南蛮王挙って韓信を助け、武安国独り猟兵と戦う
●韓信配下・武安国
「これが、神器の――【渾沌の諸相】の力か……!」
鋼鉄の錘を手にした女は、顔一面に喜悦の笑みを貼り付けていた。その炯々たる眼差しは、空へと向いている。
空に浮かんでいるのは、月――だろうか。異様に大きく、鮮血のような明るい赤一色に染まって、毒々しい輝きを放つ球形のそれは、月と呼ぶには違和感はある。が、さりとて他に何と呼ぶべき単語も見当たらない。
「こいつは凄ぇ……今なら、どんな奴が相手だろうが負ける気がしねぇぜ!」
月を握りしめようとするかのように手を伸ばし、女は叫ぶ。力のみなぎりを示すように、その身は細かく震えている。
「さあ、いつでも来やがれ、猟兵! どいつもこいつも、このアタイがブッ潰してやらぁ!」
●危急
かつて、封神武侠界を強大な魔獣らがいたという。孟獲、祝融、木鹿大王――他諸々。それら世界を破壊しかねない『南蛮王』と呼ばれた魔獣らは、次元の渦たる『南蛮門』の奥へ追いやられ、封印されたという歴史がある。
「封神武侠界で大戦があったとき、神農兀突骨っていう大ボスがいた」
険しい顔で腕組みしつつ、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)が言う。
「まあ、アレは神農っていう上げ底があったから、デフォよりはちと強力だったかもだが……ともあれ、南蛮王ってのはどいつも兀突骨とほぼ同等の力を持ってると考えてくれ」
そんな強力無比な魔獣らに、韓信は目を付けた。南蛮門を人界に設置し、魔獣らを解放して人界を滅ぼそうと……正確にいえば、儀式魔術で『封人台』を別の世界のオブリビオン・フォーミュラの元へ送るまでの時間稼ぎをしようとしているのだ。
「完全に解放される前に南蛮王たちを門の奥に追い返し、韓信を叩く。デッドラインは、十二月の二十七日だ」
十二月二十七日までに二十度、韓信を撃破することが、韓信との最終決戦に勝つ条件となる。
「戦闘は三段階。まず、南蛮門への道を封鎖してる韓信配下のオブリビオンを討つ。奴は韓信から神器【渾沌の諸相】を受け取ってる。つまりは追加のユーベルコードだが……すまん、予知の段階じゃどんな性質のもんかまではわからん」
朱毘は悔しげにうめいた。
まあ、わからないものはどうしようもないので、ここはゴリ押しでどうにかするしかない、とのことだ。
「第二に、魔獣を門の奥へ追い返す。繰り返しになるが、魔獣は一体一体が超強力だ。どんだけ精鋭を集めようが奇跡が起きようが、殲滅は無理だ。目指すのは撃破じゃなく、追い返すことだってのを念頭に戦ってくれ」
それが済めばいよいよ本丸、韓信との戦いになる。
「韓信は『闇紅娘々』っていう、血の爪で戦うキョンシーの軍勢を率いてる。恐らく、ユーベルコードの撃ち合いじゃ相手に先手を取られる上、ユーベルコードとは別に軍勢を使った包囲殲滅攻撃を食らうことになる」
この先制攻撃をいかに凌ぐかという策は、韓信を撃破する上で大きな鍵になるだろう。
「……説明は以上だ。武運を祈る」
朱毘はそう言って、転送ゲートを開いた。
大神登良
オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良です。
このシナリオは、封神武侠界を舞台にした決戦シナリオです。これと同種の決戦シナリオを合計「20回」成功すれば、韓信大将軍の計画を阻止し、人仙を封印できるという『封人台』が他世界のオブリビオン・フォーミュラの手に渡るのを防げます。
ただし、タイムリミットは「12月29日」までです。
第一章は、神器【渾沌の諸相】の力を得たボスオブリビオンとの戦いです。
神器【渾沌の諸相】は、追加で「リプレイ執筆時まで内容を明かさない、秘密のユーベルコード(既存いずれかをアレンジ)」一種を習得するというものです。敵はOPでやたらテンション上がってますが、対策しないと詰むというほど強力なものでもないので、ゴリ押してくださって大丈夫です。
第二章は、南蛮門からあふれてきそうな南蛮王(超強力な魔獣)の軍勢を押し返すターンです。全てを打ち倒す必要はありません(というか、まず不可能)が、門の奥へと軍勢を押しやらないと、人界が滅んでしまいます。
第三章は、韓信との決戦です。個人の武勇にせよ軍を率いた戦術にせよ、極めて高い能力を持った強敵ですので、無策で突撃しても思ったような戦果は期待できないと思ってください。
韓信は、必ず先制してユーベルコードを使ってきます。このユーベルコードの先制行動に対する対策を盛り込んだプレイングには、ボーナスが付きます。
さらに、ユーベルコードとは別に、集団オブリビオンの『闇紅娘々』の大軍勢による包囲攻撃を仕掛けてきます。闇紅娘々については、血でできた長い爪でうりゃーっと斬りかかってくるやべーキョンシーだと認識できていればよく、具体的なユーベルコードがどうかというのは気にしなくてOKです。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『武安国』
|
POW : 不惜身命
自身の【片腕】を代償に、【超高温の炎】を籠めた一撃を放つ。自分にとって片腕を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 狂瀾怒濤
敵を【鉄槌による乱打】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ : 大山鳴動
自身が装備する【鉄槌を振り下ろした地面】から【大きな震動】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【千鳥足】の状態異常を与える。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠大宝寺・朱毘」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●武をもって国を安んずる者
武安国。
かつて、世が乱れた際に現れて人々を守護するといわれた瑞竜である。三国時代に勇将として顕現し、大いに悪逆無道の輩と戦ったという。
しかしオブリビオン化した後、その有り様は歪んだ。あり余る力をもってただ野放図な闘争に明け暮れる怪物と化したのである。
そして今や、韓信配下として人界に仇成そうとしていた。
「来やがったなぁ、猟兵ども!」
凶竜そのものといった咆吼が響き渡る。
「空を見な。あの月は神器【渾沌の諸相】の力でアタイが生み出した。あの月がある限り、アタイは不死身だ! この【披星戴月】の力の前に、ひれ伏しやがれ!」
赤い月の光に照らされ、禍々しい気配を纏った武安国は、鉄槌を振り上げて突進してきた。
~~~~~
【披星戴月】(【フルムーンブレイク】アレンジ)
偽物の【満月】を創造し、戦場上空に浮かべることで、【強化された身体能力】による連続攻撃能力と超再生能力を得る。
ミルディア・ディスティン(サポート)
「サポート?請われれば頑張るのにゃ!」
UDCでメカニックして生計を立ててるのにゃ。
『俺が傭兵で出撃して少し足しにしてるがな?』
※自己催眠でお人好しで好戦的な男性人格に切り替わりますがデータは変わりません。
ユーベルコードはシナリオで必要としたものをどれでも使用します。
痛いことに対する忌避感はかなり低く、また痛みに性的興奮を覚えるタイプなので、命に関わらなければ積極的に行動します。
公序良俗は理解しており、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。むしろ積極的に助ける方です。
記載の無い箇所はお任せします。よろしくおねがいします。
杉崎・まなみ(サポート)
まなみは正当派後衛職のヒロインタイプです
聖職者教育を受講中の学生ですが、特に依頼に縛りは無く、どのような依頼も受けられます
但し人並みに気持ち悪いモノ、怖いもの等は苦手で遭遇した際は多少なりとも嫌がる仕草が欲しいです
甘いモノ、可愛いモノが好きで少し天然な所があります
初対面の人でもあまり物怖じせず、状況を理解して連携を取る動きが出来ます
シリアス2~3:ギャグ7~8割くらいのノリが好みです
ただシリアスもやれますよー
UCは状況に応じて、MS様が好きなのを使ってください
その他、細かい部分はMS様にお任せします
●月下の凶竜
武安国の持つ鉄槌が狂おしいほどの熱を持ち、赤く光を放つ。光は炎となって逆巻いて鉄槌を、いや武安国の全身を覆い尽くした。
地を蹴った武安国は炎の砲弾のごときとなり、ミルディア・ディスティン(UDCの不可思議メカニック・f04581)へと吶喊する。
「にゃぁぁぁ!?」
ちょっとやそっとの痛みならば耐える自信があるミルディアだったが、その一撃は耐えられるようなものではないと、本能的に直感した。
四つん這いからのゴロゴロ連続前転で転がった次の刹那、お尻の方でドゴン! と巨大な爆発が起き、爆圧と烈風に煽られて前のめりにすっ転んだ。
「だらしないねぇ! 逃げるばっかりかい?」
武安国が哄笑しつつ鉄槌を肩に担ぎ上げた。
彼女の左腕は、肘から先が骨だけになっている。【不惜身命】の代償として失ったのだろう。ただ、【披星戴月】の再生能力のせいで、見る間に骨だけだった腕は肉を纏い、血管を巡らせ、皮膚で覆われていった。
流石に再生に掛かるラグがあるので、間を置かず連発できるというわけではないらしい。それでも、一撃必殺レベルの攻撃がコンスタントに飛んでくるのは脅威である。
「ず、ズルだにゃ! そんな簡単に腕が再生するとか!」
「はっはァ! ズルじゃねぇよ、これが神器の力だ!」
再び武安国が鉄槌を上段に振り上げる。
と、そんな彼女目がけて、横合いから何かが高速回転しながら飛来すた。
黄色い柄と赤い頭部から成る、いわゆるピコピコハンマーであった。ただ、その大きさはざっと見て二メートルにも及ぶ。
「うおっ!?」
鉄槌を切り返してピコピコハンマーを弾く。
横に逸れて飛んでいく――と思いきや、急角度で跳ねるように武安国の頭上へ飛び、高速度で落下する。
「ちぃ!」
どごっ! と。
武安国が横っ跳びした直後の地面をピコピコハンマーが叩く。見た目ではどう考えてもそれほどの重量などないはずなのだが、炸裂した地面には巨大なパスタ皿めいたクレーターが生み出された。
明らかに物理法則の埒外にあるピコピコハンマー。それは杉崎・まなみ(村娘・f00136)がユーベルコードによって生み出した超絶超常のハンマーだった。
「何だぁ!? ふざけた見た目の攻撃しやがって!」
「し、失敬な! 私は大真面目ですよ!」
武安国の鉄槌の届かない遠間からピコピコハンマーを操りつつ、まなみは反駁した。
見た目のファンシーさはさておき、高威力のハンマー攻撃を百メートルをゆうに超す射程で操るユーベルコード。はまれば一方的に攻撃して完封することも可能な、それなりに強力な技なのである。
特にこの場合、敵は近接戦がメインの武安国なので有効に働く――はずだったが。
「ハッ――この程度、どうってこたァねぇ!」
めぎり、と、空気が軋むような音。
実際に何が軋んだのかはわからないが、とにかくみなぎった力が鉄槌に加わった。転瞬、遠投でもするかのように大きな振りかぶりから、鉄槌が振り下ろされた。
鋭く弧を描いた一閃はピコピコハンマーを一瞬で粉砕し、勢いを全く衰えさせず地面に激突する。
途端、膨大なエネルギーが地面を揺らす。武安国の周囲一帯、まなみやミルディアの立つ場所に至るまで、土石が粉砕されるほどの局所的大地震が襲った。
「う、あ……!?」
足を取られたまなみが膝を突く。が、膝を突こうが腰が抜けようが【神の悪戯】の発動には不都合はない。
再びピコピコハンマーを生み出して武安国に飛ばそうとする――と、その時点で武安国は崩れた地を蹴って距離を詰めにきていた。
速い。まずい。
まなみの脳裏に二語が同時に瞬き、とっさにピコピコハンマーを盾にした刹那に鉄槌が激突する。
極大の衝撃がピコピコハンマーを波打たせ、まなみにまで届く。千鳥足の状態でその圧に耐えることはできず、後ろに吹っ飛んだ。
「ハッ、ぬるいなぁ!」
追撃の鉄槌が振りかぶられる。と。
「助けてにゃ、ご主人さま!」
ミルディアが悲鳴を上げる。
同時、ミルディアの眼前に全身甲冑の騎士らしきモノが出現した。
ただ、その手に持っているのは剣でもなし、槍でもなく、建築用の工具やら大具道具やらを無秩序にゴテゴテとくっつけたような謎のガジェットだった。強いていえば、そういった形状の戦槌といった風情。
どう使うかわからないそれを、騎士は考えられ得る最も単純な使い方をした。つまり、振り上げ、全力で叩きつける。
駆け寄ってきた騎士に、武安国はまなみへの追撃を止めて向き直らざるを得ず。
「ち――!」
振り向きざまに横薙ぎにした鉄槌をゴテゴテのガジェットに叩きつけ、一撃のもとに破壊する。
が、ごちゃついたガジェットは砕けてなお余勢を駆り、謎の刃や突起が霰めいて武安国に降り注いでズタズタに斬り裂かれた。
「あがっ!? クソ……やってくれんじゃねぇか」
血みどろになった武安国は歯ぎしりした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
他の猟兵と協力して戦うわね。
とりあえず相手に気づかれないように[迷彩]模様の衣装で[目立たない]ように隠れるところからスタートね。
そして隙を見計らって足を止めて弓矢で射撃開始。
「疾く来たれ、そして貫け」
ユーベルコード【撃ち貫く奔流】
3倍速の射撃を集中。[スナイパー]+[誘導弾]で可能な限り人体の急所を狙い撃ち。
「超再生能力があるようだけれど、再生より早く撃たれたらどうなるのかしらね?」
ちなみに近づかれそうなら[逃げ足]活かして距離を取るわ。
そしてまた射撃。敵が倒れるまで続行よ。
鳴上・冬季
「腕を代償に一撃を放つ、ですか。なるほど」
嗤う
「ならばその前に腕をなくしてしまえば良い。そういうことでしょう?」
嗤う
自分は風火輪
黄巾力士は飛来椅で上空から戦場俯瞰
黄巾力士は敵に制圧射撃し行動阻害
自分は雷公鞭振り回し雷撃とUC織り交ぜ敵の腕を狙い攻撃
腕を爆破して腕を代償とした高威力攻撃の封殺を狙う
腕が何本も生え変わるようなら首狙い頭部爆破に切り替える
敵の攻撃は黄巾力士はオーラ防御
自分は仙術+功夫で縮地(短距離転移)して回避
「尾だけでなく腕も再生するなら頭を潰した方が早いでしょう?」
「頭部を高速再生し続けて同じものが出来るわけがない。脳は繊細なのです。制御が甘くなれば行き着くのは只の木偶です」
嗤う
●猛攻×猛攻
武安国の【不惜身命】は、ある種の呪詛ともいえるだろう。
生前、天下無双とも称された呂布との一騎打ちに及んだ武安国は、片腕を斬り落とされて敗北した。その史実がオブリビオン化した今の彼女にも反映されており、超強力な一撃を放てるがその代償に片腕が必要であるというユーベルコードを得るに至っているのだ。
「……つまり、発動の前に腕を破壊してしまえば、使えないということですね」
両足に風火輪を装備して空に浮かぶ鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、眼下に立つ武安国に向かって、勝ち誇ったようにそう言った。
空に浮かんでいるのは冬季だけではない。人に似たシルエットをした鋼鉄の塊――黄巾力士もそうだ。
それを見上げる格好になっている武安国は、獣のように獰猛な笑みを浮かべた。
「その通りだよ。頭イイな、お前」
トントン、と己のこめかみを指で叩きつつ、武安国は言う。
「で? それがわかったから何だ?」
「実行するまでです。当然でしょう?」
冬季は両腕を大きく広げた。
その途端、彼の十指からレモンイエローの光線が発されて宙を奔り、何重もの幾何学模様やら梵字めいた何かやらが複雑に絡み合った、円形の陣を描き出す。
その陣から、雨あられのごとく稲妻が降り注いだ。さらには黄巾力士の頭部、戦車の砲塔めいた形状のそれも火を吐く。恐らくは戦車用砲弾、榴弾の類だろう。稲妻ほどではないもののかなりの弾幕を生み出している。
標的が一体のみであることを思えば、過剰ともいえる火力である。一帯が草一本も生えない焦土に変わるほどの。
だというのに、武安国の表情は笑みの形のまま変わらない。
「そりゃいい考えだ――お前程度にゃ不可能だってこと以外はな!」
武安国は眼光を光らせ、鉄槌を超速度で振り回して己の身に降りかかる稲妻や砲弾のことごとくを粉砕していった。
顔をひくつかせつつ、冬季は稲妻の弾幕を張る手は休めない。
後から後から殺到する雷撃を、それでも武安国は鉄槌の乱打でもって凌ぐ。ただ、単純に弾幕の濃密さに押されるような形にはなっており、またそれに加えて上空という有利位置に陣取っているせいもあって、武安国は大きなユーベルコードを放てるだけの隙は見出せないでいるようだ。
互いに決定打を欠いた膠着状態。
だがそこに、稲妻の豪雨の隙間を縫うように彗星のごとき超速度で何かが飛び、武安国へと迫った。
「ッ!?」
彗星が心臓を貫く寸前、鉄槌の柄尻が鋭く振り落とされて先端を弾く。脇腹の肉が浅く削がれ、致命傷ではないものの小さからぬ傷が刻まれた。
「何だ?「誰だ?「どこからだ?」――複数の疑問を同時に胸中に発生させつつ、武安国は素早く周囲を見回した。
その次の刹那には、緩い弧を描いた彗星が後頭部に迫っている。
肌を粟立たせつつ、武安国は鉄槌を切り返して彗星に触れさせ、軌道を逸らす。
黄巾力士の砲撃。否、手応えはそれより重い。彗星の逸れた先を目で追うと、それは矢だった。
「射られた――他の猟兵か!?」
武安国が視線を走らせるが、しかし、見つけられない。
見つかるはずがない。
周囲一帯は雷撃と砲撃によって視界はやかましく騒々しく埋め尽くされており、そうでなかったとしても十二分な距離を取りつつ迷彩を施した装備を着込んだ射手――ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)を見つけ出すのは、至難の業だ。
「……超再生能力を上回る速度で射抜くつもりだったけど、なかなか好きに当てさせてくれないわね」
一瞬の間も置かずに次の矢をつがえつつ、ヴィオレッタは口の中だけに響くような小声でつぶやいた。神器の効果もあるのか、武安国の鉄槌をさばく速度と精密さは恐るべきものであって、容易には矢が届かない。
「まあ、だったら当たるまで撃ちまくるまでだわ。疾く来たれ、そして貫け」
どどどっ、と一息に三条の彗星が飛ぶ。
武安国に余力があるわけでもない。【撃ち貫く奔流(フラッシュフロッド・カレント)】の矢の速度は、目で追えないほどではないが、誘導弾仕様ゆえのたわむような軌道が見切りを困難にしていた。そして、それがまた射手の位置が特定されづらい要因にもなっている。
「ぐっ!?」
かわしそこねた矢が武安国の左肘を刺し貫く。
「ち――持って行かれるくらいなら!」
武安国がギロリと上空を睨むや、その左肩から先がポンと弾けるように赤の粒へと変じ、逆巻く。逆巻いて炎の繭となり、武安国を包む。
「弓兵は後だ! まずはテメェから殺す!」
宣言は冬季に向けたものだった。地対空ミサイルめいて発射された炎塊――武安国自身が超速で直進していく。
「っ――!」
雷の雨が炎塊を叩いて迎撃するが、勢いは死なない。
激突――の寸前、危ういところで冬季は仙力を爆発させた超速移動で炎の体当たりを回避する。
次の瞬間に爆裂した猛炎が無造作に暴れ狂い、レモンイエローの雷陣を見事に木っ端微塵にした――といって、武安国の狙いはそんなものではなかったわけだが。
「クソがァ!」
喉がねじくれたような咆吼を上げる武安国は、雷の弾幕を強行突破したせいだろう、全身が見るも痛ましいズタズタぶりである。その顔に、余裕を示すような笑みは最早ない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
煙草・火花
不死身の力は確かに脅威ではありますが……如何なる敵であろうと打ち崩せぬ道理はなし
學徒兵の一人として必ずやこの世界を守護してみせるであります!
その片腕の一撃……本来はその代償が大きいが故の威力でございましょう
であれば、再生能力を得た今、その威力は彼奴自身が思っているよりも落ちている筈
その隙を突かせてもらうであります!
あえて、ギリギリまで力を使わずに軍刀を振るい、敵の攻撃を誘うであります
本来よりも落ちた威力、そしてあの慢心……勝てると踏めばゴリ押しで叩き潰そうとしてくる筈
狙いはその瞬間……抜刀!
爆発によって一気に速度と威力を上げた一閃を御見舞い!
再生するならばそれよりも速く、それだけであります
●代償
煙草・火花(ゴシップモダンガァル・f22624)は、極めて冷静に武安国を観察していた。
恐らく気性は猪突猛進型。韓信から与えられた神器の力を盲信しすぎており、さほどの冷静さや慎重さはない。もちろん、不死身を自称するほどの超再生能力を得ているのは実際脅威ではあるが。
しかし、その再生能力は恐るべきであると同時、武安国の足枷にもなっていると、火花は看破していた。
武安国は片腕を代償に高威力の一撃を放つユーベルコードを操るが、それが高威力たり得るのは、代償の大きさに比例するという呪詛が働くからだ。失うのが腕一本というリスキーさを思えば、本来であればいざという時の取っておきなのだろう。
それが今、凄まじい再生能力を得たことで比較的気楽に連発できるようになっている。つまり、代償としての質が低くなっているということなので、呪詛の性質上、ユーベルコードの威力は本来のそれよりも大幅に低下している。
無論、だからといって気軽に受け止められるほど弱くなっているわけはないが、付け入る隙になっているには違いない。
「がああァァ!」
武安国の全身に刻まれた傷から血飛沫が舞い、舞った端から炎と化し、化した端からうねり、包み、逆立つ。
鉄槌というよりは猛火の剛斧となったそれを引き絞り、全霊でもって打ち下ろす。大抵の存在を一瞬で消し炭にするか、消し炭さえ残さず消滅させるであろう一撃――だが。
(強引に叩き潰しにかかる――読み通りであります!)
ぎりぎりのところで一撃を回避した火花は、彼女を包む耐熱式外套は、灼かれることはなかった。
同じ刹那に抜き放たれた火花の軍刀が、武安国の炎に触れた瞬間にガス爆発を起こし、赤黒い火球と暴圧を生み出す。
「――!?」
片腕を失っている上に力任せに吶喊してきたところでカウンターを喰らったのだ。体勢を崩さないわけがない。
畢竟、それは火花の【桜火ノ型 弐式 号砲(オウカノカタ・ニシキ・ゴウホウ)】にとって餌食だった。爆発を味方にして神速を得た軍刀が踊るように奔り、武安国の首を驚くほどあっさりと刎ね飛ばした。
「ばっ――」
驚愕に見開かれた武安国の首は、己の生んだ炎に呑まれるようにして、あっという間に炭となり灰となって、消えた。
「……うげ、っふ」
極限の集中、緊張状態から解放された火花を酩酊感が襲う。だが、そんな無防備な背中を殴りつけるような敵は、今はない。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『『南蛮王』を撃退せよ』
|
POW : 苛烈に攻め立て、南蛮王の軍勢を後退させる
SPD : 超強大な魔獣の僅かな隙や弱点を突く
WIZ : 計略で敵の動きを誘導する
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アトシュ・スカーレット(サポート)
性格
悪ガキから少し成長したが、やっぱり戦うのは好き
大人に見られるように見た目的にも精神的にも背伸びしている
目の前で助けられる人がいるなら積極的に救おうとする
口調は「〜だな。」など男性的
戦闘
【呪詛(腐敗)】と「棘」を組み合わせ、万物を強引に腐敗させる方法をついに編み出した
前衛も後衛もやれる万能型だが、前衛の方が好き
複数の武器を同時に操ることも可能
高速戦闘も力任せの戦闘も状況に応じて使い分ける
(装備していれば)キャバリアにも対応可
光や聖属性は使えません
非戦闘
聞き耳などを駆使した情報収集を中心とする
化術で動物に化けて偵察することも
風薙・澪(サポート)
穏やかで柔和な少女
だるい、めんどくさいと言いつつも、オブリビオン討伐には顔を出す
ただひとたびやると決めると、行動は早く無駄も少ない
物腰は柔らかで、だらけていなければ優等生に見える
調査や探索は、自身の人当たりのよさそうな容姿を生かして、聞き込みにまわることが多い。
UDC出身だがアックス&ウィザーズにいる精霊を扱う人間に師事しており、
状況が許せば「精霊に聞く」ようなことも行う
●南蛮門前の死闘
南蛮門は『門』と名が付いているものの、建造物としての門のような形状ではなかった。様々な食材と調味料を叩き込んでかき混ぜている最中のスープのような、どろどろと渦巻く空間の歪み。それが南蛮門であった。
その歪みから、四本の巨大な黒蛇の首ががヌッとせり出してきた。四つの口からは、赤、青、黄、緑の液体――恐らく、それぞれ性質の異なる毒だろう――があふれ出ていた。
全身が見えてくると、四本の首は胸あるいは腹のあたりで合流しており、胴体は一本に纏まっているのがわかる。つまり、四本の首は一体の魔獣のものだということだ。
その四つ首の大蛇の魔獣は朶思大王と名乗った。南蛮の諸王の中の一王である。
「さて……どう戦ったもんかね」
アトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)の涼やかに整った顔が、険しく歪んでいた。
南蛮王は各々が兀突骨と同等の力量を持つ強力無比な怪物だとは、グリモアベースで耳にタコができそうなほどに聞かされた。そうでなかったとしても、眼前の敵が尋常の力量でないのは気配で知れる。
これが複数――というか、群れが作れるほどに大量に現れるとなれば、なるほど、全てを討ち平らげるなど不可能と念押しされるのも、うなずけた。
「あれって多分、毒蛇よね? 万が一かまれたら、めんどくさいことになりそうだわ」
げんなりと顔を曇らせながら、風薙・澪(ウィザードウォーリア・f17869)が言う。
「あんまり近寄りたくないわ~」
「同感だな」
アトシュはうなずき、左右の手に黒白の大型拳銃を握りしめた。
「あの牙の届かんところから嫌がらせをするとしよう――風よ、オレを空に導いてくれ」
たん、と地を蹴って身を躍らせたアトシュは、宙にあるうちに【Krarvint(クラールヴィント)】の魔法陣を足元へ生み出し、それを蹴ってさらに高く跳躍する。
そして朶思大王の四つの顔面目がけ、両手の大型拳銃から一瞬のうちに幾発もの銃弾を撃ち出す。大口径に見合った高威力の銃弾――ではあるが、朶思大王の巨体と比してしまうと、山に向かって石を投げているような様相だった。
銃弾が朶思大王の表皮に弾かれ、刹那の火花を残しつつ明後日へと飛んでいく。さしたダメージもなさげではあったが、朶思大王はわずらわしげに鎌首を返すなり、カッと口を開いて毒液を飛ばしてきた。
「うわ!?」
アトシュは素早い空中連続ジャンプで、四色の毒液を回避する。
「何だよ、離れてても結構危ねえんじゃん……油断できねえな」
毒液を外した朶思大王がフシャーッと悔しげな威嚇音を発する。
そんな中、敵の注意が外れた澪は、その隙を逃さずに全身全霊の魔力を練り上げていた。
「我が喚ぶは魔狼の顎。凍てつく鋭き牙よ――」
ぎぎっ! と澪の周囲、空間そのものが軋むような音が鳴る。彼女の頭上から両脇にかけて、何本もの極太の氷柱が半円を描いて配置される。それらが魔狼の牙だとするなら上顎相当か。
「敵を穿ち、貫け!」
号令に従うように【氷霜槍(フロスト・ジャヴェリン)】が朶思大王の胴体、四つ首の合流ポイントあたりに殺到した。
蛇は背中側より腹側の皮が柔らかい、とは常識の範疇で成立する話だが、氷の牙が突き刺さった朶思大王の腹には見る間に傷が刻まれていく。
ただし、浅い。数こそ多いが、深さは皮膚一枚分といったところだろうか。
「うっへえ、堅いわね……でも、足は止めさせてもらうわよ」
朶思大王の腹に当たった端から砕けて消えゆくかに見えた氷だが、しかし、砕けてもなおそれらは霜のごとくにへばりついていく。初めうっすらとした霜は、やがて氷の膜となり、さらには壁と呼べるほどの厚みを生み出していく。
朶思大王の四つ首が、とまどうようにうごめいた。己の体にへばりついた氷壁が地面を引きずり、また、ろくに身をよじることさえもできずにいる。
動きが鈍った朶思大王に、まだ連続ジャンプにて宙にあるアトシュが銃撃を加えていく。
「強いし堅いんだな、お前――だからって、どこをどう叩いても傷一つ付かないってわけじゃねえんだろうが!」
シャア――!
毒液を吐き出そうと朶思大王が口を開けたところ、その口の中に銃弾が炸裂した。赤い毒液に混じって、鮮血の赤が花弁のごとくに散りばめられる。
鉄が裂かれるような悲鳴を上げる朶思大王の顔面に、さらに澪の放った氷柱が襲い掛かる。途端、緑の毒液をこぼす口が氷まみれとなり、開くことのできない状態になってしまう。
――――!
しばらく四本の首をもつれ合わせるようにジタバタともがき苦しんだ朶思大王は、次第にじりじりと南蛮門の方へ後退していった。
「……やる気をなくしてくれたみたいだぜ」
「ひとまずは上手く行ったってことね」
アトシュと澪はお互いに目を見合わせつつ、安堵の吐息をもらした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
バルタン・ノーヴェ
全員リクエストによる、各シナリオへの救援プレイングです。
長らく滞っていたり人手が足りてない時など、ご自由にご利用ください。
台詞のアレンジ、行動のアドリブ、他猟兵との連携歓迎。自作PBWも採用歓迎です。
ユーベルコードも指定外の、公開中から適当なものを使用してもらって構いません。
HAHAHA!
グリモア猟兵殿の要請に応じて参上デース!
お困りのようデスネー? ドントウォーリー! ワタシが手伝いマスヨー!
アタック、ディフェンス、他の方への支援! おまかせくだサーイ!
白兵戦、射撃戦、集団戦もボス戦もオーライ!
冒険の踏破や日常への奉仕活動も得意であります!
臨機応変に対処可能デース、よろしくお願いしマース!
●赫炎
美しいヘッドドレスに、純白のエプロンをあしらったドレス。誰が見てもメイドさんといった装束――ただし、背中に金属製のタンクを背負い、それからチューブでつながった筒を手に持っているというわけのわからなさを除けば。
「強力な敵の団体さんみたいデスネー? ならば人手は多い方がいいでショウ! お手伝いしマスヨー!」
状況の割に快活な声を上げ、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は金属筒を腰だめに構えた。
「六式武装展開、炎の番!」
筒先から【火炎放射器(フランメヴェアファー)】の炎が吐き出される。
メカニック的なことでいえば、可燃性の液体を噴射しつつ発火することで、炎を鞭のごとくに横に伸ばして周囲を焼き払うというもの。が、これはユーベルコードに由来する超常の炎であって、ただ液体をまくような形では実現不可能な威力と挙動をする。
バルタンの意思を反映して荒ぶる炎は、南蛮門の周囲を取り囲むように壁を形成した。
「大体の獣は炎を怖がるものと相場が決まってマース! まあ、トンデモな魔獣に通用する理屈ではないデショーが、それでも楽には通り抜けられないはずデース!」
天を焦がさんばかりの凄まじい炎の防壁。通常の獣などはいうに及ばず、大抵のオブリビオンでさえも触れた端から消し炭になることだろう。
しかし――いや、やはりというべきか――強力無比なる南蛮王らの中には、その炎をも押し通らんとするものはあった。
黒白のまだら模様。全身を太く長い棘でびっしりと武装し、さらに口には銀色の鋭い牙が生えそろう。大きなヤマアラシといった風情の魔獣である。
その魔獣は雍闓と名乗った。ダメージがないはずはないが、炎に巻かれつつも果敢に突っ切ろうとする。
「む? 好きにはさせマセン!」
雍闓の眼前を覆うように、バルタンは重点的に炎をまいた。
雍闓は一瞬たじろいだような様子を見せたが、ブルンと体を震わせるや、体の棘を散弾銃よろしく放ってバルタンを攻撃する。
「――おっと!」
棘が当たるより先に、鋼鉄の鍋を盾にして弾いた。
「その程度で怯むワタシではありマセン。さあ、炎のおかわりはまだまだありマスヨー!」
鍋の盾の隙から覗いた筒先が、再び炎を放つ。
べしゃん! ごぉぅ!
雍闓の鼻の頭に直撃した可燃液が燃え盛り、さしもの魔獣も慌てたような様子で後退していった。
倒せはしなかったものの、魔獣一体を南蛮門の奥へ追いやったのだ。まず充分な戦果であろう。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
「これを放置したら、師に何年の奉仕を申し付けられることか。困ったものです」
嗤う
「死者は死者のまま引きこもって居ればよろしかろうに。鏖殺せよ、黄巾力士火行軍・改」
・金磚と砲頭から制圧射撃16体
・金磚と砲頭から徹甲炸裂焼夷弾連射し敵を鎧無視・無差別攻撃で蹂躙する16体
・上記2班をオーラ防御で庇う16体
の48体を1隊として3隊計144体、金磚と飛来椅を装備し飛行する黄巾力士召喚
自分は風火輪
普段連れ歩く黄巾力士も飛来椅で飛行
召喚黄巾力士よりも高々度から戦場俯瞰
黄巾力士にオーラ防御で庇わせながら自分は竜脈使い全黄巾力士の能力値底上げ
継戦能力高めつつ隊の損耗により順次隊入替
召喚黄巾力士又は敵全滅迄戦闘続行
●九死
「困ったものです。これを放置したら、師に何年の奉仕を……」
笑みの形に口を歪めつつ、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は首を横に振った。
南蛮王の群れが流出するのを放置すれば人界が滅ぶ。その話はグリモアベースですでにしていた。
封神武侠界は人界と仙界の両輪で成り立つ世界である。片輪で走る車がないように、人界が滅んでしまえば封神武侠界全体も滅ぶ。つまり、誰に何年分の奉仕を命じられるか、などという呑気極まることを言っていられる状況ではないのだ。
「……私の仙術、その精一杯を発揮しましょう。鏖殺せよ、黄巾力士火行軍」
風火輪で空中に浮かぶ冬季の周囲には、飛来椅装備の黄巾力士が群れを作っている。
黄巾力士は大きく三つの隊に分かれ、三方――正面、左翼、右翼から、南蛮門へ砲撃を敢行する。隊の中でさらに班分けしており、直接に魔獣を狙って砲撃する班、足止めを狙う制圧射撃を行う班がある。さらに、シールドを張って隊の防御に徹する班もある。
冬季のできる範囲で最も効率的だと考えた戦い方がそれだった。手数はあり、広範囲もカバーできる。猟兵一人で生み出せる分となれば限られはするが、火力も最大値を発揮している。
そんな砲撃の雨の中、全身を鎖帷子めいた鱗でびっしりと覆った、巨大なヒグマとアルマジロを合体させたような魔獣が進み出てくる。制圧射撃に叩かれるのも意に介さず、貫通力に優れた砲弾さえ弾きながら進むその魔獣は、劉冑と名乗った。
「――っ!」
冬季が弾幕を突破した劉冑の姿を認めたときには、劉冑は前屈みに体を丸めてボールのようなシルエットになっていた。そして直後、そのままの格好でボン! と飛び跳ねつつ正面の黄巾力士の隊へと体当たりしてくる。
黄巾力士のシールドは決して脆くはないが、劉冑の装甲、また跳躍の勢いや重量もまた凄まじい。
ばぎゃっ! と分厚い陶器が割れるような音が鳴る。少しの間の拮抗の後、黄巾力士らのシールドは破壊された。さらに間を置かず躍りかかった劉冑により、黄巾力士自体も破壊される。
正面の隊は砲撃を止め、シールドを張りつつ前へ出た。
「まずい……集中攻撃を!」
右翼、左翼の黄巾力士は広範囲への弾幕を中断し、劉冑へと挟み撃ちの砲撃を行った。
劉冑は気にも留めずにシールドを張った黄巾力士を蹴散らしていく――が、流石に集中攻撃ともなれば、それまでとは比較にならないほど苛烈な火力となる。
貫通力と爆発力に圧され、堅牢無比な劉冑の装甲が削れていく。
――――!
趨勢悪しと見たのだろう、劉冑の次の行動は素早かった。つまり、ボール状に丸まるなり、ゴロゴロと一気に南蛮門へと遁走する。
「……鏖殺とはいきませんでしたが、目的は果たせましたか」
紙一重のところで包囲網を突破されずに済み、冬季は胸をなで下ろした。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『韓信大将軍』
|
POW : 楽浪郡勇士集結
レベル×1体の【神器で武装した楽浪郡の勇士(異世界人)】を召喚する。[神器で武装した楽浪郡の勇士(異世界人)]は【他世界】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 南蛮魔獣集結
自身の【召喚した、南蛮界の魔獣の軍勢】に【背水の陣】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
WIZ : 三国武将集結
【偉大なる三国時代の武将達】の霊を召喚する。これは【生前に得意とした武器】や【韓信大将軍に与えられた『神器』】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:瑞木いとせ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●背水
衣装は夜のように黒く、肌もまた闇のように昏い。
その一方、目と爪は火のような赤さがあり、かつ剣呑な輝きがある。爪は脇差しほどの長さがあり、いかにも痛そうに鋭く尖っている。
闇紅娘々。血に狂う邪仙キョンシーたる彼女たちは、しかし、今は恐ろしく整然と隊列を組んで並んでいる。
中心に立つ男――天下に並ぶ者なしと称された名将中の名将、韓信の指揮下にあるゆえである。
「……追い詰められたか、この韓信ともあろう者が。いや、意外とは言うまい。この程度のことはしてのけよう」
巨大な片刃刀を肩に担ぎ上げつつ、韓信は双眸をすぼめて猟兵たちを睨み据えた。
「だが、わかっているだろう。私が健在であるうちは、貴様らがどれほどの戦果を上げようと無意味だということを。武安国を討ち、南蛮諸王を退けた武が、この国士無双に通じるか……試してみるがいい」
さっと韓信が手を挙げると同時、居並ぶ闇紅娘々の眼光が鋭く怪しく輝いた。
荒珠・檬果(サポート)
『今日も元気に張り切って!!』
三国志大好きなシャーマンズゴースト。
七色竜珠の赤は紅紋薙刀、青は蒼紋退魔刀、緑は緑玉鳥になりますし、全て合成すると白日珠になります。
白日珠は可変武器ですので、その場に似合った、もしくはUCで指定した形になります。
詠唱文は設定されていませんが、バトルキャラクターズを使うときには『カモン!バトルキャラクターズ!』と言います。言わなくても可。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
シェリー・クサナギ(サポート)
「美しくない世界なんて、生きるに値しないわ」
◆口調
・一人称はワタシ、二人称はアナタ
・女性的な口調
◆性質・特技
・血液の形状を自在に操作する能力を保有する
・可愛いものには目がない
◆行動傾向
・暴力と砂嵐が支配する狂気の世界において、美しいものと可愛いものこそが人の心を救うと信じ、それらを護るために戦ってきた歴戦の奪還者です。社会通念や秩序に囚われることなく、独自の価値観を重んじます(混沌/中庸)
・彼にとって『美しさ』は外見だけでなく、義侠心や献身的な姿勢、逞しく生きようとする精神の高貴さも含まれます。これを持つものは敵であっても尊重します(が、世界を脅かす存在は『美しくない』ので結局戦います)
●尚武
「英傑よ、我が元に来い!」
韓信の号令と同時、韓信の足元の地面がどろりと波打った。
灰色に蠢く空間の水面は、一呼吸の後に真紅に輝き出す。そしてせり上がるように、三人の将が現れた。
三人は三人とも赤い頭巾を被っており、さらには三人とも片刃刀を右手に持っていた。刀はどれも幅広で長さもあり、いかにも重そうな代物である――というか、三人の持つそれらは、長さといい幅といい鍔や柄の意匠といい、全てが全く同じであった。
「赤い頭巾……同じデザインの刀……三人……まさか!?」
「知ってるの?」
驚いたように――恐怖や焦りに由来するような驚きではなく、どちらかといえば歓喜に近いニュアンスに見えたが――荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)が叫んだところを、シェリー・クサナギ(荒野に咲く一輪の花・f35117)が尋ねてくる。
「赤い頭巾といえば呉の君主である孫堅が愛用していた頭巾が赤だったという話があるんですよ。そう考えると恐らくあの刀は古錠刀ではないかと思われます。孫呉三代の君主に受け継がれていったといういわば家宝のようなものでして」
熱のこもった早口で檬果が話すのを、シェリーは目をぱちくりさせつつ聞く。ただ、その一瞬のうちに内容を全把握するのは流石に無理があった。
「つまり……ええと、どういうことかしら?」
「あれは同じデザインの刀が三本あるのではなく、同一の刀なんです。三人が三人とも、君主であった時代の姿で召喚されているから、あんな風になってるだけで。つまり、彼らは孫呉三代の君主たち……孫堅、孫策、孫権の三人です!」
三国時代、大陸の南東側を支配した呉は、孫氏によって統治されていたために孫呉とも呼ばれる。孫氏は、兵法家の元祖ともいうべき孫武の末裔を名乗っており、勇猛果敢さにおいては他二国の君主と比べて頭一つ抜けていると称していい。
そんな三人が何やら一斉に鋭く声を発するや否や、闇紅娘々の軍勢が整然と鋒矢陣を形成し、一気呵成に攻め寄せてくる。
「わぁ!?」
軍勢それ自体が一本の剛槍となったかのような猛撃。
両者は大急ぎで後退し、大盾を構えた檬果のキャバリア、そして防弾仕様のシェリーのトラックの陰へと身を躍らせた。
どぎゃぁっ! と耳障りな破砕音が響き、それでも盾やトラックが大軍勢の一斉突撃を受けてなお消し飛ばなかったのは、僥倖だろう。
それでもどやどやと回り込んできたりキャバリアを乗り越えてくる闇紅娘々はあるわけで、それに対して檬果は大薙刀を振り回し、シェリーはアサルトライフルを乱射して対処しなければならない。
銃声や剣戟の音に負けぬよう、大声でもってシェリーが怒鳴る。
「彼らについて詳しいみたいだけど、だったら弱点は知らないかしら!?」
「い、一応……孫堅や孫策は勇猛でしたが、君主らしからず軽はずみに最前線に出張るものだから早死にしたと評価されてます!」
「それは……今この状況だと、弱点になるのかしらねぇ……?」
シェリーがぼやいた刹那、さっ、と影が差す。
二人が反射的に頭上に目をやると、そこにはEP風火輪で空を飛びつつ古錠刀を振りかぶる三君主の姿があった。
「どぇっ!?」
斬撃、あるいは刺突。
雷光の乱舞のような猛攻を、檬果とシェリーはすっ転がるようにして回避した。
「――アナタらをノックするのは厳しそうね。だったら!」
シェリーは転がりつつ銃を構え、すぐ横に迫っていた闇紅娘々に銃弾を叩き込む。
ただの銃弾ではない。【血弾注入(ブラッド・ブレット・インジェクション)】の弾だ。
「ガハッ……!」
「――ハッ!?」
胸やら手足やらを撃たれた闇紅娘々らが、ぐねりと身をよじらせる。ナノマシン入りの血液が彼女たちを操作し、意思とは無関係に動かす。そして彼女たちは三君主へと歪なタックルで襲い掛かった。
「――……!」
操られたのは十人弱ほど。彼女たちだけで三君主をどうにかできるほどの戦闘力はない。それでもそれまで統率の取れていた隊伍を乱し、隙を作るくらいのことはできる。
つまり、反撃の端緒をつかんで引き寄せるくらいのことは。
「そっちが呉の君主を使うなら――こっちは、彼らを使います!」
叫ぶ檬果の周囲で、星が弾けて虹色の光を放つ。その光の中から五人、ソーシャルゲームのレアカードから抜け出したような美丈夫たちが、煌びやかな衣装を纏って出現した。
【巻、分けられようと(ジダイヘツヅクバトンハイズコ)】によって出現したのは、周瑜、魯粛、呂蒙、陸遜という、呉で大都督――最高軍事責任者を勤めた者らと、呂蒙が後継に指名していたはずの朱然の五将。封神武侠界にて封じられた英傑らとは異なる世界線の、いわばキャラクターたちだ。
五将は剣や槍、戟などの武装を構え、三君主へと殺到した。
「――……!?」
操られた闇紅娘々らを振りほどき、斬り払い、五人に向き直った時には刃はすでに眼前である。
古錠刀の切り返しは間に合わず、孫堅の胸を槍が貫き、孫策の首に戟が叩きつけられ、孫権の肩を剣が斬り裂く。
「やった!」
と、猟兵二人が快哉を上げた次の瞬間、後続の闇紅娘々の軍勢がどやどやと吶喊してくる。
「おわぁ!」
「一旦退がるわよ!」
シェリーの弾幕と五将を壁にしつつ、檬果とシェリーは後退していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
他の猟兵たちと協力して戦うわね。
さて、まずは先制攻撃に対処しないと…と言ってもこちらは[迷彩]衣装で[目立たない]ように隠れていること。
発見されなければ先制攻撃は難しいでしょう?
そして他の人たちと敵の交戦が始まったら、気づかれないように弓を空へ。
矢を持ちて天を穿つ。
「降り注げ、友に癒しを、敵には滅びを」
ユーベルコード【ヤヌスの矢】
戦場全体の敵を[除霊]+[浄化]付きの魔力の矢で一斉攻撃。味方は回復効果の矢を。
敵に気づかれたら[逃げ足]を活かして距離を取りまた潜伏。
そして射撃。
敵が擦り切れるまで続けてあげるわね。
「国士無双…ねえ、あくまでその国の中で最強、というだけでしょう?」
猟兵は国外、よね?
アスハ・ゾート(サポート)
…ラスボスの魔女×UDCエージェント、28歳の女だよ。
…普段の口調は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」。
…時々「神のような(私、あなた、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」だね。
…普段の口調の時は全ての台詞をひらがな表記にしてね。
…基本的に眠たげ。
…敵が攻撃してきたとしてもどうでも良さげに振舞うよ。
…他者には見えないナニカが認識できていて、会話する時もあるね。
…ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動するね。他の猟兵に迷惑をかける行為はしないよ。
…絡みOK、NGなし。
…後はおまかせするよ。よろしくおねがいするね。
●南寇
全体は黒いが、首回りと胸回り、鼻回りに黄金色の体毛の生えた大熊――その魔獣は金環三結と名乗った。
湾曲刀のような二本の大牙を備えた、赤茶色の剛毛で全身を覆った巨大な猪――その魔獣は阿会喃と名乗った。
異様な太さの四本脚と、ドリルのような光沢のある角を備えた馬――その魔獣は董荼那と名乗った。
「――さて」
南蛮の魔獣らを召喚した韓信は、周囲に目をやった。
圧倒的実力を持つ戦術家である韓信は、どれほどの猟兵を前にしても先制してユーベルコードを行使できる。【南蛮魔獣集結】であれば、南蛮王らを召喚して陣形を整え、その攻撃力を数倍にまで引き上げる。
と、ここまでである。引き上がった莫大なる攻撃力でもって攻撃を仕掛けるのには、もうワンアクション分の手間が要る。
その猶予の間に、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は土色のマントをかぶって気配を絶ちつつ、移動していた。
見つからぬなら先制の『攻撃』は避けられる、という心算がヴィオレッタにはあった。問題は彼女の隠形の術が韓信の目をくらませるほどの水準にあるかだが、こればかりはやってみないとわからない。
韓信の視線は――果たして、定まらなかった。
しかし。
「私の耳目がごまかされたとて、どうということはない。我が手は広く、この戦場を押し包むぞ」
その言葉が号令であったかのように、闇紅娘々が整然と動く。横に広い鶴翼陣――ただし、広いといって疎ではなく、隣り合う闇紅娘々同士で足並みを揃えつつの行軍。
手というよりは、網だ。小魚一匹、エビ一匹さえも逃すまいという緻密なる網が、ヴィオレッタのいそうなあたり一帯をさらいつくそうとしている。
「……っ!」
網から逃れるべく、ヴィオレッタは静かに走る。あまりに急いで目立ってしまえば本末転倒。逃げそびれてもまた無意味。
半ば詰んだような状況にヴィオレッタは焦れそうになる。いっそ、見つかるのを覚悟で矢を放ってしまった方がいいかもしれない。そんな考えが脳裏をかすめ、呼吸二つか三つの間を経た、その時。
ずずず、という地鳴りが響く。韓信と闇紅娘々たち、南蛮王たち、ついてヴィオレッタの目も音の鳴る方へと向いた。
異変は、見た瞬間に知れる。津波だ。高さは三メートル、いや五メートルはあるだろうか。海どころか川さえなかったはずの陸地に、唐突にそれは出現していた。
「……わたしは、こういうができるのよ」
ささやくようなアスハ・ゾート(万物知らぬ有害なる魔女・f34478)の声は津波にかき消されて、他の誰にも聞こえない。しかし、それが彼女の繰り出した【わたしはしぜんをあやつるもの(ネイチャー)】によって生み出された猛威であるという事実には変わりはない。
津波の進路にある闇紅娘々らは、迫り来る巨大な水壁に対して果敢にも血爪の斬撃を浴びせていくが、それは儚き蟷螂の斧である。わずかな拮抗さえ許されず、呑まれ、砕かれ、押し潰されていく。
津波はそのまま韓信のいる場所へと押し寄せていく。必然、彼の周囲にある南蛮王たちももろともに呑み込まれそうになる。
「――なるほど。だが……」
韓信は揺るがず、さっと腕を前に掲げた。
同時、金環三結が両腕をしならせて爪撃を放ち、阿会喃が牙を奮い立たせて突進し、董荼那が角を前にして疾駆する。
それらは超常の衝撃波をもって津波に激突した。韓信の力によって底上げされていたその威力たるや凄まじく、闇紅娘々の大軍を蹂躙してなお勢を失わなかった津波を一瞬にして粉砕し、脆弱な水飛沫の群れへと変えてしまった。
「背水の南蛮王らを破るには不足だったようだな。そのまま踏み潰されるがいい」
魔獣らは速度を落とさず、アスハに向かって猛進していく。
「……まあ」
アスハはわずかに首を傾げた。なまじの攻撃を当ててもどうにもならないのは、さっきの光景から明白だ。
「……じゃあ、これなら?」
ぺん、と足代わりに生えた触手の一本が、地べたを叩く。
刹那、触手の触れた地面を端緒として奇怪な青紫色のうねりが奔る。地面が泥と化す――いや、毒属性の大渦と化したのだ。
魔獣らが足を取られる。そしてそのまま沈んでいく――というほど甘い相手ではないものの、流石に突進の速度は一気に落ちる。
そこへ、余裕の生まれていたヴィオレッタが【ヤヌスの矢(アロー・オブ・デュアルフェイス)】を放つ。
「降り注げ、友に癒しを、敵には滅びを」
密かに空へと放っていたヴィオレッタの矢は、天高くで弾けて広がり、柳花火のように無数の白光の雨となって戦場に降り注ぐ。
どがが! と魔獣の全身に矢が突き立った。頑強な防御力を誇る魔獣らではあるが、足の動かぬ彼らは防ぐも避けるも能わずという有様である。
さらに、矢の雨は韓信も狙って殺到している。
「――くっ……ちまちまと、猪口才な」
周囲に闇紅娘々も南蛮王もおらず、盾になるような物もない。孤立した韓信は巨刀を振り回して斬り払う。といって全てを防ぐことはできず、手足や肩などにいくらか矢が突き刺さってはいるが。
(国士無双……あくまで、その国の中で最強というだけで。猟兵は、国外の存在……よね?)
声は出さず胸中でだけつぶやき、ヴィオレッタは薄く笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎
ここが天下分け目の関ヶ原デスネ!
韓信大将軍、その大将首ここで置いていってもらいマース!
韓信の前に辿り着く前に、まず大勢のエネミー……楽浪郡勇士と闇紅娘々に対処する必要がありマスネ!
神器で武装した他世界属性と鋭利な爪での包囲攻撃は強大!
なので、装甲蒸気機関車に乗り込んで強行突破を試みマース!
ヒャッハー! 退かないとはね飛ばしマース!
操縦しながら列車砲の砲撃をばら撒き、近づいたら運転席からチェインハンマーでなぎ倒し、道を切り開きマース!
こうして韓信を射程圏内に収めれば、ヴァリアブル・ウェポン展開!
命中率を高めた各種内蔵式火器の弾幕を、フルに叩き込んで差し上げマース!
鳴上・冬季
「これはこれは。韓信御大にお会い出来るとは光栄です」
嗤う
「封人台は称賛に値する素晴らしい仕儀ではありますが、そろそろ貴方も封神台に封ぜられてもよい頃合だと思うのですよ」
嗤う
「人から成り上がろうが血を好む邪仙だろうが。あまり思い上がられると業腹です。たかが先制で全てを制したと思うなよ?…獣夜礼讃」
黄巾力士と共に中空に浮かんだままUC使用
先制は超再生能力でいなす
黄巾力士には制圧射撃とオーラ防御命じ自分は途切れることなく連続で雷撃
敵の攻撃は基本全て黄巾力士に庇わせるが間に合いそうにない場合は仙術+功夫で縮地(短距離転移)
「地を這う愚物を侮れぬようでは師父師兄に顔向け出来ぬわ!」
血を吐いても侮蔑し嗤う
●不知彼不知己毎戦必殆
「退かないとはね飛ばしマース!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の怒鳴り声を乗せ、地面を削る轟音と蒸気機関の唸る音をまき散らしつつ、蒸気機関車が疾走する。
蒸気機関車といって、無限履帯によって線路を必要とせず荒野だろうが何だろうが踏破できるそれは、機関車風の見た目をした戦車と呼んだ方が正しいかもしれない。車体に相応の砲塔も設えられているため、余計にそう見える。
その鉄塊の猛進を眺めやり、韓信は「ふむ」と軽く息を吐く。
「猪武者か? あるいは慎重策を採ってもジリ貧になると思ったか」
韓信の指揮する闇紅娘々の群れは、恐れなど知らぬげに機関車を囲みつつ襲い掛かる。
彼女たちの武器は、両手に備わる鋭い爪だ。鋭いといって、当たり前の物理を適用するなら、分厚い鋼鉄の装甲をいくら引っ掻いたところで傷一つ付くはずがない。
が、そこは雑兵なりといえどもオブリビオンである。渾身の貫手ともなれば対物ライフルないしそれ以上の威力を生み出せる。
取り付かれる前に戦車砲によって吹っ飛ばし、取り付かれてもチェインハンマーで叩くなどしてバルタンも対応はしているが、しかし間に合っているとはいい難い。見る間に機関車は満身創痍となっていった。
「やはり敵は強大……でも、大将首までもう少しデース!」
バルタンはキッと韓信の方を睨む。しかし。
「どういうつもりでも結果は同じだ。私には届かぬ」
機関車の目鼻の先に、分厚い鋼鉄の盾を構えた機械の巨人たちが不意に出現した。
「イッ!?」
クロムキャバリアから召喚されたであろう、楽浪郡のオブリビオンマシンの軍勢。恐らく【渾沌の諸相】で何かしらのユーベルコードを用いて大幅に防御力を上げたのだろう、幾重にも並ぶ様は金城鉄壁を体で成すごとし。
どごっ! と機関車が真正面から激突する。オブリビオンマシンの数台はひしゃげて潰れたが、果たして韓信の台詞通り、彼には届かない。
まずい、とバルタンが思った刹那、オブリビオンマシンから榴弾の砲撃を浴びせられて機関車が吹っ飛ばされる。
韓信がさらに追撃の号令を発しようとする――が。
「……む」
韓信の目線が上方に移ろう。
バルタンが切り拓いた道をなぞるように、頭部が戦車の砲塔のようになった人型メカが飛んできていた。その傍らには、風火輪を足に備えて飛ぶ鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)の姿もある。
「これはこれは、ご尊顔を拝し光栄至極」
慇懃無礼な冬季の声を聞きつつ、韓信は周囲を一瞥した。空にある冬季には、闇紅娘々の爪は届かない。
「封人台は素晴らしい仕儀ですが……あまり思い上がられると業腹です。先制を許した程度で、戦の全てを制したと思うなよ」
唐突に周囲一帯の色が変わる。それまでも大した色彩ではなかったものが、さらに昏い闇色へと変じ、さらに中天には妖しげな金の満月が浮かぶ。
そして、冬季の体は【仙術・獣夜礼讃(センジュツ・ジュウヤライサン)】によって人の形から獣のそれへと変わる。多くの尾を持つ狐の姿へと。
「貴方も封じられる頃合いだ、韓信!」
冬季が叫ぶと同時、その全身から何条もの光線が発される。
光線は鋭く屈折しつつ荒れ狂い、雷の猛雨となって韓信、さらにその周囲のオブリビオンマシンを打ち据えていく。鉄壁の守備力を誇るはずのオブリビオンマシンが雷撃に刺し貫かれていく。灼かれたそれらは機能を失い、機械からただの金属塊へと変ず。
それだけの雷撃であれば、韓信もまた一瞬にして黒炭と化す――と思われたが、彼の頭上を覆うように、雷撃を体毛と成したような金色のサーベルタイガーのごとき南蛮魔獣が身を乗り出して盾となっている。体毛の様子からして恐らく雷への耐性があるのだろうその魔獣は、鄂煥と名乗った。
「地を這う獣風情が生意気にも粘るとは」
「……随分な物言いだな」
「無論。空も飛べぬ愚物を侮れぬようでは師父師兄に合わす顔がない」
狐の顔でもはっきりそれとわかるほどに、冬季は嘲笑している。
「大敵を恐れず小敵を侮らず……兵書読み初めの小童ですら弁えているのだが」
韓信は特に腹を立てるでもなく、ただ呆れていた。必要なら匹夫の股下をくぐっても平静を保つ彼からすれば、冬季の罵声はそよ風に等しい。
どっ! と、背水陣によって強化された鄂煥の跳躍が一瞬で魔獣の巨体を空へ運び、巨大な双牙が黄巾力士の結界のシールドに突き立ち、砕く。
「――!」
勢いそのままに鄂煥が冬季に爪を振るうが、それを瞬間移動で回避する。が、回避した先に、韓信は間髪入れず巨刀を投擲する。雷光をも凌駕する速度で放たれたそれは、狙い過たず冬季の足を斬り裂いた。
バランスを崩した冬季は、血を散らしつつ落下する。その落下点に瞬時に至った韓信は、冬季の首を鷲づかみにした。
「ただ敵が地にあるだけで侮る思慮なしに育つとは。いっそ憐れだ」
冬季の首が締め上げられ、ゴキリとへし折られる。それでも超再生能力で辛うじて命をつないではいる――が、あと何秒も保ちはすまい。しかし、その段になってなお、口の端から血をあふれさせてなお、冬季の顔は嘲笑の形のままだった。
刹那、ボッ! というあっさりした破裂音と発し、冬季をつかんでいた韓信の腕がちぎれる。
「――っ?」
銃撃、ないし砲撃。それを感じた韓信が視線を振ると、そこにいたのは血まみれになりつつ機関車から這い出ていたバルタンである。
「生きていたか……!」
「油断大敵一生ジエンド! 小学生でも知ってマース!」
バルタンの腰にマウントしたアームドフォート、右手にガトリング、左手にグレネードランチャー、それら火器の口は韓信に向いている。
巨刀は手元にない。盾になりそうな配下もすぐに寄れる位置にない。転瞬、放たれた【ヴァリアブル・ウェポン】の弾幕を防ぐ手立ては韓信にはなかった。今度こそ彼は撃たれ、貫かれ、灼かれ、粉砕される。
もうもうたる火薬の煙と土埃に紛れるように、韓信は塵のように空気に溶け、骸の海に還った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴