である、と言われたのならば、即座にそうだと応えられるものだっているだろう。
だが、その内部より。
コックピットより発せられる重圧は、模造でもなく。紛れもなく真の技量を持つ存在が騎乗していることを理解させるだろう。
「……」
イオンブースターが展開し、その奇異なるオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は戦場を横断する。
あまりにも凄まじい加速。
サブアームに懸架された大型突撃槍の一撃が狙うは『クリノ・クロア』の駆る教官機であった。
「速いッ!?」
放たれる一撃は確かに不意をつくものだっただろう。
だが、それの一撃は浮遊する式神たる盾によって防がれ、なおも貫く切っ先は『クリノ・クロア』のかる機体のコクピットハッチを引きはがす。
凄まじい衝撃と共に駆け抜けた『インドラ・ナイトオブリージュ』は反転し、さらに彼の機体へと襲い掛かる――。
村崎・ゆかり
教官機のコクピットに『鎧装豪腕』貼り付けといて正解だったわ。
『クロア』、後は任せて!
主犯は生かして捕らえたいけど、オブリビオンマシンに乗って前線へ出てくる以上、乗り手は捨て駒でしょうね。それなら容赦はしない!
「全力魔法」雷の「属性攻撃」「衝撃波」で、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経! 疾!
真正面からの攻防に特化したスタイルみたいだけど、直上からの落雷ならどうかしら?
校庭が荒れるけど、それはこの際我慢してもらいましょ。
落雷の「弾幕」を束ねて、敵機を叩き潰す!
どこかに何かに似てるかなんて知らないわ。あたしはただ、目の前のオブリビオンマシンを討滅するだけ。
疾風迅雷をもって、初手を潰しきる!
功を奏した、と村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は弾け飛ぶ己の式神とコクピットハッチの破片を見て思った。
彼女が狙われている『クリノ・クロア』の教官機に己の式神である『外装剛腕』を纏わせていたのは正解だった。
確実に彼を狙うオブリビオンマシンが存在することはわかっていた。
だからこそ、念には念を入れていたのだ。彼女がもし、式神をつけていなかったのならば、最悪『クリノ・クロア』は死んでいただろう。
そう思わせるほどの僅かな差。
オブリビオンマシンの踏み込みは、それほどまでに恐るべき踏み込みであったのだ。それを防ぐことができたのは、大きな意味を持つものであったことだろう。
とは言え、窮地を脱したわけではない。
「『クロア』、後は任せて!」
「でも……!」
「そんな期待状況で強がらない!」
ゆかりは、即座に戦場に飛び出す。
迫るオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は奇異なるキャバリアだった。
古代の生物、恐竜じみた体躯を持ちながら中世の騎士の如き装備を持って飛び込んでくる。
イオンブースターの噴射に寄って凄まじい加速を得た機体は一直線にゆかりへと向かってきている。
「誰が乗っているのか知らないけれど!」
「……」
応答が無い。
だが、それでもやるべきことに変わりはない。
乗り手を生かして捕らえたいとは思うが、ゆかりはオブリビオンマシンに乗っている以上、乗り手は捨て駒であろうと判断する。
ならば、容赦する必要など無いと、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
迸る雷撃。
それは周囲の視界を阻害するほどの強烈なる落雷の一撃を解き放つユーベルコード。
痛烈なる一撃を受けてラウンドシールドが跳ね上がる。
直上からの一撃をシールドで受け止めたのだ。
だが、その機体の速度が落ちる。
「受け止めた!? けど、速度は落ちたでしょ!」
さらに叩き落とす落雷の一撃。
軋むように『インドラ・ナイトオブリージュ』の機体がかしぐ。だが、それでもゆかりは見ただろう。
かの機体は構わず突き進んでいることに。
「こいつ……どこの何かに似ているかなんて、あたしは知らないけれど! 眼の前のオブリビオンマシンを討滅するだけ! 疾風迅雷を持って、その初手、潰し切る!」
その言葉と共に放たれる雷撃。
それは『インドラ・ナイトオブリージュ』の加速を完全に殺し切る。
動きを止めた機体が身震いするようにして、盾を掲げる。
致命傷にはなっていない。
だが、それは『クリノ・クロア』を暗殺すうという目的を挫くには十分な初撃であったことだろう。
「……」
「戦いは此処からってわけね、いいわよ、付き合うわ!」
ゆかりはそう告げ、さらなる戦いに身を投じる。
どの道、あの機体をどうにかしないことには、このオブリビオンマシンの事件は幕を閉じないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
こいつは…強敵だ!!
ARICAに運ばせてたレスヴァントMrk2が到着した。
ここからはこいつで行くよ。
アストライアの『威嚇射撃』で牽制しつつ、敵機の動きを『見切り』『瞬間思考力』で先読みして回避。
ボクの『操縦』テクニックを甘く見るなよ、
距離を中距離を維持しつつ、突進を回避したタイミングに、側面からクラッキングアンカーを撃ち込んで『ハッキング』して相手の『情報収集』
さすがに、今回の事件は黒幕の手が回りすぎている。多少でも情報を引き出さないと…
アンカーで繋がっている今がチャンス…でもあるか。
ダークマンティスの『エネルギー充填』100%
『レーザー射撃』をお見舞いする
その踏み込み、閃光の如し。
そう思わせるには十分すぎるほどの速度で持ってオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は今回の事件の標的である『クリノ・クロア』の教官機へと一撃を叩き込んでいた。
猟兵たちの手回しによって、辛うじて『クリノ・クロア』は危機を脱していたが、依然『インドラ・ナイトオブリージュ』の狙いは彼であることは言うまでもない。
そして、それを阻止するために動くユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『グレイル』から飛び降りて、己の眼前に降り立つ白いキャバリア『レスヴァントMk-2』に乗り込む。
「こいつは……強敵だ!!」
ユーリーは即座に理解していた。
あの機体。
奇異なる機体特性を持っているようであるが、やっていることは単純だ。胆汁であるがゆえに打ち破られ難い、ということを体現している。
それは彼女の『エース』としての技量があるからこそ感じ取れるものであったことだろう。
「並の機体じゃだめだ……頼りにしているよ『レスヴァントMk-2』!!」
スラスターを噴射させ、機体が走るのと同時に『インドラ・ナイトオブリージュ』もまた動き出す。
アサルトライフルの牽制射撃でもって敵の挙動を制限しようとしても、サブアームにて構えられたラウンドシールドでもって受け止めながら一直線にこちらへと向かってきている。
凄まじい速度だ。
まともに受け止めては、此方の機体が持たないと理解できるだろう。
「くっ……!」
「……」
躱しても即座に反転してくる。
一瞬の隙すら産まぬ挙動にユーリは舌を巻く。やるものだと思った。大抵、あのような速度に優れたキャバリアというのは、反転の際が最も隙が生まれるというのに、『インドラ・ナイトオブリージュ』はその隙をサブアームを自在に操ってラウンドシールドでもって隙を潰すように構えて反転しているのだ。
「こいつも『エース』ってこと!?」
手強い。
今回の事件でよくわかった。オブリビオンマシン側に黒幕がいるのならば、手が回りすぎている。
グリモアの予知を持ってしても後手に回る状況。
ならば、ユーリーは少しでも情報を引き出さなければならないと理解するだろう。
「クラッキング・アンカー! 射出!!」
放たれる一撃がワイヤーアンカーとして放たれ、『インドラ・ナイトオブリージュ』の装甲の一部に叩き込まれる。
しかし、次の瞬間『インドラ・ナイトオブリージュ』の構えた大型突撃槍の一撃が『レスヴァントMk-2』のアサルトライフルの銃身を貫く。
いや、ユーリーがとっさに盾にしたのだ。
「こいつ……!」
ハッキングしてクラッキングしようとしたシステムに到達できない。
こんなにも隙がないのかとユーリーは理解する。だが、同時に彼女は見ただろう。
クラッキングしようとした『インドラ・ナイトオブリージュ』のコクピット。
その内部はわからずとも、その動き、その癖。
「知ってる……でもッ!」
それは直線的な動きであれど、圧倒的な速度を有する戦い。高速戦闘を得意とするパイロットの癖。
『エース』の動き。
「……まさか、『アイン』!?」
だが、それは違うはずだ。
彼女は一連のオブリビオンマシン事件で片腕を失ってパイロットを辞しているはずだ。
そして、今は『グリプ5』にいる。
なら、今『インドラ・ナイトオブリージュ』に乗っているのは。
「……」
「答えなよ!」
「……」
答えはない。だが、確実にユーリーは理解する。眼の前のオブリビオンマシンを駆るのは『アイン』ではないと。
だが、『エース』同士だからこそわかる、その違和感。
酷似しているが、決定的に違うと理解できる一点。その一点こそがユーリーのレーザー射撃のトリガーを引かせ、その一撃でもって『インドラ・ナイトオブリージュ』を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『恐竜だ!初めてみた!私たちを無視するとは良い度胸だねぇ!!』
狙いを絞り吶喊してくる。厄介だ!
デモニック・ララバイ【操縦】
〈斬奏抜剣〉発動。高速の【斬撃波】を飛ばし【切断】攻撃!
更に斬撃波の弾幕でクロア殿へ寄らせず、【音響弾】
軌跡に置いた音波から【衝撃波】を放つことで【吹き飛ばし】
クリノ・クロア!死んだらツェーンが悲しむ!!距離を取れ!!!
【瞬間思考力】と人工魔眼の【動体視力】で機動を見切り、サイキックシールドで【オーラ防御】距離を詰め突撃槍の懐へもぐりこみ、斬撃波とRX騎兵刀、躯体各所から生える殺戮音叉で連続攻撃を【武器受け】
口腔へ腕を差し込み、【串刺し】殺戮音叉【貫通攻撃】壊れろ!!!
戦場を横断するかのような閃光の如き一閃。
それはオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』の突撃槍による一撃であった。
しかし、その一撃は標的たる『クリノ・クロア』を貫くことはなかった。
猟兵の為した防護によって僅かであるが首の皮一枚で彼の生命が繋がったのだ。
『恐竜だ! 初めて見た! ええ、すごい! ああいうキャバリアもあるんだねぇ!! でも、私達を無視するとは良い度胸だねぇ!!』
『クレイドル・ララバイ』の声に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、やかましいと思った。
だが、敵の狙いが絞られている、という点が厄介だった。
己達を敵と認識しながら目的を見失うことなく体勢を崩し、コクピットハッチを引き剥がされ、剥き身の体を晒すことになった『クリノ・クロア』を狙っ散る。「
「厄介だ!」
『デモニック・ララバイ』のアイセンサーが煌めき、斬奏抜剣(クイック・トーン)によって無数の斬撃波を解き放つ。
だが、その斬撃波を『インドラ・ナイトオブリージュ』はサブアームに懸架されたラウンドシールドで受け止めながら反転し、直角に挙動しながら小枝子たちの駆る『デモニック・ララバイ』へと突進してくるのだ。
「『クリノ・クロア』! 死んだら『ツェーン』が悲しむ!! 距離を取れ!!!」
その言葉を読んでいたかのように『インドラ・ナイトオブリージュ』は、その大型槍の切っ先の延長線上に『クリノ・クロア』の機体を置く。
小枝子は道中の石を弾く程度にしか思っていないのだろう。
『なんとも癪に触る動きをしてくれるじゃあないか!! こっちの動き、意図が読み切られている!!』
「そんなことは分かっている!」
小枝子は叫ぶ。
人工魔眼が燃えるような熱を生み出す。
瞬間思考で視覚情報から得られた汎ゆる情報を読み解いていくのだ。
動体視力で『インドラ・ナイトオブリージュ』の動きを捉える。速い。閃光の如し、というほかないほどの圧倒的な速度。
その速度で振るわれる大型突撃槍の一撃は凄まじい威力を誇るだろう。
サイキックシールドを容易く砕き、貫通してくる。
『砕かれた……!!』
「構わない! もとより防げるとは思ってなど居ない!!」
砕けたサイキックシールドの破片と共に小枝子は踏み込む。
「……」
「その槍はこの懐では奮えまい!」
『奏者、だめだ、この距離では!』
その言葉に小枝子は目を見開く。
大型槍は確かに敵のメインウェポンだろう。
だが、それを即座に手放したサブアームが『デモニック・ララバイ』の頭部を殴りつけ、更に腕部が機体を投げ飛ばすのだ。
「ぐっ……!?」
『私の体が!!』
「そんなこと気にしている場合か!!『クリノ・クロア』を守る! 自分は!!」
投げ飛ばされた空中で『デモニック・ララバイ』の機体を反転させる。この距離では、と理解が及んでいる。
現に己に向けられるショットガンの銃口を見ているからだ。
だが、それでも小枝子は構わなかった。
彼女の機体が振るった斬撃波は、その軌跡の後に音波を残している。放たれた散弾はその音波にぶつかり勢いを殺される。
必殺の距離であっただろう。
装甲が砕ける。だが、内部フレームには到達していない。
「掻き鳴らせ」
ユーベルコードに煌めく『デモニック・ララバイ』のアイセンサーは、散弾で潰されている。
だが、構わない。
相手にとってこの距離が必殺の間合いであったというのならば、こちらもまた必殺の間合い。
放たれる斬撃波を解き放ち盾構える『インドラ・ナイトオブリージュ』を打ち据えながら押し止めるようにして拳を叩き込む。
殺戮音叉の一撃でもってもなお、シールドに受け止められるも、小枝子は構わずユーベルコードの斬撃波と共に、その機体を弾き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
この前のひよこっぽいキャバリアほどじゃないけど変わった機体だね。
『あれと比べるのもどうかと思うが……突撃からの近距離戦と一撃離脱が得意そうだ、気をつけろ。』
ん、一対一が得意そうだしこうしよう。
ミサイルとガトリング砲で攻撃しかけながら
バックホバーダッシュで距離を取ってシルエット・ミラージュ
からのイマジナリー・マイセルフ発動。
ハンドレッド・イリュージョンで100~1000体以上を一人で操作するよりは細かく対処できるかなって。
合わせて15体で取り囲んで攻撃しかけるよ。
技量とか本体よりも落ちるかもしれないけど数でカバーできるでしょ。
……こっちの方が操作確かに楽だけど全員五月蝿いのどうにかならないかな。
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は思った。
キャバリアとは人型ではないのかと。
オーバーフレームとアンダーフレームでもってコクピットブロックを挟み込む。それがキャバリアを戦術兵器としての汎用性の高さの本質となっているはずだ。
だというのに、目の前のキャバリアはどうだろうか。
前傾姿勢の恐竜めいた姿。
『インドラ・ナイトオブリージュ』は、そういう意味では奇異なる機体であったことだろう。
「変わった機体だね」
『……突撃からの近距離戦と一撃離脱に秀でた機体であることはわかるが……気をつけろ』
サポートAIである『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィはうなずく。
己の機体『ミドガルズ』とシルヴィは神経接続で機体と同調させている。
その運動性は通常のキャバリアの比ではない。
しかし、それでも速度に優れたあのオブリビオンマシンの相手は簡単ではないことがわかるだろう。
ミサイルとガトリング砲でもって牽制を仕掛ける。
それに釣られるようにして『インドラ・ナイトオブリージュ』は駆け出す。いや、違う、とシルヴィは気がついただろう。
先んじた猟兵との戦いで手放した大型突撃槍をサブアームでもって拾い上げるためにあえて、踏み込んできているのだ。
後退しながらシルヴィの放つ弾丸がラウンドシールドに受け止められる。
距離を離す。
近距離戦闘はあちらの独壇場だろう。
故にシルヴィの瞳がユーベルコードに輝く。
シルエット・ミラージュによる精巧な残像分身が戦場を走り抜ける。
一対一で馬鹿正直に戦う必要はない。
さらに、分裂した残像でもって『ミドガルズ』が増えていく。十五を超える残像分身と共にシルヴィは攻撃を仕掛ける。
「はいはーい! じゃあ、一斉に行くよ!」
分身たちの声が聞こえる。
やかましいと思ったが、技量が此方より劣るのが不安材料だった。だが、数でカバーできると思ったのだ。
しかし、シルエット・ミラージュで増えた精巧な残像分身が使用するユーベルコードは半分の威力と命中率しかない。
「……」
その半分しかない技量の機体を的確に『インドラ・ナイトオブリージュ』は選んでいるかのように突撃槍とラウンドシールドに寄る殴打、ショットガン、さらには腕部に寄る格闘戦で持って一撃のもとに粉砕していくのだ。
閃光のような戦い方だった。
わずかに見えた、その攻撃の軌跡を知ることができたのはシルヴィが一廉のパイロットであるからだろう。
だからこそ、『ヨルムンガンド』は言ったのだ。気をつけろ、と。
その言葉の意味をシルヴィは知るだろう。
あの機体に乗っている者がどんな者かは知らない。
けれど、他者を圧倒する力は本物だろう。数などものともしない。意味をなさない。そういうかのように振るわれる突撃槍の切っ先がシルヴィに迫る。
「数が追いつかない……でも」
「……」
踏み込みの速度まで恐ろしいほどに速い。その上正確だ。故に、シルヴィは知る。その正確さを逆手に取るようにして『ミドガルズ』の機体を反転させる。
そして、残像分身の一体に己を踏み台にさせて『インドラ・ナイトオブリージュ』の頭上を取らせるのだ。
「不意でも打たないと無理でしょ、これは!」
放たれるミサイルとガトリング砲の弾丸がラウンドシールドに防がれる。
けれど、爆風が『インドラ・ナイトオブリージュ』を吹き飛ばす。その光景をセンサーでみやりながらシルヴィは機体を滑らせるようにして後退させる。
明らかにこれまでのオブリビオンマシンの動きではなかった。
強烈な技量。
その確かな殺意がシルヴィをコクピット越しでも射抜くようだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
くっ……速い!?
(どうする?「機械新生」を使うには正直リスクが大きすぎるし、「Gプレッシャー」でも1度じゃあの勢いは殺しきれない…!他の手は……!?)
……。
……そう、そうよね。元より私には、|彼ら《エース》のような操縦の腕も何もない
……賭けられるのは、ただ一つ……!!
敵とクロア機との間に立ち塞がる!
敵の突撃に対してはどうせ防がれる以上攻撃は加えない、防壁を展開して受けて立ち……
どうせ勢いは止めきれないから、ランスチャージをわざと受けるわ!
……くっ……ごほっ。確かに並みの力量じゃない。正確にコクピットの位置を貫いてくれたけど……
今の『私』は、『アルカレクス・ドラグソリス』は……「お腹」貫かれた程度じゃ、止まれないのよ!!
痛みは激痛耐性で誤魔化し、敵機が態勢を立て直し離脱・再加速を始める前に全開出力での拘束力場、そして全展開した『ドラグカプト』により敵機を抑え込み離脱を妨害、そのまま超至近距離からの【ゲネシス・デストラクティオー】を叩き込み、此処で、終わらせる……!!
爆風の中を突っ切ってオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は閃光のように駆け抜ける。
その速度は圧倒的だった。
かと言って生半可な攻撃は、サブアームに懸架されたラウンドシールドでもって防がれてしまう。
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)はそれを理解していた。
「くっ……速い!?」
捉えられない。
イオンブースターに寄る加速。
この訓練場という閉鎖された空間にあってなお、あの機体は壁面であろうが天井であろうが縦横無尽に駆け抜けている。
その速度が此方を圧倒しているのだ。
焦りが生まれる。
リスクの大きいユーベルコードは使えない。
かと言って広範囲に効果を及ぼす力でも、一度ではあの速度と勢いを殺しきれない。
どうしようもない状況がアルカを取り囲んでいく。
それを示すように『インドラ・ナイトオブリージュ』のアイセンサーが煌めく。
ぞわり、とアルカは己の背筋が粟立つかのような感覚を覚えたことだろう。恐怖。死を幻視する。
圧倒的な強者の気配。
あまりにも、そうあまりにも実力差が離れすぎている。
言ってしまえば、それは『エース』を越えた……|『超越者』《ハイランダー》とも言うべき存在の技量だった。
「……」
しかし、かのオブリビオンマシンを駆る者は何も応えない。
裂帛の気合も。
激情乗せる言葉もない。
ただ淡々と、正確な動作でもってアルカを追い詰めに来ているのだ。
故に、彼女は頭を振る。
「……そう、そうよね!」
アルカの瞳が見開かれる。
恐怖はある。恐れがないわけなんてない。だからこそ、彼女は踏み込む。己の機体『アルカレクス・ドラグソリス』と共に一歩を踏み出す。
それを『インドラ・ナイトオブリージュ』は決定的な隙と捉えたようだった。
一瞬で踏み込んでくる。
イオンブースターの速度は圧倒的だった。
サブアームが手にした突撃槍の一閃が戦場に刻まれる。
その一撃が『アルカレクス・ドラグソリス』の腹部を貫く。正確に。真芯を捉えるようにして打ち込まれていた。
機体の背面まで貫いた一撃。
キャバリアはオーバーフレームとアンダーフレームに寄ってコクピットブロックが挟み込まれている。
そういう構造なのだ。
だからこそ、槍によって貫かれた腹部はコクピットだった。
血潮のようにオイルが溢れ出す。
「もとより私には、|彼ら《エース》のような操縦の腕も何もない」
声が聞こえる。
『インドラ・ナイトオブリージュ』を駆る者は僅かにいぶかしむような感情を槍に載せた。
「……」
「……私が賭けられるのは、ただ一つ……!!」
アルカはあくまで立ちふさがっていたのだ。
オブリビオンマシンの狙いである『クリノ・クロア』の教官機を守るために。仁王立ちと言っても良い。
どう攻撃してもあの突撃は防げない。
そして、こちらの攻撃も有効打になりえない。ならば、彼女はどうするかなどたった一つしかなかったのだ。
「己の生命よ……ごほっ!」
「アルカさん!」
声がきこえる。
心配しなくっていいのに、とアルカは思っただろう。
けれど、と彼女は突撃した『インドラ・ナイトオブリージュ』を掴む。
腕部を掴む。
それは明らかにおかしい動きだった。そう、コクピットブロックを貫いた。『アルカレクス・ドラグソリス』は機体の主たるパイロットを確実に殺したはずなのだ。
だが。
「確かに並の力量じゃない。正確にコクピットを貫いた……いえ、貫いてくれた!」
ユーベルコードに輝く『アルカレクス・ドラソリス』のアイセンサー。
両腕に破壊と再生の力が生み出され、融合していく。
その光はオブリビオンを分解する光波。
「今の『私』は、『アルカレクス・ドラグソリス』は……『お腹』を貫かれた程度じゃ、止まれないのよ!!」
アルカが吐血すると、同じように『アルカレクス・ドラグソリス』の頭部、その口に当たる部分からオイルが迸る。
確かに払った代償は大きかった。
だが、それでも己のユーベルコードが叩き込める。
「……」
「逃さない!」
拘束力場が展開し、飛び退ろうとする『インドラ・ナイトオブリージュ』の速度を殺す。さらに飛び立つ『ドラグカプト』が機体を押さえつけるのだ。
如何に速度に優れるオブリビオンマシンと言えど、掴んだこの距離からでは彼女のゲネシス・デストラクティオーからは逃れられない。
「これで終わらないのだとしても! 次に繋ぐ! それが猟兵の戦いってものでしょう!!」
放つ一撃が『インドラ・ナイトオブリージュ』の腕部を破壊する。
素粒子にまで分解された腕部をパージしながら『インドラ・ナイトオブリージュ』が離脱する。そうするしかなかったのだろう。
そこまでアルカは追い込んでいたのだ。
後退無き『インドラ・ナイトオブリージュ』に一歩退かせた。
それはアルカが一矢敵に報いた証だった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『まだやるのかい?…まったく頭に血上らせて!仕方ないね
こういう時は、盛大に歌おうじゃないか!元々この機体はそういう機体だからね!適切に丁寧に扱ってくれたまえよ!!』
……じゃあこうしましょう。
【楽器演奏】〈陽月光〉ララバイ、歌唱。
超振動波の【衝撃波】で断罪の雷を散らし、
『クリノ・クロア』の駆る教官機を再構築。武装生成、機体再生強化。
守りながら戦って勝てる相手ではない、だったら一緒に戦えばいい!
戦えるか、『クリノ・クロア』!!
【継戦能力】クリノ・クロアと共闘、陽月光で再生させながら、範囲に入ったインドラの躯体へ超振動波破壊の圧を掛けて動きを鈍らせ、インドラの搭乗者へも魔音【催眠術】操縦を狂わせる。
音が響いている。それが一体どんな音であるのかを朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は知っている。
戦いの音だ。
猟兵とオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』の戦いは激戦というほかなかった。
かのオブリビオンマシンの狙いは『クリノ・クロア』だ。
彼の殺害。
それによって生み出される二国間の軋轢。
求めるは、その結果のみというように圧倒的な速度で『インドラ・ナイトオブリージュ』は猟兵たちの猛攻を凌ぐどころか圧倒し始めていた。
言うなれば、体が温まってきた、とでもいうかのようだった。
『まだやるのかい?』
「当然だ。やらねばならない。動く四肢があって、食らいつく顎があるのなら、自分は最期まで戦う。それが兵士というものでありましょう!」
小枝子の言葉に『クレイドル・ララバイ』は頭を抱えたい気分だった。
自分の体たる『デモニック・ララバイ』の機体状況は芳しくない。
アイセンサーは潰されている。装甲の一部だって脱落している。正直な所をいうと、後退してほしい。
『……まったく頭に血上らせて! 仕方ないね! こういう時は、盛大に歌おうじゃないか!』
「素直にそう言って欲しいであります」
『元々そういう体だからね! とは言え、適切に! 丁寧に! 扱ってくれたまえよ!!』
その言葉に小枝子は鼻から呼気を吐き出すような笑いでもって応えた。
笑った、と自覚もなかったけれど。
しかし、小枝子の体は動いた。
これまで何時間。何日。こうやって演奏の練習をさせられてきただろうか。
息を吸い込む。
魔楽機が変貌し、呼気を送り込む。鍵盤を叩く。
音が響く。
唄え、と小枝子は己の機体の中で響かせる。
陽月光(ヘリオスフェガリ)は戦場のあらゆる障害を無視して貫く超振動波破壊を解き放つ。
それは一瞬で『インドラ・ナイトオブリージュ』へと到達する。
だが、瞬間、機体から発せられるは口腔より放つライトニングバスターの一射。
『奏者!』
間に合わない。
だが、その一撃は『クリノ・クロア』の駆る『グレイル』のシールドによって防がれる。ひしゃげる腕部。
しかし、小枝子の演奏によって奏でられたユーベルコードは『グレイル』の損壊した腕部を再生していく。
「……これは」
「護りながら戦って勝てる相手ではない、だったら一緒に戦えば良い! 戦えるか、『クリノ・クロア』!!」
その言葉に彼はうなずく。
「かしこまっているより、そっちのほうがずっといいですよ、俺はそう思います」
「そ、そうでありますか? とは言え!」
小枝子と『クリノ・クロア』は迫る『インドラ・ナイトオブリージュ』を見やる。
小枝子の放った超振動波破壊の一撃は雷撃を散らす。
仕切り直し、と言ったほうが良いだろう。
だが、敵は猟兵の猛攻で徐々に機体をすり減らしている。
「機体の損壊は気にするな! 直撃だけに注力!!」
「了解! いきます!」
二機が戦場を駆け抜ける。
機体は異なれど。それでも、互いをカバーするように超音速で突進してくる『インドラ・ナイトオブリージュ』と戦い続ける。
だが、『クレイドル・ララバイ』は気がついていた。
己を演奏する奏者、小枝子の演奏は魔音。相対するパイロットに催眠術めいたもので狂わせるものである。
それが効いていない。
これが示すのは。
『人じゃあないのかな。それとも、本当に|『超越者』《ハイランダー》だとでも――?」
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
(今更ですが)セラフィム・エイルの六本腕と三面の頭部はエイルさんが駆る『熾盛』の再現に必要だった?
つまりエイルさんはキメツにおける日の呼吸の使い(ry
それはともかく今は眼前の恐竜帝国?の機体を何とかしましょう。
焔天武后を操縦し、第六感・心眼で相手の動きを予測して、空中戦・見切り・ダンスで相手の突進を回避(オーラ防御も纏う)。
《サイコキネシス》&念動力で相手を捕縛。
スピードを抑えたり、ハイパーチャージの攻撃軌道を焔天武后から逸らしたり。
光の属性攻撃で強化したレーザー射撃・スナイパー・一斉発射。
盾で防がれるでしょうが、何本かは別途滞空させていた天耀鏡に当てて反射させ、全くの別方向から攻撃しますよ。
『熾盛』というキャバリアのデータがあった。
あの動きは尋常ならざるものであったことだろう。シュミレータとは言え、相対した大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は思い出していた。
小国家『グリプ5』の『エース』であった、今はこの世界から消えてしまった『フュンフ・ラーズグリーズ』……彼が使っていたのは、国父たる『フュンフ・エイル』の駆ったと言われる『熾盛』であった。
百年前の機体であるということ。
そして、その頭部だけがレプリカであり、ロボットヘッド『エイル』であった。
あの決戦にて見た『セラフィム・エイル』は三面六臂であった。
そして、新たに新造された『熾盛・改』もまた同じく三面六臂。そこに符号めいたものを彼女は感じていた。
「つまり、あれは『熾盛』の再現に必要だった?」
ということは、『フュンフ・エイル』は、詩乃がコミックで見た……これ以上は危ないあれであるが、そういうことなのかと詩乃は訝しむ。
だが、今はそれを置いて置かなければならない。
イオンブースターの凄まじい加速でもって戦場を駆け抜けるオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』が迫っているからだ。
「考えても答えが出るわけではないでしょう。今は眼前の恐竜帝国の機体をなんとかしましょう!」
なんだか神社に積まれたコミックの種類というもののジャンルが偏ってきているようなきがしないでもない。
だが、事実でもある。
己の乗機である『焔天武后』と共に詩乃は戦場を駆け抜ける。
敵の動きを予測しようにも、あの機体は地上だけではなく壁や天井すら利用して跳ねるようにして己を取り囲んでいるのだ。
「躱せている、のではないですね、これは……!」
「……」
詩乃は理解しただろう。
あの『インドラ・ナイトオブリージュ』の攻撃は攻撃ではない。加速する距離を稼ぐために大仰に、大ぶりに攻撃して見せているだけなのだと。
そして、それを躱せていると錯覚した瞬間、こちらはあの大型突撃槍によって貫かれる未来しか訪れないと。
故に詩乃は、最期の決め手たる一撃をこそ警戒する。
己の神力による拘束すら追いつかない。
「追いつけない……ですが!」
煌めくユーベルコードの輝き。
互いの機体のアイセンサーが輝いている。一瞬の交錯。決めてくる、と詩乃が理解した瞬間、彼女のサイコキネシスは網目のように編み上げられる。
掴み上げることを放棄したのだ。
「天網恢恢疎にして漏らさず! 遍く世界に在りても、オブリビオンマシン、その悪意は、全てすり抜けること能わずと知りなさい!」
突進の一撃をサイコキネシスの網で受け止める。
だが、その突進能力は凄まじかった。
「……」
「……ここまで!」
引きちぎられる。ユーベルコードの網目であっても食い破られるようにして槍の穂先が己の乗機へと迫る。
狙いは、コクピット!
故に、詩乃はレーザーの一撃を放つ。一斉射だった。だが、それらの全てを躱しきって『インドラ・ナイトオブリージュ』が迫る。
なんたる絶技であろうか。
しかし、詩乃は計算づくだった。鏡の盾を飛ばし、躱されたレーザーを反射させ、予想しない角度から光の乱舞でもって『インドラ・ナイトオブリージュ』を打ち据える。
反射によって熱量が足りない。
だが、それでも機体を弾き飛ばすことはできたのだ。
「言ったでしょう。その悪意は、世に零さぬと――!」
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
恐竜のキャバリア……!
恐竜は強い、それは知ってる。
でも鮫はもっと昔から今までいるのに、恐竜は絶滅しちゃった。
何でか分かる?もちろん鮫の方が強いからだよね。
そして鮫の得意な場所でなら……もっともっと強い!
そう、うるうのとっとき!シェイプ・オブ・ウォーター!
深海適応したテルビューチェの水中機動なら、この環境でも教官さんを守るのは難しくないよ。
逆に恐竜は走ったりし辛くて困っちゃうんじゃないかな?
後は敵の武器だね。
海水には電気は流れるだろうけど、逆にその場に留めておくのは難しいはず。
戦場全体に拡散しちゃえば威力も下がってそんなに怖くないもんね!
さぁテルビューチェ、鮫の力で白亜紀を思い出させてやれー!
戦場を駆け抜けるオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』の強力さは、これまでのオブリビオンマシンと比べると強大そのものだった。
機体の性能だけではない。
これを駆るパイロットの技量が群を抜いていると言っていいだろう。
それを証明するように猟兵たちの猛攻を『インドラ・ナイトオブリージュ』はしのぎ切っていた。
恐るべきことである。
猟兵一人ひとりが一騎当千である。その猛攻を受けて今もなお健在であるということ。
しかし、杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)はひるまない。
「恐竜のキャバリア……!」
恐竜は強い。
それは知っている。大きくて、強靭で、たくましい。かつて古の時代に隆盛を極めたというのもうなずける。
でも、と潤は己の駆るオブリビオンマシン『テルビューチェ』のコクピットでコンソールを撫でる。
「でも鮫はもっと昔から今までいるのに、恐竜は絶滅しちゃった。なんでかわかる?」
「……」
その問いかけに搭乗者は応えない。
けれど、応えだというように『インドラ・ナイトオブリージュ』の口腔より放つ雷撃の如き一撃を『テルビューチェ』に叩き込む。
訓練場を破壊し、余波が『テルビューチェ』を襲う。
周囲に雷撃が満ちている。
迂闊に動けない。あの一射はわざと外されたのだと潤は理解しただろう。
「わかんないかな! もちろん鮫のほうが強いからだよ! そして!」
潤の瞳がユーベルコードに輝く。
たとえ、これが罠であったとしても潤は信じている。己の魔法を。己の乗機を、信じている。
「シェイプ・オブ・ウォーター!」
降り注ぐはソーダ水の雨。
戦場たる訓練場は深海へと変貌する。
それは戦場を塗りつぶし、状況を敵に押し付けるユーベルコードであった。深海、すなわち、水圧凄まじい場所である。
機体の装甲がひしゃげる音をたてながら『インドラ・ナイトオブリージュ』は戦場を駆け抜ける。イオンブースターの出力を底上げしているのだろう。
だが、それでも潤は構わない。
だって、今の『テルビューチェ』は深海に適応した水中機動で持って『クリノ・クロア』へと『インドラ・ナイトオブリージュ』を近づけさせないのだ。
「疲れちゃうでしょ! 体の重たい場所で走るのは!」
ならば、と放たれるライトニングバスターの一射。
今度は外すつもりなどない正確な一撃だった。
けれど、『テルビューチェ』は構うことなく真っ向から受け止める。ここは深海。降り注ぐソーダ水は雷撃収束の一撃を減退させる。
踏み込む。
「いっけー!『テルビューチェ』! 鮫の力で白亜紀を思い出さえてやれー!」
怖くない。
『テルビューチェ』が一緒にいてくれるから。
潤は、そう思うのだ。
どんなに怖い敵でも。どんなに恐ろしい力を持つのだとしても。
それでも、ともにあるオブリビオンマシン『テルビューチェ』は優しい子だと。そう知っているからこそ、彼女は一緒に戦場を駆け抜け、手にした打撃武器でもって『インドラ・ナイトオブリージュ』を打ちのめすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
展開早いって!(3階ぐらいの窓に片足を掛けながら
って訳で、指揮官さんの前に(無限収納の)扉を出して、Vrykolakas行ってこーい!
…あ。ランスが刺さっ…
…何かVrykolakasが怒ってそうな気がするし、UC:限定的解放・藍薔薇の戒め を気持ち早めに発動!ほーら敵だぞ!暴れてこーい!
僕は指揮官さんに来る攻撃や余波を、愛用の黒剣と自分の身と怪力で武器受け&オーラ防御とPiscesの鎖をロープワークで僕自身に巻き付けて、短剣部分はナイフ投げ&投擲&串刺しで地面にしっかり固定した上で激痛/吹き飛び耐性で耐える!
Vrykolakasが暴れ足りなくても、僕知らなーい!(無限収納で強制送還
訓練場へと飛び込むようにしてインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は窓枠に足をかけた。
一気に体を放り投げるようにして戦場へと飛ぶのだ。
「あっという間じゃん! とは言え、間に合ったもんは間に合ったんだから、『Vrykolakas』行ってこーい!」
扉が開く。
その扉をこじ開けるようにして現れるは青藍色のオブリビオンマシン。
しかし、次の瞬間、オブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』の大型突撃槍の一撃が『Vrykolakas』の装甲を貫く。
軋む音が聞こえる。
それは互いの機体から響く音であったし、インディゴにとっては『Vrykolakas』の声であるようにも思えただろう。
確かに彼は標的にされている教官機を駆る『クリノ・クロア』を守るために『Vrykolakas』を現出させた。
だが、それは盾にするつもりであったわけではなかったのだ。
己の想定よりも遥かにオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』が強大な敵であったということであろう。
踏み込みが早すぎるのだ。
その一連の動きに『Vrykolakas』が怒っているように感じたのだ。
「わ、わかってるってば! 隙に暴れていいんだから、ちょっとだけね!」
インディゴの瞳がユーベルコードに輝く。
オブリビオンマシンたる『Vrykolakas』は己が管理下にあることを条件に、現存しているオブリビオンマシンである。だが、その足かせの如き力を外す。
限定的解放・藍薔薇の戒め(リミテッドリリース・インディゴチェイン)によって、『Vrykolakas』の内部にあるであろうジェネレーターが唸りを上げる。
封印を解く。
それが何を意味するのかなど言うまでもない。
自律行動の解禁。
己が何を為すべきか。己が何を為すために生まれてきたのか。
それを示すかのような咆哮と共に『Vrykolakas』は『インドラ・ナイトオブリージュ』へと掴みかかる。
振りほどくようにして鋼鉄の巨人が投げ倒される。
しかし、即座に反転するように機体が立ち上がり、さらに手にしたサーフブレイドの一撃を『インドラ・ナイトオブリージュ』へと叩き込む。
ラウンドシールドで受け止め、受け流される。
あのオブリビオンマシンを駆る搭乗者の技量は凄まじいものである。
戦いの余波が凄まじい。
「一進一退じゃないか……! えーと、えーと、指揮官じゃなくって教官の……」
「『クリノ・クロア』です」
「そうそう、キミ、狙われているんだから大人しくしてなって!」
「でも!」
「いや、逆に巻き添えくうっって、あんなの!」
インディゴは示す。
己のオブリビオンマシン『Vrykolakas』と『インドラ・ナイトオブリージュ』との戦い。
その余波は凄まじいものだった。
一部解禁したとは言え、それでも『Vrykolakas』の攻勢をあのオブリビオンマシンは真っ向から受け止めていなし続けている。
マジで消耗戦じゃないか、とインディゴは理解する。
いずれ押し負ける。
だからこそ、インディゴは決断する。
「暴れたりないって顔してるけど、壊れるよりマシでしょ!」
後でなんかフラストレーション溜め込んだ『Vrykolakas』が暴れ狂うのだとしても。
「僕知らなーい!」
明日のことは明日のインディゴがなんとかするでしょう、と彼は思って押し留めた『インドラ・ナイトオブリージュ』から引きはがすようにして己のオブリビオンマシンを強制送還させるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
薄翅より『クロア』へ
あなたの機体、少しだけ借りるわね
『ライド・オン』を発動し、『プロメテウスV』を駆る
これは愛する人を守るために創造された機体
その為の力を引き出せば、きっとどこまでも疾くなれる
執拗に『クロア』を狙うならば
私と『プロメテウスV』が盾となるわ
結界術を飛ばし、少しでも敵機の機動力を落とし
強化した装甲と搭載装備で応戦しましょう
言葉はなくても機体の動きを通じて伝わるものがある
『アイン』……なぜ今彼女を思い出すの
あなたは、誰
青いキャバリア『プロメテウスV』。
そのコクピットに収まりながら、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は瞳を伏せる。戦場にあって、そのようなことをするのは憚られることであったかもしれない。
けれど、彼女にとって必要なことだった。
機体のことを知りたいと思った。
知りたいと願うことは、彼女にとってこれ以上無いことだったのだ。
わかる。
これは愛の結晶だと。
誰かが誰かのためにと願った力の結晶だと。これが愛だと知れたのならば、静漓は『クリノ・クロア』へと呼びかける。
「薄翅より『クロア』へ。あなたの機体、少しだけ借りるわね」
「『プロメテウス』!? なんで……!?」
「わかっているわ。『ツェーン』があなたのためにこの機体を組んだこと。それを私が使っていることへの疑問」
「違います、そうじゃないです。なんで起動してるんです!」
その言葉に彼女は得心が行く。
そうか、と。
この機体は。
「そう、あなた。あの子を守るために目を覚ましたのね」
静漓は知る。
きっとこの機体はまだ機動できる状況ではなかったのだろう。けれど、『ツェーン』が愛する人を守るために創造した機体なのだ。
ならば、『クリノ・クロア』の危機に目覚めるのは当然とも言えた。
その深さを知って、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「そのための力があなたにはある。きっとあなたは何処までだって駆けつける事のできる疾さを得ることができる。ええ、そうよね。もっと、疾く」
肩部アーマーが変形する。
展開する装甲から現れるのはブースターの噴射口。
そして、背面にエネルギーインゴットから過剰に放出された熱波が光の翼のように放出される。膨張した空気に後押しされるようにして静漓の駆る『プロメテウスV』が一気に戦場を駆け抜ける。
執拗に『クリノ・クロア』を狙うオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』へと立ち向かう。
間に割って入るようにして静漓は展開した結界術でもって、その突進を受け止める。
止まらない。
「……」
「なんという力……でも」
展開する装甲板が静漓のユーベルコードによって増強される。強固なシールドへと変形した機体の装甲が繰り出された突撃槍の一撃を弾く。
「武装は……」
「背面部にプラズマエッジが!」
『クリノ・クロア』の言葉に静漓はうなずく。展開した背面部装甲からプラズマエッジの柄が出現する。
それを握りしめて『インドラ・ナイトオブリージュ』の突撃槍と撃ち合う。
押し負けない。
機体性能が十全に引き出されている。そこにさらに己のユーベルコードの力が上乗せされているのだ。
ならばこそ、わかる。
この子は、すごい子だ、と。愛とは此処まで力を放つのかと彼女は理解しただろう。
「……」
だが、同時に彼女は違和感を覚える。いや、違和感ではない。既視感だ。
これは。
「……なぜ今彼女を思い出すの」
『アイン』。
別世界で遊んだ相手の名前。
確かにオブリビオンマシンの機体は恐竜型で似ても似つかない。あの子は、人型のホビーを好んで使っていた。
違う。
違うはずだと彼女は己の胸がひきつるような痛みを覚える。
「『アイン』……」
この動きは彼女のものだ。
故に静漓は問いかけた。
「あなたは、誰」
だが、激突する火花の向こうから応えはない。無言たる圧力と共に互いの機体は弾かれるようにして吹き飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
へえ、手練れか
インドラ、神の名を冠する機体
誰が乗っているのやら…せめて自己紹介の一つくらいはしてくれると、戦い甲斐があるんだけど?
…そんなつもりはないんだろうね
倒せば名乗ってくれるかな?
まあ、いいや
お喋りが嫌いなら、ただやり合うだけだしね
どんな目論見があろうとも、私達が全部潰してあげる
それが猟兵のやるべき事だがら
超克…オーバーロード!
外装転送、模造神器全抜刀
さあ、恐竜狩りといこうじゃないか
距離を取られたら『斬撃波』を飛ばし、近距離ならば剣戟で攻撃を与えていこう
【Ex.Code:R.T.C】起動
先ずは【移動速度】の倍化カードを使用、手数の多い敵の攻撃を回避していこう
避けきれない物は『オーラ防御』でシールド展開、逸らし弾いて直撃を回避
更に追撃していき、次のカード
【斬撃波の破壊力】倍化を使用
遠距離攻撃の威力を上げて、追撃…カードが現れ次第【移動速度】倍化のカードを何度か使用
更に加速していこう
奴より速くなってきたらラストカード【模造神器の切断力】倍化カードを使用
斬れる所を切断し『部位破壊』だ
猟兵は言うまでもなく一騎当千たる猛者たちである。
その猛者たちの猛攻を受けながらも、なおオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は健在であった。
此処に至るまで失ったのは腕部のみ。
細かい手傷はあれど、しかし未だ十全たる性能を発揮し続けているのは、恐るべきことである。
そう思わせるほどの圧倒的な戦いぶりを見せるのは機体性能だけではないと月夜・玲(頂の探究者・f01605)は理解する。
手練れである。
明らかにあのオブリビオンマシンの搭乗者は、『エース』という枠組みを越えている。
『インドラ』と神の名を冠する機体に振り回されていない。
乗りこなしている、といってもいい。
「せめて自己紹介の一つくらいはしてくれると、戦い甲斐があるんだけど?」
玲の言葉に『インドラ・ナイトオブリージュ』の搭乗者は応えない。
あるのは沈黙だけであった。
「……わかっていたけど、そんなつもりはないんだろうね。倒せば名乗ってくれるかな?」「……」
あくまで沈黙を貫く『インドラ・ナイトオブリージュ』、しかし返答は如実だった。
構えたショットガンから炸裂する散弾が生身単身たる玲へと躊躇なく放たれる。
その一撃を玲は転送されていた外装たる巨腕でもって防ぐ。
「随分とご挨拶じゃあない!」
超克、オーバーロードの輝きの中で抜刀される四振りの模造神器の刀身。
凄まじいかが焼きを解き放ちながら、彼女の瞳が煌めく。
「おしゃべりが嫌いなようだね。なら、ただやり合うだけだよ。どんな目論見があろうとも、私達が全部潰してあげる」
振りかぶった模造神器の煌めきは、迫る『インドラ・ナイトオブリージュ』を前にしても引けを取らなかった。
放たれるショットガンの散弾が玲へと襲い来る。
手数でこちらを圧倒するつもりなのだ。わかっている。速度で圧倒するよりも、生身単身、それも超常たる存在を相手取るのならば、この戦法が有効だと理解しているのだろう。
わかっている。
確実に、こちらが猟兵……超常存在と規定しての動きだと。
「さあ、恐竜狩りといこうじゃないか」
踏み込む。
だが、即座に距離を取られる。イオンブースターの加速が厄介だった。サイズ差というものを考慮しての動き。
厄介過ぎる。
己が圧倒的な兵器に搭乗しているという意識すらない。
眼の前の存在を対等以上と定めているからこその、慢心なき強者の戦い方だ。放つ斬撃波で牽制してもラウンドシールドで受け止められる。
いや、そのままラウンドシールドの質量で押しつぶしに来る。
「……」
「厄介な戦い方! ならさ!」
玲の瞳がユーベルコードに輝く。
交差させた模造神器でもって大型突撃槍の一撃を受け止める。外装腕部の関節が火花を噴出させる。
それほどまでの圧倒的加速と重たい一撃。
「強化コード、起動! Ex.Code:R.T.C(エクストラコード・リインフォーススリーカード)!!」
弾くようにして『インドラ・ナイトオブリージュ』を押し返しながら玲は眼前に現れた三枚のカードの内、一枚を手にする。
「移動速度強化!」
踏み込む。
腕部を失っている『インドラ・ナイトオブリージュ』であったが、手数の多さは健在だった。
此方が人間大であることも要因になっていたが、踏みつけやショットガン、盾によるシールドバッシュや槍の一撃は軽くとも、しかし圧倒的な速度で玲に迫る。
ならばこそ、彼女は神速たる踏み込みで持って懐の飛び込むのだ。
だが、振るわれる槍は刺突ではなく、叩きつけられるようにして玲へと振り下ろされる。
速度強化してもなお、追いつかれる。
圧倒的な質量でもってオーラのシールドがひび割れていく。だが、それを反らしながら衝撃を受け止め、彼女は回り込む。
「コード! 次!」
眼前に残された二枚のカードの一枚を手に取る。
斬撃波の破壊力強化。
振るう斬撃の速度はこれまでと変わらない。だが、強化された斬撃波はこれまで傷つけられなかったラウンドシールドに斬撃の跡を残す。
そして、その衝撃は更に増しているのだ。
さらにカードが目の前に現れ、玲は加速していく。
速度で圧倒されるのなら、その速度を上回るといわんばかりに彼女の速度はましていき、蒼い嵐となって『インドラ・ナイトオブリージュ』を取り囲む。
「……」
「上回った……! ここだよね!」
最期の一枚を手に取る。
切断力の強化。
その蒼い一閃は、『インドラ・ナイトオブリージュ』の頭部と胴体を繋ぐ首へと振り下ろされる。
刹那にみたぬ判断。
それは、僅かにそらされ、寸断を免れる。
だが、その胸部へと深々と傷が刻まれる。コクピットハッチ。
その奥に玲は、見ただろう。
ユーベルコードの輝き満たす、眼光を――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
見たことないキャバリアが出てきたね。
これは捕まえてバラしたくなる!
でもこれはちょっと捕獲は厳しいかな?
サージェさん、どう思う?挟み込んでいけると思う?
あ、挟み込むっていっても、
サージェさん魅惑のたゆんで挟み込むわけじゃなくてね?
2人で挟み込んだら捕まえられないかなーって意味だからね?
『おねーちゃん、いくらサージェさんでも、あれははみ出るから』
さすが『希』ちゃん、分析が的確だね!
っと、冗談は置いておいて、ここは2人がかりのほうがよさそうだよね。
サージェさん、なんとかついて行くからタイミング任せる、よー!
サージェさんの攻撃に合わせて、【白の天蓋】を発動。
手数で勝負だよー!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
むぅ、これは強敵ですね
っていうか理緒さんが理緒さんで安心しました
とりあえず、シリカ! 敵機正面! クロアさんとの間に割り込みますよ!
え?挟み込む?理緒さんマジですか?!
はい??私の魅惑の……なんです??
敵の攻撃が激しすぎて聞こえないんですけど!?
はみ出るってなに!!
早く助けて!?
あとシリカさん今ばりぃはやめて!?
フローライトダガーを両手に攻撃回数重視の
【疾風怒濤】で勝負!
「手数こそ正義! まいります!」
全然突破できないんですけど!?
くっこの感じ……!
エースっていうか、これはもしかしてフュンフ・エイルのデータ!?
変なメイドが飛び出してきそうな厄物を出してこないでください!?
腕部を失い、コクピットの装甲が切り裂かれてなおオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は止まらなかった。
凄まじい速度は、パイロットに対する負荷が尋常ならざるものであったことだろう。
だが、それでも縦横無尽に戦場を駆け抜ける姿は、正しく閃光の如く。
壁を、天井を、地面を。
汎ゆる面が走破すべき場所であると示すように、あの機体は一騎当千たる猟兵達を前にしてもなお、『エース』を超越したかのような技量で持って立ち回っている。
手傷を追ってなお、未だ機体が健在である。
「見たこと無いキャバリアが出てきたね。これは捕まえてバラしたくなる!」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『ネルトリンゲン』の艦橋から戦場を直走る『インドラ・ナイトオブリージュ』の姿に、それは難しいだろうということも理解していただろう。
「確かに強敵ですね。ていうか、理緒さんが理緒さんで安心しました!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はよくわからない安心の仕方をしていたが、いつも通り戦えるというのならば、何も問題はない。
当面の目標は『クリノ・クロア』の保護である。
彼の教官機の前にサージェは『ファントムシリカ』を割り込ませる。
だが、猛烈なる突進の一撃に機体がかしぐ。
出力負けしている、とサージェは瞬間的に悟っただろう。一体どのような加速を行えばここまでの突進ができるのか。
突撃のインパクトでパイロットにも衝撃が走っているであろうに、まるで関係ないと言わんばかりに『インドラ・ナイトオブリージュ』は戦場を疾走していく。
「ぐっ……これっ!」
「いやー本当に捕獲は難しそう!」
「そうですよね! これ、『クロア』さん守るので手一杯では……とわっ!?」
機体が揺れる。
圧倒的な速度で此方の速度を容易く上回ってくる。
機体の装甲が傷つく。後で怒られる! とサージェは色んな意味で板挟みにされながら戦々恐々たる思いで戦っている。
普通、パイロットの保護優先じゃないのかと思うのだが、まあ、しゃーなしである。本当にそうか? と思うが、まあ、そうなのである。
「サージェさん、どう、挟み込んでいけると思う? あ、挟み込むっていってもサージェさんの魅惑のたゆんで挟み込むわけではなくってね? 二人で挟み込んだら捕まえられないかなーって意味だからね?」
「はじめからそういう意味だと思ってますが、他にどんな解釈が!?」
サージェは理緒の言葉に、クエスチョンマークを頭に浮かべる。
とは言え、悠長におしゃべりをしている暇などなかった。機体に迫る構成は更に勢いを増していく。
「というか、敵を勢いづかせたらだめですよ! これ! 止められなくなります!」
「だよねー」
『おねーちゃん、いくらサージェさんでも、あれははみ出るから』
何処から何が? と問いかけたくなることを『希』が発言する。挙手して発言できて、えらい。
「さすが『希』ちゃん、分析が的確だね!」
「はみ出るって何!! っていうか助けてくださーい! 本当にやばいです! あっ、あっ、あっ! シリカさん、今ばりぃはやめて! 本当にまずいですからぁ!!」
なんていうか、字面だけ見たらふざけてるとしか言いようのないやりとりであるが、サージェは必死だった。
本当にヤバイのである。
『インドラ・ナイトオブリージュ』の突進は冗談抜きで、こんな漫才コントみたいなことをやっている暇がないほどに苛烈なのだ。
「そうだね。冗談はおいておいて、ここは二人がかりで止めよう1 サージェさん、なんとかついていくからタイミング任せる、よー!」
「もうばりぃ、されるのは覚悟の上です! 手数こそ正義! 参ります!!」
サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
疾風怒濤(クリティカルアサシン)たるユーベルコードによる超高速連続攻撃。
フローライトダガーの剣閃が嵐のように『インドラ・ナイトオブリージュ』へと襲い掛かる。
だが、それらの全てをラウンドシールドが受け止めている。
突破できない。
まるで疾風怒濤たる連続攻撃の全てを捉えているかのような盾捌き。
「突破できないんですけど……この感じ……!」
『エース』じゃない。
それどころじゃない。これは|『超越者』《ハイランダー》!
「『フュンフ・エイル』さんのデータ、ってこと、かなー?」
「違います、この動き! これっ!」
何処かで見たことがある。
けれど、己が体感したことのあるもの以上の重圧と、苛烈さ。
二人の頭に浮かぶのは『アイン』。
あのオブリビオンマシンによる事件によって片腕になってパイロットを辞した彼女を思わせる技量。
だが、それ以上だと理解できる。
「クロック、アジャスト」
白の天蓋(シロノテンガイ)が『インドラ・ナイトオブリージュ』を囲う。
電脳魔術で減速さえてなお、対応してくる技量。
遅くなった、と即座に理解していなければできない動き。
「止められない、けど……! サージェさん、動きは鈍らせられたよ! ここで手数を!」
「わかってます! なんかどこかのやべーメイドが飛び出してこないと思ってたんですよ!」
サージェは踏み込む。
『ファントムシリカ』の機体が踏み込み、手にしたフローライトダガーの一閃が槍を跳ね上げ、盾を弾き、サブアームへと斬撃を叩き込み、手傷を追わせる。
ただ、それだけだというのに、二人は息を吐き出す。
退けた、という感触しか残らない。
けれど、確実に言えるのは、消耗させたということだけだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
疋田・菊月
おやおや、真打ち登場というわけですか
混乱に乗じて、確実に任務をこなす強力な機体を投じると……素晴らしい作戦ですね
我々猟兵がやってくるのは誤算だったかもですが
さて、クロアさんをやらせるわけにはいきませんが、相手は特機
大型の得物が目を引きますが実質四本腕ですよね
こちらも手をお借りしましょうか!
注意すべきは、突撃槍、そして近接散弾
正対しては一気に距離を詰められるでしょうから、側面を取りつつモストロを撃ち込みます
おや、弾切れですね
予備まで打止めです
うーん、こんな時、私の九九式がこの機体で使えれば話は違うんですけどねーチラチラ
「おやおや、真打ち登場というわけですか」
疋田・菊月(人造術士九号・f22519)は混迷を極めるかのような状況に目を見張る。
逐次戦力の投入。
この状況において、さらに強力な機体が飛び込んでくるのは、混乱している現場においては最適な一打と言えるだろう。
確実に任務をこなす。
そういう意味ではオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は確かに適切な機体であったのだろう。
問題は。
一騎当千たる猟兵たちの数多たる攻勢を受けてなお、今も健在であるということである。
手傷を負ってはいる。
けれど、目立った外傷は腕部の喪失だけであろう。
それ以外では盾やサブアーム、コクピット周りに傷があるのみである。恐るべきことである。機体性能だけではない。搭乗者の技量もまた凄まじいものでると理解できただろう。
「……機体とパイロット。その両方を兼ね備えた上、この作戦」
素晴らしい、と言わざるを得ないと菊月は己のキャバリア『ヴァルウラン』のコクピットの中で深くうなずく。
だが、己たちがいる、ということは誤算ではなかったのかと思う。
猟兵がいてもなお、遂行できる、という自負があるかのような実力をオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は示していた。
「とは言え、『クロア』さんをやらせるわけにはいきませんので!」
踏み込む。
敵の得物は大型突撃槍。ラウンドシールド。
それに隠れるようにしてショットガンも備えている。腕部が喪われていることは幸いであった。
「四本腕なら、流石に手数に押されたでしょうが!」
今ならば、と菊月は踏み込んだのだ。
キャバリアライフルの弾丸をばらまく。一気に距離を詰められることは理解していた。
速度に優れるキャバリア。
特異な機体だ。前傾姿勢たる恐竜めいた機体。
踏み込みの疾さならば、人型であるより、こちらの方に分があるであろうことは容易に想像できる。
だからこそ、足回りを潰す。
弾丸で踏み込みを躊躇ってくれればよいと思ったが、しかし、それを跳躍し訓練場の壁を蹴って、多角的に踏み込んでくるのだ。
「正気ではないですが……おっと」
キャバリアライフルの弾丸が切れる。
乾いた音を響かせるライフル。瞬間、一気に『インドラ・ナイトオブリージュ』が突撃槍の切っ先を繰り出す。
好機と見たのだろう。
だが、菊月はこれまでの応酬でユーベルコードを発露させていない。
そう、彼女は待っていたのだ。『インドラ・ナイトオブリージュ』が此方の球切れに気がついて突っ込んでくるのを。
「予備まで使ったことを確認しているとは、目聡いといいますか、抜け目がないといいますか。こういう駆け引きすら織り込み済みとは」
これは、と菊月は困った顔をする。
だが、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「ああ、こんなときに」
自分の武器がキャバリアで使えたら便利なんですけどねー、と呟いた瞬間、彼女の武装がキャバリア大へと変貌し『ヴァルウラン』の手に収まっている。
「……」
悪魔の魔法を組み合わせた装備の限定解除。
それによってキャバリアサイズにリサイズされた彼女の機関銃が現れ、弾丸をばらまくのだ。しかし、それさえも『インドラ・ナイトオブリージュ』は読み切って躱す。
「そうですよね、けれど!」
菊月は『ヴァルウラン』と共に踏み込む。
弾丸を討つだけが、己の武器ではないのだ。
『型式九九K』は、銃身を切り詰めた銃剣備えた武装。
それはキャバリアサイズにリサイズされても変わらない。
故に。
「こういうことです!」
振り下ろした一撃が『インドラ・ナイトオブリージュ』の大型突撃槍の穂先を切り裂いた――。
大成功
🔵🔵🔵
明和・那樹
●SPD
まさに大地その物を蹂躪するが如くの走りっぷりだ
キャバリアのような体躯であれば何とかなるのだろうけど、俺のように乗っていないと防戦一方となるのは仕方ない
けど、そこには認識の違いがある
こっち側の人からすれば自殺行為だろうけど、こちら側としてはGGOの拡張世界に過ぎない
そして、だいたいの行動ルーチンや癖も様子見で掴めたから、ここから形勢を逆転させて行こう
竜使いの笛でラドランを呼び寄せて騎乗
これでショットガンの射線から脱したけど、手数が多い分迂闊に近寄れない…が、突撃時は突撃に専念している
それを見切り、すれ違いざまの『絶空斬』で内部動力系を寸断させるぞ
誰だか知らないけど、未来の芽は潰させないよ
体高5mの鋼鉄の巨人たちが闊歩する戦場。
それがクロムキャバリア世界の常である。戦場の花形というのであれば聞こえがよいものである。
しかし、人型であること。
戦術を駆使すること。
それらの利点を超越するかのようにオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は大地を踏み鳴らし疾駆している。
イオンブースターに寄る加速は凄まじいものであり、相対する生身単身たる明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は、恐れ抱いても仕方のない光景を目の当たりにしていた。
だが、彼にとって、これは別段珍しいものではなかったのだろう。
確かにこれだけ巨大な兵器が戦場を闊歩し、席巻するのもうなずける。
歩兵が意味をなさない。
それほどまでにキャバリアとは兵器としての汎用性を持ちつつ、他を圧倒する力の象徴でもあったのだ。
「けど、そっちには認識の違いがあるよな」
確かにこの世界では戦場はキャバリアが独占している。歩兵の出る幕など何一つ無い。
生身単身で立ち向かうことはすなわち死を意味している。
ただの自殺行為でしかない。
けれど、那樹にとっては、ゴッドゲームオンライン世界の拡張世界でしかないのだ。
故に。
敵の行動の全てはルーチンワーク。そして、癖。
これまでの戦いで敵の動きは見てきた。
しかし、一騎当千の猟兵たちの猛攻を数多受けてなお、目立った機体の傷は少ない。腕部を失っていること、コクピットハッチの装甲が一部切り裂かれていること。それ以外は軽傷とも言うべきものであった。
恐るべきことだ。
だが、ゴッドゲームオンラインというゲームの世界にいる以上、エネミーというのは数値化されている。
どんなに手傷を追わせても、それでも敵の行動や攻撃が万全と遜色ないなど、当たり前のことだった。
故に那樹に油断はない。
「行くよ、『ラドラン』!」
竜使いの笛で呼び寄せたライドドラゴンに飛び乗って、那樹は『インドラ・ナイトオブリージュ』へと踏み込む。
放たれる散弾は脅威だ。
近距離で放たれたら、まず躱せない。
そして、シールドも防御だけではなく殴打の武器として使ってくる。サブアームが傷ついてはいるが、しかし油断はできない。
兎にも角にも敵の手数が多いことが厄介だたt。
「迂闊に近づけない、か……けれど、突撃時には突撃攻撃に集中しているだろ!」
すれ違いざまに、と飛び込む。
けれど、『インドラ・ナイトオブリージュ』は、その動きに付き合うまでもないと言わんばかりに『ラドラン』の側面へと体当たりを敢行する。
イオンブースターを横に向けすべらせるようにしてぶつかってきたのだ。
「……」
「うわぁ!? こ、こいつ……!」
戦い慣れている。
いや、経験がそうさせているのかわからない。あえて、敵はこちらが観察していることを前提として、不意たる行動パターンを打ち込んできたのだ。
「でもっ! 防御したって無駄だ!」
霊力を帯びた那樹のツインブレードの一閃が走る。
それは、絶空斬(ゼックウザン)。
防ごうと構えられたラウンドシールドを透過し、威力を増大された斬撃は、障害など何もないと言うかのように放たれ、その斬撃を『インドラ・ナイトオブリージュ』の体躯へと叩き込み、横合いにぶつかってきた機体を返って大きく弾き飛ばすようにして訓練場の壁面へとしたたかに打ち据えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
随分と標的にご執心じゃねえすか…!
個人的な恨み買った覚えがあるとかじゃねえっすよね!?
『ポイボス』による<レーザー射撃>で相手の優先対象をこちらへ誘導しつつ
『ローレル』の<推力移動>で相手武装の射程範囲から離脱。
攻撃、解析、離脱。
これを繰り返し、相手の情報を<情報収集>で把握し、最終的には【霹靂】で要を撃ち抜ける…
だが敵機体性能はもとより、搭乗者の技量も高い…!
詰め寄られるのが先か、撃ち抜くのが先か…
…やるぞ『カサンドラ』。
願った者がいて、最善を模索し、勝ち取ったからこその今の平穏でしょうよ!
|過去の化身《オブリビオン》が好きに踏みにじっていいものじゃねえだろ…!
猟兵の猛攻を受けてなお、壁面に叩きつけられたオブリビオンマシン『インドラ・ナイトオブリージュ』は即座に復帰するようにイオンブースターの加速を得て疾駆する。
そのアイセンサーの残光が走る先は、教官機駆る『クリノ・クロア』であった。
彼を狙う理由はわかる。
彼はこの小国家『フルーⅦ』に出向してきた他国のキャバリアパイロットである。
友好条約を結んだ小国家で彼が事故であれ何であれ、死亡したというのであれば、確実に二国間の条約に罅を入れることだろう。
確実に火種になるであろうし、仮に賠償などで補填したのだとしても、軋轢が残る。
故に、彼は狙われている。
「随分とご執心じゃねえすか……! 個人的な恨みを買った覚えがあるとかじゃねえっすよね!?」
安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は『カサンドラ』のコクピットから『クリノ・クロア』に呼びかける。
彼が狙われる理由はわかる。
だが、この執着の仕方は尋常じゃない。
他になにか思惑があるとしか思えない。
「わかりません! でも……!」
彼の言葉はわかる。この戦乱の世界である。誰も彼もが清廉潔白であるとは言えないだろう。戦いがある以上、知らず誰かの大切なものを傷つけていないとは誰も言えないのだ。
故に、彼は己が狙われることを是としながら、狙われる理由が判然としないのだ。
「生き残ることが先っすよね!」
レーザーライフルによる射撃。
放たれる光条をまるで気にもとめていないかのように『インドラ・ナイトオブリージュ』は戦場を疾駆する。
素早い、というだけではない。
確実にこちらの意図を読み切られている。
『クリノ・クロア』の機体は教官機だ。武装はシールドと一体になったパイルバンカーのみ。あまりにも相性が悪い。
あの突撃に打ち勝てる要素など何一つないのだ。
だからこそ、だ。
「『ローレル』、行け!」
『カサンドラ』から射出された盾型スラスターが宙を舞い、レーザー砲台となって『インドラ・ナイトオブリージュ』へと光条を打ち込む。
取り囲んでの一射。
だというのに『インドラ・ナイトオブリージュ』はラウンドシールドと加速だけでしのぎ切ってしまうのだ。
「……機体性能だけじゃない……! 搭乗者の技量が高い……!」
穣は理解しただろう。
明らかに『エース』の動きじゃない。『エース』を超える閃光の如き速度で持って『インドラ・ナイトオブリージュ』は踏み込んでくるのだ。
圧倒的な技量。
凄まじいまでの能力。
「けど……やるぞ『カサンドラ』!」
穣は覚悟を決める。
己に詰め寄られるのが先か、撃ち抜くのが先かなど行っている場合ではない。
あの機体を確実に止められなければ、喪われるのは目先の生命だけではない。多くの生命が喪われるきっかけになってしまう。
だからこそ、彼の瞳はユーベルコードに輝く。
瞳がユーベルコードに輝く。
その瞳は遠隔透視能力を発露する。見据える。
そのコクピットの先にある存在の姿を捉える。
目と。
目が。
かち合う。視線が、火花を散らす。此方が見ている以上に、相手も己を見ている。見られている。ぞわりと背筋に走る怖気。
「……」
「願ったものがいて、最善を提示し、勝ち取ったからこその今の平穏でしょうよ! それを!」
穣は恐れを振り払う。
己の体に降り注ぐような恐怖は今、振り切る。
目指したものがある。願われたものがある。祈られたものがある。
それを台無しにして踏みにじろうとする悪意が己に恐怖を覚えさせるのだとしても。
「|過去の化身《オブリビオン》が好きに踏みにじっていいものじゃねえだろ……!」
穣の裂帛たる叫びは、霹靂(ヘキレキ)たる一撃となって『インドラ・ナイトオブリージュ』の尾を打ち抜き、破壊するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソフィア・エルネイジェ
●塩沢家
インドラが…!?
搭乗者は何も語るつもりは無いとお見受けしました
では戦いを以て己が果たすべきを果たすと致しましょう
しかし…同じインドラと武を交えられるこの状況…昂ってなりません!
参りますよ!インドラ!
敵の目的はクロア様でありましょう
目論見を挫くには積極的に攻勢に出なければ
ジュディスは煙幕を焚きましたか
こちらは推進噴射の光跡を追ってショットガンの交互連射で牽制を加えます
突進はサイドイオンブースターで横方向に回避
被弾がやむを得ない場合はまともに受ければ粉砕されるが必至
盾に傾斜を付けて構える事で受け流します
避けた後、または敵の狙いがガルムに向かった際は即座に追撃を
敵の突進の脅威はよく知っているつもりです
だからこそ!こちらも同じ突進で応えましょう!
インドラ!ハイパーチャージ!
ガルムのバスターストームにより磔にされている敵機へ直線加速
機体ごと衝突させる覚悟でナイトランスによる突撃を敢行します
結果として槍が折れようと盾が砕けようとも牙が残されています
食らい付きライトニングバスターを接射します
ジュディス・ホーゼンフェルト
●塩沢家
んなっ…向こうもインドラ!?
中身を何で置き換えたのか知らないけど、どうやら見掛け倒しのハリボテじゃないっぽいね
しかも誰か乗ってる?
ああもう脳筋皇女!あんたが責任持ってなんとかしなよ!
あっちのクロアは?生きてる?
悪いけど面倒見てる余裕無いから!
ガルム!今度はいきなり止まるのは無しだよ!
ええい恐竜の皮を被ったイノシシめ…!
轢かれたら病院送りどころじゃ済まないか…!
暗殺するには随分と騎士道精神に溢れた機体を選んだね
でもこっちはまともに付き合う義理なんて無いんで!
ジャミングスモークで狙いを付け難くしてやろーっと
突撃をギリギリまで引き付けてターボイオンブースター点火
ガルムの運動性を活かした瞬間加速で横に跳んで躱す!
敵は背後!反転して吼えろガルム!
ハウリングシャウターですっ転べ!
突っ込んで来るなら近寄らせなければいいんでしょうが!
バスターストームで動きを止める!
敵を中心に周囲を弾幕で埋め尽くす感じでね
これで突進に必要な移動も加速も殺してやるってわけ
後は脳筋皇女がどうにかするでしょ!しろ!
二人の猟兵は、突如として現れたオブリビオンマシンの姿に驚愕する。
このオブリビオンマシン事件の元凶たる存在。
キャバリアをオブリビオンマシン化させる謎のユーベルコードを放つ機体、その姿をソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)とジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)は目を見開いて驚愕するしかなかった。
「んなっ……」
「『インドラ』が……!?」
特にソフィアにとっては、己の乗機とほぼ変わらぬ姿をしているオブリビオンマシンに驚愕するしかなかただろう。
逆にジュディスはまだ冷静だった。
あれがオブリビオンマシンであるというのならば、ガワだけを真似した可能性だってある。見掛け倒しだってありえる。
けれど、これまでの猟兵たちとの戦いを見ればわかる。
あれは。
「見掛け倒しのハリボテじゃないっぽいね。しかも『誰か』乗ってる?」
あんた知ってる? とジュディスは己の乗機『ガルム』に問いかける。
が、『ガルム』は首を横に振るだけだった。
「……」
ジュディスは一瞬考えた。
「んん!? あんた今首を横に振ったわね!?」
初めてだ。応えた。
その事実にジュディスは目を見開く。だが、いや、今はそれどころではない。
あの『インドラ・ナイトオブリージュ』は明らかに『クリノ・クロア』を狙っている。彼が死ねば、それだけで二国間の関係は悪化する。
恩を売ってやろうだとか、そんなことをやっている暇はまったくないことを彼女は理解していたのだろう。
「……」
「あの搭乗者は何も語るつもりは無い、とお見受けします。では」
逆にソフィアは冷静さを取り戻していく。
いや、違う。
彼女の心の中に湧き上がる者があった。
「戦いを以て己が果たすべきを果たすといたしましょう。ああ、ですが、しかし! 同じ『インドラ』と武を交えられるこの状況……昂ぶってなりません!」
「ああもう脳筋皇女! そういうんならあんたが責任もってなんとかしなよ!『クロア』、あんたは生きてる!?」
「無事です!」
「悪いけど、面倒見てる余裕ないから! 自分のことは自分でできるでしょ、男の子なんだから!」
「そういう言い方って、もっと年下に言ってくださいよ!」
「わーってるってば、『ガルム』! 今度はいきなり止まるのは無しだよ!」
三人は迫る『インドラ・ナイトオブリージュ』を前に立ちふさがる。
『クリノ・クロア』の機体はコクピットハッチが剥がされただけだ。まだ五体満足であるのは、狙われ続けながらも猟兵たちが彼を守っていたからだろう。
ならばこそ、彼もまた戦力として戦うつもりなのだろう。
シールドを構えている。
だが、あの突進は恐らくシールドの意味を為させないだろう。
「参りますよ!『インドラ』!」
ソフィアの叫びと共にイオンブースターが噴射する。
互いに同じ装備。同じ速度。
閃光の如き加速と共に一気に距離が詰まる。敵の目的はあくまでも『クリノ・クロア』の殺害。
ならばこそ、ソフィアは積極的に攻勢にでなければならないと理解する。
すでに猟兵たちの攻勢でもって『インドラ・ナイトオブリージュ』は機体が損壊し始めている。だというのに、未だあの機体の動きは精彩を欠く、ということを知らないようだった。
「ええい、恐竜の皮を被ったイノシシめ……!」
「突進能力はまだ衰えてないですよ!」
「だったらさ!」
ジュディスの瞳がユーベルコードに輝く。
ジャミングスモークが炊かれる。センサーがなければ、カメラアイによる目視しか頼れないはずだ。
敵がどのような意図で『インドラ・ナイトオブリージュ』を選んだのかは知らないが、随分と正々堂々たる立ち振舞である。
騎士道精神に溢れたものであるが、それに付き合う義理はないとばかりにジュディスは、突進の一撃をギリギリまで引き付けてターボイオンブースターを点火し、空中バク転するようにいて槍の一撃を躱すのだ。
空中で『ガルム』のアイセンサーが煌めく。
敵は真下。
背後をとっても、サブアームに懸架されたラウンドシールドで防がれる。
ならばこそ、ジュディスは理解する。
「吼えろ『ガルム』!!」
空中で放たれる『ハウリングシャウター』の一撃。
物理的な衝撃波が『インドラ・ナイトオブリージュ』のサブアームに重圧をかける。重力と衝撃波。指向性をもたせた一撃はサブアームの動きを鈍らせるのだ。
しかし、その一撃を『インドラ・ナイトオブリージュ』は突撃槍を地面に突き立て、『クリノ・クロア』が放ったパイルバンカーの必殺たる間合いの一撃を躱してみせたのだ。
「狙われてるのが突っ込むんじゃあないっての!」
「でも、次の一手、あるんでしょう!」
「そりゃ……あるに決まってんでしょうが!」
ジュディスは見据える。
突き立てられた槍を支点にぐるりとイオンブースターの加速を得て急旋回した『インドラ・ナイトオブリージュ』が『ガルム』と正対する。
来る、と思った。
一瞬で距離を詰められる。
死を幻視する。だが、ジュディスは笑ったのだ。
「突っ込んでくるんなら、近寄らせなければいいんでしょうが!」
破壊の嵐(バスターストーム)たるミサイルとビームキャノンの速射が『インドラ・ナイトオブリージュ』へと放たれる。
瞬間的な弾幕。
それは爆風を生み出し、加速のために距離を稼ぐことすら赦さない。
「後は脳筋皇女がどうにかするでしょ! しろ!」
その言葉にジュディスは、後で怖いかもしれないと思ったが、次の瞬間『インドラ』のアイセンサーが嵐のを切り裂いて残光を引いて、走り抜ける。
「『インドラ』!」
その言葉に呼応するように『インドラ』が咆哮する。
このジャミングスモークの中であっても『インドラ・ナイトオブリージュ』のイオンブースターの噴射光は見えている。
ならばこそ、ソフィアは理解していた。
あの突進能力は凄まじい。
だが、横方向への対応が難しい。己に迫る槍の切っ先をソフィアは見ただろう。再度イオンブースターでもってステップを踏むようにして躱し、反転した『インドラ・ナイトオブリージュ』の切っ先を更に躱す。
「……」
「凄まじい技量であると言えるでしょう、そして、その加速に絶えうるだけのお体をお持ちのようですね!」
ソフィアは理解する。
あの動き。
明らかに『エース』を超越している。『インドラ』を模した機体。イオンブースターの加速は常人には絶えられない。
だと言うのに、あの機体は加速と急旋回を幾度となく繰り返している。
「来ますか! ならば、応えましょう!」
「……」
踏み込む互いの機体。
突進威力は己がよく知っている。だからこそ、盾で受け流す。
ジュディスの張った弾幕のお陰でコースが見極められる。ソフィアは万全だった。
だが、『インドラ・ナイトオブリージュ』を駆る存在はソフィアの予想を上回る速度で踏み込むだけではなく、彼女の頭上を取るように機体を跳ね上げさせたのだ。
突進はブラフ。
駆け引きをされた、とソフィアは己の全身が粟立つのを感じただろう。
殺気。
これまで『クリノ・クロア』を殺すことだけを優先してきた『インドラ・ナイトオブリージュ』が確実に己に標的を変えた瞬間だった。
機体ごと突進させる覚悟を決めていた。
打ち勝てると思っていた。
結果として槍が折れようとも盾が砕かれようとも、牙が残されているとさえ思っていたのだ。
だが、それを上回られた。
それも戦いにおける駆け引きでもって。
「……なっ……!」
背後から迫る一撃。
「脳筋皇女!!」
その言葉に反応できない。それより早く、あの槍の一撃がソフィアを貫く。
次の瞬間、轟音が響き渡る。
だが、ソフィアは見ただろう。己の機体が貫かれたのではない。
ソフィアを守るようにして『クリノ・クロア』の機体がシールドに内蔵された『グレイル』のパイルバンカーと大型突撃槍を正確に……それこそ、切っ先と切っ先を正面からぶつけ互いの槍と杭とをひしゃげさせたのを。
そして、『インドラ・ナイトオブリージュ』の槍はパイルバンカーを引き裂くようにして貫きながら教官機『グレイル』の腕部を貫きながら、その頭部をもぎとっていた。
「『クロア』様……!」
「敵の狙いが俺じゃあなくなった、というのなら! 俺がすることは、今も昔もこれからもずっと変わらない!」
守るということ。
故に彼は『インドラ』と『インドラ・ナイトオブリージュ』の間に割って入ったのだ。まともな装備もない訓練機で。
『インドラ・ナイトオブリージュ』は僅かにひきつる動きを見せた瞬間『クリノ・クロア』は機体を捨て脱出する。
瞬間、機体のエネルギーインゴットが臨界を迎えて爆発を引き起こす。
「やるんなら!」
ジュディスの言葉にソフィアの瞳がユーベルコードに輝く。
「『インドラ』! 超強行突進(ハイパーチャージ)!!」
教官機の爆発に後押しされるようにして『インドラ』の機体が加速する。
その一撃が『インドラ・ナイトオブリージュ』を貫く。しかし、槍がひしゃげる。至近距離から放たれたショットガンにシールドが砕ける。
しかし、それでもソフィアはこの千載一遇たる好機を逃さない。
「食らいつきなさい! あの騎士に報いるためには!」
『インドラ・ナイトオブリージュ』の首元へと食らいついた『インドラ』の口腔より放たれたライトニングバスターの一撃が閃光と共に『インドラ・ナイトオブリージュ』を穿ち、その機体が凄まじい爆発を巻き起こし、オブリビオンマシンを現出させていた元凶を破壊霧散させるのであった――。
大成功
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