何者にもなれない者たちの歌
●ドーバー海峡
不気味な船。
それが恐らく、その艦船の第一印象であったことだろう。
戦艦、と呼ぶにはあまりにも奇異なる形状。
言うなれば『機械仕掛けの洋館』の如き形状をした、海往く屋敷だった。
そもそも何故、そんなものが海を往くことができるのかさえ不明だった。
「ここは誰もが虐げられている」
その『狂気戦艦』の屋根の上に一人の男が立っている。
『蒼の王』と呼ばれるUDC怪物は、空を見上げて呟いた。その視線の先にあるのは、『コウモリ爆撃兵』たちであった。
ドーバー海峡はブリテン島までの距離が最も近い。
故に『狂気戦艦』……『狂気艦隊』を多く出撃させることはできなかったのだ。『コウモリ爆撃兵』が『狂気戦艦』の上空を警戒するように飛んでいるのは、超大国『クロックワーク・ヴィクトリア』と敵対する超大国『ゾルダートグラード』の『鋼鉄艦隊』を警戒してのことだったのだろう。
だが、此処数日『ゾルダートグラード』の『鋼鉄艦隊』の艦船が現象したという報告を『蒼の王』は受けていた。
だが、その報告を受けていたとしても、彼は特別何かを思うことはなかった。
彼の胸に去来しているのは唯一つ。
己が寄生した肉体。
この肉体の持ち主が死の淵において思い描いたものを実現するという意思のみ。
そう、誰も虐げられない世界の実現。
『平和』な世界である。それを実現するためには全ての生命をUDC化しなければならない。そうするかしかないのだ。
「『プロメテウス』……君はまだ『曉の歌』を歌えているか」
その問いかけは空に溶けて消えていく。
誰も応えない。誰も答えられない。
わかっていることだ。
擦り切れた記憶の奥底で響く言葉がある。その言葉に答える術を持たぬ『蒼の王』はただひたすらに空を見上げ、その先にある星の海を見る。
すでに到達できぬ道行。
燃え盛る炎の導はなく。
「俺は定めよう。『戦いに際しては心に』『祈りを』……俺は祈り続けよう――」
●クロックワーク・ヴィクトリア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。獣人戦線において『超大国』の一つ、『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国がブリテン島に存在していることが確認されております」
彼女の言葉はヨーロッパ戦線の獣人たちによって得られた情報と同様だった。
たしかにこれまでも幾度かのブリテン島への上陸計画は立案されてきた。
だが、しかし、それが実現されることはなかった。
何故ならばブリテン島に上りうするためにはドーバー海峡を代表とする周辺海域には『クロックワーク・ヴィクトリア』だけではなく『ゾルダートグラード』、その二つの超大国が艦隊を派遣して争い合う激戦区であったからだ。
つまり、この海峡を突破するためには超大国二つの戦力を同時に相手取らねばならなかったのだ。
「ですが、『ゾルダートグラード』側の観戦数が何らかの理由で現象したのです。『鋼鉄艦隊』と言えども、艦船の数が減れば……」
そう、後は『クロックワーク・ヴィクトリア』の擁する『狂気艦隊』に対処するだけだ。
もしも、この『狂気艦隊』の艦船を撃破することに成功すれば。
「はい、私がブリテン島へと皆さんを転移することも可能となるはずです」
そうすれば、獣人たちの抵抗は更に苛烈にオブリビオンの超大国へと攻勢を仕掛けることができるようになるだろう。
だが、言葉で言うほど簡単なことではない。
「『狂気艦隊』の一隻、『狂気戦艦』は不気味そのものたる『蒸気仕掛けの洋館』そのものです」
とても船には思えぬ『狂気戦艦』に取り付こうにも、直上の空を護衛するようにオブリビオン『コウモリ爆撃兵』が飛び交っているのだ。
このオブリビオン部隊を蹴散らし、『狂気戦艦』へと飛び込まねばならない。
問題はそれだけではない。
「どうやら『狂気戦艦』の内部は蒸気機械入り組むヴィクトリア調の豪奢な洋館となっているようです。そして、ひしめくは『蒸気人形』たち。彼等は恐らくUDC怪物なのでしょう」
そして、狂気に満たされた戦艦の内部では|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》をクリアしなければ乗り越えられないようなのだ。
今回猟兵たちが乗り込む『狂気戦艦』の内部は、まるでダンスホール。
つまり。
「完璧な紳士淑女の如き完璧な所作でもって『蒸気人形』たちに認められなければならないのです」
この『紳士淑女の作法』をクリアしなければ、最深部への扉は開かれない。
そして、この関門を乗り越えた先、『狂気戦艦』の機関部に一体のUDC怪物『蒼の王』が存在している。
彼がどうやら『狂気戦艦』に動力を提供しているようなのだ。
しかし、彼もまた『紳士淑女の作法』によって強化されている。
『蒸気人形』たちとは異なったルールを用いるようであるが、これによって『蒼の王』は超強化されている。逆にこのルールを満たさぬのなば超弱体化されるというわけである。
「ですが、このルールを守るのならば、多少は有利に戦いを運ぶこともできるはずです」
ナイアルテは、そのルールを遵守することでしか『蒼の王』を撃破することができないだろうと言う。
猟兵たちは雁字搦めたる狂気の中に飛び込む覚悟を決め、ナイアルテに見送られるようにして転移するのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
二つの超大国がひしめくドーバー海峡において、綻び見せた激戦区にて『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国、ブリテン島へと上陸するために『狂気艦隊』の一隻『狂気戦艦』を撃破するシナリオになっております。
●第一章
集団戦です。
ドーバー海峡にて往く不気味な『蒸気仕掛けの洋館』めいた『狂気戦艦』の一隻へと突入を目指します。
ですが、『狂気戦艦』の上空にはオブリビオン部隊である『コウモリ爆撃兵』たちが数多警戒して飛んでいます。
これを蹴散らすことで『狂気戦艦』へと取り付くことができるでしょう。
●第二章
冒険です。
第一章にて『狂気戦艦』に取り憑いた皆さんは、内部へと突入しますが、その内部は外見と同じように蒸気機械入り組む洋館の内装と同じです。
その内部はUDC怪物の反応があり、数多の『蒸気人形』たちがひしめいています。
襲ってくることはありませんが、内部は何故かダンスホールのような光景が広がっています。
『|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》』……『社交ダンスのマナーに則って蒸気人形と踊る』ことが条件となっているようです。
完璧な紳士淑女としての所作、服装、みだしなみによってしか『蒸気人形』は皆さんを認めないでしょう。
これをクリアしなければ、最深部への扉は開くことはありません。
覚悟を決めて紳士淑女らしい所作を見せつけ、『蒸気人形』と一曲踊りましょう。
●第三章
最深部たる機関部に到達した皆さんは一体の強力なUDC怪物『蒼の王』との戦いに挑むことになります。
この『蒼の王』を撃破すれば『狂気戦艦』を破壊することができます。
ですが、『蒼の王』は彼が定めた『紳士淑女の作法』でもって強化されています。超強化されている上に、これを満たさぬ猟兵は超弱体化してしまいます。
極めて強力な能力ですが、そのルールを守って戦うのならば多少強化されるようです。
それでは『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国へと上陸するために『狂気艦隊』へと挑む皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『コウモリ爆撃兵』
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POW : 無差別爆撃
戦場にレベル×5本の【焼夷弾】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【多くの被害と死者が出る】対象を優先して攻撃する。
SPD : 反響定位
【超音波】を体内から放出している間、レベルm半径内で行われている全ての【攻撃】行動を感知する。
WIZ : 空飛ぶ悪魔
戦場内で「【助けて・死にたくない・怖い・熱い・神様】」と叫んだ対象全員の位置を把握し、任意の対象の元へ出現(テレポート)できる。
イラスト:はるまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
あまりにも奇妙な光景だった。
海上に浮かぶは『蒸気仕掛けの洋館』であった。あまりにも不可解。何故浮かんでいるのかも、何故航行できるのかもまるでわからない。
けれど、現に猟兵たちの視界には海上を往く洋館がある。
そして、上空には無数のオブリビオン部隊『コウモリ爆撃兵』たちの姿があった。
「上空を警戒中。敵影を確認。猟兵と認識する」
転移した猟兵たちは即座に己たちの姿が認められたことを理解するだろう。
どの道、『狂気戦艦』に取り付くためには上空のオブリビオン部隊の戦力を突破しなければならなかったのだ。
ならば、これは遅いか速いかでしかない。
「爆撃を開始する。敵猟兵戦力を『狂気戦艦』に取り付かせるな」
『コウモリ爆撃兵』たちは空より猟兵たちに襲いかかる。
それは見事に連携の取れた行動だった。
そして、そんな迎撃行動を取るオブリビオン部隊を尻目に『狂気戦艦』はただ濛々と白煙を上げ、不気味に静観し続けるのだった――。
イリスフィーナ・シェフィールド
獣人戦線にUDC怪物ですか、どこから紛れ混んだのでしょうね。
洋館が海をゆくというのもシュールですが攻略必須であれば行くしかありませんわね。
飛び交うコウモリさん達には同じく空中戦を挑んでライトニング・プレッシャーで叩き落としましょう。
……この場で助けて云々言う人普通はいないでしょうし無駄な能力ですわね。
わざと言って呼び寄せるという手段はあり得るでしょうが。
何度目を凝らしてみても、それはあまりにも異様な光景だった。
海をゆく洋館。
しかも蒸気機関が内部に存在している。白煙を上げながら海を進む『狂気艦隊』が一隻。その上空を警戒するようにして飛ぶはオブリビオン部隊『コウモリ爆撃兵』たちだった。
すでに猟兵が『狂気戦艦』に迫らんとしていることを彼等は把握している。
「空域に迫る敵影在り」
「迎撃、迎撃、迎撃」
『コウモリ爆撃兵』たちは一斉に羽根を羽ばたかせて迫る猟兵へと、その頭上を取るべく飛翔する。
放たれる爆撃。
そのすさまじい爆風の中をイリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)はユーベルコードの輝きで切り裂く。
「獣人戦線にUDC怪物ですか」
目の前にある一隻の『狂気戦艦』の内部には、この戦艦とも呼べぬほどの蒸気機械の洋館を動かす動力を供給し続けるUDC怪物が存在しているのだという。
UDC怪物はUDCアースにおけるオブリビオン……邪神の類である。
それが他世界に存在しているということは、一体どのような経緯を辿って、この地に至ったのかを知る手かがりになるかもしれない。
「どこから紛れ込んだのだとしても、やるべきことはかわりませんわっ」
きらめくはシャイニング・ウィル。
イリスフィーナが討つと決めたのならば、その意思は光へと変換され、さらに雷へと姿を変える。
迸る雷撃が『コウモリ爆撃兵』の身を穿ち、その羽ばたきを麻痺させる。
「どれだけ頭上を抑えようともっ、ライトニング・プレッシャー』を前にしては意味のないことですわっ」
「迎撃困難。救援を求む」
『コウモリ爆撃兵』たちの言葉に『狂気戦艦』は応えない。
特別に猟兵に何かをすることなく、ただ悠然と海上にありて、その存在を示し続けている。
「無駄のようですわねっ」
たとえ、『コウモリ爆撃兵』たちが同じ部隊である彼らの元へとテレポートで駆けつけてくるのだとしても、イリスフィーナにとっては何の問題もなかった。
「戦線が維持できなくなる。このままでは、突破される」
「その通り、わたくしたちはあの洋館の……『狂気戦艦』の内部に用があるのです。この程度の戦力で止められると思わぬことですわっ」
イリスフィーナは迸り、轟く雷光と共に戦場を駆け抜けていく。
海上にありて、異常な光景を生み出す要因となっている『狂気戦艦』。
あの洋館じみた内部に飛び込めば、より一層狂気が彼女を襲うかも知れない。けれど、彼女の意思の光は陰ることはなかった。
どれだけの狂気が満ちているのだとしても、決して折れぬという心がある限り、イリスフィーナを屈服させることはできないだろう。
「ならば、ゆきますわ。この意思の輝きがある限り、わたくしは!」
『コウモリ爆撃兵』たちの放つ爆風をかいくぐり、イリスフィーナは『狂気戦艦』……その洋館じみた異様なる戦艦へと飛び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
海に浮かぶ洋館なんて、カクリヨファンタズムでも見た事ない!
でもコウモリが守ってるって言うのは雰囲気ばっちりだね。
行くよテルビューチェ、サメの強さを見せてやれ!
まぁサメだって空を飛ぶ生き物だし、【空中戦】でもコウモリに引けを取らないけど……ここは有利な戦場を作ろう。
とゆー事でシェイプ・オブ・ウォーター!
【深海適応】ならサメの圧倒的有利だ!
深海になった空を泳いで【水中戦】で勝負!
爆弾も超音波も、海の中じゃあ使い勝手が違うよね。
後はテルビューチェが思いっ切り暴れればきっと勝てるはず。
助けてって言うのはそっちの方だよ!
UDCを倒さなきゃなんだから、邪魔しないでよね!
海にうかぶ洋館。
それはいくつもの世界を知る猟兵にとっても奇異なるものに写ったことだろう。
『狂気戦艦』と呼ばれた『クロックワーク・ヴィクトリア』の誇るドーバー海峡の守護を担う『狂気艦隊』の一隻。
その上空にはオブリビオン部隊である『コウモリ爆撃兵』たちが飛び交う。
猟兵の接近を察知し、その高高度からの爆撃でもって突破をさせんとする彼らの猛攻。それは激しくも当然の行為であった。
なぜなら、彼らが守護するは本国であるブリテン島。
此処を抜かれれば猟兵が『クロックワーク・ヴィクトリア』の元へと転移することが可能となる。
それを阻止するための瀬戸際と言ってもいい。
「海にうかぶ洋館なんて、カクリヨファンタズムでも見たことない!」
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は驚きに満ちた瞳を見開く。
確かに海上、海での戦いはグリードオーシャンなどで慣れているものであるが、しかし潤は指を打ち鳴らす。
海中よりせり上がるようにして体高5mの戦術兵器にしてオブリビオンマシンたる『テルビューチェ』が威容を示す。
サメ型のオブリビオンマシン。
海中より飛び出した姿は、海原の覇者とも言うべき姿であったことだろう。
「行くよ、『テルビューチェ』、サメの強さを見せてやれ!」
彼女の言葉と共に爆撃が行われる海上を『テルビューチェ』は大地を蹴るようにして海面から跳ねる。
爆風に煽られながらも、しかし潤を乗せた『テルビューチェ』はさらに脚部を跳ねさせて空へと飛び立つ。
「敵機動兵器を確認。爆撃を加える。敵を『狂気戦艦』には近づけさせぬ」
「コウモリが洋館を守っているなんて、雰囲気ばっちり。けれどね、サメだって空を飛ぶ生き物なのよ!」
潤の言葉は他世界の者にとっては、一瞬『?』となる言葉であったが、グリードオーシャンにおいてサメとは空すら飛ぶものである。
空を飛ばぬサメなどただの魚と一緒である。
サメとは即ち大空の覇者。
如何に『コウモリ爆撃兵』たちが空より強襲するのだとしても、『テルビューチェ』は一歩も引かないのだ。
「『テルビューチェ』、キミの得意な戦場にしてあげるよ! シェイプ・オブ・ウォーター!」
潤の瞳がユーベルコードに輝く。
次の瞬間、空は暗雲すらないのにソーダ水の雨が降り注ぐ。
「……?!」
驚愕する『コウモリ爆撃兵』たち。
彼らは目を見開くだろう。此処は大空のはずだ。なのに彼らは息苦しさ、そして体に感じる強烈な圧力に羽ばたくことすらなく失墜……いな、沈下していく。
そう、彼女のユーベルコードはソーダ水の雨を降らせることによって戦場たる空を深海と同じ環境へと変えるのだ。
「深海なら『テルビューチェ』の独壇場だよ! さあ、思いっきり暴れていいよ、『テルビューチェ』!」
機体の内部でジェネレーターが唸りを上げるようにして出力を上げていく。
『テルビューチェ』の巨体が深海となった空を泳ぐようにして飛び立ち、『コウモリ爆撃兵』たちを次々と打ちのめしていく。
「救援を求む。救援を求む」
「させないよ! あの洋館の中にいるUDC怪物を倒さなきゃなんだから、邪魔しないでよね!」
その言葉と共に潤は『テルビューチェ』を駆り、一気に『コウモリ爆撃兵』たちの阻む防衛線を突破し、『狂気戦艦』へと飛び込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
エドワルダ・ウッドストック
POW アドリブ連携歓迎
この時が来たのですわね……。
ブリテン島上陸作戦、必ずや成就させてみせましょう!
ガーター騎士団、出撃いたしますわ!
ペドロの操縦する戦闘ヘリにて、狂気戦艦へ向かいましょう。
哨戒しているコウモリ爆撃兵の脅威は、制空と無差別の爆撃ですわね……ならその上を取れば降り注ぐこともありません。
どちらが先に頭上をとれるか勝負ですわ!
……と思わせておいて、急上昇に気を取られている横っ腹にライフル弾の雨あられを叩き込みますわ!
竦んで速度を落としてくれたら上を取れますので、容赦なく銃弾を降り注がせましょう。
蹴散らさせていただきますわ!
己の出自を思う。
それは己の故郷を思うことと同義であった。
戦禍の中に生まれ、戦禍の中で育ち、戦禍の中を駆け抜ける。
己の足は鹿の脚。
駆け抜けた日々は決して無駄ではなかった。無為に散る生命など何一つなかったことを彼女は。
エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)は知る。
その光景が今まさにドーバー海峡に在る。
『ゾルダートグラード』の『鋼鉄艦隊』と『クロックワーク・ヴィクトリア』の『狂気艦隊』。
これら二つが相まみえる激戦区であるが故に『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国たるブリテン島への侵入は阻まれてきた。
だが、今まさに。
「この時が来たのですわね……」
絶好の機会が巡ってきた。
千載一遇であるとも言えるだろう。恐らくこの好機を逃せば、次にこのような状況が巡ってくるかわからない。
「ガーター騎士団、出撃いたしますわ!」
エドワルダの言葉と共にローターが回転し、戦闘ヘリが海上へと飛び出す。
目標は『狂気戦艦』――その異様なる姿を彼女は眼下に捉え、そして上空より放たれる強烈な視線に面を上げる。
「直上!」
エドワルダの言葉と共に戦闘ヘリが急上昇する。
これは結局『狂気戦艦』の上空を守るオブリビオン部隊『コウモリ爆撃兵』とどちらが頭を取れるかの戦いでしかない。
そう思わせるように戦闘ヘリが一気に急上昇するのだ
ともすれば、それはオニヤンマの如き挙動であった。急上昇、急降下、そのいずれもが直角的な動き。それができるだけの技術を詰め込んだのが戦闘ヘリである。
羽ばたくことしかできない『コウモリ爆撃兵』にとっては、その下降と上昇に注意を向けるのは当然であった。
「蹴散らさせていただきますわ!」
エドワルダはしかし、その注意の瞬間を見逃さなかった。
それを人は隙と呼ぶのだ。
一瞬の交錯。
頭を取るのではなく、エドワルダは戦闘ヘリの横からライフルを構えていた。
「その横っ腹に叩き込ませていただきますわ!」
ユーベルコードに輝くエドワルダの瞳。
彼女の瞳には意思が溢れていた。己の故郷に再び足を踏み降ろすこと。そして、その脅威となるオブリビオンを排除すること。
ならばこそ、彼女のライフルは凄まじい勢いで連射される。
弾丸は雨のように。
鋼鉄弾雨(フルメタルバレット・ストリーム)が『コウモリ爆撃兵』たちを襲い、そのまま急上昇を続ける戦闘ヘリから眼下の敵をさらにエドワルダは打ち続ける。
「制圧しますわ。そうすることで後続が、かの『狂気戦艦』に取り付く隙を作り出すことができる。少しでも多くの猟兵を内部に突入させねばなりません」
そして、己もまた飛び込まなければならない。
蹴散らす。
己の足は鹿の脚。
ならば、駆け抜けるのみである。
誰よりも早くも。誰よりも強く。
それが戦禍の中にて生まれた己の宿命にして責務。
あらゆる戦場に散った生命が無為なるものではなかったと証明するためにエドワルダはライフルの引き金を引き続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
天道・あや
ダンスが出来なきゃ島に上陸出来ないというなら、あたしのダンスで上陸許可、取ってみせまょうじゃ、あーりませんか!!
……とはいえ、ダンスの前にも審査はあるようで?
……うし! ならその審査、| 突破 《 合格 》させて貰いましょう!
海よし!戦艦よし!パスポートの準備よし!
いざ搭乗!!
転送がされたら早速UCを発動!!
ブースト全開!!真っ直ぐ最短で行かせてもらうーーうおおおっ!?(目の前に現れた敵と攻撃を見切り、ダッシュで避ける)
もしかして保安検査の人?だとしたら、チェックどぞ!
あたしは何も怪しいものは持ってませんよー!(スピーカーミサイルを全弾発射してギターを弾く!)(楽器演奏、パフォーマンス、元気)
ショータイム。
それは天道・あや( スタァーライト ・f12190)という星が照らし出すもの。
そして、至らなければならないもの。
天を越え、星をも越えた先へと届かせるものが自分の中にはある。
なぜなら、夢と未来は無限大であるからだ。
「ダンスが出来なきゃ島に上陸できないというなら、あたしのダンスで上陸許可、取ってみせましょうじゃ、あーりませんか!!」
彼女は転移した瞬間、あやの姿がユーベルコードに輝いて変じる。
タンクスーツを身にまとい、その腕と脚にパワードスーツが着用される。それは言ってしまえば、ライブ衣装だった。
「SR-3-15 (ライブステージ・ギンガノハヨウソウビ)! 銀河の果まで歌うぜ!」
あやの胸には夢と未来があった。
素晴らしい未来が待っている。
己の中には燃え盛るような希望がある。そんな自分は最高だった。今もなお、その感情は最高潮を継続しっぱなしだった。
迫りくるオブリビオン『コウモリ爆撃兵』たちと目が合う。
転移直後に見たのが、その光景だった。
「――うおおおおっ!?」
思わず、あやは叫んでいた。
ブーストによって横に回転するようにして『コウモリ爆撃兵』との衝突を避けながら声を描くようにして天に舞う。
期せずして彼女は『コウモリ爆撃兵』の頭を取っていた。
「猟兵!?」
「うおっと、いきなりダンス前の審査は、抜き打ちってことかな!?」
「こちらの頭を抑えたか!」
あやは空中で体の姿勢を入れ替える。
『コウモリ爆撃兵』はこちらが頭上を抑えているため、爆撃ができない。故にあやはスピーカーミサイルを解き放ち、ギターをかき鳴らす。
ギターの音色に誘導されるようにしてミサイルが乱舞して『コウモリ爆撃兵』の体を打ち据える。
「抜き打ち審査も、|突破《合格》ってことで! あ、もしかして保安検査の人だったりしちゃったり?」
あやは己が早とちりで『コウモリ爆撃兵』たちを撃破してしまったのかと思ったが、まあ、いいかと思った。
仮に保安検査の人であったとしても、自分は怪しいものを持っていない。嘘である。スピーカーミサイルなんて物騒極まりないものである。
しかし、これがダンスの前の審査であるというのならば突破しなければならないのだ。
「海よし! 戦艦よし! パスポートの準備よし!」
うん! とあやは自分の持ち物を空にて確認する。
海上を往くは『狂気戦艦』。
まるで洋館めいた姿。どう考えても戦艦とは思えない姿であったが、あやは構わなかった。
「搭乗確認もよし! さあ、いっくよー!」
目指すは正しくあの洋館なのだ。
あそこで歌ってやる、という意思だけで彼女は勢いよく空中で咆哮を転換し、一気に『『狂気戦艦』の内部へと飛び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
桐嶋・水之江
【エルネイジェ御一行】
ここでうちのワダツミが活躍すれば評判は鰻登り…
するとクロックワーク・ヴィクトリアとゾルダートグラードと獣人達から発注が舞い込んでくる…
これは大きなシノギの匂いがするわ
ん?私何か言った?
世のため人のため、今日も頑張りましょう
ワダツミで行くわ
腹下に潜り込まれないよう船体は海に浸けておきましょう
それではソフィア皇女メサイア皇女、発進どうぞ
飛んでる敵にはやっぱり対空ミサイルよね
アムラームをMLRSでばんばん撃つわよ
対空防御はCIWSでOK
命乞い?そもそも私は危ない所には出てこないのよ
私の死は世界の損失なんだから
私達の仕事はここまで
戦艦への突入は他の猟兵さん達に譲るわ
ソフィア・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
まさしく海に浮かぶ洋館ですね
飛び交う蝙蝠達と相まって異様な光景ですが…
故に相手にとって不足無し!
インドラ・ストームルーラーで参ります!
水之江女史のワダツミより出撃
空対空戦闘に持ち込みましょう
こちらの攻撃を察知されているようですね
では対応し切れないほどの高速連撃を叩き込みましょう
雷光強襲で突破致します
ミサイルを発射して側面に大きく迂回しつつガンポッドを斉射
高速で接近し脚のクローで蹴り飛ばします
この世界には殲禍炎剣がありません
なので速度も高度も気にかける必要はないでしょう
撹乱の目的も併せて縦横無尽に飛び回ります
しかし自由に空を翔ける事がこれほど清々しく爽快だとは…
メサイア・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
あら〜?
でっけぇお羊羹があると聞いておりましたのにどこにもございませんわ!
まさかもう食べられてしまいましたの?
お羊羹では無くてお洋館?
騙されましたわ〜!わたくしおこですわ〜!
ヴリちゃん!スカイルーラーで参りますのよ!
お博士のお船から発進ですわ〜!
バイオレンスアサルトでかっ飛ばしますのよ〜!
作戦とかございませんわ〜!
ガンポッドをバリバリ撃ちますわ〜!
ミサイルをドカドカ撃ちますわ〜!
ギュンっと急上昇してグワッと急降下してガツンと蹴っ飛ばしますわ〜!
動きが見切られても関係ございませんわ〜!
相手より速く動けばよろしいのですわ〜!
お羊羹の恨みを思い知るのですわ〜!
メルヴィナ・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
やっぱり館にしか見えないのだわ…
異世界には変わった船があるのだわ…
あなた達がいるとブリテン島に上がれないそうなのだわ
だからどいてもらうのだわ
水之江博士のワダツミから発進…はリヴァイアサンだと大き過ぎて出来ないのだわ
海中から一気に急浮上するのだわ
海面を滑空している敵に噛み付くのだわ
避けられたらクローフィンを叩き付けるのだわ
浮上後は大海の永流を撃つのだわ
高圧水流はレーザーのように収束させて薙ぎ払い続けるのだわ
攻撃を感知されていても当たるまで追うのだわ
周りは海だから吸収する水は無限にあるのだわ
海竜装甲の性能も発揮出来るから動く必要も無いのだわ
ドーバー海峡に存在する一隻の『狂気戦艦』を巡る戦いは猟兵たちの転移と共に一気に加熱していくようであった。
上空を警戒していたオブリビオン部隊『コウモリ爆撃兵』たちは突如として転移してきた猟兵達を迎撃するために海上に爆撃を加える。
だが、それまるで意に介した様子もなく海面を割るようにして巨大な質量……戦艦が出現する。
ワダツミ級強襲揚陸艦『ワダツミ』であった。
「戦艦……!?」
「だが、構うな。猟兵の用いる戦艦であるというのなら、次に来るのは……!」
『コウモリ爆撃兵』たちは理解していた。
そう、あれが彼らの思うところの猟兵の操る戦艦であるというのならば、次に飛び出すのは戦力……己たちの仇敵、猟兵達である。
確かに彼らの推察は正しかった。
一点だけ誤りがあるというのならば、『ワダツミ』から飛び出したのは……。
「それではソフィア皇女、メサイア皇女のお二方は発進どうぞ」
桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)は『ワダツミ』の艦橋に座していた。
そして、彼女の言葉と共に『ワダツミ』の甲板上から飛び立つのは二機のキャバリア。
「『インドラ・ストームルーラー』、参ります!」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)の駆る『インドラ』が雷光のように『ワダツミ』の船体を大きく海水に沈ませる勢いでもって空へと飛翔する。
その勢いに『コウモリ爆撃兵』たちは反応できなかった。
「何が!?」
「巨大な竜……!?」
彼らは見ただろう。
見上げた先に太陽を背にして翼を広げる戦術兵器たる『インドラ』の姿を。
航空装備を得た『インドラ』は、その名を示すように嵐の如き勢いで持ってミサイルを撃ち放つ。
ミサイルは爆風を生み『コウモリ爆撃兵』たちを吹き飛ばしていく。
さらにガンポッドの斉射が片っ端から『ワダツミ』の上空に集まってきたオブリビオンを打倒していくのだ。
「調子が良さそうで何よりだわ、ソフィア皇女殿下」
「ええ、この世界には『殲禍炎剣』がないということでしたが……」
そう、ソフィアの言葉通りだった。
この世界には空に蓋する暴走衛星が存在していない。少なくとも未だ確認されていない。ならばこそ、ソフィアは己の世界であるクロムキャバリアでは到底できない空を飛翔する装備でもって『インドラ』と駆け抜けているのだ。
その様は雷光強襲(ライトニングアサルト)と言うにふさわしい働きであった。
一方、同じく『ワダツミ』から飛び出した黒き暴竜の如きキャバリアを駆るメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)は怒り心頭であった。
「でっけぇお羊羹があると聞いておりましたのに、どこにもございませんわ!」
そう、メサイアが求めていたのは黒色の透明感溢れる羊羹!
それはもう大変にでっけぇ羊羹が海上に浮かんでいると思っていたのだ。言葉って、難しいね。
洋館。ようかん。羊羹という変換具合。
メサイアの思考は食べ物に即時変換されているのだろう。
「どこにもないということは、まさかもう食べられてしまいましたの?」
「あ~メサイア皇女? 羊羹っていうか、洋館ね」
「……はて?」
「あれよ、あれ」
水之江が示した先をメサイアは見つめる。
其処に在るのは海上に存在する『狂気戦艦』……蒸気機関が内燃していることを示すように白い煙を濛々と立ち上げる洋館であった。
それこそが『狂気艦隊』の一隻。
猟兵が『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国であるブリテン島に転移するための楔を打ち込むために破壊しなければならない戦艦なのだ。
その異様なる姿にメサイアは目を点にする。
「……」
「あなた間違えたのよ。まあ、言葉の響きが全く一緒だからそうだと思ったのかも知れないけれど。ある意味、蒸気機関を持つ羊羹っていうのも狂気じみているとは思うけれどね」
「むきー! 騙されましたわ~! わたくしおこですわ~!」
メサイアの激高した言葉と共に『ヴリトラ・スカイルーラー』が『ワダツミ』を『インドラ・ストームルーラー』と同様に海水に沈ませる勢いで飛翔する。
だが、その戦い方はソフィアのそれとは異なっていた。
ソフィアの空中戦が機動力による撹乱と高速連続射撃の高速戦闘であったのならば、メサイアの駆る『インドラ』が行ったのは、暴虐強襲(バイオレンスアサルト)の如き、轢殺そのものであった。
ガンポッドからばら撒かれる弾丸。
ミサイルはまるで狙いをつけていない。だが、それでも『コウモリ爆撃兵』たちは見ただろう。
「でたらめな……!」
「あ、それ! 邪魔邪魔邪魔、お邪魔ですわ~!!」
翼に内蔵された内燃機関による推力によって凄まじい突進力を得た『ヴリトラ』の脚部の一撃が『コウモリ爆撃兵』を蹴り飛ばす。
「ごっ!?」
「ごめんあそばせとは言いませんことよ~! 騙したそちらが悪いのですわ~! わたくし被害者ですわ~!」
メサイアと『ヴリトラ』は空を縦横無尽に駆け抜けて、次々と『コウモリ爆撃兵』たちを海の藻屑へと変えていく。
その様子をみやり水之江は『ワダツミ』の艦橋からのんびりと浮遊するコンソールを指で叩いて対空ミサイル(アムラーム)を撃ち放つ。
「やりたい放題ね。でもまあ、危険なことしなくっていいのだから楽な仕事だわ」
水之江は自身の死こそが世界の損失であると言って憚らないだろう。
本気でそう思っている。
「海に浮かぶお羊羹がないのならば、人間大のコウモリには用はねぇのですわ~!」
「メサイア、控えなさい。皇女としての自覚を」
「お二人さん、そういうの後にしない? 結構敵が集まってきているのだけれど」
メサイアの羊羹の恨み迸る言葉にソフィアがたしなめる。
海上では互いにキャバリアに乗っている。故に尻叩きにいけないのがソフィアにとってはもどかしい。
生身単身であったのならば、メサイアの最大の敵はオブリビオンではなくソフィアであったことだろう。
そんなこんなで二人の騒動に巻き込まれぬまいと水之江は後退していたのだが、そこに『コウモリ爆撃兵』たちが食い込んできていたのだ。
「本当しつこいわね」
「猟兵の艦船であるというのならば、ここで沈めるのみ!」
『コウモリ爆撃兵』たちは、少しでも猟兵に打撃を与えるべく爆撃を敢行しようと特攻めいた突撃でもってソフィアとメサイアの猛攻を躱したのだ。
けれど、それはあまりにも浅はかであると言えるだろう。
水之江は少なくともそう思えたし、また同時にそれを証明するよう海中より水柱が立ち上る。
否、それは水柱などではない。
それは『リヴァイアサン』の巨大なる姿だった。
海中より一気に飛び出したメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は『コウモリ爆撃兵』たちの放った爆撃を、その巨体に受けながら彼らを弾き飛ばしながら、その巨躯の威容を示す。
「大海の永流(オーシャンバスター・インフィニティ)……『リヴァイアサン』、撃ち続けるのだわ」
メルヴィナの言葉に応えるようにして『リヴァイアサン』のアイセンサーがきらめく。
迸るは高圧水流。
その一撃はまるで鋭い刃のように『コウモリ爆撃兵』たちを薙ぎ払う。
「なんだ、この巨獣めいたキャバリアは……!?」
爆撃の一撃すら『リヴァイアサン』には通用しない。
ここは海上である。『リヴァイアサン』の装甲では海水を得ることによって、その性能を発揮するものである。
そう、『コウモリ爆撃兵』たちの爆撃を躱す必要性がまったくないのである。
爆撃では『リヴァイアサン』の装甲に傷ひとつつけられないのだ。
「無駄なのだわ。海にありて『リヴァイアサン』は無敵……その意味を知るといいのだわ」
メルヴィナは海上というフィールドにおいて他者の追従を許さぬほどに圧倒的な蹂躙をもって『コウモリ爆撃兵』たちを打ち倒す。
「良いタイミングだったわよ、メルヴィナ皇女殿下。私の仕事は此処までね」
「移送ありがたく。しかし……」
「ええ、やっぱり館にしか見えないのだわ……」
ソフィアの言葉にメルヴィナが頷く。
そう、『狂気艦隊』の一隻、『狂気戦艦』。その姿は正しく羊羹そのもの。
「異世界には変わった船があるのだわ……」
あの一隻を沈めなければ『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国、ブリテン島に上陸できない。
だからこそ、ソフィアたちは己達という最大戦力で持って事に当たるのだ。
後はあの異様なる戦艦へと飛び込むだけだ。
「だから退いて貰うのだわ」
「ええ、メルヴィナ、参りましょう。自由なる空を駆けるのは後ろ髪惹かれるおもいですが……」
「食べ物の恨みは恐ろしいってことをわからせてやるのですわ~!」
ソフィアは未だ高度を気にしなくて良い空中戦、その開放感というものに心惹かれているようでもあった。だが、メサイアがいるのである。いや、別に姉としての威厳とかそういう意味ではない。
そう、メサイアの奔放すぎる振る舞いを自分が制しなければならない。妹であるメルヴィナにメサイアを任せるのは酷というものであった。
だからこそ、メサイアの怒り心頭たる叫びにソフィアは頭を抱える。
「メサイアは、今は問いませんが」
「そうですわ~! このままお羊羹に、あ、いえ、お洋館に突撃してしまわなければならないのですわ~! もしかしたら中にお羊羹あるやもしれないのですわ~!」
「どう考えても和のものは無いように思えるのだわ……」
「そんなことないのですわ、メルヴィナお姉様! お洋館なのですもの! お羊羹の一つや二つや三つ四つあるはずですわ~! きっとそうなのですわ~!」
その様子にソフィアは頭痛がする。今すぐお尻をしばけないのが、どうにもストレスになっているような気がする。
あとで矯正しよう。そう強く思いながら『狂気戦艦』へとソフィアの先導に従って彼女たちは取り付く。
そんな彼女たちの背中を見送りつつ、水之江は『ワダツミ』の艦橋で早速皮算用を始めていた。
「十分に『ワダツミ』の性能を示す活躍が出来たわね……ふふ」
これは大きなシノギの始まりに過ぎない。
そう、この戦いを機に超大国と戦う獣人たちからの『ワダツミ』やそれに類する兵器の発注が舞い込むことだろう。
戦場における兵器のシェア。
そこに自社製品を食い込ませるためにこうしてやってきていたのだ。
あくどいと言うか、なんていうか。
「これも世のため人のためよ」
にっこり笑って水之江は『ワダツミ』の中で己の頭のそろばんを弾くのだった――。
大成功
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朱鷺透・小枝子
社交ダンスか……だがそこに敵がいるなら、進まなくては。
そして
ディスポーザブル03操縦。メガスラスター【推力移動】
空を取るかッ!
ならそこから見晒せ、コウモリ共!!
03の、我らの爆撃を!!
『劫火殲滅舞踏』【エネルギー充填】
超巨大荷電粒子ビーム砲の速射で焼夷弾を【なぎ払い】
ミサイルコンテナ、全展開【誘導弾一斉発射】
敵の降らす焼夷弾をクラスターコンテナミサイルで【吹き飛ばし】
尚も大量のミサイル群を空へ目掛けて放ち【範囲攻撃】
超音波で感知しようと回避しきれぬほどに、多量の誘導弾をバラまきつづけ、上空一帯を【爆撃】し返す!!
撃て、撃て撃て撃て!!
撃ち壊せぇええええええええええ!!!!!
『クロックワーク・ヴィクトリア』の本国ブリテン島。
未だ猟兵は彼の地へと転移できない。
だがしかし、同じく超大国『ゾルダートグラード』の『鋼鉄艦隊』に穴が空いたことによる均衡の崩れは、絶好の機会を猟兵たちにもたらしていた。
本来ならば二大超大国を相手取らねばならなかった海戦を『クロックワーク・ヴィクトリア』の『狂気艦隊』だけを相手取れば良いのだから。
しかし、洋館そのものたる姿をした船とも言えぬ屋敷を前にして、その内部に仕掛けられた猟兵を阻む絶対たるルールは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとって最大の難所であるとも言えた。
「社交ダンス……」
戦うことしか出来ない。
いや、壊すことしか出来ない自分が突入したとして、困難は目に見えている。
だが、其処に敵がいるのならば進まなくてはならない。
そういうものだと小枝子は理解している。立ち止まることは許されない。立ち止まっては壊せない。だからこそ、小枝子は『ディスポーザブル03』と共に海上を飛ぶ。
メガスラスターの噴射でもって海上を飛ぶ。
目指すは『狂気戦艦』。
しかし、そんな彼女の道行を阻む爆風がある。
空を飛ぶオブリビオン部隊『コウモリ爆撃兵』たちである。彼らが放つ爆撃が『ディスポーザブル03』を襲う。
「空を取るかッ!」
頭上を抑えられるということは戦場に置いて敵に利することである。
満足に機動できなくなってしまうことは言うに及ばず。一方的に攻撃を咥えられるということである。
「猟兵を『狂気戦艦』へと近づけさせるな。奴らはやはりこちらの戦力を削り切るつもりだ!」
『コウモリ爆撃兵』たちは迫りくる猟兵たちの狙いを理解している。
させぬとばかりに爆撃の雨が『ディスポーザブル03』へと迫りくる。
「近づけさせず、一方的にこちらを殲滅する算段か。ならそこから見晒せ、コウモリ共!!」
小枝子の瞳がユーベルコードに輝くと同時に、小枝子は咆哮する。
超巨大荷電粒子ビーム砲が振るわれる。剣呑たる輝きを放つ砲身。その砲口がきらめいた瞬間、放たれるは光条。
凄まじい熱量を持った一撃が迫る爆撃、焼夷弾をことごとく空中で爆散させる。
爆風に煽られた『コウモリ爆撃兵』たちが空を舞う。
だが、それで小枝子の攻撃は終わらない。
ミサイルコンテナのハッチが次々と展開し、大量のミサイルを彼らに解き放つのだ。
「撃て」
短く言い放つ。
小枝子にとって、それは些細なことだ。
「撃て、撃て撃て撃て!!」
だが、止まらない。立ち止まっている時間などない。多くあってはならない。大量のミサイルを解き放つながら『ディスポーザブル03』が『狂気戦艦』に取り付く。
洋館の壁面に拳を叩きつけ、強引にミサイルコンテナを押し込む。
「撃ち壊せぇえええええええええ!!!!!」
ハッチが広がり、ミサイルが洋館の内部に解き放たれる。
爆風が遊び、爆炎の中に『ディスポーザブル03』は立ち上がる。
穿たれた穴。
それは『狂気戦艦』の内部へと突入する猟兵たちの助けとなるだろう。小枝子は内部の動力を破壊すべく、狂気渦巻く戦艦内部へと飛び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
海ですかー。
楽器に潮風はあまりよくないんですよね……。
そしてなによりいくら食べてもラムネが足りません。
やべー雄叫びにツッコむ前に、蕁麻疹をなんとかしないと。
でも空を飛んでるのはらっきーですね。
わたしも魔法の絨毯ありますし、久しぶりに空中演奏できそうです!
【悪魔のトリル】でコウモリさんを墜としていっちゃいましょうー♪
あ、ステラさんまた耳栓を!?
でもでも、そうはいかないのがこの演奏です!
耳栓や遮音物は、この演奏の前には無意味なんです!
しかも、聴いてくれれば回復もしちゃう優れものですからね!
って、ステラさん!?
士気上昇って、敵に向けてのものですからね!
わたしにヘイト溜めてないですか!?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!
いえ、今回はエイル様そのものではない感じですが
さりとてエイル様のメイドとしては無視も出来ず
『何者にもなれない』『プロメテウス』『戦いに際しては心に平和を』『祈り』……祈り?!
何その新たなエイル様ワード!?
ともあれ蒼の王の元まで辿り着かねば
ルクス様いきm……何がありましたその黄昏具合(汗)
『アンゲールス・アラース』を使って飛翔
【スクロペトゥム・フォルマ】で接近戦を仕掛けます
動いている私より動きの少ないルクス様の方が囮としては優秀なはず
演奏は耳栓でガー……なんですって?!
なんてものを作り出したのです!
この勇者また世界を滅ぼそうとしてる…
ドーバー海峡の海上は風が吹いている。
その風がルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の鼻腔をくすぐる。
潮風。
その香りに彼女は少しだけ表情を曇らせる。
なぜなら、彼女が持つ楽器に潮風はあまりよろしいとは言えなかった。大抵のものは潮風に強いわけではないのだ。
機械だってそうだし、生身の人間の髪だって潮風にベタついてしまう。
そして、何より。
「蕁麻疹がなんともなりません」
ルクスはシリアスアレルギーである。何そのアレルギー!? となる者もいるかもしれないが、そういうものなのである。
理屈不要。
兎にも角にもシリアスな空気に触れるとルクスはすぐさま蕁麻疹が出てしまう体質なのである。ラムネと仲良し。この子がいないと立ち行かない。ボリボリしちゃうけれど。
しかし、そんなルクスが感じるシリアスな空気を盛大にぶち壊す叫びが海原に轟く。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びである。
いつもの、である。
ルクスはもう特に何か言うつもりはなかった。いや、やべー雄叫びにツッコまなければならないというのはわかっているのだが、今は蕁麻疹どうにかしなければならない。
「いえ、今回は『エイル』様そのものではない感じですが、さりとて『エイル』様のメイドとしては無視も出来ず」
あえて断っておくが自称である。
「『何者にもなれない』『プロメテウス』『戦いに際しては心に』『祈り』……祈り!?」
ステラはグリモア猟兵からの予知を聞く。
聞き慣れないワードが飛び込んでくる。
『戦いに際しては心に平和を』、ではなく。『祈り』を、と。
何その新規ワード!? とステラは一人悶々としていた。疑問が湧き上がる。けれど、その疑問に応えうるのは、『狂気戦艦』の奥、その動力部に存在するUDC怪物だけである。
ともあれ、とステラは空を見上げる。
「あ、ステラさん、漸く戻って来られましたか。敵のオブリビオンは『コウモリ爆撃兵』ですね。空を飛んでいるのは、らっきーですね」
ふんす、とルクスが何か得意げである。
「わたしも魔法の絨毯がありますから」
「はあ、私も飛翔しますが演奏しないでくださいよ」
演奏だけはせんとってくださいよ! それはステラの願いだった。けれど、ルクスはにこりと微笑む。
「敵いっぱい。お空を飛んでいます。これらを計算すると演奏が一番良くないですか!」
その言葉にステラは静かに耳栓をすぽっと装着する。
「それではルクス様は囮に。私は飛び回って敵を撃ち落としていきますから」
ステラはルクスの返事を待たなかった。
いや、耳栓しているから、というわけではない。此処は押し切るしかない。押し切る形でもって一刻も早くルクスから距離を取らねばならない。
ルクスの演奏が届いてしまう。
そう思ってステラは一気に飛翔し、『コウモリ爆撃兵』たちと銃撃を躱す。
だが、そんなステラの姿にルクスは余裕だった。
なぜなら。
「ふっ、距離を取って耳栓をすれば大丈夫と思っていますね、ステラさん」
にこりと微笑むルクス。
そう、ルクスに秘策あり。いや、ユーベルコードあり。
「悪魔のトリル(アクマノトリル)、魂の演奏は、すべてを貫きます!」
かき鳴らすように、いや、濁流のように、あ、いや、えっと、激流のように音の大洪水が戦場に響き渡る。
そう、ルクスのユーベルコード、演奏はあらゆる耳栓をぶち抜く。
意味を成さないのである。
「――!?」
『コウモリ爆撃兵』たちはなまじ音を捉えるのに適した獣人たちであった。
それゆえに音の大洪水の前には無力だった。空よりバタバタと落ちていく彼らを前にステラは目を見開く。
音は光に及ばない。
けれど、確実に到達する。
「耳栓や遮蔽物は、この演奏の前には無意味なんです! しかも! 聞いてくれれば回復もしちゃうすぐれものですからね!」
にっこーとルクスが笑っている。
そんな彼女にステラはものすごい顔をしている。
「なんてものを作り出したのです!」
「え!? だって士気上昇するには音楽の力が一番なんですよ! これで世界を」
「滅ぼすおつもりですか、勇者!」
「ええええ!?」
ルクスは目を見開く。
まさかそんな風に言われるとは思ってもイなかったのだろう。ステラの言葉にルクスは首を傾げる。
「だ、だって回復していますよね?」
「していますが!? それは壊される端から治されては壊されているのと同じなのですが!」
プラスマイナスゼロ。
いやさ、無限ループみたいな状況にステラは悲鳴を上げる。
体は治っても、精神がもとにもどらんでしょ! と冒頭のやべー雄叫び以上に叫んだ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジークリット・ヴォルフガング
●POW
洋上に浮かぶ奇怪な館…か
館も館だが、その周囲で飛び交う機械仕掛けの蝙蝠もより不気味さを演出しているな
これもこの屋敷の主の趣向かは定かではないが、新たな地へと足がかりを切り拓かせて貰おう
エアシューズの空中機動装置で飛翔
空を我が物として飛び交う蝙蝠の群れへゾディアックソードを抜剣し、これらに応戦
間近で見るほど無性に蹴りを見舞わせてやりたい風貌だが、本来空を飛ぶに順応した蝙蝠の改造獣人相手にそこまでの余裕はないさ
多数に無勢でもあるが、危機に立たされたらば【ゾディアックサンクチュアリ】を発動
星座の重力に囚われれば満足には飛べまい
星辰の加護の元に活路を切り開き、一気呵成に駆逐するぞ!
「洋上に浮かぶ奇怪な館……か」
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)はドーバー海峡の海上を往く『狂気戦艦』……蒸気機関から立ち上る白煙を目印にしたかのような洋館を見やる。
奇異なる光景だった。
蒸気機関を持つ洋館というのは見たままの姿だ。
だが、『クロックワーク・ヴィクトリア』はこれを『狂気戦艦』と呼んでいる。
そう、戦艦に区分されているのだ。
「その上に空には機械仕掛けの蝙蝠と来たか」
より不気味さを増す『狂気戦艦』の姿にジークリットは頭を振る。
これが『狂気戦艦』の内部にあるであろうUDC怪物の趣向であるというのならば、それはなんとも言い難いものだった。
不気味、と一言で表現しきれない何かをジークリットは感じていた。
己の体に突き刺さるような薄気味悪さ。
あの館の内部には狂気が渦巻いているようにさえ思えたのだ。
「確かに不気味。だが、新たな地への足がかりとなるのならば、これを切り拓かせてもらおう」
ジークリットはエアシューズが空気を圧縮し、足場にするようにして己の体躯を空へと跳ね上げるままに迫るオブリビオン部隊『コウモリ爆撃兵』たちと相まみえる。
すでに多くの猟兵達が戦場に集っている。
後はこの上空の『コウモリ爆撃兵』たちを撃破すれば、洋館のような『狂気戦艦』に突入することも容易くなるだろう。
故に抜剣されたゾディアックソードの刀身でもって焼夷弾を切り払う。
「猟兵! それはさせぬ!」
「ありったけを打ち込め! こちらが敵の頭を取っているのだから!」
『コウモリ爆撃兵』達が放つ焼夷弾は雨あられとジークリットに迫る。
凄まじい爆風がジークリットを襲う。
「なんとも蹴りを入れたくなる風貌をしているが……」
余裕があるとは言い難い。
本来空を飛ぶことに順応した蝙蝠。その獣人を前にして、そんなことをしている余裕はない。それに多勢に無勢。
数の利を活かすようにして迫る彼らを前に振るうゾディアックソードの刀身がきらめく。
「数で押し切られるか……だが、私を甘く見ないでもらおうか!」
きらめくユーベルコード
手にした刀身に宿るは星座の重力。
解き放たれた重力は一瞬で『コウモリ爆撃兵』たちの体に襲いかかる。
「……羽根が重い……!?」
「剣に宿りし守護星座よ、我らに星辰の加護を! これよりこの空域はゾディアックサンクチュアリ……星の重さに落ちるがいい」
そして、ジークリットの身に纏うは守護星座たる『エアリーズ』の光。
それはあらゆる障害を寄せ付けぬ光だった。
「星辰の加護を得た私を止められるか!」
振るう斬撃が『コウモリ爆撃兵』を切り捨て、一気に飛び込む。エアシューズによる空気を圧縮しての足場は海上に降りることもなく、まるで稲妻か閃光のようにジークリットを彼らの間隙に走らせる。
その後に残るは『コウモリ爆撃兵』であった体躯。
切り刻まれた彼らは海上に落ちて霧散していく。
「道は切り拓いた。ならば、後は」
見据えるは『狂気戦艦』の内部。己の肌を指す狂気の源を滅ぼすためにジークリットは猟兵達によって破壊された『狂気戦艦』の壁面から飛び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
なんか中ではお行儀よくしてって言われたんだけど?
それじゃまるでボクのふだんのお行儀が悪いみたいじゃん!
いつもひんこーほーせーこーせーめーだい?なボクに対して失礼とは思わない?
●UC『神知』使用!
●サプラーイズ!
【武器(球体くん)に乗って飛ぶ】
そしてコウモリくんたちに【空中戦】をしかけよう
空を飛ぶものには空で戦うのも【礼儀作法】ってものだよ!
うんうんやっぱりボクのマナーは完璧だね!
と【第六感】任せに攻撃を回避しながら[餓鬼球]くんたちを解き放って空域制圧飽和攻撃による【残虐ファイト】を展開しよう!
そうこれが猟兵流マナーに乗っ取った紳士淑女的ファイティングってものさー!
異様なる戦艦、『狂気戦艦』の内部は独自のルールに縛られているという。
それは絶対であり、逆らうのならば罰せられる。
ルールとはそういうものである。ならばこそ、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は憤慨する。
「お行儀よくしてって、それじゃあまるでボクの普段のお行儀が悪いみたいじゃん!」
彼にとって、それは当然のことだった。
言ってしまえば神性としての所作。
在るべき姿であったのだから、人間風情に行儀のことをとやかく言われる筋合いはなかったのだ。
「んもーいつもひんこーほーせーこーせーめーだい? なボクに対して言うことじゃないよね!」
まったくもう、とロニはそうぶつくさ言いながら球体に乗って海上の空へと飛び立つ。
すでに多くの猟兵達によってオブリビオン部隊である『コウモリ爆撃兵』たちは多く駆逐されていた。
けれど、未だ彼らの脅威が残っていないのかと問われれば、そうではない。
「まったく元気が良いっていうか、無駄にがんばってるっていうか! でもまあ、わかるよ! このボクのお行儀の良さを見習いに来たんだよね!」
「これ以上は『狂気戦艦』に突入はさせぬ!」
放たれる音波。
それは反響定位と呼ばれる彼らが持つ脅威的な音に対する反応だった。
物体と己の間に横たわる音の波。
それを感じ取って彼らはロニの攻撃を即座に察知し、それを躱すのだ。
「おっと、すごいね! そんなにすぐ動けるんだ!」
ロニは空を飛ぶ者には空で戦うのがマナーだと思ったのだ。そう、自分のマナーは完璧。どこにも突っ込まれる言われはない。
だが、迫る『コウモリ爆撃兵』たち攻撃だって第六感で躱す。
なんとなく。
そうなんとなくなのである。こっちに動いた方がいいな、という直感的な何かでもってロニは『コウモリ爆撃兵』たちの攻撃を交わすドッグファイトを行うのだ。
「さあ、いっておいで、餓鬼球くんたち!」
ロニの言葉と共に球体が飛ぶ。
それは顎を持つ球体。
解き放たれた数は空域を埋め尽くすような数だった。そう、飽和攻撃。
「これこそが神様的……ううん、猟兵流マナーに則った紳士淑女的ファイティングってものさー!」
ロニは笑いながら空域を埋め尽くす球体たちの群れと共に『コウモリ爆撃兵』たちを食らいつくし、直下に浮かぶ洋館……『狂気戦艦』を見下ろす。
すでに猟兵に酔って穿たれた壁面がある。
あそこからお邪魔しますって入れば、マナー違反じゃあないだろう。
「それにしたってただ漏れな狂気だねー。漏れまくっているのはマナー違反じゃないのかな、紳士淑女的に! でもま、いっか!」
飛び込んでしまえば、内部に何がいるのかがわかる。
見えないからこそ、恐れるのだ。
なら、飛び込んで己の眼で見てみれば、神知(ゴッドノウズ)に照らされぬものはないのだ。
ロニは躊躇いなく飛び込み、玄関先ならぬ勝手口めいた穴から声を上げるのだ。
「じゃあ、いっくよー! みんなー、さんはい、おじゃましまーす――!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『紳士淑女の作法』
|
POW : 気合と根性の一夜漬けで何とか作法を覚えて来る。
SPD : 細かいミスをさりげなくごまかす。
WIZ : 一分の隙もなく完璧なマナーと所作を披露する。
イラスト:fossil
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちは『狂気戦艦』の直上を守っていた『コウモリ爆撃兵』たちを退け、洋館そのものたる屋敷の内部に踏み込む。
外観とは裏腹なる蒸気機関が所狭しと配置され、濛々と蒸気の白煙を立ち込めさせる光景を見ただろう。やはり、『クロックワーク・ヴィクトリア』はアルダワ魔法学園の蒸気文明めいた何かを持っているように見受けられる。
そして、猟兵たちの肌を指すような狂気。
これもまたUDCアースを訪れ、事件解決に向かったことのある猟兵ならば身に覚えがあるだろう。
UDC怪物がもたらす狂気。
それが今、蒸気と共に蔓延しているのだ。
だが、それ以上に猟兵たちは驚愕する。
彼らが踏み込んだ先は、蒸気機関こそ入り込む洋館の内装であったが、まるでダンスホールであったからだ。
シャンデリアの光がきらめき、蒸気を照らす。
そして、其処に佇むはおびただしい数の『蒸気人形』たち。
猟兵たちを驚かせたのは、彼らの数ではない。彼らの形だ。ざっと分類しただけでに種類に分けられる。
即ち『男性型』と『女性形』である。
「ようこソ、おいでくだサイましタ」
「本日は、皆様のオ相手を務めさせてイタだきます」
一歩踏み出す『蒸気人形』。
たしかに人型であるとわかるが、その体躯はどう見ても通常の人間のそれではない。
『多腕』であったり『多脚』であったり。はたまた『双頭』であったり、異常に『腕が長い』ものあれば、『足が長すぎる』ものもいる。
音楽は響く。
否応なしにダンスホールには社交ダンスを行わなければならない雰囲気が充満する。
そう、此処では|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》こそが全て。
『社交ダンスのマナーに則って蒸気人形と踊る』ことが共用される。
だが、今もみた通り『蒸気人形』たちの姿は千差万別にして、いずれも人型から逸脱したものばかり。辛うじて人型に収まっているように見えても、その実全てが人間相手のマナーが通用しないように思える。
だが、これは目眩ましだ。
本質を見誤ってはならない。求められるのは『社交ダンスのマナー』である。相手が如何なる存在であっても、これを見失ってはならないのだ。
そして、それぞれの猟兵たちの前に『蒸気人形』たちが現れる。
「さア、ご一曲オドっていただケませんカ――?」
エドワルダ・ウッドストック
|ええ《Sure》、|喜んで《I'd like to》。
戦場で生まれ育ったわたくしですが、戦いしか教わってきたわけではありません。
貴種として相応しい振る舞いも学んでいるのです。
獣人であれば、姿かたちに差異があるのも当然。脚が多かろうと腕が長かろうと、戸惑うことはありませんわ。
まあ、実演経験は足りてないので未熟さを見せるかもしれませんが。
社交ダンスにおける最大のマナーは、相手を辱めないこと。
相手が蒸気人形であれ、社交の場である以上は敬意と礼節を向けて応対させていただきます。
……悪意を抱く者に災いあれ。
何でしょう……その言葉が脳裏をよぎりましたわね。
(UDCアースにおけるガーター騎士団設立の逸話)
争いばかりの世界において、社交界というものはあまりにも縁遠いものであったことだろう。
ましてや戦禍にて生まれ、戦禍に生きる者にとっては尚更のことだ。
だがしかし、と言う声がある。
そう、エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)は『狂気戦艦』の内部、洋装めいたダンスホールの綺羅びやかな光と蒸気機関が生み出し白煙の中にて一歩を踏み出す。
どうか踊ってくださいませんか。
そういうように一礼して見せるは、恐らく男性型の『蒸気人形』。
その多腕は人のカタチをしていても、人ならざるものであるように思えたことであろう。
エドワルダの前に差し出された手は幾重にも重なるようであり、いずれの腕を取るのが正解であるかを品定めしているかのようでもあった。
だが、この程度で戸惑いを見せるエドワルダではなかった。
「|ええ、《Shre》、|喜んで《I'd like to》」
彼女は微笑み、手を差し出す。
それは差し出された多腕を取るのではなく、己が手を差し出したのだという証明。そう、いずれの腕をも『取る』ことが正解なのではない。
いずれかを己が選べば、相手への非礼へと繋がる。
どうあがいても『選び取る』という行為そのものが、多腕である『蒸気人形』に対する非礼となるのならば、エドワルダは相手を『辱めない』ことをこそ優先したのだ。
故に己が、ではなく。
相手が己の手を取るまで静観する。
「お手を預からセていたダキます」
『蒸気人形』はまるで満点である、と示すようにエドワルダの差し出された手を取る。
そう、社交ダンスにおける最大のマナーは、相手を慮ること。
相手のことを考え、相手の前に立つという意味を考えること。即ち、決して理解できぬ相手を理解できぬということを理解しながら、あるがままを受け入れるということ。
「ええ、よろしく」
エドワルダはそう礼節を込めて一礼し、優雅にダンスホールにて踊る。
エドワルダは己を貴種であると定める。
相応しい所作、振る舞いを戦禍にありながら学んでいるのだ。そもそも獣人であれば、姿形に差異があるのは当然こと。
「れディ。見事ナ、まナーでした。あなタは私ノ姿を見てモ、戸惑われナかっタ」
「脚が多かろうと腕が長かろうと、戸惑うことはありませんわ」
当然である、とエドワルダは『蒸気人形』と踊りながら、次々と多腕を組み替えていく。
己の手が二本しかないからといって、相手の多腕のどれかを取ればいいというのではない。それはまるでステップを踏むように次々と握る手を変えていく。
いわば、脚元ではなく、目の前の『蒸気人形』を慮るように、気遣うようにして組む腕を変えて踊るのだ。
それはまるで優雅な花が次々と咲くようにしてエドワルダを『蒸気人形』はエスコオートしていく。
「あなたニ敬意を」
「それはこちらこそ。紳士たる貴方へ」
エドワルダは敬意と礼節を持って踊る。
そう己の胸には言葉がある。それはただの言葉であるが、今まさにエドワルダは心に感じるものとして思えた。
『悪意を抱く者に災いあれ』
それは嘗て異なる世界にて逸話として語り継がれる騎士団設立の言葉だった。
エドワルダの胸に去来した言葉は、図らずともこの狂気渦巻く洋館の中でこそ示されたのだ。
「今まさに、そう想いましたわ。悪意抱く者の敵にこそなれ。よい一曲でした」
「レでぃ。よイ旅路ヲ。アナたの道行ガ、どうカ正シからんコトヲ」
言葉は言葉。
しかし、それを感じることができたのならば、窮地を切り抜ける力となる。
エドワルダは優雅に一礼し、多腕の『蒸気人形』に見送られるようにして開いた扉の奥へと足を踏み出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
天道・あや
(さーて、いよいよ本番、メインイベントの始まり)(先のUCを解いた天道が下に着ていたのはワインレッドのパーティードレス。今日の為の一張羅、これがあたしのバトルフォーム)
(普段の彼女を知るものからしたら今の彼女はとても静かで、大人しい)(だって社交パーティーだからね!雰囲気に合わせて礼儀正しくお上品でいなきゃ!)
(そっとドレスの裾を摘まんで、軽く一礼。そして差し出されたダンス相手の手を取り、踊りを始める)
【ダンス、ブームの仕掛人、情熱、手を繋ぐ】
(相手のエスコートした動きに合わせて、脚を動かし、伸ばした手をソッと握りしめ、視線が合えば微笑む)
(相手がどうあれ、共に踊るならパートナー。信じるだけ)
ひしめくは『蒸気人形』。
その姿は多種多様にして、あまりにも人の形から逸脱したものばかりだった。いってしまえば、冒涜的とも取れるデザイン。恐怖を煽るのではなく、狂気を引きずり出すかのような造形。
常人が見たのならば、その場で卒倒するか叫ぶかである。
そして、此処に置いてそれは|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》と照らし合わせるとマナー違反である。
故に天道・あや( スタァーライト ・f12190)の姿は突入時の騒々しさからは一転して粛々としたものであった。
普段の彼女を知るのながら、それはあまりに大人しいが『過ぎる』ものであった。
解かれたユーベルコードによる変身。
次なる彼女のステージ衣装はワインレッドのパーティドレス。
今日のために選んだ一張羅であるとも言える。
彼女のドレスコードは確かに、このダンスホールに相応しいものであったことだろう。
だって、社交パーティだからね! と彼女は心の中で叫ぶ。
けれど、それは内なる声の響きでしかない
逸る気持ちを抑えるようにして、あやは軽く一礼してみせる。その所作に『蒸気人形』たちは揃って深く一礼する。
そう、此処は紳士淑女の社交場。
ダンスホールにきらめくシャンデリアの輝きが、あやの所作の一つ一つを詳らかにしていくのだ。
あやが心に念じるのは、礼儀正しくお上品であること。
そっとドレスの裾を摘んだ手を離し、顔をあげる。
すると其処にあったのは無数の眼球が埋め込まれた頭部を持つ『蒸気人形』であった。ぎょろりとした眼。その全てがあやを見つめている。
「麗しキ赤き薔薇のゴトきレディ。どウか、踊っテ頂けマせんカ」
恭しく一礼して見せる多眼の『蒸気人形』を前に、あやは止まる。
その間を見て『蒸気人形』が手を差し伸べ、それをあやは手に取る。
それはゆっくりとした動きだった。
相手の動きを見て、相手がエスコートしようという意志を感じ取る。
足を踏み出す。伸ばされた手をそっと握りしめる。
微笑む。
「つぶらな瞳ね」
「どの眼球ガお好キですカ」
「どれも。選べというのは、とてもむずかしいわ」
そう言ってあやは微笑む。
確かに『蒸気人形』の造形はどれもが狂気をもたらすものであった。恐ろしい見た目であると言ってもいいだろう。
けれど、あやにとってそれは重要なことではなかった。
だって、どんな状況であれ、相手であれ。
何処でも踊ればそこはダンスホール!ステージ!(セカイスベテデオドロウ)なのだ。なら、自分は楽しく踊るだけ。相手にも楽しいと思ってほしい。
その笑顔こそがあやの報酬なのだ。
故にバックダンサーは現れない。
けれど、それでもあやは気にもとめない。
「ドの眼球が一番カ、教えて欲しかっタのですガ……」
「それくらいどれも素敵だってこと。それに、全部の目があたしを見てくれているってことでしょう? なら、とても楽しく最高に踊っていることと同じ」
なら、この時間を良いものとしたいと思うのは『蒸気人形』もまた同じのはずだ。
そう願うようにあやはバックミュージックと共に踊り続ける。
眼の前の存在は『蒸気人形』じゃあない。
今はあやのパートナーだ。心底微笑むあやの姿に『蒸気人形』は音楽の終わりとともに手を離し、膝をついて頭を垂れる。
「レディ、真ノれディたるヲ見せてイタだきましタ」
「楽しかったよ。本当にそれだけ」
「どうかアナたの信じル道ヲお進ミください」
そう告げ『蒸気人形』はあやに手で示す。
その先にあるのは扉。恐らく最奥に繋がる道があるのだろう。それにうなずいて、あやはもう一度優雅に一礼して、膝つく『蒸気人形』に別れを告げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
ごめんなすって〜!
わたくしのお羊羹はどちら〜?
こちら〜?
あら〜?
お人形だらけですわ!
なんだが変わったお姿をしておりますわねぇ…しゅっぽしゅっぽいっておりますわ〜!
お人形の皆様〜!でっけぇお羊羹はご存じありませんこと?
おダンス?
おダンスしたらお羊羹を頂けるのですわね!
では頭を床につけてぐるぐる…ん?違いますの?
お社交ダンス?
大昔に習いましたけどもう忘れてしまいましたわ〜!
なんですお姉様?
お相手に合わせなさいと?
お社交ダンスは基本左回りですって?
そんなの楽勝ですわ〜!
へい!カモン!
力を抜いて軽やかに〜!
流れるような動きで〜!
お人形様もお上手ですわねぇ
華麗なステップですわ〜!
ソフィア・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
これは…蒸気人形のダンスホールですか…
となれば紳士淑女の作法が求められると…
私とメルヴィナは兎も角メサイアが問題ですね
基本は時計回りに踊ること、それから相手に合わせることです
幸いにも女性はリードされる側ですから身体の力を抜いて相手に任せなさい
それと羊羹の事は忘れなさい
そもそもそんなものはありません
肝心の私の方ですが…相手の姿がどうあろうと基本の礼節は変わりません
独りよがりにならないよう、相手に合わせる事です
身体はしなやかに
足の運びはなめらかに
相手から伝わる押し引き、緩急の感覚
それらをありのままに受け入れるのです
では……ええ、喜んで
メルヴィナ・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
メサイア…騒ぐのはやめるのだわ…
それは淑女では無いのだわ
そもそも羊羹なんてどこにも無いのだわ
蒸気人形だらけなのだわ…
でも見た目に惑わされてはいけないのだわ
相手がどんな姿だとしても礼儀は変わらないのだわ
そして相手も紳士淑女なのだわ
戸惑う事は無いのだわ
誰かと踊ることはとても久々だけれど…ではお願いするのだわ
自分が水になったイメージで踊るのだわ
身体の動きは相手に合わせて流れる水なのだわ
寄せて返す動きは波の動きなのだわ
私は相手のダンスに揺れ動く水なのだわ
ところで…魚の匂いがしないのだわ?
い、いえ、なんでもないのだわ…
(リヴァイアサンの巫女になってから魚の匂いが取れないのだわ…)
『狂気戦艦』の内部は洋館のような見た目とさほど代わりはなかった。
もしも、これが海上に浮かぶ戦艦であると認識していなかったのならば、なんの違和感も覚えなかっただろう。
それほどまでに『狂気戦艦』の内部、ダンスホールは綺羅びやかであり見事なものだった。
しかし、それが狂気の産物であることを猟兵であるソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は即座に理解しただろう。
彼女は王族である。
このような綺羅びやかな場など幾度と経験してきただろう。
けれど、その経験のどれもが目の前に広がる光景の捕捉にもなりはしない。
「これは……『蒸気人形』のダンスホールですか……」
居並ぶ『蒸気人形』たちは皆どれも奇異なる見た目をしていた。
多腕、多脚、双頭、異様に足の長いものや、手が長いもの、異形の獣めいた姿をした『蒸気人形』さえあったのだ。
そして、この場を切り抜けるには|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》に従わねばならない。
つまり、『社交ダンスにおけるマナーに則って蒸気人形と一極踊る』ことである。
「私とメルヴィナは兎も角」
ソフィアは妹であるメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)のことは心配していなかった。彼女もまた王族として恥ずかしくない教育を受けている。
何も問題はないだろう。
けれど、この場にやってきたのは三人。
そう、もう一人いるのである。超特大の問題児が。
「ごめんなすって~! わたくしのお羊羹はどちら? こちら~? それともあちらでして~?」
「メサイア…‥騒ぐのはやめるのだわ……」
それは淑女でもなんでもないのだわ、とメルヴィナがメサイアを抑えようとするがちょっと無理であった。房総特急機関車とメサイアは急には止まれないし、マグロとメサイアは止まったら死んじゃうのである。言い過ぎた。
「そもそも羊羹なんてどこにもないのだわ」
「そんな!? ってあら~? お人形だらけですわ! なんだか変わったお姿をしておりますわねぇ……しゅっぽしゅぽいっておりますわ~!」
あら~! とメサイアの瞳が輝いている。
「メサイア、良いですか。これより行われるは社交ダンス。基本は時計回りに踊ること。それから相手に合わせることです」
「おダンス?」
メサイアは首を傾げる。
なんでダンス? 此処には羊羹を求めてやってきたのだ。なんでダンス?
ぴっこーん! そうか、とメサイアは合点がいったと手を叩く。
「おダンスしたらお羊羹を頂けるのですわね! へいほー!」
チェケラ!
とメサイアはその場に倒立してヘッドスピンを披露しようとしてソフィアとメルヴィナに取り押さえられる。
「メサイア! やるのは社交ダンスですよ!」
「違うのさわ、メサイア。それはブレイクダンスなのだわ、ヘッドスピンなのだわ! どう考えても淑女のやるダンスではないのだわ!」
「お社交ダンス?」
「習ったでしょう! 何度も私と練習したことを忘れましたか!」
メサイアは神妙な顔をした。
遠い日を思い出した。ソフィア関連の思い出をひっくり返す。尻叩きしか出てこなかった。
「……もう忘れてしまいましたわ~!」
「よいですか、お相手にお任せしなさい。良いですね、力を抜いて相手に任せなさい。それと羊羹のことは忘れなさい。そもそもそんなものはありません」
「なんとですわ~!? でもまあ、そんなこと言って用意してあるんでしょう? わたくしわかっておりますわ~! さあ、へい! カモン!」
いぇいいぇい! と乗り気なメサイアの口元をメルヴィナがとっさに抑える。
そこに三体の『蒸気人形』が現れる。
「お手ヲ、レディ」
「私たチト踊っテいだけますカ?」
「オ美しイ貴女ト是非」
エルネイジェ王族の姫君達の前に膝を折る彼らの手へと三人の皇女は己の手を差し出す。メサイアは若干勢いがすごかったが、まあ及第点だろう。
だが、恐らくメサイアが最も『蒸気人形』の動きに順応していた。
すでに王族としての教育で受けたダンスマナーはすっぽり抜け落ちているが、しかし、ソフィアの助言はしっかりと染み込んでいたのである。
いわばスポンジ。
メサイアはスポンジなのである。吸収力が凄まじいが、ところてんみたいに吸収した分だけすっぽぬけるのだ。
この場を切り抜けるだけなら、なんとかなってしまうのだ。
「お人形様もお上手ですわねぇ」
「見事ナ、それデいて完璧な所作でござイます」
そんなメサイアのダンスにソフィアは気もそぞろであったが、しかし彼女もまた皇女である。見事な所作でもってソフィアは『蒸気人形』の奇妙に長い腕に合わせて踊るのだ。
「素晴らシイ」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
「音楽のリズムは貴方様のタめにアルと言えマしょう」
「貴方様のリードのおかげでしょう」
ソフィアは微笑む。視界の端でアクロバットに『蒸気人形』と踊るメサイアに本当に気が気でないが、しかし、ソフィアは見事と言いようが無いほどに完璧に踊って見せていたのだ。
そして、メルヴィナは鴉の獣頭の『蒸気人形』と踊る。
翼が腕となっているし、嘴の鋭さも剣呑である。だが、メルヴィナは変わらなかった。
「恐ろシくはアリませんカ」
「いいえ」
「デスが、戸惑っテおられるように思エます」
「誰かと踊ることがとても久方ぶりで……」
「光栄でス。美しキ姫君」
その言葉に微笑んでメルヴィナは踊る。流水の如き動きで、まるで彼女は大海の波のように穏やかに踊り続ける。
それは相手に寄り添い、揺れ動く水そのものだった。
あまりの見事さに周囲にて紳士淑女足るかという視線を向けていた『蒸気人形』から感嘆の声が聞こえる。
「ところで……」
メルヴィナは抱き寄せた『蒸気人形』に問いかける。
頬を赤らめているのは、何故か。
「魚の匂いがしないのだわ? い、いえ、なんでもないのだわ……」
そう、メルヴィナは『リヴァイアサン』の巫女となってから魚の匂いが取れないことをキにしていたのだ。頬を赤らめたのは、そのためだろう。
だが、鴉頭の『蒸気人形』は頭を振る。
「イイえ、微塵も。わたシにとってあなタは高嶺ノ花に等シく。」
彼にとって嗅覚とは存在しないもの。そして、メルヴィナたちが『蒸気人形』を紳士として暑かったのならば、彼らもまたそのように振る舞うのだ。紳士が淑女の香りを善き香りと言わぬことなどない。
マナーとは即ち、他者を貶めぬためにあるもの。
不快にさせぬためならば、彼らはその言葉を否定するだろう。
そして、曲が終わる。
『蒸気人形』がメルヴィナの前に膝をつく。
「美しキ、れディたちよ、どうかその道行に幸オオからんことを」
それと同時にメサイア、ソフィアたちの前に膝つく『蒸気人形』たち。
彼らは認めたのだ、この狂気満ちた戦艦の奥底に続く扉をくぐることを。彼女たちは最後まで淑女として在り続けた。メサイアはなんていうかこう、その破格なプリンセスなので、その……となるアクロバティックなダンスであったが、相手が『蒸気人形』であったからこそ、許されている部分があった。
その点、ソフィアとメルヴィナは完璧だった。
文句のつけようがない。
「それではごきげんよう」
ソフィアとメルヴィナは一礼して最奥へと続く扉の前で一礼する。
「わたくし楽しくなってきましたわ~! もう一曲……」
「メサイア」
その一言にメサイアは即座に一礼する。
「ごめんあそばせ――!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
礼儀作法とダンスは習い事として習ってましたので人並みには踊れますけれど。
ただこの衣装はどうかと思いますわね、んー……手持ちで何とかとなるとメイド服でしょうか。
ドレスコードがそこまで五月蝿くないことを願ってユーベル・コードで早着替えですわ。
ホールに出ましたら声掛けされるまで待ちましょう。
最近は女性からの声掛けも問題ないと言いますけどここがそうとは限りませんし。
声掛けされましたら喜んでとエスコートされます。
相手のリードに合わせて踊りながら他に踊ってる方にぶつかったりしないよう気をつけますわ。
ミスしたなら素直に謝り相手がミスしたならお気になさらずと流しましょう。
踊り終えましたらお礼を忘れずに。
奇異なるダンスホールが広がっている。
此処は『狂気戦艦』の内部だ。確かにその姿は洋館そのものだった。けれど、内部までこのように洋装の綺羅びやかささえあるとは思ってもいなかった。
どこまでも広がる濛々たる白煙。
蒸気機関が張り巡らされているからだろう。
どこか狂気を感じるのは、『蒸気人形』と動力部にUDC怪物がいるからだ。
「人並みに踊れますけれど……」
イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)はなんとも言えない表情でダンスホールに並び立つ『蒸気人形』たちの奇異なる姿を見つめる。
彼らは全てが異形だった。
多腕であること、多脚であること、そればかりから腕の長さが一定でなかったり、足が不揃いであったりと、人型であることから逸脱していたのだ。
人型ではないというのならば、即ちそれは人のマナーもまた通用しないのではないかということである。
もしも、此処におけるマナーとうものが『他者を辱めぬもの』であるというのならば、異形である『蒸気人形』たちを前にして戸惑うことこそ最大のマナー違反であったことだろう。
恐らく、このダンスホールはそれを狙っているのかも知れない。
故にイリスフィーナは己の着衣を瞬間装着(シュンカンソウチャク)によってメイド服に一瞬で着替える。
この|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》が適用されるダンスホールにおいて、彼女のようなメイドは一般的とも取れた。
また同時に彼女をダンスに誘うことは本来紳士淑女としてはなかったかもしれない。
ダンスへの参加者のドレスコードとしては不十分であっても、この場にいること事態には否定的ではない姿だった。
「思った以上にドレスコードにはうるさいのですわね。完璧な紳士淑女たれ、ということですか」
とは言え、此処で一曲踊らねば扉の向こうにはいけない。
イリスフィーナは考える。
最近では女性からダンスの申し出をすることは問題ないという認識がある。だが、此処は『狂気戦艦』である。
何がきっかけとなるかわからない。
だから、イリスフィーナは座してまつ。
声をかけられるまで静かにまつ。たとえ、壁の花となろうとも関係ない。こうすることが最も紳士淑女としてのあり方だと思ったからだ。
「麗しキ壁のハナのきみ」
呼びかけられてイリスフィーナが顔をあげると、そこにあるのは己の倍以上の体躯を持つ『蒸気人形』の姿があった。
声からして男性型であるとわかる。
まるで怪物めいた姿だった。
だが、イリスフィーナは微笑んで一礼する。
「喜んで」
その言葉に巨漢の『蒸気人形』は膝をつく。膝をついてもなお、その巨体はイリスフィーナを超えるものだった。
けれど、イリスフィーナは差し出される手に己の手を重ねる。
別段、此処の『蒸気人形』が猟兵たちを害することがないのは、すでにわかっている。たどたどしい踊り。
ステップも巨体故に踏みづらいのだろう。
「たくましいお体ですわ」
「スまなイ。不慣レで……」
「いいえ、お気になさらず。今は時を忘れて楽しむのがダンスの最も大切なことですわ」
そう言ってイリスフィーナは微笑む。
パートナーのミスを責めることはない。
ただ、微笑んでいればいい。壁の花であった己を認めた者が目の前にいる。ただそれだけでいいのだと言うようにイリスフィーナの微笑みを巨漢の『蒸気人形』は満足げにうなずいて、曲の終わりにまた膝をつく。
「きみノ道行に幸多からんコトを――」
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
不束者ですが、それでも良ければ、喜んで。
相手の誘いにのる。うまく笑えているだろうか?
社交ダンス…難しく考えなくていい。これも戦いだ。
不慣れな事も、それでも精一杯、頑張る事も、告げてしまおう。
最初から自分が上手くできない事など分かりきっている。
先んじて相手に打ち明けてしまった方が、お互いにとって良い筈だ。
【学習力】相手の先導に【瞬間思考力】で合わせ、動きを学び取る。
そして自分も、相手に甘えているだけではいけない。
学びを活かし、蒸気人形がそうしたように相手を楽しませようと努力しよう。
これは戦いだ。平和な戦いだ。だから自分は笑顔でいられる。
平和を知れるのは嬉しいことだから。頑張ろう。
不安があった。
何が、と問われたのならば目の前のダンスホールの光景である。誰もが踊っている。優雅に、それこそ美しく。
目を奪われるような絢爛舞踏。
その光景を前にしているからこそ、不安を覚えるのは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)だった。
自分にできることは戦うこと。壊すことだ。
間違っても踊ることではない。
だからこそ、この関門とも言うべき難題を突破しなければならないのだ。
とは言え、ダンスの経験はない。
作法もよくわからない。何をどうすればいいのかも。だからこそ、小枝子は己の前に膝つく男性型の『蒸気人形』が手を差し伸べた時、飾らず偽らず告げたのだ。
「不束者ですが、それでも良ければ、喜んで」
不器用ながら小枝子は微笑んでみせた。
それが精一杯だったと言われたのならば、そうだおう。けれど、『蒸気人形』はゆっくりと面を上げる。
そこにあったのは包帯が巻き付いた顔だった。顔がない。
けれど、他の『蒸気人形』から比べると人型に近い。
「れデぃ。アナタにそう言ワせたのは、私の罪ダ。ドウか、非礼ヲお詫びサセテ欲しイ」
完璧なる紳士。
それが『蒸気人形』たちの化したこの場における|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》であるというのならば、彼らもまたそのルールに則っているのだ。
うまく笑えているだろうかという小枝子の不安は、それで氷解していくようだった。
「いえ、不慣れなことはかわりありません。それでも精一杯お相手を務めさせて頂きましょう。頑張ります」
「必ズや、アナたをこの場ニおける最高ノ花とシて」
リードするように小枝子の手を引く『蒸気人形』の手は暖かった。
内捻する蒸気機関のせいだろうか。
小枝子はパートナーたる『蒸気人形』に身を任せる。
いや、学習しているのだ。相手の先導あればこそ学ぶことは数多あるのだ。瞬間的に思考し、次なるステップを学習した事柄から推測する。
合っていればそれでいい。
間違っていたとしても、それを咎められることなどない。
「こちラに」
「ええ、わかっております。こう、でしょうか?」
「素晴らシい。コノ短期間で、モウここまで上達すルとは」
笑えているだろうか。楽しいと笑えているだろうか。包帯を巻き付けた頭部を持つ『蒸気人形』の表情は伺い知れない。
けれど、その下にある表情が笑ってくれていればと小枝子は思う。
己を受け入れてくれたように、『蒸気人形』もまた受け入れたいと思う。
これは戦いだと思う。
平和な戦いだ。だから、常なる戦いとは違って、自分は笑顔を浮かべることができる。
平和を知りたいと思う。きっとそれは嬉しいことだ。
だから、頑張ろう。
頑張って、平和の先にあるものを掴みたいと思う。
握りしめた『蒸気人形』の温かさを知る。きっとこれらは『何者にもなれなかった者』たちなのだろう。
わかる。
だからこそ、小枝子は一曲の終わりに一礼して見せる。
「ありがとうございましたであります」
「レでぃ。それハ此方が」
深々と一礼する『蒸気人形』は示す。最奥の扉の向こう。その先にこそ『狂気戦艦』の動力部があるのだろう。
「アナタの道行がアナタの求めルものでありますヨウに――」
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
社交ダンスかぁ。
うるうだってちょっとくらいは習った事あるよ、ダンス!
真剣に学んだわけじゃないし、ペアのダンスは一人で練習するのも難しい……でも大丈夫!
スマホで情報収集もしたし、求められるのは上手にダンスする事じゃなくてマナー。
要は自分も相手も、楽しく気持ちよく踊れればいいはず。
うるうはキャバリアのテルビューチェとだって友達なんだよ、蒸気人形とだって仲良く踊れる!
それに手を取ってウィンクすれば、誰だってうるうにめろめろだもん。
きっと人間にはない部位や特徴を使って上手にリードしてくれるよね!
足を踏んでも笑い合って許し合って、念動力でアップをサポートして……どう?もう一曲踊っても良くってよ!
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は『狂気戦艦』の内部、そのダンスホールを前にして思わず呟いていた。
「社交ダンスかぁ」
確かに彼女はちょっとくらいは習ったことがあるのだ。
でも真剣に学んだわけではない。言ってしまえば、義務教育で教わったからなんとなく一通り触った、くらいのものだろう。
言ってしまえば不安だったのだ。
けれど、それでも大丈夫だって自信を持って前に進む。
すでに社交ダンスにおけるマナーのいくつかは頭に入れている。
そう、この場、ダンスホールにおいて求められているのは|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》である。
ダンスの技術ではない。
あくまでマナーなのである。ならばこそ、潤はうまく踊ろう、という思考を捨て去る。
そう、それは雑念に過ぎない。
恥をかかないように、と思う時点ですでに、このダンスホールの罠に嵌ってしまっているのだ。ならばこそ、潤は一歩を踏み出す。
その堂々たる佇まいに『蒸気人形』が現れる。
膝を折ったのは潤を一人のレディとして認めているからだろう。
「私ト踊って頂ケませんカ」
「喜んで!」
ぱちっとウィンクしてしまう。それはユーベルコードに昇華したものであったが、潤にとって、それは自然な仕草だった。
『蒸気人形』は、その所作に雷に打たれたかのようにふるえた。
そう、彼女のユーベルコードでメロメロになってしまっていたのだ。
「麗しキ姫君。アナたのためならば」
『蒸気人形』のリードによって潤はダンスホールに躍り出る。ステップを踏んで一気に中心に飛び出し、くるり、くるりと彼女の体が舞う。
自然と笑ってしまう。
潤はキャバリアとだって友達になれたのだ。
なら、『蒸気人形』とだってそうなれるはずだ。仲良く踊ることができる。たしかに『蒸気人形』は人型から逸脱した姿をしている。
潤と踊る『蒸気人形』だって辛うじて人型であるだけで、その手足のバランスはちぐはぐだ。踊りづらいだろう。けれど、それでも潤は楽しいって笑う。
その笑顔こそがユーベルコードであったのかもしれない。
「あア、なんト楽しい時間でショウ」
「うるうも楽しいよ!」
足を踏んでも笑ってしまう。互いに互いを許し合って、笑って踊る。
それはこの場における最大のマナーだった。楽しむこと。楽しませること。互いを思いやること。
それこそが、最も大切なマナーだった。
だからこそ、潤は笑って念動力でお互いの体を包んでサポートする。すると『蒸気人形』の奇異なる機械の部位が潤のステップを踏み外した足を優しく持ち上げて難なく正しい位置へと戻してくれる。
互いの優しさがあればこそ、成り立つものであった。
曲が終わり、潤は大満足したように笑って。
「どう? もう一曲踊ってもよくってよ!」
その言葉に『蒸気人形』の体が揺れる。笑ってる、と潤は思っただろう。
「それハ、トテも魅力的でス。ですが、アナタにはやるべきコトがある。そうでショウ、レでぃ」
そう言って彼が示すは、最奥の扉。
その先にこそ『狂気戦艦』の源がいる。潤は頷く。
「それデハ、良キ道行となりマスよう――」
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ダンスです?
ステラさんは得意そうですよね。なんでもできますし……。
わたしはダンスの伴奏なら得意なのですけど、
自分で踊るとなりますと、経験はないですね。
ここは、わたしは演奏役ということには……ダ、ダメですね?
わかりました。
ならステラさん、わたしにとっくんしてください!
わたし音楽家ですし、リズム感はいいと思いますから、
ステップとかそういうの教えてくださいー。
ステラさんとのとっくんなら、わたし、いけると思うんです!
そして、基本を教えてもらったら、光の勇者のパワーで押し切りますので!
えと、わんつー、わんつー? 右左右?
ステラさん、それボクシングじゃないですか!?
真面目にお願いしますー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
くっ……三半規管にダメージが
ルクス様は敵だった?
|紳士淑女の作法《ヴィクトリアン・ルール》ですか
これ私の勝ち確では?
え?だって私のメイド服、ヴィクトリアンスタイルですし
というわけでそこの|ルール・ブレイカー《音の破壊神》
ちゃんと踊りましょうね
特訓……まぁ人形が待ってくれるなら
ステップが基本ですよ足がクロスしても転ばないように
ワン、ツー……え?殴って欲しい?(頭)大丈夫です?
いえ、私は大変に真面目ですが?
まぁいつもの理不尽で押し通ると良いと思います
お待たせしました
それではメイドの御業お見せしましょう
いかなる相手とて恥をかかせるような真似はしませんので
ええ、メイドに不可能はございません
視界が揺れている。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は『狂気戦艦』に突入する前の戦いにおける三半規管へのダメージにふらついていた。
それはルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)のはなった演奏、耳栓や遮蔽物などまるで意味をなさぬ凄まじいユーベルコードに寄るものであったが、おかしいな、あれって味方には回復とかそういうバフがかかるものであったのだが。
なんか知らんがステラはダメージを受けていた。
演奏そのものがダメなのか。
いやまあ、それは今は置いておくことにする。
細かいことを言い出せば、あれ? ルクスってもしかして敵だったのかなー? とかそんな思考になってしまうからだ。
とは言え、目の前のダンスホールは楽勝だとステラは思っていた。
「|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》ですか。これ私の勝ち確では?」
「たしかにステラさん得意そうですよね。なんでもできますし……」
それはルクスも同意するところだった。
黙っていたら有能メイド。それがステラである。黙ってなかったら、その、となるのが残念であるが。
ともあれ、ルクスはダンスの伴奏ならできるんだけどなーって思っていたが、すでにダンスホールに鳴り響く音楽は居並ぶ『蒸気人形』たちによって奏でられている。
演奏席は満席御礼。
勇者の出番はないようである。
そして、この場を切り抜けるのは、猟兵達は一曲踊らねばならない。それも『社交ダンスのマナーに則って』である。
「ここは、わたしは演奏役でどうにか……」
「無理でしょうね。というか、ルクス様、|ルール・ブレイカー《音の破壊神》なのですから、大人しく踊っていたほうが身のためですよ」
「今、さらりと破壊神って聞こえた気がするんですが!」
「きのせいですよ」
だがしかし、ルクスは不安だった。経験がないのだ。伴奏ならいくらでもできる。得意だし。本当?
自分で踊る番になるととたんに不安になるのだ。
「わ、わかりましたよぅ。で、でもステラさん、わたしにとっくんしてください!」
ほら、わたしってば音楽家ですからリズム感はいいんですよ、とルクスは経験不足をカバーするためにステラに特訓を申し出るのだ。
「特訓……まあ、彼らが待ってくれるのなら」
その言葉に『蒸気人形』の一体が頷く。
「待チますトモ。れディ。麗しき、紫の君」
「それではお言葉に甘えて。いいですか、ルクス様。ステップが基本ですよ。足がクロスして転ばないように」
「は、はい。えと、わんつー、わんつー? 右左右?」
「ワン、ツー」
二人はダンスホールの端でダンスレッスンである。ステラの教え方はよかった。けれど、ルクスはどうしても頭がこんがらがってしまう。
クロスでワンツー。
右左。えっと、クロスカウンター? ジャブとストレートのコンビネーション?
あれ?
「これってボクシングじゃないですか?」
「え、殴って欲しい? 大丈夫です?」
頭。とステラの言葉にルクスは憤慨する。真面目にして。
「私は大変に真面目ですが」
嘘だぞ。
ちょっとからかってるぞ、これ。
そんなこんなで二人はダンスレッスンを終える。ルクスはなんていうか、始まる前からげっそりしているが、手を差し伸べられた『蒸気人形』はステラより優しかった。
それはこの場が『紳士淑女の作法』に支配されているからかもしれないが、それでもステラのスパルタを経験した後だと、とても暖かいものに思えたのだ。
「ステラさん、わたし踊れてますよ!」
「いいですから、集中してください。紳士淑女たれ、ですよ……お待たせいたしました」
「イいエ。それデは」
ヴィクトリアンスタイルのメイドは恭しく一礼して手を取る。
優雅な曲が始まる。
『蒸気人形』と踊る最中、それはどこか楽しいものだった。
きっと『蒸気人形』たちは『何者にもなれなかった者』たちなのだろう。だから、雑多な種類がいる。どれもが同じ形はなく。
多くが不完全なカタチをしている。欠けていたり、多すぎたり。
そういう者たちと踊ることは困難だったことだろう。けれど、ステラはルクスと共に交錯するようにしてダンスホールで踊る。
「ええ、メイドに不可能はございません」
それはダンスホールに咲く二つの花。
完璧なダンスパートナーを演じた二人は、開かれる扉まで『蒸気人形』にエスコートされれる。
「善キ旅路ヲ。れディ。その道行が明るカらんコトを――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジークリット・ヴォルフガング
●POW【悪友】
さて、一難去ってまた一難とは言い難いが、また難儀なお題が出されたものだ
だが、私とて社交場の嗜みはそれなりに積んでいる
こんな事もあろうかと駅前の社交ダンス教室で嫁入り修行を積んだ私に掛かれば…orz
まぁ、マナーに厳しければこういう事があるだろうさ
良いところにステラが助け船を出してくれたので、少し待っておれよ?
ふむ…私が駅前の教室で教わったのとはまた違うのか
どこでこれを習ったのだ…本格的なお茶会も楽しめるヴィクトリア王朝式社交ダンス倶楽部、な(圧倒的女子力の差に泳ぎ目
いいさ
それはそれでこれはこれ
今教わった事を忘れず初心に帰って、Shall we ダンスだ
ステラ・フォーサイス
●WIZ【悪友】
さーて、ジークが切り拓いだ侵入口から侵入完了
なんであたしも居るのかって?
それはジークだけだと、いやーな予感はするからね
ちょっと遅れて来たけど…うん、予感は的中
あれはコテンパンにダメ出しされて打ちのめされたって感じだね
ダメダメ
こういうのはTPOに応じたマナーや作法って物があるんだよ?
はい、お手をお取りくださいませお嬢様(どやぁ
付け焼き刃なジークに社交ダンスの真髄って奴を叩き込んでクイック、クイック、スロー
そうそうそんな感じ
じゃあ、教えたとおりに力を抜いて踊ってみて
あたし?
この蒸気人形の構造とか仕組みがすっごく興味あるし気になるから、調査がてらここに残ってるよ
じゃあ、頑張ってねー
「さて、一難去ってまた一難とは言い難いが、また難儀なお題が出されたものだ」
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は頭を悩ませる。
そう、『狂気戦艦』の内部へと突入したまではいい。
オブリビオン部隊をなぎ倒し、その洋館そのものたる壁面から踏み込んだのだ。
だが、そこは狂気満ちるダンスホール。
『蒸気人形』たちは『何者にもなれなかった者』たちの成れの果てであろう。
彼らは多くが欠損していたり、手足が多かったり、一部が大きかったり短かったりとバランスを欠くものたちばかりだった。
そんな彼らをして『社交ダンスのマナーに則って一曲踊る』ことが定められた|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》であるというのだ。
とは言え、ジークリットは自信があった。
たしかに難儀なお題である。
けれど、こう見えてジークリットは社交場の嗜みをそれなりに積んでいるのだ。
どこからその自信があるのかなーってステラ・フォーサイス(帰ってきた嵐を呼ぶ風雲ガール・f40844)はジークリットの後ろからついてきていた。
いや、なんで此処にいるのかと問われたのならば、なーんか嫌な予感がするからである。
ジークリットが自信満々なところとか、特に、とステラは思っていたのだ。
「こんなこともあろうかと駅前の社交ダンス教室で嫁入り修行を積んだ私に掛かれば……」
「いやいやダメダメ。何いってんの」
「何?」
「どう考えても俄仕込みの、自称マナー講師が打ち出した新機軸過ぎるマナーに毒されてるよ」
ステラはジークリットの意気揚々とした立ち振舞に不安を覚えて、彼女の肩を掴んで引き戻す。まだ早い。ステイ。そういうようにジークリットをダンスホールから引きはがす。
「いい、ジーク。こういうのはTPO……タイム・プレス・オケイション! 時と場合によるってやつだよ? 本当にわかってる?」
なのに、その格好はなんだっていうの、とステラはジークリットの姿を指し示す。
ゴツゴツの武装である。
ドレスコードってやつがあるでしょ、と引き止めたのだ。
「む、たしかに。だが、マナーに厳しければ……」
失敗だってあるだろうさ、とジークリットはあっけらかんとしている。
「だから、それじゃだめなんだって。付け焼き刃なマナーだったら意味はないんだよ。求められているのは完璧な紳士淑女なんだからさ。はい、着替える」
「ま、待て待て早着替えでも」
「さんいはい。いいから」
あっという間にドレスに着替えさせられるジークリット。それを見てステラは満足げである。
「いい? まずはその付け焼き刃をどうにかしてあげるから。はい、お手をお取りくださいませお嬢様」
どっやぁ。
ステラのドヤ顔にジークリットはなんとも言えない顔になる。
「どこでこれを習ったのだ……」
「うん? ダンス倶楽部でだよ。こんなの当たり前じゃん。はい、クイック、クイック、スロー。そうそうそんな感じ」
ステラのリードによってジークリットはすぐさまダンスマナーとステップを覚え込まされていく。だが同時にジークリットはステラの圧倒的女子力に目が泳ぎっぱなしである。残念美人である。
「は、じゃあ、教えたとおりにね。力を抜いて踊るんだよ。ほら、もう『蒸気人形』来てるよ。なんか小さな子供型みたいだけど」
ステラはジークリットのもとにやってきた『蒸気人形』が男性型なれど、子供のような小さな少年みたいな体格をしていることを示す。
なんとも、とジークは思ったかも知れない。
だが、ここで求められるのは『紳士淑女』であること。
そこに体格の差など関係ない。
「いいさ。それはそれで、これはこれ。相手がどんな体躯であろうと変わらないさ。お前に教わったことを忘れずに」
「そう、初心ね」
「ああ、Shall we ダンス?」
「こチらコソ、です。美しキ姫」
少年型の『蒸気人形』が表情こそ見えないものの、笑ったように首を傾げて見せる。ジークリットの手を取るようにしてダンスホールにステップを踏みながら踊りだす。
それに釣られるようにしてジークリットは踊る。
傍から見ても踊れているな、とステラは満足そうに頷く。
「それにしても」
彼女は踊らない。どうやら、この蒸気機関に興味があるようだった。
「お前は踊らないのか?」
「うん、あたしは此処の仕組みに興味がすっごくあるからね! 調査がてら残ってるよ」
「わかった。十分に気をつけろ」
ジークリットの声にステラは頷く。
「あたしはいいからさ。眼の前の小さなパートナーに集中しなね」
ステラが指で示す先の『蒸気人形』にジークリットは微笑む。体格差はあれど、これも悪くない。
踊りづらい、とかそんなことは関係ないのだ。
お互いに楽しい時間を。
それこそが、この場における最大のマナー。ジークリットは一曲踊り終えると息を吐き出す。
慣れぬドレス姿は思ったより体力を消耗したようだった。頬を伝う汗を『蒸気人形』がハンカチで拭う。
「善キ時間をありがとウ。次なル扉の先にあっテも、あなたニ幸いがアりまスようニ」
そう言って少年型の『蒸気人形』はジークリットを見送り、ステラは興味深そうにその場にとどまって周囲の蒸気機関を調査するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎
んもー急に踊れだなんてドレスコードは勘弁してくれるー?
わーいありがとー!
●楽しく!華やかに!
●UC『神知』使用
【ダンス】は大好きだけれどいつものボクはリード役!
でも今日はちゃんと相手のペースにも合わせてあげよう!
なにせボクは紳士だからね!
ほらほら、キミの背丈が高ければキミがかがんでボクが背伸びをして手を取り合おう
背丈が低ければその逆で!
相手に合わせて面白みを引き出していかなくっちゃ
手と手を取り合って、くるくるまわって、ダンスは二人でなきゃできない創作芸術なんだからね
見るものを楽しませればボクもキミも大満足ってものさー
ありがとー!楽しかったよー!じゃあねー!
猟兵達に課せられた|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》は『社交ダンスのマナーに則って一曲踊る』ことであった。
眼の前に居並ぶは多種多様な欠損や異形を持つ『蒸気人形』たちであった。
彼らを前にしてマナーを守りつつ踊り切る、というのは難しいことであっただろう。それに狂気渦巻くダンスホールは、それだけで精神を蝕むものであったかもしれない。
だからこそ、此処では完璧な紳士淑女たることを求められるのだ。
それは即ち、ドレスコードもまた同様であったことだろう。
「んもー急に踊れだなんてドレスコードは勘弁してくれるー?」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思わぬ展開に戸惑っていた。
だが、それを聞いた『蒸気人形』は恭しく一礼すると、ダンスホールの脇にある一室を示す。それはウォークインクローゼットとは言えないほどの一室であった。
ずらりと並ぶ紳士服やドレス。
つまり、此処でドレスコードを己で見繕わなければならないらしい。
「わーいありがとー!」
とは言え、ロニの瞳はユーベルコードに輝いている。
アートに関する技能以外の全てを底上げする神知(ゴッドノウズ)によってダンスは問題なく行うことができるだろう。
ドレスコードだって知識があれば、そつなくこなすことができる。
とは言え、ロニのダンスの好みは社交ダンスのようなしっとりしたものではなく、きっとブレイクダンスのようなものであったかもしれないが、できないことはないのである。
「よーし、今日のボクは紳士だからね! あ、いやいつも紳士だけど!」
相手のペースに合わせてあげないと、とロニはダンスホールの壁に咲く花のようになっていた女性形の『蒸気人形』の前に躍り出る。
「良ければ一曲踊って頂けませんかー?」
「わたクシでイイのですカ?」
「キミがいいんだよ! さあ、お手をどうぞ!」
そう言って異形の女性形『蒸気人形』をロニはダンスホールの中心にリードする。己よりも背が高い『蒸気人形』であってもやることはかわらない。
背丈が違うのならば、手を取り合えばいい。
いつだって人のカタチは同じとは限らない。なら、どちらかに合わせればいい。できるものができないものを補う。
そうして人間というのは生きていくものであるのだから。
それに、とロニは思う。
どうせ踊るのならば、相手の面白みを引き出していかなくちゃ、と。
「さあ、こっちこっち。ステップステップ」
くるくる回るようにロニと『蒸気人形』は踊る。
「ダンスは二人でなきゃできない創作芸術なんだからね。ボクたちだけが楽しんじゃダメなのさ。見ているみんなを楽しませなきゃ」
そうじゃなきゃ、自分も満足できないとロニは『蒸気人形』を引っ張り回すようにして踊る。
それはめくるめく夢のような世界であったことだろう。
誰をも巻き込む楽しい宴。
それがダンスホール。
踊っていない者がいるなんて許せることではない。ロニは次から次に『蒸気人形』たちを巻き込んで踊っていく。
彼にとって最大のマナー違反。
それは楽しんでいないものをほうっておくこと。
だから。
「楽しもうよ。みんなでね!」
そう言ってロニは多くの『蒸気人形』を楽しませ、ダンスホールを笑い声で満たして、最奥たる扉の向こうへと踏み出す。
「ありがとー! 楽しかったよ! じゃあね――!」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『蒼の王』
|
POW : 冥宮楽土
戦場全体に、【自身の複製体を無尽蔵に生み出す水晶】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 蒼籃氷晶
非戦闘行為に没頭している間、自身の【負傷を癒そうと活性化する寄生体】が【敵を分断する水晶の迷宮を構築。傷が治る迄】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : 晶瑩玲瓏
攻撃が命中した対象に【結晶化状態】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【近づく程効果を増す結晶化の呪詛】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナハト・ダァト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
異形たる『蒸気人形』たちとの一曲を終えた猟兵たちは『狂気戦艦』の最深部に繋がる扉の先へと踏み出す。
狂気の純度が一気に上がったかのように感じるほどに肌をさす空気の剣呑さが増す。
濛々たる白煙。
蒸気が立ち上っているのは、この先が『狂気戦艦』の動力部であることを示していた。この先にあるUDC怪物こそが『狂気戦艦』の原動力。これを打倒することで初めて撃沈することができるのだ。
「来たか」
短い言葉が響く。
巨大な機関部を背に、蒸気の白煙を纏うようにしながら一人の男が振り返る。
その体躯のあちこちからは青色のおぞましき怪物の如き何かがうごめいている。
『蒼の王』と呼ばれるUDC怪物は、猟兵達が現れたことに特別驚いた様子を見せていなかった。
来るであろうということは予測できていたと言わんばかりの声色。
そして、彼は言う。
「俺は定める」
何を、と問いかけるより早く猟兵たちは理解するだろう。
|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》である。先程のダンスホールでは『社交ダンスのマナーに則って一曲踊る』ことがルールだった。
だが、此度は違う。
「『戦いに際しては心に』『祈りを』。それが『紳士淑女の作法』だ。俺は祈り続ける。戦いにありながら、それができるのが俺だ。そういうものだ。だが、お前たちはどうだ、六番目の猟兵。お前たちは『戦いに指しいては心に』何を抱く。『祈り』ではない何かであったというのならば、お前たちは俺を前に屈するしかないだろう」
そうなっている、と『蒼の王』は告げる。
言わなくてもいい情報だったはずだ。ルールを開示しなくても、そのまま猟兵を圧倒できるだけの力を『蒼の王』は持っていたはずだ。
なのに、開示した。
つまり。
「俺は望んでいる。お前たちが『戦いに指しいては心に』『祈り』を抱くことを。戦いは無為だ。だからこそ、その先にあるものを見据えなければならない。俺は『祈り』続ける。お前たちがたとえ、俺の前に膝を折るのだとしても」
振るわれる青い何かが一斉に猟兵たちへと襲いかかる。
それはルールによって超強化された圧倒的な力の奔流だった――。
エドワルダ・ウッドストック
……すぅ。
呼吸を入れて、心を落ち着かせましょう。
ふぅ……。
ルールを開示した蒼の王。彼の誠意に応じるには、怒りや殺意といった動機は不相応です。
というか普段通りの心情で突っ込んだら負けると言われてますので、切り替えなくては……!
気を落ち着かせるまでは防御に専念し、コンバットナイフを駆使して青い何かを凌ぎますわ。
……貴方は高潔なのでしょう。オブリビオンであっても、戦いの後を見据えている。
それでも、わたくしたちは抗いますわ。その先にある、子どもたちの未来を切り開くために。
祈りましょう。斯く在れかし。
ナイフの刃に祈りを宿し、蒼籃氷晶を断ちましょう。
攻撃を遮断する、その性質を無効化して、攻めに転じますわ。
迫るは狂気。
それだけははっきりとわかるものだった。
少なくともエドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)にはそう思えるものであった。
「……すぅ」
息を吸う。
心を落ち着かせる。
オブリビオンを前にして己の心は燃え上がる。超大国は言うまでもなくオブリビオンひしめく己たちの領土を奪いし者たちの国である。
だからこそ、今までは心に怒りをともしてきた。
奪われてきたものを奪い返すために。
そのために己の父も生命を賭したのだ。
何もかもが無為ではなかったと己自身がそう思ったのだ。
「ふぅ……」
眼の前の狂気の大本。
『蒼の王』は|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》を開示した。
それは同時にエドワルダに奇妙な感覚を覚えさせるものであった。
己の中にあったのは怒りや殺意。
されど、『蒼の王』は言う。
『戦いに際しては心に』『祈りを』と。
それ故にこの戦いに殺意と怒りは不要であり、不相応である。もしも、エドワルダが普段と変わらぬ心持ちでもって戦いに挑んだのならば、即座に敗北が決定していだろう。
「切り替えたか」
「ええ、おかげさまで」
振るわれる蒼い結晶めいた何か、その体躯に寄生した何かが次々と迷宮を構築していく。出ることは能わず。
そう言わしめるだけの強力な力を『蒼の王』は有している。
「……貴方は高潔なのでしょう。オブリビオンであっても、戦いの後を見据えている」
「そう斯く在れと願われたのならば、そう在るべきだろう。そうだろう、六番目の猟兵」
「そうですわね」
その通りだとエドワルダは思う。
手にしたコンバットナイフと蒼い結晶が激突し火花を散らす中、彼女は祈る。
何を、と問われたのならば、『蒼の王』がいったように。
斯く在れかし。
自分が何のために戦うのか。
その意味を手にしたナイフの刀身に込める。迫る蒼の結晶を断ち切る。
砕け散る破片の最中にエドワルダの表情がきらめく。
「わたくしは祈りましょう。それは抗うことと同義。戦いの先に何があるのかなど問うまでもなく!」
「祈りの果に何があると言う」
「それは!」
振るうはユーベルコードの輝き。
手にしたナイフが霊力を帯びる。祈ることで彼女は超弱体化の法則を免れ、『蒼の王』と己を隔てる迷宮の全てを無効化しながら、聖魔切断(スピリット・スライサー)たる一撃を叩き込む。
「子供たちの未来を切り開くために!」
そのために己は祈る。
『戦いに際しては心に』『祈りを』……その先にある誰かのための未来。そのためにこそエドワルダは戦うのだ。
己ではない誰か。
それこそが己が脈々と父より、そして、さらにその遥か過去より紡がれてきたものの正体である。
故に彼女は蒼い結晶を砕きながら『蒼の王』へと肉薄し、コンバットナイフの一閃を叩き込む。
「これが! わたくしの『祈り』!」
「己の未来を見ず、誰かの未来を見据えるか。それもまた」
「ええ、『祈り』ですわ!」
戦禍の中に生きて、戦禍の中に死ぬのならば、それは己だけでいい。己の先の代には、戦禍を残さない。
その願いは祈りに昇華し、エドワルダのユーベルコードの一閃を『蒼の王』へと刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
祈り、祈りですか。
戦いに際してわたくしが何を考えてるかといえば一番は仕える女神様に恥じない結果をということですね。
すなわち勝利以外にありえません……いやまぁ現実は色々厳しいのですけれど。
女神様に勝利を捧げるっと考えてるので祈り以外の何でもないでしょう(言い切り)
というわけで女神様に勝利報告するためにお倒れください。
触手っぽい攻撃はグラップルで掴んで怪力で引き千切り(切断)します。
相手が蒼籃氷晶を発動しようとするなら指定コードで挑発して攻撃させることで妨害いたしますわ。
そのまま澄ました顔を殴り飛ばして機関部に叩きつけますわ。
……まぁなんだかんだ言ってやることはいつもと変わりませんが。
戦いに際して何を思うのか。
それは問われるべきものですら無いとイリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は思う。
かのオブリビオン、UDC怪物『蒼の王』は言った。
『戦いに際しては心に』『祈りを』と。
祈りだと言う『蒼の王』のユーベルコードは猟兵からの一撃を癒やすように蒼い水晶の迷宮の奥へと閉じこもる。
そして、己と敵とを分断するのだ。
厄介極まりないユーベルコードである。
さらに言えば、|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》によって『蒼の王』は超強化されている。
その力の凄まじさは言うまでもない。
「祈り、祈りですか」
イリスフィーナは己の体を輝かかせる。
それは彼女のユーベルコード。光事態に攻撃力はない。けれど、水晶の迷宮にて光は乱反射し、一気に最奥にあるであろう『蒼の王』まで届くのだ。
光は己を攻撃させたい、という行動を冬させrう。
激しい衝動とも言っていい。
「……戦いに際してわたくしが何を考えているかと言えば、一番は!」
「俺に何をした六番目の猟兵」
「ただ光を発しただけですわ。貴方がわたくしに問いかけたように。そして、貴方はわたくしを攻撃したくてたまらない、そうでしょう?」
迷宮の最奥からイリスフィーナを目指して迫る『蒼の王』。
その強烈なる衝動は、ユーベルコードをも上回る。
「わたくしが一番に考えていることは仕える女神様に恥じない結果を、ということだけです。即ち勝利以外にありません……」
現実はいつだって厳しいものだ。
己が思い描くものばかりが実現されるものではない。
けれど、己が常に女神様に勝利を捧げること以外の何物も抱かぬというのならば、それは祈り以外の何物でもない。
「ならば、それは祈りというものでしょう!」
拳を握りしめる。
眼の前に迫る『蒼の王』のちからは強大そのもの。
己の拳を叩きつけても、己の拳がひしゃげる。
血潮が飛ぶ。
それでもイリスフィーナは拳を振るう。
勝利を捧げるという祈り以外の全ては不要というのならば、彼女の祈りは純度を上げていくことだろう。
他の猟兵が刻み込んだ傷跡。
それを癒やすためにこの迷宮は時間稼ぎをしているのだ。
ならばこそ、己が放ったユーベルコード、タウント・フラッシュは、それをさせないためにある。
最奥から引きずり出して留める。
傷を癒やさせない。
それこおがイリスフィーナが求め、女神に捧げるための勝利への礎となるのならば。
「女神様への勝利報告のためにお倒れくださいませ!」
振るう拳の一撃が『蒼の王』を捉え、水晶を砕きながら、その体躯を『狂気戦艦』の動力部へと叩きつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
天道・あや
……成る程、つまりーー
ーー所謂、パスポートとか提示して滞在目的とか聞かれる最後の入国検査って感じか!?
いいよ!それなら声高らかに!ハッキリと答えましょう!
ーー夢と未来!希望を届けにやってきた!
という訳で回答終わり!通らせて貰いますぜぇ?
荷物検査よし!作法検査よし!入国検査ーーこれからOK!
そんじゃ、入国記念に一曲、歌わせて貰いまショータイム! ミュージック、スタートっ!
相手が迷宮でこっちの行く手を阻むなら、こじ開けるのみ!UC発動!ショートカットさせて貰いますぜー!(ダッシュ、元気、鎧砕き)
ーーゴール!それじゃ、行かせて貰うよ、未来へーー!(パスポのスタンプの変わり!とパンチ!【属性攻撃炎】)
UDC怪物『蒼の王』の体が横並びに分裂するようにして生み出されていく。
それは水晶の如き体躯でもって迷宮を作り上げていく。
「お前たちは何を思う。何を『祈る』」
『蒼の王』の言葉に天道・あや( スタァーライト ・f12190)は深く、深くうなずいた。
彼女はこれまでいくつかの関門を乗り越えてきた。
いつだってそうだけれど、あやにとってそれは戦いであるという意味であったのならば、正しくそうだったのだろう。
けれど、彼女が求めているのはいつだって歌うこと。
歌を届けることだ。
そして、歌は祈りにも通じるのだ。
「……成る程、つまり――」
あやは目を見開く。
きらめくはユーベルコード。
「――所謂、パスポートとか提示して滞在目的とか聞かれる最後の入国検査って感じか!?」
多分違うと思う。
だが、そんな明後日な方角であってもあやは全力疾走する。してしまうし、してしまえるのだ。それほどまでに彼女の行動は直情的だったし、直線的であった。
兎にも角にも走らなければならない。
「いいよ! それなら声高らかに! ハッキリと応えましょう!」
あやは息を吸い込む。
己がすべきこと。やらなければならないこと。
それは過去の化身たちがもたらす停滞ではなく。
「――夢と未来! 希望を届けにやってきた!」
「それは無為だとは思わないのか」
「思わないね! 解答したんだから、通らせてもらいますぜぇ?」
あやにとって、眼の前の水晶の迷宮は何も意味を為さない。
破壊できなくたっていい。
何せ、自分が壊せるものなんてそうそう多くはないのだ。
ならば、どうするか。
答えは簡単だった。
「荷物検査よし! 作法検査よし! 入国検査――これからOK!」
こじあけるだけだ。
「何を言っている」
「わからないなら言ってみようか! 入国記念に一曲、歌わせて貰いまショータイム!」
パチン、と指を打ち鳴らした瞬間、あやの瞳はユーベルコードにきらめく。
「ミュージック、スタートっ!」
そう、人の心を震わせるのは歌。そして音楽。
道を阻む迷宮が眼の前にあるのならば、あやはいつだってこじ開けてきたのだ。
ならばこそ、打ち鳴らした指から弾けた虹色の音符を握りしめ、あやは水晶の迷宮をこじ開ける。
破壊などできようはずもない。
なのにあやのユーベルコード、歌は砕けること無く水晶を、まさしく文字通りこじ開けるのだ。
「オープンドア!(ココロノトビラヲヒラコウ) 言葉が通じなくても〜 思いと〜ハートは〜 きいっと伝えられる〜〜! だから歌う〜よ〜〜!」
あやは歌う。
こじ開けるためではなく、歌うためにこじ開ける。
迷宮の奥にいる『蒼の王』へと己の歌を届かせるために。
そして、過去の停滞ではなく、夢と未来とそして何より、希望を届けるために彼女は踏み込むのだ。
それはいつだって祈りだった。
歌うことは届きますようにと祈るものだった。
「行かせて貰うよ、未来へ――!」
『蒼の王』は見上げただろう。
あやの振るう虹色の音符が己の生み出した水晶の迷宮、それらのことごとくを意味のナイものだというようにこじ開け、己へと迫る姿を。
「ここがゴールだよね!」
「歌……それもまた祈りか。君は歌うか、『何者にもなれない者たち』のために歌えるか。何者かである君が」
「そんなの関係ないね! 誰であろうと、あたしのステージに来てくれたみんなが何者かなんて関係ない! だって、それがあたしなんだもの!」
だれかの進む未来と夢を照らす|星《スタァ》。
それが己であると示すように炎纏う拳の一撃をあや『蒼の王』へと叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
そこの御方〜!わたくしのお羊羹はご存じ?
なんですの?
お祈りしたらお羊羹を頂けますの?
でっけぇお羊羹がお腹いっぱい食べたいですわ〜!
ストゼロと一緒にお召し上がりになれば最高ですわ〜!
想像するだけで涎(ストゼロ)が出てしまいますわ〜!
あら〜?
なんか迷路に閉じ込められておりますし波が来ておりますわ〜!
さては!約束を破るつもりですわね!?
おこー!
ストゼロの波と共に出口へおダッシュですわ〜!
水は出口に向かって流れるのですわ〜!
よくわかりませんけれど青いウネウネは波が押し流してくれておりますわ〜!
でっけぇお羊羹への祈りを込めて王笏ハンマー!
わたくしにお羊羹をお寄越しくださいませ〜!
メルヴィナ・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
メサイア…それは祈りではなく欲望なのだわ…
いつも通りにするのだわ
私達には普段から祈りを捧げている機械神がいるのだわ
リヴァイアサン…あなたの力を貸すのだわ
全ての生命が生まれて、いつか帰るこの海を静寂に戻すために
祈るのだわ
蒼の王が骸の海ではなく、青の海に帰れるように
大海嘯を呼ぶのだわ
これで迷路で分断されてもお姉様とメサイアを助ける事が出来るのだわ
敵にも津波で攻撃を続けられるのだわ
治療の為に非戦闘行為に没頭させられたら、その間は攻撃を封じる事にも繋がるのだわ
海よ…荒ぶるのだわ
遍くを洗い流し、飲み込み、受け入れるために
この世界の海にいつか静寂が戻るように、私は祈り続けるのだわ
ソフィア・エルネイジェ
【エルネイジェ御一行】
聖光が全ての暗闇を照らし出さん事を
聖雷が全ての悪意を打ち砕かん事を
我が主の威光差す場所、悪が住まう場所無し
古めかしいインドラの教えの一節です
戦いで正義を果たすというのは、言葉で現せるほど単純ではありません
正しさとは常に矛盾としがらみに囚われ続けているものです
ですがそれでも私は己が成す正義を信じて進み、祈り続けます
インドラの雷が世界の闇を払う事を
例え迷宮を作り出されたとしても突き進むのみ!
メルヴィナの津波が複製体を押し流してくれています
私は剛雷突破で押し通りましょう
水の流れが出口まで導いてくれます
恐らく蒼の王は出口で待ち構えているはず
盾の突進で壁際にまで押し出し追い詰めます
UDC怪物『蒼の王』はその瞳でユーベルコードの明滅を見る。
猟兵達が放つ輝き。
その強烈なる意志の光を彼は見た。そこに宿る感情は怒りや憎悪ではなかった。なんと表現すればいいのだろうか。
まばゆいものを見るように目を細めた彼の体が水晶の如き寄生体に覆われていく。
それは強烈な重圧を解き放つ。
王と呼ばれた怪物の力。
詐称でもなんでもなく、真であることを示す。
「そこの御方~! わたくしのお羊羹はご存知?」
「いいや、知らないな」
砕ける蒼水晶の破片の最中からメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)が王笏を振るう。
その一撃を受け止めながら『蒼の王』は答えた。応える義理などなかったかもしれないが、律儀そのものだった。
「君に祈りはあるか、六番目の猟兵。エルネイジェの皇女」
「なんですの? お祈りしたお羊羹頂けますの?」
メサイアは首を傾げる。
だが、彼女の心を占めるは羊羹ばかりであった。
「でっけぇお羊羹がお腹いっぱい食べたいですわ~! ストゼロと一緒にお召し上がりになれば最高ですわ~! 想像するだけで|涎《ストゼロ》が出てしまいますわ~!」
「君の祈りは禍福だ。糾える縄のようなものだ。満たされては飢えていく。潤っては乾いていく。そういうものだ。際限のないものだ」
故に、と『蒼の王』の瞳がユーベルコードに輝く。
とっさに構えた王笏が、その蒼の結晶体の如き寄生体の一撃を受け止める。だが、次の瞬間、メサイアの体から同じ様な結晶が生み出されていく。
それは呪いだった。
「メサイア……それは祈りではなく欲望なのだわ……」
メルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は、膨れ上がる大海嘯(タイダルウェイブ)と共に祈りを捧げる。
それは普段と変わらぬことだった。
いつだってメルヴィナは祈りを捧げている。
それが巫女たる己の役目であるからだけではない。そうであって欲しいと願う心があるからこそ、祈りへと昇華していく。
「『リヴァイアサン』……あなたの力を貸すのだわ」
メルヴィナの水の癒やしがメサイアの呪いを解きほぐしていく。
「メルヴィナお姉様、助かりましたわ~! でも、あ~れ~!? なんか分断されておりませんこと~!? さては! お約束をお破りになるつもりですわね!?」
迫る大波と共に『蒼の王』の放つ水晶体が迷宮を生み出し、彼女たちを分断していく。
メサイアはおこであった。
だが、同時にメルヴィナは『蒼の王』が凄まじき力を持ったUDC怪物であると知る。
「分断されては……お姉様!」
「ええ、祈りましょう。聖光が全ての暗闇を照らし出さん事を。聖雷が全ての悪意を打ち砕かんことを。我が主の威光示す場所、悪が住まう所無し」
それは古き『インドラ』が示した教えの一部であった。
祝詞を唱えるかのようにソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は聖槍を掲げる。
彼女は正しさを愛する。
人の誰もがそうであるように、正しさとは尊ばれるべきものである。そうあるべきものである。
だが、ソフィアは思う。
戦いで正義を果たすということは、言葉で表せるほど単純なものではない。
正しさを追い求めれば、常に矛盾としがらみに囚われ続けることを示している。それこそ縄目のように。交互に連なっていくものである。
「そこまで分かっていながら、エルネイジェの皇女よ。槍の巫女よ、何故君は祈る」
「私は己が為す正義を信じて進み、祈り続けます。それが!」
迸るユーベルコードが迷宮に乱反射して、その輝きを弱めていく。
だが、ソフィアは祈り続ける。
二人の妹と分断されてなお、ソフィアはただ、突き進むのみであった。
雷の守護障壁を纏った突進の一撃が凄まじい強度を持った迷宮を穿つ。そして迫りくる『蒼の王』の複製体を打ち据える。
「私は祈りましょう。インドラの雷が世界の闇を払うことを」
「神の雷は遍く全てを照らすが何も救いはしないさ。神の雷は、人を罰するものだ。ただそれだけだ」
「あなたが言ったのですよ、『蒼の王』。祈り続けよと」
ソフィアは己の背後から迫るメルヴィナのユーベルコードによって生み出された大波を受けて剛雷突破(サンダーチャージ)の一撃で持って槍の穂先を『蒼の王』の複製体に叩きつける。
水晶が砕けるようにして弾ける破片の最中にソフィアはまっすぐに前を見つめる。
「おこー!!」
メルヴィナの大波の最中に交じるはストゼロの波。
そう、メサイアは無限ストロングチューハイ(リアルブレイカー)でもってあらゆる障害を押し流す。力技も此処に極まるというものであった。。
「よくわかりませんけれど、蒼いウネウネはメルヴィナお姉様の大波が押し流してくださいましたわ~! というわけで、でっけぇお羊羹への祈りを籠めて王笏ハンマー!」
メサイアは何も変わらない。
停滞ではない。それは一貫性を持っているということである。ドパドパとストゼロを撒き散らしながらメサイアの一撃が『蒼の王』の体を押し切る。
出口。
この水晶の迷宮の出口は一つしか無い。
ソフィアは必ず『蒼の王』が迷宮の出口にざしていると確信していた。だからこそ、メルヴィナの大波という援護を受けて一気に『蒼の王』へと迫ったのだ。
「あなたの言う祈りとは!」
「誰もが抱くものだ。叶えられるものではなく。ただ、そこにあるものでしかない。そうする他無いからこそ、祈りは掲げられる」
「『今』を見ぬ逃避でしかないとあなたは!」
ソフィアの聖槍から雷が迸る。その輝きを『蒼の王』は見つめる。
そこにメサイアが飛び込んでいる。己が振るう一撃は重たく、また同時にメサイアの体調を知らしめるものだった。つまり、絶好調である。
ついでにメサイアは、ストゼロを放出し続けている。
それはユーベルコードの力でもって『蒼の王』に衝動を与える。
「現実逃避など」
「しないと? わたくしにお羊羹をおよこしにくださるまで、わたくし、殴るのをやめませんことよ~!」
振るわれる王笏の一撃が『蒼の王』を吹き飛ばす。
凄まじい荒ぶりようであった。だが、そこに盾を構えたソフィアの突進が砲弾のように飛び込んでいく。
「メサイア、あとでお話があります」
「何もしておりませんわ~! わたくし、お約束をお守りならない殿方に、めっ! ってしているだけで」
「問答は無用です」
ソフィアは『狂気戦艦』に至る前の戦いからメサイアに一言物申す……いや、仕置をしなければならないと思っていた。
それがメサイアには直感的に理解できてしまったのであろう。
げぇ! おねえさま! というやつである。メサイアのストゼロに酔いしれる赤い顔が一気に青ざめる。
「だが、俺に寄生したものは」
『蒼の王』の放つユーベルコードが寄生体と共に走り抜ける。けれど、それらを大波が押しつぶす。それはメルヴィナのユーベルコード。
「叫んでいる。猟兵を滅ぼせと。すべからく。そのための力だと、叫んでいる」
「させないのだわ。これ以上分断は!」
きらめく『蒼の王』のユーベルコード。さらに三人を分断させようとしているのだろう。ハッキリ言って、『蒼の王』のユーベルコードはどれもが持久戦を強いるものだった。
そして、手をこまねく内に猟兵たちに消耗を強いるものだったのだ。
だからこそ、メルヴィナは大波を手繰る。
「海よ……荒ぶるのだわ。遍くを洗い流し、飲み込み、受け入れるために」
祈る。
メルヴィナは祈り続ける。
この戦いが祈りの戦いだというのならば、メルヴィナは祈る。
この世界の海にいつか静寂が戻るように、祈るのだ。それは己のためではなく誰かのためだった。
そうであってほしいと彼女が願う。
「『蒼の王』……あなたが骸の海ではなく、青の海に帰れるように」
「それが君の祈りか。このオブリビオンたる俺を」
「そうなのだわ。いつかのあなたがそうであったように、『戦いに際しては心に』」
「『祈りを』抱いたように」
「そうなのだわ。だから、私はあなたを祈る。あなたの行く末が過去の体積に歪む場所ではなく」
本来の場所に戻れますようにとメルヴィナの祈りを籠めた大波が『蒼の王』を一気に押し流すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杓原・潤
健康でいられますように、幸せになれますように、上手く行きますように。
お祈りって、要は神様とかそーゆーのに対するお願いって事でしょ?
うるう、お願いなら大得意だよ!
いるのかどうかは知らないけど、神様だってうるうのお願いならきっと聞いてくれるもんね!
でもその為にはこっちも頑張らないとね。
出て来いうるうのサメ達!
集団戦術で守りあって、一度攻撃を受けたら後退して次の子と交代!
それを繰り返して、なるべく追加攻撃でダメージを受けないようにしながら前進だ!
数の暴力で敵をやっつけちゃえ!
うるうの祈りは「世界が平和になりますように」だよ。
その為に頑張るなら、この戦いにも意味はある!きっと!
願いは祈りに昇華する。
健やかでありますように。
幸いがありますように。
全ての事柄が上手にいきますように。
杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は思う。遍く全ての人の祈りを思う。そうであってほしいと願うすべての人々の幸いたる祈りに答えたいと思う。
なぜなら、彼女は魔法使いだからだ。
本物の魔法使いだっていうのならば。
「神様がいるのかどうかは知らないけれど、神様だってうるうのお願いならきっと聞いてくれるもんね!」
あの日のことを思い出す。
魔導書に触れたあの日からずっと潤は叶え続けてきた。多くのことを。祈り、常に思う。誰かのためにと思う心は自然と祈りへと形を変える。
「神性など意味を為すものか」
『蒼の王』の体から蒼い結晶めいた寄生体が潤に迫る。
その一撃一撃が必殺にも迫る。
祈りによって超強化された『蒼の王』の力は強大そのものだった。
「祈ったところで応える神はなく」
「それでも、うるうは頑張るんだよ! その祈りに応えるために。この力は自分だけのものじゃないって知っているんだから! 出てこい、うるうのサメ達!」
ユーベルコードに輝く潤の瞳。
それは竜巻のように渦巻くサメの群れ。
それだけではない。
回転ノコギリが生え、あらゆる艦橋での飛翔能力を得たサメたちが『蒼の王』の放つ寄生体の一撃と打ち合って火花を散らす。
超強化を得た『蒼の王』と辛うじて弱体化を免れた潤のサメたちが激突すればどうなるかなど言うまでもない。
そう、打ち負ける。
弾かれたサメたちが空を舞う。けれど、竜巻の如きサメの群れから次なるサメたちが『蒼の王』へと迫る。
一撃でダメなら、さらに叩き込む。そうやって次代に繋ぐように潤のサメたちは『蒼の王』の放つ寄生体の一撃を弾き飛ばしていく。
「数の暴力で敵をやっつけちゃえ!」
「質で圧倒する」
火花を散らす互いの攻撃。
回転ノコギリが唸りを上げて寄生体を切り刻む。だが、寄生体は迫りくるサメたちを弾き飛ばしていく。
圧倒的な戦いだった。
ルールの付与による超強化は凄まじい。このままでは押し負ける。だから、潤は祈る。
いつだって心に抱いているものがある。
多くの人たちの願いを叶えてあげたいと思う。
それが幸いに繋がることであるからだ。それと同時に潤は思うのだ。人の幸いは、いつか世界を平和にしてくれる。
故に祈る。
「世界が平和になりますようにって、いつだってうるうは祈っている。そのために頑張るなら」
「そんな無為なる祈りが」
己に叶うべくもないというように迫る蒼の寄生体の一撃。けれど、それをサメ達が弾き飛ばす。
「……」
「そんなことない!『世界が平和になりますように』って祈る、そのために頑張る! なら! この戦いにも意味はある! きっと!」
『蒼の王』は見ただろう。
その純真なる瞳を。
きっと、と願うように祈る彼女の瞳が『蒼の王』を射抜いた瞬間、サメたちの回転ノコギリが彼の体を切り裂いた――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
『戦いに際しては心に』……『祈りを』?
なるほど。
祈りをもって戦いに臨むんですね。
そんなの、光の勇者であり音楽家であるわたしにはいつものことです!
ステラさんのやべー雄叫びくらい通常営業ですとも!
なんで、って……。
それはもちろん、いつもみなさまの平和を祈りつつ演奏しているからですよ?
わたしの演奏で、ひとりでも多くの人に癒やしを。
これがわたしの奏魔法ですからね!
さぁそれでは今日も、みなさまのために演奏しちゃいますよー!
この世界のみなさまが平和に日々を送れるようになること、
それが勇者たるわたしの祈りですからね!
ステラさんにこの祈りが届かないのは、
わたしの願いが入っているからなのでしょうか?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ようやくお会いできましたね蒼の王
プロメテウス、曉の歌……つまりはノイン様
貴方さまの依代は、|平和の為に戦い抜けず、なお平和を祈る《エイルという存在になれなかった》者なのですね
えっ?!ルクス様がシリアスを!?
これはルクス様の独壇場……!?
いえ、メイドとて負けるわけにはいきませんので!
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!
残念ながら私が心に抱くは戦いの先にある平和、すなわちエイル様
私は|追いかける者《メイド》ですので祈っている時間は無いのです
だけど、だからこそ
かの方自身の平和を私が創り出す
私の行為そのものが祈りとなるように
ええ、止まっている暇は無いのです!
ルクス様?何か言いました?
『戦いに際しては心に』『祈り』を。
『蒼の王』はたしかにそう言ったのだ。それが|『紳士淑女の作法』《ヴィクトリアン・ルール》であった。
まるで狂気である。
祈りながら戦わねばならないということ。
しかし、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はためらわず戦場に踏み込んだ。
彼女にとって、勇者にとって、それは常なることだった。
変わらないことではない。前提条件でしか無い。
いつだって、戦いに際しては心に祈りがある。
誰かのためにと戦うのが勇者だ。そうであるべきだ。だから、彼女はためらわなかった。ルールの開示による強制力。
それによる弱体化など気にも留めていなかった。
自分の心にあるの祈りではなくて何だというのだというようにユーベルコードにきらめく瞳と共に一歩を、さらに前に進ませるのだ。
「そんなの! 光の勇者であり音楽家であるわたしにはいつものことです! ステラさんのやべー雄叫び位通常営業ですとも!」
突然にディスである。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、一瞬、え!? と思ったが、それは自分がディスられたことにではない。
「ルクス様がシリアスを……!?」
できらぁ! というやつである。
攻守交代というか。ルクスがシリアスになるとステラがギャグになる。カードの裏表的な。
だが、ステラだって負けてはいられないのである。
ユーベルコードに輝くステラの瞳と共に彼女は手にした拳銃から迫る寄生体の一撃をいなしながら弾丸を叩き込む。
超強化された『蒼の王』の攻勢は凄まじいものだった。
自身の複製体から生み出された迷宮。
それは合わせ鏡のように無数の『蒼の王』を生み出し、ステラの道行を阻む。
ルクスにもまた同様だった。
「祈りを常に抱くか」
無数の『蒼の王』たちが一斉に口を開く。
「その重さに自らが歪み果てていることさえ気が付かないか」
「何故一身にそれを受けてなお自らが歪まぬと知り得ぬのか」
「なんでって……それは勿論、いつも皆様の平和を祈りつつ演奏しているからですよ。わたしの演奏で一人でも多くの人に癒やしを」
そう思っていつだって戦っているのだから、とルクスはラデツキー行進曲(ラデツキーコウシンキョク)を奏でる。
ヴァイオリンの響きが迷宮に反響し、複製体をひるませる。さらにグランドピアノの一撃が脆くなった複製体の体を叩き潰す。
「これがわたしの奏魔法ですからね!」
「ただの物理では?」
ステラは訝しんだ。
けれど、彼女の負けてはいられない。迷宮にひしめく無数の『蒼の王』たちに彼女は銃撃と共に問いかける。
「ようやくお会いできまいたね『蒼の王』。『プロメテウス』、『曉の歌』……」
「かの者は、歌えているか。君は知るか、その歌を」
双銃と蒼の寄生体が鍔迫り合う。
至近で躱される視線。問いかける言葉の意味をステラは理解しただろうか。
「|平和の為に戦い抜けず、なお平和を祈る《『エイル』という存在になれなかった》者なのですね、貴方様は」
「正しいが、正しくないとも言える」
「煙に巻いたものいいですね!」
ルクスのユーフォニアムが全力演奏によって凄まじい音を響かせる。
複製体の全てが一気に砕け、ステラを援護する。ステラは手にした拳銃の引き金を引くルクスのユーフォニアムによって砕かれた複製体たちの破片が飛び散る中、放たれた弾丸は跳弾を繰り返して『蒼の王』へと迫る。
「そうだろな。だからこそ」
「残念ながら私が心に抱くは戦いの先にある『平和』、すなわち『エイル』様。私は|追いかける者《メイド》ですので祈っている時間はないのです」
踏み込む。
ステラの背中を押すのはルクスの祈りだった。
世界の人々が平和に日々を遅れるように鳴ること。それが勇者としての己の祈りだった。そして、届かぬ祈りもある。
ステラに対する祈り。
己の願いが、届かぬ相手。
それでも、祈るのだ。人は祈る。いつだって祈る。己にはどうしようもない状況に、祈る。そうすることしかできないと知りながらも。
けれど、ステラは前に走っていく。
迫る『蒼の王』の攻撃が凄まじい強化を得て嵐のようにステラに迫る。
「祈ることを忘れたのならば、その道行にあるのは滅びだけだ」
「だけど、だからこそ」
ステラは頬を切り裂く一撃と血潮を見なかった。
ルクスの祈りがある。
誰かのために祈る。自身のためにではなく。そうした心があるからこそ、人は人たらしめられる。自然という生存競争の中にありながら、それでも誰かを慮ることができる。
そうやって、誰かのためになりますようにという願いが祈りに昇華して、紡がれてきたのだ。
「あの方は平和を生み出せない。だからこそ、私があの方自身の平和を私が創り出す。私の行為そのものが祈りとなるように」
止まっていられないのだとステラは銃撃と共に『蒼の王』へと迫る。
「あの欠けた者を思うか、六番目の猟兵」
「ええ、そのためには! 止まっている暇はないのです!」
突きつけた銃口が輝く。
放たれた弾丸が『蒼の王』の寄生体に激突して阻まれる。だが、そこにルクスのユーフォニアムの音色が押し込む。
砕けた結晶が散る最中、ルクスの祈りを受けたステラの弾丸が『蒼の王』を貫いた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジークリット・ヴォルフガング
●SPD
『戦いに際しては心に』『祈りを』、な
常在戦場の気概は敵ながらにしてあっぱれだ
ならば、答えよう
我が祈りは『牙無き者への剣』となる事
理不尽な暴虐に喘ぎ、圧政に困窮する民の為に私は剣となって貴様らを討つ
では、お手並み拝見と行こう
相手が構築する水晶の迷宮で二進も三進も行かなくなる前に速攻せねばならないか
ならば、打撃力に優れたゾディアックソードではなく手数重視に斬霊刀で斬り込むしかあるまい
だが、問題は相手の傷を癒やす寄生体が厄介か
いくら斬ろうとも相手の再生速度は速く、水晶の迷宮で邪魔立てされる持久戦となればこちらが圧倒的に不利…ならば、内部の寄生体のみを『絶空斬』で斬り、この再生を止めてみせよう
撃ち抜かれた弾丸。
それは『蒼の王』の体に刻まれた傷跡とつながり、その体に罅を入れる。
瞬間、蒼い結晶めいた寄生体が彼の周囲に渦巻く。
傷を負いすぎた。故に癒やさなければならないというように迫る猟兵たちを分断するように迷宮を生み出す。
その硬度は言うまでもなく頑強。
これが『蒼の王』の言うところの『戦いに際しては心に』『祈りを』というのならば、その常在戦場の如き気概をジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は見事であると思ったことだろう。
「敵ながらにしてあっぱれだ」
反響する言葉。
「君の祈りは何だ。君は何を祈る」
迷宮に響く言葉にジークリットは頷く。
「ならば、応えよう」
ジークリットは迷宮を走る。
この状況。時間をかければかけただけ『蒼の王』の傷は癒えてしまう。先に進むことも退くこともできなくなってしまう。
その前に片をつけなければならない。
「我が祈りは『牙無き者への剣』となること。理不尽な暴虐に喘ぎ、圧政に困窮する民の為に私は剣となって貴様らを討つ」
「それは次なる暴虐なる圧制者を生み出す行いだと君は知るか」
「問答を!」
している暇などないとジークリットの斬撃が蒼の結晶体の如き寄生体の一撃を打ち払う。
この迷宮にありて超強化を得た『蒼の王』のちからは凄まじい。
はっきりい言って無敵だった。
己の攻撃のことごとくが弾かれる。
寄生体の一撃すら重たく、ジークリットの体をきしませる。
「その都度正すのが私の剣だ。言っただろう。次なる圧制者が生み出されるのだとしても、私のあり方は変わらない。『牙無き者への剣』、それが私の祈りだ」
手にしたゾディアックソードが迫る蒼の寄生体を弾き、一つに束ねる。瞬間、その剣の切っ先を束ねられた寄生体へと突き立て、地面に縫い付けるのだ。
勝負は一瞬だった。
刹那にも似た時間。
勝機、と呼ぶにはあまりにもか細い糸。
手繰り寄せるには頼りなさ過ぎる。
けれど、それでもジークリットは決めたのだ。
覚悟したのだ。
己が祈ったように。そうであると定めたように。
己の剣は己のためではなく、他のためにあるのだと。ならばこそ、手にしたゾディアックソードを離すことに躊躇いはない。
抜き払う斬霊刀がユーベルコードにきらめく。
霊力を帯びた刀身。
それはこの迷宮にありて『蒼の王』へと届きうる唯一の力。
「間違えてもいいだろう。そうやって人は前に進んできたのだ。正しいばかりが人の歩みではない。過ちからこそ学ぶべきものがある」
だからこそ、とジークリットの斬撃は、空をも絶つ。
ユーベルコード。
それは己の振るう刃を防ぐ迷宮が超強化されているのならば、されているほどに強力になっていく。
しかも、阻むもの全てを無効化し、斬撃は巨大な刃となって『蒼の王』へと振り下ろされる。
「己の過ちを認めるか。認めてこそ、先に往くと」
「その通りだ。そうでなければ、人の歩みなどとうに終わりを告げている。間違っても、間違っても、それでも前に進むことを止めぬからこそ、人は生きてきたのだ」
ジークリットは、その強大なる斬撃によって切り裂かれた迷宮の先に袈裟懸けに切り裂かれた『蒼の王』を見やり、その先にある未来を見据えるのだった――。
大成功
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ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
祈っていることを祈っているって?
まあそれがキミたちオブリビオンなりのやり方ってことかー
●祈り
祈りかー
ボクは別に真理を悟ってしゅじょーきゅーさいを祈願する如来くんたちほど優しくはないしー
ボクの思うこと…祈ることがあるとすれば…
世界よ!楽しくあれ!ボクは楽しませて!
そのためにはまずはボクが世界を愉しませないとね!
【第六感】に任せて複製体の攻撃を掻い潜り、迷路の中を駆け抜けて、或いはUC『神撃』で壁をぶち抜いてとかく最短ルートで彼のとこまで最速最短で!
祈ってあげるよ!
キミがいつかそんなところから解放されることも!
ボクは神さまだからね!
そしてUC『神撃』でドーーーーンッ!!
UDC怪物『蒼の王』は狂気に満ちている。
『戦いに際しては心に』『祈りを』抱いている。そして、それを猟兵にも求めている。正気の沙汰ではない。
ルールの開示もそうであるが、本来ならばやらなくてよいことだ。
密やかに猟兵を超強化された力で打倒すればいい。
なのにそれをしない。
「祈っていることを祈っているって?」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は首を傾げる。
それがオブリビオンの、彼らなりのやり方なのかと思う。神性たるこの身において、それは些細なことだったからだ。
祈り。
それは己にとっては、己自身がさほど優しい存在ではないことを知るきっかけ程度にはなるだろう。
「結局、ボクは如来くんたちみたいになろうとしていないしー」
真理悟れど、その先にあるものが衆生救済ではないのだ。
ならばこそ、己が祈ることがあるのならば、それは。
「世界よ! 楽しくあれ! ボクを楽しませて!」
「己がままであるか。傲慢なる神性が」
「そうだよ! だから、そのためにはボクが世界を愉しませないとね! そういうものあよ!」
迫る複製体。
猟兵たちの構成によって『蒼の王』の体は切り裂かれている。これを癒やすためには猟兵たちを退けなければならない。
もっと言えば、時間を稼がねばならない。
それに故に生み出された迷宮。
「やはり、貴様たち神性とは相容れない。高みから人を見下ろしている」
「そうかな。ボクほど人のことを考えている神様っていない気がするよ! 常にボクは人を見ていたい! 彼らが作る世界で愉しませてほしいのさ!」
「全ては貴様のためにあるなど」
嘯くな、と叩き込まれる蒼の寄生体。
その一撃は苛烈。ロニの第六感を持ってしても、完全に躱しきれない。しかし、迷宮の進む先はわかる。
迷宮というからには出口が用意されている。
ならば、その出口のさきにこそ『蒼の王』がいる。
最短距離で駆け抜けて、ロニは踏み込む。
「祈ってあげるよ!」
「貴様の」
祈りは、と面を上げた『蒼の王』へと迫るロニ。その拳に輝くはユーベルコードの光。
「キミがいつかそんなところから開放されることも! なんたって、ボクは神様だからね!」
叩き込まれる神撃(ゴッドブロー)は神々しさを感じさせる。
神性を否定する者であったとしても、それを感じずにはいられない拳。
蒼の水晶体が砕け散る最中、ロニは笑う。
笑って、笑って、この戦禍満ちる世界でも笑いはあるのだと言うように笑って告げる。
「ド――ンッ!!」
そうすることでしか開放できない何かがあるのだというように――。
大成功
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朱鷺透・小枝子
まったくもってこの戦場は自分に不向きも良いところだ。蒸気人形たちも、このオブリビオン、いやUDCか。このよく分からない御仁も、やりにくい。
もう戦い方を変えよう。そうしよう。
「……自分が辿るのは、破壊の工程だ」
全ての行為が破壊の為の祈りであり、祈りの果てに破壊を為す。
「どうあっても、自分はそういうモノだ。だから」
騎兵刀で振るわれる青を【受け流し】狂気と、その【呪詛】に呼応して刀から破壊の呪詛物質を、【闘争心】己が身から崩壊霊物質を放ち呪い返す。
呪いと呪いを争わせながら、蒼の王へ肉薄。そうして
「一緒に踊りませんか?」
【第六感】と【念動力】で体を動かし、攻撃を躱し、視認した攻撃を【瞬間思考力】で躱し、先ほど学習したダンスのステップを【早業】で再現し、微笑み、手を差し出す。Shall we dance?と。
【継戦能力】発現したUCを利用して蒼の王と|踊る《戦う》
「貴殿は祈りが叶ったら、何をする?」
平和的な戦いをしよう
どちらの|呪い《祈り》が相手を壊すのか、それまで踊ろう
自分は、無為に生きたかった
狂気満ちる空間にありて、なおも朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は思う。
やりづらい、と。
ダンスホールもそうだった。
この最奥たる動力部だってそうだ。待ち受けていたUDC怪物『蒼の王』は言った。
『戦いに際しては心に』『祈りを』、と。
不向きだ。
己はどうしようもなく、この戦いの場においては不向きな存在でしかない。
破壊の権化たる己ができることは壊すことだけだ。
なのに、祈らねばならぬという。
眼の前のUDC怪物『蒼の王』だってそうだ。オブリビオンでありながら、小枝子さえも御仁と呼びたくなるほどに高潔なる精神性を有している。
いや、その高潔さ故に寄生体による歪みが生み出されているのならば、皮肉なことだった「……自分が辿るのは、破壊の工程だ」
変わらねばならない。
他者を変えるのではなく、周囲を変えるのではなく。
他ならぬ自分自身の戦い方を変えなければならない。やりづらいと感じていたおは、己がそうではないとという自覚があったからだ。
祈ること。
それは小枝子にとって、全ての行為が破壊のための祈りであり、祈りの果に壊すという真逆なる性質を持っている。
「ならば、その祈りは」
「どうあっても、自分はそういうモノだ。だから」
迫る蒼の寄生体。
それは強化されており、猟兵たちに手傷を負わされてなお凄まじい勢いで小枝子を貫かんとしている。
騎兵刀で受け流す。
狂気が己の呪詛に呼応している。
『戦いに際しては心に』闘争がある。隠しようがないことだ。そうであるのが己だ。
激突するは、狂気と呪い。
響くは戦いの残響ではなく、狂気。
小枝子の体を蝕む結晶化の呪い。
肌を突き破って蒼い結晶が生まれていく。だが、それを砕くは己の中にある闘争心だった。戦いの中に生きること。戦いの中でしか生きられないこと。壊すことしか能のないこと。
それら全てを肯定する。
呪いと呪い。
それは小枝子を縛るものであった。
けれど、小枝子はもう知っている。あの『蒸気人形』たちが己に手を差し伸べたように。
戦いしか、破壊しか知らぬ身にさえも、優しさは染み込んでいく。
迫る『蒼の王』もまたそうなのだろう。
狂気に染まり、寄生されてなお、その高潔さが在る。
歪み果てたものであったとしても、たしかにそこにあると小枝子は感じ取ることができた。身を蝕む破壊と狂気は、どうあっても己の戦いを破壊で彩るのだ。
だがからこそ、小枝子は手を伸ばす。
そうされた記憶があるからこそ、できたことだった。
「一緒に踊りませんか?」
これまでの己の中にある破壊を壊せ、朱鷺透小枝子。
叫ぶのではなく。
己の中にある何者かが言う。それはただ道行ですれ違ったものであったかもしえれないし、過去に強烈に関係したものであったかもしれない。
小枝子という存在を形成してきた全ての人々の言葉が耳に響いた。
辿ったのは破壊の工程(コーラプスロセス)であったかもしれない。
けれど、はじまりの猟兵の武具(ハルバード・スタート)が『M'aider』という言葉に、助けてという言葉に呼応したように。
小枝子は『蒼の王』の手を引いて踊る。
それはワルツ。
ダンスホールで知った踊りだった。ともにあるということ。誰かとでなければ踊れないこと。できないこと。
破壊は一人でもできる。
けれど、戦いは敵と己とが存在しなければできないことだ。
戦いのさなかにあって小枝子は微笑んだ。それはこれまでの彼女ではありえないことだった。
「貴殿は祈りが叶ったら、何をする?」
それは問いかけだった。
これはただの戦いではない。祈りの戦いである。ならばこそ、小枝子は手にしたハルバードを振るうのではなく、地面に突き立てる。
今の己は無敵である。
眼の前のオブリビオンですら敵ではない。ならば、踊るのだ。そう在ることもまた己にはできるのだと、小枝子はあのダンスホールで知ったのだ。
たとえ、それが狂気満ちる世界であったとしても。
「見果てぬ夢を見てみたいと思う」
「それは」
「しあわせなゆめをみたい」
その言葉に小枝子は頷く。それはきっと己の思うことと同じであったからだ。
「自分もだ。自分も無為に生きたかった」
それが見果てぬ夢であったとしても。
それでも。
求めることは過ちではないのだ。小枝子の呪詛が『蒼の王』の体を蝕んでいく。
今の小枝子に『蒼の王』による侵食は通用しない。
なぜなら、今の小枝子は敵の居ない状態だからだ。敵などいない。ただ踊っているだけ。
「そうか。それはなんともしあわせなゆめだな。争えど傷つかず。傷つけど争いではない。そんな……」
繰り返しの先にあるものを見ていたいと『蒼の王』は願う。
「願いは祈りに昇華する。さらば『蒼の王』」
小枝子は己の手の中で砕け、霧散していく『蒼の王』を見送り、そして動力を注ぎ込んでいたUDC怪物を失ったことで震動とともに崩壊していく『狂気戦艦』が海に没することを知るのだった――。
大成功
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