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怪物の幻影の歌

#獣人戦線 #クロムキャバリア #ゾルダートグラード #ヨーロッパ戦線 #『A』ubade #プロメテウス

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#ヨーロッパ戦線
#『A』ubade
#プロメテウス


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●メーデー
 君は知ることになる。
 世界には多くの争いが道ているが、しかし、その争いを生み出す者がいることを。
 どうあっても殺すことのできぬ|『怪物』《プロメテウス》が存在することを。
 それが君の中に生きていることを君は知るだろうか。
 認めず、否定し、ただ争いを生む怒りと恐怖とに支配されるだろうか。
 それとも己が内にある『怪物』に立ち向かい、これを打倒するだろうか。
 いずれにせよ、対決を避けることはできない。逃げることもできない。

 その『怪物』の姿を醜い、醜い姿だと歌うだろうか。
 半壊した心臓を捧げた君を、そう歌うだろうか。
 眼の前に広がる世界は、残酷なまでに美しい。生命の讃歌は『怪物』を生み出す。生命の散華は君の宿命だろう。

「だから応えるんだ。いつだって助けてという言葉に。僕……俺は、いつだって。応え続ける」
 嘗ての『フュンフ・エイル』は言った。
 あの大空の世界にて知った己の心を示す。
 銀の雨振る世界にて託した未来を知る。
 善良を克己する悪法の世界にて生まれた体躯をも走らせる。
 潔斎行路往くべき桃源郷を後にしてなお。
 緩やかな滅びに至る病抱えた世界があり、牴牾たる敗北に満ちた世界があったとしても。
 例え、己の願望が『平和』を齎すために争い生み出す歪みであったとしても。
「それでも『戦いに際しては心に平和を』。どんな祈りも、願いも。熾火のように、其処に確かにあるっていうのなら――」

●鋼鉄の巨人
 二足歩行型戦闘車両、パンツァーキャバリア、その鋼鉄の巨人と形容される姿が大地を揺らして進む。
 硝煙の煙る戦禍が迫っていることを塹壕に隠れた獣人たちは知っていた。
 地響きが己たちの体を揺らす。
「クソッ! なんて数だよ!」
「『ゼクス』、だめ。頭を出しては」
 オオカミの獣人『ゼクス』の尻尾を引っ張っているのはヒツジの獣人『ズィーベン』だった。彼女が引っ張る尻尾を降って『ゼクス』は、だったらどうしろっていうんだとわめきたいのを堪えた。
「防衛網だって伸び切ってしまっているんだぞ……!」
「だからって闇雲に飛び出したって無駄死にするだけよ」
「そんなのわかってるよ! でもこっちにはキャバリア一騎すらないんだぞ。あいつらに防衛網を破られたのなら……!」
『ゼクス』の言葉に『ズィーベン』はわかっているとまた頷く。
 またそれか! と『ゼクス』は歯噛みする。
「『キャバリア』さえあれば、なんて言わないさ。けど!」
 その言葉は砲火にかき消される。

 塹壕に降り注ぐ大量の土砂。
 その土を払って二人は入り組んだ塹壕を走る。走って、走って、走らなければ無為に生命が失われると知っていたからだ。
 だが、その懸命さを嘲笑うように迫りくる『ゾルダートグラード』のキャバリア部隊は、不気味な赤いキャバリアを筆頭に数多のキャバリアと共に迫りくるのだった――。

●歌
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。超大国『ゾルダートグラード』のパンツァーキャバリアの大部隊が進撃を開始することが予知されました。彼らは獣人達の部隊が敷いた防衛戦を突破しようとしています」
 無論、このまま座していたのならば迫りくるキャバリア大部隊によって蹂躙され獣人部隊は壊滅するだろう。
 この防衛戦に救援に向かって欲しい、というのだ。

「現地では防衛戦を敷いた獣人部隊が一か八かの一点突破でもってキャバリア大部隊の指揮官機らしき赤いキャバリアを討とうとしています。しかし……」
 獣人部隊だけでは恐らく無理だろう。
 敵は数多のパンツァーキャバリアを有している。
 彼らは通常のユーベルコードと同時に『パンツァーフォートレス』を用いて固定砲台モードに変形し、攻撃と射程を三倍してくる。
 この苛烈な攻勢に対応しなければならないのだ。
 しかし、これに対応できれば撃破は用意になるだろう。

「……加えて、第二波にはクロムキャバリア製と思わしき最新鋭キャバリアを駆るオブリビオン部隊が迫ります。『フィールドランナー』と呼ばれる強力なキャバリアです。これを退けたとしても、この大部隊を指揮する指揮官機である赤い謎のキャバリアを駆るオブリビオン『戦場の天使ナハティガル』を打倒しなければ……」
『ゾルダートグラード』のキャバリア大部隊は徹底的に攻勢を仕掛けてくる。
 ならば、猟兵たちの方針は一つ。
 第一波、第二波と続くキャバリア部隊の猛攻を凌ぎ、戦中を突破して大部隊を率いる赤いキャバリアを駆るオブリビオンを打ち取る。
 これしかない。
「熾烈な戦闘になることは言うまでもありません。危険は承知の上。ですが……」
 それでも獣人部隊を捨て置くことはできない。
 ナイアルテは頭を下げ、猟兵達を見送るのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 『獣人戦線』において『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』との戦いを繰り広げるシナリオになります。

 今回は獣人たちの防衛網を破らんとするキャバリア大部隊を率いたオブリビオン部隊との戦いになります。
 獣人部隊が掘り進めた塹壕が存在していますが、圧倒的な戦力を前に彼らは押されています。

●第一章
 集団戦です。
 既に現地にある獣人部隊は果敢に戦っています。
 ですが、迫る『ゾルダートグラード』のキャバリア部隊はユーベルコード『パンツァーフォトレス』とユーベルコードを併用して襲いかかってきます。
 圧倒的な火力の雨に如何にして対処するかで、難易度は変わってくることでしょう。
 これに対する方策を打ち出さねば苦戦は必至です。

●第二章
 集団戦です。
 第一章から続く第二波が迫ります。
 敵のキャバリア部隊は、最新鋭のキャバリア『フィールドランナー』と共に迫ります。
 獣人達も引き続き戦いますが、まともにぶつかれば彼らに被害損害が出るでしょう。

●第三章
 ボス戦です。
 敵キャバリア大部隊を指揮する不気味な赤いキャバリアを駆る『戦場の天使ナハティガル』との戦いになります。
 彼女の駆る不気味な赤いキャバリアはさらに高性能機であることが伺えます。

 それでは、『獣人戦線』において『超大国』の侵略に抗う獣人たちと共に戦い抜く、皆さんの活躍を彩る物語の一片なれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『超大国の補給部隊』

POW   :    援軍調達
いま戦っている対象に有効な【自身が所属する超大国製の武器を武装した軍】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    商戦機動力
戦場内で「【金ならあるぞ!】」と叫んだ対象全員の位置を把握し、任意の対象の元へ出現(テレポート)できる。
WIZ   :    補給拠点
1㎥以下の【物資を無限に補給できる補給拠点】を設置する。自分はいつでも[物資を無限に補給できる補給拠点]に転移でき、触れれば負傷回復するが、壊れると死ぬ。

イラスト:よどり

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 塹壕が見える。
『戦場の天使ナハティガル』と呼ばれたオブリビオンは、鋼鉄の意志漲る瞳でもって己が麾下たるキャバリア大部隊を指揮する。
「あれなる獣人たちは病巣。この世界の病巣です。争い好んで、戦場に身をさらす患者です。ならば、殺してでも治します」
 彼女の瞳は爛々とかがやくようだった。
 故に、『超大国の補給部隊』は整然と居並び、パンツァーキャバリアに乗り込む。
「迅速に処置なさい。貴方たちならばそれができます。治療に必要なのは速度なのです。圧倒的な速度で病巣を取り除ければ、それだけ患者の生命をつなぐことができるでしょう。よいですか。貴方たちは戦場を駆け抜けなさい」
「はい。仰せのとおりに」
『超大国の補給部隊』たちは一様に敬礼し、パンツァーキャバリアと共に戦場に駆け出していく。

 それはあまりにも整然とした突撃行動であったことだろう。
 彼女達のテレポート能力とパンツァーキャバリアの有する戦術『パンツァーフォトレス』によって尋常ならざる戦線展開能力と、圧倒的火力が獣人部隊へと襲いかかる。
 オオカミ獣人『ゼクス』は迫る砲火の中を、ヒツジ獣人『ズィーベン』と共に走る。
「くそったれ! 馬鹿みたいに打ち込んできやがって!」
「塹壕が意味ないくらいに神出鬼没だなんて……こんなの」
「ばか、諦めんな! 諦めることさえしなければ――ッ!」
 その言葉は自分に言い聞かせるものであったかもしれない。
 そうでも思わなければ、この地獄のような戦場では生きることさえできない。だからこそ、『ゼクス』は『ズィーベン』と共に諦観を投げ捨て、ひた走るのだった――。
シルヴィ・フォーアンサー
『』はヨル、「」はフレース。

……フレースは初仕事だね、頑張ろう。
「ええ、頑張るわ」
『よろしく頼む、それで今回はどうするね』

装甲硬いし火力強いし怖いよね……でも通り抜けちゃえば無意味。
フレースと合体して空から攻撃仕掛けるよ、一気に飛び出して後ろを取っちゃう。
キャバリアがいるとは思ってないし対応遅れるでしょ、向きを変えられる前に
パラライズ・ミサイルを撃ち込んで麻痺、範囲外のはヨルがハッキングで妨害。
シルエット・ミラージュからテラー・エリミネートで装甲無視射撃武装の三回攻撃で撃破。

「うまくいったわね、シルヴィちゃん」
うん……お腹すいた。
『ほらカロリー補充だ』
(シートからアームでエナジーバーを出す)



 砲火が荒ぶ。
 その光景は瞳を炎と黒煙に塗りつぶすものであった。
 どこを見ても轟音と衝撃が身を打つ。
 逃げ場などない。仮に逃げ出そうとしたとして、一体どこに逃れようというのだろう。塹壕を掘っても、鋼鉄の巨人の如き威容を誇る『ゾルダートグラード』のパンツァーキャバリアは、その砲火でもって汎ゆるものを吹き飛ばす。
「走れ! 走れ! 止まるな!」
 獣人部隊は走る。
 懸命に走る。けれど、砲火は生命を吹き飛ばさんとするように放たれるのだ。
「次弾装填。砲撃開始」
『超大国の補給部隊』は、己たちが駆るパンツァーキャバリアを持って、走る獣人たちに狙いを付けた。

 照準が合えば、引き金を引くだけ。
 簡単な仕事だ。だが、その砲撃の引き金を引こうとした瞬間、風が吹いた。
 それは一陣の風だった。
 しかし、同時に彼女達の頭上に拭いがたき影を落とす。
 そう、それは。
「『フレース』……よろしく」
 シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)の駆るキャバリア『ミドガルズ』と合体した『フレースヴェルグ』であった。
 影は巨大な鳥を思わせる形をしていたことだろう。『超大国の補給部隊』の駆るパンツァーキャバリアたちは見上げることしかできなかった。

「ええ、頑張るわ」
『敵パンツァーキャバリアの座標を送る。敵は火力と装甲が高い。その上、ユーベルコードを併用して移動さえ瞬時に済ませてしまう』
「なら、空から強襲する。敵はこちらにキャバリア戦力があるとは思ってないでしょ。対応が遅れたところを」
 地を這うパンツァーキャバリアとは言え、その火力と装甲は侮りがたい。
 だからこそ、シルヴィは速度、その反応の遅れを見逃さない。
 ユーベルコードに輝く『ミドガルズ』のアイセンサー。
 放たれたパラライズ・ミサイルがパンツァーキャバリアの周辺に着弾し、高圧電流を巻き散らす。
 迸る電流によって内部の操作系統を焼き切られたパンツァーキャバリアが擱座する。

「な、なんだ……!? 巨大な、鳥……!?」
 獣人部隊の獣人たちは目をむく。
 それほどまでにシルヴィの駆るキャバリアは異様な姿をしていたのだろう。
 鋼鉄の巨人。
 その背に翼が羽ばたくようにして力を生み出し、残像を空に刻むのだ。
「シルエット・ミラージュ……! テラー・エリミネート……!」
 放たれる弾丸がパンツァーキャバリアの装甲を無きものとするように打ち込まれ、擱座した機体を確実に無力化させるように爆散させるのだ。
 爆風が吹き荒れる中、『ヨルムンガンド』が飛翔する。
 此処はクロムキャバリアではない。空にふたされた世界ではなく、空を飛ぶことを許された世界。
 ならばこそ、鋼鉄の巨人の威容を持ちながら『ヨルムンガンド』は一気に戦場に風を吹かす。
 それは劣勢に立たされた獣人部隊への追い風であった。

「立て直して」
 シルヴィは短く告げる。
 彼女にとって他者はなるべく接触したくない存在であった。けれど、言わねばならない。
 己たちは味方で、救援に来たのだと。
 その言葉が、些細な言葉であっても、獣人部隊の士気を高めることを知っているから。
「救援! 本当か!」
「本当。だから、今のうちに塹壕に。機を見て」
 それだけ告げるとシルヴィは己の胃が鳴くのを感じただろう。
「……お腹空いた」
『ほらカロリー補充だ』
「うん」
 エナジーバーを受け取ってシルヴィは、その棒状の補給食を頬張る。
 簡素な味わい。
 けれど、これでいいのだというようにシルヴィは口の水分を持っていくエナジーバー嚥下し、更に迫るパンツァーキャバリアの大群を前に踏み込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
「さて、狩りの時間ね」
赤の塗料で戦化粧
方針は塹壕に籠って獣人達とフォローし合い、時に駆け回りながら戦場を観察
狙いは自由自在に動き回る赤い機体の観察だ
迷彩コートによる隠密や高周波シャベルでの即興の塹壕作成で、防御力を重視した生存重視で粘っていこう
相手のテレポートの癖を読んで、「金ならあるぞ」と叫びそうな相手を絞り込んで待ち伏せをかけたい
勘が当たれば、対戦車杭打機で相手のコクピットを狙っていきたい
仕留められなくても、転移を狙い撃つ恐怖を刻めば相手の積極性と機動力を削ることが出来る筈だ

「戦場に安全圏はないって事、その身に刻んであげるわ」



 圧倒的な物量。そして火力。加えて強靭な装甲。
 これらを兼ね備えたオブリビオン『超大国の補給部隊』たちが駆るパンツァーキャバリアは塹壕を乗り越え、吹き飛ばし、走る獣人部隊を追い詰める。
 彼女達にとって獣人部隊は標的でしかない。
 如何に塹壕に身を隠すのだとしてもパンツァーキャバリアの放つ砲火に炙り出されるほかないのだ。
「一気に塹壕内の獣人共をあぶり出す」
「斉射、始め」
 次々と砲塔が火を噴く。
 轟音と衝撃が塹壕に響く。
 土砂が吹き飛び、煙る視界の中、獣人たちは駆け出す。

「此処はだめだ! 後退しろ! 急げ! 次の砲撃が来る!」
 そんな彼らの戦いぶりを見やり才堂・紅葉(お嬢・f08859)は己の頬に赤い塗料を指で塗り込む。
 横に三本線……それこそ獣の爪痕のように彼女の顔に戦化粧ともいうべき赤き線が退かれる。
 彼女は転移した直後に走り出す。
「撤退のフォローをするわ」
「あ、あんた猟兵か!? で、でも、敵の砲撃が……うわっ!?」」
 オオカミの獣人『ゼクス』の言葉に紅葉は頷く。
 轟音に耳鳴りがする。だが、紅葉は塹壕を脱するのではなく、己の手にした高周波シャベルでもって塹壕を切り開く。

 うねるように、それこそ蛇行するように塹壕を掘り進め、地上に荒ぶ砲火を避けながら獣人部隊たちを後退させようというのだ。
「は、早すぎる……あんた一体何者だ」
 荒野を征く者(ワイルドウォーカー)、と紅葉は笑う。
 一気に切り開いた塹壕に身を隠しながら紅葉は敵勢を伺う。
 このキャバリア大部隊を率いているのは、あの赤いキャバリアだという。明らかに他のパンツァーキャバリアとは違う高性能機体であることは言うまでもないだろう。
 そして、敵のパンツァーキャバリアが神出鬼没なのは『超大国の補給部隊』たちがユーベルコードによって連携しているのが原因だ。
「金ならあるぞ!」
 その言葉が合言葉になってパンツァーキャバリアが次々と集結してくるのだ。

「なるほど?」
「あのテレポート能力が厄介すぎる。どんなに塹壕に逃げ込んでも、すぐに一騎にでも見つかれば敵戦力が集中してくるんだ」
「それに敵の装甲も強固なの。此方が一点突破しようものなら、囲まれて袋叩きにあってしまう」
 ヒツジ獣人の『ズィーベン』の言葉に紅葉は頷く。
 確かに効果的だ。
 こちらが狩られる存在でしかないことを植え込むかのような徹底した戦術。
 ならば、と紅葉は笑うのだ。
「なら、逆にやってやりましょう。戦場に安全圏はないってことを教えてやりましょう」
 紅葉の瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女は一気に塹壕から飛び出す。

 獣人たちが止める間もなく紅葉は砲火の中を走る。
 機構靴が強化外骨格のように彼女の筋力を増幅させ、大地を蹴って跳躍させる。
 砲火の衝撃が身を掠めても紅葉は笑っていた。
「さて……狩りの時間ね」
 飛びかかるようにして紅葉は己の姿を認めてテレポートしてきたパンツァーキャバリアへと脚部のアンカーを叩き込む。
 凄まじい衝撃が機体に走り抜けただろう。
「な、なにが!?」
 紅葉の手にした対戦車杭打銃を構える。敵の装甲は通常の三倍にまで引き上げられている。だが、それでも構わなかった。
 彼女が打ち込むは、敵に狙い撃ちされているという恐怖。そして、的に己たちの挙動が読まれているという疑心。

 凄まじい衝撃音がパンツァーキャバリアへと響き渡る。
「……!??!」
「そら、覚えなさい。自分たちが直接狙われる、それを読まれている、という恐怖を」
 紅葉はさらにパンツァーキャバリアの装甲を蹴って、装甲をひしゃげさせる。
 トドメをさせなくてもいい。
 これは敵の戦意を削ぐための行動だ。敵が自分たちの圧倒的優位を信じられなくなれば良いのだ。
 故に紅葉は前線を走る。
 敵の動揺を誘えば、それだけ獣人部隊が生き残る可能性は上がるのだ。
「さあ、自らが狩猟者ではなく、狩られる側だということを知りなさい――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨飾・樒
単純な火力やキャバリアの数だけじゃ、勝敗は決まらない

敵が地上の掃討に気を取られている間に、空中跳躍符を使って連中の頭上から攻撃する
"眠り薬の魔弾"なら分厚い装甲でも問題ない、乗員がいる辺りを狙って撃ち込む
私に気付いて対空砲火を向けてくるかもだけど、その時は一旦地上に降りて先に無力化した敵キャバリアを遮蔽にして後退、別方向から接近して仕掛ける
機動力はこっちが有利、翻弄してやる

補給拠点を作れるみたいだけど、再度仕掛けるときは丁度良い標的かも
破壊できなくても、補給のために来た敵を撃てば良い
行動できない敵なら、いないのと同じ



 戦いが数で決まるというのならば、猟兵たちの戦いは常に劣勢から始まるものであったことだろう。そして、その勝利も得られない。
 しかし、その劣勢を猟兵たちは何度も覆してきた。
 数を覆すのは一体何か。
 力か。それとも工夫か。
 いずれにしても、戦場にユーベルコードの明滅は絶えず。
 猟兵たちは迫る『ゾルダートグラード』のパンツァーキャバリア部隊を前に大立ち回りを演じていた。
「単純な火力やキャバリアの数だけじゃ、勝敗は決まらない」
 雨飾・樒(Dormouse・f41764)は大地を蹴って走る。
 その底部に仕込まれた符の力が発露し、力場を生み出す。空気中、その何も無い場所に床を作るように力場が発露し、彼女が空へと駆け上がっていく。

 砲火荒ぶ戦場にあって、彼女の姿はパンツァーキャバリアを駆るオブリビオン『超大国の補給部隊』たちにとっては打ち倒すべき敵として認識されただろう。
「塹壕に引き籠もっていれば良いものを」
「撃ち落とせ」
 樒へと迫る砲火は凄まじい。
 パンツァーキャバリアのユーベルコードによって砲撃の威力は三倍にまで引き上げられ、さらには装甲さえも増強されているのだ。
 生半可な攻撃ではパンツァーキャバリアの装甲を抜くことすらできないだろう。
 けれど、樒歯構わなかった。
 手にした愛用の拳銃。
 その弾丸に込められたユーベルコードの輝きが発露する。

「沈め、静寂の奥底に」
 引き金を引き、放たれるは眠り薬の魔弾(ヒプノティク)。
 空中に対する砲火の中樒が放った弾丸はパンツァーキャバリアの装甲を透過し、その搭乗員である『超大国の補給部隊』へと叩き込まれる。
 だが、彼女達が打倒されたわけではない。
 彼女の弾丸は殺傷能力があるわけではない。ただ眠りを齎す。
 ペールブルーの魔力弾は、傷つけるのではなく、眠りで持ってオブリビオンである『超大国の補給部隊』の駆るパンツァーキャバリアを無力化してみせたのだ。

「動きが止まった……?」
「砲撃も止んだぞ?」
 獣人たちは塹壕から顔を出す。
 そこには樒によって無力化し、沈黙するパンツァーキャバリアの姿があった。
「擱座したパンツァーキャバリアを奪うなり、敵を無力化するなりして」
 樒は短く獣人たちに告げる。
 自分ができることは敵を眠らせることだけだ。だが、敵はすぐさま己の姿を認めれば集結するだろう。
 そうなれば、眠りに落としたオブリビオンたちが目を覚ますのは時間の問題なのだ。

「あんたは!」
「私は敵の注意を引き付けて撹乱する。敵が補給拠点を築いて此方の攻勢の足がかりにするのを防ぐ」
 そう言って樒は駆け出す。
 敵のこの大部隊を支えているのは『超大国の補給部隊』がいればこそだ。間断なき攻勢。それを実現可能としているのはパンツァーキャバリアの数だけではない。
 必ず補給が必要になる。
 その中継点を潰すことができれば、敵の戦線が押し上げられることを防ぐこともできるはずだ。
「頼む。敵の補給が尋常じゃなく速い」
「わかってる。だから」
 樒は次々とペールブルーの魔力弾を迫るパンツァーキャバリアめがけて放つ。勢いを喪って膝をつくようにして止まるパンツァーキャバリアを盾にするようにして樒は砲撃を躱し、さらに敵の補給拠点を叩くために疾駆する。

 敵の部隊、その第二波が到着するまで余裕はない。
 だが、ここで敵の戦力、その継続戦闘能力を寸断しておくことが急務であると樒は戦場を走る。
「行動できない敵なら、いないのと同じ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
うーん、火力と射程が3倍ってだけで十分怖い……つーか腹いっぱいだな。
とは言え、それをどうにかしねえと活路も拓かねえ、と。
……うん。なんとかやってみっか。放っても置けねえしな。
(〈覚悟〉を決めた表情で)

うだうだ考えても仕方ねえ。砲撃が厄介なら、大元を叩くまでだ。
……行くぞ、クゥ! おれらが突出すれば、その分味方が楽になる……!

向かってくる砲撃は〈第六感〉を活かして〈見切る〉。防ぎきれない分は〈オーラ防御〉で耐えるか、〈スナイパー〉ばりの精度の狙撃で撃ち落とす。
接近に成功したら〈武器落とし〉〈マヒ攻撃〉で無力化しつつ、クゥと協力して砲台を破壊。

他に味方がいるんなら、〈援護射撃〉で適宜支援を飛ばす。



 オブリビオンの放つ砲火の凄まじさは言うまでもない。
 その火力は通常のパンツァーキャバリアの三倍にも及ぶ勢いであった。加えて装甲も三倍。突破することは難しく、さらには敵の攻勢は苛烈そのもの。
「……つーか、腹いっぱいだな」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は敵のユーベルコードの弱点が移動力を喪うことをだと知っている。
 けれど、オブリビオン『超大国の補給部隊』は、さらなるユーベルコードによってデメリットを打ち消している。
 己たちの位置を把握し、一気にテレポートしてくるのだ。

 これが塹壕戦を挑んだ獣人部隊を追い詰めた一手になっている。
「とはいえ、それをどうにかしねえと活路も拓かねぇ、と」
 難しい戦いである。
 だが、捨て置くことはできない。獣人たちを救うことも。この地獄のような戦いを終わらせることも、全てやらなければならないことだと嵐は思っていた。
 なら、覚悟は決まっている。
「……うん。なんとかやってみっか」
 走る。
 戦場を。砲火が立ち上らせる黒煙の最中を走る。うだうだ考えても仕方ない。砲撃は確かに厄介だった。
 なら、大本のパンツァーキャバリアを叩くまでだと焔纏った黄金のライオンと共に駆け抜ける。
 ユーベルコードによって召喚された黄金のライオンは、戦場に似つかわしい荘厳さを持つものであった。
「黄金の獅子……!?」
 獣人部隊は見ただろう。
 その威容を、輝きを。それはユーベルコードの発露であり、嵐が敵陣めがけて駆け抜ける嚆矢となるすがたであった。
「……行くぞ、クゥ! 力を貸してくれ!」

 その言葉に応えるようにして黄金の獅子の咆哮が轟く。
「何かと思えば、突出してきたか。その程度で」
 放たれる砲火。
 その一撃を見極めて嵐は黄金の獅子と共に躱す。だが、爆風が迫る。その爆煙をオーラで防ぎながら嵐はスリングショットを引き絞る。
 空中を飛ぶ砲弾を引き絞ったスリングショットからの案ガンで持って撃ち落とすのだ。
「あの黄金の獅子に続け!」
「いくぞ! あの人ばかりに突撃させるな!」
 嵐の突撃に触発されたように獣人たちが塹壕から飛び出す。

 敵の動きは活発そのものだ。だが、嵐が突出したことによって『超大国の補給部隊』は彼を叩き潰そうと次々とテレポートで集まってくるのだ。
「集まってきた……! けど!」
 そう嵐は知っていた。
 獣人たちは臆病ではない。戦えないわけでもない。きっかけさえあれば、きっと、と思っていたのだ。
 例え追い込まれていても。
 劣勢を覆す一手があるのならば、彼らは追従するのだ。
「みんながいるんなら、クゥといっしょに戦えるんなら!」
 やってやるさ、と嵐は引きつけたパンツァーキャバリアの砲火に耐える。
 ならば、パンツァーキャバリアの背後は無防備になる。そこに獣人部隊の吶喊が加われれば、『超大国の補給部隊』は総崩れになるしかない。

 本来ならばありえない背後からの突撃。
 嵐に注意を惹きつけられるばかりに、彼女達は己たちが背後から打たれるという懸念を忘れ去っていた。
「いけいけ! 背後からなら!」
「囲いを崩す! あんたは脱出しろ!」
「ありがとな! でも、まだ戦える。みんなで生き残るんだ!」
 嵐は獣人部隊と合流を果たし、戦場を駆け抜ける。
 黄金の獅子の咆哮が轟き、獣人部隊の鬨の声が響き渡る。戦いの趨勢は未だ傾かず。天秤のように揺れ動き続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドラ・バジル
【バジル】アドリブ歓迎
「おお、派手にドンパチやってるね。キャバリアも斬りたい放題だ」
「まあ、良いじゃん。まずは……戦線崩れてるみたいだし、アレクはフォローしてあげてよ。私は突っ込んで斬るからさ」
アレクの【闇黒炎雷】発動後に、こちらも【神威】を発動。
超々速度で戦場を駆け巡りつつ『無銘の刀』を縦横無尽に振るって敵キャバリア軍団をどんどん両断していきます。テレポートしても次の発動までに追いついて斬っちゃうぞ。
「ちょっとアレク、動かない的とか面白くないんだけど!」
※この戦場に来た理由は刀でロボを斬りたくなったからと言うしょーもない理由である。


アレクサンドル・バジル
【バジル】アドリブ歓迎
※アレクサンドラとは双子の姉弟です。
「キャバリアを斬りたくて来るのがなぜ獣人戦線なのか。それが分からない」
「カカカ、りょーかい」
【闇黒炎雷】を発動。
戦場全体に敵のみを害する漆黒の炎と雷を吹き荒ばせて敵キャバリア軍団を損害を与えつつ行動不能に。テレポートしようが戦場にいる限り安全地帯はない。
敵を斬りながら文句を言うサンドラに「わがままか」と返しつつも戦場を把握。獣人部隊がヤバそうな部分に炎と雷の密度を増したりして援護しておく。



 戦禍が渦巻いている。
 獣人戦線。言わずとしれた獣人たちが超大国の支配に抗う世界である。その戦いは熾烈なものであった。
 だからこそ、猟兵の助けが必要なのだ。
 塹壕があちこちに掘られ、身を潜めた獣人たちを炙り出さんとするようにオブリビオン駆るパンツァーキャバリアが大地を激震せしめるように砲火を放つ。
 圧倒的な火力。
 パンツァーフォトレスト呼ばれるユーベルコードを常時発動しているパンツァーキャバリアの脅威は言うまでもない。
 火力と装甲を両立した力。
 問題点は移動力がなくなるということ。だが、それは『超大国の補給部隊』が駆ることによってユーベルコードで解決しているのだ。

「敵を逃すな。敵が此方を包囲するというのなら、これを打ち破れば良い」
「味方の位置を把握しろ。集結と離脱を繰り返せば、敵はついてはこれない」
 彼女達の戦術は見事だった。
 なにせテレポートである。声を挙げれば、確実に其処に所在を把握して飛び込むことができるのだ。
 ならば、距離は意味なく。
 塹壕戦を仕掛ける獣人たちにとっては相性が最悪であるとも言えた。
「おお、派手にドンパチやってるね」
 アレクサンドラ・バジル(バジル神陰流・f36886)は双眼鏡でも構えるように手を広げて戦場を見つめていた。
「キャバリアも斬りたい放題だ」
「キャバリアを斬りたくて来るのがなぜ、此処なのか。それが理解できない」 
 双子の姉の言葉に、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は理解に苦しむ。
 彼女につきあわされる形で戦場にやってきたのはいいが、どうにも判然としないのである。キャバリアを斬りたい、というのならばクロムキャバリアではないのかとアkレは思った。
「まあ、良いじゃん」
 アレクサンドラはからりと笑う。
 それに、と彼女は指差す。

「戦線が崩れてるみたいだし、アレクはフォローしてあげてよ」
「どうせ、自分が突っ込みたいだけだろ」
「そうとも言うけれど、鋼鉄を斬る感触っていうのは良いものだよ。さ、サクっとやってしまおうよ」
「カカカ、りょーかい」
 アレクサンドルは、姉の言葉に瞳をユーベルコードに輝かせる。
 闇黒炎雷(クロイホノオトイカズチ)が彼の掲げた掌から発せられる。それは黒い炎と黒い雷となって迸る。
 戦場に満ちるパンツァーキャバリアの全てを捉える炎と雷は次々と『超大国の補給部隊』に打ち据えられ、消えぬ炎によって行動不能にさせられてしまうのだ。

「戦場にいる限り安全地帯なんてないんだよ」
「ちょーっと、アレク。動かない的なんて面白くないんだけど!」
 アレクサンドラが不満そうな声をあげている。
 こちらはフォローしたつもりでもアレクサンドラにとってはそうではないようだった。彼女が斬りたい、と願っているのは動き回るキャバリアである。
 こんなの案山子か木人と変わらない、とぶーたれているのだ。
「わがままか」
「面白くないもん!」
 神陰流真伝・神威(カムイ)を発露するまでもないとアレクサンドラは刀を振り回している。

 おもしろくない。
 ただそれだけの理由なのだ。
「まーそういうなって。連中、さらに第二波もあるってことだからよ。そっちを本命にしたほうがいいんじゃねーの? それに……」
 アレクサンドルは己の炎と雷を躱す敵がいることに気がつく。
 不気味な赤いキャバリアだ。
 あれがこの部隊の指揮を取っている指揮官機であろう。動きが明らかに良い。高性能機である、という事実を差し引いても、明らかに只者ではない技量を持って機体を走らせていることが伺える。

「あーいうのが好みなんじゃねーの?」
 アレクサンドルの言葉にアレクサンドラは金色の瞳で己が標的に相応しき敵を見定める。「えー、遠いじゃん!」
「第二波の後には、あいつなんだろうから、そのうち機会は巡ってくるだろ。そら、まずは準備運動」
「ぶー」
 アレクサンドラはぶーたれながらも己が刀でパンツァーキャバリアを両断していく。
 これじゃあ、準備運動にもなりゃしない、と彼女はため息を吐き出しながらも迫るパンツァーキャバリアの大群を相手取るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
(「呼ばれる時っていつもヤバい時な気がしない?」と頭の中の教導虫がぼやく)
危機だからこそ呼ばれるのが俺たち猟兵です!諦めましょう!せんせー!
(「はぁ…でどう戦う?」)
キャバリアに近づきUC【F.E.C】を発動し電子兵さんにキャバリアを『ハッキング』してもらい同士射ちさせます!
(「どうやって近づくの?」)
{蜂蜜色の靄}を練り上げ『メイク』を施し『残像』を作って囮にしつつ
俺は『肉体改造』で皮膚の色を変え保護色による『迷彩』でこっそり敵に近づきます!
(「無謀ではないけど、かなり危険な作戦よね?」)
虎穴に入らずんば虎子を得ず!覚悟を決めましょう!せんせー!



 猟兵の戦いは常に世界の危機である。
 世界の悲鳴に応える運命の戦士。それが猟兵だからだ。常に危険に直面してからでなければ動くことはできない。
『呼ばれる時っていつもヤバい時な気がしない?』
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の中でぼやく声が響いた。
「せんせー、危機だからこそ呼ばれるのが俺達猟兵です! 諦めましょう!」
 兵庫は頭の中で響いた声に応える。
 そこには覚悟があった。
 どんなときだって猟兵の戦いは常に危険と隣合わせだ。生命の危険だってある。守るために奪われることだってあるかもしれない。

 だから、教導虫の言葉もわかる。
 危険すぎる戦い。
 眼の前には砲火荒ぶ戦場がある。獣人たちが掘り進めた塹壕など無意味というかのように吹き飛ばさんとする砲弾が衝撃と轟音を彼らの身に降りかかるのだ。
 敵はオブリビオン。
 パンツァーキャバリアを駆る『超大国の補給部隊』が補給拠点を築こうとしている。これを許せば、間断なき攻勢を獣人部隊に対して行うだろう。
「それはさせない!」
『でも兵庫、どう戦うの?』
「敵の攻勢の要がキャバリアだっていうのなら、電子兵さん! バグらせちゃってくださ!」
 兵庫の瞳がユーベルコードに輝く。
 F.E.C(フェイタル・エラー・センチピード)。それは電子のムカデ。プログラムコードで体を形成した電子兵たちが一気に地を這うようにしてパンツァーキャバリアへと走る。

 彼らはパンツァーキャバリアを制御している電子系統に侵入し、その操作系統をハッキングするのだ。
『なるほどね。どうやって近づくのかと思ったけれど、残像を作って囮にしつつ、自身の皮膚の色を変更させたのね』
「そうです! これなら、敵気が付かれることなく近づくことができます!」
『無策、無謀、というわけじゃあないけれど、かなり危険な橋をわたっている自覚はある?』
 教導虫の言葉は尤も。
 兵庫にはわかっている。けれど、せずにはいられないのだ。
 獣人部隊が危機にひんしている。それだけではない。この世界そのものが危ういのだ。なら、それを守らんとするのは猟兵として覚醒した己だからこそである。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず! 覚悟を俺はもう決めてるんです、せんせー!」
 兵庫は己の瞳輝くユーベルコードと共に戦場を走る。
 間隙を縫うようにして兵庫はパンツァーキャバリアへと電子兵たちを送り込んでいく。生身で鋼鉄の巨人めいた戦術兵器を相手取るのは難しいことだろう。
 わかっている。
「電子兵さん! 敵の制御を奪ったのなら!」
 兵庫の言葉にパンツァーキャバリアをハッキングした電子兵が、その駆体を持って砲塔を旋回させる。
「機体が勝手に!?」
「撃てー!」
 旋回した砲塔、その砲口が狙うのは『超大国の補給部隊』が駆るパンツァーキャバリア。
 そう、同士討ちを狙った砲撃の一撃が至近距離で炸裂し、爆風を荒ばせる。
 その衝撃を身で受けながら兵庫はひた走る。

『まったくもう、無茶をして!』
「でも、敵の数は減らせました! これで獣人部隊も持ちこたえられるはずです!」
『それはそうかもだけれど、第二波が来るわよ!』
「なら、受けて立つまでです! どれだけ数がいようとも!」
 覚悟さえあれば、と兵庫は己の瞳をユーベルコードに輝かせ、ハッキングして操作系統を奪ったパンツァーキャバリアでもって反撃の狼煙を上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
鬱陶しい連中纏めて壊す!!
奏でろ、ララバイ!!!

デモニック・ララバイ、魔音【楽器演奏】砲撃音を貫通する【|衝撃波《超音波》】の【催眠術範囲攻撃】で敵の意識を狂わせ、
テレポートの同時発動で砲撃の手を止めさせ、一か所に集まわせて再テレポートを阻害。撃て。

『禍葬砲撃』【弾幕】の豪雨を以て集中した敵キャバリアを破壊。補給拠点を爆破し、召喚された軍勢の機先を制するように間断なく撃ち込み続け、動くキャバリアの機動を阻害し、メガスラスター【推力移動】砲撃雨の中を突っ切る!

撃て!

硝煙に紛れて接近し、殺戮音叉から【斬撃波】発振。伸ばした音叉でキャバリアを【切断】なで斬りにする!

撃てぇえええ!!



 砲火が迫る。
 炎の赤が黒煙を生み出している。轟音が響く。大地を揺らす。巻き上げられた土が烟る。
 それらを鬱陶しいと朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は思った。
 だが、それ以上に鬱陶しいのは。
「オブリビオン! 連中纏めて壊す!!」
 小枝子はサイキックキャバリア『デモニック・ララバイ』と共に戦場に転移する。
 この戦場において、主役とも言うべき兵科はキャバリアである。オブリビオンたちが駆るパンツァーキャバリアは、その砲塔を旋回させ砲弾を塹壕に打ち込み続けている。
 塹壕に潜む獣人部隊をあぶり出そうとしているのだろう。
 当たるも八卦。
 そう言いたいかのように砲火が荒び続けているのだ。
「奏でろ、ララバイ!!!」
『奏者、奏でるのは君だ。君の指が私をかき鳴らすんだよ!』
「なら、演ってやる!!」
 小枝子がかき鳴らす。
 魔楽器の弦が振動し、音を響き渡らせる。砲火の音すら貫通する旋律とも言えぬ叫びのような音。
 それは超音波とも言うべき衝撃波となってパンツァーキャバリアへと迫る。

「認識の齟齬を生み出す!」
「なんだこの音は……何かがおかしい。集結地点にあつまれ。固まれ。これは猟兵だ。猟兵が来た」
 オブリビオン『超大国の補給部隊』たちは一斉にユーベルコードで以て手レポートする。
 身を寄せ合って己たちの防御を固めようというのだ。
 ユーベルコードによって三倍にも達した火力と装甲を持つパンツァーキャバリアが密集すれば、それはハリネズミのように敵に対する威嚇となるだろう。
 故に彼女達は固まる。
 だが、それは小枝子の狙いだった。
 敵を一箇所に集める。
 その方策。
『本来はこのような形にするために演奏するんじゃあないんだけどね』
「だが、敵がまとまった。なら!!」
 小枝子が咆哮する。

 ユーベルコードに煌めくは、『デモニック・ララバイ』のアイセンサー。
 叫ぶ。
「撃て」
 虚空に出現した無数の大型キャノン砲の砲口が煌めく。
「撃て!」
 砲撃の雨が降り注ぐ。それはパンツァーキャバリアたちが塹壕に打ち込んでいた砲火よりも凄まじきものであったことだろう。
 地に打ち込まれるは雨。
 雨の如き砲火はパンツァーキャバリアを狙い、その砲弾は横方向からの砲撃に強い耐性をものともしないかのように天板を撃ち抜く。
「撃てぇええええ!!」
 小枝子は叫ぶ。
 禍葬砲撃(メタルシャウト)は、ただ、それだけのために。
 構築されつつあった補給拠点すらも打ち砕く。砲撃の雨の中を『デモニック・ララバイ』が駆け抜ける。

 スラスターを噴出させ、生き残ったパンツァーキャバリアをねじ伏せるようにして大地へと叩きつける。
「撃て! 続け! 塹壕の中で息を潜めていても、砲火は止まらない! なら、撃て! 自分に続け!!」
 小枝子の声が塹壕に隠れていた獣人部隊に届く。
 彼らは塹壕から飛び出す。
 放たれた砲撃による土埃でパンツァーキャバリアたちには地を這うようにして走る獣人たちの姿を捉えることはできない。

「戦わなければ、勝ち取れないというのならば! 撃てぇええええ!!」
 その叫びに応えるようにして獣人たちの砲口が轟く。
 音叉剣をふるう『デモニック・ララバイ』が爆炎に照らされ、道を示す。この先が生存の道だと。自由を得るためには戦わなければならない。その道行きを示すように小枝子の砲口が音叉を震わせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

怖い怖い怖い怖い。

いつもの雄叫びはいいとしましても、そこからのステラさんが怖すぎます。
さっきから鼻を鳴らしてはデレっとするの繰り返しじゃないですかー。

いろんな香りがします、とか言われましても、
わたしぜんっぜん解らないですから!?

効き『エイル』さんとかできるの、ステラさんだけですからね!

ええええー……。
時間ないのは香りに浸ってるからじゃないですかー。
いや、それが|ステラさん《やべーメイド》だと言われればそうですけども!

あ、はい。
戦いますから、フォルさんで咥えないでください!?

ステラさんが突っ込むなら、わたしはサポートを!
【悪魔のトリル】で、実弾を爆散させつつ、ステラさんを回復ですー♪


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁぁぁすっ!!
はい、|メイド《犬》推参しましたっ!
ええ、エイル様が『現代のプロメテウス』とか言われちゃったので
香りの範囲が広がっております
しかしこの世界の『エイル様枠』は鴉の獣人・熾天大聖様だったはず?
何か、異なる香りが混ざっている気がするのですが?
それにしてもプロメテウス……SOWでお見かけした赤青な鳥様を見た時に感じたエイル様感はまさにこれでしたか

そろそろ|文字数《時間》が足りませんね戦いましょう

ルクス様ー?ルクス様出番ですよー?
誰がやべーメイドですか

とりあえず強引に蹴散らしましょう
フォルいらっしゃい&【ファム・ファタール】いきます!



 君は知ることになる。
 何を、と問われるのならば応える叫びがあった。絶叫があった。 
 世界を震わせる叫び。
「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!」
 いつものやつである。
 メイドと書いて犬と読ませるあれである。ルビでよくない? まあ、いいじゃないの。
 そんないつものやり取り。
 叫びが戦場に響き渡った。
 似つかわしい叫びであったが、真である。
「はい、メイドと書いて犬、推参しましたっ!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、鼻を鳴らし目をキラキラさせていた。一見すると完璧なメイドである。一見すると、とわざわざ余計な一言を付け加えている時点で察していただきたい。

「ええ、『エイル」様が『現代のプロメテウス』とか言われちゃったので、香りの範囲が広がっております! しかし、この世界の『エイル様枠』は鴉の獣人『熾天大聖』様だったはずでは?」
 めちゃくちゃ早口である。
 饒舌にもなろうってもんである。ステラにとって主人たる『エイル』を司る事象の全てが何物にも優先されるべきものなのである。
 なら、早口など当然。
「何か、異なる香りが混ざっている気がするのですが?」
 怖い。
 何このメイド。
「悪性と善性。赤と青。『プロメテウス』……あの銀河の海往く世界でお見かけした赤青な鳥様を見たときに感じた『エイル』様感はこれでしたか。わかりますとも。ええ、私のセンサーには狂いなく。私の鼻腔に入り込んだ微粒な粒子であっても見逃すはずがあるわけございません。ええ、あるいは」

 こわい。
 本当に怖い怖い怖い怖い。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は唐突に、それこそ結構な尺をステラが早口で埋めるもんだから戦慄していた。
 いつもの雄叫びはまあ、なんていうかいつものというかノルマみたいなもんなのでいいとしても、そこからのステラが怖い。
 強すぎた。
 鼻をふんふん鳴らしているし、デレっとするの繰り返し。
 かと思えば、なんかシリアスな顔をしているし。
「芳しい香り」
 こくり、とステラは頷いていた。
「複雑でいて、しかして洗練されているように思えます」
 戦場に打ち込まれまくっているパンツァーキャバリアの砲撃の硝煙の匂いでなく?
「私にはわかります。敵の指揮官機。あれなるは『セラフィム』。赤い装甲で判別しているとかそういうわけじゃあございません。確かに香っておりますとも!!」
 こわぁ、とルクスは思った。
「わたしぜんっぜん解らないんですけど!?」
 それはそうである。普通にわからない。
 だが、ステラは自信満々だった。いや、それどころか、ちょっと『なんでわからないんですか』くらいの顔をしていた。ちょっとイラっとした。

「効き『エイル』さんとかできるの、ステラさんだけですからね!」
「そろそろ尺の問題がございますが」
「えええええー……」
 なんかルクスのせいにされたのは納得がいかない。大体ステラのせいである。いつも。そう、ステラが叫んでルクスがドン引きする。そういう方程式が出来上がっているのがいけないのである。
 とは言え、ステラがヤベーメイドであるから、と言えば、それまでである。
 誰がどう見てもやべーメイドであるから。
「ルクス様ー? ルクス様出番ですよー? 誰がやべーメイドですか」
 ステラは鳥型キャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』のコクピットに乗り込み、ルクスの体を嘴で咥えさせていたのだ。

「なんで!? 戦いますから!? むしろ、準備していたのは私のほうが先なのに、なんで私がもだもだしていたみたいな雰囲気にしてるんですー!?」
「この形が最適解なのです」
「そんな最適解は投げ捨てて下さい!」
「時間がありません」
「それは尺の問題でしょう!?」
「フォル! あなたの速度で全て蹴散らしなさい!」
 ステラの言葉に雑に始まる戦闘。マッハ5.0で飛翔する衝撃波と共にステラは叫ぶ。
「やだー!!」
 でも、ちゃんと爆撃するのは偉い。
 さすがは勇者である。やることはやっている。戦場に響き渡る轟音と爆音。
 それは勇者とメイドの奏でるなんちゃらかんちゃらほにゃららら。尺の問題ではない、と言い訳しておこう――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『フィールドランナー』

POW   :    パターンA 全弾発射
【重狙撃砲、連装機関砲、両肩腕武装の一斉射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    パターンB 連携攻撃
【装甲及び半戦車形態の機動力活用】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【仲間と共に撹乱しつつ重狙撃砲】で攻撃する。
WIZ   :    パターンC 最後の手段
【胴体格納兵器による自爆を目的とした】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【事前に武器を配布した仲間】の協力があれば威力が倍増する。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 第二波が迫っている。
 戦線は猟兵たちの活躍によって塹壕から敵を押しのけることに成功している。獣人部隊の獣人たちが土煙の中を疾駆する。
「猟兵が来てくれた……! なら、押し返せる!」
 オオカミ獣人『ゼクス』は、期待を胸に抱く。いや、希望を、だ。だが、その希望を塗りつぶすように戦場に現れたのは、第二波の敵部隊。
「パンツァーキャバリアなら! どれだけ数が……」
「……何、あれ」
 ヒツジ獣人『ズィーベン』は呆然と第二波として現れたキャバリアを見上げた。
 鋼鉄の巨人。
 その威容はパンツァーキャバリアと変わらず。
 されど、その機体は見たこともないキャバリアだった。これまで彼女達が相手取って来たのは上半身が戦車の二足歩行型。眼の前にいるのは、完全な人型であり、数多の重火器を、それこそ人のように扱うことのできるキャバリアだった。

 ただ、砲撃を打ち込むのならば戦車でいい。
 迅速に戦場に到着し、機動力を得るのならば戦闘機でいい。
 人型である意味は多くはない。
 されど、人間以上の巨体を誇る存在が、四肢でもって戦術をたぐることができる、という点が最大にして最高の利点であることを彼女達は知る。
 単一の機能ではない。
 数多の重火器、武装を状況に合わせて扱うことのできる戦術をたぐる。それこそが人型キャバリアの恐ろしさであった。
 砲火の凄まじさはこれまでと遜色なく。
 けれど、最新鋭キャバリア『フィールドランナー』は、戦術でもって獣人部隊を追い込んでいく。
「あんなのありかよ! もうあれじゃ、ただの巨人じゃあないか!」
「でも、後退できない。ここで退いたら」
「わかってるよ! やるしかないってんだろ――!」
シルヴィ・フォーアンサー
前章から合体したまま。

……また大きいのが出てきたね。
『こちらに負けじと武装が多いな、注意しろ』
「全部避けちゃえば平気よね、シルヴィちゃんなら大丈夫よ」

ん、効果範囲まで入って殲滅するよ。
狙撃は弾道と効果範囲を見切りで回避しつつ
ジャミングとハッキングでロックを外させたりして対処する。
有効距離まで近づけたらシルエット・ミラージュからの
グラビトン・ミサイルで攻撃。

外側は頑丈そうだから残るかもだけど中は無事にすまないと思うよ。



 黒鉄のキャバリアがアンダーフレームを戦車のごとき履帯でもって戦場を疾駆する。煙る土が舞い上がり、構えた重狙撃砲が剣呑なる輝きを銃身から解き放つ。
 キャバリア『フィールドランナー』はパンツァーキャバリアと同じ性質を持ちながら、その圧倒的な性能で持って獣人部隊を駆逐せんとする。いや、これは殲滅戦だ。
 そう、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は己の乗騎『ミドガルズ』のコクピットの中で理解する。
 あの黒鉄のキャバリアにあるのは殲滅の意志だけだ。
 敵を滅ぼすことだけを考えた戦術。
 ばら撒かれる弾丸に生命を奪うという感覚はない。
 ただすりつぶすだけだというように『フィールドランナー』はまさしく戦場を駆け抜けようとしている。

「……さっきの砲塔頭のキャバリアとは違うけど、キャバリアだね」
『こちらに負けじと武装が多いな、注意しろ。それだけ敵は戦術をたぐるということだ』
 AIの『ヨルムンガンド』の言葉にシルヴィは頷く。
 確かに武装の多さは戦術の幅である。それが数を持って連携を取ってくるというのだから、この脅威は単純な数以上の意味を持つだろう。
 だが、『フレースヴェルグ』は特別に意識していないかのように言い放つ。
「全部避けちゃえば平気よね、シルヴィちゃんなら大丈夫よ」
「ん」
 シルヴィは頷き、飛翔する。
 ここはクロムキャバリアではない。クロムキャバリアであったのならば、空を飛ぶことはできず、2次元的な戦い方しかできないだろう。

 だが、ここはクロムキャバリアではない。
 空に蓋のない世界。
 ならば、此処獣人戦線においてはキャバリアは3次元的な戦いを求めるられるのだ。そういう意味では『フィールドランナー』は時代遅れの産物でしかシルヴィにはなかったのだ。
「ボコボコにする」
 ユーベルコードの輝きが生み出すのは、『ミドガルズ』の残像。分身として精巧である残像は、一気に戦場を化k抜ける。
 そして、それはただの分身ではない。
 次なるユーベルコードの威力は半分なれど、それを模倣することができる。

 即ち。
「グラビトン・ミサイル」
 シルヴィの言葉と共に放たれる肩部のミサイルポッド。
 火線を引くようにして飛び立つミサイルは、通常の重力の五倍にも及ぶ高重力をもって『フィールドランナー』たちの動きを止めるようにのしかかる。
 軋むフレームの音が聞こえる。
「迂闊に近づかないで」
 短くシルヴィは外部スピーカーで獣人部隊に告げる。
 彼らも巻き込まれかねないからだ。
「……こっちの戦線は任せろってことか……?」
「そういうこと」
 短く返答する。まだ他者とのコミュケーションが上手く取れないのだろう。深くはかかわりたくない。その意志がにじみ出る言葉に獣人たちは頷く。

 シルヴィと『ミドガルズ』がいれば、この戦域は持ちこたえることができるだろう。
 ならば、と獣人部隊がシルヴィたちの戦域から離脱していく。
 この戦線を突破し、指揮官機を打倒するためには獣人たちの協力が必要不可欠だ。
 ならばこそ、ここで彼らを悪戯に消耗させる必要はない。
 何より。
「一人のほうが気楽」
 気負うことも。
 守らなければ、と思うこともない。
 煩わしさを感じないのであれば、それが一番であるし、何より他者への恐怖はまだ根深い所に残っている。

「行って」 
 短くとも、それでもシルヴィは獣人たちに告げる。
 此処は任せろ、と言外の言葉に成長を感じさせるかもしれない。だが、それでもまだまだだと言えるだろうし、これからだとも『ヨルムンガンド』は思うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
【バジル】アドリブ歓迎
「おお、クロムっぽいキャバリアだねえ」
「獣人達が吃驚してるようだ。そんじゃもっと驚かせてやろうか」
【魔神降臨Ⅱ】発動。22mの大魔神出現!
ピカッと破壊光線を周囲に振り撒いて敵のキャバリアのみを破壊。
こちらに放たれる銃弾、砲弾もピカッと消滅だ。
「えっ、邪魔すんな? はいはい」
姉の周囲の敵はスルーする感じで……。
超音速で戦場の空を翔けて破壊の光を振り撒きまくろう。


アレクサンドラ・バジル
【バジル】アドリブ歓迎
「よーし、今度は良い感じのキャバリアだ。行くよー」
「アーレークー、邪魔すんな!」
『無銘の刀』を片手に【神武】を発動。
光速の斬撃でザンザンキャバリアを斬りまくりながら戦場を縦横無尽に駆け舞いましょう。
砲弾、銃弾、なんでも返し刀でカンカンカンと防いで、そのまま流れる様にまたザンザンザン。
「たーのしー」



 黒鉄のキャバリア『フィールドランナー』が戦場を疾駆する。
 履帯が刻む戦塵は、獣人達を前にして脅威となるだろう。だが、それだけではない。重狙撃砲、連装機関砲、両肩腕武装、それら全てをばらまく一斉射は、嵐のように獣人たちに襲いかかる。
「なんて火力だよ……!」
「あれだけばら撒かれたら近づくに近づけ……!?」
 オオカミ獣人とヒツジ獣人の二人が目を見開く。
 彼らが見たのは、二人の猟兵の姿だった。
「よーし、今度は良い感じのキャバリアだ。行くよー」
「ああ、クロムっぽいキャバリアだねえ」
 アレクサンドラ・バジル(バジル神陰流・f36886)とアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)の二人が一気に戦場を割るようにして飛び込んでいく。

 それはユーベルコードの輝きが残光のように戦場に刻まれる様であったことだろう。
 オオカミとヒツジの獣人、『ゼクス』と『ズィーベン』は『フィールドランナー』の脅威よりも二人の力の発露に目を見開く。
「獣人たちが吃驚しているようだな」
「えー、いいじゃん。邪魔にならなきゃさ」
「そうもいかんだろ。巻き込んでしまっては元も子もない。それにあのキャバリアはこっちでは最新鋭ってことだ。それに指揮官も気になる」
 姉の大雑把な言葉にアレクサンドルは肩を竦める。
 そして、同時に彼の瞳がユーベルコードに輝くのだ。

「ま、せっかくだ。もっと驚かせてやろうってのが、猟兵魂をくすぐらせてくれるじゃあねぇの! さあ、魔神の力を味わいな」
 魔神降臨Ⅱ(グレーターデーモン)。
 それはアレクサンドルの姿20mを超える巨人へと変貌させる。 
 いや、巨神とも言うべき威容であった。
「な、なんだぁ……!?」
「ひ、ひと……!?」
「いいや、魔神と言っておこうか!」
 アレクサンドルの言葉と共に迫りくる砲火の全てを破壊の光でもって消滅させる。
 それは圧倒定期な力であったことだろう。
「アーレークー、邪魔すんな!」
 アレクサンドラは、アレクサンドルの大雑把な攻撃に不満が募っていた。というか、自分の獲物を横取りされているようなものだった。

「えっ、邪魔すんな?」
「してるでしょーが! 私の獲物なんですけどー!?」
「とは言ってもな」
「いーから! ここは和帯がやるから!」
 フラストレーションが溜まっているのだろうな、とアレクサンドルは口には出さないが思う。姉に何を言ってもしようがないという諦めもあったことだろう。
 なら、好きにやらせた方が言いだろう。
「はいはい」
「それでよし!」
 アレクサンドラの瞳がユーベルコードに輝く。
 己の手にした刀。『無銘の刀』を握りしめる。脱力、とは言わない。力を込める、とも言わない。
 あるのはただ一つ。

 己が振るう剣閃。
 ユーベルコードに昇華した剣技、神陰流真伝・神武(シンブ)は彼女の手によって光速の剣閃となって迸る。
『フィールドランナー』の駆体を切り裂く斬撃。
 さらに返し刀の斬撃が迫る銃弾を次々と切り裂いていく。
「で、でたらめだ!」
「銃弾を切っている……!?」
「あはは、たーのしー! 案外キャバリアもやるじゃんね!」
「調子に乗ってると……あ、いや。余計だったな」
「そゆこと!」
 はいはい、とアレクサンドルはため息を付いて破壊の光を放つ。姉の周囲を除いて、迫る敵軍を打ちのめす。

 とはいえ、アレクサンドラは縦横無尽に戦場を駆け抜けている。
 反撃されても、その反撃の尽くを手にした刀で弾くなり、切り捨てるなりしているのだ。正直に言って、埒外という言葉を越えた存在であるように獣人たちは思えただろう。
 嵐のように二人の猟兵が迫りくる黒鉄のキャバリア群を切り捨てていく。
「なんて奴らだよ……あれで本当に生身なのか……?」
「そう、みたい」
「あははは!」
 アレクサンドルもそうだが、アレクサンドラがヤバイ、と獣人たちは思っただろう。戦いにおいて楽しそうに笑っている。
 自分たちが戦場であれだけ過酷な、それこそ死にものぐるいで戦ってなお生き残れるかどうかという戦場にあって、彼女は楽しげに笑っているのだ。
「ヤバイな」
「うん、ヤバイ」
 二人の率直な感想を背中で受け止めながら、アレクダンドラは気にした様子もなく、迫る『フィールドランナー』を切り捨て、業火の中にて笑う。
 アレクサンドルは、そんな姉の哄笑はいつものことだと言わんばかりに己が放つ破壊の光でもって戦場を埋め尽くすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨飾・樒
最新鋭キャバリア、火力も機動力も高そう
でも、やるべきことは変わらない

自爆狙いで突っ込んでくる敵機は絶対に止めないと
空中跳躍も使って派手に、敵の射撃を避けながら接近
"眠り薬の魔弾"で味方に近い奴から優先して狙う
搭乗員の位置が狙い難ければ先に脚部を狙って停止させ、狙いやすい方向に回り込んで撃ち込む
味方が鹵獲できるなら最良、出来なくても止まっている機体を破壊するのは難しくないはず
私は動いてる敵機の注意を引きながら無力化を続ける

自爆できるってことは、行動不能になったら作動するような装備もあるかもしれない
疑わしいものは念入りに魔弾を撃ち込んで、被害を防ぎたい



 迫る敵機。
 その脅威は言うに及ばずであったことだろう。第一波のパンツァーキャバリアだけでも獣人たちにとっては脅威だったのだ。加えて、第二波のキャバリア群は最新鋭。
 履帯に覆われたアンダーフレームによって巻き上げられる土煙。
『フィールドランナー』は、その名が示すように戦場を駆け抜け、その装備した重火器でもって戦線を押し戻そうとしている。
 確かに、可能だっただろう。
 十分な力を『フィールドランナー』は持っていたし、数だけでも圧倒していたのだ。

 だが、雨飾・樒(Dormouse・f41764)は己の役割を全うすべきと戦場を駆け出す。
 火力も機動力も第一波のパンツァーキャバリアを上回っている。
「でも、やるべきことは変わらない」
 彼女は迫る『フィールドランナー』に駆け出す。
「……あれは、何?」
 あのキャバリアは重火器から弾丸を撒き散らしながら、こちらに突っ込んできている。自分たち猟兵という戦力を前にして突撃、というのならばわからないでもない。
 だが、どう考えても無謀極まりない突撃だ。
 他のキャバリアだって追従していない。
 なぜか、と樒は考える。

 答えは簡単に出る。
 あのキャバリアは――。
「自爆」
 その答えに至った樒は獣人部隊を下がらせる。
「自爆!? それであんたはどうする……」
「止める」
 樒は短く告げて、走り出す。靴底に仕込まれた空間跳躍の符でもって飛ぶ。敵機は確実にこちらの猟兵という戦力を潰すために己の生命を捨てるつもりなのだ。
 そうでなければ、自爆攻撃などという単騎突撃を大群を有する敵が行うはずがない。
 自分たちがただの攻撃では退けられないと知っているからこその自爆。
 否応なく止めなければならない、という戦術。
 己の生命をも駒にすることを厭わぬ精神性。

 これがオブリビオンである。
「なんとしても止める」
 樒は己の拳銃の引き金を引く。
 ユーベルコードに煌めく銃口。
 眠り薬の魔弾(ヒプノティク)を装填した弾丸は、『フィールドランナー』の装甲を透過し、一気に搭乗者であるオブリビオンへと到達する。
 それは生命を奪うものではなく、睡眠を与える力。
 ペールブルーの魔力弾がオブリビオンを打ち据える。だが、自爆攻撃を敢行するために走り出していたキャバリアは止まらない

「……止まらない」
 鹵獲できれば、と思っていたが、それは為し得ないと樒は判断し己の拳銃から弾丸を放つ。
 敵の自爆装置があるとすればアンダーフレームではないだろう。あれは駆動系を担っている。
 なら、オーバーフレーム……いや、と樒は狙いを定める。
「自爆が止められないのなら、足を止める」
 アンダーフレームの履帯へと弾丸を叩き込む。
 それは履帯を弾き飛ばし、その機体を塹壕へと飛び込ませる。溝に嵌るようにして機体が落ち込み、自爆装置が作動する。
 爆散する機体から炎と衝撃が荒ぶ。
 その衝撃に樒は大地を転がりながら威力を殺す。
「やっぱり。自爆できるってことは、行動不能になったら作動する仕掛けをしていると思った」
 獣人たちが駆け寄ってくる。
「大丈夫かよ!」
「大丈夫。敵を狙うなら、脚部……履帯を弾き飛ばせば機動力が殺せる。絶対に近づけてはダメ」
「じ、自爆かよ……めちゃくちゃやりやがる……!」
「だが、助かった。敵が自爆してくるってんなら、俺達でもやりようがある」
「少しでも被害を防ぎたい」
 ああ、と樒に応える獣人たち。
 彼らと共に樒は駆け出す。少しでも部隊の損害を抑えるために。迫りくる自爆覚悟の敵機を前に、もう誰も死なせはしないと樒は己が拳銃を構えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
正念場、ってヤツだな。
単純にデカいってだけでも十分怖いし、その上戦闘力でこっちを上回ってるっていうんだからおっかねえ。
……それでも。獣人の人たちの奮起を、犠牲を、無駄にすることなんてできねえ。
だったら、やれるだけやるだけだ……!

とにかく、こっちの有効射程に奴さんを捉えねえとな。
〈第六感〉で攻撃を〈見切り〉つつ、〈ダッシュ〉で一気に間合いを詰める。
十分な数を引きつけたらUC起動。〈楽器演奏〉を重ねて効果範囲を拡大しつつ、じわじわと弱らせていく。
それでも向こうは抵抗してくるだろうから〈オーラ防御〉で被害を抑えたり、〈地形の利用〉や〈敵を盾にする〉ことで〈時間稼ぎ〉して有利に運ぶようにする。



 正直なところを言えば、怖い。
 キャバリアは巨人そのものだった。単純に巨大だということは人の心に容易に恐怖を植え込む。思った以上に。誰もが思う以上に、己より巨大な存在は恐れを生み出すものだった。
 さらに言えば、迫る敵機キャバリア『フィールドランナー』は最新鋭。
 第一波にて迫ったパンツァーキャバリアとは一線を画する性能を持っている。
 履帯の如きアンダーフレームは悪路であっても走破する力を持っているだろう。塹壕を乗り越えることもできるし、多数の重火器を使いわけることによって迫る獣人を薙ぎ払わんとしている。
 脅威だった。
 ハッキリ言って、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は怖いと思った。
 それは隠しようのないものだった。

 けれど。
「正念場、ってヤツだな」
 震えても、恐れても。
 それでも戦わなければならない。
 獣人たちの奮起を、犠牲を、己が此処で背を向けることは無駄にすることだと知っているからだ。
 誰だって怖い。
 恐怖を噛み殺して生きているのだ。
「だったら、やれるだけやるだけだ……!」
 嵐の瞳がユーベルコードに輝く。
 迫る重火器の弾丸の嵐の中を走る。弾丸の雨は『フィールドランナー』の火力が凄まじいことを示していただろう。

 恐怖にかられながらも、その恐怖自体を噛み殺す。
 克己する、という点において嵐は多くを乗り越えてきた猟兵だろう。
 故に、その姿に獣人たちも続く。
 ともに戦うのならばこそ、恐れを抱きながらも共に往くことのできるものを選ぶだろう。
「我が奏でるは魔笛の旋律。惑い、狂い、捻じ曲がれ」
 伝承幻想・魔笛ノ旋律(ワンダーファンタズム・ウィキッドメロディ)が奏でられる。己が手にしたブルースハープより、旋律が戦場に響き渡る。
 それは奇妙な響きの音波。
 けれど、キャバリアを駆るオブリビオンたちの五感を消失させるのだ。

 視覚も聴覚も、触覚も。
 キャバリアを操縦する上で必要な五感を奪いさる。
「これで戦えないだろう! これなら……」
「まだだ! あいつら自爆するらしいぞ!」
 獣人の言葉に嵐は目を剥く。
 自爆?
 つまり、それは。

 眼の前のキャバリアが盛大な爆炎を上げる。衝撃を撒き散らし、炎が飛び散る。
「自分の生命を……なんだと思ってんだ!」
 嵐は怒りに震える。
 獣人たちに、自分たちに損害を与えようとした意志にでは、ない。
 過去の化身と言えど、己の生命などないに等しいものであるかのように扱うことに怒りを覚えたのだ。
「敵が近づかないように時間を稼ぐ。あいつから離れろ!」
 嵐の言葉に獣人たちは頷く。

 自爆の被害を受けてはならない。
 嵐はオーラで防御しながらブルースハープを奏でる。
 旋律は次々とオブリビオンたちの五感を奪っていく。その度に爆炎が上がる。
 近づけさせない。
「生命を生命とも思わない連中に、傷つけられるなんてまっぴらごめんなんだよ」
 嵐はそう、叫び自爆攻撃を敢行しようとする敵機を獣人たちに近づけせぬと、恐怖を拭い去って前線に立ち続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

なんかいっぱいきましたね。

さっきまではステラさんのやべーオーラのおかげで忘れてましたけど、
やっぱりこの世界シリアスがすぎないですか?
さすがにラムネで乗り切れなさそうな気がしてきました。

それにしましても、ちょっと多すぎないですか?

ここまで多いと、ちょっと冒険心が出ちゃいますね。
ここは思い切って、新曲のお披露目しちゃいましょう!

以前にガチャで引き当てたバグパイプ、練習してたんですよー♪

ちょっと問題もあるのですけど、ステラさんもいますし、だいじょぶですよね!
ではではいっきますよー!【フラワー・オブ・スコットランド】!

ぜひー、ぜひー……。
威力はすごいんですけど、息が保たないんですよね……。


ステラ・タタリクス
【ステルク】
エイル様の香りが強烈で
ルクス様を放置プレイしてしまいました
さすがのメイドもこれは反省
誰がやべーメイドですか
シリアスもできるクールメイドと書いて、ステラと読みます
そろそろルクス様もシリアス……
そのバグパイプはなんでしょう?ハンマーですか??(悪寒

いえ、あの、ちょっと
ええいっ!破壊音波が破壊衝撃波に進化しました?!
|なにしてんのこの勇者!!《やだしにたくない!!》

……ごふ
息が続いていたら私の命が終わってました……
ですが敵も終わりかけているようです
ならばこの倦怠感すらも振り切ってみせましょう!
【テールム・アルカ】起動!
人型サイズのハイペリオンランチャーを召喚
ええ、一気に薙ぎ払います!!



 硝煙烟る戦場にあってステラ・タタリクス(紫苑・f33899)が何を嗅ぎつけたのかは、その人のみが知ることであろう。
 他者がいくら認識しようとも、彼女だけが知る事柄である。
 故に、彼女は強烈な香りにクラクラきているのだ。なんで?
「『エイル』様の香りが強烈でルクス様を放置プレイしてしまいました」
 己のキャバリア『フォルティス・フォトゥーナ』の嘴の先で何やらルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)が喚いている。
 コクピットにいるので聞こえない。聞こえてない。だから、これは聞こえないふりではないのだとステラは深く頷いた。
「さすがのメイドもこれは反省」
「ステラさんのヤベーオーラのおかげで忘れてたんですけど」
「誰がヤベーメイドですか」
「聞こえてるじゃあないですかー!」

 それはともかくとして、ルクスは獣人戦線と呼ばれる世界の雰囲気に蕁麻疹が浮かびそうになっていた。
 彼女は極度のシリアスアレルギーである。なにそれ、と思われるかもしれないが、そういうもんなのである。深く考えたらダメなのである。
「やっぱりこの世界、シリアスがすぎないですか? 流石にラムネでは乗り切れなさそうな気がしてきました」
「大丈夫です。お任せください、ルクス様。シリアスもできるクールメイドと書いて、ステラと読みます」
「それにしましても、ちょっと数が多すぎないですか?」
 しれっとスルーしてルクスは眼下に疾駆する黒鉄のキャバリア『フィールドランナー』を見やる。
 オブリビオンの駆る大群である。
 第一波のパンツァーキャバリアとは違い、最新鋭であることが見受けられる。
 たぐる重火器も多彩であるし、アンダーフレームが履帯に覆われていることからも、塹壕戦に強いことがわかる。

 しかも数が多い、というのが厄介そのものだ。
 大軍ゆえに策略は必要なく。
 間断なき波状攻撃によって獣人部隊をすり潰そうとしているのだ。
 ステラはルクスの言葉に頷く。なんか今スルーされたイがするけれど。
「ここまで多いと、ちょっと冒険心が出ちゃいますね。ここは思い切って、新曲のお披露目しちゃいましょう!」
 なんて?
 ステラは、ぎくりと身を震わせる。
『フォルティス・フォトゥーナ』の嘴の先でなんかルクスがクソでかい楽器を手に取っているのだ。
「それは一体なんでしょう? ハンマーでしょうか?」
 悪寒がした。
 なんかモンスターハントしそうな武器である。いや、楽器であろう。何? ハント笛?
 旋律?
 何を言っているのだろう。

「以前にガチャで引き当てたバグパイプ、練習んしてたんですよー♪」
「いえ、あの、ちょっと」
 世界は余計なことをしてくれたもんである。
 それってゲームの世界の話じゃあないのかとステラは思った。いや、やめてほしい。やだ。やめてやめて。
「ちょっと問題もあるのですけど、ステラさんがいますし、だいじょうぶですよね!」
「何もよくないです! 問題だらけです。ごしょうでございますから、やめてください!!」
「さーいっきますよー! フラワー・オブ・スコットランド!」
 大きく息を吸い込むルクス。
 肺にいっぱい溜め込んだ息をバグパイプに吹き込む。それは凄まじい音響衝撃波となって迸る。

 それも上空からである。
 遮蔽物も何もない戦場にあって『フィールドランナー』はあまりにも無防備だった。放たれた音響衝撃波は一気に戦場を駆け抜け、その装甲を無意味にするように内部のオブリビオンを打ちのめす。
 反響する音は、駆体の中に空洞があればレゾナンスとして吹き荒れる。
 それは鼓膜をぶち抜くだけではない、脳さえも揺らすのだ。
 シェイクされる意識。
 オブリビオンが耐えられるはずもなかった。

「……ごふ」
 あ、これはステラの吐血である。オブリビオンの吐血じゃないのです。
「ぜひー、ぜひー……威力はすっごいんですけど、息が持たないんですよね……」
 ステラはルクスの言葉に助かった、と思った。
 僅かな時間でこれである。
 もしもルクスの息が持つのならば、これほどの脅威はないだろう。あ、ステラにとって、という意味である。
「ですが、敵も終わりかけているようです」
 ステラはシリアスもできるクールなメイドと書いてステラと読む、という矜持を持って瞳をユーベルコードに輝かせる。
 ここで踏ん張らねば何がメイドか!
 いや、メイドってそういうものじゃあない気がするのだが。
 コクピットから身を乗り出し、ステラはテールム・アルカを起動し、人型サイズの荷電粒子砲を構える。

「一気に薙ぎ払います! この倦怠感すら荷電粒子の彼方に吹き飛ばすのです!」
 ステラの叫びと共にルクスの音響衝撃波の未だ残る残響を吹き飛ばすように荷電粒子の一撃が『フィールドランナー』を薙ぎ払う。
 その衝撃波凄まじく、ルクスは自分のことも言えないんじゃないかなーと思ったり思わなかったりしたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
『さて奏者、君の声に彼らは応えた。次は、どうする?』
知れた事、自分は壊す。オブリビオンは破壊する。
デモニック・ララバイ【楽器演奏】弦を鳴らし【衝撃波】で弾丸を受け流しながら、獣人部隊に問う。

貴殿らは、まだ奔れるか?奔れるのならば、共に、壊そう…!

【推力移動】回避機動を取りながら行進曲を掻き鳴らし、不可視の【音響弾】装甲を打ち抜く凝縮した衝撃波の【弾幕貫通攻撃】

敵を!この戦場を!その心が求めるものあるならば!!
その為に、壊せぇえーー!!!

【集団戦術】『破壊鳥群』獣人部隊は破壊の翼で飛翔、加速【空中機動】制空権確保、その機動力で地を這う敵機を逆に攪乱、破壊翼による防御と破壊羽根の放出で【範囲攻撃】



 獣人たちが駆け出している。
 彼らにあるのは恐怖を噛み殺す牙である。ならばこそ、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は先陣きって走る。
 迫るキャバリアの第二波。
 その大軍は言うまでもないことである。
 黒鉄のキャバリア『フィールドランナー』は最新鋭機であると言えるだろう。パンツァーキャバリアとは比べ物にならない戦術をたぐる機体。
 重火器は状況に応じて使用し、履帯に覆われたアンダーフレームによって塹壕すらものともしない機動力を有している。
 はっきりいって不利であることは否めない。

『さて奏者。君の声に彼らは応えた。次は、どうする?』
 AIの声が聞こえる。
 小枝子はもう心を決めていた。
 言うまでもないことだ。そう、自分は破壊の化身。ならば。
「知れたこと。自分は壊す。オブリビオンは破壊する」
 弦をかき鳴らす。
 己の生み出す旋律は人の心を癒やすことはないのかもしれない。誰かの心をかきむしるように鼓舞することしかできないのかもしれない。
 けれど、それはすべて、『かもしれない』という可能性の話でしかない。
 ならばこそ、小枝子は叫ぶ。

「貴殿らは、まだ疾走れるか? 疾走れるのならば、共に、壊そう……!」
「やれないことなんてあるものかよ!」
「そうだ。此処まで戦ってきたんだ。やるっきゃないだろ! 俺達の故郷を守るためには、なんだって!」
 意気揚々とした声が響き渡るのを小枝子は見下ろす。
 そうだ。
 彼らには意志がある。オブリビオンとは違う。
 彼らが己が為すべきことを為す、というのならば、小枝子自身もまた己にできることを成さねばならぬと咆哮する。

「ああ、壊そう!!」
『クレイドル・ララバイ』のアイセンサーがユーベルコードに煌めく。
 戦場を共にする獣人部隊の背に破壊の翼が出現する。
 それは破壊物質纏う翅の放出能力を与えるものであった。
「……!? な、なんだ、これは……!?」
 戸惑う獣人たちに小枝子は言う。
「敵を! この戦場を! その心が求めるものあるならば!!」
 それは理屈ではなかった。感情の発露そのものであったことだろう。
 己が守らなければならないものがあるという。
 そして、それを壊そうと、汚そうとする者たちが迫るというのならば。これを討たねばならない。オブリビオンとはそういうものだ。だからこそ、小枝子は叫ぶ。

 はっきりと。
「そのために、壊せぇえ――!!」
 破壊鳥群(カスラクラスタ)と変貌した獣人部隊と共に小枝子は戦場を疾駆する。
 破壊の翼は飛翔能力を与え、戦場を席巻する。
 この空に蓋をされていない世界において、キャバリアは空を飛ばぬ兵器。
 ならばこそ、空を制することは地上に這うキャバリアを制することと同義。故に小枝子は獣人部隊とともに飛翔し、一気に戦場を破壊物質纏う羽根でもって爆撃するのだ。
「地上では歯が絶たなくとも……! これなら!」
「そうだ! 破壊できる! 己たちの守りたい平穏を破壊せんとするオブリビオンを破壊しろ! 破壊して、破壊して! 二度と己たちに迫ることがないように!」
 破壊しつくせ、と小枝子はユーベルコード煌めく瞳と共に戦場を切り裂くようにして駆け抜けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィンデ・ノインテザルグ
―…ギャラガー財団所属、ヴィンデ・ノインテザルグ。現着した。
Fireflyに搭乗して味方戦線の前に降り立ち
同時に接近していた敵前線をLeviathanで薙ぎ払おう。

その装甲でその機動。
ならば私も相応の速さで御相手しよう―UC機動。
Evangeliumで加速しジャンプ後
空中から敵陣に向けてBelphegorを放射。
スタン状態の個体から、Asmodeusやキックを駆使して排斥。
また、串刺しにした敵機を盾にして被弾回避を試みる。
好い装甲だな。
私に嘲りの意思はない、非道ではあるかもしれないが。

撃ち漏らしのないよう常にLuciferで牽制を行おう。
仔羊達に路を示すのが神父の務め―信仰の違い等些細な事だ。



 塹壕は洗濯板のように段々になっている。
 故に乗り越えることは困難であるし、進軍の速度が大きく落ちる。侵攻する側にとっては厄介そのものであり、その掘られた塹壕から潜んだ敵兵が飛び出してくるかも知れないという恐怖が、さらに進軍を遅らせるのだ。
 だが、それを踏破するのがキャバリアである。
 履帯覆うアンダーフレームを持つキャバリア『フィールドランナー』は戦場を、その黒鉄の駆体でもって塗りつぶすようにして迫る。

 第二波。
 獣人部隊を殲滅するための波状攻撃。
 大軍を有するオブリビオンにとって少数である獣人部隊の奇襲や奇策、そうした術策に付き合ういわれはない。
 ただひたすらにすりつぶすこと。
 それが定石であったのだ。
 だが、それは獣人部隊を支援する猟兵という存在がなければ、の話である。

 塹壕を縫うようにして高速機動特化型キャバリアが逆関節アンダーフレームの柔軟性をしめすように飛び跳ねるようにして銃火をかいくぐり戦場を疾駆する。
「――……ギャラガー財団所属、ヴィンデ・ノインテザルグ(Glühwurm・f41646)、現着した」
 推進飛行装置から噴出する光が戦場に一閃を刻む。
 それはヴィンデ駆るキャバリアが生み出した光であった。
 ビームダガーの一閃。それは三日月を思わせるような光波となって『フィールドランナー』の躯体を切り裂く。
 爆炎が上がり、照らされた駆体が獣人達を振り返る。
「み、味方……?」
「ああ、支援行動を開始させてもらう。好い朝だな」
「何を」
 言っているんだ、とオオカミの獣人『ゼクス』はたじろぐ。
 今は夕焼けが迫る時刻である。だというのにヴィンデは構うことなく朝が来たかのように振る舞っている。
 その奇異なる言葉に彼は訝しんだ。だが、ヴィンデは構わなかった。
 認識できないのだ。
 彼は『昼』を認識できない。今も暗闇の中にいる。『夜』の中にいる。だからこそ、戦いがもうすぐ終わるのならば、朝が来るのだ。

 その理屈を解されなくてもいい。
「敵機を掃討する」
 短く応えヴィンデは己がキャバリアと共に戦場に飛び込む。
 敵機の装甲の厚さは理解した。指を打ち鳴らす。機体の各部が変形し、高速戦闘モードへと移行する。
 火力も凄まじい敵だ。
「ならば、これを翻弄する。クロックアップ・スピード」
 推進飛行装置が凄まじい推力を生み出し、閃光のようにヴィンデの駆るキャバリアを走らせる。
 迫る銃火など寄せ付けもしないほどの圧倒的な速度。
 グラビティガンから放たれた弾丸が重力を生み出し、『フィールドランナー』の躯体をを押し止める。駆体がかしぐのを見た瞬間、一気に距離を詰めパイルバンカー一撃で持ってコクピットを貫く。

「ほう、好い装甲だな」
 バンカーの一撃が食い込み、引き抜けない。
 其処に銃火が迫るが敵の躯体を盾にしながら脚部で撃破した機体を蹴り飛ばして走る。
「私に嘲りの意志はない。非道ではあるかもしれないが」
 疾駆する戦場にばらまくようにしてクリスタルビットが乱舞する。
 牽制射撃と共にヴィンデは獣人たちを援護するようにして戦場に道を切り開いていく。
「仔羊達に路を示すのが神父の務め」
「あんた、神父なのか!?」
「なんてこというの」
 オオカミ獣人をヒツジ獣人『ズィーベン』が嗜める。その様子にヴィンデは頷く。
「なに、信仰の違いなど些細なことだ。あれなるが指揮官機だろう。なるほど、只者ではない」
 ヴィンデは黒鉄のキャバリアの群れの奥に座す不気味な赤いキャバリアを見やる。
 あれこそが、この部隊の首魁。
 討たねば終わらぬ戦いを齎すもの――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『戦場の天使ナハティガル』

POW   :    ここでは生きることが最優先です
【鋼鉄の意志 】を宿し戦場全体に「【治療を開始しなさい】」と命じる。従う人数に応じ自身の戦闘力を上昇、逆らう者は【容赦なく棍棒】で攻擊。
SPD   :    殺してでも治します
【素手(消毒済み) 】に【完治を願う気持ち】を付与して攻撃し、あらゆる物質を透過して対象の【患部】にのみダメージを与える。
WIZ   :    医前逃亡は死です
自身の【手に持つランプ 】から【監視の光】を放出し、戦場内全ての【逃走する患者もしくは部下】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。

イラスト:山神さやか

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は襞黄・蜜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 第一波、第二波による波状攻撃を獣人部隊は猟兵たちの手助けもあって凌ぐことができた。
 それは奇跡的なことだっただろう。
 彼らは少数。
 術策、奇策を用いても、相手がそれに乗ってこなければ意味がないからだ。だが、迫るキャバリアの大軍を要するオブリビオンの部隊は此方の塹壕戦術に乗ってこなかった。
 指揮官であるオブリビオン、『戦場の天使ナハティガル』は、大軍を間断なく押しやり、獣人部隊をすり潰すかのように攻め立てた。
 やるべきことを理解している。
 此方は大軍。
 ならば、速やかに圧倒素べきなのだ。
 敵の戦術に乗る必要はない。ただ、ひたすらに攻め立てれば戦場という病巣は切除され、寛解するであろうと理解していたのだ。
「構いません。獣人たちが如何に持ちこたえようと。如何に猟兵たちが迫るのだとしても」
 彼女の駆る不気味な赤いキャバリアのアイセンサーが煌めく。

 其の名は『セラフィム』。
 いや、違う。
「讃えよ『ケルビム』――あれなるは病巣。世界に満ちる戦乱を抵抗によって著しく蝕む者。これを討つ私こそが」
『戦いに際しては心に平和を』抱く者であると『戦場の天使ナハティガル』は言う。
『ケルビム』と呼称された赤い不気味なキャバリアが疾駆する。
 言うまでもなく高性能。
 振るうは無敵斬艦刀。戦場に乱舞するは無数のクリスタルビット。胸部より放つは凄まじき火砲の熱線。
 いずれもが強大な力であることは言うに及ばず。
「幸を共して生きよう。渦中の喜望よ」
 其の力を持って、猟兵たちに『戦場の天使ナハティガル』は迫る――。
シルヴィ・フォーアンサー
……あっちが天使ならシルヴィは死神かな。
『ふむ黒いのもそれっぽいかもな、悪魔もありかもしれん』
「あらあら、それなら堕天使というのも格好良いですよ」

……まぁこの世界に神も悪魔もないから鉛玉撃ち合ってるんだけどね。
敵は倒す、怖いものは消す、お仕事はこなすよ。

ガトリング砲を撃ち込みながらミサイル発射して爆炎に紛れているうちにロケットパンチを発射。
誘導弾として別途攻撃をしかけながら接近、相手の自称治療行為にスキルコネクト・カウンター発動。
回避しながら左右のビームサーベルで滅多斬りにした後にハイペリオンランチャーを撃ち込むよ。

とりあえず死んだら治せないから次があったらまともな治療習ってきたらいいと思う。



 不気味な雰囲気を持つ赤いキャバリア『ケルビム』を駆るオブリビオン『戦場の天使ナハティガル』は、猟兵の進撃を意に介していないようだった。
 無理解。
 というわけではない。彼女にとって猟兵も、獣人部隊も変わらぬ敵でしかない。いや、治療すべき患部でしかないというのが正しいだろう。
 戦乱にあるのは対立する勢力が存在するがゆえである。
 これを排除する、というのは適切で迅速な処置を行わなければならない。
 つまり、術策や奇策というのは彼女にとってただの遅延行為でしかない。ならばこそ、彼女は物量でもって戦場をすり潰す。
「この患部を癒やします。殺してでも」
 彼女の言葉と共に赤いキャバリアが疾駆する。

「……あっちが天使ならシルヴィは死神かな」
 シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は空より赤いキャバリアを見下ろす。
 天使、と名乗っていた。
 戦場の天使。
 それはシルヴィにとってはあまり意味のない言葉であったかもしれない。けれど、天使、というのならば己は、と考えるところは彼女の情緒というものが育ってきた証であるのかもしれない。
『ふむ。黒いのもそれっぽいかもな。悪魔もありかもしれん』
「あらあら、それなら堕天使というのも格好良いですよ」
 AIである『ヨルムンガンド』と『フレースヴェルグ』が乗っかってくる。けれど、迫る火線の一撃が彼女達の機体をかすめる。
 凄まじい熱量である。
 余波だけで機体の装甲が溶解している。直撃を受ければ『ミドガルズ』と言えど保たないだろう。

『凄まじい威力だな』
「『プロメテウス・バーン』というのでしょう。これは。煮沸消毒するのに適しています。祈りなさい。神に。そうすることで貴方たちの生命は浄化され、贖えるのです」
『戦場の天使ナハティガル』の言葉にシルヴィは頭を振る。
「……この世界に神も悪魔もいないから、鉛玉で解決する。敵は倒す、怖いものは消す、お仕事をこなす」
 それだけだというようにシルヴィの瞳がユーベルコードに輝く。
 放つはガトリング砲の弾丸。
 ミサイルを発射し、爆炎が赤いキャバリア『ケルビム』を巻き込む。
 その爆炎の中に紛れるようにして『ミドガルズ』が飛ぶ。

 瞬間思考力と敵の火線を見切る力、加えて操縦技能によって放たれた一撃をかろうじて交わす。
『此方の予測を上回る連射速度……加えて、クリスタルビットの弾幕牽制か』
「振り切れないってのが厄介よね」
 機体のAIたちの言葉をシルヴィは知る。
 確かに、と思う。敵の機体性能は尋常ではない。此方の機体の数世代先を行っていると言っても過言ではない。
 
 それほどまでに性能差が激しい。
 だが、その性能差を埋めるのもまたパイロットの技量である。
「スキルコネクト・カウンター」
 牽制のクリスタルビットを躱しながら、一気に飛び込む。
「無駄です。どれだけ爆炎に紛れようとも、私の手は患部に触れる。患部に触れるということは適切に切除できるということ」
 爆炎の中を迫るは無敵斬艦刀の切っ先。
 煌めく剣閃。
 だが、その剣閃をシルヴィは機体の装甲を弾かれながらも踏み込み、距離を詰める。手にしたビームサーベルの斬撃がクリスタルビットを切り刻む。

「死んだら治せない。それを知らないから、そんなことが言える。次があったら、まともな治療習ってきたらいいと思う」
 肩部の荷電粒子砲の砲塔が『ケルビム』へと向けられる。
 クリスタルビットが集積し、盾となるが構わない。シルヴィが引き金を引いた瞬間、放たれる荷電粒子ビームの一撃がクリスタルビットを砕きながら赤い『ケルビム』の機体を吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
(「獣人やアタシらが病巣?がん細胞みたいな存在にはそう見えるのかしらね」と頭の中の教導虫が話しかける)
せんせーのおっしゃる通りです!切除されるのは俺たちではなく奴らの方です!
しかしこのがん細胞は中々に手ごわそうですね…
(「どう攻めるか悩んでいるの?じゃあここは無敵のアタシが何とかしてあげよう」)
ありがとうございます!せんせー!では俺は獣人の皆さんと一緒に守備を固めます!
({蜂蜜色の靄}を散布することで、味方に靄を纏わせ『オーラ防御』を施し、さらに靄を媒体にした『情報伝達』で拠点防衛の『大軍指揮』を行う)
これでよし!ではUC【蜂蜜色の奔流親】発動!
せんせー!よろしくお願いします!
「オッケー!勝った後に食べるご飯の献立でも考えながら待ってなさい!」
はい!せんせー!



 赤い不気味なキャバリア『ケルビム』を駆るオブリビオン『戦場の天使ナハティガル』は猟兵たちをして、病巣と言った。
 戦場にありてオブリビオンに抵抗を示す病の根源であると。
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の頭の中で教導虫が首をひねる気配があった。
『獣人やアタシらが病巣? がん細胞みたいな存在にはそう見えるのかしらね』
 世界の悲鳴に応えるのが猟兵であったというのならば、まさしくその通りであったことだろう。
 世界という命を殺す病。
 それがオブリビオンである。であるのならば、それに対抗する己たちはオブリビオンから見れば、逆転したものとして見えるのも頷けるところであった。
「せんせーのおっしゃるとおりです! 切除されるのは俺達ではなく奴らの方です!」
「いいえ、切除されるべきは貴方たちです」
 鋼鉄の意志が漲っている。
 赤いキャバリア『ケルビム』のアイセンサーが煌めく。
 迸るようなユーベルコードの輝き。
 手にした無敵斬艦刀は、大軍である彼女の部隊のオブリビオンたちの同意を得て、途方もない力を宿している。

 振るいあげられた斬撃の一閃が兵庫に走る。
 大地を寸断するかのような斬撃。強烈な衝撃が兵庫の体を打ち据える。オーラの防御も砕けていく。
「だ、だめだ……なんだ、あのパンツァーキャバリアは!」
「デタラメが過ぎる!」
「でも、あの人が守ってくれたから、私達の生命はまだ続いている……!」
 間一髪だった。
 兵庫の放った蜂蜜色の靄。
 これによってオーラ防御を獣人たちにまとわせたのだ。致命傷は避けられたが、しかし衝撃波が彼らを吹き飛ばしている。

「みなさんは、守備を固めてください!」
 兵庫は指示を出す。
 敵を打倒できても獣人たちに被害が出ては元も子もない。だからこそ、兵庫は走る。
「切除に失敗しましたか。ですが、二度目はありません」
『戦場の天使ナハティガル』は『ケルビム』と共に迫りくる。
 鋼鉄の巨人から放たれる無敵斬艦刀の一閃は強烈そのものであったことだろう。凄まじい威力の一撃が兵庫へと落雷のように迫る。
「せんせー! 無敵のせんせーならば!」
 ユーベルコードに輝く瞳。

 兵庫は信じている。
 己の教導虫の力を。彼女が己に何を託してくれたのか。何を教えてくれたのか。何を、という思いを知るからこそ、彼の中の教導虫は無敵なのだ。
 己を導いてくれる。
 絶対なのだ。だからこそ、そのユーベルコードは千変万化する教導虫の抜け殻を無敵にする。
 振るわれる『ケルビム』の無敵斬艦刀が汎ゆるものを両断するのだとしても。
 それでも斬撃は教導虫の抜け殻に受け止められる。
「止められる……!?」
「そうだ! 俺の信じるせんせーは、俺が信じる限り無敵なんだ! だから! せんせーよろしくお願いします!」
『オッケー! 勝った後に食べるご飯の献立でも考えながら待ってなさい!』
「コロッケがいいです!」
 オーライ、と教導虫の抜け殻が飛び出す。
 振るう拳が無敵斬艦刀に罅を走らせる。そう、あれだけ強大な敵を前にしても兵庫の教導虫を信じる心は揺らがない。

 蜂蜜色の奔流親(イエローハニー・オーラペアレント)は、兵庫の彼女を信じる心が揺らげば、大幅に弱体化する。
 だが、兵庫が信じる限り、疑念を抱くことがないというのならば、彼女は無敵なのだ。
 汎ゆる大敵をも退ける無敵のせんせー。
 その振るう拳は『ケルビム』を後ずらせる。
 それほどまでの威力を放つ拳を前に『戦場の天使ナハティガル』は鋼鉄の意志でもって相対する。
 だが、言うまでもない。
 如何に鋼鉄の意志があろうと、これは概念の戦いでしかないのだ。
 鋼鉄の意志では、兵庫の教導虫を無敵と信じる心を捻じ曲げることはできない。屈服させることはできない。
 故に、その拳は鋼鉄の巨人だろうが、なんだろうが、打ち据え、打倒するのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨飾・樒
赤い機体、あれもクロムキャバリアの?
話に聞いていた奴と関係ありそうだし、こっちの世界に持ち込まれてることも気になるけど、考えるのは後

どの距離にいても撃たれる、逃げ場がないなら懐に飛び込む
接近するのに邪魔なビットに狙いを絞って"眠り薬の魔弾"で墜とす
本体からの射撃も当たったら終わり、全て避けるしかない
至近距離まで詰めたら怖いのは斬艦刀だけ、私を迎撃するために刀を振るう隙を狙う
ビームやレーザーでなければ回避は最小限、当たらないギリギリで良い
無防備になった胴体、搭乗員を狙って魔弾を撃ち込む
強い奴は一発じゃ効かないかも、撃てるだけ撃つ
狙い難ければ敵機の他の部位を標的にする
火力や機動力、一部でも削げればその分、有利

切除されるべき病巣は、私達じゃない



 猟兵の生み出したユーベルコードによる力。
 それに赤いキャバリアは後ずさる。それは本来ならありえない光景だったことだろう。だが、しかし、確実に赤いキャバリア『ケルビム』は後退した。
 振るう無敵斬艦刀。
 その斬撃は大地を寸断するほどの威力を持っていた。
 そして、戦場に満ちるはクリスタルビット。
 さらに戦場を疾駆する『戦場の天使ナハティガル』が指揮するキャバリア大部隊の残存兵力である。
「敵前逃亡は死と同義。ならば、走りなさい。眼の前の敵に、一つでも多くの銃弾を叩き込むために。悪性の腫瘍そのものたる猟兵を取り除くために。この病巣を切除するために。そのためだけに死んでも生きて殺しなさい」
 彼女の言葉は支離滅裂であった。
 だがしかし、『ケルビム』の、その手にしたユーベルコードの力は本物だった。

「赤い機体、あれもクロムキャバリアの?」
 雨飾・樒(Dormouse・f41764)は訝しむ。
 彼女の知るクロムキャバリアにおける機体と似通った雰囲気を感じ取ったのかも知れない。なぜ、他世界の兵器が、と思うのは今更であったかもしれない。
 ゾルダートグラードが如何なる超大国であろうとも、目の前に示された事実から背けても、現実は変わらないのだ。
 なら、樒は戦うことを選ぶ。 
 考えるのは後でいい。今は、と樒は走る。

「どの距離にいても撃たれる、逃げ場が無いなら」
 迫るクリスタルビット。
 それは空を埋め尽くすほどの物量であった。空だけではない。大地にも残存したキャバリア大部隊が迫っている。
 逃げ場はない。
 なら、と彼女は疾駆する。
 相手と己。
 相違なるは体躯の差でしかない。数が己を追い詰めるというのならば、己の体躯の小ささは利点にもなるだろう。
「逃げ回っていても、現実は変わりません。それを」
 放たれるクリスタルビット。
 銃弾で撃ち落としても、さらに弾幕兵器たるクリスタルビットは樒に迫る。大地を穿つほどのクリスタルビットの弾幕を前に樒はひたすらに走る。

「あたったら終わり」
 わかっている。
 全て避ける他に樒が生き残る道はない。だからこそ、彼女は集中する。
 己が見定めるは道である。
 生き残るための道は敵の懐にしかない。クリスタルビットの乱舞を駆け抜け、迫る火砲の熱線が彼女の肌を焼く。
 凄まじい、という他無い。
 圧倒的な性能。クロムキャバリアにおいても、このような機体は明らかにオーバースペックであると言えるだろう。
 何世代か先を言っているというほかないほどの性能。

 迫る火砲の熱線で焦げる肌に樒は歯を食いしばる。
 勝機を見出すために己は前に進んでいるのだ。ならば、踏み込む。あの赤いキャバリア『ケルビム』の懐へ!
「距離を詰めたからなんだというのです。例外はありません。切除以外には」
 振るわれる無敵斬艦刀。
 その一閃。あれがもっとも樒に取っては恐ろしい攻撃だった。だが、同時に隙でもあったのだ。確実に敵は己を屠るために最上段に振るい上げる。
 ならば、その一瞬が隙なのだ。

 踏み込む。
 恐れは抱かない。恐れは動きを鈍くする。ならばこそ、樒は踏み込むのだ。
「沈め、静寂の奥底に」
 眠り薬の魔弾(ヒプノティク)が放たれる。
 コクピットを狙う。透過して搭乗者であるオブリビオン『戦場の天使ナハティガル』へと弾丸を届けるのだ。
 ペールブルーの魔力弾がコクピットの装甲を透過する。
 それは殺傷能力を保たぬ弾丸。
 睡眠という異常を齎すもの。
 けれど、それが効かぬかもしれない。なにせ彼女は鋼鉄の意志を持っている。世界から己たちを切除するという意志を。

 だからこそ、樒は動きを僅かでも鈍らせることに注力する。
 そして、告げるのだ。
 力強く。彼女を否定する。
「切除されるべき病巣は、私達じゃない――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
各員散開火砲注意!ビット壊せ!!

デモニック・ララバイ【推力移動】吶喊!
BXフォースサーベル斬艦刀形態【斬撃波】ケルビムへ叩きつけに行き、
【集団戦術】〈破壊鳥群〉獣人部隊破壊羽根【弾幕範囲攻撃】でクリスタルビット破壊
〈回点弾〉破壊羽根を【念動力】で操作、ケルビムへ【追撃】
【瞬間思考力】と人工魔眼の動体【視力】で、その手を【見切り】
【早業空中機動】でケルビムの至近距離を回りながら
双剣変形フォースサーベルで【切断】攻撃

錆塗れの手で皆に触れるな…!
破傷風になったらどうするつもりだ貴様ァアアア!!!

【フェイント】殺戮音叉発振【急所突き】
コックピット目掛けて【衝撃波】纏う音叉の刺突【貫通攻撃】
ぶち抜く!!



「いいえ、切除されるべきは貴方たち。病巣は速やかに切除しなければ。世界が膿んでしまう――『ケルビム』!」
 オブリビオン『戦場の天使ナハティガル』は叫ぶ。
 不気味な赤いキャバリア『ケルビム』のアイセンサーが煌めく。
 戦場を埋め尽くすは無数のクリスタルビット。それを朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は知っている。
 その挙動を知っている。
 あれは弾幕兵器。
 圧倒的な物量による飽和攻撃。
 それを知っていたからこそ、彼女は周囲の獣人部隊に呼びかける。
「各員、散開! 火砲注意! ビット壊せ!!」
 短く。的確に告げる。

「ビット……? うわぁっ!?」
 空を飛翔する水晶体が獣人たちを打ち据える。その一撃はキャバリアには致命傷にはならないが、生身には痛烈なる一打となるであろう。
 空より落ちる獣人たちを小枝子は『デモニック・ララバイ』のマニュピレーターで受け止め、地上に下ろす。
「負傷者をカバー!」
「す、すまない。足を……ひっぱって……」
「共に戦うのなら戦友。戦友を自分は見捨てません! これより自分は!」
『デモニック・ララバイ』のアイセンサーが煌めく。
 煌めくは意志。

「吶喊!」
 推力を持って飛び込む。あの赤いキャバリア『ケルビム』さえ打倒できれば戦況が変わる。覆せる。だからこそ、小枝子は踏み込む。
 迫るクリスタルビットを獣人部隊の援護を受けて破壊しながら、戦場を疾駆する。
「ただ徒に突っ込むなど。執刀!」
 振るいあげられる無敵斬艦刀の切っ先が剣呑に輝く。その輝きを人口魔眼が捉えた。振るわれた剣閃の一撃を躱す。
 いや、『デモニック・ララバイ』の装甲が弾け飛ぶ。いや、斬り飛ばされた。なんたることだろうか。苛烈なる攻勢。
 鋼鉄の意志。
 己たちを病巣と言う、その意志の硬さ。
 改めることも顧みることも是としない意志。

『なら、これは意志と意志とのぶつかりあいだ。けれど、ウチの奏者の頑固頭は!』
「余計な思考にリソースを割くな!」
『こりゃ失敬!』
 小枝子の瞳がユーベルコードに煌めく。
 一閃が縦に振るわれたのならば、返す刃が来る。横薙ぎの一閃を小枝子は見た。見切るこはできなかった。
 一閃。
 ならば、と人口魔眼の視界が反転する。いや、ぐるり、と回転する。己が機体が宙に翻った。横薙ぎの一閃を宙に飛ぶことによって躱したのだ。
「錆塗れの手で皆に触れるな……! 破傷風になったらどうするつもりだ貴様ァアアアア!!!」
 空中に飛ぶ黒い羽根が軌道を変え、『ケルビム』の体躯へと打ち込まれる。
 機体がかしぐ。

 その瞬間を小枝子は見逃さなかった。
 さらに迫る無敵斬艦刀の剣閃。それを躱し、踏み込む。躯体から放たれる殺戮音叉、その棘の如き一撃が『ケルビム』のコクピットハッチへと突き立てられる。
 それは小枝子の叫びを増幅させ、『戦場の天使ナハティガル』の鼓膜に響き渡る。
 戦場における存在。
  オブリビオンの存在を許さぬ怨嗟は、彼女の耳朶を強烈に打ち据えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
正念場、だな。最後の敵は手強いって、相場が決まってるもんな。
ここでやられたら、今まで頑張ってきたことが全部無駄になっちまう。
……怖ぇけど、踏ん張らねえと。

向こうの攻撃はUCと〈第六感〉を使って避ける。どうしても防げねえ分は〈オーラ防御〉で耐える。
有利な間合いを保ちながら〈限界突破〉した〈鎧無視攻撃〉を撃ち込んで、ダメージを重ねていく。
獣人の人たちとか、他の味方とかにも適宜〈援護射撃〉で支援して、少しでも被害を抑えるようにする。

誰かを守ることが、命を救うことがどんだけ大変で大事なんか、アンタにはわかんねーのか! 死なせるのが、殺すのが救いなんて、安易で極端な方向に逃げやがって!



 何度も。何度も窮地に立たされる。
 踏み堪えなければならない場面が連続して己に迫ってきているようだと鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は思った。
 己は確かに怖がりなのだろうと思う。
 怖がりで痛がり。
 けれど、それでもという意志がある。如何にオブリビオン『戦場の天使ナハティガル』に鋼鉄の意志あれど、己だって曲げられない思いがある。退くに退けない時だってあることを理解している。
「なら、これは正念場ってやつだな」
 わかっている。
 敵が手強いってことは。
 あの不気味な赤いキャバリア『ケルビム』は強烈な力を放っている。己の体が震えている。武者震いだって強がることができたのならば、どんなによかったことだろう。
 けれど、強がりも口に出せない。

 だから、嵐は一歩前に踏み出す。
 なぜか。勇気あるからではない。
「ここでやられたら、今まで頑張ってきたことが全部無駄になっちまう」
 そう、無駄になってしまう。
 獣人たちが決死の思いで戦ったことも。猟兵たちが積み上げてきたことも。己一人が諦めた瞬間に瓦解することだと知っているからこそ。
「……怖ぇけど、踏ん張らねえと」
「猟兵。世界の病巣。これを取り除き、完治させるためには!」
 機体がかしぐように動く。
 猟兵たちのユーベルコードによって疲労蓄積しているのは、パイロット『戦場の天使ナハティガル』である。

 彼女とて、生身なのだ。機体が無事でも搭乗者に疲弊が蓄積しないという理屈はない。
 なら、と嵐は踏み出す。
 迫る火砲の一撃が身を焦がす。
 空を埋め尽くすクリスタルビットの猛攻が己の足を押し留めようとする。
 けれど、それでも嵐は踏み出す。
 負けられない。
 己が抱く恐怖の重さに足を止めることは許されない。理由なんて無い。けれど、それでも足を踏み出すのだ。
「病巣は!」
 切除すると無敵斬艦刀が振るいあげられる。
 剣呑な輝き、その剣閃の一撃は汎ゆるものを両断するだろう。ユーベルコードの力乗る、その一撃を受ければ嵐は己がまさしく唐竹のように割られると理解できた。

 でも。
「誰かを守ることが、生命を救うことがどんだけ大変で大事なんか、アンタにはわかんねーのか!」
 己の背には獣人達がいる。
 戦いに傷つき、倒れたものがいる。
 それを、『戦場の天使ナハティガル』は切除するという。切り離す、切り捨てるというのだ。
 それがどうにも嵐には許せなかった。
「死なせるのが、殺すのが救いなんて、安易で極端な方向に逃げやがって!」
 ユーベルコードに輝く瞳。
 忘れられし十三番目の贈り物(マルール・トレーズ)が己の体躯の中に満ちる。
 身体能力が、思考が、加速していく。
 それは刹那の力の迸りだっただろう。けれど、構わなかった。嵐は見た。放たれる剣閃の軌跡を。
 見えたら、どうするかなんて言うまでもない。

 躱す。
 身をかすめる衝撃など意にも介さない。
 そう、踏み込めばいい。踏み込み、他の猟兵が打ち込んだコクピットへの一撃、棘のように突き立てられた、それへと己が引き絞ったスリングショットから弾丸を放つ。
 押し込むようにして棘がコクピットへと刺さりこみ、砕ける。
 炸裂した一撃が『ケルビム』の巨体を傾がせた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

あの……。
えっと…………。

また知らない単語がいっぱいです。
そしてステラさんのテンションが有頂天です。

『エイル様に近づいてきてる』とか『新しいエイル様要素が出すぎ』とか、
なんかずっと怖いこと言ってます。

このままだと本格的にアスリートアースに連れて行ってはいけない感じになっちゃいそうです。

勇者として情けないですが、わたしにはもう祈ることしかできません。
どこかにいる『エイル』さん……逃げてー! 超逃げてー!! 

あっ。ラムネもうない。
このままでは全身大変なことに……って。全力!?

わっかりましたー!

それでは参りましょう。新曲【フラワー・オブ・スコットランド】!
あ、あとはお任せしましたー……。


ステラ・タタリクス
【ステルク】
見つけましたセラフィ……ける、びむ??(宇宙メイド顔
ええい、なんかエイル様(本体)に近づいてきてる感がする今日この頃
新しいエイル様要素が出すぎではないでしょうか!!
ケルビム……セラフィムと同質ながらに異質?
悪性に悪性が掛け合った結果ですか?

いえ、メイドたるもの、エイル様の敵を放っておく訳には!
『戦いに際しては心に平和を』抱く者はエイル様だけで十分です!
ケルビム……いえ、プロメテウスX!! ですよね?(弱気
ここで倒します!

ということでルクス様、ゴー!
全力オッケーです全力
フォルいらっしゃい!
ルクス様の破壊音波で弱っているところへ
【テンペスタース・クリス】突撃行きます!(ルクス様無しで



 赤い不気味なキャバリア『ケルビム』のコクピットハッチが砕ける。
 猟兵たちのユーベルコード、攻撃によるものだった。積み重ねてきた一撃が遂に『ケルビム』の装甲を引き剥がしたのだ。
 だが、搭乗者であるオブリビオン『戦場の天使ナハティガル』は未だ健在だ。
 コクピットハッチが砕かれたとて、彼女の鋼鉄の意志は些かも揺らぐことはなかった。
「だからなんだというのです。私の為すべきことは変わらない。私は世界の病巣を切除するのみ。そのためには……コール、『プロメテウス・バーン』!」
 胸部砲口から放たれる火砲の熱線が戦場を溶断する。
 凄まじい熱波が風となって吹き荒れる。
 その最中を鳥型キャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』が飛ぶ。

「みつけましたセラフィ……ける、びむ??」
 そのコクピットでステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は目を丸くしていた。いや、宇宙背景に目を丸くしている猫みたいな、そんな表情であった。
 いやに具体的だなって思われたかも知れないが、そっくりだったのでしかたないのである。
 彼女はあの赤いキャバリアが『セラフィム』だと思っていたのだ。
 けれど、そうではなかった。
『戦場の天使ナハティガル』は『ケルビム』と言った。
 違う機体なのか。いや、それにしては、武装を含めあまりにも『セラフィム』に似通っている。
「ええい、なんか『エイル』様に近づいてきてる感がする今日このごろ! 新しい『エイル』様要素が出すぎではないでしょうか!!」
 ステラは叫んだ。
 けれど、その機体の嘴に咥えられながらルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思った。いや、つぶやいた。
「あの……えっと……」
 己の現状について何か言うことはないのかと。
 そう、彼女は今空飛ぶキャバリアの嘴に咥えられているのである。ハッキリ言って怖い。こわいけれど、これがステラのガンギマリな感じに対する恐怖なのか、高所に寄る恐怖なのかわからなくなってしまっていた。ごっちゃになっていると言っても言い。
「また知らない単語がいっぱいです。ステラさんのテンションが有頂天で」
 こわぁ、とルクスは思った。

 ハッキリ言って、ステラの『エイル』に対する執着は異常だと思った。ずっと怖いこと言ってるなぁってルクスは思っていた。
 というか、このままだと確実にアスリートアースに連れて行ってはいけないと思ったし、なんかちょくちょく一人で抜け出してサイバーザナドゥへと行っているのも阻止しないと行けないと思った。
 けれど、ルクスは嘆くことしかできなかった。
 ステラを止められるわけがない。勇者として不甲斐ないが、もはや祈ることしかできない。
「どこかにいる『エイル』さん……逃げてー! 朝逃げてー!!」
「『ケルビム』……『セラフィム』と同質ながらに異質? 悪性に悪性が掛け合った結果ですか? いえ、わかりませんね。どういう意味なのでしょう」
 ステラは考える。
 あれが『セラフィム』と同系列の存在であることはわかる。けれど、名称が違うのは一体どういうことなのだと思う。

 だが、それ以上にステラは頭を振って疑念を振り払う。
「いえ、メイドたるもの、『エイル』様の敵を放っておくわけには!『戦いに際しては心に平和を』抱くものは『エイル』様だけで十分です!『ケルビム』……!」
 此処で倒す、とステラは『フォルティス・フォルトゥーナ』と共に迫る火砲を躱す。
 熱波が荒ぶ。
「あつ、熱っ!? ステラさん、熱いですー! もうラムネもないんです! シリアスアレルギーがもう抑えられないんですけど!」
「なら、全力です、ルクス様! ゴー!」
 おら、とステラは咥えていたステラを地上に下ろす。
 飛翔する『フォルティス・フォルトゥーナ』へと火線が走る。

「全力オッケーです全力!」
「えっ。全力!? いいんですか!? いいんですよね!? いいって言いましたよね!?なら、お任せあれ! このわたしに!!」
 煌めくルクスの瞳。
 きらっきらであった。ステラはちょっと頭痛いなって思ったが背に腹は代えられない。彼女の胸が膨らみ、吸い込んだ息がバグパイプに吹き込まれる。
 新曲、と言っていた彼女のフラワー・オブ・スコットランドがバグパイプより強烈な音響衝撃波となって迸る。
 それは一気に赤いキャバリア『ケルビム』を捉え、その躯体をきしませる。

「この音……!」
「そうです。ルクス様の全力! もう貴方が何を仰っているのかわかりませんが! ここでフォル!」
 突撃、とステラの瞳がユーベルコードに輝く。
 風の盾を纏う『フォルティス・フォルトゥーナ』の突進の一撃が『ケルビム』を吹き飛ばす。
 空を駆けることで、他に遅れを取ることはない。
 ステラは、その一撃で持って『ケルビム』を打ち倒し、さらに空へと飛翔する。息途切れたステラを嘴に抱え、離脱するのだ。
「『ケルビム』……位階は第ニ席……『セラフィム』よりも下がるとは一体……」
 わからない。
 けれど、それがただの名前であることはありえないだろう。新たに付加また謎にステラは身悶えし、ルクスはドンびくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィンデ・ノインテザルグ
君が天使なら、私は信徒だ。
互いに神の遣いとして―…何方が勝るか、審判を仰ごうか。

ケルビムを視認次第、即座にUCを起動。
首裏にケーブルを連結させ
私自身がFireflyとなることで機体へのダメージを軽減させよう。

熱に|装甲《肌》を嬲られようが怯まない。
獣人達の弾幕に乗じて
Luciferに敵クリスタルビットを追尾させ、相殺を狙う。
敵が動転した隙に斬艦刀にMammonを射出。
そのまま横に腕を振り抜き、武器を落下させたい。

敵機体が傾くタイミングで跳びかかろうか。
可能であれば地面に昏倒させたままに
Beelzebulで敵機の両腕を抉り続け
自由を封じた状態で、コックピットにAsmodeusの一撃を見舞いたい。



『ケルビム』――それがオブリビオン『戦場の天使ナハティガル』が駆るキャバリアの名である。
 不気味な赤い機体。
 高性能であることは言うまでもない。だが、その技術力は己たちの駆るキャバリアの数世代先を行っているものであると言わざるをえない。
 あれだけの火砲の出力を捻出しながらオーバーヒートする気配さえない。
 猟兵たちの攻勢を一身に受けながらも、なおもまだ持ちこたえていることからも伺えるだろう。
 だが、ヴィンデ・ノインテザルグ(Glühwurm・f41646)は構わなかった。
「君が天使なら、私は信徒だ」
 己が乗騎であるキャバリアへと接続される。
 非人道的な連結装置。
 コクピットに逃げ場などなく。己自身をキャバリアと同化させる装置。
 機体が己。己が機体。
 即ち、機体の腕がもげれば己もまた腕がもげるような痛みを得るということである。

 機体の駆動音が耳鳴りのように響き渡る。
「互いに神の遣いとして――……何方が勝るか、審判を仰ごうか」
 ヴィンデの瞳がユーベルコードに輝く。
 父と子と聖霊の御名に於いて―その三位一体がナスは無敵の力。
 迫る火砲の熱波が装甲を引き剥がす。それは己が肌を引き剥がのと同じだった。
 だが、それでも機体は戦場を走る。飛ぶように、跳ねるようにして火線の直撃を避けるようにして飛ぶのだ。

「援護しろ! ここであの機体を止めなくちゃあ!」
 獣人部隊の持つ火器では『ケルビム』を止めることはできないだろう。けれど、クリスタルビットの弾幕ならば、当てれば砕く事ができる。
 だが、それでも数がたりない。
「『Lucifer』――『傲慢』を司れ」
 十字に展開し、飛翔するクリスタルビットが迫るクリスタルビットと激突する。裁きの光線を放つヴィンデの操るクリスタルビットと『ケルビム』のクリスタルビットは本質が違うようだった。
 けれど、飽和攻撃は相殺できる。
「機体の制御が……『ケルビム』、なぜ怯むのです。あなたは」
『戦場の天使ナハティガル』が叫ぶ。
 だが、『ケルビム』は機体をきしませる。それはこれまでの猟兵たちの攻撃が、駆体にダメージを蓄積させていたからだ。

 その一瞬をヴィンデは見逃さなかった。
「遅い」
 放たれるビームアンカーが鮮血をほとばしらせるようにして『ケルビム』の装甲に突き立てられ、引き寄せる。
「無駄なことを!」
 振るわれる無敵斬艦刀の一閃。
 だが、その一閃は振り下ろされることはなかった。放ったアンカーのワイヤーが無敵斬艦刀に絡まり、機体のブースターの噴出と共にヴィンデは横っ飛びに走る。
 ワイヤー絡まる無敵斬艦刀が引きずられるようにして地面に切っ先を突き立てる。機体を立て直そうとした瞬間、ヴィンデは踏み込む。
「審判は下される。ただそれだけのことだ。これは」
 機体がねじれるようにして回転する。ヴィンデは、己が機体のブレイドウィングが『ケルビム』の装甲を切り裂く感触を知るだろう。

 赤い破片が舞う。
 それは機体とヴィンデ、そして己が意志が結合した瞬間であったことだろう。
 胸部砲口を潰す斬撃。
「彼らは渇望している。救われることをではない」
 ヴィンデは引き裂かれたコクピットハッチの先にあるオブリビオンの姿を捉える。
 彼女は世界の病巣を切除すると言った。
 それは救いを齎すことであったのかもしれない。けれど、とヴィンデは獣人たちを見る。
 彼らもそうであるように、自分もまたそうであると。

「この戦いの夜明けを渇望している――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
【バシル】アドリブ歓迎
「さーて、いよいよ真打だねえ。なかなかカッコイイキャバリアじゃねえか。まあこれからボコボコに壊れるんだけどな」
ちなみにナハティガルの言葉はスルー。
会話が成立するタイプじゃないと見切ってる。
【魔神闘法】を発動。先に突っ込んでるアレクサンドラに追いついて、光速の拳打を一発ケルビムに。
「いやいや、散々フォローしたじゃねえか。最後くらい楽しませろや」
ケルビムからの攻撃を周囲の魔力で受け止め、拳で撃破。
返す刀で光速の痛撃を。
アレクサンドラと連携してケルビムを追い込んでいきましょう。
「とどめは譲らねえぜ」


アレクサンドラ・バジル
【バジル】アドリブ歓迎
「わーお、格好良い。
 名前は|熾天使《セラフィム》じゃなくて|智天使《ケルビム》?
 階級下がってるじゃん。まあ、神の乗物っていうくらいだからキャバリアの名前としてはあってるのかもね。
 まあ、何でもいいや。やろうか」
【天翔】を発動。
超音速の飛翔。高速機動で熱線を躱したりビットを斬ったりして間合いを詰めて本体を斬る!
「アーレークー、コレ私の獲物だよねえ?
 えっ……まあ、しょうがないかあ」
アレクサンドルと絶妙な連携でケルビムを追い込んでいきましょう。
「とどめは私が刺ーす」



 赤い破片が飛ぶ。
 それは赤い不気味なキャバリア『ケルビム』の装甲の破片だった。猟兵たちによる攻勢。その度重なる攻撃を前に機体すら疲弊していく。
 搭乗者であるオブリビオンもまた同様だったことだろう。
 胸部砲口が潰されている。
 あの強烈な火砲はもう使用できないだろう。残されていたクリスタルビットも獣人たちとの連携によって尽くが砕かれている。
 残されているのは無敵斬艦刀のみ。
 その無敵斬艦刀を地面からひきぬき、ワイヤーを引きちぎりながら『ケルビム』は咆哮する。
「わーお、かっこいい」
 アレクサンドラ・バジル(バジル神陰流・f36886)は、ある種の恐ろしさをも醸し出す砲口を前にしても、いつも変わらぬ様子だった。
「名前は|熾天使《セラフィム》じゃなくて|智天使《ケルビム》? なーに、それ、階級下がってるじゃん」
 アレクサンドラは首を傾げる。
 幾人かの猟兵は、あの赤い機体が『セラフィム』だと確信を持っていたようであるが『戦場の天使ナハティガル』はこれを否定した。
『ケルビム』――位階は第ニ席。
 第一席たる『セラフィム』から下がっている。
 神の乗り物であるというのならば、キャバリアの名前としてはあっているのかもなーとアレクサンドラは思ったが、まあ、なんでもいいことだ、と彼女は嘆息した。

「なかなかカッコイイキャバリアじゃねえか。どっかで見たような形ではあるが、あれは色が違うしなぁ。まあ、どっちにしろいいか。これからボコボコに壊れるんだろうから」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は既視感を覚えたが、頭を振る。
 今に置いてはどうでもいいことだ。
 敵の真打ちがでてきたのだ。
 なら、やるべきことはただ一つ。
 そう、ぶっ飛ばすことだ。
「愚かなことを。世界の病巣。この私を、世界を救わんとするものを、その手を阻むなど!」
「あっそ」
 アレクサンドルは取り合わなかった。
 彼女は会話はできるオブリビオンであろうが、会話が成立する類ではないと見切っているのだ。言葉をかわすだけ無駄だと、徒労に終わると知っているからこそ、踏み込もうとして己の横を走り抜けたアレクサンドラの背中を追う。

「あ、おい、抜けがけは」
「速いもん勝ちでしょ!」
 神陰流真伝・天翔(アマカケ)。
 それはアレクサンドラの身を闘気で覆うことによって飛翔し、己が手にした刀の斬撃を『ケルビム』へと叩き込むのだ。
 斬撃が無敵斬艦刀と打ち合う。
 だが、その一合の間にアレクサンドラは剣閃をほとばしらせる。
 一撃ではない。
 ユーベルコードによって強化された己が魔力を起点とする斬撃は一瞬のうちにして『ケルビム』の赤い装甲を切り裂く。
「がーんじょー!」
「まてまて、さんざんフォローしたじゃねえか。最後くらい楽しませろや」
 アレクサンドルは不平不満を爆発させる。

 此処まで姉の行動にそうように戦ってきたのだ。
 なら、最後は自分が、と思うのも無理な狩らぬことだった。
「コレ、私の獲物だよねえ?」
「今までのフォローを忘れんなって」
「えっ……」
 アレクサンドラは思い返す。この戦場に着た時からずっと己が好き勝手やってきたことを。だが、そんなことで彼女は自省などするだろうか? いや、しない。
 それはアレクサンドルにもわかっていたことだ。
 けれど、それでもアレクサンドラはそうかも、と思ったし、なんならトドメは自分がちゃっかり奪えば好いという姉力を発露する。
 アレクサンドルもまた、そんな姉の目論見など看破しているのだ。
「とどめは譲らねえぜ?」
 魔神闘法(ムテキノトウホウ)により、光速の拳でもって『ケルビム』と打ち合う。
 無敵斬艦刀が砕け、アレクサンドルの拳を覆う魔力もまた霧散していく。
 なるほど強敵であると理解できるだろう。

 だからこそ、譲れない。
「こいつは俺が!」
「いーや、私が!」
 この双子はいがみ合いながらも絶妙な連携でもって『ケルビム』を追い込んでいく。
 それはささやかな姉弟喧嘩共言うべき様相であったことだろう。ともすれば、仲良く喧嘩しているようにも映る光景であった。
 しかし、確実に彼女達の剣閃と拳は『ケルビム』の装甲を砕き、追い込んでいくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
言ってくれるわね潔癖症
好き放題の清算はここできちんとさせてもらうわ

荒野装備に身を包み、狙うは必殺の一撃だ
ビットや射撃は獣人たちと一緒に塹壕に籠ってやり過ごす
大事なのは勝機はあると言う信念だ
獣人たちを鼓舞しながら、時に塹壕をシャベルで更に深く掘り下げてその時を待つ
焦れた、あるいは戦闘の合間で綻んだ瞬間を狙って、穴倉からアンカーショットを引っ掛けて赤い機体に取り付いての零距離攻撃を狙う
チャンスは一瞬
そこに超過起動した“楔”を叩き込むのだ

「ごきげんよう。そして、さようなら」



 砕けていく赤い装甲。
 その破片が空に舞う度に赤い不気味なキャバリア『ケルビム』は傾いでいく。
 確かに強敵であった。
 だが、猟兵たちの苛烈なる攻勢を前に、その機体と言えど劣勢を強いられるのは当然であった。
「世界の、病巣を取り除かなければ……! だというのに、貴方たちは!」
 オブリビオン『戦場の天使ナハティガル』は叫ぶ。
 彼女にとって猟兵とは病巣だった。
 取り除かなければならない対象であり、切除しなければならない存在だった。だが、今まさに世界から取り除かれんとしているのは己である。

「あってはならない。私が、施術者である私が!」
「言ってくれるわね潔癖症。好き放題の清算はここできちんとさせてもらうわ」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は迷彩外灯を翻して『ケルビム』へと迫る。装甲は剥離し、そのフレームの内部が除いている。
 胸部砲口も失い、クリスタルビットも損失した状況で残されているのは無敵斬艦刀のみ。
 もはや塹壕に身を隠す必要など無い。
 あるのは真っ向勝負のみ。
 故に紅葉は踏み出す。

 勝負は一瞬。
 獣人達を塹壕に匿ったのは、彼らが非力だからではない。
 今は時ではない、と彼女が判断したからだ。恐怖は判断を鈍らせる。ときに勇気を蛮勇に履き違えさせることもするだろう。
 だからこそ、待つのだ。
 こらえることもまた勇気の一つであるというのならば、紅葉は堪え、待つのだ。
「弔い合戦は柄じゃあないんだけど……けれど、これが清算の一打だっていうのなら!」
 紅葉は『ケルビム』へと飛びかかる。
 アンカーショットを機体の装甲に引っ掛け、巻き取る勢いのままに砕かれたコクピットハッチへと身を踊らせる。

「……ッ!」
「ごきげんよう」
 紅葉は笑っていた。
 不敵に笑い、そして、その戦化粧の赤き三つの鉤爪の如き線を輝かせる。
 手にしていたのは、対戦車杭打銃“楔”(ロンギヌス)。
 打ち込まれる一撃は、『戦場の天使ナハティガル』へと叩き込まれる。血が吹き飛ぶほどの強烈な衝撃。
 そして、打ち込まれた杭んい施された超偽神兵器の欠片が活性する。
 確実にオブリビオンを殺すための一撃。

 そのユーベルコードの輝きを紅葉は放つ。
「そして、さようなら」
 その言葉が最後だった。打ち込まれた杭は『戦場の天使ナハティガル』を穿ち、搭乗者を喪った『ケルビム』を大地に傾がせる。
 鋼鉄の巨人のアイセンサーは力なく輝きを失い、その駆体が砕けていく。
 紅葉は振り返る。
 塹壕から顔をのぞかせる獣人たちに手を振る。
 指揮官を喪ったゾルダートグラードのキャバリアたちは後退していくしかないだろう。無理に彼らを追うことはない。
 むしろ、此方は少数なのだ。
 逃げる大軍を追って此方が逆に存在を受けかねないというのならば、撃退ということで落としところを見つけ出すしかないのだ。

「終わったわ。私達の勝利よ」
 そう告げ、紅葉は獣人たちと勝利を確信する。
 これがただ一時の勝利でしかなく。
 また何れ訪れる戦禍の一端でしかないのだとしても。
 それでも、今日という日を生き延びたことを喜ぶべく、紅葉は獣人達と共に勝利に湧くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年02月11日


挿絵イラスト