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【旅団祭③】クリスマスの下準備

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●注意
 当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
 PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
 公式サイト:(https://koinegau.net/)
 公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)

 また、当依頼は『コイネガウ』の旅団シナリオです。
 旅団「恋華荘」の団員だけが採用される全1章「日常」の構成です。
『第六猟兵』の旅団シナリオとは違いEXPとWPが貰えます。

 旅団シナリオのハウスルール解説:(https://tw6.jp/club/thread?thread_id=117680&mode=last50)


 古い大きな旅館を改良して作られた女子寮、『|恋華荘《こいのかそう》』……そこに住まう女性たちの各部屋に、ある日このような手紙が置かれていた。
 『今年の恋華荘のクリスマスについて』。
 そんなタイトルから始まる手紙は、|恋華荘《こいのかそう》に住む|猟兵《異界人》の宮村・若葉(f27457)によるもの。その内容は、いつもクリスマスに多忙になる彩波・いちごとよりよく一緒の時間を過ごすための一案がある、というものだった。

 斯くして某日、|恋華荘《こいのかそう》の某所に手紙に興味を持ったメンバーが集結するのだった。
「まずは、呼びかけに応えて下さってありがとうございます。では、単刀直入に……」
 そう切り出すと、若葉はある提案をする。それは……。
「いちごさんと少しでも効率よく一緒の時間を過ごすために……クリスマスの下見、今から必要だと思いませんか?」

「もしも事前に当日に行きたい場所を調べて情報を共有し合っていたら、例えばここで数分そこで数分と、入れ替わりで二人っきりの時間を捻出しやすくなるかもしれません……」
 |希《こいねがい》|島《じま》の地図が広げられた。この島は大きく分けて五つの地区に分かれており、学園地区、住居地区、商業地区、工業地区、自然地区が存在しており広大だ。準備不足で動き回ってしまえば悔いの残る状態になる可能性は高い。
 そのため、事前にどういう場所があるか調べて共有し、その上で彩波・いちごの時間を分け合おう……という事だ。
「私の言う『クリスマスの下見』というのは、そういう趣旨の提案になります。……如何でしょうか?」
 そう伝えて彼女はにこりと微笑む。しかし|見ているだけ《ストーキング専門》の彼女がこの様に動くのは珍しい事だ。
「私もデートの計画がある程度わかる方が|観察《ストーキング》をしやすいですし、何より、皆さんの大切なタイミングを覗いてしまうのは流石に悪いので……。そこが事前に分かれば事故も避けられてお互いの為にも良いかなって。そう思ったのもあります」
 彼女としては最後の言葉が一番の理由なのかもしれない。
 こうしてクリスマス当日に向けたデートの下見や情報共有を兼ねる、『|恋華荘《こいのかそう》』メンバーによる|希《こいねがい》|島《じま》の観光の話が立ち上がるのだった。


ウノ アキラ
 注:今回の依頼は、【旅団祭】の共通題名で括られる連動シナリオのシリーズです。
 コイネガウ暦20X3年11月における旅団シナリオのお祭りの物語となります。
 なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
 ただし、旅団シナリオへのご参加は基本的にその旅団の旅団員向けとなっております。

 注2:【旅団祭③】友好勢力旅団チームの依頼の一覧表は以下です。
 雅瑠璃MS:「恋華荘」のシナリオ担当。その1。
 ウノ アキラMS:「恋華荘」のシナリオ担当。その2。
 五条新一郎MS:「恋華荘」のシナリオ担当。その3。


 「恋華荘」の『コイネガウ』のシナリオです。宜しくお願いします。

●依頼について
 ※このシナリオでは彩波・いちごはNPCとしての登場はありません。

 クリスマスのデートの下見を兼ねた観光となります。
 クリスマスのノベルのネタにもなると思います。

 学園地区、住居地区、商業地区、工業地区、自然地区からひとつ選び、どんなクリスマスになりそうかを妄想をしながら、どういう地形があってどんな店があるのか下見していく観光を想定しています。

 以上となります。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

イラスト:YoNa

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

詩羽・智悠璃
※ヰヱヲ等の古い表記を使う大正娘
※アドリブ絡み大歓迎
※茶色のスカートに桜色のブラウスなど私服で参加

私もいちごさん含め皆さんの動向は是非知りたいですね♪
|取材《ネタあつめ》の効率的なルウトを書き出すのは勿論
間隙を縫って何処かにいちごさんをお誘いしたいですから

というわけで情報収集としては全域分を広く集めますが
自分のデヱト用として下見に力を入れるのは【商業地区】
私が病弱というのもあってお買い物やスヰツ方面で
恋人めいたクリスマスを堪能してみたいんですよね

とはいえザッハトルテ等なかなか凝ったケヱキを前にすると
製法等に気が向く辺りはメイド(&恋華荘手伝い)の性でしょうか?

諸々の堪能後に戻るとなった時は…そうですね
大型ツリヰの前でいちごさんを抱きすくめてキス等?
「たまには私の方からというのも…♪」

結局は衆人環視で私も照れますし
帰り道で正月の買い出しもさせられそうですが
やはり彼の困った可愛いテレ顔は
執筆の燃料として摂取したいのです♪

若葉さん達に襲われては堪らないので
この辺も含めて構想は全てお伝えしますね


霧沢・愛里
若葉さん同行希望。
お互いにお父様(いちごさん)と素敵な時間を過ごせるように、しっかり計画を立てていかなきゃね❤
…若葉さんの場合はちょっと違うかな?

ともあれ、向かうのは商業地区。
今回はお昼のうちに行くけど、実際のデートはやっぱり夕方~夜になるかな。
ほら、街のイルミネーションとか楽しみたいし♪

クリスマスらしい雑貨とか小物とか扱ってるお店の場所をチェック。そういうお店を巡って、品物を見て楽しむプラン。
何か気に入ったものがあったら、お互いにプレゼントしてあげちゃったり。
もし買ってくれなくてもそれはそれで。あいりにとってはお父様と過ごす時間が一番のプレゼントだもの❤

後はクリスマスディナーを何処で食べるか。
夜景を一望できるレストランが一番望ましいから、条件に合いそうなお店をチェック。
特に気になるところは実際に食べてみるのもアリ。

…でも若葉さん。折角のクリスマスなのだし、偶には直接お父様と一緒するのもアリじゃない?
お父様なら受け入れてくれるハズだし。
若葉さんがあくまで見守る形を望むならそれも良いけど…


彩波・流江
(アドリブ歓迎です)

商業地区にやってきました
くりすますに向けて、飾り付けも増えてきましたね〜…賑やかです!
折角ですし服でも見て回りたいのですが…種類がとても多くて見切れませんね〜
合う服があれば良いのですが…当日どういった服装で行くのが望ましいのかも考えておかないとですね。皆さんと意見交換など出来ればと思います

他には…当日に選んだ衣服を着て、投票で勝てば一式貰えるそうな…ふぁっしょんしょー…という物でしょうか
自分に自信がある人向けですねこれは…いえ、自信はありますけど、服選びで躓きそうです…当日はいちごさんに選んでもらうのも手でしょうか

…何だか普通に観光を楽しんでしまいましたね〜


天雅・朝姫
(アドリブ歓迎)

商業区に来てみたけれど、広いわね…予定されてるイベント一覧みたいなものもあるみたいだし、それを見ながら予定地を回ってみようかしら

冬の味覚を味わう物や、スイーツ目白押しな物など…流石にまだ用意されてないけど、代わりに今は別のイベントが開かれてるみたいね

謎解きイベント?
…へぇ、迷路の中に入って時間内に脱出を目指すタイプね、面白そうじゃない
参加してみるとこれが中々、部屋の中に隠されたパネルを探し出して並べ替えたり、指定されたポーズを暗号から導き出して台座で一定時間…などなど
意外と緊張感あって楽しめたわ…ふふ、当日も別の謎解きゲームが開かれるなら、そっち行ってみても良いかもしれないわね



「このような乗合自動車や鉄道が多いのは病弱の身としては助かりますね」
 詩羽・智悠璃(湯煙に舞う添桜・f22638)はバスの中から商業区の様子を眺めていた。手にする巾着の中には折り畳み地図とメモ帳に鉛筆を携帯し、クリスマスに向けた調査のために気合いが入っている。この日はいつものお手伝いとしての恰好ではなく、茶色のスカートに桜色のブラウスといった私服の姿だ。
「こうして実際に訪れると細やかな所が良く解ります……♪ どのような場所かは事前に読んだ冊子で知ってはいましたが、これでより効率的なルウトも導き出せそうです……」
(そして、そのルウトに鉄道での移動を組み込めば道中では次の様なことも……。例えば時は昼過ぎ。この地を訪れる人々は午後の予定のために移動を開始するでしょう。つまりその間の交通機関は一時的に混む筈。そこに私といちごさんも午後のスヰツを食べに行こうと乗り合わせるのですが、あまりの混み具合に私はあわや押し潰されかねない状況に……ですがいちごさんは私を庇う様に立って下さって。二人は互いに正面を向き合った状態で群衆の中、密着をする事になるのです。身長差を思えばいちごさんの方がやや低く、彼の視線には私の唇が来るでしょうか。あるいは視線のすぐ下に私の胸が来るでしょうか。ならば当日は胸元を少々大胆にした服の方が……? ともあれ降車駅に着くまでの間、互いの息づかいと匂ひ、そして胸の鼓動を間近に感じ合う密着が自然と発生して、そして……)

 智悠璃は空想癖を炸裂させていた。しかしその意識は呼ぶ声に引き戻される。
「――さん。智悠璃さん。次で降りますよ?」
「――はっ!?」
「智悠璃さん、大丈夫ですか……? もし体調が悪いのであれば……」
 目の前には心配そうに覗き込む彩波・流江(不縛神フルエリュト・f25223)の姿があった。帰還した智悠璃は妄想を悟られまいと急いで取り繕う。
「だ、大丈夫です。少しぼんやりしていました」
「そうですか……? 顔も赤いですし、無理はなさらないでくださいね」
 流江はそう言って、智悠璃が席を立つのを補助する様に手を差し出す。何時の間にかバスは目的の停留所に到着して降車口が開いていた。同じくバスに乗っていた天雅・朝姫(近所の巫女さん・f42087)も智悠璃を気遣って声をかける。
「忘れ物は無いかしら? ドアが閉まる前に早く行きましょう」


 バスを降りればそこは|希《こいねがい》|島《じま》の商業区の中心だ。それらのビルは中が商店街の様になっており、ビル内にある大きな通路の両脇に様々な店舗がひしめき合っている。そしてこのビルは、その中でも衣類を扱うアパレルショップが集まる建物であった。
「くりすますに向けて、飾り付けも増えてきましたね〜……賑やかです!」
 流江は感嘆の声をあげる。その飾りつけはビルの中に入ればより華やかで、流れるBGMも相まって楽しい気分にさせてくれる。どの店もお洒落な冬物を推しており、その装いで着飾れば愛しの彼がどう思うだろうといった期待のワクワクとドキドキを提供してくれた。

 そんなアパレルショップが立ち並ぶビル内で、この一行のメンバーのひとりである霧沢・愛里(ヌーベル・エルダー・f34610)はぽつりと呟いた。
「服、かぁ」
 そう言って彼女は自分の和ゴスな装いを見下ろした。この恰好は気に入っているし|お父様《いちごさん》も気に入ってくれてるとは思う。あまり服装を変える気は無いものの、|お父様《いちごさん》と過ごす時間のちょっとした味変として変えるのもありだろうか? とちょっとだけ考える。
(服の事は後で考えよう。それよりも、移動にかかる時間や道順が実際に分かるのは助かるね)
 そんなことを考えつつ愛里は隣の宮村・若葉へ話しかけた。
「お互いに|お父様《いちごさん》と素敵な時間を過ごせるように、しっかり計画を立てていかなきゃね♡」
「そうですね。素敵な時間を過ごす彼を計画的に|観察《ストーキング》できるように、私もしっかり現地を確認しようと思います♪」
 愛里に誘われてついて来た若葉は、恋華荘ではおそらく少数派な推しを見守る壁になりたい勢。今回の彼女は、デートそのものではなく彩波・いちごを効率よく追いかけつつデートの大事な瞬間は邪魔しない様にしたいという配慮のために観光を提案していた。なのできっと誘わなくても皆の後をこっそり追跡していただろうが……。
(……やっぱり若葉さんの場合は目的がちょっと違うかな?)
 と、愛里は首をかしげる。
「ともあれ、今回はお昼のうちに行くけど、実際のデートはやっぱり夕方~夜になるかな。ほら、街のイルミネーションとか楽しみたいし♪」
「イルミネーションは私も気になりますねぇ。夜は死角が増えますが同時に相手を見失いやすいので、それらの対策のために光源の位置はしっかり把握しておきたいところです」
 そんな微妙に噛み合わない会話を交わしながら二人はうふふと笑い合った。


 さて、今回の観光がアパレルショップから入るのは「折角ですし服でも」という流江の提案によるものだ。クリスマス当日にどういう服を着るかをお互いに意見交換しあい、その後は隣のビルの小物雑貨を見てまわり、さらに隣の飲食店が多いビルでスイーツを食べるのだ。
 最後にイベント類やツリーのある場所をチェックして、日が沈むころにはイルミネーションの華やかな広場や公園へ向かっていくのが今回の予定となっている。成人済みの智悠璃と朝姫が保護者として同行しているので暗くなる時間でも問題はない。

 そんな感じで始まった観光の前半のアパレルショップ巡りは、智悠璃と流江が仲良く服を選んでときどき愛里が意見を挟み、朝姫と若葉がさらに意見を求められる。そんなサイクルが早くも出来上がっていた。
「あ、この服かわいいですね!」
「しかしこの丈はけっこう脚が露出しそうですよ? お腹も出ちゃいませんか?」
「う……そこは防寒を兼ねてタイツやストッキングで……。でも言われてみれば、確かにおへそと足は派手かもしれませんね……」
「流江さんなら、|お父様《いちごさん》はこれとか喜ぶんじゃないかな?」
「これ胸の側面が丸出しではありません……?」
「普段は別の上着を羽織って隠しておいて、ここぞという所で脱げば……ね♪」
「愛里さん……!?」
「朝姫さんと若葉さんはどう思いますか?」
「こういうのはあまり詳しくないのよね……動きを阻害しなければ良いんじゃないかしら」
「そうですねぇ。……目のやり場に困る彼は可愛いので、私は大いに賛成ですよ」
 女三人寄ればかしましいというが、まさに賑やかで華やかで楽しげな雰囲気になっている。

「うーん……やっぱり、当日どういった服装で行くのが望ましいのかは悩みますね」
「恋人めいたクリスマスを堪能するためにも、デヱトの服は重要ですからね」
 智悠璃は服の形状や組み合わせについて懸命にメモを書きこんでいた。そこには店員から勧められた若草色のベレー帽やチェック柄のマフラーについても記録している。恐らくは帰ったあともデートのルートと相応しい服装について練っていくのだろう。
 一方で流江はいくつかのブラウスやニットを試着しては諦めていた。胸が大きすぎて物理的に入らなかったり、入っても胸を包む分に布が持っていかれてお腹の丈が異様に短くなってしまうのだ……。
(合う服があれば良いのですが……)
 そんな具合に服を選んでいく最中、流江はクリスマス当日に行われるというイベントの広告に気がついた。それは商業区にある広場あたりで日中に行われるイベントだ。
(……当日に選んだ衣服を着て、投票で勝てば一式貰える……ふぁっしょんしょー……という物でしょうか)
 多くの人に自分を評価してもらって一番を決めるコンテスト。それは、流江にとってはあまりに輝かしい。
「自分に自信がある人向けですねこれは……」
 思わずそう呟いてしまう。けれど、それ以前に服選びで躓きそうだと流江は思った。
 流江にとってこのイベントは眩しすぎる。けれど憧れが無いわけではない。だからちょっとだけ、もしも出るならばと考えた……。その時、自分を支えて背中を押してくれそうな人がひとり、頭に思い浮かんだ。
(……当日はいちごさんに選んでもらうのも手でしょうか)
 この時、流江がクリスマスにしたい事がひとつ決まった。


 洋服を一通り見てまわった一行は続けて小物雑貨が集まるビルへ移動した。
 小物雑貨は季節感を演出する飾りも含まれるためこの区画は特にクリスマス感が強い。通路の装飾に加えて各店舗の飾りも加われば華やかさだけで季節感を堪能することができる。
 ここでは愛里が特に熱心に見てまわっていた。
「……品ぞろえはこっちの方がいいかな。いやでもあっちの方がお揃い感のあるデザインのコップやお皿も多いし……。あっちのお店は子供向けだけどアクセサリーもあるんだね。他にも色々あって話題もたくさん作れそう」
 当日に|お父様《いちごさん》と一緒に過ごす事を想定して、記念のプレゼント購入はもちろんのこと会話のネタになりそうな品物もチェックする。これらは一緒に時間を過ごす時の会話のきっかけであり舞台なのだ。
 同じものを見て共有し、言葉と感想を交わし合う。そんな時間を過ごすのにこういったお店は都合がいい。そうして一緒の時間を過ごしたついでに思い出として何かひとつ買っていくのも良いだろう。

(そういうお店を巡って、品物を見て楽しむプランだからね。何か気に入ったものがあったら、お互いにプレゼントしてあげちゃったり。もし買ってもらえなくてもそれはそれで。あいりにとってはお父様と過ごす時間が一番のプレゼントだもの♡)
「あっ、コレかわいいかも♪」
 愛里は目についた人形を手に取った。それは青い髪の和ゴス衣装の人形だ。ちょっとだけ|お父様《いちごさん》に似ている気がする。次に二人で一緒に来たときは、この人形をキカッケにどんな話ができるだろうか。
 そこまでシミュレーションしたところで、愛里はこの観光で|彼女《・・》に聞こうと思っていた事があるのを思い出した。ちょうど愛里のいる位置は商品棚に隠れているし、みんなもそれぞれ小物に夢中なのでプライベートな事も聞きやすい。
「若葉さん、今いる?」
「はい、どうかしましたか?」
 愛里が名前を呼ぶと若葉が影からスッと現れた。先ほどまで別の場所で掃除用品をニコニコ眺めていたはずだが、その姿はもう無い。自身の肉体を影の追跡者にする能力を使ったのだろう。この能力で若葉はいちごとその周辺の者を比較的容易に|観察《ストーキング》することが可能となっている。そんな|視聴者《・・・》に対して愛里は疑問を投げかけた。
「若葉さん、ちょっと聞きたいんだけど……。折角のクリスマスなのだし、偶には直接お父様と一緒するのもアリじゃない?」
 それは、いつも見るだけの|視聴者《・・・》に|参加者《・・・》にならないかと呼びかけるものだった。
「お父様なら受け入れてくれるハズだし。若葉さんがあくまで見守る形を望むならそれも良いけど……」
 後半にそう言い淀んだのは、いつも見るだけの立場をとる理由が分からないため。もし遠慮をしているだけならば|お父様《いちごさん》ともっと一緒に過ごしても良いんじゃないかなと愛里は思う。その問いかけに、若葉はこう答えた。
「ん-……そうですねぇ。それはきっと素敵な事だと思います。けれど私には刺激が強すぎて、眩しすぎて。だから、私はこれで良いんです」
 はっきりした答えは出なかったものの、答える時の表情はいつもの笑顔とは異なっていた。


 小物や雑貨を扱う店を見終えたなら当日のデートの下見も折り返し。ここからは休憩を兼ねたスイーツの時間だ。
 一行はさらに隣のビルへと移動した。そこは飲食店が多く入っており、お洒落な店から手ごろなお値段のファミレスやカフェもあればスイーツの専門店もある。上の方の階に行くほどがっつり食事ができる店舗が多くなり、屋上のテラスにはビアガーデンが入っていた。そして屋上のテラスの横からさらに塔のように伸びた先には夜景を売りにしたレストランが複数入っているようだ。
「夜景を一望できるレストラン……当日のクリスマスディナーによさそう♪ まだ早いけど夕食ここで食べてみない?」
「こういう場所はテーブルマナーが厳しいんじゃないかしら……。私、妖物を斬るのは得意だけれど肉をナイフで上品に斬る経験はあまりないわよ」
「それにお値段も高そうですよね……」
 愛里の提案に朝姫と流江が尻込みする傍らで智悠璃が自前のメモ帳をパラパラめくる。
「上の階層の店は確かにドレスコヲドがあり作法に厳しい高級店が多い様です。そのような高級店はコウス料理しかない様ですね。ですが、もう少し低めの階なら基準が緩くメニウも選べる一般のやや高め程度のレストランがあります。そこなら作法も厳しくないでしょう」
「事前に調べていたということは……」
「このあたりのレストランのアフタヌウンテヱのコースも私のデヱトルウトの候補です」

 エレベーターで暫し昇れば外の景色は下へと流れて地面が明らかに遠くなる。これまで見上げていた建物が全て下へ。それらは見下ろすものになっていく……。夜景を売りのひとつにするだけあってそこはまさに摩天楼だった。
 一行はエレベーターを途中で降りて一般のレストランへと入っていく。とはいえここも十分に高い階なので見晴らしが良く、眼下の離れた場所に大きな広場と大型のツリーが見えていた。夜になればイルミネーションや商業ビルの明かりが宝石をちりばめた様に輝いて美しい景色が広がるだろう。
 愛里は窓から眼下を眺めて呟いた。
「ここでも夜景は十分良さそうかな……。上の高級店はもっと眺めが良さそうだけれど……」
 そこはまた後で考えよう、そう考えて愛里は座り直す。目の前のテーブルの上にはティースタンドがあり、上にはスコーンと小さなケーキとタルト、そして小さなサンドイッチが乗っていた。それらはすべて、一口で食べられる絶妙な一口サイズになっている。
「この盛り付けはハイカラですね。シンプルでいながら食べやすさと味を両立させる工夫が随所に散りばめられています……」
 そう言いながら智悠璃は盛り付けられた軽食やお菓子を観察する。彼女が提供品に込められた細やかな配慮に注目するのは|メイド《恋華荘手伝い》であるからだろうか。そして同じく成年組の朝姫はティーカップや小さな菓子の華奢な様に慎重になっており、恐る恐る触っては口に運んで笑みを溢していた。それは普段の物静かな様子からは珍しく、一喜一憂の表情の変化が現れている。
「こういった繊細なものは力加減に迷ってしまうわね。でも、美味しいわ」
「ほんとうに、美味しいですね~」
「紅茶も香りがしっかり出ていますねぇ。スコーンと良く合います」
「景色も良さそうだしこういう所もアリ? でも折角だし高級店もまだ一応候補に……」
「むむ、このチョコレヱトケヱキはザッハトルテ……? 別のこの小さなケーキは酸味爽やかなムウスが……! なかなか凝ったケヱキを前にすると製法等に気が向いてしまいますね……」
 三者三様な反応を見せながら、一行はこの後も三軒ほど店を梯子した。


 午後のお菓子休憩も一区切り。日が落ち始めて空は白と黄色が混ざり出した。……ここから三十分もあれば空は赤く染まり、すぐに暗くなり始めるだろう。彼女たちの商業区の観光もいよいよラストとなる。
 一行はイベント類の会場や巨大ツリー、そしてイルミネーションの飾りが豊富な大きな広場へとやってきた。広場の端には広く落ち窪んだ段差があってそこは野外ステージになっている。今はまだ何も開催されておらず人々が思い思いに座る場所になっているが、時が来ればファッションショーやライブイベントが開催される場所になるだろう。
 そんな広場の傍らで智悠璃が巨大ツリーを見たまま固まっている。ぼんやりととろけた表情をしているため、空想癖が今まさに炸裂しているのだろう。
「衆人環視……大型ツリヰの前で、抱きすくめて……たまには私の方からというのも……♪ うふふふ」

 そんな智悠璃を見守りながら、皆は広場をぐるりと見渡した。
 イルミネーションの電飾は広場を囲む様に設置されており、このまま暗くなれば散りばめられた色とりどりの小さな光に囲まれるだろう。巨大ツリー自体にも電飾が巻かれているため、ツリーそのものが大きな輝く飾りになることか解る。この巨大ツリーはきっと、離れた場所からも綺麗に見えるはずだ。
 その中で朝姫はイベント開催スケジュールの表を眺めていた。
「冬の味覚を味わう物や、スイーツ目白押しも近々開催するのね。開催場所は……ふぅん、さっきのビルだったのね。でも確か、まだ用意されてなかったわね」
 隣には、イベントの開催地のマップもある。大半はこの広場に集中しているものの、そうではないものもある。
「それにしても広いわね……あら、雑貨のビルではスタンプラリーが予定されていたのね。テーマに沿った小物を扱っているお店を探して巡ると、なるほどね。そしてこの広場ではファッションショー……と。あら、今は別のイベントが開かれてるみたいね」
 さてさてと朝姫が見れば一階のテナントが丸々脱出ゲームになっているビルがあった。
「みんな、私あの謎解きイベントをやってくるわ」
 朝姫は皆へそう告げると脱出ゲームを体験するべく受付へと足を運んだ。


 そこは小規模なテーマパークのような場所。研究所を手伝おう! というテーマになっており、中に設置された課題をこなしながら道を進んでいく小さな迷路になっていた。
 スタッフから一通り説明を受けた朝姫は目の前の挑戦に胸を躍らせる。
「……へぇ、迷路の中に入って時間内に脱出を目指すタイプね、面白そうじゃない」
 証明がパッと落ちたかと思えばスポットライトが人形を照らして説明の寸劇が始まった。どうやら参加者は新人研究員という設定らしい。問題が発生して職員は対応に追われており、猫の手も借りたい状況。そこでちょうど手の空いている参加者が手伝っていくという流れのようだ。研究所の中を進んで奥の装置にカギを指したら完了して外に出られるらしい。

 設定の説明が終わるとスポットライトは机の上にあるカードを指し示す。アナウンスによると同じものをいくつか探して台に正しい順番で並べるとクリアとの事だ。照明が元の明るさに戻ると室内の様子がはっきりと分かる様になった。そこはごちゃっとした実験室になっていて机の引き出しや本の模型に机の下と探せそうな場所が豊富にある。
「……もしかしてもうひとり連れてきた方が良かったかしら」
 朝姫はぽつりと呟いた。どう見ても一人で進めるのは手間がかかりそうである。とはいえ途中で投げ出すつもりもない。幸い難易度は高くなく、怪しそうなところにはもれなく仕掛けがあって着実に達成感を積み重ねていける作りになっている。
「これで先に進めるわね。次の仕掛けは……暗号と、ポーズ?」
 次の部屋へ移動すると、今度は台座の上から影絵を壁へと映し出し、しばらくキープするという仕掛けが用意されていた。しかもその影絵は暗号で示したものを順番に作る必要があるらしい。
 しかしよく見れば影の作り方の例が別方向の壁に描かれていてそれが暗号の答えになっていた……。とはいえ、その答えがないと思い悩んだ末に|とんでもない《・・・・・・》ポーズをとる事になりかねず、これは一種の事故防止なのだろうと推測される。
 そしてこの仕掛けも朝姫は難なくクリアした。刀剣を振りかざせる体幹は一般人向けの片足立ちのポーズくらいは楽にこなせるのだ。とはいえ一人で進めるには暗号の確認と影の作成で行ったり来たりと忙しなかったので、やはりもうひとり人手がほしい。
「時間は……思ったよりギリギリね。でも意外と緊張感あって楽しめたわ……ふふ」
(当日も別の謎解きゲームが開かれるなら、誰か誘って行ってみても良いかもしれないわね)
 朝姫は満足しながらそう考えた。
 ――当日は健やかなるToラブルの在らん事を。

 朝姫が全ての仕掛けをクリアして外へ出ると空はすっかり暗くなっていた。目に飛び込むのは色鮮やかなイルミネーションの光。暗い空を巨大ツリーが光で照らし、空の闇を否定する。
 広場全体を包む輝きは眩くて、今が夜だということをつい忘れてしまいそうなほどだ。赤、緑、黄、そして白。これらの人工の光が闇夜を否定して足元を照らす。その煌きは力強く、けれど幻想的で美しい。
 クリスマス向けのイルミネーションは、そこに居るだけで間違いなくいつもと違う気持ちにさせてくれるものだった。


「……何だか普通に観光を楽しんでしまいましたね〜」
 流江は満足気に呟いた。電車の定期的な揺れと温かい座席が心地良い。
 行きはバスで帰りは電車、これは当日の移動手段を決めるため、両方に乗ってみるのが狙いだった。小回りが効いて街中をじっくり見られるバスと、速くて楽な電車。
 特に疲れのある帰りならゆっくり座れる電車が良い。

 その帰りの電車で智悠璃は当日の自分のプランを説明した。
「――という訳でして、私は巨大ツリーでいちごさんにアタックするつもりです。なのでどうか、その時は付近で見かけてもそっとしておいて欲しいのです」
 道中で他の恋華荘メンバーに出会ってしまえば、いちごは気を使って一緒に過ごす事を検討するだろう……そしてそれが智悠璃のプランの懸念事項でもあったのだ。しかしこうやって伝えた事で巨大ツリー付近での遭遇率は大幅に下げられる。
 智悠璃は胸をなでおろした。
(あまり夜遅くになると帰り道で正月の買い出しもさせられそうですが……でも、これで彼の困った可愛いテレ顔を得られますね。執筆の燃料として摂取したいのです♪)
 もちろん智悠璃の方も他のメンバーに合わせて邪魔をしてしまわないように移動するつもりだ。特にスイーツと小物雑貨は被りやすいため気をつける必要があるだろう。
 最後に智悠璃はある確認したかった事を現地で確認してちょっとだけガッカリしていた。
(ところでこの時間の鉄道はあまり混んでないんですね……)
 妄想の中で展開していためくるめく密着ロマンス。それはどうやら望み薄かもしれない。

 クリスマスの下準備として行われた四人の観光はこれにてまずはひと段落。この観光で得られた情報を元にさらに計画を練れば、当日はより素敵な時間を過ごせることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

湯上・アリカ
【ヴェールと】
色々面白そうな街だし、いちごとかも連れてクリスマスデートとかしたいかもなのね
というわけで今のうちに下見するのよ!

行先はヴェールも興味あるみたいなので商業地区
クレープ食べ歩きしつつお店観察
なんだかんだ言っていちごだと、寮の管理人の仕事に役立ちそうなグッズとかあれば喜ぶと思うのよね
面白雑貨屋とか見に行くのよ

入ったお店は、ド○キとかロフ○とかそんな感じの雑多なお店
いちごの役に立ちそうな台所用品とか掃除グッズとか見ていたはずなのに、気付いたらコスプレグッズとかアクセサリーとかに流れちゃって
あ、これなんかヴェールに合うんじゃない?なんて、リボンとかかわいいコス衣装とかを見繕ってみちゃったり

そのあたりから、どんどんヴェールを可愛くすることに夢中になって
今度はブティックへ可愛い服を見にいったり
一緒に更衣室に連れ込んで、ロリィタなんかに無理矢理着替えさせちゃったりして楽しんじゃうのよ
ほらほら、大人しく可愛くなっちゃうがいいのだわ!

可愛く着飾らせることができて満足
当日もこのノリで行くのよ♪


ヴェール・フィエーニクス
湯上・アリカさん(f00440)と一緒に

いちごさんとのクリスマスの下見、です?
では一緒に色々見て回って、行く所を決めていきましょう、ですっ!

…あと、アリカさんと一緒に行く場所も…

と、というわけで、今回は商業地区に行きましょう、ですっ。

グルメやアクセサリに、インテリアなどの色々なお店以外にも、人がいっぱい来る場所だけあって、おっきなツリーとかのきらびやかな装飾も多い、ですっ!

色々巡りながら、いちごさんが喜びそうなものをアリカさんと相談しながら、当日行く場所と時間を決めていきます、ですっ。

…あと、だいじょぶでしたら、スイーツとかを買い食いしながら、アリカさんと一緒にいく所もお話しできたら…

と相談していたら、だんだんアクセサリや衣服の試着になってます、です!?

しかもそれがエスカレートして、ブティックでアリカさんと一緒に色々きせかえしていくことに!?

いろんな服やお着替えするアリカさんにどきどきはわはわしながらも、いろんな服装を楽しんじゃいます

…と、当日も、こうして仲良くすごしていけたら、です…



「到着! なのよ!」
 商業地区の一角で湯上・アリカ(こいのか荘のアリカさん・f00440)は腰に手をあてふんすと鼻息を荒くした。街の探索に向けて気合いは十分と言った様子である。そしてその隣ではヴェール・フィエーニクス(「涙を拭う手」のアサシン・f00951)が恐る恐ると周りを見渡していた。
「こ、ここがそうなんですね……。人が沢山います……!」
 二人がいるのは商業地区のうち比較的落ち着いた場所になる。そこは歓楽街のような乱雑さもなく、企業街のような静けさもなく、商業ビル群のような物量も無ければ、テーマパークのような忙しなさも無い。
 けれど立ち並ぶ店々は新旧が入り乱れていて変化が緩やかな様が見て取れる。それは、常に新しいものが並んでは入れ替わる場所と異なって緩やかな時間の流れを錯覚させる。このあたりは建物も高くてせいぜい三階ほどしかないので、遠目には別の場所の巨大ツリーと巨大なビル群が見てとれた。別方向の観覧車はテーマパークだろうか。
 だが商業地区のツリーは遠目に見える巨大ツリーだけではない。駅前のターミナルの植え込みにも大人が一抱えするほどのツリーが鎮座しており、他にもそこかしこの店先の鉢植えにそれなりの大きさのツリーが飾られていた。

「クレープが売ってたから買ってきたのよ。一緒に食べるのだわ」
 そう言ってアリカは大きなクレープを差し出した。なのでヴェールはドキドキしながら一口食べる。このクレープはこのまま二人で仲良く分け合った。
 もちろん周辺の散策も忘れていない。
「思った通り色々面白そうな街なのよ。クリスマスはいちごとかも連れてデートしたいし、今のうちにめいっぱい下見するのよ! ヴェールも行くのよ!」
 そう言って、アリカはクレープを食べながら周辺の散策を進めていった。ヴェールもアリカの隣に並んでついていく。その道中、ヴェールはアリカからクレープを一口もらっては甘さに口元をほころばせて、視界に入る街中の装飾に目を輝かせていた。


「グルメやアクセサリに、インテリアなどの色々なお店以外にも、人がいっぱい来る場所だけあって、おっきなツリーとかのきらびやかな装飾も多い、ですっ!」
 ヴェールは感情をあまり出さないタイプだ。だからいつもよりキョロキョロと周りを見回して口数も多い今はとても楽しんでいると言えるだろう。
「クレープ、もうひと口どうぞなのよ」
「それじゃあ、いただきます、ですっ」
「美味しいかしら?」
「はいっ、おいしいですっ」
 そんな彼女を見ているとアリカも楽しくなってきて柔らかな笑みがこぼれてくる。とはいえ今回の目的も忘れてはいない。ヴェールは口の中のクレープを飲み込むとアリカに話かけた。
「いちごさんは、何が喜びそうでしょうか……? これだけいろいろあると、当日行く場所と時間に悩む、です」
「なんだかんだ言っていちごだと、寮の管理人の仕事に役立ちそうなグッズとかあれば喜ぶと思うのよね」
「役立ちそうなグッズ、ですか……」
「あ、あそこなんか良さそうなのよ!」
 そう言って、アリカは大型の雑貨店を指差した。

 そこは食べ物からちょっとした医療品、さらには洗剤や食器、小さなインテリアに工具、そして衣類までと様々なものを揃えていた。それだけ聞けば百貨店かデパートの様であるが、そういった店は整理されて広々としているのに対してこの店は所狭しと品物が陳列されている。
 それはまるで倉庫をひっくり返したかのような様相だ。
「まずは台所用品を見るのよ! さあ行くのよ!」
「わっ、す、すごく色んなものが一杯ある、ですっ」
「袋とじのクリップなんかあると便利かもなのよ」
「ときどき足りなくて、輪ゴムで留めてましたね……。あ、これもどうかな、ですっ」
「まな板なのね。確かに今あるのはそろそろ傷だらけだし、とても良さそうなのよ」
「あっちは掃除グッズでしょうか……?」
「掃除グッズもいちごが喜びそうだわ。そっちも見てみるのよ!」
 ふたりはクリスマス当日に買うことを意識して値段をしっかり確認しながら店内を移動する。そして……。
「わわっ、こんなのも売ってるんだ……」
「何か見つけたのかしら?」
 ……いつの間にか二人はコスプレグッズやアクセサリーのコーナーに接近していた。


「やっぱり定番はサンタさんだわ! このサイズならいちごも着られそうなのよ!」
 アリカはコスプレ衣装のひとつを手にとる。衣装の存在は想定外であったがこの商品配置はいちごを自然とこのコーナーに連れて来ることができそうだ。後は流れで買ってしまえばいちごは後で着てくれる。そんな気がする。
「いちごさんだったら、こういうのも似合いそう、です」
 ヴェールが手に取ったのは赤いパーティドレス。肩が大きく露出したタイプだが腰回りはパニエのような構造が内側にあって広がっているため、いちごなら女性と見間違える様な着こなしを見せそうだ。安いコスプレ衣装として作られているので、縫製が甘く長持ちするようなものではないが二回〜三回着る分には十分な強度だろう。
 そんなヴェールの背後にアリカが忍び寄り、頭にネコ耳をぽんと乗せる。
「ひゃっ!? な、なんですか!?」
「ヴェールもこういうのが似合うのよ♪」
 そう言ってアリカはアクセサリーの試着用の鏡を指し示す。ヴェールの頭には黒いネコ耳が乗っていた。
「あ、これを組み合わせたらもっとヴェールに合うんじゃない?」
 そう言ってアリカは黒の魔女っ娘ドレスを持ってきてヴェールの身体に重ねてみせる。鏡の中には、黒くひらひらしたドレスの銀髪銀目の黒ネコ耳の少女が写っていた。
「とっても可愛いのだわ♪ どうせなら黒猫の尻尾も欲しいのよ」
「アリカさん!?」
「あ、そうだわ! 他のお店にも向かうのよ♪」
 ネコ耳や衣装を元の場所へ戻すと、アリカはドキドキと戸惑うヴェールの手を取って雑貨店を出るのだった。
 店を出たアリカは再びずんずん進む。ヴェールはその手を握り返した。新しい景色、新しい経験。アリカと一緒に過ごす時間はヴェールの中に沢山の想い出とドキドキを作ってくれる。
「あのクレープも美味しそうだわ。ちょっと寄り道していくのよ!」
「……はいっ!」
 時に交互に、時に重なって、いろんなドキドキがやってくる。いつもドキドキにペースを崩されてしまうヴェールだけれど、こういった時間は好きだと思う。こんな時間をもっと過ごしたい……。そう、彼女は願っていた。
(クリスマスの当日に、アリカさんと一緒にいく所もお話しできたら……)
 クリスマスの約束を今日とりつけよう。ヴェールは心の中でそっと決意した。


 次に二人が訪れたのはブティックだ。ファッショナブルな服やアクセサリーを専門店に取り扱う店であり、随所にお洒落が散りばめられている。
「じゃーん! 到着なのよ!」
「えっ、あっ、アリカさん……!?」
 入店するやアリカはヴェールを連れて店の奥へずんずん進む。そしてヴェールを更衣室に押し込んだ。
「ちょっと待ってて欲しいのよ」
 そう言って数秒離れると、ロリィタ系の服を持って戻って来た。
「これなんかヴェールに合うんじゃない?」
「えっ、これはさすがに私には派手過ぎる、ですっ……!」
「ほらほら、大人しく可愛くなっちゃうがいいのだわ!」
「ひえぇ~!?」
 ヴェールは更衣室で成す術無く身包み剥がされた。続けててきぱきと複雑な服を着せられていく。
「ほらね、やっぱり似合うのよ♪」
 更衣室の鏡に映る、いつもと違う自分の姿にヴェールは息を飲む。さっきまで狭い場所にアリカと二人きりなドキドキだったのが、今度は自分が別人のように可愛くなったことにドキドキしていた。そして――。
「じゃあわたしはこれを着て……と」
「わわわ、アリカさんここで着替えるんですか!?」
「ここが着替える場所なのよ?」
 ――突然脱ぎだしたアリカによって別のドキドキで上書きされる。
 ヴェールが試着した服は鮮やかなルビーレッドの生地が多く使われていて黒がワンポイントのロリィタ衣装だ。対するアリカが試着した服はマリンブルーの生地にデフォルメされた植物がレモンイエローで描かれて、白が散りばめられたロリィタ衣装になっている。

「この色だと二人で揃って並ぶと良い感じなのよ」
 ここが店内でなければ写真をとっていただろう。鏡に写るツーショットで満足したアリカは元の服に着替えると「他の服を持って来るのよ」と言い残して更衣室を出ていった。
 そこから先はファッションショーだ。モデルはもちろんヴェールである。
 アリカは、どきどきはわはわするヴェールを次々と着せ替えていった。緩いシャツにコートとミニスカートを合わせたちょっとダラッとした着こなしに、ワンピースにカーディガンを重ねた森ガール系、ハイネックセーターにロングスカートの上から冬の防寒着やニット帽を合わせたもこもこした恰好まで。ほんとうに様々な服を着せ替えた。


 気がつけば時間も過ぎてそろそろ帰る時間だ。
 存分にヴェールを着せ替えたアリカはとても満足した様子でつやつやしている。対するヴェールはちょっぴり疲れた様子だったけれど、ヴェール自身もとても楽しかった。なのでまたこうして遊びに来たいなと彼女は考えた。
「可愛く着飾らせることができて満足なのだわ♪」
「……あの、アリカさん……!」
 下見が終わる帰り道で、ヴェールはアリカに話しかける。
「……今日は、楽しかった、ですっ!」
「わたしも楽しかったのよ♪」
「それで、あの、だいじょぶでしたら、なのですが」
「?」
 アリカはなにかしら? と首をかしげる。
「……と、当日も、こうして仲良くすごしていけたら、と思って……。なので、クリスマスも今日みたいに、一緒にここに、来ませんかっ!!」
 ドキドキを乗り越えてヴェールは次のお誘いを口にした。クリスマスの当日もアリカと一緒に過ごす時間が欲しいから。だから、勇気を出したのだ。
 そのお誘いに、アリカは快く承諾した。
「もちろんなのよ。当日も一緒に楽しく遊ぶのだわ♪」

 日が暮れはじめて街灯やイルミネーションに光が灯る。空はまだ明るくて足元も十分見えるけど、暗くなるのはあっという間だろう。
 空が赤くなり始め、夕日が次第に街を染めていく。この夕日は帰路につく二人の姿もだいだい色に染めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年12月20日


挿絵イラスト