人権焼却されたと思ったらイキりウサギに転生した件
印旛院・ラビニア
ラビニアが猟兵として目覚めることとなった物語
中村・裕美(f01705)とのお話
・ゴッドゲームオンラインで元々は別のキャラ(♂)でプレイしていたラビニア。名前も違う
・バグプロトコルと戦い、戦闘不能に。このまま時間経過したら戦場外へ強制移動
・バグに襲われると復活できず、リアル世界の方でも遺伝子番号が焼却されて人権を失うという噂は知っている
・(こんなことなら調子に乗って『僕は大丈夫だから、みんなは先に逃げて』とか余裕見せるんじゃなかったな)とか(人権失ったら人生おしまいだよね。そんなことになる前に童貞卒業したかった)とか
・そんな時、自分を倒したバグプロトコルを一掃し、近づいてくる人物。それが裕美
・裕美はラビニア(の前キャラ)に近づくと電脳魔術『リアリティハッキング』を使用しての蘇生を試みる
・だが、死の間際で遺伝子番号やキャラデータの消失が激しく、現在の維持の状態が限界で蘇生は不可能
・その為、別の場所からプレイヤーのデータをかき集めたりなどして遺伝子番号を補完、もしくは偽造番号を生成して人権消失だけは免れさせようと試みる
・裕美がプレイヤーへの質問をしたり、アカウント情報のハッキングを行うことで、プレイヤーが過去にプレイしていたオンラインゲームのデータに辿り着き、それを継ぎ合わせることで『印旛院・ラビニア』と言うデータを生成し、GGOのキャラロストを防ぎ、更にそのデータを元に偽造遺伝子番号を作成「……『獣王戦線』……『グリードブルー』……どれも可愛い女の子のキャラばかりね」(放っておいて欲しい)
・なんやかんやで『新キャラを生成、そのデータから逆算して遺伝子番号を偽造』と言う手段で人権剥奪は免れることができた。
・お礼を言いつつログアウトするラビニア。だが、しばらくしてすぐログイン
ここからギャグパート
・「僕の身体が女の子になっていたんだけど!」「……見ればわかる」「いや違くって!」
・話を聞いてみるとラビニアのプレイヤーは男性だったはずなのだが、ログアウトして自分の体を確認すると、女の子の体になっていたと話す
・興奮して捲し立てるラビニアを(物理的に)大人しくさせ、今後のことについて話し合う「だって、胸が大きくなって……巨乳で……ああ、そこにも大きいおっぱ」「とりあえず黙りなさい」
・『正規のキャラデータ、遺伝子番号に上書きできれば元に戻れるかもしれない』『だが、その情報を集めるには統制機構に行けない裕美には限界がある』『裕美のような猟兵が統制機構に行けるようになる鍵は最終クエストに隠されているというので、協力して欲しい』
・その後、ラビニアがグリモアを所持していることが判明。ラビニアがグリモア猟兵であることは好都合であると、猟兵についてや異世界の話をし、異世界で力をつければ最終クエストで役に立つかもしれないと話が出る
・そんな訳でゴッドゲームオンラインや異世界でのクエストをこなしつつ最終クエストに備えるラビニアの猟兵人生が始まるのだった
☆は余っても大丈夫です
●僕が死んだ日 そして生まれ変わった日
(まずったな……)
|GGO《ゴッドゲームオンライン》ダンジョンの中で横たわりながら後悔する。
(あれが噂のバグプロトコルかな。どうりで強い訳だよ)
いつものダンジョンでやけに強いモンスターに遭遇し、一番足の速い自分が囮になるからと仲間や周りのプレイヤーを避難させたのは良いものの、変則的で不条理に強力な攻撃に対応しきれず、戦闘不能になったわけだ。そして、そのモンスターは倒した相手に興味を失ったのか、うろうろ歩き回っている。
(こんなことなら調子に乗って『僕は大丈夫だから、みんなは先に逃げて』とか余裕見せるんじゃなかったな)
バグプロトコルに倒された者は|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却されて人権を剥奪されるという噂はあり、それらしき被害にあったらしい知り合いと連絡が取れなくなってるので、おそらく噂は本当だろう。
(人権失ったら人生おしまいだよね。なら、そんなことになる前に童貞卒業したかったな)
そのほかにも色々やり残したことや未練が頭の中を駆け巡りじんわり涙も浮かぶ。
「いやだ……終わりたくない」
そう思って気合を入れても踏ん張っても戦闘不能の身体がどうにかなる訳でもなく、戦場外へと強制ログアウトする光に包まれそうになったその時、
「……燃え尽きなさい……オブリビオン」
「ッ!?」
突如、青年を倒したモンスターが黒い炎に包まれて消滅する。
「……|凍結《フリーズ》」
そして、冷ややかな声と共に、青年を包む光が動きを止める。
「……大丈夫……ではないわね」
そしてそう声をかけた女性は漆黒のチャイナドレスを身に纏った黒髪の、そして竜のツノと翼が生えた女性だった。
(ドラゴンプロトコル? 確か、ダンジョンやアクエストの運営をしている上位AIがそんなのだったような)
青年がそう考えているのも束の間、女性は青年のそばに近づいてゆき、金色の双眸で覗き込んでくる。
「……キャラデータ……遺伝子番号の完全消失は回避。……これよりデータの修復を開始するわ」
そう言うと女性の周囲に何重ものウインドウが出現し、忙しなくそれらを操作してゆく。それが自分を助けている行為であるのは青年はなんとなく分かったが、女性の顔が曇ってゆくのを見て、不安になる。
「……駄目。……データ損傷が激しすぎる。……完全修復は無理」
「そんな……」
駄目なのかと青年が絶望し出したその時、
「……キャラクターデータを基に遺伝子番号を生成する。……キャラデータの新規作成。……貴方……他にも何かゲームをやってる? ……できればプレイ時間の長いもの」
「ええっと、『獣王戦線オンライン』に『グリードブルーオンライン』……あとは……」
青年はこういったゲームは色々なものに手を出していたので、つらつらとゲーム名が出てくる。統制機構という現実に退屈していたのかもしれない。
「……獣王戦線……グリードブルー……名前が分かれば検索は容易。……どれも可愛い女の子のキャラばかりね」
(放っておいてほしい)
装備を変えたり見た目を楽しむなら男キャラより女キャラの方が華があっていいじゃないか。そう反論もしたいところだったが、体に軽い痛みとむず痒さが起きる。それと、強制ログアウトの時とは違う暖かい光。
「……【リアリティハッキング】完了。……これで……大丈夫よ」
そう話す女性はいつの間にか取り出したエナジードリンクのプルタブを開ける。そして、いつの間にかパープルのパーカーとホットパンツというラフな格好になっていおり、その金色の瞳はグルグル眼鏡で見えなくなっていた。
「あ、ありがとう……!?」
お礼を言った青年はある違和感に気付く。自分の声が高くなっていることに。
「……元のデータが修復できなかったから……別ゲームのデータを……今の貴方に『移植』したの。……ステータス確認できる?」
「……印旛院・ラビニア(人権焼却されたと思ったらイキりウサギに転生した件・f42058)……これ、『獣王戦線オンライン』で使っていた僕のキャラ!」
ステータスウインドウで確認できた自身の俯瞰図を見て青年……否、ラビニアは驚きの声を上げる。細部こそ違えど、別のオンラインゲームで遊んでいた自分のキャラの姿をしていたのだから。
「……見つけたデータで一番データ量の大きかったキャラクターがそれ。……他のゲームのキャラも……少し統合されていると思うけど」
「うう〜ん、このゲーム、プレイヤーと違う性別のキャラは本来作れないみたいなんだけど、いいのかな?」
「……本来のプログラム外のことをしたから仕方ないかもね」
「はぁ。でも、ある意味レアな状況と思えば、存外楽しめるかな?」
気持ちを切り替えることにしたラビニア。そして、近くの街まで辿り着いた2人は、そこで別れる。
「なんだか今日は色々あったんで、ゆっくり休もうと思います」
「……そう。……元気でね」
「はい、お姉さんも」
そう言ってログアウトするラビニアを裕美は見送るのだった。
●サポート外のトラブルです
ラビニアがログアウトした後、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)はブツブツと呟く。
「……今までも蘇生を試みたことはあったけど成功したのは今回が初めて。……戦闘不能になって遺伝子番号消失までの消失が遅かったから何とか別データで埋めることで完全消失まで防げたけど……その前から消失に抗っていた?だとすると、彼も猟兵の素質が?」
などと先程助けたゲームプレイヤーのことを思い返していると
「お姉さあああああああん!!」
先程ログアウトしたはずのラビニアが裕美めがけて走ってくる。
「……? ……ゆっくり休めたの?」
「休める訳ないでしょ! それより僕、僕……」
ラビニアは今にも泣き出しそうな顔をしている。しかも微妙に内股だ。
「僕の身体が女の子になっていたんだけど!」
「……見ればわかる」
「いや違くって!」
その話は先程したじゃないかと怪訝に思う裕美にラビニアは捲し立てる。
「ログアウトして、自分の体の違和感に気づいて、確認したら、生身の方も女の子になっていたんですよ!」
「は?」
まだ要領を得ない裕美にラビニアは自分の大きな胸を持ち上げ、詰め寄る。
「戻ったら、アレがなくて、コレが付いてたんですよ!」
ぐっと詰め寄りすぎラビニアの胸が裕美の胸の当たる。
「あ、お姉さんも立派なコレをお持ちで」
「……とりあえず黙りなさい」
「へぶっ!?」
軽いビンタでラビニアを落ち着かせた後、裕美は落ち着ける飲食店で詳しい事情を聞く。
「……つまり……プレイヤーの貴方の体の性別が変わってしまったと。……まさか遺伝振子番号の書き換えがこんなことになるなんて」
「何とかなりませんか?」
頭を抱える裕美に縋るような目でラビニアは話しかける。
「……今の状態を正規のキャラデータ、遺伝子番号に上書きできれば元に戻れるかもしれない」
「え、本当ですか!?」
ラビニアの表情が明るくなり、
「……現状では無理。……正規の遺伝子番号が分からないもの」
「そんな……でも、それって何とか調べられません? 僕の本名から統制機構のデータを辿るとか」
一瞬顔を暗くするも、何とか考えを絞り出して食い下がるラビニア。
「……それが無理。……私のハッキング能力が及ぶのはあくまでこのゲーム内だけ。……消失の影響を受けていなかった貴方のゲームアカウントからラビニアのデータを引っ張ってこれたけど……そこまでが限界」
「この世界でだけ能力がって、お姉さんは何者なんですか?」
ラビニアの質問に少し逡巡して裕美は口を開く。
「……|猟兵《イェーガー》。……異世界を渡り……オブリビオンから世界を救う者達。……その1人よ」
そこから猟兵の存在について軽く説明を受けるラビニア。
「つまり、その力でお姉さんは僕を助けてくれたと」
「……たまたま運が良かった……というのもあるけど。……ただ……この世界のすぐ外……統制機構に行く力は……猟兵に『まだ』ないの」
「まだ?」
「……いずれ……この世界で最終クエストが発令される。……そこに鍵があるらしいの」
「……最終……クエスト? ッ!?」
最終クエストという単語を耳にした時、ラビニアに激しい頭痛が走る。
「何これ?統制機構の打倒?バグプロトコルへの対抗?あばばばばば!」
そして頭痛とともに多くのイメージが脳内を駆け巡る。
「……大丈夫?」
「う、うん。何だろう?頭の中を色々なイメージが。……予知?」
不意に口をついた単語を耳にし、裕美の口角が上がる。
「……予知……ね」
「アレ? 何でそう思ったんだろう」
はてな顔のラビニアに、裕美はこう告げる。
「……どうやら貴方も……猟兵に……しかもグリモア猟兵に選ばれたようね」
「え?」
やはり猟兵の素質があったから生き延びることができたのだと裕美は確信する。
「つまり、僕もお姉さんみたいに色々な世界を回ったりすごい力を身につけることができると?」
「……同じ力かは分からないけど……少なともあのオブリビオン……いえ、こっちはバグプロトコルね。……あれを倒せる力は手に入るわ」
しかも、猟兵の中でも予知能力を持つグリモア猟兵なので、この世界や異世界で起きる悲劇を先に予知して未然に防ぐこともできるようになるとのことだ。
「じゃあ僕は選ばれた存在ってことですか?」
「……そう……なるわね」
「そっか……」
それを聞いたラビには急に胸を張り、にまっと笑う。
「僕、選ばれる存在だったかー。他とはやっぱ違うとは思っていたんだけどね。そうかー、世界を救っちゃえる器かー」
「……何だこいつ」
急に調子に乗り始めたラビニアにちょっと引く裕美。どこか気弱そうで余裕のない感じから話しやすかったが、これはなんか絡みづらい。
「色々な世界を渡って、世界救って、それでレベルアップして最終クエストに挑めばいいって訳ですね。で、それでうまくいけば僕も元に戻れる。なら、話は簡単。この猟兵・ラビニアに任せてよ!」
「ええ……」
さっきまで泣きそうだったのが、盛大にイキリちらかしている。こんなだからバグプロトコルに殺されかけたのではあるが。
「ああ、そうだ」
ふと何かを思い出し、ラビニアは裕美に声をかける。
「お姉さんの名前、聞いていなかったね。教えてもらってもいいかな?」
「……そうね。……中村・裕美よ。……よろしく」
「よろしくね、裕美さん」
こうして、元の身体に戻るべく、ラビニアの猟兵人生が始まったのであった。
成功
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