●騎士の忠義は闇に消えて
「御機嫌よう、皆。よく来てくれたね」
グリモアベースにある作戦会議室、招集に応じた猟兵たちをカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手・f21100)は一礼で出迎えた。
今回の予知はダークセイヴァー、その第二層での戦いに関するものだと彼女は告げる。
「相手は|人間画廊《ギャラリア》を伴う月光城の主、呪いの二刀と魔靴を携えし黒騎士だ。未だ謎の多い存在だけど……無辜の人々が囚われている以上、放っておく訳にもいかない」
第五の貴族の支配さえ阻む月光城の主との戦いでは単純な戦闘力の高さに加え、『月の眼の紋章』の攻略が鍵になるとグリモア猟兵は続けた。
持ち主の戦闘力を66倍に増強するこの紋章は人間画廊……持ち主と輝く鎖で繋がった、浮遊する数十個のクリスタルに閉じ込めた人間をエネルギー源としている。
相手が破格の強化を受けている状態で正面から戦うのはリスクが大きい。何らかの策を用い、まずは囚われた人々を解放する事がセオリーと言える。
また、月の眼の紋章から飛び出す棘鞭による速度と射程を兼ね備えた奇襲にも警戒は必要だろう。
「ただ、アタシの視た予知だと……相手を首尾よく撃破しても、儀式そのものを完全に阻む事は難しいらしい」
消滅の間際、月光城の主は『異形の身体部位』を幾つも生やした強力なオブリビオンに生まれ変わりダークセイヴァー|第三層《上層》を支配する闇の種族と同等の力を得る。
消耗した状態での連戦になるが、しかし相手もまた不完全。
『欠落』による無敵を攻略せずとも撃破できる状態での戦闘は討伐の貴重なチャンスでもあるという事だ。
「どうか武運を。今回もキミたちの勝利と無事の帰還を祈っているよ」
グリモアの放つ輝きと共に、豪奢な装飾の施されたゲートが開いて。
ふーみー
当シナリオをご覧くださりありがとうございます、ふーみーです。
此度はダークセイヴァー、謎多き月光城の主との2連戦!
一章はVS月光城の主、『呪いの二刀と魔靴を携えし黒騎士』。
彼は『月の眼の紋章』により戦闘力66倍の強化を得ており、浮遊する数十個のクリスタル『|人間画廊《ギャラリア》』と鎖で繋がっています。
|人間画廊《ギャラリア》内に囚われている人々を解放する事で紋章は弱体化し、救出率50%で完全に効果を失います。
通常攻撃に加え月の眼の紋章から飛び出す棘鞭による奇襲も仕掛けてくるためお気をつけください。
二章はVS闇の種族イリーナ。
月の如く煌々と輝く『異形の身体部位』、鋭い無数の翼を生やした状態での戦闘です。
人間画廊に囚われていた人々の扱いはプレイング内で指定があれば準拠しますが、基本的には一章-二章のインターバル間で安全圏に保護できたものとして扱います。
また、試験的に難易度オプションも始めました。
興味のある方はMSページをご覧ください。
それでは皆様の健闘をお祈りしています。
第1章 ボス戦
『呪いの二刀と魔靴を携えし黒騎士』
|
POW : 黒風鎧装・迅
自身に【猟兵の🔵取得数に比例した規模の黒き旋風】をまとい、高速移動と【二刀からの斬撃と共に繰り出す黒き旋風の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 天を翔け地を砕く魔靴
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【装備する黒騎士の魔靴】から【直撃箇所及びその周囲の地形を破壊する蹴り】を放つ。
WIZ : 封印を司る呪いの二刀
【触れた任意のあらゆる力を封じる呪いの二刀】で攻撃する。[触れた任意のあらゆる力を封じる呪いの二刀]に施された【戦闘能力増強を伴う己の人狼としての狂暴性】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
イラスト:唐草
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ルパート・ブラックスミス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●尽くすべき忠義は何処へ
ダークセイヴァー第二層……大地全てが血管で構築された、悍ましき異形の大地。
流れる血液は五卿六眼の一角、腐敗の王が集めた『これまでこの世界で流された、全ての血液』であるという。
「俺は……何をしているのだろうな」
オブリビオン以外に一切の生物の気配無き狂気の大地に乾いた自嘲の声が響く。
浮遊する数十もの|人間画廊《ギャラリア》を従え、その身を引きずるように歩むは人狼の黒騎士。
「……酷い気分だ。頭が痛む。何かを探していた筈なんだが……お前には関係の無い事か」
冷めた双眸が|猟兵《あなた》を睨む。その首元では眼球と満月を組み合わせたような『月の眼の紋章』が、抑え難い人狼の凶暴性に呼応するように煌めいて。
「去れ。阻むなら容赦は出来ん」
抜身の二刀から放たれる殺意に満ちた魔力が空気を震わせる。
|人間画廊《ギャラリア》に囚われた人々を解放し、堕ちた狂剣を打ち破れ。
印旛院・ラビニア
↑
「えへへ〜、そうですか。なら遠慮なく」
怖気付いて帰りそうになるけど、人間画廊を見てなんとか奮起
「遺伝子番号以前に、そもそも人権が与えられていない世界なんて酷すぎるよ! 囚われた人達、返してもらうよ!」
統制機構で人権を失った人達と人間画廊の人たちとをどこか重ねつつサーベルを構える
「だああっ!無理無理無理!」
ステルスクロークの隠密性とシャドウパリィを駆使してなんとか逃げ回る。UCで放射攻撃はダメージを減らすけど元の威力がエグくて死にそう
「死にたくない。でも……」
そんな感じでワーワー逃げ回っている間にクリーピングコイン達に頼んで人々を救出をしてもらう
「この場所から逃げたくない!」
無様でも頑張るよ!
●力無くとも、虐げられる人々の為に
「えへへ~、そうですか。なら遠慮なく」
黒騎士から放たれる殺気に中てられ、愛想笑いを浮かべた印旛院・ラビニア(人権焼却されたと思ったらイキりウサギに転生した件・f42058)は踵を返す。
彼……いや彼女……ともあれラビニアは元々本物の異能や殺し合いとは無縁な廃ゲーマーだったのだ。生身での鉄火場など有り得ないと怖気づくのは寧ろ真っ当な感性と言えた。
嫌に生々しく脈動する血管の大地は見渡せど果ても見えず……視界の端にクリスタルが映り込む。
浮遊する|人間画廊《ギャラリア》の内部、物のように囚われている人々。
その姿がラビニアの故郷、|統制機構《コントロール》で人権を失った人たちと何処か重なって見えた。
……足が止まる。
「|遺伝子番号《ジーンアカウント》以前に、そもそも人権が与えられていない世界なんて酷すぎるよ!」
ヒトとして生きる事さえ許されない、その悲惨さはラビニアとて知らないものではない。それが世界全体で罷り通る過酷さはどれ程のものか。
見捨てられないと、強く思う。
「囚われた人達、返してもらうよ!」
震え声で啖呵を切れば、サーベルを構えた姿は光輝く聖戦士へと変じて。
「……そうか」
醒めた嘆息が一つ。
「なら、死ね」
「ッ!?」
ラビニアの命を救ったのは廃ゲーマーとして磨いた|高等技術《シャドウパリィ》。
首を刎ねる軌道で迫った黒き旋風の刃に竜騎兵サーベルを合わせ、全身運動で思考より速く受け流す。
「どっ……どーだ! 66倍強化がどうだか知らないけど、こっちのダメージカットは100分の1だよ!!」
「ならば百度斬る内に死ぬだろう」
「そうはならないだろバカぁぁーーっ!」
生存本能に突き動かされるように飛び退き駆けだす。
直後、先に受け流した一閃以上の斬撃がラビニアの立っていた地面を吹き飛ばした。
「だああっ! 無理無理無理!」
冗談ではないと悲鳴が溢れる。
ただ一撃で指先から肩まで痺れが取れないと言うのに、通常攻撃がそれ以上の威力で気軽に飛んでくるなど負けイベントもいいところだ。とにかく足を止めたら殺されると死に物狂いで逃げ回る。
「……無様だな」
「ぅ、ああ……っ!」
斬撃が掠め、深く抉れた二の腕から鮮血が噴き出す。UCの防御とステルスクロークの隠密性、片方でも機能していなければ斬り飛ばされていただろう。
勢い余って転倒し、それでも藻掻くように駆ける。
狂ったように暴れる心臓が鼓動を打つたびに傷口から血が流れ出る。傷の燃えるような熱さと裏腹、身体の芯から冷えていくような感覚に気が触れそうになる。
それでも足だけは止められない。軽減の効かないサーベルの射程内から攻撃を受ければ一巻の終わりだ。
「こうなる事は分かっていただろう。……何故挑んだ」
黒き旋風の刃が脱兎を掠め吹き飛ばす。
甚振る趣味は無い。防具の隠密性能一つに患わされている訳でもない。
黒騎士自身にも分からない苛立ちが、その刃を鈍らせている。
「死に、たく……ない。でも……」
意識は靄の掛かったように霞んで、言葉は半ば譫言のように零れる。
或いはそれゆえの、ラビニアを突き動かす偽りの無い意思。
「――この場所から逃げたくない!」
「ッ……!!」
ズキリ、と黒騎士の頭を苛み続けていた痛みが意識を劈く。
獲物を追い立てる|獣《けだもの》の如くに堕ちたこの身と引き換え。
臆し、無様に逃げ惑いながらも諦めない聖戦士の姿はまるで。
まるで――
「貴様……ッ!」
激情の儘に放った斬撃は当たらない。
違和感に眉を顰めた騎士の背後……ラビニアが囮となり逃げ回る間、人間画廊に囚われた人々を密かに解放していたのは彼女に従う|意志ある「空飛ぶ金貨」の大群《クリーピングコイン》。
(まずったかな……)
遺伝子番号を焼かれた時の記憶が走馬灯のように蘇る。思えばあの時も|調子に乗って《恰好をつけて》死に目を見たのだったか。
だが今この場に助けは来ない。自分が助ける側なのだから。
「無様でも、頑張るよ……!」
何故だか黒騎士の動きが止まっている。
千載一遇の好機だと竜騎兵サーベルを握りしめ前に出る。
どっ、と殴りつけられるような衝撃――月の眼の紋章から飛び出す棘鞭。危なかった。間合いの内から放たれていれば貫かれていた。
更に一歩、真っ直ぐに踏み込む。
「輝け、【聖戦剣戟陣】……本物の聖戦士に僕はなるっ!」
がむしゃらに繰り出した一閃は、堕ちた黒騎士を斬り裂いて。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
去れとの言葉に
「俺だってこんな辛気臭いところに長居するのは
御免被りたいさ。
だからこそ、手早く用件を済まさせて貰う。」
敵に先手を取られる前に【高速詠唱】で知恵の魔物を発動。
(魔物と対話して使用ユーベルコードを決定)
何れのユーベルコードでも人間画廊の人々の解放を優先。
敵の攻撃に対しては刀の間合いや移動速度
月の眼の紋章の注意
特に魔靴の動き、効果を見逃さない様にし
足元の動きから動作を予測。
攻撃を【見切り】つつ距離を取り
呪装銃「カオスエンペラー」の【誘導弾】【呪殺弾】で弾幕を張って
その幻覚、マヒの効果で隙を作り。
【2回攻撃】で発動したユーベルコードの使用に繋ぎ
敵への攻撃若しくは囚われた人々の解放を行う。
●|知恵の魔物は啓示を導く《~ possibly Sophistry ~》
「俺だってこんな辛気臭いところに長居するのは御免被りたいさ」
黒騎士の言葉にフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は肩を竦め、停滞なく呪装銃を抜き放つ。
「だからこそ、手早く用件を済まさせて貰う」
開戦を委ねたのは黒騎士の側。
為すべき事を迷わないが故に、初手はフォルクが先んじた。
「影の狭間で歴史を眺め、知識を喰らうもの。我が呼び声に応えて危難を越える術を与えよ――」
「……まったくだ。面倒は早々に終わらせるに限るか」
一歩、踏み出す魔靴の動きに細心の注意を払い見極める。
術士であるフォルクにとって――尤も、当て嵌まらない者こそ極めて少ない部類だろうが――接触により力を封じる二刀の呪いを受ける事は詰みに等しい。
危険な能力を多数備える黒騎士だが、間合いに捉えられない為にもその踏み込みは特に警戒すべきものと言えた。
「黄泉への導たる我が名の下に命ずる。我が敵を惑わし、縛める呪いとなれ」
「煩わしい……!」
フォルクの呪装銃が放つのは幾多の死霊。
取り囲み纏わりつく群れと一切合切を斬り払う二刀が拮抗するのは僅かな時間だが……充分。布石は役割を果たし、|本命《・・》は此処にその力を示す。
|人間画廊《ギャラリア》を糧として絶大な力を振るう月光城の主を討つべく、【|知恵の魔物《ブックイーター》】が授けた解は――ことり、と音を立てて転がった小さな壺。
(成程な。【フェアリーランド】……壺に触れたものを異空間に回収する力か)
代表的なものでさえ膨大な種類を誇るユーベルコードだが、それを媒介とするものは限られる。
……ことり、と壺の落ちる音。
ことり。ことり。ことり。まったく同じ外見の壺が実に数十、虚空から絶え間なく零れ落ちる。
(……フェアリーランド、か……? いや、|人間画廊《ギャラリア》の解放に使うなら都合は良いが)
壺が媒介とされてはいるがその個数は定義されていない……という事でいいのだろうか。
定かではないが猶予は有限、目的に利するなら活かさない手は無い。
「ファントムレギオン――我が手、我が指先となりて我が意を果たせ」
呪装銃の引鉄を引く傍ら、密やかに死霊の集合体へと命令を下す。
実体化したそれは各々が小さな壺を引っ提げ、大立ち回りを演じる黒騎士を迂回するように浮遊するクリスタルへ忍び寄り……触れればその身を吸い込むように、囚われた人々を安全な異空間へと救い出した。
「ッ……貴様……!」
人々を|一斉に《・・・》解放するところまでが策の内。
押し寄せる死霊を当たるを幸いに薙ぎ払わんとしていた66倍の強化は段階を刻まずして剥ぎ取られ、落差はそのまま隙となって無数の呪詛をその身に刻ませる。
「まだだ……!!」
「いいや、これ以上死霊を削られるのは御免被る。――ケリを付けよう」
警戒は一瞬たりとも切らしていない。
月の眼の紋章から飛び出す棘鞭の奇襲を捌き、未だ健在な呪いの二刀が再び閃くより速く呪具の数々に刻まれた力を解き放つ。
氷の刃に炎の波濤、空圧の鉄槌に死霊の呪殺は立て直す事も許さず黒騎士を呑み込み、叩き伏せて。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
↑
初めまして、異界の犬混じり。
貴公の”お願い”通り、去ってやってもよいぞ?
口と智慧のある生き物ならば問答してこそであろう?
対価として人間共を開放してくれぬか?
貴公の生死なぞ、他の猟兵が扱ってくれよう。
解放されたら約束は守る
妖怪は《お約束》に縛られた存在のため
決裂した場合は吸血鬼として戦う
狼で纏わりつき、蝙蝠で逃げ、霧で避ける
ついでに地面から吸血して回復する
血がある限り、御伽噺の方法でない限り、感染地域全域に消毒液を散布されない限り、太陽光を浴びない限り滅びないので長期戦での病殺を狙う
ついでに地形を破壊させ、血管だらけの地上を削減させる
全力で余を潰しに来るがよい。
後で罰を受けても余は知らぬがな?
●吠える迷子|犬《狼》を葬って
「初めまして、異界の犬混じり。貴公の”お願い”通り、去ってやってもよいぞ?」
叩きつけられる波濤を思わせる殺気を涼やかな顔で受け流し、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は慇懃に笑う。
「…………」
「口と智慧のある生き物ならば問答してこそであろう?」
憮然と眉間に皺を刻んだ黒騎士の様子には構わず喉を鳴らしてみせる。
言葉を遮る素振りを見せないのは果たして話を聞く気があるのか無いのか。
「対価として人間共を開放してくれぬか? 貴公の生死なぞ、他の猟兵が扱ってくれよう」
「話にならんな。この人間共は、俺の――……」
言葉は途中で舌打ちに変わり、苛立たしげに首を振る。|人間画廊《ギャラリア》と黒騎士を繋ぐ鎖がジャラリと音を立てた。
「……いや、どうでもいい。言いたい事はそれだけか」
「ふむ、では吸血鬼として戦うとしよう。全力で余を潰しに来るがよい――後で罰を受けても余は知らぬがな?」
首肯を一つ、ブラミエがゆるりと両手を広げれば血管の大地に生温い風が吹く。
「鬼の器に封されしは古き災厄。今ひとたびこの夜に零れ落ちよう。恐怖と共に」
「恐れるものか。この世界で吸血鬼を名乗る者を、黒騎士は赦しはしない……!」
【伝承解放・悪しき風と共に来たるモノ】――飛翔力に優れた蝙蝠にその身を変じ、しかし【天を翔け地を砕く魔靴】を解き放った黒騎士の踏み込みは猶速い。
月光城の主たる力を十全に発揮する今、時速にして100万kmに迫る飛翔は彼我の間合いを瞬時にして踏み潰す。
消し飛んだ……否。
文字通り霧散した蝙蝠の身体は、そのまま霧へと変わって広がり漂う。
『効かんよ。この世界の連中にどれ程当て嵌まるか迄は知らんが……』
莫迦げた速度で衝撃波を撒き散らす黒騎士だが、|人間画廊《ギャラリア》に繋がれた今移動範囲そのものは然程広くない。
射程外へと逃す憂いも無く待ち構え、不気味に脈打つ地表から血液を吸い上げる。
『|吸血鬼《余》はな。血がある限り、御伽噺の方法でない限り、感染地域全域に消毒液を散布されない限り、太陽光を浴びない限り、滅びはしない』
「構うものか。殺すッ!」
宙を蹴った黒騎士は流星と化して霧諸共に血管の大地を吹き飛ばし、漂い続ける霧へと二刀を振り回す。
傍から見ればそれは狂人の痴態として映っただろう。
ブラミエの変じた霧がもたらす病が幻覚を引き起こす事も事実、なのだが。
(狂犬め。当然のように概念を斬り砕くか)
その身を霧と変え薄く広げているが故に一撃辺りの損耗は僅かな一部に留まるとも見做せるが、元の理不尽な威力と差し引きどれ程釣り合うものか。
膨大な存在を端から破壊していく衝撃に晒されながら、大地に満ちる血を霧全体で吸い上げ命脈を繋いでいく。
先の宣告は虚勢ではない。
斯様に無粋な力押しで吸血鬼は滅びない――滅びる訳にはいかない。
それは嘗て“正しく”打倒された者としての矜持。
『なぁ、犬混じりよ』
病毒の霧のカタチをしたまま、あくまで悠然と声を響かせる。
『はじめに答えを誤魔化したな。そこに捕らえた人間共は、貴公にとっての何だ?』
「チッ……!」
『餌なら餌と言えばよい。よもや騎士として守護しているとでも、貴公が信じる分には貴公の勝手であろう』
なぁ、と再び呼びかける。
ただ吸血鬼を狩らんとする黒騎士の役に入り込んだ人狼は随分と充実して見えた。戦いが始まる前の鬱屈とした様子とは別人のように。
『質問を変えてやろう。獣か、騎士か……貴公は何だ?』
「黙れ!!」
霧を力尽くに打ち砕かんとする黒騎士の動きは激昂に伴って苛烈さを増す。
それは――病毒の巡りも速くなるという事。
ぐらりと揺らいだのは身体か、精神か。
『生憎、半端な迷い犬の現実逃避に付き合ってやるほど暇ではないのでな』
霧は一つ所に集い狂乱の病を纏う狼へと変わる。
神速で振るわれる二刀の回避など勘定に入れもしない。刻まれた傷からは病に穢れた鮮血が迸り黒騎士を穢す。
「俺、は……ッ!」
『言ったであろう? 後で罰を受けても余は知らぬとな』
戦闘力に優れた狼の牙が、獲物の首筋を容赦なく咬み裂いた。
成功
🔵🔵🔴
イングリット・イングラム
何かを探していた筈、ですか
かつて存在した、呪いの二刀と魔靴を携えた黒騎士
その方は確かに何かを探していたのかもしれません
ですが、それらは全て終わった話です
貴方は骸の海から染み出てきた|黒騎士の紛い物《オブリビオン》
貴方が探すべきものもやるべきこともこの世界に存在しません
骸の海へと還します
鎖を断つことが第一
しかし、ただ法力を放ったのでは旋風に相殺される
剣を構え、敵と水晶の動きを見極める
旋風の刃を放ってきたなら、法力を込めた剣で反射し、鎖を断ち切る
間合いを詰め、相打ち覚悟で直剣を刺突
法力を放ち、高速移動の効果を反転
こちらには治癒の加護があります
敵が動きを鈍らせている間にけりを付けます
●まるで定められた運命の導きが如く
「何かを探していた筈、ですか」
イングリット・イングラム(剣士・f35779)は黒騎士の呟いていた言葉を口に乗せる。
まるで無意味な殺戮を良しとしないような科白といい、一見するとその姿は理性的なようにも見えた。
……それも無辜の人々を捕らえた|人間画廊《ギャラリア》を引き連れていなければ、の話だが。
「かつて存在した、呪いの二刀と魔靴を携えた黒騎士。その方は確かに何かを探していたのかもしれません」
例えば生前に抱いていた未練、或いは死後も忘れきれない想い。彼にとっては大事な事だったのだろう。
「ですが。それらは全て終わった話です」
「……知った風な口を利くものだな」
「貴方は骸の海から染み出てきた|黒騎士の紛い物《オブリビオン》。貴方が探すべきものもやるべきこともこの世界に存在しません」
すぱりと、刃で斬るように断じる。
生前にまつわる想いを半端に残している事こそ酷な話か。世界の|正常化《清浄化》を務めとする者として、為すべき事は決まっている。
「――骸の海へと還します」
「いいだろう。出来るものなら、やってみせろ……!」
黒き旋風を纏う騎士に相対し、教団の使徒たる証の直剣を構えたイングリットは集中力を研ぎ澄ませる。
|人間画廊《ギャラリア》より力を吸い上げる『月の眼の紋章』が万全の今、月光城の主として絶大な力を宿した黒騎士は無策に押し切れる相手ではない。
「黒き風よ。我が命を喰らい、全てを引き裂く我が牙となれ!」
「そこです――我が身、我が刃を以て此処に教義の体現と為さん事を」
卓越した剣技と法力により教団の「使徒」に選ばれたのがイングリット・イングラムという剣士だ。
彼女の力を十全以上に発揮させるのが、ともすれば|異能《ユーベルコード》をも凌駕する“眼”であった。
旋風の刃が放たれるより早く、黒騎士の二刀が振るわれるより早く、その初動と殆ど同時に見切った攻撃軌道に直剣を合わせて【対抗】の法力を込める。
「なん、だと……!?」
「遅い」
次の瞬間、|人間画廊《ギャラリア》を繋ぐ鎖を断ち斬ったのは跳ね返された旋風の刃。
|有り得ない《・・・・・》と驚愕に黒騎士の目が見開かれる。
侮りと表現するのは酷だろう。
猟兵と紋章による万全の強化を受けた月光城の主、少なくとも膂力や速度といったフィジカルの差について黒騎士の見立てにも誤りは無い。
だからこそ隙が生じた。
よもや――よもや防御に留まらず反射を成立させる奇跡のような神業を、狙って成し遂げてみせる等と。
「境界を侵す者に再びの死を」
「舐めるなッ!」
痺れの走る手に力を込めて直剣を握り、イングリットの疾走は予定調和のように斬撃を掻い潜って黒騎士へと距離を詰める。
不意を打った反撃、|人間画廊《ギャラリア》の一部を解放した事による強化の減衰と併せて漸く互角。
迷いなく放たれた刺突は二刀の斬撃と刺し違える形で黒騎士を捉え貫く。
「捕まえましたよ」
「チ――」
月光城の主の力が相手だろうと法紋に護られた超常の肉体ならば多少の無茶は効く。
鮮血にその身を濡らしながらも動きに停滞は無く、直剣を通じて直接に叩き込んだ【対抗】の法力は黒き旋風の力を裏返し、騎士を縛る枷へと変えて。
「このまま、けりを付けましょう」
生と死の境界の守護を掲げる、清廉な使徒の魂がもたらす治癒の加護がイングリットの動きを鈍らせない。
「境界の彼方へと還します」
「ぐ、ぅ……ッ!」
傷を負う事を恐れず、しかし不死ゆえの隙を見せる事もない極めて合理的な討滅の連撃。
繰り返し振るわれる直剣は遂に二刀の護りを破り、黒騎士の心窩を貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
↓
探し物なら手伝ってやろうか?勿論、キッチリ代金は払って貰うが。
皮肉交じりに両手を広げて【挑発】。
――ま、こんなお愉しみもねぇ場所じゃ使う所もねぇか。
酒はない、食い物はない、カジノの一つもありゃしない。
あるのはこの世の終わりのような光景だけ。
…いっそのこと報酬はその|人間画廊《ギャラリア》でどうだ?
交渉決裂とは残念だ。
なら、強引に|【盗む】《壊す》としようか。
魔剣からUC。その狙いは数十個のクリスタルの【焼却】。
音を立てて砕け散るサマは壮観だろうぜ。高価もしくは高級な代物ってのはブチ壊したくなるタチでね。
今日は|小煩い連中《UDC》のお小言も無しだ。報酬から差し引かれる心配もない。
馬鹿にするかのように無防備に背を向けて。66倍を失った相手なら既に脅威と呼ぶには程遠い。
今度はこっちが言う番だ。
去りな。逃げるなら追わねぇよ。
騎士の矜持か、それともオブリビオンとしての責任感、か。
二刀を持って迫る相手に振り向かず、一発の紫雷を込めた銃撃。
変異していくその姿に笑って。
さて、第二ラウンドと行こうか。
●瞬きより短い決闘劇
「探し物なら手伝ってやろうか? 勿論、キッチリ代金は払って貰うが」
黒騎士の殺気もどこ吹く風とばかり、皮肉交じりに両手を広げてみせたのはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。
胡乱げに眉を顰める黒騎士の様子に構う事なく、愉しむような軽口はどこか芝居がかって。
「――ま、こんなお愉しみもねぇ場所じゃ使う所もねぇか。酒はない、食い物はない、カジノの一つもありゃしない」
あるのはこの世の終わりのような光景だけ、と血管の大地を見渡し大仰に溜息など吐いてみせる。
視線は取るに足らないもののように黒騎士を素通りしてその背後、人々を捕えた無数の浮遊水晶へと移り。
「……いっそのこと報酬はその|人間画廊《ギャラリア》でどうだ?」
「言いたい事は充分か。……去らないなら屠るのみだ」
「交渉決裂とは残念だ。なら、強引に|盗む《壊す》としようか」
「ッ……!」
刹那の間に鎬を削ったのは有形無形の熾烈な攻防。
先ず黒騎士が牽制に放った斬撃波を猟兵が最小限の動きで躱す事により一手。
騎士が黒き旋風を纏う隙とも言えないような間隙、軽いステップで揺さぶりを掛けるカイムの手に顕現した神殺しの魔剣が黒銀の炎を呼び起こすのがほぼ同時。
初太刀を振り抜いた騎士の体勢と|人間画廊《ギャラリア》に伸びる鎖により生じる僅かな死角。
【黒風鎧装・迅】が真価を発揮するに先んじて、【|無慈悲なる衝撃《インパルス・スラッシュ》】が解き放たれる。
“目は口程に物を言う”等と表される事もあるが、こと戦闘に関して身体全体から読み取れる情報はどれ程のものか。
火蓋が切られると同時に敵を仕留める為の予備動作、相手の動きの予測、それを更に察知した上での誘導。
刃を交えずとも戦いは既に始まっており……故に読み合いを制すればこのように、『月の眼の紋章』による強化の万全な月光城の主を出し抜く芸当も不可能ではない、という話。
「高価もしくは高級な代物ってのはブチ壊したくなるタチでね」
斬撃と共に荒ぶる黒銀の炎は目を瞠る黒騎士の姿を、そしてその背後に浮かぶ|人間画廊《ギャラリア》をも呑み込み拡散。
低位のオブリビオンなら容易く消し飛ばす灼熱は狙った獲物だけを焼き払う。
「今日は|小煩い連中《UDC》のお小言も無しだ。報酬から差し引かれる心配もない」
黒銀の炎が収まり消えゆく光景に背を向け、小さく首を傾ければ火炎の向こうから閃いた棘鞭は標的を捉える事なく空を切る。
66倍の強化を失った以上既に脅威と呼ぶには程遠いと、馬鹿にするように無防備に。
「今度はこっちが言う番だな――去りな。逃げるなら追わねぇよ」
「ふっ……」
背中越しに聞こえたのは思わず、といった風な笑い声。
挑発に対する単純な憤りだけでなく、自棄を起こしたでもなく、滲むのは恐らく彼自身にも分かっていない感情。
「妙だな。肩の荷が軽くなったような気分だ」
「そうかい」
|人間画廊《ギャラリア》も繋がっていた鎖も焼け落ちた。
クリスタルは浮遊していたとはいえ負担だったのかもしれないし、そういう話ではないのかもしれない。いずれにせよ知る由も無い事だ。
「……誰が逃げるか。叩き斬るぞ」
「ハッ! やらせるかよ」
黒騎士の宣言にも振り向く事無く、振るわれる二刀の風切り音には一発の紫雷を込めた銃撃で応じる。
心臓に叩き込まれた内なる邪神の異能はオブリビオンへのトドメに充分な威力を炸裂させて。
「本番は此処からなんだろ? さて、第二ラウンドと行こうか」
あくまで飄然と嘯いた言葉を浚い、吹き抜ける風はどこか不吉に冷たく。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『喪誓の凛騎士』イリーナ・ナイトリンクス』
|
POW : 斬界淘汰/とっておきだ、見惚れないでおくれよ?
【レベル秒持続し時空をも引き裂く斬撃の嵐】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 無窮の矜持/恥ずかしながら技だけは未だ健在でね
技能名「【心眼・早業・残像・破魔・斬撃波・貫通攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 封刃剣舞/超えてくれたまえ、キミに出来るなら!
【未来予知に等しい見切り】【神速の反応速度】から【射程・遮蔽を無視する破魔の斬撃波】を放ち、【動作や能力発動を寸前に妨害する切れ味】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:小笠原みぉ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠カタリナ・エスペランサ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●騎士の誇りは闇に沈みて
「ハ、ッ……嗚呼……覚めてみれば、なんとも…………虚しい夢だったな」
猟兵により決定打を受け、喀血した黒騎士はその身を揺らがせる。
致命傷の手応えがあった。
程なくしてこのオブリビオンは骸の海へ還り消えるだろう……本来なら。
「だが……道化は道化なりに課せられた役がある。悪いが付き合って貰うぞ、六番目の猟兵――敗けてくれるなよ」
地に突き立てた二刀で身体を支え、背筋を伸ばして|宙《ソラ》を睨む。
もはや死に体の有様ながら、続けて響かせる声は朗々と。
「それでも、俺は尚も五卿六眼の欠落を求める……ッ!」
その科白に応えたのは第二層に浮かぶ六つの赤い月、その一つ。
放たれる赤い月光を浴びた黒騎士の身を内から食い破るように無数の翼が飛び出し、繭のように覆い隠す。
異変は時間にして数秒にも満たず、閉じ合わさっていた異形の翼は緩やかに開き……
「……まったく、愚かな……と言うと我が身に返るな。難儀なものだ、と言っておこうか」
そこに精悍な人狼騎士の面影は無い。
白猫の耳をぴくりと動かし、刃のような翼を月光に煌めかせる少女は気取った仕草で一礼してみせる。
「ごきげんよう|JAEGER《猟兵諸君》。こうして降り立ってしまった以上は致し方ないな」
変質に伴い『月の眼の紋章』も、月光城の主としての力も喪われた筈だ。
だというのに押し寄せる殺気と重圧は先の黒騎士にも勝るとも劣らないもので。
「ボクも悪逆非道の闇の種族として人々の鏖殺に取り掛かるとしよう。阻むなら欠落の不完全な今をおいて他に無い」
つまらない台本でも諳んじるように告げて双剣を抜き払う。
あなたに向ける表情はにこやかに微笑んで、しかし今見逃せば彼女は言葉通りの殺戮を為すのだろう。
「さあ、世界の息の根を止めよう――なんてね。どうか止めてくれたまえよ?」
見事討ち果たしてみせろと、闇の種族は無造作に踏み出す。
ブラミエ・トゥカーズ
犬の次は猫であるか。
ならば次は馬か鹿か?
傲慢に余裕を見せつつ正面から無造作に堂々と剣戟に応じる
普通の人間でもそれなりの腕前があれば渡り合える程度の力任せの無造作な剣技
敵の反応速度や見切りで余裕で対応可能
馬鹿が出た
UC発動を妨害され妖怪として破魔の力で損害を受ける
どんな様になっても余裕は崩さない
余では貴公に勝てぬようであるな、爆発オチとは昨今の怪人らしいとは思うが、余は少し不本意であるな。
後は任せるぞ、正体《わし》よ。
結果、吸血鬼の形は破壊され、爆発四散する
周囲に血煙をまき散らす
真の姿
手枷足枷をした中世風村娘の形に凝縮したウイルスの集合体
猟兵になった病原菌
残念だがな。猫の嬢ちゃん。
わしに斬撃は効かねぇよ。
射程:すぐそこにもはるか遠くにもそれは漂う
遮蔽:隠れていない、ただ肉眼では見えないだけ
動作:手足などない
能力:発動するものではなく、唯々他者の体内で生きるその結果が他者に害なだけ
破魔:ただの最小で最弱で単純な生物
土地:この病原菌は血液に感染する
アドリブアレンジ絡み色々歓迎
●天国も地獄も無いのなら
「犬の次は猫であるか。ならば次は馬か鹿か?」
「む。今ボクのこと馬鹿って言ったかい」
「あまり|咄《はなし》の終いを急くものではないぞ。これだから小娘は」
不遜且つ傲慢に振る舞うブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)の余裕は崩れず、軽口を叩いてはやれやれと肩を竦めてみせる。
おもむろに二振りの剣を手に取れば、相対する闇の種族も手にしていた双剣をくるりと回してみせて。
「遊んでやるとしよう。そら、何処からでも掛かってくるがいい」
「大した余裕じゃないか。それなら精々エスコートさせて貰おうか」
斬、と剣を握ったままの腕が宙を舞った。
振るおうとしていた浄剣を初撃で崩し、即座の追撃がヴァンパイアの腕を刎ねる――刹那さえ遥か置き去りに、【封刃剣舞】は止まらない。
人外の膂力に任せたブラミエの無造作な剣技。
普通の人間であってもそれなりの腕前があれば渡り合える程度では只の一振り、只の一歩さえ許されないとばかりに為す術も無く彼女の身は斬り刻まれる。
「……それ見た事か……馬鹿が出た」
「あの月光城の主は消え失せたけれど、直前の戦いの記憶くらいは引き継いでいてね」
もはや解体と表現すべき惨状に成り果てたヴァンパイアの断面から血が流れ出る事は無く、無論再生の類が始まるようにも見えない。
いっそ不自然なまでの呆気なさを訝るように眉を顰めながら、イリーナは猶も悠然と嗤うそれを見下ろす。
「|吸血鬼《ヴァンパイア》の如何な異能も破魔の刃は斬り祓う……お得意の再生も、先のような病毒の散布もさせはしない」
「成程……余では貴公に勝てぬようであるな」
「だけどまだ息があるとはね。此方の落ち度だ、御免よ」
ぎらりと凶悪に月光を照り返す異形の翼を一斉に振り上げ、振り下ろす。
ただならぬ力の込められた一撃を受ければ既に九割九分死体と変わらぬ肉塊など跡形も無く消し飛ぶに違いない。
「爆発オチとは昨今の怪人らしいとは思うが……余は少し不本意であるな」
――後は任せるぞ、|正体《わし》よ。
「っ……!」
イリーナの見切りは未来予知に匹敵する精度を誇るが予知そのものではない。
爆発四散したヴァンパイアの身体から撒き散らされる血煙に一切の前触れは無く、咄嗟に翼で防御しつつ後退するまでに一秒の半分。
オーバーロード。
ただ本来の在り方へと回帰する|だけ《・・》の、埒外たるを象徴する超克の御業。
「……してやられたものだ。種明かしを聞いても?」
『もう何も隠しちゃいない、御自慢の眼で見てみるがいいさ――まともに見えるなら、だが』
闇の種族が睨む先、消し飛んだ筈のヴァンパイアの姿があった場所には手枷足枷を嵌めた中世風の村娘。
正しくはヒトではない。
その形に凝縮したウイルスの集合体であり、それが猟兵となった病原菌……ブラミエ・トゥカーズの真の姿。
停滞は一瞬、無尽の斬撃が村娘の輪郭を微塵に斬り刻む。
……一説によればヒトの身体には380兆ものウイルスが生息していると言われる。
幾万、ともすれば億に届く程の斬撃を以てしても駆逐するには程遠い。
『残念だがな。猫の嬢ちゃん』
響く声は身体の内からか、外からか。
【|災厄流行《パンデミック》・|赤死病《テンイセイケツエキシュヨウウィルス》】が付与するのは伝染性ウィルスによる血液への悪性腫瘍。
熾烈な剣舞は血の巡りを早め、かつてUDCアースで猛威を振るった致死性伝染病の猛威は罹患者を死に至る貧血、飢餓感、幻覚、喘息の症状に苛む。
『わしに斬撃は効かねぇよ』
「……一つ……解せないな。何故、斬れない?」
『赤死病、転移性血球腫瘍ウイルス、全てわしの名だ』
《妖怪》ヴァンパイアなど仮初の姿。名も無き災厄に与えられた|物語《約束》にして|信仰《檻》。
それを破却した今、病毒の害をもたらすのは御伽噺の吸血鬼などではなく唯ウイルスが他者の体内で生きた結果に過ぎない。
『人間共は正しく打ち克ってみせたぞ? 今更オカルトの横紙破りなんざ許すものかよ』
|赤死病《ブラミエ》は既に撲滅された病だ。
今やワクチンで治癒可能な程度の伝染病は血液を介し、闇の種族に留まらず血管の大地をも侵していく。
「……ああ、全く。悔しいな……悪党には似合いの末路か」
乾いた音を立てて双剣が地に転がる。
オブリビオンに纏わりつくウイルスの霧は形無き手が抱くように、或いは骸に蟲の集るように。
大成功
🔵🔵🔵
印旛院・ラビニア
↑
「これが儀式による生まれ変わり?」
あれからさらに強くなるとか、オブリビオンって何でもありだね。人間画廊の人たちは解放されたけど、
「鏖殺にするなら、止めなきゃいけない。うん、止めさせてもらうよ」
正直戦うのは怖い相手だけど、覚悟は決めるよ
とは言っても相手の卓越した剣技に手も足もでない。何とか【シャドウパリィ】で防いでいなすけど、追い込まれる。途中までは
「……だんだん思い出してきたんだよね。ゲーマーとしての勘を」
戦っている間に【学習力】で相手の攻撃の癖やリズムを覚え、身体に適応するよう【チューニング】する。後は相手の動きに合わせてUCの【マキシマムカウンター】を放つ
「まだまだ、強くならないとなぁ」
●征け、過去を超えて
「これが儀式による生まれ変わり?」
悍ましくも何処か神々しい『月光城の主』の変貌を前に印旛院・ラビニア(人権焼却されたと思ったらイキりウサギに転生した件・f42058)は呼吸を整えた。
|人間画廊《ギャラリア》に囚われていた人々は解放されたとはいえ、再誕した闇の種族は先の黒騎士より更に力を増しているように見える。これがゲームならコントローラーを投げ出しているところだ。
……それでも。
「鏖殺にするなら、止めなきゃいけない。うん、止めさせてもらうよ」
「良い目だ。ならばボクも嘗て騎士だった者としてお相手しよう」
覚悟を決めて心を奮い立たせるラビニアに、イリーナは眩しいものを見るように目を細めて。
「願わくば心の輝きに見合う実力のある事を。さて、小手調べといこうか」
「お手柔らかに……っ!」
パフォーマンスじみた所作で双剣を振るえば無数の斬撃波が生じ、異形の大地を斬り裂いて血飛沫を上げながらラビニアに迫る。
選択肢など無きに等しい。
離れていてもアウトレンジから斬り刻まれるだけだと、無我夢中で前に出てサーベルを振るう。
「残念、残像だよ」
「く、ぅ……!」
「済まないね。狼のように|バイオレンス《暴力的》ではないけれど、遊びがちなのは猫の悪癖だ」
確かに入った筈の渾身の一太刀は敢え無く躱され、返す斬撃は余波だけでもサーベルを弾き猟兵の身を吹き飛ばす。
護りを貫く斬撃はまともに防げる類のものではない。
|受け流し《シャドウパリィ》による回避に徹し、その上で抑えきれないダメージと避けきれない斬撃の傷が見る間にラビニアを鮮血で染め上げていく。
どうにか食らいつこうとするラビニアの常に一歩先をリードするように、双刃の剣舞も容赦なく苛烈さを増して。
「だけど……だんだん思い出してきたんだよね。ゲーマーとしての勘を」
「頼もしいね。この僅かな間で、先の黒騎士と戦っていた時とは見違えるようじゃないか」
張り詰めた緊張の糸が|解《ほど》ければ、一秒ごとに今の限界を超えられなければ、その瞬間には首が飛ぶ死の舞踏。
裏を返せば全力を出し続ける限り――傷こそ増える一方にせよ――食い下がれる|程度《・・》の死線。
単に甚振り弄んでいるのか、それとも他の意図があるのかは分からない。
ただ、ある種トランス状態めいて研ぎ澄まされた意識に鋭さを増していく剣舞のリズムそのものを馴染ませていく。
(こっちの攻撃はほとんど当たらないけど……相手も至近から攻撃してきてる以上、近くに居る事は変わらない)
脅威は双剣ばかりではない。
刃のような異形の翼に斬り裂かれて地に転がり、即座に跳ね起きて追撃への対処を間に合わせる。
(相手の剣技の底はまるで見えない。でも、テンポアップのペースは掴めてきた)
敢えて大きく振るったサーベルが躱されるのは織り込み済み。
続く反撃を危ういところで凌ぎ、相手の位置に見当を付ける手掛かりとする。
「とはいえ、そろそろ身体も動かなくなる頃だろう。この辺りで幕引きとしようか」
「……っ……!」
ぜぇ、と荒い息を吐く。
身体の感覚など疾うに極度の緊張に塗り潰されているが……超えるべき分水嶺、相手から宣言してきたそれを逃す理由は無い。
半分は勘だ。
無数の傷と共に身体に叩き込んだリズムを頼りにヤマを張り、一瞬にも満たない刹那を掴むべく全身全霊を振り絞る。
「――切り札は最後までとっておくもの、ってね!」
一か八か、イリーナの心眼を掻い潜る為の【|スキルクロス・リユニオン《独自技能》】。
相手が此方の成長をも常に一歩上回り続けると言うのなら、一足飛びに飛び越えてしまえばいいという単純な解法。
言うは易いの極致だが……大きく薙ぎ払ったサーベルから伝わる鈍くも確かな重い手応え。
ほぼ差し違えるような形ながら、闇の種族に届いた|決死の反撃《マキシマムカウンター》を霞む視界が捉える。
「けほっ……やるじゃ、ないか。それでいい。頼むよ……皆を……」
「……まだまだ、強くならないとなぁ……」
倒れる音は二つ重なって。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
↑
今日も|便利屋《Black Jack》は通常営業中。
千客万来ってのかね?『敗けてくれるなよ』に繋げて『止めて見せろ』と来たモンだ。
(肩で笑いながら)
自慢じゃないが、これでも最前線を張る一端の猟兵でね…その依頼。
(魔剣を肩に担いで)
――俺が請け負った。
彼女の剣の技能は目を見張るモノがある。
だから俺は剣で彼女に勝つ。無茶?無謀?命知らず?…言われ慣れてる、んな事はよ。
【反逆の意志】を用いて、超強化。代償は呪縛。
徐々に身体を蝕み、やがて俺自身の動きを完全に封じる厄介な代物さ。
【怪力】を活用して魔剣を振るい、暴力的と言える斬撃の嵐を【見切り】と超強化の身体能力で躱して行く。
戦闘の軽口の合間に身体に付けられた傷。徐々に鈍く重くなっていく身体は時間的猶予を俺に許さない。
だからこそ、本命のUCは既に発動してある。
奪うのは彼女の冷静さ、思考力、判断力。呪縛を用いた駆け引き。
与えられるのは僅かな幸運。
散った赤い俺の血が彼女の視界を一瞬だけ汚した。刹那の猶予ってヤツだ。
だが…ケリを付けるには十分な時間だ。
●示すは人としての誇り
「今日も|便利屋《Black Jack》は通常営業中。千客万来ってのかね?」
新生した闇の種族を前にカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は肩を揺らして笑ってみせる。
『敗けてくれるなよ』と言い残した人狼の騎士に『止めてみせろ』と告げた白猫の騎士。
紛れもない|世界の敵《オブリビオン》として振る舞いながら、敵手である猟兵に向ける言葉にしては随分と期待に満ちている。
「自慢じゃないが、これでも最前線を張る一端の猟兵でね……その依頼」
顕現させた魔剣を肩に担ぎ、不敵に告げる。
「――俺が請け負った」
声に込められているのは単なる余裕ではない。
人であろうとする【信念】、猟兵であろうとする【誇り】、力を背負う【覚悟】こそ揺るぎなき【|反逆の意志《リベリオン》】――限界を超えて湧き上がる力の源泉。
「まったく、報酬も出やしないのにね。格好良いじゃないか」
「そいつはどうも。ま、どうせ褒めるなら勝った後にしてくれよ」
「尤もだ。それじゃあ……踊ろうか!」
互いに軽口を叩きながら動き出すのは同時。
袈裟懸けに放った魔剣の一閃が斬り裂いた騎士の姿は残像、返す双剣の反撃が猟兵を掠め血華を咲かせる。
さながら風か光か、留まるところを知らない剣舞は凄まじい強化を宿したカイムにさえ無数の傷を刻み付けて。
「ッ……成程、大した剣技じゃねぇか!」
「恥ずかしながら技だけは未だ健在でね。得物を持ち換える間くらいは待ってあげようか?」
「気遣い痛み入るな。……要らねぇよ。|だから《・・・》俺は剣で勝つ」
単純な膂力なら分があるのはカイムの方だ。厄介なのは物質も魔力も構わず断ち斬る双剣の切れ味。
神殺しの魔剣でもなければまともに剣戟を交わす事さえ至難を極めただろう。
未来を見透かすような心眼と磨き抜いた見切りのセンスで熾烈な先の読み合いを繰り広げ、燃え続ける反逆の意志を以て無窮の矜持に食らいつく。
「随分と無謀な道を選ぶものだね」
「言われ慣れてる、んな事はよ」
致命的な一閃に魔剣の刃を合わせて逸らし、猶も絶え間ない斬撃の嵐は力任せに掻い潜る。
押されてばかりではないと繰り出した反撃には僅かな手応え。まだ浅い。
最前線を張る猟兵としての自負は伊達ではない。凄絶な剣技を振るう闇の種族を真っ向から相手取りながら、卓越したフィジカルと技術を以て水際で拮抗を保ち続ける。
……今は。
「息が上がってきてるね。戦意は衰えずとも身体の方が限界かな?」
「まだまだ、序の口さ。余裕が無くなってきたのはそっちの方だろ?」
一歩も退かずに応じてみせながら、しかし直接に斬り結ぶイリーナの見立ては概ね正しい。
身体に刻まれた無数の傷だけでなく、超強化の代償にその身を蝕む呪縛は徐々にその動きを鈍らせていく。
もはや猶予は数秒と残されていない。
だからこそ――
「賭けてやってもいい。アンタじゃあ、俺には勝てねぇよ」
「……む。面白いじゃないか、秘策があるなら見せて貰おう!」
押さえつけてきた天秤が遂に傾く。回避も防御も超えてカイムに届いた斬撃は決定打と言っていい。
見極めたのはその一瞬。
限界が近い事を敢えて悟らせ、捌ききれない斬撃の狙いを誘導し、此処一番の挑発的な煽り文句でイリーナのプライドを刺激する。
重なった無数の要素で僅かに騎士の心眼を曇らせる【|命知らずの賭け《デッド・オア・アライブ》】、齎されたのは僅かな幸運。
血飛沫の赤がイリーナの視界を遮った時間は一秒にも満たない。
(刹那の猶予ってヤツだが……ケリを付けるには十分な時間だ)
「お望み通り――コイツで総取りといこうか!」
振り絞ったのはあらん限りの力と信念。
神殺しの魔剣は騎士の華奢な身体を捉え、確かに叩き斬る。
「……御見事。良い戦いぶりだったよ。……あぁもう、悔しいなぁ……!」
「悪くねぇ気分だ。報酬としちゃ、上々だな」
自らも満身創痍ながら、骸の海へ還る騎士を看取る笑顔は得意げに。
大成功
🔵🔵🔵
イングリット・イングラム
止めてみせろ――ですか
その姿はおろか記憶や感情、世界に対する悪意さえ、与えられたものに過ぎない哀れな存在
それがオブリビオンと思っていましたが、貴方はそのことを自覚し、その役割を楽しんでいるようにも見えます
まさしく、世界の敵たる邪悪な存在
その歪んだ命、ここで終わらせます
こちらも全ては見せていない
法力を解放し、剣と衣に光を纏う
光翼を広げ――一気に距離を詰める
二刀との戦いは先ほどの貴方が教えてくれた
間合いを測り、動きを覚え、後の先、先の先を取るように攻撃
斬撃の嵐は、剣に“死”を込めて殺す。残り1回
僅かな動揺も見逃さない
残りの“死”をもって骸の海へ送ります!
道化、道化師
ならばその観客は一体何処に――
●戒律の隷従よ、救いは此処に
「止めてみせろ――ですか」
「ああ。キミも態々その為に来てくれたんだろう?」
これ見よがしな程に叩きつける殺意とは裏腹、あくまで飄々とした闇の種族の振る舞いにイングリット・イングラム(剣士・f35779)は眉を顰めた。
「その姿はおろか記憶や感情、世界に対する悪意さえ、与えられたものに過ぎない哀れな存在。それがオブリビオンと思っていましたが……」
ダークセイヴァー|上層《第三層》を支配する闇の種族という存在ゆえか、月光城の主にまつわる謎多き生態に関連してのものか、或いはそれ以外の理由によってか。
真意を見透かす事こそ容易ではないが、眼前の相手から単なる戦闘力とも異なる異質さを彼女は感じ取っていた。
「……貴方はそのことを自覚し、その役割を楽しんでいるようにも見えます」
「間違いではなくともそれが全てではない、と言ったところかな」
その相槌は所感のどの部分に対するものか。意図するところは定かではないし、悟らせるつもりも無いのだろう。
意味のあるようで無い返答は何処かこの会話そのものと重なるようで。
「まさしく、世界の敵たる邪悪な存在。その歪んだ命、ここで終わらせます」
「哀れみを向けられるのも性に合わなくてね。Good,期待しているよ」
先ずは挨拶代わりとばかり、白猫騎士は軽く騎士剣を一振りしようとして――先手を取ったのは猟兵の側。
単純な速度のみではない。
思考の推移や動作の予兆……文字通り機先を制して飛び込むイングリットの法紋から生じた光が彼女の剣と衣を輝かせ、光翼となって爆発的な推進力を生み出す。
「ふッ――」
「おっと……! 驚いたな、この僅かな間に此処まで……!」
先の黒騎士との戦いの記憶をイリーナも保持している可能性は想定内。
|だからこそ《・・・・・》、それは一層劇的な効果を発揮したと言えるだろう。
戦いを通じた猟兵の成長は目覚ましいものだが、今のイングリットのそれは輪を掛けて並外れている。
イリーナが速度と技の冴えを武器にするならイングリットは洗練された戦闘演算と最高効率の神業を以て。
闇の種族の圧倒的な|基礎性能《スペック》には100倍以上もの法外な【強化】で渡り合い、残像やフェイントを交えた小細工は“真実”の看破を以て踏み潰し、機械にも勝る精密さで常に初動を封じ込めるように攻め立てる。
「二刀との戦いは先ほどの貴方が教えてくれたので」
「ははっ……! それは先刻のボクも鼻が高いだろうね!」
能力や戦術理論に差異はあれど、人型の双剣使いという点でどうしても立ち回りに似通う部分は現れる。
猟兵は身を以てその挙動を学習した直後であり、その経験を十全に活用する力を備えたイングリッドが得たアドバンテージは計り知れないものだ。
リズムの異なる舞踏をぶつけ合うような激突を繰り返す中、彼女は更に人狼と白猫の細かな癖の違いを捉え動きを研ぎ澄ませていく。
「さて……! ジリ貧やマンネリといった言葉は好みじゃないんだ。とっておきを披露するとしよう!」
「……何のつもりで自ら隙が出来ると予告するのかは存じませんが――」
安いブラフという訳でもない。本来なら隙とも言えないような僅かな溜めもイングリットが見逃す事は無く、繰り出した精密な一撃はまともにオブリビオンの身を抉った。
止まらない。
追撃で仕留めきるより捨て身の大技が先んじると判断、猟兵もまた刹那にも満たない猶予を迎撃へと切り替える。
「――ルーンよ。その暴威に死を賜え」
「ッ……やれやれ。参ったなこれは……!」
【斬界淘汰】――世界の息の根を止める等と嘯いた口上に違わず、時空をも引き裂く理外の絶技。
解き放たれようとした斬撃の嵐は、しかし一直線に駆けた直剣に|殺される《・・・・》。
必然の結果だ。
繰り出す寸前に与えた傷で鈍らせた不完全なユーベルコードであり、迎撃にはそのユーベルコードや概念さえ殺し得る死のルーンのありったけを出し尽くした。
「奥の手は用意しておくもの……骸の海へ送ります!」
そして、死を司る力を生み出すルーンは|もう一つ《・・・・》。
立て直す隙など一秒も許しはしないと強引に踏み込み、叩きつける。
直剣を通じ伝わるのは存在の核を打ち砕いた致命的な手応え。
「見事な手並みと……称えて、おこうか。手間を掛けさせたね……!」
最後に少し咳き込んで、ルーンのもたらす死に呑まれたオブリビオンは骸の海へと還り消える。
静寂に包まれた血管の大地、その上空に浮かぶ六つの赤い月も不吉に沈黙するのみ。
「道化、道化師。ならばその観客は一体何処に――」
今はまだ、その呟きに返る答えは無く。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「残念ながら姿かたちが変わってもやる事は一つも変わらない。
望み通り、止めてやるよ。」
先ず技能やアイテムを使用した攻撃や妨害を行って
此方の行動の幅を敢えて相手に知らせる事で
技能等による迎撃に迷いを生じさせ
最終的には正面からユーベルコードで攻撃する。
敵の主力は剣によるものと予想し距離を取り
【誘導弾】【呪殺弾】の特性を持たせた
デモニックロッドの闇の魔弾で弾幕を張りつつ
冥理影玉で【呪詛】を強化した
呪装銃「カオスエンペラー」の銃撃での幻覚、【マヒ攻撃】
も織り交ぜ攪乱。
それを突破されたら
エンドオブソウルに記された死霊術で呼び出した亡者と
影狼【ハイド】を【式神使い】で操り迎撃しながら
ファントムレギオンの死霊を盾として身を守り
龍翼の翔靴を使い空中へ逃れる。
上空からフレイムテイルから火炎を放ち
それに紛れさせる形でスカイロッドから不可視の風弾を発射。
此方の攻撃に対応される前にシャドウクロークを発動し
認識を阻害した上で今までの距離を取る戦術を変更し
真直ぐに最短距離、全速力で敵に向って直進。
黒爪で一撃を加える。
●Good bye, have a nice life.
「残念ながら姿かたちが変わってもやる事は一つも変わらない」
新生した闇の種族を前にしてもフォルク・リア(黄泉への導・f05375)に動揺は無い。
ただ為すべきを為すため、変化した状況に対応すべく即座に手を打つのみ。
「望み通り、止めてやるよ」
「頼もしい事だ。なら、お手並み拝見といこう!」
「闇よ、我が魔力を喰らい染め上げろ」
「杖と銃とは変則的な二刀流だね。いずれも高位の|魔導具《マジックアイテム》、同時に制御するだけでも大したものだ」
「一目で見抜くか。|性質《タチ》の悪い心眼だな」
見透かされる事は織り込み済み。
多彩な手札と修めた技巧の数々はフォルクの強みの一つであり、その集大成を以て攻防に長けたイリーナの絶技を制さんと立て続けに攻め立てる。
「……死せる霊ども、冥理を纏いて我に仇為す者をその|腕《かいな》に捕らえよ」
「まさに一騎当千だ。参るな、烏滸がましくも血が滾る……!」
右の騎士剣を薙げば闇の弾幕が斬り裂かれ、左の刃を振るえば回り込もうとしていた死霊が押し留められる。
纏わせた|秘宝《冥理影玉》の呪を以て一太刀を食い止めるのが限界、間断無い剣舞より放たれる連斬は死霊を寄せ付ける事も許さず宿した幾多の呪詛諸共に斬り刻む。
(剣の間合い以上を纏めて斬り裂く斬撃波、呪詛も死霊も構わず断ち斬る破魔の業。成程、厄介だが……)
「――想定内。まだ序の口だ」
「それでこそだね。いいよ、テンポを上げていこう!」
正面から切り込んでくる闇の種族を迎え撃つべく魔弾と死霊の弾幕密度を増そうとして……寸前、歴戦の経験と洞察力が見逃さなかったのは大局的な戦況の推移。
一手誤れば決壊する死線、首筋に死神の息吹を感じながらすかさず魔導書のページを開く。
「開け冥府の門。審判の日には未だ尚早なれど、我が名の下に一時の解放を与えよう」
「おっと……! 流石に嗅覚までは誤魔化せないなっ」
不意に手応えを失った弾幕と死霊の群れはイリーナの残像に殺到し、いつの間にかフォルクの側面を突こうとしていた白猫騎士――更にその死角から術士の意思に応じ予兆無く襲い掛かった|影狼《ハイド》の爪牙は紙一重に空を切る。
相手からしても危ういところだったのだろう、此処に来て漸く僅かに体勢が流れる。
得られた猶予は数秒。その数秒が今は値千金に等しい。
|魔導書《エンドオブソウル》に記された秘奥より召喚されし亡者の群れは今度こそ突破の叶わぬよう闇の種族を取り囲み、各々に備わった能力を以て飽和攻撃を集中させる。
如何に優れた心眼の見切り、遍く魔を断つ斬撃を持とうと法則も性質も異なる無尽の攻撃に対処するにはその分だけ掛かる負荷も増す。
これこそ百戦錬磨の死霊術士としての、そして此度選んだ戦術の真骨頂。
「ははっ、凄まじいな! ――ならば此方も遠慮は要らないね?」
「よく言う……!」
地面が砕けた。異形の大地から血飛沫が噴き上がり、重力に引かれて雨のように降り注ぐ。
流麗な剣舞は嵐の如く在り方を変え、包囲を維持せんと群がる亡者を貫いて無差別に駆ける斬撃が戦場を蹂躙する。
「……阻め、ファントムレギオンッ」
死霊の集合体を盾として斬撃を受け流し、|翔靴《ブーツ》の能力で上空へと身を躱す。
成程、と分析は迅速かつ冷静に。
先の闇の種族の科白はある種のマイクパフォーマンス、ジリ貧に追い込まれるのを嫌い力尽くに押し返さんとする破壊の嵐はそう長く続けられるものではないだろう。
その上で限界より先に押し切れると踏んだが故の力業であり、なればこそ|まだ見せていない《・・・・・・・・》札が勝利の鍵となる。
「目覚めるがいい封じられし魂。今一度灼熱の暴威を地に知らしめよ」
黒手袋の指を弾く音が響く。
手加減無用は此方も同じ、上空から地上へと薙ぎ払うように火炎の蛇尾を振り下ろし……同時に無詠唱で励起したスカイロッドが不可視の風弾を放って側面を狙う。
技巧の粋を凝らしながら、しかしこれ程のパワーゲームも早々無いだろう。
開幕から〆の段に至るまでフォルクの切った手札は全てが続く攻撃を当てる為の布石であり、同時に一撃でも通れば敵を詰ませるには十分な決まり手の連続だった。
「は、はははは……っ! そうだ……! 超えて、みせてくれ……ッ!」
無尽の斬撃が収束し、振り下ろされた灼熱の一部が消し飛ぶ。
その身に浅くない傷を負いながら、この一瞬が勝敗を決すると悟ったオブリビオンは真っ直ぐにフォルクを狙う。
……無論、それもまた布石の一つ。
「この身に纏うは目も耳も捉え得ぬ影の呪衣。我が手に宿るは触れれば砕ける死の指先――」
最後の詠唱を密やかに唱えれば認識阻害の呪衣が翻る。
これまでフォルクは騎士から距離を取る事を念頭に立ち回ってきた。
それは術士としてのセオリーであり……【シャドウクローク】が彼の身をイリーナから隠しきる瞬間までそのように見せかけるのも駆け引きの内。
「――闇より出でて汝の全てを奪い去らん」
元より騎士の方から迫っていたのだ、全速を以て間合いを詰めるのは難しい事ではない。
受けた呪詛の幾らかが心眼を曇らせている間を逃す事無く黒爪の一撃を見舞う。
「っ……!」
「剣で、防いだな?」
能力と策の限りを尽くし、最も隙が出来る勝機を作り出した。
首を狙った黒爪は間際で騎士剣に阻まれ、その刃は砕けず……しかしそれが最後の抵抗。
黒爪に宿った闇の力は剣刃を蝕み封じ込める。
「終わりだ。骸の海へ還るがいい」
「……Excellent. 嗚呼、敗北は口惜しいけれど……安心したよ。満足だ……!」
勝敗は決し、コマ送りのようだった時間の流れが正常に戻る。
膨大な死霊と亡者の呪詛、魔導具の猛威が騎士を呑み込み……斯くして闇の種族は暴虐を為す事無く、この世界から消え去った。
大成功
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